姓名部/名上

p.0583 名ハ彼此ヲ甄別スル所以ニシテ、凡ソ宇宙ノ間ニ在ルモノ、一トシテ名アラザルハナシ、而シテ人ニ在リテハ、姓氏ヲ以テ其族ヲ分チ、名ヲ以テ其人ヲ分ツ、
人ノ始テ生ルヽヤ、之ニ名ヲ命ズ、童名幼名是ナリ、冠 ニ及ビ、改メテ更ニ名ヲ加フ、是ヲ實名ト云ヒ、又名乗(ナノリ)ト云フ、而シテ上古ハ文字ノ音訓ヲ問ハズ、純然タル國語ヲ用イシガ、後ニハ多ク支那ノ熟語ヲ用イルニ至ル、
實名ノ外ニ假名アリ、又喚名(ヨヒﾞナ)ト云フ、此名ハ輩行ヲ以テスルアリ、太郎二郎ノ如シ、加フルニ姓氏ヲ以テスルアリ、善太郎藤二郎ノ如シ、官制ノ大ニ紊ルヽニ及ビテハ、官名ヲ以テ假名トスルアリ、善右衞門藤兵衞ノ如シ、然レドモ女子及僧徒ノ官名ヲ以テ假名トスルコトハ、中世ヨリ起リテ某中納言某少納言ナド云フ、
名ヲ擇ブニ嘉名ヲ以テスルコトハ古ヨリアリ、後世ニハ其字ノ反切ノ吉凶ヲ判シテ之ヲ命ズルアリ、又名ヲ賜フコトモ、古ニ起リテ、別ニ名ヲ命ズルアリ、己ノ偏名ヲ賜フアリ、又父祖ノ名ヲ襲フコトモ古キコトニテ、偏名ヲ用イルト、全名ヲ用イルトノ別アリ、名ノ上ノ一字ヲ累世襲フモノヲ通字ト云フ、
名ヲ避クルコトハ、上古ニハ絶エテ無カリシカド、中世ヨリ起リテ、天皇或ハ皇子皇女、及ビ 外戚大臣ノ爲ニ其姓ヲ改メシコトサヘアリ、後世ニハ又文字ヲ缺畫スルコトアレドモ、儒生輩ノ支那人ニ倣ヒテ、私ニ行ヒシニ起ル、
唐名、又反名ト云フ、蓋シ遣唐使ノ彼土ニ往來セシ時、我方ニテ命ゼシ名ヲ以テ鄙俗ト爲シ、其名ノ字ノ音ニ近キモノ等ヲ以テ、之ニ代ヘシニ起リシナラン、而シテ唐名ニハ其名ノ半分ヲ寫スモノアリ、全分ヲ寫スモノアリ、半分ナルハ、匡房ノ訓マサフサナルヲ、滿昌ノ二字ヲ以テ、マサノ二聲ヲ寫シ、明衡ノアキヒラナルヲ、安蘭ノ二字ヲ以テアラノ二聲ヲ寫セルガ如シ、全分ナルハ、淸行ヲ居逸ト爲シ、忠臣ヲ達音ト爲セルガ如シ、
字ハ、アザナト云フ、古クハ二郎三郎ノ如キ、假名ヲ字ト稱セシガ、中世ニ至リ、大學生ニハ字ヲ命ズルコトアリ、別ニ一箇ノ文字ヲ擇ビ、冠セシムルニ姓ノ一字ヲ以テシタルモノ多シ、德川幕府ノ時ニハ、儒學ノ大ニ行ハルヽニ隨ヒ、文墨ニ從事スルモノハ、名ノ外ニ、字及ビ號ヲ以テシタリ、然レドモ禪僧ノ字、及ビ號ハ、是ヨリ前ニアリ、又俳家ニ俳名アリ、俳優ノ輩ニ藝名アリ、
諡ニハ國風漢風ノ二種アリテ、天皇皇后ニ係レルハ、載テ帝王部ニ在リ、人臣ノ諡ハ、中世ヨリ生前太政大臣タリシモノニ限レルコトニテ、古來數人ニ過ギズ、藤原不比等ガ右大臣ヲ以テシ、藤原師賢ガ權大納言ヲ以テ諡ヲ賜ヒシハ特例ナリ、又剃髪セシモノハ、諡ナキヲ以テ例トス、德川幕府ニ至リテハ、尾張水戸二藩ノ如キハ、私ニ諡ヲ制シ、儒者ニモ門人子弟ノ輩ノ私ニ諡ヲ贈リシモノアリ、而シテ將軍ハ、薨後ニ院號アレド、朝廷ヨリ賜ヒシ所ナレバ、中世ノ諡ニ似タリ、抑院卜ハ同牆アルモノヽ謂ニテ、官廨及ビ浮屠ノ所居ノ稱ナリ、凡ソ天皇脱屣ノ後ノ御所ヲ後院ト稱ス、故ニ天皇ニ諡ヲ上ラヌ世トナリテハ、平生ノ御所號ヲ以テ某院ト稱シ奉リシガ、後ニハ前皇后ニモ院號ヲ上ルコトアリ、是ヲ女院ト稱ス、此類並ニ 帝王部ニ詳ナリ、蓋シ人臣ノ院號ハ、藤原兼家ヲ法興院關白ト稱セシニ起ル、法興院ハ其建ツル所ノ寺ノ名ナリ、後世ニ至リテハ、此ヲ以テ殆ド諡卜爲シ、平人トイヘドモ、死後必ズ之ヲ稱シ、或ハ生前ニ剃髪シテ、其院ト稱スルモノモアリ、
女子ノ名ハ男子ニ異ナリ、某賣(メ)ト云ヒ、某姫(ヒメ)ト云ヒ、某刀自(トシﾞ)ト云ヒ、某子(コ)ト云フ、其尊稱ニハ某前(マヘ)卜云ヒ、某御前(ゴゼン)ト云ヒ、其方(カタ)ト云ヒ、某御方(オンカタ)ト云ヒ、某御(ゴ)ト云フ、後世ハ専ラ假名(カナ)ノ二字トナリテ、對稱ニハ、上ニオノ字ヲ加フ、而シテ女子ハ、中古ニ在リテハ、喚名(ヨビナ)ノミヲ傳へテ、實名ノ明ナラザルモノ多シ、其中ニテ實名ノ傳ハレルハ、多クハ貴女ナレドモ、貴女ニ在リテモ幾モナシ、是レ女子ハ、人ニ對シテ、己ガ名ヲ告ゲザリシニ由レルナラン、
僧ノ名モ、大ニ常人ニ異ナリ、僧トナルトキハ必ズ姓氏ヲ棄テ、從前ノ名ヲ改メテ、二字ヲ用イテ音讀ス、支那人ニ倣ヒシナリ、

名稱

〔伊呂波字類抄〕

〈奈/人事〉

p.0585 名〈ナ ナツク〉

〔段註設文解字〕

〈二上/口〉

p.0585 自命也、〈○註略〉从二口夕一、夕者冥也、冥不二相見一、〈冥幽也〉故㠯レ口自名、〈故从二夕口一會意、武幷切十部、〉

〔運歩色葉集〕

〈那〉

p.0585 名乗(ナノリ) 名(ナ)〈人〉

〔下學集〕

〈下/態藝〉

p.0585 名字(シ) 名乗(ナノリ)〈二字同〉

〔書言字考節用集〕

〈四/人倫〉

p.0585 名(ナ) 名乗(ナノリ)

〔倭訓栞〕

〈前編十九/那〉

p.0585 な 名は生也、成也、春秋説題にも名成也と見えたり、周人多く名は用、字は體を用う、又那摩は名の梵語なるよし、倶舎論に見えたり、日本紀に、字もまたなとよめり、あざなとは訓せず、弘決に、西方風俗、稱レ名爲レ尊、此方風俗、避レ名爲レ敬ともいへり、

〔古事記傳〕

〈三十九〉

p.0585 まづ名は、〈名と云言の本の意は爲(ナリ)、爲とは爲りたるさま狀を云、其は常に爲人(ヒトヽナリ)と云も、爲りたる形狀と云事、又物の形を那埋(ナリ)と云も同意にて、名と云も、もと其物のある狀なり、○中略〉もと其人のある狀〈行狀容貌由縁、其外くさ〴〵、〉を賛稱て、負(ツ)けたる物にて、名を呼は尊みな り、〈其名たとひ賛たる言には非るも、負けたる意は賛たるものなり、故名を呼は尊みなり、然るに漢國にては、人の名を呼を不敬とするは、反の差なり、皇國にても後になりては、人の名を呼を不敬とするは漢のうつりなり、後のならひを以て、古を疑ふことなかれ、〉

〔倭訓栞〕

〈前編十九/那〉

p.0586 なのり 日本紀に稱、又言をよめり、實名をいふ、名を告(ノル)の義也、名告の字、古事記に見ゆ、なのるを體にいふ也、源氏にもなのりする人と見えたり、新千載集に、
九重やちかき守りのまとゐしてなのるを聞ば夜は更にけり、こは時まうしの事也、

〔名字盡〕

p.0586 名乗とは、夫人間の一心、魂の本性也、其ゆへに、是木火土金水の五行に合、名のるもの也、父祖の名乗をかたどるときは、上一字か下の一字を取る、是を通字といへり、

〔貞丈雜記〕

〈二/人名〉

p.0586 一名といふは、名乗の事也、字といふは、常によぶ名の事也、然れども日本には、あざなといふ物なし、唐人にばかりあざ名はある也、今日本にて、何太郎、何次郎、何兵衞、何左衞門、其外百官名の類は、字といふ物にはあらず、是をあざなと心得たる人あるはあやまり也、いにしへ文屋康秀(ブンヤノヤスヒデ)が字は、文琳(ブソリン)といひ、平貞文(サダブン)が字は、平仲(ヘイチウ)、曾禰好忠(ソネノヨシタゞ)が字は、曾丹(ソウタン)といひける由古書にあり、是もたま〳〵の事にて、其比おしなべて、人々字ありしにはあらず、名〈卜〉字のニ〈ッ〉をわけて、くはしく云ふ時は右の如し、後世には、それまでの吟味もなし、名字(ミヤウジ)といふ時は、たヾ人の名の事也とばかり心得べし、物の本を知ざれば、まよふ故記レ之、

〔韻鏡易解大全〕

〈三/頭註〉

p.0586 名字
倭邦間、誤有下氏云二名字一者上、今名字者、例如三史記世家云二孔子名丘字仲尼一、〈巳上〉名與レ字、如レ次當二倭國實名及假名一也、又在家、以二實名一多云二名乗一、故目録云二名乗分別等一也、又如三子孫忌二辟祖父等存日名一、云二之諱一也、如二韓退之諱辨述一矣、倭朝却用二先祖名字一、示レ不レ忘二其恩澤一也、又世有下詩人歌人等、假名實名外、稱二風流號一之輩上、云二之齊名(サイミヤウ)一、又門人稱二先生一、不三敢直穢二其名字一、如二以レ處稱一、儒家呼二周茂叔於濂溪〈川名〉先生一、佛家稱二隋智者於天台〈山名〉大師等一也、或儒稱レ氏、云二程先生等一、釋呼レ德云二淸涼師等一、如レ是等類甚多、或又有二廟號諡號一、又有二 道號戒名等一、若懇切則可レ用二反切等例一、故今云レ等也、

〔人名考〕

p.0587 本朝の人の名、漢字を用ひられしより此かた、或は文字の音を以てしるし、 欝色雄(ウツシコヲ)命など云類なり、後代にて不比等(フヒト)、武智麻呂(ムチマロ)などの類また同じ、或は文字の訓を以てしるし
大彦(オホヒコ)命などいふ類なり、後代にも入鹿(イルカ)、鎌足(カマタリ)などの類またおなじ、
或は文字の音と訓とを以て併せしるし
吉備津彦(キビツヒコ)の類は、上二字は音なり、下二字は訓なり、後の代にも藤原の長良(ナガラ)など、上は訓なり、下 は音なり、
其人々の意の欲する儘にしるしければ、文字の數も定らず、
不比等を不比登としるし、馬養(ウマカヒ)を又宇合(ウカフ)としるし、長谷雄(ハセヲ)をまた發昭(ハセヲ)としるせし類は、一人の 名を、或は音にてもしるし、或は訓にてもしるせしなり、古より本朝の人々の名をつきしにも、 異朝の如く五ッのいはれありと見えて、是等の事、悉く考て呈せむと思ひ、草按をば立置しも のあり、事長ければこヽにはしるさず、
五十四代の帝、仁明天皇の御時より、始て今の代の人の名の如く、多くは文字の訓をとりて、二字を用る事にはなりたり、
此事は神皇正統記に見ゆ
されば昔の人の用ひし處は、定れる文字もあらず、多くは聖經賢傳の文字を取用ひて、皆々意義ある事共にてありし、世の末ざまになるに隨ひ、文字やヽ廢れしより、世の人多くは、古人の名に用ひし文字のみを取用ひ、己が名とするほどに、その名とする所、意義もなく、自から文字も定れる樣にはなりたり、ましてや近き代にて、西域二合の法に倣て、二字を合て一字となし、其一字の 義訓の吉凶を論ずる事にのみ成りしかば、〈俗に名乗字を歸すといふ事なり〉人の名、尚々むかしにも似ず、あさましき事には成りたるなり、
右は名の字に、定れる字と云ことはあらざる證の一ッなり、
前に申せしごとくに、古には人の名の字、定れる文字はなかりき、末の世に至りては、自から儒家の人々の家に、抄し置れし所の文字もありしにや、文和の初め、御光嚴帝の御名字を撰ませられし時に、成の字を房(フサ)と訓ずる事、名字抄にみえたるよし、菅三位在成卿の申せし事をしるせしものあり、
洞院大相國〈○藤原公賢〉の御記に見ゆ、後光嚴帝は、九十九代にあたらせたまふ、此頃は太平記の代 にてありしなり、
されど今は、名字抄などいふものも、世には傳はらず、
節用集、〈○中略〉拾芥抄、〈○中略〉などいふものに、人の名字を集め置し、世に廣く行はるヽほどに、世の人皆これらの書を據となして取用ひる事に成りたり、油小路故大納言隆眞卿ののたまひしは、近代の人の名、殊に淺ましきものに成りたり、拾芥等の書に抄出せし所は、いかなる事を據となして、僻る字多く集め置きけん、心得られず、周公の撰ませ給ひしといふ、爾雅の字を取用ひたらんには、然るべき文字いくらもありなんとぞ、
隆眞卿の説は、某〈○新井君美〉に神書を授けし人、まのあたり承はりしよしを申しき、此卿は近代の 有職の人にておはしき、
いはれある事とこそ覺ゆれ
右は近世の人の名の字よからず、又人の名に定れる文字あるまじき證の二ッなり、
又師〈○木下順庵〉にて候し者の、某に窃に傳へ候しは、天子の御名は、凡人の名に、となふる所と同じか るべからざる由、ある有職の人の仰せられき、
何人の仰にかと、重ねて問返し難かりし故に、其人の名をばつゐに承らざりき、口惜き事なり、 此事を思ふに、たとへば御水尾院の御諱政仁を、まさひとヽは申さで、ことひとヽ申し、今の仙洞〈○靈元〉の御名を、識仁としるして、のりひとヽは申さで、さとひとヽ申の類なるべし、
さては將軍家の御名など撰申さんには、心得あるべき事也、我國に傳はるのみにもあらず、異朝の後の代までもしるし傳ふべければ、いかにも經書の文字を取用うべし、たヾに經書の字を取用ひんのみにもあらず、唱へまゐらする所も、心得あるべきよしを申き、
今按ずるに、室町殿の代々の御諱に、讀得がたき事ありとぞ覺ゆる、寶篋院殿の御諱を義詮と申き、詮の字を敎(ノリ)と唱る人あれど、普廣院殿を義敎(ヨシノリ)と申まゐらせしかば、いかで其祖考の御諱に同じき唱の名をば付させ給ふべき、又詮の字を昭(アキ)と唱る人あれど、靈陽院殿を義昭(ヨシアキ)と申まゐらせしかば、是も先祖の御諱におなじきとなへの名は付させ給ふべからず、拾芥節用等を見るに、詮の字の訓に、敎と昭との外に、別の訓も見えぬは、寶篋院殿の御諱は、必らず別なる訓のありしを、世の人其傳を失ひしなるべし、〈追て拾芥抄を考るに、詮の字としと訓ず、蓋寶篋院殿の御諱、よしとしと申せしにや、猶たづぬべし、〉
大塔宮の御諱を護良としるして、もりよしと世には云傳へたれど、實はもりながと申まゐら せき、是等また同時の事なれば、義詮のとなへ、必らず世に云傳るがごときにあらじ、
是等の事を思ふに、先師の傳へし所、誠に誣ずとすべし、
右は名の字に、定まれる字なきのみにもあらず、唱る所も定れるとなへなき證の三ッなり、

〔本邦名字説〕

p.0589 凡ソ物必名アリ、飛潜動植器物ニ到ルマデ皆名アリ、況ヤ人ニ於テヲヤ、人ノ名アルハ自然ナリ、宇宙ノ間、凡ソ人類、スべテ名ナクンバアルベカラズ、但周ノ世、文ヲ尚テ、元服シテ字アリ、其後襲ヒ來テ皆然リ、本邦古ヨリ字(アザナ)ナシ、中葉遣唐使アリテヨリ、唐ノコトヲ見習ヒ、事多ク 唐禮ニ從フ、紀寛〈紀長谷雄〉文琳〈文屋康秀〉ノ類ノ字アリ、然レドモ文字ヲ好ム人ノミニシテ、公家武家、一同ニ然ルニハ非ズ、此方ニテハ字ハ無クテモ事カケヌコト乎、ソレヨリ已來、世ニ字ツク者ナシ、近世天下一タビ治テ、文化漸ク盛ナリ、故ニ書ヲ讀ムモノ字ツク、然レドモ字ノ稱シヤウ一ナラズ、何レモ鴻儒ノセラルヽコトナルユエ、黄口敢テ議シガタシ、但私ニ愚見ヲ記シテ子姪ニツグルノミ、凡ソ世ノ字ヲ稱スル人、名乗ハ信定ニシテ、名ハ瑤、字ハ温夫ナルアリ、此レ一ナリ、又交名喜右衞門、名乗義方ナルヲ、名ハ喜、字ハ義方トスルアリ、此レ二ナリ、又小名與次ナルヲ、名ハ譽、字ハ彦聲トスルアリ、其説ニ、内則ニ云如ク、小兒ノ時、父ノ名ヅケタルガ實ノ名ナリト、此レ三ナリ、又交名忠助、名乗維弼ナルヲ、名ハ維弼、字ハ中輔トスルアリ、此レ四ナリ、又交名源兵衞ナルヲ、名ハ源、字ハ子澄トスルアリ、此レ五ナリ、又交名茂介ナルヲ、名ハ懋、字ハ伯德トスルアリ、此レ六ナリ、又名乗長英ナルニ、此レヲ字トシテ、ソレニ縁ヲ取テ名ヲ俊トスルアリ、此レ七ナリ、愚謂此七樣、共ニ世上一同ノ通例トシガタシ、疑フベキナリ、先一ツニ、名乗ト名ト二ツアルコト訝カシ、吾邦凡ソ事訓ヲ以テ行ハルヽ、人モ實名ハ名乗トテ、訓ヲ以テ稱スルナリ、瑤ノ字ノ類、名乗ノ訓ニヨマレヌ字ヲ用ルコト、本邦ノ風ニ非ザルニ似タリ、又二ツニ喜右衞門ト云ハ、喜ノ字、本ハ紀ノ字ニテ紀姓ナリ、初兄弟ノ次第ニテ、太郎次郎ト云、或ハ姓ヲ上ニ冒フリテ、源太、平二郎、紀次郎ト云モアリ、平藏ハ平三ナリ、唐ノ人、李三郎、杜五郎ト云ガ如シ、六位ノ衞府ニナレバ、左右ノ衞門兵衞、ソレ〴〵ニ又其姓ヲ上ニ冒ムラシメテ、紀姓ナレバ、紀右衞門ト稱スルナリ、唐ニテ韓吏部、杜拾遺ト云ガ如シ、ソレ故此方ニテモ交名ト云ナリ、源平藤橋ヨリシテ、菅原ノ菅、大江ノ江、淸原ノ淸、中原ノ中、丹治ノ丹、惟宗ノ宗ノ類、後ニ橘ヲ吉ト書カヘ、菅ヲ勘トシ、江ヲ郷トシ、中ヲ忠トシ、宗ヲ摠トスルナリ、ソノ後物數奇次第ニ交名ヲツキテ、吉兵衞、忠右衞門ト云ヒ、紋太郎、無理之介ト云フニイタル、本ハ姓ナルコトヲ知ラヌヤウニナリ來ルナリ、又人ニヨリ太郎二郎ナルモノ、太郎 左衞門、二郎右衞門卜稱スルモアリ、今喜右衞門ノ喜ヲ名トスル時ハ、姓ヲバ名トスルナリ、或ハ太郎左衞門、二郎右衞門ハ、名ヲ太トシ二トスベキヤ、又ハ太郎ノ子、小太郎、或ハ又太郎、或ハ新太郎、ソノ子孫ソノ子彌太郎ナリ、左衞門ノ子、小左衞門ト云、孫彦彌モ同ジ、右衞門、兵衞、大夫、此ニ準ズ、次郎ノ嫡子ハ、次郎太郎ト云、小四郎左衞門、平六兵衞、小平六ト云モアリ、北條四郎時政ノ子、義時ヲ小四郎ト云モ然リ、然類上ノ字ヲ摘テ、何トテ名トセラルベキヤ、名乗義方ヲ字トスルコト訝カシ、喜右衞門ハ交名ナレバ、實名ハ名乗義方ナリ、實名ヲ字トスルコト從ガヒガタシ、又三ツニ、小名與次ナルニ、畫ヲソヘテ名ヲ譽トスルコト訝カシ、ソノマヽ與次ヲ實名トスルニモ非ズ、上ノ一字ヲ切取テ、又畫ヲ添ル時ハ、今又作爲スルナリ、況ヤ與ノ字、本ハ餘ノ字ニテ、兄弟ノ次第、十ニ餘リテ十二番目ノ子ヲ餘次ト名ヅク、那須余一ハ十二番目ノ子ナリ、故アリテ十一トナル、餘ヲ略シテ余トシ、終ニ轉ジテ與トナリタルナリ、此レヲ名トスルコト、イブカシキコトナリ、小名千代丸、三四郎、牛之介、何ト名ヲ稱センヤ、又四ツニ、忠助ヲ書カヘテ、中輔ヲ字トスルコト訝カシ、忠助ハ本中原ナル人、介ナラバ如レ此稱スベシ、何之介ハ、或ハ受領ノ介ヨリ轉ジ、何之丞進ハ、百官ノ下ヅカサヨリ轉ズ、何内ハ、昔シハ内舎人ナル人ノツキシ名ナリ、何平ハ、兵衞ノ轉ズルナリ、交名ナレバ、師又ハ賓ノツケタル字ニモ非ズ、況ヤ書カフルコト作爲ニワタル、太郎、二郎、衞門、兵衞、大夫ヲツキタル人、イカヾ書カフベキヤ、又五ツニ、源兵衞ノ源ヲ名トスルコト、前ニ云如ク、姓ヲ名トスルナリ、ソノ外ミナ前ニ詳ナリ、ソレノ縁ヲトリテ、字ヲ子澄トスルコト訝カシ、茂介ノ茂ヲ、音ノ通ズル懋ニ書カヘテ名トスルコト、此レ又作爲ナリ、太郎兵衞、二郎介、ソノ外前ニ云如キヲイカヾ字ノ縁ヲトリ、イカヾ音ノ通ズル字ニ書キカヘンヤ、名乗長英ナルヲ字トシテ、名ヲ俊トスルコト、字ハ名ニヨリテコソツクベケレ、字ヨリシテ名ヲツクル訝カシ、此七ツ、何レモ一同ニ例ヲ推シテ行ナヒガタキニ似タリ、或ハ古ヘハ古ヘノコト、今ノ稱スル所ニヨリテ義ヲ取 ルト云フベキヤ、然レドモ世上一同ニ、字ト云フモノツクコトニ非ズ、書ヲ讀ムモノヽスルコトナレバ、古ヘヲ推シテ、本ヲタヾサヌト云フコトモアルマジキコトナリ、愚意本唐山必シモ 强ヒテ引キアハセズトモ、交名ハ交名ニシテ、姓ヲ冒ムルコトヲ忘レタルコトハ、流風ナレバ是非ニ及バズ、名乗ヲ本トシテ、字ハ本邦ノ風ニハ無シトスベキナリ、モシ書ヲヨムモノ字ヲツクナラバ、名乗ガ實名ナルユエ、此レニ縁ヲ取リテ字ヲツクベシ、韓吏部交名、紀右衞門ト云フガ如シ、愈ハ實名ナリ、此方ノ名乗義方ト云フガ如シ、退之ハ字ナリ、此方ニハ無キコトナリ、此通リニテ平易ナルニ似タリ、

〔日本書紀通證〕

〈一/ 言〉

p.0592 今按、神代紀、多以レ名證二其德一、曰レ尊曰レ命曰レ彦曰レ姫、皆美稱也、皇代紀、有下以二地名一稱者上、有下以二職業一稱者上、有下據二一時之事一者上、〈大鷦鷯、日本式之類、〉其餘概當二以レ之求一焉、〈欽明紀曰、帝王本紀、多有二古字一、撰集之人、 經二遷易一、後人習讀、以レ意刊改、傳寫既多、遂致二舛雜一、帝王本紀者、推古紀所レ謂天皇紀、而厩戸太子所二撰定一者也、古字者、謂二皇子古名字一也、親王所二自述一既如レ斯、宜也其難レ解乎、〉至二臣庶一、則稀僻之名尤多矣、不レ可二悉曉一也、又如下網田爲二阿彌陀一、史爲二不比等一、馬養爲二宇合一、旅人爲中淡等上、皆通二用音訓一也、後世反名、蓋出二乎此一、〈○註略〉又古者不二必字一、偶稱レ字、〈顯宗紀、改レ字曰二丹波小子一、仁賢紀字嶋郎、〉亦似二所レ謂小字一、〈揚雄子、小字童鳥之類、〉而讀曰レ那(ナ)、〈蓋與レ名同、程郊倩曰、字即是名、古人誠有レ之、如下韋應物即名二應物一、孟浩然即名中浩然上是也、〉無二阿奘那(アザナ)之訓一、〈阿奘那、交名也、交レ人之稱也、或謂阿奘那梵語、然字梵云二乞又囉一、乃文字也、此間文字、亦讀云レ那、見二天武紀一、周禮、掌二書名於四方一、註古曰レ名、今曰レ字、〉後世儒士、或字レ之、〈阿奘那、見二源氏談抄一、云爲レ儒者必有レ之、〉然亦與二西土一法少異、〈如二菅原道眞字三、文屋康秀字琳、三善淸行字耀之類一、又如二宇治拾遺云、字袴垂一、似二所レ謂謔名(シコナ)一、〉又有二假名實名之稱一、假名俗呼也、實名即名也、實名多二二名一、故謂二之二字一、〈○註略〉又名二麻呂一者多矣對レ人、自稱亦曰二麻呂一、〈或作レ麿、二合字、如二榊類一、或作レ滿、與レ圓訓義通、倶出二後世一、〉或曰、男子通稱、猶二周代子路子貢之類一、〈如二物類一蚱 呼爲二稻春兒麻呂一、鎌呼爲二加摩麻呂一、猶レ有二扇子刀子之稱一、〉或曰、自謙之辭、古人有二小屎糠虫一、後世紀貫之、幼名阿古久曾、蓋同意、
○按ズルニ、滿ヲマロト云フハ音ナリ、與レ圓訓義通ト云フハ、恐ラクハ誤ナラン、

〔年々隨筆〕

〈三〉

p.0592 今時の俗名といふものは、人の實名は、かりにも他より呼べきものならねば、輩行と成功との二ツをもて稱へし物也、其輩行といふは、兄を太郎といひ、つぎを二郎といひ、三郎、四郎、 ついでのまヽによぶ事也、十郎より上は、餘一餘二などぞいひけらし、今昔物語に、〈○中略〉貞盛ガ甥、幷甥子ナドヲ、ミナ収集メテ養子ニシケルニ、此維茂甥子ナルニ、亦中ニモ年若カリケレバ、十五郎ニ立テ養子ニシケレバ、字ヲ餘五君トハ云ケル也とあり、眞田與一、淺利與一などいふもこれか、これら必しも十餘子とはみえざなれど、餘五のやうなる子細ありもやしけん、その程すでに曾我十郎は兄にて、五郎は弟なるたぐひあれば、この與一も、輩行のみだれたるにもあらんかし、成功とは、上候にいへるごとく、物をいたして、四府の尉、諸司の三分になりて、その官名をなのる也、かくてその族々に、太郎、二郎、兵衞、衞門ありて、他氏他族と參會しても、さらぬをりも、何事につけてもまぎらはしき故、その上に姓の一もじをそへて、藤太郎、源二郎、淸兵衞、宗左衞門などやうに名乗たる物にて、今時の名はこの姿なり、さてもなほ、おなじ名の多かるほどに、居所の地名をそへてよぶ、新庄にすむ藤太郎は新庄藤太郎、山田にをる源二郎は山田源二郎也、これすなはち今の名苗字也、元弘建武よりは、成功の事は絶えはてたれど、代々に宮申たる家は、父祖のなのりしまヽに名のりもしつらむ、さらぬ者も僣上して、兵衞、衞門とつきもしたらむ、亂世にて、誰とがむる者もなきゆゑなり、應仁以後にいたりては、何事も、舊き蹤うしなひはてつる世なれば、上の一もじを姓といふ事も、下は輩行官名とも何ともしらで、たヾ人の名は、かうやうの物ぞと心えて名のりしほどに、上の一もじ、姓ならぬもいできたる也、されば世の中のうつり來しにしたがひて、成功の實もうせ、輩行の序もみだれて、そのかみのやうに、うるはしくこそあらねど、きと由緒ある事にて、今においては、うけばりたる名乗に、これを置ては何かはあらん、しかるを此頃の學者たち、さるゆゑよしはしらずやあらん、世に俗名と稱れば、ひたすら俗なりと心えて、歌よ消息よと、人のがりやるにも、これをいみさけて、人の實名書ちらすこそ、さもこちなく、うたてき事なれ、そも〳〵これは皇國の學するともがらのみにもあらず、儒者とある人たちの漢文にかヽ むにも、いとよろしき稱呼なるを、さる事のきこえぬは、くちをしき事也、朝夕にめなれ口なれためる唐詩選などをもみよ、王大、高五とあるは輩行、高都護、杜少府などあるは官名にて、今時の名と、もはらおなじきを、唐人の名のるは雅にて、こヽにて物するは俗なるやうあらましや、今時の漢文をみるに、稱呼の妄なる事、いふべくもあらず、

〔善庵隨筆〕

〈二〉

p.0594 漢土ニ小字トイフモノアリ、今古奇觀ニ、小名宋金郎、官名宋金トアリ、官名ト、公邊ニ用フル表向ノ名ニテ、實名トイフガ如シ、小名トハ、民間ニ呼習ハシタル平生ノ通名ナリ、コレ證トスルニ足ルヤウナレドモ、他書ニ載スル小名小字ハ、大抵幼少ノ時ノ子供ノ名ナリ、又侍兒小名録ニ載スル小名ハ、此方ノ人、タトヘバ家ニ居ルトキノ名、女子ナレバ阿松トカ、阿梅トカイヘルガ、諸侯方ニ奉公スレバ、別ニ名ヲ賜テ、尾上トカ、岩藤トカ改ム、ソノ奉公中ノ名ヲ小名トイフ、カク一定セザレバ、一ヲ取テ證トシ用ヒガタシ、

〔類聚名物考〕

〈姓氏八〉

p.0594 名字 な あざな
およそ古人の名、今の心よりは、わきまへがたきもの多ければ、よみうる事さへかたきをや、されば宇合を乃支阿比(ノキアヒ)と訓が如く、舎人親王を伊敝比止(イヘヒト)と申が如き、みなよくも思はぬ、後世の心より出し僻よみなり、又訓にてのみは訓(ヨメ)ざるも有、德足の如きは、止古多利(トコタリ)と音訓相交へてよむなら、この類ひは長良冬良の如き、良をば音にいふ、一條禪閤兼良公をば、加禰羅(カネラ)と訓(ヨム)を、加禰與之(カネヨシ)ともよむべきよしもいへり、これらよく思ひわきまへでは、僻事のまじれるものなれば、書このむ人は、必おろそかにはすべからぬ事ぞかし、

〔類聚名物考〕

〈姓氏八〉

p.0594 別名 一名
これは名二ツ有をいふ、たとへば同人異名有人あり、又は名をかへし人を物にしるしたるに、二所三所に見えしに、二三の名有て、その人は異ならざるも有、又は傳への異にして二名有もある 也、たとへば、宇治山の喜撰を、基泉と同人也ともいひ、或は別人といふが如きも有、又は西行法師を、中比は圓位上人ともいひしを、初は佐藤兵衞憲淸といひしが如し、僧正遍照をも、俗にては良岑宗貞といへるが如きも有、これいとまぎらはし、此にはその中にとりて、傳への異にして、名二ツ有をもはらのせたり、神代紀に、八千矛の神に七名有が如きをいふ也、別號といへるに似たり、

〔類聚名物考〕

〈姓氏八〉

p.0595 本名
今案に、本名といふ事、西土にも有、然れども今俗に云とは、その意異なり、俗の意は、今假名有に依て、その本體の名をさして本名と云、本は假の反對なり、西土のは、もとの名にて、今改めて稱する所の名にむかへて本名と云、古今と云に似たり、唐の顔眞卿の撰び書る、浪跡先生玄眞子張志和の碑に云、玄眞子、姓張氏、本名龜齡、東陽金華人と有、次下に改二名志和一、字子同と有にむかへて、昔の名龜齡とはいへる也、

〔類聚名物考〕

〈姓氏八〉

p.0595 名告 なのり 名謁〈東鑑〉 名乗〈俗借字〉
今思ふに、奈乃利(ナノリ)は、我名をのりて人にいふ故なり、古事記の雄略天皇紀に、名告と見え、萬葉集にも見えたり、告を乃里(ノリ)といふは古語也、東鑑には名謁と書しは、義をもて書る也、我名を告て、人に謁るの意也、

〔古今要覽稿N 〕

姓氏

p.0595 な 名
人の名は、往古よりしてあり、渾沌初てひらくる時に、國常立尊、國狹槌尊と申奉る、すなはち御名なり、西土にてもまたしかり、少昊の名を摯といひ、帝尭の名を放勳といへるこれなり、たヾし太古にては、子孫といへども、御名を憚るところなく、後に西土の制を移させ給ひしより、憚りて御名を稱せず、〈委は松迺落葉にみえたり〉人の天地間にあること、名の別つべきものなかるべからず、たヾ人のみにあらず、天下にあらゆるもの、大は高山大河、小は禽虫魚鱗に至り、一として名なきはあらず、 後世に至りて、うぢかばねの類ひおこり、字號の屬、生ずるは、文華の盛なるなり、たヾ又諡といふことあり、崩後に改め名づく、神武と申、綏靖と申奉るこれなり、今の俗稱は、假名あるひは呼名ともいふ、これ保元平治の比よりやはじまりけん、某郎などいふこと多し、これ通稱にて、伯仲をわかつに數の序次を以てす、これにむかへて實名といふ稱はおこれり、また名乗ともいふ、名乗は、もと人に對して我名を唱ふることなり、古事記萬葉集に、名告ナノリと傍訓し、東鑑に名謁ともかけり、皆人に對して我名をなのる義なり、のりは、のりことなどののりにて、言語にあらはすなり、さればわが名をなのることよりして、つひに實名を名のりといふことにはなりたり、さてその名、後には家々の通り字ありて、代々同字を用ゆ、古にも淳和天皇の御子たち、多く上に恒字を置れ、仁明天皇の御子たち、下に常字を置、文德のみこ、上に惟字を置れし類、又淸和天皇を惟仁と申せしより始まりて、醍醐天皇を敦仁、一條天皇を懐仁など申すより、以後皇子たち、凡て某仁とつけらるヽことにはなれり、通り字のはじめ、これらに本づけるならん、また尊上の人、卑賤の者に名の一字をあたふること、源平盛衰記、北條九代記等に見え、當世に至りては恒例となりぬ、また女の名、古代は男子と同じく、某命といひ、中古は某子といひ、後世は於の字をつく、於は阿にかよひて助辭なり、これ婦女の名は簡易なれば、唱よき爲にいひつけしにや、

〔十訓抄〕

〈一〉

p.0596 天智天皇、世につヽしみ給事ありて、筑前國上座郡朝倉と云所の山中に、黑木の屋を造でおはしけるを、木丸殿と云、圓木にて造故也、〈○中略〉さてかの木丸殿は、用心をし給ひければ、入來の人、かならず名のり(○○○)をしけり、
朝倉や木の丸殿に我をれば名のりをしつヽ行はたが子ぞ
是天智天皇の御歌也

〔枕草子〕

〈三〉

p.0596 殿上のなだいめんこそ、猶をかしけれ、御前に人さふらふをりは、やがてとふもをか し、あしおとどもしてくづれ出るを、うへの御つぼねのひんがしおもてに、みヽをとなへてきくに、しる人のなのり(○○○)は、ふとむねつぶるらんかし、又ありともよくきかぬ人をも、此をりにきヽつけたらんは、いかヾおぼゆらん、なのりのよしあし、きヽにくヽさだむるもをかし、

〔花鳥餘情〕

〈三/夕顔〉

p.0597 なだいめんはすぎぬらん、たき口のとのゐ申はいまこそは、亥一刻に、内豎、時のふだを奏す、其後侍臣のなだいめん有、なだいめんとは名謁をいふ、殿上に御とのゐせる侍臣、たがひに名を問れて、なのる事也(○○○○○)、此次に瀧口のとのゐ申あり、とのゐ申といふも名謁と同じ事也(○○○○○○○)、

〔神皇正統記〕

〈仁明〉

p.0597 第五十四代第三十世、仁明天皇、諱は正良、〈是よりさき御諱たしかならず、多は乳母の姓などを諱に用ひられき、是より二字(○○)たヾしくましまぜば、のせたてまつる、〉

〔古事談〕

〈三/僧行〉

p.0597 文範卿云、餘慶僧正ヲ驗者ト云ヘドモ、被レ犯二人妻一云々、僧正聞二此事一ノ後、向二彼卿宅一之處、得二其意一、稱二所勞一不二出合一、僧正猶大切ニ可レ申事有ト被レ申ケレドモ猶不二出會一、其時僧正呪而只投出卜被レ申ケルニ、主忽悶絶シテ屏風ノ上ヲ打越テ 出、僧正サコソハトテ被レ歸畢、三ケ日猶悶絶ス、因レ之一門子息等獻二二字(○○)於僧正一、仍被レ免、後存命云々、

〔蔭涼軒日録〕

p.0597 長享二年正月晦日、陳外郎話云、大内息次郎相公、賜二二字(○○)義興一、義字賜者、世所レ稀也云々、

〔類聚名物考〕

〈姓氏八〉

p.0597 片名 かたな
二字ある名の一字を片名といふ、今俗に左衞門といふを、左衞とも、或は衞門とも書をも、また片名といふ也、

〔源平盛衰記〕

〈三十三〉

p.0597 太神宮勅使附緒方三郎責二平家一事
日數積ツテ月滿ヌ、花御本男子ヲ生、隨レ爲二成長一容顔モユヽシク心樣モ猛カリケリ、母方ノ祖父ガ片名(○○)ヲ取テ是ヲ大太童ト呼、

〔源平盛衰記〕

〈三十六〉

p.0598 鷲尾一〈ノ〉谷案内者事
御曹司〈○源義經〉ハ、〈○中略〉去ハﾞ汝ヲバ鷲尾三郎ト云ベシ、名乗ハ我片名(○○)ニ、父ガ片名(○○)ヲ取テ經春ト附ベシ、片岡ト同名ナレ共、多キ人ナレバ、事カケジ、

〔松屋筆記〕

〈三十七〉

p.0598 名の片字
照光記、建久七年五月五日の條に、次手結文、令二請印一云々、持來更卷懸紙一令レ封、封了持來、書二名片字(○○)一返給了云々、

名讀方

〔倭訓栞〕

〈前編三十/美〉

p.0598 み 名に相をよむは藤良相あり、みるの義也、

〔薩戒記〕

〈部類二〉

p.0598 名字讀
藤宿奈麻呂〈後改名 繼太宰帥大錦上比羅夫之子〉 藤濱成〈一名濱足參議麻呂一男〉
〈大納言〉大伴旅人(タビト)〈一名多比等大納言贈從三位安麻呂一男〉 〈中納言〉同家特(ヤカモチ)〈旅人男〉
〈右大臣〉淸原夏野〈本名繁野〉
源勤(ツトム) 同舒
藤原永手〈權中納言始 參議〉同牛養(カイ) 阿倍沙彌(サミ)麿 大中臣子老(コヲキナ)〈右大臣淸丸二男〉 中臣淸丸〈中納言美麿七男 知太政官事〉刑部親王〈從三位 但馬權守〉橘逸勢(トシナリ) 藤原愛發(ヨシシゲ) 宇合(ノキアイ/ウガウ) 輔相 常行(トキツラ) 眞楯(マダテ) 魚名(ウヲナ) 御楯(ミタテ) 眞夏(マナツ)

〔諱訓抄〕

p.0598 帝王
定省(カミ)〈宇多〉 寛明(ユタアキラ)〈朱雀〉 懷仁(カネヒト)〈一條〉 居貞(イヤサダ)〈三條〉 敦成(アツヒラ)〈後一條〉 敦良(ナガ)〈後朱雀〉
體(ナリ)仁〈近衞〉 順(ノブ)仁〈六條〉 懷成(カネヒラ)〈廢帝〉 茂(トヨ)仁〈後堀川〉 秀(ミツ)仁〈四條〉 豐(ユタ)仁〈光明〉
幹(モト)仁〈後小松〉 實(ミ)仁〈稱光〉 成(フサ)仁〈後土御門〉
親王
舎人(トネリ)〈天武子〉 阿保(アホ)〈平城子〉 人(サネ)康〈仁明子〉 敦實(ミ)〈宇多子〉 代明(ヨアキラ)〈醍醐子〉 常(トコ)明〈醍醐子〉
他戸(ヲサベ)〈光仁子〉
大臣
木菟(ツク)〈履中御宇〉 圓〈安康御宇〉 蝦夷(カイ/エビス)〈皇極御宇〉 赤兄(アカエ)〈天武御宇〉
不比等〈藤原古人傳云、此名有二由緒一、奈 比比止之加 須(ナラビヒトシカラズ)、無二傍輩一之儀也、〉 武智(タケチ)麻呂〈南家〉
諸兄(モロエ)〈橘氏〉 永手(ナガタ)〈藤原〉 眞吉備(マキビ)〈吉備公〉 魚名(ウナナ)〈藤氏〉 是公(コレキミ)〈藤氏〉 内(ウツ/ウチ)麻呂(マロ)〈藤氏〉
三守(ミモレ)〈藤氏〉 常(トキハ)〈源氏〉 良相(ヨシミ)〈藤氏〉 多(マサル)〈源〉
納言以下
廣庭(ヒロニハ)〈安倍〉 宇合(ウカフ)〈藤〉 毛人(エビス)〈安倍〉 家持(ヤカモチ)〈大伴〉 子老(オキナ)〈大中臣〉 今毛人(イマエビス)〈佐伯〉
古佐美(コサミ)〈紀〉 乙叡(オトエイ)〈藤氏〉 眞夏(マナツ)〈藤氏〉 入鹿(イルカ)〈多〉 眞道(マミチ)〈菅野〉 五百枝(イホエタ)〈春原(音譜也)〉
愛發(ヨシチカ/チカノリ)〈藤、越前愛發山此字也、又アラチ、〉 鹿取(カトリ) 篁(タカムラ)〈小野〉 長良(ナガラ)〈藤〉 定(マタ)〈源〉
善繩(タゞ)〈春澄〉 音人(ヲトムド)〈大江〉 廣相(ヒロミ)〈橘〉 長谷雄(ハセヲ)〈紀〉 有實(ミ)〈藤〉 玄上(ハルカミ)〈藤〉
自明(コロアキラ)〈源〉 好古(ヨシフル)〈橘〉 朝成(トモヒラ)〈藤〉 義懷(チカ)〈藤〉 誠信〈藤〉 佐理(スケタカ)〈藤〉
齊信(タヽノブ)〈藤〉 朝(アサ)綱〈大江〉 湛(タヽフ)〈藤〉 直(ナヲシ)〈源〉 公材(キムキ)〈橘〉 友于(ユキ)〈在原〉
等(ヒトシ)〈源〉 言鑒(コトミ)〈尾張〉 敏久(ミニク)〈狛部〉 傅(スケ)説〈三船〉 義忠(ノリタヾ)〈藤儒者〉 公資(ヨリ)〈大江〉
積善(モリヨシ)〈高階〉 佐世(ツギ)〈藤〉 淸公(キミ/トモ)〈菅原〉 齊名(タヾナ)〈紀〉 孝標〈菅〉 逸勢(イツセイ)〈橘〉
懷(ナリ)忠 令(ヨシ)尹 明義(アツノリ)〈中原〉 朝(アサ)光 擧周(タカチカ)〈大中臣〉 諸(モロ)葛(クズ/ツラ一註)〈中納言〉
秘樹(ナミキ)〈橘〉 五常(トモツネ)〈六位外記史經暦者也、文屋五典(トモノリ)、〉〈明德三年除目、故殿御申文此例也、〉 直幹(ナヲモト)
奉(トモ)時〈小野〉 希(マレ) 巨(ヲ)城 允(タゞ/イン)亮(スケ) 護良(モリナガ)〈大塔宮〉 允(タヽ)明
源信(マコト) 旅人 文信(ノリアキラ)〈藤氏鎭守府將軍〉 越雄(コヲ)〈藤氏〉

〔東野州聞書〕

p.0600 一寶德四年七月廿二日、於二常光院一承條々、〈○中略〉
作者ノ讀やうの口傳 俊生(としふ) 山上億良(やまのうへのおくら) 額田 王(ぬかたのおほきみ)〈○中略〉
置始東人〈名のりは口傳〉懷〈此字は、名のりには、やすと讀、猶よみあり、○中略〉
一享德元年八十六、於二常光院一尋習條々、〈○中略〉
朝光(アサミツ) 朝忠 國章(ノリ)〈此字、名のりによつて、あさらせ讀也、〉 平祐擧(タカ) 平公誠(トシ) 輔昭(スケテル) 平忠依(ヨリ) 源寛(スケ)信朝臣 高向(タカンコノ)
年春(トシハル) 弓削嘉言(ユゲノヨシコト) 大江喜言(ヨシコト) 石川良女(イラツメ) 高岳相如(タカヲカスケユキ) 三統元夏(ミムネモトナツ) 源致方(ムネカタ) 慶滋保胤(ヨシシゲノヤスタネ) 統理(ムネマサ)
參議玄上(ハルマサ) 扶朝(スケトモ)朝臣 孚子(マウシ)内親王 輔臣(スケミ) 治部卿仲統(ムネ) 北邊(キタノベ)左大臣 惟宗成長(コレムネナリナガ)

〔叡岳要記〕

〈上〉

p.0600 推古天皇十四年丙寅、以二三位三津氏百枝一爲二大藏卿一、〈○中略〉
私云、大外記中原師重云、百枝二讀也、一ニハ百枝(モヽキ)、一ニハ百枝(モヽエ)、然者不レ可レ讀レ枝(エタ)云々、〈建保六年夏聞之〉

〔南留別志〕

〈一〉

p.0600 一名乗に、純をすみ、茂をもちとよめるは音なり、〈○中略〉
一朝の字を、或はあさ、或はともとよむ事は、或は公武にてかはり、或は上下にて異なりとやらん いふは、僻事なるべし、義朝の子、朝長あり、おき所上下ありともかはるまじ、公家武家といふ事 は、鎌倉以後の事なり、

〔南留別志拾遺〕

p.0600 朝をともと讀む事は、朝廷もおほやけも同じ意なりとて、公の字の訓を用ゐたるなるべし、公は公共の意にて、ともとよめる也、

〔野宮問答〕

p.0600 一忠助と書きたる名乗を、忠覽と讀み申事は、元來忠覽にて候得共、障りこれあり、忠助と字を替へ候へ共、たヾみといふ事、上に御存知の實名故、よみを改めずして、忠助をたヾみといひ付申候、

〔鹽尻〕

〈一〉

p.0600 昔人名倭訓 昔人の名、倭訓傳をしらずして、妄に稱はいと俗なり、合間(ヨシチカ) 董文(カホヨシ) 愛發(チカナリ)發生(チカフ) 乙叡(タカトシ) 訓儒(トキハカ) 巨勢麿(ホセマル) 主復(ヌシフ) 在公(アリキン) 眞能守(マタノモリ) 仁道(ヨシネ) 直作(マタナリ) 弟藤(ツギフヂ) 五百城(イホノキ) 三成(タヾヒラ) 玄(ツル) 上(ウラ) 千乗(チシヲ)
此類多し、今しばらく藤氏上代の人名のみ、其一二を記す、菅家の祖宇庭を、ウチニハと讀が如し、熊谷入道蓮生は、れんせいとよむべし、
宇都宮入道蓮生は、れんしやうとよむべし、
僧名漢音呉音によみ來れる事の多し、其宗家に聞べし、惠果ケイクハ惠心エシソ等の如し、

〔玉勝間〕

〈八〉

p.0601 後鳥羽天皇の御諱のよみ
後鳥羽天皇の御諱尊成、歴代編年集成に、タカヒラと假字附〈ケ〉あり、成〈ハ〉平也といふ意なるべし、

〔尊卑分脈〕

〈五/藤原〉

p.0601 愛發(チカナリ/ヨシアキラ)〈又ノリ〉

〔玉勝間〕

〈十二〉

p.0601 愛發といふ名のよみ
藤原愛發といふ人あり、此名いかによむにかといぶかしかりしに、越前國の地名をとれる名にて、愛發關、あらち山などいふところなりけり、

〔玉勝間〕

〈十三〉

p.0601 平城天皇の御名
平城(ナラ)天皇の御諱、はじめには小殿(ヲドノ)と申せしを安殿(アデ)と改め給へり、〈○中略〉さてこは阿傳(アデ)と字音に讀み奉る也、紀の國の在田郡は、もと安諦(アデ)郡にて、書紀續紀に、阿堤(アデ)郡とも書れたるを、この天皇の御名に渉るをもて、大同元年に、在田郡とは改められき、

〔玉勝間〕

〈十四〉

p.0601 人の名の和字の事
人の名に和字を加受(カズ)とよむは誤也、これは加都(カツ)にて、都は淸音なり、此言は、かてかつかつると活用て、物を和合こと也、萬葉歌に、醬酢爾(ヒシホズニ)、蒜都伎合而(ヒルツキカテヽ)とある、此合而なり、

〔古事記傳〕

〈二十二〉

p.0601 建内宿禰、建内は多祁字智(タケウチ)と訓べし、〈世に此名を武之内(タケノウチ)と之を添てよむは、古言をしらず、後世竹ノ内と云地名のあるにならへるみだり言なり、古に建之と云る例あることなし、〉

〔比古婆衣〕

〈三〉

p.0602 建内宿禰の名の唱
建内宿禰の名は、兄を味師内宿禰(ウマシウチノスネ)と稱へる味師に對へたる美稱にて、多祁志宇智宿禰(タケシウチノスクネ)と稱ひしなるべし、其はまづ古事記に、兄の名を味師とあるを、書紀には甘美と書き、姓氏録には味と一字に書るをおもふに、宇麻志の志は、甘美の活言なる事著し、弟の名も同じさまに相對へて、多祁志と唱へるに、建字を當て書るなり、書紀などに武字を書るも同じ、かくて其兄弟の名の、味、建、といふに、内の宿禰と引合せて呼べるなり、古事記仁德天皇の御歌に、建内宿禰の事を、宇知能阿曾(ウチノアソ)とよみ給ひ、神功紀に見えたる、熊之凝が、御軍人に向ひて唱へる歌にも、于地能阿曾(ウチノアソ)といへるをも證とすべし、

〔比古婆衣〕

〈三〉

p.0602 倭建命の御名の唱
倭建命の御名、ヤマトタケルと稱し奉たりしなるべし、其は古事記に、此命熊襲建(クマソタケル)兄弟を殺し給ふ時、〈○註略〉弟建が言に、於二西方一、除二吾二人一、無二建 强人一、然於二大倭國一、益二吾二人一、而建男者坐祁里(マシケリ)、是以吾獻二御名一、自レ今以後、應レ稱二倭建御子一云々、故自二其時一稱二御名一謂二倭建命一云々、〈○註略〉と見えたるによりて知られたり、〈○中略〉さて此皇子の御名、書紀に日本武、また餘古書どもに倭武とも書きて、その武字は例にタケ、またタケシなどこそは訓め、タケルとはよむまじきがごと思ふ人もあるべけれど、書紀に梟帥と書るを、既く古事記に、建字を用ひられたるにも准へしるべく、また猛字も武字と同じ義として、つねにタケ、またタケシなどよめど、書紀に五十(イ)猛神(タケルノ)と書るなど、おもひ合すべし、さて又タケルてふ稱の義は、記傳に、威勢ありて、猛き者を云ふ稱なりと説はれたるがごとし、〈○中略〉さて景行紀四十三年、此命の崩給へる處に、日本武尊、化二白鳥一云々、因欲レ録二功名一、即定二武部一也、と見えたる式部を、古訓にタケルベとあり、又出雲風土記に、出雲郷、所三以號二健部一者、纒向檜代官御宇天皇〈○景行〉勅、不レ忘二朕御子倭健命御名一、建部定給、爾時神門臣古禰、健部定給、即健部臣等、自レ古至レ今、猶居二此處一、 故云二健部一、また姓氏録に、建部公云々、日本武尊之後也、など見えたる建部も、みな多祁流倍(タケルベ)と呼べるなるべし、

〔續近世畸人傳〕

〈五〉

p.0603 津田一淸
一淸は、訓じて、ねずみととなふ、

名之用字

〔伊呂波字類抄〕

〈伊/名字〉

p.0603 家〈イヘ〉 宅 彌〈イヤ〉 最〈同〉 今〈イマ〉 未〈イマタ〉

〔伊呂波字類抄〕

〈波/名字〉

p.0603 春〈ハル〉 治 玄 晴 霽 明 流 逡 立〈巳上ハル〉
○按ズルニ、本書伊呂波ノ下、必ズ名字ノ條アリ、今纔ニ一二ヲ録シテ、他ハ總テ省略ニ從フ、

〔拾芥抄〕

〈中本/姓尸録〉

p.0603 人名録
伊 彌(イヤ)〈最末〉 最(イト)〈糸〉 今(イマ)〈末〉 家(イヘ)〈宅屋舎〉 岩(イハ)〈石〉 市(イチ) 入(イル) 磯(イソ) 稻(イネ) 活(イク)〈生〉 池(イケ)
波 春(ハル)〈治玄晴齊明〉 晴(ハル)〈霽〉 橋(ハシ)〈階端〉 原(ハル)〈腹〉 早(ハヤ)隼 花(ハナ) 濱(ハマ)
仁 新(ニヒ)
保 穗(ホ)〈部無レ之〉
土 友(トモ)〈共類丈具奉備那與倶寛朋朝伴寅公知倫兼僚比等誠郡義肥智〉 年(トシ)〈利俊敏聰稔明載歳智逸鏡照詮信章季曉順〉 遠(トホ)〈遐通捨有在茂寛〉 節(トキ)〈論時辰説秋言祝侯者宗國晨朝釋剋解〉 富(トミ)〈福〉 豐(トヨ) 德(トク)〈得〉 虎(トラ) 融(トヲル) 鳥(トリ)〈取〉
知 親(チカ)〈近畿元周凡愼庶隣前愛懷味用身躬子實見恒哉信眞浮邇允〉 千(チ)
奴 主(ヌシ)
遠 男(ヲ)〈雄緒尾臥絃濟臣水〉 大息〈興居起〉 岳(ヲカ)〈岡〉 乙(ヲト)〈音〉 長(ヲサ)〈酉〉
和 綿(ワタ)
加 方(カタ)〈象堅覽朝固 賢命名聲議〉 廉(カド)〈門〉 兼(カヌ)〈包懷説〉 影(カゲ)〈陰景蔭晷〉 金(カネ) 數(カズ)〈員算筭憲毎和量計〉 穎(カヒ)〈柄〉 河(カハ)〈川〉 苅(カリ)〈鴈獦〉
鎌(カマ) 勝(カツ)〈遂葛〉 風(カゼ)〈吹〉 香(カ)〈馨芬芳鹿〉 神(カミ)〈上〉 鴨(カモ) 梶(カヂ) 與 吉(ヨシ)〈 善義好愛珍嘉淑令美宴賀理可慶能榮至由資德穀克與儀懿綏微佳休熙若賴承燕宜喜賢功子命麗時備敬典悦純〉 賴(ヨリ)〈依資縁倚由自繇仍方賢形因寄從〉 米(ヨネ)
淀(ヨド) 世(ヨ)〈代與〉
太 高(タカ)〈隆孝堯尊學敎古楚貴章擧山喬渉懷應標幸卒峯生考等〉 任(タフ)〈堪能塔妙純〉 種(タネ)〈胤殖子〉 忠(タゞ)〈陟正理齊直忽只賢政公渡濟格位匡江睢禪位薫産尹藏唯資身子但紀兄帝孫〉 爲(タメ) 妙(タヘ)〈絶〉 武(タケ)〈高健嵩竹〉 篁(タカムラ) 瀧(タキ) 旅(タビ) 足(タリ) 田(タ) 鷹(タカ)
曾 園(ソノ)
津 純(ツク)〈序續次月系減弟嗣緇樓〉 經〈常恒庸方懷繩昔繼英尋〉 綱(ツナ)〈純繩〉 椿(ツバキ) 鉤(ツリ) 積(ツム) 束(ツカ)〈冢墓〉 圓 津 連(ツラ)〈行貫陣屬列綿宣〉
禰 禰〈根子〉
奈 中(ナカ)〈仲榮〉 成(ナリ)〈平爲作音絡生齊業也登周濟低枚均就得尚有忠〉 永(ナガ)〈長修度脩榮 〉 並(ナミ)〈方甫淵比濤波秘南浪〉 直(ナホ)〈尚猶仍脩庭如君〉 多(ナ)〈聲命稱名〉
夏(ナツ) 繩(ナワ)
羅 良(ラ)
武 宗(ムネ)〈致統棟陳梁胸旨齊順至〉 村(ムラ)〈邑〉 馬(ムマ) 虫(ムシ)
宇 敬(ウヤ)〈禮恭〉 氏(ウチ)〈姓内〉 浦(ウラ)〈上〉 海(ウミ) 牛(ウシ) 魚(ウヲ)
爲 居(井)
乃 則(ノリ)〈憲範規乗章似德法猷政知紀典象孝式位儀經義敎刑度慶令繩昇期明書述朝藝彜軌稚仙考言代記永化至以肖載〉 信(ノブ)〈重陳序延舒順命叙暢書述伸申圓展惟宣遙掃將備所別修演正房總言誠董布攄政〉 宇(ノキ) 後(ノチ) 野(ノ)
久 國(クニ)〈邦一弟乙州郡訓〉 倉(クラ)〈藏庫椋位〉 黑(クロ)〈玄〉 阿(クマ)〈隈曲〉 葛(クズ) 桑(クハ)
也 安(ヤス)〈泰寧保康愷定息毗貫易烈綿行屬連俾綏逸穏縁休豫〉 山(ヤマ) 屋(ヤ)
末 正(マサ)〈雅昌綿齋公匡將當政允童齊理絹均緭藏繩方尹幹鴨賢蔚客〉 全(マタ)〈完益復又增加也〉 麿(マル) 希(マレ) 松(マツ) 間(マ)〈眞〉
計 毛(ケ)
不 房(フサ)〈總〉 文(フン)〈書牧〉 福(フク)〈富〉 藤(フチ)〈淵〉 古(フル)〈舊雨〉 深(フカ) 冬(フユ) 船(フネ) 生(フ) 是(コレ)〈惟維期之伊自此時比實云穴繄右兄〉
江 枝(エ)〈條柯族朶〉 江(エ)〈兄柯柄〉
天 光(テル)〈照昭〉 手(テ)
安 明(アキラ)〈正章信朗詮昭光著行高在顯卿耀諦〉
顯(アキ)〈秋翹卿明朗草曉著昭詮在亮信鏡〉
厚(アツ)〈敦重篤淳涼 〉 有(アリ)〈在茂滿光益順照〉 相(アフ)〈會合遇遘〉 赤(アカ) 肖(アニ)
〈似〉 朝脚(アサアシ)〈足〉
左 眞(サネ)〈實修尚猶誠信核 孚子人〉 貞(サダ)〈定兒慥信〉 郷(サト)〈里隣吏誠〉 逆(サカ)〈酒〉 前(サキ)都〈鋒〉 澤(サハ)
幾 淸(キヨ)〈潔浄聖諦舜〉 木(キ)〈樹材典甲城規起林紀黄息置來鮮藝〉 公(キン)〈君后林〉 菊(キク)
由 行(ユキ)〈足隨于往曲將門致征元戃廉之章至如順幸通由以適雪舒起爲促時運〉
妙 目(メ)
美 見(ミ)〈視子覽身三鑒實躬觀相后皆臣親膽省現鏡〉 光(ミツ)〈舜滿明充仞實泉盈苗三水並看師溢〉 道(ミチ)〈通途廉路達方逕陸徑盈充滿〉 峯(ミネ)〈岑嶺〉 宮(ミヤ)
之 重(シケ)〈滋繁薫成惠段蕃芝茂枝爲兄以包咸誠〉 嶋(シマ) 鹽(シホ)
比 平(ヒフ)〈衡位 枚均成救行〉 廣(ヒロ)〈弘博熙尋寛泰宏汎憙〉 秀(ヒデ)〈英末標季穎淑愷末以下六字或抄末(スエト)注之如何〉 久(ヒサ)〈尚之淹〉 人(ヒト)〈仁者〉 彦(ヒコ)〈孫位〉
毛 本(モト)〈職元幹基資初舊意臺躬苞下〉 諸(モロ)〈衆度誌庶師〉 守(モリ)〈護衞盛積〉 茂(モチ)〈以用望住蔚將持庸式後申荷殖時費〉 百(モヽ)
世 關(セキ) 瀨(セ)〈灘〉
寸 介(スケ)〈祐輔相助佐亮弼爲傳棟毗 延脩右資昌將副扶方翼高伴〉 澄(スミ)〈純有在角栖宥處維隅住〉 末(スエ)〈標季穎 淑〉 菅(スガ) 椙(スギ) 鈴(スヾ)

〔姓名録抄〕

p.0605 俗名
義儀(ノリヨシ) 良々(スケヨシ) 高々(スケタカ) 方々(スケマサ) 信々(サネノブ) 成々(シゲナリ) 孝々(ナリタカ) 令々(ノリヨシ) 敎々(タカノリ) 住々(モチスミ) 甚々(タネタフ) 覺々(アキタゞ) 盛々(シゲモリ) 經(ノリ)經(ツネ) 行々(ツラユキ) 章々(アキノリ) 信々(アキタゞ) 陳々(ツラノブ) 能々(ヨシムネ) 在々(アリアキ) 惠々(シゲサト) 吉々 方々(ヅネミチ) 助々(スケヒロ) 永々(ナガヒラ) 之々(ヨリユキ) 任(タネ)々
實々(ミツカネ) 平々(サネタカ) 至々(ヨシユキ) 能々(ノブタカ) 業々(ナリノリ) 資々(スケヨシ) 薰々(マサノブ) 眞々(サネマサ) 形々(ノリカタ) 君々(スヒキミ) 元々(チカモト) 通々(ユキミチ) 右々(アキスケ)
棟々(スケムネ) 茂々(シゲタカ) 正々(マサタカ) 土々(ノリタゞ) 順々(マサトシ) 載々(ノリトシ) 節々(トモトキ) 慶々(チカヨシ) 智々(トモサト) 爲々(タメヲシ) 理々(マサヨシ) 由々(ヨシユキ) 標々(タカスエ) 信(トキ) 信(アキラ) 直々(タゞナナ) 或々(ノリモチ) 仁々(キミヒト) 知々(トモカズ) 隆々(タカトキ) 修々(ノブナガ) 廣々(ヒロミツ) 明々(アキラミツ) 末々(スエトモ) 適々(ヨリユキ) 象々(ノリカタ) 誠々(サネノブ) 申々(ノブモト)
薰々() 時々(コレトキ) 幸々(ヨシトモ) 村々(ムラスエ) 玄々(ハルツネ) 平々(ヒラヨシ) 泰々(ヤスヒロ) 有々(アリナヲ) 利々(カズトシ) 寛々(ヒロトナ) 秋々(アキトシ) 尋々(ヒロミツ) 自々(コレヨリ)
郷々(サトアキラ) 忠々(タゞツラ) 枝々(シゲエダ) 朗々(トキアキラ) 與々(トモスエ) 作々(トモヲ) 將々(マサユキ)

〔韻鏡諸抄大成〕

〈六〉

p.0606 丈夫依レ性可レ名字之事
水性ノ人 福 木 峯 茂 彌 武 民 八 門 丈 萬 判 伴 卯 馬 名 平 兵
富 以上唇音ノ字ニシテ水ナリ、故ニ水性ノ人ニ比和シテ大吉ナリ、
菊 玉 江 義 龜 五 元 嘉 久 九 牛 金 角 吉 加 勘 彦 源 以上
ハ牙音ノ字ニシテ木ナリ、故ニ水性ノ人ニハ、水生木ト生ズルヲ以テ、武士藝者ニ吉ナリ、
宗 二 松 四 市 庄 助 辰 勝 七 孫 次 千 小 善 佐 常 新 尚 作
淸 甚 十 三 增 以上ハ齒音ノ字ニシテ金ナリ、故ニ水性ノ人ニハ金生水ト生ズ ルヲ以テ、農商職ノ人ニ吉ナリ、
○按ズルニ、此下ニ、火木金土性ノ人、及ビ女子ノ五性ニ由リテ用イルべキ名ノ字アレド、今略 ス、

〔名謁反切樞要〕

p.0606 交名頭字
左衞門 右衞門 兵衞 助 介 丞 太郎 次郎 藏 内 等は、面々の心にまかすべし、姓にかまはず反切する事もなし、又左に記す頭字も、名より體を生ずるも、體より名を生ずるも、又姓と比和するもよし、可レ隨二所望一也、
茂 平 半 文 八 門 彌 萬 伴 卯 兵 武 梅 馬 芳 百 滿 米 房 邦
包 品 麻 豐 福
唇音水性の字なるゆへ金性水性によし、 覺 義 吉 彦 角 介 加 庫 久 源 元 近 郡 嘉 金 吟 九 五 岩 菊
國 幾 由 權 光 磯 江 其
牙青木性の字なるゆへ、水性火性によし、
忠 藤 太 重 理 利 林 二 六 通 治 猪 丑 仲 竹 嶋 蝶 當 侍 多
舌音火性の字なるゆへ、木性土性によし、
與 宇 乙 一 伊 友 幸 喜 安 熊 和 由 好 恒 郷 虎 酉 寅 園
喉昔土性の字なるゆへ、火性金性によし、
新 淸.佐 勝 四 七 三 千 十 小 淺 善 宗 總 甚 作 次 庄 市 常
正 政 松 秋 石 晴 春 積 種 增 辰 才 眞
齒音金性の字なるゆへ、土性水性によし、

〔韻鏡諸抄大成〕

〈六〉

p.0607 勝復之事
先祖ヨリ用ヒ來リタル字、其人ノ性ニアハザルアリ、假令バ木性ノ人ニ、齒音金ノ文字ヲ父字トナス時、名乗ノ父字ヨリ其人ノ性ヲ克ス是凶ナリ、然ドモ此文字ヲ父字ニセネバナラズトアラバ、此父字ニ生ゼラルヽ所ノ唇音ノ文字ヲ母字ニ用レバ、母字ヲ父字ヨリ生ズルヲ以テ、父字ノ氣、自トヨハリテ、其人ノ性ヲ克スル事カナハズ、其上此母字ヨリ其人ノ性ヲ生ズルナリ、是負ベキ所ノ者、復テ勝ト云ヲ以テ、勝復ト云ナリ、例シテ云ハヾ、木性ノ人ノ名乗ニ數敷(カズノブ)ト云ガ如シ、是數ノ字ハ齒音ニシテ金ナリ、此金ヨリ性ノ木ヲ剋ス、然ドモ數ノ字、先祖ヨリノ通リ字ナルヲ以テ父字ニ用フ、故ニ母字ニ敷ノ水字ヲ用テ、父ノ金氣ヲ奪フナリ、是ヲ以テ其人ノ木性ヲ克スル事アタハザルナリ、

〔日用重寶記〕

〈二〉

p.0607 名字俗名の事
百官名の類に、相馬百官と俗呼する、その百官名の類に、諌(いさめ) 勇人(いさめ) 勇馬(いさめ) 武人(いさめ) 五百人(いはと) 夷則(いのり) 意氣揚(いきやう) 射居(ゐをり) 直郎(ろくらう) 正郎(ろくちう) 肇(はじめ) 一(はじめ) 剏(はじめ) 首(はじめ) 一馬(はじめ) 初馬(はじめ) 隼太(はやた) 波門分(はもん) 春門(はると) 八箭(はちや) 端衞(はもり) 獏象(ばくざう) 半象(はんざう) 判司(はんじ) 逸身(はやみ) 平三(へいざう) 平格(へいかく) 平作(へいさく) 亨(とをる) 唱(となふ) 十一(とをいち) 得馬(とくま) 篤磨(とくま) 兎毛(ともう) 兎也(となり) 外也(となり) 外衞(ともり) 登輔(とうすけ) 登身佐(とみすけ) 東作(とうさく) 収(をさむ) 修(をさむ) 音人(おとんど) 男女介(をめすけ) 男也(をなり) 雄也(をなり) 轍(わだち)叶(かなふ) 協(かなふ) 員磨(かずま) 算馬(かずま) 一馬(かずま) 數枝(かずゑ) 算衞(かずえ) 鼎(かなへ) 龜(かゞむ)〈音キン〉 縑(かとり) 珂土里(かとり) 佳盛(かもり) 薫(かほり) 可也(かなり) 可聞(かもん) 可問(かもん) 屯(たむろ) 糺(たゞす) 環(たまき) 丹解(たんげ) 田面(たのも) 但見(たゞみ) 湛(たゞふ) 巽(たつみ) 達(たつす) 太衞(たもり) 泰佐(たいすけ) 泰輔(たいすけ) 園面(そのも) 其母(そのも) 其也(そなり) 外箭(そとや) 十十八(そとや) 都守(つもり) 都賀夫(つがふ) 務(つとむ) 勉(つとむ) 司(つかさ) 職(つかさ) 積(つもる) 半(なかば) 央嶋(なかば) 直人(なをと) 波江(なみえ) 並(ならぶ) 雙(ならぶ) 並重(なみへ) 轉(うたゝ) 宇衞(うもり) 宇治衞(うちゑ) 昇(のぼり) 升(のぼり) 登(のぼり) 騰(のぼり) 織人(おりと) 音也(おとや) 藏紀(くらき) 藏司(くらうず) 競(くらぶ) 久馬人(くめんど) 九三二(くさうじ) 九六二(くろじ) 九二三(くにざう) 族(やから) 箭簳(やから) 舎(やどり) 彌嗣(やつぎ) 矢格(やかく) 眞(まこと) 信(まこと) 匡(まさゝ) 速(まだき) 眞澄(ますみ) 忠一(まめいち)
刑馬(けいま) 景司(けいじ) 慶三(けいざう) 原造(げんさう) 元作(げんさく) 此面(このも) 延象(えんざう) 江守(えもり) 營輔(えいすけ) 營二(えいじ) 新(あらた) 宛(あたか) 恰(あたか) 湊(あつむ) 集馬(あつめ)
中(あたる) 充(あつる) 淳(あつし) 安積(あづみ) 亞良夫(あらふ) 左右馬(さうま) 作馬(さくま) 左治衞(さぢゑ) 左恊(さけふ) 三九二(さくじ) 極人(きわめ) 究(きはむ) 潔(きよし) 競(きそふ)
欣正(きんろく) 舊馬(きうま) 舊直(きうろく) 舊質(きうしち) 勇馬(ゆうま) 往來(ゆきゝ) 佑輔(ゆうすけ) 標(めあて) 恵(めぐむ) 貢(みつぎ) 水門(みなと) 水嘉善(みかき) 滿(みつる) 三二二(みふじ)
主米(しゆめ) 首令(しゆれい) 鎭(しづむ) 靜馬(しづめ) 下枝(しづえ) 島圖(しまと) 圓象(ゑんざう) 衞守(ゑもり) 衞佐(ゑすけ) 衞夫(ゑふ) 永年(ゑいすけ) 弘(ひろむ) 弘人(ひろめ) 廣人(ひろめ)
廣紀(ひろき) 守度(もりと) 護戸(もりと) 索人(もとめ) 百紀(もゝき) 物面(ものも) 最平(もへい) 門司(もんじ) 物集女(もずめ) 千也(せんや) 淸紀(せいき) 箭正(せんろく) 専直(せんろく)
淸(すめり) 澄(すめり) 以上名字名ども、字はよめて惑ふものあり、兒童の爲、こヽにあらましを誌す、

不定名之用字

〔羅山文集〕

〈七十/隨筆〉

p.0608 本朝古人名、改二其文字一者、藤原不比等、初曰レ史、藤原馬養、初曰二宇合一、橘廣相、初曰二博覽一、又 大枝大江、凡河内押河内、山城山背、近江淡海、大和養德(ヤマト)、耶摩堆(ヤマト)之類猶多、皆是郷音之近者、或訓或聲、假二借之一也、又阿部仲滿、一云二仲麻呂一、藤原仲滿、一云二仲麻呂一、麻呂二字、與二滿一字一、通用呼レ之歟、又大己貴神、大汝神、大穴持神、皆一而其字不レ同、亦借訓也、忌曰二由機(ユキ)一、次曰二須岐(スキ)一、後人改云二悠紀主基(ユキスキ)一、而忌與レ齋、共訓曰二由機一、推二上項之例一、而可レ知二倭語之用一レ字、庶乎擧レ一而明レ三也、然則雖二百千一可二以例一焉、

〔延喜式〕

〈二十二/民部〉

p.0609 凡勘籍之徒、或轉二蝮部姓一注二丹比部一、或變二永吉名一爲二長善一、如レ此之類、莫レ爲二不合一、

〔日本書紀〕

〈二十四/皇極〉

p.0609 元年十二月甲午、初發二息長足日廣額天皇〈○舒明〉喪一、是日小德巨勢臣德太(○○)、代二大派皇
子一而誄、 四年六月戊申、中大兄、〈○天智〉使下將軍巨勢德陀(○○)臣、以二天地開闢、君臣始有一説中於賊黨上、令レ知レ所レ起、
○按ズルニ、德太德陀、音讃相通ゼリ、

〔日本書紀〕

〈二十八/天武〉

p.0609 元年六月、大伴連馬來田(○○○)、弟吹負、並見二時否一、以稱レ病退二於倭家一、

〔日本書紀〕

〈二十九/天武〉

p.0609 十二年六月己未、大伴連望多(○○)薨、
○按ズルニ、馬來田望多、音訓相通ゼリ、

〔日本書紀〕

〈三/持統〉

p.0609 四年二月己酉、以二直廣肆藤原朝臣史(フムヒト)一爲二判事一、十年十月庚寅、假二賜正廣參位右大臣
丹比眞人一、資人一百二十人、〈○中略〉直廣壹石上朝臣麻呂、直廣貮藤原朝臣不比等(○○○)並五十人一、

〔續日本紀〕

〈八/元正〉

p.0609 養老四年八月癸未、是日右大臣正二位藤原朝臣不比等(○○○)薨、

〔懷風藻〕

p.0609 贈正一位太政大臣藤原朝臣史(○)五首〈○詩略〉

〔續日本紀〕

〈二/文武〉

p.0609 大寶元年正月丁酉、以二守民部尚書直大貮粟田朝臣眞人一爲二遣唐執節使一、〈○中略〉參河守務大肆許勢朝臣祖父(○○)爲二大位一、〈○位恐誤字〉

〔續日本紀〕

〈三/文武〉

p.0609 慶雲四年三月庚子、遣唐副使從五位下巨勢朝臣邑治(○○)等、自二唐國一至、

〔續日本紀考證〕

〈二〉

p.0609 祖父〈或作二邑治一邦訓通〉

〔續日本紀〕

〈七/元正〉

p.0609 靈龜二年八月癸亥、是日以二從四位下多治比眞人縣守一爲二遣唐押使一、〈○中略〉正六位下藤原朝臣馬養(○○)爲二副使一、

〔續日本紀〕

〈九/聖式〉

p.0609 神龜元年四月丙申、以二式部卿正四位上藤原朝臣宇合(○○)一爲二持節大將軍一、

〔大日本史〕

〈百十四/列傳〉

p.0609 宇合或作二馬養一、尊卑分脈曰、歸レ自レ唐、改二名宇合一、宇合、馬養、音訓相通、

〔東大寺正倉院成卷文書〕

〈十五〉

p.0609 尾張國収納〈正税帳天平六年十二月史生從八位上丹比新家連石麿○中略〉 謹件収納天平六年正税雜充用之狀具注如レ件、仍付二守從五位下勳十二等多治比眞人多夫勢(○○○)一進上以解、
天平六年十二月廿四日 守從五位下勳十二等多治比眞人倓世(○○)

〔績日本紀〕

〈十八/孝謙〉

p.0610 天平勝寶三年正月庚子、踏歌歌頭女孺忍海伊太須(○○○)〈○中略〉授二外從五位下一、

〔績日本紀〕

〈二十三/孝謙〉

p.0610 天平寶字五年六月己卯、賜二外從五位下忍海連致(○)〈○中略〉從五位下一、

〔績日本紀〕

〈二十/孝謙〉

p.0610 天平寶字二年七月丙子、正六位上山田史銀(○)授二外從五位下一、

〔績日本紀〕

〈二十二/淳仁〉

p.0610 天平寶字三年十二月壬寅、外從五位下山田史白金(○○)〈○中略〉賜二姓連一、

擇名

〔江家次第〕

〈十七〉

p.0610 當代親王宣旨事
藏人頭、奉レ仰二上﨟博士一、令レ勘二申御名字一、兼日示二氣色一、當日仰レ之、
博士進二勘文一〈江家不レ注二年月日一〉
三以下〈幷注二本文幷音訓一、有二重紙一、懸紙用二檀紙一、〉
勘申御名字事
某書 某 反 也
同レ上某 反 也
右勘申如レ件
年月日官姓名
頭以二文刺一奏之
於レ定被レ用二嘉名一〈○中略〉
今宮〈正家朝臣擇申〉
宗仁 尊明 後又慶仁 今上〈實綱朝臣擇申〉
善仁 守成
院〈明衡朝臣擇申、後三條院東宮、〉
貞仁 有成 博時
貞尊不レ宜由、公卿等申レ之、〈能長資綱等〉
陽成院 華山院 三條院云々〈幷貞字〉
故院仰曰、還可レ爲レ例、明衡曰、帝王三人、被レ用二貞字一、可レ謂レ無二耻辱一、
後三條院 後冷泉院〈義忠朝臣擇申〉
親仁 尊仁 能成
後朱雀院 後一條院〈匡房朝臣擇申〉
敦成 敦良 敦仁
三條院
一條院〈齊光卿擇申〉
華山院〈同レ上、或説輔正云々、〉
圓融院〈維時擇申〉
冷泉院〈在衡卿擇申〉
維時擇二申故慶賴親王名一、仍在衡卿擇申由、見二九條記一、
村上
朱雀院〈等可レ尋レ之〉
寛明

〔中右記〕

p.0612 元永二年五月廿八日癸酉、雜色相逢云、皇子〈○崇德〉降誕、六月十四日己丑、大學頭敦光朝臣來談云、若宮御名可二擇申一、依レ有二院宣一所二撰申一也、件勘文、内々所二見合一也、顯仁、此字又予〈○藤原宗忠〉披見云、顯仁〈ハ〉反音傾音也、頗勝也、 十六日辛卯、巳時許參院、候二北面一之間、大學頭敦光朝臣、進二若宮御名勘文一、頭辨奏聞、則以二頭辨一被二仰下一、親王宣旨、來十九日也、件日御名字、雖三一日被二沙汰一、當日時刻推遷也、仍兼日一定也、此勘文、心閑見定可レ申者、披見之處、顯仁爲仁也、爲ハ平聲成也、此二字之中、顯仁勝也、就レ中反音傾也、仍顯仁勝之由奏了、頭辨又爲二御使一參二左府一了、後聞左府顯仁宜之由被レ申云々、已叶二患案一也、

〔台記別記〕

p.0612 久安四年七月十三日戊戌、夫人〈○藤原賴長妻〉名字、可二擇獻一之由、使三親隆朝臣仰二式部權少輔成佐一、〈成佐有レ疾、仍不二召仰一、〉 十六日辛丑、親隆朝臣、獻二成佐擇進名字一、令レ見二菅登宣一、〈無官六位〉以二智者一故也、所レ對不二分明一、令レ見二公能卿一、又内二覽禪閤一、〈○賴長父忠實〉問二師安一、皆以爲可レ用二幸子一、即申二禪閤一曰、古者女御内親王等名可レ避歟、西宮文、〈女叙位所〉后之外不レ可レ避由所レ見也者、御返事載レ之、同師安返事同載、勘申御名字事、
能
玉篇曰、奴登反、工也、善也、廣雅曰、能任也、周禮八統四曰、使レ能鄭玄曰.多二材藝一也、
師古漢書註曰、能本獸名、爲レ物堅中而 强力、故人之有二賢材一者、皆謂二之能一、
専
唐韻曰、職縁反、政也、誠也、
杜預傳左傳註曰、専自建也、
賈逵國語註曰、専猶レ擅也、
禮記曰、君専席而酢焉、
毛詩正義曰、夫人専レ夜、
幸 玉篇曰、胡耿反、説文曰、幸而免レ凶也、
如淳漢書註曰、天子車駕所レ至、民臣以爲二僥倖一、故曰レ幸、
右勘申如レ件
久安四年七月十六日 式部權少輔藤原朝臣成佐
能子
専子
幸子
右件名字、不レ當二國母后宮貴女名人等一候、但能子延喜女御也、〈右大臣定方女〉然而就二吉凶一非一名人一候歟、幸子優候歟、男女親王名、近代 强不レ避候歟、盛章敦保敦方等是也、況於二女御更衣一哉、元撰二名字一之時、避二帝王皇宮攝籙大臣名人刑人等一候云々、宜下以二此旨一令二言上一給上、師安恐惶々々、
七月十六日 大外記中原師安〈請文〉
如レ此事不二勘侍一、仍難レ申二進止一侍、但古女御名、無レ所二覺侍一、幸字ハ一切人、吉字知侍ハ、幸字打聞侍に、吉侍者歟、於二深事一者、不二知給侍一也、屋外夜前御返事遲々、
十七日壬寅、名二夫人一曰二幸子一、密問二吉日於陰陽師一、申二今日吉由一仍名レ之、書二幸子二字於一紙一授二夫人一、京極大北政所、延久三年八月廿日名也、承保元年六月廿五日、叙二從三位一、〈本無位〉爰知下非二叙位日名一レ之豫名上レ之、

〔台記別記〕

p.0613 久安四年八月七日壬戌、依レ爲二無レ憚之日一、成佐獻二女子名字勘文一、〈依レ疾不レ來、以レ書獻レ之、〉即問二名於禪閤、攝政殿下、侍從中納言成通卿、大外記師安、駿河守雅敎、前少納言俊通、前能登守孝能、前肥前介賴業、蔭孫菅原登宣一、又泰親問二釋信西一、〈問二嘉事於法師一、専可レ忌レ之、是以如レ余、告二其名於泰親一、問二信西一不レ受二余命一、故不レ稱レ使也、〉各所レ對續二載狀左一、又權中納言公能卿所レ對不レ詳、 勘申
御名字事
荃
唐韻曰、此縁反、香草也、
王逸楚辭註曰、荃、君也、
李善文選註曰、香草也、以諭レ君也、人君被二芬香一、故以二香草一爲レ諭、
多
玉篇曰、旦何反、衆也、重也、大有也、
説文曰、重夕爲レ多、
子夏詩序曰、螽斯、后妃子孫衆多也、
鄭玄詩箋曰、君其子孫衆多、將二日日以盛一、
尚書曰、成周既成、周公作二多士一、
頌
玉篇曰、似用反、形容也、頌二其盛德一、
公羊傳曰、什一行而頌聲作矣、何休曰頌聲者、大平歌頌聲、帝王之高致也、
文選序曰、頌者、所下以游二揚德業一褒中讃成功上、
毛詩正義曰、王功既成、德流二兆庶一、下民歌二德澤一、即是頌聲作矣、又曰、頌之言容、天子之德、光二被四表一、格二 于上下一、無レ不二覆燾一、無レ不二持載一、此之謂レ容、於レ是和樂興焉、頌聲乃作、
右勘申如レ件
久安四年八月七日 式部權少輔藤原朝臣成佐 如レ此事、計申條尤見苦侍、仍不二申侍一也、女子名字床上之可レ被二計仰一候、自二其殿一可レ被レ仰候、付二御使一令レ申候也、以二此旨一可レ被レ申、謹言、
八月七日 賴業
日記賜預了、大治之比抄出、件日失之條、日記未レ歟、重爲二引檢一遣召了、未二持來一之間、自以遲引、名字勘文一見了返奉之、字作幷所レ引之文、皆以神妙、不具、謹言、
荃多頌三字之中、於二多字一者、雖レ無二指釋一、連二多子一之時、頗可レ宜歟、名實賓之故也、
適蒙レ仰不二參仕候一之條、極恐思給候、所勞之條、境節申限不レ候者也、
昨日所二下給候一之御名字勘文一通、謹以返二上之一、先度如レ此沙汰候之條、且面目無レ極、且怖畏不レ少候者也、幼少之昔、雖レ忘二鑚仰一、 强仕之今、都以廢忘、疾逐レ年侵、性經レ日慵候之故也、就レ中於二如レ此事一者、不レ知二子細一候、難二計申一候者也、但廻二愚案一、荃字與二東三條院御名一〈○圓融后藤原詮子〉同音、雖レ可レ爲二吉例一、本文屈原詞、頗不快候歟、多字宜候歟、字作二重夕一、孝武本紀、天子如レ郊拜二泰壹一、朝朝レ日、夕夕レ月云々、頌字作二頁公一也、然則公子之義、不レ叶二皇胤之心一候歟、偏不レ申候者、又依レ有二其恐一如レ形所レ令二言上一也、且所勞之間、委不レ能二引勘一候也、以二此旨一可レ然之樣、可下令二言上一給上候者也、雅敎、誠恐謹言、
八月八日 民部權大輔雅敎上
修理大夫殿
荃字
訓不二分明一、委可一被二尋問一、
頌字
似レ無二其難一
多字 女以二多字一可レ爲レ勝、何況又説文重レ夕爲レ多云々、付一之重レ夕者、専夜之儀也、彌可レ爲二最吉一、
右三字之中、隨二管見所一レ及、注申之狀、如レ件、
久安四年八月七日 前備前權守源俊通
御名字勘文拜見返二上之一、愚案之所レ及、多字優候歟、名字多可レ用二平聲一云々、又親王幷婦人名、訓未レ慥之字不レ用云々、是出公御前、不レ可レ讀レ聲、可レ讀レ訓之故云々、而近代問訓不レ慥字等見候如何、就レ中多字、万佐留(マサル)云訓候歟、彌神妙覺候、子細只今參入、可レ令二言上一候之狀、如レ件、
八月七日 大外記中原師安〈請文〉
荃〈蘭荃一物也〉
左傳
鄭文公有二賤妾一、曰二燕嬉一、〈嬉名燕姓〉夢天使レ與二己蘭一〈蘭香草〉曰、余爲二伯鯈一、余而祖、〈伯鯈、南燕祖也、〉以レ是爲二而子一、〈以レ蘭爲二汝子名一〉以三 蘭有二國香一、人服二媚之一如レ是〈媚、愛也、欲レ令二人愛レ之 如一レ蘭也、〉既而文公見レ之、與二之蘭一而御レ之、
久安四年八月七日 散位孝善
多
玉篇曰、旦何反、〈旦字日下有レ一、何字人可也、日下一人可也、反音既佳歟、〉
説文曰、重夕爲レ多、〈后妃有二王寵一、與御重レ夕、尤可二優美一、〉
毛詩序曰、螽斯、后妃之子孫衆多也、
螽斯之篇、述二后妃子孫衆多一也、大姒爲二文王之正后一生二聖子武王一、子孫衆多而周祚長久也、
多
夫婦之義、以レ愛爲レ先、文既重レ夕、情同専レ夜、加以子孫衆多、后妃至德也、又反音旦何、旦日一、何人可、我 朝日本爲レ號、既日下有二一人一可也、尤叶二其宜一矣、 頌
聖主在レ上、人頌二其德一、以二此文字一爲二其義一、名者定爲二天子之裏一者歟、
荃〈信西〉
文選曰、荃不レ察二余之中情一兮、反信レ讒濟レ怒、是屈原之詞也、此文不吉歟、若是以レ爲二東三條院御名同音 之字一擇申歟、抑後宮、以下從二草合一字上爲レ名之人、贈后茂子、茨子等、於二皇胤一吉例也、至二其御身一者、平生不レ備一 后位一、吉否之間、可レ在二御定一、
多
訓釋雖レ無レ吉、多子之義、可レ謂レ宜歟、
頌
破レ字云二頁公子一、然則公子之義、不レ叶二帝子之心一歟、
八日癸亥、以二成通卿、雅敎、信西、師安、所レ對之書一、奏二法皇一〈○鳥羽〉曰、從二衆議一將レ用二多子一、他小學生、多持二多字一、其書以二鄙生一不レ上、〈以二消息一奏也〉手書報詔曰、尋了名字事、人々多字無難之由令レ申侍者、可レ被レ用二件字一侍事歟、如レ此事者、無二治術一侍事也、以二他事一不レ被二押計一侍事也、端書曰、只打聞侍に、めでたくこそ覺侍、巳刻、使二親佐一、〈親佐、成佐弟、〉問二荃子訓於成佐一、對曰、王逸楚辭註云、荃、君也、加之勘二楚辭一云、荃不レ察二余之中情一云々、其文勢似二訓レ荃爲一レ君、因レ之先師春宮亞相〈師賴〉讀作レ君、復言、先師平生常言、汝若有レ撰二貴女名一者、以二荃頌等字一、就レ中荃字音、同二東三條院御名詮子一、可レ謂二吉例一焉、臣今至二於此一、故守二先師之命一而巳、 九日甲子、今日女子多子、〈年九〉叙二從三位一、〈本無位〉自二昨日一修二除家中一〈大炊御門北、高倉東方一町亭.石大將同居、〉敷レ砂、今朝余出巡檢、午刻右大將來、余示下依二衆議一將レ用二多字一之由上、對曰、諾、未刻範家來、〈先日招レ之〉使三憲親〈布衣〉賜二女子名字一、〈書二多子二字於檀紙一枚一、公親書レ之、無二禮紙一、〉曰、非レ可レ奏二此書一、爲レ令レ知レ汝賜レ之、

〔台記〕

p.0617 久壽元年八月十七日戊戌、新大納言送レ書、傳二法皇〈○鳥羽〉命一曰、永範朝臣擇二申内親王名字一勘文遣 レ之、可レ被レ用レ何乎、但今日親王宣旨延引、
入レ夜新大納言使淸職示曰、明日可レ被レ下親王宣旨御名字、早可二定申一者、申曰、擇二申三字一、皆有レ難、重擇申可レ宜歟、十八日己亥、饗儀了參内、〈○中略〉更闌光賴朝臣來曰、只今新大納言參入、可レ用二壽字一之由所レ申也、余〈○藤原賴長〉答曰、壽者、衞宣公之子、遇レ殺者名也、〈見二桓十六年左傳一〉非レ無二其忌一如何、光賴退告二大納言一、大納言曰、夜及二深更一、不レ能レ奏二鳥羽一、勘レ例統子内親王宣旨後改レ名、依二彼例一今夜用二壽字一、後日改名、何事之有乎、余即著陣、光賴朝臣下二親王名一、余結申、光賴曰、可レ爲二内親王一、余稱唯卷レ之、召二左大辨一下レ之、大辨退下、次光賴來、仰下以二侍從藤原朝臣一〈成通〉爲二内親王別當一之由上、即仰二左大辨一、〈不二召立一〉又示二成通卿一、次成通、公敎、重通、公能等卿、進二射場一奏レ慶、此間余參二鳥羽一〈北殿〉奏レ慶、土佐守季行朝臣〈別當〉傳奏、是大將慶也、此間曉鐘頻報、次昇レ堂、家司職事申レ慶了、余退出、〈東三條〉大將饗三獻間、新大納言奉二院宣一、送二親王名字勘文一曰、依二閤下定申本一勘申、依二壽諱一不レ被レ用、依レ仰重擇申也、見二件勘文一、載二姝擇好三字一、申曰、禮儀中間、不レ能レ勘二文書一、但姝擇無二殊難一歟、如レ此事、被レ問二太政大臣一、被レ用下被二定申一趣上可レ宜歟、 廿九日庚戌、頭光賴朝臣來曰、内親王改二壽子一爲二姝子一〈○鳥羽皇女〉者、示下可二書下一之由上、即書二檀紙一授レ之、

〔兵範記〕

p.0618 久安五年十月十六日甲子、今日左府〈○藤原賴長〉若君、〈十二、信雅朝臣女腹、女院宮仕督殿、〉有二所々昇殿事一、依二入道殿御沙汰一也、〈○中略〉
今朝大學頭維順朝臣、注二獻御名字一、
實家 家敎
皆不レ被レ用之、左府有二御議定一、被レ奉レ定二師長一云々、

〔玉海〕

p.0618 治承三年四月十七日乙巳、此日小童加二首服一、〈○中略〉同刻成光朝臣、令レ進二名字勘文一、須二持參一也、而依二頓病一自二路頭一歸家云々、
良經 經通 家通 右擇申如レ件
治承三年四月十七日 豐前守成光
余〈○藤原兼實〉案レ之、先年三位中將、元服之時、兄長光勘二進名字一、不レ書二右狀年號署所等一、今以如レ此、不レ知二是非一、又署所不レ書レ姓、頗不審也、

〔百練抄〕

〈十四/四條〉

p.0619 貞永元年十一月廿四日庚午、當今〈○四條〉同胞妹親王宣旨也、御名字暐子、式部大輔爲長卿擇申、

〔園太暦〕

p.0619 貞和二年二月廿日、法皇〈○花園〉皇女、今夜立親王事候、御名字課二在成卿一之處、如レ此注進候、何字可レ被レ用候哉、須レ申二入萩原殿一候處、毎事省略、一向可レ令二計沙汰一之由蒙レ仰之間、不レ能下依二遼遠一伺申上候、此内舊字候やらんと不審に候、貴子、後深草院第一皇女に候、但内親王名字、用二舊字一之條例候歟と思給候、就二是非一如二抄物一引勘之條、只今計會事候間、きと申合候也、
被二仰下一候旨畏承畢
内親王御名字事、在成卿勘文、令二拜見一畢、祺字は崇明門院御諱候、貴子は保明太子妃、貞信公〈○藤原忠平〉女に候歟、而後深草院皇女御名字被二採用一候歟、於二内親王御名字一は、 强不レ被レ憚候、可レ在二時宜一候、歟、祝字、元釋神妙に候歟、若未レ被レ用者、今度被レ用候條、可レ爲二何樣一候哉、以二此旨一可レ被二計披露給一候、公賢、誠恐頓首謹言、
二月廿日
大宮宰相殿
勘申
御名字事
貴
陸法言曰、居謂反、高也、
公羊傳曰、子以レ母貴、母以レ子貴、
祝
王仁 曰、之育反、求二永貞一也、
左傳曰、杜預曰、祝上レ壽也、
祺
東宮切韻曰、巨基反、福祥巨孫、納言云、吉祥也、
爾雅曰、麻果云、毛詩壽考惟祺、祺吉也、微之先見也、
右勘申如レ件
貞和二年二月十八日 勘解由長官藤原朝臣在成

〔後深心院關白記〕

p.0620 應安四年三月十日甲午、頭中將宗泰朝臣、爲二勅使一來、宮〈○後圓融〉御名字、〈勘文在レ之〉可レ被レ用二何字一乎、可二計申一、答下加二思案一上可レ申之由上、
頭書云
勅問人々 關白 前相國 内大臣 藤中納言云々
勘文如レ此、字訓相尋、勘者所二注付一也、
勘申
御名字事
昭(テル)仁
廣韻曰、昭、上遙反、日明也、著也、
左傳曰、五色比レ象昭二其物一、 東宮切韻曰、理二政事一而至二成功一、謂二之仁一、
爾雅曰、大平之人、仁也、
成(フサ)仁
東宮切韻曰、陸法言曰、成、市征反、就也、平也、善也、
尚書曰、地平天成、
緒仁
玉篇曰、緒、似呂反、
東宮切韻曰、事也、録也、
毛詩曰、纉二禹之緒一、
右勘申如レ件
應安四年三月日 正三位行勘解由長官菅原朝臣高嗣
十二日丙申、裏書云、
余申詞如レ此〈注二折紙一〉
御名字事
昭字成字、字訓共以不レ相二叶引用書之義一、緒字無二殊難一乎
廿四日戊申、御諱被レ用二緒字一云々、愚意之所存、無二相違一歟、

〔建内記〕

p.0621 嘉吉元年八月十六日庚辰、月輪中將家輔朝臣、爲二殿下〈○二條持基〉御使一來、武家御名字事、任二鹿苑院殿〈○足利義滿〉御例一可レ被二計申一由、有二其沙汰一之間、雖レ有二斟酌一、任二佳例一申沙汰也、仍爲淸卿撰申内、可レ有二淸撰一、難二心得一之段、先度事舊了、可レ被二如何一哉、此内可レ申二寮見一之由承之、
義行〈切 身長好貌〉 義敏〈切釿〉 〈齊也、劑斷也、劑分劑也、〉
義繁〈切元〉 〈元、善之長也、〉
義勝〈切凝〉 〈水竪也、結也、成也、定也、嚴整之貌、〉
義種〈無形〉
義豐〈切 〉 〈獸似レ豕〉
義富〈切 〉 〈仰鼻也〉
義淸〈無形〉
義行 中將云、九郎判官〈○源義經〉没落之彼、一旦稱之由有二或説一云々、予〈○藤原時房〉申云、然者不二思寄一 事也、朝敵不レ可レ然、
義敏 此反字、分際ヲ定タル樣ナリ、可レ有レ憚歟、
義繁 此反字、尤可レ然、但新田先祖義重、可レ爲二如何一候哉、無益歟、可レ有二評義一歟、故道孝禪門名字、
初義重、後義敎也、義敎先御代爲二御名字一、又以二義重之同訓一可レ爲二御名字一事、不レ可レ有レ憚哉、 同可レ有二御沙汰一之由申レ之、
義勝 者、一色故六郎早世之名也、可レ憚之由先御代有レ仰、今更難レ被レ用レ之、
義種 志波故修理大夫名字也、有二何事一哉、無難候人也、然而如何、
義豐 先御代及二御沙汰一了、 ハ唐人ノ食メル獸ナリ、好レ雨、クサク穢ラハシキ獸トテ、不レ被 レ用レ之、然者難レ被レ擧歟、
義富 者、反字之訓ハスキレ鼻歟、難レ用レ之、
義淸 者、武家逸見小笠原等元祖歟、無二其難一之人歟、不レ知レ之、被二相尋一之、可レ有二御沙汰一哉、
所詮只今八之内、五者巳有二子細一歟、義繋義種義淸三之内、猶可レ有二評定一哉之由申了、今日中山宰相中 將〈定親卿〉參二執柄一、可二申談一之由申レ之由、中將所レ語也、
十九日癸未、今日巳刻、御名字治定、御叙爵宣下也、〈○中略〉關白〈持基公直衣〉參内、被レ申二彼御名字事一、被レ染二宸筆一、貞治鹿苑院殿、應永普廣院殿〈○足利義敎〉如レ此、關白於二議定所一有二御對面一、中山宰相中將、〈定親卿〉參仕申二次之一、關白直給レ之、令レ持二向室町殿一給、御名字、關白被二計申一之、但大藏卿爲淸卿、以二儒卿之謂一、如二反音一注進之、去十六日、中山宰相中將參二執柄一有二評定一、大外記業忠、參二關白一有二淸撰一、且如二管領一被レ候、被二仰談一之談仰歟、以二義勝一被二治定一者也、反字凝、〈水堅也、成也、定也、〉此二字、先年於二執柄一被レ撰レ之其内也、今度爲淸卿成二上勘文一、只儀式許云々、於二勘文一者、字釋載レ之、於二宸翰一者、只義勝二字也、〈以二立紙一、有二裹紙一、令レ書御、〉

〔親長卿記〕

p.0623 文明四年八月十一日、晝以後參内〈直衣〉新大納言、〈敎秀〉廣橋大納言〈綱光〉等祇候、〈各下姿〉條條談奏聞、〈○中略〉
一親王御名字事、〈高平、雅明、通堯、〉前菅大納言〈益長〉草進也、〈○中略〉
親王御名字事、高平可レ然、〈雅明事、爲二親王御名字一之由予出之、引二見御系圖一之由依レ仰、於二御前一引レ之、醍醐天皇御子雅明也、〉仍被レ定二高平一了、

〔親長卿記〕

p.0623 文明十二年十二月八日、親王宣下、依二御名字勘進遲々一延引、可レ爲二十三日一云々、十二日、依二若宮御名字事一方々尋之、〈勅問〉巨細在レ別、 十三日、御名字猶未レ定、令二治定一者、可レ進二勘文一之由、菅中納言〈在治〉被二重勅問一、及二晩頭一御返事到來、勸修寺大納言申送云、歡樂〈餘醉々々〉之間、直可二奏聞一云々、予持參、〈昨日御申詞、今日重申詞等持參、昨日只御名字許、被レ注二料紙一各申了、〉〈各々寫之各進了、今案、依急事如此沙汰了也、後度注引文、〉申詞如二昨日一之由各被レ申、
勅問人數
禪閤〈御輕服 勝仁、貞高、英仁、〉太閤(二條)〈御輕服 英仁、勝仁、〉九條前關白〈政基 貞高、英仁、〉關白〈政家、勝仁、〉西園寺前内大臣〈實遠、 (カタ)仁、〉
勝仁、小人之俗難有レ之、不レ謂之由禪閤被レ申、兩三人擧奏之間、可レ爲二勝仁〈○後柏原〉云々、
仰二官〈宣旨用意〉幷勘者一了
抑御名字事、奉行職事、可二仰勘一者歟之由存之處、傳奏直申之處、臨二勅間之期一、申二奉行一之條不レ得二其意一、可 レ給二御敎書一之由、菅中納言〈在治〉申之、〈○中略〉元長自二御所一申二出高檀紙一書二御名字一、〈勝仁 二字許也〉

〔陰德太平記〕

〈三〉

p.0624 丹比松壽丸元服附明人相二人相一事
永正八年、丹比松壽丸、十五歳ニ成給ヘバ、元服可レ有トテ、此由母公ヨリ佐藤ノ某ヲ京都ヘ上セ、舎兄毛利備中守興元ノ許ヘ宣ヒ送ラル、興元、吾ヲ少輔太郎ト稱シケル間、松壽丸ハ、少輔次郎ニテゾ有ベキ、實名ハ元ノ字ハ當家ノ字ナレバ不レ及レ云、下ノ字ハ、東福寺ノ彭叔和尚ヘ尋ネ候ヘト宣フ、佐藤、頓テ惠日山ヘ立越、吉侍者ヲ以テ、實名幷ニ本卦ノ事ヲ申入タリケレバ、和尚、韻經及周易ヲ考ヘテ、實名ハ元就ト可レ被レ稱、又本卦ハ師ノ卦、上六ニ充テ候、上六ハ、大君有レ命、開レ國承レ國、小人勿レ用トアリ、如何樣、名大將ト成テ、數箇國ヲ切隨ヘ給フベシ、但今庶子ニ生レ給タリト雖、宗領家相續シ給ベキ本卦ニテ候トゾ被レ答ケル、斯テ佐藤、吉田ヘ下リ云々ノ由反命シタリケレバ、頓テ松壽丸殿元服有テ、丹比少輔次郎元就ト稱シ給フ、

〔尚通公記〕

p.0624 永正九年二月十六日壬辰、頭辨伊長朝臣來、有二勅問之事一、若宮〈○後奈良〉御名字事也、菅中納言〈○和長〉勘進之也、加二愚案一可二申入一由令二返答一、勸二一盞一、
御名字事
知仁(トモヒト)
廣韻曰、知、陟離切、覺也、欲也、
禮記曰、序二其禮樂一、備二其百官一、如レ此而后、君子知レ仁、注曰、知レ仁知二禮樂所一レ也、又中庸篇曰、舜其大知也 與、好レ問而好察二邇言一、
廣韻曰、仁.如鄰切、仁賢、
禮記曰、仁者、右也、道者、左也、仁者、人也、道者、義也、
恭(ウヤ)仁〈字哉(ウヤ)也〉 廣韻曰、恭、九容切、恭敬也、
毛詩曰、賓之初筵、温温其恭、
禮記曰、〈中庸篇〉君子篤恭、天下平、
齊(クゞ)仁〈多太(タゞ)也〉
玉篇曰、齊、在奚切、美貌、
毛詩曰、人之齊聖、注曰齊正、
禮記曰、〈中庸篇〉齊明盛服、非レ禮不レ動、所二以修一レ身也、
誠(サネ)仁〈佐禰(サネ)也〉
玉篇曰、誠、時征切、實也、信也、
韻會曰、伊州程氏曰、無レ妄之謂レ誠、
禮記曰、〈中庸篇〉誠者、天之道也、誠レ之者、人之道也、
正明(マサアキラ)
禮部韻曰、正、之盛切、中正、正者無レ邪也、君也、長也、定也、平也、正直曰レ正、又當也、
毛詩注曰〈關睢篇〉君臣敬則朝廷正、朝廷正則王化成、
禮記曰、官職相序、君臣相正、國之肥也、
廣韻曰、明、武兵切、光也、照也、通也、
毛詩曰、明明上天、照二臨下士一、
禮記日、君者、所レ明也、非二明レ人者一也、注曰、明猶レ尊、
權中納言兼大藏卿菅原和長
十八日甲午、若宮御名字、申詞以後、示二遣甘露寺一、申詞如レ此、 御名字勘進内、可レ被レ用二何字一哉事、
知字、龜山院皇子御名字也、既非二吉例一、何被レ用二同字一耶、
恭齊兩字、其訓頗可レ有二俗難一、殊齊字反音神也禮部韻曰、神靈妙不測云々、最有レ憚者乎、
明字、聖代及一度々一、爭被レ棄二置之一、但近代不レ避二仁字一之上者、用捨叵二計申一焉、
誠字、後三條院皇子御名字實仁也、雖レ爲二同訓一、可レ被一宥用一哉、禮記曰、禮不レ諱二嫌名一者、其謂レ之歟、仇對二實 字一、不レ可レ諱二誠字一、則禹與レ雨之類也、此外 强而被二採用一者、雖レ存二子細一可レ爲二恭字一歟、猶宜レ在二聖斷一矣、
三月十四日己未、從二禁裏一以二頭辨伊長朝臣一、御名字重勘進内、可二計申一由被二仰出一候間、從レ是可二申入一之由、令二對面一令二返答一、
勘文
御名字事
持(モチ)仁
玉篇曰、持、直之切、握也、
孝經曰、道者扶二持萬物一、
定(ヤス)仁〈耶須(ヤス)也〉
廣韻曰、定、徒徑切、安也、
禮部韻曰、定、安也、
毛詩曰、共二武之服一、以定二王國一、〈箋曰、定、安也、〉登(モロ)仁〈毛呂(モロ)也〉
廣韻曰、登、都滕切、成也、衆也、
禮部韻曰、登、衆也、熟也、 禮記曰、農乃登レ穀、天子嘗レ新、
權中納言兼大藏卿菅原和長
十八日癸亥、申詞進二伊長朝臣許一、使俊永也、
御名字、重勘上内、可レ爲二何字一哉事、
持字、高倉宮御名字、以仁也、其訓既相通、可レ謂二不快一、何致二撰用一也、
定字、是又其訓通、康仁太子諱之間、可レ有二其憚一之由存レ之、
登字、奉レ稱二一人一之所、其訓頗有二俗難一、三字共叵二計申一、猶可二撰申一之由可レ被二仰下一耶、
管見所二窺定一、有二魯魚迷一哉、宜レ在二時誼一矣、四月九日癸未、基規朝臣來云、昨日午刻宣下、〈○中略〉
御名字知仁云々、内々以二元長卿一、一條前關白〈江〉御談合云々、彼前關白、内々被二擧申一候歟、古來俗難、 殊以龜山院皇子不レ及二讓位一、頗可レ謂二不快一歟、不レ足レ言之、

〔宣胤卿記〕

p.0627 永正十四年二月六日、大藏卿狀到來、
一條殿名字事、先度承二尊意一之已後、猶以雖二勘試候一、此五字之外、不レ及二了見一次第候、先度申談候御字 共者、如レ是之難共候間、是又不レ及レ力候、御家字於レ難レ得者、室町殿御字、可レ被二申請一候哉、是又無レ力次第 候歟、仍此一紙註調候、可レ得二尊意候也、誠恐謹言、
二月六日 和長
中御門殿
嗣良〈切常〉嗣平〈切 〉兼藤〈切 〉内冬〈切農〉内良〈切孃〉
巳上此外者無レ字二于勘一レ之候
房忠〈此字雖二宜候一、二條名字、打返之間、於二加冠人一者、不レ可レ然條、難レ用存候、〉
兼長兼賴冬賴〈此三字事、惡左府已來、賴長二字、不レ可レ用之由庭訓之條、無二了見一候也、〉
兼冬經冬〈此兩字、反切字攻也、是不二了見一候、〉
右前件字、如レ是之條、前五字之内、可レ爲二如何一候哉、雖二新字一於レ無二其字一者、可レ被レ用事候哉、藤字事、可レ爲二如何一候哉、攝家無二其例一之段雖レ無レ紛、難レ得之時不レ可レ似レ被レ用二不吉例一歟、
又就レ無二其字一、雖二不吉例一、可レ被レ申二武家御字一歟、然者此等字如何、
稙嗣〈切置〉稙冬〈切冬〉稙房〈切張〉稙忠〈切中〉稙良〈此字武家御字、打反同訓之間不レ可レ然候歟、仍不レ可二注進一存候也、〉
今日令二物詣一、只今芳問令二披見一候、彼御名字事、端五内者、内冬内良、尤可レ然存候、室町殿御字五内、端四各宜存候、其内房字、無二庶幾一之由、就二他事一先日大納言殿仰候シ歟と存候、兩端可レ被二甲談一候哉、及二黄昏一候間、馳レ筆申候、恐惶謹言、
二月六日 乗光
嗣良〈後普賢寺關白、本名 嗣也、打反不二庶幾一、丞相名字、打反用レ之事、於二他家一者連綿、於一攝家一モ未レ無二其例一、先日注内、房 有レ之、殊先祖字打反事無レ例事也、其旨令二演説一了、〉
兼藤〈藤字於二攝家一無レ例、不レ可レ用之定、土佐房冬、元服之時、後妙華寺殿承了有二御狀一、其時大藏卿勸進内、房藤有レ之故也、凡諸家藤字、多不快也、當家ニハ經藤藤房藤長、〉
一内字事、一條殿流、内實内嗣不快也、芬陀利華院關白〈内經〉嘉例也、
一室町殿御字事、政房不吉也、於二兵庫一有二横死一、敎房公、又難レ謂二吉例一之由、大納言殿演説勿論也、依レ之房 字無二庶幾一也、
十九日、一條殿御狀到來、
若公御名字事勘進候、此内申談候へども、程にまいらせ候、此方の心中、いづれもにて候、さりな がら取分、初後二之間歟と存候、〈○中略〉謹言、
十九日 房家
中御門殿 兼藤〈切 〉嗣良〈切常〉房通〈切蓬〉 此三注二折紙一、和長卿進レ之、
御書畏拜見候、御名字事、三内、奥尤可レ然存候、下通字、御先祖度々御佳例候、藤字事、攝家無レ例候間、 難レ被レ用之由、故御所被二仰置一候御書(土佐御方御所元服時、御談合、)所持候、其外又存旨候、粤不レ能一左右一存候、猶可レ被二仰談一候哉、内々 可レ得二御意一候、恐々謹言、
二月十九日 乗光
御返事
平松少將殿
四月卅目、今夜一條若公〈九才〉御元服也、〈○中略〉一御名宇和長卿注進、〈房通〉

〔國師日記〕

p.0629 元和六年九月五日、御城〈江〉被レ爲レ召、出仕大炊殿、上野殿、對馬殿、御奏者にて御對面、若君樣、御國樣御名乗字、切可二申上一由被二仰出一、
家忠〈如レ此引合、一重ニかき、上包シテ上候、〉 忠長 如レ上
公之字 章之宇
右御意に入、則書付阿備州〈江〉渡候而、傳奏〈江〉被レ爲レ見候樣にと御諚候、
若君樣 御國樣
家忠(御名乗)〈如レ此引合一重ニかき上包シテ阿備州〈江〉渡ス〉 忠長(御名乗) 如レ上
右阿備中殿〈江〉渡退出、又備州御望にて右のごとく書て渡候、是は内證、先傳奏〈江〉見せ申度由 也、御官位若君樣者大納言、御國樣は宰相也、
六日、於二御城一御年寄衆對談、先日之若君樣御名乗、花山ノ元祖ニ在レ之由、傳奏衆之中上由也、則御名乗七ツ書付、字切ヲ見テ掛二御目一候、家光岡ノ字ニ切ル、御意ニ入、則書付ル、大高一重二ツ折ニシテ書之、御國樣ノモ先日ハ引合ニ書候而、大高ニ同前ニかきなおす也、かきやうも同前也、大高ハ御前 ゟ出ル、御右筆衆持て出ル、停書也、

〔基熙公記〕

p.0630 延寶七年十一月廿二日癸丑、新院〈○後西院〉より姫君へうつぼ物語等白銀等拜領、御使平松前中納言、女房姫君等對面、此序姫君名之事、若於二江府一可レ被レ定歟之由、此中風聞之間、令二平中納言勘一レ之、重而可二書進一之由有二領狀一、 廿四日乙卯、從二平中納言一有レ文、姫君名字撰給、房(フサ)、隠(ヤス)、定(サダ)、常(ツネ)、繁(シゲ)、常、殊宜之間令二治定一了、

〔宗建卿記〕

p.0630 享保十九年四月四日、内々殿下、〈○近衞家久〉以二宗建一右被二申上一之條令二言上一後、殿下以二紙面一被レ附二宗建一被二申願一、來廿一日、御息被レ加二元服一之故也、
名字事
右家熙元服之時、勅撰賜二宸翰一、元祿年中、家久加二首服一、内々注進賜二御點一、今度任二祖父例一、宸筆願存候、〈○中略〉
名字事、若於二御尋一者、所存者、左之名字之内、被レ任二叡慮一於二宣下一者、猶以可二畏存候由也、
内前 稙久 基前 内前二字有二勘物一、古文内前行、〈略之〉
廿一日、關白殿下若君有二御元服事一、〈○中略〉大夫殿御名字内前、去十九日、勅撰被レ染二宸筆一、殿下御參被二申出一之了、是陽明〈○近衞家〉近代例也、

〔大江俊矩記〕

p.0630 文政元年九月廿四日己未、太田勘解由先日賴越名乗字幷華押之事考遣、今日八太郎へ渡遣了、
誠久(ミチヒサ) 〈歸納〉 受〈○華押略〉
中庸云、至誠無レ息、不レ息則久、

命名

〔御産の規式〕

p.0630 小兒に名をつくる事
一小兒に、をさな名を付る事は、七夜につくる也、名のなき程は、若子とよび、主人の子をば若君とよぶ也、名は父の心にまかせて、何なりとも付らるヽなり、又家により、定りたるをさな名あり、父 の方より名を折紙に書て、大刀刀などそへて參らせらる、をさな名は、或は松竹鶴龜などの齡久きもの、又は百千萬の多き數、四季の名物などの名をとる事定法なし、をさな名は、何麻呂と名づくる事本也、後に元服して男になりたる時、何太郎、何二郎、何三郎などヽ名を付也、〈源氏は源太郎、平氏は平太郎などヽ云なり、〉是をゑぼし名といふ、其時實名をもつくる也、をさな名、何太郎、何次郎などいふ名をつくるは非なり、

〔徒然草〕

〈上〉

p.0631 人の名も、めなれぬ文字をつかんとする、益なき事也、何事もめづらしきことをもとめ、異説をこのむは、淺才の人のかならずある事なりとぞ、

〔元服法式〕

p.0631 元服次第〈○中略〉
一元服以前は實名(ナノリ)なし、元服の日、加冠の人の名のり字を申受て、家の通り字ある人は、その通り字と、とり合せて實名をつく也、又主君の御一字を拜領して、名乗る事も有、〈○中略〉
一主君へ御字の儀、願ひ置たらば、主君の御館へ出仕して、御字御腰物等給る也、公方樣より御字拜領の事、折紙に被レ遊候て、御大刀又は御腰物にそへられ候て、御盃頂戴の時に、直に被レ下候を、一ツに取ていたヾき、御字をば左の手に持退出候、御腰物そへられ候事は、まれの儀に候、先御大刀計に候、御腰物そひ候時は、大刀のおびとりの間にとりそへ退出候、
一公方樣へ御字申請る事、兼日申上候時、下の字、何と申字と申上、二字ともに御筆を染られ被レ下候事も有レ之、只御一字計御筆を染られ被レ下候事通法にて候、御字の折紙は引合也、御字を上におき、下の字は、我家々に定る字を付く事勿論也、

〔刊謬正俗〕

p.0631 名字類
禮郊特性、冠而字レ之、敬二其名一也、鄭玄註云、重乙以下未二成人一之時上呼甲レ之、冠義、已冠而字レ之、成人之道也、左傳、申繻曰、名有レ五、有レ信有レ義有レ象有レ假有レ類、以レ名生爲レ信、以レ德命爲レ義、以レ類命爲レ象、取二於物一爲レ假、取二於父一爲レ類、 不レ以レ國、不レ以レ官、不レ以二山川一、不レ以二隠疾一、不レ以二畜牲一、不レ以二器幣一、内則、凡名レ子不レ以二日月一、觀レ此則名字之義、各有二深意一、今按、所レ謂名者今之實名也、俗或曰二名乗一、字者今之假名也、俗或云二俗名一、〈凡平生對レ人稱呼者、是爲レ字也、〉國人命レ名.不レ顧二其義如何一、徒合二兩字一以自命、殊無二意義一、顧レ名思レ義之義、何在哉、有レ志之士、須レ擇二二字相適者一、或剪二截經書中字樣一、以自命レ名可矣、

〔禮記〕

〈二/内則〉

p.0632 子生、〈○中略〉三月之末、擇レ日剪レ髪爲レ鬌、男角女羈、否則男左女右、是日也、妻以レ子見二於父一、〈○中略〉夫入レ門升レ自二阼階一、立二于阼一西郷、妻抱レ子出レ自レ房、當レ楣立東面、姆先相曰、母某敢用二時日一、祇見二孺子一、夫對曰、欽有レ帥、父執二子之右手一、咳而名レ之、妻對曰、記有レ成、遂左還授レ師、子師辯告二諸婦諸母名一、妻遂適レ寢、夫告二宰名一、宰辯告二諸男名一、書曰、某年某月某日某生而藏レ之、宰告二閭史一、閭史書爲レ二、其一藏二諸閭府一、其一獻二諸州史一、州史獻二諸州伯一、州伯命藏二諸州府一、夫入食如二養禮一、
世子生、則君沐浴朝服、夫人亦如レ之、皆立二于阼階一西郷、世婦抱レ子升レ自二西階一、君名レ之乃降、適子庶子見二於外寢一、撫二其首一、咳而名レ之、禮帥レ初無レ辭、
凡名レ子、不レ以二日月一、不レ以レ國、不レ以二隠疾一、大夫士之子、不下敢與二世子一同上レ名、

〔隨意録〕

〈七〉

p.0632 名字之制、初生之時、父名レ之爲レ名、冠而名レ之爲レ字、漢世以來、或舎二其幼名一、而改レ名者亦有焉、凡冠以後、自レ己稱レ名、自レ他稱レ字、禮也、然尊貴之於二卑賤一、則皆呼二其名一也、我方之俗、初生所レ名以爲二俗名一、而自他與稱レ之、冠而所レ名、以爲二實名一、俗謂二之名乗一、若有レ所レ敬、則稱二其實名一、而其謂二之名乗一者、何謂也、予〈○塚田虎〉按.我方古言、謂レ告曰二能留(ノル)一、如三萬葉集曰二家農禮名農禮(イヘノレヽナノレ)一、告レ家告レ名之謂也、故後人之言、亦初相見曰二名能留(ナノル)一、則告レ名也、斯名自レ己告之義、乃俗謂二之名乗一者、方言訓レ乗曰二能留(ノル)一、假字耳、字素當レ爲二告名一、爲二名告一逆也、不レ知者、不レ爲下謂二實名一曰中名乗上、可レ笑也、

〔古事記傳〕

〈二十〉

p.0632 凡て古の御代々々の王等〈皇子皇女男王女王等を、古は凡て王と云へり、〉の御名に、種々の色あり、今茲に其大概をいはヾ三種なり、一には由縁に就て諸物名など以てつけられたる、二には居地名を以 申せる、三には美稱(ホノタヽヘ)て付奉れるなり、王等のみならず、凡人の名どもヽ、大方此三種なり、さて此三色の例を一〈ツ〉二〈ツ〉づヽいはヾ、垂仁天皇の御子、火中(ホナカ)に生坐し故に、本牟智和氣(ホムチワケノ)御子と著られ、景行天皇の御子、雙生坐るを、父天皇異坐(アヤシミ)て碓(ウス)に誥(コトアゲ)し給へりし故に、大碓(オホウスノ)命小碓(ヲウスノ)命と申し、應神天皇は生坐し時に、御腕に鞆(トモ)のごとくなる御肉の坐ける故に、大鞆和氣(オホトモワケノ)命と申し、仁德天皇と建内宿禰の子と、同日に生坐て、木兎(ツク)と鷦鷯(サヾキ)との祥ありしに因て、其祥を相易て、御子を大鷦鷯(オホサヾキ)、建内宿禰の子を木兎(ツク)と名け坐し、淸寧天皇は生坐ながら、御白髪坐ける故に、白髪(シラガノ)命と申し、反正天皇は御齒の奇(クシ)びに坐しに因て、水齒別(ミヅハワケノ)命と申しヽが如きは、由縁の物名を取て著け奉れりし證例なり、又聖德太子は厩の戸にして生れましヽ故に、厩戸(ウマヤド)と申し、天武天皇の御子大伯(オホクノ)皇女と申しヽは、備前國の大伯(オホクノ)海にして生坐しヽ故の御名なる、是等も處名ながら、猶由縁に就きたるなり、次に開化天皇の御孫、沙本毘古(サホビコノ)王の沙本(サホ)に坐し、〈此王、垂仁天皇を弑せ奉らむと謀ける時に、天皇の大御夢に、抄本(サホ)の方より暴雨降來と見坐しヽこと見ゆ、〉應神天皇の御子、宇遲能和紀郎子(ウヂノワキイラツコ)の山代の宇遲(ウヂ)に坐し、仁賢天皇の御子春日(カスガノ)山田〈ノ〉郎女の春日(カスガ)に坐し、〈書紀繼體〈ノ〉卷に、勾〈ノ〉大兄〈ノ〉皇子の此皇女を妻問坐る御歌に、春日(ハルヒ)の春日(カスガ)の國にくはし女をありと聞て云々、〉雄略天皇の大后、若日下(ワカクサカノ)王の河内の日下(クサカ)に坐る、〈天皇此后の御許に、日下に幸行しヽ事見えたり、〉又此天皇長谷(ハツセノ)宮に坐しヽ故に、大長谷若建(オホハツセワカタケノ)命と申し、安康天皇は石上(イカミノ)穴穗(アナホノ)宮に坐る故に、穴穗(アナホノ)命と申しヽ類は、皆居地名を以申せる證例なり、又舒明天皇の御子、蚊屋(カヤノ)皇子は、吉備國の蚊屋(カヤノ)采女が腹、天智天皇の御子、伊賀(イガノ)皇子は、伊賀(イガノ)采女が腹より生坐る、此等は御母の本郷の名を取れる御名と聞えたり、

〔玉勝間〕

〈十四〉

p.0633 今の世人の名の事
近き世の人の名には、名に似つかはしからぬ字をつくこと多し、又すべて名の訓は、よのつねならぬがおほきうちに、近きころの名には、ことにあやしき字、あやしき訓有て、いかにともよみがたきぞ多く見ゆる、すべて名は、いかにもやすらかなるもじの、訓のよくしられたるこそよけれ、 これに名といふは、いはゆる名乗實名也、某右衞門某兵衞のたぐひの名のことにはあらず、さて又其人の性といふ物にあはせて、名をつくるはいふにもたらぬ愚なるならひ也、すべて人に火性水性など、性といふことはさらになきことなり、又名のもじの反切といふことをえらぶも、いと愚也、反切といふものは、たヾ字の音をさとさむ料にこそあれ、いかでかは人の名、これにあづからむ、

〔年々隨筆〕

〈三〉

p.0634 此ごろ此江戸人の名には、をさ〳〵つかぬもじをつき、又輔(スケ)、祐(ジヤウ)などかならず書くまじきもじをかき、あるは阿畑、根住などやうに、人の名ともきこえぬ事をぞなのるなる、おろかにつたなき事、いふばかりもなくて、いと〳〵わろきならひ也、

〔燕石襍志〕

〈一〉

p.0634 苗字
往古は、人の名も今には同じからで、或は文字の音をもてしるし、或は文字の音と訓とをもて併せしるし、その人の隨意記しにければ、文字の數も定らず、五十四代仁明天皇の御代より、今の代の人の如く、多くは文字の訓を取て、二字を用ひることにはなりぬと、神皇正統紀にしるされたり、將安康雄略以降、三公百官、草木魚鳥をもて名とするありけり、その十が二三をいはヾ、雄略より、推古の間、大臣に眞鳥(マトリ)、馬子(ウマコ)等あり、仁賢天皇の四年鮪(シビノ)臣謀反によつて誅に伏す、元明天皇の和銅元年四月、從五位下柿木猿(サル)卒、考謙の御時に、柿本枝成、文德の御時に、橘百枝、南淵永河、淸和の御時に、卜部乙屎麻呂、下野の屎子等あり、みな是國史に載る所也、この餘、木兎、魚養、犬養、堅魚、眞鯨等、勝ていふべからず、亦數十代の御代を經て、正親町院の永祿の比より、諸國の武士等に、奇異なる名おほかり、その十が二三をいはヾ、山中鹿〈ノ〉介幸盛、秋宅庵〈ノ〉介、寺本生死〈ノ〉介、尤道理〈ノ〉介、藪中 〈ノ〉介、小倉鼠〈ノ〉介、山上狼右衞門、〈以上尼子家臣〉この餘、朝倉家の十八村黨、河野家の十八森黨、大内家の十本杉黨、吉見家の八谷黨、尼子家の九牛士、里見家の八犬士、枚擧に遑あらず、こはみな軍陣に臨て、名告るとき、 敵にわが名をおぼえさせん爲也とぞ、戰世には武備あまりありて文備なし、その名の野なる心ざまの猛きさへ推てしらる、

〔磨先韻鏡〕

〈下〉

p.0635 韻鏡索隠
反切者、古人創制、以音二註于文字一諸韻書所レ載是也、〈○中略〉近世悞爲レ反二切名諱一、而偶歸二空圍一、則倣レ有二往來寄韻等例一、牽 强以求レ字、徒是兒戯耳、曷知古人依二方音一而反切成レ異、是以後人立二變例一也、未レ聞三華人反二切名諱一、況反二切書目一乎、雖二本邦一古未レ有二此之陋一、第近世之流弊也巳、倘名欲二必美一、則須レ撰二其字義一、奚以レ論二反切一爲、矧本邦之俗、呼二名諱一用二和訓一、男女共爾、故字音與二訓音一、七音所レ屬不二同軌一、生剋何之是何之非、亦復以爲人有レ局二賦五性一也、未レ見二聖經可一レ據、恐是後世杜撰也、今時道俗、多拘二于反切一、而其名陋固、或二名不レ成レ義者亦不レ尠、遂爲二大方君子之所一レ笑、

〔日本書紀〕

〈二/神代〉

p.0635 一云、〈○中略〉豐玉姫謂二天孫一曰、妾已有レ娠也、天孫之胤、豈可レ産二於海中一乎、故當レ産時、必就二君處一、如爲レ我造二屋於海邊一以相待者、是所レ望也、望也、故彦火火出見尊、已還レ郷、即以二鸕鷀之羽一葺爲二産屋一、屋甍未レ及レ合、豐玉姫自馭二大龜一將二女弟玉依姫一、光レ海來到時、孕月已滿、産期方急、由レ此不レ待二葺合一徑入居焉一、〈○中略〉既兒生之後、天孫就而問曰、兒名何稱者、當レ可乎、對曰、宜レ號二彦波瀲武鸕鷀草葺不合尊意、言語乃渉レ海徑去、

〔古事記N 中/垂仁〕

p.0635 爾天皇詔之吾殆見レ欺乎、乃興レ軍擊抄本毘古王一之時、〈○中略〉其后〈○沙本毘古王妹沙本毘賣〉姙身、於レ是天皇不レ忍三其后懐姙及愛重至二于三年一、故廻二其軍一不二急攻迫一、如レ此逗留之間、其所レ姙之御子既産、故出二其御子一置二稻城外一、令レ白二天皇一、若此御子矣、天皇之御子所二思看一者可二治賜一、〈○中略〉亦天皇命、詔二其后一言、凡子名必母名、何稱二是子之御名一、爾答曰、今當下火二燒稻城一之時上、而火中所レ生、故其御名宜レ稱二本牟智和氣(ホムチワケノ)御子一、

〔大鏡〕

〈七/太政大臣道長〉

p.0635 右大臣不比等のおとヾは、實は天智天皇の御子なり、されどかまたりのおとどの二郎になり給へり、このふひとうのおとヾ、御名のもじよりはじめて、なべてならずおはし ましけり、ならびひとしからずとつけられたまへる名にぞ、このもじは侍るなり、

〔藤原家傳〕

〈下/武智麻呂〉

p.0636 藤原左大臣、諱武智麻呂、左京人也、〈○中略〉天武天皇即位九年歳次庚辰四月十五日、誕二於大原之第一、義取二茂榮一、故爲レ名焉、

〔續世繼〕

〈四/ふしみの雪のあした〉

p.0636 あふみのかみ有佐といひし人は、後三條院のまことには御子ときこえしかど、さぬきのかみ顯綱のこにてこそやまれにしか、有佐といふ名も、みかどの御てにて、あふぎにかヽせ給て、母の内侍にたまへりける.

〔台記〕

p.0636 康治元年六月十九日庚辰、靑侍初參請レ名、于レ時尚書第七卷在レ前、困レ之名二以寛一、〈微子之命篇也〉追遙集跡也、

〔沙石集〕

〈四〉

p.0636 上人ノ子持タル事
一信州鹽田ノ或山寺ニ上人アリ、三ノ腹ニ三人ノ子ヲ持リ、初ノ腹ノ子ハ、マメヤカニ忍ケレバ、上人ノ子ト云ヒケレドモ不審ニ覺テ、名ヲバ思ヒモヨラズト付タリ、次ノ腹ノ子ヲバ、時々ニハ我坊ニモ忍々ニ通ケレバ、ヒタスラニ疑ノ心モ薄クシテ、名ヲバサモアルラムト付ク、後ノ妻ハ打絶我坊ニ置テ疑心ナカリケレバ、名ヲバ子細ナシト付ク、是ハ當時ノ事也、

〔平治物語〕

〈三〉

p.0636 牛若奥州下事
遮那王〈○中略〉承安四年三月三日ノ曉、鞍馬ヲ出テ、東路遙ニ思立、心ノ程コソ悲ケレ、其夜鏡ノ宿ニ著、夜更テ後、手ヅカラ髪取上テ、懷ヨリ烏帽子取出シ、ヒタト著テ打出給へバ、陵助、早御元服候ケルヤ、御名ハ何ニト問奉レバ、烏帽子親モナケレバ、手ヅカラ源九郎義經トコソ名乗侍レト答テ、打連給テ、〈○下略〉

〔吾妻鏡〕

〈十二〉

p.0636 建久三年八月九日己酉.巳剋男子御産也、〈○中略〉次有二御名字定一、千萬君云云、

〔吾妻鏡〕

〈十四〉

p.0636 建久五年二月二日甲午、入レ夜江間殿〈○北條義時〉嫡男〈童名金剛、年十三、〉元服、於二幕府一有二其儀一、〈○中略〉時 剋北條殿相二具童形一參給、則將軍家〈○源賴朝〉出御有、御加冠之儀、武州千葉介等、取二脂燭一候二左右一、名字號二太郎賴時一、

〔親長卿記〕

p.0637 文明十年四月廿一日、言國朝臣息改名事、予可二注給一之由、自二先日比一申レ之、無沙汰催促之間、今日注付之、實言定言也、實言通二大臣之名字一、定言可レ然之由仰了、其分治定、

〔親長卿記〕

p.0637 延德四年二月廿九日、今日聞鷹司前關白〈政平公〉若公有二首服事一、御名字兼敎云々、〈後聞改名兼輔〉陽明〈○近衞家〉御庶流有二此御名字一、殊准二大臣一也、誰人勘申哉不審、殊一代將軍御名字、〈○足利義敎〉人々不レ付レ之、旁無二故實一事也、三月九日、前藤中納言云、御方御所御名字如何、兼敎、先日子細予示レ之、返答云、申二此趣一之由、自二中御門大納言許一申レ之、〈若公禁色昇殿一級上卿也〉仍被二勘改一云々、

〔相州兵亂記〕

〈一〉

p.0637 公方管領不和事
永享十年六月、公方〈○足利持氏〉ノ若公天王丸殿、御元服アルベシトテ、御祝儀ノ用意善盡シ美盡セリ、管領〈○上杉憲實〉又諌言ヲ以テ被レ申ケルハ、代々ノ公方ノ御元服アリシ時、皆京公方ヘ御使有、一字御申下サル、先規ニマカセ御使可レ有.某ガ弟ニテ候上杉三郎重方ヲ罷ノボセサムラハント被二申上一ケレドモ、此條曾テ御承引ナクシテ、御名字ヲモ則自ラ義久ト御名乗被レ申テ、彼御祝儀トシテ國人ドモヲ、名字ヲ指テ被レ召ケル、

〔甲陽軍鑑〕

〈十下〉

p.0637 信虎牢人の次年、駿府にて男子一人持て候〈○中略〉武田の上野守と名乗、當年廿五歳になる、此上野守十六歳の時まふけたる子、我等名を付候に、信玄〈○幼名勝千代〉にあやかるやうにとて、勝千代と付候、

〔鵞峯文集〕

〈二十二/説〉

p.0637 明英説
乙巳仲冬吉辰、勿齋藤君嫡子義兒求二名於余一、以二其漸成長一也、君家世隨二國俗一、以二明字一爲二通稱一、故擇二翻切善者三箇一以應レ之、就レ中明英定爲二其名一、

〔鵞峯文集〕

〈二十二/説〉

p.0638 名レ姪説〈乙巳仲冬朔〉
法令謂二之憲一、四書六經所レ載、皆是先王之法言、而聖賢之敎令也、不レ可レ不レ守焉、古不レ云哉、發レ慮憲憲敏也、目與レ心應之謂也、汝祖以レ之、又不レ云哉、博聞爲レ憲、汝考以レ之、予視レ汝猶レ子、汝視レ予猶レ父、汝視二 戇一猶レ兄、 戇視レ汝猶レ弟、則名レ汝曰レ憲、猶三邁過之於レ遠、朱鑑之於二鉅鉉一、乎、憲乎憲乎、吾期下汝聿念二其祖一無上レ忝一所生一也、

〔文會雜記〕

〈一下〉

p.0638 一春臺、〈○太宰〉三平〈○宇野〉ニ名ヲ恒有ト付ラレタリ、獲麟解ニヨレリ、文章軌範ナドニハ不常有トアリ、覺ソコナヒト君修モ思テ、韓文ヲ見ルニ恒有トアリ、初テ春臺ノ讀書精密ヲ知ルト君修語ケル、

〔將軍德川家禮典附録〕

〈三〉

p.0638 元文二丁巳年五月廿八日
一若君樣〈○德川家治〉御名、竹千代樣と公方様〈○德川吉宗〉より被レ進候、公方樣思召にも、此度之儀.御十分之儀に思召候、權現樣御名にも候得者、外之御名を可レ被レ進と被二思召一候得共、御代々御名之儀、達而被レ進候樣にと、年寄共〈老中〉申上候に付、老中列座にて、出仕之面々へも、於二席々一左近將 申二達之一、

〔將軍德川家禮典附録〕

〈三〉

p.0638 元文五庚申年十二月十二日
一左之書付、大目付御目付〈江〉渡レ之、來ル十五日、竹千代樣、御名被レ進候に付、爲二御祝儀一、翌十六日、熨斗
目半袴著用、西丸〈江〉總出仕、夫より御本丸〈江〉可レ被二出一候、尤老中右京大夫能登守、幷若年寄中〈江〉 可レ被二相廻一候事、
但隠居幼少病氣之面々は、老中右京大夫能登守宅〈江〉、以二使者一御祝儀可二申上一候事、
一在國在邑之五萬石以上之面々は使札、其外は可レ爲二飛札一事、
但在國在邑之隠居部屋住拾萬石以上は可レ爲二使札一、其外は可レ爲二飛札一候事、
一右に付、御祝儀獻上物には不レ及候、
一石に付、十五日月次御禮無レ之候間、不レ及二出仕一候、 右之趣可レ被二相觸一候
十二月
十二月十五日
一竹千代樣〈江〉御名被レ進候に付、月次御禮無レ之、
一御本丸西丸殿中、熨斗目半袴著用、
一公方樣〈○德川吉宗〉西丸〈江〉被レ爲レ入、於二御座間一三御所樣〈○吉宗家重家治〉御對顔、御名被レ進、御式相濟而、竹千代 樣には、紅葉山御宮〈江〉御參詣、西丸御駕寵臺より大紋行列に而被レ爲レ成、御幣帛御頂戴、御拜相濟 而還御、
一御名可レ奉レ稱二家治公一旨被レ仰二出之一
一御名被レ進候に付、大納言樣〈○德川家重〉より竹千代樣〈江〉、守家之御刀被レ進、竹千代樣より大納言樣〈江〉、 眞長之御大刀被レ進レ之、
一御本丸西丸詰合之布衣以上へ、吸物御酒被レ下レ之、御本丸より御供之布衣以上之面々〈江〉も被レ下 レ之、

〔大峯文集〕

〈二/説類〉

p.0639 名字説
古者生而名、冠而字、名有レ五、有レ信、有レ義、有レ象、有レ假、有レ類、而字則取二與レ名相屬一耳、老子以二聃字一、配二名與一レ字、孔子以二尼丘一、配二名與一レ字、鯉之伯魚、賜之子貢、由之子路、准而可レ知矣、且其名レ之也、亦皆非二深考而後名一也、臨レ時乃有レ取焉爾、取二於其耳之聃一、取三於禱二尼丘之山一、取三於君之賜二鯉魚一、皆是類也、取二於其生與レ父同物一、乃以名レ同、取二於戰時生一、乃名二成師一、取三於獲二長狄僑如一、乃名二僑如一、取二於徴一レ蘭、乃名レ蘭、或取二於手理有一レ字、乃以名之類、亦可レ見也、然又不レ以レ國、不レ以レ官、不レ以二山川一、不レ以二隠疾一、不レ以二畜牲一、不レ以二器幣一、若或以二是物一名焉、則有二偏廢一焉、而漢以來、則似レ不レ然焉、而多以レ意名、且字之與レ名、不二必相屬一者有焉、今我東方之俗、生而所レ名謂レ之爲二 俗稱一、俗稱者、乃字之謂也巳、元服而名、謂レ之爲レ諱、是逆二乎古一也、且其名レ之也、非二敢有一レ取蔦、或徒以二文字音韻一、對二其性之五行一、乃考二相生相克一、以擇二其文字一、不三敢問二之於五名一、是古之所レ無焉、仰不レ知レ刱一於何時一、漢京房、有下吹レ律定二人姓一之説上、其亦似焉、是固妄也、非レ古也、又或有二其家系相襲文字一、以犯二其父祖二名之一字一、猶下楚子世用二熊字一、長狄種用中如字上然也、而字之與レ名、亦不レ問二相屬一、東方之俗、亦古昔之人、則不レ然也、其生而所レ名、皆時有レ所レ取焉、乃以爲レ諱而巳、予〈○冢田虎〉之生也、先人名以レ虎、然是所レ謂俗稱也、比二元服一也、自名曰レ信、後乃顧レ之、我則信州人也、不レ可二以名一レ信、乃代以レ眞、而後復顧レ之、眞字六經之所レ無焉、則不レ可二以名一焉、乃頗惑三乎所二以名一、而乃又顧レ之、予之生也、先人名以レ虎、然則從二古之道一、而宜下以二先人所一レ名爲上レ名也、於レ斯乎、以レ虎爲レ名、乃字曰二嘯叔一、後或謂レ予曰、吾子之字、嘯叔不レ是、嘯者意氣不レ伸也、無二乃不可一乎、予以爲レ然、乃代以二叔貔一、蓋予之生也、先人名以レ虎者、不レ知何所レ取焉也、蓋亦將レ有レ所レ取焉、古人以レ虎爲レ名者、唐虞有二伯虎一、八元之一也、周有二召虎一、宣王之相也、鄭有二罕虎一、秦有二鍼虎一、楚有二穀於菟一、於菟亦虎也、是皆賢良也、非三我之所二跂及一也、魯有二陽虎一、是則姦慝、固非レ可レ數也、戰國以降、亦稱レ虎者衆矣、我誰比擬乎、亦非二敢有一レ所二比擬一也、但書曰、如レ虎如レ貔、吾竊取二乎斯一、乃欲レ勇二猛于學一焉耳、

〔山陽遺稿〕

〈十〉

p.0640 中川祿郎名字説
江薩摩村有二中川生一、生之在二母腹一也、其大父指レ於レ腹曰、是必男也、吾レ之曰レ祿、既生果男矣、呼二小字祿郎一、及レ壯數更二其名字一、無二適定一也、謁レ余定レ之、余曰、不レ有下定二之於未生一者上乎、而誰敢聞焉、

〔言成卿記〕

p.0640 文久三年正月十三日庚申、新誕男孫七夜云々、從二家公一賜二呼名一云々、二男(ニヲ)丸云々、〈如レ形内祝云々〉

賜名

〔御加冠拔書解〕

p.0640 武家書札之書御内書文に云
任二先例一、諱政一字遣レ之候、彌可レ期二繁榮一候、謹言、
八月四日 義政判 九郎どのへ
是は管領細川右京大夫勝元朝臣之御子〈江〉、御一字被レ下候御内書也、是より政元と名乗給ふ 也、

〔殿中年中行事〕

p.0641 正月十四日、〈○中略〉國人一揆中ニハ、御酒一獻、但元服アツテ御一字ヲ被レ申時者、三獻アリ、御一字被レ下樣者、折紙ニ名乗計被レ遊テ、御酒已前ニ、公方樣有二御持一、直ニ被レ下レ之、參而給三度頂戴仕テ後懷ニ入テ、其後御酒ヲ被レ給也、正月元服ノ方々依レ有レ之令二記録一也、

〔柳營秘鑑〕

〈一〉

p.0641 御一字頂戴之家々〈但至二庶子一ハ無二御例一〉
松平加賀守 松平兵部大輔 松平幸千代 松平大隅守
松平陸奥守 松平安藝守 松平大炊頭 松平相模守
松平大膳大夫 松平筑前守 松平信濃守 松平阿波守
松平甲斐守 上杉民部大輔 松平庄次郎
右元服加冠之節、於二御前一御一字官爵被レ下レ之、御盃之上、御腰物拜領被二仰付一、
一御一字被レ下レ之 細川越中守〈○下略〉

〔光臺一覽〕

〈三〉

p.0641 五家中、二條家は代々將軍家の有職御師範之家として、堂上に御門弟も少く候也、其御親睦に依て、二條家には東照宮以來、關東の御諱字を一字充、御用ひ被レ成御事なり、

〔類例略要集〕

p.0641 御一字二條殿〈江〉被レ進之御禮物 文政七申年四月廿八日
御字被レ遣候御禮
公方樣〈江〉
眞御大刀〈康光〉
二條齊敬殿使者
金臺枚 隠岐播磨守 内府樣〈江〉
御大刀一腰 銀馬代
御臺樣〈江〉 紅白縮緬三卷 御肴代金三百疋
御簾中殿〈江〉 干鯛一箱
右二條齊敬殿より
公方樣〈江〉 昆布一箱 干鯛一箱 御樽一荷
内府樣〈江〉 干鯛一箱
右二條前左大臣殿より 治孝公也
公方樣〈江〉 二種一荷 同前
内府樣〈江〉 一種 同前
右二條左大臣殿より 齊信公也
公方樣〈江〉 干鯛一箱 白銀壹枚
右御同人御簾中より
例 享保十三申九月廿八日
享和元酉年四月朔日 公家衆一統節
同日使者御暇、於二柳間一時服貮、老中出席被レ下レ之、
二條殿ハ足利中比 ゟ武家昵近故、代々將軍 ゟ被レ遣レ之、

〔古事記〕

〈上〉

p.0642 速須佐之男命、宮可二造作一之地求二出雲國一、爾到二坐須賀〈此二字以レ音、下效レ此、〉地一而詔之、吾來二此地一、我御心須賀須賀斯而、其地作レ宮坐、故其地者、於レ今云二須賀一也、〈○中略〉於レ是喚二其足名椎神一告言、汝者任二我宮之首一、且負レ名號二稻田宮主須賀之八耳神一、

〔日本書紀〕

〈一/神代〉

p.0643 素戔鳴尊、〈○中略〉勅之曰、吾兒宮首者、即脚摩乳手摩乳也、故賜二號於二神一、曰二稻田宮主神一、

〔古事記〕

〈上〉

p.0643 爾伊邪那岐命、告二桃子一、汝如レ助レ吾、於二葦原中國一所レ有、宇都志伎〈此四字以レ音〉靑人草之落二苦瀨一而患惚時可レ助、告二賜名號意富加牟豆美命一、〈自意至レ美以レ音〉

〔日本書紀〕

〈三/神武〉

p.0643 天皇親帥二諸皇子舟師一東征、至二速吸之門一、時有二一漁人一乗レ艇而至、天皇招レ之因問曰、汝誰也、對曰、臣是國神、名曰二珍彦一、釣二魚於曲浦一、聞二天神子來一、故即奉レ迎、又問レ之曰、汝能爲レ我導耶、對曰、導レ之矣、天皇勅授二漁人椎㰏末一令レ執、而牽二納於皇舟一以爲二海導者一、乃特賜レ名、爲二椎根津彦(シヒネツヒコ)一、〈椎此云二辭毗一〉

〔日本書紀〕

〈三/神武〉

p.0643 戊午年六月、大伴氏之遠祖日臣命、帥二大來目一、督二將元戎一、蹈レ山啓行、〈○中略〉于レ時勅譽二日臣命一曰、汝忠而且勇、加能有二導之功一、是以改二汝名一爲二道臣(ミチノオミ)一、

〔日本書紀〕

〈六/垂仁〉

p.0643 五年十月、即發二近縣卒一、命二上毛野君遠祖八綱田一令レ擊二狹穗彦一、〈○中略〉天皇於レ是美二將軍八綱田之功一、號二其名一謂二日向武日向彦八綱田(ヒムカタケヒムカヒコヤツナダ)一也、

〔古事記〕

〈下/顯宗〉

p.0643 此天皇求二其父王市邊王之御骨一時、在二淡海國賤老 一參出曰、王子御骨所レ埋者、専吾能知、亦以二其御齒一可レ知、〈御齒者如二三枝一押齒坐也〉爾起レ民堀レ土、求二其御骨一、即獲二其骨一而於二其蚊屋野之東山一、作二御陵一葬、〈○中略〉故還上坐而召二其老 一、譽二其不一レ失三見二置知其地一以賜レ名號二置目老 一、

〔續日本紀〕

〈二十一/淳仁〉

p.0643 天平寶字二年八月甲子、以二紫微内相藤原朝臣仲麻呂一任二太保一、勅曰、〈○中略〉禁レ暴勝レ 强、止レ戈靜レ亂、故名曰二押勝(オシカツ)一、朕舅之中、汝卿良尚、故字稱二尚舅一、

〔續日本紀〕

〈二十七/稱德〉

p.0643 天平神護二年三月丁卯、大納言正三位藤原朝臣眞楯薨、〈○中略〉寶字四年、授二從三位一、更賜二名眞楯一、本名八束、

〔平治物語〕

〈三〉

p.0643 牛若奥州下事
義經、〈○中略〉上野國松井田ト云所ニ被二一宿一ケルニ、家主ノ男ヲ見給ニ、大剛者ト覺ケレバ、後平家ヲ被二責上一ケル時、語ヒ具シ給ヘリ、伊勢國目代ニ連テ上野ニ下ケルガ、女ニ付テ留レル者ナレバ、伊 勢三郎ト被レ召、我烏帽子子ノ始ナレバ、義ノ字ヲサカリニセントテ、義盛ト付給ヘリ、

〔源平盛衰記〕

〈四十〉

p.0644 維盛出家事
與三兵衞申ケルハ、〈○中略〉九ト申シヽ年、君ノ御元服ノ次デニ、忝クモ軈テ本ドリヲ取上ゲラレ進ラセテ、盛ノ字ヲバ御代ニ附奉レトテ、君ツカセ給ヌ、重〈○平維盛父重盛名字〉ノ字ヲバ松王ニ賜フトテ、重景トハ付サセ給ケリ、

〔愚管抄〕

〈六〉

p.0644 千萬御前、元服せさせて、實朝と云名も京より給りて、建仁三年十二月八日、やがて將軍宣旨申くだして、〈○下略〉

〔吾妻鏡〕

〈三十九〉

p.0644 寶治二年五月廿八日己亥、左親衞〈○北條時賴〉妾、〈幕府女房〉男子平産云云、今日被レ授二字寶壽一云云、

〔北條九代記〕

〈八〉

p.0644 伊具入道被二射殺一附諏訪刑部入道斬罪
正嘉元年二月二十六日、相州時賴入道ノ嫡子正壽丸、七歳ニシテ、將軍家〈○宗尊親王〉ノ御所ニオイテ元服アリ、武藏守長時以下、一門御家人參リツドフ、親王將軍家、スナハチ宗ノ字ヲ下サレテ、時宗卜號セラル、

〔太平記〕

〈十三〉

p.0644 足利殿東國下向事附時行滅亡事
諸卿議奏有テ、急足利宰相高氏卿ヲ討手ニ可レ被レ下ニ定リケリ、〈○中略〉忝モ天子ノ御諱ノ字ヲ被レ下テ、高氏ト名ノラレケル高ノ字ヲ改メテ、尊ノ字ニゾ被レ成ケル、

〔太平記〕

〈三十三〉

p.0644 新田左兵衞佐義興自害事
奥州ノ國司顯家卿、陸奥國ヨリ鎌倉ヘ責上ル時、義貞ニ志アル武藏上野ノ兵共、此義興ヲ大將ニ取立テ、三萬餘騎ニテ、奥州ノ國司ニ力ヲ合セ、鎌倉ヲ責落シテ、吉野ヘ參ジタリシカバ、先帝〈○後醍醐〉叡覽有テ、誠ニ武勇ノ器用タリ、尤義貞ガ家ヲモ可レ興者也トテ、童名德壽丸ト申シヲ、御前ニテ元 服サセラレテ、新田左兵衞佐義興トゾ召レケル、

〔南方紀傳〕

〈下〉

p.0645 明德四〈癸西〉年九月甘一日、北畠親能叙爵、義滿賜二滿一字一改二滿泰一、
應永二〈乙亥〉年九月十九日、義滿給二諱字於攝家以下諸臣一、稱二烏帽子子一、
應永五年〈戊寅〉三月、師嗣公〈○二條家〉男道忠、賜二義滿諱字一、改二滿基一、

〔康富記〕

p.0645 文安六年〈○寶德元年〉四月十四日甲子、今夜今小路殿御元服也、於二二條殿一有二其儀一、右府〈○二條持通〉爲二御加冠一、名字之事、近來鹿苑院殿〈○足利義滿〉勝定院〈○足利義持〉御字被レ申二請之一、今度又被レ申、仍令レ付二成(シゲ)冬一、〈○足利義政舊名義成ノ一字ヲ與ヘシナリ〉給、

〔新撰長祿寛正記〕

p.0645 義就〈○畠山〉方ノ衆徒、進出テ申ケルハ、〈○中略〉此義就ハ古德本ノ實子ナリ、元服ノ時ニモ、政長ニ下字ヲ給シカドモ、義就ハ各別ニテ、上字ヲ給シナリ、
○按ズルニ、足利義政ノ二字ヲ上下ニ分チテ、二人ニ予ヘシヲ云フ、

〔中國治亂記〕

p.0645 子息政久、〈○尼子〉民部少輔ト申セシ時、去ル永正十年九月六日、大内〈○義隆〉ト合戰、時ニ安世城ニテ流失ニ當テ、廿六歳ニテ早世ス、父經久大ニ歎息シテ、嫡孫晴久ヲ修理大夫ニ任ジ、初ハ詮久ト號シケルヲ、公方〈○足利義晴〉ヨリ一字ヲ賜ハリ、晴久ト改名シテ、則チ出雲屋形ヲ令レ繼、

〔相州兵亂記〕

〈四〉

p.0645 加島合戰之事
原美濃守、〈○中略〉是ハ下總國千葉ノ侍ナリシガ、父原能登守友胤ト云者、小弓ノ御所合戰ノ比、總州ヨリ牢人シテ甲州ヘ行キ、信虎〈○武田〉ヲ賴ミ奉公シテ、度々高名シテ討死ス、其子美濃守、父ニ勝リテ大剛ノ者ナレバ、信虎烏帽子子ニシテ虎胤ト名ヅク、

〔甲陽軍鑑〕

〈九上〉

p.0645 一勝千代殿、十六歳の三月、〈○天文五年〉甲府へ勅使たつて、甲州武田源信濃守大膳大夫と被レ成させ給ふ、又公方萬松院義晴〈○足利〉公より、上野中務少輔御使者として、晴と云字を下さる、晴信公と云々、

〔中國治亂記〕

p.0646 同年〈○天文十一年〉五月七日ニ、義隆卿〈○大内〉敗軍也、此時八杉ノ浦ヨリ舟ニ乗リ、阿陀加江ト云處ニテ、義隆ノ養子ノ家督大内新介稙持ハ、舟ヲ乗沈メテ逝去ス、〈○中略〉去ル天文八年六月十九日、十六歳ニテ左兵衞佐正五位ノ下ニ任ジ、初メハ稙持ナリシヲ、公方〈○足利義晴〉一字ヲ賜ハリ、晴持ト改名シ、今年十九歳、花質紅顔美麗ニテ、比類ナキ兒ナリケルヲ、惜ヌ人コソナカリケル、

〔相州兵亂記〕

〈四〉

p.0646 景虎小田原ヘ寄來事
上杉景虎、〈○中略〉其年〈○永祿四年〉五月、北國ヲ通リ、上洛シテ京公方光源院殿義輝公〈○足利〉ヘ出仕ヲイタシ、〈○中略〉御諱ノ一字ヲ被レ下、輝虎ト改名シテ、アジロゴシ、狀ノ裏書ヲ御免アリ、

〔總見記〕

〈十七〉

p.0646 近衞信基御元服幷信長公御加冠事
同〈○天正五年〉後ノ七月六日、大臣家〈○織田信長〉御上洛、二條新造ノ御所御移徒、同月十二日、近衞殿下前久公ノ公達ノ御方御元服、加冠ノ儀、大臣家ヘ御所望ナリ、往古ヨリ禁裏ニ於テ御元服、通例ノ事ニ候間、當時最其例然ルベキノ由、大臣家再三御辭退候トイヘドモ、頻並ニ御所望默止ガタク、是ニ依テ是非ニ不レ及、大臣家御加冠ナサレ、公達今日御元服、御一字ヲ進ゼラレ、信基ト名付ラレ、其儀式嚴重ナリ、

〔毛利家記〕

〈一〉

p.0646 隆景、〈○中略〉最前秀吉公ヘ爲二人質一、能良源五郎、金山孫市、兩人ヲ差上サセ給ヘドモ、是ハ輕々シキ者共ナレバトテ、四郎殿元綱ヲ小早川ト名乗セ給ヒ被二差上一、御元服ノコト、秀吉公ヘ被レ仰シニ、藤ノ字ト秀ノ字ト被レ進、小早川藤四郎秀包ニ成ラセ給ヒシ、

〔參松傳〕

〈十四/福釜〉

p.0646 康親
同〈○慶長〉十年七月、從五位下筑後守、東照君賜二諱字一、

〔元寛日記〕

〈二〉

p.0646 元和七年二月十五日、奥平美作守信昌之孫、松平攝津守忠政之子、今日於二御前一〈○德川秀忠〉元服、賜二御諱字一、號二松平飛驒守忠隆一、拜二領左文字大刀一、

〔御日記〕

〈六十〉

p.0647 元和八年十二月廿六日、立花宗茂子、千熊麻呂元服、公〈○德川秀忠〉召二千熊麻呂一、以二諱字一賜二千熊麻呂一稱二忠茂一、叙二從四位下一、任二左近將 兼飛驒守一、

〔武藝小傳〕

〈五/刀術〉

p.0647 神子上典膳忠明
由二台德大君〈○德川秀忠〉命一、言二上刺擊之事一、台德大君甚賞二精妙一、賜二諱字一號二忠明一、其芳譽遍二海内一、寛永五戊辰年十一月七日、於二江戸一卒、

〔西山遺事〕

〈一〉

p.0647 同〈○寛永〉十三年丙子七月六日、武州江戸の御城にて御元服、大猷公、〈○德川家光〉御諱の一字を賜ひて、德川左衞門督光圀と稱せらる、御歳九歳、

〔嚴有院殿御實紀〕

〈七〉

p.0647 承應三年正月十二日、松平犬千代、首服加へられ、御名〈○德川家綱〉の一字給はり、正四位下少將に叙任し、加賀守綱利〈後綱紀ニ改〉と稱す、

〔基長卿記〕

p.0647 正德二年十二月十二日、巳刻參院令レ宿、爲二關東〈江〉御用一、松平紀伊守參院、若君名字、院〈○靈元〉御定被二願申一、依レ是被二定遣一、御治定、字家繼、被レ染二宸翰一〈仙洞宸翰也〉被レ下、仍而召二紀伊守一被レ渡了、

〔文恭院殿御實紀附録〕

〈三〉

p.0647 千住の邊に御放鷹ありし時、餌まき孫右衞門といふが、鳥飼の事、殊に高手なりしが、渠に宣ひしは、今日は殊更に鶴を手に入度と仰られしに、我右衞門、平生傲言の者なりしが、今日は某力をつくし候はんには、たやすく御手に入べしと放言せしが、果して御手に入たり、公〈○德川家齊〉大に悦ばせ玉ひ、げに高名空しからずとて賞し玉ひ、此ごろ歌舞伎役者に、歌右衞門といふが世に上手なるよし、汝も歌右衞門と名乗べしと命ありて、その名を拜領せしと、後までも人々に誇れりとぞ、

改名

〔名目抄〕

〈諸公事言説〉

p.0647 改名(カイミヤウ)

〔傳宣草〕

〈上〉

p.0647 改名事
奉入 宣旨
藏人正五位(職事仰詞無二藏人字一)下平朝臣親賢申、請下改一本名一爲中親守上事、仰依レ請、
右宣旨奉入如レ件
三月(正和四)十一日 左衞門督藤原判〈奉〉

〔傳宣草〕

〈下〉

p.0648 諸宣旨事
一下二外記一宣旨
臨時事
諸人改レ姓改レ名事〈或仰二辨官一〉
一下二辨官一宣旨
臨時事
同改レ姓改レ名事〈或仰二外記一〉 同改レ名事
一下レ官事
諸人改レ姓改レ名事

〔享祿本類聚三代格〕

〈十七〉

p.0648 太政官符
不レ可三輙聽二百姓改名一事
右被二大納言從三位神王宣一偁、奉レ勅名以召レ實、不レ可二輙改一、如レ聞頃年改レ名者衆、其計多端、或避二見課一而入二不課一、或除二無蔭一以附二有蔭一、如レ此輩類、其姧繁多、不レ聽二改名一、無レ由レ作レ姧、自レ今以後、不レ得二輙改一、如主典以上、依レ有二相諱一、必可二改替一者、所司覆二勘其由一、得レ實然後聽レ之、不レ得三濫縦改替浪成二姧詐一、
延暦十七年二月八日

〔享祿本類聚三代格〕

〈十七〉

p.0648 太政官符 改レ名事
右去二月十一日、下二左右京職五畿内諸國一符偁、檢二案内一、太政官去延暦十七年二月九日、下二職國一符偁.大納言從三位神王宣、奉レ勅如レ聞頃年改レ名者衆、其計多端、或避二見課一而入二不課一、或除二无蔭一以附二有蔭一、如レ此輩類、其姧繁多、不レ聽二改名一、無レ由レ作レ姧、自レ以後、不レ得二輙改一、如主典已上、依レ有二相諱一、必可二改替一者、所司覆二勘其由一、得レ實然後聽レ之、不レ得三濫縦改替浪成二姧詐一者、然則改レ名之禁、元資成レ姦.相諱之替、聽在レ得レ實、斯乃所由存レ之、不レ可二以越經一、頃間内外諸司、寄二言相諱一、頻繁改正、尋二求本末一、事必不レ然、至レ如三百姓好要二國驗一、國司不レ覆、直稱レ有レ實、研二勘籍帳一、或亦空虚、加以國主國繼等名字、勅禁已久、若有二斯類一、須二隨即止一、而猶不二遵行一、毎以請レ改、既煩二抄符一、還增二狼籍一、職國承知、自レ今而後、一准レ上行レ之、不レ得二輙以相聽越經上一レ官、
延暦廿三年三月廿二日

〔類聚符宣抄〕

〈七〉

p.0649 改名
太政官符式部民部兩省〈外〉
應レ改二名字一筑前權守從五位上藤原朝臣成周事今請下改二周字一爲中字上
右得二成周今月二日奏狀一偁、謹檢二史籍一、件周字、音訓所レ説、左右多レ疑、若不二相改一者、恐有レ所レ悔乎、望請天恩因二准傍例一、早停二稱レ周之有一レ疑、將レ給二爲レ房之無一レ悔者、右大臣宣、奉レ勅依レ請者、省宜承知、依レ宣行レ之、符到奉行、」
權左中辨 左大史
長德二年六月十七日

〔憲法部類〕

〈三〉

p.0649 享保四亥年十二月廿四日、左之御書付平岡一郎右衞門被二相觸一候、
名改之儀、同役相番、其外近き親類、又者近き縁者など指合候名、先祖之名等に而、無レ據存寄有レ之 者各別、左も無レ之候者、名改之願申出候義、向後可レ被二差扣一候、
右之趣、寄々可レ被二相達一候、以上、 十二月
V 官中秘策

〈二十二〉

p.0650 改名之事
一御老中年寄〈江〉罷越、名改之子細ヲ演、窺二内意ヲ一、御用番之御老中〈江〉可レ參旨御差圖、其節心安御旗 本衆同道、改名貮色程書付持參、演二其趣一被レ得二其意一候、追而可レ被レ聞旨御挨拶、其後年寄御老中〈江〉罷 越、今朝申入候旨ヲ演説、他日留守居被二召呼一、名改候儀御仲間〈江〉被二仰談一候、勝手次第改可レ申旨被二 仰聞一、幷此方 ゟ書上候何之何、右兩樣之内、勝手次第可レ被レ致候、小紙ニ書付被レ遣.則爲二御禮一老中初 如レ例參上、嫡子名改父在府爲二御禮一參上、在府之時ハ不レ及二御禮勤一、

〔續日本紀〕

〈二十/孝謙〉

p.0650 天平寶字元年五月丁卯、授二正六位上藤原朝臣執弓從五位下一、

〔續日本紀〕

〈二十一/淳仁〉

p.0650 天平寶字二年八月庚子朔、授二從五位下藤原朝臣眞先從五位上一、

〔續修東大寺正倉院文書〕

〈一〉

p.0650 天平寶字二年詔書草
勅 天平寶字二年八月一日
從四位下藤原御楯〈本名千尋〉
從五位上藤原眞先〈弓取〉
○按ズルニ、續修東大寺正倉院文書ニ載セタル藤原眞先、續日本紀ニ在ルモノト同人ニシテ、 原名弓取ナルヲ知ル、而シテ續日本紀ナル藤原執弓ハ、位階ニ就キテ之ヲ考フルニ、即チ弓取 ニシテ、ユミトリト讀ミシモノカ、若シ當時人名ヲ逆讀スル例アリトスルトキハ、藤原惠美朝 臣執棹〈續日本紀、天平寶字七年正月壬子等ニ見ユ、眞先ト同ジク押勝ノ男ナリ、〉ノ執棹モサヲトリト讀ムベク、〈又中臣朝臣楫取ト云フアリ、同書天平 寶字三年七月庚辰ニ見ユ、合セ考フベシ、〉中臣丸連張弓〈續日本紀天平十八年四月癸卯ニ見ユ〉道公張弓〈續日本紀寶龜元年四月壬子ニ見ユ〉ノ張弓モ ユミハリト讀ムベキカ、〈尾張宿禰弓張ト云フ人、續日本紀延暦元年十二月庚戌ニ見ユ、〉

〔日本紀略〕

〈桓式〉

p.0650 延暦廿三年正月戊寅、改二茨田親王名一、爲二萬多一、

〔大日本史〕

〈八十九/皇子列傳〉

p.0651 按日本紀略、萬多初名茨田、廷暦二十三年改二今名一、然據二倭名類聚抄一、河内茨田郡、注萬牟多、萬多茨田、音訓相同、蓋改レ字而非レ改レ名也、
○按スﾞルニ、當時人名ノ用字、略ゝ定例アリ、故ニ文字ヲ改ムルハ、即チ名ヲ改ムルナリ、

〔文德實録〕

〈六〉

p.0651 齊衡元年八月戊辰、陸奥國馳驛上奏、鎭守將軍從五位下伴宿禰三宗卒、〈○中略〉三宗元名健宗、當二伴健岑配流之時一、惡二避其相渉一、改爲二三宗一、

〔三代實録〕

〈五/淸和〉

p.0651 貞觀三年二月廿九日癸酉、參議從四位上行太宰大貮淸原眞人岑成卒、〈○中略〉岑成本名美能、至二于十年六月一、賜二姓淸原眞人一、改レ名爲二岑成一、

〔三代實録〕

〈二十一/淸和〉

p.0651 貞觀十四年五月七日丙子、掌渤海客使少内記都言道、自修二解文一、請二官裁一偁、姓名相配、其義乃美、若非二佳令一、何示二遠人一、望請改二名良香一、以遂二隠便一、依レ請許レ之、

〔吾妻鏡〕

〈六〉

p.0651 文治二年閏七月十日辛卯、義經者、與二殿三位中將殿一〈 經〉依レ爲二同名一、被レ改二義行一之由云云、
十一月廿九日壬申、可レ捜二求義行一〈改二義顯一〉事、去十八日、於二院殿上一有二公卿僉議一、〈○下略〉

〔吾妻鏡〕

〈十九〉

p.0651 承元三年八月十三日甲戌、知(○)親〈元朝(○)字也、與二美作藏人朝親一、名字著到時、混亂間改レ之、〉自二京都一歸參、

〔親長卿記〕

p.0651 長享三年〈○延德元年〉九月一日、參内、〈○中略〉仰云、可レ被二改二御諱字一、可レ尋レ例云々、三日、節會方、召二内膳一仰レ之、次雅久宿禰、御改名勘例到來、予尋云、就二御改名一有二宣下一否事、無二其儀一云々、
帝王被レ改二御諱字一例事
元正天皇御諱氷高、後被レ改二飯高一、
崇光院御諱益仁、後被レ改二興仁一、
稱光院御諱躬仁、後被レ改二實仁一、
貞和四年十一月廿八日、量實紀曰、大相國被レ談曰、御改名事、御本名益仁者、大殿祓中有二益人一之 間、仍及二御改名一、可レ被二宣下一歟之由雖レ有二議上一、就二御改名事一、 强不レ然之旨有二沙汰一、只被レ改許也、 九月三日 左大史小槻雅久上

〔宣胤卿記〕

p.0652 永正四年正月六日、中納言方到來宣下、
獻上
宣旨
請下特蒙二天恩一、因二准先例一、改二本名實枝一可レ爲二實胤一之由被上レ下二宣旨一事(實枝申二改本名一了、如レ此後日書改之、藤原ト朝臣トハ必アルベシ、依止卿下知ニハ官姓名尸書也、)、
仰依レ請〈副二欵狀一〉
右宣旨、早可下命二下知一給上之狀如レ件、〈改名事、近代不レ及二宣下一、存二古儀一歟、〉
十二月廿七日 右少辨伊長〈奉〉
進上 中御門中納言殿

〔言繼卿記〕

p.0652 天文十三年六月二日乙巳、今日三條大納言實世卿改名實澄云々、世人云、世ヲ捨テスミニナラルヽト申云々、將シテ室ヲ失ヒ、十日頃遁世とて嵯峨二尊院へ出奔也、

〔大友記〕

p.0652 石松源五郎名ヲ返事
長尾ノ城ニ、秋月人數サシ籠ケル所ニ、石松源五郎ツメカケ、毎度攻合ケルニ、一度モヲクレヲ不レ取、其忠功ニヨツテ、マダ郎等ナレドモ、ヤカタノ御前ニ召出サレ、隼人ニナシ玉フ、其後秋月トセメ合ケルニ、石松隼人ト名乗ケレバ、秋月勢、扨ハ源五郎ハ向ハザリケルゾ、一當ニ追散シテ寄カクル、石松爰ヲセンドヽ戰ケレドモ、敵事トモセズ打テカヽレバ、石松支ヘカネ引退ク、サテモ石松、今度一戰ニウチ負シ事、隼人ニ名ヲ替シ故ナリトテ、下サレケル名戻シ、元ノ源五郎ニ成ニケル、カクテ重テ秋月ト戰シニ、件ノ源五郎ト名乗テ、ツイテイリケレバ、秋月勢フミトメズ、忽ニ敗軍ス、サレバ人ニ知レタル名ヲバ、替ベキ事ニアラズトコソ皆人云ケリ、

〔松平記〕

〈一〉

p.0652 一去程に竹千代殿御成人之間、今川殿御前にて元服被レ成、義元一字を付被レ申、松平次郎 三郎元信と申、弘治二年正月、義元の御妹聟に關口刑部少輔殿と申て、今川御一家御座候、其聟に元信を被二仰付一、義元の姪聟に御成被レ成候、御官途有、松平藏人元康と御改名被レ成、淸康の康の字を御付被レ成候、

〔松平記〕

〈二〉

p.0653 一同〈○永祿五年〉二月、家康と改名ある、駿河と手ぎれなされ候故也

〔蒲生氏郷記〕

p.0653 永祿十一年戊辰、氏郷十三歳鶴千代ト申時、〈○中略〉信長公時々御感アリ、依レ之爲二聟君一、信長公彈正忠ノ字ヲ賜、號二蒲生忠三郎敎秀一、後改二賦秀一、〈○中略〉其後筑前守秀吉公感ジ、高名神妙也トテ、同名ニナシ、號二羽柴飛驒守ト一、然シテ秀ノ字憚有トテ、秀郷ノ郷ヲ取テ號二氏郷ト一、任二參議從四位一、

〔東照宮御實紀附録〕

〈二〉

p.0653 小栗又一忠政、はじめ庄次郎といひしが、此戰〈○姉川役〉の時年わづか十六歳なり、敵兵一人御側近く伺よるを見て、御物の信國の鎗取でわたりあふ内に、御勢どもあつまり來て、遂に敵を討とりぬ、君〈○德川家康〉庄次郎が、年若けれど心きヽたるを賞せられ、今日の功一番鎗にも越たりとて、その鎗を給はりけり、その後も度々の御陣に、一番鎗を入しかば、又一かと仰有て、名を又一と改めしとぞ、又大塚甚三郎某は、敵と鎗を合せしに、己が鎗折ければ、敵の鎗取てその敵突伏しを御覽じ、又ない働を仕たるぞ、又内〳〵と仰有て、是もこれより又内と改稱す、大久保荒之助忠直も、敵の鎗取て奮戰せしかば、荒が事を仕たると仰られて、金の御團扇を賜ひしより、荒之助と改稱す、

〔先哲叢談〕

〈續編二〉

p.0653 田止邱
磐鴻笠澤筆塵云、田麟、字一角、與二長崎僧玄光一論二辨聲律一、爲レ之説破、不レ能レ發レ口、世之所レ傳、儒釋筆陣是也、林鵞峯、讀二其答問一、嗔二筆鋒萎弱一曰、麟一角、今當レ作レ犀、自レ是而後更二名犀一、

以神佛號及佛語爲名

〔日本書紀〕

〈二十五/孝德〉

p.0653 白雉五年二月、遣二大唐一押使大錦上高向史玄理、〈○中略〉判官大乙上書直麻呂、宮首阿彌陀(○○○)、〈○中略〉田邊史鳥等、分二乗二船一、

〔類聚名物考〕

〈姓氏八〉

p.0654 怪名
古しへ阿彌陀釋迦、あるは沙彌法師などいへる類ひを付るは、異なる好なれども、又人の好める所歟、後には此事停止せられし事、國史に見えたり、此事唐に起れる歟、唐人紀事のうち、小名録一卷あり、古今人物の幼名をしるせり、その中に維摩迦葉などいへる名見えたり、是らを羨て付しにや、

〔廿二史劄記〕

〈十五〉

p.0654 元魏時人多以二神將一爲レ名
北朝時人、多有下以二神將一爲レ名者上、魏北地王世子、名鍾葵、元叉本名夜叉、其弟羅本名羅刹、孝文時、又有二奄人高菩薩一、爾朱榮子一名叉羅、一名文殊、梁蕭淵藻小名迦葉、隋時漢王諒反、其將有一喬鐘葵一、隋末有二賊帥宋金剛一、唐武后時、嶺南討擊使上二二閹兒一、一曰二金剛一、一曰二力士一、即高力士也、

〔續日本紀〕

〈三/文武〉

p.0654 慶雲元年正月癸巳、授二正六位上文忌寸釋加(○○)從五位下一、

〔續修東大寺正倉院文書〕

〈四〉

p.0654 下政戸六人部久知良戸口十一〈○中略〉
寄人嶋阿彌多(○○○)〈年廿三正丁〉 次无量壽(○○○)〈年十九少丁〉

〔享祿本類聚三代格〕

〈十七〉

p.0654 勅、〈○中略〉頃見二諸司入奏名籍一、〈○中略〉用二佛菩薩及聖賢之號一、毎レ經二聞見一、不レ安二于懷一、自レ今以後、宜勿二更然一、〈○中略〉主者施行、
神護景雲二年五月三日

〔公卿補任〕

〈陽成〉

p.0654 元慶八年〈甲辰〉
參議從四位上橘廣相〈(中略)本名博覽〉 貞觀九二月十一、文章博士〈辭而不レ就〉改二博覽一爲二廣相一、
〈首書云〉貞觀十十十一、若狹守峯範奏レ官云、以二佛菩薩及聖賢名號一爲二人名一者、既有二格制一、而舎利弗別號博覽比丘、望請改爲二廣相一者、許レ之、十五年六月廿三日、前若狹守從五下峯範言、秩滿歸レ京、嬰二病況一不レ堪三向レ國辨二百姓訴一、請遣二文章博士從五位下橘朝臣博覽一、相代辨糺、勅宜下遣二博覽一代レ父辨上レ之、 今案、貞觀 九年改二名廣相一者、而博覽者如何、

〔文德實録〕

〈一〉

p.0655 嘉祥三年五月丙戌、是日有レ制、爲二諸名神一令レ度二七十人一、各爲二名神一發願誓念、其得度者、皆以二神字一被二於名首一、

〔日本紀略〕

〈九/一條〉

p.0655 永延元年九月廿五日乙酉、於二眞言院一、童子五十五人、剃頭令二受戒一、名字附二諸社片字一、來廿七日、可レ被レ遣二佛舎利使一之故也、

〔尊卑分脈〕

〈十二/源氏〉

p.0655 賴義
義家 七歳春、於二祖神社壇一〈○石淸水宮〉依レ加二首服一、號二八幡太郎一云々、
義綱 父於二賀茂社一、令レ加二首服一之故也、號二賀茂次郎一、
義光 平日住二三井寺一、號二新羅三郎一、於二園城寺新羅明神社壇一、加二首服一之故也、

〔續世繼〕

〈五/みつくき〉

p.0655 のりながの御わらはなは、文殊君(○○○)と聞えき、

〔宇治拾遺物語〕

〈一〉

p.0655 今はむかし、丹後國に老尼ありけり、地藏菩薩は、あかつきごとにありき給ふことを、ほのかにきヽて、曉ごとに地藏見たてまつらんとて、ひとよかいまどひありくに、博打のうちほうけてゐたるが見て、尼公は、さむきに何わざし給ぞといへば、地藏菩薩のあかつきにありき給ふなるに、あひまいらせんとて、かくありくなりといへば、ぢざうのありかせ給ふみちは、我こそしりたれば、いざ給へ、あはせまいらせんといへば、あはれうれしきことかな、ぢざうのありかせ給はん所へ、我をゐておはせよといへば、われにものをえさせ給へ、やがてゐて奉らんといひければ、此きたるきぬたてまつらんといへば、いざたまへとて、となりなる所へゐてゆく、あまよろこびていそぎ行に、そこのこに、ぢざう(○○○)といふ童ありけるを、それが親をしりたりけるによりて、ぢざうはと、とひければ、おやあそびにいぬ、いよきなんといへば、くはこヽなり、地藏のおはしますところはといへば、あまうれしくて、つむぎのきぬをぬぎてとらすれば、ばくちうちはい そぎてとりていぬ、〈○下略〉

〔平治物語〕

〈三〉

p.0656 牛若奥州下事
年若ハ、鞍馬寺ノ東光坊阿闍梨蓮忍ガ弟子、禪林坊阿闍梨覺日ガ弟子ニ成テ、遮那王(○○○)トゾ申ケル、

〔平家物語〕

〈一〉

p.0656 妓王が事
しらびやうしのじやうず、一人出來たり、加賀の國のものなり、名をばほとけ(○○○)とぞ申ける、年十六とぞきこえし、

〔吾妻鏡〕

〈九〉

p.0656 文治五年二月廿一日癸巳、筥根兒童等、依レ召去夜參著、是爲レ勤二仕來月三日鶴岳舞樂一也、童形八人、增壽、筥熊、壽王、閉房、楠鶴、陀羅尼(○○○)、彌勒(○○)、伊豆石丸等也、

〔吾妻鏡〕

〈十二〉

p.0656 建久三年五月廿六日丁酉、多賀二郎重行、被レ収二公所領一、是今日、江間殿〈○北條義時〉息童金剛(○○)殿、〈○北條泰時〉歩行而令二興遊一給之處、重行乍レ令レ乗レ馬、打二過其前一訖、

〔吾妻鏡〕

〈十二〉

p.0656 建久三年八月十四日甲寅、於二鶴岳廻廊外庭一、放生會相撲内取手被二召決一云云、藤判官代爲二奉行一云云、〈○中略〉
八番 小中太 千手(○○)王
十五日乙卯、鶴岳放生會舞樂也、〈○中略〉
舞童
左 金王(○○)〈○中略〉 彌陀王(○○○)
右 夜叉(○○) 觀音(○○)

〔東寺文書抄〕

〈二〉

p.0656 讓渡相傳之私領地幷下人事〈○中略〉
下人 〈生年九歳、字愛德女、〉
右件元者、依レ爲二相傳之私領一、次女字明王(○○)御前、讓渡進處、在地明白也云々、 延慶元年〈戊申〉十二月十四日 父僧審尊判
子息次女明王御前

〔太平記〕

〈三〉

p.0657 主上御夢事附楠事
主上〈○後醍醐〉笠置へ臨幸成テ、〈○中略〉當寺ノ衆徒成就房律師ヲ被レ召、若此邊ニ楠ト被レ云武士ヤ有ト御尋有ケレバ、近キ傍リニ左樣ノ名字付タル者アリトモ未二承及一候、河内國金剛山ノ西ニコソ、楠多門兵衞正成トテ、弓矢取テ名ヲ得タル者ハ候ナレ、是ハ敏達天皇四代ノ孫、井手左大臣橘諸兄公ノ後胤タリトイヘドモ、民間ニ下テ年久シ、其母若カリシ時、志貴ノ毘沙門ニ百日詣テ、夢想ヲ感ジテ設タル子ニテ候トテ、椎名ヲ多門(○○)トハ申候也トゾ答申ケル、

〔太平記〕

〈十五〉

p.0657 將軍都落事附藥師丸歸京事
二月〈○建武二年〉二日將軍〈○足利尊氏〉曾地ヲ立テ、攝津國へゾ越給ヒケル、此時熊野山ノ別當四郎法橋道有ガ末ニ藥師丸(○○○)トテ、童體ニテ御伴シタリケルヲ、將軍喚寄給テ、〈○下略〉

〔太平記〕

〈三十六〉

p.0657 淸氏叛逆事附相模守子息元服事
相模守〈○細川淸氏〉ハ、氣分飽マデ侈テ、行跡尋常ナラザリケレ共、偏ニ佛神ヲ敬フ心深カリケレバ、神ニ歸服シテ、子孫ノ冥加ヲ祈ラントヤ思レケン、又我子ノ烏帽子親ニ可レ取人ナシトヤ思ケン、九ト七トニナリケル二人ノ子ヲ、八幡ニテ元服セサセ、大菩薩ノ烏帽子子ニ成テ、兄ヲバ八幡六郎、弟ヲバ八幡八郎トゾ名付ケル、此事軈テ天下ノ口遊ト成ケレバ、將軍〈○足利義詮〉是ヲ聞給テ、是ハ只當家ノ累祖伊豫守賴義、三人ノ子ヲ、八幡太郎、賀茂次郎、新羅三郎ト名付シニ異ズ、心中ニイカ樣、天下ヲ奪ハント思フ企アル者也ト、所存ニ違テゾ思ハレケル、

〔關八州古戰録〕

〈十三〉

p.0657 北條氏忠受二佐野名迹一ノ事
佐野ノ舊臣等ガ人質ノ爲、毘沙門丸(○○○○)ヲ小田原ヘ召ヨセ、城中ニ留置シガ、〈○下略〉

〔臥雲日件録〕

p.0658 文正二年六月廿六日、雲章來回話、民部卿爲二華岳南禪入道一送二二十緡一曰、十佛弟子士佛也、士字言二十一佛一也、予以爲、十佛士佛爲二父子一、今問レ之則師弟子耳、

〔本朝醫考〕

〈中〉

p.0658 九佛
九佛、和州人也、始遷二洛陽一、専施二醫術一、
十佛
十佛者、九佛之子也、〈○中略〉
士佛
士佛者、十佛之子也、諱慧勇、號二健叟一、醫述通二神妙一、〈○中略〉曾侍二寶篋院〈○足利義詮〉鹿苑院〈○足利義滿〉勝定院〈○足利義持〉三相公一、特爲二鹿苑相公一所二寵遇一、相公呼レ彼稱二士佛一、以二士字從レ十従一レ一、而亞二十佛一之謂也、

〔倭樂傳記〕

〈二〉

p.0658 四座幷喜多座の始等之事
觀世大夫は、伊賀の服部一黨の者也、足利將軍東山殿〈○義政〉に仕へて、觀阿彌と云同朋也、渠に仰て猿樂の業を學び始め勤しむ、其子世阿彌、其子音阿彌と續て、同朋にて是を相勤、

以地名爲名

〔日本書紀〕

〈三/神武〉

p.0658 其年〈○甲寅〉冬十月丁巳朔辛酉、天皇親帥二諸皇子舟師一東征、〈○中略〉行至二筑紫國菟狹一、〈菟狹者地名也、此云二宇佐一、〉時有二菟狹國造祖一、號曰二菟狹津彦、菟狹津媛一、
戊午年六月、天皇獨與一皇子手硏耳命一帥レ軍、而進至二熊野荒坂津一、〈○中略〉時彼處有レ人、號曰二熊野(○○)高倉下一、
十有二月丙申、皇師遂擊二長髓彦一、〈○中略〉長髓、是邑之本號焉、因亦以爲二人名一、

〔古事記〕

〈下/允恭〉

p.0658 此天皇娶二意富本杼王之妹、忍坂之大中津賣命一、生御子〈○中略〉輕大郎女、

〔古事記〕

〈下/顯宗〉

p.0658 天皇娶二石木王之女難波王一、

〔日本書紀〕

〈六/垂仁〉

p.0658 二年二月己卯、立二狹穗姫一皇后一、 五年十月己卯朔、天皇幸二來目一居二於高宮一、時天皇枕二皇后膝一晝寢、於レ是皇后既無レ成レ事、而空思之、兄王所レ謀適是時也、即眼涙流之落二帝面一、天皇則寤之語二 皇后一日、朕、今日夢矣、錦色小蛇、繞二于朕頸一、又大雨從二狹穗一發、而來之濡レ面、是何祥也、

〔日本書紀〕

〈二十三/舒明〉

p.0659 二年正月戊寅、立二寶皇女一爲二皇后一、后生二二男一女一、一曰二葛城皇子一、

〔日本靈異記〕

〈中〉

p.0659 好二於惡事一者以現所レ誅二利鋭一得二惡死報一縁第卌
橘朝臣諾樂麻呂(○○○○)者、葛木王(○○○)之子也、

〔豫章記〕

p.0659 河野系圖
伊但馬〈常國西南土佐境有レ館、以レ處爲レ名也(○○○○○)、〉

以國名爲名

〔續日本紀〕

〈三/文武〉

p.0659 慶雲二年十二月癸酉、无位山前王、授二從四位下一、丹波王(○○○)、阿刀王、並從五位下、

〔續日本紀〕

〈四/元明〉

p.0659 和銅二年正月丙寅、授二正六位上調連淡海(○○)從五位下一、

〔續日本紀〕

〈十一/聖武〉

p.0659 天平六年正月己卯、授二正五位下播磨王(○○○)正五位上一、

〔續日本紀〕

〈十九/孝謙〉

p.0659 天平勝寶七年十二月丁未、以二從五位下佐伯宿禰美濃麻呂(○○○○)一、爲二越前守一、

〔續日本紀〕

〈二十/孝謙〉

p.0659 天平寶字元年閏八月癸亥、從五位下出雲王(○○○)、尾張王(○○○)、賜二姓豐野眞人一、

〔日本後紀〕

〈十七/平城〉

p.0659 大同三年七月己丑、正五位下布勢朝臣尾張麻呂(○○○○)、爲二攝津守一、

以外國名爲名

〔續日本紀〕

〈三/文武〉

p.0659 慶雲元年二月乙亥、從五位上村主百濟(○○)、改賜二阿刀連一、

〔續日本紀〕

〈十七/聖武〉

p.0659 天平勝寶元年四月甲午朔、授二正六位上佐伯宿禰靺鞨(○○)、從五位下一、

〔續日本紀〕

〈三十四/光仁〉

p.0659 寶龜七年三月癸巳、從五位下矢集宿禰大唐(○○)、爲二能登守一、

以地勢爲名

〔日本書紀〕

〈十四/雄略〉

p.0659 五年六月丙戌朔、孕婦果如二加須利君言一、於二筑紫各羅島一産レ兒、仍名二此兒一曰二島君(○○)一、

〔續日本紀〕

〈一/文武〉

p.0659 四年正月癸亥、有レ詔賜二左大臣多治比眞人嶋(○)、靈壽杖及輿 一、高年也、

〔續日本紀〕

〈四十/桓武〉

p.0659 延暦九年十二月庚戌、授二下總國猨嶋郡主帳正八位上孔王部山麻呂(○○○)、外正六位上一、

〔日本後紀〕

〈八/桓武〉

p.0659 延暦十八年四月庚寅、正六位上大伴宿禰峯麻呂(○○○)、爲二遣新羅使一、

以官職爲名

〔官職難儀〕

p.0659 源内平内など云は、いかヾしたる官にか候ぞ、 内舎人に成たるを云、源氏の者の成たるをば源内と申、平氏は平内、藤内、善内など申候、みな其姓を付てよび侍るなり、位署には内舎人某と書べき也、平内左衞門など申は、内舎人より左衞門尉になりたるを、もとの官を付てよぶ也、太郎など申仁の左衞門尉に成たるを、太郎左衞門など申もおなじ事也、勘解由左衞門、彈正左衞門など皆同事なり、勘解由判官、彈正忠などより左衞門尉に成たる事也、

〔白石小品〕

p.0660 武家官位ノ事
足利殿ノ代盛リ迄ハ、御家人ノ官位、各古ノ制ヲ存セラレキ、サレバ其比迄ハ太郎左衞門、三郎兵衞、四郎兵衞ナド聞へシ輩、皆々四府ノ尉ニシテ、六位セシモノ共、其字ヲ、
昔武士ノ字トイヒシハ、今ノ代ノ名ト云フ事ノ如シ、
其官ニアハセテ呼シナリ、左右ノ衞門大夫、左右ノ兵衞大夫ナド聞ヘシハ、皆コレ叙留ノ輩ナリ、〈○中略〉又其代ノ人、タトヘバ 物太郎、藏人次郎、左近太郎、右馬次郎ナドイヒ、相模太郎、隠岐次郎、武藏五郎、陸奥六郎ナドイヒシモ、皆是其父ノ官途シ受領セシコトヲ其家ノ面目トシテ、其子ヲカクハイヒシ也、權太郎、介八郎ナドイヒシモ、其父其國ノ權守、其國ノ介ナドニナサレシガ子息等ニテ、源内、平内、藤内、橘内ナドイヒシハ、ミヅカラ内舎人トナサレシ輩ナリ、

〔南留別志〕

〈三〉

p.0660 一源内、平内、藤内は内舎人なり、太郎作、五郎作は、さくわんなるべし、

〔四季草〕

〈秋草上/姓名〉

p.0660 一百官名とて、中務、式部、治部、民部、刑部、大藏、掃部、織部、主水、外記、内記、大學、藏人などの名をつくるも、右にいふごとく、官名をぬすみたる也、世俗に是らの類をば百官名といひ、何左衞門、何右衞門、何兵衞などは、官名にあらずと心得たる人もあり、をかしき事也、

〔言丈雜記〕

〈二/人名〉

p.0660 一今の世、何兵衞、何右衞門、何左衞門などを、百官名にてなしと心得たる人有、あやまり也、兵衞、右衞門、左衞門は、皆官の名也、源氏の人、兵衞の官になりたるを、源兵衞と云、平氏は平 兵衞、藤氏は藤兵衞、橘氏は吉兵衞也、〈橋ト吉、同意也、〉右衞門、左衞門も是に准じ知べし、又太郎の人は太郎兵衞、二男は次郎兵衞、此外もおして知べし、〈淸原氏ハ淸兵衞、三善氏ハ善兵衞、文屋氏ハ文兵衞などヽ云也、〉一何大夫と云名は、五位になりたる人の名也、五位のくらゐになりたる人を、大夫と云也、〈タイウト、スミテ云也、ダイブト、ニゴルハ又別也、〉されば、すべて五位の人を諸大夫と云也、〈諸大夫ト云フトキハ、ダイブトニゴル也、〉たどへば源氏の人、五位に成たるは源大夫也、平氏は平大夫、藤原氏は藤大夫、橘氏は橘大夫、〈吉大夫も同前、橘と吉、同音也、〉淸原氏は淸大夫、三善氏は善大夫などヽ云也、又太郎の人は太郎大夫、次郎の人は次郎大夫などヽ云なり、
一伊織、小膳、多門、多宮、要人、藏主、左膳、右膳、藤馬、求馬、久馬などヽ云名を、東百官と云、禁裏の官名に似たる故、百宮と云成べし、京都の官名にあらざる故、東とは云なるべし、平親王將門、下總の國に都を立し時、定たる官名也と云は誤り也、古書に東百官の名付たる人見えず、近代關東の武士の名に、左門、伊織、藤馬、平馬など、いふ名あるによりて、東百官といひ習したるを、將門の定し官名なりと附會したる也、官名に似たるやうなるゆへ、東百官といふなるべし、

〔年々隨筆〕

〈三〉

p.0661 今の俗名は、成功のなごりなるにつきておもふに、衞門兵衞丞允の外に、爵をもうられつとみえて、今昔物語に、田舎人、榮爵かはんとて、京へのぼりて、河原院にやどりて、女を鬼にとられし事みえたり、今某大夫となのるは、その餘波なり、又諸寮の次官もうられつるか、某助となのる人もあり、某進は京職修理大膳の判官、其内は内舎人、これらは除書に常みゆ、内舎人は、かならず衞府を帶せし物にて、藤内左衞門、源内兵衞などいふを、時としてはこれをはぶきて、藤内、源内とばかりもいひしなるべし、これらみな成功の遺風にて、今もなのる也、某藏といふは、佐々木源三、梶原平三などのやうに、三を言便に三(サウ)といひし餘波にて、藏とかくは轉訛なるべし、諸院の藏人になりし事もあるにや、土岐十郎藏人など太平記にみえしにや、もし此類か、某作某吉は、亂 世になりての後、人の名の由諸をもしらで、おのが事好にまかせて、杜撰につきし也、源は杜撰なれど、三百年來、世あまねくつく事なれば、今においては子細なし、

〔年山紀聞〕

〈三〉

p.0662 市人稱二官名一
本朝にても、末の世には、冶工筆工のたぐひまでも、官名を稱する事になりぬ、もろこしも同じ事なり、陸容菽園雜記曰、吏人稱二外郎一者、古有二中郎外郎一、皆臺省官、故僣擬以尊レ之、今人稱二郎中一、鑷工稱二待詔一、磨工稱二博士一、師巫稱二太保一、茶酒稱二院使一皆然、此艸率名分不明之舊習也、國初有レ禁、

〔松の落葉〕

〈一〉

p.0662 何右衞門何左衞門といふ事
今の世の人のあざなに、何右衞門なに左衞門といふ事のよしを考るに、こはみかどにて左衞門右衞門などのあまたありて、まぎらはしきを、平氏の右衞門をば平右衞門、藤原氏にて内舎人かけたる左衞門をば、藤内左衞門などいひてよびつるにて、左衞門右衞門はもと官なれど、かくつらねて字のやうにいひなしたるがはじめにて、のち〳〵はしもざまにて、その官ならぬ人にもいへるなり、甲陽軍鑑に、そも〳〵男が四十五十にあまり、赤口關左衞門、寺川四郎右衞門などヽ、官途受領まで仕る侍が云々といへり、赤口寺川は今名字といふものにて、それをもつらねいふさま今の世と同じ、たヾし官途受領といへるをみれば、朝廷に申てなり、わたくしにものせるにはあらず、かヽれば今の世のならひにしたがふとても、むげにいやしきものつくる民、あき人などのあざなには、こヽろしてつくまじき事なりかし、

〔日本書紀〕

〈十/應神〉

p.0662 四十年正月甲子、任二大山守命一、令レ掌二山川林野一、

〔古事記〕

〈中/應神〉

p.0662 於是天皇、問三大山守命、與二大雀命一詔、〈○中略〉大山守命、爲二山海之政一、大雀命、執二食國之政一以白賜、

〔古事記傳〕

〈三十二〉

p.0662 此職は、下文に、此之御世、定二賜海部山部山守部一と見え、書紀にも五年秋八月、令二 諸國一定二海人及山守部一と見えて、此等の部の民を定賜て、其業々を奉仕るを、大山守命には.此部部を統領ることを任し賜ふなり、〈○中略〉さて大山守と申す御名は、海人部山部山守部を領せる中の一に就て負賜へるなり、〈御自山を守給ふ由には非ず、山守の督なる由なり、〉大は御名に就たる稱言なり、

〔古今著聞集〕

〈九/武勇〉

p.0663 右大將、〈○源賴朝〉高麗國を責めし時の追討使に、あまのヽ式部大夫遠景むかひけり、大將家のきり物にて、次官藤内といはれし藤内は是也、

〔駿臺雜話〕

〈三〉

p.0663 阿閉掃部
秀康卿、越前に封ぜられ給ひし後、阿閉掃部(○○)とて、武功の譽ありし者を、厚祿にて召抱られけり、

以輩行爲名

〔白石小品〕

p.0663 武家官位ノ事
大太郎、小太郎、孫二郎、彦三郎、又太郎、餘次郎、先次郎、後三郎ナド聞エシハ、其比ニハ太郎ヨリ次第ニカゾヘテ、十郎ニ至リヌレバ、又トモ餘トモ加ヘヨビテ、太郎ガ子ヲ小太郎トイヒ、其子ヲ孫太郎トイヒ、又其子ヲ彦太郎トモイヒ、大トイヒ、先トイヒ、後トイフガ如クニ稱シタレバ、人ノ召名(ヨビナ)ト云モノモ、近代ノ如ク、其義ナキコトニハナカリシナリ、

〔日知録〕

〈二十三〉

p.0663 排行
兄弟二名、而用二其一字一者、世謂二之排行一、如二德宗德文、義符義眞之類一、起レ自二晉末一、漢人所レ未レ有也、水經注、昔平侯王譚、不レ同二王莽之政一、子興生二五子一、並避レ亂隠居、光武卽二帝位一、封爲二五侯一、元才北平侯、益才安喜侯.顯才滿陰侯、仲才新市侯、季才唐侯、是後人追撰妄説、東漢人、二名者亦少、
單名以二偏旁一爲二排行一、始見二於劉琦劉琮一、此後應璩應瑒、衞瓘衞玠之流、踵レ之而出矣、〈陳球傳、二子瑀璠、弟子珪、若レ取二偏旁一、又不レ當二與レ父同一也、〉
今人兄弟行次、稱レ一爲レ大、不レ知レ始レ自二何時一、漢淮南厲王常謂二上大兄一、孝文帝行非二第一一也、

〔釋親考〕

〈附輩行説〉

p.0663 梁武陵王妃、聞三侯景陷二臺城一、湘東王將レ討レ之、謂二僚佐一曰、七官文士、豈能匡濟、胡三省 曰、湘東於二兄弟次一第七、故呼爲二七官一、剪燈新話、同郡有二趙氏子者第六一、注第六姓兄弟之行也、唐德宗、呼二陸贄一不レ名、而以二兄弟之行一、呼レ之曰二陸九一、又曰、此皆六娘子之所二種植一也、注六娘稱二姉妹之行一也、或曰、趙子於二姓兄弟行一在二第六一、敬二其妻一疑亦稱爲二六娘一也、如二元二、魏三十六、歐陽九等一皆然、蓋稱二兄弟一者、不三必限二親兄弟一、凡再從三從、皆泛稱二兄弟一、而推二年最長者一爲レ一、隨二其齒一而數レ之也、

〔貞丈雜記〕

〈二/人名〉

p.0664 一太郎は、總領の子也、次郎は、二男也、三郎は三男也、今の世には、總領の子を何次郎、何三郎と名付、二男三男に何太郎と名付るもあり、あやまり也、
一小太郎の事、源平盛衰記源氏勢揃の條、河越太郎重賴、同小太郎茂房、熊谷次郎直實、子息小次郎直家、又宇治合戰の條、足利太郎俊綱が子に、又太郎忠綱、これらを以考るに、何太郎何次郎となのる人の子をば、小太郎小次郎又太郎など名のりしとぞみゆ、又源氏勢揃條、土肥次郎實平、子息彌太郎遠平とあり、實平は二男なれば次郎といふ、其次郎の總領なれば彌太郎と云歟、總領家の太郎に對して、彌の字を付たるなるべし、又石橋合戰の條、權頭季定子息荻野五郎季重、同彦太郎、同小太郎とあり、是は本文順を書違たる歟、荻野五郎が子小太郎成べし、小太郎が子彦太郎なるべし、權頭季定が曾孫なる故、彦太郎とはいひしにや、

〔三養雜記〕

〈三〉

p.0664 餘一
むかしは第一の子を太郎、つぎを次郎といひ、それより三郎四郎と、十郎まで名つけ十一人めより餘一餘二と、次第に名くることなり、十は成數なれば、十郎よりは、あまりといふ意なるべし、盛衰記に、金子十郎家忠の弟金子與一、那須十郎資隆の弟那須與一なり、餘を與に作るは假借なり、平維茂を餘五將軍といふも、十五郎たる故なり、源義經は第八子なるを、九郎判官といへるは、八郎爲朝の成行よからざれば、八郎をいみて、九郎としたりとかや、曾我兄弟の兄を十郎、弟を五郎といふも、わけあることなり、むかしは兄弟の排行正しかるうちに、たま〳〵みだれたりとおも ふも、みな故あることなり、

〔阿邪名呼名考〕

p.0665 阿邪名
そもこの太郎次郎八郎十郎などいへることは、そのもとは必ず定りたる字(アザナ)のごとくにはあらで、今世に長男次男八男十男といへるがごとき意にて呼びそめたるものにて、さやうに用ゐたるはた多く書どもにみえたり、そは世繼物語〈さま〴〵の悦の卷〉に、只今の大殿は三郎にこそはおはしましけれ云々、一條の右大臣殿は、九郎にぞおはしける、〈○中略〉などやうに用ゐたる猶あまたみえたり、さればかの字を太郎とも何太ともいへるは、その父の第一男なる義、次郎とも何二ともいふは次男、三郎何三は三男、十郎は十男、餘一郎とも與一ともいへるは十一男、餘三は十三男、與五郎與八は十五男十八男のことなるを、十一郎十八郎といはずして、餘一郎餘八郎としもいへりしは、十餘一郎十餘八郎の義にして、その十の字を省きたるものなり、されば餘一餘二と書くべきを、古より與一與二とかけるもあるは、たヾ音の同くて、かきよき文字を借用ゐたるものにて、異なる義あるにはあらずなむ、今のなべての世の人は、さることヽしも心得ぬげに、兄なる子にも、與一、與三、何十郎、何五郎など號け、弟には何太郎ともつくる類も、まれ〳〵あるは、むげに物え辨へぬ人々のことにしあめれば、いかヾはせむを、さる分際にはあらで、かの太郎次郎の次第など、よく心得ためる人々の、なか〳〵に、餘一郎をば、何太郎の異稱とや思ひとれる、愼一郎守一郎といふやうなる名も聞ゆる中に、わが太郎子をも、一郎などなづくる類も出來にけるは、何も昔の跡をばよくもたどらで、古のことをたヾ等閑に思ひすぐせる心ぐせにで、いと淺ましく口惜しきことなりかし、〈○中略〉
この太郎次郎などいふ字をしも、今俗間の人々は、生るすなはち號ることヽ思ひためれど、緑子の名などには、いと似つかずなむ有ける、故むかしの人々は、いと幼きほどは、まづふさはしき幼 字をつけて、さて成長て元服をもしたらむ時に、實名と共にこそ、太郎次郎三郎などはつくる例なりけれ、

〔燕石襍志N 〕

p.0666 苗字
海嶋なる人の名は、今將聞わきがたきもあれど、亦おのづからいにしへに稱へり、伊豆の大嶋の居民に、東四郎太郎三郎、〈これにて一人の名也〉或は百太郎二郎など呼びなすものありとぞ、是は一男を太郎、二男を二郎とのみ呼べば、毎人にして紛るヽから、住處の地名などに、祖父又父の名を被て、東の四郎が一男を東四郎太郎、又それが三男なれば、東四郎太郎三郎と呼ぶと聞ゆ、

〔茅窻漫録〕

〈中〉

p.0666 郎字
此邦の人、太郎二郎など名づくる事、古今常例なり、其始は日本紀に、皇極帝四年、蘇我入鹿を、君太郎といふよりこと起りて、光孝帝の三子を太郎二郎三郎と稱し奉るも、唐朝の例に倣ひたまふにや、唐太宗は、高祖の二男にて二郎と稱し、玄宗は睿宗の三男にて三郎と稱するがごとし、後世多く其例に倣ひて、源賴義の三子は、太郎二郎三郎と稱し、佐々木兄弟五人、太郎定綱より五郎義淸まで皆おなじ、漢土も五郎六郎は、唐朝より俗をなす事、隋唐嘉話に見えたり、〈○中略〉大抵唐朝より専らにいひし事と見ゆ、此邦も其頃は唐朝と數往來せしゆゑ、彼土の稱呼にならひ、遂に俗をなせりと覺ゆ、源氏物語に、大殿の太郎君といひ、次郎三郎、肥後國の大夫 にすかされてなど書きたるも、滋野貞主を滋二と稱し、在原業平を在五と稱するも、其例皆おなじ、

〔古事記〕

〈中/開化〉

p.0666 此天皇、〈○中略〉娶二丸邇臣之祖、日子國意祁都(ヒコクニオケツノ)命之妹意(オ/○)祁都比賣(ケツヒメノ)命一、〈意祁都三字以レ音〉生御子日子坐王、〈○中略〉日子坐王、娶二山代之荏名津比賣、亦名苅幡戸辨一、〈此一字以レ音〉生子大(オオ/○)俣王(マタノ)、次小(ヲ/○)俣王(マタノ)、〈○中略〉又娶二其母弟袁(ヲ/○)祁都比賣命(ケツヒメ)一、

〔古事記傳〕

〈二十二〉

p.0666 意祁都比賣命、〈○中略〉此比賣と云の弟、袁祁都比賣あり、是意(オ)と袁(ヲ)とを以て姉妹 の名を分てること億計(オケノ)王と弘計(ヲケノ)王との例の如し、大小の意なるべし、

〔古事記〕

〈中/垂仁〉

p.0667 此天皇、〈○中略〉娶二山代大國之淵之女、苅羽田刀辨(カリハタトベ)一、〈○中略〉又娶二其大國之淵之女、弟(オト/○)苅羽田刀辨一、

〔古事記〕

〈中/景行〉

p.0667 此天皇、娶二吉備臣等之祖、若建吉備津日子之女、名針間之伊那毘能(イナビノ)大(オホ/○)郎女(イラツメ)一、〈○中略〉又娶二伊那毘能大郎女之弟、伊那毘能若(ワガ/○)郎女(イラツメ)一、〈自レ伊下四字以レ音〉

〔日本書紀〕

〈十五/淸寧〉

p.0667 二年十一月、依二大嘗供奉之料一、遣二於播磨國司山部連先祖伊與來目部小楯一、於二赤石郡縮見屯倉首忍海部造細目新室一、見二市邊押磐皇子子億計(○○)〈○仁賢〉弘計(○○)一、〈○顯宗〉畏敬兼抱、思二奉爲一レ君、奉養甚謹、以レ私供給、
○按ズルニ、古事記ニ億計ヲ意富祁ニ作リ、弘計ヲ袁祁ニ作ル、億ト云ヒ意富ト云フハ大ノ義 ニテ、弘ト云ヒ袁卜云フハ小ノ義ナリ、

〔續修東大寺正倉院文書〕

〈三〉

p.0667 御野國加毛郡半布里大寶二年戸籍
下々戸主彌蘇〈年五十二正丁○中略〉 戸主弟目里(○○)〈年卌七正丁○中略〉 目里弟小目里(○○○)〈年卌二兵士〉
嫡子廣(○)〈年十一小子〉 次小廣(○○)〈年九小子○中略〉
下々戸主安多〈年六十五一枝廢癈疾〉 嫡子志比(○○)〈年卌一正丁〉 次小志比(○○○)〈年卌正丁〉
次身(○)麻呂〈年卌三兵士〉 次小身(○○)〈年卌一正丁〉

〔菅家文草〕

〈四〉

p.0667 詶二藤十六(○○○)司馬對レ雪見レ寄之作一〈○詩略〉
詶二藤六(○○)司馬幽閑之作一〈○詩略〉

〔大鏡〕

〈六/内大臣道隆〉

p.0667 内大臣道隆、〈○中略〉男君達は太郎君(○○○)、故伊與守知仁のぬしの女のはらにぞかし、大千與君(○○○○)、それは祖父おとヾ〈○藤原兼家〉の御子にしたてまつり給ひて、道賴六郎君(○○○)とこそは申しか、〈○中略〉今一所は小千與君(○○○○)〈○道賴異母弟伊周〉とて、後ほかはらの大千與君には、こよなくひきこし、廿一におは せし時に、内大臣になし奉り給ひて、〈○下略〉

〔今昔物語〕

〈二十五〉

p.0668 平維茂罰二藤原諸任一語第五
今昔、實方中將ト云フ人、陸奥守ニ成テ、其ノ國ニ下タリケルヲ、〈○中略〉其ノ國ニ平維茂ト云者有ケリ、此ハ丹波守平貞盛ト云ケル兵ノ弟ニ、武藏權守重成ト云ガ子、上總守兼忠ガ太郎也、其ヲ曾祖伯父貞盛ガ、甥幷甥ガ子ナドヲ皆取リ集テ、養子ニシケルニ、此ノ維茂ハ甥ナルニ、亦中ニ年若カリケレバ、十五郎ニ立テ養子ニシケレバ、字ヲ餘五君トハ云ケル也、

〔保元物語〕

〈一〉

p.0668 新院召レ被二爲義一事附鵜丸事
爲義、〈○中略〉四郎(○○)左衞門賴賢、五郎(○○)掃部助賴仲、賀茂六郎(○○)爲宗、七郎(○○)爲成、鎭西八郎(○○)爲朝、源九郎(○○)爲仲以下、六人ノ子共相具シテ、白河殿ヘゾ參ケル、

〔源平盛衰記〕

〈十五〉

p.0668 宇治合戰附賴政最後事
足利又太郎ハ、〈○中略〉鐙蹈張弓杖ツキテ申ケルハ、只今宇治川ノ先陣渡セルハ、昔朱雀院御宇承平ニ、將門ヲ討、勸賞ニ預リシ、下野國住人俵藤太秀郷ガ五代ノ苗裔、足利太郎(○○)俊綱ガ子ニ又太郎(○○○)忠綱、生年十七歳、童名王法師、〈○下略〉

〔源平盛衰記〕

〈三十七〉

p.0668 熊谷父子寄二城戸口一幷平山同所來附成田來事
熊谷父子、城戸口ニ攻寄テ、大音揚テ云ケルハ、武藏國住人熊谷次郎(○○)直實、同小次郎(○○○)直家、生年十六歳〈○下略〉

〔吾妻鏡〕

〈三〉

p.0668 壽永三年〈○元暦元年〉三月五日甲子、去月於二攝津國一谷一被レ征二罰平家一之日、武藏國住人藤田三郎(○○)行康、先登令二討死一訖、仍募二其勳功賞一、於二彼遺跡一、子息能國可二傳領一之旨、今日被二仰下一、御下文云、件行康、平家合戰時、最前進出、被レ討二取其身一訖、仍彼跡所知所領等無二相違一、男小三郎(○○○)能國、可レ令二相傳知行一之由云云、

〔源平盛衰記〕

〈四十二〉

p.0669 屋嶋合戰附玉蟲立レ扇與一射レ扇事
金子十郎(○○)家忠、〈○中略〉組ヤ〳〵ト云處ニ、家忠ガ弟ニ、金子與一(○○)、引儲テ、有國ガ首骨ヲ志テ射タリケルニ、〈○下略〉

以等親爲名

〔玄同放言〕

〈下/人事〉

p.0669 姓名稱謂
六親をもて名とせしものは、坂本吉士長兄(○○)、〈皇極紀〉額田部連甥(○)〈孝德紀〉百舌鳥長兄(○○)、〈同紀〉佐々貴山君親人(○○)、〈續紀聖武紀〉文室眞人古能可美(○○○○)、〈光仁紀、古能可美、兄也、〉この他巨勢臣人(○)、〈天智紀〉多治比眞人家主(○○)〈聖武紀〉あり、

〔日本書紀〕

〈三/神武〉

p.0669 八月〈○戊午年〉乙未、天皇使レ徴二兄猾及弟猾者一、〈猾此云二宇介志一〉是兩人、菟田縣之魁帥者也、

〔古事記〕

〈中/安寧〉

p.0669 和知都美命者、〈○中略〉有二二女一、兄名蠅伊呂泥(○○○○)、亦名意富夜麻登久邇阿禮比賣命、弟名蠅伊呂杼(○○○○)也、

〔古事記傳〕

〈二十一〉

p.0669 兄は伊呂泥(イロネ)と訓べし、〈○中略〉弟は伊呂杼(イロド)と訓べし、

〔續日本紀〕

〈七/元正〉

p.0669 靈龜二年正月壬午、授二大伴宿禰祖父麻呂(○○○○)從五位下一、

〔東大寺奴婢籍帳〕

p.0669 奴婢籍帳〈天平勝寶二無印〉
兄万呂(○○○)〈年廿三○中略〉
右卅四人嶋宮奴〈○中略〉
妹女(○○)〈年卌七○中略〉
右五十一人官婢〈○中略〉
天平勝寶二年三月三日

〔續日本紀〕

〈三十四/光仁〉

p.0669 寶龜八年正月癸亥、授二從五位下大野朝臣姉(○)從五位上一、

〔續日本紀〕

〈二十五/光仁〉

p.0669 寶龜十年正月庚申、授二從六位上大伴宿禰弟麻呂(○○○)從五位下一、

〔日本後紀〕

〈八/桓武〉

p.0669 延暦十八年十一月戊申、從五位下橘朝臣眞甥(○○)、爲二少納言一、

〔續修東大寺正倉院文書〕

〈十一〉

p.0670 戸主智縁年伍拾漆歳〈○中略〉
從父兄出雲臣族祖父(○○)年陸拾貮歳 老丁〈○中略〉
女出雲臣族孫賣(○○)年貮拾捌歳 丁女

以姓氏爲名

〔古事記傳〕

〈二十〉

p.0670 繼體天皇の御子、茨田(マムタ)大娘女は、御母茨田連氏の女、用明天皇の御子當麻(タギマ)王は、御母當麻藏首氏の女なる、これらは御母の姓を取〈レ〉るか、〈○中略〉さて又やヽ後には、其乳母の姓を取て、御子の御名とせられし御制も有りき、文德實録に、先朝之制、毎二皇子生一、以二乳母姓一爲二之名一焉、故以二神野一爲二天皇諱一と見えたる、此は嵯峨天皇御名神野と申せるは、御乳母の姓なりしことに就て云るなり、抑此制は、何れの御世より始まりしにかあらむ、上代よりも、希々には此例も有〈リ〉つるか、詳ならず、欽明天皇の御子たちなどよりして、姓と思はるヽ御名の多く見ゆるは此例か、桓武平城などの御子たちの御名は、男女みな此なり、さて彼の嵯峨天皇の御名の外に、乳母の姓を取られたる證の物に見えたるは、天武天皇、初大海人(オホシアマ)皇子と申せしに、その崩りましヽ時に、大海宿禰蒭蒲といひし人の第一に誄奉りしことの見えたるは、御乳母の氏族と聞え、孝謙天皇、御名阿倍と申せるに、阿倍朝臣石井といふ御乳母見え、平城天皇、初御名小殿と申せるに、安倍小殿朝臣堺と云御乳母見え、桓武の皇女、朝原(アサハラ)内親王の御乳母に、朝原忌寸大刀自と云ふが見えたる是らなり、

〔文德實録〕

〈一〉

p.0670 嘉祥三年五月壬午、故老相傳、〈○中略〉天皇〈○嵯峨〉誕生、有二乳母一、姓神野、先朝之制、毎二皇子生一、以二乳母姓一爲二之名一焉、故以二神野一爲二天皇子諱一、

〔尊卑分脈〕

〈五/藤原〉

p.0670 不比等傳
内大臣鎌足第二子也、一名史、齊明天皇五年生、公有二所レ避事一、便養二於山科田邊史大隅等家一、其以名レ史也、

〔續日本紀〕

〈一/文武〉

p.0670 三年十月辛丑、遣二直大貮粟田朝臣眞人於山科山陵一、並分レ功修造焉、

〔續日本紀〕

〈八/元正〉

p.0671 養老二年正月庚子、詔授二正六位上大伴宿禰首從五位下一、

〔東照宮御實紀附録〕

〈三〉

p.0671 甲州士の内にも、山縣三郎兵衞昌景が武略忠節は、わきて御心にかなひけるにや、一年本多百助信俊が男子設けしに、兎缺なればとて心に應ぜぬよし聞しめし、そはいとめでたき事なり、信玄が内の山縣は大なる兎缺なり、かの魂精の拔出て、當家譜第の本多が子に生れ來りしなるべし、大切に養育すべしと仰付られ、その子の幼名をも本多山縣とめされ、台德院殿〈○德川秀忠〉の御伽にめし加へらる、

〔白石小品〕

p.0671 武家官位ノ事
源太郎、平二、豐三、橘四、神五、紀六、長七、春八、藤九、田十、江太、野二、中三、丹三、宗四、菅五、宮六、高六、淸七、善八ナド聞エシハ、皆其姓ト其行第ヲ合セテ稱セシ也、
源太ハ源姓、平二ハ平姓ナリ、其他豐原、橘、大神、紀、長谷部、春原、藤原、田口、大江、小野、中原、丹治、惟宗、 菅原、宮道、高階、淸原、三善等ノ諸姓、悉クニカゾフルニ遑アラズ、

襲父祖名及以

親族偏名爲名

〔古事記傳〕

〈二十〉

p.0671 大概古の王等の御名は、〈○中略〉御母の名に因れりと見ゆるもあり、孝靈天皇の御子、千々速比賣(チヽハヤヒメ)命は、御母千々速眞若比賣なり、孝元天皇の御子、建波邇夜須毘古(タケハニヤスビコ)命は、御母波邇夜須毘賣なるが如し、

〔松の落葉〕

〈四〉

p.0671 祖のあざなをつく事
今の世に、たとへばおやのあざな三左衞門といへば、子もうまごも、そのあざなをつくなるは、み國ぶりにして、いとよきならはしになん、しかすれば其家のすぢ、よくわかれて、まぎらはしからず、神武天皇は、彦火火出見尊のうまごの君にして、神日本磐余彦火火出見尊と申しヽも、さるみこヽろしらひにこそ、中ごろよりのちも、人の名つくに、とほりももじとて、ふたもじのうち、一もじは、さき〴〵のによりて、ものすなるも、いにしへよりのみくにぶりにしたがへるにぞ、から國の ふりと、ことなりとて、何のわろきことかあらん、さるをみくにのふりをはなれて、からのによりたる一もじの名も、これかれと見えしらがへり、そはいみじきひがごとする人どもになん、

〔唐律疏議〕

〈十/職制〉

p.0672 諸府號官稱、犯二祖父名一、而冒レ榮居レ之、〈○中略〉徒一年〈○註略〉
疏議曰、府有二正號一、官有二名稱一、府號者、假若父名衞、不レ得下於二諸衞一任上レ官、或祖名安、不レ得レ任二長安縣職一之 類、官稱者、或父名軍、不レ得レ作二將軍一、或祖名卿、不レ得レ居二卿任一之類、皆須二自言一、不レ得二輙受一、

〔和漢三才圖會〕

〈九/官位〉

p.0672 名〈音明〉 諱〈音誨〉 字〈音自〉
按字本朝所レ謂名乗、而多用二二字一、上爲二父字一、下爲二母字一、取二用其一字一、以爲二子孫世世通字一、如二賴光賴、家義家等一、是也、今多用二張氏之韻鏡一、考二二字輕重、相生相剋、及歸納之音訓一用レ之、唯名用二代代同名一、庶子新レ名、

〔名字辨〕

p.0672 父の名をわかちて、其子どもがつき、
〈たとへば源爲義の子に、義(○)朝爲(○)朝、又義朝の子に、賴朝義(○○)經、又平經盛の子に、經(○)政敦盛(○)など有がごとし、〉
父祖の名をわかちて、子孫がつきしはつねの事なり、
〈たとへば源仲政の子に、賴政(○)、孫に仲(○)綱、又平時政の子に、義時(○)、孫に政(○)村など有がごとし、〉

〔二判問答〕

p.0672 一曩祖名字、令二翻顚一用之條、可レ爲二如何一哉、冷泉爲尹卿、政爲卿、字替其例候、不レ替レ字者、可レ有レ憚哉、
一字相替之上者無二子細一、二字共同字者不審、

〔刊謬正俗〕

p.0672 名字類
公諱諱二于國一、私諱諱二于家一、古之制也、本國自二中世一以降世仍二父祖之名一、截二其一字一用レ之、稱曰二通字一、如下足利氏世以二義字一冠上レ名是也、

〔島津家譜〕

p.0672 天正八年八月、〈○中略〉相良勢ツキ、〈○中略〉島津〈○忠平〉ノ幕下タルベキ旨降ズルニ依テ令二赦免義陽、〈○相 〉則嫡子四郎太郎ヲ指上セ、元服シテ一字ヲ所望ス、依テ家字(○○)ノ忠卜云字ヲ授ケ、四 郎太郎忠房ト改名ス、

〔日本書紀〕

〈四/孝安〉

p.0673 二十六年二月壬寅、立二姪押媛一、爲二皇后一、〈○註略〉后生二大日本根子彦太瓊天皇一、〈○孝靈〉

〔古事記傳〕

〈二十一〉

p.0673 大倭根子日子賦斗邇命、御名〈ノ〉意、根子は尊稱にて、景行天皇の御子にも、倭根子命と申すあり、凡人にも記中に、難波根子、書紀神功〈ノ〉卷に、山背根子など云名見えたり、天皇は大倭國所知看(シロシメス)を以て、倭根子とは申奉るなり、故此御號、是を始として、孝元開化の二御世、又淸寧元明などの御名にも稱奉れり、〈光仁より仁明までの御謚號には皆是あり〉凡て御代御代の天皇の御通號となりて、詔命などにも、みな倭根子天皇と申し奉ることなり、

〔古事記〕

〈中/孝靈〉

p.0673 此天皇、〈○中略〉娶二春日之千千速眞若比賣(チゞハヤマワカヒメ)一生御子、千千速比賣命、

〔日本書紀〕

〈四/孝元〉

p.0673 七年二月丁卯、次妃河内靑玉繋女、埴安(ハニヤス)媛、生二武埴安彦命一、

〔古事記〕

〈中/開化〉

p.0673 日子坐王、〈○中略〉娶二春日建國勝戸賣之女、名沙本之大闇見戸賣(サホノオホクラミトメ)一生子、沙本毘古(サホビコ)王、次袁邪本(ヲザホ)王、次沙本毘賣(サホヒﾞメ)命、

〔古事記〕

〈中/垂仁〉

p.0673 此天皇、〈○中略〉娶二其沼羽田之入日賣命之弟、阿邪美能伊理毘賣(アザミノイリビメ)命一〈此女王名以レ音〉生御子、〈○中略〉阿邪美都比賣(アザミツヒメ)命、

〔日本書紀〕

〈二十三/舒明〉

p.0673 二年正月戊寅、娶二吉備國蚊屋(カヤ)釆女一、生二蚊屋皇子一、

〔大鏡〕

〈三/太政大臣實賴〉

p.0673 たヾとしの君〈○實賴子齊敏〉の御おのこヾ、御おほぢ、をのヽみやのおとヾ、〈○實賴〉御子にし給ひて、さね(○○)すけとつけたてまつり給ひて、いみじうかなしうし給ひき、このおとヾの御名の文字なり、さねもじはといふほども、あまりざえがりたりや、

〔平家物語〕

〈八〉

p.0673 をだまきの事
たとへば、昔ぶんごの國、あるかた山里に女有き、ある人のひとり娘、おつともなかりけるがもとへ、をとこよな〳〵かよふ程に、年月もへだヽれば、身もたヾならずなりぬ、〈○中略〉程なくさんをし たりければ、男子にてぞ有ける、母かたのおほぢ、そだてみんとてそだてたれば、いまだ十さいにもみたざるに、せい大きう、かほながヽりけり、七歳にてげんぶくせさせ、母かたのおほぢを大(○)大夫と云間、是をば大(○)太とこそつけたりけれ、

〔中臣氏系圖〕

p.0674 輔(○)親 輔隆 輔經 親(○)定 親仲 親隆(○) 能隆 隆通
隆世(○) 定(○)世 定忠(○) 親忠
隆泰 隆直(○) 蔭直
隆蔭(○) 經蔭(○)
隆實

〔宮司近代系圖〕

p.0674 長(○)任 長則 長藤
長泰 長基 長昌 長盛

〔尊卑分脈〕

〈四/卜部〉

p.0674 兼(○)延 兼忠
兼親 兼政 兼俊 兼康 兼貞
兼國 兼宗 兼時 兼友 兼衡

〔尊卑分脈〕

〈十一/藤原〉

p.0674 公(○)季 實(○)成 公成 實季 公實 實行 公敎
實國 公時 實宣 公光 實冬

〔源平盛衰記〕

〈十八〉

p.0674 文覺賴朝勸二進謀判一事
文覺ハ、渡邊黨ニ遠藤左近將 盛光ガ一男、上西門院ノ北面ノ下﨟也〈○中略〉十三ニ成ケル年、一門ニ遠藤三郎瀧口遠光ト云者呼寄テ、元服セサセテ烏帽子子トス、父盛光ガ盛ヲ取、烏帽子親遠光ガ遠ヲ取テ、盛遠ト名ヲ付、父ガ跡ヲ追テ上西門北面ニ參、遠藤武者盛遠トゾ云ケル、

〔豫章記〕

p.0674 通(○)信ノ子數多有、嫡子者、得能冠者通俊、母者新居大夫玉氏女、後ニハ四郎大夫ト云、是得能 ノ始トシテ、十八ケ村十八番目也、其子通秀、太郎ト云、得能冠者ト號ス、其子通純〈得能又太郎〉文永年中、六波羅吏部ヲ討伐シテ、阿波國富田庄ヲ賜、次男通村、〈得能彌太郎〉三男信綱、四男通方、又通村子通綱、〈得能又太郎〉任二備後守一、〈○中略〉通信三男通末、〈河野八郎、見上隨兵乗人也、〉同四男通久〈河野九郎左衞門尉、母北條時政女、○中略〉通久之子、嫡子ハ通時、〈河野四郎ト云フ〉次男通續、〈河野彌太郎、母工藤祐經女、〉藏人ト云、後上野介ニ任ズ、其子通有、〈河野六郎、任二對馬守一、母井門三郎長義女、○中略〉通有子七人アリ、嫡子通忠、〈八郎ト云、童名千寶丸、母江戸太郎女、〉十四歳時、父同蒙古ノ戰、毎度究二高名一之上被レ疵、彌進出射二答矢一、河野柚木谷ニ御館アリ、柚木谷殿ト號ス、福生寺ト云ハ其跡也、其子通貞、〈對馬三郎、母別府七郎左衞門入道女、〉元亨年中、將軍〈○足利尊氏〉方ニ參テ忠節ヲ致、越後國上田庄小栗山郷ヲ賜ル、通有次男通茂、〈九郎、母通久女、〉柏谷ニ居住シテ柏谷殿ト云、三男通種、〈四郎左衞門、母ハ通久女、〉其子通時、〈太郎左近將監、任二彈正少弼一、〉建武年中、爲二與州大將一一族等相催シ、國中凶徒ヲ退治シ、當國〈玉生庄幷〉由並中山等所々給レ之、通種次男通任、〈四郎〉先代〈○北條時行〉蜂起時、於二當國一討死、通有四男通員、〈五郎左衞門、母ハ通久女、〉同五男通爲、〈七郎左衞門尉、母同上、〉同六男通里、〈八郎左衞門、母同上、〉同七男通治一、〈九郎左衞門、母同上、〉後通盛ト改、

〔蜷川親俊日記〕

p.0675 天文七年五月廿日壬辰、東郷帶刀左衞門子〈二歳〉親俊名ヲ可レ有之由、連々懇望候間同心候、則召具帶刀來、三荷兩種持參、彼子祖父豐後ヲバ松千世、親名ヲバ鶴千世ト申候、然者二人名ヲトリ候テ松鶴ト名付、

〔總見記〕

〈十二〉

p.0675 御曹司御元服事附江州所々軍事同善祥坊降參事
元龜三年壬申正月、歳旦ノ拜禮常ノゴトシ、今月信(○)長公三人ノ御曹司、岐阜ニ於テ御元服アリ、嫡男ノ若君奇妙御曹司、十六歳ニナラセ給フ、是ヲ織田勘九郎殿信忠ト申奉ル、後ニ秋田城之介殿ト申ス是也、次男ノ若君ハ茶箋丸トテ、勢州ノ國司ナリ、元服有テハ北畠三助殿信雄ト云、常眞公是ナリ、三男ノ若君モ同日ニ御元服、是モ勢州ノ内ノ領主、神戸三七郎信孝ト名ノラセ給フ、

〔德川家譜〕

〈三/尾張〉

p.0675 義直 慶長五年庚子十一月二十八日、生二于駿河府中一、小名五郎太(○○○)、
光友
寛永二年乙丑七月二十九日、生二于尾張一、小名五郎太、
綱誠
承應元年壬辰八月二日生、小名五郎太、

〔鵞峯文集〕

〈七十七/哀悼〉

p.0676 西風涙露上
先考〈○林信勝〉以二天正十一年癸未八月一生、歴二六十一年一、汝〈○林信春〉以二寛永二十年癸未八月一生焉、先考初得レ孫、特喜二其同二干支一、生三日、而先考、以二其幼名又三郎一名レ之(○○○○○○○○○)、

〔天保武鑑〕

〈二〉

p.0676 植村
榮政〈新六郎〉 〈出羽守〉
〈後改家存〉
依二台命一〈○德川家康〉家之御一字拜領、傳二子孫一用レ之、
家次 家政 家貞 家言〈○下略〉

〔浚明院殿御實紀附録〕

〈二〉

p.0676 竹本次左衞門長景は、御氣色にかなひたる小納戸なりしが、病もて死せしとき、其ゆかりある女房の御かたはらに候したるに、次左衞門が子は、直に父の名に改めよと仰有りしかば、とみにつたへしに、忌はつる日、次左衞門と改めけり、

〔閑散餘録〕

〈下〉

p.0676 徂徠先生、俗名ヲ總右衞門ト稱セルコトハ、曾祖父ノ名ヲ襲ヘルナリ、

兄弟名用同字

〔古事記傳〕

〈二十〉

p.0676 嵯峨天皇の御子たちの御名は、〈○中略〉皇男のは、みな良字を下におかる、其中に源朝臣と云姓を賜へるは、みな皇子のは一字、皇女のは某姫と云、次に淳和天皇の御子たちのも同じさまにて、此は多く上に恒字をおかれ、仁明天皇の御子たちのは、下に常字をおかれ、文德のは、上に惟字をおかれ、淸和のは、上に貞字、陽成のは、上に元字、光孝のは、上に是字、醍醐のは、下に明字、村 上のは、下に平字なり、

〔玄同放言〕

〈三上/人事〉

p.0677 姓名稱謂
取二父祖片一以名二子孫一事、こは延喜天暦の年間より、その萌見えたり、しかれども藤氏に、時平、兼平、忠平、仲平のごとき、兄弟その名に、ひとしく平字を命け給へるのみ、父祖の片名を取り給ひしにはあらず、平家には貞盛繁盛あり、これも兄弟なり、圓融花山のおん時に、源氏に、滿仲、滿季、滿快、滿重あり、是も亦兄弟なりき、爾後賴信、賴義、義家、義親、平家には正度、正衡、正盛、忠盛に至りて、父祖の片名を取ること恒になりぬ、唐山にも父祖の名を嗣ぐこと稀にあり、さりとてこの土のごとくにはあらず、語は日知録卷廿三に見えたり、文多ければ載せざるなり、本書に就きて見るべし、しかはいへども、よに人の弟子たるもの、その師の片名を取りて、おのが名とし、或は亡師の名號を受けつぐ事、ふるくは和漢に所見なし、〈○中略〉浄土宗の譽字、日蓮宗の日字は、これらを濫觴とすべし、それより又おし移りて、巫醫百工、及文人墨客まで、各その師の名號を一字、わが名に受けつぐなるべし、

〔日本書紀〕

〈四/孝昭〉

p.0677 二十九年正月丙午、立二世襲足媛一爲二皇后一、〈○註略〉后生二天足彦國押人(アマタラシヒコクニオシヒト)命、日本足彦國押人(ヤマトタラシヒコクニオシヒト)天皇一、〈○孝安〉

〔日本書紀〕

〈四/孝安〉

p.0677 日本足彦國押人天皇、觀松彦香殖稻天皇〈○孝昭〉第二子也、母曰二世襲足(ヨリタラシ)媛一、尾張連遠祖瀛津世襲(オキツヨソ)之妹也、

〔古事記〕

〈中/孝元〉

p.0677 比古布都押之信命、娶二尾張連等之祖、意富那毘之妹、葛城之高千那毘賣一〈那毘二字以レ音〉生子、味師内(ウマシウチ)宿禰、〈此者山代内臣之祖也〉又娶二木國造之祖、宇豆比古之妹、山下影日賣一生子、建内(タケウチ)宿禰、

〔日本書紀〕

〈四/開化〉

p.0677 稚日本根子彦大日日天皇、大日本根子彦國牽天皇〈○孝元〉第二子也、母曰二欝色謎(ウツシコメ)命一、穗積臣遠祖、欝色雄(ウツシコヲ)命之妹也、

〔續修東大寺正倉院文書〕

〈二〉

p.0678 御野國加毛郡半布里大寶二年戸籍 無印
下々戸主島(○)手〈年卌五正丁〉 嫡子山寸〈年十九少丁○中略〉 次百足(○)〈年十四小子〉
次小足(○)〈年四小子○中略〉 戸主弟小島〈年卌四正丁〉 嫡子大庭(○)〈年十六小子〉
次小庭(○)〈年十二小子〉 次廣庭(○)〈年十小子〉 戸主弟多都〈年卌七正丁〉
嫡子金寸(○)〈年十八少丁〉 次小寸(○)〈年十六小子〉 、〈年十四小子〉
次古猪(○)〈年十小子〉 次猪(○)手〈年一緑兒〉

〔續日本紀〕

〈十七/聖武〉

p.0678 天平勝寶元年五月戊辰、從七位上陽侯史令珍、正八位下陽侯史令珪、從八位上陽侯史令璆、從八位下陽侯史人麻呂、並授二外從五位下一、四人並是眞身之男、各貢二錢千貫一也、

〔皇胤紹運録〕

p.0678 陽成天皇〈諱貞明、治八年〉 〈母皇太后高子、長 卿女、〉
元良親王〈三品兵部卿〉〈母主殿頭藤遠長女〉
佐(○)材王〈從五上〉
佐(○)時王〈從五上、中務大輔、母神祇伯藤邦隆女、〉
佐(○)賴王〈從四上、大舎人頭山城守、母延喜(醍醐)第八内親王、〉
佐(○)兼王〈從五上〉
源佐(○)藝〈從四上母宇多第七内親王誨子〉
源佐(○)平〈中務大輔刑部卿〉
源佐(○)親

〔大鏡〕

〈二/太政大臣基經〉

p.0678 御おのこヾ四人おはしき、太郎左大臣時平(○)、次郎左大臣仲平(○)、四郎太政大臣忠平(○)といふに、しげきがけしき、ことになりて、まづうしろの人のかほうち見渡して、それぞこのいはゆるおきなが、たからのきみ、貞信公におはしますとて、あふぎうちつかふかほもち、ことにを かし、三郎にあたらせ給ひしは、從三位して、宮内卿兼平(○)の君と申てうせ給ひにき、さるは御母いとあてにおはす、みつよしの式部卿のみこの御むすめにて、かへす〴〵もやむごとなくおはすべかりしかど、この三人の大臣たちを、よの人三平と申き、

〔大鏡〕

〈五/太政大臣兼家〉

p.0679 大入道殿〈○兼家、中略、〉女院の御母北方の御はらの君達みところ〈○道隆、道兼、道長、〉の御ありさま申侍らん、昭宣公〈○藤原基經〉の御きんだち三平〈○時平、仲平、忠平、〉とは聞えさすめりしに、此三ところをば三道とやよの人申けん、えこそうけ給はらずなりしかとてほヽゑむ、

〔閑散餘録〕

〈下〉

p.0679 仁齋〈○伊藤氏〉ニ五人ノ男子アリ、五子トモニ才學有テ、家聲ヲ落サズ、長(○)胤字ハ原藏(○)、東涯ト號ス、又別ニ慥々齋ト號ス、長(○)英、字ハ重藏(○)、梅宇ト號ス、初メ周防ノ德山毛利侯ニ仕ヘ、後備後ノ福山阿部伊勢侯ニ仕フ、長(○)衡、字ハ正藏(○)、介亭ト號ス、高槻ノ永井飛驒侯ニ仕フ、長(○)準、字ハ平藏(○)、竹里ト號ス、筑州ノ久留米有馬玄蕃侯ニ仕フ、長(○)堅、字ハ才藏(○)、蘭嵎ト號ス、紀伊侯ニ仕フ、五子ノ次第此ノ如シ、東涯ハ長子ナルユヘ、京都ノ家ヲ承テ、仕途ニ就ズ、弟四人ハ、右ノ如ク各々儒業ヲ以テ、諸侯ニ祿仕セリ、五人ノ中、東涯ト末子ノ蘭嵎二人、經術文章、特ニスグレタル故ニ、京都ノ諺ニ、五藏ノ頭尾ト稱セリ、五藏トハ五人同ジク、字ニ藏ノ字アルガユヘナリ、

以古人名爲名

〔玄同放言〕

〈三上/人事〉

p.0679 姓名稱謂
儒佛名號をもて名とせしは、〈○中略〉圓融院の御宇に、藤原朝臣伊尹公〈日本紀略六〉あり、一條院の御宇に、藤原朝臣伊周卿〈同書十〉あり、伊周は、伊尹、周公旦を一字づヽ取り給ひしなり、是より先き藤原諸葛〈三代實録光孝紀〉あり、漢の孔明が復姓を取れり、又花山の朝に、大江匡衡あり、漢の匡衡を取れるなるべし、

〔閑田耕筆〕

〈二〉

p.0679 續日本紀大寶三年下に、衣縫造孔子といふ名あり、〈○中略〉唐人の名を付たる類は、藤原伊尹公、同相如の類、尚有べし、相如は彼にても蘭相如をうらやみ、司馬相如とつき、公孫無忌、魏無 忌のごときあれば、さも有べし、伊尹はあまりにや、禪家には、古德の號を付人、あまた聞ふるが、さらずともとおぼゆ、

〔續日本紀〕

〈三/文武〉

p.0680 大寶三年正月丙申、從七位下茨田足嶋、衣縫造孔子(○○)、並賜二連姓一、

〔續日本紀〕

〈二十五/淳仁〉

p.0680 天平寶字八年正月己未、從五位下阿倍朝臣子路(○○)、爲二左少辨一、

〔山槐記〕

p.0680 治承三年正月十日己巳、今夕左衞門權佐光長嫡男〈○註略〉加二首服一、右中辨經房朝臣猶子也、仍於二彼辨亭〈勘解由小路南、萬里小路東、〉有二此事一、〈○中略〉今夜光長相二具冠者一可レ參二關白殿一〈○藤原基房〉云々、依二先例一可レ獻二名簿一云々、書樣事示二合予一、〈○藤原忠親〉
蔭孫正六位上藤原朝臣長房
治承二年正月十日
定長可二淸書一云々、長房者故人名也、〈參議大藏卿長房也〉近代名字盡了、當世之人(○○○○)、多取二故人名(○○○○○)一、件名無二反音一云々、

〔江次第抄〕

〈三/正月〉

p.0680 東堅 以二三子一爲二東孺(アツマハラハ)一、按一舊簿一、多以二紀朝臣季明(○○○○○)、阿閉宿禰友成(○○○○○○)一爲二其名一、中古以來以二季明一定爲二其名一、不レ似二尋常一事也、

〔總見記〕

〈八〉

p.0680 勢南御出馬所々合戰事同秀吉武勇事
扨モ此度木下ガ働、信長公大ニ御感ノタマヒケルハ、今日〈○永祿十二年八月二十七日〉藤吉ガ手ヲ負ナガラ門ヲ破テ責入タル樣、誠ニ古ノ朝伊名三郎義秀ガ勇力ニモ劣ルマジキ剛ノ者ナリトゾ褒仰ラレケル、藤吉是ヲ忝存ケレバ、是ヨリ頓テ義秀ノ名乗ヲ打返シ秀義ト名乗ル(○○○○○○○○○○○○○○○)、サリナカﾞラ義ノ字ハ、公方樣〈○足利義昭〉御諱ノ字ナレバ、憚アリトテ文字ヲカヘ、木下藤吉郎秀吉ト名乗ケルハ、此時ヨリノ事也ケリ、

〔人見雜記〕

p.0680 豐臣秀賴公幼名捨君
天正十九年八月五日早生せし捨君あり、三歳の由、妙心寺に葬る、然ば秀賴と異なり、萩泰昶云、天 正十九年辛卯、秀吉公年五十に超て子なし、此秋初て男子を設け玉ふ、〈月日未詳〉大に悦んで其名を捨君と稱し、鶴松丸、又八幡太郎(○○○○)に改む、然るに其年八月五日夭す、

以形體爲名

〔古事記〕

〈下/仁德〉

p.0681 爾口子臣之妹、口日賣仕二奉大后一、

〔古事記〕

〈下/履中〉

p.0681 此天皇、娶二葛城之曾都毘古之子、葦田宿禰之女、名黑比賣命一、生御子市邊之忍齒王、

〔古事記傳〕

〈三十八〉

p.0681 忍齒は近飛鳥宮段に、此王の御事を云るに、御齒者如二三枝一押齒坐也とあれば、其に因れる御名なり、

〔古事記〕

〈下/反正〉

p.0681 水齒別命、〈○中略〉御齒長一寸、廣二分、上下等齊、既如二貫珠一、

〔古事記傳〕

〈三十八〉

p.0681 如レ貫レ珠とは、色の白く美麗くして、玉の如くなるを云なるべし、貫とは並びたるさまに因て云ならむ、さて水齒別と申す御名は、如レ此御齒の美麗く坐るに因て、負賜へるなり、

〔新撰姓氏録〕

〈右京諸蕃下〉

p.0681 長背連
高麗國主鄒牟王〈一名朱蒙〉之後也、欽明天皇御世、率レ衆投化、貌美體大、其背間長、仍賜二名長背王一、

〔續日本紀〕

〈九/聖武〉

p.0681 神龜三年正月庚子、天皇臨レ軒、授二正六位上多胡吉師手(○)外從五位下一、

以動物爲名

〔日本書紀〕

〈八/仲哀〉

p.0681 八年正月壬午、幸二筑紫一、時岡縣主祖熊鰐(○○)、聞二天皇軍駕一、〈○中略〉參二迎于周芳沙磨之浦一、

〔日本書紀〕

〈十一/仁德〉

p.0681 元年正月己卯、大鷦鷯尊即二天皇位一、〈○中略〉初天皇生日、木菟入二于産殿一、明旦譽田天皇、〈○應神〉喚二大臣武内宿禰一語レ之曰、是何瑞也、大臣對言、吉祥也、復當二昨日臣妻産時一、鷦鷯入二于産屋一、是亦異焉、爰天皇曰、今朕之子、與二大臣之子一、同日共産、幷有レ瑞焉、是天之表焉、以爲取二其鳥名一、各相易名レ子、爲二後葉之契一也、則取二鷦鷯名一、以名二太子一曰二大鷦鷯(○○○)皇子一、取二木菟名一、號二大臣之子一曰二木菟(○○)宿禰一、是平群臣之始祖也、

〔日本書紀〕

〈十六/武烈〉

p.0681 十一年八月、〈○仁賢〉太子〈○武烈〉思三欲聘二物部麤鹿火大連女影媛一、遣二媒人一、向二影媛宅一期會、影媛曾姧二眞鳥大臣男鮪一、〈鮪此云二茲寐一〉

〔日本書紀〕

〈十九/欽明〉

p.0682 三十一年七月、是月遣三許勢臣猿(○)與二吉士赤鳩(○)一、發レ自二難波津一、控二引船於狹狹波山一、而裝二飾船一、

〔日本靈異記〕

〈上〉

p.0682 狐爲レ妻令レ生レ子縁第二
昔欽明天皇〈○註略〉御世、三野國大野郡人、應レ爲レ妻覔二好孃一、乗レ路而行時、嚝野中遇二於姝女一、其女媚レ牡馴睇之、牡睇レ之言何行、稚孃之答言、將レ覔二能縁一而行女也、牡心語言成レ妻耶、女答言聽、即將二於家一交通相住、比頃懷任、生二一男子一、〈○中略〉故其令二相生一子名號二岐都禰(キツネ)一、亦其子姓負二狐直一也、

〔日本書紀〕

〈二十/敏達〉

p.0682 元年四月、是月〈○中略〉以二蘇我馬子宿禰一爲二大臣一、

〔日本書紀〕

〈二十四/皇極〉

p.0682 元年二月戊申、詔二大臣一曰、〈○中略〉以二難波吉士水鷄(○○)一、可レ使二於百濟一、〈水鷄此云二倶比那一〉

〔日本書紀〕

〈二十五/孝德〉

p.0682 大化二年三月辛巳、詔二東國朝集使等一曰、〈○中略〉鹽屋鯯魚(○○)〈鯯魚、此云二擧能之盧一、○中略〉奉レ順二天皇一、朕深讃二美厥心一、〈○下略〉

〔日本書紀〕

〈二十八/天武〉

p.0682 元年七月壬子、於レ是近江將犬養連五十君、自二中道一至之留二村屋一、而遣二別將廬井造鯨(○)一、率二二百精兵一衝二將軍營一、

〔續日本紀〕

〈四/元明〉

p.0682 和銅二年正月丙寅、授二正六位上大私造虎(○)從五位下一、

〔續日本紀〕

〈十/聖武〉

p.0682 天平元年四月乙丑、筑前國宗形郡大領外從七位上宗形朝臣鳥(○)麻呂、奏下可レ供二奉神齋一之狀上、

〔日本靈異記〕

〈中〉

p.0682 力女捔レ力試縁第四
聖式天皇御世、三野國片縣郡少川市、有二一力女一、爲レ人大也、名爲二三野狐(○)一、〈是昔三野國狐、爲レ母生人之四繼孫也、〉

〔東大寺奴婢籍帳〕

p.0682 奴婢籍帳〈天平勝寶二無印○中略〉
堅魚〈年冊八○中略〉 虫(○)万呂〈年廿○中略〉 眞鯖(○)〈年卌四○中略〉
右卅四人嶋宮奴〈○中略〉 犬(○)万呂〈年五十七○中略〉
右六十六人官奴〈○中略〉
鮑(○)女〈年卅九○中略〉 眞魚(○)女〈年十○中略〉
右卌九人嶋宮婢〈○中略〉
天平勝寶二年三月三日

〔續日本紀〕

〈十九/孝謙〉

p.0683 天平勝寶五年六月丁丑、陸奥國牡鹿郡人外正六位下丸子牛(○)麻呂、〈○中略〉賜二牡鹿連姓一、

〔日本後紀〕

〈八/桓武〉

p.0683 延暦十八年二月乙未、流二陸奥國新田郡百姓弓削部虎(○)麻呂、妻丈部小廣刀自女等於日向國一、

〔鵞峯文集〕

〈二十二/説〉

p.0683 犬松説
動物以爲レ名者、 龍熊羆之類不レ少、植物以爲レ名者、曰レ楷曰レ筠曰レ松曰レ柏之類猶多、狛郎幼弟、其名犬松、岐嶷可レ愛、乃祝レ之曰、假二守レ夜之能一、以守二其家業一、則今日狛犬童子、爲二他日逐レ 之韓盧一乎、睎二群木之長一、以高二一藝之才一、則唯今一寸小松、爲二後來吹萬之靈籟一乎、犬松犬松、吾期二汝遠大一、〈丙午五月朔〉

以植物爲名

〔日本書紀〕

〈十二/反正〉

p.0683 天皇初生二于淡路宮一、〈○中略〉於レ是有レ井、曰二瑞井一、則汲レ之洗二太子一時、多遲花、落有二于井中一、因爲二太子名一也、多遲花者、今虎杖花也、故稱謂二多遲比瑞齒別天皇一、

〔三代實録〕

〈十二/淸和〉

p.0683 貞觀八年二月廿一日丁卯、左中辨正五位下丹墀眞人貞峯等、賜二姓多治眞人一、先レ是貞峯等上表曰、〈○中略〉私檢二古記一、檜隈廬入〈○記以下五字、據二一本一補、〉野宮御宇宣化〈○化原作レ和、據二一本一改、〉天皇皇子、加美惠波皇子、生二十市王一、十市王、生二多治比古王一、此王生産之夕、忽多治比花、飛二浮湯沐釜一、以二斯冥感一、名二多治比古王一、

〔古事記傳〕

〈三十五〉

p.0683 書紀、此命〈○反正〉御段に、天皇初生二于淡路宮一、於レ是有レ井、曰二瑞井一、則汲レ之洗二太子一時、多遲花落在二于井中一、因爲二太子名一也、多遲花者今虎杖花也、故稱謂二多遲比瑞齒別天皇一とあるは、事のまぎれたる傳なり、其は三代實録十二に、丹墀眞人貞峯等上レ表曰云々、〈○中略〉とあるに依るに、多 遲花の故事は、此多治比古王の生坐し時の事なるを、此水齒別命の御名も多治比云々と申せるから、此御事に誤り傳へたるなるべし、姓氏録丹治宿禰條にも、書紀の如く云れど、彼は書紀に依てなるべし、抑書紀姓氏録を誤として、後なる三代實録にしも依れるはいかにと云に、此命は河内の多治比に都坐(ミヤコシキ)せれば、本より彼處に居住給ひて、其地名なることはいちじるしければなり、

〔續日本紀〕

〈二/文武〉

p.0684 大寶二年正月乙酉、從五位下當麻眞人橘(○)、爲二齋宮頭一、

〔續日本紀〕

〈九/元正〉

p.0684 養老七年十二月丁酉、放二官婢花一從レ良、賜二高市姓一、

〔續日本紀〕

〈二十八/稱德〉

p.0684 神護景雲元年二月戊申、從四位下藤原朝臣楓(○)麻呂、爲二太宰大貮一、

〔續日本紀〕

〈二十八/稱德〉

p.0684 神護景雲元年十月壬戌、授二從六位上賀茂朝臣萱草(○○)從五位下一、

〔萬葉集〕

〈十六/有由縁幷雜歌〉

p.0684 昔者有二娘子一、字曰二櫻(○)兒一也、

〔台記〕

p.0684 康治二年十二月八日庚寅、菖蒲丸〈六歳〉著袴、〈今度事、依二永保三年入道殿、康保四年攝政殿等例一所レ行也、〉是余〈○藤原賴長〉庶長也、余無二嫡子一、而禮六十以前、不レ能レ立レ嫡、余以二五月一生、因名二菖蒲若一、以下賞二菖蒲一之月上故也、於レ五亦可レ爲レ假、此兒又以二五月一生、又名二菖蒲一、是又爲レ假、兼又可レ爲レ類、所三以取二父之號一、若字者避二父名一也、

〔今物語〕

p.0684 安貞のころ、河内國に百姓有けるが、子に蓮花(○○)王といひけるわらはありけり、

〔源平盛衰記〕

〈十六〉

p.0684 菖蒲前事
鳥羽〈ノ〉院〈ノ〉御中ニ、菖蒲(○○)前トテ世ニ勝タル美人アリ、

〔吾妻鏡〕

〈四〉

p.0684 元暦二年〈○文治元年〉五月一日癸未、故伊豫守義仲朝臣妹公、〈字菊(○)〉自二京都一參上、

〔本朝高僧傳〕

〈四十一/淨禪〉

p.0684 京兆玅心寺沙門宗舜傳
釋宗舜、號二日峯一、姓藤、城州嵯峨縣人、母源氏、素有二賢行一、嘗詣二法輪寺一、禱二男子於虛空藏菩薩一、期以二百日一、期滿夜、夢有二一高僧一、出レ自二堂中一、持二菊花一而授、寤即有レ娠、及レ産顔貌非凡、小字曰二菊夜叉一、

以金石爲名

〔日本書紀〕

〈二十七/天智〉

p.0685 十年正月癸卯、大錦上中臣金(○)連、命二宣神事一、

〔續日本紀〕

〈二十/孝謙〉

p.0685 天平寶字二年七月丙子、正六位上阿倍朝臣乙加志、授二從五位下一、正六位上額田部宿禰三富、〈○中略〉山田史銀(○)、並外從五位下、

〔十訓抄〕

〈四〉

p.0685 堀河院御時、中宮の御方に、半物に、砂金(○○)と云て、雙なき美女ありけり、

以器物爲名

〔日本書紀〕

〈七/景行〉

p.0685 二年三月戊辰、立二播磨稻日大部姫一〈○註略〉爲二皇后一、后生二二男一、第一曰二大碓皇子一、第二曰二小碓尊一、〈一書去、皇后生二三男一、其第三曰二稚倭根子皇子一、〉其大碓皇子、小碓尊、一日同胞而雙生、天皇異レ之、則誥二於碓一、故因號二其二王一曰二大碓小碓一也、

〔日本書紀〕

〈二十五/孝德〉

p.0685 白雉元年、是歳遣二倭漢直、縣白髪部連鐙(○)、難波富士胡床(○○)於安藝國一、使レ造二百濟舶二隻一、

〔續日本紀〕

〈九/元正〉

p.0685 養老七年正月丙子、授二正六位上石川朝臣樽(○)從五位下一、

〔續日本紀〕

〈十一/聖式〉

p.0685 天平六年正月己卯授二正六位下當麻眞人鏡(○)麻呂外從五位下一、

〔續日本紀〕

〈二十六/稱德〉

p.0685 天平神護元年正月己亥、正四位上文室眞人大市、〈○中略〉授二從三位一、〈○中略〉正六位上土師宿禰冠(○)外從五位下、

〔續日本紀〕

〈三十四/光仁〉

p.0685 寶龜八年正月癸亥、授二正六位上忍海倉連 (○)外從五位下一、

〔續日本紀〕

〈三十五/光仁〉

p.0685 寶龜十年正月甲寅、授二吉彌横刀(○○)外從五位下一、

以色爲名

〔日本書紀〕

〈二十八/天武〉

p.0685 元年七月壬辰、將軍吹負、屯二于乃樂山上一、時荒田尾直赤(○)麻呂、啓二將軍一曰、〈○下略〉

〔東大寺奴婢籍帳〕

p.0685 東大寺大宅可是麻呂籍帳案〈天平勝寶元年○中略〉
奴黑(○)人年十二〈○中略〉
右卌九人、大倭國添上郡大宅郷戸主大宅朝臣可是麻呂戸賤、〈○中略〉
婢黑(○)刀自賣卅一〈○中略〉
右十二人、未レ除二本籍一、 以前貢二於東大寺一賤等歴名如レ件、謹以解、
天平勝寶元年十一月三日

〔續日本紀〕

〈二十三/淳仁〉

p.0686 天平寶字五年正月戊午、授二正六位上御間名人黑女外從五位下一、

〔續日本紀〕

〈二十八/稱德〉

p.0686 神護景雲元年正月己巳、授二正六位上高屋連赤麻呂、秦忌寸蓑守、〈○中略〉並外從五位下一、

〔續日本紀〕

〈三十/稱德〉

p.0686 神護景雲三年十月甲子、授二正六位上伊福部宿禰紫女外從五位下一、

以歳時爲名

〔古事記〕

〈中/應神〉

p.0686 有二二神一、兄號一秋(○)山之下氷壯夫一、弟名二春(○)山之霞壯夫一、

〔續日本紀〕

〈五/元明〉

p.0686 和銅四年十二月壬子、從五位下狛朝臣秋(○)麻呂言、〈○下略〉

〔東大寺奴婢籍帳〕

p.0686 奴婢籍帳〈天平勝寶二無印○中略〉
正月〈年廿六○中略〉 九月〈年五○中略〉
右卅四人嶋宮奴〈○中略〉
十二月万呂〈年八〉 六月万呂〈年四○中略〉 五月万呂〈年二○中略〉
右六十六人官奴〈○中略〉
秋女〈年四〇中略〉
右卌九人嶋宮婢〈○中略〉
十月女〈年二〉
右五十一人官婢〈○中略〉
天平勝寶二年三月三日

〔續日本紀〕

〈三十九/桓武〉

p.0686 延暦五年正月乙巳、授二正六位上賀茂朝臣三月從五位下一、

〔續日本紀〕

〈四十/桓武〉

p.0686 延暦十年七月己卯、故少納言正月(○○)王男、藤津王等言、〈○下略〉

〔日本後紀〕

〈十二/桓武〉

p.0687 延暦廿三年四月己酉、從五位下田中朝臣八月(○○)麻呂、爲二右衞士佐一、

〔日本後紀〕

〈十二/桓武〉

p.0687 延暦廿四年二月乙卯、賜二十二月(○○○)王、小十二月(○○○)王等三人室原眞人一、

〔文德實録〕

〈六〉

p.0687 齊衡元年三月癸巳、賜二下野國節婦秦部總成女爵二級一、〈○中略〉總成女者、秦部正月(○○)滿之妻也、

〔三代實録〕

〈五十/光孝〉

p.0687 仁和三年五月十一日甲申、右京人外從五位下備後介平群臣春(○)雄、兄中務少録正六位上平群臣秋(○)雄、從父弟无位平群臣秋(○)常春(○)常等四人賜二姓朝臣一、春雄自言、祖出レ自二都久宿禰一矣、

以由縁爲名

〔古事記〕

〈上〉

p.0687 大穴牟遲神、〈○中略〉故其八上比賣者雖二率來一、畏二其嫡妻須世埋毘賣一、而其所レ生子者、刺二挾木俣一而返、故名二其子一云二木俣神一、亦名謂二御井神一也、

〔日本書紀〕

〈二/神代〉

p.0687 有二美人一、名曰二鹿葦津姫一、〈○中略〉皇孫〈○瓊瓊杵尊〉因而幸レ之、即一夜而有レ娠、皇孫未二之信一曰、雖二復天神一、何能一夜之間、令二人有一レ娠乎、汝所レ懷者、必非二我子一歟、故鹿葦津姫忿恨、乃作二無戸室一入二居其内一、而誓之曰、妾所レ娠、若非二天孫之胤一、必當二 滅一、如實天孫之胤、火不レ能レ害、即放レ火燒レ室、始起烟末生出之兒、號二火闌降命一、〈是隼人等始祖也、火闌降、此云二褒能須素里一、〉次避レ熱而居生出之兒、號二彦火火出見尊一、次生出之兒、號二火明命一、〈是尾張連等始祖也〉凡三子矣、

〔日本書紀〕

〈二/神代〉

p.0687 一云、〈○中略〉豐玉姫從容語曰、妾已有レ身矣、當下以二風濤壯日一出中到海邊上、請爲レ我造二産屋一以待之、是後豐玉姫、果如二其言一來至、謂二火火出見尊一曰、妾今夜當産、請勿レ臨レ之、火火出見尊不レ聽、猶以レ櫛燃レ火視レ之時、豐玉姫、化二爲八尋大熊鰐一、匍匐逶蛇、遂以レ見レ辱爲レ恨、則徑歸二海郷一、留二其女弟玉依姫一持二養兒一焉、所以兒名稱二彦波瀲武鸕鷀草葺不合尊一者、以下彼海濱産屋、全用二鸕鷀羽一爲レ草葺之、而甍未レ合時兒即生上焉、故因以名焉、

〔新撰姓氏録〕

〈河内國神別〉

p.0687 襷多治比宿禰
火明命十一世孫、殿諸足尼命之後也、男兄男庶其心如レ女、故賜レ襷爲二御膳部一、次弟之男庶、其心勇健、其 力足レ制二十千軍衆一、故賜レ靭號二四十千健彦一、因負二姓靭負一、

〔日本書紀〕

〈七/景行〉

p.0688 二十七年十月己酉、遣二日本式尊一令レ擊二熊襲一、〈○中略〉於レ是日本式尊、抽二裀中之劒一、刺二川上梟帥之胸一、末レ及二之死一、川上梟帥叩頭曰、且待之吾有レ所レ言、時日本式尊、留レ劒待レ之、川上梟帥啓之曰、汝尊誰人也、對曰、吾是大足彦天皇〈○景行〉之子也、名日本童男也、川上梟帥、亦啓之曰、吾是國中之 强力者也、是以當時諸人、不レ勝二我之威力一、而無二不レ從者一、吾多遇二武力一矣、未レ有下若二、皇子一者上、是以賤賊陋口、以奉二尊號一、若聽乎、曰聽之、即啓曰、自レ今以後、號二皇子一應レ稱二日本武皇子一、言訖乃通レ胸而殺之、故至二于今一稱二曰日本式尊一、是其縁也、

〔古事記〕

〈中/仲哀〉

p.0688 大鞆和氣命、亦名品陀和氣命、〈○註略〉此太子之御名、所三以負二大鞆和氣命一、者、初所生時、如レ鞆宍生二御腕一故、著二其御名一、

〔日本書紀〕

〈十/應神〉

p.0688 譽田天皇、足仲彦天皇〈○仲哀〉第四子也、〈○中略〉初天皇在レ孕、而天神地祇授二三韓一、既産之、宍生二腕上一、其形如レ鞆、是肖下皇太后〈○神功皇后〉爲二雄裝一之負上レ鞆、〈肖此云二阿叡一〉故稱二其名一謂二譽田天皇一、〈上古時俗、號レ鞆謂二褒武多一焉、〉

〔古事記傳〕

〈三十〉

p.0688 此は謂二大鞆別尊一と云べきを、亦御名と紛らかして、謂二譽田天皇一と誤りたる傳なり、〈又右の文の次に、細書に、上古の時、俗號レ鞆謂二褒武多一焉とあるは、かの譽田天皇は傳へのまぎれにて、大鞆別なることを辨へずして推當に注せられたるひがことなり、いと上代より、鞆は登母とのみこそ云れ、さらに褒武多と云しことは無きをや、〉

〔新撰姓氏録〕

〈右京皇別下〉

p.0688 酒部公
同皇子〈○神櫛別命〉三世孫、足彦大兄王之後也、大鷦鷯天皇〈○仁德〉御代、從二韓國一參來人、兄曾々保利、弟曾々保利二人、天皇勅有二何才一、白有二造酒之才一、令レ造二御酒一、於レ是賜二麻呂一號二酒看都子一、賜二山鹿比咩一號二酒看都女一、

〔日本書紀〕

〈十四/雄略〉

p.0688 七年七月丙子、天皇詔二少子部連蜾嬴一曰、朕欲レ見二三諸岳神之形一、〈○中略〉汝膂力過レ人、自行捉來、蜾嬴答曰、試往捉レ之、乃登二三諸岳一捉二取大蛇一、奉二于天皇一、〈○中略〉仍改賜レ名爲レ雷、

〔日本書紀〕

〈十五/淸寧〉

p.0688 白髪武廣國押稚日本根子天皇、大泊瀨幼武天皇〈○雄略〉第三子也、母曰二葛城韓媛一、天皇 生而白髪、長而愛レ民、

〔日本書紀〕

〈二十二/推古〉

p.0689 元年四月己卯、立二厩戸豐聰耳皇子一爲二皇太子一、仍録二攝政一、以二萬機一悉委焉、橘豐日天皇〈○用明〉第二子也、〈○中略〉父天皇愛之、令レ居二宮南上殿一、故稱二其名一謂二上官厩戸豐聰耳太子一、

〔袋草紙〕

〈四〉

p.0689 紫式部ト云名〈ニ〉有二二説一、一此物語〈○源氏〉ニ紫〈ノ〉卷ヲ作、甚深之故得二此名一、一條院御母之子也、而上東門院〈○一條后藤原彰子〉ニ令レ奉トテ、吾ユカリノ物ナリ、アハレト思食セト令レ申給之、故ニ有二此名一、武藏野ノ義也、

〔十訓抄〕

〈二〉

p.0689 上東門院の御方に、琴引人の今まいりしたりけり、院、紫式部に、此女房に琴ひく由はなれぬ名つけよと、仰ごと有けるに、いはこすとつけたりければ、殊にほめさせ給けり、ことぢのさきに緒のあたる所は、いはこすと申によりて、思よられけり、彼名をばしれる人、いと稀也、

〔豫章記〕

p.0689 親經〈○河野氏〉ニハ、女子一人計ニテ、相續者ナキ故、賴義ノ末子ヲ聟取、家ヲ令レ續、賴義ノ子四人有、〈○中略〉四男三島四郎親淸ト號、家ヲ繼、〈○中略〉ヌ親淸ニモ長子無リケレバ、女中親經之女、氏神三嶋宮へ參籠有テ、家ノ事ヲ祈請セラル、其比迄ハ家督タル人社參ニハ、丑時諸社燈明、悉消シテ參リ玉へバ、明神三階迄御出有テ、御對談有シ事也、如レ其女中參勤有テ、心中ノ趣、具ニ申給ヘバ、明神モ下ラセ玉フ、就レ中長子無テハ、誰ニ家ヲバ可レ〈ト〉令レ續仰有ケレバ、明神御聲ニテ、親淸ハ異姓他人也、努努不レ〈ト〉可レ爲二種姓一有ケル、女中然ラバ我身ヲバ、何トテ男子トハ成玉ハヌヤ、サリトテハ子孫御絶可レ有哉ト申給へバ、明神モ道理ニ攻ラレテ、然バ今一七日伺候有レトテ、神ハ上ラセ給ケリ、御託宣ニ任セテ、又七箇日、御社籠有ケル、第六日ニ當、夜半ノ程ニ、長十六丈餘ノ大蛇之身現、御枕本ニ寄給フ、本ヨリ大剛ナル女中ナレバ、少モ不レ騒、其時ヨリ御懷妊有テ、男子一人出來給フ、其形常ノ人ニ勝テ、容顔微妙、御長八尺、御面兩脇、鱗〈ノ〉如〈ク〉ナル物有、小跼テ脊溝無也、面前異相成ヲ耻テ、人ニ向事ヲ愼、常ニ手ヲ插頭給ヘバ、河野ノ物耻ト申傳タリ、烏帽子手形有事、此謂也、河野新大夫ト云、後伊 豫權介通淸ト稱ス、是ヨリ通字ヲ名乗也(○○○○○○○○○)、其故ハ明神一夜、密通ノ義ヲ以テ云爾、即大通智勝理顯然タリ、然ルヲ今諸人是ヲ名乗事、太以テ不レ可レ然也、

〔保暦間記〕

p.0690 光明峯寺入道關白〈○藤原道家〉ノ三男〈于レ時號二三虎(○○)御前一○賴經〉ト申ハ、聊先將軍〈○源賴朝〉ノ縁類ニテ御坐ケレバ、此人ヲ將軍ニ定テ、公家ヘ申ス、同〈○承久元年〉六月廿五日請ジ下シ奉ル、

〔愚管抄〕

〈六〉

p.0690 二歳なる若公〈○藤原賴經〉祖父公經の大納言がもとに養ひけるは、正月寅日の寅の歳寅時生れて、誠にもつねのをさなき人にも似ぬ子の、占の宿曜にもめでたく叶ひたりと、それを終に六月廿五日に、武士ども迎に上りて、下しつかはされにけり、

〔秦山集〕

〈雜著/甲乙録二〉

p.0690 予〈○保井春海〉年及二六十一、徘二徊武江一、談二皇都故事一、故人皆號二都翁一、近年中、神書號曰二都翁一、訓曰二津々泥(ツヽチ)一、春海之名、取二伊勢物語鴈鳴菊花開之歌一也、

〔伊勢物語〕

〈下〉

p.0690 むかし男、いづみの國へいきけり、〈○中略〉ある人、住吉のはまとよめといふ、
鴈なきて菊の花さく秋はあれどはるのうみべに住吉の濱

從姓氏命名

〔日本書紀〕

〈二十九/天武〉

p.0690 十年十二月癸巳、柿本臣猨(○)〈○中略〉授二小錦下位一、

〔日本書紀〕

〈二十九/天武〉

p.0690 十四年五月辛未、高向朝臣麻呂、都努(○○)朝臣牛(○)飼等、至レ自二新羅一、

〔玄同放言〕

〈三上/人事〉

p.0690 姓名稱謂
天武持統の朝廷より、文德淸和の朝廷まで、縁レ氏取レ名たるもの多かり、その類をいはヾ、都努牛飼、〈都努は角なり、角によりて牛を名とせり、〉柿本猨、〈以上書紀〉柿本建石、橘諸兄、〈諸兄は、諸枝なるべし、〉蓑笠麻呂、〈以上續紀〉船小楫、山邊何鹿、〈何鹿は丹波國の郡名なり、イカナル鹿の略辭なれば、山に縁あり、〉石川毛比、〈毛比は水なり〉淡海三船、石川淨濱、加茂大川、石川魚麻呂、林山主、〈以上殘缺後紀〉橘枝子、橘千枝、橘百枝、橘時枝、橘末茂、橘枝主、〈以上續後紀〉船湊守、石川橋繼、御船賀祐、〈賀祐は櫂也、以上類史、〉南淵永河、〈文德實録〉柿本枝成、橘信蔭、橘三夏、〈以上三代實録〉この他猶あるべし、近來狂歌師の狂名といふもの、これに近し、氏に縁りて名を取る事は、唐人の名に縁りて字せしに本づきたる歟、 譬へば顔回字子淵、〈 籍莊論曰、通謂二之川一、回謂二之淵一、〉仲由字子路〈按、由與レ熊近、子路熊一名也、然不レ載二諸爾雅一、疑取二由之字一、以爲二熊一名一耳、〉の如し、

〔日知録〕

〈二十三〉

p.0691 以レ姓取レ名
古人取レ名、連レ姓爲レ義者絶少、近代人命名、如二陳王道、張四維、呂調陽、馬負圖之類一、榜目一出、則此等姓名、幾居二其半一、不レ知レ始レ自二何年一、嘗讀二通鑑一、至二五代後漢一、有二虢州伶人靖邊庭一、胡身之註曰、靖姓也、優伶之名、與レ姓通取二一義一、所二以爲一レ譃也、〈靖邊庭、亦見二宋史田欽祚傳一、〉考レ之自レ唐以來、如二黄幡綽、雲朝霞、〈唐書魏暮傳〉鏡新磨、〈五代史伶官傳〉羅衣輕〈遼史伶官傳〉之輩一、皆載二之史書一、益信二其言之有一レ據也、嗟乎以二士大夫一、而效二伶人之命名一、則自二嘉靖一以來然矣、

〔急就篇〕

〈一〉

p.0691 石敢當
衞有二石碏、〈干弱反〉石買、石惡一、鄭有二石癸、石楚、石制一、皆爲二石氏一、周有二石速一、齊有二石之紛如一、〈紛扶云反〉其後亦以命レ族、敢當言下所レ當レ〈一作向〉無上レ敵也、