p.0961 筑後國ハ、チクゴノクニト云フ、本ト筑前ト合シテ、筑紫國ト稱セシヲ以テ、舊クハ、ツクシノミチノシリトモ云ヘリ、西海道ニ在リテ、東ハ豐後、西ハ肥前、南ハ肥後、北ハ筑前ニ界シ、西南ハ海洋ニ面セリ、東西凡ソ十一里、南北凡ソ八里、其地勢ハ、山嶽東南ニ亘リ、洪河西北ヲ繞リ、土地廣濶ニシテ、山海ノ利頗ブル多シ、此國ハ、古ヘ國府ヲ御井郡ニ置キ、御原(ミハラ)、生葉(イクハ)、竹野(タカノ)、山本(ヤマモト)、御井(ミヰ)、三瀦(ミムマ)、上妻(カムヅマ)、下妻(シモヅマ)、山門(ヤマト)、三毛(ミケ)ノ十郡ヲ管シ、延喜ノ制、上國ニ列ス、後世三毛郡ヲ三池郡ニ作ル、明治維新ノ後、御原、山本ノ二郡ヲ御井郡ニ合セ、竹野郡ト生葉郡ノ一部トヲ合セテ浮羽郡ト稱シ、生葉郡ノ一部ト、上妻、下妻ノ二郡トヲ合セテ八女郡ヲ立テ、凡テ六郡ト爲シ、新ニ久留米市ヲ設ケ、福岡縣ヲシテ之ヲ治セシム、
〔倭名類聚抄〕
〈五國郡〉
p.0961 筑後〈筑紫乃三知乃之里〉
〔饅頭屋本節用集〕
〈知天地〉
p.0961 筑後〈筑州〉
〔日本風土記〕
〈一寄語島名〉
p.0961 筑後〈職骨骨(チククツクツ)〉
〔日本書紀〕
〈七景行〉
p.0962 十八年七月甲午、到二筑紫後國(○○○○)御木一、居二於高田行宮一、
〔易林本節用集〕
〈下〉
p.0962 筑後、〈筑州〉上、管十郡、南北五日、穀與二魚鼈一不レ可二勝計一、珍寶器械多也、大中國也、
〔地勢提要〕
〈乾〉
p.0962 各國經緯度〈附里程〉 筑後柳河、〈瀬高町〉極高三十三度一十分、經度西五度一十八分、從二小倉一〈長崎街道自二山家一經二薩州街道瀬高一自二同所一柳河街道、〉二十九町二十間半、三百一十二里二十八町三十一間〈◯從二東都一〉
〔日本經緯度實測〕
p.0962 北極出地 筑後 梁川 三三度一〇分〇〇秒 久留米 三三度一九分三〇秒〈◯中略〉 東西里差 山城 京 〇度〇〇分〇〇秒〈◯中略〉 筑後 久留米 西五度一一分四八秒 梁川 西五度一八分三九秒
〔筑後地鑑〕
〈上北筑〉
p.0962 一筑後之爲レ州也、東以二豐後一爲レ限、西與二肥前一阻レ河、南隣二肥後一、北接二筑前一、州内方十餘里、山少而田多、其國爲二上國一、分爲二十郡一、〈凡三十三万石〉有二兩府一、北名二久留米一、我有馬公所レ城也、生葉、竹野、山本、御井、御原、上妻、下妻、三潴等之八郡屬レ之、〈凡二十万石有餘〉南名二柳川一、立花公之城也、山門、三池之二郡、及上妻、下妻、三潴之内若干邑屬レ之、〈凡十万石有餘〉兩府相距五里、兩府各有二府庸一、北號二松崎一、〈在二御原郡一、爲二久留米附庸一、采地一万石、〉南號二三池一、〈在二三池郡一、爲二柳川附庸一、一万石、〉
〔日本地誌提要〕
〈六十六筑後〉
p.0962 疆域 東ハ豐後、西ハ肥前、南ハ肥後、北ハ筑前、西南ハ海ニ至ル、東西凡壹拾壹里、南北凡八里、
〔日本實測録〕
〈十一島嶼〉
p.0962 〈筑前國三瀦郡大野 肥前國佐嘉郡大多久間〉 島〈蓋一島、因二地方一稱右各、〉周廻三里廿町廿六間
〔筑後志〕
〈一形勝〉
p.0962 東南は、山嶽の險に倚り、西北に洪河の阻を帶び、西南は海濱の隘に接す、地勢廣濶土脈膏腴、穀稼多實、四民安裕にして、四方八達風氣和暖の佳域なり、
〔日本地誌提要〕
〈六十六筑後〉
p.0963 形勢 山嶽東南ニ亘リ、洪流西北ヲ繞リ、沿河迤南、土地平衍、海灣ニ接ス、五穀豐饒ニシテ運輸ノ便ヲ兼ヌ、但洪水汜濫ノ害ヲ免カレズ、民産頗富ミ、風俗質直温厚、
〔筑後地鑑〕
〈中北筑〉
p.0963 一從二久留米一至二豐前大里一行程二十四里、小倉城東海濱一里計有下名二大里一處上、此則古之所レ謂豐前國柳浦者、而安徳帝蒙塵之一所也、故後世也尚呼爲二内裏一、今作二大里一、我府若東竹乘船之津也、故構館多置レ船、至二小倉津一行程有二兩道一、曰二八町越一、曰二冷水越一、發二久留米一州内本郷四里、筑前秋月三里、千津二里、小隈一里半、豐前猪膝二里、香春三里、採銅所一里、呼野二里、石原一里、小倉三里、凡九驛二十二里半、是曰二八町越一、冷水越自二久留米一當州御原郡横隈四里、筑前山〈江〉二里、内野三里、飯塚三里、小屋瀬五里、黒崎三里、豐前小倉三里、凡七驛二十三里、是爲二冷水越一、 一從二筑前境本郷一、至二肥後境四ケ村一、凡十里有餘、此路北來レ自二豐前小倉一、南至二于薩州房津一、本朝開闢已來之大路也、故道古昔自二羽犬塚之驛亭一、渡二長田川一過二本吉邑一、至二原野町驛邸一、今也柳川立花公改二替封内大路一、自二羽犬塚一透瀬高兩庄驛舍、至二原野町一、故行程自二故道一遠者一里、 一柳川海道者、先國司田中公入部後、令三長子主膳亮守二久留米城一、故慶長年中、新經二營此大路一、行程五里、廣野無二人家處一及二三里一、因レ兹旅客行人恐二夜行一、故闢二野間一立レ町、爲二往還之便一、曰二横溝町、大角町、土甲呂町、次山町、目安町、津福町一、皆除二市宅之祖役一、至二于今一免レ之、 一從二柳川一歴二福島一至二黒木一行程六里餘、大路、田中公所レ營也、福島城主久兵衞、黒木城代辻勘兵衞爲二往還一行程者也、 一從二久留米一豐後海道至二吉井一、去二久留米一六里有餘、有二兩道一、山邊草野町驛、次中道田主丸町驛次之、 一從二久留米一福島道三里有餘、自二福島一未者至二矢部一、或至二鹿子尾一、又至二星野金山一、 一從二久留米一經二城島一二里半至二復津一、行程五里十町、
〔日本實測録〕
〈七街道〉
p.0963 從二筑前國山家一薩州街道至二鹿兒島一〈◯中略〉
p.0964 筑後國御原郡上岩田村松崎町 一十二町二十四間 下岩田村 二十五町一十二間 御井郡平方村 二十三町三十三間 八町島村古賀茶屋 一里一町一十六間 府中町旗崎 五町四十九間 同上町〈至二高良玉垂社一一十四丁三十間〉 二十九町六間 上津荒木(カウツラキ)村二軒茶屋 一里一十二町五十七間 上妻(カウツマ)郡一條村盛徳〈至二福島古松町一二里三十四間、從二古松町一至二唐人町一、一十丁五十八間、又從二古松町一至二山門郡本吉村一、二里一十七丁五十四間、從二本吉一至二清水寺一、一十五丁四間、又從二本吉一至二上小川村一、二十丁二十九間、〉 三十二町五十四間 羽犬塚町 二里八町一十一間半 山門郡、瀬高、上庄町村、 三町二十四間 同瀬高驛、三十三度一十分、 六町八間 瀬高下庄村 一十二町一十六間 上小川村 一里一十七町二十九間 原町村 一里三十四町三十七間半〈至二國界一一里四丁一十五間〉 肥後國玉名郡關村關町〈◯中略〉 從二豐後國竹田一歴二善導寺一至二平方一〈◯中略〉 筑後國生葉(イクハ)郡山北村 二里一十一町五十一間 吉井村〈至二若宮村八幡社一八丁一十二間〉 一里二十七町三十八間 竹野郡田主丸(タヌシマル)村主丸町 二里一十二町三十六間 山本郡飯田村善導寺門前〈至二府中町旗崎一一里一十二丁九間〉 二十五町一十三間 御井郡大城(オホキ)村〈至二豐比咩神社一二丁三十六間〉 一里一十六町二十四間 御原郡本郷村上町 一里一十七町五十七間 御井郡平方村 〈從二竹田一至二平方一〉街道、通計一十二里二十八町二間半 從二筑後國八町島一歴二久留米及柳河一至二植木一 筑後國御井郡八町島村古賀茶屋 三十五町二十一間 宮地(ミヤヂ)村〈至二肥前國基肄郡水屋村一二十二町二十一間、從二水屋一至二筑後川岸一三丁一十八間半、又從二水屋一至二田代宿一一里一十四町、〉 一十六町一十二間 久留米通町十町目外町〈至二府中町旗崎一二十七丁一十三間〉 一十三町三十七間 同三本松町〈至二新町一一町四十八間、北極高三十三度一十九分半、又從二三本松町一至二上町一、四丁一十五間、從二上町一至二瀬下濱町一、一十一丁三十五間、從二濱町一至二肥前國三根郡石貝村一、二十九丁一十五間半、從二石見一至二千栗八幡社一、四丁三十九間、又從二石貝一至二神崎郡吉田村苔野一、一里三十三丁四十五間、〉 二町四十六間 久留米原古賀町二町目〈至二上津荒木村二軒茶屋一一里五丁三十三間半〉 一里二十一町四十五間〈至二大善寺村高良玉垂社前一一里一十八丁四十八間〉
p.0965 三瀦郡上野町 三里八町四十七間 山門郡柳河外町〈至二柳河村沖畑一六丁三間、從二沖畑一至二三瀦郡榎津町一、一里四丁四十八間半、從二榎津一至二小保村宿所一、三丁二十一間、北極高三十三度一十二分半、從二宿所一至二筑後川岸一九丁三十九間、〉 四町一十四間半 同辻町 一町二十四間 同瀬高町、三十三度一十分、 八町一十九間 藤吉村瀬高門 一十町二十間半 今古賀村 一里一十四町四十五間半 中島村 二十九町三十四間 三池郡江浦村〈至二山門郡瀬高下莊村一一里二十五丁四十二間〉 一里二十七町五十四間半 三池町村、三十三度三分半、 一町三十七間半 同新町 一里三十町四間〈至二國界一一里一十六丁三十七間半〉
〔日本實測録〕
〈六沿海〉
p.0965 從二薩摩國鹿兒島一沿海至二長崎一〈◯中略〉 筑後國三池郡大牟田村諏訪川口〈沿レ川至二大島村一二十三丁五十八間半〉 一十六町二十九間 大牟田村〈歴二横洲村一至二三池町一、一里六丁二十七間、從二横洲一至二海岸一、六丁三十六間、〉 六町九間半 横洲村 三里五町三十四間半 山門郡島堀切村瀬高川口 一里二十七町四間半 鷹尾村川口〈沿二鹽塚川一至二徳益村一、一里一十一町一十三間、〉 一里八町五十七間 矢留村川口〈沿二沖端川一至二古賀村一、二十丁二十八間、從二古賀一至二吉留村宿所一、一十一丁四十九間、北極高三十二度一十分、又從二古賀一沿二沖端川一至二柳河村一、一十九丁四十四間、〉 二里三十一町二十八間〈至二網干村住吉渡一二里三十丁三十六間〉 三瀦(ミノタマ)郡小保(コボウ)村 九町三間 向島村若津町 二十二町一十八間 中古賀村筑後川口〈筑後川渡直徑〉五町 肥前國左嘉郡徳富村筑後川口
〔延喜式〕
〈二十八兵部〉
p.0965 諸國驛傳馬〈◯中略〉 筑後國驛馬〈御井、葛野、狩道各五疋、〉 傳馬〈御井、上妻、郡狩道驛各五疋、〉
〔日本國郡沿革考〕
〈二西海道〉
p.0965 筑後 上國、管十郡、七百十村、 生葉〈五十四村 古作二浮羽一 景行紀云、到二的邑一而進食、是日膳夫遺レ盞、故時人號二其遺レ盞處一曰二浮羽一、今謂レ的者訛也、昔筑紫俗、號レ盞曰二浮羽一、即此地、 新撰字鏡、的、人姓、訓二由久波一、〉 竹野〈八十九村〉 山本〈三十村〉 御原〈三十五村〉 御井〈七十一村古國府〉 上妻〈百九村 古八女國、或爲レ縣、景行紀八女縣即是、分爲二上下二郡一、未レ詳レ在二何時一、持統四年紀、作二上陽咩郡一、 景行十八年紀、到二八女縣一、詔曰、峯岫重疊、且美麗、神在二此山一乎、時水沼縣主奏言、有二女神一、名曰二八女津媛一、居二此山中一、故名二八女國一、〉 下妻〈三十三村〉 三瀦〈百四十一村 景行紀、水沼縣主、即是、〉 三池〈六十二村 古御木國、延喜式等作二三毛一、正徳二年四月令、自今宜レ書二三毛一、而今猶作二三池一、 景行十八年紀、有二僵樹一、長九百七十丈、天〉
p.0966 〈皇曰、是神木也、是國宜レ號二御木國一、〉 山門〈八十六村〉 御牧〈見二大内家日記一、廢置未レ詳、〉
〔日本地誌提要〕
〈六十六筑後〉
p.0966 沿革 古ヘ國府ヲ御井郡ニ置、〈今ノ府中驛是ナリ〉文治二年、草野永平ヲ以テ守護トナシ、子孫山本郡竹城ニ居ル、〈吉木村〉建武中興、少貳頼尚ヲ以テ州守ニ任ジ、守護ニ補ス、足利尊氏ノ反スル、頼尚首トシテ之ニ屬ス、正平ノ初、菊池武光頼尚ヲ伐テ之ヲ破リ、州ノ豪傑、草野、黒木、蒲池諸氏ヲ降シ、征西將軍懷良(カネナガ)親王ヲ高良山ニ奉ジ、全州ヲ併セ、阿蘇惟澄ヲ以テ州守トナス、尊氏又州族高橋光種〈御原郡高橋ニ居ル〉ヲ以テ撿斷使トナス、大内今川九州ヲ定メシ後、諸族更ニ探題澀川氏ニ隷ス、澀川氏衰フルニ及テ、草野氏、〈山本郡〉星野氏、〈生葉竹野二郡〉黒木氏、〈上妻郡猫尾〉高橋氏、〈御原郡〉筑紫氏、〈御井郡〉西牟田氏、〈三瀦郡〉蒲池氏、〈山門下妻二郡〉三池氏、〈三池郡〉等各郡邑ニ據リ、或ハ大内氏ニ屬シ、或ハ大友氏ニ附ス、永祿七年大友義鎭(シゲ)大擧入侵シテ、盡ク全州ヲ併セ、天正中、島津氏ト日向耳川ニ戰テ敗績シ、州豪離叛、大率龍造寺氏ニ歸ス、俄ニシテ島津氏勢日ニ強大、闔境皆爲ニ侵奪セラル、豐臣氏西征、本州ヲ分テ、生葉、竹野、御原三郡ヲ小早川隆景ニ加賜シ、立花宗茂ヲ柳河ニ、〈拾三萬石、山門三池下妻三郡、〉毛利秀包ヲ久留米ニ、〈三萬五千石、三瀦山本御井三郡、〉筑紫廣門ヲ福島ニ〈一万八千石、上妻郡、〉封ズ、關原役畢リ、宗茂秀包廣門皆封ヲ失ヒ、田中吉政ヲ全州ニ封ジ、柳河ニ治ス、元和六年、其子忠政卒シ、子無クシテ國除シ、有馬豐氏ヲ久留米ニ封ジ、〈貳拾萬石〉再ビ柳河ヲ宗茂ニ賜ヒ、〈拾壹萬石〉其支封ヲ三池トス、〈立花種次、文化中、其裔種善陸奥下手渡(シモテド)ニ移リ、明治ノ初、其孫種恭ニ至リ復封ス、〉凡テ三藩、王政革新、皆廢シテ縣トナシ、又之ヲ合併シテ三瀦縣ヲ置、
〔續日本紀〕
〈六元明〉
p.0966 和銅六年八月丁巳、從五位下道君首〈◯首、一本作二名首一、〉爲二筑後守一、
〔吾妻鏡〕
〈六〉
p.0966 文治二年閏七月二日丙子、二品〈◯源頼朝〉令レ擧二草野大夫永平所望一事、依レ有二殊功一也、御書云、平家背二朝威一企二謀叛一、鎭西之輩、大略雖レ相二從彼逆徒一、筑後國住人草野大夫永平仰二朝威一、致二無貳忠一、仍
p.0967 筑後國在國司、押領使兩職、爲二本職一之間、可二知行一之由雖レ申レ之、如レ此事非二頼朝成敗一候、御奉行之由承及候、有二御奏聞一、可レ充二給永平一候、恐皇謹謹言、閏七月二日 頼朝 進上 帥中納言殿
〔倭名類聚抄〕
〈五國郡〉
p.0967 筑後國〈國府在二御井郡一〉
〔筑後志〕
〈七附録〉
p.0967 府中〈御井郡高良山麓、今宿驛アリ、〉古老傳テ云、古ノ國府ノ地ナリ、隣郷國分村和泉村ノ田畠ヲ耕シテ、古瓦ヲ得ルコトアリ、青赤白色其形一ナラズ、表ニ數品ノ紋アリ、世ニ此瓦ヲ綱手ト名ク、又彼和泉村ノ中ニ、俗ニ長者屋敷ト稱スル所アリ、其邊ニ古井ノ跡アリ、倶ニ皆國府ノ舊址ナルベシ、國分ノ村名モ、國府ノ字ノ轉ゼルモ知ベカラズ、
〔倭名類聚抄〕
〈五國郡〉
p.0967 筑後國〈◯註略〉管十〈◯註略〉御原〈三波良〉生葉〈以久波〉竹野〈多加乃〉山本〈也萬毛止〉御井〈三井〉三瀦〈美無萬〉上妻〈加牟豆萬〉下妻〈准レ上〉山門〈夜止萬〉三毛〈三計〉
〔延喜式〕
〈二十二民部〉
p.0967 筑後國、上、〈管 御原(ミハラ) 生葉(イクハ) 竹野(タカノ) 山本(ヤマモト) 御井(ミヰ) 三瀦(ミムア) 上妻(カミツマ) 下妻(シモツマ) 山門(ヤマト) 三毛(ミケ)◯中略〉 右爲二遠國一
〔皇國郡名志〕
p.0967 筑後國〈十郡〉 御原(ミハラ) 〈松崎 肥前筑前界〉 生葉(イクハ) 〈△能山 △高井岳 山バカリ在郷無シ筑前豐後界〉 竹野(タケノ) 〈福ロク一ケ村山バカリ 筑前界〉 山本(ヤマモト) 〈浦村 チヽヤ 山バカリ 筑前界〉 御井(ミイ) 〈田生丸 吉井 二ケ村山計 △善道寺 筑前界〉 三瀦(ミムマ) 〈久留米 ●赦久 柳川 ●酒見 筑後川ニ添テ肥前界 上妻(カムツマ) 〈●朽米 山バカリ 國中〉 下妻 〈●内屋 △矢部川 肥後界〉 山門(ヤマト) 〈●江浦 西南海ニ向〉 三毛(ミケ) 〈驛町無シ 肥後界西南海向ニ〉 ◯按ズルニ、本書及ビ次下ノ郡名異同一覽ノ符號ハ、山城國篇郡條ニ引ク所ノ、二書ノ凡例ヲ參照スベシ、
〔郡名異同一覽〕
p.0968 筑後
〔太宰管内志〕
〈筑後二〉
p.0969 御原郡 名義いまだ詳ならず〈筑後志に、里老語傳に、御原郡の内に、小郡野、山隈野、大保野、此三野原あるが故に、三原と云と云り、覺束なき説なり〉
〔太宰管内志〕
〈筑後二〉
p.0969 生葉郡 さて地圖を按るに、生葉郡、東豐後國日田郡、南本國上妻郡、西竹野上妻二郡、北千年川を隔て、筑前國上座郡に隣れり、土地廣狹ノ事はいまだ考へず、
〔釋日本紀〕
〈十述義〉
p.0969 公望私記曰、案筑後國風土記云、昔景行天皇巡レ國、旣畢還都之時、膳司在二此村一、忘二〈◯忘原作レ怠、據二一本一改、〉御酒盞一云々、天皇勅曰、惜乎朕之酒盞、〈俗語云二酒盞一爲二宇枳一〉因曰二宇枳波夜郡一、後人誤號二生葉郡一、
〔日本書紀〕
〈七景行〉
p.0969 十八年八月、到二【的邑】(イクハノムラ)一而進食、是日膳夫等遺盞、故時人號二其忘レ〈◯忘原作レ忌、據二一本一改、〉盞處一曰二浮羽一、今謂レ的者訛也、昔筑紫俗、號レ盞曰二浮羽一、
〔太宰管内志〕
〈筑後二〉
p.0969 竹野郡 さて地圖を按ずるに、竹野郡、東生葉郡、北筑前國夜須下座二郡、本國御原郡等、南上妻下妻二郡、西山本郡に隣りて、山多く平地少し、廣狹里數等いまだ考へず、
〔三代實録〕
〈十二清和〉
p.0969 貞觀八年三月四日庚辰、太宰府解偁、觀音寺講師傳燈大法師位性忠申、牒偁、〈◯偁原脱、據二一本一補、〉寺家人清貞宗位等三人、從五位下笠朝臣麻呂五代之孫也、〈◯中略〉望請准二據格旨一、徙レ居貫二附筑後國
p.0970 竹野郡一、 太政官處分、依レ請、
〔太宰管内志〕
〈筑後二〉
p.0970 山本郡 名義は大山を負たる故なるべし、〈和名抄に、肥後國山本郡山本などもあり、森氏云、山本郡は耳納山麓にあれば、負せたるなるべし云々といへり、此説さもあるべし、◯中略〉さて地圖を按るに、山本郡、東竹野郡、南は上妻郡、西御井郡、北御井川を堺として、御井郡にとなりて、郡中に田地多くして、南方に箕尾山あり、土地狹少なる事、國中第一なり、
〔太宰管内志〕
〈筑後三〉
p.0970 御井郡 郡の方位は、東方山本、竹野二郡に隣り、西は三瀦郡、又肥前國にとなり、北は御原郡にとなり、郡中に大川流れて、運送の便よく、三瀦郡につぎて豐饒の地なり、
〔日本書紀〕
〈十七繼體〉
p.0970 二十二年十一月甲子、大將軍物部大連麁鹿火、親與二賊帥磐井一交二戰於筑紫御井郡一、〈◯下略〉
〔日本紀略〕
〈嵯峨〉
p.0970 弘仁九年十一月丙午、筑後國御井郡高良玉垂命神爲二名神一、
〔太宰管内志〕
〈筑後五〉
p.0970 三瀦郡 美無万は美奴万を、唱へひがみたる物と聞ゆ、〈古言に美無萬と云事あるべくもあらず、さて玉篇に、瀦音猪水所レ停也と見え、又和名抄に、安房國朝原郡大瀦於保奴萬とあり、式に、出雲國出雲郡美努麻神社、又阿波國麻殖郡天水沼間比古神社と云も有、〉名義は、沼に由有て負せたるべし、土地ノ様もしか思はるヽ所なり、〈◯中略〉さて方位は東上妻下妻二郡に隣り、南山門郡に隣り、西は河を隔て肥前國に隣り、北は御井郡、又肥前國に隣りて、郡中に山なく、西北に大河流れて、諸品運送ノ便よく、豐饒土地にして、國中の大郡なり、
〔日本書紀〕
〈十四雄略〉
p.0970 十年九月戊子、身狹村主青將二呉所レ獻二鵝一到二於筑紫一、是鵝爲二水間君犬一所レ囓死、〈別本云、是鵝爲二筑紫嶺縣主泥麻呂犬一所レ囓死、〉由レ是水間君、恐怖憂愁、不レ能二自默一、獻三鴻十隻與二養鳥人一、請二以贖一レ罪、天皇許焉、
〔筑後志〕
〈一郡名〉
p.0970 上妻郡 倭名鈔加牟豆萬(カムヅマ)、今讀て加宇豆萬(カウヅマ)、
〔太宰管内志〕
〈筑後六〉
p.0971 上妻郡 名義は、景行天皇〈筑紫巡狩件〉に、十八年七月丁酉、到二八女縣一、〈◯中略〉水沼縣主猿大海奏言、有二女神一名曰二八女津媛一、常居二山中一、故八女國之名由レ此起也とあり、されば加牟豆万ハ加牟都邪米のつヾまりたるなり、〈ヤメをつヾむればマとなるなり、さて此八女津媛の名の起り、いかなる由ともしりがたし、もしは地名を元にて負せたるを、其人廣く其邊を領ずるにつきて、人の名より又移りてそこの大名となれるにてもあらむか、◯中略〉方位事は東方豐後國に隣り、南方肥後國に隣り、西方山門、下妻、三瀦三郡にとなり、北は御井、山本、竹野、生葉四郡に隣りて、東西十一里余、南北三四里或五里あり、郡中大山多くして田地すくなし、
〔日本書紀〕
〈七景行〉
p.0971 十八年七月丁酉、到二八女縣(○○○)一、則越二前山一、以南望二粟岬一、詔之曰、其山峯岫重疊、且美麗之甚、若神有二其山一乎、時水沼縣主猿大海奏言、有二女神一、名曰二八女津媛一、常居二山中一、故八女國(○○○)之名由レ此起也、
〔日本書紀〕
〈三十持統〉
p.0971 四年九月丁酉、大唐學問僧智宗、義徳、淨願、軍丁、筑紫國上陽咩郡(○○○○)大伴部博麻、從二新羅送使大奈未金高訓等一還二至筑紫一、
〔釋日本紀〕
〈十三述義〉
p.0971 筑後國風土記曰、上妻縣(○○○)、縣南二里、有二筑紫君磐井之墓墳一、高七丈、周六丈、墓田南北各六十丈、東西各卌丈、石人石盾各六十枚、交陳成レ行、周二匝四面一、當二東北角一有二一別區一、號曰二衙頭一、〈衙頭致政（政下原有二炊字一據二一本一刪）所也〉其中有二一石人一假容立レ地、號曰二解部一、前有二一人躶形伏一レ地、號曰二偸人一、〈生爲偸レ猪乃擬二决羅一◯羅恐罸誤〉側有二石猪四頭一、號二贓〈◯臟原作レ賊據二一本一改、下同、〉物一、〈贓物盜物也〉彼處亦有二石馬三匹、石殿三間、石藏二間一、古老傳云、當二雄大迹天皇〈◯繼體〉之世一、筑紫君磐井、豪強暴虐、不レ擾二皇風一、生平之時、預造二此墓一、俄而官軍動發欲レ襲之間、知二勢不一レ勝、獨自遁二于豐前國上膳縣一、終二于南山峻嶺之曲一、於レ是官軍追尋失レ蹤、士怒未レ泄、擊二折石人之手一、打二墜石馬之頭一、古老傳云、上妻縣多有二篤疾一、蓋由レ玆歟、 ◯按ズルニ、倭名類聚抄ニ上妻ヲ加牟豆萬ト訓ミ、下妻ヲ上ニ准ズト記シタレドモ、右ニ引ク
p.0972 景行紀、持統紀等ニ參考スルニ、舊クハカミツヤメ、シモツヤメト稱セシナラン、
〔太宰管内志〕
〈筑後七〉
p.0972 下妻郡 方位は東北すべて上妻郡、南方は山門郡、西方は山門、三瀦兩郡に隣りて、郡中に山なく田地廣し、
〔太宰管内志〕
〈筑後七〉
p.0972 下妻郡 筥崎宮寄附状に、去六日於二多々良濱一遂二一戰一、與中被レ盡二粉骨一、忠功至二奇特一候、仍筑後下妻郡之地被二宛行一畢、聊於二神前一、可レ励二天下安寧之懇祈一之状如レ件、建武三年三月十一日、筥崎大宮司殿、源朝臣〈判、〉
〔太宰管内志〕
〈筑後八〉
p.0972 山門郡 名義は、山相對て門の如くなる處なるべし、〈◯中略〉地圖を按ずるに、山門郡地、東方上妻郡に隣り、南方三池郡に隣り、西方海濱、北方下妻、三瀦二郡に隣て、郡中平地多く、東南の隅に山あり、
〔日本書紀〕
〈九神功〉
p.0972 三月〈◯仲哀九年〉丙申、轉至二山(○)〈◯山原作レ小、據二一本一改、〉門縣(○○)一、則誅二土蜘蛛田油津媛一、時田油津媛兄夏羽、興レ軍而迎來、然聞二其妹被一レ誅而逃之、
〔續日本紀〕
〈三文武〉
p.0972 慶雲四年五月癸亥、讃岐國那賀郡錦部刀良、〈◯中略〉筑後國山門郡許勢部形見等、各賜二衣一襲及鹽穀一、〈◯下略〉
〔太宰管内志〕
〈筑後八〉
p.0972 三毛郡 方位は東南總て肥後國にとなり、西は海を限とし、北は山門郡に隣りて、東南に山多く、西北に平地多し、
〔釋日本紀〕
〈十述義〉
p.0972 公望私記曰、案筑後國風土記云、三毛郡云々、昔者倲木一株、生二於郡家南一、其高九百七十丈、朝日之影蔽二肥前國藤津郡多良之峯一、暮日之影、蔽二肥後國山鹿郡荒爪之山一云々、因曰二御木國一、後人訛曰二三毛一、今以爲二郡名一、櫟木與二倲木一名稱各異、故記レ之、
〔日本書紀〕
〈七景行〉
p.0972 十二年七月熊襲反之、不二朝貢一、八月己酉、幸二筑紫一、九月戊辰、到二周芳娑磨一、〈◯中略〉爰有二女
p.0973 人一、曰二神夏磯媛一、〈◯中略〉參向而啓之曰、〈◯中略〉二曰耳垂、殘賊貧婪、屢略二人民一、是居二於御木(○○)〈木此云開〉川上一、 十八年七月甲午、到二筑紫後國御木一、居二於高田行宮一、時有二僵樹一、長九百七十丈焉百寮踏二其樹一而往來、時人歌曰、阿佐志毛能(アサシモノ)、瀰概能佐烏麼志(ミケノサヲハシ)、魔幣菟耆瀰(マヘツギミ)、伊和哆羅秀暮(イワタラスモ)、彌開能佐烏麼志(ミケノサヲハシ)、爰天皇問之曰、是何樹也、有二一老夫一、曰、是樹者歴木也、嘗未レ僵之先、當二朝日暉一則隱二杵島山一、當二夕日暉覆二阿蘇山一也、天皇曰、是樹者神木、故是國宜レ號二御木國(○○○)一、
〔倭名類聚抄〕
〈九筑後國〉
p.0973 御原郡 長栖 日方 坂井〈○坂、高山寺本作レ板、〉川口 生葉郡 大石 山北 姫治〈◯治、高山寺本作レ沼、註二比女奴一、〉物部 椿子 小家 高西 竹野郡 柴刈 二田 竹野 長栖 船越 川會 山本郡 土師 蒲田 古見 三重 芝澤 御井郡 節原 伴太 殖木 弓削 神氏〈◯氏高山寺本作レ代註二久万之呂一、〉 賀駄 大城 山家 三瀦郡〈◯瀦原作レ猪〉 高家 田家 三瀦〈◯瀦原作レ猪、據二高山寺本一改、〉鳥養 夜關〈◯高山寺本關作レ開、註二夜介一、〉青木 荒木 管綜 上妻郡 太田 三宅 葛野 桑原 下妻郡 新居 鹿待 村部 山門郡 大神 山門 草壁 鷹尾 大江 三毛郡 米生〈◯高山寺本註二與那布一〉十市 砥上 日奉
〔大友文書〕
〈三立花伯爵所藏〉
p.0973 三聖寺嘉祥庵院主處英謹言上(新券案)〈◯中略〉 下二賜諸官御證判一、欲レ備二後代龜鏡一、處英相傳領筑後國三池北郷(○○○○)内帝尺寺、桶田野志、野尾井、長坂四箇村半分田畠在家、并同寺〈乃〉門田、坂本田新開田、以下山野江河等地頭職豐後國三重郷蓮城寺〈號内山〉文書等事、〈◯中略〉 元弘三年十一月十三日 式部大丞
p.0974 蓮城寺長老
〔新編會津風土記〕
〈七〉
p.0974 讓與 助太郞貞元〈◯安藝〉所 筑後國三池南郷(○○○○)總領分、同國竹野新庄得重金丸兩名〈◯中略〉已下地頭職事 右云二本領一云二新恩一、道寄〈◯安藝貞鑒〉領掌無二相違一地也、仍爲二貞元嫡子一、相副本證文、悉皆讓與之畢、子々孫々無二他妨一、可レ令二知行一之状如レ件、 建武三年三月廿五日 沙彌道寄〈花押〉
〔筑紫古文書〕
〈追加〉
p.0974 讓與次郞資經、筑前國夜須西郷(○○○○)地頭職、同國安岡名地頭職、〈◯中略〉 右地頭職等者、所レ讓二與資經一也、領掌不レ可レ有二相違一之状如レ件、 建武三年二月五日 沙彌妙惠〈◯少貳貞經〉在判
〔郡名一覽〕
p.0974 一筑後國(御料私領) 〈筑州 南北五日〉 拾郡 高三拾三万千四百九拾七石七斗六升九合 七百九ケ村 ●久留米 二百九十二里半 ●柳河 二百九十里餘 ◯按ズルニ、本書ノ符號ハ、山城國篇村里條ニ引ク所ノ、本書ノ凡例ヲ參照スベシ、
〔郡國提要〕
p.0974 筑後 十郡、七百十村、 高三十七万五千五百八十八石八斗九升七合八勺(御料私領) 生葉郡五十四村 竹野郡八十九村 山本郡三十村 御原郡三十五村 御井郡七十一村 上妻郡百九村 下妻郡三十三村 三瀦郡百四十一村 山門郡八十六村 三池郡六十二村
〔地勢提要〕
〈坤〉
p.0974 郡邑島嶼奇名 筑後 御原郡、古飯(フルイ)村、御井郡、神代(クマシロ)村、上津荒木(カウヅラキ)村、大城(オホキ)村、三瀦(ミツマ)郡、懸赤(カケシヤク)村、上八院(カンハチイン)村、土甲呂(トコロ)村、小保(コボウ)村、下妻郡、久郞原(クロウハル)村、竹野郡、中徳(チウトク)村、三池郡、下里(サカリ)村、生葉(イクハ)郡、
〔歴世古文書〕
〈一〉
p.0975 筑後國三瀦莊木室村(○○○)北方内田地事 合伍町四段餘者 右件地者、領家地頭折中之間、領家御進止分也、但此村者、南北共、去元享元年雖レ被レ定二置鷲尾金山院鎭守新春日社御供料所一、今度世上動亂之刻、云二領家一云二莊家一、有二御誓願子細一之間、割二分當村北方内田地伍町餘一、〈中分状被二相副一之〉永代被二寄附一之畢、於二今伍町餘一者、更雖レ爲二一塵一、不レ可レ被レ懸二社役一者也、然者旁不レ及二異儀一、早爲二彼寺領一、盡未來際無二退轉一、彌可レ專二御祈禱忠一者也、仍末代龜鏡御寄進如レ件、 元弘三年十一月二十五日 沙彌稱念判 前僧正法印大和尚位
〔松浦文書〕
〈七〉
p.0975 筑後國下宇治村(○○○○)地頭職半分、爲二勳功賞一松浦小次郞入道蓮賀可レ令二知行一者、天氣如レ此、悉レ之、 建武元年三月二十一日 左衞門權佐〈◯花押岡崎範國〉
〔歴世古文書〕
〈一〉
p.0975 筑後國淨土寺、并寶琳尼寺雜掌快潤申、當國三潴莊八院村(○○○)中分一方〈領家方〉田畠屋敷、牟田荒野等事、解状具書如レ此、白垣八郞入道致二濫妨狼藉一云々、早西牟田彌次郞入道相向莅二彼所一、鎭二狼藉一可二沙汰一、居二雜掌一、若又有二子細一者、載二起請之詞一、可レ被レ申之状如レ件、 建武三年七月廿二日 沙彌判 守護代
〔筑後將士軍談〕
〈二之三〉
p.0975 筑後國西牟田村(○○○○)寛元寺、右軍勢並甲乙人等、不レ可レ致二濫妨狼藉一、若有二違犯一之輩者、可レ處二罪科一之状如レ件、 建武五年五月日
〔西遊雜記〕
〈六〉
p.0975 久留米(○○○)に至る、大概の所也、上方邊の城下と違ひて、草葺の家宅數多なれば身分あし
p.0976 く、市中三千軒餘、本町と云、商人も見えて、二三町計ふしき町有、
〔佐藤元海九州記行〕
p.0976 柳川(○○)ノ城ハ、立花家ノ都スル所ニシテ、平地ナレドモ、城郭壯麗ニシテ、都下ノ町家モ頗ル繁昌ナリ、
〔東寺百合文書〕
〈一之六〉
p.0976 寶莊嚴院御庄園〈◯中略〉筑後國三潴庄(○○○) 隆季卿 米六百石 綿四百十一兩〈◯中略〉右注進如レ件平治元年潤五月 日
〔古今著聞集〕
〈五和歌〉
p.0976 嘉應二年十月九日、道因法師人々をすヽめて、住吉社にて歌合しけるに、後徳大寺左大臣、前大納言にておはしけるが、此歌をよみ給ふとて、社頭月といふを、 ふりにける松物いはヾとひてましむかしもかくや住の江の月、かくなんよみ給ひけるを、判者俊成卿ことに感じけり、よの人々もほめのヽしりける程に、其比彼家領筑紫瀬高の庄(○○○○)〈◯筑後國山門郡〉の年貢つみたりける船、攝國に入らんとしける時、惡風にあひて、すでに入海せんとしける時、いづくよりか來りけん、翁一人出きて、こぎなをして別事なかりけり、舟人あやしみ思ふ程に、おきなのいひけるは、松物いはヾの御句面白う候て、此邊にすみ侍る翁の參つると申せといひてうせけり、住吉大明神の彼歌を感ぜさせ給ひて、御體をあらはし給ひけるにや、
〔吾妻鏡〕
〈三〉
p.0976 壽永三年〈◯元暦元年〉四月六日甲戌池前大納言、並室家之領等者、載二平氏沒官領注文一、自二公家一被レ下云云、而爲レ酬二故池禪尼恩徳一、申二宥彼亞相勅勘一給之上、以二件家領三十四箇所一、如レ元可レ爲二彼家管領一之旨、昨日有二其沙汰一令レ辭レ之給、〈◯中略〉
p.0977 池大納言沙汰、〈◯中略〉 三原庄(○○○)〈筑後◯中略〉 右庄園拾七箇所、載二沒官注文一、自二於院一所二給預一也、然而如レ元爲二彼家沙汰一、爲レ有二知行一、勤状如レ件、 壽永三年四月五日
〔上妻文書〕
p.0977 將軍家政所下 筑後國上妻庄官等 可下早令二藤原家宗一爲中當庄内、今弘、光友、地久志部、豐福、多久万田、久米北田、境田等漆箇所地頭職上事、 右人補二任彼職一之状、所レ仰如レ件、以下、 建久四年六月十九日〈◯署名略〉
〔上妻文書〕
p.0977 奏聞候了〈花押◯少貳貞經〉 一品親王〈◯尊良親王〉去月二十六日、太宰府原山御坐之間、筑後國上妻庄(○○○)一分地頭宮野四郞入道教心、即馳參、賜二陣屋一令レ勤二仕大番一候畢、以二此旨一可レ有二御奏聞一候哉、教心恐惶謹言、 元弘三年六月 日 沙彌教心〈上〉
〔吾妻鏡〕
〈十八〉
p.0977 元久二年五月廿四日辛巳、安樂寺領、筑後國、岩田(○○)、田島(○○)兩庄事、就二社僧等愁訴一有二沙汰一、今日被レ付二地頭職於社家一云云、
〔吾妻鏡〕
〈三十六〉
p.0977 寛元二年六月十六日甲寅、〈◯此月庚午朔、甲寅恐乙酉誤、〉今日有二評定一、筑後國御家人吉井四郞長廣、與二同御家人矢部十郞直澄一相二論當國生葉庄(○○○)内得安名屋敷田畠事一、稱二當知行一、掠二給御下知一奸謀之間、召二返彼状一、任二貞應御成敗一、可レ爲二本所ノ成敗一之由云云、
〔古文書類纂〕
〈上處分状〉
p.0977 後深草天皇建長二年關白藤原道家處分状 總處分 條々事〈◯中略〉 一家地文書庄園事〈◯中略〉 前攝政〈◯中略〉 新御領〈◯中略〉 筑後國三毛山門庄(○○○)〈◯中略〉
p.0978 建長二年十一月 日 愚老〈在御判〉
〔西大寺文書〕
〈三〉
p.0978 筑後國竹野莊(○○○)地頭職、爲二光明眞言之料所一、所レ被レ付二寺家一也、可レ令二存知一者、天氣如レ此、仍執達如レ件、 元弘三年六月二十九日 式部少輔〈花押〉 西大寺長老
〔西大寺文書〕
〈三〉
p.0978 西大寺雜掌僧範盛申、筑後國竹野新莊四箇郷事、任二建武三年三月廿四日御奇進状一、可レ沙二汰付于當寺雜掌一之旨、可レ被レ下二知守護代一之状、依レ仰執達如レ件、 建武四年七月十三日 武藏權守〈花押〉 宇都宮常陸前司殿
〈色川本〉
〔島津文書〕
〈三〉
p.0978 筑後國小家莊(○○○)地頭職〈志田三郞左衞門督跡〉爲二勳功賞一、大隅左京進入道道惠〈◯伊作宗久〉可レ令二知行一者、天氣如レ此、悉レ之以レ状、 建武元年十一月二十六日 左衞門權佐〈花押〉
〔集古文書〕
〈十三下文〉
p.0978 雜訴決斷所下文(陸奥國會津家臣大竹喜三郞) 雜訴決斷所下安藝六郞藏人貞家所筑後國三池庄(○○○)南郷地頭職事 右件地頭職任二近衞前宰相中將家之去四月十四日和與状一、宜レ令二中分領知一也、互不レ可二違越一之状、下知如レ件、 建武二年八月四日 前筑後守藤原朝臣〈花押〉
〔慶應元年武鑑〕
p.0978 有馬中務大輔慶頼(大廣間 從四位中將元治元子四月任) 二拾一万石 居城筑後御井郡久留米〈江戸ヨリ海陸二百九十二里余 久留米ヨリ大坂迄海上百五十九里、大坂ヨリ江戸迄陸百三十三里、 城主毛利家小早川治部大輔秀包居レ之、慶長五、田中兵部大輔吉政、同筑後守忠政、元和七、有馬玄蕃頭豐氏、以後代々領レ之、 〉
p.0979 立花飛騨守鑑寛(大廣間 從四位上少將元治元子四月任) 拾一万九千六百石 居城筑後山門郡柳河〈江戸ヨリ〉二百九十里餘〈代々立花氏居之、慶長五、田中兵部大輔吉政、元和七、再城主立花飛騨守宗茂、以後代々領レ之、◯節略〉
〔倭名類聚抄〕
〈五國郡〉
p.0979 筑後國〈◯註略〉管十〈田萬二千八百餘町〉
〔拾芥抄〕
〈中末本朝國郡〉
p.0979 筑後〈上遠〉十郡〈（中略）田萬千三百七十七町〉
〔伊呂波字類抄〕
〈知國郡〉
p.0979 筑後國〈管十四（中略）本田二万二千八百二十八町〉
〔海東諸國記〕
p.0979 筑後州 郡十、水田一萬三千八百五十一町八段、
〔筑後地鑑〕
〈上北筑〉
p.0979 一北筑八郡之邑數凡五百三十、其民數男女老幼通計十三万六百五十餘人也、
〔筑後地鑑〕
〈中北筑〉
p.0979 御井郡六十八箇所〈山口高〉三万六千七百八十石〈◯中略〉 御原郡三十五ケ村〈山口高〉二万五千八十七石〈◯中略〉 山本郡三十三ケ村〈山口高〉一万二千八百四十石〈◯中略〉 竹野郡八十三ケ村〈山口高〉一万二千三百九十七石〈◯中略〉 生葉郡五十四ケ村〈山口高〉一万二千六百七十五石〈◯中略〉 上妻郡九十一ケ村〈山口高〉二万五千三百十三石〈◯中略〉 下妻郡二十五ケ村〈山口高〉一万五千六百一石〈◯中略〉 三潴郡百二十四ケ村〈山口高〉七万五千六百八十五石〈◯中略〉 凡八郡村數五百十三ケ村〈今五百三十ケ村〉 山口高合二十一万六千三百七十八石
〔筑後地鑑〕
〈下南筑〉
p.0979 山門郡八十四ケ村〈山口高〉五万六千九百十五石〈◯中略〉 三池郡六十ケ村〈山口高〉三万七千四百十八石〈◯中略〉 上妻郡十六ケ村〈山口高〉四千十三石三斗〈◯中略〉 下妻郡八ケ村〈山口高〉五千九百十三石三斗〈◯中略〉 三瀦郡十一ケ村〈山口高〉一万四千三百六十石四斗〈◯中略〉 五郡合山口高十一万八千六百十七石有餘〈三池和泉守領分共〉 村數合百七十九ケ村 田中代帳面松倉豐後竹中采女勘合 筑後十郡數合六百八十七ケ村 山口高合三十三万四千九百九十五石 但寺社領除レ之
〔日本鹿子〕
〈十四〉
p.0979 筑後國、十郡、大中國、南北五日、〈◯中略〉知行高三十萬二千八十石、
〔吹塵録〕
〈五人口及國高〉
p.0980 天保度御國高調〈◯中略〉 筑後國〈御料私領〉 一高三拾七万五千五百八拾八石八斗九升七合八勺
〔延喜式〕
〈二十六主税〉
p.0980 諸國出擧正税公廨雜稻〈◯中略〉 筑後國、正税公廨各廿万束、國分寺料一万三千三百九十四束、修理觀世音寺料一万束、文殊會料二千束、府官公廨十万束、衞卒料一万八千一百五束、修理府官舍料六千束、救急料三万束、俘囚料四万四千八十二束、
〔倭名類聚抄〕
〈五國郡〉
p.0980 筑後國〈◯註略〉管十〈（中略）正公各二十万束、本穎六十二萬三千五百八十二束、雜穎二萬三千五百八十二束、〉 ◯按ズルニ、延喜式ニ據レバ、雜穎二十二萬三千五百八十一束ナリ、此書二萬ノ上二十ノ二字ヲ脱ス、而シテ延喜式ヨリ一束多シ、
〔延喜式〕
〈二十四主計〉
p.0980 筑後國〈行程一日〉 調、綿紬十八疋、貲布卅二端、自餘輸二絹、絲、綿、布一、 庸、輸二綿、布一、 中男作物、穀皮、席、防壁、苫薦、蒲薦、簀、漆、胡麻油、海石榴油、荏油、槾椒油、醬鮒、雜魚楚割、雜腊、押年魚、煮鹽年魚、鮨年魚、漬鹽年魚、鮨鮒、
〔毛吹草〕
〈三〉
p.0980 筑後 紅花 菘 芳米 洪武錢(コロセン) 鹽鴨 海茸 三條鯉〈九州ニハ限二當國一〉 三池賀留多(ガルタ)
〔筑後地鑑〕
〈上北筑〉
p.0980 一筑後十郡、土宜之所レ産者、并名物、御井郡三町鯉魚、國分切麪、北野牛蒡、〈其長者及二三尺一〉此二種者爲二九州名物一、同所紅花、小森野大根、〈小而長者似二牛蒡一〉宜二香物一、又宜二圓于一、雖二尾張大根一不レ劣、蜷川大根、其大圍尺餘、長又二尺餘、其近里數家邑、皆孟春出二蕪菁一、宜二菹菜一、仲夏出二芥子一、爲レ油運二送于畿内一、仲秋者生二里芋一、味美而其居民充二饗飧一、竹野郡石垣小海老、生葉郡星野山出二燧石一、上妻郡鹿子尾出レ漆、黒木生二黒菎蒻一、大田生レ芹、〈其味脱而風味異レ他〉牟禮生二穗蓼一、知徳村塘生二蓴菜一、北川内鮎鮓、耳木鐵炮火繩、古賀河苣上廣川鮱、内田大辨馬場大竹藤田河原生二柴胡一、酒井田村作レ矢、毎歳獻二于府一、納二于武庫一、高江村作二松烟墨一、下妻郡
p.0981 水田北島陶二藍甕井筒一、殊半田土鍋爲二天下美物一、溝口漉紙、薄紙、奉書、十文字、杉原等多出、馬間田出二疊面一、三潴郡草場鱸魚、中島大根、同所密柑、西牟田郡角鞦、正月所レ玩之童男幼女之羽子板、弓矢數万箇、及夏月所レ用之圑扇數百本、三猪下郡鯽魚一、其大者如二鯉魚一、自二黒田村一以河南濱村城島浮島榎津等生二蘆葦一、榎津河海所レ取之海茸水母、歳送二于府一、獻二之東武一、此外近年高良山松茸、山町煙草、新産出之者、下田浮島七島筵之類、南筑上妻郡北田温石、土窪松材木、下妻郡本郷村藍染物、山門郡瀬高町挑燈、垂見疊、三池加留多、〈博奕所用之具〉同上卷具、三潴郡薄池村出二土器一、〈并〉半田土鍋爲二最第一一、爲二柳川領陶家長一、
〔官中秘策〕
〈三〉
p.0981 筑後國 十郡〈◯中略〉 一人數貳拾六萬八百七拾五人 内〈拾五萬六千五百四拾六人 男 拾萬四千三百貳拾九人 女〉
〔吹塵録〕
〈五人口及國高〉
p.0981 諸國人數調(文化元甲子年)〈◯中略〉 一人數貳拾七萬七千五百七拾九人(御料私領) 筑後國(高三拾三万千四百九拾七石餘) 内〈拾貳万五千七百貳人 男 拾壹万貳百四拾八人 女◯中略〉 ◯按ズルニ、此人口總數、内譯ト合ハズ、恐ラクハ一誤アラン、
〔吹塵録〕
〈五人口及國高〉
p.0981 諸國人數調(弘化三丙午年)〈◯中略〉 一人數貳拾九万九千四拾壹人(御料私領) 筑後國(高三拾七万五千五百八拾八石餘) 内〈拾七万三百六拾七人 男 拾貳万八千六百七拾四人 女〉
〔人國記〕
p.0981 筑後國 筑後國之風俗、筑前ニ替リ、實儀成者十人ニ八人如レ此、常ニ義理ヲ談ジ、得失ヲ沙汰シ、費ヲ愼テ、言語ヲ飾ル事猶以テ鮮シ、雖レ然下劣ハ一涯ニ而、非ヲ辨ル者スクナク、無體ノ事ノミ多シ、譬バ其堅固成事鐵石ヲ以テ是ヲ云ニ、鐵ニ非ズ而如レ石、其練レル事無フシテ、分レテ二度遇フト云事ナキハ石ナリ、武士モ大形此風儀ニ和アルモノト可レ知、
〔筑後志〕
〈一風俗〉
p.0982 性寛舒質貞實、才慧敏智巧明成器有て、文武諸技に堪へ、工思有て能く物を摸す、華麗を好尚し、滋味に厚し、些の英氣有て義理を好み邪妄を憎む、困勤を厭ひ、安逸を甘んず、凡そ州内の東塞〈俚俗上筑後と稱す〉の郷民、淳素勁勇、古風を存す、西郷〈俚俗下筑後と稱す〉の民心、痴嚚嬾惰、義氣無し、嘗て先君春林公、〈◯有馬豐氏〉丹州福知山より米府〈◯久留米〉に轉住の後、府下の言語殆んど京語に近し、是丹州の本語を摸するもの也、唯生葉の山民のみ本土の故言を存して、頗る訛強なり、俚俗これを生葉(イクハ)ノ聲(ジヤウ)と云ふ、
〔西遊雜記〕
〈六〉
p.0982 七月朔日筑後に入ル、堺に標木建、是より立花左近將監領分とあり、扨筑後は、山少く平地多く、所々に森村見え、焚火不自由ならず、水の流れもきよく、上々國の風土也、然るに在中廣く見渡すに、豪家と覺しき百姓一家も見えず、風俗肥後のごとく、十人に六七人までは、男女、ともに夏月は裸身にて、婦人などの人を恥る氣色更になし、風土は肥後よりも勝れてよき國ながら、人物言語の風俗はおなじ、初めにいふごとく、花は三芳野人は武士にて、城下近き村はいつしか見習ひて、中國筋の風俗におとらず、在々に入ては、中國上方筋の在とは大ひに劣れり、農具なども違ひしもの多し、中にも此邊の筵は角にして方六尺餘、五穀類を日に干に、こぼれずして便理也、然れ共雨にても降る時は、壹人にて取入る事自由ならず、二人がヽりにて持はこぶ事なり、何事にても二ツながらよきはなきものなり、又へふりといふ農具あり、 畑方三分、田方七分の國ゆへに、筑後川を堰て口またに小川あり、水損はいかならん、早挽はなき國と見ゆる、此川々に鮎多ク、鵜遣ひ村々に有、
〔日本鹿子〕
〈十四〉
p.0982 同國〈◯筑後〉中名所之部 一夜川 世俗に筑後川と云也 そのまヽに後の世もしらず一夜川渡るや何の夢路なるらん
p.0983 高良(カウラ)山 御井郡のうち也、大明神の宮ゐ有、玉垂の社といふなり、 足(アシ)代山 石垣の里 金目川 三池 濡瀬山 琴引の宮 はやみの里 右之通名所多しといへども、いまだ不二順見一、
〔延喜式〕
〈二十八兵部〉
p.0983 諸國器仗〈◯中略〉 筑後國〈甲三領、横刀十口、弓廿張、征箭卅五具、胡簶卅五具、〉
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