地部/紀伊國 - Kojiruien

p.0721 紀伊國ハ、キイノクニト云ヒ、舊クハ、キノクニト云フ、南海道ニ在リ、北ハ和泉、河内、大和、伊勢ニ接シ、東西南ノ三方ハ海ニ面ス、東西凡ソ二十七里、南北凡ソ三十里、此國ハ古ヘ國府ヲ名草郡ニ置キ、伊都(イト)、那賀(ナカ)、名草(ナグサ)、海部(アマ)、在田(アリタ)、日高(ヒダカ)、牟婁(ムロ)ノ七郡ヲ管シ、延喜ノ制、上國ニ列ス、在田郡ハ、原ト安諦郡ナリシヲ、平城天皇ノ大同元年、御諱ヲ避ケテ在田ニ改ム、明治維新ノ後、牟婁郡ヲ東西南北ノ四郡ニ分チテ、東牟婁、西牟婁、南牟婁、北牟婁トシ、又名草郡、海部郡ヲ合シテ海草郡ト爲シ、新ニ和歌山市ヲ設ケ、和歌山縣ヲシテ一市及ビ伊都、那賀、海草、在田、日高、東牟婁、西牟婁ノ七郡ヲ治セシメ、三重縣ヲシ南牟婁、北牟婁ノ二郡ヲ治セシム、

名稱

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〔倭名類聚抄〕

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〈五國郡〉

p.0721 紀伊

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〔新撰類聚往來〕

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〈下〉

p.0721 國名〈◯中略〉　紀伊〈紀州〉

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〔日本風土記〕

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〈一寄語島名〉

p.0721 紀伊〈乞奴苦藝(キノクニ)〉

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〔平家物語〕

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〈五〉

p.0721 てうてきぞろへの事　抑我朝に、てうてきのはじまりける事は、むかし日本いはれみこと〈◯神武〉の御宇四年、きしう(○○○)なぐさの郡たかをの村に一つのちヽう有、身みじかく手足長して、力人にすぐれたり、

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〔後撰和歌集〕

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〈十七雜〉

p.0721 紀のすけに侍りける男のまかり通はずなりにければ、彼男の姉のもとに、うれ

 p.0722 　へをこせて侍りければ、いと心うきことかなと、いひ遣はしたりける返事に、　紀の國(○○○)の名草のはまは君なれやことのいふかひありと聞つる

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〔倭訓栞〕

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〈前編七幾〉

p.0722 きい　紀伊はもと木國と書たるを、和銅年間に好字を撰み、二字を用ゐさせられしよりかく書也、伊は紀の音の響なり、

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〔古事記傳〕

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〈十〉

p.0722 木ノ國、名義此字の如し、〈◯中略〉書紀に、素戔鳴尊帥二其子五十猛神一降二到於新羅國一云々、初五十猛神天降之時、多將二樹種一而下、然不レ殖二韓地一、盡以持歸、遂始レ自二筑紫一、凡大八洲國之内莫レ不二播殖一、而成二青山一焉、所以稱二五十猛神一、爲二有功之神一、即紀伊國所在大神是也、〈◯中略〉さて右の如く木種を分播(ホドコシ)たまふ神の坐ス故に、木ノ國とは名けしなり、

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〔紀伊續風土記〕

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〈一提綱〉

p.0722 總論　本國の地は即上世大八洲國の内、大日本豐秋津洲の最南の一區域にして、舊其大名を東の方を熊野國といひしを、後熊野を併せて、木國を以て總名とす、木國は古事記神世に、大穴牟遲神の事を書して、速遣二於木國之大屋毘古神御所一とある木國なり、木を以て國號とせし由は、五十猛命二妹とともに、素盞鳴尊に從ひ天降り給ひし時、樹種を大八洲國に播殖し給ふ、當國は其三神鎭坐ありし地なれば、樹木の暢茂せし事、他の國よりも殊に勝れたれば、木國とは名づけしなり、又熊野の名も山林鬱茂の義にして、五十猛命の父神櫛御氣野命〈素盞鳴尊の一名なり〉の鎭まり坐せる地なるより其名起れり、〈◯註略〉木國の名と其義の本づく所は一なり、木は其物を以て名づけ、熊野は形状につきて呼ぶなり、〈◯中略〉美材の出る事、今に至りても、他の國に勝れたれば、木の國と名づけし、誠に稱へりといふべし、元明天皇和銅五年、文字を紀伊國と改めらる、故に日本書紀神代卷以下、當國の名を皆紀伊國と書す、神代卷に伊弉冉尊崩御の事を書して、葬二於紀伊國熊野有馬村一焉とある、此本國の事の史に見はるヽ始なり、

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〔萬葉集〕

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〈四相聞〉

p.0723 神龜元年甲子冬十月、幸二紀伊國一之時、爲レ贈二從駕人所レ誂娘子一、笠朝臣金村作歌一首并短歌　天皇之(スメロギノ)、行幸乃隨意(ミユキノマヽニ)、〈◯中略〉麻裳吉(アサモヨシ)、木道爾入立(キヂニイリタチ)、眞土山(マツチヤマ)、越良武公者(コユラムキミハ)、〈◯下略〉

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〔冠辭考〕

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〈一阿〉

p.0723 あさもよし〈木びと　きぢ城のべの宮〉　萬葉卷一に、〈大寶元年調淡海が歌〉朝毛吉(アサモヨシ)、木人乏母(キビトトモシモ)、亦打山(マソチヤマ)〈（中略）是までは紀伊の國にかヽれり〉卷二に、朝毛吉(アサモヨシ)、木上宮乎(キノベノミヤヲ)、〈（中略）是は大和國の城戸なり〉こは淺葱(アサギ)てふ色の事なるを、上に淺よといひて、葱とつヾけしならんか、〈◯中略〉さて毛與志(モヨシ)の毛と志はたヾ助辭のみ、與は呼出す辭也、〈◯中略〉　又或人、集中に、麻衣きればなつかし木の國のいもせの山にあさまけわぎもとよめると、又眞間の娘子をよめる歌に、ひたさ麻(ヲ)を裳には織きてなど有を以て、紀の國よりよき麻裳を出せし故によめるかといへど、總て國つものを以て、冠辭とせしはなきよしは、上下にいふが如し、その上この冠辭は、紀伊のみにもあらず、山との城戸にもつヾけたれば、此説は違へり、

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位置

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〔十寸穗の薄〕

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〈一〉

p.0723 紀伊國　一天經、北極卅四度、

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〔地勢提要〕

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〈乾〉

p.0723 各國經緯度〈附里程〉　紀伊和歌山、〈港久保町〉極高三十四度一十三分半、經度西三十四分半、從二東都一〈東海道經二大坂一〉一百六十八里三丁四十一間半、　紀伊新宮〈船川〉極高卅三度四十三分半、經度東一十四分、從二東都一〈東海道自二日永追分參宮街道一經二山田及鵜万村一沿海〉二百一十八里二丁五十間半、　紀伊田邊、〈本町〉極高三十三度四十四分、經度西二十二分半、從二東都一〈同上〉二百一十里七丁三十間、

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〔日本經緯度實測〕

p.0724 北極出地　紀伊　新宮　　三三度四三分三〇秒　三浦　三四度一〇分〇〇秒　長島浦　三四度一二分三〇秒　和歌山　三四度一三分三〇秒　田邊　三三度四四分〇〇秒〈◯中略〉　東西里差　山城　京　〇度〇〇分〇〇秒〈◯中略〉　紀伊　和歌山　西〇度三四分三〇秒

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疆域

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〔紀伊續風土記〕

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〈一提綱〉

p.0724 總論　本國は上國にして、南海道の首に居りて、近國なり、管する所總て伊都、那賀、名草、海部、在田、日高、牟婁、總て七郡〈延喜式和名抄〉七郡の疆界名號は、大抵孝徳天皇の御世定め給ふなるべし、七郡統る所合せて五十三郷、〈◯註略〉これ又大化年間より仁明天皇の御世〈◯註略〉比までに備はりしならむ、其七郡疆界の四至は、北は和泉河内二國と界し、夫より大和國吉野郡の西南東三面を繞りて、北の方伊勢と境を接し、其大形半壁の如く、東西及南の三面皆海に濱して、西は阿波土佐と海を隔て相對し、東南は大洋に向ひて際涯を知らず、和泉河内二國との境、葛城の連峯列障の如くにして、其南に四郡東西に列せり、伊都郡其東首に在りて、大和國宇智吉野兩郡と接せり、〈◯註略〉伊都の西を那賀郡とす、那賀の西を名草郡とす、名草の西海濱にあるを海部郡とす、此四郡北に葛城あり、南に長峯あり、〈長峯とは東は大和國に起りて、西は海部郡に至りて海に入る連峯をいふ、〉紀川其中央を貫きて西に流れて海に入る、舟行通ずる所十四五里、大和國に至れり、四郡の地の延袤を量るに、東西十三里許、南北六七里なり、又長峯の南に在るを在田郡とし、又其南にあるを日高郡とす、並に東は大和國十津川と界し、西の方海に瀕す、各大川ありて其郡中を貫き、在田にあるを在田川といふ、舟行通ずる所五里、日高にあるを日高川といふ、舟行通ずる所七里、二郡の延袤南北十四里許、東西近き所十五六里、遠き所二

 p.0725 十里餘、日高の東南に續きて、北は大和伊勢に界し、東南大洋に向ふ地を牟婁郡とす、〈◯註略〉牟婁の海濱鹽ノ御崎最南の極にして、鹽ノ御埼より日高郡比井御埼は乾位に當り、伊勢國度會郡は艮位に當る、牟婁郡一國の半を占めて、六郡を併せて大抵相對すべし、其地高峯峻嶺重疊連綿して、諸川其間を分畫す、北にあるを富田川といひ、其東南にあるを日置川といひ、其東なるを大田川といふ、舟行通ずる處皆七八里なり、其東なるを熊野川といふ、最大にして東南に流れて海に入る、舟行通ずる處十四五里なり、其路程南より東に回りて、日高の界より熊野川に達するまで三十里許、北の方大和の國界より南の方海に至るまで十五六里、熊野川より北皆大和を背にして、東の方海に面す、其地形東西廣さ四五里、南北長さ二十里許、北の端伊勢と相接す、國中の幅員長短平均して、大抵東西五十里餘、南北三十里餘、極星地を出る度數を測るに、若山ありて三十四度半弱なり、本國の地は即上世大八洲國の内、大日本豐秋津洲の最南の一區域にして、舊其大名を東の方を熊野國といひしを、後熊野を併せて、木國を以て總名とす、

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〔日本地誌提要〕

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〈五十九紀伊〉

p.0725 疆域　北ハ和泉、河内、大和、伊勢、東西南ハ海ニ至ル、東西凡貳拾七里、狹處凡八里、南北凡三拾里、狹處凡七里、

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〔平治物語〕

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〈一〉

p.0725 從二六波羅一紀州被レ立二早馬一事　大將〈◯平清盛〉以下皆淨衣ノ上ヘ鎧ヲ著敬禮、熊野權現今度ノ合戰無二事故一、討勝サセ給ヘト祈精シテ、引懸々々打程ニ、和泉ト紀伊國トノ境ナル、鬼ノ中山ニテ、蘆毛ナル馬ニ乘タル者、早馬ト覺シクテ、揉ニ揉デ出來タリ、〈◯下略〉

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島嶼

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〔日本實測録〕

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〈九島嶼〉

p.0725 紀伊國牟婁郡　實測　アカノ島、周廻一里二町、〈從二北岬一至二南岬一一十八町一間〉　鈴島〈從二北岬一至二南岬一〉一十九町四十四間、　中島、周廻九町三十間、　向島、周廻一十一町五十六間、　大島、〈從二鰹岬越山一至二大島浦一〉一里二十八町四十八間、〈從二樫野浦一至二街道一八丁二十四間、從二須江浦一至二街道一二十四丁二十四間、〉　稻積島、〈從二東岬一至二西岬一〉五町、　遠測　蛇島　米島

 p.0726 　ツヽキ島　千鳥濱　大島　大イツキ　小イツキ　丸山島〈道瀬浦〉　雀島〈道瀬浦〉　乙島〈白浦〉　夕岩黒岩　木生島　二股島　寺島〈島勝浦〉　サマル島　投石　大石〈小山浦〉　ワレカミ島　雀島〈尾鷲浦〉　丸山〈大曾根浦〉　毛ナシ　氏神島　桃頭島　ハトカ島　カヽリカツキ　ソホマ　篠野島　獅子島　マミルカ島　箱島〈古泊浦〉　イ島　鈴島　久島　中山島　久石　大和島　メサメ島　駒ケ崎離石　海老島　長島　丸島〈宇久井浦〉　小平石　大平石　鍋島　立島　サコ平岩　帆立岩　大磯岩　寺島〈勝浦〉　元太島　丸戸島　鶴島　乙島〈勝浦〉　姥島　雀島〈勝浦〉　鰹島〈太地浦〉　大石〈太地浦〉　千鳥島　トベラ島　ヒサゴ島　黒石　カントリ島　笠島　立石　男床島　鳥島　座島　ツヤ島〈浦上浦〉　鵜糞島　烏帽子島　箱島〈西向浦〉　黒ノ島〈西向浦〉　琵琶島　橋杭岩　鰹島〈大島〉　テス島　ツヤ島〈大島〉　堂島　雙島　横島　ハヤマ島　夷島　地黒島　沖黒島　鰹島〈周參見浦〉　赤島　黒島〈周參見浦〉　高島　シソフ島　メド岩　丸山島〈瀬戸村〉　馬見島　畑島　神樂島　神島〈瀬戸村〉　田所島　本島　内座岩　沖島　日高郡　遠測　鹿島　霰石　松魚島　海士取島　中ノ磯　有島　ヒシキ島　畑島〈神谷浦〉　烟島〈大引浦〉　海獺(アシカ)島　續島　黒島　有田郡　遠測　高島　刈藻(カルモ)島　毛無島　海士郡　實測　地友島、周廻一里一十五町二十三間、　沖友島、周廻二里二町五十一間、　遠測　小刈藻　大刈藻　毛無島　地ノ島〈又呼二浦之初島一〉　沖ノ島　野島〈大崎浦〉　辨天島　野島〈冷水浦〉　野島〈舟尾浦〉　太サ島　二子島　神島

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〔紀伊國名所圖會〕

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〈三下海士郡〉

p.0726 友が島〈また鞆がしまとも、土俗これを苫がしまといへり、古名妹がしま、新田の旅店より西南にのぞむところのしまをいふ、形見浦の條下に記せる地しま沖しまの外に、神島を加へてすべて三島なり、〉　友が島の勝景たるや、古しへ傳へて神仙の幽栖とし、敢て窺ひ探るもの一人もあることなし、

p.0727 嘗て役(ゑん)の角仙足跡を著しより、遂に修驗道の行所となれり、今にいたつて聖護三寶兩院の配下、爰に來て修行をなすこと曾て懈ることなし、其島都て三つあり、地島、沖島、神島なり、其形をいはヾ地島沖島は、鳥の翼を張れる勢をなして、譬へば左右の眉の人の面にあるがごとくしかり、神島は其眉のうへに、黒子を添たらんごと、やヽ西南のかたに浮出たり、先加太にて舟をやとひ、直に牛が首にいたつて、上る所の者是地島なり、陸にちかきをもて、さは呼べるなるべし、島の周廻やがて二里にも足りなん、青松蓊蔚として、曾て他の雜樹なし、〈◯中略〉神島は其周廻三百歩に過ず、〈◯下略〉

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地勢

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〔易林本節用集〕

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〈下〉

p.0727 紀伊、〈紀州〉上、管七郡、南北四日半、三方海欠二平地一、五穀不レ熟、小下國也、

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〔紀伊國名所圖會〕

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〈一上和歌山〉

p.0727 郡分之事　按ずるに、當國京畿を去ること遠からず、東北は和河泉勢の四國に界を接し、西南は蒼海に濱せり、郡縣都而重嶺を隔て鳥道を通じ、河水おの〳〵分流して海に朝す、山河の險隘魚鹽の豐饒、まことに天府の國といふべし、

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道路

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〔和漢三才圖會〕

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〈七十六紀伊〉

p.0727 和歌山〈或爲二弱山一、艮至二江戸一百四十六里、寅卯至二橋本一十一里半、同至二和州高取一十七里、艮至二和州郡山一二十一里、子丑至二攝州大坂一十六里、至二泉州岸和田一九里、乾至二淡州由良一海上五里、〉新宮〈乾至二和歌山一三十九里、亥子至二本宮一九里、至二那智山一四里半、艮方至二勢州田丸二十八里、◯中略〉　自二弱山一行二攝州大坂一道〈凡十六里許、但五十町爲二一里一、〉　弱山ヨリ〈一里半、此間有レ坂有レ渡、〉　山口〈一里半、有レ坂、紀州泉州堺、◯中略〉　自二弱山一行二伊勢山田一道　弱山ヨリ〈三里〉　三軒屋〈四里〉　名手(ナテ)〈四里半〉　橋本〈五里、有二犬飼眞土村一、◯中略〉　自二弱山一至二熊野三山一道　海部郡和歌山〈至二内原一一里半、在二弱浦紀三井寺一、〉　内原〈二里、有二藻屑川藤白峠一、此峠海部名草二郡之境、〉　名草郡加茂谷〈一里二十五町、在二蕪坂一海部有田之〉

p.0728 〈境、〉　有田郡宮原〈一里廿町、在二絲我村雲雀山一、〉　湯淺〈三十二町在二由良寺一〉　井關〈二里、在二鹿脊山一、自レ此有田日高之郡境、〉　日高郡原谷〈一里廿八町〉　小松原〈三里十六町在二道成寺一、〉　印南(イナミ)〈三里、在二切目王子岩代之松一、〉　南部(ミナヘ)〈二里、坂井村有二袖摺岩一、日高牟婁郡境、〉　田邊〈一里半七町、在二雞合權現及湯崎之温泉一、〉　三柄(ミス)〈二里十五町、自レ此本宮迄皆山中也、〉　芝〈二十二町、在二岩田川一、〉　高原〈二里十町、在二十條坂一皆深山、〉　近露〈二十九町〉　野中〈三里半九町、在二清水一、發心門村、〉　伏拜〈一里〉　本宮　本宮ヨリ〈九里八町、音無川、〉　新宮〈一里半、飛鳥神倉、〉　三輪崎〈半里、胎内潛リ〉　宇久井〈半里、目覺山、〉　濱宮〈一里半〉　那智　右自二和歌山一至二本宮一高三十一里十八町〈謂二中邊路一〉　那智ヨリ〈一里半〉　濱宮〈半里〉　天滿〈半里〉　湯川〈半里〉　橋川〈十町〉　二河〈一里温泉〉　市屋〈十町〉　和田〈十町〉　庄村〈一里〉　浦神〈一里〉　下田原〈三十町〉　津賀浦〈十七町〉　古屋〈十町〉　神川浦〈二十六町〉　伊串〈二十六町〉　姫浦〈二十町〉　鬮川〈二十町〉　二色〈十町〉　二部(ブ)〈一里〉　田辨(タナベ)〈半里〉　江田〈半里、此處潮不レ拘二干滿一片潮也、俗謂二日本之南限一、〉　田子〈半里〉　和深〈三十一町〉　里野〈二十八町〉　江住〈二十町〉　見老津〈一里半難所〉　和深川〈一里〉　周參見(スサミ)〈一里半〉　安居村〈三里〉　富田〈一里〉　朝來(アツク)〈一里半〉　田邊　右自二那智一至二田邊一二十四里〈謂二大邊路一〉

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〔紀伊續風土記〕

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〈六名草郡〉

p.0728 郡中街道　上方街道　府下〈◯和歌山〉より艮の方山口莊山口驛に至りて三里、夫より山口峠を越て泉州に入り、山中信達貝塚堺の四驛を經て大坂に至る、官道なり、各驛舍封堠あり、　伊勢街道　府下より東の方那賀郡岩手ノ莊清水驛に至りて四里、夫より名手驛、伊都郡橋本驛を經て和州に入り、越部鷲家の二驛を經て、勢州公領に至る、是を川俣街道といふ、各驛舍堠あり、　熊野街道　府下南の方神宮下郷内原驛に至りて一里十町、夫より海部在田日高の三郡を經て、牟婁郡田邊城下に至る、夫より道二筋に分れ、東北に向ひて三栖莊に至るを中へちといひ、南に向ひて富田莊に至るを大へちといふ、各驛舍封堠あり、　

p.0729 孝子越　貴志ノ莊中村より葛城を越て、和泉ノ國日根郡中孝子深日村に至る、路程二里、山路平坦なり、此道舊は笠木越、又笠道ともいふ、古和泉國へ踰る本道なり、聖武稱徳二帝、此道を踰給ひ、其後關白頼通公大納言公任卿も、和歌浦遊覽に此道を踰らる、〈事は貴志莊中村の條に見ゆ、府下より貴志莊平井村に至り、夫より泉州へ越る道あり、上孝子越といふ路程近し、〉　淡路街道〈或いふ根來街道〉　海部郡木ノ本村より東行して、貴志莊園部村に至りて一里半、夫より山口莊谷村に至りて一里三十町、夫より那賀郡山崎莊に至り、根來粉河に通ず、是古の南海道の官道にして、大和より伊都郡萩原驛に至り、郡中名草驛を經て、海部郡加太驛に至れるなり、今淡島街道といふは、其神佛に詣ずるを以てなり、　熊野古道　和泉國日根郡山中村より山口莊雄山を越て南行し、大野莊藤白村に至りて、今の熊野街道と合ふ、土俗此道を小栗街道といふ、　◯按ズルニ、本書他郡ニモ高野街道、熊野街道、伊勢街道、龍神街道、桃崎道、大木越等ヲ載セタレド、今省略ニ從フ、

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宿驛

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〔延喜式〕

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〈二十八兵部〉

p.0729 諸國驛傳馬〈◯中略〉　紀伊國驛馬〈萩原、賀太各八疋、〉

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〔續日本紀〕

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〈二文武〉

p.0729 大寶二年正月戊寅、始置二紀伊國賀陀驛家一、

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〔日本後紀〕

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〈二十一嵯峨〉

p.0729 弘仁二年八月丁丑、廢二紀伊國萩原、名草、賀太三驛一、以レ不レ要也、

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〔日本後紀〕

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〈二十二嵯峨〉

p.0729 弘仁三年四月丁未、廢二紀伊國名草驛一、更置二萩原驛一、

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〔平治物語〕

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〈一〉

p.0729 從二六波羅一紀州ヘ被レ立二早馬一事　去程ニ十日ノ曉、六波羅ヨリ立シ早馬、切目ノ宿(○○○○)ニテ追付タリ、

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〔太平記〕

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〈二十二〉

p.0729 義助豫州下向事

 p.0730 高野ヨリ紀伊ノ路ニ懸リ、千里ノ濱ヲ打過テ、田邊ノ宿(○○○○)ニ逗留シ、渡海ノ舟ヲ汰(ソロ)ヘ給ニ、〈◯下略〉

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〔南遊紀行諸州めぐり〕

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〈四紀伊〉

p.0730 なて(○○)ノ市場(○○)〈粉川より一里〉宿驛也、今日すでに暮ぬれば、なての市場に宿す、〈◯中略〉　かぶろの宿(○○○○○)〈高野より三里あり〉俗にいへるかるかや道心の妻の墓あり、其事はかるかやと云うたひにつくりて詳也、其外に小寺あり、常念佛なり、

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建置沿革

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〔日本國郡沿革考〕

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〈三南海道〉

p.0730 紀伊　古木國、上國、管七郡、千三百三十七村、　伊都(イト)〈百四十七村、日本紀作二伊刀一、〉　那賀(ナガ)〈二百四十八村〉　名草(ナクサ)〈百五十村古國府〉　海部(アマ)〈五十九村〉　在田(アリダ/アリタ)〈百三十七村　本安諦郡、日本紀作二阿提一、續紀作二阿氐一、大同元年七月、改爲二在田郡一、以三詞渉二天皇諱一也、〉　日高〈百四十八村　續紀氷高評、即是、〉　牟婁〈四百四十八村　續紀作二牟漏一、渡會延佳曰、熊野國造、即牟婁郷熊野之地、〉

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〔日本地誌提要〕

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〈五十九紀伊〉

p.0730 沿革　古ヘ國府ヲ名草郡ニ置、〈今ノ直川(ナウガハ)莊府中村〉鎌府ノ初、佐原義連ヲ以テ守護トス、延元正平ノ際、州豪湯淺、保田、貴志輩、多ク官軍ニ應ズ、足利尊氏、畠山國清ヲ以テ守護トナシ入侵ス、官軍ノ將四條隆俊、名草郡ニ駐テ州兵ヲ招諭シ、楠正儀ト相控援シテ、國清ヲ禦ギ、阿瀬河堡ニ保ツ、後官軍ノ衰ル、足利氏、山名義理(マサ)ヲ以テ守護トシ、藤白(フジシロ)〈名草郡大野莊〉ニ治ス、元中ノ末、其族滿幸ト倶ニ叛ス、將軍義滿、大内義弘ヲシテ之ヲ討ゼシム、義理逃亡ス、義滿因テ本州ヲ以テ義弘ニ賜フ、應永六年、義弘誅ニ伏シ、畠山基國代テ守護トナリ、河内ニ居テ之ヲ併領ス、文安中、楠氏ノ餘裔、皇孫義有王ヲ奉ジテ、湯淺城〈在田郡〉ニ據ル、畠山氏擊テ之ヲ平グ、其國ノ曾孫政長、義就、嫡ヲ爭フニ及ビテ、州族各之ニ分屬ス、政長ノ子尚順、義就ノ子義豐ヲ滅シ、河内ヲ子植長ニ讓リ、來テ廣城〈在田郡〉ニ居ル、大永ノ初、州人湯川直光叛テ尚順ヲ逐フ、天文中、堀内氏虎、牟婁郡ノ諸族ヲ脅制シ、新宮ニ居ル、永祿ノ末、尚順ノ孫高政、遂ニ河内ヲ棄テ來奔ス、根來、雜賀ノ黨、高政ノ從子貞政ヲ奉ジテ州主トシ、岩室城〈在田郡〉ニ居ル、天正ノ初、堀内氏善〈氏虎ノ子〉伊勢ノ北畠氏ト戰ヒ、志摩ノ三郷ヲ取ル、〈曾根浦以東ノ地是ナリ、爾後遂ニ牟婁郡ニ屬ス、〉十三年、豐臣氏將ヲ遣テ地ヲ略ス、貞政出亡シ、氏

 p.0731 善降附シ、故封ヲ保ツ、豐臣氏、畠山氏ノ故地ヲ以テ、其弟秀長ニ加賜ス、其子秀俊卒シテ國除ス、和歌山ヲ桑山重晴ニ賜フ、關原役後、堀内氏善ノ封ヲ收メ、桑山氏ヲ大和ニ徙シ、淺野幸長ヲ全州ニ封ズ、元和五年、其弟長晟、安藝ニ徙リ、徳川頼宣代テ封ゼラレ、和歌山ニ治ス、安藤直次ニ田邊ヲ賜ヒ、水野重仲ヲ新宮ニ封ジ、以テ其相トナス、皆世襲ス、王政革新、田邊〈安藤直行〉新宮〈水野忠幹〉直ニ藩列ニ加ハル、既ニシテ皆改テ縣トナシ、又廢シテ和歌山一縣ニ併ス、

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〔先代舊事本紀〕

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〈十國造〉

p.0731 紀伊國造　橿原朝〈◯神武〉御世、神皇産靈命五世孫天道根命定二賜國造一、　熊野國造　志賀高穴穗朝〈◯成務〉御世、饒速日命五世孫大阿斗足尼定二賜國造一、

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〔續日本紀〕

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〈十六聖武〉

p.0731 天平十七年九月戊午、外從五位下井上忌寸麻呂爲二紀伊守一、

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〔紀伊續風土記〕

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〈一提綱〉

p.0731 守護　佐原十郞左衞門尉義連　義連は三浦大介義明の三子にして、從五位下和泉守左衞門尉となる、〈◯中略〉元暦元年攝州一ノ谷鵯越の先陣をなし、和泉紀伊兩國の守護となる、〈三浦家系圖〉

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〔吾妻鏡〕

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〈十八〉

p.0731 建永二年〈◯承元元年〉六月廿二日丙寅、坊門亞相〈信清卿〉使者參著、所レ被レ進二仁和寺御室令旨一也、是紀伊國土民等、亂二入高野山一、企一狩獵一押二妨寺領一、和泉紀伊國守護代爲二其張本一、爲二關東御沙汰一可レ被レ止二狼籍一之趣、有二寺門愁訴一之間、御室以二件金剛峯寺所司等状一被レ仰二合坊門一、仍又被レ傳二申其旨一云云、　廿四日丙戍就二御室仰坊門亞相被一レ執下申高野山愁訴、紀伊國土民狼籍事上、於二御所一有二其沙汰一、和泉紀伊兩國守護者、佐原十郞左衞門尉義連職也、義連卒去之後、未レ被レ補二其替一、向後兩國爲二院御熊野詣驛家雜事一、自今以後無二指事一外、不レ可レ置二守護人一、就レ之諸事可レ爲二仙洞御計一之由被レ定レ之、仍義連代、早可二召上一之由、所レ被レ遣二御書於掃部入道寂忍之許一也、廣元朝臣奉二行之一、

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國府

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〔倭名類聚抄〕

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〈五國郡〉

p.0732 紀伊國〈國府在二名草郡一、行程上四日、下二日、〉

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〔三代實録〕

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〈三十四陽成〉

p.0732 元慶二年九月廿八日庚申、紀伊國司言、今月二十六日亥時、風雨晦暝、雷電激發、震二於國府聽〈◯聽恐廳誤〉事及學校并倉屋一、被レ破二官舍二十一宇、縁邊百姓三十三家一、〈◯下略〉

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〔紀伊續風土記〕

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〈九名草郡〉

p.0732 府中村　直川村の東十四町餘にあり、和名抄國府在二名草郡一、行程上四日、下二日、とある地即是なり、故に今に至るまで古名を存して府中といふ、往古は此邊の總名を直川郷といふ、〈◯註略〉當村國府のありし所なるを以て府中といふ、〈◯中略〉　國府遺蹤　其地今詳ならず、按ずるに村中に平林といふ少し高き地あり、〈水野大夫の別業の地なり〉古より無高の地にして、堀り耕すものなし、此地官府ありし跡ならん、

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郡

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〔倭名類聚抄〕

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〈五國郡〉

p.0732 紀伊國〈◯註略〉管七〈◯註略〉伊都　那賀〈賀音如レ鵞〉名草〈奈久佐、國府、〉海部〈阿末〉在田〈阿利太〉日高〈比太加〉牟婁〈牟呂〉

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〔延喜式〕

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〈二十二民部〉

p.0732 紀伊國、上、〈管　伊都(イト)　那賀(ナカ)　名草(ナクサ)　海部(アマ)　在田(アリタ)　日高(ヒタカ)　牟婁(ムロ)　◯中略〉　右爲二近國一

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〔皇國郡名志〕

p.0732 紀伊國〈七郡〉　伊都(イト)　〈●廣口　●大畑　●大野　●橋本　●秃　●二尊院　●紙谷　●花坂　△高野山　和河界〉　那賀(ナカ)　〈●志賀　●大津　●高野辻　△粉川寺　△根來山　泉界〉　名草(ナクサ)　〈和歌山　●八軒屋　●岩手　泉界〉　海部(アヘ)　〈●加田　△粟島社　△和歌ノ浦　△紀ノ川　有田郡ヲ越テ、六七郷在家此郡ニ屬、　西北ノ海ニ向〉　在田(アリタ)　〈●カモ谷　●ヒハリ山　和界ヨリ細長ク海ニ貫〉　日高(ヒタカ)　〈●印南　●小松原　△日高川　△道成寺　在田ニ並〉　牟婁　〈田邊　●近ツエ　●發心門　●クマノ本宮　●泉式部白川法皇塔　●請川　●小口　●富山　●阿瀧　●ミロツ　●里浦　●有田浦　●鹽見崎　●宇ラカ　●ウクイ　△那智山　●ミワサキ　△三熊野社　●有馬〉　

p.0733 〈●新鹿　●三鬼　●ヲワシ　●馬瀬　新宮　●カウ村　伊和ノ界ヨリ東南西ノ海ニ貫、紀ノ國七分ノ一郡也、〉　◯按ズルニ、本書及ビ次下ノ郡名異同一覽ノ符號ハ、山城國篇郡條ニ引ク所ノ、二書ノ凡例ヲ參照スベシ、

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〔郡名異同一覽〕

p.0733 紀伊

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〔年山紀聞〕

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〈一〉

p.0734 物の名　仲文集に、紀の國の郡どもをよめる、いと〈伊都〉なか〈那賀〉なくさ〈名草〉ありた〈在田〉あま〈海部〉ひたか〈日高〉むろ〈牟漏〉　いとなが(○○○○)き夜はなくさ(○○○)ますあま(○○)りありた(○○○)えずひたか(○○○)んむろ(○○)にすまばや　三十一字の中に、七郡十七字をかくしたるは、やすからぬ事なり、

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〔宇野主水記〕

p.0734 一紀伊國【奧郡】湯川中務大輔直春(十一月（天正十一年）十八日御書ノ御日付也)、此比御無音也、

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伊都郡

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〔紀伊續風土記〕

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〈四十二伊都郡〉

p.0734 總論　當郡は那賀郡の東にありて、東は大和國宇智吉野兩郡に界し、南は在田郡に接し、北は河内國錦部郡に界す、其廣袤東西六里、南北九里、伊都の義詳ならず、按ずるに、伊都は絲の義なるべし、本國に絲の縁ある事は、延喜式に、凡貢二夏調絲一云々、紀伊等十二國並上絲とあり、〈◯中略〉當郡の形勢を考ふるに、葛城峰北に連なり、長峯南に連なり、中間紀川東西に貫き流る、又東は大和の堺眞土山あり、西は那賀の堺背山ありて東西を塞ぎ、郡中即一谿谷の如し、村邑川に傍ひて碁布し、又山巒谿

 p.0735 谷の間に散在す、川南を高野領とす、古の神戸郷是なり、川北は古の賀美村主揖理桑原四郷の地なり、川南峯巒重疊して、盡深山幽谷にて少の平野なし、然れども地の大さ郡中三分の二に居る、是古の丹生神地なり、〈◯下略〉

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〔紀伊國名所圖會〕

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〈三編二〉

p.0735 伊都郡　東は大和國宇智吉野兩郡、西は本國那賀郡、南は有田郡、北は河内國錦部郡、和泉國泉南郡に攝す、

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〔日本書紀〕

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〈二十九天武〉

p.0735 八年　是年、紀伊國伊刀郡(○○○)貢二芝草一、其状似レ菌、莖長一尺、其蓋二圍、

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〔東大寺正倉院文書〕

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〈十二〉

p.0735 山背國愛宕郡雲下里計帳〈◯神龜三年〉　戸主少初位上出雲廣足、年陸拾玖歳、〈◯中略〉　女出雲臣乎美奈賣、年伍拾壹歳　丁女　和銅五年、逃二紀伊國伊刀郡一

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〔東大寺正倉院文書〕

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〈三十七〉

p.0735 紀伊國正税帳　紀伊國司解　申天平二年收納大税并神税事〈◯中略〉　伊都郡　天平元年定大税稻穀伍阡參伯肆拾斛漆斗漆升漆合〈◯下略〉

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那賀郡

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〔紀伊續風土記〕

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〈二十七那賀郡〉

p.0735 總論　疆域、東は伊都郡に接し、西は名草郡に接し、南は有田郡と界し、北は和泉國泉南日根二郡に界す、其廣袤大抵東西四里餘、南北六里餘、紀ノ川其中央ヲ貫きて東西に流れて、川の北は二里にして葛嶺を界とし、川の南は四里にして、遠く長嶺を以て界とす、那賀は舊郷名なり、今の長田ノ莊邊の名にして其義なるべし、其地平廣にして長の名に應ぜり、〈◯註略〉郡名を定らるヽ時、取りて大名とせられしなり、〈◯中略〉大寶に當郡をして絲を獻ぜしむるを見れば、當郡蠶桑に宜しき地なる事知べし、今猶郡中多く棉花を作り、木綿并に紋羽を織るを婦女の業とす、古絲を作りし遺意といふべ

 p.0736 し、紀ノ川郡の中央を流るヽを以て、郡中堰渠を所々に作りて、灌漑の利あり、田畑皆沃腴にして、五穀の性少し伊都に讓るといへども、名草に勝れり、且川あるを以て運漕の便あり、又山あるを以て薪柴乏しからず、通じてこれを論ずるに、民の生産宜しといふべし、郡中商買多くして、輕薄の風あり、山中の諸村といへども、又大に寒乏に至るものなし、粉河あり、根來あり、高野の街道にして、中世天子の臨幸、公卿の參詣屢なりし故、郡中繁昌して舊跡等も亦多し、

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〔續日本紀〕

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〈九元正〉

p.0736 神龜元年十月癸巳、行至一紀伊國那賀郡玉垣勾頓宮一、

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〔東大寺要録〕

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〈六〉

p.0736 別功徳分庄　紀伊國那賀名草兩郡十二町九段廿歩

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名草郡

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〔紀伊續風土記〕

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〈六名草郡〉

p.0736 總論　孝徳天皇の御代、國郡を定め給ひしより、名草を以て郡名とし給ひしなり、〈國造舊記曰、十九代大山上忍穗立二名草郡一とある、則是なり、〉其名義は詳ならず、或説に、渚の義ならむといへり、〈渚、和名鈔韓詩注云、一溢、一否曰レ渚、和名奈木左とあり、木と久とは語通ひて、古の地形に據ればよしありげにきこゆ、〉郡の廣袤東は那賀郡に接し、西南は海部郡に接し、北は和泉國日根郡に界す、東西行程六里餘、南北三里半、〈◯中略〉古より諸郡の中にて、田野平曠にして、播種地に宜く、五穀蔬菜より草蓏衆草に至るまで、生殖せざる物なし、人民富庶にして、郷里の數も他郡より多き事數倍す、官知神も亦多し國中輻湊の地なること知べし、故に古より國造こヽに居し、國府を此郡に建られ、〈直川莊府中村〉守護も亦是に居れり、〈大野莊〉大抵國中の貴族著姓爰に出ざる者なし、〈◯下略〉

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〔續日本紀〕

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〈九元正〉

p.0736 養老七年十一月丁丑、下總國香取郡、〈◯中略〉紀伊國名草郡等少領已上、聽レ連二任三等已上親一、

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海部郡

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〔紀伊續風土記〕

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〈二十一海部郡〉

p.0736 總論　當郡總て七莊、名草、在田、日高三郡の濱海の地にして、壤地三斷して接續せず、加太、木本、雜賀三莊

 p.0737 一區域にして、名草郡に接し、仁義、濱中二莊一區域にして、名草在田二郡に接し、衣奈、由良二莊は一區域にして、在田、日高二郡に接せり、一郡七莊の地を通考すれば、東は名草、在田二郡に界し、西は海を隔てヽ、阿波淡路に對し、南は日高郡に接し、北は和泉國日根郡に接す、其地長きを斷ち短きを補ひて、大抵方三里許なり、海部は海人部の界にして、漁鹽を營む者の部をいふ名なり、古事記書紀に、諸國の海部見えたり、〈◯中略〉欽明天皇十七年の紀に、紀伊國置二海部屯倉一とあり、是本國海部の見えたる始なり、〈◯中略〉郡中は皆海濱なれば、山川明媚にして、土壤清麗勝景の地多く、和歌吹上加太の名、最古今に高く、田野沃腴、人民繁富にして、富邑大村多く、農民少くして漁戸多く、各莊少異同あれども、大抵其俗奢侈狡嶮なり、雜賀木本の二莊、紀川の海口にありて、洪波の爲に變遷し、地形屢改革せり、

↑

〔續日本紀〕

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〈九元正〉

p.0737 神龜元年十月壬寅、賜二造離宮司及紀伊國國郡司并行宮側近高年七十已上祿一、各有レ差、百姓今年調庸、名草海部二郡田租咸免之、

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〔今昔物語〕

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〈二十〉

p.0737 長屋親王罰二沙彌一感二現報一語第廿七　今昔、聖武天皇ノ御代ニ奈良ノ宮ノ時、〈◯中略〉彼長屋ノヲ紀伊國ノ海部ノ郡ノ桝抄ノ奧ノ島ニ置ク、

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阿提郡/在田郡

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〔紀伊續風土記〕

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〈五十七在田郡〉

p.0737 總論　當郡は阿提郡といふ、阿提或は阿氐又は安締と書す、阿提は即英多にして原一郷の名なり、郡名を定めらるヽ時、擧げて大名とせられしならむ、〈◯中略〉郡の廣袤東西九里許、南北五里許、東は伊都郡及大和國吉野郡に界し、南は日高、海部二郡に隣り、北は伊都、那賀、名草、海部四郡と接す、三方山を阻して西の方海に面す、

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〔日本書紀〕

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〈三十持統〉

p.0737 三年八月丙申、禁下斷漁獵於攝津國武庫海一千歩内、紀伊國阿提郡(○○○)那耆野二萬頃、伊

 p.0738 賀國伊賀郡身野二萬頃上、置二守護人一、准二河内國大鳥郡高脚海一、

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〔續日本紀〕

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〈十一聖武〉

p.0738 天平三年六月庚寅、紀伊國阿氐郡(○○○)海水變如二血色一、經二五日一乃復、

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〔日本後紀〕

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〈十四平城〉

p.0738 大同元年七月戊戍、改(○)二紀伊國安諦郡(○○○○○○)一爲二在田郡(○○○)一、以三詞渉二天皇諱一也

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〔續日本後紀〕

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〈十八仁明〉

p.0738 承和十五年五月癸酉、紀伊國在田郡(○○○)爲二上郡一、以二戸口増益、課丁多一レ數也、

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日高郡

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〔紀伊續風土記〕

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〈六十三日高郡〉

p.0738 總論　日高郡は在田郡の南にありて、南は牟婁郡と界し、東は大和國吉野郡十津川と境を接し、西は海に濱す、其廣袤東西十八里、南北十里、日高の名義を考ふるに、日の高く天の眞秀に坐して、照輝く義にして、山あれども高からず、よく日をうくる地の美稱なり、取りて直に郡名とせるならん、

↑

〔續日本紀〕

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〈二十五淳仁〉

p.0738 天平寶字八年七月丁未、先レ是從二位文室眞人淨三等奏曰、伏奉去年十二月十日紀寺奴益人等訴云、紀袁祁臣之女粳賣、嫁二木〈◯木原作レ本據二一本一攺〉國氷高評(○○○)人内原直牟羅一、生二兒身賣狛賣二人一、

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牟婁郡

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〔紀伊續風土記〕

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〈六十九牟婁郡〉

p.0738 總論　牟婁は日高郡の東南に續きて、其地の延袤、伊都、那賀、名草、海部、在田、日高の六郡を合せても、其大きさに較ぶべきにあらず、長短相補ひて、其廣さをいはヾ、東西三十五里、南北十二三里許なるべし、六郡の地は、大抵大和國の西にあり、當郡は大和國の南より東に繞りて吉野郡を包みて、北の方伊勢國と境を接す、東南は大瀛に向ひて、其際涯を知る者なし、萬國圖を閲るに、本國より東南隅八丈島を除きて、其外に國あらず、實に洋溟に濱すといふべし、此地上古は熊野といふ、今に至りても是を通稱とす、牟婁の名は初めて齊明紀及萬葉集に出でヽ、往古は僅に郡の西邊、今の田邊近邊の稱にして、後の牟婁郷の地即其地なり、〈事は田邊莊論に詳なり〉其名義は館(ムロツミ)の義にして、海津官舍あるより起れる稱ならむか、〈播磨室津周防室積なども同じ、又尾張師埼をむろ崎ともいふ、是も皆海邊なればおなじ義ならむ〉又は温暖の義にし

 p.0739 て、其地の暖なるより起れる稱ならむ、〈大和物語に、きの國のむろの郡に行く人は風の寒さも思ひ知られじ、其返しに、紀の國のむろの郡に行ながら君とふすまの無きぞかなしき、〉其地を除く外は、盡熊野の地にして、〈大抵今の富田坂より東の方〉其地曠大にして一邦域をなせり、其名義、熊は隈にて古茂累(コモル)義にして、山川幽深樹木蓊鬱なるを以て名づくるなり、〈◯中略〉孝徳帝の御世、國郡を分ち給へる時、熊野國を廢して牟婁の地を加へて一郡とし、本國に隷し、牟婁郡と名づけ、郷を分けて岡田、牟婁、栗栖、三前、神戸の五郷とす、其帝の記には牟漏郡と書けり、五郷の地今これを地形に考ふるに、岡田、牟婁、栗栖、三前の四郷は、今の口熊野の地なり、唯神戸の一所熊野の神領にして、今の奧熊野をいふに似たり、神武紀に神邑とある即其地ならん、〈◯中略〉又中世以後五郷の名も絶えて、郡中自然に區分し、遂に四十三莊となれり、又其地の大きなるより、大名も自から二に分れて、東の方を奧熊野と稱し、西の方を口熊野と稱す、其奧口の界、大抵郡の中央にてわかる、郡中第一の大嶽を大塔峯といふ、此山奧口の中央に在て東西を隔絶して、蟠根は十里の外に跨がり、其枝峯蔓嶔遠く彌延するを以て、中間十里許の地、人行絶えて通ぜず、其勢東西を分ちて、口奧の稱を立ざる事を得ず、故に熊野の街道二條ありて、一は中邊地といひ、一は大邊地といふ、中邊地といふは、山中を行きて大塔峯の西より北へ回る道をいふ、大邊地といふは、海濱に沿ひて大塔峯の南より東へ出る道をいふ、大邊地中邊地と兩道に分るヽは、大塔峯中央を隔るの故に由るなり、

↑

〔熊野遊記〕

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〈上〉

p.0739 牟婁者紀之南垂、邇睨二四島一遐瞠二八東一、掖レ勢負レ和、炎壤以窮、名山大川、錯二繚乎其間一、土毛水産、殷二充於其中一、上古未レ立レ郡、稱爲二熊野一、孝徳帝時、定爲二牟婁郡一、有二三山一、日本宮也、新宮也、那智也、是曰二三熊野一、實鎭二南方一、

↑

〔日本書紀〕

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〈三十持統〉

p.0739 六年五月庚午、御二阿胡行宮一時、進レ贄者、紀伊國牟婁郡人阿古志海部河瀬麿等兄弟三戸、復二十年調役雜徭一、復免二梜抄八人今年調役一、

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〔續日本紀〕

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〈二文武〉

p.0740 大寶元年九月丁亥、天皇幸二紀伊國一、　十月丁未、車駕至二武漏温泉一、　戊申、從官并國郡司等、進レ階并賜二衣衾一、及國内高年給レ稻、各有レ差、勿レ收二當年租調并正税利一、唯武漏郡本利並免、曲二赦罪人一、

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〔空穗物語〕

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〈吹上之下〉

p.0740 かくて紀伊國むろのこほり(○○○○○○)に、かみなひのたねまつといふ長者、かぎりなききよらのわにて、たヾいま國のまつりごと人にて、かたちきよげにて心つきてあり、

↑

〔大和物語〕

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〈上〉

p.0740 おなじ男、紀伊國にくだるに、さむしとて、きぬをとりにをこせたりければ、女、　きの國のむろのこほりに行人は風のさむさもおもひしられじ、返しおとこ、　紀伊國の室の郡に行ながら君とふすまのなきぞかなしき

↑

郷

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〔倭名類聚抄〕

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〈九紀伊國〉

p.0740 伊都郡　神戸　賀美〈◯美、高山寺本作レ茂、〉村主　指理　桑原　那賀郡　神戸　右手〈◯右、高山寺本作レ石、〉　福門〈◯福、高山寺本作レ橋、〉　那賀　荒川　山埼　埴埼、〈◯高山寺本註二羽佐岐一〉　名草郡　大屋　直川　苑部　大田　大宅　忌部　誰戸　斷金　驛家　野應　津麻〈◯麻、高山寺本作レ摩、〉　神戸　國懸　島神戸　有眞〈◯高山寺本註二アリマ一〉大屋　八〈◯八、字高山寺本无、〉荒賀　大野　旦來〈◯旦、高山寺本作レ朝〉　日前神戸　伊太杵會神戸　須佐神戸　海部郡　賀太　濱中　全戸　㛔家〈◯㛔誤字、恐〉　在田郡　吉備　温笠　英多　奈郷　須佐　日高郡　財部　清水　内厚〈◯厚、高山寺本作レ原〉石淵　南部　全戸　牟婁郡　岡田　牟婁〈無婁〉栗栖　三前　神戸

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〔古語拾遺〕

p.0740 仍令下天富命〈太玉命之孫〉率二手置帆負彦狹知二神之孫一、以二齋斧齋鉏一始採二山材一構中立正殿上、〈◯中略〉故其裔今在二紀伊國名草郡御木(○○)、麁香二郷(○○○○)一、〈古語正殿謂二之麁香一〉採レ材齋部所レ居謂二之御木一、造レ殿齋部所レ居謂二之麁香一、是其證也、

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〔大安寺伽藍縁起并流記資財帳〕

p.0740 合墾田地玖佰參拾貳町　

 p.0741 在二紀伊國海部郡木本郷(○○○)一佰漆拾町〈◯中略〉　合今請墾田地玖佰玖拾肆町〈◯中略〉　紀伊國伍町　海部郡木本郷葦原〈◯中略〉　天平十九年二月十一日〈◯署名略〉

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〔日本靈異記〕

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〈下〉

p.0741 漂二流大海一敬稱二尺迦佛名一得レ全レ命縁第廿五　長男紀臣馬養者、紀伊國安諦郡吉備郷(○○○)人也、小男中臣連祖父麿者、同國海部郡濱中郷(○○○)人也、

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〔國造家所藏文書〕

p.0741 日前國懸社御遷宮時四面四至糺定郷々事　艮　他領　直川庄上芝原　松島郷(○○○)　栗栖庄細工谷　神領　有間郷(○○○)　永沼郷(○○○)　西方寺免畠東　他領　湯橋庄　岡崎庄堺之尾　東頭越　神領　忌部郷(○○○)　僧綱寺山峯筋　神前郷(○○○)　福　飯峯筋　巽　他領　冷水郷(○○○)　海之沖洲　神領　舟尾郷(○○○)　海擔子洲　南　他領　冷水郷　鹽津庄海　神領　毛見郷(○○○)　海三井之神山頂上少シ見ユル堺　坤　他領　大崎海　雜賀庄海　神領　毛見郷　海擔子洲〈於〉當レ東小島甲崎〈於〉當二丑方堺一　西　他領　雜賀庄　園豆　鈴丸　神領　小宅郷(○○○)　西島　西畠　太田郷(○○○)　西畠　吉田郷(○○○)　本畠　新畠　乾　他領　北有本郷(○○○)道　同ジク有本郷　神領　本有本郷　刀禰名畠　北　他領　六十谷庄道　神領　薢津郷(○○○)　若島ガ畠　右嘉禎元年、御遷宮時之四面四至、任二先例一、同四年九月廿五日、依レ被二糺定一令二注進一之状如レ件、　嘉禎四年戊戍九月廿五日　紀伊國司從五位下源長信

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〔續寳簡集〕

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〈六〉

p.0742 奉寄進　御影堂陀羅尼田事　在紀伊國毛原郷(○○○)内字永長　定田六斗者〈◯中略〉　嘉暦三年〈戊辰〉七月十日　定盛〈花押〉

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〔集古文書〕

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〈十御教書〉

p.0742 〈南朝〉御教書〈所藏不レ詳〉　紀伊國布施屋郷(○○○○)地頭職半分、爲二兵粮料一所レ可レ令二知行一之由其沙汰也、仍執達如レ件、　正平六年十月三日　大判事〈花押〉　二見左衞門大夫殿

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村里/名邑

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〔郡名一覽〕

p.0742 一紀伊國(皆私領)　〈紀州　南北四日半〉　七郡　高三拾九万七千六百六拾八石壹升九合　千四百拾三ケ村　●和歌山〈百四十六里餘〉　 ●新宮〈紀州三万七千石百十五里〉　水野飛騨守　 ●田邊〈同三万五千石百四十二里〉　安藤帶刀　 ◯貴志〈同一万六千石〉　三浦將監　◯按ズルニ、本書ノ符號ハ、山城國篇村里條ニ引ク所ノ、本書ノ凡例ヲ參照スベシ、

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〔郡國提要〕

p.0742 紀伊　七郡、千三百三十七村、　高四十四万八百五十八石三斗七升七合七勺一才(皆私領)　伊都郡百四十七村　那賀郡二百四十八村　名草郡百五十村　海部郡五十九村　在田郡百三十七村　日高郡百四十八村　牟婁郡四百四十八村

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〔地勢提要〕

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〈坤〉

p.0742 郡邑島嶼奇名　紀伊牟婁(ムロ)郡、島ノ勝浦(カツウラ)、周參見(スサミ)浦、朝來歸(アサラキ)村、男床(オトコ)島、海士郡、椒濱(ハジカミハマ)浦、雜賀崎(サイガサキ)浦、

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〔日本書紀〕

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〈三神武〉

p.0742 戊午年六月丁巳、軍至(○)二名草(○○)邑一、則誅二名草戸畔者一、〈戸畔此云二妬鼙〉遂越二狹野一、到二熊野神邑(○○○○)一、

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〔日本紀略〕

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〈一醍醐〉

p.0742 延喜六年八月七日戊子、紀伊國言、管牟婁郡熊野村(○○○)、去四月十八日牝牛産レ犢、〈◯下略〉

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〔南紀名勝略志〕

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〈牟婁郡〉

p.0743 熊野村　新宮ノ庄ニ上熊野村、中熊野村、下熊野村有、今ノ新宮村ト云モ元ハ熊野邑ノ内ナレドモ、新宮大神鎭座ノ以後所名トセルカ、諸書熊野村ト云ルハ此所ナルベシ、總ジテ牟婁ノ一郡ヲ熊野ト云ヘルハ、新宮熊野村ニ因テ云フト見ヘタリ、

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〔熊野遊記〕

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〈上〉

p.0743 本宮者在二熊野川上游一、東南七里而至二那智一、又五里至二新宮(○○)一、新宮者在二熊野川口一臨二于海一焉、自二紀北一循レ海至二新宮一曰二大邊地一、自二田邊城一折而左至二本宮一曰二中邊地一、

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〔熊野遊記〕

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〈下〉

p.0743 傍レ川〈◯熊川〉西北得二華表一入、是爲二新宮一、庿貌整麗、山與二城市一因以得レ名、返レ東過二市街一、民戸殷富、爲二紀南一都會一、命卿水野氏邑焉、

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〔續千載和歌集〕

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〈十七雜〉

p.0743 那智(○○)にて庵の柱にかきつけける　前大僧正行尊〈◯歌略〉

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〔源平盛衰記〕

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〈十三〉

p.0743 熊野新宮軍事　那智新宮(○○○○)ノ者共、寄合寄合カクス〳〵ト私語ケレドモ、〈◯下略〉

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〔續日本紀〕

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〈二十六稱徳〉

p.0743 天平神護元年十月癸未、還到二海部郡岸村(○○)行宮一

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〔元亨釋書〕

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〈二十八寺像〉

p.0743 粉川寺者、寳龜元年建、〈◯中略〉河内澀河郡有二佐大夫者一、一子沈痾、萬醫拱レ手、一日童子來舍、〈◯中略〉大夫送レ門曰、恩意深不レ知レ謝、所レ住何處、屢通二音問一、答曰、我住二紀州那賀郡風市村(○○○)粉河寺一、語已辭去、不レ幾大夫牽二婦子一、向レ彼至二風市村一、無一粉河寺者一〈◯中略〉見二林中一有二一宇一、〈◯中略〉中夜像前燈盞自然點レ火、堂内赫奕、大夫驚起見レ之、千手大悲宛然、〈◯中略〉即知二童子此像之應化一、感嘆敬禮、普告二四來一、於レ是伊都郡澀田村(○○○)富家寡婦聞二此事一、捨二住宅一改二精舍一、爾來靈應日新、

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〔續日本紀〕

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〈三十五光仁〉

p.0743 寳龜十年六月辛亥、紀伊國名草郡人外少初位下神奴百繼等言、己等祖父忌部支波美自二庚午年一至二大寳二年之籍一並注二忌部一、而和銅元年造籍之日、據(○)二居里名(○○○)一注(○)二姓神奴(○○○)一、望請從レ本改正者、許之、

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〔日本靈異記〕

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〈下〉

p.0744 女人濫嫁飢二子乳一故得二現報一縁第十六　横江臣成負女、越前國加賀郡人也、〈◯中略〉紀伊國名草郡熊應里(○○○)之人、寂林法師離二之國家一經二之他國一、修レ法求レ道而至二加賀郡畝田村一逕レ年止住、〈◯中略〉　未二作畢一捻攝像生二呻音一示二奇表一縁第十七　沙彌信行者、紀伊國那賀郡彌氣里(○○○)人、俗姓大伴連祖是也、〈◯中略〉　彌勒丈六佛像其頸蟻所レ嚼示二奇異表一縁第廿八　紀伊國名草郡貴志里(○○○)有二一道場一、號曰二貴志寺一、其村人等造二私之寺一、故以爲レ字也、〈◯中略〉　村童戯刻二木佛像一愚夫斫破以現得二惡死報一縁第廿九　紀伊國海部郡仁嗜之濱中村有二一愚癡夫一、姓名未レ詳也、自性愚癡不レ知二因果一、海部與二安諦一通而往還、山有二山道一、號曰二玉坂一也、從二濱中一指二正南一而踰、到二乎秦里(○○)一、〈◯中略〉　刑二罰賤沙彌乞食一以現得二頓惡死報一縁第卅三　紀直吉足者、紀伊國日高郡別里(○○)椅ノ家長公也、〈◯中略〉　南怨病忽、嬰レ身因レ之受レ戒行レ善以現得レ愈レ病縁第卅四　巨勢呰女者、紀伊國名草郡埴生里(○○○)之女也、〈◯中略〉　災與レ善表相先現而後其災善答被縁第卅八　山部天皇代〈◯桓武、中略、〉延暦六年丁卯秋九月朔四日甲寅酉時、〈◯中略〉爰景戒聞レ之廻レ頭而睠二乞人一者、有二紀伊國名草郡内楠見粟村(○○○○)一之沙彌鏡日也、

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〔今昔物語〕

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〈二十〉

p.0744 紀伊國名草郡人造二惡業一受二牛身一語第廿二　今昔、紀伊國ノ名草ノ郡三上ノ村(○○○○)ニ一ノ寺ヲ造テ名ヲ藥王寺ト云フ、

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〔東大寺要録〕

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〈六〉

p.0744 一諸國諸庄田地〈長徳四年注文定◯中略〉　

p.0745 鹽山五百六十町〈◯中略〉　二百町　在二紀伊國海部郡加太村(○○○)一

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〔平家物語〕

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〈六〉

p.0745 ぎをん女御の事　有時白河院くまのへ御かうなる紀伊國いとかさか(○○○○○)といふ所に、御こしかきすへさせ、しばらく御きうそく有けり、

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〔源平盛衰記〕

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〈四十〉

p.0745 維盛入道熊野詣附熊野大峯事　此ヨリ熊野參詣ノ志アリトテ、〈◯中略〉紀ノ國【三藤】(ミトウ)ト云所ヘ出給ヒ、藤代王子ニ參リ、

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〔續寳簡集〕

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〈五〉

p.0745 謹辭　相傳渡水田事　合壹段陸拾歩者〈字檀上〉　在二紀伊國伊都郡高野山御領大谷(○○○)村一〈◯中略〉　元久貳年〈乙丑〉八月廿六日　僧長圓〈花押〉

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〔寶簡集〕

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〈三十〉

p.0745 粉河寺申、紀伊國丹生屋村(○○○○)與二高野山領名手庄一相論條々事、聖護院僧正御房御書〈副寺解〉謹進上候、子細被レ載レ状候、以二此旨一可レ有二御披露一候、恐惶謹言、　閏七月〈◯寛元元年〉十七日　相模守平重時〈裏花押〉　進上　大夫僧都御房

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〔續寶簡集〕

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〈四〉

p.0745 寄進　御影堂陁羅尼田事　合壹段者〈在二紀伊國伊都郡山田村(○○○)字田尻一、定田五斗七升、◯中略〉　永仁元年〈癸巳〉十一月日　大法師泰助〈花押〉

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〔南遊紀行諸州めぐり〕

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〈四紀伊〉

p.0745 和歌山(○○○)は淡島より三里あり、其間右の方の濱邊に松多し、此邊白(シラ)浦なり、和歌山町の方へ行に、紀の川を舟にてわたる、是吉野川の下也、大河也、紀伊のみなとヽ云名所也、客船多し、和歌山の城は紀州君居給ふ、城下の境地ひろくゆたけし、和歌山と和歌浦の間の北の濱

 p.0746 を吹上と云、吹上の町は和歌山とつヾけり、吹上にも士の屋宅有、寺院多し、〈◯中略〉凡和歌山は天然の景色すぐれ、其上大國の城下なれば、神社佛寺いかめしく、其洒掃もきよければ、一入の光景をませり、

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〔紀伊續風土記〕

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〈四若山〉

p.0746 總論　若山或は和歌山とも書す、元祿年中、若山の文字に定めらる、若山の城地は、岡山又は吹上峯などいひし地にて、名草海部兩郡の界にして、雜賀莊に屬す、四面曠廓の中、崛然として特起せり、南に長峯あり、北に葛城ありて、屏障を列するが如く、其中間豁然として東に拓て、那賀名草の曠野一瞬の中にあり、西蒼海に臨て、淡阿の諸山指點すべし、岡山近く南に連りて、萬松蓊鬱として龍蟠虎踞の勢あり、紀川東より來て、郭北を繞て襟帶の形をなせり、天正十三年、豐臣太閤根來寺を滅し、太田城を降し、國中を統一して、羽柴美濃守秀長に賜ふ、此地の體勢城地に宜きを觀察して、親く自繩張を命じ、三月二十一日、鍬初あり、藤堂和泉守、羽田長門守、一庵法印を普請奉行として、本丸、二ノ丸、其年の内工功竣る、秀長大和國郡山を居城とし、其臣桑山修理亮重晴〈入道として法印宗榮といふ、若名小藤太尾州愛知郡地士三萬石を領す、〉を以て、本國の城代として、同十四年より茲に在城して、若山の城と稱す、此地吹上濱の東に峙を以て吹上峯と號し、又岡山の北首にあるを以て岡山(○○)の名あり、然るに岡山の南和歌浦の諸山と其勢相接きて、和歌の名最四方に高きより、取て若山と名づくといふ、〈若の字を穉弱の義に用ること、賈誼新書匈奴篇に、猶三若子之咢二慈母一とあり、古事記萬葉集にも、亦穉弱の義に用ふ、◯中略〉慶長六年、町割ありて市鄽を改易し、商賈百工四方より來り集り、日を重ね歳を歴て、漸都會の地とはなれり、元和五年、南龍公〈◯徳川頼宣〉封を本國に受られて、五月十八日、初て入國せらる、以前の大手口を改めて北を以て大手とし、京橋門の北通衢を開て本町とす、其餘市鄽寺院の類しば〳〵移易あつて、各其便に就しめ、猶城下の區域、人民を容るヽに足ざるを以て、東の方廣瀬の川を越て、新内村中野島村領に亘りて、市鄽を開きて

 p.0747 新町と號す、又北の方鈴丸川を越て、中野島領の内に市鄽を開きて北新町とす、これより城下の區域、北は宇治村の故地を盡して紀川堤を限り、東北隅は中野島村と人家相接ぎ、東は新内村より太田村の堺に亘り、南は吹上を盡して關戸村と相隣り、西は湊川の岸に臨むを界とし、其中央を内郭とす、若山大名八所に分る、中に就て諸士の邸第五箇所、東に岡廣瀬あり、北に宇治あり、南に吹上あり、西に湊あり、工商の居五箇所、北に内町、東に廣瀬、新町北新町、西に湊あり、〈工商の居五箇所盡町名あり、士邸五箇所總て名稱なし、〉此其大略にて、士宅商屋其中に相間雜する者、亦其幾許處なることを知らず、凡城下の區域、街衢逼促、人戸闐盈して尺地の間隙なく、百工の所作商賈の所レ販、山物海物より諸製造の物に至るまで、雲の如く集り山の如く積て、南海の一大都會となれり、

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〔紀州御發向之事〕

p.0747 秀長〈◯羽柴〉常專二軍忠一糺二臣下一、猥不レ成二憲法沙汰一、依レ之小雜賀曰二岡山(○○)一所二定居城一、分二人數一成二普請一、彼岡國府中而平地獨秀城郭也、南和歌浦、西吹上濱、自レ東紀川北流入二紀港一、麓林深諸木交レ條、寔萬景一覽之境致也、

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〔武徳編年集成〕

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〈三十一〉

p.0747 天正十三年三月、秀吉、紀伊和泉兩國ヲ、舍弟小一郞秀長ニ授ケ、且紀州ノ中央岡山ノ城ヲ築キ、秀長ノ居城トス、〈後年和歌山ノ城ト云〉

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〈南遊紀行〉

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〔諸州めぐり〕

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〈四紀伊〉

p.0747 紀三井寺の東一里に雜賀(○○)と云處あり、和歌よりうらつヾき也、

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〔勢州兵亂記〕

p.0747 一天正六年、信雄朝臣より志州九鬼大隈守并矢野衆等、船に而大坂へ被レ廻に、雜賀に而船軍し、信長公の預二御感一也、九鬼は鳥羽が聟、元熊野侍也、

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〔宇野主水記〕

p.0747 一霜月〈◯天正十二年〉一日、濱ニテ雜賀ヨリノ商船ニ、岸和田衆存分アリ、〈◯中略〉　一雜賀ノ大田ノ城ニ楯籠タル者共、四月〈◯天正十三年〉廿一日水ゼメニセラルヽ、

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〈南遊紀行〉

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〔諸州めぐり〕

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〈四紀伊〉

p.0747 根來寺〈◯中略〉和歌山より高野へ行に、根來によれば半里ばかり遠し、本道は紀の川の邊にあり、根來(○○)は河の西北の山下に有、

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〔明徳記〕

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〈下〉

p.0748 土丸ノ城ハ、軈テ合戰ナン共有ベシ、サラバ紀伊國ノ根來ヘ入進ラセヨトテ、正月〈◯明徳三年〉四日ノ暮程ニ、根來ヘ入進セタリケリ、

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〔南遊紀行諸州めぐり〕

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〈四紀伊〉

p.0748 かだ(○○)は民家千軒有と云、富人多し、此邊名草郡也、かだの先に淡島あり、是にも民家多し、かだと淡島は民屋つヾけり、〈◯中略〉賀田の北の出崎を和田の崎と云、賀田淡島の前は入海也、此地佳景也、西國の商舶泊る、遠江などをのりて、江戸奧州に行舟は、苫が島とかだの間を通り、又苫が島の外をも通る也、淡島の前は港よからずといへども、旅舶の纜を繫ぐ所也、淡島かだの邊より阿波國もむかひに近く見ゆ、今宵はかだに宿す、旅舍は二階にて海にのぞめり、前に客船多く、むかひに辨才天の山そばたちて青く茂り、おきに苫が島二ながらはるかに見ゆ、風景よし、此所にかだめとて、わかめの名物有、めづらし、

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〔紀伊國名所圖會〕

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〈三下海士郡〉

p.0748 松江(○○)〈東松江中松江西松江あり、紀の川の湊口より西の方本の脇までの松原をいふ、舊名これを和田御前松(わだのみまへのまつ)といふ、また東湖(ひがしのみづうみ)とも和田浦ともいへり、◯中略〉夫此地の風色たるや、北は峨々たる青山、日景を含で金碧の色を醸し、南は渺々たる蒼海月明を浮べて、琉璃の光を磨けり、松江の松の常盤なる、冬の霜を凌ぎ、白濱の沙の鮮明なる夏の雪ともうたがへり、千維の都城は、雲外に聳へ、二子の島渚波際に浮む、遠く水天の窮まる際を望に、阿土(アト)の二國は一刷の翠黛たり、范蠡が舟常に維がず、子陵が釣もいとまなし、されば月に感あり、雲に興あり、沙にひろふては、松露の羹に酔をすヽめ、濱にとりては、あさり貝のあさからぬまで、風流俗子のわいだめなく、四時にかれぬ遊地なるべし、

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〔日本書紀〕

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〈三神武〉

p.0748 天皇〈◯中略〉帥レ軍而進至二熊野荒坂津一〈亦名丹敷浦〉因誅二丹敷(○○)戸畔者一、

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〔南紀名勝略志〕

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〈牟婁郡〉

p.0748 錦浦　那智ノ庄、渚ノ宮村ノ南ノ海濱、長サ十二三町ヲ云也、載二日本書紀一、〈荒坂ノ津ト有、又ノ名ハ丹敷浦、〉

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〔丹敷浦考〕

p.0748 紀に丹敷浦とあるは、今の二木島(ニキシマ)の事なりと思はる、にしきとにきしと音近ければ

 p.0749 轉じたるか、にしき島と云たるが、シの字の省りたるかなるべし、〈◯中略〉さて元來丹敷といへる地は、和名抄郷名の部に、志摩國英虞郡の下に、甲賀、名錐、船越、道潟、芳草、二色、餘戸、神戸と出たるを考ふるに、英虞郡の東北に、今も甲賀と云あり、同東南海邊に波切と書て、なきりと稱する地名錐也、船越も其西にあり、道潟は和名抄今の印木道浮とあるは誤なり、今伊勢國度會郡に入たる、南の海邊に道方と云是なり、芳草は同其西に方座といへるにて、今の紀勢の國界に遠からず、次に二色とあるをみれば、東北より西南への順次なり、されば此二色郷といへるは、今の錦浦二郷村の邊より、ひろく南方古の國界なる二木島のあたりまでを云る名にて、上代大名にひろく云けん事察すべし、されば一名丹敷浦と傳へけんも、ひがことに非ず、後々詳細に地名出來て、和名抄の頃は令の定にて、北より南へ押かぞへて、今の錦長島の邊を二色の郷とし、相賀、尾鷲の邊を神戸とし、〈◯註略〉曾根三木の邊を、餘戸と云わけしより、〈◯註略〉二色といへる舊來の大名は、纔に其郷の東のはてなる浦の名にのみ殘りたるを、其地にのみ拘りて解せんとするより、不審多くなれるなり、丹數戸畔は、則此上代大名にいへる二色郷といへる程を、主領居(ウシハキ)たる者ときこゆれば、我領地の界に出て戰たりとみれば、則二木島の地にて、紀の趣もしか聞えたり、〈◯中略〉かく見れば二木島の名も丹敷の轉音にて、殘れる所縁も、又別にいへる二木島、古の國堺なりし事も、いよ〳〵明らかにて、すべて紀記の傳説同一に歸していぶかしき隈もなかるべし、

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莊保

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〔當宮縁事抄〕

p.0749 左辨官下　石清水八幡宮并宿院極樂寺　應丙永停下止宮寺并極樂寺庄園領家預所下司公文等、或號レ有二先祖讓状一、或稱レ相二傳文書一、致二異論一企中掠領上、兼又有二由緒一雖レ令二傳領一、子孫斷絶處々付乙本所甲事、　宮寺領〈◯中略〉　紀伊國　　野上庄(○○○)　【鞆淵】(カワフチ)【庄】　衣奈園　隅田庄(○○○)　出立庄(○○○)

p.0750 極樂寺領〈◯中略〉　紀伊國　伊都野庄(○○○○)〈◯中略〉　保元三年十二月三日　大史小槻宿彌〈在判◯下略〉

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〔石清水文書〕

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〈一〉

p.0750 太政官牒石清水八幡宮護國寺　宮寺所所庄園參拾肆箇處事　一應下如レ舊領中掌庄貳拾壹箇處上之事〈◯中略〉　紀伊國陸箇處　壹處　宇野上庄　那賀郡〈◯中略〉　壹處　字隅田庄　伊都郡　水田貳拾玖町〈◯中略〉　壹處　字薗財庄(○○○)　日高郡　水田參拾町　畠貳拾町〈◯中略〉　壹處　字出立庄　牟婁郡〈◯中略〉　一應レ停二止庄拾參箇處一事〈◯中略〉　紀伊國壹處　字名手庄(○○○)〈◯中略〉　延久四年九月五日〈◯署名略〉

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〔源平盛衰記〕

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〈四〉

p.0750 殿下御母立願事　御詫宣聊モタガハセ給ハズ、御腫物イヘサセ給テ、御心地本復サセ給ケレバ、紀伊國田中庄(○○○)ハ、殿下〈◯藤原師通〉渡庄也ケレ共、八王子ニ御寄附アリ、

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〔壬生家文書〕

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〈二〉

p.0750 日前國懸庄々請文案　謹請川上御庄(○○○○)所課造日前國懸兩社殿舍修造請文事〈◯中略〉　治承二年閏六月廿四日　雜掌藤原〈在判〉　謹請造日前宮法勝寺御領阿氐川庄(○○○○)所課男客殿一字切符事〈◯中略〉　治承二年閏六月廿六日　預所〈在判〉

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〔吾妻鏡〕

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〈三〉

p.0750 壽永三年〈◯元暦元年〉七月二日戊子、成就院僧正房使者、去夜戌刻參著、是寂樂寺僧徒、令レ亂二入高野山領紀伊國阿氐河庄一致二非法狼藉一之由依二訴申一也、則進二覽當山結界繪圖、並大師御手印案文等一、筑後權守俊兼、於二御前一釋二申之一、凡吾朝弘法者、偁レ爲二大師聖跡一之由、武衞有二御信仰一之間、不日被レ經二沙汰一、可レ止二狼藉一之旨、被レ下二御書一、其状云、　

p.0751 下二紀伊國阿氐河庄一　可下早停二止旁狼藉一如レ舊爲中高野金剛峯寺領上事　右件庄者、大師御手印、官府内庄也、而今自二寂樂寺一致二濫妨一云云、事實者不二穩便一事歟、御手印内、誰可レ成二異論一哉、早停二止彼妨一、如レ舊可レ爲二金剛峯寺領一之状、如レ件、　元暦元年七月二日

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〔吾妻鏡〕

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〈十九〉

p.0751 承元四年二月十日己巳、紀伊國安氐川庄地頭職者、故右大將軍御時、爲二高野大塔造營奉行賞一、賜二高雄文覺房一訖、御素意被レ改二彼一身一之處、此間湯淺兵衞尉宗光稱レ得二上人讓状一、望二申安堵御下文一、被レ經二御沙汰一以二件地頭職一、不レ申二子細一無二左右一難二讓補一、輒不レ可レ被二許容一之由、雖レ被レ仰レ之、宗光爲二御家人一有二其功一之上、准二新恩一可二宛給一之旨、頻依二愁申一、今日被レ成二政所御下文一云云、

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〔壬生家文書〕

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〈二〉

p.0751 日前國懸庄々請文案　謹請造日前國懸造營支配一紙　右岡前庄(○○○)所課、任二配符之旨一、來十月以前、可レ令二取進一木返抄之状、謹所レ請如レ件、　治承二年閏六月　日　預僧〈在判〉　謹請靜川庄(○○○)所課事〈◯中略〉　治承二年閏六月廿八日　僧〈在判〉　謹請造日前宮課役事　生馬堅田庄(○○○○○)〈三柄寺領〉　右任二支配之旨一、可レ令二勤仕一之由、可レ令レ下二知庄司等所一之状如レ件、　治承二年閏六月廿六日〈在判◯中略〉　謹請造日前國懸宮殿舍相樂南部所課事

 p.0752 合　相樂御庄(○○○○)　國懸宮神殿西端間内參尺〈付壇礎石〉　南部御庄(○○○○)　日前宮神殿東妻庇〈付壇礎石◯中略〉　治承二年閏六月廿一日　散位紀朝臣〈在判〉

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〔吾妻鏡〕

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〈三〉

p.0752 壽永三年〈◯元暦元年〉二月廿一日庚辰、有二尾藤太知宣者一、此間屬二義仲朝臣一、而内々任二御氣色一參二向關東一、武衞今日直令レ問二子細一給、〈◯中略〉紀伊國田中(○○)、池田兩庄(○○○○)、令二知行一之旨申レ之、以二何由緒一令二傳領一哉之由被二尋下一、自二先祖秀郷朝臣之時一、次第承繼處、平治亂逆之刻、於二左典厩〈◯源義朝〉御方一牢籠之後得替、就レ愁二申之一、田中庄者、去年八月木曾殿賜二御下文一之由申レ之、召二出彼御下文一覽之、仍知行不レ可レ有二相違一之旨被レ仰云云、

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〔吾妻鏡〕

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〈六〉

p.0752 文治二年八月廿六日庚子、於二蓮華王院領紀伊國由良庄(○○○)一、七條細工宗紀太、構二謀計一致二濫妨一之由、領家範季朝臣折紙、並院宣到來之間、今日令二下知一給之云云、　下蓮花王院御領紀伊國由良庄官　可三早停二止銅細工字七條宗紀太妨一事　右件御庄停二止彼細工之謀計一、任二院宣一領家可レ令レ知二行庄務一之状如レ件、以下、　文治二年八月廿六日　廣由良庄濫妨事、折紙進二上之一、可下令二奏下一給上候、七條紀太丸之謀計殊勝候、尤可レ被レ處二重科一候也、稱二領家一者、其親朝臣云云、不レ知二子細一、田舍人猶以結二構如レ此之狼藉一候歟、以外事候、就レ中臨二幸南山一之由其聞候、彼庄相違候者、檜物具等不レ可レ叶候、年來挊田郷勤二仕件役一、而彼建立高雄寺庄候了、雖二片時一可レ被二急仰下一候歟、恐々謹言、　閏七月廿四日　木工頭範季上　蓮花王院領廣由良庄妨事、領家範季朝臣所レ進折紙證文案等如レ此、可レ被レ尋二子細一之由、内々御氣色候

 p.0753 也、仍執啓如レ件、　後七月廿九日　太宰權帥經房〈奉〉

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〔吾妻鏡〕

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〈十〉

p.0753 文治六年〈◯建久元年〉五月廿九日壬午、御隨身左府生秦兼平、去比進二使者一、是八條院領、紀伊國三上庄(○○○)者、兼平譜代相傳地也、而自二關東一所レ被二定補一之地頭、豐島權守有經、於レ事對捍、抑二留乃貢一、早可レ蒙二恩裁一之由訴申、仍任二先例一可レ沙二汰濟物一之旨、給二御下文一之間、彼使者今日歸洛云云、

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〔明惠上人傳記〕

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〈上〉

p.0753 建仁元年辛酉二月比、〈◯中略〉紀州保田庄(○○○)ノ中、須佐明神ノ使者ト云者、夢中ニ來テ、住處ノ不淨ヲ歎キ、又一尊ノ法、傳授ノ志、甚深之由ヲ被レ述、

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〔吾妻鏡〕

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〈二十六〉

p.0753 承久四年〈◯貞應元年〉四月廿七日、以二鳥居禪尼所領、紀伊國佐野庄(○○○)地頭職一、尼一期之後、子息長詮法橋可二相傳一之由被レ仰云云、彼禪尼者、六條延尉禪門〈◯源爲義〉妹、故右大將家〈◯源頼朝〉姨母也、仍令下避二數箇所地頭職一給上訖、而子息法橋行忠〈長詮兄〉背二母命一押二領當庄一、剩去年兵亂之時、候二仙洞一致二合戰一、零落之後、猶立二還當庄一之由、長詮就二訴申一如レ此、長詮者抽二關東御祈禱之忠一云云、

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〔古文書類纂〕

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〈上處分状〉

p.0753 後深草天皇建長二年關白藤原道家處分状　總處分　條々事〈◯中略〉　一家地文書庄園事〈◯中略〉　前攝政〈◯中略〉　家領　女房方〈◯中略〉　紀伊國井上本庄(○○○○)〈被レ寄二月輪殿高野護摩用途一◯中略〉　新御領〈◯中略〉　紀伊國三栖庄(○○○)〈院御領◯中略〉　右大臣〈◯中略〉　家領　女院方　紀伊國井上新庄(○○○○)〈被レ寄二進高野蓮華谷一不斷念佛◯中略〉　建久二年十一月　日　愚老〈在御判〉

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〔吾妻鏡〕

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〈四十一〉

p.0753 建長三年八月六日甲午、勝長壽院小御堂者、故禪定二位家御遺跡、濫觴異レ他、然近年及二破壞一、其跡已欲レ改、仍爲レ被レ加二修理一、以二紀伊國雜賀庄一募二料所一、於二不日一可レ終レ功旨、今日被下仰二備後前司康持一付上云云、

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〔後宇多院御領目録〕

p.0754 廳分　紀伊國荒河庄(○○○)　神野眞國庄(○○○○○)　印南庄(○○○)〈◯中略〉　一歡喜光院〈◯中略〉　紀伊國三上庄(○○○)〈◯中略〉　右所々可レ有二御管領一之由、院宣所レ候也、以二此旨一可下令レ申二入昭慶門院一給上、仍執達如レ件、　嘉元四年〈◯徳治元年〉六月十二日　右衞門　高倉前宰相殿

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〔古文書類纂〕

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〈下廻状〉

p.0754 文殿廻　紀伊國高家庄(○○○)内西庄原村池田事　宣旨局雜掌〈奉〉　義亨上人雜掌　右來廿四日可レ有二其沙汰一兩方帶二文書正文一、巳一點、可レ令レ參二對文殿一之状、所レ廻如レ件、　康永三年二月十二日

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〔南方紀傳〕

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〈下〉

p.0754 南朝元中九年〈壬申〉北朝明徳三年六月七日、南帝命二刑部少輔顯連一、以二紀州南有本庄(○○○)一附二紀伊國造一、

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〔應仁後記〕

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〈中〉

p.0754 赤澤宗益攻二落高屋城一事　畠山尚順ハ又此城〈◯高屋〉ヲ退去シ、再度紀州ノ廣ト云所エ落行キ、殘徒數多討捕ラレテ、細川方ノ軍兵數度ノ勝利ヲ得タリケル、〈◯中略〉尾張守尚順ハ紀州廣ノ庄(○○○)ニ隱レ居テ今年十八歳、未ダ若冠ノ身ナレドモ、剃髮ノ姿ト成テ、卜山入道ト號シケルガ、〈◯下略〉

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〔續應仁後記〕

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〈三〉

p.0754 紀州兵亂事附畠山卜山禪門病死事　畠山卜山禪門ハ、紀州廣ト云所ニ閑居シテ在ラレケレ共、近年當國湯川ノ庄(○○○○)ノ住人ニ直光ト云者有テ、卜山ノ命ニ背キ騷動ニ及ブ、抑此湯川庄司直光ハ、昔ノ武田惡三郞信忠ガ末孫ニテ代々當國ニ居住シ、熊野八庄司ノ隨一ナリ、

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〔東大寺小櫃文書〕

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〈上〉

p.0754 東大寺政所下　紀伊國山田保(○○○)　

p.0755 可三早弁二濟御封米一事　副下廳宣一通　右當國御封保、國司所レ被レ成二廳宣一也、〈◯中略〉　久安三年十一月　日〈◯署名略〉

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藩封

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〔慶應元年武鑑〕

p.0755 紀伊中納言茂承卿様(正三位　元治元子五月被叙)〈◯中略〉　五十五万五千石　御在城紀州名草郡和歌山〈江戸ヨリ〉百四十六里餘　〈桑山果報院居、慶長六、淺野紀伊守幸長、同但馬守永晟、元和五、紀伊大納言頼宣卿、以後被レ領レ之、〉

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田數/石高

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〔倭名類聚抄〕

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〈五國郡〉

p.0755 紀伊國〈◯註略〉管七〈田七千百九十八町五段百歩〉

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〔拾芥抄〕

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〈中末本朝國郡〉

p.0755 紀伊〈上近〉七郡〈（中略）田七千百十九町〉

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〔海東諸國記〕

p.0755 紀伊州　郡七、水田七千二百三町七段、

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〔紀伊續風土記〕

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〈二提綱〉

p.0755 田制〈◯中略〉　慶長六年撿地高　田　一萬九千十町八畝十一歩　畠　一萬二百三十七町七段四畝二十二歩　田畠總計　二萬九千二百四十七町八段二畝卅三歩　田畠高　三十七万六千五百六十二石五斗八升六合　今時〈◯天保〉撿地高　田　二万五百五十五町八段五畝三歩　畠　一萬三千三百九十九町六段五畝十九歩　田畠總計　三萬三千九百五十五町五段二十二歩　田畠高　四十一萬九千百三石餘　高野領撿地高　田畠總計　二千百四十三町八段六畝十三歩　田畠高　二萬千三百石

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〔日本鹿子〕

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〈十三〉

p.0756 紀伊國七郡、小下國、南北四日、〈◯中略〉知行高三十九万五千四百二十石餘、

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〔官中祕策〕

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〈五〉

p.0756 紀伊國　七郡〈◯中略〉　一石高三拾九万七千六百六拾八石餘

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〔吹塵録〕

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〈五人口及國高〉

p.0756 天保度御國高調〈◯中略〉　紀伊國〈皆私領〉　一高四拾四万八百五拾八石三斗七升七合七勺壹才

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出擧稻

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〔延喜式〕

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〈二十六主税〉

p.0756 諸國出擧正税公廨雜稻〈◯中略〉　紀伊國正税公廨各十七万五千束、國分寺料二万束、金剛峯寺料五千六百十六束、同寺燈分并佛聖料二千八百束、祐〈◯祐恐粉誤〉河寺料四百束、文殊會料二千束、修理池溝料三万束、救急料六万束、

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〔倭名類聚抄〕

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〈五國郡〉

p.0756 紀伊國〈◯註略〉管七〈（中略）正公各十七萬五千束、本稻四十六萬八千八百十八束、雜稻十一萬八千十八束、〉

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國産/貢獻

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〔儀式〕

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〈四〉

p.0756 踐祚大嘗祭儀下　太政管符諸國司　紀伊國　海部郡薄鰒二連　生蚫三籠　生螺三籠　都志毛三籠　古毛三籠　螺貝燒鹽五壺　右六種國所二造備一〈◯中略〉　以前得二神祇官解一偁、供二大嘗會一、其所由加物、依レ例所レ請如レ件者、國宜承知、依レ數造備進上、

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〔延喜式〕

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〈十五内藏〉

p.0756 諸國年料供進〈◯中略〉　樽〈（中略）紀伊、阿波、伊豫十五箇國各二合、〉

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〔延喜式〕

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〈二十三民部〉

p.0756 年料春米〈◯中略〉　紀伊國〈大炊二百石◯中略〉　年料別納租穀〈◯中略〉　紀伊國〈三千百石◯中略〉　年料別貢雜物〈◯中略〉　紀伊國〈紙麻七十斤、鎌垣船九隻、◯中略〉　諸國貢レ蘇番次〈◯中略〉　紀伊國七壺〈二口各大一升、五口各小一升、◯中略〉　右十四箇國爲二第六番一〈子午年◯中略〉　交易雜物　紀伊國〈白絹十二疋、絹二百疋、鹿革十張、鹿角菜二石、青苔五十斤、海松卅斤、海藻根十斤鳥坂苔五斤、那乃利曾五十斤、樽二合、大凝菜一百斤、於胡菜卅斤、大豆廿石、小豆〉

p.0757 〈卅石、胡麻子五石、醤大豆十石、隔三年進醤大豆三石、〉

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〔延喜式〕

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〈二十四主計〉

p.0757 紀伊〈◯中略〉　右十二國並上絲〈◯中略〉　紀伊〈◯中略〉　右廿九國輸レ絹〈◯中略〉　紀伊國〈行程、上四日、下二日、〉海路六日　調、兩面五疋、鼠跡羅二疋、一窠綾四疋、二窠綾五疋、薔薇綾三疋、白綾廿疋、纁帛卅疋、緑帛十疋、緋絲卌五絇、縹絲、緑絲各廿絇、橡絲十絇、皂絲五絇、自餘輸二絹、絲、綿、鹽、鮨鰒、堅魚、久惠腊、滑海藻一、但浮浪人調庸輸レ錢、　庸、白木韓櫃五合、自餘輸二綿米一、　中男作物、黄蘗三百斤、龜甲十七枚、絹、綿、紅花、胡麻油、鹿脯、鹿鮨、猪鮨、堅魚、押年魚、煮鹽年魚、鯛楚割、大鰯、海藻、滑海藻、

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〔延喜式〕

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〈三十三大膳〉

p.0757 諸國貢進菓子〈◯中略〉　紀伊國〈甘葛煎七升〉

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〔延喜式〕

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〈三十四木工〉

p.0757 諸國所レ進雜物〈◯中略〉　海藻二千九百五十斤〈◯註略〉　紀伊國千五百斤

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〔延喜式〕

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〈三十七典藥〉

p.0757 諸國進年料雜藥〈◯中略〉　紀伊國卅五種　獨活、松脂各十斤、牛膝、楡皮、厚朴各九斤、萆薢五兩、白朮一斤、藍漆、茄、地楡各三斤、昌六斤、玄參、葛花各一斤、苦參廿六斤、白芷一斤四兩、躑躅花二斤、木斛廿五斤、石斛二斤五兩、大青伏苓各四斤、括棲一斤十四兩、升麻十兩、葛根十一斤、天門冬八斤、夜干一斤九兩、滑石一百廿斤、署預六升、桃人一斗、牡荊子二合、車前子、蜀椒各五升、㝹絲子二升、麻子八升、亭藶子一斤、秦椒三升、

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〔延喜式〕

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〈三十九内膳〉

p.0757 旬料〈◯中略〉　紀伊國雜魚上中下旬各三擔半〈司受取課丁七十四人、以二其調物一交二易鮮物一徭丁運進、◯中略〉　節料〈◯中略〉　紀伊淡路兩國〈三節各五擔◯中略〉　年料〈◯中略〉　紀伊國〈鮨年魚二擔四壺〉

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〔新猿樂記〕

p.0757 四郞君受領郞等刺史執鞭之圖也、〈◯中略〉宅常擔二集諸國土産一、貯甚豐也、所レ謂〈◯中略〉紀伊國縑、

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〔毛吹草〕

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〈三〉

p.0757 紀伊　

 p.0758 青皮(セウヒ)　陳皮(チンヒ)　枳殼(キコク)　楊梅(ヤマモヽ)　蜜柑　若山忍冬酒　延命酒　宮崎麥粉　紀伊川鯉　藤代馬刀(マテ)　烏帽子貝〈タイラギトモ云〉　玉津島蠣　松江浦蛤　蜊(アサリ)　サヽラ貝　雜賀鹽　鯛　 (マナガツヲ)　筋鰹　大鱧(オホハム)　大鮧(ヱソ)〈此外魚類多キ所也〉　若浦海雲(モヅク)　鹿尾藻(ヒジキ)　鳥足〈鳥ノ足ニ似タル藻也〉　鼠藻　堅苔　三穗荒和布　賀太浦賀太和布　篷〈舟ニ用レ之〉　黒江澀地椀　熊野白蜜　檻(ケヤキ)　塡　楠板〈舟木ニ用レ之〉　榧(カヤ)木〈碁磐ニ用レ之〉　ユスノ木〈櫛ニ用〉　樵木　葛籠藤　矢篦竹　椿實　天狗矢根　燧　海蠃(バイ)　酢貝　子安貝　鯨油　蕪骨　粉凝草(ヲゴリクサ)〈トコロテンニ用レ之〉　布苔　泥川黐　玉置檜杖　檜笠〈山伏用レ之〉　根來椀　折敷〈昔寺繁昌之時、拵タル道具ト云、當時方々ニテ賣二買之一、〉　粉川鞦〈小荷駄馬ニ用レ之〉　鮎白干　那智碁石　金付石　神子濱砥　大崎庭石　浮石　神川弓　田邊鉛　鴨谷泰平墨　待乳膏藥　大野穗蓼〈穗四季共ニ有ト云〉　日高松茸　高野岩茸　干蕨　蒜〈外ニ替大ウヘ玉フト云〉　菩提子　松煙　油煙　目藥〈大師夢想ノ藥ト云〉　傘紙　著笠

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〔續日本紀〕

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〈三文武〉

p.0758 大寶三年五月己亥、令下紀伊國奈我名草二郡、停二布調一獻上レ絲、但阿提、飯高、牟漏三郡獻レ銀也、

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人口

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〔官中秘策〕

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〈五〉

p.0758 紀伊國　七郡〈◯中略〉　一人數五拾万八千六〈◯六恐壹誤〉百七拾四人　内〈貳拾八万貳千四百七拾五人　男　貳拾貳万五千六百九拾九人　女〉

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〔吹塵録〕

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〈五人口及國高〉

p.0758 諸國人數調(文化元甲子年)〈◯中略〉　一人數四拾七万七千三百六拾壹人(皆私領)　紀伊國(高三拾九万七千六百六拾八石餘)　内〈貳拾四万五千六百貳拾四人　男　貳拾三万千七百三拾七人　女◯中略〉　諸國人數調(弘化三丙午年)〈◯中略〉　一人數四拾九万九千八百貳拾六人(皆私領)　紀伊國(高四拾四万八百五拾八石餘)　内〈貳拾五万六千七百五拾壹人　男　貳拾四万三千七拾五人　女〉

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風俗

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〔人國記〕

p.0758 紀伊國　

 p.0759 紀伊國ノ風俗、不律義第一ニ而、陽氣甚シクイヤシク、上ト而ハ下ヲ貪リ、下ハ上ミヲアナドリ、法令ヲ不レ入而更ニ言語ニ絶タリ、牟婁日高在田郡ノ人、別而我慢ニシテ、意地ヲ強ク立ルカト思ヘバ亦弱ク而、詰ル處之奧意不レ極シテ、譬バ昨日味方タリシ人之弱身ナレバ、今日ハ亦敵トナリ、其從フ處ノ人ニ大事有ト見レバ、サスガ本ヘモカヘル事ヲハヂ、頭ナシノ一揆ヲモ企ル如クノ風俗、言舌ニ顯然ト而備レリ、因レ玆見レ之バ、郡々ニ名主ト號シ、庄司殿ト是ヲ呼テ、是ヲ主君ノ如ク仰ギ、勢ヲ得ル時ハ是ヲ先立、後ルヽ時ハトモニ從テ蟄居スルノ類、治承之亂之時ヨリ而聞傳、其アリサマヲ見ルニ誠ニ、思ヒ當レリ、其氣ノカタクヘナク不二頼カラ一事、擧テ難レ云、扨亦伊都名草那賀海部郡之人ハ、南郡ヨリハ氣柔也、然レドモ差掛リタル意地ノミニテ、是モ詰リタル心微塵モ無レ之トイヘドモ、善惡ヲ知リテ、多クハ惡意ニ從フ程ノ儀ハ無レ之ト見ヘタレドモ、慾深キ事、日本ニモ雙ブ國有間敷キ也、都而武士之風俗、身ヲ上分ニ持チナシ、常ニ饗應ヲ盡而放逸ヲ不レ知、唯心之行處ニ從テ、利口ヲ面前ニ顯シ、律儀ト云コト實ト云コトヲ露ホドモ不レ用而、シカモ武之翫ブ處ノ事ヲバ如レ形雖レ務、終ニ無レ實シテ其業數ヲ覺テ耻ヲカク之人、千人ニ九百九十人、如レ形兩伊丹石州之五ケ國ヨリハ意地強シ、碁石蕨蒜ハ吉、

↑

名所

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〔日本鹿子〕

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〈十三〉

p.0759 同國〈◯紀伊〉中名所之部　紀の川　吉野の末也、西へ流たる川也、かぶろの宿と云所より五町計北也、此宿ゟ高野山へ三り也、不動坂と云へ上る也、　巨勢野(コセノ)　春野冬野といふ所もちかし〈◯中略〉　紀の關　かぶろの宿と高野と中間に有レ之と云々、また蟻との渡りと云所也共云、　高野山　京より二十九り、大坂より十六り也、〈◯中略〉　玉川　金剛三昧院より奧の院へ一り也、彼院より南に玉川と云橋あり、奧の院西向也、又玉川の

 p.0760 水をば人のむべからずといへり、〈◯中略〉　藤代(フジシロ)峠　京よりくまのへの順道也、眺望無雙の地なり、〈◯中略〉　由良の御崎　藤代にちかし、由良の戸とも云也、〈◯中略〉　若の浦　伊勢に同名有、藤代にちかし、〈◯中略〉　吹上の濱〈◯中略〉　吹井の浦　和泉丹後に同名あり、吹上の濱にちかし〈◯中略〉　岩代山　有馬の王子とて社あり〈◯中略〉　鹽屋津　鹽屋の王子とて社あり〈◯中略〉　三熊野〈◯中略〉　岩田川　熊野海道に此川有レ之〈◯中略〉　千種(チクサ)嶽　東屋の嶺〈◯中略〉　糸鹿(カ)山〈◯中略〉　音無川　音無の瀧同山同里　ひとつ所也、雄(ヲノ)山といふ所にあり、〈◯中略〉　妹脊山　妹山脊山二ツを、一ツに云也、〈◯中略〉　妹が島　像見(カタミ)の浦　神島　礒間浦　結の浦　千尋の濱〈◯下略〉

↑

〔玉勝間〕

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〈九〉

p.0760 紀の國の名どころども　待乳(マツチ)山は、大和國の堺にて、紀の國伊都郡なり、角田(スミダ)川は、待乳川のことなるべし、此川みなもとは、葛城山のうちより出て、北隅田庄を流れて、きの川におつるなり、紀の關は、和泉國よりきの國の名草郡にこゆる雄山に在て、南のふもとなる山口村にちかし、䄂中抄に、雄山の關守とあり、白鳥關といへるも、此關のことなるべし、名草山は紀三井寺の山なり、飽等(アクラ)濱は海士郡賀田浦の南の方に、田倉崎といふ所ある、是なりと、里人のいひ傳へたりとぞ、吹上ノ濱は若山の西南にて、若ノ浦の北なり、雄水門は今若山の内に、湊といふ所に、小野町といふ有て、蛭子ノ社ある、そこに雄之芝(ヲノシバ)といふあり、五瀬命の薨ましヽ跡也といへり、小野町といふも、もと雄の町なりといへり、此蛭子社に

 p.0761 吹上社といふをも、並べ祭れり、或説には、吹上社は、關戸村の矢の宮なりともいへり、雜賀(サカ)浦は、海士郡にて、雜賀庄とて廣き所なる其中に、若ノ浦の西の方に雜賀崎といふところ有、此わたり雜賀浦なるべし、浦の初島は同郡濱中庄椒(ハジカミ)村の八町ばかり海中に、地の島といふ有、東西四町あまり、南北八町ばかりの島なり、其島の三町ばかり西に又島有て、沖の島といふ、東西五町に、南北六町ばかりあり、此二つの島を、浦のはつ島といふ、小爲手(ヲステ)の山は、在田郡山保田庄に、推手(オシデ)村といふあり、これか、其村は伊都郡の堺にて、山のおくなり、白崎は、日高郡衣奈庄衣奈浦の東南の方に、衣奈八幡といふある、其社の縁起に、白崎といふこと見えたり、三穗の岩屋は、同郡三尾村の廿五町ばかり東南の海べに在、岩屋の中に、石の觀音の像あり、熊野道のうち、日高川鹽屋浦のあたりより、西の海べに、一里ばかりの長き松原有て、和田松原といふ、此岩屋は、その西の際なり、野島阿胡根浦は、同郡鹽屋浦の南に野島里あり、その海べをあこねの浦といひて、貝の多くよりて集まる所なり、切目(キリメ)山は、同郡熊野道の海べにて、切目坂、切目浦、切目村あり、山は村より一里ばかり東北なり、村の北に切目王子ノ社も有、磐代は同郡なり、切目を過て、切目川有て、次に磐代なり、西岩代、東岩代とて村有、岩代王子社、海べにあり、千里濱は、岩代の南の邊より、南部までのあひだ、一里半ばかりのところをいふ、むかし元弘元年七月三日、大地震にて、きの國千里の濱廿よ町がほど、たちまち陸となれるよし、太平記にしるせり、三名部(ミナベ)は、岩代の南なり、三名部村みなべ浦あり、その十町ばかり海中に島有、これ鹿島なり、さて三名部の南に、堺浦といふ有て郡堺なり、そこまでは日高郡、それよりあなたは牟婁郡なり、礒間浦は、田邊の玉宿村の南、神子濱つヾきにあり、神島は、その一里ばかり海中にありて、かしまともいへり、白良濱は、湯崎鉛山と瀬戸とのあひだに在て、里人は白濱といへり、此濱の眞砂、遠く見れば雪のごとし、神藏山は、新宮より二町ばかり東南〈一書には西南〉に有、社の説に、天照大神と、高倉下と、二神を祭といへり、石の階を、六間ばかりのぼりて、上に堂有

 p.0762 て、地藏の像を置りといへり、それを神倉權現といひて、其外に社はなし、かの高倉下命の、神劒を得たりし地は、こヽなりとぞ、熊野村は、新宮に、上熊野、中熊野、下熊野とて、三村あり、三輪が崎は、新宮より那智へゆく道の海べなり、新宮より一里半ばかりありて、けしきよき所なり、佐野は佐野村といふ有て、三輪崎のつヾきなり、佐野岡は、村より七八町北にあり、玉の浦は、那智山の下なる、粉白浦といふところより、十町ばかり、西南に有、離小島といへるは、玉の浦の南の海中に、ちりぢりに岩あれば、それをいへるなるべし、其外には島はなし、熊野御崎は、那智山の下濱宮よりゆく海べの道を、大邊地といふ、その間に上野村といふあり、海中へ長くつき出たる崎にて、鹽の御崎とも鹽崎浦ともいへり、三前神社あり、少彦名命を祭る、此所の海は、のぼり潮くだり潮とて、年を重ねて、片潮に流れて、しほの滿干にかヽはらず、いと早く流るれば、海を渡る船人の、いたくおそるヽところなり、有馬村は、新宮より北の方へ、伊勢の方へ五里ばかり行て、木の本といふ所の、廿町ばかり南にあり、そこに産田神社、又花の窟あり、里人訛りて、大般若の窟といふ、此窟の山、高さ廿四五間、周三町ばかりあり、此窟は伊邪那美尊を葬奉れる所といふを、又或説には、いざなみの尊を葬奉れる所は、産田神社にて、花ノ窟は火神なりともいへり、楯が崎は、木本庄二木島といふところより、一里ばかり海中にあり、むかしは此所伊勢と紀の國の堺なりしと、里人いへり、錦の浦は、長島庄長島村の一里ばかり東なり、此地むかしは志摩國なりしとぞ、上件礒間浦よりこなたは、皆むろの郡なり、そも〳〵此きの國はふるき名どころども多くして、萬葉集にも殊におほく見えたるを、世の人は、いづれの郡にありとだに、えしらぬ所々の多かるを、此國にては、かくれなくて、みな人よくしれるなど、又さらぬも、書どもには、みなしるしたるが、見過しがたくて、その大かたを寫しおきつる中に、たしかならぬさまに聞ゆるをば、みなもらして、さもありぬべくおぼゆるかぎりを、それかれとえりいでヽ、しるせるほどに、此卷は、すヾろに、きの國の名所集のやう

 p.0763 にぞなりぬる、〈◯下略〉

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〔紀伊國名所圖會〕

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〈一下和歌山〉

p.0763 吹上(フキアゲ)〈同濱、今府城の西南をいふ、また砂山とて、ちいさき岡のあるも、いにしへの遺跡なり、〉　此吹上の濱といふは、西南の風烈しきときは、白砂を高く吹上て、一夜のほどに一處に吹あつめて山をなし、又しばしが程に吹散して、もとの平地となり、こは常に風眞砂をふき上る、これによりて吹上のはまとはいふなり、此地はむかしより月の名どころにして、文苑古詠かずかずあり、されば年歳累りて名所も廢して、蒼海三たび桑田となるのならひ、今は其俤さへも衞士の甍を連て、出る月も家より出て家に入の風情とはかはりぬ、

↑

〔枕草子〕

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〈九〉

p.0763 はまは　ふきあげのはま

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〔後拾遣和歌集〕

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〈九覊旅〉

p.0763 熊野へまゐり侍りける道にて、吹上の濱を見て、　懷圓法師　都にて吹上の濱を人とはヾけふ見る計りいかヾかたらむ

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〔紀伊國名所圖會〕

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〈二海部郡〉

p.0763 和歌浦〈今西南出島浦あり、上古はこヽの洲なくて、一めんの干かたなり、◯中略〉　當浦は扶桑におゐて、名たる勝地にして、〈◯中略〉東西廿餘町ありて、濱松の色濃、あしべの田鶴波間のちどり、江水は洋々たり、〈◯下略〉

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〔源平盛衰記〕

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〈三十九〉

p.0763 維盛出二屋島一參二詣高野一附粉川寺謁二法然房一事　權亮三位中將維盛ハ、〈◯中略〉サテモ御舟ニ乘移リ給、〈◯中略〉八重立霞ノヒマヨリ、御船汀ニ押寄タリ、爰ハイヅコナルラント尋給ヘバ、名ニシオフ紀伊國和歌浦トゾ聞給、夫ヨリ吹上ノ浦ヲ過給ケルニ、一門ヲ離、兄弟ニモ知(シラ)レ子バ、一ハ恨ニ似タレ共、カヽラザラマシカバ、係名所ヲバ爭カ可レ見ト聊慰給ケリ、彼和歌浦ト申ハ、衣通姫トレ居、山ノ岩松礒打波、沖ノ釣船月ノ影、シラヽノ濱ノ眞砂ニ、吹上ノ浦ノ濱千鳥、日前國懸ノ古木ノ森、面白カリケル名所哉、サレバ衣通姫、玉津島姫明神ト彰テ、此所ニ住給ヘル理也トゾ思召、〈◯下略〉

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〈南遊紀行〉

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〔諸州めぐり〕

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〈四紀伊〉

p.0764 和歌浦に〈和歌山より一里あり〉東照宮右の山上に立玉ふ、宮作大にして甚美麗也、神領多く僧舍六坊有、是より和歌浦を望めば其景すぐれたり、今日は此邊櫻さかりにさきて光景もいとまされり、〈◯中略〉是より少右の方へ行て漁人の町を過、和歌の浦の海べたに出づ、おきに地の島おきの島みゆ、和歌の浦は南をうけて入海なり、俗説に此浦におなみ有て、めなみなし、故に片男波と云、此説非也、男波とは大なみなり、め波とは小波也、われもとより其説を信ぜず、あめつちの内、などてかヽるつねの理にたがひぬる事やあるべきとおもひしかば、かへりて後人にもかたり其迷をさとさんため、わざと此濱邊にやすらひて心をとめて久しく見侍りしに、いさヽか俗説のごとくにはなし、只よのつねの所のごとくおなみめなみともにいくたびもたち來れり、和歌の浦にしほみちくればかたをなみと、古歌によめるは、俗説の意にあらず、しほみち來りて潟(カタ)なくなると云意也、其故あしべの方にたづ鳴來れるといふ意明らかにきこゆ、萬葉第六卷に此歌あり、滷乎無美(カタヲナミ)とかけり、此文字にて歌の意明らかなり、乎(ヲ)はやすめ字也、しほみちくれば潟(カタ)なくなると云意也、いとまなみといへるもいとまなしと云意なり、此類萬葉の歌におほし、此浦の佳景聞しにまさりて目を驚かせり、我此景色をむさぼりみて海邊に躊躇し、去事をわすれて時をうつせり、〈◯中略〉近年新しく名付し和歌の浦八景と云は、東照宮、天滿宮、玉津島、紀三井寺、妹脊山、片男波、〈又かたを浪と云在所あり〉布引の松、蘆邊寺是なり、蘆邊寺は妹脊山の南辨才天のある所也、是赤人の歌によりて名づけしならん、八景の内玉津島を除ては、いづれも古來の名所にあらず、

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