櫛/名穩

〔新撰字鏡〕

〈木〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0387 梳、〓〈同色魚反、櫛、久志、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十四/容飾具〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0387 櫛 説文云、櫛、〈側瑟反、和名久之、〉梳枇總名也、

〔東雅〕

〈八/器用〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0387 櫛クシ 伊弉諾神、並に素戔烏尊の湯津爪櫛、鹽土老翁の玄櫛などいふもの見えたれば、〈舊事、古事、日本紀等の書に、〉因來る所すでに久しき物也、そのクシといひしは義詳ならず、釋日本紀に、並訓久志といふ事見えたり、櫛をクシといふも、並(ナラブ)之義と見えたり、異朝にして櫛比といふはよのつねなり、

〔源氏物語〕

〈十七/繪合〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0387 院〈○朱雀〉にもかゝることきかせ給て、うめつぼに御ゑどもたてまつらせ給へり、〈○中略〉御せうそこはたゞことばにて、院の殿上にもさぶらふ、左近中將を御つかひにてあり、かの大ごくでんの御こしよせたる所のかう〳〵しきに、
身こそかくしめのほかなれそのかみの心のうちをわすれしもせず、とのみあり、聞え給はざらんもいとかたじけなければ、くるしく覺しながら、昔の御かんざし(○○○○)のはしを、いさゝかおりて、 しめのうちはむかしにあらぬ心ちして神代のことも今ぞこひしき、とて花だのからのかみにつゝみて參らせ給、

〔歷世女裝考〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0387 櫛をかんざしともいひし事 是はむかし梅壼齋宮にて〈俗にいふおものいみ〉伊勢へ下り給ひし時、別れの櫛とて、帝御てづから、齋宮の御頭へさし玉ひし、むかしの櫛のはしを〈木櫛を定式とす〉かきとりて、歌にそへ玉ひたる也、

〔源氏物語〕

〈三十四/若菜〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0388 中宮よりも、御さうぞく、くしのはこ、心ことにてうぜさせ給て、〈○中略〉姫宮の御方にまいらすべくの給はせつれど、かゝることぞ中にありける、
さしながら昔を今につたふれば玉のをぐしぞ神さびにける、院御らんじつけて、あはれにおぼし出らるゝことどもありけり、あえ物けしうはあらじと、ゆづりきこえ給へるほど、げにおもたゞしきかんざしなれば、御かへりもむかしの哀をばさし置て、
さしつぎにみる物にもがよろづ世をつげのをぐしのかみさぶるまで
○按ズルニ、此文亦櫛ヲ稱シテカンザシト云ヘルナリ、

櫛初見

〔古事記〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0388是欲見其妹伊邪那美命、追往黃泉國、〈○中略〉故刺左之御美豆良、〈三字以音、下效之、〉湯津津間櫛之男柱一箇取闕而、燭一火入見之時、宇士多加禮斗呂呂岐氐、〈○中略〉八雷神成居、於是伊邪那岐命見畏而、逃還之時、其妹伊邪那美命言、令吾、卽遣豫母都志許賣、〈此六字以音〉令追、爾伊邪那岐命、取黑御鬘投棄乃生蒲子、是摭食之間逃行、猶追亦刺其右御美豆良之湯津津間櫛引闕而投棄乃生笋、是拔食之間逃行、

〔古事記傳〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0388 湯津石村(ユツイハムラ)、〈○中略〉師〈○賀茂眞淵〉説に、五百(イホ)を約て由(ユ)と云り、〈○註略〉湯津桂(ユツカツラ)、湯津爪櫛(ユツツマグシ)なども、枝の多く齒の繁きを云、

〔古事記傳〕

〈九〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0388 於湯津爪櫛取成其童女ハ、其童女袁湯津爪櫛爾取成(ソノヲトメヲユツツマグシニトリナシ)と訓べし、湯津は、上湯津石村の下〈傳五の七十一葉〉に云るが如し、〈○註略〉爪(ツマ)は〈借字〉加都麻(カツマ)の上を略けるなり、加都麻(カツマ)は堅津間(カタツマ)にて、〈多都を切(ツヾ)むれば都(ツ)なり、〉櫛の齒のしげくて間(マ)の堅くせまれるを云り、〈(中略)古の櫛は、爪の形したりとも、妻櫛の意なりともいふは誤なり、〉櫛は本串(クシ)と同シ名なり、黃泉(ヨミ)ノ段に火を燭(トモ)し賜ふを思へば、上代の櫛の齒は、やゝ長かりしかば、串と同〈シ〉類〈ヒ〉 ぞかし、

〔歷世女裝考〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0389 櫛の始原、擲櫛を忌緣、湯津津間櫛の考、
此説〈○古事記傳〉に據ば、湯津津間〈又爪〉櫛といふは、何にて作りたる質かはしられねど、齒はしげくせまりて、今の櫛よりは長き物なりといふ解なり、〈○中略〉竊に謂く、〈○岩瀨百樹、中略、〉櫛の火に燃るをもて、木なる事論をまたず、すでに湯津桂といふ木もありしをや、〈○中略〉和名抄〈木部〉柞四聲字苑云、柞和名由志、漢語抄に云、波々曾木の名、堪梳也とあり、湯と志とは音近きゆゑに、湯津の津を後年には由之といひけんかし、〈○中略〉これらに據ば、柞は和漢ともに梳材〈梳は櫛と同字〉なる事和漢同じ、柞を近くは國によりて、はゝそ、くしの木ともいふ、〈本草啓蒙〉しかれば今僞黃楊とする櫛は柞にて、神代の湯津津間櫛も柞木櫛なるめりとぞおもはるゝ、〈○中略〉さて津間櫛といふ名義、〈○中略〉竊におもへらく、齒のつまるは櫛の常體なり、けだし梳に對てつま櫛といはんも穩ならず、おのれは袖中抄に、つまは妻の義かといふ説に從事、愚按に、妻櫛といふ義は、左右の髩に相對て双つ刺物なれば也、此櫛一枚にては奇にて用をなさず、それいかんとなれば、上代の男は、髻をば一ツに結て双にわけ、左右へ綰たるを櫛にて刺貫て宿おくなり、これを髩といふ、〈○註略〉されば件の黃泉段にもはじめは左りのびんづらの櫛をなげ玉ひ、二度目は右のびんづらの櫛をなげ玉へり、〈○註略〉必一對なればならぬ物ゆゑに、夫婦に儀て夫婦櫛といひけんかし、〈○中略〉一日學友來りて物語のつひで、櫛の事をかたりしに、いふやう前年西遊せし時、南都の達識穗井田忠友翁の宅にて〈同人撰〉觀古雜帖〈寫本〉といふ物を視し中に、一古寺の寶物とて、神代の櫛を視て摸寫たるを一覽して、心に忘ずしか〴〵なりしときゝてうれしくその儘席上にて、闇記の圖を寫させたるを下に出す、此圖をみれば、むかしは櫛をかんざしともいひしはうべなり、髮をとかすべき物にあらず、因ておもふに神代に解梳は別に有けんかし、 長さ九寸餘、幅二寸五分餘、木にて作りたる物、作りさま古朴なり、木の質辨じがたしとぞ、此圖を視れば、伊弉諾尊櫛の男桂をかきとりて、火に燭し玉ひて伊弉册尊の屍を照し視玉ひしも、彦火々出見尊のうがやふきあへずのみことの生れ玉ふ所を視玉ひしほどの間ありしも、櫛の大さにて實にとぞおもはるゝ、又黃泉段のところに、櫛を引かきてなげうち玉へば、生笋なりとおもひて、醜女が拔食しも、おのづから櫛の形ち見ゆ、
但しなげ玉へば、神通にてそのまゝ其物となりしなり、

〔日本書紀〕

〈二/神代〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0390 一書曰、兄火酢芹命、能得海幸、弟彦火火出見尊、能得山幸、時兄弟欲互易其幸、故兄持弟之幸弓、入山覓獸、終不獸之乾迹、弟持兄之幸鈎海釣魚、殊無獲、遂失其鈎、是時兄還弟弓矢而責已鈎、〈○中略〉時有一長老、忽然而至、自稱鹽土老翁、乃問之曰、君是誰者、何故患於此處乎、彦火火出見尊、具言其事、老翁印取囊中玄櫛(○○)地、則化成五百箇竹林、因取其竹大目麁籠、内火火出見尊於籠中之于海

櫛製作

〔延喜式〕

〈十五/内藏〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0390 年中所造御梳三百六十六枚、〈二百枚御料、百枚中宮料、六十枚春宮料、並六月十二月、各半分進之、六枚神今食新嘗祭等料各二枚、皆用由志木、〉所須調布一丈六尺、紙卌八張、木綿大五兩二分、木賊大三兩、柳筥四合、三月中旬具數申省、仍令工手依例造備、訖毎十枚分爲一裹、〈裏以白紙、結以木綿、〉十裹盛柳筥漆櫃〈敷白褥〉安漆牙牀案、〈覆以黃表帛裏、結以縹帶二條、〉訖六月一日〈十二月准此〉先進奏狀、内侍執奏、卽寮官四人執案進立殿庭、少退而立、于時内侍宣、持參來、寮官一人稱唯共舁案進詣階下、執筥進内侍、訖舁案退出、〈獻中宮亦准此〉但六月十二月神今食、十一月新嘗料、各付縫殿寮、其東宮御梳、裹〈裹以自紙、結以木綿、〉訖盛柳筥高案、〈敷白布〉先進啓狀、坊官執啓、卽寮官二人執案進立殿庭退出、舍人受案送寮、

〔倭名類聚抄〕

〈二十/木〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0390 柞 四聲字苑云、柞、〈音柞、一音昨、和名由之、漢語抄云、波々曾、〉木名、堪梳也、

〔人倫訓蒙圖彙〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0390 櫛挽 櫛は伊須、黃楊等其外諸の唐木、象牙、玳瑁等をもつて造り、蒔繪金具をも つて彩、各下細工人有、唐櫛は唐よりわたす、其外大阪長町にて造り、又梗槩是を商也、細工人別にあつて、此所ゑうるなり、竹、角、象牙、鯨鰭をもつて造る、

〔和漢三才圖會〕

〈二十五/容飾具〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0391 櫛 音節 櫛 和名久之 枇 和名保曾岐久之〈○中略〉
琉球及屋玖島黃楊木、黃潤文理甚美也、豆州三倉島之産次之、土佐日向阿波又次之、而色帶褐不正黃
豫州出櫛木、〈名加豆於志美〉白色、染黃以爲黃楊(ノ)贋〈本草所謂柞木是乎〉
一種以水木犀櫛不佳、出於伊豫、土佐、日向
一種以伊須乃木櫛、下品多用、出於土佐肥前〈天草〉日向

〔我衣〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0391 女子ノ櫛筓、寬文迄ハ鯨(○)ナリ、其後鼈甲(○○)ノ薄ク黑キヲエリ出シ、頭ニイチヤウ、或ハハヅレ雪ナドノ類ヲ細工セシヲ最上トセリ、後鹿ノ角ヲ蘇枋染(○○○○○○○)ニシテ、朝日ノ櫛筓ト云、上品ナリ、後ニ元祿年中、京都紅工ニテ、銀ニテ角切ガクノ内、或ハ丸ノ内ニ、種々ノ紋ヲ彫スカシニシテ、鼈甲ノ頭ニサス、櫛ノ棟ニモ銀(○○○○○○)ニテ梅ノ枝、或ハ唐竹ナドヲスカシ、サヤノヤウニハメタリ、重キユへ髮下ルトテ後ハ不用、

〔類聚雜要抄〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0391 差櫛銀二兩、〈單切四疋〉同時〈○髮上〉用之、〈○中略〉
懸子納〈○中略〉櫛八十枚、〈螺鈿料二百卌疋、枚別三疋、〉納甲乙〈○懸子〉各四十枚、

櫛種類

〔倭名類聚抄〕

〈十四/容飾具〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0391 細櫛(○○) 唐韻云、梳〈音踈、一訓介都留、〉細櫛也、枇(○)〈毘志反、和名保曾岐久之、〉百刺櫛(○○○)、〈佐之久之〉

〔和漢三才圖會〕

〈二十五/容飾具〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0391 櫛〈○中略〉
櫛齒疏者曰梳、其齒細密相比者曰枇、〈笓箆亦同〉以竹爲之、可髮垢、又枇類可以取蟣虱者曰䇫、〈音雞〉
按今所用者、有解櫛、水櫛、眞櫛、唐櫛、插櫛五品
解櫛(○○)〈止木久之〉齒疏而豫可以解一レ髮、大抵三寸許、二十四齒、所謂梳是也、稍密者有四十齒許者、 水櫛(○○)、〈美豆久之〉卽梳之密者、凡七十四齒許、點水撫整鬢也、
眞櫛(○○)、〈末久之、一云須木久之、〉凡百有餘齒、可以去髮垢、所謂枇是也、
古者竹爲之、細齒相比、故曰笓、後用木、故字亦作枇乎、本枇杷之枇、俗假借用之矣、
唐櫛(○○)、〈太宇久之〉以水牛角或鯨鬐兩端、中編竹相比凡百二十四齒、可以取虱蟣、所謂䇫是也、
插櫛(○○)、〈佐之久之〉以黃楊木、象牙、瑇瑁、或漆塗描金、其齒如水櫛、婦人毎插髮者也、

〔倭訓栞〕

〈前編八/久〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0392 くし 櫛は髮に用る物ゆゑに名とす、歌に別れの櫛、柘の小櫛(○○○○)、築紫櫛(○○○)、刺櫛などよめり、五節に、ゑり櫛(○○○)、まき櫛(○○○)、から櫛(○○○)、した櫛(○○○)、こぐし(○○○)など見えたり、

〔歷世女裝考〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0392 蒔繪の櫛 三ツ櫛
元服法式〈永祿年中の物寫本〉櫛は三ツ一具なり、〈中略〉御櫛三ツ、解、簾、細、桐蒔繪也、解はとかし(○○○)、簾はすき櫛(○○○)なり、細はびん櫛(○○○)なり、

〔好色一代男〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0392 かたみの水櫛
世之介〈○中略〉惜い事をしたと四邊を見れば、黃楊の水櫛(○○)落ちてけり、油臭きは女の手馴し紀念ぞ、是にて辻占を聞く事もがなと、岨づたひ岩の陰道を行く、〈○下略〉

〔雅亮裝束抄〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0392 五せち所のこと
ゑりぐし(○○○○)、まきぐし、かんざしをぐして、五せち所ごとにをきまいるなり、

〔空穗物語〕

〈菊の宴一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0392 后宮、しうかねのくしのはこむようひ、こがねのはこゆほとも、なにゝよろづのありがたき物どもいれて、よの中にありがたき、御すへひたひ、えりぐし、さいし、もとゆひ、おほ宮づかへのはじめの御てうどたてまつり給、

〔類聚雜要抄〕

〈三/五節雜事〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0392 一理髮具〈○中略〉
彫櫛二枚〈○中略〉 一可本所物〈○中略〉 彫櫛六百枚

〔類聚雜要抄〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0393 彫櫛形 黃楊用之 髮上時用之
○按ズルニ、本書ニ圖ヲ掲ケテ、長一寸八分トアリ、

〔枕草子〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0393 七日〈○正月〉は〈○中略〉白馬見んとて、里人はくるまきよげにしたてゝ見にゆく、中の御門のとじきみひきいるゝ程、かしらども一ところにまろびあひて、さしぐし(○○○○)もおち、よういせねばおれなどしてわらふも又おかし、

〔枕草子〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0393 せちは
五月にしくはなし、〈○中略〉わかき人々は、さうぶのさしぐしさし、ものいみつけなどして、さま〴〵からぎぬ、かざみ、ながきね、おかしきおりえだども、むらごのくみしてむすびつけなどしたる、めづらしういふべき事ならねど、いとおかし、

〔枕草子〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0393 あさましき物 さしぐしみがぐほどに、物にさへて折たる、

〔枕草子〕

〈十〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0393 うれしきもの さしぐしむすばせて、おかしげなるも又うれし、

〔神樂歌〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0393 刺櫛
さしぐしは、とうまりなゝつ、ありしかど、たけくのじやうの、あしたにとり、ようさりとり、とりしかば、さしぐしもなしや、さきんだちや、

〔新撰六帖〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0393 くし 前内大臣
明暮てさしぐしもなく成にけりたけふのせうのとるとせしまに
前大納言
君にをきてみせんと思ひしさしぐしを朝夕べに誰かとりけん

〔類聚雜要抄〕

〈三/五節雜事〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0393 一可本所物 差櫛〈上十二枚下十二枚〉

〔元祿曾我物語〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0394 帚掃除世話やかでよし茶屋座敷
しめつけ島田髮、先も跡も長みをなじ程にして、中程により鬠を二筋かけ、〈○中略〉白繻子の疊帶、むすび先は一文字にして、庵形のさし櫛(○○○○○○)、姿見歸りの蹴出しあゆみ、〈○下略〉

〔俗つれ〴〵〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0394 是ぞ妹背の姿山
落し懸の大島田、忍髻の上に中疊平結、先は一文字にして、庵形の插櫛に切金の折菊、〈○下略〉

〔嬉遊笑覽〕

〈一下/容儀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0394 世の人心〈○書名〉に、べつかうの總すかしのさし櫛(○○○○○○○)と見えたり、〈天和貞享のころなり〉透しの櫛は、其後元文頃より、近く天明迄も行はれたり、彫工東雨安親は、奈良辰政が弟子にて出藍の譽あり、安親が女子に彫て與へたる透しの櫛あり、假鍮(シンチウ)にて形角なり、みねの所狹く、齒長し、おもてに水仙の折花をすかしに造りたり、安親は寬文中の生れにて、延享元年身まかれり、此櫛は寶永正德頃にも造れる歟、

〔娵入記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0394 よめ入の條々
一くしの箱、くしのかず三十三あるべし、此内びんのくし(○○○○○)あるべし、これはびんをけづり侍らむためなり、

〔類聚雜要抄〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0394 櫛筥一雙〈甲乙〉 同〈○甲身納銀〉小筥納十二合、〈○中略〉一合、〈差櫛二枚、金(○)也、單功六疋、〉

〔享保集成絲綸錄〕

〈十九〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0394 元祿十七申年二月
覺〈○中略〉
一女のさし櫛、かうがいに、金銀のかな物(○○○○○○)無用に候、尤蒔繪類も結構成仕形無用之事、
右之通被仰出候間、急度可相守候、以上、

〔萬葉集〕

〈九/相聞〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0394 石河大夫遷任上京時播磨娘子贈歌 君無者(キミナクバ)、奈何身裝飾(ナゾミヨソハム)、匣有(クシゲナル)、黃楊之小梳毛(ツゲノヲグシモ/○○○○○ )、將取跡毛不念(トラムモモハズ)、

〔空穗物語〕

〈あて宮〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0395 かくてあて宮、東宮にまいり給事、十月五日とさだまりぬ、きこえ給人々まどひ給ふことかぎりなし、〈○中略〉かくて其時になりて、御車かずのごとし、御供の人しな〴〵さうぞくきて、日のくるゝをまち給ほどに、なかたゞの中將の御もとより、蒔繪のをきぐちのはこよつに、ぢんのさしぐし(○○○○○○○)よりはじめて、ようづにしつりぐしの御くしあけの御てうど、よき御すゑひたひ、さいし、もとゆひ、ゑりぐしよりはじめてあり、

〔榮花物語〕

〈八/初花〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0395 しうかねのはこのふたに、鏡をいれ、沈のくし、白かねのかうがいをいれて、〈○下略〉

〔空穗物語〕

〈樓の上之下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0395 殿は人の御しだいにの給へと、さべき事なれど、人は心こそはづかしけれとて給つ、かれらのすきばこ、ひとつにはからあや五疋、いまひとつには(○)、ぢむしたんのく(○○○○○○○)しあるを、たいの御方に奉らせ給とて、かんの殿、
思ひやる心をつげのくしならばおぼつかなくはなげかざらまし、とて奉り給へれば、御返、
そのかみにふりにし物をあらたむるこれこそつげのをぐしとはみれ、をばのと思給へらるるときこえ給へり、

〔嬉遊笑覽〕

〈一下/容儀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0395 或諸侯の藏物に、紫檀にて作れる古き櫛二ツ有、一ツは形圓く、傍に短き柄ありて自在に動く、今の毛筋通しなどの用をなすもの歟、一ツはみねを鳥の形に彫たり、

〔俗つれ〴〵〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0395 御所染の袖色ふかし
しめつけ島田髮、前も後も長み同じことにして、中ほどに平鬠を懸け、插櫛白檀の木地(○○○○○○○)に、珊瑚珠の切入、梅の古木に氣を盡し、

〔一話一言〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0395 平賀鳩溪
平賀源内、名は國倫、字は士彜、鳩溪と號す、狂名は風來山人、又天竺浪人と號す、讃州志度浦の人也、 〈○中略〉明和七年庚寅の頃、長畸に赴く、大通詞吉雄幸左衞門が家を主とす、阿蘭陀本草を學び、エレキテルセイリテイトといへる奇器〈人身の火をとりて病をいやす器なり〉をつくる事を學び得て歸り、專ら蠻學をなす、或は伽羅の櫛(○○○○)〈銀むね、象牙の齒、月に郭公などの細工あり、〉をつくり、或は金から革等を作りてつねの産とす、

〔平賀鳩溪實記〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0396 源内櫛の事
源内は、種々心を配りて、兎角世上へ流行事を工夫しけるが、風と思ひ付て、伽羅を長崎より多く持參しけるを取出して、是を櫛に挽せて、銀にてむねを一分通りに覆輪を懸、是を世上へ弘めんと、當時吉原にて名高き遊女、丁子屋の雛鶴こそ歷々も御出なさるゝ名あるものなれば、何卒彼にさゝせんと便をもとめけるに、こゝに一瓢といへる牽頭(タイコ)持あつて、淺草茅町に住居しけるが、彼を密に招き申しけるは、〈○中略〉何卒其方が宅へ招き、我等が胸中をはらさせよと餘儀なき體に申けり、一瓢、〈○中略〉早速承引して、〈○中略〉雛鶴が座敷へ行、四方山の物語して申しけるは、雛鶴さまへ、近頃餘儀なき御無心御座候御叶ひ可下やと改めて賴ければ、〈○中略〉相應の事ならば、承知致さんと申ける時に、〈○中略〉一瓢は大きに悦び、直に源内が宅へ行て、しか〴〵の趣を語りければ、源内は大きに悦び、明るをまつて一瓢が宅へおもむきけり、
源内雛鶴へ初て對面之事
斯て源内は約束の日限にも及ければ供人召連れ、一瓢が方へ趣きけるが、未だ雛鶴は來らず、一瓢も酒肴の設念比にして、今やをそしと待居たり、程なく雛鶴は駕籠にうち乘、一瓢が表口へ這入ければ、待まふけたる一瓢、やがて座敷へ案内して源内へ引合せけり、源内も興に入て、酒數獻に及て、已に日も西山に傾きたれば、源内雛鶴へ申けるは、先もつて今日は日比の存念晴候て、此上もなき大慶なり、今日の悦、何ぞ進上申たけれど、指したる土産もなし、是は近比麁末ながら、先年我等長崎表より持參せし伽羅を以て、態々此度挽せし櫛也、用立てくれられなば、大悦至極と 述ければ、雛鶴も嬉しげに、金銀のかゝりしは、さして賞翫もなき物なれど、唐土より長崎へ來る伽羅の、また江戸迄持參し玉ひしを、私に給り候御志と申、遠來の名器、實に匂ひゆかしく候也、以來は他の櫛を用ゆまじと、源内に暇乞して、淺草さして歸りける、源内も立別れ、一瓢に一禮述て、我家をさして歸りけり、源内も滿足せしとかや、此櫛世上にて源内櫛と名付、江戸一統、今以て流行す、されども其始る所を不知なり、

〔延喜式〕

〈四十一/彈正〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0397 凡内命婦三位已上、聽象牙櫛

〔類聚雜要抄〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0397 彫櫛形〈○圖略〉
大治五年二月廿一日、中宮藤聖子立后料、待賢門院令申請給時、以牙(○)作天令進給了、

〔我衣〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0397 元文中、象牙ノ櫛(○○○○)カウガイハヤル、男女トモ身ノ飾リ奢ルコトハ、享保以來甚シ、

〔嬉遊笑覽〕

〈一下/容儀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0397 椀久物語、女乞食のことをいふ處、この淺ましき身となりても、黑髮そゝけず、一筋元結かけて、象牙の半をれたるさし櫛、これくせもの、昔のおもはれ、〈○中略〉その後、元文ごろ象牙櫛筓はやる、〈○中略〉今も吉原にて、松葉屋半左衞門方には、正月二日遊女ども象牙の櫛をさし、昔の餘風ありとぞ、

〔好色一代女〕

〈六〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0397 暗女晝化物
人の目立たぬやうにはしけれど、顏に白粉、眉の置墨、丈長の平髻を廣疊に掛けて、梅花香の雫を含ませ、象牙の插櫛、大きに萬氣を著けて拵へ、

〔賤のをだ卷〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0397 其比〈○寶曆、中略、〉象牙の櫛筓も流行セり、蒔繪などさせてさしたり、奇麗にてよかりき、

〔嬉遊笑覽〕

〈一下/容儀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0397 四角めきたる大形に齒を深くひきたる櫛、米仲が獨吟歌仙に、關の地藏を唄にゆりすて、角櫛(○○)を下駄の齒などとさみせられ、〈是享保中の作なり〉寶曆頃にもはやりけるにや、其頃の畫にみゆ、遊女の二枚櫛は其後なり、櫛の形は同じ樣なり、

〔好色一代男〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0398 是非もらひ著物
鼈甲の差櫛(○○○○○)が本蒔繪にて、三匁五分で出來るなどと、はしたなく申せしは、聞いて戀も覺ぬべし、

〔我衣〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0398 明曆年中迄ハ大名ノ奧方ナラデハ鼈甲ハ不用、〈○中略〉元祿ノ比ヨリ世上活達ニナリテ、鼈甲モハヤアキテ、蒔繪ナドカヽセ、鼈甲モ上品ヲエラビ、價ノ高下ニカヽハルトイヘドモ、金二兩ヲ極品トス、享保頃ヨリ鼈甲ノ上品五兩七兩トナル、依之常體ノ女求ルニ不力、木ノ櫛ニ色々ノ蒔繪切金等ヲカヽセ、百疋、二百疋ニテ求ム、ソレユへ寬保年中ヨリ、細工人ニ上手出來テ、水牛(○○)ノ色ヨキニ鼈甲ノ黑斑ヲ入テ、上鼈甲ノマガヒニ賣、是モ始ハ廿目ホドモ致シケル、櫛(○)筓トモニ上手ニ似セタリ、

〔物類稱呼〕

〈四/器用〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0398 櫛くし 京大坂にて、たいまいのくし(○○○○○○○)といふを、江戸にてべつかうのくしと云、

〔倭訓栞〕

〈前編二十/爾〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0398 にたり、〈○中略〉櫛にいふは、牛角を和らげて、玳瑁に似せたるもの也、

〔歷世女裝考〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0398 璋瑁の櫛〈俗にいふべつかふ〉
賢女心の鏡〈○書名、中略、〉われは此年まで、髮の中に小枕の外は、蒔繪の木櫛に、黑き筓を〈くぢらなるべし〉さして花をやりしに、娶のあたまをみれば、透玳瑁の櫛(○○○○○)をさし、筓の外にかんざしとやらいふ物、何の用に立事ぞ、

〔空穗物語〕

〈樓の上之下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0398 大にのぼり、さて殿にしろがねのすきばこ、廿がう、あやちうのみねに、らてんすりたるくし(○○○○○○○○○)など奉りたるないしのかみ、宮の御方になゝつ、我御方にもの御方々々にも二三づゝくばり奉らせ給、

〔類聚雜要抄〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0398 甲筥懸子、納螺鈿櫛四十枚

〔新編鎌倉志〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0398 鶴岡八幡宮 神寶
十二手匣 壹合小道具不備、箱ノ内ニ圖〈○圖略〉ノ如ナル櫛三十アリ、櫛ノ徑三寸八分餘、高サ一寸 二分、厚サ三分、櫛ノ背ニ淺ク鑿タル穴十三アリ、元靑貝ヲ入タル物ニテ、今ヌケタル跡ナリ、間靑貝ノ見ユルモアリ、穴ノクバリ、皆三二三二三トアリ、木ハイスト云フ、

〔類聚雜要抄〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0399 伏輪各三疋 銀三分 二隻四枚也

〔嬉遊笑覽〕

〈一下/容儀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0399 同書〈○類娶雜衷抄〉銀にて、伏輪ある細き形の櫛あり、〈○中略〉伏輪は、今、銀むねといふと同じ、

〔笑委集〕

〈十二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0399 七が、いでたつしやうぞくには、〈○中略〉黑髮島田とかやにゆひあげ、銀ふくりんに蒔繪かきたる玳瑁の櫛(○○○○○○○○○○○○○○○○)にて前髮をおさへ、紅粉を以て面をいうどり、さもあてやかにいでたちけり、

〔我衣〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0399 正德ノ比、厚ムネノ木グシ流行、棟ニ金銀粉ニテイツカケ(○○○○)ヲシタリ、甚宜ク見ヘタリ、

〔嬉遊笑覽〕

〈一下/容儀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0399 透しの櫛は、其後元文頃より近く天明迄も行はれたり、〈○中略〉其後はやれるは、齒の處玳瑁水牛にて、たけ短く面を廣くして、銀の覆輪(○○○○)、種々の摸樣をすかしに造りたり、

〔類聚雜要抄〕

〈三/五節雜事〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0399 一可本所物 蒔櫛(○○)

〔歷世女裝考〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0399 蒔繪の櫛(○○○○) 三ツ櫛
江戸にても、享保の比まきゑ櫛、流行しと古老語れり、又櫛の峯に銀のふくりんを懸たるに蒔繪したる物はやり、明和に至ては、まきゑすたれ、竪一寸六分、横六寸許りの甲のべつかふの櫛はやりしとぞ、〈横長のくしはやりたるは、根なし草にも見ゆ、〉天明より後文化まで四十五年の間は、まきゑのくし世にすた り、近年むかしにかへりて、蒔繪の木櫛はやるは、民歸樸といふべし、

〔嬉遊笑覽〕

〈一下/容儀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0400 葛藤集、證文に足手そらなる十年季〈秀億〉朱ぬりの櫛(○○○○○)は誰かみつらむ〈渭舟〉

〔賤のをだ卷〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0400 一衣類の色も、其比〈○寶曆〉は、丁子茶と云色流行出て、男女貴賤を論ぜず、賤者のひとつ布子さへ、丁子茶に染て著たり、〈○中略〉櫛は朱ぬりの、山形の平たく横へ長きをさしたり、〈○中略〉其頃の歌に、丁子茶と五寸もやうに日傘、朱ぬりの櫛に花のかんざし、とて貴賤吟みたり、

〔保元物語〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0400 爲朝生捕被流罪
九月〈○保元元年〉二日湯屋ニ下タル時、三十餘騎ニテ押寄テケリ、爲朝眞裸カニテ、合木ヲ以テ數多ノ者ヲバ打伏タレ共、大勢ニ取籠ラレテ無云甲斐搦ニケリ、季實判官請取テ、二條ヲ西へ渡ス、白キ水干袴ニ、赤キ帷子ヲ著セ、髻ニ白櫛(○○)ヲゾ指タリケル、北陣ニテ叡覽アリ、公卿殿上人ハ不申見物ノ者市ヲナシケリ、

〔安齋隨筆〕

〈前編九〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0400 一五節櫛(○○○) 五節ノ童御覽の時、舞姫御前に參りて、色々の紙を重ねて櫛を包たるを、御前にさし置て退く也、御目とまりたる舞姫の櫛をば取召るゝ也、御前に櫛置たる體、古キ五節の繪卷物に見たり、

〔公事根源〕

〈十一月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0400 五節 同日、〈○中丑日〉丑二ある時は、上〈ノ〉丑〈ヲ〉用、式〈ノ〉下〈ノ〉丑の日〈ヲ〉用也、中〈ノ〉丑の日をば、五節〈ノ〉帳臺試といふ、常寧殿にて主上御覽あり、五節舞姫は五人なり、〈○中略〉御殿の廂にて亂舞あり、くしなどををかる、昔は年々におこなはる、いまは大嘗會の時より外はなきにや、

〔雅亮裝 抄〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0400 五せち所のこと
五せち所に、かむだちめたちいられば、くしは、やなゐばこにいれてまいらすべし、〈○中略〉
ひめ君のさうぞくとらの日〈○中略〉 すゑひたひかみあげまうく、かんざし、さいし、四すぢあるを本所にまうく、からぐし、したぐし、ゑりぐし、こぐし、しかい、〈○絲鞋〉これらは、くら人がたにまうく、

〔類聚雜要抄〕

〈三/五節雜事〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0401 一同〈○童女〉頭物忌付事
差櫛一説木櫛ヲバ不用シテ、其形ニ作テ、其體ニ色取テ、髮ニ當所ヲ一兩所削懸テ、髮ニカヽヘサセテ差説アリ、但近來ハ櫛ヲバ自本ソラシ造也、又サヽズシテ童ニ付、殿上人ノ持之、但殿上人獻時者、件櫛中ニ物忌ヲ付也、

〔榮花物語〕

〈八/初花〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0401 五節、廿日〈○寬弘五年十一月〉まいる、〈○中略〉御前に扇おほく候中に、蓬莱つくりたるを、はこのふたにひろげ、日かげをめぐりて、そのなかにらてんしたるくしどもを入て、しろひ物など、さべいさまにいれなして、おほやけざまにかほしらぬ人して、中納言の君の御つぼねより、左京の君のおまへにといはせて、さしをかせつれば、かれとりいれよなどいふは、かのわが女御どの〈○義子〉より給へるなりと思ふなりけり、またさおもはせんと、たばかりたる事なれば、案にははかられにけり、たき物をたてぶみにして、かみにかきたり、
おほかりしとよの宮人さしわけてしるき日かげをあはれとぞみし、彼つぼねにはいみじうはぢけり、宰相〈○實成〉もたゞなるよりは心ぐるしうおぼしけり、

〔榮花物語〕

〈二十七/衣の珠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0401 大宮〈○藤原彰子〉この月〈○萬壽三年正月〉のうちに覺せたゝせ給、〈○中略〉三位僧都〈○永圓〉は御いとこにてないげし給へれば、それ御ぐしおろし奉らんとてあるに、關白殿御はさみ奉らせ給に、御めもくれまどひて、いみじうなかせ給に、とのゝ御まへ〈○藤原道長〉かくならせ給を、このよの御さいはひはきはめさ、せ給へり、後生いかにと思きこえさせ給へりつるに、いとうれしう心やすき御事なりと、そゝのかしきこえさせ給へれど、さばかりめでたき御有さまの、にはかにひきかへさせ給をば、とのゝ御まへをはじめたてまつり、殿ばらうへの御かた〴〵せきもあへずなかせ 給へば、宮の御前いとあはたゞしげに覺しめしたり、〈○中略〉辨の内侍ひるいみじうさうぞきて、さしぐし(○○○○)にものいみをさへつけて、思事なげなりつる程は、さいふともいかゞと覺しつるに、〈○下略〉

〔建禮門院右京大夫家集〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0402 やしまのおとゞ〈○平重盛〉とかや、このごろ人はきこゆめる、その人の中納言ときこえしころ、五節にくしこひきこえたりしをたぶとて、くれなゐのうすやうに、あしわけをぶねをむすびたるくしさしたるが、なのめならぬに、かきてをしつけられたりし、蘆分のさはる小舟にくれなゐのふかき心をよするとをしれ〈○返歌略〉

〔吉記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0402 治承四年十一月十九日丁卯、今日五節童女御覽也、〈○中略〉人々參中宮御方、依淵醉也、〈○中略〉侍臣等亂遊殆超近年、白拍子之次獻櫛、兩貫首强雖獻、依衆議獻之、次雲客推參八條殿、今樣朗詠亂舞、事畢分散、

〔明月記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0402 建曆三年十一月十二日、今日風流櫛等構出、送之按察、火桶〈押錦以櫛爲炭、以白物灰、櫛廿枚入之、〉炬屋一、〈以櫛葺其上檜皮、以薄樣立蔀、〉十三日、御前試了、舞姫退下、〈○中略〉末座殿上人等入五節所櫛、六位藏人等來奪取、蒙衣雜女又如此、 十五日、沐浴、未時欲仁和寺之間、季嚴僧都來臨相逢、卽參御室、依今日念佛也、書著到、此次雖異樣、所乞取櫛十裹、裹薄樣入於五節所、乞得之由申也、實風流櫛殘等也、 十六日、參内候鬼間方、以治部大輔知長櫛數裹、已爲毎年事、依此事參入也、

〔建武年中行事〕

〈十一月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0402 寅日、殿上の淵醉あり、朗詠、今樣などうたひて、三ごんはてゝ亂舞あり、次第に沓をはきて、女官の戸よりのぼりて、うへをへて御ゆ殿のはざまより下におりて、北のらんをめぐりて、五節所にむかふ、其後所々に參て、すいざんなどあり、后宮、女院など、えんすいあれば、けふあすの程也、けふ御前の試あり、御殿のひさしに亂舞あり、櫛などぞをくめる、

〔近世奇跡考〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0402 相撲櫛(○○○)
元祿の頃を盛りに經たる兩國梶之助と云相撲取、櫛をさし始しより、其頃前髮ある相撲取、櫛を さす事はやりて、鬼勝象之助、面に白粉をぬり、二枚櫛をさしけるよし、相撲大全に見ゆ、何のゆゑにしかせしと云に、其頃前づけと云手をとる事はやりけるが、彼等それをつたなき事とし、其手をとらざる證とて櫛をさしけるとぞ、

〔嬉遊笑覽〕

〈一下/容儀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0403 安永中、平賀源内、菅原櫛(○○○)といへるを工夫し出しけるころ、或人狂歌を贈りけるに、醉て來て小間物見せの御手際は仕出しの櫛もはやる筈なり、返し、かゝるとき何とせん里のこま物や伯樂もなし小づかひもなし、此櫛も瞬息の間のことゝ見ゆ、今其形狀をしらず、

〔類聚雜要抄〕

〈二/調度〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0403 長曆二年八月一日、法性寺座主敎圓僧都參會關白相府、〈○藤原賴通〉語云、自所々御調度等被入法性寺書狀云、櫛巾、御筥一合、又御櫛筥納物之中在尼櫛(○○)、〈○中略〉殿下仰云、去月十五日、於御堂此事、答知之由、退尋見、誠有櫛巾筥、但體有故云々、〈○中略〉又仰尼櫛、是昔尼所指之櫛名也、皆有其櫛樣幷所一レ指云々、

櫛用法

〔貞丈雜記〕

〈二/人物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0403 一女の髮にくしかうがいさす事いにしへはなし、古はよき女房衆は髮をわげてゆう事なし、髮をさげし也、今とてもさげ髮には櫛かうがいをさす事なし、古も同じ事なり、古もげす女は、髮を上げてつのぐるといふ事にするゆへ、かうがいをさしてわげをかためし也、〈髮をくるくるとまきてかうがいをさす故、かうがいはつのゝやうなり、依之つのぐると云ふ、かうがいも昔のは甚みじかきなり、〉されどもくしをばさゝぬなり、髮にくしさす事はいむ事也、

〔源氏物語〕

〈六/末摘花〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0403 すみのまばかりにぞ、いとさむげなる女房、しろき衣のいひしらずすゝけたるに、きたなげなるしびら、ひきゆひつけたる腰つき、かたくなしげなり、さすがにくしをしたれて(○○○○○○○)、さしたる(○○○○)ひたいつき、ないけうばう、ないしどころの程に、かゝるものどものあるはやとおかし、

〔大鏡〕

〈一/三康〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0403 つぎのみかど、三條院のみかどと申き、〈○中略〉院にならせ給ひて御目を御らんぜざりしこそいといみじかりし、ことに人の見たてまつるには、いさゝかかはらせ給ふ事おはしまさゞ りければ、そらごとのやうにぞおはしましける、御まなこなども、いときよらにおはしますばかり、いかなるおりにか、時々は御らんずる時もありけり、みすのあみをの見ゆるなどもおほせられて、一品宮ののぼらせ給へりけるに、弁のめのとの御ともに候が、さしぐしを左にさゝれたり(○○○○○○○○○○○○)ければ、あごよ、などくしはあしくさしたるぞとこそおほせられけれ、

〔雅言集覽〕

〈四十七/左〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0404 くしは右にさすべきものを、左にさしたるを、三條院の見とがめ給へるなり、

〔大和物語〕

〈丁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0404 昔、やまとのくにかづらきのこほりにすむおとこ有けり、〈○中略〉この女いとわろくなりにければ、男わづらひて、かぎりなく思ひながらめをまうけてけり、〈○中略〉かくて月日おほくへて、思ひやるやう、つれなきかほなれど、女の思ふ事いといみじぎ事なりけるを、かくいかぬをいかに思ふらんとおもひ出て、ありし女のがりいきたりけり、ひさしくいかざりければ、つゝましくてたてりけり、さてかいまめば、われにはよくてみえしかど、いとあやしきさまなるきぬをきて、おほぐしをつらぐしにさしかけてをり(○○○○○○○○○○○○○○○○○)、手つからいひもりをりけり、いといみじと思ひてきにけるまゝにいかず成にけり、

〔雅亮裝束抄〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0404 五せち所のこと
物いみのひろさをはからひて、かみをばとるなり、たうにち、は、さしぐしといふものを、右の物い(○○○○○○○○○○)みのかしらに、よこさまにさすなり(○○○○○○○○○)、このくし、これにはさゝず、ながさ六七寸ばかり、齒のたけ五分ばかりあるを、みねのかたへよくそらしあげて、なかをさしたるとぞ申す、

〔歷世女裝考〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0404 横櫛
今、市中にていやしき女、櫛を斜に插を横櫛と唱(○○○○○○○○○○)て、よしある女中は假にもせの事なり、よこぐしなるは、心ねもそれとしられていやしげなり、むかしもさる例あり、大和物語〈○註略〉風吹ばの歌の下に、女のがりいきたりけり、〈業平なり〉ひさしくいかざりければ、つゝましくてたてり、さてかいまめ ば、われにはよくてみえしか、いとあやしきさまのきぬきて、大ぐしをつらくしにさしかけてをり、てづからいひもりをりけり、いといみじとおもひてきにけるまゝいらずなりにけり、とあり、こゝにつらくしとあるは、横面櫛にて、乃横に大なる黃楊の櫛を刺て居たるにはあらぬか、〈○下略〉

燃櫛爲燭

〔古事記〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0405 故伊邪那美神者、因火神、遂神避坐也、〈○中略〉故爾伊邪那岐命詔之、愛我那邇妹命乎、〈那邇二字以音、下效此、〉謂子之一木、〈○中略〉於是欲見其妹伊邪那美命往黃泉國、爾自殿騰戸出向之時、伊邪那岐命語詔之、愛我那邇妹命、吾與汝所作之國未作竟、故可還、爾伊邪那美命答曰、悔哉不速來、吾者爲黃泉戸喫、然愛我那勢命〈那勢二字以音、下效此、〉入來坐之事恐、故欲還旦具與黃泉神相論、莫我、如此白而、還入其殿内之間、甚久難待、故刺左之御美豆良〈三字以音、下效之、〉湯津津間櫛之男柱一箇取闕而、燭一火入見之時、宇士多加禮斗呂呂岐氐、〈○下略〉

〔日本書紀〕

〈一/神代〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0405 一書曰、〈○中略〉伊弉册尊曰、吾夫君尊、何來之晩也、吾已冷泉之竃矣、雖然吾當寢息、請勿視之、伊弉諾尊不聽、陰取湯津爪櫛折其雄柱、以爲秉炬而見之者、則膿沸虫流、今世人、夜忌一片之火、又夜忌櫛、此其緣也、

〔日本書紀〕

〈二/神代〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0405 一云、〈○中略〉是後豐玉姫、果如其言來至、謂火火出見尊曰、妾今夜當産、請勿臨之、火火出見尊不聽、猶以櫛燃火視之、時豐玉姫化爲八尋大熊鰐、匍匐逶蛇、〈○下略〉

〔今物語〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0405 近き御代に五節の比、ゆかりにふれて、たれとかやの御局へ、或女のやんごとなき、忍びて參りたりける事ありけるを、ちときこしめして、いかで御覽ぜんと思しけるまゝに、俄にをしいらせ玉ひけり、とりあへず、ともし火を人のけちたりければ、御ふところよりくしをいくらも取いでゝ、火びつの火にうちいれ給ひたりければ、おくまで見えて、よく〳〵御らんじけり、御心のふぜい興ありていとやさしかりけり、

投櫛絶緣

〔吾妻鏡〕

〈四十〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0405 建長二年六月廿四日戊午、今日居住佐介之者、俄企自害、聞者競集、圍繞此家其死骸、 有此人之聟、日來令同宅處、其聟白地下向田舍訖、窺其隙艶言於息女、息女殊周章、敢不許容、而令櫛之時、取者骨肉皆變他人之由稱之、彼父潜到于女子居所、自屛風之上入櫛、彼息女不意而取之、仍父巳准他人志、于時不圖而聟自田舍歸著、入來其砌之間忽以下、不悲及自害云云、〈○下略〉

櫛爲餞

〔夫木和歌抄〕

〈三十二/櫛〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0406 かたみのくし 能宣朝臣
君にやるかたみのくしはわかれぢの神にまかせていのれとぞ思ふ

〔落窪物語〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0406 明後日くだり給ふとて、左の大い殿にたいめんしたてまつらでは、いかでかはとて參りたまふ、〈○中略〉たれも〳〵御供にくだる人々に、北のかた、いとよくしたる扇二十、螺すりたる櫛、まき繪の箱に白粉入て、こゝの人のかたらひけるして、かたみに見たまへとてとらす、

〔源氏物語〕

〈四/夕顔〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0406 いよのすけ、神無月のついたちごろにくだる、女房のくだらんにとて、たむけ心ことにせさせ玉ふ、またうち〳〵にもわざとしたまひて、こまやかにおかしきさまなる、くし、あふぎ、おほくして、ぬさなどわざとがましくて、かのこうちきもつかはす、
逢までのかたみばかりとみしほどにひたすら袖のくちにけるかな

賜櫛齋宮

〔倭訓栞〕

〈前編四十二/和〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0406 わかれのくし(○○○○○○) 齋宮群行に、天子親く齋宮に櫛をさゝせだまふ、永く都のかたへ歸りたまふなと仰らるゝよし、是を別れの櫛といふといへり、〈○中略〉又傳へいふ、伊勢齋王の御櫛を、和泉國日根郡の澤村の櫛代の祠より調進すといふ、

〔鋸屑譚〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0406 夜擲櫛を忌む事は、神代紀に見えたり、又世櫛を婦女に贈る事を忌むは、蓋齋宮群行辭見天子、天子手自櫛を執らし給ひ、これを其ひたひに加ふ、謂之別御櫛也、

〔西宮記〕

〈臨時五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0406 齋宮三度禊 群行〈大略同野宮
天皇行八省、主水供御手水、次御大極殿、〈○中略〉齋王參入、〈○中略〉天皇以小櫛王額、〈藏人仰作物所小櫛、内侍取傳〉 〈奉櫛之間、天皇示京由云々、〉

〔江家次第〕

〈十二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0407 齋王群行
宸儀渡御大極殿、〈○註略〉藏人持候御笏式幷齋王額櫛筥等、〈此櫛先仰作物所、以黃楊木作、長二寸許、入金銀蒔繪筥、〉〈方四寸〉〈松折枝幷鶴等蒔之、○中略〉 内侍奉仰進齋王許、申近參給、親王近候御前、〈○註略〉 天皇、以櫛刺加其額勅、京〈乃〉方〈仁〉趣〈支〉給〈不奈、〉 次、内侍以櫛筥親王乳毋、〈件櫛、今夜刺之、至勢多頓宮筥云々、〉

〔源氏物語〕

〈十/賢木〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0407 齋宮は十四にぞ成給ける、いとうつくしうおはするさまを、うるはしうしたて奉りたまへるぞ、いとゆゝしきまで見え給を、みかど御心うごきて、別の御くしたてまつり給ふ、いとあはれにてしほたれさせ給ひぬ、

〔大鏡〕

〈一/三條〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0407 齋宮〈○三絛皇女當子〉のくだらせ給ふ、わかれの御くしさゝせ給ひては、かたみに見かへらせ給はぬ事を思ひがけぬに、此院〈○三條〉はむかせ給へりし、あやしとは見奉りし物をとぞ、入道殿〈○藤原道長〉おほせられける、

〔榮花物語〕

〈三十八/松の下枝〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0407 齋宮には、當代〈○後三條〉の女二宮〈○俊子〉ゐさせ給へりつる、九月〈○延久四年〉にくだらせ給ふ、あはれなることどもおほかり、大極殿にて、わかれの御くし(○○○○○○○)などのほど、いとあはれなり、御ぐしあげさせ給ひて、いとかう〴〵しくゑたてゝおはします、

以櫛爲占

〔新撰六帖〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0407 くし 前左京大夫
あふことをとふやゆふげのうらまさにつげのをぐしのしるしみせなん

〔歌林拾葉集〕

〈十一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0407 櫛 信實
あふことをとふや夕げの占まさにつげのをぐしもしるし見せなん
此歌は古記云、兒女子云、持黃楊櫛女三人、向三辻之、又午歲女午日問之、今案三度誦此歌、作堺散米、鳴櫛齒三度、後堺〈ノ〉内〈ニ〉來〈ル〉人、答爲内人言語〈ヲ〉聞推吉凶云々、くしの占といふこと、 かくのごとし、

〔萬代和歌集〕

〈十/戀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0408 占戀といふことを 修理大夫顯季
よゐ〳〵につげのをぐしのうらをしてつれなき人をなをたのむかな
○按ズルニ、夕占ノ事ハ、神祇部雜占篇ニ在リ、參看スベシ、

櫛産地

〔毛吹草〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0408 山城 櫛硯細工 和泉 コギ櫛 攝津 築嶋櫛(ツキジマグシ) 伊勢 山田櫛(ヤウダグシ) 長門櫛〈大閤薩摩入之時、天下一ニ號、〉 紀伊 ユスノ木〈櫛ニ月〉 薩摩 黃楊木(ツゲノキ)〈櫛ニ用之〉

〔諸國名産往來〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0408 諸國名物盡
伊勢 櫛 長門 長府櫛 薩摩 藤櫛

〔後撰和歌集〕

〈十五/雜〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0408 女ともだちのもとにつくし(○○○)よりさしぐしを心ざすとて、
大江玉淵朝臣女
なにはがたなにゝもあらずみをつくしふかき心のしるしばかりぞ

〔七十一番歌合〕

〈中〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0408 四十二番 右 櫛挽
出やらでいとゞ心を筑紫櫛(○○○)はわけの月に山風もがな

櫛工

〔延喜式〕

〈十五/内藏〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0408 雜作手卅三人 造御櫛手二人

〔七十一番歌合〕

〈中〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0408 四十二番 右 櫛挽
いかにせん逢ことかたきゆすの木の我にひかれぬ人の心を

〔雍州府志〕

〈七/土産〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0408 櫛箆 處々造之、其内京極二條北、舟木屋之所作爲良、舟木長門國、而所櫛之黃楊木、幷伊須木之所産也、近世或又以玳瑁象牙之、

〔人倫訓蒙圖彙〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0408 櫛挽〈○中略〉 京櫛挽、寺町通押小路の下、舟木長門、其外所々にあり、伊須の木長門より出、此木を舟木と號す、

〔七十一番歌合〕

〈中〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0409 櫛挽
先これはかりひきてのこきりのめをきらむ

〔和漢三才圖會〕

〈四十六/介甲〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0410 瑇瑁
按瑇瑁甲飾文匣香盒、爲櫛筓〓子等、黑紫色映日見之、有白赤黃橒文、艶美可愛、然脆易折損繼補也、近頃工人、繼櫛齒折者、聊不其痕、但炙温接之耳、

〔歷世女裝考〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0410 瑇瑁を斑なしに作る起立
寺島良安翁、此書〈○和漢三才圖會〉を作りし頃、今の如くべつかふの透所のみ斷截接合事あらば、右の文の下へ其事をいふべきにいはざるは、折たるをつぐ事のみにて、今の職術はしらざりしとみへたり、然ればきりよせてつぐ事は、何れの比及にやあらん、其源を尋ぬべしと、正德〈今より百三十年ばかりまへ〉以來の書どもを、俗にいふぢごくさがしに尋ねけるに、ありげにおもひしにはなくて、おもひの外なる俗書にて一證をえたり、〈○中略〉舊友玳瑁樓照義老人のもとに至りて、〈○中略〉接合事の起立おぼへありやと尋しに、翁謂やう、我家は、今に三代玳瑁の職を業とす、父は元文元年の生れにて、享和十年酉のとし、七十七にて身まかりぬ、父がはなしにきゝしは、享保の中比、長崎より江戸に來りし回國の六部、べつかふ職の者にゆかりありて、杖をとゞめしうち、病に臥し、日を經て全快したる禮謝にとて、べつかふをつぐ事ををしへしより、はじめて櫛筓のをれたるをつぐ事をしり、のちには弟子にもつたへ、世にひろまりしが、いまだ今の如く切拔つぐ事はしらざりしに、元文年中にいたり、職人の中に、よせてつぐものいできて、追々ひろまりしが、いまだ今のやうに、鋏拐(カナバシカセ)をはめて繼事はしらざりしゆゑ、けふは誰が所にてつぐ日なりとて、そこにあつまり、かはるがはる鋏を握りて繼ぎ、たがひに助けあひけるに、仲間の内に一人、他の力を借ず、人よりは多く、細工をなす者ありし故、其術を尋ねしに、秘して敎へず、然るにこの職人、賭に身をはたし、細工道具を箱に納、錠封して質入れし、京へ上りし後、絶て音信なきゆゑ、職人どもいひあはせ、かの質物をうけ出し、箱をひらきて、はじめて道具の便利なるをしりけると、父が聞つたへしとてかたれり、

〔京羽二重〕

〈六〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0411 諸職名匠
櫛所 寺町三條上ル町 梅本薩摩 右同町 櫻木河内 寺町御池上ル町 舟木長門 寺町四條上ル町 井上和泉 五條はし通 藤澤屋三十郎

〔國花萬葉記〕

〈一上/山城〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0411 諸職名匠
櫛師 梅本薩摩〈寺町三條上〉 梅木河内〈上同丁〉 船木長門〈寺町御池上〉 井上和〈泉寺町四條上〉 藤澤屋三十郎

〔文化四年武鑑〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0411 御櫛師 〈南大工町二丁目〉 神村和泉

〔江戸總鹿子名所大全〕

〈六〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0411 諸職名匠諸商人
櫛師 日本橋南二丁目 井上數馬 京橋南二丁目 石井近江守 同所 對馬守 新橋竹川町 松井玄蕃 日本橋北三丁目 和泉屋近江

櫛屋

〔國花萬葉記〕

〈七下/武藏〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0411 江府名匠諸職商人
櫛問屋 木や九兵衞〈日本橋南二丁メ〉 木や庄兵衞〈同所〉 駒屋長右衞門〈通しほ町〉 堺や喜太郎〈日本橋南一丁メ〉

〔江戸總鹿子名所大全〕

〈六〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0411 問屋大概
櫛問屋 日本橋南貳丁目 木屋九兵衞 同所 木屋庄兵衞 通しほ町 駒屋長右衞門 日本橋南一丁目 堺屋喜太郎

〔一話一言〕

〈八〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0411 二十三屋
東都唐櫛屋の名を二十三屋といへるは、十九四(トウクシ)といへるなりとぞ、

櫛筥

〔倭名類聚抄〕

〈十四/容飾具〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0411 嚴器 魏武疏云、漆畫嚴器、俗用唐櫛匣三字、〈賀良玖師介〉

〔和漢三才圖會〕

〈二十五/容飾具〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0411 櫛匣〈櫛匣、久之介、〉

〔日本書紀〕

〈五/崇神〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0412 十年九月〈○中略〉倭迹迹姫命語夫曰、君常晝不見者、分明不其尊顏、願暫留之、明旦仰欲美麗之威儀、大神對曰、言理灼然、吾明旦入汝櫛笥(○○)而居、願無吾形、爰倭迹迹姫命、心裏密異之、待明以見櫛笥遂有美麗小虵、其長大如衣紐、〈○下略〉

〔萬葉集〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0412 石川少郎歌一首
然之海人者(シカノアマハ)、軍布苅鹽燒(メカリシホヤキ)、無暇(イトマナミ)、髮梳乃小櫛(クシゲノヲグシ/○○ )、取毛不見久爾(トリモミナクニ)、

〔類聚雜要抄〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0412 差櫛筥銀廿兩
櫛筥(○○)一雙〈甲乙〉
方一尺
深三寸之中、蓋鬘九分、懸子深七分、有縫立
懸子〈甲乙同前也〉
鉸二
鑷二



枚 乙身
甲筥身
納筥
廿二合、
十六合
打堺、六
合透堀
物、深各
八分之
中蓋鬘
二分
甲、乙筥納筥共、吉薄經可作也、
櫛筥料木、〈三寸半板、一丈一尺七寸、弘一尺一寸、〉木道、〈單功八十疋、飡乃米、〉口白錫三斤二兩、〈單功卌疋各廿疋〉螺鈿料千三百十六疋、堀料百疋、堺入料百疋、入玉料百疋、蒔料金卅兩二分、〈各十五兩一分〉漆一升四合、磨料六百疋、裏塗六疋、

〔江家次第〕

〈十七〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0413 天皇元服御裝束
東向厨子中有三層、〈○中略〉中層置同螺鈿唐匣(○○)、〈(中略)次懸子置櫛二枚

〔江家次第〕

〈十七〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0413 東宮御元服
春宮坊司〈○中略〉左右立平文置物机、〈在南北倚子中間、卽當主上御倚子、〉机上分置櫛箱(○○)泔坏等、〈紫檀地螺鈿歟〉泔坏置左机、〈北寄有臺〉唐匣(○○)〈櫛匣也(○○○)〉置右机、〈無臺〉

〔源氏物物〕

十七/繪合

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0414 前齋宮の御參りのこと、中宮の御心にいれてもよほし聞え給、〈○中略〉院はいと口おしくおぼしめせど、人わろければ、御せうそこなどたえにたるを、その日に成て、えならぬ御よそひども御くしのはこ(○○○○○○)、うちみだりの箱、かうごの箱ども、よのつねならず、くさ〴〵の御たき物ども、くぬえかう、またなきさまに、百ぶのほかをおほくすぎにほふまで、心ことにとゝのへさせたまへり、おとゞみ給ひもせんにと、かねてよりやおぼしまうけけん、いとわざとがましかめり、殿もわたりたまへるほどにて、かくなんと女別當御らんぜさす、たゞ御くしのはこのかたつかたを見給に、つきせずこまかになまめきて、めづらしきさまなり、さしぐしのはこのこゝろばに、わかれぢにそへしをぐしをかごとにてはるけき中と神やいさめし、おとゞわれを御らんじつけて、覺しめぐらすに、いとかたじけなくいとおしくて、わが御こゝうならひのあやにくなる身をつみて、かのくだり給しほど、御心におもほしけんこと、かう年へてかへり給て、其御心ざしをもとげ給べき程に、かゝるたがひめのあるをいかにおぼすらん、御位をさり、物しづかにて世をうらめしとやおぼすらん、

〔和泉式部集〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0414 さしぐしのはこにかきて
さま〴〵に神をぞいのるさしぐしのさしはなるゝが心ぼそさに

〔狹衣〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0414 くしの箱やうのもの、くるまにとりいれなどしてたつ、

櫛案

〔延喜式〕

〈五/齋宮〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0414 櫛一具、〈黃楊〉櫛案一脚〈○中略〉
右齋内親王神忌御服料

〔延喜式〕

〈十七/内匠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0414 加茂初齋院幷野宮裝束
櫛机(○○)一具、〈長一尺五寸、廣一尺三寸、足高九寸、〉料波多板一枚、檜榑半材、阿膠十兩、炭二斗一升、切釘廿隻、漆一升二合、掃墨三合、燒土三合、綿六兩、絹一尺、手作布一尺、單功九人、〈木工六人、漆三人、〉

櫛巾

〔類聚雜要抄〕

〈二/調度〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0415 小野宮差圖
庇立二階一脚〈南北行東向○中略〉
下層南、唾壼、手筥、北打亂筥、櫛巾、四方疊置筥上

〔江家次第〕

〈十七〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0415 天皇元服御裝束
東向厨子中有三層、〈○中略〉中層置同螺鈿唐匣、〈(中略)次身入綾櫛(○○)巾一絛、〉〈裏白面黑〉〈小刀、幷檀紙、幷紙㩢等、〉

櫛掃

〔和漢三才圖會〕

〈二十五/容飾具〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0415 梳帚 俗云久之波良比
三オ圖會云、梳帚以骨爲體、以毛物其首、以去齒垢、刮以去古垢、而帚則去、〈按所謂骨者、鹿角象牙之類、〉

〔嬉遊笑覽〕

〈一下/容儀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0415 糸金の櫛はらひ、白猪の櫛はらひあり、長き筋を集めて中程を金物にて括りたり、其形水引を束ねたるやうなり、

〔類聚雜要抄〕

〈二/調度〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0415 一被以前御調度外御物事
掃筥、〈有縫立〉納掃〈○掃恐衍〉櫛掃

〔類聚雜要抄〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0415 懸子納〈甲乙同前○中略〉櫛掃二、〈銀一兩、各二分、單功六疋、各三疋、〉白猪二、納如上、

〔類聚雜要抄〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0415
櫛掃〈銀糸金〉
銀三両
單功六疋
櫛掃〈白猪毛〉銀

〔類聚雜要抄〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0416 手筥一合〈○中略〉
櫛掃結所〈五朱、二疋二升、〉

櫛押

〔賤のをだ卷〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0416 一昔は女の帽子と云ものをかぶりて歩行たり、〈○中略〉扨其ぽうしをとむる針を銀にて物好に拵ひ、贔負のかぶき役者の紋所などをうたせてさしたり、其後又櫛おさへ(○○○○)と云もの流行出たり、是は櫛の前へ倒れぬ樣の爲なりとて、櫛の前へたてにさしこみたり、
櫛おさへも銀にて、紋所或はさま〴〵の物好をうたせたり、

〔嬉遊笑覽〕

〈一下/容儀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0416 櫛押への出來しもその頃、〈○寶曆〉なり、帽子針の頭を曲たるやうに作る、頭の丸き處に紋などほるなり、銀にて作る、明和二年前句附、廣いことかな〳〵、當世は軒端にあまる櫛が出來、

櫛雜載

〔古事記〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0416是八百萬神共議而、於速須佐之男命、負千位置月、亦切鬚及手足爪令拔而、神夜良比夜良比岐、〈○中略〉故所避追而、降出雲國之肥上河上在鳥髮地、〈○中略〉以爲人有其河上而、尋覓上往者、老夫與老女二人在而、童女置中而泣、〈○中略〉故其老夫答言、僕者國神、大山上津見神之子焉、僕名謂足上名椎、妻名謂手上名椎、女名謂櫛名田比賣、亦問汝哭由者何、答白言、我之女者自本在八稚女、是高志之八俣遠呂智、〈此三字以音〉毎年來喫、〈○中略〉爾速須佐之男命詔其老夬、是汝之女者奉於吾哉、〈○中略〉爾足名椎手名椎神白然坐者恐立奉、爾速須佐之男命、乃於湯津爪櫛成其童女而、刺御美豆良、〈○下略、又見日本書紀、〉

〔今昔物語〕

〈二十五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0416 源賴義朝臣討安陪貞任等語第十三
貞任ガ伯父安陪爲元、貞任ガ弟家任、降シテ出來ル、亦數日ヲ經テ、宗任等九人降シテ出來ル、其後國解ヲ奉テ頸ヲ斬レル者、幷ニ降ニ歸セル者、申シ上グ、次ノ年貞任、經淸、重任ガ頸三ツ奉ル、京ニ入ル日、京中ノ上中下ノ人此レヲ見、喤ル事无限リ、首ヲ持上ル間、使、近江國甲賀郡ニシテ、筥ヲ開テ首ヲ出シテ、其ノ髻ヲ令洗ム、筥ヲ持ル夫ハ貞任ガ從降人也、櫛无キ由ヲ云フ、使ノ云ク、汝等ガ 私ノ櫛ヲ以テ可梳ルト、夫然レバ私ノ櫛ヲ以テ泣々梳ル、

〔源平盛衰記〕

〈三十九〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0417 重衡酒宴附千壽伊王事
狩野介、湯殿尋常ニコシラヘテ、御湯ヒキ給ヘト申ス、中將〈○平重衡〉嬉キ事カナ、道ノ程疲テ見苦カリツルニ、身淨メン事ノ嬉シサヨ、但今日ハ身ヲ淸メ、明日ハキラレズルニヤト心細クゾ思ハレケル、〈○中略〉晩程ニ、十四五計ナル美女ノ、地白ノ帷ニ染付ノ裳著タリケルガ、金物打タル楾ニ、新キ櫛取具シテ、髮ニ水懸、洗梳ナンドシテ上奉、

〔諸艶大鑑〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0417 心玉が出て身の燒印
川原町四條の角屋に湯屋あり、菊屋の小八、二階座敷に東山の風まてども、汗の止む事なし、〈○中略〉浴衣たゝむ間見合せけるに、三十四五にて小作なる男、損ねぬ鬢を撫でける、其櫛見知のあるニツ紋なり、〈○中略〉友とする人に、灸の蓋をして遣りながら語るを聞けば、我太夫に逢初めて、まだ間も無きに、某が定紋つける事、祇園八幡油斷はせぬが、あらふ事かと人に聞けがしに咄す、廣い都に居ながら、さても疎し、あれを知らぬげな、戀の目印とて、其時逢ふほどの客の紋所を書かせて、櫛何枚か拵へ置き、其日のお敵に合せて插すは嬉しき事にもあらずと、紋ある櫛を二三枚取出だし、小者などに取らして笑へば、彼男短かく二ツに折りて、大釜の下に燻ける、

〔願掛重寶記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0417 高尾稻荷の社
永代橋西詰に高尾稻荷の赴あり、此祠に詣て頭痛平愈の願がけをするに、平愈する事速なり、願がけをなす時に、小き櫛を一枚祠の内より借受、朝夕高尾大明神と祈り髮をなで付るなり、病氣平愈の後、外に新に櫛を一枚添へ社へ奉納するなり、頭痛に限らず、すべて髮の毛の薄き人、頭痛のたぐひ、あたまの煩ある人、願がけして其驗うたがひなし、


トップ   差分 履歴 リロード   一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2022-06-29 (水) 20:06:21