https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1306 浦ハ、ウラト訓ズ、裏ノ義、曲渚ニシテ直ニ海表ニ向ハザル處ヲ謂フナリ

名稱

〔倭名類聚抄〕

〈一涯岸〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1306 浦 四聲字苑云、浦大川旁曲渚、船隱風所也、傍古反、〈和名宇良〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈一水土〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1307 曲直瀬本無和名二字、神武紀同訓、按心訓宇良、對外面之名、裏訓宇良、對表之名、今俗有宇良街、謂通衢、宇良屋、謂人家背裏、浦亦曲渚、非直向在大洋、故名宇良、〈◯中略〉山田本、昌平本、隱風作風隱、大雅常武、率彼淮浦、毛傳、浦厓也、説文、浦水瀕也、王念孫曰、浦者旁之轉聲、猶水旁耳、

〔東雅〕

〈一地輿〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1307 浦ウラ 義不詳、倭名抄には四聲字苑を引て、浦大川旁曲渚、船隱風所也と註せり、〈古語にウラといひし事多し、浦を呼びてウラといひし、いづれの義にやあるらん、ウヘウラなど云ひしは表裏なり、又オモテウラともいひし、これに同じ、又萬葉集抄に、ウラとは下なり、ウラモナシなど云ふが如き是なりといふ、ウラミといひ、ウラヤムといひ、ウラヲモヒといふの類、皆これ心の内に思ふ所をいへばウラとは下なりといふも、また裏といふ義に異ならず、又占卜をウラといひ、ウラナヒといふが如きは、ウラアハスなどいふに同じくして、龜甲のうらの方を鑽りて、ハヽカ火にて燒て、表の方の坼し状を見る事なれば、これも又裏といふ義に異ならず、また上をもウラといふ、ウラウラシともいひ、またウレともいふ是なり、ウレといふは、ウラといふ語の轉ぜしなり、また末をもウラといふ、草にウラワカミと云ひ、木にウラガレといふが如き是なり、又古には桑樹をウラクハノキと云ひしと見えたり、また麗はしといふ事を、ウラクハシといひ、また和らげる事を、ウラヽといふ、春の日の和らげるを、ウラヽなど云ふが如き是也、舊説にすべて重ね言ふ詞には、上のことばのすゑを重ねいふ、たとへばハラハラといふべきを、ハララといひ、キラキラといふべきを、キラヽといふが如き是なりといひけり、さらばウラヽと云ひしも、ウラウラといふ如くなるなり、是等のことばの中、浦をいひて、ウラといひしは、倭名抄に、船隱風所なりと見えし説に據らば、風浪の平かに和らげる所をさしいひしとも云ひつべきなり、〉

〔倭訓栞〕

〈前編四宇〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1307 うら 裏をいふは衣の内ら也、家のうらも裏の義也、浦をいふも海面に對せし辭なるべし、歌に多く恨をそへたり、萬葉集に灣をもよめり、〈◯下略〉

〔藻鹽草〕

〈五水邊〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1307 浦 浦浪 浦路 浦わ 浦ま 浦見〈是は恨にそへたる也〉 浦かなし 浦さびし 浦つたひ うら〳〵 浦のとまや わらはべの浦〈是名所歟 老つしましまもり神やいさむらん波もさはらずわらはべのうら〉 四方浦 浦松 浦なれたる〈源氏浦也〉

制度

〔香取神宮古文書纂〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1307 下總國香取大禰宜長房申、常陸國浦々海夫事、注文一通遣之、早任先例、可沙汰之由、所仰下也、各不異儀之由候、仍執達如件、

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1308 應安七年五月廿五日 智兼〈花押〉 道轍〈花押〉 地頭御中 下總國香取社大禰宜長房申、常陸國浦々海夫事、先度被仰之處、不事行云々、甚無謂、神慮尤難測歟、所詮嚴密可其沙汰之由候、仍執達如件、 應安七年六月廿一日 智兼〈花押〉 道轍〈花押〉 地頭御中

〔徳川禁令考〕

〈五十三廻漕令條〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1308 寛文十亥年七月 唐船作之御船通行之節之儀ニ付、御料私領浦々江御證文、 唐船作之御船江戸より西國筋迄、浦々にて風波之節は、見懸次第船を出し、破損無之様に精を入べし、此證文浦々ニ而寫置之以來迄可其趣、然者此證文郷次に長崎迄相屆之、彼地奉行人江急度可差上之者也、 寛文十一年亥十月 内膳 但馬 大和 美濃 江戸より長崎まで浦々御料私領中 覺 唐船作之御船、江戸より長崎まで之浦々にて、自然風波之節は、其浦より船をいだし、御船不破損様ニ精を入べし、向後何時ニよらず、此趣を相守、可念者也、 寛文十一亥七月 内膳 但馬 大和 美濃 江戸より長崎まで浦々御料私領中

〔徳川禁令考〕

〈五十三廻漕令條〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1309 元祿三午年四月 關八州伊豆駿河國廻米津出湊浦々河岸之道法并運賃書付 〈駿河國〉一鹽久津浦 江戸江海上七十五里 運賃米百石ニ付四石七斗 〈伊豆國〉一〈三津 宇久須松崎 子浦〉 浦 江戸江海上五十八里より七十三里迄 三津 運賃米百石ニ付四石五斗  宇久須 運賃米百石ニ付四石三斗  松崎 運賃米百石ニ付四石貳斗  子浦 運賃米百石ニ付四石壹斗 〈伊豆國〉 長津呂 一〈手石 浦 下田〉  江戸江海上五十五里より五十八里迄 長津呂 運賃米百石ニ付四石壹斗 手石 運賃米百石ニ付四石  下田 運賃米百石ニ付四石 〈伊豆國〉 一〈伊東 宇佐見〉浦 江戸江海上三十八里より三十九里迄 運賃米百石ニ付三石四斗 〈伊豆國〉 一〈網代熱海〉浦 江戸江海上三十六里より三十八里迄 運賃米百石ニ付三石三斗 〈上總國〉 一木佐良津河岸 江戸江海上九里 運賃米百石ニ付壹石壹斗 〈下總國〉 一撿見川湊 江戸江海上八里 運賃米百石ニ付壹石 〈下總國〉 一〈曾我野登戸〉浦 江戸江海上拾里 運賃米百石ニ付壹石壹斗 〈武藏國〉 一神戸河岸 江戸江海上拾里 運賃米百石ニ付壹石三斗 〈武藏國〉 一〈野毛本牧〉浦 江戸江海上拾里 運賃米百石ニ付壹石三斗 〈武藏國〉 一神奈川湊 江戸江海上拾里 運賃米百石ニ付壹石三斗 〈上總國〉 一〈八幡五所〉浦 江戸江海上九里 運賃米百石ニ付壹石三斗 〈上總國〉 一〈金谷湊〉浦 江戸江海上拾五里 運賃米百石ニ付壹石九斗

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1310  〈安房國〉 一保田湊 江戸江海上拾六里 運賃米百石ニ付貳石 〈相模國〉 一浦賀湊 江戸江海上拾五里 運賃米百石ニ付壹石九斗 〈相模國〉 一秋谷浦 江戸江海上貳拾壹里 運賃米百石ニ付貳石七斗 〈相模國〉 一〈永井上宮田〉浦 江戸江海上拾六里より貳十里迄 永井 運賃米百石ニ付貳石六斗 上宮田運賃米百石ニ付貳石壹斗 〈安房國〉 一〈八幡正木〉浦 江戸江海上貳十三里 運賃米百石ニ付貳石九斗 〈相模國〉 一〈江島小坪〉浦 江戸江海上貳十八里 江島 運賃米百石ニ付三石六斗 小坪 運賃米百石ニ付三石四斗 〈相模國〉 一須賀浦 江戸江海上三十壹里 運賃米百石ニ付四石 〈安房國〉 一白子浦 江戸江海上貳十八里 運賃米百石ニ付三石五斗 〈安房國〉 一勝山浦 江戸江海上貳十貳里 運賃米百石ニ付貳石三斗 〈安房國〉 一〈磯村余瀬〉浦 江戸江海上三十六里 運賃米百石ニ付四石五斗〈◯中略〉 右之通、海上川通運賃米積書面之通相極候、 午四月

名浦

〔枕草子〕

〈九〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1310 浦は おふのうら、しほがまのうら、しがのうら、なたかの浦、こりずまのうら、わかのうら、

〔奧義抄〕

〈上ノ末〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1310萬葉集所名 普通名所不注〈◯中略〉 浦 まれかのうら〈ころもでの〉 名たかのうら〈むらさきの〉 繩のうら むこのうら さたのうら とよたのうら たひのうら たるひめのうら いそのうら たちのうら みぬめのうら

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1311 とものうら なつみのうら〈すかしまの〉 あさかのうら〈すみよしの〉 しきつのうら〈すみよしの〉 ちしのうら まとかたのうら かヽのうら まのヽうら みほのうら しかつのうら〈さヾなみの〉 あかねのうら ひらのうら さひかのうら(紀伊國) をみのうら あこのうら ひかさのうら しほつすかうら をりのうら 玉のうら まりふのうら いそまのうら〈かみしまの〉 まなかのうら のさかのうら たゆゐのうら なかはまのうら かざはやのうら かたみのうら まのヽうら〈かつしかの〉 したのうら たきのうら ふちしのうら ふせのうら

〔八雲御抄〕

〈五名所〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1311 浦 しがのうら〈近 万 しがつのうらの〉ひとの〈同 万〉おほ〈同 万 みぞれふる、とほつのおほうら、〉のじま〈同 あはぢ一説也、但皆入近江、〉みかみの〈同 くにつみかみのとも〉まなか〈同 万 みほがさき〉ちさかの〈同 千、俊憲、〉まのヽ〈同〉 あしりの〈同 万 たかしまの〉する〈同 万 しほつする浦といへり〉あさかの〈攝 すみよしのたまもうる〉むこの〈同 万 いりえのすと云り、あはしまをうしろにみる、〉まのヽ〈同 万 まのヽつぎはし、こ菅のかさ、〉みぬめの〈同 万 ますかヾみ〉おほわたの〈同 万 神代より千舟のとまり〉ちぬの〈同万〉すみよしの〈同 元輔歌、わすれがひ、あひをひの松、〉しきつの〈同 万 すみよしの、なのりそ、〉なにはの〈同 万 なはのうらとも、あし、〉いくたの〈同〉みつの〈同 業平歌、なにはなり、〉あしの〈同 後撰 足の由にはよめれ共、葦也、難波也、〉すま〈同 万 こりすまのうらといふは同所也、但別なる様にいふ人もあり、〉をみの〈伊勢 万 舟のりすらん、つまとも、〉ふたみの〈同〉〈古 たまくしげ、松、〉みくまのヽ〈紀 万 はまゆふ〉あかしの〈播 万 月、たけるひ、〉ふたみの〈同 古 兼輔、向但馬温泉道之、是もまたくしけ、〉ふぢえの〈同 万 白妙のふぢえの〉むろの〈同 万 をとのさきなる、なき島、〉ひかさの〈同 万 あまづたふひかさのいなみの、ゆきすぎぬ、〉あこねの〈紀 万 のじまはみせつ、底ふかき、〉あきの〈同万〉さひかの〈同 万 あまのともすひ、波まよりみ、〉みつなへの〈同〉たまの〈紀 万 鶴、あさりするたづといへり、〉いその〈同 万 をしどり、しらかみのいその、ゆらのさきしほひにけらし水つてのいそのうらはといふ、水傳也、〉なるみの〈紀歟、尾張歟、増基法師歌〉 〈万〉ちたの〈紀万〉 まとかたの〈同 万すとり〉いそまの〈同 万 神しまの、月よみのひかりをきよみ、〉けひの〈越前 万、つるが也、〉こつかみの〈河内 後拾、基房歌、元輔、こへかみ、〉たゆひの〈越前 万、こしの海、〉あこの〈長万〉ともの〈備後 万 むろの木、ますらをのてにまきもてるともの〉まりふの〈周防、万、〉にしきの〈出雲 清輔抄〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1312 〈志摩國道命〉いつもの〈同 古歌 いつもの浦のいつも〳〵〉そてしの〈後拾 國房、うつせがい、〉なたかの〈遠 万 むらさきの〉おほの〈万 そのなかはま、大きみのみほみことかしこみ、〉みほの〈駿 万 いほはらのヽきよるせきのと云り、きよみがさきのみほの、〉かざはやの〈同 万 かざはやのみほの浦といへり〉したの〈同 万 あさこぐ舟〉たごの〈同 駿河 田子、この田子は始古今、〉ふせの〈越中 万 家持、有藤水海也、家持國司依遊所也、〉たこの〈同 越中のたこ有聚、家持國司興遊所也、水海也、〉たかひめの〈同 万水海也〉なこの〈同 万 非攝津國、海中に鹿島と云、あまけのなごり、〉をふの〈同万、 伊勢にあり、是梨有所也、なし、ありそのめぐり、〉あを〈同万〉かとりの〈下總 万 たかしまの〉まヽの〈同 万 かつしかの〉まつか〈讚 万 まつかうら島は陸奥也、光成、まつか浦波とよめるは讚岐也、〉鹽がまの〈陸 古今、神御在所、〉とふの〈同 新古、爲仲、〉のこの〈筑前 万 からとまり〉まつらの〈肥前万〉ちかの〈同、道信歌、〉たかしきの〈對馬 万 うらまのもみぢ〉しかの〈筑前 万 しほ海のしか也〉そての〈出羽 新古、齋宮女御、〉からの〈石 万 鶴有信歌〉さたの〈石 筑紫也、万、わしきたの、〉みのふの〈同 後馬内侍〉のさかの〈筑紫 万 あしきたのみしまにゆかん〉とこの〈石 後相模歌〉まきの〈石〉ちえの〈同 万秋風〉かたみの〈紀万 いもが崎、鶴、〉なつみの〈同 万 すがしまなつみの、鶴、〉まわかの〈石 万衣での〉とばたの〈同 万郭公〉そこひの〈同 万 あめつちそこひの〉かすみの〈常〉なるゐの〈千〉わかの〈紀 万 山としまみゆ、かたをなみは潟なしといへり、〉おほよどの〈伊勢 齋宮女御〉ふけゐの〈同清正〉たかしの ありその〈越中〉よごの〈金 頼綱〉いちしの〈伊勢 俊成歌、新、〉つもりの〈攝 万住吉也〉をくの しのぶ〈陸〉かしひの〈土佐〉あみの〈讚、万、〉ちたの〈紀 万 あゆちかた〉まつほの〈淡、万、〉ゑとりの〈万〉しまの〈筑前、万、〉つのヽ〈石 万 浦なし、かたなしといへり、〉かぜなぎの〈万 かざなぎとも〉あこぎか〈古歌 しほ木つむ〉ながはまの〈能登 万、月、すヽの海、〉なるとの〈金永縁〉あはでの〈常陸 金雅光〉あふせの〈對馬〉うきしまの ねぬなはの〈丹後〉あさぢの〈對〉なさかの〈常陸、万、〉

〔藻鹽草〕

〈五水邊〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1312 浦〈付名所〉 伊勢浦〈波の花、はま萩、みるめ、螢、尋つる、鹽やく、いもが家づと、あまのまぐかた玉、櫻貝、しほ貝、忘がひ、うつせがひ、あはび、玉、〉 石浦〈紀州、岩つヽじ、をし鳥、あさりする、ゆらのさき、〉磯浦〈越中、あさけの水組、異本にはあさけのなごりとあり、をし鳥、菊、或云、是石浦同所歟、紀州と云々、〉 礒間浦〈紀州、神しまのいそまのうらとつヾけたり、あまのいさり火、千鳥、〉 生田浦〈攝州、鹽、あま、つり船、いくたびかなど云り、〉 一し浦〈伊勢あま、いそな、月、千鳥、〉 礒野浦〈ひくあみのめにかけながら、あはぬ戀、〉 出雲浦〈雲州〉伊香浦〈近江、みるめ、〉 池浦〈伊勢 松に吹池のうら風たかヽらし波にたヾよふうきしまの山〉 伊禰浦〈丹波 若めかるよさの入海かすみぬとあまにはつげよいねのうらかぜ〉 濱名浦〈遠江、しほ風、山おろし、〉 蓮浦〈越前 つみふかき身はほろぶやと音に聞はちすのうらをゆきてだにみん〉 錦浦〈しま、櫻、柳、貝、名に高き〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1313 〈錦のうらを來てみればかつかぬあまはすくなかりけり〉 爾閉浦〈とをたうみ、岩枕、敷しま、〉 床浦〈未勘、枕の上にしほたれて、むなしき波、月、 涙のみもろこし舟もよりぬべし身はうきしづむ床のうら風しきたへの夢あれにしまヽ、〉 鳥羽田浦〈同右、伊勢に飛幡と書る有、同事歟時鳥、五月雨、月、〉 遠津大浦〈近江、みぞれ〉 十府浦〈奥州、すがこも、水鳥、みし人もとふの浦風音せぬにつれなくすめる秋のよの月〉 時浦〈長門、わすれがひ、思ぞいづる、〉 鞆浦〈備後、むろの木、あまを舟、ますらをの手にまきもたるとものうら、〉 茅渟浦〈泉州、いもがためかいひろふ、松、しほひ、うき見る、〉 知田浦〈きの國、かぢをと、 あゆちがた鹽ひにけらしちたのうらにあさこぐ舟の沖に出るみゆ〉千賀浦〈筑前、千鳥、見るめ計を契にて、猶ぬらす、やく鹽煙、 ちかのうら浪よせかへる心ちしてひるまなくても暮しつるかな、或云肥ぜん、〉 千坂浦〈近江、鶴、 君が代の數にはしかじかぎりなきちさかのうらの眞砂なりとも〉 千枝浦〈未勘、秋風のちえのうらはのこつみなす心はよりぬのちはしらねど、〉 小鹽浦〈越前 思ひきや小鹽のうらのとまやにてね覺に秋の月をみんとは〉 小江浦〈紀州千鳥〉 若浦〈紀伊、たづ、鹽みちくればかたをなみ、忘貝、老の波、月、松の葉ごしにながむれば、沖つしほあひ、みくづ、もしほ草かく、あまのもしほ木、玉つ島姬、玉も、千鳥、雪、舟、入江のもくづ、神松、敷しま、戀かきあつむるもしほ草、濱千鳥、跡つけそむる、玉をみがく、光をそふる、かきをくなみのもくづ、昔にあとにまよふ、吹つたへたる若の浦風、家風、わかのうら松、老木の松、玉ひろふべき、みことのり、しづみはてぬる捨舟、わかのうら路、道まよふ、夜なく鶴、蘆、又和歌に寄てよめり、千鳥をよめるも其心なり、吹上の濱近なり、〉 香取浦〈下總、夏衣、あま衣、月、袖せばき、又同名有近江、それには、いづこにか船のりすらむ高しまのといへり、〉 韓浦〈未勘 おきつより鹽みちくらしからのうらわ、あさりするたづなきてさはぎぬ、或云、すわうかと云々、〉 香椎浦〈ちくぜん いざやこヽかしゐのかたに白妙の袖さへぬれてあさなつみてん〉 韓亭能古浦〈ちくぜん、泊、浪高し〉 霞浦〈常州、あまのいさり火、船、戀、磯な、歸雁、夕煙、あまのもしほのけぶり、〉 枯木浦〈丹波 枝もなきからきのうらも風吹ばなみの花とぞちりみだるらめ〉 勝間浦〈すわう 思ひ出よ千世の子日のけふことにかつまのうらの岸の姬松〉 風早浦〈駿河 我ゆへにいもなげくらし風はやの浦のおきつの霧たなびけり〉 葛飾浦〈下總、月、 かつしかの浦間のなみの打つけにみそめし人の戀しきやなぞ〉 風莫浦〈かざなみのうらの白なみいたづらにこヽによりくるみる人なしに〉 形見浦〈紀州、もかり舟、たづ、ちどり、月、戀、あまの釣舟、もしほぐさ、なみ枕、ゆめかへる、雁、空貝、いもがしまをそへたり、〉 鹿島浦〈常州、しほ、〉 堅田浦〈近江、あみのうげなは、あだなみ、つり舟鮒、あふ事はかただ共云り、〉 よ謝浦〈たんば、松のむら立、ちどり、いさり、あま、うら松共つヾけたり、〉 余古浦〈近江 衣手によごのうら風さしさしてたヾかみ山に雪ふりにけり〉 玉浦〈きの國、あさりする、たづ、月にみがける、〉 手本浦〈相州 馴て見したもとのうらのかひもあらば、ちどりのあとをたえずとはなん、〉 玉島浦〈筑前まつら河玉しまのうらにわかゆつりいもらを見らん人のともしき〉 手結浦〈越前、あま、 こしの海たゆいのうらに旅ねしてみれば戀しみやまと思ひつ〉 高砂浦〈播州、松、時雨、〉 竹浦〈同右 音そよぐ竹のうらかぜ吹立て眞砂にあそぶ秋のかりがね〉 高間浦〈常州 よそにみて袖やぬれなんひたちなるたかまのうらのおきつしらなみ〉 竹敷浦〈對馬、紅葉、玉も、御船、〉 高師浦〈遠江、或云、泉州と云々、此定、いるしほ、はまなの橋 をとに聞高師のうらのあだなみはかけじやそでのぬれもこそすれ、そなれ松なれずはいか〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1314 〈に、戀を多よめり、〉 高島浦〈あふみ、紅葉、〉 田籠浦〈するが、又ゑつ中、玉もかる、月、もしほのけぶり、あま霧、春のみなと、松、五月雨、なみのぬれぎぬ、早苗とる、たごの浦人 駿河なるたごのうら浪たヽぬ日はあれども君を戀ぬ日はなし、已上するが也、又越中のには、有松、時鳥 田子のうらの庭さへにほふ藤なみをかざしてゆかんみぬ人のため、〉 多留姫浦〈越中 たるひめのうらを漕つゝけふの日はたのしくあそべいひつげにせん たるひめのうらこぐ船のかぢまにもならのわきへをわすれておもへ、舟こぎめぐり〉 瀧浦〈大和 よし野川河波高し瀧のうらをみずかへりけん戀しくなへに、是宗祇法師注たる物にあり、さこそあるらめ、名仁のしたることなれば、不是非歟、又無不審にもあらず、若瀧の裏と云ふ心歟〉 袖師浦〈出雲、うつせ貝、千鳥、戀、みるめ、引あみのめにもたまらぬ涙、或云、伊勢、〉 そこひの浦〈未勘 天地のそこひのうらにあるごとく君にこふらんはさねあらじ〉袖浦〈出羽、左右にも浪やかくらむ、みなと入江のみをつくし、もしほ、たれも鹽くむ、あまのかるも、あま衣、みるめはからぬ、返す衣、玉もかりほす、涙の床にふしわぶる、我かたしきの雪、しほひもしらぬ、納凉、松、 君こふるなみだのかかる袖浦は岩ほ成共くちぞしぬべき〉 津守浦〈攝州住吉郡、大船、月、宮、各戀、こぬ夜つもり、松年、恨、うきと、あまくだる神、あま、雪、老の波、紅葉、神代より、すみよしのつもり、あびきのうけのを、〉 角浦〈石見、いはみの海の、つのヽうらはをうらなしと人こそみらめ、鯨魚石なし、〉 角鹿浦〈ゑつ中〉 根蓴浦〈丹後 くる人もなきねぬなわの浦なれば心とけずもみゆるなるべし〉 難波浦〈攝州、梅、あさり、釣舟、ひとつ橋、蘆刈、是はあしきによせたる也、うらみ、みつのあま、あしのうきね、宮木引あつさの杣、うきめ、ことうらにすむ月、千鳥、たづ、綱手引、なだのを舟、みぞれ、あしのうらは、時鳥、あまのたくなわ、あし火たく、衣うつ、老の波、をしてる、戀わたる、なにはのこと、螢、なには人、あしのしのや、こやのあしのしのね、みおづくし、夢、あびき、あしの一夜、難波おとこ、もしほのけぶり、入江、あしのかりの世、雪、なにはめ、いそな、ひかた、なにはとこぎ出て見れば時雨ける、いこまのたけ、〉 名高浦〈遠江 むらさきの名高のうらのなのりそのいそぎなびかん時まつわれを、紫の名高のうらの、なひきもまなごちに袖のみぬれて、紀州有同名、 きの國の名高のうらによるなみのをとたかしかもあはぬこゆへに、月、〉 名立浦〈攝州 かつきする名たてのうらのあま人は波のぬれぎぬいく代きぬらむ〉 繩浦〈同上 なはのうらをうむきにみゆるおくの島こぎまふ舟はつりをすらしも、彌陀國、〉 名佐可浦〈ひたちなるなさかのうらに鹽みちて有明の空に千鳥なくなり〉 奈呉浦〈ゑつ中、又つの國、つり、よる貝、戀、あま人、氷、月、いさり、あさこぎくれば、海中に鹿ぞ鳴、〉 長居浦〈つの國、千鳥、君が代のさヾれ石、鶴、すべらき、月、忘草、ふなとヾめする、〉 夏身浦〈紀州 するしまのなつみのうらによるなみのあひだもをきてわがおもはなくに〉 長濱浦〈能登 すヽの海にあさびらきしてこぎくれば長はまのうらに月てりにけり、或云、伊勢、〉 なゐの浦〈未勘、但攝州歟、 嵐吹伊駒の山に雪晴てなゐの浦はにすめる月かげ〉 長柄浦〈つの國、あし火たく、〉 鳴門浦〈すわう、又阿州、しほの音、玉も、 音に聞なるとの浦にかつきするあまよわびしきめをみする、〉 長門浦〈あさなぎに、みちくるしほの夕なぎに、〉 鳴尾浦〈つの國、秋にさむくなるお、あま人、松風、擣衣、ひヾき、〉 鳴海浦〈尾張、恨、はまひざき、うつせ貝、あぢむら生る、めうのすむ、石、千鳥、戀、ひくしほ、たづ、月、いくなるみのとうたへり、〉 武庫浦〈つの國、入江のす鳥、はくらける田鶴、千鳥、求食する、あまの釣舟、神のめぐみ、鹽ひがた、磯のむろの木、戀、 むこのうらにこぎまふ小舟あましまをうしろにみつヽともしきを船〉 室浦〈はりま むろのうらのせとのさきなるなかしまのいそこす浪にぬれぬらんかも、千〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1315 〈鳥、友舟、せとのはや舟、〉 結浦〈但州 あじろ過むすぶのうらの朝日影はるかに出るあまのつり舟〉 鶯浦〈大和或云、河内歟と云々、ただし、又云、泉州歟と云々、〉 宇度浦〈駿河あまの羽衣、はふりこ、千鳥、〉 猪名浦〈つの國、月、鶴、鹽鳥、〉 野坂浦〈肥後、葦、擣衣、 あしきたの野坂のうらに舟でしてみしまにゆかんなみたつなゆめ 蘆北の野さかのうらに鳴ちどりみしまにかよふこゑぞふけぬる〉 野島浦〈近江、玉もかる、あま衣、〉 後瀬浦〈若州、かつきのあま、みるめ、花かつみ、〉 能古浦〈筑前志摩郡、からとまりのこのうら波たヽぬ日はあれ共君を戀ぬ日はなし、〉 能登浦〈万 のとのうらにつりするあまのいざり火の光にいまし月待がてら〉 大輪田浦〈つの國、或云紀しう、 濱きよくうちなつかしみ神代より千舟のとまる大わだのうら〉 大浦〈近江 みぞれふるとをつ大うらによる波のたとひよるともにくからなくに〉 大江浦〈同右 玉もかる大江のうらのうら風につくしの花はちりぬべらなり、わたなべの大江のうらともつヾけたり、〉 おほの浦〈とをたうみ 大君のみことかしこみおほのうらをそがひに見つつみ山へのぼる〉 大淀浦〈伊勢、かりほすみるめ、貝、鶴、歸雁、あまのつりふね、あやめ、みそぎ、神の初も、大淀のみそぎいく代に成ぬらん神さびわたるうらの姬松 おほよどの松はつらくともあらなくにうらみてのみもかへる波かな〉 宇生浦〈同右、又越中射水郡有同名、櫻、あさ、戀、なき名のみ、ともちどり、船のり、みるめ、いづれの島、玉も、かた枝さしおほひなるなしのなりもならずもねてかたらはん、又越には、 をろかにぞわれはおもひしおほのうらのありそのめぐりみれどあかぬや〉 烏咩浦〈持統天皇、伊勢國に行幸の時、都に留てよみ侍ける、人丸、 をみのうらに舟のりすらんつまどもの玉ものすそにしほみつらんか〉 松浦〈ひぜん、をとめら、とこよのくにのあまをとめ、ふねの行衞も、波の千へにへだてヽ、鏡の神もろこしかけて見渡は、松浦ふねみをはやみかぢとる方、〉 松賀浦〈さぬき 松がうらに、さはへうらたちまよひことおほみすなもるわりもほのすも、松山の松が浦風吹よせばひろひてしのべ戀わすれ貝、〉 松島浦〈奥州、礒のたづ、擣衣、あま、千鳥、紅葉、〉 まきの浦〈未勘 中々に君に戀ずばまきの浦のあまならましを玉もかりつヽ〉 松帆浦〈淡路、舟せにみゆるあはぢ島、こぬ人を、も鹽、朝なぎに、玉もかりつヽ、夕なぎ、戀、〉 的形浦〈紀州 的かたの浦のす鳥も波たてば妻よび立てへに近づくも〉 麻利府浦〈すわう、いもがいへちかくありせばみれどあかぬまりふの浦を見せまし物を、 大舟にかぢふり立て濱きよきまりふのうらにやどりかせまし、まかぢぬき舟ぢゆかすは、〉 眞長浦〈近江 思ひつつくれどきかねてみほがさきまながのうらを又かへりみつ〉 わかの浦〈未 衣手のまわかのうらの眞砂地にまなくこふらくわがこふらくは〉 眞野浦〈攝州、よどのつぎ橋、こ菅笠、夜舟、入江、かもめ、玉も、みだれあしのほむけの風、尾花、舟よばふ、又あふみにも在同名、それには入江のす鳥、月、ひらの山、風、鶉、〉 眞間浦〈下總葛飾郡 かつしまのまヽのうらまを漕舟のふなべにさはぐ波立らしも かつしまのまゝのうら風吹にけり夕浪こゆるよどのつぎ橋、あけのそほ船、からろ〉 眞熊浦〈伊賀、貝、松原、手向草はまゆふ、青つヽら、なぎの葉、〉 麻續浦〈伊勢、舟のりをとめ、〉 氣比浦〈越前あたかの郡 けひのうらよするうら波しき〳〵にいもが姿はおもほゆるかも〉 吹飯浦〈いづみ日根郡、ゑしまのいそに月かたぶきぬ、あまつ風、ゐるたづ、千鳥、さ夜もふけ井のしほむ我世、ふけゐのうらみても子思ふ、つる、おきつ風、舟、波、有同名、千鳥、月、よさのふけ井とつヾけたり、〉 吹上浦〈紀州 たつ浪の花かあらぬかうら風にふきあげにすめる秋のよの月〉 笛浦〈丹波 音たかきなみたちよりてきヽしかばふえのうらにも風はふくなり〉 古江浦

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1316 〈未勘 万代のかげをならべて鶴のすむふる江のうらは松ぞこだかき〉 布勢浦〈越中射水郡 ふせのうらに行てしめでは百敷の大宮人にかたりつげてん 音にのみ聞て目にみぬ有、〉藤江浦〈はりま あらたへのふぢ江のうらにすヽぎつるあまとかみえん旅行われを 沖つ波へなみをやすみいさりすとふぢ江のうらに舟ぞどよめる、鮪つる、鹽やく、夜船、かもめ、かもゐ、をきつす、夜船、いざよふ月、〉 藤井浦〈同、あしたづのふぢゐのうらにしびつるとあまぶねによみしほやくと、〉 二見浦〈播州、勢州、兩所、 夕月夜おぼつかなきを玉くしげ二見のうらは明てこそみめ、是は播州歟、 玉くしげ二見のうらのかひしげみまきゑにみゆる松のむら立、おきつしま人、月、千鳥、かたしかひ、あられ、伊勢しま共そへたり、いせ也、〉古津神浦〈あは こつかみのうらに年へて、よるなみの同心に返る也けり〉 越路浦〈ゑちご 物おもひこしぢのうらの白なみもたちかへるならひありとこそきけ〉衣浦〈もにあらはれて玉ぞよりくるぬれてほすあまの衣のうらなみ、ちどり、しほたるヽあまの衣の玉かしは、みるめすくなき、月、〉 明石浦〈はりま、螢、船松原、月、桂、千鳥、波枕、鹿、擣衣、とまや、やく鹽、あま小舟、あまのいさり火、たくもの煙、たける火のほにほ出ぬる、いもにをしく、〉 阿古木浦〈勢州、月、恨、思、もしほ木に雪つみそへて、つむや鹽木の、からきおもひあこぎが浦のうらみても度かさなればかはる契りを、〉 阿古根浦〈紀伊 わが思ひし野しまは見せつ庭ふかきあこねのうらの玉もひろひぬ〉 有間浦〈攝津、木葉、すけ、〉阿古浦〈長門 あこのうらに船のりすらん乙女子があかものすそにしほみつらんか〉 有礒浦〈越中射水郡 からくのみありそのうらの濱千鳥よそに鳴つ、戀やわたらん、思、〉淺香浦〈攝州住吉郡、みをつくし、玉もかる、夕されば鹽みちきなん、常州有同名、〉 飽浦〈紀州、空貝、 あびきするあまとや見つるあきのうらの清きあらそを見にこしわれを〉葦若浦〈未勘 あしわかの浦にきよする白波のしらじな君は我おもふとも、或云、わかの浦と云、〉 秋津浦〈紀州 藻かり船秋津のうらにさほさして思ふ人どちこぎつヽぞゆく〉蘆屋浦〈攝州、月、霧の遠島、なだ、鹽やき、海松、いさりび、ほたる、〉 恠浦〈常陸 立しきりたれも一にさはぐ也あやしのうらの波のこヽろは〉 あしの浦〈攝州、しまめぐり、あしのうらのものさだなくも見ゆるかな波はよりてもあらはざりけり、或云、伊勢、〉 あをの浦〈伊勢、あをのうらによする白波いやましにたちヽをよせてあゆをいたみかも、〉 足利浦〈近江〉 會瀬浦〈常州 七夕のあふせのうらによる浪のよるとはみれど立かへりつヽ〉 あは手浦〈尾張、あまだにもみるめはかづく物とこそきけ、しほたるヽ袖のひるま、うつせがひ、名にたてゝ、戀、もしほび、かたいと、あまのすて舟、〉 あみの浦〈さぬき、あまをとめがやくしほ、波風も長閑なる、あみのうら人、たヽぬ日ぞなき、〉 ありの浦〈 立歸り名ごりもありのうらなれば神もめぐみをかくる白なみ、勅撰には不入歌也、〉 遊浦〈丹後みるかひ、〉 さたの浦〈出雲 沖つなみへなみのきよるさたのうら此さた過てのちこひんかも さだまらぬなみ、さたのうらによする白なみ、源もなく思ふをいかにいもに逢がたき、〉 雜賀浦〈きの國 きの國のさひがのうらにいてみればあまのともしびなみ間よりみゆ〉 里海士浦〈あは、しほやき衣、たちわかれ、衣うつ、歸雁、うらなみに、なれて鹽くむ、春の雁かね、〉 堺浦〈きの國、但和泉歟、あま、興つも、 新春のさかひのうらのさくら鯛あかねかたみにけふや引らん〉 夕日浦〈たんば いさごふみ見にこそ來つれ入かたや夕日のうらの天のはしだて〉 三尾浦〈駿河、しらつヽじ、松、月、霧、風はやのみお共つヾけたり、清みが關をもそへたり、富士のけぶりをもそへたり、是等何も近所也、山ぢ打出て、〉 三穗浦〈つの國、もしほやく、是にもしらつゝじ〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1317 〈をよめる歟、然はするかかと相似り、いかヾ、〉 箕面浦〈つの國、是如何、不審也、〉 三島浦〈同右、もしほ火、櫻貝、 波のたつ三島の浦のうつせがひむなしきからに我やなりなん〉 みのぶの浦〈未勘 うかりけるみのぶのうらのうつせがひむなしき名のみ立はきヽきや、但筑前歟、〉 三浦〈さがみ しはつきのみうらさきなるねつこ草あひみずあらば我戀んやは〉 蓑浦〈近江、長明詠と云々、〉 三熊野浦〈紀州、又伊勢、はまゆふ、戀、船、松、手向草、駒のつまづく音、つゞら、波の白ゆふ、雪、〉 水江浦〈奥州 さよ更て都に出る月影を水の江のうらに〉 三名部浦〈紀州 いそな、みつなべのうら、鹽みつな、かしまなる釣するあまをみてかへりこん、〉 水傳磯浦〈同上、岩つヽじ、〉 三津浦〈近江、しての音松、〉 御座浦〈土佐 うちにせとみましのうらはかひもなし衣かたしく人もなければ〉 三上浦〈近江野洲郡、月ますかヾみ、さヾ波のくにつ三上とつヾけたり、〉 御津浦〈攝州西生郡、蘆、 難波づをけふこそみつの浦ごとにこれや此世をうみわたる舟〉 三犬女浦〈攝州、ます鏡、千鳥、もヽ舟、松、月、鹿、あま、もしほ木、うき人、あた波、忘がひ、〉 みるめの浦〈みつ鹽のながれひるま、雪、 とはヾやなみるめのうらにすむあまもこヽろのうちに物やおもふと〉 三方浦〈若州、月、〉 鹽屋浦〈紀州、煙、あま、 思事くみてかなふる神なればしほ屋に跡をたるヽなりけり、宗祇注之、不審あり、〉 志田浦〈駿河、月、うきしま、 しだのうらあさ漕船はよしあしにこぐらめかもよなしこざるらめ〉 鹽竈浦〈奥州宮木郡、煙絶にし、浦さびしく、うらこぐ舟のつなでかなしも、前にうきたるうきしま、雪、霧、月、たくもの煙、人めも見えぬ、ひかた、白川の關のあなたに立名するとり、〉 信夫浦〈同右、人め、やくしほ、あまのたく繩、けぶり、或は、立けぶり、夕けぶり、をくあみ、人しれぬ名にたつあまのもしほ火、〉 志賀浦〈近江、又筑前糟屋郡にも有、よめる事かはれり、先あふみには、ふなのり、氷、櫻、月、雪、時雨、霧、網のうけなは、松、みるめなき、しらゆふ、花、駒なべて、打出の濱、歸雁、螢、入江の蘆、 昨日までみたらし河にせしみそぎしがのうら波たちぞかはれる しがのうら五の色の浪立てあまくだりけるいにしへのあと、ちくぜんには、いさりするあま、からふゑに田鶴鳴わたる、歸雁、うらまこぐらし、かぢの音きこゆ、神社あり、しほやくけぶり風をいたみたちはのぼらで山にたな引、 しがの浦のひとつにおちずやくしほのからき戀をも我はするかな〉 しまの浦〈紅葉 大和路のしまのうらはによするなみあひだもなけんわが戀まては、ちくぜん歟、さほの山風、〉 白神磯浦〈きの國、しほひ、ゆらのさき、〉 柴浦〈 あまのたくしばのうら風吹まにけぶりとみえてたつ千鳥かな、〉白菅浦〈とをたうみ、松、入海、〉 鹽津浦〈あぶみ、淺井郡、これいかヾ、〉 敷津浦〈攝州、なのりそ、春霞もしほ草、時雨、岩根の松を枕、松のむらだち、月、衣手、雪、眞砂地うき枕、こよひばかりや旅ねせん、旅ねの夢、〉 繪島浦〈淡路、松、櫻、月、千鳥、紅葉、雪〉、 延鳥浦〈よしやえしたヾならずともえとり浦歎ゐたるかつげんこもかも〉 比良浦〈近江 中々に君に戀ずばひらの浦のあまならましを玉もかりつヽ〉 日笠浦〈播州 いなみ野は行過ぬらしあまつたふひかさの浦になみたてるみゆ、さしてくる、〉 屏風浦〈同右 立けるかびやうぶの浦の春霞世にあふ坂の關をこさじと〉 ひかたの浦〈未勘 くるしまに薄ちるらし夕鹽のひかたのうらにあまの袖みゆ〉 藻鹽浦〈未勘 絶ず立もしほのうらの夕けぶりいかなる時におもひけたれん〉 飾磨浦〈播州、つり船、民、かたびさし、〉 諏磨浦〈攝州八部郡 すまのあまの鹽やきヽぬの藤衣まとをにあればいまだきなれず すまのうらのあまのこがつむもしほ木のからくも下にもえ渡るかな、すまのうらのなぎさにたてるそなれ松しづ枝は波のうたぬ日ぞなき、山下風にうらづたひする〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1318 〈紅葉かな、紅葉、わくらはにとふ人、こりずまのうら、戀、もしほたれ、くゆる煙、舟、五月雨、雁、千鳥、やく鹽がまの煙たく、も、波かけ衣、鹽かぜ、みるめからん、月あまのつり舟あまのまとをの衣、もしほくむ、霧なぎたるあさは、めもはるに、關守しほひに玉もかる、松、しほたれ衣、關吹こゆる秋風、舟のかぢをたえ、あまのいさり火、とまや、あま飛雲、うら松の葉ごしにおつる月、 すまのうらに玉もかりほすあま衣袖ひづしほのひる時ぞなき、うきね、衣うつ、春の夜の月、時雨たびねする雪、やくしほとけさ立煙、關屋の板びさし、月もれ、〉 すが浦〈近江 高島のありその海をこぎ過てしほつすがうらいまかこぐらん〉 住吉浦〈攝州、きしの姬松、行幸、藤、松、玉も、眞砂、きしうつ波、敷しまの道、月、しき波、みつしほ、夕立、神、あけの玉がき、千木のかたそぎ、霜、戀、忘草、鶴、わたつ海をあらはれ出しちかひ、五月雨、あら人神、うつせ貝、みをづくし、住吉の松は昔の二葉より久しきことのためしにぞひく、〉

和泉國/吹井浦

〔諸州めぐり〕

〈三和泉〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1318 吹(フケ)井の浦、〈淡輪より半里餘、信連より三里許、〉名所也、民家多し、海濱左右に山の出崎あり、和泉國の浦々の内にて、最佳景也、〈◯下略〉

高師浦

〔金葉和歌集〕

〈八戀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1318 堀河院御時、艷書合によめる、〈◯中略〉 返し 一宮紀伊 音にきくたかしのうらのあだ波はかけじや袖のぬれもこそすれ

攝津國/須磨浦

〔書言字考節用集〕

〈二乾坤〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1318 須磨浦(スマノウラ)〈攝津八部郡〉

〔海上行囊抄〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1318 須磨 自兵庫于此一里、自駒ガ林一里ニ近シ 須磨トハ、駒ケ林ヨリ一ノ谷ノ中間ヲ云、東須磨、濱須磨、西須磨トテ三段ニアリ、

〔古今和歌集〕

〈十八雜〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1318 田村の御時に、事にあたりて、津の國の須磨といふ所にこもり侍りけるに、宮の うちに侍りける人に遣はしける、 在原行平朝臣 わくらばに問ふ人あらばすまの浦に藻鹽垂つヽわぶと答へよ

〔源氏物語〕

〈十二須磨〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1318 御舟にのり給ぬ、日ながき比なれば、をひかぜさへそひて、まださるの時ばかりにかの浦につき給ぬ、〈◯中略〉おはすべき所は、ゆきひらの中納言の、も鹽たれつヽわびける家居ちかきわたり成けり〈◯中略〉御返かき給言の葉思ひやるべし、〈◯中略〉 あまがつむなげきの中にしほたれていつまですまの浦とながめん、きこえさせんことのい

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1319 つとも侍らぬこそ、つきせぬ心ちし侍れなどぞありける、

〔謠曲〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1319 忠度 抑此須磨の浦と申は、さびしきゆへに其名をうる、わくらはに問人あらばすまの浦に、もしほたれつヽわぶとこたへよ、實や漁のあま小船、もしほの煙松の風、いづれかさびしからずと云事なき、

敏馬浦

〔萬葉集〕

〈六雜歌〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1319敏馬浦時、山部宿禰赤人作歌一首并短歌、 御食向、(ミケムカノ)淡路乃島二(アハヂノシマニ)、直向(タヾムカン)、三犬女乃浦能(ミヌメノウラノ)、奧部庭(オキベニハ)、深松採(フカミルツミ)、浦回庭(ウラワニハ)、名告藻苅(ナノリソヲカリ)、深見流乃(フカミルノ)、見卷欲跡(ミマクホシケド)、莫告藻(ナノリソ)之、己(ノオノガ)名惜三(ナヲンミ)間使裳(マヅカヒモ)、不遣(ヤラズ)而吾者(テワレハ)、生友奈重二(イケルトモナシ)、〈◯短歌略〉

〔萬葉集抄〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1319 攝津國風土記曰、美奴賣松原、今稱美奴賣者、神名、其神本居能勢郡美奴賣山、昔息長足比賣天皇、幸于筑紫國時、集諸神祇於川邊郡内神前松原以求禮福、于時此神亦同來集曰、吾亦護治、仍諭之曰、吾所住乃山、有須義之木、各宜材採、爲吾造船、則乘此船而可行幸、當幸福、天皇乃隨神教、遣命造一レ船、此神船遂征新羅、〈◯註略〉還來之時、祠祭此神於斯浦、並留船以獻神、亦號此地美奴賣、敏馬浦、此處歟、

伊勢國/安漕浦

〔書言字考節用集〕

〈二乾坤〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1319 安濃浦(アコギガウラ)〈又作阿漕勢集安濃郡〉

〔伊勢參宮名所圖會〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1319 阿古木浦 今津の城下岩田橋より巽にありといへど、古所詳ならず、〈◯中略〉 按るに、阿漕は地名にて、元は一堆の島にてありしなるべし、其證歌六帖、鯛の題にて、 あふことをあこぎの島にひく鯛のたび重ならば人しりぬべし、此歌を直して、いせの海あこぎが浦にひくあみのたびかさなれば顯れにけり、とさへ誤れり、あこぎといふ名の事、或云、濃の字をコギと讀て、安濃浦を誤りたるか、又云、あことは海子の事にて、きとは木なるべし、これは鹽木をこヽに積たる事の多きによりて、あこぎとはいひたるにや、あこの證歌は、萬葉三

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1320 に、大宮の内まできこゆあびきすとあことヽなふるあまのよび聲云々、鹽木は此浦に古歌多し、 新後拾 崇全法師 わすれなよ度をかさねて鹽木つむあこぎが浦になれし月影 同按察使公敏、いかにせんあこぎがうらに袖ぬれてつむや鹽木のからきおもひを、

二見浦

〔書言字考節用集〕

〈一乾坤〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1320 二見浦(フタミノウラ)〈勢州度會郡〉

〔伊勢參宮名所圖會〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1320 二見浦 二見は、清き渚、打越濱の邊りの總名にて、此を立石といふは、注連はりし二ツの石に付ていへり、二見の名義説々あれども、悉く信ずるに足らず、汐の干ぬれば、いろ〳〵貝を拾ひ藻を取、ある時は網引などして、あまのしはざども甚興あり、 或は立石の注連は、興玉の拜所にて、遙沖の大成岩の汐干にも見へぬ岩神あり、是猿田彦にて、わだつみの神也云々、 されどもわだつみは、日本紀に海童と書て、たヾ海の神を拜する成べし、猿田彦といふには及ぶべからず、又磯の砂、珊瑚砂と號るものうち交りて、實に珊瑚に似たる石あり、 又旭に富士を見る事、參詣記に云がごとし、日の地下を離んと欲する間は、全く見へて、景情尤心を澄せり、

志摩國/阿胡浦

〔萬葉集〕

〈一雜歌〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1320于伊勢國時、留京柿本朝臣人麿作歌、 嗚呼兒乃浦爾(アゴノウラニ)、船乘爲良武(フナノリスラム)、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000018d02.gif 嬬等之(ヲトメラガ)、珠裳乃須十二(タマモノスソニ)、四寶三都良武香(シホミツラムカ)、

〔日本書紀〕

〈三十持統〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1320 六年五月庚午、御阿胡行宮(○○○○)、時進贄者、紀伊國牟婁郡人、阿古志海部阿瀬麻呂等、兄弟三戸復十年調役雜徭

駿河國/田子浦

〔運歩色葉集〕

〈多〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1320 田子浦(タコノウラ)〈駿河〉

〔書言字考節用集〕

〈一乾坤〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1320 田子浦(タゴノウラ)〈續日本紀、作田胡、駿州廬原郡、〉

〔東海道名所圖會〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1321 田子浦 田籠、あるひは田兒とも書す、都て清見興津よりひがし、浮島原迄の海邊の總號なるべし、

〔笈埃隨筆〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1321 一田子の浦は、昔しの街道なりしが、親不知とて、高山岩石屏風の如く、礒邊は波高くして、しばしも止事なし、其波の引間に走り通り、一騎打にて行人路を顧るいとまなく、明暦元年の秋、半腹を切ひらきて往來とせり、故に今誠の田子の浦を知る人なし、

〔續歌林良材集〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1321 するがの國の風土記に云、廬原郡不來見の濱に、妻をおきてかよふ神あり、其神つねに岩木の山より越て來るに、かの山にあらぶる神の道さまたぐる神ありて、さえぎりて不通、件の神あらざる間をうかヾひてかよふ、かるがゆゑに來ることかたし、女神は男神を待とて、岩木の山の此方にいたりて夜々待つに、まち得ることなければ、男神の名よびてさけぶ、よりてそこを名付て、てこの呼坂とすと云々、てことは東俗の詞に、女をてこといふ、田子浦も手子の浦なり、

相模國/由比浦

〔吾妻鏡〕

〈三十四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1321 仁治二年四月三日辛酉、戌刻大地震、南風、由比浦大鳥居内拜殿被潮流失、著岸船十餘艘破損、

〔吾妻鏡〕

〈五十一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1321 弘長三年八月廿七日甲戍、申刻以後風雨、入夜大風、由比浦船舶沒、彼死人寄河彼是不勝計

常陸國/霞浦

〔木曾路名所圖會〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1321 霞浦〈行方郡に屬し、箕幡江の中也、又香澄とも書す、◯中略〉 ゆく川の水はたえずして、もとの水にあらず、此浦をながめてなを船に乘て行ば、紅日漸生じて雲は錦繡の色をなし、樹々ははるかに彩畫を見るに等し、日夜の潮聲幾たびか去來し、古今の山色たヾ濃淡あり、老子曰、江海の所以は能百谷の王たり、其能下るのゆへをもつてす、舷に昇て見れば、魚の波の上に踊る、これなん莊子の魚樂を論じて、又おのれが樂しみとす、こヽは我國のひ

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1322 んがしの極なれば、日の光もめづらかに、東方朔が十州の記に、祖州東海の中にありて、地の廣サ五百里、上に不死草瓊田の中に生ずとかや、其草菰苗に似たり、長三尺許、人已に死するときは、即これを覆へば忽蘇るとぞ、舵工にかたり〳〵なぐさむれば、程もなく鹿島の鳥居のもとに著く、

陸奥國/鹽竈浦

〔東遊雜記〕

〈二十三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1322 八つ時過鹽竈浦へ御著船なり、此浦むかしにかわりて、ふね入淺く、やう〳〵船の通行せる事にて、所々に柱を建てしるしとせり、海面清淨ならず、入江々々沼のごとくに見ぐるし、町にあがりては、松島の町よりは大にすぐれ、三百餘軒あり、町の間に鹽筒尾命の社あり、

〔古今和歌集〕

〈二十東歌〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1322 陸奧歌 みちのくはいづくはあれど鹽竈の浦こぐ舟の綱手かなしも

播磨國/明石浦

〔運歩色葉集〕

〈安〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1322 明石浦

〔書言字考節用集〕

〈二乾坤〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1322 明石浦(アカシウラ)〈播州明石郡〉

〔倭訓栞〕

〈前編二阿〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1322 あかし〈◯中略〉 日本紀に赤石をあかしとよめり、播磨の明石も、延喜式に赤石に作る、〈◯下略〉

〔萬葉集〕

〈三雜歌〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1322 門部王在難波漁父燭光作歌一首 見渡者(ミワタセバ)、明石之浦爾(アカシノウラニ)、燒火乃(トモスヒノ)、保爾曾出流(ホニゾイデヌル)、妹爾戀久(イモニコフラク)、

〔古今和歌集〕

〈九羈旅〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1322 題しらず 讀人しらず ほの〴〵と明石の浦の朝霧に島がくれゆく舟をしぞ思ふ この歌は、ある人のいはく、柿本人麻呂がなり、

〔今昔物語〕

〈二十四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1322 小野篁被隱岐國時讀和歌語第四十五 今昔、小野篁ト云人有ケリ、事有テ隱岐國ニ被流ケル時、〈◯中略〉明石ト云所ニ行テ、其夜宿テ九月許リノ事也ケレバ、明髴ニ不寢テ詠メ居タルニ、船ノ行クガ島隱レ爲ルヲ見テ、哀レト思テ此ナ

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1323 ム讀ケル、ホノ〴〵トアカシノウラノアサギリニ島ガクレ行舟ヲシゾオホフ、ト云テゾ泣ケル、此レハ、篁ガ返テ語ルヲ聞テ語リ傳ヘタルトヤ、

〔平家物語〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1323 すヾきの事 ある時、たヾもり、びぜんの國より、のぼられたりけるに、鳥羽の院、あかしのうらはいかにと、おほせければ、忠盛かしこまって、 有明の月もあかしの浦風に波ばかりこそよるとみえしか、と申されければ、院大きに御かん有て、やがて此歌をば、金葉集にぞ入られける、

備前國/藤戸浦

〔本朝無題詩〕

〈七旅館付路次〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1323備前藤戸浦興 同人〈◯釋蓮禪〉 殘雲樹様難相比、明月峽圖不論、煙色斜籠秋岸草、潮聲鎭打暮山根、洛陽人若問斯地、爭以舌端子細言、沙烟迎霽日華白、江雨經秋楓葉黄、李放畫圖何得寫、蓬壺境界亦能望、山如碧障水如簟、此處征人皆斷腸、

長門國/壇浦

〔本朝無題詩〕

〈七旅館付路次〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1323長門壇即事 釋蓮禪 浪驛渉旬猶泛然、愁中有興綴詩篇隣船礎日引麻布、〈類船之中有一小坏、以疎布單幕、礙朝日殘暑、故有此興云、〉里社祈風供木綿、〈遠岸有一社、當州稱二宮、於舟中而遙拜、指社頭而奉使、是不日祈順氣、〉夜憶遐郷纔入夢、晴望孤島於拳、一尋西府温泉地、治病逗留及兩年、 於長門壇逗留重賦六韻 同人 落帆停棹暫容與臨海館〈長門館名也〉邊望眇焉、渡口繫舟秋浪咽、山腰訪寺暮雲屯、僧談中道無三教、人禮西方即一尊、採藥路深逢白雨、燒香煙細向黄昏柴荊不閉新孤店、桑梓幾方舊小園、非唯地形多感事、土宜案内聞民言

〔吾妻鏡〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1324 元暦二年三月廿二日乙巳、廷尉〈◯源義經〉促數十艘兵船、差壇浦纜云云、自昨日乘船計云云、三浦介義澄、聞此事會于當國大島津、廷尉曰、汝已見門司關者也、今可案内者、可先登者、義澄受命、進到于壇濱奧津邊、〈去平家陣三十餘町也〉于時平家聞之、棹船出彦島、過赤間關、在田浦云云、 廿四日丁未、於長門國赤間關壇浦海上源平相逢、各隔三町向舟船、〈◯下略〉

〔玉海〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1324 元暦二年四月四日丁巳、光雅仰云、院宣云、追討大將軍義經、去夜進飛脚〈相副札〉申云、去三月廿四日午刻、於長門國團合戰、〈於海上合戰云々〉自午正晡時伐取之者、云生取之輩、不其數、此中、前内大臣、右衞門督清宗、〈内府子也〉平大納言時忠、全眞僧都等爲生虜云々、

〔筑紫紀行〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1324 だんのうらは、いづくの邊ぞと問へば、それは長門國にて、八島とは海をへだてヽ、はるかに西のかたにて候、東國の御かた〳〵は、たヾ世に八島、だんのうらと申つらね候まヽに、だんのうらは、やしまのうちならんとも、又は八島近邊のうらならんともおもひ給へども、さやうには候はずと、船人ものしりがほにいふ、

紀伊國/和歌浦

〔運歩色葉集〕

〈和〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1324 若浦〈和歌也〉

〔書言字考節用集〕

〈一乾坤〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1324 和哥浦(ワカノウラ)〈紀州海部郡、本字弱浦、續日本紀、神龜元勅改弱濱名明光浦、〉

〔諸州めぐり〕

〈四紀伊〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1324 和歌浦〈和歌山より壹里あり◯中略〉 和歌のうらは、南をうけて入海なり、俗説に、此浦におなみ有てめなみなし、故に片男波といふ、此説非也、男波とは大なみなり、女波とは小波なり、われもとより其説を信ぜず、〈◯中略〉和歌のうらにしほみちくればかたをなみと古歌によめるは、俗説の意にあらず、しほみち來れば潟なくなるといふ意也、其故あしべの方にたづなき來れるといふ意明に聞ゆ、〈◯中略〉此浦の佳景聞しにまさりて目を驚せり、我此景色をむさぼりみて、海邊に躊躇し、去事をわすれて、ときをうつせり、〈◯下略〉

〔紀伊國名所圖會〕

〈二海部郡〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1324 和歌浦〈今西南出島浦あり、上古はこヽの洲なくて一めんの干がたなり、◯中略〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1325 當浦は、扶桑におゐて名たる勝地にして、古人の秀詠多ければ、壹人一首を粗しるせり、東西廿餘町ありて、濱松の色濃、あしべの田鶴、波間のちどり、江水は洋々たり、東方には名草山、金剛寶寺のかねの聲は、悠揚として月に清く、霜にさえたり、東南には生石が峯つらなりて藤白の御坂翠巒たかくそびへ、麓には冷水浦、鹽津浦のみなと賑はしく、西海、北海、四國の商船、あるひは關東廻りの出船入船ありて、商家の軒をつらねしも鮮に見えわたり、西南は蒼海漫々として、大鵬九万里に羽を打俤あり、うらの初島、あら磯にみるめかるわらは、千尋の底にあはびとる海士、潮汲むしづのめ、みな世をわたる業くれさま〴〵にして、いづれか哀れならざるはなし、〈◯下略〉

〔續日本紀〕

〈九聖武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1325 神龜元年十月辛卯、天皇幸紀伊國、 壬寅、詔曰、登山望海、此間最好、不遠行、足以遊覽、故改弱濱名、爲明光浦、宜置守戸、勿荒穢、春秋二時、差遣官人、奠祭玉津島之神明光浦之靈

〔萬葉集〕

〈六雜歌〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1325 神龜元年甲子冬十月五日、幸于紀伊國時、山部宿禰赤人作歌一首并短歌、〈◯中略〉 反歌 若浦爾(ワカノウラニ)、鹽滿來者(シホミチクレバ)、滷乎無美(カタヲナミ)、葦邊乎指天(アシベヲサシテ)、多頭鳴渡(タヅナキワタル)、右年月不記、但偁從駕玉津島也、因今撿注行幸年月以載之、焉

名高浦

〔紀伊續風土記〕

〈十九名草郡〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1325 名高浦〈奈多加◯中略〉 日方浦の南にあり、其間人家相隔ること僅に五十間、名高、倭姫世記には名方と書せり、國造家の記録に、中田、或中方など書せり、皆訓の相似たるより文字轉ぜるなり、古より名高き地にて、萬葉をはじめ、代々の詠歌いと多かり、

〔萬葉集〕

〈七譬喩歌〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1325藻 紫之(ムラサキノ)、名高浦乃(ナダカノウラノ)、名告藻之(ナノリソノ)、於礒將靡(イソニナビカム)、時待吾乎(トキマツワレヲ)、

〔萬葉集〕

〈十一古今相聞往來歌〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1325物陳

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1326 木海之(キノウミノ)、名高之浦爾(ナダカノウラニ)、依浪(ヨルナミノ)、音高鳬(オトタカキカモ)、不相子故爾(アハヌコユヱニ)、

熊野浦

〔萬葉集〕

〈四相聞〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1326 柿本朝臣人麻呂歌四首〈◯三首略〉 三熊野之(ミクマヌノ)、浦乃濱木綿(ウラノハマユフ)、百重成(モヽヘナス)、心者雖念(コヽロハオモヘド)、直不相鴨(タヾニアハヌカモ)、

那智浦

〔源平盛衰記〕

〈四十〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1326 中將入道入水事 三位入道〈◯平維盛〉三ノ山ノ參詣、事ユヘナク被遂ケレバ、濱宮ノ王子ノ御前ヨリ、一葉ノ舟ニ棹サシテ、萬里ノ波ニゾ浮給フ、遙カノ沖ニ小島アリ、金島トゾ申ケル、彼島ニ上リテ、松ノ木ヲ削ツゝ、自名籍ヲ書給ヒケリ平家嫡々正統小松内大臣重盛公之子息、權亮三位中將維盛入道、讃岐屋島戰場ヲ出テ、三所權現之順禮ヲ遂、那智ノ浦ニテ入水シ畢、 元暦元年三月二十八日、生年二十七ト書給ヒ、奧ニ一首ヲ被遺ケリ〈◯下略〉

阿波國/勝浦

〔吾妻鏡〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1326 元暦二年〈◯文治元年〉二月十八日壬申、廷尉〈◯源義經〉昨日自渡部渡海之處、暴風俄起、舟船多破損、〈◯中略〉仍丑刻先出舟五艘卯刻著阿波國勝浦、〈常行程三箇日也〉

〔源平盛衰記〕

〈四十二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1326 勝浦合戰附勝磨并親家屋島尋承事 判官〈◯中略〉又浦人召テ、此所ハ何ト云ゾト問、勝浦ト申ト答、軍ニ勝タレバトテ、色代シテhttps://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f00006513d1.gif 飾ヲ申ニコソ、加様ノ奴原ガ不思議ノ事ヲバシ出ゾ、返忠セサスナ、義盛ハ無キ歟、シヤ頭切レト宜ヘバ、伊勢三郞太刀ヲヌキ進出タリ、浦人大ニ恐戰テ、其儀ハ候ハズ、此浦ハ御室ノ御領五箇庄ニテ、文字ニハ勝浦ト書テ候ナルヲ、下臈ハ申安キニ付テ、カツラト呼侍キ、上臈ノ御前ニテ侍レバ、文字ノ儘ニ申上候ト云、〈◯中略〉義經軍ノ門出ニハチマアマコノ浦ニテ軍ニ勝テ、又勝浦ニ著テ敵ヲ亡ス、末憑シトゾ悦ケル、判官又浦人ニ問給フ、此勝浦ヨリ屋島ヘハ、行程イクラ程ゾト、二日路候ト申、サラバ敵ノ聞ヌ先ニ、打ヤ〳〵トテ、鞭障泥ヲ合テ打處ニ、〈◯中略〉判官宜ヒケルハ、〈◯中略〉偖屋島ヨリ此方ニ敵アリヤト問ヘバ、近藤六申ケルハ、今三十町計罷テ、勝宮ト云フ宮アリ、彼ニ阿部民部

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1327 大輔成能ガ子息、傳内左衞門尉成直三千餘騎ニテ陣取タリツルガ、此間河野四郞通信ヲ攻ントテ、伊豫國ヘ越タリト聞ユ、餘勢ナドハ、少々モ候ラント云ケレバ、〈◯中略〉打ヤ〳〵トテ、勝宮ニ押寄セテ見レバ、傳内左衞門尉ガ兵士ニ置タリケル歩兵等少々在ケレ共、散々ニ蹴散シテ、逃ルハタマタマ遁ケリ、〈◯中略〉新八幡ノ寶前ヲバ判官下馬シテ再拜スレバ、郞等モ又如此、判官ハ勝浦ノ勝モカツト讀、勝宮ノ勝モカツトヨム、旁ノ軍ニ打勝テ、今大菩薩ノ御前ニ參、源氏ノ吉瑞顯然也、〈◯下略〉

筑前國/橿日浦

〔日本書紀〕

〈九神功〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1327 九年〈◯仲哀〉四月、皇后〈◯神功〉還詣橿日浦、解髮臨海曰、吾被神祇之教、頼皇祖之靈、浮渉滄海、躬欲西征、是以今頭濮海水、若有驗者髮自分爲兩、即入海洗之、髮自分也、皇后便結分髮而爲髻、〈◯下略〉

若松浦

〔筑前國續風土記〕

〈十四遠賀郡〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1327 若松 町あり、武家多し、是當國東の端にありて、豐前長門凡上方よりの渡りなり、むかしは修羅多村の技村なりしが、長政卿入國の後、則村となる、〈◯中略〉長政公入國の後、山の所に夜船數十艘をつなぎ、船司舟人等多く置て、急用に備らる、是は廬屋洋は、風あらき時は、船の往來なりがたき故、此所より便の人を舟に乘せて、大坂につかはすべきため也、

〔筑紫道記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1327 移り行て、筑前國若松の浦といふに著ぬ、〈◯中略〉かた山かけて、植木高き陰よりうちとの海をみるに、鹽屋の煙暮わたり、入日影に移ふほど、又いふかたなし、

豐前國/柳浦

〔平家物語〕

〈八〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1327 太ざいふおちの事 山がへも又かたきよすと聞えしかば、取ものも取あへず、平家は小舟共に取乘て、終夜ぶぜんの國柳が浦へぞわたられける、爰に都をさだめて、内裏つくらるべしと、公卿せんぎ有しか共、ぶんげんなければ、それもかなはず、


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Last-modified: 2022-07-23 (土) 17:18:52