地部/大隅國

p.1166 大隅國ハ、オホスミノクニト云フ、西海道ニ在リ、元明天皇和銅六年四月、日向國肝坏、囎唹、大隅、姶羅ノ四郡ヲ割キテ始テ置ク所ナリ、東ハ日向、西ハ薩摩、南ハ日向、薩摩ニ界シ、南ハ海ニ至ル東西凡ソ十里、南北凡ソ二十八里、其地勢ハ東北西ノ三面、山嶽回抱シ、南方海表ニ横出シテ半島ノ状ヲ成シ、西方薩摩ト相對シテ鹿兒島灣を爲ス、此國ハ古ヘ國府ヲ桑原郡ニ置キ、菱刈(ヒシカリ)、桑原(クハバラ)、囎唹(ソヲ)、大隅(オホスミ)、姶羅(アヒラ)、肝屬(キモツキ)、馭謨(ゴム)、熊毛(クマゲ)ノ八郡ヲ管シ、延喜ノ制、中國ニ列ス、始メ多褹島ハ多褹國トモ稱セシガ、仁明天皇天長元年、此國ニ隷屬セシメ、能滿郡ヲ馭謨郡ニ、益救郡ヲ熊毛郡ニ合ス、後世姶羅郡ヲ誤テ始羅郡ト稱セシガ明治維新ノ後、其舊稱ニ復シ、新ニ大島郡ヲ置キ、囎唹郡ヲ東西ニ分チ、大隅郡ヲ南北ト爲シ、櫻島ヲ以テ其北郡ニ充テ、更ニ菱刈郡ヲ廢シテ薩摩國伊佐郡ニ併セ、北大隅郡ヲ薩摩國鹿兒島郡ニ併セ、南大隅郡ヲ肝屬郡ニ合セ、又日向國南諸縣郡ヲ東囎唹郡ニ合セテ、囎唹郡ト改稱シ、桑原、西囎唹二郡ヲ姶良郡ニ合セ、馭謨郡ヲ熊毛郡ニ併セ、凡テ五郡ト爲シ、鹿兒島縣ヲシテ之ヲ治セシム、

名稱

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.1167 大隅〈於保須美〉

〔饅頭屋本節用集〕

〈遠天地〉

p.1167 大隅(ヲホスミ)〈隅州〉

〔日本風土記〕

〈一〉

p.1167 大隅〈阿思米(ヲウスウミイ)〉

〔易林本節用集〕

〈下〉

p.1167 大隅、〈隅州〉中、管八郡、東西二日、雖レ爲二小國一、食類豐、魚鼈類多、紙帛殊饒也、中上圀也、

〔倭訓栞〕

〈前編四十五於〉

p.1167 おほすみ　大隅の國は、字の如く南海へさし出たる國にて、種が島、やく島なども此國に屬せり、

〔諸國名義考〕

〈下〉

p.1167 大隅　和名抄に、大隅〈於保須美、國府在二桑原郡一、〉名義は日向國内にて、西南の隅に差出たるゆゑに、大隅郡と號しならむ、

位置

〔地勢提要〕

〈乾〉

p.1167 各國經緯度〈附里程〉　大隅邊津加村枝郷大泊、極高三十一度一分、經度西四度五十六分、從二薩摩鹿兒島一〈沿海〉三十七里一十四町、〈九州極南地〉　四百一十九里四町四十三間半〈◯從二東都一〉　大隅種子島、〈西面村赤尾木〉極高三十度四十三分半、經度西四度三十六分半、從二大泊一〈渡レ海直徑〉一十里三十町、四百二十九里三十四町四十三間半〈◯從二東都一〉　大隅屋久島、〈吉田安房村〉極高三十度一十八分、經度西四度五十五分半、從二大泊一〈渡レ海直徑〉一十九里二十四町、　四百三十八里二十八町四十三間半〈◯從二東都一〉

〔日本經緯度實測〕

p.1167 北極出地　大隅　波見村〈肝屬郡〉　三一度二一分〇〇秒　赤尾木〈種子島〉　三〇度四三分三〇秒　大泊　三一度〇一分〇〇秒　安尾村〈屋久島〉　三〇度一八分〇〇秒〈◯中略〉　東西里差　

p.1168 山城　京　〇度〇〇分〇〇秒〈◯中略〉　大隅　佐多岬　西四度五四分〇〇秒

疆域

〔佐藤元海九州記行〕

p.1168 一大隅國、東ハ日向ニ接シ、西ハ薩摩ニ連リ、南ハ大洋ニ岬出テ、北ハ肥後ノ球摩郡米良ノ深山ニ遠ク犬牙接壤シ、東西ハ短ク、南北ハ長シ、又南海中ニ種兒島屋久島アリ、此二島ハ頗ル大ニシテ、一國ノ如シ、皆此大隅ノ屬地ナリ、

〔日本地誌提要〕

〈七十二大隅〉

p.1168 疆域　東ハ日向、西ハ薩摩、北ハ日向、薩摩、南ハ海ニ至ル、東西凡壹拾里、南北凡貳拾八里、

島嶼

〔日本實測録〕

〈十一島嶼〉

p.1168 大隅國肝屬郡　實測　中島、周廻九町一十四間、　遠測　舟木磯　沖大筈磯　地大筈磯　天神島　大隅郡　實測　櫻島周廻一十里一町三十七間、　新島、大周廻一十九町四十四間、　新島、中周廻七町八間、　新島、小周廻四町、〈新島三、安永八己亥年十月湧出、〉　ヲコ島、周廻一十一町二間、　遠測　島瀬　枇榔島　大輪島　股河洲　江之島　鳥島　新島地　新島沖〈新島二、安永八己亥年十月湧出、〉　桑原郡　實測　邊田小島、周廻一十七町一十間、〈從二南岬一至二辨天岬一、六町三十三間〉　沖小島、周廻一十町五間、　遠測　一盃島　馭謨郡　實測　屋久島、周圍一十六里三十七間、吉田安房村、三十度一十八分、長田村、三十度二十四分、吉田宮之浦村、三十度二十五分、同小瀬田村、三十度二十三分半、〈從二芋生川口一至二東生村一八丁一十六間、從二長田村濱一至二宿所一二丁一十五間、從二長田岬一至二御崎一三丁一十八間、從二一湊村濱一至二矢筈崎一一十四丁四十間、〉　遠測　口之永良部島　沖岩　七ツ瀬　熊毛郡　實測　種子島、周廻三十七里二十七町四十三間、西面村、赤尾木三十度四十三分半、國上村浦田三十度四十八分、同濱脇、三十度四十五分半、島間村古川、三十度一十七分、〈從二西面村赤尾木一至二田之脇一、徑測二里一十四丁四十六間、國上村浦田岬徑測三丁二十間、從二國上村濱脇一至二宿所一、七丁二十八間、從二納官村東濱一歴二郡原一至二西濱一、徑測二里二十五丁三十間、〉　遠測　馬毛島　アブノコ鼻　蠟蠋瀬　山瀬〈莖永村〉　竹瀬〈納宮村〉　アキト瀬　沖ノ瀬　小瀬　竹瀬〈莖永村〉　大鳥巣　岡鳥巣　岡大瀬　沖鳥巣　沖大瀬　一ツ瀬　中山瀬　沖山瀬　山瀬〈納宮村〉

〔麑藩名勝考〕

〈二大隅〉

p.1169 同郡〈◯大隅〉　櫻島(○○)〈本朝文粹等亦云二向島一、武備志同、是麑島に對備するの名なり、櫻島といふは、むかし櫻花一葉、海上に浮てよりなれる島ゆえ名づけしと云舊説あり、蓋木花開耶姫の名によりしなるべし、方角集に、薩摩の内に收めしは誤なり、〉　府東海上一里周廻七里　山上八分より上は、三條の外路なし、渉るを一里といひ、降るを十八丁と云、皆九折の嶮岨也、巓に湖あり、嶺に神祠あり、彦火々出見尊を祀る、又月夜見尊、火闌降命をも配祀すと云、故に兎を愛して、島民其名を諱て敬謹するものは、月夜見尊を奉祀するが故といふ、

〔地理纂考〕

〈二十大隅〉

p.1169 大隅郡　櫻島　鹿兒島ヲ距ル事東方一里、四方海岸、周廻九里三十一町餘、村落十九、〈武村、古里村、湯ノ村、西道村、杉浦村、二俣村、白濱村、脇村、高免村、瀬戸村、黒神村、有村、野尻村、赤水村、横山村、小池村、赤生原村、藤野村、沖之島村、〉高二千七百十七石五斗三升八勺一撮、〈◯中略〉人員總計一万千四百二十九人、戸數二千百二十五軒、　島形大抵圓シ、中央ニ櫻島岳秀出ス、人家皆海岸ニアリ、南ニ沖子島アリ、西南ニ鳥島アリ、北ニ新島アリ、皆當島ニ屬ス、サテ此島俗ニ靈龜四年、或ハ養老二年、或ハ和銅元年ニ湧出ストイヘルハ、無稽ノ妄説ニシテ、兎角論ズルニ足ラズ、按ズルニ、續日本紀天皇天平寶字八年十二月、西方有レ聲似レ雷、非レ雷、時當二大隅薩摩兩國界一、煙雲晦冥、奔雷去來、七日後、乃天晴、於二鹿兒島信爾村之海一、砂石自聚、化成二三島一、炎氣露見、有三如レ治鑄之爲二形勢一相連望似二四阿屋一、爲レ島被レ埋者、民家六十二區、口八十餘人云々トアルヲ訛レル事論ナシ、是ハ同紀ニ神造島トアリテ、今ノ國分郷小島ナリ、サルヲ近世騷人文士等、妄リニ櫻島ヲ天平島、或ハ寶字峯ナドヽイヘルハ笑フニ堪ヘリ、〈神造島ノ事ハ、同國國分郷ノ卷、小村ノ條ニ詳ナリ、白尾國柱曰、皇帝紀云、靈龜四年向島湧出ス、或説、養老二年、向島湧出ス、按ズルニ、二説思ラクハ非ナリ、靈龜養老ノ間、天長時政録誌曲盡シテ遺サズ、櫻島ゴトキノ一島生出セムニ、國史ニ是ヲ登載セザラムヤト云々、〉

〔西遊雜記〕

〈四〉

p.1169 櫻島は、大隅薩摩の中央にありて、小ならざる島にて、山をしまケ嶽といふ、麓はくる

p.1170 くると取まわし、漁村數多有り、むかしは櫻木數千本ありて、花の名高し、此故いく櫻島と稱す、國守の御茶屋も有なり、〈（中略）此島船にて海上をめぐれば、十里ありと土人の言也、〉安永八年亥九月〈◯九月、翁草作二十月一、〉朔日より地動き、海底鳴りて、潮鼎の涌るごとし、こはいかならんと、浦人さわぎおどろきて漁船に乘て、地方へ渡らんとせしに、海底より潮を吹上る事強くて、自おもふ方へよする事叶はず、覆らんとす、兎や角とする内、志滿ケ嶽の頂より砂石を飛して、燃出る事夥敷、北方の漁村を埋む事百餘軒、死亡せるもの百六拾二人、痛つく者百餘人、鹿兒島を始め、近き所の濱浦の人は、二三里も逃しりぞく、〈予櫻島の漁夫三四人に聞しに、その話し同じ、〉二十日計強く燃て、其後は煙り計立て今のごとし、又其頃海底より土砂吹上て、島となる所大小七ツ、大なるは周く二十町餘、小なるは一二丁、年々に高くなると、浦人の物語りき、〈◯中略〉すべて島の模様、入海の眺望、勝景の地也、〈◯中略〉眞言律宗淨光寺といへるは、小高き所にて、此境内より櫻島を見れば、風景一しほよし、

〔續日本紀〕

〈二十五淳仁〉

p.1170 天平寶字八年十二月、是月、西方有レ聲、似レ雷非レ雷、時當二大隅薩摩兩國之堺一、煙雲晦冥、奔電去來、七日之後、乃天晴、於二鹿兒島信爾村之海一、沙石自聚化成二三島一、炎氣露見、有下如二治鑄一之爲中形勢上、相連望以二四阿之屋一、爲レ島被レ埋者、民家六十二、區口八十餘人、

〔拾芥抄〕

〈中末本朝國郡〉

p.1170 邊要國〈◯中略〉　陸奧　出羽　佐渡　對馬　多禊(○○)〈◯中略〉　併分國國〈◯中略〉　大隅〈（中略）天長元年月日、停二多襯島一隷二大隅國一、〉

〔書言字考節用集〕

〈一乾坤〉

p.1170 【多禰島】(タ子ガシマ)〈舊事記作二多褹一、隅州附庸、〉

〔倭訓栞〕

〈中編十三多〉

p.1170 たねがしま　日本紀に多禰島、續日本紀に多褹島、武備志に種子島、唐書に多尼、全淅兵制に種島に作れり、今大隅の國に屬り、南島志に琉球の内とせり、

〔南浦文集〕

〈上〉

p.1170 鐵炮記〈代二種子島久時公一〉　隅州之南有二一島一、去レ州一十八里、名曰二種子一、我祖世々居レ焉、古來相傳、島名二種子一者、此島雖レ小、其居民

p.1171 庶而且富、譬如下播種之下二一種子一、而生々無上レ窮、是故名レ焉、〈◯中略〉和泉界有二橘屋又三郡者一、商客之徒也、寓二止我島一者一二年、而學二鐵炮者一、殆熟矣、歸旋之後、人皆不レ名、而呼曰二鐵炮又一矣、然後畿内之近邦、皆傳而習レ之、非二翅畿内關西之得而學レ之而已一、關東亦然、〈◯中略〉然則鐵炮之權二輿於我種子島一也、明矣、昔者採二一種子之生々無レ窮之義一名二我島一者、今以爲レ符二其䜟一矣、

〔麑藩名勝考〕

〈二大隅〉

p.1171 多褹島〈續日本紀　日本紀作二多禰一者、指ス所今ノ琉球ナリ、後ニミユ、唐書作二多尼一、明世法録作二多襯一、圖書編作二多藝州一、蒼霞草、兩朝平壤録並作二多熱島一、海東諸國記、日本風土記、武備志等並作二種島佗尼什麼一、登壇必究等作二種子島一、是我今俗ノ所書ニ作レルナリ、〉　府東南三十九里、周匝四十五里、西去二益救島一七里、　村數十八　古は今の屋久島を益救能滿の二郡として、多褹島に隷て一國とし、國造を置れき、多褹對馬並言こと、今の壹岐對馬のごとし、故に國史多褹島を係る事、比々枚擧に遑あらず、

〔地理纂考〕

〈二十四大隅〉

p.1171 熊毛郡　種子島〈書紀多禰或ハ多褹ニ作ル〉　鹿兒島ノ南ニ距ル事三十九里、周廻三十六里廿三間、西距二益救島一七里ナリ、村落十六、〈西表村、國上村、下中村、島間村、由久村、野間村、莖永村、納官村、安納村、古田村、坂井村、平山村、現和村、西野村、増田村、赤尾木村、〉此島上古、屋久島、口之永良部島ヲ合セ、益救、能滿、馭謨、熊毛ノ四郡ヲ置テ多褹國ト云ヒシヲ、天長元年十月大隅ニ隷ラレシナリ、

〔佐藤元海九州記行〕

p.1171 種兒島ハ、大隅ノ國佐多崎ヨリ東南十八里アリ、屋久島ハ正南二十里餘ト云フ、

〔日本書紀〕

〈二十九天武〉

p.1171 十年八月丙戍、遣二多禰島一使人等貢二多禰國(○○○)圖一、其國去レ京五千餘里、居二筑紫南海中一、切レ髮草裳、粳稻常豐、一葅兩收、土毛支子、莞子、及種々海物等多、　庚戍、饗二多禰島人等于飛鳥寺西河邊一、奏二種々樂一、

〔續日本紀〕

〈一文武〉

p.1171 三年七月辛未、多褹(○○)、夜久、菴美、度感等人、從二朝宰一而來貢二方物一、授レ位賜レ物各有レ差、　八月己丑、奉二于南島獻物于伊勢太神宮及諸社一、

〔續日本紀〕

〈二文武〉

p.1172 大寶二年八月丙申、薩摩多褹隔レ化逆レ命、於レ是發レ兵征討、遂校レ戸置レ吏焉、

〔續日本紀〕

〈六元明〉

p.1172 和銅七年四月辛巳、給二多褹島(○○○)印一圖一、

〔東大寺正倉院文書〕

〈四十三〉

p.1172 筑後國天平十年正税帳　賚二官馬牛皮一入レ府、多褹島人貳拾捌人還二歸本島一、〈廿五日〉單漆伯人、食稻貳伯捌拾束、〈人別四把〉得度者還二歸本島多褹島一、僧貳軀〈廿五日〉單伍拾人、食稻貳拾束、〈人別四把〉

〔續日本紀〕

〈十六聖武〉

p.1172 天平十七年十月戊子、論三定諸國出二學正税一、毎レ國有レ數、但多褹對馬兩島者、並不レ入レ限、

〔續日本紀〕

〈二十六稱徳〉

p.1172 天平神護元年正月戊戍、太宰大貳從四位上佐伯宿禰毛人、坐二逆黨一左二遷多褹島守一、〈◯守據二日本紀略一補〉

〔類聚三代格〕

〈七〉

p.1172 太政官符　應レ聽下以二同姓人一補中主政主帳上事　右撿二天平七年五月廿二日格一偁、終身之任、理可二代遍一、宜二一郡不一レ得レ并二用同姓一、如於二他姓中一无レ人レ可レ用者、僅得レ用二於少領已上一、以外悉停レ任、但神郡國造、陸奧之近レ夷郡、多褹島郡等聽レ依二先例一者、今被二右大臣宣一偁、奉レ勅一郡之人同姓尤多、或身有二勞効一、或才堪二時務一、而被レ拘二格旨一不レ蒙二選擢一、人之爲レ憂莫レ甚二於此一、宜下改二斯例一依レ件令上レ補不レ得三因レ此任二譜第人一、自レ今以後、永爲二恒例一、　弘仁五年三月廿九日

〔釋日本紀〕

〈十四述義〉

p.1172 掖玖(○○)人　夜句人　私記曰、或本爲二夜句一、同也、掖玖者西海別島也、出二美貝一、今俗謂二之夜句具一、但此島與二大隅國一相近耳、

〔麑藩名勝考〕

〈二大隅〉

p.1172 益救島〈延喜式　日本紀夜句、續紀夜久、益久、夜古、兩朝平壤録、日本風土記並作二養久山一、海東諸國記作二赤島一、圖書編作二葉活島一、琉球國志略作二野古一、〉　府南四十八里、周匝三十五里、港五、大小村落二十餘、所レ隷永良部島、　日本紀曰、推古天皇二十年、掖玖人來、　隋書琉求傳作二邪久一、唐書作二邪古一者、並に今の南海諸島に

p.1173 混じ稱するものにして、今の馭謨郡一島を付言するものにあらず、通證曰、琉球上世與二掖玖一混二同其名一、所レ謂小琉球者、或指二益久一而言、世法録海貝亦可レ證也、按今南島人、七島を指して土噶喇といふがごとし、土噶喇は其七島寶島の名也、掖玖又此方の陸に近き端島、故南島を呼て邪久といえり、當時南島の名稱未レ備ば也、

〔地理纂考〕

〈二十四大隅〉

p.1173 馭謨郡　屋久島　鹿兒島ノ南ニ距ル事四十八里、周廻廿五里ナリ、村落十八、〈栗生村、永田村、吉田村、一湊村、白子村、宮之浦村、船行村、麥生村、小島村、楠川村、尾野間村、平内村、湯泊村、小瀬田村、中間村、安房村、原村、口永良部島村、〉　高千三百四十五石　平民六千六百八十二人〈男三千三百十八人　女三千三百六十四人〉　戸數千七十一

〔杜氏通典〕

〈百八十六邊防〉

p.1173 東夷〈◯中略〉　琉球　煬帝大業初、海帥何蠻等云、毎二春秋二時天清氣靜一、東向依稀、似レ有二煙霧之氣一、亦不レ知二幾千里一、三年、帝令三羽騎尉朱寛、入レ海求二訪異俗一、何蠻言レ之、遂與レ蠻倶往、因到二流求國一、言不二相通一、掠二一人一、并取二其布甲一而還、時倭國使來朝、見レ之曰、此夷邪久國(○○○)人所レ用也、

〔異稱日本傳〕

〈上二〉

p.1173 今按、邪久者、唐書所レ謂邪古、日本書紀所レ謂掖玖也、字雖レ異、音通、邪久爲二我西南小島一、故使者知二其布甲一、

〔新唐書〕

〈二百二十東夷列傳〉

p.1173 日本、古倭奴也、〈◯中略〉其東海嶼中、又有二邪古(○○)、波邪、多尼三小王一、北距二新羅一、西二北百濟一、西南直二越州一、有二絲絮怪 一云、

〔兩朝平壤録〕

〈四日本〉

p.1173 西海道近淛江山少、止養久(○○)山居二海中一、方圓二百餘里、竹中叢茂、多二茶笋一、又出二多羅木一、有二地都一守レ之、

〔西遊雜記〕

〈四〉

p.1173 此地〈◯薩摩〉より屋久の島へ、海上二十里といへども遠し、此間に小島多し、さて屋久の島は、古しへ屋久國と稱せし一國にて、東西九里餘、南北五里、七里、或は二里、或は一里、名産には杉

p.1174 の木を第一とし、樫の木樟腦尤よし、島の風俗、上世のかた殘りて、島人琉球のごとく有髮の者多し、半は琉球の風有りと云々、　此島へ旅人の渡る事國禁にて、予〈◯古河辰〉も渡海せず、浦々にて屋久の島へ渡らんと聞は、尋よりて島風を聞し事也、信じがたき事は爰に記さず、

〔日本書紀〕

〈二十二推古〉

p.1174 二十四年三月、掖玖人三口歸化、　五月、夜句人七口來之、　七月、亦掖玖人二十口來之、先後并三十人、皆安二置於朴井一、未レ及レ還皆死焉、

〔日本書紀〕

〈二十三舒明〉

p.1174 元年四月辛未朔、遣二田部連〈闕名〉於掖玖一、　二年九月、是月田部連等至レ自二掖玖一、　三年二月庚子、掖玖人歸化、

〔日本書紀〕

〈二十九天武〉

p.1174 十一年七月丙辰、多禰人、掖玖人、阿麻彌人、賜レ祿各有レ差、

〔續日本紀〕

〈一文武〉

p.1174 三年七月辛未、多褹、夜久(○○)、菴美、度感等人、從二朝宰一而來貢二方物一、授レ位賜レ物各有レ差、　八月已丑、奉二于南島獻物于伊勢太神宮、及諸社一、

〔續日本紀〕

〈十九孝謙〉

p.1174 天平勝寶六年正月癸丑、太宰府奏、入唐副使從四位上吉備朝臣眞備船、以二去年十二月七日一來二著益久島一、自レ是之後、自二益久島一進發、漂蕩著二紀伊國牟漏埼一、

〔倭名類聚抄〕

〈十九鱗介〉

p.1174 錦貝　辨色立成云、錦貝、〈夜久乃斑貝、今按、本文未レ詳、但俗説、西海有二夜久島一、彼島所レ出也、〉

地勢/氣候

〔萬國夢物語〕

〈下〉

p.1174 自レ夫南大隅ノ地ニ行、此國東南西ノ三方皆海也、北ニテ東ハ日向、西ハ薩摩、北ハ肥後也、東南海中廿里計ヲ隔テ種島其西ニ夜久(ヤク)島アリ、氣候南ノ端ニテ、鹿兒島ヨリモ又南ナレバ、餘程暖國ナリ、

〔西遊雜記〕

〈三〉

p.1174 漸十七日に大隅に入りし也、此國も口向と同じ風土にて、上方筋中國筋にくらべ思へば、何といはんやふなき下國にて、人物言語賤敷、諸品不自由也、大隅は東西せまく、南北長き山國にて、東は日向、西は薩摩、南は海、北へは長々と肥後の求摩郡まで入込し國也、國中にさして一

p.1175 覽すべき程の風景の地、名所舊跡もなく、鹿兒島の風景一日もはやく見まほしく、道をいそぎて、此日加治木の町に至りて止宿せり、

〔日本地誌提要〕

〈七十二大隅〉

p.1175 形勢　東北西三面、山嶽回抱シ、南方尖長、海表ニ横出シテ西ニ裏海ヲ擁シ、遙ニ二大島ト相望ム、澗壑深阻ト雖ドモ、氣候極煖ニシテ、草木暢茂ス、

道路

〔日本實測録〕

〈七街道〉

p.1175 從二肥後國坂梨一歴二高千穗一至二濱市一〈◯中略〉　大隅國囎唹(ソオ)郡田口村〈至二霧島神社一一里二十二丁五十一間〉　三里二十一町三十五間半　桑原郡内村辻〈至二國府八幡社一五丁二十三間〉　二十八町二十二間　濱市(ハマノイチ)村、三十一度四十三分、〈至二海岸一一丁〉　〈從二坂梨一至二濱市一〉街道、通計七十里八町一十二間半、〈◯中略〉　從二日向國麓村一歴二加久藤一至二中之村一〈◯中略〉　大隅國桑原郡鶴丸村　二里三十四町一間　小羽村　一里二十四町九間　中之村　〈從二麓村一至二中之村一〉街道、通計一十四里廿九町二十一間、　從二日向國油津一歴二牛ケ峠一至二廻村一〈◯中略〉　大隅國囎唹(ソオ)郡鶴木村小倉　一里三十二町四十四間　佳例川(カレイハカ)村　二里一十八町三十間　廻(メグリ)村　〈從二油津一至二廻村一〉街道、通計一十八里三十町六間〈◯中略〉　從二肥後國湯浦本村大口街道一至二鹿兒島一〈◯中略〉　大隅國菱刈郡湯尾村　三里一十一町四十五間　桑原郡中之村　三町一十五間　同横川、三十一度五十四分半、　二里一十六町一十八間　姶羅郡有川村石原　三里六町一十二間　段土(タント)村浦町〈又呼二加治木一〉　一里三十一町一十町　脇本村浦町、三十一度四十一分半、　三里二十七町一十九間〈至二國界白金峠一二十七町四十四間〉　薩摩國鹿兒島郡鹿兒島車町　〈從二湯浦本村一至二鹿兒島一〉街道、通計二十四里二十町三十七間、

〔日本實測録〕

〈六沿海〉

p.1176 從二豐前國小倉一沿海至二鹿兒島一〈◯中略〉　大隅國肝屬(キモツキ)郡柏原村〈至二中野村鹿屋野町一四里二十一町五十六間、北極高、三十一度二十一分半、從二野町一至二大姶良(アヒアヒラ)村一、二里四町一十八間、〉　二町四十八間〈至二高隈川口一二町一十八間〉　波見村、三十一度二十一分、〈沿レ川至二荒瀬尻一、一十二町廿九間半、〉　二里二十町一十五間半　小串村高崎　二里八町三十六間半　南浦村内之浦町、三十一度一十五分半、　一里一十八町三十六間半　南浦村火崎　四里五町七間半　岸良(キラ)村濱、〈至二岸良村宿所一一十一町〉三十一度一十三分、　三里二十八町五十八間　同川向　四里一十四町四十七間　大隅郡邊津加村、三十一度四分半、　二里三十四町三十二間　郡(コホリ)村濱、〈至二郡村宿所一汎測一十二町三十間〉三十一度三分半、　二里二十七町二十四間　邊津加村大泊、三十一度一分、〈至二山崎村尾波瀬一徑測二十四丁一十一間〉　一里一十町三十二間　同田尻〈歴二御崎權現華表前一至二佐多崎一、二十八丁二十八間從二華表前一至二御崎權現社一、四丁二十二間、〉　六町九間　同田尻越〈至二佐多岬一八丁三十間〉　一里一町三十二間　山崎村尾波瀬　二里二間　伊座敷(イザシキ)村、三十一度五分、　二里一十七町一十一間半　山木村邊田　三里九町三十間半　大根占(オホ子シメ)村濱、〈至二大根占村宿所一汎測四丁三十間〉三十一度一十四分半、　一里　神之川村〈至二大姶良(アヒラ)村宿所一二里九町五十一間、北極高三十一度一十九分半、〉　二里二十町五十六間　肝屬(キモツキ)郡高洲村野里　二里一十九町二十間　新城村濱、〈至二新城村宿所一三丁三十三間〉三十一度二十五分、　二里二十一町一十五間　大隅郡田上村、三十一度二十九分、一里二十三町二十一間　海潟(カイカタ)村　二里三十二町五間　二川村、三十一度三十四分半、　二里三十三町四十九間　囎唹(ソオ)郡廻(メグリ)村、三十一度三十九分半、〈◯以下墨滅〉

宿驛

〔延喜式〕

〈二十八兵部〉

p.1176 諸國驛傳馬〈◯中略〉　大隅國驛馬〈蒲生、大水各五疋、〉

建置沿革

〔日本國郡沿革考〕

〈三西海道〉

p.1176 大隅〈姓氏録作二大角一◯中略〉　中國、管八郡、二百三十村、　菱刈(　/ヒシカリ)〈十三村　天平勝寶七載五月、大隅郡菱刈村浪浮九百三十餘人言、欲レ建二郡家一許之、〉　桑原〈三十二村古國府〉　始羅(シラ/アヒラ)〈三十九村　延喜式等作二姶羅一、續紀作二姶 一、神代紀日向吾平山即此地、〉　囎唹(　/ソオ)〈六十三村　古襲國、延喜式等作二贈於一、拾芥抄以レ茲爲二國府之地一、　景行紀十二年十二月、議レ討二熊襲一、天皇詔曰、朕聞之、襲國有二厚鹿文迮鹿文者一、熊襲之渠帥者也、衆〉

p.1177 〈類甚多、是謂二熊襲八十梟師一、其不レ可レ當焉、十三年五月、悉平二襲國一、〉　肝屬〈三十八村續紀作二肝杯一〉　大隅〈三十二村〉　熊毛〈九村　古多褹島、或作二多禰一、天武紀十年八月、遣二多禰島一使人等貢二多禰國圖一、其國去レ京五千餘里、居二筑紫南海中一、天長元年停二多褹島一隸二大隅國一、參議大宰大貳小野朝臣峯守等解偁、謹按二内太政官去二月十一日符一偁、（中略）右大臣宣、奉勅宣、勅利害言上者、南溟淼々、有レ國無レ益、一如二符旨一、須停レ島隷二大隅國一、計二其課口一、不レ足二一郷一、量二其土地一、有レ餘二一郡一、能滿合二於馭謨一、益救合二於熊毛一、四郡爲レ二、於レ事爲レ便、多褹島近世作二種子島一、圖書編作二多藝島一、通典作二多尼一、〉　馭謨(コム)〈四村〉　益救(ヤク)〈天長元年廢合二熊毛郡一、推古紀作二掖久一、或作二夜久、又夜句一、續紀作二益久一、　唐書作二邪古一、平壤録作二養久山一、〉　熊滿〈天長元年廢合二馭謨郡一〉　串卜(クシウラ)〈見二大隅國風土記一、廢置未レ詳、〉

〔日本地誌提要〕

〈七十二大隅〉

p.1177 沿革　和銅六年、日向ノ四郡ヲ割テ本州ヲ建テ、〈後桑原菱刈二郡ヲ増置ス〉國府ヲ囎唹郡ニ置、〈今ノ國府郷府中村〉天長元年、多褹島ヲ廢シテ其二郡〈熊毛馭謨〉ヲ本州ニ隷ス、鎌倉ノ時薩摩守護島津忠久、本州守護ヲ兼ネ、子孫多ク邑ヲ州内ニ食ム、建武中興、忠久ノ玄孫貞久ヲシテ守護ヲ兼ネシム、尋テ足利氏ニ應ズ、州豪肝付兼重高山(コウヤマ)城〈肝付郡、伴兼貞長元中此城ニ移ル、因テ肝付氏ト稱ス、兼重ハ兼貞七世ノ孫ナリ、〉ニ居リ、獨リ官軍ニ屬シ、島津氏ト相抗ス、正平十八年、貞久本州守護ヲ第四子氏久ニ傳ヘ、内(ウチノ)城〈日向諸縣郡〉ニ治ス、初平行盛ノ子時信、種子島ヲ領シ、北條氏ト稱シ、世々島津氏ニ隷セズ、是ニ至リ時信五世ノ孫頼時、始テ氏久ニ從フ、天授中、氏久從弟伊(コレ)久ト共ニ官軍ニ屬シ、弘和ノ初、再ビ足利氏ニ降ル、應永十一年、氏久ノ子元久、本州及日向守護ニ補シ、勢威頗ル振ヒ、肝付氏〈兼重ノ孫兼元〉遂ニ麾下ニ屬ス、元久ノ後、三世忠昌ノ時、管内大ニ亂レ、永正中、肝付兼久〈兼元ノ曾孫〉再ビ自立シ肝付大隅二郡ニ據リ、日向ノ伊東氏ト相結ビ、島津氏ト戰フ、其孫兼續勢漸ク強大ニシテ、永祿ノ初、廻(メグリ)城〈囎唹郡福山村〉ヲ襲ヒ取ル、九年、兼續卒シ、其子良兼兼亮兄弟相繼ギ、僅ニ高山一城ヲ保ツ、天正八年、兼亮ノ子兼道降ヲ乞ヒ、本州永ク島津氏ニ歸ス、王政革新、熊毛、馭謨二郡ハ鹿兒島縣ニ隷シ、自餘六郡ハ都城縣ヨリ兼治ス、尋テ悉ク鹿兒島縣ヨリ兼治ス、

〔先代舊事本紀〕

〈十國造〉

p.1177 大隅國造　纒向日代朝〈◯景行〉御世、治二平隼人同祖初小一、仁徳帝代者、伏布爲二日佐一、賜二國造一、

〔續日本紀〕

〈六元明〉

p.1178 和銅六年四月乙未、割二日向國肝坏、贈於、大隅、姶 四郡一、始置二大隅國一、

〔續日本紀〕

〈八元正〉

p.1178 養老四年二月壬子、太宰府奏言、隼人反殺二大隅國守(○○○○)陽侯史麻呂一、

〔類聚三代格〕

〈五〉

p.1178 太政官謹奏　停二多禰島一隷二大隅國一事　右參議大宰大貳從四位下小野朝臣峯守等解偁、謹撿二案内一、太政官去二月十一日符偁、件島南居二海中一、人兵乏弱、在二於國家一、良非二扞城一、又島司一年給物、准レ稻三万六千餘束、其島貢調鹿皮一百餘領、更無二別物一、可レ謂二有レ名無レ實多レ損少一レ益、右大臣宣、奉レ勅、宜下勘二利害一言上上者、南溟淼々、無レ國無レ敵有レ損無レ益、一如二符旨一、須三停レ島隷二大隅國一、計二其課口一、不レ足二一郷一、量二其土地一、有レ餘二一郡一、熊滿合二於馭謨一、益救合一於熊毛一、四郡爲レ二、於レ事得レ便者、聖帝登レ樞、事期レ濟レ世、明王布レ政、理貴レ適レ時、臣等商量、昔漢元帝納二賈捐之言一、罷二珠崖郡一、前史以爲二美談一、後世稱二其英烈一、雖二建レ國重レ疆非一レ無二分野一、而䘏レ民救レ急、猶棄二州郡一、况溟海之外、費損如レ此、加以往還之吏、漂亡者多、運送之民、蕩沒不レ少、守二無益之地一、損二有用之物一、求二之政典一、深 二物議一、伏望依レ件、停隷以省二邊弊一、伏聽二天裁一、謹以申聞、謹奏聞、　天長元年九月三日

〔太閤記〕

〈十〉

p.1178 大隅日向知行割之事　大隅八郡之内　七郡島津兵庫頭被レ下　一郡伊集院右衞門大夫被レ下

國府

〔倭名類聚抄〕

〈五大隅〉

p.1178 大隅國〈◯中略〉桑原〈久波々良、國府、〉

〔麑藩名勝考〕

〈二大隅〉

p.1178 桑原郡國分郷府中村〈府中村、古の大隅國府也、〉　和名抄にも、桑原郡、府ありといふ、故に郷名國分と云、

郡

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.1178 大隅國〈◯註略〉管八〈◯註略〉菱刈〈比志加里〉桑原〈久波々良、國府、〉囎唹〈曾於〉大隅　姶羅〈阿比良〉肝屬〈岐毛豆岐〉馭謨〈五牟〉熊毛〈久末介〉

〔延喜式〕

〈二十二民部〉

p.1179 大隅國、中、〈管〉　〈菱刈(ヒシカリ)　桑原(クハハラ)　贈於(ソオ)　大隅(オホスミ)　姶羅(アヒラ)　肝屬(キモツキ)　馭謨(コム)　熊毛(クマケ)◯中略〉　右爲二遠國一

〔和漢三才圖會〕

〈八十大隅〉

p.1179 八郡〈◯中略〉　贈於　肝屬〈或爲二肝坏一〉　大隅　姶羅　菱刈　桑原　熊毛　馭謨〈俗爲二駒路一〉　多褹島

〔皇國郡名志〕

p.1179 大隅國〈八郡〉　菱刈(ヒシカリ)　〈三ケ村限　日薩界〉　桑原(クハハラ)　〈●宮内　△鹿兒島社　日ト薩トノ間〉　噌唹(ソオ)　〈＜國府　日界〉　大隅　〈●垂水　●大濱　●竹浦　●大泊　南出崎〉　姶羅(アイラ)　〈●梶木　●脇本　薩界〉　肝屬(キモツキ)　〈●内浦　●柏原　東出崎〉　馭謨(コム)　〈●宮浦　一郡屋久島ト云〉　熊毛(クマケ)　〈●赤尾木　一郡種子島ト云〉　◯按ズルニ、本書及ビ次下ノ郡名異同一覽ノ符號ハ、山城國篇郡條ニ引ク所ノ、二書ノ凡例ヲ參照スベシ、

〔郡名異同一覽〕

p.1179 大隅

菱刈郡

〔麑藩名勝考〕

〈二大隅〉

p.1180 菱刈郡〈和名鈔菱刈比志加里、菱刈郷あり、今本城、曾木、馬越、湯之尾の四ケ郷をいふ、菱刈野は本城に有、むかし菱刈氏の居城なり、　按、仲哀紀、皇后遣二吉備臣祖鴨別一、令レ擊二熊襲一、辛卯、至二層増岐野一、といふ層増岐、即曾木にして、野は則菱刈野成べし、〉

〔地理纂考〕

〈二十大隅〉

p.1180 菱刈郡　

p.1181 東諸縣郡、南桑原郡、西姶良郡、北薩摩郡ニ分界ス、郡内牛山、太良、菱刈ノ三郷ヲ置ク、

〔續日本紀〕

〈十九孝謙〉

p.1181 天平勝寶七歳五月丁丑、大隅國菱苅村(○○○)浪浮九百三十餘人、言欲レ建二郡家一、許之、

桑原郡

〔地理纂考〕

〈十九大隅〉

p.1181 桑原郡　和名抄曰、大隅國桑原郡、同書ニ大隅國桑原、〈久波々良、國府、〉後紀ニ、桑原郡蒲生驛、延喜式、桑原郡鹿兒島神社ナドヽ見ヘタリ、大隅國ハ始メ肝屬、大隅、囎唹、姶羅ノ四郡ナルヲ、桑原郡ヲ置レシハ史ニ漏タリ、〈委シクハ大隅國號ノ卷ニ云リ〉東贈於郡、西姶羅郡、北菱刈郡ニ接シ、南面ハ海ニ對ス、郡内吉松、横川、栗野、踊、國府ノ五箇郷ヲ置ク、

囎唹郡

〔麑藩名勝考〕

〈二大隅〉

p.1181 囎唹郡〈舊作レ襲、曾添、贈於、皆古之襲國也、和名鈔囎唹、曾於襲疊嶂之義、又曰二膂宍之膂之義一、〉

〔地誌纂考〕

〈十七大隅〉

p.1181 贈於郡　此郡名ハ、日本紀ニ、襲高千穗峯トアル襲ヨリ出タリ、景行天皇紀ニ、悉平二襲國一トアル襲國ノ遺稱ニテ、和名抄ニ、大隅國囎唹〈曾於〉トアル是也、贈於トアルハ、紀國ヲ紀伊、頴ヲ頴娃ト書ルナドヽ同ジ、東北日向諸縣郡ニ界ヒ、南大隅郡ニ連リ、西北桑原郡ニ接ス、郡内八ケ郷ヲ置ク、〈襲山、清水、國府、敷根、恒吉、市城、福山、財部、〉

〔地名字音轉用例〕

p.1181 韻(ヒヾキ)ノ音ノ字ヲ添ヘタル例　そ　囎唹〈隅郡〉曾於(ソオ)　書紀ニ襲(ソノ)國トアル是也、サレバ曾(ソ)ト注スベキ例ナルニ、曾於ト注セルハイカヾ

〔古事記〕

〈上〉

p.1181 伊邪那岐命、〈◯中略〉妹伊邪那美命、〈◯中略〉御合、〈◯中略〉次生二筑紫國一、此島亦身一而有二面四一、毎レ面有レ名、故〈◯中略〉熊曾國(○○○)謂二建日別一、〈曾字以レ音〉

〔日本書紀〕

〈二神代〉

p.1181 皇孫乃離二天磐座一〈天磐座、此云二阿麻能以簸矩羅一、〉且排二分天八重雲一、稜威之道別道別而、天二降於日向襲(○)之高千穗峯一、矣、既而皇孫遊行之状也者、則自二槵日二上天浮橋一、立二於浮渚在平處一〈◯註略〉而、膂宍之

p.1182 空國自二頓丘一覔レ國行去、〈◯註略〉到二於吾田長屋笠狹之碕一矣、

〔釋日本紀〕

〈八述義〉

p.1182 膂宍之空國　大問云、此國何國哉、先師申云、仲哀天皇欲レ討二熊襲國一之時、有レ神詫宣曰、熊襲國者、膂宍之空國也、愈二玆國一有二金銀寶國一〈新羅國也〉云々、然則膂宍之空國者、熊襲國之號歟、將亦下國之摠名歟、熊襲國者爲二佐渡島一名一之由、見二舊事本紀一耳、

〔續日本紀〕

〈三十九桓武〉

p.1182 延暦七年七月己酉、太宰府言、去三月四日戌時、當二大隅國贈於郡(○○○)曾乃峯上一、火炎大熾、響如二雷動一、及二亥時一火光稍止、唯見二黒烟一、

〔類聚國史〕

〈百九十風俗〉

p.1182 延暦十二年二月己未、大隅國曾於郡(○○○)大領外正六位上曾乃君牛養、授二外從五位下一、以下率二隼人一入朝上也、

〔大隅國圖田帳〕

p.1182 大隅國　注進　國中總田數寺社庄公領并本家領所地頭辨濟使等交名事　合田參仟拾漆町伍段大〈◯中略〉　曾野郡(○○○)　二百廿九丁四段大〈◯中略〉　建久八年六月日〈◯署名略〉

大隅郡

〔太宰管内志〕

〈大隅國下〉

p.1182 大隅郡　輿地圖を按ずるに、大隅郡東西南三方は海に至り、北は肝屬部につけり、

姶羅郡

〔太宰管内志〕

〈大隅國下〉

p.1182 姶良郡　日本輿地圖を按ずるに、姶羅郡、東は贈於郡、南は海、北は桑原郡、西は薩摩國鹿兒島郡に隣りて、東五六里、南北七八里あり、〈常足按ずるに、昔の姶良郡と云は、大隅肝付二郡の内にいりて、中比絶たりし趣なるを、近比に桑原郡を割て姶良郡を作りし物と聞ゆ、そは昔の郷名などを勘へ合せてしらる、〉

〔地理纂考〕

〈十六大隅〉

p.1182 姶良郡　

p.1183 續紀曰、和銅六年夏四月乙未、割二日向國肝抔、贈於、大隅、姶 四郡一、始置二大隅國一ト見ユ、東ハ大隅國桑原郡、西ハ薩摩國鹿兒島郡ニ接シ、北菱刈郡ニ境ヒ、南ハ海ニ對ス、郷數六〈蒲生、加治木、帖佐、溝邊、山田、里留、〉ナリ、サルヲ後世姶ノ字ヲ始ニ誤リテ、郡名ヲ始羅郡ト號セシ事、大隅國總説ニ委シク辨ジタルガ如シ、故ニ改テ姶羅郡トス、ソモ〳〵此郡ノ古ノ方域ハ、東贈於郡、西鹿兒島郡ニ堺ヒ、北ハ菱刈郡ニ接シ、南ハ海ニ連リケンヲ、後ニ贈於、姶羅ノ兩郡ノ間ニ桑原郡ヲ置レシヨリ、姶羅郡ハ大ニ縮マリテ、今ハ古ヘノ半ニモ過キザルナリ〈桑原郡ヲ置カレシハ、史ニ漏シタリ、〉

〔地名字音轉用例〕

p.1183 入聲フノ韻ヲ同シ行リノ音ニ通用シタル例　あひら　姶羅〈隅郡〉阿比良(アヒラ)　姶ハ烏合(ウガウ)反ニテ、アフノ音ナルヲアヒニ用ヒタリ、

〔續日本紀〕

〈十聖武〉

p.1183 天平元年七月辛亥、大隅隼人姶 郡(○○○)少領外從七位下勳七等加志君多利、外從七位上佐須岐君夜麻等久々賣、並授二外從五位下一、

肝屬郡

〔地理纂考〕

〈二十三大隅〉

p.1183 肝屬部〈和名抄曰、肝屬ハ岐毛豆岐續紀肝衝、又肝坏ニ作ル、建久八年圖田帳ニ、肝付郡百三十町二反三丈ト見ユ、〉

〔續日本紀〕

〈一文武〉

p.1183 四年六月庚辰、薩末比賣、久賣、波豆、衣評督衣君縣助督衣君氐自美、又肝衝(○○)難波、從二肥人等一、持レ兵剽劫覔二國使刑部眞木等一、於レ是勅二竺志總領一、准レ犯刑罰、

〔南浦文集〕

〈下〉

p.1183 諫二玄雄藏主一文〈此僧、後於二武州東禪寺一爲レ盜、貨財燒却、東禪遂被レ殺之、〉　故福田俊雄、隅州肝付郡(○○○)人也、少之時入二前瑞光太益翁之室一、剃髮受具、年漸欲レ壯之時、背二太益師之命一、忘二其厚恩一、既而入二日州大玆門下一爲二沙彌一矣、

能滿郡/馭謨郡/益救郡/熊毛郡

〔續日本紀〕

〈十一聖武〉

p.1183 天平五年六月丁酉、多褹島熊毛郡(○○○)大領外從七位下安志託等十一人、賜二多褹後國造姓一、益救郡(○○○)大領外從六位下加理伽等一百三十六人、多褹直、能滿郡(○○○)少領外從八位上粟麻呂等九百六十九人、因レ居賜二直姓一、

〔類聚三代格〕

〈五〉

p.1183 太政官謹奏　

p.1184 停二多禰島一隸二大隅國一事　右參議大宰大貳從四位下小野朝臣峯守等解偁、〈◯中略〉須三停レ島隷二大隅國一、計二其課口一、不レ足二一郷一、量二其土地一、有レ餘二一郡一、能滿合(○○○)二於馭謨(○○○)一、益救合(○○○)二於熊毛(○○○)一、四郡爲レ二、於レ事得レ便者、〈◯中略〉伏聽二天裁一、謹以申聞、謹奏聞、　天長元年九月三日

〔延喜式〕

〈十八式部〉

p.1184 凡郡司者、一郡不レ得三併二用同姓一、若他姓中无二人可レ用者一、雖二同姓一、除二同門一外聽レ任、神郡、陸奧縁邊郡、大隅、馭謨(○○)、熊毛(○○)等郡者、不レ在二制限一、

帖佐郡

〔大隅國圖田帳〕

p.1184 大隅國　注進　國中總田數寺社庄公領并本家領所地頭辨濟使等交名事〈◯中略〉　帖佐郡　二百七十一丁大〈◯中略〉　建久八年六月日〈◯署名略〉

郷

〔倭名類聚抄〕

〈九大隅國〉

p.1184 菱刈郡　羽野　亡野〈◯亡、高山寺本作レ出、〉大水　菱刈　桑原郡　大原　大分　豐國　答西〈◯答、高山寺本作レ益、〉稻積　廣田〈◯田、高山寺本作レ西、〉桑善　仲川〈國用二中津川三字一〉囎唹郡　葛例　志摩〈國用二島字一〉阿氣　方後　人野　大隅郡　人野〈◯人恐大誤〉大隅　謂列〈◯謂恐渭誤〉姶臈　禰寢　大河〈◯河、原作レ阿、據二高山寺本一改、〉岐刀〈◯刀原脱、據二高山寺本一補、〉姶羅郡　野裏　串伎〈◯伎、高山寺本作レ占、〉鹿屋　岐刀　肝屬部　桑原　鷹屋　川上　雁麻　馭謨郡　謨賢　信有　熊毛郡　熊毛　幸毛　阿枚〈有二三郷一〉

〔地理纂考〕

〈一三國總説〉

p.1184 熊曾國　大隅國　和名鈔ニ姶羅郡ノ次ニ肝付郡ヲ載タレバ、兩郡相接シタルガ如クナレド然ラズ、前ニ云ル如ク、姶羅郡ハ今ノ始羅郡ニテ、肝付郡トノ間ニ桑原、贈於、大隅ノ三郡隔リ、其間廿里ニ近シ、サテ

p.1185 姶羅郡ヲ今ノ始羅郡トイヘル證ハ、和名鈔姶羅郡ノ郷名ニ、野裏、串伎、鹿屋、岐刀トアル野裏ハ今ノ内ノ浦郷ニテ、頭ニ裏或ハ内等ノ字アリシガ脱タルベシ、串伎ハ串良ナリ、伎ハ字書ニ妓ト同字ニテ、良ノ音ニ取レル事、神樂設樂ノ例ニ同ジ、鹿屋ハ今ノ鹿屋郷ナリ、妓刀ハ詳ナラザレドモ、其外ノ三ケ郷、今實地ヲ踏ニ、和名鈔ニ所レ謂姶羅郡ニ非ズ、都テ肝付郡ナリ、又肝付郡ノ郷名ニ、桑原、鷹屋、川上、雁麻トアル桑原ハ、同國國府郷ニテ、鷹野モ同國始羅郡溝邊郷ナリ、川上ハ詳ナラザレド、同府郷ニ隼人城アリテ、書紀ニ所レ謂川上梟帥ガ居城ノ遺地アリ、　此梟帥ガ居ヲ川上トイヘルモ、地名ニ困レル事疑ナケレバ、川上モ此アタリナルベシ、雁麻ハ詳ナラズ、サレド其外ノ郷名ニテ肝付郡ナラザルヲ思フベシ、正本ニハ桑原云々ヲ姶羅郡、野裏云々ヲ肝付郡ニ載セタリシガ、後世錯簡ケム、

〔萬葉集抄〕

〈三〉

p.1185 大隅國風土記、大隅郡串卜郷(○○○)、昔者造國神、勤レ使者遣二此村一令レ見二消息一、使者報道、有二髮梳神一云、可レ謂二髮梳村一、因曰二久四良郷一、

〔色川本島津文書〕

〈二〉

p.1185 御判　下島津三郞左衞門尉　可レ令三早領二知大隅國桑郷(○○)一〈東西〉事　右以レ人、爲二勳功之賞一所二宛行一也、早守二先例一、可レ致二沙汰一之状如レ件、　建武五年正月廿七日　花押(裏判)〈◯今川貞世〉　花押(裏判)

〔大隅國圖田帳〕

p.1185 大隅國　注進　國中總田數寺社庄公領并本家領所地頭辨濟使等交名事〈◯中略〉　桑東郷(○○○)　百八十九丁四段大〈◯中略〉　桑西郷(○○○)　百五十六丁二段六十歩　正宮敷地〈◯中略〉　加治木郷(○○○○)　百廿一丁七段半〈◯中略〉　

p.1186 建久八年六月　日〈◯署名略〉

〔南浦文集〕

〈上〉

p.1186 隅州願成寺鐘銘　隅州帖佐郷(○○○)願成寺者、前薩隅日三州太守惟新尊君所二草創一之精廬、而運譽上人、修二念佛三昧一之道場也、草創未レ幾、殿堂門廡漸成、庖廩井竈具備、

村里/名邑

〔郡名一覽〕

p.1186 一大隅國　〈隅州　東北二日〉　八郡　高拾七万八百三拾三石四斗五升壹合　貳百三拾ケ村　 ●種子島〈薩州三万石〉種子島彈正　 ◯今出水〈同〉島津安藝　 ◯田井水〈同二万石〉島津美作　◯按ズルニ、本書ノ符號ハ、山城國篇村里條引ク所ノ、本書ノ凡例ヲ參照スベシ、

〔郡國提要〕

p.1186 大隅　八郡二百三十村　高十七万八百三十三石四斗五升一合(皆私領)　菱刈郡十三村　桑原郡三十二村　始羅郡三十九村　囎唹郡六十三村　肝屬郡三十八村　大隅郡三十二村　熊毛郡九村　馭謨郡四村

〔地勢提要〕

〈坤〉

p.1186 郡邑島嶼奇名　大隅　肝屬(キモツキ)郡、邊田(ヘタ)村、富山(トヒヤマ)村、大姶良(オホアイラ)村、大隅郡、邊津加(ヘツカ)村、汀野迫(ミキハノサコ)村、大根古(オホ子シノ)村、海潟(カイガタ)村、向面(カウメン)村、囎唹(ソヲ)郡、廻(メクリ)村、佳例川(カレイカハ)村、下井村、姶羅(アヒラ)郡、日木山(ヒキヤマ)村、竹子(タカシ)村、桑原郡、高田(カウタ)村、見次(ミツキ)村、馭謨(コモ)郡、安房(アンボウ)村、熊毛郡、西面(オモテ)村、

〔萬葉集抄〕

〈十三〉

p.1186 大隅國風土記云、必志里(○○○)、昔者此村之中在二海之洲一、因曰二必至里一、海中洲者、集人俗語云二必至一、

〔釋日本紀〕

〈六述義〉

p.1186 先師申云、案二風土記一、日向國宮埼郡高日村(○○○)、昔者自レ天降神、以二御劒柄一置二於此地一、因曰二劒柄村一、後人改曰二高日村一也云々、神世之昔、以二劒之柄一稱二多加比一、以レ之可レ知也、

〔薩藩舊記〕

〈前集十三〉

p.1186 下可レ令三早爲二大隅國筒羽野村(○○○○)半分地頭代官職一事　

p.1187 東條藤次郞入道々悟　右以レ人、所レ補二任當村半分地頭代官職一也、於二有限年貢已下濟物等一者、任二先例一可二沙汰進一之状如レ件、　建武三年四月十日　道鑒〈花押◯島津貞久〉

〔薩藩舊記〕

〈前集十三〉

p.1187 菱刈郡田中村(○○○)〈號二重富一本名之〉内、福原平寒水名主職事所二申付一也、於二有限所當米濟物公事課役等一者、無二懈怠一可レ致二沙汰一之状如レ件、　建武三年九月廿日　道鑒〈花押〉　菱刈郡本城郷、今有村名重富者此也、又馬越郷、今有村名田中者、(朱書)

〔薩藩舊記〕

〈前集十四〉

p.1187 大隅國多禰島内現和村(○○○)名主職事、被レ致二軍忠一之上、帶二右大將家御下文以下證文等一、相傳之條、歴然之間、於二半分一者、先所二申付一也、至二年貢一者、爲二軍勢兵粮一可レ被二直進一之状如レ件、　建武四年八月一日　源〈花押◯畠山直顯〉　禰寢彌次郞殿

〔深堀系圖證文記録〕

〈二佐賀文書纂所收〉

p.1187 下深堀彌次郞時繼　可レ令三早領二知大隅國岸良村(○○○)一〈尾張前司高家（名越）跡〉事　右以レ人、爲二勳功之賞一所二宛行一也、守二先例一可レ致二沙汰一之状如レ件、　建武四年十二月廿六日　御袖判

〔南浦文集〕

〈上〉

p.1187 國分(○○)新府記　大隅故州、國分新府、路通二日向一、地接二薩摩一、襟二清水一、而帶二大津一、顧二其後背一、有二億丈之城一、其爲二主將一者、不レ振二兵威一以戒二不虞一、望二其前面一、有二萬頃之田一、其爲二人民一者、有レ勤二農業一、以樂二有年一、其食足兵足者、又非二治レ國之具一乎、此則新府之所二兼有一也、若二夫八旛正宮之有一レ乾門也、有二護國靈驗之名一、霧島權現之在二艮闕一也、有二安住不動之勢一、地已靈、而人未レ傑者、爲レ可レ惜矣、慶長六年辛丑夏之仲、龍伯尊君相レ攸、鑿レ山通レ江、以欲レ營二府第於

p.1188 此地一、其用二人力一者、非二物情之所一レ欲、蓋避二其地之低濕一也、〈◯中略〉忠増公歸國之後、綿二蕝於野外一、以分二街巷一、予觀二夫新府勝状一、東西之衢其數九者、蓋象二于陽數一也、南北之陌其數五者、蓋象二于五行一也、士大夫之家二于九衢一者、三百、蓋取二千禮義三百一也、其營中之延袤方九十餘間、而不レ滿レ百者、虧レ盈而益レ謙也、〈◯中略〉是故、不レ日而華第創造之功成、士大夫迨庶人之新居、亦其功成矣、於レ是、英雄霧列、俊傑星馳、尊君之願既滿、衆人之望亦足矣、不レ幾而新府爲二一都會之地一、不二亦盛一哉、

〔西遊雜記〕

〈三〉

p.1188 此日加治木の町(○○○○○)に至りて止宿せり、此所は外城と稱して、士家凡三百家計船つきの町にて、商家も數多にて、大隅にては第一の市中と云所なり、是より肥後へ出る道有、薩州侯御一代に一度、此道筋を御通行有て、御參勤有と云、大口外城と云所には、士家五百軒餘も在當の武家ありと云、薩州界より、大隅をへて、再び薩摩の小河内と云所に〈番所あり〉出て、肥後の久木野村へ出る也、〈此道筋は近しといへども、難所の坂計にて通行なりがたき道といふ、〉

莊

〔長門本平家物語〕

〈四〉

p.1188 丹波少將は、〈◯中略〉それ室野、船引、大山といひて、月影日かげもさヽぬ、深山のががたるせきがんをしのぎこえて、日向のくに西方が島津の庄(○○○○)に著給ふ、かの庄内にあさくら野といふ所に、ひとつの峯たかくそびえて、けぶり絶せぬ所あり、日本さいしよの峯、霧島のだけと號す、金峯山、しやかのだけ、富士のたかねよりも、さいしよの峯なるがゆへに、名づけてさいしよの峯といふ、

〔薩藩舊記〕

〈前集十三〉

p.1188 新田右衞門佐義貞誅伐事、去年被レ下二關東御教書一訖、而肝付八郞兼重以下輩、令レ同二意義貞一、於二日向國所々一擧レ旗、既及二合戰一之由、當國守護代、并島津莊總政所等、依馳申一、所レ差二遣羽月四郞右衞門尉元眞一也、早相二催一族一、馳二向彼所一、可レ被二退治一候、仍執達如レ件、　建武三年正月廿五日　太宰小貳〈◯頼高〉　廣武又次郞入道殿

〔大日本史〕

〈食貨十六莊園〉

p.1189 至二保延中一、前關白忠實新立二大隅島津莊一、占二一國之半一、〈大隅圖田帳〉其莊跨二日向薩摩二國一、日向田數、過二國中三分之一一、薩摩亦殆居二一國四分之三一、〈日向薩摩圖田帳、二國莊田不レ詳二何時置一レ之、姑書二于此一、〉

〔大隅國圖田帳〕

p.1189 大隅國　注進　國中總田數寺社庄公領并本家領所地頭辨濟使等交名事〈◯中略〉　姶良庄(○○○)五十餘町　〈正宮大般若庄内沙汰元吉門高信宗清所レ知〉　島津庄　殿下御領　地頭衞門兵衞尉　新立庄(○○○)　七百五十丁〈◯中略〉建久八年六月日〈◯署名略〉

〔古文書類纂〕

〈上處分状〉

p.1189 後深草天皇建長二年關白藤原道家處分状　總處分　條々事〈◯中略〉　一家地文書庄園事　宣仁門院〈洞院攝政長女〉　泉涌寺〈◯中略〉　寺領〈◯中略〉　日向國平群庄(○○○)〈◯中略〉　建長二年十一月　日　愚老〈在御判〉

〔薩藩舊記〕

〈前集十三〉

p.1189 御袖判　下　島津上總入道道鑒〈◯貞久〉　可レ令三早領二知薩摩國河邊郡大隅國本莊(○○)一事　右以レ人、爲二勳功之賞一所二補任一也、任二先例一可レ令二領掌一之状如レ件、　建武三年三月十七日

〔南浦文集〕

〈上〉

p.1189 隅州國分莊永徳寺地藏堂再興幹縁文　聞昔、隅州國分莊者、諸大薩埵之古道場也、相傳、此地昔年有二洪水之害一、人皆作レ魚矣、〈◯中略〉慶長辛丑之夏、島津華胄龍伯尊君相攸、欲レ營二華第於此地一、至二於甲辰冬之仲一、華第落成矣、諸士大夫之侍從者、殆乎千人、野人之懷レ惠而移レ家者倍レ焉、然後國分爲二一都會之地一矣、

院

〔大隅國圖田帳〕

p.1189 大隅國　注進　國中總田數寺社庄公領并本家領所地頭辨濟使等交名事〈◯中略〉　

p.1190 小河院(○○○)　三百四十八丁三段大〈◯中略〉　蒲生院(○○○)　百十丁九段半〈◯中略〉　吉田院(○○○)　十八丁二段〈◯中略〉　栗野院(○○○)　六十四丁〈◯中略〉　鹿屋院(○○○)内恒見　八丁〈◯中略〉　正宮領〈◯中略〉　深川院(○○○)　百五十餘丁　財部院　百餘丁〈◯中略〉　横川院(○○○)　三十九丁五段二丈〈◯中略〉　串良院(○○○)　九十丁三段二丈　鹿屋院(○○○)　八十五丁九段〈◯中略〉　建久八年六月日〈◯署名略〉

藩封

〔慶應元年武鑑〕

p.1190 松平修理大夫茂久(大廣間　從四位少將)　七拾七万八百石　居城薩州鹿兒島郡鹿兒島　薩摩、大隅(○○)、日向三國主、兼領二琉球國一、〈◯節略〉

田數/石高

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.1190 大隅國〈◯註略〉管八〈田四千八百餘町〉

〔伊呂波字類抄〕

〈於國郡〉

p.1190 大隅國〈管八（中略）本田三千七百七十三丁〉

〔拾芥抄〕

〈中末本朝國郡〉

p.1190 大隅〈中遠〉八郡〈（中略）田四千九百七町〉

〔運歩色葉集〕

〈諸國之郡名〉

p.1190 大隅〈八郡（中略）田數五千八百十四丁〉

〔海東諸國記〕

p.1190 大隅州　郡八、水田六百七十三町、

〔大隅國圖田帳〕

p.1190 大隅國　注進　國中總田數寺社庄公領并本家領所地頭辨濟使等交名事　合田參仟拾漆町伍段大〈◯中略〉　右件總田數、任二御教書之旨一、注進如レ件、　建久八年六月日〈◯署名略〉

〔寛文印知集〕

〈二〉

p.1190 目録　大隅國一圓　菱刈郡　〈拾三箇村〉　高九千九百八拾六石八斗五升六合　桑原郡　〈三拾貳箇村〉　高貳万千八百貳拾四石四升三合　

p.1191 姶羅郡　〈三拾九箇村〉　高貳万六千六百四拾三石四斗六升貳合　囎唹郡　〈六拾三箇村〉　高四万三千八百八拾四石四斗八升　肝屬郡　〈三拾八箇村〉　高四万貳千拾五石九斗八升八合　大隅郡　〈三拾貳箇村〉　高貳万百九拾貳石三斗壹升三合　熊毛郡　〈九箇村〉　高五千貳百五石七斗壹升九合　馭謨郡　〈四箇村〉　高千八拾石五斗九升〈◯中略〉　寛文四年四月五日　松平大隅守殿

〔日本鹿子〕

〈十四〉

p.1191 大隅國、八郡、中上國、東西二日、〈◯中略〉知行高十七万八百二十石、

〔官中秘策〕

〈五〉

p.1191 大隅國　八郡〈◯中略〉　一石高拾七万八百三拾三石餘

〔吹塵録〕

〈五人口及國高〉

p.1191 天保度御國高調〈◯中略〉　大隅國〈皆私領〉　一高拾七万八百三拾三石四斗五升壹合

出擧稻

〔延喜式〕

〈二十六主税〉

p.1191 諸國出擧正税公廨雜稻　大隅國、正税八万六千卌束、公廨八万五千束、國分寺料二万束、文殊會料一千束、修理池溝料二万束、救急料三万束、

〔續日本紀〕

〈十六聖武〉

p.1191 天平十七年十一月庚辰、制、諸國公廨、大國四十万束、上國三十万束、中國二十万束、就レ中大隅薩摩兩國各四万束、下國十万束、〈◯下略〉

國産/貢獻

〔延喜式〕

〈二十四主計〉

p.1191 大隅國〈行程上十二日、下六日、〉　調、綿布、　庸、綿布、　中男作物、紙、

〔毛吹草〕

〈三〉

p.1192 大隅　多禰島筒(タ子ガシマヅヽ)　ヤクノ島ノ榑板(クレイタ)

人口

〔官中秘策〕

〈五〉

p.1192 大隅國　八郡〈◯中略〉　一人數拾三万千六百貳拾三人　内〈七万四千五拾貳人　男　五万七千五百（五百下恐脱七）拾壹人　女〉

〔吹塵録〕

〈五人口及國高〉

p.1192 諸國人數調(文化元甲子年)〈◯中略〉　一人數拾壹万四千百六拾六人(皆私領)　大隅國(高拾七万八百三拾三石餘)　内〈六万千七百貳拾壹人　男　五万貳千四百四拾五人　女　◯中略〉　諸國人數調(弘化三丙午年)〈◯中略〉　一人數九万九千貳百拾貳人(皆私領)　大隅國(高拾七万八百三拾三石餘)　内〈五万三千百七拾人　男　四万六千四拾貳人　女〉

風俗

〔人國記〕

p.1192 大隅薩摩國　大隅薩摩兩國之風俗違フ事ナシ、是モ皆死ヲ以テ表トシ、唯男子ハ死スルヲ道トスト覺テ、五常之道ト云フ事、一段外之事ト覺ヘ、佛法トイヘバ、死テ後之穿鑿ニ而、生死ヲ可レ知爲トナレバ、用ルニ不レ足ト自見而遠リ、常ニ主下之作法モ有テナク、主ト云名ヲ知テ祿ヲ受ル士ハ主トノミ覺ヘ、百姓ハ地頭トノミ覺テ、不禮之行跡擧而不レ足レ言也、武士之戰場ニ死スルモ、忠義ニ因テ死スル處ノ節ヲ以テ善トスル工夫ナク、唯武士ハ於二戰場ニ一死ヲ致ス者トノミ覺ヘテ、死スルハ可レ論様ナシ、蓋シ泰平之時ハ、主安坐而席ヲ正フ而アルニ、臣ハ足ヲ伸シ、或ハ立チナガラ主君ト問答スルノ類多シ、末代以テ是風俗ナルベシ、

〔西遊雜記〕

〈三〉

p.1192 日向大隅の二州にて、一家に女馬三疋五疋も飼て、駒をあまた出す國にて、九州すべて兩國の駒を用る事也、兩國にては、年毎に三千疋も産せると土人の物語き、即詳ならず、扨馬を

p.1193 追ふを見るに、馬卒に男子は一人もなく、婦人のみ也、一人して五疋も七疋も放し綱にて追ふに皆々女馬とは云ながら、刎合食合もせず、無爲の馬也、男子牛を遣ふ、手にて山分の材木を牛にて引出す也、牛の大トさ大津の車牛の如し、かくの如きの地、車の上にいか程大成材木にても載置、道の嶮しきもいとはずして、牛に引する事也、國風とは云ひながら、無調法なる事也、

名所

〔日本鹿子〕

〈十四〉

p.1193 同國〈◯大隅〉中名所之部　風の森　當國はさして名所なしと舊記にも見へたり、風の森、大隅郡の内也、うたに　恨みじな風の森なる櫻花さこそあたなる色にさくらめ　後瀬山　青葉山　夕暮の關　氣色の森

雜載

〔日本書紀〕

〈二十九天武〉

p.1193 十一年七月甲午、隼人多來貢二方物一、是日大隅隼人、與二阿多隼人一相二撲於朝廷一、大隅隼人勝之、

〔類聚國史〕

〈百五十九田地〉

p.1193 延暦十九年十二月辛未、收二大隅薩摩兩國百姓墾田一、便授二口分一、