器用部/車上

p.0751 車ハ、クルマト云フ、輫(トコ)、軸(ヨコガミ)、輪、轅(ナガエ)等アリテ、牛力又ハ人力等ヲ以テ輓行スル者ナリ、日本書紀履中天皇紀ニ、筑紫ノ車持部ノ事見エタレバ、以テ其用ノ久シキヲ知ルベシ、〈車持部ノ事ハ、官位部古代官職伴造篇ニ詳ナリ、〉人力ヲ以テスル者ニ輦アリ、又牛力ヲ以テスル者ニ、牛車(ギツシヤ)、唐庇車、檳榔毛車、網代車、絲毛車等ノ數種アリ、又貨物等ヲ運搬スルニ、力車、大八車等アリ、而シテ其製作各〻異ナルヲ以テ、其名モ亦一ナラズ、輦ハ、テグルマ、又コシグルマト云フ、皇太子、親王、及ビ大臣、婦女、僧侶等ノ特ニ宣旨ヲ蒙リテ後、乘用スルコトヲ得ルナリ、輦ニ乘リテ宮門ヲ出入スルヲ聽サルレバ、待賢門ニ於テ、輦ニ移乘シ、春花門前ニ於テ下車ス、而シテ僧侶ハ、其拜賀ノ時、朔平門前ニ於テ下車スルナリ、待賢門ハ宮城門ニシテ、春花、朔平兩門ハ宮門ナリ、蓋シ宮門ニ出入スルヲ聽ストハ、宮城門ヲ主トスルナリ、故ニ中重(ナカノへ)宣旨ヲ蒙ルニアラザレバ、宮門ニ入ルコトヲ得ズ、牛車ハ特ニ重キモノニシテ、多クハ輦車ノ宣旨ヲ蒙リタル人ニアラザレバ、此宣旨ヲ賜ハルコトナシ、其出入スベキ門ヲ、亦宮城門ト爲シ、特旨ニアラザレバ宮門ニ入ルコトヲ得ズ、而シテ宮城門ノ中ニ於テハ、上東門ヨリ入ルヲ以テ常ト爲セドモ、或ハ他ノ門ヲ用イ、或ハ待賢上東兩門ヲ兼ネ用イルコトアリ、唐庇車ハ、又唐車トモ云フ、蓋シ唐樣ニ摸スルナリ、檳榔毛車ハ一ニ毛車ト稱ス、檳榔ノ葉ヲ裂テ、棟及ビ輫ノ下ヲ飾レルモノナリ、絲毛車ハ 檳榔ニ代フルニ、絲ヲ以テスルモノニテ、靑絲毛、紫絲毛、赤絲毛等ハ、其色ニ由テ名クルナリ、網代車ハ籧篨ヲ以テ、輫ヲ飾レルモノナリ、賀茂祭ノ使ノ車、及ビ物見車ハ裝飾ヲ主トスルニ由リ、飾車又ハ風流車ノ名アリ、婦女ノ車ニ衣裳ヲ簾ヨリ垂レ、互ニ其美ヲ競フノ風アリ、之ヲ出衣(イダシヌギ)ト云フ、
貨物ヲ運搬スルニ、人力ヲ以テスルヲ、力車ト云フ、卽チ荷車ナリ、又牛力ヲ以テスルヲ、牛車(ワシグルマ)ト云フ、德川幕府ノ時ニハ、人力ヲ以テスルニ、大八車ト云フモノアリ、牛車ト共ニ運搬ノ用ニ供セリ、

名稱

〔倭名類聚抄〕

〈十一/車〉

p.0752 車駕 古史考云、黃帝作レ車、〈尺遮反、一音居、和名久留萬、〉四聲字苑云、駕〈音賀〉牛馬入二轅軛中一也、

〔段注説文解字〕

〈十四上/車〉

p.0752 〓、輿輪之總名也、〈車之事多矣、獨言二輿輪一者、以二轂輻牙一皆統二於輪一、軾䡈軫軹轛、皆統二於輿一、輈與レ軸則所二以行一、此輿輪者也、故倉頡之制レ字、但象二其一輿兩輪一軸一、許君之説レ字、謂二之輿輪之總名一、言レ輪而軸見矣、渾言レ之則輿輪之總名、析言レ之則惟輿偁レ車、以二人所一レ居也、故攷工記曰、輿人爲レ車、〉夏后時、奚仲所レ造、〈左傳曰、薛之皇祖奚仲居レ薛、以爲二夏車正一、杜云、奚仲爲二夏禹掌車服大夫一、然則非二奚仲始造一レ車也、明堂位曰、鉤車、夏后氏之路也、毛詩元戎傳曰、元、大也、夏后氏曰二鉤車一、先レ正也、殷曰二寅車一、先レ疾也、周曰二元戎一、先レ良也、箋云、鉤者、鉤股曲直有レ正也、俗本譌甚、今依二釋名及音義一改正、蓋奚仲時、車制始備、合二乎勾股曲直之法一、古史攷云、少昊時加レ牛、禹時奚仲加レ馬、强爲二之説一耳、〉象形〈謂象二兩輪一軸一輿之形一、此篆横視レ之乃得、古音居、在二五部一、今尺遮切、釋名曰、古者曰レ車、聲如レ居言、行所二以居一レ人也、今曰レ車、車舍也、行者、所處若二屋舍一也、韋昭辯二釋名一曰、古惟尺遮切、自レ漢以來、始有二居音一、按、三國時、尚有レ歌無レ麻、遮字祇在二魚歌韵内一、非レ如二今音一也、古音讀如レ袪、以言二車之運行一、不二讀如一レ居、但言、人所二居止一、老子當二其無一レ有二車之用一、音義、去於反、此車古音也、然考工記、輿人爲レ車、是自レ古有二居音一、韋説未レ愜也、〉凡車之屬、皆从レ車、

〔類聚名義抄〕

〈九/車〉

p.0752 車〈クルマ〉 〓〈籀〉 輅〈クルマ〉 軟車〈クルマ〉 轔〈クルマ〉 〓〈クルマ〉 輞〈正歟〉

〔倭訓栞〕

〈前編八/久〉

p.0752 くるま 車を訓ぜり、轉輪の義、まとわと ぜり、

〔八雲御抄〕

〈三下/枝葉〉

p.0752 雜物部〈附調度〉
車 よつのむま ながるゝ水 を 水 しば ちから 小 しばつみ うしの車〈法花經大白牛車也〉
しゝの車〈同〉 ひつじの〈同〉 唐 手 を かざり すき かさ むな

〔壒囊抄〕

〈三〉

p.0752 世ノ謠(コトハザ)ニ、リウスイアカス、戸菜虫クハズト云リ、リウスイトハ何ゾ、車ノ一名ヲ流水卜 云、巡姿、水流ニ似タルガ故ニ、若シ是ヲ云歟、

〔藏玉和歌集〕

p.0753 あじろ玉(○○○○)〈車〉 里舟(○○)〈車〉

〔倭訓栞〕

〈中編一/阿〉

p.0753 あじろたま 車也といへり、網代給の義にや、

〔和玉篇〕

〈中/車〉

p.0753 車(シヤキヨ)〈クルマ〉

〔下學集〕

〈下/器財〉

p.0753 大車(タイキヨ/○○) 小(/○)車(シヤ/○)〈車字、緣二大小一音異也、見二論語一也、〉

〔秉燭譚〕

〈三〉

p.0753 大車小車ノ事
論語ノ大車小車ヲ、大キヨ、小シヤトヨミ來レリ、韻會ヲ考ルニ、車ニ兩音アレドモ、大小ニ因テカハルコトハナシ、顏氏家訓ヲ按ズレバ、古ハ車ノ字ヲ唱遮ノ反ニ呼ブ、漢已來、乃居(○)ト云、俗語ニハ則唱遮反ト云々、琅邪代醉編ニ、張鼎思ガ考ニハ、詩ノ北風篇ニ、莫二赤匪一レ狐ト云々、携手同レ車ト、則 音モト居ノ音アリト云々、シカレバシヤトキヨトハ、古今ノ異音ニテ、今日ハ通ジテ唱遮ノ反ニ呼ガ宜シキナリ、大車小車、モトヨリワケテヨムベキニアラズ、

〔延喜式〕

〈四十八/左右馬〉

p.0753 五月五日節式
右當日早朝、鞍二簡定馬一授二二府一、騎射官人、率二舍人一到來裝束、居駕(○○)幸二武德殿一、
○按ズルニ、居駕ハ車駕ノ假借ニシテ、車ノ字ニ居ノ音アルヲ以テナリ、

〔分義解〕

〈六/儀制〉

p.0753 車駕〈行幸所レ稱〉

〔令集解〕

〈二十八/儀制〉

p.0753 車駕、謂乗輿行幸之時名、謂二之車駕一也、

〔貴嶺問答〕

p.0753 令レ候二内裏一給之由承畢、於二御門一閉レ之、還御之時、又可レ開歟、宮衞令曰、車(キヨ)駕行幸、卽閉二諸門一、隨レ便開二理門一、

〔夫木和歌抄〕

〈三十三/車〉

p.0753 百首歌 寂蓮法師
山がつのあふさかこゆるをぐるま(○○○○)に心やりたるあかつきのこゑ

〔玉霰〕

p.0754 歌と文との詞の差別
車を、小(ヲ)車といふは、歌詞也、文にはたゞ車といふべし、

車名所

〔和漢三才圖會〕

〈三十三/車駕〉

p.0754 車
按、車有二數品一、所レ圖者、〈○圖略〉轓車也、〈俗云御所車〉轓(ヤカタ)者車之蔽也、車耳反出、所下以爲二藩屛一翳中塵泥上、以レ簟爲レ之、或用レ革、〈俗謂二之屋形一〉有二二十八轑一、以象二列星一也、轑、〈音聊〉轓上之椽也、車上重起、如二牛角一者曰レ較、〈音覺〉輪之心曰レ轂(コシキ)、〈音谷〉轂中横截者曰レ軸(ヨコカミ)、〈音逐〉軸末謂レ軹、車前横木可レ憑者曰レ軾(シキミ)、〈音釋〉後横木曰レ軫、〈〓同〉軸上伏免曰レ轐、〈音卜〉車下索曰レ〓(トコシバリ)、在二車下一與レ輿(ゾコ)相連縛者也、

車蓋

〔倭名類聚抄〕

〈十一/車具〉

p.0754 車蓋〈轑附〉 大戴禮云、車蓋、〈俗車屋形、夜加太、〉二十八轑、以象二列星一也、野王案、轑、〈音老〉車蓋上椽也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈三/車具〉

p.0754 轑、蓋叉也、如二屋構橑一也、説文、轑、蓋弓也、按車蓋、謂二車上樹レ蓋以蔭蔽一耳、與二此間車屋形一、其制不レ同、

〔類聚名義抄〕

〈九/車〉

p.0754 車蓋〈ヤカタ〉 車屋形〈同〉

〔延喜式〕

〈十七/内匠〉

p.0754 牛車一具、屋形、〈長八尺、高三尺四寸、廣三尺二寸、〉

〔西宮記〕

〈四月〉

p.0754 賀茂祭事
今日左右馬寮、申二請祭料車屋形一、文史申レ辨、辨申二上卿一、下二宣旨大藏省一、

〔枕草子〕

〈九〉

p.0754 五月ばかり、山里にありく、いみじうおかし、〈○中略〉左右にある垣の枝などのかゝりて、車の屋形にいるも、いそぎてとらへて折らんと思ふに、ふとはづれて過ぎぬるも口惜し、

庇

〔輿車圖考〕

〈九〉

p.0754 廂
車のまへうしろ、物見の上へ、さし出たるひさしをいふ、

〔門室有職抄〕

p.0754 一車樣事
庇車〈○中略〉 庇ノ體ハ、如二四方輿一、上白、袖ハ唐草、中ハ菅文也、

眉

〔輿車圖考〕

〈九〉

p.0755 眉
くるまのやかたの前後の棟を云ふ、兩眉は唐弓を伏せたるやうなるかたちをいふ、くしがたのやうなるはつねなり、

〔桃華蘂葉〕

p.0755 一車事
網代車〈無レ庇、眉(○)如二常八葉一、〉

〔大鏡〕

〈八〉

p.0755 いにしへのいみじき事どもの侍りけんはしらず、なにがしものおぼえて後、ふしぎなりしことは、三條院の大嘗會の御禊のいだしぐるま、大宮、〈○一條后彰子〉皇太后宮〈○三條后妍子〉よりたてまつらせ給へりしぞありしや、大宮の一の車のくちのまゆ(○○)に香囊かけられて、そらだき物たかれたりしかば、二條のおほぢの、つぶとけぶりみちたりしさまこそめでたく、いまにさばかりのみものまたなしといへば、〈○下略〉

〔明月記〕

p.0755 寬喜元年十一月廿四日戊子、明日相國、〈○藤原道家〉初著二直衣一參内給、〈公卿不二扈從一、殿上人三人、〉〈實〓、實任、實淸、〉半蔀車之眉ヲ如二唐棟一被レ造云、

棟

〔輿車圖考〕

〈九〉

p.0755 棟
やのむねのこと、やかたのうへに、前後へ通りし木なり、

〔蛙抄〕

〈車輿〉

p.0755 檳榔車
棟表、袖表、左右各覆二檳榔一、〈○中略〉内方棟、及左右、各有二格子一、

棟融

〔輿車圖考〕

〈九〉

p.0755 棟融
融は通なり、車の前の中央に、あげまきつけたるをいふ、

〔蛙抄〕

〈車輿〉

p.0755 文車

〔輿車圖考附圖〕

〈乙〉

p.0756 くるまの名どころ
軾
榻
軛
鷺足
轅
雨皮付
髙襴
前板ノ内ノ木ト云是ナリ 眉
軒格子
棟融
上革カクル折釘ノ所
袖格子
榜立
手形アリ
上革
前スダレ
前板
屋形
上葺
袖
蟹甲
長物見
半ハナルヲ切物見ト云
𩌏
カゲニナリテ見エズ
下立板
輪
輻
軸
袖
惣テ箱ト云
䲭尾
轂
轄
釭 棟融〈是角總事也、壯年人紅糸、老年人白糸、各付二前方棟木下一、〉

〔九條家車圖〕

p.0758 公卿時召レ之
網代〈○中略〉
棟通〈如二普通一〉

〔園太曆〕

p.0758 貞和四年五月廿八日〈彈正少弼公興朝臣車事〉
一棟融不レ付事

〔九條家車圖〕

p.0758 侍從中少將時召レ之
網代〈○中略〉
棟緖茜糸四兩〈四組長三尺九寸鐵尺定〉

〔輿車圖考〕

〈七〉

p.0758 文車
棟緖は棟融の事なるべし、四組とは今いふよつ打にて、四ツに組みたる緖の三尺九寸なるをあげまきにむすびたるなるべし、

上葺

〔輿車圖考〕

〈九〉

p.0758 上葺
毛車にかぎりいふ、ふけばなり、

〔桃華蘂葉〕

p.0758 一車事
唐庇〈晴時召レ之〉
上葺、〈檳榔毛○中略〉晴時、上葺幷廂總〈件總或用二紫末濃一〉等、用二白絲一、

〔兵範記〕

p.0758 仁安元年十月十日庚辰、有二立太子事一、〈○中略〉儲皇〈○高倉〉御車、〈華美唐車也、四面垂二白生糸一、左右横緣上葺同糸、〉

輫

〔倭名類聚抄〕

〈十一/車具〉

p.0758 輫 唐韻云、輫、〈音俳〉車箱也、漢語抄云、車箱、〈車乃度古、一云、車輿、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈三/車具〉

p.0758 車乃度古、〈○中略〉卽是車牀之義、按、説文、輫、車底也、禮記曲禮正義云、輿、車牀也、 故云、一云車輿也、方言箱謂二之輫一、是顧氏之所レ本、廣雅、輫、轓、箱也、王念孫曰、篋謂二之箱一、亦謂二之篚一、與三車箱謂二之輫一、其義一也、又曰、輫之言、棐也、爾雅、棐、輔也、箱之言、輔相也、篋謂二之箱一、大室兩夾、謂二之廂一、車兩轓謂二之箱一、其義一也、按、毛詩小雅大東篇云、睆彼牽牛、不二以服箱一、傳、大車之箱也、説文、箱、大車牝服也、考工記、車人、大車牝服二二柯一、又參二分柯之二一、注、大車、平地任載之車、然則乘車曰レ輿、載車曰レ輿、其名不レ同、車乃度古、以二車輿一充レ之爲レ允、然隋書禮樂志、陳承二梁末一、五輅兩箱、後皆用二玳瑁一爲二鵾翅一、兩箱之裏、衣以二紅錦一、舊唐書輿服志云、重翟車、其箱、飾以二重翟羽一厭レ翟、其箱飾以二次翟羽一、然則乘車之輿、亦可レ謂レ箱、故漢語抄、以二車箱一、爲二車乃度古一也、

〔類聚名義抄〕

〈九/車〉

p.0759 車箱〈車ノトコ〉 車輿〈同〉 輫〈トコ クルマノトコ〉

〔三代實録〕

〈二十七/淸和〉

p.0759 貞觀十七年九月九日戊子、神祇伯從四位下兼行美濃守藤原朝臣良近卒、〈○中略〉良近爲レ人强力、嘗醉乗レ車而行、戯謂二同車者一曰、吾欲レ令二此牛不一レ行、乃以レ手據二車床(○○)一、閉氣堅坐不レ動、牛張二四足一立而不レ前、其膂力過レ人如レ此、

〔榮花物語〕

〈二十五/峯の月〉

p.0759 三月〈○萬壽二年〉つごもりに、花とともに別れさせ給ふ、〈○三條后妍子崩〉ついたち〈○四月〉三四日の程にぞ、うりう院の西の院といふ所におはしまさせ給ふ、やがて其夜に入棺といふことせさせ給ふ、〈○中略〉さて西院におはしまさせて、御車のとこ(○○○○○)かきおろし給ふ、

〔吾妻鏡〕

〈三十八〉

p.0759 寬元五年〈○寶治元年〉六月五日丙戌、今曉鷄鳴以後、鎌倉中、彌物忩、未明左親衞、〈○北條時賴〉先遣二萬年馬入道於泰村之許一、被レ仰下可レ相二鎭郎從等騷動一之由一、〈○中略〉而泰村、今更乍二仰天一、令二家子郎從等防戰一之處、橘薩摩餘一公員〈不レ著二甲胄一、爲二狩装束一、〉者、自二兼日一懸二意於先登一、潛入二車排(○○)之内一、宿二于泰村近邊荒屋一、付二時聲一進寄、〈○中略〉差二北條六郎時定一、爲二大手大將軍一、時定令レ撤二車排一、揚レ旗自二塔上一馳逢、
○按ズルニ、車排ハ蓋シ車輫ナリ、

〔園太曆〕

p.0759 貞和四年五月廿八日〈彈正少弼公興朝臣車事〉 一箱〈如二普通八葉車一、檐袖幷屋形内簀子也、召レ之、但長物見内外、盡圖無レ之、金物、綱前、〉
一箱内〈無二障子幷畫圖一、皆黑漆、物見上連子、彩色如レ例、〉

桙立/手形

〔輿車圖考〕

〈九〉

p.0760 傍建〈桙立〉
くるまの前後の口の左右にある木にて、手形あるものなり、

〔侍中群要〕

〈八〉

p.0760 御書使事
蒙レ召參二御前一、卽下二給御書一罷出、〈○中略〉至二陽明門一乘車、〈御書、插二車前桙立穴一、若無二自車一者、直乘二在レ門之車一、不三必觸二其主一歟、殿上外記史等車也、〉

〔雅亮裝束抄〕

〈一〉

p.0760 くるまのきぬをいだすこと
きぬのいづることは、くるまのほうだて(○○○○)のかみ、二三寸ばかりよりはじめて、ひきいだして、〈○下略〉

〔玉海〕

p.0760 治承五年〈○養和元年〉十二月五日丁未、御入棺〈○崇德后聖子〉事、〈○中略〉召二季長基輔一、相共以レ布〈六丈〉縢二御棺一、〈○中略〉凡上下方其有二布餘一、爲レ結二付車桙立一也、

〔源平盛衰記〕

〈三十三〉

p.0760 光隆卿向二木曾許一附木曾院參頑事
木曾〈○義仲〉車ニユガミ乘タル形勢、ヲカシナドハ云許ナシ、〈○中略〉牛童車ヲ門外ニ遣出テ、後レテ一楉アテタレバ、飼立タル强牛ノ逸物也、何ノ滯カ有ベキナレバ、如レ飛走ル、木曾車ノ内ニ却樣ニマロブ、〈○中略〉牛飼今ハ中直セント思テ、ソレニ候、御手形ニ取付セ給ヘト敎ヘケレバ、イヅクヲ手形トモ不レ知ゲニ、見エケル時ニ、其ニ候、方立(○○)ノ穴ニ取付セ給ヘト云時、初テ取付テ、アハレ支度ヤ、是ハ和牛小デイガ支度カ、又主ノ殿ノ構カトゾ問タリケル、

〔承久記〕

〈上〉

p.0760 同〈○建保七年正月〉廿七日、鎌倉ノ八幡宮ニテ拜賀アルベシトテ、〈○中略〉若宮へ著カセ給ヒテ、〈○源實朝〉車ヨリオリサセ給ケルガ、細太刀ノ柄ノ、車ノ手形(○○)ニ入タフケルヲ知ラセ給ハデ、打ヲラセ給ヒヌ、

高欄

〔輿車圖考〕

〈九〉

p.0760 高欄 車によりて、前板のうちに高欄あり、高欄なき板もあり、前板のうちにある木などをいふなり、

〔蛙抄〕

〈車輿〉

p.0761 檳榔毛車
箱〈無二物見一、有二開戸一、〉〈前後有高欄〉

〔延喜式〕

〈十七/内匠〉

p.0761 腰車一具、〈○中略〉高欄(○○)鳥居等料、檜榑二材、

袖

〔輿車圖考〕

〈九〉

p.0761 袖
くるまの口の左右にあるものなり、袖の表、また前袖後袖などゝもみゆ、

〔桃華蘂葉〕

p.0761 一車事
半蔀〈○中略〉
網代〈○中略〉袖〈白網代、以レ漆畫二牡丹或杜若一、〉

〔玉蘂〕

p.0761 承元三年三月五日、修明門院、春日御幸也、〈○中略〉右少將家嗣車、袖透タリ、未レ聞他家人車袖透タル事、是法性寺殿、〈○藤原忠通〉自二白川院一給タル車也、

袖格子

〔輿車圖考〕

〈九〉

p.0761 軒格子〈袖格子〉
軒格子、袖格子、車のうちのかた棟、左右かうしあり、

〔蛙抄〕

〈車輿〉

p.0761 文車
壯年人ハ、袖格子三重襷、〈如レ菱〉軒格子、常ノ體ニテ三重襷、〈非レ菱也〉

開戸

〔輿車圖考〕

〈六〉

p.0761 半蔀車
台記云、仁平三年九月十日、〈於二車中一見二文書一條〉乘二檳榔車一西向立レ之、〈軛懸レ榻卷レ簾〉家司文章博士長光進申曰、外記景良候仰二可レ召之由一、景良自二北方一直進入二轅内一、置二筥於踏板一、〈先レ是開二輦戸一〉余〈○藤原賴長〉置レ笏一々取レ之見了、
これらをもてかうがへ侍れば、輦戸はひきゝものにや、毛車物見なければ、輦戸高くば内暗かるべし、鳳輦より出でたれば、輦戸とはいふめれ、その鳳輦の輦戸を考ふるに、 明月記云、元久元年十一月八日、〈行幸跪置〉 弓開二輦戸一、〈先上の横渡の銅を拔きて、次に下に指し六る銅を抽き戸を開く、〉立進寄二西内侍前一、相跪取レ璽、右廻置二御輿内一、〈御輿巽角方、御劒可レ置二其外一之程也、〉退二本所一取レ弓候、主上御二御輿一候二階下一、將警驆、予〈○藤原定家〉立進寄二東内侍前一、相跪取二御劔一、左廻安二御輿一、〈○註略〉次戸ヲ押シタテヽ鏁レ之如レ元、
同云、建曆二年十月廿五日、〈行幸〉後聞基忠卿不レ開二輦戸一取二御劒一、主上〈○順德〉令レ仰二御劒一御之間、久而思出開レ戸、
これら鳳輦の輦戸のひきゝ證なり、されば車の前のかたに、高欄のやうに見ゆるが、かの輦戸にても侍るにや、〈輦戸なく高欄あるなどいふ註文もあれば、もとよりひとつものには侍らじ、すがたは似たるものにや侍らむか、〉檳榔はじとみ車など、古畫にいちじるくなりながら、戸の見えざるを見ても、かうがへ見るべし、

〔蛙抄〕

〈車輿〉

p.0762 檳榔車〈略○〉
箱 無二物見一有二開戸一〈前後有二高欄一○下略〉

〔九條家車圖〕

p.0762 檳榔庇〈○中略〉
開戸〈黃金物〉

物見

〔輿車圖考〕

〈九〉

p.0762 長物見〈切物見〉
前の袖よりうしろの袖までなるを、長物見といふ、半ほどなるを、切ものみといふ、

〔飾抄〕

〈下〉

p.0762 一車
網代〈連子、或號二網代廂一、〉
網代有レ庇、或網代有二連子物見(○○)一、
八葉〈付小八葉〉
大八葉、五緖、長物見(○○○)、極位人大臣乘レ之、而近代多乘用、不レ可レ然云々、

〔物具裝束抄〕

p.0762 一車事 八葉車〈長物見大八葉、大臣乗レ之、切物見(○○○)大八葉、上下常乗レ之、〉

〔古今著聞集〕

〈十三/哀傷〉

p.0763 後中書王、〈○具平親王〉雜仕を最愛せさせ給ひて、土御門右大臣をば、まうけ給ける也、朝夕是を中にすへて、あいし給事限なかりけり、月のあかゝりける夜、件の雜仕をぐし給て、遍照寺へおはしましたりけるに、かの雜仕、物にとられて失せにけり、中書王、なげきかなしみ給、理にも過たり、思あまりて、日比ありつるまゝにたがへず、我御身と、失せにし人との中に、この兒を置きて見給つる形を、車の物見(○○○○)の裏に繪にかきて御覽じける、さる程に、寬弘の中殿の御作文に參り給て、其車を陣にたてられたりける程に、物見落たりけるを、牛飼たつるとて、あやまりて裏を面に立てけり、其後あらためらるゝ事なくて、今におほがほの車(○○○○○○)とて、かの家に乗り給へるは、此故に侍るとぞ申傳たる、

〔台記〕

p.0763 保延二年十月廿二日丙辰、著二布衣一參二鳥羽一、〈長物見車〉 十二月九日壬寅、曙程、相二具内房一、渡二東三條一、〈○中略〉予〈○藤原賴長〉乘二長物見車一、〈車副二人〉

〔百練抄〕

〈七/後白河〉

p.0763 保元三年四月廿日、賀茂祭、博陸〈○藤原忠通〉於二町棧敷一見物、宰相中將信賴、欲レ通二彼前一之間、雜人鬪亂、打二破中將車物見一、

〔吉記〕

p.0763 安元二年四月廿二日丁酉、今日賀茂祭也、〈○中略〉
路頭次第甚狼藉也
先馬寮使車〈上覆物見付レ藤、袖並金銅輪知加陪、長物見有二立緣一、○下略〉

〔山槐記〕

p.0763 治承三年正月廿日己卯、今日著二直衣一、用二日來車一、〈中八葉切物見(○○○)、大理乘車也、〉 四月廿一日己酉、今日賀茂祭也、〈○中略〉
近衞使車
物見〈以二靑玉一、石疊形貫二懸之一、但下方一尺之程卷二上之一、〉 物見下〈地展二銀蒲一、其畫牡丹唐草、〉

〔源平盛衰記〕

〈三十三〉

p.0764 光隆卿向二木曾許一附木曾院參頑事
木曾〈○義仲〉車ニユガミ乘タル形勢、ヲカシナドハ云許ナシ、左右ノ物見(○○○○○)ヲ開、前後ノ簾ヲ揚タリ、牛小童ガ角ハセヌ事ニテ候ト云ケレバ、ヤヲレ牛童ヨ、タマ〳〵車ニ乘タル時、人ヲモ見タリ、人ニモ見ユルゾカシ、〈○下略〉

物見板/立板

〔輿車圖考〕

〈九〉

p.0764 物見板
左右に窻のごときを物見といふ、〈○中略〉物見の下を下立板といふ、

〔蛙抄〕

〈車奧〉

p.0764 網代車
物見板(○○○) 黑漆、長物見、蟹甲如レ例、大臣、大將、納言、參議無レ差、
同下立板(○○○○) 内方黑漆如レ例、大臣已下無レ差、

〔九條家車圖〕

p.0764 侍從中少將時召レ之
網代〈○中略〉
立板物見内押綾〈和繪、山水木立泥繪也、〉
同緣錦四尺

〔西園寺車圖〕

p.0764 納言大將半蔀車
一物見板〈外ニハ簾ヲ彩色、内ニハ畫二遠山霞鶴一、下ヘ落入之樣構レ之、内ニ構二懸金一懸レ之、〉
一立板〈小葵綾ヲ張〉〈天〉〈畫二四季繪一、〉〈左ノ前春、同後秋、右ノ前夏、同後冬、〉〈赤地錦緣、上下四方幷其間右二平金銅金物一、〉

〔永昌記〕

p.0764 保安五年四月十四日辛酉、參院〈源中納言同車〉賀茂祭御見物御幸也、本院〈○白河〉新院〈○鳥羽〉有二別車儀一、美作守顯輔調二新院御車一、〈立板掘二透金銅唐草一、下簾縫物、自餘銅鏤レ之、美不レ能二勞記一、〉臨レ期御二同車一、

前板

〔輿車圖考〕

〈九〉

p.0764 前板〈踏板〉 車の口にある板にて、踏板(○○)ともいふ、

〔榮花物語〕

〈二十五/楚王の夢〉

p.0765 かんのとの〈○尚侍藤原嬉子、中略、〉五日〈○萬壽二年八月〉うせ給ひて、六日夕、法興院にわたらせ給ふ、〈○中略〉殿の御まへ、〈○嬉子父道長〉御とのごもらぬまゝに、うちおはしましつる、御車の前板といふものにおしかゝりて、何ごとにかあらん、うちなきて、泣く〳〵の給ひつゝ、あかさせ給ふ、

〔今昔物語〕

〈二十八〉

p.0765 賴光郎等共紫野見物語第二
今昔、攝津守源ノ賴光ノ朝臣ノ郎等ニテ有ケル、平ノ貞道、平ノ季武、ノ公時ト云フ三人ノ兵有ケリ、〈○中略〉而ル間賀茂ノ祭ノ返サノ日、此三人ノ兵云合セテ、何カデカ今日物ハ可レ見キト謀ケルニ、〈○中略〉今一人ガ云ク、下簾ヲ垂テ、女車ノ樣ニテ見ムハ何ニト、今二人ノ者、此ノ義吉カリナムト云テ、〈○中略〉如此シテ行ク程ニ、三人乍ラ醉ヌレバ、踏板(○○)ニ物突散シテ、烏帽子ヲモ落シテケリ、

〔台記〕

p.0765 仁平三年九月十日、奉二幣帛春日、大原野、吉田一、〈○中略〉此第者高陽院尼、近日被レ行二懺法一、又巽角有二佛閣一、雖レ無二法名一、先年以二仁和寺法親王一爲二導師一被レ供二養之一、如レ此之事、非レ無レ所レ憚、家中不淨之時、於二門外一開レ之、已爲二故實一、仍於二西門外一乗二檳榔車一、〈依二女院仰一、於二門外一乗也、〉西向立レ之、〈軛懸レ榻卷レ簾〉家司文章博士長光、進申曰、外記景良候、〈○註略〉仰二可レ召之由一、景良自二北方一直進入二轅内一、〈○註略〉置二筥於踏板一、〈先レ是開二車戸一〉余〈○藤原賴長〉置レ笏一々取レ之、〈○下略〉

〔徒然草〕

〈上〉

p.0765 今出河のおほい殿〈○兼季〉 峨へおはしけるに、有栖川のわたりに、水の流れたる所にて、さい王丸、御牛を追たりければ、あがきの水、前板(○○)迄さゝとかゝりけるを、爲則、御車のしりに候けるが、希有の童かな、かゝる所にて、御牛をば追ものかといひたりければ、〈○下略〉

敷板

〔古今著聞集〕

〈二十/魚虫禽獸〉

p.0765 同〈○承安〉二年、祇園會を菅博士行衡、三條堀川にて見けるに、車のうしろのかたを引てすぎける牛、とみのをのかたより、車のしたに入て、車にかけたる牛の、左の腹をつきてけり、行衡が牛、おどろきはしりければ、つきたる牛も、おなじくはしりけり、引てすぎつる童、うしろの方より、綱を取て引かへしけるほどに、車をうちかへさんとして、敷板もうしのつのにあた りて、やぶれにけり、

軾

〔倭名類聚抄〕

〈十一/車具〉

p.0766 軾〈軫附〉 説文云、軾、〈音式、和名車乃度之岐美、〉車前也、四聲字苑云、軫、〈之忍反〉車後横木也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈三/車具〉

p.0766 釋名云、軾、式也、所二伏以式敬一者也、按、考工記、兵車之輪六尺有六寸、〈○中略〉輪崇車廣、衡長參如レ一、以二其廣之半一、爲二之式崇一、注、兵車之式、高三尺三寸、式卽軾字、可レ見下軾與二止之岐美一不上レ同、然其所在之處同、故借レ軾爲二止之岐美一耳、又按、説文云、輑軺、車前横木也、軺、小車也、車乃止之岐美近レ之、

〔類聚名義抄〕

〈九/車〉

p.0766 軾車〈ノトシキミ〉

〔枕草子〕

〈十一〉

p.0766 あひのりたる道の程こそおかしけれ、〈○中略〉かたはらに、えび染のかたもんのさしぬき、日き衣どもあまた、山吹くれなゐなどきこぼして、なをしのいと白き、ひきときたれば、ぬぎたれられて、いみじうこぼれ出たり、指貫のかたつかたは、とじきみ(○○○○)のとにふみ出されたるなど、道に人のあひたらば、おかしと見つべし、

轅

〔新撰字鏡〕

〈車〉

p.0766 輓棿〈同、魚雞反、轅端横木、以縛レ扼者也、奈加江乃波志乃久佐比、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十一/車具〉

p.0766 轅 唐韻云、輈、〈張流反〉車轅也、轅、〈音園、和名奈加江、俗在レ前謂二之轅一、在レ後謂二之鴟尾一、或云二小轅一、〉車轅也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈三/車具〉

p.0766 奈加江、長柄之義、〈○中略〉按、古者乗車、曲轅駕二駟馬一、兵車田車同、惟平地任載之大車駕レ牛、乃有二兩轅一、詳見二考工記一、皇國乘車駕レ牛、故亦有二兩轅一、其狀與二古乘車轅一異、

〔類聚名義抄〕

〈九/車〉

p.0766 〓輈〈ナカエ〉 轅〈ナカエ クルマノナカエ〉

〔和玉篇〕

〈上/車〉

p.0766 轅(エン)〈クルマノナガエ〉

〔延喜式〕

〈十七/内匠〉

p.0766 牛車一具、〈○中略〉轅輻料樫九十七枚

〔江家次第〕

〈十九〉

p.0766 石淸水御幸儀
諸司一分以上、十二人扈從如レ恒、〈八人轅、二人轂本、二人小轅、〉

〔大鏡〕

〈六/内大臣道隆〉

p.0767 此おとゞ、〈○道隆、中略、〉御賀茂詣の日は、社頭にて、三度の御かはらけ、定まりにて參らするわざなるを、其御時には、禰宜神主も心えて、大かはらけをぞ參らせしに、三度はさらなることにて、七八度などめして、上の御社に參り給ふ路にては、やがてのけざまにしりのかたを御まくらにて、不覺におほとのごもりぬ、〈○中略〉まゐりつかせ給ひて、御車かきおろしたれど、えしらせ給はず、いかにと思へど、御前どもゝえおどろかしまうさで、只さぶらふなめるに、入道殿、〈○藤原道長〉おりさせ給へるに、さてあるべきことならねば、轅のとながら、たかやかにやゝと御扇をならしなどせさせ給へど、おどろき給はねば、〈○下略〉

〔葉黃記〕

p.0767 寬元四年正月九日己亥、今夜東宮、〈○龜山〉行二啓前右府〈○藤原實氏〉冷泉第一、〈○中略〉抑路次之間、諸司二分一切不レ見、御車副二人、其外召使等付レ轅爲レ奇、

〔徒然草〕

〈上〉

p.0767 北の屋かげに消殘りたる雪、いたうこほりたるに、さし寄せたる車の轅も、霜いたくきらめきて、有明の月さやかなれども、くまなくはあらぬに、〈○下略〉

〔太平記〕

〈九〉

p.0767 六波羅攻事
千種頭中將忠顯朝臣、士卒ニ向テ被二下知一ケルハ、此城尋常ノ思ヲ成テ、延々ニ責バ、千葉屋ノ寄手、彼ヲ捨テ、此後攻ヲ仕ツト覺ルゾ、諸卒心ヲ一ニシテ、一時ガ間ニ可二責落一卜被二下知一ケレバ、出雲伯耆ノ兵共、雜車二三百輛取集テ、轅ト轅トヲ結合セ、其上ニ家ヲ壞テ、山ノ如クニ積擧テ、櫓ノ下へ指寄、一方ノ木月ヲ燒破ケリ、

〔太平記〕

〈二十三〉

p.0767 土岐賴遠參二合御幸一致二狼籍一事附雲客下レ車事
如何ナル雲客ニテカ有ケン、〈○中略〉轅ハゲタル破車ヲ、打テドモ行ヌ疲牛ニ懸テ、北野ノ方ヘゾ通リケル、

〔看聞日記〕

p.0767 應永廿六年十月廿五日、於二聖幢庵一有二大飮一云々、秉燭以後被レ歸之間、牛飼下部等沈醉、於二松 原邊一、〈法安寺邊云々〉車轅忽打折畢、地下男共、樣々加二修理一被レ歸之間、於二深草一、又一方之轅打折、左右折之間、乘車不レ叶、面々輿を尋て被レ歸云々、牛飼失二面目一逃隱云々、頗不吉不思議事歟、

〔七十一番歌合〕

〈上〉

p.0768 五番 右 車作
心して車つくらむ秋のよのながえの月のをそくめぐらば

鴟尾

〔枕草子〕

〈十〉

p.0768 ある人の、いみじう時にあひたる人の聟になりて、一月もはか〴〵しうもこでやみにしかば、すべていみじういひさわぎ、めのとなどやうのものは、まが〳〵しき事どもいふもあるに、其かへる年の正月に、藏人になりぬ、〈○中略〉六月に、人の八講し給ひし所に、人々あつまりて聞くに、此藏人になれる聟の〈○中略〉忘れにし人の車のとみのを(○○○○)に、はんひのを、引かけつばかりにて居たりしを、〈○下略〉

〔古今著聞集〕

〈十二/武勇〉

p.0768 同朝臣、〈○源義家〉若ざかりに、ある法師の妻を密會しけり、件の女の家、二條猪隈へんなり、〈○中略〉法師のたがひたる隙をうかゞひて、夜ふけて、かの堀のはたへ車を寄せければ、女棧敷のしとみをあげて、すだれを持あげゝる、其時とびの尾(○○○○)より越入にけり、堀の廣さもまうなりけるに、上樣に飛入けん、早業の程、凡夫の所爲にあらず、

〔古今著聞集〕

〈二十/魚虫禽獸〉

p.0768 同〈○承安〉二年、祇園會を菅博士行衡、三條堀川にて見けるに、車のうしろのかたを引てすぎける牛、とみのをのかたより、車のしたに入て、車にかけたる牛の左の腹をつきてけり、

〔成通卿口傳日記〕

p.0768 一坊門殿のかゝりの下に、簾もかけぬ車のありしを、引入よと沙汰もせずして、かたがゝりにいみじきなど、さだせしほどに、車の本にて、たび〳〵數鞠をす、われはおとすべからずとて、立替て待に、とみのをの方へまりおつ、まわりあはむとせば、おちぬべくて、轅の方よりくゞりこえざまに、鞠を庭へ出す、猶轅のうちにや落ちんと覺しかば、とみのをの方より走りく ぐり越て、庭へいだしてき、見物の人、のゝしりあふさまかぎりなし、

軛

〔新撰字鏡〕

〈車〉

p.0769 〓〈近倶反、軛、久比木、又久佐比、〉 輨轄、〈上古緩反、上鍵也、下胡〓反、訓同、久佐比、〉 軛枙〈同於革反、菩薩大悲之軛、久比木、久佐比、〉

〔同〕

〈彳〉

p.0769 衡〈魚迎反、横也、迎也、平車挽也、久比支、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十一/車具〉

p.0769 軛 釋名云、軛、〈音厄、久比岐、〉所三以扼二牛領一也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈三/車具〉

p.0769 原書釋車、作下槅扼也、所三以扼二牛頸一也上、按、説文云、槅、大車枙、徐音古覈切、周禮車人、鬲長六尺、鄭司農注鬲、謂下轅端厭二牛領一者上、鬲帥槅字、説文又云、〓、轅前也、徐音於革切、二字不レ同、段玉裁曰、通曰レ〓、大車之〓曰レ槅按、小車衡以駕レ馬、大車槅以駕レ牛、皇國之乘車駕レ牛、若二大車犢車一、故引下釋名、訓所三以扼二牛領一之槅字上也、此引二釋名一作レ軛、恐誤、然玉篇、軛、牛領〓也、後漢書列女傳注、軛、謂下轅端壓二牛領一者上、皆爲二牛車具一、故源君、引二釋名一作レ軛也、

〔類聚名義抄〕

〈九/車〉

p.0769 軛〈クヒキ〉 軥〈クヒキ〉

〔易林本節用集〕

〈久/器財〉

p.0769 軛(クビキ)

〔玉海〕

p.0769 建久四年四月廿日丙辰、此日攝籙〈○藤原兼實〉之後、初度賀茂詣也、〈○中略〉東面立レ車、〈○註略〉外レ鞦放レ牛、立レ榻置二頸木(○○)一、

軸

〔新撰字鏡〕

〈車〉

p.0769 軸〈徐陸勅陸二反、與己加彌、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十二/車具〉

p.0769 軸 説文云、軸、〈直六反、和名興古加美、〉持レ輪者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈三/車具〉

p.0769 釋名、軸、抽也、入二轂中一可二抽出一也、王念孫曰、軸之言、持也、舟柁謂二之舳一、機持レ經者、謂二之柚一、義並同也、

〔類聚名義抄〕

〈九/車〉

p.0769 〓〈ヨコカミ〉 軸〈ヨコカミ メクラス〉

〔和玉篇〕

〈上/車〉

p.0769 軸(チク)〈スヽ厶 ヨコガミ コシキ メグラス〉

〔倭訓栞〕

〈中編二十八/與〉

p.0769 よこがみ 和名抄、新撰字鏡、延喜式に、軸をよめり、横上の義にや、車輪をもつ ものなり、よこぎは軫なり、

〔延喜式〕

〈十七/内匠〉

p.0770 牛車一具、〈○中略〉軸木一枚、

〓

〔倭名類聚抄〕

〈十一/車具〉

p.0770 〓 唐韻云、〓、〈音博〉車下索也、釋名云、〓、〈今按和名度古之波利〉在二車下一、與レ輿相連縛也、

〔類聚名義抄〕

〈九/革〉

p.0770 〓〈正〓䪙、或車下索、トコシハリ〉

〔九條家車圖〕

p.0770 保延五年十月、八幡賀茂詣日繪樣、 檳榔庇〈○中略〉
車輿縛緖白生絹〈下結白布〉

〔權記〕

p.0770 寬弘七年二月廿日庚子、今日亥刻、尚侍〈○藤原姸子〉被レ參二東宮一、〈○三條〉䡨二糸車於細殿一、光榮返閉、出二西中門一之間、車床縛(○○○)切、爲レ結暫放二胸垣一、

〔日本紀略〕

〈十三/後一條〉

p.0770 万壽四年七月廿日戊午、從三位道雅卿、於二帶刀長高階順業宅一、博奕之間、從三位道雅卿、取レ賭歸去之處、順業令二郎從一、令レ勇二車輿之縛繩一、覩者如レ堵、

〔明月記〕

p.0770 文曆二年十一月廿六日、兵部權少輔經俊車、欲レ融二少將雅繼車傍一、少將牛童、押塞懸二寄車三條築垣一、車筒懸二經俊車輪一責融間、輫〓(○○)剪、車放レ輪落、袖又破、〈○下略〉

輪

〔倭名類聚抄〕

〈十一/車具〉

p.0770 輪〈輞附〉 野王案、輪、〈音倫、和名和、〉車脚所二以轉進一也、四聲字苑云、輞、〈文兩反、漢語抄云於保和、一云輪牙、〉車輪郭曲木也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈三/車具〉

p.0770 和與レ万通、與下丸訓二万呂之一、圓訓中万止加上同語、〈○中略〉今本玉篇云、輪、車輪也、不レ載二所レ引文一、慧琳音義引云、輪、車輞也、亦不下與二此引一同上、説文、輪、有レ輻曰レ輪、無レ輻曰レ輇、釋名、輪、綸也、言二彌綸一也、周帀之言也、王念孫曰、輪之言、員也、運也、〈○中略〉考工記、輪人、牙也者、以爲二固抱一也、注、鄭司農云、牙讀如二跛者訝一、跛者之訝、謂二輸輮一也、世間或謂二之罔一、説文、有二枒字一云、一曰車网會也、枒卽牙字、故云二輞一去輪牙也一、三才圖會亦云二輪牙一、〈○中略〉按、釋名、輞、罔也、罔二羅周輪之外一也、周禮、輪人疏云、古者車輞、屈二一木一爲レ之、要爲三木善二火齊一、又得二是車輪郭曲木之義一也、古無二輞字一、只作レ网、見二説文輪字注一、

〔玉篇〕

〈十八/車〉

p.0771 輪〈力均反、考工記、(中略)又曰、兵車之輪六尺有六寸、田車之輪六尺有三寸、乗車之輪六尺有六寸、野王案、卽車之脚也、所用轉以進者也、〉

〔類聚名義抄〕

〈九/車〉

p.0771 輪〈ワ クルマノン〉 〓〈オホワ、一之輪牙、〉

〔下學集〕

〈下/絹布〉

p.0771 輪〈車具也〉

〔延喜式〕

〈十七/内匠〉

p.0771 牛車一具、〈○中略〉輪料櫟廿八枚、

〔大鏡〕

〈六/内大臣道隆〉

p.0771 此帥殿〈○藤原伊周〉は、花山院と、あらがひごと申させ給へりしはとよ、いとふしぎなりしことそかし、わぬしなりとも、我門はえわたらじと仰せられければ、隆家、などてかまかりわたり侍らざらんと申給て、其日に定められぬ、輪つよぎ御車(○○○○○○○)に、逸物の御牛かけて、御烏帽子直衣、いとあざやかにさうぞかせ給へり、

〔台記〕

p.0771 久安四年五月十日丁卯、早旦、禪閤〈○藤原忠實〉詣二天王寺一、〈○中略〉禪閤渡二御宿所一、〈西門外北屋〉 十四日辛未、申刻御レ輦、〈予(藤原賴長)候二輦後一〉放(○)レ輪(○)舁二居西門外地一、覽二聖人所レ行之迎講一、

轂

〔新撰字鏡〕

〈欠〉

p.0771 〓〈古久反、己志支、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十一/車具〉

p.0771 轂 説文曰、轂〈古祿反、楊氏漢語抄云、車乃古之岐、俗云筒、〉輻所レ湊也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈三/車具〉

p.0771 按、内匠寮式、云二牛車橧一者卽是、橧、蓋甑俗字、甑訓一古之岐一、故借用也、〈○中略〉文選解嘲、轂訓二古之幾一、新撰字鏡、〓訓二己志支一、〓卽轂字之譌、按、其形似レ甑故名、〈○中略〉釋名、轂埆也、體堅埆也、

〔類聚名義抄〕

〈九/殳〉

p.0771 轂〈正、車ノコシキ、俗云トウ、〉〓〈俗〉

〔同〕

〈九/車〉

p.0771 軨䡿〈正、或零車、 コシキ上ソムクルマノワ、〉 䡼〈又〉䡰䡰〈全正 車堅コシキ〉 〓〈車ノトウ〉

〔延喜式〕

〈十七/内匠〉

p.0771 牛車一具、〈○中略〉橧料槻二枚、

〔大鏡〕

〈八〉

p.0771 花山院の御時の、石淸水臨時祭、圓融院の御覽ぜしばかり、けうある事候はざりき、〈○中略〉大臣二人は、左右の御車のとう(○○○○○)をさへて立せ給へり、

〔源氏物語〕

〈九/葵〉

p.0772 御車ども、立つゞけつれば、人給ひの奧におしやられて、物も見えず、〈○中略〉榻なども皆おしやられて、すゞろなる、車のとう(○○○○)に打かけたれば、又なう人わろく悔しう、何に來つらんと思ふにかひなし、

輻

〔倭名類聚抄〕

〈十一/車具〉

p.0772 輻 老子經云、古車有二三十輻一、〈音福、和名夜、〉以象二月數一也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈三/車具〉

p.0772 西京賦、輻訓久留万夜、輻之在二輪内一、猶三矢之在二彎中一、

〔後漢書〕

〈二十九/輿服〉

p.0772 輿方法レ地、蓋圓象レ天、三十幅、以象二日月一、〈鄭玄曰、輪象二日月一者、以二其運行一也、日月三十日而合宿、〉蓋弓二十八、以象二列星一、

〔類聚名義抄〕

〈三/木〉

p.0772 輻櫟〈クルマノヤア〉

〔同〕

〈九/車〉

p.0772 輻〈ヤ ヤア クルマノヤ〉 輭〈ヤ〉

〔和玉篇〕

〈上/車〉

p.0772 輻〈ツドフ トヾム アツマル クルマノヤ〉

〔易林本節用集〕

〈美/器財〉

p.0772 輻(ミソノヤ) 〈車輪之中有レ之、數有二三十輻一也、〉

〔倭訓栞〕

〈前編三十四/也〉

p.0772 や 輻をよむも和名抄にみゆ、矢より轉ぜる成べし、

〔延喜式〕

〈十七/内匠〉

p.0772 牛車一具、〈○中略〉轅輻料樫九十七枚、

〔壒囊抄〕

〈二〉

p.0772 車〈ノ〉ワハ數アル物歟、又其字如何、
老子經曰、三十(ミソノ)輻共二一轂(コシキ)一、嘗二其无一有二車之用一、是ヲ註古(スルニ)車ニ三十輻アリ、一月ニ法、一轂ヲ共ニストハ、輻中ニ輻アリ、衆輻共ニ湊(アツマル)ト云リ、是ハ道敎心虚无自然道ヲ談ズル故ニ、轂中虚ニ輪間透テメグル事ヲ得ヲ以テ、除レ情去レ欲、心ヲ空シカラシメバ、道ニ叶ベキニ喩ヘタリ、注ニ、古ヘニハト云ヲ以テ知、又今ノ車ハ輻ハ減ズルナルベシ、當時車ハ輪木八板アリテ、輻數廿四枚也、輪木一〈ニ〉、ヤ各三ヲサス也、仍三八廿四也、車ヲバ奚仲ト云者始テ作ルト云ヘリ、輻字ヲヤト讀也、但雜車ハ輪七枚有テ、ヤノカズ廿一枚也、

〔太平記〕

〈二十三〉

p.0772 土岐賴遠參二合御幸一致二狼籍一事附雲客下レ車事 同〈○康永元年〉九月三日、〈○中略〉持明院上皇、〈○光嚴〉伏見殿へ御幸ナル、〈○中略〉松明ヲ秉テ還御ナル、〈○中略〉斯ル處ニ土岐彈正少弼賴遠、二階堂下野判官行春、今比叡ノ馬場ニテ笠懸射テ、芝居ノ大酒ニ時刻ヲ移シ、是モ夜深テ歸ケルガ、無レ端樋口東洞院ノ辻ニテ、御幸ニゾ參リ合ケル、〈○中略〉賴遠醉狂ノ氣ヤ萌シケン、〈○中略〉御車ヲ眞中ニ取籠テ馬ヲ懸寄セ、追物射ニコソ射タリケレ、〈○中略〉供奉ノ卿相雲客モ皆打落サレテ、御車ニ當ル矢ヲダニ防ギ進ラスル人モナシ、下簾皆撥落サレ、三十幅(○○○)モ少々折レニケレバ、御車ハ路頭ニ顚倒ス、淺猿シト云モ疎カ也、

轄

〔倭名類聚抄〕

〈十一/車具〉

p.0773 轄 野王案、轄、〈音割、和名久佐比、〉軸端鐵也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈三/車具〉

p.0773 原書在二車部一云、轄、車聲、又車鍵也、與二所レ引文一不レ同、舛部云、〓、車軸端鐵也、與レ此合、按、説文、〓、車軸耑鍵、又云、轄、車聲也、一曰、轄、鍵也、顧氏蓋並本レ之、廣韻、轄、車軸頭鐵、又以二〓轄同字一、依下説文〓訓二車軸耑鍵一、轄一訓上レ鍵、合倂爲二一字一也、慧琳音義、一引作二轄車軸兩端鐵也一、再引作二轄車軸端鐵也一、則古本玉篇、以二〓轄一爲二一字一、與二廣韻一同、故此擧二轄字一、訓以二軸端鐵一也、又按、今本玉篇、軸上有二車字一、慧琳三引皆同、此蓋脱二車字一也、

〔類聚名義抄〕

〈八/金〉

p.0773 鎋〈クサヒ、カネノグサヒ、グサヒサス、カネノハナ、〉

〔同〕

〈九/車〉

p.0773 轄〈クサヒ、クサヒサス、クヒキ、〉

〔七十一番歌合〕

〈上〉

p.0773 五番 右 車作
我戀はくさびもさゝぬ小車のめぐり逢べきたのみだになし

釭

〔新撰字鏡〕

〈金〉

p.0773 錕〈古本反、銚也、車乃可利母、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十一/車具〉

p.0773 釭 説又云、釭、〈古紅反、又古雙反、和名車乃加利毛、〉轂口鐵也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈三/車具〉

p.0773 原書作二車轂中鐵也一、〈○中略〉又按、急就篇注、釭、車轂中鐵也、王應麟曰、説文、一作レ口、是説文、本有レ作レ中、有レ作レ口也、釋名、釭、空也、其中空也、王念孫曰、説文、銎、斤斧穿也、斤斧穿謂二之銎一、猶三車穿謂二之釭一、釭銎之爲レ言空也、

〔類聚名義抄〕

〈八/金〉

p.0774 釭〈カモ クルマノカモ〉 錕〈車ノカリモ〉 〓〈車ノカリモ〉

〔拾遺和歌集〕

〈九/雜〉

p.0774 能宣に、車のかも(○○○○)をこひに遣して侍けるに、侍らずといひて侍ければ、
藤原仲文
かをさして馬といふ人ありければかもをもをしと思ふなるべし
返し 能宣
なしといへばをしむかもとやおもふらむしかやうまとぞいふべかりける

輔

〔新撰字鏡〕

〈車〉

p.0774 輔〈扶禹反、万相也、助也、補也、車乃波知、〉

〔段注説文解字〕

〈十四上/車〉

p.0774 〓、春秋傳曰、輔車相依、〈凡許書、有下不レ言二其義一、徑擧二經傳一者上、如下〓下云二詞之〓矣一、鶴下云下鶴鳴二九皋一、聲聞中于天上、艴下云二色艴如也一、絢下云中詩云、素以爲レ絢兮之類上是也、此引二春秋傳僖公五年文一、不レ言二輔義一者、義已具二於傳文一矣、小雅正月曰、其車旣載、乃棄二爾輔一、傳曰、大車旣載、又〓二其輔一也、無レ棄二爾輔一、員二于爾輻一、傳曰、員、益也、正義云、大車、牛車也、爲レ車不レ言レ作レ輔、此云レ〓レ輔、則輔是可二解脱一之物、蓋如下今人縛二杖於輻一、以防中浦車上也、今接、呂覽權勳篇曰、宮之奇諫二虞公一曰、虞之與レ〓也、若二車之有一レ輔也、車依レ輔、輔亦依レ車、虞〓之勢是也、此卽詩、無レ〓二爾輔一之説也、合三詩與二左傳一、則車之有レ輔信矣、引申之義、爲二凡相助之偁一、今則借義行、而本義廢、尠レ有下知三輔爲二車之 物一者上矣、人部曰、備、輔也、以二引申之義一釋二本義一也、今則本字廢、而借字行矣、面部曰、䩉、婦車也、面䩉自有二本字一、周易作レ輔、亦字之段借也、今亦本字廢、而借字行矣、春秋傳、捕車相依、許廁二之於是一者、所三以説二輔之本義一也、所三以説二左氏一也、謂輔與レ車、必相依倚也、他家説レ左者、以三頰與二牙車一釋レ之、乃因二下文之唇齒一、而傳會耳、固不レ若二許説之善一也、〉从レ車甫聲、〈扶雨切、五部、〉人頰車也、

沿革

〔輿車圖考〕

〈一〉

p.0774 車の事、日本紀に車輿などあるは、例の文章にて、たしかに見えたるは、雄略紀に上車歸とあると、新撰姓氏録に見えたる車持公の條と合せみて、此時はたしかなれど、猶履中紀に、車持君、車持部を校して兼取充神者とあれば、それより古よりある事をしるべし、〈○中略〉淸寧天皇御時、億計弘計の皇子だちを靑蓋車にて迎へらるよし見えたれど、これは漢書輿服志の文にてかけるなり、又雄略紀に、展車馬とあるは文選の文なり、日本紀には、この類多し、〈○中略〉孝德紀に、車形錦といふ事みゆるも、是またいにしへよりありし一證なり、〈○中略〉そも〳〵唐の制度、乗御に四色あり、路車、傍車輦、輿あり、〈○中略〉この中に路車、傍車は、皇朝には凡用ひられず、

〔湯土問答〕

〈二〉

p.0775
吾大東ニ、車ノ造リ出サレシハ、イヅレノ比ニヤ、又天子御車ニ召ケル事モ、イヅレノ世ニ始リケルニヤ、大和物語ニ、御輦ニ鷹ヲトマラセラル事見ユ、輦トハ手カキニスル車ナリ、車ハ牛ニヒカスルナレバ、輦ト車トハ異ナル物也、サテ昔ハ賤キ人モ車ニ乘タル事、今昔物語等ニ見エタリ、然ラバ車ノ制度ニ貴賤ノ品有シニヤ、檳榔毛ナド名目モ聞ユ、又車ノスタレタルハ、イツ比ヨリノ事ニヤ、
右詳ニセンハ、事長カルベクトモ、クハシキコト、承申度コソ存ジ候へ、
答
車作リ出サレシ事、國史等所見ナク候、然ルニ海東諸國記ニ、天武天皇十二年ニ、始テ車ヲ作ルト見エ候、外國ヨリ記セシコトナレドモ、日本紀ニ不レ見シテ、其後國史等ニ見へ候ヘバ、此説ヨク叶タルガ如シ、此廢レシコトハ、イツトサシテ見エ候コトハナク候ヘドモ、應仁ノ亂、都ハ野邊ノタヒバリト讀シ頃ニ、車マデモ殘リナク燒失シ、其後公卿雲客モ諸國へ流浪シ給ヒ、タマ〳〵殘り給フモ、卽位ノ禮サへ、御讓位以後、十年餘ヲ經テ行シ世ナレバ、其公卿車ナド作リ出ス料ナド、思モヨラズ成リニシヨリ、自然ト廢レシゾ、文明十二年ニ、一條禪閤〈○兼良〉記シ給シ桃花蘂葉ニ、私家有レ之車、破殞ノ後ハ、院ノ御車ヲ申出シテ使用ナリトアレバ、彼ノ應仁以來ハ、仙洞計ニ車モ殘リアリシヲ、攝家ナドバカリ用ラレシナルベシ、今ハ諸臣ノ車ヲ用ヒ給フコトナキ世トハナリタリ、
天子御車ノコトハ、更ニナキコトニテ御輿ナリ、是ニ三ツアリ、鳳輦、葱花輿、腰輿ナリ、是ハ行幸ニ鳳輦、神事行幸ニ葱花、宮中又燒亡等ノ時ニ腰輿ノヨシ、有職抄ニ見エタリ、是ヲカキ奉ル駕輿丁、七十人ノ定ノ由候へ共、當時ハ五十人計、京都ニ居申由ニ候、輦ハ和名抄ニ、和名天久流萬ト見エ、 職員令義解ニ、舁行曰レ輿、輓行曰レ輦トモ見エ候、是ハ宮中ニテ、牛ヲ放テ手ビキニスル故ノ名也、又別ニ輦ト云車ヲ作リテ後、更衣等宮中ヲ行カヨヒ給フ時ノ料ナルモ、昔ハ有シト云、然ルニ鳳輦ニ手車ノ字ヲ書コト、不審ナルコト也、初メ轝ナリシヲ、誤テ輦ノ字ヲ用候ヤト云、本朝ニテ、似タル字ニテ通用スル例、多キコトニ候、
車ニ貴賤ノ品アルコト 飾車、〈加茂祭乘レ之〉靑糸毛、〈春宮乘二給之一〉赤糸毛、〈加茂祭女使乘レ之〉尼眉、〈關白太政大臣乘レ之〉唐庇、〈上皇女院乘二給之一〉半蔀車〈大將以上乘レ之〉檳榔車、〈關白以下至二參議一常乘レ之〉網代車、〈家々説不レ同也〉長物見大八葉、〈大臣乘レ之〉切物見大八葉、〈上下乘レ之〉小八葉車〈外記史辨官、醫陰之輩乗レ之、〉之由、物具抄ニ見エタリ、サレドモ諸家ノ記ドモノ説、一條ナラズ、殊ニ網代車ノ事、説々不同ト記セシ如キコトニテ、一條家裝束抄ニハ、半蔀車ト同物ナル由見エ候ヘバ、貴人ノ物ニ候、サレドモ源氏物語ニ、御忍ビアルキナレバ、御車モイタフヤツシ給フトアル所ノ諸注ニ、網代車ナリトアレバ賤キ車也、其外ニモ賤シキニハ、網代車ト多ク書シコトアレバ、一條家裝束抄ノ説不審ナリ、然ルニ西宮抄ニ、昔賤キモノ乘候網代車ニハ、紋ヲ多ク畫キテ、文(モン)車ト云トアレバ、網代車ニ制作ノヤウニヨリテ、貴賤ノ品アルニヤ、又猶賤キニ尹板車ト云アリテ、下﨟ノ乘ニハ、簾ノ緣ヲ色革ヲ以テスルト云コトモ、總役車ニ僧ノ乘リシト云コトモ、古ク見エタレバ、昔四天王ト云ヒシ武士ノ乘シモノナドハ、文車、板車ナドノ類ナルベシ、

制度

〔延喜式〕

〈五十/雜〉

p.0776 凡乘レ車出二入宮城門一者、妃已下、大臣嫡妻以上、限二宮門外一、四位以下、及内侍者、聽レ出二入土門一、但不レ得レ至二陣下一、

〔政事要略〕

〈六十七〉

p.0776 寬平六年五月十二日官符云、男女有レ別、禮敬殊著、而頃年上下總好二乘車一、非レ施二新制一、何改二弊風一、左大臣宣、奉レ勅、不レ論二貴賤一一切禁制、
使廳續類聚云、寬平七年正月五日宣旨、無品薺世親王、明日許聽レ乘レ車、同九日宣旨、中納言藤原朝臣諸葛、民部卿藤原朝臣保則等宣、聽レ乘レ車者、親王公卿、總制レ乘レ車、明經學生秦維興、依二輒乘一レ車、被レ断二 其罪一、卽處二違式之科一、依二多事一具不レ載、
同〈○寬平七年八月〉十七日宣旨、奉レ勅、男聽レ乘レ車、〈見二同類聚一〉
男乘車之制、隔二一年一停止、爲レ見二舊法一、大略記注、
太政官符
雜事拾一箇條
一應レ禁二制六位以下乘一レ車事
右太政官、寬平六年五月符偁、男女有レ別、禮敬殊著、而頃年上下總乘レ車、非レ施二新制一、何改二弊風一、左大臣宣、奉レ勅、不レ論二貴賤一一切禁斷、又同七年八月十日宣旨偁、奉レ勅、男聽二乘車一者、其後雖二車聽レ乘之者一、非レ無二等差一、而凡庶之人、不レ量二涯分一恣以乘用、或加二黃金之飾一、轉濫二朱轓之體一、風流嘲哢、眩二妙巧一驚二衆且一、又是凋訛之基也、夫乘レ車者皆君子、不レ可二大夫徒行一、若无二隄防一何誡二後車一、同宣、奉レ勅、自レ今以後、六位以下乘レ車、一切停止、但外記官史、諸司三分以上、並公卿子孫、及昇殿者、藏人所衆、文章得業生、不レ可二必制一、
長保元年七月廿五日
右辨官下撿非違使
雜事參箇條
一應三重禁二制六位以下乘一レ車事
右同前〈○太政官〉奏狀偁、同前符〈○寬平六年五月符〉偁、寬平七年八月十七日宣旨偁、奉レ勅、男聽二乘車一者、其後雖二車聽レ乘之者一、非レ無二差等一、而卑位凡庶之人、不レ量二涯分一、恣以乘用、或加二黃金之飾一、轉濫二朱幡之體一、同宣、奉レ勅、自レ今以後、六位已下乘車、一切停止、但外記官史、諸司三分已上、公卿子孫、及昇殿者、藏人所衆、文章生、不レ可二必制一者、伏按二符旨一、依二彼人之等差一、可レ有二車之分別一、未レ定二其體一、猶レ遺二此疑一、又諸禁色、皆從二破却一、不レ聽レ乘之輩、若誤乘之日、其車可二必破却一、但牛馬之如何、重按二律條一、牛非二唯駕車之備一、兼復爲二耕稼之本一也、返給可レ充二 他用一歟、沒官可レ經二公用一歟、同請二裁定一、宜二以遵行一者、同宣、奉レ勅、車只禁二華美一、牛又返二給本人一者、
長保二年六月五日
或人云、不レ可レ乘レ車之者、與二可レ乘之人否乘者、主客可レ有レ罪哉、答、不レ可レ无レ罪、主人處二不應爲輕一、合乘之者、可レ處二違式一、又同月事、 兩人罪異、若處二一罪一、可レ有二首從一歟、答、名例律云、共犯レ罪而本罪別者、雖三相因爲二首從一、其罪各依二本律一、首從論者、由レ是案レ之、以二主人一爲二不應爲之首一、以二合乗一爲二違式之從一耳、但至二其首從一、臨レ時可レ定、以二先唱之者一可レ爲レ首之故、又云、無位孫王、可三乘レ車著二絹袴一哉、答、擧レ輕明レ重、律條所レ指也、公卿在レ下、子孫猶聽二乘車一、親王加レ上、子孫可レ聽二乘車一、然而新制之意、難レ可二因准一、何者諸司雖レ有二七位八位之允佑一、綸言所レ聽也、諸國雖レ有二六位七位之介掾一、制符所レ拘也、所レ謂非常之斷、人主專レ之、偏守二輕重相明之文一、何定二王卿勝負之法一、然則无位孫王、不レ可二乘車一、

〔朝野群載〕

〈十一/廷尉〉

p.0778 太政官符撿非違使
雜事漆箇條
一諸司諸衞官人以下不レ可レ乘レ車事
右同〈○左大臣〉宣、奉レ勅、聽レ乗レ車輩、載在二格條一、而不レ憚二憲章一、違犯爲レ事、宿衞之人、各遠二兵仗一、恣飛二華軒一、狼戻之至、職而斯由、宜下任レ法決レ科、且録レ名言上上者、〈○中略〉
以前條事下知如レ件、使〈○檢非違使〉宜承知、依レ宣行之、符到奉行、
永久四年七月十二日 正五位下行右大辨兼内藏頭藤原朝臣
修理右宮城判官正五位下行左大史兼算博士播磨守小規宿禰

〔日本後紀〕

〈二十四/嵯峨〉

p.0778 弘仁六年十月壬戌、勅、〈○中略〉内親王孫王、及女御已上、四位已上命婦、四位參議已上嫡妻子、大臣孫、並聽レ乘二金銀裝車一、自餘一切禁斷、

〔延喜式〕

〈四十一/彈正〉

p.0778 凡内親王孫王女御、及内命婦、幷參議以上、非參議三位嫡妻女子、大臣孫、並聽レ乗二用金 銀裝車屋形一、
凡内親王三位已上、内命婦、及更衣已上、幷聽下乘二絲葺有レ庇之車一、幷著中緋牛鞦上、
凡市人、不レ得下以二白綾夾纈等一、爲二車屋形裏一、以二雜揩色一、爲二從者衣一、以二綵色一編レ竹成レ文爲レ簾、及將中從四人以上上、凡裁二絹絁一爲二獵衣袴一、縫二白絹縑一著二從女衣裳一、以レ絲葺レ車、及用二金銀飾等一、悉皆禁斷、〈但金泥釘非二制限一〉

〔政事要略〕

〈六十七〉

p.0779 彈正式云、〈○中略〉以レ絲葺レ車、及用二金銀飾等一、悉皆禁斷、〈但金泥釘非二制限一〉
乘車之制粗見二此式一、唯止有下葺レ絲用二塗釘一之文上、未レ明下踏レ榻懸二下簾一之法上、況檳榔毛車制數等亦無二其限一、然而古今之間、王卿皆用レ之矣、凡厥下簾用否、車制多少、蓋是承前之事、宜レ依二古來之例一耳、〈僧侶之事、亦似二此法一、〉

〔政事要略〕

〈六十七〉

p.0779 太政官符撿非違使
雜事六箇條
一應レ禁二制車華美一事
右同前〈○太政官〉奏狀偁、長保二年六月五日宣旨云、車只禁二制華美一、牛亦返二給本人一者、華美之體、儉約之法、不レ別二位階一、無レ有二異同一、其器物之類、隨レ人不レ同、須下依二品秩一以異中形勢上、四位網代、五位薦張、六位板車、床不レ可レ塗レ内、輪只塗二掃墨一、凡厥塗漆不レ得二照耀一、又造二高大一、一切禁斷、然則華美自斷、儉約可レ存者、同宣、奉レ勅、依二先宣旨一只禁二斷花美昭耀一、但至二于輪轤轂一、公卿、及少納言、辨、六衞府次將、殿上侍臣用レ之、自餘一切禁斷者、〈○中略〉
長保三年閏十二月八日
問、僧尼美車、可レ制哉否、
答、僧尼令云、僧尼有レ犯、准二格律一、合二徒年以上一者還俗、如犯二百杖以下一、毎二杖十一、苦使十日、義解云、其格律者、元爲二俗人一設レ法、不下爲二僧尼一立上レ制、是以稱レ准也、犯二苦使一、已斷訖、未レ付二三綱一者散禁、若未レ經レ斷者、付レ寺參 對者、華美之車、先爲二俗人一立レ法、照耀之禁、縱雖二僧尼一難レ犯、仍須二車早破却一、身從二寬免一、卽令三寺行二其苦使一、唯夫僧綱、録名奏聞而已、

〔古事談〕

〈一/王道后宮〉

p.0780 後冷泉院末、過差事外之間、至二上官車一用二外金物一、而後三條院代始、八幡行幸之時、留二鳳輦一、見物車外金物ヲヌカセラレケリ、中ノ金物ハ、依レ不二御覽一不レ被レ放之故、今ニ所レ用也、賀茂行幸之時、外金物車、無二一兩一云々、

〔續世繼〕

〈二/手向〉

p.0780 此帝、〈○後三條〉世をしらせ給ひてのち、〈○中略〉石淸水の行幸はじめてせさせ給ひけるに、物見車どものかな物うちたるを御覽じて、御輿とゞめさせ給ひてぬかせ給ひける、御めのとの車より、いかでか我君のみゆきに、この車ばかりはゆるされ侍らざらんときこえければ、この由をや奏しけむ、そればかりぞぬかれ侍らざりけるとかや、賀茂の行幸には、金物ぬきたる跡ある車もぞ、立ならびて侍りける、

〔玉蘂〕

p.0780 建曆二年三月廿二日、此日〈○中略〉又被レ下二新制宣旨廿ケ條一云々、追可二尋入一、有二眞名、假名新制一、可二書入一、
建曆二年三月廿二日宣旨〈左大臣左大辨〉
一可レ停二止賀茂祭使齋王禊供奉人簦車及從類裝束過差一事
簦車
金銀珠鏡錦繡銅薄等可レ停二止之一〈○中略〉
抑、簦車風流僮僕衣裳、空費一十家之産一、偏擅二一日之美一、禁奢之法、豈以可レ然哉、慥守二符旨一、永令二停止一、
一可レ糺二定緇素上下諸人服飾過差一事〈○中略〉
車内金物、要須所之外、不レ論二貴賤一可二停止一、
僧侶之中、法印乘用之外、金物車同可レ停二止之一、〈○中略〉 藏人民部權少輔藤原資賴奉

〔增鏡〕

〈十/老の波〉

p.0781 八月、〈○弘安二年〉御子の御ありきぞめとて、万里小路殿にわたらせ給ふ、〈○中略〉そのころけんやく行はるとかや聞えしほどにて、下すだれのみじかくなされ、小金物ぬかれける、物見車どものも、召次よりて、切などしけるをぞ、時しもや、かゝるめでたき御事のおりふしなど、いふ役人もありけるとかや、

〔令義解〕

〈七/公式〉

p.0781 凡行程、〈○註略〉馬日七十里、步五十里、車卅里、

〔延喜式〕

〈三十四/木工〉

p.0781 車載
舊材積三万材、〈除二彫穿一積〉雜材積二万七千材、〈但飛檐簧子等類、並准二舊材一、〉〓榑十六材、瓪瓦一百二十枚、筒瓦一百四十枚、鐙瓦八十枚、宇瓦六十枚、大坂石積七千九百二十材、〈小石九千材〉讃岐石積六千三百材、〈小石七千二百材〉白土三石三斗、藁五十圍、四尺檜皮十二圍、三尺檜皮十八圍、各載二一輛一、〈駄减二三分之二一〉
凡山城國大井津雜材木直、幷車賃錢者、五六寸步板、一丈四尺柱、直各四十五文、榑一材直九文、簀子、一丈二尺柱、直各二十六文、自二同津一至レ寮車一輛賃五十文、

〔三代實録〕

〈十一/淸和〉

p.0781 貞觀七年九月十五日癸巳、太政官下二知彈正臺、左右京職、山城、攝津、伊賀、近江、丹波、播磨等國一、禁二材木短狹一、及定二車載法一曰、〈○中略〉車荷者、量二材長短一、先有二制法一、今擧二不法一、旣責二輕薄一、運載之法、何應二一同一、須二〓榑卅二材、步板八枚、簀子十枚、以レ此爲一レ定、〈○下略〉

〔享祿本類聚三代格〕

〈十八〉

p.0781 太政官符
禁二制材木短狹一及定二不如法材車荷一事
右太政官、去貞觀七年九月十五日、下二諸國一符偁、〈○中略〉其車荷者、量二材長短一、先有二制法一、今擧二不法一、旣責二輪薄一、運送之法何應二一同一、仍須二〓榑卌二材、步板八枚、簀子十枚、以レ此爲一レ定、復レ舊之後、改從二恒例一、不レ得三因レ此更令二濫吹一、長官相承、嚴加二督察一、牓二示山口一、分明令レ知者、被二大納言正三位兼行左近衞大將藤原朝臣氏 宗宣一偁、如レ聞先定車荷、煩人愁、宜更下知、〓榑廿材、步板七枚、簀子九枚、一丈二柱九根、以レ此各爲二一輛車之荷一、若賃車之徒、猶不二改正一者、當所刀禰、隨レ見得二登時決笞一、刀禰等不レ加二勘糺一、科二違格之罪一、自餘一切、如二先符一、
貞觀十年三月十日

〔享保集成絲綸録〕

〈二十六〉

p.0782 天和三〈亥〉年正月
覺
一車長持向後彌停止之事
附火事之節、地車に諸道具を積のせ申間敷候事、〈○中略〉
正月

〔大成令〕

〈八十六〉

p.0782 元祿人亥年十二月
一町中に而、大八車に物を積引候儀、大分物をつみ候故崩落、けがも有レ之候間、向後は何に而も、輕積可レ申候、尤積候物、崩落不レ申樣に可レ仕候、若相背候はゞ、急度可二申付一者也、
十二月

〔三代實録〕

〈十八/淸和〉

p.0782 貞觀十二年十二月廿五日壬寅、制、〈○中略〉又運二禀院雜物一車馬、聽レ出三入自二美福門一、大膳職自二郁芳門一、春宮坊自二待賢門一、中院木屋自二談天門一、

〔殿居囊〕

p.0782 武家心得草
御曲輪内御門に諸品通行心得
車は御用之品積候分は、御徒目付中之印鑑、又は其向御役所よりの切手に而相通し、大名方其外町車に而も、切手を以相通、牛車地車は一切相通不レ申、夫も御徒目付より斷有レ之候得者相通、

〔享保集成絲綸録〕

〈十五〉

p.0782 定 一牛車は不レ及レ申、地車たりといふ共、往來共、橋之上へ一切通申間敷、
但土橋之上、通候儀は不レ苦事、〈○中略〉
右之條々、堅可レ被二相守一者也、
享保六年閏七月
和泉守
山城守
河内守
和田倉御門番中
外櫻田 田 橋 常磐橋 馬場先 日比谷 半藏 田安 竹橋 呉服橋 一ツ橋 鍛冶橋 數寄屋橋 淸水口 雉子橋
右同文言

輦車宣旨

〔延喜式〕

〈五十/雜〉

p.0783 凡乘二輦車一出二入内裏一者、妃限二曹司一、夫人及内親王限二温明後凉殿後一、命婦三位限二兵衞陣一、但嬪女御、及孫王大臣嫡妻乘レ輦限二兵衞陣一、

〔花鳥餘情〕

〈一/桐壺〉

p.0783 てぐるまのせんじ、延喜雜式云、〈○中略〉今案に、〈○一條兼良〉温明殿、後凉殿は、中重の殿也、温明殿は、内侍所おはします殿也、東の宣陽門の中にあり、後凉殿は、西の陰明門の内にあり、〈○中略〉又兵衞陣と云は、中重の門の外也、

〔西宮記〕

〈臨時五〉

p.0783 勅授輦車
蒙二宣旨一之後、帶劒拜舞、若於二御前一被二宣旨一者、卽帶劒、於二庭前一拜舞、天皇卽位讓位之日、依二新帝宣旨一可レ著、雖二衞府者一、勅授人尚給二宣旨一云々、上卿奉レ勅、仰二撿非違使彈正等一、
輦車 親王大臣中、老宿人、有二此恩一、女親王、女御、尚侍、毎二出入一藏人經二奏聞一、仰二閤門吉上一、〈雖レ載二雜式一、毎度仰、〉或僧正、有下蒙二宣旨一者上、從三位菅根侍讀間、聽三乘レ輦至二梨下一、已上皆仰二有司一、

〔西宮記〕

〈臨時八〉

p.0784 輦 太子、老親王、大臣、僧正等、依二宣旨一乘レ之、〈女官見二殫正式一〉

〔西宮記〕

〈臨時一〉

p.0784 諸宣旨
勅授帶劒、牛輦車宣旨、〈親王大臣女、初參夜被レ聽レ輦、〉上卿奉レ勅、仰二彈正撿非違使等一、

〔北山抄〕

〈六〉

p.0784 輦車牛車事
宣二彈正撿非違使一〈外記傳宣〉

〔江家次第〕

〈十四〉

p.0784 讓位〈幼主儀〉
召二藏人一仰云、牛車輦車勅授等如レ舊、藏人仰二此由於第一上卿一、

〔侍中群要〕

〈八〉

p.0784 仰二輦車宣旨一事
藏人奏二事由一之後、著二麹塵袍一、向二其人參入之陣一、〈退之時不レ向レ陣、直召二吉上腋一仰レ之、〉若有官把笏、令下小舍人二人、著二表衣一取中脂燭上、左右前行、至二玄輝門内一、立留仰二近衞陣一、出二閤門外一、又立留仰二兵衞陣一、次出二朔平門外一、仰二靱負陣一、〈小舍人留二門内柱下一、藏人於二砌下一引レ裾、但御物忌之時、於二門内一仰レ之、〉至二輦車前一、南面立定、召二吉上一二聲、左右同音稱唯、〈吉上召令誡候若不候、小舍人代稱唯、〉仰云、其人〈乃〉參給〈ヲ〉、輦車令レ入〈與〉、仰了逐電退還、〈小舍人相從如レ前〉卽以レ輦引入、是大内之儀也、若御二他所一之時、只仰二一陣一、依レ無二中重一歟、
輦車宣旨事
其所令レ奏二參入若罷出之由一、奉二宣旨一之藏人、召二小舍人一令レ差二脂燭一、立二玄輝門閫内一、〈南面、餘門準レ此、〉仰二左右近一、〈先立定、召二吉上一二聲、吉上稱唯、其詞云、其人、女御參、令レ入二輦車一、但東宮、其宮參給、令レ入二御輦車一〉〈〓、〉〈必加二御字一、今上一品宮同加レ之、〉閫外亦仰二左右兵衞一、於二朔平門閫外一、亦仰二左右衞門一、〈但御物忌時、於二閫内一仰レ之、〉
藏人奉レ仰之後、先令三小舍人警二候吉上舍人一、又藏人文官取レ笏、武官帶劒幷取レ笏、
輦車宣旨事
藏人承二宣旨一、隨二參入之吿一、著二麴塵袍一、〈束帶、或以二位袍一仰レ之、可レ隨レ便、〉先令三小舍人二人指二脂燭一、〈在二相並前行一〉至二陣頭一端レ笏、〈有官〉 立定後、召二吉上一二音、〈詞云、吉上々々矣、(矣一本作レ左)吉上等先令二誡候一、〉左右同音稱唯、藏人仰云、其人參給、輦車令レ入〈與〉、吉上等稱唯、六陣召仰皆如レ此、〈先於二玄輝門内一仰二近衞一、於二同門外一仰二兵衞一、至二朔平門外一仰二靱負一、〉仰了、藏人早以趁還、近來更不レ仰二六陣一、還入之次、玄輝門召二吉上一、但又如〈○如、一本作レ加、〉類歟、
内親王、女御、尚侍、參入退出、
口傳云、其剋、先令三小舍人指二脂燭一、步出端笏、立定之後、南面召二吉上一二音、〈其音太上長而上〉左右同音稱唯、仰云、某〈乃〉人〈乃〉參給〈不〉、輦令レ入〈與〉、六府陣皆仰レ之、其次第、先於二玄輝門内一、仰二近衞陣一、出レ閫而仰二兵衞陣一、次到二朔平門一、出レ閫而仰レ之、〈若御物忌之時、於二閫内一而仰レ之、但是從レ内被二退出一之時、欲レ入レ輦之時召、只召二彼府官人若吉上一、可レ仰二事由一者、〉

〔傳宣草〕

〈下〉

p.0785 諸宣旨事
一下二近衞一事
中隔輦車事

〔三中口傳〕

〈一〉

p.0785 一牛車輦車人參内事
輦車
於二待賢門一移二乘輦車一、於二春花門前一下車、
已上俗儀也、僧侶拜賀之時、參レ從二朔平門一之樣、粗覺二悟之一、
自二待賢門一乘二移輦車一、〈庇車也、號二雨眉(アママユ)車一、諸司二分著二束帶一引レ之、〉至二春花門一、
里内者、於二陣外一移二所レ乘車一、引二之下車所一、
牛車輦車人ハ、於二二條西洞院辻一下也、共以五十未滿人、於二門外一不レ下云々、

〔門室有職抄〕

p.0785 輦車宣旨事〈輦車之體如二唐車一云々〉
如レ前乍レ駕レ車、自二上東門一入テ至二朔卒門一、於二其門一乘移車輦手引ニシテ、到二玄暉門之前一下車云々、已上左右攝政關白被レ許レ之、又親王爲二御持僧一之上ニ宿老人許レ之、不レ蒙二二ケ之宣旨一人ハ、於二宮城門下車云々、

〔蛙抄〕

〈車輿〉

p.0786 輦車〈號二手車一是也〉
脱屣之日、奮主退二于別宮一之時、或用二此車一有レ例、太子又乗二用之一、親王乘レ之例有レ之歟、又執政臣幷大臣高僧等、聽而乘レ之、〈輦車之宣旨是也〉諸司二分、冠緌褐白狩袴葈脛巾引レ之、〈○中略〉或抄云、不レ蒙二二箇〈○輦車牛車〉之宣旨一人ハ、於二宮城門一下車、〈今按宮城門ト云ハ十二門、幷ニ上東上西門事也、〉高談云、讃岐院〈○崇德〉御位ヲ避テ令レ出二内裏一給ニ、御手車寄、例車根ニ寄タリケレバ、セバクテ無下可二乘用一之樣上リケレバ、令二猶豫一給ケル程、法性寺殿、〈○藤原忠通〉令レ參給、牛車ハ、ソバヲコソヨスレト被レ申タリケル時、ソバヲ寄タリケレバ、廣クテ令レ乘給テケリ、〈○中略〉手車ハ輪ノチイサクテ、ソバノ廣クテ、前ハ、セバキ物ナリ、

〔有職問答〕

〈四〉

p.0786 一輦車牛車勅許之次第、幷乘おり兩所等如何、
〈輦車ハ宮中ヲ出入、牛車ハ中、重トテ、中門ノキハマデ乘候也、〉

〔故實拾要〕

〈六〉

p.0786 輦車
是爲二三公一ノ人、蒙二勅許一乘車也、但輦車ハ手シテ輓行者也、

〔西宮記〕

〈臨時五〉

p.0786 勅授輦車
正五位上羽栗翼、寶龜初、天皇〈○光仁〉以二其年老一、聽下乘二小車一出中入公門上云々、

〔西宮記〕

〈臨時一/裏書〉

p.0786 承和十四年正月宣旨、典侍當麻眞人浦虫子、賜二手〈○手、一本作レ牛、〉車一、永聽二出入一者、

〔三代實録〕

〈四十五/光孝〉

p.0786 元慶八年五月廿五日甲申、勅聽三太政大臣、〈○藤原基經〉駕レ輦〈○一本、輦下有二車字一、〉出二入宮中一、

〔公卿補任〕

〈宇多〉

p.0786 仁和五年〈○寬平元年〉
左大臣 從一位源融〈六十八〉 〈十一月十九日、勅聽下 乘二輦車一出中入宮中上、〉

〔日本紀略〕

〈二/朱雀〉

p.0786 天慶二年十一月七日甲戌、勅聽下式部卿敦實親王、幷左大臣、〈○藤原仲平〉乘二輦車一出中入宮門上、

〔本朝世紀〕

p.0786 天慶二年十一月八日乙亥、政之後、上卿著二宜陽殿一、〈○中略〉次移二著左衞門陣一、召二彈正一仰云、式部卿敦實親王、左大臣〈○藤原仲平〉等、聽下乘二輦車一出二入宮中一、及諸節會日不レ著レ列、隨レ便參入上者、 廿五日壬辰、豐 明節會也、天皇〈○朱雀〉御二南殿一、式部、卿敦實親王宣旨之後、初乘二輦車一、參三入自二東福春華門等一、左大臣雖レ蒙二同宣旨一、不レ乘二件車一、如二尋常一參入、

〔公卿補任〕

〈村上〉

p.0787 天德二年
左大臣 正二位藤實賴〈五十九〉 〈皇太子傳、三月聽二輦車一、〉

〔扶桑略記〕

〈二十六/村上〉

p.0787 天德四年十月二日戊辰、勅聽下左大臣〈○藤原實賴〉乘二輦車一出中入宮中上、

〔日本紀略〕

〈四/村上〉

p.0787 應和元年十一月廿二日壬午、今日左大臣〈○藤原實賴〉始乘二輦車一參内、去年十月二日蒙二宣旨一、於二春華門前一下レ之、

〔公卿補任〕

〈村上〉

p.0787 康保四年
左大臣 正二位源高明〈五十四〉 〈十二月十三日轉、(中略)同日聽二輦車一、〉

〔公卿補任〕

〈圓融〉

p.0787 天延二年
左大臣 從二位源乗明〈六十一〉 〈皇太子傳、二月廿八日、聽二輦車一、〉

〔日本紀略〕

〈六/圓融〉

p.0787 天延二年二月廿八日丁未、詔以二内大臣從二位藤原朝臣秉通一、爲二太政大臣一、叙二正二位一、爲〈○爲恐及誤〉聽二乘レ輦參一レ宮、 三年十月五日癸卯、聽二太政大臣〈○兼通〉輦車一宣旨、
○按ズルニ、公卿補任、天延三年、兼通ノ下ニハ、十月五日聽二牛車一トアリ、

〔日本紀略〕

〈六/圓融〉

p.0787 貞元二年十一月十八日甲辰、今日仰云、左大臣、〈○藤原賴忠〉可レ聽二乘レ輦出入一、

〔日本紀略〕

〈八/花山〉

p.0787 寬和二年正月廿六日乙未、今日、大納言重信卿、奉二勅旨一、左大臣源朝臣、〈○雅信〉乘二輦車一可レ出二入待賢門一者、

〔日本紀略〕

〈十/一條〉

p.0787 長德二年十一月十四日庚辰、右大臣顯光女元子、初參内、〈承香殿〉仰二手車(○○)一、母氏天曆〈○村上〉盛子丙親王、同車被レ參、仍仰レ之、

〔江談抄〕

〈二/雜事〉

p.0787 濟時女參二三條院一事 爲仲云、濟時卿女、〈○藤原娀子〉被レ參二三條院一〈東宮之時〉之日夕、大將、〈○濟時〉參二大入道殿一、〈○藤原兼家〉被レ申云、被レ下二輦車宣旨一哉、件事欲レ蒙二莫大恩一、返答云々、ナドカハ可レ無二恩許之事一也、欲二奏達一云々、大將不レ堪二感悦一、起座拜舞退出、及二入内之剋限一、雖レ相二待宣旨一、已以無レ音、敷二筵道一被二參入一也、時人密號二空拜大將一、又彼大將家前庭有二紅梅一、便稱二空拜一云々、

〔公卿補任〕

〈後一條〉

p.0788 長和六年〈○寬仁元年〉
左大臣 正二位藤顯光〈七十四〉 〈三月四日轉任、(中略)同月廿二日、聽二輦車一、〉
右大臣 正二位藤公季〈六十二〉 〈三月四日轉任、同廿二日、聽二輦車一、〉

〔日本紀略〕

〈十三/後一條〉

p.0788 寬仁二年正月三日丁酉、今日、太政大臣〈○藤原道長〉蒙下乘二輦車一、出二入宮中一之宣旨上、萬壽三年四月一日丁未、今日、右大臣、〈○藤原實資〉被レ聽下乘二輦車一出中入宮城上、 七月九日壬子、右大臣蒙二輦車宣旨一之後、始乘二輦車一、入レ自二待賢門一、參二枇杷陣一、

〔範國朝臣記〕

p.0788 長元九年四月十九日丁卯、〈○是月十七日、後一條崩、後朱雀卽位、〉殿下〈○藤原賴通〉以二權左中辨一〈資地下〉被レ奏二年料米解文一、先被レ聽二昇殿一、次奏聞、次殿下、如レ舊被レ聽丁可レ乘二牛車一、右府、〈○藤原實資〉可丙乘二輦車一出乙入待賢門甲者、左頭中將奉レ仰、仰二源大納言一、〈師房〉

〔公卿補任〕

〈後冷泉〉

p.0788 天喜四年
右大臣 正二位藤敎通〈六十一〉 〈左大將、皇太弟傳、十二月二十九日、聽二輦車一、〉
天喜五年
内大臣 正二位藤賴宗〈六十五〉 〈右大將、十一月十五日、聽二輦車一、〉

〔續世繼〕

〈四/うす花櫻〉

p.0788 近き世の關白には、大殿〈○藤原師實〉とて、をぢの大二條殿〈○藤原敎通〉の次に、一の人におはしましゝこそ、御みめもよく、御心ばへも末榮えさせ給ふことも、すぐれておはしましゝか、〈○中略〉承保二年九月、〈○二十六日〉内覽の宣旨かぶり給て、十月三日、氏の長者にならせ給、十五日に關白に ならせ給き、御年三十四、白河院の御時なり、大將はのかせ給ひて、御隨身猶たまはらせ給ひて、手車の宣旨(○○○○○)かふらせたまふ、〈○中略〉嘉保元年三月、〈○八日〉關白のかせ給ひても、御隨身はもとのやうにつかはせ給ひき、同三年正月、〈○二十六日〉なかのへの手ぐるまの宣旨(○○○○○○○○○○○○)ありき、

〔中右記〕

p.0789 永長元年正月廿六日丁巳、今夜大殿〈○藤原師通〉中重之内、乘レ輦可レ聽二出入一之宣旨被レ下、又左大臣、〈○源俊房〉可レ聽二輦車一之由同宣下、中宮大夫〈○源師忠〉奉レ勅、仰二下外記一、 二月十日、今日大殿、内重輦車宣旨(○○○○○○)之後、令レ申二御慶一給云々、 廿七日戊子、今日又左大臣、輦車之宣旨、令レ申レ慶給、

〔殿曆〕

p.0789 嘉承二年十月廿六日戊寅、參二前齋院一、〈(令子内親王)今夜入内〉卽退出、〈○中略〉戌刻許寄二御車一、余〈○藤原忠實〉出レ從二東門一先參内、其路用二北陣一須二之渡一給、有二輦車宣旨一、藏人長隆仰レ之、東北對西妻北面戸に寄レ之下給、後人々退出、

〔公卿補任〕

〈鳥羽〉

p.0789 保安四年
太政大臣 從一位源雅實〈六十五〉 〈正月廿七日、聽二甃車一、〉

〔長秋記〕

p.0789 天承元年七月廿七日辛酉宰相中將、請二輦車宣旨日記(○○○○○○)一、延久嘉保兩度記注送、右府〈○藤原家忠〉可レ被レ蒙二宣旨一云々、 八月二日丙寅、右大臣、蒙二輦車宣旨一云々、民部卿、〈○藤原忠敎〉問二其間事一、一日宰相中將許、注送由答之、 三日丁卯、自二宰相中將許一、輦車宣旨後、未二乘車一之先、參内否由被二尋下一、不レ乘之先、參内樣不レ見之由答了、 廿二日丙戌、宰相中將語云、右大臣奏二輦車慶一、〈○中略〉於二南陣舍南邊一下レ輦、時戸部云、可レ卷二車簾一者、丞相不二承引一、
前日面次、予〈○源師時〉所二諷諫申一也、輦車不レ卷レ簾云々、
入二左衞門陣代一〈○下略〉

〔台記〕

p.0789 仁平元年二月廿七日戊辰、酉時頭朝隆朝臣來、示二雜事一、〈○中略〉又太政大臣〈○藤原實行〉請レ聽二牛車一如何、先例多先聽(○○○○○)二輦車(○○)一後(○)、聽(○)二牛車(○○)一、直聽二牛車一、非レ無レ所レ疑矣、〈法皇(鳥羽)命〉對曰、仰旨可レ然、非二執政臣一、先聽二輦車一、後聽二牛 車一、是定例也、 三月七日戊寅、傳聞、被レ下下聽三太政大臣乘レ輦出二入宮門一宣旨上、〈上權中納言忠基卿〉太相〈○藤原實行〉參入奏レ慶、

〔本朝世紀〕

p.0790 仁平元年三月七日戊寅、申刻權中納言忠基卿著二仗座一、藏人頭右大辨朝隆朝臣來仰云、太政大臣藤原朝臣、〈○實行〉宜聽三乘レ輦出二入宮中一者、上卿召二權少外記中原師尚一仰レ之、戌刻太政大臣參内奏レ慶、〈乘二檳榔毛一〉

〔公卿補任〕

〈後白河〉

p.0790 保元二年
左大臣 正二位藤伊通〈六十五〉 〈(中略)十月廿六日聽二輦車一〉

〔公卿補任〕

〈安德〉

p.0790 養和二年〈○妻永元年〉
左大臣 從一位藤經宗〈六十四〉 〈十一月廿三日被レ聽二輦車一〉

〔知信朝臣記〕

p.0790 大治五年正月四日丁未、爲二御使一參二開白殿一、〈○藤原思通〉令レ申云、北方可下令レ蒙二輦車宣旨一給上、尤可レ然事也、但鷹司殿、京極北政所、〈承保元年八月〉三位後、令レ蒙二輦車宣旨一給、同ハ依二先例一令レ叙二三位一給、令レ蒙二件宣旨一給、何可レ爲レ難哉、又車條先例不二分明一、前後在レ轅輦ハ糸毛車具也、定不二令レ用給一歟、後四人相乘、鷹司令レ乗レ中給、輦車候二御堂一御車也、件車求失了、吉々求出可レ申者、御通報云、三位事可レ申候、又車ハ女御殿唐御車、何事候哉者、歸參申二此由一、又御返事云、女御殿御車、神妙候者、 八日、女叙位也、内大臣〈○源有仁〉爲二執筆一、關白殿御前、令レ叙二從三位一給、左中辨實光朝臣、擇二申御名字一入レ夜奉二輦車宣旨一、令二退出一給、其儀檳榔毛車三兩、䡨二北陣一、女房十二人乘レ之、〈○中略〉亥藏人右兵衞尉源長時、〈靑色帶劒、小舍人著二衣冠一指二脂燭一、〉打二出門一、外〈砌内〉立二直南向一召二吉上一、〈二聲〉吉上稱唯、次仰云、從三位藤原朝臣乃手車、永令レ入〈與〉、吉上稱唯、次長時自二本路一退入、〈永殊被二仰下一、依二先例一也、〉次下家司六人〈束帶〉前駈、諸大夫〈束帶〉引二入御車一、次䡨二車北屋東妻戸一、殿下〈御直衣〉令レ寄二御車一給、右兵衞督被レ候レ之、〈束帶〉次引二出御車一、於二門外一懸レ牛、御車副六人、牛飼等布衣、大殿若君、〈(基實)垂二鬢頰一束帶〉令二扈從一給、

〔台記別記〕

p.0790 久安六年正月廿二日庚子、午刻許參二御前一、頃之渡二御女御〈○藤原多子〉廬一、〈○中略〉女御乘車、三位〈謂二夫〉 〈人一〉候二其後一、〈依レ爲二糸毛一不レ出レ衣〉出レ自二東西北門一、至二二條一東行、至二京極一南行、至二四條坊門一西行、至二東洞院一南行、至二西面北門外一、税レ駕立レ榻、藏人邦綱、仰二輦宣旨一、〈其詞、女御従三位藤原朝臣乃參給、輦車人令レ入ヨ、待賢門院、女御間退出時、唯稱二女御無位姓朝臣一、今仰詞、旣違二彼例一、未レ知二是非一、〉訖移レ輦〈入内夜、所レ用之輦也、〉余〈○藤原賴長〉公能卿、執二几帳一覆二左右一、諸大夫十二人、挽レ輦入レ門、養二卯酉廊北面妻戸一、〈余、公能卿、立二屏風几帳等一、〉先三位下レ輦、次女御下了、 廿八日丙午、是日、三位蒙二輦車宣旨一、退出、依二除目一服二心喪朝服一著陣、次詣二直廬一執筆、著座後、余及公能卿起座、向二女御廬一、先レ是右大將、〈○藤原實能〉束帶參入、侍二女御廬一不レ臨、〈不レ臨二仗座除目座等一〉從車檳榔毛三兩、先遣二大炊亭一、載二女房一〈車副四人〉將來、立二西面北門外邊一、〈可レ乘二從車之女房一、皆在二大炊亭一、仍遣レ車載レ之、〉次藏人右近將監高階爲賴、〈靑色袍也〉召二吉上一仰二輦車宣旨一、〈其詞、從三位藤原朝臣出入給、輦車永〉〈久〉〈令レ入、其詞、余豫注賜レ之、依二承保元年、京極北政所、(藤原師實妻)被レ聴レ輦之例一、〉其儀如二入内夜一、〈吉上不レ賜レ祿也〉五位諸大夫十二人挽レ輦、〈承保元年御曆、用二字治毀(賴通)輦一之由所見也、仍問二其輦於禪閤一、(藤原忠實)報命曰、不レ知二何輦一、但所レ在二鴨院倉町一之輦車歟、件輦、法成寺入道相國(藤原道長)輦云々、傳在二宇治殿一歟、卽借二件輦一、豫加二修理一所レ用也、其形左右有レ廂、前後無レ廂、物見所爲二連子一、上靑畫二唐草圖文一、左右亦畫二同文一、赤色簾、蘇芳帷裳、上白轅鵄尾、如二尋常車一也、〉入レ自二西面北門一、䡨二臺盤所舍西面妻戸一、公能兼長兩卿、立二屛風几帳等一、次三位乘レ輦、坊門殿乘二其後一、〈右大將女、出レ衣、依レ非二糸毛一也、〉挽二出輦車於門前一、移乘二余檳榔毛車一、〈○中略〉今日定二女御女房、及家司職事番一、〈家司職事番押二侍所一、女房番押二臺盤所一、〉以長〈大夫、經二藏人一者、〉付二待所簡一、〈不レ補二家司職事一、敦任付レ之、付二侍堺一云々、〉翌日使三右少將公親朝臣、奏二三位輦車慶於法皇一、〈(鳥羽)、帝(近衞)未レ親二政事一、仍奏二法皇一也、承保元、使二四位少將俊明奏一レ之例也、〉退出日、泰親所二擇申一也、〈不レ成二勘文一、不レ擇二吉時一、〉

〔山槐記〕

p.0791 治承三年正月廿三日壬午、今夜中宮〈○高倉后平德子、淸盛女、〉母儀、二品〈尼〉參内、〈閑院〉被レ蒙二輦車宣旨一、兼不レ被レ仰二上卿一、爲二内侍宣一畢、臣下輦車儀予〈○藤原忠親〉密々立二車於三條大宮一見物、于レ時戌刻、〈○中略〉傳聞、自二八條亭一被二出立一、大宮北行、二條東行、向二車於閑院西門一〈四足、右衞陣也、此殿無二北陣一、令レ擬二北陣一歟、〉立レ榻、諸大夫取二松明一、殿上人不レ取レ之列二門内一、右大將、右武衞立二車傍一、藏人判官家實仰二輦車一、〈先召二吉上一二音、吉上稱唯、家實仰曰、從二位平朝臣乃參給、手車令二之出入一ヨ、今夜次第、春宮大夫兼雅卿被レ注、獻二二口一云々、彼人被二示合一云爲レ尼、其人詞如何、予曰、殿雖レ爲レ尼、除目大間尻付、書二從一位源朝臣一、可レ准歟者、〉次下家司、先例仰詞、永〈久〉ト仰云々、是後毎度不レ可レ仰之故云々、承保、京極北政所、爲房記、注二永宣旨之由一、大治、法性寺北政所、藏人顯時加二永字一、久安、藏人爲賴、又加二永字一云々、引二入車於門内一、䡨二西向妻戸一、不レ乘二移輦車一、無二送物一、今夜不レ被二退出一、 輦車者乘二移輦一也、而先例或不レ然、乍レ乘二唐車(○○)一引レ之、至二于半庇車(○○○)一、今度始レ之歟、 二月十日戊戌、今夜北政所、可下令二參内一給上、卽可レ被レ仰二輦車一也、〈○中略〉先例非二准后一之女人、被レ聽二輦車一事、多后宮母儀也、京極北政所、法性寺北政所、宇治左府室家等也、今度無二其儀一、有二此事一、希代事歟、可レ有二東宮御養母之儀一云々、

〔玉海〕

p.0792 文治六年〈○建久元年〉正月十一日丙寅、此日攝政太政大臣〈○藤原兼實〉長女、從三位任子有二入内事一、〈○中略〉藏人修理亮源忠國、著二靑色一出二朔平門一立二壇下一、〈砌下南面〉仰二手車一、〈其詞云、從三位藤原朝臣任子參給、手車令レ入ヨ、〉仰了歸二入本路一了、次輦車ヲ引二上壇上一、南北行立レ之、差二廻糸毛車一、〈以二鴟尾方一爲レ面〉䡨二輦車下一、糸毛ハ高ク、輦車ハヒキヽ也、仍車副幷余〈○藤原兼實〉大將隨身等、揚二手輦一、〈車副等入二其下一持レ之〉諸大夫等、付二前後轅一、兼房良經等卿、取二几帳一指二掩之一、〈○中略〉兩人〈三位及母儀〉乘移了、〈母儀皆紅衣、乍レ著乘レ之〉撤二几帳一立二輦車後方一〈始欲レ乗之時撤レ之也、立レ之撤レ之、共諸大夫役レ之、立之時大將可レ立レ之、〉舁二下之一、引二去糸毛車一、次手車前方近南ニ引二向之一、諸大夫十二人付レ之、前後轅、各六人、〈一方各三人也〉引二入門一、

〔公卿補任〕

〈後醍醐〉

p.0792 元應二年
左大臣 從一位藤實泰〈五十二〉 〈三月廿二日宣、聽二輦車一之、〉

〔大江俊矩記〕

p.0792 文政八年八月廿二日丁丑、女御入内也、〈鷹司關白政通公養女祺子十六、母政所従三位子、實入道准后政煕公女、毋家女房、是後參女御也、○中略〉奉行顯孝朝臣、至二玄輝門外一、立二北面一招二俊常一、仰二輦車宣旨一、其詞、〈從三位藤原祺子、乘二輦車一令レ出二入宮中一給、〉俊常奉レ之、〈垂レ裾〉出二朔卒門外一、〈霤外至二御車前一〉南面正レ笏、召二吉上一二聲、豫吉上代小舍人、居二朔平門内左右一、〈職興、正之、〉兩人俊常前進出、同音稱唯、仰曰、從三位藤原朝臣祺(ヤス)子令レ參給、輦車令レ入〈與〉、稱唯退居二初所一、〈○中略〉仰二輦車宣旨一事、今度兼日不レ被二仰下一、當日女御殿令レ參給節、宣旨可レ爲二本儀一間、豫俊常可レ奉二覺悟一、可レ然旨内見之日、奉行有レ噂、仰詞、幷備忘等、依二所望一認、入二進覽一了、如レ左、
輦車宣旨次第
藏人奉二事由一向二北陣一、〈雨儀、以二藏人一只仰二輦車之事一、〉藏人著二麴塵袍一執レ笏、若入レ夜者、小舍人、著二衣冠一、取二脂燭一前行、次向二朔平門外一〈霤外至二輦前一〉南面、〈垂レ裾〉次正レ笏立定、召二吉上一二聲〈若吉上不レ候者、以二小舍人一爲レ代、〉次吉上左右、同音蔕唯、次藏人 卿云、無品内親王令レ參給、輦車令レ入〈與〉、次仰了卽退還、

〔東寶記〕

〈七〉

p.0793 僧中輦車東長始蒙二宣旨一、
淸和天皇貞觀六年二月十六日、寺務眞雅僧正、乘二輦車一可レ出二入公門一之由宣下、是僧中(○○○)、輦車之初也(○○○○○)、

〔三代實録〕

〈三十五/陽成〉

p.0793 元慶三年正月三日癸巳、僧正法印大和尚位眞雅卒、〈○中略〉六年、〈○貞觀、中略、〉勅聽下眞雅乘二輦車一出中入公門上、

〔扶桑略記〕

〈二十二/光孝〉

p.0793 仁和二年三月十四日癸巳、賜二僧正遍昭、食邑百戸一、聽三駕レ輦出二入宮門一、

〔日本紀略〕

〈七/圓融〉

p.0793 天元四年八月十九日、勅聽三僧正良源乘レ輦出二入宮内一、天皇不豫之間、依二御修法之驗力一也、

〔扶桑略記〕

〈二十八/後朱雀〉

p.0793 長久四年五月十五日、仁海聽二輦車一、

〔元亨釋書〕

〈二十六/資治表〉

p.0793 嘉保二年八月、帝〈○堀河〉瘧、隆命加愈、賞二封戸一、十一月、帝疾、又加愈聽二輦車一、帝賜二御車一、拜賀之日乘レ之、

牛車宣旨

〔三中口傳〕

〈一〉

p.0793 一牛車輦車人參丙事
牛車
入レ從二上東門一、至二于式曹子坤角一下車、卽立二車於此所一、〈○中略〉
内裏御參時、牛車宣旨以前、引二入御車於陣口一事、甚不當也、雖レ然近來必不レ然、上官之車、陣口一兩ニテモ立ツレバ、其上次第ニ立ル間、多及二陣口一事有レ之、頗無二其謂一、

〔世俗淺深秘抄〕

〈上〉

p.0793 一牛車輦車人、大略先聽二輦車一、後聽二牛車一尋常事也、直聽二牛車一事、執政之外、頗不二分明一、執政家之牛車之人、用二上東門一、自徐之輩、用二待賢門一歟、雖二執政之人一、又用二此門一例間々存、入二待賢門一時、參二春花門一、仍車立二彼門外東邊一、或又入レ自二上東門朔平門一、或用二建春門一、各於二門外一下車之、門腋頗退立レ之、參二八省一時、入レ自二待賢門一、於二昭訓門壇下一下車、有二八省於幣物一時、雖二牛車輦車人一、必令二步行一也、況又於 レ令レ奉二仕上卿一哉、執政人、駕二牛車一往二還陽明門藻壁門一、此兩門之外、依二便宜一用レ之常事也、但大臣雖レ聽二牛車輦車一、不レ蒙二別仰一以前、不レ出二入待賢門一、依二重宣旨一、用二此門一也、

〔世俗淺深秘抄〕

〈下〉

p.0794 一准三宮人、尋常牛車輦車之上、往二來中部一、但於二上東門一乘二牛車一、至二玄輝門云々、

〔門室有職抄〕

p.0794 牛車宣旨事
乍レ駕レ車自二上東門一入、二町西行、土御門ト壬生トノ角ニテ下車云々、已上宣旨ハ、攝政關白被レ許レ之、或親王宿老之大臣又許レ之云々、

〔左大史小槻季繼記〕

p.0794 一牛車輦車事
牛車ヲ以テ爲二重ト一、共關白大臣ノ外不レ乘也、關白ハ宣下後、則牛車事被二宣下一ト云ドモ、五十以後令レ乘レ之給、大臣ハ五十以後、被二宣下一事歟、

〔傳宣草〕

〈上〉

p.0794 牛車
口宣旨
前大僧正尋覺宜レ聽二牛車一事
右職事仰詞、内々奉レ之、早可レ被二下知一之狀如レ件、
〈文保元〉十二月廿九日 左衞門督藤原判
大外記局
賜預
口宣一枚
前大僧正尋覺宜下乘二牛車一出中入宮中上事
右早可レ令二下知一之狀如レ件
十二月三日 左衞門督判

〔傳宣草〕

〈下〉

p.0795 諸宣旨事
一下二外記一宣旨
臨時事
牛車輦車事
已上三ケ事舊例、直仰二彈正、〈著二左衞門陣屋一、召二忠以上一仰レ之、〉撿非違使一、〈著二左近陣座一、召二仰尉以上一、〉而近代以二外記一傳宣、〈○中略〉
一下二彈正一宣旨〈著二左衞門陣座一、召二忠以上一給レ之、近代以二外記一傳宣、漸爲二流例一、○中略〉
牛車輦車事〈○中略〉
一下二撿非違使一宣旨〈著二仗座一、召二尉以上一仰レ之、或以二外記一有レ傳、給二志以下一之例、近代多以二外記一傳宣、○中略〉
牛車輦車事〈○下略〉

〔續日本後紀〕

〈十二/仁明〉

p.0795 承和九年十月丁丑、文章博士從三位菅原淸公薨、〈○中略〉淸公、六年〈○承和〉正月、叙二從三位一、老病羸弱、行步有レ艱、聽下乗二牛車一到中南大庭梨木底上、斯乃稽古之力、非二詢求之所一レ致、

〔日本紀略〕

〈二/朱雀〉

p.0795 承平二年二月廿九日辛巳、勅聽一左大臣〈○藤原忠平〉乘二牛車一、自二上東門一出入之事上、

〔公卿補任〕

〈村上〉

p.0795 康保四年
關白 從一位藤實賴〈六十八〉 〈九月十三日、聽下乘二牛車一出中入宮中一、(中略)十月五日、(中略)乘二牛車一出二入上東門云々、〉

〔日本紀略〕

〈六/圓融〉

p.0795 安和二年八月十六日辛卯、勅聽一太政大臣〈○藤原實賴〉乘二牛車一、出中入上東門上、

〔公卿補任〕

〈圓融〉

p.0795 天祿二年
攝政 從二位藤伊尹〈四十八〉 〈十一月二日、正二位、同廿四日、牛車、〉
天延三年
關白太政大臣 正二位藤兼通〈五十一〉 〈正月七日、從一位、十月十日、聽二牛車一、〉

〔日本紀略〕

〈七/圓融〉

p.0795 天元二年正月三日癸未、聽下太政大臣、〈○藤原賴忠〉幷式部卿爲平親王、乘二牛車一從二上東門一可二 出入一之由上、

〔大鏡〕

〈五/太政大臣兼家〉

p.0796 うちにまゐらせ給にはさらなり、牛車にて北陣までいらせ給へば、それよりうちは、なにばかりの程ならねど、ひもときていらせ給とぞ、

〔公卿補任〕

〈一條〉

p.0796 寬和三年
左大臣 正二位源雅信〈六十八〉 〈正月七日、聽二牛車一、〉

〔日本紀略〕

〈九/一條〉

p.0796 正曆元年五月廿五日、勅聽下關白内大臣〈○藤原道隆〉乘二牛車一、出中入宮門上、

〔本朝世紀〕

p.0796 正曆元年七月十五日戊子、午後、權中納言源伊渉卿、參議同時中卿、參二著左仗座一、今日被レ聽二左大臣〈○源雅信〉牛車宣旨一了、 廿一日甲午、午後、中納言藤原顯光卿、源保光卿、參議源時中卿、參二著左仗座一、次左大臣、從二陽明門一著二同仗座一、以二藏人右少辨源朝臣俊賢一、令レ奏下乘二牛車一從二上東門一、可レ參二慶賀一之事上、〈時酉二刻〉其後從二玄暉門一退出、於二朔平門外一乘二用牛車一、卽從二上東門一退出、中納言藤顯光卿、起レ座著二左衞門陣座一召、二音、彈正少疏曰佐眞文、于レ時眞文唯稱進立、下二給件牛車宣旨一早罷出、其後戌時、上卿各退出、
○按ズルニ、公卿補任ニハ、永祚元年源雅信ノ下ニ、七月聽二牛車一トセリ、

〔本朝世紀〕

p.0796 正曆五年五月廿三日甲戌、今日皇太后宮、〈○一條帝母后藤原詮子〉自二前備後守源相方朝臣宅一、移二御本宮一、諸司供奉如レ常、不レ召二御輿一用二牛車一、上卿皆被レ申二故障一、

〔日本紀略〕

〈十二/三條〉

p.0796 寬弘八年八月廿三日甲子、政始、今日右大臣、〈○藤原顯光、中略、〉召二撿非違使一仰云、左大臣〈○藤原道長〉乘二牛車一、可レ聽レ出二入待賢上東兩門一、〈○中略〉亥剋左大臣參二弓場殿一、申二牛車慶賀(○○○○)一、

〔日本紀略〕

〈十三/後一條〉

p.0796 寬仁元年三月廿二日辛酉、攝政内大臣、〈○藤原賴通〉上表請レ罷二左近大將一、勅許レ之、卽日宣命、依二寬和例一、可レ列二左右大臣上一、又聽下乘二牛車一參中入宮門上、

〔公卿補任〕

〈後一條〉

p.0796 寬仁五年〈○治安元年〉
太政大臣 從一位藤公季〈六十六〉 〈七月廿五日任、卽日聽二牛車一、〉

〔小右記〕

p.0797 治安元年七月廿八日辛巳、大外記文義云、一日牛車宣旨下了、尋二前例一欲二宣旨一之間、太相府、〈○藤原公季〉於二朔平門一乘車、出レ從二上東門一、攝政關白人外、牛車輦車、出三人自二待賢門一、而任レ意用二上東門一如何者、能可レ尋二知前例一也、承二下宣旨一之人、納言公任卿、明日可レ問、昨日可レ被レ取下送故殿〈○藤原師輔〉御記、幷撿非違使類聚、聽二輦車一等之奏上、若依二此事一歟、 廿九日壬寅、牛車宣旨事、問二遣按察一、〈○藤原公任〉返報云、車事、一日仰云、攝政關白、可レ聽レ出二入宮中一者、外聽二上東待賢等門一云々、相尋可レ令二書下一者、見二類聚一、輦車聽レ出二入宮中一、牛車者、上東門云々、非二是自一レ人、依二牛車無一レ便、出二入他門一歟、一條左府、始用二上東門一後、任レ意用二待賢門一也、彼時人有レ所レ申云々、客々〈○客々恐誤字〉事也、一曰、公親朝臣、謬事を申也、

〔日本紀略〕

〈十四/後一條〉

p.0797 長元五年八月十三日壬子、關白左大臣、〈○藤原賴通〉初乘二牛車一入レ自二上東門一、立二車於朔平門前一、

〔公卿補任〕

〈後冷泉〉

p.0797 天喜六年〈○康平元年〉
右大臣 正二位藤敎通〈六十三〉 〈左大將、皇太弟傳、(中略)七月廿五日、聽二牛車一、〉

〔公卿補任〕

〈白河〉

p.0797 承保二年
右大臣 從一位源師房〈六十八〉 〈右近大將、十一月七日、勅聽下乘二牛車一出中入閤門上、〉

〔中右記〕

p.0797 嘉承二年十一月廿九日庚辰、今夕左大臣、〈○源俊房〉牛車宣旨云々、本輦車之人也、
永久六年〈○元永元年〉三月廿二日、依二殿下〈○藤原忠實〉仰一、中辨送二書札一、三殿下、先年雖レ有二牛車宣旨一、爲レ恐二壯年一、未レ駕二牛車一也、而來廿四日、臨時祭之次、初駕二牛車一可二參内一也、先例如レ此禁中有レ事時、令二參仕一給次所レ駕二牛車一也、但御堂、〈○藤原道長〉宇治殿、〈○藤原賴通〉大殿、〈○藤原師實〉初駕二牛車一日、必著レ陣給、入三御從二敷政門一也、

〔殿曆〕

p.0797 元永元年十一月廿五日癸酉、余〈○藤原毘實〉須二早參一、而始乘二牛車一今日參内、仍暫遲々、〈○中略〉今日余前驅廿人、〈四位二人、五位十四人、六位四人、〉隨身著二褐衣一、〈ツボヤナグヒ〉宇治殿、〈○藤原賴通〉故殿、〈○藤原師通〉皆於二御年四十一一、令レ駕二牛車一給、就二彼例一余乘レ之、御堂、〈○藤原道長〉十一月に令レ乘給、抑蒙二牛車宣一人申二慶賀一、而余去讓位〈○鳥羽〉日、蒙二宣旨一申 レ慶了、仍重不レ申、 今日不レ勘二日時一、又殿上人不レ乘レ馬、宇治殿、駕二牛馬一給日、先參二上東門院一、次參内、付二彼例一、今日參レ院退出、重參不二得心一、雖レ然爲二路次一、仍重參入、

〔中右記〕

p.0798 元永元年十一月廿五日癸酉、今日殿下、〈○藤原忠實〉初駕二牛車一可下令二參内一御上也、〈○中略〉殿下被レ仰云、御堂〈○藤原道長〉駕二牛車一事、御年卅七八、宇治殿、〈○藤原賴通〉大殿、〈○藤原師實〉卌一也、我先年、蒙二攝政宣旨一日、雖レ有二牛車宣旨一、依レ爲二壯年身一、成レ恐不レ駕也、今年已卌一、仍爲レ思二吉例一、今日駕二牛車一參内也、就レ中御堂、駕二御牛車一事、十一月臨時祭日也、今日幸當二吉日一、仍有二此事一也、又被レ仰者、執政人、駕二牛車一事、除二陽明藻壁一大内儀也、門外雖二何門一、任レ意出入、無二其憚二云々、次々大臣ハ雖レ蒙二牛車宣旨一、從二待賢門一出入之事ハ、又蒙二宣旨一者、此事未レ知、尤有二深意一也、牛車、輦車、可レ用二上東門一之故歟、

〔古事談〕

〈一/王道后宮〉

p.0798 知足院入道殿、〈○藤原忠實〉被レ仰云、吾ハ御堂〈○藤原道長〉宇治殿〈○藤原賴通〉大殿〈○藤原師宣〉ナドノ御昇晉ニ一事無二相違一、大臣大將、氏長者、攝政、關白、牛車、輦車、又内辨官奏執、納言騎馬物詣等、皆無二貽事一、〈○下略〉

〔台記〕

p.0798 康治元年三月十二日乙巳、自二攝政殿一〈○藤原忠通〉被レ送レ札云、明日駕二牛車初可二參内同蓮可レ宜者、承諾了、保安三年、有二牛車宣旨一、而明日初參也、先々未レ有下如レ此經二年月一者上云々、 十三日丙午、午初刻、參二攝政御許一、〈菅原院〉同四刻、攝政駕二庇車一〈鄙生褰レ箔〉參内、〈土御門烏丸〉前駈廿人、〈此内四位一人、先例二人、今度无二其人一、〉鄙生、藤大納言、〈宗輔〉殿上人四五輩後從、自二東洞院一至二土御門一西行、余於二鷹司東洞院一下車、大内時、執柄入二上東門一、後從人入二陽明門一、今日准レ彼也、〈殿上人、當レ參二御車共一、今日大納言被レ參二御車一、共忘二古禮一歟、〉攝政於二東面北門外一、下車、少將爲通朝臣奉レ沓、余伺二候御車邊一、外記史等、列二居陣屋頭一見參、吉上一人、持二白楚一居二門下一、攝政入二同門一、〈謂二東面北門一〉南行經二藪政左靑鎖其禮門、〈共參也〉南殿北廂一、昇二小板敷一、直參二給晝御座方一、此後可レ有二吉書事一云々、永保二年、故京極殿、〈○藤原師實〉入二敷政門一著二給仗座一、今日不二著給一、不レ兼二大臣一之故歟、可レ尋二先例一、多卌一乘二牛車一、今度卌六、是謙之至也、

〔本朝世紀〕

p.0798 仁平二年正月七日癸卯、今日白馬節會也、〈○中略〉重通卿、召二權少外記中原景良一仰云、太政大 臣藤原朝臣、〈○實行〉宜レ盡三牛車出二入宮中一者、又太政大臣參入云々、

〔公卿補任〕

〈二條〉

p.0799 應保二年
關白左大臣 正二位藤基實〈廿〉 〈十月一日、牛車宣旨、〉

〔公卿補任〕

〈安德〉

p.0799 養和二年〈○壽永元年〉
左大臣 從一位藤經宗〈六十四〉 〈十一月二十三日、被レ聽二輦車一同廿五日、被レ聽二牛車一、〉

〔玉海〕

p.0799 壽永元年十一月廿四日辛卯、傳聞左大臣、〈○藤原經宗〉先蒙二輦車宣旨一、而忽不レ能レ調レ車之由被レ申、仍被レ改二下牛車宣旨一云々、甚過分事也、依二自由申狀一、被レ改二宣下一、朝廷之輕忽、爰而掲焉者歟、

〔公卿補任〕

〈安德〉

p.0799 壽永二年
攝政 正三位藤師家〈十二〉 〈十一月廿一日詔爲二攝政幷氏長者一、(中略)十二月(中略)八日、叙二從二位一、聽二牛車一、賜二兵仗一、〉

〔公卿補任〕

〈後醍醐〉

p.0799 元亨二年
左大臣 從一位藤實泰〈五十四〉 〈三月十一日、宣聽二牛車一、〉〈元輦車〉
元亨三年
關白 正三位藤房實〈卅四〉 〈三月廿九日詔、同日氏長者、内覽、牛車宣下、〉

〔公卿補任〕

〈後花園〉

p.0799 永享四年
左大臣 從一位源義敎〈八月廿八日轉任、(中略)十二月日、(中略)蒙二牛車宣一、〉

〔公卿補任〕

〈正親町〉

p.0799 慶長八年
右大臣 從一位源家康〈六十二〉 〈二月十二日轉、同日征夷大將軍、氏長者、㢡學淳和院等別當、牛車、兵仗八人等宣下、〉

〔光臺一覽〕

〈四〉

p.0799 御當家〈○德川、中略、〉將軍宣下の節は、宣旨十一通、一度に被レ下候、御兼任の官職多く有故也、十一通に、次第々々有、左に記すが如し、〈○中略〉
内大臣正二位征夷大將軍源朝臣家宣 右以二件人一、宜レ令レ聽下乘二牛車一出中入王城上矣、
寶永六年四月幾日 大外記正六位上兼右大吏掃部頭造酒正中原朝臣師英〈奉〉

〔仁和寺御傳〕

p.0800 濟信大僧正
寬仁四〈庚申〉年三月日、蒙二牛車宣旨一、〈僧中牛車之始也(○○○○○○○)云々〉

〔日本紀略〕

〈十三/後一條〉

p.0800 寬仁四年二月廿七日己酉、今日、大僧正濟信、聽二牛車一宣旨、

〔扶桑略記〕

〈二十八/後一條〉

p.0800 長元九年四月二日、前大僧正深覺聽二牛車一、有レ召、依二御藥一也、

〔中右記〕

p.0800 永長元年正月十八日己酉、今夜大僧正覺圓、蒙二牛車宣旨上、〈中宮大夫宣下〉二月廿日、前大僧正覺圓、今日申レ慶、是牛車宣旨之後申二慶賀一也、前駈八十人、童子等裝束唐物金繡、美麗無レ極、增譽法務以下、僧綱七人、連レ車扈從、各有二前駈一、從二華山院一被二出立一被二參内一、令二權中將顯實申一レ慶、召二二間方一給レ祿、〈○下略〉

〔元亨釋書〕

〈二十六/資治表〉

p.0800 長治二年六月、增譽牛車、依レ加二帝〈○堀河〉疾一也、
天治二年夏五月、僧正行尊加レ大、秋七月、聽二牛車一、

〔本朝世紀〕

p.0800 康治二年十二月十五日丁酉、被レ下二天台座主僧正行玄、牛車宣旨一、

〔古事談〕

〈三/僧行〉

p.0800 宗賴卿、爲二家長者一之時、勸修寺八講之捧物ニ引二牛車一ト云々、而成寶僧都受二牛車一、嚴親別當入道、三ケ度マデ乞ケレド、遂ニ惜而不レ與、仍禪門忿怒及二放言一云々、此事ヲ臺蓮坊、〈成賴卿入道〉於二高野一聞レ之、被レ詠二一首歌一、
椎ノ輪ハッミハジメケル車カナ乞モヲシムモウシトコソキケ〈椎輪ハ大路之物ト云々〉
○按ズルニ、大路之物ハ、大輅之始ノ誤ナラン、文選ノ序ニ、若夫椎輪爲二大輅之始一、大輅寧有二椎輪之質一トアリテ、註ニ、椎輪、古棧車、大輅玉輅トアリ、

〔後愚昧記〕

p.0800 貞治七年五月十四日、自二今日一於二禁裏一、被レ始二行七佛藥師法一、〈有二星御祈一云々〉阿闍梨靑蓮院入道親王、〈故後伏見院云々〉今日被レ聽二牛車宣旨一云々、車事、被レ仰二談内府一〈實繼公〉云々、彼間事、内府不レ審二題目等一、此間所レ相二尋 予〈○藤原公忠〉也、所詮八葉長物見車、被レ新二調之一云々、件車上古無レ之歟、中古以來用レ之歟、野宮左府、〈○藤原公繼〉建保〈前官之間〉以後、或駕二網代車一、〈文車也〉或乘二殿上人車一、或又此車用レ之、毎度物見ニ懸二小簾一用レ之、車副差綱遣レ之、抑物見懸二小簾一事、强非二本説一由、見二彼公元仁元年六月十八日記一、彼記文、注二遣内府一了、又物見ノ上〈爾〉、有二連子一事、久我故相國、〈長通公〉如二仙洞評定參仕之時一、度々用レ之、彼車〈八葉長物見、不レ懸二小簾一、〉有二連子一云々、今度連子有無可レ尋レ之、野宮左府車、無一連子一也、公經公車、又無二連子一由有二所見一、今度車、委尋二内府一可レ注二置之一、 廿五日、座主宮、八葉長物見車事、有二外金物一之由聞レ之、仍相二尋内府一之處、返事云、外金物事、不二存知一候、大方治定儀不二計申一候、只所見分少々注進候き、爲二後記一治定分、可レ尋二申竹園一、追可二進覽一云々、 廿六日、内府送狀云、座主宮車事、昨日尋申了、返事如レ此進二覽之一、外金物候けり、説者不審候、物見は、廂などは前後兩方開たる物〈ト〉、八葉長物見不レ然候哉、才學不レ詳候、文車〈ナドハ〉、近比までも開閉任レ意了、今も本儀は、尤可レ然候哉、今度事、宗と誰ニ被レ訪候けるやらん、不審候、太閤〈○久我通相〉久我〈○具通〉などの外、不レ覺云々、
座主宮返事云
車事、長物見、〈開二前方戸一懸レ簾〉外連子心地候、仍立〈フチ〉横〈フチナドノ〉折目風情〈ニ〉、少々金物候き、外連子時、如レ此候やらんと或仁申候程に、如レ此致二沙汰一了、先日宮槐記にも、長物見にも、外ニ所々金物候樣に見候しやらん、仍才學も符合候し程に、如レ此用候、〈以下略レ之〉
野宮左府記〈内府注二遣座主宮一云々、先日所二示送一也、〉
嘉祿二年十一月十六日、童御覽、
網代車〈稱二チカヘ物見一、是對二半蔀一名也、常網代車也、有二外黃金物一、開戸ノ金物ハ散物也、以下略レ之、〉
予案レ之、稱二網代車一者、文ノ車事也、定事也、上白〈トモ〉號也、其趣見二記録等一、委不レ遑レ記レ之、勿論事也、而内府以レ此、稱二網代車之記一、八葉長物見〈ト〉心得〈天〉、注二遣座主宮一歟、僻案無二口傳一之所レ致歟、可レ嘲可レ歎、如レ此之事、能々可レ有二斟酌一事也、非二累家一、而當時稱二有識之所一レ致也、比興々々、 應安四年正月廿一日、任承法印洞院家督事、並良瑜僧正一座宣旨、牛車等事示二送之一、彼案等繼レ之、兩事共以依二武家執奏一被レ行レ之了、〈○中略〉
〈牛車〉正二位行權大納言藤原朝臣公豐宣、奉レ勅、前僧正良瑜、宜レ聽下乘二牛車一出中入宮中上者、
應安三〈○三恐四誤〉年正月卅日 大炊頭兼大外記下總守中原師茂奉

〔公卿補任〕

〈孝明〉

p.0802 文久三年〈(中略)廿八日(十月)隹三宮牛車等宣下〉〈法務前大僧正增護〉〈上卿坊城大納言、辨俊政、奉行經之、朝臣、〉

車税

〔大成令〕

〈八十六〉

p.0802 元祿十三辰年八月
覺
一今度町中代八車、幷借駕籠之分、三傳馬町名主共方より、致二極印一候筈に被二仰付一、先達而相觸候、就レ夫代八車、致二所持一候者、日本橋より北之方、大傳馬町名主馬込勘解由、小傳馬町名主宮邊又四郎、日本橋より南之方は、南傳馬町名主小宮善右衞門、右之通、名主共方〈江〉、當月廿九日迄之内、罷越候而帳面に付、極印請候日限も承合、極印請可レ申候、借駕籠致二所持一候もの共も、右同前たるべく候間、此旨可二相心得一候、以上、
八月
元祿十三辰年八月
一町中大八車之儀、向後三傳馬町名主共、致二極印一候樣に、兩御奉行所より被二仰渡一候、就レ夫爲二極印賃一、大八車壹輛に付、壹ケ月銀壹匁宛、三傳馬町〈江〉出し申筈に候間、大八車所持致候者共、此旨可二相心得一候、〈○中略〉
右兩品之儀、申觸候樣にと、今日御内寄合に而被二仰渡一候、委細三傳馬町名主共方より可二申談一候間、少も違背有レ之間敷候、以上、
八月 元祿十六未年十二月
一大八車、幷借駕籠出銀、三傳馬町幷出レ之候儀、向後差免候間、此旨大八車、幷借駕籠持候者共に可二觸聞一者也、
十二月

製作

〔延喜式〕

〈十七/内匠〉

p.0803 腰車一具、屋形、〈長六尺、廣五尺、〉障子六枚、〈二枚、各高二尺六寸、廣二尺、四枚、各高二尺六寸、廣六寸五分、〉料槻廿四枚、〈四枚、各長八尺五寸、方二寸五分、四枚、各長五尺、方二寸五分、八枚、各長四尺五寸、方一寸五分、二枚、各長五尺、廣一尺一寸、厚二寸五分、四枚、各長三尺五寸、方二寸五分、二枚、各長二尺、徑七寸、〉轅幷輪料櫟七十二枚、柱幷高欄鳥居等料檜榑二材、桁幷椽箕形等料步板四枚、熟銅大十一斤二兩、滅金小十兩三分、水銀小三兩三分三銖、鐵十一廷、漆四升、掃墨一升五合、胡麻荏油各三合、帛一尺二寸、石見綿一斤八兩、伊豫砥二顆半、靑砥一枚、白綾四丈、油絹二丈八尺、兩面一丈一尺二寸、錦七尺五寸、東絁二丈二尺四寸、練絲二兩、調布三丈二寸、東席二枚、苧大五兩、毛料草二圍半、糯米一升、小麥一升、炭九斗、和炭廿四斛六斗、熬炭五斗、燒土五升、長功二百九十二人半、〈木工一百十九人、銅五十六人半、鐵卅五人半、畫三人、釭四人、張十二人、漆廿二人、夫卌人半、〉中功三百卌一人、〈工二百九十四人、夫卌七人、〉短功三百八十九人大半、〈工三百卅六人、夫五十三人大半、〉
牛車一具、屋形〈長八尺、高三尺四寸、廣三尺二寸、〉輪料櫟廿八枝、轅輻料樫九十七枝、橧料槻二枚、博風四枚料步板四枚、檜榑五材、軸木一枝、熟銅大卌斤、滅金小廿兩、水銀小八兩、鐵四廷、漆五升、胡麻油荏油各四合、掃墨二升五合、帛三尺、石見綿八兩、調布一端一丈二尺、伊豫砥二顆、靑砥二枚、燒土五升、白綾五丈、油絹五丈、練糸五兩、出雲席二枚半、毛料染苧卌四兩、炭十一斛、和炭五十斛、銀小八兩、〈鑵二銅物一料〉洗革一枚、木賊七兩、糯米三升、猪髮二把、釭一具、絹三尺、絲一斤四兩、箟廿株、染料茜大三百斤、白米九斗、〈煮レ茜用度〉酢一斛二斗、生絹四尺、〈篩レ茜料〉庸布四尺、〈篩レ皂料〉灰卌五斛、〈斤別一斗五升〉薪百五十荷、〈斤別宛二半荷一〉染槽一隻、〈長一丈已下八尺以上、廣三尺已下二尺以上、〉柴十五荷、杓二柄、水麻笥一口、〈受二四斗以下一〉水瓺麻笥一口、〈受二二斛一〉苧割雇女單卅人、食料白米二斗四升、〈人別八合〉酒一斗八升、〈人別六合〉魚六升、〈人別二合〉鹽六合、〈人別二勺〉海藻三連、〈人別一把〉功新錢六十文、〈人別二文〉工百三人、夫九十人、 〈不レ論二長短功一〉

〔延喜式〕

〈四十八/左右馬〉

p.0804 凡車五兩、屋形五具、鞦五具料、桃染調布四端、〈具別二丈七尺五寸〉縫絲大二分四銖、敷茵五枚、並支度、三年一申レ官儲備、但車油一斗八升、毎年請受、其釧取レ舊廻充レ新、隨レ損乃請、不二必限一レ年、

〔明良洪範〕

〈續篇十一〉

p.0804 安藤對馬守重信、二條城へ行幸有シ時、女院〈○中和門院前子〉中宮〈○源和子〉ノ御車、新ニ作ラセラルベシト、車作リヲ召テ、御沙汰有シニ、御車一輛、金一萬兩ノ代金ト申、餘リ過分ノ事迚、衆義アリ、外ノ車作リニ申付ケリ、御好ミノ如ク、賓郎毛、網代、何ニテモ下直ニ請合シ故ニ、殿上人以上、各用ヒラルヽ車ニモ萬金ヲ費サンヤ、下直ナル事、實成ベシ迚、安藤重信ニ申ケレバ、重信聞テ、先年御入内ノ時、御車一萬兩宛ニテ、大八葉以下出來セシ由ナリ、古へ公家殿上人ナド用ヒシハ、只今我等ガ用ユル所ノ乘物ノ類ヒナラン、時代押移リ、車ノ用ナキ事、歲霜久シク、車作リノ所作ナシ、重ネテ箇樣ノ規式有ベキ期ヲ知ラズ、故ニ以來迄ノ儲ケヲ望ムト見エタリ、去バ遏分ノ下直成モ心得難シ、殘ラズ申付ン事モ無用也、先一輪申付、其出來バヘヲ試ミラルベシト有ニ、程ナク御車キテメキテ出來セシカバ、牽セ試ミルニ、音律モ叶ハザル故ニ御用ニ立ズ、重信、去バコソ子細有ベキ事トテ、禁中ノ車作リニ仰付ラレシカバ、斯ル大禮、古ヘヲ取テ執行ハルヽ故ニ、儉約ガマシキ事ハ少シモ勿リシ、此度ノ行幸ハ、北山殿ノ日記ヲ摸サレ、所作樂行幸ノ禮ニ、北山殿ノ兩禮宜敷處ヲ取行ルヽトカヤ、女院東福門ノ御車ドモ、今モ泉涌寺般若院ニ收メラレ、將軍家ノ御車ハ、二條ノ御城ニ有トゾ、後年千代姫君ノ御乘物、代金一萬兩ニテ御召替マデ出來シ、誠ニ善美ヲ盡ナレシト也、

〔秦山集〕

〈雜著/甲乙銑四〉

p.0804 二月〈○元祿十年〉十五日、皇都御入内〈○幸仁親王女幸子入内〉吿到二武江一、廿九日、諸大小名爲二賀儀一登城、女御之乘輿、今國主息女之乘物十分一之價、平黑塗也、雖二費輕一是御車也、女御之作法不レ可レ略、武家之所レ不レ及也、

車大工

〔人倫訓蒙圖彙〕

〈六〉

p.0805 車作 車作は、輪木八枚、輻は廿四枚、雜車は、輪木七枚、輻廿一枚なり、作手は、京淸藏口久右衞門、

〔雍州府志〕

〈七/服器〉

p.0805 車 凡造レ車者、所々有レ之、其内造二禁裏院中之車一時、預二其事一者、其酋長號二總司久右衞門一、有二家領五石餘一、常住二京北柳原一、轅大工中井氏造レ之、所レ駕牛、仙納彌市兩家常飼レ之、稛二載雜品物一者、謂二雜車一、洛下三條橋西南、鳥羽横大路造レ之、

〔翁草〕

〈三十九〉

p.0805 御車大工、昔は總司久太郎とて、車屋町丸太町上ル所に居ス、故ニ車屋町と號、今は久太郎は丹波へ引越、是が一族總司茂左衞門と云者、上京木の本町に居て御用を勤、且御車副に出る、

〔諸事留〕

〈三〉

p.0805 天保七〈申〉年正月
御府内車大工職之者、年來拾八人ニ而申合、渡世相續致來候處、此度一同相談之上、爲二冥加一相州鎌倉火術御用車(○○○○○)、無代ニ而差出申度願出候間、右ニ付差障有無取調候樣、館市右衞門殿ニ而被二申渡一候間、御支配限車大工職之者御取調、差障有無御書取、來月七日迄ニ、淸右衞門方〈江〉可レ被レ遣候、
正月廿六日 〈組合〉肝煎
一御府内車大工職之者、年來拾八人ニ而申合、渡世相續致來候處、此度相談之上、爲二冥加一相州鎌倉火術御用車、無代ニ而差出申度願出候ニ付、差障有無御尋ニ御座候處、前書之趣、私儀一切差障無二御座一候、依レ之此段申上候、以上、
天保七〈申〉年正月 本材木町四丁目
由兵衞店
車大工職 七兵衞

〔七十一番歌合〕

〈上〉

p.0805 五番 右 車作り
心して車つくらむ秋のよのながえの月のをそくめぐるは〈○中略〉 我戀はくさびもさゝぬ小車のめぐり逢べきたのみだになし〈○中略〉
びりやうのわとて、よくつくれとおほせ候、〈○圖略〉