帝王部/太上天皇〈追尊天皇附〉

p.0789 太上天皇トハ、讓位ノ天皇ノ尊稱ニシテ、太上皇ト云ヒ、上皇ト云フハ、並ニ略稱ナリ、或ハ此二號ハ、支那ノ語ヲ用ヰタルニテモアルベシ、又太上法皇ト云ヒ、法皇ト云フハ、出家ノ稱ニシテ、院ト云フハ御所ヨリ起レル稱ナリ、上古ニハ禪讓ノ事ナケレバ、此稱ノアラザリシハ勿論ニテ、禪讓ノ既ニ起リシ後モ、初ハ未ダ此稱ヲ立テザリシニ、後ニハ前帝ハ必ズ太上天皇ト號シ奉ルヲ以テ例ト爲セリ、兹ニ其始ヲ原ヌルニ、扶桑略記ニ、舒明天皇ノ太上天皇ト稱シタマヒシコトヲ擧ゲタレド、他ノ古書ニ未ダ其徴ヲ見ザレバ、恐クハ謬傳ナラン、孝徳天皇ノ登祚ノ日ニ、皇極天皇ヲ尊ビテ皇祖母尊ト稱シ奉リシモ、太上天皇トハ異ナリ、其太上天皇ノ稱ノ、正シク國史ニ見エタルハ、持統天皇ヲ以テ始トス、是ヨリ後、讓位ハ殆ド恒例ノ如クナリシカバ、太上天皇タル君主モ亦多シ、然レドモ尊號ヲ上ルコトハ、當時ノ史ニ明文ナシ、其明ニ史籍ニ見エタルハ、淳和天皇ヨリ嵯峨天皇ニ上リタマヒシヲ以テ始ト爲シ、尊號ヲ辭シ給フコトモ、亦此時ヨリ古キハナシ、而シテ平城天皇ノ尊號ヲ辭シタマフノ擧ハ、反テ嵯峨天皇ノ後ニ在リ、
尊號ヲ辭シ給フニハ、必ズ數回ノ往復ヲ經テ、在位ノ天皇ヨリ、終ニ聽從シタマハザルヲ以テ例トス、其聽從シ給ハザル書ヲ名ヅケテ尊號御報書ト云フ、此禮、應仁以降中絶セシガ、櫻 p.0790 町天皇ノ朝ニ再興セラレタリ、
尊號ヲ辭シ給フ中ニ於テ、宇多天皇ガ六タビ辭書ヲ上リタマヒシガ如キハ、歴代中希覯ナルモノトス、故ニ醍醐天皇モ聽從シテ、尊號ヲ停メタマヘリ、又鳥羽、後嵯峨ノ二天皇ガ厄會ヲ禳ハンガ爲ニ、永ク尊號ヲ停メンコトヲ請ヒタマヒテ、勅答ナカリシガ如キハ並ニ異例ナリ、然レドモ皆一時ノ事ニテ、後ニ尊號ヲ稱シタマヒシガ如シ、宇多天皇ガ太上法皇ト稱シ、鳥羽、後嵯峨ノ二天皇ガ上皇ト稱シタマヒシニテ知ルベシ、太上法皇ノ稱ハ、實ニ宇多法皇ヲ以テ始トス、
太上天皇ノ號ハ、上ニ云ヘル如ク、讓位ノ後ニ在ルモノナリ、然レドモ亦變例ナキニアラズ、安徳天皇ノ播遷ノ禍ニ遭ヒタマフヤ、後鳥羽天皇ガ、遙ニ尊ビテ太上天皇ト爲シタマヒシガ如キ是ナリ、北朝ヨリ後醍醐天皇ニ尊號ヲ上リタマヒシモ此類ニテ、並ニ尊號ヲ受ケタマヒシニアラズ、又帝位ヲ黜ケラレテ尊號ヲ受ケ給ヒシアリ、光嚴、崇光ノ二天皇ガ貶セラレテ、並ニ上皇ノ號ヲ受ケタマヒシガ如シ、又出家ノ後ニ於テ、始テ尊號ヲ稱シ給ヒシアリ、花山天皇ノ如キ是ナリ、幼冲ニシテ太上天皇ト稱シ給ヒシアリ、六條天皇ノ如キ是ナリ、同時ニ二上皇アリシハ、淳和天皇ノ朝ノ、平城嵯峨ニ始マル、其後三上皇アルハ、平常ノ事ニテ、後二條天皇ノ朝ニハ、五上皇アリ、故ニ一院、本院、中院、新院等ノ稱ヲ以テ之ヲ分テリ、
太上天皇ハ、讓位ノ天皇ノ尊稱ナレド、天皇ノ御父タル親王ヲ陞セテ太上天皇トスルアリ、其生前ナルハ、守貞親王〈後高倉院〉貞成親王〈後崇光院〉ニシテ、薨後ニ贈ラレタルハ、誠仁親王ナリ、又太上天皇ニ準ジテ待遇セラレシハ、敦明親王〈小一條院〉ナリ、典仁親王ヲ追尊シテ太上天皇ト爲シタマヒシガ如キハ、維新ノ後ニ係レドモ、聖上追孝ノ盛志ヲ表彰シ奉ランガ爲ニ、特ニ例ヲ破リテ之ヲ掲ゲタリ、 p.0791 白河上皇ヨリ以後數世ノ間、讓位ノ後、院中ニテ大政ヲ聽キ、院宣ヲ以テ天下ニ號令スルコト自ラ慣例トナリテ、在位ノ天皇ハ、殆ド尸位ノ姿ニナリシカバ、院中ノ事隨テ繁ク、院ノ職員モ益多クナレリ、是啻ニ太上天皇ノ一大變ナルノミナラズ、實ニ國勢上ノ一大沿革ナリ、ナホ官位部ノ院司等ヲ參看スベシ、又太上天皇ノ封戸ノ事ハ、封祿部ニ在リ、又御幸ノ事、出家ノ事ハ各其篇アリ、而シテ特ニ此篇ト適切ノ關係ヲ有スルモノハ讓位ノ篇ナリ、皆以テ參看スベシ、

名稱

〔令義解〕

〈六儀制〉

p.0791 太上天皇、〈讓位帝所レ稱、〉

〔史記〕

〈六秦始皇〉

p.0791 二十六年、追二尊莊襄王一、爲二太上皇一、〈按太上皇之號、肇見二于此一、後世遂用之、以爲二王者之稱一、〉

〔史記〕

〈八漢高祖〉

p.0791 六年、高祖五日一朝二太公一、如二家人父子禮一、太公家令説二太公一曰、天無二二日一、土無二二王一、今高祖雖レ子人主也、太公雖レ父人臣也、奈何令三人主拜二人臣一、如レ此則威重不レ行、後高祖朝、太公擁レ蔧迎レ門却行、高祖大驚、下扶二太公一、太公曰、帝人主也、奈何以レ我亂二天下法一、於レ是高祖乃尊二太公一爲二太上皇一、〈索隱曰、葢太上者、無上也、皇者、徳大二於帝一、故尊二其父一、號二太上皇一也、〉

〔漢書〕

〈一高帝〉

p.0791 六年五月丙午、詔曰、人之至親、莫レ親二於父子一、故父有二天下一、傳歸二於子一、子有二天下一、尊歸二於父一、此人道之極也、前日天下大亂、兵革竝起、萬民苦レ殃、朕親被レ堅執レ鋭、自帥二士卒一、犯二危難一、平二暴亂一、立二諸矦一、偃レ兵息民、天下大安、此皆太公之教訓也、諸王通矦將軍群卿大夫、已尊レ朕爲二皇帝一、而太公未レ有レ號、今上二尊太公一、曰二太上皇一、〈師古曰、太上、極尊之稱也、皇君也、天子之父、故號曰レ皇、不レ預二治國一、故不レ言レ帝也、〉

〔名目抄〕

p.0791 一院〈院數ケ所御之時、第一ノ院ヲ申也、〉　法皇(ホウワウ)　上皇(シヤウクワウ)　本院(ホン井ン)〈ニムト可レ申也〉　中院(チウ井ン)　新院〈是モニムト有ベキ也、連聲、〉

〔八雲御抄〕

〈三下異名〉

p.0791 院　朝庭〈わかくさと云、後抄、〉　むなしき舟〈延久〉　院をもみかどヽ云〈源氏には、やまのみかど、又たヾみかどとも有、〉　御所　はこやの山〈山名にてあれども、これ仙洞といふ、〉

〔拾芥抄〕

〈中本唐名〉

p.0791 太上天皇〈上九之尊　仙院　仙洞　芝砌　太上皇　脱屣　虚舟　法皇　陛下　上皇　禪定仙院　南面之尊　射山　姑射　具茨山　姑射山　藐姑山　汾〉

p.0792 〈水　汶陽　薦闕　茨山　紫府　丹臺〉

〔公武大體略記〕

p.0792 一仙院
天子御位をすべらせ給ひ、太上天皇の尊號まし〳〵て、院の御所に渡らせ給ふを、上皇、仙洞など申なり、又和歌の諺に、藐姑射〈ノ〉山、緑〈ノ〉洞など申奉るは、院の御事なり、

〔榮花物語〕

〈二花山〉

p.0792 八月〈◯永觀二年〉になりぬれば、廿七日御讓位とてのヽしる、其日になりぬれば、みかど〈◯圓融〉はおりさせ給ぬ、〈◯中略〉おりゐのみかど(○○○○○○○)は、堀河の院にぞおはしましける、

〔増鏡〕

〈十三秋のみ山〉

p.0792 おりゐの御門(○○○○○○)〈◯花園〉は、御このかみの本院〈◯後伏見〉と、ひとつ持明院殿にすませ給、

〔源氏物語〕

〈三十四若菜〉

p.0792 六條院も、〈◯中略〉御たうばりのみふなどこそ、皆同じごと、おりゐのみかど(○○○○○○○)ヽひとしく定まり給へれど、まことの太上天皇の儀式にはうけばり給はず、

〔本朝續文粹〕

〈七書状〉

p.0792 鳥羽院奉二答天皇一、〈◯崇徳〉請レ罷二尊號一、仙院(○○)〈◯鳥羽〉後報書、

〔椿葉記〕

p.0792 仙洞(○○)〈◯後小松〉宸筆の、御八講行はる、

〔執次詰所記〕

〈中御門〉

p.0792 享保廿年三月廿三日、尊號太上天皇、奉レ稱二仙洞(○○)一、

〔公明卿記〕

p.0792 寛政四年正月十八日、閑院一品宮〈◯典仁〉御事、〈◯中略〉尊號宣下無レ之而者不二相叶一、〈◯中略〉仙洞(○○)〈◯後櫻町〉思召も、勿論御同様之御事、〈◯下略〉

〔下學集〕

〈上人倫〉

p.0792 姑射山〈指二仙洞(○○)一也、姑射山仙人之所レ居也、祝以謂(○○○)二院居(○○)一也(○)、〉

〔莊子〕

〈一逍遙遊〉

p.0792 藐姑射之山(○○○○○)、有二神人一居焉、肌膚若二氷雪一、淖約若二處子一、不レ食二五穀一、吸レ風飮レ露、乘二雲氣一御二飛龍一、而遊二乎四海之外一、

〔萬葉集〕

〈十六〉

p.0792 有二由縁一并雜歌
心乎之無何有乃郷爾置而有者(コヽロヲシムカウノサトニオキタラバ)藐姑射能山(ハコヤノヤマ/○○○○○)乎見末久知香谿務(ヲミマクチカケム)

〔千載和歌集〕

〈十賀〉

p.0792 百首の歌よみ給ける時の祝の歌　　　式子内親王

p.0793 動きなきなほよろづよぞたのむべきはこやのやま(○○○○○○)のみねの松風

〔八代集抄〕

〈三十七千載〉

p.0793 こヽにては、仙洞を申なるべし、

〔續千載和歌集〕

〈十七雜〉

p.0793 山月といふ事をよませ給うける　　　法皇〈◯後伏見〉御製
こヽろすむはこやの山(○○○○○)の秋の月二たび世をもてらしつるかな

〔新續古今和歌集〕

〈七賀〉

p.0793 應永廿六年三月、仙洞にて、鶴馴レ砌といへる事を講ぜられけるに、　　　權大納言實秋
もろともにみぎりのたづもよばふなりはこやの山(○○○○○)のよろづ世のこゑ

上尊號式

〔柱史抄〕

〈下〉

p.0793 太上天皇尊號事
先帝讓位之宣命、停二太上天皇號一、而新帝即位之初、詔書上二太上天皇尊號一、當日上卿著レ陣、召二内記一仰云、太上天皇尊號詔書可二草進一、内記持參之、草清書等、内覽奏下如レ恒、〈有二御畫一〉上卿召二中務一給了、此次藏人以二口宣一、可レ差二進院御隨身一之由仰二上卿一、上卿召二左右次將一一々仰レ之、

〔小右記〕

p.0793 長和五年二月十四日己丑、昨日、〈◯中略〉被レ行二太上天皇〈◯三條〉尊號之詔書事一、〈大内記義忠、作二詔書一注二暦裏一、〉又被レ仰下下被レ奉二御隨身一之宣旨上、〈左近、頭中將資平、右近、外記傳二仰陣官一、〉頭中將資平來云、昨日攝政、及公卿達被レ參レ院、別當被レ定二下院司〈別當資平、季隨、前土佐守、左衞門權佐資業、〉并所々別當〈所謂、別當所御厩等徒、〉職事等一、〈◯中略〉右大臣〈◯藤原顯光〉被レ承二行太上天皇尊號事一、詔書草以二内記一被レ奉二攝政一、〈藤原道長〉諸卿云、不レ可レ然事也、是内覽之議也、至レ今以二辨若頭藏人一、可レ被レ奉也云々、清書以二資平一被レ奉、御畫日攝政書者、院御隨身宣旨、右府仰下、被レ奏二詔書一之次、便被レ仰二左近御隨身事一者、攝政者可レ被レ仰也、四條大納言〈◯藤原公任〉云、被レ仰二左右近將一也者、
裏書
詔朕以二庸虗一、忝承二叡託一、膺二龍圖一而寒心、虞夏之道難レ達、履二帝跡一而歩薄、陽春之氷欲レ辛、誠是君國之號雖レ尊、子民之化、猶淺者也、太上天皇天地其性、日月其明、風化彌高、道榮二於華胥一、民状問二道於

p.0794 藐姑射之堂一矣、將聖之徳、功成退レ身、抑朝之舊典之通規、列代所レ照、可二以率由一、謹上二尊號一爲二太上天皇一、告巡式申聞知、主者施行、
　　長和五年二月

〔禁秘御抄〕

〈下〉

p.0794 表
太上天皇尊號辭表〈如二臣下一、中納言爲二御使一、六位判官代一人相從、傳二職事一申二事由一奏覽、被二返進一之時マデ被レ置二御前一、〉

〔柱史抄〕

〈下〉

p.0794 報書事
上皇請レ罷二尊號一之書也、辨儒草之、召二能書人一令二清書一之、書二檀紙一入二表凾一、以二院司納言一爲レ使參内、判官代一人、主典代一人相從爲レ使、
今上御答表事
上卿著レ陣召二内記一、下二給太上天皇報書一、仰云、可レ草二進勅答一、内記持參之、草清書内覽奏聞如レ恆、御畫〈虫損〉先例也、於二御前一納二表凾一、以二上卿一被レ進二仙院御所一、

待遇

〔令義解〕

〈六儀制〉

p.0794 凡皇后皇太子以下、率土之内、〈◯中略〉於二天皇太上天皇一上表、同稱二臣妾名一、〈對揚稱レ名、謂凡臣下面在二君前一、稱二揚自名一者、唯稱二某甲一、不レ言二臣某一、◯下略〉

〔令義解〕

〈七公式〉

p.0794 太上天皇
右皆平出〈謂平頭抄出〉

〔法曹至要抄〕

〈上〉

p.0794 作二詔書并位記一事
詐僞律云、詐爲二詔書一者遠流、説者云、太上天皇宣亦同、

〔西宮記〕

〈臨時三〉

p.0794 院宮事
上皇脱屣之後、出入無二警蹕一、依二新主宣旨一、分二左右近衞府物節各五人一爲二御隨身一、供膳同二在位儀一、〈釆女供候〉別納供二御飯〈勅旨田地子〉菜一、〈御封物〉主殿所供二御湯油一、掃部所奉二鋪設一、廳充二所所食一、藥殿供二御藥一、頭爲二別當一、五位藏

p.0795 人爲二侍者一、六位藏人爲二判官代一、不レ補者藏人如レ元、出納爲二主典代一、瀧口爲二武者所一、上臈女房一人爲二宣旨一、男女爵内外官御給、御封御稻田、大粮、衞士、仕丁、依レ例可二尋知一、白馬大牛牽分使事、節會之時、殿上人見參、渡二外記一云云、院分位祿事、御隨身勤二夜行一、召繼奏レ時、諸祭使不二列立一、宮主神祇官官人、於二本院一行二鎭魂一、御讀經、〈雜事圖書〉御灌佛廳勤仕、御佛名院司問レ人、御隨身申二刻限一、御衣青色并直衣、布衣隨レ事有レ例、烏犀御帶、御荷前以二殿上四位五位一爲レ使、御行乘二檳榔車一、〈御車副八人〉御隨身布衣烏帽帶二弓箭一、御服時從二以レ日易レ月之制一、亭子院〈◯宇多〉出家時、侍者判官代稱二番頭一、如二法師一、又僧爲二別當一、陽成院被レ行二大饗一、〈◯又見二江家次第一〉

〔嚴制録〕

〈一〉

p.0795 新院御所御定目
　　　　　　　條々
一官位并表向之儀、一切御いろひ被レ成間敷事、
一總而御見物之儀、新院〈◯明正〉御所ニ而者、一切可レ爲二御無用一事、禁中、仙洞、〈◯後水尾〉女院、〈◯東福門院和子〉御所において、御一同ニ御覽之時者不レ苦事、
一御連枝之儀は、年始御禮之時計可レ爲二御對面一、御連枝之外者、縱令攝家親王家門跡たりといふとも、一切御對面被レ成間敷事、
一御祝日、并拜賀之時、公家衆參上之儀、新院之傳奏〈江〉申屆之、自二表向一可レ爲二退出一事、
一御幸之儀者、仙洞女院御所へは不レ苦、禁中〈江〉者、仙洞、女院、御一同之時者可レ然也、御一人之御幸一切御無用たるべき事、
　　附御幸之時、院參之公家二人宛可レ爲二供奉一事、
　　　　　以上
　　承應四年正月十一日　　　　　　　　　　　御黒印〈◯家綱〉

去位稱太上天皇

〔日本書紀〕

〈三十持統〉

p.0795 十一年八月乙丑朔、天皇定二策禁中一、禪二天皇位於皇太子一、〈◯文武〉

〔扶桑略記〕

〈五持統〉

p.0796 十一年八月一日甲子、天皇讓二位輕皇子一、〈◯文武〉號二太上天皇一、生年五十歳、〈◯又見二一代要記、水鏡、皇胤紹運録、皇代記、皇年代略記一、〉

〔愚管抄〕

〈一持統〉

p.0796 位を東宮に讓り奉りて、太上天皇の尊號を奉り給(○○○○○○○○○○○)、

〔神皇正統記〕

〈持統〉

p.0796 此天皇、天下を治め給ふ事十年、位を太子〈◯文武〉にゆづりて、太上天皇と申き、太上天皇といふ事は、異朝に漢の高祖の父を大公と云、尊號ありて太上皇と號す、〈◯中略〉本朝にはむかし其例なし、皇極天皇位をのがれ給ひしも、皇祖母の尊と申き、此天皇よりぞ太上天皇の號は侍ける、

〔續日本紀〕

〈二文武〉

p.0796 大寳元年六月庚午、太上天皇〈◯持統〉幸二吉野離宮一、

〔萬葉集〕

〈一雜歌〉

p.0796 大寳元年辛丑秋九月、太上天皇〈◯持統〉幸二于紀伊國一、〈◯下略〉

〔續日本紀〕

〈二文武〉

p.0796 大寳二年十月甲辰、太上天皇〈◯持統〉幸二于參河國一、

〔萬葉集〕

〈一雜歌〉

p.0796 二年〈◯大寳〉壬寅、太上天皇〈◯持統〉幸二參河國一、〈◯下略〉
◯按ズルニ、皇祖母尊ノ稱ハ、是ヨリ先キ皇極天皇ノ朝ニ、御母吉備女王ヲ尊ビテ、皇祖母命ト稱シ奉リシニ起ル、祖母ハ即チ母ヲ云フナリ、祖ノ字ヲ訓ジテオヤト爲ス、故ニ上古ニハ或ハ母ニ祖ノ字ヲ用ヰタリ、古事記ニ大穴牟遲神ノ母、刺國若比賣ヲ指シテ御祖(ミオヤ)神ト云ヒシガ如シ、サレバ是ハ神皇正統記ニ云ヘル如ク、太上天皇トハ異ナリ、太上天皇ノ稱ハ實ニ持統天皇ニ起レリ、サレドモ當時後帝ヨリ上リ給ヒシニハアラザルベシ、抑モ太上ノ稱ハ支那ニ在リテハ嬴秦ニ起リテ、始皇ガ其父莊襄王ヲ追尊シテ太上皇ト爲シヽヲ以テ權輿トス、サレドモ是ハ歿後ノ事ナリ、其後、漢ノ高祖ガ其父ヲ尊ビテ太上皇ト爲シヽハ、生存中ノ事ニハアレドモ帝位ニ昇リシモノニハアラズ、後凉ノ呂光ガ天王ト爲リ、子ヲ立テヽ位ヲ紹ガシメ、自ラ太上皇帝ト稱セシガ如キハ自稱ナリ、唐書ニ太宗ノ父、高祖ノ事ヲ擧ゲテ、太上皇徙居二大安宮一ト

p.0797 アルモ自稱ナルベシ、故ニ持統天皇ノ太上天皇モ、尊號ヲ上リシニハアラザルベシト思ハルルナリ、且ツ令ノ本注ニハ、太上天皇、讓位帝所レ稱トアリテ、讓位ノ後ハ例トシテ稱スベキニ似タリ、カク支那ニテハ、自稱セシコトモ、尊號ヲ上リシコトモアレド、吾邦ニテハ、其初ハ別ニ上リシニハアラザラン、是ヨリ後數世ノ間モ亦尊號ヲ上ルノ文ナシ、嵯峨天皇ノ讓位シ給フヤ、自ラ帝號ヲ除キ、人臣ニ列セントス、是ニ於テ尊號ヲ上ルノ詔アリ、尊號ヲ上ルコトノ明ニ史ニ見エタルハ是ヲ始トス、
又按ズルニ、扶桑略記舒明天皇十三年ノ條ニ、一説云、讓二位於皇極天皇一、號二太上天皇一トアルニ據レバ、太上天皇ノ尊號ハ、既ニ舒明天皇ニ起レルガ如シ、然レドモ他書ニ明徴ヲ得ザレバ、信ヲ措キ難シ、

〔一代要記〕

〈一元明〉

p.0797 和銅八年乙卯九月三日、讓二位於氷高内親王一、〈◯元正〉爲二太上天皇一、年五十五、〈◯又見二神皇正統記、皇年代略記一、〉

〔東大寺要録〕

〈八〉

p.0797 裏書　奈保山太上天皇〈◯元明〉山陵碑〈養老五年十一月七日崩◯碑文略〉

〔延喜式〕

〈二十一諸陵〉

p.0797 奈保山東陵〈平城宮御宇元明天皇、在二大和國添上郡一、〉

〔續日本紀〕

〈十二聖武〉

p.0797 天平八年十一月丙戌、從三位葛城王、從四位上佐爲王等上表曰、〈◯中略〉飛鳥淨御原大宮御大八洲天皇、〈◯天武〉徳覆二四海一、威震二八荒一、〈◯中略〉太上天皇、内脩二四徳一、外撫二萬民一、〈◯中略〉後太上天皇(○○○○○)、無レ改二先軌一、守而不レ違、〈◯下略〉

〔續日本紀考證〕

〈五〉

p.0797 太上天皇、蓋謂二持統天皇一也、後太上天皇(○○○○○)、蓋謂二元明天皇一也、

〔一代要記〕

〈一元正〉

p.0797 養老八年甲子二月四日、讓二位於皇太子豐櫻彦一、〈◯聖武〉即日爲二太上天皇一、時年四十四、〈◯又見二扶桑略記、水鏡、皇胤紹運録、皇年代略記一、〉

〔東大寺要録〕

〈一〉

p.0797 廿年〈◯天平〉戊子、飯高太上天皇〈◯元正〉崩、年六十九、

〔東大寺獻物帳〕

p.0798 獻二盧舍那佛一
　　御袈裟合玖領〈◯中略〉
　　　右件厨子、〈◯中略〉天皇、〈◯文武〉傳二賜平城宮御宇中太上天皇(○○○○○)一、〈◯元正〉

〔一代要記〕

〈一孝謙〉

p.0798 天平寶字二年戊戌八月一日、禪二位於皇太子大炊王一、〈◯淳仁〉爲二太上天皇一、〈◯又見二水鏡、神皇正統記、皇胤紹運録、皇年代略記一、〉

〔續日本紀〕

〈二十四淳仁〉

p.0798 天平寶字六年六月庚戌、喚二集五位已上於朝堂一詔曰、太上天皇〈◯孝謙〉御命以〈氐、〉卿等諸語〈部止〉宣〈久、〉朕御祖太皇后〈乃◯聖武后光明子〉御命以〈氐〉朕〈爾〉告〈之久、〉岡宮御宇天皇〈乃◯天武皇子草壁〉日繼〈波〉加久〈氐〉絶〈奈牟止〉爲、女子〈能〉繼〈爾波〉在〈止母〉欲レ令レ嗣〈止〉宣〈氐〉此政行給〈岐、〉加久爲〈氐〉今帝〈止〉立〈氐〉須麻〈比〉久〈流〉間〈爾、〉宇夜宇也〈自久〉相從事〈波〉無〈之氐、〉斗卑等〈乃〉仇〈能〉在言〈期等久〉不レ言〈岐〉辭〈母〉言〈奴、〉不レ爲〈伎〉行〈母〉爲〈奴、〉凡加久伊波〈流倍枳〉朕〈爾波〉不レ在、別宮〈爾〉御坐坐〈牟〉時自加得言〈也、〉此〈波〉朕劣〈爾〉依〈氐之〉加久言〈良之止〉念召〈波、〉愧〈自彌〉伊等保〈自彌奈母〉念〈須、〉又一〈爾波〉朕應レ發二菩提心一縁〈爾〉在〈良之止奈母〉念〈須、〉是以出家〈氐〉佛弟子〈止〉成〈奴、〉但政事〈波〉常祀〈利〉小事〈波〉今帝行給〈部、〉國家大事賞罸二柄〈波〉朕行〈牟、〉加久〈能〉状聞食悟〈止〉宣御命衆聞食宣、

〔續日本紀〕

〈三十六桓武〉

p.0798 天應元年十二月甲辰、詔曰、〈◯中略〉頃者太上天皇、〈◯光仁〉聖體不豫、〈◯中略〉　丁未、太上天皇崩、春秋七十有三、

〔水鏡〕

〈下光仁〉

p.0798 天應元年四月三日、みかど〈◯光仁〉位を東宮〈◯桓武〉にゆづり奉り給て、太上天皇と申き、〈◯又見二一代要記、皇胤紹運録、皇年代略記一、〉

〔皇年代略記〕

〈平城〉

p.0798 大同四年己丑四月朔日、禪二位於太弟一、〈（嵯峨）卅六〉同日太上天皇尊號、〈◯又見二水鏡、神皇正統記、皇胤紹運録一、〉

〔類聚國史〕

〈二十五帝王〉

p.0798 弘仁十四年四月丙午、先太上天皇（◯平城）差二前大和守從三位藤原朝臣眞夏一、令レ賷下可レ停二止平城宮諸司一状上、即率二官人廿許一奉返、　辛亥、臣諱〈嵯峨太上天皇〉言、伏奉二勅書一、垂二示恩慰一、兼期レ除二尊號一、聞レ命驚惕、阽焦非レ遙、臣蒙二珠奬一、忝嗣二鴻基一、励レ治十有餘載然大寶者、是至公之器也、天下者、非二一人之有一也、臣

p.0799 之庸薄、何可二久妨一、思下欲託二山水一而送二百年一、翫二琴書一以了中一生上、故以二萬機之務一、傳二於賢嗣一、八柄之權、非二復所一レ知、苟欲レ答二來詔之意一、恐貽二代庖之譏一焉、因執二勅書一奉レ達二今上一、〈◯淳和〉即有二還報一、事不レ獲レ允、臣爲レ省二繁費一、除二上皇號一、今上固據二古典一、亦不レ見レ許、心迹相違、伏惟垂照、　五月甲子、臣諱〈平城太上天皇〉言、先帝不レ棄二丹朱一、謬辱二丕業一、懵性不侫、添以二錮疾一、仍懼二尸位一、禪二太上皇一、〈◯嵯峨〉太上皇帝看レ賢讓レ國、遁レ跡頤レ性、屬二斯能事一、感激更邃、是以除レ號之書、奉二太上皇帝一、報詔曰、八柄之權、非二復所一レ知、因執二臣書一、奉レ達二今上一、〈◯淳和〉事不レ獲レ允者、膺二斯絲綸一、戰栗倍百、今明主固據二古典一、尊二太上皇一、尤合二物宜一、宇宙幸甚、唯至二于臣之所一レ請、未レ得二允聽一、乃雖三恩出二不世一、而事匪二宿望一、蓋疑時王奪レ號、禮經所レ諱、抑以人欲天隨、復自茂典也、故縁二心攸一レ欲、除レ號徹レ物、所レ有諸司一切奉レ返、夫古聖所二以垂一レ禮者、本爲二濟レ國安一レ民焉、上多下苦、豈謂レ禮乎、加之一國之内有二兩太皇一、瀛表寰中未レ詳二前聞一、伏願陛下曲垂二鑑許一、不レ任二七日之哭一、敢上二萬死之状一、先太上天皇〈◯平城〉差二散位從五位下秦奈理一、令レ賷乙請下除二太上天皇號一、并撤中服御物上書甲、奉二上今上一、勅此書首尾稱レ臣、此表體也、不レ可二敢開一、宜二附レ使早奉一レ返者、即副二大臣書一、送二前大和守藤原眞夏所一、　壬申、先太上天皇附二權右少辨息長眞人文繼一、上下除レ號停二諸司一書上曰、太皇報勅曰、執二愚除レ號書一、奉レ達二今上一、事不レ獲レ允者、下情潛二思松蘿一、年顏踰レ紀、加二號折禀一、赧悚歳深、苟念倉府實耗、據レ號而生、世事繁閑、由レ人而起、無レ號無レ人、物累何有、仍皇號諸司一切奉上、而誠未レ動レ天、所レ乞猶曠、夫狐裘蒙茸、晋人尚嫌、况乎太皇雙立、豈謂二懿禮一哉、凡一天號令、雖レ罔レ所レ遁、六府囂煩、烟霞不レ許、伏願曲降二殞霜之期一、破二前貪於後約一、殊垂二崩城之感一、安二西魂於北邙一、豈借二鳴謙一、至誠靡レ華、〈◯原本有二誤脱一、據二一本一訂、〉

〔類聚國史〕

〈二十五帝王〉

p.0799 弘仁十四年四月丁未、詔曰、詳觀二列代一、緬鑒二前王一、或因レ事以別レ名、或乘レ時而異レ號、太上天皇〈◯嵯峨〉利見踐レ暦、執象循レ機、文教與二鵬翼一齊飛、武功將二日車一並運、樂推之望、幽顯猶尅、謳歌之誠、華夷未レ已、爲而不レ恃、成而弗レ居、纖二芥紫宸一、錙二銖黄屋一、弛二擔四海一、高二謝萬邦一、遂乃仰損二天皇之號一、俯同二人臣之例一、稽二諸往古一、未レ有二前聞一、論二之當今一、實非二通元一、然則名不レ正則言不レ順、言不レ順則事不レ成、聖人無レ名、雖レ絶二言象一、

p.0800 稱謂之儀、非レ無二故實一、宜下猶上二尊號一爲二太上天皇一、皇太后曰二太皇太后一、皇后爲中皇太后上、　戊申、太上天皇上レ書曰、元氣肇開、樹レ之以レ君、有レ命不レ恒、所レ輔惟徳、天心人事、選二賢與一レ能、辱以二菲薄一憂二勞庶政一十有餘載、馭レ朽兢懷、履レ氷悚慄、遂避二大寶一、得レ果二宿心一、即懷二物表一、欲レ狎二風雲一、實有レ以也、而隨二禮法一、蒙レ加二尊號一、非二唯一身一、后亦如レ此、雖レ承二邦儀一非二復情願一、不二敢拒一レ命、諒爲レ愜レ心、夫秦代以往、故實不レ聞、漢年而還、稱謂初著、今違二詔旨一欲レ從二古朴一、冀照二愚心一、使レ依レ所レ請、　己酉、臣諱〈淳和〉言、伏奉二詔旨一、不レ許レ奉二復尊號一、心魂蕩遷、罔レ知レ攸レ措、伏以太古之時、人民初載、君臣之理雖レ著、尊卑之序未レ明、上如二標枝一、下如二野鹿一、鴻荒朴略、難二得而知一也、天皇地皇以來名號始顯、伏犧神農之後、稱謂既彰、然則世有二淳醨一、時有二今古一、若推二鴻荒之風於名教之代一、此莊老之談、所二以見一レ棄二於世一也、又禪讓之主莫レ盛二於堯舜一、未レ聞下堯舜除二却帝號一、還同中庶人上、豈有下朝爲二南面之主一、而夕爲中北面之臣上哉、誠知二教訓正レ俗、非レ禮不レ備、君臣上下、非レ禮不一レ定、陛下當璧所レ鍾、早承二先緒一、君二臨天下一、已踰二一紀一、民知二帝力一、俗染二聖風一、皇太后殿下正二位宮壺一、同二體至尊一、而並除二尊號一、不レ近二物情一、伏願屈二謙光之固執一、允二歴代之通典一、凡在二天下一、良爲二幸甚一、忽省二詔旨一、伏承二周厚一、豈伊菲薄、堪二彼尊號一、欲レ逐二愚意一、還恐レ迕レ旨、固辭之事於レ此而罷、但服御物及諸司應レ直者、悉從奉レ返、然則國用之支既足、獨靜之趣稍得、冀廻二聖慮一依レ請施行、
◯按ズルニ、忽省詔旨以下ハ、嵯峨天皇ノ御書ナルベシ、

〔日本紀略〕

〈淳和〉

p.0800 弘仁十四年九月癸亥、太上天皇〈◯嵯峨〉幸二嵯峨莊一、先レ是中納言藤原朝臣三守奏下可二行幸一状上、皇帝即勅二有司一、令レ設二御輿及仗衞一、太上天皇辭而不レ受、皇帝再三苦請、太上皇固辭、遂騎二御馬一、無二前駈并兵仗一、

〔續日本後紀〕

〈一仁明〉

p.0800 天長十年三月〈◯原本作二十二月一、據二一本一改、〉己丑、詔曰、朕不レ免二叡託一、馭レ朽乘レ奔、瞻二公卿一而兢レ懷、顧二兆庶一而軫レ念、思弘二國憲一、无レ虧二成規一、後太上天皇〈◯淳和〉憲二章千古一、含二育萬邦一、仁化未レ澆、機事遄脱、今檢二詔旨一云、天下多レ尊百姓所レ苦、避二位之號一、勿レ隨二舊典一、夫太上尊號非二唯一時一、秦日漢年稱謂尚矣、朕以禮之爲レ用、所下

p.0801 以達二天道一順中人情上之大寶也、其在レ人也、如二竹箭之有一レ筠也、如二松柏之有一レ心也、故貫二四時一、不二改レ柯易一レ葉、是以聖人知二禮之不一レ可二以已一也、冀脩二先王之禮制一、不レ私二至公之典要一、朕先日重表、遂蒙二拒逆一、空庸之軀、謗讟總集、若猶奉二順聖慮一改二易正名一、天下仰瞻何用取レ信、宜下上二尊號一爲中太上天皇上、〈◯中略〉普告二天下一令レ知二朕意一、後太上天皇辭二尊號一曰、今摹二古典一猶加二尊號一、已違二本圖一翻孤二元誓一、何者事期二自足一、老聃杜二企跨之塗一、量不レ可レ強、莊叟開二性分之域一、謬以二太上天皇之授一也、經二理萬機一、夕惕多稔、神勞二于用一、形倦二于勤一、至二於將攝之方、眇邈其遠一、所三以釋二彼負重一、保二兹閑放一、揖二風月一而爲レ友、偶二煙蘿一而遣レ日、然則收レ視反レ聽、煩不レ嬰レ心、峻レ號崇レ名、貪豈攸レ樂、况大道之行、禀性咸遂、玄邁悠然、蓋有レ之矣、請廻レ光從レ詔、心久所レ辭、深閇固距、言匪二矯飾一、天皇不レ能レ聽、〈◯原本有二誤字一、據二一本及類聚國史一改、〉

〔續日本後紀〕

〈四仁明〉

p.0801 承和二年三月丁巳、勅後太上天皇〈◯淳和〉御封二千戸、〈◯中略〉准二冷然院〈◯嵯峨〉御封一行レ之、若當二有レ揖年一、以レ公相補、令レ進レ之、

〔神皇正統記〕

〈淳和〉

p.0801 天下を治給ふ事十年、太子にゆづりて太上天皇と申す、此時兩上皇まし〳〵ければ、嵯峨をば前太上天皇、此御門をば後太上天皇と申き、

〔三代實録〕

〈三十陽成〉

p.0801 貞觀十八年十二月八日辛亥、上二清和天皇尊號一爲二太上天皇一、詔曰、朕祇膺二叡託一、猥纂二鴻基一、顧二秋駕一而晨兢、履二春氷一而夕惕、伏惟太上天皇化架二鼇波一、澤漏二蟻穴一、光華之運未レ盡、謳歌之聲猶喧、而今簸二落粃糠一、洗二除塵垢一、不レ徳二其徳一、不レ功二其功一、境絶迹殊無二得而稱一、然國有二成典一、不二敢愆忘一、謹上二尊號一爲二太上天皇一、主者施行、是日勅、令三所司奉二白綾二百疋、綾三百疋、白絹五百疋、絹二千疋、帛五百疋、白絲三百絇、絲七百絇、細長綿千屯、石見綿四百屯、調綿一萬屯、庸綿五千屯、細布千端、調布二千端、新錢二百貫文於太上天皇宮一、又奉レ充二御封二千戸一、　元慶元年閏二月十五日丁亥、太上天皇〈◯清和〉宮別當右大辨從四位下藤原朝臣山蔭上二奏今上一言、依二太政官去年十二月八日符旨一、應レ納二太上天皇御封二千戸一、而奉二天皇勅一偁、王風不レ競、國弊民亡、此故褫二夫袞龍一、愛二此蘿薜一、豈復享二太上之尊名一、致二公家之煩費一乎、宜三其

p.0802 封物等莫二敢納用一者、勅命如レ斯、仍請レ奉レ返、　廿七日己亥、是日今上抗レ表、請レ被レ納二太上天皇御封一曰、臣諱言、今月十五日、右大辨從四位上〈◯上、都氏文集作レ下、〉藤原朝臣山蔭至、奉レ宣天旨曰、讓二還御封一、恭承二慈綸一、伏増二震駭一、〈中謝〉臣諱若稽二故事一、太上天皇者御供有レ數、所司祗陪、陛下顧二重國家一、申レ詔抑損、敦訓切至、奉以周旋、然國之通規率由漸久、一旦頓廢千載貽レ譏、故仍二先代一冲レ之挹レ之、舊割二二千戸一以爲二御封一、臣猶恨壤少二連亘一、物非二奇贏一、而今更慮二公費之繁多一、不レ享二土地之所一レ輸、臣聞二諸遺老一、承和之始、前後太上天皇〈◯嵯峨、淳和、〉並二存於世一、當二斯時一也、封分二二天一、租入二兩處一、理之所レ定未レ爲レ多レ煩、况今陛下一天覆二育四海一、幽顯頼二其徳化一、公私有二何難艱一、加以古之所レ行今有二成典一、至レ臣而闕謂二論者何一、伏願陛下日月照臨之明必察二寸欵一、河海含容之量莫レ厭二微涓一、無レ任二悚戰之至一、謹奉レ表以聞、臣諱誠兢誠惕頓首頓首死罪死罪謹言、太上天皇不レ許レ之、　三月廿九日庚午、今上重抗レ表曰、臣諱言、伏奉二今月廿六日慈誨一、不レ許レ充二上御封一、臣去月表聞冀レ蒙二允照一、赤抱無レ效玄鑒彌遙、〈中謝〉臣聞問二道崆峒一而不レ廢二御レ俗之務一、凝二神姑射一而未レ忘二理レ世之方一、眞假兩存古今一レ揆、豈有下以二寂寥之趣一違二率由之規一者上乎、陛下降二黄屋之尊一、棄二赤縣之富一、削二花袞冕一、滌二慮石泉一、今之御封猶同二撮壤一、此而可レ厭細塵安歸、陛下好レ謙之過既出二理法之外一、愛レ費之至欲レ居二乏約之中一、縱令陛下上仙之厨、取二足朝夕之饌一、則恐左右下縱之類難レ給二歳時之資一、豈汙二汾水流一聊上二畎澮之輸一、伏願陛下使下臣白華之志、申二盡致之誠一、臣烏鳥之情、得中反哺之便上、則臣子禮達、忠孝道行、全二舊式於當年一、傳二故實於來代一、無レ任二懇欵之至一、謹重奉レ表以聞、臣諱誠兢誠惕頓首頓首死罪死罪謹言、

〔三代實録〕

〈三十一陽成〉

p.0802 元慶元年四月廿一日壬辰、先レ是去三月廿九日、今上奉レ表請二太上天皇一〈◯清和〉御封戸欲レ被二許納一、是日太上天皇勅答曰、向者輸二寫所一レ懷、而今獎飾彌切、求レ情究レ理、反覆念レ之、事有二成虧一、義難二兩善一、吾豈獨欲レ獲二謙々之終福一、而令下帝取中斁二朝彝一之嫌上、故解二固結於先慮一、和レ之以二天倪一而已、但諸司及諸衞府等分直者、皆當下復供二職於平昔一、得上レ專二此虚閑之望一矣、太上天皇諱、〈惟仁〉此勅書年月下注二惟字一、先レ是勅二參議從三位大江朝臣音人一、令レ議下太上天皇送二天皇一之書、可レ注二御諱一將否上、音人奏議言、謹案二禮經一、君前臣名、

p.0803 父前子名、故周公告二文王一、皆稱二武王名一、又云、見レ似目瞿、聞レ名心瞿、夫父者子之天也、故其禮節之相去、如二天地之懸隔一、豈有三父爲レ子稱二其名一乎、夫天子之禮、雖下與二庶人一異上、而至二于父子之間一、未レ有二差別一、昔太公家令、有二人臣之語一、漢祖善レ之褒賞、是則爲二太公未一レ登二尊位一也、雖レ然漢祖以レ之被レ短二於世一耳、又案二諸家書儀一、父母與レ子書、皆云二爺告孃告一、遂無下注二其名一者上、然則書二御諱一事、未レ知レ攸レ據也、謹奉二勅命一、古今於二勅書一只書二御畫日一、又無レ注二御諱一、見レ之者可レ知二誰書一論二之物情一、理不レ可レ然、謹案二摯虞決疑要一云、古者臨レ文不レ諱、而今猶以爲レ諱嫌名不レ諱、而今猶以爲レ諱、二名不二偏諱一、孔子母名徴在、言レ徴不レ言レ在、言レ在不レ言レ徴、今亦不二偏諱一、若據二孔聖之前蹤一、唯注二御諱之一字一、隨レ禮隨レ俗、儻得二其宜一哉、於レ是勅從レ之、　廿五日丙申、先レ是去廿一日太上天皇勅答曰、諸司及諸衞府分直者、皆當下復供二職於平昔一、得上レ專二此虚閑之望一矣者、是日帝上レ表曰、臣諱言、伏奉二今月廿一日天誨一、許レ上二御封一、更有二別制一、諸司及諸衞府等分直者、遣二還本職一、恭承二命旨一、情慮驚廻、氷炭交懷、喜懼兼至、〈中謝〉臣聞上天垂レ象、禁衞嚴二於紫微一、皇王凝レ規、官職共二於朱闕一、故供奉無レ失、在二曉夕一而唯祗、威容所レ加、示二遠近一而可レ畏、亦夫不レ愆不レ忘、當二舊章一、是率是由、詎廢二故事一、加之六軍之衆、單兵分從、百官之中、數司遞直、假二之議者一未レ謂二煩勞一、况今新御二別宮一、有レ如二客舍一、宜レ有三宿衞以備二徼巡一、臣伏見人臣之家、且有、隨身之仗一、州郡之宰、非レ無二耀威之兵一、矧乃太上至尊、天皇崇重、巨細噞二喁於徳澤一、遐邇瞻二仰於恩暉一、伏願推二陛下懷中之慈一、允二微臣膝下之請一、無レ任二悾欵之至一、謹重奉レ表、陳乞以聞、

〔三代實録〕

〈三十五陽成〉

p.0803 元慶三年二月十七日丁丑、先レ是太上天皇、〈◯清和〉勅返二御封一千戸一、至レ是皇帝上レ表、不レ奉二勅旨一、猶充二奉二千戸一曰、臣諱謹言、伏奉二勅旨一、減二折御封一、不二恭承而止一、畏切レ鏤レ氷、欲二箝默以從一、誠虧二底露一、臣諱誠惶誠惶頓首頓首、臣聞天之與レ人、孝子業在レ諧レ命、事之隨レ理、愚夫愼二其有一レ常、故一天下之至尊、臣不レ拒二前勅於童稚一、二千戸之甚少、臣能稽二舊章於老成一、而今枉二降中使一、重叙二睿情一、纔納二半封一、更増二掊挹一、臣謹計二入租一、伏量二輸貢一、若任レ土非レ實、恐支用或虧、陛下縱損二全數一、雖レ有二撝謙之徳一、臣遂從二折分一、既忘二愛禮之義一、况皇天貴レ誠不レ貴レ物、臣子爲レ道不レ爲レ身、陛下臣之皇天也、請將レ盡二誠於方寸一、臣陛下之臣子也、請不レ失二

p.0804 道於小銖一、伏願鴻慈廻二照鑒一、臣血誠仰二雲霄一以兢惕、流レ汗臨二淵谷一以累レ表抗聞、臣諱誠惶誠恐頓首頓首謹言、

〔菅家文草〕

〈八〉

p.0804 太上天皇贈二答天子一文
　　奉二清和院太上皇勅一重請レ減二封戸一状
今月十七日來状丁寧、不レ忍三半折二封戸一、追二尋宿念一、澄二審本謀一、不下以二用足一爲上レ情、將以レ靜レ心爲レ樂、况一畦一畝、未二必旅生一、自レ寸自レ分、皆出二機杼一、國用倍二多於昔日一、民勞緊二急於當時一、雖レ有二成章一、豈無二權議一、夫竹窓之曉、水閣之暮、閑送二春秋一、遠翫二風月一、取二諸一身之事一、蕞爾千戸之資、容量以莫レ爲二相累一耳、
　　元慶三年二月二十六日

〔三代實録〕

〈三十五陽成〉

p.0804 元慶三年二月廿九日己丑、天皇遣二參議正四位下行左大辨兼左近衞中將近江權守源朝臣舒於清和院一、奉レ表曰、臣諱言、伏奉二今月廿六日勅一、重降二宸命一減二封邑一、仰二天嚴一而跼蹐、宜二日愼而奉承一、唯國家之事、既貴レ盡二于芻蕘一、豈得レ嫌二其抗颺一、况臣子之誠、苟云レ補二於蔕芥一、則安顧二其童眛一、臣諱〈中謝〉臣旁詢二下議一、上驗二前修一、姑射岫深、猶具二紫微之羽衞一、櫟陽宮靜、無レ闕二黼扆之聲明一、蓋萬乘之尊彌弘、衆星之拱何息、而先謙攸レ貴、省減過多、僅置二二千戸之貢輸一、以換二億兆民之供奉一、此之爲二資用一、曾不レ充二錙銖一、今亦半レ之、何其甚矣、况復群下之俸邑、尚有二二三千戸一者、陛下若貶二具々〈◯具々、類聚國史作二昊一、〉之至極一、割二湯沐之半分一、則彼食菜之卿、昨第之子、措二手足一而無レ地、亨二膏腴一而敢甘、不三只乖二逆衆心一、實慮虧二損大體一、苟聞二其不可一、而嘿以從レ之、則謂二天下何一、遺二後代一何、不レ任二屏營怵惕之至一、敢拜表翹抗以聞、太上天皇遂固讓不レ受、　五月廿日己酉、勅令三大和國進二米百斛於清和院一、奉レ充二太上天皇頭陀山中之費一、

〔三代實録〕

〈三十七陽成〉

p.0804 元慶四年二月廿五日己酉、百姓口分田、并墾田九町二百九十歩、在二山城國愛宕郡一、貞觀十九年有レ勅、奉レ充二清和院一、今太上天皇勅歸二於公家一、仍返二給本戸一、

〔三代實録〕

〈四十四陽成〉

p.0804 元慶八年二月四日乙未、會二文武百官於院南門一、詔曰、現神〈止〉大八洲御宇日本根子

p.0805 天皇〈加〉御命〈良萬止〉宣御命〈乎、〉親王等王等臣等百官人天下公民衆聞給〈止〉宣、食國〈乃〉政〈乎〉末遠聞食〈倍喜乎、〉御病時々發〈己止〉有〈天、〉萬機滯〈己止〉久成〈奴、〉天神地祇之祭〈乎毛〉闕怠〈己止〉有〈奈牟加止〉危〈美〉畏〈利〉念〈保之天、〉天皇位〈乎〉讓遜給〈天、〉別宮〈爾〉還御坐〈奴止〉宣御命〈乎、〉親王等大臣等聞給〈部、〉承レ詔給〈天〉恐〈美〉畏〈母〉國典〈爾〉准〈天〉、太上天皇之尊號〈乎〉進〈留、◯下略〉

〔三代實録〕

〈四十五光孝〉

p.0805 元慶八年三月十九日庚辰、奉レ宛二太上天皇〈◯陽成〉封二千戸一、

〔日本紀略〕

〈二朱雀〉

p.0805 天慶九年四月廿六日丙戌、詔〈◯村上〉上二太上天皇〈◯朱雀〉尊號一、〈◯又見二一代要記、神皇正統記、皇胤紹運録、皇年代略記一、〉

〔類聚符宣抄〕

〈四〉

p.0805 太政官符、神祇、中務、式部、治部、民部、兵部、刑部、大藏、宮内、彈正、左右京、修理、勘解由、齋宮、
　齋院等官省臺職寮使司、
太政官符、左右近衞、左右衞門、左右兵衞、左右馬、兵庫等府寮詔書壹通、〈上二尊號一爲二太上天皇一、（朱雀）皇太后曰二太皇太后一事、〉
右詔書頒下如レ件、諸司諸衞承知、符到奉行、
左少辨　　　　　　　　　　　　右大史
　　天慶九年五月一日

〔類聚符宣抄〕

〈四〉

p.0805 太政官符、五畿内七道諸國司、
　頒二下詔書一事
右去月廿六日詔偁、朕忝膺二聖鑒一、濫握二神符一、上欽二七廟之一、心深二兢惕一、下荷二兆人之責一、念切二憂勞一、太上天皇〈◯朱雀〉功冠二百王一、道光二四表一、華夷染レ化、動殖霑レ仁、鳳衣龍庭、咸受二正朔一、蟠桃搖木、盡入二湜封一、皇天之暦運未レ傾、㝢縣之謳歌猶至、而厭二彼垂衣一、期二茲脱屣一、遂釋二天下之重負一、永懷二物表之高居一、勤遜二萬機一、隔二撫臨於紫遊一、想凝二衆玅一、追二恬惔於玄關一、令下抑二太上之鴻名一、垂中清虗之伶徳上、奉二順叡旨一、恐レ虧二朝章一、既有二恆規一、何愆二舊典一、善脩二先王之禮制一、或副二四海之仰瞻一、宜下上二尊號一爲二太上天皇一、皇太后曰中太皇太后上、普告二遐邇一、令レ知二朕意一、主者施行者、諸國承知、符到奉行、

p.0806 左少辨　　　　　　　　　　　右大史
　　天慶九年五月一日

〔日本紀略〕

〈二朱雀〉

p.0806 天慶九年五月一日庚寅、太上天皇〈◯朱雀〉上書辭二尊號一、天皇〈◯村上〉上表不レ許、　三日壬辰、太上天皇又辭二尊號一、　四日癸巳、天皇上表不レ容、

〔日本紀略〕

〈六圓融〉

p.0806 安和二年八月廿五日庚子、太上天皇〈◯冷泉〉尊號、詔二大内記伊輔一作レ之、　廿八日癸卯、是日也、太上天皇上書謝二尊號一、　天祿元年四月二日壬申、今日夜半、冷泉院燒亡、太上皇〈◯冷泉〉遷二御朱雀院一、〈◯又見二一代要記、皇年代略記一、〉

〔日本紀略〕

〈八花山〉

p.0806 永觀二年九月九日丙辰、此日詔上二太上天皇號於先皇一、〈◯圓融、又見二一代要記、神皇正統記、皇胤紹運録、皇年代略記一、〉

〔皇年代略記〕

〈一條〉

p.0806 寛弘八年六月十八日、太上天皇〈◯一條〉尊號、〈◯又見二一代要記、皇胤紹運録一、〉

〔日本紀略〕

〈十二三條〉

p.0806 長和五年二月十三日戊子、新皇〈◯三條〉上二太上天皇尊號一、〈◯又見二一代要記、大鏡裏書、十三代要略、神皇正統記一、十三日、皇胤紹運録作二廿四日一、皇年代略記作二十四日一、〉

〔皇胤紹運録〕

p.0806 後朱雀院、〈◯中略〉寛徳二、正、十六、讓位、同日尊號、〈◯又見二皇年代略記、皇代略記一、〉

〔扶桑略記〕

〈三十白河〉

p.0806 延久四年十二月十二日丙戌、有二太上天皇〈◯後三條〉尊號之詔一、〈◯又見二一代要記、十三代要略、神皇正統記、皇代記、皇年代略記一、〉

〔大府記〕

p.0806 延久四年十二月廿四日戊戌、今日未刻、被レ獻二太上天皇〈◯後三條〉尊號辭書一、〈文章博士實政朝臣作之、少納言公經書之、以二縹紙一書之、入二朴木筥一、件筥并臺花足等、面有二折立一、敷物白織物、表卷二懸紙一、以二檀紙一裹之、様同二例表一、或上卿〈資綱、隆俊、〉被レ申云、大臣初度表筥、居レ案仍有レ臺、次表筥裹之不レ居レ案、又無レ臺、今日儀已不レ居レ案、何可レ具レ臺哉、然而又或人被レ申云、猶可レ副レ臺者、〉別當權大納言能長卿持參、判官代式部丞宗基捧レ之相從、是先跡云云、件御辭書留二御所一、行日可レ被二返獻一也、其文云、
伏見二去十二日詔書一、尊號爲二太上天皇一者、事乖二蓄懷一、義非二宿志一、馭レ俗撫レ民之時、猶慙二薄徳一、虗閑之日、豈貧二崇名一、縱有二叡念之難一レ違、盍レ陳二素意之不一レ移、孝敬之道、和順爲レ先、請停二尊號一、永斷二羈累一矣、

p.0807 　　延久四年十二月廿四日
五年正月十七日丁酉、今日戌刻、從二大内一被レ獻二御報書於院一、〈去年十二月廿四日、被レ獻二尊號辭書一、而所レ被二許申一之勅答也、〉中使權大納言源顯房卿、先於二中門廊一、以二院別當權中納言資綱卿一、令レ申二事由一、次召二御報書一、同資綱卿持二參御前一、次仰下令二給了一由於中使大納言上、次中使歸二參大内一不レ給レ祿、不レ儲レ座、蓋舊規云云、件御報書入二朴木筥一、以二檀紙一裹二其上一、置二花足臺一、〈或説不レ可レ具レ臺云云、御報書令レ稱二臣諱一給者、◯又見二一代要記一〉

〔十三代要略〕

〈二白河〉

p.0807 應徳三年十二月二日、有二太上皇尊號詔書一、〈◯又見二扶桑略記、一代要記、皇胤紹運録、皇年代略記一、〉

〔本朝續文粹〕

〈二詔〉

p.0807 奉二太上天皇尊號一〈白河院〉　　　　　　　　　　　　　　　　敦基
詔朕〈◯堀河〉以二幼冲一、濫臨二神器一、受二龜圖於翠潙之水一、謬乘二時龍一、承二駿命於黄軒之丘一、如レ馭二秋駕一、憖從二叡託之旨一、未レ決二童蒙之情一、太上天皇、徳侔二蒼昊一、仁洽二黔黎一、照二六合於胷襟一、置二八荒於掌握一、長垂二有截之化一、遂盛二無窮之基一、赫哉聖猷冠二於萬古一、爰比二大統於繊芥一、同二寳籙於錙銖一、不レ顧二濟川之重浪一、逐二虚舟一而皷レ橈、空指二射山之片雲一、冀二脱屣一而尋レ跡、將聖之徳、功成不レ居者歟、抑國扇二玄風一、道傳二粉澤一、宜下率二崇敬之舊章一、殊用中稱謂之新聽上、謹上二尊號一、爲二太上天皇一、布二告遐邇一、稱二朕意一焉、主者施行、
　　應徳三年十二月二日　　　　　中務少輔從五位上臣藤原朝臣基頼宣奉行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　作者内記藤原朝臣敦基

〔朝經記〕

p.0807 永治元年十一月九日、尊號、〈◯崇徳〉勅旨田、御隨身等事宣下、　十三日、新院報書事、〈敦光草、予清書、〉中使右大將、　二年正月十八日、御報書勅奏事、〈◯又見二皇代記、歴代皇紀、皇年代略記一、九日、一代要記、皇胤紹運録、並作二七日一、〉

〔續世繼〕

〈二八重の潮路〉

p.0807 新院〈◯崇徳〉は、九日〈◯永治元年十二月〉ぞ三條西洞院へ渡らせ給、太上天皇の御尊號奉らせ給、かくて年經させ給、

〔一代要記〕

〈六二條〉

p.0807 永萬元年七月廿九日、爲二太上天皇一、〈◯又見二皇胤紹運録、歴代皇紀、皇代記、皇年代略記一、〉

〔皇代記〕

〈二條〉

p.0807 永萬元年六月廿九日戊午、御尊號云々、　七月五日壬子、辭二尊號一御上表云々、

〔山槐記〕

p.0808 治承四年二月廿七日己酉、今日上皇〈◯高倉〉尊號宣下、如二應徳之例一〈◯白河〉云々、又御隨身事宣下云々、左右大臣〈◯藤原經宗、藤原兼實、〉被レ申二所勞一、仍三條大納言〈實房〉奉行、攝政〈◯藤原基通〉於二朝餉一令レ書二御畫一給、頭辨申二沙汰此事一云々、
詔朕以二童稚一、忝纂二皇基一、承二叡託一以傳二玉鏡一、似レ臨二春氷之薄一、在二幼冲一、以撫二龍圖一、如レ馭二秋駕之節一、太上天皇澤覃二四海一、化被二八埏一、聖智於胸襟之底、鑒二帝典於掌握中一、爰撝謙無レ撓、謝二明徳於禁闈之月一、遜讓惟深、伴二浮遊於汾水之波一、大矣哲后、功成身退者、抑禮有二彝則一、國有二舊章一、列代所レ照、可二以率由一、謹上二尊號一、爲二太上天皇一、普告二遐邇一、令レ知二朕意一、主者施行、
　　治承四年二月廿七日〈有二御畫一、作者大内記業實、清書少内記業昌、〉
正二位行權大納言藤原朝臣實房宣、奉レ勅仰二左右近衞府一、以二府生番長各一人、近衞各三人一、宜レ爲二太上天皇御隨身一者、
　　治承四年二月廿七日大外記清原頼業奉〈◯又見二一代要記、皇帝紀抄、皇胤紹運録、皇代記、皇年代略記一、〉
三月二日甲寅、有二上皇詔書覆奏事一云々、　四日丙辰、申斜有二御報書事一、〈◯中略〉
伏見二去月廿七日詔書一、尊號爲二太上天皇一者、忽披二綸誥一、已非二素懷一、外乖二傳國之策命一、内爲二當時之羈累一、夫謝二漢庭一而損レ尊、唯樂二汾水之洗一レ心、逐二白雲一而爲レ伴、何有二紫泥之驚一レ眼、孝子善述二父志一、新主豈違二我言一、請照二卑謙一、早停二崇號一、
　　治承四年三月四日〈草不レ入レ日、清書令二書乘一也、〉
後日定長曰、新主所レ草、有二闕字一不二平出一、定長問二俊經卿一、答曰、雖レ可二平出一、如レ此讀連之時、不二平出一之由所二習傳一也者、仍清書之時同不二平出一、太上天皇者、依レ爲二御報書一、不レ可二闕字一之由所レ存也、但書二行上一者、
後聞定長清書、加二裏紙一進之、〈表清書之人加之、主人加之問二定長一、答云、依レ書二一枚一加之、但不レ知二慥説一者、〉奏聞了返給、於二東對南孫庇一、大納言〈隆季〉裹之、乍レ重二檀紙二枚一爲二懸紙一、又以二一枚一テ二枚ノ懸紙ノ端〈爾〉加之納レ筥、〈如二表筥一以二朴木一作之、有二牙象龜甲一、浮文織物爲二折立一、不レ押二蓋内一、〉

p.0809 〈有二華足一、其面押二同織物一、〉以二檀紙四枚一テ、上下各二枚ヅヽニテ裹レ之テ、以二細貼紙一結レ中テ、尻頭ヲ自二上下一取合、授二藤大納言一、〈實國〉大納言取レ之、賜二判官代左兵衞尉源信政一、參内路間、御報書入二大納言車一、於二中門廊東簀子一、大納言挿レ笏取二御報書一、〈信政在二地上一〉經二小板敷御座覆懸間一、〈此所小板敷間有二二間一、大内儀用二中間一歟、〉上二長臺盤上縁〈爾一〉置レ之〈臣下表置二此所一、太上皇報書置二小臺盤一歟可レ尋、〉候二端座一、頭辨入二上戸一、自二端方一進寄取之、出二上戸一不レ奏之、置二日記御厨子上一、〈自置レ之、不レ令二藏人置一レ之、〉攝政不レ被レ參、兼被レ仰二頭辨一曰、參入シタル様ニテ可レ有也者、頭辨無レ仰二御使一、此後大納言退出、後日可レ有二勅答一也、〈◯中略〉　九日辛酉、有二上皇御報書勅答事一、大内記業實作之、源大納言〈定房〉持二參院御所一、〈土御門北、東洞院東、〉藤大納言〈實國、院司、〉相逢取之、持二參御前一無レ録、又不レ儲レ座云々、　七月廿九日己卯、今日新院、被レ辭二申兵仗封戸尊號一云云、〈◯中略〉上皇去二月遜位、初度御幸之時、御隨身右府生以下、四月被レ加二將監一、其後無二晴御幸一、今依二御惱一遂被レ辭二兵仗一了、〈◯中略〉今日自二新院一以二頭辨一爲二御使一、被レ申二攝政一〈◯藤原基通〉云、遜位之後、猶聞二朝務一自然事也、更非二本意一、不レ堪二其器一、於レ申有レ恐、隨二近日病重一、存命不レ定、天下事一向可レ有二御沙汰一、此事只非二嫌申一者、内々被レ仰レ之、一切不レ可レ二政理一、若又病愈命存者、其體可レ隨レ事、如二當時一者、不レ可レ知二食天下事一、但於二御寺等事一者、可レ有二御沙汰一也者、以二院宣趣一申二攝政一、被レ申云、畏承候了者、内々被レ仰了、我又有二所勞一、〈近日令レ煩二疱病一給〉進退惟谷、雖レ可二對面一、病間不レ能二面謁一者、以二宮内少輔棟範一、被二傳仰一云々。

〔玉海〕

p.0809 治承四年八月四日甲申、未刻大外記頼業來、〈◯中略〉又云、去月廿九日、新院〈◯高倉〉被レ辭二兵仗封戸等一、雖レ被レ辭二尊號一可レ被レ發二遣公卿勅使一、〈院御屋〉而止二太上皇字一云事背二先例一、因二此議出來一、於二尊號一者暫不レ被二辭退一歟云々、後聞尊號猶被レ辭了云々、使藤大納言、奉書草俊役可、〈◯俊役可三字、恐誤字、〉清書定長云々、

〔皇年代略記〕

〈後堀河〉

p.0809 貞永元年十月七日癸未、太上天皇尊號、〈◯又見一増鏡、神皇正統記、皇胤紹運録、皇代記、歴代皇紀一、〉

〔百練抄〕

〈十四四條〉

p.0809 貞永元年十月廿八日甲辰、上皇〈◯後堀河〉有二尊號報書事一、

〔岡屋關白記〕

p.0809 貞永元年十二月廿七日壬寅、今日有二太上天皇〈◯後堀河〉尊號辭表勅答〈◯中略〉等事一、〈大納言雅親卿行之〉

〔皇年代略記〕

〈花園〉

p.0809 文保二年三月十日、太上天皇尊號、〈◯又見二神皇正統記、歴代皇紀、皇胤紹運録、皇代記一、〉

〔資朝卿記〕

p.0810 文保二年三月十日辛未、新院〈◯花園〉今日廳始也、予奉行之、早旦爲二亞相殿御使一向二北山一、秉燭之程參二新院一、催二促人々一、西園寺新大納言、〈實衡〉春宮大夫、〈公賢〉辨宰相中將、〈師賢〉四條宰相、〈隆有〉著二殿上一、〈端座〉不レ居レ膳、無二盃酌一、〈建久、寛元、正元等例也、〉予覽二吉書於西園寺新大納言一、見了以レ予奏聞、次返二下大納言一、大納言又返二下予一、書二端書一下レ廳、次判官代源仲秀、持二參御封返抄一、〈入レ筥〉置二西園寺新大納言之前一、次持二參硯一、次第加置、次非參議別當、并五位六位判官代等、相率著二廳屋一、〈依レ無二其所一用二、御念誦堂一、〉饗廿前居之、四位別當座小文、判官代座紫縁、別當座、〈横敷〉先光繼朝臣著二横敷西端一、次予目二經顯一而堂上著、同著二座東一、持レ笏揖如レ常、次第著了、次一獻、盃〈居二折敷一〉主典代親景役之、瓶子廳官光國、二獻盃主典代同廳官光久、汁物兼居之、箸下其儀置レ笏立レ箸、次三獻盃主典代資景、廳官清種持二參硯一、次第加署眞名也、次覽二御封國催牒於予一加署、〈草名〉次覽二諸司二分等交名於予一、主典代同、予見了返給之、仰下可レ申二執事別當一之由上、次自二下臈一起座、此間執事殘二留殿上一、廳官以二藏人一覽二件交名一、次撤レ机、饗立二食床一居二饗并合子飯一、主典代以下著座、有二勸盃一、雜仕女役之、如二著到一云云、予不レ見之傳聞許也、藏人所并武者所始等事定、行事下二知廳一之後、無二口人之事一、點二御所近邊之屋一爲二其所一、饗各廿前、御分國勤之、

〔増鏡〕

〈十三秋のみ山〉

p.0810 おりゐの御門〈◯花園〉は、御このかみの本院〈◯後伏見〉と、ひとつ持明院殿にすませ給、もとより御子のよしにておはしませば、まいてひとつ院のうちにて、いさヽかもへだてなく聞えさせ給、いとおもふやうなる御ありさまなり、さるべき御中といへども、むかしもいまも御腹などかはりぬるは、いかにぞやそば〳〵しき事もうちまじり、くせあるならひにこそあるを、この院の御あはひ、まめやかにおもほしかはしたる、いとありがたうめでたし、

〔皇年代略記〕

〈光明〉

p.0810 貞和四年十月廿七日、禪二位皇太子一、　十一月廿五日、太上天皇尊號、〈廿八〉

〔園太暦〕

p.0810 貞和四年十二月三日乙丑、今日新院〈◯光明〉尊號詔書覆奏事、
詔朕以二菲徳一、忝受二羅圖一、繆臨二萬乘之神器一、聖智不レ明、未レ照二六合於胸襟一、帝功難レ及、上以欽二祖宗一、下以慙二黎

p.0811 庶一、太上天皇徳遍二乾坤一、明侔二日月一、普天之下、仁風遠翔、率土之濱、惠澤廣被、而避二宸居一兮、染二思於襄城之春草一、訪二山棲一兮、契二樂於汾陽之秋水一、大哉至聖、功成身退者歟、抑朝有二舊章一、禮有二恆法一、彝倫攸レ叙、何不二率由一、謹上二尊號一、爲二太上天皇一、布二告遐邇一、令レ知二朕意一、主者施行、
　　貞和四年十一月廿五日
　　　中務大輔正五位下三善朝臣俊經
　關白從一位兼行左大臣藤原朝臣〈◯良基〉
　參議從三位行左近衞權中將藤原朝臣等言、
　詔書如レ右、請奉
　レ勅付レ外施行、謹言、
　　貞和四年十二月一日

〔園太暦〕

p.0811 貞和五年正月廿六日、抑今日新院尊號御報書事有レ之、大夫勤二中使一、
伏見二詔書一、尊號爲二太上天皇一者、黄麻含レ命、丹棘有レ懼、夫太上皇者、至尊之高稱、極美之大名也、徳不レ合レ天、何施二皇明於庸昧一、志貞問レ寢、早並二仙居於射山一、陛下言下之旨、縱有二敬長之儀一、太上無上之位、爭受二同父之稱一、先蹤尠レ彙、史官未レ記、請照二卑謙一、曲停二殊號一、
　　貞和五年正月廿六日太上天皇
草勘解由長官在成卿、清書從三位行尹卿、中使權大納言春宮大夫實夏卿、判官代奉行院司左中辨親明朝臣、〈同人裹之、實夏卿諷諫令レ裹、〉

〔皇年代略記〕

〈光明〉

p.0811 觀應二年二月廿八日、俄以御落飾、〈◯中略〉是日於二賀名生宮一〈◯後村上〉被レ宣二下太上天皇尊號一、是先度沙汰、不レ被レ用之故云々、〈◯又見二皇胤紹運録一〉

〔皇年代略記〕

〈後小松〉

p.0811 首書　明徳五年〈◯應永元年〉二月廿三日、南方前主〈◯後龜山〉於(○)二當朝(○○)一爲(○)二諸王子(○○○)一、有二太上天

p.0812 皇詔一、

〔荒暦〕

p.0812 明徳五年〈◯應永元年〉二月廿二日、相公來、予示云、先稱二太上天皇一事、猶廻二愚案一偏限二登極帝一歟、其故者脱屣遜讓君、雖レ未レ上二尊號一、稱二美其徳一之時、無二呼而可レ名之號一、仍先奉レ稱二太上天皇一歟、加之讓國脱屣、即日如二院司被一レ補之、是則尊號以前被レ行二太上天皇之禮一也、後高倉法皇〈◯後堀河父、守貞親王、〉雖レ爲二皇親一、依レ非二登極一無二彼文一、然者登極脱屣君、猶不レ載二此號一事、間雖レ有二其例一〈正安是也〉非レ常者、尊號以前、稱二太上皇一例未レ聞之、所詮摸二久安〈◯近衞〉正安〈◯後伏見〉等例一、大概可レ被二相計一歟、今大覺寺殿、〈南主（御龜山）御事也〉雖レ無二昭穆之寄一、九族之儀可二相准一歟者、相公稱レ善、即草案書改之、此分可レ然之由示了、文章等條々商量之間、聊述二愚存一了、相公云、只追二建武〈◯御醍醐〉例一、可二作進一之由雖レ被二仰下一、兩所太上天皇字誠可レ有二巨案一、重可二伺申一事也云々、　廿三日癸巳、尊號宣下事、頭中將隆信朝臣奉行之、上卿權中納言隆仲卿、辨兼宣朝臣、少外記中原師世、右大史高橋秀職等參陣、大内記不參、清書事用二外記一歟可レ尋、封戸頓給料仕丁等事宣下、定如二先規一歟、兵仗事同宣下云々、後日菅宰相語云、詔書草先持二參室町殿、〈◯足利義滿〉内々伺申之處、建武准據猶可レ然歟、於二正安例一者、後二條院御代、被授二申後伏見院一之間、頗不二庶幾一歟、但可レ申二執柄一云々、即又持二參執柄一之處、此草分尤神妙之由被レ申、仍昨日分治定了者、非二登極帝一先稱二太上天皇一事、無二先規一之由兩局同令レ申云々、此定誠穩便儀也、
詔朕雖二菲質一、苟闢二靈珍一、風雲際會之時、百官勸レ義、輿圖混同之日、萬邦依レ仁、偏委二賢良一、永昌二洪業一、是以爲レ闡二皇家之大猷一、忽獻二仙院之崇號一、聞二其有徳一、思二彼徽名一、守二往聖之憲章一、視二庶民之歡苦一、化被二南國一、文武之道並昌、駕來二上都一、天人之心交應、和輯之世、誰不二歡娯一、仍無(○)二準的之舊蹤(○○○○○)一特(○)垂(○)二禮敬之新制(○○○○○)一、宜下上二尊號一爲一レ太上天皇一、布二告遐邇一、俾レ知二朕意一、主者施行、
　明徳五年二月　日
抑此尊號希代珍事也、後醍醐天皇皇胤、猶不レ可レ絶歟、天運循環之理、冥慮昭鑒之至、非二凡口之所一レ測耳、

〔愚管記〕

p.0813 應安四年閏三月六日己未、太上天皇尊號、并兵仗頓給料米事被二宣下一、上卿洞院大納言云々、
　廿七日庚辰、〈◯中略〉尊號〈◯後光嚴〉詔書覆奏、〈◯又見二續神皇正統記、皇胤紹運録、皇年代略記一、〉

〔皇年代略記〕

〈後圓融〉

p.0813 永徳二年壬戌四月廿五日、太上天皇尊號、〈◯又見二續神皇正統記、皇胤紹運録一、〉

〔續神皇正統記〕

〈後圓融〉

p.0813 天下を治給ふ事安泰にして、尊號例の如し、院中にても暫御政務あり、

〔常永入道記〕

p.0813 應永十九年九月五日丁亥、太上天皇尊號、〈◯後小松〉并御隨身等宣下之、奉行清長朝臣、公卿洞院大納言、〈實信卿◯以上又見二皇年代略記、歴代皇紀一、〉　廿一日癸卯、尊號詔書覆奏、奉行清長朝臣、上卿洞院大納言、

〔續神皇正統記、〕

〈後小松〉

p.0813 天下を治給ふ事三十餘年、尊號例の如し、〈◯中略〉御讓位以後も、なほ院中にして御政務とぞ、

〔椿葉記〕

p.0813 應永十九年八月廿九日、一の宮〈◯稱光〉に御くらゐゆづり申さる、〈◯後小松〉御治世はもとのごとくにて、よろづめでたく渡らせ給ふ、

〔皇胤紹運録〕

p.0813 後花園院〈◯中略〉寛正五、七、十九、禪位尊號、〈◯又見二歴代皇紀一〉

〔公卿補任〕

〈後土御門〉

p.0813 文明二年十二月廿七日、太上法皇〈◯後花園〉崩御、

〔皇年代略記〕

〈正親町〉

p.0813 天正十四年十一月七日、禪位、同月太上天皇尊號、

〔皇年代略記〕

〈後陽成〉

p.0813 慶長十六年四月七日、太上天皇尊號、

〔執次詰所記〕

〈後水尾〉

p.0813 寛永六年十一月八日、讓位、〈三十四歳〉同日、太上天皇尊號宣下、〈◯又見二續皇胤紹運録一、〉

〔執次詰所記〕

〈明正〉

p.0813 寛永二十年十月十二日、尊號太上天皇、號二新院一、〈◯又見二續皇胤紹運録一、〉

〔公卿補任〕

〈明正〉

p.0813 寛永廿癸未年十月十二日、尊號定宣下、陣儀上卿廣橋大納言兼賢卿、奉行職事頭右大辨綏光朝臣、

〔忠利宿禰記〕

p.0813 寛永廿年十月十二日、今日興子新院、〈◯明正〉太上天皇尊號宣下也、上卿兼賢卿先著陣有、次太上天皇宣下之詔書也、封之義仰詞有、于二宣旨一不レ書、大外記年爵同前也、大内記爲庸、中務大輔泰

p.0814 廣朝臣、少内記生職、外記亮昭、史亮英、左大史忠利宿禰、大外記師定、諸役人以下如レ例、

〔執次詰所記〕

〈後西院〉

p.0814 寛文三年二月三日、尊號太上天皇、〈廿七歳◯又見二續皇胤紹運録一〉

〔寛文三年記〕

p.0814 寛文三年二月三日、午刻尊號〈◯後西院〉宣下、上卿坊城大納言、辨資廉、大内記豐長朝臣、攝政於二議定所一内覽、中務大輔資冬朝臣、新院〈◯後西院〉詔書持參、

〔季連宿禰記〕

p.0814 貞享四年三月廿五日癸卯、今日尊號〈◯靈元〉宣下、并院號定陣宣下也、巳刻許著二朝衣一令二參陣一、諸司等各參陣、良久相待、申終刻許事始、其儀如二御次第一歟注レ左、〈尊號宣下院號定等御次第、攝政御作進云々、◯中略〉上卿右大臣、〈鷹司殿兼凞公〉奉行職事頭中將基勝朝臣、辨藏人右少辨宣定、大内記長量朝臣、中務大輔長時、〈◯中略〉
一中務大輔長時、持二參詔書於院御所一、副使〈召使宗岡行量〉一人被レ具之、〈件副使依二頭中將命一、大外記被二催出一、召使行量、行量著二束帶一持二覽筥一相從之、且中務被レ具二副使一事無レ例、然而奉行職事命非レ可二違背一、詔書覆奏等之事(○○○○○○○)、近代斷絶(○○○○)、仍不レ及二施行一、只中務輔持二參院御所一也、可レ謂二朝儀御零落一、〉
一詔書
詔以二幼弱之躬一、承二叡哲之運一、繼二皇化之鴻業一、膺二萬國之貢珍一、上皇聖姿、輕二脱屣於千乘一、傳二神器於億載一、常覃二孝道之思一、以二虞舜心一、今酬二親愛之惠一、慕二漢高敬一、恭上二尊號一、宜レ爲二太上天皇一、布二告遐邇一、俾レ知二朕意一、主者施行、
　　貞享四年三月　日〈大内記長量朝臣作進、有二御畫一、◯又見二妙法院日次記、執次詰所記、續皇胤紹運録一、〉

〔章弘宿禰記〕

p.0814 寳永六年六月廿四日、今日卯刻、尊號〈◯東山〉宣下、〈◯中略〉刻限著二束帶一參陣、隨身官符今朝進、右中辨令二加署一、諸司各參集、暫上卿御參、次攝政殿御參、
上卿右大臣〈二條殿綱平公〉被二著陣一、參議左大辨兼廉卿、奉行職事右大辨尚房朝臣、右中辨益光、少納言時春朝臣、大内記總長朝臣、中務大輔徳光朝臣、大外記師英朝臣、左大史章弘、少外記中原昌範、右大史春職、少内記職永、召使宗岡頼行、副使宗岡行長、〈中務尊號詔書持參之副使也〉陣官人富嶋大舍人一人、大藏省、木工寮、〈請印案調進〉主殿寮、佐伯一人、掃部寮兩人、官外記使部兩人、主鈴兩人、〈康有朝臣、内藏民部丞、〉將監、〈村田〉

p.0815 　　尊號宣下次第
先大臣著二陣座一、次參議著座、次職事來、仰下可レ令レ作二太上天皇尊號詔書一之由於大臣上退入、次上卿移二著端座一、次上卿令二官記敷一レ軾、次上卿以二官人一召二内記一仰二詔書之趣一、内記退入、次内記持二參詔書草一、次上卿披見、畢内記退入、次上卿以二官人一召二職事一、仰下可レ令二奏聞一之由上、次職事還來、仰下可レ令二清書一之由上、退入、次上卿以二官人一召二内記一給二詔書草一、仰下可レ令二清書一之由上、次内記持二參清書一、次上卿披見、畢進二弓場代一、〈内記持レ筥相從〉令二職事奏聞一返給、次上卿還二著陣一、内記置レ筥退出、次上卿以二官人一召二中務省一、中務輔參二進軾一、次上卿給二詔書中務輔一取レ之退出、次職事就レ軾、仰下可レ差二進左右近衞將曹府生番長各二人近衞各三人一之由上、次上卿以二官人一召二外記一、令レ傳下仰可レ差二進御隨身一之由上、次職事就レ軾、仰二御封頓給衞士仕丁等之事一退入、次上卿以二官人一召レ辨、仰二御封以下之事一、次上卿起座、次參議起座、〈◯又見二公卿補任、尊號宣下次第、執次詰所記、貞享四年記、續皇胤紹運録一、〉

〔御昇壇記〕

p.0815 尊號宣下詔書
詔朕以二幼冲之躬一、繼二皇化之任一、受二四海之圖籍一、納二萬民之貢珍一、上皇聖姿、輕二寳位於脱屣一、傳二神器於無窮一、今不レ致二至孝誠一、何酬二親愛厚一、冀庸二典禮一、謹守二洪基一、恭上二尊號一、宜レ爲二太上天皇一、布二告遐邇一、俾レ知二朕意一、主者施行、
　　寳永六年六月廿三日

〔章貞宿禰記〕

p.0815 寳永六年六月廿五日、〈◯中略〉又自二關東一、御領〈◯東山〉定被レ進二七千石一云々、

〔執次詰所記〕

〈中御門〉

p.0815 享保廿年三月廿三日、尊號太上天皇奉レ稱二仙洞一、〈◯又見二尊號宣下次第、續皇胤紹運録一、〉

〔公卿補任〕

〈中御門〉

p.0815 享保廿年三月廿三日、太上天皇尊號宣下、〈◯中略〉上卿内大臣、〈◯久我惟通〉參議左大辨宰相、辨顯道、奉行兼胤、　卅日、詔書覆奏、上卿一條大納言、辨規長、奉行基禎朝臣、　後三月十五日、尊號御報書奏聞使御厩別當、　廿四日、尊號御報書勅答、上卿源大納言、作者長誠朝臣、清書執筆右大將、奉行兼胤、

〔難波宗建卿記〕

p.0816 享保廿年後三月十五日、尊號(○○)〈◯中御門〉御報書也(○○○○)、久中絶之處(○○○○○)、今度御再興(○○○○○)、珍重々々、　廿四日、尊號御報書勅答也、

〔友俊記〕

p.0816 延享四のとし丁卯五月七日、尊號宣下、さくら町御殿太上天皇と申奉る、〈◯又見二執次詰所記、續皇胤紹運録一、〉

〔公卿補任〕

〈櫻町〉

p.0816 延享四年五月七日、太上天皇尊號宣下、上卿内大臣、〈◯二條宗基〉辨益房奉行實連朝臣、　十日、詔書覆奏、上卿葉室大納言、奉行實連朝臣、　八月七日、尊號御報書勅答、上卿中山大納言、中使中山大納言、奉行説道、

〔公卿補任〕

〈後櫻町〉

p.0816 明和七年十一月廿五日、太上天皇尊號宣下、〈◯中略〉上卿内大臣、〈◯九條道前〉參議新宰相中將、辨謙光、奉行光祖、　三十日、詔書覆奏、上卿右大將、辨篤長、奉行紀光朝臣、〈◯又見二續皇胤紹運録一〉

〔公卿補任〕

〈光格〉

p.0816 文化十四年三月廿四日、太上天皇尊號宣下、上卿右大臣、〈◯鷹司政通〉參議左宰相中將、辨顯孝、奉行經定朝臣、　四月廿八日、太上天皇尊號御報書勅答、上卿權大納言、中使同卿、奉行俊明朝臣、

〔御讓位禁秘抄〕

p.0816 文化十四丁丑春三月廿四日、尊號宣下、〈◯光格〉御次第、〈上卿右大臣〉上卿著二仗座一、次參議著座、次職事來、仰下被レ奉二太上天皇尊號一、可レ令レ作二詔書一之由上、次上卿移二著端座一、令二官人敷一レ軾、次上卿令三官人召二内記一、仰二詔書事一云々、
伏覽二去月廿四日詔書一、尊號爲二太上天皇一、反覆數四、慙惕交至、竊惟厚加二崇禮一、非二禪讓之本旨一、叨當二過稱一、豈爲二撝挹之高義一、加之兵爲二宮闕周衞一、宜レ復二彼府一、土是國家實用、何私二斯身一、方今翳々林樾、會心不二必求一レ遠、洋々池沼、遐想却此在レ近、領二芬芳於三春一、寧非二櫻町名園一哉、期二壽齡於千秋一、亦是栖鶴之幽洞也、可レ謂二嗜好厭足、忻樂有一レ餘者、夫嚴父之儀、既修二之於往日一、養志之孝、須レ行二之於當時一、語曰、四時之序、成レ功者去、我慕二其義一久矣、新主其勉、敷二大徳一以安二四海一、則所レ獲實多、敢貪二尊名一、而招二謗議一乎、請聽レ所レ謝、一從二停廢一、及二隨身兵仗封戸等一、亦皆遣歸、伏冀拄二回玄鑒一、莫レ拒二丹誠一、謹言、

p.0817 　　文化十四年四月廿八日　御諱
五月七日勅答
御諱謹言、屬奉二嚴諭一、見レ謝二尊號一、屈損之旨、溢二于紙上一、卑退之辭、出二于意外一、悚懼之餘、不レ知レ所レ報、蓋聞冬温夏清、往哲人之善教、進レ膳上レ服、舊史氏之美言、熟思下爲二人子一之道上、安可三須 遺二其親一、伏冀察二懇々之至情一、轉二謙々之確志一、永居二太上之尊一、令レ行二微薄之孝一、不レ退二兵仗一、以警二非常一、無レ返二封戸一、以給二奉養一、保二全壽算於棲鶴之洞一、啓二沃慈訓於雙鳳之闕一、豈唯一人之慶已、亦是群臣之願也、以固請、莫レ有二逆排一、御諱〈◯仁孝〉謹言、
　　文化十四年五月七日　〈御諱〉謹言〈◯又見二執次詰所記一〉

出家後上尊號

〔古事談〕

〈一王道后宮〉

p.0817 花山院御出家、寛和二年六月廿三日事也、〈◯中略〉未時許、頭中將實資參入、即候二御前一、仰云、見已遂二宿念一也、全不レ知二世間誹謗一、但尊號及封等事、更不レ可二受容一、〈◯下略〉

〔一代要記〕

〈四花山〉

p.0817 寛和二年六月二十三日、號二太上天皇一、固辭之、〈◯又見二扶桑略記、歴代皇紀、皇胤紹運録、皇年代略記一、〉

〔日本紀略〕

〈九一條〉

p.0817 寛和二年六月廿八日乙丑、詔上二太上天皇尊號於花山法皇一、

〔榮花物語〕

〈四見はてぬ夢〉

p.0817 花山院ひんがしのゐんの九の御かた〈◯藤原伊尹女〉に、あからさまにおはしましけるほどに、やがてゐんの御めのとのむすめ中務といひて、あけくれ御らむぜしなかに、なにともおぼし御らんぜざりける、いかなる御さまにかありけん、これをめして御あしなどうたせさせ給けるほどに、むつまじうならせ給て覺し移りて、寺へもかへらせ給はで、つく〴〵と日ごろをすぐさせ給、〈◯中略〉かやうなる御有さま、おのづからかくれなければ、御封などもなくていかにいかにとて、きさいのみや〈◯圓融后詮子〉攝政殿〈◯藤原兼家〉などきヽいとほしがりたてまつらせ給て、受領までこそえさせ給はざらめ、つかさかうふり、〈◯年官年爵〉御封などはあべきことなり、いとかたじけなきことなりとさだめさせ給て、さるべきつかさかうふり御封などたてまつらせ給へば、いとど御さとずみ心やすく、ひたぶるにおぼされて、ひんがしのゐんの、きたなるところにおはしま

p.0818 しどころつくらせ給、

黜位上尊號

〔皇年代略記〕

〈光嚴〉

p.0818 正慶二年五月十日、遷二御伊吹山太平護國寺一、〈◯中略〉此間爲二伯州詔命一、〈◯後醍醐〉奉レ退二皇位一、〈◯中略〉十二月十日、被レ獻二太上天皇尊號一、〈御年廿三〉同日、被レ獻二隨身兵仗一、〈左右近將曹府生番長各一人、近衞各三人、〉
首書、　詔朕恭承二帝系一、叨握二神符一、王道難レ覃、謝二徳於姫周之賢一、庸昧可レ耻、宣二化於夷夏之俗一、而皇太子謙讓合レ道、惠澤普及、今避二儲位於青闈之月一、伴二仙遊於射岫之雲一、仍雖レ無二准的之舊蹤一、加以二禮制崇敬一、宜下上二尊號一爲中太上天皇上、普告二遐邇一、俾レ知二朕意一、主者施行、元弘三年十二月七日、〈◯七日、十日誤、〉

〔皇朝史略〕

〈十一後醍醐〉

p.0818 外史氏曰、孔子曰、名不レ正則言不レ順、言不レ順事不レ成、量仁親王既爲二帝儲貳一、方二帝之蒙塵一、則監國稱レ制、固其宜也、然帝未レ讓レ位、既爲レ賊所レ立、斥爲二閏位一、則帝之復レ位、勢不レ得レ不レ廢、已廢之則故親王也、安可下以二尊號一加上レ之哉、名之不レ正、莫二斯之甚一、恢復之初、庶績草創、而紀綱紊亂如レ此、宜其再致二播遷一也、

〔續神皇正統記〕

〈光嚴〉

p.0818 十二月〈◯正慶二年〉尊號を獻ぜらる、詔書に皇太子今避二儲位於青闈之月一、伴二仙遊於射岫之雲一、之文章を載られけるとかや、

〔皇年代略記〕

〈崇光〉

p.0818 觀應二年十一月七日、奉レ廢レ之、〈武將和睦、賀名生君（後村上）申二行之一、廢二觀應號一、爲二正平六年一、〉十二月廿八日、被レ奉二太上天皇尊號一、〈於二南方行宮一宣下之由、翌年正月三（三一本作レ二）日、被二告申一、〈御年十八〉◯又見二續神皇正統記、椿葉記、皇胤紹運録一、〉

在位上尊號

〔玉海〕

p.0818 壽永二年八月十八日庚戌、今日議定之趣、追可二尋記一之、定無二異議一歟、近代之作法而已、〈◯中略〉　十九日辛亥、早旦問二昨日定子細於兼光朝臣許一、注送旨如レ此、〈◯中略〉
　先主〈◯安徳〉尊號事
尤可レ候之由、一同議定、若無二其議一者、定有二兩主之疑一歟、

〔源平盛衰記〕

〈三十二〉

p.0818 還俗人即位例事
同十八日、〈◯壽永二年八月〉左大臣經宗、堀河大納言忠親、民部卿成範、皇后宮權大夫實守、前源中納言雅頼、

p.0819 梅小路中納言長方、源宰相中將通親、右大辨親宗參入セラレテ、即位并劒鏡璽宣命尊號事等議定アリ、〈◯中略〉舊主〈◯安徳〉尊號事、若無二尊號一者、天可レ似レ有二二主一、尤可レ有二沙汰一歟、宣命事任二外記勘状一、可レ被レ用二嘉承例一、〈◯堀河〉之由、一同ニ定申サレケリ、〈◯中略〉舊主已ニ尊號ヲ奉ラレ、新帝〈◯後鳥羽〉踐祚アレ共、西國ニハ又三種神器ヲ帶シ奉ラレ、寳祚ヲ受給テ今ニ在位、國二主有ニ似タルカ、叙位除目已下事、法皇(○○)〈◯後白河〉宣(○)ニテ被レ行レ之上者、強ニ急ギ無二踐祚一トモ可レ有二何苦一、〈◯中略〉二人ノ帝ノ御坐事未レ聞、世ノ末ナレバヤ、京田舍二人ノ國王出來給ヘリ、不思議也トゾ申ケル、

〔皇年代略記〕

〈後醍醐〉

p.0819 建武三年〈延元元也〉十月十日壬午、重又幸二花山院亭一、〈官軍雖レ無レ利、以二和睦儀一武家申二行之一出御云々、〉　十一月二日、被レ奉二太上天皇尊號一、〈今日被レ渡二劒璽於新帝（光明）土御門殿一〉

〔神皇正統記〕

〈後醍醐〉

p.0819 十月十日〈◯延元元年〉の比にや、主上都に出させ給ふ、〈◯中略〉主上は尊號の儀にてましましき、
◯按ズルニ、此年十月北朝陽テ和ヲ南朝ニ請フ、後醍醐天皇亦權ニ之ヲ許シ、京師ニ還御アリシヲ以テ尊號ヲ奉リシナリ、然レドモ實ニ之ヲ受ケタマヒシニハ非ザルナリ、姑ク附記シテ參考ニ供フ、

幼帝受尊號

〔玉海〕

p.0819 仁安三年二月廿八日辛酉、尊號事、〈◯六條〉上卿藤大納言、　廿九日壬戌、見二昨日尊號詔一、大内記光範作レ之、其詞曰、
詔朕以二幼冲一、忝承二叡託一、皇縁之寄不レ輕、難レ委二朝政於賢佐一、童蒙之心未レ決、何忘二夕惕於眇身一、上欽二祖宗一、下慙二黎元一、太上天皇徳法二三才一、道光二四表一、諸夏皆致二就日之望一、率土旁通二嚮風之跡一、而忽抽二脱屣之思一、更謝二守文之尊一、辭二宸居於帝宮一、富二春秋一而養レ志、訪二仙遊於姑射一、尋二水石一而閑レ心、至矣將聖之道、纖二介大縁一者歟、抑禮有二恆法一、國存二舊規一、列代彝範、何不二率由一、宣下上二尊號一爲中太上天皇上、布二告遐邇一、俾レ知二朕意一、主者施行、
　　仁安三年二月廿八日、〈有二御畫一、攝政書レ之、〉

〔兵範記〕

p.0820 仁安三年七月十一日庚午、晩頭參内、權大納言公保卿被レ候二仗座一、下官奉二攝政殿〈◯藤原基房〉仰一、開二日記御厨子一、取二出新院尊號御辭書一、〈去三月、十一日被レ獻也〉式部大輔永範卿草之、中宮大進光長書之、清書檀紙一枚、有二裹紙一、以二又二枚一卷二禮紙一、其上又卷二一紙枚一、納二朴筥一、有二白織物折筥一、有二花足小机一、同押二織物面一、毎事如レ常、表筥依レ仰下二給權大納言一、〈引二留懸紙裹紙等一〉仰云、書二案文一可レ留レ局、又仰云、猶可レ奉二尊號一由、可レ作二返報一、其趣可レ依二昌泰二年十月例一者、次上卿移二端座一、召二官人一令レ敷レ軾、次召二大内記光範一下二給御辭書一、被レ仰二返答趣一、次光範覽レ草、攝政殿令レ候二朝餉一、仍召二下官於仗下一、上卿被レ示下可二内覽奏聞一由上、〈入レ筥、御辭書本被二加入一之、〉殿下御覽了返給、仰令二清書一、次上卿參二弓場一、令三下官奏二清書一〈黄紙、〉下官如レ初奏覽、上卿被レ候二殿上一、殿下令レ書二御諱一給、〈三ケ所〉下官於二御前一入二平筥一、無二禮紙一以二檀紙二枚一裹之、前後押合〈不二結申一〉居二花足机一、令三下官給二大納言一、被レ仰下可レ持二參新院一之由上、下官從二上戸一出、置二殿上臺盤南縁一、〈當二彼座之間一〉大納言召二藏人一令レ持レ之、起座退下、於二弓場殿一、令レ持二左近將曹大石範直一、被レ參二彼院一、〈東山末、七條殿御所東面、〉次下官退出、大納言、自二新院一被二歸參一哉否不レ知之、
於二彼院一別當中納言資房奏二事由一、受二取報書筥一、持二參御所一、
去三月十一日、新院被レ獻二御辭書一、先例雖レ有二御返報一、去寛治元年十二月被レ獻二辭書一、〈◯白河〉正月有二御返報一、准二彼例一四月可レ有二御返報一由雖レ有二議定一、自二四月中旬一、下官恐懼不二出仕一、他人又不二申出一、已及二三四月一、仍下官令二申行一也、件御辭書、無二上皇御諱一、是幼稚之間、不レ能二宸筆一之上、無下可二奉書一之人上故云々、而無二御諱一之返勅、爲二後代一聊可レ有二分別一由、下官申二殿下一、仍被レ尋二問先例一之間、大内記光範引二勘柱下一之處、昌泰二年、村上〈◯村上恐宇多誤〉天皇尊號之間、延喜聖主〈◯醍醐〉返報無二臣字一、頓首死罪文之由申上、無二左右一任二件例一被二仰下一了、今度上皇御辭書、無二御諱一之條猶有レ難、不レ可レ爲二後例一歟、依レ問有レ答之間、返報之状被レ省二略臣字并死罪文一、又非二穩便事一歟、
上皇御辭書
伏見二詔書一、敢非二雅意一、何以二幼冲不敏之性一、猥忝二太上立徳之名一、况乎惶二馭俗於秋駕一、追二脱屣於虚舟一、守二

p.0821 寳位一而四廻、誰聞二薫風之聲一、加二尊號一而一旦、忽驚二紫泥之色一、稱謂之美、無レ益二于林門一、崇重之儀、不レ堪二于輕薄一、縱有二舊規一、可レ無レ所レ據、早罷二上皇之峻號一、令レ遂二下愚之懇懷一、謹言、
　　仁安三年三月十一日
作者式部大輔永範卿、清書中宮大進光長、使院別當權大納言定房卿、
奉レ答二上皇辭一レ號
諱謹言、忽奉二駿命一、推二謝尊名一、驚怖之至、意緒易レ紊、夫前聖之垂レ規者、後哲之所レ鑑也、國典既有レ跡、徽號何爲レ踰、伏以監國守器之始、纔送二夏暦之三載一、堯讓臨レ民之今、偸慕二舜日之再中一、惷昧之甚、當二餘熱一而心寒、兢惕之深、履二薄氷一而股戰、謬忝二受禪之寄一、謹獻二稱謂之崇一、而堅抽二撝挹一、更賜二辭章一、縱欲レ擅二閑伴於白雲一、豈敢忘二厚禮於粉澤一、煩廻二聖慮一、勿忤二愚執一、諱謹言、
　　仁安三年七月十一日諱謹言〈◯十一日、皇代記、皇年代略記、並作二十日一誤、〉

停尊號稱太上法皇

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

p.0821 寛平九年七月十日、詔上二太上天皇尊號於先皇一、〈◯宇多〉　十四日丁亥、太上天皇上書辭二尊號一、天皇上レ状不レ許之、上皇又上書、　十五日、太上天皇又手書云、至二於封戸一總非レ所レ受、諸衞分直亦皆可レ停、　昌泰二年十月廿日、太上皇又謝二尊號一、

〔菅家文草〕

〈八〉

p.0821 奉二朱雀院太上皇〈◯宇多〉勅一重請レ停二尊號一状
使者往反、來報再三、初擧下佛法附二國王一之義上、次陳下天皇棄二寳位一之情上、披讀之中、心神迷亂、雖レ似二急急一、不レ能レ不レ言、凡所謂附二法國王一者、是膺レ籙受レ圖之人君、非二燒レ香散レ花之弟子一、偏依二虚號一、囑以二正教一、正教之玭、不レ日而見、又所下以逃二重累一以委中新君上者、欲下一日萬機、保二安社稷一、子子孫孫相中傳天下上也、尋レ雲而逐、蹈レ海而隨、雖レ在二固拒之詞一、自妨二持念之意一、今日以後、勿レ告二斯趣一、定損二吾神一、定傷二吾性一、至下于漢家曽無二舊典一、當朝未上レ有二前例一、彼不レ行二其志一也、我遂行二其志一也、已云二出家一、何得レ稱レ皇、亦曰二入道一、何不レ貴レ僧、求二之戒律一、問二之威儀一、年臘次第、衣鉢行列、不レ可二以越一レ之、不レ可二以違一レ之、而今落髮之後、四五日來、爲レ讀レ經請二其師一、師主恭敬如レ故、爲レ共レ齋

p.0822 屈二其僧一、僧綱恐惶倍レ前、欲レ恊二佛教一、乃用二私禮一、師主僧綱無レ由二親近一、一畏二違律之結一レ罪、一悲二宿願之難一レ熟、非レ有二他煩一、只煩二尊號一、縱二佛子一早停二本號一、其國王猶修二舊禮一、雖レ非二上皇一、可レ得二尊重一、一人國主如レ是尊重、四海黎民誰爲二輕慢一、爲二帝父一爲二舊君一之徳、雖レ無レ所レ指、百代可レ傳、若遂嫌レ無レ號、必可レ究二其執願一、專除二太上皇一、直被レ喚二朱雀院一、稱謂之名、依止之處、彼此隨レ意、豈不レ宜哉、挌レ筆而止、忘レ筌以留、勿レ令下新發意者頻疲中談論上耳、
　　昌泰二年十月廿日

〔本朝文粹〕

〈七書〉

p.0822 醍醐天皇奉レ答下法皇〈◯宇多〉請上レ停二尊號一書　　　　　紀納言〈◯長谷雄〉
諱謹言、伏奉二慈旨一、被レ告三入道兼嫌二尊號一、悲感之腸、一時九廻、但至レ停レ號、所レ不二敢甘一、世尊猶有二十號一、上皇遂無二一累一、〈◯累扶桑略記作レ果〉實封不レ受、虚稱何勞、仰願廻二大慈悲一、留二此排拒一、〈諱〉謹言、
　　年〈◯昌泰二年〉十月廿四日　諱言〈◯又見二朝野群載一〉

〔菅家文草〕

〈八〉

p.0822 奉二朱雀院太上皇〈◯宇多〉勅一請レ停二尊號一状
前年讓レ位者、爲二社稷一也、今日出レ家者、爲二菩提一也、空閑可レ守、撝挹惟勤、願早停二太上皇之號一、令レ成下盡二形尋一之願上矣、
　　昌泰二年十月廿四日〈◯又見二日本紀略一〉
　　　　　奉二朱雀院太上皇勅一重請レ停二尊號一状
入道之縁、業在レ省レ事、省レ事之人、不レ貴二虚名一、况可下稱二佛子一以過中一生上、何敢帶二人君一以事二三寳一、今如二來報一、不レ許レ停レ號、孝子尊レ父之情、先感二其志一、施主隨レ師之義、今勿二相違一耳、
　　昌泰二年十月
　　　　　奉二朱雀院太上皇勅一重請レ停二尊號一状
使者再廻、報書重至、讀未二三四字一、涙已千萬行、夫述二父志一、是子之至孝也、成二師願一非二佛之實語一乎、今師昔父、志述願成、天下之有レ耳有レ目者、何人得レ不二隨喜讃歎一、若相二違所一レ請、惱二亂我心一、近則逐二白雲一以沒レ名、遠亦

p.0823 超二蒼海一而收レ跡、存問之道、寒温之便、於レ焉而絶、鳴呼悲哉、
　　昌泰二年十月〈◯又見二朝野群載一〉

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

p.0823 昌泰二年十一月廿五日乙卯、詔停二朱雀院太上天皇〈◯宇多〉之尊號一、　延喜五年七月廿一日、法皇〈◯宇多〉請レ辭二封戸一、〈◯又見二扶桑略記一〉

〔本朝文粹〕

〈七書〉

p.0823 法皇請レ停二封戸一書　　　　　　紀納言〈◯長谷雄〉
手詔再到、不レ許レ所レ辭、驚而又悶、欲レ罷不レ能、凡出家本意、爲レ避二塵機一、如食二公封一、何斷二俗累一、始在二揖讓之間一、事摠排脱、將下損二一毛一以益中萬分上、丹棘如レ舊、白楡數遷、更有二何意一、可レ改二初懷一、彼清和故事、與レ今不レ同、雖レ云レ入二不二之門一、而猶居二上九之位一、奉レ充二御封一、理實宜レ然、至レ如二小僧一、長抛二尊號一、不レ知不レ識、何典之從、又季世之衰、隨レ日而至、民俗厚薄、府庫盈虚、豈與二貞觀之代一、得二同レ日而論一乎、夫幽栖之謀、虚閑爲レ業、三衣一鉢之外、受二民貢一而何爲、苔徑松扉之中、領二邑祖一而安納、若秋山嵐寒、則臨レ時可レ望二御府之衣一、若曉爐煙絶、則計レ日將レ乞二公家之食一、帝王既在、未二敢謂一レ貧、寧不レ喜二南陔〈◯陔原作レ院、依二扶桑略記一改、〉之志一、只爲レ遂二西方之念一也、願早收二綸旨一、莫レ繫二小僧虚舟之心一、
　　延喜五年七月廿一日〈◯又見二朝野群載、扶桑略記、日本紀略一、〉

〔類聚三代格〕

〈四〉

p.0823 太政官符
　應レ加二置眞言宗年分度者四人一事
右太上法皇(○○○○)〈◯宇多〉勅命曰、〈◯中略〉
　　延喜七年七月四日

厄年辭尊號

〔一代要記〕

〈五鳥羽〉

p.0823 保安四年二月二日、有二太上天皇尊號詔一、〈◯又見二十三代要略、歴代皇紀、皇胤紹運録、皇年代略記一、〉

〔皇代記〕

〈鳥羽〉

p.0823 保安四年二月二日、被レ上二尊號一、　十四日戊辰、被レ獻二報書於内裏一、

〔中右記〕

p.0823 保延元年十二月十八日、中納言顯頼卿送レ書云、院〈◯鳥羽〉明年御愼(○○○○)不(○)レ輕(○)、仍可下令レ辭二申尊號并御

p.0824 隨身一給上候、宇多院停二尊號一、白河院令レ辭二隨身一給歟、縱無二先跡一、可レ有二叡慮一、况可レ准二據彼等例一之由、所二思食一也、但御却状御願文年月下、書二太上天皇一有二御諱字一、而御辭退之後、可レ被レ置二前字一歟、將只可レ被レ書二御諱許一歟如何、如レ此之趣、委細可下令二計申一給上者、依二御氣色一言上如レ件、予申云、不レ論二先例一、如可下令レ辭二申尊號一給上者、只可レ任二御叡慮一也、但辭二退尊號一後、前太上天皇字不レ可レ候歟、只御諱字計可レ候也、早以二此旨一、可下令二奏達一給上、　廿四日、從レ院有レ召、午時許著二直衣一參院、民部卿、〈忠教〉源大納言、〈師頼〉按察大納言、〈實行〉參會、以二藤中納言顯頼一被レ仰云、明年御愼重、仍可レ被レ辭二申太上天皇尊號并御隨身一也、而如二御願文祭文時一、可レ被レ書二前太上天皇一歟如何、前字可レ有二其忌一歟、人々相議被レ申云、前字不レ可レ有二其忌一、臣下モ辭官之後、號二前太政大臣一常事也、又被レ仰云、先々雖レ有二返報一、於二今度一者長可二辭申一、不レ可レ被レ返之由欲レ奏也、人々申云、可レ在二御慮一也、及二申時一退出、　廿九日、參院、民部卿、源大納言、按察大納言、〈已上直衣〉中納言顯頼卿參入、今日尊號御封御隨身令二辭申一給也、大貳實光作二報書一、源大納言被レ申、封書之中、厄運殊重字可レ被レ改歟、先年入道左府、厄運重詞、可レ忌之由、被二云置一事候、仍厄運可レ愼之文〈二〉被レ成了、朝隆清書用二檀紙一、入レ筥裹二檀紙一、顯頼卿取二報書一、置二小大盤上一、使二別當右衞門督實能卿取一レ之、令レ持二六位判官代清雅一、立レ先被二參内一、置二殿上小大盤上一、頭辨宗成取レ之持二參殿下一、内覽奏聞之後、納二日記御厨子一申了、長依下令二辭申一給上、無(○)二勅答(○○)一由被二沙汰一也、〈◯又見二一代要記一〉

〔本朝續文粹〕

〈七書状〉

p.0824 鳥羽院奉二答天皇一〈◯崇徳〉請レ罷二尊號一仙院御報書　　　　　　敦光朝臣
先命重至、謙拒彌深、夫亢龍之誡、易象垂レ文、頻攄二冲挹之旨一、請レ罷二上皇之名一、今披二尺牘之無一レ許、更有二寸心之不一レ移、彼唐堯之遊二汾陽一也、未レ聞二稱謂之舊典一、劉煓之歸二豐邑一也、始傳二太上之新儀一、縱雖レ聞二奕代之勝躅一、寧忝二尊號於微躬一、方今乾坤屢呈二變動之異一、州縣不レ休二虚耗之愁一、非二啻厄會之可一レ惶、兼傷二凋殘之難一レ救、况乎翫二林泉於洛外之地一、尋二烟嵐於壺中之天一、閑適者養生之藥也、何必收二雲稼於民烟一、仁義者却邪之器也、何必耀二霜仗於仙洞一、然則封戸之租、早停二來貢一、期門之士、莫レ分二嚴威一、
　　保延三年七月廿二日

〔中右記〕

p.0825 保延三年七月廿三日癸未、院〈◯鳥羽〉姫宮百日也、仍未時許、參二院御所白河一、〈◯中略〉有二盃酌一、人々勸盃、上皇出御、〈◯下略〉

〔百練抄〕

〈六崇徳〉

p.0825 保延三年十月十五日、上皇〈◯鳥羽〉供二養鳥羽東殿御堂一、〈安樂壽院〉

〔百練抄〕

〈十五後嵯峨〉

p.0825 寛元四年二月十三日癸酉、院〈◯後嵯峨〉尊號被二宣下一、上卿右大將實基卿參行之、〈◯又見二神皇正統記一、二月一代要記作二七月一、十三日皇年代略記、皇胤紹運録、並作二五日一、〉

〔經俊卿記〕

p.0825 寛元四年二月十三日癸酉、今日太上天皇尊號〈◯後嵯峨〉也、詔書并頓給仕丁等事、可レ被二宣下一云云、相二待殿下〈◯藤原實經〉御參一之由、頭辨示之、頃之殿下御參、頭辨宣下之、詔書奏之、殿下已加二御畫一給云々、又同御隨身將曹府生番長各二人、近衞各三人被二宣下一之、將曹久員、本官將監也、先例等兼日有二其沙汰一、頭辨奉行也、〈◯又見二陽龍記一〉

〔百練抄〕

〈十五後嵯峨〉

p.0825 寛元四年二月廿七日丁亥、詔書覆奏也、權大納言公相卿已下參入、〈◯又見二陽龍記一〉

〔陽龍記〕

p.0825 寛元四年二月廿八日戊子、上皇〈◯後嵯峨〉御詔書使土御門大納言、

〔經俊卿記〕

p.0825 寛元四年三月五日甲午、今日太上天皇御報書勅答、使堀河大納言、〈具實〉頭辨奉行之、早出之間、不レ見二其儀一可レ尋、

〔皇年代略記〕

〈後嵯峨〉

p.0825 弘長元年三月十四日、辭二尊號一、〈依二今年辛酉革命一也〉

〔帝王編年記〕

〈二十六龜山〉

p.0825 弘長元年五月八日、一院〈◯後嵯峨〉於二龜山殿一、令行二如法經一、　六月十三日、上皇〈◯後嵯峨〉自二龜山殿一、御二幸石清水一、如法經奉納、〈◯又見二一代要記一〉

一時有二上皇

〔一代要記〕

〈三淳和〉

p.0825 上皇　平城　嵯峨〈◯又見二帝王編年記一〉

〔類聚國史〕

〈二十五帝王〉

p.0825 弘仁十四年四月丙午、先太上天皇、〈◯平城〉差二前大和守從三位藤原朝臣眞夏一、令レ賷下可レ停二止平城宮諸司一状上、

〔續日本後紀〕

〈三仁明〉

p.0825 承和元年正月甲寅、後太上天皇、〈◯淳和〉賀二先太上天皇〈◯嵯峨〉於冷然院一、以レ入二新年一也、先

p.0826 太上天皇、乍レ驚逢二迎中庭一、

〔簾中抄〕

〈上〉

p.0826 淳和天皇、〈◯中略〉承和七年五月崩、後太上皇と申、嵯峨をば前の太上皇と申、院のふたり並びておはしましければ、前後となづけ奉れり、

〔神皇正統記〕

〈淳和〉

p.0826 天下を治め給ふ事十年、太子〈◯仁明〉に讓りて、太上天皇と申す、此時兩上皇ましましければ、嵯峨をば前太上天皇、此御門をば後太上天皇と申き、

〔一代要記〕

〈四醍醐〉

p.0826 上皇　陽成院　宇多院〈◯又見二帝王編年記一〉

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

p.0826 寛平九年九月十日壬午、後太上天皇、〈◯宇多〉於二朱雀院一喚二詩人一、

〔日本紀略〕

〈三村上〉

p.0826 天暦三年十月二日辛未、依二前太上天皇〈◯陽成〉崩一、遣二三關使一、
◯按ズルニ、宇多帝ノ崩ジ給フヤ、陽成帝ニ先ダツコト、實ニ十有九年、爾後上皇ト稱スベキハ、特リ陽成上皇ノミ、然ルニ猶謂テ前太上天皇ト云フ、蓋舊稱ニ因循セシニ過ザルベシ、

一時有三上皇

〔帝王編年記〕

〈二十四仲恭〉

p.0826 太上皇　後鳥羽院　土御門院　順徳院

〔三長記〕

p.0826 建久九年正月廿日戊午、今日被レ奉二太上皇尊號〈◯後鳥羽〉詔書一、右府〈◯藤原兼雅〉參陣、頭中將宣二下尊號御隨身一、〈左右近將曹府生番長各二人、近衞各三人云々、〉并仕丁封戸頓給等事、同宣下云々、〈◯又見二一代要記、神皇正統記、皇胤紹運録、皇代記、皇年代略記一、廿日皇帝紀抄作二十九日一、〉

〔玉蘂〕

p.0826 承久二年十一月八日甲午、此日院〈◯後鳥羽〉被レ辭二尊號御隨身等一、鳥羽院保延元年例云々、〈◯中略〉御辭状草、大藏卿、〈◯菅原爲長〉注送之、
建久九年勅命再來、不レ罷二崇號一、無レ遂二蓄懷一、彼時縱有二漢行之不反一、當今盍レ許二懇志之所請一、夫父有二天下一、傳二了於子一、子有二天下一、歸二尊於父一、雖三太上之名恊二斯義一、而謙下之道切二于心一、四海謝二富樂一、虚舟之泛二汾水一、萬乘指二尊遇一、日車之遊二襄城一、素意不レ移、玄靜爲レ望、况乎明年之厄運可レ愼、今日之辭謝彌深、抑紅雪者、仙家之味也、何賷二霞租於民間一、白雲者、閑唐之伴也、豈耀二月弓於物外一、孝之爲レ大、在二於從一レ親、請褰二黈聽一、永斷二覊累一、

p.0827 　　承久二年十一月八日

〔増鏡〕

〈二新島守〉

p.0827 四にて位につき給て、〈◯後鳥羽〉十五年おはしましき、おり給て後も、土佐院〈◯土御門〉十二年、佐渡院〈◯順徳〉十一年、猶天の下にはおなじ事なりしかば、すべて三十八年がほど、この國のあるじとして、萬機のまつり事を御心ひとつにをさめ、もヽのつかさをしたがへ給へりし、そのほどふく風の草木をなびかすよりもまされる御ありさまにて、遠きをあはれみ、近きをなで給ふ御めぐみ、雨のあしよりもしげヽれば、津の國のこやのひまなきまつりごとをきこしめすにも、難波のあしのみだれざらんことをおぼしき、藐姑射の山のみねの松もやう〳〵枝をつらねて、千世に八千代をかさね、霞のほらの御すまひ、いく春をへても、そらゆく月日のかぎりしらず、〈◯下略〉

〔三長記〕

p.0827 承元四年十二月五日己未、尊號〈◯土御門〉事、藤中納言同奉行、〈◯又見二百練抄、皇胤紹運録、歴代皇紀、皇代記、皇年代略記一、〉

〔増鏡〕

〈一おどろの下〉

p.0827 その年〈◯承元四年〉のしはすに、太上天皇の尊號あり、新院〈◯土御門〉ときこゆれば、父の御門〈◯後鳥羽〉をばいまは本院と申、なほ御まつりごとはかはらず、

〔一代要記〕

〈七順徳〉

p.0827 承久三年四月廿三日、尊號、〈◯又見二皇帝紀抄、愚管抄、皇胤紹運録、歴代皇紀、皇年代略記一、〉

〔増鏡〕

〈二新島守〉

p.0827 承久も三年になりぬ、〈◯中略〉おなじ廿三日、〈◯四月〉院號のさたありて、いまおりさせ給へるを新院(○○)〈◯順徳〉ときこゆれば、御兄の院〈◯土御門〉をば中の院(○○○)と申、父御門〈◯後鳥羽〉をば本院(○○)とぞ聞えさする、

〔愚管抄〕

〈二仲恭〉

p.0827 廿六日〈◯承久三年四月〉新院〈◯順徳〉初御二幸一院〈◯後鳥羽〉御所嘉陽院一、去廿三日、太上天皇尊號云々、本の新院〈◯土御門〉をば、土御門院云々、太上天皇三人初例云々、

一時有五上皇

〔百練抄〕

〈十七後深草〉

p.0827 正元元年十二月二日庚子、大納言良教卿被レ奏二新院〈◯後深草〉尊號詔書一、〈◯又見二一代要記、神皇正統記、皇年代略記一、〉

〔高輔朝臣記〕

p.0827 正元元年十二月二日、今夜行二太上天皇〈◯後深草〉尊號詔書事一、〈職事仰詞、可レ奉二太上天皇尊號一、宜レ令レ作二詔書一、〉次御隨

p.0828 身事、并御封頓給被二宣下一歟、左右府生各一人、於二將曹一直被二仰下一之、不レ及二宣下一、建久〈◯後鳥羽〉除目之時被レ任之、但件仁不レ被二召加一歟、今日事不二出仕一之間、雖レ不二見及一、以二奉行職事頭辨資平朝臣説一記之、委猶可二尋記一、政始日、尊號御隨身事被二宣下一、應徳〈◯白河〉嘉例也、

〔増鏡〕

〈七北野の雪〉

p.0828 しはすの二日、〈◯正元元年〉太上天皇の尊號ありて、新院〈◯後深草〉ときこゆ、〈◯刊本有二錯亂一、據二古寫本一訂、〉

〔増鏡〕

〈九草枕〉

p.0828 文永十一年正月廿六日、春宮〈◯後宇多〉に位ゆづり申させ給、〈◯中略〉新院〈◯龜山〉は世をしろしめす事かはらねば、よろづ御心のまヽに、日ごろゆかしくおぼしめされし所々、いつしか御幸しげう花やかにてすぐさせ給、いとあらまほしげなり、本院〈◯後深草〉はなほいとあやしかりける御身のすくせを、人の思ふらん事もすさまじうおぼしむすぼヽれて、世を背かんの設けにて、尊號をも返し奉らせ給へば、兵仗をも止めんとて、御隨身どもめして、祿かづけ、いとまたまはする程、いと心細しと思ひあへり、

〔増鏡〕

〈十老の浪〉

p.0828 春宮〈◯伏見〉位に即給ひぬれば、天下本院〈◯伏見御父後深草〉におしうつりぬ、世の中おしわかれて、人の心どもかヽるきはにぞあらはれける、

〔皇年代略記〕

〈龜山〉

p.0828 文永十一年二月二日、太上天皇尊號、〈廿六、◯又見二神皇正統記、皇胤紹運録、皇代略記一、十一年、文應皇帝外記作二十二年一、〉

〔勘仲記〕

p.0828 弘安十年十月三十日丁亥、尊號〈◯後宇多〉宣下事、明後〈二日〉先帝(○○)〈◯龜山〉御衰日(○○○)之由、在秀朝臣申之、可レ爲二四日一之由治定云々、

〔伏見院御記〕

p.0828 弘安十年十一月十五日壬寅、今日舊主〈◯後宇多〉奉二尊號詔書一、文章博士在嗣朝臣草之、上卿信嗣卿先奏レ草、信輔朝臣奏之、次奏二清書一、於二朝餉一覽之、畫レ日返賜、〈◯又見二一代要記、皇胤紹運録、皇年代略記一、〉　廿八日乙卯、今日新院〈◯後宇多〉尊號御報書、權大納言公守卿御使也、信輔朝臣奏之覽之、置二日記御厨子上一、

〔増鏡〕

〈十一今日の日蔭〉

p.0828 おりゐの御門〈◯後宇多〉をいまは新院ときこゆれば、太上天皇みたり〈◯後深草、龜山、後宇多、〉世におはします比也、

〔増鏡〕

〈十三秋のみ山〉

p.0829 文保二年二月廿六日、御門〈◯花園〉おりゐさせ給ふ、春宮〈◯後醍醐〉はすでに三そぢにみたせ給へば、待遠なりつるに、めでたくおぼさるべし、法皇〈◯後宇多〉都に出させ給て、世の中しろしめす、

〔神皇正統記〕

〈後宇多〉

p.0829 天下を治めたまふ事十三年、思ひの外にのがれまし〳〵て、十餘年ありき、〈◯中略〉其後後醍醐の帝、位につきまし〳〵しかば、又しばらく世をしらせ給ひて、三年ばかりありて讓まし〳〵き、

〔皇年代略記〕

〈伏見〉

p.0829 永仁六年八月三日、太上天皇尊號、〈◯又見二神皇正統記、皇胤紹運録、皇代記一、〉

〔皇代記〕

〈伏見〉

p.0829 延慶元年十二月廿二日、兵仗宣下、同三年四月三日、兵仗辭退、

〔神皇正統記〕

〈伏見〉

p.0829 院中にて世をしらせ給ひしが、程なく時移りにしかど、中六とせばかりありて、又世をしり給ひき、

〔皇年代略記〕

〈後伏見〉

p.0829 正安三年正月廿八日、太上天皇尊號、〈◯又見二皇胤紹運録、皇代記一、〉

〔皇代記〕

〈後伏見〉

p.0829 延慶元年十二月廿八日、兵仗宣下、同廿九日兵仗御辭退、

〔増鏡〕

〈十一今日の日蔭〉

p.0829 おりゐの御門〈◯後伏見〉十四にて、太上天皇の尊號あり、いときびはにいたはしき御事なるべし、纔に三とせにておりゐさせ給へれば、何事のはえもなし、〈◯中略〉さて此君を新院と申せば、父の院〈◯伏見〉をば中院ときこゆ、御門〈◯後二條〉の御父〈◯後宇多〉は一院と申、法皇〈◯後深草〉も此比一におはしますなめり、一院の政事きこしめせば、天下の人又おしかへし一かたになびきたる程も、さもめの前にうつろひかはる世の中かなとあぢきなし、

〔神皇正統記〕

〈後伏見〉

p.0829 正和のころ、父の上皇〈◯伏見〉の御ゆづりにて世をしらせ給ふ、時のみかど〈◯花園〉は御弟なれど、御猶子の義なりとぞ、元弘〈◯後醍醐〉に世の中みだれし時、又しばらくしらせたまふ、

〔増鏡〕

〈十三秋のみ山〉

p.0829 おりゐのみかど〈◯花園〉は、御このかみの本院〈◯後伏見〉と、ひとつ持明院殿にすませ給ふ、
◯按ズルニ、正安三年七月、後二條天皇受禪、其後嘉元二年七月、後深草上皇崩御ニ至ル迄約四

p.0830 年、此間後深草、龜山、後宇多、伏見、後伏見ノ五上皇アリ、

院中聽政

〔愚管抄〕

〈四〉

p.0830 世のすゑの大なる變りめは、後三條院の世のすゑに、ひとへに臣下のまヽにて、攝籙臣世をとりて、内は幽玄のさかひにておはしまさん事、末代に人の心はおだしからず、脱屣の後太上天皇とて、政をせぬならひはあしき事なりと思召て、かた〳〵の道理さしもやは思召けん、委くは知らねども、道理のいたり、よも叡慮にのこる事あらじ、昔は君は政理かしこく、攝籙の人は一念わたくしなくてこそあれ、世のすゑには君はわかくて幼主がちにて、四十にあまらせ給ふは聞えず、御政理さしもなし、宇治殿〈◯藤原頼通〉などは多くわたくし有とこそは御覽じけめ、太上天皇にて世をしらん、當今はみな我子にてこそあらんずればと思召ける間に、ほどなく位をおりさせ給ひて、延久四年十二月八日御讓位、〈◯中略〉かヽる御心のおこりけるも、君の御私やおほかりけん、我御身はしばしも御脱屣の後、世をばおこなひ給はず、事の道理は、又世のすゑには、尤かヽるべければ、白河院はうけとらせおはしまして、太上天皇の後、七十七まで世をしろしめしたりけり、

〔續世繼〕

〈二紅葉の御狩〉

p.0830 白河院〈◯中略〉延久四年十二月八日、位につかせ給ふ、〈◯中略〉次の年の五月に、後三條院かくれさせ給ひにしかば、國のまつりごと、廿一の御年よりみづからしらせ給ひて、位におはします事十四年なりしに、三十四にて位おりさせ給ひて後、七十七までおはしましヽかば、五十六年國のまつりごとをせさせ給へりき、〈◯中略〉この院は、ちヽの太上天皇〈◯後三條〉世をしらせ給し事いくばくもおはしまさず、さきの御なごりにて、一の人のわがまヽにおこなひ給もおはせねば、若くより世をしらせ給て、院の後は、堀河院、鳥羽院、讃岐の院〈◯崇徳〉御こ、まご、ひヽこうちつヾき、三代のみかどの御代、皆法皇の御まつりごとのまヽなり、かく久しく世をしらせ給事は、昔もたぐひなき御ありさまなり、後二條のおとヾ〈◯藤原師通〉こそおりゐのみかどのかどに、車たつるやう

p.0831 やはあるなどのたまはせける、それかくれ給て後は、すこしもいきおと〈◯おと一本作二をも〉たつる人やは侍し、

〔神皇正統記〕

〈白河〉

p.0831 天下を治めたまふ事十四年、太子〈◯堀河〉に讓りて尊號あり、世の政を始めて院中にてしらせ給ふ、後に出家せさせ給ひても、猶其まヽにて御一期はすごさせまし〳〵き、おりゐにて世をしらせ給ふ事、昔はなかりしなり、孝謙脱屣の後にぞ、廢帝〈◯淳仁〉は位に居給ばかりと見えたれど、古代の事なれば、たしかならず、嵯峨、清和、宇多の天皇も、たヾ讓りてのかせ給ふ、圓融の御時は、やう〳〵しらせ給ふ事もありしにや、院の御前にて、攝政兼家の大臣承て、源時中の朝臣を參議になされたりとて、小野宮の實資の大臣などは、傾け申されけるとぞ、されば上皇ましませど、主上をさなくおはします時は、ひとへに執柄の政なりき、宇治の大臣〈◯藤原頼通〉の世となりて、三代の君の執政にて、五十餘年權を專らにせらる、先代には、關白の後は如在の禮にて有しに、あまりなる程に成にければにや、後三條院坊の御時より、あしざまに思しめすよし聞えて、御中らひあしくて、あやぶみおぼしめすほどの事になむ有ける、踐祚の時、即關白をやめて宇治にこもられぬ、弟の二條の教通の大臣關白せられしが、殊の外に其權もなくおはしき、まして此御代には、院にて政をきかせ給へば、執柄はたヾ職にそなはりたるばかりになりぬ、されどこれより又ふるきすがたは一變するにや侍りけん、執柄世をおこなはれしかど、宣旨官符にてこそ天下の事は施行せられしに、此御時より院宣(○○)、廳の御下文(○○○○○)をおもくせられしによりて、在位の君又位にそなはり給へるばかりなり、世のすゑになれるすがたなるべきにや、又城南の鳥羽と云所に離宮を立、土木の大なるいとなみ有き、むかしはおりゐの君は、朱雀院にまします、是を後院と云、又冷然院にも〈然の字火事のはヾかりありて、泉の字にあらたむ、〉おはしけるに、かの所々にはすませ給はず、白河より後には鳥羽殿をもちて、上皇御座の本所とは定められにけり、御子堀河の御門、御孫鳥羽の御門、御曾

p.0832 孫崇徳の御在位まで、五十餘年〈在位にて十四年、院中にて四十三年、〉世をしらせ給ひしかば、院中の禮(○○○○)など云事も是よりぞ定まりにける、

〔愚管抄〕

〈二白河〉

p.0832 此御時、院中に上下の北面をおかれて、上は諸大夫、下は衞府多く候て、下北面御幸の御後には矢おひてつかまつりけり、後にも皆其例なり、

〔愚管抄〕

〈四〉

p.0832 堀河院うせ給てける時は、重祚の御心ざしもありぬべかりけるを、〈◯白河〉御出家の後にて有ければ、鳥羽院をつけまゐらせて、陣の内に仙洞をしめて、世をば行はせ給ひにけり、光信爲義保清三人のけびゐしを、朝夕に内裏の宿直をばつとめさせられけるになん、

〔續世繼〕

〈二白河の花宴〉

p.0832 白河の法皇のおはしましヽ限りは、世中の御まつり事なかりしに、かの院うせさせ給て後は、ひとへに世をしらせ給て、〈◯鳥羽〉廿八年ぞおはしましヽ、

〔保元物語〕

〈一〉

p.0832 後白河院御即位事
大治四年七月七日、白河院隱レサセ給テヨリ後ハ、鳥羽院天下ノ事ヲ知召テ政ヲ行給フ、忠アル者ヲ賞シ御坐事、聖代聖主ノ先規ニ不レ違、罪有者ヲモ宥メ給フ事、大慈大悲ノ本誓ニ叶御坐ス、サレバ恩光ニ被レ照、徳澤ニ潤ヒテ、國モ富、民モ安カリキ、

〔神皇正統記〕

〈鳥羽〉

p.0832 白河院かくれ給ひて後、政を知せ給ふ、御孫ながら御子の義なれば、重服をきさせ給ひけり、是も院中にて廿四年、其間に御出家ありしかど、猶世をしらせ給ひき、されば院中の古きためしには、白河鳥羽の二代を申侍なり、

〔朝隆記〕

p.0832 保元三年八月十七日甲辰、尊號〈◯後白河〉事、〈◯又見二一代要記、皇代記、歴代皇紀、皇年代略記一、〉

〔續世繼〕

〈三内宴〉

p.0832 保元三年八月十六日、位〈◯後白河〉とうぐ〈◯二條〉に讓り申させ給、〈◯中略〉おりゐのみかどにて、御心のまヽに世をまつりごたんとおもほしめすなるべし、さき〳〵の御門位につかせ給、院など申せども、わがまヽにせさせ給事は、有難きに、並ぶ人もおはしまさず、

〔神皇正統記〕

〈後白河〉

p.0833 天下を治め給ふ事三年、太子〈◯二條〉にゆづりて、例のごとく尊號ありて、院中にて天下をしらせ給ふ事三十餘年、其間に、御出家ありしかど、政務はかはらず白河鳥羽兩代の如し、されどもうち續き亂世に合せ給ひしこそあさましけれ、

〔愚管抄〕

〈五〉

p.0833 保元三年八月十一日に、おりさせ給ひて、〈◯後白河〉東宮二條院に御讓位ありて、太上天皇にて、白河鳥羽の定にて世をしらせ給ふ、〈◯中略〉大方此二人〈◯藤原經宗、藤原惟方、〉して、世をば院にしらせ參らせじ、内〈◯二條〉の御さたにてあるべしと云けるをきこしめして、院は清盛を召て、我世にありなしは、此惟方經宗にてあり、是を思ふ程いましめて參らせよとて、なく〳〵仰ありければ、〈◯中略〉さてやがて經宗をば阿波國、惟方をば長門國へ流してけり、

〔源平盛衰記〕

〈三〉

p.0833 一院御出家事
高倉院踐祚ノ後ハ、無二諍方一一院〈◯後白河〉萬機之政ヲ聞召シカバ、院中ニ近ク召仕ル、公卿殿上人以下、北面ノ輩ニ至マデ、程々ニ隨フテ、官位俸祿、身ニ餘ル程蒙二朝恩一タレ共、人ノ心ノ習ナレバ、猶アキ足ズ覺テ、平家ノ一類ノミ、國モ官ヲモ多ク塞ギタル事ヲ目醒シク思テ、此人ノ亡タラバ、其レハアキナン、彼者ガ死タラバ、此官ハアキナメト心ノ中ニ思ケリ、〈◯中略〉一院モ被二思召一ケルハ、〈◯中略〉清盛カク心ノ儘ニ振舞コソ然ルベカラネ、是モ末代ニ及テ王法ノ盡ヌルニヤ、迚モ由ナシト思召立セ給テ、一筋ニ後世ノ御勤思召立ト聞エシ程ニ、〈◯中略〉嘉應元年己丑六月十七日、上皇法住寺殿ニシテ御出家アリ、〈◯中略〉平家ノ振舞、中々御善知識トゾ思召ス、

〔百練抄〕

〈八高倉〉

p.0833 治承三年十一月十五日、世間嗷々、武士滿二洛中一、入道大相國〈◯平清盛〉奉レ怨二公家一、率二一族一可レ下二向鎭西一之由風聞、上皇〈◯後白河〉以二法印靜賢一、自今以後、萬機不レ可レ有二御口入一之由被二仰遣一之、
或記云、上皇與二關白一、〈◯藤原基房〉可レ令レ滅二平家黨類一之由、有二密謀一之由有二其聞一、其上師家卿、超二二位中將一任二中納言一、其鬱云々、

〔玉海〕

p.0834 治承四年十二月十八日丙申、傳聞法皇〈◯後白河〉可レ知二食天下之政一之由、禪門〈◯平清盛〉再三被レ申、初雖レ有二辭遁之由御詞一、遂以御承諾、又讃岐美濃兩國、可レ爲二法皇之御分國一云云、

〔百練抄〕

〈九安徳〉

p.0834 養和元年正月十七日、天下萬機、法皇〈◯後白河〉如レ元可二聞食一之由被二仰下一之、

〔愚管抄〕

〈六〉

p.0834 太上天皇もおはしまさで、白河、鳥羽此院〈◯後白河〉と三代は、おりゐの御門の御世にて有ければ、めづらしく後院の廳務なくして、院の尊勝陀羅尼供養などいふ事も、法性寺にて行はれなどして、殿下、〈◯藤原兼實〉鎌倉の將軍〈◯源頼朝〉仰せ合せつヽ、世の政は有けり、

〔神皇正統記〕

〈後嵯峨〉

p.0834 天下を治め給ふ事四年、太子幼くまし〳〵しかども讓國あり、尊號例の如し、院中にて世をしらせ給ふ、御出家の後もかはらず、二十六年ありしかば、白河、鳥羽よりこなたには、おだやかにめでたき御代なるべし、

尊親王爲太上天皇

〔百練抄〕

〈十二仲恭〉

p.0834 承久三年八月十六日戊辰、持明院宮〈◯後堀河御父守貞〉有二尊號事一、右大臣〈◯藤原家通〉參二仗座一宣二下之一、〈◯又見二神皇正統記、紹運要略一、八月、一代要記作二七月一、〉

〔皇年代略記〕

〈後堀河〉

p.0834 承久三年八月十一日、尊二皇親入道守貞親王一、爲二太上天皇一、〈後高倉院是也〉

〔皇胤紹運録〕

p.0834 後高倉院〈承久三、八、十六、爲二太上法皇一、是依二茂仁王（後堀河）踐祚一也、出家之後尊號之始、又自二親王一直院號初例、〉

〔増鏡〕

〈三藤衣〉

p.0834 其頃〈◯承久年間〉いとかずまへられ給はぬふる宮おはしけり、守貞親王とぞ聞えける、高倉院第三の御子なり、隱岐の法皇〈◯後鳥羽〉の御このかみなれば、思へばやんごとなけれど、むかし後白河の法皇、安徳天皇の筑紫へおはしまして後に、見奉らせ給ける御むまごの宮たちえりの時、泣き給しによりて、位にもつかせ給はざりしかば、世中ものうらめしきやうにてすぐし給、さびしく人めまれなれば、年をへて荒れまさりつヽ、草深く八重むぐらのみさしかためたる宮の中に、いと心細くながめおはするに、建保〈◯順徳〉のころ宮のうちの女房の夢に、かうぶりしたるものあ

p.0835 またまゐりて、劒璽を入奉るべきに、おの〳〵よういしてさふらはれよといふと見てければ、いとあやしうおぼえて、宮にかたり聞えけれど、いかでかさほどの事あらんとおぼしもよらで、つひに御ぐしをさへおろし給て、この世の御望みはたちはてぬる心ちして物したまへるに、このみだれ〈◯承久亂〉いできて、一院〈◯後鳥羽〉の御ぞうは、みなさま〴〵にさすらへ給ひぬれば、おのづからちいさきなど殘給へるも、世にさし放たれて、さりぬべき君もおはしまさぬにより、あづまよりのおきてにて、かの入道のみやの御子の〈後堀河院の御事〉十になり給ふを、承久三年七月九日、俄に御位につけ奉る、父の宮をば、太上天皇になし奉りて、法皇と聞ゆ、いとめでたくよこさまの御幸ひおはしける宮なり、

〔愚管抄〕

〈二後堀河〉

p.0835 承久三年八月十六日、天皇〈◯後高倉〉御尊號あり、日本國に此例いまだなきにや(○○○○○○○○○○○○○)、漢高祖の父太公の例を、是には似たるべきなど、世に沙汰しける、

〔五代帝王物語〕

p.0835 後堀河院、位に即せ給べきに定て、關東より馳せのぼりて申ければ、後高倉の法皇〈◯守貞〉は、折ふし持佛堂にわたらせ給ひけるが、後世の障となるべし、ふつとかなふまじきと仰有けるを、北白河院〈◯守貞妃陳子〉のいかにかヽる事をば思食さるヽぞ、宮々の御ためも、旁めでたかるべし、子細あるまじと申勸めまゐらせて、御領掌有けり、〈◯中略〉さて法皇は太上天皇の尊號ありて、世をしろしめす、

〔椿葉記〕

p.0835 かやうに申も片はら痛く人笑はれなるべけれど、さりとては昔の院號の例を申さば、小一條の院、それは東宮にてわたらせ給へば子細に及ばず、守貞の親王は、後堀河院踐祚ありて、かの親王法體にてましませども、やがて太上天皇の尊號を奉られて、後高倉の院と申、〈◯中略〉されば上古より帝王の父として、無品親王にてはてたるためしなければ、〈◯中略〉古例に任せて、院號の御さたどもあるべき事にて侍れども、不肖の身、中々微望をいたすに及ばず、終には又追號のさた

p.0836 はありもやせんずらん、同じくは存命の中に、尊號の儀もあらば、いかに本意ならん、さてこそ君〈◯後花園〉の聖運開きましますしるしも、いよ〳〵氣味はあらめとおぼえ侍る、何事も人の偏執によりて、當座はとかく申なし侍るとも、昔の例は世のしる所なれば、今さら申に及ばざる事なり、〈◯中略〉よろづ雲ゐのよそにきヽ奉るばかりにて過し侍る、よろこびの中のうれへにて侍るなり、かやうの道理をおぼしめしわくべき、君の御せいしんを待奉れば、老の命も長かれかしと、いよいよ御代安全、寶祚の長久ならん事を念じ侍るばかりなり、

〔皇胤詔運録〕

p.0836 貞成親王〈文安四、十一、廿七、太上天皇尊號、康正二、八、廿九崩、八十五、奉レ號二後崇光院一、〉

〔建内記〕

p.0836 文安四年三月六日丁酉、伏見宮〈入道貞成親王、禁裏（後花園）御實父事也、〉尊號事、近日頻有二御所望一、未二治定一、若及二其沙汰一者、御叙品強雖レ無二宣下一、彌不レ可レ及二沙汰一之由、有二内議一歟云々、但院中事、自今可レ爲二嚴然一之條、如二祗候人一難治無人之基歟之由、又有二其沙汰一云々、此事後小松院遺詔之第一也、尊號事、未來有二勅許一者、當今〈◯後花園〉繼嗣之由、可二治定一歟、然者後光嚴院御流忽斷絶歟、日來勅約如レ空、不レ可レ有二尊號之沙汰一、〈是一〉舊院仙洞、〈在二正親町以北、東洞院以西一、晴面者烏丸也、〉不レ可レ爲二伏見宮御所一事、〈是二〉御追號可レ爲二後小松院一事〈是三〉被レ載二勅書一、御病中以二大祥寺方丈一、〈于時東堂爲二當住一也〉被レ進二普廣院殿一〈◯足利義教〉了、御追號事、平家小松内府〈◯重盛〉之稱、無二庶幾一之由、普廣院殿、其時一旦雖レ有二御沙汰一、任二遺詔一被レ用了、〈◯中略〉尊號事、聖斷之様、追可二尋記一、　廿三日甲寅、伏見入道貞成親王者、禁裏御實父也、仍太上天皇尊號宣下事被二申請一之、被レ尋二人々意見一、可レ有二御沙汰一之由、同被レ申之也、勅問不レ可レ及レ廣、可レ爲二兩三人一、其内先予〈◯藤原時房〉可二計申一之由、勅定之旨、禪正尹示之、予申云、綺重事也、輙難二計申一、但如二愚意一者、於二常儀一者、被レ配二嚴父於天一不レ能二左右一也、而後小松院如二御所生一、被レ契二約御父子之儀一了、舊院御病中、被レ遣二勅書於普廣院殿一訖、三个條有二遺詔事一云々、如二傳聞一者、伏見宮依二御實父一、尊號事不レ可レ被二宣下一、若被二宣下一者、御違變之義出來之基歟、然者後光嚴院御一流、忽可レ爲二斷絶一之儀歟、仍有二遺詔一也、仙洞不レ可レ被レ成二伏見宮御所一事、御追號可レ爲二後小松院一事、以上三个條云々、件勅書者、以二大祥寺

p.0837 東堂一被レ遣了、御追號事已如レ此、仙洞事如二遺詔一者、雖レ似レ被レ背二其旨一、被レ壞二寢殿一被レ渡二東頰一、伏見宮渡御事、普廣院殿申御沙汰也、全體被レ成二御在所一之時、有二其恐一之間、普廣院殿以二御意巧一、如レ此御沙汰歟、不レ然者尤不レ及二改渡一、可レ被レ成二竹園一歟、猶被レ守二遺詔之趣一歟、尊號事如レ此、被二申請一之條可レ被二如何一哉、所詮於二御父子御契約一者、更不レ可レ有二違變一之由先慥被レ定二叡慮一、次雖レ非二御父子一、以二他人一被レ宣二下尊號一例在之、〈後龜山院是也〉仍可レ被二宣下一之由、被レ獻二御告文於後小松院御陵一、其後被レ授二申尊號一者、不レ背二廟意一、而當時御所望無二相違一者、兩端共若不レ有二子細一哉、制止之遺詔者、後光嚴院御一流斷絶之御怖畏也、而御父子之約、始終不レ可レ有二轉變一之由有二一決一者、御陵冥慮、若不レ可レ有二相違一哉、就レ中於二南朝未來事一、崇光院被レ染二一紙勅筆一云々、然者其子孫之分者、冥慮難レ測哉、彌舊院御父子御約束無二轉變一者、聖運長久、竹園御慶、又不レ可レ如レ之歟、光範門院〈◯後小松后資子〉者、如二御實母一御契約也、而御實母准后宣下詔書、朕母之由可レ奉レ載之由有二勅定一歟、仍故院御契約、又轉變難レ定事也、又後光嚴院御子孫之外、不レ可二憑申一之由、鹿苑院殿〈◯足利義滿〉被レ書二遣誓状於舊院一了、然者武家之儀又如何、肝要不レ乖二廟意一之様、被レ廻二叡慮一、就二傍例一被二宣下一之様、可レ有二其沙汰一歟、此題目出二微言一之條、竹園御意太有レ恐、然而乍二存知一阿順之儀、於二臣道一爲二不忠一、勅問之上者、不レ可レ有二私事一也、仍内内申入候、而可二計奏聞一者、又翌日以二冬房一示二送尹一云、叡慮一定之後、先被レ告二仰武家一、次被レ獻二御告文於山陵一、次宣下可レ然歟、同可レ得二其意一者、霜臺云、貢馬、門大番等如何、予云、武家進二貢馬一者、御治世之時事也、諸院不レ然歟、門役事、是又限二御治世歟之様、粗覺悟者、霜臺云、伏見殿御自筆御系圖見及之處、伏見宮御實名〈貞成親王〉被レ載之、其次主上御諱〈彦仁〉被レ釣之、後小松院御猶子之由被レ注之、彼御意者如レ此歟、誠不レ可レ然事也、　十一月十九日丁未、按察大納言〈公保卿〉入來、久不レ謁之間思立云々、言談成レ藪、來廿七日、伏見宮尊號宣下事必定云々、此事兼不二承及一之處、近日觸レ耳了、先度已被レ經二御沙汰一云々、予同申二意見一歟之由被レ尋之、最密々以二尹卿一勅問之旨密語了、予所レ申尤々可レ然、其時勅三人也、近衞前關白、〈◯藤原房嗣〉關白、〈◯藤原兼良〉予也、予意見之由有二委細之旨一、前關白者只無二豫儀一、勿論之由被レ申了、其後予申旨如レ此、可レ爲二如何一

p.0838 哉之由、又被二尋仰一之、後小松院御契約之旨誠有二得意一、予所レ申有二其謂一、御父子之御約諾、更不レ可レ被レ變之、然者不レ可レ有二子細一之由予已申上者、此條尤々也、可レ爲二此定一、但先被レ立二山陵使一、且被レ告二申不レ被レ變之由一、且可レ被レ告二申彼尊號事一之條、伏見宮尊慮中事々敷候様哉、唯叡慮深不レ被二悔返一者、可レ爲二肝要一歟之由、兩人被レ申之、仍治定之由所二聞及一之由被二密語一者也、誠珍重々々、就二其今度之儀一、更無二可レ被レ摸之例一、入道以後例、雖レ有二貞應〈◯後高倉〉例一、爲二不快一之上、爲二嚴父一者、今度之儀併可レ爲二新儀一、〈後龜山院者、御俗體之時由、〉本所之儀未二周備一布衣始已前者、時服等可レ爲二如何一哉云々、予曰、帝位御脱屣以後尊號、于時未レ被レ改二帝號一之被レ改之時、爲二布衣始一者也、元來非二帝位一者、今更布如何、都護云、誠不審也、今度之儀廳始等、以二新儀一可レ爲二同日一云々、執事別當事、可爲被二仰下一候、以二參仕之便一、可レ勤二陣上卿一之由、有御旁取亂云々、今度之儀申候ほどに、可レ被レ摸之無二定様一之間、多は女院などの風體云々、凡今度尊號事何とも不二甘心一之様被レ稱之、同者御存日ありたき様に自二女中一頻被レ申之、御主の御申之儀にては無レ之歟云々、今日頭左大辨俊秀朝臣〈尊號宣下奉行職事也〉入來、可レ參二本所一、公卿殿上人、以二勅定分一、可二相催一之由尹卿書下、御點寫留了、　廿二日庚戌、今夜伏見宮、同式部卿宮御參内、有二一獻御樂等一、來廿七日、尊號宣下事治定、仍御參内歟、珍重々々、一獻宮申二御沙汰一云々、　廿七日乙卯、入道無品貞成親王〈奉レ號二伏見宮一、崇光院皇孫、大通院榮仁親王第二宮、當今御實父、但依非二御父子之儀一、〉有二太上天皇尊號宣下事一、頻被二望申一、〈但女中頻被レ申之、非二御自望之儀分一云々、〉叡慮難レ被二默止一之謂也、先度密々有二勅問一申二愚意一了、〈子細度々、兼日記了、〉奉行職事頭左大辨俊秀朝臣、上卿按察大納言、〈公保卿〉辨權右中辨親長、大内記、〈在治〉史左大史小槻晨照宿禰、長興宿禰、少史安倍盛時、少内記中原康顯、〈外記也〉大外記清原業忠眞人等參陣、中務少輔兼敏、先上卿著二陣奧一、職事就二座下一、仰二仰詞一、仰詞事、入道無品親王、可レ奉二太上天皇尊號一詔書令レ作ヨ、先上卿移二著外座一令レ敷レ軾、召二大内記在治一、參レ軾、承二仰詞一、以二少内記一進レ草、〈入レ筥〉次上卿就二弓場一奏聞、〈付二俊秀朝臣一〉被二返下一、仰下可二清書一之由上、次上卿歸二著陣座一、少内記置レ筥欲レ退、便召留仰二清書事一返下之、次少内記持二參清書一、〈入レ筥〉又就二弓場一奏聞之被二返下一、〈被レ入二御畫一〉次上卿又歸二著陣座一、〈少内記相〉

p.0839 〈從置レ筥退〉次召二中務輔一賜二詔書一了、次職事就レ軾仰云、御封頓給米衞士仕丁任レ例奉レ宛〈シメヨ、〉次召レ辨仰之、親長著二床子座一、仰二左大史晨照宿禰一、〈官務也〉依レ連レ袖乍レ座仰之、次按察大納言〈執事別當也〉已下可レ參二本所一之人々率參二伏見殿一、〈土御門以南、東洞院以西西頰、元三條前右府第、爲二伏見殿御所一也、〉
本所儀、關白被レ作二進次第一、疏荒執事別當内々用意、載二委細一皆以寫取在レ別、以二新儀一被二計用一事等在之云々、御法體以後尊號、承久三年八月之外無レ例、件度記不二撰出一、不審多端、
凡非二帝位一人尊號、後高倉院、〈但後堀河院嚴父之謂也〉後龜山院〈三種神器被レ渡二當朝一之謂也〉兩度也、今度之儀淺レ自二後高倉院一、深レ自二後龜山院一者歟、
先諸卿參集、著二公卿座一、按察大納言〈公保卿、端、執事別當、〉綾小路中納言〈長資卿、奧、別當、〉三條宰相中將公綱朝臣、〈端、別當、◯中略〉
　十二月一日己未、參二仙院一、〈去月廿七日、尊號也、予冠直衣、忠敦在レ共、〉賀二申入宣下事一、〈◯中略〉先於二簀子一伺二御目一昇二長押一、即是疊上也、〈◯中略〉賀二申入配天之御慶一了、法皇仰云、今度之儀、老體無二所期一之處、御沙汰之次第、面目此事也、勅問之時、無二相違一被レ申之條、喜入之由有レ仰、予申云、叡慮奉レ察之上、爲二御冥加一尤可レ然者、〈後小松院御事、并先可レ被レ告二申先院御廟一之子細等、予申入之條、被二聞食及一哉未レ然哉、此事今又不レ及二申出一也、唯賀申了、◯又見二康富記、皇胤紹運録、皇年代略記一、〉
◯按ズルニ、貞成親王ハ後花園天皇ノ御實父タリト雖モ、天皇既ニ後小松天皇ノ御猶子タルヲ以テ、御父子ノ禮ヲ以テ、此儀ヲバ行ヒ玉ハザリシナリ、

〔看聞日記〕

p.0839 文安四年十一月三日、宣下日次在貞卿問之、年預政賢朝臣内々尋之、今月廿二日、廿七日、來月八日之由勘進、　廿七日、秉燭間、人々參集、〈◯中略〉執事別當著二殿上一、奉行院司下二賜別當以下交名於執事別當一、〈殿上人交名同給之〉
　　其儀如二次第一
次院司公卿以下、列二中門外一奏慶、〈西上北面〉申次六位判官代源定仲、各拜舞、了歸二著殿上一、次殿上人於二殿上口一奏慶、〈南上西面〉藏人申次之、次公卿執事別當著二殿上座一、〈兼居レ饗〉四位院司一兩、〈俊秀朝臣、賢政朝臣、〉著二加座末一、次令レ勘二

p.0840 造簡日時一、〈陰陽師在貞卿不參之間、内々進二勘文一、〉公卿以下著座畢後、奉行院司〈政賢朝臣〉起座、出二殿上北面方一、取二勘文一〈入レ筥、件筥自レ廳進レ之、〉持二參之一、進二寄執事座後方一跪二簀子一、自二座下方一置レ前了、暫候二簀子一、執事披見畢、如レ元入レ筥返給之、奉行院司取去參二進寢殿南面一、於二簾下一傳二女房一〈右衞門督著二衣袴一〉進入之、余〈◯後崇光〉廂階間繧繝疊著座、〈裘袋懸二袈裟一〉披覽之畢被二返下一、奉行院司賜レ之退歸、又如レ初置二執事前一、執事即返二給奉行院司一、奉行院司取レ之退入、於二殿上東縁一、〈北端邊〉下二賜主典代一、〈定直朝臣〉主典代賜レ之退入、次令レ作レ簡、〈近代兼作儲之、今度如レ然、〉次一獻、〈本儀雖二三獻一、略レ之一獻、〉奉行院司〈俊秀朝臣〉於二殿上東縁一〈北端〉取レ盃、〈居二折敷一〉進二居第一公卿後座上方簀子一、〈六位判官代源定仲、取二瓶子一相從、〉獻二公卿一、公卿取レ盃許之後、取二折敷一右廻退入、次下レ箸、公卿以下置レ笏、取レ箸立二飯上一、次覽二吉書一、其儀、奉行院司、〈政賢朝臣〉於二殿上東縁北端一取二吉書一〈入レ筥、主典代進之、〉參進、自二執事座下方一置レ前、執事披二見之一返授、奉行院司取レ之、參二進寢殿南面一、於二簾下一付二女房一〈右衞門督〉進之、御覽了返給之、奉行院司給レ之退、如レ初置二執事前一、執事返二給奉行院司一、奉行院司取レ之退入、於二便宜所一〈殿上北面〉引二棄吉書裹紙一、次書下二吉書一、〈以二藏人一召二寄硯一〉
　　書様
　　　下廳
　　　　可レ成二返抄一
　　　　　別當左近衞權中將源朝臣政賢
書畢卷レ之返入レ筥、取レ之於二初所一下二主典代一、次主典代成二上返抄一、〈入レ筥〉藏人〈定仲〉取レ之、置二執事別當前一、次又取レ硯同置レ之、執事以下次第加判、四位別當在座之人同加判、次藏人參進取レ之、返二下主典代一、次自二上臈一次第起座、此間先進二贄殿御膳一、〈御厨子所預爲豐調進〉高土器三本、平盤二枚、廂階間敷二繧繝疊二枚一著座、南面御簾垂之、西方遣戸一間御簾半ニ上、役送源朝臣經秀、〈衣冠〉藤原朝臣行秀、〈同〉先取二打敷一進二中臈一、〈右衞門督著二衣袴一〉上臈〈二條五衣袴〉取レ之敷二御前一、次役送殿上人、御膳次第進、中臈取レ之進二上臈一、上臈次第置二御前一、次御銚子〈片口〉飮盃畢、次第撤之、〈女房撤レ之〉次六本立自二廂西間一、女官進之、〈殿上人今度不二役送一〉下臈〈新太夫衣袴〉取レ之進二中臈一、〈同前〉上臈〈同〉次

p.0841 第供レ之飮盃、〈如レ前〉次御膳次第撤之起座、〈褰衣女房群集見レ之、歴々也、〉
　　　廳初儀
先吉書儀畢、四位別當并五位六位判官代等相率著二廳屋一、四位別當著二四方横座一、〈小文高麗端東面〉五位判官代二人、著二奧端座一、〈相對紫端〉六位判官代同著座、〈赤端〉次盃酌一獻、主典代持二參盃一、〈居二折敷一〉廳官取二瓶子一四位別當飮畢、授二判官代上臈一、次主典代持二參吉書并硯一、〈廳官進之〉四位別當以下次第加判返之、次自二上臈一次第起座事訖、
　小槻宿禰晨照宣旨〈數通〉持參、詔書内記近例不二持參一、仍執事別當、内々寫レ之被レ進、
詔朕以二寡徳一承二嘉符一、負二鳳扆一正二鳥紀一、軒丘之就日、未レ照二蒼生之心一、皇家之聖風、盍レ育二華夷之俗一、貴レ親者禮、昵レ族者仁、因レ兹爲レ闢二朝章於奕代一、忽獻二峻號於射山一、洞戸迎レ春、根英益馥、汾陽疊レ浪、金石列レ聲、是則治世之大猷、達道之厚化、粗雖レ無二舊典之凖的一、令三特加二新制之崇儀一、宜下上二尊號一爲中太上天皇上、普告二遐邇一、俾レ知二朕意一、主者施行、
　　文安四年十一月廿七日

〔康富記〕

p.0841 文安四年十二月廿日戊寅、今夜詔書覆奏也、去月廿七日、太上天皇〈◯後崇光〉尊號詔書也、任二應永十九年例一、〈◯後小松〉被二申沙汰一之、　五年二月廿二日戊寅、今夜有二太上天皇〈◯後崇光〉尊號御報書〈御辭退御書也〉事一、洞中儀、頭左大辨俊秀朝臣奉行之、御使權中納言教季卿也、御次第殿下有二御作進一、御報書式部權大輔在豐卿草之、伊忠朝臣清書之、〈◯中略〉伏見二去年十一月廿七日詔書一、尊號爲二太上天皇一者、忽驚二叡辭一、更想二曩事一、太上者至尊之號也、貴二於君一、天皇者、登極之稱也、大二於常一、是聖主之所レ蹈、非二人臣之所一レ居、况亦内無二遜位之名一、外欠二傳國之徳一、唯以二篤族之高義一、豈拜二尊親之憲章一、與レ得二崇重於當時一、孰レ避二謗訕於後代一、早罷二太上之徽號一、令レ遂二謙下之懇懷一、謹言、
　　文安五年二月廿二日

贈太上天皇

〔皇年代略記〕

〈後陽成〉

p.0842 陽光院、諱誠仁者、正親町院第一皇子〈◯中略〉天文廿一年四月降誕、永祿十一年十二月十五日爲二親王一、天正十四年七月廿四日薨御、贈二太上天皇尊號一、

〔公卿補任〕

〈正親町〉

p.0842 天正十四年七月廿四日、誠仁親王薨給、號二陽光院一、

〔皇胤紹運録〕

p.0842 陽光院〈諱誠仁、（中略）天正十四、七、廿四薨御、三十五歳、贈二太上天皇一、〉

〔皇統御系譜〕

p.0842 陽光院　天正十四丙戌年七月廿日崩、〈◯中略〉同月廿四日、表向贈二太上天皇一、

〔公明卿記〕

p.0842 寛政四年正月十八日、御内慮書今日遣二于所司代一、〈◯中略〉閑院一品宮〈◯典仁〉御事、當今〈◯光格〉御間柄之儀を以、尊號宣下之事、去寛政元年八月、御内慮被二仰進一度ニ付、先其許〈◯所司代太田資愛〉迄相達候一件書之趣、關東へ被二申入一候ニ付、同年十一月、老中方より申來候一紙被レ達レ之、及二沙汰一候、就レ其最前申入候通、主上御年長ニ付而者、御孝道之儀專被二思召一、太上天皇尊稱之事、御内慮被二仰進一度、御沙汰候旨書付相達候ニ付、則關東ヘ被二申入一候處、右尊號之儀者、不二容易一儀ニ付、今一應厚御評議被レ有レ之候様被二相達一之趣及二言上一候處、先以御滿悦之御沙汰ニ候、依レ兹爾來深御思惟も被レ爲レ在候處、兎角本朝ニ而者、承前之例ニ付、尊號宣下無レ之而者不二相叶一、御内々如何程之御取扱被レ爲レ有候而も、名實不レ正候而者、御實父御崇敬之孝道不二全調一、王臣北面之禮儀難二相止一候故、何とも叡慮御不安之御儀、仙洞〈◯後櫻町〉思食も勿論御同様之御事故、猶又今度厚御評議有レ之ニ付、勅問衆、其餘前官大臣、大納言、中納言、參議聴本座輩迄も、被レ尋二所意一候ニ付、勅答申詞之寫も別ニ相達候、此餘先々之議論等も可レ有レ之候へ共、既本邦之例蹤ニ成來候儀を、當朝ニ而今度被レ爲二廢案一候儀者、甚不二容易一事ニ思召、宸襟御不安、院慮も御同様之御事候、仍御先格之通、彌尊號宣下被レ爲レ有度思召候間、目出度被二遂行一候様ニ、自二御兩所一被二仰進一候、若又今度難二相調一之趣ニ而者、深思召も被レ爲レ在候間、無レ滯被二遂行一候様ニ被レ爲レ遊度候、右ニ付御時節柄候間、新院御殿者不レ及二御新造一、閑院宮少々御建添御繕ニ而可レ然候、御領之儀者、新院之御例格七千石候ヘ共、今度被二減省一候間、五千石以下可レ然程可レ被二附進一候、右御内慮之趣、關東

p.0843 ヘ宜レ被二申入一候事、

〔柳營雜載〕

p.0843 十一月四日、〈◯寛政四年〉所司代へ達す書付、〈◯中略〉一體最初群議等被レ添被二仰進一候後、御返答早速に不レ被二仰出一候者、御名器重大無二此上御事一、御孝心〈◯光格〉之處、是又御尤之至に付、品々御勘考被レ爲レ在候故にて候、其後必御無用之御旨趣、委被二仰出一候様にとの處、右御返答之儀も未レ被二仰出一候者、總而三代之禮にも大宗小宗之際、嚴重に被二定置一候儀にて、尊祖重宗不レ貳レ斬、不レ分レ統之旨にて、先王之禮を制する無二二三一共有レ之、况萬乘之御位者、聖祖神之御寳位にて候へば、其位を不レ被レ踐、其統を不レ被レ繼して、其名を被レ爲レ上候儀者、不レ可レ然御事に候、罔極之御恩を被二思召一候所者、甚以御尤之御事に候へば、いかにも深御孝養者可レ被レ爲レ盡御儀に候へ共、御位號に於は、名分之不レ輕御事に候、且又御舊典御先蹤とても、總て御歴代之故事を皆先蹤とて被二遵行一、舊典とて可レ被レ守御事に無レ之者、勿論之儀にて、只其蹤を被二尋糺一、論説時勢道理之當否等、一々御取捨之上、無二御差障一者、可レ被二遵行一にて候、寔に於レ禮者不二容易一御事、上より下萬民に至迄、無レ私者禮之一事にて候へば名器一動候ては、社稷蒼生之廢興安危にも拘候筋に可二成行一歟にて、甚御大切之儀に被二思召一候、已に今般之御進止者、後代之御規範、御大切之儀と迄其頃被二仰進一候は、甚以御尤之御旨趣にて、已に本邦之事而已にても無レ之、異域にも可二相聞一儀、無量之御大事に候間、古今之論説猶も御糺有レ之、先頃寫來候群議等、御不審之所不レ少候へば、御尋も有レ之、品により追々群議衆下向の儀も被二仰出一、御糺問有レ之、誠に御道理を被レ盡、論説無二餘薀一、精々被二盡極一候思召にて候、右様に不レ被レ爲レ在しては、可レ爲二御規範一重御旨にも御相當被レ爲レ在間敷との御事にて候、何れ御委敷御旨趣者、三卿〈◯正親町公明、中山愛親、廣橋伊光、〉下向御尋糺共有レ之上、可レ被二仰進一との御旨にて候、將又御領等被二増進一候類之儀者、太上天皇之御相應に、御領被レ進候類之儀には無レ之、尤御所等御造營之事、是又被二仰進一候には無レ之、只御孝養を被レ盡、御心閑に被レ在レ之候様にとの御主意を以、御領にても、御藏米にても、御相應に可レ被二増加一哉との御事にて、已に天明四

p.0844 年、閑院宮御在世中、千石宛年々被レ進候も、御内慮通に被二成進一、御滿足之旨も被二仰進一候、右之通之御譯合にて、御内慮は思召次第に被二仰進一候様にとの儀を以被二仰進一候御事にて候、外に何ぞ思召付之儀被二仰進一候様にとの儀も、右御同様之御趣意にて被二仰出一候事に候、新嘗祭以前御發表との事は被二差止一、御見合可レ被レ爲レ在旨其後被二仰進一、甚以御安心之段、其頃申進候通に候、猶尊號必御無用との御趣意者、三卿下向之上可レ被二仰出一候へ共、御領等之一件者、一體之儀にも無レ之候間、右之御返答計被二仰出一、且段々御念被レ爲レ入候事故、速に御返答無レ之御旨趣先被二仰出一候間、此段程能兩卿へ可レ被レ達候以上、

〔公明卿記〕

p.0844 寛政四年十一月十二日、今日兩役召二御前一、尊號宣下停止之事被二仰出一、明日行二向相摸守〈◯所司代堀田正順〉役宅一、可二申達一旨兩人請奏了、

〔柳營雜載〕

p.0844 傳奏衆より所司代への御書付　閑院一品宮尊號宣下一件、此度御宗統之儀に付、委細被二仰進一、聖祖神皇之御寳位、不レ被レ踐二其位一、不レ被レ繼二其統一、被レ上二御位號一事不レ可レ然由、御深厚之御旨、逐一及二言上一候處被二聞食一、此上者有二餘薀一間敷、叡感之御事に候、因レ兹仙洞〈◯後櫻町〉へも被二仰合一、實に被レ易二宸襟一候に付、今度尊號宣下之事被二停止一候者、以二叡感〈◯光格〉仙洞之思召一被二仰出一候間、此段關東へ宜二申入一候事、

〔官報〕

〈二百十四號告示〉

p.0844 太政官第一號
今般特旨ヲ以、光格天皇御實父、故一品典仁親王ヘ、太上天皇ノ尊號ヲ御追贈、御諡慶光天皇ト稱セラル、
右告示候事
　　　明治十七年三月十九日　　　　　　　　　　　太政大臣三條實美

准太上天皇

〔一代要記〕

〈六後一條〉

p.0844 太子敦明親王、〈三條第一子、寛弘八年十月五日爲二親王一、長和五年正月廿九日爲二皇太子一、寛仁元年八月九日辭之、廿四准二太上天皇一、號二小一條院一、〉

〔日本紀略〕

〈十三後一條〉

p.0844 寛仁元年八月廿五日〈◯百練抄作二廿九日一〉庚寅、以二前皇太子一爲二小一條院一准二太上天皇一、賜二年爵

p.0845 年官受領吏等一、停二進屬一爲二判官代、主典代一、又以二左右近衞各五人一爲二御隨身一、御封等如レ舊奉レ宛レ之、〈◯又見二帝王編年記、十三代要略、續世繼、愚管抄、紹運要略、皇胤紹運録、皇年代略記一、〉

〔大鏡〕

〈三左大臣師尹〉

p.0845 この宮〈◯三條皇后娀子〉の御はらの一のみこ、敦明親王とて式部卿と申し程に、長和五年正月廿九日、三條院おりさせ給へば、この式部卿東宮にたヽせ給ひにき、〈◯中略〉三條院のおはしましつる限りこそあれ、うせ給にける後は、よのつねの東宮の御やうにもなく、殿上人など參りて御遊びせさせ給や、もてなしかしづき申人などもなく、いとつれ〴〵にまぎるヽかたなく、おぼしめされけるまヽに、心やすかりし御ありさまのみ戀しく、ほけ〳〵しきまでおぼえさせ給けれど、三條院おはしましつる限りは、院殿上人などもまゐりや、御つかひもしげく參りかよひなんどするに、人目もしげくよろづ慰めさせ給を、院うせおはしましては、世の中のものおそろしく、おほぢのゆきかひもいかヾとのみわづらはしくふるまひにくきにより、宮司などだにも參りつかうまつる事も難くなりゆけば、ましてげすの心はいかヾはあらん、殿もりづかさのしもべも、朝ぎよめつかうまつる事もなければ、庭の草もしげりまさりつヽ、いとかたじけなき御すみかにておはします、まれ〳〵參よる人々は、よにきこゆる事とて、三宮〈◯後朱雀〉かくておはしますを心苦しく殿〈◯藤原道長〉も大宮〈◯上東門院彰子〉も思ひ申させ給に、もしうちにをとこ宮もいでおはしましなばいかヾあらん、さあらぬさきに、東宮に立たてまつらばやとなんおほせらるなり、さればおしてとられさせ給へるなりなどのみ申を、まことにしもあらざらめど、げにことのさまもよもとおぼゆまじければにや、きかせ給御心ちは、いとヾうきたちたるやうにおぼしめされて、ひたぶるにとられんよりは、われとやのきなましとおぼしめすに、又高松殿のみくしげどの〈◯道長女寛子〉參らせ給て、殿のはなやかにもてなし奉らせ給ふべかなりとて、例の事なればよの人さま〴〵さだめ申を、皇后宮きかせ給て、いみじうよろこばせ給を、東宮はいとよかるべき事なれど

p.0846 さだにあらば、いとヾ我思ふ事えせじ、猶かくてえあるまじくおぼしめされて、御母宮にしかじかなん思ふと聞えさせ給へば、さらなりや、いと〳〵あるまじき御事也、みくしげどのヽ御ことをこそ、まことならばすヽみきこえさせ給はめ、さらに〳〵おぼしめしよるまじきことなりと聞えさせ給て、御ものヽけのするなりと御いのりどもせさせ給へど、さらにおぼしめしとヾまらぬ御心のうちを、いかでか世人もきヽけん、さてなんみくしげ殿參らせ奉らせ給へともきこえさせ給べかなるなどいう事、殿の方にもきこゆれば、まことにさもおぼしゆるぎての給はせば、いかヾすべからんなどおぼす、さて東宮はつひにおぼしめしたちぬ、さてのちにみくしげ殿の御事もいはんに、中々それはなどかなからんなど、よきかた様におぼしめしけん、ふかくの事なりやな、〈◯中略〉皇后宮にもかくとも申させ給はず、たヾ御心のまヽに、殿に御せうそく聞えんとおぼしめすに、むつましうさるべき人もものし給はねば、中宮の權大夫殿〈◯藤原能信〉のおはします、四條の坊門と西の洞院とは宮近きぞかし、それ計をこと人よりはとやおぼしめしよりけん、藏人なにがしを御つかひにて、あからさまに參らせ給へとあるを、おぼしもかけぬ事なれば驚かせ給て、なにしにめすぞと問はせ給へば、申させ給べき事のさぶらふにこそと申を、このきこゆる事どもにやとおぼせど、のかせ給ことはさりともよにあらじ、みくしげ殿の御事ならんとおぼす、いかにもわが御こヽろひとつには思ふべき事ならねば驚きながら、參り候べきをおとヾにあない申てなんさぶらふべきと申させ給て、まづ殿にまゐり給へり、東宮よりしか〴〵なんおほせられたりつると申させ給へば、殿もおどろかせ給て、何事ならんとおほせられながら、大夫殿の御同じやうにぞおぼしよられける、まことにみくしげ殿の御事の給はせんを、いなび申さんもびんなし、參り給なば又さやうにあやしくてはあらせ奉るべきならず、又さては世の人の申すなるやうに、春宮のかせ給はんの御思ひあるべきならずかしとはおぼせど、しかわざと

p.0847 めさんには、いかでか參らではあらん、いかにもの給はせん事を聞くべきなりと申させ給へば、參らせ給ほど日もくれぬ、陣に左大臣殿〈◯敦明舅藤原顯光〉の御車や、ごぜんどものあるを、なまむづかしとおぼせど歸らせ給べきならねば、殿上にのぼらせ給て、參りたるよしけいせさせよと藏人にのたまはすれば、おほい殿の御まへにさぶらはせ給へば、たヾ今はえなん申候はぬときこえさする程みまはさせ給に、にはの草もいとふかく、殿上のあり様も東宮のおはしますとはみえず、あさましうかたじけなげなり、おほい殿いで給てかくとけいすれば、朝がれひの方にいでさせ給て、めしあれば參り給へり、いと近くこちとおほせられて、ものせらるヽ事もなきにあないするも憚り多かれど、おとヾ〈◯道長〉に聞ゆべき事のあるを、傳へものすべき人のなきに、まぢかきほどなればたよりにもと思ひて、せうそこし聞えつるなり、そのむねは、かくて侍るこそは本意ある事と思ひ、故院〈◯三條〉のしおかせ給へる事を、たがへ奉らんもかた〴〵に憚り思はぬにあらねど、かくてあるなん思ひつヾくるに罪深くもおぼゆる、うちの御行末はいと遙にものせさせ給、いつともなくてはかなき世に命もしり難し、この有さまのきて、心にまかせて行ひをもし、物まうでをもし、やすらかにてなんあらまほしきを、むげにさきの東宮にてあらむは見苦しかるべきなん、ゐんがう給りて、としに受領などありてなむあらまほしきを、いかなるべき事にかと傳へられよとおほせられければ、かしこまりてまかでさせ給ぬ、その夜はふけにければ、つとめてぞ殿に參らせ給へるに、うちへ參らせ給はんとて、御さうぞくのほどなれば、え申させ給はず、〈◯中略〉源民部卿〈◯俊賢〉よりおはして、などかくてはおはしますと聞えさせ給へば、この殿には隱し聞えさせ給べきことにもあらねば、しか〴〵の事のあるを、人々のさふらふめればえ申さぬなりとの給はするに、御けしき打かはりてこの殿も驚き給、いみじうかしこき事にこそあなれ、たヾとく聞せ奉らせ給へ、うちに參らせ給なば、いとヾ人がちにてえ申させ給はじとあれば、げにと

p.0848 おぼしておはします方に參り給へれば、さならんと御心えさせ給て、すみの間に出させ給て、東宮に參りたりつるかと問はせ給へば、よべの御せうそく委しく申させ給に、さうなりや、おろかにおぼしめさんやは、おしておろし奉らん事は憚りおぼしめしつるに、かヽる事のいできぬる御よろこび猶つきせず、まづいみじかりける大宮の御すくせかなとおぼしめす、民部卿殿に申あはせ給へは、たヾとく〳〵せさせ給べきなり、何かよき日もとらせ給、すこしものびばおぼし返して、さらでありなんとあらんをば、いかヾはせさせ給はんと申させ給へば、さる事とおぼして御覽ずるに、けふもあしき日にもあらざりけり、やがて關白殿〈◯此時關白ナシ、攝政藤原頼通ヲ云フナラン、〉も參らせ給へるほどに、とく〳〵とそヽのかし申させ給、まづいかにも大宮に申てこそはとて、うちにおはしますほどなれば參らせ給て、かくなんときかせ奉らせ給へば、まして女の御心はいかヾはおぼしめさん、それよりぞ春宮に參らせ給、かう申事は寛仁元年八月六日の事也、又例も御ともに參り給御こどもの殿ばら、また例も御ともに參り給上達部殿上人、ひきぐせさせ給へれば、いとこちたくひヾきことにておはしますを、待つけさせ給へる宮の御心ちは、さりともすこしすヾろはしうおぼしめされけんかし、〈◯中略〉殿にはとしごろおぼしめしつる事など、こまかに聞えんと心づよくおぼしめしつれど、まことになりぬるをりはいかになりぬる事ぞと、さすがに御心さわがせ給ぬ、むかひきこえさせ給ては、方々におくせられ給にけりとや、たヾ昨日の同じさまに中々事ずくなにおほせらるヽ、御かへりは、さりともいかにかくはおぼしめしよりぬるぞなどやうに申させ給けむかしな、御けしきの心ぐるしさをかつは見奉らせ給て、すこしおしのごはせ給て、さらば今日よき日なりとて、院になし奉らせ給て、やがて事ども始めさせ給て、よろづの事さだめ行はせ給、判官代には、宮づかさども藏人などかはるべきにあらず、別當には中宮の權大夫をなし奉り給へれば、おりて拜し申させ給、事ども定まりはてぬれば出させ給ぬ、〈◯原〉

p.0849 〈本有二誤脱一、據二一本一改、〉

〔榮花物語〕

〈十三木綿四手〉

p.0849 かヽる程に東宮〈◯敦明〉何の御心にかおはしますらん、かくて限りなき御身を何ともおぼされず、昔の御しのびありきのみこひしくおぼされて、時々につけて、花紅葉も御心にまかせて、御覽ぜむとのみ、なほいかでさ様にてもありにしがなとおぼさるヽ御心、よるひるきうにわりなくて、皇后宮〈◯敦明御母娀子〉に一生はいくばくに侍らぬに、猶かくて侍こそいぶせく侍れ、さるべきにや侍らん、いにしへの有さまに、心やすくこそ侍らまほしけれなど、をり〳〵に聞えさせ給へれば、宮はいと心うき御心なり、御物のけの思はせ奉るならん、故院〈◯三條〉のあべきさまにしすゑ奉らせ給し御事を、いかにおぼして、やがて御跡を繼がず、世のためしにもならむとはおぼしめすぞ、心うき事なりと常にいさめ申させ給て、御物のけのかうはおもはせ奉るなりとて、所々に御祈りをせさせ給、おぼしあまりては、若やかなる殿上人の申あくがらすならんとて、召おほせなどせさせ給、されど殿〈◯藤原道長〉のお前にさるべき人して、かうやうになどまねび申させ給、殿のお前いとあるまじき御事なり、さは故院の御繼はなくてやませ給べきか、いみじかりし御物のけなれば、夫がさ思はせ奉るならんとのたまはせて、聞入れさせ給はぬを、いかで對面せんとたび〴〵聞えさせ給へば、殿參らせたまへり、おぼつかなきよの御物語など聞えさせ給て、猶此すくせのわろきにや侍らん、かくうるはしき有さまこそいとむづかしけれ、いかでおり侍りて、一院といはれて侍らんと聞えさせ給へば、さらに淺ましき御心おきてにおはします、〈◯中略〉たヾこれはこと〳〵ならじ、御物のけのおぼさするなめりと申させ給へば、なでうものヽけにかあらん、たヾ本よりあそびの心のみありならひにければ、かくあるがいとむづかしくおぼえて、心にまかせてあらんと思ひ侍なり、それになほえあるまじうおぼされば、本のほいもあり、さるべき様にてあらんとなむ思ふと申させ給、いと不便なる事なり、出家とまでおぼしめさ

p.0850 れば、いとことの外に侍り、さらばさるべき様につかうまつるべきにこそ侍なれ、一院にておはしまさむも、御身はいとめでたき事におはします、よにめでたきものは、太上天皇にこそおはしますめれなど、よく心のどかに聞えさせ給、〈◯中略〉かくて八月九日〈◯寛仁元年〉東宮〈◯後朱雀〉たヽせ給ひぬ、はじめの東宮〈◯敦明〉をば、小一條院と聞えさす、院いとおぼしめす様にやさしくおぼしめされて、十二人の御隨身えりとヽのへさせ給、乘るべき馬鞍まで清らをせさせ給、故院の御隨身どもの、世中をいとあえなく思ひたりつるに、さるべうびヾしきなどはみな參り集まりぬ、殿上人のさるべく使ひつけさせ給へる人々、いみじうけうありと思へり、皇后宮いとあかぬ事にくちをしうおぼせど、又一院とて年官年爵えさせ給、藏人判官代何くれの定めあるにつけても、あしくはおはしまさず、今めかしう御心やりならまほしげなる方は、月ごろの御有さまにまさらせ給へり、さは故院の御つぎは、かくてやませ給ぬるにやとおぼしめす方ぞいと哀しかりける、

追尊天皇〖附〗

p.0850 附追尊天皇〈私稱天皇併入〉
追尊天皇トハ、生時未ダ甞テ帝位ニ在ラズシテ、去世ノ後ニ帝號ヲ上ラレシ者ヲ云フ、此帝號ニハ、天皇ノ、御父ヲ尊ビ給フヨリ出ヅルアリ、或ハ禍祟ヲ畏レ給フニ由リテ起ルアリ、又其號ニモ諡アリ、居所ヲ以テ稱スルアリ、之ヲ概スルニ、皆御父子ノ間ナルヲ明治ノ昭代ニ當リ、數世ノ後ヨリ、典仁親王ヲ諡シテ慶光天皇ト稱シタマヒシガ如キハ、追孝ノ特例ナリ、追尊天皇ハ、大鏡ニ據ルニ、即チ贈太上天皇ナルガ如シ、
私稱天皇トハ、攝政ノ皇后皇女、及ビ有功ノ皇子等ヲ、後世ヨリ其威徳ヲ欣慕スルノ餘ニ、私ニ天皇ト稱スルヲ云フ、厩戸皇子ヲ上宮法王ト稱セシガ如キハ、當世ノ事ニハアレド此類ナリ、

追尊天皇

〔二所大神宮例文〕

p.0850 雖レ不レ著二天位一奉レ號二天皇一、　長岡天皇〈草壁皇子、天武太子、文武之親、〉

〔續日本紀〕

〈二十一淳仁〉

p.0851 天平寳字二年八月戊申、勅日並知(ヒナメシ)皇子命〈◯文武御父草壁〉天下未レ稱二天皇一、追二崇尊號一古今恒典、自レ今以後、宜レ奉レ稱二岡宮御宇天皇(○○○○○○)一、

〔長等の山風〕

〈附録〉

p.0851 岡宮は、皇子のおはしましたりし宮號なり、そは大和高市郡飛鳥の地にて、舒明紀に、二年十月、遷二都飛鳥岡傍一、是謂二岡本宮一と見え、齊明紀に、二年、是歳於二飛鳥岡本一、更定二宮地一、號曰二後飛鳥岡本宮一とあるも同地にて、岡宮も同じ飛鳥岡傍に在しなるべし、龍葢寺あざなを岡寺とよびて、今岡村といふ處にありとぞ、東大寺要録に、龍葢寺記を引て、義淵僧正が、奇特ありて生れたる事をいひて、天智天皇聞二食之一、與二日並知皇子一、共令レ移二岡宮一、遂以レ宮賜二僧正一爲レ寺、號二龍葢寺一と見えたり、此岡宮をもて、尊號に係け奉られたるなり、〈此皇子の尊號を、神皇正統記、紹運録、帝王編年記等に、長岡天皇と記せり、岡を長岡とも云へるによりて、然もまをしならひたるなるべし、〉

〔延喜式〕

〈二十一諸陵〉

p.0851 眞弓丘陵〈岡宮御宇天皇(○○○○○○)、在二大和國高市郡一、◯下略〉

〔釋日本紀〕

〈四〉

p.0851 帝皇系圖
草壁皇子〈號二長岡天皇(○○○○)一〉

〔皇胤紹運録〕

p.0851 草壁皇子〈號二日並知皇子一、淨廣一位、天武十二年立太子、而當皇帝登霞之時、母后（持統）踐祚、仍不レ嗣レ位、天武、持統東宮、朱鳥四年四月薨、追二號長岡天皇(○○○○)一、〉

〔帝王編年記〕

〈十文武〉

p.0851 文武天皇、天武天皇孫、東宮草壁皇子〈追號長岡天皇(○○○○)〉第二子、

〔神皇正統記〕

〈持統〉

p.0851 草壁の皇子は、太子に立たまひしが、世を早くしたまふ、〈◯中略〉後に追號ありて長岡の天皇(○○○○○)と申す、

〔二所大神宮例文〕

p.0851 雖レ不レ著二天位一奉レ號二天皇一、　崇道盡敬天皇〈舍人親王、文武第八子、廢帝親、〉

〔續日本紀〕

〈二十二淳仁〉

p.0851 天平寳字三年六月庚戌、帝御二内安殿一、喚二諸司主典巳上一、詔曰、〈◯中略〉比來太皇太后〈◯聖武后光明子〉御命以〈氐、〉朕〈爾〉語宣〈久、◯中略〉凡人子〈乃〉去レ禍蒙レ福〈麻久〉欲爲〈流〉事〈波〉爲レ親〈爾止奈利、〉此大福〈乎〉取總持〈氐、〉親王〈爾〉送奉〈止〉教〈部〉宣〈夫〉御命〈乎〉受給〈利氐奈母〉加久爲〈流、〉故是以自レ今以後追二皇舍人親王一、〈◯淳仁御父〉宣下稱二崇道(○○)

p.0852 盡敬皇帝(○○○○)一、當麻夫人〈◯淳仁御母〉稱二太夫人一、兄弟姊妹悉稱中親王上〈止〉宣天皇御命衆聞食宣、

〔二所大神宮例文〕

p.0852 雖レ不レ著二天位一奉レ號二天皇一、　田原天皇〈施基皇子、天智三子、光仁親、〉

〔續日本紀〕

〈七元正〉

p.0852 靈龜二年八月甲寅、二品志貴親王〈◯光仁御父〉薨、從四位下六人部王、正五位下縣犬養宿禰筑紫、監二護喪事一、親王天智天皇第七之皇子也、寳龜元年追尊稱下御(○)二春日宮(○○○)一天皇(○○)上、

〔續日本紀〕

〈三十一光仁〉

p.0852 寶龜元年十一月甲子、詔曰、現神大八洲所知倭根子天皇詔旨〈止〉宣詔旨〈乎、〉親王王臣百官人等天下公民衆聞食宣、朕以二劣弱身一忝二鴻業一〈氐〉恐〈利〉畏、進〈毛〉不レ知〈爾〉退〈毛〉不レ知〈爾〉所念〈波、〉貴慶〈岐〉御命自獨〈能味夜〉受給〈武止〉所念〈氐奈毛、〉法〈能麻爾麻爾〉追下皇掛恐御二春日宮一皇子上奉(○)レ稱(○)二天皇(○○)一、又兄弟姉妹諸王子等悉作二親王一〈氐〉冠位上給治給、又以二井上内親王一定二皇后一〈止〉宣天皇御命衆聞食宣、

〔釋日本紀〕

〈四〉

p.0852 帝皇系圖
施基皇子〈號二田原天皇(○○○○)一〉

〔延喜式〕

〈二十一諸陵〉

p.0852 田原(○○)西陵〈春日宮御宇天皇、在二大和國添上郡一、◯下略〉

〔續日本紀〕

〈三十一光仁〉

p.0852 天皇諱白壁王、近江大津宮御宇天命開別天皇〈◯天智〉之孫、田原天皇(○○○○)第六之皇子也、

〔帝王編年記〕

〈九天智〉

p.0852 皇子　施基皇子〈追號田原天皇(○○○○)〉

〔神皇正統記〕

〈光仁〉

p.0852 光仁天皇は、施基皇子の子、天智天皇の御孫なり、〈皇子は第三の御子なり、追號ありて田原の天皇(○○○○○)と申す、〉

〔二所大神宮例文〕

p.0852 雖レ不レ著二天位一奉レ號二天皇一、　崇道天皇〈早良親王、光仁二子、〉

〔續日本紀〕

〈三十八桓武〉

p.0852 延暦四年十月庚午、遣二中納言正三位藤原朝臣小黒麻呂、大膳大夫從五位上笠王於山科山陵一、〈◯天智、中略、〉以告下廢二皇太子一之状上、

〔日本紀略〕

〈桓武〉

p.0852 延暦四年九月庚申、詔曰、云々、中納言大伴家持〈◯中略〉等、式部卿藤原朝臣〈乎◯種繼〉殺〈而、〉朝廷傾奉、早良王〈乎〉爲レ君〈止〉謀〈氣利、◯中略〉是日皇太子、自二内裏一歸二於東宮一、即日戌時、出二置乙訓寺一、是後太子、不二自飮食一積二十餘日一、遣二宮内卿石川垣守等一、駕レ船移二送淡路一、比レ至二高瀬橋頭一巳絶、載レ屍至二淡路一葬云々、

〔日本紀略〕

〈桓武〉

p.0853 延暦十一年六月癸巳、皇太子〈◯平城〉久病、卜レ之崇道天皇爲レ崇、遣二諸陵頭調使主等於淡路國一、奉レ謝二其靈一、
◯按ズルニ、崇道天皇ハ、桓武天皇ノ皇太弟早良親王ナリ、其追尊ハ、延暦十九年ニ在リ、本文及以下四條、並ニ追書ニ係ル、

〔類聚國史〕

〈二十五帝王〉

p.0853 延暦十一年六月庚子、勅、去延暦九年、令下淡路國充二某親王〈崇道天皇〉守冡一烟一、兼隨近郡司專中當其事上、而不レ存二敬衞一致レ令レ有レ崇、自レ今以後、冡下置レ隍勿レ使二濫穢一、　十六年五月乙巳、遣二僧二人於淡路國一、轉經悔過、謝二崇道天皇之靈一也、

〔日本後紀〕

〈八桓武〉

p.0853 延暦十八年二月己丑、遣二從五位上行兵部大輔兼中衞少將春宮亮大伴宿禰是成、傳燈大法師位泰信等於淡路國一、令下賚二幣帛一謝中崇道天皇靈上、

〔類聚國史〕

〈二十五帝王〉

p.0853 延暦十九年七月己未、詔曰、朕有レ所レ思、宜下故皇太子早良親王追二稱崇道天皇(○○○○)一、故廢皇后井上内親王追復稱中皇后上、其墓竝稱二山陵一、令下從五位上守近衞少將兼春宮亮丹波守大伴宿禰是成、率二陰陽師衆僧一、鎭中謝在二淡路國一崇道天皇山陵上、　壬戌、分二淡路國津名郡戸二烟一、以奉レ守二崇道天皇陵一、　甲子、遣二少納言從五位下稱城王等一、以二追尊事一、告二于崇道天皇陵一、

〔日本後紀〕

〈十二桓武〉

p.0853 延暦廿四年正月甲申、奉二爲崇道天皇一、建二寺於淡路國一、　二月丙午、令下僧一百五十人、於二宮中及春宮坊等一、讀中大般若經上、造二一小倉於靈安寺一、納二稻卅束一、又別收二調綿百五十斤、庸綿百五十斤一、慰二神靈之怨魂一也、　四月甲辰、令下諸國奉二爲崇道天皇一建二小倉一、納中正税四十束上、并預二國忌及奉幣之列一、謝二怨靈一也、　庚戌、任二改葬崇道天皇司一、

〔延喜式〕

〈二十一諸陵〉

p.0853 八嶋陵〈崇道天皇(○○○○)、在二大和國添上郡一、◯下略〉

〔日本後紀〕

〈十三桓武〉

p.0853 延暦廿四年十月庚申、奉二爲崇道天皇一、寫二一切經一、其書生、隨レ功叙位及得度、　癸亥、於二前殿一讀經三日、

〔類聚三代格〕

〈三〉

p.0854 太政官符
　應三五畿内七道諸國轉二讀金剛般若經一事
右被二右大臣宣一偁、奉二爲崇道天皇一、令三永讀二件經一者、宜レ使下國分僧春秋二仲月、別二七日一存レ心奉レ讀之經、并僧數附二朝集使一言上上、其布施者、三寶調綿十屯、衆僧各調布一端、自レ今以後立爲二恒例一、
　延暦廿五年三月十七日〈◯又見二日本後紀一〉

〔扶桑略記〕

〈拔萃平城〉

p.0854 大同元年十一月、天皇、於二山階地一、建二立伽藍一號二八島寺一、勅入利稻三毎年下行之、又五畿七道諸國、毎郡各々立二別倉一、毎年積二正税稻之上分一、郡別卌一束、是則奉二爲崇道天皇一所二納置一也、〈◯又見二水鏡一〉

〔延喜式〕

〈二十六主税〉

p.0854 諸國出擧正税公廨雜稻
大和國、〈◯中略〉靈安寺料四千束、八嶋寺料一萬束、

〔類聚國史〕

〈二十五帝王〉

p.0854 大同五年七月乙丑、度二一百三十人一、奉二爲崇道天皇一一百人、〈◯中略〉　丁卯、奉二爲崇道天皇一、於二川原寺一奉レ寫二法華經一部一、

〔類聚三代格〕

〈七〉

p.0854 太政官符
　應レ修二理正倉一事
右案二太政官去延暦廿四年四月四日符一偁、右大臣宣、奉レ勅奉二爲崇道天皇一、諸國造二正倉一、收二納正税一者、仍須下國司掾已上一人專二當其事一、郡別造レ倉納中稻卌束上、其造物准二納物數一、所レ須料者、宜レ用二正税一者、今被二正三位行中納言兼左兵衞督陸奧出羽按察使藤原朝臣良房宣一偁、奉レ勅件倉、若有二損失一者、隨即修造、自外之事一依二前符一、
　　承和九年二月廿五日

〔三代實録〕

〈七清和〉

p.0854 貞觀五年五月廿日壬午、於二神泉苑一修二御靈會一、〈◯中略〉所レ謂御靈者、崇道天皇〈◯中略〉等是也、

p.0855 並坐レ事被レ誅、寃魂成レ厲、近代以來、疫病死亡甚衆、天下以爲、此災御靈之所レ生也、〈◯中略〉今茲春初、咳逆疫、百姓多斃、朝廷爲祈、至レ是乃修二此會一、以賽二宿禱一也、

〔權記〕

p.0855 長保三年三月十八日庚寅、崇道天皇大安寺御在所、平超可二修理一由、并阿波國御在所、燒亡後未レ作、同仰二國司一、又諸國崇道天皇御稻倉等修塡由、同可レ仰下不レ可二懈怠一之由上、

〔大鏡〕

〈三左大臣師尹〉

p.0855 世始まりて後、東宮位とりさけられ給ふ事は、八九代ばかりにやなりぬらん、中に法師東宮おはしけるこそは、うせ給ひて後に贈太上天皇と申て、いはひすゑられ給へれ、おほやけもしろしめして、しゆだう天皇(○○○○○○)とて、官物のはつほさきに奉らせ給ふめり、

〔官報〕

〈二百十四號告示〉

p.0855 太政官第一號
今般特旨ヲ以、光格天皇御實父、故一品典仁親王ヘ、太上天皇ノ尊號ヲ御追贈、御諡慶光天皇(○○○○)ト稱セラル、
右告示候事
　明治十七年三月十九日　　　　　　　　　　　太政大臣三條實美
◯按ズルニ、典仁親王ノ事ハ、贈太上天皇條ニ載セタリ、參看スベシ、

私稱天皇

〔常陸風土記〕

p.0855 或曰、倭武天皇(○○○○)巡二狩東夷之國一、幸二過新治之縣一、〈◯下略〉

〔古事記〕

〈中景行〉

p.0855 到二能煩野一之時、〈◯中略〉即崩(○○)、〈◯倭健命〉爾貢二上驛使一、於レ是坐レ倭后等、及御子等諸下到而作二御陵(○○)一、

〔日本書紀〕

〈七景行〉

p.0855 四十年十月癸丑、日本武尊發路之、〈◯中略〉既而崩(○)二于能褒野(○○○○)一、〈◯中略〉仍葬二於伊勢國能褒野陵(○○○○)一、〈◯陵、延喜諸陵式作レ墓、〉

〔萬葉集抄〕

〈七〉

p.0855 阿波國風土記云、勝間井云由者、倭健天皇命(○○○○○)、乃大御櫛笥忘、〈◯下略〉

〔比古婆衣〕

〈三〉

p.0855 此尊〈◯倭健尊〉の御事を、常陸又阿波の風土記に、倭健天皇とかけるは、此尊其國々をみことむけに出ましける時、いと武猛くおはしましける御稜威を畏敬み奉る餘りに、國人ども

p.0856 倭健の天皇とたヽへ奉りしを、そのかみのかたり言のまヽに書記せるものなるべし、

〔釋日本紀〕

〈六述義〉

p.0856 攝津國風土記曰、所三以稱二住吉一者、昔息長足比賣(オキナガタラシヒメ/○○○○○)天皇(/○○)〈◯神功皇后〉世、住吉大神現出、而巡二行天下一、〈◯下略〉

〔常陸風土記〕

p.0856 茨城國造初祖、天津多祁許呂命、仕二息長帶比賣天皇(○○○○○○○)之朝一、

〔海東諸國記〕

p.0856 神功天皇(○○○○)開化五世孫、息長宿禰女、仲哀納爲レ后、仲哀沒遂主二國事一、

〔神皇正統記〕

〈神功〉

p.0856 第十五代神功皇后は、息長宿禰の女、開化天皇四世の御孫なり、〈◯中略〉皇后攝政して、辛巳の年〈◯仲哀崩明年〉より天下をしらせ給ふ、

〔播磨風土記〕

p.0856 朸田、宇治天皇(○○○○)〈◯應神皇太子莵道稚郞子〉之世、宇治連等遠祖、兄太加奈志、弟太加奈志二人、〈◯下略〉

〔皇胤紹運録〕

p.0856 飯豐天皇(○○○○)〈忍海部女王是也、又號二豐青姫一、清寧崩後、仁賢顯宗兄弟、相讓不レ即レ位、仍其姊豐青姫、自二二月一令(○)レ攝(○)二天下政(○○○)一、〉

〔日本書紀〕

〈十五顯宗〉

p.0856 五年〈◯清寧〉正月、白髮天皇〈◯清寧〉崩、是月皇太子億計王、〈◯仁賢〉與二天皇一〈◯顯宗〉讓レ位、久而不レ處、由レ是天皇姊飯豐青皇女、於二忍海角刺宮一、臨(○)レ朝秉(○○)レ政(○)、自稱二忍海飯豐青尊一、當世詞人歌曰、野麻登陛儞瀰我保指母能婆於尸農瀰能莒能拖哿紀儺屢都奴娑之能瀰野(ヤマトベニミガホシモノハオシヌミノコノタカキナルツヌサシノミヤ)、　十一月、飯豐青尊崩、葬二葛城埴日丘陵(○○○○○○)一、

〔古事記〕

〈下清寧〉

p.0856 故天皇崩後、無下可レ治二天下一之王上也、於レ是問二日繼所レ知之王一也、市邊忍齒別王之妹、忍海郞女、亦名飯豐王、坐二葛城忍海之高木角刺宮一也、

〔扶桑略記〕

〈二飯豐〉

p.0856 飯豐天皇(○○○○)、〈◯帝王次第、同二水鏡一、〉市邊押磐皇子女、〈◯中略〉甲子歳春二月、生年四十五即位、顯宗天皇仁賢天皇兄弟、相讓不レ即二皇位一、仍以二其姊豐青姫一、令レ秉二天下之政一矣、〈◯中略〉此天皇不レ載二諸皇之系圖一、但和銅五年上奏日本紀載レ之、仍註二傳之一、諸本有无不レ同也、

〔水鏡〕

〈上飯豐〉

p.0856 次のみかど〈◯本書在二清寧下、顯宗上一、〉飯豐天皇(○○○○)と申き、これは女帝におはします、〈◯中略〉甲子のとし二月に位につき給ふ、〈◯中略〉さてほどなく其年の内、十一月にうせ給ひにしかば、此みかどをば、系圖

p.0857 などにも入れ奉らぬとかやぞうけたまはる、されども日本紀には入れ奉りて侍るなれば、次第に申侍るなり、

〔神皇正統記〕

〈顯宗〉

p.0857 第二十四代顯宗天皇、〈◯中略〉御兄仁賢、まづ位につきたまふべかりしを、相共に讓りまししかば、同母の御姊、飯豐尊しばらく位に居給ひき、されどやがて顯宗定まりまし〳〵しによりて、飯豐天皇(○○○○)をば、日嗣にはかぞへ奉らぬなり、

〔法隆寺釋迦佛造像記〕

p.0857 法興元世一年歳次辛巳十二月、鬼前太后崩、明年正月廿二日、上宮法皇(○○○○)〈◯厩戸皇子〉枕レ病弗二悆于食一、

〔上宮聖徳法王帝説〕

p.0857 上宮聖徳法王(○○)、又云二法主王(○○○)一、

〔日本書紀〕

〈二十一用明〉

p.0857 元年正月壬子朔、立二穴穗部間人皇女一爲二皇后下、是生二四男一、其一曰二厩戸皇子一、〈更名耳聰聖徳、或名二豐聰耳法大王(○○○)一、或云二法主王(○○○)一、〉此皇子初居二上宮一、

〔釋日本紀〕

〈十四述義〉

p.0857 伊豫風土記曰、湯郡、〈◯中略〉立二湯岡側碑文一、記云、法興六年十月歳在二丙辰一、我法主大王〈◯厩戸皇子〉與二惠統法師及葛城臣一、逍二遙夷與村一、〈◯下略〉