地部/信濃國

p.1344 信濃國ハ、シナノヽクニト云フ、東山道ニ在リ、東ハ甲斐、武藏、上野、西ハ美濃、飛騨、南ハ駿河、遠江、三河、北ハ越中、越後ノ十箇國ニ界シ、東西凡ソ二十三里、南北凡ソ四十五里餘、其地勢最モ高ク、至ル所ニ高山峻嶽重疊シ、河流亦四方ニ奔馳シ、實ニ我國中原ノ脊梁ト稱セラル、此國ハ古ヘ國府ヲ筑摩郡ニ置キ、伊那(イナ)、諏訪(スハ)、筑摩(ツクマ)、安曇(アヅミ)、更級(サラシナ)、水内(ミノチ)、高井(タカヰ)、埴科(ハニシナ)、小縣(チイサカタ)、佐久(サク)ノ十郡ヲ管シ、延喜ノ制上國ニ列ス、是ヨリ先、元正天皇ノ養老五年ニ、諏方郡一帶ノ地ヲ割キテ諏方國ヲ置キタリシガ、聖武天皇ノ天平三年ニ至リテ、復タ信濃ニ併合セリ、明治維新ノ後、筑摩郡ヲ東西ニ、安曇、佐久ノ二郡ヲ南北ニ、伊那、水内、高井ノ三郡ヲ上下ニ分チ、新ニ長野市ヲ設ケテ一市十六郡ト爲シ長野縣ヲシテ之ヲ治セシム、

名稱

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.1344 信濃〈之奈乃〉

〔運歩色葉集〕

〈志〉

p.1344 信濃　信州

〔日本風土記〕

〈一寄語島名〉

p.1344 信濃〈申阿農(シナノ)〉

〔地名字音轉用例〕

p.1344 ンノ韻ヲナノ行ノ音ニ通シタル例　しなの　信濃〈國〉之奈乃(シナノ)　信(シン)ヲシナニ用ヒタリ、古事記ニ科野(シナヌ)トアリ〈濃ノ字モヌノ假字ナレバ、モトハシナヌナリ、〉

〔日本書紀通證〕

〈十二景行〉

p.1344 信濃國〈倭名鈔之奈乃、齊明紀及古事記作二科野一、今按、科木出二於此國一、其薄皮甚靱強(シヒツヨシ)、今用以飾レ馬綴レ鎧、蓋楮穀之類也、或曰、諏訪社裝束、亦用二此物一、古式也、倭名鈔信濃國更級郡更科左良之奈、埴科郡倉科久良之奈、高井郡穗科保之奈、上野國多胡郡辛科加良之奈、利根郡男信奈萬之奈、笠科加佐之奈等、亦疑與二國名一同出二于此義一也、神樂歌云、木綿造流信濃原爾也、延喜民部式年料別貢雜物、信濃國上野國倶有二樺皮一、〉

〔古事記傳〕

〈十四〉

p.1344 科野(シナヌ)國齊明紀にも此字を作(カケ)り、名義は山國にて、級坂(シナザカ)ある故の名なりと師〈〇賀茂眞淵〉説れき、其説なほ冠辭考〈しなざかる、又しなてるの條、〉に見えたり、〈此國には、なほ倉科、穗科、御科、仁科、蓼科など、志那てふ地名いと多かり、又一説には、志那と云木あり、古いはゆる栲これなり、其皮しな〴〵しき故に、志那とは名くるなるべし、又其皮色白ければ、志那は志良なりとも云り、さて此木の皮をはぎて木綿に作り、衣衾などにもし、紙にもせし〉

p.1345 〈を、此信濃國に生るは、殊に色白くて名産なり、神樂歌にも、木綿造る科の原と見え、又諏訪神社の御裝束、鎧のおどし、馬の飾、船の綱などにも用ふ、然れば科野てふ國名も、此木より出たるなり、今も級布、紙布、藤布、多布布などを出し、更科郡などは殊に楮を多く出して名産なり、右の多布布と云も、楮皮にて織れる布なれば、多布は多久の訛なるべしと云り、今思ふに、此説もかた〴〵由ありて捨がたし、楮(タク)を志那と云ることは、古書に見えざれども、こは此國の方言にても有リぬべし、又神樂歌に、木綿造るしなの原とあるも、國名とは聞えざれば、木綿を造る此志那の木の生たる原なるべし、よし又地名にまれ、なほ本は此木によりての名なるべし、〉

〔諸國名義考〕

〈上〉

p.1345 信濃　和名抄に、信濃、〈之奈乃、國府在二筑摩郡一、〉名義は、信濃國風土記に、往昔建御名方神等之所住之地也、治二天下一御神大穴持命、又少彦名命、建御名方命巡二行此國一給、到二坐阿羅野一、詔此國者木葉草垣葉品々也、故云二品野一、今云二信濃一者、音之轉也とあり、古事記傳には級坂(シナサカ)あるゆゑの名なりとあり、こは古事記に、志那陀由布云々とある歌の志那は、坂路にて、陀由布は猶豫にて、平らかならざるさまをいふよしあり、日本書紀景行天皇卷に、日本武尊、進入二信濃一、是國也山高谷幽、翠嶺萬里、人倚レ杖而難レ升、巖嶮磴紆、長峯數千、馬頓レ轡而不レ進、然日本武尊披レ烟凌レ霧、遙經二大山一、旣逮二于峯一云々、また推古天皇卷に、有二蠅聚集一浮レ虚、以越二信濃坂一、鳴音如レ雷云々、また齊明天皇卷に、科野國言、蠅群向レ西、飛二踰臣坂一、大十圍計、高至二蒼天一云々、また日本紀略延長三年七月二十九日、東國民烟爲レ風多損、信濃御坂路壞云々、また萬葉集、信濃國防人歌に、知波夜布留、賀美乃美佐賀爾、怒佐麻都里、伊波負伊能知波、意毛知々我多米とよめるを始にて、後、拾遺集、新古今集、又今昔物語などにも、信濃の御坂の事見えたり、此坂を級(シナ)とはいへるなり、志那の約りは佐にて、加は所(カ)なり、かゝれば佐加(サカ)は級所(シナカ)なるよし、古事記傳に見えたり、〈〇中略〉山根宗利といふ人この國に行て、科布(シナヌノ)の裁端(キレハシ)を我方におこせたり、賤の衾などの料なりといへり、いと麁き布なり、和名抄に、調布、豆岐乃沼能、又有二信濃望陁等名一云々、其體與二他國調布一頗別異、故以二所レ出國郡名一爲レ名也とあり、科木(シナノキ)より出たる國名か、國名より出たる調布の名か、本末をしらず、又思ふに、伊勢津彦といふ神、大風を起し立去りしより、伊勢國風土記〈上の伊勢國の條に引り〉にあり、

p.1346 延喜神名式に、水内郡風間神社あり、今も風間村といふ、俊頼朝臣の歌に、信濃なる木曾路のさくら咲にけり風のはふりに透間あらすな、夫木集に、信濃路や風のはふりご心せよしらゆふ花の匂ふ神垣、などよめり、俊頼朝臣雜談抄、また清輔朝臣袋草紙などに、風祝部(カゼノハフリ)の事あり、かゝれば信濃は息長野(シナノ)にてもあらむか、中川顯允は萬葉集に、三篶刈信濃(スヾカルシナヌ)とよめれば、篠野(シヌヌ)ならむかともいへり、

〔萬葉集〕

〈二相聞〉

p.1346 久米禪師娉二石川郞女一時歌五首　【水篶】(ミスヾ)〈〇薦原作レ篶今攺〉【刈】(カル)、【信濃】乃眞弓(シナヌノマユミ)、吾引者(ワガヒカバ)、宇眞人佐備而(ウマビトサビテ)、不言常將言可聞(イナトイハムカモ)、

〔冠辭考〕

〈九美〉

p.1346 みすゞかる　しなゐ　萬葉卷二に、水篶刈(ミスヾカル)、信濃乃眞弓(シナヌノマユミ)、云云、〈〇註略〉こは眞篶(マスヾ)を刈(カル)野とつゞけたり、荷田大人のいへらくは水篶は眞すゞ也、〈水は借字、美と麻はことに通へり、〉神代紀に、使三山雷者採二五百箇眞坂樹八十玉籖一、野槌者採二五百箇野篶八十玉籖一云云、〈〇註略〉これによるに、すゞてふ小竹(シヌ)をかる野とつゞけし物也と、こは古意也、

位置

〔地勢提要〕

〈乾〉

p.1346 各國經緯度〈附里程〉　信濃上諏訪宿、〈中町〉極高三十六度二分半、經度東二度二十五分、從二東都一〈中山道〉五十六里二十三町二十八間半、〈甲州街道〉四十七里二十九町五十七間半、　信濃長野村、〈善光寺大門町〉極高三十六度四十分、經度東二度三十分、從二東都一〈中仙道追分〉五十七里二十三町二十二間、

〔日本經緯度實測〕

p.1346 北極出地　飛騨　高山　三六度〇八分三〇秒〈〇中略〉　東西里差

p.1347 　山城　京　〇度〇〇分〇〇秒〈〇中略〉　飛騨　高山　東一度三二分〇四秒

疆域

〔信府統記〕

〈三〉

p.1347 國郡大綱　當國信濃ハ、東山道八ケ國ノ一ニシテ、越後、上野、武藏、甲斐、駿河、遠江、三河、美濃、飛騨、越中、都テ十ケ國ニ鄰レル大國ナリ、郡ヲ分ツコト十郡、南北五日路餘、東西三日路ニ及ベリ、

〔日本地誌提要〕

〈二十六信濃〉

p.1347 疆域　東ハ甲斐、武藏、上野、西ハ美濃、飛騨、南ハ駿河、遠江、三河、北ハ越中越後ニ至ル、東西凡貳拾三里、南北凡四拾里餘、

〔信府統記〕

〈三〉

p.1347 水内郡〈〇中略〉　戊亥ノ方ハ越後境高妻山ノ麓國境ナリ、但シ高妻山西ハ安曇郡雨飾山ノ方ナリ、　黒姫山〈高妻山ヨリ丑ニ當ル〉高妻山ヨリ此所マデ麓通國境　關川〈黒姫山ヨリ東〉黒姫山ノ麓ヨリ此所マデノ間、信濃國ノ方ノ川岸國境、野尻村ヨリ越後國關川マデ三十町三十間、〈但シ往還ナリ〉野尻村ノ池ヨリ關川ヘ落合ナリ、關川ノ岸ヨリ山婆嶽マデノ間、山々左ニ記ス、各峯通國境、　柄切峯國境〈越後國ニテハ柏ケ峯ト稱フ〉此峯ヲ越ス道、古海(コミ)村より越後國桶海(ヲケミ)村マデ一里三十四町〈〇中略〉　班山〈〇註略〉此山ノ右ニ道アリ、大川村ヨリ越後國樽本村マデ一里十五町四十間餘、〈〇中略〉　大峯〈班山ヨリ子丑ニ當ル、越後國ニテハ鳥屋ケ峯ト稱フ、〉　鷹折場〈大峯ヨリ亥子ニ當ル、越後國ニテハハイケトヤ山ト稱フ、〇中略〉　あさみとや〈鷹折場ヨリ丑寅ニ當ル〉　松倉山〈あさみとやノマヘ右ノ方〉　桂池〈松倉山ノ東北ニアリ〉　つなき平〈あさみとやヨリ丑寅ニ當ル〉顏戸村ヨリ越後國下平丸村マデ二里十七町三十間　山婆嶽〈つなき平ヨリ子丑ニ當ル、越後國ニテハ黒倉山ト稱フ、〉つなき平、山婆嶽ノ間ニ道アリ、北條村ヨリ越後國小澤村マデ二里三十町三十間、〈〇中略〉　高井郡〈〇中略〉　當郡ノ北越後境しくみ川、此川越後ノ方ノ川岸國境ナリ、〈〇中略〉　當部丑寅ノ隅三國峠峯通、越後、上野、信濃三國境ナリ、是ヨリ當郡ノ東上野境滿山マデノ間、皆峯

p.1348 通國境ナリ、〈〇中略〉　白根山〈上野國ニテハ今白根山ト稱フ〉　滿山〈峯通リ國境〉　黒湯山〈此山峯通リ國境、上野國ニテハおくしか嶽ト稱フ、乳山マデノ間、山中境界分明ナラズ、〉　乳山〈峯通國境、上野國ニテハうらくら山ト稱フ、四阿山マデノ間、國境分明ナラズ、〉　四阿山〈峯通國境、上野國ニテモ同名、往古ハ東屋山、〉此四阿山ノ南ノ方郡境、南ハ小縣郡ニテ申酉ハ埴科郡ナリ、〈〇中略〉　小縣郡〈〇中略〉　此郡ノ寅卯ノ方ハ、上野國ヘ隣ル、〈〇中略〉　鳥居峠〈四阿山ノ南ナリ〉御茶屋久保國堺上野國マデモ同名、大日向村ヨリ上野國田代村マデ二里半、〈〇中略〉　湯ノ丸山〈佐久郡マデノ内峯通國界〉上野國ニテモ同名、〈〇下略〉

〔信府統記〕

〈四〉

p.1348 佐久郡　當郡ハ信濃國東ノ方ニテ、上野武藏甲斐三國ニ隣レリ、〈〇中略〉　碓氷峠、〈上野國ニテモ同名、はらしこ山ヨリ辰巳ノ方、〉横笹山ヨリ此所迄ノ山々峯通國境、但シ此所ニ分杭アリ、〈〇中略〉三國山、武藏上野信濃三國ノ界ニテ、即チ峯通ヲ境界トス、是ヨリ〈落合梓山〉村出口道迄ノ間、山中國境知レズ、〈〇中略〉十文字峠、峯通國境、〈三國山ヨリ未ノ方、武藏國ニテモ同名、〉此峠道〈落合梓山〉村ヨリ武藏國橡木マデ九里四町餘、〈〇中略〉　大椹峠、武藏甲斐信濃三ケ國ノ境ナリ、此大椹峠峯通國堺、〈武藏甲斐兩國ニテハ國師ケ獄ト稱フ、十文字峠ヨリ午未ノ方ニテ、此郡ノ巽ノ隅ナリ、東ハ武藏、南ハ甲斐ナリ、〉金峯山、〈大山巖壁ナリ〉峯通國境、〈〇中略〉八ケ嶽、峯通國境、〈甲斐國ニテモ同名〇中略〉此八ケ嶽、當國ノ方北面、峯ノ半ヨリ佐久郡、西ハ諏訪郡ナリ、〈〇中略〉　伊奈郡〈〇註略〉　此郡ハ〈〇中略〉南前嶽ノ峯通ヲ境トシテ甲斐國ヘ隣ル、〈〇中略〉此峯ヨリ甲斐、駿河、信濃三國界ノ山マデノ間、亦境界判明セズ、〈〇中略〉是ヨリ巳ノ方ヘ遙ニ出張タル山岳ハ、即チ駿河、遠江、信濃三國ノ境ナリトス、〈〇中略〉　天龍川ハ遠江、三河、信濃三國ノ境目ナリ、此川ノ西ニ坂部村ヨリ三河國佐太村ヘノ通路十八町

p.1349 ナリ、但シ此所峯通國境、〈此所ヨリ新野村出口道マデノ間ハ、山中ニテ境知レズ、〇中略〉是ヨリ西ひばらはなれ山ノ峯マデノ間ハ、境界分明ナラズ、ひばらはなれ山ノ峯ニ境杭アリ、國境ナリ此路根羽村ヨリ三河國上津具村マデ三里十八町、是ヨリ西杣路峠マデノ間モ亦境知レズ、杣路峠中ノ沓掛峯通國境、〈三河國ニテモ同名〉月瀬村ヨリ三河國野入村マデ一里十八町二十間往還ナリ、此路古ヘ美濃國ヨリ木曾山路ヲ開カザリシ以前ハ、中山道トシテ往還セシト云傳ヘタリ、〈〇中略〉　月瀬村ヨリ三河國大桑村マデ二十二町五十間餘、此所ヨリ三河美濃信濃三國境マデ、山中國境分明ナラズ、此三國境ノ山ハ境ノ澤ヨリ、戌亥ニ當ル、是ヨリ野熊山マデノ間モ國堺知レズ、

〔信府統記〕

〈五〉

p.1349 筑摩郡木曾〈〇中略〉　此郡ハ國中ノ西南ナリ、南ハ美濃國ヘ隣リ、野熊山峯通國界、〈美濃國ニテハ惠那嶽ト稱ス、伊奈木曾ノ郡界モ此峯ナリ、〉野熊山ヨリ西ノ方湯舟澤村出口ノ道マデノ間ハ、國界分明ナラズ、堺ノ澤國界〈美濃國ニテモ同名〉湯舟澤村ヨリ美濃國落合村マデ一里六町二十間餘、是ヨリ馬籠峠マデノ間モ又山中ニテ境知レズ、　馬籠村ハ木曾路往還ナリ、峠ノ上一里塚國境、〈西南ハ美濃國ナリ、十石峠ト稱ス、東北ハ信濃坂馬籠峠ト云ヘリ、〉馬籠村ヨリ美濃國落合村マデ一里五町、此峠ヨリとゞめき道マデノ間モ國境知レズ、　とゞめき國境〈美濃國ニテモ同名〉此とゞめきト云フハ木曾川ノ内ナリ、石龜澤マデノ間、川ノ中央國堺ナリ、〈〇中略〉　石龜澤國境〈美濃國ニヲモ同名〉田立村ヨリ美濃國坂下村マデ三十三町餘、〈〇中略〉石龜澤ヨリ長根山マデノ間、國堺知レズ、　長根山峯通國境〈美濃國ニテモ同名〉此山ノ北ニ谷ノ鳥屋ト云アリ、是モ峯通リ國境〈〇中略〉此谷ノ鳥屋ヨリひげすり峠マデノ間、山嶮ニテ國境知レズ、　髭摺峠〈此郡ハ南西ノ隅ナリ〉峯通リ國境、〈美濃國ニテモ同名〉瀧越村ヨリ美濃國小郷村マデ五里六町、髭摺峠ヨリ三

p.1350 河國境マデノ間、國境知レズ、　髭摺峠ヨリ北西ヘ出張タル山、美濃、飛騨、信濃三國ノ界ナリ、是ヨリ北ハ飛騨國ヘ隣ル御嶽マデノ間、國境分明ナラズ、　御嶽山峯通國境、〈飛州ニテモ同名〉此嶽ヨリ永峯マデノ間、國境分明ナラズ、　永峯山嶺通國境、〈飛州ニテモ同名〉西野村ヨリ飛騨國小日和田村マデ二里十一町、永峯ヨリ寄合峠マデノ間、國境分明ナラズ、　寄合峠峯通國境、〈飛騨國ニテハ野麥峠ト稱ス、〉川浦村ヨリ飛騨國野麥村マデ二里十八町、是ヨリ乘鞍ケ嶽マデノ間山中國境知レズ、

〔信府統記〕

〈六〉

p.1350 安曇郡　乘鞍嶽、峯通國境、〈此嶽飛騨ニテモ同名、是ヨリ信濃峠マデノ間、山深ク國境分明ナラザルナリ、〉　信濃峠、峯通國境、〈乘鞍嶽ヨリ北ニ當ル、此峠飛騨國ニテハ平湯峠ト云、大野川村ヨリ、飛騨國平湯村マデ五里三町、嶮路ニテ荷物ヲ負セル馬足ハ立チ難シ、雪中ニハ通路絶ユ、是ヨリ北ヘ燒嶽迄ノ間モ國境知レズ、〉　燒嶽、峯通國境、〈飛騨國ニテハ硫黄嶽ト云フ、是ヨリ北、越中、飛騨、信濃三國境ノ山マデノ間、國境知レズ、〉　越中、飛騨、信濃ノ三國境ハ、深山ニテ山名モ無シ、峯ヨリ東面ハ信濃國ナリ、西ノ方ニテ、南ハ飛騨、北ハ越中國トス、〈是ヨリ北ヘ、信濃國ト越中國トノ界ハ、山深ク嶮岨ナル故、通路ナシ、但シ山中ニ、だいら川ト云フ川アリ、是ヲ界トスルナリ、だいら川ハ、加賀川ノ入ニテ、野口澤、本谷ノ北、すばり越ト云邊ヨリ奥ヘハ通路ナシ、此すばり越ノ邊マデモ、山師杣人ノ外ハ行クコトナシ、夫ヨリ此方ニ、さら〳〵越ト云所アリ、昔シ天正年中、信長公ノ臣佐々内藏助、越中國ヨリ、此さら〳〵越ヲ通リテ、當國ヘ來ルコトアリシト云傳ヘタルハ、此邊ヲ越テ、加賀川ニ沿ヒ、野口村ノ方ヘ出テタリトカヤ、だいら山ヨリ、越中國立山ノ、信濃堂ナドイフ所見ユ、山傳ヒニ、立山マデ五里許リモアルベキナリ、是ヨリ越後、越中、信濃三國界マデノ中モ國境分明ナラズ、〉　越後、越中、信濃三國境、〈此所モ山ノ名ナク、亦通路モナシ、東面ハ信濃國ナリ、西ノ方ニテ、南ハ越中、北ハ越後國ナリ、此山中、層嶽重峰、何幾トイフ數知レズ、信濃國ノ中ハ、大山名アル嶽々下ニ記ス、三國界ノ山ヨリ北ヘ、乘鞍嶽マデノ間モ、國界知レズ、〉　

p.1351 乘鞍嶽、峯通ヲ國境トス、〈越後國ニテモ同名、此所ヨリ、蒲原、古澤、姫川ヘ落口ノ所マデ、山ハ峯通リ、川ハ中央ヲ以テ國界トス、乘鞍ケ嶽ノ名、松本領ノ中ニ三所アリ、一ハ前ニ見エタル、南西ノ隅ニアル山ナリ、一ハ此山ニテ、越後境ニアリ、又一ハ信濃國中ノ山ニテ、即チ安曇郡大町與鹽島新田村ノ西北ニアリ、是ヨリハ南ニ當ル、享保七年、山見通シノコト、仰蒙リタル山ノ一ナリ、委ク大町與山ノ部類ニ載ス、〉　横前鞍嶽〈越後國ニテモ同名、此嶽乘鞍ヨリ北ニ當レリ、其間ニ、風吹トイフ峯アリ、此風吹ハ乘鞍ト、横前トノ前山ニテ、越後國ヘハ隣ラズト見エタリ、〉　ゑびらが峠〈越後國ニテモ同名、此峯横前鞍嶽ヨリ、子丑ニ當ル、又安曇郡來馬村ヨリハ西ナリ、大綱橋ヨリハ未申ノ方ニ見ユ、此峯ヨリ北ハ越後領ナリ、是ヨリ東往還ノ路ノ左ニ、古澤トテ川アリ、越後分、蒲原村モ、路ヨリ左ニテ、西ノ方ナリ、此邊ヨリ雨飾山マデノ國境、元祿十五年、總方ノ百姓諍論ニ及ビ、御裁許アリテ相究リタル地ナリ、委クハ御裁許ノ記ニ見エタリ、〉　蒲原、古澤、此川中央國境、〈此澤川ハ未ノ方ノ山裏ヨリ出テ、寅ノ方ヘ流レ、大綱橋ノ少シ上テ姫川ヘ落ツ、此落合ヨリかくま澤マデ、姫川ノ中央國境ナリ、〉

〔三代實録〕

〈三十六陽成〉

p.1351 元慶三年九月四日辛卯、令二美濃信濃國一、以二縣坂上岑一爲二國堺一、縣坂上岑、在下美濃國惠奈郡與二信濃國筑摩郡一之間上、兩國古來相二爭境界一、未レ有レ所レ決、貞觀中、勅遣二左馬權少允從六位上藤原朝臣正範、刑部少録從七位上靱負直繼雄等一、與二兩國司一臨レ地相定、正範等撿二舊記一云、吉蘇小吉蘇兩村、是惠奈郡繪上郷之地也、和銅六年七月、以二美濃信濃兩國之堺、徑路險隘、往還甚難一、仍通二吉蘇路一、七年閏二月、賜二美濃守從四位下笠朝臣麻呂、封邑七十戸、田六町一、少掾正七位下門部連御立、大目從八位上山口忌寸兄人、各進二位階一、以レ通二吉蘇路一也、今此地、去二美濃國府一行程十餘日、於二信濃國一最爲二逼近一、若爲二信濃地一者、何令二美濃國司一、遠入レ關通中彼路上哉、由レ是從二正範所一レ定、

〔信府統記〕

〈二十四〉

p.1351 元祿十五壬午年、越後國頸城郡山口村と信州安曇郡小谷村と國境諭御裁許、　越後國頸城郡山口村と、信濃國安曇郡小谷村境諍論、　山口村百姓申趣、横川は元來越後、信濃兩國境相極候、其上根小屋村之者八十年以前、信州小谷村庄屋之名子に成、於二越後國之山陰一、田畠致二開發一令二住居一、爲二信州中俣村之地一由雖レ申レ之、畢竟爲二越後之地一旨訴レ之、小谷村百姓申候は、從二往古一白池限レ之、信越兩國相分れ、正保年中、御國繪圖に有レ之由申傳候旨答レ之、　

p.1352 右爲二撿使一、佐橋左源太、室七郞左衞門差遣、遂撿二分官庫之大繪圖一令二點撿一之處に、白池は兩國境に記レ之候、又小谷村百姓名子に成候由雖レ申レ之、證據一切無レ之、剩宗門吟味之節、從二松本領主一改レ之、且信州人別水帳に載レ之候、横川之儀大繪圖之面、全信州之地に有レ之上は、旁以越後百姓申處、無レ謂境之儀、西はかくま澤より、戸倉山の麓へ移り、自二其山一王池へ見通、小倉明神へ相續、雨飾山峯限レ之、兩國境相定畢、但境を隔有レ之、兩國之畑反畝改互可レ相二替之一、仍爲二後證一繪圖之面引二墨筋一、各加二印判一雙方へ下レ之條、永可二相守一者也、　元祿十五壬午年十一月廿二日　戸　備前〈〇下略〉

地勢/氣候

〔日本書紀〕

〈七景行〉

p.1352 四十年十月癸丑、日本武尊發路之、〈〇中略〉日本武尊進入二信濃一、是國也、山高谷幽、翠嶺万重、人倚レ杖而難レ升、巖嶮磴紆、長峯數千、馬頓レ轡而不レ進、

〔易林本節用集〕

〈下〉

p.1352 信濃〈信州〉上、管二十郡一、南北五日、陰氣深、草不レ長、海阻而鹽味希也、地深一丈、桑麻厚而帛綿多、大々下國也、

〔本朝事跡考〕

p.1352 信濃國　地高而寒、群川之長大者、其源多自二此州一流出岐岨山材木甚多、大者數圍、長者數丈、土民戸々白板扉、屋四面皆板不レ塗レ壁、裂二大木一爲レ薪、伐レ木者、轉レ自レ山浮レ河、以達二諸國一、

〔千曲之眞砂〕

〈前編一〉

p.1352 國圖源流并國界風土寒暖　藻鹽草曰、しなの丶國、是坂東一高き國なり、甲斐よりも登り、越後よりものぼる、美濃よりものぼるといへり、日本事跡考曰、〈上略〉地高而寒群、川之長大者、其源多自二此國一流出、　私曰、此國外ヨリ流レ入ル水無シ、近國ノ大河、此國ヲ川源トス、其大略天龍川ハ諏方湖ヨリ南方遠州ヘ流レ、木曾川ハ鳥居峠ヨリ南ヘ流レテ美濃ヘ落、犀川ハ駒ガ嶽ヨリ出北ヘ流レ、水内郡ニ至リ千曲川ト合シ、千曲川ハ金峯山ヨリ出北流レ、犀川ト合シ下テ、越後新潟ニ至テ海ニ

p.1353 入ル、荒川ハ川上山東ヨリ出、武州ヘ流レ隅田川トナル、釜無川八ガ嶽ノ南ヨリ出、東南ヘ落チ富士川トナル、利根川ハ淺間山後ヨリ出ヅ、碓氷川ハ碓氷山ヨリ出、東流レ下テ烏川ト合シ、利根川ヘ落ツ、同山ノ北角打ガ嶽ヨリ鳥巖、鳥川ヘ出、碓氷蕪川二川ト合シテ利根川ヘ落チ、姫川ハ安曇郡佐野ノ嶺ノ西北ヨリ出、北流レ越後ノ海ニ入ル、關川ハ水内郡野尻湖水ヨリ出、高田ヘ落、海ニ入、大井川ハ伊奈郡ト甲州トノ境ヨリ出、東海道ヘ落ツ、其外ノ小川源ハ枚擧スルニ暇アラズ、此ノ如クナルガ故ニ、地ノ高キ事日本無雙ト謂ベシ、又雪ノ降事ハ多カラズト雖ドモ、寒氣ノ甚キ事ハ他ニ准ズベキ國ナシ、コレニ因テ少シ降リタル雪モ、旬ヲ越エ月ヲ重テモ消スル事ナシ、又曰、水内高井兩郡、越國ニ隣ル地ハ、北越ニ劣ラズ雪降ル事多シ、常ニ尺餘ニ及ビ、大雪ト云時ハ丈餘ニ至ル、往來雪車橇、又ハ雪竿ヲ用ユ、二月末ニ至リ雪消ル後見レバ、草鞋等樹頭ニ掛レリ、然レドモ寒氣ハ諏方佐久二郡ヨリハ暖ナリ、雪ハ少シトイヘドモ、風烈ク寒氣ノ甚事ハ、諏方、佐久、又ハ木曾谷邊、尤日本ニ雙ビ無シトナリ、

道路

〔日本實測録〕

〈二街道〉

p.1353 從二東海道岡崎一伊奈街道至二金澤一〈〇中略〉　信濃國伊奈郡根羽(子バ子)村　四里二十三町四十一間〈至二平谷村二里一十八丁一十七間〉　浪合村　三里二十町四十五間　駒場村、三十五度二十六分半、　三里一十五町二十九間半　飯田櫻町　一里一十二町五十間　上市田村　一里二十七町八間　名子村大島町　一十七町　片桐郷片桐町　一里三十四町四十七間　石曾根村飯島町、三十五度四十一分、　一里二十七町三十七間　上穗村上穗町　一里二町八間　宮田村宮田町　二里三町四十六間　西伊那部村　八町一十二間　山寺村御舞瀬　二里一十五町三十二間　高遠本町〈至二高遠城大手一二丁二十七間〉　一里三十五町五間　四日市場村　一里八町二十九間　御堂垣外村　二里二十二町七間半　諏訪郡金澤宿　〈從二岡崎一至二金澤一〉街道、通計四十四里二十六町三十一間、　

p.1354 從二伊奈街道根羽一歴二新城一至二市田一　信濃國伊奈郡根羽村　二里三十三町二間半〈至二國界一一里二十六丁四十三間〉　三河國設樂郡上津具村〈〇中略〉　從二伊奈街道山寺一歴二鮎澤一至二東堀一　信濃國伊奈郡山寺村御舞瀬　一里六町八間　北殿村　一里六町　松島村　二里一十町一十三間半　平出村　一里二十六町二十二間　諏訪郡鮎澤村〈沿レ川至二諏訪湖傍一、三十三丁四十九間、〉　一里二十町九間半〈至二岡谷村一三十丁五十五間〉　東堀村　〈從二山寺一至二東堀一〉街道、通計七里三十二町五十三間、

〔日本實測録〕

〈三街道〉

p.1354 從二東京一中山道至二草津一〈〇中略〉　信濃國佐久郡輕井澤宿、三十六度二十一分、　一里一十町一十一間半　沓掛宿　二十一町四十三間　借宿村　二十町一十八間　追分宿、三十六度二十分、　一里一十五町四十九間〈至二越後街道追分一三丁五十一間〉　小田井宿　一里二町四十四間　岩田村、三十六度一十六分半、一里一十七町一十五間半　鹽名田宿　二十三町一十八間〈至二千曲川岸一二丁三十七間〉　八幡宿　三十二町四十二間　望月宿、三十六度一十五分半、一里九町一十八間半　芦田宿　一里一十一町三十九間　小縣郡長窪宿、三十六度一十五分、　一里三十四町三十九間　和田宿、三十六度一十二分、　三里三町四十一間半〈至二和田峠一二里二十一丁二十一間〉　諏訪郡下原村餅屋、三十六度八分、二里一十二町三十四間　下諏訪宿、三十六度四分、　二十二町一十四間　東堀村　二里一十二町三十二間〈至二鹽尻峠一一里四十二間〉　筑摩郡鹽尻宿　一十三町五十二間　大門村〈至二原新田一一里七丁三十間〉　一里五町五十二間　洗馬宿　三十四町一十五間　本山宿、三十六度三分半、　一里三十五町四十二間　贄川宿〈從二贄川一至二馬籠一呼二木曾庄一、〉　一里二十八町四間　奈良井宿、三十五度五十七分半、　一里一十六町五十三間〈至二鳥居峠一二十二丁三十間、從レ峠至二善光寺路追分一二十九丁二十三間〉、　藪原宿、三十五度五十六分、　一里二十一町五十一間　宮腰宿、三十五度五十三分、　三里三十一町一十九間〈至二福島關所一三里二十七丁卅六間〉　福島宿、三十六度五十一分、　二里九町三十八間　上松(アゲマツ)宿、三

p.1355 十五度四十七分、　三里五町五十三間半　須原宿、三十五度四十二分、　一里二十八町一十六間　野尻宿、三十五度四十分、　二里八町三十一間　三富野宿、三十五度三十六分半、　一里六町二十七間　妻籠宿一里三十三町四十五間〈至二馬籠峠一一里一十二丁二十一間〉　馬籠宿、三十五度三十二分、　一里二町三十九間〈至二國界一一十九丁五間、從二界境一至二十曲峠一六丁、〉　美濃國惠那郡落合宿〈〇中略〉　從二中山道追分一歴二善光寺一至二今町一　信濃國佐久郡追分宿　三里七町一十五間　小諸市町、三十六度一十九分半、　二里一十町一間　小縣郡田中宿　二里一十三町一十二間〈至二海野宿一一十五丁四十七間〉　上田海野郡、三十六度二十四分、　二里三十五町五十三間半　埴科郡坂本宿　一里一十一町　下戸倉宿、三十六度三十分、　一里一十七町一十三間半　屋代宿　二十八町四十九間〈至二千曲川岸一二十丁二十八間〉　更科郡鹽崎村篠野井　一里三十四町二十六間　丹波島宿　一里一十三町二十間〈至二犀川岸一一十四丁二十二間〉　水内郡長野村善光寺大門町、三十六度四十分、　一里二間　稻積村〈又呼二新町一〉　九町一十間〈至二下徳間村一四丁三十六間〉　東條村〈又呼二荒町一〉　二里一十七町三間　牟禮宿　一里三十三町三十二間半〈至二古間村一一里二十三町四十一間半〉　柏原宿、三十六度四十九分、　三十五町二十九間　野尻宿　二十八町三十七間〈至二國界一二十六丁三十四間〉　越後國頸城郡關川宿〈〇中略〉　從二信濃國屋代一歴二飯山一至二下徳間一　信濃國埴科郡屋代宿　二里四町二間　松代伊勢町　二里二町二十五間　高井郡川田村川田宿　一十二町三十一間　綿内(メンナイ)村古屋〈至二川中島千曲川岸一一十一丁三十六間〉　一里二十二町五十四間　須坂下町〈歴二須坂陣屋前一至二上町限一四丁五十間半〉　一里八町一十四間　小布施村　四里三十二町二十八間半〈至二金井村一二里一十五丁二十三間、從二金井一至二千曲川岸一一里一十三町四十間、〉　水内郡飯山新町〈至二飯山本町一八丁四十二間、從二本町一至二飯山城大手一五丁、又從二本町一至二伊勢町限一一十丁三十三間、〉　二里一十八町四十七間半〈至二替佐峠一二里三丁四十八間〉　替佐村　一里二十六町三十三間　淺野村　二里四町三

p.1356 十九間　神代(カウシロ)村　一十六町二十一間　石村〈至二粟野神社一三丁五十一間〉　一里九町四十二間　下徳間村〈從二屋代一至二下徳間一〉街道、通計一十八里三十四町三十七間、　從二中山道洗馬一歴二松本一至二篠野井一　信濃國筑摩郡大洗馬宿　一町四十二間　桔梗原〈至二本洗馬村長興寺一一十七丁一十四間〉　一里八町四十二間　郷原町村　一里一十一町一十五間〈至二堅石町一三丁三十間、從二堅石一至二原新田一一十四丁四十五間、〉　村井町村〈又呼二村井宿一〉　一里二十一町三十九間〈至二松本博勞町一一里二十丁二十間〉　松本本町、三十六度一十三分半、　一里二十三町二十五間半〈至二松本安原町限一一里二丁五十四間〉　下岡田村治郞丸〈至二岡田神社一五丁一十二間〉　四町一十五間　岡田町村　一里一十七町一十九間半　刈谷原町村〈又呼二刈谷宿一〉　一里八町四十五間　會田町村、〈又呼二會田宿一〉三十六度二十分半、　二里二十五町六間〈至二中峠一一里七丁九間〉　青柳宿　一里四町二十四間　麻續宿〈至二法善寺一三丁一十二間〉　二里一十六町三十二間半〈至二猿馬場峠一一里六丁五十九間〉　桑原村〈至二治田神社一二丁五十四間、從二社前一至二龍洞院一一十二町二十七間、〉　一十四町三十九間　稻荷山村新田町〈至二本八幡村八幡社一一十五丁、從二社前一至二姨拾山月見堂一一十七町四十二間、〉　三町三十間　同八日市町、三十六度三十二分、　一里一町二十二間　鹽崎村篠野井　〈從二大洗馬一至二篠野井一〉街道、通計一十六里一十八町卅六間半、　從二中山道藪原一歴二野麥一至二高山一　信濃國筑摩郡藪原宿　一里二十七町二十五間〈至二木曾川岸一三丁五十一間〉　荻曾(ヲイソ)村柴原　二里二十町四十三間　奈川村寄合渡　三里二十町八間半〈至二野麥峠一二里一十九丁四十七間半、從レ峠至二國界一六丁五十九間、〉　飛騨國益田郡野麥村〈〇中略〉　從二東京一歴二甲府一至二下諏訪一〈〇中略〉　信濃國諏訪郡蔦木宿、三十五度五十二分、　三里七町五十五間　金澤宿　二里一十七町四十一間　上桑原村〈至二上諏訪社一三十三丁一十二間〉　二十九町一間半　上諏訪宿中町、三十六度二分半、　七町五十間半〈至二高島城大手前一一丁一十二間〉　下桑原村辰道　三十三町一十三間　富部村　六町三十三間〈至二下諏訪一五丁二十〉

p.1357 〈一間〉　下諏訪宿　〈從二東京一至二下諏訪一〉街道、通計四十八里一十三町五間半、

〔千曲之眞砂〕

〈前編一〉

p.1357 上代税祖賦役次第　行程東西四十七里餘、〈自二上野國境碓氷嶺一、至二美濃國境十國嶺下、釜ケ橋中央一、〉南北五十四里餘、〈自二三河國境根羽先檜原村一、至二越後國境野尻先、關川橋中央一、〉

〔千曲之眞砂〕

〈前編三〉

p.1357 松本城〈號深志城〉地屬二筑摩郡一　自二松本一到二江戸一行程、〈東山道通六十一里半、武石通五十五里、保福寺通五十八里二十五丁、〉到二上野國境碓氷嶺一、〈廿五里半、東山道通也、〉到二越後國境、關川橋中央一、〈二十三里餘〉到二美濃國境、釜橋中央一、〈三十里〉到二上田一、〈十一里十二丁〉到二松代一、〈十四里廿八丁〉到二須坂一、〈十六里十八丁〉到二飯山一、〈二十三里十丁〉到二高島一、〈八里半〉到二飯田一、〈二十三里〉到二高遠一、〈十三里〉到二福島一、〈十三里三十四丁〉到二小諸一、〈十六里十二丁〉到二仁科大町一、〈九里八丁〉到二越後國糸魚川一、〈千國通二十九里八丁〉到二飛騨國高山一、

〔千曲之眞砂〕

〈前編四〉

p.1357 松代城〈號海津城〉地屬二埴科郡一　自二松代一到二江戸一行程、〈五十五里廿七丁、武鑑五十三里ト有ハ非也、〉到二上野國境碓氷嶺一、〈十九里八丁〉到二越後國境關川橋一、〈十里餘〉到二松本一、〈十四里廿八丁〉到二小諸一、〈十四里〉到二飯山一、〈九里〉到二須坂一、〈三里十八丁〉到二上田一、〈九里〇中略〉　飯田城　地屬二伊奈郡一　自二飯田一到二江戸一行程一、〈東山道通七十五里十五丁、甲州通六十五里、〉到二上野國境碓氷嶺一、〈二十八里〉到二甲斐國境蔦木橋一、〈〇里數闕〉　到二美濃國釜橋一、〈〇里數闕〉　到二參河國境檜原内一、〈〇里數闕〉　到二遠江國境青崩嶺一、〈十一里半餘〉到二高島一、〈十七里〉到二高遠一、〈十二里〉到二松本一、〈二十三里〉到二越後國境關川橋、〈四十三里餘〉

〔千曲之眞砂〕

〈前編五〉

p.1357 小諸城　地屬二佐久郡一　自二小諸一到二江府一行程、〈四十二里廿七丁、武鑑ニ四十一里十一丁ト有非也、〉到二越後國境關川橋一、〈廿二里十八丁〉到二上野國境碓氷嶺一、〈六里十八丁〉到二甲斐國境深澤橋一、〈十四里十八丁〉到二上田一、〈五里〉到二松本一、〈十六里十二丁〉到二松代一、〈十三里〉到二飯山一〈十四里十八丁〉到二善光寺一、〈十五里〇中略〉　飯山城　地屬二水内郡一　自二飯山一到二江戸一行程、〈六十四里二十七町〉到二上野國境碓氷嶺一、〈二十八里〉到二越後國境關川橋一、〈九里〉到二越後國境白倉一、〈九里餘〉

p.1358 到二松代一、〈九里〉到二松本一〈廿三里十丁〉到二上田一、〈十七里〉到二小諸一、〈廿二里〇中略〉　高遠城　地屬二伊奈郡一　自二高遠一到二江戸一行程、〈東山道六十四里、甲州通五十五里、〉到二遠江國境青崩嶺一、〈〇里數闕〉　到二甲斐國境蔦木橋一、〈〇里數闕〉　到二上州國境碓氷嶺一、〈二十七里〉到二松本一、〈十三里〉到二飯田一、〈十二里〉到二高島一、〈六里半〉

〔千曲之眞砂〕

〈前編六〉

p.1358 福島館　地屬二筑摩郡一　自二福島一到二江戸一行程、〈七十里十九町、或七十里九町、〉到二美濃國境釜橋一、〈十三里餘〉到二上野國境碓氷嶺一、〈三十一里半〉到二京都一、〈〇里數闕〉　到二宮越驛一、〈二里半〉到二上松驛一、〈二里半〉到二櫻澤驛一、〈六里半〉到二尾州名護屋一、〈〇里數闕〉　到二松本一、〈十三里〉到二飯田一、〈〇里數闕〉　到二高遠一、〈〇里數闕〉　到二高島一、〈〇里數闕、中略、〉　木曾路者、自二松本領境一、到二美濃國境一、行程廿二里三丁餘也、但往還橋大小三十七有レ之云云、

宿驛

〔延喜式〕

〈二十八兵部〉

p.1358 諸國驛傳馬　信濃國、驛馬、〈阿知卅疋、育良、賢錐、宮田、深澤、覺志各十疋、錦織、浦野各十五疋、亘理、清水各十疋、長倉十五疋、麻績、亘理、多古沼邊各五疋、〉傳馬、〈伊那郡十疋、諏波、筑摩、小縣、佐久郡各五疋、〉

〔日本後紀〕

〈八桓武〉

p.1358 延暦十八年九月甲寅、信濃國伊那郡阿智驛(○○○)驛子永免二調庸一、以二道路險難一也、

〔吾妻鏡〕

〈七〉

p.1358 文治三年二月廿五日丁酉、二品渡二御三浦介義澄亭一、有二御酒宴一、折節信濃國保科宿(○○○)遊女長者、依二訴訟事一參住、召二出其女一聞二食郢曲一云云、

〔信府統記〕

〈二十四〉

p.1358 正徳二辰年、木曾贄川町、奈良井町、藪原町、宮越町四ケ宿ヘ、筑摩郡之内高遠領之内西五千石、松本領二十一ケ村御用之趣にて、大通之節計助人馬被二仰付一候村々之内、兩波多村、三溝村、新村此四ケ村より、同郡之内近き村野溝村、平田村、百瀬村、上下瀬黒村、竹淵村と道路遠近之儀御訴訟に罷出、　御裁許　信州筑摩郡上波多村、下波多村、新村、三溝村訴趣、正徳二辰年より、中仙道贄川、奈良井、藪原、宮之腰四

p.1159 ケ宿ヘ、助人馬出レ之候處に、村方困窮、其上道程も遠、令二難儀一之間、同國同郡野溝村、平田村、百瀬村、上瀬黒村、下瀬黒村、竹淵村は、道程も近く、無役村に候間、助人馬役引替候様に仕度之旨申レ之、相手六ケ村答候は、村方素田にて、牛馬所持候者も少く、漸作馬計にて、役儀勤候様成馬無レ之、難儀仕之旨雖レ申レ之、自餘助郷に類多き事故、難レ立事候、依レ之立合繪圖申付候處に、雙方相對之上、右四ケ宿之内、贄川迄致二撿地一、相改繪圖差出候付、再應遂二穿鑿一之處、三溝村より七里三十二間之道一筋、百瀬村より六里四町廿七間餘之道一筋、野溝村より六里十町十三間餘野道一筋有レ之、何も道程近候付、三溝村助郷高八百五十四石之分、百瀬村高八十石、野溝村高五百三十石、平田村高五百三十七石、内二百四十四石、合八百五十四石引替之上、新村より七里十三間之道一筋、六里十町十三間餘之道一筋有レ之、道程近く候條、上新村助郷高二百八十一石之分、平田村高五百三十七石之内二百八十壹石引二替之一、上波多村より道二筋平二均之一六里三十一町十九間餘、平田村より六里十町十三間餘道一筋、竹淵村より六里十五町十五間道一筋、上瀬黒村より六里十八町五十四間之道一筋有レ之、何も道程近候付、上波多村助郷之高四百五十七石之分、平田村高五百三十七石之内十二石、竹淵村高二百八十八石、上瀬黒村高二百九十七石之内百五十七石、合四百五十七石引二替之一、下波多村より道二筋平二均之一六里廿町八間、上瀬黒村より六里十八町五十四間、道引合候處に、過分之違も無レ之候付、下波多村助郷高六百四十三石之内にて、五百廿八石上瀬黒村引替、殘石百四十石之内にて百十五石、合六百四十三石、高割申付候條、右助郷高、都合二千二百三十五石を以て、向後人馬役可レ勤レ之、下瀬黒村は、六百廿町三十間餘之道一筋有レ之、下波多村へ引合、道程少々遠候付、割替之不レ及二沙汰一除レ之候、仍助郷帳面今般改レ之、右四ケ宿へ渡置之間、守二其旨一、來申の二月より、書面之通、助人馬役可レ勤レ之、仍爲二後證一立合繪圖令二裏書一、雙方へ下二置之一條、永不レ可二違失一者也、　正徳五未年十一月　荻源左衞門〈〇下略〉

建置沿革

〔日本國郡沿革考〕

〈二東山道〉

p.1360 信濃　古作二科野一、〈古事記國造記、〉養老五年六月、割二信濃國一置二諏方國一、天平三年三月、廢併二信濃國一、上國、管二十郡一、千六百十五村、　佐久(サク)〈百八十八村〉　諏訪〈百三十五村　古洲羽國、見二古事記一、國造記作二須羽一、後併二信濃國一、養老五年六月、割二信濃國一置二諏方國一、此時蓋再置也、天平三年、廢併二信濃國一、後爲レ郡、延喜式等作二諏方一、正徳二年令、自今宜レ書二諏訪一、〉　伊那〈二百八十四村　正徳二年四月令、自今宜レ書二伊奈一、而今仍作二伊奈一、　筑摩(チクマ/ツクマ)〈二百三十三村、古國府、〉　小縣(チヒサガタ)〈百二十村埴科(ハシナ/ハニシナ)三十七村　延喜式等作一垣科一〉　更科〈七十三村　延喜式等作二更級一、正徳二年四月令、自今宜レ書二更科一、〉　安曇〈百八十村〉　水内(ミナチ/ミノチ)〈二百十四村〉　高井〈百五十一村〉

〔日本地誌提要〕

〈二十六信濃〉

p.1360 沿革　古ヘ國府ヲ筑摩郡ニ置、〈今ノ松本是ナリ〉治承中、源義仲木曾ヨリ起リ京師ニ入リ、平氏ヲ西海ニ逐ヒ、征夷將軍ニ任ズ、鎌府ノ時、小笠原長清守護ニ補シ、子孫世襲ス、玄孫長氏ニ至テ、州守ヲ兼ヌ、元弘ノ末、其孫貞宗兵ヲ起シテ勤王、後叛テ足利尊氏ニ降リ、守護タル故ノ如ク、深志城ニ居、〈今ノ松本城〉永享中、小笠原氏漸ク衰ヘ、村上、〈埴科郡葛尾城〉諏訪〈諏訪郡高島〉木曾〈筑摩郡福島、即義仲ノ裔、〉諸氏各一隅ニ據ル、天文ノ末、武田晴信侵擾スル連年、小笠原及村上諏訪二氏ヲ滅シ、木曾義昌ヲ降シ、終ニ全州ヲ取ル、時ニ上杉輝虎屢兵ヲ川中島ニ出シテ地ヲ爭ヒ、遂ニ飯山ニ城テ其近境ヲ取ル、天正十年、織田信長、武田氏ヲ滅シ、海津(カイヅ)ヲ〈後松代ト攺ム〉森長一ニ、飯田ヲ毛利秀頼ニ賜フ、旣ニシテ信長弑セラレ、武田ノ故將眞田昌幸上田ニ據リ、獨リ上杉氏ニ屬ス、長一等西上シ、州内擾亂ス、徳川氏北條氏ト地ヲ爭ヒ終ニ本州ヲ取ル、舊族小笠原貞慶、〈松本〉保科正直、〈高遠〉皆故地ヲ復シ、義昌昌幸等ト共ニ徳川氏ノ節度ヲ受、昌幸尋テ豐臣秀吉ニ屬ス、十八年、徳川氏關東ニ遷ル、〈保科木曾二氏皆之ニ從フ〉秀吉貞慶ノ地ヲ收メテ、森忠政〈長一ノ弟〉ヲ松代ニ、石川數正ヲ松本ニ封ジ、飯田高遠ヲ京極高知ニ、小諸ヲ仙石秀久ニ賜フ、徳川氏ノ初、松本、〈初小笠原秀政、後松平光慈(チカ)、〉松代、〈初松平忠輝、後眞田信之、〉上田、〈初眞田信之、後松平忠周、〉高島、〈諏訪頼水〉高遠、〈初保科正直、後内藤清枚(カズ)、〉飯田、〈初脇坂安元、後堀親昌、〉須坂、〈堀直重〉飯山、〈初皆川廣照、後本多助芳、〉小諸、〈牧野康重〉九藩トス、後ニ内藤正勝ヲ岩村田ニ封ジ、三河奧殿藩〈松平乘謨〉徙テ田野口ニ治シ、凡テ十一藩、王政

p.1361 革新、伊那中野二縣ヲ置キ、田野口ヲ龍岡ト改稱ス、旣ニシテ皆改テ縣トシ、又廢シテ筑摩長野二縣ヲ更置ス、

〔先代舊事本紀〕

〈十國造〉

p.1361 須羽國造　纏向日代朝〈〇景行〉御代、建沼河命孫大臣命、定二賜國造一、　科野國造　瑞籬朝御世、〈〇崇神〉神八井耳命孫建五百建命、定二賜國造一、

〔續日本紀〕

〈八元正〉

p.1361 養老五年六月辛丑、割二信濃國一始置二諏訪國(○○○)一、

〔續日本紀考證〕

〈四〉

p.1361 案舊事紀、有二須羽國造一、古事記、科野國之洲羽海、所レ謂諏方湖也、今有二諏方郡一、見二和名抄一、

〔古事記〕

〈上〉

p.1361 天鳥船神、副二建御雷神一而遣、〈〇中略〉爾欲レ取二其建御名方神之手一乞歸而取者、如レ取二若葦一、搤批而投離者即逃去、故追往而迫二到科野國(○○○)之洲羽海一、將レ殺時、建御名方神白、恐、莫レ殺レ我、除二此地一者不レ行二他處一、

〔續日本紀〕

〈八元正〉

p.1361 養老五年八月癸巳、以二諏方(○○)飛騨一隷二美濃按察使一、

〔續日本紀〕

〈九元正〉

p.1361 神龜元年三月庚申、定二諸流配遠近之程一、〈〇中略〉諏方(○○)伊豫爲レ中、

〔續日本紀〕

〈十一聖武〉

p.1361 天平三年三月乙卯、廢二諏方國一并二信濃國一、

〔古事記傳〕

〈十四〉

p.1361 洲羽(スハ)ノ海、洲字舊印本、延佳本共に州と作るはわろし、今は一本に從ひつ、洲羽は、和名抄に、信濃國諏方〈須波〉郡〈方字訪ともかけり〉是なり、續紀に、養老五年六月辛丑、割二信濃國一始置二諏方國一、天平三年三月乙卯、廢二諏方國一并二信濃國一とあり、かゝれば、古は一國にもすばかり廣き名なりけむ、名義未考ヘ得ざれども、嘗にいはゞ、須夫麻理の意にもやあらむ〈夫麻を切(ツヾム)れば婆なるを、清音に轉じ、理を省けるなり、すぶまりはすぼまりにて、上の鼠段にも、すぼきことを須夫須夫と云り、〉其由は此次の詞に見ゆ、海は湖なり、凡て古は湖をも〈某湖とはいはで〉

p.1362 たゞ某海と云る例なり、さて此に洲羽とのみは云ずして、海としも云るは、道のある限は逃賜ひつるが、此湖の岸に至りて、終に道絶て逃べきすべなく窮(セマ)れる由にて、迫到(セメイタリ)と云る、即其意なり、〈凡て世牟留ハ狹むるなり、世麻留は狹まるにて、自と他とを云差のみなり、〉かゝればかの須夫麻理も、此神の追迫(セメ)られて、此處に窮(スボ)まり賜へる田の名にもやと思ふなり、

國府

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.1362 信濃國〈國府在二筑摩郡一、行程上二十一日、下十日、〉

〔信府統記〕

〈七〉

p.1362 筑摩郡〈〇註略〉　凡當郡ハ、信濃ノ國府ナリ、郡ノ名トセル筑魔村ハ、〈古ハ塚魔ノ字ヲ書ケリトカヤ、近世筑摩ノ字ヲ用ユ、〉庄内ノ地ナリ、〈庄内ノ號モ、國府ナルガ故ナリトカヤ、〇下略〉

〔北國紀行〕

p.1362 神無月二十日あまりに、彼國府長野の陣所に至る事、晡時になれり、此野は秋の霜をあらそひし戰場、いまだはらはずして軍兵野にみてり、

〔市河文書〕

〈二〉

p.1362 著到　市河刑部大夫助房　同左衞門十郞經助　右信濃國水内郡常岩凶徒等、爲二對治一致二軍忠一候、并至二于符中(○○)一令二馳參一候畢、仍著到如レ件、　建武二年三月日　承了〈花押〇小笠原貞宗〉

郡

〔延喜式〕

〈二十二民部〉

p.1362 信濃國上〈菅　伊那　諏方　筑摩　安曇　更級　水内　高井　埴科　小縣　佐久〉　右爲二中國一

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.1362 信濃國〈〇註略〉管十〈〇註略〉伊那　諏方〈須波〉筑摩〈豆加萬、國府、〉安曇〈阿都之〇之恐三誤〉更級〈佐良志奈〉水内〈美乃知〉高井〈太賀爲〉埴科〈波爾志奈〉小縣〈知比佐加多〉佐久

〔信府統記〕

〈三〉

p.1362 信濃國郡號　水内(ミノチ)　高井(タカ井)　埴科(ハジナ)　小縣(チサガタ)　佐久(サク)　伊奈(イナ)　諏訪(スハ)　筑摩(ツカマ)　安曇(アヅミ)　更科(サラシナ)　

p.1363 右合テ十郡ナリ、古ヘ誤テ木曾仁科ヲ別郡トシテ、都テ十二郡ト云傳ヘシ所モアリ、併シ是ハ古ヘ郡境分明ナラザル時ノ説ト見エタリ、旣ニ木曾ハ、正保年中國繪圖ヲ記シ出サレシ時迄ハ、郡ノ外トシテ十郡ノ内ニ入ラズ、故ニ或ハ美濃ノ内ト云ヒ、亦ハ安曇郡トモ伊奈郡トモ、其説一決セズ、其後元祿年中、國繪圖改メラレシ時、筑摩郡ニ定マレリ、仁科ハ固ヨリ安曇ノ郡ナリト雖ドモ、古ヘ此邊ノ領主久敷爰ニ居住アリシ故、仁科ノ名ヲ唱來レリ、木曾モ亦然ナリ、〈〇中略〉古今變遷多キ故、元祿年中、改メ定メラレシヲ以テ是ニ記ス、日本國中凡六百二十郡ナリトカヤ、

〔皇國郡名志〕

p.1363 信濃國〈十郡〉　伊奈(イナ)　〈飯田　●イナ　●宮田　●片桐　●市田　●八重河内　●新野　●伏地　●平田　●浪合　高遠　●セイナイシ廿　●一ノ瀬廿　●駒場　●立石　●山本　●駒場　甲駿遠三國ノ界〉　諏訪(スハ)　〈高島　＜澀湯　●下スハ　△スワ湖　同社　甲界〉　筑摩(ツクマ)　〈松本　●洗馬　●鹽尻　●麻績　●ナラヰ　●福島　●馬コメ　●妻コメ　●青柳　●カリヤ原　●ヤマ原　●宮越　●ニヱ川　●西野　●畑村　●上松　スワラ　●野尻　●ミトノ　△木曾川　●ミタケ川　●ミタケ山　國中ヨリ美飛ノ界ニ至〉　安曇(アツミ)　〈●セウレ澤　●池田　●大町　●飯盛　●横川　●キウマ　●新田　●保高　飛越ノ中後ノ界〉　更級(サラシナ)　〈●イナリ山　●追分　●丹波島　國中〉　埴科(ハニシナ)　〈松代　●尾代　●坂城　●サラシナ山　國中〉　水内(ミノチ)　〈飯山　●トクラ　●ムレヰ　柏原　●野尻　△善光寺　●戸隱山　越後界〉　高井(タカイ)　〈＜須坂　田中　シクミツ　上毛越後界〉　小縣(チイサカタ)　〈上田　●田中　●下和田　●中クホ　國中郡〉　佐久(サク)　〈小諸　●鹽カタ　●岩村田　●輕井澤　●追分　●八幡　●望月　△千隈川原　上武甲界〉　〇按ズルニ、本書及ビ次下郡名異同一覽ノ符號ハ、山城國篇郡條ニ引ク所ノ、二書ノ凡例ヲ參照スベシ、

〔郡名異同一覧〕

p.1364 信濃

伊那郡

〔信府統記〕

〈四〉

p.1365 伊奈郡〈高十二萬二千六百八十七石九斗四升六合九勺四才、村數三百三十六、〉　此郡ハ東前嶽ノ北麓甲州かまなし川ノ涯諏訪郡界ヨリ、南前嶽ノ峯通ヲ境トシテ甲斐國へ隣ル、〈此山甲斐國ニテハ駒ケ岳ト云フ〉但シかまなし川ヨリ此峯マデノ間ハ、山中境分明ナラズ、此峯ヨリ甲斐駿河信濃三國界ノ山マデノ間、亦境界判明セズ、但シ前嶽ヨリ三國境ハ巳午ノ方ニ當ル、又是ヨリ巳ノ方ヘ遙ニ出張タル山岳ハ、即チ駿河遠江信濃三國ノ境ナリトス、其間ハ左右トモ境界知レズ、當郡和田川ヨリ東山深ク村里モ無レバ路モナシ、況テ隣國ヘ通路アルコトナシ、是ヨリ遙ニ西青萌峠ト云テ遠江國ヘ通スベキ路アリ、木澤村ヨリ南ヘ一里餘、和田川ノ西ヲ通リテ、川ヲ東ヘ歩渡リニテ越エ和田村ニ至ル、和田村ヨリ遠江國領家村マデ四里二十四町、此青萌峠、峯通國境〈遠江國ニテモ同名〉是ヨリ未申ノ方ニ河内川、東ヨリ西ヘ流レテ天龍川ヘ落ル、此河内川國堺ナリ、〈遠江國ニテハ境ノ澤ト稱ス〉和田川ヲ歩渡リニテ越エ、天龍川ノ東ニ鶯巣村ト云アリ、是ヨリ遠江國鹽澤マデ山路二里十八町ナリ、〈河内川ヲ越エ行ク〉

〔續日本紀〕

〈二十九稱徳〉

p.1365 神護景雲二年六月乙未、信濃國伊那郡人他田舍人千世賣、少有二才色一、家世豐贍、年廿有五喪レ夫、守レ志寡居五十餘年、裒二其守節一、賜二爵二級一、

〔三代實録〕

〈十二清和〉

p.1365 貞觀八年二月二日戊申、以二信濃國伊奈郡寂光寺一、〈〇中略〉預二之定額一、

諏訪郡

〔郡名考〕

p.1366 信濃　諏方〈スト計　スハ〉

〔信府統記〕

〈五〉

p.1366 諏訪郡〈高三萬五千十九石九斗一升四合九勺、村數百七十二、〉　當郡辰巳ノ方、八ケ嶽ノ峯半ヨリ未申ノ方ヘ斜ニ、前嶽ノ北ノ麓ノ邊マデ甲斐國ヘ隣リ、かうろく澤ヨリ釜無川マデ、川ノ中央ヲ國境トス、芹ケ澤村ヨリ、甲斐國小荒間村ヘノ路六里三十間餘又圓見山村ヨリ、甲斐國小淵澤村ヘノ路三十三町二十間、かうろく澤、かまの澤、落合ノ西、下蔦木村ヨリ、甲斐國上教來石村ヘ往還二十一町二十間餘、釜無川ノ橋長七間、〈教來石ト名ツケシ古實アリトカヤ〉　南ハ伊奈郡界木ノ間山ノ西ニ伊奈郡御堂垣外村ヘ、當郡高部村ヨリ路二筋アリ、〈此内西ノ路上ノ諏訪神宮寺ヨリ伊奈郡片倉村マデ、一里十三丁五十間、〉又是ヨリ西後山新田村ヨリ、伊奈郡一澤川〈歩渡〉ヲ越シ、長岡村ヘ路アリ、〈神宮寺ヨリ長岡村マデ四里半程ナリ〉又上野新田〈有賀村ノ支郷〉ヨリ、伊奈郡上平出村〈平出村ノ内〉ヘノ山路アリ、〈〇中略〉　西ハ筑摩郡界、〈此道筋ハ筑摩郡ノ記ニ見エタリ、〉北ハ小縣郡界、〈路筋中山道ハ道程記ニ見エ、大門峠筋ハ小縣郡ニ見エタリ、〉北東佐久郡界、〈前ニ見ユ但シやしか峯ハ諏訪郡ノ山ナリ、〉甲斐國境八ケ嶽、此外佐久郡境、〈山嶽等ノコトハ佐久郡ニ見ユ〉

〔三代實録〕

〈十一清和〉

p.1366 貞觀七年七月三日壬午、信濃國諏方郡(○○○)水田二段、爲二彼國建御名方富命神社田一、

〔日本書紀〕

〈三十持統〉

p.1366 五年八月辛酉、遣二使者一祭二龍田風神、信濃須波(○○)水内等神一、

筑摩郡

〔伊呂波字類抄〕

〈志國郡〉

p.1366 信濃國〈管十〉　筑摩〈ツクマ　チクマ　ツカマ府〉

〔郡名考〕

p.1366 信濃　筑摩〈ツカマ　チクマ〉

〔地名字音轉用例〕

p.1366 入聲クノ韻ヲ同行ノ音ニ通用シタル例　つかま　筑筑〈信郡〉豆加萬(ツカマ)〈〇中略〉　タノ行ノ音同行通用セル例　つかま　筑摩〈信郡〉豆加萬(ツカマ)

〔信府統記〕

〈一〉

p.1366 信州松本城記録　

p.1367 信濃國筑摩郡〈〇中略〉　當郡ハ中古小笠原氏ノ領地タリシ故、彼幕下ノ氏族タル人、所々分チ領シテ、或ハ古城ノ跡エ倚リ、又ハ新ニ城ヲ築キ、屋鋪ヲ構テ住居ス、其中ニ島立右近〈本氏廣野〉ト云フ人、始ハ庄内ノ地、小島村井河ノ城ニ住シ、後城ヲ今ノ松本ノ地ニ移セリ、〈此井河ノ城ハ、四方ニ流アリテ、井ノ字ノ如クナル故ニ、井河ノ城ト云フ、古ヘ誰人ノ築ケルト云フコトヲ知ラズ、久シク小笠原家ニテ持來レル處、城主中絶シテ城郭廢壞セリ、寛正六年乙酉、再ビ之ヲ修覆シテ、攺メ名ツケテ深志城ト云フ、此邊ハ小笠原氏數代ノ領地ナルガ故ニ、文龜年中迄、林ノ城主ヨリ兼ネ持テリ、島立右近モ小笠原ノ一族タリシトナリ、〉

〔信府統記〕

〈七〉

p.1367 筑摩郡〈高五萬四千八百六石四斗三升九合二勺、村數二百四十二、是ハ元祿年中、國繪圖攺ラレシ時ノ知行高村數ナリ、當郡ノ内木曾ハ始メ當郡ノ内ニアラズ、元祿年中、國繪圖攺メラレシ時ヨリ、當郡ニ定メラレタリ、木曾ハ尾張殿領分ナレバ、下ニ別ニ記ス、櫻澤ノ橋ヨリ北、松本領ノ境左ノ如シ、〉　凡當郡ハ信濃ノ國府ナリ、郡ノ名トセル筑魔村ハ、〈古ハ塚魔ノ字ヲ書ケリトカヤ、近世筑摩ノ字ヲ用ユ、〉庄内ノ地ナリ、〈庄内ノ號モ、國府ナルガ故ナリトカヤ、〉筑摩ノ神社ハ、昔シ當國ニ鬼神住ミテ、人民ヲ惱マシケル故、退治セラレケル時、其鬼ノ首ヲ此所ニ埋メ、其上ニ神社ヲ建テ、八幡宮ヲ勸請アリシト言傳フ、〈此神社ノ縁起、天正年中マデハ、社人所持セルノ所ニ、小笠原家當地沒落ノ時、兩社人ノ内一人、異心ヲ懷キテ甲州ヘ屬シ、一人ハ兼テ小笠原家ノ歸國ヲ祈リテ、常ニ神前ニ燈明ヲ捧ゲ、祈禱懈リナカリシ故、貞慶歸參ノ砌、社領ヲ賜ヒシガ、異心ヲ懷キシ一人ハ、貞慶歸參アリテ、怨敵ノ意趣遁レ難ク、遂ニ落失セシガ、其時縁起マデ持行ケルニヤ紛失セリ、其後尋ネ求ムレドモ叶ハズ、今アル所ノ記ハ、後ニ書記セルモノ故慥ナラズ、宮中ニアル所ノ物ハ、神秘ニテ社人モ見ルコト能ハズト云フ、去ルニ依テ、此社ノ起發年代知レズ、松本ノ城主代々之ヲ修造ス、祭禮等ノ事ハ、神社ノ部ニ記ス、古書ニ筑摩權現トアルハ、此社ノコトナリ、〉是レ筑摩郡ト稱スルノ原ナリ、當郡木曾ノ外ハ、過半松本領ナレドモ、御代官所又ハ諏訪高遠ノ領分、少シ入交レリ、

〔日本書紀〕

〈二十九天武〉

p.1367 十四年十月壬午、遣二輕部朝臣足瀬、高田首新家、荒田尾連麻呂於信濃一、令レ造二行宮一、蓋擬レ幸二束間(○○)温湯一歟、

〔三代實録〕

〈三十六陽成〉

p.1367 元慶三年九月四日辛卯、令二美濃信濃國一以二縣坂上岑一爲二國堺一、縣坂上岑在下美濃國惠奈郡與二信濃國筑摩郡一之間上、兩國古來相二爭境堺一、未レ有レ所レ決、

〔信府統記〕

〈五〉

p.1368 筑摩郡木曾　此郡櫻澤ノ橋ヨリ南ハ木曾ト稱シテ、尾張殿領分ナリ、此知行高現米千六百十二石五斗五合、但シ山中ニテ田地ナキガ故ニ、榑木二十六万八千百五十八丁、土井四千三百五十二駄ヲ以テ、右現米ノ代トシテ、定納セル村數二十九、此谷ノ内ハ、往古ヨリ木曾トノミ稱ヘ來リテ、何郡ト云フコト分明ニ知レザルガ故ニ、正保二年乙酉、國繪圖出來マデハ郡付ナク、筑摩郡墨引ノ外ナリ、其後元祿年中ニ至リ、國繪圖改メラレシ時、吟味アリシ處ニ、正保二年已後、公儀ヘ筑摩郡ト書上ラレシヨシ、山村氏ノ證文アルヲ以テ、始メテ分明ニ此郡ト定レリ、〈櫻澤ノ橋ヨリ北ハ松本領記録ニ載ス〉凡木曾ハ深山幽谷ノ地ナリ、〈古人モ蜀ノ棧道ニ比セシトナリ〉文武天皇ノ御宇、大寶二年十二月、始テ木曾山道ヲ開クノ由、續日本紀ニ見エタリ、昔者信濃美濃ノ間ニ、通路ナカリシ時ハ、伊奈ヨリ三河國ヘ出ル、杣路峠ヲ越テ往還セシトナリ、木曾ノ中ヘモ、伊奈界ノ山ヲ越テ通路アリ、〈伊奈郡ノ所ニ見ユ〉然ルニヨリ、木曾ヲ伊奈郡トモ云フ、又安曇郡ト記シタル、舊キ書モアリ、或ハ木曾郡トテ、一郡ニナシタルナドノ説ハ誤リノ由ニテ、今ハ筑摩郡ニ定マレリ、

安曇郡

〔郡名考〕

p.1368 信濃　安曇〈アツミ　アヅシ〉

〔地名字音轉用例〕

p.1368 ンノ韻ヲマノ行ノ音ニ通用シタル例　あづみ　安曇〈信郡〉阿都三(アヅミ)　曇ヲヅミニ用ヒタリ〈〇中略〉　タノ行ノ音同行通用セル例　あづみ　安曇〈信郡〉阿都三(アヅミ)　曇(ドン)ヲヅミニ用ヒタリ

〔信府統記〕

〈六〉

p.1368 安曇郡〈高三万八千九百四十四石二斗三升八合五勺、村數百八十三、是ハ元祿年中、國繪圖攺メ記サレシ時ノ調査ナリ、此郡ハ一圓ニ松本領ナリ、〉　隣國并郡境　當郡ノ西南ノ隅、乘鞍ケ嶽ヨリ北ヘ、西面ハ飛騨國ヘ隣リ同半ヨリ越中國ヘ隣レリ、又西ヨリ北

p.1369 ニ、側至テ、雨飾山マデ越後國ヘ隣ル、雨飾山ノ峯通ヨリ、水内郡ヘ界シ、東側ノ半ヨリ南ヘ更科郡ヘ界ヒ、猶南ハ筑摩郡ノ境ナリ、

更級郡

〔信府統記〕

〈五〉

p.1369 更級郡〈高四万五千九百七十七石二斗二升六合、村數九十四〉　當郡ハ國中ニテ、他國ヘ隣ル所ナシ、北ハ水内郡界、犀川ノ中央ニテ、東ハ埴科郡界、千曲川ノ中央ナリ、〈委細前ニ見ユ〉但シ北東ノ隅〈千曲川犀川〉落合ノ所、東ニテ少ノ程高井郡界、河合村ノ丑寅ノ隅、兩川ノ落合ヨリ、川向丑ノ方ヘ、大豆崎村出張リ、同寅ノ方ヘ、牛崎村出張リテ、其下郡界、北ハ水内、東ハ高井ナリ、南ヘ細ク斗出セシ處ハ小縣郡界、室賀峠ノ方、少ノ程ナリ、是ヨリ西ハ、戌亥ノ方ヘ斜ニ、筑摩郡界、姨捨山ノ申酉ノ方、往還ノ峠ヨリ、未申ノ方ヘ斜ニ、又筑摩郡ヘ界シ、下岡村ノ邊ニテ、犀川ノ中央ヘ少シ掛リテ、是ヨリ北ヘハ、當郡ノ西ノ方安曇郡界ナリ、〈此兩界ハ委ク松本領筑摩安曇ノ記中ニ見エタリ〉　此郡ニハ、當時城地ナシ、牧ノ島古城ノ跡ハ、犀川ノ西ヘ流レ、東ヘ流ルヽ中間ニテ、島ノ如キノ地ナリ、甲州武田家ヨリ、馬場美濃守ヲ置カル、此所、北ハ水内郡ナリ、水内ノ橋ヨリ、西ニ當レル犀川ノ渡リハ、水内郡ノ部ニ記ス、〈但シ西ノ方ハ此郡犀川ノ向フマデ出張リテアリ、牧田中村ヨリ大原村ヘ船渡アリ、是ハ犀川ヲ西ヘ渡ル水面三十四間、是ヨリ川上大岡村ノ内、桐澤村ヨリ安曇郡船場村ヘ船渡アリ、四十二間、是ハ安曇郡ノ部ニ見エタリ、〉凡ソ川中島ト云フハ、高井、水内、埴科、更級ノ四郡へ亘レリト雖ドモ、取分ケ更級郡ハ、千曲川犀川ノ兩間ニアル故、專ラ此郡ヲ指付シ、此郡ニテモ、又別ニ御幣(オンベ)川ヨリ東ヲ指スナリ、御幣川今ハ水ナキ故、川跡モ見エズ、人家田畑等ト爲レリ、御幣川村、高田村、原村、今井村ノ内、北原村丹波島村ハ往還ナリ、此東ニ横田村ト云アリ、〈古ヘ木曾義仲越後ノ國主城四郞長茂ト合戰アリシ所ナリ、是ヲ筑摩川合戰共云フ、壽永元年九月、此合戰信濃源氏井上九郞光森ト云フ者ノ武略ニテ勝利ヲ得、或ハ河ヘ追込或ハ思フ所ヘ追落シ、越後勢多ク討ルヽ中ニ、越後ノ山野太郞、會津乘丹房ナド云事一騎當千ノ兵討死シ城ノ四郞モ手負、漸ク脱レテ川ニ沿テ越後ニ歸ル、此長茂ハ平ノ惟茂ノ子貞盛ノ甥ナリ、兄ノ跡ヲ繼テ、越後守ニ任ズト、古書ニ委シク見エタリ、〉永祿四年辛酉九月十日、武田信玄長尾景虎ト合戰アリシモ此所ナリ、〈川中島合戰トテ、世ニ隱レナキ大合戰ナリ、謙信ノ陣城妻女山ハ、埴科郡ニテ此所ヨリ千曲川ヲ隔テ南ナリ、今ニ陣取ノ塚多クアリ、信玄ハ雨ノ宮ノ渡リヲ取切リ、當郡茶臼山ニ陣取レリ、茶臼山ハ往還ノ西ニテ有旅村ノ近所ナリ、〉

〔續日本紀〕

〈二十九稱徳〉

p.1370 神護景雲二年五月辛未、信濃國更級郡人建部大垣、爲レ人恭順、事レ親有レ孝、〈〇中略〉免二其田租一終レ身

水内郡

〔信府統記〕

〈三〉

p.1370 水内郡〈知行高八萬四千六百七十一石五斗二升三合、村數三百二十三、〉　當國ニテ北ニ當レル郡ナリ、西北ハ越後國ヘ隣リ、西半安曇郡ヘ界シ、南ハ更科郡ヘ界ヒ、犀川ノ中央ヲ郡境トシ、東ハ高井郡ヘ界ヒ、千曲川ノ中央ヲ郡境トス、戌亥ノ方ハ越後境高妻山ノ麓國境ナリ、但シ高妻山西ハ安曇郡雨飾山ノ方ナリ、

〔續日本紀〕

〈二十九稱徳〉

p.1370 神護景雲二年五月辛未、信濃國〈〇中略〉水内郡人刑部智麻呂、友于情篤苦樂共レ之、同郡人倉橋部廣人出二私稻六万束一、償二百姓負稻一、免二其田租一終レ身、

高井郡

〔郡名考〕

p.1370 信濃　高井〈タカト計　タカヰ〉

〔信府統記〕

〈三〉

p.1370 高井郡〈知行高六萬九千百二十九石四合、村數二百二十四、〉　當國ノ東北ニ當レル郡ナリ、北ハ越後國ヘ隣リ、東ハ上野國ヘ隣レリ、南ハ小縣郡ヘ界ヒ、南西ハ埴科郡ヘ界ヒ、千曲川犀川落合ノ處ニテハ、少シノ程更級郡ヘ界ヒ、是ヨリ北ヘ西ノ方ハ水内郡ヘ界ヒ、千曲川ノ中央郡境ナリ、

〔三代實録〕

〈十四清和〉

p.1370 貞觀九年三月十一日辛亥、信濃國高井郡人從八位上物部連善常、改二本居一貫二山城國紀伊郡一、

埴科郡

〔郡名考〕

〈信濃　埴科〈ハニシナ〉　埴科〈ハシナ〉〉

〔信府統記〕

〈三〉

p.1370 埴科郡〈高二萬七百八十石二斗壹升四合、村數四十一、〉　當郡ハ國中ノ小郡ニテ他國ニ接スル所ナシ、未申ノ方ヨリ西北ヘ押廻シテハ、更級郡ノ境千曲川ノ中央ナリ、但シ此川數曲アルガ故ニ千曲川稱フルトカヤ、所ニヨリ川ノ此方ヘ郡筋入込アリ〈更級郡ノ内、向八幡村ハ、川ノ此方ニアリ、〉亦北ニテハ川向ヘ當郡出張レリ、〈更級郡鹽崎村ノ邊、又東福寺村西寺尾村ノ邊兩所アリ、川筋時トシテ替レル〉

p.1371 〈故ナリトカヤ、〉昔時武田信玄ト越國ノ謙信合戰アリシ所、其時ノ地形今ノ川筋トハ違ヒタリト云フ、丑寅ノ方ハ高井郡ヘ界ヒ、辰巳ノ方ハ小縣郡ヘ界ヒ、各山中郡堺ナリ、

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.1371 天平勝寶七歳乙未二月、相替遣二筑紫一諸國防人等歌、　知波夜布留(チハヤブル)、賀美乃美佐賀爾(カミノミサカニ)、怒佐麻都里(ヌサマツリ)、伊波負伊能知波(イハフイノチハ)、意毛知々我多米(オモチヽガタメ)、　右一首、主帳埴科郡神人部子忍男、

〔三代實録〕

〈六清和〉

p.1371 貞觀四年三月廿日戊子、信濃國埴科郡大領外從七位上金刺舍人正長、小縣郡權少領外正八位下他田舍人藤雄等、並授二借外從五位下一、

小縣郡

〔信府統記〕

〈三〉

p.1371 小縣郡〈高六萬六千四十三石五斗六合、村數百六十五、〉　當郡ハ高井郡四阿山ノ南ヨリ、湯ノ丸山ノ東、地藏ノソリノ路ノ東、佐久郡横笹山ノ西マデノ間ナリ、此郡ノ寅卯ノ方ハ上郡國ヘ隣ル、當郡界、北ハ四阿山ノ南ヨリ申ノ方ヘ斜メニ、高井郡ヘ界シ、同半ヨリ未申ノ方ヘハ埴科郡ニ接シ、千曲川ノ西ニテハ、北ノ方少ノ間更級郡ヘ界ヒ、西ハ筑摩郡、南ハ諏訪郡、東ハ佐久郡ナリ、又郡界ノ越口道自攝峠地藏峠亦千曲川ノ端下鹽尻村ヨリ〈埴科郡鼠宿ヘノ往還ナリ〉右三筋ノ路ハ埴科郡ニ見エタリ、

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.1371 天平勝寶七歳乙未二月、相替遣二筑紫一諸國防人等歌、　可良己呂茂(カラコロモ)、須曾爾等里都伎(スソニトリツキ)、奈苦古良乎(ナクコラヲ)、意伎氐曾伎怒也(オキテゾキヌヤ)、意母奈之爾志氐(オモナシニシテ)、　右一首、國造少縣郡(○○○)他田舍人大島、

〔類聚國史〕

〈八十七配流〉

p.1371 延暦十四年四月戊戌朔、先レ是信濃國介正六位上石川朝臣清主、爲レ人被レ射而不レ中、遣二從五位下藤原朝臣都麻呂等一、勘二捜射人一、不レ得焉、更遣二衞門佐大伴宿禰是成一推二問小縣郡人久米舍人望足一服焉、流二讃岐國一、

〔續日本後紀〕

〈五仁明〉

p.1371 承和三年五月甲子、賜二信濃國小縣郡公田十三町、彈正尹秀良親王一、

佐久郡

〔信府統記〕

〈四〉

p.1372 佐久郡〈高七萬七千六百五十八石七斗二升四合、村數二百四、〉　當郡ハ信濃國東ノ方ニテ、上野武藏甲斐三國ヘ隣レリ、此郡ノ北ハ横笹山〈小縣ノ郡界〉ヨリ東北ノ方上野國ヘ隣ル碓氷峠マデノ間峯通國界ナリ、此横笹山ヲ、上野國ニテハかごのとうト稱ス、水ノとう、みつをね、〈兩所共ニ上野國ニテモ同名〉此みつをねト淺間山ノ間ニ道アリ、〈新繪圖ニハ參詣道トアリ、正保ノ繪圖ニハ鎌原ヘ出ル道トアリ、〉小諸ヨリ境目マデ三里三十丁、境目ヨリ上野國大笹村マデ三里二十三町、

〔三代實録〕

〈十二清和〉

p.1372 貞觀八年二月二日戊申、以二信濃國〈〇中略〉佐久郡妙樂寺一、並預二之定額一、

郷

〔倭名類聚抄〕

〈七國郡〉

p.1372 信濃國伊那郡　輔衆　伴野〈土毛乃〉麻績〈乎美〉福智〈布久知〉小村〈乎無良〉　諏訪郡　土武〈土無〉佐補〈左布〉美和　桑原〈久波波良〉神戸　山鹿〈也末加〉氐良　筑摩郡　良田、〈與之太〉宇賀〈曾加〉辛犬〈加良以奴〉錦服〈爾之古里〉山家〈也末無倍〉大井〈於保井〉　安曇郡　高家〈太木倍〉八原〈夜八良〉前社　村上〈無良加美〉　更級郡　麻績〈乎美〉村上〈無良加美〉當信　小谷〈乎宇奈〉更級〈左良之奈〉清水〈之美都〉斗女〈土女〉池郷〈以介〉氷銫〈比加奈〉　水内(ミノチ)郡　芋井〈伊曾井〉大田〈於保多〉芹田〈世無多〉尾張〈乎波利倍〉大島〈於保之末〉古野〈布無奈〉赤生〈安加布〉中島〈奈加之末〉　高井郡　穗科〈保之奈〉小内〈乎宇奈〉稻向〈以奈無木〉日野〈比無乃〉神戸　埴科郡　倉科〈久良之奈〉礒郡〈伊曾倍〉船山〈布奈也末〉大穴〈於保奈〉屋代〈也之呂〉英多〈衣太〉坂城〈佐加木〉　小縣郡　童女〈乎無奈〉山家〈也末加〉須波　跡部　安宗〈安曾〉福田　海部〈安末無倍〉餘戸　佐久郡　美理　大村　大井　餘戸　刑部　青沼　茂里　小沼

〔多武峯略記〕

〈下〉

p.1372 田園　信濃國筑摩郡蘇我郷(○○○)、字草茂庄一處、〈田類等、在二施入状一、〉

〔吾妻鏡〕

〈一〉

p.1372 治承四年九月十日己未、甲斐國源氏武田太郞信義、一條次郞忠頼已下、聞二石橋合戰事一、奉レ尋二武衞一、欲レ參二向于駿河國一、而平氏方人等在二信濃國一云云、仍先發二向彼國一、去夜止二宿于諏方上宮庵澤之

p.1373 邊一、及二深更一青女一人、來二于一條次郞忠頼之陣一、稱レ有二可レ申事一、忠頼乍レ怪招二于火爐頭一謁之、女云、吾者當宮大祝篤光妻也、爲二夫之使一參來、〈〇中略〉忠頼殊信仰、自求二出野劒一腰、腹卷一領一、與二彼妻一、依二此告一則出陣、襲二到平氏方人管冠者伊那郡大田切郷(○○○○)之城一、冠者聞レ之、未レ戰放二火於館一自殺之間、各陣二于根上河原一、相議云、去夜有二祝夢想一、今思二管冠者滅亡一、預二明神之罰一歟、然者奉レ寄二附田園於兩社一、追可レ申二事由於前武衞一歟者、皆不レ及二異儀一、召二執筆一令レ書二寄進状一、上宮分當國平出、宮所兩郷也、下宮分龍市一郷也、而筆者誤書二加岡仁谷郷(○○○○)一、此名字衆人未二覺悟一、稱二不レ可レ然由一、再三雖レ令二書改一、毎度載二兩郷名字一之間、任二其旨一訖、相二尋古老一之處、號二岡仁谷一之所在レ之者、信義忠頼等附レ掌、上下宮不レ可レ有二勝劣一之神慮已掲焉、彌催二強盛信一、歸敬禮拜、其後於二平家一有レ志之由、風聞之輩者、多以糺斷云云、

〔吾妻鏡〕

〈三〉

p.1373 壽永三年〈〇元暦元年〉二月三十日己丑、信濃國東條庄内狩田郷(○○○)領主職避二賜式部大夫繁雅一訖、此所被二沒收一之處、爲二繁雅本領一之由愁申故云云、

〔吾妻鏡〕

〈六〉

p.1373 文治二年十一月八日辛亥、藤澤一余盛景依二諏方大祝訴一、去比蒙二御氣色一、今日所預二厚免一也、〈〇中略〉　下　信濃國黒河内藤澤(○○○○○)　可レ令下早任二先日御下文旨一、專二大祝下知一勤中仕神事等上事、　右件兩郷、御二寄進諏訪大明神一、神外全無二他勤一、而余一盛景己忘二本跡一、抑二留恒例之御狩一、忽二緒拜殿造營一之由事、以二彼對捍之時一、無二左右一雖レ可レ令レ改之、早任二先例一、且令レ勤二仕御狩一、且可レ令レ修二造拜殿一之状耳、敢不レ可レ及二遲々一、〈〇中略〉　元暦三年十一月八日

〔吾妻鏡〕

〈五十一〉

p.1373 弘長三年三月十七日丁酉、最明寺禪室買二得信濃國深田郷(○○○)一、今日寄二附善光寺一、所レ被レ充二置不斷經衆不斷念佛衆等粮料一也、偏思二食來世値遇一云云、

p.1374 善光寺金堂不斷經衆結番事〈〇中略〉　合〈次第不同〉　定蓮房律師觀西　理久房阿闍梨重實〈〇中略〉　右守二番帳之旨一、可レ令二勤仕一、但彼不斷經用途者、水田六町、在二當國水内郡深田郷内一、是則不斷經衆之免田也、〈〇中略〉　弘長三年三月十七日　沙彌蓮性〈在判〉

〔集古文書〕

〈二十七下知状〉

p.1374 嘉元四年下知状〈所藏不レ詳〉　可レ令三早神眞光爲二信濃國伊那郡中澤郷(○○○)内中曾藏村參分壹地頭職一事　右對決之處、〈〇中略〉如下後家所レ進眞〈氏字有レ憚〉讓二男爲眞一嘉祿三年五月状上者、如レ此雖二處分一、不レ儲二男子一者可レ讓二舍弟等一也、女子者不レ可レ過二在家壹宇一云々、而爲眞以二四箇村一讓二與後家女子一之條、雖レ似レ背二亡父之命一、眞直等本自得二父讓一之上、爲直以二牛尾莊一讓二與眞直一、以二四箇村一讓二眞光一之條、非レ無二思慮一、仍可レ謂二相傳一歟、此眞直等、不レ及二鬱訴一歟、但爲眞以二中曾藏村一讓二與家子小次郞一云々、其理不レ可レ然歟、仍以二彼村參分貳一者可レ爲二眞直分一、以二參分一一者可レ令三眞光爲二地頭職一之状、依二鎌倉殿仰一下知如レ件、嘉禎三年四月十一日云云、〈〇中略〉仍任二眞光所レ進御下知文一所レ被二寫下一也者、依二鎌倉殿仰一下知如レ件、　嘉元四年九月七日　陸奧守平朝臣判　相模守平朝臣判

〔市河文書〕

〈二〉

p.1374 信濃國市河左衞門六郞助房謹言上　欲下早任二相傳當知行旨一下二賜安堵國宣一備中末代龜鏡上、信州高井郡中野西條内、田地參段、在家壹宇、并志久見郷(○○○○)總領職、賀志加澤村等事、　右所等、重代傳領知行于レ今無二相違一上者、依二恖劇一雖レ不レ持二參次第御下文、御下知、手繼證文等一之、欲レ下二給

p.1375 安堵國宣一、若レ是以二不知行地一於レ掠二申國宣一、可レ被レ處二重科一者也、仍恐々言上、如レ件、　元弘三年十月日

〔大徳寺文書〕

〈一〉

p.1375 信濃國伴野莊内高柳郷(○○○)、被レ下二繼義一綸旨所レ被二召返一也、如レ元爲二寺領管領一、不レ可レ有二相違一者、天氣如レ此、仍執達如レ件、　建武元年八月二十一日　左衞門權佐〈花押〇岡崎範國〉　大徳寺長老方丈

〔安保文書〕

p.1375 下安保丹後權守光泰法師〈法名光阿〉　可レ令三早領二知武藏國安保郷内屋敷在家、同國枝名内鹽谷田在家、同國太駄郷、出羽國海邊余部内宗太村、播磨國西志方郷、信濃國室賀郷(○○○)等地頭職一事、　右任二代々讓状、并正安三年十二月十日、正慶二年二月廿九日、外題安堵状等一、可二領掌一之状如レ件、以下、　建武三年十二月十一日　源朝臣〈花押〇足利直義〉

〔島津文書〕

〈二〉

p.1375 御判　下二島津大夫判官宗久一　可レ令三早領二知信濃國太田莊内大藏郷(○○○)〈貞顯跡〉地頭職一事　右人爲二勳功之賞一所二宛行一也、早守二先例一、可レ致二沙汰一之状如レ件、　建武五年正月廿四日　花押(裏判)〈〇今川貞世〉

〔集古文書〕

〈四十三寄附状〉

p.1375 貞治五年寄進状〈信濃國諏訪郡下諏訪社藏〉　奉寄進　諏方下宮社　

p.1376 信濃國筑摩郡鹽尻郷(○○○)東條事　右旨趣者、爲二天下安穩、當國靜謐、殊今度合戰勝軍一、寄附之状如レ件、　貞治五年二月九日　信濃守源〈〇源下恐脱二朝字一〉臣長豐

〔集古文書〕

〈四十一施行状〉

p.1376 寶徳三年施行状〈信濃國諏訪社藏〉　信濃國筑摩郡春近領鹽尻東西　池東西新村南方、大妻南方等事、任二代々判形之旨一、御知行領掌不レ可レ有二相違一之状如レ件、　寶徳參年十月十六日　大膳大夫〈花押〉　諏方大祝殿

〔大塔物語〕

p.1376 去應永七年庚辰九月廿四日、於二信州更科郡布施郷(○○○)一合戰次第事〈矣、〇下略〉

〔集古文書〕

〈四十六寄附状〉

p.1376 木曾義康寄進状〈信濃國木曾農家藏〉　義康判　野尻之郷(○○○○)之内林在家之事、如二年來之一、お末代如意寄進申候、爲二後日一之右如レ件、　永祿四年辛酉正月十六日　進上　定勝寺

〔和名抄諸國郡郷考〕

〈七〉

p.1376 永祿九年九月諏訪下社造宮改帳に、一諏方左衞門慰申意趣者、外垣壹間、爲二清水之郷(○○○○)役一之由載二本帳一、此故筑摩郡之内、號二清水一地造宮錢催促之處、百姓申者、前々此所號二清水一、爲二庄内之内一上宮之神役相勤之由候、然則者信州之内、元來名二清水村墎尋捜、可レ致二所務一者也、〈〇中略〉　諏訪下社永祿九年丙寅九月晦日、下社造宮改帳、小縣郡洗馬(○○)、曲(○)、横尾(○○)、彼三ヶ郷之造宮錢、諏方藤七郞大和監物請取、瑞垣拾間建立云云、

〔集古文書〕

〈三十一下知状〉

p.1376 武田信玄下知状〈信濃國木曾農家藏〉　

p.1377 定　信州佐久郡岩村田郷(○○○○)　百貫之事〈〇中略〉　右御扶助被二仰出一者也、全令二領分一軍用嗜之、陳役可二相勤一旨、下知仍而如レ件、　永祿十一年〈辰〉三月二日　朱印　山縣三郞兵衞尉　奉之　小澤兵庫殿

〔集古文書〕

〈三十八掟〉

p.1377 武田信玄定状〈信濃國諏訪社藏〉　定　高梨内原郷、同堤郷(○○)同櫻澤郷(○○○)、小布施半郷(○○○○○)、聖中條郷(○○○○)、長沼内村山、小縣内鹽田、鹽崎内邊久郡、右從二郷中一集二造營錢一、下諏訪大鳥居造立之處、累年令二難澀一未濟之由、右自由之至也、急度加二催促一、如二前々造營錢可二請取一之旨、所レ被二仰下一也、仍如レ件、　原隼人佑　天正六年二月二十八日　朱印　小山田六左衞門　奉之　三澤平太

村里/名邑

〔郡名一覽〕

p.1377 信濃國(御料私領)　信州　南北五日　拾郡　高六拾壹萬五千八百拾八石七斗三升七合五勺四才　千六百九拾七ケ村　●松代　五十三里　●松本　六十一里半　●上田　四十六里半　●飯山　六十四里餘　●高島　五十四里　●高遠　〈上州道六十四里　甲州道五十五里〉　●小諸　四十一里十一町　●飯田　七十五里十五町　〇須坂　五十八里　〇岩村田　五十八里　 河島　知久千馬佐　 伊黄木　小笠原靱負　 山吹　座光寺伊奈助　 〇福島　〈尾州　山村甚兵衞〉　＜中之條　四十九里餘　

p.1378 ＜御影　四十里餘　＜中野　五十八里餘　＜飯島　〈六十里出ハリ〉　〇按ズルニ、本書符號ハ、山城國篇村里條ニ引ク所ノ、本書ノ凡例ヲ參照スベシ、

〔郡國提要〕

p.1378 信濃　十郡、千六百十五村、　高七十六万七千七百八十八石七升七合六勺(御料私領)　佐久郡百八十八村　諏訪郡百三十五村　伊那郡二百八十四村　筑摩郡二百三十三村　小縣郡百二十村　埴科郡三十七村　更科郡七十三村　安曇郡百八十村　水内郡二百十四村　高井郡百五十一村

〔地勢提要〕

〈坤〉

p.1378 郡邑島嶼奇名　信濃　諏訪郡、文出(フミデ)村、大和(オハ)村、小坂(ヲサカ)村、小(ヲ)井川村、小(ヲ)口村、御射(ミサ)山神戸(ガウド)村、芧木(トチノキ)村、富部(トンベ)村、佐久郡、馬取萱(マトリガヤ)村、高井郡、米持(ヨネモチ)村、筑摩郡、洗馬(セバ)宿、日出鹽(ヒデジホ)村、藪原(ヤゴハラ)宿、麻績(ヲミ)宿、上松(アゲマツ)宿、三富(ミト)野宿、妻籠(ツマゴ)宿、馬籠(マゴメ)宿、更科郡上氷銫(ヒガノ)村、鬼無里(キナリ)〈時雨ノ袖〉足俣村、

〔信府統記〕

〈一〉

p.1378 信州松本城記録〈〇中略〉　松本ノ地ハ、往古國々ニ定レル主ナキ頃ハ、時トシテ國司ヲ任ゼラレテ、下向ノ節居住アリシ所ナルガ故ニ、當國中ノ地頭各爰ニ出仕アリケルト云ヒ傳ヘタリ、其頃ハ今ノ三ノ曲輪地藏清水、ノ邊ハ市陌ニシテ、繁榮ナリシ所ナリ、其後國司ノ下向絶テ、町數減少スト雖モ、猶市辻〈今ノ地藏清水〉泥町〈今ノ柳町〉麻葉町〈今ノ安原口〉西口〈今ノ伊勢町〉ナド殘リテ、市日ニハ衆人群集セシトナリ、〈〇註略〉松本ハ當國中ニ於テ平坦ノ地ナリ、筑摩村ニ神社アリ、郡名ノ本トスル所トカヤ、當城ハ府中ニテ殊ニ四神相應ノ地ナリ、其繁昌ヲ慕ヒテ、永正元年甲子、小島ナル深志ノ城ヲ茲ニ移セリ、其頃ハ猶元ノ名ニ順ヒ深志　城ト云フ、

〔信府統記〕

〈八〉

p.1378 松本領御朱印郷村高辻一〈〇中略〉　

p.1379 信州松本領七万石ハ、元和三年、松平丹波守康長、當城ヲ賜ハリシ時、中野七藏、高室金兵衞ヲシテ、領地配分セシメ相渡サル、其帳面今猶存セリ、寛永十九年、堀田加賀守ヨリ、忠清公請取ラレシ所ノ帳面アリシト云ドモ、數年ノ後、郷村并ニ石高共ニ増減多クシテ、右ノ帳面ニ相違出來レルニ依テ、慶安年中、忠職公ノ時、公聽ニ達セラレ、總撿地アリ、其後寛文年中、御朱印成シ下サル、〈〇中略〉　信濃國安曇郡百四十四個村、三萬四千三百二石餘、筑摩郡之内百四十二個村、三万五千六百九十七石九斗餘、都合七萬石、〈目録別紙アリ〉事如二前々一充二行之一訖、全可二領知一者也、仍而如レ件、　寛文四年四月五日　御朱印　水野出羽守どのへ

〔信府統記〕

〈二〉

p.1379 松代城開起并城主交代年數　松代(○○)ハ埴科郡川中島ナリ、〈初メ海津ノ城ト云ヒ、中頃待城、又ハ松代ト唱ヘ、近來ニ至テ松代ト稱ス川中島ト云フハ、筑摩川犀川二大川ノ中間ナレバナリ、此地更科、埴科、高井、水内ノ四郡ヘ亘レリ、〉平城ニテ城下ノ西ニ筑摩川流ル、〈此河今ハ千曲川ト稱ス、此邊ニテ川流數曲アルガ故ナリ、當國名所ノ一トス、〉昔ハ清野氏ガ屋鋪地ナリ〈〇中略〉慶長八年癸卯、森右近大夫〈後美作守ト攺ム〉美作國津山ヘ所替トナリテ、其ノ跡暫ク御代官所ト爲ル、此時ヨリ待城ト改メ稱ス、同九年甲辰、松平上總助忠輝公入部松城ト改メラル、其後越後國ヲ加ヘ賜リテ高田ノ城ヘ移リ給ヒ、當城ニハ家臣花井主水城代ナリ、元和元年乙卯、大坂落去ノ後、忠輝公御改易、花井主水死刑トナリ、〈〇中略〉同八年十月廿日、眞田伊豆守信之、同州上田ヨリ封地ヲ増賜リ、都合十萬石ニテ當城ニ移リ、〈〇中略〉萬治元年六月十九日、同伊豆守信房二歳ニテ家督シ、享保七年ニ至ル迄〈六十五年〉城主タリ、此時城ノ字ヲ改メテ松代ト爲ス、〈但シ正徳元年辛卯、公義ヨリノ仰ナリ、〉

〔日本靈異記〕

〈下〉

p.1379 重斤取二人物一又寫二法花經一以現得二善惡報一縁第廿二　

p.1380 他田舍人蝦夷者、信農國小縣郡跡目里(○○○)人也、多富二財寶一、錢稻出擧、蝦夷奉レ寫二法花經一二遍、毎レ遍設レ會、講讀旣了、後復思議猶不レ足レ心、更敬繕寫唯未二供養一、寶龜四年癸丑夏四月下旬、蝦夷忽率而死、妻子量言、丙年之人、故不二燒失一、點レ地作レ塚、殯以置レ之、死經二七日一而甦、

〔日本靈異記〕

〈下〉

p.1380 用二寺物一復將レ寫二大般若一建レ願以現得二善惡報一縁第廿三　大伴連忍勝者、信農國小縣郡孃里(○○)人也、大伴連等同レ心、其里中作レ堂、爲二氏之寺一、忍勝爲レ欲レ寫二大般若經一、發レ願集レ物剃二除鬢髮一、著二之袈裟一、受レ戒修レ道、常住二彼堂一、寶龜五年甲寅春三月、倐被二人讒一、堂檀越所二打損一而死、〈〇下略、又見二今昔物語一、〉

〔今昔物語〕

〈十五〉

p.1380 信濃國如法寺僧藥連往生語第二十　今昔、信乃國高井ノ郡中津村(○○○)ニ如法寺ト云フ寺アリ、其寺ニ藥連ト云フ沙彌ノ僧住ケリ、

〔吾妻鏡〕

〈三十六〉

p.1380 寛元二年八月三日辛未、市河女子藤原氏事、於二荏柄社一不レ密二通落合藏人泰宗一之由、書二記請文一、令二參籠一之間、以二御使寂阿西佛一被レ加二撿見一之處、七日七夜無二其失一之由、各申之、仍市河掃部助入道見西、所二訴申一之信濃國船山内青沼村(○○○)、伊勢國光吉名、甲斐國市河屋敷等者、見可レ令三氏女領二掌之一、至二市河屋敷一者、氏女一期之後、可レ賜二見西子孫一之由、今日被レ定之、

〔續錦雜誌〕

〈八〉

p.1380 花押〈〇足利尊氏〉　下志水與三郞實俊　可レ令三早領二知信濃國石河内小山田村(○○○○)地頭職一事　右人爲二勳功之賞一所二宛行一也者、守二先例一、可レ致二沙汰一之状如レ件、　建武五年正月十八日

〔古文帖〕

p.1380 戸隱山神領之覺　信の國水内郡栗田村(○○○)、二條、上楠川、合貳百石者先寄進也、上野村(○○○)、栃原村(○○○)、内分、楠川、宇和原、遠良尾、合

p.1381 八百石者、新寄進、都合貳千石、内別當五百石、社僧三百石、社家貳百石、全可二寺納并社領一、同前境内山林竹木爲二守護不入一、令二寄附一上者、永代不レ可レ有二相違一者也、仍可レ抽二天下安全祈禱一状如レ件、　慶長十七年五月朔日　御朱印

〔信府統記〕

〈二十四〉

p.1381 御裁許記〈〇中略〉　元祿十丁巳年、麻績組同町市野川村永井村と更科郡八幡村郡村、志川村、羽尾村四ケ村と山論御裁許、　信州筑摩郡松本領、麻績村(○○○)、市野川村永井村(○○○○○○○)と、同國更科郡松代領、八幡村(○○○)、郡村(○○)、志川村(○○○)、羽尾村(○○○)諍論之事、　麻績、永井、市郡川三ケ村百姓訴候は、いぎれより湯光坊土橋、三ツ嶺、小坂、九折道、ぜごが池、菖蒲池、屏風岩、中尾、釣根、冠著嶽、境之由申レ之、八幡、郡、志川、羽尾四ケ村百姓答候は、小高柄峯より樋ケ峯、猿ケ馬場峠、三ツ峯、風越山峯一本松、冠著嶽、境之由申レ之、遂二糺明一處に、雙方申所不二分明一、依レ之撿使三上半兵衞、完倉與兵衞撿分之上、いぎれより湯光坊、土橋、三ツ峯、風越山峯、鷲岩、一本松海道限レ之、冠著嶽迄郡境相定候、墨引之外、東北に有レ之畑八枚、境不慥に付、開置候と相見條、向後可荒之次に、札山内山、雖レ及二異論一、證文證跡無レ之、柴草多有レ之方は、内山と相見候、其上見通境用之中尾根より一本松迄、札山境相立候、且又羽尾村百姓申候は、永井村地内之山、爲二請納山一由申レ之、永井村百姓札山の由答レ之令二吟味一處、松代領仙石(○○)、須坂(○○)、若宮(○○)、徳間(○○)四ケ村百姓、新山札請取由、永井村へ證文出之條、羽尾村も山札、致二所持一、永井村之山へ入候と相聞候、柴草茂り候分は、永井村内山に相極、口あき岩の尾根より、道心が峯迄、繪圖之面墨筋を引、各加二印判一雙方へ下置間、不レ可二再犯一者也、　元祿十年丁丑七月廿二日　荻　近江〈〇下略〉

莊保

〔當宮縁事抄〕

p.1381 左辨官下　石清水八幡宮并宿院極樂寺　

p.1382 應丙永停下止宮寺并極樂寺庄園領家預所下司公文等、或號レ有二先祖讓状一、或稱レ相二傳文書一、致二異論一企中掠領上、兼又有二由緒一雖レ令二傳領一、子孫斷絶處々付乙本所甲事、　宮寺領〈〇中略〉　信濃國　小谷庄(○○○)〈〇中略〉　保元三年十二月三日　大史小槻宿禰〈在判〇下略〉

〔諸家系圖纂〈十七下藤原〉〕

p.1382 那須　宗隆〈那須與一資隆攺名、無雙之弓馬之達者也、屬二源義經一於二四國矢島一射レ扇、于レ時十七歳、鎌倉歸參、蒙二勸賞一所レ謂丹波五ケ庄、信州角豆莊(○○○○○)、若州東宮川原、武州太田庄、備中繪原庄、〇下略〉

〔吾妻鏡〕

〈六〉

p.1382 文治二年三月十二日庚寅、小中太光家、爲二使節一上洛、是左典厩賢息、〈二品御外甥〉依レ可下令レ加二首服給上一、被レ獻二御馬三疋長持〈被レ納二砂金絹等一〉二棹一之故也、又關東御知行國々内、乃貢未濟庄々、召二下家司等注文一被レ下レ之可下加二催促一給上之由云云、今日到來、　注進　三箇國庄々事〈下總、信濃、越後等、國々注文、〇中略〉　信濃國　伊賀良庄〈尊勝寺領〉　伴野庄〈上西門院御領〉　郡戸庄〈殿下〉　江儀遠山庄　大河原鹿鹽　諏方南宮上下社〈八條院領〉　同上下社領〈白川郷〉　小俣郷熊井郷　落原庄〈殿下〉　大吉(オホキソ)社庄〈宗像少輔領〉　黒河内藤澤〈無二庄號字一之由、今度尋二捜之一處、彼爲二諏訪上下社領一、仍不レ隨二國衙進上一、〉　捧中村庄　捧北條庄　洗馬庄〈蓮華王院御領〉　相原庄　麻績(ヲミ)御厨〈大神宮御領〉　住吉庄〈院御領〉　野原庄〈同前〉　大穴(オホナ)庄〈元左大辨師能領、近年忠清法師領、〉　前見庄〈雅樂頭齊領〉　仁科御厨〈太神宮御領〉　小谷庄〈八幡宮御領〉　石河庄〈御室御領〉　四宮庄南北〈同前〉　布施本庄　布施御厨　富都御厨　善光寺〈三井寺領〉　顯光寺〈天台山末寺〉　若月庄〈澄菩提院領〉　太田庄〈嚴下御領〉　

p.1383 小河庄〈上西門院御領〉　丸栗庄〈御室御領〉　弘瀬庄〈院御領〉　小曾禰庄〈八條院御領〉　市村庄〈院御領〉　芋河庄〈殿下御領〉　青瀧(シヤウリウ)寺　安永勅旨　月林寺〈天台末寺〉　今溝庄〈松尾社領〉　善光寺領〈河居　馬島　村山　吉野〉　天台山領小市　東條庄〈八條院御領〉　保科御厨　橡原御厨〈九條城興寺領〉　英多庄〈殿下御領〉　倉科庄〈九條城興寺領〉　同加納屋代四箇村　浦野庄〈日吉社領〉　鹽田庄〈最勝光院領〉　小泉庄〈一條大納言家領〉　常田庄〈八條院御領〉　海野庄〈殿下御領〉　依田庄〈前齋院御領〉　穀倉院領　佐久伴野庄〈院御領〉　千國庄〈六條院〉　桑田餘田〈前堀河源大納言家領〉　大井庄〈八條院御領〉　平野社領〈淺間社岡田郷、今八幡宮領、〉

〔集古文書〕

〈三十三打渡〉

p.1383 享徳四年打渡〈信濃國木曾定勝寺藏〉　木曾庄(○○○)淨戒山定勝禪寺住持職之事、永代渡二與於慧嚴首座一處也、仍爲二後證一渡状如レ件、　享徳四年乙亥三月三日　左京大夫家賢書判　定勝寺侍衆禪師

〔吾妻鏡〕

〈三十四〉

p.1383 仁治二年三月廿五日癸丑、海野左衞門尉幸氏、與二武田伊豆入道光蓮一、相下論上野國三原庄與二信濃國長倉保(○○○)一境事上、幸氏所レ申、依レ有二其謂一、任二式目一加二押領分限一、可二沙汰一之旨、被レ仰二含于伊豆前司頼定、布施左衞門尉康高等一訖、

藩封

〔慶應元年武鑑〕

p.1383 眞田信濃守幸教(帝鑑間　四品　安政四巳)　拾万石　居城信州埴科郡松代〈本名　河中島　江戸ヨリ五十三里　信玄時代、高坂彈正居、後森武藏守長一、同右近大夫忠政、天正八、松平上總介忠輝卿、元和中、松平伊豫守忠昌、同五、酒井宮内大輔忠勝、同八、眞田伊豆守信之、以後代々領レ之、〉　松平丹波守光則(帝鑑間　四品　文久元酉十二月叙)　六万石　居城信州筑摩郡松本〈江戸ヨリ中山道六十二里半、保福寺通リ五十八里、武石通リ五十五里餘、　當城者、永正元甲子年、島左近大夫築レ之、文永（文永恐大永誤）三、水上宗浮、天文三、小笠原大膳大夫長時持、同廿二、武田信玄持城、後武田勝頼持、天正十、小笠原右近大夫貞慶、同兵部大輔秀政、同十八、石川伯耆守康昌、同玄蕃頭光長、慶長十八、再小笠原兵部大夫秀政、同右近將監忠眞、元和三松平丹波守康長、寛永十、松平出羽守直政、同十五、堀田加賀守正盛、同十八、水野隼人正忠清、同出羽守忠職、同〉

p.1384 〈隼人正忠直、同出羽守忠周、同日向守忠軒、同隼人正忠恒、享保十乙巳年、松平丹波守光慈、以後領レ之、〉　松平伊賀守忠禮(帝鑑間　朝散大夫)　五万三千石　居城信州小縣郡上田　〈江戸ヨリ四十六里半　眞田安房守昌幸、同伊豆守信幸居之、元和八、仙石兵部少輔忠政、同越前守政俊、同越前守政明、寶永三、松平伊賀守忠周、以後領レ之、〉　内藤若狹守頼直(雁間　朝散大夫)　三万三千石　居城信州伊奈郡高遠〈上州通六十四里、甲州通五十五里、　晴信時代、仁科氏居レ之、後保科彈正忠正直、京極修理大夫高知、慶長五、再保科彈正忠正直、同肥後守正之、寛永十三、鳥居主膳正忠春、同兵部少輔忠常、同播摩守忠救、元祿四年、内藤駿河守清長、以後領レ之、〉　諏訪因幡守忠誠(帝鑑間　從四位侍從元治元子十一月任)　三万石　居城信州諏訪郡高島　〈江戸ヨリ五十四里　本名諏訪ト云、諏訪氏代々居、天正中、日根野織部正高吉、同織部正吉明、慶長六ヨリ再諏訪氏代々領レ之、〇節略〉

〔慶應元年武鑑〕

p.1384 本多相模守助藉(帝鑑間　朝散大夫)　二万石　居城信州水内郡飯山　〈江戸ヨリ六十四里餘　天正五、上杉景虎築レ之、家臣爲二城代一而守レ之、文祿年中、森右近大夫忠政、慶長十五、上總介忠輝卿持、元和二、佐久間備中守安次、同日向守安長、同三、五郞勝長居、寛永十八、松平大膳亮忠重、同遠江守忠倶、同筑後守忠繼、同遠江守忠喬、寶永三、永井伊賀守直敬、武州岩槻エ替、同八、青山大膳亮幸秀丹後宮津エ替、享保二、本多若狹守助芳、以後領レ之、〉　松平縫殿頭乘謨(菊之間　從五位下)　一万六千石餘　在所信州佐久郡田野口　〈江戸ヨリ四十二里　元祿十六年ヨリ當所領レ之〇節略〉

〔慶應元年武鑑〕

p.1384 牧野遠江守康濟(雁間　朝散大夫)　一万五千石　居城信州佐久郡小諸(コモロ)　〈江戸ヨリ四十一里十一町　仙石越前守秀久、同兵部大輔忠政、元和八、青山因幡守宗俊、寛文二、酒井日向守忠能、延寶七、西尾隱岐守忠成、天和二、石川美作守乘政、同能登守乘矩元祿十五、牧野周防守康重、以後領レ之、〉　内藤志摩守正誠(雁間　朝散大夫)　一万五千石　居城信州佐久郡岩村田格　〈江戸ヨリ三十八里　元祿年中、内藤氏正勝以後代々領レ之、〉　堀石見守親義(柳間　朝散大夫)　一万五千石　居城信州伊奈郡飯田　〈江戸ヨリ上州通七十五里十五町　天正十八、毛利河内守秀頼居、後京極修理大夫高知、慶長六、小笠原兵部大輔秀政、元和三、脇坂淡路守安元同中務少輔安政、寛文十二、堀美作守親昌、以後代々領レ之、〇節略〉

〔慶應元年武鑑〕

p.1385 堀内藏頭直虎(柳間　朝散大夫)　一万五十三石餘　在所信州高井郡須坂　〈江戸ヨリ五十八里　元和三ヨリ堀氏直重以後領レ之〇節略〉

田數/石高

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.1385 信濃國〈〇註略〉管十〈田三萬九百八町八段百四十歩〉

〔伊呂波字類抄〕

〈志國郡〉

p.1385 信濃國〈管十（中略）本田四万千六百五十六丁〉

〔拾芥抄〕

〈中末本朝國郡〉

p.1385 信濃〈上中〉十郡〈（中略）田千六百五十六町〉　〇按ズルニ、此書千ノ字ノ上ニ四万ノ二字ヲ脱ス、伊呂波字類抄ニ從フベシ、

〔新撰類聚往來〕

〈下〉

p.1385 國名〈〇中略〉　信濃〈信州〉十郡〈（中略）田數三万一千四百三十町〉

〔海東諸國記〕

p.1385 信濃州　郡十、水田三萬九千二十五町三段、

〔前關白秀吉公御檢地帳之目録〕

p.1385 四十万八千三百五十八石　信濃

〔國花萬葉記〕

〈十一信濃〉

p.1385 信濃國〈信州　上　管十郡〉　田數貳万九百九十六町〈〇中略〉　知行高五拾四万八千六百石

〔千曲之眞砂〕

〈前編一〉

p.1385 國中總高　高四十万八千三百五十八石　右天正十八年庚寅七月、依二小田原北條家滅亡一、信州不レ殘豐臣家爲レ領、時諸士配分之高如レ斯也、　高五十四万七千三百六十石　高五十四万八千六百石　右文祿四年、太閤撿地改高也、其後御當家、寛永御改右同高也、　高六十一万五千八百十八石七斗三升七合五勺、　右元祿十四年辛巳、御改高辻如レ斯也、此後至二當世一、山林川原芝間等、新田開發不レ可二勝計一、今者總高七十万石餘有レ之云云、

〔千曲之眞砂〕

〈前編六〉

p.1385 木曾隱士語曰、木曾谷者廿四箇村有レ之、十一箇村合三十五箇村、廿四谷也、往古

p.1386 太閤秀吉公、御改高千六百八十五石八斗六合四勺也、其後享保九年甲辰、自二尾州公一撿地、御改高二千四百六十三石八斗一合也云云、

〔官中秘策〕

〈三〉

p.1386 信濃國　十郡〈〇中略〉　一石高六拾壹万五千八百拾八石餘

〔吹塵録〕

〈五人口及國高〉

p.1386 天保度御國高調〈〇中略〉　信濃國〈御料私領〉　一高七拾六万七千七百八拾八石七升七合六勺

出擧稻

〔延喜式〕

〈二十六主税〉

p.1386 諸國出擧正税公廨雜稻〈〇中略〉　信濃國、正税公廨各卅五万束、國分寺料四万束、興福寺料四万束、文殊會料二千束、修理池溝料三万束、救急料八万束、俘囚料三千束、

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.1386 信濃國〈〇註略〉管十〈（中略）正公各三十五萬束、本稻八千九百五十束、雜稻十九萬五千束、〉　〇按ズルニ、此書本稻八千九百五十束トアルハ、八十九萬五千束ノ誤ナリ、

國産/貢獻

〔延喜式〕

〈二十三民部〉

p.1386 年料別納租穀〈〇中略〉　信濃國〈一万二千石〇中略〉　年料別貢雜物〈〇中略〉　信濃國〈筆一百卅管、零羊角六具、木賊二圍、樺皮二圍、〇中略〉　諸國貢レ蘇番次〈〇中略〉　信濃國十三壺〈五口各大一升、八口各小一升、〇中略〉　右八箇國爲二第三番一〈卯酉年〇中略〉　交易雜物〈〇中略〉　信濃國〈商布六千四百五十段、熟麻十斤、履牛皮三張、鹿皮九十張、洗皮十五枚、紫草二千八百斤、布一千五百端、細貫筵五十枚、圓長猪脂一斗、櫑子四合、〉

〔延喜式〕

〈二十四主計〉

p.1386 信濃國〈行程、上廿一日、下十日、〉　調、紺布六十端、縹布卅端、緋革五張、自餘輸レ布、但浮浪人調庸輸二商布一、　庸、輸レ布、　中男作物、紙、紅花、麻子、芥子、猪膏、脯、雉腊、鮭楚割、氷頭、背膓、鮭子、

〔延喜式〕

〈三十七典藥〉

p.1386 諸國進年料雜藥〈〇中略〉　信濃國十七種　黄連十斤、細辛卅五斤、白朮廿六斤九兩、藍漆五斤、大黄卅斤、女青六斤、䕡茹卅七斤、

p.1387 干地黄一斗四升、附子三斗、蜀椒一斗六升、蕪夷一斗、石硫黄三斗八升、熊膽九具、鹿茸十具、 杞廿斤、杏人六斗、大棗大一斛

〔新猿樂記〕

p.1387 四郞君、受領郞等刺史執鞭之圖也、〈〇中略〉宅常擔二集諸國土産一、貯甚豐也、所レ謂〈〇中略〉信濃梨子、〈又木賊〉

〔庭訓往來〕

p.1387 信濃布、常陸紬、

〔毛吹草〕

〈三〉

p.1387 信濃　小人參　芍藥　杏仁　小梅　串柿　干蕨　蕎切〈當國より始ルト云〉　白荢　小椙原　曾ノ原木賊　木曾ノ麻衣　柾　椹(サハラ)　土井檜皮　諏訪湖鱣鮒　奈良井ノ枉物　〇按ズルニ、諸國名物往來ニハ、右ノ外ニ、玄古蓈菪(タバコ)、上田紬 、硫黄等ヲ擧ゲタリ、

〔續日本紀〕

〈二文武〉

p.1387 大寶二年三月甲午、信濃國獻二梓弓一千二十張一、以充二太宰府一、

〔續日本紀〕

〈三文武〉

p.1387 慶雲元年四月庚午、以三信濃國獻二弓一千四百張一、充二太宰府一、

〔續日本紀〕

〈十三聖武〉

p.1387 天平十年正月庚午朔、信濃國獻二神馬一、黒身白髮尾、　壬午、大二赦天下一、〈〇中略〉又貢レ瑞人賜二爵及物一、并免二出レ瑞郡當年之庸一、

〔三代實録〕

〈五十光孝〉

p.1387 仁和三年二月九日癸丑、信濃國例貢梨子、大棗呉桃子、雉腊、別貢梨子、大棗等貢獻之期、元不レ立レ制、太政官議定、例貢毎年十月、別爲レ期、立爲二恒例一、

人口

〔官中秘策〕

〈三〉

p.1387 信濃國　十郡〈〇中略〉　一人數六拾八万六千六百五拾壹人　内〈三拾六万四百九拾人　男　三拾貳万六千百六拾壹人　女〉

〔吹塵録〕

〈五人口及國高〉

p.1387 諸國人數調〈〇中略〉(文化元甲子年)　一人數七拾四万八千百四拾貳人(御料私領)　信濃國(高六拾壹万五千八百拾八石餘)　内〈三拾八万八千八百五拾九人　男　三拾五万九千貳百八拾三人　女　〉

p.1388 諸國人數調〈〇中略〉(弘化三丙午年)　一人數七拾九万四千六百九拾八人(御料私領)　信濃國(高七拾六万七千七百八拾八石餘)　内〈四拾万三千八百六拾八人　男　三拾九万八百三拾人　女〉

風俗

〔令義解〕

〈一職員〉

p.1388 彈正臺　〈尹一人掌レ肅二清風俗一謂肅者敬也、風者氣也、俗者習也、土地水　氣有二緩急一、聲有二高下一、謂二之風一焉、人居二此地一、習以成レ性、謂二之俗一焉、假令信濃國俗(○○○○)、夫死者即以レ婦爲レ殉若有二此類一者、正レ之以二禮教一、是以爲レ肅二清風俗一也、〉

〔人國記〕

〈信濃國〉

p.1388 信濃國之風俗ハ、武士之風俗天下一也、最百姓町人之風儀モ、其律義ナル事、伊賀、伊勢、志摩之風俗ニ、五畿内ヲ添タルヨリハ猶モ上也、所以者、義理強ク而臆スル事ナク、百人ニ九十人ハ律義也、タマタマ臆病成者有トイヘドモ、夫モ他國之如形之人ト云程ニハ有ラズシテ、タマ〳〵ノ物語ニモ、弱ミノ比興ノ事ハ無レ之、若シ比興ノ事ヲ述ベ、亦ナス時ハ、人皆是ヲ惡テ不レ交、故柔弱之人モ後ニハ義理ヲ知リテ、國風ト成ナリ、都而知惠モ餘國ヨリハ勝レタリ、然ドモ偏鄙之國成故ニ、カタクヘナキコトモ多シトイヘドモ、善十ニシテ惡一二之風俗也、

名所

〔日本鹿子〕

〈八〉

p.1388 同國〈〇信濃〉中名所之部　木曾路　京より江戸まで木曾街道を行は、美濃國大井といふ宿より四り計行て、信州安裹(アツミ)郡木曾のうちなり、是より木曾路ト云、　出る峯入山のはのちかければ木曾路は月の影ぞみじかき　木曾御坂　まごめ峠といふ是より深山に入、山坂多し、　信濃路や木曾の御坂の小笹原分行袖にかくや露けき　掛橋　是を木曾のかけ橋と云、あげ松と云宿より福島と云宿へ越る間也、則かけ橋と云里あり、

p.1389 山の岨にわたしたる橋なり、　生ひすかふ谷の梢を蛛手にて散ぬ花ふむ木曾のかけ橋　薗原山　小縣郡の内也、伏屋は小諸の山ノ手也、此原にはヽき木と云もの生ふる、後拾遺雜歌、　信濃なるその原にこそあらね共我はヽき木と今はたのまん　更科　いづこ共月は分しをいかなればさやけるらん更科の山　姨捨山　更科郡の内也、やしろの宿よりとくらへ越る間、筑間川と云あり、此川の向ふにあり、姨捨石と云も有、　あやしくもなぐさめがたき心かな姨捨山の月も見なくに　有明山　更科の里よりまへにかヽへたる山なり、後鳥羽院の御製に、　片敷の衣手さむく時雨つヽ有明の山にかヽるむら雲　淺間山　上野國へ下るに、武藏野より北に見えたり、伊勢物語のうたに、業平朝臣、　信濃成淺間のたけにたつけふり遠近人の見やはとがむる　諏訪の海　水海也、中に湯あり、冬になれば此海水はりつめ、そのうへを道にして行かよふ、俗に此氷のうへに鹿の足あとあれば、是神の通給ふ跡なりとて、是をしるしに渡ると也、　諏訪の海の氷の橋の通路は神の渡りてとくるなりけり　桐原　望月　兩所共に牧在所也、望月はあしたの宿よりやはたの宿の外にある宿也、西行法師のうたに、　望月のみまきの駒はさむからし布引山を北とおもへば　須賀荒野　戸隱山　高月山　幾ケ嶺　筑間川　田毎月

雜載

〔延喜式〕

〈二十八兵部〉

p.1389 諸國健兒〈〇中略〉　信濃國一百人〈〇中略〉　

p.1390 諸國器杖〈〇中略〉　信濃國〈甲二領、横刀三口、弓卅六張、征箭卅六具、胡簶卅六具、〉

〔日本書紀〕

〈七景行〉

p.1390 四十年十月癸丑、日本武尊發路之、〈〇中略〉日本武尊曰、蝦夷凶首咸伏二其辜一、唯信濃國(○○○)越國頗未レ從レ化、

〔日本書紀〕

〈十四雄略〉

p.1390 十一年十月、鳥官之禽、爲二莵田人狗一所レ囓死、天皇瞋黥レ面而爲二鳥養部一、於レ是信濃國直丁、與二武藏國直丁一侍宿、相謂曰、嗟呼我國積鳥之高同二於小墓一、旦暮而食、尚有二其餘一、今天皇由二一鳥之故一而黥二人面一、太無二道理一、惡行之主也、〈〇下略〉

〔日本書紀〕

〈十六武烈〉

p.1390 三年十一月、詔二大伴室屋大連一、發二信濃國男丁一作二城像於水派邑一、仍曰二、城上一也、

〔日本書紀〕

〈二十九天武〉

p.1390 十三年二月、丙子、是日遣二三野王、小錦下采女臣筑羅等於信濃一令レ看二地形一、將レ都二是地一歟、　閏四月壬辰三野王等進二信濃國之圖一

〔三代實録〕

〈四十七陽成〉

p.1390 仁和元年二月八日甲午、聽下信濃國以二乘田三十町一營二國厨佃一、但其地子任レ例進二納太政官厨一永以爲上レ例、彼國營レ佃自レ此始焉、

〔十訓抄〕

〈中〉

p.1390 信濃國は、極めて風はやき所也、是によりて、諏訪明神の社風の祝と云ものを置て、深くこめすべく祝ひ置て、百日の間尊重する事也、

〔吾妻鏡〕

〈三十三〉

p.1390 暦仁二年〈〇延應元年〉十一月一日丙寅、寅刻西方雷電數度、午刻以後震動、大風甚雨、近日信濃國司、初任二撿註一事有二其沙汰一、而諏訪五月會、并御射山頭人等企二訴訟一、相二當神事一頭番之輩、有下預二免許一之先例上、但被レ優二神事一、雖レ被レ免二其年一、以二後年一於レ被レ遂二行其節一者、不レ可レ有二免除一之由云云、仍今日有二評定一、被レ尋二問先例於當社大祝信濃權守信重一云云、

〔萬葉集〕

〈十四東歌〉

p.1390 信濃奈流(シナノナル)須我能安良能爾(スガノアラノニ)、保登等藝須(ホトヽギス)、奈久許惠伎氣婆(ナクコヱキケバ)、登伎須疑爾家里(トキスギニケリ)、　右一首、信濃國歌(○○○○)、　相聞〈〇中略〉　

p.1391 比等未奈乃(ヒトミナノ)、許等波多由登毛(コトハタユトモ)、波爾思奈能(ハニシナノ)、伊思井乃手兒我(イシヰノテコガ)、許登奈多延會禰(コトナタエソ子)、　信濃道者(シナノヂハ)、伊麻能波里美知(イマノハリミチ)、可里婆禰爾(カリバ子ニ)、安思布麻之牟奈(アシフマシムナ)、久都婆氣和我世(クツハケワガセ)、　信濃奈流(シナノナル)、知具麻能河泊能(チクマノカハノ)、左射禮思母(サヾレシモ)、伎彌之布美氐婆(キミシフミテバ)、多麻等比呂波牟(タマトヒロハム)、　中麻奈爾(ナカマナニ)、宇伎乎流布禰能(ウキヲルフ子ノ)、許藝氐奈波(コギテナバ)、安布許等可多思(アフコトカタシ)、家布爾思安良受波(ケフニシアラズバ)、　右四首、信濃國歌、