帝王部/帝號

p.0169 帝號ハ天皇ヲ尊崇スルノ號ニシテ、吾邦ノ語ニテ稱スルアリ、漢字ノ音ニテ稱スルアリ、漢字ノ熟語ニ吾邦ノ語ヲ塡ツルアリ、上表服御行幸ニ稱スルアリ、又統治ヲ以テ稱スルアリ、地位ヲ以テ稱スルアリ、系統ノ所出ヲ以テ稱スルアリ、直ニ神ヲ以テ稱スルアリ、所在ヲ以テ稱スルアリ、支那ノ故事ヨリ出ヅルアリ、佛語ヲ用ヰルアリ、以上ハ皆尊崇ノ言ナリ、或ハ自稱ニ出デヽ帝號ト爲ルアリ、一人ノ如キ是ナリ、サテ此帝號ハ、令ニ依ルニ自ラ等級アリ、例ヘバ上表等ノ文ニ、天子天皇等ヲ平出トシ、乘輿車駕等ヲ闕字トスルガ如シ、

總載

〔令義解〕

〈六儀制〉

p.0169 天子、〈祭祀所レ稱、〉〈謂告二于神祇一、稱爲二天子一、凡自二天子一至二車駕一、皆是書記所レ用、至二風俗所一レ稱、別不レ依二文字一、假如皇御孫命、及須明樂美御徳之類也、〉天皇、〈詔書所レ稱、〉皇帝、〈華夷所レ稱、〉〈謂華、華夏也、夷、夷狄也、言王者詔二誥於華夷一、稱二皇帝一、即華夷之所レ稱亦依レ此也、〉陛下、上表所レ稱、太上天皇、〈讓位帝所レ稱、〉乘輿、〈服御所レ稱、〉〈謂凡物御二王者一、皆稱二乘輿御物一、不二敢媟黷以一レ言、故託二乘輿一以名之、假如乘輿御馬、乘輿御食、乘輿御書等之類也、〉車駕、〈行幸所レ稱、〉

〔八雲御抄〕

〈三下異名〉

p.0169 帝王　やすみしる　すべらき〈すべらきみとも、すべらとも、〉　おほきみ〈たヾ王をもいふ〉　あきつ神〈君を申也、わがすべらきとつヾけたり、又すべらきは神にしませばともよめり、すべらきの神の宮人まさきかづらなどもよめり、〉　大やけ〈官字をかきてよめり〉　ひじりの御よ〈聖代也、在二萬葉一、〉

〔簾中抄〕

〈唐名〉

p.0169 帝王
天子　皇帝　主上　天皇　陛下　至尊　聖朝　聖上　聖主　聖皇　國家　朝廷　一人　明

p.0170 朝　聖代

〔公武大體略記〕

p.0170 一禁裏
帝王の御事は、一天の主、御諱なしといへども、天子、一人、聖主、聖王、金輪、大宅(オホヤケ)大内、禁裏、今上、主上、當今、階下、陛下、宸儀、鳳闕、朝廷など申奉る、皆是君の御事也、

〔拾芥抄〕

〈中本唐名大略〉

p.0170 帝王〈天子　皇帝　主上　天皇　陛下　至尊　明時　聖朝　金輪聖王　我后　聖上　聖皇　國家　朝廷　一人　聖代　九五之聖　南面之主〉

天皇

〔令義解〕

〈六儀制〉

p.0170 天皇(○○)〈詔書所レ稱、〉

〔令集解〕

〈二十八儀制〉

p.0170 釋云、天皇、公式令云、天皇詔旨云々咸聞、是、〈◯詔書式詳二政治部一、〉

〔事物紀原〕

〈一帝王后妃〉

p.0170 徐整三五暦紀曰、歳起二攝提一、元氣肇始、有二神人一、號二天皇一、項峻始學篇曰、天地立、有二天皇一、張愔帝系譜曰、天地始起、溟涬鴻濛、即生二天皇一、治萬八千歳、此稱レ皇之始也、

〔唐書〕

〈三高宗〉

p.0170 上元二年八月壬辰、皇帝稱二天皇一、皇后稱二天后一、

〔日本書紀〕

〈九神功〉

p.0170 九年〈◯仲哀〉十月辛丑、〈◯中略〉新羅王遙望、以爲非常之兵將レ滅二己國一、讋焉失レ志、乃今醒之曰、吾聞東有二神國一謂二日本一、亦有二聖王一謂二天皇(○○)一、其國之神兵也、豈可二擧レ兵距一乎、

〔日本書紀〕

〈十九欽明〉

p.0170 九年四月甲子、百濟遣二中部扞率掠葉禮等一、奏曰、〈◯中略〉伏顏可畏天皇(○○○○)、〈西蕃皆稱二日本天皇一、爲二可畏天皇一、〉先爲勘當、〈◯下略〉

〔延喜式〕

〈十二中務〉

p.0170 慰勞詔書式
天皇敬問云々〈大蕃國云、天皇敬問、小蕃國云、天皇問、〉

〔日本書紀〕

〈二十二推古〉

p.0170 十六年九月辛巳、唐客裴世清罷歸、〈◯中略〉爰天皇聘二唐帝一、其辭曰、東天皇(○○○)敬白二西皇帝一、〈◯下略〉

天子

〔令義解〕

〈六儀制〉

p.0170 天子(○○)、〈祭祀所レ稱、〉〈謂告二于神祇一、稱爲二天子一、〉

〔令集解〕

〈二十八儀制〉

p.0170 古記云、謂祭將二書記字一、謂二之天子一也、辭稱二須賣彌麻乃美己等一耳也、

〔獨斷〕

〈上〉

p.0171 天子、夷狄之所レ稱、父レ天母レ地、故稱二天子一、

〔日本書紀〕

〈十二履中〉

p.0171 五年十月、〈◯中略〉或者曰、車持君行二於筑紫國一、而悉挍二車持部一、兼取二充レ神者一、必是罪矣、天皇則喚二車持君一、以推二問之一、事既實焉、因以數レ之曰、爾雖二車持君一、縱撿二挍天子(○○)之百姓一、罪一也、〈◯下略〉

〔隋書〕

〈八十一倭國〉

p.0171 大業三年、〈◯推古天皇十五年〉其王多利思比孤〈◯舒明天皇、號二息長足日廣額一、〉遣レ使朝貢、使者曰、聞海西菩薩天子重興二佛法一、故遣二朝拜一、兼沙門數十人來學二佛法一、其國書曰、日出處天子(○○○○○)致二書日沒處天子一、無レ恙云云、帝〈◯隋煬帝〉覽レ之不レ悦、謂二鴻臚卿一曰、蠻夷書有二無禮者一、勿二復以聞一、

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

p.0171 延喜十年九月某日、太上法皇〈◯宇多〉登二天台山一、於二座主増命房一受二灌頂一、〈◯中略〉天子(○○)〈◯醍醐〉聞レ之、遣レ使増命授二法眼和尚位一、

〔台記〕

p.0171 久安三年八月十日辛丑、今日天子(○○)、〈◯近衞〉幸二鳥羽南院一、

〔源平盛衰記〕

〈二〉

p.0171 二代后〈附〉則天皇后事
主上〈◯二條〉ノ仰ニハ、天子(○○)ニ無二父母一、萬乘ノ寳位ヲ忝セン上ハ、此程ノ事叡慮ニ任スベシ、〈◯下略〉

〔太平記〕

〈二〉

p.0171 天下怪異事
大塔宮〈◯後醍醐皇子護良〉ヨリ潜ニ御使ヲ以テ、主上〈◯後醍醐〉ヘ申サセ給ヒケルハ、〈◯中略〉近臣ヲ一人天子ノ號(○○○○)ヲ許サレテ、山門〈◯延暦寺〉ヘ被レ上セ、臨幸ノ由ヲ披露候ハヾ、敵軍定テ叡山ニ向テ、合戰ヲ致シ候ハン歟、〈◯下略〉

〔空穗物語〕

〈初秋〉

p.0171 天子(○○)そらごとせずといふ事は、なき世なりけりとこそはおもふらめ、

皇帝

〔令義解〕

〈六儀制〉

p.0171 皇帝(○○)、〈華夷所レ稱、〉〈謂華、華夏也、夷、夷狄也、言王者詔二誥於華夷一稱二皇帝一、即華夷之所レ稱亦依レ此也、〉

〔令集解〕

〈二十八儀制〉

p.0171 跡云、皇帝、謂二華夷一、若有下可レ註二御名一之事上者、用二此名一、

〔唐六典〕

〈四禮部〉

p.0171 凡夷夏之通稱、天子曰二皇帝一、

〔續日本紀〕

〈十九孝謙〉

p.0171 天平勝寳八歳十二月己酉、勅遣二皇太子及右大辨從四位下巨勢朝臣堺麻呂於東大

p.0172 寺、〈◯中略〉講二梵網經一、講師六十二人、其詞曰、皇帝(○○)敬白、〈◯下略〉

〔續日本紀〕

〈二十孝謙〉

p.0172 天平寳字元年十一月壬寅、勅、〈◯中略〉皇帝(○○)皇太后、如三日月之照臨、並治二萬國一、〈◯下略〉

〔續日本紀〕

〈二十一淳仁〉

p.0172 天平寳字二年八月庚子朔、高野天皇禪二位於皇太子一、〈◯中略〉是日百官及僧綱、詣二朝堂一上表、〈◯中略〉其百官表曰、〈◯中略〉伏惟皇帝(○○)陛下、〈◯孝謙〉臨二馭天下一、十有餘年、〈◯中略〉謹據二典策一、敢上二尊號一、伏乞奉レ稱二上臺寳字稱徳孝謙皇帝(○○)一、

〔續日本紀〕

〈二十一淳仁〉

p.0172 天平寳字二年八月戊申、勅曰、子尊二其考一禮家所レ稱、〈◯中略〉敬依二舊典一、追上二尊號一、策稱二勝寳感神聖武皇帝(○○)一、〈◯下略〉

〔朝野群載〕

〈三文筆〉

p.0172 尊星王供告文　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　式部大輔正家
維康和二年歳次庚辰、十月朔甲午、十一日甲辰、南瞻部州大日本國皇帝(○○)諱、〈◯堀河〉謹敬二白擁讓衆生慈悲奇特尊星王大士一、〈◯下略〉

陛下

〔令義解〕

〈六儀制〉

p.0172 陛下(○○)、〈上表所レ稱、〉

〔令集解〕

〈二十八儀制〉

p.0172 古記云、上表、謂進二天皇一之書、謂二之上表一也、

〔唐六典〕

〈四禮部〉

p.0172 臣下敷二奏於天子一、曰二陛下一、

〔獨斷〕

〈上〉

p.0172 陛下者、陛階也、所二由升一レ堂也、天子必有二近臣一、執レ兵陣二于陛側一、以戒二不虞一、謂二之陛下一者、群臣與二天子一言、不三敢指二斥天子一、故呼下在二陛下一者上而告レ之、因レ卑達レ尊之意也、

〔日本書紀〕

〈十五顯宗〉

p.0172 二年八月己未朔、天皇謂二皇太子億計一〈◯仁賢〉曰、〈◯中略〉皇太子億計、歔欷不レ能レ答、乃諫曰、〈◯中略〉陛下(○○)饗レ國、徳行廣聞二於天下一、〈◯下略〉

〔古事記〕

〈序〉

p.0172 臣安萬侶言、〈◯中略〉伏惟皇帝陛下(○○○○)〈◯元明〉得レ一光宅、通レ三亭育、〈◯下略〉

〔東大寺獻物帳〕

p.0172 奉二爲太上天皇一、〈◯聖武〉捨二國家珍寳等一、入二東大寺一願文、〈◯中略〉伏惟先帝陛下(○○○○)、〈◯聖武〉徳合二乾坤一、明並二日月一、〈◯中略〉今帝陛下(○○○○)〈◯孝謙〉壽同二法界一、福類二虚空一、〈◯下略〉

〔日本後紀〕

〈五桓武〉

p.0173 延暦十六年二月己巳、先レ是重勅二從四位下行民部大輔兼左兵衞督皇太子學士菅野朝臣眞道〈◯中略〉等一、撰二續日本紀一、至レ是而成、上表曰、〈◯中略〉伏惟天皇陛下(○○○○)、徳光二四禮一、道契二八眉一、〈◯下略〉

乘輿

〔令義解〕

〈六儀制〉

p.0173 乘輿(○○)〈服御所レ稱、〉〈謂凡物御二王者一、皆稱二乘輿御物一、不二敢媟黷以一レ言、故託二乘輿一以名之、假如乘輿御馬、乘輿御食、乘輿御書等之類也、〉

〔律疏〕

〈名例〉

p.0173 八虐
六曰、大不敬、〈謂毀二大社一、及盜二大祀神御之物、乘輿服御物(○○○○○)一、〉〈乘輿服御物者、謂主上服御之物、人主以二天下一爲レ家、乘輿巡幸、不三敢指二斥尊號一、故託二乘輿一以言之、〉

〔唐六典〕

〈四禮部〉

p.0173 天子自稱曰レ朕、〈◯中略〉服御曰二乘輿(○○)一、

〔獨斷〕

〈上〉

p.0173 乘輿(○○)出二於律一、律曰、敢盜二乘輿服御物一、謂天子所二服食一者也、天子至尊、不二敢渫瀆言一レ之、故托二之于乘輿一、乘猶レ載也、輿猶レ車也、天子以二天下一爲レ家、不下以二京師宮室一爲中常處上、則當下乘二車輿一以行中天下上、故群臣託二乘輿一以言レ之、或謂二之車駕一、

〔日本書紀〕

〈三神武〉

p.0173 三十有一年四月乙酉朔、皇輿(スメラミコト/○○)巡幸、因登二腋上嗛間丘一、而廻二望國状一、

〔日本書紀〕

〈十一仁徳〉

p.0173 三十年十一月庚申、天皇浮レ江幸二山背一、〈◯中略〉明日、乘輿(スメラミコト/○○)詣二于筒城宮一、

車駕

〔令義解〕

〈六儀制〉

p.0173 車駕(○○)、〈行幸所レ稱、〉

〔令集解〕

〈二十八儀制〉

p.0173 車駕、謂乘輿行幸之時名、謂二之車駕(○○)一也、

〔唐六典〕

〈四禮部〉

p.0173 天子自稱曰レ朕、〈◯中略〉行幸曰二車駕(○○)一、

〔日本書紀〕

〈七景行〉

p.0173 三年二月庚寅朔、卜乙幸二于紀伊國一、將祭下祀群神祇上、而不レ吉、乃車駕(ミユキ/○○)止之、

〔日本書紀〕

〈七景行〉

p.0173 四年二月、〈◯中略〉天皇欲二得爲一レ妃、幸二弟媛之家一、弟媛聞二乘輿(スメラミコト)車駕(ミユキスト/イデマス)一、則隱二竹林一、

一人

〔令義解〕

〈一職員〉

p.0173 太政官
太政大臣一人、
　右師二範一人(○○)一、儀二形四海一、〈◯下略〉

〔禮記〕

〈十三玉藻〉

p.0174 凡自稱、天子曰二予一人一、

〔令集解〕

〈二職員〉

p.0174 朱云、一人(○○)者、天子也、

〔令義解〕

〈七公式〉

p.0174 御、〈謂斥二至尊一、〉〈謂一人(○○)也、〉

〔官職難儀〕

p.0174 攝政關白をば大職と申なり、必一座の宣下とて、第一に着給ふべきよし宣下あるの故に、一の人と申なり、同字ながらも、一(イチ)人(ジン/○)と申時は天子の御事なり、よのつねの人の事をば、一人(イチニン)と申事、誰もしりたる事ながら、其事々に讀かへる事、習ひのうちにてあるなり、

〔本朝文粹〕

〈十三祭文〉

p.0174 北野天神供二御幣并種々物一文　　　　　　　　　　　大江匡衡
右天滿自在天神、或鹽二梅於天下一、輔二導一人(○○)一、或日二月於天上一、照二臨萬民一、〈◯中略〉
　寛弘九年六月二十五日

〔源平盛衰記〕

〈三十八〉

p.0174 重國花方帶二院宣一西國下向同上洛奉二返状一事
平左衞門尉重國、院宣〈◯後白河〉ヲ帶シテ西國ヘ下向、〈◯中略〉彼院宣ニ云、一人聖帝(○○○○)〈◯安徳〉出二北闕九重之臺一、而幸二于九州一、〈◯下略〉

〔さかゆく花〕

〈上〉

p.0174 永徳元年三月十一日、ぎやうかう〈◯後圓融〉あり、〈◯中略〉およそいちじん(○○○○)出給ふ事たやすからず、千くわん百くわんをとヽのへらる、

至尊

〔令義解〕

〈七公式〉

p.0174 至尊(○○)、〈◯中略〉　右皆平出、

〔唐六典〕

〈四禮部〉

p.0174 凡夷夏之通稱、天子曰二皇帝一、臣下内外、兼稱曰二至尊(○○)一、

〔令義解〕

〈七公式〉

p.0174 御、〈謂斥二至尊(○○)一、〉〈謂一人也、三后亦准レ此、〉

〔令義解〕

〈二職員〉

p.0174 神祇官
大嘗、〈謂嘗二新穀一以祭二神祇一也、朝諸神之相嘗祭、夕者供二新穀於至尊(○○)一也、〉

〔小右記〕

p.0174 長和四年四月七日丙辰、今日中宮女親王〈三歳〉著袴、〈◯中略〉此間至尊(○○)〈◯一條〉渡御、

〔三代實録〕

〈三十一陽成〉

p.0175 元慶元年四月二十五日丙申、太上天皇〈◯清和〉勅答曰、〈◯中略〉帝上レ表曰、〈◯中略〉太上至尊、天皇崇重、〈◯下略〉

御

〔令義解〕

〈七公式〉

p.0175 御(○)、〈謂斥二至尊一、〉〈謂一人也、三后亦准レ此、〉　右如レ此之類並闕字、

〔令集解〕

〈二十八儀制〉

p.0175 釋云、名例律云、稱二乘輿車駕及御(○)一者、太皇太后、皇太后、皇后並同、

〔延喜式〕

〈一四時祭〉

p.0175 御贖、〈◯中略〉東文部捧二横刀一入就二版位一、勅曰、參來、即稱唯就二階下一、轉授二中臣女一取奉レ御(○)、訖即出、

〔延喜式〕

〈三十九内膳〉

p.0175 正月三節、〈◯中略〉供奉膳部卌人、〈卅人御(○)、十人中宮、〉

〔安齋隨筆〕

〈前十三〉

p.0175 稱レ御辭　御の字は、天子の事に云ふ詞なり、されども毎事毎物、悉く御と云ふにあらず、國史令式等に、御を云ふ事稀にあり、中古以來、天子は勿論、貴人には毎事毎物、悉く御と云ふ、御の詞喧く聞ゆ、今に至ては賤しき我〻とても、相互に御字を付て云ふ事になれり、其本は御宇、御製、崩御などの類、天子の事に稱する詞なり、

主上

〔律疏〕

〈名例〉

p.0175 八虐
六曰、大不敬、〈謂毀二大社一、及盜二大祀神御之物、乘輿服御物一、〉〈乘輿服御物者、謂主上(○○)服御之物、〉
◯按ズルニ、乘輿服御物者、謂主上服御之物トハ、唐律疏議ノ文ヲ用ヰシニテ、主上トハ、支那ノ用語ヲ用ヰシナリ、

〔續日本後紀〕

〈四仁明〉

p.0175 承和二年十二月庚寅、主上(○○)始於二清凉殿一、限二三夜裏一、禮二拜佛名經一、

〔續日本後紀〕

〈二十仁明〉

p.0175 嘉祥三年三月己丑、令二大法師道詮等一請レ戒、主上(○○)口受二永不殺生一、

〔類聚雜例〕

p.0175 長元九年四月十七日乙丑、主上(○○)〈◯後一條〉自二去三月之比一、不例御、

〔平治物語〕

〈一〉

p.0175 主上六波羅行幸事
主上(○○)〈◯二條〉ハ、北陣ニ御車ヲタテ、女房ノ飾ヲ召テ、御鬘ヲ奉ル、

〔源平盛衰記〕

〈三十四〉

p.0176 明雲八條宮人々被レ討事
主上(○○)〈◯後鳥羽〉ノ、御沙汰シ進スル人モナシ、

〔百練抄〕

〈十一土御門〉

p.0176 承元四年八月廿日、主上(○○)行二幸春日社一、上皇〈◯後鳥羽〉有二御見物一、

〔太平記〕

〈九〉

p.0176 主上上皇御沈落事
何クヨリ射ル共知ラヌ流矢、主上(○○)〈◯光嚴〉ノ左ノ御肱ニ立ニケリ、

〔太平記〕

〈十七〉

p.0176 還幸供奉人々被二禁殺一事
主上(○○)〈◯後醍醐〉兼テヨリ御用意有ケル、似セ物ヲ取易テ、内侍ノ方ヘゾ渡サレケル、

〔東寺修行日記〕

p.0176 嘉吉三年九月廿三日、子刻大内燒亡、〈◯中略〉主聖様(○○○)〈◯後花園〉ハ近衞殿出御成、

〔小右記〕

p.0176 長和四年四月七日丙辰、今日中宮女親王〈三歳〉著袴、〈◯中略〉聖上(○○)〈◯一條〉出御、〈◯下略〉

上

〔類聚名義抄〕

〈一一〉

p.0176 上〈君〉

〔日本後紀〕

〈十二桓武〉

p.0176 延暦廿三年十月甲辰、行二幸和泉國一、其夕至二難波行宮一、　乙巳、上(○)御レ舟泛レ江、

〔日本後紀〕

〈十三平城〉

p.0176 大同元年三月丙戌、上(○)謂二公卿一曰、〈◯中略〉報曰、〈◯下略〉

〔獨斷〕

〈上〉

p.0176 上者、尊位所レ在也、大史令司馬遷記レ事、當レ言レ帝、則依違但言レ上、不三敢渫瀆言二尊號一、尊レ王之義也、

〔榮花物語〕

〈一月宴〉

p.0176 今の上(ウヘ/○)〈◯村上〉の御心ばへ、あらまほしく、あるべき限りおはしましけり、

〔紫式部日記〕

p.0176 殿、〈◯藤原道長〉若宮〈◯後一條〉いだき奉り給ひて、御前にいで奉り給ふ、うへ(○○)〈◯一條〉いだきうつし奉らせ給ふ、

〔紫式部日記〕

p.0176 うちのうへ(○○○○○)〈◯一條〉の、源氏物語人によませ給ひつヽきこしめしける、

〔増鏡〕

〈十一今日の日蔭〉

p.0176 乾元元年六月十六日、龜山殿へ行幸あり、〈◯中略〉法皇〈◯後宇多〉より、内(○)〈◯後二條〉に聞えさせ給、〈◯中略〉御返し内のうへ(○○○○)、〈◯下略〉

上様

〔太平記〕

〈七〉

p.0176 先帝船上臨幸事

p.0177 佐々木富士名判官ガ番ニテ中門ノ警固ニテ候ケルガ、〈◯中略〉申入ケルハ、上様(ウヘサマ/○○)〈◯後醍醐〉ニハ未知シ召レ候ハズヤ、楠兵衞正成、金剛山ニ城ヲ構テ楯籠候シ處ニ、〈◯下略〉

〔資勝卿記〕

p.0177 元和七年辛酉十二月十五日
一女御様〈◯後水尾后、徳川和子、〉御脇フサギ也、〈◯中略〉女御様の御うつくしさ、うへ様(○○○)〈◯後水尾〉もながめいらせられ候つる、

今上

〔東大寺獻物帳〕

p.0177 厨子壹口
右件厨子、〈◯中略〉後太上天皇〈◯聖武〉傳二賜今上(○○)一、〈◯孝謙〉今上謹獻二盧舍那佛一、

〔類聚國史〕

〈百四十七文〉

p.0177 日本後紀序
臣緒嗣等、討二論綿書一、披二閲曩策一、文史之興、其來尚矣、〈◯中略〉今上(○○)陛下、〈◯仁明〉禀二乾坤之秀氣一、含二宇宙之滴精一、〈◯下略〉

〔三代實録〕

〈二清和〉

p.0177 貞觀元年三月十九日乙亥、大僧都傳燈大法師位眞雅抗レ表曰、〈◯中略〉毎年三月上旬、試二定上件三人一、當下於二今上(○○)降誕之日一度上レ之、〈◯下略〉

〔三代實録〕

〈三十一陽成〉

p.0177 元慶元年四月廿一日壬辰、先レ是去三月二十九日、今上(○○)奉二表請一、太上天皇〈◯清和〉御封戸欲レ被二許納一、〈◯下略〉

〔枕草子〕

〈五〉

p.0177 今上〈◯一條〉一の宮、〈◯敦康〉まだわらはにておはしますが、〈◯下略〉

〔増鏡〕

〈三藤衣〉

p.0177 今上〈◯四條〉は、二歳にぞならせたまふ、

當今

〔續世繼〕

〈三二葉の松〉

p.0177 當今(○○)〈◯高倉〉御事、申も憚り多く侍れど、つヾきにおはしませば、事新らしく侍れど申になん、

〔公明卿記〕

p.0177 寛政四年正月十八日、閑院一品宮〈◯典仁親王〉御事、當今(○○)〈◯光格〉御間柄之儀ヲ以、尊號宣下之事、〈◯下略〉

〔和訓栞中編〕

〈十三多〉

p.0178 たうぎん(○○○○)、　當今とかけり、當代の今上を申奉る辭なり、和語なるべし、

當代

〔源氏物語〕

〈十三明石〉

p.0178 たうだい(○○○○)のみこは、〈◯中略〉ふたつになり給へばいといはけなし、

〔源氏物語〕

〈十四冷標〉

p.0178 たうだい(○○○○)のかく位にかなひ給ぬる事を、思ひのごとうれしとおほす、

〔續世繼〕

〈三男山〉

p.0178 保延五年にや侍りけん、〈◯中略〉たうだい(○○○○)〈◯崇徳〉の御子になし奉り給事いできて、みな月の廿六日、皇子〈◯近衞〉内へ入らせ給、

皇御孫命

〔令義解〕

〈六儀制〉

p.0178 凡自二天子一至二車駕一、〈◯中略〉皆是書記所レ用、至二風俗所一レ稱、別不レ依二文字一、假如皇御孫命(スメミマノミコト/○○○○)、〈◯中略〉之類也、

〔日本書紀〕

〈二神代〉

p.0178 欲下立二皇孫(スメミマ/○○)天津彦彦火瓊瓊杵尊一、以爲中葦原中國之主上、

〔古事記傳〕

〈十五〉

p.0178 皇御孫(スメミマノ)命とは、此尊を始めて、後の御世御世の、天皇をも申奉る稱なり、

〔延喜式〕

〈八祝詞〉

p.0178 祈年祭
集侍神主祝部等諸聞食〈登〉宣、〈◯中略〉御年皇神〈能〉前〈爾〉白馬白猪白鷄種々色物〈乎〉備奉〈氐、〉皇御孫命(○○○○)〈能〉宇豆〈乃〉幣帛〈乎〉、稱辭竟奉〈久登〉宣、

〔延喜式〕

〈八祝詞〉

p.0178 六月晦大祓〈十二月准之〉
集侍親王諸王諸臣百官人等諸聞食〈止〉宣、〈◯中略〉如此所聞食〈氐波〉皇御孫之命(○○○○○)〈乃〉朝廷〈乎〉始〈氐、〉天下四方國〈爾波、〉罪〈止〉云〈布〉罪〈波〉不レ在〈止、◯下略〉

〔日本書紀〕

〈九神功〉

p.0178 九年〈◯仲哀〉十二月辛亥、〈◯中略〉一云、足仲彦天皇〈◯仲哀〉居二筑紫橿日宮一、是有レ神、託二沙麼縣主祖、内避高、國避高、松屋種一、以誨二天皇一曰、御孫尊(ミマノミコト/○○○)也、若欲レ得二寳國一耶、將現授レ之、〈◯下略〉

〔續日本紀〕

〈十五聖武〉

p.0178 天平十五年五月癸卯、宴二群臣於内裏一、皇太子〈◯孝謙〉親儛二五節一、〈◯中略〉御製歌曰、〈◯中略〉阿麻豆可未美(アマツカミミ)麻乃彌己止乃(マノミコトノ/○○○○○○)〈◯乃恐爾誤〉登理母知氐(トリモチテ)、許能等與美岐遠伊(コノトヨミキヲイ)寸〈◯寸恐末誤〉多氐末都流(タテマツル)、

〔古事記〕

〈上〉

p.0178 爾豐玉毘賣命思レ奇、出見乃見感目合、而白二其父一〈◯綿津見神〉曰、吾門有二麗人一、〈◯穗々出見尊〉爾海神自出

p.0179 見云、此人者天津日高(○○○○)〈◯邇々杵尊〉之御子、虚空津日高矣、

〔日本書紀通證〕

〈七〉

p.0179 今按、天津日高(○○○○)者、天子之稱、虚津日高者、太子之稱、

須明樂美御徳

〔令義解〕

〈六儀制〉

p.0179 凡自二天子一至二車駕一、〈◯中略〉皆是書記所レ用、至二風俗所一レ稱、別不レ依二文字一、假如〈◯中略〉須明樂美御徳(スメラミコト/○○○○○○)之類也、

〔古事記傳〕

〈十六〉

p.0179 此假字は、異國に示さむ爲に、書れたるものと見えて、好字の限りを集めたるほどに、御字など、清濁さへかなはず、此字に據て、コ(○)を濁るはひが事なり、

〔曲江集〕

〈七〉

p.0179 勅二日本國王一書
勅、日本國王、主明樂美御徳、〈◯下略〉

〔類聚名義抄〕

〈六玉〉

p.0179 天皇〈スベラキ(○○○○)〉

〔八雲御抄〕

〈三下異名〉

p.0179 帝王　すべらき(○○○○)〈すべらきみとも、すべらとも、〉

〔萬葉集〕

〈十五〉

p.0179 到二壹岐島一雪連宅滿遇二鬼病一死去之時作歌
須賣呂伎(スメロギ/○○○○)能等保能朝廷等(ノトホノミカドト)、可良國爾和多流和我世波(カラクニニワタルワガセハ)、〈◯下略〉

〔萬葉集〕

〈十八〉

p.0179 賀二陸奧國出一レ金詔書歌
葦原能美豆保國乎(アシハラノミヅホノクニヲ)、安麻久太利之良志賣之家流(アマクダリシラシメシケル)、須賣呂伎(スメロキ/○○○○)能神乃美許等能(ノカミノミコトノ)、〈◯下略〉

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.0179 天平勝寳七歳乙未二月相替遣二筑紫諸國一防人等歌
阿良例布理可志麻能可美乎伊能利都々(アラレフリカシマノカミヲイノリツヽ)須米良(スメラ/○○○)美久佐爾和例波伎爾之乎(ミクサニワレハキニシヲ)
　右那賀郡〈◯常陸〉上丁大舍人部千文

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.0179 喩レ族歌
比左加多能安麻能刀比良伎(ヒサカタノアマノトヒラキ)、〈◯中略〉加久佐波奴安加吉許己呂乎(カタサハヌアカキココロヲ)、須賣良(スメラ/○○○)幣爾伎波米都久之氐(ベニキハメツクシテ)、〈◯下略〉
　右縁二淡海眞人三船讒言一、出雲守大伴古慈悲宿禰解任、是以家持作二此歌一也、

〔古今和歌集〕

〈序〉

p.0180 今すべらぎ(○○○○)〈◯醍醐〉の天の下しろしめす事、よつの時、こヽのかへりになんなりぬる、

〔堀川院御時百首和歌〕

p.0180 氷室　　　從四位上行木工頭源朝臣俊頼
すべらき(○○○○)のみことの末のたえせねばけふも氷室のおものたつなり

〔玉葉和歌集〕

〈二十神祇〉

p.0180 後白河院位御時、八十嶋の使にて、住吉にまうでヽよみ侍ける、　　　從二位朝子
すべらき(○○○○)の千世のみかげにかくれずはけふ住吉の松をみましや

天神御子

〔古事記〕

〈上〉

p.0180 僕者國神、名猨田毘古神也、所二以出居一者、聞二天神御子(アマツカミノミコ/○○○○)〈◯邇々杵命〉天降坐一、故仕二奉御前一、而參向之侍、

〔日本書紀〕

〈三神武〉

p.0180 十月辛酉、〈◯甲寅年〉天皇親帥二諸皇子一、舟師東征、至二速吸(ハヤスヒ)之門一、時有二一漁人一、乘レ艇而至、天皇招之、因問曰、汝誰也、對曰、臣是國神名曰二珍彦一、釣二魚於曲(ワタ)浦一、聞二天神子(アマツカミノミコ/○○○)〈◯神武〉來一、故即奉レ迎、

〔日本書紀〕

〈三神武〉

p.0180 戊午年十有二月丙申、長髓彦乃遣二行人一、言二於天皇一曰、嘗有二天神之子一、乘二天磐船一自レ天降止、號曰二櫛玉饒速日命一、〈◯中略〉故吾以二饒速日命一、爲レ君而奉焉、夫天神之子、豈有二兩種一乎、奈何更稱二天神子一、以奪二人地一乎、吾心推レ之、未二必爲一レ信、天皇曰、天神子亦多耳(○○○○○○)、汝所レ爲レ君、是實天神之子者、必有二表物一、可二相示一之、長髓彦即、取二饒速日命之天羽羽矢一隻及歩靱一、以奉二示天皇一、天皇覽之曰、事不レ虚也、還以二所レ御天羽羽矢一隻及歩靱一、賜二示於長髓彦一、長髓彦見二其天表一、益懷二踧踖一、
◯按ズルニ、文ニ天神子亦多耳トアリ、此稱ハ必シモ、天皇ニノミ限ラザルナリ、

〔日本書紀〕

〈二神代〉

p.0180 大己貴(オホナムヂノ)神、〈◯中略〉乃以二平レ國時所レ杖之廣矛一、授二二神一〈◯經津主神、武甕槌神、〉曰、吾以二此矛一卒有レ治レ功、天孫(○○)若用二此矛一治レ國者、必當二平安一、

〔古事記傳〕

〈十五〉

p.0180 書紀に、天孫ともあるは、古言に非ず、こは天神之御子を、例の漢めかしく簡にかヽれたるものなり、阿麻都加微能美古(アマツカミノミコ)とよむべし、阿米美麻(アメミマ)〈◯本書古訓、アメミマ(○○○○)、〉とよむは非なり、

〔日本書紀〕

〈九神功〉

p.0181 九年〈◯仲哀〉十二月辛亥、〈◯中略〉一云、〈◯中略〉皇后爲二男束裝一征二新羅一、〈◯中略〉於レ是新羅王宇流助富利智于參迎、跪之取二王船一、即叩頭曰、臣自今以後、於二日本國一所レ居、神御子(○○○)爲二内官家一、無レ絶朝貢、

日之皇子

〔萬葉集〕

〈一雜歌〉

p.0181 藤原宮之役民作歌
八隅知之吾大王(ヤスミシヽワガオホキミ)、高照(タカヒカル)日之皇子(ヒノミコ/○○○○)、〈◯持統〉荒妙乃藤原我宇倍爾(アラタヘノフヂハラガウヘニ)、食國乎賣之賜牟登(ヲスクニヲメシタマハムト)、都宮者高所知武等(ミアラカハタカシラサムト)、神長柄所念奈戸二(カムナガラオモホスナヘニ)、〈◯下略〉

〔古事記〕

〈中應神〉

p.0181 吉野之國主(クズ)等、瞻二大雀命(オホサヾキ)〈◯仁徳〉之所レ佩御刀一歌曰、本牟多(ホムダ)〈◯應神御名〉能(ノ)、比能美古(ヒノミコ)、意富佐(オホサ)邪岐意富佐邪岐(キオホサザキ)、〈◯下略〉
◯按ズルニ、上文古事記ノ外、萬葉集ニモ、皇子ヲ日之皇子ト稱シ奉リシ例多ク見エタリ、故ニ此稱ハ、特ニ天皇ニノミ限レルニハアラズト知ルベシ、

〔年中行事歌合〕

p.0181 四十四番
　右　行幸　　　内大臣〈◯藤原師良〉
萬民のてらさぬ方もなかりけり日のわが君(○○○○○)のいづる御幸に

現人神

〔倭名類聚抄〕

〈二鬼神〉

p.0181 現人神(○○○)、　日本紀云、現人神、〈和名、安良比止加美、〉

〔日本書紀〕

〈七景行〉

p.0181 二十八年十月、爰日本武尊、則從二上總一轉入二陸奧國一、時大鏡懸二於王船一、從二海路一廻二於葦浦一、横渡二玉浦一、至二蝦夷境一、蝦夷賊首島津神、國津神等、屯二於竹〈ノ〉水門一而欲レ距、然遙視二王船一、豫怖二其威勢一、而心裏知二之不一レ可レ勝、悉捨二弓矢一、望拜之曰、仰視二君容一秀二於人倫一、若神之乎、欲レ知二姓名一、王對之曰、吾是現人神(アラヒトカミ/○○○)之子也、於レ是蝦夷等悉慄、則褰レ裳披レ浪、自扶二王船一而着レ岸、仍面縛服レ罪、故免二其罪一、因以俘二其首帥一、而令レ從レ身也、

〔日本書紀〕

〈十四雄畧〉

p.0181 四年二月、天皇〈◯雄略〉射二獵於葛城山一、忽見三長人來望二丹谷一、面貌容儀相二似天皇一、天皇知二是神一、猶故問曰、何處公也、長人對曰、現人之神(アラヒトカミ/○○○○)先稱二王諱一、然後應レ道、

〔續日本後紀〕

〈十九仁明〉

p.0181 嘉祥二年三月庚辰、興福寺大法師等、爲レ奉レ賀三天皇寳算滿二于四十一、奉レ造二聖像四十軀一、

p.0182 〈◯中略〉副二之長歌一奉獻、其長歌詞曰、〈◯中略〉我國之聖〈乃〉皇〈波〉、尊〈毛〉御坐〈加、◯中略〉毎レ皇〈爾〉現人神(○○○)〈止〉、成給御坐〈世波、◯下略〉
◯按ズルニ、現人神ハ字ノ如ク、古代ニ在テハ、天皇ニ限レル尊稱ナリシニ、後ニハ轉ジテ專ラ神ヲ云フコトヽナレリ、萬葉集卷第六、天平十年、石上乙麻呂配二土左國一之時歌ニ、繫卷裳湯湯石恐石(カケマクモユユシカシコシ)、住吉乃荒人神(スミノエノアラヒトガミ)、船舳爾牛吐賜(フナノヘニウシハキタマヒ)トアル是ナリ、

明御神

〔八雲御抄〕

〈三下異名〉

p.0182 帝王、　あきつ神(○○○○)、〈君を申也、わがすべらきとつヾけたり、〉

〔令義解〕

〈七公式〉

p.0182 詔書式
明神(アキツミカミト/○○)御宇日本天皇詔旨、〈謂以二大事一宣二於蕃國使一之辭也、〉云々咸聞、
明神(○○)御宇天皇詔旨、〈謂以二次事一宣二於蕃國使一之辭也、〉云々咸聞、
明神(○○)御二大八洲一天皇詔旨、〈謂用レ於二朝廷大事一之辭、即立二皇后皇太子一、及元日受二朝賀一之類也、〉云々咸聞、〈◯下略〉

〔延喜式〕

〈八祝詞〉

p.0182 出雲國造神賀詞
八十日日(ヤソカビ)〈波(ハ)〉在(アレ)〈止毛(ドモ)、◯中略〉明御神(アキツミカミ/○○○)〈止(ト)〉大八島國所知食(オホヤシマクニシロシメ)〈須(ス)〉天皇命(スメラミコト)〈乃(ノ)、◯下略〉

〔祝詞考〕

〈人〉

p.0182 公式令に、明神御宇大八洲天皇、宣命に顯御神とあるたぐひ、皆あきつみかみ(○○○○○○)、あきつかみ(○○○○○)とよみ申すべし、萬葉に明津神(○○○)吾王とあるは、あきつかみ(○○○○○)とよむ外なければなり、さてこは、天皇は今明らかに世におはします御神と、崇み畏みて申す言なり、

〔日本書紀〕

〈二十五孝徳〉

p.0182 大化元年七月丙子、詔二於高麗使一曰、明神(○○)御宇日本天皇詔旨、〈◯中略〉又詔二於百濟使一曰、明神(○○)御宇日本天皇詔旨、〈◯中略〉　二年二月戊申、天皇幸二宮東門一、使二蘇我右大臣一、詔曰、明神(○○)御宇日本倭根子天皇、詔二於集侍卿等、臣連國造伴造、及諸百姓一、〈◯中略〉　三月壬午、皇太子使レ使奏請曰、〈◯中略〉現爲明神(○○○○)御二八嶋國一天皇、問二於臣一曰、〈◯下略〉

〔日本書紀〕

〈二十九天武〉

p.0182 十二年正月丙午、詔曰、明神(○○)御二大八州一日本根子天皇勅命者、諸國司、國造、郡司、及百

p.0183 姓等、諸可レ聽矣、〈◯下略〉

〔續日本紀〕

〈一文武〉

p.0183 高天原廣野姫天皇〈◯持統〉十一年、立爲二皇太子一、　八月甲子朔、受レ禪即レ位、　庚辰、詔曰、現御神(アキツミカミ/○○○)〈止〉大八嶋國所知天皇大命〈良麻止〉詔、〈◯下略〉

〔萬葉集〕

〈六雜歌〉

p.0183 讃二久邇新京一歌
明津神(アキツカミ/○○○)吾皇之(ワガオホギミノ)、天下八嶋之中爾(アメノシタヤシマノウチニ)、國者霜多雖有(クニハシモオホクアレドモ)、〈◯下略〉

〔萬葉集〕

〈一雜歌〉

p.0183 幸二讃岐國安益郡一之時〈◯舒明〉軍王見レ山作歌
霞立長春日乃(カスミタツナガキハルビノ)、〈◯中略〉遠神(トホツカミ/○○)吾大王乃(ワガオホキミノ)、行幸能山越風乃(イデマシノヤマゴシノカゼノ)、〈◯下略〉

〔萬葉集〕

〈三雜歌〉

p.0183 角麻呂歌
清江乃木笑松原(スミノエノキシノマツバラ)遠神(トホツカミ/○○)我王之幸行處(ワガオホキミノイデマシドコロ)

ひじりのきみ

〔續日本後紀〕

〈十九仁明〉

p.0183 嘉祥二年三月庚辰、興福寺大法師等、爲レ奉レ賀三天皇寶筭滿二于四十一、奉レ造二聖像四十軀一、〈◯中略〉副二之長歌一奉獻、其長歌詞曰、〈◯中略〉我國之聖(○)〈乃(○)〉皇(○)〈波〉、尊〈毛〉御坐〈加〉、日宮〈能〉聖之御子〈能〉、天下〈爾〉御坐〈天〉、御世御世〈爾〉相承襲〈氐〉、毎レ皇〈爾〉現人神〈止〉、成給御坐〈世波、◯下略〉

〔和訓栞〕

〈二十五比〉

p.0183 ひじり　日本紀に聖字をよめり、萬葉集に日知とかけり、日徳を知しめす聖天子の稱なり、又大人をもよめり、西土にも天子を聖といへれど、我邦日知の意は西土と異なり、天つ日嗣しろしめす皇孫の尊を申奉るなり、

おほきみ

〔八雲御抄〕

〈三下異名〉

p.0183 帝王、　おほきみ(○○○○)〈たヾ王をもいふ〉
◯按ズルニ、周易ノ師卦ニ、大君有レ命、開レ國承レ家トアレド、吾邦ノ大君(オホギミ)ハ、此ニ依ルニアラズ、

〔令義解〕

〈九喪葬〉

p.0183 凡服紀者、爲二君(○)、〈謂天子也〉父母、及夫、本主一、〈◯中略〉一年、

〔日本書紀〕

〈十一仁徳〉

p.0183 五十年三月丙申、〈◯中略〉天皇於レ是歌以問二武内宿禰一曰、〈◯中略〉武内宿禰答歌曰、夜輸瀰始之和我(ヤスミシシワガ)於朋枳瀰(オホキミ/○○○○)、〈◯下略〉

〔日本書紀〕

〈十四雄略〉

p.0184 四年八月庚戌、幸二于河上小野一、〈◯中略〉天皇乃口號曰、〈◯中略〉飫裒枳瀰(オホキミ/○○○○)簸賊據嗚枳舸斯題(ハソコヲキカシテ)、〈◯下略〉

〔續日本紀〕

〈十五聖武〉

p.0184 天平十五年五月癸卯、宴二群臣於内裏一、皇太子〈◯孝謙〉親儛二五節一、〈◯中略〉因御製歌曰、〈◯中略〉又歌曰、夜須美斯志和己(ヤスミシシワゴ)於保支美(オホキミ/○○○○)波(ハ)、多比良氣久那何久伊未之氐(タヒラケクナカクイマシテ)、等與美岐麻都流(トヨミキマツル)、

〔萬葉集〕

〈十四東歌〉

p.0184 相聞
於保伎美(オホキミ/○○○○)乃美己等可思古美可奈之伊毛我多麻久良波奈禮欲太知伎努可母(ノミコトカシコミカナシイモガタマクラハナレヨダチキヌカモ)

〔萬葉集〕

〈十八〉

p.0184 太上皇〈◯元正〉御二在於難波宮一之時歌
　河内女王歌
多知婆奈能之多泥流爾波爾等能多氐天佐可彌豆伎伊麻須和我(タチバナノシタテルニハニトノタテテサカミヅキイマスワガ)於保伎美(オホキミ/○○○○)可母(カモ)

〔古事記傳〕

〈二十二〉

p.0184 意富伎美(オホキミ)と申す御稱は、天皇を始め奉りて、親王諸王迄にわたる御稱にて、まづ主とは天皇を申すなれば、諸王に限りての稱の如くなれるは當らぬ事なり、

みかど

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.0184 藤原夫人〈◯名氷上天武夫人〉歌
可之故伎也安米乃(カシコキヤアメノ)美加度(ミカド/○○○)乎可氣都禮婆禰能未之奈加由安左欲比爾之氐(ヲカケツレバネノミシナカユアサヨヒニシテ)

〔萬葉集略解〕

〈二十下〉

p.0184 みかどヽ云は、こヽは天皇を申奉れり、直ちに天皇をさし奉るは恐あれば、朝廷(ミカド)をいひて、やがて天皇の御事なり、あめとは尊ていへり、古今集古注に、あめのみかどあふみのうねめに給る歌とあり、あめのみかどは、天智天皇を申すといふはかたくなヽり、釆女は諸國より貢すれば、近江の釆女とても、必近江の朝〈◯天智〉とするはひが事なり、

〔令義解〕

〈七公式〉

p.0184 闕廷(○○)　朝廷(○○)〈◯中略〉　右如レ此之類並闕字、

〔日本靈異記〕

〈下〉

p.0184 閻羅王示二奇表一勸レ人令レ修レ善縁第九〈◯中略〉
闕(○)〈彌加止〉

〔和訓栞〕

〈三十美〉

p.0185 みかど　御門と書り、陛下闕下などいふ如し、日本紀に人主、王室、天闕、國家、朝廷、日本國、中國をもよめり、

御所

〔令義解〕

〈一職員〉

p.0185 中務省
大内記二人、〈掌下造二詔勅一、凡御所(○○)記録事上、〉

〔令集解〕

〈三職員〉

p.0185 釋云、御所(○○)記録者、止行〈◯行恐斥字誤〉至尊也、不レ渉二三治一〈◯治恐后字誤〉也、

〔日本書紀〕

〈二十九天武〉

p.0185 十一年五月戊申、遣二高麗一使佐伯連廣足、小使小墾田臣麻呂、奉二使旨於御所(○○)一、

〔平家物語〕

〈十一〉

p.0185 大坂越の事
御所(○○)〈◯安徳〉の御船には、女院、北のまん所、二位殿いげの女房たちめされけり、

〔園太暦〕

p.0185 觀應三年〈◯文和元年〉閏二月廿一日、申刻許、此間武士群起之由謳歌、〈◯中略〉所詮御所々々(○○○○)、〈◯光嚴、光明、崇光、〉可レ幸二八幡一之由也、〈◯下略〉

〔看聞日記〕

p.0185 嘉吉三年九月廿三日、暮程より世間物忩、〈◯中略〉惡黨三四十人許、清凉殿へ亂入、常御所へ入、御所様(○○○)〈◯後花園〉は未レ成二御寢一、〈◯下略〉

内裏

〔源氏物語〕

〈十三明石〉

p.0185 かヽるついでに、だいり(○○○)に奏すべき事あるによりてなん、急ぎのぼりぬ、〈◯下略〉

〔椿葉記〕

p.0185 内裏(○○)〈◯後光嚴〉は、伏見殿〈◯崇光〉と、御中よく申通ぜられ侍る、

〔椿葉記〕

p.0185 内裏(○○)〈◯後小松〉は、御治天三十年、政務おぼしめすまヽにておりさせ給ふ、

〔椿葉記〕

p.0185 内裏(○○)は、二十日〈◯正長元年七月〉崩御なりぬ、〈諡號二稱光院一〉

〔榮花物語〕

〈三十八松の下枝〉

p.0185 此内(ウチ/○)〈◯後三條〉の御心、いとすくよかに、〈◯下略〉

〔源平盛衰記〕

〈三十四〉

p.0185 明雲八條宮人々被レ討事
信清聲ヲ高シテ、是ハ内(ウチ/○)〈◯後鳥羽〉ノ渡ラセ給ナリ、如何ニカク狼籍ヲバ仕ルゾト宣ケレバ、木曾〈◯義仲〉ハ國王ヲ内(○)ト申進スル事ヲバ知ラザリケル間、内(○)トハ己等ガ妻ヲ云ゾト心得テ、内(○)トハ妻ガ事

p.0186 ニヤ、女トテモ處ヲヤ置ベキ、只皆射殺セト下知シケレバ、イトヾ矢ヲゾ進セケル、

〔宗良親王千首〕

〈跋〉

p.0186 天授二年の夏の末つかた、〈◯中略〉内(○)〈◯後龜山〉春宮二御かた、千首御歌あそばさるべしとて、〈◯下略〉

禁裏

〔椿葉記〕

p.0186 禁裏(○○)〈◯後圓融〉は、御在位十二年まし〳〵て、永徳二年四月御讓位あり、

〔椿葉記〕

p.0186 禁裏(○○)〈◯稱光〉逆鱗の事ありて、御位おりさせ給はんなど、さま〴〵煩はしくきこゆ、

〔建内記〕

p.0186 文安四年三月六日丁酉、伏見宮〈入道貞成親王、禁裏(○○)（後花園）御實父事也、〉尊號事、近日頻有二御所望一、〈◯下略〉

〔多聞院日記略〕

p.0186 天正十四年九月、來廿六日、禁裏〈◯正親町〉御讓位アリト云々、

〔三寳院日記〕

p.0186 承應三年九月廿日、禁中、〈◯後光明〉今曉寅刻崩御、

おほやけ

〔八雲御抄〕

〈三下異名〉

p.0186 帝王、　大やけ〈官字をかきてよめり〉

〔伊勢物語〕

p.0186 昔おほやけ(○○○○)おぼして、つかふ給ふ女の、色ゆるされたる有けり、

〔伊勢物語〕

p.0186 昔仁和のみかど〈◯光孝〉芹川に行幸し給ひける時、〈◯中略〉おほやけ(○○○○)の御けしきあしかりけり、

〔獨斷〕

〈上〉

p.0186 天子自稱、謂曰二行在所一、〈◯中略〉近臣侍從官、稱曰二大家一、

〔吾妻鏡〕

〈四〉

p.0186 文治元年正月六日庚寅、爲レ追二討平家一、〈◯中略〉欲レ被レ仰二遣西海一、〈◯中略〉其状云、
十一月十四日御文、正月六日到來、〈◯中略〉八嶋御坐大やけ(○○○)、〈◯安徳〉并に二位殿女房達なども、少もあやまり、あしざまなる事なくて、向へとり申させたまふべし、〈◯下略〉

公家

〔續日本後紀〕

〈十三仁明〉

p.0186 承和十年二月壬戌、散位從四位下勳七等大野朝臣眞鷹卒、〈◯中略〉淳和天皇踐祚、天長之初、任二右近衞權少將一、以二舊臣一也、〈◯中略〉天皇脱屣御閑之日、猶留二眞鷹身於公家(○○)一、

〔百練抄〕

〈四圓融〉

p.0186 永觀元年三月廿三日、供二養圓融寺一、公家(○○)御願也、准二御齋會一、

〔榮花物語〕

〈五浦々の別〉

p.0186 西院になんこもりておはする〈◯藤原伊周〉といふ事聞えたれば、〈◯中略〉これたヾの

p.0187 事にはあらじ、公家(○○)〈◯一條〉をいかにしたてまつらんとする事をかまへたるぞなど、いみじき事をおしはからせ給、〈◯下略〉

〔長門本平家物語〕

〈十四〉

p.0187 平家の殿ばらは、曉西國へ落下るべくとて、以の外にひしめき候なるが、具し參らせんとて、既に公家(○○)〈◯安徳〉を迎へ參らせて候なり、

萬乘ノ主

〔保元物語〕

〈三〉

p.0187 新院御遷幸事
新院〈◯崇徳〉ヲ讃岐國ヘ遷シ奉ルベキ由ヲ奏聞ス、〈◯中略〉異國ヲ聞バ、〈◯中略〉我國ヲ思ヘバ、安康天皇ハ繼子ニ殺サレ、崇峻天皇ハ逆臣ニ犯サレ給ヒキ、十善ノ君、萬乘ノ主(○○○○)、先世ノ宿業ヲバノガレ給ハズト思召慰ムハシトゾ成ニケル、

〔源平盛衰記〕

〈四十三〉

p.0187 二位禪尼入海事
悲シキ哉、月ニ瑩シ萬乘ノ玉體(○○○○○)、〈◯安徳〉蒼海ノ浪ニ影ヲ沈御坐事ヲ、

〔太平記〕

〈九〉

p.0187 主上上皇御沈落事
何クヨリ射ル共知ラヌ流矢、主上〈◯光嚴〉ノ左ノ御肱ニ立ニケリ、〈◯中略〉忝モ萬乘ノ主(○○○○)、卑キ匹夫ノ矢前ニ被レ傷テ、神龍忽ニ釣者ノ網ニカヽレル事、淺猿カリシ世中也、
◯按ズルニ、萬乘之君、孟子公孫丑ニ見エテ、同書梁惠王篇、萬乘之國ノ注ニ、萬乘之國者、天子畿内、地方千里、出二車萬乘一トアリ、

一天ノ主

〔源平盛衰記〕

〈四十三〉

p.0187 二位禪尼入海事
昔ハ一天ノ主(○○○○)〈◯安徳〉トシテ、殿ヲハ長生ト祝ヒ、門ヲバ不老ト名ケシカ共、今ハ雲上ノ龍下テ、忽ニ海中ノ鱗ト成給コソ悲シケレ、

〔太平記〕

〈四〉

p.0187 先帝遷幸事
先帝〈◯後醍醐〉ヲ隱岐國ヘ遷シ奉ル、〈◯中略〉京中ノ貴賤男女、小路ニ立雙テ、正シキ一天ノ主(○○○○)ヲ、下トシテ

p.0188 流シ奉ル事ノ淺猿サヨ、武家ノ運命今ニ盡ナント、所レ憚ナク云聲巷ニ滿、

〔太平記〕

〈九〉

p.0188 主上上皇御沈落事
備前國ノ住人中吉彌八、行幸〈◯光嚴〉ノ御前ニ候ケルガ、敵近ク馬ヲ懸寄テ、忝モ一天ノ君(○○○○)、關東へ臨幸成處ニ、何者ナレバ加様ノ狼籍ハ仕ルゾ、〈◯下略〉

〔伯耆之卷〕

p.0188 長高〈◯名和〉承り、少し差退、袖かき合、泪をはら〳〵と流て申けるは、忝も一天の君(○○○○)〈◯後醍醐〉の勅定を蒙りながら、いかで子細を可レ申候、

十善之主

〔圓融院御受戒記〕

p.0188 寛和二年三月廿二日庚寅、侍臣曰、〈◯中略〉十善之主(○○○○)、既富二春秋一、其猶如レ此、我等何益、〈◯下略〉

〔下學集〕

〈下數量〉

p.0188 十善、〈不レ作二十惡一、即十善也、別而可レ無二十善義一、〉

〔榮花物語〕

〈十日蔭の鬘〉

p.0188 寛弘八年六月十三日御讓位、〈◯一條〉十月十六日御即位〈◯三條〉なり、〈◯中略〉そこらのかんたちめ殿上人、御おくりつかうまつり給て、御こしのさヽげられ給へる程ぞ、猶限りなき十善の王(○○○○)におはしますめれ、

〔讃岐典侍日記〕

〈上〉

p.0188 十戒を先の世にうけさせ給ひて、破らせ給はざりければこそ、此世にて十善の位(○○○○)永く保ち、佛法をあがめ、一切衆生をあはれみさせ給ふ心、いまだ昔より今に至る迄、かばかりの帝王〈◯堀河〉おはしまさず、

〔保元物語〕

〈三〉

p.0188 新院御遷幸事
新院〈◯崇徳〉ヲ讃岐國ヘ遷シ奉ルベキ由ヲ奏聞ス、〈◯中略〉十善ノ君(○○○○)、萬乘ノ主、先世ノ宿業ヲバノガレ給ハズト思召慰ムハシトゾ成ニケル、

〔源平盛衰記〕

〈四十三〉

p.0188 二位禪尼入海事
哀レナル哉、花ニ喩ヘシ十善(○○)ノ御粧、〈◯安徳〉無常ノ風ニ匂ヲ失ヒ、〈◯下略〉

〔増鏡〕

〈三藤衣〉

p.0189 今上〈◯四條〉は二歳にぞならせ給ふ、淺ましき程の御いはけなさにて、いつくしき十善のあるじ(○○○○○○)に定まり給ふ、

〔平戸記〕

p.0189 仁治三年正月十九日壬寅、〈◯中略〉抑此事、〈◯後嵯峨踐祚〉關東計申之條雖レ知、末世之至極、可レ悲可レ悲、十善帝位(○○○○)之運、更非二凡夫愚賤之所一レ思、〈◯下略〉

〔神皇正統記〕

〈光孝〉

p.0189 佛も衆生をみちびきつくし、神も萬姓をすなほならしめんとこそしたまへど、衆生の果報品々に、受る所の性同じからず、十善の戒力にて天子とはなりたまへども(○○○○○○○○○○○○○○○○○○)、代々の御行迹善惡亦まち〳〵なり、

〔太平記〕

〈三〉

p.0189 主上御二沒落笠置一事
忝モ十善ノ天子(○○○○○)、〈◯後醍醐〉玉體ヲ田夫野人ノ形ニ替サセ給テ、ソコトモ不レ知、迷ヒ出サセ給ケル御有様コソ淺猿ケレ、

〔太平記〕

〈七〉

p.0189 先帝船上臨幸事
忠顯朝臣是ヲ聞キ給テ、〈◯中略〉何ヲカ隱スベキ、屋形御中ニ御座アルコソ、日本國ノ主、忝モ十善ノ君(○○○○)〈◯後醍醐〉ニテ入ラセ給ヘ、

金輪聖主

〔本朝文粹〕

〈十三表白文〉

p.0189 天皇〈◯村上〉御筆法華經供養講説日問者表白
　　　　　　　　　　　　　　　前中書王〈◯兼明親王〉
金輪聖主(○○○○)、堯雲遍燾、潤二藥草於春畞一、舜日重照、轉二法輪於昏衢一、〈◯中略〉
　天暦九年正月四日

〔阿毘達磨倶舍論〕

〈十二分別世品〉

p.0189 論曰、從二此洲人壽無量歳一、乃至二八萬歳一、有二轉輪王生一、減二八萬一時、有情富樂、壽量損減、衆惡漸盛、非二大人器一、故無二輪王一、此王由二輪旋轉應導一、威二伏一切一名二轉輪王一、施設足中説レ有二四種一、金銀銅鐵輪應別、故如二其次第一、勝上中下逆次、能王領二一二三四洲一、謂鐵輪王王二一洲界一、銅輪王レ二、

p.0190 銀輪王レ三、若金輪王王二四洲界一、