https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0071 料理トハ、食物ヲ作リ調フルヲ謂フ、元來料理ノ文字ハ、獨リ食物ノミナラズ、諸般ノ事ヲ處理スル意ナルガ、遂ニ專ラ食物ヲ調理スルコトニ用イルニ至レリ、食物ヲ調理スルニハ、先ヅ庖丁ヲ用イテ之ヲ割截スルヲ以テ、直ニ之ヲ庖丁ト云ヒ、又食物ハ鹽梅ヲ主トスルヲ以テ、之ヲ調味トモ云フ、凡ソ鳥、獸、魚、貝ヲ始メ、野菜、海藻ノ類、料理シテ膳羞ニ供スルモノ、殆ンド幾百種ナルヲ知ラズ、或ハ産出ノマヽ庖丁ヲ加ヘタルノミニテ、煮燒セズシテ直ニ食用ニ供スルモノアリ、膾、刺身ノ如キ是ナリ、或ハ煮燒シ或ハ蒸茹シテ、膳羞ニ供スルモノアリ、羹、煮物、熬物、燒物、揚物、蒸物、茹物ノ類是ナリ、而シテ汁アルモノト汁ナキモノトノ多少、燒キタルモノト煮タルモノトノ分量ヲ比較シ、濃淡宜キヲ得テ、主客ノ口腹ヲ歡バシムルハ、獻立ノ主トスル所ニシテ、廚人最モ意ヲ用イルヲ要ス、 膳羞ヲ供スルニハ、人品ノ貴賤高下ニ因リテ、或ハ折敷、高坏ヲ用イ、或ハ單ニ折敷ヲ用イ、或ハ公饗、四方、三方等ノ器具ヲ用イ、菜數ノ多少ト、器具ノ異同トニ因リテ、三本立、四本立、六本立、十二本立等ノ稱アリ、又朝廷公事ノ盛讌ニハ、威儀御膳、晴御膳、腋御膳、殘御膳等アリ、武家、及ビ民間ノ饗膳ニハ、本膳、七五三膳、五五三膳、五三三膳、五三二膳等ノ名アリ、七五三膳ヲ饗スルトキハ、之ヲ撤シテ後引替膳ヲ進ム、 本膳トハ、原ト二膳以下ニ對スル稱ナリシガ、後世ニハ、汎ク式正ニ用イル膳立ヲ言フ稱トナリテ、通常膳ヨリ三膳マデ出シ、次ニ向詰、引而、吸物、肴等ヲ出スヲ謂ヘリ、七五三膳トハ、三ハ式三獻、五ハ五獻、七ハ七膳ノ義ニテ、先ヅ式三獻ヲ出シ、次ニ初獻ヨリ五獻マデ出シ、次ニ一膳ヨリ七膳マデ出スヲ云フ、五五三、五三三、五三二等ノ膳ハ、之ヲ節略シタルモノナリ、而シテ本膳ヲ用イザル略式ノ料理ヲ會席ト稱ス、 會席料理ハ、茶會ニ用イシ料理ニテ、後終ニ一般ニ流行スルニ至レリ、固ヨリ本膳ト其器具ヲ異ニシ、菜數モ數種ニ止マリ、二膳以下ヲ羞ルコトナシ、凡ソ本膳、會席ニ係ラズ、魚鳥ヲ用イズ、菜蔬ノミヲ用イルヲ精進料理ト云フ、食卓料理ハ支那風ノ料理ニテ、數人一卓ヲ圍ミ、相對シテ共ニ食スルナリ、食卓トハ、蓋シ食器ヲ載スル机ノコトナリ、普茶(シツポク)料理ハ、食卓ノ精進料理ニテ、黄檗僧徒ノ剏メタル所ナルガ、後割烹店ニテモ之ヲ調理シテ衆人ニ薦ムルニ至レリ、 肴ハ、サカナト云ヒ、一ニフグシモノトモ云フ、蓋シサカナハ酒魚(サカナ)ノ義ニシテ、魚菜ニ渉レル稱ナリ、凡ソ、ナトハ、酒飯ニ副ヘテ食スルモノヽ總名ニテ、野菜ヲ指シテナト云ヘルモ、魚類ヲ指シテ云ヘルモ、其義一ナリ、就中魚ハ其味殊ニ美ナルヲ以テ、マナトモ云ヘリ、菜ハ字音ノマヽニサイト云ヒ、或ハアハセトモ、メグリトモマハリトモ云フ、蓋シアハセトハ飯ニ合セ食スルヨリ云ヒ、メグリ又マハリトハ、食机ニ供スルトキ、飯ノ周圍ニ配置スルニヨリテ云ヘルナルベシ、 羹ハ、アツモノト云フ、熱物ノ義ニテ、今ノ謂ユル汁ナリ、字書ニ、野菜ニ羹ト云ヒ、魚鳥ニhttps://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029786.gif ト云フト云ヘド、我邦ニテハ魚鳥ニアリテモ多クハ羹ノ字ヲ用イルヲ例トス、古ハ汁ト吸物トヲ區別スルコトナカリシガ、中世以後、初ニ出スヲ汁ト云ヒ、次ニ出スヲ二ノ汁ト云ヒテ、 其餘ヲバ汁ト云ハズ、吸物ト稱スルニ至レリ、

名稱

〔伊呂波字類抄〕

〈禮畳字〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0073 料理

〔下學集〕

〈下態藝〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0073 料理(レウリ)

〔易林本節用集〕

〈禮言辭〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0073 料理(レウリ)

〔庭訓往來〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0073 配膳勸盃料理(○○)庖丁、或盛物已下故實職者一兩輩可雇給者也、

〔庭訓抄〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0073 料理ハ、魚類精進共ニ味ヒシタツル者是也、

〔倭訓栞〕

〈前編四十禮〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0073 れうり 割烹を料理といへる事、類聚國史に内膳に料理といひ、高橋氏の文にも見えたれば、いと古き事なるべし、居家必用にも菎蒻を製する事を料理と書り、太平記に、本院第二の御子を南朝へ取奉らんとせられけるが、とかく料理に滯りて、京都に捨置奉りけると書るは本義よれり、

〔居家必用〕

〈九種菜〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0073蒟蒻〈○中略〉 料理法、右於https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins026336.gif 筐中揩自凝、碓中擣亦成片段、即於釅灰汁中煮十數沸、以水淘洗、換水更煮五六遍、即切作臠片段、於五味汁中淹、兼少阿魏酥尤妙、作臠及湯腩、隨人所好、加少酥乳最佳、

〔貞丈雜記〕

〈六飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0073 一料理の二字は、はかりおさむるとよみて、食物を調ふる事ばかりに限らず、何事にても取りはからひ調ふることを云也、食物を調ふるを料理すと云も右の心也、本は食物を調る事をば、庖丁(○○)とも、調味(○○)とも云也、

〔玉勝間〕

〈十四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0073 饌(ケ) 饌をつくりとヽのふるを、俗に料理といひ、それよりうつりて、そのつくりとゝのへたる饌をさしても料理といひ、御料理を下さる、結構なる料理などといふみな饌をいへり、

〈增補〉

〔俚言集覽〕

〈禮〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0073 料理 困學紀聞、料理出王徽之傅、愚案、此は料理の文字の出處を云、此方の俗の厨 人の調理(○○)を云ふにはあらず、〈○中略〉十誦律卷〈三十五〉次知料理飮食事、江家次第〈十五〉子一刻料理主基神膳

〔儀式〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0074 踐祚大嘗祭儀中 卯日平明、神祇官班幣帛於諸神、〈○中略〉内膳司率諸氏伴造、各供其職、料(○)理(○)御膳

〔延喜式〕

〈七踐祚大嘗祭〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0074 凡料理御膳、并備小齋人食院者、近宮之地、隨便卜定、〈○中略〉所作盛屋(モリモノヤ)一宇、酒屋一宇、贄屋一宇、器屋一宇、大炊屋一宇、供御膳屋一宇、料理雜魚屋一宇、備食屋一宇、〈已上屋數及長廣、隨事閑繁增減、〉皆以板葺、

〔延喜式〕

〈三十三大膳〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0074 年料 索餅料、小麥卅石、〈御并中宮料各十五斛〉粉米九斛、〈同料各四斛五斗〉紀伊鹽二斛七斗、〈○中略〉 右從十一月一日、迄來年十月卅日供御料、女孺率女丁内膳司、與司料理日別供之、但韲内膳儲備、

〔延喜式〕

〈三十九内膳〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0074 年料 切案十六脚、〈二脚料理雜韲料、二脚料理肴料、二脚料理雜滑海藻料、二脚料理雜菜料、四脚料理鮮魚料、二脚料理雜菓子料、二脚儲料、〉

〔本朝月令〕

〈六月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0074 朔日内膳司供忌火御飯事 高橋氏文云、挂畏卷向日代宮御宇大足彦忍代別天皇〈○景行〉五十三年癸亥八月、詔群卿曰、〈○中略〉冬十月、到于上總國安房浮島宮、爾時磐鹿六﨟命從駕仕奉矣、〈○中略〉即磐鹿六獦命、以角弭之弓、當遊魚之中、即著弭而出、忽獲數隻、仍號曰頑魚、此今諺曰堅魚、〈今以角作釣柄堅魚、此之由也、〉船遇潮涸〈天〉渚上〈爾〉居〈奴、〉堀出〈止〉爲〈爾〉得八尺白蛤一貝、磐鹿六獦命捧件二種之物、獻於太后、〈○八坂媛〉即大后譽給〈比〉悅給〈氐〉詔〈久、〉甚味清、造欲御食、爾時磐鹿六獦命申〈久〉六獦令料理(ツクラセ)〈天〉將供奉〈止〉白〈天、○中略〉乘輿從御獦還御入坐時〈爾〉爲供奉

〔類聚國史〕

〈百七職官〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0075 平城天皇大同三年七月庚子、停内膳司食長上一人料理長上一人

〔酒食論〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0075 造酒正長持申樣 いくらの美物ありとても、氣味とゝのふるれうり(○○○)まで、酒をはなれてかひもなし、

〈增補〉

〔俚言集覽〕

〈禮〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0075 料る(○○) 料理を活用して料ルと云

饗膳

〔伊呂波字類抄〕

〈幾疊字〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0075 饗膳

〔三中口傅〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0075 〈三〉饗膳名各別事 〈中山注進本不見〉折敷高坏机等謂之饗(○)、高坏謂之膳(○)、〈本數不六本、比目不之、〈無内外賓客之時居之、〉〉

〔新儀式〕

〈四臨時〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0075 天皇加元服事 當日早朝所司、設御座於紫宸殿御帳之内南、〈○中略〉又南廂之西第三間、設酒饌等、〈設白木八足机三前、就中二前居御酒具、一前居八足小机二前、居御酒肴類、唐禮設脯醢、今代以乾鯛々醤並用陶器、其上覆以白細布、小机敷布、〉 天皇遷御事〈○中略〉 内藏寮辨備饗饌、賜王卿已下侍臣并女房等

〔北山抄〕

〈一年中要抄〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0075 正月九日始議外官除目事〈○中略〉 藏人頭仰内藏寮、令饗饌

〔江家次第〕

〈一正月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0075 元日〈ノ〉宴會(エンエ) 當御帳東第二間中央、東西兩行設親王公卿座、鋪紺布蠻繪毯代、〈○中略〉 其前立朱臺盤五脚、辨備饗饌、〈近例立四尺四脚、八尺一脚、西第一臺盤大臣并親王料、第二三四納言料、八尺參議料、其饌物者中墨物也、以七寸朱漆盤菓子、毎四尺臺盤六坏、八尺臺盤十二坏、其菓加之繩〈一坏〉、餲餬黏臍合〈一坏〉、大柑子〈一坏〉、栗〈一坏〉、干柿〈一坏〉、椿餅〈一坏〉、或依當時所一レ在、其南北以土器腹赤切并鹽肴等、〉

〔皇大神宮年中行事〕

〈二月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0075 一鍬山伊賀利神事 直會饗膳(○○○○)、〈永井御厨役〉但當時酒肴、〈跡部役〉簀盛二、器盛二、羹菓子等在之、當時是輕微沙汰也、 餓鬼草紙

〔世俗淺深秘抄〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0078 一可然時供御前物儀無異事、但汁物並雉鯛等居樣有兩説、御飯〈ヲ〉中〈ニ〉居時〈ハ〉四種盤中〈ニ〉汁物〈ヲ〉居、仍同居其盤、飯〈ヲ〉居左方時〈ハ〉窪坏盤〈ニ〉居之、雉奥方、鯛方雖先、先以右手之、左手〈ニ〉取移〈テ〉居之、是便宜能樣也、

〔世俗淺深秘抄〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0078 一同〈○公卿〉陪膳之時、平盛四種追役ノ人持參、陪膳取二種御前、是雉與鯛也、御飯左方〈ニ〉居〈ル〉時〈ハ〉、在御座左方、四種窪坏〈ノ〉面之方〈ノ〉間〈ニ〉雉〈ヲ〉居、居樣尋常〈ノ〉定也、次鯛南方〈ニ〉居、共〈ニ〉四種〈ノ間〉也、或鯛居北方、〈御前方〉但以南爲善、御飯居中央時、四種ハ在東方、仍居御箸〈ノ〉臺〈ノ〉盤也、其樣雉西端、必居四種盤、鯛必以居南方、是北〈ニハ〉依汁物坏也、總先居汁物、次居平盛也、汁物〈ハ〉居四種時〈ハ〉中央居箸盤時、北方中程也、〈御前方〉總居是等事、以右手已如居、實居事用左手也、其故以右居之〈ハ〉袖懸加御飯〈テ〉便宜也、仍進寄間、右〈ノ〉手〈ニ〉持〈テ〉臨期用左、古賢〈ノ〉秘事也、不披露事也、

〔三中口傅〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0078 〈三〈一本〉〉一貴賤饗應事 公卿ノ饗ハ、高坏例飯ヲフクラカニ盛テ、神妙菜居廻シテ、一本ニハ箸ノ臺可之、汁一本〈菜六種若八種可居〉折敷一枚、汁又一種ヲモ居テ、其上比目一抔ヲ可居加也、 殿上人ニハ、飯一本折敷ニ汁ヲ居テ、比目等ハ可公卿也、 僧綱凡僧可此定 高坏居(スエ)ニナレバ高坏本數モ多ク成、又アマリニ大樣ナルハ如此計申也、是又常儀也、

〔門室有職抄〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0078 人々羞酒飯儀〈○中略〉 至極饗應之時、高坏十二本備也、其時必用折敷高坏、次八本、次六本、次四本、次三本云々、普通高坏用之、

〔大内問答〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0078 一御著坐候ば、則御盃可參歟、又御肴參次第の事、〈○中略〉 御肴の次第の事は、雜掌がたの覺悟にて候間、此方には不存義ながら、尋承り候まゝ先及見候分は、初獻にぞうに、二獻すい物、三獻同前、四獻目の御肴參て、扨湯漬參、御菓子參、扨御休息候而、頓て 又如先御著座候時、四獻目の御肴〈さうめんか〉參、〈引物有〉御銚子參、扨五獻目の御肴參り、銚子參候時、樣體を見はからひ、御能はじめさせ申候、又前にしるすごとくに、ぞうに參、其後二獻目を參、三獻目に御能させられ候つる事もたび〳〵有之、又御ゆづけの以後、御休息に不及御能させられ候事も候つる、定法は無之候か、御休息候て、右に注候ごとく候事、猶々可然よし、沙汰申候也、

〔當流節用料理大全〕

〈頭書〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0079 移徙の事 式三獻饗膳まいる、御湯には白かいを白き金色にて參る、御饗膳あがりて、頓而龜のかうまいり、御ざう煮より三獻にて御食參り候也、 御かみおきの事 式三獻御饗膳は、三本たてに可然也、但御位によるべし、立松にかへて鶴龜を作りて置べき也、初獻三こん參るべき也、御めし三の膳にても可然、 はかまぎの事 饗膳有べし、式三獻のうち身兩身を下の鯉たるべし、

〔外宮子良館舊記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0079 一文龜元年辛酉十二月十一日、宮後長官朝敦卒去、頓而西川原の長官の御政はじめを、十二月十六日にめされ候、其時子良館へ饗膳(○○)以上廿四ぜん請取申候、同御長官之館へ物忌衆著申候、同饗膳はまへ〳〵は七種にて、す盛にて候得ども、堅御侘事に候間、かわらけもちいを請取申候、七種にてはなく候、

〔太閤記〕

〈十六〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0079 吉野花御見物之事 文祿三年甲午二月廿五日、吉野の花御覽有べきとて、大坂を立出させ給ふ、〈○中略〉廿七日、紀州六田の橋を打わたり、市の坂に至て上らせ給へば新宅有、大和中納言秀俊卿より立させ給へる御茶屋にて侍るよし申ければ、則立よらせ給ふ、饗膳など上られければ、御心よげにすゝみ參らせら

〔前九年合戰繪詞〈東京帝室博物館所藏〉〕

れ、それより千本の櫻、花園、櫻田ぬたの山、かくれがの松など御覽有、〈○下略〉

威儀御膳

〔新儀式〕

〈四臨時〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0082天皇御算事〈○中略〉 中宮職立御厨子於殿西第三間、〈○註略〉殿西壁下立棚厨子四基、設威儀御膳、〈○中略〉 天皇奉上皇御算事〈○中略〉 其儀、母屋東第三間立太上皇大床子三脚、〈○中略〉東廂當母屋二間曲折立棚厨子四基、置威儀御膳也、〈○中略〉獻物之間、供上皇御膳、辨備御臺盤二基、安置御前也參議一人陪膳、殿上四位五位供膳、〈兼院殿上者用之、延喜六年供銀御臺四基并高坏物、矣、又獻物之前供之、○中略〉 天皇賀太后御算事〈○中略〉 大后御座之間孫廂、鋪地敷二枚、其上敷四幅帛、備舞踏所、南軒廊四間板敷上、立棚厨子四基、供威儀御膳、〈菓子干物各卅種〉

〔厨事類記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0082 威儀御膳 御厨子二脚〈三階高四尺、長五尺、弘一尺五寸、或高三尺九寸、或四尺九寸云々、〉 或蒔繪、或黑漆、或紫檀地螺鈿、后宮御産之時、用榎本螺鈿、可時儀、但近代塗胡粉雲母、畫松鶴、花盤六十口〈徑六寸、或五寸五分、花足高八分、厚三分、〉平盤十五枚、〈徑一尺二寸、花盤盛物、枚數四坏居之、〉已上塗胡粉雲母、畫松鶴

〔空穗物語〕

〈吹上之上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0082 吹上の宮につきたまへれば、西のぢんをひらきていらせ給、日さるのときばかりにおはしまして、めでたくみがきしつらへる所に、みなつきなみ給ぬ、いとになきところなりけり、いかでかくてすむらんと御らんず、いぎのおもの(○○○○○○)はさらにもいはず、かんたちめみこたちぢんしたんのつゐがさねして、海山のものつくしてまいり、六位のゑふ諸大夫しな〴〵にいかめしくて、あるじしたり、

晴御膳 腋御膳

〔倭訓栞〕

〈前編三十美〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0082 みけ 節會に、睛御膳(○○○)といふは、酢、鹽、酒、醬、餛飩、索餅、餲餬、桂心也、殘御膳(○○○)といふは、 鎚子、黏臍、饆饠、團喜也、また晴御膳といふは、内膳司より獻り、腋御膳(○○○)といふは、高橋より獻るといへり、

〔江家次第〕

〈三正月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0083 踏歌 内膳入日〈○日一本作月〉華門御膳、〈遲遲時、内膳別當公卿下殿催之、内膳正以下令史等、叉手前行、膳部等擎御膳相從、正令史留版、令史稱警、膳部八人相並登南階第一級、采女等出御前次間、迎取供之、酢、酒、鹽、醬、餛飩、索餅、餲餬、桂心、〉群臣諸仗共立、〈晴御膳(○○○)供了居〉

〔厨事類記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0083 御臺本高一尺、〈或九寸五分、或九寸、〉面弘一尺三寸、〈或一尺三寸三分〉土居弘八寸八分、同厚一寸三分、〈或一寸一分〉 諸宮晴御膳紫檀地〈螺鈿、肴物儀、〉木繪或金靑地施泥繪、〈面押錦〉銀伏輪、〈或白錫〉尋常之時蒔繪、日貢御膳被朱漆、〈面許也〉

〔四節八座抄〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0083 元日節會〈○中略〉 次供晴御膳八盤、〈群臣立供了居、遲々有催、〉次腋御膳四盤、〈群臣不居○中略〉 白馬節會〈○中略〉 次晴御膳、〈群臣立、供了居、〉次腋御膳四盤、〈群臣不起○中略〉 踏歌節會〈○中略〉 次晴御膳、〈先采女撤https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins008808.gif 、群臣立如常、〉次腋御膳四盤、〈群臣不起○中略〉 豐明節會〈○中略〉 次晴御膳、〈采女先撤https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins008808.gif 八盤、群臣立如常、〉次腋御膳、〈四盤、群臣不起、〉

〔建武年中行事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0083 元日節會、内辨大臣陣の座につきてことをおこなふ、〈○中略〉内辨御膳を催す、下殿してこれを仰す、内膳のかみ已下南階のもとにすゝむ、けいひちのこゑを聞て群臣たつ、これよりさきうねべすゝみて草とむにつく、役送のうねべ御づし所の中のばん二もちてすゝむ、陪膳の うねべ〈かみをあげたり、やくそうはあげず、〉御だいばんのおほいを〈兩めんなり〉とりて、二ながらおの〳〵御ばんにすへてこれをまかる、くだ物もとより御だいばんにあり、ばとうばんはしかいおなじくあり、臣下のだいばんにも、くだ物はしかいかねてすへたり、はれの御膳四種已下八ばん(盤)供じぬれば、やがてわきの御膳を供ず、もし程をへば、内辨もよほす、其詞云、御後の職事や候、わきの御ぜんとう〈あるひはのこりの御ぜんともいふ〉五位藏人西階のへんすのこにて、これをもよほしおこなふ、おほよそ御ぜんのくさ〴〵その名はあれども、その姿いづれとわきがたし、内膳などたしかにいまだたづねとはず、てんせい(黏臍)、ひつら(饆饠)、かつこ(餲餬)、けいしん(桂心)などやうの物なり、こんとん(餛飩)、さくべい(索餅)は、めぢかきものなれば、さだめて人もおぼつかなからず、

〔恒例公事録〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0084 元日節會 次晴御膳〈内膳司自南階之〉四種〈酢、酒、鹽、醬、各銀器、〉唐菓子〈餛飩、餲餬、索餅、桂心、各銀器、〉 其儀、内膳司率膳部〈二行〉自南階之、采女正叉手月華門ヲ入前行版ニ留立、警蹕ヲ稱、〈其詞〉ヲシ、膳部等相並南階ヲ昇、〈下ノ第一級〉二三采女南廂西第三間ヲ出、南階ヲ下リ取之、〈二采女四種御盤ヲ取、三采女唐菓子盤ヲ取、〉本路ヲ歸入、先四種御盤ヲ進、一采女取之參進、一御臺盤ニ供、各蓋擎子ヲ撤シ、盤ニ載セ下之二三采女手轉西階ヨリ下之、進物所受之退出、次唐菓子ヲ供、蓋擎子等返下如前、進物所受之退入、采女手及ビ難キ時、藏人頭御帳西ニ立、密々扶之、 次掖御膳〈御厨子所預自西階之、〉https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins044324.gif 子 黏臍 饆饠 團喜〈皆銀器〉

〔恒例公事録〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0084 元日節會御下行米之事 出御之御用 拾石 晴御膳〈内膳司〉 四石貳斗 腋御膳〈御厨子所預〉

〔豐鑑〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0085 内野行幸 五日目十八日〈○天正十六年四月〉還幸なり、〈○中略〉禁中へ入らせたまひて、いやましの御ことぶきなのめならざる御氣色なり、晴の御膳の儀式あり、それより殿下〈○豐臣秀吉〉も還御有て、踏舞に堪給はず、誠に天長く地久しく、御代たもち給ふべき福ひなりと、皆人仰たてまつるもことはり也、

〔江家次第〕

〈一正月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0085御藥 陪膳女房調垸飯臺盤、〈大盛二十坏、飯二十坏、大折櫃交菓子二合、〉給諸司女官并六衞府大破子、〈三十荷小折櫃、交菓子三十合、〉 此外稱腋御膳、自御厨子所御齒固具、又供御藥酒等、以高坏六本之、

〔朝野群載〕

〈五朝儀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0085 藏人左少辨藤原朝臣伊房仰云、從今月廿五日御八講、脇御膳宜内藏寮勤仕者、 治暦元年九月一日 出納右京少屬佐伯政輔 件脇御膳料、出納書分宣旨、令之諸司也、内膳司椿餅、唐菓子、造酒司酒一斗、酢三升、大炊寮、行事所道工等料、造物熟食、朱砂燒、橋二所塗料朱砂二百兩也、其書樣見上、

〔厨事類記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0085 腋御膳〈御臺六本〉 第一御臺 御飯 御箸 同臺 第二 魚味四坏〈紙立盛耳土器〉 第三 魚味四坏同 第四魚味八坏同 第五 御汁物 追物八坏〈紙立無之〉 第六 菓子八坏 〈此内三種菓子小預備進之〉 已上盛土器

殘御膳

〔三節會次第〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0085 元日節會次第〈○中略〉 次内膳供御膳〈自南階之、餛飩、索餅、餲餬、桂心〉供間群臣諸仗共立、供了各居、〈間陪膳采女之〉遲々時内膳別當下殿催之、別當不候者、内辨仰參議之、次供殘御膳〈自東階供之、群臣不起、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins044324.gif 子、黏臍、饆饠、〉遲々、〈○中略〉 白馬節會次第〈○中略〉 次内膳供御膳、〈八盤、自南階之、〉次供殘御膳、〈○中略〉 踏歌節會次第〈○中略〉 次内膳供御膳、次供殘御膳

〔禁裏年中行事細記〕

〈正月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0086 白馬節會次第〈○中略〉 次内膳供御膳〈八盤〉 次供殘御膳〈四盤〉 次給臣下粉熟

本膳 二膳 三膳 四膳 五膳

〔尺素往來〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0086 本膳(○○)、追膳(○○)、三膳(○○)、大汁、小汁、冷汁、山海苑池之菜、誠調百味候也、

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0086 一飯ノ獻立ノ事、本膳(○○)ノ中ニハ必不紛定事ニハナマス用處ニ、近代無其義、不然、ヤキモノヽ事ハ、本膳ニハ魚ノヤキモノ、二ノ膳(○○○)ニハ鳥ノヤキモノ有ベシ、是ヲ本膳ニ雙テ鷠ノヤキモノヲ置事、四條六條ノ日記ノ外成ベシ、不之子細也、

〔宗五大草紙〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0086 公方樣諸家へ御成の事 一先年金仙寺〈貞宗朝臣常の御城〉亭御成の時、御肴參たる次第大方注候、初獻〈ぞうに〉二獻〈まんぢう、又二獻めにすひ物參候而、三獻點心の參候事も候、〉三獻〈すひ物、〉三獻過候てぐご參候、本膳(○○)に御まはり七ぐごすはる、二の膳(○○○)に御まはり五、御汁二ツ、又三(○)に御まはり三ツ、御汁二ツ、四の膳(○○○)〈四ノ御膳を、公方には與ノ御膳と申候、〉御まはり三、御汁二ツ、五に御まはり三ツ、御汁一ツ、六同、七同同、又五の膳(○○○)まで參り候時も、御汁御まはりの數同前、ぐご、御ゆづけ、共に御かはらけ、

〔大内家壁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0086 椀飯同御節并所々御出之事〈○中略〉 一問田へ御おそほの事、御祝并進物已下如例、御肴一獻參りて御臺參べし、御臺は本膳(○○)に御さい六ツ、二の膳(○○○)に御さい三ツ、三の膳(○○○)に御さい三ツ、御汁は本膳に一ツ、精進、二の前に二〈一ヒヤシル〉たるべし、何れの所へ御出のときも、御相伴衆までは此準據たるべし、近習衆は本膳にさい三、汁二ツたるべし、外樣衆は本膳にさい三、ひやしる一ツたるべし、但總別之所に御出之次第、時により御 氣色によるべし、

〔山内料理書〕

一本膳(○○)、是は椀之膳之仕樣なり、土器之時は汁不居、中之飯計可居、椀之時は塗折敷、一 とりもうをころも土器ならば五と入也、かわらけの時は足折也、一鯛燒物をひら燒物と云、かいしきせず、一辛螺きそくする一蛸いぼをすきて皮をむく也二 にすへて又かわらけをわりて結ぶかわらけあいの物 一分飯之時も本膳にも分飯にも手懸也、祝時は分飯の上に黑苔にても甘苔にても少置也、一三膳(○○)おも二ノ膳(○○○)之方ニ居、引物より左に居、三膳以後は三くみ也とも皆引物也、皿數向居候事忌之、三 魚汁たるべし、こだゝみ、老海鼠汁ふぜいのものなるべし、三ど入下に重候ハあいの物、下土器は汁にもつけ、又湯をも可呑ため也、烏賊は靑酢からしずなり引物一五ど入吸口とん山葵を杏仁半程かわらけの端に付 二 燒びたしとは、きすをやきて湯へ入て、頭方よりもそ〳〵とこそげて、鱗をおとすなり、其後鹽少入酒を掛、尾をこがさぬやうに燒なり、三https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png insy_1_0089_001.gif

〔天正十年安土御獻立〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0089安土上樣三河守殿御申獻立、 十五日をちつき 本膳〈〈かわたてきん たこ〉〈かわたて かうの物〉〉 なます〈たいのやき物 な汁 〈かわたて ふなのすし 御めし〉〉 二膳〈〈をけきんゑをかきて うるか〉〈わをきんにゑをかきて かいあわび〉〉 ふとに〈〈かわたて うちまる ほやひや汁〉〈かわたて はむこいの汁〉〉 三膳〈やきとり〈わきんきんきそくゑ有 にし〉〉 〈きそく金銀繪有 かさめ〉〈〈やまのいも つるしる〉すゝき汁〉 よ膳〈〈かわたて まきするめ〉〈かわたて しゐたけ〉〉 〈いろへ しきつほ〉 ふな汁 五膳〈まなかつうを けづりこぷ〉 〈さしみ かわらけ入こはう しやうかず〉 かも汁 御くわしふちたか是をつけて やらひもろ まめあめ みのかき はなにこぶ から花 十五日晩御膳 みづあへ こま〳〵 あゆのすし ひだい 御めし 二膳 〈くしあわび ならづけ〉 こち汁 三ひしくひ 〈かくにつぼ〉 たいのあつ物 をり二かう 〈かくもり つぼもり〉 ふくらいり きしまぜにぶどう をり二かう かわらけの物そのほか、いろ〳〵いで申候、

〔四條家法式〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0090 一大猷院樣、〈○中略〉寛永三寅年九月六日、行幸二條御城、同十日還御、〈○中略〉 同七日朝御本(○○) 〈膾〈燒骨鯛、栗、薑、山葵、〉濃焦鳩〉〉 香物 〈集〉〈御汁〈大根、茄子、芋、 卜治、摘入、〉 御食、〉 御二(○○) 〈燒浸〈鮒〉 和物〈松茸〉〉 御汁〈雁〉 御三(○○) 〈濃氷煉麩〈胡桃〉〉 花和〈夕顔〉 御汁〈海雲、栗薑、〉 一向詰(○○)指身〈眞鰹 山葵〉 引而(○○)〈燒鮎 伊勢海老 カバ燒鱣 蒲穗 鯛苔鮓〉 御吸物(○○○)〈https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins009001.gif ズイキ〉 御肴(○○)〈鹽引 コヾリ 蒟蒻 ゴン切 木耳 榮螺〉 御吸物〈玉子茄子〉 御肴〈水栗、雲蛸、鏝羮、マンヂウアンヲ入レズ、四角ニシテ色付燒、橘燒、椎茸、鹽指玉子、〉 御吸物〈小鮒〉 御肴〈田螺 浮波燒 鹽貝 燒松茸 馬力〉 御菓子(○○○)七種〈縁高〉 同七日晩御本 〈カゾウ鱠〈木耳、栗、海月、薑、貝、海老、大根、キス、氷頭、〉辛螺坪煎〉 香物 〈御汁〈雁卜治〉御食〉 御二 〈燒物〈鮭〉フクラ煎〉 海月 御汁〈鯛鹽煮〉 御三 〈スカシ地紙〉散盛〈水札、伊勢海老、眞鰹燒、蒲穗、油貝、〉 御汁〈海鼠疊、山芋、生海鼠、栗薑、鰹、山葵、海苔、〉 一向詰〈小鯛〉 引而〈梅首鷂燒テ、キスゴ、鮎鮓、〉 吸物〈牡蠣〉 御肴〈フワ〳〵、貝田樂、アミ、短册治苔、海茸、烏頭目、〉 御吸物〈芋卷〉 御肴〈シダレ熨斗 煎蓮 串貝浮燒 結干瓢 目指 燒カサメ〉 御吸物〈バントイリ〉 御肴〈麩ノ燒 煮鳥 辛螺ハダカ燒 久年母〉 御菓子七種〈縁高〉 同八日朝御本 〈酒浸〈鹽貝、鰹、鹽鯛、唐墨、鹽鴨、栗 薑〉煮物〈串蚫、ケシ、胡桃、〉、〉 香物 〈御汁〈鯉〉御食〉 御二 〈湯引鯛〈葛溜〉千度煎海鼠〉 和物〈干蛸〉 御汁〈鴨、イテウ、〉 御三 〈金籠〈水札、蒲穗、煮貝、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02063.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins033599.gif 、〉海鼠腸桶〉〉 御汁〈鱈〉 一向詰伊勢海老 引而〈鱸燒テ、蚫田樂、ハエ燒テ、〉 御吸物〈烏賊、鹽指、〉 御肴〈ムヂ漬、蒸煎海鼠、燒海苔、海螄ハイ、酢牛房、〉 御吸物〈雜子魚〉 御肴〈淡菜貝 蒸松茸 ツベタ 燒牛房 玉子蒲穗〉 御吸物〈蒲穗、松茸、〉此間八日迄虫喰損失 同九日朝御本 〈沖鱠 煮物〈豆府山葵〉 香物 〈御汁〈雁松茸松露〉御食〉 御二 〈〈金小角〉燒物〈鮭龜足〉〈同〉小桶〉 〈金箱〉杉燒 御汁〈鱸鹽煮〉 御三 金地紙〈龜足、蒲穗、伊勢海老、龜足、燒鳥、〉 御汁〈小菜〉 一向詰指身〈ハキ立鯉、眞鰹、煎酒、〉引而〈煎燒〈菜芋〉、蛸、梅首鶴、水札、鱣酢〉 御吸物〈蜆〉 御肴〈https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins009201.gif (ホヤ)、京ノヒモ、フリ海鼠、丸山漬、十六島白魚、竹子煮テ、鹽ボラ、干田螺、水カウ、〉 御菓子金縁高〈造花、結花、羊羹、ヤウヒ、カステラ、雪餅、龜ソク、柿、アルヘイトウ、結昆布、〉 〈鮒鱠〈針栗、薑、山葵、〉煮物〈箏羮、車海老〉〉 香物 〈御汁〈タヽキ豆腐、菜、小鳥、丸芋〉御食〉 御二〈五菜煮鰆(サハラ)、〈鹽アテ、酒ニ醬油少加ヘ〉濃焦〈鯛牛房、〉 御三 燒浸〈鮒〉 一向詰鯛 引而〈燒鳥、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02063.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins033599.gif 、酢貝、〉 御吸物〈鯛〉 御肴色々 御菓子七種〈縁高〉

七膳

〔甲陽軍鑑〕

〈十六品第四十四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0092 七の膳之次第 右前々に後すへ候所よりあげ候也、 御獻立之次第 初獻 御引渡 〈勝栗五 昆布五〉 熨斗五 二獻 御雜煮 〈燒鳥五種龜ノ甲〉 御ざうに御箸 三獻 御鰭の物〈小鱧(ごんぎり)味噌付 鯛 御箸 角之子〉 已上 御本膳(○○○) 〈雜虀(あへまぜ)御香之物〉鮒鱠〈屈輪鱻儀(くりこき) 御汁〈鶴〉鹽 鶉燒鳥 御飯 山椒〉 御箸同臺 御二之膳(○○○○) 〈蒲穗子指躬〉貝鮑〈御文有〉 〈小鱧 鳥冷汁 鮎鮓 鯛〉 御三之膳(○○○○) 〈海月鹽引〉桶〈御文有〉 〈摺熨斗 眞羽煎 和魚 鯉〉 御よつめ(○○○○) 酒鯛 辛螺〈輪金御文〉 鱈〈昆布〉 御五つ目(○○○○) 舟盛 小串 一獻煮 御六つ目(○○○○) 唐送 御七つ目(○○○○) 鱗煮 已上

〔寛永行幸之記〕

〈中〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0093 供御御獻立之次第 金御木具 初獻 こざし龜甲 御ざうに 御手鹽 けづりもの 二獻 くらげ かいもり 御すい物 からすみ 三獻 壹つ物 鮒 七の御膳の次第 御本膳(○○○) しほびき ふくめ 御やき物 あへまぜ 御湯漬 たこ おけ はし 御二(○○) おんちん かまぼこ 御汁鯛 さめ くらげ 御しるあつめ 御三(○○) はむ やき鳥 かいもり すし かぞう 御汁鶴〈ごぼう〉 御與(○○) 〈まきするめからすみ さかびて 御汁〉 御五(○○) 地紙壽盛 いか うろこ 魚桶三ツ かざみ くもたこ きすご 御汁くゞひ 御六(○○) すいま さゞい はい はまぐり しいたけ 御汁鯉 御七(○○) ふなもり にし はもり 御汁鮒一こんに 御かはらけ物三つすへ 一ふの小ぐし 一うづら羽もり 一のし 兩御所樣 一うづら羽もり 一ふのこぐし 御菓子 かき あるへい かやざくろ のし 右は初日の供御なり、後日は七五三の供御なり、いろ〳〵しな〴〵の御獻立どもあり、

八膳

〔奉公覺悟之事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0094 一御膳之事、八のぜん公方さま一御まへ御參候事候、此時も御しやうばんは三まで也、さいの候はぬは膳とは云まじき也、すへ可申やうの事、 御汁二ツ三ツ御ゆづけ御前御汁二ツ五ツ 七御さい本ニ七ツ二ニ五ツ同二ツ三ニ五ツ同二ツ四(よ)ニ三ツ同一ツ五ニ三ツ同一ツ六ニ三ツ同一ツ七ニ三ツ同一ツ八ニ三ツ同一ツ此時ハ引物は無之六同名備中入道常喜御膳七〈ヲ〉六六〈ヲ〉七〈ニ〉すへられ候 本ハ七是も三まで三ツ汁二五四三ツ汁一ツ此時ハ引物有之あけ候時末よりあけ申也

〔屠龍工隨筆〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0095 童の遊戯に、一の膳いや〳〵、二の膳いや〳〵といふより、段々かぞへて十の膳(○○○)まで言立る事あり、膳府は本膳二の膳三の膳をなかに、四の膳五の膳などゝ、童のことぐさのたはひなきよりいふなるとおもひしに、甲陽軍鑑の料理の事をかきたる圖に、誠に十の膳ありしなり、

七五三膳 五五三膳

〔貞丈雜記六飮食〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0095 一七五三(○○○)の膳と云事、七とはめしにてもあれ、湯漬にてもあれ、七の膳まで出すなり、五とは初獻〈ぞうに、そへ肴、鯉のあつもの、〉二獻〈まんぢう、そへ肴、うづらの羽もり、〉三獻〈たいのあつ物〉四獻〈むし麥、そへ肴、たちばなやき、〉五獻〈やうかん又ハすいせんかん、そへ肴、鮒の一こん煮、〉三とはきやらの膳也、三の膳まで出すなり、料理調樣庖丁人の家に定法有、右は 大草流也、流によりて替るべし、五五三(○○○)と云は七五三を略して、めしにても湯づけにても、五の膳まで出すなり、

〔四季草〕

〈六秋草下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0096 七五三 七五三の膳と云を、今世しらぬ人は、本膳にさい七ツ、二の膳に菜五ツ、三の膳に菜三ツ、くみ付る事とおもへり、それは七本立、五本立、三本立とて、菜の數の事なり、七五三の膳部にはあらず、七五三といふは、先ヅ三とは式三獻なり、膳三ツあり、〈引わたし、うちみ、わたいれなり、〉五とは五獻出すを云、其五獻は、初獻烹雜〈ざうにのことなり〉添肴あり、二獻まんぢう添肴あり、三獻あつ物、〈吸物の事なり〉四獻むし麥〈ひやむぎ、ぬるむぎ、時節によるべし、〉添肴あり、五獻やうかん〈又水仙かんの類〉添肴あり、右の膳何れも組付け物あり、七とは、飯〈湯づけにても同じ〉七の膳まで出すを云ふなり、是等の食物の調樣は、庖丁の家々に傳へて故實ある事なり、武家の知る事にあらず、庖丁家に尋ねしるべし、

〔甲陽軍鑑〕

〈十六品第四十四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0096 湯浸(ゆづけ)之事 菜數七五三也すはま汁など有右まゑつめには船などをかざるなり  汁鱈か鮭か汁何なりとも魚すはる五まゑつめ水又熟(ジユクシ)をも置也、菜にあらず鹽飯七浸物三汁 白鳥(ハクテウ)菜は三七

〔式三獻七五三膳部記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0097 二重一對へいじ一具〈此二色は、座敷の床の方に立置也、〉 式三獻 わノ寸法膳姫折等寸法記にあり しほのもりやうは杉なり、高サ一寸ほど也、 二  婚入には鯉を用ず、鯛を用也、口傳有之、ひばの枝をさす、  はじかみのもりやうは、杉なりに、高サ一寸ほど也、  かわらけわなし 一〈女房衆へはまはしもりなりひきわたし〉   はしの臺あり  梅ぼしハ四ツもりて、其上に壹ツもりて以上五ツ也  鯛を用ゆる也 御手かけ  かく足有本 何もかはらけの分にはわなり  帶のきやう はしの臺あり 同ゑりきりハするめを長さ一寸程に切て、けずりて一片づゝもる也 あつ作とは、鯛のさかびて也、酒を、も不付はなつがつうをせぬ也、まきするめとは、するめを卷て繩にてゆひていづる也、さてちとすぢかへて切也、二  かわらけ貳ツかさなる、下のかわらけにては湯を參申候也、御しるかけ食 三 山のいもをかはすきて、壹寸ばかりに切て、きじを作て、たれみそにてしたゝめ候て、上にあまのりを置也、かくかくさしくらげにかはる事なし只其まゝもる也 一  二  かはらけこかく足同大ちう有かはらけ同御ゆづけ同こかく足有同かはらけ同かはらけちう同同同同前 三 五  六 足かくかはらけあいの物足かく足かくかはらけ大ちうかくあひの物わあり同かはらけかはらけ五六分わありあひの物わありかはらけ足かく同同 七 かはらけ同同大かくの足なし てしほ雜煮朱書 初こんの内雜煮大ぢうてしほはしの臺ありみゝかはらけかめのこうにハいち上にいりこをもる也、常にハ靑黄赤白黑なれ共、雜煮の時は靑赤黄白黑ともる也、足には五色をもり候 二朱書初こんの内朱書二こんそへざかなうづらの羽もりてんしんまんぢうまんぢうをもるに、三ツ四ツもるなり、然ばたてゝよせかけてもる也、四ツの時は上に壹ツ是をよこに置也、四朱書三こん五朱書四こんの内立花やきそへざかな也てんしんむしむき 六朱書四こんの内鮒の一こんに七朱書五こんむしあはびそへざかな也

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0103 慶長拾一年六月廿四日 大草三郎左衞門尉公以判有

〔老人雜話〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0103 信長、美濃齋藤が所へ婿入の時、廣袖の湯帷子に、陰形を大に染付て著し、茶筅髪にて往く、山城守が家老等、國境まで迎に出て、其樣を見て膽をつぶし、密に云ふは、此樣の人に七五三(○○○)の式法などは不都合ならんとて、早使を返し、田舎家具の大なるなどを用意せよと云、信長宿に著て、束帶正しく調て、山城守に對面す、又驚き騒ぎ、もとの七五三(○○○)の式法を用ゆ、此時山城歎じて云、我國は婿引出物に仕たりと、其心は我子共など、國を保つことあたはじ、信長に取れんと思ふ也、

〔御湯殿の上の日記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0103 慶長八年三月九日、女ゐんの御所へ御はなみとてはなしまいらるゝ、御のふ十一ばんあり、たゆふしふたゆふまいる、こん五こん七五三(○○○)のく御まいる、御しやうばんにてはなし、こなたにて參る、たいの物御さか月のたいもまいる、

〔義演准后日記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0103 慶長八年四月四日、卯刻將軍〈○德用家康〉御所へ出仕、單衣〈紫〉五帖ケサ生袴、御相伴衆事、 上壇中央將軍御座、左予著座、上壇只將軍ト予ト二人他、〈○中略〉御相伴衆予ト共ニ廿人也、七五三(○○○)結三構、御膳過テ暫御休息、其後御出御能始ル、

〔四條家法式〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0104 一大猷院樣元和九亥年七月十三日御上洛ニテ、寬永三寅年九月六日、行幸二條御城同十日還御、 七五三御本 行幸御式禮六日之畫 〈土器輪供ニ盆〉鹽引〈同〉香物 〈同〉和交〈同〉蛸〈同〉含 〈金土器輪供二〉湯漬〈蒲穗 五ツ龜足金 金小角ニノセ〉小桶 鹽〈金手鹽付〉箸臺〈金〉 御二〈土器輪供金〉卷鰑〈同〉一墨 〈龜足〉貝盛 〈同〉海月ソキ物 〈集〉御汁〈大根串煎コ芋午房〉御汁〈鶴松茸椎茸〉 御三〈小角供金〉羽盛〈同〉舟盛 〈金輪供〉榮螺 〈金土器輪供〉御汁〈鰭ノ物〉 二〈ツ〉星〈高九寸五分、居一尺四寸、〉橘トンホウ龜足 一六角盛〈羊羹蛤貝供〉 一ヒケコ中〈ニ〉色々肴入〈ル〉〈段々ニ七重組、高髯重金銀ニテクム、〉一松葉盛〈金ノ攀繩ヲ五筋入、唐龜足花ハ水仙、〉一八角盛〈鹽引、黑海苔、金ノ攀繩ニテ結、其間間ニ金ノ貝ヲ交、山吹ノ花ヲ指、〉一午桶〈六ツニテ色々ノ肴ヲ詰、七重糸櫻置テ但金銀ニテクム、〉一六角盛〈カツヲ、芍藥花、シイラ、水玉龜足、〉一六角盛〈大豆飴白玉沈丁花〉一廻〈シ〉盛〈唐墨梓紅菊、〉一クルリ輪盛〈金柑糸薄、金錢花、〉一角盛〈躑躅、瞿麥、〉一饅頭〈金銀段々櫻、菊、〉一廻〈シ〉盛〈鹽引、菖蒲花、牡丹花、〉一金銀ニテスワマ〈ノ〉臺二十六〈立物盛物品々〉 一木地〈ノ〉臺三十〈立物盛物品々〉 一木地〈ノ〉三方造物二十六〈立物盛物品々〉 一御吸物〈鮒〉同〈櫻煎〉同〈フクライリ〉 一御菓子〈金ダミノ縁高ニ盛、三タニ居、臺ニ居ル、御楊枝モ金ダミ、〉 〈羊羹、龜足、結昆布、唐松結花ニ付ル、カステラ、胡桃、千鳥龜足付、榧金蝶龜足付、柿大豆飴、燒麩、金蜻蛉指ス、アルヘイトウ、饅頭、〉 同十日朝 一七五三、引之物、金銀之臺、木地臺、三方造物、御肴、御吸物、御菓子、六日同前也、

〔四條家法式〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0105 大猷院樣御代寬永十三子年二月 一朝鮮人初參候時結構被仰付、天野圖書勤之、〈始ハ五郎大夫ト申ス〉 七五三本 〈鹽引 香物〉 和交 〈蛸 海月〉 食〈蒲穗 手鹽 箸臺 小桶〉 二 〈唐墨 スシ〉 貝盛 卷鰑(タリ) 〈汁〈集〉汁〈鳥〉〉 三 〈羽盛 舟盛〉 榮螺 〈汁〈鯉〉汁〈鰭物〉 與ツ目〈作リ物松立木 ハイ 蛤 榮螺 ツヘタ アサリ 金銀ダミ○圖略〉 五ツ目 地紙〈作リ物梅ノボク サトウ コンペイトウ キリコセウ トウガラシ 燒鹽 コセウ 小桶 トウガラシ〉金銀ダミ繪有〈○圖略〉 盃臺九膳内四膳クリ足 押ヘ供〈ニ〉 一折飾作物櫻山桃トンボウフクサ蝶 小桶 タリ 籠 切コ 鹽引 熨斗 星物〈鹽貝羊羹〉 三〈ツ〉星〈唐墨、マテ、八寸、カイトウ、海苔、アサリ、ツバキ、〉 菓子九種〈松、梅、躑躅、〉 一先三獻出〈ル〉〈三獻ハ如前〉臺何〈モ〉金松竹繪有、小道具同平薄〈ク〉、 一右七五三〈ノ〉臺〈足切違十文字、縁高三寸、總高九寸八分、指渡〈シ〉一尺三寸、二三〈ハ〉組入高サ五分ヲトリ、〉 三人前コン地ドンス、紋小道具迄、三人前赤地ドンス、紋小道具迄、三人前モエキドンス、紋小道具迄、 一右朝鮮人參候時、道中城々ニテ信使三人、上々官二人、副使官、七五三引替之膳、本二三、引物五ツ 色、吸物、菓子、上官、五々三(○○○)、引替ナシ、引物五ツ、肴三色、菓子面々、次〈ノ〉膳本菜二〈ツ〉二〈ニ〉二〈ツ〉、引物三色、汁二ツ、吸物一ツ、肴一ツ總菓子、下官本二ツ、引物二ツ、汁一ツ、

〔朝鮮信使賜饗儀注〕

〈坤〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0106 〈正德元年十一月三日〉 一御饗應之次第左ニ記〈○中略〉 大廣間前殿 御勝手後之間北之方 御臺子西之御縁 御附書院 三使 〈相伴〉對馬守〈狩衣〉 〈同〉兩長老 七五三 本膳 二膳 三膳 〈追膳〉四ツ目 五ツ目 〈銀〉湯次 〈同〉金鉢 置盃〈三方に居出之、二獻濟三獻之時奈良臺と引替之、〉捨土器 吸物 銚子〈但銚子白紙飾糸花〉 加 初獻 正使始之、次對馬守、次副使、次縁長老、次從事、次集長老に而酌引之、 吸物〈初之吸物と引替之〉 銚子 加 二獻 副使始之、次對馬守、次正使、次縁長老、次從事、次集長老に而酌引之、 吸物〈二獻目之吸物と引替之〉 盃臺〈奈良臺眞之糸花、人形三つ、立金紗掛け、〉銘々 押取肴〈三方共木地臺押共に糸花飾之、〉銘々 折 三合 二星之物〈木地すはま臺に組付、木地三方に居、〉 三星之物 右同斷 但折之物、星之物、此三品は上座に並置、三獻目始、 銚子 加 三獻 從事始之、次對馬守、次正使、次縁長老、次副使、次集長老給、納銚子膳部等引之、 菓子九種〈杉、木地縁高龜足〈蝶千鳥〉白木白木三方に而出之、糸花〈松梅椿どんばう〉楊枝添〉 茶〈臺天目〉 上々宮〈江〉は平茶碗帛に而出之 松 之間 〈御勝手後之間北之方、御臺子四之間北西之隅、〉 上々宮〈三人〉 右御饗應七五三、仕形膳具共に三使同斷、 盃臺〈彫足島臺眞之糸花、人形三つ、立金紗かけ、〉銘々 押取肴 銘々

〔將軍德川家禮典附録〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0107 例年參向公家衆御馳走御能之節御料理獻立、三月、 御白書院 勅使 院使 七五三 〈大重金土器敷輪木地〉鱧 〈上同〉鰑 〈小角木地〉蒲鉾〈金銀龜足〉 本木地薄盤 〈右同〉和交 〈平皿敷輪木地〉切燒鱒 〈金木土器敷輪木地〉湯漬〈手鹽箸臺〉 〈右同〉香の物 〈上同〉福目 〈總金小角木地〉小桶〈梅ひしほ香の物〉 〈小重金土器敷輪木地〉鹽引鮭 〈上同〉福目 〈金間土器敷輪木地〉汁〈くらこ松たけ燒豆腐里いも皮ごぼう〉 二 〈敷輪木地〉目盛〈龜足〉 〈右同〉熨斗盛 〈上同〉海月 〈右同〉汁〈鶴麩椎たけ〉 〈小角木地〉羽盛 〈金間土器敷輪木地〉汁鯛 三 〈金間土器敷輪木地〉榮螺〈龜足〉 〈右同〉船盛 〈右同〉汁鯛 〈金間土器敷輪木地ヘ三方ニ居〉吸物鮒 箸臺 〈同〉 吸物 〈卯の花いり 品川のり〉 同 〈同〉 吸物〈ふくら煮鮑 同わた〉 同 〈木地縁 糸花 高とんぼう〉 押 奈良臺 菓子〈檜の葉〉 〈やうかん すわま まんぢう あるへい せんべい〉 蝶 〈枝かき 結こんぶ〉 千鳥 やうし 〈腰高〉煮染〈むし貝 車ゑび ぜんまい〉 〈黄淺椀〉餅菓子 〈小まんぢう、外良餅、付彩餅、やうかん、うづら燒、白はし〉、 〈右同〉香の物 吸物〈鶴 松茸〉 〈さかな〉一切かまぼこ

五三三膳

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0108 一五三三御めし集養の事、ひざのくみ樣前のごとく、これも五ツ目まで參り候て、はしを取候時は、右の手をうつむけて、左の手をあをむけて取、右の手をはしにつけてまはして取なをして、大汁とそのさきのさいとのあいだにて、はしをつきそろへて、大汁にてはしさきをひたし、わんを取あげ、めしをたべて大汁をすい、汁のみをばくはず候、さて鹽をはしにてくい、又めしをくい、大汁をすふて手こしのさいをくふ、又食をくい、はし取なをし、二の手本のしるを右の手にて取、左右の手にて汁をすふてみをくふて、又汁をすふて、右の手にてもとのごとくをく也、扨さいごしのさいをくふ、又めしをくい、三ツ目の手本の汁をはし取なをし、左にてとり、兩の手にて汁をすひ、みをすこしくふて、又汁をすふて、左の手にて本のごとくをく、其後運のさいをくふ、又めしをくふて二の膳の右はしの汁をすふ、集養前同前、其後めいのさいをくふ、又めしをくい、はし取なをし、三ツ目の左はしの汁をすふ、集養同前、其後ゑびをあつかふ、

〔四條家法式〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0109 一五三三 初獻引渡 〈昆布勝栗〉 熨斗 二獻臟煮 〈梅干五種〉 餅〈イモ串子 クシ貝平カツラ〉 箸臺 三獻吸物 〈鱠數子〉 鯛〈鰭〉 箸臺 御銚子 御提 御本 〈鹽引香物〉 和交 〈燒物 御汁〈集〉 蒲穗 御食〉 箸臺 御二 〈卷鰑鮎鮨〉 貝盛 御汁〈鳥〉 御三 〈羽盛舟盛〉 辛螺 御汁〈鯛〉 一ツ盃 唐墨 醬煎 箸臺 熊引 御湯 御菓子〈五種〉 色直之獻 〈結熨斗赤白粉〉 餅〈八ツ〉 箸臺 二獻 〈指身蛤〉 吸物〈鮒〉 箸臺 三獻添肴 鮎鱜 箸薹 此次ニ引替之御膳出ル也

五三二膳

〔四條家法式〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0109 一五三二 數熨斗 三盃 初獻引渡 〈昆布搗栗〉 熨斗 二獻臟煮 〈梅干數子〉 餅〈イモ串子串貝平カツラ〉 箸臺 三獻吸物〈鯛鰭〉 箸臺 御銚子 御提 御本 〈鹽引香物〉 和交 〈燒物 御汁〈集〉 蒲穗 御食〉 箸臺 御二 〈卷鰑鮎鮨〉 榮螺 御汁〈鳥〉 御三 〈羽盛舟盛〉 御汁〈鯉〉 一盃 御吸物 醬煎 箸臺 御湯 御菓子〈五種〉 御色直之獻 〈縮熨斗赤白粉〉 餅〈八ツ〉 箸臺 二獻 指身 吸物〈鮒〉 箸臺 三獻御添肴 鮎鱜 右相濟、次引替之膳出ル也、

〔料理獻立〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0110 年頭御式 朝御膳 〈二汁十菜〉 右往古より五三〈ン〉二と唱へ申候、奥よりも五三二之御膳と御申有之、尤右ニ付古實有之、或、難相分候、 御獻立如左、但昨卯年〈○寬政七年〉被召上候品を記申候、但例之外者、御品其節之御好に隨ひ、少宛之相違御座候、 御本〈厚御三方附ケ方御獻立書面之通〉 〈御皿付〉御鱠〈きすご あわび くらげ くり きんかん〉 〈同上〉一御やきもの 〈すまし〉御汁〈花あわびみる〉 〈一鹽小鯛〉御飯 御に物〈めばるたんざくこんぶ〉 御かうのもの〈みどりぶけし付〉 御二 〈右同斷〉かばやき 〈例〉ふき 〈とうへい〉御に物〈へいも ほな もすく か菜〉 〈右同斷〉御ひたし〈けしはくり〉 御引物〈例〉一わかゑび〈同〉一御ひしわらび〈但牛〉 夕御膳〈五三二前同斷〉 御鱠〈御品前同斷〉 一御やきもの〈前同斷〉 〈すまし〉御汁〈ほうぼ初霜こんぷ〉 御に物〈たいみる〉 御飯 御かうのもの〈一鹽小百合根〉 御二 付あぶりきすご 御に物〈おぼろかへのり〉 〈ふくさ例〉御汁〈前同斷〉 御にしめ〈ぜんまい梅ぼし〉 御引物〈兩種御品前同斷〉 右は三ケ日とも同斷、御品は御好次第前同斷 節分御式 朝御膳如尋常 夕御膳五三二前同斷 但御引物例 一やきとりつむぎ〈○鶇〉 一御ひしわらび〈○下略〉

引替膳

〔四條家法式〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0111 一大猷院樣、元和九亥年七月十三日御上洛ニテ、寬永三寅年九月六日行幸二條御城、同十日還御、〈○中略〉 九月六日晩御引替之御膳 御本 〈膾〈鯛生海鼠 葵山葵〉ユデ鳥〈鴨〉 香物 〈御汁〈生鶴 松茸〉御食〉 御二 〈燒物〈生鰹〉スヽギ燒〈鯛赤貝 小島ヘソ〉 ズイキ和 御汁〈鱸鹽煮〉御三 杉地紙〈蛸細螺車海老蒲穗〉 御引物 一燒物〈鴫〉 一鮓〈鱣〉 一蒸貝 御吸物〈三方造物 蜆〉御肴〈蛸櫻煮柚干、挼熨斗、蚶小串、 富士海苔、〉 御吸物〈小海老、木ノコ、〉 御肴〈慈姑、唐墨、堅海苔、疊鰯、煮貝、水栗、〉 御吸物〈蒲穗 松茸〉 御肴〈鷹羽蒲穗、燒麩、小鳥小串、蟻實、カハ燒、柘榴、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02063.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins033599.gif (&タイラキ)、蜜柑、澳津鯛、〉 御菓子七種〈縁高〉 同十日朝〈○中略〉 御引替御本膳 〈水和〈烏賊、薑栗、串貝、熨斗、煎海鼠、鰹、〉千羽〈小鳥〉〉 香物 〈御汁〈鴨、生鱸、〉御食〉 御二 〈鮒鱠 眞鰹燒〉 海月和 御汁〈鯉、セリ、〉 御三 重地紙〈鴫燒、海老、海菜、〉 御汁〈蛤、干菜、〉 一向詰〈鮒〉 引而〈苔鮓、丸濃氷、煎鳥、玉子フワフワ、ユフホウカラヤキ、〉御吸物〈アンカウ〉 御肴色々 御菓子七種 寬永三寅年九月十日 小川勘右衞門

〔御日記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0112 寬永八年正月元日〈○中略〉 一御裝束被脱御長袴、 御齒固餅、御祝ノ御膳御引替也、御膳ハ酒井阿波守、 午下刻〈御席御座間〉御盃出、酒井下總守〈役之○中略〉御膳申ノ上刻御祝ノ御膳、次引替ノ御膳、上御夜詰六過、

式正料理

〔將軍德川家禮典附録〕

〈二十四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0112 一御式正御料理之事 十二月十二日 御媒納 同廿八日 歳暮 日限不定節文ノ日 正月三ケ日 同六日十四日年越 右諸席共、御式正御料理被之、

〈增補〉

〔俚言集覽〕

〈保〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0113 本膳 式正に用ゐる膳立をいふ、二の膳、三の膳あり、

會席料理

〔倭訓栞〕

〈中編六久〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0113 くわいせき 茶人の客を請じて、茶より前に飮食を出すを恠石といふは、蘇東坡の佛印禪師に點心せんとて、恠石を供せられしによれり、

〈江戸流行〉

〔料理通大全〕

〈初編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0113 茶事會席の料理心得之事 一茶事の會席は、かつて料理にあらず、依て庖丁の花美を好まず、食するものゝ味ひを本意とする故、意は料理の二字に叶ふて面白き事多し、然るに會席といへば、何か面白き取合とのみ心得て、食するものゝ味ひを失ふ道理を知らず、會席は二菜三菜に限り、數菜ならねば、鹽梅の宜きを元とす、是を本意とすべし、珍敷取合の惡物好はかならず無用也、其いにしへやんごとなききみ、利休の亭へ御立寄らせ給ひし時、利休取敢ず土器にあらひ米を盛て、茶を奉りし事ありとかや、甚感ある事なり、

〔料理早指南大全〕

〈初編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0113 會席 〈一〉飯 〈二〉汁 〈三〉膾 〈四〉附合 〈五〉手鹽皿〈香物〉 〈六〉平皿 〈七〉大ちよく 〈八〉茶碗

〈江戸流行〉

〔料理通大全〕

〈初編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0113 會席鱠之部 春〈あま酢 たつくりせん つくり身たい わか大こん くりしやうが〉 夏〈あま酢あへ せごしあゆ きうりさゝうち きくらげ ふくめしやうが〉 秋〈いりざけ酢 かみしほ鯛うすつくり じゆんさいまき菜 せんわさび〉 冬〈あはせ酢 ほそつくり身きす きくみ きくらげせん あられしやうが〉 同汁之部 春〈ふくろかき わかめせん〉 夏〈はぢきさといも 火取きすおろしみ〉 秋〈つぶはつたけ はぜすりながし〉 冬〈地大こんせん六本 花かつを〉 同椀盛之部 春〈たらかきわらび しようろ〉 夏〈すゞき はすいもせん 大しいたけせん〉 秋〈うづらつみ入 さゝがしごぼう 丸しめじ〉 冬〈かもいんじょ ふゆ菜〉 同燒物之部 春〈卸身むしかれい鹽燒 ふきのとう切合〉 夏はつがつを生り節 いんげん附あはせ 秋〈一夜漬なまさけ しろさけかけ〉 冬〈おろし身あまだい 一夜づけ〉 同すまし吸物之部 春〈つる わか菜〉 夏〈せぎりあぢ じゆんさい〉 秋〈うち魚 うどめ〉 冬〈ふくろかき 燒ふきのとう〉 同口取之部 春〈唐納豆 からすみ〉 夏〈むかご鹽煮 やきとり〉 秋〈火とり熨斗 さくらのは鹽つけ〉 〈うまに〉冬〈ほしぶどう まつかせきす〉

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0114 又會席料理といふは、予〈○喜多村信節〉が覺えて藥研堀の川口忠七鳴竹始なり、彼は芝居の笛吹なりし、

即席料理

〔料理早指南大全〕

〈初篇〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0114 凡例 一即席料理と部立せしは、先魚を得て、さて其魚に依て趣向するゆへに名づく、

〔浪花の風〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0114 當地も即席料理の店は多くして、江戸と替ることなし、されども其調理風味の大旨をいはゞ、江戸は淡味を主として甘美なる方にて、當地は滋味を主として鹽辛き方なり、これをむかし織田右府が大内家の料理人に調理を命ぜしに、口に適せずして怒られしかば、料理人改め乞ふて再び調理せしに、大に右府の口に適ひし時、料理人が評せし語に思ひ合すれば、江戸の料理は大内家の第一等に近く、當地の料理は第二等に當りぬべしと思はれぬ、當地は豪富のもの多く、奢侈を極めし樣に思はるれども、飮食抔は江戸ものゝ如きにもあらず、諺にいふ江戸の食倒れといふもの思ひ合すべし、

鳥料理

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0114 鳥料理獻立之事 〈皿〉雉子鱠〈大こんおろし くりしらが せうが同 きじやき候て こまかにたゝき ざくろ ほたで〉 〈ふくさ〉汁〈鴈のしらに うどのめ ふ なめすゝき〉 鳥こくせう〈鶉たゝき ぎんなん 山のいも小口切〉 〈すまし〉汁〈雉子靑味かち あをのりほそくほどき入り〉 二 御食 小ちよく〈ひばり 鹽辛〉 三〈平皿〉小鴨〈茹どり くすたまりわさび〉 〈ふくさ〉汁〈小鳥たゝき な〉 引テ〈鴨あまかは細作り〉 和物〈鳥のもゝげ けしみそ〉 〈皿〉指身 〈皿臺ニのせ〉向詰〈うづらやき玉子のふのやき〉 〈足打〉引合〈えんすいり酒わさび 鴨の板やき たうふのうば〉 鳩酒〈はとたゝき入みそニすりまぜさけを入〉 鍋引〈煎鳥(にとり)〈ひばりせり〉〉 吸物〈白鳥のほそわた はすいものくき〉 菓子〈玉子そうめん かすてら〉 後段 鳥雜水〈つちくれ鳩 せりこまかにたゝき〉 鳥〈引而味噌〈小ざらに入〉〉

牡蠣料理

〔浪花の風〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0115 牡蠣は少なき方なれども、土人尤賞味す、故に十月頃よりかき船とて、口口邊より多くかき積たる船來る、此船にてかき料理とて、かきを加へ飯を焚、其餘、汁、平等に至る迄、一式かきのみを用ひたる料理ありと、土人之を賞玩す、

精進料理

〔倭訓栞〕

〈前編十一志〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0115 しやうじん 野菜海草の類を精進物といふは、古き語也、朝野群載御齋會加供解文に、精進物と出し、靑苔曳干、和布曳干、海松、昆布など見えたり、酷食といふも、精進の事也、精進落は、西土にいふ開齋也、又開葷といふ、杜詩に、多年病酒開硯滴とある、開の字義に同じ、精進の語は、もと美食せざるをいへり、今魚肉を食ざる事とするは、佛氏の意也、

〔倭訓栞〕

〈中編十二曾〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0115 そじき 匡謬正俗に、素食、謂但食菜菓糗餌之屬酒肉也、今俗謂桑門齋食素食、蓋古之遺語焉と、見えたり、

〔新猿樂記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0116 七御許者、食飮愛酒女也、所好何物、〈○中略〉精進者(○○○)、腐水葱、香疾大根、舂鹽辛納豆、油濃茹物(ユデモノ)、面穢松茸、

〔枕草子〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0116 こと〴〵なるもの おもはん子を法師になしたらんこそは、いと心ぐるしけれ、さるはいとたのもしきわざを、たゞ木のはしなどのやうに思ひたらんこそいとおしけれ、さうじもの(○○○○○)ゝあらきをくひ、〈○下略〉

〔大上﨟御名之事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0116 女房ことば 一しやうじん 御しやうじ物

〔鹿苑日録〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0116 慶長八年七月十五日、未明ニ供佛餉、出洛先至豐光、〈○中略〉各々閑話、板倉伊賀守ヨリ豐光ヘ有使者、只今相公〈○德川家康〉豐光ヘ出御ト云々、各々不驚愕、則至豐光各用意、先油物ノ御菓子、御四方ニ敷杉原之、次ニ葛索麵御相伴ニ常素麵、又葛索麵、麩ノ吸物、御酒一返、其間ニ彈正殿〈○淺野長改〉與相公御碁一番有之、此間ニ御膳用意、湯漬本膳、 〈豆角香豆〉麵 御飯 〈御懸盤〉二〈煎麩 カキ 薇 椎茸〉 集汁 〈葉盛〉三〈ユウカウ海松梅浸 酢 煎昆布〉 冷汁〈海雲〉 御酒〈二返〉 御菓子〈水餅油物薄皮栢 桃〉御茶 御相伴衆足打本膳 〈豆角香豆〉麩 飯 二〈根若梅浸 ユウカウ 煎昆布 酢 香物〉 集汁 酒〈二返〉 御菓子〈桃 水餅〉 八月朔、卯頭に赴伏見、先至豐光、〈○中略〉於豐光齋、三寶院殿御相伴、圓光、予亦備其員、推https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins009639.gif予者乎、本膳ズイキ、煎昆布、ヒヂキニチ麩、煎昆布、ユウガウ、ヒユ、香物、酢、本二何モ足打、菓子桃、中酒三返、齋了悤々トシテ登城、 十五日、至寺志州、豐光東紀入、圓光、床五兵衞如水座敷半ニ、筑前守光駕、先飯汁蔓草アエマゼ、靑豆、煎麩、煎昆布、田樂、酒五返、後又出粥、此時又酒一返、則如水屋形船ニ乘、碁打之、本因坊亦乘、〈○中略〉申尾酉頭ニ至大阪、各々赴住吉、可今夜月ト云々、各々同之、予者直至住吉、調 會席、汁蔓草、菜、干瓢、茗荷、牛房、引テ梅漬、香物、菓子仙袂、後又アエ物引之、中酒五返、後又赴橋上、于時又ヲモユ持參シテ且宴遊、及亥尾各々歸城、

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0117 大書院御成精進御料理〈式正獻立〉 御本膳 御茹交(あへまぜ)〈釣かき 大こん 奈良つけな 針せうが 六でう はりくり 針ごぼう ほうづき ぼうふう〉 御汁〈里いもふき やきだうふ くわへ小しいたけ〉 〈御箸紙二包 御楊枝紙二包〉 〈小皿〉御香之物〈淺瓜 細大こん 小なすび〉 御和(あへ)物〈さゝげご〉〈まみそ〉 御食 二之御膳 〈平皿〉御煮物〈山のいも ひらたけ わらび しなの梅干〉 〈すまし〉御汁〈みつば こんぶ ねいも わかめ 切しそ 切たで〉 〈中皿〉御沼田鱠〈こんにやく めうがの子 靑まめ 山椒の葉 酒のかすみそ〉 三之御膳〈直たで〉 御指身〈味噌酢 こゝろぶと 海ぞうめん あざふり細たち とさかのり 色かんてん〉 御汁〈とろゝ 靑のり〉 笋羮(しゆんかん)〈大竹の子 丸なすび かんぴやう 大梅ぼし〉 足付八寸 一大皿〈丸山麩 大白昆布〉 直煎酒 足付八寸 中酒 一御吸物〈丸うば あづきほ〈こみそ〉〉 足付七寸 肴段々 一板屋のあられ 榧(へぎ)八寸 一なすびでんがく〈山椒みそ〉 榧八寸 一御吸物〈天王寺かぶら 水仙寺のり〉 一蘸(ひたし)物にんじん〈どんぶり〉 鉢八寸 一またゝび〈すみそ〉 直七寸 一靑まめ〈鹽少入ル〈南京染付〉〉 深皿八寸 一御吸物〈淺瓜ほそだち くわへ〉 一じゆんさい〈けし すみそ〉 〈桶〉直八寸 一酒麩 重箱八寸 一ちどりみそ 〈南京染付〉深皿八寸 一御吸物〈むすび山のいも かたのり〉 一燒わかめ 榧八寸 一牛房ふとに 重箱八寸 一おさへ〈燒山のいも やきぐり にしめ〉 三方松梅椿の作りばな 一水の物 大鉢 御茶菓子〈藤の花餅 花いろ餅 にしめぎんなん〉 縁高八寸 御茶はゞむかし 總菓子〈びはあんず〉 大鉢九寸 後段 大皿〈くろのり からみ大こん とうがらし やきみそ 水仙寺のり むめぼし あさづき〉 〈蕎麥切汁〉 御吸物〈たうふくろのり〉 御食 引而 御香之物 御煮物〈さゝげふ〉大くわへ 御茹物〈竹の子輪切〉たでごまみそ 中酒 一〈ひりやうずあげてあぶりこんぶ〉 〈牛房あさのみくず〉 榧八寸 一豆腐連串〈とふがらしみそ〉 榧八寸 一御吸物〈なすび〉めうがの子 一大こんかきなます〈京のひぼのりせうが 靑まめ くり〉 小皿八寸 一鹽はす 中鉢八寸 一つぶあへ〈むすび昆布 山椒みそ〉 直八寸 一御吸物〈ほそたちのこんにやく〉淺草のり 一茹物〈うど 白ごま 靑まめ とみかす 山椒の葉 みそ〉 中直八寸 一燒竹の子 〈ひらき小串〉 榧八寸 一生わかめ〈すみそ〉 小皿八寸 一御吸物〈たうふのうば和にんじん若め〉 一燒栗付あぶり 小串 榧八寸 一まきうばの小口切り 榧八寸 御茶菓子〈薄がうり にしめ 友千鳥 いわたけ〉 〈縁高〉八寸 御茶〈後むかし〉 御總菓子〈枝柿 丸せんべい やうかん 大らくがん〉 大鉢

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0118 精進物を肉菜にならひて作るもの、可笑記〈三〉に、さる御寺へ參る、色々の御料理なるに、きじやきのたぬき汁のと、どしめく、こはいかなることにやと、心空にて見れば、さもなき精進物の御菜なり、寺がたの料理だて心得有べし、料理物語に、きじやきはとうふをちいさくきり、 鹽をつけうちくらべて燒なり、此製古きことゝ見えて、宗鑑が犬筑波集、しやうじの汁にまじるふしやうじ、雉やきをよく〳〵見れば豆腐にて、淀河に此句に付て不審たつほど、まづ白なしほ注に、きじ燒はやき鹽付る故なり、〈これをおもへば、まことの雉やきも鹽やきなるべし、〉又たぬき汁は、獸の歌合、五番左、狐つかの穴ゑもん、右たぬき汁のこんにやくと有り、今も蒟蒻を汁に煮てしか呼なり、篗絨輪寮の窻つまは焦さじ扇なり、結句、狸汁にばけるこんにやく、芙蓉文集、桃鏡と云もの、こんにやくの文に、或はたぬき汁と化して舌つゞみを打する、一際風流のさたなり、又鴫燒のことも雜考にいへり、精進のは庖丁聞書に、鴫壺といふは、生茄子のうへに、枝にて鴫の頭の形つくりて置なり、柚味噌にも用とあるは、猶まことの鴫を用ひたるさま殘れり、其後は名のみにてもとの形なし、料理物語に、鴫やき、茄子をゆで、よきころにきり、串にさし、山椒みそ付てやくなり、慶長このかた今の形となれりとみゆ、寬永發句帳、德元が句に、鴫やきなすびなれど、もとより肴、佐夜中山集、鴫やきはかならず秋の茄子哉、

〔精進魚類物語〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0119 納豆太その儀ならば、精進の物(○○○○)共促せとて、鹽屋といふものをもつて、先身ぢかくしたしきものなれば、すり豆腐權守につげけり、道德といふ物、みそかにはせめぐりて催けり、先六孫王よりこのかた、まむぢう素麺をはじめとして、蒟蒻兵衞酸吉、午房左衞門長吉、大根太郎、苣次郎、蓮根近江守、大角山城守、渡邊黨には、薗豆武者重成、茗荷小太郎、莇角戸三郎いらたか、笋左衞門節重、納豆太郎糸重、甥の唐醬太郎、同次郎、味噌近冬、苽新左衞門、獨活兵衞尉、蕗源太苦吉、蕎麥大隅守、薯蕷藤九郎、芋頭太宮司、煎大豆https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins004113.gif 太郎、こたうふの權介、實莘新左衞門、河骨太郎秋吉昆布大夫、荒和布新介、靑海苔、昆布、苔、鷄冠、雲苔太郎、山葵源太、苽五色太郎、松https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins044241.gif 壹岐守、〈○中略〉熊野侍には、柚皮庄司、糂太左衞門、靑蔓の三郎常吉を始として、以上其勢五千餘騎、久かたや雲の梯引おとし、分取高名我も我もとおもはれける、

〈文化增補〉

〔京羽二重大全〕

〈三下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0120 精進肴割物所 富小路四條上ル町 丁子屋白水

食卓料理

〔倭訓栞〕

〈中編十志〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0120 しつぼく 蠻語なるべし、或は卓袱の唐音也といへり、又卓子をよめり、丈膳をよめるは、孟子の食前方丈によれるにや、又八仙卓(パズエチヨ)を訓す、八仙人に据にや、高三尺餘、幅四尺餘、四方朱漆にて塗て、縁に斑竹を打、四隅に獅子の形の脚あり、廻りに紅白の紗綾を垂る、卓下に餕餘の物又皮骨などを入る器を置く、是をhttps://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins012001.gif 斗(ツアヽテロウ)といふ、

〔新撰會席しつぽく趣向帳〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0120 凡例 一しつぽくといふ詞は、肥前の長崎にていふ言葉にして、おそらくは蕃語ならん、唐にて八僊卓(ぱすゑんちよ)といふて、猪豕の肉を專に用ゆる事也、是彼國は米穀の味麁(ざつと)なる故なり、日本は米穀の味、万國にまさりて厚味なり、故に肉脂の力をかるにおよばず、殊に繁華の地に遊戯(すまい)する人は、常に厚味を食す、ゆへに胡麻の油さへ脾胃にもたれ、食後に必おくびに出て心よからず、然るをしつぽくといふ名に泥みて、唐めかしたき心より、脾胃にもあはぬ油氣を喰ふ事も、何とやらをかしからずや、器物に唐めきたるも又めづらしく風流なれば、今新に撰みて油を用ひずして、調味をなす趣向を數多しるす、 一しつぽくは、大菜〈五種六種〉小菜〈七種八種〉の物也、大宴なれば大菜〈九種〉小菜〈十六種也〉これを引替るに氣轉あるべし、此時は異酒(めいしゆ)等にて氣を轉る事馳走也、是を能くふうして取まはせば茶の湯の料理會席は自由なるべし、〈○中略〉 一しつぽくの文字詳ならず、然れども朋友懇に酒を飮む事を、演義文に卓袱と書たり、〈唐音にてしつほく也〉因て此字を用ゆ、なほ後人の考を待つのみ、 浪花 禿箒子著

〔卓子宴儀〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0121 卓子宴ノコトタルヤ、シツポコト稱シテ調味ノ名トスレドモ、シツポコト云コトハ、卓子ノコトニテ、即ニ方卓子ニ四下裏坐シテ、以一器相倶ニ餔啜スルコトナリ、然レドモ其濫觴ヲ不知、嘗テ三禮ニモ不見、其餘ノ載籍ニモ不見、何レノ頃ヨリカ支那ニ行ハルヽ宴式ナリ、近世大淸人長崎ニ來リ興行スルニ慣テ、和邦都鄙此彼稍流布セリ、サレバシツポコハ非唐音、尤和邦ノ非音訓、故ニ無正字、疑是蠻語ナランカ、卓子宴ハ個々饌具ニ非ズシテ、一個ノ方卓子ノ上頭ニ設ル器ヲ相倶シ餔啜スル者ナリ、和邦宴會毎ニ引盃ト云モノヲ設各前、揚盃互ニ遜讓ノ禮話アリ、次序端正ニシテ勸酒スルコト、大率三タビ順行シテ、其禮式ヲ整フコト、宴會ノ規則ナリ、畢テ別ニ一個ノ盃ヲ設テ、室中ノ列客相互ニ獻酬置酒ス、且茶事ノ宴式ト云モノ、一個ノ以茶碗、室中ノ列客相互ニ喫茶、以爲一個ノ盃ニテ置酒スルト、一個ノ以茶碗茶コト、酒茶トモニ一器合啜スルコトハ、曾テ卓子宴ノ意義ニ通亨一般ナリ、蓋其由來ヲ未ダ詳ニセズト云ドモ、説話投機親友ノ交接ナリ、〈○中略〉 明和八年歳次辛卯三月吉旦 張藩微臣雲萊太田資玫道珪、滌毫於整廣齋

〔橘庵漫筆〕

〈二編二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0121 食卓とは食物を乘する机の名なり、食卓臺といへるは、淸土(から)の洒落を眞似る人には似合はぬ片言なり、扨食卓(しゆつぽく)或は卓子(しゆつぽく)などゝいひて、食物の名と思えるは彌拙しと或人は云へれど、これも入ほがとおぼゆ、夫本朝の風に御膳上り申と饗膳配膳などゝ云、すべて膳を稱して俗間食物に通ず、故食卓召されと計り云ても、御膳召上られひと云樣成義と同じ、扨食卓畿内に流布すること、京師祇園の下河原に佐野屋嘉兵衞と云ふもの、享保年中に長崎より上京して、初て大碗十二の食卓を料理し弘めける、これ京師浪花にての食卓料理店の初とかや、嘉兵衞娘はんといえる老婆、近頃まで存命せり、則今の佐野屋の祖なり、大坂にて彼是食卓料理數多ひろめたれども、野堂町の貴得齋ほど久敷つゞきたるはなし、

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0122 しつぽく、食卓は食をのする机なり、唐人流の料理をしかいふ、陶説隆慶窯卓器、淸異録に、五代の時、貴勢以筵具たがひに相尚る、方丈の案なほ足らず、旁に二案を增して數百の器皿を排ぶ、これを綽楔臺盤といふ、又北轅録に、淳熙丙申待制張政といふ者、金國の生辰を賀する使にゆく、館に抵れば晩食を供す、まづ茶筵具瓦https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins005592.gif を設く、此にいふ卓器即筵具なり、一桌の器みな、一齊にそろひたるものなり、瓷色もやう倶に類從す、明窯にはこの隆慶窯ぞ始なるべき、今はさかりに行はる、古人は几筵を用ひたり、今の桌は几に代るものなり、楊億談苑云、感平景德中主家造檀杳倚卓、借倚卓字、後人以木作椅、桌又桌字加木傍https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins015346.gif 俗書也、おこたり草に云、京師祇園の下河原に、佐野や嘉兵衞といふもの、享保年中長崎より上京して、初て大椀十二の食卓をし弘めける、是京師難波にて食卓の始とかや、嘉兵衞が娘はんといふ老婆、近ごろ迄存命せり、大坂にて彼是食卓料理あまた弘めたれど、野堂(ノド)町の貴得齋ほど久しくつゞきたるはなし、江戸にも處々にありしなるべけれど行はれず、浮世小路の百川茂左衞門なども、初め食卓料理したるなり、大椀は大平なるべし、故にそば切を大平にもり、上おきしたるをしつぽくと呼、今は大平にもらねどもしかいふは、上おきの名となりしやうなり、又葱入るゝを南蠻と云ひ、鴨を加へてかもなんばんと呼ぶ、昔より異風なるものを南蠻と云によれり、これ又しつぽくの變じたるなり、鴨なんばんは馬喰町橋づめの笹屋など始めなり、

〔料理山家集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0122 普茶と卓袱と類したるものながら、普茶は精進にて、凡て油をもつて佳味とす、卓袱は魚るいを以て調じ、仕樣も常の會席などに別にかはりたる事なしといへども、蠻名を假てすれば、式と器ものゝ好とに心を付る事專要なり、猶數品調ずる内に、けんちへん、或めづらしきよせものしんじよ、魚でんなぞに、珍らしく佳味なる品を工夫する事を好とする也、但し普茶は下戸の好もの、卓袱は酒を進る仕やうと心得て吉、大よそ蠻名ゆへに、調る所も唐めかしたる事と 心得違へて、一向酒の進まざる品のみにする、甚しきたがひなるべし、

〔鹽尻〕

〈四十七〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0123 異邦の饗應、日本の膳部に同じからず、 黏果〈榧子(カヤ)核桃(クルミ)龍眼等の木の實也〉 水果〈蜜柑九年母栗https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins228898.gif 子慈姑の類也〉 米食 炒米糕〈ラクカン〉の類也 臘味〈臘鴨風雨鹽引等〉海味〈諸魚麥厥腸〈アハヒ〉等多し、〉 湯麪〈歟〉 餅https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins044070.gif 〈饅頭豆沙糕〈ヤウカン〉の類品〉 熱菜 醯槳〈醬酢肉桂鹽胡椒山椒等多シ〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins222910.gif 盆 大概十般也、餘は是に準じて知るべし、

〔八僊卓燕式記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0123 淸人呉成充船中饗金右衞門式 叙席(シユイヅイツ) 烟筒ニ煙草ヲツギテ出ス、管ノ長サ凡四尺許、管ノ長キヲチソウトス、芬盤(フウンボワン)、火盆(ホヲベエン)、烟袋(エンダイ)ノ類ヲ出サズ、主人火刀ヲ以テ火ヲウチ黄簽ニテ喫ス、 獻茶(ヘンヅアヽ) 茶盤(ヅアヽボワン)ニ鍾子(チヨンツウ)ヲ載セ、茶瓶ヲソヘ持出ル、客二人ノ時ハ、鍾子二ツ前ニ置、茶ヲツグ、客ニ先後ノ差別ナシ、 荖葉密(ラ○ウエツミイツ) 長崎ニテキンマト云モノナリ、此ヲ食スレバ齒ヲ固ムルヨシ、蜜漬ニシタルモノナレドモ、味イ澀キモノナリ、 中食(シヨンジツ) 揀麪(ケンメン) 此方ノ温飩ノ如キモノナリ、小麥ノ粉ヲ鷄蛋汁(キイダンヂツ)ニテノバシ、長サ二寸ホドニ剪リテ、猪(ブタ)ノ細腸(スイチヤン)、木耳(モルウ)ヲツマニシ、淡醬油ニテ烹テ出ス、 此間ニ賓主ノ外同船ノ唐山人會合シテ、琴棊書畫(ギンギイスウツアヽ)ノ戯ヲナス、唐山ニテ逍遙(スヤ○ウヤ○ウ)ト云、已ニ終テ座ヲナスヲ安席ト云、 安席(アンヅイツ) 客座ニ藤席(テンジ)ヲ鋪キ、其上ニ赤毡(チツツエン&モウセン)ヲ敷キ、又重テ華紋氈(ハアヽウエンツエン)ヲ布ク、〈○中略〉 調和デヤhttps://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins012401.gif ホウ</rt></ruby> 芥酢(キヤイツヲヽ) 此方ノカラシズ 白酢(ベツツヲヽ) 此方ノシラス 醬油(ツヤンユウ) 此方ノシヤウユウニ似タリ酸酒(サンツユウ) 此方ノ煮酒ノ味ノモノナリ 右四品携出ス 小菜(スヤウツアイ)八品 哥六鮝(コヲロスヤン) 廣南ヨリ出ルコウムキト云魚ノhttps://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins012402.gif 鮧(ツヲイテイ&シヲカラ)ナリ、 章魚鮝(チヤンイユイスヤン) 廣東ヨリ出ル手ナガ章魚ヲ、紅麹ニテ漬タルhttps://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins012402.gif 鮧ナリ、長崎ヘ來ル、其製本艸ニモ出ヅ、 蝦米(ヒヤアミイ) 東埔塞(トンプウツアイ)ヨリ出ル川蝦ナリ、蒸テ乾タルモノナリ、水ニ漬醬油ヲカケ出ス、 海粉(ハイフエン) 南國ノ海中ヨリ出、浮龜(ヘウクイ)ノ子ナルヨシ、酢ニ漬、生薑ヲ加ヘ出ス、 橄欖(カンラン) 福州ヨリ産ス、木ノ實ナリ、此ヲ生ニテ醬油ニ漬出ス、此實鹽漬又ハ生ニテモ長崎ヘ多來ル、橄欖ノ樹、長崎崇福寺内竹林院ニアリ、年々實ヲ生ズ、它邦ニ植レドモ生長シガタシ、 鹿角菜(ロキヨツアイ)〈一名海鹿艸〉 厦門(マアメン)ノ海中ヨリ出ル藻ノ根ナリ、酢醬油ニ漬出ス、和名ツノマタノリ、 菜脯(ツアイフウ) 冬月蘿蔔ヲ四ツワリニシテ、一夜鹽ニ漬、翌日取出シ日ニ干シ、筵ヲカケスリ合セヨクモミテ、又桶ニ入、手ニテ鹽ヲウチ、又翌日出シ前ノゴトクニシ、四五日モ同樣ニシテ、壺ノ底ニ藁ヲシキ、其上ヘ蘿蔔ヲナラベ置キ、又藁ヲ置、幾重モ同樣ニシテ、壺ニ蓋ヲナシテ口ヲ封ジ、日ヲ經テ取出シ食フ、此方ノ香ノ物ノ如ニ用、 醬瓜(ツヤンクワア) 此方ノナラ漬瓜ナリ、洗ヒテツマミキリ出ス、右銀ノ小皿ニ盛携出、八僊卓ノ上ニ置、 中菜(チヨンツアイ)十二品 醎鴨蛋(エンマツダン) アヒルノ蛋(タマゴ)ヲ、赤土一升ニ鹽五合入漬置、日ヲ經テ取出シ、湯煮シテ殻共ニ三ツワリニシテ出ス、 蚱兒(ツエルウ)〈一名海蜥〉 此方ノ唐海月ナリ、水ニ漬鹽ヲダシ、割ミ醬油ニ漬テ用、 筍糟(スインツアウ) 竹 ノ子ノ糟漬ナリ、切洗ヒテ油ニテ熬(アゲ)出ス、調和宜ニ隨、 帶魚糟(タイイヽツアウ) 此方ノタチウヲノ糟漬ナリ、右同樣ニシテ出ス、調和宜ニ隨、 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins232853.gif 魚糟(タイイヽツアウ) 廣南ヨリ出、和名シグチト云魚ノ糟漬ナリ、切洗ヒ テ蒸テ出ス、調和宜ニ從、 鯿魚干(ベンイヽカン) 暹羅ヨリ出ルニベ魚ノ干タルモノナリ、湯煮シテムシリ出ス、調和宜ニ從、 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046319.gif 魚(ヂヴイヽ) 此方ノスルメナリ、炙リテ出ス、 蚶兒(カンルウ)〈一名小蚶〉 此方ニ云サルボウナリ、水ヲ用ヒズ煮レバ血ニテ熟ス、醬油ヲカケ用、唐山ニテ泥中ニ飼ヲキ食品ニ充ルナリ、沙蟶干(シヤアシンカン) 此方ノマテ貝ナリ、湯煮シテ油ニテアゲ出ス、調和宜ニ從、 紫菜(ツウツアイ) 此方ニテ云アマ海苔ナリ、猪ノ油ニテアゲ鹽ヲフリカケ出ス、 蝦蛄生(ヒヤアクウスエン) 此方西國ニテシヤツクハト云蝦ナ リ、首尾ヲ去リ鹽水ニ漬、シバラクシテ取出シ用、大坂ニテシヤコト云、 紅菜生(ヲンツアイスエン) 此方ニテ云トサカノリナリ、生蘿蔔トマゼテ酢醬油ヲカケ出ス、 右硝子(スヤウツウ)ノ皿子ニ入携出、八仙卓ノ上ニ置、 大菜(タアヽツアイ)八品 方肉(ハンジヨ)〈和名角煮〉 猪肉四角ニ切リ、水ニテトクルホド烹テ醬油ヲ加ヘ、莞荽ト云モノヲ上ニ置、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins230414.gif 香ノ粉ヲフリカケ出ス、莞荽ハ此方ノ芹ニ似タルモノナリ、本艸ノ胡荽ナルベシ、近年種ヲ傳ヘ、此方ニ多アリ、コヘントロト云、 猪頭(チユイテヴ) 猪ノ頭ヲ水ニテトクルホド烹テ、切ラズ其マヽ出ス、各ムシリ皿子ニ受テ調和シテ食フ、 大臟 猪ノ大ワタヲ細ニ割ミ、木耳ヲ加ヘ、醬油ニテ煮出ス、 猪宮(チユイコン) 猪フクロワタヲ細ニ割ミ、春菜ト云テ此方ノ土筆ヲ加ヘ、淡醬油ニテ煮出ス、 腰子(ヤウツウ) 猪ノ腰ニ大キナル豆ノ如クナル赤色ノ物アリ、此ヲ細ニ割ミ、筍干ト云モノヲ加ヘ、淡醬油ニテ煮出ス、 猪血(イユイヒエ) 猪ノ血ヲ器ニ入、鹽ヲ少シ入ヲケバ、豆腐ノ如クニ凝ルナリ、ソレヲ煮テ薄クヘギ、風吹餅ト云廣南ヨリ出ル薄キセンベイヲイレ、淡漿ニテ煮出ス、 猪醬(チユイツヤン) 猪ノ肉ヲ切湯煮シテ、味噌ヲ磨(ス)ラズニ葱靑ヲ細ニ割ミ拌テ出ス、 猪蹄(チユイテイ) 猪ノ四肢ヲ足クビヨリ切リ、 蹄ヲ水煮シテ主人携出、客是ヲ受タガイニ禮ヲハリテ、手ニツマミ芥酢或ハ漿ニテ食ス、 右猪一色ノ料理ナリ、頭ヨリ足マデ用ユルコト大饗應ナリ、大菜ノ饗客ヨリ全供ト云テ、主人ヘ厚ク禮ヲノブルナリ、初ヨリ大菜ヲ出スマデ主人ハ食事セズ、賓ヘ右ノ小菜中菜大菜トモニ美ナルトコロヲ皿子ニ盛薦ムルナリ、主人ヘ客ヨリ懇ニアヒサツシテ酒ヲ勸メ、請下筯(チンヒヤアツウ)ト云テ、客箸ヲトリテ主人ヘ薦ムルナリ、此時固辭ト云テ、主人固ク辭退スルナリ、客ノ云、莫拘(モツキユイ)ト云テ、ヒタスラ勸ムルニヨリ、主人箸ヲトリ食事イタス法ナリ、是ヨリ酒ヲ各杯ニテ飮ムナリ、 大碗頭(タアワンデウ)八品 白煮雞兒(ベヅウキイルウ) 鷄ノ毛ヲヒキ腸ヲヌキ、淸水ニテ全體ニ烹出ス、各ムシリ皿子ニ受調和シテ食ス、 白煮鴨兒(ヤツルウ) アヒルヲ右同樣ニシテ出ス 白煮鮫https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046603.gif (キヤウレツ) 此方ノ鯛ノ鱗ヲフカズ腸ヲヌキ、右同樣ニシテ出ス、鯛漳州人鮫https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046603.gif ト云、南京人ハ紅魚(ヲンイユイ)ト云、閩書ニ出タル棘鬣魚ノヨシ、鮫https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046603.gif 紅魚ト云モ方言ナルベシ、 羊兒(ヤンルウ) ヤギト云獸ナリ、全體ニテ熱湯カケ、庖丁ニテ逆ニ毛ヲコソゲ落シ、腸ヲ除キ淸水ニテ煮ナリ、煮ヘアガリタルトキ醬油鹽少加ルナリ、客ヘ出ス時燒酎ヲ多ク入引出、其マヽニテ出ス、各調和シテ食ス、 鹿筋(ロキン) 台灣ヨリ出ル鹿ノ脚ノ筋ヲ干タルモノナリ、一寸許ニ切水ニ漬ヤワラゲ、鷄絲ト云モノト同ク和シ、漿ニテ味ヲツケ出ス、各調和シテ食ス、鷄絲ハ鷄ヲ湯煮シテ、絲ノ如ク細ニ箸ニテサキタルモノナリ、 海參(ハイスエン) 此方ノイリコナリ、大泥(タニ)ヨリ出ル犀皮(スエヽビイ)ト云モノ干タルヲ水ニ漬シ、此二品同ク淡漿ニテ味ヲ付出ス、 <ruby><rb>鮑魚</rb><rt>パウイユイ 鮑ヲ切テ鴨絲ヲ入、淡漿ニテ煮テ出ス、 銀魚(インイユイ) シロウヲノコトナリ、沙魚(スアヽイユイ)魚金ト云フ、カノヒレノ金色ノトコロヲ撰ミ、アマ海苔ヲ加ヘ、水ニテ煮、酢ヲ加ヘ鹽少シ入レテ出ス、 右此方ニ云ドンブリ鉢ニ入レ出ス、各箸ヲ入食ス、 喫飮(キワン) 常ノ飯ナリ、茶碗ニ入、人數ホド各ニ出ス、飯ノ湯出サズ、茶ニ漬シ食ス、 收器(シウキイ) 初ヨリ席ニ出シタル器物ヲ遺サズ、取納ルコトナリ、 三事筒(サンズウトン)三品 竹ノ筒ニ納タル、左ニイフトコロノ三品ヲ、主人携出テ客ニ薦ム、 耳爬子(ルウパアツウ)〈○中略〉 齒托(ツウト)〈○中略〉 齒刷(ツウスエツ)〈○中略〉 修癢(スユウヤン) 此方ノ按摩導引ナリ、主人アイサツアリテ、客ヘ望ムヤウニスルコトナリ、 音樂(インヤ) 絲竹、其餘數種鳴器ヲ出シ歌吹ス、 冲茶(チヨンツアヽ) 大壯爐(ダアヽチヤンロウ)ト云ル風爐ニ急燒(キツスhttps://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins012701.gif ウ)ヲカケテ湯ヲ沸ス、宜興鑵〈宜興ト云所ノ土ニテ燒タル器ナリ〉ト云茶ダシニ茶ヲ入、其上ヘ湯ヲサシ出ス、尤佳茶ヲ用ユ、小キ鍾子ヘツギ出ス、此方ノダシ茶ナリ、〈○中略〉 密餞茶料(ミツエンツアヽリヤウ)二十四品 小卓(スヤ○ウチヨツ)ノ廣サ二尺四方許ナルニ小皿子二十四ヲ置テ出ス、此方ノ茶ウケナリ、〈○中略〉 銀爵獻還(インチヤツヘンワン) 此方ノ酒宴ナリ、〈○中略〉銀爵ニテ主人酒ヲ一盃受客ヘサス、是ヲ獻ト云、客飮了テ主人ヘモドス、是ヲ還ト云、肴ヲハサムヲ過菜ト云、夫ヨリ亂宴ニナル、是ヲ戲酎(ヒイチウ)ト云、宴ノ中ニ數々戲ヲナス、〈○中略〉 諸戲既ニ終リタルコロ、客主人ヘ後段ノ食ヲ乞ナリ、是ヲ尋後(ジンヘユウ)ト云、 賀尾(ホウウイ) 薏苡仁或ハ西國米ヲ砂糖ニテ煮テ、石碗ニ盛出ス、水ニテ粥ノ如クニシテ、砂糖蜜カケテヨシ、此方律院點心ナドニモ用、此ニテ總終ナリ、

〔長崎紀行〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0128 十五日〈○明和四年十月〉菊左衞門〈○長崎櫻町名主〉宅にて、夜食に唐樣の卓子(シツホク)といふ饌部を出す、給仕のものに指南せられて箸を取、一案に六人ヅヽ圍み坐て食す、但飯椀計り面々にて、羮菜は寄合なり、 卓子圖〈○圖略〉 案のさしわたし貳尺四五寸 酒食ひ初ると間もなく出る大鉢、素麺、鯛、せん卵、木茸、葱、大鉢は替らず、どんぶりは皆かはる、

〔西遊記〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0128 卓子(しつほく) 近きころ上方にも唐めきたる事を好み弄ぶ人、卓子食といふ料りをして、一ツ器に飮食をもりて、主客數人みづからの箸をつけて、遠慮なく食する事なり、誠に隔意なく打和し、奔走給仕の煩はしき事もなく簡約にて、酒も獻酬のむづかしき事なく、各盞にひかへて心任せにのみ食ふこと、風流の宴會にて面白事なり、寺院にも黄檗宗などの寺には、不茶とて精進ながら卓子料理をすることなり、是日本にてはめづらしきことに思ひて、至て心易き朋友中ならでは行ひがたき事なるに、唐土にては世間常のことなりとぞ、それゆへに長崎に來れる唐人、日本の常々貧家といへども、膳椀みな別々にひかへて、おのれが箸にては、香の物一ツもとらざるを見て、大ニ感心し、扨も日本は禮義正しき國なり、家内のしたしき中にてさへ、日夜飮食の事にかくの如く禮をみださず、貧家といへども膳椀を別々に備へたるは、唐土などにてはおもひもよらざる事といへるとぞ、誠に是を聞ては、日本の風義正しきをよろこぶべき事なり、禮儀正しき中にて、たまたま上方の如く、卓子料理も打和してよけれども、此事常に成りてはいとみだりがはしき事なる べし、

〔長崎聞見録〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0129 唐人館 唐人館は、東北に山をかたどり、西南の方に出入の門あり、その三方はきびしく二重に圍みあり、無用の者は猥りに入事あたはず、所以を求て此館内に入、委しく見たり、菓子煮賣藥種等の店あり、又常の唐人、部屋々々多くありて、その門戸々々にはこと〴〵く額聯などを掛たり、予一日船主陸明齋が客館に至るに、種々の饗應あり、器物は皆唐地の燒物にて、其燒ものゝ器物を乘たる臺は、日本にて製したる木地臺なり、尤其數多く並べ立て、恰も佛家百味のをんじきを備へたるにひとしかるべきなり、其品味盡く食なれざる珍奇にて、一々枚擧するに暇あらず、試に其略を論ずれば、麪粉にて衣をかけ、油にてあげたる形梅の核のやうなるものあり、是を食ふに、裏にぼりぼりとはぎれあり、口中次第にかんばしく、甘味いはんかたなし、これを尋ぬるに、鷄骨を終日砂糖にて煮る、これに衣を掛け油にてあげたるものなり、また笋のほそきを鹽漬にして、甘ぼしにしたるやうのものあり、これを食ふに、鹽味の裏に甘味を帶たり、是蘆筍の鹽づけなり、又ぶた鷄のるいを、さま〴〵に料理ていだす、ことに燕巣(ゑんす)の酷のものなどは、唐にてもいたつての賓客にあらざれば、つかはざるものまでも饗應す、酒ももとより陶器に入ていだす、唐酒は少し苦味のうちに醋味をおびたり、このみにより日本の酒もいだすなり、主人は下戸のよしにて、べつに一唐人をいだし、獻酬饗應せしむ、また給仕人五六輩もかたはらに連立し、とき〴〵酒茶等にいたるまでも持はこぶ事なり、さて酒酣にをよべば、主人興に乘じ、愛妓を呼いだし酌を取らしむ、また皆扇面をいだして書を乞ふ、主人、魏元春といふ十七八歳なる者をよびいだし、執筆せしむ、たかき机あり、此まへに曲彔をおきたり、魏元春此曲彔によりて、數十の扇子一時に揮毫しをわる、是より唐茶の饗應あり、菓子は雲片糕、月餅、連環、かすていら、種々蜜漬龍眼肉の類なり、さて其 殘菓は紙につゝみ、各々くわい中してかへる、主人は始終曲彔によりてもてなす、かへりには曲彔を下りてをくる、實に一高興といふべきなり、

〔新撰會席しつぽく趣向帳〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0130 〈四季混雜〉獻立の大旨 〈大菜器物は亭主の好次第〉第一湯鯛 〈大猪口〉煮かへし酢〈煮かたは奥にあり〉 〈中の鯛よろし、煮かた奥にあり、または鯛麪かき鯛もよろし、〉 〈小菜中皿〉鱠〈靑酢 さより木くらげ赤がいみつば〉 小皿〈わさびおろし大こんねぎとうがらし〉 〈小菜小鉢〉あへ物〈ひしこぬたからしあへ、或は蜆靑あへ、またはふくだみ鹽からの類、〉 〈小菜中皿〉煎付〈蚫か蛸か、さゞゐ坪燒かあるひは當坐ずしか鎌くら海老か燒玉子か、〉 〈小菜大猪口〉精進物〈嫁菜ひたし物か、何にてもさらりとしたるもの一二種あるべし、大菜は吸物なり、小菜は取さかなに取なれバ、其心得にて少し宛出して折々取かゆるれバ馳走なり、四季折折の物は部分の所にて身れバ、趣向も思ひ付も物ずきも自由なるべし、小菜四五種づゝはたえず卓の上にあるべし、〉 〈大菜器物は取替る度々にかたち替るをよしとす〉第二味噌汁〈こち、かゐわり菜、あるひはこちのふぐ料理などよろし、四季部分汁の所にて見るべし、まへにもいふごとく、大菜は常の料理の吸物または汁煮物を大菜と名付たると覺てよし、〉 〈大菜〉第三すまし〈精進物よろし 奥の煮物吸物精進の部にて見合すべし〉 〈大菜〉第四薄くず煮〈あんばい大事也 きんこ、生椎茸、生姜、又は小鴨、摘麩、せり、〉 〈およそ此あたりにて、上戸と下戸のわかちあるべし、是第一の心がけ也、下戸あらバここにて油あげもの、雁もどき、又はけちゑんの類、下戸は油あげの類を好人多けれバなり、一概にいふにはあらず、〉 〈大菜〉第五燒鹽あんばい〈水吸物のこゝろ 也雲わた、せん柚子などの類よし、なを奥にて考ふべし、〉 〈大菜〉第六赤みそ汁 〈大蜆からし此類の品用ゆべし〉 第七 飯 〈海苔飯、黄飯、紅飯、麥飯、挽割飯、右常のごとく辛味をそへ、煮出し薄醬油なり、〉 〈しかし重菜のあとなれバ、上茶にて茶漬の方よろし、〉 香物 〈つけあわせあるひは一色〉 〈糠漬糟漬は亭主の風流にまかすべし、〉 菓子 〈これまた同斷なり、しかし四季の景物遠來の土産などは、麁なる物にても用べし、上品の物はいふに及ばず、〉 茶 〈薄茶、濃茶、煎茶出し茶、此四種の物は、賓と主の時のよろしきに隨ふべし、〉 獻立畢

普茶料理

〔倭訓栞〕

〈中編十志〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0131 しつぽく〈○中略〉 精進の料理を普茶といふ、

〈江戸流行〉

〔料理通大全〕

〈四編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0131 自序〈○中略〉 唐料理普茶卓子の部に及びて、暫く筆をさしおき、兼て長崎に下り、其宗を極めん事を思ひ立、往る辰〈○天保三年〉の春上方に登り、南禪寺東福寺は更なり、宇治の黄檗山、波華の瑞龍寺、一心寺など、普茶ある毎にいたらざる處なく、既に長崎に下らんとする比、浪華に在て、彼地の普茶料理の達人何某の老僧に面會せしに、僕が此道に執心なるを悅び、再三再四普茶によばれて、倶に其仕樣をきけり、〈○中略〉 江戸 八百善主人

〈江戸流行〉

〔料理通大全〕

〈四編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0131 會席普茶料理略式 普茶といふは、唐風の調味にて、精進の卓子なり、長崎の禪寺、宇治の黄檗などにて、客を迎るには、必ず普茶料理にて饗應す事常例なり、近來上方にて專ら流行して、會席に略してする樣になれり、 客四人を一脚と唱へて、客七人なれば卓子臺を二脚とし、主人も其中に加りて供に相伴する事なり、原來酒を多く進る料にあらざれば、下戸口にあふ調味ながら、大菜小菜の中に上戸の意に叶ふ品を調ふべき事なり、 まづ煎茶を出して、座附吸物といふ處から、直に卓子臺を持出すなり、小菜八品、大菜十二品にて、 皆長の數なり、次第は圖に出せり、引合せて見給ふべし、 卓子料理の内にも、當時の淸風と、おらんだ流とて、大に異なれども、尤それは長崎に於て、通辭衆の宅などにて催す事なれば、白煮の猪(ぶた)の蹄、丸煮の雞、燒羊の屬、日本にて調味しがたき物は、その時々魚鳥に更て庖丁す、 世に普茶卓子などいへば、諸事費多く驕奢の沙汰に聞ゆれども左にあらず、その仕樣に依て、有合の物到來の品にても濟事なり、唯器物の次第、席上に持出して物々敷盛並る故に、目新しく一入の興になりて、客の歡ぶものなれば、其略式に傚ひて試み給ふべきなり、

〈江戸流行〉

〔料理通大全〕

〈四編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0132 普茶卓子略式心得 一卓子料理は、淸風(からふう)の茶の會席に齊しく、貴賤のへだてなく、懇意を結び交りを厚くするの一なり、器の中へ與に箸を入て食する物なれど、正客より順に賞翫すべし、 一こつぷ酒鍾(さかづき)は、銘々ひかへあれど、酒たけなはにおよびて、各互ひに盃をとりかへて飮事なり、 一臺上に汁をこぼす事なかれ、若あやまちてこぼす時は拭ひとるべし、箸に挾みて喰物は、碟兒(こざら)にとりて食べし、湯匙(ちりれんげ)は左の手に持べし、骨ある物は皿子に殘し置、直に渣斗(ほねはき)に入れるなり、 一席中都て雅言を用ゆ、小皿を碟兒(てうじ)とよび、皿子(べいし)といふ、盃を爵といひ、又單提といひ、盃猪口を十景套盃(じつきんぱい)、また石(いし)ともいふ、吸物椀を蓋碗といひ、銚子を酎瓶(ちうびん)といひ、散蓮華(ちりれんげ)を湯匙(たんすう)といふ、土瓶を茶瓶(さびん)といひ、箸を牙筯(げちよ)といふ、箸紙に差て細き朱唐紙にてまき、福祿壽などの目出度文字をかく、 一大菜小菜とて、別に器のかはる事なし、常々の皿丼(どんぶり)大平臺重鍋なども遣ふべし、只名目のからめきたるのみにて、異樣の調味すべからず、客の上戸下戸を窺ひ、腹をうがち、臨機應變見はからひに有べし、

〔和漢精進料理抄〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0133 普茶圖 普茶は先菓子と生茶とをならべ、ちよくと箸とを添て出すべし、次に茶を引なり、茶は其ちよくにうけて喫(ノミ)、菓子生菜を喰て、ゆる〳〵と茶をのむ也、茶四五遍も過ば、煮菜を二三種出し、其次に小食の饅頭か菜包(ツアイパウ)を二三種、其馳走の多少によりて出すなり、凡菜十五六種あらば、八九種程出してから食(メシ)を出し、次にだん〳〵に菜を一種々々出すべし、此圖は四人合の圖なり、是も四人五人乃至十人にかぎらず、相合て喰なり、菜の多少は其時の馳走に依て定まらず、凡煮菜十種あらば、生菜も亦十種なるべし、生菜と菓子とは皿に飣(モリ)煮菜は大碗に飣(モル)なり、人多き時は鉢にも飣なり、

〔浪華の賑ひ〕

〈二篇〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0134 茶臼山 此地は天王寺の西南にあたりて、一心寺の後なり、舊の名荒陵といふ、慶長元和の年間御陣營となる、是より後當山に登ることを禁ぜらる、又此南の向ふに邦福寺といふ禪刹あり、此方丈の座敷より眺望殊に美景なり、春秋の花紅葉はもとより、螢、水雞、時鳥、萩、薄、菊、女郎花、雪の景色一しほよくして、遊觀たへざる勝地也、且知音の徒乞ふに任せて、普茶の料理を出せり、

〔黄檗淸規〕

〈節序〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0134 十二月 除夜、毎年廿九日開浴決算、〈○中略〉下午小參藥石後、常住普茶、次堂中執事等、就齋堂茶筵、請堂頭及大衆、初一夜堂外執事備茶筵、初二夜堂頭設普茶

南蠻料理

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0134 一同〈○鯛〉南ばん燒は、油にてあぐる也、油は胡麻又はぶたの間であぐるなり、後味噌汁を入候也、 一鴈の鳥、白鳥同前也、水出し多入て吉也、

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0134 南蠻料理は 鷄の毛を引、かしらあしとしりをきりあらひ、なべに入、大こんを大きにきり入、水をひた〳〵よりうへに入、大こんいかにもやはらかになるまでたく、さて鳥をあげ、 こまかにむしり、もとのしるへかげをおとし、又大こんをにて、すいあはせ出し候時、鳥を入さか鹽吉、すい口にんにく、其外色々、うす味噌にてもつかうまつり候、妻に平茸ねぶかなども入、

〔當流節用料理大全〕

〈頭書〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0135 鷄南蠻料理 鷄毛を引、け燒をして羽を打、腹のざう物を取出し跡をよく洗、中へ 一餅米の粉〈一はい〉 一うるの粉〈一盃〉 一酒〈一はい〉 一す〈一盃〉 一醬油〈一はい〉 一味噌〈一盃〉此間へ大根かつを入、水はめしをたくかげん也、右の鳥を入、水を入、手を平にしておせば、水手くびまでつくかげんによし、扨水みなになり申まで食のごとくたき、にえつまりて後つかひ申候、鴨にても雁にても何鳥にても仕候、

〔鹽尻〕

〈三十三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0135 一異邦殽饌に〈料理獻立の事〉獸肉を先とす、魚鳥是に次ぎ、先是を喰ひ酒を呑、後飯を服せり、我國の飯を第一にするもろこし古への風也、阿蘭陀の如きは、もろこし人の調味に似て亦異也、酒肉蔬菜羮に湯を食て、飯をhttps://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins076589.gif せず、唯わづかに粉餅を用ひて止む、近きころ長崎より筆して贈りし通使の者を、紅夷饗する治具〈獻立の事〉左のごとし、賢按、今俗卓袱(シツホク)といふ、 スラカ〈ちさ せんうど さん玉子 せん人じん さきひともじ 豕の皮肉〉 かけ汁〈ほるとがる油 酢鹽 胡椒粉〉 ストウ〈うなぎ さあり紅 夷茸也 胡椒 醬油少鹽 少入て煮〈ル〉〉 コヲル〈紅毛のからぺな 鹽漬おろすとぶたのみを細ニ切豕の百尋に結入〈ル〉牛肉 にくつくの粉 胡椒の粉 醬油少鹽入て煮〈ル〉〉カリヲラ〈雞の切身 せんひともじ こへんとう さふらん 粒胡椒入て煮ル しやうが くづのこ入ル 〈上下玉子にてせむ醬油少鹽少入て煮〈ル〉〉 ヲツフヘヽル〈鴨 鷄のみ 丸(&○)玉子〉 酒〈ふ(△)らんそうゑんを入て煮ル鹽少砂糖少〉 ハステル汁〈鳩鷄肉玉子丸くして醬油少鹽少入て煮ル〉 鹽牛肉 以上

〔紅毛雜話〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0136 料理の獻立 往年玄澤子〈○大槻〉崎陽に遊學せし時、紅毛の卓袱を食せしとなり、其時の菜帖(こんたて)左に記す、 「パステイソップ」〈鷄かまぼこ、椎茸せん、氷こんにやく、ふりたて玉子、ねぎ、すだしの如き鹽仕たて也、〉 「コクトヒス」燒肴 「ハクトヒス」油揚魚 「ロストルヒス」濱燒鯛 「フラートハルコ」猪の股丸燒 「カルマナーチイ」〈猪の薄身 鹽こせう摺こみやき〉 「コテレット」〈雞 胡椒 肉豆寇の花 葱 右よくたゝきて紅毛紙に包みやき〉 「ラーグー」〈雞たゝき丸めて しひたけ ねぎ すましあんばい〉 「ゲールウ〈ヲ〉ルトル」〈にんじん 油にて揚、醬油にて煮しめ、〉 「スペナーン」〈菜 みぢんにたゝき「ポートル」乳酪にてざつと揚て皿にもり 玉子 四ツわりにしてもりあはせ〉「ブラートルボック」野牛の股丸やき 「ハルトベースト」〈鹿の股丸やきにしてからし酢かけ〉 「ブラートルエントホーゲル」鴨丸煮 「ケレヒトソツプ」海老がね、 菓子 「カラテイラブロート」花かすていら  紙燒かすていら 〈紅毛紙を箱に折かすてらのたねをつぎ、燒なべの中へならべて燒たるなり、〉 「スペレツ」〈玉子小麥右水にてねりまぜ引のばして、繩のごとく捻り、油にて揚たるくわしなり、〉 「ポーフルチス」菓子の名 「タルタ」同 「ヲペリイ」〈花の形に拵へたるかすていら也、大さかぶとの鉢ほどあり、〉 「スートアップル」蜜柑 以上二十一種


トップ   差分 履歴 リロード   一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2022-06-29 (水) 20:06:27