https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0461 贈遺ハ、オクリモノト云ヒ、後ニ引出物(ヒキデモノ)、又ハ進物トモ云フ、物品ヲ人ニ贈與スルヲ謂フナリ、凡ソ贈遺ヲ爲スニハ、古來或ハ之ヲ木ノ枝ニ付クルアリ、或ハ袋、籠、曲物、桶、箱、臺等ニ入ルヽアリ、或ハ薄樣、檀紙、引合等ノ紙ニ包ミ、水引ニテ結ビテ、之ニ熨斗ヲ添フルアリ、別ニ又折紙等ニ物品ノ目錄ヲ記シテ、之ヲ添フルコトモアリキ、而シテ進獻ニ關スル事ハ、尚ホ政治部貢獻篇、及ビ官位部諸奉行、進物番、大名等ノ諸篇ニ在レバ、多クハ省略ニ從ヘリ、

名稱

〔伊呂波字類抄〕

〈於/雜物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0461 贈〈オクリモノ〉 賂 饋〈已上同〉

〔同〕

〈計/疊字〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0461 獻上

〔同〕

〈志/疊字〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0461 進上

〔運歩色葉集〕

〈遠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0461 贈物

〔同〕

〈楚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0461 贈進(ソウシン)

〔同〕

〈志〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0461 進上 進獻 進物

〔書言字考節用集〕

〈七/器財〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0461 進物(シンモツ)〈又云獻物

〔名物六帖〕

〈人事四/交際問遺〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0461 信物(オクリモノ)〈貴耳集、信物一角、〉 人事物(オクリモノ)〈宋許觀東齊記事、今人以物相遺謂之人事物、韓退之、有韓弘人事物、乃知、此稱自唐已有之、〉

〔書言字考節用集〕

〈七/器財〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0461 引出物(ヒキデモノ)〈江次第〉

〔倭訓栞〕

〈前編二十五/比〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0461 ひきでもの 江次第に遣曳出物馬二匹幷送物と見え、北山抄大饗の條にも、牽出物に馬鷹あり、名義知ぬべし、〈○下略〉

〔類聚名物考〕

〈人事十〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0461 引出物 ひきでもの 引物
古へ人に物給ひ、あるひは誦經などに物を引、または布施物など僧に贈るを、すべて物を引といへり、今さかしらなる人のいへらく、古へ人に物給ひなどするは、馬をむねとする事にて、その馬 をば引出て贈り給はる故、引出物といふは、馬にかぎりたる事なり、それを本として、轉じてなににても引出物といふよし、これもことはりなきにはあらず、いはれたり、去りながら、かたくとりて、さとのみもいふべからず、物に引といふことつけていふ、つねのことなり、引わたす、引やる、引ちがふる、引かづくなどいへる、その外にも、俗にも、膳の引もの、または引落などいふの類ひ多く有り、さらばそこへ引並べ、引居、引渡などいふ詞より出て、あながち馬引よりおこれるにはあらず、かゝるさまの事いと多し、ふたゝび思ひかへして、得心すべきにこそ、略しては引物とのみもいひ、なに〳〵を引ともいふなり、

〔倭訓栞〕

〈前編十六/都〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0462 つと(○○)〈○中略〉 苞苴をいふは裹むの義なるべし、よて万葉集に裹字をつとゝよめり、又つゝみもてゆかん、見ぬ人のため、ともあれば、みも反も、つも反と也、山づと、濱づと、道ゆきづと、ゐ中づとなどは、そこの土産をいひ、手向のつと、家づと、都のつとなどは、其土産をもて、こんずる所をいへば、共に通へり、

〔伊勢物語〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0462 むかし男、みちの國に、すゞうに行いたりにけり、そこなる女、京の人は、めづらかにやおぼえけん、せちに思へる心なん有ける、〈○中略〉おとこ京へなんまかるとて、
くりはらのあねはの松の人ならば都のつと(○○○○)にいざといわまし、といへりければ、よろこぼひて、思ひけらしとそ云をりける、

作法

〔大内問答〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0462 一御酒半に引出物被進時は、何樣の物たるべき哉の事、
御酒半に引出物の事、殿中にては一獻申沙汰よりも、獻々にも進上候、またこんはさめにも進上候、又一兩度も進上候、常に御參會の時は、客人、貴人にて候へば、從亭主進、又亭主、貴人ニ而候へば、從人も被進候、然ば五獻七獻目などに、御酌ニ而御酒被參候時、二目を被參時可然候、一番には必太刀たるべく候か、馬、太刀なども可然候、加樣の時は目錄添候はで、太刀を被進時、馬をと詞 にて被仰事可然候、又目錄添候、事も候太刀より前にはいかやうの物に而も不進候、〈○中略〉
一引出物に具足、幷鞍、鐙、同繪以下唐物等可進候かの事、
具足の事、尤可然候、御成之時も、式御引出物の内、御鐙にても、常にも可進事勿論ニ而候、鞍鐙の義、是も同前、ゑさん物、其外から物等尤に候、同時に從客人から物等、於當座進候義はいかゞ、御出之刻左樣のから物等をば、御宮下として以目錄進候、
一豹虎の皮、於御座敷も可進候かの事、
豹虎の皮、座敷ニ而爲進事は見及不申候、左も可在か、無分別候、
一打刀幷長具足可進哉事
打刀の事、一かどの樣に候へども、一番には不然候、先太刀を被參候て、のち〳〵可然候歟、打刀をばつば刀とも申候へば、打刀御出候はゞ、太刀を被添候半事、本義に而候、打刀計は略儀に候、殿中も同前、但御引出物にあらず、唯打刀計進上の事は勿論ニ而候、次長具足の事は、何々を長具足と可申哉のよし、先々より不審申義候、長太刀、野太刀、小鑓の事か、先年山名左衞門督殿へ土岐美濃守殿より、酒半に長具足被進候に出樣の事、祖父貞親に被相尋時、何共無覺悟ニ而候由返事申候、乍去先座敷の傍に便よからん所に立置、案内申され候て可然候か、聢と仕たる法樣は不存候、又見及ばぬ由申たる旨しるし置候、以之可分別候、
一從客人さゝれ候御腰物被進候はゞ、亭主よりも頓而指れ候腰物可進かの事、
さゝれ候腰物被參候はゞ、此方よりさゝれ候腰物被進候事は、定法にて候、乍去其家の重代、又は事により、麁相なる刀などにて候へば、別の刀を可遣候か、かやうの御參會には、兼々其御心掛候て可然候、可召遺腰刀をさゝれ候事、故實にて候、
一同時に脇指をも被進事候哉の事 脇ざしの事は、隱劔と申て、人に見せざる樣に、自然さゝれ候か、殿中などへは努々御さしなき事にて候間、わきざしの沙汰、何共無覺悟候、又不見候まゝ、兎角は難申候、
一太刀、かたな、銘によりて、引出物に成申さず候哉、同中心きりたる刀、又無銘の太刀、かたな、いかがの事、
銘によりて御物には不成候、銘々の進物には不其沙汰候か、無銘の事、式々の進物には不成候、常には不苦候、其時は目錄ニも持と付候、又中心切たるも同前、式々の引出物には不然候、

〔武雜記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0464 一豹虎の皮進上の事、臺にすゑ候皮一段大に候へば、二ツに折候て、頭の方を懸御目候、別に替る義無之候、〈○中略〉
一鞦のつゝみ樣とて、別にはあるまじく候、引合にて包み水引にて可結候、正月二日御乗馬始に進上も此分に候、
一手綱腹帶つゝみ候事も、鞦同前たるべし、何方へも被遣候はゞ臺にすゑられ候、十具廿具同前、
一杉原をこしらへ候事は、やがて杉原を八枚程四に折て、紐に結候て臺にすゑ、其上に扇板物をすゑ候、十束廿束の時は相替候、又引合だんしなどは、かみえり二筋にて結候、いづれも臺にすはり候、別に樣體は無之候、
一眞羽又は鷹の羽などは、引合につゝみ水引にて結候て臺にすゑ、羽の本を御前へなし申候、〈○中略〉
一盆香合進上の時は、香合をば袋より取出候て進上候袋をば同朋衆へ渡可申候、御前へ紋の草木の本末を見分候て、本の方を御前になし可申候、
一香爐進上候時は盆にすはり候、香爐に足候はゞ、あしのうらおもてを見分候て、御前へ可持參、〈○中略〉 一扇一本の時は如常、又一つゝみとは十本の事にて候、それをば、うつくしくたゝみたる、うすやうの重ねたるにてつゝみ、金銀の水引にてからげて、引合だんしにもすゑられ候、〈○中略〉
一繪を進上の時、長き繪をば横に盆にすゑ申べし、繪のおもての方御前へ向可申候、然ば外題は御前の左たるべし、持參申者の右へ外題あるべし、又繪を盆に竪にすゑ申べし、然ば外題の方、我かたへなし、可持參候、二幅、三ぶくの時、同前、〈○中略〉
一金襴、段子など進上に仕る時は、記錄に有之ごとく古く、候とも唐包可然候、あまりにそこね候はゞ、上を引合にて包み水引にて可結候、五端十端とも進上候時は、一端づゝせん香などつゝむ樣にして、それをもとゆひのふときほどに、二すぢ紅にして、總を結て盆にすゑらるべし、むかしの段子は卷候はでたゝみたるにて候、今は一どんすにて候間、一端づゝ包て總結をして可然候、總結は兩わなたるべし、一端づゝはかたわなたるべし、
一唐糸三斤、或は五斤など進上候時は、ねぢたるかたを下になし、堅に盆にもすゑ候へば、ねぢたるかたふつさりとして見だてよく候、一斤などにて候へば、如常横にもすゑられ候、

〔武雜記補註〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0465 唐包とは、金襴段子は唐より渡る也、から包は唐にて包みたる也、唐紙にて包みて、靑き印、赤き印などすゑたる紙也、

〔貞丈雜記〕

〈九/進物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0465 一進物の小袖の下とづる事、豐記抄に云、小袖、そでの下とぢ候事、數餘多候時の事に候、御成之次第に云、御練貫五重、袖のしたをとぢ、五重を又總をとぢ候て、だんしを廣ぶたにすへ、其上に練貫を置て、紙の切目御前になすべし云々、〈だんしそへざる時も同前なり〉小袖の袖下をとづるに、男女の替りあり、男の方は片かぎ、女の方は諸(モロ)かぎ也、ともにふさを付る也、女房故實條々に見たり、

〔貞丈雜記〕

〈九/進物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0465 一進物を紙に包む折形(○○○○○○○○○)、いにしへは城殿といふ職人のする業也、〈今も京都に城殿といふ職人あり、其末流なり、〉庭訓往來に、城殿扇とあり、城殿ガ扇名物なりし也、城殿は色々のかざり物をする者にて ありし故、進物なども城殿に包ませけるなり、それをまねて手前にても包む也、板の物、卷物などは、唐包を賞翫する故、此方にて上を包む事なし、唐包とは唐土より包みて渡したるを云、唐包には板木にて文字を押し、朱印、靑印などあり、もし唐包の損ずれバ、此方にて包み直してつかはす事、武雜記、其外の舊記に見えたり、我家に傳たる折形も少ばかりあり、包結記に記す如し、是等もかの城殿ガ包みし形なり、〈○中略〉
一進物に荒物(○○)と云事有、本式樽肴と云時は、肴は煑燒して折に入て遣す也、然るに魚鳥を生にて遣スをあら物と云也、書札條々に云、樽肴之次第、本式の樽は折十合、又は五合、御樽十荷、又は五荷等也、又荒物と申候は、一種々々也、或は雁一、白鳥一、鯛一、折共又は十廿共、貝蚫一折、樽等也、又云、御折、御樽本式也、又あら物と云は、美物一種に調候云々、〈○中略〉
一今世上に魚を進物にするに、篠の葉をかい敷にする也、篠の葉をかい敷にするは忌む事也、切腹する人に酒飮する時、肴のかい敷に、さゝの葉を用る故也、猶飮食の部見合べし、〈○中略〉
一魚類の進物に、海の前(○○○)、河の後(○○○)とて、海魚は腹の方を人に向け、川魚は背の方を人にむけて、臺につむと云説あり、非なり、舊記に其沙汰なし、何魚にても一つの時は、頭を主人の左へなし、腹の方を御前へ向る也、二つの時は腹を向ひ合せ、三つの時は同前にして、一つは背の方を外えなしてつむ也、海川の差別はなき事也、〈他家にては海川の差別あるよし申也、當家に傳へたる室町殿の禮式には、海川の差別無之、差別無用之事なり、〉
一馬代の事、書札大方に云、總別昔は馬代千疋にて候を、一亂以後三百疋の事候、今も國によりて千疋の事分も有之也云々、一亂とは應仁年中の大亂を云、然れば東山殿〈○足利義政〉御代應仁の亂以前は、馬代とあれば千疋づゝ遣しける也、亂以後は三百疋になりたる也、是は私にての事なるべし、殿中へ馬代進上は有べからず、舊記にみへず、私にても折節生馬の有合ざる時は、馬代用ひしなるべし、

〔倭訓栞〕

〈後編十三/登〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0467 としのみ(○○○○)〈○中略〉 世俗贈物の時、先より又其器へ物を入て返すをいふ、大神宮年中行事、鍬山伊賀利の神事の條に、折敷に小石を入て年の實と號し、分て贈る事あるに出たり、

〔建久三年皇大神宮年中行事〕

〈二月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0467 一鍬山伊賀利神事
宮司神主ハ裹鍬拜領諸役人等ハ折敷ニ入小石ヲ、號年實、分給後一同ニ揖拜、

〔嬉遊笑覽〕

〈八/忌諱〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0467 人の許より物贈れる時、其器物に移り紙(○○○)とて、紙をいれ、ことそぎては、つけ木を入ても返す、沙石集に、君に忠有て榮ふるといふ條に、返り引出物(○○○○○)とて、紙一枚をぞ給はりける、これ今いふうつり也、つけ木、古くは硫黃といへり、職人盡に、硫黃箒賣あり、二品をうれるなり、これを移りに用るは祝ふ意なり、〈かなはちがへども、音のまがふ故なり、又今祝をいわひと、俗文に書は、いはひにては、位牌にまがふとなり、〉うつりとは名殘の意なるべし、

〔石田先生事蹟〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0467 音物をうけ、ため(○○)を入給ふに、上半紙を用ゐ給ふ、是は手習の淸書紙にもなり、無益につひえざるやうにとなり、

禁忌

〔大内問答〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0467 一馬も毛によりて、引出物に用捨の義候哉の事、
常には馬の毛によりて嫌義無之、ぶちをば用捨候、またよめ入の祝義に猿毛、移徙に火性の馬などは可用捨、又神社參詣の時、其社に付て神馬の毛定たる事在之義候、其毛をば可斟酌候、

〔武雜記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0467 一萬祝言に付て遣候物等用捨の事、元服の祝言に弓、征矢遣時、きりふの羽付たる矢用捨の事、〈○中略〉わたましに火性の馬、火打袋、ひはだ色の衣裳、赤さげ緖、もえぎ色など可用捨、總別祝言に禁句等可心得

〔貞丈雜記〕

〈九/進物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0467 一進物はすべて詞のとなへ惡き事を遠慮すべし、進物ならずとも、常にも此心得有べし、香を一たき、三たきは、人に送らぬ物也と云、一たきは人燒と云に似たり、三燒は身燒といふに似たり、香の物三切をいむ事も、功の者身切れと云に似たり、矢を人に遣すに、四筋六筋を忌 む事、四は死に似たり、六は無に似たり、無とは的に一つもあたらぬを云、元服の祝に切符の矢を贈らず、切るといふ事、男の祝に忌む也、〈○中略〉右何れも舊記に見たり、

用器/付枝

〔門室有職抄〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0468 引出物事
牛馬冬春ハ雖衣、引出之時脱之引也、太刀、笛、琴體ハ必入袋(○)乎、本ハ薄樣檀紙等可裹、物枝ニ付(○○○○)時、以錦等之、非貴人外ハ、付枝儀無之、

〔享保集成絲綸錄〕

〈十九〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0468 元祿二巳年八月

一獻上物之臺、上檜、杉無用ニ仕、何木ニ而も用之、磨抔も輕くいたし、足は檜、杉の外、何木成共仕、二重ぐり相止、ひきく可仕事、
一獻上箱、肴之箱、其外獻上物入候箱、杉、檜ヲ相止、何木ニ而も丁寧に無之、透し、ゑよう無用に可仕事、〈○中略〉
一獻上之外杉重檜臺令止之、常々取かはし候は、塗重箱(○○○)可之事、
一常々取かわし候音物、かけ流しの臺無用に致し、籠(○)を可用事、
一常に取かわし候箱肴停止致し、輕く肴代に可仕、肴にて遣候はゞ、籠を可用事、〈○中略〉
右之通、來午正月ゟ改之、可相守者也、
八月
元祿二巳年十月
申渡覺〈○中略〉
一常々取かわし候音物、鮨、甘子の類入候曲物桶(○○○)之事、
籠、雜木の箱、塗重箱、壼(○)、此類を用可申事、 一常々取かわしの小袖臺、又は馬具抔載候臺の事、
少き臺は塗候而用可申候、小袖臺、馬具載候臺、成程麁相ニ雜木ニ而用可申候、
一常々取かわし候肴遣し候、掛流し籠の事、
靑竹の籠、掛流しに用可申候、
一常々取かわし候音物の箱の事
成程麁相ニ致し、雜木の箱可用申候、〈○中略〉
一常々取かわし候音物の塗臺(○○)、幷塗樽(○○)の事、
常々取替候毫樽塗候而用候儀は、心次第に候、但塗候器物、直ニ音物ニ付候而、差置候儀ニ而は無之候、〈○中略〉
右之通相心得、何方ゟ誂候共、此書付の外一切仕間敷候、若誂候者、町年寄〈江〉相斷、差圖ヲ請候而可仕候、
十月

〔貞丈雜記〕

〈九/進物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0469 一今時付臺(○○)とて、黃金一枚、銀子一枚などゝ書たる包紙を、臺にのりにてはり付て、金銀をば別に包て遣す事有、古は付臺と言事なし、要脚何疋とて、鳥目にて遣しける也、殿中にて鳥目など懸御目事はなかりし也、付臺と云物、後世出したる物也、〈慶長の頃より大判、小判、小粒など出來たり、古は錢ばかり通用したり、〉
一金らん、段子、くつわ等を、折(○)に入ても進ずる事、舊記に見へたり、折とは檜の板にて折わげて造たる箱也、食物を入る折の作り樣と同じ、大小長短廣狹は、物に依て相應につくるなり、〈○中略〉
一弦を進物にするには、桶(○)に入て進ずる也、一桶と云は廿一筋也、桶は檜の木のわげ物也、ふたはかぶせぶた也、とぢめは我方にして渡す也、ふたの書付は、ふたを竪板にして、弦廿一筋、又は廿一 條と書べし、字頭我方にして渡すなり、

〔古今著聞集〕

〈十三/祝言〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0470 延長二年十二月廿二日、内裏御賀〈○醍醐、四十賀、〉を中宮〈○醍醐后藤原穩子〉奉らせ給けるに、〈○中略〉中宮の御かたより、樂器を奉らせける中に、北邊左大臣〈○源信〉の淸和御時、手自かゝれたる、春鶯囀の箏の譜を、木の枝(○○○)に付て奉られける、めづらしくやさしき、御をくりものなりかし、

〔大和物語〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0470 故源大納言〈○淸蔭〉宰相におはしける時、京極のみやすどころ、〈○藤原褒子〉亭子院〈○字多〉の御賀つかうまつり給とて、かゝる事をなんせむと思ふ、さゝげ物、一えだ、二えだせさせて給へと、聞え給ひければ、ひげこ(○○○)をあまたせさせ給ふて、としこに色々にそめさせ給ひにけり、しきものゝおりものども色々にそめ、よりくみなにかと、みなあづけてせさせ給ひけり、

熨斗

〔貞丈雜記〕

〈九/進物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0470 一進物にのしを添る(○○○○○○○○)事、〈のしとばかりいふは非也、古はのしあはびと云なり、〉古は大刀、馬、鎧、鞍、鐙、其外すべて進物に熨蚫を添る事は無之、さればのし包といふ物もなし、のし蚫を進物に添るは、後世のならはし也、當世にても太刀目錄などには、熨蚫をそゆる事なきは、古風の殘りたる也、我家〈○伊勢〉に傳へたる熨蚫の包形は、京都將軍家の庖丁人、大草流の式三獻の時、引渡しの膳にすゆるのし蚫の包形也、今當世進物に必のし蚫を添る風俗なれば、當家にても世のならはしにそむきがたき故、のしあはびを進物にそゆる時には、かの大草流の引わたしの包形を借用る也、古は進物にのしあわび添ざる事、古書を見て知べし、

〔本朝食鑑〕

〈十介〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0470 鰒〈○中略〉
長鰒〈訓乃志〉釋名熨斗〈言引鰒片長則如熨斗之舒一レ皺故名、〉
集解、造長鰒法、采生鰒腸殼、以小刀耳端、環切至中肉條、次第切盡、條條洗淨、略暴乾待生乾而引舒侖長、復暴乾作明白條、此謂長鰒、短鰒亦略同、〈○中略〉或用榮螺而亂之、然味亦不鰒、故謂榮螺熨斗、〈○中略〉本邦賞長鰒者、仍爲上下賀祝之先供也、神祠亦奠之、取延長悠久之義乎、

〔石田先生事蹟〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0471 人へつかはし給ふ包銀には、のしを付け、包錢は水引をかけてのしを付給へり、

水引

〔運歩色葉集〕

〈見〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0471 水引

〔雍州府志〕

〈七/土産〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0471 水引 元城殿之所製爲始、近世兼康町八木某多造之、如今所々製之、其式杉原紙、或奉書紙、隨紙之長短、幅一寸許直切之、以手指之、其長一尺餘、而暫浸米滑水、取起之白巾引之、故謂水引、日乾而後半塗臙脂、是謂赤白水引、半白所爲本、半赤所爲末、以是括短册玄猪、其外括諸物、至近世則金箔、臙脂、鬱金汁、藍汁、段々彩之、而以箔細紙十條之、是謂一把、至百把或三百把、爲婦人贄、其剛堪束諸物、又鳥子紙一枚、段々彩各色、細切不捻而用之、是謂平水引(○○○)、是又近世之製也、

〔三内口決〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0471 一水引結物事
禁中者、多分被紙捻候、但懷紙、短冊等ハ、白紅之水引、以一筋之候、女房髮之水引、同前候、當時段々水引一向不之候、半白ク、半紅ナル水引、白紅ト號シテ外樣ニ用之、
結樣(○○)事〈中ニ可見用ノアルハ片鎰(○○)也、細々開見マジキ物ハ毛呂和那(○○○○)也、〉
又薄樣ノ水引ハ、其紙ヲ捻候テ、面ト懷胞ト中倍トノ五色ヲ捻テ、五筋宛續之、十文字ニカラゲテ、裏ニテ、留之片鎰ナリ、

〔貞丈雜記〕

〈九/進物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0471 一紅白水引にて包物を結事、紅白の色左右定なし、然れども結ばざる以前に白を左にし、紅を右にすべし、白は五色の本也、左は陽にて貴き方なれば、白を左になすべし、

目錄/折紙

〔宗五大草紙〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0471 折紙調候樣の事
一先折紙のたけの高きは狼藉也、公方樣へは、常々公家、門跡、大名衆は備中紙、小高檀紙を一重二に折て御用候、御供衆同前、大かたの人は小引合、杉原など被用候、公方樣ゟ禁裏樣へ御進上之日錄は、大高檀紙一枚にて候、管領の御母ゟ公方樣へ參候折紙、大高檀紙一枚にて候、又細川殿ゟ進 上之目錄同前、彼御一人にかぎり如此、折紙の調樣、攝家より公方樣への御折紙には、進上は候はで、色計あそばし候て、以上と候、淸花も此分に而候、余の公家衆も進上は候はで、以上之奧に實名をあそばし、そばに上文字を御付候、縱ば如此、實名上、又は門跡も進上は候はで、以上の奧に何院と計候、是は門跡の事候、武家は進上とはしにかきて、以上の奧に名乘をかき、名字官途受領をも書候、又土岐殿一人名乘をばかゝで、土岐左京大夫と候、又私にては色計書て、以上、おくに各乘を書、かたに名字官途など書は、一段賞翫の義也、又受領にても官途計にても書候、是も賞翫、是は賞翫ながら前の程はなく候、又常に等輩には、只以上と計書候、色はいく色も同前ひろひて可書、又人の内衆主人へ參候折紙、進上と書候、公方樣へ武家進上の書やう同前、
一折紙に調候物の次第、大内殿ゟ故勢州へ被尋候時、しるして被遣候分、公方樣へは御太刀一腰、〈銘〉御馬一疋、〈毛付印付〉万疋、〈此字成べし〉又千疋、五千疋、私ざまにては御の字あるべからず、又太刀の銘は大方太刀のわきに付べし、又書狀には用脚の異名を書候、折紙にはたゞ万疋千疋と有べし、又御太刀一腰、〈銘〉御繪一幅、〈筆付べし數不定〉御香合一、〈堆紅以下可付〉金襴一端、〈色可付〉段子繻子〈數不定〉數多くば何端とて色色可付、此外ぢんのほた、から絲、御花瓶胡銅一、御香合一、御盃にすはる御盃の數不定、何にても堆朱堆紅など付べし、公方樣へ進上の外、御ノ字有べからず、公方樣へも金襴段子などやうなる物に、御ノ字は不書候、公私共に太刀そひ候はゞ、一番に太刀を書べし、
一御太刀一腰、〈銘〉御弓、征矢、御鐙一領向甲、〈糸色付べし〉御馬一疋、〈毛付印付〉公方樣へ此分、〈○中略〉
一女中へ進上の折紙、調樣、万びき、又は千びきなど有べし、又名乘は、上の字をかなに、下をばまなにて書、名字、官途も、かな、まなを交べし、私にて女房衆への折紙此分也、又ほん、かうばこ、どんす以下も、かなに書べし、だんし十帖、引合杉原も、十でうとかくべし、おりたる以下の折紙をも、まなをまぜてかくべし、 一公方樣へ折樽以下進物書やう、御盃臺、〈繪樣可付、數不定、〉御折十合、〈數不定〉押物五合、〈數不定〉御樽十荷、〈數不定〉京にては柳なれば柳何荷共書、又御樽、〈天野何荷共云〉是も私へならば、御字あるべからず、是も女中へはかななるべし、
一魚鳥を折紙に調候は、大かた鳥前、魚後に書候、又大内殿より金仙寺〈○伊勢貞宗〉へ、精進と魚とを書まぜて、進上の時は、如何と尋られし時、返事に、さのみ見及候はず候、但精進の物は前に候はんずるかと候し、又常に私にて昆布をそへ候事、きとしたる時は見及候はず候、又常に進上候魚鳥の數の事、是又大内殿より故勢州へ被尋候時、しるし被遣候分、鳥には白鳥、鵠、雁、鴨、雉、鶴、雲雀、靑鷺、五位鷺、鶇、鴫、鶉、四足には兎より外は參候はず候、魚には鮒、同鮓、鯉、鮎、同鮓、鯛、鱈、鮭、鱧、鯨、鰤、鮝、鱓、海鹿、鮫、鱒、鱸、鯇、鹽引、蛸、細鯉、來々、海老、擁劒、生海鼠、振海鼠、大蟹、煎海鼠、海月、海鼠腸、海糠、老海鼠、烏賊、筋子、眞鰹、波良々子、細螺、貝蠣、貝蚫石花蛤、辛螺、榮螺、ばい、熨斗蚫此外もあるべし、

〔三内口決〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0473 一馬太刀進物事〈○中略〉
其馬太刀折紙書樣
馬一疋ト載之時ハ、毛付有之、有毛付之時ハ、太刀一腰ノ下ニ其作注之、若無作之物之時ハ、持ト 注之、馬ヲ一疋ト書心ハ、可馬代之義也、但家々意、互ニ不株乎、

〔貞丈雜記〕

〈九/書札〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0473 一進物の目錄を書に、先精進物を書て、次に魚鳥を書事、古法也、是は奪氏卿、夢窻國師を師として、禪法に歸依し給ひしにより、御代々禪宗を崇敬し給ふにより、諸侯も皆禪法をこのみ、精進の人多かりし故、精進物を先として、目錄にも、又は座敷え折を出すにも、先精進物、次に魚鳥と次第を定たる物也、〈○中略〉
一古は折紙のまん中に、千疋万疋などゝばかり書て人に遣したり、今は金子千疋、万疋或は肴代何疋、樽代何疋と書て、何疋の上の方に金子を糊にて付る事世上にはやる也、古は金子なく鳥目 計有し也、それ故たゞ何疋と計書付て、別に鳥目をば遣しける也、今の金子の折紙も、千疋万疋などゝ書て、金子をば別に包て遣す事よろしかるべし、
一今時貴人より下輩へは、竪目錄(○○○)を用、下輩より貴人えは横目錄(○○○)を用るといふ説あり、古は竪目錄横目錄といふ名目なし、前にも記す如く、太刀馬の目錄と、千疋万疋などの折紙は横に折り、魚鳥などの注文は横に折らず、竪紙を用し也、貴賤に依て竪横の差別、古法はなき事也、〈○中略〉
一進物に魚類と精進物有ば、目錄に精進物を初に書べし、書札條々に云、總て公方樣へしやうじ物〈精進物の事也〉をくはへ進上之事不見及也、昆布なども、御肴、あら物に〈あら物の事は精進物の部ニ出〉そひ申事無之、名物の事も一色には進上候歟、又常にわたくしには精進物そひ候べし、其時は精進物を一番に可調也、又云、折精進、美物〈魚鳥類の事〉之事、當方には一番に精進を被調候、他家には美物を一番に被調候、
一魚と鳥進物の時は、鳥を先に書べし、書札條々に云、鳥魚物ばかり也、此時鳥を先調らるべし、
一進物の目錄の料紙、貴人より下輩へ給るは、大たかだんし大引合などを用らるゝ、下輩より貴人へ奉るは、小たかだんし小引合などを用る事古の禮也、今は下輩より貴人へ奉るに大たかだんしを用る事、分に過たる儀なれども、世上如此なり、
一今時進物に三色目錄(○○○○)、別儀目錄(○○○○)と云名有、三色目錄は太刀、馬の間に、要脚、呉服、卷物の類を書列たるを云、別儀目錄とは、太刀、馬に、卷物、〈魚の事也〉樽などを書加へたるを云、古は此三色目錄、別儀目錄と云名目なし、太刀、馬に書加へもあれども、三色別儀などゝ云名目はなし、
一目錄に馬代書事、萬拔書條々に云、目錄に馬代と書候不見候、一疋の下に毛付不代候て調候、毎々の儀に候、要脚書かる事も可之、馬代いか程より認る儀、但さも可有哉と云々、古は一疋の下に毛付をばすれども、馬代何程と書事なし、御太刀一腰、要脚何千疋と書事はあり、馬代何程 とは不書也、貞丈云、今は專ら馬代を用る也、御馬一疋の側に、馬代白銀十枚などゝ書也、殿中へ獻上も右の如くになりたり、今改がたし、然れども愚意を以ていはゞ、目錄には御馬一疋とばかり書て、毛付すべからず、毛付せざるは馬代を用るが故也、扨馬代銀ならば、其包紙に御馬代銀何枚と書べし、鳥目ならば御馬代錢何程と木札を付可然歟、

〔和簡禮經〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0475 禁裏江從公方樣御進上之目錄ノ事
假令バ御太刀 一腰御馬 一疋以上進上モ御實名モ在ベカラズ、御料紙大高檀紙一枚ニテ候、押折テ伊勢守貞宗調進被申候、右書樣近來菊亭殿自筆ニテ書付、天正十九之比給候モ一同也、〈○中略〉
一折紙事
鳥目折紙ニテ、攝家、淸華、宮門跡、平公家、其外不貴賤、書樣事何も同前也、〈付被召仕候輩ニモ、又ハ觀世大夫以下ニモ同前也、〉
折紙ノ中央ニ万疋千疋多少ハ可時宜〈○中略〉 一從武家進上事
假令バ
進上
御太刀 一腰
御馬 一疋
以上
名字官
名乘
銘アラバ銘、無銘ナラバ持ト云字、毛付
又ハ印ヲモ可書、但何モ不書モ不苦也、
現馬ノ朝ハ毛付アルベシ、馬代ノ時ハ、
一疋ト計アレバ、則代ト可心得也、
右至極ノ敬の書樣なり、
進上、御太刀、御馬ト、三ハ同ジ通也、以上ハ一字サゲテ可書也、進上モ少サグル流モアリ、半字、〈○中略〉樽目錄の認やうの事
昆布鳥魚獸ト次第スル也
進上
白鳥 一
雁 一
鯛 一折
鱈 一折
海月 三桶
已上
名字官
名乘
是は主人貴人等江の認樣にて候、鯛鱈見たて能候へば、
これも數を書事も有之、又如此一折共認候也、次けだ物
はいち奧に認候、又桶に入候ものは、いく桶と書申候歟、
樽添候はゞ、肴悉かき候て、いちおくに書申候也、
進上ノナキ時ハ、目錄ト口ニ可書申也、〈○下略〉

贈遺例

〔伊勢物語〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0477 昔男有けり、人の許より、かざり粽をこせたりける返事に、
あやめかり君はぬまにぞまどひけるわれは野に出てかるぞ侘しき、とてきじをなんやりける、

〔古事談〕

〈一/王道后宮〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0477 白川院爲御方違、俄臨幸實季卿家、御引出物(○○○○)ニ、役ノ優婆塞ノ獨鈷ヲ相傳シテ持タリケルヲ、殊勝唐錦一段ニ裹テ被進ケル、召テ令還御了、世人奉謗云々、

〔吾妻鏡〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0477 壽永三年〈○元曆元年〉六月一日戊午、武衞〈○源賴朝〉招請池前亞相〈○平賴盛〉給、近日可歸洛之間、爲餞別也、右典厩、幷前少將時家等在御前、先三獻、其後數巡、又相互被世上雜事等、〈○中略〉次有御引出物、先金作劒一腰、時家朝臣傳之、次砂金一裹、安藝介役之、次被鞍馬十疋、其後召客之扈從者、又賜引出物

〔吾妻鏡〕

〈九〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0477 文治五年六月十一日己亥、中納言法橋參御所、依御招請也、塔供養無爲事被賀仰、又有獻盃、以沙金十兩、銀劒一腰、染絹五十端、爲御贈物

〔沙石集〕

〈六下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0477 君忠有榮事
先年ノ比、何者ノ云出シケルニヤ、相手ヲ孔子ニ取テ事ヲシ、相手引出物ヲセバ、時ノ横災ヲマヌカルベシト云事、京田舍ニ普クソノ沙汰アリテ、カミツカタニモ此毫アリケルニヤ、或公卿ノ御所ニ此事アルベシトテ、相手ヲサダメラレケルニヤ、恩モ蒙ラズ私ノタクヘモ無シテ、貧シキ侍ノ宮仕ケルガ、主ノ御相手ニ取アタリヌ、是モ不運ノイタリト身エモ思ヒ、ヨソニモサタシケリ、〈○中略〉女房ノハカラヒニシタガハントテ、屋地ヲウリテ、用途五六十貫ガホドアリケルニテ、銀ノ折敷ニ金ノ橘ヲツクラセテ、コト〴〵シカラヌヤウニ、紙ニツヽミ、懷中シテ手ニ色々ノ引出物共シケリ、イカニモ某ハ、上ノ御相手ニ參テ、其用意アルカト、傍官共問ケレバ、爭カ用意仕ラザラント云、イカバカリノ事カ、シ出スベキトテ、目ヒキ鼻引、カホヲソバメテゾ、オカシゲニ思ケル、上 ニモヨニカタハライタキ事ニ、思食タル氣色ナリケリ、スデニフトコロヨリ、紙ニ裹タルモノヲトリ出スヲ見テ、サセル事アラジト思テ、餘ノカタハライタサニ、諸人面ヲクツフセケリ、サテ御前ニ置タル物ヲヒキヒロゲテ見給ヘバ、銀ノ折敷ニ金ノ橘ヲ置タリ、心モヲヨバズ作タリケリ、是ヲ見テ皆目ヲ驚シ、諸人ニガリテゾ見ヘケル、抑ナニトシテ御恩モナキニ、カヽル不思議ハシ出タルゾト、御所中ノ人ニ尋給ケレバ、カヽル子細トゾ承ルト、委クキヽタル人申シケレバ、大ニ感ジ被仰ケリ、サルホドニ返リ引出物トテ、紙一枚ヲゾ給ケル、都近キ庄ノ千石バカリナルヲ給テ、富榮テイヨ〳〵奉公ツカマツリ、重テ御領モ預リ、方々榮華目出クアリケル、

〔太閤記〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0478 秀吉歲暮御禮之事
先今夜忍びの對面すべし、其にまたせよとて、御袴めし給ひつゝ、〈○織田信長〉筑前〈○豐臣秀吉〉か、扨も久しやと再三宣、〈○中略〉御暇被下けり、斯て明日の捧物、數多き事なれば、無相違やうに、臺にのせて見せよと、終夜用意有しかば、吿渡八聲の鳥催旦、進物の奉行共はや持出、山下よりならべ置候へ、頓て出給はんとて、奉行共出し給へり、山下にて信長公への進物は道の左に、御若君たちへのは右にならべ、其次々の進物は、如此せよと被仰付、登山有けり、臺の數二百餘の事なれば、左右にならべつる臺は、御門に入共、跡の臺はいまだ山下に在、信長公殿守より御覽有て、坂に布引におしはへ見ゆるは、彼大氣ものゝ筑前守が進物の臺なるべし、見よや者とて打笑せ給ひける、

〔太閤記〕

〈十一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0478 行幸
卯月〈○天正十六年〉十四日行幸〈○後陽成〉有べしとなり、〈○中略〉殿下〈○豐臣秀吉〉も何かの事取まぜ沙汰し給ふとて、申刻ばかり〈○四月十玉日〉にまう上り給ひぬ、獻々の内に、
捧物
一御手本 卽之筆蹟千字文、金の折枝に付、 一御繪 三幅一對
一沈香 百斤、方五尺餘の臺、紅糸の網を掛、六人これをかく、
右進上之物取納させ給ふて、頓て攝家の御方、諸門跡、淸華衆、殘らず其沙汰に及べり、
伏見殿 九條殿 一條殿 二條殿 近衞殿 菊亭殿〈右府〉 德大寺前内大臣 尾州内府 右之御衆へ〈但各自にかくのごとし〉
一繪 二幅 一虎皮 一枚 一盆 一堆紅 一小袖 三重 一太刀 一腰
卽御領知の御折紙被相添、各自にまいらせらる、其外衞府所司へも小袖二重、太刀一腰宛、領知の折紙相添給ふ、是亦傳奏衆へ渡し申されけり、

〔甲子夜話〕

〈八〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0479 前人〈○林述齋〉又云、昔トテモ權勢ノ人ヘハ贈遺モアレド、近來ノ如キ鄙劣ナルコトハ無キコトナリ、今姫路ノ酒井家、モト前橋ヲ領シテ、大老勤ラレシトキ、仙臺ヨリ大筒二十挺贈リシトゾ、一挺ヲ車一輛ニ載ル重サナリシトナリ、今ソノ筒、江戸ト姫路ニ半ヅヽ藏スト聞ク、ソノ時鍋島家ヨリハ、伊万里燒ノ鱠皿、燒物皿、菓子皿、猪口、小皿等、凡膳具ニ陶器ニテ用ユベキ程ノ物ヲ、千人前ニシテ送リシトナリ、只今尋常ノ客ニ掛合ノ膳ヲ供スル時、ヤハリソノ陶器ヲ用ユ、多クハ敗損セシガ三ケ一ハ尚殘レリトナリ、又高崎侯ノ祖〈諱輝眞、松平右京大夫、〉元祿中、殊更ニ御眷注ヲ被ラレシカバ、人々ノ奔走モアリシガ、一日加賀侯訪問ニテ面話ノトキ、何ゾ遞上ト存ズレドモ、事欠ルベキニモ無レバ、空シク打過ス、馬ヲ好マレ候ト承リヌレバ、國製ノ鐙ニテモ進ジ候半歟ナドトノ物語ナリシカバ、厚意忝キノ旨挨拶アリ、加侯歸邸ノ後、使者ヲ以テ鐙百掛贈ラレケリ、折角ノ厚情ナレバ迚、厩ニ繫ケル馬百疋ニ鞍置セ、其鐙ヲ掛ケ使者ニ付テ、卽時ニ加邸へ牽セ、此通リ用ヒ忝旨ノ謝詞アリシトナリ、此頃ノ風儀ハ、信ニ感ジ入タル事ナラズヤ、贈ル人モ、受ル人モ、孰レヲイヅレトモ云ガタシ、

〔甲子夜話〕

〈六〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0480 田沼氏ノ盛ナリシトキハ、諸家ノ贈遺、樣々ニ心ヲ盡シタルコトドモナリキ、中秋ノ月宴ニ、島臺輕臺ヲ始メ、負ケ劣ラジト趣向シタル中ニ、或家ノ進物ハ小ナル靑竹籃ニ、活潑タル大鱚七八計ニ、些少ノ野蔬ヲアシラヒ、靑柚一ツ、家彫萩薄ノ柄ノ小刀ニテ、ソノ柚ヲ貫キタリ、〈家彫ハ後藤氏ノ所彫、世ノ名品其價數十金ニ當ル、〉又某家ノハ、イト大ナル竹籠ニシビニ尾ナリ、此二ヲバ類無トテ興ニナリタリト云、又田氏中暑ニテ臥シタルトキ、候間ノ使价、此節ハ何ヲ翫ビ給フヤト訊フ、菖盆ヲ枕邊ニ置テ見ラレ候ト、用人答シヨリ、二三日ノ間、諸家各色ノ石菖ヲ大小ト無ク持込、大ナル坐敷ニ計ハ透間モ無ク並ベタテヽ、取扱ニモアグミシト云、ソノ頃ノ風儀如此ゾアリケル、

雜載

〔江家次第〕

〈二/正月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0480 大臣家大饗
此間、召人退出、有祿、〈○註略〉 次引出物(○○○) 馬各二疋〈○註略〉 尊者若好鷹者、被之〈(中略)私人不鷹由、有新制、不引出物云々、〉

〔三内口決〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0480 一馬、太刀進物事、
面向之一禮定儀候
嫁取、元服、拜賀、扈從之人衆等、必有此禮儀
行幸供奉之公卿有此禮
樂道郢曲等傳受候時、又有此禮

〔翹楚篇〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0480 一常々の御物語に、〈○上杉治憲〉獻上物は輕きに却てしほらしき誠あり、下々同士の贈物も斯有べし、よき品到來の滿足ならぬにはあらねども、善盡し美盡せる品を贈られては、其心遣ひの痛入、亦相應の挨拶もがなと思ふより、常々苦にし心に懸て安からず、譬釣魚二三も持來り、或は菜園の品摘來りて、手作の品と云、昨日釣得たりなんどいひて贈れるには、實も其人の眞實おもひやられてしほらし、斯る品とて挨拶の如在をすべきにあらね共、苦にし心にかゝる程にもあ らざれば、心におきて安きなり、然るに能品事々敷取飾て贈れるは、上を敬する誠より、其心を盡せるに相違もなけれ共、其心遣が却て痛入て安からぬ也、凡の人情思ふ儘成には心殘らず、心に任せのに殘念のたえぬもの也、去ば能品取揃て贈れるは、元ゟ己が思ふ儘の贈物成なり、おのづから殘す處なしといふ心より、又も〳〵とおもふ心の誠を失ふ也、心にまかせぬ漸少の贈物せるは、其漸少なるの殘念より、又も〳〵贈たきと云心忘られず、其人の誠も益々進ぞかしと宣ひし、

〔嬉遊笑覽〕

〈八/忌諱〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0481 狂言記、福わたしに、ふくはなんじや、ありの實で御ざりますなど見ゆ、今世にも外よりくれたる物を分ちて人に贈るを、福わけといふ、


Last-modified: 2020-06-12 (金) 09:35:15 (104d)