地部/駿河國

p.0601 駿河國ハ、スルガノクニト云フ、東海道ニ在リ、東ハ相模、伊豆、西ハ遠江、北ハ甲斐、信濃ニ界シ、南ハ海ニ面ス、東西凡ソ十八里、南北凡ソ十二里、其地勢ハ概ネ山嶽ニ富ミ、至ル所丘陵起伏シ、平坦ノ地ハ、僅ニ南方沿海ノ小區ニ過ギズ、此國ハ實ニ名山富士ノ所在地トシテ其名高ク、隨テ東海道中最モ勝區ニ饒ナリ、古ヘ國府ヲ安倍郡ニ置キ、志太(シタ)、益頭(マシヅ)、有度(ウド)、〈後有渡ニ作ル〉安倍(アベ)、廬原(イホハラ)、富士(フジ)、駿河(スルガ)ノ七郡ヲ管シ、延喜ノ制上國ニ列ス、後世駿河郡ヲ駿東郡ト改稱セシガ、明治維新ノ後、益津郡ヲ志太郡ニ合シ、有度郡ヲ安倍郡ニ併セ、凡テ五郡ト爲シ、新ニ靜岡市ヲ設ケテ、靜岡縣ヲシテ之ヲ治セシム、

名稱

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.0601 駿河〈須流加〉

〔饅頭屋本節用集〕

〈寸天地〉

p.0601 駿河(スルガ)〈駿州〉

〔地名字音轉用例〕

p.0601 ンノ韻ヲラノ行ノ音ニ轉ジ用ヒタル例　するが　駿河〈國〉　須流加(スルガ)　駿ハシユンノ音ナルヲ、〈シユヲ直音ニシテスニ用ヒ〉ンノ韻ヲ轉ジテ、スルニ用ヒタリ、

〔倭訓栞〕

〈前編十二須〉

p.0601 するが　駿河をよむは、しゆ反す、むとると通ぜり、大井川富士川などの、するどき川あるをもて名とす、

〔諸國名義考〕

〈上〉

p.0602 駿河　和名抄に、駿河、〈須流加、國府在二安部郡一、〉名義は、萬葉集に、打縁流駿河能國(ウチヨスルスルガノクニ)云々とある如く、尖川(スルトガハ)の意なるべし、また東遊駿河舞歌に、須留可奈留(スルガナル)、宇止波末仁(ウドハマニ)、宇知與須留(ウチヨスル)、奈見波奈々久佐乃(ナミハナヽクサノ)云々ともあり、こは川ならず、海なれば、いづこも浪はつよく打よすべけれど、万葉集の歌にゆかりあればいふのみ、すべて此國の川は、山より落て海に入る水のけはしければ、川波強く打よする勢ひの猛烈なるによりて、尖川國と云なるべし、此國に駿河郡あり、もとはそこより出し名なるべし、此國の風土記に、駿河有二三大河一、而其濤勢如三駿馬駈二千里一、故爲二國號一、また、薦河者、依二其河流薦々、而不一レ知二淀溜一也、所レ謂志通波他河(シヅハタガハ)、不二河(フジカハ)、大堰河(オホヰガハ)也とあるは、共に字になづみたる也、

〔比古婆衣〕

〈十八〉

p.0602 駿河國名義　和名抄に駿河國駿河郡駿河郷あり、今按ふに、舊はスルガてふ一處の地名の、例の漸々に廣ごりて郷名となり、又郡名にも定められ、竟に國名にも負せ定められたるものなるべし、さて其スルガてふ舊の地は、富士川の下つかたの川邊に在しなるべし、〈此考は下に云ふべし〉名義は此川世に名だたる大なる荒川にて、ともすれば水がさ益り漲りて、岸波立て川邊ゆすり流るヽが、殊にその甚しきわたりをユスルガといへるを、ユスの約りておのづからスルガと呼びならへるものなるべし、さてユスルとは、すべて鳴響むやうの事を云ふ言にて、そを水につきていへる例は、萬葉集七卷に、大海之磯本由須理立波之、〈◯註略〉とよめるこれなり、〈沐浴、泔などの字をゆするとよむも、本の義は同じけれど、轉りたる言にて、異義のごとくなれり、事長ければこゝにはいはず、〉カは處にて例多き言なるが、ことに當國には白須加、横須加、大須加など云へる地名多し、おもひ合すべし、〈但しこれらのスカは渚處の義か、◯中略〉さてそのスルガてふ舊地は、富士川の下方の川邊に在しなるべく考へたる事は、古駿河郷と稱し處今慥ならず、又駿河郡と建(サダ)められたりし界域も慥ならねど、今駿東郡とて富士郡の東にあるは、古の駿河郡を東西と兩に割たれたる

p.0603 東の方なるべければ、駿西郡はそれに接續きて西の方、今の富士郡の南の方かけて、富士川の下流も、其部内にて其處に舊のスルガてふ地は在しを、又後に駿西郡を停て、富士郡に合られたるなるべし、故舊スルガと云ひし地は、今の富士郡の富士川の下流の川邊なりけむとはいへるなり、なほその國人によく訪ひ尋ねてさだむべし、

〔駿河國新風土記〕

〈一〉

p.0603 郡名考　駿河郡　オノレツラ〳〵思フニ、ソノカミシルカト云シヲ、言ノ通フマヽニ、ヲノヅカラスルカト云ナルベシ、言ノ意ハ滑所(シルカ)ト云義ナラン、シルハシユルノ略〈シユノ反ス〉ナレバ、スルカトモ云、所ヲカト云ハ、住所(スミカ)、在所(アリカ)、隱所(カクレカ)ナドノ如シ、其シルト云ハ固ノ反ニテ、和名抄ニ、饘、〈和名加太加由〉厚粥也、粥〈知名志留加由〉薄糜也トアルニテ、固(カタ)ニ對シテシルテフ言ノ例ハイチシロシ、扨此國名、今ノ駿東郡ノ内ニスルカノ郷トイヒシ所アリシトゾ、夫ヨリ起レルコトトゾ思ハルヽ、其スルカノ郷ト云シハ、イヅクトモ今ハ知ガタシ、サレドモヨク〳〵考ルニ、今ウキ島ノ原ト云アタリナルベシ、今ノ原宿其アタリノ村々、スベテ中ムカシヨリウキ島ノ原トハ云ナリ、今モ田地皆深田ニテ、足入ガタク、苗植ルニモ稻苅ルニモ船ニテゾスナル、又淺キ所ハ橇ノ如キ物ヲハキテ草取ナドスルナリ、此地斯テシカリケレバ、滑所トハ名ニ負ヒツラン、〈◯中略〉　駿河　河野通世撰述　舊事記作二珠流河一、類聚國史作二蕣河一、或作二洲流河一、万葉集作二薦河一、或須流河、風土記作二仙河一、或作二尖峨一、駿河字、日本紀其餘諸書皆有焉、〈◯中略〉するがてふ名の義を思ふに、萬葉集高橋蟲麿歌集中の歌に、打縁流、駿河能國と云、又春日部麻呂の歌に、宇知江須流、須流河乃禰良とも云て、エとヨと音通ふなればなり、此辭をつら〳〵考るに、打よするは浪を云るにて、下にするがと續けたるは、すは洲なり、るは寄のよを省けるにて、がは陸棲(クガスミカ)などのかと同じ、人の行かふべき所(ガ)を云、山が海がなど皆

p.0604 同じ、さればするがは洲寄る所にて、浪の洲を打寄せて、人の行かふべき所と成れるを云、

〔萬葉集〕

〈三雜歌〉

p.0604 詠二不盡山一歌一首并短歌　奈麻余美乃(ナマヨミノ)、甲斐乃國(カヒノクニ)、【打縁流】(ウチヨスル)、【駿河】能國與(スルガノクニト)、己知其智乃(コチゴチノ)、國之三中從(クニノミナカユ)、出之有(イデヽシアル)、不盡能高嶺者(フジノタカ子ハ)、〈◯下略〉

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.0604 和伎米故等(ワキメコト)、不多利和我見之(フタリワガミシ)、【宇知江須流】(ウチエスル)、【須流河】乃禰良波(スルガノ子ラハ)、苦不志久米阿流可(クフシクメアルカ)、　右一首、春日部麿、〈◯駿河國防人〉

〔詞林采葉抄〕

〈五〉

p.0604 打縁流駿河國　打よするするがの國とは異儀多く、波のすなごを打よするとつヾけたりとも、亦彼國には富士と葦高との二の山あり、是則金胎兩部の垂跡也、此兩山の間は、昔は東海道の驛路也、その間に横走の關と云ありけり、此道は觸穢の者の通けるを、明神いとひ給て、南海に浮島原の砂のゆられあるきけるを、打寄させ給ひければ、打寄る駿河國と申とも云へり、今或記云、昔富士山は海中より涌出して波に隨て、うかれけるに、もろ〳〵の天女あまくだり舞遊けるを、白波打寄て、此國の山となれりけれは申とかや、是蓬萊にて有と云説に、符合する歟、

〔冠辭考〕

〈二宇〉

p.0604 うちよする　するが　又うちえする　萬葉卷三に〈不盡山を詠〉奈麻余美乃(ミノ)、甲斐乃國(カヒノクニ)、打縁流(ウチヨスル)、駿河能國與(スルガノクニト)、己知其智乃(コチゴチノ)、國之三中從(クニノミナカユ)、卷二十に、〈駿河國防人〉宇知江須流(ウチエスル)、須流河乃禰良波(スルガノ子ラハ)、云々、こは音(コヱ)し通へば、打よするとも打えするともよみたるを思へば、その二つもはた正しからで、實は打泔(ユス)る泔(ス)る髮(ガ)てふ意につヾけなしけんかし、髮を櫛梳るとき用る水をゆするといへば也、さて此國はいとはやき川有故に、する河とはいふらめど、今ゆす(泔)るかみ(髮)のゆとみを略けるが如くいひなすは冠辭也、同卷二十に、〈同國の防人〉多々美氣米(タヽミケメ)、牟良自加已蘇(ムラジガイソ)てふは、薦を編(アム)といふを、あを略きてつヾけたる類ひ也、する河てふ名につきて浪の打よするといへる説あれど、波ともいはで打よするといはんは、古歌の冠辭ともな

p.0605 く、又此上のなまよみてふも、未乾(カハカヌ)弓の反(カヘ)るといひかけつること、奈部にいふが如くて、只冠辭なれば、此語も駿河に由ある語ならぬを思ひやるべきなり、

〔碩鼠漫筆〕

〈七〉

p.0605 打縁流の發語追考〈附泔坏名義〉　今一説の僻按あり、此打ゆするよりつヾけたる意を、なほ熟稽ふるに、するがを陶汰る金ととりなしたるにはあらじか、〈金をかとのみも云ふべきは、する〳〵と瀧ちゆく川をするがといひ、又白髮をしらがといひ、あて君、犬君等を、あてき、いぬきと云へるなどに同じ、又俗語にも、兄君をあにきといへり、又故伴信友の、駿河國名義考といふものには駿河は響る處の義にて、駿河郷は富士川の岸なるべければ、さる郷名に負たりけむを、それが後に郡名になり、竟に國名とさへなれるならむ、と云へり、此説も由なきにはあらねど、處の義と云へるは信じがたし、響る川の義とは云ふべし、猶末に全説をもしるしたるを見るべし、〉金は鏈石〈金山にて是をクサレ石と云〉を搗き碎きて、水をかてヽ打陶汰り、樋に流してとるものなれば、〈此事は那須の汰金の解に、委曲にいふを見るべし、〉ゆすがねと云ふべきなり、良玉集、八雲御鈔等に、ゆりがねとあるも同じ、萬葉集卷七〈二十二左〉に大海の礒もと由須理たつ波の云々、武烈天皇紀に、那爲我與釐據魔〈地震がゆり來ばなり、よりはゆりなり、是をもて打縁流も、打ゆすると同語なる事を了知すべし、〉とあるを見るべし、ゆするも、よするも、ゆるも、よるも、もとはみな同語なるをや、かヽれば打汰る汰る金とやうに、取なせるにやとは云へるにこそあれ、

位置

〔地勢提要〕

〈乾〉

p.0605 各國經緯度〈附里程〉　駿河府中〈傳馬町〉極高三十四度五十八分半、經度東二度三十八分、從二東都一〈東海道〉四十七里一町五間、

〔日本經緯度實測〕

p.0605 北極出地　駿河　沼津　三五度〇六分〇〇秒　府中　三四度五八分三〇秒　吉原　三五度一〇分〇〇秒　藤枝　三四度五二分〇〇秒〈◯中略〉　東西里差　山城　京　〇度〇〇分〇〇秒〈◯中略〉　

p.0606 駿河　府中　東二度三七分一四秒　富士山　東三度〇〇分〇〇秒

疆域

〔駿河國新風土記〕

〈二堤要〉

p.0606 疆域　風土記ニ、疆域ヲ記シテ、此國東西二日半ノ宿、南北一日半之宿、地勢強而山嶺多、東南海嶼多、河流帶レ之焉、東限二息田神祠一、西限二大井川一、北限二猪川山一、南限二有渡沖一トイヱリ、東西ノ里程、三十六町ヲ一里トシテ、島田宿ヨリ三島宿マデ二十四里餘、二日半ノ宿ナリ、南北ノ里程、有渡郡中島村ヨリ安倍郡梅ケ島マデ十五里、一日半ノ宿ナリ、東限二息田神祠一ト云所、今詳ナラズ、伊豆國ノ疆、駿東郡ニ柿田村ト云村アリ、息ハ臭ノ誤ニテ、カキトヨムベキニヤ、此村トスルトキハ、東ノ限リト云ニカナヘリ、西限二大井川一ハ論ナシ、北ハ限二猪川山一、富士郡猪頭村ノ山ヲ云ナルベシ、此村甲斐ノ境ニテ、北ノ限トサスベシ、南限二有渡ノ沖一モ論ナシ、スベテ四境ハ、伊豆、相模、甲斐、信濃、遠江ノ五國ニワタレリ、伊豆國志ニ疆域ヲアゲテ云、西北大溪瀧溪ノ二溪、茶畑村上ニテ合流シ、以下ヲ界川ト云、幸原村ヲヘテ三島ノ千貫樋下ヲ過テ、長伏村ニシテ狩野川ニ注グマデ、駿州駿東郡ト凡テコノ川ヲ界別トス、近世幸原ニテ水盡ク東決シ、西南ノ方千貫樋マデ水枯竭レドモ、依レ舊古水道ヲ界トス、長伏ヨリハ狩野川界タリ、江間川ニ至リテハ、駿州大平村口野村トノ間、連山岡脊界ナリ、海濱ハ重寺村ト駿州口野村ノ間、大潜ト云處ヲ分界トス、按ニ、古昔相州トノ疆界ハ、箱根山脊通ヲ北ニ指シ、今ノ箱根三島町ト小田原町トノ間ヨリ、湖水ノ中通ヲ伊駿相ノ分界トス、信救記曰、孝安天皇時、熟二視而境風致一〈而當作レ東〉地跨二伊駿相三州一、因分二其域一、而良材立二波心一、號二目代木(ケヽラキ)一、西汀名二駿河津一、南岸號二伊豆地一、東濱名二相模津一ト記、附録云、是木ニ和歌ヲ刻ス、又印木トモ國分トモ云、三椏木ナリ、歌ニ、　足柄也箱根ノ湖ノケヽラキニ三國ヲ分テ立ル白波、此木ノコト、箱根ノ人ニ尋ヌルニ、ソノ木今ニ存在ス、旱年ニ湖水減ズレバ、三尺許水上ニ見ルト云、稻葉氏小田原侯タル頃、界今ノ所ヘ移ルヨシナリ云々、コレ伊豆國田方郡君澤郡ト駿河國ノ界ヲ云、道雄按ニ、信救記トハ、大夫坊覺明

p.0607 ガ書ル箱根權現ノ縁起也、古風土記ニヨリテイエルナルベシ、其ハ後ノ世ノ口ツキニテ、上古ノモノトハ思ハレズ、〈◯中略〉上件伊豆國トノ疆ヲ云、相模國ノ疆ハ、三國峠ヲ界テ、此山ノ東面相模、北面甲斐國、南面ハ駿河國トス、甲斐國ノ堺ノコト、甲斐國志ニ記ス事詳ナレドモ、各郡各村ニシルシタレバ、カヘリテマギラハシキニ似タル所、スベテコレヲイフニ、甲斐國都留郡ト駿河郡ノ堺、東ノ方甲斐國山中村ト駿東郡須走村トノ界ハ、籠坂峠ヲ東南ニ下リテ傍ニ杭アリ、富士郡トノ界ハ、富士山無間ケ嶽ヨリ西北ヲ甲斐國トシ、東南ヲ駿河トス、庵原郡ノ界ハ、甲斐國万澤ノ南白鳥山二國ニ跨リ、庵原郡内房村ト界川ヲ以テ界トス、コノ川富士川ニ入、安倍郡ハ梅ケ島村、甲斐成島村ニ隣リ、又安倍郡井川ハ、甲斐湯島村、十郞次山、千挺木山等ニ界ヒ、夫ヨリ遠江榛原郡千頭村公林、井川七村ノ山ト、信濃國ニ連リ、遠江ノ界ハ、千頭村公林ノ中ニアリ、大須俣川ト井川ノ流合シテ、遠江駿河トノ界トナリ、下流志太郡細島村ヨリハ、大井川ノ流中古變ジテヨリ川ノ東ニ榛原郡ノ地アリテ、志太郡一色村ハ遠江國小杉村ト小路ヲ以テ界トス、コレ此國ノ四境ノ大略ナリ、

〔日本地誌提要〕

〈十四駿河〉

p.0607 疆域　東ハ相模、伊豆、西ハ遠江、北ハ甲斐、信濃、南ハ海ニ至ル、東西壹拾八里、南北壹拾貳里、

〔日本靈異記〕

〈中〉

p.0607 藥師佛木像流レ水埋レ沙示二靈表一縁第卅九　駿河國與二遠江國一之堺有レ河、名曰二大井河一、其河上有二鵜田里一、是遠江國榛原郡部内也、

〔松屋筆記〕

〈六十〉

p.0607 伊豆駿河古は木瀬川を界とす　玉海、元暦元年八月廿一日の條に、此日定能卿來、傳聞、頼朝出二鎌倉城一來二著木瀬川一、〈伊豆より駿河之間云々〉近暫逗留、進二飛脚一申云、已所二上洛仕一也、但ひきはりても、不レ令二上洛一候也云々、〈◯中略〉按、今は駿豆の二國、三島の西千貫樋の川をもて界とすれど、古は木瀬川を界とせり、伊豆志〈一の卷郡郷部〉に、鏡作(カヾミツクリ)、泉水(イヅミ)二郷分置

p.0608 ノ時、伊豆ニ屬シ、延喜ノ後、復駿河ニ屬シ、北條氏割取シテ伊豆トシ、駿河亞相駿城ニ在ス時、庖廚(ダイドコロ)料トシテ、復駿河トナルと見ゆ、

地勢

〔易林本節用集〕

〈下〉

p.0608 駿河〈駿州〉上、管二七郡一、東西二日半、山原野里、皆均等也、抱レ海帶レ山、肥産多、大中國也、

〔駿河國新風土記〕

〈一〉

p.0608 駿河　河野通世撰述　此國、東西を經とし、南北を緯とす、經凡二十二里餘、緯凡二十里餘より七八里に至る、山川田野程よく相錯れり、驛路に三つの峻嶺あり、宇津谷坂薩埵坂、七難坂なり、三の大河あり、大河川、阿倍川、富士川なり、是皆天然の要障なり、國形は東西長うして南北短く、前後廣うして中狹く、千木の如く、また鼓に似れり、西北に高山を負ひ、東南に大洋を抱たるが故に、國中おのづから暖和にして、雪ふれども積らず、氷ぬれども厚からず、是以百穀善熟り、菓菰早就、されば國富物豐にして、俗文華を好む、延喜式此國を上國の列に入れ、風土記定穀上之上とす、宜なるかな、さて限るに山を以てし、横に最を截ば、遠江の國界より宇津の山に至る凡五里を第一截とす、宇津の山より薩埵山に至る凡六里を第二截とす、薩埵山より七難坂に至る凡四里を第三截とす、七難坂より伊豆國の界に至る凡七里餘第四截とす、限るに川を以てすれば、大井川より阿倍川に至る七里を第一截とす、阿倍川より富士川に至る凡八里餘を第二截とす、富士川より伊豆の國の界に至る凡七里餘を第三截とす、かく山と川と點綴して、たとへば一匹錦の花紋列なるが如し、これ自然の形勢なり又縱に是を分ちて三路とす、山中を上の一路とす、其民良材を伐て桴を下し、茶を製し、紙を製し、藥草を採などを業とす、官道を中の一路とす、逆旅亭、茶店、酒肆相連り、逆旅亭長、〈俗云本陣〉驛長、〈俗云二問屋一〉驛老〈俗云二年寄一〉あり、貧しきものは驛馬を驅せ、行客の裝を荷ふをもて業とす、海濱を下の一路とす、魚鹽の利夥しく、しかのみならず通船運漕、天下の諸國を比隣の如くするの便あり、農は此三路の間に充滿して耕耘を勤む、是民産業をなすの大略なり、

道路

〔日本實測録〕

〈二街道〉

p.0609 從二東京一東海道至二西京一〈◯中略〉　駿河國駿東郡沼津本町、三十五度六分、〈至二海岸一廿三丁〉　一里二十三町二十五間半　原宿一里一十三町一十五間半　富士郡柏原新田〈至二海岸一二丁三十間〉一里二十三町二間　吉原宿、三十五度一十分、　一里五町二間〈至二吉原宿追分町一十二丁五十一間〉　松岡村、〈至二松岡村宿所一八丁九間〉三十五度九分八町五十一間、〈至二富士川岸一四丁三十間〉　菴原郡岩淵村　二十八町五十七間半　蒲原宿　一里一十七町二十四間半　由比宿、三十五度六分半　二里一十三町四十二間半　興津宿、三十五度三分、　一里一十三町五十七間半　江尻宿　二里二十六町二十七間〈至二靜岡横田町一二里一十六丁一十四間、從二横田町一至二八幡町一六丁九間、〉　有渡郡靜岡〈本府中〉傳馬町、三十四度五十八分半、　一里二十二町五十六間〈至二安倍川岸一二十四丁八間〉　丸子宿〈又書二鞠子一〉　二里三町五十七間半〈至二宇津谷峠一三十二丁一十九間半〉　志太郡岡部宿　一里一十五町一間　藤枝宿追分〈至二益津郡田中城大手一七丁〉　一十二町二十七間　藤枝宿、三十四度五十二分、　二里一十五町二十間　島田宿　一里四町四十二間〈至二國界大井川岸一一十八丁五十間〉　遠江國榛原郡金谷宿〈◯中略〉　從二東京一歴二大山及御殿場一至二大月一〈◯中略〉　駿河國駿東郡竹之下村　一里一町三十二間　御殿場村追分〈至二相模國足柄上郡仙石原村一二里一十五町二十二間、從二仙石原一歴二關所一至二宮城野村一一里二十三丁二十二間半、從二宮城野一至二湯本村一、一里三十二丁四十二間、又從二宮城野一至二蘆之湯一、一里二丁四十八間、從二蘆之湯一至二元筥根八丁坂一二十丁二十二間、〉　一町一十二間　御殿場村、三十五度一十九分、　四町三十六間　同上宿〈歴二神山村一至二佐野村西原一四里九丁三間〉　一十七町三十七間半　仁杉村　一里三十三町一十六間半　須走村、三十五度二十一分、　二里六町三十六間〈至二國界一一里二十七間半、從二國界一至二籠坂峠一、四丁四十五間、〉　甲斐國都留郡山中村〈◯中略〉　從二東海道三島一歴二佐野一至二今泉一〈◯中略〉　駿河國駿東郡佐野村二本松新田〈至二西原一七丁一十八間、從二西原一至二深山村一三里四丁三十六間、從二深山一至二印野村十文字一一里四十一間、又從二深山一至二富士淺間社一、五丁一十五間、〉　一十九町五十四間　水窪村　二里二町四十五間　中澤田村　二里二十一町　西船津

p.0610 村、三十五度九分、　二十六町五十四間　富士郡中里村須津川岸〈至二廣沼傍一、一十三丁三間〉　一十六町一十八間　比奈村、三十五度一十分、　三十二町一十八間　今泉村横道　〈從二三島一（伊豆）至二今泉一〉　街道、通計八里三十二町三十五間半、　從二東海道吉原一歴二身延一至二韮崎一　駿河國富士郡吉原宿追分町　四町九間　傳法村〈至二六所淺間社一二丁二十七間〉　二里一町一十三間　上小泉村〈至二久遠寺一五丁五十七間〉　一十二町二十八間　大宮郷青柳町〈至二岩本町實相寺一一里二十九丁九間、從二實相寺一至二松岡村一一十六丁一十八間、〉　三町三十間　同中宿町、三十五度一十四分、　二町一十五間　同西新町淺間華表前〈至二大宮郷田宿一三丁四十六間、從二田宿一至二富知神社一四丁四十八間、又從二田宿一至西山村新垣外一一里七丁二十七間、〉　一里一十五町五十一間〈至二淺間社前一一丁五十一間〉　粟倉村〈至二村山郷淺間社一一十四丁九間、北極高三十五度一十五分半、〉　一里六町五十一間　北山村本門寺門前　一里二町五十一間　上井出宿新田〈至二上井出宿所一四丁五十一間、北極高三十五度一十八分、從二宿所一至二觀音前一三丁三間、從二觀音前一至二人穴村追分一一里一十丁二十四間、從二追分一至二人穴一、四丁五十間、又從二追分一至二原村一二里八丁二間、從二原村一至二上井出觀音前一六丁四十二間、〉　三十五町六間　上條村大石寺門前〈至二大石寺町一三十間〉　一十七町一間　下條村妙蓮寺門前〈至二妙蓮寺一一丁四十五間〉　一里五町三十六間　上柚野村〈至二勢子一一丁二十一間、北極高三十五度一十六分、〉　一里一十一町三十九間　西山村片熊〈至二新垣外一六丁四十二間、從二新垣外一、至二本門寺一八丁五十一間、〉　一里八町五十一間半、〈至二長貫村富士川綱橋一一里五十四間、從二綱橋一至二内房村一二十七間半、〉　菴原郡内房村八幡前〈至二岩溜村一三里四十五間〉　三十四町二十八間半〈至二國界一二十九丁五十五間半〉　甲斐國巨摩郡萬澤村韮久保澤岸

〔日本實測録〕

〈一沿海〉

p.0610 從二東京一沿海至二大坂一〈◯中略〉　駿河國駿東郡口野村、三十五度三分、　二里一十九町二十二間半　沼津　三里一十九町一十九間半　富士郡西柏原新田　一里一十三町四十二間半〈至二吉野湊一一里二町二十六間〉　田子村、三十五度八分、　一里五町二十八間　五貫島村富士川口〈至二洲岬一七町四間〉　一里二町二十二間　菴原郡蒲原宿〈至二街道一五町四十八間〉　三里一十間〈至二西倉澤村一一里二十八町三十間〉　興津宿　一里二十三町五十三間半　有渡郡清水湊〈至二江尻宿一〉

p.0611 〈二十二町三十九間〉　二里一十七町二十九間半　三保村北濱〈至二南濱一徑測一十八町二十八間〉　二十九町五十六間　同南濱　二里三十四町三十七間半〈至二根古屋村久能一二里五町四間半〉　大谷村濱、〈至二大谷村宿所一三町三十間〉三十四度五十七分半、〈從二大谷村濱一至二靜岡〈本府中〉八幡町一一里六町五十九間〉　二里三町二十三間〈至二安倍川口一三十五町二十九間〉　石部村、三十四度五十五分、　一里二十九町二十七間　益津郡城腰村、三十四度五十二分、　三里一十二町五十四間〈至二大井川口一一里一十八町四十二間半〉　遠江國榛原郡川尻村濱

宿驛

〔延喜式〕

〈二十八兵部〉

p.0611 諸國驛傳馬〈◯中略〉　駿河國驛馬〈小川、横田、息津、蒲原、長倉各十疋、横走廿疋、〉傳馬〈益頭、安倍、廬原、富士、駿河郡、并横走驛各五疋、〉

〔駿府志略〕

p.0611 海港〈郵驛付〉　丸子驛、在二府西里許一、戸數二百餘煙、〈◯中略〉驛東大半里有二手越村一、古驛也、有二佳人千壽居阯一、村南手越原、建武二年新田義貞大捷地也、　藤枝驛、在二府西五里一、跨二益津志太二郡一、戸數一千三百餘煙、多二青鮫魚皮一、　岡部驛、在二宇都嶺西一、距レ府三里、戸數四百餘煙、驛原係二益津郡一、後屬二志太郡一、　江尻驛、在二府東三里一、戸數八百餘煙、巴水絶二驛東一流、有レ橋曰二兒子橋一、長二十一弓、都亭北有二故壘一、穴山梅雪所レ居、　興津驛、在二府東四里一、戸數三百餘煙、負レ山臨レ海、多二魚蝦一、驛東捍海隄長一千二百五十弓、隄盡有レ津、冬春架レ橋、夏秋撤レ之、

〔續日本後紀〕

〈九仁明〉

p.0611 承和七年十二月癸卯、改二駿河國駿河郡永藏驛(○○○)家一、遷二置于伊豆國田方郡一、以下駿河郡特帶二三驛一、百姓殊苦中重役上也、

〔三代實録〕

〈九清和〉

p.0611 貞觀六年十二月十日癸亥、駿河國言、駿河郡帶二三驛二傳一、横走(○○)、永倉、柏原驛(○○○)家是也、總差二點丁驛子四百人、傳子六十人一、年來疫旱荐臻、課丁欠少、因而驛傳子等、不レ能レ滿レ數郡民凋殘、莫レ甚二於

p.0612 此一、望請廢二柏原驛一、富士郡蒲原驛(○○○)遷二立於富士河東野一、然則蒲原驛與二永倉驛一、行程自均、民得レ息レ肩、從之、

〔吾妻鏡〕

〈一〉

p.0612 治承四年十月十三日壬辰、甲斐國源氏并北條殿父子、赴二駿河國一、今日暮兮、止二宿大石驛(○○○)一云云、戌刻、駿河目代、以二長田入道之計一、廻二富士野一襲來之由、有二其告一、仍相二逢途中一、可レ遂二合戰一之旨群議、武田太郞信義、次郞忠頼、三郞兼頼、兵衞尉有義、安田三郞義定、逸見冠者光長、河内五郞義長、伊澤五郞信光等越二富士北麓若彦路一、爰加藤太光員、同藤次景廉、石橋合戰以後、逃二去于甲斐國方一、而今相二具此人人一到二駿州一云云、

〔吾妻鏡〕

〈五〉

p.0612 元暦二年〈◯文治元年〉十一月一日庚辰、二品著二御駿河國黄瀬河驛(○○○○)一、被レ觸二仰御家人等一云、爲レ聞二定京都事一、暫可レ逗二留于此所一、其程可レ用二意乘馬并旅粮已下事一云云、

〔吾妻鏡〕

〈二十一〉

p.0612 建暦三年〈◯建保元年〉四月十八日己丑、義直相二具朝盛入道一、自二駿河國手越驛(○○○)一馳歸、仍義盛遂二對面一、暫散二鬱憤一云云、又乍レ著二黒衣一參二幕府一、依レ有二恩喚一也、

〔吾妻鏡〕

〈三十二〉

p.0612 嘉禎四年〈◯暦仁元年〉十月廿五日丙寅、三御逗留二蒲原宿(○○○)一、聊依二御不例一也、

〔沙石集〕

〈六下〉

p.0612 正直之女人事　近比奧州ノアル山寺ノ別當ナル僧、本尊ヲ造立セムト年來思企テ、金ヲ五十兩、守袋ニ入テ頸ニ掛テ上洛シケル程ニ、駿河ノ國原中ノ宿(○○○○)ニテ、晝水ヲアミケル家ニテ、此袋ヲ忘テ、菊川ニテ思出シタリケリ、

建置沿革

〔日本國郡沿革考〕

〈二東海道〉

p.0612 駿河　古作二珠流河一〈駿河風土記、崇神三年、割二威豆國一而分、蓋謬説不レ可レ信、又云、國内有二三大河一、其濤勢如二駿馬一、故爲二國號一、〉　上國、管七郡、七百八十村、　志太〈百二十六村〉　益津(　/マシツ)〈三十二村　延喜式等作二益頭一、正徳二年令、自今宜レ書二益頭一、而今仍作二益津一、　萬葉集所レ謂燒津邊、即此地、土人今世仍稱也、伊津、蓋古訓之遺、日本紀云、日本武尊至二駿河一、賊徒欺曰、野多二麋鹿一、王信二其言一入レ野覓レ獸、賊放レ火燒二其野一、王知レ被レ欺、則以レ燧向燒、悉焚二其賊一滅レ之、故號二其處一、曰二燒津一、〉　安倍〈百二十三村　古府治、　駿河風土記作二安辨一、〉　庵原〈八十二村　古廬原國、見二國造記一、古事記作二五百原一、延喜式等作二廬原一、〉　富士〈百四十八村〉　駿東〈百七十一村　古駿河郡延喜式作二駿河一、蓋中世折爲二東西二〉

p.0613 〈郡一、後廢二駿西郡一、未レ詳二何時一、〉　有渡〈九十九村　孝徳紀作二莵礪一、延喜式等作二有度一、正徳二年令、自今宜レ書二有度一、而今仍作二有渡一、〉

〔日本地誌提要〕

〈十四駿河〉

p.0613 沿革　古ヘ國府ヲ安倍郡ニ置、〈今ノ靜岡是ナリ〉鎌府ノ初、武田信義ニ命ジテ、本州ヲ管セシメ、源廣綱、三浦義村、相繼テ守護ヲ以テ州守ヲ兼ヌ、建武中興、脇屋義助ヲ守護トス、正平六年、足利尊氏、今川範國ヲ以テ守護トシ、府中ニ治ス、相傳ル八世、義元ニ至リ、勢頗ル強大、遠江三河ヲ兼併ス、永祿三年、織田氏ト戰テ敗死、子氏眞嗣ギ、州人離叛ス、永祿ノ末、武田晴信、襲フテ府城ヲ陷レ、氏眞ヲ逐ヒ、遂ニ本州ヲ奪フ、武田氏ノ亡ブル、徳川氏之ヲ取リ、遠江ヨリ移テ府中ニ治ス、天正十八年、關東ニ遷ル、豐臣氏、中村一氏ヲ本州ニ封ジ、嗣忠一封ヲ襲グ、慶長五年、徳川氏之ヲ伯耆ニ徙シ、府中ヲ内藤信成ニ賜ヒ、〈三萬石〉大久保忠佐ヲ沼津ニ、酒井忠利ヲ田中ニ、天野康景ヲ興國寺ニ封ズ、後沼津興國寺二城ヲ廢ス、十四年、信成忠利ヲ徙封シ、徳川頼宣ヲ全州ニ封ジ、府城ニ鎭ス、元和中、之ヲ紀伊ニ移シ、寛永元年、徳川忠長ヲ封ズ、〈元和ヨリ寛永ニ至ルマデ、田中城ニ城代ヲ置キ、州事ヲ理セシム、〉九年、罪有テ國除セラレ、城代ヲ府中ニ置キ、士隊及騎歩卒ヲ置テ戍シ、松平忠重ヲ田中ニ封ズ、〈後ニ本多正矩〉元祿中、松平信治ニ小島ヲ賜ヒ、安永ノ初、水野忠友ヲ沼津ニ封ジ、凡テ三藩、王政革新、三氏ヲ安房上總ニ徙シ、徳川家達(イヘサト)ヲ本州ニ封ジ、府中ニ治シ、改テ靜岡ト云、既ニシテ廢シテ靜岡縣ヲ置、

〔先代舊事本紀〕

〈十國造〉

p.0613 珠流河國造　志賀高穴穗朝〈◯成務〉世、以二物部連祖大新川命兒片堅石命一定二賜國造一、　廬原國造　志賀高穴穗〈◯成務〉朝代、以二池田坂井君祖吉備武彦命兒意加部彦命一定二賜國造一、

〔駿府志略〕

p.0613 襍記　駿河、景行天皇四十年、神烈東征、分爲二四國一、宇都山以西爲二素賀國一、富士水以西爲二安倍廬原二國一、足柄山以西爲二駿河國一、孝徳天皇時始併爲二一國一、

〔駿府志略〕

p.0614 興替　府城安倍氏墟、後爲二州治一、並不レ詳二其時世一、至二建武二年一、今川範國始封二駿遠二國一、範國居二遠府一、今見附驛也、卒壽八十七、諡二省公一、子範氏立、徙居二本州華倉里一、卒壽五十、諡二慶公一、子泰範立、卒壽五十五、諡二高公一、子範政立、始居二本府一、嘉吉二年卒、壽七十八、諡二全公一、子範忠立、多力善レ射、寛正二年夏五月五日卒、壽五十四、諡二賀公一、子義忠立、文明七年夏四月、西伐二横瀬氏一敗死、諡二昌公一、邦内大亂、關東帥足利氏滿遣レ兵來討、立二義忠子氏親一、氏親西伐報二父讐一、遂併二參河一、大永六年夏六月卒、壽五十四、諡二僖公一、子氏輝立、天文五年夏四月卒、諡二玄公一、弟義元立、永祿三年夏五月、率二師四萬一、西伐二織田氏一、敗二死桶狹一、時年四十四、諡二哲公一、子氏眞立、奢侈無レ度、邦人大畔、十一年冬、爲二武田氏所一レ攻出走今川氏建國二百三十四年、首二乙亥一盡二戊辰一、武田信玄、以二永祿十一年一入二駿河一、明年春、與二北條氏一相二持薩埵山一、凡百餘日北還、冬十月、復南伐盡有二駿地一、修二横山江尻田中等諸城一、分二戍諸將一、天正元年春、信玄大擧西伐、卒二于師一、子勝頼立、十年夏、烈祖〈◯徳川家康〉與二織田氏一、夾攻滅二勝頼一、武田氏有レ駿十四年首二戊辰一盡二壬午一、　烈祖以二天正十年一併二駿河一、越四年營二府城一、遷居焉、十八年秋東遷、豐公以二本府一封二其將中村一氏一、食二十四萬石一、慶長五年秋卒、子忠一立、冬烈祖徙二忠一于伯耆一、以二本府一賜二韮山城主内藤信成一、十一年夏、徙二信成於江之長濱一、明年秋七月、烈祖再遷焉、又二年己酉冬、封二八子頼宣於遠之横沙一、食二駿遠二國一、頼宣年幼、未レ就レ封、元和二年、烈祖薨、頼宣遂居二本府一、五年、移二封紀伊一、台廟〈◯徳川秀忠〉二子忠長代封、忠長以二寛永九年一、謀レ反賜レ死、爾後置二留守一、

國府

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.0614 駿河國〈國府在二安倍郡一、行程、上十八日、下九日〉

〔伊呂波字類抄〕

〈須國郡〉

p.0614 駿河國〈◯中略〉　安倍〈アヘ府〉

〔駿府志略〕

p.0614 襍記　國府、或云在二廬原一、或云在二藤枝一、或云今府即古國府、或云厥初在二廬原一、後徙二藤枝一、又徙二今地一、其説不レ一、府人新莊雄曰、駿河本四國、廬原自有二廬原國府一、安倍自有二安倍國府一、此説似レ是、

〔駿河國新風土記〕

〈六國府〉

p.0615 和名抄、國府在二安倍郡一、行程、上十八日、下九日、今案ルニ、府ヨリ京マデ今ノ道七十五里トイフ、〈◯中略〉府ヲ當郡ニ置レシ事、イヅレノ御代トイフ事ヲシラズ、古ハ廬原郡ニアリテ風土記ニ、古國府トアル所是ナリ、今ハ廬原郡ニアル事ハ、ムカシ廬原國造ヲ任サレシヨリ、其氏人五百原君代々コノ所ニ住シテ、國ノ政ヲモトリシカラニ、國守ノ府モ爰ニ定リシナルベシ、〈◯中略〉國分寺ヲ置レシハ、神龜三年聖武天皇ノ御代ナルニ、廬原郡北高橋ニアリト、風土記ニアリ、コハ府ノ東西ニ建トイフコトナレバ、郡ヲヘダツルコトモアルベケレド、コノ川邊ノ國分寺トイフモ、圖帳ニアレバ、後ニ安倍郡ニウツシタルニヤ、然レバ府ノウツリタルハ神龜ヨリ後チニテ、風土記ノナリタル延長ヨリ前ナルベシ、〈◯中略〉今ノ町ハ、往昔安部市ノ舊跡ナリ、其ムカシ、今ノゴトク小路ナドノ町アリシニヤ未レ詳、永祿九年今川家ノ老臣飯尾豐前守トイフモノ、野心ノ沙汰アリテ、遠州掛川ノ城ヨリ爰ニ招寄テ、家人ニ命ジテ誅セシ事アリ、其時小路軍トイフ事アリシト見エタレバ、今ノ如キマチノアリシコトハ知ラレタリ、其後永祿天正二度ノ兵火ニテ、昔ノ家居ハ殘リナク失テ、天正ヨリ以前爰ニ住シトイフモノ有事ナシ、カクテ慶長ノ初メヨリ、民家モソココヽニ建初タルヲ、同十二年神祖爰ニウツリ賜ヒテ、同十四年彦坂久兵衞光政、畔柳壽學ヲ奉行トシテ、繩張シテ今ノ町ヲ割ラシメ賜ヒシト云、今ノ町ノナレルハ、友野宗善ガ力ナリ、宗善ハ代々府ノ町人ノ頭ニテ、町年寄友野與左衞門トイヘル者ノ祖ナリ、其家ニモテル古文書アリ、　定　御普請并郷夫之事　一人質之事　一壹揆之事　令レ歸二參駿府一爲二居住一者、右如レ此之詰役、可レ有二御免許一之由仰出者也、仍如レ件、　天正三年乙亥十月朔日　跡部九郞左衞門尉奉之　

p.0616 駿府商人衆　今ノ町ハ、安倍郡有渡郡ニマタガル、其境官道ヨリ北ヲ安倍トシ、南ヲ有渡トス、一町兩郡ニワタルモノナリ、

〔加藤文書〕

p.0616 傳馬壹疋、自二金屋一駿府迄可レ出者也、仍如レ件、　戊子壬五月廿日　淺井鴈兵衞奉之　右之宿中

〔集古文書〕

〈四十九配符〉

p.0616 天正十六年配符〈紀伊國高野山高室院藏〉　傳馬四疋、自二駿府一岡崎迄可二出立一候也、仍如レ件、　戊子三月廿八日　石原市左衞門尉奉之　右宿中

郡

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.0616 駿河國〈◯註略〉管七〈◯註略〉志太、　益頭、〈末志豆〉有度〈宇止〉安倍、　廬原〈伊保波良〉富士〈浮志〉駿河〈與レ國同〉

〔延喜式〕

〈二十二民部〉

p.0616 駿河國、上、〈管　志太　益頭　有度　安倍　廬原　富士　駿河◯中略〉　右爲二中國一

〔伊呂波字類抄〕

〈須郡國〉

p.0616 駿河國〈管七〉　志太〈シタ〉　益頭〈マシツ〉　安倍〈アヘ府〉　廬原〈イヲハラ〉　富士〈フシ〉　有度〈アリト〉　駿河

〔拾芥抄〕

〈中末本朝國郡〉

p.0616 駿河〈上中〉七郡　志太(シタ)、益豆(マシツ)、有度(ウト)、安倍(アベ)、〈府〉廬原(イホハラ)、富士(フジ)、駿河(スルカ)、〈上下與レ國同〉

〔皇國郡名志〕

p.0616 駿河國〈七郡〉　志太(シタ)　〈●泉　●桑山　●御室　遠信甲界大井川上〉　益頭(マシツ)　〈＜島田　＜藤枝　大井川下海ニ至〉　有度(ウト)　〈田中　＜岡部　●丸子　△ウツノ山　△アベ川　府中ト藤枝ノ間小郡〉　安倍(アヘ)　〈＜久能　府中　△三保　△清水　△蘆久保　國中〉　

p.0617 廬原(イホハラ)　〈●岩淵　●蒲原　●由井　●沖津　●江尻　●松野　●獅子原　甲界海ニ貫〉　富士(フシ)　〈●吉原　●北山　スベテ不二山巡テ村カズ少　甲界海ニ貫〉　駿東(スントウ)　〈●原　沼津　●カウ山　須走　＜松山　△浮島原　豆相甲ノ界〉　〈舊駿河今作二駿東一〉　◯按ズルニ、本書及ビ次下ノ郡名異同一覽ノ符號ハ、山城國篇郡條ニ引ク所ノ、二書ノ凡例ヲ參照スベシ、

〔郡名異同一覽〕

p.0617 駿河

〔駿河國新風土記〕

〈二提要〉

p.0618 郡　道雄曰、コノ國、昔ヨリ郡ヲ分ツコト七ツ、風土記ニ、大郡〈參〉中郡〈貳〉小郡〈貳〉烏渡郡〈大〉伊穗原郡〈大〉富士郡〈中〉安辨郡〈中〉薦河郡〈大〉志太郡〈小〉麻賤郡〈小〉ト見ヱタリ、有渡郡ノ地、今ノ田額三万三千石餘、駿河郡高四万千七百石餘ナレバ大郡ト云ベシ、伊穗原郡高二万百石餘ナリ、二郡ニ比スレバ小ナレドモ、コノ郡ハ多ク海濱ナレバ、人民モ多ク、昔ヨリ土地開ケシ所ナレバ、大郡ト云シナルベシ、富士郡高三万五千三百石餘ナレバ、郡ノ中富士川ノ急流アリテ、昔ハ田地モ開ケズ、人民モ少カリシカラニ、中郡トハ定マリシナルベシ、安辨郡高一万二千五百石餘、田ハ少ケレド、土地廣ケレバ中郡ニハ入シナルベシ、志太郡高三万六千百石餘、益津郡高一万千八百石餘、コノ二郡ハ大井川ノ急流アリテ、今ノ田地多クハ新ニ開キシ所ナレバ、土地ノ人民モ少カリシコト知ラレタリ、大中小ノコト、今ノ田額ノ高ヲ以テ論ズベキニアラ子ドモ、戸數多ケレバ田所モ多キコト知ルベキナレバ、今ノ田數ニヨリテ論ズルナリ、

志太郡

〔駿河國新風土記〕

〈一〉

p.0618 郡の事　志太郡　和名抄風土記并作二志太一、風土記異本作二止太一、其餘諸書、皆作二志太一、　志太と名付し事は、此郡の内、しだと云草の多く生ふる故にやあらむ、凡其地に多く生ふるものもて、郡名又は郷名に

p.0619 負する事甚多し、近江國蒲生郡、武藏國橘樹郡遠江國榛原郡など是なり、今此志太郡は其名の元なる志太村を始として、夫より西北の方、皆山に傍たる村里にして、しだと云ふ草至て多し、

〔駿河隨筆〕

〈上〈小〉〉

p.0619 志太郡〈止駄〉　百六十一村　北自二宇津山峠一、西大井川除限、南藤枝之驛、中割西之方、東岡部驛ノ入朝比奈ヲ限、西宇津山際ヲ限、

益頭郡

〔駿河國新風土記〕

〈一〉

p.0619 郡の事　益津郡　古書皆作二益津一、延喜式作二麻賤一、後世諸書多作二益津一、郡名もとやきつの郡なり、呉音釋轉して、やきの假字に用ゆ、頭呉音ヅ濁音なり、後に燒と云辭を忌てましづと呼、終に頭の字を改めて津の字を書しなり、

〔駿河隨筆〕

〈上〈小〉〉

p.0619 益豆郡　麻賤　三十二村　南東海際限、北自二宇津山一、當目山ニ限、西大井川際ニ限、

〔日本書紀〕

〈七景行〉

p.0619 四十年、是歳日本武尊初至二駿河一、其處賊陽從之、欺曰、是野也、麋鹿甚多、氣如二朝霧一、足如二茂林一、臨而應レ狩、日本武尊信二其言一、入二野中一而覓レ獸、賊有二殺レ王之情一、〈王謂二日本武尊一也〉放レ火燒二其野一、王知レ被レ欺、則以レ燧出レ火之、向燒而得レ免、〈◯中略〉故號二其處一曰二燒津(○○)一、

〔古事記〕

〈中景行〉

p.0619 故爾到二相武國一〈◯日本武尊〉之時、其國造詐白、於二此野中一有二大沼一、住二是沼中一之神、甚道速振神也、於レ是看二行其神一、入二坐其野一、爾其國造火著二其野一、〈◯中略〉於レ今謂二燒遣(○○)一也、

〔古事記傳〕

〈二十七〉

p.0619 燒遣、〈◯中略〉萬葉三に、燒津邊吾去(ヤキヅヘワガユキ)しかば、駿河(スルガ)なる阿倍(アベ)の市道(イチヾ)に逢(アヒ)し兒等(コラ)はも、神名式に、駿河國益頭郡燒津神社〈今も燒津村と云あり、また野燒村と云もあり、野脇ともいふ、〉和名抄に、同國益頭〈末志豆〉郡益頭〈万之都〉郷と見え、かの風土記にも麻賤郡など書れど、益津は音を取れる字にて、即燒津なり、〈此事谷川氏も云りき、頭字音を取れゝば、益もヤクの音を轉じてヤキに用ひたるなり、然るを麻志豆としも云は、やゝ後に燒と云ことを忌惡みて、其字の訓に唱へ更たる物なるべし、然る例他にもあるなり、〉

有度郡

〔駿河國新風土記〕

〈一〉

p.0620 郡名考　有渡郡　万葉集有度ニ作リ、風土記烏渡ニ作リ、和名抄延喜式有度ニ作リ、今有渡ト書ス、中古ヨリ同ジ、万葉集〈二十〉有度郡牛麿ト云名アリ、コノ國人ナリ、風土記ニ、有度清水、有度采女、藪子陵アリ、有度山アリ、中古ノ歌ニ有度濱トヨム、皆此ナリ、其有度テフ語意ハ、有ハ借字ニテ、ウウノ約リテウトナリ、度ハ所(ト)ノ意ニテ、植所(ウト)ノ義ナリ、植トハ稻苗ヲ植ル所ト云意ナリ、其有度ノ里トサス所、今ノ有東村成ベシ、

〔駿河隨筆〕

〈上〈大〉〉

p.0620 有渡郡　烏渡　九十村　南海際ヲ限、北自二丸子左渡一宇津山際ヲ限、東府中呉服町一町目二町目境、南側江尻橋際ヲ限、西宇津、山際ヲ限、

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.0620 天平勝寶七歳乙未二月、相替遣筑紫諸國防人等歌、　美豆等利乃(ミヅトリノ)、多知能已蘇伎爾(タチノイソギニ)、父母爾(チヽハヽニ)、毛能波須價爾氐(モノハズケニテ)、已麻叙久夜志伎(イマゾクヤシキ)、　右一首、上丁有度郡牛麿、

安倍郡

〔駿河國新風土記〕

〈一〉

p.0620 郡名考　安倍郡　古事記阿倍ト書キ、書紀同ジ、類聚國史ニ安倍、風土記并民部省圖帳安兵ト書ス、今安倍ノ文字ニ隨フ、中古ヨリ同ジ、〈◯中略〉此地、中ムカシヨリ二ツニ分レテ、東ノ方ヲ安東ト云、西ヲ安西ト云テ二郷トハナレルナリ、スベテ大郷ニテ、此アタリノ大名ナレバ、郡ノ名ニモ及ビシ成ベシ、又昔武治河命ノ子孫ノ、知ラシヽ所ノカギリノ郡名ト成ルニモアランカ、安東安西ハ總テ府ノ東西ニテ、中古ノ書ニモ數多出タル地名ナリ、

〔駿河隨筆〕

〈上〈中〉〉

p.0620 安倍郡　安辨　百十一村　南府中呉服町ヲ限、北江尻能島ヲ限、西信濃境ヲ限、東横内川流ヲ限、

廬原郡

〔駿河國新風土記〕

〈一〉

p.0621 郡の事　廬原郡　後世或作二庵原一、廬原は浮島原に對へての名なり、古浮島原は、渺茫たる野原にして、人の家居すべき所なし、此郡浮島が原に隣りて家居多かりければ名付けるならむ、廬は民の家を云、原は廣く平らかなる義なり、舊事紀有二廬原國一、廬原、安倍、有度、志太、益頭五郡を合せての名なるべし、何れの御世よりか廬原の國を駿河の國に合せて、駿河は一國の大號となり、廬原は降て郡の名となれり、

〔駿河隨筆〕

〈上〈大〉〉

p.0621 庵原郡　伊穗原　七十九村　東富士川ヲ限、西江尻能島ヲ限、南海ヲ限、北甲州山ヲ限、

〔續日本紀〕

〈十八孝謙〉

p.0621 天平勝寶二年三月戊戌、駿河國守從五位下楢原造東人等、於二部内廬原郡多胡浦濱一獲二黄金一獻レ之、〈練金一分、沙金一分、〉於レ是東人等賜二勤臣姓一、

富士郡

〔駿河國新風土記〕

〈一〉

p.0621 郡名考　富士郡　書紀不盡川ト書、万葉不二ト書ス、和名抄以下富士ニ作ル、本朝文粹都良香富士山記ニ、古考傳云、山名富士、取二郡名一、山有レ神、名二淺間大神一トアルハ、本末ノタガヒニテ、コノ山ヨリ郡ノ名トモナレルナリ、

〔駿河隨筆〕

〈上〈中〉〉

p.0621 富士郡　百村　東原ノ驛ヲ限、西富士川ヲ限、南海ヲ限、北富士山ヲ限、

駿河郡

〔駿河國新風土記〕

〈一〉

p.0621 郡の事　駿東郡(○○○)　古駿河郡(○○○○)とす、享保年間、官より命じ玉ひて駿東郡と改む、舊事紀に駿河國と云へるは、本郡と富士郡とを合せての名なるべし、後廬原國を併せて、駿河と云名は一國の大號となりて各郡を置玉ひしとき、此郡に舊名を殘せしなるべし、

〔駿河隨筆〕

〈上〈大〉〉

p.0622 駿東郡　駿河　百五十村　東伊豆國ヲ限、西富士郡ヲ限、南沼津ノ驛ヲ限、北山ヲ限、

〔續日本紀〕

〈四十桓武〉

p.0622 延暦十年四月戊申、駿河國駿河郡(○○○)大領正六位上金刺舍人廣名爲二國造一、

〔駿河國新風土記〕

〈二提要〉

p.0622 郷庄〈◯中略〉　此國ノ庄名、古書ニ出タル事左ノ如シ、〈◯中略〉　走湯山所藏、嘉元二年文書、駿河國金持庄、〈駿東郡(○○○)〉

郷

〔倭名類聚抄〕

〈六國郡〉

p.0622 駿河國　志太郡　大長　大津　葦原〈◯葦高山寺本作レ英〉餘能　刑部　英原　夜梨　大野　益頭部　西刀〈世止〉　澤食〈（食高山寺本作レ會）佐波比〉朝夷〈安佐比奈〉飽波〈阿久奈美、在二上下一、〉八田〈也太〉物部〈毛乃乃倍〉益頭〈萬之都〉高楊〈多加也奈木〉小河　新居〈爾比井〉　有度郡　内屋〈宇都乃也〉眞壁〈萬加倍〉他田〈乎佐多〉新居〈爾比井〉託美〈多久美〉嘗美〈奈女美〉會星〈安布保之〉　安倍郡　川邊〈加波乃倍〉埴生〈反布〉廣伴〈比呂止毛〉葛間〈加都良萬〉美和　川津〈加波都〉八祐〈也介之〉横太〈與古太〉　廬原郡　西奈〈世奈〉大井〈於保井〉河名〈加波奈〉廬原〈伊保波良〉蒲原〈加無波良〉息津〈於木都〉　富士郡　島田〈之萬多◯高山寺本、島作レ鳥、無二之萬多訓一、〉小坂〈乎佐加〉古家〈布留伊倍〉蒲原　驛家　大井〈於保井〉久貳〈久爾〉　姫名〈比奈〉　神戸　駿河郡　柏原〈加之波波良〉矢集〈也都女〉子松〈古萬都〉古家〈布留以倍〉玉造〈多萬都久里〉横走〈與古波之里〉駿河　山埼〈也萬左木〉宍人〈之々比止〉永倉〈奈加久良〉宇良

〔集古文書〕

〈四十二寄附状〉

p.0622 北條時頼寄進状〈伊豆國熱海走湯山東明寺藏〉　寄進　走湯山寺領事　駿河國伊賀留美郷(○○○○○)内水田伍町　右爲二天下泰平一、爲二息災安穩一、以彼田地所令二寄進一也、早停二止郷司地頭一沙汰爲一圓不輸之地一、限二永代一可レ爲二當山御領一之状如レ件、　

p.0623 寛元五年二月十六日　左近將監平朝臣〈花押〉　延慶四年寄進状〈相模國鎌倉鶴岡八幡宮藏〉　寄進　駿河國池田郷(○○○)内田畠屋敷〈注文在二別紙一〉事　右爲二鶴岡八幡宮毎季大般若經轉讀料所一、寄進状如レ件、　延慶四年正月十九日　沙彌〈花押〉

〔富士文書〕

〈乾〉

p.0623 駿河國下島郷(○○○)地頭職、所レ被レ寄二附當宮一也、知行者天氣如レ此、悉之以レ状、　元弘三年九月三日　左少辨〈花押◯中御門宣明〉　富士大宮司館

〔三島神社文書〕

〈乾〉

p.0623 奉寄　三島大明神　駿河國土加利郷(○○○○)内、田參町、畠壹町事、　右奉レ寄、如レ件、　建武元年二月九日　左兵衞督源朝臣〈花押◯足利尊氏〉

〔小早川什書〕

〈六〉

p.0623 駿河國安部郷(○○○)内、殿岡七郞入道跡事、爲二闕所一之由望申之間、爲二相模國北成田郷、波多野郷之内、阿曾沼下野權守〈◯朝綱〉跡替一、暫所レ被二預置一也、自二將軍家一被二仰下一之程、可レ被二所務一由候、仍執達如レ件、　建武三年十月十日　家長〈花押◯斯波〉　小早河左衞門五郞入道殿

〔和簡禮經〕

〈上〉

p.0623 曾我奧太郞時助申、駿河國沼津郷(○○○)〈工藤右衞門尉跡〉事、任二去二月八日御下文之旨一、可レ被二沙汰付一之状、依レ仰執達如レ件、　建武三年十月十五日　武藏權守〈◯高師直〉在判　

p.0624 少輔四郞入道殿

〔蠹簡集殘編〕

〈二〉

p.0624 駿河國香貫郷(○○○)正税四分壹事、爲二井伊城責兵粮一、所二宛行一之状如レ件、　建武五年三月廿七日　花押〈◯今川範國〉　松井八郞殿〈◯助宗〉

〔實相寺文書〕

p.0624 駿河國岩本郷(○○○)内實相寺寺務職事　右法東侍者禪師爲職、任二先例一可レ令二管領一之状、國宣如レ件、　建武五年六月廿七日　花押〈◯今川範國〉

〔集古文書〕

〈十五判物〉

p.0624 延文三年判物〈伊豆國熱海走湯山東明寺藏〉　走湯山領駿河國中田保西島郷(○○○)等事、依二安部凶徒蜂起一、雖レ預二軍勢等一、如レ元所二返付一也、任二先例一可レ被レ致二沙汰一之状如レ件、　延文三年十二月廿六日　前上總介〈花押〉　當所預所

〔駿陽徴古〕

〈一〉

p.0624 寶樹院領駿河國内尾郷(○○○)佛光寺田、并番匠洽同大岩郷(○○○)内〈等持院殿御寄進〉紺免、同下島道場田〈慶壽寺被二寄進一〉井宮、同上足洗内壹名〈長慶寺被二寄進一、木作跡、〉瀬宮、〈今林寺被二寄進一〉并馬淵御堂屋敷貳段、向笠文太夫知行内壹町、當府内寺中屋敷、同玉屋屋舖等事、　右依二此等證文等事〈文安元甲子二月七日〉寺家炎上一、悉令二紛失一畢、雖レ然住當知行之旨、領掌不レ可レ有二相違一者也者、守二先例一可レ被レ全二寺家執務之状如レ件、　文安元年三月廿七日　前上總介〈在判〉

〔駿陽徴古〕

〈三〉

p.0624 駿河國下方内大塚郷(○○○)稚村太郞左衞門尉爲久名主職〈此内、神尾右京亮讓分共、〉并新屋名等之事、　右代々證文、近日逢二盜賊一失却之候、縱從二他之手一雖レ出レ之、不レ可レ有二許容一、兼又親類割分事、於レ令二同心一者、可

p.0625 レ爲レ如二前々一、至三于有二異儀一者、爲久宜レ然可二相計一、定納年貢納一門以下等者、可レ爲レ如二年來一之状如レ件、　大永八〈戊子〉年八月七日　五郞〈花押〉　稚村太郞左衞門尉殿

〔久住文書〕

p.0625 口野郷(○○○)之内、江浦へ著岸伊勢船之儀、其外雖レ爲二小舟一、於二諸商賣一不レ可レ有二横合一、并問屋之儀も申付上、代官かたへ禮等之儀者、可レ爲レ如レ前候、但於二有役者一、此方へ可レ致二沙汰一、若依二打鐵錠一者、代物以二貳拾疋一可レ致二浦祭一、此上代官百姓、若有二兎角儀一者、爲二先彼判形一可二相斷一之状如レ件、　弘治三〈丁巳〉三月廿四日　氏元〈花押〉　楠見善左衞門尉殿

〔清水寺文書〕

p.0625 於二稻葉郷(○○○)内清水寺一、毎年正月十七日七月十七日兩度、新町可二相立一事、　一商人諸商買不レ可レ有レ役事　一押買狼藉之事　一喧嘩口論事　右條々、於二違犯之輩一者、急度可レ加二成敗一者也、仍如レ件　永祿四年六月朔日　清水寺衆徒中

〔駿陽徴古〕

〈一〉

p.0625 駿河國椎尾増善寺境内門前田畠、并諸塔頭諸末寺光雲寺領壹町四段半畠貳枚、上島郷(○○○)内浮免貳町、同段錢六貫文、字名郷地頭方、〈岡部左馬允分、拾貫文、〉賀島内蓮光寺分〈米百貳拾俵餘、代五貫文、〉小杉米六拾六俵半等之事、　右寺領所々、任二代々判形之旨一、如二宗滴和尚讓状一令二領掌一畢、〈◯中略〉守二先例一可レ被二執務一之状如レ件、　永祿八乙丑年十一月七日　上總介〈花押〉　増善寺宗佐和尚

〔駿陽徴古〕

〈一〉

p.0625 駿河國太平之郷(○○○○)臥雲庵領之事　合八貫五百文者　

p.0626 右爲二天澤寺殿御靈供一寄進申候、寺家山林、并門前棟別轉役課役如二前々一免除之、不レ可レ有二相違一者也、仍如レ件、　元龜三年壬申二月廿二日　氏眞〈花押〉　大輝和尚　定　阿野庄之内、赤野山青野郷(○○○)淺間并足高明神別當職之事、如二前々一被二仰付一畢、然者神前之諸役等、如二舊規一不レ可レ有二怠慢一者也、仍如レ件、　元龜三年壬申五月十四日〈在判〉　市川宮内助奉レ之　定　瀬名郷(○○○)内利倉宮事、自二前々一拘來之上者、自今以後、彌不レ可レ有二御相違一、去宮中造立祭祀等、無二怠慢一可レ令二懃仕一之旨、所レ被二仰出一也、仍如レ件、　天正四丙子年二月十六日〈在判〉　跡部大炊助奉之　奈吾屋大夫

〔渡井文書〕

p.0626 布澤之郷(○○○○)小屋之者、何も赦免候間、爲二先印判一可レ被二申付一候、軍勢甲乙人、彼男女ニ手指候者、可レ處二嚴科一者也、仍如レ件、　三月六日(壬午)〈北條氏虎朱印〉　垪和伯耆守〈奉之〉　源五郞殿

村里/名邑

〔駿河國志〕

p.0626 郡數七郡　村數三百四ケ村　内貳百九拾三ケ村　御代官所　拾壹ケ村　御預リ所

〔郡名一覽〕

p.0626 一駿河國(御料私領)〈駿州　東西二日半〉　七郡　

p.0627 高貳拾三万七千八百三拾七石四斗七合貳勺八才　七百九拾五ケ村　●府中御城〈四十五里〉　●田中〈四十八里〉　●沼津〈廿九里半〉　○小島〈四十三里半〉　 久能〈四十二里榊原越中守〉　＜府中紺屋町〈四十五里〉　＜島田〈出張五十里〉　＜松岡〈同上卅八里〉　＜三島〈同上廿八里〉　◯按ズルニ、本書ノ符號ハ、山城國篇村里條ニ引ク所ノ、本書ノ凡例ヲ參照スベシ、

〔郡國提要〕

p.0627 駿河　七郡、七百八十村、　高二十五万五百三十八石七斗五升三合九才(御料私領)　志太郡百二十六村　益津郡三十二村　安倍郡百二十三村　庵原郡八十二村　富士郡百四十八村　駿東郡百七十一村　有度郡九十九村

〔地勢提要〕

〈坤〉

p.0627 郡邑島嶼奇名　駿河　有渡(ウト)郡、安古(アコ)村、用宗(モチム子)村、有東坂(ウトウサカ)村、富士郡、神戸(ガウト)村、駿東郡、新芝(アラシハ)村、仁杉(ヒトスギ)村、北久原(ホクハラ)村、深良(フカラ)村、芝穗田(シハスタ)村、

莊

〔駿河國新風土記〕

〈二提要〉

p.0627 郷庄　庄號ハ國中ノ各村ニアルニアラズ、臣下ニ賜フ所ニノミアリテ、公田ノ所ニハ庄名ナシ、此國ノ庄名、古書ニ出タル事左ノ如シ、　東鑑ニ出タル庄名　服織庄、八條院御領、〈安部郡ナリ〉　益津庄、圓勝寺領トモ鶴岡神宮寺領トモ、〈益津郡ナリ〉　蒲原庄、庵原郡ナリ、　大岡庄、駿河郡ナリ、　太平記ニ、駿河國入江庄、〈有渡郡〉　走湯山所藏嘉元二年文書、駿河國金持庄、〈駿東郡〉　永正年古文書、國界庄、〈同郡ナリ、此庄名不レ審、地名所々ニ論ズ、〉　曾我物語、富士郡松風庄、今詳ナラズ、　古書ニ出タル所コレラナリ、中古ノ文書、棟札、鐘名ナドニアルモノ、多クハ不審ナルノミアリ、元祿年間ノ高附帳ニシルシタル庄名、　安部郡服織庄〈一郡スベテ服織庄ト云、何ヨリイヅレナルコト未レ詳、安部山中ニ玉川庄ト云村アレド、古ニ證トスベキ者ナシ、俗稱ナルベシ、〉　有渡郡長田庄、〈古ノ郷名ナリ、長田或ハ中田ニ作ルモノアリ、同ジ所ナリ、一郡コノ庄名ヲ稱ス、〉　志太郡大津庄、〈古ノ郷名ナリ、又御厨ノ名ナリ、庄トイ〉

p.0628 〈フコト古書ニハ見ヘズ、〉　葉梨庄、風土記ノ郷名ナリ、前ニ同ジ、　前島庄、中古ノ驛ノ名ニアリ、前ニ同ジ、　益津郡益津庄、東鑑ニ出タルニ同ジ、　廬原郡蒲原庄、同、　高部庄、下方庄、此庄名、北條五代記ニモミヘタリ、　須津庄、　駿東郡鮎澤庄、本邦竹下村鮎澤川アリ、　小泉庄、泉六ケ村ト稱ス、　金持庄、前ニ出、　大岡庄、同、　阿野庄〈阿野栗禪師公曉モ、コノ所ニ住テ、阿野ヲ以テ稱ス、〉　上件ノ外ニ改選系譜、松平伊賀守忠晴、寛永十九年九月、賜二駿河國志太郡御厨庄田中城三万石一トアルハ、外ニ見ヘヌ庄名ナリ、此御厨ト云ハ、イヅレノ御厨ノナマリナリケン、若クハ小楊津御厨ノウチナリシヤ、

〔吾妻鏡〕

〈三〉

p.0628 壽永三年〈◯元暦元年〉四月六日甲戌、池前大納言、并室家之領等者載二平氏沒官領注文一、自二公家一被レ下云云、而爲レ酬二故池禪尼恩徳一申二宥彼亞相勅勘一之上、以二彼家領三十四箇所一、如レ元可レ爲二彼家管領一之旨、昨日有二其沙汰一令レ辭レ之給、〈◯中略〉　池大納言沙汰〈◯中略〉　大岡庄(○○○)〈駿河◯中略〉　右庄園拾七箇所、載二沒官注文一、自二於院一所二給預一也、然而如レ元爲二彼家沙汰一爲レ有二知行一、勤状如レ件、　壽永三年四月五日　池大納言家沙汰〈◯中略〉　服織庄(○○○)〈駿河◯中略〉　已上、八條院御領、〈◯中略〉　右庄園拾陸箇所注文如レ此、任二本所之沙汰一、彼家如レ元爲レ有二知行一、勤状如レ件、　壽永三年四月六日

〔吾妻鏡〕

〈八〉

p.0628 文治四年七月廿八日壬戌　式部大夫親俊募二武威一貪二他人領所一、抑二留乃貢之間、雖レ預勅問一失二陳謝一之由、依二其讒出來一、二品令レ尋二親能許一給之處、不レ能二委細言上一、只去六月已捧レ状訖、案文獻二上之一、若此事候歟之由申レ之、此由訴レ之歟之由、二品令レ感給云云、　謹請　院宣二箇條事　一駿河國蒲原御庄(○○○○)御年貢事　

p.0629 右件御庄、大外記師尚依二相親一令二訛付一之間、以二内儀一令レ致二沙汰一之處、文治元二年者、令二究濟一預二返抄一畢、可レ被レ召二尋彼師尚朝臣一、歟、去年分、去四月令二積載一令レ解レ纜畢〈◯中略〉　文治四年六月十一日　散位藤原朝臣親能

〔吾妻鏡〕

〈十九〉

p.0629 承元三年十一月八日戊戌、鶴岡神宮寺可レ奉二常燈一之由被二仰下一、以二駿河國益頭庄(○○○)乃貢一、可レ爲二彼燈油一之由、被レ仰二相州一云云、

〔白河文書〕

p.0629 駿河國須津莊(○○○)内須津河郷事、不レ可レ混二總莊一之上者、可レ被二全知行一者、天氣如レ此、悉之以レ状、　建武元年八月十一日　宮内卿〈◯中御門經季〉在判　結城上野入道〈◯宗廣〉館

〔蠹簡集殘編〕

〈一〉

p.0629 駿河國葉梨莊(○○○)内田地壹町、并屋敷壹所地頭代職事、守二先例一、可レ令二知行一之状如レ件、　建武五年正月二日　花押〈◯今川範國〉　松井兵庫允殿

〔梅花無盡藏〕

〈一〉

p.0629 里槃脚上方始對談〈二十日黎明、出二袖浦一、午時入二葉梨庄一、日遣二山槃脚寺一、前夕舟子迷レ津、艤レ岸移レ刻、小河大船多、而道路甚汚穢、無二可レ投レ脚之地一、◯詩略〉

〔駿陽徴古〕

〈二〉

p.0629 定　駿州阿野庄(○○○)之内眞如寺之事、從二法性院殿一被二懸置一候之上者、自今以後、彌不レ可レ有二相違一候之條、修造已下、無二怠慢一様、可レ被レ加二尊意一儀肝要候、恐惶敬白、　元龜四年〈癸酉〉八月廿七日　勝頼〈花押〉　拜進　長禪寺侍衣閣下

藩封

〔慶應元年武鑑〕

p.0629 水野出羽守忠誠(帝鑑間　朝散大夫)　五万石　居城駿州駿東郡沼津〈江戸ヨリ三十九里半　當城者、天正七己卯年、武田勝頼使二其臣高坂源五郞築一レ之、其后同九辛巳年、松平周防守康重、慶長六辛丑年、大久保次右衞門尉忠佐居、同十九甲寅、廢城、安永六丁酉年、依二台命一、水野出羽守忠友築城、以後領レ之、◯節略〉

〔慶應元年武鑑〕

p.0630 本多紀伊守正訥(雁間　朝散大夫)　四万石　居城駿州益津郡田中〈江戸ヨリ四十八里　慶長十五、御番城、寛永二駿河大納言忠長卿持、同八、松平大膳亮忠重、同十二、水野監物忠喜、同十九、松平伊賀守忠晴、正保元、北條出羽守氏重、慶安二、西尾丹後守忠照、同隱岐守忠成、延寶七、酒井日向守忠能、同九、土屋相模守政直、貞享五、太田攝津守資直、同熊次郞資重、寶永二、内藤豐前守式信、正徳二、土岐伊豫守頼殷、同丹後守頼稔、亨保十五ヨリ本多伯耆守正矩、以後領レ之、〉　松平丹後守(菊之間　朝散大夫)　一万石　在所駿州庵原郡小島〈江戸ヨリ四十三里半　元祿年中ヨリ松平氏代々領レ之◯節略〉

田數/石高

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.0630 駿河國〈◯註略〉管七〈田九千六十三町二段百六十五歩〉

〔伊呂波字類抄〕

〈須國郡〉

p.0630 駿河國〈管七◯中略〉　本田九千七百九十七町

〔海東諸國記〕

p.0630 駿河州　郡七、水田九千七百十七町、

〔官中秘策〕

〈二〉

p.0630 駿河國　七郡〈◯中略〉　一石高貳拾三万七千九百三拾七石餘

〔駿河國志〕

p.0630 駿河國總高合貳拾四万六千八百七十四石四斗壹升四合四勺貳才　内譯　高壹万九千八百五拾五石四斗七升七合五勺　安部郡　高三万六千壹石八斗五合五勺五才　有渡郡　高貳万千七百七拾壹石七斗七升六勺　庵原郡　高四万八千貳百五拾七石三斗九升壹合三勺　富士郡　高五万五千三拾八石三斗五升　志太郡　高壹万千八百四拾七石七斗四升三合　益津郡　高四万九千六百六拾四石八斗六升三合　駿東郡

〔吹塵録〕

〈五人口及國高〉

p.0630 天保度御國高調〈◯中略〉　

p.0631 駿河國〈御料私領〉　一高貳拾五万五百三拾八石七斗五升三合九勺

出擧稻

〔延喜式〕

〈二十六主税〉

p.0631 諸國出擧正税公廨雜稻　駿河國、正税廿三万束、公廨廿五万束、國分寺料二万束、大安寺料四万一千束、藥師寺料八千束、文珠會料二千束、修理池溝料三万束、救急料六万束、俘囚料二百束、官牧牛直一千三百卅四束、

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.0631 東海道〈◯中略〉　駿河國〈◯註略〉管七〈（中略）正公各二十八萬束、本稻五十八萬二千二百六十束、雜稻三萬三千二百六十束、〉　◯按ズルニ、此書ノ記スル所、頗ル延喜式ト合ハズ、而シテ遠江國ノ稻數ト相同ジ、其遠江國ノ條ト相混ジテ錯誤ヲ致シヽヤ必セリ、

〔東大寺正倉院文書〕

〈十八〉

p.0631 駿河國正税帳　志太郡、天平九年定穀參萬伍仟伍伯參拾陸斛肆斗捌升、〈振入三千二百卅斛五斗九升、斛別入一斗、〉　定參萬貳阡參伯伍斛捌斗玖升〈◯中略〉　益頭郡(○○○)天平九年定穀萬肆阡伍伯壹拾參斛陸斗、〈振入四千卌六斛六斗九升、斛別入一斗、〉　定肆萬肆伯陸拾陸斛玖斗壹升〈◯中略〉　安部郡(○○○)、天平九年定穀伍萬玖阡陸伯肆拾伍斛參斗貳升、〈振入五千四百廿二斛三斗、斛別入一斗、〉　定伍萬阡貳伯貳拾參斛貳升〈◯下略〉

國産/貢獻

〔延喜式〕

〈二十三民部〉

p.0631 年料別納租穀〈◯中略〉　駿河國〈三千五百石◯中略〉　年料別貢雜物〈◯中略〉　駿河國〈筆一百管、零羊角四具、◯中略〉　諸國貢蘇番次〈◯中略〉　駿河國十二壺〈四口各大一升、八口各小一升、◯中略〉　右八箇國爲二第一番一〈丑未年◯中略〉　交易雜物〈◯中略〉　駿河國〈絹二百疋、商布二千一百段、段別長二丈六尺、鹿革卌張、樽二合、〉

〔延喜式〕

〈二十四主計〉

p.0631 駿河〈◯中略〉　右十一國麁絲〈◯中略〉　駿河〈◯中略〉　右十國輸レ絁〈◯中略〉　

p.0632 駿河國〈行程、上十八日、下九日〉　調、一窠綾六疋、二窠綾五疋、三窠綾四疋、小鸚鵡綾一疋、薔薇綾三疋、帛一百廿疋、橡帛十三疋、橡帛八疋、皂帛十疋、倭文卅一端、煮堅魚二千一百卅斤十三兩、堅魚二千四百十二斤、自餘輸レ絁、庸、白木韓櫃廿合、自餘輸レ布、　中男作物、手綱鮨卅九斤十三兩二分、紙、紅花、火乾年魚、煮鹽年魚、堅魚、煎汁堅魚、

〔延喜式〕

〈三十四木工〉

p.0632 諸國所レ進雜物〈◯中略〉　商布七百六十二段〈三千七百九十二段内、配二修理職一之遺、〉　駿河國七百段、下野國六十二段、

〔延喜式〕

〈三十七典藥〉

p.0632 諸國進年料雜藥〈◯中略〉　駿河國十七種　桔梗廿斤、白、朮十兩、木斛、橘皮各五斤、伏苓、防風、夜干、防己各十斤、桑螵蛸五兩、暑預、附子、蜀椒各二斗、麥門冬、決明子各五升、桃人一斗、亭藶子二升、零羊角四具、

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0632 駿河　安倍川紙子(カミコ)　久野蜜柑　三穗松露　富士苔〈山中谷川ニ有レ之〉　黄芪(ワウギ)　香爐灰　大井川萸　瀬戸染飯　宇都山十團子　善徳寺酢　澳津鯛　同白砂干　神原鮎鮫

〔駿府志略〕

p.0632 物産　漆器、磁器、白銅器、竹絲籃屬、府人製レ之、楮紙、椏紙、出二于安倍諸邑一、牡丹、芍藥、桂蘭、石斛、萬年青屬、出二于龍爪一、葡萄石出二于横澤一、馬蹄石出二于藁科一、蜃灰出二于三尾一、龜甲、緜布、出二于八幡一、青鮫魚皮、出二于藤枝一、葛根、獨活、山藥、出二于宇都谷一、伏苓出二于廬原諸山一、沙糖以二三尾一爲レ最、茶以二蘆窪一爲レ最、　蜜柑出二于小坂朝夷一、梅子出二于西谷内牧一、松蕈出二于建穗雄鹿一、乾苔、松露、蕃薯、甘瓜屬、出二于三尾一、薯蕷出二于蘆窪丸子一、香菰出二于安倍山中一、芹菜出二于稻川一、牛房出二于松野一、蔓菁出二于大内一、萊菔出二于雄鹿江尻一、　 菜出二有東木溪一者爲レ最、蔊田布二細石於淺水中一、種二蔊其間一、蓋惡二淤氣一也、石蟹好食レ之、故往往有二蟹荒一、　鳬、雁、鷺鶿、鯉魚、鯽魚、圓魚、饅鱺屬、出二于麻機鯨池一、溪鰛出二于安倍藁科朝夷興津諸水一、鰒魚出二于石部一、奇

p.0633 鬣黄穡、松魚、蠓魚、鱸魚、鯵魚、河豚、華臍烏賊龍蝦、海參、牡蠣屬、出二于清水城腰一、　棘鬣魚餻、謂二之半平一、忠長寵臣戸田半平始製、因以名レ之、至レ今其法精二於佗方一、半平或作二鱧餅一、音訛也、興津鯛、即乾黄穡魚也、炙煮皆宜、烈祖之在二駿城一、興津河内屢進レ之、因賜レ名、　角粽、朝夷郷人、以二山茶灰汁一製レ之、邑如二琥珀一、數月不レ變、佳品也、

〔續日本紀〕

〈五元明〉

p.0633 和銅五年七月壬午、令二〈◯中略〉駿川〈◯中略〉讃岐等二十一國一、始織二綾錦一、

人口

〔官中秘策〕

〈二〉

p.0633 駿河國　七郡〈◯中略〉　一人數三拾三万三千八百拾九人　内〈拾六万千三百八拾八人　男　拾五万貳千四百三拾壹人　女〉

〔吹塵録〕

〈五人口及國高〉

p.0633 諸國人數調〈◯中略〉(文化元甲子年)　一人數貳拾五万貳千七拾貳人(御料私領)　駿河國(高貳拾三万七千八百三拾七石餘)　内〈拾三万千百三拾人　男　拾貳万九百四拾貳人　女◯中略〉　諸國人數調〈◯中略〉(弘化三丙午年)　一人數貳拾八万六千貳百九拾人(御料私領)　駿河國(高貳拾五万五百三拾八石餘)　内〈拾四万六千八百五拾四人　男　拾三万九千四百三拾六人　女〉

風俗

〔人國記〕

p.0633 駿河國　駿河國之風俗、遠州ニ替リ、人ノ氣狹ク、而モ實寡シ、然ドモ氣狹キガ故ニ、伸ル心スクナク、氣ノ屈スル時ハ取ナヲス事ナラズ而、命ヲ終ルモノ時々成故ニ、思ヒ詰タル時ハ、氣一和スル故ニ、片クヘナキ所有、雖レ然常ニ諂フ事ナク而、毎物ニ氣ヲ付、思慮深クシテ、ヌキンズル者スクナク、人ニ從フ心大分有テ、義ヲ思ヒ詰テ立ル人ハ小分也、都而イケン多ク而、吾ハ人ヲ誹リ、人ハ吾ヲイヤシム、風儀更ニシマリナキ國ナリ、去ルニ因テ一國一和スルトイヘドモ、一郡一庄一郷ニ氣質之公成人希ニ而慾深シ、是國ヲ靜メン事、舊惡ヲ不レ數而、其悔ル處之事ヲ不レ糺其勢ヲ高ク振フ時ハ、心

p.0634 氣トロケテ旗ヲ卷クコト、日ヲ不レ可レ期也、

名所

〔日本鹿子〕

〈五〉

p.0634 駿河國名所舊跡之部　岡部　丸子と藤枝との間也、宿の名なり、〈◯中略〉　宇津の山　岡部と丸子の宿との間也、けはしき坂也、宇津の谷とも云、業平の朝臣、東に下りし時、此所にてす行者に都に言傳しけんといふも此所なり、〈◯歌略〉　蔦の細道　宇津の山のうちをいふなり〈◯歌略〉　木枯の森　府中と丸子との間に川あり、安部川と云、此水上に此木村あり、〈◯中略〉　清見潟　清見寺　沖津の宿近邊なり、寺は山かげ也、北は山、南は海也、清見が關といふは所寺の門前なり、〈◯歌略〉　清見がたより一里餘有りて、江尻といふ宿あり、三保より汐入の川一里西に有レ之、舟にて三保へは川をさし出るなり、無雙の景地也、　三保の浦　同崎　同松原　同入海　西より東へ一里計海中へ出たる松原也、南は江尻につヾきたり、清見がたより三保は南也、入海の上一里あり、富士も三保よりはよく見えたり、言語につくしがたき景地也、入江より東の沖になりては、伊豆の海のうち也、〈◯歌略〉　奧津の里　同川　海際也、北はさつた山といふ山あり、清見よりちかし、川は北より南へ流出たり、〈◯歌略〉　富士山　富士のすがたは、北へ遠く足をはりて、南西はけんそに見えたり、さるによりて、遠江より駿河の宇津の山にて見るまでも、山のなりは同じ様なり、清みがたを過て神原を行々見れば、丑寅にあたりてけんそに見ゆるなり、〈◯中略〉　田子の浦　富士は川より少東也、岩本へ五十町ばかり也、かん原よりは東也、三保の入江よりう

p.0635 き島がはら傳の浦をしなべて、田子の浦と總名に云なり、清見奧津などそのうちの小名也、〈◯歌略〉　足高山　富士より東にあり、此山は唐土の山となり、富士に岳くらべせんとて日本え來るを、足柄の明神けくづさせ給ひて、富士よりひきしと云へり、駿河の沖に浪のごとくにて有りけるを、神力を以今うき島が原と成しヽと云々、子細ありてことのよし、むかし鎌倉へ下るには、ふじと足高山との間を、足柄ごえとてくだりしとなり、　浮島が原　東西三十里也、但し六町を一里とすと云へり、富士より南也、富士と此原との間は水海也、京より南は大海也、ふじ川より東に見付といふ所あり、爰より次を浮島が原といふとなり、〈◯歌略〉

雜載

〔延喜式〕

〈二十八兵部〉

p.0635 諸國健兒〈◯中略〉　駿河國五十人〈◯中略〉　諸國器仗〈◯中略〉　駿河國〈甲三領、横刀七口、弓卌張、征箭卌具、胡簶卌具、〉

〔吾妻鏡〕

〈六〉

p.0635 文治二年三月十三日辛卯、關東御分國々乃貢、日者依二朝敵征伐事一、頗懈緩、然者被レ免二以前分一、自二今年一可二合期沙汰一之由、所レ被レ申二京都一也、　諸國濟物事、治承四年亂以後、至二于文治元年一、世間不二落居一、〈◯中略〉頼朝知行國々、相模、武藏、伊豆、駿河、上總、下總、信濃、越後、豐後等也、〈◯中略〉　三月十三日　頼朝　進上帥中納言殿

〔萬葉集〕

〈十四東歌〉

p.0635 相聞　安麻乃波良(アマノハラ)、不自能之婆夜麻(フジノシバヤマ)、己能久禮能(コノクレノ)、等伎由都利奈波(トキユツリナバ)、阿波受可母安良牟(アハズカモアラム)、　不盡能禰乃(フジノ子ノ)、伊夜等保奈我伎(イヤトホナガキ)、夜麻治乎毛(ヤマヂヲモ)、伊母我理登倍婆(イモガリトヘバ)、氣爾餘婆受吉奴(ケニヨハズキヌ)、　

p.0636 可須美爲流(カスミスル)、布時能夜麻備爾(フジノヤマビニ)、和我伎奈婆(ワガキナバ)、伊豆知武吉氐加(イヅチムキテカ)、伊毛我奈氣可牟(イモガナゲカム)、　佐奴良久波(サヌラクハ)、多麻乃緒婆可里(タマノヲバカリ)、古布良久波(コフラクハ)、布自能多可禰乃(フジノタカネノ)、奈流佐波能基登(ナルサハノゴト)、　或本歌曰、麻可奈思美(マガナシミ)、奴良久波(ヌラクハ)〈◯波一本无、恐衍、〉思家良久佐(シケラクサ)〈◯佐原脱據二一本一補〉奈良久波(ナラクハ)、伊豆能多可禰能(イヅノタカネノ)、奈流左波奈須與(ナルサハナスヨ)、　一本歌曰、阿敝良久波(アヘラクハ)、多麻能乎思家也(タマノヲシケヤ)、古布良久波(コフラクハ)、布自乃多可禰爾(フジノタカネニ)、布流由伎奈須毛(フルユキナスモ)、　駿河能宇美(スルガノウミ)、於思敝爾於布流(オシヘニオフル)、波麻都豆夜(ハマツヾラ)、伊麻思乎多能美(イマシヲタノミ)、波播爾多我比奴(ハハニタガヒヌ)、　一云、於夜爾多我比奴(オヤニタガヒヌ)、　右五首駿河國歌(○○○○)〈◯中略〉　譬喩歌　斯太能宇良乎(シダノウラヲ)、阿佐許求布禰波(アサコグフネハ)、與志奈之爾(ヨシナシニ)、許求良米可母與(コグラメカモヨ)、奈志許佐流良米(ナシコザルラメ)、　右一首、駿河國歌、