帝王部/讓位下〈受禪併入廢帝附〉

讓位初見

〔日本書紀〕

〈十八安閑〉

p.0527 二十五年〈◯繼體〉二月丁未、男大迹天皇〈◯繼體〉立二大兄一〈◯安閑〉爲二天皇一、
◯按ズルニ、書紀集解ニ、此ヲ以テ讓位ノ始ト爲ス、

〔日本書紀〕

〈二十四皇極〉

p.0527 四年六月庚戌、讓二位於輕皇子一、〈◯孝徳〉立二中大兄一〈◯天智〉爲二皇太子一、

皇太子受禪

〔日本書紀〕

〈十七繼體〉

p.0527 七年十二月戊子、詔曰、〈◯中略〉盛哉勾大兄、〈◯安閑〉光二吾風於萬國一、〈◯中略〉寔汝之力、宜下處二東宮一、助レ朕施レ仁翼レ吾補上レ闕、

〔日本書紀〕

〈十八安閑〉

p.0527 二十五年〈◯繼體〉二月丁未、男大迹天皇〈◯繼體〉立二大兄一〈◯安閑〉爲二天皇一、

〔續日本紀〕

〈三十六光仁〉

p.0527 天應元年四月辛卯、詔曰、〈◯中略〉故是以皇太子〈止〉定賜〈留〉山部親王〈爾◯桓武〉天下政〈波〉授賜〈布、〉古人有レ言知レ子者親〈止〉云〈止奈毛〉聞食、此王〈波〉弱時〈余利〉朝夕〈止〉朕〈爾〉從〈天〉至レ今〈麻天〉怠事無〈久〉仕奉〈乎〉見〈波、〉仁孝厚王〈爾〉在〈止奈毛〉神〈奈我良〉所知食、〈◯中略〉衆諸如レ此〈乃〉状悟〈弖〉清直心〈乎毛知〉此王〈乎〉輔導〈天、〉天下百姓〈乎〉可レ令二撫育一〈止〉宣、〈◯中略〉是日皇太子受レ禪即レ位、

〔三代實録〕

〈二十九清和〉

p.0527 貞觀十八年十一月廿九日壬寅、皇太子〈◯陽成〉自レ出二東宮一、駕二牛車一詣二染殿院一、是日天皇讓二位於皇太子一、勅二右大臣從二位兼行左近衞大將藤原朝臣基經一、保二輔幼主一、攝二行天下之政一、如二忠仁公故事一、詔曰、〈◯中略〉皇太子〈止〉定〈多留〉貞明親王〈爾〉此位〈乎〉授賜〈布、〉諸衆此状〈乎〉悟〈天〉清直心〈乎〉持〈天〉皇太子〈乎〉輔導〈岐〉仕奉〈天、〉天下〈乎〉平〈介久〉令レ有〈與、◯中略〉皇太子受二天子神璽寶劒一、御二鳳輦一歸二於東宮一、文武百官扈從如二常

p.0528 儀一、

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

p.0528 寛平九年七月三日丙子、午三刻太上天皇〈◯宇多〉讓二天祚于紫宸殿一、

〔大鏡〕

〈一醍醐〉

p.0528 寛平五年みづのとのうし四月二日に、東宮にたヽせ給ふ、〈◯中略〉同九年丁巳七月三日、位につかせ給ふ、御歳十三、やがてこよひよるのおとヾより、にはかに御かうぶり奉りて、さしいでおはしましたりける、御手づからわざと人の申はまことにや、

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

p.0528 延長八年九月廿二日壬午、天皇逃レ位、讓二於皇太子寛明親王、〈◯朱雀〉詔曰、左大臣藤原朝臣、保二輔幼主一、攝二行政事一、内侍執二劒璽一參二宣耀殿一、先帝御春秋四十六、今上八、

〔扶桑略記〕

〈二十九後冷泉〉

p.0528 後朱雀天皇太子、母攝政太政大臣道長四女、寛徳二年正月十六日癸酉、受禪、年廿一歳、

〔一代要記〕

〈四白河〉

p.0528 延久元年四月廿八日甲子、於二閑院一立爲二皇太子一、同四年十二月八日甲子、受二禪於昭陽舍一、

〔續世繼〕

〈二紅葉の御狩〉

p.0528 このみかど、〈◯白河〉天喜元年六月廿日むまれさせ給、延久元年四月廿八日に東宮にたヽせ給、御とし十七、同四年十二月八日、位につかせ給、御とし廿にやおはしましけん、くらゐゆづりたてまつらせ給て、つぎのとしの五月に、後三條院かくれさせ給にしかば、國のまつりごと、廿一の御としよりみづからしらせ給て、位におはします事十四年なりしに、卅四にて位おりさせ給てのち、七十七までおはしましヽかば、五十六年くにのまつりごとをせさせ給へりき、

〔神皇正統記〕

〈後白河〉

p.0528 天下を治給ふ事三年、太子〈◯二條〉にゆづりて、例のごとく尊號ありて、院中にて天下をしらせ給ふ事三十餘年、

〔帝王編年記〕

〈二十一二條〉

p.0528 後白河院第一皇子、母贈皇太后藤懿子、〈◯中略〉久壽二年九月廿三日丁未、爲二親王并皇太子一、〈年十三〉今朝先被レ下二親王宣旨一、保元三年八月十一日戊戌、受禪、

〔増鏡〕

〈二新島もり〉

p.0529 承久も三年になりぬ、四月廿日御門〈◯順徳〉おりさせ給、春宮〈◯仲恭〉四にならせ給にゆづり申させ給、ちか比みなこの御よはひにて受禪ありつれば、これもめでたき御行すゑならむかし、

〔増鏡〕

〈三藤衣〉

p.0529 さておなじ四日〈◯貞永元年十月〉おりゐさせ給、〈◯後堀河〉御なやみ重きによりてなりけり、こぞの二月、后の宮〈◯藤原竴子〉の御はらに、一の御子〈◯四條〉いでき給へりしかば、やがて太子にたヽせ給しぞかし、〈◯中略〉今上〈◯四條〉は二さいにぞならせ給、あさましきほどの御いはけなさにて、いつくしき十善のあるじにさだまり給事、いとゆヽしきまでさきの世ゆかしき御ありさまなり、むかし近衞院三さい、六條の院二さいにて位につき給へりし、いづれもいとこヽろゆかぬためしなり、

〔帝王編年記〕

〈二十七後伏見〉

p.0529 正應二年四月廿五日、立太子、永仁六年七月二十二日、受禪、

〔皇年代略記〕

〈後光嚴〉

p.0529 應安四年三月廿三日、讓二位於皇子緒仁親王一、〈◯後圓融〉今日先爲二皇太子一、

〔椿葉記〕

p.0529 その頃將軍〈◯足利義滿〉は幼少にて、執事細川武藏守頼之朝臣、天下の事はとりさた申ほどに、内裏にては、近き臣ども内談ありて、御讓國のさたやう〳〵風聞せしかば、伏見殿〈◯崇光〉より榮仁親王〈◯崇光皇子〉踐祚の事、後深草院以來、正嫡にてまします御理運の次第を、日野中納言教光卿を勅使にて武家へ仰せらる、御返事は聖斷たるべきよしを申す、承久以來は武家よりはからひ申す世になりぬれば、いかにも申沙汰せらるべき由を再三仰せらる、御理運勿論とはぞんじ申ながら、内裏〈◯後光嚴〉より別して頼之朝臣を頼み仰せらるヽによりて、所詮いづかたの御事をもいろひ申まじき由を申て、つひに一の御子〈◯後圓融〉に御讓位ありぬ、武家ひとへに贔負申うへは、力およばざる次第なり、さるほどに本院〈◯崇光〉新院〈◯後光嚴〉たちまち御中あしくなりて、近習の臣下もこヽろごヽろに奉公ひきわかる、兄弟の御中にも御位のあらそひは、昔よりあることなれば、ちからなき事なり、

〔續史愚抄〕

〈後小松〉

p.0530 永徳二年四月十一日庚寅、於二土御門里内一受禪、〈春秋六〉以二太政大臣一〈良基〉可レ爲二攝政一、被レ載二讓位宣命一者、節會終、自二舊主〈◯後圓融〉御所一〈中園殿〉攝政〈良〉已下參入、依レ爲二幼主一無二出御一、公卿昇殿、勅授帶劒、牛車及殿上人禁色雜袍等如レ元、

〔貞享四年記〕

p.0530 貞享四丁卯歳三月廿一日、巳時御讓位トゾ聞ユ云々、次職事來仰云、讓二位於皇太子一、〈◯東山〉以二關白藤原朝臣一〈◯一條兼輝〉令レ攝二行政事一、一如二忠仁公之舊事一、且又可レ停二太上天皇尊號及服御物一令レ作二宣命一、同日午刻劒璽渡御、新主御所儀、〈以二中宮一爲二新主御所一〉新主密々渡二御内裏一云々、

〔續皇胤紹運録〕

p.0530 櫻町院、諱昭仁、享保十三年六月十一日立太子、同廿年三月廿一日受禪、

〔執次詰所本御系譜〕

p.0530 光格天皇、文化十四、三、廿二讓位、〈四十七◯中略〉同日被レ渡二劒璽於土御門殿一、〈新主（仁孝）御所〉

〔皇統御譜〕

p.0530 今上皇帝、〈◯仁孝〉御諱惠仁、文化六年三月廿四日立二皇太子一、〈十歳〉同十四年三月廿二日御受禪、
◯按ズルニ、皇太子ノ受禪ハ、此他ナホ多ケレド、此處ニハ皇子ノ皇太子ト爲リ給ヘルモノヽミヲ擧ゲテ、其他ハ略ス、

皇太弟受禪

〔日本後紀〕

〈十七平城〉

p.0530 大同四年四月丙子朔、天皇自二從去春一寢膳不レ安、遂禪二位於皇太弟一、〈◯嵯峨〉

〔日本紀略〕

〈嵯峨〉

p.0530 弘仁十四年四月甲午、帝〈◯嵯峨〉遷二于冷泉〈◯泉當レ作レ然〉院一、詔二右大臣藤原朝臣冬嗣一曰、朕思レ傳二位于皇太弟一〈◯淳和〉矣、今將レ果二宿心一、故避レ宮焉、冬嗣言曰、聖知レ聖、今陛下以二萬機一、付二託聖人一、天下幸甚、但比年之間、豐稔未レ復、若奉二一帝二太上皇一、臣恐天下難レ堪、臣願暫待二年復一、然後傳レ位、於レ事不レ晩、帝曰、朕心素定、又推レ賢讓レ位、唯爲二天下一、賢君臨レ政、何憂二年之未一レ復乎、　庚子、帝御二前殿一引二今上一〈◯淳和〉曰、朕本諸公子也、始望不レ及二於〈◯於下恐脱二此字一〉太上天皇〈◯平城〉曲垂二褒飭一、超登二儲貳一、遂遜二位于朕躬一、辭不レ獲レ免、日愼二一日一、未レ幾而身嬰二疹疾一、彌留不レ瘳、爲二萬機擁滯一、令二右大臣藤原朝臣冬嗣一奉二還神璽一、朕始有二歸閑之志一、太上天皇不レ允レ所レ請、當二此之時一有二小人之言一、令二太上皇與レ朕有一レ隙、公卿相共議、逐二君側群少一、太上不レ察二愚欵一、有二入レ東之計一、

p.0531 群臣不レ安二社稷一、遣レ邀レ之、朕亦心有レ如二曒日一、朕以二冥昧一、有レ位十有六年、太弟與レ朕春秋亦同朕雖レ乏二知レ人之鑒一、與二太弟一周旋年久、太弟之賢明仁孝、朕之所レ察、仍欲レ傳二位於太弟一、已經二數年一、今果二宿心一、宜レ知レ之、今上避レ座跪言、臣以二闇劣一疏二派天潢一、昔屬二世危險一、自謂不レ免二於禍一、會逢二聖明一、更同二再生一、幸莫レ大焉、又何所レ望、而陛下殊奬、忝二兹儲兩一、然身有二犬馬之病一、不レ堪二承祧之状一、屡語二右大臣一、戰々兢々得レ到二于今一、而今復以二大寶一、俯授二愚蒙一、心魂迷惑、不二敢承一レ勅、帝不レ許、仍答曰、今日以前、朕遇二太弟一如レ子、今日以後遇レ朕亦如レ子耳、〈◯亦如子耳、恐亦如父耳誤、〉

〔日本紀略〕

〈淳和〉

p.0531 弘仁元年九月庚戌、立爲二皇太弟一、同十四年四月壬寅、皇太弟出レ自二東宮一、遷二御内裏一、

〔大鏡裏書〕

p.0531 村上天皇御事
天慶七年四月廿二日甲子、爲二皇太弟一、同九年四月十三日癸酉、受禪、

〔踐祚部類抄〕

〈村上〉

p.0531 天慶九年四月廿日庚辰、受禪、〈新主承香殿、舊主弘徽殿、南殿節會畢、有二拜表事一、〉上卿右大臣左大將藤原朝臣、〈實頼公〉内辨右大臣左大將藤原朝臣、宣命使中納言藤原元方卿、劒璽使、〈北山云、内侍二人、典侍掌侍各一人也云々、或云、典侍藤原朝臣隆子、掌侍橘平子奉二仕之一云々、〉
首書、十九日、警固固關、有二拜表儀一、其儀畢、令二内侍獻二御服一襲於新帝一、加二御笏一、廿二日新主遷二御綾綺殿一、

〔日本紀略〕

〈六圓融〉

p.0531 康保四年九月一日、立爲二皇太弟一、安和二年八月十三日戊子、冷泉院天皇逃レ位讓二於天皇一、于時新帝年十一、新主於二襲芳舍一受禪、

〔日本紀略〕

〈十四後一條〉

p.0531 長元九年四月十七日乙丑、天皇落飾崩、〈◯中略〉以二如在之儀一、今日讓二位於皇太弟一、〈◯後朱雀〉

〔左經記〕

p.0531 長元九年四月十七日乙丑、主上〈◯後一條〉自二去三月之頃一不例、〈◯中略〉漸及二戌刻一之間、遂崩二於清凉殿一、〈春秋廿九、在位廿一云、〉關白相府被レ示二仰諸卿一云、可レ有二讓位一之由奉レ詔、次參二啓東宮一之間、忽以晏駕、於レ今者不レ可レ被レ行二其儀一只令レ持二御劒等一、早可レ被レ參二昭陽舍一也、

〔皇年代略記〕

〈後三條〉

p.0531 寛徳二年正月十六日辛酉、爲二皇太弟一、〈十二、後冷泉无二皇子一、仍立之、〉治暦四年四月十六日庚申、

p.0532 受禪、

〔百練抄〕

〈六崇徳〉

p.0532 永治元年十二月七日、天皇讓二位於皇太弟一、〈◯近衞〉

〔續世繼〕

〈二八重の潮路〉

p.0532 いまの女院〈◯鳥羽后藤原得子〉ときめかせ給て、このゑのみかどうみたてまつらせ給へる、東宮にたてまつりて、位ゆづりたてまつらせ給、〈◯中略〉みかどの御やしなひご、れいなきとて、皇太弟とぞ宣命にはのせられ侍ける、

〔愚管抄〕

〈四〉

p.0532 さてうへ〳〵の御中あしきことは、崇徳院の位におはしましけるに、鳥羽院は長實中納言が女を、ことに最愛におぼしめして、はじめには三位せさせておはしましけるおん腹に、をのこみこ生れさせ給へるを東宮にたてヽ、崇徳の后には、法性寺殿〈◯藤原忠通〉のむすめまゐられたる、皇嘉門院〈◯藤原聖子〉なり、その御子のよしにて、外祖の儀にて、よく〳〵さたしまゐらせよと仰られければ、ことに心に入て、誠の外祖のほしさに、さたしまゐらせけるに、その定にて讓位候べしと申されければ、崇徳院はさるべしとて、永治元年十二月に、御讓位ありける、保延五年八月に、東宮には立せ給にけり、其宣命に、皇太子ともあらんずらんと思召けるを、皇太弟とかヽせられける時には、いかにとまた崇徳院の御意趣にこもりけり、

〔玉蘂〕

p.0532 承元四年十一月廿三日、子刻許、自二大納言許一造送云、今日關白參入出二御前一、大相國議二定御讓位〈◯土御門〉事一、可レ爲二明後日廿五日一之由被二仰下一了、聞二此事一悦淚數行、不レ知二手舞足蹈一也、　廿四日、巳刻許、著二直衣一參二東宮一〈◯順徳〉參二御前一、人々語云、明日多先可レ有レ行二啓于押小路一、其後可レ有二此事一也、件御所暫可レ爲二内裏一、明旦上皇渡二御此御所一、有二御對面一、其後可二行啓一也、人人多以參集如二雲霞一、數刻祗候、申刻許退出、　廿五日、是日天皇〈◯土御門〉讓二國於皇太弟一日也、

〔皇年代略記〕

〈順徳〉

p.0532 正治二年四月十五日庚子、立二太弟一、承元四年十一月廿五日己酉、受禪、〈十四〉

〔歴代皇紀〕

〈後深草〉

p.0532 正元元年十一月廿六日、禪二位於皇太弟恒仁親王一、〈十七◯龜山〉

〔皇年代略記〕

〈龜山〉

p.0533 正嘉二年八月七日、立二皇太弟一、正元元年十一月廿六日甲午、受禪、〈十一〉

〔執次詰所本御系譜〕

p.0533 後西院、寛文三年正月廿六日、讓二位皇太弟一、〈◯靈元〉

〔皇胤紹運録〕

p.0533 靈元院、寛文三年正月廿六日、受禪、

皇孫受禪

〔日本書紀〕

〈三十持統〉

p.0533 十一年八月乙丑朔、天皇定二策禁中一、禪二天皇位於皇太子一、〈◯文武〉

〔續日本紀〕

〈一文武〉

p.0533 天眞宗豐祖父天皇、〈◯文武〉天渟中原瀛眞人天皇〈◯天武〉之孫、日並知皇子尊之第二子也、〈◯中略〉高天原廣野姫天皇〈◯持統〉十一年、立爲二皇太子一、八月甲子朔、受レ禪即レ位、

〔皇年代略記〕

〈後陽成〉

p.0533 後陽成院、正親町第一皇子、〈◯中略〉實陽光院贈太上天皇子、陽光院諱誠仁者、正親町院第一皇子、〈◯中略〉天正十四年十一月七日、受禪、

〔多聞院日記略〕

p.0533 天正十四年九月、來廿六日禁裏〈◯正親町〉御讓位アリト云々、先段御崩御ノ親王様〈◯陽光院〉ノ御息〈十六歳◯後陽成〉云々、

皇姪受禪

〔續日本紀〕

〈九元正〉

p.0533 神龜元年二月甲午、天皇禪二位於皇太子一、〈◯聖武〉

〔續日本紀〕

〈九聖武〉

p.0533 神龜元年二月甲午、受レ禪即二位於大極殿一、
◯按ズルニ、聖武天皇ハ、文武天皇ノ皇子ニシテ、元正天皇ハ、文武天皇ノ同母姊ナリ、

〔續日本後紀〕

〈一仁明〉

p.0533 天長十年二月乙酉、皇帝〈◯淳和〉於二淳和院一、讓二位于皇太子一、〈◯仁明〉　丙戌、〈◯中略〉天皇命二車駕一、拜二謁先太上天皇〈◯嵯峨〉及太皇太后宮於冷然院一、還二御東宮一、
◯按ズルニ、仁明天皇ハ、嵯峨天皇ノ第二皇子ニシテ、嵯峨天皇ハ、淳和天皇ノ異母兄ナリ、

〔日本紀略〕

〈七圓融〉

p.0533 永觀二年八月廿七日甲辰、天皇讓二位於皇太子一〈◯花山〉云々、自二閑院第一移二御堀河院一受禪、即日入二内裏一、儀一如二行幸一、先皇留二御堀河院一、
◯按ズルニ、花山天皇ハ、冷泉天皇ノ皇子ニシテ、圓融天皇ハ、冷泉天皇ノ同母弟ナリ、

〔皇年代略記〕

〈光明〉

p.0533 貞和四年十月廿七日、禪二位於皇太子一、〈◯崇光〉

p.0534 ◯按ズルニ、崇光天皇ハ、光明天皇ノ同母兄ナル、光嚴天皇ノ皇子ナリ、

〔執次詰所本御系譜〕

p.0534 後櫻町院、明和七年十一月廿四日、讓位、移二御于北御殿一、

〔皇胤紹運録〕

p.0534 後桃園院、明和七年十一月廿四日、受禪、〈十三〉
◯按ズルニ、後桃園天皇ハ、桃園天皇ノ皇子ニシテ、桃園天皇ハ、後櫻町天皇ノ異母弟ナリ、

從兄弟受禪

〔日本紀略〕

〈九一條〉

p.0534 寛和二年六月廿三日庚申、花山天皇偸出二禁中一、奉二劒璽於新帝一、〈◯一條、中略、〉翌日行二先帝〈◯花山〉讓位之禮一、
◯按ズルニ、一條天皇ノ御父圓融天皇ト花山天皇ノ御父冷泉天皇トハ、同母兄弟ナリ、

〔日本紀略〕

〈十二三條〉

p.0534 寛弘八年六月十三日乙卯、一條院天皇逃二位於新皇一、〈◯三條〉
◯按ズルニ、三條天皇ノ御父冷泉天皇ト、一條天皇ノ御父圓融天皇トハ、同母兄弟ナリ、

〔勘仲記〕

p.0534 弘安十年十月廿日丁丑、〈◯中略〉參二常磐井殿一、〈◯後深草〉予夕郞無二相違一、可レ被レ渡二新帝一〈◯伏見〉之由有二御沙汰一、謁二平相公一所二畏申入一也、參二春宮一申二入女房一退出、次參内、頭大夫參會、殿下内二覽明日條々事一、大内記中務輔等無二領状一云々、内々可レ被レ申二常磐井殿一云々、御治世于レ今不二治定一之間、諸事不二合期一歟、爲レ之如何、　廿一日戊寅、〈◯中略〉參内、今日御讓位事在二別記一、　廿三日庚辰、參内、〈◯中略〉參二殿下一、余申云、神宮怪異、内宮正殿并西寶殿御鏁、澁固不二令レ開給一事、内宮古宮心御柱切取事、其後無二沙汰一、可レ爲二如何様一、神慮難レ測之由所二申入一也、仰云、誠忩可レ有二沙汰一歟、但代始奏二聞怪異一之條不レ可レ然、一而令レ閣之條、神宮事有二其恐一、先例如レ此之時、如何様有二沙汰一哉、祭主適在京也、可二仰合一之由有レ仰、　廿四日辛巳、不二出仕一、祭主入來、問二答殿下仰趣一、後聞今日殿上人十五人、被レ仰二昇殿一云々、　廿五日壬午、〈◯中略〉參二殿下一、神宮怪異事、祭主申之趣申入了、暫可レ相二待世上落居一云々、入レ夜退出、
◯按ズルニ、伏見天皇ノ御父後深草天皇ト、後宇多天皇ノ御父龜山天皇トハ、同母兄弟ナリ、

再從兄弟受禪

〔帝王編年記〕

〈二十七後伏見〉

p.0534 正安三年正月廿一日、天皇讓二位於皇太子一、〈邦治◯後二條〉

〔踐祚部類抄〕

〈後二條〉

p.0535 正安三年正月廿一日壬戌、受禪、
◯按ズルニ、後二條天皇ノ御父後宇多天皇ト、後伏見天皇ノ御父伏見天皇トハ、從兄弟ナリ、

〔増鏡〕

〈十三秋のみ山〉

p.0535 文保二年二月廿六日、御門〈◯花園〉おりゐさせ給ふ、春宮〈◯後醍醐〉はすでに三そぢにみたせ給へば、まちどほなりつるに、めでたくおぼさるべし、
◯按ズルニ、後醍醐天皇ノ御父後宇多天皇ト、花園天皇ノ御父伏見天皇トハ、從兄弟ナリ、

從姪受禪

〔百練抄〕

〈四三條〉

p.0535 長和五年正月廿九日、讓二位於皇太子一、〈◯後一條〉渡二劒璽於太子第一、
◯按ズルニ、後一條天皇ハ、一條天皇ノ皇子ニシテ、三條天皇ト一條天皇トハ、從兄弟ナリ、

叔父受禪

〔帝王編年記〕

〈二十一六條〉

p.0535 仁安三年二月十九日壬子、讓二位於叔父皇太子一、〈憲仁親王◯高倉〉

〔續世繼〕

〈三花園の匂ひ〉

p.0535 世をたもたせ給事三年にやおはしますらむ、一院〈◯後白河〉おぼしめしおきつる事にてとうぐう〈◯高倉〉に位をゆづり奉りて、まだをさなくおはしますに、太上天皇と申もいとやんごとなし、
◯按ズルニ、高倉天皇ハ、六條天皇ノ御父二條天皇ノ異母弟ナリ、

族叔祖父受禪

〔續日本紀〕

〈二十一淳仁〉

p.0535 天平寶字二年八月庚子朔、高野天皇〈◯孝謙〉禪二位於皇太子一、〈◯淳仁〉

〔皇胤紹運録〕

p.0535 淡路廢帝、寶字元年四月廿九日、立太子、〈廿五〉同二年八月一日、受禪、〈二十六〉
◯按ズルニ、淳仁天皇ハ、孝謙天皇ノ御祖父文武天皇ノ從兄弟ナリ、

皇太弟受禪以前帝子爲太子

〔日本紀略〕

〈淳和〉

p.0535 弘仁十四年四月壬寅、皇太弟〈◯淳和〉出レ自二東宮一遷二御内裏一、〈◯中略〉　己酉、天皇受レ讓、并定二皇太子一〈◯仁明〉事、告二于柏原山陵一、〈◯桓武〉
◯按ズルニ、仁明天皇ハ、嵯峨天皇ノ第二皇子ナリ、

〔日本紀略〕

〈六圓融〉

p.0535 康保四年九月一日、立爲二皇太弟一、安和二年八月十三日戊子、冷泉院天皇逃レ位讓二於天皇一、新主於二襲芳舍一受禪、

〔皇年代略記〕

〈花山〉

p.0536 安和二年八月十三日戊子、立二太子一、〈二、圓融院受禪日、圓融皇子一條雖二御坐一、以二冷泉皇子一立之、〉
◯按ズルニ、花山天皇ハ、冷泉天皇ノ第一皇子ナリ、

皇姪受禪以前帝子爲太子

〔日本紀略〕

〈七圓融〉

p.0536 永觀二年八月廿七日甲辰、天皇讓二位於皇太子一〈◯花山〉云々、自二閑院第一移二御堀河院一受禪、〈◯中略〉此日立二懷仁親王一〈◯一條〉爲二皇太子一、

〔榮花物語〕

〈二花山〉

p.0536 時々の事どもはかなく過もて行て、七月〈◯永觀二年〉すまひも近くなれば、これを若宮〈◯一條〉に見せばやと宣はすれど、おとヾ〈◯藤原兼家〉少しふさはぬ様にて過させ給に、たび〳〵おとヾまゐらせ給へと、うちよりめしあれど、みだりかぜなどさま〴〵のおほんさはりども申させ給ひつヽまゐらせ給はぬを、すまひちかくなりて、しきりにまゐらせ給へとあればまゐり給へれば、いとこまやかに御ものがたりありて、くらゐにつきてことし十六年になりぬ、〈◯圓融〉いまヽであべうもおもはざりつれど、月日のかぎりやあらん、かく心の〈◯原本無二の字一據二一本一補、〉ほかにあるを、この月はすまひのことあれば、さわがしかるべければ來月ばかりにとなんおもふを、とうぐう〈◯花山〉くらゐにつき給なば、わかみや〈◯一條〉をこそは春宮にはすゑめとおもふに、いのりところ〴〵によくせさせて、おもひのごとくあべくいのらすべし、おろかならぬこヽろのうちをしらで、たれだれもこヽろよからぬけしきのある、いとくちをしきことなり、あまたあるをだに、人は子をばいみじきものにこそおもふなれ、ましていかでかおろかにおもはんなど、よろづあるべきことヾもおほせらるヽ、うけたまはりてかしこまりてまかで給て、にようごどの〈◯一條母后藤原詮子〉にものさヾめき申させ給て、おほんとなぶらめしよせて、こよみ御らんじて、ところ〴〵におほんいのりつかひどもたちさわぐを、かう〳〵との給はせねど、とのヽ中の人々けしきをみておもへるさま、いふもおろかにめでたし、このいへのこのきんだち、いみじうえもいはぬ御けしきどもなり、さてすまふなどにもこの君たちまゐり給、おとヾのおほんこヽろのうち、はれ〴〵しうてまじ

p.0537 らはせ給、かくて八月になりぬれば、廿七日御讓位とてのヽしる、その日になりぬれば、又みかど〈◯圓融〉はおりさせ給ひぬ、とうぐうはくらゐにつかせ給ぬ、東宮には梅つぼのわかみや〈◯一條〉ゐさせ給ぬ、いへばおろかにめでたし、世はかうこそはとみえきこえたり、おりゐのみかどは、ほりかはのゐんにぞおはしましける、
◯按ズルニ、花山天皇ハ、圓融天皇ノ皇姪ニシテ、一條天皇ハ、圓融天皇ノ皇子ナリ

從兄弟受禪以前帝子爲太子

〔日本紀略〕

〈十一一條〉

p.0537 寛弘八年六月十三日乙卯、有二御讓位事一、午刻宣命云、皇太子座〈◯座恐止誤〉定賜〈ヘ留、〉居貞親王〈仁◯三條〉天日嗣〈遠〉授賜〈布、〉敦成親王〈◯此下恐脱二小書遠字一〉立〈天〉皇太子〈止〉定賜〈布、〉新帝上表陳謝、

〔榮花物語〕

〈九石蔭〉

p.0537 かくて御かど、〈◯一條〉いまはかくておりゐなむとおぼすを、さるべきさまにおきて給へとおほせらるれば、殿〈◯藤原道長〉うけたまはらせ給て、春宮〈◯三條〉に御たいめこそは例の事なれとて、思しおきてさせ給程に、東宮行啓あり、みすごしに御たいめありて、あるべき事ども申させ給、位もゆづりきこえさせ侍りぬれば、東宮にはわか宮〈◯一條〉をなん物すべうはべる、だうりのまヽならば、そちのみや〈◯一條皇子敦康〉をこそはと思ひ侍れど、はか〴〵しきうしろみなどもはべらねばなむなど申させ給ふ、さてかへらせ給ぬ、御讓位六月〈◯寛弘八年〉十三日なり、〈◯節略〉
◯按ズルニ、後一條天皇ハ、一條天皇ノ皇子ニシテ、三條天皇ト、一條天皇トハ從兄弟ナリ、

皇女受禪

〔續日本紀〕

〈六元明〉

p.0537 和銅八年〈◯靈龜元年〉九月庚辰、天皇禪二位于氷高内親王一、〈◯元正〉

〔續日本紀〕

〈七元正〉

p.0537 日本根子高瑞淨足姫天皇、〈◯元正〉天渟中原瀛眞人天皇〈◯天武〉之孫、日並知皇子尊之皇女也、〈◯中略〉九月庚辰、受レ禪即二位于大極殿一、

〔續日本紀〕

〈十七聖武〉

p.0537 天平勝寶元年七月甲子、皇太子〈◯孝謙〉受レ禪即二位於大極殿一、
◯按ズルニ、孝謙天皇ハ、聖武天皇ノ皇女ナリ

〔時慶卿記〕

p.0537 寛永六年十一月八日、辰刻俄ニ堂上各束帶ニテ可二伺候一旨被レ觸、事ノ子細ハ不レ知急參内、

p.0538 予又素絹ニテ内ノ番所迄伺候シテ退、外ヘ出、未刻計ニ御節會アリ、次第別ニ記之、御讓位俄也、誰モ無二知人一、中御門大納言計ニテ各驚計也、

〔皇胤紹運録〕

p.0538 明正院、諱興子、寛永六年十月廿九日、爲二内親王一、〈七歳〉同年十一月八日受禪、
◯按ズルニ、明正天皇ハ、後水尾天皇ノ皇女ナリ、

皇女受禪更以前帝太子爲太子

〔續日本紀〕

〈六元明〉

p.0538 和銅八年〈◯靈龜元年〉九月庚辰、天皇禪二位于氷高内親王一、〈◯元正〉詔曰、〈◯中略〉以二此神器一欲レ讓二皇太子一、〈◯聖武〉而年齒幼稚、未レ離二深宮一、庶務多端、一日萬機、一品氷高内親王早叶二祥符一、夙彰二徳音一、〈◯中略〉今傳二皇帝位於内親王一、公卿百寮、宜三悉祗奉以稱二朕意一焉、

〔續日本紀〕

〈七元正〉

p.0538 靈龜元年九月庚辰、受レ禪即二位于大極殿一、

〔續日本紀〕

〈九元正〉

p.0538 神龜元年二月甲午、天皇禪二位於皇太子一、〈◯聖武〉

立太子之日受禪

〔百練抄〕

〈五白河〉

p.0538 應徳三年十一月廿六日、天皇讓二位於善仁親王一、〈◯堀河〉先爲二皇太子一由載二宣命一、

〔帝王編年記〕

〈十九堀河〉

p.0538 應徳三年十一月廿六日庚辰、爲二皇太子一、即受禪、

〔百練抄〕

〈五鳥羽〉

p.0538 保安四年正月廿八日、天皇讓二位於第一親王顯仁一、〈五◯崇徳〉先爲二皇太子一之由載二宣命一、

〔秀長卿記〕

p.0538 應安四年三月廿三日丁未、今日有二御讓位事一、今上二宮、〈諱緒仁◯後圓融〉先當日有二御元服事一、宣命、緒仁親王〈乎〉今日新加二元服一〈氐、〉皇太子〈卜〉定賜〈比天、〉此天嗣〈乎〉授賜〈布、◯節略〉

〔後深心院關白記〕

p.0538 應安四年三月廿一日乙巳、是日天皇〈◯後光嚴〉遷二御藤中納言忠光卿柳原第一、明後日可レ有二讓位一之故也、後聞、今夜行幸已後、有二親王宣下事一、　廿三日丁未、今日天皇讓位也、儲皇〈◯後圓融〉先於二柳原内裏一有二御元服事一、未刻節會始、事了人人參二新帝御所一、〈◯節略〉

〔孝亮宿禰記〕

p.0538 慶長十六年二月二日癸酉、依二使者一參二傳奏勸修寺大納言一、被レ示云、今度立太子節會、坊官除目可レ有レ之由被二仰出一、女房之事三ケ條被二仰出一云云、　十日辛巳、立太子御習禮有レ之、關白殿以下諸家并諸司等參之、　十一日壬午、今日立太子節會可レ有レ之處、俄以停止、關白并上卿等有二御退出一、諸司

p.0539 各退出、　廿三日甲午、大外記來臨、御讓位三月廿七日之由、内々有二其催一云々、　三月廿七日丁卯、今日御讓位當日也、内辨鷹司内大臣殿、〈左大將信尚公〉先劒璽渡御、次行幸有レ之、
◯按ズルニ、後水尾天皇立太子ノコトハ、俄ニ停止トナリシカドモ、後陽成天皇讓位ノ日ニ至リ、先ヅ皇太子ニ立チ、然ル後受禪シ給ヒシナリ、

爲親王爲太子之日受禪

〔帝王編年記〕

〈二十一六條〉

p.0539 永萬元年六月廿五日壬寅、爲二親王一、同日立太子、即受禪、

〔一代要記〕

〈十六條〉

p.0539 永萬元年六月廿五日、爲二親王一、今日受禪、先爲二太子一之由載二宣命一、

〔皇年代略記〕

〈六條〉

p.0539 永萬元年六月廿五日壬寅、爲二親王一、但去十七日、被レ定下可レ立二太子一之由上、依二御腦一俄有二讓位事一、即日受禪、先立二太子一、

不爲親王而爲太子之日受禪

〔皇年代略記〕

〈土御門〉

p.0539 建久九年正月十一日己酉、受禪、兼日無二立親王立坊事一、今日先爲二皇太子一、

〔玉海〕

p.0539 建久九年正月六日甲辰、或人云、可レ有二讓位一云々、明後日行二幸大炊殿一、以二閑院一可レ爲二新帝宮一云々、十一日廿一日之間、可レ有二讓國之儀一云々、一昨日東脚到來、其後事一定云々、或云、二三宮之間踐祚、當今王子立坊、或云、直皇子踐祚云々、此等説未レ有二一定一云々、　七日乙巳、讓位事傳國等事、自レ元不レ及二沙汰一云々、幼主不二甘心一之由、東方頻雖レ令レ申、綸旨懇切、公朝法師下向之時、被レ仰二子細一之時憗承諾申、然而皇子之中未レ被レ定二其人一、關東許可之後、敢取二孔子賦一、又被レ行二御占一、皆以二能圓孫一爲二吉兆一云々、仍被二一定一了、此旨以二飛脚一被レ仰二關東一了、不レ待二彼歸來一、來十一日可レ有二傳國之事一云々、桑門之外孫曾無レ例、而通親卿爲レ振二外祖之威一、〈嫁二彼外祖母一之故也〉二三歳踐祚、爲二不吉例一之由申出云々、〈信清孫三歳、範季孫二歳、〉而博陸又響應、尤可レ被レ忌例、不レ可レ及二外祖之沙汰一之由再三被二申行一、是則其息新侍從兼基爲二桑門之孫一、世人爲二奇異一、爲レ休二其嘲一、忘二帝者之瑕瑾一、同二通親謀一云々愚哉、以二少人入魂一爲二小童之才學一、國家之滅亡擧レ足可レ待歟、於二占卜之吉兆、及孔子賦等之條一者、如レ此之事、只依二根元之邪正一、有二靈告之眞僞一也、通親忽補二後院別當一、禁裏仙洞可レ在二掌中一歟、彼卿日來猶執二國柄一、〈世稱二源博陸一、又謂二土御門一、〉今假二外祖之號一、獨二歩天下一之體、只可レ以レ目歟、

〔神皇正統記〕

〈土御門〉

p.0540 土御門院、諱は爲仁、後鳥羽の太子、〈◯中略〉父の御門の例にて親王の宣下なし、立太子の義ばかりにて則踐祚あり、
◯按ズルニ、父ノ御門ノ例トハ、後鳥羽天皇ノ親王宣下ナクシテ、後白河天皇ノ詔ニ由リ、安徳天皇ノ皇太子トナリテ、即日踐祚シタマヒシヲ云フ、

〔良賢入道記〕

p.0540 永徳二年四月十一日庚寅、今日天皇〈◯後圓融〉讓二位于皇子一、〈御歳六歳、童體幼主、◯後小松〉無二立親王并立太子一、直有二受禪一、御諱事兵部卿長綱卿撰申、幹仁躬仁之間、勅問、被レ用二幹仁一之由治定云々、〈◯中略〉
現神〈度〉大八洲所知倭根子天皇〈我〉詔旨〈良麻止〉勅命〈乎、〉親王諸臣百官人等天下公民衆聞食〈止〉宣、朕以二薄徳一〈天〉天日嗣〈乎〉承傳賜〈倍留〉事漸送二年序一〈禮利、〉愚庸之身〈波〉此位〈仁〉不レ可レ堪〈止〉歎畏賜〈比天、〉令レ避二皇位一賜〈比那牟止〉所念行〈天那牟〉隨法〈仁〉可レ有政〈止〉爲〈天、〉某王〈乎〉皇太子〈止〉定賜〈比天〉此天日嗣〈乎〉授賜〈布、〉衆此状〈乎〉悟〈天〉清直〈乃〉心〈乎〉持〈天、〉皇太子〈乎〉輔導〈幾〉仕奉〈天、〉天下〈乎〉平〈介久〉令レ有〈與、◯下略〉

〔皇年代略記〕

〈後小松〉

p.0540 永徳二年四月十一日、受禪、〈六〉今日先立太子、不レ立二親王一、

爲親王不爲太子而受禪

〔續日本紀〕

〈六元明〉

p.0540 靈龜元年九月庚辰、天皇禪二位于氷高内親王一、〈◯元正〉

〔續日本紀〕

〈七元正〉

p.0540 靈龜元年九月庚辰、受レ禪即二位于大極殿一、
◯按ズルニ、元明天皇ノ皇太子ハ、聖武天皇ナレドモ、未ダ幼稚ナリシカバ、元正天皇ハ、太子ヲ越エテ直ニ受禪アリシナリ、

〔常永入道記〕

p.0540 應永十九年八月廿九日壬午、今日御讓位也、奉行頭右大辨藤原清長朝臣也、酉刻親王御方、〈◯稱光〉自二裏松亭一有レ渡二御土御門内裏一、室町殿〈◯足利義持〉爲二御同車一、有レ御二參彼亭一、公卿殿上人少々扈從、

〔椿葉記〕

p.0540 さてだいり〈◯後小松〉は御治天卅年、政務おぼしめすまヽにておりさせ給ふ、同十九年〈◯應永〉八月廿九日、一の宮〈◯稱光〉に御くらゐゆづり申さる、御治世はもとのごとくにて、よろづめでたく渡らせ給、

〔蔭凉軒日録〕

p.0541 寛正五年七月十七日、今晨就二十九日御即位一而、諸奉行各伺二庶事一、以二其繁多一不レ及レ伺二僧中之事一退出也、　十八日、明日四刻親王〈◯後土御門〉行二幸于御所一云々、依レ之忩々閣二餘事一也、　十九日、親王今日御二幸于御所一云々、是故今晨罷參也、四皷刻行二幸于禁裏一也、御所今日御宴、凡可レ有二七獻一云々、〈◯中略〉申刻出御、公方又御同車、小雨裛二輕塵一、而車馬僕從、紛冗改觀也、

〔大乘院寺社雜事記〕

p.0541 寛正五年六月廿七日、來月十九日御讓國云々、　七月十九日、今日親王〈◯後土御門〉自二日野大納言亭一渡御、〈御車八葉云々〉室町殿御一獻等在レ之、則入二御内裏御車庇一云々、御尻乘室町殿、左大臣於二内裏一一獻有レ之、室町殿則還御、八葉歟、今日御共公卿十人、各毛車云々、殿上人十二人云々、各騎馬、本内裏今者號二親王御所一、自二酉刻一於二内裏一節會、〈仙洞伏見殿〉號二今内裏一、御讓國儀毎事無爲無事、珍重々々、至二節會明日未刻一了、

〔續史愚抄〕

〈後花園〉

p.0541 寛正五年七月十九日庚午、主上〈御年四十八〉讓二位於儲皇三品成仁親王一〈無二立太子事一◯後土御門〉日也、於二東洞院殿一有二固關警固一、次被レ行二節會一、内辨右大臣、〈公有、雖レ末二拜賀一、遂著陣奉行、是中御門右大臣宗忠、後徳大寺左大臣實定等例云、〉次被レ渡二劒璽内侍所等於新主御所一、〈土御門殿〉今日先右大臣〈公有〉著陣、〈大臣後也、未二拜賀一、〉

〔御湯殿の上の日記〕

p.0541 天正十四年十一月七日、御じやうゐあり、しんわう〈◯後陽成〉の御かた、こよひより御所にならしまし候、めでたし〳〵、〈◯節略〉

疾病讓位

〔續日本紀〕

〈三十六光仁〉

p.0541 天應元年四月辛卯、詔云、〈◯中略〉朕以二寡薄一寳位〈乎〉受賜〈氐〉年久重〈奴、〉而〈爾〉嘉政頻闕〈氐、〉天下不レ得二治成一、加以元來風病〈爾〉苦〈都々〉身體不レ安、復年〈毛〉彌高成〈爾氐〉餘命不レ幾、今所念〈久〉此位〈波〉避〈天、〉暫間〈毛〉御體欲レ養〈止奈毛〉所念〈須、〉故是以皇太子〈止〉定賜〈留〉山部親王〈爾◯桓武〉天下政〈波〉授賜〈布、◯中略〉是日皇太子受レ禪即レ位、

〔日本後記〕

〈十七平城〉

p.0541 大同四年四月丙子朔、讀二經宮中一、又遣二使於京下諸寺一誦經、天皇自二從去春一、寢膳不レ安、遂禪二位於皇太弟一、〈◯嵯峨〉詔曰、現神等大八洲所知倭根子天皇〈我〉詔旨〈良末止〉勅御命〈乎〉親王等王等臣等百

p.0542 官〈乃〉人等天下公民衆聞食〈止〉宣、朕躬劣弱〈氐〉洪業〈爾〉不レ耐〈已止乎〉本自思畏〈利〉賜〈許止〉暫〈毛〉不レ息、加以朕躬元來風病〈爾〉苦〈都々〉身體不レ安〈志氐、〉經レ日累レ月〈氐〉萬機缺懈〈奴、〉今所念〈久〉此位〈波〉避〈天、〉一日片時〈毛〉御體欲レ養〈止奈毛〉所念〈須、〉故是以皇太弟〈止〉定賜〈流〉某親王〈爾◯嵯峨〉天下政〈波〉授賜〈布、〉諸衆此状〈乎〉悟、清直心〈乎毛知〉此皇子〈乎〉輔導〈伎、〉天下百姓〈乎〉可レ令二撫育一〈止〉勅、天皇御命〈乎〉衆聞食〈止〉宣、　戊寅、〈◯中略〉天皇遂傳レ位、

〔日本紀略〕

〈嵯峨〉

p.0542 弘仁十四年四月庚子、帝御二前殿一、引二今上一〈◯淳和〉曰、朕本諸公子也、始望不レ及レ於〈◯於下恐脱二此字一〉太上天皇〈◯平城〉曲垂二褒飭一超登二儲貳一、遂遜二位于朕躬一、辭不レ獲レ免、日愼二一日一、未レ幾而身嬰二疹疾一、彌留不レ瘳、爲二萬機擁滯一、令三右大臣藤原朝臣國人奉二還神璽一、朕始有二歸閑之志一、太上天皇不レ允レ所レ請、在位十有六年、與二太弟一周旋年久、仍欲レ傳二位於太弟一、已經二數年一、今果二宿志一、宜レ知レ之、今上抗レ表陳讓、帝遂不レ許、〈◯節略〉

〔續日本後紀〕

〈一仁明〉

p.0542 天長十年二月乙酉、皇帝〈◯淳和〉於二淳和院一讓二位于皇太子一、〈◯仁明〉詔曰、現神〈止〉大八洲國所知倭根子天皇〈我〉詔〈良萬止〉勅御命〈乎〉親王諸王諸臣百官〈乃〉人等天下公民衆諸聞食〈止〉宣、太上天皇〈◯嵯峨〉朕〈我〉不徳〈乎〉不二棄賜一〈志天〉寳位〈乎〉授賜〈閇理、〉忝鍾二重睠一〈氐〉日日畏愼〈太麻布、〉春秋〈乃〉往隨〈爾〉舊疹〈毛〉稍發〈流〉故、機務〈乃〉暫〈毛〉虧怠〈牟許止乎〉恐賜〈氐〉朝夕煩懷念〈須許止〉久矣、今念行〈佐久〉皇太子〈止〉定〈太流〉正良親王賢明夙彰〈禮、〉仁孝〈毛〉兼厚〈久之天、〉太能毛之久於太比之久在、是以撫二安國家一〈牟止之天〉此位〈乎〉授賜〈布、◯中略〉天皇〈我〉勅旨〈乎〉衆聞食〈止〉宣、

〔三代實録〕

〈二十九清和〉

p.0542 貞觀十八年十一月廿九日壬寅、〈◯中略〉是日天皇讓二位於皇太子一、〈◯陽成〉勅二右大臣從二位兼行左近衞大將藤原朝臣基經一、保二輔幼主一、攝二行天子之政一、如二忠仁公故事一、詔曰、〈◯中略〉朕以二薄徳一〈天〉天日嗣〈乎〉忝〈之〉賜〈倍利、〉日夜無レ間〈久〉愼畏〈利〉御坐〈須、〉而君臨漸久〈久〉年月改隨〈爾、〉熱病頻發〈利〉御體疲弱〈之天〉不レ堪レ聽二朝政一、加以比年之間災異繁見〈天〉天下無レ寧〈之、〉此〈乎〉毎レ思〈爾〉憂傷彌甚〈之、〉是以此位〈乎〉脱屣〈天〉御病〈乎〉治賜〈比、〉國家〈乃〉災害〈乎毛〉鎭〈女〉息〈無止〉念行〈須己止〉年久〈奈利奴、〉然〈止毛〉皇太子〈乃〉成人〈乎〉侍賜〈布止〉爲〈天奈無〉于レ今經二數年一〈奴止、〉今所思〈波〉朕〈毛〉昔以二幼穉一〈天〉得レ鍾二此位一〈利、〉賢臣〈乃〉保佐〈爾〉頼〈天〉得レ至二於今日一〈利、〉然則良佐〈乃〉翼載

p.0543 〈波〉皇太子〈乃〉大成〈己止〉何遠之有〈牟止〉念行〈須、〉故是以皇太子〈止〉定〈多留〉貞明親王〈爾〉此位〈乎〉授賜〈布、◯下略〉

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

p.0543 延長八年八月廿五日、右大臣於二天台山一令レ讀二金剛般若經一百卷一、依レ祈二御不豫一也、　九月廿二日壬午、天皇逃レ位讓二於皇太子寛明親王一、〈◯朱雀、中略、〉　廿七日丁亥、先帝欲レ遷二坐朱雀院一之間、御病甚重、移二坐右近衞府大將曹司一、

〔扶桑略記〕

〈二十四醍醐〉

p.0543 裏書、延長八年九月廿二日壬午、有二讓位事一、左大臣貞信公在二陣座一、右大臣定方起座爲二内辨一、中納言恒佐爲二宣命使一、依二御藥急一俄有二此事一、人々拭レ淚、宣制後、大臣已下退下閉二諸門一、掌侍藤灌子同朋子等參二麗景殿一、贈二璽綬劒笏、并服御物等一、爲レ忌二方角一、自二常寧殿一還二御此殿一、參二宜陽殿一奉レ授二新帝一、〈◯朱雀〉爲レ避二方忌一先御二此殿一、亥時事了、新帝自二宜陽殿一遷二御弘徽殿一、

〔榮花物語〕

〈一月宴〉

p.0543 御ものヽけ、いとおどろ〳〵しうおはしませば、さるべき殿上人とのばら、たゆまずよるひるさぶらひ給、いとけおそろしくおはしますに、けふおりさせ給ふ、あすおりさせ給ふとのみ、きヽにくヽ申思へるに、みかどヽいふものは一たびはのどかに、一たびはとくおりさせ給ふといふことも、必あるべきことに申思へるに、ことしは安和二年とぞいふめるに、位にて三とせにこそはならせ給ぬれば、いかなるべき御ありさまにかとのみ見えさせ給へり、〈◯中略〉はかなく月日もすぎて、ことかぎりあるにや、みかど〈◯冷泉〉おりさせ給とてのヽしる、安和二年八月十三日なり、みかどおりさせ給ぬれば東宮〈◯圓融〉位につかせ給ぬ、

〔榮花物語〕

〈二花山〉

p.0543 かヽるほどに年號もかはりて永觀元年といふ、うへ〈◯圓融〉今はいかでおりなんとのみおぼさるヽうちに、御ものヽけもおそろしうしげうおこらせ給ふにも、冷泉院はなほ例の御心はすくなくて、あさましくてのみすぐさせ給ふに、はかなくて永觀二年になりぬ、ことしだにかならずとおぼしめして、人しれずさるべきやうにおぼしめさるべし、かくて八月になりぬれば、廿七日御讓位とてのヽしる、その日になりぬれば、みかどおりさせ給ぬ、東宮〈◯花山〉は位につ

p.0544 かせ給ぬ、〈◯節略〉

〔日本紀略〕

〈十一一條〉

p.0544 寛弘八年五月廿二日乙未、天皇始不豫、　廿七日庚子、有二御藥事一、諸卿參入、　廿八日辛丑、詔大二赦天下一、大辟以下罪咸赦除、依二御藥一也、　六月二日甲辰、太子〈◯三條〉參二覲内裏一之間、龍顏嚴、公卿侍臣莫レ不レ拭レ涙、　十三日乙卯、有二御讓位事一、午刻宣命云、皇太子座定賜〈ヘ〉居貞親王〈仁〉天日嗣〈遠〉授賜〈布、〉敦成親王立〈天〉皇太子〈止〉定賜〈布、〉新帝上表陳謝、　十四日丙辰、太上皇御腦甚重、　十九日辛酉、辰刻太上皇落髮入道、入レ辰之時雖レ可二避忌一、御腦危急遂二叡念一也、

〔權記〕

p.0544 寛弘八年五月廿七日庚子、參内、爲二御腦消除一、自二今日一限二三日一、仁王經不斷經御讀經被レ行、御讀經未レ始之前、有レ召候二御前一、仰云、可二讓位一之由一定已成、於二大盤所邊一、女房等有二悲泣之聲一、驚問、兵衞典侍云、御腦雖レ非二殊重一、忽可レ有二時代之變一云々、仍女官愁歎也、此間主上出二御晝御座一蒙レ仰、以レ有二難レ忍之事等一、今朝左大臣參二東宮一、被レ申二御讓位案内一云々、此事自レ昨所レ發也云々、匡衡朝臣易筮曰、豐之二明夷一、豐卦不快云々、占者相示云、此卦延喜〈◯醍醐〉天暦〈◯村上〉御藥共所レ遇也、加之今年當二移變之年一、殊可二愼御一之由共春所レ奏也云々、此等旨左大臣覺悟、於二二間一與二權僧正一見二占文一、共以泣涕、于時上御二夜大殿内一、自二御几帳帷綻一、御二覽此事一、有二疑思之事一、〈御病重、因可レ有二大故一歟之趣也、〉即御腦彌令レ重給、于時有二此遜位之儀一云々、依二昨重日一、今朝達二此案内一云々、後聞此案内爲レ達二東宮一、自二御前一被レ參之道、經一上御廬之前一、縱雖レ承二此議一、非レ可レ云二何事一之、是大事也、若無二隔心一可レ被レ示也、而爲二隱秘一無下被二示告一之趣上云々、此間事雖二甚多一、不レ能二子細一之耳、〈◯節略〉

〔百練抄〕

〈四一條〉

p.0544 寛弘八年六月十三日、讓二位於皇太子一、依二御腦一也、於二一條院一有二此儀一、新帝〈◯三條〉即渡二御東三條第一、

〔榮花物語〕

〈九石蔭〉

p.0544 かくて御かど、〈◯一條〉いかでおりさせ給なむとのみおぼしの給はすれど、殿〈◯藤原道長〉の御まへゆるし聞えさせ給はぬ程に、れいならずなやましうおはしまして、いかなることにかとおぼして御つヽしみあり、まめやかにくるしうおぼしめさるれば、これよりおもらせ給やう

p.0545 もこそあれと、なにごともおぼしわかざるほどに、いかでともかくもと思しめさる、御物のけなどさま〴〵しげきさま也、この頃一條院にぞおはします、夏の事なれば、さらぬ人だにやすくもあらぬに、いみじうくるしげにおはしますも、見奉りつかうまつる人やすくもあらずなげく、六月七八九日〈◯寛弘八年〉の程なり、いまはかくておりゐなむとおぼすを、さるべきさまにおきて給へとおほせらるれば、殿うけたまはらせ給て、春宮〈◯三條〉に御たいめんこそは例の事なれとて、思しおきてさせ給程に、東宮行啓あり、みすごしに御たいめありて、あるべき事ども申させ給、よにはおどろ〳〵しうきこえさせつれど、いとさはやかによろづの事聞えさせ給へば、世の人のそらごとをもしけるかなと宮はおぼさるべし、おほかたの御まつりごとにも、とし頃したしくなど侍りつるをのこどもに御ようい有べきものなり、みだり心ちおこたるまでも、ほいとげはべりなんとし侍り、またさらぬにてもあるべき心ちもし侍らずなど、さま〴〵あはれに申させ給ふ、春宮も御目のごはせ給べし、さてかへらせ給ぬ、うへは御心ちのくるしうおぼえさせ給まヽにも、みやの御まへをまつはし聞えさせ給へば、かたときたちさり聞え給はず、いとくるしげにおはします、御讓位六月十三日なり、十四日より御こヽちおもらせ給ふ、〈◯節略〉

〔百練抄〕

〈四後朱雀〉

p.0545 寛徳二年正月十六日、讓二位於皇太子一、〈◯後冷泉〉依下自二去年冬一玉體不豫上也、

〔榮花物語〕

〈三十六根合〉

p.0545 内〈◯後朱雀〉の御にきみの事、なほおこたらせ〈◯原本作二おもらせ一、據二一本一攺、〉給はねば、いかにとむづかしう覺しめす、ついたちのありさまなどおなじ事也、日ごろのすぐるまヽに、なほ水などいさせ給てやよからんと申せば、其さほふの御しつらひしていたてまつる、いとさむきころたへがたげにみえさせ給、〈◯中略〉寛徳二年正月十六日に位ゆづりの事ありて、春宮〈◯後冷泉〉わたらせ給、絲毛にて參らせ給、いといみじき御ありさまを、よそにおぼしめしつるよりもいみじうかなしくおぼしめさる、いみじうなかせ給へば、かくななき給そ、上東門院〈◯彰子〉によくつかうまつり給へ、二

p.0546 の宮〈◯後三條〉思ひへだてずおぼせなど申させ給へば、御かほに袖をおしあてヽおはします、ときなりぬと申せどとみにもえうごかせ給はず、内侍御はかしのはこ給はすれば、かみあげてとる、心ちいみじうて、つヽみもあへずまが〴〵しとてさいなむ、水はたてまつればいとたへがたし、この世にてだにしばしやすめよとおほせらる、いみじうかなし、いたく夜ふけてかへらせ給、上達部殿上人さながらつかうまつり給、おなじ事なる御事なれど、御車にておはしましつるを、御輿にてかへらせ給いみじうめでたし、

〔榮花物語〕

〈三十八松の下枝〉

p.0546 しはすの八日〈◯延久四年〉おりさせ給、〈◯後三條〉このちかく成てはおもくわづらはせ給て、おりさせ給にいと哀なり、あひもおもはぬなど、弘徽殿の壁に伊勢がかきつけけんなどおもひいでられて、なに事にもめのみとまる、おりさせ給て弘徽殿におはしまして、十六日にこそ、關白〈◯藤原教通〉どのヽおはします、二條殿にいでさせ給ぬる、

〔百練抄〕

〈七二條〉

p.0546 永萬元年六月廿五日、讓二位於第二親王順仁一、〈◯六條〉先雖レ可レ有二立坊一、依二主上御不豫危急一、俄有二此儀一、

〔續世繼〕

〈三花園の匂ひ〉

p.0546 廿三におはしましヽ御とし、御やまひおもくて、わか宮〈◯六條〉にゆづり申させ給て、いくばくもおはしまさヾりき、よき人はときよにもおはせ給はで、久しくもおはしまさヾりけるにや、末の世いとくちをしく、みかどの御くらゐはかぎりある事なれど、あまりよをとくうけとりておはしましけるにや、又太上天皇てうにのぞませ給つねの事なるに、御心にもかなはせ給はず、よのみだれなほさせ給ほどといひながら、あまりにはべりけるにや、よくおはしましヽみかどとて、よもをしみたてまつるときこえ侍る、二條院とぞ申すなる、

〔玉海〕

p.0546 治承四年二月五日丁亥、基輔自二内裏一退出云、主上〈◯高倉〉聊御風氣御云云、　十五日丁酉、晩頭參内、余參二御所一謁二女房一、御不豫事猶以不快、然而明日行幸、必可レ然之由叡慮一決了、萬人可二延引一之由雖二

p.0547 計奏一、更以無二御承引一云々、及二亥刻一退出了、　廿一日癸卯、此日有二讓位事一、〈◯節略〉

〔源平盛衰記〕

〈十二〉

p.0547 主上鳥羽御籠居御歎事
主上〈◯高倉〉ハ臣下ノカク成ヲダニモ不便ノ事ニ歎キ思食ケルニ、法皇〈◯後白河〉ノ御事聞召テハ不レ斜御歎キ有テ、何事モオボシ召入ヌ御有様ニテ、日ヲ經ツヽハカ〴〵シク貢御モ進ズ、打解御寢モナラ〈◯ヲ下恐脱二ネ字一〉バ御心地惱シトテ、常ハ夜ノオトヾニ入セ御坐タレバ、后宮ヲ始進セテ、近ク候ハレケル女房達モ心苦ク見進ケル、内ヨリ鳥羽殿ヘ御書アリ、世モカクナリ、君モ左様ニ御坐ン上ハ、位ニ候テモ何ニカハ仕ベキ、花山法皇ノ御坐ケン様ニ、國ヲ捨、家ヲ出テ、山々寺々ヲモ修行セント思食トマデ申サセ給、〈◯下略〉
◯按ズルニ、此他三條後堀河等ノ天皇ハ、災異ト疾病トヲ以テ御讓位アリ、故ニ之ヲ災異讓位ノ條ニ收メタリ、就テ看ルベシ、

臨終讓位

〔日本書紀〕

〈十八安閑〉

p.0547 二十五年二月丁未、男大迹天皇〈◯繼體〉立二大兄一〈◯安閑〉爲二天皇一、即日男大迹天皇崩、

〔神皇正統記〕

〈後醍醐〉

p.0547 さても八月の十日あまり六日〈◯延元四年〉にや、秋霧におかされさせ給ひて、かくれまし〳〵ぬとぞ聞えし、〈◯中略〉かねて時をもさとらしめ給ふにや、前の夜より親王〈◯後村上〉をば左大臣〈◯藤原經忠〉の第へうつしたてまつられて、三種の神器をつたへ申さる、後の號をば仰のまヽにて、後醍醐の天皇と申す、

〔吉野拾遺〕

〈上〉

p.0547 同じ八月〈◯延元四年〉のはじめごろより、秋霧にをかされさせ給ひけるが、かねて時をもしろしめしけるにや、同十五日の夜親王〈◯後村上〉を左大臣經忠公の亭にうつし奉らせ給ひ、三種の御たからを讓りおはしまし、御行末のこといとこまやかに仰せ置れて、御劒と法華經とを左右の御手にものし給ひ、いざよひの月と共に雲隱れさせ給ひけるに、附從ひ奉りし人々は、たヾ闇路にまよふこヽちなんし給ひける、

〔太平記〕

〈二十一〉

p.0548 先帝崩御事
南朝年號延元三年八月九日ヨリ、吉野主上〈◯後醍醐〉御不豫ノ御事有ケルガ、次第ニ重ラセ給フ、〈◯中略〉玉體日々ニ消エテ、晏駕ノ期遠カラジト見エ給ケレバ、大塔忠雲僧正御枕ニ近付奉テ、泪ヲ押ヘテ申サレケルハ、〈◯中略〉萬歳ノ後ノ御事、萬叡慮ニ懸リ候ハン事ヲバ悉ク仰置レ候テ、後生善所ノ望ヲノミ叡心ニ懸ラレ候ベシト申サレタリケレバ、主上苦シゲナル御息ヲ吐セ給ヒテ、〈◯中略〉只生々世々ノ妄念共ナルベキハ、朝敵ヲ悉亡シテ、四海ヲ令二泰平一ト思計ナリ、朕則早世ノ後ハ、第七〈◯七恐八誤〉ノ宮ヲ天子ノ位ニ即奉テ、賢士忠臣事ヲ謀リ、義貞義助ガ忠功ヲ賞シテ、子孫不義ノ行ナクバ、股肱ノ臣トシテ天下ヲ鎭ムベシ、思レ之故ニ、玉骨ハ縱南山ノ苔ニ埋モルトモ、魂魄ハ常ニ北闕ノ天ヲ望ント思フ、若命ヲ背キ義ヲ輕ゼバ、君モ繼體ノ君ニ非ズ、臣モ忠烈ノ臣ニ非ジト、委細ニ綸言ヲ殘サレテ、左ノ御手ニ法華經ノ五ノ卷ヲ持セ給ヒ、右ノ御手ニハ御劒ヲ按ジテ、八月十六日ノ丑ノ刻ニ遂ニ崩御成ニケリ、

衰老讓位

〔續日本紀〕

〈六元明〉

p.0548 靈龜元年九月庚辰、天皇禪二位于氷高内親王一、〈◯元正〉詔曰、乾道統レ天文明、於レ是馭レ暦、大寳曰レ位、宸極所二以居一レ尊、昔者揖讓之君、旁求歴試、干戈之主、繼レ體承レ基、貽二厥後昆一、克隆二鼎祚一、朕君二臨天下一、撫二育黎元一、蒙二上天之保休一、頼二祖宗之遺慶一、海内晏靜、區夏安寧、然而兢々之志、夙夜不レ怠、翼々之情、日愼二一日一、憂二勞庶政一、九二載于茲一、今精華漸衰、耄期斯倦、深求二閑逸一、高踏二風雲一、釋レ累遺レ塵、將レ同二脱屣一、因以二此神器一欲レ讓二皇太子一、〈◯聖武〉而年齒幼稚、未レ離二深宮一、庶務多端、一日萬機、一品氷高内親王、早叶二祥符一、夙彰二徳音一、天縱寛仁、沉靜婉㜻、華夏載仰、謳訟知レ歸、今傳二皇帝位於内親王一、公卿百寮、宜三悉祗奉以稱二朕意一焉、

〔續史愚抄〕

〈正親町〉

p.0548 天正十四年十一月七日戊戌、天皇〈御年七十〉讓二位于皇孫二品和仁親王一、〈（後陽成）於二土御門里内一也〉先有二召仰及日時定一、次被レ行二警固固關一、已上上卿右大臣、〈晴季〉次有二節會一、次行事新殿、〈稱二下御所一、後年號二櫻町殿一也、〉祭主神祇權大副慶忠奉仕、大殿祭如レ恒、次被レ渡二劒璽于土御門殿一、〈新主御所〉

p.0549 ◯按ズルニ、此他疾病ト衰老トヲ以テ御讓位アリシモノ、光仁天皇アリ、疾病讓位ノ條參看スベシ、

崩後讓位

〔日本紀略〕

〈十四後一條〉

p.0549 長元九年四月六日甲寅、上東門院〈◯後一條母后彰子〉入内、依二天皇〈◯後一條〉不豫一也、　十七日乙丑、戌刻天皇落飾、崩二于清凉殿一春秋廿九、在位廿年〈去三月以來、御體不豫、〉子刻諸卿近衞、以二璽劒一奉二皇太子〈◯後朱雀〉於昭陽舍一依レ有二遺詔一暫秘二喪事一、以二如在之儀一、今日讓二位於皇太弟一、〈大床子、并小御厨子、時簡殿上御倚子等、運二新帝御所一、〉

〔一代要記〕

〈六後一條〉

p.0549 長元九年三月中旬以後、聖體不豫、　四月十七日乙丑、亥時崩二于清凉殿一、年廿九、子刻公卿、令レ持二璽劒於近衞次將一參二皇太弟一、依レ有二遺詔一暫秘二喪事一、以二如在之儀一、行二揖讓一云々、三十日、奉レ遷二上皇於上東門院一、

〔榮花物語〕

〈三十三きるは佗しと歎女房〉

p.0549 内〈◯後一條〉の御なやみ、日をへておもらせ給て、四月十五日〈◯長元九年〉ばかりより、日ごとにたえいらせ給、女院〈◯彰子〉中宮〈◯妍子〉涙にくれておはします、〈◯中略〉つひに四月十七日のゆふかたうせさせ給ぬれば、所がら院も宮もおなじさまにておはしませば、きこえさせわづらひて、かくてのみはいかでかとて、御せうとの殿ばらぞ、しもの御つぼねに、御そにおしくくみてゐておろしたてまつらせ給、いましばしだにのどかに見たてまつらせ給べきを、御心にもあらず、いみじうおぼしまどはせ給、御こえもり聞えつヽいといみじ、世中ゆすりみちたるここちするに、たしかに聞えさする人もなけれど、一品宮〈◯修子〉のをさなげになかせ給もいみじうあはれなり、いつのまにか東宮〈◯後朱雀〉の御かたには除目ありて、頭五位藏人六位藏人などよろづにみな師子こまいぬ、ひのみづし、御はかしなどわたり、ひきかへたるありさま夢の心ちなむしける、れいのさほふに御めのとごども、のりたふのいよのかみ、たねつな、のりふさ、よしみちなど、つかうまつる心ちども思やるべし、かねふさの中宮の亮、いひつヾけてなく聲のおどろ〳〵しきもあはれなり、むかしはかく位にてうせさせ給は、まさなき事おほく、ところせかりけれど、今

p.0550 のよはさるきびしき事もなし、

〔續世繼〕

〈一子日〉

p.0550 同じき九年〈◯長元〉やよひの十日あまりのほどより、うへ〈◯後一條〉の御なやみときこえさせ給ひて、神々にみてぐら奉らせ給へる、さまざまの御いのりきこえ侍りき、殿上人御つかひにて、左右の御むまなどひかれ侍りけり、御年みそぢにだに今ひとつたらせ給はぬいとあたらし、されど廿年たもたせ給ふ、末の世にありがたくきこえさせ給ひき、まだおはしますありさまにて、御おとうとの東宮〈◯後朱雀〉に位ゆづり申させ給ふさまなりけり、後の御事よそほしかるべきによりて、位おりさせたまふ心なるべし、

〔百練抄〕

〈四後冷泉〉

p.0550 治暦四年二月以後、聖體不豫、有二御祈等一、〈◯中略〉四月十九日、天皇崩二于高陽院一、〈四十四〉左大臣〈◯藤原教道〉以下參入、獻二劒璽東宮一、〈閑院◯後三條〉如在禮也、

災異讓位

〔日本紀略〕

〈十二三條〉

p.0550 長和三年二月九日乙丑、今夜亥刻火起二登華殿一、殿舍多皆以爲二灰燼一、天皇并中宮春宮御二大極殿一、此間左大臣〈◯藤原道長〉騎馬、馳入レ自二陽明門一被レ申云々、渡二御太政官朝所一、仍御二此所一、　十二月二日甲寅、内裏上棟也、長和四年九月廿日丁卯、天皇自二左大臣枇杷第一入二御新造内裏一、　十一月十七日癸亥、戌刻内裏燒亡、火起レ自二主殿寮一、内侍所天皇后宮御二桂芳坊一、次遷二御太政官松本曹司一、　長和五年正月廿九日甲戌、天皇於二枇杷第一、讓二位於皇太子一、〈◯後一條〉

〔榮花物語〕

〈十二玉の村菊〉

p.0550 さていらせ給ひて、日ごろおはします程に、御物忌なる日、皇后宮の御湯殿つかうまつりけるに、いかヾしけんその火いできてうちやけぬ、かヽることは、さてもよるなどこそあれ、晝なればいとかたはらいたく、心あわたヾしきこと多かり、よるひるきびしく仰せられて、急ぎ造りみがきていらせ給ひて、一月にだにならぬにかヽることはあるものか、これにつけてもみかど、〈◯三條〉世の中を心ぼそくおぼしめさるヽことかぎりなし、うへはおりさせ給はんとて、かく急がせ給ひしかども、すべて心うくかヽる事のあるをぞ、うちの燒ることは度々なり、一

p.0551 條院の御時などたび〳〵なりしかど、此度のやうにあへなきやうなし、おりさせ給はんことも、ためしにもなりぬべきことをおぼしめすことわりになん、かヽるほどに御こヽち例ならずのみおはします、うちにもものヽさとしなど、うたてあるまであれば、御物忌がちなり、年はいくばくもあらねば、こヽろあわたヾしきやうなれど、いと惱ましくおぼしめさるヽにぞ、いかにせましとおぼしやすらはせ給ふ、しはすの十よ日、月のいみじうあかきに、うへの御局にて、宮のおまへに申させ給ふ、
心にもあらでうき世にながらへば戀しかるべきよはの月哉、長和五年正月十九日御讓位、〈◯節略〉

〔百練抄〕

〈十三後堀河〉

p.0551 貞永元年十月二日、於二前關白〈◯藤原道家〉里第一被レ定二讓位事一、依二應徳〈◯白河〉例一也、權中納言定家注二出寛平國史一、今度依レ可レ追二彼例一云々、　四日、有二讓位事一、依二彗星之變爲一レ攘也、

〔増鏡〕

〈三藤衣〉

p.0551 貞永元年になりぬ、十月四日おりゐさせ給ふ、御なやみおもきによりてなりけり、こぞの二月、后の宮の御腹に、一の御子〈◯四條〉いでき給へりしかば、やがて太子に立せ給ひしぞかし、うへ〈◯後堀河〉はおりさせ給ひて、その七日やがて尊號あり、御なやみ猶おこたらず、大かた世も靜ならず、この三年ばかりは天變しきり、なゐふりなどしてさとししげく、御つヽしみおもきやうなれば、いかヾおはしまさんと、御心どもさわぐべし、〈◯節略〉

〔増鏡〕

〈八飛鳥川〉

p.0551 大かた今年〈◯文永十年〉は、なゐしげくふり、世の中さわがしきやうなれば、つヽしみおぼされて、十月十五日より、圓滿院の二品親王内にさぶらひ給ひて、尊星王の御修法つとめたまふに、廿日のよひ、二の對より火いできたり、あさましともいはむかたなし、上下立騷ぎのヽしるさま思ひやるべし、〈◯中略〉上〈◯龜山〉は腰輿にて押小路殿へ行幸なりぬ、法親王は修法のつよきゆゑに、かヽる事はあるなりとぞのたまはせける、この四月に御わたましありつるに、いくほどなうか

p.0552 かるは、げにいみじきわざなれど、むかしも三條院位の御時かとよ、大内造りたてられて、御わたましの夜こそ、やがて火いで來て燒にしこともあれば、これより重き大事もあるべかりけるに、かはりたらんはいかヾせん、かくてことしもくれぬ、上はいよ〳〵世の中心あわたヾしうおぼされて、おりゐなんの御心づかひすめり、

〔皇年代略記〕

〈龜山〉

p.0552 文永十一年正月廿六日、讓二位於皇太子一、〈◯後宇多〉
◯按ズルニ、此他清和天皇ハ、疾病ト災異トヲ以テ御讓位アリシカバ、之ヲ疾病讓位ノ條ニ收メ、土御門天皇ハ、災異ヲ以テ御讓位アリシカドモ、其實ハ後鳥羽上皇ノ意ニ出シモノナレバ、之ヲ讓位出父祖意ノ條ニ收メ、後西院天皇モ、亦災異ノ爲メニ御讓位アリシカドモ、徳川氏ノ進奏ニ出デタルモノナレバ、之ヲ讓位出權臣意ノ條ニ收メタリ、

讓位便事

〔續日本紀〕

〈二十一淳仁〉

p.0552 天平寳字二年八月庚子朔、高野天皇〈◯孝謙〉禪二位於皇太子一、〈◯淳仁〉詔曰、〈◯中略〉然皇〈止〉坐〈氐〉天下政〈乎〉聞看事者、勞〈岐〉重〈棄〉事〈爾〉在〈家利、〉年長〈久〉日多〈久〉此座坐〈波、〉荷重力弱〈之氐〉不レ堪二負荷一、加以掛畏朕婆々皇太后朝〈爾母〉人子之理〈爾〉不レ得二定省一〈波〉朕情〈母〉日夜不レ安、是以此位避〈氐〉間〈乃〉人〈爾〉在〈氐之〉如レ理婆婆〈爾波〉仕奉〈倍自止〉所念行〈氐奈母〉日嗣〈止〉定賜〈幣流〉皇太子〈爾〉授賜〈久止〉宣天皇御命衆聞食宣、

〔愚管抄〕

〈四〉

p.0552 さて世のすゑの大なる變りめは、後三條院の世のすゑに、ひとへに臣下のまヽにて、攝籙臣世をとりて、内は幽玄のさかひにておはしまさん事、末代に人の意はおだしからず、脱屣の後太上天皇とて、政をせぬならひはあしき事なりと思召て、かた〴〵の道理さしもやは思召けん、委しくは知らねども、道理のいたりよも叡慮にのこる事あらじ、昔は君は政理かしこく、攝籙の人は一念わたくしなくてこそあれ、世のすゑには君はわかくて、幼主がちにて、四十にあまらせ給ふは聞えず、御政理さしもなし、宇治殿〈◯藤原頼通〉などはおほくわたくし有とこそは御覽じけめ、太上天皇にて世をしらん、當今はみな我子にてこそあらんずればと思召ける間に、ほどなく

p.0553 位をおりさせ給て、延久四年十二月八日、御讓位にて、〈◯中略〉五月七日、御年四十にてうせさせ給にけり、

〔續世繼〕

〈三内宴〉

p.0553 かくて保元三年八月十六日、〈◯十六日、恐十一日誤、〉くらゐをとうぐう〈◯二條〉にゆづり申させ給、位におはしますこと三年なりき、〈◯後白河〉おりゐのみかどにて、御心のまヽに世をまつりごたんとおもほしめすなるべし、

〔増鏡〕

〈一おどろの下〉

p.0553 建久九年正月第一の御子〈土御門院〉四になり給に、御くらゐゆづり申させ給ておりゐ給ふ、〈◯後鳥羽〉位におはします事十五年なりき、けふあすはたちばかりの御よはひにて、いとまだしかるべき御事なれども、よろづ所せき御ありさまよりは、中々やすらかに、御幸など御心のままならんとにや、世をしろしめすことは、いまもかはらねばいとめでたし、

〔百練抄〕

〈十二順徳〉

p.0553 承久三年四月二日丙辰、被レ立二三社奉幣使一、宣命趣世人成二不審一歟、　八日壬戌、及レ晩洛中物忩也、重事已相定云々、　廿日甲戌、今日有二御讓位事一、〈◯中略〉皇太子〈懷成◯仲恭〉御二閑院一被レ渡二劒璽一、新攝政已下諸卿相二從之一、

〔神皇正統記〕

〈仲恭〉

p.0553 承久三年春の比より、上皇〈◯後鳥羽〉おぼしめし立事ありければ、俄に讓國し給ふ、順徳御身をかろめて合戰の事をも一つ御心にせさせ給はん御はかりごとにや、新主〈◯仲恭〉に讓位ありしかど、即位登壇までもなくて軍やぶれしかば、外舅攝政道家の大臣の九條の第へのがれさせ給ふ、三種の神器をば閑院の内裏にすておかれにき、

讓位出父祖意

〔大鏡〕

〈八〉

p.0553 朱雀院の母、〈◯穩子〉いうにおはしますとこそはいはれさせ給ひしかども、將門が亂などいできて、おそれすぐさせおはしましヽほどに、やがてかはらせ給ひにしぞかし、そのほどの事のありさまこそいとあやしう侍りけれ、母后の御もとに行幸せさせ給へりしを、かヽる御ありさまの思ふやうにめでたくうれしき事など奏せさせ給ひて、今は春宮〈◯村上〉ぞかくて見きこえさ

p.0554 せまほしきと申させ給ひけるに、心もとなく、いそぎおぼしめす事にこそありけれとて、ほどなくゆづりきこえさせ給ひけるに、きさいの宮はさ思ひても申さヾりし事をたヾゆくすゑの事をこそ思ひしかとて、いみじくなかせ給ひけり、さておりさせ給ひて後、人々のなげきけるを御らんじて、院〈◯朱雀〉より后宮にきこえさせ給へりし、くにゆづりの日、
　日のひかりいでそふけふのしぐるヽはいづれのかたのやまべなるらん、きさいのみやの御返し、
　しらくものおりゐるかたやしぐるらんおなじみ山のひかりながらに、などぞきこえ侍りし、
院は數月綾綺殿にこそはおはしましヽか、のちにはすこしくいおぼしめすことありて、位にかへりつかせ給ふ御いのりなどせさせ給ひけりとあるはまことにや、

〔續世繼〕

〈二八重の潮路〉

p.0554 もとの女院ふたところ〈◯鳥羽后待賢門院璋子、高陽院泰子、〉も、かた〴〵にかろからぬさまにおはしますに、いまの女院〈◯鳥羽后美福門院得子〉ときめかせ給て、このゑのみかどうみたてまつらせ給へる、東宮にたてまつりて、位ゆづりたてまつらせ給、その日たつの時より、かんだちめさま〴〵のつかさ〴〵まゐりあつまるに、内〈◯崇徳〉より院〈◯鳥羽〉にたび〴〵御つかひありて、藏人の中務少輔〈◯藤原師能〉とかいふ人かはる〴〵まゐり、又六位の藏人御書さヽげつヽまゐる程に、日くれがたにぞ神璽寳劒など、春宮〈◯近衞〉の御所昭陽舍へ、かんだちめひきつヾきてわたり給ける、〈◯中略〉いまのうち〈◯近衞〉には、職事殿上人などおほせくだされ、あるべきことヾもありて、新院〈◯崇徳〉は九日ぞ三條西洞院へわたらせ給、太上天皇の御尊號たてまつらせ給、

〔保元物語〕

〈一〉

p.0554 後白河院御即位事
保延五年五月十八日、美福門院御腹ニ皇子〈◯近衞〉御誕生アリシカバ、上皇〈◯鳥羽〉殊ニ悦思召テ、何シカ春宮ニ立給フ、永治元年十二月七日、三歳ニテ御即位アリ、依テ先帝〈◯崇徳〉ヲバ新院トゾ申ケル、

p.0555 先帝コトナル御恙モ渡ラセ給ハヌニ押オロシ給ヒケルコソ淺マシケレ、依テ一院〈◯鳥羽〉新院父子ノ御中快カラズトゾ聞エシ、誠ニ御心ナラズ御位ヲサラセ給ヘリ、

〔増鏡〕

〈一おどろの下〉

p.0555 永治のむかし、鳥羽の法皇しゆとく院の御心もゆかぬにおろし聞えて、近衞院をすゑたてまつり給ひし時は、御門〈◯崇徳〉いみじうしぶらせ給ひて、その夜になるまで、勅使をたび〴〵たてまゐらせ給ひて、内侍所けんじなどをもわたしかねさせ給へりしぞかし、さてその御いきどほりのすゑにてこそ、ほうげんのみだれもひきいで給へりし、

〔神皇正統記〕

〈六條〉

p.0555 諱は順仁、二條の太子、〈◯中略〉天下を治め給ふ事三年、上皇〈◯後白河〉世をしらせ給ひしは、二條の御門本より心よからぬ御事なりしゆゑにや、いつしか讓國の事ありき、御元服などもなくて、十三歳にて、世をはやくしまし〳〵き、

〔續世繼〕

〈三花園の匂ひ〉

p.0555 世をたもたせ給事、三年にやおはしますらむ、〈◯六條〉一院〈◯後白河〉おぼしめしおきつる事にて、とうぐう〈◯高倉〉に位をゆづり奉りて、まだおさなくおはしますに、太上天皇と申もいとやんごとなし、

〔玉海〕

p.0555 仁安三年二月十六日己酉、亥刻許或人告送云、來十九日可レ有二讓位事一、〈◯六條〉於二閑院一可レ有二其事一云云、　十七日庚戌、未刻許參二東宮一、相二合女房一談二讓位事等一、昨日俄出來事云々、上皇〈◯後白河〉有二思召事一、〈御出家事歟〉且因レ之令レ急給、
◯按ズルニ、此文ニ依レバ、後白河上皇將ニ出家セントシテ、六條天皇ノ御讓位ヲ急ニセラレシモノヽ如シ、

〔増鏡〕

〈一おどろの下〉

p.0555 承元二年になりぬ、十二月廿五日、二の宮〈◯順徳〉御かうぶりし給ふ、修明門院〈◯重子〉の御はらなり、この御子を、院〈◯後鳥羽〉かぎりなくかなしき物に思ひ聞えさせ給へれば、になくきよらをつくし、いつくしうもてかしづきたてまつり給事なのめならず、つひにおなじ四年十一月

p.0556 に御くらゐにつけたてまつり給、もとの御門〈◯土御門〉ことしこそ十六にならせ給へば、いまだはるかなるべき御さかりに、かヽるをいとあかずあはれとおぼされたり、永治のむかし、とばの法皇、しゆとく院の御心もゆかぬにおろし聞えて、近衞院をすゑたてまつり給ひし時は、御門いみじうしぶらせ給て、その夜になるまで、勅使をたび〴〵たてまゐらせ給へりしぞかし、さてその御いきどほりのすゑにてこそ、ほうげんのみだれもひきいで給へりしを、この御門はいとあてにおほどかなる御本上にて、おぼしむすぼヽれぬにはあらねども、けしきにももらし給はず、世にもいとあへなき事に思ひ申けり、承明門院〈◯母后在子〉などは、まいていとむねいたくおぼされけり、

〔神皇正統記〕

〈土御門〉

p.0556 此御門まさしき正嫡にて、御心ばえもたヾしく聞え給ひしに、上皇〈◯後鳥羽〉鍾愛にうつされましけるにや、程なく讓國あり、立太子までもあらぬさまになりにき、

〔六代勝事記〕

p.0556 阿波院天皇〈◯土御門〉は、隱岐院第一の子、〈◯中略〉在位十二年のあひだ、天地變異なく、雨降時をあやまたず、國をさまり民ゆたかなり、太上天皇〈◯後鳥羽〉威徳自在の樂にほこりて、萬方の撫育を忘れ給ひ、又近臣寵女の諫つよくして、四海の清濁をわかざるゆゑに、今上陛下〈◯土御門〉帝運いまだきはまり給はざるをおろし奉り、茅洞の風秋冷しく、茨山の月影さびしかりき、

〔承久軍物語〕

〈一〉

p.0556 承久四年十二月一日、上皇〈◯後鳥羽〉第三の皇子、守成のみこ〈◯順徳〉を御位につけ給ひて、第一の御子〈◯土御門〉をばおしこめ奉らしめ給ふ、これは當腹の御寵愛によつてなり、されば一院〈◯後鳥羽〉新院〈◯土御門〉御中よからずとぞ聞えし、

〔宮槐記〕

p.0556 承久四年十一月廿四日、早旦春宮宣旨送二書状一、可レ有二御讓位一之事云々、悦存之由返答畢、又自二別當之許一送二書状一此事也、風聞已送二年月一、今度決定歟、是災星〈彗星〉之所レ致レ之歟、但故擧二大事一被レ謝之趣也、非下任二天運一之儀上歟、　廿五日己酉、今日御讓位〈◯土御門〉也、可レ被レ渡二璽劒於皇太弟〈順徳〉御在所一云云、

〔愚管抄〕

〈六〉

p.0557 承久四年九月卅日、はヽき星とて、久しく絶たる天變の中に、第一の變と思ひたる彗星いでヽ、夜を重ねて久く消ざりけり、世の人いかなる事かとおそれたりけり、〈◯中略〉御つヽしみはいかヾとて有程に、同十一月十一日に、又出きにけり、そのたび司天のともがらも大に驚き思ひける程に、上皇〈◯後鳥羽〉信を出して御祈念など有けるに、御夢の告の有けるにやとぞ人は申ける、忽に御讓位の事を行はれて、承元四年十一月廿五日に受禪〈◯順徳〉の事ありけり、〈◯中略〉誠にも彗星この御讓位の事にて有ければにや、上皇の御つヽしみは、いともなくてやみにける也、
◯按ズルニ、後鳥羽天皇、久シク順徳天皇ノ受禪ヲ望ミ給フ、會彗星ノ變アリシカバ之ヲ以テ辭トシテ、土御門天皇ノ御讓位ヲ促シ給ヒシナリ、

〔梅松論〕

〈上〉

p.0557 爰に後嵯峨院、寛元年中に崩御の刻、遺勅に宣く、一の御子、後深草院御即位あるべし、おりゐの後は、長講堂領百八十ケ所を御領として、御子孫永く在位の望をやめらるべし、次に二の御子、龜山院御即位ありて、御治世は累代敢て斷絶あるべからず、子細有に依てなりと御遺命あり、依レ之後深草院御治世、寳治元年より正元元年に至までなり、

〔増鏡〕

〈六おりゐる雲〉

p.0557 そのとし〈◯正元元年〉の八月廿八日、春宮〈◯龜山〉十一にて御げんぶくし給、御いみな恒仁ときこゆ、世の中にやう〳〵ほのめきヽこゆる事あれば、御門〈◯後深草〉はあかず心ぼそうおぼされて、〈◯中略〉十一月廿六日、おりゐさせ給に、空のけしきさへあはれに雨うちそヽぎて、物がなしく見えければ、伊勢のごがあひも思はぬもヽしきを、といひけんふる事さへいまの心ちして、心ぼそくおぼゆ、うへもおぼしまうけ給へれど、劒璽のいでさせ給ほど、つねの御ゆきに御身をはなれざりつるならひ、十三年の御なごり、引わかるヽはなほいとあはれにしのびがたき御けしきを、かなしと見たてまつりて辨内侍、

p.0558 　いまはとておりゐる雲のしぐるれば心のうちぞかきくらしける

讓位出權臣意

〔小右記〕

p.0558 長和四年十月二日己卯、資平云、主上〈◯三條〉密々被レ仰云、日來左大臣〈◯藤原道長〉頻責二催讓位事一、大奇事也、又云、當時宮達不レ可レ立二東宮一、依レ不レ可レ堪二其器一、故院〈◯一條〉三宮〈◯後朱雀〉足レ爲二東宮一者、於二吾前一所レ定如レ此、左右思慮何爲、至レ今讓位事都思留了、〈◯中略〉　十一月十八日甲子、〈◯中略〉資平密語云、今朝左府被レ責二申御讓位事一、而唯今不レ閑思定、可二左右一之由有二仰事一、是今朝所レ被レ仰也、

〔日本紀略〕

〈十二三條〉

p.0558 長和五年正月廿九日甲戌、天皇於二枇杷第一、讓二位於皇太子一、〈◯後一條〉天皇春秋卌一、在位五年、太子年九、令三左大臣藤原朝臣〈◯道長〉攝二行政事一、如二忠仁公〈◯藤原良房〉故事一、
◯按ズルニ、小右記ノ文ニヨレバ、三條天皇ノ御讓位ハ權臣ノ意ニ出タル如クナレドモ、榮花物語等ニハ、災異ト疾病トヲ以テ御讓位アリシ如ク記セリ、ナホ災異讓位ノ條ヲ參看スベシ、

〔神皇正統記〕

〈龜山〉

p.0558 後嵯峨かくれさせ給ひてのち、兄弟〈◯後深草、龜山、〉の御あはひに、あらそはせたまふ事ありければ、關東より母儀大宮院〈◯後嵯峨后〉にたづね申けるに、先院〈◯後嵯峨〉の御素意は、當今にましますよしを仰つかはされければ、事さだまりて禁中にて政務せさせ給ふ、天下を治め給ふ事十五年、太子にゆづりて尊號れいのごとし、

〔皇年代略記〕

〈龜山〉

p.0558 正元元年十一月廿六日甲午、受禪、〈十一〉

〔伏見院御記〕

p.0558 弘安十年十月廿一日戊寅、今日讓位〈◯後宇多〉也、去十二日自二關東一依レ申也、

〔増鏡〕

〈十老の波〉

p.0558 弘安も十年になりぬ、この御門〈◯後宇多〉位につき給て、十三年ばかりになりぬらん、本院〈◯後深草〉まちどほにおぼさるらん、いとをしくおしはかりたてまつるにや、例の東より奏する事あるべし、新院〈◯龜山〉の御かたざまには、心ぼそうきこしめしなやむべし、〈◯中略〉よろづあかずおぼさるヽほどなれど、そのとしの十月におりゐさせ給、もとのうへは、廿一にぞならせ給ける、御本上もいとうるはしく、のどめたるさまにおぼして、すぐよかに、御才もかしこうめでたうおはしま

p.0559 せば御まつり事などもやう〳〵ゆづりや聞えましなどおぼされつるに、いとあへなくうつろひぬる世を、すげなく新院はおぼさるべし、

〔北條九代記〕

〈十一〉

p.0559 伏見院御即位
弘安十年十月廿一日、京都ニハ主上〈◯後宇多〉御讓位ノ事アリ、〈◯中略〉龜山ノ新院モ、只今ノ御讓位ハ餘ニ早速ノ御事ナレバ、イマダ遲カラズ、御殘リ多クオボシメシ、主上モ本意ナラズト聞エサセタマヘドモ、後深草ノ本院強ニ待兼サセタマフベシ、只疾ク御位ヲユヅラセタマハンハ、然ルベキ太平比和ノ御基タルベキ旨、關東ヨリ奏シ申セバ、御心ノマヽナラズ俄ニ御讓位有テ、東宮熙仁〈◯伏見〉御位ニツカセタマフ、
◯按ズルニ、後嵯峨天皇、次子龜山天皇ヲ鍾愛シテ、皇統ヲ其裔ニ傳ヘンコトヲ遺詔シ給フ、長子後深草天皇懌ヒ給ハズ、密カニ北條氏ニ諭シ給フ所アリ、此ニ依テ兩統迭立ノ策ヲ獻ズルコトヽナレリ、ナホ踐祚篇、兩統更立ノ條ヲ參看スベシ、

〔増鏡〕

〈十一今日の日蔭〉

p.0559 又の年〈◯正安三年〉のむ月の頃、内侍所の注連のおり給へるは、いかなるべき事にかなど思ひてさヾめく程こそあれ、東よりの御使のぼるとて、世の中騷ぎて、禪林寺殿〈◯龜山〉見奉り給ふ世にとや、正月廿一日、春宮〈◯後二條〉位につかせ給ひぬ、おりゐの帝〈◯後伏見〉十四にて太上天皇の尊號あり、いときびはにいたはしき御事なるべし、わづかに三とせにておりさせ給へれば、何事のはえもなし、

〔北條九代記〕

〈十一〉

p.0559 後伏見院御讓位
正安三年正月ニ、鎌倉ヨリノ使節トシテ、隱岐前司時清、山城前司行貞上洛シテ、主上〈◯後伏見〉ノ御位ヲ下シ奉リ、東宮〈◯後二條〉ヘユヅリ奉リ給フ、主上今年イマダ十四歳、御在位ワヅカニ三年ニシテ、何ノ御事モオハシマサヾリケルヲ、押オロシ奉ルコト、天道神明ノ照覽モイカヾ、恐ロシト

p.0560 ゾ心アル人ハ申合レケル、〈◯中略〉王道久シク廢シテ、政事ニ付テハ萬叡慮ニ任セラレズ、天下ハコレ天子ノ天下ニアラズ、又天下ノ天下ニモアラズ、關東ヨリ計ラヒ奉リ、武家ノ天下ナリケルコトヽ申ス人モ多カリケリ、

〔繼塵記〕

p.0560 文保二年二月廿一日癸巳、午一點度々有レ召參二御所一、近臣等悉參集、坊中物忩、御文書等悉被レ納二御文庫一、〈◯中略〉去月廿二日、六波羅兩方使者、以二勅書一下二向關東一、而南方陸奧守維貞使者、本所去夜以二御返事一歸洛、北方使者糟屋依二所勞一逗留云々、依レ之御吉事不レ可レ有二相違一之間、人々不二參集一之已前、被レ納二御文書於文庫一、且爲二受禪一依レ可レ幸二内裏一也、申刻縫殿頭貞重、隨二身關東御返事文函一參二北山第一、酉刻以二伊豫守春衡一被レ相二尋吉田前中納言一〈定房卿〉曰、此文函無二表書一之間、無二左右一難二披見一者可レ來云々、仍馳向取二彼御返事一、馳二參大覺寺殿一、第巳刻法皇〈◯後宇多〉臨幸爲二御車一、〈◯中略〉近習人々悉參會、此間人々濟々焉、寅刻法皇出二御東向御所一、關白、洞院前右府、大夫師信卿、吉田前中納言等候二御前一、兩箇重事〈受禪、立坊、〉有二其沙汰一、吉田前中納言以二亮隆長朝臣一、召二陰陽頭在冬朝臣一、於二殿上下侍一令レ勘二申日時一、不レ及二勘文一以レ詞奏レ之、吉田前中納言奏二聞之一、來廿六日云々、件夜先行二啓〈◯後醍醐〉内裏一、可レ被レ渡一劒璽一云々、　廿二日甲寅、〈◯中略〉御讓位藏人方事、藏人兵部少輔成輔申二沙汰之一、舊主〈◯花園〉明後日〈廿四日〉行二幸土御門一、於二彼御所一可レ被レ行二節會一、奉行頭宮内卿資教朝臣云々、

〔北條九代記〕

〈十二〉

p.0560 後醍醐帝踐祚
文保二年二月二十六日、京都ニハ御讓位ノ御事アリ、主上〈◯花園〉今年二十二歳、春宮〈◯後醍醐〉ハスデニ三十歳ニアマリ給フ、スデニ東宮ニ立テ御年三十一歳ニナラセ給ヘバ、後宇多法皇ヲ初メタテマツリ、ソノ方ザマノ人々ハ待兼サセラルベシトテ、關東ヨリ計ラヒ申テ、同廿九日御位ニ即給フ、〈◯節略〉

〔翁草〕

〈十九〉

p.0560 新帝踐祚之事

p.0561 寛永廿年、女主〈◯明正〉御治世既に十三年に及ければ、御位を下させ玉ひ可レ然と公家武家ともに思召に仍て、九月下旬に、江戸より御使として、酒井讃岐守忠勝、松平伊豆守信綱上洛、十月三日、女主御讓位有て新院へ行幸、同廿一日、御弟紹仁親王〈◯後光明〉即位し給ふ、

〔弓削物語〕

p.0561 京都御物好ニテ從二關東一御不審并院中密々神君様御像ヲ被レ爲レ祀之事
饑歳ニハ糟糠ヲ貴ミ、豐年ニハ稻粱ヲ賤ムトカヤ、保平〈◯保元、平治、〉ノ頃ヨリ、王威日ニ陵夷シテ古ニ異ナリ、就レ中元弘ニ富士山崩レテヨリ、皇統二ツト成、又加フルニ應文〈◯應仁、文明、〉ノ大亂ヲ經テ、文武其柄ヲ失フト雖、皇統幸ニ存シ、織田公ヲ經テ豐臣公ニ至リテ、皇統ヲ尊ミ玉フト雖、尚未レ足シニ、大神君〈◯徳川家康〉世ニ出給ヒ、誠ニ上ハ宸極ヲ安ジ、下ハ草木ヲ撫給フ、御神徳申モ中々恐アルコトナリ、ナホ御三世ニ至テ、俊傑ノ徳ヲ顯シ、禮樂ノ典ヲ盛ニシ玉フハ、大猷院殿家光公也、御連枝ハ既ニ后位〈◯徳川秀忠女後水尾后和子〉ニ昇給ヘル御盛華、恐悦ノ御事ノミ也、然ルニ一頃如何ノ叡慮ニヤ、頻ニ鍛冶ヲ召レ、昵近ノ人々モ弓馬刀劒ヲ習ヒ、或武家姿ノ御人々モアリ、此物好世中流説囂ケレバ、關東ヨリ不審リ玉ヒテ、昵近ノ女中ヲバ、關東ヘ召シ下サレ、御城中ニテ御局〈◯大納言局〉申サレケルハ、京都如何ノ思召ニヤ、世上ノ取沙汰サマ〴〵也、悉ク御聞被レ遊度御私ヲバ召レ候也、世上ノ噂ノミナランカシ、ヨモヤ御間柄ト申、左様ノ御事ハ被レ爲レ在マジキ也、世ノ疑ヲ晴サン爲ナレバト申サレケレバ、答曰、イヤトヨ京都ノ御氣色アシク候、サレドモ御マヘ如キノ京都御前遠キ人ニハ申ハ恐多シ、御直トナラバ申上ベクトアレバ、御内々ノ所ニテ、御對面アリテ、御尋ニ答申上ラルヽヤウハ、百敷ヤ古キ軒バノ御コトヾモヲ、今日ノ御不自由、御賄ノ不行屆ニ、朝夕ノ御物モ思召ニ叶ハズ、且ハ延喜天暦ノ御政ニ遊シ度、一日モ叡慮ノナゴミナシ、近々ニ武官ノ人ヲ遣ハサレ、御政事御取返シニ相成筈也ト申上ラルレバ、ホロ〳〵ト御落涙被レ遊、サテコソ京都ノ御様子、旁以恐入タル次第也、御賄等ノ不行屆ハ皆某ガ罪也、シカレド

p.0562 モ昔室町家ノ末ヨリ、天下大ニ亂レ、君臣トモニ安堵セズ、神社佛閣モ多クハ廢シ、萬民塗炭ニ陷ルコト數年ニ及ベリ、爰ニ織田羽柴兩家誠忠ヲ盡サレ、ヤヽ上下ノ差別ヲ立、各以安カラシムト雖、亂離イマダ絶ズ、國々ハ皆各ノ私物ト心得、兎角上ヲ恐レズ、逆威ヲ振ヒ民力ヲ苦シムル輩アリ、カヽリシ所我祖父ニ候家康、永祿九年十二月、從五位下三河守ニ任ジテヨリ、後段々朝恩ヲウケ、遂ニ任槐ノ極望ニ達シ、剩ヘ勅ヲウケテ理世安民ノ將職ヲ奉ズ、誠ニ萬々年ヲ盡テモ、報ジ奉ルベキ日ナシ、家康淺官ノ初ヨリ、心密ニ願所ハ、上ハ宸襟ヲ安ジ、下ハ萬民ヲ救ハントノ所存ナリケルニ、不思議ニ今日某ガ身ニ及デ、職ヲ繼グコト偏ニ神明佛陀ノ助ル所也、抑祖父并父ニ候秀忠、トモニ古來ノ惡政ヲ除キ、三教ノ信誠ヲコラシ、身謙リ徳行ハルヽニヨリテ、今天下安穩ニシテ、牛馬耕耨ニアリ、是併京都ノ御徳トハ雖、家康ヨク治タリト思召ベキ也、然ニ今某ガ身ニアタリテ、叡慮ノ御異變ニヨリテ官軍ヲ向ケラルレバ、何ゾ、朝敵トナランヤ、普天ノ下、率土ノ濱、皆臣民タレバ、某モ朝使ニ對シ、首サシノベテ討ルヽマデノコト也、サレドモ人皆其主ヲ主トシテ、朝廷ノ尊キコトヲシラザレバ、如何様ノ逆人有マジトモ云ハレズ、其上當家御誅罸ノ後、如何様ナル逆臣出來リテ、朝廷ヲ輕ジ、國威ヲ危ブメンモ計ガタシ、今日我家ノ亡ンコトハ露塵モ惜ネドモ、忝モ天照皇大神八幡大菩薩ノ御正統、尚行スヱ億々萬年モ御長久ニテ、祖父誠忠ヲ盡サレシ勳功、子々孫々朝廷ヲ安ジ、惡徒ヲ退ケ、治國安民ノ所存モ消テ家ヲ亡サンコト、深キ御子細モ有ベケレドモ、餘ニ御情ナキ叡慮ナラズヤ、尚某ハ當家ノ亡ビテ後、朝廷ヲ守護スル人イカヾアラント、世ノ成行末ヲ恐レ申計ナリ、サテ亦武士ノ輩下民マデ、再兵刄ノ苦ヲウケンコトノ不便サヨト、又又御涙止サセ玉ハズ、女中モ打シホレ落涙シ、ケ程ナル御信實ナル思召ヤナ、京都ヲ御大切ニ思召シ、下々迄御不便ガルコトノ深サヨ、左様ニ思召ナラバ、ナゼニ御滿足ガルヤウニ御計ナキヤト申上ケレバ、仰ニ、叡慮萬一ニモ祖父ノ

p.0563 功ヲ思召シアラセラレヨ、古歌ニナガラヘバト云ヘル、下萬民ヲ憐マセ玉ヒ、彼漢ノ董卓トイヘル逆臣亡ビテ、曹操孫權等出シコトヲ思召テ、此度ノ逆鱗ヲ止メサセ玉ハヾ、朝廷ノ御長久、當家尤萬民ノ安堵、千秋萬歳天恩ヲ仰ン、且ハ士民ノ倒懸ヲ免ンコトノ娯シサヨト仰ケレバ、私ハ久ク御側ニ在者ナレバ、他人ノ申上ト違ヒ御諌聞シメサン、乍レ去今迄ノ通ニテハ聞召サジ、私ガ承リ候京都ノ御入用ハ、此印形ヲ以申上ンコト御承知遊スヤ、仰ニ、左様ノ筋ニテ京都ノコト治ルナラバ、兎モ角モスベキ也、元來國中朝廷ノ御物也、雖レ然保平ニ亂レテ、世ノ中騷シク成行バ、鎌倉殿〈◯頼朝〉ヲ總追捕使ニ補セラレ、國中ノ成敗ヲ執サセ玉ヒ、地頭職ヲ下サレ、國々ニ地頭ヲ置キテヨリ、爾來政事地面共ニ永ク武家ニ屬セリ、コレト申モ公家方ノ諸臣、唯々日夜優美ノコトノミ心ヲ盡シ、弓馬ノ武官モ、音樂ノ藝者ニ任セラレシヨリ、時々惡黨アリテモ、誰カ分捕スル人モナク、國司モ後ニハ、代官目代ナドヽテアラヌモノナレバ、中々國ノ治ル日ナシ、况ヤ清盛ガ惡逆、北條ノ有様、後醍醐帝ニ至テ大亂トナリ、室町殿ノ守護アリシ皇統、誠ニ宗廟ノ御加護ニテ、今ニ至リ榮エ玉フ也、舊記御覽ニテ御存知ノ御事也、且室町ノ末ノ有様ニ、祖父ガ尊敬ハマサルベシ、况ヤ今柔弱優美ノ侍臣ナド、萬一ノ御用ニ立ベキヤ、當家ハ大小名ヲ隨ヘ、武備ヲ糺シ、和漢ノ善蹤ヲ撰ミ、マサカ朝廷ニ逆スル人カ、或異國ヨリ襲ハンズル時ニ、本朝ノ光ヲ揚ゲ、宗廟ヲ安ジ、公家ヲシテ危キコトヲ知シメザル、是誠忠ニ非ヤ、トカク今ノ善事ヲ以、昔ノ惡事ニ引アテヽ思召サバ、左ノミ當家ノ致方モ、宸襟ノ不レ安コトモアルマジ、夫天子ハ萬民ノ父母タリ、萬物ノ其所ヲ安ズル様ニト思召サバ、御憤リモ止ヌベシト、御詞ヲ盡シノ玉ヘバ、サテモ御尤ノ御コト也、トク〳〵上京御諌申上ン、就レ夫先刻ノ御書物ヲ下サレヨト、即御名印アル御書付ヲ賜ハリ、且先刻ヨリ仰ノアル中、心覺ニ書付シヲ、京都ニ持參アリテ申上ラルヽハ、關東ノ御器量㧞群ノ上、一分ノ私ナク、唯天下萬民ノミノ心入、眼中ノ光リ、心氣ノ

p.0564 強ク落付クヤウ、親マサリノ人也、中々並々ノ人ノ相手ニ非ズ、又此ニ候書留ヲ御覽被レ遊ヨト差上ラル、得ト御覽アリテ、朕ガ思召スヨリハ、殊ニ徳川ハヨキ心入也、カヽル上ハ東西彌ムツマジクゾ、何モヨク〳〵計ヒ奉レト、其由關東ヘ聞エケレバ、何事ナク皆内々ニテ治リ、御互ニ御感心ノ御コトヽカヤ、カクテ門院御所〈◯東福門院〉ノ仰ニ、關東ノ忠信ハサラ也、サレドモ一旦御物好ニテ不審ノ所ニ、事ハ治レドモ、此上眞實安堵アル様ニト、仙院〈◯後水尾〉仰ニ、連枝コソヨク心底ヲシラルベシ、御答ニ、家光ハ殊更祖父ノ徳ヲ慕フコト若キ時ヨリ人ニ超タリ、祖父既ニ神位ヲ得ラレシコトナレバ、何トゾ密カニ御庭ニ權現ノ御祀アラバ、其勳功ヲ賞シ玉フ叡慮ヲ深感申サレント、ゲニモト思食勅作アリテ、尊像ヲ密ニ御祀アリケリ、此後ニ關東ヨリノ男女ノ人々ニ、門院カク御祭ノ叡慮厚キコト御噂被レ爲レ在シカバ、御兩地誠ニ寛仁大度、永久ノ御吉兆、御和熟ナルコソ恐悦ナレ、
右ハ文言御縁起ヲ以、理長、慶安中ニ直諌ノ時、書付テ差上ラレシノ寫也、
◯按ズルニ、後水尾天皇、徳川氏ニ快カラズシテ、突然明正天皇ニ御讓位アリ、爾來公武ノ間常ニ圓滑ナラザリシヲ、大納言局、其間ニ往來停調スル所アリ、是ニヨリテ家光屢上洛シテ仙洞ニ覲シ、ナホ叡志ヲ迎ヘテ、明正天皇ノ御讓位ヲ促シタルモノナリ、

〔十三朝紀聞〕

〈二後西院〉

p.0564 寛文二年十月、大將軍〈◯徳川家綱〉使三松平民部少輔、板倉筑前守、入議二讓位事一、

〔續史愚抄〕

〈後西院〉

p.0564 寛文三年正月廿六日乙未、天皇〈御年廿七〉讓二位於儲皇二品識仁親王一、〈（靈元）御弟也、後光明院御養子、〉於二假皇居一〈右大將基熙今出川第〉被レ行二節會一、内辨左大臣、〈房輔〉外辨權大納言、〈頼業〉已下六人參仕、以二清閑寺中納言一〈熙房〉爲二宣命使一、奉行藏人左少辨光雄、其後被レ渡二劒璽于新主御所一、〈土御門里内〉公卿諸司等供奉、奉行藏人右少辨方長、於二内侍所一者可レ爲二明日一〈廿二日〉云、違例、

〔翁草〕

〈十九〉

p.0564 新帝踐祚之事

p.0565 此帝〈◯後西院〉即位の後、京江戸其外國々火災多し、殊に伊勢内宮も燒失す、御行跡も不レ宜様上下取さたしければ、御位退給ふべしなど申族も多かりける、寛文二年、洛中夥敷地震、月を踰て止ざりけり、人々皆帝徳の闕たる故なるべしと囂々たり、然ば新造の内裏へは、此帝入御に不レ及して、御讓位然るべからずと武家にも思召けるにや、吉良若狹守上洛し、内院の事有て歸府、其後板倉筑後守、松平民部少輔相續て入洛し、明春讓位受禪、明夏御即位と議定す、明れば寛文三年正月、吉良上野介義英、御祝儀の御使として上洛す、正月廿一日東宮〈◯靈元〉九歳、新造の内裏へ行啓、同廿四日、主上近衞殿假御所にて讓位まし〳〵、廿六日、劒璽を東宮の御方へ渡させ給ふ、

讓位出不平

〔資勝卿記〕

p.0565 寛永六年五月七日、女院御所御使、中御門大納言、阿野中納言、烏帽子ニテ被レ參候、其様子ハ主上〈◯後水尾〉切々御腫物指出申候、又今度御痳病故、通仙院ヘ被二仰出一候ヘバ、御養生可レ然由候、左様ニ候ヘバ、御灸治ヲモ被レ遊度候ヘドモ、御在位ニテハ如何候之間、御讓位モ有度由被レ仰候、又女一宮〈◯明正〉ヲ、東宮御誕生マデ御即位モ有度トノ義候、此返答ヲ兩人衆マデ、書付ヲ以可二申入一旨候也、西園寺花山兩右府ヘ御返答ノ談合ニ參候ヘバ、無二御分別一由也、　十一月五日、今日勅答ノ御談合ニ、鷹司殿、太閤關白殿、近衞前關白、西三條、烏丸、西園寺、〈大〉清閑寺、中院、〈中〉花山〈中〉白川宰相、西洞院入道等也、兩頭藏人辨、〈俊完〉奧ヨリ御文ニテ勅許之分御書立候テ、勅答ニ相副出申候也、又中院中納言、三條中納言申二大納言一、川鰭申二中將秀相四位一、北面地下之者共御談合ニ出申候也、前ノ勅問ノ分、大方相濟申候也、　八日己丑、禁中ヨリ被レ觸、早々束帶ニテ可レ參由也、何事ニヤト相尋之處、何事歟不レ知、公家衆不レ殘被レ參之由也、柳原殿、廣橋殿、竹屋殿、於二當家一被レ著二束帶一、其後同道ニテ參内申、頭中將、中院、又皆々ヘ相尋候ヘ共不レ知二子細一、其後二條殿參内之間、得二御意一候所、御讓位之由聞申候、陣ヘ著、公卿、光廣卿、公益卿、共房卿、時直卿、元親卿也、上卿ハ康道公也、公卿皆奧ニ著了テ、奉行公卿ノ後ヲ經テ仰二上卿一、康道公被レ移レ端、諸卿著レ幄、六位史召使著了、予第一ニテ如レ例節會、

〔時慶卿記〕

p.0566 寛永六年十一月八日、辰刻俄ニ堂上各束帶ニテ可二伺候一旨被レ觸、事ノ子細ハ不レ知急參内、予又素絹ニテ内ノ番所迄伺候シテ退、外へ出、未刻許ニ節會アリ、次第別ニ記レ之、御讓位〈◯後水尾〉俄也、誰モ無二知人一、中御門大納言計ニテ各驚計也、諸卿參集ハ巳刻、陣未刻、節會果テ日入各拜、初夜ニ院參亥刻許、拜ノ衆、多ハ無レ之ト猶可レ尋、

〔大猷院殿御實記〕

〈十四〉

p.0566 寛永六年十一月八日、京にて主上〈◯後水尾〉にはかに御位を女一宮〈◯明正〉にゆづらせたまふ、近侍の公卿といへども、今日まで此事をしるものなし、中宮〈◯後水尾后徳川和子〉はわきてしろしめさヾりしに、夜に入て主上わたらせ給ひ、かくと告させたまへば、驚き思召事斜ならず、急脚を關東にたてられ、天野豐前守長信をもにはかにつかはされ、大御所〈◯徳川秀忠〉へも御手書もて仰進らせられ、こよひより中宮御所はふかくとざし、婦女出入を禁じ、嚴につヽしませ給ふとぞ、關東にてもやがて酒井雅樂頭忠世、土井大炊頭利勝、及伊丹播磨守康勝を上京せしめ、丹後郡代五味金右衞門豐直とはかり、御讓位の事を沙汰せしめ、豐直はこれまで板倉周防守重宗があづかりし仙洞御料、洛中并西國邊にて、公卿より收公ありし采邑宅地の事を沙汰せしめらる、よて別に御判物并月俸二十口たまふ、　九日、中宮を推て皇太后宮とし、東福門院と稱し奉る、　十三日、天野豐前守長信參著し、御讓位の事を土井大炊頭利勝まで聞え上しに、兩御所〈◯秀忠、家光、〉聞召、御けしきよろしからず、長信は十二月五日迄とヾめられ、御返詞の御沙汰なし、十二月廿三日、中宮附天野豐前守正信、はじめて御前にめし出され、中宮への御返書をさづけ給ふ、

〔新蘆面命〕

〈下〉

p.0566 後水尾院様、ふと御位を御すべりなされ候故、板倉周防守殿、近衞様へ參られ、不意なる事御世繼をも不レ被二仰出一、江戸へも不レ被二仰談一して、御心まヽなる事ども何事にやと尋被レ申候、應山公被レ仰候は、吾等も曾不レ知、何事にて有けん、防州再三尋被レ申候へば、御存無レ之候、中院は存候半哉と被レ仰候故、中院通村朝臣へ御尋候處、通村仰られ候は、何が面白くて御位に可レ被レ成二御座一候哉、

p.0567 僧何某を紫衣に被二仰付一候處、江戸にて御奪被レ成候、如レ此の有さまにて、何とて御位を御留可レ被レ遊候哉と仰られ候、周防守殿にも大に驚き被レ申、此旨江戸表へ被二申上一候處、台徳公〈◯徳川秀忠〉大御氣色損じ、舊例の如く隱岐國へも御うつし可レ被レ成哉と被レ仰候處、大猷院様〈◯徳川家光〉大に御諌めなされ、是は仙洞様〈◯後水尾〉の御道理至極にて候間、再三御詫なされ候へとの御事にて相すみ、夫故事あはただ敷明正院様御立被レ遊候、此ニ付中院殿を何となく關東へ召寄せられ、四五年江戸に御入なされ候、中院殿のあやまちの様にしなしたる也、又大猷院様の御懷紙を御望なされ候時、如レ比叡慮に候や、葦原よしげらばしげれの御歌をあそばし被レ遣候、相公もとかくのこと不レ被レ仰由也、

〔細川家記〕

〈忠興〉

p.0567 京に而禁中向之儀承候、主上之御事は不レ及レ申、公家衆も事之外、物きれたる體と申、主上御不足之一ツニハ、公家中官位御まヽに不レ成との事、又は御料所加増にて被レ遣、金銀も折々被レ遣候へ共、是も毛頭御まヽに不レ成候、右之分に候へば、何を以公家衆へ感不感可レ成二御立一様も無レ之候、其上八木金銀御遣なきによりたまり申候を、利分を付奉行共より人に借付申候、如レ此之故、人之口にて候へば、王之米何程借り候、金銀いかほど借り候と口ずさみ申候、神代より禁中に無レ之例に候を、今主上〈◯後水尾〉の御代に當り、か様の事無二御存知一事故、後代のそしり御請被レ成候事、何より口惜思召候由、又は大徳寺妙眞寺長老なり、不屆と武家より被レ仰、或衣をはがれ被レ成二御流一候へば、口宣一度に七八十枚もやぶれ申候、主上此上之御耻可レ有レ之哉との儀、又かくし題には、御局衆のはらに、宮様達いか程も出來申候をおしころし、又は流し申候事、事の外むごく御無念に被二思召一由候、いくたり出來申候共、武家の御孫より外は御位には付被レ申間敷に、餘りあらけなき儀とふかく被二思召一由候、此外未數御入候へ共忌申候、此前いつの時分やらん、
おもふ事なきだにやすくそむく世にあはれすてヽもをしからぬ身を、と被レ遊候由、此はてのをとまりは、殘るてにをはと申物かと存候、よせいかぎりなき御製と世上に申由に候、案の如く

p.0568 御位をすべらせられ候、後は不レ存、つよき御事と存候事、

〔十三朝紀聞〕

〈一後水尾〉

p.0568 寛永六年十月、帝〈◯後水尾〉令レ傳二旨於幕府一曰、遜レ位以二二女一〈◯明正〉繼レ之、大將軍〈◯徳川家光〉大驚謂、自二遷都一以來久無二女主一、至レ今女宮踐レ極、後世曰二外戚威之所一レ爲也、諌レ之不レ聽、　二十九日、以二皇女興子一爲二内親王一、　十一月八日、帝讓二位於興子内親王一、詔二關白兼遐一攝政、

〔玉露叢〕

〈八〉

p.0568 御即位記
寛永七年秋九月十二日、御即位之事アリ、是ハ去年ノ冬、俄ニ御位ヲ第一ノ皇女〈◯明正〉ニ讓リ玉フ事、昔奈良ノ京ニテハ數代オハセシカドモ、此平安城ニウツサセ玉ヒテ後ハ、八百年ニ餘リテ、タメシスクナキ御事也、此事江戸ニ聞召シ及バレ驚カセ玉ヒ、本朝ハ神國ニテ、天照大神ノマサシク姫神ニテ、天津日嗣ヲ萬世マデ傳ヘ玉フトハイヘドモ、久ク稀ナル御事ドモナレバ、若シ後ノ代ニ、御外戚ノ御勢ニテ、カヽル事モ有ケルヤラントイハレサセ玉ハン名ノ、事々シカラン義ヲ慮ンハカラセオハシマス、イトメデタシ、然ハアレド御脱屣ノ叡慮カタクモノシ玉ヘバ、強ク諌メサセ玉フニ及バズ、兎モ角モ叡心ノマヽト思食ス事ニ成ヌ、武家ヨリ禁裏ヲ崇敬シ玉フ事他ニ異ニシテ、頼朝卿ヨリノ以來、雙ビナキ御事ナリ、其上御年モサカリニシテ、萬機ノ政ヲイトハセ玉ヒ、堯ノ舜ニ讓リ、舜ノ禹ニ讓リシ昔ハ、皆年寄リテノコトドモナリ、然ルニ今春秋ニ富セオハシマシテ、姑射ノ雲ヲ眺メ、汾水ノ風ヲ玩ビ玉ハンコト、然ルベカラザル御計ヒ也ト武家ニハ思食セドモ、叡心ノ趣ク所ハ、武家ノ政正シク明ラカニ、オホヤケヲ敬ヒ玉ヘバ、御幼帝ノ御事ニテモ、其タスケ守リト成玉ハン事イト安カルベシ、片々遂ニオリヰサセ玉ヘバ、武家ニモモダシガタク、止事ヲ得玉ハズ、去程ニ預メ今日御即位アルベキニ定リヌ、

雜載

〔三代實録〕

〈四十四陽成〉

p.0568 元慶八年二月四日乙未、先レ是天皇〈◯陽成〉手書送二呈太政大臣一〈◯藤原基經〉曰、朕近身病數

p.0569 發、動多疲頓、社稷事重、神器叵レ守、所レ願速遜二此位一焉、宸筆再呈、 〈◯ 恐旨字誤〉在レ難レ行、是日天皇出レ自二綾綺殿一、遷二幸二條院一、二品行兵部卿本康親王、〈◯中略〉扈從、文武百官供奉如レ常、但少納言不レ奏二給レ鈴之状一、諸衞不レ稱二警蹕一、神璽寳劒等依レ例相從、驛鈴符〈◯符、扶桑略記作二傳符一、〉内印管鑰等留二置承明門内東廊一、令二參議正四位下行左大辨兼播磨守藤原朝臣山蔭〈◯中略〉等一留守焉、會二文武百官於院南門一、詔曰、現神〈止〉大八洲御宇日本根子天皇〈加〉御命〈良萬止〉宣御命〈乎〉親王等王等臣等百官人天下公民衆聞給〈止〉宣、食國〈乃〉政〈乎〉末遠聞食〈倍喜乎〉御病時時發〈己止〉有〈天、〉萬機滯〈己止〉久成〈奴、〉天神地祇之祭〈乎毛〉闕怠〈己止〉有〈奈牟加止〉危〈美〉畏〈利〉念〈保之天、〉天皇位〈乎〉讓遜給〈天、〉別宮〈爾〉遷御坐〈奴止〉宣御命〈乎、〉親王等大臣等聞給〈部、〉承レ詔〈天、〉恐〈美〉畏〈母〉國典〈爾〉准〈天、〉太上天皇之尊號〈乎〉進〈留、〉又皇位〈波〉一日〈母〉不レ可レ曠、一品行式部卿親王〈波、◯光孝〉諸親王中〈爾〉貫首〈爾毛〉御坐、又前代〈爾〉無二太子一時〈爾波〉如レ此老徳〈乎〉立奉之例在、加以御齡〈母〉長給〈比〉御心〈母〉正直〈久〉慈厚〈久〉愼深御坐〈天、〉四朝〈爾〉佐仕給〈天〉政道〈乎母〉熟給〈利、〉百官人天下公民末天爾謳歌所レ歸咸無二異望一、故是以天皇璽綬〈乎〉奉〈天〉天日繼位定奉〈良久乎、〉親王等王等臣等百官人天下公民衆聞給〈部止〉宣、中納言在原朝臣行平於レ庭誥レ之、百辟群寮並立侍焉、事畢王公已下拜舞而退、

〔愚管抄〕

〈三〉

p.0569 陽成院、〈◯中略〉不レ斜淺ましくおはしましければ、をぢにて昭宣公基經は、攝政にて諸卿群議ありて、是はいかヾ、國王とて國をも治めおはしますべきとてなんおろし參らせんとて、やう〳〵に定ありけるに、仁明の御子にて、時康親王とて、式部卿の宮にておはしましけるを迎へとりて、位につけまゐらせられける、是は光孝天皇なり、

〔世繼物語〕

〈中〉

p.0569 去程に陽成院位につかせ給ひて、物にくるはせ給やうにて、けうふしぎのまつり事をせさせ給へば、すべきかたなくて、關白殿〈◯藤原基經〉を初て、世はうせなんと歎きあひ給へどかなはず、いきたるものどもをとりあつめて、くちなはに蛙をいくらともなくのませ、猫に鼠をとらせ、犬猿などをたヽかはしつヽころさせ給だにあるに、はてには人を木にのぼせさせ

p.0570 給て、うちころさせ給つヽ、いくらともなく人しぬるに、關白にて昭宣公〈◯基經〉なげきていまはすぢなし、位をおろし參らせんとおぼして、さりぬべき宮たち、又ちかき御門の御ぞうの源氏に成給へるなどをみありき給に、宮達は心えてよく見えんとつくろひきらめきあひ給へり、つぎつぎ敷いみじきをこれもわろし、是もよくも見えずとおぼして、小松の宮へ參上のよし申させ給へば、さきかせ給ぬとてしばしありていれ奉りて、とみに出させ給はず、けだかく物し給ふとおぼす程にぞいで給へる、ふるめき神さびて御なをしもき給はず、したりがほなるさまにて何事にたちよらせ給ひたるぞとて、物の給ひたるさまもかくおはします、位につかせ給たらんにかしこくおはしましなんと見奉り給て、かう〳〵と申給へば、いつばかりと問せ給へば、程へばあしくさふらひぬべければ、あさて日もよく侍ふ、其日とてまかで給ひぬ、さてうちにまいり給へれば、木に人をのぼせてうちころしたるをけうじて人々笑、われもわらひ入ておはします、いとあさまし、おとヾ申給、つれ〴〵に侍らへば、くらべむまのせんとし侍ふに、行幸して御覽すべきよし申給に、いみじうよろこばせ給て、いつばかりと仰らるれば、あさてと申給へば、よろこびていつしかとまたせ給ふ、其日になりぬれば、かんたちめ殿上人せうせうまゐりて、よき人々をばえりとヾめて、年老すゑあるまじき人々つかうまつりて、陽成院といふ所に御輿よせておろし奉りつ、さて後にぞ物くるはしく人をさへころさせ給て、世のうせ侍ひぬべければ、おろしまゐらせつるぞと申かけけるを聞せ給てぞ、かなしき事かなとてをう〳〵とおめかせ給ひたりける、さてやがて昭宣公をはじめ奉りて、百官引つれて御輿ぐして、小松の宮へまゐらせ給ぬるめでたくいみじ、御輿よせたるに、行幸には是にはのらぬ物を、今一にこそのれと仰られければ、おりさせ給ぬるをのせ奉りてさふらへば、此御輿をもてまゐりて侍ふと申させ給へば、さきかせ給ひてぞ奉りける、さ仰られけるをうへのきか

p.0571 せ給て、年比わびしくならひたる心に所せくや人の思はんとあやうくおぼして、なにの輿成ともたヾのらせ給へかしとぞ、はせつきて申給ける、

〔日本紀略〕

〈八花山〉

p.0571 寛和二年六月廿三日庚申、今曉丑刻許、天皇密々出二禁中一、向二東山花山寺一落飾、于時藏人左少辨藤原道兼奉レ從レ之、先二于天皇一、密奉二劒璽於東宮一〈◯一條〉出二宮内一云々、〈年十九◯中略〉皇太子嗣レ祚、

〔大鏡〕

〈一花山〉

p.0571 寛和二年丙戌六月廿三日の夜、あさましく候し事は、人にもしられさせ給はで、みそかに花山寺におはしまして、御出家入道せさせ給へりしとぞ、御とし十九、よをたもたせたまふ事二年、其後廿二年はおはしましき、あはれなる事は、おりおはしましける夜は、ふぢつぼのうへの御つぼねの小どよりいでさせ給ひけるに、有明の月のいみじうあかヽりければ、見證にこそありけれ、如何あるべからんとおほせられけるを、さりとてとまらせ給ふべきやう侍らず、神璽寳劒わたり(○○○○○○○)給ひぬるにはと、粟田のおとヾ〈◯藤原道兼〉さわがし申給ひける事は、まだ御門出させ給はざりけるさきに、しんじほうけん手づからとりて、東宮〈◯一條〉の御方に渡し奉り給ひてければ、かへりいらせ給はん事はあるまじくおぼして、しか申させ給ひけるとぞ、さやけきかげをまばゆくおぼしめしつる程に、月のかほにむら雲のかヽりて、すこしくらかりければ、わが出家は成就するなりけりとおほせられて、あゆみいでさせ給ふ程に、こき殿の女御〈◯忯子〉の御ふみの日ごろやりのこして、御身もはなたず御覽じけるをおぼしめしいでヽ、しばしとてとりにいらせ給ひけるほどぞかし、あはた殿いかにかくはおぼしめしたちぬるぞ、たヾ今すぎなば、おのづからさはりもぞいでまうできなんとそらなきし給ひける、

〔古事談〕

〈一王道后宮〉

p.0571 花山院御出家、寛和二年六月廿三日事也、子時計、主上私令レ出二御在所一給、藏人左少辨道兼、天臺僧嚴久候二御供一、〈嚴久候二御車側一、嚴久ハ車也、道兼騎馬云々、〉向二御花山一、即以二嚴久一令レ剃二御頭一給云々、此間右大臣〈法興院殿◯藤原兼家〉參二春宮一、固二諸陣一禁二出入一云々、權中納言義懷、權右中辨惟成等、後朝尋二參花山寺一、同以出家、

p.0572 未時計、頭中將實資卿參入、即候二御前一、仰云、是已遂二宿念一也、全不レ知二世間誹謗一、但尊號及封等事、更不レ可二受容一、暫可レ住二横川一者、中納言法師云、御在位之間、浴二無涯之朝恩一、今遇二辭退之時一、若改二奉從之誠一者、本意相違歟、仍所二出家一也、亦趨二朝市一、更無二其益一歟云々、惟成所レ陳同レ之云々、
◯按ズルニ、此條ハ、天皇出家ノ條、花山天皇ノ項ト參看スベシ、

〔榮花物語〕

〈四十紫野〉

p.0572 宮〈◯白河中宮賢子〉の御こヽちおもくおはしますとて、十七日〈◯應徳元年九月〉にいそぎかへらせ給ぬ、いとおもくおはしましけり、日をへておもくならせ給て、九月廿二日うせさせ給ぬ、あさましなども世のつねなり、〈◯中略〉内の御まへ〈◯白河〉には、ことわりとは申ながら、いふかたなくたぐひなく覺しめしいらせたまへり、〈◯中略〉内には月日のゆくもしらせたまはず、露の御ゆなどもめさずしづみいらせ給て、よるのおとヾのとにもいでさせたまはず、〈◯中略〉月日はかはれどたれも覺しなげくに、内はなほそのかみにかはらず、まつりごとなどにもいでさせ給ふこともなく、あはれに心ふかくおぼしいらせ給へり、いかに覺しめすにか、九條のあなたに鳥羽といふ所に、池山ひろうつくらせ給は、おりさせ給べき御心まうけにやなど申思へる程に、十一月廿六日〈◯應徳二年〉に二宮〈◯堀河〉に御位讓申させ給、ことしぞ八にならせ給、

〔つれ〴〵草〕

〈上〉

p.0572 御國ゆづりの節會おこなはれて、劒璽内侍所わたし奉らるヽほどこそ、かぎりなう心ぼそけれ、新院〈◯花園〉のおりゐさせ給ての春よませたまひけるとかや、
　殿もりのとものみやつこよそにしてはらはぬ庭に花ぞちりしく、今の世のことしげきにまぎれて、院にはまゐる人もなきぞさびしげなる、かヽるをりにぞ、人のこヽろもあらはれぬべき、

〔園太暦〕

p.0572 貞和四年八月廿八日、今日大夫可二退出一欲レ遣レ仰之處、今日左兵衞督有下可二參入一之風聞上、折節無レ人不便、至二其時分一可二祗候一由被二仰下一云々、子刻許退出、傳二勅語一曰、今日直義卿參入、東宮〈◯崇光〉踐祚、親王立坊等事申レ之、總別御大慶不能二左右一、日來之御本望滿足之間、故所レ被レ仰也云々者、　三十日、亥刻參

p.0573 院入二見參一、踐祚立坊已下事、此間御沙汰候次第、被レ語二仰勘例等事一、有下被二仰下一候旨上退出、　九月三日、昨日春宮大夫參時被二仰下一旨、及委細編目令レ申二所存一、加之就レ被二尋下一、先例等注進之、
新帝御在所事
可レ爲二義讓之禮一者、土御門殿舊主新主御所、當時内御方東宮御方兩方、無二子細一之様可レ被二計用一也、遷二御他所一可レ有二讓國之儀一者、
御元服時分事
今度以二寛平例一、可レ有二沙汰一之由被二思食定一了、而讓國儀、於二大内一被レ行二本儀一勿論、今度於二土御門殿一被レ行之條勘例之處、里内同所讓國先規不吉也、然者御元服者於二清涼殿代一、如二寛平一被レ行レ之、即退出爲二兩所之儀一可レ然也、
就二御同宿一讓國儀
内侍所御在所事
同所義讓之時、賢所渡御之儀無レ之候哉、
舊主出御儀事
先乘二御輦一於二玄耀門一、令レ乘二移他車一給、月卿雲客御隨身等如法禮也、御隨身不レ可二合期一者、出御之後被レ申二尊號兵仗事一、安和二年有レ例歟、此條爲二何様一哉、
他所皇居事
兩主同所先規不快之上者、各別御所尤大切也、關白押小路亭先々爲二皇居一、可レ被二仰試一哉、
踐祚料足分限事
内々被二相尋一可二申入一
奉行人事條々

p.0574 讓國大略、藏人頭奉行歟、仁治頭辨定嗣、弘安頭大夫信輔、永仁頭辨經守、只今所二覺悟一也、其外引勘可二注進一、
里内同所禪讓例
花山院〈永觀二年八月廿七日〉
堀河院〈但新主當日自二閑院一入御、其儀了即入二御大内一、〉
三條院〈寛弘八年六月十三日〉
一條院〈新主當日自二東町別所一入御、其儀了即入二御東三條一、〉
後冷泉院〈寛徳二年正月十六日〉
東三條〈新主當日自二上東門一參入、即日乘輿歸御、〉
崇徳院〈保安四年正月廿八日〉
土御門殿〈新主東對代廊、舊主清涼殿代北子午廊、〉
近衞院〈永治元年十二月七日〉
土御門殿〈新主東對昭陽舍代、舊主北對子午廊、〉
四條院〈貞永元年十月四日〉
閑院〈新主清涼殿代、舊主仁壽殿代、〉
禪讓各別御所例
後一條院〈長和五年正月廿九日、新主上東門院京極第、舊主土御門院、〉
後三條院〈治暦四年四月十九日、新主閑院、舊主高陽院有二御事一、〉
堀河院〈應徳三年十一月廿六日、新主堀河院、當日自二大炊殿一遷御、舊主三條殿、〉
鳥羽院〈嘉承二年七月十九日、新主大炊御門東洞院、舊主、堀河院有二御事一、〉

p.0575 後白河院〈久壽二年七月廿四日、新主高松第、當日渡御、日來新院御同宿、舊主近衞第有二御事一、〉
六條院〈永萬元年六月廿五日、新主土御門高倉第、舊主東洞院御所各別、長和應徳例歟、〉
高倉院〈仁安三年二月十九日、新主閑院、舊主土御門高倉、〉
安徳天皇〈治承四年二月廿一日、新主五條邦綱宅、舊主閑院、〉
土御門院〈建久九年正月十一日、新主閑院、當日渡御、舊主大炊御門富小路、自二閑院一遷御、〉
順徳院〈承元四年十一月廿五日、新主押小路烏丸、當日渡御云々、舊主大炊御門富小路、〉
後堀河院〈承久三年七月九日、新主閑院、當日入御、舊主高倉院、但密退二九條邊一云々、〉
後深草院〈寛元四年正月廿九日、新主冷泉富小路、舊主冷泉萬里小路、〉
龜山院〈正元元年十一月廿六日、新主冷泉富小路、十七日遷御、舊主冷泉萬里小路、十五日遷御、〉
後宇多院〈文永十一年正月廿六日、新主二條高倉、舊主押小路烏丸、〉
伏見院〈弘安十年十一月廿一日、新主冷泉富小路、舊主二條高倉、〉
後伏見院〈永仁六年七月廿二日、新主冷泉富小路、舊主二條高倉、〉
後二條院〈正安三年正月廿一日、新主二條高倉、舊主二條富小路、〉
太上法皇〈徳治三年八月廿六日、新主土御門東洞院、當日渡御、本持明院殿、舊主二條高倉有二御事一、院廿四日遷御、〉
後醍醐院〈文保二年二月廿六日、新主冷泉富小路、當日渡御、本萬里小路、舊主土御門東洞院、廿四日遷御、〉
十三日、抑日野前大納言入來、踐祚事奉行傳奏也、有二勅問一、新主舊主御所間事也、關白、近衞前關白、一條前關白、鷹司前關白、右大臣等申詞令レ見之、就レ之可レ申二所存一之旨示了、追可二注進一之旨示了、申刻許注二進之一、
讓國并御元服間事、就二寛平嘉躅一被二遂行一之條、不レ可レ有二異儀一候哉、御在所事、當時同所御座上者、任二舊規一義讓之禮雖レ可レ然、於二里内一被レ行二此事一、永觀以後六代雖レ存二先規一、崇徳以來兩三代可レ謂二不快一歟、然者於二各

p.0576 別御在所一被レ行可レ宜哉、就レ其舊主幸二他所一、新主御座本皇居、建久例尤可レ謂二嘉摸一、正元又可二比擬一乎、於二愚意所存一者、此條若可レ叶レ宜歟、且新主遷御者、永觀例爲二新主一不二庶幾一歟、但舊主被レ行二院中禮一之地、爲二始終禁中一雖レ似レ有レ憚、被レ補二院司一、并出御臨幸之儀、大内御座之時先例勿論也、如二布衣始一、遷二御他所一以後被レ行者、不レ可レ有二子細一歟、且新主冠禮畢出二御押小路第一、舊主於二土御門殿一被レ行二其禮一者、佇之容易、刻限之早速可レ爲二大切一歟、恰袷之間被レ決二叡慮一乎、
　〈杉原折紙書レ之、春宮大夫筆也、〉
　　申詞一紙獻レ之、可下令レ計二披露一給上候、謹言、
　　　　　九月十三日　　　　　　　　　　　　　　　　判
　　　　　　　　　日野前大納言殿
此次人々申詞書二留之一
　關白
受禪日皇居事、先度御沙汰之趣雖二相違一、今被二仰下一之旨、土御門殿可レ爲二始終皇居一之間、暫被レ用二仙洞一之條可レ有二其憚一歟云々、此條強不レ可レ有二巨難一由存候、於二里内一者、依レ時無二定儀一之上者有二何事一哉、且今度儀依二當日御元服一、諸人往復可レ有二其煩一歟、然者以前御沙汰、猶叶二物宜一哉、此上宜レ在二時議一、
　近衞前關白
踐祚御所事、土御門殿不レ可レ有二子細一歟、但被レ用二他所一否事、短慮無二左右一難二計申一、宜レ在二時宜一乎、
一條前關白
御讓位事、可レ依二寛平例一之條不レ可レ有二異儀一歟、幸元來有二御同宿一、及二御元服儀一之上者、尤受禪之後、任二先例一可レ有二拜謝禮一之處、先行二啓他所一之條、云レ例云レ理可レ爲二何様一候哉、雖レ有下爲二受禪一御參内之先蹤上、未レ聞下爲二受禪一、臨レ期行二啓他所一之例上、猶於二一所一可レ有二踐祚一之條可レ宜哉、舊主御在所、保安永治避二本殿一、遷二御北對廊一云々、

p.0577 被レ准二據彼等例一、可レ被レ經二御沙汰一歟、此事須レ在二時宜一乎、
　鷹司前關白
來月可レ有二踐祚并御元服一、天皇御元服儀可有其先有二御元服一、即夜踐祚事、寛平佳例尤不レ可レ有二子細一、次御所事、於二執柄第一御元服并踐祚事、存レ例之上者、於二二條亭一御元服踐祚、同不レ可レ有二子細一者乎、
　經教公
來月春宮可レ有二踐祚一、其御所并同日御元服間事、短慮雖レ廻二商量一、於二同日御元服一者、有二寛平例一不レ有二子細一也歟、次當今御所、可レ被レ用二關白第一之條者、頗可レ背二其禮一、且無二先規一哉、春宮御元服之後、有レ行二啓彼第一、被レ渡二劒璽一暫爲二御所一、當今脱屣之後、於二土御門殿一被レ補二院司一之條、有二准據例一之上者、不レ可レ有二巨難一歟、其後早速有二御幸始一、於二持明院殿一、御布衣始以下有二其沙汰一者、土御門殿暫雖レ爲二御所一、不レ可レ有二仙洞號一歟、此上事宜レ在二時議一乎、
　永仁例、資明卿頻爲二故證一歟一紙帶レ之、予寫レ之引二合皇居抄一之處無二相違一、仍此事載二予申詞一也、
後伏見院
　永仁六年七月廿二日受禪
　舊主御所、二條高倉殿、〈自レ元皇居〉七月廿二日脱屣、今夜被レ補二院司一、八月五日御幸始、〈常磐井殿、雅俊朝臣奉行、〉還御以後布衣始、〈奉行信經朝臣〉同廿一日八葉始、〈元皇居富小路歟〉
　新主御所富小路殿、〈爲二受禪一自二内裏一行啓〉八月十七日、自二富小路殿一遷二幸二條殿一、〈元皇居、此間新院御所、〉
十月廿二日乙酉、〈◯中略〉明日奉幣宣命之趣事、禁裏御返事見候畢、返獻候旨趣、誠不レ可レ過レ之候ト倩猶加二了見一候ヘバ、發句ニ、代々踐祚最前告申者例也と候て、結句ニ、年來中懷、此時欲レ表と候へば、由奉幣日、此時猶可二果遂一ニ混合し候ぬべくやと覺候、且如何候べき、何事にても他事など可レ被レ申事被レ載候者、まぎれて可レ宜歟、但其も何事にて候べきやらん、皇太子に讓位、某を立二太弟一などは又態め

p.0578 かしく宣命にも相似候歟、但先例もや候らん不審候、可レ被二引勘一候哉、若又避二皇位一と之旨趣を受て、謙讓之儀協二天意一者、國家更致二大化一、社稷彌固二洪基一など體の趣意なる様候、被レ載候て今度被二果請一候姿を大略やし候べき、猶又賢慮をも可レ被レ廻候哉、又奏事目六二枚見了、無二相違一候也、今夕節會公卿人數も候歟、天氣又怡然、旁且目出思給了、
被二仰下一之旨跪奉了、明日宣命事、今度重事候、能々可レ被レ經二御沙汰一候歟、就レ其被二仰下一候趣、尤可レ然候けり、准二由奉幣一體は不レ可レ然候、其此事具に被レ成候て、抑御謙讓叡旨、乃至社稷洪基など、久久體如何可レ候やらん、只今被レ讓二皇太子一之由などは、餘に踐祚宣命めき候やらん、且寛平其叡旨聊見候、一段注進候、就二恰袷一有二御沙汰一可レ被レ計歟、且又今一度可爲禁裏候哉、以二此等趣一可レ被下洩二披露一給上候、誠恐頓首謹言上、
　　十月廿三日　　　　　　　　　　　　　　　　藤原公賢
　　　大宮宰相殿
以二薄徳一受二天日嗣一以降、已某箇年、諸國亡弊難二興復一、百姓艱苦不レ能レ救、天譴有レ畏、人望有レ耻、是以故令レ避二皇位一、欲レ易二民急一、加之宜下任二累代軌則一、發中遣最初幣使上、而去建武比、神郡擾亂、通路不レ達、因レ兹其儀難レ治、不レ慮二擁怠一、云レ恰云レ袷、欲レ謝二恐懼一、謙讓之義應レ協二天意一者、國家更致二大化一、社稷彌固二洪基一、
廿三日丙戌、今日伊勢一社奉幣也、是別御願也、某趣當代々始、御即位由奉幣使未レ被二發遣一、而今夜有二脱屣一、仍其趣被レ謝二申宗廟一也、其宣命間事、先日於二仙洞一奉二勅定一、如レ形註レ之、而今日被二直下一、入レ夜遣二文章博士行光朝臣息男大内記氏種一可レ草二進之一也、就レ中行幸無人、實教卿至二于御沙汰一候由被二仰下一、無二行粧一雖レ爲二嘲哢之基一、可二構參一旨仰二大夫一了、馬副并舍人居飼、不レ及二催促一參事併至忠也、次將又左右各一人云々、諸人不レ勤二公事一不便儀也、
天皇〈我〉詔旨〈度〉掛畏〈支〉伊勢〈乃〉度會〈乃〉五十鈴〈乃〉河上〈乃〉下都磐根〈爾〉大宮柱廣敷立〈氐〉高天原〈爾〉千

p.0579 木高知〈天〉稱辭定奉〈留〉天照坐皇大神〈乃〉廣前〈仁〉恐〈美〉恐〈美毛〉申賜〈波久度〉申〈久〉、朕以二薄徳一〈氐〉受二天日嗣一〈志與利〉以降既〈爾〉十有三季、諸國〈乃〉亡幣難二興復一〈志〉、百姓〈乃〉艱苦不レ能レ救、天〈乃〉譴有レ畏〈利〉、人望有レ耻〈利〉、加之〈須〉累代〈乃〉軌則〈爾〉任〈勢氐〉最初〈爾〉幣使〈乎〉雖レ可二發遣一〈度毛、〉去建武〈乃〉比神郡擾亂之間通路不レ達、因レ兹〈氐〉其儀擁怠〈勢利、〉恰〈毛〉袷〈毛〉恐懼中心無聊〈志〉歳暦推遷〈禮利、〉忽〈爾〉令レ避二皇位一〈氐〉欲レ謝二天運一〈布〉、謙讓之義、應二天意一〈倍者、〉國家更致二大化一〈志〉、社稷彌固二洪基一〈免牟度〉祈念行〈志氐奈牟、〉是以吉日良辰〈乎〉擇定〈氐〉、官位姓名〈乎〉差使〈天〉某〈乃〉弱肩〈爾〉太繦取懸〈氐〉、内外〈乃〉宮〈爾〉禮代〈乃〉大幣〈乎〉令二捧持一〈氐〉奉出賜〈布〉、掛畏〈支〉皇大神此状〈乎〉平〈久〉安〈久〉聞食〈天〉、天皇朝廷〈乎〉寳位無レ動〈久〉常磐堅磐〈爾〉夜守日守〈爾〉護幸奉給〈比氐、〉一天泰平〈爾〉四海靜謐〈爾〉護恤賜〈倍度〉恐〈美〉恐〈美毛〉申賜〈波久度〉申〈壽〉、
　　貞和四年十月廿三日
◯按ズルニ、本文ノ事ハ、即位篇即位祭神ノ條ヲ參看スベシ、

〔南方紀傳〕

p.0579 此即位の時、伏見殿〈◯崇光皇子榮仁〉も、南帝の太子〈◯後龜山皇子良泰〉も御即位の御望あり、三人相並て御諍論あり、然れども武家實仁〈◯稱光〉の贔負し奉りし故に遂に踐祚あり、此時伊勢の國司、并に大和紀伊河内陸奧の宮方一同は訴るといへども、御即位なりし故に、悉く謀反すとなり、

〔孝亮宿禰記〕

p.0579 慶長十六年二月廿三日甲午、大外記來臨、御讓位〈◯後陽成〉三月廿七日之由内々有二其催一云云、　三月六日丙午、今日兩傳奏并兩局諸司等、於二南殿一御讓位之御道具有二點撿一、官方之分、南殿御帳帷依二破損一、今度新調也、自餘之御道具者、被レ用二古物一、又不足分者可二新調一也、又木工寮縄床子之事、縄ハ可二見苦一、以二木綿糸一可レ作レ之、總ハ黒塗也、大概此分治定、　十六日丙辰、參二鷹司内府殿一、於二彼御亭一御讓位御習禮有レ之、駿河大御所、〈◯徳川家康〉明日御上洛之由、自二板倉伊賀守一申二傳奏一、山科迄可レ出二御迎一之由返答云々、　十七日丁巳、今日午刻、自二駿河一大御所有二御上洛一、二條城有二著御一云々、　廿日庚申、兩傳奏等、於二南殿一高御座御道具等尋出、以二大工一令二點撿一、　廿一日辛酉、鷹司殿有レ仰、當家之老懸令二借進一、是御讓位

p.0580 之時御用云々、　廿二日壬戌、於二禁中一御讓位有二御習禮一、予參之、　廿三日癸亥、今日將軍大御所有二參内一、御子息左兵衞佐殿并常陸介殿、御孫越前守殿有二御同道一、大御所御進上物、銀子百枚、綿、女院御所銀子五拾枚、綿、親王御方銀子五拾枚、綿云々、左兵衞常陸兩殿銀子廿枚宛、越前守殿卅枚云々、於二禁中一大御所三獻有レ之、其外者御盃計云々、　廿六日丙寅、駕輿丁今日請二取鳳輦一令レ飾レ之、兩傳奏被レ點二撿之一、漏刻者、内舍人可レ持之由、今日被二仰出一也、〈内舍人當時兩人有レ之之由申レ之、白張四人申付、可レ令レ荷之由有レ仰、荷之由有二舊記一云々、〉内舍人者當局催也、勅筆漏刻之様子被レ遊レ之被二仰出一者也、　廿七日丁卯、今日御讓位當日也、内辨鷹司内大臣殿、〈左大將信尚公〉先劒璽渡御、次行幸有レ之、次新主之儀、廣橋大納言〈兼勝〉、奉行正親町三條頭中將實有朝臣、大外記師生、官務孝亮、六位外記史各參、孝亮兼二中務大輔一之故、劒璽渡御之時供二奉版一、　四月一日辛未、新帝〈◯後水尾〉諸家被レ申二御禮一云々、院御時勅勘人々烏丸宰相以下出仕云々、　二日壬申、駿河大御所〈江〉、於二、二條城一公家衆御禮有レ之、各大刀持參也、予同出二御禮一、親王〈八條殿、伏見殿、〉與二攝關家一御禮前後之事、御相論出來、〈此度先親王可レ爲レ前之由也〉日野入道、舟橋秀賢、兩人御使、件御相論之事、重而舊記次第可レ有二御沙汰一者、將軍被二申入一云々、

〔續百一録〕

p.0580 延享四年四月廿九日、來月朔日警固固關之節、御非役之御方様、高遣戸諸大夫間等ヨリ御昇降被レ遊間敷候事、
召具之儀も、平唐門之内へは一兩人之外者御無用ニ候事、上下著候者、下部等は勿論可レ爲二御無用一事、〈◯中略〉
一御讓位御當日ヨリ四日、また三ケ日之間、僧尼重輕服參内停止之事、院御所へは、御當日僧尼重服參入停止之事、
一二日、御非役之御方様、高遣戸御昇降之儀御無用ニ候事、
一二日、御非役之御方、禁裏様ニテ召具之事、一兩人之外ハ、與力同心番所之東之方ニ有レ之候塀重

p.0581 門之外ニ差留可レ被レ置候事、上下著候もの、下部ハ勿論可レ被二差留一候事
一櫻町御所御車寄之前ヘハ、召具一兩人之外者被二召具一間敷候、上下著候者一向被二召連一間敷候事、御中門内者勿論、召具之人一向停止之事、
一劒璽渡御之節、庭上〈江〉御越被レ成候者、禁裏様ニテハ、平唐門之外、櫻町御所ニテハ、與力同心番所之南〈并〉北ニ切戸有レ之候者、外ニ召具可二御留置一候事、尤右南之切戸、北之切戸外之儀者、其節御見計ニテ可レ有レ之候事、
一櫻町御所ヘ御參被レ遊候ハヾ、二日ヨリ三日未刻マデ、御臺所御門ヨリ御入、北面所玄關ヨリ御昇降可レ被レ遊候事、尤三日未刻已後者、唐御門ヨリ御往來事、御車寄も假板敷へ設候間、御往來難レ成候事、
一禁裏様御臺所御門御往來之義、先達テハ廿九日卅日ト被二申入一候へ共、廿九日ヨリ來月三日迄、唐門御往來御無用、御臺所御門ヨリ可レ被二御往來一候事、
一御參役之御方様ヘハ、一會之傳奏御奉行ヨリ可レ被二相觸一候、其旨御守被レ成候様にと被レ存候事、
一勿論朔日二日兩日者、召具之輩等、萬端猥ケ間敷無レ之様ニ堅可レ被二仰付一候事、
一行幸之節、僧尼之輩者、拜見之儀相成不レ申候事、
右之條々、爲二御心得一各迄可二申入一候旨、兩傳奏被二申附一如レ此候以上、
　　　　四月廿九日
　　　　　　　　口上覺
火之用心之儀常々可レ被二仰付一候へども、御大禮之節、彌以可レ入二御念一候、此段各迄爲二御心得一可二申入一之旨、兩傳奏被二申附一如レ此候以上、

〔山槐記〕

p.0581 治承四年二月十九日辛丑、御乳母洞院局、以二女官一送レ書云、御讓位〈◯高倉〉日、供二御浴一如何、答曰、以

p.0582 前更不レ可レ憚、受禪〈◯安徳〉之後者、可レ用二吉日一也、

〔見聞雜録〕

〈二十二〉

p.0582 文久二年十二月廿一日夜、小十人格和學講談所附塙次郞、加藤一周〈加藤氏之隱居ニ而、番町邊住宅之由、〉同道いたし、駿河臺邊より〈一説に、駿河臺中坊陽之助方より歸りと云〉歸宅之途中、三番町堀田攝津守構へに於て、何者共不レ知四人程にて、右兩人を及二切害一、其上日本橋御高札場、麹町三丁目横丁、湯島天神等〈江〉捨札を建候由、
逆賊安藤對馬守同腹いたし、前田健助一同、恐多くもいはれざる舊記を取調候段、不屆至極に付、三番町に於て天誅を加へる者也、
前田健助は歌學に名高く、先年浪人に而、和歌之宗匠成しが、御目見被二仰付一、下谷長者町邊住宅にて、歌名夏蔭と云、

〔嘉永明治年間録〕

〈十一〉

p.0582 文久二年十二月廿二日、江戸三番町に捨札アリ、其文に曰、塙次郞、此もの儀先年逆賊安藤對馬守と同腹致し、兼々御國體は辨へながら、前田健助兩人にて、恐れ多くも無レ謂く舊記を取調候段、大逆の至り、依レ之昨夜三番町に於て天罸を加る者なり、
◯按ズルニ、當時ノ外國奉行堀利熈ガ老中安藤信睦ニ與ヘタル書ナリトテ世ニ傳フルモノニ、米國都督米理努理留微造二貴邸一、專論二我政務一、閣下〈◯老中安藤信睦〉共レ被同レ餐、尊レ之如二師父一、遂與二刑典數部一、是可レ怪一也、閣下與レ渠結二伯仲之義一、渠贈二衣帛珠玉巨萬一、閣下酬以二慶長正保金一萬鎰一、是可レ怪二也、渠酔倒之際、挑二閣下侍婢一、閣下許而與レ之、是可レ怪三也、渠固請レ築二館于殿山一、閣下遂許レ之、是可レ怪四也、此四者辱二國體一大者、而有下甚二於此一者上、渠聞三朝廷固二持異議一、論二廢帝之事一、閣下慫慂、使三國學者探二舊典一、ナド見エタレドモ、此書ノ後人ノ僞作ナルコトハ、世既ニ定論アリ、尊攘紀事補遺ニモ、清川八郞爲二詭言一、劫二中山忠愛一曰、如レ聞幕吏謀下逼二皇上一〈◯孝明〉讓上レ位、不二及レ今決一レ事、則無二復及一也、ト見エタル如ク當時ノ浪士、爲メニスル所アリテ故ラニ斯ル詭言ヲ放チ、甲唱ヘ乙和シテ、遂ニ世ニ流布スル

p.0583 ニ至リシモノナリ、サレバ塙次郞ノ害セラレシモ、此浮言ヲ信ズル輩ノ所爲カ、然ラズバ私怨ヲ挾ム徒ノ、強テ斯ル罪名ヲ付セシモノナルベシ、

廢帝〖附〗

p.0583 　附廢帝
廢帝ノ事ハ、人臣トシテ言フニ忍ビズ、尤モ之ヲ掲グルニ忍ビザル所ナリ、然レドモ其實ヲ傳フルニハ、亦之ヲ擧ゲザルヲ得ズ、實ニ已ムヲ獲ザルナリ、此篇ニ擧グル所ハ、淳仁仲恭ノ二天皇ニシテ、淳仁天皇ノ廢黜ハ、奸髠ノ逆謀ニ出デタリト雖モ、前帝ノ詔ヲ假リテ之ヲ行ヒシモノニシテ、眞ニ廢黜セラレタマヒシナリ、其淡路ニ蹕ヲ移シタマヒシヲ以テ、後世淡路廢帝ト稱ス、仲恭天皇ハ、陪臣北條義時、大逆無道ニシテ、後鳥羽、土御門、順徳ノ三上皇ヲシテ、蒙塵セシメ奉リ、其餘燄天皇ヲシテ、自ラ其位ヲ去リ給フニ至ラシメタリト雖モ、此レ實ニ北條義時ノ意ニシテ、即チ廢立ヲ行ヒシナリ、故ニ當時九條廢帝ト稱ス、而シテ淳仁ト云ヒ、仲恭ト云フ諡ハ、實ニ明治聖上ノ追ヒテ上ラセタマヒシ所ナリ、此餘陽成天皇ハ、藤原氏ノ意ヲ以テ之ヲ廢シタリト雖モ、其表面ニ在リテハ、恒例ノ内禪ト爲シタレバ、今ハ之ヲ讓位ノ篇ニ收メタリ、安徳、後醍醐、光嚴、崇光天皇ノ如キハ、太上天皇ノ號ヲ上リシヲ以テ、之ヲ太上天皇ノ篇ニ擧ゲ、其説ヲ解題ニ載セタリ、

廢天皇爲親王

〔水鏡〕

〈下淳仁〉

p.0583 次のみかど廢帝と申き、〈◯中略〉大炊王と申は、すなはち此みかどにおはします、

〔扶桑略記〕

〈拔萃淳仁〉

p.0583 大炊天皇〈號二淡路廢帝一〉

〔皇年代略記〕

〈淳仁〉

p.0583 廢帝〈◯中略〉寳字八甲辰十月日、退二帝位一、賜二親王號一、爲二淡路公一、〈◯中略〉天平神護元年乙巳九月薨、稱二淡路廢帝一、

〔續日本紀〕

〈二十四淳仁〉

p.0583 天平寳字六年五月辛丑、高野天皇〈◯孝謙〉與レ帝有レ隙、於レ是車駕還二平城宮一、帝御二于中宮院一、高野天皇御二于法華寺一、

〔續日本紀〕

〈三十二光仁〉

p.0584 寳龜三年四月丁巳、下野國言、造藥師寺別當道鏡死、道鏡俗姓弓削連、河内人也、略渉二梵文一、以二禪行一聞、由レ是入二内道場一、列爲二禪師一、寳字五年、從レ幸二保良一、〈◯孝謙〉時侍二看病一、稍被二寵幸一、廢帝常以爲レ言、與二天皇一〈◯孝謙〉不二相中得一、天皇乃還二平城別宮一而居焉、

〔續日本紀〕

〈二十四淳仁〉

p.0584 天平寳字六年六月庚戌、喚二集五位已上於朝堂一、詔曰、太上天皇〈◯孝謙〉御命以〈氐、〉卿等諸語〈部止〉宣〈久、〉朕御祖太皇后〈乃◯聖武后光明子〉御命以〈氐〉朕〈爾〉告〈之久、〉岡宮御宇天皇〈乃◯天武皇子草壁〉日繼〈波〉加久〈氐〉絶〈奈牟止〉爲、女子〈能〉繼〈爾波〉在〈止母〉欲レ令レ嗣〈止〉宣〈氐〉此政行給〈岐、〉加久爲〈氐〉今帝〈止〉立〈氐〉須麻〈比〉久〈流〉間〈爾、〉宇夜宇夜〈自久〉相從事〈波〉無〈之氐、〉斗卑等〈乃〉仇〈能〉在言〈期等久〉不言〈岐〉辭〈母〉言〈奴、〉不爲〈伎〉行〈母〉爲〈奴、〉凡加久伊波〈流倍枳〉朕〈爾波〉不レ在、別宮〈爾〉御坐坐〈牟〉時自加得言〈也、〉此〈波〉朕劣〈爾〉依〈氐之〉加久言〈良之止〉念召〈波、〉愧〈自彌〉伊等保〈自彌奈母〉念〈須、〉又一〈爾波〉朕應レ發二菩提心一縁〈爾〉在〈良之止奈母〉念〈須、〉是以出家〈氐〉佛弟子〈止〉成〈奴、〉但政事〈波〉常祀〈利〉小事〈波〉今帝行給〈部、〉國家大事賞罸二柄〈波〉朕行〈牟、〉加久〈能〉状聞食悟〈止〉宣御命衆聞食宣、

〔續日本紀〕

〈二十五淳仁〉

p.0584 天平寳字八年十月壬申、高野天皇〈◯孝謙〉遣二兵部卿和氣王、左兵衞督山村王、外衞大將百濟王敬福等一、率二兵數百一圍二中宮院一、時帝遽而未レ及二衣履一、使者促レ之、數輩侍衞奔散、無二人可一レ從、僅與二母家三兩人一、歩到二圖書寮西北之地一、山村王宣詔曰、掛〈未久毛〉畏朕〈我〉天先帝〈乃◯聖武〉御命以〈天〉朕〈仁〉勅〈之久、〉天下〈方〉朕子伊未之〈仁〉授給事〈乎之〉云〈方、〉王〈乎〉奴〈止〉成〈止毛、〉奴〈乎〉王〈止〉云〈止毛〉汝〈乃〉爲〈牟未仁未爾、〉假令後〈仁〉帝〈止〉立〈天〉在人〈伊、〉立〈乃〉後〈仁〉汝〈乃多米仁〉無レ禮〈之氐〉不レ從奈賣〈久〉在〈牟〉人〈乎方、〉帝〈乃〉位〈仁〉置〈許止方〉不レ得、又君臣〈乃〉理〈仁〉從〈天、〉貞〈久〉淨〈岐〉心〈乎〉以〈天〉助奉侍〈牟之、〉帝〈止〉在〈己止方〉得〈止〉勅〈岐、〉可久在御命〈乎〉朕又一二〈乃〉豎子等〈止〉侍〈天〉聞食〈天〉在、然今帝〈止之天〉侍人〈乎〉此年〈己呂〉見〈仁〉其位〈仁毛〉不レ堪、是〈乃味仁〉不レ在、今聞〈仁〉仲麻呂〈止〉同レ心〈之天〉竊朕〈乎〉掃〈止〉謀〈家利、〉又竊六千〈乃〉兵〈乎〉發〈之〉等等乃〈比〉又七人〈乃味之天〉關〈仁〉入〈牟止毛〉謀〈家利、〉精兵〈乎之天〉押〈之非天〉壞亂〈天〉罰滅〈止〉云〈家利、〉故是以帝位〈乎方〉退賜〈天、〉親王〈乃〉位賜〈天、〉淡路國〈乃〉公〈仁〉退賜〈止〉勅御命〈乎〉聞食〈止〉宣、事畢將二公及其母一、到二小子門一、雇二道路鞍馬一騎レ之、右兵衞督藤原朝臣藏下麻呂衞二送配所一、幽二于一院一、勅曰、以二淡路國一賜二大炊親

p.0585 王一國内所レ有、官物調庸等類、任二其所用一、但出擧官稻一依二常例一、

〔續日本紀〕

〈二十六稱徳〉

p.0585 天平神護元年二月乙亥、勅二淡路國守從五位下佐伯宿禰助、風聞配二流彼國一罪人、稍致二逃亡一、事如レ有レ實、何以不レ奏、汝簡二朕心一、往監二於彼一、事之動靜、必須二早奏一、又聞諸人等詐二稱商人一、多向二彼部一、國司不レ察、遂以成レ群、自レ今以後一切禁斷、　三月丙申、詔曰、〈◯中略〉復有人〈方〉淡路〈仁〉侍坐〈流◯流恐須誤〉人〈乎◯淳仁〉率來〈天、〉佐良仁帝〈止〉立〈天〉天下〈乎〉治〈之米無等〉念〈天〉在人〈毛〉在〈良之止奈毛〉念、然其人〈方、〉天地〈乃〉宇倍奈〈彌〉由流〈之天〉授賜〈流〉人〈仁毛〉不レ在、何〈乎〉以〈天可〉知〈止奈良方、〉志愚〈仁〉心不レ善〈之天、〉天下〈乎〉治〈仁〉不レ足、然〈乃味仁〉不レ在逆惡〈伎〉仲末呂〈止〉同レ心〈之天〉朝廷〈乎〉動〈之〉傾〈無止〉謀〈天〉在人〈仁、〉在、何〈曾〉此人〈乎〉復立〈無止〉念〈無、〉自レ今以後〈仁方〉如レ此〈久〉念〈天〉謀〈己止〉止〈等〉詔大命〈乎〉聞食〈倍止〉宣、　十月庚辰、淡路公不レ勝二幽憤一、踰レ垣而逃、守佐伯宿禰助、掾高屋連並木等、率レ兵邀レ之、公還明日薨二於院中一、

〔續日本紀〕

〈三十二光仁〉

p.0585 寳龜三年八月丙寅、遣二從五位下三方王、外從五位下土師宿禰和麻呂、及六位已下三人一、改二葬廢帝於淡路一、之屈二當界衆僧六十口一、設レ齋行道、又度下當處年少稍有二淨行一者二人上、常廬二墓側一令レ修二功徳一、

〔續日本紀〕

〈三十五光仁〉

p.0585 寳龜九年三月己巳、勅淡路親王墓、宜下稱二山陵一、其先妣當麻氏墓稱二御墓一、充二隨近百姓一戸一守上レ之、

自出宮而外徙

〔吾妻鏡〕

〈二十五〉

p.0585 承久三年七月九日辛卯、今日踐祚也、〈◯後堀河〉先帝〈◯仲恭〉於二高陽院皇居一避レ位、密々行二幸九條院一、

〔百練抄〕

〈十二仲恭〉

p.0585 承久三年七月八日庚寅、主上密々渡二御九條殿一云々、　九日辛卯、持明院入道宮〈◯守貞〉御子、〈御年十歳◯後堀河〉有二御踐祚事一、關東申(○○○)二行之(○○)一、

〔皇胤紹運録〕

p.0585 九條廢帝〈承久三、七、九、廢レ之、〉

〔皇代記〕

〈仲恭〉

p.0585 廢帝(○○)〈諱懷成、順徳第三子、號二九條廢帝一、〉

〔皇年代略記〕

〈仲恭〉

p.0586 廢帝、〈◯中略〉承久三年七月九日辛卯、廢レ之、

〔帝王編年記〕

〈二十四仲恭〉

p.0586 後廢帝、〈◯中略〉大嘗會不レ被レ行以前退下、世稱二半帝一、〈◯中略〉　承久三年辛巳七月八日、天皇奉レ廢レ之、　文暦元年甲午五月廿一日、崩御、〈◯中略〉號二後廢帝一、

〔増鏡〕

〈三藤衣〉

p.0586 前の御門〈◯仲恭〉は、四にて廢せられ給ひて、尊號などのさただになし、〈◯中略〉年號かはりぬ、文暦元年といふ、承久の廢帝十七になり給へるも、五月廿日にうせ給ひぬ、