帝王部/行幸下〈朝覲行幸附〉

親征

〔日本書紀〕

〈三神武〉

p.0657 神日本磐余彦天皇、〈◯神武、中略、〉及二年四十五歳一、謂二諸兄及子等一曰、昔我天神高皇産靈尊、大日孁尊、擧二此豐葦原瑞穗國一、而授二我天祖彦火瓊瓊杵(ヒコホノニヽキ)尊一、於レ是火瓊瓊杵尊闢一天關一、披二雲路一、駈二山蹕一以戻止、是時運屬二鴻荒一、時鍾二草昧一、故蒙以養レ正、治二此西偏一、皇祖皇考、乃神乃聖、積レ慶重レ暉、多歴二年所一、〈◯中略〉而遼邈之地、猶未レ霑二於王澤一、遂使二邑有レ君、村有レ長、各自分レ彊、用相凌躒一、抑又聞二於鹽土老翁一曰、東有二美地一、青山四周、其中亦有下乘二天磐船一飛降者上、余謂彼地、必當レ足下以恢二弘天業一、光中宅天下上、蓋六合之中心乎、厥飛降者、謂是饒速日(ニギハヤヒ)歟、何不二就而都一之乎、諸皇子對曰、理實灼然、我亦恒以爲レ念、宜二早行一之、是年也大歳甲寅、其年冬十月辛酉、天皇親帥二諸皇子一、舟師東征、至二速吸之門一、〈◯中略〉　戊午年二月丁未、皇師遂東、舳艫相接、方到二難波之碕一、會下有二奔潮一太急上、因以名爲二浪速國一、〈◯中略〉　六月丁巳、軍至二名草邑一、〈◯中略〉遂越二狹野一、到二熊野神邑一、〈◯中略〉天皇獨與二皇子手研耳命一、帥レ軍而進、至二熊野荒坂津一、〈◯中略〉尋二烏所一レ向、仰視而追之、遂達二于菟田下縣一、〈◯中略〉是後天皇欲レ省二吉野之地一、乃從二莵田穿邑一、親率二輕兵一巡幸焉、〈◯中略〉　十月癸巳朔、天皇嘗二其嚴瓫之粮一、勒レ兵而出、先擊二八十梟帥於國見丘一、破斬レ之、

〔古事記〕

〈中神武〉

p.0657 神倭伊波禮毘古命(カムヤマトイハレビコノミコト)、〈自レ伊下五字以レ音〉與二其伊呂兄五瀬(イツセノ)命一〈伊呂二字以レ音〉二柱、坐二高千穗宮一而議云、坐二何地一者、平聞二看天下之政一、猶思二東行一、即自二日向一發幸御二筑紫一、故到二豐國宇沙(ウサ)一之時、其土人名宇沙都比古(ウサツヒコ)、宇沙都比賣(ウサツヒメ)〈此十字以レ音〉二人、作二足一騰(アシヒトツアガリノ)宮一而獻二大御饗一、自二其地一遷移、而於二竺紫之岡田宮一一年坐、亦從二其國一上

p.0658 幸、而於二阿岐國之多祁理(タケリノ)宮一七年坐、〈自レ多下三字以レ音〉亦從二其國一遷上幸、而於二吉備之高嶋宮一八年坐、故從二其國一上幸之時、乘二龜甲一爲レ釣乍、打羽擧來人、遇二于速吸(ハヤスヒノ)門一、爾喚歸問之、汝者誰也、答曰、僕者國神名宇豆毘古(ウヅビコ)、〈◯名以下五字據二古事記傳一補〉又問汝者知二海道一乎、答曰、能知、又問從而仕奉乎、答曰、仕奉、故爾指二度槁機一、引二入其御船一、即賜レ名號槁根津日子(サヲネツヒコ)一、〈此者倭國造等之祖〉故從二其國一上行之時、經二浪速之渡一、而泊二青雲之白肩津一、此時登美能那賀須䘦毘古(トミノナガスネビコ)〈自レ登下九字以レ音〉興レ軍待向以戰、爾取下所レ入二御船一之楯上而下立、故號二其地一謂二楯津一、於レ今者云二日下(クサカ)之蓼津一也、於レ是與二登美毘古一戰之時、五瀬命、於二御手一負二登美毘古之痛矢串一、故爾詔、吾者爲二日神之御子一、向レ日而戰不レ良、故負二賎奴之痛手一、自レ今者行廻、而背負レ日以擊期、而自二南方一廻幸之時、到二血沼(チヌノ)海一、洗二其御手之血一、故謂二血沼(チヌ)海一也、從二其地一廻幸、到二紀國男之水門(ヲノミナト)一而詔、負二賎奴之手一乎死、爲二男建一而崩、故號二其水門一謂二男水門一也、陵即在二紀國之竈山一也、故神倭伊波禮毘古命、從二其地一廻幸、到二熊野村一之時、大熊髮出入〈◯髮及入二字恐誤字〉即失、爾神倭伊波禮毘古命倐忽爲二遠延一、及御軍皆遠延而伏、〈遠延二字以レ音〉此時熊野之高倉下(タカクラジ)〈此者人名〉齎二一横刀一到二於天神御子〈◯神武〉之伏地一而獻之、時天神御子即寤起詔、長寢乎、故受二取其横刀一之時、其熊野山之荒神、自皆爲切仆、爾其惑伏御軍悉窹起之、故天神御子問下獲二其横刀一之所由上、高倉下答曰、已夢云、天照大神高木神二柱神之命以、召二建御雷(タケミカヅチノ)神一而詔、葦原中國者伊多玖佐夜藝帝阿理祁理、〈此十一字以レ音〉我之御子等、不平坐良志〈此二字以レ音〉其葦原中國者專汝所二言向一之國、故汝建御雷可レ降、爾答曰、僕雖レ不レ降、專有下平二其國一之横刀上可レ降、〈此刀名云二佐士布都神一、亦名云二甕布都神一、亦名布都御魂、此刀者坐二石上神宮一也、〉降二此刀一状者、穿二高倉下之倉頂一、自レ其墮入、〈◯此間恐脱文〉故阿佐米余玖〈自レ阿下五字以レ音〉汝取持、獻二天神御子一、故如二夢教一、而旦見二巳倉一者、信有二横刀一、故以二是横刀一而獻耳、於レ是亦高木大神之命以覺白之、天神御子自レ此於二奧方一莫レ使二入幸一、荒神甚多、今自レ天遣二八咫烏(ヤタガラス)一、故其八咫烏引道、從二其立後一應二幸行一、故隨二其教覺一、從二其八咫烏之後一幸行者、到二吉野河之河尻一、〈◯中略〉自二其地一蹈穿越幸二宇陀(ウタ)一、故曰二宇陀之穿(ウタノウガチ)一也、故爾於二宇陀一有二兄宇迦斯(エウカシ)〈自レ宇以下三字以レ音、下效レ此也、〉弟宇迦斯(オトウカシ)二人一、故先遣二八咫烏一問二二人一曰、今天神御子幸行、汝等仕奉乎、於レ是兄宇迦斯、以二鳴鏑一待射二返其使一、故其鳴鏑所レ落

p.0659 之地、謂二訶夫羅前(カブラザキ)一也、將二待擊一云而聚レ軍、然不レ得レ聚レ軍者、欺陽仕奉、而作二大殿於其殿内一、作二押機一待、時弟宇迦斯先參向、拜曰、僕兄兄宇迦斯、射二返天神御子之使一、將二爲待攻一、而聚レ軍不レ得レ聚者、作レ殿其内張二押機一將二待取一、故參向顯白、爾大伴連(オホトモノムラジ)等之祖道臣(ミチノオミノ)命、久米直(クメノアタヘ)等之祖大久米(オホクメノ)命二人、召二兄宇迦斯一罵詈云、伊賀〈此二字以レ音〉所二作仕奉一於二大殿内一者、意禮〈此二字以レ音〉先入、明白下其將二爲仕奉一之状上、而即握二横刀之手上一、矛由氣〈此二字以レ音〉矢刺而追入之時、乃已所レ作押見レ打而死、爾即控出斬散、故其地謂二宇陀之血原(ウダノチハラ)一也、然而其弟宇迦斯之獻大饗者悉賜二其御軍一、〈◯中略〉自二其地一幸行、到二忍坂(オサカ)大室一之時、生レ尾土雲〈訓云二具毛一〉八十建在二其室一、待伊那流〈此三字以レ音〉故爾天神御子之命以、饗賜二八十建一、於レ是宛二八十建一、設二八十膳夫一、毎レ人佩レ刀、誨二其膳夫等一曰、聞レ歌之者一時共斬、故明レ將レ打二其土雲一之歌曰、〈◯中略〉如レ此歌而拔レ刀一時打殺也、〈◯中略〉故爾邇藝速日(ニギハヤビノ)命參赴、白二於天神御子一、聞二天神御子天降坐一、故追參降來、即獻二天津瑞一以仕奉也、〈◯中略〉故如レ此言二向平三和荒夫琉神等一、〈夫琉二字以レ音〉退二撥不レ伏人等一而坐二畝火之白檮原(ウネヒノカシバラノ)宮一治二天下一也、

〔古語拾遺〕

p.0659 逮二于神武天皇東征之年一、大伴氏遠祖日臣命、帥二督將元戎一、剪二除兇渠一、佐命之勳、無レ有レ比レ肩、物部氏遠祖饒速日命、殺レ虜帥レ衆歸二順官軍一、忠誠之效、殊蒙二褒寵一、大和氏遠祖椎根津彦者、迎二引皇舟一、表二績香山之巓一、加茂縣主遠祖八咫烏者、奉レ導二宸駕一、顯二瑞莵田之徑一、妖氣既晴無二復風塵一、

〔日本書紀〕

〈七景行〉

p.0659 十二年七月、熊襲反之不二朝貢一、　八月己酉、幸二筑紫一、〈◯中略〉　十三年五月、悉平二熊襲國一因以居二高屋宮一已六年也、〈◯中略〉　十八年三月、天皇將レ向レ京、以巡二狩筑紫國一、始到二夷守(ヒナモリ)一、　四月甲子、到二熊縣一、
　壬申、自二海路一泊二於葦北小嶋一、〈◯中略〉　五月壬辰朔、從二葦北一發レ船、到二火國一、〈◯中略〉　六月癸亥、自二高來縣一渡二玉杵名邑一、〈◯中略〉　丙子、到二阿蘇國一也、〈◯中略〉　七月甲午、到二筑紫後國御木一、居二於高田宮一、〈◯中略〉　丁酉、到二八女縣一、〈◯中略〉　八月、到二的邑一、〈◯中略〉　十九年九月癸卯、天皇至レ自二日向一、

〔日本書紀〕

〈八仲哀〉

p.0659 二年二月戊子、幸二角鹿一、即興二行宮一而居レ之、是謂二笥飯(ケヒノ)宮一、　三月丁卯、天皇巡二狩南國一、於レ是留二皇后〈◯神功〉及百寮一、而從レ駕二三卿大夫、及官人數百、而輕行之、至二紀伊國一、而居二于徳勒津(トコロツノ)宮一、是時熊襲

p.0660 叛之不二朝貢一、天皇於レ是將レ討二熊襲國一、則自二徳勒津一發之、浮レ海而幸二穴門一、即日使遣二角鹿一、勅二皇后一曰、便從二其津一發之逢二於穴門一、〈◯中略〉　八年正月壬午、幸二筑紫一、　己亥、到二儺縣一、因以居二橿日宮一、

〔日本書紀〕

〈二十六齊明〉

p.0660 六年十二月庚寅、天皇幸二于難波宮一、天皇方隨二福信所レ乞之意一、思下幸二筑紫一將上レ遣二救軍一、而初幸レ斯、備二諸軍器一、是歳欲二爲百濟一將レ伐二新羅一、乃勅二駿河國一造レ船、已訖挽二至績麻郊一之時、其船夜中無レ故、艫舳相反、衆知二終敗一、科野國言、蝿群向レ西、飛踰二巨坂一、大十圍計、高至二蒼天一、或知二救軍敗績之恠一、

觀馬行幸

〔日本書紀〕

〈二十九天武〉

p.0660 八年八月己未、幸二泊瀬一、以宴二迹驚(トゞロキ)淵上一、先レ是詔二王卿一曰、乘馬之外、更設二細馬一隨レ召出之、即自二泊瀬一還レ宮之日、看二群卿儲細馬於迹見驛家道頭一、皆令二馳走一、

〔日本書紀〕

〈三十持統〉

p.0660 四年二月壬子、天皇幸二于腋上陂一、觀二公卿大夫之馬一、

〔類聚國史〕

〈三十一帝王〉

p.0660 天長元年六月庚子、幸二神泉苑一、覽二左右馬寮御馬一、

行幸相遷都地

〔續日本紀〕

〈十四聖武〉

p.0660 天平十四年八月癸未、詔曰、朕將レ行二幸近江國甲賀郡紫香樂村一、即以二造宮卿正四位下智努王、輔外從五位下高岡連河内等四人一、爲二造離宮司一、　甲申、車駕幸二石原宮一、　己亥、行二幸紫香樂宮一、以二知太政官事正三位鈴鹿王、左大辨從三位巨勢朝臣奈氐麻呂、右大辨從四位下紀朝臣飯麻呂一、爲二留守一、攝津大夫從四位下大伴宿禰牛養、民部卿從四位下藤原朝臣仲麻呂、爲二平城留守一、即日車駕至二紫香樂宮一、　九月壬寅朔、幸二刺松原一、　乙巳、車駕還二恭仁京一、

事變行幸

〔百練抄〕

〈七二條〉

p.0660 平治元年十二月九日夜、右衞門督信頼卿、前下野守義朝等謀反、放二火上皇〈◯後白河〉三條烏丸御所一、　廿五日夜、主上中宮、〈◯鳥羽皇女姝子〉偸出二御清盛朝臣六波羅亭一、

〔愚管抄〕

〈五〉

p.0660 信頼かくしちらして、〈◯中略〉二條院當今にておはしますを取り參らせて、世を行て、院〈◯後白河〉を御書所と云所にすゑ參らせて、〈◯中略〉十二月廿五日〈◯平治元年〉乙亥、丑の時、六波羅〈◯平清盛第宅〉へ行幸をなしてけり、其やうは清盛尹明に細かに教けり、

〔平治物語〕

〈一〉

p.0660 主上六波羅行幸事

p.0661 主上〈◯二條〉ハ北陣ニ御車ヲタテ、女房ノ飾ヲ召テ、御鬘ヲ奉ル、同御寶物共ヲ渡シ奉ラントテ、内侍所ノ御唐櫃モ大床迄出タリケルヲ、鎌田ガ郞等、怪シメ奉リテ留進ラセケルヲ、伏見源中納言師仲卿ニ申合テ、坊門局ノ宿所ヘゾ遷シ奉リケル、中宮モ主上ト一車ニゾ召レケル、別當惟方、新大納言經宗直衣ニ柏バサミシテ供奉シ、藻壁門ヨリ行幸ナシ奉レバ、此門ハ金子平山固タリ、家忠如何ナル御車ゾト申セバ、別當、上 女房達ノ出サセ給フ也、惟方ガアルゾ、別ノ仔細アルマジト宣ヘ共、金子猶怪テ弓ノ筈ニテ簾掻揚、松明振入テ見奉レバ、二條ノ院御在位ノ始、御歳十七ニ成給フ上、龍顏本ヨリ美シクオハシマスニ、花ヤカナル御衣ハ召レタリ、誠ニ目モ迷フ計ノ女房ニ見エサセ給フ、中宮ハオハシマス、爭カ見咎メ奉ラン、故ナク落シ進ラセケリ、清盛郞等伊藤武者景綱、黒絲威服卷ノ上ニ、小張著テ雜色ニナル、舘太郞貞康、黒革腹卷ノ上ニ牛飼裝束シテ御車ヲ仕ル、上東門ヲカラリト遣出ス程コソアレ、土御門ヲ飛ガ如クニ行幸ナル、左衞門佐重盛、三河守頼盛、常陸介經盛三百餘騎ニテ、土御門東洞院ニ待ウケ奉リ、御車ノ前後ヲ守護シテ、六波羅ヘコソ入奉リケレ、事故ナク行幸成テケレバ、平家ノ人々勇悦ブ事限ナシ、

〔保暦間記〕

p.0661 權中納言右衞門督藤原信頼卿ト申ハ、〈◯中略〉家ニ絶タル大臣ノ大將ヲ心懸ケ給ヘリ、同比少納言入道信西ト申ハ、〈◯中略〉院〈◯後白河〉ノ御乳母程ノ人也ケレバ、〈◯中略〉信頼ガ事仰合ラレケルニ、有ベカラヌ事ト申タリケレバ、此事信頼聞テ憤ヲ成シテ、下野守源義朝ヲ語ヒテ、平治元年十二月九日ノ夜、院ノ御所ヘ押寄テ、院ヲ取奉テ内裏ヘ入レ奉テ、〈◯中略〉信頼内裏ニテ、天子ノ如クニ住ケリ、主上〈◯二條〉忍玉ヒテ、清盛朝臣ガ六波羅ノ宿所ヘ御車ニテ行幸ナル、

〔皇年代略記〕

〈安徳〉

p.0661 壽永二年癸卯七月廿五日、東軍攻來、平兵不レ勝二警固一、引二率主上一赴二西海一、〈劔、璽、内侍所被レ奉レ具、〉

〔吉記〕

p.0661 壽永二年七月廿五日、主上〈御乘車◯安徳〉南轅赴二海西一、事之殊勝、可レ謂二未曾有一云々、主上御乘車御乳母二人、并按察局御乳人一人〈遠江〉劒璽等御同車、事次第筆墨難レ及歟、　廿八日、〈◯中略〉左大臣、内大臣、堀河

p.0662 大納言等、相議被レ申云、忩可レ有二沙汰一、若及二遲々一者、何事大事歟、注下分所々可二守護一之由上可レ被二仰下一歟、良久兼光朝臣又出來、仰二左府一云、前内大臣〈◯平宗盛〉忽巧二謀叛一赴二西海一、偸奉レ具二幼主一之間、神鏡并劒璽等、累代御物同奉レ取了、幼主叡慮之中、所二察思食一也、仍早可レ有二還宮一之由、被レ遣二仰時忠卿許一了、然而其事輙難レ達歟、何様可レ被二進止一哉、

〔玉海〕

p.0662 壽永二年七月廿五日丁亥、〈◯中略〉及二巳刻一武士等、奉レ具二主上一〈◯安徳〉向二院地方一了在二籠鎭西一云々、〈◯中略〉申刻落武者等又歸京、〈◯中略〉或又奉レ具二主上及劒璽賢所等一、欲レ趣二鎭西一、而可レ無二臣下一、仍爲レ取二具可レ然之公卿一也云々、

〔源平盛衰記〕

〈三十一〉

p.0662 平家都落事
去程ニ平家ハ、日頃法皇〈◯後白河〉ヲモ、西國ヘ御幸ナシ進セント支度シ給タリケレ共、カク渡ラセ給ネバ、憑ム木本ニ雨ノタマラヌ心地シテ、去トテハ行幸計成トモ有ベシトテ、卯時ノ終リニ出御アリ、御輿ヲ指寄ケレバ、主上〈◯安徳〉ハイマダ幼キ御齡ナレバ、何心モナク召奉ル、神璽寳劒取具シテ、建禮門院〈◯母后平徳子〉御同輿ニ召ル、内侍所モ同ク渡入奉ル、平大納言時忠卿庭上ニ立廻テ、印鎰、時ノ簡、玄上鈴鹿、大床子、河霧御劒以下、九重ノ御具足、一モ取落スベカラズト下知セラレケレ共、人皆アワテツヽ我先ニ〳〵ト出立ケレバ、取落ス物多カリケリ、晝ノ御座ノ御劒モ殘留タリケルトカヤ、御輿出サセ給ケレバ、内大臣宗盛公父子、平大納言時忠卿父子、藏人頭信基計ゾ、衣冠ニテ被二供奉一ケリ、其外ハ公卿殿上人、近衞官、御縄介ノ末ニ至ルマデ、老タルモ若モ皆甲冑ヲ著シ、弓箭ヲ帶シテ打立ケリ、七條ヲ西ヘ、朱雀ヲ南ヘ行幸ナル、唯夢ノ様ナリシ事共也、〈◯又見二平家物語一〉

〔愚管抄〕

〈五〉

p.0662 かヽりける程に七月廿四日〈◯壽永二年〉の夜、事火急になりて、六波羅へ行幸なして、一家の者どもあつまりて、山科かために大納言頼盛をやりければ、再三辭してけり、〈◯中略〉辰巳午兩三時ばかりに、やうもなく内〈◯安徳〉を具しまゐらせて、内大臣宗盛一族、さながら鳥羽の方へ落て、船に

p.0663 乘て四國の方へ向ひけり、

〔保暦間記〕

p.0663 廿四日〈◯壽永二年七月〉宗盛公小夜深テ、忍テ女院〈◯建禮門院徳子〉ノ御所ヘ參テ、西國ヘ下向ノ事申出サレケル所ニ、此夜半計ヨリ法皇〈◯後白河〉渡セ給ハヌト申、宗盛走參テ見參ラセケレバ、實ニ渡セ給ハヌ程ニ、憑ム木ノ下ニ雨ノタマラヌ心地シテ、サリトテハトテ同廿五日、行幸計ニテモトテ、鳳輦ヲ指寄セ、神璽寳劒内侍所、三種ノ神祗〈◯祗隨二原本一〉渡シ奉ル、〈◯中略〉女院ハ主上〈◯安徳〉ヲ抱キ奉リ、御輿ニノセ進ラセ賜フ、時忠ノ外ハ、大臣殿〈◯宗盛〉ヨリ始テ鎧ヲ著給ヒヌ、平家ノ人々御輿ノ前後ヲ打圍ンデ、七條ヲ西ヘ、朱雀ヲ南ヘ行幸ナル、

〔源平盛衰記〕

〈三十二〉

p.0663 平家著二太宰府一附北野天神飛梅事
八月十七日〈◯壽永二年〉ニ平家ハ筑前國御笠郡太宰府ニ著給ヘリ、菊地次郞高直、宍戸諸卿種直、臼杵、戸槻、松浦黨ヲ始トシテ、奉レ守二護主上一、如レ形被レ造二皇居一タリ、彼大内ハ山中ナリケレバ木〈ノ〉丸殿トモ云ツベシ、人々ノ家々ハ、野中田中ナリケレバ、草深シテ露繁シ、麻ノサ衣ウタネ共、十市ノ里トモ云ツベシ、稻葉ヲ渡ル風ノ音、一人丸寢ノ床ノ上、片敷袖ゾシホレケル、〈◯又見二平家物語一〉

〔源平盛衰記〕

〈三十三〉

p.0663 大神宮勅使附緒方三郞責二平家一事
惟義〈◯緒方〉ハ三萬餘騎ノ大勢ヲ率シテ、博多津ヨリ押寄テ、時ヲ咄ト造リタリケレバ、平家ノ方ニハ肥後守貞能ヲ大將軍ニテ、菊地原田ガ一黨ヲ被二指向一テ防戰ケレドモ、大勢攻懸リケレバ取物モ取敢ズ、太宰府ヲコソ落給ヒケレ、〈◯又見二平家物語一〉

〔源平盛衰記〕

〈三十三〉

p.0663 平家太宰府落并平氏宇佐宮歌附清經入海事
去程ニ主上〈◯安徳〉ハ駕輿丁ナケレバ、玉ノ御輿ヲモ不レ奉、御伴ノ公卿殿上人ハ奴袴ノ傍ヲ取、女房北方ハ裳唐衣ヲ泥ニ引イヅ、習タルニハアラネドモ、畏シサノ餘ニ悲キ事モ覺エズ、カチハダシニテ我先ニ我先ニト、箱崎ノ津ニ逃給ケルゾ無慙ナル、〈◯中略〉箱崎津モ難二始終叶一ケレバ、是ヨリ又

p.0664 兵藤次秀遠ニ具セラレテ、筑前國山鹿ノ城ヘゾ入ラセ給フ、〈◯中略〉山鹿城ニモ未御安堵ナカリケル處ニ、惟義十萬餘騎ニテ押寄ルト聞エケレバ、又取物モ取敢ズ、山鹿城ヲモ落サセ給ヒテ、タカセ舟ニ乘移、豐前國柳ト云所ヘ渡入ラセ給ヒケリ、〈◯又見二平家物語一〉

〔源平盛衰記〕

〈三十三〉

p.0664 平氏著二屋嶋一事
長門ハ新中納言ノ國、目代ハ紀民部大輔光季也ケリ、當國ノ檜物舟トテ、マサノ木積タル船、百三十餘艘點定シテ奉ル、此ニ乘移リテ四國ノ地ヘ著給フ、爰ハヨキ城郭也ト申ケレバ、讃岐ノ屋嶋ニ下居給、城構シテ御坐ケリ、〈◯又見二平家物語一〉

〔源平盛衰記〕

〈三十六〉

p.0664 福原除目事
元暦元年二月四日、平家ハ福原ニテ、〈◯中略〉三種神器ヲ帶シテ、君〈◯安徳〉カクテ、渡ラセ給ヘバ、爰コノ都ナレトテ叙位除目僧事ナド被レ行、〈◯又見二平家物語一〉

〔源平盛衰記〕

〈三十七〉

p.0664 一谷落城事
東西ヨリ火ニ責ラレ人ニ被レ責テ、皆舟ニノラント渚ニ向ケ落行ケルモ、海ヘノミコソ馳入ケレ、〈◯中略〉先帝〈◯安徳〉ヲ始進セテ、女院北政所二位殿三位殿已下ノ女房達、大臣殿父子〈◯平宗盛及子清宗〉已下ノ人々ハ、兼テヨリ御船ニ召テ、海上ニ出浮テコレヲ被二御覽一、イカバカリノ事ヲカ思召ケント哀ナリ〈◯又見二平家物語一〉

〔源平盛衰記〕

〈四十二〉

p.0664 屋嶋合戰事
屋嶋ヨリ鹽于瀉一隔、武例高松ト云所ニ燒亡アリ、〈◯中略〉先帝〈◯安徳〉ヲ奉レ始、女院二位殿以下ノ女房達、公卿殿上人、屋嶋總門ノ渚ヨリ御船ニメサル、〈◯又見二平家物語一〉

〔源平盛衰記〕

〈四十三〉

p.0664 湛僧同二意源氏一附平家志度道場詣并成直降人事
先帝〈◯安徳〉ヲ奉レ始テ、〈◯中略〉宗徒ノ人々ハ、讃岐ノ志度ヘゾ御坐ケル、〈◯中略〉爰ヲモ被二攻落一テ、長門國引

p.0665 嶋ニ著、〈◯又見二平家物語一〉

〔承久軍物語〕

〈三〉

p.0665 山田の二郞重忠は、くひぜ川の軍に打まけ、都へ歸り登りつヽ、賀陽院の御所へ參りつヽ、方々の官軍いくさに打まけ、凶徒等都近く攻寄候なり、いかにも御計あるべき由奏し申ければ、上皇〈◯後鳥羽〉いかヾ思召けん、六月八日〈◯承久三年〉酉の刻に、日吉の社に御幸なる、〈◯中略〉主上〈◯仲恭〉もひそかに女房輿に召れて行幸なる、ことし四歳にならせ給ふが、大相國のむすめ、中納言の局と申人相そひ奉る、劒璽は御輿におはします、職事は資頼具實なり、

〔五妻鏡〕

〈二十五〉

p.0665 承久三年六月八日辛酉、寅刻秀康〈◯藤原〉有長〈◯筑後左衞門尉〉乍レ被レ疵令二歸洛一、去六日、於二摩免戸合戰一、官軍敗北之由奏聞、〈◯中略〉次有レ御二幸于叡山一、〈◯中略〉主上〈◯仲恭〉又密々行幸、〈被レ用二女房輿一〉職事資頼朝臣、具實朝臣、〈已上直衣〉劒璽在二御輿一、中納言局〈大相國女〉奉二相副一云々、主上上皇入二御于西坂本梶井御所一、

〔皇年代略記〕

〈後醍醐〉

p.0665 元弘元年八月廿四日、密出二帝都一、後日幸二笠置寺一、〈四十四〉　九月廿九日、重御二出奔件寺一之間、武士於二光明山一參會、奉レ遷二宇治平等院一、　十月二日、入二御六波羅一、〈六波羅南方爲二御所一〉

〔増鏡〕

〈十五村時雨〉

p.0665 まづ六波羅を御かうじあるべしとて、かねてより宣旨にしたがへりしつはものどもをしのびてめす、〈◯中略〉つヽむとすれど事ひろくなりにければ、武家にもはやうもれ聞て、さにこそあなれとよういす、まづ九重をきびしくかため申べしなどさだめけり、かくいふは元弘元年八月廿四日なり、雜務の日なれば、記録所におはしまして、人の爭ひ愁る事どもを行ひ暮させ給ひて、人々もまかで、君も本殿にしばし打休ませ給へるに、今夜既に武士共きほひ參るべしと忍て奏する人ありければ、取あへず雲の上を出させ給ふ、中宮の御方へ渡らせ給ても、しめやかにもあらずいとあわたヾし、兼ておぼしまうけぬにはあらね共、事のさかさまなる様になりぬれば、萬うき〳〵と我も人もあきれいたりて、内侍所神璽寳劒計をぞ忍びてゐて渡らせ給ふ、上はなよらかなる御直衣奉り、北の對よりやつれたる女車の様にて忍び出させ給ふ、〈◯中略〉日比の

p.0666 御用意には、先六波羅を攻られん紛に山へ行幸ありて、かしこへ兵共をめして、山の衆徒をも相具し、君の御かためとせらるべしと定られければ、彼法親王達〈◯尊澄、尊雲、〉も、其御心して坂本に待聞え給ひけれど、今はか様に事違ぬればあひなしとて、俄に道をかへて奈良の京へぞ赴せ給ふ、中務の宮〈◯尊良〉も御馬にて追て參り給ふ、九條わたり迄御車にて、夫よりみかども假の御ぞにやつれさせ給ひて、御馬にたてまつる程、こはいかにしつる事ぞと、夢の心ちしておぼさる、御供に按察大納言公敏、萬里小路中納言藤房、源中納言具行、四條中納言隆資など參れり、何れもあやしき姿に紛らはして、くらき道をたどりおはする程、げにやみのうつヽのこヽちして、我にもあらぬさまなり、丑みつばかりに木幡山を過させ給ふ、いとむくつけし、木津といふわたりに御馬とヾめて、東南院の僧正の許へ御消息遣す、それより御輿を參らせたるに奉りて、奈良へおはしまし著ぬ、爰に中一日ありて、廿七日和束の鷲峰山へ行幸ありけれども、そこもさるべくやなかりけん、笠置寺といふ山寺へ入せ給ひぬ、所のさまたやすく人の通ひぬべき様もなく、よろしかるべしとて木の丸殿の構を始らる、是よりぞ人々少し心ちとりしづめて、近き國々の兵など召に遣す、〈◯中略〉東の夷どもヽ漸く攻上る由聞ゆ、元より京にある武士共も我先にと競ひ參る、木の丸殿にはさこそいへ、むね〳〵しき者もなし、いかに成行べきにかといと物心細くおぼし亂る、〈◯中略〉既に東武士共、雲霞の勢をたなびき上る由聞ゆれば、笠置にもいみじう覺し騷ぐ、元よりいとけはしき山の深きつヾらをりを、えもいはず木戸逆も木石弓などいふことヾもしたヽめらる、さりともたやすくは破れじと頼ませ給へるに、後の山より御敵くづれ參りて、木戸ども燒拂ひ、おはしますあたり近く既に烟も懸りければ、今はいかヾせんにて、怪しき御姿にやつれてたどり出させ給ふ、座主の法親王、〈◯尊澄〉御手を引たてまつり給へるも、いとはかなげなる御有様なり、中務の御子、〈◯尊良〉大塔の宮〈◯尊雲〉などは、兼てよりこヽを出させ給ひて、楠が舘におはしましけり、行

p.0667 幸もそなた様にやと覺し心ざして、藤房具行兩中納言、師賢の大納言入道手を取かはして、焰の中をまぬかれ出る程の心ち共、夢とだに思ひもわかずいと淺まし、少し延させ給ひてぞ御馬尋出て、君ばかり奉りぬれど、習はぬ山路に御心ちもそこなはれて、誠に危く見えさせ給へば、高間の山といふわたりに、しばし御心ちをためらふ處に、山城國の民にて、深須の太郞入道とかいふ者參り懸りて、案内聞えたるしもいと目醒しう口をし、上達部思ひやるかたなくて、只目を見かはして、如何様にせんとあきれたるに、東より上れる大將軍にて、陸奧の國の守貞直といふ大勢にて參れり、今は唯ともかくも宣はすべき様無れば、終にかひなくて敵のために御身を任せぬる様なり、やがて宇治にみゆきあるべきよし奏すれば、御心にもあらでひかされおはします程に、心うしといふもなのめなり、〈◯中略〉君をば宇治へ入たてまつりて、先事のよし六波羅へ聞ゆる程に、一二日御逗留あり、〈◯中略〉十月三日、都へ入せ給ふも、思ひしに替りていとすさまじげなる武士ども、衞府の佐の心ちして、御輿近く打圍みたり、鳳輦にはあらぬ綱代輿のあやしきにぞたてまつれる、六波羅の北なる檜皮屋には、元より兩院〈◯後伏見、花園、〉春宮〈◯光嚴〉おはしませば、南の板屋のいと怪しきに御しつらひなどして、おはしまさするもいとをしう忝し、

〔太平記〕

〈二〉

p.0667 天下怪異事
元弘元年〈◯中略〉八月廿四日、夜ニ入テ大塔宮〈◯尊雲〉ヨリ竊ニ御使ヲ以テ、主上〈◯後醍醐〉ヘ申サセ給ヒケルハ、今度東使上洛ノ事、内々承候ヘバ、皇居ヲ遠國ニ遷し奉リ、尊雲ヲ死罪ニ行ハン爲ニテ候ナル、今夜急ギ南都ノ方ヘ御忍候ベシ、城郭イマダ調ハズ、官軍馳參セザル先ニ、凶徒若シ皇居ニ寄來ラバ、御方防ギ戰フニ利ヲ失ヒ候ハンカ、且ハ京都ノ敵ヲ遮リ止ンガ爲、又ハ衆徒ノ心ヲ見ンガ爲ニ、近臣ヲ一人天子ノ號ヲ許サレテ、山門ヘ上セラレ、臨幸ノ由ヲ披露候ハヾ、敵軍定テ叡山ニ向テ合戰ヲ致シ候ハンカ、サル程ナラバ衆徒吾山ヲ思フ故ニ、防鬪フニ身命ヲ輕ジ候ベシ、凶

p.0668 徒力疲レ合戰數日ニ及バヽ、伊賀伊勢大和河内ノ官軍ヲ以テ、却テ京都ヲ攻ラレンニ、凶徒ノ誅戮踵ヲ旋スベカラズ、國家ノ安危、只此一擧ニ在ベク候ナリト申サレタリケル間、主上只アキレサセ給ヘル計ニテ、何ノ御沙汰ニモ及給ハズ、尹大納言師賢、萬里小路中納言藤房、同舍弟季房、三四人上臥シタルヲ御前ニ召レテ、此事如何有ベシト仰出サレケレバ、藤房卿進テ申サレケルハ、逆臣君ヲ犯シ奉ラントスル時、暫ク其難ヲ避テ、還テ國家ヲ保ハ、前蹤皆佳例ニテ候、所謂重耳走レ翟、大王去レ豳、共ニ王業ヲ成テ、子孫無窮ニ光ヲ耀シ候キ、兎角ノ御思案ニ及候ハヾ、夜モ深候ナン、早御忍候ヘトテ御車ヲ差寄、三種ノ神器ヲ乘奉リ、下簾ヨリ出絹ヲ出シテ、女房車ノ體ニ見セ、主上ヲ扶乘進ラセテ、陽明門ヨリナシ奉ル、御門守護ノ武士共、御車ヲ押ヘテ誰ニテ御渡リ候ゾト問申ケレバ、藤房季房二人、御車ニ從テ供奉シタリケルガ、是ハ中宮ノ夜ニ紛レテ、北山殿ヘ行啓ナラセ給フゾト宣ヒタリケレバ、サテハ仔細候ハジトテ御車ヲゾ通シケル、兼テ用意ヤシタリケン、源中納言具行、按察大納言公敏、六條少將忠顯、三條河原ニテ追付キ奉ル、此ヨリ御車ヲバ止ラレ、怪シゲナル張輿ニ召替サセ進ラセタレドモ、俄ノ事ニテ駕輿丁モ無リケレバ、大膳大夫重康、樂人豐原兼秋、隨身秦久武ナドゾ御輿ヲバ舁奉リケル、供奉ノ諸卿皆衣冠ヲ解テ、折烏帽子ニ直垂ヲ著シ、七大寺詣スル京家ノ青侍ナドノ、女性ヲ具足シタル體ニ見セテ、御輿ノ前後ニゾ供奉シタリケル、古津ノ石地藏ヲ過サセ給ヒケル時、夜ハ早ホノボノト明ニケリ、此ニテ朝餉ノ供御ヲ進メ申テ、先南都東南院ヘ入セ給フ、〈◯中略〉同廿七日、潛幸ノ儀式ヲ引ツクロヒ、南都ノ衆徒少々召具セラレテ、笠置ノ石室ヘ臨幸ナル、

〔光嚴院御別記〕

p.0668 元弘元年十月三日乙巳、今日先帝〈◯後醍醐〉可レ奉レ迎二六波羅一之由風聞、然而無二其儀一云々、　四日丙午、此曉先帝已奉レ入二時益宿所一云々、〈◯中略〉及二寅終頃一、先帝又乘レ輿、數萬騎武士打二圍之一、就レ中貞直著レ鎧不レ著レ甲、在二御輿前一、其外軍士圍二繞前後左右一、毎レ手取二松明一、又在地人燒二松明一、宛如二白晝一云々、是見物

p.0669 緇素之説也、

〔太平記〕

〈三〉

p.0669 主上御二沒落笠置一事
去程ニ類火東西ヨリ吹覆ヒテ、餘烟皇居ニ懸リケレバ、主上〈◯後醍醐〉ヲ始メ進ラセテ、宮々卿相雲客皆徒跣ナル體ニテ、何クヲ指トモナク、足ニ任セテ落行給フ、此人々始メ一二町ガ程コソ、主上ヲ扶進ラセテ、前後ニ御供ヲモ申サレタリケレ、雨風烈シク道闇ウシテ、敵ノ閧ノ聲此彼ニ聞エケレバ、次第ニ別々ニ成テ、後ニハ只藤房季房二人ヨリ外ハ、主上ノ御手ヲ引進ラスル人モナシ、忝モ十善ノ天子、玉體ヲ田夫野人ノ形ニ替サセ給ヒテ、ソコトモ知ズ迷ヒ出サセ給ヒケル御有様コソ淺マシケレ、如何ニモシテ夜ノ中ニ赤坂ノ城ヘト、御心計ヲ盡サレケレドモ、假ニモイマダ習ハセ給ハヌ御歩行ナレバ、夢路ヲタドル御心地シテ、一足ニハ息ミ、二足ニハ立留リ、晝ハ道ノ傍ナル青塚ノ陰ニ御身ヲ隱サセ給ヒテ、寒草ノオロソカナルヲ御座ノ茵トシ、夜ハ人モ通ハヌ野原ノ露分迷ハセ給ヒテ、羅縠ノ御袖ヲ乾アヘズ、兎角シテ夜晝三日ニ、山城多賀郡〈◯郡恐郷誤〉ナル、有王山〈◯増鏡、作二高間山一、〉ノ麓マデ落サセ給ヒテケリ、藤房李房モ、三日マデ口中ノ食ヲ斷ケレバ、足タユミ身疲レテ、今ハ如何ナル目ニ遇トモ、逃ヌベキ心地モセザリケレバ、詮方ナクテ幽谷ノ岩ヲ枕ニテ、君臣兄弟諸共ニ、現ノ夢ニ臥給フ、梢ヲ拂フ松ノ風ヲ雨ノ降カト聞召テ、木陰ニ立寄セ給ヒタレバ、下露ノハラ〳〵ト御袖ニ懸リケルヲ、主上御覽ゼラレテ、
　サシテ行笠置ノ山ヲ出シヨリアメガ下ニハ隱家モナシ
藤房卿涙ヲ押ヘテ、
イカニセン憑ム陰トテ立ヨレバ猶袖ヌラス松ノ下露、山城國住人深須入道、松井藏人二人ハ、此邊ノ案内者ナリケレバ、山々峰々殘ル處ナク捜ケル間、皇居隱ナク尋出サレサセ給フ、主上誠ニ怖シゲナル御氣色ニテ、汝等心アル者ナラバ、天恩ヲ戴テ私ノ榮花ヲ期セヨト仰ラレケレバ、

p.0670 サシモノ深須入道俄ニ心變シテ、哀レ此君ヲ隱シ奉リテ、義兵ヲ擧バヤト思ヒケレドモ跡ニ續ケル松井ガ所存知ガタカリケル間、事ノ漏レ易クシテ、道ノ成難カラン事ヲ憚テ、默止ケルコソウタテケレ、俄ノ事ニテ網代ノ輿ダニ無リケレバ、張輿ノ怪シゲナルニ扶載セ進ラセテ、先ヅ南都ノ内山ヘ入奉ル、〈◯中略〉十月二日、六波羅北方常葉駿河守範貞、三千餘騎ニテ路ヲ警固仕テ、主上ヲ宇治平等院ヘナシ奉ル、〈◯中略〉翌日龍駕ヲ廻シテ、六波羅ヘナシ進ラセントシケルヲ、前々臨幸ノ儀式ナラデハ、還幸成マジキ由ヲ強テ仰出サレケル間、力ナク鳳輦ヲ用意シ、袞衣ヲ調進シケル間、三日迄平等院ニ御逗留有テゾ六波羅ヘハ入セ給ヒケル、日來ノ行幸ニ事替テ、鳳輦ハ數萬ノ武士ニ打圍レ、月卿雲客ハ怪シゲナル籠輿傳馬ニ扶乘ラレテ、七條ヲ東ヘ、河原ヲ上リニ六波羅ヘト急セ給ヘバ、見ル人淚ヲ流シ、聞人心ヲ傷シム、

〔皇年代略記〕

〈後醍醐〉

p.0670 元弘二年三月七日、奉レ移二隱岐國一、〈四十五、入道相模守平高時、申二沙汰之一、〉

〔光嚴院御記〕

p.0670 元弘二年三月七日丙子、今日巳刻許先帝令二進發一給、自二六波羅一出御、用二御車一、御車寄公重卿、可下辭二宮司一參上云々、召次御牛飼等、自二崇明門院一〈◯後宇多皇女 子内親王〉可レ被二沙汰進一旨武家申レ之、御牛公宗卿進之、公宗卿不二扈從一、自二別路一參二向鳥羽一、行房朝臣、忠顯等供奉、但自二路頭一被レ止參二會鳥羽一云々、先帝御裝、〈◯裝下恐脱二束字一〉御直衣下絬云々、於鳥羽棧敷供二御破子一之後、有二數刻一出御、今度御輿四方輿、被レ卷二三方簾一云云、女房三人輿武士數百騎圍二前後左右路頭一、　十四日、於二出雲國一可レ爲二御乘船一云々、入二御鳥羽一事、承久之例云々、但今度事儀相替歟、然而有二武家別申入旨一之間、不レ及レ被レ仰二子細一、寢殿被二相憚一之間、於二棧敷殿一儲二破子一之旨、公宗卿申レ之、

〔増鏡〕

〈十六久米のさら山〉

p.0670 元弘二年の春にもなりぬ、〈◯中略〉終に隱岐國へ移したてまつるべしとて、やよひの始の七日、都を出させ給、今はと聞召御心まどひどもいへばさらなり、〈◯中略〉卯の時ばかりに出させ給、あじろの御車に、御前どもなどは、故院〈◯後宇多〉の御世より仕うまつりなれにしものども

p.0671 あるかぎり參れり、御車寄に西園寺中納言公重さぶらひ給、上は御かうぶりに、尋常の御直衣、指貫ひあやの御衣一重たてまつれり、〈◯中略〉御供には内侍の三位殿、大納言小宰相など、男には行房の中將忠顯少將ばかりつかうまつる、おのがじヽ宮この名殘ども云盡しがたし、六波羅よりの御送りの武士、さならでも名あるつは物ども千葉介貞胤をはじめとして、おぼえことなる限り十人えらびたてまつる〈◯中略〉六波羅より七條を西へ、大宮を南へをれて、東寺の門前に御車をさへらる、とばかり御念誦あるべし、〈◯中略〉君も御簾少しかきやりて、このもかのも御覽じ渡しつヽ御目とまらぬ草木もあるまじかめり、岩木ならねば、武士の鎧の袖どもヽしほれげにぞみゆる、都のこずゑを、かくるヽまで御覽じおくるも、猶夢かと覺ゆ、鳥羽殿におはしましつきて、御よそひあらため、破子などまゐらせけれど、氣色ばかりにてまかづ、是より御輿にたてまつれば、とヾまるべき御前どもの、むなしき御車をなく〳〵やりかへるとて、くれまどひたるけしき、いと堪がたげなり、〈◯中略〉出雲の國やすきの津といふ所より、御舟にたてまつる、大船二十四艘、小舟どもはしに數しらず付たり、〈◯中略〉彼嶋におはしましつきぬ、〈◯中略〉海づらよりは少し入たる國分寺といふ寺を、よろしきさまにとりはらひて、おはしまし所に定む、

〔皇年代略記〕

〈後醍醐〉

p.0671 正慶二年〈◯元弘三年〉癸酉閏二月二十四日、密出二御隱州謫處一、幸二伯州大山寺一、〈四十六〉五月日、出二彼寺一赴二御帝都一、六月五日丁卯、還二幸二條富小路殿一、

〔増鏡〕

〈十七月草の花〉

p.0671 かの嶋〈◯隱岐〉には、〈◯中略〉然るべき時の至れるにや、御垣守に侍らふつはものどもヽ、御けしきをほの心えて、なびきつかうまつらんと思ひ心つきにければ、さるべき限りかたらひ合せて、同じ月の廿四日〈◯元弘三年閏二月〉の明ぼのに、いみじくたばかりて、かくろへゐて奉る、いとあやしげなるあまの釣舟のさまに見せて、夜深き空のくらまぎれにおし出すしも、霧いみじうふりて行先もみえず、いかさまならんとあやうけれど、御心をしづめて念じ給ふに、思ふ方の風さへ

p.0672 ふきすヽみて、其日の申の時に、出雲國につかせ給ひぬ、こヽにて人々こヽちしづめける、同じ廿五日、伯耆國稻津浦といふ處へ移らせ給へり、此國に那波の又太郞長年といひて、あやしき民なれど、いとまうにとめるが、類廣く心もさか〳〵しくむね〳〵しき者なり、彼がもとへ宣旨をつかはしたるに、いとかたじけなしと思ひて、とりあへず五百餘騎の勢にて御迎へに參れり、〈◯中略〉舟上寺といふ處へおはしまさせて、九重の宮になずらふ、

〔太平記〕

〈十一〉

p.0672 諸將被レ進二早馬於船上一事
都ニハ五月十二日、〈◯元弘三年〉千種頭中將忠顯朝臣、足利治部大輔高氏、赤松入道圓心等追々早馬ヲ立テ、六波羅已ニ沒落セシムルノ由船上ヘ奏聞ス、〈◯中略〉同廿三日、伯耆船上ヲ御立有テ、腰輿ヲ山陰ノ東ニゾ催サレケル、路次ノ行粧例ニ替テ、頭大夫行房、勘解由次官光守二人計コソ衣冠ニテ供奉セラレケレ、其外ノ月卿雲客、衞府諸司ノ助ハ、皆戎衣ニテ前騎後乘ス、六軍悉甲冑ヲ著シ、弓箭ヲ帶シテ、前後三十餘里ニ支ヘタリ、鹽谷判官高貞ハ、千餘騎ニテ、一日先立テ前陣ヲ仕ル、又朝山太郞ハ、一日路引後レテ、五百餘騎ニテ後陣ニ打ケリ、金持大和守、錦御旗ヲ差テ左ニ候シ、伯耆守長年ハ帶劒ノ役ニテ右ニ副フ、

〔太平記〕

〈十一〉

p.0672 書寫山行幸事附新田注進事
五月廿七日ニハ、播磨國書寫山へ行幸成テ、先年ノ御宿願ヲ果サレ、〈◯中略〉廿八日ニ、法華山へ行幸成テ御巡禮アリ、是ヨリ龍駕ヲ早メラレテ、晦日ハ兵庫福嚴寺ト云寺ニ、儲餉ノ在所ヲ點ジテ、且ク御坐有ケル、〈◯中略〉此寺ニ一日御逗留有テ、供奉ノ行列、還幸ノ儀式ヲ調ヘラレケル、

〔太平記〕

〈十一〉

p.0672 正成參二兵庫一事附還幸事
兵庫ニ一日御逗留有テ、六月二日、瑤輿ヲ廻ラサルヽ處ニ、楠多門兵衞正成、七千餘騎ニテ參向ス、〈◯中略〉兵庫ヲ御立有ケル日ヨリ、正成前陣ヲ承テ、畿内ノ勢ヲ相隨へ、七千餘騎ニテ前驅ス、其道十

p.0673 八里ガ間、干戈戚揚相挟、左輔右弼列ヲ引キ、六軍次ヲ守リ、五雲閑ニ幸スレバ、六月五日ノ暮程ニ、東寺迄臨幸成、〈◯中略〉翌日六月六日、東寺ヨリ二條ノ内裏ヘ還幸成、〈◯中略〉サル程ニ千種頭中將忠顯朝臣、帶劒ノ役ニテ鳳輦ノ前ニ供奉セラレケルガ、尚非常ヲ愼ム最中ナレバトテ、帶刀ノ兵五百人二行ニ歩セラル、高氏直義二人ハ、後乘ニ從テ百官ノ後ニ打ル、衞府ノ官ナレバトテ、騎馬ノ兵五千餘騎甲冑ヲ帶シテ打ル、其次ニ宇都宮五百餘騎、佐々木判官七百餘騎、土居、得能二千餘騎、此外正成、長年、圓心、結城、長沼、鹽谷已下諸國ノ大名ハ、五百騎、三百騎、其旗ノ次ニ、一勢々々引分テ、輦路ヲ中ニシテ閑ニ小路ヲ打タリ、凡路次ノ行粧、行列ノ儀式、前々ノ臨幸ニ事替テ、百司ノ守衞嚴重ナリ、見物ノ貴賤岐ニ滿テ、只帝徳ヲ頌シ奉ル聲、洋々トシテ耳ニ盈リ、

〔皇年代略記〕

〈後醍醐〉

p.0673 建武三年〈延元元也〉正月十日丁巳、依二尊氏等東軍襲來一幸二山門一、同卅日丁丑、依二東軍敗北一還二幸洛陽一、〈◯中略〉　二月三日己卯、幸二入道右大臣〈◯藤原家定〉花山院亭一、〈是去月十日、二條皇居炎上之故也、〉

〔保暦間記〕

p.0673 十三日、〈◯延元元年正月〉方々戰同時ニ敗テ、京方落散ケリ、主上〈◯後醍醐〉叡山へ行幸ナル、

〔梅松論〕

〈上〉

p.0673 所々京方皆逃上る間、同十日〈◯延元元年正月〉の夜、山門へ臨幸ある、〈◯後醍醐〉則内裏燒亡しけり、

〔太平記〕

〈十四〉

p.0673 主上都落事附勅使河原自害事
山崎大渡ノ陣破レヌト聞エケレバ、〈◯中略〉義貞義助イマダ馳參ラザル前ニ、主上〈◯後醍醐〉ハ山門ヘ落サセ給ハントテ、三種ノ神器ヲ玉體ニ添テ鳳輦ニ召レタレドモ、駕輿丁一人モナカリケレバ、四門ヲ固テ侍フ武士共、鎧著ナガラ徒立ニ成テ、御輿ノ前後ヲゾ仕リケル、〈◯中略〉公卿殿上人三四人コソ、衣冠正シク供奉セラレタリケレ、其外衞府ノ官ハ、皆甲冑ヲ著シ弓箭ヲ帶シテ、翠花ノ前後ニ打圍ム、〈◯中略〉新田左兵衞督、〈◯義貞〉脇屋右衞門佐、〈◯義助〉并ニ〈◯中略〉外様ノ大名八十餘人、其勢僅ニ二萬餘騎、鳳輦ノ跡ヲ守禦シテ、皆東坂本ヘト馬を早ム、

〔太平記〕

〈十四〉

p.0673 坂本御皇居并御願書事

p.0674 主上已ニ東坂本ニ臨幸成テ、大宮ノ彼岸所ニ御坐アレドモ、イマダ參ズル大衆一人モナシ、

〔神皇正統記〕

〈後醍醐〉

p.0674 丙子〈◯延元元年〉の春正月、〈◯中略〉十六日より合戰はじまりて、三十日終ニ朝敵を追落す、やがて其夜還幸したまふ、

〔皇年代略記〕

〈後醍醐〉

p.0674 建武三年〈延元元也〉五月廿五日庚午、重幸二山門一、〈敗軍自二西國一襲來故也〉

〔太平記〕

〈十六〉

p.0674 聖主又臨二幸山門一事
官軍ノ總大將義貞朝臣、纔ニ六千餘騎ニ討成サレテ、〈◯中略〉官軍若戰ニ利ヲ失ハヾ、前ノ如ク東坂本ヘ臨幸成ベキニ兼テヨリ議定アリケレバ、五月十九日、〈◯延元元年〉主上三種ノ神器ヲ先ニ立テ、龍駕ヲゾ廻ラサレケル、〈◯中略〉此春モ山門ヘ臨幸成テ、程ナク朝敵ヲ對治セラレシカバ、又サル事ヤアラント、定ナキ憑ミニ積習シテ、此度ハ公家ニモ武家ニモ供奉仕ル者多カリケリ、攝籙ノ臣ハ申ニ及バズ、〈◯中略〉武家ノ輩ニハ、新田左中將義貞、〈◯中略〉是等ヲ宗徒ノ侍トシテ、其勢都合六萬餘騎、鳳輦ノ前後ニ打圍テ、今路越ニゾ落行給ヒケル、

〔太平記〕

〈十七〉

p.0674 自二山門一還幸事
將軍〈◯足利尊氏〉ヨリ、内々使者ヲ主上ヘ進ラセテ申サレケルハ、〈◯中略〉若天鑒誠ヲ照サレバ、臣ガ讒ニ墮シ罪ヲ哀ミ思召テ、龍駕ヲ九重ノ月ニ回サレ、鳳暦ヲ萬歳ノ春ニ復サレ候ヘ、〈◯中略〉且ハ條々御不審ヲ散ゼン爲ニ、一紙別ニ進覽候ナリトテ、大師勸請ノ起請文ヲ副テ、淨土寺ノ忠圓僧正ノ方ヘゾ進ラセラレケル、主上是ヲ叡覽有テ、告文ヲ進ラスル上ハ、僞テハヨモ申サジト思召レケレバ、傍ノ元老智臣ニモ仰合ラレズ、ヤガテ還幸成ベキ由ヲ仰出サレケリ、

〔太平記〕

〈十七〉

p.0674 義貞北國落事
明レバ十月十日〈◯延元元年〉巳刻ニ、主上ハ腰輿ニ召レテ、今路ヲ西ヘ還幸ナレバ、〈◯中略〉還幸ノ供奉ニテ京都ヘ出ケル人々ニハ、〈◯中略〉都合其勢七百餘騎、腰輿ノ前後ニ相從フ、

〔太平記〕

〈十七〉

p.0675 還幸供奉人々被二禁殺一事
還幸既ニ法勝寺迄近ヅキケレバ、左馬頭直義〈◯尊氏弟〉五百餘騎ニテ參向シ、〈◯中略〉主上ヲバ花山院ヘ入進ラセテ、四門ヲ閉テ警固ヲスヱ、降參ノ武士ヲバ、大名共ノ方ヘ一人ヅヽ預テ、囚人ノ體ニテゾ置レケル、

〔皇年代略記〕

〈後醍醐〉

p.0675 建武三年〈延元元也〉十二月廿一日癸亥、又密出二御花山院一、遷二御吉野金峰山一、

〔太平記〕

〈十八〉

p.0675 先帝潜二幸芳野一事
刑部大輔景繁、武家ノ許ヲ得テ、只一人伺候シタリケルガ、勾當内侍ヲ以テ潜ニ奏聞申ケルハ、越前金崎ノ合戰ニ、寄手毎度打負候ナル間、〈◯中略〉天下ノ反覆遠カラジト謳歌ノ説耳ニ滿候、急ギ近日ノ間ニ、夜ニ紛レテ大和ノ方ヘ臨幸成候テ、吉野十津川ノ邊ニ皇居ヲ定ラレ、諸國ヘ綸旨ヲ成下サレ、義貞ガ忠心ヲモ助ラレ、皇統ノ聖化ヲ燿サレ候ヘカシト、委細ニゾ申入タリケル、主上事ノ様ヲ具ニ聞召レ、〈◯中略〉明夜必寮ノ御馬ヲ用意シテ、東ノ小門ノ邊ニ相待ベシトゾ仰出サレケル、相圖ノ刻限ニモ成ケレバ、三種ノ神器ヲバ新勾當内侍ニ持セラレテ、童部ノ踏アケタル築地ノ崩レヨリ、女房ノ姿ニテ忍出サセ給フ、〈◯中略〉景繁則吉野ヘ行向ヒ、當寺ノ宿老、吉水法印ニ此由ヲ申ケレバ、〈◯中略〉若大衆三百餘人、皆甲冑ヲ帶シテ御迎ニゾ參リケル、此外楠帶刀正行、〈◯中略〉五百騎、三百騎、引モ切ラズ、面々馳參ケル間、雲霞ノ勢ヲ腰輿ノ前後ニ圍マセテ、程ナク吉野ヘ臨幸ナル、

〔皇年代略記〕

〈光嚴〉

p.0675 正慶二年三月十二日、主上并兩院〈◯後伏見、花園、〉幸二六波羅一、〈内侍所同渡御、以二北方一爲二皇居一、閏二月以來、伯州主（後醍醐）出御、天下擾亂之故也、當所探題、仲時時益奉二保護一了、〉五月七日、六波羅城敗績、仲時等奉レ伴二主上上皇以下一赴二東國一、〈於二江州番場一、仲時時益等自殺、三主以下御逗留、〉同十日、遷二御伊吹山太平護國寺一、〈暫以二此所一爲二御在所一〉兩院以下又同御二此寺一、此間爲二伯州詔命一、奉レ退二皇位一、〈元號又廢二正慶二年一、更復二元弘三年一、〉同二十八日、自二江州一還二幸於京都一、

〔太平記〕

〈八〉

p.0676 持明院殿行二幸六波羅一事
資名資明二人御前ニ參ジテ、官軍戰弱クシテ、逆徒期セザルニ洛中ニ襲來候、個様ニテ御座候ハバ、賊徒差違テ、御所中ヘモ【G門＆lt｛戀-心｝】入仕候ヌト覺エ候、急ギ三種ノ神器ヲ先立テ、六波羅ヘ行幸成候ヘト申サレケレバ、主上〈◯光嚴〉軈テ瑤輿ニ召レ、二條河原ヨリ六波羅ヘ臨幸ナル、其後堀河大納言、三條源大納言、鷲尾中納言、坊城宰相以下、月卿雲客二十餘人、路次ニ參著シテ供奉シ奉リケリ、是ヲ聞召及テ、院〈◯後伏見〉法皇〈◯花園〉東宮〈◯康仁〉皇后、梶井二品親王〈◯尊胤〉マデ、皆六波羅ヘト御幸成間、供奉ノ卿相雲客、軍勢ノ中ニ交テ、警蹕ノ聲頻ナリケレバ、是サヘ六波羅ノ仰天一方ナラズ、俄ニ六波羅北方ヲアケテ、仙院ノ皇居トナス、事ノ體騷シカリシ有様ナリ、

〔太平記〕

〈九〉

p.0676 主上上皇御沈落事
爰ニ糟谷三郞宗秋、六波羅殿〈◯北條仲時、北條時益、〉ノ御前ニ參テ申ケルハ、〈◯中略〉主上上皇ヲ取奉リテ、關東ヘ御下リ候テ後、重テ大勢ヲ以京都ヲ攻ラレ候ヘカシ、〈◯中略〉是程ニ淺マナル平城ニ、主上上皇ヲ籠進ラセテ、名稱、匹夫ノ鋒ニ名ヲ失ハセ給ハン事、口惜カルベキ事ニ候ハズヤト再三強テ申ケレバ、兩六波羅實モトヤ思ハレケン、サラバ先女院皇后北政所ヲ始進ラセテ、面々ノ女性少キ人人ヲ忍ヤカニ落シテ後、心閑ニ一方ヲ打破テ落ベシト評定有テ、〈◯中略〉南方左近將監時益ハ、行幸ノ御前ヲ仕テ打ケルガ、馬ニ騎ナガラ北方越後守ノ中門ノ際迄打寄テ、主上〈◯光嚴〉ハ、ハヤ寮ノ御馬ニ召レテ候ニ、ナドヤ長々シク打立セ給ハヌゾト云捨テ打出ケレバ、〈◯中略〉龍駕遙ニ四宮河原ヲ過サセ給フ處ニ、落人ノ通ルゾ、打留テ物具剥ト呼ル聲前後ニ聞エテ、矢ヲ射ルコト雨ノ降ガ如シ、角テハ行末トテモ如何有ベキトテ、東宮ヲ始進ラセテ、供奉ノ卿相雲客、方々ヘ落散給ヒケル程ニ、今ハ僅ニ日野大納言資名、勸修寺中納言經顯、綾小路中納言重資、禪林寺宰相有光計ゾ龍駕ノ前後ニハ供奉セラレケル、〈◯中略〉主上其日ハ篠原宿ニ著セ給フ、此ニテ怪シゲナル網代輿ヲ

p.0677 尋出シテ、歩立ナル武士共、俄ニ駕輿丁ノ如クニ成テ、御輿ノ前後ヲゾ仕リケル、

〔太平記〕

〈九〉

p.0677 越後守仲時以下自害事
夜明ケレバ、越後守仲時、篠原宿ヲ立テ、仙蹕ヲ重山ノ深キニ促シ奉ル、都ヲ出シ昨日迄ハ、供奉ノ兵二千騎ニ餘リシカドモ、次第ニ落散ケルニヤ、今ハ僅ニ七百騎ニモ足ザリケリ、〈◯中略〉鸞輿跡ニ連リテ番場峠ヲ越ントスル處ニ、數千ノ敵道ヲ中ニ夾ミ、楯ヲ一面ニ並、矢サキヲ汰テ待懸タリ、

〔太平記〕

〈九〉

p.0677 主上上皇爲二五宮一被レ囚給事附資名卿出家事
去程ニ五宮〈◯參考太平記引、金勝院本、作二五辻兵部卿親王宮一、按五辻宮、名守良、龜山皇子也、〉ノ官軍共、主上上皇ヲ取進ラセテ、其日先長光寺ヘ入奉リ、〈◯中略〉今迄附纒ヒ進ラセタル卿相雲客モ、此彼ニ落留リ、出家遁世シテ退散シケル間、今ハ主上春宮兩上皇ノ御方様トテハ、經顯有光卿二人ヨリ外ハ、供奉仕ル人モナシ、其外ハ皆見馴ヌ敵軍ニ前後ヲ打圍マレテ、怪シゲナル網代輿ニ召レ、都ヘ歸上ラセ給ヘバ、見物ノ貴賤岐ニ立テ、アラ不思議ヤ、去々年先帝〈◯後醍醐〉ヲ笠置ニテ生捕進ラセテ、隱岐國ヘ流シ奉リシ其報、三年ノ中ニ來リヌル事ノ淺マシサヨ、昨日ハ他州ノ憂ト聞シカド、今日ハ我上ノ責ニ當レリトハ、加様ノ事ヲヤ申スベキ、此君モ又、如何ナル配所ヘカ遷サレサセ給ヒテ、宸襟ヲ惱サレヌラント、心アルモ心ナキモ、見ル人毎ニ、因果歴然ノ理ヲ感思シテ、袖ヲ濡サヌハ無リケリ、

〔園太暦〕

p.0677 觀應二年正月十四日、參内依二世上擾亂一、今夜俄可レ有行二幸〈◯崇光〉仙洞一〈持明院殿〉之由被二仰下一之間、御輿長駕輿丁等相催之所、少々參集、時刻寄二御輿於南階一、〈腰輿〉有レ暫出二御南殿一、主上〈御直衣〉内侍二人取二劒璽一候、〈東西〉伊俊勤二仕劒一、作法如レ常、供奉公卿新大納言〈垂纓、直衣、水干鞍、平緒鞦歟、〉右兵衞督、〈衣冠、柏挾、帶二野劔一、負二隨身狩胡籙一、〉次將隆右、〈衣冠、柏挾、隨身狩胡籙、〉職事行時、〈束帶〉伊俊、〈柏挾野大刀、負二隨身狩胡籙一、〉供二奉本陣一、教言朝臣〈於二路頭一馳參〉教光朝臣等供二奉御後一、於二仙洞一時光先申二事由一、其後寄二御輿於南階一、〈伊俊昇レ從二南階一候二簀子一〉被レ垂二御簾一、先取二御劒一進二入簾中一、次候二御簾一、下御之後、〈取レ璽渡二内侍一〉行幸御後、内侍所有二渡御一、先申二賢所渡御由一、下二御御西向御壺一、候二御劒一、其後入御、

〔皇年代略記〕

〈後光嚴〉

p.0678 康安元年十二月八日、寅刻幸二山門一、〈依二南方軍士、清氏（細川）等襲來一也、〉同日、遷二御江州武佐行宮一、同廿八日、遷二幸同國成就寺一、同二年〈貞治元〉正月五日、幸二山門一、義詮卿率二越州軍勢一入洛、凶徒不レ及レ戰引退了、同二月十一日、入洛、〈幸二右大將實俊卿北山第一、内裏修理間也、〉

〔太平記〕

〈三十七〉

p.0678 新將軍京落事
公家〈◯後村上〉ノ大將ニハ、〈◯中略〉武將ニハ、石堂刑部卿頼房、細川相模守清氏、〈◯中略〉十二月三日、〈◯康安元年〉住吉天王寺ニ勢調ヘヲスレバ、〈◯中略〉カクテハ合戰ハカ〴〵シカラジ、先ツ京ヲ落テコソ、東國北國ノ勢ヲモ待メトテ、持明院ノ主上〈◯後光嚴〉ヲバ警固シ奉リ、同八日ノ曉ニ、宰相中將殿、〈◯足利義詮〉苦集滅道ヲ經テ、勢多ヲ通リ、近江ノ武作寺ヘ落給フ、

〔太平記〕

〈三十七〉

p.0678 持明院新帝自二江州一還幸事
帝都ノ主上〈◯後光嚴〉ハ、未ダ近江ノ武作寺ニ御坐有テ、京都ノ合戰イカヾ有ント、御心苦敷ク思食ケル處ニ、康安元年十二月廿七日ニ、宰相中將、〈◯足利義詮〉早馬ヲ立テ、洛中ノ凶徒等、事故ナク追落シ候ヌ、急ギ還幸ナルベキ由ヲ申サレタリケレバ、〈◯中略〉其翌ノ朝龍駕ヲ促サレテ、先比叡山ノ東坂本ヘ行幸成テ、此ニテ御越年アリ、〈◯中略〉三月十三日ニ、西園寺ノ舊宅ヘ還幸ナル、

〔看聞日記〕

p.0678 嘉吉三年九月廿三日、暮程より世間物忩、自二管領一相觸、軍勢共烏丸殿へ馳參、野心之牢人可二推參一云々、實説不分明、仍用心男共參候、禁中には當番不二參入一、夜按察參云々、無二御用心之儀一、夜半許猥雜燒亡云々、有俊朝臣告レ之、予〈◯後崇光〉平臥起出之處、禁裏云々、寢殿へ走出見レ之、已清凉殿炎上、仰天失二心神一、大事之本尊樂器等欲二運出一、御乳人走來申、惡黨三四十人許、清凉殿へ亂入、常御所へ入、御所様〈◯後花園〉は未レ成二御寢一、親長、季春、御前祗候、晝御座御劒被レ召、議仗所へ逃御、大納言典侍、取二劒璽一逃出之處、凶徒奪取、無レ力被レ取て、女中右往左往へ逃出、御乳人は小袖はがれて逃出、御所様御行方も不レ知之由泣々申、心神惘然失二東西一、有俊朝臣、忩他所へ可レ有二御出一之由申之間、乘輿東門より逃出、宮御

p.0679 方女房之様にて歩行、若宮二條奉レ抱、御喝食兩所南御方女中走出、男共御共、持經朝臣宿所へ行、留守之御所にも大勢馳參、警固騷動凡無二言計一、而内侍所渡御之由申、彌仰天、刀自奉二取出一、三條青侍〈三井〉奉二舁出一之由刀自申、庭上奉レ居恐之間、構二高御座一奉レ居、予下レ庭奉レ拜、兵部卿〈衣冠〉參、御行方も不二存知一之由申、暗然之外無レ他、此旅宿も怖畏之間、宮御方若宮、〈二條御乳人奉レ付〉定直宿所へ奉レ成、隆富持經等朝臣御共參、密儀也、主上陽明〈◯近衞忠嗣〉へ臨幸云々、又無二其儀一之由申、實説不分明、内侍所御迎に武家奉行共參之由申、若惡黨爲二取奉一如レ此申歟、不審之間無二左右一不レ可レ渡之由數問答、自二三條一御迎に被レ參者、可レ奉レ渡之由令レ申、奉行三條に令レ申歟、公綱朝臣〈直垂〉參、奉行人御迎に可レ參之由被レ申、遲參之間内へ入閑談、天明以後、奉行數輩、警固二百餘人〈帶二甲冑一〉參、陽明へ可レ奉レ成之由申、其時御座治定令二安堵一、則渡御、次將教季朝臣、〈直垂〉有俊朝臣、〈同〉公綱朝臣、〈同〉重賢朝臣、〈同〉極臈源定仲、〈束帶〉供奉、非常之儀不レ及二先例之沙汰一者哉、軈面々歸參、中門に御坐云々、玉體安穩、賢所無爲渡御、亂中之大慶也、内裏殿々悉炎上、四足門東門二殘、〈餘炎不レ移二他所一〉樂器名器和歌以下雜抄、御具足雜物等悉灰燼云々、燒亡時分、諸大名侍所等一人も不二馳參一、公家人も不レ參、尤不審也、主上をば季春にがし奉る、高名忠節不レ堪二感悦一者也、天明以後、予女中本所へ歸、留守ニ伊成、永親、僧侶等濟々祗候、　廿四日、去夜事委細聞、凶徒清凉殿ニ亂入、先劒璽奪取、已劒璽ハ奉レ取ぬ、可レ付レ火之由下知、殿々放火、御所様議仗所へ御逃ありて、殿上之後へ出御、親長、季春、大刀を拔て、凶徒を打拂てにがし奉る、御冠を脱て、女房體にて唐門より逃出御、御供季春一人候、親長は惡黨ニ押隔られて行方不レ見、裏辻宰相家へ入御、其より廣橋中納言家へ渡御、自レ彼密密御輿にて陽明へ臨幸云々、隱密之間、公家人誰も不レ參、賢所渡御之後露顯、

〔應仁記〕

〈二〉

p.0679 室町亭行幸之事
此日〈◯應仁元年八月十八日〉西陣〈◯山名持豐〉ノ敵内裏ヘ切入、君ヲ奉レ取ト云事有ケレバ、内裏〈◯後土御門〉仙洞〈◯後花園〉行幸御幸ヲ、室町殿ヘ成可レ申之由勝元〈◯細川〉執被レ申ケリ、此間禁中警固ニハ、吉良左兵衞佐、同上總介、

p.0680 赤松伊豆守、名越次郞ニテゾ有ケル、御迎ニ細川下野守兄弟參上シ、三種神器ヲ先立テ行幸アル、猶内裏ノ御留守ノ爲二警固一ト吉良ノ一族、并赤松土佐守、同宮内少輔御門ヲ守護シケリ、女官局町女房達、興ヲ醒而周章騷倒翊給事限ナシ、中御門、西園寺殿ニハ、京極陣ヲ取、二條烏丸ニハ、武田陣ヲ取ケルニ、此内ヘト迯集ル、爰ニ花ノ御所ニ十二人ノ人々諍亂、故ニ天子仙院ノ玉輦ヲ總門ノ外ニ留奉レバ、午ノ刻ヨリ亥ノ刻迄、供奉ノ公卿殿上人女官等ニ至ル迄、皆小路ニヒレ臥テ憂ヲモヨホシケル、〈◯中略〉サテ其日、廿三日ノ亥刻ニ及ンデ、花ノ御所〈◯足利氏第宅〉ノ御會ヲカマヘ、天座トシテ行幸ヲゾナシ奉ル、此時迄門外ニ天子ノ御車ヲ留奉ル事ハ、公方〈◯足利義政〉常ニ山名方ヘ御心ヲ被レ寄ノ由風聞ナレバ、今若十二人ヲ御同心アリテ、山名方ヘ御出アラバ、勝元ハ一院主上ヲ守リ奉テ、合戰ヲバセントノ謀有ケルガ、公方様モ勝元ト一同ニテ、十二人ヲ被二追出一ケレバ、細川方喜悦カギリナシ、

行幸再興

〔實麗卿記〕

p.0680 文久三年三月十一日丁巳、今日賀茂下上社行幸也、攘夷御祈請云々(○○○○○○○)、予供奉之事先日被二仰下一、仍丑刻許著二束帶一、〈◯中略〉辰刻許有二出御催一、仍直降二便宜階一、入二月花門一候二西階邊一、次將陣二階下一、公卿列二庭中一、〈◯中略〉先レ是寄二御輿〈鳳輦〉南階一、博房供二御承足一、良久宸儀令二帳前立一御、劒璽内侍候二左右一、次陰陽頭〈晴雄〉參進、奉二仕御反閇一、次予參進、覆雨皮打返開二輦戸一、迫二東柱一從二母屋一膝行、取二御劒一安二御輿内一、退候二額西間邊一、須レ褰レ帷、而兼於二御輿柱一纒附、次宸儀乘御、次予參進、賜二御草鞋一授二東豎子一、更參進迫二西柱一從二母屋一膝行、取二神璽一安二御輿内一、自令レ取御、次閇二輦戸一垂二覆雨皮一、〈◯中略〉次第前行、御輿出二御承明建禮門一、於二此所一供二副轅一了進御、〈于時巳刻許〉予候二御後一、御列別記、午刻許著二御于下御社一、於二樓門外一召二替於腰輿一、仍予參進取二寶劒一、次下御、則乘二御于腰輿一、新右宰相中將、今度取二神璽一、予相並前行、於二中門一下御、〈◯中略〉於二樂屋一〈東面〉有二御手水事一、陪膳豐房朝臣、御手長博房、役送大江俊昌、了御二于幣殿一御拜、此間予、新右宰相中將等、取二劒璽一立二砌上一、源大納言獻二御幣一、〈二捧〉御拜了、源亞相參進、賜二御幣一授二禰宜祝一、禰宜祝則奉二納神前一、次禰宜傳二神宣一、源亞相奉レ之

p.0681 言上、〈其儀一揖〉次祝於二案下一祝申拍手、源亞相應レ之、〈打交〉了祝案上取二御插頭一、〈榊〉參二進于砌下一、右大臣傳取、參二進于御前一、被レ奉レ挿二御巾子一、了禰宜祝等被レ仰二勸賞一、經二本路一於二中門下一乘御、〈御腰輿〉入二御御休幕一、〈御服所〉予、新右宰相中將等、安二劒璽案上御左方一、豫設レ案、此後御厨子所供二御膳一、御獻奉行奉仕、〈◯中略〉未刻許、上御社行幸有レ催、先䡨二腰輿一乘御、於二樓門外一召二鳳輦一等、劒璽進退准二始御輿出御一、豫赤井橋東にて乘馬、從二鴨假橋一經レ堤令レ到二上御社一御、〈此間雨時々降〉入二御一二鳥居一、予一鳥居外にて下馬、次奉レ䡨二鳳輿於細殿御輿寄一、次予西方於二階下一脱レ沓參進、覆兩皮打返、開二輦戸一取二御劒一、自令二取渡一御、置二御座御左案上一給、次豐房朝臣獻二御草鞋一、先レ是博房供二御承足一、次下御、殿下被レ候二御裾一、入二御於細殿一、次予參進、取二御草鞋一賜二東豎子一、更參進取二神璽一參上、置二御劒内一直退下、〈◯中略〉次有二御手水事一、了御腰輿䡨二御輿寄一、次予參進、取二御劒一立二御腰輿先一、〈御左之方〉次新右宰相中將、取二神璽一與レ予相並、〈御右之方、如二下御社一、〉次乘御、降晃朝臣仰二御輿長一、〈如レ例〉經二橋殿西橋玉橋等一、於二樓門外一下御、豐房朝臣獻二御草鞋一、關白被レ候二御裾一、予、新右宰相中將相並前行、入二御中門一了閉レ戸、於二巽戸下一俊政獻二御笏一、御草鞋脱御、於二幣殿一御拜、〈設二半帖一〉先源大納言參進取二御幣一〈神主捧レ幣、在二神前庭上左方一、〉奉レ之、一如二下御社一、御拜了御幣奉納如レ始、次右大臣參上、奉二御挿頭一、〈榊一枝〉神主被レ仰二勸賞一、次豐房朝臣獻二御草鞋一、予、新右相公羽林等前行如レ先、於二樓門外一乘御、還二御于細殿一、此後奉二御割合一、〈御厨子所調進〉於二御前一賜二一獻一、有二天酌一、又依レ仰大樹〈◯徳川家茂〉休所〈御所屋〉向召二大樹一、則被レ參二於細殿一賜二一獻一、又賜二天酌一、小時退下、被レ參二社頭一、申半刻許、還幸有レ催、先寄二鳳輦一、次予參進、取二御劒一入二御輿一、次乘御、關白被レ候二御裾一、次予參進、賜二御草鞋一授二東豎子一、更參進、取二神璽一入二御輿一、〈自令レ取御〉次仰二御輿長一、次御輿奉二舁立一、此比先陣次第前行、於二一鳥居外一乘馬、此比秉燭、經二本路一還御、于時戌斜也、今日散状、公卿、關白、〈輔熙〉右大臣、〈齊敬〉内大臣、〈公純右大將〉源大納言、〈忠禮〉左大將、〈忠房〉新大納言、〈資宗〉飛鳥井中納言、〈雅典〉徳大寺中納言、〈實則〉予、〈右宰相中將〉新宰相中將、〈公正〉少納言修長朝臣、辨經之朝臣、〈左中辨〉次將左、〈中〉隆晃朝臣、〈中〉實在朝臣、〈少、御綱將、〉公允朝臣、〈少〉公董朝臣、〈少〉通禧朝臣、右〈中〉隆韶朝臣、〈中〉基敬朝臣、〈少、御綱將、〉公述朝臣、〈少〉公知朝臣、〈少〉公賀朝臣、職事豐房朝臣、〈頭右中辨〉俊政、〈藏人右少辨〉大江俊堅、〈藏人左將監〉大江俊昌、〈藏人左將〉

〔文久三年賀茂行幸圖〕

〈文久行幸記節畧〉

p.0682 【圖】

〔文久三年賀茂行幸圖〕

〈文久行幸記節畧〉

p.0683 【圖】

p.0684 〈監〉侍臣忠光朝臣、〈侍從〉隆謌朝臣、〈侍從〉傳奏正親町大納言、奉行長順朝臣、〈頭右大辨〉自餘諸司供奉在二御列書一爰略、大樹依二上洛中一、列外供奉候二御後一、其外在京大名同候二前後一、各衣冠單、〈◯中略〉今日於二兩社一、祠官等有二勸賞事一、

〔公卿補任〕

〈孝明〉

p.0684 文久三年四月十一日、石清水社行幸、〈依二攘夷御祈願一也〉傳奏正親町大納言、〈◯實愛〉奉行豐房朝臣、〈◯清閑寺〉

〔實麗卿記〕

p.0684 文久三年四月十一日丁亥、〈◯中略〉供奉之輩追々參上、〈◯中略〉卯半刻許殿下令レ參給、仍出御有レ催、各下レ殿經二階下一列二立于南庭一、次䡨二鳳輦于南階一、予揖離レ列副レ之、小時出御、令二帳前立一御、内侍捧二劒璽一候二左右一、〈劔東、璽西、〉次陰陽頭參進、奉二仕御反閇一、次宰相中將經二階下一、南階自二西腋一參進、〈◯中略〉開二輦戸一自二當間一斜參進、自二母屋一膝行取二御劒一、經二本路一安二御輿中一、次乘御、先レ是藏人辨供二御承足一、關白被レ候二御裾一、次宰相中將賜二御草鞋一授二東豎子一、更參進取二神璽一安二御輿中一、了閇二輦戸一、〈◯中略〉此比公卿以下進行、于時辰斜、次舁二立御輿一予副レ之、出二御承明門一之後、走進加二前列一、已斜令レ到二于稻荷旅所一御、〈烏丸三條大路、御休幕不レ被レ用、直令レ到二此處一給、〉於二此所一暫御休足、從二此所一密々召二御車轅一、〈依二幸路狹少一也〉九條野中御假幄入御、小時出御、午半刻許、著二御于城南宮一、〈以二拜殿一爲二御座一〉於二此處一供二御膳一、〈御厨子所調進〉臣下一同賜二割合一、未刻許此所出御、同半刻許、飛鳥方旅所入御、小時出御、申刻許、愛宕御假幄入御、申半刻許淀姫旅所入御、小時出御、酉斜著二御下院一、先レ是於二放生川一鯉鮒鰻等被レ放、〈兼有二御沙汰一〉暫時御休息之後、自二此所一極密々召二御板輿一、〈山路依二狹少一也〉戌刻許著二御豐藏坊一、〈以二此坊一爲二御休幕一〉先供二御膳一、須臾著二御御束帶一、于時亥斜、次令レ到二本宮一御、今度召二御腰輿一、於二樓門外一下御、先宰相中將取二御劒一、予弓置二于階西腋一、取二神璽一御輿前相並、次下御、關白被レ候二御裾一、西廻廊於二東一二間一、有二御手水事一、了著二御於幣殿御座一、宰相中將予等隨二御歩一前行、〈劒西、璽東、〉次藏人俊政、自二出納一、取二捧金銀御幣三捧一參進、左大臣殿傳取供進、次御拜、〈三所〉此間相公羽林予跪、關白被レ候二御後少東邊一、了左大臣殿參進、賜二御幣一被レ授二祠官三人一、先東次西、共奉二納於神前一、了次出二御東門一、先レ是西方武内社有二御拜一、〈依二社前狹少一、從レ外斜御拜、〉次攝社々々有二御拜一、〈◯中略〉入三御自二

p.0685 西門一、御二本宮御拜座一、更有二御祈請之事一、次還御、先宰相中將安二御劒一、次乘御、次予安二神璽一自令レ執御、次相公羽林仰二御輿長一、次御輿舁立、〈◯中略〉次還二御于豐藏坊一、于時天明、須臾供二御膳御酒等一、〈◯中略〉昨日於二本宮一、小鳥鳩等放生思食之處、及二夜陰一之間、今朝於二此所一被レ放了、辰刻前、有二還御催一、須臾出御、辰半刻許、於二下院一御休息、小時召二御車轅一、一如二昨日一、巳斜飛鳥方御休幕、小時出御、午刻前著二御城南宮一、先供二御膳御酒等一、諸臣賜二割合一如二昨日一、午半刻此所出御、未半刻許、稻荷旅所入二御御休幕一、小時出御、從二此所一召二鳳輦一、申半刻許、還二御本殿一、〈◯中略〉一昨夕、野宮被レ示二警衞士之事一、到二昨朝一何等之沙汰無レ之間、御二城南宮一之後、及二尋問一之處、最早止メ之由、輕卒返答也、如何不レ足レ謂、其後聞及之處依二大樹〈◯徳川家茂〉不參一歟云々、猶更無レ論之儀也、又云、一橋黄門〈◯徳川慶喜〉三百人相具云々、兼日之沙汰ニ而、中將二十人、少將十人宛相具、各衣體布衣從レ官被レ渡云々、御列外供奉大名、前列上杉彈正大弼、細川越中守、宗對馬守、松平備前守、松平紀伊守、後列大樹公、〈臨レ期不參〉一橋中納言、松平讃岐守、此外前後武家警固數輩、又幸路自二堺町門外一到二男山一、諸藩警固有レ之、
公卿、關白、〈輔熈〉左大臣殿、内大臣、〈公純右大將〉左大將、〈忠房〉權大納言、〈家信〉源大納言、〈忠禮〉新大納言、〈資宗〉冷泉中納言、〈爲理〉源中納言、〈重胤〉三條中納言、〈實美〉劒璽所役宰相中將、〈有容〉御拜之間劒璽所役實麗、〈右宰相中將〉長順朝臣、〈右大辨宰相〉少納言康賢朝臣、辨經之朝臣、〈頭左中辨〉次將左〈中〉實在朝臣、〈中〉宗有朝臣、〈少〉公允朝臣、〈少、御綱將、〉公董朝臣、〈少〉通禧朝臣、右〈中〉隆韶朝臣、〈中〉通善朝臣、〈中〉基敬朝臣、〈少、御綱將、〉公述朝臣、〈少〉公知朝臣、職事豐房朝臣、〈頭右中辨〉博房、〈權右中辨〉俊政、〈右少辨〉源常典、藤原助胤、侍臣隆謌朝臣、〈侍從〉頼徳朝臣、〈右馬頭〉傳奏正親町大納言、〈實徳〉奉行豐房朝臣、

〔文久紀事〕

p.0685 文久三癸亥四月
　石清水行幸之件
　　　　　　洛中洛外〈江〉觸書

p.0686 來ル十一日、石清水社行幸御道筋、堺町御門三條油小路御順路、町在并裏借家ニ至迄、火之元入レ念可レ申候、
右之趣、町在并洛中洛外〈江〉、不レ洩様急度可レ被二相觸一もの也、
　　四月
　　　別紙
今度石清水社行幸者、攘夷之御祈誓之思召に而(○○○○○○○○○○○)、萬民之憂を被レ爲レ救候御趣意に被レ爲レ在候間、通御之御途中、下々傷損に相成候而者、被レ惱二宸襟一候間、精々質素に相心得可レ申候、無レ據儀者格別に候得共、決而取繕費用相立候儀、叡慮貫徹にも不二相成一候、折角御仁愛之思召にも相背候間、屹度相心得可レ申候、
右之趣、通御筋者勿論、洛中洛外〈江〉不レ漏様可二相觸一もの也、
　　四月
　　　　　御警衞人員
明後十一日、石清水社行幸之節、御途中御警衞、左之通可レ被二心得一候、
一御鳳輦左右御警衞
　　總勢凡八百人
　　兩　御　番　三　百　人　新御番　二　十　一人
　　大　御　番　百　　人　小十人　二　十　二　人
　　御徒三組　六十九人　清水附　二百四十人
一隨身加勢
　　同　　凡二百人

p.0687 　　御徒　二十三人
　　　御書院番與力同心　五十人
　　　　　警衞之面々著服
一御定番與力同心　百二十人
一石清水鳥居内者、御警衞人數半減之事、
一御警衞之面々、裁附割羽織著用之事、
右之通相心得候様、向々〈江〉可二相達一候、
　　四月
　　　　　隨從ノ諸士著服
來ル十一日、石清水社行幸供奉被レ遊候節、布衣以上之面々、熨斗目著用候様、向々〈江〉可レ被レ達候事、
　　四月
　　　　　　公卿供奉及諸藩警衞
鷹司關白　一條左大臣　徳大寺左大臣　近衞左大將　大炊御門大納言　廣幡大納言　日野大納言　冷泉中納言　三條中納言　葉室頭右中辨　坊城右少將　庭田中納言　橋本右宰相中將　松木中將　中御門頭左中辨　舟橋少納言　河鰭少將　櫛笥中將　滋野井中將　東久世少將　梅溪中將　東園中將　錦小路右馬頭　三條西少將　正親町少將　藤島新藏人　姉小路少將　四條侍從　小森典藥頭　細川藏人

p.0688 右之外非藏人二十人、地下官人役々三十人、列奉行二十人、
　　　　武家供奉
松平紀伊守〈◯安藝〉　松平備前守〈◯備前〉　宗對馬守〈◯對馬〉　松平長門守〈◯長門〉　上杉彈正大弼〈◯出羽米澤〉松平譖岐守〈◯讃岐高松〉一橋中納言〈◯徳川慶喜〉松平餘四麿〈◯水戸藩主慶厚弟〉山内兵之助〈◯土佐藩主一族〉片倉小十郞〈◯仙臺藩士〉小栗長門守〈◯禁裏附〉　瀧川播磨守〈◯京都町奉行〉
　　　　御列外御先著
有栖川帥宮　近衞前關白
傳奏　奉行職事
坊城大納言　野宮宰相中將
先著
三室戸新三位　石三位　四辻少將　萬里小路〈闕官〉　澤主水正　豐岡中務權大輔
御脇
豐岡大藏卿　山科少將
　　　　社頭警衞
上杉彈正大弼〈◯出羽米澤〉細川越中守〈◯肥後熊本〉
　　　　禁裏御所〈并〉内侍所警衞
守護職之人數〈并〉諸司代
　　　　禁裏御門九口御門外
本多主膳正〈◯近江膳所〉稻葉長門守〈◯山城淀〉永井飛騨守〈◯攝津高槻〉青山因幡守〈◯丹波篠山〉

p.0689 　　　　途中口々〈并〉要所嚴重警衞
尾州、紀州、水戸、長州、備前、對州、仙臺、高松、久留米、黒田、佐竹、南部、藤堂、薩州、當時御主人滯京無レ之面面有レ之候得共、詰合人數ニ而相勤候様被二仰付一、御警衞有レ之事、
近衞殿〈江〉尾州より三十人、徳大寺殿〈江〉因州より三十人、櫛笥殿〈江〉會津より二十人、滋野井殿〈江〉阿州より二十人、櫻井殿〈江〉筑前より二十人、三條西殿〈江〉肥後より十人、河鰭殿〈江〉薩州より十人、正親町殿〈江〉肥後より十人、東久世殿〈江〉佐竹より十人、姉小路殿〈江〉州より十人、
行幸之節爲二加員一、隨身書面人數、夫々自二諸藩一差出候様、尤可レ爲二士分以上一旨被二仰付一候、衣體布衣帶刀供奉ニ相成候事、

〔毛利家舊藩記録〕

p.0689 八幡行幸ノ建言書寫
先般加茂泉涌寺之御參詣ハ、御親征御巡狩之御基本ニ可レ有レ之段、及二言上一候處、如何ニモ時勢相迫、夷艦攝海ヘ不日闌入仕候趣、實以皇國之安危、此時ニ相決候事ニ付、防禦警衞之者共、決鬪死戰仕候者勿論ニ候得共、如レ此御時勢、乍レ恐至尊深宮ニ被レ爲レ在候様モ無レ之、膺懲之御偉業不レ被レ爲レ建テハ不二相叶一儀ニ付、何卒鳳輦ヲ男山邊御進メ、天下之士氣ヲ御淬励被レ爲レ遊候得バ、畿内ニ馳參者蝟集仕、防禦之士モ益感奮仕ラヌ者有レ之間敷ト奉レ存候、左無レ之テハ攝海ハ必爭之地ニ付、賊ノ有トモ相成可レ申歟、イカニモ被レ爲レ對二列聖一不二容易一御時勢、御聖察被レ爲レ遊、御親征之宸斷有レ之度、爲二神州一奉レ冀候、
　　右ハ文久三年二月廿八日、家老浦靱負ヲ以テ學習院ヘ差出ス、

行幸官

〔令義解〕

〈一職員〉

p.0689 中務省
内舍人九十人、〈掌下帶レ刀宿衞、供二奉雜使一、若駕行分中衞前後上、〉

〔令義解〕

〈一職員〉

p.0689 左衞士府、〈右衞士府准レ此、〉

p.0690 督一人、〈掌下禁二衞宮掖一、〈◯中略〉車駕出入、前驅〈謂導引也〉後殿〈謂在レ後爲レ殿〉事上、〉

〔令義解〕

〈一職員〉

p.0690 左兵衞府、〈右兵衞府准レ此、〉
督一人、〈掌下撿二挍兵衞一、〈◯中略〉車駕出入、分二衞前後一〈◯中略〉事上、〉

〔延喜式〕

〈十二中務〉

p.0690 凡行幸者、丞以上率二内舍人一、候二閤門外一、分二列左右一供二奉御前一、其次第在二近衞陣前、兵衞陣後一、其幸近處不二裝束一、〈謂二豐樂院神泉苑之類一〉
凡應レ供二奉城外行幸陣一、侍從次侍從者、除二留守一外咸悉陪從、若無レ故不レ陪者、不レ預二節會一、
書司
供二奉行幸一御琴硯綱料、緋帛四丈五尺、調布一端三尺、御琴硯案袋覆緒綱料、絁五丈八尺五寸、緋帛五丈、油絹五丈八尺五寸、調布一端三尺、並隨二故損一請換、

〔延喜式〕

〈十二内記〉

p.0690 凡供二奉行幸一、遠處内記二人、史生一人、内記分在下左右預二被レ鞍御馬一官人之後、駄レ鈴馬主鈴之前上、近處内記一人、史生一人、

〔延喜式〕

〈十二主鈴〉

p.0690 凡行幸從レ駕内印、并驛鈴傳符等、皆納二漆簾子一、主鈴與二少納言一共預供奉、其駄者左右馬寮充レ之、

〔延喜式〕

〈十三大舍人〉

p.0690 凡車駕行幸者、舍人四番〈以二十二人一爲二一番一〉供奉、御輿長八人、駄鈴四人、並著二緋袍白布袴帶一、若皇后有レ幸、又供二御輿長一、裝束同レ前、其叫門者、便取二副鈴舍人一、總緋袍四十八領、布帶四十八條、〈緋布衫准レ此〉並納二寮庫一、臨時充用、若有二破損一、返レ故請レ新、

〔延喜式〕

〈十三圖書〉

p.0690 凡行幸從レ駕御研案一具、〈研一口、筆十管、銀小瓶一口、墨四挺、雜色紙數不レ定、〉和琴二面、〈御一面、凡一面、〉柳筥一合、〈納二赤地兩面袋一〉地圖一卷、〈以二細布一爲レ之、納二赤地兩面袋一、〉儲幕四條、〈二絁、二布、並隨レ破請換、〉官人二人率二番上二人一、令二仕丁五人擔一レ之、各著二紺布衫布袴布帶一、〈事畢返二收寮家一、隨レ損請換〉其應レ御二和琴一者、官人以レ袖執二琴尾一而擎、轉二於書司一進之、給二侍臣一者、執二琴首一直趍就レ座後授之、

〔延喜式〕

〈十六陰陽〉

p.0691 凡行幸陪從、屬已上二人率二陰陽師二人、漏刻博士一人、守辰丁十二人、直丁一人一供奉、立二於右兵衞陣後、右衞門陣前一、其守辰丁裝束、紺布衫十三領、〈別一丈九尺〉調布袴十三腰、〈別八尺〉調布帶十三條、〈別長九尺、廣一尺二寸、〉並隨レ損請換、

〔延喜式〕

〈十八式部上〉

p.0691 凡次侍從帶二職事一陪二從行幸一、闕二朝座一者、待二中務移一乃聽之、近處行幸者、朝座畢後追參、凡車駕行幸應三宴集及出二京外一者、輔以上一人、丞一人、録一人陪從、

〔延喜式〕

〈二十一雅樂〉

p.0691 行幸之所、屬已上率二雅樂人一祗候、

〔延喜式〕

〈二十八兵部〉

p.0691 凡經レ宿行幸之時、皆遣二史生一點二撿諸衞府留守人一、若在二内裏一者令二録點撿一、

〔延喜式〕

〈二十八隼人〉

p.0691 凡遠從駕行者、官人二人、史生二人、率二大衣二人、番上隼人四人、及今來隼人十人一供奉、〈番上已上並帶二横刀一騎レ馬、但大衣已下著二木綿鬘一、今來著二緋肩巾木綿鬘一、帶二横刀一執レ槍歩行、〉其駕經二國界及山川道路之曲一、今來隼人爲レ吠、
凡行幸經レ宿者、隼人發レ吠、但近幸不レ吠、

〔延喜式〕

〈三十六主殿〉

p.0691 車駕行幸供奉殿部十人、各給二紅染細布衫一領、細布帶一條、袴一腰一、今良三十人、各紺調布衫一領、調布帶一條、調布袴一腰、〈已上隔二三年一請〉仕丁十二人、各紺布衫一領、布袴一腰、布帶一條、〈已上隨レ破請換〉

〔延喜式〕

〈三十七典藥〉

p.0691 凡行幸者、官人一人、侍醫一人、率二藥生四人一賷二御藥一從之、若應レ經レ宿者、亦率二醫生一令下賷二草藥一擔、及雜方經并料度等物一候上レ之、〈其藥種色目臨レ時量定、擔夫申レ省、但直丁擔夫等裝束、及食同亦申レ省、〉

〔延喜式〕

〈四十二左右京〉

p.0691 凡車駕行幸、京職前驅、若夜即屬以上及史生將二坊令書生等一、執レ燎供奉、〈其松明職備之〉

〔延喜式〕

〈四十五左右近衞〉

p.0691 凡供二奉行幸一、大將以下少將以上、〈幸遠著二摺衣一、幸近臨時處分、〉並著二皁緌横刀弓箭行騰草鞋一、〈幸近除二行騰一著レ靴〉將監以下、府生以上、並著二皁緌布衫白布帶横刀弓箭行騰麻鞋、〈幸近以二蒲脛巾一代二行騰一〉近衞皁緌青摺布衫白布帶横刀弓箭蒲脛巾麻鞋一、〈騎隊二十五人、堪二騎射一少將以下在二此中一、皆用二官馬一、以二行騰一代二脛巾一、幸近省二五人一、自餘府生已上、及近衞並乘二私馬一、〉
凡行幸者將監一人、升レ自二西階一、受二取御劒一供奉、即率二近衞二人一護之、亦令三近衞二人護二印鈴一、
凡行幸還レ宮、少將已上與二近臣一撿二收内豎執物一、

p.0692 凡行幸之時、御輿長五人、擇二近衞膂力者一、預前注二交名一奏之、並著二紅染布衫一、不レ帶二弓箭一、其料細布三端一丈四尺、紅花十五兩、隔二三年一請、
凡車駕行幸經レ宿者、從行及留守竝具レ數奏、〈主典已上具二顯交名一〉餘府准此、
凡供二奉行幸一駕輿丁者、駕別二十二人、〈十二人擎二御輿一自餘執二前後綱一、〉皆著二皁頭巾皁緌緋白衫調布襖貲布衫紫大纈褶白布袴白布帶白布脛巾一、總二十二具、〈中宮亦准レ此〉貯二收府庫一、臨時充用、若有二損破一、申レ官請換、但笠簑請二内藏寮一、

〔延喜式〕

〈四十六左右衞門〉

p.0692 凡供二奉行幸一官人以下、府生以上、並准二近衞府一、門部皁緌紺布衫白布帶横刀弓箭行騰麻鞋、〈幸近以二蒲脛巾一代二行騰一〉衞士皁緌桃染布衫白布帶横刀弓箭白布脛巾草鞋、
凡行幸之日、召二集散所衞士一令二供奉一、若致二闕怠一、毎二一日怠一奪二五斗粮一、

〔延喜式〕

〈四十七左右兵衞〉

p.0692 凡供二奉行幸一官人以下裝束、並准二近衞一、〈騎二私馬一〉但踐祚大嘗會祓禊、用二虎像纛幡一旒、鷹像隊幡四旒、小幡二十旒、鉦鼔各一面一、其用度准二衞門府一、
凡駕行之日、分二配兵衞一者御輿長二人、〈不レ帶二弓箭一〉御膳前二人、御馬副二人、自餘陪レ陣、
凡駕輿丁五十人
凡供二奉行幸一駕輿丁裝束十一具、〈中宮准レ此〉

〔延喜式〕

〈四十九左右兵庫〉

p.0692 車駕行幸、執纛一人、〈騎レ馬、牧子二人執レ轡、〉著二皁末額緋大纈袍布汗衫帛袴布帶鞋行騰一、執二纛綱一二人、著二桃染布衫布袴布帶一、執戟一人、〈從二執纛人一〉執鉦二人、執鼔二人、〈以二熊皮一盖二鉦皷一〉擊者二人、〈已上服色、同二執纛人一、〉鉦鼔師各一人、〈騎レ馬、服色同二執纛人一、〉寮官二人、著二公服行騰一、〈騎二私馬一〉並陣二大臣前一、其所レ須裝束申レ官請受、事訖返上、行幸擊二鉦鼔一節、其日質明、寮承二大臣命一擊二動鼔一三度、度別平聲九下、即裝束訖、擊二列陣鼔一一度、平聲九下、諸司陣列訖、擊二進鼔一三度、度別九下、〈初擊二細聲一、漸登二大聲一、〉次擊二行鼔一三度、度別雙聲二下、〈陣列或遲、相尋擊レ之、〉御二行宮一擊二靜陣鉦一三下、〈還二本宮一亦如之〉次擊下喚二隊司一〈謂諸衞次官已上〉鼔上三下、訖擊二解陣鉦一五下、並諸衞相應、

〔二中歴〕

〈八儀式〉

p.0693 行幸
前陣京職　神祇内藏　彈正兵部　民部雅樂　治部式部　官史隼人　左衞左兵　陰陽中務　内舍侍從　左右馬寮　外記内記　少納王卿　左右近衞　中央御輿　女官侍中　後陣典藥　内膳造酒　主水内藏　圖書内匠　主殿大藏　縫殿宮内　大舍掃部　大膳木工　大炊右兵　後右衞門〈◯又見二拾芥抄一〉

〔西宮記〕

〈臨時十〉

p.0693 行幸時事
卷纓著レ緌、又著二平胡籙虎皮尻鞘闕腋靴等一、宮中行幸之時、著二縫腋壺胡籙一、著二淺沓一、非違佐者縫腋之上、著二平胡籙靴等一、年來著二平裝束壺胡籙一、著二淺沓一、自餘可レ隨二時議一、

〔世俗淺深秘抄〕

〈下〉

p.0693 大將夜行幸供奉之時、尋常隨身袴用二狩袴一、但新任即可レ用二染分一、

〔續日本紀〕

〈九聖武〉

p.0693 神龜三年九月壬寅、以二正四位上六人部王、藤原朝臣麻呂、正五位下巨勢朝臣眞人、從五位下縣犬養宿禰石次、大神朝臣道守等二十七人一、爲二裝束司一、以二從四位下門部王、正五位下多治比眞人廣足、從五位下村國連志我麻呂等十八人一、爲二造頓宮司一、爲レ將レ幸二播磨國印南野一也、

〔續日本紀〕

〈二十六稱徳〉

p.0693 天平神護元年九月庚戌、遣レ使造二行宮於大和河内和泉等國一、以レ欲レ幸二紀伊國一也、　癸丑、以二從二位藤原朝臣永手、正三位吉備朝臣眞備一、爲二御裝束司長官一、從四位下高岳連比良麻呂、從五位上豐野眞人出雲、大伴宿禰伯麻呂爲二次官一、判官四人、主典四人、　十月辛未、行二幸紀伊國一、以二正三位諱一、〈◯光仁〉爲二御前次第司長官一、從五位下多治比眞人乙麻呂爲二次官一、正四位下中臣朝臣清麻呂爲二御後次第司長官一、從五位下藤原朝臣小黒麻呂爲二次官一、各判官二人、主典二人、

留守官

〔令義解〕

〈六儀制〉

p.0693 凡車駕巡幸及還、百官五位以上辭迎、留守者不レ在二辭迎之限一、〈謂執掌之長官留守者也、假如監國之太子、若執契之公卿之類、〉若不レ經レ宿者、不レ用二此令一、

〔令義解〕

〈七公式〉

p.0693 便奏式、〈◯中略〉其皇太子監國、〈謂天子巡行、太子留守、是爲二監國一、〉亦准二此式一、以二奏勅一代二啓令一、

〔令義解〕

〈七公式〉

p.0694 凡車駕巡二幸京師一、留守官給二鈴契一、〈謂留守官者、皇太子不レ在者、餘官留守者亦是也、給二鈴契一者、案二唐令一、不レ給二内印一、但有レ事應レ用二鈴契一者、更副二官符一行下、其依二上條一、太子監國之日、唯得レ用二勅旨及便奏一、以外大事、不レ得二施行一、此據二尋常之時一、不レ由二非常之變一、若有二軍機急速一、應レ處二分兵馬一者、不レ拘二恒法一、亦得二兼行一、〉多少臨時量給、

〔延喜式〕

〈十二中務〉

p.0694 凡行幸經レ宿者、差二定留守徒一、付二公卿一奏レ之、

〔日本書紀〕

〈二十六齊明〉

p.0694 四年十月甲子、幸二紀温湯一、〈◯中略〉　十一月壬午、留守官蘇我赤兄臣語二有間皇子一曰、〈◯下略〉

〔日本書紀〕

〈二十八天武〉

p.0694 元年六月甲申、將レ入レ東、時有二一臣一、奏曰、近江群臣、無レ有二謀心一、必告二天下一、則道路難レ通、何無二一人兵一、徒手入レ東、臣恐事不レ就矣、天皇從レ之、思三欲返二召男依等一、即遣二大分君惠尺、黄書造大伴、逢臣志摩、于留守司高坂王二、而令レ乞二驛鈴一、

〔日本書紀〕

〈三十持統〉

p.0694 六年二月丁未、詔二諸官一曰、當以二三月三日一將レ幸二伊勢一、　三月戊辰、以二淨廣肆廣瀬王、直廣參當麻眞人智徳、直廣肆紀朝臣弓張等一、爲二留守官一、

〔續日本紀〕

〈十四聖武〉

p.0694 天平十四年八月己亥、行二幸紫香樂宮一、以二知太政官事正三位鈴鹿王、左大辨從三位巨勢朝臣奈氐麻呂、右大辨從四位下紀朝臣飯麻呂一爲二留守一、攝津大夫從四位下大伴宿禰牛養、民部卿從四位下藤原朝臣仲麻呂爲二平城留守一、

〔續日本紀〕

〈三十八桓武〉

p.0694 延暦四年九月丙辰、車駕至レ自二平城一、〈◯中略〉至三於行二幸平城一、太子、〈◯早良〉及右大臣藤原朝臣是公、中納言種繼等並爲二留守一、

〔類聚符宣抄〕

〈四〉

p.0694 右大臣〈◯藤原園人〉宣、行幸經レ宿留守侍從、中務省差二定參議已上一、執二省奏一奏レ之、永爲二恒例一、其參議已上不レ在二中務省、若限、但裝束行事不レ據二此例一、
　　弘仁五年二月十五日　　　少外記大春日朝臣款雄〈奉〉

〔新任辨官抄〕

p.0694 留守辨、尋二知諸衞官人外記史等一、可レ催之由能誡仰、又尋二内侍所女官祗候否事、諸陣所々誡不事一、

〔中右記〕

p.0695 嘉承二年三月五日辛卯、今夜可レ有レ行二幸法王〈◯白河〉御所鳥羽一也、〈◯中略〉内大臣〈◯源雅實〉被レ參後、行幸路并留守辨(○○○)、〈右大辨時範朝臣、藤宰相顯實、〉又頭辨被二仰下一、

〔長秋記〕

p.0695 大治四年正月廿日己亥、行二幸院一、〈◯白河〉巳刻參内、〈◯中略〉主上〈◯崇徳〉出御、依二兼催一未レ寄二御輿一、仍立二中門廊一被二加催一、下官、宗輔、取二劒璽一如レ前、下官弓與レ筥持加、雜亂間依レ可レ被レ引レ矢不レ撤レ弓也、是非二尋常儀一、又依二攝政〈◯藤原忠通〉命一閉二中門戸一、雜人立二群御所一無禮故也、適中門下䡨二御輿一乘御、乃還御、内侍不レ出二南殿一、被二相待一之間、時刻推遷、攝政命云、是留守藏人失云々、

〔猪隈關白記〕

p.0695 正治三年正月廿三日甲戌、此日天皇〈◯後土御門〉行二幸於院〈◯後鳥羽〉二條高倉第一、仍巳刻許著二束帶一〈◯中略〉參内、〈于時皇居閑院也〉先レ之殿下〈◯藤原基通〉令レ參給、余參二朝餉一、藏人頭右大辨資實朝臣來、可二召仰一之由仰レ之、仍著二陣座一、〈奧〉則頭辨來、下二日時勘文一、余結二申之一、次仰二召仰事并道次第等事一退歸、不レ仰二留守人一、寛治〈◯堀河〉之比、院〈◯白河〉御所依二程近一、無二留守人一彼例云々、

朝覲行幸〖附〗

p.0695 　附朝覲行幸
朝覲トハ、支那ニテ諸侯ノ天子ニ謁見スルノ稱ナレド、我邦ニテハ、天皇ノ、太上天皇、皇太后等ヲ拜シタマフヲ謂フナリ、歳首ノ朝覲ハ、多ク正月三日四日ノ兩日ヲ用ヰレドモ、或ハ吉日ヲ擇ブアリ、忌月ヲ避クルアリ、或ハ他ノ事故ニ由リテ、其日ヲ改ムルアリテ、必シモ一定セズ、此外ニ即位後ノ朝覲、元服後ノ朝覲等アリ、抑モ朝覲ハ、鹵簿ヲ備ヘ、儀衞ヲ嚴ニスルコトナレド、御所ニ近ヅキテハ警蹕ヲ停メ、中門外ニテ御輿ヨリ下リ給フガ如キハ、敬親ノ意ニ外ナラズ、而シテ母后ニ朝覲シテ還御ノ時ニ、階下ニテ鳳輦ニ御スルハ、仁明天皇ニ始マル、天皇ノ母后ニ朝シ給フヤ、其鹵簿ノ盛儀ヲ觀ント欲シテ此命アリシ故ナリ、又天皇ノ、上皇ノ御前ニテ笛ヲ吹キ給フコトハ、一條天皇ニ始マリテ、後世多ク此事アリ、且ツ幼帝ハ、母后ト同輿シ給フヲ以テ例トスレドモ、或ハ元服前ノ朝覲ヲ以テ非トスルノ説アリ、又父帝

p.0696 母后等ノ大漸ヲ奉問シ給フトキハ、鹵簿ノ備ハルヲ待タズ、遽ニ之ニ趨キ給フヲ以テ、是ヲ非常ノ行幸ト爲セリ、又後世ニ至リ、御所ノ接近シタルトキハ、亦鹵簿ヲ備ヘズ、歩儀ヲ用ヰサセ給ヘリ、

名稱

〔伊呂波字類抄〕

〈七天〉

p.0696 朝覲(テウキン)

朝覲式

〔公事根源〕

〈上〉

p.0696 朝覲行幸　二日〈◯正月〉
是ハ天子年の始に、上皇并母后の宮に行幸なる事有、嵯峨天皇大同四年八月に、朝きんの儀ははじまる、嘉祥二年正月廿日に、仁明の御門、母后に朝きんのため、冷泉院に行幸なる、彼時御門南階をくだりて、笏をたヾしくして跪給し事も侍にや、周禮、春日朝、秋日覲、と見えたり、是朝覲の心なり、漢高祖は、五日に一度、父太公に朝せられける、人の御門にも其ためし有事にこそ、
◯按ズルニ、嘉祥二年正月廿日ハ、三年正月四日ノ誤ナリ、猶下ニ掲グル續日本後紀ヲ參看スベシ、

〔周禮〕

〈大宗伯〉

p.0696 春見曰レ朝、夏見曰レ宗、秋見曰レ覲、冬見曰レ遇、時見曰レ會、殷見曰レ同、〈此六體者、以二諸侯見一レ王爲レ文、〉

〔北山抄〕

〈一〉

p.0696 正月三日朝覲事

〔年中行事秘抄〕

p.0696 正月二日拜二覲上皇母后一事

〔西宮記〕

〈臨時五〉

p.0696 行幸　京内
元正幸二太上皇及母后宮一者、王卿著二魚袋一、到二后宮近邊一、停二警蹕聲一、〈蹕謂二臨幸儀一〉到二中門外一、停二御輿一降御、中將持二神璽一、先御二宿所一、次有二氣色一、詣二御前一有二拜舞一、〈著レ靴把レ笏御拜、可レ有二色物一、文徳（恐仁明誤）天皇、幸二冷泉院一時、依二大后命一、於二寢殿前一乘輿云々、〉參議已下留守、歸御間、立二公卿後一、名謁如レ常、

〔小野宮年中行事〕

p.0696 正月三日行幸事
天皇幸二太上天皇宮一、〈皇后若御二京城之外一、同准レ此、〉有二拜賀禮一、御二鳳輦一、非二神事一外著レ靴、但或書云、是日用二魚袋一者可レ尋、典

p.0697 侍潅子朝臣申云、延長年中、供二奉行幸一之時、乘二御輿一之後、内侍進置二御劒等一、而年來之間不レ因二斯例一、先置二御劒一、是尤説也者、

〔柱史抄〕

〈上正月〉

p.0697 朝覲行幸〈正月二日有二此儀式一、又有下擇二吉日一之時上、〉
六位内記二人、供二奉此事一、天皇臨二幸仙院一之後、著二上官座一、車駕還御之時、未レ䡨二御輿一之間、上卿以二官人一召二内記一、内記入レ自二中門一、磬折而立、上卿仰云、某人賜二其位一、内記微音稱唯退歸、若及二數輩一之時、下二賜折紙一、〈上卿若坐二堂上一者、五位居二階腋一奉レ之、六位居レ地奉レ之、若乍レ立被レ仰者、各磬折奉レ之、〉

〔世俗淺深秘抄〕

〈上〉

p.0697 朝覲行幸之時、於二中門一下給、次將開二輦戸一、取二御劒一暫相待、下給蹲二居沓脱下一、天皇進寄給之間、昇二沓脱一先行、是故實也、早速昇殿シテ、見二下天皇進行一條、無二便宜一事也、御劒左頗先、璽右少後、上臈將授二御劒於内侍一、後入御間、暫蹲居閉二輦戸一、弓者進時御輿邊〈爾〉置レ之、如隨身〈爾〉給レ之、進非也、於二中門一、乘輿之時、上臈次將進寄〈天、〉先開二輦戸一、先レ是置レ弓、其後參二進於南面妻戸一、跪給二御劒一、内侍在二簾中東方一也、御劒置二御輿前方、刄外柄右方也近御劒事外長、仍頗乍二前方一寄二左方一須千加倍置レ之也、其後取レ弓跪候、天皇乘御、其後下臈將置二璽筥一、或乘輿以前乍レ二置レ之、此事臨時隨レ仰事也、其時上臈將進寄〈天、〉縿二入御下襲一、取二挿鞋一給二東童一、御裾縿入、即閉二輦戸一、次取二草鞋一也、下給時、公卿將參二進路一、御輿東西〈爾〉安、左將度レ南、可レ入レ自二南小戸一也、其間渡二御輿前一、頗無二便宜一、頗傍二公卿列一可レ渡、南面〈爾〉安、左右共可レ經二御輿後陣方一也、縿二入御裾一事、或頭中將縿入、攝政參時、攝政縿レ之、不レ然時公卿可二縿入一、非參議將、依レ仰縿入之例有二所見一、况於二公卿一哉、

〔世俗淺深秘抄〕

〈下〉

p.0697 朝覲行幸、若〈ハ〉雖レ不レ然、院亭有二行幸一時、於二中門一下御、是例也、其時車寄妻戸必不レ開レ之也、急閉レ之故實也、
朝覲行幸、若諸事於二寢殿一被レ行事、公卿候二御前座一時、簀子〈ニ〉居餘公卿、透渡殿〈ニ〉居也、而近代聊依二御座下一不レ著、甚不レ知二案内一事也、透渡殿座二行也、仍雖二人數多一無レ餘也、康和〈◯堀河〉御賀之時、於二鳥羽南殿一、諸卿

〔朝覲行幸圖〕

〈年中行事繪卷所載〉

p.0698 【圖】

〔朝覲行幸圖〕

〈年中行事繪巻所載〉

p.0699 【圖】

p.0700 著座儀如レ此、其後年々朝覲行幸、凡不レ可二勝計一、皆以著之也、

〔世俗淺深秘抄〕

〈上〉

p.0700 上皇朝覲行幸之時、或持レ笏或不レ持、先例不レ同、只臨時可レ計事也、殊存晴時可レ持者也、朝覲行幸之時、於二院門前一、神祇官獻二大麻一事不レ可レ然、中古以來毎度獻レ之、然而不レ可レ獻事也、具見二延久聖主〈◯後三條〉御記一、

〔神祇官年中行事〕

p.0700 朝覲行幸
大殿祭、中臣忌部勤之、　大麻

〔夕拜備急至要抄〕

〈上正月〉

p.0700 朝覲行幸〈雖レ載二年中分配一、必非二毎年儀一、〉
日次〈正月二日〉　公卿　劒璽内侍　左右大將　次將將監　少納言〈鈴奏供奉料〉　外衞〈督佐尉〉　貫首　職事御輿　東豎子二人　反閇陰陽師〈目録〉　腰輿　御後侍臣　威儀儲二御馬一〈左馬寮〉　關白參　官外記大刀契　前後陣供奉諸司〈左右京職兵士隼人兵士〉　神祇官大麻　雅樂寮立樂　筵道布單　御靴〈御拜料〉　御草鞋　御笏〈御拜料〉　出納小舍人
上　卿　明年正月二日、爲二朝覲一可レ有レ行二幸院一、可下令二供奉一給上者、依二天氣一言上如レ件、
次　將　明年正月二日、爲二朝覲一可レ有レ行二幸院一、可下令レ供二奉本陣一給上者、依二天氣一執達如レ件、
少納言　明年正月二日、爲二朝覲一可レ有レ行二幸院一、可下令二供奉一給上者、依二天氣一執達如レ件、
官外記　明年正月二日、可レ有二朝覲行幸一、任レ例可レ被二催沙汰一、下知状如レ件、

〔飾抄〕

〈上〉

p.0700 赤色
太上皇著御之、保元四、朝覲、著二御赤色御袍一、　長寛元、朝覲、今年不レ著二御赤色一、著二御橡一云々、今案先院脱屣之初、神社御幸、朝覲等、著二御赤色一、

〔世俗淺深秘抄〕

〈下〉

p.0700 上皇朝覲行幸時者、著二青色袍一、是殊刷時事也、其時六位之青色袍不レ著、路頭者無レ妨、

〔眞俗交談記〕

p.0700 朝覲行幸之時、御引出物、用二和琴一張一給事、自二何御時一始哉、資實云、延喜二年、醍醐天皇仁

p.0701 和寺行幸時、法皇〈◯宇多〉御對面後、茶二盞有二御勸一、和琴一張、爲二御引出物一令レ進之給、歸幸後、彼和琴被レ送二進掖主一畢、自レ爾以降、不レ改二其御例一、毎度如レ斯云々、

〔安元御賀記〕

p.0701 安元二年、としのついでひのえさる、彌生のはじめの四日、〈◯中略〉今年太上法皇〈◯後白河〉いそぢに滿たまふによりて、我きみ〈◯高倉〉の御賀を奉らせ給ふなりけり、其日の曉、法住寺の南どのに行幸あり、百のつかさども參り隨へる事常のごとく、院の御所、一町に及ぶ程に、さきの聲を停む、みこしを西のよつあしにかきたつ、〈◯下略〉

歳首朝覲

〔續日本後紀〕

〈三仁明〉

p.0701 承和元年正月癸丑、〈◯二日〉天皇朝二覲後太上天皇〈◯天皇御叔父淳和〉於淳和院一、太上天皇逢迎、各於二中庭一拜舞、乃共昇レ殿、賜二群臣酒一、兼奏二音樂一、左右近衞府更奏レ舞、既而太上天皇、以鷹鷂各二聯、嗅レ鳥犬四牙一、獻二于天皇一、天皇欲レ還レ宮、降レ自レ殿、太上天皇相送到二南屏下一也、　乙卯、〈◯四日〉天皇朝二謁先太上天皇〈◯父帝嵯峨〉及太皇太后〈◯母后嘉智子〉於冷泉院一、是日先太上天皇御二淳和院一、以二相賀一也、〈◯原本有二脱字一、據二類聚國史一補、〉

〔續日本後紀〕

〈四仁明〉

p.0701 承和二年正月己酉、〈◯三日〉天皇謁二覲先太上天皇〈◯嵯峨〉及太皇太后〈◯嘉智子〉於嵯峨院一、

〔續日本後紀〕

〈十一仁明〉

p.0701 承和九年正月戊戌、〈◯三日〉天皇朝二覲太上天皇〈◯嵯峨〉及太皇太后宮〈◯嘉智子〉於嵯峨院一、于時雅樂寮奏二音樂一、公卿酔中不レ勝二感興一、各起更舞、是日詔授二從五位下秋篠朝臣康子正五位下、無位山田宿禰近子從五位上一、並太上天皇更衣也、賜二扈從五位已上祿一、日曛歸レ宮、

〔續日本後紀〕

〈二十仁明〉

p.0701 嘉祥三年正月癸未、〈◯四日〉北風切吹、白雪紛々、天皇朝二覲太皇太后〈◯嘉智子〉於冷泉院一、親王以下、飮宴酣樂、賜レ祿有レ差、須臾天皇降レ殿、於二南階下一端レ笏而跪、召二左大臣源常朝臣、右大臣藤原良房朝臣一、勅曰、被二太后命一儞、吾處二深宮之中一、未三甞見二我常御レ輦之儀一、今日事訖、階下登(○○○)レ輿(○)、使(○)レ得(○)二相見(○○)一者朕再三固辭、遂未レ得レ命、於二卿等意一如何、大臣等奏云、禮敬而已、如レ命而可、天皇即登レ殿、至二御簾前一、北面而跪、于時寄二鳳輦於殿階一、天皇下(○○○)レ殿(○)、御(○)レ輦而出(○○○)、左右見者攬レ涙、僉曰、天子之尊、北面跪レ地、孝敬之道、自二天子一達二庶人一、誠哉、

〔大鏡〕

〈八〉

p.0702 まこと〳〵御門の、はヽきさいの御もとに、行幸せさせ給ひて、御こしよする事は、ふかくさ〈◯仁明〉の御時よりありけることヽこそ、それがさきは、おりてのらせ給ひけるを、后宮行幸のありさま見奉らん、たヾよせてたてまつれと奏せさせ給ひければ、そのたびさておはしましけるより、今はよせてのらせ給ふ(○○○○○○○○○○)とぞ、

〔文徳實録〕

〈六〉

p.0702 齊衡元年正月癸丑、〈◯二十八日〉帝覲二於中宮一、〈◯文徳母后順子〉賜二宴侍臣一、祿各有レ差、

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

p.0702 昌泰二年正月三日丁酉、天皇朝二覲太上皇〈◯宇多〉於朱雀院一、以レ入二新年一也、賦二庭中梅花之詩一、

〔小野宮年中行事〕

p.0702 正月三日行幸事
醍醐御日記曰、延喜三年正月三日、此日奉二謁仁和寺一、〈◯宇多〉例三日供二鳳輦一、而用(○)二葱花輦(○○○)一、失例也(○○○)、

〔西宮記〕

〈臨時五〉

p.0702 被物
延喜三、正、三、天皇幸二仁和寺一、〈◯宇多〉遊宴之間、右大臣〈◯源光〉上二御盃一、今上〈◯醍醐〉起レ座拜舞、上皇〈◯宇多〉脱二單衣一賜二今上一、今上拜舞退出、有レ仰令二暫侍一、上皇脱二横被一、令三式部卿親王〈◯敦實〉給二右大臣一、大臣廂中拜舞、〈大臣被二固辭一云云、〉

〔扶桑略記〕

〈二十三醍醐〉

p.0702 延喜七年丁卯正月三日庚辰、午二刻行二幸仁和寺一、奉レ拜二法皇一〈◯宇多〉如レ例、法皇召二式部卿親王左大臣一令レ侍、仰二親王大臣等一曰、還御時可二寂寥一、宜二圍碁一、將懸物有二好馬一、則召二碁局一、式部卿敦實親王與二左大臣時平朝臣一碁、其間御厩別當春野、牽二鹿毛御馬一立二庭中一、一局終左大臣勝、又初レ局間日漸暮、則退二出息所一欲二罷出一、法皇使二律師觀賢召一、則以參入、律師如無、中納言源朝臣〈◯貞恒〉各取二一捧物一、法皇自持二和琴一仰曰、此圓城寺所レ生木也、此寺自二幼少時一御レ之、見二來此物一雖レ未レ好、以爲猶勝二他所物一、則召二左大臣一令レ持二授之一、則受彈兩三聲、左大臣曰、此御馬宜レ給二左馬寮一、則定方朝臣代二春野一、牽給二馬寮一、又給二大臣等御酒一、一巡後、起座拜舞退出、御輦還レ宮、昨日仲平朝臣奏曰、仁和寺行幸時、先々諸衞中少將佐等著二褐衣一、

p.0703 去年圓堂院行幸時著二當色一、此時有可レ著二當色一、不レ可レ著レ褐、仰曰、令レ著二當色例服一、〈已上御記◯又見二河海抄一〉

〔日本紀略〕

〈三村上〉

p.0703 天暦元年正月四日庚寅、天皇幸二朱雀院一、拜二謁太后一、〈◯母后穩子〉次謁二太上天皇一、〈◯朱雀、帝兄、〉

〔榮花物語〕

〈三様々の悦〉

p.0703 永延二年になりぬれば、正月三日、ゐん〈◯圓融〉にぎやうかう〈◯一條〉ありて、みや〈◯母后藤原詮子〉もおはしませば、いとヾしうものヽぎしきありさままさりて、心ことにめでたし、みかどの御ありさま、いみじううつくしげにおはしますを、ゐんいとかひあり、えもいはずみたてまつらせ給、御ふえをぞ御こヽろにいれさせ給へれば(○○○○○○○○○○○○○○○○○○)、ふかせたてまつらせ給て(○○○○○○○○○○○)、いみじうもてけうぜさせ給、ゐんの御かたには、みかどの御おくり物や、みやのおほんおくりものやなど、さま〴〵にせさせ給へり、かんだちべてんじやう人の御祿など、すべてめもあやにおもしろくせさせ給へり、おほんめのとのないしのすけたちや、なべての命婦藏人、みやの御かたの女ばう、すべてしものかずにもあらぬ衞士仕丁まで、みなしなじな物給はせたり、又院司かんだちべや、さべき人々よろこびせさせ給へり、

〔百練抄〕

〈四一條〉

p.0703 正暦元年正月十一日戊子、幸二圓融寺一、朝二覲法皇一、〈◯圓融〉主上令(○)レ吹(○)二御笛(○○)一給(○)、〈◯又見二日本紀略一〉

〔續古事談〕

〈一王道后宮〉

p.0703 一條院圓融寺〈◯圓融〉ヘ御幸アリ、〈◯中略〉御遊ノ時、主上御笛吹キ給フ、其音メデタクタヘナリケレバ、院〈◯圓融〉感ジテ、御笛ノ師左衞門督高遠朝臣ヲ召テ、三位ヲ免サレケレバ、高遠拜舞シテ上達部ノ座ニ加ハリツキケリ、
◯按ズルニ、本文年月ヲ掲ゲザレドモ、公卿補任正暦元年ノ下ニ、從三位藤高遠、正月十一日、行二幸圓融院一日トアレバ、上文百練抄ト同時ナルヲ知ルベシ、

〔日本紀略〕

〈十一條〉

p.0703 長徳元年正月二日己酉、行二幸東三條院一、〈◯母后藤原詮子〉爲二朝覲一也、

〔小右記〕

p.0703 正暦六年〈◯長徳元年〉正月二日己酉、巳時許參内、今日行幸也、〈◯中略〉既及二未一點一、件刻遂有二行幸一、〈出二建禮陽明等門一如二去年一〉警蹕鈴奏等如レ例、右大臣、〈◯藤原道兼〉内大臣、〈◯藤原伊周〉以下扈從、左大臣〈◯源重信〉追二參於院一、〈乘車◯中略〉三

p.0704 位輔正扈從、鳳輦欲レ入二西門一之間、主上以二藏人頭齊信朝臣一先被レ啓也、復命之後入二鳳輦一、於二中門外一下給也、於二御簾中一有二拜覲禮一、外人不二敢見一、院被レ供二御膳一、大納言道頼爲二陪膳一、侍從益供、不レ召二諸卿於御前一、黄昏賜二諸卿以下祿一有レ差、秉燭還レ宮、

〔續世繼〕

〈一子日〉

p.0704 萬壽四年正月には、上東門院〈◯彰子〉にとしのはじめのみゆき〈◯後一條〉ありて、朝覲の御はいせさせたまひき、つねのところよりも、御すまひありさまいとはえ〴〵しく、からゑなどのやうに、山のいろ水のみどり、こだちたていしなどいとおもしろきに、くらゐにしたがへる色々の衣の袖、近衞司のひらやなぐひひらをなどめもあやなるに、きぬのいろまじはれるうちより、からのまひ、こまの舞人、左右かた〳〵袖ふるほどなど、所にはえておもしろしなども、ことばもおよばずなん侍りける、

〔左經記〕

p.0704 長元七年十二月廿一日丁丑、入レ夜參内、〈◯中略〉頭權辨語云、正月二日、可レ有二上東門院〈◯母后彰子〉行幸一〈◯後一條〉也、年來公卿以下饗、本院被レ儲云々、而自二明年一准二故東三條院〈◯詮子〉例一、永可レ令三諸司調二備件饗一之由、有二宣旨一、〈公卿饗内藏寮、殿上人所衆穀倉院、侍從饗厨家、上官饗厨家云々、但當時有二東宮行啓一、仍宮殿上帶刀侍者等饗、從レ院可レ被レ仰二後院一、是依レ非二公事一、内々可レ被レ仰之由有レ議也云々、又祿料絹百疋、院依レ被二申請一、自レ家被レ渡云々、〉

〔日本紀略〕

〈十四後一條〉

p.0704 長元八年正月二日丁亥、天皇行二幸上東門院一、〈◯母后彰子〉

〔續世繼〕

〈一初春〉

p.0704 又正月二日、〈◯長暦二年〉上東門朝院、覲〈◯後朱雀〉のみゆきありて、いづくと申ながら、猶この院のけしきありさまの、山の嵐よろづ世よばふ聲をつたへ、池のみづもちとせのかげをすまして、まちとりたてまつり給き、先帝〈◯後一條〉かくれさせ給へれども、かくうちつヾきておはします、二代の國母と申もやんごとなし、

〔十三代要略〕

〈二白河〉

p.0704 承暦元年正月十一日、行二幸左大臣東三條第一、覲二祖母陽明門院一、〈◯後朱雀后禎子〉

〔中右記〕

p.0704 康和四年正月二日戊午、未刻許參内、今日依二朝覲一、有レ行二幸〈◯堀河〉法皇〈◯白河〉御所一、〈◯中略〉抑今夕欲

p.0705 レ有二還御一之處、依レ例御方違、今日依レ爲二吉日一經二一宿一、人々退二下直盧一、　三日己未、鷄鳴之後有二還御一、

〔永昌記〕

p.0705 長治二年正月五日甲戌、行二幸〈◯堀河〉太上皇〈◯白河〉宮一、〈大炊御門第◯中略〉右大臣殿下〈◯藤原忠實〉參御、依レ仰被レ敷二御拜鋪物一、〈元被レ懸二屏風一、其上置二鎭子一、〉差レ笏跪令レ敷レ之給、〈御座繧繝地鋪レ茵、其上有二日色鋪物一、儲二中央間一、〉主上御靴御笏、〈内府頭辨獻レ之〉予更供二筵道一、自二南透廊一及二東妻戸一、主上自二南庇一、至二于御座一、北折先御揖拜舞、先再拜、次置二御笏一、立左右左、臥御左右左、次取レ笏小揖、次立再拜、更東折、皈二御本所一、法皇先御二母屋座一、令レ受二御拜一給、〈御出家以後、未レ出二御簾一、先日拜覲之時、下二庇御簾一、今度依二院宣一、上二庇御簾一、法皇露給也、〉上入御、法皇又歸御、

〔永昌記〕

p.0705 大治元年正月二日、今日朝覲行幸〈◯崇徳〉也、〈皇居土御門、院御所三條、〉未刻出御、攝政〈◯藤原忠通〉御車供奉、〈◯中略〉於二西御門一止二御輿一、衞門門外引レ陣、兵衞門内引レ陣、公卿其北相向列立、〈西上南面〉神祇官進二御麻一、按察大納言奏二御旨於上皇一、〈◯鳥羽〉左右亂聲、御輿税二中門許一、諸司供二筵道一、宰相中將宗輔、師時、取二御劒璽一、主上入二御東對御休所一、諸卿著座、頃之法皇〈◯白河〉出二御御座一、〈繧繝疊上敷二東京錦茵一〉先レ是兼殿上五位二人、經定長輔、上レ簾撤二御座一、召二内大臣一、取二草座三會筥一候二南簀子一、次有二御氣色一、主上渡御、〈敷二筵道一取レ笏令レ着レ靴給、〉御舞踏如レ例、次歸御、法皇又入御、新院〈◯鳥羽〉又出二御御座一、幼主御拜舞、又同前入御了、各御座定、本院御二西簾中一、主上御二中央間簾外一、〈此間以東垂二母屋上庇御簾一〉其東第二間敷レ茵、爲二新院御座一、〈赤色御袍束帶〉其南簀子并渡殿、敷二圓座一爲二公卿座一、〈攝政并右大臣（藤原家忠）以下候之、予在二末座一、〉頭辨召二諸卿一、兼又引レ陣、女房出二彩袖一、前庭立二樂屋一、其西庭立二大皷鉦皷一、人々座定、召二近衞將二人一、〈成通實衡爲二左右樂行事一、各向二樂屋左右一坐也、〉左光則、右忠方、各振桙、又相比振レ之、左奏二萬歳樂、春鶯囀、泰平樂、散手、龍王、右地久、新鳥蘇、狛桙、新靺鞨、貴徳、納蘇利等一、地久之間、居二公卿衝重一、〈兼殿上人經定、長輔二人役之、勸盃頭中將、〉春鶯囀初供二御膳一、陪膳民部卿、起座於二便所一解レ劒指レ笏、取二打敷一南面敷レ之、參議宗輔、非參議經忠、參議師時、爲隆、伊通等役レ之〈各拔レ笏還、新院御座不二敬屈一、只正レ笏、〉復座、次供二新院御膳一、陪膳別當歸、又解二弓箭劒一、不レ取二老懸一差レ笏、〈先年取二老懸一〉兼二殿上一四位等役レ之、舞了有二御引出物一、〈御馬二疋、近將引レ之、〉次公卿祿、各退去侍臣取レ之、次奉謁有二勸賞一、頭辨宣下、右大臣、從四位〈新院分〉清隆、正五下〈本院分〉爲重、從五上家成、〈女院分、三院御分歟、〉被レ仰二内記一、入レ夜還御、鈴奏名謁如レ恒、

p.0706 ◯按ズルニ、大治元年ニハ、崇徳天皇、御曾祖父白河法皇及御父鳥羽上皇ニ、朝覲アリシナリ、

〔中右記〕

p.0706 大治二年正月三日癸巳、依レ例有レ行二幸三院(○○)〈◯白河、鳥羽、及鳥羽后待賢門院、〉御所(○○)三條東洞院第一、〈件御所新造之後、未レ有二行幸一、今日初有二臨幸一、未明三院先從二西殿一遷御也、◯中略〉今夕三院行幸以後、還二御西面〈◯一本面字無〉御所一、
裏書　院行幸、已滿二四十年一也、始レ自二寛治二年一至二今年一、四十一年、堀河院、新院、〈◯鳥羽〉當今〈◯崇徳〉三代之間、法王令レ逢二此臨幸一給、漢家日域未レ有二如レ此之例一、法王〈◯白河〉保二仙算一、天下仰二聖化一耳、
◯按ズルニ、此文ニ據レバ、寛治二年以降四十年間ハ、年毎ニ、朝覲行幸アリシガ如シ、然レドモ下條ニ掲グル中右記大治五年九月二日ノ條ヲ參看スルニ、其間三タビ停止アリシナリ、姑ク附記シテ參考ニ供ス、

〔中右記〕

p.0706 長承四年〈◯保延元年〉正月四日戊寅、滅日、依二朝覲一有レ行二幸〈◯崇徳〉院一〈◯鳥羽〉皇居二條東洞院也、院御所二條萬里小路、近々間歩行幸(○○○)也、

〔長秋記〕

p.0706 保延二年正月五日癸酉、行二幸〈◯崇徳〉院一、〈二條殿◯鳥羽〉依二皇居近一被レ用二歩儀一、仍供奉諸司無二鞍馬煩一、〈◯又見二中右記、台記一、〉

〔中右記〕

p.0706 保延三年正月四日、院〈◯鳥羽〉行幸〈◯崇徳〉近々之間歩行幸也、〈◯又見二十三代要略、台記一、〉

〔本朝世紀〕

p.0706 久安四年正月三日壬戌、今日可レ有レ行二幸〈◯近衞〉一院〈◯鳥羽〉御所一、爲二朝覲一也、而無(○)レ音(○)停止(○○)也、是所疑者、民部卿藤顯頼卿、煩二癰疽之病一萬死也、仍法皇殊勞二叡情一、不レ可レ聞二食音樂一之故歟、

〔兵範記〕

p.0706 保元三年正月十日辛未、天皇〈◯後白河〉爲二朝覲一、行二幸美福門院〈◯鳥羽后得子〉御在所、白川押小路殿一、殿下〈◯藤原忠通〉唐御車前駈廿人、〈◯中略〉右大臣殿〈◯藤原基實〉御裝束如レ常、〈◯中略〉前陣左右京職以下供奉、諸司諸衞併祗候、少納言重雅副候二鈴列一、公卿參議右兵衞督光頼、新中納言公通、伊實、大納言按察使重通、内大臣、〈左大將◯藤原公教〉御綱中納言中將、參議中將實長、四位五位次將、次五位六位藏人、四位殿上人以下、次後陣諸司、次關白殿、〈◯中略〉御在所儀可二尋知一之、

〔顯廣王記〕

p.0707 仁安二年正月廿二日辛酉、今日可レ有二行幸一、〈◯六條〉而丑時以後天氣陰雨雪下、終日不レ晴、仍行幸延引(○○○○○)、來廿八日云々、〈◯又見二愚昧記一〉

〔玉海〕

p.0707 承安五年〈◯安元元年〉正月四日丙戌、此日朝覲行幸也、〈◯中略〉主上(○○)〈◯高倉〉取(○)レ笛(○)給、〈◯中略〉抑主上令レ吹二御笛一給事近古例、寛治三年正月十一日、堀河院〈御年十一〉始有二御笛事一、政長朝臣爲二御師匠一、仍其息有賢被レ免二昇殿一、〈歳十二〉

〔百練抄〕

〈八高倉〉

p.0707 安元元年正月四日、朝二覲太上法皇一〈法住寺殿◯後白河〉有二御遊一、主上令(○)レ吹(○)二御笛(○○)一給(○)、其聲寥亮、御笛師權大納言實國卿叙二正二位一、

〔三長記〕

p.0707 建仁元年正月廿三日甲戌、今日天子〈◯土御門〉臨二幸于上皇〈◯後鳥羽〉御所一、〈二條殿〉蓋朝覲之禮也、自二去廿日一始二御裝束儀一、寢殿南東二面上二庇并母屋御簾一、敷二弘筵差筵等一、西北二方覆二懸翠簾一、立二亘屏風一、母屋懸二廻壁代一、母屋供二上皇御座一、南庇供二主上御座一、〈敷二龍鬢一如レ常〉以西中隔、以二西二箇間一爲二七條院〈◯後鳥羽母后殖子〉御所一、垂二庇御簾一、西第一間出二彩袖一、〈薄萌黄紅單梅表著蒲萄染唐衣〉同二間出二几帳帷一、以二東對一爲二上皇御所一、諸司奉二仕御裝束一、以二西二棟廊一、爲二東宮〈◯順徳〉御所一、以二西廊北三箇間一、爲二一品宮御所一、北第一間出二几帳帷一、同出二二三間於彩袖一、〈欵冬白青單柳表著蒲萄染唐衣〉東中門廊東對、南西弘庇、同透廊、寢殿東南西簀子等、皆悉敷二滿弘筵一、殿上上敷西中障子敷二弘筵一、二行敷二高麗疊一居二机饗一、爲二公卿座一、西廊東中門南腋座、〈以二件屋一爲二殿下御休幕一〉西池岸屋皆覆二懸翠簾一垂之、車宿前東西行、西廊前南北行引レ幔、池橋以南、敷二假板敷一立二樂屋幄一、幄前立二大皷鉦皷等一、前庭作二梅樹一立レ之、植二小松一令レ栖二仙鶴一、隨身所儲二上官座一、自餘所々委不レ能レ記、

〔皇帝紀抄〕

〈土御門〉

p.0707 建仁元年正月廿三日、平長茂、參二上皇御所一、又亂二入京守護人左衞門尉朝政宿所一、殺二害郞從等一、今日朝覲行幸、未レ還レ宮之間也、院中殊騷動(○○○○○)、〈◯又見二百練抄、帝王編年記、一代要記、六代勝事記一、〉

〔百練抄〕

〈十二順徳〉

p.0707 承久元年正月十五日壬午、今夜行二幸上皇〈◯後鳥羽〉御在所高陽院一、頗被(○)レ擬(○)二朝覲之禮(○○○○)一歟(○)、

〔百練抄〕

〈十二順徳〉

p.0707 承久三年正月十七日壬寅、辰刻天皇行二幸上皇〈◯後鳥羽〉御在所一、〈高陽院〉歩儀也(○○○)、雖レ非二朝覲之

p.0708 禮一、有二此事一、大納言良平卿以下供奉之、入レ夜參宮、

〔吾妻鏡〕

〈二十八〉

p.0708 寛喜四年〈◯貞永元年〉正月廿三日甲辰、去十二日、朝覲行幸、〈◯後堀河〉無爲被レ遂之由、自二京都一被レ申レ之、自二閑院一幸二持明院一〈◯後高倉〉云々、

〔帝王編年記〕

〈二十七後伏見〉

p.0708 正安二年正月十一日、天皇爲二朝覲一、行二幸新院〈◯伏見〉御在所富小路殿一、〈法皇（後深草）御同宿◯又見二一代要記一、〉

〔増鏡〕

〈十三秋のみ山〉

p.0708 あくる春〈元亨二〉正月三日、朝覲の行幸〈◯後醍醐〉あり、法皇〈◯後宇多〉は御おとうとの式部卿のみこの御家、大炊御門京極〈常磬井殿〉といふにぞおはします、内裏は二條萬里小路なれば、陣のうちにて、大臣以下かちよりつかうまつらる、關白久我太政大臣、〈◯源道經〉左大臣、〈◯藤原實泰〉右大將、〈◯藤原兼季〉左大將〈冬教〉中宮大夫實衡、中納言には、具親、公敏、爲藤、顯實、經定、宰相には、實任、冬定、公明、光忠、中將には、公泰、資朝、殿上人は、頭中將爲定、修理大夫冬方をはじめてのこるはすくなし、此院は池のすまひ、山の木だちもとよりよしあるさまなるに、時ならぬ花の木ずゑをさへつくりそへられたれば、春のさかりにかはらず、さきこぼれたるに、雪さへいみじくふりてのこる常磐木もなし、洲崎にたてる鶴のけしきも、千代をこめたる霞の洞は、まことに仙の宮もかくやと見えたり、京極おもての棟門に、御輿をおさへて、院司ことのよしをそうす、亂聲のヽち中門に御輿をよす、中門の下よりいづるやり水に、ちひさくわたされたるそりはしの左右に兩大將ひざまづく、劒璽は權亮宰相中將公泰つとめられしにや、關白公卿の妻戸の御簾をもたげて入たてまつらせ給、とばかりありて、寢殿の母屋の御簾みなあげわたして、法皇いでさせ給へり、香染の御衣、おなじ色の御袈裟なり、御袈裟の箱御そばにおかる、内のうへ〈◯後醍醐〉公卿の座より高欄をへ給ふ、御ともに關白さぶらひ給、階の間より出給て、廂におましたてまつりたれば、御拜したまふ程、西東の中門の廊に、上達部おほくうちかさなりて見やりたてまつる中に、内の御めのとの吉田の前大納言定房、ま

p.0709 みいたうしぐれたるぞあはれにみゆる、そのかみの事など思ひいづるに、めでたき悦の涙ならむかし、御拜をはりぬれば、又もとの道をへたまひて公卿座にいらせ給ぬ、法皇も内に入たまひて、しばしありて、左右の樂屋の調子とヾのほりてのち、又御門いらせ給、法皇もおなじまのうちに、御しとねばかりにておはします、すゑのひさしに内よりまゐれる女房どもさふらふ、〈◯中略〉上達部座に著て後、御臺まゐる、やくそうは、公泰宰相中將、陪膳右大將、〈兼季〉その程舞人ひざまづき、地下の舞はめなれたる事なれど、をりからにやけふはことにおもヽちあしぶみもめでたくみゆ、〈◯中略〉そのヽち御まへの御あそびはじまる、頭大夫冬賢御箱のふたに御笛入てもちてまゐる、關白とりて御前にまゐらせ給、右大將も笛、中宮大夫琵琶、大宮大納言笙、春宮大夫こと、右宰相中將は和琴、光忠宰相篳篥、兼尊も吹しにや、柏子左大臣、すゑ、冬みつの宰相、ふけゆくまヽに、うへの御笛のすみのぼりていみじくさえたり、左のおとヾの安名尊、伊勢の海かぎりめでたくきこゆ、ことヾもはてぬれば、御おくり物まゐる、錦の袋に入たる御ふえ、箱の蓋にすゑらる、左大臣とりつぎて關白にたてまつる、御前に御らんぜさせて、冬方をめして給はす、次に唐の赤地の錦の袋に、御琵琶入てまゐる、そのヽち御むま、殿上人くちをとりて御まへに引出たり、ほの〴〵とあくるほどにぞ歸らせ給ぬる、

〔宣順卿記〕

p.0709 承應三年正月二日、今日朝二覲行幸〈◯後光明〉本院、〈（後水尾）女中密々沙汰〉女院一、〈◯母后壬生院繼子〉還御之後、本院女院禁裏へ御幸、

母后同輿

〔本朝世紀〕

p.0709 康治二年正月三日辛卯、天皇〈◯近衞〉臨二幸法皇〈◯鳥羽〉御在所一、〈小六條殿〉皇太后宮(○○○○)〈◯得子〉同輿(○○)、太上天皇、〈◯崇徳〉皇后宮〈◯崇徳后聖子〉并暲子内親王、同御二此所一、又攝政〈◯藤原忠通〉室家同被二參候一、中門廊(○○○)施(○)二翠簾(○○)一、是(○)依(○)二皇后同輿(○○○○)一也(○)、設二樂懸一奏二妙舞一、又載二伶倫於龍舟一、奏二絃歌於鳳扆一、入レ夜還レ宮、有二勸賞事一、〈◯又見二台記一〉

〔榮花物語〕

〈十二玉の村菊〉

p.0709 長和五年、〈◯中略〉御禊になりぬれば、いみじう常にもわかず、〈◯中略〉御門〈◯後一條〉童

p.0710 におはしませば、大宮〈◯一條后藤原彰子〉御輿にたてまつりたれば、其ほどまねびやらんかたなくめでたし、

〔長秋記〕

p.0710 天治元年正月五日、辰刻參内、早出二御南殿一云々、今度始(○)無(○)二同輿儀(○○○)一云々、〈◯又見二十三代要略一〉

〔源平盛衰記〕

〈十六〉

p.0710 遷都附將軍塚附司天臺事
治承四年五月廿九日ニハ、都遷アルベキ由有二其沙汰一、來月三日、福原ヘ行幸〈◯安徳〉ト被二定仰下一ケリ、〈◯中略〉兼テハ六月三日ト有二披露一シニ、俄ニ二日ニ被二引上一ケル間、〈◯中略〉御伴ノ上下、イトヾ周章騷、取物モ不二取敢一、帝王ノ稚ク御坐スニハ、后コソ同輿ニハ召ニ、是ハ御乳母ノ平大納言時忠卿ノ北方、帥ノ内侍ト申ゾ被レ參ケル、先例ナキ事也ト人欺キ申ケリ、
◯按ズルニ、此等ノ文ニ據レバ、天皇御幼冲ナレバ、必ズ母后御同輿アル例ナリシコト知ラレタリ、

〔台記〕

p.0710 康治三年〈◯天養元年〉正月五日丁巳、有二朝覲行幸一、〈◯近衞〉巳一刻參内、經二敷政門一、先參二太后〈◯母后得子〉在處一、即參二朝餉一、小時清隆卿奉二仕御總角一、此間攝政〈◯藤原忠通〉參上、被レ命云、向レ陣可レ有二召仰一、即就二左仗端座一、有二召仰事一、午斜行幸、出二御西門一、入二御法皇〈◯鳥羽〉御所〈白河押小路末〉東門一、于時頭辨來傳二攝政御命於大納言一〈伊通〉曰、雖二扶レ疾僅參入一、難レ參二門下一、早可レ被レ申二事由一、豫〈◯藤原頼長〉云、執政不レ候者、依二藏人頭氣色一申レ之、汝早可レ參二門下一、頭辨即參二門下一示二氣色一、新大納言參上奏レ之、歸來示二可レ許由一、即御輿舁二居中門一、帝后共入御了、卿相著二殿上一、小時頭中將來、傳二法皇之召一、即參上取二三衣筥一、御拜間儀如二去年一、但不レ奉レ拜二皇后一、又不レ垂二御簾一、御拜間天皇無二一失一、又進退有レ度如二成人一、見者感歎、

〔顯廣王記〕

p.0710 仁安二年正月廿八日丁卯、朝二覲行幸〈◯六條〉法住寺殿一、〈（後白河）攝政騎馬、諸卿皆參、〉中宮(○○)〈◯母后育子〉御同輿(○○○)、蒙二勸賞一公卿以下廿五人、指二行幸御儲一之間、有二條々失禮一、別當隆季卿不レ知二案内一之故也、御前物事大失錯也、以外云々、可レ爲二一上勤一之由載二定文一、是不レ知二案内一也、又雖レ注不レ觸二申此由於左大臣一也、殿下令レ存二先例一、

p.0711 雖レ有二御用意一、是又不レ申、如レ此之間、行幸已成、後院司木工頭盛隆、進觸二隆季卿一之處、稱下爲二一上勤一之由上、仍尋二申左府一之處、左府被レ陳云、此由更不二存觸一、隨二一上一爲レ勤之事更無二指文一、何况乎不レ被レ觸乎、爰失二東西一、先觸二邦綱卿一、陳二無用意一之處、猶然其後術盡、急觸二右衞門督一、借二東宮行啓之時御前物具一、其雖レ備二御儲一、天氣全不二寄付給一、是有レ恐事歟、又行幸成之後、爲二御拜一令二渡御一之處、隆季卿參向、申下不レ可二御拜候一由上、仍還御了、其後天氣不快、遂無二御拜一、不下令レ取二御前物一給上、是旁有レ恐耳、

〔愚昧記〕

p.0711 仁安二年正月廿八日、今日朝覲行幸、仍午刻參内、頃之出御、事々如レ常、未終著二御上皇〈◯後白河〉御在所一、按察使奏レ之、了入御、其儀又如レ常、主上〈◯六條〉下御之後中宮〈◯母后育子〉下御云々、攝政〈◯藤原基房〉并右大臣〈◯藤原兼實〉令二沙汰一之歟、其後改二御裝束一、〈無二御拜一云々〉上皇出御、近仗引陣、次主上出御之間、事外有二御難澁一、遂以入二御簾中一、〈◯又見二玉海一〉

〔兵範記〕

p.0711 仁安三年十月九日丁酉、今夜中宮〈◯二條后藤原育子〉御遁世、御年廿三、去永萬年中、二條院崩御以後、唯有二此御願一、先帝〈◯六條〉在位、幼主同輿之間(○○○○○○)、于今遲々、既當二此時一、令レ遂二素懷一給云々、

〔中右記〕

p.0711 天仁元年十二月十九日甲午、今日初有レ行二幸〈◯鳥羽〉法皇〈◯白河〉御所一、〈六條殿〉午時許參内、〈◯中略〉寄二鳳輦於南階一、〈初無二同輿人一、上二御輿帷一、◯鳥羽時六歳〉

〔百練抄〕

〈十五後嵯峨〉

p.0711 寛元四年二月十三日癸酉、御讓位〈◯後嵯峨〉已後、始行二幸〈◯後深草〉閑院一、〈◯中略〉中宮〈◯母后姞子〉御同輿也、〈◯後深草時四歳〉

踐祚即位後朝覲始

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

p.0711 延長八年九月廿六日丙戌、新皇〈◯朱雀〉拜二覲先帝〈◯醍醐〉御所一、

〔貞信公記〕

p.0711 天慶九年七月九日、〈◯中略〉今上〈◯村上〉謁二太上皇一、〈◯朱雀〉臣弘徽殿談之後供二御肴酒一、二三巡後、今上捧二玉盃一勧二上皇一、上皇示下今上可二先飮一之状上數度、遂上皇受飮、其後上皇執レ盃勧二今上一、今上恭揖、上皇先飮授二今上一、今上飮後拜二上皇一、避レ座受レ禮、次大内獻入本琴笋和琴御馬四疋、賜二祿臣下一、又院同賜、臨二還御時一、御劒玉帶獻二今上一、　八月十七日、行二幸朱雀院一、覲二太上皇太后〈◯穩子〉本院一、親王以下、次侍從等賜レ祿、

p.0712 有二音樂一、臨二還御一被レ獻二鷹馬犬等一、馬四疋鷹聯、犬二疋、〈◯又見二日本紀略、御遊抄一、〉
◯按ズルニ、村上天皇ハ、此年四月廿日踐祚シ、廿八日即位シ給ヘリ、

〔日本紀略〕

〈九一條〉

p.0712 寛和二年七月廿二日戊子、天皇即二位於大極殿一、　十二月廿日甲寅、行二幸圓融院一、〈◯圓融〉有二御對面一、僧俗官勸賞、

〔百練抄〕

〈四後冷泉〉

p.0712 永承五年十月十三日、始行二幸〈◯後冷泉〉東北院一、〈◯後冷泉御祖母彰子〉是踐祚之後未レ見、而仙院年來之間(○○○○○○)有(○)二固辭(○○)一、〈◯又見二扶桑略記一〉

〔扶桑略記〕

〈二十九後三條〉

p.0712 治暦五年〈◯延久元年〉八月十六日庚戌、行二幸閑院一、拜二覲母儀仙院一、〈◯陽明門院禎子〉踐祚之後初拜覲也、

〔中右記〕

p.0712 寛治二年正月十七日、院〈◯白河〉於二大炊殿南庭一、御二覽行幸〈◯堀河〉日舞等一、舞人衣冠、〈左、萬歳樂、蘇合、輪臺、秦王、打毬樂、散手、右、地久、新鳥蘇、林歌、新靺鞨、狛桙、貴徳、〉今日兩侍中從レ事、　十九日丁卯、初〈◯即位後〉有レ行二幸院大炊殿一、今朝雨雪紛々、庭上敷レ粉、依可二延引一否間、時刻推移、未時寄二鳳輦一、鈴契警蹕如レ常、近々之間、行幸被レ用二歩儀一、但諸衞次將闕腋平胡籙靴、隨身狩胡籙如レ例、〈◯中略〉送物横笛、〈付二銀枝一、按察大納言被レ取レ之、〉琵琶一面、〈源大納言被レ取レ之〉御手本二卷、〈有レ臺、内大臣取レ之給、◯又見二十三代要略一〉

〔榮花物語〕

〈四十紫野〉

p.0712 としかへりぬれば、〈◯寛治二年正月〉ゐん〈◯白河〉に行幸〈◯堀河〉あり、めでたくよそほしきぎしきなるに、御びづらゆひておりさせ給へるは、すヾろなる人だになみだとまらず、ましてゐんの御こヽろのうちには、いふかたなくなんおぼしめされける、ゐんの人、との〈◯藤原師實〉の人などかヽいしめでたし、

〔續古事談〕

〈一王道后宮〉

p.0712 堀河院初テ朝覲行幸ニ、御笛フキ給ケルニハ、御笛ノ師政長朝臣息男有賢、殿上ユルサレケリ、
◯按ズルニ、玉海承安五年正月四日朝覲行幸ノ條ニ、抑主上令レ吹二御笛一給事、近古例寛治三年正

p.0713 月十一日、堀河院〈御歳十一〉始有二御笛事一、政長朝臣爲二御師匠一、仍其息有賢被レ免二昇殿一云々ト見エタルハ即チ此時ノ事ナリ、

〔中右記〕

p.0713 天仁元年十二月十九日甲午、今日初有レ行二幸〈◯鳥羽〉法王〈◯白河〉御所一、〈六條殿〉午時許參内、〈◯中略〉未一點御二出南殿一、〈◯中略〉寄二鳳輦於南階一、〈初無二同輿人一、上二御輿帷一、〉公卿次第前行、〈◯中略〉天下上下初奉レ見二龍顏一、

〔兵範記〕

p.0713 仁安三年八月四日癸巳、今日行二幸法住寺御所一、〈◯後白河〉幼主〈◯高倉〉即位以後、上皇〈◯後白河〉皇太后宮〈◯滋子〉初爲二朝覲一也、〈◯中略〉
自二大皇一御手本裹二青地錦一、付二銀松枝一、内大臣〈◯藤原忠雅〉取レ之、自二東方一經二南簀子一、跪二御前一渡レ西、下官請二取之一、給二納殿藏人信廣一、御琵琶入二錦袋一、藤大納言取レ之、同經二御前一、給二藏人左衞門佐一了、
次自二皇太后宮一御笛裹レ錦付二銀枝一、大夫取レ之、同經二御前一、給二藏人少輔兼光一了、
次御馬六疋皆安二平文移鞍一、
左少將修範朝臣　右少將通能朝臣〈著二青朽葉下襲一、若女郞花歟、〉　伊保朝臣　光能朝臣　泰通朝臣　顯信朝臣
　已上帶二胡籙一著二淺沓一
院御隨身左近將曹秦兼頼以下六人取二片綱一、南庭三匝了、引二出西中門一、給二左右馬寮一了、

〔古今著聞集〕

〈八孝行恩愛〉

p.0713 建春門院〈◯平滋子〉は兵部大輔時信が女なり、小辨とて後白河院にさぶらはせ給けり、御寵愛ありて、高倉院をうみ奉らせ給にけり、東宮にたヽせ給て、仁安三年御讓位有けり、御即位の日、女院皇太后宮に立給ひて後、朝覲の行幸有けるに、宮簾中におはしますを、主上〈◯高倉〉拜し參らせ給けるを、むかし肩をならべまゐらせられたりける上臈女房たれとかや、宮の御そばへ參て、此御目出たさをば、いかヾ覺しめすと問參らせられければ、さきの世の事なれば何とも覺えずとぞ仰られける、ゆヽしかりける御こヽろなるべし、

〔百練抄〕

〈八高倉〉

p.0714 嘉應元年四月廿八日、始朝二覲〈◯高倉〉于太上天皇一、〈（後白河）天仁例◯鳥羽〉

〔韓川筆話〕

〈六〉

p.0714 延享四年丁卯五月二日、櫻町天皇より桃園天皇へ御讓位あり、四日初御幸、九日朝覲行幸、いと嚴重に行はれしよし也、朝覲行幸は久しく行はれざりし(○○○○○○○○○)に、いといみじき事なりと、都人の傳てに謹てこれを聞けり、

元服後朝覲始

〔長秋記〕

p.0714 天永四年〈◯永久元年〉正月八日、行幸、去三日頭辨相二尋人々一云、來八日御元服〈◯鳥羽〉後、始可レ有二行幸一、而件日當二御齋會初日一、被レ尋二前例一處、其事不レ詳、爲レ之如何、左右大臣〈◯源俊房、藤原忠實、〉奏申云、御忌月憚有無條、其沙汰候歟、不レ可レ有レ憚之由、人々被レ申了者、相二當御齋會一之條、不レ可レ及二沙汰一候、何事候、〈下官被レ仰云、尚忌月行幸不請事歟、〉内大臣被レ申二此旨一云々、民部卿申云、御齋會以二結願一爲二宗日一者、件日有二行幸一、別遣二上達部一何事候哉、後聞御齋會初日有二行幸一、仍被レ尋二此旨一處、付二近代例一、以二結願一爲二宗日一由被レ申條、頗含レ咲輩在歟、巳刻參内、新藤宰相令二左兵衞陣相語一云、主上已出二御南殿一、自二承明門一可二出御一云々、〈◯中略〉行路自二中門一東行至二東洞院一、其後如レ例、〈◯中略〉良久上皇〈◯白河〉出二御南面母屋中央間一也、主上出レ自二御所一、經二東簀子敷一入レ自二南廂一西向、了京就白袷拜舞、御二著靴一令レ持二御笏一、御拜了還二御本御所一、上皇入御、〈◯中略〉今日有二御送物一、御手本、御和琴云々、

〔中右記〕

p.0714 大治四年正月廿日己亥、依二朝覲一有レ行二幸〈◯崇徳〉三院〈◯白河、鳥羽、鳥羽后待賢門院、〉御所一、〈三條東洞院第也◯中略〉宰相中將二人宗輔師時、雖二輕服日數中一、依レ仰取二御劒璽御筥一不レ忌歟、〈◯中略〉御元服最前行幸(○○○○○○○)、世人不(○○○)二甘心(○○)一歟(○)、〈◯中略〉今日可レ有二御送物一歟、不レ然如何、御元服初行幸也、
◯按ズルニ、崇徳天皇ハ此月ノ朔ニ御元服アリ、是ヨリ先キ未ダ元服シタマハザリシ時ニ朝覲アリシハ、當時以テ違例ナリトシタリ、

〔台記〕

p.0714 久安六年正月廿日戊戌、〈◯中略〉亥刻降雨〈行幸（近衞）還御之後〉人傳法眼靜經、昨日奉レ勅禱レ不二降雨一、〈爲レ遂二行幸一〉今如レ所レ禱、驗力掲焉、〈翌日余賀二其驗一〉午刻自二宿廬一參上、先レ之有二召仰一云々、仍不レ著レ陣、著レ靴不レ待二大將一出御、〈大將參二會門外一〉未刻到二于六條一、法皇〈◯鳥羽〉出御之間、余取二三衣筥一如レ例、〈依(○)二年來例(○○○)一不(○)レ拜(○)二女院(○○)一、今案、御元服日、不レ拜之、今日尤可二拜観一、〉

p.0715 ◯按ズルニ、此文ニ據レバ、御元服後初度ノ朝覲ニハ、母后ヲ拜シ給ハザル例ナルガ如シ、近衞天皇ノ御元服ハ、此月ノ四日ニ在リ、

〔玉海〕

p.0715 嘉應三年〈◯承安元年〉正月十三日戊子、此日御元服之後、〈◯高倉〉初朝覲行幸也、

〔源平盛衰記〕

〈三〉

p.0715 朝覲行幸事
嘉應三年〈◯承安元年〉正月三日、主上〈◯高倉〉御元服有テ、十三日ニ朝覲ノ行幸ト聞エキ、法皇〈◯後白河〉モ、女院〈◯建春門院滋子〉モ、旁御珍ク花ヤカニ待申サセ給ケリ、初冠ノ御姿最嚴ク、翠ノ山ニ月ノ出シガ如ク、籬ノ内ニ梅ノ綻ビタルニ似サセ給ヘリ、アラタマノ年ノ始ノ御事ナレバ、人々モ殊ニ御祝ノ事共申テ悦申給ヘリ、

臨時朝覲

〔類聚國史〕

〈二十八帝王〉

p.0715 大同四年八月癸卯、帝〈◯嵯峨〉朝二于太上皇后一、〈◯平城、后字恐衍、〉右大臣從二位藤原朝臣内麿奉獻、宴飮終日、賜レ物有レ差、

〔類聚國史〕

〈二十八帝王〉

p.0715 天長十年八月癸巳、天皇〈◯仁明〉謁二覲先太上天皇、〈◯嵯峨〉及太皇太后〈◯嘉智子〉於冷泉院一、賜二扈從五位以上祿一有レ差、

〔扶桑略記〕

〈二十三醍醐〉

p.0715 延喜十六年三月十九日癸酉、行二幸亭子院一、拜二謁法皇一、〈◯宇多〉還御時、左衞門督藤原朝臣少僧都如無、各把二著捧物一、附二授殿上侍臣等一、嵯峨天皇御手跡一裹、和琴一面也、〈已上御記〉

〔日本紀略〕

〈十一條〉

p.0715 長保三年閏十二月十六日癸未、天皇行二幸東三條院一、〈◯母后詮子〉還御之後、東三條院御出家、依二御惱危急(○○○○)一也、

〔長秋記〕

p.0715 大治五年九月一日庚子、巳刻著二直衣一參院、良久催二人々一參會、〈◯中略〉關白〈◯藤原忠通〉召二頭辨雅兼朝臣一、被レ奏二人々參由一、仰云、今年朝覲行幸可レ有否由、可レ令二定申一者、下官申云、嵯峨間朝覲行幸希也、寛平〈◯宇多〉間、雖レ非二毎年事一、常有二此事一、寛治二年以後無レ障時、毎年有二此事一者、付二近例一有二行幸一有二何事一矣、又無二行幸一多存二舊例一者、於二今年一雖レ不レ候、不レ可レ難候歟條間、宜レ隨二勅定一、源相公〈◯有仁〉申云、非二興宴事一至孝禮也(○○○○)、尤可レ候

p.0716 者、

〔中右記〕

p.0716 大治五年九月二日、依レ召未時許參院、日者籠居之後、且又依二日次宜一也、〈◯中略〉參二殿上一以二頭辨一被レ仰云、今年可レ有二朝覲行幸一歟、又雖レ可レ有二九月中行幸之定一如何、人々大略一同、或有或止、只可レ有二御定一、源相公、獨一定必可レ候也、朝覲至孝之禮也(○○○○○○○)、無二指故一不レ可レ留者、豫申云、大略如二人々定一、往古院行幸、非二毎年事一、但寛治二年被レ始、後纔三度許被レ止也、或依二大事一止、或雖レ無二別事一被レ止、可レ候二勅定一也、於二行幸定一者、全不レ被レ忌二九月一、先々件定於二此院御方一被レ行之故也、仰云、人々申旨聞食了、有無不二思食得一、重可レ申者、一同申云、有二行幸一何事有哉、仰云、然者可レ被レ問二日次一者、陰陽頭家榮申云、十月一日、行幸定來四日者、

〔十三代要略〕

〈二崇徳〉

p.0716 大治五年十月一日、天皇行二幸太上皇〈◯鳥羽〉御在所一、朝覲也、

〔本朝世紀〕

p.0716 久安五年二月五日戊午、今日於二一院一〈◯鳥羽〉内々有二行幸間沙汰一、攝政〈◯藤原忠通〉故障之間、御拜敷物、誰人可レ敷哉被レ尋二先例一、權辨光頼申云、康和〈◯堀河〉元二兩年、兼被レ敷之由、見二爲房卿記一、今度可レ用二彼例一、又法皇御三衣筥、年來内大臣〈◯藤原頼長〉令レ取之給、而今度故障、白河院御時、當時攝政執二給之一、依レ有二猶子之義一也、被レ尋二先例一、天仁〈◯鳥羽〉元年、朝覲之時、宗通卿執二白河院御三衣筥一、同二年、法皇自令レ具御、是則覺行法親王薨畢後、當時攝政未レ昇二公卿一間也、　十二日乙丑、今夕法皇〈◯鳥羽〉令レ渡二小六條殿一、依二明日朝覲行幸一也、　十三日丙寅、今日朝覲行幸〈◯近衞〉也、〈◯中略〉於二寢殿一有二御拜事一、攝政不レ被レ候之間、御拜敷物兼敷レ之、其敷様頗乖二先例一、爰法皇、忽召二藏人頭左中將經宗朝臣一、令二改置一給、〈白袷左右端不レ推二入御座下一、直展之故也、〉次有二御拜事一、先レ是法皇令レ著二御座一御、〈御手取二三衣一御云々〉事畢主上還二御御所一、法皇入二御御簾中一、〈◯中略〉今日還御秉燭以前也、希代事歟、

〔百練抄〕

〈十三後堀河〉

p.0716 貞應二年五月八日、行二幸一條殿一、〈院御所◯御父後高倉〉御不豫(○○○)有(○)二危急之聞(○○○○)一、

〔帝王編年記〕

〈二十五後深草〉

p.0716 建長二年十月十三日、行二幸太上皇〈◯後嵯峨〉御在所、鳥羽殿南殿一有二朝覲之禮一、

〔辨内侍日記〕

〈下〉

p.0716 十月十三日、〈◯建長二年〉鳥羽殿へてうきむの行幸〈◯後深草〉なり、よひのほどはしぐれもや

p.0717 など思ひ侍しに、あしたことに晴ていとめでたくぞ侍し、鳥羽殿の御所のけいきのおもしろさ、ことわりにもすぎたり、いろ〳〵のもみぢもをりをえたる心ちす、れうとうげきすうかべる、池のみぎはの紅葉などたとへんかたなし、

〔一代要記〕

〈九龜山〉

p.0717 弘長二年壬戌三月廿六日、八幡行幸、同七日、還二御鳥羽殿一、雨降朝覲、雖(○)二雨儀(○○)一晴儀(○○)、

〔増鏡〕

〈十一今日の日蔭〉

p.0717 正應も二年になりぬ、よろづめでたき事どもおほくて、三月廿三日、鳥羽殿へ朝覲の行幸〈◯伏見〉なる、本院〈◯後深草〉はかねてより鳥羽殿におはしまして、池の水草かきはらひ、いみじうみがヽれて、れいのたと〴〵しきからの御舟うかべられて、廿四日に舞樂ありき、廿六日にぞ歸らせ給ける、

〔續後拾遺和歌集〕

〈十賀〉

p.0717 正應二年三月、鳥羽殿に朝覲行幸〈◯伏見〉の時、花添二春色一といふことを講ぜられけるに、　　　一條内大臣〈◯藤原兼忠〉
はなの色を春のひかりと思ひしやけふの御幸のためしなるらん

〔増鏡〕

〈十一今日の日蔭〉

p.0717 乾元元年六月十六日、龜山殿へ行幸〈◯後二條〉あり、法皇〈◯後宇多〉いとめづらしくうつくしと見たてまつらせ給、あか月歸らせ給ぬる後、法皇より内に聞えさせ給、
　したはるヽ名殘にたえず月を見れば雲のうへにぞ影はなりぬる
御かへし、内のうへ、
　君はよし千とせのよはひたもてればあひみむことのかずもしられず

〔園太暦〕

p.0717 康永三年十月廿三日己卯、今日可レ有レ行二幸仙洞一〈◯光嚴〉云々、其間事自二去比一有二沙汰一、粗及二勅問一、其旨趣主上〈◯光明〉已御成人、萬機尤可レ聞事也、而如二評定一未レ及二御聽聞一、先々或行二幸仙洞一、御逗留有二聞食事一歟、今度行幸暫御逗留、如レ此事沙汰可二相一歟、然者雖二朝覲行幸已前一、中門下御、爲二仙洞一之儀、御逗留之間、如レ此沙汰可レ宜歟、將又雖レ爲二御留守儀一、御逗留之間、御同宿之體にて、如二評定一出御可レ宜歟、可二計申一候

p.0718 間、先日勅問候間、所存兩様共不レ可レ有二相違一歟之旨申入了、其子細委見二去十四日記一、其後件例相二尋師右朝臣清澄等一之處、師右請文不分明、清澄注進分明也、仍其趣申入了、抑行幸儀、中門下御可レ宜之由治定、就レ其御輿向方事、常儀中門下御、御輿東面也、西禮之時之御輿、向二内方一有レ便、東禮之時御輿向二外方一似レ無レ便、中門扉外南面可レ案之由、有二上皇仰一之由、先日忠季卿談レ之、此事日來曾不二存知一、仍引二見舊記等一之處、更無二所見一、仍不審、而當代大嘗會御習禮之時、南面之由有二沙汰一、仍一條前關白子細當職之間也、尋申之處、其日依二所勞一不二出仕一、御輿向方東面流例歟、南面事所見不二勘得一云々、此事不審未レ決、今朝以二事次一、尋二申仙洞一之處、今日行幸已前可二參仕一、且可レ被二仰談一云々、秉燭之間參二仙洞一、〈狩衣直衣異體之間、自二同所一參入、〉依レ召參二御前一條々申入了、其次勅定事等有レ之、

〔康富記〕

p.0718 文安五年二月廿八日、是日入レ夜有レ行二幸〈◯後花園〉於仙洞一、伏見殿程近之上爲二俄事一之間、以(○)二非常儀(○○○)一、被(○)レ用(○)二歩儀行幸(○○○○)一者也、〈當時皇居者、一條東洞院南東、伏見殿御所也、嘉吉二年已來爲二皇居一、仙洞者、土御門高倉南面角、三條前右府公光公亭也、嘉吉二年已來、爲二伏見殿御所一、去年十一月、尊號、仙洞（後崇光）是也、國母准后（敷政門院幸子）并式部卿親王皆爲二御同宿一者也、〉是母儀准后様(○○○○○)、自(○)二去年冬(○○○)一初有(○○)二病氣(○○)一、〈噎之由醫師等申レ之〉御長病之上、近日有二御増氣一之由風聞、昨今御危急歟之間、可レ有二臨幸一之條、可レ爲二何様一哉之由、被レ申二合於執柄一、今日執柄有二御參内一、直有二御對面一、委細有二勅問一、令二治定一歟、但執柄御申様、爲二御長病一之間、爲レ被レ拜二御病體一有二臨幸一者、可レ被レ稱二御方違一之條、叶二其理一歟由、非常臨幸者、或近邊火事、或已及二御獲麟一之由有二沙汰一、誠爲二御危急一之時、可レ有二非常名一也、如二今明一者、彼御病體延々儀也、猶以二御方違之儀一、可レ有二臨幸一之條、可レ然之由被レ申レ之、雖一レ然御方違儀者、尚今夕不レ可二事行一、且去應永十三年、通陽門院御病氣危急之時、有レ臨二幸於三條第一、以二此近例一可レ爲二非常之儀一之條、可レ然之由近臣等各被レ申之故歟、遂以二今夜之儀一爲二非常行幸一者也、仍無二召仰、并幸路、留守、内侍所渡御等之御沙汰一云々、御腰輿也、〈駕輿丁廿人計參之、御輿長御輿固等不參云々、◯中略〉仙洞儀、於二中門御車寄一〈東向也〉有二下御一、〈敷二筵道一御輿南向ヘ舁廻之、自レ右有二下御一云々、此下御事、去應永十三年、通陽門院有レ御二坐此御所一、其時如二今夜一、於二中門簀子一、有二下御一之由、故菅相公秀長卿被二記置一候間、益長卿執二此儀一被レ申二沙汰一云々、殿下被レ仰、應永十三年者、通陽門院御一所有二御坐一、當時者、法皇爲二御同宿一、於二中門簀子一、可レ有二下御一條、不二打任一之間、於二中門土庇一有二下御一、敷二筵道於地上一、自二中門廊一可レ有二行幸一之由被〉

p.0719 〈レ申レ之、雖レ然於二地上一、可レ有二下御一之事不レ宜之由、近臣菅相公等被二執申一之、依レ之於二中門東簀子一有二下御一、宰相中將公綱卿役二御劒一、〉主上直令レ幸二准后御寢所一御、有レ御二拜見御病體一云云、李部親王有二御引導一云々、其後於二寢殿南面一、法皇〈◯後崇光〉有二御對面一、主上南面、法皇東面、式部卿親王西面、〈主上御座重高二於餘一云々〉三獻有之、〈御連枝之宮々令レ取二御酌一給、又親王令レ取二御酌一給、人々被二召出一給之、又有二天酌一、被レ下二人々一云々、御陪膳禁裏女房達參給云々、〉及二丑寅刻一有二還幸一、

〔公卿補任〕

〈明正〉

p.0719 寛永十二乙亥年九月十六日、行幸召仰有レ之、〈◯中略〉同日、行二幸仙洞一、〈◯後水尾〉廿日、還御、

〔外記局記録〕

p.0719 寛永十二年九月十六日
　行幸次第
刻限公卿參二著陣座一、大臣在二外方一行二雜事一、先有二召仰事一、其儀職事下二日時勘文一、仰二輦路留守等事一、〈仰詞同二職事〉次大臣召二裝束司辨一、仰二御輿御裝束事一、次公卿起座、此間衞府公卿帶二弓箭一、次天皇〈◯明正〉出二御南殿一、御劒内侍候二御前一、璽内侍候二御後一、立二御帳前一御時候二左右一、次近衞引レ陣、次陰陽師奉二仕反閉一、次左次將渡レ西、御輿長同渡二階下一、次公卿列二立南庭一、〈北上東面〉大將立二階左右一、次闈司奏、次鈴奏、少納言就二版位一奏レ之、次寄二御輿一、卿次將副二御輿一到二階腋一、主殿官人撤二御座覆一、掃部寮敷二筵道一、次内侍開二輦戸一安二御劒一、次天皇乘御、大將稱二警蹕一、〈次將應レ之〉次内侍安二璽筥一閉二輦戸一、次公卿離レ列先行、〈爲レ先二下臈一〉次御輿長舁二降御輿一漸進行、大將仰二御綱一、〈於二月花門外壇上一、召二大舍人一仰レ之、〉路間兩大將行二御輿左右一、〈次將隨レ之、召二次將一、進二行御後一、〉次御輿到二儲御所一、暫招二門下一、大將立二門左右一、神祇官獻二大麻一、此間雅樂寮發二亂聲一、次入御、左右大將於二中門外一、立替進行、〈次將隨レ之〉先レ之公卿入二中門一、列二立南座一、〈北上西面〉御輿寄二南階一、左右大將進レ之、〈如二出御一〉次將立二階下左右一、卿次將同進二立階下一、次内侍開二御輿戸一、取二御劒一候二右方一、次下御、大將稱二警蹕一、〈次將應レ之如二出御一〉次内侍取二璽筥一候二左方一、次舁二退御輿一、次鈴奏、次入御、及二夜陰一有二名謁一、次公卿退出、〈以下應レ之〉

〔外記局記録〕

p.0719 寛永十七年三月十二日、今日朝覲行幸、〈◯今上明正、上皇後水尾、〉被レ行二召仰陣儀一、上卿柳原大納言〈業光卿〉奉行職事日野藏人辨弘資、大外記師生朝臣、左大史忠利、少外記生利、少史亮守、陣官人、大藏省、木

p.0720 工寮、主殿寮等諸司如レ常、

〔執次詰所記〕

〈明正〉

p.0720 寛永十七年三月十二日、行二幸〈◯明正〉于仙洞一、〈◯後水尾〉

〔公卿補任〕

〈後光明〉

p.0720 慶安四辛卯年二月廿五日、朝覲行幸召仰、上卿左大臣、辨雅房、奉行俊廣朝臣、　廿九日、還幸、

〔朝覲行幸部類〕

p.0720 慶安四年二月廿五日、寅刻有二陣儀一、上卿左大臣、〈以下令レ略〉卯刻天皇〈◯後光明〉渡二御南殿一御二坐御帳中倚子一、〈内侍二人持二劒璽一〉關白候二御裾一、内侍二人立二御帳外一、〈御左方持レ劒東向南、御右方持レ璽西向南、〉近衞次將引二陣左右一、關白候二御帳西傍一、次陰陽師奉二仕反閉一、〈幸徳井勤レ之〉天皇立二給御帳前一、次左陣渡レ右、〈右次將之下臈之次、左次將自二上首一著レ之、〉公卿入二宣仁門一、列二立南庭一、〈北上東面有レ揖、次將之列後、先レ是於二陣座後一著レ靴、〉次左右大將引レ陣、立二東西掖一、〈自二櫻橘樹一北、分二立階之程一、〉左右衞門府列二立南庭一、〈東上北面〉次闈司奏、〈今度無レ之歟〉次鈴奏、〈少納言就レ版揖而退〉次左右次將上首二人引二鳳輦一、豫寄二月花門内一、次將二人分二左右一褰二御輿御簾一、而見二御裝束具否一、次寄二南殿簀子一、〈鳥向レ東、兼設二御輿寄於南階上一、〉此間左次將各退立レ南、〈東上北面、寄二御輿於南殿庭一、爲レ令レ開レ路也、〉御輿寄二簀子一、畢左次將如レ先列二右陣一、次右宰相中將揖、而離二公卿列一候二階下一、〈西方〉次左宰相中將揖、而離二公卿列一候二階下一、〈東方揖アル歟〉次右宰相中將自二南階之西堂一上、〈兼取二發階西高欄於一間一、爲下役二劒璽一人之路上、於二階下一脱レ靴、乍レ帶二弓箭一堂上、而殿簀子於二西方高欄、本置レ弓、〉次卷二御輿御簾一、〈以レ紐有レ鎰可二掛結一レ之歟〉次開二輦戸一、〈掛二輦戸於御輿後轅横木西方一也〉次取二御劒一安二御輿一、〈御前方道之東〉次乘御、關白候二御裾一、次左大將稱二警蹕一、右大將從レ之、次右宰相中將役二劒璽一、便徹二御草鞋一、次取レ璽安二御輿一、〈御前方置レ之〉次閉二輦戸一垂二御簾一、次下二御草鞋於東豎子一、次取レ弓下レ殿、於二階下一著レ靴、次行列公卿先二下臈一、〈有二離レ列揖一〉次巡二鳳輦一、次將二行、其次卿次將二人二行、〈餘見二行列次第一〉公卿及次將經二月花門一、自二西四足門一供奉、
　今度無二御綱并奏之儀一、大將不レ仰レ之云々、
　　儲御所儀
入二南四足門一、公卿列二立中門外一、留二御輿於中門外一、左右次將立二御輿腋一、卿次將立二其次一、神祇官獻二大麻一、次關白進立二給御輿傍一、次院司申次、〈供奉公卿第一之大納言〉揖而離レ列向二關白一、次關白向二院司一揖、院司答揖、而入二中門一

p.0721 向二南階一一揖、次出二中門一、向二御輿一一揖、次如レ先列立、次大將入二中門一立二左右、次寄二御輿於中門内一、〈南方兼徹二敷閫一、敷二筵道布單一、〉次右宰相中將開二輦戸一、〈乍レ垂二御簾一開レ之、先レ是脱レ靴、弓左右次將之列中央置レ之、〉掛二輦戸於御後轅一、次持二御劒一、〈取二御劔一時、褰二少御簾一、主上令二取賜一之、以二左右手一持レ之、横下御之間、中門北方、乍レ持二御劔一、跪敬屈、〉次左宰相中將供二御草鞋一、〈役レ璽便供之、先レ是於二次將傍一脱レ靴、置二弓於其所庭上一、〉次褰二御簾一、次下御、關白候二御裾一、〈不レ踏二筵道一、先レ是於二中門外腋一令レ脱レ靴、〉右中辨取二關白裾一、右宰相中將持二御劒於御左方一、〈進二御先一横行、不レ踏二筵道一、〉次左宰相中將取二御輿内璽一候二御右方一、〈進二御跡一越二筵道一不レ踏レ之〉次伶人於二中門外一奏二立樂一、〈長慶子〉自二殿上一經二弘御所西簀子一、行レ北折レ東、自二北二間一令レ入二御休所一給、頭右大辨褰二御簾一、内侍二人分二左右一出向、次授二御劒於内侍一、〈東方〉次入御、〈此間左宰相中將跪敬屈〉次垂二御簾一、右宰相中將撤二御草鞋一、次左宰相中將授二璽於内侍一、〈褰二少御簾一授之、次退去右廻、〉次各歸二本路一、右宰相中將下二御草鞋於東豎子一、次閉二輦戸一、次宰相中將著レ靴取レ弓、如レ先立レ列、右宰相中將同前、公卿升殿、〈各有レ揖〉
　　還御之儀
廿九日、戌刻副二中門之外南一、公卿假立、次將列二立中門内階之左右一、次公卿列二立中門内坤方一斜行立、〈寄二御輿一爲レ令レ開レ路也、北上東面、〉次右大將立二西階一、〈左大將不參〉次寄二御輿於御所簀子一、〈兼設二御輿寄於南階上一〉主殿寮取二松明於階下一、左右次卿次將揖而離二公卿列一、便階下左右、次右宰相中將升レ階役二劒璽一、〈不レ撤二高欄一、自二階西端一越之升レ殿、〉内侍二人分二立左右一、〈乘御次第、行幸同二禁中之儀一、〉次乘御、頭中將候二御裾一、〈關白依二不參一也〉先レ是頭中將供二御草鞋一、右宰相中將閇二輦戸一垂二御簾一下レ殿、自二中門外一左右次將各取二松明一、〈御輿先、主殿寮二人、分二左右一取二松明一、〉行列次第如二行幸一、
　　還二御禁中一儀
留二御輿於月花門之外一、〈令レ入二四足門一後不レ取二松明一、〉次神祇官獻二大麻一、次伶人奏二立樂一、〈還城樂、自二月花門一伶人分二左右一、引レ列進二御輿先一、〉先レ是公卿列二立南庭一、〈北上西面有レ揖〉次寄二御輿於南殿簀子一、次將列二立階下一、左右大將立二西階一、〈東西〉卿次將立二左右階下一、次右宰相中將升レ階役二劒璽一、内侍二人出向、〈授二劔璽一次第同レ前〉次入御、頭中將候二御裾一、同供二御草鞋一、次右大將稱二警蹕一、次伶人止二立樂一、次右宰相中將閇二輦戸一垂二御簾一、取レ弓下撤立二公卿列一、〈有レ揖〉左宰相中將同立二公卿列一、〈有レ揖〉次左右次將退、次名對面、〈右次將上首一人殘勤レ之〉次諸卿自二上首一揖而離レ列、經二月花門一退出、〈◯又見二執次詰所記一〉

〔槐記〕

〈別記〉

p.0722 辛亥〈◯享保十六年〉九月十二日、後光明院ニハ、各別ノ御器ナリシ事、毎度仰ラレシ事ナルガ、其頃板倉周防守〈◯重宗〉ガ所司代役ヲツトメシ時也、後水尾院ニ癰ノ御腦マシマシテ、日々ノ御容體ヲ叡聞ニ達セシニ、尚御心モトナクヤ思召サレケン、板倉周防守ヲ召テ、近日行幸アルベキノ由ヲ仰下サル、周防守申シ上ゲシハ、朝覲行幸ノ事ハ、其儀大形ノ事ナラズ、先關東ヘモ申遣シ、其儀モタヾサレズシテ、俄ニハ調マジキ由ヲ申上ゲシニ、サラバ其事ハ止ラルベシ、禁中ノ辰巳ノ隅ノ築地ヨリ、院ノ御所ノ戌亥ノ隅マデ、梯ニテ高廊下ヲ急ニ申付クベシ、禁裏ノ内ヲ行幸ナルハ常ノ事ナリ、廊ヨリ廊ヘ移ラルヽ事ヲ、誰カ行幸ト申スモノヽ有ベキヤ、早々ニ仕立ベシトテ終ニ行幸ナリケルトナリ、

〔承應遺事〕

p.0722 後光明帝、〈◯中略〉ある日上皇〈◯後水尾〉へ朝覲し給ひ、詩の御製和歌の御製ありけり、

朝覲雜載

〔中右記〕

p.0722 嘉保三年〈◯永長元年〉正月九日、朝大盤以後退出、明後日院〈◯白河〉行幸〈◯堀河〉路可レ令レ作由、召二仰撿非違使府生忠重一了、又院御所御裝束事等、任レ例可二勤仕一由、仰二史盛忠一了、是假裝束使間沙汰也、　十日、從二殿下一〈◯藤原師通〉有レ召則馳參、明日行幸御出方角沙汰也、明日大伯神在レ東、然者可レ被レ用二西陣一歟、輦路慥可レ見者、則參内、先日西陣取二御輿丈尺一見二其程一、西陣方油小路甚狹少之上、右衞門陣屋已滿二小路一、纔雖レ有二輦路一頗以見苦、見二東陣門處一甚南ニ依、從二夜大殿一不レ當二大伯神方一、歸二參殿下一申二此旨一處、仰云、然者不レ當二正方一、可レ用二東門一者、〈◯中略〉參院相二具史盛忠一也、明日行幸御裝束可二奉仕一由、付二甲斐守行實朝臣一、取二御氣色一處、明旦早參可二奉仕一者、晩頭歸レ家、大宋御屏風大床子等、暫置二御所一、　十一日壬寅、今日依レ例、有レ行二幸院一、元三之中雖(○○○○○)レ可(○)レ有(○)、依(○)レ避(○)二日次(○○)一引及(○○)二今日(○○)一也、

〔中右記〕

p.0722 大治五年十二月廿四日、今夕於二殿上一有レ定、必可レ參也、御氣色申二承了由一、申後歸二中御門一、著二束帶一、與二頭中將一同車、參二院〈◯鳥羽〉御所白河北殿一、〈◯中略〉以二頭辨一被レ仰云、正月院之御忌月也、而可レ有二朝覲行幸一、可レ有レ憚哉否條可レ定也、左大辨雅兼申云、御忌月強不レ可レ有レ憚歟、而御叡慮憚思食ハ、且可レ在二勅定一、皇后宮

p.0723 權大夫師時申云、御忌月不レ可レ被レ憚歟、左衞門督實行申云、故院〈◯白河〉御時此行幸被レ付二新院御方一、其時御忌月條不レ可レ有レ憚由沙汰切了、又始不レ可二此沙汰一候歟、仍不レ可レ有二其憚一也、〈◯中略〉大略一同不レ可レ有レ憚由申之、早可レ有二行幸一、

〔中右記〕

p.0723 保延二年正月五日癸酉、始朝二覲院〈◯鳥羽〉御所一、〈二日御衰日、三日往亡、四日申日、仍及二五日一也、〉皇居〈◯崇徳〉二條東洞院、御所二條萬利小路也、仍近々之間、歩行幸〈◯崇徳〉也、諸衞將佐闕腋平胡籙也、如二去年一巳時參レ院御之後、公卿進二御前座一也、

〔玉海〕

p.0723 壽永二年二月廿一日丙辰、此日今上〈◯安徳〉始朝覲行幸也、正月(○○)依(○)二御忌月(○○○)一無(○)二此禮(○○)一、後冷泉後三條鳥羽院等例(○○○○○○○○○○○)也、依レ雨持レ疑人々遲參、未刻出御、依二路次逗留一、申終幸二法住寺殿一〈◯後白河〉云々、雨息供奉、午刻參内之後、人々參集、攝政〈◯藤原基通〉未刻被レ參云々、

〔吉記〕

p.0723 壽永二年二月廿一日丙辰、今日朝覲行幸〈◯安徳〉也、〈春秋六歳、度々吉例也(○○○○○)、正月依二御忌月一無二其沙汰一、天仁（鳥羽）初度十二月也、後々毎年被レ用二二月一、於二十二月一者不レ可レ似、今度之例仍被レ用二今月一歟、一昨日俄可レ被二延引一之由有二院宣一、是御逆修間、指令之故云々、大藏卿泰經朝臣内々相二尋外記一之處、初之例二三兩月共無二所見一、於二後々一者有レ例云々、然而三月追討使可二發向一、今月可レ宜之由、内大臣（平宗盛）依レ被二計申一、不レ行二延引一也、◯又見二百練抄一〉

〔源平盛衰記〕

〈二十八〉

p.0723 宗盛補二大臣一并拜賀事
二月廿日、〈◯壽永二年〉當今〈◯安徳〉始テ朝覲ノ爲ニ、法住寺殿〈◯後白河〉ヘ行幸、〈◯中略〉建禮門院〈◯母后徳子〉夜部此御所ヘ御幸アリ、法皇ノ御方ノ御拜ノ後、女院御方ノ御拜アリケリ、
◯按ズルニ、上ニ掲グル玉海吉記ニ據ルニ、廿日ハ甘一日ノ誤ナルベシ、

〔玉海〕

p.0723 文治元年十二月十五日、此日院御佛名也、〈◯中略〉正月(○○)依(○)二御忌月(○○○)一二月(○○)可(○)レ有(○)二朝覲行幸(○○○○)一、仍今夜不レ被レ定二行幸雜事一也、近例正月有二行幸一之時、必御佛名次有二其定一者也、

〔愚昧記〕

p.0723 文治六年〈◯建久元年〉正月廿七日壬午、朝覲行幸〈◯後鳥羽〉也、依二天永〈◯鳥羽〉例一、雖二御忌月(○○○)一有(○)二此事(○○)一、〈又見二玉海、百練抄一、〉

〔中右記〕

p.0724 寛治五年正月二日、依レ例可レ有レ行二幸一院一之由、去年雖レ有二其定一俄被レ留了、　十三日癸酉、爲二朝覲一行二幸〈◯堀河〉太上天皇〈◯白河〉御所一、未刻御二出南殿一、〈◯中略〉今日無二送物并院司祿御遊等一也、〈◯又見二後二條關白記一〉

〔三代實録〕

〈三十五陽成〉

p.0724 元慶三年五月九日戊戌、天皇欲下幸二粟田院一奉上レ見二太上天皇一、〈◯清和〉天皇將レ御二鸞輿一、太上天皇遣二右大辨從四位上藤原朝臣山蔭一、馳下奏可レ停二仙駕一之状上、因而駐レ蹕、

〔台記〕

p.0724 仁平四年正月二日乙卯、朝覲行幸、〈◯近衞〉依(○)二御目事(○○○)一停止(○○)云々、閏十二月廿日比、有下正月二日可レ有二行幸一之風聞上、然而近日其事無レ音、元日節會猶無二出御一、况行幸乎、

〔續世繼〕

〈三虫の音〉

p.0724 此みかど〈◯近衞〉御みめも御心ばへも、いとなつかしくおはしましけるに、すゑになりて、御めを御らんぜざりければ、かた〴〵みいのりも御くすりも、しかるべきにやかひなくて、すゑざまにはとしのはじめの行幸などもせさせ給はずなりにけり、

〔吾妻鏡〕

〈二十八〉

p.0724 寛喜四年、〈◯貞永元年〉正月四日乙酉、後鳥羽院御時、朝覲行幸繪、自二京都一被レ進レ之、將軍家〈◯藤原頼經〉今日有二御覽一、陰陽權助晴賢朝臣、依レ仰讀二彼詞一云々、