p.0203 山城國ハ、ヤマシロノクニト云フ、原ト山背、山代、開木代等ノ字ヲ用ヰタリシガ、桓武天皇ノ延暦十三年、改メテ山城ト爲ス、蓋シ地勢ニ據レルナリ、東ハ近江ニ境シ、西ハ丹波、攝津ニ至リ、南ハ伊賀、大和、河内、北ハ丹波ニ接シ、東西凡ソ六里、南北凡ソ十五里アリ、此國ハ、古ヘ國府ヲ乙訓郡ニ置キ、乙訓(オトクニ)、葛野(カドノ)、愛宕(オタギ)、紀伊(キイ)、宇治(ウヂ)、久世(クゼ)、綴喜(ツヾキ)、相樂(サガラ)ノ八郡ヲ管ス、仁明天皇ノ朝、勅シテ畿内ノ第一班ト爲シ、延喜ノ制、上國ニ列ス、明治維新ノ後、新ニ京都市ヲ設ケ、京都府ヲシテ一市八郡ヲ治セシム、 京都ハ、葛野愛宕ノ二郡ニ跨ル、其奠都ハ、桓武天皇ノ時ニ在リ、事ハ皇都篇ニ詳ナレバ、宜シク就テ看ルベシ、
〔倭名類聚抄〕
〈五國郡〉
p.0203 山城〈夜萬之呂〉
〔運歩色葉集〕
〈屋〉
p.0203 山城〈始曰二山背一、后改曰二山城一也、〉
〔易林本節用集〕
〈下〉
p.0203 山城〈雍州山州〉
〔日本風土記〕
〈一寄語島名〉
p.0203 山城〈羊馬(ヤンマ)失羅(シイロウ)〉
〔日本紀略〕
〈桓武〉
p.0203 延暦十三年十一月丁丑、詔、〈◯中略〉此國山河襟帶、自然作レ城、因二斯形勝一可レ制二新號一、宜下改二山背(○○)國一爲中山城(○○)國上、
〔松の落葉〕
〈一〉
p.0204 山城國はやまきのくにといひたりし事 日本後紀一の卷、延暦十三年十一月のところに、此國山河襟帶、自然作レ城、因二斯形勝一可レ制二新號一、宜下改二山背國一爲中山城國上とあれば、山背國(ヤマシロノクニ)の名を山城國(ヤマキノクニ)とかへたまへるなり、源順朝臣など新號とあるをいかヾ心えられけん、もじのみかはれる事として、和名抄に山城〈夜萬之呂〉としるされしはいみじきひがことなり、此抄の郡郷の名は、其時の人のいふまヽにしるして、住吉〈須美與之〉とかヽれたるたぐひいにしへにたがへる事は、ほかにもおほかれど、これらはさはかくまじき事ぞ、延暦のみかどのみさだめにたがへる事なればなり、このひがことよりおこりて、今の世には城(キ)をしろといへり、城と云もじは、日本書紀には、きと訓によみ、又さしともよめれど、しろとよめることは、すべて古書にみえたる事なし、山城國のもじは、やまきのくにとよまんぞ正しかるべき、されど國の名などはあやまりにても、久しくいひなれては、今さらにわたくしには、あらためがたき事なりかし、
〔古事記〕
〈下仁徳〉
p.0204 於レ是大后大恨怨、〈◯中略〉即不レ入二坐宮一而引二避其御船一、泝二於堀江一、隨レ河而上幸二山代一、此時歌曰、都藝泥布夜(ツギネフヤ)、【夜麻志呂(ヤマシロ)】賀波袁(ガハヲ)、迦波能煩理(カハノボリ)、和賀能煩禮婆(ワガノボレバ)、迦波能倍邇(カハノベニ)、淤斐陀氐流(オヒダテル)、佐斯夫袁(サシブヲ)、佐斯夫能紀(サシブノキ)、斯賀斯多邇(シガシタニ)、淤斐陀氐流(オヒダテル)、波毘呂(ハビロ)、由都麻都婆岐(ユツマツバキ)、斯賀波那能(シガハナノ)、氐理伊麻斯(テリイマシ)、芝賀波能(シガハノ)、比呂理伊麻須波(ヒロリイマスハ)、游富岐美呂迦母(オホキミロカモ)、〈◯又見二日本書紀一〉
〔古事記傳〕
〈三十六〉
p.0204 都藝泥布夜(ツギネフヤ)は〈此言書紀には四首ある並夜字なし、萬葉十三にもあるにも夜字はなし、此記には四首ある二首には夜字あり、二首には無し、あるをば師（賀茂眞淵）は衍なりとせられつれど、此も次なるも、諸本共に有れば、今はさてあるなり、〉繼苗生(ツギ子フ)やなり、〈夜は余と云むが如し、歌ひ出したる辭なり、〉那閉(ナヘ)を初めて泥(ネ)と云り、繼苗とは山の樹を伐取たる跡に、又繼て樹を生し立む料に植る苗を云、生は其苗を豫て蒔生(マキオホ)し設け置く地なり、〈粟田(アハフ)豆田(マメフ)、淺茅生、蓬生などの類、皆其物の生たる地を某生(ナニフ)といへり、〉さて稻の苗を蒔生する田を苗代と云如く、かの山の樹の繼苗を生する地を山代と云なるべし、凡て山の用は材を出
p.0205 すを主とする故に、即材を伐取る事を山と云て、〈杣人の材を伐初るを山口と云、又材を造る斧を山多豆と云、これらみな山とは材につきて云り、〉此は其伐出すべき材の繼苗を生する地なるを以て山代と云り、萬葉に開木代(ヤマシロ)とも書るは此義なり、〈開木は代と離して意を取るときは、材を伐出す意にて山なり、又代に連ねて意を取るときは、材を生立る繼苗の意なり、何れに取ても此にかなへり、されば此繼苗生の考を以て、かの開木代(ヤマシロ)と書る義をも相明すべし、〉されば此枕詞は、繼苗生之山代と云意につヾけたるなり、〈然るを昔より萬葉に次嶺經と書るに依て、續きたる山を經てゆく由に解來たるは當らず、まづ次嶺と云言も、いかゞなるうへに、山城國は、大和よりたゞ程近き山一重をこそ越れ、さいふばかり續きたる山を經て行國には非るを、いかでか然は云む、〉さて山代は、本より一國の大名にてもあるべけれど、又思ふに、始はかの繼苗生を云、山代より負る一郷などの名にてもありけむ、〈本より一國の名にても、此枕詞のつゞけの意は同じことなり、〉
〔萬葉集〕
〈十三問答〉
p.0205 次嶺經(ツギネフ)、【山背】道乎(ヤマシロヂヲ)、人都末乃(ヒトヅマノ)、馬從行爾(ウマヨリユクニ)、己夫之(オノツマガ)、歩從行者(カチヨリユケバ)、〈◯下略〉
〔萬葉集〕
〈七雜歌〉
p.0205 旋頭歌 【開木代】(ヤマシロノ)、來背社(クゼノヤシロノ)、草勿手折(クサナタヲリソ)、己時(オノガトキ)、立雖榮(タチサカユトモ)、草勿手折(クサナタヲリソ)、 右柿本朝臣人麻呂之歌集出
〔萬葉集略解〕
〈七〉
p.0205 卷十一にも、山しろと云にかく書たり、聖武紀天平十七年正月、云々乍遷二新京一、伐レ山開レ地以造レ室なども有て、林を開て材をとるべき所は山なれば、開木にてやまとよむべし、
〔倭訓栞〕
〈前編三十四也〉
p.0205 やましろ 日本紀に山背と書り、大和國の北にあるをもて名とす、延暦中に山城と改めさせられしは、國の形勢による也、山代とも書るは訓を借る也、萬葉集に開木代(ヤマシロ)と書るは、義をもてよめる也、杣をそまとよめるが如く成べし、大和本紀に、總て材木を採所を、杣人の諺に山開(シロ)といへば、山城も材木を取し所歟と見えたり、雍州と稱するは、西土洛陽雍州に在るをもて也、俗に山に在るの城をいふには、しを濁れり、
〔古事記傳〕
〈七〉
p.0205 山代國造、名義は書紀に山背と書る字の意〈うしろのうを省く〉なるべし、此國は大和國の北方の山の後なればなり、
〔國名考〕
p.0206 山城(ヤマシロ)〈仁徳紀歌夜莽之呂、和名抄訓同、〉按山城字舊作二山背一、又作二山代一、延暦十三年十一月丁丑、詔改レ之、山城之爲レ言山場也、山彌隈(ヤマ)也、謂隈曲彌重場(クマ〴〵イヤカサナル)猶レ言レ地、訓曰二志呂一、曰二止古呂一、志呂猶二繩志呂之志呂一、謂疆場平坦、此國在二山間一爲二平坦地一因名焉、神名式有二丹後國丹波郡稻代神社一、是取二地名於稻田一、乃稻場(イナシロ)之義、以レ場呼者與レ此相同也、和名抄有二加賀國江沼郡山背郷、阿波國那賀郡山代郷等名一、蓋亦山間一場之地乎、又有二出雲國意宇郡山代、郷山代神社等一、按二風土記一、山代彦命處レ之、故名二山代一云、或曰山城山背也、謂在二於大和之山背一、今撿二其地一、二國之間非レ無レ山、所レ在皆丘阜迆邐不二甚險一、然則山背之背舊假字、而非二背後之背一也明矣、
〔地勢提要〕
〈乾〉
p.0206 各國經緯度〈附里程〉 山城京師改暦所〈三條千本〉極高三十五度三十秒爲二東西經度之中度一、從二東都日本橋一〈下同〉東海道〈佐屋廻リ下同〉一百三十五里一十五町二十五間半、中山道一百三十八里一町二十六間半、 山城伏見〈西濱町〉極高三十四度五十六分經度東一分、從二東都一〈東海道〉一百三十六里一町五十五間半、
〔日本經緯度實測〕
p.0206 北極出地 山城 淀 三四度五四分◯◯秒 京 三五度◯◯分三六秒 伏見 三四度五六分◯◯秒〈◯中略〉 東西里差 山城 京 ◯度◯◯分◯◯秒
〔山城志〕
〈二〉
p.0206 疆域 東至二江州界一、西至二丹攝二州界一、南至二伊和河三州界一、北亦至二丹州界一、東西六里餘、南北十八里餘、
〔日本地誌提要〕
〈三山城〉
p.0206 疆域 東ハ近江、西ハ丹波、攝津、南ハ伊賀、大和、河内、北ハ丹波ニ至ル、東西凡六里、南北凡壹拾五里、
〔雍州府志〕
〈一建置沿革〉
p.0207 凡山城北至二若狹一、南連二大和河内一、其間相距十七八里餘、東限二近江伊賀界一、西隣二丹波攝津一、其間或四五里或七八里、巽與レ乾之間地形長而廣、至二艮方一則地勢窄迫、
〔山城志〕
〈二〉
p.0207 形勝 山河襟帶、自然作レ城、〈延暦十三年勅云〉博大爽塏天府之國、形勢雄偉易二於據守一、
〔和漢三才圖會〕
〈七十二本山城〉
p.0207 二條城〈艮至二比叡山一三里、北至二鞍馬山一三里、東至二三井寺一三里半、戌方至二愛宕山一三里、南至二伏見一三里、未方至二男山八幡一四里半、至二宇治一五里、〉淀〈艮至二江戸一百二十五里、北至二京都一三里半、東至二伏見一一里、申方至二大坂一九里、〉 從二京師一至二諸國一行程大略 武州江戸ヘ 百二十四里 常州鹿島ヘ 百五十三里 相州鎌倉ヘ 百十九里 野州日光山ヘ 百五十八里 甲州身延山ヘ 九十九里 豆州箱根山ヘ 百一里 駿州富士麓ヘ 九十二里 信州善光寺ヘ 百十二里 越前敦賀ヘ 二十九里 賀州金澤ヘ 六十七里 越中立山ヘ 百四十六里 奧州仙臺ヘ 二百十二里 奧索覩(ソトノ)濱ヘ 三百二十五里 和州奈良ヘ 十一里 和州吉野ヘ 二十三里 和州大峯ヘ 二十九里 紀州熊野ヘ 四十七里 紀州弱(ワカ)山ヘ 二十八里 江州大津ヘ 三里 羽州湯殿ヘ 二百五十二里 尾州熱田ヘ 三十七里半 江州多賀ヘ 十六里 伊勢山田ヘ 四十三里半 伊勢鈴鹿ヘ 十八里 若狹小濱ヘ 十八里 丹波龜山ヘ 五里 攝州大坂ヘ 十三里 攝州高槻ヘ 六里
〔山城志〕
〈二〉
p.0207 路程 自二京師一至二江都一一百二十里、至二攝州大坂一十二里有半、至二高槻一五里、至二和州南都一十里餘、至二郡山一十一里餘、至二丹州龜山一五里、至二江州大津一三里、至二膳所一四里、至レ淀三里、至二伏見一二里十八町 〈官道〉 東國路 三條口至二四宮辻一〈江州滋賀郡界〉一里十六町〈所レ歴曰粟田口、曰日岡、曰御陵、曰竹鼻等、又自二四宮辻一左折一蹊、謂二之小關越一、〉 大和路 五條口至二伏見豐後橋一二里、〈所レ歴曰東福寺門前、曰稻荷、曰深草、曰藤森等、〉豐後橋至二廣野新田一二里、〈歴二巨椋、羽拍子一、〉新田至二長池驛一一里、〈所レ歴曰平川、曰久世、曰寺田等、〉長池至二玉水驛一一里八町、歴二奈島十六一玉水至二木津驛一二里四町、〈歴二綺田綾杉藪一〉、木津至二一坂一〈和州添上郡界〉二十四町、〈五條口至レ此通計九里、又自二五條橋一經二新(イマ)熊野西山村一至二勸修寺一三十二町、謂二之濘(スベリ)石越一、又自二五條稿一歴二清閑寺一至二御陵村一一里十町、謂二之汁谷越一、〉 西國路 東
p.0208 寺口至二向日町一一里十二町、〈所レ歴曰吉祥院、曰石原、曰上久世、曰大藪、曰下久世、曰寺戸等、〉向日至二山崎驛關戸一〈攝州島上郡界〉一里二十四町、〈所レ歴曰開田、曰馬場、曰神足(カウタニ)、曰調子、曰圓明寺等、東寺口至レ此通計三里、又經二歴吉祥院、塔森、久我、下植野等一、至二山崎一、謂二之久我畦畷(ナハテ)路一、一名古道、又自二東寺口一至二淀驛一二里十八町、所レ歴曰上鳥羽、曰小枝、曰下鳥羽、曰横大路、曰富森、曰納所、自レ淀歴二美豆一而到二河州交野郡界橋本金橋一一里十町、謂二之大坂路一、又自レ淀至二和州添下郡界相樂村一六里十八町、所レ歴曰美豆、曰下奈良、曰上奈良、曰岩田、曰薪、曰田邊、曰興(コウ)戸、曰高木、曰菱田、曰下狛、曰祝園、曰菅井、曰吐師(ハジ)、謂二之歌姫越一、〉 丹波路、〈舊名大枝道〉七條口至二樫(カタギ)原驛一一里十二町、〈所レ歴曰川勝寺、曰下桂、曰川島等、〉樫原至二沓掛一二十九町、〈經二塚原一〉沓掛至レ峠〈丹州桑田郡界〉二十一町、〈七條口至レ此通計二里二十六町〉 長坂越、〈一名山國路〉長坂口至二杉坂一二里十三町、〈歴二鷹峯一〉杉坂至二西河内一一里二十町、〈歴二眞弓中村一〉西河内至レ峠〈桑田郡界〉十九町〈長坂口至レ此通計四里十六町、又自二杉坂一至一上村一一里一町、上村至レ峠十町、謂二之細河(ホソコ)路一、山國細河倶丹州、〉 久多越、〈舊名若狹路、又云小川越、〉鞍馬口至二鞍馬一一里二十一町、〈所レ歴曰賀茂、曰幡枝、曰市原、曰野中、曰二瀬等、〉鞍馬至二大見一三里十四町、〈歴二百井一〉大見至二久多一三里、〈山路險峭〉久多至レ峠〈江州高島郡界〉一里、〈鞍馬口至レ此通計八里三十五町、又自二久多一至二榎木峠一一里、謂二之榎木越一、小川榎木倶江州、又自二久多一至二能見峠一十八町、乃丹州桑田郡界、又自二鞍馬一經二過花瀬嶺別所、及百井、大見二分道一、至二大布施村一三里四町、自レ村至レ嶺二十町、乃桑田郡界也、又自二大布施村一至二八升村一二十町、自レ村至レ嶺八町、亦桑田郡界也、又自二八升一歴二國土峠一至二久多一四里九町、羊腸崎嶇不レ可二馬行一、〉 龍華越、〈舊名大原道、又名橡生(トチフヽ)越、〉大原口至二八瀬一一里三十四町、〈歴二山端(ハナ)高野一〉八瀬至二小出石(コデシ)峠一〈江州滋賀郡界〉二里十町、〈所レ歴曰戸寺、曰大長瀬、曰來迎院、曰勝林院、自二大原口一至レ此通計四里八町、橡生、龍華、舊屬二本郡一、今入二江州一、已上京師七口路(○○○○○)、〉 〈間道〉 嵯峨路 下立賣朱雀至二鳴瀧一二十八町、〈歴二木辻、仁和寺門前一、〉鳴瀧至二嵯峨清凉寺門前一二十九町、〈歴二山越池裏一〉嵯峨至二水尾一一里十四町、水尾至レ峠〈桑田郡界〉十町、〈朱雀至レ此通計三里九町、又自二水尾一至二越畑峠一一里十九町、山路險隘、〉 高雄越 一條朱雀至二鳴瀧一二十七町、〈歴二仁和寺門前、福王寺一、〉鳴瀧至二中島一三十四町、〈歴二平岡、善妙寺一、〉中島至レ峠〈桑田郡界〉一里一町、〈朱雀至レ此通計二里二十六町〉 雲カ畑越 大宮森至二雲畑出谷一二里六町、〈歴二中津川、中畑一、〉出谷至レ峠〈桑田郡界〉一里十五町、〈歴二岩屋山下一自二大宮森一至レ此通計三里二十一町、已上丹州境界、〉 山中越 今出川口至二白川村一十五町、〈歴二雲母(キラヽ)越分道一〉白川至レ峠〈江州滋賀郡界〉二十四町、〈今出川至レ此通計一里三町、又自二一乘寺村一至二滋賀郡界撞木島一三十四町、謂二之白鳥越一、〉 竹田路 東鹽小路至二伏見京橋一一里二十五町〈已上蹊路、往自二京師一、〉 大澤嶺、〈攝州島上郡界〉至二柳谷一六町、柳谷至二神足一一里二町、〈歴二下海印寺村一、又自二柳谷一有二一蹊一、外通二尺代村一、〉 外畑(トノハタ)越、〈桑田郡界〉至二塚原一二里三町〈所レ歴曰坂本、曰長峯、曰大原野、又自二坂本一有二一蹊一、外通二出灰(イヅルハ)村一行程一里、〉 唐櫃越、〈桑田郡界〉至二下山田一一里、 芹生越、〈桑田郡界〉至二貴船村一一里十四町〈已上丹州境界〉 二ノ尾峠、〈滋賀郡界〉至二六地藏村一二里八町、〈歴二二尾、炭山、木幡一、坂磴甚險、又自二二尾村一有二一蹊一、外通二栗本郡曾束村一、〉 禪定
p.0209 寺越、〈栗本郡界〉自レ界至レ村十六町、自レ村至二郷口一三十町、〈歴二岩本、荒木、上町一、〉郷口至二宇治一一里二十七町、〈通計三里一町、又有下禪定寺村外通二曾束村一一蹊上、〉 信樂越〈甲賀郡界〉至二茶屋一十六町、茶屋至二大道寺一一里三十三町、〈歴二川上、奧山田、湯屋谷等一、〉大道寺至二郷口一一里五町、〈歴二糠塚、贄田、上町等一、〉郷口至二市邊一一里十五町、〈國界至レ此通計四里三十三町〉 柞(ハヽソ)嶺、〈甲賀郡界〉至二湯船一三十二町、湯船至二原山一三十四町、原山至二川原村一二里、〈所レ歴曰岡、曰、白栖、曰石寺、曰井平尾、曰岡崎、自レ嶺至レ此通計三里三十町、又自二湯船一至二郡曰龍芝一二里七町、謂二之多羅尾越一、〉 野殿越、〈甲賀郡界距二野殿村一一里十二町、坂磴險難、〉自レ村至二北大河原一一里、〈已上江州境界〉 大河原越、〈伊州阿拜郡界、距レ村二十七町、〉北、大河原驛至二北笠置驛一一里二十町、〈歴二上有市、下有市一、〉北笠置至二草畑渡一〈笠置管内〉十八町、渡至二西村一二里十八町、〈所レ歴曰木(コ)屋、曰錢司(デス)、曰井平尾、曰岡崎、曰川原、〉西村至二神童寺一十二町、神童寺至二綾杉一二十四町、〈歴二平尾一自二國界一至レ此通計六里十一町、一名神童寺越、〉 飛鳥路越、〈添上郡曰、去二飛鳥路村一三十町、坂路嶮岨、〉自レ村至二有市一三町、 柳生越、〈添上郡界〉至二草畑渡一一里二十町、〈歴二飛鳥路、南笠置一、又自二南笠置一至二國界一七町、外通二廣岡村一、〉 梅谷越、〈添上郡界〉至二里村驛一一里九町、里村至二草畑渡一一里二十一町、〈所レ歴、曰船屋町、曰北村、曰山田屋敷等自二國界一至レ此通計二里三十町、已上和州境界、〉 普賢寺越、〈交野郡界〉至二田邊一二十三町、 荒坂越、〈交野郡界〉至二松井村一十六町、 洞嶺〈交野郡界〉至二八幡志水町一十八町、〈又有二一蹊一曰二七ツ松越一、倶河州境界、大澤嶺已下來自二境界一〉 粟生路 友岡至二粟生一二十五町、粟生至二沓掛一一里五町、〈所レ歴曰上里、曰石見、曰大原野、曰長野、曰岡新田等、通計一里三十町、〉 愛宕路 上嵯峨至二樫原一一里十九町、〈所レ歴曰天龍寺門前、曰上山田、曰松尾、〉樫原至二向日町一三十二町、〈歴二寺戸物集(モズ)女一、通計二里十五町、〉 新道 伏見至二藤ノ森一二十三町、藤森至二小野一一里六町、〈歴二大龜谷、勸修寺一、〉小野至二追分一一里二町、〈通計二里三十一町〉 宇治路 小野至二六地藏驛一一里、〈歴二醍醐、石田等一、〉六地藏至二宇治橋一一里、〈歴二木(コ)幡、五箇莊等一、〉宇治至二廣野新田一十六町、〈通計二里十六町〉 賀茂路、〈一名河南路〉木津村至二法華寺野一二十八町、〈粟生路已下國内行路之號〉
〔日本實測録〕
〈二街道〉
p.0209 從二東京一東海道至二西京一〈◯中略〉 山城國宇治郡髭茶屋町 一里三十町一間 西京三條大橋東頭〈沿二鴨川一至二中島村小枝橋一、二里三町五十三間、從二小枝橋一至二桂川口一、一里十七町五十一間、〉 一十六町二十一間 同瓦師町〈至二千本通四辻一、三町一十四間、從二四辻一至二西三條臺攺暦所一、六町三十五間、〉 二町八間 同神泉苑町、三十五度三十秒、 〈從二東京一至二西京一〉東海道通計一百三十四里一十六町三十五間〈◯中略〉 從二伊勢國津一、歴二伊賀國一、至二木津一、〈◯中略〉
p.0210 山城國相樂郡北大河原村〈至二大和國小柳生陣屋一、二里三町三十五間、〉 一里八町四十二間 北笠置村〈至二笠置寺一、一十六町二十五間、〉 二里一十七町九間半〈至二加茂宿一、二里九間半、〉 里村〈至二奈良坂村一、一里一十町四十八間、〉 一里一十五町二十八間半 木津宿本町、三十四度四十四分半、 〈從レ津 至二木津一〉街道通計二十一里二十六町一十四間 從二伊勢國市場庄一、歴二大和國一、至二西京一、〈◯中略〉 山城國相樂郡木津宿本町 二里四町九間半 綴喜郡井出郷水無村玉水宿 一里九町一十五間 久世郡富野村長池町、三十四度五十分半、 一里四町三十六間 廣野村〈至二宇治郷橋本町一二十八町四十九間半〉 一里二十四町四十五間 紀伊郡向島村橋詰町 七町三間〈至二伏見玄蕃町一、二丁四間、〉 堀内村〈至二鐵門一、八丁三十七間、〉 一十八町三十一間〈至二大龜谷村七十軒町一、一十六町四十二間、〉 大龜谷村鳥居崎町 二町九間〈至二藤森社前一、四十五間、〉 深草村玄蕃町 一十八町一十八間 稻荷村御前町〈至二稻荷山稻荷社一、二町三十間、〉 二十五町一十四間〈至二東福寺前一、八町一十四間、〉 西京大佛前 一十九町三十間〈至二建仁寺前一、九町六間、從二寺前一至二四條通一、四町五十一間、〉 西京三條大橋東頭 〈從二市場庄一至二西京一〉街道通計四十九里二十五町五十七間〈◯中略〉 從二東海道鳥居川一、沿二勢田川一、至二伏見一、〈◯中略〉 山城國久世郡宇治郷橋本町、三十四度五十三分半、〈歴二宇治橋一、至二宇治郡宇治郷一、一丁四十三間、從二宇治郷一、至二宇治神社一、四丁一十八間、又從二宇治郷一、至二大鳳寺村一、四丁五十七間、從二大鳳寺村一、至二三室戸寺一、一十一丁四十二間、又從二大鳳寺村一、至二黄檗山萬福寺前一、一十八丁一十五間、從二寺前一、至二大龜谷村七十軒町一、一里九丁二十一間、〉 三十二町一十三間 紀伊郡向島村 二十一町一十四間 同橋詰町 四町〈至二伏見玄蕃町一、二町、〉 伏見豐後橋町〈歴二彈正島一、至二三栖町一、一十一町七間、〉 一町一十五間 同彈正町〈歴二元材木町一、至二撞木町一四丁八間、〉 七町一十間〈至二撞木町一、四丁二十八間、〉 同南濱町三十四度五十六分、二十六間 同京橋 〈從二鳥居川一至二伏見一〉街道通計七里二十八町二十四間
〔日本實測録〕
〈四街道〉
p.0210 從二山城國髭茶屋一歴二伏見及大坂一、至二西宮一、 山城國宇治郡髭茶屋町 三里六町一十五間〈至二大龜谷村鳥居崎町一、二里九丁、從二鳥居崎町一、至二深草玄蕃町一、二里九間、〉 紀伊郡伏見京橋 一里一十町二十八間半〈至二三栖町一、八丁五十一間、從二三栖一至二淀小橋一、三十五丁五十八間半、〉 久世郡淀池上町、三十四度五十四
p.0211 分半、 一十三町四十九間〈至二木津川岸一、一十丁二十五間、〉 綴喜郡美豆村木津川岸、〈沿二木津川一、至二淀川岸一四町四十一間、〉 三十町五十九間、橋本町 一十一町八間半〈至二國界一、三町三十八間、〉 河内國交野(コモノ)郡楠葉村〈沿二淀川一至二牧方宿一、二里二町四十四間、◯下略〉
〔國花萬葉記〕
〈二下山城〉
p.0211 拾遺 宇治大路方(ヲチカタ) うぢより木幡を經て京師に上るの道也、うぢ橋の東三室に至る道路をすべて宇治大路と云へり、それをおちかたと云ならはせるは誤り也、〈◯中略〉 諸方道法 大津〈三リ〉 比叡山〈三里〉 伏見〈二里半〉 鞍馬〈三リ〉 淀〈三リ〉 大原〈三里〉 山崎〈三里半〉 八幡〈四里〉 岩屋〈四里〉 勝尾〈八里半〉 有馬〈十六里〉 黄檗〈三里〉 嵯峨〈二里〉 宇治〈四里〉 愛宕〈三リ〉 高雄〈三里〉 唐崎〈四リ〉 膳所〈四里〉 石山〈五里〉 牛尾〈二里半〉 醍醐〈三里〉 粟生〈三里半〉 龜山〈五里〉 奈良〈十一里〉 大坂〈十二里〉
〔雍州府志〕
〈一形勝〉
p.0211 凡自二四方一入二京師一有二七道一、是謂二七口一、是自レ古所レ定レ之也、於レ今京師繁華日増月盛、故七口之外、入二京師一之道有二數箇所一、人馬之往來不レ絶レ跡、所レ謂七口者、東三條口、伏見口、鳥羽口、七條丹波口、長坂口、鞍馬口、大原口是也、倭俗出入之道謂レ口、〈◯中略〉
〔山州名跡志〕
〈四上愛宕郡〉
p.0211 粟田口 東國ヨリ鳳城ニ入ル路口ノユヘニ口(クチ)ト稱ス、粟田ハ總名ナリ、其方境、東ハ白河ヲ限リ、西ハ鴨川ヲ限リ、北ハ二條ノ東ヲ限リ、是ヲ下粟田ト云フ、其北ハ北白河ニ至ツテ上粟田ト號ス、
〔續日本紀〕
〈二十五淳仁〉
p.0211 天平寶字八年九月乙巳、太師藤原惠美朝臣押勝、逆謀頗泄、 壬子、軍士石村〈◯村原脱、據二一本一補、〉主石楯斬二押勝一傳二首京師一、押勝者、〈◯中略〉遂起レ兵反、〈◯反原作レ及、據二一本一攺、〉其夜相二招黨與一、遁レ自二宇治一奔據二近江一、山城守日下部子麻呂、衞門少尉佐伯伊多智等、直取二田原道(○○○)一、先至二近江一燒二勢多橋一、
〔下學集〕
〈上天地〉
p.0211 【苦集滅道】(クヽメヂ)〈洛陽東山清水寺南、清閑寺之麓也、三井開山教侍和尚欲レ往二城南山崎別業一、及レ經二此地一、其木履之響鳴作二苦集滅道之音一、奇異事也、由レ是厥後關東左遷人、亦及〉
p.0212 〈レ經二此道一時者、必觀二四諦之法一、故呼二此道一云二苦集滅道一也、〉
〔保元物語〕
〈上〉
p.0212 官軍方々手分事 彼等ヲ南庭ニ被レ召テ、少納言入道ヲ以テ、去ヌル二日一院〈◯鳥羽〉崩御後、武士共兵具ヲ調テ、東西ヨリ都ヘ入集ル事道モ去アヘズ、以ノ外ノ狼籍也、弓箭ヲ帶セン輩ヲバ、一々ニ召捕テ參上スベキ由被二仰下一、各庭上ニ跪テ是ヲ承ル、義朝義康ハ内裏ニ候テ、君ヲ守護シ奉レ、其外ノ撿非違使ハ、皆關々ヘ可レ向トテ、宇治路(○○○)ヘハ安藝判官基盛、淀路(○○)ヘハ周防判官季實、粟田口ヘハ隱岐判官惟重、【久久目(ククメ)路】ヘハ平判官實俊、大江山(○○○)ヘハ新藤判官助經承テ向ヒケリ、 ◯按ズルニ、久々目路ハ苦集滅道ト同ジクシテ、清閑寺ノ麓ヨリ山科ニ通ズル道ナリ、
〔源平盛衰記〕
〈二〉
p.0212 額打論附山僧燒二清水寺一事并會稽山事 搦手ハ、大關、小關、四宮川原モ打過テ、苦集滅道ヤ、清閑寺、歌ノ中山マデ攻寄タリ、
〔源平盛衰記〕
〈五〉
p.0212 山門奏状事 座主〈◯明雲〉一切經ノ別所ヲ出テ配所ヘ赴給フ、〈◯中略〉彼粟田口、兩葉(ヲトハ)山、四宮河原ヲ打過テ、〈◯中略〉粟津ノ浦ニゾ出給フ、
〔源平盛衰記〕
〈十四〉
p.0212 山門變改事 南都ノ大衆、芳野十津川ノ惡黨等ヲ相語ヒテ、宇治路、淀路ヨリ挾テ寄ルナラバ、〈◯下略〉
〔源平盛衰記〕
〈十五〉
p.0212 宇治合戰附頼政最期事 宮〈◯高倉〉ハ御淨衣ニテ御馬ニ召、〈◯中略〉宇治ヘゾ入セ給ケル、宇治ト寺トノ間、行程纔ニ三里計ナリ、
〔源平盛衰記〕
〈三十〉
p.0212 平家兵被レ向二宇治勢多一事 新三位中將資盛大將軍トシテ、〈◯中略〉宇治路ヨリ田原路(○○○)ヲ廻テ、近江國ヘ指下サル、
〔源平盛衰記〕
〈三十五〉
p.0212 高綱渡二宇治河一事
p.0213 大勢河ヲ渡ヌレバ、〈◯中略〉或ハ木幡大道、醍醐路(○○○)ニ懸ツテ阿彌陀ガ峯ノ東ノ麓ヨリ攻入モアリ、或ハ小野庄、勸修寺ヲ通リテ七條ヨリ入者モアリ、或ハ櫃川ヲ打渡リ、木幡山、深草里ヨリ入モアリ、或ハ伏見、尾山、月見岡ヲ打越テ、法性寺一二ノ橋ヨリ入モアリ、道ハ互ニ替レドモ、同ジ都ヘ亂レ入ル、
〔源平盛衰記〕
〈三十五〉
p.0213 巴關東下向事 木曾〈◯義仲〉ハ、此彼ヲ打破テ東ヲ差テ落行ケリ、龍華越(○○○)ニ北國ヘ傳トモ聞ケリ、長坂(○○)ニカヽリ播磨ヘ共云ケリ、
〔續日本紀〕
〈五元明〉
p.0213 和銅四年正月丁未、始置二都亭驛、山背國相樂郡岡田驛、綴喜郡山本驛一、〈◯下略〉
〔日本後紀〕
〈十二桓武〉
p.0213 延暦二十三年六月己巳、停二山城國山科驛一、
〔日本後紀〕
〈二十一嵯峨〉
p.0213 弘仁二年閏十二月甲辰、遊二獵于水生野一、御二於山崎驛一、
〔類聚國史〕
〈三十二帝王〉
p.0213 弘仁四年二月己亥、遊二獵於交野一、以二山埼驛一爲二行宮一、是日津頭失レ火、延二燒廿一家一、
〔凌雲集〕
p.0213 御製〈◯嵯峨〉廿二首〈◯中略〉 河陽驛(○○○)經レ宿、有レ懷二京邑一、 河陽亭子經二數宿一、月夜松風惱二旅人一、雖レ聽二山猿助レ客叫一、誰能不レ憶二帝京春一、
〔朝野群載〕
〈三文筆〉
p.0213 遊女記 自二山城國與渡津一、浮二巨川一西行一日、謂二之河陽一、往二返於山陽西海南海三道一之者、莫レ不レ遵二此路一、〈◯下略〉
〔山城名勝志〕
〈六乙訓郡〉
p.0213 河陽〈或云、山崎同所歟、〉
〔太平記〕
〈十六〉
p.0213 正成下二向兵庫一事 正成是ヲ最期ノ合戰ト思ケレバ、嫡子正行ガ今年十一歳ニテ供シタリケルヲ思フ様有トテ、櫻井ノ宿(○○○○)ヨリ河内ヘ返シ遣ストテ、庭訓ヲ殘シケルハ、〈◯下略〉
〔日本國郡沿革考〕
〈二畿内〉
p.0214 山城 古作二山背一、或作二山代一、〈國造記〉延暦十三年十一月詔、改二山背國一爲二山城國一、是時奠都焉、民皆謳歌、異口同辭、號二平安京一、承和三年十月、承前之例、畿内國次以二大和國一處二之第一一、勅宜下以二山城國一處中之第一上、上國、管八郡四百七十七村、〈諸國郡名、以下延喜式、和名抄、拾芥抄所レ載之異同上、注二各郡條下一、而色葉字類抄、運歩色葉抄、古本節用集、亦載二郡名一、各有二小異同一、〉 乙訓〈五十二村 古弟國、後爲レ郡、延暦十六年八月、遷二國治於長岡京南一、舊在二葛野郡一、地隘也、貞觀三年六月、國司奏、以下河陽離宮少二行幸一而稍就中破壞上、請爲二國司爲政之所一、當レ存二舊號一、臨レ有二行幸一、而先掃レ之、◯中略〉 紀伊〈三十四村〉 葛野〈八十一村〉 久世〈四十二村〉 愛宕〈八十一村〉 宇治〈五十一村 日本紀作二菟道一、萬葉集氏川、即是、〉 綴喜〈五十四村 古事記作二筒木一、仁徳紀筒城岡、萬葉集管木之原、即是、〉 相樂( /サカラカ)〈八十二村〉
〔山城志〕
〈二〉
p.0214 建置沿革 畿内第一之域、天文距レ極三十五度半強、尚古曰二山背國一〈以三其在二大和國北一爲レ名、一作二間木(ヤマ)代一、又山開、又山代、〉延暦十三年十一月改爲二山城一、神武天皇以二天目一命一爲二國造一、舊府在二相樂郡甕原一、貞觀中、遷二于山崎一、建久中執二國政於六波羅一、延元以來、徒二于室町一、今在二二條城北一、謂二之所司代一、其所二職掌一兼知二畿内及西州事一、
〔日本地誌提要〕
〈三山城〉
p.0214 沿革 桓武天皇ノ御宇、皇都ヲ葛野愛宕二郡ノ地ニ定メ、左右京職東西市司ヲ置、又國司アリ、府ヲ乙訓郡〈河陽(カヤ)離宮〉ニ置キ、都外ノ事ヲ領ス、鎌府ノ建ツ、京都守護ヲ設ケ、北條氏執權ノ日、南北六波羅探題ヲ創置シテ、京畿山陰山陽南海諸州ノ政刑ヲ兼掌セシム建武中興大内ヲ營造シ、省司諸制始テ舊式ニ復セリ、既ニシテ足利尊氏反シ、後光明天皇ヲ擁立シ、將軍府ヲ室町ニ開キ、國命ヲ執リ、應仁以後、輦下大ニ亂レ、永祿中、三好松永群黨、將軍義輝ヲ弑シ、淀、勝龍寺諸城ニ據ル、天正ノ初、織田信長盡ク之ヲ平ラゲ、所司代ヲ京都ニ設ク、信長弑セラレ、豐臣秀吉代テ國權ヲ握リ、聚樂及伏水ニ城テ京都ヲ守ル、豐臣氏亡ビ、徳川氏亦所司代ヲ置キ、二條城ヲ築キ、山城、大和、丹波、近江ノ政刑ヲ統シメ、伏水ニ奉行ヲ置キ、松平定綱ヲ淀ニ封ズ、享保中、稻葉正知之ニ代リ世襲、王政革新所司代及伏水奉行ヲ廢ス、明治二年乘輿東遷シ、留守官
p.0215 ヲ置キ二條城ヲ以テ府トナス、尋テ淀藩ヲ廢シ留守官ヲ府ニ併ス、
〔先代舊事本紀〕
〈十國造〉
p.0215 山城國造 橿原朝〈◯神武〉御世、阿多根命爲二山代國造一、 山背國造 志賀高穴穗朝〈◯成務〉御世、以二曾能振命一定二賜國造一、
〔續日本後紀〕
〈五仁明〉
p.0215 承和三年十月己未、承前之例、畿内國次、以二大和國一處二之第一一、勅宜下據二新式一改之、以二山城國一處中之第一上、
〔倭名類聚抄〕
〈五國郡〉
p.0215 山城國〈源唱朝臣爲レ方之時奏聞、以二河陽離宮一爲二國府一、〉
〔拾芥抄〕
〈中末本朝國郡〉
p.0215 山城〈上〉八郡 乙訓〈府〉
〔日本紀略〕
〈桓武〉
p.0215 延暦十六年八月戊寅、遷二任山城國治於長岡京南一、以二葛野郡地勢狹隘一也、
〔三代實録〕
〈五清和〉
p.0215 貞觀三年六月七日庚戌、山城國奏言、河陽離宮久不二行幸一稍致二破壞一、請爲二國司行レ政處一〈◯中略〉許之、
〔延喜式〕
〈二十二民部〉
p.0215 山城國上〈管 乙訓 葛野 愛宕 紀伊 宇治 久世 綴喜 相樂〉
〔倭名類聚抄〕
〈五國郡〉
p.0215 山城國〈◯註略〉管八〈◯註略〉乙訓〈於止久邇〉葛野〈加止乃〉愛宕〈於多岐〉紀伊〈岐〉宇治〈宇知〉久世〈久世〉綴喜〈豆々岐〉相樂〈佐加良加〉
〔皇國郡名志〕
p.0215 山城國〈八郡〉 乙訓(オトクニ) 〈●久我 ●岩倉 ●久世 ＜向日町 ＜神足 ＜山崎 淀川ニ添テ攝丹界郡〉 葛野(カトノ) 〈洛西八九條、東寺、島原、壬生、金閣、嵯峨、清瀧、高雄、愛宕山、梅津、樫原、 國中ノ郡也〉 愛宕(オタキ) 〈洛中ヨリ東ハ粟田口、白川、西ハ二條御城、北野、本願寺、南ハ七條限、北ハ叡山迄、 江丹界郡〉 紀伊(キ)〈＜伏見 淀 ●竹田 ●上鳥羽 國中ノ郡也〉
p.0216 宇治(ウシ) 〈●日ノ岡 ●御陵 上醍醐 ●大塚 ●追分 江界郡〉 久世(クセ) 〈●宇治 ●長沼 國中ノ郡也〉 綴喜(ツヽキ) 〈＜玉水 ＜八幡 ●橋本 河界ノ郡〉 相樂(サカラク) 〈●木津 ●大河原 ●北カサギ 伊賀大和界〉 ◯按ズルニ、本書ノ凡例ニ、郡名ノ下ノ地名城地、＜ハ陣屋、
御關所、●ハ驛地、無印ハ名高キ村名也、△ハ神社佛閣名所舊跡山川等ト見エタリ、
〔郡名異同一覽〕
p.0216 山城
p.0217 ◯按ズルニ、本書ノ凡例ニ、紀ハ日本紀、續ハ續日本紀、後ハ日本後紀、續後ハ續日本後紀、文ハ文徳實録、三ハ三代實録、古ハ古事記、舊ハ舊事紀、史ハ類聚國史、略ハ日本紀略、万ハ萬葉集、東ハ東鑑、圖ハ古圖、知ハ寛知集、元ハ元祿帳、銘ハ郡銘録トアリ、
〔大館常興日記〕
p.0217 天文七年九月朔日、一城州〈下郡五郡(○○○○)〉田畠段錢爲二右京兆一被二相懸一之間、被レ成二御内書一、四日、一城州下五郡(○○○)段錢事、六角方より京兆へ被レ申候返答如レ此候由にて、京兆并播州書状〈六角方ヘ也〉等六角方より被二上進一之、
〔伊呂波字類抄〕
〈也國郡〉
p.0217 山城國 管八郡 乙訓〈オトクニ府〉
〔古事記〕
〈中垂仁〉
p.0217 喚二上美知能宇斯王之女等一、〈◯中略〉其弟王二柱者因二甚凶醜一返二送本土一、於レ是圓野比賣(マトヌヒメ)慚言、同兄弟之中以二姿醜一被レ還之事、聞二於隣里一、是甚慚而、〈◯中略〉到二弟國一之時、遂墮二峻淵一而死、故號二其地一謂二墮國(オチクニ)一、今云二弟國(オトクニ)一也、〈◯又見二日本書紀一〉
〔古事記傳〕
〈二十五〉
p.0217 弟國は和名抄に山城國乙訓郡〈於止久邇〉神名帳に、同郡乙訓(オトクニ)ニ坐ス大〈◯大恐火誤〉雷神社、書
p.0218 紀繼體卷に十二年、遷二都弟國一など見ゆ、〈古弟國と云し地は、今の井内村今里村のあたりなり、井内村に乙訓明神の社あり、又今里村なる法皇寺と云寺は、昔は乙訓寺と云つと或書に云り、宇治拾遺物語に、長岡の邊をすぎて、乙訓川のつらをすぐと思へば、又寺戸の岸をのぼる云々と云り、寺戸村と云も今もあり、〉
〔日本書紀〕
〈十七繼體〉
p.0218 十二年三月甲子、遷二都弟國一、
〔山城志〕
〈三〉
p.0218 乙訓郡〈東至二紀伊郡界一、西至二丹州桑田郡界一、南至二綴喜及攝州島上郡界一、北至二葛野郡界一、〉
〔山城名勝志〕
〈六乙訓郡〉
p.0218 凡當郡、東限二桂川下流一、南限二淀河一、西南方限二水無瀬河一、西限二出羽村川一、北限二丹波龜山路一、
〔山州名跡志〕
〈一八郡封境〉
p.0218 乙訓郡 當郡又南北ニ亘テ坤ニ至ル、北ハ檞原(カタキハラ)ノ西、大枝坂ノ東、塚原ヲ限ル、其西ヨリ南ニ至テハ山ヲ限ル、其西北ハ丹波ヲ爲レ隣、但小鹽山ノ後邊、乾ニ外畑(トノハタ)村アリ、是當郡ニ攝ス、坤ハ大山崎ヲ限リ、艮ハ吉祥院ノ西北ニ當テ桂川ノ西面、上久世(カミクゼ)、下久世(シモクゼ)、物集女(モヅメ)、寺戸、其南ハ開田(カイデン)ニ至ル、東ハ桂川ヲ限ル、川ノ西ニ久我(コガ)、古河、鴨川村、赤井、菱河等ノ村アリ、其南西ハ大山崎ノ東ニシテ、調子、久貝(クガヒ)等ノ村アリ、大山崎ノ西ハ津國(ツノクニ)ヲ爲レ隣也、
〔山州名跡志〕
〈十乙訓郡〉
p.0218 西岡 此號ハ乙訓郡ノ別稱也、當郡北ハ大江ノ坂、南ハ山崎、東ハ川、西ハ至二西山一總名也、謂ハ依二土地形一ナリ、其地沓掛村〈桂西在二一里余一〉西ノヨリ續テ、南方雞冠井(カイイデ)、向日(ムカフ)山ニ至テ、凡三十餘町ノ間、一壇ノ岡山アツテ、王城ノ西ナルノ謂也、上古ニハ稱二長岡一、凡此丘ヲ領スル民村ハ、岡村、〈在二樫原南一〉物集女、寺戸、雞冠井(カイデ)等、此丘ノ在二東面一南北ニ亘レリ、
〔續日本紀〕
〈二文武〉
p.0218 大寶二年七月癸酉、在二山背國乙訓郡一火雷神、毎レ旱祈レ雨、頻有二徴驗一、宜レ入二大幣及月次幣例一、
〔續日本紀〕
〈三十八桓武〉
p.0218 延暦三年五月丙戌、勅遣二中納言正三位藤原朝臣小黒麻呂〈◯中略〉等於山背國一、相二乙訓郡長岡村之地一、爲レ遷レ都也、
〔東寺百合古文書〕
〈一〉
p.0218 久世庄文書案
p.0219 うりわたすなか地事 合壹段者 あり 山城國おと國のこほり(○○○○○○○)上久世庄内すけとも名〈あざな ゐのつぼ◯中略〉永和貳年〈丙辰〉十一月廿日 うりぬし山城國おと國のこほり上久世庄 き七判〈◯下略〉
〔伊呂波字類抄〕
〈也國郡〉
p.0219 山城國 管八郡〈◯中略〉 葛野〈カトノ〉
〔古事記〕
〈上〉
p.0219 次大山〈上〉咋神、亦名山末之大主神、此神者坐二淡海國之日枝山一、亦坐二葛野(○○)之松尾一用鳴鏑神者也、
〔古事記傳〕
〈十二〉
p.0219 葛野は加豆怒(カヅヌ)と訓べし、中卷明宮〈◯應神〉段の大御歌に見ゆ、書紀垂仁卷に、唯竹野媛者因二形姿醜一、返二於本土一、則羞二其見返一、到二葛野一自墮レ輿而死之、故號二其地一、謂二墮國一、今謂二弟國一訛也、とあるを思へば、古は乙訓郡のあたりまでかけて、泛く葛野と云しなり、〈（中略）加豆(カヅ)に葛字を用ひたるは、久豆(クヅ)を加豆とも云しなり、字音を取るにはあらず、後に加杼野(カドノ)と云は、加豆の轉れるなり、下總の葛飾は音を取れり、例異なり、〉
〔古事記〕
〈中開化〉
p.0219 次袁邪本王者〈（開化皇子彦坐王子）葛野(○○)之別、近淡海蚊野之別祖也、〉
〔古事記〕
〈中應神〉
p.0219 一時天皇越幸二近淡海一之時、御二立宇遲野上一、望二葛野一歌曰、知婆能(チバノ)、【加豆怒】袁美禮婆毛毛知陀流(カヅヌヲミレバモヽチダル)、夜邇波母美由(ヤニハモミユ)、久爾能富母美由(クニノホモミユ)、
〔古事記傳〕
〈三十二〉
p.0219 葛野は、〈◯中略〉垂仁紀を引て云る如く、古は乙訓のあたりをも、葛野と云しことあれば、なほ葛野、乙訓、紀伊三郡にわたりて、其平原なる地を、廣くすべて云し名なるべし、〈延暦十三年十月の詔に、今京の事をも、葛野乃大宮地とあり、〉されば宇遲より望給ふこと宜なり、〈或説に、此の葛野は、久世郡なる富野村の舊名なり、葛野郡とは別なりと云るは、宇治より葛野郡までは遠ければ、望賜ふべきに非ずと思ふから、御歌のもゝちだるやにはとある詞に依て、富野てふ名に附會(ヒキツケ)たるものなるべし、そは葛野と云は、古には廣き名なりしことを知ざるからのひがことなり、◯中略〉知婆能(チバノ)は、契冲云く、千葉之(チバノ)なり、葛は葉の繁き物なれば、其枕詞なり、下總國に千葉郡あるも、さる意以て名けたるか、加豆怒袁美禮婆(カヅヌヲミレバ)は、葛野を見ればなり、契冲云、加豆(カヅ)は加豆良(カヅラ)の下略なり、
〔山城志〕
〈四〉
p.0220 葛野郡〈東至二京師及愛宕郡界一、西北至二丹州桑田郡界一、南至二乙訓郡界一、〉
〔山州名跡志〕
〈一八郡封境〉
p.0220 葛野郡 當郡ハ愛宕(ヲタギ)ノ西ニ雙テ南北ニ長シ東ハ洛陽朱雀通ニシテ、艮ハ紫野ノ北、氷室ニ亘リ、北ハ小野、東河内、西河内、眞弓等ヲ攝シ、北ニ山アリ、丹波ヲ爲レ隣、乾ハ鷹峯ノ奧長坂、及杉坂ヲ經テ細河ニ至リ、其上ニ丹波堺アツテ、彼國山國ニ至ル、委二卷中一、其南西ハ北山、絹笠、大内山〈仁和寺山〉ヲ限リ、及栂尾、高尾、愛宕山ヲ限リ、其南ハ松尾、葉室山等ヲ限リ、其南ハ大枝ノ坂ヲ限ル、西後皆丹波ト爲レ隣、〈坂峠西有二國界一、見二卷中一、〉坂ヨリ東ニ至テハ、檞原(カタギハラ)、桂ヲ經テ、川勝寺村、東ハ朱雀通ヲ限ル、川勝寺ノ坤ニ御所ノ内梅ガ小路村アリ、其西南ハ牛ガ瀬、下津林、唐橋等ヲ經テ、南ハ九條通、巽ハ朱雀通ノ辻ヲ限ル、又西九條村、東鹽ノ小路等ノ民居、是ヲ當郡ニ攝ス、此地愛宕郡ノ地ナリ、此所末代ニ至テ田畠トナスヲ以テ、年貢公役ニツイテ、其支配所ニ從フニ、次宜ユヘナリ、東鹽小路トイフハ、東洞院通七條ノ南一町許ニ、大路ノ東ニ民居アル是ナリ、是今葛野郡ニ攝ス、其南ニ洛陽外封ノ土堆アリ、是ヨリ五町許ニ九條通アリ、是ヲ限ル、其南ハ紀伊郡也、
〔續日本紀〕
〈三十四光仁〉
p.0220 寶龜七年十二月戊申、左京人從六位下秦忌寸長野等二十二人賜二姓奈良忌寸一、山背國葛野郡人秦忌寸箕造等九十七人朝原忌寸、
〔三代實録〕
〈十一清和〉
p.0220 貞觀七年九月己卯朔、詔以二山城國葛野郡山地一町八段一賜二清源山寺一、
〔日本紀略〕
〈四村上〉
p.0220 應和三年六月廿五日乙巳、大井河塞料掃部寮舊薦三百枚宛二給之一、依二同國〈◯山城〉葛野郡請申一也、
〔伊呂波字類抄〕
〈也國郡〉
p.0220 山城國 管八郡〈◯中略〉 愛宕〈オタキ〉
〔山城志〕
〈五〉
p.0220 愛宕郡〈東至二宇治及江州滋賀郡界一、西至二葛野郡界一、南至二紀伊郡界一、北至二丹州桑田、江州高島二郡界一、〉
〔山州名跡志〕
〈一八郡封境〉
p.0220 愛宕郡 當郡ハ王城ヲ爲二中央一、東ハ洛陽ノ東山ヲ限ル、艮ハ叡山ノ後西ニシテ、下ニ八瀬大原アリ、其中ニ大長瀬、勝林院村等アリ、委ハ載二卷中一、大原ノ北ニ近江堺アリ、其所
p.0221 小弟子村ノ北ニシテ、是ヲ云二山城峠一、中ニ往還道アリ、近江朽木及若狹小濱ニイタル、大原領西ニ山アリ、南北ニ亘ル、其山下ニ艸生、野村等アリ、其西南ニ號二藥王坂一坂路アリ、是ヲ越テ長谷ニ出、其西北ハ靜原、鞍馬等ニ至ル、其地又東西ニ山アツテ南北ニ續キ亘ル、鞍馬ノ北ニ大悲山(セン)アリ、麓ニ村アリ、云二大布施一、蓋是大悲山ノ民語ナリ、其北ハ丹波ト爲レ隣、是ヲ云二北丹波一、此所當郡北ノ究竟也、鞍馬ノ乾ニ芹生ノ里アリ、是貴布禰ノ北ナリ、其南西ハ岩屋ヲ限ル、其南ハ畑村ヨリ西賀茂ニ亘リ、鷹峯、紫野、〈次第亘レ南〉蓮臺野、其南、町ニ至テハ朱雀通〈今云二千本通一〉ヲ限ル、朱雀通其坤ハ同街九條ヲ限ル、巽ハ東福寺ノ北一ノ橋ヲ限ル、
〔續日本紀〕
〈三十六光仁〉
p.0221 寶龜十一年四月庚申、山背國愛宕郡人正六位上鴨禰宜眞髮部津守等一十人賜二姓賀茂縣主一、
〔日本紀略〕
〈十三後一條〉
p.0221 寛仁元年十一月廿五日己未、天皇行二幸賀茂社一、皇太后〈◯藤原彰子〉同輿、宣命云、愛宕郡可レ奉レ寄之由、先年祈申、而件郡、或帝王城都、或明神鎭地、皆是萬代相傳之處、非二一人自由之地一、仍南限二皇城北大路一、東限二郡界一、西限二大宮東大路末一、北限二郡界一、但此内有二陵室藏氷之邑一、是百王之職事、難レ致二一時之改易一、縱在二神郡内一、可レ除二此一邑一、抑上下御社平均所二進分一也、
〔伊呂波字類抄〕
〈也國郡〉
p.0221 山城國 管八郡〈◯中略〉 紀伊〈キイ〉
〔山城志〕
〈六〉
p.0221 紀伊郡〈東至二宇治郡界一、西至二乙訓及綴喜郡界一、南至二久世郡界一、北至二京師及愛宕葛野二郡界一、〉
〔山州名跡志〕
〈一八郡封境〉
p.0221 紀伊郡 當郡南北ニ亘ル、東ハ慧日山、〈東福寺山〉稻荷山ヲ限リ、艮ハ東福寺ノ北一ノ橋ヲ限リ、其西ニ至テハ九條ヲ限ル、乾ハ唐橋村ノ西北、西ノ庄ヲ限リ、其南西ハ吉祥院、石原、塔ノ森、其西面ハ桂川ヲ限ル、坤ハ鳥羽、横大路、富ノ森、納所、淀ニ至テ爲レ限、淀ノ西水垂ハ東ニ桂川ノ末アツテ、此所川ノ西トイヘドモ、古ハ無レ川、仍テ當郡也、此川古ハ今云フ横大路ノ東ニ流テ、宇治川ノ末ト合シテ淀ニ入シナリ、委ハ載二卷中一、淀ニ至テハ小橋ヲ限ル、艮ハ伏見豐後橋ノ南ノ爪ヲ限ル其
p.0222 ヨリ北ニ續テ、東ハ伏見古城(フルシロ)ノ山ヲ限ル、其北ハ深草山ヨリ東福寺山ニ續テ爲レ限、淀ノ東面ハ川ヲ限ル、其東ハ久世郡ナリ、
〔日本書紀〕
〈十九欽明〉
p.0222 天國排開廣庭天皇〈◯欽明、中略、〉天皇幼時、夢有レ人云、天皇寵二愛秦大津父者一、及二壯大一必有二天下一、寤驚、遣レ使普求、得レ自二山背國紀伊郡深草里一、
〔續日本紀〕
〈三十三光仁〉
p.0222 寶龜六年七月丙辰、山背國紀伊郡人從八位上金城史山守等十四人賜二姓眞城史一、
〔三代實録〕
〈四十四陽成〉
p.0222 元慶七年九月廿三日丙戍、山城國紀伊郡墾田二段、返二給實相寺一、
〔日本紀略〕
〈四村上〉
p.0222 應和三年六月廿五日乙巳、自二今日一三箇日下二神泉苑池水一漑二京南紀伊郡一、依二山城國申請一也、
〔伊呂波字類抄〕
〈也國郡〉
p.0222 山城國 管八郡〈◯中略〉 宇治〈ウチ〉
〔日本書紀〕
〈九神功〉
p.0222 三月〈◯攝政元年〉庚子、命二武内宿禰和珥臣祖武振熊一、率二數萬衆一令レ擊二忍熊王一、爰武内宿禰等、選二精兵一從二山背一出之、至二【莵道(ウヂ)】一以屯二河北一、
〔古事記〕
〈中應神〉
p.0222 於レ是大山守命者、違二天皇之命一、猶欲レ獲二天下一、有下殺二其弟皇子一之情上、竊設レ兵將レ攻、〈◯中略〉渡到二河中一之時、令レ傾二其船一、墮二入水中一、爾乃浮出、隨レ水流下、即流、歌曰、知波夜夫流(チハヤブル)、【宇遲】能和多理邇(ウヂノワタリニ)、佐袁斗理邇(サヲトリニ)、波夜祁牟比登斯(ハヤケムヒトシ)、和賀毛古邇許牟(ワガモコニコム)、於レ是伏二隱河邊一之兵、彼廂此廂一時共興、矢刺而流、故到二訶和羅之前一而沈入、故以レ鈎探二其沈處一者、繫二其衣中甲一而訶和羅鳴、故號二其地一謂二訶和羅前(カワラノサキ)一也、
〔山城志〕
〈七〉
p.0222 宇治郡〈東北至二江州滋賀郡界一、西至二愛宕紀伊二郡界一、南至二久世郡界一、〉
〔山州名跡志〕
〈一八郡封境〉
p.0222 宇治郡 當郡又南北ニ行テ巽ニ亘ル、北ハ山科郷御廟野ヲ限リ、其東ハ追分ヲ限ル、其所町ノ東ニ堺ノ杭アリ、其地山科小山領ナリ、艮ハ小關ニシテ、江州三井寺ノ南ニ至ル、其艮ニ藤ノ尾村アリ東ハ山ヲ限ル、其山南ニ亘、醍醐山ニ續ク、其巽ニ山ヲ越テ、笠取、炭山アリ、是ヲ限ル、東面ハ山ニシテ近江ト爲レ隣、其卯辰ニ至テハ大鳳寺村、御室戸、宇治ニ至リ、宇治橋ノ東ノ
p.0223 爪ヲ限ル、其西ハ宇治川ノ東ノ岸ヲ限ル、伏見ノ東面ニシテハ、伏見山ヲ限リ、其北ハ深草、稻荷山等ノ東面ヲ限ル、
〔伊呂波字類抄〕
〈也國郡〉
p.0223 山城國 管八郡〈◯中略〉 久世〈クセ〉
〔山城志〕
〈八〉
p.0223 久世郡〈東至二宇治綴喜二郡界一、西南至二綴喜郡界一、北至二紀伊郡界一、〉
〔山州名跡志〕
〈一八郡封境〉
p.0223 久世郡 當郡ハ艮ニ入テ南ニ亘リ、東西不レ寛、艮ハ平等院ノ奧白河ヲ限ル、其所近江ト爲レ隣、宇治ハ當郡ノ子丑ニ當テ川ヲ限ル、其ヨリ南ニ至テ、中ニ大和大路アリ、此所ニテイハヾ、北ハ豐後橋ノ南ノ爪ヲ限リ、其東ハ宇治川ノ岸ヲ限ル、南境ハ巨椋(オグラ)ノ南、大和大路ノ中ニ、灰拍子、平河、久世、寺田、長池村アリ、其南中村ヲ限ル、〈中村内大和大路中有二石橋一是堺也〉其西ニ至テハ、川ノ北岸ヲ限ル、川ハ木津川ノ末ニテ淀大橋ノ下ニ流ル川ノ北ニ富野(トノ)、枇杷莊、水主等ノ村アリ、但水主一村ハ川ノ南綴喜郡ニ攝ス、乾ハ御牧、一口(イモアラヒ)ヲ限ル、御牧ノ卯辰ニ亘テ、狹山、佐古、林、大久保、平河アリ、皆平地ナリ、其北西ハ水境ニテ巨椋ノ入江、宇治川ノ末也、水主ヲ西ニ向ヘバ、上津屋(カウツヤ)下津屋、封戸(フゴ)、御牧、一口等ニ至ル、一口ハ淀ノ東面ニテ中間ハ川ナリ、此川ヲ爲レ限、淀ハ紀伊郡也、坤ハ淀ノ大橋ノ北ノ爪ヲ限ル、橋ノ北ハ同所小橋ヲ限ル、酉戍亥ニ至テハ、伏見ヨリ巽ニシテ宇治川、伏見川ノ入江、曠々タル水面及葦原ヲ爲レ限、
〔續日本後紀〕
〈十三仁明〉
p.0223 承和十年九月辛丑、正三位藤原朝臣愛發薨、〈◯中略〉至二九年〈◯承和〉秋一、連二逮伴健岑謀反事一、出二于京外一、在二山城國久勢郡別墅一而薨焉、時年五十七、
〔萬葉集〕
〈九雜歌〉
p.0223 鷺坂作歌 山代(ヤマシロノ)、【久世】乃鷺坂(クセノサギサカ)、自神代(カミヨヨリ)、春者張乍(ハルハハリツ)、秋者散來(アキハチリケリ)、
〔伊呂波字類抄〕
〈也國郡〉
p.0223 山城國 管八郡〈◯中略〉 綴喜〈ツヽキ〉
〔山城志〕
〈九〉
p.0223 綴喜郡〈東至二江州甲賀郡界一、西至二河州交野郡界一、南至二相樂郡界一、北至二久世紀伊二郡界一、〉
〔日本書紀〕
〈十一仁徳〉
p.0224 三十年九月乙丑、皇后〈◯磐之媛中略、〉更還二山背一興二宮室一於二【筒城】(ツヽキノ)岡南一而居之、 十月甲申朔、遣二的臣祖口持臣一、喚二皇后一、〈一云和珥臣祖口子臣〉爰口持臣至二筒城宮一雖レ謁二皇后一而默之不レ答、時口持臣、沾二雨雪一、以經二日夜一、伏二于皇后殿前一而不レ避、於レ是口持臣之妹國依媛仕二于皇后一、適二是時一侍二皇后之側一、見二其兄沾一レ雨而流涕之、歌曰、椰莾辭呂能(ヤマシロノ)、【莵莵紀】能瀰椰珥(ツヅキノミヤニ)、茂能莾烏輸(モノマヲス)、和餓齊烏瀰例麼(ワガセヲミレバ)、那瀰多愚摩辭茂(ナミダグマシモ)、〈◯又見二古事記下一〉
〔日本書紀〕
〈十七繼體〉
p.0224 五年十月、遷二都山背箇城(ツヽキニ)一、
〔山州名跡志〕
〈一八郡封境〉
p.0224 綴喜郡〈始作二筒城一〉 當郡ハ寅卯ヨリ坤ニ亘リ、其中東西ニ大和大路アリ、其所ニテイハヾ、北ハ長池村ヲ限リ、南ハ玉水ノ南、澀河トイフ河ヲ爲レ堺、其南ハ相樂郡ナリ、寅卯ニ宇治田原(ウチダハラ)アリ、但田原ハ總名ニテ、中ニ多村アリ、載二卷中一、艮ヨリ卯ニ至テ近江ト爲レ隣、委二卷中一、坤ハ八幡ヲ限ル、八幡ノ南ニ洞ガ峠アリ、此所ニ河内ノ堺アリ、男山ヲ西ニ巡テ、南ニ金橋(コガ子バシ)アリ、是河内ノ堺也、其大路ハ津國大坂路ナリ、八幡ノ北ハ淀大橋ノ南ノ爪ヲ限リ、橋ヨリ巽ニ至テ大路アリ、大和歌姫ニ至ル、其中間ニ多郷アリ、橋ノ南ニ美豆アリ、ソレヨリ川口、奈良、南上津屋、岩田、野尻、大住、岡村、山王、薪、天神ノ森是也、其南ハ相樂郡下狛ニ至ル、其ヨリ又歌姫ニ至ル、中間ノ村里載二卷中一、
〔續日本後紀〕
〈十五仁明〉
p.0224 承和十二年五月乙卯、山城國言、綴喜相樂兩郡境内、始レ自二去三月上旬一、蝱虫殊多、身赤首黒、大如二密蜂一、好咬二牛馬一、咬處即腫、相樂郡牛斃盡無レ餘、綴喜郡病死相尋、郡司百姓求二之龜筮一、就二于佛神一隨レ分祓攘、曾無二止息一、移染之氣、于レ今比行者、令レト二其由一、綴喜郡樺井社及道路鬼更爲レ祟、即遣三使祈二謝一之、兼賜下治二牛疫一方并祭料物上、
〔三代實録〕
〈四十二陽成〉
p.0224 元慶六年十二月廿一日己未、勅山城國〈◯中略〉綴喜郡田原野、天長年中、既禁レ從レ禽、今重制斷、
〔伊呂波字類抄〕
〈也國郡〉
p.0224 山城國 管八郡〈◯中略〉 相樂〈サカラカ〉
〔古事記〕
〈中垂仁〉
p.0225 又隨二其后之白一喚二上美知能宇斯王之女等、比婆須比賣命、次弟比賣命、次歌凝比賣命、次圓野比賣命并四柱一、然留二比婆須比賣命、弟比賣命二柱一、而其弟王二柱者、因二甚凶醜一、返二送本土一、於レ是圓野比賣慚言、同兄弟之中、以二姿醜一被レ還之、事聞二於隣里一、是甚慚、而到二山代國之相樂(サガラカ)一時、取二懸樹枝一而欲レ死、故號二其地一謂二懸木(サカリキ)一、今云二相樂(サカラカ)一、
〔古事記傳〕
〈二十五〉
p.0225 和名抄に山城國相樂郡〈佐加良加（中略）書紀の訓にサガラとも、サハラともあるは、又訛れるなり、今もさがらと云り、又相樂村と云もあり、其は今もさがらかと云とかや、〉
〔山城志〕
〈十〉
p.0225 相樂郡〈東至二伊州阿拜郡界一、西至二河州交野郡界一、南至二和州添上下二郡界一、北至二綴喜及江州甲賀郡界一、〉
〔山州名跡志〕
〈一八郡封境〉
p.0225 相樂(サガラ)郡〈俗サガナカ、又サウラクトイフ非ナリ、〉 當郡ハ巽ヨリ申酉ニ亘リ、申ニ大和大路アリ其北ハ上ニイフガ如シ、南ハ木津ノ南一ノ坂ヲ限ル、其南ハ南都ノ領ナリ、坤ハ大和西ノ京口ニシテ、歌姫爲レ隣、巽ハ笠置ニ至ル、其東南ハ伊賀ヲ爲レ隣、彼國上野ニ至ル、東ハ近江ト爲レ隣、皆隔レ山、艮ニ鷲峯山(シユブゼン)アリ、此山ノ東南ニ至テ、湯舟、木屋(コヤ)、野殿等ノ村アリ、其所四面山嶽ニシテ、中ニ河アツテ、海修山(カイジユセン)ノ東南ニシテ木津川ニ出、
〔日本書紀〕
〈十九欽明〉
p.0225 三十一年四月乙酉、越人江渟臣裙代、詣レ京奏曰、高麗使人、辛二苦風浪一、迷失二浦津一、任レ水漂流、忽到二著岸一、〈◯中略〉詔曰、〈◯中略〉有司宜下於二山城國相樂郡一、起レ館淨治、厚相資養上、
〔續日本紀〕
〈二文武〉
p.0225 大寶元年正月丁酉、山代國相樂郡令追廣肆掃守宿禰阿賀流爲二小位一、
〔續日本紀〕
〈十三聖武〉
p.0225 天平十二年五月乙未、天皇幸二右大臣相樂別業一、宴飮酣暢、授二大臣男无位奈良麻呂從五位下一、
〔江家次第〕
〈十二神事〉
p.0225 齋王歸京次第 五日、〈◯中略〉過二大安寺邊并奈良坂一、至二山城相樂頓宮一、在二木津川南一、〈供給〉
〔倭名類聚抄〕
〈六國郡〉
p.0225 山城國 乙訓郡 山崎〈夜末佐岐〉鞆岡〈度毛乎賀〉長井 大江〈於保江〉物集〈毛豆女〉訓世〈郡勢〉榎本
p.0226 羽束〈波豆賀之〉石作〈以之都久利〉 葛野郡 橋頭 大岡〈於保乎加〉山田 川邊〈加波乃倍〉葛野〈加度乃〉川島〈加八之末〉上林〈加無都波也之〉櫟原 高田 下林〈之毛都波也之〉緜代 田邑〈多無良〉 愛宕郡 蓼倉〈多天久良〉栗野〈久留須乃〉上粟田〈阿波多〉大野 下粟田 小野〈乎乃〉 錦部〈爾之古利〉八坂〈也佐加〉鳥戸〈止利倍〉 愛宕〈於多木〉出雲〈以都毛在二上下一〉賀茂 紀伊郡 岡田〈乎加多〉大里 紀伊 鳥羽〈度波〉石原 拜志〈波以之〉深草〈不加久佐〉石井 宇治郡 宇治 大國 賀美 岡屋〈乎加乃也〉餘戸 小野〈乎乃〉山科〈也末之奈〉小栗〈乎久留須〉 久世郡 竹淵〈多加不知〉奈美 那羅 水主 那紀 宇治 殖栗 栗隈〈久里久末〉富野〈止無乃〉 拜志 久世 羽栗 綴喜郡 山本 多河〈◯高山寺本、河字作レ可、〉田原〈多八良〉中村 志磨 綴喜〈豆々木〉大住 有智 甲作 餘戸 相樂郡 相樂〈佐加良加〉水泉〈以豆美〉賀茂 大狛 蟹幡〈加無波多〉祝園〈波布曾乃〉下狛〈之毛都古末〉
〔山州名跡志〕
〈十六〉
p.0226 於レ郷爲二其郡名一、所俗是云二親里(オヤザト)一、列レ左、 愛宕 在二同郡一 宇治 在二同郡一 久世 在二同郡一 相樂 在二同郡一 乙訓 在二同郡一 綴喜 在二同郡一 葛野 在二同郡一 紀伊 在二同郡一
〔山城志〕
〈三乙訓郡〉
p.0226 郷名 山埼 鞆岡〈方廢村存〉長井〈廢〉大江〈已廢有二大江山一〉物集 訓世〈日本後紀作二國背一、倶廢村存、〉榎ノ本〈已廢存二坂本村一〉羽束〈已廢有二神社一〉石作〈方廢存二灰方村一〉
〔大安寺伽藍縁起并流記資財帳〕
p.0226 合處々庄拾陸處 山背國三處〈（中略）乙訓郡一處在二山前郷(○○○)一◯中略〉 天平十九年二月十一日〈◯署名略〉
〔爲尹卿千首〕
〈冬〉
p.0226 河時雨
p.0227 山さきやむかひの雲の一むらは淀の河瀬に時雨來にけり
〔山州名跡志〕
〈十乙訓郡〉
p.0227 友岡(○○)〈所名〉古ニハ作レ鞆、在二長丘南四町計、山崎街道開田町二町計一、此所和歌詠レ笹、
〔枕草子〕
〈十〉
p.0227 をかは ともをかは、さヽのおひたるがおかしき也、
〔神樂歌〕
p.0227 採物歌 篠 此さヽは、いづこのさヽぞ、とねりらが、こしにさがれる、ともをかのさヽ、ともをかのさヽ、〈◯末歌略〉
〔日本後紀〕
〈二十四嵯峨〉
p.0227 弘仁六年六月癸亥、山城國乙訓郡物集(○○)國背兩郷、雷風壞二百姓廬舍、人或被レ震死、
〔山槐記〕
p.0227 治承三年四月廿七日乙卯、向二善峯別所一、〈◯中略〉於二物集繩手邊一出車女房各乘レ輿超二中山一、
〔太平記〕
〈八〉
p.0227 禁裏仙洞御修法事附山崎合戰事 桂河ヲ渡リ、河島ノ南ヲ經テ、物集女(○○○)大原野ノ前ヨリゾ寄タリケル、
〔山城名勝志〕
〈六乙訓郡〉
p.0227 訓世郷(○○○)〈和名抄訓世郷在二乙訓郡一、按、今上訓世、下訓世有二二村一、〉
〔萬葉集〕
〈十一古今相聞往來歌〉
p.0227 旋頭歌 開木代(ヤマシロノ)、來背若子(クゼノワクコガ)、欲云(ホシトイフ)、余相狹丸(ワヲアフサワニ)、吾欲云(ワヲホシトイフ)、開木代來背(ヤマシロノクゼ)、 右柿本朝臣人麻呂之歌集出
〔萬葉集略解〕
〈十一〉
p.0227 くぜは、乙訓郡來背の郷なり、
〔東寺百合古文書〕
〈一〉
p.0227 讓與 處分私領采女領畠地事 合畠壹段者 在二下久世郷内牛飼里參拾壹坪一〈◯中略〉 文治元年十一月十五日 瀧口藤原國成判
〔山城名勝志〕
〈六乙訓郡〉
p.0227 羽束郷(○○○)〈和名抄云乙訓郡 古河村北有二羽束師森一 按羽束師郷、今古河村邊歟、自二久我村一、半里許南也、〉
〔後撰和歌集〕
〈十戀〉
p.0227 題しらず よみ人しらず
p.0228 わすられておもふなげきの茂るをや身をはづかしの杜といふらむ
〔方丈記〕
p.0228 若日うらヽかなれば、嶺によぢ上りて遙に故郷の空を望み、木幡山、伏見の里、鳥羽、羽束師をみる、
〔山城名勝志〕
〈六乙訓郡〉
p.0228 石作郷(○○○)〈和名抄云石作郷乙訓郡、按石作郷、灰方、灰谷、出灰(イヅルハ)、此邊歟、一休年譜曰、讓羽(ユヅルハ)爲レ名、朝貢出二石灰一地、讓羽ユツルハ、出灰イツルハ、和訓相近云々、今灰方村、出灰雖レ隔レ地、氏神同社、同時祭レ之、出灰有二灰方村領山一、〉
〔類聚國史〕
〈三十二帝王〉
p.0228 延暦十一年閏十一月己亥、幸二高橋津一、便遊二獵于石作丘一、
〔延喜式〕
〈二十一諸陵〉
p.0228 石作陵〈贈皇后高志内親王、在二山城國乙訓郡一、〉
〔延喜式〕
〈二十一玄蕃〉
p.0228 凡近都諸寺、東拜志以北、西石作以北、停レ預二講師一僧綱檢察、
〔空穗物語〕
〈樓の上下一〉
p.0228 かくていしつくりてらのやくしほとけげむじ給とて、おほくの人まうで給、
〔山城志〕
〈四葛野郡〉
p.0228 郷名 橋頭、〈廢〉大岡、〈方廢岡村存〉山田、〈方廢村存〉川邊、〈廢〉葛野、〈已廢存二郡上野二村一〉川島、〈方廢村存〉上林、〈已廢存二平野及龍安寺一〉櫟原、〈已廢、上山田村北有二櫟谷社一、〉高田、〈方廢村存〉下林、〈方廢村存〉緜代、〈已廢木辻村東有二地名馬代一〉田邑、〈已廢有二田邑陵一〉
〔續日本後紀〕
〈三仁明〉
p.0228 承和元年正月庚午、山城國葛野郡上林郷(○○○)地方一町賜二伴宿禰等一、爲下祭二氏神一處上、
〔三代實録〕
〈二十二清和〉
p.0228 貞觀十四年十二月十五日辛亥、山城國葛野郡上林郷地一町充二平野神社一、〈◯神社二字原脱、據二日本紀略一補、〉
〔三代實録〕
〈三十五陽成〉
p.0228 元慶三年四月七日丙寅、庶人伴善男沒官墾田三町二段五十歩、在二山城國葛野郡上林郷一、永施二入安祥寺一、
〔三代實録〕
〈四十陽成〉
p.0228 元慶五年八月廿三日己亥、勅以二山城國葛野郡二條大山田地三十六町一爲二大覺寺地一、其四履、東至二朝原山一、西至二觀空寺并栖霞館東路一、北至二山嶺一、自餘山野入二嵯峨院四至一者、皆爲二公地一、若有下稱二空閑一申請者上、一切不レ得二勅許一、但樵蘇之輩不レ在二制限一、 九月廿七日壬申、山城國葛野郡櫟原郷(○○○)野地
p.0229 三町賜二興福寺傳燈大法師位修審一、〈◯下略〉
〔文徳實録〕
〈十〉
p.0229 天安二年八月庚申、大納言安倍朝臣安仁、率二陰陽權助滋岳朝臣川人、助笠朝臣名高等一、至二山城國葛野郡田邑郷(○○○)眞原岳一、點二定山陵一、
〔三代實録〕
〈四十八光孝〉
p.0229 仁和元年八月十三日乙丑、勅以二山城國葛野郡田邑郷神應寺一、預二於定額一、〈◯下略〉
〔日本紀略〕
〈五冷泉〉
p.0229 康保四年六月四日辛酉、今夕奉レ土二葬先皇〈◯村上〉於山城國葛野郡田邑郷北中尾一、
〔山城志〕
〈五愛宕郡〉
p.0229 郷名 蓼倉、〈已廢、存二下賀茂田中二村一、〉栗野(クルスノ)、〈已廢、野存、〉上粟田、〈廢〉大野、〈已廢、存二大宮村一、〉下粟田、〈方廢、粟田口村存、〉小野、〈已廢、存二高野村一、〉錦部(ニシコリ)、〈已廢、存二西賀茂一、見二類聚三代格一、〉八坂、〈方廢町存〉鳥戸、〈已廢、山存、〉愛宕、〈已廢、寺存、〉出雲〈已廢、町存、〉賀茂、
〔小右記〕
p.0229 寛仁二年十一月廿五日癸未、定文如レ此、 可レ奉レ寄二賀茂上下社郷一之事〈◯中略〉 〈上社〉賀茂郷(○○○) 小野郷(○○○) 大野郷(○○○) 錦部郷(○○○) 〈下社〉栗野郷(○○○) 蓼倉郷(○○○) 上栗野郷(○○○○) 出雲郷(○○○)
〔山城名勝志〕
〈十一愛宕郡〉
p.0229 蓼倉郷〈（中略）下鴨東北地、高野川西也、◯中略〉 古文書云、〈紫竹〉常徳寺分之事、〈在所者たて藏の郷田中の里〉 永享年中寺社文書云、〈御判〉山城國蓼倉庄事、可レ被レ渡二付景勝季長季久代一之由候也、仍執達如レ件、 永享四年十二月廿四日 爲種 主護代
〔山州名跡志〕
〈五愛宕郡〉
p.0229 糺〈所名〉下賀茂〈トモ〉 在二今出河口東北二町許一 糺或作二只洲(タヾス)一、又作二河合(タヾス)一、 糺トハ地ニ在二河合社(タヾスノヤシロ)一故ナリ、下鴨トハ有二御祖社一故也、〈◯中略〉下トハ對レ上云フ、本名蓼倉也、源順載二和名集一、蓼倉里是也、總ジテ彼書ニ所レ載ノ村里ノ號ハ、其本郷ノ名ナリ、今民間ニ云處ノ親里(オヤザト)ナリ、彼書ノ里ノ名今猶用ルモアリ、文字ヲ改ムルモアリ、多クハ改ム、此
p.0230 所古ノ蓼倉ナリト云コト、其證載二風土記一、〈◯中略〉蓼倉里三身社、〈◯下略〉
〔三代實録〕
〈三十七陽成〉
p.0230 元慶四年二月五日己丑、山城國愛宕郡下粟田郷(○○○○)百姓口分田四町二段九十五歩奉レ充二中宮職一、以二彼職新造立之地犬牙相接一也、其代給二於他郡一、
〔山州名跡志〕
〈二愛宕郡〉
p.0230 八坂(○○)〈所名〉蓋郷名也、延喜式ニ出、其方領凡祇園ヨリ三年坂ニ至ル歟、八坂ト稱スルハ、方地ニ八ノ坂アルニヨル、所レ謂祇園坂、長樂寺坂、下河原坂、法觀寺坂、靈山坂、三年坂、山井坂清水坂是ナリ云々、
〔續日本後紀〕
〈六仁明〉
p.0230 承和四年二月庚申、從五位下菅野朝臣永岑言、亡父參議從三位眞道朝臣奉二爲桓武天皇一所二建立一道場院一區在二山城國愛宕郡八坂郷一、雖三其疆界接二八坂寺一、而其形勢猶爲二別院一、由レ是道俗號二八坂東院一、〈◯下略〉
〔三代實録〕
〈四十六光孝〉
p.0230 元慶八年十二月廿五日辛亥、勅以二山城國愛宕郡鳥戸郷(○○○)地四町一爲二贈正一位藤原朝臣總繼墓地一、以二同郡八坂郷地十町一爲二贈正一位藤原朝臣數子墓一、
〔源平盛衰記〕
〈二〉
p.0230 清水寺縁起并上皇臨二幸六波羅一事 此清水寺ト申ハ、昔大和國子島寺ニ沙門アリ、其名ヲ賢心ト云、淀河ヲ渡給ケルニ、水ノ中ニ金色一筋ノ流アリ、是直事ニ非ズトテ、流ニ隨テ源ヲ尋ヌ、山城國愛宕郡ニ八坂郷、東山ノ邊リ清水ノ瀧ノ下ニ至レリ、〈◯下略〉
〔三代實録〕
〈五十光孝〉
p.0230 仁和三年五月十六日己丑、是日、勅以二山城國愛宕郡鳥部郷(○○○)榛原村地五町一賜二施藥院一、其四至、東限二徳仙寺一、西限二谷并公田一、南限二内藏寮支子園并谷一、北限二山陵并公田一、施藥院使等奏、院所領之山元在二彼村一、即是藤原氏之葬地也、依二元慶八年十二月十六日詔一、被レ占二入中尾山陵之内一、由レ是氏人送葬之事、既失二其便一、請賜二此地一、依レ舊行レ事、許之、
〔山城名勝志〕
〈十二愛宕郡〉
p.0230 出雲郷(○○○)〈和名抄愛宕郡、上下出雲寺下鴨邊總而出雲郷也、〉
〔東大寺正倉院文書〕
〈十一〉
p.0231 山背國愛宕郡雲上里計帳 山背國愛宕郡出雲郷雲上里神龜三年史生從八位下間人宿禰男君(繼目裏書) ◯按ズルニ、此書卷十二ニ、愛宕郡雲下里計帳ヲ載セタリ
〔山城名勝志〕
〈十一愛宕郡〉
p.0231 賀茂郷〈和名抄云愛宕郡〉 古文書云、賀茂社境内六郷、河上郷、大宮郷、小山郷、中村郷、岡本郷、散在、〈櫟原野、二ノ瀬幡枝在レ之、〉小野郷南北散在之事、自二往古一社家當二知行一之處、今度小山郷有二違亂之族一者、以外次第也云々、如二先々一嚴密可二沙汰一由、所二仰出一候状如レ件、 享祿二十月廿一日 堯連 長俊 當所名主沙汰人中
〔山城志〕
〈六紀伊郡〉
p.0231 郷名 岡田〈已廢、存二東福寺門前町一、〉大里、〈已廢存二西莊村一〉紀伊〈廢〉鳥羽 石原、〈方廢村存〉拜志、〈廢、愛宕郡鳥部野有二拜志墓一、〉深草、 石井〈已廢存二伏見一〉
〔山城名勝志〕
〈十六紀伊郡〉
p.0231 鳥羽郷(○○○)〈東限二竹田一、南限二横大路一、西限二桂川末一、北限二四塚一、此間有二二村一、隔二小枝橋一、北云二上鳥羽一、南云二下鳥羽一、〉
〔山州名跡志〕
〈十一紀伊郡〉
p.0231 鳥羽〈所名〉 鳥羽在二上下一 上鳥羽ハ在二四塚南一 上鳥羽民居北端ヲ云二出在家一、此ノ所自二四塚一八町ナリ、
〔扶桑略記〕
〈三十白河〉
p.0231 應徳三年十月、公家近來、九條以南鳥羽山庄、新建二後院一、凡卜二百餘町一焉、近習卿相侍臣地下雜人等、各賜二家地一、營二造、舍屋一、宛如二都遷一、讃岐守高階泰仲、依作二御所一、已蒙二重任宣旨一、備前守藤原季綱、同以重任、獻二山庄一賞也、〈◯下略〉
〔百練抄〕
〈五堀河〉
p.0231 寛治元年二月五日、上皇〈◯白河〉遷二御鳥羽離宮一、營作甫就之故也、六府供奉、於レ陣有二召仰一、件地本是備前守季綱朝臣領也、去年進二上之一、讃岐守泰仲造二進舍屋一、
〔續後撰和歌集〕
〈七秋〉
p.0231 名所の歌めしける次でに 後鳥羽院御製
p.0232 雲ゐとぶ鴈のは風に月さえて鳥羽田の里に衣うつ也
〔山城名勝志〕
〈十六紀伊郡〉
p.0232 石原郷(○○○)〈今吉祥院村、南島村北有二石原村一、桂川東也、◯中略〉 佐比〈◯中略〉 三鈷寺雜々文書云、〈◯中略〉紀伊郡司解、權大納言殿御領、石原田畠、合田畠六拾伍町七段佰八十歩〈此内在常荒川原〉石原郷十條下石原西佐里 十一條下佐比里 十二條上左比里 長元六年三月十日 刀彌左督長調仕 郡司上勝
〔小馬命婦集〕
p.0232 いしはらにすむをとこ、久しくきこえねばとて いとヾしくもえこそわたれいしはらの中よりわれて出づる思ひは
〔菟藝泥封〕
〈四上〉
p.0232 深草(○○) 東は小栗栖、西は竹田、北は稻荷、南は伏見の邊も皆深草のうちなりとかや、山口野有、里有、
〔山州名跡志〕
〈十二紀伊郡〉
p.0232 深草〈所名〉 在二稻荷南一 但今云フ所ハ於二深草一ハ北界也、其中央ハ此ヨリ六七町南ニ至ル、凡東ハ谷口山ヲ限リ、西ハ竹田大路ヲ限リ、南ハ伏見領墨染ノ南四五町ヲ限ル也、深草ハ郷總名ニシテ、中ニ別名アリ、
〔日本紀略〕
〈桓武〉
p.0232 延暦十一年八月丙戌、禁レ葬二埋山城國深草山西面一、縁レ近二京城一也、
〔古今和歌集〕
〈十六哀傷〉
p.0232 ほりかはのおほさおほいまうちぎみ、〈◯藤原基經〉身まかりにける時に、ふか草の山におさめてけるのちによめる、 かむつけのみねを 深草の野邊の櫻し心あらばことしばかりはすみぞめにさけ
〔三代實録〕
〈六清和〉
p.0232 貞觀四年十月七日壬寅、正三位行中納言兼民部卿皇太后宮大夫伴宿禰善男奏言、〈◯中略〉請捨二山城國紀伊郡深草郷別墅一爲二道場一、賜二額報恩一、然則名之與レ實自將二相副一、上答二聖主覆載之恩一、
p.0233 下酬二法界領復之徳一、詔許之、
〔東寺百合古文書〕
〈五〉
p.0233 沽却 私領田事 合壹段者 在二山城國石井郷(○○○)鳥羽手里一貳拾漆坪東繩本參段内壹段也〈◯中略〉 永仁五年三月十三日 沽主初女〈花押◯請人三名略〉
〔山城志〕
〈七宇治郡〉
p.0233 郷名 大國、〈廢〉賀美、〈方廢上野村存、〉岡屋、餘戸、〈方廢、有二余古木邑一、今入二江州滋賀郡一、〉小野、〈方廢村存〉山科、小栗(ヲクルス)、〈方廢村存〉宇治、
〔古事記〕
〈中垂仁〉
p.0233 此天皇〈◯中略〉又娶二山代大國(○○)之淵之女、苅羽田刀辨一、〈◯下略〉
〔古事記傳〕
〈二十四〉
p.0233 山代大國之淵、和名抄に、山城國宇治郡大國郷あり、此地なるべし、淵は人名なり、
〔東大寺正倉院文書〕
〈東南院三櫃四十一〉
p.0233 謹解 申家地賣買券文進事 合地捌段屋貳間〈有二宇治郡加美郷(○○○)堤田村一〉直絁拾匹税布拾端 地主加美郷戸主宇治宿禰大國〈◯中略〉 天平廿年八月廿六日 賣地人宇治宿禰大國〈◯下略〉
〔山城名勝志〕
〈十七宇治郡〉
p.0233 岡屋郷(○○○)〈和名抄云宇治郡、木幡西、宇治川東有二岡屋村一、〉
〔方丈記〕
p.0233 岡の屋に行かふ船をながめて、滿沙彌が風情をぬすみ、〈◯下略〉
〔善隣國寶記〕
〈上〉
p.0233 后宇多院建治元年〈乙亥〉至元十二年 日本古記曰、正月十八日、蒙古人二人、高麗人一人、明州人一人、已上四人自二鎭西一送レ之、皆不レ入二洛中一、自二山崎一經二岡屋醍醐一赴二關東一、
〔承久軍物語〕
〈五〉
p.0233 承久三年六月十四日、はう〴〵へむけられけるくわんぐん、はいぼくせしかば、木ばた、ふしみ、をかのや、くわんじゆ寺へんにて、東國ぜいにをつヽめられ、くみおとされ、うた
p.0234 るヽもの數をしらず、
〔山城名勝志〕
〈十七宇治郡〉
p.0234 餘戸郷(○○○)〈和名抄云、宇治郡、按今四宮村東有二余古木村一、是餘戸郷遺名乎、〉 安祥寺境内古文書云、山城國宇治郡餘戸郷石雲里云々、
〔山城名勝志〕
〈十七宇治郡〉
p.0234 小野郷(○○○)〈和名抄云、宇治郡、今小野村在二醍醐村北、勸修寺東一、〉
〔三代實録〕
〈三十四陽成〉
p.0234 元慶二年十二月廿五日丙戌、山城國愛宕郡小野郷人勘解由次官從五位下小野朝臣當岑改二本居一貫二隷左京職一、
〔延喜式〕
〈三十四木工〉
p.0234 凡自二小野、栗栖野兩瓦屋一、至二宮中一、車一兩賃卌文、
〔菟藝泥封〕
〈四下〉
p.0234 山科(○○)〈宇治郡〉木幡より北、藤尾御廟野、花山などすべて十八郷の總名とぞ、然ども山科といふ所四宮河の邊に在、
〔山城名勝志〕
〈十七宇治郡〉
p.0234 山科郷〈和名抄云宇治郡、東限二逢坂一、南限二醍醐一、西限二松坂一、北限レ山、〉
〔山州名跡志〕
〈十四宇治郡〉
p.0234 山科郷〈或作二山階一〉 在二日岡東一、 如今郷内有二多村一、所レ謂日岡、陵、四宮、安祥寺、竹鼻、音羽、小山、大宅、野村、花山、西ノ山等ナリ、
〔續日本紀〕
〈十四聖武〉
p.0234 天平十三年九月丁丑、行二幸宇治及山科一、
〔萬葉集〕
〈九雜歌〉
p.0234 宇合卿歌三首〈◯二首略〉 山品之(ヤマシナノ)、石田乃小野之(イハタノヲヌノ)、母蘇原(ハヽソバラ)、見乍哉公之(ミツヽヤキミガ)、山道越良武(ヤマヂコユラム)、
〔今昔物語〕
〈二十七〉
p.0234 在原業平中將女被レ噉レ鬼語第七 今昔、右近ノ中將在原ノ業平ト云フ人有ケリ、〈◯中略〉或ル人ノ娘ノ形チ有様世ニ不レ知ズ微妙シト聞ケルヲ、心ヲ盡シテ〈◯中略〉密ニ盜ミ出シテケリ、其レニ忽ニ可二將隱一キ所ノ无カリケレバ思ヒ繚テ北山科(○○○)ノ邊ニ、舊キ山庄ノ荒テ人モ不住ヌガ有ケルニ、〈◯下略〉
〔後拾遺和歌集〕
〈十九雜〉
p.0234 石山にまいりけるみちに、山しなといふ所にてやすみ侍けるに、〈◯下略〉
〔今昔物語〕
〈三十一〉
p.0235 東山科藤尾寺尼奉レ遷二八幡新宮一語第一 今昔、天暦ノ御代ニ、粟田山ノ東山科ノ郷ノ北ノ方ニ寺有リ、始テ藤尾寺ト云フ、
〔山城名勝志〕
〈十七宇治郡〉
p.0235 白河寺〈◯中略〉 山科家雜掌言上文書云、山科家雜掌重支謹言上、右子細者、山科郷之内、之事、爲二當家名字之地一、譜代知行之段勿論也、就レ中當郷之内、諸散在名田等、號二後白河院御影堂領一事、彼在所仁院御所被レ置レ立、御自筆仁御影被レ遺之條、則爲二御修理供料一可レ致二知行一之段、觀應三年八月三日、同廿三日、等持院殿様御判兩通、并弘安、文和、其外到二應仁歳中仁一、數通被レ成二下綸旨一云々、然於勝定院殿様御代、依二三寶院殿御押領一、御影堂御修理已下之事者不レ及レ申、既勅筆之御影及二破滅一之間、法住寺殿江預置申、先爲二當家一、毎月供料致二下行一者也、 文龜二年十月日
〔親長卿記〕
p.0235 文明十三年十一月七日、先年山科申二請院宣一、〈名字地之内大宅郷(○○○)事〉
〔山城名勝志〕
〈十七宇治郡〉
p.0235 小栗郷(○○○)〈和名抄云、宇治郡、今勸修寺南、醍醐西、有二南北二村一、〉 施凉寺〈◯中略〉 古文書云、〈報恩院僧正雜掌申〉右院家領、小栗栖之内、號二施凉寺分一、田地之事、既當院爲二知行一、及二七十年一無二相違一之地也、〈文明十八年九月日〉
〔山城志〕
〈八久世郡〉
p.0235 郷名 竹淵(タカフチ)〈已廢、今綴喜郡有二竹淵神祠一、〉奈美〈廢〉那羅、 水主(ミヌシ)、〈倶廢、今綴喜郡有二奈良村、水主村一、〉那紀〈已廢存二伊勢田村一〉宇治、殖栗(ヱクリ)〈廢〉栗隈、〈方廢、山杜存、〉富野(トンノ)〈方廢、村存、〉拜志〈方廢、林村存、〉久世〈方廢、村存、〉羽栗〈廢〉
〔山城名勝志〕
〈十八久世郡〉
p.0235 那羅郷(○○○)〈和名抄云久世郡、男山東、木津川西端、有二上下二村一、〉
〔延喜式〕
〈三十九内膳〉
p.0235 園地卅九町五段二百歩〈京北園十八町三段、奈良(○○)園六町八段三百廿歩、山科園九段、奈美(○○)園五町五段二百卌歩、羽束志園四町九段、泉園一町、乎城園二町〉
〔類聚雜要抄〕
〈一〉
p.0235 用途料〈◯中略〉
p.0236 奈良御園〈苽、茄子、蘿蔔、◯中略〉 奈美〈同前〉
〔三代實録〕
〈四十二陽成〉
p.0236 元慶六年十二月廿一日己未、勅〈◯中略〉久世郡栗前野美豆野、奈良野(○○○)、〈◯中略〉天長年中既禁レ縱レ禽、今重制斷、山川之利、藪澤之生與レ民共レ之、莫レ妨二農業一、但至二于北野一、不レ在二此限一也、
〔山城名勝志〕
〈十八久世郡〉
p.0236 那羅郷〈◯中略〉 古文書云、〈賣渡進作手畠新立券文事〉合壹段者〈在二奈良郷一〉右件畠、元者中原氏二女之相傳私領也、〈◯中略〉但領家者賀茂御領、地子物芋伍升、追レ年無二懈怠一可二辨進一、 文永六年六月十七日 〈賣人中原氏女嫡男紀〉
〔山城名勝志〕
〈十八久世郡〉
p.0236 水主郷(○○○)〈和名抄云久世郡、土人呼二水主村一、今入二綴喜郡一云々、在二下津屋東南川端一、〉
〔三代實録〕
〈十三清和〉
p.0236 貞觀八年十一月廿日辛酉、進二山城國從一位勳二等松尾神階一加二正一位一、授二從四位下水主神從四位上一、
〔山城名勝志〕
〈十八久世郡〉
p.0236 那紀郷(○○○)〈和名抄云、久世郡、〉
〔山城名勝志〕
〈十八久世郡〉
p.0236 栗隈郷(○○○)〈和名抄云、久世郡〉
〔日本書紀〕
〈十一仁徳〉
p.0236 十二年十月、堀二大溝於山背栗隈縣一以潤レ田、是以其百姓毎豐年也、
〔日本書紀〕
〈二十二推古〉
p.0236 十五年、是歳冬、山背國堀二大溝於栗隈一、
〔大和物語〕
〈上〉
p.0236 おなじ女のもとにさらにをともせで、きじをなんおこせたまへりける返事に、 くりこまのやまにあさたつきじよりもかりにはあはじとおもひしものを
〔山城名勝志〕
〈十八久世郡〉
p.0236 富野郷(○○○)〈和名抄云久世郡、長池町西有二富野村一、土人云、長池町元自二富野村一出在家也、〉 古文書云、山城國富野郷内南村、於二當村之散在一者、舍兄備前守政清、〈于レ時遁世號二宗信一〉避状炳焉之上、早彼一村同散在田畠、彌可レ被二領知一、 文明十八年十一月廿三日 散位加賀守
p.0237 小笠原播磨守殿〈元長〉
〔山城名勝志〕
〈十八久世郡〉
p.0237 久世郷(○○○)〈和名抄云久世郡、今久世村在二長池町北大和路一、〉 御教書案云、山城國采女司領、久世村、〈文明十四年十二月廿九日〉 文書云、華嚴禪院事、〈◯中略〉城州久世村依レ爲二便宜之地一寄二附之一、 子曇〈判◯中略〉 寺田郷(○○○)〈今久世村南有二寺田村一、長池町乾也、〉
〔公卿補任〕
〈後醍醐〉
p.0237 元徳三年〈◯元弘元年〉 大納言正二位藤師賢〈九廿九出家、〈法名素貞〉山城國寺田郷地頭代野邊若熊丸召二捕之一進二武家云々、〉
〔山城名勝志〕
〈十八久世郡〉
p.0237 安養院〈在二于平川郷(○○○)一云々、今平川村在二久世郡大久保村南久世村北一、〉 松井郷成願寺鐘銘云、沙彌佛阿、法阿、弘長二年寄二平河郷安養院鐘樓修理料畠一事、 四至〈南北繩、西繩、乘際目、〉右山城國久世郡馬耳田里一坪内 件畠者十念相傳知行、無二相違一者也、件畠所レ奉二寄進一眞實也、 文保三年己未卯月八日 當寺鐘勸進聖 沙彌十念〈敬白〉
〔山城名勝志〕
〈十八久世郡〉
p.0237 田井郷(○○○)〈下津屋乾、木津川東端有二田井村一、〉 古文書云、平野社領大井(タヰ)郷内有見里鯰里事、下津屋越前守親信、去應仁元年雖レ掠二給奉書一、既被レ遂二御糺明一被レ成二御判一、 明應三年六月三日 前筑後守 前信濃守
〔山城名勝志〕
〈十八久世郡〉
p.0237 意足軒〈在二橋本郷(○○○)一〉 默雲稿 前妙光等仲禪師、鷲峯法燈的裔、自南和尚賢孫也、現居二城南竹林寺一、閑門護竹鬱然成レ林、南風一拂則玉音琅然、如レ侍二先人之側一、又相二攸於八幡橋本郷(○○○)一、築レ軒種レ竹、扁曰二意足一、就レ余需二一詞一、 天隱 數竿也足歳寒心、況亦森々蒼雪深、知爲二子孫一添二境地一、南風養レ筍補二疎林一、 ◯按ズルニ、葛野郡ノ古郷ニ橋頭(ハシモト)アリト雖モ、玆ニ謂ユル橋本郷ハ、久世郡中ニ在リ、男山ノ西
p.0238 麓ニ位シ、淀川ニ面ス、古山埼橋在リシヲ以テ此名アリ、
〔山城志〕
〈九綴喜郡〉
p.0238 郷名 山本 多河、〈方廢村存〉田原 中村、〈方廢村存、入二久世郡一、〉志磨、〈已廢存二奈島村一、〉綴喜、〈今呼二普賢寺莊一、〉大住 有智〈方廢村存〉甲作 餘戸〈倶廢〉
〔山城名勝志〕
〈十九綴喜郡〉
p.0238 山本郷(○○○)〈和名抄云、綴喜郡、在二飯岡村南一、〉
〔三大實録〕
〈十八清和〉
p.0238 貞觀十二年七月廿九日己卯、山城國言、綴喜郡山本郷、山頽裂陷、長二十二丈、廣五丈一尺、深八尺、底廣四丈八尺、相去七丈、小山堆起、草木無二變動一、時人疑陷地入二地中一、更堆起成レ山歟、
〔山城名勝志〕
〈十九綴喜郡〉
p.0238 田原郷(○○○)〈和名抄云綴喜郡、自二宇治一ノ坂一田原郷口ヘ二里八町坂路也、從二郷ノ口一長池ヘ一里半、鷲峯山ヘ一里半、田原郷ハ入口狹ク、谷中廣シ、今十五村有、誠ニ隱レ里ト云ツベシ、類少キ奇境也、此郷ノ内湯屋村ニ三ノ谷有、湯屋ノ谷、中ノ各、鹽ノ谷ト云、鹽ノ谷ノ中ニ古キ蛤貝多シ、加様ノ所外國ニモ海邊遠キ所ニ有トカヤ、古ヘトテモ海ニテ可レ有所ナラズ、開闢以前ヨリ有シ物ニヤ、不審シ、宇治ヨリ田原ヘ越ル道危嶮也、是栗子山越ト云、◯下略〉
〔山城志〕
〈九綴喜郡〉
p.0238 村里 切林、名、符作(フツクリ)、老(ヲイ)中、奧山田、〈屬邑四〉湯屋ノ谷、〈屬邑四〉長(ヲトノ)山、禪定寺、〈舊名桑有(クアリ)〉岩本、荒木、平岡、大道寺、糠塚、贄田、郷口、〈以上十五村田原郷〉
〔西宮記〕
〈臨時一〉
p.0238 諸宣旨 田原御栗栖長〈以二國解名簿一自二御所一下、上卿下レ辨、賜二官符於山城國一、〉
〔朝野群載〕
〈五朝儀〉
p.0238 田原御栗栖住人申文 田原御栗栖住人山背友武解、申二請藏人所恩裁一事、 請丁殊蒙二恩裁一且依二先判旨一、且召二問在地一、被レ裁丙許爲二紀貞則男貞次一、押乙作相傳所領御栗栖大明神御祭料田四段百八十町甲〈◯町恐歩誤〉状、〈◯中略〉 天永四年癸卯閏三月一日 御栗栖住人山背友武
〔山槐記〕
p.0238 永暦元年十一月十五日己丑、早旦、自二田原供御所一持二來甘栗三十籠一、〈上十下廿◯中略〉有二解文一、〈◯中略〉五節之時爲二恒例一持二來兩貫首之許一云々、
〔宇治拾遺物語〕
〈十五〉
p.0239 今はむかし天智天皇の御子に大友王子といふ人ありけり、太政大臣になりて世のまつりごとをおこなひてなんありける、〈◯中略〉春宮〈◯天武〉これを御らんじてさらでだにおそれおぼしけることなれば、さればこそとて、いそぎ下種の狩衣袴を著給て、藁沓をはきて、宮の人にもしられず、たヾ一人山を越て、きたざまにおはしけるほどに、山城國たはら(○○○)といふところへ、道もしり給はねば、五六日にぞ、たどる〳〵おはし著にける、その里人あやしくけはひのけだけくおぼえければ、高つきに栗をやきまたゆでなどしてまゐらせたり、その二色のくりをおもふことかなふべくは、おひいでヽ木になれとて、かた山のうへにうづみ給ぬ、里人これをみてあやしがりて、しるしをさしておきつ〈◯中略〉田原にうづみ給しやきぐりゆでぐりは、形もかはらず生出けり、いまにたはらの御くりとてたてまつるなり、
〔平治物語〕
〈一〉
p.0239 信西最 事 少納言入道信西〈◯中略〉宇治路へ懸り、田原ガ奧大道寺ト云所領ニゾ行ニケル、
〔山城名勝志〕
〈十九綴喜郡〉
p.0239 綴喜郷(○○○)〈和名抄云綴喜郡、八雲御抄云、綴喜里、山城、〉
〔宗良親王千首〕
〈春〉
p.0239 隣家梅 風かよふつヾきの里の梅がかを空にへだつる中垣ぞなき
〔山城名勝志〕
〈十九綴喜郡〉
p.0239 大住郷(○○○)〈和名抄云綴喜郡松井村南手バラ川ノ北ニアリ、〉
〔康富記〕
p.0239 嘉吉三年五月五日己未、自二隼人司領山城大住庄名主等中一、粽十二連上之、三連米進也、 文安五年正月六日癸巳、自二山城國大住隼人司領一、公事物七種菜、〈十二把上、三把未進、〉小餅、〈赤白大充〉十二前上レ之、〈三前未進〉
〔山城名勝志〕
〈十九綴喜郡〉
p.0239 甲作郷(○○○)〈和名抄云綴喜郡〉
〔續日本紀〕
〈七元正〉
p.0239 靈龜二年九月癸巳、正七位上山背甲作客小友等二十一人、訴免二雜戸一、除二山背甲作四字一、改賜二客姓一、
〔山城名勝志〕
〈十九綴喜郡〉
p.0240 飯岡〈在二木津川西端、草内村巽山本村北一、〉 古文書云、御判壹萬部御經料所、山背國草内郷(○○○)内飯岡、 永享四年五月廿五日 貞連 爲種 正實坊 飯岡鐘銘云、雍州綴喜郡、飯岡者此嶂(ミネ)、人里不レ近不レ遠、而眞俗不レ背云々、此岡者在二國中田園内一、東木津河布二岩崎磐石一、故洪水不二漂破一、西屏二天王山一、則大風不二崩虧一、【北草肉(クサシヽ)郷】、常揚二民竈一、南山本村、時掉二賣買船一矣、東西量及二十町一、高二町餘所、唯松樹茂、南北平地、而有二人家一、山頭墳冢耳、其中大者二三岡震有二天滿天神宮一、未レ知二移者一兊有二大墓所一、昔行基菩薩封所、 寛永十六年二月日 良定上人入觀袋中
〔山城名勝志〕
〈十九綴喜郡〉
p.0240 成願寺〈松井郷(○○○)〉 鐘銘云、山城國松井郷成願寺鐘、當伽藍沙彌佛阿同宿尼法阿、弘長三年始置二不斷念佛一云々、今奉レ鑄二此鐘一、爲二伽藍安穩、興隆佛法、廣作佛事、郷内泰平、諸人快樂乃至法界、平等利益一、 文保三年己未卯月八日 沙彌十念〈敬白〉 願主比丘尼法阿闍梨 眞慶 僧西念 大工伊勢田爲依
〔山城名勝志〕
〈十九綴喜郡〉
p.0240 奧山田〈田原郷東限也、在二湯屋谷艮一、自レ是通二江州朝宮一、〉 武家雜記云、大炊寮雜掌、與二權暦博士宣繼朝臣一相論、山城國奧山田郷(○○○○)事、〈◯中略〉止二彼姧訟一可レ被二全宣繼代所務一之由所レ被二仰下一也、 應永八年十一月十六日 沙彌〈判〉 結城越後入道殿
〔山城志〕
〈十相樂郡〉
p.0240 郷名 相樂〈方廢村存◯中略〉水泉(イツミ)〈今云二瓶原郷一、〉加茂 大狛〈方廢村存〉綺田(カハタ)〈日本紀作二綺戸一、山槐記作二加幡一、元亨釋書作二蟹幡一、〉祝(ハフ)
p.0241 園(ソノ)〈◯註略〉下狛〈◯註略〉
〔山城名勝志〕
〈二十相樂郡〉
p.0241 相樂郷(○○○)〈和名抄云相樂郡、今云二相樂村一、在二木津村西南半里許一、和州郡山道西也、〉
〔山城名勝志〕
〈二十相樂郡〉
p.0241 水泉郷〈和名抄云相樂郡、萬葉仙覺抄云、いづみの里、山城國、〉
〔山城志〕
〈十相樂郡〉
p.0241 山川〈◯中略〉 木津川〈本名輪韓(ワカラ)川、又名挑(イトミ)川、又泉川、〉
〔日本書紀〕
〈五崇神〉
p.0241 十年九月、武埴安彦與二妻吾田媛一謀二反逆一、興レ師忽至、各分レ道而夫從二山背一、婦從二大坂一、共入欲レ襲二帝京一、〈◯中略〉遣下大彦與二和珥臣遠祖彦國葺一向二山背一擊中埴安彦上、〈◯中略〉更避二那羅山一而進到二輪韓河一、埴安彦挾レ河屯之、各相挑焉、故時人改號二其河一曰二挑河一、今謂二泉河一訛也、
〔續日本紀〕
〈三十一光仁〉
p.0241 寶龜元年十二月乙未、賜二左大臣正一位藤原朝臣永手、山背國相樂郡出水郷山二百町一、
〔萬葉集〕
〈四雜歌〉
p.0241 石川朝臣廣成歌一首 家人爾(イヘビトニ)、戀過目八方(コヒスギメヤモ)、川津鳴(カハヅナク)、泉之里爾(イヅミノサトニ)、年之歴去者(トシノヘヌレバ)、
〔萬葉集略解〕
〈四〉
p.0241 泉の里は山城相樂郡泉川のあたりを云べし、
〔中右記〕
p.0241 長承四年二月廿七日辛未、院春日御幸、〈◯中略〉申時著二泉木津一、〈今度有二假橋一〉
〔山城名勝志〕
〈二十相樂郡〉
p.0241 瓶原(○○)〈在二木津渡東一里半許一、郷内廣、今有二九村一、賀茂郷隔二泉川一北也、〉
〔古今和歌集〕
〈九羈旅〉
p.0241 題しらず よみひとしらず 宮こいでヽけふみかの原いづみ川かは風さむし衣かせやま
〔新古今和歌集〕
〈十一戀〉
p.0241 題しらず 中納言兼輔 みかの原わきてながるヽいづみ川いつみきとてか戀しかるらん
〔山城名勝志〕
〈二十相樂郡〉
p.0241 賀茂郷(○○○)〈和名抄云相樂郡、賀茂郷今有二六村一、里村北有二賀茂渡一、自二木津渡一二里東也、〉
〔山城志〕
〈十相樂郡〉
p.0241 村里〈◯中略〉 高田 觀音寺 大野〈屬邑一〉 里〈屬邑一〉北 莵並(ウナミ)〈高田已下賀茂郷〉
〔今昔物語〕
〈十一〉
p.0242 天智天皇御子始二笠置寺一語第三十 今昔、天智天皇ノ御代ニ御子〈◯大友〉在マシケリ、〈◯中略〉山城ノ國相樂ノ郡賀茂ノ郷ノ東ニ有ル、山邊ヲ狩リ行クニ、〈◯下略〉
〔藤河の記〕
p.0242 ならの京を立て般若寺ざかをこえ、梅谷などいひて、人はなれこヽろすごき所々をへて、かものわたりをすぎ、三日の原といふ所に輿をとヾめて思ひつヾけ侍り、
〔山城名勝志〕
〈二十相樂郡〉
p.0242 大狛郷(○○○)〈和名抄云相樂郡、今上狛村歟、在二平尾村南木津渡北山際一、 下狛郷(○○○)〈和名抄云相樂郡、木津川西、祝園村西、飯ノ岡南有二下狛村一、上狛隔レ川、〉
〔日本書紀〕
〈十九舒明〉
p.0242 三十一年四月乙酉、越人江渟臣裙代詣レ京奏曰、高麗使人辛二苦風浪一迷失二浦津一、任レ水漂流忽到二著岸一、〈◯中略〉詔曰、〈◯中略〉有司宣二於山城國相樂郡起レ館淨治厚相資養一、 七月壬子朔、高麗使到二于近江一、是月、遂引二入山背高楲(コマヒ)館一、
〔三代實録〕
〈五清和〉
p.0242 貞觀三年八月十九日庚申、左京人散位外從五位下伴大田宿禰常雄賜二伴宿禰姓一、先レ是正三位行中納言兼民部卿皇太后宮大夫伴宿禰善男等奏言、〈◯中略〉欽明天皇時、百濟以二高麗之冦一、遣レ使乞レ救、狹手彦復爲二大將軍一伐二高麗一、其王踰レ墻而遁、乘勝入レ宮、盡得二珍寶貨賂一以獻之、珠敷天皇〈◯敏達〉世、還來獻二高麗之囚一、今山城國狛人是也、
〔萬葉集〕
〈六雜歌〉
p.0242 讃二久邇新京一歌 狛山爾(コマヤマニ)、鳴霍公鳥(ナクホトヽギス)、泉河(イヅミガハ)、渡乎遠見(ワタリヲトホミ)、此間爾不通(コヽニカヨハズ)、 右田邊福麿之歌集中出也
〔續日本紀〕
〈二十六稱徳〉
p.0242 天平神護元年八月庚申朔、從三位和氣王坐二謀反一誅、〈◯中略〉流二伊豆國一、到二于山背國相樂郡一、絞レ之埋二于狛野一、〈◯下略〉
〔催馬樂〕
p.0242 呂 山城〈三段、拍子各十、合拍子三十、空拍子、〉
p.0243 山しろの、こまのわたりの、うりつくり、なよやらいしなや、さいしなや、うりつくり、うりつくりはれ、〈◯下略〉
〔兼盛集〕
〈夏〉
p.0243 大監物なる時、御こき侍しに、内侍所に參りたりしに、いとおかしげなるこうりをつつみていだしたりしかば 山城のこまのわたりをみてしかなうりつくりけん人の垣ねを
〔山城名勝志〕
〈二十相樂郡〉
p.0243 蟹幡郷(○○○)〈和名抄云相樂郡、玉水町南、平尾村北、有二綺田(カハタ)村一、〉
〔日本書紀〕
〈六垂仁〉
p.0243 三十四年三月丙寅、天皇幸二山背一、時左右奏言之、此國有二佳人一曰二綺戸邊一、姿形美麗、山背大國不避之女也、〈◯中略〉仍喚二綺戸邊一納二于後宮一、生二磐衝別命一、
〔今昔物語〕
〈十六〉
p.0243 山城國女人依二觀音助一遁二虵難一語第十六 今昔、山城ノ國久世ノ郡ニ住ケル人ノ娘、年七歳ヨリ、觀音品ヲ受ケ習テ讀誦シケリ、〈◯中略〉其ノ後虵ノ苦ヲ救ヒ、多ノ蟹ノ罪報ヲ助ケムガ爲ニ、其地ヲ掘テ、此虵ノ屍骸ヲ埋テ、其ノ上ニ寺ヲ立テヽ、佛像ヲ造リ經卷ヲ寫シテ供養シツ、其寺ノ名ヲ蟹滿多寺(○○○○)ト云フ、其ノ寺于レ今有リ、其レヲ世ノ人和カニ紙幡寺(○○○)ト云フ也ケリ、本儀ヲ不レ知ザル故也、
〔中右記〕
p.0243 寛治六年二月八日辛酉、辰時許於二加波多河原一暫留二御馬一、前駈皆下レ自レ馬候二左右一、
〔山城名勝志〕
〈二十相樂郡〉
p.0243 【祝(ハフリ)園郷】〈和名抄云相樂郡、今木津川西端、下狛村東、有二上祝園下祝園二村一、〉
〔日本書紀〕
〈五崇神〉
p.0243 十年九月、彦國葺射二埴安彦一、中レ胷而殺焉、其軍衆脅退、則追破二於河北一、而斬レ首過半、屍骨多溢、故號二其處一曰二羽振苑(ハフリソノト)一、
〔續日本紀〕
〈十三聖武〉
p.0243 天平十二年十二月戊午、從二不破一發至二坂田郡横川頓宮一、是日、右大臣橘宿禰諸兄、在レ前而發、經二略山背國相樂郡恭仁郷(○○○)一、以レ擬二遷都一故也、
〔山城名勝志〕
〈二十相樂郡〉
p.0243 岡田(○○)〈郷、驛、山、離宮、〉
〔三代實録〕
〈十一清和〉
p.0244 貞觀七年九月廿六日甲辰、勅二木工寮一、採二銅於山城國相樂郡岡田郷一、
〔郡名一覽〕
p.0244 一山城國(御料私領)〈城州 南北一日半餘〉 八郡 高貳拾貳萬四千貳百五拾七石七斗八升八合壹勺六才 四百五拾九ケ村 ●二條御城 〈江戸ヨリ百二十三里〉 ●淀 〈同百二十五里半 京四里半 大坂八里〉 ○伏見 〈同百二十四里 京へ三里 大坂九里〉 ＜京 ＜宇治 〈江戸百二十六里〉 ◯按ズルニ、本書凡例ニ、●城、
城主格、○陣屋、
寄合衆在所、其外在所住居、
陪臣在所、公儀御役所、＜御代官陣屋トアリ、
〔郡國提要〕
p.0244 山城 八郡四百七十七村 高二十三万百三十一石七斗六升八勺六才五札(御料私領) 葛野郡八十一村 愛宕郡八十一村 宇治郡五十一村 紀伊郡三十四村 乙訓郡五十二村 久世郡四十二村 綴喜郡五十四村 相樂郡八十二村
〔地勢提要〕
〈坤〉
p.0244 郡邑島嶼奇名 山城 愛宕(オタキ)郡、葛野(カト)郡、乙訓(オクニ)郡、神足(カウタリ)村、開田(カイデン)村、雞冠井(カイデ)村、相樂(サガラ)郡、有市(アチ)村、鹿背山(カセヤマ)村、
田(カバタ)村、久世郡、富野(トノ)村、一口(イモアラヒ)村、宇治郡、木幡(コハタ)村、川邊郡、昆陽(コヤ)宿、中食滿(ケス)村、次屋(ツキヤ)村、
〔古事記〕
〈中應神〉
p.0244 一時天皇越二幸近淡海國一之時、〈◯中略〉故到二坐木幡村(○○○)一之時、麗美孃子遇二其道衢一、〈◯下略〉
〔山州名跡志〕
〈十五宇治郡〉
p.0244 木幡里 今稱二木幡村一、自二金辻南一二町計、南至二五箇庄一、
〔延喜式〕
〈二十一諸陵〉
p.0244 巨幡墓〈贈一品伊豫親王、在二山城國宇治郡一、◯下略、〉
〔拾遺和歌集〕
〈十九雜戀〉
p.0244 題しらず ひとまろ 山しなのこはたの里に馬はあれどかちよりぞくる君を思へば
〔源平盛衰記〕
〈六〉
p.0244 西光卒都婆事 或人ノ云ケルハ、今生ノ災害ハ、過去ノ宿習ニ報ベシ、貴賤不レ免二其難一、僧俗同ク以テ在レ之、西光モ先
p.0245 世ノ業ニ依テコソ、角ハ有ツラメドモ、後生ハ去トモ憑シキ方アリ、當初難レ有願ヲ發セリ、七道ノ辻ゴトニ、六體ノ地藏菩薩ヲ造奉リ、卒都婆ノ上ニ道場ヲ構テ、大悲ノ尊像ヲ居奉リ、廻リ地藏ト名テ、七箇所ニ安置シテ云、〈◯中略〉加様ニ發願シテ造立安置ス、四宮河原、木幡ノ里、造道、西七條、蓮臺野、ミゾロ池、西坂本是ナリ、
〔日本書紀〕
〈十四雄略〉
p.0245 十七年三月戊寅、詔二土師連等一、使レ進下應レ盛二朝夕御膳一清器上者、於レ是、土師連祖吾笥(アケ)仍進二〈◯中略〉山背國内ノ村【俯見(フシミ)村】〈◯中略〉私民部一、名曰二贄土師部一、
〔山城名勝志〕
〈十六紀伊郡〉
p.0245 伏見〈（中略）東限二木幡六地藏村一、南限二宇治河末一、西限二三栖芹川村一、北限二深草里一、〉
〔枕草子〕
〈三〉
p.0245 里は 伏見の里〈◯中略〉いづれもおかし
〔後拾遺和歌集〕
〈十九雜〉
p.0245 伏見といふところに、四條宮女房あまたあそびて、日暮ぬさきにかへらむとしければ、 橘俊綱朝臣 都人くるればかへるいまよりはふし見のさとの名をもたのまじ
〔萬葉集〕
〈三雜歌〉
p.0245 高市連黒人羈旅歌 速來而母(トクキテモ)、見手益物乎(ミテマシモノヲ)、山背(ヤマシロノ)、【高槻村(タカツキノムラ)】、散去奚留鴨(チリニケルカモ)、
〔東大寺奴婢籍帳〕
p.0245 山背國司移 大養徳國司 合奴婢貳拾捌人 婢飯虫女〈年卅六〉 婢伊蘇女〈年卅五〉 右二人、綴憙郡甲作里(○○○)戸主粟國加豆良部人麻呂戸口所貫〈天平五年死亡〉 奴人足〈年廿〉 右一人、同郡〈◯綴喜〉山本里(○○○)戸主錦部田禰戸口所貫
p.0246 奴麻呂〈年六十◯中略〉 右十一人、久世郡那紀里(○○○)戸主水尾公眞熊戸口所貫 奴牛甘〈年卅八◯中略〉 右九人、紀伊郡邑薩里(○○○)戸主輕部牛甘戸口所貫〈◯中略〉 奴與止麻呂〈年廿四〉 奴藪原〈年十三〉 右二人、乙訓郡山崎(○○)里戸主間人造東人戸口所貫 奴雲足〈年六 神龜二年帳死亡〉 右遷二附彼部一添上郡師毛里(○○○)戸主少初位下大宅朝臣加是麻呂戸〈◯中略〉 天平十三年六月廿六日 ◯按ズルニ、邑薩ハオホサトト訓ズ、即チ大里ナリ、
〔東大寺奴婢籍帳〕
p.0246 散位寮散位大初位上大宅朝臣可是麻呂謹解 申貢進賤事 合陸拾壹人〈◯中略〉 奴雲足年十四〈一人、山背國羽束里(○○○)戸主長岡坂本國麻呂戸口、◯中略〉 天平勝寶元年十一月三日
〔續日本紀〕
〈二十六稱徳〉
p.0246 天平神護元年八月庚申朔、從三位和氣王坐二謀反一誅、〈◯中略〉和氣知之其夜逃竄、索二獲於率河社中一、流二伊豆國一、到二于山城國相樂郡一、絞之埋二于狛野一、又絞二益女於綴喜郡松井村(○○○)一、
〔康富記〕
p.0246 寶徳三年九月四日已亥、大住庄名主兩人〈東南〉來申云、大住庄與二松井村百姓一、草刈場堺目論事出來、〈◯下略〉
〔續日本紀〕
〈三十八桓武〉
p.0246 延暦三年五月丙戍、勅遣二中納言正三位藤原朝臣小黒麻呂〈◯中略〉等於山背國一、相二乙訓郡長岡村(○○○)之地一、爲レ遷レ都也、
〔續日本後紀〕
〈九仁明〉
p.0247 承和七年五月癸未、後太上天皇崩二于淳和院一、 戊子、此夕奉レ葬二後太上天皇於山城國乙訓郡物集村(○○○)一、御骨碎粉奉レ散二大原野西山嶺上一、
〔三代實録〕
〈二十一清和〉
p.0247 貞觀十四年五月十五日甲申、勅遣下從五位上守右近衞少將藤原朝臣山蔭一到二山城國宇治郡山科村(○○○)一、郊迎勞中渤海客上、
〔古今和歌集〕
〈十八雜〉
p.0247 深草のさと(○○○○○)にすみ侍て、京へまうでくとて、そこなりける人によみておくりける、 なりひらの朝臣 年をへてすみこしさとをいでヽいなばいとヾ深草野とや成なむ
〔三代實録〕
〈四十七光孝〉
p.0247 仁和元年二月八日甲午、先レ是神祇官奏請、去貞觀十七年四月十七日有レ勅、以二山城國葛野郡上木島下木島兩里(○○○○○○○○)乘田五段一、奉レ充二從一位平野神社一、而班田使圖帳不レ注二神田一、收公斑二給百姓口分一、望被二返充一、
〔山州名跡志〕
〈十一葛野郡〉
p.0247 桂里(○○) 川ノ西ニアリ、里兩所南北ニ在テ、上桂中桂下桂ト云、
〔古今和歌集〕
〈十八雜〉
p.0247 かつらに侍ける時に、七條中宮とはせ給へりける御返事にたてまつれりける、 伊勢 久方の中におひたるさとなればひかりをのみぞたのむべらなる
〔夫木和歌抄〕
〈三十一里〉
p.0247 こまのヽ里(○○○○○)〈狛野山城〉 前大納言公任卿 山ちかみあさたつ雲とみえつるはこまのヽ里の煙なりけり 此歌、春日よりかへり侍けるに、山づらにけぶりの立けるをとへば、こまのヽ里といひければよめると云々、
〔今昔物語〕
〈三十一〉
p.0247 鳥羽郷聖人等造二大橋一供養語第二 今昔、鳥羽ノ村(○○○○)ニ大キナル橋有ケリ、此レハ昔ヨリ桂川ニ渡セル也、
〔山州名跡志〕
〈九葛野郡〉
p.0248 梅津里(○○○) 在二松尾卯辰間三町許一、隔二中間川一、里分二東西一、云二東梅津、西梅津一、
〔參考源平盛衰記〕
〈六〉
p.0248 内大臣召レ兵事 印本、一本、伊藤本、八坂本、鎌倉本、如白本、佐野本、並云、〈◯中略〉淀(○)、羽束瀬(○○○)、宇治(○○)、岡屋(○○)、日野(○○)、勸修寺(○○○)、醍醐(○○)、小栗栖(○○○)、梅津、桂、大原、志津原(○○○)、芹生(○○)ノ里ニ溢居タル兵共、或ハ鎧著テイマダ兜ヲ著ヌモアリ、或ハ矢負テイマダ弓ヲ持ヌモアリ、片鐙蹈ヤ蹈ズニテ周章騷テ馳參ル、
〔夫木和歌抄〕
〈三十一里〉
p.0248 御集、大原せれふの里と云所にて、 後徳大寺左大臣 よをそむくかどではしたり大原やせれふの里の草の庵に
〔太平記〕
〈九〉
p.0248 足利殿著二御篠村一則國人馳參事 官軍ハ五月七日京中ニ寄テ、合戰可レ有ト被レ定ケレバ、篠村八幡山崎ノ先陣ノ勢、宵ヨリ陣ヲ取寄テ、西ハ、梅津桂ノ里、南ハ竹田、伏見ニ篝ヲ燒、〈◯下略〉
〔長祿記〕
p.0248 去程ニ明レバ十九日〈◯長祿四年九月〉辰ノ一天ニ、都ヲ落サセ給、〈◯畠山義就、中略、〉去程ニ茄子造コウヅノ里(○○○○○)ヲ打過テ、餘リノ事ノウラメシサニ、年ヲ守リノ星田ノ里(○○○○)、打恨ツヽ行程ニ、駒モ靜ニ打上リ、蕭敷秋ノ野崎ノ里(○○○○)、猶裏枯ル草賀ヨリ、一宮ヲ伏拜ミ、若江ノ城ニ入給フ、自レ昔諸大名度々ニ及テ都ヲ落行シニ、白晝ニシトヤカニ落給ハ、今ノ義就ト皆々沙汰シケリ、去程ニ次郞殿ハ、同廿三日、家督ノ御出仕有テ、次ノ閏九月九日、和州ヘ下リ給フ、義就ハ愁ノ西路ヲ下給フ、政長ハ悦ツヽ、東門ヲ開テ、天ニモ上ル計ナル、高倉ヲ下リニ、法性寺ヲ見渡セバ、晩稻ヲ苅テ稻荷山、斯ル憑ミハ深草ノ、鶉ノ床ニ伏見ノ里、白菊笑ル野ヲ見レバ、荻ノ枯葉ニ紫ノ、サナガラ藤ノ森(○○○)過テ、木幡ノ里ニ馬ハアレド、歩ニテ下ル人々ガ、八十宇治川ノ邊ニテ、神保宗次郞御馬ニ近ク參リ、御物語申様、此宇治ト申ハ久敷名所也、特更源氏ニ縁多キ處也、〈◯下略〉
〔大覺寺文書〕
p.0248 山城國御所内七拾石餘、并嵯峨内〈生田村高田村(○○○○○○)〉貳拾七石餘事、爲二新地一進覽之、全可レ有二御直務一
p.0249 之状如レ件、 天正三年十一月六日 信長〈◯花押〉 大覺寺殿
〔續應仁後記〕
〈三〉
p.0249 三好孫次郞範長所々合戰事 同キ天文八年己亥ノ六月、公方家モ若君達モ京都ヲ御退去ナラセ給テ、洛外八瀬ノ里(○○○○)ニ移ラセ給ヒ、朽木民部少輔稙綱等相從奉リ、同十年坂本へ御動坐有リ、或ハ慈照寺ニ入御マシマス時モ有リ、
〔雍州府志〕
〈一山川〉
p.0249 八瀬里 去レ洛東北三里許、在二叡山麓一、斯邊總小野庄内也、一説天武天皇被レ襲二大友皇子一時逃二此里一、流矢中二天皇背後一、故號二矢背一云、土俗男子亦椎髻、傳言山鬼曾栖二八瀬河西山中鬼洞一、一村男女悉山鬼之裔也、故男子亦束二髮於頭上一處一、到レ今毎年自二七月七日一至二同月十五日一、村中兒女聚二斯洞一鳴レ鉦、大唱二彌陀佛號一、是謂レ祭二先祖一、予〈◯黒川道祐〉思斯處在二叡山麓一、自二傳教大師一以後被レ聽二牛車一之僧、使二此土人藏レ車飼一レ牛、其僧乘レ車入レ洛日、則使三土人爲二牛童一、倭俗牛童、束二長髮於頂上一、垂二其末於背後一、今長髮則其遺風也、何有レ爲二鬼神之裔一乎、一村百戸餘、俗朴身著二木棉衣一、又著二裘革袴一、登レ山如二猿
一、耕レ田以二牛馬一、農暇各腰二斧鎌一登レ山伐レ木尺許束レ之、入レ窖蒸レ之、去二濕氣一則青色忽變レ黒、是謂二黒木一、日々賣二京師一、大原土俗亦然、
〔夫木和歌抄〕
〈三十一里〉
p.0249 や瀬の里〈山城〉 戀歌中歌林 印禪法師 日にそへてすがたぞかげに成にけりやせの里なるいもをこふとて
〔夫木和歌抄〕
〈三十一里〉
p.0249 たけだの里〈竹田、山城、〉 永久四年百首水鷄 俊頼朝臣 心からたけだの里にふしなれていくよくゐなにはかられぬらん
〔類聚名物考〕
〈地理三〉
p.0249 竹田里(○○○) たけだのさと 山城國〈紀伊郡〉 原 竹田
p.0250 竹田は大和國十市郡にも有り、萬葉集第四に、坂上郞女從二竹田庄一贈二女子一歌あり、是はまさしく大和なり、また日本紀第三に猛田と書しを、舊事紀には建桁とも書り、又延喜式神名帳に、大和國十市郡に竹田神社あり、是等の類はまさしく大和なれども、又後世の歌によみしは、たヾ山城國紀伊郡の竹田なり、芹川淀等をよみ合せしにて知べし、
〔山州名跡志〕
〈十一紀伊郡〉
p.0250 竹田 在下城南宮(グウ)森艮亘二卯辰一一町許上、此所洛陽東洞院通ノ南順路也、竹田今ハ所ノ名トス、如二舊記一竹田ハ庄號ニシテ、竹田庄ト云フ、或云二眞竹庄一、 分レ村云二東竹田、西竹田一、中間一町餘、
〔山州名跡志〕
〈十六久世郡〉
p.0250 巨椋〈或作二小倉一〉 在二宇治乾三十町許一、有二民居一名レ村、此所伏見ヨリ到ル順路ハ豐後橋ノ南、大和路ニテ、橋ヨリ五十町ニアリ、其路左ニ宇治川アリ、右ニ伏見澤アリ、右此五十町ノ所、秀吉公ノ時所レ築ノ堤ナリ、古ノ大和路ハ、巨掠ヨリ寅卯ノ間ニ向ツテ宇治橋ニ出デ、木幡ノ關ニ趣キシ也、〈◯中略〉 久世〈所名清音〉 在二大久保巳午間一、其間十町許、但大和街道ハ於二久世一東ノ端ニシテ南北五町許ヲ云フ、其南ハ寺田村ニ雙ブ、但久世村ノ民居ハ大和街道ノ西ニアリ、
〔類聚名物考〕
〈地理三〉
p.0250 綴喜里(○○○) つヾきのさと 山城國〈綴喜郡〉 宮 郡 岡 原 今は連續の訓の如く、下のつを濁りてとなふるを、上古は清てとなへしにや、日本紀には筒城と書れしにて知べし、その類古今の違ひ、まヽその例多し、物によりてその心得有るべし、
〔山州名跡志〕
〈六愛宕郡〉
p.0250 花園〈村名〉 在二小野橋北十二三町一、 花園ノ名ハ古左大臣夏野公ノ別莊ニヨルナリ、其地初ハ今ノ妙心寺ノ地是也、彼人於二其所一諸花ヲ愛セルヲ以、花園左大臣ト稱ス、然ヲ人皇九十四代ノ帝、彼地ヲ好取玉ヒテ、其裔孫良枝ニ今此地ヲ賜ル、仍テ彼別莊ヲ此地ニ移、故ニ此號アリ、上皇又彼地ニテ群花ヲ愛シ玉フ故、上皇ノ御稱號ヲ花園院トモ、又萩原院トモ申也、
〔大安寺伽藍縁起并流記資財帳〕
p.0251 合處々庄拾陸處 山背國三處〈相樂郡二處北大河之限、〉 〈一泉木屋并薗地二町、東大路、西藥師寺木屋、南自井一段許退、於一棚倉(○○)瓦屋東谷上、西路、南川、北南大家野之堺限二乙訓郡一、◯中略〉 天平十九年二月十一日〈◯署名略〉
〔萬葉集〕
〈十九〉
p.0251 天平五年十月二十二日、於二左大辨紀飯麻呂朝臣家一宴歌、 手束弓(タツカユミ)、手爾取持而(テニトリモチテ)、朝獵爾(アサカリニ)、君者立去奴(キミハタヽシヌ)、多奈久良能野爾(タナクラノヌニ)、
〔石清水文書〕
〈一〉
p.0251 太政官牒石清水八幡宮護國寺 宮寺所所庄園參拾肆箇處事 一應如レ舊領中掌庄貳拾壹箇處上事 山城國肆箇處 壹處 字奈良庄(○○○) 久世郡 水田陸町玖段參佰歩〈◯中略〉 壹處 字稻間庄(○○○) 相樂郡 水田貳拾玖町貳段伍拾歩〈◯中略〉 以前庄園如レ件、國宜二承知、依レ宣行一レ之者、宮寺承知、牒到准レ状、故牒、 延久四年九月五日〈◯署名略〉
〔當宮縁事抄〕
p.0251 左辨官下 石清水八播宮并宿院極樂寺 應丙永停下止宮寺并極樂寺庄園領家預所下司公文等、或號レ有二先祖讓状一、或稱相二傳文書一、致二異論一企中掠領上、兼又有二由緒一雖レ令二傳領一、子孫斷絶處々付乙本所甲事、 宮寺領 山城國 租穀庄(○○○) 稻八間庄(○○○○) 新庄(○○) 河原崎庄(○○○○) 本田庄(○○○)〈◯中略〉 保元三年十二月三日〈◯署名略〉
〔拾玉集〕
〈五〉
p.0251 建久二年、右少辨資實に山本の庄(○○○○)を給べたるよし聞て、おほぢの日野の民部卿入道の許よりよろこぶよし申とて、一絶をつかはしたるを見れば、
p.0252 書二所懷一呈二子孫一 老沙彌如之 孫枝子葉誇恩日、枯木自然如レ遇レ春、水蕣徒今宜二詠謝一、後榮不レ識七旬身、 これをみて和してつかはすとて 木のもとの春にあふなる春なれば老木に花もさかざらめやは
〔西大寺文書〕
〈一〉
p.0252 注進 西大寺所領諸庄薗現存日記事 合〈◯中略〉 山城國 下已呂波里狛野庄(○○○)、畠七町百八十歩之内、〈一町一段百六十歩左馬寮收公〉 已上九箇庄大體有名無實、或被二國領一、或被二人領一、或半分、或三分之一也、然而就二庄號一注進之、 一顚倒庄々〈◯中略〉 山城國 羽束志庄(○○○○)、九町二段百二十歩、 久世庄(○○○)、一町、 已上二十七處、依二流記公驗一明白注進之、 右依二宣旨一、注進如レ件、 建久二年五月十九日〈◯署名略〉
〔山城名勝志〕
〈二十相樂郡〉
p.0252 野〈◯狛〉 永享年中寺社文書云、山城國狛野庄興福寺十二大會并若宮祭禮料所、 永享二年十二月廿五日 爲種 貞連
〔島田文書〕
p.0252 注進 御庄々一年中課役事〈付寺役并本支配内不動物等〉 合〈◯中略〉 下桂庄(○○○) 元三雜事 御簾二間、疊二枚、〈小文一枚、紫一枚、〉砂三兩、 三月御八講砂二兩 五月五日菖蒲二駄、〈付艾〉 御更衣小文疊一枚〈宮御方十月料〉 臨時召人夫等〈御八講、歳末掃除、七月御瓮供、舁二行幸行啓一等料、〉 移花十枚(不勤之)〈◯中略〉
p.0253 建久二年十月 日注進之
〔東寺百合古文書〕
〈二〉
p.0253 七條院御領十七ケ所事 山城國上桂庄(○○○)〈以二同國桂東庄(○○○)内北方一御相傳之〉 同國河島庄(○○○) 同國廣庭庄(○○○)〈◯中略〉 正和三年七月三日 亮判(春宮亮隆長)〈奉〉 粟田口少將殿
〔東寺百合古文書〕
〈五十七〉
p.0253 山城國上桂庄〈號二上野庄(○○○)一〉本主平氏女代良秀謹言上 欲下早被レ經二御奏聞一、任二相傳道理一、被レ返二付于氏女一、全知中行當主領主職上事〈◯中略〉 建武元年十二月日
〔東寺百合古文書〕
〈四十七〉
p.0253 東寺領山城國上野庄〈又名上桂庄〉雜掌謹辧〈◯中略〉 貞和五年九月日
〔東寺百合古文書〕
〈二〉
p.0253 七條院十七箇所事、上桂庄替、桂東庄北方爲二安樂壽院領一歟、然者被レ立二替吉身庄(○○○)一候、於二植木庄(○○○)一者、萬秋門院別相傳之由被レ申之、〈◯中略〉 元亨三年九月卅日 中宮亮(藤房)〈判〉 謹上 法性寺三位殿
〔吾妻鏡〕
〈三十〉
p.0253 文暦二年〈◯嘉禎元年〉五月廿三日乙卯、石清水八幡宮寺與二興福寺一有二確執及喧嘩等一之間、可二計沙汰一之旨、被レ下二院宣一之由、自二六波羅一被二馳申一、是薪大住(○○○)兩庄用水相論之故也云云、
〔百練抄〕
〈十四四條〉
p.0253 嘉禎元年六月三日甲子、武士多發二向八幡方一、是南都領大住庄與二石清水領薪庄一水相論、遣二實檢使一可レ被二裁許一之由被二仰下一之處、南都惡徒等可レ燒二拂八幡領一之由風聞之間、爲二防禦一遣二勇士一也、官軍以前衆徒燒二拂八幡領薪園一畢、
〔扶桑略記〕
〈三十堀川〉
p.0253 寛治六年三月六日己丑、山階寺大衆數百人引率、燒二失山城國木津川東里二百餘烟一、
p.0254 賀茂庄(○○○)云々、
〔古文書類纂〕
〈上處分状〉
p.0254 後深草天皇建長二年關白藤原道家處分状 總處分 條々事〈◯中略〉 院領 山城國久世庄 曾末庄(○○○)〈◯中略〉 寺領 山城國小鹽庄(○○○)〈◯中略〉 建長二年十一月日 愚老〈在御判〉
〔東寺百合古文書〕
〈三十一〉
p.0254 山城國拜志庄(○○○)内日吉十禪師宮神田事 合壹町貳段半内〈◯中略〉 在 眞幡木里廿九坪二反半 跡田里二十九坪二段 穴田里五坪一反〈◯中略〉 須久田里十八坪五反 右注進如レ件 弘安九年五月
〔山城名勝志〕
〈十六紀伊郡〉
p.0254 三栖〈伏見西南、有二上三栖下三栖二村一、土人云、太平記山城國深須入道アリ、此所住人也云々、◯中略〉 安樂壽院記云、〈安樂壽莊園〉山州眞幡木、芹川、上三栖(○○○)、播州石造莊、〈已上見二于文明天文綸旨一云々〉
〔管見記〕
p.0254 嘉吉二年十月廿四日、下三栖内(○○○○)、下司名代官職事、〈◯中略〉仰二付有景一了、
〔康富記〕
p.0254 寶徳三年九月四日己亥、大住庄(○○○)名主兩人、〈東西〉來申云、大住庄與二松井村百姓一、草刈場堺目論事出來、〈◯下略〉
〔長享年後畿内兵亂記〕
p.0254 永祿三庚申年臘月七日、自レ曉雷電、正月二十七日御即位、七月三日、三好豐前入二河内一、趣二高屋一合戰、十月八日、香西越後守於二宇治五ケ庄(○○○)一出張、九日木幡燒、十日三栖鳥羽深草燒、
〔信長記〕
〈六〉
p.0255 室町殿重御謀反之事 十六日〈◯元龜三年七月〉信長卿、槇木ノ島ヘ向ヒ玉ヒケレバ、彼四人先懸ヲ申請テゾ加リケル、翌日信長卿ハ五箇庄、柳山ニ旗ヲ立ラレ、〈◯下略〉
〔山城志〕
〈七宇治郡〉
p.0255 村里〈◯中略〉 大和田、廣芝、畑寺、岡本、新出、岡屋、上(カミ)谷、〈已上八村岡ノ屋ノ郷、今呼二五箇莊一、〉
〔山州名跡志〕
〈五愛宕郡〉
p.0255 【大原】(ヲハラ) 在二矢背北一爲レ隣、於波羅(ヲハラ)ト唱フ、但和歌ニハ大原(オホハラ)トモ詠ズ、是則チ庄號ニシテ、分テ云二大原一里ハ無キ也、此庄内ニ南北ニ通ツテ往還道アリ、是ヲ隔テ東西ニ八ノ村アリ、南端戸寺村、其次上野村、大長瀬村、來迎院村、勝林院村アリ、西ハ南ニ井出村、其次野村其次草生村是ナリ、
〔續千載和歌集〕
〈十八雜〉
p.0255 大原にまかりて草庵の所などしめをきて後寂圓上人に申つかはしける、 常磐井入道前太政大臣 うれしくぞまだみぬ山のおくもみし世のうき時の宿もとむとて
〔山州名跡志〕
〈十三紀伊郡〉
p.0255 伏見(○○) 是即庄號也、伏見ノ方境ハ、今墨染寺ノ南二町許ニ、左右ノ辻アリ、是レ北ノ界也、但今所レ定伏見領ハ、稻荷北一町餘、大路ノ石橋ヲ限ル、南ハ京橋南十町餘、至レ淀堤ノ上ニ界アリ、西ハ竹田大路ヲ限リ、東ハ古城山巽、豐後橋ヲ限ル、
〔慶應元年武鑑〕
p.0255 稻葉民部大輔正邦(雁間從四位侍從文久三亥七月任) 拾萬二千石 居城山城紀伊郡淀〈江戸ヨリ百二十五里七町半當城者依二台命一築レ之、元和九、松平越中守定綱、寛永十、永井信濃守尚政、同右近大夫尚征、寛文十、石川主殿頭憲之、同主殿頭義孝、同石之助總慶、寶永八松平丹波守光煕、同孫四郞光慈、享保二、松平左近將監乘邑下總佐倉エ移、享保八稻葉丹後守正知以後領レ之、◯節略〉
〔倭名類聚抄〕
〈五國郡〉
p.0255 山城國〈◯註略〉 管八〈田八千九百六十一町七段二百九十歩、正税公廨各十五萬束、本稻五十萬四千七十九束三把、雜稻二十一萬四千七十九束三把、〉
〔伊呂波字類抄〕
〈也國郡〉
p.0255 山城國〈管八郡（中略）本田八千九百六十二町一反〉
〔海東諸國記〕
p.0256 山城州 所屬郡八、水田一萬一千一百二十二町、
〔運歩色葉集〕
〈屋〉
p.0256 山城〈田數 萬七千七百五町〉
〔雍州府志〕
〈一郡名〉
p.0256 凡愛宕郡有二五十八村一、秋米通計二萬六百七十八石九斗七升零、久世郡有二二十二村一、秋米通計二萬二千三百九十四石零、紀伊郡有二二十三村一、秋米通計二萬四千七百石九斗零、宇治郡有二三十七村一、秋米通計一萬五千二百十一石九斗零、綴喜郡有二四十三村一、秋米通計二萬八千七百三十二石一斗三升零、葛野郡有二六十八村一、秋米通計三萬四千九百六十八石九斗五升零、乙訓郡有二四十五村一、秋米通計二萬六千百五十四石八斗零相樂郡有二七十村一、秋米通計三萬五千五百十石四斗九升零、今考レ之則山城八郡通計秋米二十一萬八千三百五十二石一斗四升零也、比レ古則其所二收納一者有レ餘、近年依下新闢地與中縣吏入上レ竿也、倭俗墾田號二新開一、以二一間六尺三寸之竹竿一爲レ准、量二土地之廣狹一、是謂レ入上レ竿、村號多異二于古之所一レ記、今之所レ名悉載二于茲一、此内今公家之所レ領合十一萬九百三十五石零也、〈八郡之中其村號、倭名類、聚鈔并拾芥鈔之所レ記載二于茲一、今考レ之多違二今之所一レ稱、依二時世一面變易者乎、〉
〔日本鹿子〕
〈一〉
p.0256 山城國、八郡、大上々國、大上々國、南北百餘里、〈◯中略〉知行高二十萬六千七十石、
〔和漢三才圖會〕
〈七十二本山城〉
p.0256 八郡 二十一万六千七十石
〔官中秘策〕
〈一〉
p.0256 山城國〈◯中略〉 一石高貳拾貳萬四千貳百五拾七石餘
〔吹塵録〕
〈五人口及國高〉
p.0256 天保度御國高調 山城國〈御料私領〉 一高貳拾三萬百三拾壹石七斗六升八勺六才五札
〔延喜式〕
〈二十六主税〉
p.0256 諸國出擧正税公廨雜稻 山城國正税公廨各十五萬束、國分寺料一萬五千束、嘉祥寺料一千七百卅六束四把、海印寺料三千束、元慶寺料一千束、圓覺寺料一千束、東光寺料一千束、文殊會料二千束、修理驛家料一千束、池溝料
p.0257 三萬束、救急料六萬束、交易蒭直八千三百卅三束三分也、
〔倭名類聚抄〕
〈五國郡〉
p.0257 山城國〈◯註略〉管八〈（中略）正税公廨各十五萬束、本稻五十萬四千七十九束三把雜稻二十一萬四千七十九束三把、〉
〔延喜式〕
〈十五内藏〉
p.0257 諸國年料供進〈◯中略〉 畿内國營田舂米六百五十四斛七斗三升二合〈山城國百八十五斛一斗◯中略〉 支子〈數有二損益一〉山城國二園、五斛八斗六升、
〔延喜式〕
〈二十三民部〉
p.0257 交易雜器 山城國酒槽卅一隻、圓槽七隻、臼十腰、杵十五枚、槽八口、置簀十三枚、匏三百卅柄、輦籠五十四脚、〈◯中略〉 交易雜物 山城國〈大麥三石、小麥卅石、大角豆六石、胡麻子四石、荏子四石、〉
〔延喜式〕
〈二十四主計〉
p.0257 山城國 調廣席二百八十枚、狹席五百九十枚、折薦八百五十八枚、葉薦四百六枚、食薦一千五百枚、〈隨レ時損益、餘國准レ此、〉自餘輸レ錢、
〔延喜式〕
〈三十一宮内〉
p.0257 諸國例貢御贄 山城國〈平栗子、氷魚、鱸、〉
〔延喜式〕
〈三十三大膳〉
p.0257 諸國貢進菓子 山城國〈郁子四擔、蔔子一擔、覆瓮子一捧、楊梅子三擔、平栗子十石、〉
〔延喜式〕
〈三十七典藥〉
p.0257 諸國進年料雜藥 山城國卅二種 王不留行十二斤、獨活十斤、白朮廿五斤、地楡、黄蓍各十斤、牛膝、苦參各廿五斤、桔梗卅斤、香
、夜干各十五斤、昌
三斤、枳實、漏蘆、槀本各九斤、薺苨、苘草小蘗各六斤、龍膽、通草各五斤、紫菀三斤、商陸八兩、芍藥四兩、厚朴十八斤、白蘝二斤二兩、葛根卅二斤、鼠尾草三斤、桃人九升、杏人一斗八升、赤小豆四斗六升、蜀椒一斗二升、鼈甲一枚、白粟大一斗、
〔延喜式〕
〈三十九内膳〉
p.0257 山城國〈山蘭二斗、（中略）已上年料所レ進、◯中略〉 年料 山城國〈氷魚、鱸魚、〉
〔新猿樂記〕
p.0257 四郞君受領郞等刺史執鞭之圖也、〈◯中略〉宅常擔二集諸國土産一貯甚豐也、所レ謂〈◯中略〉山城茄子、
p.0258 〈◯下略〉
〔庭訓往來〕
p.0258 大舍人綾、〈◯中略〉六條染物、猪熊紺、宇治布、大宮絹、烏丸烏帽子、室町伯樂、〈◯中略〉嵯峨土器、〈◯中略〉大原薪、小野炭、小柴黛、城殿扇、仁和寺眉作、姉小路針、鞍馬木芽漬、醍醐烏頭布、東山蕪、西山心太、
〔毛吹草〕
〈三〉
p.0258 山 洛陽典樂頭屠蘇白散 半井龍腦丸 延壽院延齡丹 施藥院牛黄清心圓 盛方院鳳髓丹 竹田牛黄圓 上智院蘇香圓 兼康元康齒藥 慶祐太乙膏 慶雲意徳萬應膏 同茄子膏藥 大膳亮産藥〈同大極助、大膳大夫、右三家、〉 道正解毒 外郞透頂(ウイラウノトウチン)香 入江殿被綿 同表刺褚(ツヽ) 曇花院殿千瓜 伊勢因幡守作鞍鐙 後藤雕物 同粉銅 兩座金銀 本阿彌目利 正阿彌金具 埋忠鍔 同剃刀 糸竹具〈琴、琵琶、三尾線、横笛、笙、觱篥、圖竹、十二律四穴等、〉 鼔筒、鳥甲 冠 石帶 雛 張子 水引 扣箔(ウチハク) 色紙 短册 表具 表紙 板摺本 繪草紙 摺繪 縫薄物 帽子 縊物(クヽシモノ) 結鹿子 白粉 炭團 鏡 金銀、銅、眞鍮飾細工、御簾 桑黒柿等洗(スカシ)細工 塗師細工 蒔繪道具 筆 削楊枝 刻多葉紛 切付細工 鹿切革細工 土火鉢 圍爐裏等 紺染 梅染 茶染 藍染 紗羅(シヤムロ)染 揉紅梅 蘇枋染 味淋酎 消酎 南蠻酒等 西陣撰絲 厚板物〈綾練島紋島等〉 金襽 唐織 紋紗 戻(モヂ) 絹縮 木線羽織地 同袴地等 色絲 絹糸 安居院疊縁〈高麗ベリ、雲繝ベリ也、〉 筆柿〈丹波ヨリ來ヲ此所ニテサハスト云〉 非田院藺金剛〈昔此寺ノ門前ニテ、非人共作テ賣タルト云、當時ハ方々ニテ作レ之、〉同寺内白味噌 舟橋吉岡染 木下紫染 柳原絹 本新在家龜屋島 無車小路指金細工 大峯辻子前鬼豆腐 一條藥玉〈此外造花〉 似紺染(ニゴンゾメ) 土御門風爐小板 長者町圍爐裏縁 疊紙 新在家羽二重 羅板物〈段縬(シヾラ)片色等〉 立賣縊染物〈外ヨリ宜〉 春日通丸田町曝木 鷹鈴 大炊御門通爐火箸 政平庖丁 冷泉通南蠻菓子 ミズカラ、〈昆布ニテ作レ之〉 二條藥種〈諸國ヨリ集ルヲ、此所ニテ繕出ス、〉 洗鮫 秤 キセル 釜鐶鏁〈奈良鍛冶ト云、當時京ニ住ス、〉 金義鑷 佐伯柄卷 碁雙六盤 茶入袋 紗織物〈高官ノ御衣ニ奉レ之、二條邊也、〉 押小路針口砥粉 三條袈裟
p.0259 衣 蚊帳 繕綿(ムシリワタ) 蠟燭 釜座鐵唐金鑄物 粉川鼻革 六角調緒 頭巾 木綿袴 自在 位牌 銚子 坊門鑄物目貫 四條沼津屏風 藤重中繼 坊門茶筌〈麁相物、空也堂ニテ鉢扣作レ之、〉 白箸 道場 襪子 綾小路木綿足袋 觀音堂辻子精好 五條半女桃 扇地紙 腰張紙 煮紙子 澀紙 紙帳 坊門御倫旨紙 扣薄寫紙 六條佛具 燈籠細工 梅汁〈諸方染屋用レ之〉 山川酒 飯鮨 煎餅 醍井分餅(ヘギモチ) 坊門賀留多〈麁相物也〉 錫細工 御影堂扇 引物細工〈狛香合等ナリ〉 七條編笠團子〈小麥ニテアミ笠ノナリニスル也〉 八條淺瓜 九條眞桑 青瓜 芋 扣菽(ウチマメ) 水菜 藍 大宮通葡萄〈當所ニ多作出ス〉 丹後織絹紬〈其品多〉 堀川紺形〈二條邊ニ多雕也〉 水屋具〈井筒走釣瓶等〉 戸障子細工 油小路網代塗團扇 仕立刀 縊染物糊粉 土風爐 池川針 小川組緒 紐 織帶等 箞(ウツボ) 太刀 舞扇 饅頭 毬打(ギチヤウ) 振振玉(ブリブリタマ) 羽子 胡鬼板 菖蒲甲 同刀 踊團扇 同太鼔 西洞院椙細工 茶具 棗塗師 憲法染 織絞 雪踏 新町繪筆 面 乘物 淺黄椀 折敷 塗長持 行器 中島鏡〈和泉守ト云〉 挑燈 鞠 同沓 堅紅粉 室町塗葛籠 香具〈掛香、匂玉、燒物等、〉 目貫〈麁相雕也〉 上金剛〈絹ニテ作レ之〉 下緒〈鼠屋ト云〉 貝桶 倚懸 縊枕〈色々ノ絹也〉 筒衞護(ツヽマモリ) 烏帽子 松本洲濱
(ヲコシ) 烏丸内裏粽 麩灸 鹿茸 金賀留多 歌賀留多 櫻馬場張枕 文匣 插箱 藥罐細工 新物仕立 植毛虎皮 蒔繪手道具〈麁相物ナリ〉 道惠盃 數寄屋家具 疊大工 頭襟 篠懸(スヾカケ) 大經師經 同暦 大佛師 東洞院三本木ムク練 茶柄杓〈大津柄杓ト云、當時京ニ住ス〉、 黒柿抂鍋(マゲナベ)〈酒ノ渡カン鍋ニ用レ之〉 蒔繪下地印籠 板唐紙(ハンノカラカミ) 堺町明珍鎖 萬里小路鍔〈麁相物ナリ〉 雨紙 合羽 麩 冰蒟蒻 土圭細工 富小路扇骨要 御幸町玉細工〈軸、目金、數珠等、〉 練珊瑚珠 具足 椀木地 魚箸 網代籠履 寺町石塔細工 御靈前人形細工 誓願寺前糸鞦ドシ織 數珠 繪像 木像 紙表具 櫛 硯細工 角象牙細工 口藥入 唐革細工 決拾(ユガケ)細工 鎖子 打替 寸袋(スンブクロ) 雪沓 大皮踏皮(タビ) 屏風〈麁相物也〉 琴絲 金銀針 鑓長刀柄 弓箭細工 角倉町辛螺蚫摺貝 摺碁石 淺黄盆
p.0260 猶洛中名物雖レ多レ之、不レ遑レ記、 八幡蘇民將來 小弓 旗竹 菖蒲革 牛房 山崎油酒 善峯(ヨシミ子ノ)目藥 西岡竹 松尾白粉合土 梅津抹香 桂糖 常盤平野落髮細工 西京青菽 麹〈諸國麴ノ司ト云〉 北野作木〈諸木ノ枝ヲタメ置、舟鉢等ニ入テ商レ之、〉 辛螺青貝唐繪盆、折敷等、口人(クチウドノ)菜刀 宮司梅干 茶屋粟餅 眞盛衣大豆(シンセイノコロモマメ)〈比丘尼ノ業ナリ〉 淨福寺納豆 大徳寺蒸素麪 龍安寺山松茸 内野蕪菜 蓮臺野大根 嵯峨蒲萄 木練柿 庭石 大井川鮎モドキ 水尾柚樒、〈洛中佛前之花ニ用レ之〉 龜山蓍木 愛宕粽〈參詣之道者土産ニ用レ之〉 高雄砥〈高雄ナル砥取ノ山ノホトトギスヲノガカタナヲトギズトゾナク〉 鳴瀧飛石 栂尾土砂〈末期ニ用レ之〉 同茶〈根本ト云〉 畑枝土器 鞍馬草蔛(トコロ) 山椒皮 燧石 大原菩提子 杉丸太 一原篠葉〈洛中粽ニ用レ之〉 八瀬黒木 谷川カジカ 車坂鮎 賀茂川
(ハヘ) 
(イシブシ) ヲイカハ 打蒔青石 社家虫籠細工〈色々ノ作物ヲシテ大内ヘ上レ之〉 御手洗團子 田中鮨餅 吉田大根 黒谷茶入合土〈漢ノ土ニ似ト云〉 鐘鑄形工〈諸寺ニ用レ之〉 白川眞鍮瑠土〈諸國ニ行〉 切石 成道寺浮壺便(フクベ) 粟田口キセル土物 天邊太鼔、〈六サイ念佛鼠戸等ニ用レ之〉 モロヲロシ〈ウシノ子ノ皮ト云、刀ノ鞘ヌリ下地ニ用レ之、〉 祇園風車 蕚箒 茶屋豆腐 甘餅(アンモチ) 丸山醤 梅漬 八坂弦 履〈出家用レ之〉 遊行澀(サビ)土〈壁ニ用レ之〉 清水坂灸餅 作紙子 清閑寺木石(ボクイシ) 花山多葉粉 山科金屑丸 澀柿 茜染 源氏繪具 荷馬腹當 醍醐蒸竹 楊梅 甘干柿 大佛餅 蔟瓦(シヽカハラ) 椶櫚箒 明珍轡 象眼鎧〈猶洛中ニ多レ之〉 鷹鈴 著籠(キゴミ) 摺火打 法性寺籜笠 鼻尺八 東福寺門前地黄煎 火繩 額板 稻荷染團子 山黄土(ワウド)〈繪ノ具ニ用レ之〉 刃土〈諸國ニ行〉 壺々火桶 唐菘(タウガラシ) 深草糸瓜 藺箒 茶屋鶉餅 竹田蕗 鳥羽瓜 伏見雜喉 竹簾 美豆菖蒲〈五月五日洛中用レ之〉 蘆 眞菰〈同日洛中粽ニ用レ之〉 淀ノ川サガシ 名吉 宇治川小白魚(キスゴ) 
鱸 鯉 鱣鮓〈是ヲ宇治丸ト云〉 茶 同磨 風爐灰 圓柿 瓶原砥(ミカノハラド) 狛越瓜(シロウリ) 茄子〈外ヨリ早シ〉 薯蕷 ヌカゴ 牛房 蜜柑 柑子 金柑 柚柑 代々 久年母 當歸 地黄 山藥 干姜 生姜 紫蘇 薄荷 荊芥 青皮 陣皮 牡丹皮 山城米
〔日本書紀〕
〈二十七天智〉
p.0261 六年六月、葛野郡獻二白燕一、
〔宮中秘策〕
〈一〉
p.0261 山城國〈◯中略〉 一人數五拾貳萬貳千六百貳拾六人 内〈貳拾七萬六千九百四拾人 男 貳拾四萬五千六百八拾六人 女〉
〔吹塵録〕
〈五人口及國高〉
p.0261 諸國人數調(文化元甲子年)〈◯中略〉 一人數四拾六萬九千五百拾九人(御料私領) 山城國(高貳拾貳萬四千貳百五拾七石餘) 内〈貳拾四萬貳千九百貳拾人 男 貳拾貳萬六千五百九拾七人 女◯中略〉 諸國人數調(弘化三丙午年) 一人數四拾五萬貳千百四拾人(御料私領) 山城國(高貳拾三萬百三拾石餘) 内〈貳拾貳萬九千貳百八拾人 男 貳拾貳萬貳千八百六拾人 女〉
〔人國記〕
p.0261 山城國 山城之國之風俗ハ、男女トモニ其言葉自然ト清濁分リ善クテ、譬バ流水之滯フル事無フシテ、イサギヨキガ如シ、世俗ニ其國風ハ其水ヲ以知ルト云事誠ナル哉、城州ハ其水潔フシテ萬色ヲ染ムルニ、其色餘國ニハルイ違ヘル事、從レ古至二于今一如レ斯、人之膚之滑成事、亦如レ斯、女之姿音聲之尋常ナル事ナラブ國ナシ、然ドモ武士之風俗不レ好事、中々不レ及二子細一也、其所以考ルニ、王城之地ニシテ、常ニ管絃之樂ヲ翫ブ事ヲ見馴レ、或ハ商賣之人等ハ、遠國波島マデモ僞ヲ以テ實トスル習ナレバ、殊ニ王城ノ地如レ斯シ、サレバ常ニ實ヲ忘レテ虚ヲ談ズルヲ以テ、世ヲ渡ルヲ本トス、タマ〳〵實儀ノ人有トイヘドモ、其邪ニ推カクサレ、或ハ其實ヲ隱シテ、其風儀勤ル之類有ト見ヘタリ、如レ斯之武士千人ニ一人ナレドモ、是人モ後ハ如レ形之惡キ形儀ニ成ナリ、然レバ總テ此國ノ風俗實ヲ用勤ル人スクナキ故不レ知二義理一也、不レ知二義理一ガ故ニ、勇臆之儀ヲ沙汰スレドモ、餘所ノ事ニ心得ル故也、此氣質ヲ不レ離也、自然ニ好キ人有ハ口傳、
〔山城志〕
〈二〉
p.0262 風俗 水甘土厚、人嗜二技藝一、性稟寛舒、多二文雅士一、勁勇間豪傑、沈靜有二工思一、北山郷民、樸素存二古風一、
〔雍州府志〕
〈一風俗〉
p.0262 山城國中州而帝都之所レ有也、故古今之間、材徳技藝之人不レ可二勝數一、故人物措而不レ論、依レ之不レ置二人品門一、凡國中人情寛舒而無二疎豪之氣一、是又中土地氣之所レ使レ然者乎、
〔徒然草〕
〈下〉
p.0262 悲田院の堯蓮上人は、俗姓は三浦のなにがしとかや、さうなき武者なり、故郷の人の來りて物語すとて、あづまの人々に、いひつることはたのまるれ、都の人はことうけのみよくて實なしといひしを、聖それはさこそおぼすらめども、をのれは都にひさしくすみて、なれて見侍るに、人の心おとれりとは思ひ侍らず、なべて心やはらかに情あるゆへに、人のいふほどの事、けやけくいなびがたくて、よろづえいひはなたず、心よはくことうけしつ、いつはりせんとは思はねど、ともしくかなはぬ人のみあれば、をのづからほいとをらぬ事おほかるべし、あづま人はわがかたなれど、げには心の色なくなさけをくれ、ひとへにすぐよかなるものなれば、はじめよりいなといひてやみぬ、にぎはひゆたかなれば、人にはたのまるヽぞかしと、ことはられ侍りしこそ、此ひじりこゑ打ゆがみ、あら〳〵しくて、聖教のこまやかなることはり、いとわきまへずもやと思ひしに、此一ことばの後、心にくヽなりて、おほかる中に、寺をも住持せらるヽは、かくやはらぎたるところありて、其益もあるにこそとおぼえ侍し、
〔日本鹿子〕
〈一山城〉
p.0262 名所の類 白川 南禪寺のおくなり、寺の門前より西へ流たる川也、〈◯中略〉 岩藏山 此名洛の四方にあり、帝都鎭護の爲に、一切經を書て四方の山に埋れし故、此名ありといへり、東の岩くらは、白川の東南禪寺の上なりと云、北は松が崎の後、西はよしみね也、南は大和の國にあり、〈◯中略〉
p.0263 粟田山 粟田口といふ所也、三條通の東あふ坂に近し、十禪寺より花頂院のあたりをいふといへり、 うきめをばよそめとのみぞのがれ行く雲のあはだつ山のふもとに 山階里 郡の名也、粟田口より相坂へ行間、四の宮などヽいふ所有、 音羽山 相坂の關より南に有と云 相坂の筧の水に流るヽは音羽の山の紅葉なりけり 花山 清水寺の東也、遍昭の舊跡なり、また山科の内に鏡山といふあり、花山北也、 栗栖野 伏見の東、醍醐の西也、 見わたせば若なつむべく成にけりくるすの小野の萩の燒原 篠の隈 山階のうちに有、京より二里あまりなり、 清水寺 くはしく佛閣の所にしるせり 日吉の社 神社の所にくはしく有〈◯中略〉 稻荷 神社の所に有〈◯中略〉 深草〈山、野、里、〉 京よりは辰巳のかたなり、いなりの山の續也、 伏見〈里山〉 深草の南里續也、乘功法師のうたに、 冬の夜のさむけき月にかずみえてふしみの澤にわたるみづどり 木幡〈山里〉 伏見の東なり〈◯中略〉 笠取山 醍醐の南木幡の東也、大山なり、〈◯中略〉 宇治の〈山、里、川、〉 京より辰巳の方三里也、水上は近江の水海より流落て、末は淀川へ落る、川は北へ流れて、橋は東西にかけたり、山吹の瀬、槇の島、橘の小島が崎、皆同所の名所なり、〈◯中略〉 竹田河原 淀より東、伏見方也、〈◯中略〉
p.0264 鳥羽 秋の山 同池鳥羽のうちの名所也、竹田に近し、京より一里餘、淀の續也、〈◯中略〉 淀〈河、渡、橋、◯中略〉 京より未申の方三里也 美豆野 淀川の南の方也、みづの御牧と續たるも此所の事也、 八幡山 神社の所にくはしく有〈◯中略〉 駒野 京より奈良へ行道也 木津川 此川は駒野と木津の里との間なり、木津と云は南也、 泉川 都より南、奈良の順道にして、木津に近し、〈◯中略〉 柞の森 京より大和へ行道〈◯中略〉 岩田小野 淀の小橋の浮田の森のあたりなり〈◯中略〉 神南備社 山崎の西也、賀茂春日兩社ならびし故に此名あり、京より未申の方也、〈◯中略〉 水無瀬 山崎に近し、男山より西にあたる也、〈◯中略〉 桂川 西川と云、七條通の西也、 大原野 九條の通より少南なり〈◯中略〉 小鹽山 大原野のうちにあり、京より四里ばかり也、春日の末社たち給ふ、此所に岩倉といふ山寺あり、よしみねと云も此山のみね也、 葉室里 西山青生野より南也〈◯中略〉 松尾 葉室より北也、神社の所にくはしく書記せり、〈◯中略〉 衣手森 松の尾と嵐山の間也 梅津川 洛の西、松尾より東也、舟渡し有、〈◯中略〉 大井川 洛の西、嵯峨天龍寺の前の川也、〈◯中略〉
p.0265 嵐山 洛の西、松尾の北、法輪寺の後の山也、 龜尾山 嵯峨天龍寺上の山也〈◯中略〉 雙岡 仁和寺の東の方の岡也 阿太子山 樒原 月輪の里、兩所もあたごのうちの名也、 高雄山 洛の西北にして、あたご山のならびさがの北也、紅葉の名所也、栂尾、槇尾、皆近隣也、 鳴瀧川 仁和寺のおく、ならびの岡の北より流れ出る小河也、〈◯中略〉 衣笠山 是も仁和寺西也 位山 一條より北の通也、衣笠山より未申也、總而帝王の御座所をさして此名有と云説あり、 北野 京より戌亥にあたりて天神の御社有、神社の所に委ク書り、〈◯中略〉 紙屋川 北野の西也、北より流たる小川也、 平野 北野の西也 卜野 紫野同所か、また歌には紫野のならびのやうに見へたれどもいかヾ、北野のことか、〈◯中略〉 北山 京より戌亥也、衣笠山の近所なり、 船岡野 室町通也、一條より十町計也、〈◯中略〉 小野 若狹の境也、京より四里也、 鞍馬 此山都の北にあたりて、行程三里也、〈◯中略〉 貴船川 くらまの西也〈◯中略〉 大荒木杜 京とくらまとの間、市原野という所に有、鞍馬より一里南也、〈◯中略〉 松が崎 一條より一里計也、賀茂より東也、七月十六日妙法の送り火ともす、 氷室山 洛の北、松が崎より丑寅也、〈◯中略〉
p.0266 大原 都より三里、八瀬より一里北也、〈◯中略〉 瀬ガ井ノ清水 大原の里にあり〈◯中略〉 御影山 賀茂也、ひえいざんのふもとやせの里也、俗にみあれ山と云、〈◯中略〉 神樂岡 吉田山春日の社より南の方茂りたる松の木高き林のうちに小社有、是神樂岡の神、吉田の地主也、〈◯中略〉 雲の林 雲林院の事か、梶井殿とて、一條大宮より北に千本近くに御門跡の御所也、舟岡と北野との間也、〈◯中略〉 中川 北畠より一條東洞院へ流れたり、今出川共いへり、京極川とも云り、源氏かたたがへの夜、うつせみの尼の住ける、中川の宿といへるは、此あたりなりといへり、 滋野井 勘解由小路と、中の御門の間也、 鹽竈 六條高倉にあり、融大臣の舊跡也、
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