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安斎随筆
前編三
一獄門の樗木 古き書共に、首お斬て獄門の木に掛けると雲事あり、樗の木お用るは誤也、和名抄に、練、阿布智とあり、此訓古し、樗はむかし此方になき木なれば、獄門に植べき事有べからず、獄門に植しあふちは練の字也、何故獄門に練お植しぞと雲理は、何の書にも所見なければ詳に知れず、無証の推量の説は無益なれ共、愚私に推量するに、国言に血に穢るヽお血にあへるとも、あへ血とも雲に付けて、血にあへる意にて、練の名のあふちといふお以て、斬首お掛ん為に、此樹お獄門の前に植へたる歟、〈◯下略〉 ◯按ずるに、練樹に梟首する事は、法律部上編死刑篇に詳なり、