帝王部/外戚上

p.1511 天皇ノ外戚ハ、上古ニ在リテ固リ之ヲ特待セル跡ナキニアラズト雖モ、未ダ其制度ノ見ルベキモノアラズ、其之アルハ蓋シ近江朝廷ノ頃ナルベシ、然レドモ當時ノ制ノ今ニ存セザルヲ以テ亦之ヲ知ルニ由ナシ、大寳ノ制ヨリ以後、其制ト例ト昭々トシテ攷フベシ、凡ソ天皇ノ外戚タルモノハ、毎ニ其官位ヲ進メ、三宮ニ準ジテ封戸ヲ給ヒ、直衣ヲ著スルヲ聽シ、臺盤所ニ入ルヲ得シムルノミナラズ、其病ムニ及ビテハ度者ヲ賜ヒ、諸寺ニ布施シ、神祇ニ奉幣シ、或ハ天下ニ大赦シ、賑給ノ令ヲ發シ、以テ之ヲ救濟スルコトアリ、其犯罪アル、皇太后ノ四等以上ノ親、皇后ノ三等以上ノ親モ皆六議ノ恩典ニ霑ヘリ、是レ其生前ニ於ケル待遇ナリトス、其沒スルヤ天皇爲ニ錫紵ヲ服シ、或ハ帛衣ヲ除キ、廢朝ノ事ヲ行ヒ、或ハ賻物葬儀ヲ賜ヒ、贈位贈官ノ使ヲ發シ給フ等ノ事アリ、而シテ其尤モ貴顯ナルモノニ至リテハ、警固固關シ、爲ニ節會ヲ停廢シ、其墓ハ山陵ニ準ジテ墓戸ヲ置キ、荷前ヲ進メ、天下事アル時ニハ必ズ之ニ告グルヲ以テ例トセリ、是レ其死後ニ於テ享クル所ノ待遇ナリトス、
外戚ガ其生前死後ニ於テ享クル所ノ待遇ハ、大要此ノ如シ、是ヨリ少カ其故事ニ就テ陳ブル所アラントス、兹ニ我國家ノ治亂盛衰ノ跡ヲ歴覽スルニ、外戚ニ關係スルモノ實ニ尠シトセズ、神武天皇ヨリ十一代ニシテ垂仁天皇ノ朝ニ至ル、此時始テ外甥狹穗彦ノ反アリ、後 p.1512 マタ二十二代ニシテ崇峻天皇ノ時、馬子ノ變アリ、馬子ハ武内宿禰ノ子、蘇我石川宿禰ヨリ出ズ、石川四世ノ孫ヲ稻目ト云フ、二女ヲ倶ニ欽明天皇ニ納レテ、用明推古崇峻三天皇ノ外祖トナル、即チ馬子ノ父ナリ、馬子ノ子蝦夷、孫入鹿、相繼ギテ大臣ト爲リ、父祖ノ威烈ニ藉リ、專恣ヲ極メ、擅ニ封民ヲ役シテ大墓ヲ築キ、祖廟ヲ建テヽ八佾ヲ舞ハシメ、其墓ヲ陵ト云ヒ、其家ヲ宮門ト呼ビ、其子ヲ王子ト稱シテ、密ニ不軌ヲ圖リシカバ、天誅踵ヲ回サズシテ、竟ニ中大兄皇子〈天智〉ノ討伐ニ遇ヒ、一門悉ク亡滅ニ歸セリ、而シテ其密議ニ參シ、大憝ヲ殪シ、國家ヲ安ンゼシハ藤原鎌足ノ功ナリ、是ヲ以テ其子不比等、文武天皇ノ朝ニ當リ、荐リニ榮達シテ、天下ノ樞機ヲ掌リ、一門漸ク盛ナリ、其病デ臥スヤ、詔シテ度者ヲ賜ヒ、諸寺ニ布施シ、天下ニ大赦シ、其薨ズルニ及テハ、太政大臣正一位ヲ贈リ、食封資人並ニ生時ノ如クセシム、外戚ノ爲ニ赦令ヲ發シ、贈位贈官及ビ賜封ノ擧アル、蓋シ之ヲ以テ嚆矢トス、時ニ聖武天皇ハ皇太子ニシテ、不比等ノ外孫ナリ、即位ニ至リ、遂ニ不比等ノ女安宿媛ヲ立テヽ皇后トス、古來皇后ハ多クハ之ヲ皇胤ニ擇ブヲ以テ例トシ、大寳ノ令ニハ、妃モ猶之ヲ内親王ニ取リシガ、是ニ至リテ始テ臣下ノ女ヲ採リ、皇后ニ列スル例ヲ開ケリ、是時ニ當リテ、不比等ノ子、武智麻呂、房前、宇合、麻呂等、何レモ顯要ニ列シタルノミナラズ、皇后ノ異父兄、橘諸兄ノ如キモ亦大ニ登用セラレ、大臣ノ位ニ昇リ、外戚ノ權甚ダ重シ、是ヨリ藤原氏累世外戚タルノ故事ヲ馴致セリ、孝謙天皇、藤原皇后ノ出ヲ以テ、聖武天皇ノ後ヲ繼ギ給フニ及ビテ、詔シテ外祖ノ名ヲ諱ミ、且ツ外家ノ姓ヲ避ケシム、外戚ノ威益熾ナリ、淳仁天皇ノ朝ニ至リ、終ニ不比等ヲ近江十二郡ニ追封シテ淡海公ト稱シ、其室ヲ以テ太夫人ト爲セリ、此時惠美押勝ノ亂アリ、押勝ハ武智麻呂ノ子ナリ、
稱徳光仁二天皇ノ際ニ當リテ、宇合ノ子百川、輔弼ノ功アリ、女旅子ヲ桓武天皇ニ納レテ、淳 p.1513 和天皇ノ外祖父トナル、桓武天皇其父ノ故ヲ以テ、長子緒繼ヲ殿上ニ召シテ加冠セシメ給フ、外戚殿上ニ於テ元服スルコト、是ヲ以テ權輿トス、嵯峨天皇ノ后橘氏ハ、諸兄ノ孫清友ノ女ナリ、弟氏公右大臣ト爲リ、橘氏復大ニ興リ、仁明天皇ニ至リ、其氏神モ官祠ニ列セラル、天皇、房前ノ玄孫冬嗣ノ女順子ヲ納レテ女御ト爲シ給フ、順子文徳天皇ヲ生ム、文徳天皇立チ給フニ及ビテ、冬嗣ノ子良房、又女明子ヲ納レテ其外舅トナリ、威權日ニ重シ、天皇ノ峻嚴ナル猶之ヲ憚リ、長ヲ舍テ幼ヲ立テ給フニ至ル、是ヲ清和天皇トス、良房、文徳天皇ノ遺詔ヲ奉ジテ萬機ヲ攝セリ、攝政ノ稱是ニ昉マル、即位ノ元年、始テ十陵四墓ノ制ヲ定ム、四墓ノ列ニ在ルモノハ、藤氏ノ祖ト外祖父母、及ビ外祖父ノ父母トノミ、後増減アリト雖モ、要スルニ外家一門ノ外ヲ出デズ、良房其姪基經ヲ養ヒテ子トス、又外舅ノ大臣ヲ以テ陽成天皇ノ朝ニ攝政トナリ、後ニ至リテ始テ關白トナル、後世攝關ノ職、必ズ之ヲ外祖外舅ノ大臣ニ取ルノ例ハ、良房父子ヲ以テ其先蹤ト爲ス、基經、天皇ノ失徳アルヲ以テ之ヲ廢シテ、光孝天皇ヲ迎ヘ立ツ、是實ニ人臣ヲ以テ廢立ヲ擅行スル始ナリ、是ヨリ大權全ク相門ニ歸シ、威權王家ヲ震ス、光孝天皇ガ基經ヲ臥内ニ引キテ皇太子ノ事ヲ託シ、宇多天皇ガ阿衡ノ事ヲ以テ自ラ責ヲ引キ給ヒシガ如キ、以テ其一端ヲ窺フニ足ルベシ、宇多天皇ハ英主ナリ、一旦其權ヲ收メント欲シ、菅原道眞ヲ擧ゲテ政ヲ輔ケシメ給ヒシカド、其效ナキノミナラズ、積重ノ威、愈激シテ愈盛ナリ、其經ノ子時平、亦醍醐天皇ノ朝ニ驕ル、天皇ハ高藤ノ女ノ産ム所ニシテ、高藤ハ良房ノ弟良門ノ子ナリ、久シク世ニ沈淪セシガ、是ニ至リテ復タ盛ナリ、是ヲ勸修寺家ノ始祖トス、當時數世ノ間、皇后ヲ立テ給ハザリシハ、蓋シ鑑ミル所アリシ故ナルベシ、　朱雀天皇幼冲ヲ以テ立チ給フニ至リテ、時平ノ弟忠平マタ之ガ攝政トナリ、嫡子實頼亦冷泉天皇ノ朝ニ關白タリ、是ヨリ先キ村上天皇ノ中宮ハ實頼ノ弟師輔ノ女ナリ、天皇及ビ爲 p.1514 平守平二親王ヲ生メリ、村上天皇殊ニ爲平親王ヲ愛シ、冷泉天皇ノ太子ニ立テントシ給ヒシカド、外家ノ援ナキヲ以テ成ラズ、村上天皇崩ジ給フニ及ビテ、實頼遺詔ト稱シテ守平親王ヲ立テ、左大臣源高明ヲ貶竄シ、弟師尹ヲ以テ之ニ代ヘタリ、高明、爲平親王ヲ以テ婿トス、故ニ廢立ノ意アリト云フヲ以テ讒ヲ蒙リシモノニシテ、醍醐天皇ノ朝ニ、菅原道眞ガ、宇多天皇ノ皇子齊世親王ノ外舅タルヲ以テ、流謫セラレシト同一轍ナリ、亦以テ當時外戚ノ状態ヲ見ルベシ、圓融天皇ノ時、外祖九條師輔ノ子伊尹、伯父實頼ニ繼ギテ攝政トナル、凡ソ攝關ハ常置ノ職ニアラザレドモ、伊尹之ニ任ジテヨリ子弟相續ギ、永ク絶エザルニ至レリ、兼通兄伊尹ニ嗣ギテ關白トナリ、弟兼家ト互ニ女ヲ宮閫ニ納レント爭ヒ、從弟頼忠ヲ引キテ援トス、頼忠亦兼家ト爭フ、兼家花山天皇ヲ賺シテ、其位ヲ遜レシメ、一條三條二天皇ノ外祖トナリ、驕奢日ニ盛ニシテ、衽ヲ放チテ幼主ヲ抱キ、親王ヲ罵ル等ノ事アリ、其長子道隆、次子道兼、相繼ギテ關白トナリ、自專愈盛ナリシガ、三子道長ニ至リテ殆ド其極ニ達セリ、初メ道隆ノ女定子立チテ一條天皇ノ皇后トナリ、敦康親王ヲ生ミシガ、道長又其女彰子ヲ納レテ中宮トシ、敦成親王ヲ生メリ、二后竝立スルコト之ヲ以テ始トス、後相沿ヒテ流例トナリ、名分大ニ紊レタリ、
三條天皇位ヲ嗣ギ給フニ及ビテ、一條天皇、敦康親王ヲ以テ皇太子ニ立テ給ハントス、中宮彰子モ亦其父道長ニ勸メテ之ヲ立テシメントス、而ルニ天皇、道長ヲ憚リ、終ニ敦成親王ヲ立テヽ皇太子トシ給フ、道長又外孫ノ早ク登祚シ給ハンコトヲ欲シ、三條天皇ニ逼リテ讓位セシム、敦成親王乃チ立チタマフ、是ヲ後一條天皇トス、時ニ皇太子ハ三條天皇ノ皇子敦明親王ナリ、道長又己ノ女ノ出ニアラザルヲ以テ其位ヲ去ラシメ、敦良親王ヲ立テヽ後一條天皇ノ皇太弟トセリ、亦道長ノ外孫ナリ、是時ニ當リテ道長三天皇ノ外祖ト爲リ、位人臣 p.1515 ヲ極メ、其富天下ニ冠タリ、諸子亦朝ニ列シテ、高キハ攝關大臣ニ至リ、卑キモ納言參議ヲ失ハズ、百事己ノ意ノ如ク、一事モ缺ケザルヲ以テ自ラ十五夜ノ月ニ比シ、此世ヲ以テ我世ト爲スニ至ル、實ニ攝關ヲ置キテヨリ以來、未ダ富貴滿盈ナルコト、道長ノ如キモノハアラザルナリ、道長ノ子頼通亦先人ノ餘風ヲ承ケテ、驕傲父祖ニ讓ラズ、身ハ三代ノ執抦トナリテ、權ヲ專ニスルコト凡ソ五十餘年ナリ、而シテ敦康親王ノ女嫄子ヲ養ヒ、名ケテ眞ノ所生ト爲シ、是ヲ後朱雀天皇ノ中宮ト爲ス、亦外戚ノ權ヲ貪ルニ過ギズ、而シテ藤原氏ニハ此轍ヲ踏ムモノ殊ニ多シ、
後三條天皇ハ、藤原氏ノ出ニアラザルヲ以テ、儲位ニ升リ給フモ頗ル難カリシガ、登極ニ至リ甚ク藤氏ノ權ヲ制シ給ヒシニ由リ、外家ノ勢力頓ニ挫折シテ、復昔日ノ如クナラズ、白河天皇ノ中宮ハ、頼通ノ子ナル師實ノ女ニシテ、實ハ源顯房ノ女ナリ、堀河天皇ノ朝、顯房外祖ヲ以テ榮達シ、兄俊房ト共ニ左右ノ大臣ト爲リ、大將ヲ兼子、子族亦納言衞府辨官等ノ顯要ニ列シタリ、藤氏ニアラズシテ兄弟左右ノ大臣タルハ、此ヨリ前ニ絶エテ無キ所ナリ、亦以テ世變ヲ觀ルベシ、且ツ當時ハ天下ノ政、皆院中ヨリ出ヅルヲ以テ、藤原氏益勢力ナシ、然レドモ外戚タランコトニ汲々タルハ猶從前ニ異ナラズ、
堀河鳥羽崇徳ノ三天皇ノ朝ヲ歴テ、近衞天皇ニ至ル、時ニ頼通ノ玄孫頼長、父忠實ノ寵ヲ恃ミテ、兄忠通ト善カラズ、互ニ女ヲ養ヒテ之ヲ後宮ニ納レント欲シ、父子相陷レ、兄弟交軋リ、以テ保元ノ亂ヲ醸シ、更ニ平治ノ變ヲ歴テ、平清盛ヲシテ殊勳ヲ樹テシム、是ニ於テ藤氏ハ從前ノ威權ヲ擧ゲテ之ヲ平氏ニ屬セリ、清盛モ亦藤氏ノ所爲ニ傚ヒ、女ヲ納レテ高倉天皇ノ中宮トシ、竟ニ天皇ニ逼リテ外孫ナル皇子ニ讓位セシム、安徳天皇是ナリ、清盛愈威權ヲ弄シ、跋扈跳梁至ラザル所ナケレドモ、多クハ功績ニ矜リシモノニテ、專ラ外戚ノ親ヲ怙ミ p.1516 シニアラズ、是ヨリ後外戚ノ王室ニ於ル、大ニ前日ト其觀ヲ異ニセリ、
源頼朝府ヲ鎌倉ニ開クニ及ビテ、亦藤氏ノ顰ニ傚ヒ、其女ヲ後宮ニ納レント欲シテ成ラザリシ以來、足利幕府ニ至ル迄、遂ニ將軍ノ女ヲ入ルヽノ事ナシ、當時ハ武家天下ノ政權ヲ掌握セシカバ、皇家ノ外戚モ、其力ニ頼ルニアラザレバ、全ク其勢ナシ、是ヲ以テ鎌倉幕府ノ頃ニハ、西園寺氏ハ將家ノ親ヲ以テ、累世帝戚トナリ、室町將軍ノ時ニハ、日野氏裏松氏等ハ、幕府ノ姻ニ依リテ、盛ニ其家門ヲ興セリ、豐臣氏ノ時ニ及ビテ、近衞氏ノ女、關白秀吉ノ養子トナリテ、後陽成天皇ノ宮ニ入リシハ、少カ其類ヲ異ニスト雖モ、蓋シ亦其力ニ頼ルナリ、後水尾天皇ノ朝、征夷大將軍徳川秀忠、其女ヲ納レテ中宮トス、鎌倉幕府ヨリ以來、將軍ノ女ニシテ后位ニ居ルモノ前後絶エテアルコトナシ、明正天皇ハ徳川氏所生ノ皇女ナリ、孝謙天皇以後女王ヲ立ツルノ例久シク絶エタリシガ、是ニ至リテ復女帝アリ、論者或ハ以テ外戚專横ノ致ス所トス、然レドモ徳川氏ハ之ヲ以テ權威ヲ加ヘントスルニハアラズシテ、之ヲ以テ榮トセントスルニ過ギザリシナラン、此時代ニ在リテハ、復外戚ノ爲ニ社寺ニ奉幣布施シ、或ハ度者ヲ賜ヒ、赦令ヲ行フガ如キ事ナシ、而シテ其沒スルニ當リテハ、忌服廢朝、贈位贈官等ノ事、猶舊典ニ據リテ之ヲ行ヘリト雖モ、復固關警固ノ事ナキニ至レリ、時世ノ然ラシムル所ナリ、
要スルニ我皇室ノ外戚ニ於ケル、之ヲ世界萬國ニ求ムルニ、終ニ其比ヲ見ザル所ニシテ、外戚ハ必ズ藤原氏外戚タルニアラザレバ、執政タルヲ得ザルノ姿ナリシカバ、天照大神ノ御子孫ハ、長ク瑞穗國ニ君臨シ給ヒ、天兒屋命ノ後裔ハ、長ク執政ノ臣ト爲リテ、萬世替ルコトナキハ蓋シ二神ノ幽契ニ起レリト云フ説アルニ至レリ、而シテ藤原氏ハ冬嗣ヨリ以後房前ノ子孫常ニ上流ニ居リ、道長以後其嫡長タル人常ニ攝關タリシガ、鎌倉幕府ノ時、分レテ p.1517 五派ト爲リ、之ヲ五攝家ト稱シ、互ニ外戚タリト雖モ、其勢益微ナリ、足利幕府ノ時、攝家ノ輩、將軍ノ偏諱ヲ受クルニ至リテハ、益言フニ足ラズ、

名稱

〔伊呂波字類抄〕

〈六久〉

p.1517 外戚〈シヤク〉

〔空穗物語〕

〈初秋〉

p.1517 なかたゞ、ないしやくにも外しやく(○○○○)にも、女といふものなんともしく侍る、〈◯中略〉もしはゝかたの外しやくこそ、かのとしかげの朝臣のきむはつかうまつらめ、

〔承久軍物語〕

〈六〉

p.1517 十月十日、〈◯承久三年〉とさのくにゝせんかう〈◯土御門〉あるべきにさだめられけり、〈◯中略〉げしやく(○○○○)のつちみかどの大納言さだみち卿參りて、なく〳〵御車をよす、

〔下學集〕

〈下態藝〉

p.1517 外戚(ゲシヤク)

〔愚管抄〕

〈三〉

p.1517 九條の右丞相、〈◯中略〉我子孫を帝の外戚(ゲサク)とはなさんと誓ひて、觀音の化身の、叡山の慈惠大師と師檀のちぎりふかくして、横河のみねに楞嚴三昧院といふ寺を立、

〔増鏡〕

〈七煙の末々〉

p.1517 院の宮たちの御中には、御このかみにてものし給へど、御げさく(○○○)のよわきはいまもむかしもかゝるこそ、いと〳〵ほしきわざなりけれ、

〔運歩色葉集〕

〈二久〉

p.1517 外(グワイ)戚

〔下學集〕

〈下態藝〉

p.1517 外戚(グワイセキ)

〔令義解〕

〈六儀制〉

p.1517 親戚〈謂親者内親也、戚者外戚也、〉

〔安齋隨筆後編〕

〈一〉

p.1517 内戚外戚　父方の親類を内戚と云、母方の親類を外戚と云、親族に内外を稱する皆是なり、

授官位

〔續日本紀〕

〈八元正〉

p.1517 養老五年正月壬子、授二從三位縣犬養橘宿禰三千代〈◯藤原不比等妻〉正三位一、
◯按ズルニ、天皇ノ外戚ニシテ、官祿ヲ授ケラレタルモノ、其例甚多ク、悉ク載スルニ勝ヘズ、故ニ今史ニ明文アルカ、若クハ其特ニ著明ナルモノヽミヲ取レリ、

〔續日本紀〕

〈四十桓武〉

p.1518 延暦九年二月甲午、詔授二正五位下百濟王玄鏡從四位下、從五位上百濟王仁貞正五位上、正六位上百濟王鏡仁從五位下一、是日詔曰、百濟王等者朕之外戚也、今所下以擢二一兩人一加中授爵位上也、

〔類聚國史〕

〈三十一帝王〉

p.1518 弘仁五年四月乙巳、幸二左近衞大將正四位下藤原朝臣冬嗣閑院一、供張之宜、甚有二雅致一、天皇染レ翰、群臣獻レ詩、時人以爲二佳會一、授二冬嗣從三位、无位藤原美都子從五位下一、賜二五位以上衣被一、

〔類聚國史〕

〈六十六人〉

p.1518 天長十年正月丁未、出雲守正四位下紀朝臣咋麻呂卒、爲レ人無レ才、以二田原天皇〈◯文徳〉外戚一特至二四位一、終以二天命一、時年七十九、

〔文徳實録〕

〈九〉

p.1518 天安元年二月丁亥、右大臣正二位藤原朝臣良房爲二太政大臣一、〈◯中略〉宣制曰、天皇〈我〉詔旨〈良萬止〉勅御命〈乎〉親王諸王諸臣百官人等天下公民衆聞食〈止〉宣〈不〉、右大臣正二位藤原良房朝臣〈波〉朕之外舅(○○○○)〈那利、〉又稚親王〈止〉大坐時〈與利〉助導〈支〉供奉〈禮留〉所〈毛安利、〉今〈毛〉又忠貞〈留〉心〈乎〉持〈天〉食國〈乃〉天下〈乃〉政〈乎〉相安奈那〈比〉申賜〈比〉助奉〈留〉事〈毛〉漸久〈玖那利奴、〉古人有レ言〈利、〉徳〈止之天〉無レ不レ酬〈止奈毛〉聞食〈須、〉而今所レ在〈乃〉官〈波〉掛畏〈支〉先帝〈乃〉治賜〈留〉所〈那利、〉朕未レ有レ所レ酬、是以殊〈爾〉太政大臣官〈爾〉上賜〈比〉治賜、〈◯中略〉天皇御命〈乎〉衆聞食〈止〉宣、

〔三代實録〕

〈三十八陽成〉

p.1518 元慶四年十二月四日癸未、天皇御二紫宸殿一、喚二公卿及百官於殿庭一、策拜二右大臣正二位藤原朝臣基經一爲二太政大臣一、公卿百僚拜舞而罷、策命曰、天皇〈我〉詔旨〈良萬止〉勅御命〈乎〉親王諸臣百官人等天下公民衆聞食〈止〉宣、右大臣正二位藤原基經朝臣〈波〉朕之親舅〈奈利、〉忠貞心〈乎〉持〈氐〉御世御世〈與利〉天下政〈乎〉相安奈々〈比〉助奉〈母〉久〈奈利奴、〉又朕未レ及二初載一之時〈與利〉輔導崇護供奉〈禮留〉所〈母安利、〉因レ兹掛畏太上天皇〈乃◯清和〉詔命〈乎〉持〈天〉攝政〈乃〉職〈爾〉事〈與佐之〉治賜〈倍利、〉朕〈我〉食國〈乎〉平〈久〉安〈久〉天照〈之〉治聞食〈須〉故〈波〉此大臣之力〈奈利、〉而所レ帶官〈波〉攝政〈乃〉職〈爾波〉不二相當一〈止〉頃年參〈加利〉大坐〈都、〉今掛畏太上天皇〈乃〉詔旨〈爾毛、〉職〈波〉貴〈天〉官〈波〉賤〈天也波〉久年〈乎〉歴〈倍岐〉太政官〈乃〉其人〈止波〉最此卿〈乎〉可レ謂〈止〉勅御命〈母安利支、〉掛畏〈岐〉御命〈乃〉任〈仁〉上給治

p.1519 給〈牟止〉去春夏間〈與利〉仰給大坐、而大臣〈乃〉懇〈爾〉加志許〈末利〉辭讓申〈仁〉依〈天〉今〈未天仁〉延來〈禮利、〉今畏〈岐〉本御意早行〈倍岐〉物〈奈利止〉仰給〈不〉御命〈母安利、〉故是以太政大臣官〈爾〉上給〈比〉治給〈久止〉勅、但攝政之職〈波〉今〈母〉彌益々〈爾〉勤奉仕〈禮止〉勅御命〈乎〉衆聞食〈止〉宣、

〔三代實録〕

〈四十三陽成〉

p.1519 元慶七年正月十五日壬午、從四位下行越前權守藤原朝臣弘經卒、弘經者贈太政大臣正一位長良朝臣子、太政大臣昭宣公〈◯藤原基經〉之弟也、〈◯中略〉弘經天皇之外舅也、故天皇特愍、十二月晦日〈◯元慶六年〉授二從四位下一、就二床下一賜二告身一、七年正月遷爲二越前權守一、後四日卒、年四十五、

〔今昔物語〕

〈二十二〉

p.1519 高藤内大臣語第七
此ノ高藤ノ君、止事无ク御ケル人ニテ、成上リ給テ大納言マデ成給ヒヌ、彼ノ姫君〈◯胤子〉ヲバ宇多院ノ位ニ御シケル時ニ、女御ニ奉リ給ヒツ、其ノ後幾ク程ヲ不レ經ズシテ、醍醐ノ天皇ヲバ産奉リ給ヘル也、〈◯中略〉祖父ノ大領〈◯宮道彌益〉ハ四位ニ叙シテ、修理ノ大夫ニナム被レ成タリケル、醍醐ノ天皇位ニ即セ給ヒニケレバ、祖父ノ高藤ノ大納言ハ内大臣ニ成給ヒニケリ、其後彌益ガ家ヲバ寺ニ成シテ、今ノ勸修寺此也、向ノ東ノ山邊ニ其妻堂ヲ起タリ、其名ヲバ大宅寺ト云フ、此レ彌益ガ家ノ當ヲバ、哀レニ睦シク思食ケルニヤ有ケム、

〔權記〕

p.1519 正暦二年九月七日、任大臣事、諸司裝二束南殿廂一、從二額間一云々、時刻卿相參陣、大内記爲時朝臣持二宣命一令レ覽二於中納言顯光卿一、〈◯中略〉
天皇〈我〉詔旨〈良萬と〉勅御命〈乎〉親王諸臣百官人等天下公民衆聞食〈と〉宣、太政大臣〈乃〉官〈ハ〉攝政正二位藤原道隆朝臣〈乃〉可レ任〈なり、〉而謙二讓心神一〈之天〉内大臣〈乃〉官〈をも〉辭申〈天支、〉此般猶令二昇進一〈めハ〉彼心〈爾〉違〈ぬべし、〉右大臣從一位藤原爲光朝臣、數代〈爾〉歴任〈ヘ天〉朝〈乃〉重臣〈とあり、〉仍殊〈爾〉太政大臣〈乃〉官〈仁〉上給〈比〉詔賜〈布、◯中略〉正二位行權大納言藤原道兼朝臣〈ハ〉朕〈乃〉親舅〈なり、〉朝恩〈を〉可レ蒙〈幾〉人〈なる仁〉依〈天那牟〉殊〈爾〉内大臣〈乃〉官〈爾〉任賜〈（中略）久止〉勅〈布〉天皇〈我〉御命〈乎〉衆聞食〈と〉宣、

p.1520 　　正暦二年九月七日

〔權記〕

p.1520 長徳四年十月廿九日甲寅、依レ召參院、〈◯一條母后東三條院詮子〉仰云、年來御二坐左大臣〈◯藤原道長〉土御門家一、亦月來御二此一條一、依レ有二先例一欲レ給二爵賞於大臣室家一之由可レ奏、又給二三位階一如何、其由同加二用意一可二洩申一者、依レ不レ知二御名一、詣二彼殿一案内、丞相命云、名倫子、元從五位上、〈◯中略〉抑此事先日承レ仰已了、而今爲二仰下一、内々令レ申二事由一之處、仰旨如レ此、若有二難澁御氣色一歟、有二事次一見二氣色一可レ示、了〈更不二具記一〉即參内、申二院御消息一、仰〈◯一條〉云、尤可レ然事也、早可二仰下一者也、即奏只今上卿不參、右大將藤原朝臣〈◯道綱〉候、院使可レ仰歟、仰云、有レ便之事也、依レ請、〈◯中略〉即奉二勅命一先參院、奏二御返事旨一、〈大臣室（倫子）、可レ叙二從三位一之趣也、〉

〔日本紀畧〕

〈十一一條〉

p.1520 寛弘三年三月四日丙午、天皇自二東三條一遷二御一條院一、中宮〈◯彰子〉同行啓、是日也、天皇先於二東三條殿一命二花宴一、〈◯中略〉左大臣室、〈◯藤原道長妻倫子〉並子息家司等各増レ爵、

〔日本紀畧〕

〈十一一條〉

p.1520 寛弘五年十月十六日癸卯、天皇賀二鳳輦一、行二幸中宮彰子御所上東門第一、依二第二皇子〈◯後一條〉誕生一也、有二音樂一、即以二皇子一爲二親王一、御名敦成、左大臣〈◯藤原道長〉以下於二南殿一拜舞、宴遊之後給レ祿有レ差、又左大臣室源倫子叙二從一位一家司等叙レ位、子刻還御、〈其中左大臣子息二人、（頼通教通）家司二人叙位、〉

〔御堂關白記〕

p.1520 寛弘五年十月十六日癸卯、道方朝臣召二右大臣一、〈◯藤原顯光〉候レ前、御書敍位、以二道方一被レ仰云、可レ賜二一階一如何、奏聞云、官位共高、仕レ公間非レ無二其恐一不レ賜爲レ慶、又仰云、可レ然家司一人賜レ賞、可レ奏二其人一者、以二季隆一奏也、叙位了右府著座、正二位藤原朝臣齊信、從二位源朝臣俊賢、藤原朝臣頼通、從四位下教通從四位下季隆、以二道方一奏云、實成朝臣上達部亮被レ給二一階一、仰云書落也、早可レ入者、右大臣承也、書二加從三位實成一、源倫子從一位、慶賀人々奏二聞其由一、余並内府同奏、是依二子慶一也、

〔續世繼〕

〈七うたゝね〉

p.1520 六條殿〈◯源顯房〉は、よのおぼえあに〈◯源俊房〉よりもまさり給て、大納言の大將、中宮〈◯白河后賢子〉のおほんおやにておはせしに、大臣あきて侍りけるを、白川のみかどおぼしわづらはせ給て、ひごろすぎけるに、匡房の中納言におほせられあはせければ、ほりかはの大納言〈◯俊房〉をなさせ

p.1521 給へとうちいだして申ければ、みかどおほせられけるは、おとうとなれども、右大將中宮の御おやにて、このたびならずば法師にならんといふなり、又上らうども有て、われこそなるべけれなどいへば、それもすてがたきなりとおほせられければ、大納言大臣になり侍ることは、かならずしも一二といふこと侍らず、なるべき人をえりてなされ侍るなり、又國のつかさへたる人いかゞなど申侍りければ、すがはらのおとゞ〈◯道眞〉もさぬきのかみぞかしとおほせられければ、江帥申けるは、はかせはべちのことに侍り、又さいがくたかく侍らんあにを、大臣になさせ給はんに、出家するおとうともよに侍らじと申ければ、堀川殿はなり給へりけるとぞ、六條のおとゞはそのゝちにぞなり給し、中宮の御おやほりかはのみかどの御おほぢにていとめでたくおはしき、

〔中右記〕

p.1521 寛治七年十一月十五日己巳、今夜有二大將召一、仰二藏人頭左中將宗通朝臣一、奉レ仰令三内豎召二權大納言源朝臣雅實卿一、〈于時在二右府（顯房）六條一〉則被レ參二仗座一、〈被レ候二奧座一〉宗通朝臣仰云、可レ成二賜右近衞大將一日時撰申〈セ〉者、則奉二此旨一退出、〈◯中略〉
　今夜召仰後、大納言還レ家書二定文一、件定文宮内大輔俊信書レ之云々、
抑今夜五節帳代試也、先被レ相二尋例一之處、或有二除目下名一、或有二臨時叙位一者、仍所レ被二仰下一也、彼大納言年少卅五、是雖レ有二右府讓一、超二越數輩之上臈一、被レ補二顯要之大任一、甚有レ恐事也、但國母之人(○○○○)、先例又如(○○○○)レ此(○)、是一之道理也、可レ然云々、戚里之貴誠矣斯言、〈◯中略〉
廿日甲午、依下可レ任二大將一事上有二除目一、今日禁中御物忌也、仍殿下内府令二參籠一給也、未時許大納言參内、〈螺鈿劔、有文帶、紫淡緒、前駈八人、右兵衞督以下、右府子族五人皆扈從、〉暫徘二徊陣壁外一、内大臣此間著二仗座一、諸卿同被レ候、則供二御前御裝束一、其儀如二官奏一、〈東面〉但依二御物忌一、北第一間〈只一間也〉垂二御簾一、御物忌付二廂御簾一、又大臣圓座外、加二敷殿下御料圓座一、須臾出御、〈御直衣〉執抦殿下令レ候御、召二藏人頭宗通朝臣一被レ仰下可レ召二大臣一由上、宗通朝臣出二仗座一召レ之、内大臣參上、著二御前座一即召レ人、藏人兵部大輔通輔參候、依レ仰持二參紙筆等一、

p.1522 右近衞大將正二位源朝臣雅實〈兼〉將曹良定、件良貞申文、頭中將依レ仰持二參御前一也、事了大臣取二除目一、退二歸於殿上一、召二清書上卿一〈權中納言基定卿〉給レ之、上卿著陣行二清書并下名事等一云々、此間大將參二弓場殿一、付二頭中將一奏二慶賀一、次拜舞、〈至二後再拜一之時、隨身等追レ前、後聞右府命云、後拜ト云ハ先一拜、次之拜時、隨身可レ追レ前也、而至二于左右左舞踏後二拜一追レ前、是隨身等失也者、左少辨重資諷諫云々、〉拜間、官人發二歌笛聲一、次府生等〈ニ〉御酒給〈と〉被レ奏、〈件詞前ニ、次將以下賜二饗祿一と奏云々、〉勅許之後、渡二南庭一參二中宮御方一、令三權亮國信朝臣啓二慶賀由一、拜了還二本路一、出二敷政門代一、引二率公卿并次將以下一、歸二還饗所一、〈◯中略〉事了人々退歸之後、大將下二南庭一、被レ拜二嚴親右相府一云々、右府有二牽出物一、馬一疋者、〈◯中略〉
人々被レ談云、新大將、此年之間、被二拜任一事誠大運也、祖父故土御門右府〈◯師房〉五十餘任二大將一、嚴親右府卌餘任二此職一、至二此納言一者、已卅餘也、隨レ及二子孫一彌以早速也、就レ中時二三の人子姪爲二大將一之事、誠未曾有也、右相府奇不可思議歟、
十二月廿七日庚午、依二任大將事一有二除目一、未時許内府令レ蒙二勅授帶劒宣旨一給、頭辨仰二下上卿左兵衞督一、内府則於二弓場殿一令レ奏二慶賀由一、拜舞之後令レ著二仗座一給、〈去廿五日、雖レ可レ有二勅授宣旨一依後日引及二今日一也、〉左大臣〈螺鈿劔、紫淡緒、有文、〉參内、藤大納言、中宮大夫、〈帥〉中納言中將、殿上人親五六輩扈從、前駈十餘人許、此中四位一人、〈義綱朝臣〉頭中將宗通朝臣、此間出二御使一往二反院一、〈◯中略〉
左右大臣(○○○○)、左右大將(○○○○)、源氏同時相置例(○○○○○○○)、未(○)レ有(○)二此事(○○)一、今年春日御社頻恠異、興福寺大衆亂逆、若レ是此徴歟、加之大納言五人之中、三人已源氏、六衞府督五人已源氏、七辨之中四人也、他門誠希有之例也、爲二藤氏一甚有レ懼之故歟、

〔續世繼〕

〈三男山〉

p.1522 保延五年にや侍りけん、つちのとのひつじの年五月十八日、よになくけうらなる玉のをのこ宮〈◯近衞〉うまれさせ給ぬれバ、院〈◯鳥羽〉のうちさらなり、世の中もうごくまでよろこびあへるさまいはんかたなし、〈◯中略〉八月十七日春宮にたゝせ給、昭陽舍に御しつらひありてわたらせ給、大夫には堀川の大納言〈◯師頼〉なり給、御母〈◯鳥羽后得子〉のをぢにおはして、ことにえらばせ給へる

p.1523 なり、

〔吾妻鏡〕

〈二十八〉

p.1523 寛喜三年二月廿一日、京都飛脚參著、去十二日、中宮〈將軍家（藤原頼經）御姉◯後堀河后竴子〉御平産、皇子〈◯四條〉降誕之由申レ之云々、　四月十七日、京都使者參著、依二中宮御入内賞一、去八日將軍家、令レ叙二正四位下一御之由申レ之、

賜封戸

〔續日本紀〕

〈三文武〉

p.1523 慶雲四年四月壬午、詔曰、天皇詔旨勅〈久、〉汝藤原朝臣〈乃◯不比等〉仕奉状者、今〈乃未爾〉不レ在、掛〈母〉畏〈支〉天皇御世御世仕奉而、今〈母〉又朕卿〈止〉爲而、以二明淨心一而朕〈乎〉助奉事〈乃〉重〈支〉勞〈支〉事〈乎〉所念坐御意坐〈爾〉依而、多利麻比氐夜夜彌賜〈閇婆〉忌忍事〈爾〉似事〈乎志奈母〉常勞〈彌〉所念坐〈久止〉宣、又難波大宮御宇掛〈母〉畏〈支〉天皇命〈乃◯孝徳〉汝父藤原大臣〈乃◯鎌足〉仕奉〈賈流〉状〈乎婆、〉建内宿彌命〈乃〉仕奉〈賈流〉事〈止〉同事〈叙止〉勅而、治賜慈賜〈賈利、〉是以令文所レ載〈多流乎〉跡止爲而、隨レ令長遠〈久〉始レ今而次次被レ賜將レ往物〈叙止、〉食封五千戸賜〈久止〉勅命聞宣、辭而不レ受、減二三千戸一賜二二千戸一、一千戸傳二于子孫一、

〔公卿補任〕

〈文徳〉

p.1523 攝政從一位藤良房　天安二年十一月七日宣旨爲二攝政一、准三宮(○○○)、食封、賜下内舍人左右近衞爲二隨身一、帶仗資人卅人上、依レ爲二帝外祖一被二抽賞一也、

〔濫觴抄〕

〈下〉

p.1523 准三宮
清和十四年辛卯〈貞觀十三〉三月十日丙戌、勅攝政太政大臣准二三宮一、賜二年官封戸三千、内舍人、左右近衞兵衞六人、隨身兵仗資人四十人一、

〔三代實録〕

〈十九清和〉

p.1523 貞觀十三年四月十日丙戌、勅、功多者賞厚、先王之通規、徳茂者位尊、往哲之彜訓、是故蒼精既著、増二高於曲阜之基一、朱火以光、加二映於博陸之地一、爰及二本朝一亦有二舊典一、皆迹存二於鉛槧一事絢二於緹蒸一、太政大臣外祖父藤原朝臣、風槩沈遠、器度淹凝、摘縢之寄攸レ歸、據計之任是重、朕自レ在二襁褓一頼レ其保レ生、義爲二君臣一、恩過二父母一、蓋有二不世之功一、須レ受二非常之寵一、而鳴謙在レ心、卑損無レ已、所以顯著之績、春秋繁茂、降崇之典、歳月寂寞、今朕已得レ成レ人、大臣頽齡漸暮、若遂二掊多之美一、不レ崇二加異之章一、則恐當時後代、將レ歸二

p.1524 謗於朕躬一、夫太政大臣法當二食邑三千戸一、及隨身兵仗、國有二成式一、又准二三宮一給二年官一、先帝之恩寵也、至二于封邑一固二讓二千一、唯享二千戸一、隨身等事皆辭不レ受、朕以祿法所レ當、古賢不レ辭、既能有二其功一、居二其位一、何不下食二其祿一増中其威上、然則所レ辭封邑等事、乖二元老崇班之義一、非二國家褒飾之心一、故今不二敢踰一レ法唯盡二其所一レ當、宜下其封戸全食二三千一、以二内舍人二人左右近衞左右兵衞各六人一爲中其隨身之兵上、又給二帶仗資人三十人一、年官准二三宮一事、亦當レ奉レ遵二先帝之遺詔一、又大臣所レ保官爵、皆是先朝之寵章也、於二朕之時一、無二一加益一、仍欲レ増二一位之餘階一、而深忌二亢極一、固自遜辭、朕不二敢違一、全二其冲挹一、斯亦屈二己之志一、成二人之美一也、普告二遐邇一、令レ知二朕意一、　十四日庚寅、太政大臣從一位藤原朝臣良房抗レ表曰、臣伏奉二今月十日勅旨一、賜レ臣以下食邑如二舊命一、年官准三宮、帶刀資人隨身兵仗等事上、荷レ恩不レ力、レ膽無レ間、臣聞太政大臣者、上理二陰陽一、下經二邦國一、一人有レ慶、師範猶施、四海無レ波、儀形自用而先帝不レ棄二臣庸瑣一、委以二此崇班一、純陽未レ免レ履レ氷、臘月逾添二流汗一、自愧二形影一、深執二撝謙一、唯許二減封三分有一一、又隨身兵仗等事、雖二舊貫一不三敢當二其仁一、年官則恩是新情、臣未レ堪レ爲二其首一、故臣並固辭、以視不二虗受一、今陛下更憲二章先帝一、重宣二慰鴻私一、忠誠不レ移、先後惟一、臣欲二推レ賢以避一レ路、何私二陛下公選之官一、將三扶レ老以二干城一、何分二陛下宿衞之士一、况比年調和不レ偶、水旱重仍、倉廩少二禮節之資一、城池失二金湯之險一、故去十一年六月二十六日聖主下レ勅曰、服御常膳並宜二減撤一、同年七月二日公卿上奏曰、五位已上封祿亦蹔減折、其議未レ復、其事猶存、豈君臣偏好二卑謙一、蓋内外共待二豐稔一、若以二斯時一全食二彼邑一、欺二耻格於先帝一、而取二嫌猜於當時一也、且尸素者、天奪二其鑒一、充盈者鬼瞰二其家一、温飽有レ餘、何以忘二止足一、年齡已暮、蹔欲レ養二遊魂一、臣所三以不二奉遵一、公私兼濟而已、不レ任二懇欵屏營之至一、謹修二表状一、陳讓以聞、不レ許、〈◯又見二都氏文集、菅家文草一、〉

〔三代實録〕

〈四十一陽成〉

p.1524 元慶六年二月甲戌朔、勅曰、舅氏太政大臣藤原朝臣〈◯基經〉朕自レ在二提抱一頼二其保護一、思下隆二非常之渥寵一、以答中莫大之元功上、其職封職田資人等、累經二以聞一自遜辭、朕不二敢違一レ之、聽二其所一レ請、又舊儀所レ賜隨身内舍人二人、左右近衞各六人、左右兵衞各六人、然而隨二其固辭一、不二更加給一、依二前日之分配一、減

p.1525 定内舍人二人左右近衞各四人一、但任人賜爵等並准二三宮一、一如下先帝策二命忠仁公一故事上、

〔公卿補任〕

〈醍醐〉

p.1525 左大臣從二位藤時平　延喜二年正月廿八日、賜二別封二千戸一、

〔公卿補任〕

〈朱雀〉

p.1525 攝政左大臣正二位藤忠平　延長九年五月廿日、賜二内舍人隨身一、〈左右近衞四人〉任人爵人並准二三宮一、〈◯中略〉承平二年二月廿九日、宣旨聽下乘二牛車一出中入上東門上、十一月廿六日、叙二從一位一、

〔日本紀略〕

〈二朱雀〉

p.1525 天慶二年正月廿八日、太政大臣〈◯藤原忠平〉任人賜爵並准二三宮一、一如二貞觀故事一、

〔公卿補任〕

〈圓融〉

p.1525 關白太政大臣從一位藤兼通　貞元二年十月十一日、依レ病辭二關白并太政大臣一上表、即有二勅許一、十一月四日、依レ請停二關白一讓二于左大臣一、〈◯藤原頼忠〉同日詔、任人爵人准二三宮一、

〔本朝文粹〕

〈二勅書〉

p.1525 充二華山法皇外祖母惠子女王封戸年官年爵一勅、　　　　　　慶保胤
勅漢武即レ位、臧兒遇レ封、誠是眇代之恒規、抑亦前史之令典也、朕外祖母王氏、〈◯藤原伊尹妻〉禮法在レ心、閨闈垂レ範、朕當二幼日一、早別二先妣一〈◯懷子〉祖母視レ朕亦猶レ子、朕報二祖母一未レ如レ親、往年厭レ世歸レ道、出レ家爲レ尼、何以二塵俗之風一、妄訪二勸念之月一、授二邑土三百戸、幷年爵内外官三分等一、聊爲二湯沐資一、兼與二役從之輩一、主者施行、
　永觀二年十二月十三日

〔日本紀略〕

〈九一條〉

p.1525 寛和二年六月廿八日乙丑、勅賜二攝政右大臣〈◯藤原兼家〉内舍人二人左右近衞各四人一爲二隨身一、

〔本朝文粹〕

〈四表〉

p.1525 爲二入道前太政大臣一〈◯藤原兼家〉辭二職幷封戸准三宮一第三表　　　　　　江匡衡
臣某言、頻獻二表奏一、未レ蒙二照臨一、仰二前疏一而増二戰栗一、濡二禿筆一而惱二虞松一、臣某〈中謝〉臣伏惟察レ能授レ官、上聖爲レ之布レ徳、揣レ分受レ職、往賢由レ其全レ身、若授受乖二其宜一、則如下養二魚鼇於層雲之巓一、棲中鳥雀於重淵之底上者也、臣齡先二懸車一而身已病、器非二負鼎一而力早衰、騏驥之病也、駑馬先レ之、况駑馬之病乎、孟賁之衰也、庸夫蔑レ之、况庸夫之衰乎、凡登二高秩一者、必飾二謙挹之詞一、至二大年一者、即述二歸老之志一、今臣所レ請、異二於彼一焉、夫事無二兩全一、物難二倶有一、連枝或臨二艾服一兮凋枯、臣之餘二六旬一者、可レ謂二家老一、末葉多列二槐庭一兮榮顯、臣之居二三公一者、是摠二國卿一、

p.1526 加以兩院上皇不レ弃二渭陽之勞功一、擢以二親舅一矣、今上陛下不レ遺二豐沛之父老一、賞以二外祖一焉、太后降レ尊、忝存二爲レ子之道一、少陽厚レ禮、猶有二稱レ孫之名一、其外竹園蘭坂、多是臣之枝苗、二府九卿、半又臣之弟姪、書契以還、未レ有二才徳薄、寵榮厚如レ臣者一矣、是以葉公魂驚、何更扶二龍圖一而招二半死一、華封齡老、唯須下祝二鳳暦一而送中餘生上、臣縱遁二崇班一以棲二野雲一、命存則可レ仰二聖化一、臣若叨二重寄一以先二朝露一、位尊亦無レ益二微躬一、方今塵曠漸深、慙懼彌劇、昔秉二釣柄一而過二九十一、寧非二安平之強健一哉、今辭二官職一而至二再三一、則是暗懦之尫羸也、雖レ降二十勅一、何改二一心一、伏望鴻慈殊矜二微懇一、聽二臣欵闕之請一、不レ異二敢諫之皷一、靜二臣懸旆之心一、自爲二進善之旗一、無レ任二挹滿之至一、謹重遣二正四位下行右近衞中將兼伊豫守藤原朝臣道頼一、抗レ表陳乞以聞、臣某誠競誠愓、頓首頓首、死罪死罪謹言、
　永祚二年四月廿一日太政大臣從一位藤原朝臣〈某〉上表

〔公卿補任〕

〈一條〉

p.1526 攝政太政大臣從一位藤兼家〈出家人准三宮初例〉　永祚二年五月五日、辭二攝政太政大臣一、更詔關白、八日、返二關白一、依レ病入道、〈法名如意〉十二日、詔賜二度者一百人一、廿三日、詔書云、准三宮任人賜爵之儀、擬二三宮一、以不レ改二釆邑茅土之制一、割二二千一而殊加者、固辭不レ受、七月二日、薨二于東三條第一、

〔公卿補任〕

〈一條〉

p.1526 左大臣正二位藤道長　長徳二年七月廿日、叙二正二位一、廿一日、大將如レ元、八月九日、辭二大將一、以二童六人一爲二隨身一、十月九日、停レ童爲二左右近衞府生各一人、近衞各四人、
　〈内覽童隨身六人給レ之、九條右大臣（師輔）例云々、〉

〔本朝文粹〕

〈五表〉

p.1526 爲二入道太政大臣一〈◯藤原道長〉辭二左大臣並章奏隨身等一表　　　　　　江匡衡
臣〈某〉言、頻表仰レ恩、未レ蒙二矜遂一、馳二意半漢一、秋駕之騎方危、盡二詞披陳一、春木之筆欲レ腐、臣某〈中謝〉臣聲源淺薄才地荒蕪、偏以二母后〈◯一條母后詮子〉之同胞一、不次昇進、亦因二父祖之餘慶一、匪レ徳登用、彼周公旦之夕見七十也、臣未レ能レ薦二一士一、叔孫通之朝儀三千也、臣未レ能レ出二一言一、冰魂雪汗、四二廻于兹一、天譴鬼瞰、萬二念于懷一、〈◯中略〉伏望弘慈曲降二叡鑑一、臣所帶官、及内外章奏、觸レ臣宣行之事、忽從二停止一、又隨身近衞府已下十人、名付二本府一、令

p.1527 レ從二歸歟一、俾二夫天地之徳、施而彌新、日月之明、照而更盛一、無レ任二危懼謙退之至一、謹重上表陳請以聞、臣某誠兢誠愓、頓首頓首、死罪死罪謹言、
　長徳四年三月十二日左大臣正二位兼行左近衞大將藤原朝臣上表

〔日本紀略〕

〈十三後一條〉

p.1527 長和五年六月十日壬午、勅、左大臣〈◯藤原道長〉年爵年官准二三宮一、本封外加二食邑三千戸一、以二内舍人、左右近衞、左右兵衞等一爲二隨身兵仗一、并給二帶刀資人卅人一、如二忠仁公〈◯藤原良房〉故事一、又室家源倫子本封外、給二邑土三百戸、年爵内外官三分一、　十月二日癸酉、攝政辭表、載二左大臣並准三宮事一、勅答不レ許、

〔小右記〕

p.1527 寛仁三年五月八日甲子、四條大納言被レ示二送状一云、昨日依レ有二攝政〈◯藤原頼通〉御消息一、今日參入、可レ行二勅書事一、是入道殿〈◯道長〉御封事云々、大入道御時事、若有レ所二聞食一歟、御暦被レ注乎、故宣義抄二出詔勘一之中有二此勅一、先入道關白任人賜爵猶擬二三宮一、封戸不レ改レ勅云々、書中任人賜爵之儀、擬二三宮一不レ改二釆邑茅土之制一、割二二千一而殊加云々、表状云、讀二月日勅書一、賜二其封二千戸一、任人賜爵擬二三宮一云々、勅答辭下其准二三宮一之儀上、謝下以二封二千一之制上云々、案レ之最初勅書割二二千一、新加之文、本封〈仁〉似レ加二別封二千一、依レ之端所レ書文者、宣義所レ注也、出家之人何有二位封職封一乎、表并勅答者、只有二別封加字一、非レ無レ所レ疑如何、又勅書無二御畫一者、不レ就二御所一只可レ奉二攝政一歟、先例雖二幼主一皆奏、近代不レ然、今被レ加二御元服一、如レ此事如何者、報云、暦無レ所レ注、或書云、只入道殿例、注二准三宮年爵年官并別封二千一、抑出家人不レ可レ有二位職等封一歟、忽無二御畫一之文、不レ可レ被レ奏者、古跡亦就二御所一奏聞、從二御所一被レ遣二攝政所一、而近代不レ然、但事已不レ輕、進二御所一被レ奏宜歟、可レ有二事疑一者、先示奏者、隨二案内一被二進止一如何、近代事不レ似二古昔一耳、　九日己丑、昨日勅書趣并進奏不等事、問二達大納言御許一、報云、任人賜爵如レ故、可レ被レ給二封戸二千戸一、不レ可レ有二位職等封一、仍只被レ給二別封二千戸一云々、如二大入道殿御時一、於二入道殿一申二案内一、付二御所一可レ宜者、依進二御所一奏覽、攝政被レ候二御所一者、此事合二愚案一、

〔濫觴抄〕

〈下〉

p.1527 法准三宮　

p.1528 後一條四年己未〈寛仁三〉五月八日、入道前太政大臣〈◯藤原道長〉重勅如レ故、出家以後希代之例也、

〔扶桑略記〕

〈二十九後冷泉〉

p.1528 治暦三年丁未十月七日壬子、前大相國賜二准三宮勅書一、年官年爵食邑三千戸、内舍人二人、左右近衞兵衞各六人爲二隨身一、資人卅人、如二忠仁公舊事一、

〔公卿補任〕

〈崇徳〉

p.1528 散位　前太政大臣從一位藤忠實　保延六年二月十日、宣旨聽下乘二輦車一出中入中重上、六月五日、勅宣年官年爵一准二三宮一、又食邑三千戸、以二内舍人二人、左右近衞各六人一爲二隨身兵仗一、并給二帶仗資人卅人一、如二忠仁公故事一者、

〔兵範記〕

p.1528 久安五年十月十六日甲子、今日攝政殿〈◯藤原忠通〉北政所從一位藤原朝臣宗子、有二准三宮勅書事一、上卿左兵衞督重通卿依レ召參二右仗一、藏人頭以二皇太后宮權亮爲通朝臣一宣二下之一、大内記長光削二作之一、其勅文曰、
勅〈◯中略〉從一位藤原朝臣者攝籙之嫡室、皇后〈◯崇徳后聖子、時爲二皇太后一、〉之母儀也、訓導克宣、施二榮輝於掖庭之月一、節儉夙標、傳二佳譽於曲阜之風一、况朕義同二祖母一、禮如二順孫一、撫養之恩惟深、報酬之忠最切、是以誼二語芳躅於倭漢一、將レ准二徽號於宮闈一、宜レ授二本封外邑土三百戸、年爵并内外官三分一、主者施行、
　　久安五年十月十六日

〔台記〕

p.1528 久安六年正月廿二日庚子、申刻大相府〈◯藤原忠通〉與レ書曰、禪閤〈◯藤原忠實〉嚴命如レ此、宜二計示一者、即見二禪閤御消息一載二三箇條一、一條殿欲二加階一、已爲二從一位一、可レ益二加何事一乎、角振隼宜レ加二一階一、憲雅可二加階一、而重喪人有レ憚否、此等事與二左大臣一〈◯頼長〉謀二議可否一候以二聞法皇一者、報状曰、一條殿已極レ位、無レ所レ可二益加一、竊以爲帝之高祖母齡過二九旬一、〈是年九十一〉被レ准二三宮一、理尤可レ然、角振隼加階亦必可、〈◯中略〉是夜候レ内、後聞内大臣奏二勅書一云々、勅、有レ功必酬、貽二彜範於竹帛一、積善永顯、傳二佳猷於典墳一、從一位藤原朝臣全子〈◯藤原師通妻〉者、攝籙大相國之祖母也、四徳倶備、六行相兼、二代宰臣之、致二輔弼一也、受二彼餘裔一、當時皇后之儼二啓令一也、爲二其曾孫一、仍縱凝二安懌之歡一、寧忘二褒崇之道一、宜レ授二邑土三百戸、并年爵内外官三分一、主者施行、　

p.1529 　　久安六年正月廿二日、　　　　　　　　　　　〈作者大内記長光〉
上卿内大臣　中務輔丞不レ參、仍召二外記師直一賜レ之、〈◯下略〉

〔百練抄〕

〈七六條〉

p.1529 仁安二年十一月十八日、從三位平盛子、〈故攝政（藤原基實）北政所、前太政大臣（平清盛）女、〉被レ下二准三后勅書一、

〔公卿補任〕

〈六條〉

p.1529 散位　前太政大臣從一位平清盛　仁安二年五月十七日、上表辭二太政大臣并兵仗一、八月十日、賜二官符一以二播磨國印南野、肥前國杵嶋郡、肥後國御代郡南郷、土比郷等一爲二大功田一傳二子孫一、

〔平家物語〕

〈四〉

p.1529 いつくしま御幸の事
治承四年二月廿一日、主上〈◯高倉〉ことなる御つゝがもわたらせ給はざりしをおしおろし奉りて、〈◯中略〉東宮〈◯安徳〉せんそ有しかば、入道〈◯平清盛〉相國夫婦共に外祖父外祖母とて、准三ぐうのせんじをかうむり、年官年爵を賜はりて、上日の者を召つかひ、ゑかき花つけたる者共出入て、ひとへに院宮のごとくにてぞ有ける、出家の人の准三后のせんじをかうぶる事は、ほうごう院の大入道殿かね家公の外は、是はじめとぞ承はる、

〔百練抄〕

〈十四四條〉

p.1529 貞永元年十二月廿七日壬寅、前關白〈◯外祖父藤原道家〉北政所有二准三宮一、

聽著直衣

〔禁秘御抄〕

〈中〉

p.1529 聽二直衣一事
聽二入立一之人、定聽二直衣一、其外侍讀聽レ之、不レ然人不レ聽レ之、可レ然人少々聽レ之也、〈◯中略〉崇徳御時、實隆通季實行實能一時聽レ之、准レ之高倉院御時、時忠候二帳臺御共一、世人嘲レ之、〈◯下略〉

〔禁秘御抄階梯〕

〈中〉

p.1529 按四人〈◯實隆、通季、實行、實能、〉共閑院公實卿男、崇徳院御外舅、〈◯中略〉按時忠者高倉院御外舅也、以二御外舅名一准二實隆卿已下供奉例一、時忠卿候二御共一、但實隆卿以下者公達也、於二時忠卿一者諸大夫也、仍不レ足二准據一、世人嘲レ之乎、

〔續世繼〕

〈二春のしらべ〉

p.1529 仁和寺の女院〈◯待賢門院〉の御はらの一御子は、位おりさせ給て新院〈◯崇徳〉ときこえさせ給しのちに、さぬきにはおはしましゝかば、さぬきのみかどとこそ聞えさせ給らめな、御

p.1530 母女院は中宮璋子と申き、公實大納言の第三女、鳥羽院の位におはしましゝとき、法皇〈◯白河〉の御むすめとてまゐり給へりき、此みかど、〈◯中略〉保安四年正月廿八日位につかせ給、〈◯中略〉御母女院ならぶ人なくておはしましゝかば、御せうとの侍從中納言さねたか、左衞門督みちすゑ、右衞門督さねゆき、左兵衞督さねよしなど申て、みかどの御をぢにてなをしゆるされて(○○○○○○○○○○○○○○○○○)つねにまゐり給、其きんだち近衞のすけにてあさゆふさぶらひ給、

聽入臺盤所

〔禁秘御抄〕

〈中〉

p.1530 被レ聽二臺盤所一人事
無レ何万人亂入、尤不レ可レ然事也、執柄人并子息ナドハ勿論、其外殊難レ去大臣納言之間、兩三人可レ足、而近代旁子細面々所望之間及二數輩一、御乳母父必聽、御外舅勿論(○○○○○)、〈◯中略〉崇徳後白河御時、實行兄弟不レ及二左右一、又高倉院御時時忠、院〈◯後鳥羽〉信清、當時〈◯順徳〉範茂、雖レ難レ比二彼等一聽レ之、

〔禁秘御抄階梯〕

〈中〉

p.1530 實行兄弟公實卿男、實隆實行通季實能實兼季成等兄弟、共待賢門院御連枝也、爲二崇徳院御外舅一也、時忠平時信公男、建春門院御連枝、爲二高倉院御外舅一也、信清信隆卿男、七條院御連枝、號二太秦内大臣一、爲二後鳥羽院御外舅一也、範茂範季公二男、修明門院御連枝、爲二順徳院御外舅一也、

〔枕草子〕

〈一〉

p.1530 清凉殿のうしとらのすみの、北のへだてなる御さうじには、あらうみのかた、いきたる物どものおそろしげなる、手ながあしながをぞかゝれたる、うへの御つぼねの戸おしあけたれば、つねにめに見ゆるをにくみなどしてわらふほどに、かうらんのもとにあをきかめの大なるすゑて、さくらのいみじくおもしろきえだの五尺ばかりなるを、いとおほくさしたれば、かうらんのもとまでこぼれさきたるに、ひるつかた大納言殿〈◯藤原伊周〉さくらのなをしのすこしなよゝかなるに、こきむらさきのさしぬき、しろき御ぞども、うへにこきあやのいとあざやかなるをいだしてまゐり給へり、うへ〈◯一條〉のこなたにおはしませば、戸ぐちのまへなるほそきいたじきに

p.1531 ゐ給ひて、ものなどそうし給ふ、みすのうちに、女房さくらのからぎぬどもくつろかにぬぎたれつゝ、ふぢやまぶきなどいろ〳〵にこのもしく、あまたこはじとみのみすよりおし出たるほど、日のおましのかたにおものまゐるあしおとたかしけはひなどをし〳〵といふ聲きこゆ、うらうらとのどかなる日のけしきいとをかしきに、はての御はんもたる藏人まゐりて、おものそうすれば、なかの戸よりわたらせ給ふ、御ともに大納言殿まゐらせ給うて、ありつる花のもとにかへりゐ給へり、宮〈◯一條后定子、伊周妹、〉の御まへの御きちやうおしやりて、なげしのもとに出させ給へるなど、たゞなにごともなくよろづにめでたきを、さぶらふ人もおもふ事なきこゝちするに、月も日もかはりゆけどもひさにふるみむろの山のといふふることを、ゆるゝかにうちよみ出してゐ給へる、いとをかしとおぼゆる、げにぞちとせもあらまほしげなる御ありさまなるや、

姓名特典

〔續日本紀〕

〈十聖武〉

p.1531 神龜四年十二月丁丑、正三位縣犬養橘宿禰三千代〈◯聖武后藤原安宿媛母〉言、縣犬養連五百依安麻呂、小山守大麻呂等是一祖子孫、骨肉孔親、請共沐二天恩一、同給二宿禰姓一、詔許レ之、

〔續日本紀〕

〈二十孝謙〉

p.1531 天平寳字元年八月癸亥、夫人正二位橘朝臣古那可智、无位橘朝臣宮子、橘朝臣麻都賀、又正六位上橘朝臣綿裳、橘朝臣眞姪改二本姓一賜二廣岡朝臣一、

〔續日本紀〕

〈二十孝謙〉

p.1531 天平寳字二年六月乙丑、大和國葛上郡人從八位上桑原史年足等男女九十六人、近江國神埼郡人正八位下桑原史人勝等男女一千一百五十五人同言曰、伏奉二去天平勝寳九歳〈◯天平寳字元年〉五月二十六日勅書一偁、内大臣、〈◯藤原鎌足〉太政大臣〈◯不比等〉之名、不レ得レ稱者、今年足人勝等、先祖後漢苗裔、劉言興言帝利等、於二難波高津宮御宇天皇〈◯仁徳〉之世一、轉自二高麗一、歸二化聖境一、本是同祖、今分二數姓一、望請依レ勅一改二史字一、因蒙二同姓一、於レ是桑原史、大友桑原史、大友史、大友部史、桑原史戸、史戸六氏同賜二桑原直姓、船史船直姓一、

〔續日本紀〕

〈二十一淳仁〉

p.1531 天平寳字二年八月甲子、以二紫微内相藤原朝臣仲麻呂一任二太保一、勅曰、褒レ善懲レ惡、聖主

p.1532 格言、賓〈◯賓恐賞誤〉レ績酬レ勞、明主彜則、其藤原朝臣仲麻呂晨昏不レ怠、恪勤守レ職、事レ君忠赤、施務無レ私、愚拙則降二其親一、賢良則擧二其怨一、殄二逆徒於未一レ戰、黎元獲レ安、固二危基於未然一、聖暦終長、國家無レ亂略由二若人一、平二章其勞一、良可二嘉賞一、其伊尹有莘媵臣、一佐二成湯一、遂荷二阿衡之號一、呂尚渭濱之遺老、且弼二文王一、終得二營丘之封一、况自二乃祖近江大津宮内大臣一〈◯鎌足〉已來、世有二明徳一、翼二輔皇室一、君歴二十帝一、年殆一百、朝廷無事、海内、清平者哉、因レ此論レ之、准レ古無レ匹、汎惠之美、莫レ美二於斯一、自レ今以後、宜三姓中加(○○○)二惠美二字(○○○○)一禁レ暴勝レ強、止レ戈靜レ亂、故名(○)曰(○)二押勝(○○)一、朕舅之中、汝卿良尚、故字(○)稱(○)二尚舅(○○)一、更給二功封三千戸、功田一百町一、永爲二傳世之賜一、以表二不常之勳一、別聽三鑄レ錢擧レ稻、及用二惠美家印一、

〔續日本紀〕

〈二十一淳仁〉

p.1532 天平寳字二年八月丙寅、外從五位下津史秋主等卅四人言、船、葛井、津本是一祖、別爲二三氏一、其二氏者蒙二連姓一訖、唯秋主等未レ露二改姓一、請改(○)二史字(○○)一、於レ是賜二姓津連一、

〔續日本紀〕

〈四十桓武〉

p.1532 延暦九年十二月壬辰朔、詔曰、春秋之義、祖以レ子貴、此則禮經之垂典、帝王之恒範、朕君二臨寓内一十二年於兹一、追尊之道猶有二闕如一、興言念レ之、深以懼焉、宜下朕外祖父高野朝臣〈◯弟嗣〉外祖母土師宿禰、並追二贈正一位一其改二土師氏一爲中大枝朝臣上、夫先秩二九族一、事彰二常典一、自レ近及レ遠、義存二曩籍一、亦宜三菅原眞仲、土師菅麻呂等、同爲二大枝朝臣一矣、〈◯又見二本朝月令一〉

〔續日本後紀〕

〈四仁明〉

p.1532 承和二年正月己巳、是日後太上天皇〈◯嵯峨〉幸姫橘氏〈◯嘉智子〉所二誕育一皇子爲二親王一、左京人右馬寮權大允清友宿禰眞岡、散位同姓魚、引等、賜二姓笠品宿禰一、非二其願一也、公家避二贈太政大臣橘氏〈◯嘉智子父清友〉之名一耳、

〔續日本後紀〕

〈九仁明〉

p.1532 承和七年十一月辛巳、勅、橘戸、蝮橘、橘連、伴橘連、橘守、橘等六姓、與二橘朝臣一〈◯清友〉相渉、宜レ賜二椿戸、蝮椿連、伴椿連椿守、椿等一、自餘以二橘字一爲レ姓之類、亦以レ椿換レ之、

吉事恩遇

〔續日本後紀〕

〈十三仁明〉

p.1532 承和十年七月庚戌、致仕左大臣正二位藤原朝臣緒嗣薨、〈◯中略〉緒嗣者、參議正三位式部卿太宰帥宇合之孫、而贈太政大臣正一位百川之長子也、桓武天皇延暦七年春、喚(○)二緒嗣於殿上(○○○○○)一

p.1533 令(○)二加冠(○○)一焉、其幞頭巾子、皆是乘輿之所レ撤也、

〔公卿補任〕

〈清和〉

p.1533 參議從四位下藤基經　貞觀六年正月十六日任、元藏人頭左中將、中將如レ元、
家傳云、年十八、於二東宮〈◯清和〉寢殿上一加冠、天皇〈◯文徳〉覽、〈仁壽元也〉

〔三代實録〕

〈四十九光孝〉

p.1533 仁和二年正月二日壬午、太政大臣〈◯藤原基經〉第一之男時平、於二仁壽殿一加二元服一、于時年十六、帝自手取レ冠加二其首一、令二主殿助從五位下藤原朝臣末並理一レ鬢、即日授二時平正五位下一、其告身天皇親筆書二黄紙一以賜レ之、勅二參議左大辨從四位上兼行勘解由長官文章博士橘朝臣廣相一作二告身文一、其所レ須冠巾皆是服御之物也、

〔本朝文粹〕

〈二位記〉

p.1533 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　橘贈納言〈廣相〉
　　無位藤原朝臣時平
　　　右可二正五位下一
中務、伯禽封レ魯、辟疆侍中、咨爾時平、名父之子、功臣之嫡、及二此良辰一、加二汝元服一、鳳毛酷似、爵命宜レ殊、可レ依二前件一、主者施行、
　仁和二年正月二日

〔神皇正統記〕

〈光孝〉

p.1533 この天皇、昭宣公〈◯藤原基經〉の定によりて立ちたまひしかば、御志も深かりしにや、その子〈◯時平〉を殿上に召して元服せしめ、御自ら位記をあそばして、正五位下になし給ひけるとぞ、

〔扶桑略記〕

〈二十二宇多〉

p.1533 寛平二年二月十三日己巳、大臣〈◯藤原基經〉參入言曰、可レ加二小童仲平元服一、即簾前立二倚子一、就レ之、大臣祗候、爰使二散位定國先結一レ髮、次朕著レ冠、此時左大臣融朝臣參入、太政大臣並仲平相具舞踏、賜二仲平白褂一領一、朕即手造二位記一曰、無位藤仲平、今可二正五位下一、先帝〈◯光孝〉御宇之日、兄時平加二元服一、皆率二其流一也、

〔台記〕

p.1534 久安六年十二月廿五日丁卯、傳聞關白〈◯忠通〉息童、〈八歳〉於二近衞亭一加二元服一、關白加冠、權中納言忠基卿理髮、上達部直衣、殿上人衣冠、宗能忠基經定等之外無二來客一、無二飮食事一、冠者直衣、〈用(○)二主上御冠(○○○○)一〉於二堂上一拜二加冠一云々、今夜無二叙位禁色昇殿等事一云々、〈◯中略〉上皇〈◯鳥羽〉及皇嘉門院〈◯崇徳后聖子、忠通女、〉御二件亭一、依二此事一去夜上皇移二御三條第一、元服了還御、〈◯中略〉元服人三箇日留二近衞亭一、居二女房局一云々、是夜元服禮儀、未レ知二誰人何年例一、京師傾奇、

〔冠儀淺寡抄〕

〈一陳設〉

p.1534 後世〈◯中略〉於二正寢一、然而嫡家嫡子必行二之於正寢之廂一、庶流末子者、乃於二東西對及出居〈廂或廊〉曹司等一行レ之、〈◯中略〉於(○)二禁中(○○)一行(○)レ之者是聖寵之至也(○○○○○○○○)、〈◯中略〉又於(○)二仙洞並女院等(○○○○○○)一行(○)レ之亦殊恩也(○○○○○)、

〔公卿補任〕

〈高倉〉

p.1534 散位　非參議從三位平清宗　治承四年五月卅日叙、〈◯中略〉
前大納言正二位平宗盛一男、母贈左大臣時信公女、　承安二、正、五從五下、〈建春門院當年御給〉同加二元服一、〈於二一院（後白河）御所一加レ之〉同日、被レ聽二内昇殿一、即聽二禁色雜袍一、

〔玉海〕

p.1534 治承元年十二月卅日乙未、〈◯中略〉其夜有二小除目一云々、花山中納言〈◯兼雅〉息〈大相國入道（平清盛）外孫〉加二元服一、即夜叙爵〈從五位下〉昇殿、又拜二任侍從一云々、拜賀候時可レ被レ許二禁色一候由兼被レ仰云々、攝録之息尚未レ聞二元服之夜授レ官候例一、中納言子息元服之日昇殿、太以過分也、但權門之事不レ能レ論二是非一歟、

〔三代實録〕

〈七清和〉

p.1534 貞觀五年十月廿一日庚辰、天皇宴(○)二太政大臣(○○○○)〈◯藤原良房〉於内殿(○○○)一、以(○)賀(○)二滿六十之齡(○○○○○)一、有二衣被寳物之贈一、毎色叶二於六數一、皆是乘輿服御之物也、特喚二諸大夫年六十已上者於仗頭一賜レ飮、太政大臣家令從五位下菅野朝臣弟門、授二從五位上一、藤原朝臣直方從五位下、從四位下藤原朝臣儉子進二從四位上一、無位藤原朝臣多美子從四位下、從五位下上毛野朝臣滋子正五位下、慶賀之餘歡、恩㢡及二餘家人一也、〈◯中略〉　廿三日壬午、屈二六十僧於内殿一、限二三箇日一轉二讀大般若經一、　十一月廿六日乙卯、中宮〈◯良房女明子〉於二太政大臣染殿第一大設二齋會一、演二大乘經一、賀三太政大臣滿二六十一也、限二三日一訖、公卿大夫多參陪焉、　十二月廿四日壬午、中宮爲レ賀三太政大臣齡滿二六十一設二廣讌一、親王已下五位已上並侍焉、極レ歡而罷、賜二親王已

p.1535 下衣被一、

〔小右記〕

p.1535 長和四年十月廿五日壬子、今日皇太后〈◯一條后彰子〉於二上東門宅一賀二左相府〈◯彰子父藤原道長〉五十算一、佛兩界曼陀羅經、大般若一部、壽命經五十卷、十僧外百口僧、威儀師二人行事、但十僧給二法服一、左大臣、内大臣、大納言道綱齊信頼通公任、中納言俊賢行成懷平教通頼宗經房、參議兼隆定成通任、三位左中將能信、右兵衞督憲定、參議頼定等著二饗座一、〈東對〉撤二御在所一〈寢殿〉爲二法會堂一、佛具新調、幡花縵代同調、花縵代殿上人調進云々、庭中搆二舞臺一、其北屬二南階一、件舞臺、賛衆梵音錫杖衆等立所料、行香机立二舞臺上一、誦經物立二標東邊一、諸僧集二會馬場殿一、打レ鐘之後、弟子僧先來置二香鑪筥一、毎レ座立二標位一、池東西諸僧參入著座云々、堂童子座立レ庭、四位各方二人、五位人、僧不二著座一之前、左大臣已下起二饗座一、著二堂前座一作法云々大行道廻二池邊一、師大僧都定隆俄有レ所レ煩辭退、補二大僧都慶命一、十僧一人闕、補二僧都文慶一、百僧内多有二僧綱一云々、〈僧綱八人、大僧都慶命、少僧都文慶、扶公、如源、律師尋圓、永圓、心譽、法橋源憲、凡僧二人、定基、心清、〉藏人頭資平先進二左大臣許一申下給二度者一由上相次就二高座下一、仰二導師慶命一〈錫杖後仰レ之〉云々、給二祿於資平一云々、資平於二東對坤庭一再拜、内御誦經勅使、中宮東宮御使、當二御諷誦時一著座、〈南階簀子敷二圓座一、〉佛事了除二右大臣一之外、執レ祿被レ僧、左右相分、上達部座在二南階東西簀子一、殿上人地下人同執レ祿了、僧侶退下、講演中間秉レ燭撤二僧座一、敷二上達部座一〈母屋北上北面〉左大臣已下著二御前座一、居二衝重一有二盃酒一、左大臣供二御膳於太后一、大納言公任執二打敷一、進二母屋御簾下一、上達部取レ膳、膳體不レ能二具記一、風流殊甚、件御膳、自二西方一度二御前一供之、卿相雲上人等絲竹頻唱、漸及二酔郷一有二和歌興一、左相府折二佛前作花一爲二挿頭一、内府大納言〈道◯藤原道綱〉下官傳取同挿レ冠、依二相國命一、諸卿祖大納言公任執レ盃出會、其後左大臣設二卿相雲上人祿一有二差別一、立明主殿寮官人、左大臣隨身、左大將隨身余〈◯實資〉隨身疋絹云々、宮所レ給歟如何、左大辨諸卿臨二東對南面一、馬一疋志二内大臣一、左相國加二大納言道綱一、令レ脱レ衣〈單衣〉給二左將軍一、次内大臣脱二單衣一、給二左大臣隨身右府生公忠一、次左相國脱二阿古女一襲一、給二余隨身番長保重一、事了退出、亥終許也、左大臣直廬、設下寢殿與二東對一渡殿四尺御屏風六帖上、其和歌近習上達部請書二讀人名一、他雜具相府辭

p.1536 而不レ承、仍被二停止一了者、

〔扶桑略記〕

〈二十八後一條〉

p.1536 長元六年癸酉十一月廿九日、於二關白左大臣〈◯藤原頼通〉高陽院一、賀二母氏從一位源倫子〈◯後一條外祖母〉七十算一、有二童舞一、翌日天皇召二覽童舞於禁省一、件童等三人被レ聽二昇殿一、

疾病恩遇

〔日本書紀〕

〈二十二推古〉

p.1536 二十二年八月、大臣〈◯推古外舅蘇我馬子〉臥病、爲二大臣一而男女并一千人出家、

〔公卿補任〕

〈文武〉

p.1536 大納言從二位藤原朝臣不比等　慶雲二年五月大納言藤原朝臣臥レ病、詔賜二度者廿人一、〈是賜二度者一之始也〉兼以二布四百端、米八十石一、施二京諸寺一、
◯按ズルニ、公卿補任ニ不比等ヲ以テ、度者ヲ賜フ始ト爲スト雖モ、既ニ蘇我氏ノ時ニアルコト、前ニ引ク所ノ日本書紀ノ文ヲ見テ知ルベシ、

〔續日本紀〕

〈八元正〉

p.1536 養老四年八月辛巳朔、右大臣正二位藤原朝臣不比等病、賜二度三十人一、詔曰、右大臣正二位藤原朝臣疹疾漸留、寢膳不レ安、朕見二疲勞一惻二隱於心一、思二其平復一、計無レ所レ出、宜下大二赦天下一、以救上レ所レ患、養老四年八月一日午時以前、大辟罪已下、罪無二輕重一、已發覺未發覺、已結正未結正、繫囚見徒、私鑄錢及盜人、并八虐常赦所レ不レ免、咸悉赦除、其發疾之徒、不レ能二自存一者、量二加賑恤一、因令二長官親自慰問一、量給二湯藥一、勤從二寛優一、僧尼亦同レ之、　壬午、令三都下四十八寺、一日一夜讀二藥師經一免二官戸十一人一爲レ良、除二奴婢一十人一從二官戸一、爲レ救二右大臣病一也、

〔愚管抄〕

〈一元正〉

p.1536 不比等大臣ハ養老四年八月三日薨、〈年六十二〉諡號二淡海公一、聖武の外祖にて、病に臥給ふより、重く殊にもてなされ給ふ、

〔續日本紀〕

〈十二聖武〉

p.1536 天平九年七月乙未、大二赦天下一、詔曰、比來縁レ有二疫氣多發一、祈二祭神祇一獨未レ得レ可、而今右大臣〈◯藤原武智麿〉身體有レ勞、寢膳不レ穩、朕以惻隱、可下大二赦天下一救中此病苦上、自二天平九年七月廿二日昧爽一以前、大辟罪已下咸赦除之、其犯二八虐一、私鑄錢、及強竊二盜、常赦所レ不レ免者、並不レ在二赦限一、

〔三代實録〕

〈二十一清和〉

p.1536 貞觀十四年三月七日丁丑、太政大臣〈◯藤原良房〉患二咳逆一、〈◯中略〉是日賚二錢五十萬一、以充二祈

p.1537 禱之費一、　九日己卯、詔曰、酌二訓皇源一、陶二風帝籙一、未レ有乙不下施二厚恩一以崇二盛徳一、降二殊貸一以慰中元功上者甲、朕外祖父太政大臣藤原朝臣、功蓋二三代一、位極二上台一、仁襟被二九州一而有レ餘、徳水露二千里一而無レ盡、自三朕在二襁褓一以至二今時一、言二其顧復保佐之勤一、豈以二周旦漢光一爲レ伍、朕念二不賞之功一、將レ加二非常之寵一、知三其至謙之性、不二敢開レ口而言一、聊且欲三縻レ爵加レ封、以酬二萬一一、而損挹彌深、遜讓尤切、感二夫乃情一、不レ忍二相忤一、朕之庶幾、頼二彼撝謙之誠一、増二其延壽之福一、長生久視、輔二導朕身一、令レ若下倚二南山一、坐中平原上也、是以屈レ己從レ人、不レ奪二其志一、恐天下以レ朕爲レ不レ知レ恩也、而今寢二瘵私第一、日月彌留、珪幣相尋、祈禱未レ效、朕自レ鍾二此患一、寢食無レ安、心墮思焦、言與レ淚倶、深患二救復之方一、誠無レ所レ不レ到矣、聞二諸内經一、度レ人歸レ道之功、能救二人之厄命一、又先王徳政、議レ獄緩レ刑、矜レ老養レ孤、若施二斯仁貸一副二朕篤情一、縱雖三病在二膏盲一、幸使三箴藥得二其宜一、賜二度者八十人一、又大二赦天下一、今日昧爽已前所レ犯大辟已下、罪无二輕重一、已結正未結正、已發覺未發覺皆赦除、唯犯二八虐一故殺謀殺、私鑄錢、及強竊二盜、常赦所一不レ免者不レ在二赦限一、又天下道俗高年者、鰥寡孤獨篤之類、量加二賑恤一、普告二遐邇一、俾レ知二此意一、

〔菅家文草〕

〈八詔勅〉

p.1537 答丁太政大臣〈◯宇多后温子父藤原基經〉謝丙爲レ病賜二度者一免乙罪人甲勅〈◯宇多〉
勅、太政大臣雅言悉レ之、皇天不レ知、公病無レ損、朕前行レ志、冥助惟求、欲レ令レ出二獄門一者、開二法網一以爲二公處療之方一、入二禪道一者、轉二戒珠一、以爲二公加持之力一、功重報輕、朕之過也、謝章忽至、増愧深焉、又國家庶務、關二白於公一、朕自樂レ成、業在レ恭レ己、而今具叙二其意一、固辭二此職一、非二唯退閑之謀一、期以二消伏之術一、既云レ避レ害、朕豈忤レ之、雖レ暗二前途一、暫順二來請一、不レ有二日月一乎、不レ有二山川一乎、所レ患少間、視レ事如レ故、勿レ使下朕當二淵氷奔馳之危一以無中舟檝御轡之備上而已、嗟虖朕之砭石、朕之股肱、豈圖令三股肱不二安和一、爲二砭石一所二治攝一、捻レ心而歎、刻レ骨以傷、公強加レ飡、莫レ忘二社稷一、
　　寛平二年十一月十九日奉勅製之

〔日本紀略〕

〈二朱雀〉

p.1537 天慶七年十月廿四日癸亥、依二關白太政大臣〈◯藤原忠平〉重病一賜二度者五十人一、

〔九暦〕

p.1537 天暦三年正月廿一日、頭有相來仰云、御病重由、助憂不レ少、爲二息災一給二度者五十人一者、復命云、依二臣

p.1538 下病一恩給之例、雖レ有二一兩一、是爲二有功勤公之輩一也、今臣〈◯藤原忠平〉年來纒二病痾一、無レ由二出仕一、而蒙二不レ涯之恩一、不レ知レ所レ奏者、此仰具承、中納言傳レ之、被物白大褂一重、　廿二日、昨日因レ給二度者一、且分二配卌人一、令三鎭朝律師申上成二祈願一、

〔九暦〕

p.1538 天暦三年八月十四日、太閤〈◯藤原忠平〉薨御事、〈戌刻〉此夕有下詔賜二度者三十人一事上、又有二赦令事一、　十六日、遣二固關使一又警固事、　十八日、御葬送俄事、　廿五日、開關事、

〔九暦〕

p.1538 天徳二年二月廿二日、左大閤〈◯藤原實頼〉御惱殊重、仍又加二修法壇一云云、爲レ救二左大臣病一、給二度者十五人一是依二奏請一云々、

〔歴代皇紀〕

〈冷泉〉

p.1538 關白
左大臣藤原實頼〈◯中略〉
　安和元年六月十四日、給二度者卅人一、依二所惱一也、

〔日本紀略〕

〈九一條〉

p.1538 正暦元年五月十二日、詔、賜二入道太政大臣〈◯藤原兼家〉度者一百人一、大二赦天下一、大辟以下常赦所レ不レ免者赦除、又免二調庸一加二賑給一、

〔日本紀略〕

〈十三後一條〉

p.1538 寛仁三年三月廿一日戊寅、前太政大臣從一位藤原朝臣道長落飾入道、〈年五十四、法名行觀、後改二行覺一、〉依二胸病一也、戒師法印院源、剃二御頭一律師定基、入レ夜小一條院、〈◯敦明親王〉並太皇太后宮、〈◯一條后彰子〉皇后、〈◯三條后妍子〉中宮、〈◯後一條后威子、以上三宮並道長女、〉渡御、〈◯中略、〉　四月三日庚寅、詔大二赦天下一、大辟以下罪無二輕重一、常赦所レ不レ免者赦除、依二入道前相國之病一也、

〔小右記〕

p.1538 寛仁三年四月辛卯、早朝彼是入道殿〈◯藤原道長〉重惱給、〈◯中略〉去夜被二非常赦一、中納言行成卿承レ之、臨二曉更一赦免云々、

〔日本紀略〕

〈十三後一條〉

p.1538 萬壽四年十一月八日甲辰、中宮〈◯威子〉行二啓法成寺一、依二入道前太政大臣〈◯藤原道長〉所惱一也、〈◯中略〉　十三日己酉、詔大二赦天下一、又免二調庸一加二賑恤一、依レ救二入道大相國之病一止〈◯止恐衍〉也、又給二度者千人一、

p.1539 　十四日庚戌、上東門院〈◯彰子〉仰二諸寺一、轉二讀壽命經二萬六千餘卷一、中宮令レ讀二金光明經涅槃經維摩經等一、關白左大臣〈◯藤原頼通〉行二萬僧供養一、依レ祈二入道前大相國之除病一也、　十七日癸丑、舞姫參入、無二御出一、依二禪下病一也、　十八日甲寅、鎭魂祭無二御前試一、依二禪下病一也、今日中宮奉二爲入道禪下一被レ行二修法一、左府〈◯頼通〉爲二入道禪下一集二百口僧一、令レ轉二讀觀音經一、　十九日乙卯、今日於二法成寺藥師堂一爲二入道禪下除病一、中宮令三百口僧行二仁王經讀經一、　廿六日壬戌、天皇幸二法成寺一、依二入道前相國之病一也、以二封戸五百烟一施二入寺家一、又修二諷誦供養一、南北諸寺僧萬人、依レ被二申請一、以二因幡守庶政一任二美濃守一、左衞門權少志豐原爲長爲二撿非違使一、又造塔事可レ遂之由云々、　廿九日乙丑、春宮〈◯後朱雀〉行二啓法成寺一、依二同病一也、御二坐法成寺阿彌陀堂南廊一、

〔小右記〕

p.1539 萬壽四年十一月十三日己酉、民部大外記頼隆來云、今日被レ行二非常赦一、依二前太政大臣〈◯藤原道長〉病一、按察大納言行成、〈大内記之作詔〉右衞門權佐爲善奉二宣旨一、先レ是別當經通來二簾下一訪二所勞一、又陳下可レ有二赦令一之由上、入レ夜中將來云、禪閤〈◯道長〉無二増減一、夜前沐浴、被レ始二念佛一、外人聞二其聲一、上下走迷、存二入滅訖由一云々、公家被レ奉二千人度者一、　廿四日庚申、關白〈◯道長子頼通〉御消息云、日者、携二御堂御病一、心神不覺如二酔人一、公家之例事、一々可レ被二驚示一、又明日行幸、禪室可レ被レ行二功徳事一、何等事宜乎未二思得一、可レ然之事可レ被レ示也、非常赦令此時可レ被レ行、而早被レ行至レ今何爲者、餘〈◯藤原實資〉報云、有二所勞一籠侍、心神不例、徒然送レ日、事與レ心迷、欲レ申不レ得、行幸日功徳事、左右難レ申、赦令早被レ行事、更有二何事一乎、以レ早可レ爲レ善、抑後日被レ行二萬僧供一、又被レ行二賑給一如何、不比等大臣病時臨幸、只給二度者九十人一、被レ行二非常赦令一、鎌足大臣病時行幸、給二大織冠一、任二内大臣一、其外無二所見一、亦東三條院御病、又有二行幸一、

〔榮花物語〕

〈三十鶴の林〉

p.1539 殿〈◯藤原道長〉の御まへ、〈◯中略〉かくて日ごろにならせ給へば、ほいのさまにてこそはおなじくはとて、阿彌陀堂にわたらせ給、もとの御念誦のまにぞ御しつらひしておはします、〈◯中略〉うち〈◯後一條〉よりも東宮〈◯後朱雀〉よりも、かく今までに見奉らせ給はぬなげきの御消息しきれば、よ

p.1540 からん日しておはしまさせ給へかし、たゞ思事は、いとなめげにふしながら御覽ぜん事を思ふなり、さらばよき日してとのたまはす、この月〈◯萬壽四年十一月〉廿五日よろしき日なれば、その日行幸の御用意あり、東宮の行啓はおなじ日あるべけれど、心あはたゞしかるべければ、おなじ月の廿八日とさだめさせ給、さてその日になりて、たつのときばかりに行幸あり、昨日御ぐしなどそらせ給て、御けさころもなど奉らせ給て、世のつねの御有さまにて、御脇足におしかゝりておはします、うへいといみじうあはれに見たてまつらせ給て、せきもとゞめずなかせ給ふ、あさましうあらぬひとにほそらせ給へる御ありさま、哀にかなしく心うく見たてまつらせ給、さてなに事をかおぼしめすこととてはあるときこえさせ給へば、いまはこのよにすべて思ふ事候はず、世中におほやけの御うしろみつかうまつりたる人々おほかる中に、あがりてもかばかりさいはひあり、すべき事のかぎりつかうまつりたる人さぶらはず侍、まづはおほやけのおほぢやなどこそはかやうにて候に、まだかゝるをりの行幸候はず、ちゝみかど母ぎさきの御事にこそは候めれ、それすらさしもあらぬたぐひどもあまたさぶらふ、まづちかうは三條院六月にくらゐにつかせ給て、十月七日冷泉院の御心ちおもらせ給し、行幸あるべくおほせられしかど、諸卿のさだめに、なほ御ものゝけのいとおそろしうおはしますよし申侍しかば、行幸候はずなりにきなど、いとさはやかに申つゞけさせ給へば、此御心地はちからなげさのいみじきにこそあんめれ、御心ちはゆめにかはらせ給ことなし、あはれやめたてまつらばやとおぼすにいとかなしうて、おぼさんまゝの事の給へと返々申させ給へば、すべて思事候はず、世はじまりてのち(○○○○○○○○)、この行幸こそはためしに候めれ(○○○○○○○○○○○○○○)、これよりほかの事は何事かは、たゞしこの御堂の事つかうまつりつるをのこどもをなんひとつの事をせんと思ひたまへつると申させ給へば、いとやすき事なりとて、關白殿のかみの家司因幡前司ちかたゞをば、よりあきらがかはりに美濃になさせ給、しもの家

p.1541 づかさ左衞門尉ためかたをば、使かけさせ給宣旨くださせ給、また御堂には五百戸の御封よせさせ給宣旨おなじくくだりぬ、とのゝ御まへいみじううれしきおほせなりと返々なく〳〵よろこび申させ給、うへは又なにごとをと覺しめさるれど、又申させ給事なきをくちをしうおぼしめさる、女院の御かたにいらせ給へれば、女院いみじくなかせ給て、とのゝいみじううれしきことによろこびなき給が、かへす〴〵うれしきことゝよろこび申させ給、あはれに心うきこと見給ふなどいみじうなかせ給、中宮さておはしませばおなじさまの御事どもこそは、對面などはとみにえあるまじきにこそなどあはれにかたらひ申させ給、さていととくかへらせ給ぬ、おほやけより此御堂にきぬ三百疋、布千段、誦經におこなはせ給けり、殿の御壽命のための御誦經なりけり、そのほどげに世のためしにしつべく、ふりがたうめでたき御ありさまなり、ひとゝせの御堂供養に、行幸行啓などおぼしあはせられてかへらせ給ぬ、かくて八日に成ぬれば東宮の行啓あり、同じくとのゝ御まへ、一日のやうにさるべきさまにておはします、東宮見奉らせ給にあはれにあさましきまでなかせたまへば、殿もいみじうなかせ給ふ、あべい事ども申させ給て、いみじうなかせ給ふにも、御心のうちに我よにあはせ給はずなりぬる事を、あはれにくちをしうもあるかな、心のほど見えたてまつらんとおもひつる物をとおぼさるゝに、いとかなしう覺しめさるゝなりけり、いまはかく行幸行啓にまかりあひぬれば、いまなんおぼつかなく心とまる事なくて、極樂にも心きよくまゐり侍るべきとてもなかせ給へば、いとゞあはれにいみじうみたてまつらせ給ふ、女院の御かたにいらせ給ても、この御事よりほかのことは何事かあらん、さてもとくかへらせ給、しばしもとおもへど、おきゐ給へるがいとくるしければとの給はせても又なかせ給、とのゝ御まへは今はいと心やすし、けふまで世にはありつるなりとの給はするにつけても、僧俗そこらの人々、なみだをながせどいみじうしのびやかなり、

〔公卿補任〕

〈後冷泉〉

p.1542 關白左大臣從一位藤頼通　康平二年二月十一日、上表請レ罷二職并隨身近衞等一、勅答近衞依レ請、三月六日、大二赦天下一、大臣病、九日、依二病重一辭二大臣一、無二勅答一、

〔中右記〕

p.1542 寛治七年十一月五日、今日伊勢公卿勅使參宮之日也、〈◯中略〉今日内大臣參二使座一有二不堪田定一、入レ夜有二臨時免者一、〈未斷輕犯者卅三人〉聊依レ有レ所二思食一有二此恩赦一也、是右相府〈◯源顯房〉之所惱、猶以無二減氣一、大概此恩赦依二件事一歟、抑如レ此大神宮公卿勅使參着之日、有二免者一之例先被二相尋一、或被レ問二外記一、或被レ問二民部卿並別當一、但慥先例未レ見歟、人々所レ被レ申不レ有二一定一、但依レ無二日次一、推今夜有二此事一歟、藏人兵部大輔沙汰許事、

〔百練抄〕

〈七六條〉

p.1542 仁安三年二月十六日、依二入道太政大臣〈◯平清盛〉病一、被レ行二非常赦一、

〔百練抄〕

〈十四四條〉

p.1542 仁治二年十一月卅日癸丑、被レ行二非常赦一、依二禪定太閤〈◯藤原家實〉所惱一也、雖レ非二外戚一執政之故、異レ他之故也、

殁後恩遇

〔令義解〕

〈九喪葬〉

p.1542 凡天皇爲二本服二等以上親喪一服(○)二錫紵(○○)一、〈謂凡人君即レ位、服絶二傍期一、唯有二心喪一、故云二本服一、其三后及皇太子、不レ得レ絶二傍期一、故律除二本服字一也、依二儀制令一、子爲二一等一、故稱二二等以上一、即外祖父母亦同、依二同令一、皇帝不レ視レ事與二二等親一同故、其天皇爲二考妣一、令條無レ文、依二式處分一也、錫紵者細布、即用二淺墨染一也、〉爲二三等以下〈謂四等以上、即五等之内、無二服親一故也、依二儀制令一、三等親喪、皇帝不レ視レ事一日、即四等親喪、雖レ得レ視レ事、而除レ帛之制、亦一日爲レ限也、〉及諸臣之喪一、〈謂儀制令、皇帝不レ視レ事、是也、〉除二帛衣一〈謂白練衣〉外通二用雜色一、

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

p.1542 延喜七年十月十七日辛酉、從三位宮道朝臣列子〈◯藤原高藤妻〉薨、帝之外祖母也、有二薨奏一、　廿六日庚午、詔贈二從三位宮道列子正二位一、殊賜二絹布等一、天皇服二錫紵一、

〔百練抄〕

〈四後冷泉〉

p.1542 天喜元年六月十一日、從一位源倫子薨〈天皇外祖母左大臣（藤原頼通）母、號二鷹司殿一、〉廢朝三箇日、主上著二錫紵一、

〔令義解〕

〈六儀制〉

p.1542 凡〈◯中略〉皇帝二等以上親、及外祖父母、右大臣以上、若散一位喪、皇帝不(○)レ視(○)レ事三日(○○○)、〈謂依二喪葬令一、從二發レ哀日一始計至二三日一、其親王亦同、給二葬具及賻物一、親王與二散一位一同故也、〉

〔禁秘御抄〕

〈下〉

p.1542 廢朝
廢朝三箇日被レ仰ヌレバ、止二音奏警蹕一、禁中無二物音一、垂二清凉殿御簾一、〈◯中略〉又同年、〈◯寛治八年〉顯房公薨、五日

p.1543 薨、八日奏、自二此日一止二音奏警蹕一、〈帝（堀河）外祖〉而十日十一日共復日也、仍十二日雖レ爲二凶會日一、強不レ忌、則上二御簾一畢、

〔續日本紀〕

〈八元正〉

p.1543 養老四年八月癸未、是日右大臣正二位藤原朝臣不比等薨、帝深悼惜焉、爲レ之廢レ朝、擧二哀内寢一、特有二優勅一吊二賻之一、禮異二于群臣一、大臣近江朝内大臣大織冠鎌足之第二子也、

〔公卿補任〕

〈清和〉

p.1543 太政大臣從一位藤良房　貞觀十四年九月二日薨、在官廿五年、同四日賜二正一位一、號二白河殿又染殿一、諡云二忠仁公一、封二美乃國一、輟レ朝三箇日、是日、葬二山城國愛宕郡白河邊一、

〔日本紀略〕

〈三村上〉

p.1543 天暦三年八月十四日乙酉、戌時太政大臣藤原忠平薨二小一條第一、〈年七十〉病間公家賜二度者卅人一、又大二赦天下一、　十七日戊子、太政大臣薨奏、仰二廢朝〈三箇日〉固關警固(○○○○)一、

〔日本紀略〕

〈六圓融〉

p.1543 貞元二年十一月廿日丙午、奏二故太政大臣〈◯藤原兼通〉薨由一、廢朝三箇日、固二三關一、

〔百練抄〕

〈五堀河〉

p.1543 寛治三年十月四日、諸卿定二申源隆子薨事一、〈右大臣（源顯房）室〉件人雖レ爲二當今外祖母一、前中宮〈◯白河后賢子〉改レ姓爲二藤氏一、仍令三諸道勘二申之一、就レ所レ養不レ可レ有二錫紵一、但廢朝三ケ日之由被レ定了、凡爲二人養子一之者、本生傍親服不レ可レ著之由僉議了、

〔朝野群載〕

〈二十一雜文〉

p.1543 禮喪廢朝
　勘二申從二位源朝臣隆子薨逝間所レ被レ行事一
儀禮喪服經曰、爲二外祖父母一、同疏曰、小功五月、章曰、爲二外祖父母一、傳曰、何曰二小功一也、以レ尊加也、外祖之服不レ過二緦麻一、以二祖是尊名一、故加至二小功一、春秋左氏傳杜氏注曰、天子絶二傍期一、唯有二心喪一、大唐開元禮云、皇帝本服、大功以上、及外祖父母、皇后父母、百官一品喪、皇帝不レ視レ事三日、
　　就二件等文一、雖レ可レ被レ行二外家之義一、猶非レ無二物疑一、又准據之文、經典無二所見一、然則心喪廢朝之禮、依二時議一可レ被レ行歟、
右依二宣旨一勘申如レ件

p.1544 　寛治三年十月四日
　　　　　　　　　　　從五位上行直講　中原朝臣章貞
　　　　　　　　　　　從五位上行直講　清原眞人定康
　　　　　　　　　　　正五位下行助教兼石見守　中原朝臣在國
　　　　　　　　　　　正五位下行助教兼越中守　清原眞人
　　　　　　　　　　　正五位上主税頭兼大外記博士伊與權介　中原朝臣師平

〔朝野群載〕

〈二十一雜文〉

p.1544 薨奏(○○)
太政官謹奏
　　無位藤原朝臣睦子〈◯藤原實季妻、鳥羽母后苡子母、〉
右人去月廿四日卒、今月二日葬、儀制令云、皇帝外祖母喪、不レ視レ事三日者、仍録二事状一、謹以申聞、謹奏、
　永久二年三月七日

〔玉海〕

p.1544 治承五年閏二月十四日庚申、此日有二禪門〈◯平清盛〉薨奏一、雖レ爲二出家之人一、依二康和之例一被レ行云云、從二今日一廢朝三箇日云云、

〔續日本紀〕

〈十一聖武〉

p.1544 天平五年正月庚戌、内命婦正三位縣犬養橘宿禰三千代薨、遣二從四位下高安王等一監(○)二護喪事(○○○)一、賜二葬儀一准二散一位一、命婦皇后〈◯藤原光明子〉之母也、

〔續日本紀〕

〈十二聖武〉

p.1544 天平七年十一月己未、正四位上賀茂朝臣比賣卒、勅以二散位葬儀一送之、天皇之外祖母也、

〔續日本紀〕

〈十二聖武〉

p.1544 天平九年四月辛酉、參議民部卿正三位藤原朝臣房前薨、送以二大臣葬儀一、其家固辭不レ受、房前贈太政大臣正一位不比等之第二子也、

〔續日本紀〕

〈十二聖武〉

p.1544 天平九年七月丁酉、勅遣二左大辨從三位橘宿禰諸兄、右大辨正四位下紀朝臣男人一、就二

p.1545 右大臣〈◯藤原武智麻呂〉第一授二正一位一、拜二左大臣一、即日薨、遣二從四位下中臣朝臣名代等一監二護葬事一、所レ須官給、武智麻呂贈太政大臣不比等之第一子也、

〔續日本紀〕

〈三十八桓武〉

p.1545 延暦三年十月乙未、尚藏兼尚侍從三位阿倍朝臣古美奈薨、遣二左大辨兼皇后宮大夫從三位佐伯宿禰今毛人、散位從五位上當麻眞人永繼、外從五位下松井連淨山等一、監二護喪事一、古美奈、中務大輔從五位上粳虫之女也、適二内大臣贈從一位藤原朝臣良繼一生レ女、即是皇后〈◯藤原乙牟漏〉也

〔日本紀略〕

〈六圓融〉

p.1545 貞元二年十一月八日甲午、依二太政大臣〈◯藤原兼通〉病一大二赦天下一老人賜レ物、大臣於二堀川院一薨、〈年五十三◯中略〉左大臣〈◯藤原頼忠〉仰云、諸陣可二打固一者、宜陽建春宜秋陰〈◯陰或作レ陽〉明等門開、令レ出二入雜人一者、今夜子刻、故太政大臣遷二東山雲居寺一、　九日乙未、左大臣仰云、瀧口武者帶二弓箭一可レ免二出入一之者、右大臣〈◯源雅信〉以下諸卿參仗、權中納言朝光以二散位紀以文一令レ申者、故太政大臣存日命云、可レ被レ停二止官喪儀贈位等事一者、上卿云、明日春日平野祭也、過二件神事一可レ奏者、〈◯中略〉　十四日庚子、故太政大臣葬送也、仍上官等參、　廿日丙午、奏二故太政大臣薨由一、廢朝三个日、固二三關一、韶贈二正一位一、封二遠江國一爲二遠江公一、諡曰二忠義公一、食封資人並同二生日一、本官如レ元、

〔小右記〕

p.1545 萬壽四年十二月四日庚午、巳時許式光來云、禪閣〈◯藤原道長〉昨日入滅、而昨夜有二搖動氣一云云、〈◯中略〉頭辨來、以レ人相傳云、入道相府不レ可レ存云云、此太不審、先可レ被レ下二御簾一乎、余云、薨奏後可レ垂二御簾一、但女院御二坐同所一、必所レ有二聞食一、薨奏以前下二御簾一可レ宜歟、可レ被レ尋二前例一、抑可レ依二大入道〈◯藤原兼家〉例一歟、且當時有二臨幸一、不レ可レ准二他時一歟、節會等事如何、七々忌内難レ被レ行歟、大入道七月二日薨、四十九日内無二節會一、三條太后十二月一日崩、正月節會停止、七日只牽二白馬一、誠雖レ御二后位一、不レ御二服親一、禪室(○○)雖(○)レ云(○)二臣下(○○)一已是祖父(○○○○)、已蒙(○○)二准三后宣旨(○○○○○)一之人也(○○○)、猶(○)准(○)二彼三條太后例(○○○○○○)一可(○)レ被(○)レ行(○)歟、依レ重被レ行何如、〈◯中略〉　六日壬申、頭中將顯基問下薨奏并着二御錫紵(○○)一事等上、以二師重一相二傳左兵衞督一示送云、女院別當依二御重服一、院司可二着レ服給一者、件事見二邑上天徳四年御記一、九條丞相薨時、中宮職司等不レ可レ着レ服、在二明法勘状一、不レ可レ著由被レ下二宣旨一了、見レ遣二

p.1546 御記一了、明年節會等事、欲レ聞二案内一、付二中將一令達、歸來云、藤宰相廣業關白被レ報云、具承、但明日可レ行二葬送事一、同日可レ有二薨奏一、御錫紵警固固關歟、心神不覺、可レ然之様可二申行一、貞信公〈◯藤原忠平〉御葬家子大臣冠歟直衣歟如何、可レ示二案内一者、余報云、因二永祚例一一々可レ被二准行一、先有二固關一、其後有二薨奏一、次第違濫有レ不レ靜云々、先有二警固固關等一由被レ問云々、猶先可レ被レ行二薨奏一、只明日服二着錫紵一令レ除給之日當二重日一、尋二前跡一可レ被レ行歟、可レ被レ縮二日數一歟、將可レ被レ延歟、臨二歳未一遣二固關使一、有二事煩一歟、被レ屬二猶國一可レ宜乎、又貞信公御葬送事、清愼公〈◯實頼〉不レ被二慥記一、但葬禮皆着二凶服一、不レ可レ着二直衣一乎、清愼信公從レ家不レ被レ行二葬禮一、先移二山寺一從レ彼行二葬禮一、仍從レ家相從、上下其裝束如二尋常一、且明年正月節會等事大略申達、忠仁公九月二日薨、年十一月豐明節會止、明年正月十六日節會賭射等停、又永祚例、前太政大臣〈◯藤原兼家〉七月二日薨、八月考定釋奠、過二七々忌景一晦被レ行、且三條太后十一月一日崩、正月元日七日十六日節會賭射等止依二御卌九日内一也、就レ中御本服三箇月、及二明年十一月一、太后與二臣下一尊卑相累、然而太后者、不レ御二御服親一、前太政大臣雖(○○○○○○)二臣下(○○)一外祖父也(○○○○)、隨亦可レ有二三箇月御心喪一、御心喪限内也、不レ可レ被レ行二節會等一、亦先朱雀院踐祚時、法帝〈祖父也◯宇多〉七月十九日崩、御心喪五箇月及二十一月一、仍大嘗會延引、次定謂レ之、御心喪内不レ可レ行二如レ此之事等一歟、藤宰相相傳云、尤被二甘心一者、入レ夜頭辨來傳二關白〈◯頼通〉消息一云、可レ被レ行二警固一事、御錫紵日數不レ滿二限日一事、頗可レ轉歟、先行二固關等事一、又擇二吉日一、薨奏警固固關等同日被レ行如何、又廢朝日數有下過二御錫紵日數一之例上歟、此間事能々可二申行一者、仰二大外記頼隆一令レ勘二申前例一、次定二勘文一、明旦令レ見二下官一可二計行一者、但案内之故者、夜間有下可レ被二尋覽一之文書上、撿二知前跡一、明日可レ承二置事由一、不レ待二返事一退去了、明旦可レ報二件返事等一、　七日癸酉、早朝中將來、參二御堂一者、薨奏等事有レ使、今可レ令二達漏一之由、大外記頼隆眞人持了、示乙可下來二會余一給上之由甲、仍早參相待之間辨來、以二頼隆一傳二關白消息一云、外記勘文如レ此、可二計行一者、固關事可レ付レ國歟、薨奏可レ行、且御錫紵除給日數事可二定申一、心神不覺、不レ能二具申一者、余報云々、以二頼隆一先有二固關一、後日有二薨奏之事一、只永祚也、似レ不レ被二尋行一、薨奏以前、不レ可レ給二固關之官符一、依二其事一可レ給二官符一、而無二薨奏一不、可二

p.1547 知食一、今日薨奏固關警固等事被レ行宜歟、固關被レ付レ國最可レ佳、以二遣使一不レ可レ爲レ重、給二官符一不レ可レ爲レ輕、前々式依二國司申一、被レ停二遣使一、或有二隨レ時之儀一被レ屬二猶國一、此度已及二歳暮一、事煩可レ多、被レ止レ使一計也、廢朝依二勘申一可レ被レ行、〈三箇日〉且今日著二御錫紵一、第四日除可レ宜歟、外記勘申云、天慶元年十一月十二日記云、四品勤子内親王今月五日薨、〈主上御姉〉去九日薨奏、同日服二御錫紵一、同十一日滿二三箇日一除二錫紵一也、而當二御衰日一、仍及二四箇日一所レ除也、者如二件勘文一延二一日一例分明也、天暦八年九月七日重明親王薨奏服二錫紵一、廿三日除給、已及二四箇日一、件例注出、又御衰日除給、康保三年十二月廿二日〈壬午〉中務卿式明親王薨奏服二錫紵一、廿四日〈甲申〉御衰日除給、避二復日一給也、亦重日除給例、延喜十年二月廿五日〈乙酉〉均子内親王薨奏服二喪服一、廿七日〈丁亥〉除給、同注出付二頭辨一、御衰日重日例不レ宜、前太政大臣御事、能避二事忌一可レ被レ注也、亦日限不レ滿之例側所レ覺也、而未二尋出一、抑日數減例與二延行例一、且可レ在二御定一者也、事事大概以二頼隆一相傳、外記勘文一見了返二授于辨一云、可レ然之様相定可二仰下一者、依二重事一所二申達一也、辨云、可レ有二賻物一乎如何、御使候哉、余答云、至二賻物一無二官職一人不レ可レ給、但前々親々人、有二臨時賻物一歟、又云、物數如何、答云、可レ依二太政大臣例一歟、又云、勅使乎、予答云、殿上四位辨如何、可レ有二勅定一、亦云、可レ有二弔喪御使一乎、答云、尤可レ然事也、御使何等人哉、余答云、宣命時勅使納言、但位記使宰相歟、至二別勅使一四位如何、可レ有二勅定一事也、又云、此間觸二下官一可二左右一者、尚書隨二身頼隆一歸參、依レ可二仰下一歟、中將歸來云、以二藤宰相一一々可二申通一、關白被レ報云、以二頭辨一令レ問畢、今如レ此消息、今日薨奏服二御錫紵一事、警固固關可レ行也、錫紵四箇日除給、有二兩度例一尤從レ事也、依二彼等例一及二四箇日一除給也者、入レ夜中將從レ内退出云、今日中納言道方卿固關事造二國々官符一、内印進二御所一令レ奏、警固事同行レ之、〈◯中略〉頭辨云、臨時賻物更不レ可レ給由關白被レ命云、又云、吊喪勅使可レ遣二左大辨定頼一、〈參議歟〉次召二遣使者一云、不レ知二在所一者、上達部供二奉葬送御共一、至二中將一給二故宮素服一可レ有二事忌一、源中納言相同、仍兩人行二固關等事一、今夜前太政大臣禪閤於二鳥戸野一葬送、〈◯中略〉　十日丙子、中將來云、卯時令レ除二錫紵一給云々、

〔榮花物語〕

〈三十鶴の林〉

p.1547 萬壽四年十二月四日うせさせ給て、〈◯藤原道長〉ついたち七日の夜御葬送、御年六十

p.1548 二にならせ給けり、〈◯中略〉とのばらみな皇太后宮の御うすにほひにておはしまし、みやづかさなどこまやかなりつるに、くろつるばみにならせ給、世中の十が九はみなにぶみわたりたり、いはば諒闇ともいひつべし、おほやけよりも諒闇せよといふ宣旨くだりたればなりけり(○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○)、

〔日本紀略〕

〈十三後一條〉

p.1548 萬壽四年十二月一日丁卯、〈◯一月丁卯、恐四日庚午誤、〉入道前太政大臣藤原道長公薨二於法成寺無量壽院一、〈法名行覺、年六十二、〉　十一日丁丑月次祭神今食等、依二入道大相國薨一被二停止一畢、仍有二大祓一、

〔中右記〕

p.1548 寛治八年〈嘉保元年〉九月五日、此曉右大臣〈◯源顯房〉薨、〈年五十八六條亭、〉先十餘日勞二赤痢病一、遂以薨逝、仍今日雖レ可レ有二宇佐遷宮并官奏一、皆以止了、主上〈◯堀河〉御愁歎之餘、雖レ供二朝夕膳一無二出御一、　八日丙午、今夜藤大納言、左大辨〈季〉參二仕仗座一〈官人置二膝突一〉有二右府薨奏事一、先外記申二其由一、上卿令三藏人右少辨時範奏二薨奏候之由一、仰二聞食了由一、外記指二薨奏於文杖一覽二上卿一之、見了後進二御所邊一、令二時範奏一留二御所一、返二給文杖一、抑從二彼家一被レ申云、賻物別給葬司等被二停止一者、上卿還著二仗座一、時範仰云、可レ贈二正一位一、賻物別給任葬司等隨二申請一、警固并廢朝三日者、〈明日平座停止之由別不レ被二仰下一、是依レ爲二廢朝三箇日中一也、〉便賻物等事、可レ隨二申請一由被レ仰二時範一、了仰レ史、上卿召二内記一、少内記菅原宣資參進、〈大内記在良、籠二九條前太政大臣穢一、依召二文章生少内記一也、〉被レ仰下可レ作二宣命並位記一之由上、此間且召二外記一被レ問二六府參入由一、皆以參仕者、令三内豎召二六府一、入レ從二西中門方一、列二立仗座前庭一、右少將有賢、左衞門權佐有信、餘四府將監尉等也、〈六位帶二弓箭一可レ立二北上一也、而南上若誤歟、佐尉異位重行、〉无二名對面一、次仰下可二警固一由上、次位記宣命草等内記覽二上卿一、〈入レ筥〉上卿進二御所邊一、令二時範奏一返給、歸二著仗座一、仰二内記一令二清書一、清書了後、被二位記請印一儀如レ常、但中務輔俄不二參仕一、依以二右少將有賢一爲二代官一、〈帶二弓箭一〉少納言家俊請二印於位記一、上卿進二御所一重奏覽、返給之後著二仗座一、目二使左大辨一、左大辨參二上卿前一、給二宣命於左大辨一、次召二中務輔代主殿頭公經朝臣一、給二位記一爲レ使、〈内豎一人相具〉宣命使位記使等起レ座、行二向彼家六條亭一、時範仰云、來十一日例幣延引、其由可レ行二大祓一、上卿召二外記一返二給筥一了、次被レ仰云、廢朝三日、又來十一日例幣延引者、又召二右少辨時範一、十一日可レ行二大祓一之由宣下、時範則仰レ史、已及二夜半一事了、上卿先丙午之日有二贈位一例被二相尋一、法性寺太政大臣時、午日被レ

p.1549 行二贈位一也、又位記宣命可二内覽一哉否、被レ問二先例一、大外記定俊申云、閑院太政大臣時、兼不レ可二内覽一之由殿下被レ仰者、仍令三少外記申二此旨於殿下一、返來云、彼例不レ可二内覽一者、〈薨奏本不二内覽一也、仍不レ被レ申也、〉宣命位記草可二奏聞一哉否條、先被レ問二大外記一、申云、可レ被二奏聞一是先例也、清書請印之後、重相二具宣命一可レ被レ奏者、仍隨二定俊眞人申一被レ仰也、　九日、無二平座一、依レ爲二廢朝中一也、但内藏寮居二酒肴一、於二殿上一如レ例諸司供二菊花一、　十一日、例幣延引之由有二大祓一、宰相中將保實行レ之、〈右少辨遲參、不レ被レ著者、〉　十二日、早朝上二御簾一、并有二音奏一、依レ避二日次一、引及二今日一歟、

贈官位

〔柱史抄〕

〈下〉

p.1549 贈官位事
母后并外祖父母多有二此事一、上卿召二内記一、内記參レ軾、仰云、某人可レ贈二〈虫損〉后宮一某人可レ叙二其位一、詔書宣命位記任レ例可二奉仕一者、被レ仰二下准據之例一、即各成レ草、參進内覽、奏下如レ恒、〈若於二位記一者、直清書進之、自餘草許也、〉上卿於二本座一、召二大内記一仰二清書事一、清書覆奏如レ例、詔書有二御畫一、上卿召二中務輔一賜レ之、贈后宮宣命使、參議次官五位殿上人也、上卿召二少納言一給二贈位位記宣命一、〈告文於二墓所一燒レ之、至二位記一者、持二向彼子息許一之、或以二少納言一差遣、依レ人可レ有二其事一、〉

〔大鏡〕

〈一後一條〉

p.1549 世はじまりてのち、大臣みなおはしけり、〈◯中略〉あるひはみかどの御おほぢ、あるひは御門の御をぢぞなり給ふめる、またしかのごとく帝王の御おほぢをぢなどにて御うしろみし給ふ、大臣納言かずおほくおはす、うせ給ひてのち、贈太政大臣などになり給へるたぐひあまたおはすめり、さやうのたぐひ七人〈或本十人〉ばかりやおはすらん、わざとの太政大臣はなりがたくすくなくぞおはする、

〔續日本紀〕

〈八元正〉

p.1549 養老四年八月癸未、是日右大臣正二位藤原朝臣不比等薨、　十月壬寅、詔遣二大納言正三位長屋王、中納言正四位下大伴宿禰旅人一、就二右大臣第一宣レ詔、贈二太政大臣正一位一、

〔愚管抄〕

〈一元正〉

p.1549 不比等大臣は、養老四年八月三日薨、諡號淡海公、聖武の外祖にて、病に臥給ふより重く殊にもてなされ給ふ、贈太政大臣と云々、

〔續日本紀〕

〈十一聖武〉

p.1549 天平五年十二月辛酉、遣二一品舍人親王、大納言正三位藤原朝臣武智麻呂、式部卿從

p.1550 三位藤原朝臣宇合、大藏卿從三位鈴鹿王、右大辨正四位下大伴宿禰道足一、就二縣犬養橘宿禰第一、宣レ詔贈二從一位一、別勅莫レ收二食封資人一、

〔續日本紀〕

〈十二聖武〉

p.1550 天平九年十月丁未、贈二民部卿正三位藤原朝臣房前正一位左大臣一、並賜二食封二千戸於其家一、限以二二十年一、

〔續日本紀〕

〈三十八桓武〉

p.1550 延暦四年五月丁酉、詔曰、春秋之義、祖以レ子貴、此則典經之垂範、古今之不易也、朕君二臨四海一于兹五載、追尊之典、或猶未レ崇、興言念レ此、深以懼焉、宜レ追二贈朕外曾祖贈從一位紀朝臣〈◯諸人〉正一位太政大臣一、

〔日本後紀〕

〈十四平城〉

p.1550 大同元年六月辛丑、詔曰、尊レ祖追レ榮、先王之茂範、敦レ親贈レ號、曩哲之嘉猷、朕以二菲薄一嗣二守洪基一、思下欲率二循舊章一、篤中崇典禮上、宜下朕外祖父贈從一位内大臣藤原朝臣良繼追二贈正一位太政大臣一、外祖母贈從一位尚藏安倍朝臣古美奈贈中正一位上、

〔日本後紀〕

〈二十四嵯峨〉

p.1550 弘仁六年七月壬午、立二夫人從三位橘朝臣諱一〈嘉智子〉爲二皇后一、〈◯中略〉贈二皇后父正五位下橘朝臣淨友從三位一、

〔日本紀略〕

〈淳和〉

p.1550 弘仁十四年五月己未、詔曰云々、外祖父贈右大臣從二位藤原朝臣、〈◯百川〉外祖母尚縫從三位藤原氏云々、宜下加二崇班一式照中幽壤上、外祖父可二太政大臣正一位一、外祖母可二正一位一、

〔續日本後紀〕

〈一仁明〉

p.1550 天長十年三月乙卯、詔曰、盛徳無レ沫、必資二加等之榮一、徽烈惟昭、聿修二崇レ號之制一、故使下敬レ宗尊レ祖、義煥二曩篇一、追レ遠飾レ終、不上レ隔二異代一、朕外祖父從三位橘朝臣、〈◯清友〉疏基顯レ族、驤二首高衢一、外祖母從三位田口氏、毓二彩芝田一、騰二芳薫圃一、但屬二運謝一、已從二閲川一、朕以二菲薄一、丕承二供業一、緬尋二既往一、想二清渾之眇焉一、乃詢二舊章一、宣二縟禮一而有レ貴、宜三外祖父及外祖母並追二贈正一位一也、橘朝臣位記状曰、地居二貴戚一、爵既隆而加レ榮、徳蘊二餘芳一、人雖レ謝而追レ遠、宜下申二朝典一、式賁中泉扁上、田口氏位状記曰、曾慶二潛行一、誕二兹婉嫕一、粉川行閲、蘭郁猶流、欽若二舊章一、睦親斯在、宜下崇二寵贈一允迪中追榮上、勅二山城國相樂郡挊山墓、河内國交野郡小山墓一、並宜レ置二守

p.1551 冢一烟一、

〔續日本後紀〕

〈十七仁明〉

p.1551 承和十四年九月丁酉、詔二贈大納言從三位橘朝臣奈良麿一、更贈二太政大臣正一位一、崇二帝戚一也、

〔續日本後紀〕

〈十七仁明〉

p.1551 承和十四年三月戊子、神祇伯正四位下田口朝臣佐波主卒也、詔贈二從三位一以二嵯峨太皇太后之外戚一也、

〔文徳實録〕

〈二〉

p.1551 嘉祥三年七月壬辰、追二崇外祖父〈◯一本外祖父下有二左大臣三字一〉正一位藤原朝臣冬嗣一爲二太政大臣一、外祖母尚侍從三位藤原朝臣美都子贈二正一位一、策命曰、天皇〈我〉勅命〈爾〉坐宣〈久、〉尊レ祖〈比〉敦レ親〈須留〉事〈波〉食國〈乃〉恒典〈奈利、〉故是以追〈氐〉太政大臣〈乃〉官贈賜〈比〉崇賜〈布〉勅命〈乎〉散位從五位下藤原朝臣雄瀧〈乎〉差レ使〈氐〉申賜〈久止〉宣、詔曰、貴レ徳重レ親、前王之令圖、悼レ往飾レ終、有國之通典、朕外祖父左大臣正一位藤原朝臣、風標秀上、器宇凝深、徳爲二時宗一、位居二朝棟一、至忠報レ國、世異名新、遺愛在レ人、身徂徳盛、外祖母尚侍從三位藤原氏、自レ家刑レ國、以レ孝率レ忠、嬪規縟二於釆蘋一、母則賢二於大姒一、春花早落、翫二流芳一而有レ餘、石火不レ留、繼二殘焰一而仍照、朕寓二形苫壤一、沈二思鼎湖一、至哀之餘、懷二夫親懿一、况國憲有レ恒、崇班攸レ歸、宜下加二寵章一、式炎中拱木上、外祖父可レ贈二太政大臣一、外祖母可レ贈二正一位一、布二告遐邇一、稱二朕意一焉、

〔三代實録〕

〈一清和〉

p.1551 天安二年十一月廿六日癸未、贈二故正三位源朝臣潔姫正一位一、遣二從四位上行越中守源朝臣啓於神樂岡冢一、告以レ贈レ位、潔姫帝之外祖母也、

〔三代實録〕

〈三十陽成〉

p.1551 元慶元年正月廿九日辛丑、詔曰、紀レ徳録レ勳、代既異而加レ等、飾レ終追レ遠、身雖レ謝而及レ恩、况乃天愛之深理切敦レ族、人道之重情殷睦レ親、外祖父故中納言從二位藤原朝臣、〈◯長良〉識度夷雅、餘慶延二於身後一、外祖母藤原氏門傳二閫訓一、家著二閨儀一、蘋藻之禮彌恭、松蘿之茂交映、並征耀靡、借二貸晩景於西峰一、圉水昜レ驚、逐二遊魂於東岱一、悲二玉樹之早落一、不レ見二孫榮一、訪二瓊蘭之遺芳一、宜二從レ子貴一、外祖父可二左大臣正一位一、外祖母可二正一位一、死而有レ知、嘉二兹哀贈一、主者施行、〈◯又見二都氏文集一〉

〔三代實録〕

〈四十五光孝〉

p.1552 元慶八年三月十三日甲戌、天皇外祖父故從五位上藤原朝臣總繼、外祖母正五位下藤原朝臣數子、並贈二正一位一、

〔三代實録〕

〈四十八光孝〉

p.1552 仁和元年九月十五日丙申、詔曰云云、朕外祖父贈正一位藤原朝臣總繼云云、贈以二太政大臣一、　十六日丁酉、藤氏公卿大夫、詣レ闕拜舞、稱三賀贈二帝外祖父太政大臣一也、

〔皇胤紹運録〕

p.1552 桓武天皇―仲野親王、〈二品式部卿、贈一品太政大臣、宇多天皇爲二外祖一故也、〉

〔勸修寺縁起〕

p.1552 ありしひと夜のちぎりにいでき給へりし女ぎみは、宇多院の位におはしましける時に入内ありて、皇太后宮胤子と申、皇子いでき給にければ、高藤の公は朝家に又なき權臣にて、内大臣になり給ひにけり、皇子踐祚ありて延喜の聖の御門とぞ申なる、我朝の賢王におはします、帝祖になり給にければ、うせ給てのちは、太政大臣正一位を贈せらる、

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

p.1552 寛平九年十二月十七日戊午、詔贈二外祖母故從二位操子女王正一位一、

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

p.1552 延喜九年四月四日、左大臣藤原朝臣時平薨、〈年卅九〉　五日、贈二故左大臣太政大臣正一位一、有二固關警固事一、

〔日本紀略〕

〈三村上〉

p.1552 天暦三年八月十八日己丑、戌時葬二太政大臣〈◯藤原忠平〉於法性寺外艮地一、詔贈二正一位一諡二貞信公一、勅使大納言清蔭卿、中納言元方卿、參議庶明朝臣等向二彼所一、

〔日本紀略〕

〈五冷泉〉

p.1552 康保四年十月廿四日己卯、詔贈二故從三位藤原盛子正一位一、天皇外祖母、九條右大臣〈◯藤原師輔〉室也、宣命使民部大輔源行正、率二局史生一人一向二金龍寺一、

〔日本紀略〕

〈九一條〉

p.1552 永延元年二月十六日己酉、贈二故藤原時姫〈◯圓融后詮子母〉正一位一、

〔扶桑略記〕

〈二十九後冷泉〉

p.1552 天喜二年四月廿六日、皇后〈◯藤原寛子〉母氏從五位下源朝臣祗子贈二從二位一、

〔古事談〕

〈一王道后宮〉

p.1552 白河院延久五年五月六日、天皇先妣藤原茂子〈信能女〉贈二皇后位一、〈◯中略〉又故權大納言藤原能信卿贈二太政大臣正一位一、又外祖母藤原祉子贈二正一位一、

〔朝野群載〕

〈二十一雜文〉

p.1553 正二位藤原朝臣實季
　　右可レ贈二正一位一
中務、朝之泉藪、世之國華、抽二精誠於魏宮一、流二餘慶於姒幄一、嗟乎音響長隔、歳月其徂、睦レ親之義惻二隱于懷一、宜下遵二飾終之禮一、式申中贈爵之恩上、可下依二前件一、主者施行上、
　嘉承二年十二月十三日

〔續世繼〕

〈三花園の匂ひ〉

p.1553 このみかど〈◯二條〉の御母は、大納言經實の御むすめ、その御母春宮大夫公實の御むすめなり、その大納言の中の君は、花ぞのゝ左のおとゞ〈◯源有仁〉の北の方なれば、あねの姫君を子にして、院のいま宮とておはしましゝに奉られたりしなり、このみかどうみおき奉りてうせ給にき、后の位をおくられ給て、贈皇太后宮懿子と申なるべし、御おやの按察大納言〈◯經實〉も、おほきおとゞ、おほきひとつのくらゐおくられ給へるとなんうけ給はる、さる事やあらんともしらでうせ給にしかども、やんごとなき位そへられ給へり、御すゑのかざりなるべし、

〔兵範記〕

p.1553 仁安三年六月廿九日己未、今上主上〈◯六條〉外祖父母有二贈官位事一、去三月御即位以後此議出來、連々相障于レ今延引、上卿著陣、召二中務少輔定長一下二給詔書一、次召二少納言泰經一、下二給宣命位記各二通一、泰經出二敷政門一、令レ持二外記史生一向二彼墓所一、東山四條末十樂院東、故顯尋法眼結界之地、有縁殯歛彼在生時、依二連理之契一御二坐一所一也、仍兩所位記宣命泰經一人爲二勅使一、右兵衞督以二案内者一、被レ副二少納言一爲二指南一也、〈贈左大臣正一位平時信、贈正一位藤原祐子、〉

〔玉海〕

p.1553 治承三年六月廿九日丙辰、白河殿〈◯平清盛女盛子、藤原基實妻、〉准后薨逝間事、〈◯中略〉
宣命贈位事、准二淑子〈◯藤原長良女、藤原氏宗妻、〉并代々外祖母等例(○○○○○○○)一者(○)、可(○)レ被(○)レ贈(○)二正一位(○○○)一歟(○)、〈◯下略〉

〔愚管抄〕

〈五〉

p.1553 贈左大臣範季〈◯中略〉は、後鳥羽院を養ひ進らせて、踐祚の時もひとへに沙汰しまゐらせし人也、さて加階は二位までしたりしかども、當今〈◯順徳〉の母后〈◯重子〉のちゝなり、さて贈位もたま

p.1554 はれり、範季がめひ刑部卿の三位と云しは、能圓法師が妻也、能圓は土御門院の母后、承明門院の父なり、

〔愚管抄〕

〈六〉

p.1554 當今佐渡院〈◯順徳〉御母は、建永二年六月七日院號ありき、立后はなし、二位せさせ給てきと、准后の官になり給て、修明門院と云院號ありけり、この例は八條院の御時より始りけるとぞ、又東宮御即位の後、院號近例かならず有事也、されば又範季の二位も贈左大臣に成にき、出家いとよにすべかりし人のこの事を思ひて(○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○)、出家もせずしてうせにしか(○○○○○○○○○○○○)、はたしてかゝればめでたき事也(○○○○○○○○○○○○○○)、

〔増鏡〕

〈四三神山〉

p.1554 阿波院〈◯土御門〉の宮〈◯後嵯峨〉は、〈◯中略〉御はゝはつちみかどの内大臣みちちかの御子に、宰相の中將みちむねとて、わかくてうせにし人の御むすめなり、〈◯中略〉さて仁治三年三月十八日御そくゐ、よろづあるべきかぎりめでたく過もてゆく、〈◯中略〉當代かくめでたくおはしませば、通宗宰相も左大臣從一位おくられ給ふ、御むすめも后の位をおくり申されし、いとめでたし、

〔贈官宣下記〕

p.1554 文安元年五月六日乙卯、是日贈官位宣下也、御外祖父綾少路源少將經有、去應永十九年五月十五日逝去、今年今月相二當三十三年遠忌一之間、被レ贈二左大臣從一位一者也、國母〈◯後花園〉准后之御父也、庭田中將重賢朝臣之祖父也、上卿權中納言藤原定繼卿、職事藏人右中辨同資重、〈奉行〉少納言菅原繼長朝臣、權少外記中原康顯、右大史高橋員職等參レ陣也、其儀上卿著二仗奧座一、次職事進仰二勅語一、上卿移著二端座一令レ敷レ軾、召二少内記高橋員職一仰二宣命位記事一、〈其詞云、外祖父右近衞少將源經有贈二左大臣從一位一、任レ例作二進詔書宣命位記一ヨ、〉員職退持二參宣命草一通並一卷一、〈納二筥蓋一〉上卿披見之、令レ持二内記一參二進弓場一、付二右中辨一奏レ之、即被二返下一之、〈殿下無二御參一、不レ及二内覽一、〉上卿取レ之返二給内記一、内記於二弓場一、取二替清書宣命〈草取出令二懷中一之〉位記一、又此時懷中之、又被レ奏之被二返下一之後、上卿歸二著陣一披二見宣命位記等一、〈内記於二弓場與レ陣之間一、今度入二加位記一持參云々、〉返二給空筥於内記一、猶位記宣命者留レ前、令レ退二内記一、次上卿召二少納言於軾一、給二宣命位記少納言一、少納言翌日宣命位記等相具向二墓所一、〈伏見也〉

〔宣胤卿記〕

p.1555 文明十二年正月廿六日丁未、自二左少辨許一宣下兩通〈正月十三日正二位藤原朝臣〈信〉宜レ叙二從一位一、同廿六日故内大臣信宗公宜レ贈二太政大臣一、〉到來、極位者内府也、贈官者故大炊御門内府〈稱號可レ尋〉也、今日忌日也、當今〈◯後土御門〉御母〈◯藤原信子〉御父分也、仍及二此沙汰一者也、則下二知大内記一、

〔台徳院殿御實紀〕

〈六十〉

p.1555 元和九年七月廿七日、公〈◯徳川秀忠〉は此日より天下を御讓與まし〳〵、御みづからは大御所と稱し奉る、〈◯中略〉御隱退前後十年にして、寛永九年正月廿四日亥刻、西城の正寢にして薨じ賜ふ、御壽五十四なり、〈◯中略〉二月廿九日勅使參向ありて、台徳院殿と勅諡せられ、正一位を贈らせらる、主上〈◯明正〉は太上天皇の尊號を御追贈あらまほしき叡慮おはしけれど(○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○)、御平常御謙遜の御志ふかくまし〳〵けるゆゑ(○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○)、こなたよりはかたく御辭退ありければ(○○○○○○○○○○○○○○○○○)、先正一位にのぼせ給ひけるとぞ聞えし、

〔諸家知譜拙記〕

〈三〉

p.1555 園基音
靈元院外祖、權大納言正二位號二南宗院一、承應四、二、十七薨、五十二、贈左大臣、
　一本云、基音公寛文七、七、五贈左大臣、勅使少納言豐長朝臣向二誓願寺一讀二宣命一、依二當今外祖一也、

〔十三朝紀聞〕

〈七仁孝〉

p.1555 弘化元年正月、贈二故外祖權大納言經逸内大臣一、

〔今日抄〕

〈一孝明〉

p.1555 嘉永三年正月二十七日、贈二外舅權中納言實光左大臣一、

沒後賜封

〔公卿補任〕

〈元正〉

p.1555 右大臣正二位藤原朝臣不比等　養老四年八月三日薨、〈◯中略〉聖武孝謙二代外祖、〈◯中略〉十月十日壬寅、詔遣二大納言正三位長屋王一、〈◯中略〉就二右大臣第一宣レ詔、贈二太政大臣正一位一、諡曰二文忠公一、食封資人並如二全生一、

〔續日本紀〕

〈十四聖武〉

p.1555 天平十三年正月丁酉、故太政大臣藤原朝臣〈◯不比等〉家、返二上食封五千戸一、二千戸依レ舊返二賜其家一、三千戸施二入諸國國分寺一、以充下造二丈六佛像一之料上、

〔續日本紀〕

〈二十三淳仁〉

p.1555 天平寶字四年八月甲子、勅曰、子以レ祖爲レ尊、祖以レ子亦貴、此則不易之彜式、聖主之善

p.1556 行也、其先朝太政大臣藤原朝臣〈◯不比等〉者、非三唯功高二於天下一、是復皇家之外戚、是以先朝贈二正一位太政大臣一、斯實依二我令一、已極二官位一、而准二周禮一猶有レ不足、竊思二勳績一蓋二於宇宙一、朝賞未レ允二人望一、宜下依二太公故事一追以二近江國十二郡一封爲中淡海公上、餘官如レ故、以二繼室從一位縣狗養橘宿禰一贈二正一位一爲二太夫人一、又得二大師〈◯藤原押勝〉奏一偁、故臣父及叔者、並爲二聖代之棟梁一、共作二明時之羽翼一、位已窮レ高、官尚未レ足、伏願廻二臣所レ賜太師之任一、欲レ讓二南北兩左大臣一者、宜レ依レ所レ請、南卿〈◯武智麻呂〉贈二太政大臣一、北卿〈◯房前〉轉贈二太政大臣一、庶使下酬レ庸之典、垂二跡於將來一、事レ君之臣、盡中忠於後葉上、普告二遐邇一知二朕意一焉、

〔三代實録〕

〈二十二清和〉

p.1556 貞觀十四年十月十日丁未、正三位守右大臣兼行左近衞大將藤原朝臣基經、抗レ表辭二故太政大臣忠仁公〈◯藤原良房〉封邑一曰、臣聞昔樊裏侯之遺言、時至猶從二厥旨一、羊太常之終制、府丞不二敢違一レ心、何况忘レ私義讓、指二河曰一而結レ誠、愛レ國忠謀、糜二肝膽一而貽レ誠、臣謹讀二去月四日詔書一、贈二於故太政大臣藤原朝臣一、以二正一位一、又以二美濃國一封之爲二美濃公一、諡曰二忠仁一、食封資人並同二平日一、太政大臣之官亦如レ故矣、崇賁慇懃、寵光輝赫、聲榮之盛、門閥縟萃、伏計先臣幽魄、追榮二舊想一、添二鳬藻於天波一、退憚二新恩一、増二氷谷於地底一、但先臣臨レ終誡レ臣曰、余昔奉二聖主於襁褓一、望二成人於日月一上天從レ欲、明辟累レ年吾生自レ此而歿、世上亦有二何思一、徒恨時運陵遲、邦國凋弊、雖三煩開二聖化於東后一、猶難レ起二人謠於甫田一、生時既見二帑藏之空一、死後何招二錙銖之費一、即我下世之後、朝例攸レ給葬送等物、凡諸應レ爲二公煩一者、無レ小無レ大、須宜二固辭一切勿一レ請、但如二此心一、事々須レ面二諮皇太后殿下一、然而君臣禮隔、男女事殊、何驚二長樂之宮一、敢幸二沈淪之地一、吾既無レ男、汝即猶レ子、宜下述二吾志一莫上レ忘二吾言一、而今職位食封既同二平日一、加之以二美濃之一國一、公費兼二倍於生時一、誠非二先臣提撕告誡之意一也、臣仍具状以聞、〈◯中略〉勅答曰、省レ表悉之、故太政大臣忠仁公、保二養朕躬一、丕訓告レ功、朝露溘至、傷如二之何一、凡褒贈之設所下以旌二有功一表中有徳上也、忠仁公處二於外祖之顯地一、重以二上台之元功一、朕思レ所二以加隆一、無レ所レ不レ至、但尋二公平日之志一、深秉二謙損之志一、是用纔飾以二正一位一、追封爲二美濃公一、於二朕之心一猶有レ不レ厭、軍法斬二一牙門將一者、封二侯萬里之外一、夫斬二一將一之功孰三與安二寧天下一、况亦有二天爵一者、人爵從レ之、朕

p.1557 答二於恩一、公食二於道一、假二之議者一、誰謂レ不レ宜、今卿上表爲レ公讓レ之、朕雖レ知二其丹誠一、未レ忍レ割二素意一、宜下如二前詔一、莫上レ有レ所レ請、

〔三代實録〕

〈二十四清和〉

p.1557 貞觀十五年十一月六日丁卯、右大臣從二位兼行左近衞大將藤原朝臣基經、上レ表請レ還二故忠仁公〈◯藤原良房〉封邑一云々、勅答曰、右大臣藤原朝臣、得レ表已知爲二故太政大臣忠仁公一讓レ封、朕聞存立二嘉庸一、沒受二寵渥一、古之遺法也、公儀刑道著、輔導年深、仁爲二已任一、死而後已、朕追二加封爵一同二之生存一、答二恩篤一也、而卿禀二遺旨一、再三固辭、朕察二其至誠一、不レ拒二來請一、唯餘二位封之所一レ輸、以示二厚意之不一レ已、今纔過二忌景一、更求二讓還一、朕以爲古之功臣、有二傳レ世不レ絶之誼一、况公地居二外祖一、天下權勳、至二其遺封一、未レ謂二羨食一、於レ朕失二割腴之賞一、在レ公非レ爲二軫〈◯軫恐紾誤〉臂之飡一、聊添二幽穸之榮一、兼助二奠祭之費一、朕不レ勝二感泣一、卿勿二復請一、〈◯又見二都氏文集一〉

〔公卿補任〕

〈宇多〉

p.1557 太政大臣從一位藤基經　寛平三年正月十三日薨、〈年五十六〉詔贈二正一位階一、封二越前國一、諡曰二昭宣公一、號二堀川太政大臣一、生年承和三年丙辰、送二山城國宇治郡一、攝政十一年、關白八年、

〔愚管抄〕

〈一宇多〉

p.1557 關白太政大臣基經〈（中略）寛平三年正月十三日薨五十七、天皇甚哀悼、詔贈二正一位一、食封資人並如レ生、故大臣又如レ故、〉

冢墓

〔續日本紀〕

〈十聖武〉

p.1557 天平二年九月丙子、遣レ使以二渤海郡信物一、令下獻二山陵六所一、并祭中故太政大臣藤原朝臣〈◯不比等〉墓上、

〔續日本紀〕

〈十九孝謙〉

p.1557 天平勝寳七年十月丙午、勅曰、比日之間、太上天皇枕席不レ安、寢膳乖レ宜、朕竊念レ兹、情深惻隱、〈◯中略〉遣二使於山科、大内東西、安古、眞弓、奈保山東西等山陵、及太政大臣〈◯藤原不比等〉墓一、奉レ幣以祈請焉、

〔三代實録〕

〈一清和〉

p.1557 天安二年十一月五日壬戌、〈◯中略〉從四位上行右兵衞督源朝臣勤、爲二今上外祖母源氏〈◯藤原良房妻潔姫〉愛宕墓使一、並告以二天皇即位一也、

〔三代實録〕

〈一清和〉

p.1557 天安二年十二月九日丙申、詔定二十陵四墓一獻二年終荷前之幣一、〈◯中略〉贈太政大臣正一位藤原朝臣鎌足(○○)多武峯墓、在二大和國十市郡一、後贈太政大臣正一位藤原朝臣冬嗣宇治墓、在二山城國宇治郡一、尚侍贈正一位藤原朝臣美都子〈◯冬嗣妻〉次宇治墓在二山城國宇治郡一、贈正一位源朝臣潔姫〈◯藤原良房妻〉

p.1558 愛宕墓、在二山城國愛宕郡二、〈◯又見二類聚符宣抄四一〉

〔三代實録〕

〈七清和〉

p.1558 貞觀五年二月七日庚子、下二知大和國一、禁二藤原氏先祖贈太政大臣多武岑墓四履之部内、百姓、伐レ樹放一レ牧、

〔三代實録〕

〈七清和〉

p.1558 貞觀五年三月十五日丁丑、帝外祖母源氏〈◯潔姫〉墓、在二山城國愛宕郡一、詔以二域地四町一爲二四履之限一、

〔三代實録〕

〈二十二清和〉

p.1558 貞觀十四年十二月十三日己酉、先レ是天安二年十二月九日定二十陵四墓一、獻二年終荷前幣一、是日〈◯中略〉四墓加二太政大臣贈正一位藤原朝臣良房愛宕墓一爲二五墓一、在二山城國愛宕郡一、

〔三代實録〕

〈三十二陽成〉

p.1558 元慶元年十二月十三日己卯、勅定下毎年獻二荷前幣一五墓上、贈太政大臣藤原氏多武岑墓、在二大和國一、贈正一位源氏墓、太政大臣贈正一位藤原氏墓、並在二山城國愛宕郡一、贈左大臣藤原氏墓、在二山城國宇治郡一、贈正一位藤原氏墓、在二山城國紀伊郡一、自餘皆停廢焉、

〔三代實録〕

〈三十五陽成〉

p.1558 元慶三年四月十六日乙亥、故太政大臣忠仁公〈◯藤原良房〉墓、置二守冢一烟一、

〔三代實録〕

〈四十六光孝〉

p.1558 元慶八年十二月廿日丙午、定下毎年獻二荷前幣一十陵五墓上、〈◯中略〉贈太政大臣正一位藤原朝臣多武岑墓、在二大和國十市郡一、贈太政大臣正一位藤原朝臣墓、在二山城國宇治郡一、贈正一位藤原氏墓、在二山城國紀伊郡一、贈太政大臣正一位藤原朝臣墓、在二山城國愛宕郡一、贈正一位藤原氏墓、在二同郡一、停二廢〈◯中略〉太皇太后〈文徳后明子〉考太政大臣贈正一位藤原朝臣、妣贈正一位源氏兩墓一、不レ預二別貢荷前幣一、

〔三代實録〕

〈四十六光孝〉

p.1558 元慶八年十二月廿五日辛亥、勅以二山城國愛宕郡鳥戸郷地四町一、爲二贈正一位藤原朝臣總繼墓地一、以二同郡八坂郷地十町一、爲二贈正一位藤原朝臣數子墓地一、

〔三代實録〕

〈四十八光孝〉

p.1558 仁和元年十月八日己未、是日勅、皇妣贈皇太后山陵置二守冡五戸一、外祖父贈太政大臣正一位藤原朝臣總繼、外祖母贈正一位藤原朝臣數子墓各一戸、〈◯中略〉並在二山城國愛宕郡一、

〔西宮記〕

〈十月〉

p.1558 荷前事　

p.1559 延喜七年十二月二十一〈◯一、一本作レ五、〉日、亦依二左大臣〈◯藤原時平〉申一、止二長良墓一、以二宮道列子一預二荷前事一、

〔延喜式〕

〈二十一諸陵〉

p.1559 牧野墓〈太皇太后之先和氏、在二大和國廣瀬郡一、兆域東西三町、南北五町、守戸一烟、〉
大野墓〈太皇太后之先大枝氏、在二大和國平群郡一、兆域東西六町、南北四町、守戸一烟、〉
阿陁墓〈贈太政大臣藤原朝臣良繼、日本根子推國高彦尊天皇外祖父、在二大和國宇智郡一、兆域東西十五町、南北十五町、守戸一烟、〉
村國墓〈贈正一位安部命婦、（古美奈）同天皇外祖母、在二大和國添下郡一、兆域東西四町、南北五町、守戸一烟、〉
多武岑墓〈贈太政大臣正一位淡海公(○○○)藤原朝臣、在二大和國十市郡一、兆域東西十二町、南北十二町、無二守戸一、〉
後阿陁墓〈贈太政大臣正一位藤原朝臣武智麻呂、在二大和國宇智郡一、兆域東西十五町、南北十五町、守戸一烟、〉
相樂墓〈贈太政大臣正一位藤原朝臣百川、淳和太上天皇外祖父、在二山城國相樂郡一、兆域東西三町、南北二町、守戸一烟、〉
後相樂墓〈贈正一位藤原氏同天皇外祖母、在二山城國相樂郡贈太政大臣墓内一、無二守戸一、〉
加勢山墓〈贈太政大臣正一位橘朝臣清友、仁明天皇外祖父、在二山城國相樂郡一、兆域東西四町、南北六町、守戸一烟、〉
小山墓〈贈正一位田口氏、同天皇外祖母、在二河内國交野郡一、兆域東西三町、南北五町、守戸二烟、〉
後宇治墓〈贈太政大臣正一位藤原朝臣冬嗣、文徳天皇外祖父、在二山城國宇治郡一、兆域東西十四町、南北十四町、守戸一烟、〉
次宇治墓〈贈正一位藤原氏、同天皇外祖母、在二山城國宇治郡贈太政大臣墓内一、〉
愛宕墓〈贈正一位源氏、清和太上天皇外祖母、在二山城國愛宕郡一、兆域東二町、南一町、西一町五段、北一町五段、守戸一烟、〉
後愛宕墓〈太政大臣贈正一位美濃公藤原朝臣、在二山城國愛宕郡一、守戸一烟、〉
深草墓〈贈正一位藤原氏、陽成太上天皇外祖母、在二山城國紀伊郡一、守戸一烟、〉
河嶋墓〈贈正一位當宗氏、在二山城國葛野郡一、墓戸一烟、〉
八坂墓〈贈正一位藤原氏、在二山城國愛宕郡八坂郷一、墓地十町、墓戸一烟、〉
拜志墓〈贈正一位藤原朝臣總繼、在二山城國愛宕郡鳥戸郷一、墓地四町、墓戸一烟、〉　

p.1560 次宇治墓〈贈正一位太政大臣越前公藤原朝臣、在二山城國宇治郡一、墓戸一烟、〉
小野墓〈贈太政大臣正一位藤原朝臣高藤、在二山城國宇治郡小野郷一、〉
後小野墓〈贈正一位宮道氏、在二山城國宇治郡小野郷一、〉
又宇治墓〈贈太政大臣正一位藤原朝臣時平、在二山城國宇治郡一、墓戸一烟、〉

〔政事要略〕

〈二十九〉

p.1560 荷前事
多武峯墓〈贈太政大臣正一位淡海公藤原朝臣、在二大和國十市郡一、兆域東西十二町、南北十二町、無二守戸一、〉
　淡海公者、内大臣鎌足之長子也、依レ爲二藤氏之先一、雖レ多二他墓一別所レ注也、自餘墓可レ見レ式、

〔公卿補任〕

〈元正〉

p.1560 右大臣正二位藤原不比等　養老四年八月三日薨　十月八日戊子、火二葬佐保山椎崗一、從二遺教一也、

〔古事記傳〕

〈二十〉

p.1560 四墓ハ贈太政大臣正一位藤原朝臣多武峯墓、藤原朝臣冬嗣墓、尚侍藤原朝臣美都子墓、源朝臣潔姫墓これなり、冬嗣公は文徳天皇の御外祖、美都子は同御外祖母、潔姫は當代〈◯清和〉の御外祖母なればなり、然るに多武峯墓は不比等公にて、聖武孝謙の御外祖にこそあれ、清和の御代に殊に祭らるべき由はなきに、此内に置れたるは、此時天皇は未幼坐々ば、凡て良房大臣の御心より出たる故なるべし、さて三代實録今本に、右の多武峯墓鎌足とあるは、後人のなまさかしらに改めつるものなり、古本には此名なし、多武峯は不比等と諸陵式にも見え、贈太政大臣正一位も鎌足にてはかなはぬ物をや、

〔大日本史〕

〈禮樂四〉

p.1560 按實録云、贈太政大臣正一位藤原朝臣鎌足多武峯墓、符宣鈔書法亦同、而延喜式書二多武岑墓贈太政大臣正一位淡海公藤原朝臣一、政事要略以爲二不比等一、其説不レ合可レ疑、且鎌足贈位贈官正史無二所見一、實録書法亦非レ無レ疑、據二大織冠傳一、鎌足葬二山階一、公卿補任、帝王編年記、不比等葬二椎岡一、然皆其火葬地也、意者後人或移二葬二人遺骨於多武峯一、定爲二墳墓一、而二墓竝在二同地一、故致二此

p.1561 異同一乎、然朝廷奉幣、必止二一墓一、而二説不レ同、竟不レ知三其爲二誰墓一、亦太可レ異也、今姑據二二書一定爲二鎌足一、併二擧異同一以待二後考一、
◯按ズルニ、鎌足ハ内大臣大織冠タリ、三代實録ニ、太政大臣正一位トアルハ、往時ノ内大臣ノ、當時ノ太政大臣ニ當リ、大織冠ノ、正一位ニ當ルヲ以テナリ、故ニ此前後ノ書ニ、多ク内大臣大織冠ト云ヘリ、太政大臣正一位ヲ贈リシニ非ザルヲ知ルベシ、天平十三年ノ銅版詔書ニ、鎌足不比等ノ二人ヲ藤原氏前後太政大臣ト云ヒ、興福寺縁起ニ、先正一位太政大臣、後太政大臣ト云ヘルハ、三代實録ト同一ノ筆法ナリ、多武峯ハ、鎌足ト不比等トヲ移葬セル地ニシテ、初ニハ荷前ニ鎌足ヲ祭リ、後ニハ改メテ不比等ヲ祭リシ故ニ、同一ノ藤原太政大臣多武峯墓ノ文ニシテ、三代實録ト延喜式ト、其人ヲ異ニスルヲ致セルカ、附シテ以テ他日ノ參攷ニ備フ、

〔政事要略〕

〈二十九〉

p.1561 太政官符中務省
　應毎年荷前山陵幷墓事〈◯中略〉
一墓八所
　大和國一所〈多武峯〉
　山城國七所
　一所〈贈太政大臣藤原氏、在二愛宕郡一、◯中略〉
　一所〈贈正一位當宗氏、在二葛野郡一、〉
　一所〈太政大臣贈正一位藤原氏、在二宇治郡一、〉
　一所〈贈太政大臣正一位藤原氏、在二宇治郡一、〉
　一所〈贈正一位宮道氏、在二同郡一、〉
　一所〈贈正一位王氏、在二同郡一、〉

p.1562 右左大臣宣、奉レ勅依レ件定之、自餘停止者、省宜二承知依レ件行一レ之、符到奉行、
　　延長八年十二月九日

〔拾芥抄〕

〈下本十陵〉

p.1562 天慶九年四月廿六日記曰、被御位田山陵使云、
　山階　柏原　嵯峨　深草　後田邑〈異本原〉　後山階　後宇治〈昭宣公（藤原基經）墓〉　後宇治〈同公室、今上（朱雀）外祖母〉　合八箇所

〔九暦〕

p.1562 天暦三年十二月廿三日、以二貞信公〈◯藤原忠平〉墓所一、可レ預二荷前幣一之由蒙レ仰了、可レ令レ作二官符一之由仰二有相朝臣一事、

〔政事要略〕

〈二十九〉

p.1562 荷前事
新加二太政大臣正一位藤原氏一〈在二宇治郡一〉
　太政大臣〈諱實頼〉　太政大臣〈伊尹〉
　　今案有二新加一レ墓之時、如レ陵不レ除二先墓一歟、又堀川相府〈兼通〉可レ入歟可二尋知一、

〔小右記〕

p.1562 長和三年十二月十七日己巳、昨日内大臣定二申荷前使一、〈今月廿七日◯中略〉
宇治〈參議道方〉　中宇治〈參議頼定〉　班幣所〈參議兼隆〉

〔左經記〕

p.1562 長元元年十二月卅日庚寅、申刻被レ立二御荷前使一、先廳備二饗六前一居二侍所一、長官四位少將定良、次官良位朝臣等著レ饗、余〈◯源經頼〉進二兩三盃一、此間小使二人〈官史生也、著二衣冠一、〉取二小筵二枚一敷二南庭一、〈卯酉爲レ妻〉次舁下立置納二荷前物一筥、八足案一脚於中中門外上、次次官纔著、〈依二地濕一云々〉舁レ案入レ從二中門一立二筵上一退出、〈使少將解レ劔笏挿レ腰、次官笏挿レ腰〉次小使史生取二使料筥一置二案下筵上一、御拜了、〈令レ著二純色御裳唐衣一給云云〉次長官舁二出案中門外一、〈即荷前廳切二裹之一、案小筵御季所レ儲之云々、〉次長官舁向二木幡一〈◯藤原道長墓〉燒レ之云、

〔兵範記〕

p.1562 仁安三年七月廿五日甲申、今日皇太后宮〈◯平滋子〉先公贈左大臣〈◯平時信〉御忌日也、從レ宮被レ行二其式法一於二東山十樂院一被レ行、是彼時七々中陰堂場也、顯尋法眼之時、有レ縁被レ用畢、今忠雲内供雖二相承一、依二官

p.1563 仰一奉二行之一、

〔吉記〕

p.1563 安元二年六月卅日癸卯、今日十樂院新御堂棟上也、依レ有二詫宣一、奉二爲贈左府一〈◯平時信〉有二此營一、院司兵部卿、主典代盛職、參向行也、

犯罪處分

〔律疏〕

p.1563 六議
一曰議親、謂皇親、及皇帝五等以上親、及太皇太后、皇太后四等以上親、〈太皇太后者皇帝祖母也、皇太后者皇帝母也、〉皇后三等以上親、

〔令義解〕

〈六儀制〉

p.1563 凡五等親者、父母、養父母、夫、子、爲二一等一、〈謂養子亦同也〉祖父母、嫡母、繼母、伯叔父姑、兄弟姉妹、夫之父母、妻、妾、姪、孫、子婦、爲二二等一、〈謂妾亦同、子妾尚爲二二等一、父妾入二二等一明、其養子之父母及妻者、不レ得三復爲二夫之父母及子婦一也、〉曾祖父母、〈謂祖父之父母也〉伯叔婦、夫姪、從父兄弟姉妹、異父兄弟姉妹、夫之祖父母、夫之伯叔姑、姪婦、繼父同居夫前妻妾子、爲二三等一、〈謂今妻妾子亦同也、夫姪爲二三等一、夫兄弟爲二四等一、謂伯叔之妻爲レ母、夫之姪爲レ子、又兄弟之子猶レ子、引而進之、即此義也、從父兄弟、謂兄弟之子、相呼爲二從父一、長者曰レ兄、少者曰レ弟也、〉高祖父母、從祖祖父姑、〈謂祖父之兄弟姉妹也〉從祖伯叔父姑、〈謂從祖祖父之子、即父之從父兄弟姉妹也、〉夫兄弟姉妹、兄弟妻妾、再從兄弟〈謂從祖伯叔父之子也〉姉妹、外祖父母、舅、姨、〈謂母之兄弟曰レ舅、姉妹曰レ姨、〉兄弟孫、從父兄弟子、外甥、曾孫、孫婦、妻妾前夫子爲二四等一、〈◯下略〉

車駕幸私第

〔三代實録〕

〈八清和〉

p.1563 貞觀六年二月廿五日壬午、車駕幸二於太政大臣〈◯藤原良房〉東京染殿第一觀二櫻花一、中路駐二蹕於一條第一、即是帝〈◯清和〉降誕之處也、太政大臣以二肴醴一賜二扈從群臣文武官一、積二祿物於庭中一、令二帝覽一訖、班賜有レ差、遂幸二染殿花亭一、親王已下侍從已上並侍焉、太政大臣別令三伶人教二習樂一部一、喚二能屬レ文者、五位已上十人諸司六位十人、文章生二十人一、命レ樂賦レ詩、具酔歡樂、移レ自二花亭一、御二於射場一、帝御二弓矢一一發中レ鵠、群臣稱二萬歳一、親王已下以レ次遞射、山城國司守正四位下紀朝臣今守等、率二郡司百姓於東垣外一、行二耕田之禮一、欲レ令三帝覽レ之、知二農民之有一レ事也、自レ晨至レ暮、極レ樂而罷、賜二親王公卿文武百僚祿一各有レ差、夜分還レ宮、

〔榮花物語〕

〈十一莟花〉

p.1563 長和二年七月六日の夕かたより御けしきあるさまにおはしませば、〈◯三條后妍子藤原道長〉

p.1564 〈女〉御いのりの僧どもこゑをあはせてのゝしる、加持まゐり、うちまきしさわぐ、〈◯中略〉日ごろいみじかりつる御いのりのしるしにや、いぬの時ばかりにいとたひらかにみこ〈◯三條皇女禎子内親王〉むまれ給ぬ、〈◯中略〉女におはしませば、うち〈◯三條〉にもいますこし、心ことにおきてきこえさせ給、たゞおなじくばとたれもおぼさるべし、されど春宮〈◯後一條〉のむまれ給へりしを、とのゝおまへ〈◯藤原道長〉の御はつむまごにて、榮花のはつはなときこえたるに、この御ことをばつぼみ花とぞ聞えさすべかめる、〈◯中略〉九月にも成ぬれば、行幸の事けふあすの程にいそがせ給ふ事いみじ、宮の女房のなりいみじきに、かんの殿〈◯後一條后威子〉の御かた、とのゝうへ〈◯道長妻倫子〉の御かた、われも〳〵とのゝしることいみじ、ふねのがくなどいみじくとゝのへさせ給へり、行幸の有さまみな例のさほうなれば、かきつゞくまじ、大宮〈◯一條后彰子〉の東宮〈◯後一條〉のむまれさせ給へりしのちの行幸、たゞそのまゝの有さまなり、〈◯中略〉うへ、〈◯中略〉御帳のうちにいらせ給て、月比の御物語など、心のどかに聞え給、かくうつくしき人をいままで見ざりつる事、なほめでたき事なれど、この身のありさまこそくるしけれ、いみじく思人のともかくもおはせんを、とみにもみぬ事、いみじくくちをしかしなど萬に聞えさせ給て、いざちごむかへてなかにふせて見ん、いみじくうつくしきものかな、この宮達のちごなりしをこそうつくしうみしかど、なほそれはれいのありさまなり、これはことのほかにをかしくみゆるは、かみのながければなめり、なほ〳〵とく〳〵いらせ給へ、うちにてはめのといるまじ、まろめのとにてはべらんなど聞えさせ給へば、ものぐるほしとてすこしわらはせ給、かゝる程に日もくれぬれば、上達部の御あそびになりぬるがいみじくなつかしくおもしろきに、〈◯中略〉とみに出させ給まじき御けしきなれば、殿いらせ給て、よにいりはべりぬ、かばかりおもしろきあそびども御覽せんと申させ給へば、いとおもしろしときゝ侍り、がくのこゑはきくこそおもしろけれ、見るはをかしうやはある、さま〴〵のまひどもはみな見はべりぬといとのどか

p.1565 にの給はすれば、すげなくて出させ給ぬ、〈◯中略〉よろづあさましくめでたきとのゝありさまなり、このつちみかど殿にいくそたび行幸あり、あまたのきさきいでいらせ給ぬらんと、よのあえ物にきこえつべき殿なり、これを勝地といふなりけり、これを榮花といふにこそあめれと、あやしのものどもの、しもをかぎれるしなどもゝよろこびゑみさかえたり、

〔一代要記〕

〈七後冷泉〉

p.1565 關白左大臣頼通〈◯中略〉
治暦三年十月五日庚戌行二幸宇治平等院一、〈◯頼通別莊〉勅曰、前太政大臣、〈◯頼通〉名(○)雖(○)レ爲(○)二君臣(○○)一、義(○)如(○)二父母(○○)一、同七日勅、年官年爵准三宮、賜二内舍人二人、左右近衞各六人一爲二隨身一、

祭外家神

〔大鏡〕

〈七太政大臣道長〉

p.1565 かまたりのおとゞ、むまれ給へるは常陸の國なれば、かしこのかしまと云ふところに氏の御神をすましめたてまつり給て、その御よゝりいまにいたるまで、あたらしき御門后大臣たち給をりは、みてぐらづかひかならずたつ、みかどならにおはしましゝ時は、かしこ遠しとて、大和國みかさ山にふり奉りて、春日明神となづけたてまつりて、いまに藤氏御氏神にて、おほやけをとこ女つかひたてさせ給ひ、后宮その氏の大臣公卿、みな此明神につかうまつり給て、二月十一月上申日御まつりにてなん、さま〴〵のつかひたちのゝしる、みかどこの京にうつらしめ給ては、又ちかくふり奉りて大原野と申、きさらぎのはつうの日、霜月初子日とさだめて、としに二度のまつりあり、又おなじくおほやけのつかひたつ、藤氏殿原みなこの御神にみてぐら十列たてまつり給、なほもちかくとてまたふりたてまつりて、吉田と申ておはしますめり、この吉田の明神は山かげの中納言のふりたて奉り給へるぞかし、御まつり日四月後の子日、十一月下申日とをさだめて、我御ざうにみかど后宮たち給ふものならば、おほやけまつりになさんとちかひ奉りておはしましければ、一條院の御時よりおほやけまつりにはなりたるなり、

〔廿二社本縁〕

p.1566 　　大原社事
　　吉田社事
此二社者春日〈乎〉勸請〈乃〉社也、依二所〈仁〉一稱二彼名〈於〉一歟、被レ祭二本社〈ヲ〉一上〈和、〉後代勸請〈乃〉神〈爾天、〉同時〈仁〉被レ祭事无二其謂一歟、然而藤氏〈乃〉繁昌〈乃〉後、風儀尊崇相同哉、氏后〈奈度和〉大原野〈仁〉行啓〈寸、〉昔〈與里乃〉事也、〈己上〉

〔伊勢物語〕

〈上〉

p.1566 昔二條の后〈◯清和后藤原高子〉の春宮のみやす所と申けるころ、氏神にまうで給けるに、つかうまつれりけるこのゑづかさなりける翁、〈◯在原業平〉人々のろく給はりけるついでに、御車より給はりてよみて奉る、　　大原や小鹽の山もけふこそは神世のこともおもひいづらめ〈◯又見二古今和歌集一〉

〔大鏡〕

〈七太政大臣道長〉

p.1566 春日の行幸は、さきの一條院の御時よりはじまれるぞかし、それに當代〈◯後一條〉おさなくおはしませども、かならずあるべき事にて、はじまりたるれいになりにたれば、大宮〈◯彰子〉御こしにそひ申させ給ひておはします、よのつねならずときの御おほぢにてうちそひつかふまつらせ給ふ、殿〈◯藤原道長〉の御ありさま御かたちなど、すこしよのつねにもおはしまさましかばあかぬ事にや、そこらあつまりたるゐなかせかいのたみ百姓、これこそたしかにみたてまつりけめ、たゞてんりんしやうわうなどは、かくやとひかるやうにおはしますに、佛を見たてまつりたらんやうに、ひたいに手をあてゝをがみまどふさまことわりなり、大宮のあかいろの御あふぎ、御かたの程などはすこしみえ給ひけり、かばかりにならせ給ひぬる人は、つゆの御すきかげもふたぎ、いかゞとこそもてかくし奉るに、ことかぎりあれば、けふはよそほしき御ありさまも、すこしは人の見たてまつらんもなどかはやともやおぼしけん、とのも宮もいふよしなく御心ゆかせ給へりけることおしはかられ侍るは、殿、大宮に、
　そのかみやいのりおきけんかすがのゝおなじみちにもたづねゆくかな、御かへし、

p.1567 　くもりなきよのひかりにや春日野のおなじみちにもたづねゆくらん、かやうに申かよはせ給ふほどの、げに〴〵ときこえて、めでたく侍りし、なかにも大宮のあそばしたりし、
　みかさ山さしてぞきつるいそのかみふるきみゆきの跡をたづねて、これらぞな、おきななどが心のおよばぬにや、あがりてもかくばかりの秀歌えさぶらはじ、その日にとりては、春日明神のよませ給へりけるとおぼえ侍り、

〔伊呂波字類抄〕

〈五無〉

p.1567 梅宮
譜牒男卷下云、太后〈橘嘉〉氏神、祭二於圓提寺一、〈此神始犬養太夫人（藤原不比等妻）所レ祭神也、太夫人子藤原大后（光明子）及牟漏王（美努王女、光明子異父姉）祭二於洛隅川頭一、其後遷二祭於相樂郡挊山一、〉此神爲二仁明天皇一成レ崇、出二於御卜一、復託二宣宮人一云、我今天子外家神也我不レ得二國家大幣一、是何縁哉云々、天皇畏レ之欲下盛立二神社一、准二諸大社一、毎年令中崇壯上、太后不レ肯曰、神道遠而人道近、吾豈得下與二先帝外家一齊上乎、天皇固請レ之、大后曰、但恐爲二國家一成レ祟、仍近移二祭於葛野川頭一、太后自幸拜祭焉、今梅宮祭是也、

〔三代實録〕

〈三十六陽成〉

p.1567 元慶三年十一月六日辛酉、停二梅宮祭一、梅宮祠者、仁明天皇母、文徳天皇祖母太后橘氏之祖神也、歴二承和仁壽二代一以爲二官祠一、今永停廢焉、

〔二十二社註式〕

p.1567 今案仁明母、文徳祖母、太皇太后橘嘉智子也、嵯峨后左大臣諸兄之曾孫、贈太政大臣奈良麻呂之孫、贈太政大臣清友之子也、此太后者、嘉祥三年五月四日崩、〈六十五歳〉

〔三代實録〕

〈四十五光孝〉

p.1567 元慶八年四月七日丁酉、是日始祭二梅宮神一、是橘氏神、頃年之間停二春秋祀一、今有レ勅更始而祭、

〔小野宮年中行事〕

p.1567 四月上酉日當宗祭事〈午日使立〉
仁和四年四月乙亥御記云、朕〈◯宇多〉之外祖母當宗氏神、在二河内國一、今年始可レ祭之状仰了、

〔年中行事秘抄〕

〈四月〉

p.1567 上酉日當宗氏祭事、〈午日使立◯中略〉世記云、寛平五年四月七日戊辰、是日始奉レ遣二河内

p.1568 國志紀郡當宗氏神祭幣帛使一、國司一人專二當其事一、使食二薑等一並用二國正税一、永爲二恒例一、當宗社天皇外祖母之氏神也、

〔世俗淺深秘抄〕

〈下〉

p.1568 一寛平法皇〈◯宇多〉御外祖母氏神、在二河内國一、所レ謂當宗社也、仍自二仁和五年一被レ祭レ之、或説曰、實御母儀也、御母儀仲野親王女班子女王由雖レ記レ之、其年齡頗不レ可レ然、爲二後見一如レ此雖レ註、實〈ハ〉當宗氏女也、大概見二寛平御記一歟、

〔諸社根元記〕

〈下〉

p.1568 新國史云、延喜十一、正、六、宣旨、山科神二前、右依二宮道氏人内藏少允宮道良連等去年八月七日解一、初付二官帳一、四度幣偁、件氏神依二去寛平十年三月七日奉勅之宣旨一、預二享公家春秋祭禮一、又預二四度幣一、
◯按ズルニ、山科ノ神ハ、宮道氏ノ祖神ニシテ、宮道氏ハ宇多天皇ノ皇后藤原氏ノ外家ナリ、故ヲ以テ此時始メテ之ヲ祀リシナリ、

〔大鏡〕

〈三太政大臣忠平〉

p.1568 このおとゞ、これ基經のおとどの四郞君、御母本院の大臣、〈◯時平〉びはの大臣〈◯仲平〉におなじ、このおとゞ〈◯中略〉よをしらせたまふ事廿年、〈◯中略〉のちのいみな貞信公となづけたてまつる、〈◯中略〉三人の大臣〈◯忠平子、實頼、師輔、師尹、〉たちのまゐらせ給ふれうに、小一條のみなみ、かでのこうぢには、いしだゝみをぞせられたりしが、まだ侍るぞかし、むなかたの明神おはしませば、洞院うしろのついぢよりおりさせ給ひしに、あめなどのふる日のれうとぞうけたまはりし、〈◯中略〉此貞信公は宗像神明うつゝにものなど申たまひけり、我よりは御位たかくてゐさせ給へるなんくるしきと申たまひければ、いとふびんなる御事なるかなとて、神位は申まさせ給へるなり、

輔政

〔神皇正統記〕

〈村上〉

p.1568 わが國は神代よりのちかひにて、君は天照大神の御すゑ國をたもち、臣は天兒屋の命の御ながれ君をたすけたてまつるべき器となれり、〈◯中略〉上古には皇子皇孫おほくて、諸國にも封ぜられ、將相にも任ぜられき、〈◯中略〉然れど大織冠氏をさかやかし、忠仁公、政を攝せられ

p.1569 しより、專ら輔佐の器としてたちかへり、神代の幽契のまゝになりぬるにや、閑院の大臣冬嗣、氏のおとろへたることをなげきて、善をつみ、功をかさね、神にいのり、佛に歸せられける、そのしるしも相くはゝりはべりけんかし、

〔三代實録〕

〈十三清和〉

p.1569 貞觀八年八月十九日辛卯、勅二太政大臣一攝二行天下之政一、〈◯中略〉　廿二日甲午、太政大臣從一位藤原朝臣良房抗レ表言、竊以疲驂倦レ路、難三責以二逐日之能一、病鶴忘レ飛、豈望二其凌霄之効一、伏惟聖朝陛下、聰跨二軒昊一、徳駕二成昭一、泣レ辜之惠非レ深、扇レ暍之仁猶薄、臣以二庸材一、謬膺二佐命一、唯獻二血誠之无一レ比、潛欽日就而不レ訾、遂乃天從二人願一、神感二聖仁一、大成之日已來、歸老之期行及、臣不三敢忘二盈滿之誡一、又深企二二疏之風一、然而聖慈不レ許レ出二於直廬之外一、臣誠不レ忍レ離レ自二玉階之前一、徘二徊恩澤一、猶侍二禁中一、而去六年冬、大病以還體氣疲苶、心魂惘然、坐念立忘、昨知今惑、加以二長樂宮御藥之事一、夙夜剡レ思無レ顧二私第一、自然心將レ事レ懶、性與レ物踈、唯欲二助レ衰以叨一レ恩、那堪二勤政以賛一レ化、而今忽降二綸言一、更預二機務一、乍承驚悚、諮謝忘レ言、臣雖二質情之愚薄一、而當昔之全状、唯以二勤格之力一、幸獲レ免二於罪戻一、而今身已衰朽、勤勞何申、心已昏迷、恭恪胡施、即知於レ公无レ益、爲レ私多レ傷、徒招二眼下之耻一、還損二身後之名一、臣竊想二古人教レ射之言一、夫去二楊葉一百歩而射、百發而百中、然其弓撥鈎、氣衰力倦、則百發之功盡廢矣、何况平生材望、幸頼二偶中一、器局力衰之後、更向二百歩之葉一、假令雖レ專、愚者猶當レ知二其不可一焉、伏願陛下察二其深衷一、矜二其疲勞一、更廻二璽詰一、改賜二旒聽一、則巍々聖帝、無レ偏之徳彌新、欵々微臣有レ涯之生少レ損、無レ任二誠懇之至一、謹拜表以聞、不レ許、勅曰、廼者災異荐臻、内外騷動、然須下頼二公助理一、且得中謐靜上、　廿四日丙申、太政大臣重抗レ表言、先傾二丹寳一仰二紫圍一、而天顧弗レ廻、叡情無レ感、愚衷尚屈、㢡喩彌申、阽二焦原一而非レ危、履二虎尾一而倍懼、臣聞日月猶示二盈昃一、山川未レ免二崩沖一、物理自然、人事何忒、臣徳薄才拙、任重位高、儻頼二聖哲欽明一、天人叶賛、得レ免二罪戻一、久塵二宸階一、常愧二深息不レ窮、淺効無一レ答、如レ踏二鑪炭一、似レ履二春氷一、况今老大逼來、疲病交集、藥餌無レ聞、毎闕二趍奉一、素飡之慙、彌倍二平常一、安得下以二此疲勞一重二掌機密一、上黷二國釆一下貽中身累上、况復神監害レ盈、鬼瞰貽レ禍、何忘二止足之分一、坐待二幽冥之責一、臣頽齡漸迫、殘命

p.1570 尚危、若能廻二聖慈一、矜二臣深志一、賜以二優閑一、任二其將息一、則再造之恩更渥、三舍之惠彌深、豈敢偏惜二衰朽之身一、唯貪三久視二太平之化一、伏願陛下別垂二哀許一、不レ省焉、

〔大鏡〕

〈二太政大臣良房〉

p.1570 太政大臣良房のおとゞは、〈◯中略〉文徳天皇のをぢ、太皇太后宮明子の御ちゝ、清和天皇の御祖父にて、太政大臣准三宮位にのぼらせ給ひ、年官年爵の宣旨くだり、攝政關白などし給ひて、十五年こそはおはしましたれ、おほかた公卿にて卅年、大臣の位にて廿五年ぞおはせし、此殿ぞ藤氏のばじめて太政大臣攝政し給ふ、めでたき御ありさまなり、

〔平家物語〕

〈一〉

p.1570 がくうちろんの事
本朝にどうていの例を尋ぬるに、清和天皇九さいにして、文徳天皇の御ゆづりをうけさせ給ふ、それはかの周公旦の成王にかはり、南面にして一日萬機の政事ををさめ給ひしになぞらへて、外祖忠仁公幼主をふぢし給へり、これぞ攝政の始なる、

〔愚管抄〕

〈三〉

p.1570 さて文徳の王子にて清和出來給ふ、〈◯中略〉一歳にて東宮にたゝせ給ひけり、九歳にて位に即せ給ひければ、幼主の攝政は日本國にはいまだなければ、漢家の成王の御時の周公旦の例をもちゐて、母后のてゝにて、忠仁公良房を初て攝政におかれけり、其後攝政關白といふことは出來たる也、それも始はたゞの内覽の臣に置れて、誠しく攝政の詔下さるゝ事は、七年をへて後、貞觀八年八月十九日にて有けるとぞ日記には侍なる、

〔愚管抄〕

〈三〉

p.1570 忠仁公、〈◯藤原良房〉清和の御門が日本國の幼主の初にて、外祖にて初て攝政におかれて後、この攝政の家々(○○○○○)、帝の外祖外舅ならん大臣のあらん必々執政の臣なるべき道理は(○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○)、ひしと作りかためたる道理にて(○○○○○○○○○○○○○○)、一度もさなき事はなし(○○○○○○○○○○)、

〔職原抄〕

〈上〉

p.1570 攝政〈◯中略〉清和天皇幼而即位、外祖忠仁公〈◯藤原良房〉奉二文徳遺詔一而攝政、是本朝以二人臣一爲二攝政一之初也、爾來彼一門爲二執政之臣一、

〔濫觴抄〕

〈下〉

p.1571 攝政〈本朝〉
清和元年戊寅、〈天安二〉外祖太政大臣良房公始任レ之、〈五十五〉

〔神皇正統記〕

〈清和〉

p.1571 天皇諱は惟仁、水尾の帝とも申す、文徳第四の子、御母は皇太后藤原の明子、〈染殿の后と申す〉攝政太政大臣良房の女也、我朝は幼主位に居たまふ事稀なりき、この天皇九歳にて即位、戊寅の年なり、己卯に改元、踐祚ありしかば、外祖良房の大臣はじめて攝政せらる、〈◯中略〉天皇おとなび給ければ攝政政を還し奉りて、太政大臣にて白河に閑居せられにけり、君は外孫にましませば、なほも權を專らにせらるともあらそふ人あるまじくや、されど謙退のこゝろふかく、閑適をこのみて、常に朝參などもせられざりけり、

〔大日本史贊藪〕

〈三〉

p.1571 藤原良房及子孫傳賛
賛曰、良房相業、雖レ不二多見一、而文徳帝期以二蕭何一、則規模徽猷、必有二可レ觀者一、興二耕田之禮一、欲レ使三幼主知二稼穡之艱難一、則其輔賛彌縫之功、可二推而知一也、基經廢レ昏立レ明、一爲二社稷大計一、可レ謂至公無レ私、近二於霍光之所一レ爲、而其器過二於傅亮徐羨之一遠矣、然文徳帝畏二良房勢一、不レ得レ立二惟喬親王一、宇多帝駭二基經之訟一、遽收二阿衡之詔一、則威權之逼、不二啻負芒之憚一、而奕世昌熾、一門不レ知二其幾后一、外戚之盛、實基二于此一矣、

〔三代實録〕

〈二十九清和〉

p.1571 貞觀十八年十一月廿九日壬寅、天皇讓二位於皇太子一、〈◯陽成〉勅二右大臣從二位兼行左近衞大將藤原朝臣基經一、保二輔幼主一攝二行天子之政一、如二忠仁公〈◯藤原良房〉故事一、詔曰、現神〈止〉大八洲國所知倭根子天皇〈我〉詔〈良萬止〉勅御命〈乎、〉親王諸王諸臣諸司百官〈乃〉人等天下公民衆諸聞食〈止〉宣、朕以二薄徳一〈天〉天日嗣〈乎〉忝〈之〉賜〈倍利、〉日夜無レ間〈久〉愼畏〈利〉御坐〈須、〉而君臨漸久〈久〉年月改隨〈爾〉熱病頻發〈利〉御體疲弱〈之天〉不レ堪レ聽二朝政一、〈◯中略〉今所思〈波〉朕〈毛〉昔以二幼穉一〈天〉得レ鐘二此位一〈利、〉賢臣〈乃〉保佐〈爾〉頼〈天〉得レ至二於今日一〈利、〉然則良佐〈乃〉翼戴〈波〉皇太子〈乃〉大成〈己止〉何遠之有〈牟止奈母〉念行〈須、〉故是以皇太子〈止〉定〈多留〉貞明親王〈爾〉此位〈乎〉授賜〈布、〉諸衆此状〈乎〉悟〈天〉清直心〈乎〉持〈天〉皇太子〈乎〉輔導〈岐〉仕奉〈天〉天下〈乎〉平〈介久〉令レ有〈與、◯中略〉右大臣藤原朝

p.1572 臣〈波〉内外〈乃〉政〈乎〉取持〈天〉勤仕奉〈己止〉夙夜不レ懈、又皇太子〈乃〉舅氏〈奈利、〉見二其情操一〈爾〉幼主〈乎〉寄託〈倍之、〉然則少王〈乃〉未レ親二萬機一之間〈波〉攝レ政行レ事〈牟許止、〉近〈久〉忠仁公〈乃〉如レ保二佐朕身一〈久〉相扶仕奉〈倍之、◯下略〉

〔三代實録〕

〈三十陽成〉

p.1572 貞觀十八年十二月甲辰朔、右大臣基經抗レ表辭二攝政一言、伏奉二去月二十九日傳國詔命一曰、少主未レ親二萬機一之間、臣基經攝二行政事一、如二忠仁公一、徳崇功大、仁義兼資、况先帝〈◯文徳〉之親舅、陛下〈◯清和〉外祖、人望皆歸、官齒既貴、陛下知二其元老一、專俾レ攝レ政、天下萬民、僉以爲レ宜、今臣年出二不惑一、性猶童蒙、職至二大臣一、効無二匡濟一、朝夕流レ汗、責深罪重、夫代レ天治レ民者人君也、導レ君從レ天者人臣也、而詔命曰、比年災異仍見、此復重二臣罪責一也、漢代以二災異一免二三公之官一、臣所二尤可一レ懼也、臣平生備レ員之日、陛下猶引二過於一人一、臣非常受レ寄之時、今上何明二徳於四海一、蹇驢既疲二坦途一、况雲巖不レ知二遠近一乎、短檝無レ利二夷浪一、况淵水不レ測二邊涯一乎、任重道悠、不レ知レ所レ處、今公卿大臣在レ位者多、皆是有徳良人、陛下察而用レ之、亦亡叔忠仁公、屬纊之夕、重託二扶持一、陛下莫レ愆二始終之教一、臣今縁二詔命一、離二去仙砌一、攝二事朝廷一、進慙レ失レ教、退恐レ違レ命、臣始謂三穆遊之轉二翠華一、誰知三堯心之脱二黄屋一、臣將下隨二陛下一爲中雲中之吠犬上、何更歸二城闕一爲二華表之鳴鶴一、臣之至誠、既其如レ此、臣〈某〉誠惶誠恐、頓首頓首、死罪死罪謹言、不レ許矣、〈◯又見二本朝文粹一〉

〔神皇正統記〕

〈光孝〉

p.1572 天皇諱は時康、小松の御門とも申す、〈◯中略〉陽成しりぞけられ給ひし時、攝政昭宣公、〈◯藤原基經〉諸の皇子を相し申されけり、この天皇、〈◯中略〉人主の器量、餘の皇子たちにすぐれましましけるによりて、即ち儀衞をとゝのへて迎へ申されけり、〈◯中略〉踐祚のはじめ攝政を改めて關白とす、これ我朝の關白のはじめなり(○○○○○○○○○○○○○)、漢の霍光、攝政たりしが、宣帝のとき政を還して退きけるを、萬機の政なほ光に關り白さしめよとありしが、その名をとりて授けられにけり、〈◯中略〉この御世より藤氏の攝籙の家も他流にうつらず、昭宣公の苗裔のみぞたゞしくつたへられにたる、上は光孝の御子孫、天照大神の王統とさだまり、下は昭宣公の子孫、天兒屋根命の嫡流となりたまへり、二神の御ちかひたがはずして、上は帝王三十九代、下は攝關四十餘人、四百七十餘年にもなり

p.1573 ぬるにや、

〔濫觴抄〕

〈下〉

p.1573 關白
宇多元年丁未〈仁和三〉十一月廿一日、太政大臣〈基經公五十二〉始任レ之、同廿六日乙丑上表、勅答云、社禝之臣非二朕之臣一、宜下以二阿衡之任一爲中卿之任上、左大辨橘廣相作レ之、時人阿衡之字難云云、仍朝家及二嚴密之御沙汰一之間、橘廣相思死云云、

〔神皇正統記〕

〈宇多〉

p.1573 踐祚のはじめより、太政大臣基經また關白せらる、この關白薨じて後は、しばらくその人なし、

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

p.1573 延長八年九月廿二日壬午、天皇逃レ位讓二於皇太子寛明親王一、〈◯朱雀〉詔曰、左大臣藤原朝臣〈◯忠平〉保二輔幼主一攝二行政事一、

〔神皇正統記〕

〈朱雀〉

p.1573 天皇諱は寛明、醍醐十一の子、御母皇太后藤原の穩子、關白太政大臣基經の女なり、〈◯中略〉外舅左大臣忠平〈昭宣公の三男、後に貞信公といふ、〉攝政せらる、寛平に昭宣公薨じてのちには(○○○○○○○○○○○○○)、延喜御一代まで攝關なかりき(○○○○○○○○○○○○○)、この君また幼主にてたちたまふによりて、故事にまかせて萬機を攝行せられけるにこそ、

〔一代要記〕

〈五朱雀〉

p.1573 攝政
左大臣忠平〈◯中略〉
　天慶四年十月卅日辭二攝政一、十一月廿八日爲二關白、

〔日本紀略〕

〈二朱雀〉

p.1573 天慶四年十一月廿八日、詔萬機巨細百官總レ己、皆關二白於太政大臣一、〈◯藤原忠平〉然後奏下如二仁和故事一、

〔榮花物語〕

〈一月の宴〉

p.1573 安和二年八月十三日なり、御門〈◯冷泉〉おりさせ給ぬれば、東宮〈◯圓融〉くらゐにつかせ給ひぬ、御年十一なり、東宮におりゐの御門の御このちごみやゐさせたまひぬ、師貞親王〈◯花山〉

p.1574 なり、伊尹の大納言の御さいはひいみじくおはします、〈◯中略〉東宮〈◯花山〉の御年ふたつなり、〈◯中略〉かかるほどに五月廿日、一條のおとゞ〈◯伊尹〉攝政の宣旨かうぶり給て、一天下我御心におはします、東宮の御おほぢ、みかどの御をぢにて、いと〳〵有べきかぎりの御おぼえにてすぐさせ給、此御ありさまにつけても、九條殿の御有様のみぞなほいとめでたかりける、

〔愚管抄〕

〈三〉

p.1574 この九條右丞相師輔の公のいへに、攝籙の臣のつきにけることは、小野宮どの〈◯實頼〉うせ給ひて、九條殿の嫡子、一條攝政伊尹攝籙になりぬ、是は圓融院の外舅にて、右大臣にてあれば、九條殿は攝籙せざりしかば、なにとて肩をならべ競べきもなくてかくは侍る也、地體は藤氏長者といふことは、上よりなさるゝ事なし、家の一なる人に次第に、朱器臺盤印などをわたし〳〵する事なり、その人また同じく内覽の臣とはなる也、關白攝政といふことは、必しもたえずなる事はあらず、攝政は幼主の時ばかり也、忠仁公の後は、たゞ藤氏長者内覽の臣になりぬるを一人とは申也、内覽もかならずしもなき事也、關白も昭宣公攝政の後に、關白の詔始りけり、漢の宣帝のとき、霍光がまづあづかり聞しめて後に白せよとうけ給はりける例なるべし、小野宮殿の攝政をへずして、關白詔始りけるをばおそれ申されけり、されば廷喜の御時、時平うせ給ひてのちと、天暦の御時には内覽の臣だになく、まして攝政關白といふつかさもなされず、たゞ藤氏長者一のかみにて、廷喜の御時は、貞信公〈◯忠平〉のちにこそ、朱雀院八にて御位なれば、攝政にはならせ給へ、村上には初は貞信公關白如レ元とてありけれど、うせさせ給ひて後は、左大臣にて小野宮殿こそはたゞ一の上にて事おこなひて、冷泉院の御時直に關白の詔ありければ、時の君の御器量がらにてかつは置るゝ事也、世の末はみな君も昔には似させ給はず、誠の聖王は有がたければ、今は様のごとく攝政關白の名はたゆる事なし、それも御堂のはじめ、一條院三條院、知足院殿〈◯忠實〉のはじめ堀河院、このふたゝびは内覽ばかりにて、關白にはならせたまはざりけり、やさしき

p.1575 ことなり、

〔歴代皇紀〕

〈圓融〉

p.1575 内大臣藤兼通〈元中納言〉
天祿三年十一月廿七日任、〈四十八〉不レ經二大納言一、〈◯中略〉去十月廿七日宣、太政大臣不レ從レ事之間、宜レ勤二行公務一者、即日又召二御前一曰、朕未レ更レ事、汝可レ爲二輔佐一者、

〔公卿補任〕

〈圓融〉

p.1575 關白正三位藤兼通　天延一年二月八日、爲二氏長者一、廿八日、聽二輦車一、三月廿六日、詔、帝御年十六、關二白萬機一賜二内舍人二人、近衞各四人一爲二隨身一、同聽二牛車一、

〔愚管抄〕

〈三〉

p.1575 花山院には、義懷の中納言こそは外舅なれば、執政すべけれど、踐祚の時は藏人頭にこそ、初て四位侍從に任じて、やがてとく中納言になりて、三條關白〈◯藤原頼忠〉如レ元とておはしけれども、國の政はおさへて義懷おこなひけるほどに、わづかに中一年にて、不可思議の事出來にければ云ばかりなし、大入道殿〈◯藤原兼家〉はこの繼めにと、日比の違恨を思しけれども、外祖舅にもあらず、小野宮〈◯藤原實頼〉どのゝ子、九條殿〈◯藤原師輔〉の子、たゞ同じ事なれば、もと宿老になりて、關白ならんとおもふべきやうなしと、思召けるも道理にて、この時はやみにける、

〔大鏡〕

〈三太政大臣頼忠〉

p.1575 このおとゞ、小野宮實頼大臣次郞なり、御母時平大臣御むすめ、敦敏少將おなじはらなり、大臣の位にて十九年、關白にて九年、〈◯中略〉一條院位につかせ給ひにしかば、よそ人にて關白はのかせたまひにき(○○○○○○○○○○○○○○○○)、
◯按ズルニ、よそ人トハ、當代ノ外戚ナラザルヲ云フ、

〔日本紀略〕

〈九一條〉

p.1575 寛和二年六月廿三日庚申、花山天皇偸出二禁中一、奉二劒璽於新皇一、〈年七〇一條〉外祖右大臣〈◯藤原兼家〉參入、令下固二禁内一警備上、翌日行二先帝諸位之禮一、右大臣藤原朝臣攝二行萬機一、如二忠仁公〈◯藤原良房〉故事一、

〔日本紀略〕

〈九一條〉

p.1575 正暦元年五月八日、詔令下内大臣藤原朝臣道隆關中白萬機上、　廿五日、勅聽下關白内大臣乘二牛車一出中入宮内上、　廿六日、詔以二關白内大臣一、改二關白一、攝二行政事一如二昭宜公〈◯基經〉貞信公〈◯忠平〉故事一、

〔公卿補任〕

〈一條〉

p.1576 攝政正二位藤道隆　正暦四年四月日、上表辭レ職、廿二、辭二攝政一、勅令レ關二白萬機一、除目官奏於二御前一行レ之、〈年四十一〉

〔日本紀略〕

〈十三後一條〉

p.1576 長和五年正月廿九日甲戌未剋、三條院天皇逃レ位讓二皇太子一、〈◯後一條〉于時皇太子春秋九歳、于時御二坐上東門院一令下新帝外祖左大臣藤原道長朝臣攝二行政事一如中忠仁公故事上、

〔愚管抄〕

〈三〉

p.1576 内大臣にて伊周もと内覽の宣旨かうぶりたる人にて在けるに、大納言にて御堂〈◯藤原道長〉はおはしけるは、道兼道隆の弟也、この伯父の大納言その器量拔群にして世の人もゆるしたりけり、我身もこの時伊周執政の臣たらば、世は亂れうせなんず、わが身を攝籙の臣におかれなば世はおだしかるべしとさい〳〵と仰られけり、

〔大鏡〕

〈七太政大臣道長〉

p.1576 女院〈◯詮子〉は入道殿〈◯藤原道長〉をとりわきたてまつらせ給ひて、いみじうおもひ申させ給へりしかば、帥殿〈◯伊周〉はうと〳〵しくもてなさせ給へりけり、みかど〈◯一條〉皇后宮〈◯定子、伊周妹、〉をねんごろにときめかさせ給ふゆかりに、帥殿はあけくれ御前に候はせ給ひて、入道殿をばさらにも申さず、女院をもよからず、ことにふれて申様をおのづから心やえさせ給ひけん、いともほいなき事におぼしめしけることわりなりな、入道殿のよをしらせ給はんことを、みかど〈◯一條〉いみじうしぶらせ給ひけり、皇后宮父おとゞ〈◯道隆〉おはしまさで、よの中をひきかはらせ給はんことを、いと心ぐるしうおぼしめして、あはた殿〈◯道兼〉をもとみにやはせんじくだせさせ給ひし、されど女院のだうりのまゝのこともおぼしめし、また帥殿をばよからずおもひきこえさせ給ひければ、入道殿の御事をいみじうしぶらせたまひけれど、いかでかくはおぼしめしおほせらるゝぞ、大臣こえられたる事だにいと〳〵をしう侍りしに、ちゝおとゞのあながちにし侍りし事なれば、いなびさせ給はずなりにしにこそ侍れ、あはたのおとゞにはせさせで、これにしも侍らざらむは、いとをしさより御ためなんいとびなくよの人もいひなし侍らんなど、いみじう

p.1577 そうせさせ給ひければ、むづかしうやおばしめされけん、後にはわたらせ給はざりけり、さればうへの御つぼねにのぼらせ給ひて、こなたへとは申させ給はで、我よるのおとゞにいらせ給ひて、なく〳〵申させ給ふ、その日は入道殿はうへの御つぼねに候はせ給ふ、いとひさしういでさせ給はねば、御むねつぶれさせ給ひける程に、とばかり有て、とおしあけてさしいでさせ給へりける御かほは、あかみぬれつやめかせ給ひながら、御くちは心よくゑませ給ひて、あはやせんじくだりぬとこそ申させ給ひけれ、いさゝかの事だにみな此よならず侍るなれば、いはんやかばかりの御ありさまは、人のともかくもおぼしおかんによらせ給ふべきにもあらねど、いかでかは院をおろかにおもひ申させ給はまし、〈◯中略〉中關白殿〈◯道隆〉あはた殿うちつゞきうせさせ給ひて、入道殿にようつりしほどは、さもむねつぶれてきよ〳〵とおぼえ侍りしわざかな、

〔小右記〕

p.1577 長和四年七月十日丁巳、安和御時〈◯冷泉〉故殿〈◯藤原實頼〉坐二關白一、主上御惱之間、關白被レ下下可レ見二官奏一之宣旨上、彼例可二尋送一之由、先日有レ命、仍聊書出奉レ之先了、今日重引出書寫、付二資平一奉之、其御記云、康保四年八月十五日伊尹卿來云、依二御惱一不レ御二覽官奏一之間、准二攝政大臣一、可レ見之由將レ奏二聞之一云云、先レ是兼家朝臣奏聞被レ許了云云、公卿奏二事由一可レ仰二大辨一之事也、

〔小右記〕

p.1577 長和四年十月廿七日甲辰、今日京官除目、而無二外記告一、〈◯中略〉今朝官奏除目雜事、准攝政儀宜レ令二左大臣〈◯道長〉行一レ之由被レ下二宣旨一、大納言公任奉レ下之、官奏事仰二左大辨一、除目雜事也、仰二大外記文義一、大納言所レ談也、余〈◯藤原實資〉問云、若勞御間とやあると云(○○○○○○○○○○)、不レ然者、
正二位行權大納言兼太皇太后宮大夫藤原朝臣公任宣、奉レ勅除目等雜事、宜レ令下左大臣准二攝政儀一行上レ之者、
　長和四年十月廿七日、大外記小野朝臣文義奉、

〔一代要記〕

〈六後一條〉

p.1577 後一條天皇〈◯中略〉　

p.1578 長和五年正月廿九日、受二禪於京極亭一、即以二外祖父左大臣一爲二攝政一、

〔榮花物語〕

〈十五疑〉

p.1578 殿の御まへ〈◯道長〉世しりはじめさせ給てのち、御門は三代にならせ給、わが御世は廿三四年ばかりにならせ給に、みかど〈◯後一條〉わかうおはしますときは攝政と申、おとなびさせ給ふをりは關白と申ておはしますに、このころ攝政をも御一男、たゞいまの内大臣〈◯頼通〉に讓きこえさせ給て、我御身は太政大臣の位にておはしますをも、つねにおほやけにかへし奉らせ給へど、おほやけさらにきこしめしいれぬに、たび〳〵わりなくてすぐさせ給、御心にはすさまじうおぼさるゝ事かぎりなし、

〔日本紀略〕

〈十三後一條〉

p.1578 寛仁三年十二月廿二日甲辰、攝政内大臣〈◯藤原頼通〉上表謝二攝政一、即詔停二攝政一、令レ關二白萬機一〈◯中略〉　廿八日庚戌、令下關白内大臣、以二攝政儀一行中官奏除目上、

〔愚管抄〕

〈四〉

p.1578 宇治殿〈◯藤原頼通〉は後一條後朱雀後冷泉三代の御門の外舅にて、五十年ばかり執政の臣にておはしけり、後冷泉のすゑに、攝政を大二條殿〈◯教通〉と申は、宇治殿の御弟也、てゝの御堂〈◯道長〉もよき子とおぼして、宇治殿にもおとらずもてなされけるが、年七十にて左大臣なりけるを我御子には道房の大將とて、かぎりなくみめよく人用ゐたりける御子の、廿にてうせられける後、京極の大殿師實は、むげにわかき人にてありければ、越れむ事のいたましくおぼさるゝ程の器量にて、大二條殿ありければ讓らせ給ひけるを、世の人宇治殿の御高名、善政の本體と思へりけり、

〔續世繼〕

〈五みかさの松〉

p.1578 ちかくおはしましゝ法性寺のおとゞ〈◯藤原忠通〉は、〈◯中略〉保安二年のとし關白にならせ給ふ、御とし廿五にぞおはしましゝ、同四年正月に、さぬきのみかど〈◯崇徳〉くらゐにつかせ給しかば攝政と申き、みかどおとなにならせ給て關白と申しほどに、近衞のみかど位につかせ給しかば、又攝政にならせ給ひき、久壽二年七月この衞のみかどかくれさせ給ひて、この一院〈◯後〉

p.1579 〈白河〉位につかせ給しにも又關白にならせ給しかば、四代のみかどの關白にて、ふたゝび攝政と申き、昔もいとたぐひなきことにこそ侍りけめ、おほきおとゞにもふたゝびなり給へりし、いとありがたく侍りき、

〔續世繼〕

〈五ふぢのはつ花〉

p.1579 攝政前右大臣〈◯藤原基實〉とてちかくおはしましゝは、法性寺のおとゞ〈◯忠通〉の太郞にぞおはしましゝ、〈◯中略〉二條のみかどくらゐにつかせ給しに、ちゝおとゞのゆづりにて、保元三年三月十六日關白になり給、御年十六とぞきこえ侍し(○○○○○○○○○○○)、むかしよりかくきびはにてなり給へる一の人、これやはじめにておはしますらん、からくにゝ甘羅といひける人は、十二にてぞ大臣になり給ける、よの人をさなしとも申さゞりけり、人によるべきことにこそ侍めれ、〈◯中略〉永萬元年六月みかどくらゐ、みこ〈◯六條〉にゆづり奉らせ給し日、攝政にならせ給ふ、

〔愚管抄〕

〈四〉

p.1579 鳥羽院踐祚の時、御母は實季のむすめなり、東宮大夫公實は外舅にて、攝籙の心ありて、家すでに九條右丞相の家にて候、身大納言にて候、いまだ外祖外舅ならぬ人、踐祚にあひて攝籙する事候はず、さ候はぬたび〳〵は、大臣大納言などにその人候はぬ時こそ候へと白川院にせめ申けり、我御身も公成のむすめの腹にて、ひき思召御心やふかゝりけん、思召煩ひて御思案あらんとや思召けん、御前へ人のまゐる道を三重までかけまはして、御とのごもりけり、其時今日すでに其日なり、未催なんどもなし、こはいかにとおどろき思ひて、其時の御うしろみ、さうなき院別當にて俊明大納言ありければ、束帶を正しくさうぞきてまゐれりける、御前さまの道みなとぢたりければ、こはいかにとてあらゝかに引けるを、うけ給りてかけたる人いできて、かうかうといひければ、世間の大事申さんとて俊明がまゐるに、猶かけよと云仰はいかでかあらん、ただあけよといひければ、皆あけてけり、近くまゐりてうちしはぶきければ、誰と問せ給ふに俊明となのりければ、何事ぞと仰ありければ、御受禪の間の事いかに候やらん、日も高くなり候へば

p.1580 うけ給りに參り候、いかゞと申ければ、その事なり、攝政はさればいか成べきぞと仰有て、無二左右一如レ本とこそはあるべけれと仰られけるを、たゞ〳〵とさうなく稱唯して、やがて束帶さはらとならして立ければ、そのうへをばともかくも仰られず、やがて殿下參りて、例にまかせてとく行はれ候べきよし御氣色候と申て、ひし〳〵と行はれにけり、如レ元とこそはあるべけれども、公實が申やうはなど仰られんと思召けるを、あまりにこはいかにあるべくもなき事かなと、かさとりていかでかさる事候べきと思ひけるにや、九條の右丞相〈◯師轉〉の子なれ共、公季思ひもよらで、その子孫實成公成實季と五代までたえはてゝ、ひとへの凡夫にてふるまひて、代々をへて、攝政にはさやうの人のいるべきほどのつかさかは、さる事は又むかしも今もあるべきことならずと、親踈遠近、老少中年、貴賤上下、思ひたることを、いさゝかも思召煩ふは、あさましきことかなと思けるなるべし、さりとて又公實の和漢の才に富て、北野天神の御跡をもつぎ、又知足院殿〈◯忠實〉に人がらやまと魂のまさりて、識者も實資などやうに思はれたらばやはあらんずる、たゞ外舅になりたるばかりにて、まさしき攝籙の子孫にだにへぬ人こそおほかれ、いかに公實もさほどには思ひよりけるにか、又君も思召煩らふべき程の事かはとて、この物語はみそか事にて、うちまかせてよの人のしりてさたする事にては侍らぬなめり、されどせめて一節を思て、家をおこさんと思はんも、我身になりぬれば誠に又大臣大納言の上 などにて、外祖外舅なる人の攝籙の子孫なるが、執政の臣に用ゐられぬことは一度もなければ、さほどにも思よりけるにや、あまねき口外にはあらねども、かくこそ申つたへたれ、

〔愚管抄〕

〈六〉

p.1580 九條の右大臣〈◯藤原兼實〉は、文治二年三月十二日につひに攝政の詔、氏の長者と仰下されにけり、去年十二月廿九日より、内覽臣許にて、我も人も何ともなく思てありけるに、かく定りにければ、世の中の人も、げに〴〵しき攝籙の臣こそ出きたれと思へりけり、さて右大臣いはれけ

p.1581 るは、治承三年の冬より、いかなるべしとも思ひわかで、佛神に祈りて、攝籙の先途には必ず達すべき告有て、十年の後、けふ待つけつるといはれけり、十六日やがて拜賀せられにけり、其夜ことに雨ふりたりけり、さて後法皇〈◯後白河〉には、心しづかに見參に入てありければ、我はかくなにとなきやうなる身なれど、世をば久く見たり、はゞからずたゞよからんさまにおこなはるべき也など仰有て、おほえの丹後と云は、淨土寺二位宜陽門院〈◯後白河皇女〉の御母也、出あはせなどして在けり、

〔保暦間記〕

p.1581 建久三年三月十三日法皇崩御ナル、後追號ヲバ後白河院ト申、保元ヨリ打續キ世亂レテ、御心安キ事モ無テ、年ヲ送セ御坐キ、是末代ニ成リヌル故ニ、皇法ノスタレ行ト覺エタリ、主上〈◯後鳥羽〉幼帝ニ坐シケレバ、昔ノ如ク攝政〈兼實公、月輪殿、〉政事ヲ仕給ケリ、大方ハ一向關東ノ任ニソ成ケル、

〔公卿補任〕

〈順徳〉

p.1581 攝政正二位藤道家　承久三年四月廿日、詔氏長者、依二新帝〈◯九條〉外舅一也、

〔愚管抄〕

〈二仲恭〉

p.1581 攝政左大臣道家〈（中略）外祖外舅、爲二大臣一之時、無下不レ居二攝政一之例上、道理必然、宣命云々、〉

〔百練抄〕

〈十四四條〉

p.1581 嘉禎元年三月廿八日辛酉、前關白〈◯藤原道家〉被レ還二補攝政一云々、希代例也、

〔保暦間記〕

p.1581 天福元年十二月二日主上〈◯後堀河〉ノ一宮〈◯四條〉ニ讓國アリキ、先帝ヲバ後堀川院ト申テ、院中ニテ政ヲセサセ給フ處ニ、同二年文暦元年也、八月六日崩御成セ給フ、當今僅四歳ニ成セ給ケリ、幼帝ニテ爲レ渡給ケレバ、關白道家昔ノ如ク攝政シ給ケリ、關東ノ將軍〈◯頼經〉モ此息男ニテ御坐シケレバ、公家武家一ニテゾ有ケル、

〔増鏡〕

〈五内野の雪〉

p.1581 寛元も四年になりぬ、正月廿八日春宮〈◯後深草〉に御位ゆづり申させ給ふ、この御門も又四にぞならせ給ふ、めでたき御ためしどもなれば、行すゑもおしはかられ給ふ、光明峯寺殿〈◯道家〉御三郞君、左大臣〈さねつね〉のおとゞ、御とし廿四にて攝政し給ふ、いとめでたし、御あにの福光園院殿、〈◯良實〉もと關白にておはしつる、うらみてしぶ〳〵におはしけれどちからなし、御はらから三人までせつろくしたまへるためし、ふるくは謙徳公、〈伊尹〉忠義公、〈兼通〉東三條大入道殿、〈兼家〉その

p.1582 又御子ども中關白殿、〈◯道隆〉あはた殿、〈◯道兼〉法成寺入道殿、〈◯道長〉これふたゝびなり、ちかくは法性寺殿の御子ども、六條殿、〈もとざね〉松殿、〈もとふさ〉月輪殿、〈兼實〉是ぞやがていまの峯殿〈◯道家〉の御おほぢよ、かやうの事いとたま〳〵あれど、あはた殿もせんじかうぶり給へりしばかりにて、七日にてうせ給ひにしかば、天下執行し給ふにおよばず、松殿の御子もろいへのおとゞ、夢のやうにてしかも一代にてやみたまひにき、いづれも御すゑまではおはせざりしに、この三所の御後のみいまにたえず、御ながれ久しきふぢなみにて、たちさかえたまへるこそたぐひなきやんごとなさなめれ、すゑのよにもありがたくや侍らん、今の攝政殿をば、のちには圓明寺殿〈◯實經〉とぞきこゆめりし、一條殿の御家のはじめなり、攝政にて二とせばかりおはしき、女院〈◯後嵯峨后姞子、〉の御父〈◯藤原實氏〉も太政大臣になりたまひて、手車ゆり給ふ、さるべき事といひながらいとめでたし、