器用部/輿

p.0917 輿ハ、コシト云フ、其形ハ輪ヲ除ケル車ノ如シ、前後ニ轅アリ、或ハ手ヲ用イ、或ハ肩ヲ用イテ之ヲ舁クモノナリ、史ニ見エタルハ、日本書紀神武天皇紀ニ、皇輿ノ字アルヲ以テ始ト爲ス、之ニ次ギテ、垂仁天皇紀ニ、竹野媛ガ輿ヨリ墮チシ事アリ、而シテ大寶以後ハ、天皇及ビ三宮、齋王ノ御料ニ限レリシガ、後漸ク人臣モ用イルコトヽナレリ、足利幕府ノ時、其臣下ニ乘輿ヲ聽スノ制アリ、次デ豐臣德川二氏執政ノ時ニ至リテモ、乘用スルニ其制アリ、輿ニ鳳輦、葱花輦、腰輿、網代輿、塗輿白輿等ノ數種アリ、鳳輦ハ又鸞輿トモ云フ、屋頂ニ金鳳ヲ飾レルヲ謂フ、葱花輦ハ略シテ花輦トモ稱ス、屋頂ノ飾ニ、尖圓ヲ用イル、其形葱花ニ似タリ、因テ名ヅク、而シテ鳳輦、葱花輦ハ、天皇ノ乘御ノ料ニシテ、皇族ト雖モ用イルコトヲ得ズ、腰輿、手輿ハ並ニタゴシト訓ズ、手ヲ以テ舁クガ故ナリ、而シテ其轅ノ舁ク者ノ腰ニ當ルガ故ニ腰輿ノ名アリ、網代輿ノ網代ハ、籧篨卽チ竹席ノ事ニテ、アムシロト云フベキヲ、省呼シテアジロト云ヒ、之ヲ輿ノ四面ノ腰ニ施シタルナリ、塗輿ハ髹漆ヲ施シ、白輿ハ木地ノ板ヲ以テ造レルヨリ云フ、

名稱

〔倭名類聚抄〕

〈十一/車〉

p.0917 轝 四聲字苑云、轝、〈音餘、字或作レ輿、和名古之(○○)、〉車無レ輪也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈三/車〉

p.0917 按、説文、輿、車輿也、謂二車之輿、人所一レ居也、所レ謂輪輿卽是也、可レ訓二車乃度古一、曲禮正 義云、輿、車牀也、又按、職員令義解、擧行曰レ輿、挽行曰レ輦、故天皇所レ御之輿、謂二之鳳輿一、又謂二之鸞輿一、而西宮記、北山抄、有二鳳輦一、又有二葱花輦一、變レ輿曰レ輦、轉謂二車之無レ輪者一爲レ輿、急就篇注、著レ輪曰レ車、無レ輪曰レ輿、釋名廣雅、輿〓也、亦謂二此肩輿腰輿一、是也、故訓爲二古之一、按、隋書禮儀志、今輦制、象二軺車一而不レ施レ輪、用レ人荷レ之、然則鳳輦、葱花輦之名、亦非レ無レ據也、

〔段注説文解字〕

〈十四上/車〉

p.0918 〓、車輿也、〈車奧、謂二車之輿一也、攷工記、輿人爲レ車、注曰、車、輿也、按不レ言レ爲レ輿、而言レ爲レ車者、輿僞二人所一レ居、可三獨得二車名一也、軾、䡈、軫、軹、轛、皆輿事也、〉レ从レ車舁聲、〈以諸切、五部、〉

〔令義解〕

〈一/職員〉

p.0918 主殿寮
頭一人、掌二供御輿輦、〈謂擧行曰(○○○)レ輿(○)、輓行曰レ輦也、○中略〉等事一、

〔令集解〕

〈五/職員〉

p.0918 古記云、輿無レ輪也、輦有レ輪也、漢語抄云、輿母知許之(○○○○)、

〔日本靈異記〕

〈上〉

p.0918 捉レ雷緣第一
豐浦寺與二飯岡一間、鳴雷落在、栖輕見レ之、卽呼二神司人一、入二轝籠一、而持二向於大宮一、〈○中略〉轝〈去之〉

〔類聚名義抄〕

〈四/〓〉

p.0918 輿〈コシ、或タコシ、〉

〔同〕

〈九/車〉

p.0918 輿轝〈コシ、ミコシ、コシクルマ、〉

〔和漢三才圖會〕

〈三十三/車駕〉

p.0918 轝(コシ) 音豫 和名古之 俗多多用二輿字一、輿、〈雲倶切、音于、〉車底也、
四聲字苑云、轝車、無レ輪者也、字彙云、兩手對擧之車曰レ轝、與二輿字一混用者非也、

〔倭訓栞〕

〈前編九/古〉

p.0918 こし 輿を訓ずるは、運び越の義、日本紀の歌に、たごしにこさばと見えしも、手して石を運び送る意也、朝野群載、齋王の處に、輦輿一基、腰輿一基と見ゆ、又四方輿、手輿、張輿、腰輿あり、靈異記に轝もよめり、瑤輿は、親王家晴の時めす、白輿は、親王、攝家、淸華、大臣以上に用う、網代輿は常に用ゐらる、又長柄輿あり、又板輿あり、通鑒に見ゆ、釣ごしあり、又半切とも稱す、もと宮家のめしつかはるゝ婦女の乘物也、今公卿夫人とても是にめす也、足利の時、三家は、吉良、石橋、澀河也、 此は長柄之塗輿免許也、當代の塗輿は、彼例なりしとぞ、塗輿は、四方輿の代り也、當時は車の代りとす、武士幷僧の輿には廂なし、ござ包みを荷輿とす、地下も用う、

〔古今要覽稿〕

〈器財〉

p.0919 輿〈○中略〉
輿を長柄(○○)とのみ稱することは、京都將軍家の御時、いまだ所見なきにや、その長柄といふは、轅のことなるを、駕柄輿〈海人藻芥〉といふものに對して、轅輿といひたりしが、遂に長柄とのみいふことゝなりしにはあらざるか、

〔續視聽草〕

〈初集十〉

p.0919 乘物(○○)名目
乘物名目之事
乘物ト云名目、古ニ所見ナシ、凡乘物ト云ハ、車、馬、輿、舟ノ類ノ總名ナリ、然シテ車ニ糸毛、檳榔、網代等ノ品アリ、馬ニハ唐鞍、移鞍等ノ飾アリ、舟亦龍頭、鷁首ノ名アリテ、艨艟舶ノ如キ類ナリ、各鈔、桃花、蘂葉又和名鈔、其名義ヲ擧ラル、而シテ輿ト云ハ、車ノ轍ヲ放チタル物ニテ、人手ヲ用テ是ヲ舁ク故ニ腰輿ト稱ス、人腰ノ程ニ舁行故也、因テ和訓モ亦腰ノ義ニテ古之ト云ヘリ、其輿ニ四方輿、塗輿、網代ゴシ等ノ次第アリテ尊卑ヲ分ツ、則今云轅輿也、其物ハ箱〈是間ニ云フ、クルマヤナリ、〉ヲ轅ニ居ヘタル物也、今略稱シテ轅ト計モ云ヘリ、東鑑ニ、鶴岡又二所 〈伊豆箱根ヲ二所ト云ナリ〉御參詣ノ時、式ニハ車ニテ、略式ノ度ハ輿ヲ用ラルヽト云ハ、卽轅輿ノ事也、又至極ノ内々ニハ、女房ノ輿ヲ用ラルヽト云事アリ、

初見

〔日本書紀〕

〈三/神武〉

p.0919 三十有一年四月乙酉朔、皇輿巡幸、因登二腋上嗛間丘一、而廻二望國狀一、

〔日本書紀〕

〈六/垂仁〉

p.0919 十五年八月壬午朔、立二日葉酢媛命一爲二皇后一、以二皇后之三女弟一爲レ妃、唯竹野媛者、因二形姿醜一返二於本土一、則羞二其見一レ返、到二葛野一自墮レ輿而死之、

沿革

〔輿車圖考〕

〈一〉

p.0919 往古車輿所見事 上古車輿の事、いつより有りそめたりといふ事詳ならず、輿は神武紀に皇輿巡幸とあるは、誠に御輿に乘じ給ひしか、又潤飾の文なるもしりがたし、鸞輿乘輿などゝいふこと、所々に見えたるは、みな文章なり、〈○中略〉垂仁紀に、竹野媛、輿より墮ちて死したるよし見えたるはたしかなり、〈○中略〉應神天皇の御輿、承久元年に燒亡せしよし、東鑑に見ゆ、〈○中略〉かた〴〵車輿ありし事は明らかなれど、其の制はしり難し、中古よりは、天子は御輿と腰輿とに乘り給ふことにて、牛車は勿論、輦車といへども、是を供奉したる事はなし、是は孝德、天智、文武などの御時よりの事かとおもへど、其のはじめまた詳ならず、しかれども古書どもに、おほく御輿といひて車とはいはず、輦といへるも、まれ〳〵にはあれど、子細ある事なり、〈○中略〉さて延喜式〈○内匠式〉に、その製造は見えたり、〈○中略〉このくだりにも、御輿御腰輿には御の字ありて、腰車牛車にはなし、これ供御と人給とをわかちたるもの也、これにても供御は輿にかぎる事をしるべし、然るに職員令主殿條に、輿輦とある、〈○中略〉これによれば、供御の輦あるが如くなれど、しからず、孝德天皇よりこなたは、おほく隋唐の制度に倣はるゝ事なるが中にも、令は唐令によりて造られたるが、文章も名目も、必しもその制度には准ぜずとも、たゞ其の儘にうつされたる事まゝあり、こゝの輿輦も、唐令の文のまゝにて、實に供御の輦ありしにはあらず、その證には、この文大唐六典に見えたる、六典も唐令によれるなるべきに、その文全く同じきをもてしるべし、〈○中略〉猶令文の輿輦を解せば、輿とは、腰輿の事にて論なし、輦とは、熟字は唐令の文のまゝにて、實は御輿の事なり、皇朝の制、車輪を除きて、輿として用ひらるゝ事にて、鳳輿は唐の鳳輦なり、葱花輿は唐の大小玉輦なり、五色輿、常平輿といふもあれど、鳳形葱花を據として、猶御輿は、輦を摸られたると定むべし、そも〳〵唐の制度、乘御に四色あり、路車、傍車、輦、輿なり、〈○中略〉この中に路車、傍車は、皇朝には凡用ひられず、輦は御輿にて、輿は腰輿なり、しかればそのもとの名目のまゝに、輦といひしも常なりしと見えて、輦とも鳳輦ともいへる 事あり、後々の日記などには、かへつて輿といへる事希なり、〈○中略〉この書ども〈○續日本後紀、抉桑略記、村上天皇御記、西宮記、北山抄、小右記、〉に、鳳輿とも鳳輦とも相まじへていへり、鳳輿は車輪なくして實は輿なるが故、かくかけるにて、當時のことばには、熟字のまゝに、鳳輦といひなれたることばのまゝなり、この詞、後世までもつたはりて、いまもたゞ鳳輦、葱花輦とのみいふなり、三代實録に輦といへる事もあり、それはた輦は名稱にて、その物輿なる故、かくもいひけん、この文下に引けり、又日本紀略〈○天長七年十二月〉に、荷前使發二遣于行幸一の處に鳳輦とあり、この文字、慥なるものにはこゝにはじめていづ、〈○中略〉荷前の發遣は、宮中行幸にて、腰輿を供奉する例なれば、心得ず、文飾に過ぎたるなるべし、

〔古今要覽稿〕

〈器財〉

p.0921 輿
輿を武家にて用ひしは、文治二年十一月十二日、鎌倉右幕下〈○源賴朝〉の若君、〈賴家、時に五歲なり、〉鶴岡八幡宮へ參られし時、乘ちれしをはじめといふべし、〈東鑑〉たゞしそのころ、いまだ輿に付てのさだめなかりしにや、三浦大介義明、衣笠の戰やぶれて落行時、輿にのり、〈源平盛衰記〉北條時政の、六代御前を捕て關東へ下る時も、輿にのせたると、伊豫守義經の車に乘たるを、右幕下の花飾なりといかられしを、〈同上〉合せ考ふるに、武士の車にのることはならざりしと聞ゆれども、輿はさもなかりしなるべし、その後、延文三年十二月廿二日、足利宰相中將義詮卿、征夷大將軍に任ぜられて參内ありし時、義詮卿は車を用られ、舍弟の左馬頭基氏、及び管領左兵衞督義繩は輿仁のれり、その他はこと〴〵く騎馬なり、〈寶篋院殿將軍宣下記〉永和元年三月廿七日、鹿苑院將軍、〈○足利義滿〉石淸水社參の時、御所より東寺まで車、東寺より四方輿を用ひられし〈鹿苑院殿御元服記〉を以て考ふれば、車と輿との輕重、またしられたり、今川貞世は、等持院將軍〈○足利尊氏〉より、寶篋院〈○足利義詮〉鹿苑院の兩代まで現存せし人なり、その書おける書に、輿に付ての禮式、くはしくしるしたれども、乗人のさだめはみえず、たゞし今川は、足利家の一族にて、重き人なれば、末々の人の上には及ばざりしにや、そののち三職、及び御相伴衆、 吉良、石橋、土岐、六角、細川右馬頭、伊勢守、評定衆、奉行は、輿にのることをゆるさる〈宗五大册子〉いつの時よりといふこと、さだかならずといへども、應永卅年正月十一日、評定始の時、評定衆張輿を用ひたれば、〈花營三代記〉その比にゆるされしにや、天文十五年十二月十八日、光源院將軍、〈○足利義輝〉坂本へ赴かせ給ふ時は、板輿を用ひたまふ〈光源院殿御元服記〉といへば、四方輿も板輿も、さして差別はなかりしなるべし、

制度

〔律疏職制〕

p.0922 凡乘輿服御物、持護修整、不レ如レ法者笞五十、〈○註略〉其車馬之屬不二調習一、駕馭之具不二完牢一、徒一年〈謂御馬有レ驚、車輿及鞍轡之屬有二損壞一者、〉

〔輿車圖考〕

〈一〉

p.0922 往古車輿所見事
天子は至尊におはしませば、車には乘御せず、また輿はことに重くせらるゝものにて、天子の外には、皇后と齋王とに限れり、〈○中略〉皇后はもとより然るべき道理なり、〈○中略〉齋王は、ことの外なるやうなれど、御敬神のあまり、服御に准ぜらるゝなるべし、〈○中略〉法會の時、僧の小輿にのれるは別儀なり、〈○中略〉太上天皇すら、御輿を辭し給ひしことも見ゆるをや、〈○中略〉輿はかくの如く重き儀にして、中ごろまでも、臣下などの更にのれる事はなかりしを、末代の事とて、その制造こそあらぬ物なれ、猶其輿々々とて種々の物はいできたるなり、

〔政事要略〕

〈二十四/年中行事〉

p.0922 官曹事類云、右符案云、養老五年九月十一日天皇〈○元正〉御二内安殿一、〈○中略〉以二皇太子〈○聖武〉女、井上王一爲二齋王(○○)一、仍移二於北池邊新造宮一、其儀右大臣從二位長屋王、率二參議以上及侍從幷孫王等一而前從之、〈○中略〉乳母二人領二小女子十餘許人一、繞レ輿從行、中臣正六位上菅生朝臣忍桙、忌部從七位上忌部宿禰君子、輿前從行、舁レ輿人、用二左右大舍人六人一、並著二靑摺布衣一、

〔類聚國史〕

〈三十一/帝王〉

p.0922 弘仁十四年九月癸亥、太上天皇、〈○嵯峨〉幸二嵯峨莊一、先レ是中納言藤原朝臣三守、奏下可二行幸一狀上、皇帝〈○淳和〉卽勅二有司一、令レ設二御輿及仗衞一、太上天皇辭而不(○○○○○○○)レ受(○)、皇帝再三苦請、太上皇帝固辭、遂騎二御 馬一、無二前駈幷兵仗一、

〔三代實録〕

〈五/淸和〉

p.0923 貞觀三年二月十八日壬戌、皇太后(○○○)、〈○文德后藤原明子〉臨二御太政大臣〈○藤原良房〉東京染殿第一、〈○中略〉太后可レ御二鳳輦一、而今日用二牛車一、

〔日本紀略〕

〈十一/一條〉

p.0923 寬弘二年三月八日丙辰、中宮(○○)行二啓大原野社一、〈○中略〉抑撿二先例一、五條后爲レ賽二宿禱一參詣之間用レ車、今度用レ輿、是則備レ禮也、

〔中右記〕

p.0923 嘉承二年閏十月九日、晩頭從二殿王一〈○藤原忠實〉有レ召、則參入、民部卿〈俊〉新源中納言〈基〉左大辨〈重〉藤相公〈顕〉同以參會、聊有二議定事一、
御卽位日、三ケ日之中可レ被レ用二何日一哉〈○中略〉
人々被レ申旨、諒闇〈○堀河〉之中不レ可レ有レ憚、至二母后一者准二一條院母后一、猶早可レ有二立后一也、就レ中御卽位日必可下令二同輿一給上也、前齋院(○○○)同輿之條、前字尤可レ有レ憚下官〈○藤原宗忠〉申旨同之、殊加レ詞申云、我朝帝王皇后齋王之外無(○○○○○○○○○○○)二乘(○)レ輿人(○○)一、仍尤可レ有二立后一也、前齋院尤可レ有レ憚、〈○中略〉件事又以二頭爲房朝臣一被レ問二左府〈○源俊房〉内府〈○源雅實〉江帥一〈○大江匡房〉之處、左府被レ申云、前齋院同輿、何事有哉、御卽位十二月一日者、内府被レ申云、前齋院尤可レ有レ憚、早可レ有二立后一、卽位日可レ在二勅定一、江帥匡房申云、前齋院同輿何事之有哉、御卽位十二月一日者、

〔常照愚草〕

p.0923 一ぬりこし御免の事、三職は不レ及二御免一、其外國持幷大名など、乘つけられ候家々、代替の時、御免を申されしなり、其時はすだれを上て乘用也、大名國持にても無レ之衆は、御免申上候ても、すだれをおろしても乘用也、奉公方はいかに分限ありとも、乘用候事は無レ之、所勞などの時、いたごしにすだれをおろし乘る事は法外非制限なり、入道にては不レ及二御免一候由候へども、いかゞ候哉、赤うるしにも、こき赤うるし、くりいうなど、次第有レ之事也、自然忍て乘用の時は、ちりとりにのり候てなどゝ、ひげの伺申事も在レ之、

〔宗五大草紙〕

〈下〉

p.0924 騎馬の事
一人によりてこし御免候、三職其外御相伴衆、吉良殿、石橋殿など、同前御免のさたなくめし候、御相伴衆の内にも、赤松殿、京極殿、大内殿御免候て被レ乘候、土岐殿、六角殿同前、又細川右馬頭殿、勢州代々御免候、評定衆同前、奉行も式しやうの出仕の時、こしにのられ候、又人のぶんざいにより、めしつれ候者數さだまるよし申候、

〔蜷川親元記〕

p.0924 文明十七年八月五日癸未、御輿御免、貞親朝臣四十二歲にて御免、依二其例一者歟、

〔蜷川親俊記〕

p.0924 天文十一年十二月二日壬寅、細川播州御輿御免候事、内々望御申之、此儀付て、大與州御談合御書、親俊調レ之、

〔武家擥要〕

p.0924 諸家格供立之事
束帶之節轅
御三家、〈○尾州、紀州、水戸、〉越前、加州、薩州、仙臺、筑前、藝州、長州、佐賀、備前、因州、阿州、土州、雲州、久保田、久留米、米澤、津山、盛岡、川越、對州、二本松、津、
但輿ノ者絹德、長絹、八德、白張、掛素袍有二家格一、

〔德川禁令考〕

〈三十八/鹵簿〉

p.0924 年號闕四月
御三家方庶流、衣冠束帶之節、轅爲二相用一度儀ニ付、取調申上候書付、
一四月二日出羽守殿下ケ
三家方庶流、衣冠束帶之節、轅不レ用候儀、元祖之向、下乘不自由之儀ニ〈而〉、是迄用ニ不レ成候得共、同席内、多分轅相用、伊達遠江守、丹羽左京大夫抔も、此度津輕越中守儀も、相用候趣ニ付、向後松平左京大夫、松平中務大輔、松平播磨守、松平大學頭にも、衣冠束帶之節ハ、轅相用させ被レ申度被レ存候、右爲二相用一候〈而〉も不レ苦儀にも可レ有レ之哉、此段被レ及二御内談一候樣被二申聞一候、 一同月十六日、了簡申上、同廿八日御下ケ書取相添、御三家方庶流之面々、衣冠束帶之節、轅相用候儀、〈○中略〉御内談候ニ付、下條伊豆守差出候書面御下ケ被レ成、取調候處、右者文化十三年、御連枝方、御大禮之節、同席並之通、轅被二相用一候〈而〉も、御趣意ニハ背申間敷哉之旨、成瀨隼人正御内意相伺候書面御下ケ被レ成、其節先役掛井上美濃守、彦坂三大夫取調申上候ハ、轅相用候儀、御定被二仰丗一候儀ハ無二御座一候得共、前條之仕來ニ〈而〉、轅相用候面々、別紙之通ニ御座候、尤四品被二仰付一候〈而〉も轅不二相用一、常々駕籠相用候向も有レ之、其外溜詰庶流之面々ハ、相用不レ申、表大名ニ限リ候共難レ申、古來ヨリ相用ひ來候分ハ格別、質素第一之御時節ニ見合候得バ、御連枝方ハ是迄相用不レ申候趣意にも相叶可レ申、前々轅相用不レ申家ニ〈而〉當時より相用申度旨ハ、全行粧を取繕候儀ニ〈而〉不レ宜候間、無用ニ可レ仕旨被二仰達一候方ニ致度申上候所、御連枝方、轅之儀、是迄之通不レ被二相用一可レ然旨被二仰達一候、此度被二申立一候趣ハ、庶流之面々、元祖之向、下乘不自由ニ付、是迄不二相用來一候得共、同席内、幷伊達遠江守、丹羽左京大夫等相用、此度津輕越中守も相用候趣ニ付、向後御連枝方ニ〈而〉も、爲二相用一被レ申度旨ニ候得共、伊達遠江守ハ前々より用來、丹羽左京大夫ハ、四品被二仰付一候ヘバ、是又相用候仕來ニ御座候、津輕越中守儀者、强〈而〉相用候趣ニ付、同人家來呼出相尋候所、隱居右京大夫昇進後、近衞家より轅讓受候得共、先代ハ相用候儀無レ之、當越中守、此度初〈而〉相用候由ニ御座候、勿論同席内多分轅相用候儀ニ付、席並ニ〈而〉、相用候儀不レ苦儀と相心得、始〈而〉之儀ニハ候得共、御屆等ハ不レ致相用候由申聞候、前書申上候通、四品被二仰付一候〈而〉も、不二相用一向も有レ之、同席之内、不レ殘相用候儀にも無レ之、席並と心得、御屆も不レ致、相用候段ハ不束之儀ニ御座候間、家來より別紙之通書付爲二差出一申候、畢竟同席之内、承合等も不レ致候ニ付、右樣不都合之事も出來仕候間、越中守にも、御沙汰御座候樣にも、可二申上哉にも奉レ存候得共、全く心得違ニ〈而〉相用、不束之段恐入候旨申立候上者、以後相用不レ申ハ勿論之儀ニ御座候、右之趣御沙汰御座候ハヾ、越中守不念に も相成、不レ輕筋と奉レ存候間、以後相用申間敷段ハ、私共より申達置候樣にも仕候〈而〉ハ、如何可レ有二御座一哉と奉レ存候、御連枝方之儀者、表大名共違ひ、御取扱之儀、別段之儀ニハ候得共、是迄不二用來一候儀、當時より相用候事ニ相成候ハヾ、前書申上候通、四品被二仰付一候〈而〉も、轅不二相用一面々〈江〉相響、不レ可レ然儀と奉レ存候、文化度、成瀨隼人正より御内意相伺候節も、轅之儀、是迄之通不レ被二相用一方可レ然旨被二仰達一候儀、旁此度被二申立一候趣ハ、難二相整一段被二仰達一候方可レ然哉奉レ存候、依レ之御下ケ被レ成候御書面返上仕、此段申上候、以上、
四月 石谷周防守
羽太左京
別紙書付
松平加賀守 松平越前守 松平薩摩守〈當時豐後守〉
松平安藝守 松平出羽守 松平肥前守
有馬中務大輔〈當時玄蕃頭〉 松平阿波守 上杉彈正大弼
佐竹右京大夫 松平大和守 松平土佐守
宗 對馬守 伊達遠江守 松平上總介
松平大膳大夫〈當時因幡守〉 松平政千代 松平淡路守
松平越後守 松平官兵衞〈當時備前守〉 丹羽加賀守〈當時左京大夫〉
松平相摸守
右之分、御大禮幷御法事等ニ〈而〉、束帶衣冠著用之節、轅相用候由、
但松平淡路守、丹波左京大夫、四品被二仰付一候得バ、轅相用候由、
右之通、文化十三子年、井上美濃守、彦坂三大夫より申上候趣、書留御座候、

〔續泰平年表〕

p.0927 天保八年九月十五日、松平左京大夫賴學、紀伊殿ゟ被二仰立一候趣も有レ之ニ付、格別之思召を以、御大禮ニ付、束帶衣冠之節は、轅相用候樣被レ爲レ命、〈此例に依而、松平攝津守、松平レ大學頭、松平播磨守も同樣免許有レ之、〉

製作

〔延喜式〕

〈十七/内匠〉

p.0927 御輿一具、〈長一丈四尺、廣三尺一寸、柱高四尺八寸、斗内長三寸、廣三尺二寸、脚高六寸、〉障子四枚、〈一枚長五尺、高二尺、一枚高四尺三寸、廣三尺五寸、二枚各高三尺二寸、廣九寸、〉蓋一枚、〈長六尺、廣五尺四寸、〉長桁幷梁脚等料五六寸桁二枚、壁代幷平帖束柱等料步板二枚、朸料簀子二枚、柱桁幷葱花等料槻十三枚、簀子敷幷棉梠障子押等料檜榑二材、骨料榅榑二材、蓋椽料簀子木廿六枚、〈笠縫氏供〉蓋下棧料川竹十株、蓋料菅一圍、〈山城國進〉熟銅大廿三斤、水銀小十五兩、銀大一兩二分、滅金小一斤十四兩、釘料鐵三廷、膠小四兩、漆一斗、掃墨三升、油四合、伊豫砥一顆半、靑砥一枚、障子料紫綾四丈、下張料東絁三丈五尺六寸、緣料錦一丈三尺、縫料紫絲二兩、生絲六兩、絞レ漆料帛三尺、石見綿三斤、調布一尺五寸、下二銅湯一料調布六尺、巾料調布六尺、浸レ菅幷拭料商布一段、黏レ緣料薄紙十六張、糯米一升三合、小麥五合、燒土一斗、炭二斛七斗、和炭五十二斛五斗、長功三百卌人、〈木工五十五人、銅百卌七人、鐵七人、漆六十人、畫七人、張五人、縫笠廿人、夫卅九人、〉中功三百九十四人大半、〈工三百五十一人小半、夫卌三人半、〉短功四百五十三人小半、〈工四百一人大半、夫五十人、〉
御腰輿一具、〈桁長一丈四尺、廣二尺大寸、脚高五寸、〉桁脚料簀子二枚、平帖束柱料步板一枚、鳥居高欄料檜榑一材、熟銅大一斤十兩、滅金小一兩一分、水銀小二分三銖、鐵一廷漆四升、掃墨一升五合、油二合、帛一尺二寸、石見綿一斤八兩、調布四尺二寸、伊豫砥半顆、靑砥一枚、燒土七升、炭六斗、和炭三斛二升、長功七十八人、〈木工廿四人、銅九人、鐵二人、畫半人、漆卅六人、夫六人半、〉中功九十一人、〈工八十三人小半、夫七人大半、〉短功一百四人、〈工九十五人半、夫八人半、〉
野宮裝束
輿一具〈長一丈四尺、廣三尺、高五尺四寸、斗内長三尺一寸、〉障子四枚〈一枚長四尺八寸、廣一尺八寸、一枚高四尺一寸、廣三尺三寸五分、二枚各高三尺、廣六寸五分、〉料五六寸桁二枚、壁代束柱鳥居等料步板二枚、平帖料檜榑二材、槻十三枚、〈各長五尺、方二寸、但一枚、廣一尺、〉朸料簀子二枚、障子骨料榅榑二材、熟銅大卌六斤、滅金小一斤十二兩、銀大一兩、水銀小十四兩、鐵三廷、炭二斛一斗、和 炭五十斛五斗、漆九升、掃墨二升、燒土一斗、帛三尺、油三合、淺紫纈帛三丈六尺、東絁三女六尺、錦一丈三尺、紫絲二兩、生絲六兩、石見綿三斤、調布一丈三尺五寸、商布一段、苧小一斤、薄紙十五張、膠小四兩、伊豫砥一顆、糯米一升三合、小麥五合、長功三百廿九人、〈木工卌七人、銅一百卌七人、鐵七人、漆六十人、畫七人、張五人、笠十人、夫卅八人、〉中功三百八十四人、〈工三百卅八人半、夫卅五人半、〉短功四百卌八人、〈工三百九十五人、夫五十三人、〉
腰輿一具、〈長一丈二尺、廣二尺九寸、斗内長三尺、脚高五寸、〉障子二枚、〈一枚長五尺、廣二尺、一枚長五尺、廣二尺二寸、〉桁料簀子二枚、壁代梁料步板、一枚、高欄鳥居等料檜榑半材、障子骨料榅榑一材、熟銅大十二斤、滅金小七兩、水銀小三兩二分、鐵一廷、漆四升、掃墨一升、帛一尺二寸、石見綿一斤八兩、調布七尺二寸、油二合、淺紫纈帛二丈六尺、東絁二丈六尺、錦八尺、淺紫絲二分、練絲二分、薄紙八張、阿膠小二分、伊豫砥靑砥、糯米六合、小麥五合、炭一石、和炭十四斛二斗五升、長功一百五十一人半、〈木工廿五人、銅五十九人、鐵二人、漆卅六人、畫三人、張三人、夫十三人半、〉中功百八十人、〈工一百六十三人小半、夫十六人大半、〉短功二百五人大半、〈工一百八十六人大半、夫十九人、〉
御輿中子菅蓋一具、〈菅幷骨料材、從二攝津國一、笠縫氏參來作、〉料生絲六兩、苧小十兩、〈已上二種骨結料〉單功十人、食料白米二斗、〈人別二升〉鹽二合、〈人別二勺〉醬滓二升、〈人別二合〉魚二升、〈人別二合〉海藻一斤四兩、〈人別二兩〉酒六升、〈人別六合〉
御輿蓋一枚料、油絁一丈六尺二寸、調布一丈六尺二寸、單功三人、〈漆工〉

〔徵古圖録〕

p.0928 龜山帝御腰輿〈南禪寺所藏○圖略〉
柱長三尺一寸七分 前二尺七寸七分 横三尺九分 棒長一丈一尺六寸 曲籙高一尺二寸八分 疊巾一尺四寸八分 疊巾竪二尺四寸

〔輿車圖考〕

〈二〉

p.0928 應永廿九年八幡御幸次第云、當日未明出御、〈御淨衣、御輿、中略、〉御步行御登山、〈爲二用意一撤二御輿蓋一、可レ令レ舁二御前一、〉
永正年間行事官行賢注進
注進腰輿御修理之事
御蓋 代一貫文 四方手崎金物釣柄、朽損之間、可二鐵伏一歟、 葱花 代三百文 金薄以レ漆置レ之
雨皮 代三貫文 生平絹兩面水色、長八尺、弘六幅、
繧〓疊 代八百文 錦四方二重緣
東京錦御茵 代二貫五百文
加良美緋組 代一貫文
油單並張筵 代八百文
木丸總蘂〈四方ニアリ〉 代八百文
金物所々 代三貫文 檻幷地盤折金物等
柱四本 代五貫文 木口金物アリ失ハズ、黑漆、兩儀ニ被レ用レ之、
呉床 代一貫交 檻木柱八本、鐵折金物アリ、差綱等、
物塗 代三貫八百文 折中分
表裏筵 代三百文
已上十八貫八百文
覆張、可レ被レ用二古物一之間、不二注申一、
右爲二折中一注進如レ件
永正十二年六月 日 〈行事官左史生〉宗岡行賢〈上〉

〔娶入記〕

p.0929 一御こしのかなものゝしだい
十二所 九所 七所 五所なり
しげがなものは、十二所のかな物のあひだへ、いろ〳〵の花鳥などをかざり申なり、これはたゞの人、は、しむしやくあるべし、

〔輿車圖考附圖〕

〈乙〉

p.0930 妙心寺所傳輿圖〈傳云 後奈良帝所賜大休國師〉
圓徑七寸三分
髙二寸
二尺
七分
一尺三寸
七分角
箱前ノ柱ヨリ後柱マデ四尺六寸
五寸二分
一寸一分
栗形マデ二尺
九寸五分
内法
三寸五分
髙三尺二寸四分
一尺四寸
底マデ一尺七分
八稜
圓徑
三寸
二分
二寸五分
二寸
五寸二分
四寸八分
厚五分
三尺二分
五寸二分
二寸五分
二寸八分
一尺四寸
是ヨリ轅ノハシマデ
三尺六寸五分
厚二寸一分 四尺九寸七分
五寸四分
軒口ニテ四尺七寸七分
物見竪一尺三寸八分
横一尺三寸九强
一尺五寸
𣥃間九寸二分
足ノ間二尺二寸七分

〔大江俊矩記〕

p.0932 文化六年十月十一日戊戌、網代輿壹挺、〈新調也、未鐵物等不二悉具一、棒も塗損有レ之故、可二塗直一由也、〉昨日淸介肝煎に而、新町下立賣上ル町甲斐屋ゟ取寄令二一覽一、今朝又取返しに來、返遣了、此輿、安井門跡ゟ誂に而、今度新タニ打立候處、網代組立間違出來、模樣注文に違候故不二相納一、又更に仕直し申候由、夫故かぶり物に相成、甚輿屋難儀致し居候ものゝ由、勿論安井へは、眞鍮金物毛彫等も有レ之、絞も金きせに而、金物に餘程入用多は候得共、總仕上ゲ代金貳拾五兩にて請取候代〈ロ〉物之由、され共右之通替り仕直し、卽當時細工最中に而、入用も多事故、輿屋之損に致し、直段容易に成共、何分早く賣拂申度由、仍代金九兩に致し可二差越一旨、尤桐油乘ござ共之直段也、令二一覽一處、此方所持之網代とは餘程大形に而、成程細工も能、隨分念入有レ之樣子、全體甚堅固に相見、位宜敷網代也、尤金物は未ダ打立無レ之、此方へ買上ゲ候はゞ、鐵ノ色付金物悉打立、〈紋金物は別也、但好可レ打由、是は直段外也、〉棒も塗損ジ有レ之故塗置し、何歟宜敷致し可二差越一旨也、黃網代に而、棒取置也、棒ノ長サ本尺に而、大方貳間半程有レ之也、何分新調故、甚見事に相見、三十年は受合之由申居云々、寬政元年、先考御調被二成、置一、當時所持之網代、其節代金六兩計之樣に相覺、尤古物也、予之乘用には、甚少サク迷惑故、兼而淸介へ申置、利口成拂物出候はば、買替度旨賴置故、卽今朝右輿屋へ所持之網代輿見せ候處、當時餘程損ジ有レ之故、直しに壹兩か、壹兩壹步計は可レ掛、左樣致セバ、素人方へ取遣候へば、金三兩計之直打は隨分有レ之由、只今此儘に而私方へ申受候へば、金三步計之直段に而有レ之由申故、餘り下直成事故、左樣之事に而は下〈タ〉追遣候事難レ成、相談不二相成一旨、一旦斷申切、差返し候得共、淸介段々相勸メ、輿屋も何卒相談致し呉樣之願有レ之趣に而、度々淸介往來致し候に付、左候はゞ金子五兩は可二差出一、其餘之處は、所持之網代輿壹挺に而可二相償一、其代り當時金五兩之内、三兩相渡置申さば、右網代輿ノ足留メニ〓り置候樣成ものに而、三兩相渡可二遣置一、尤網代も輿屋に預り置、より〳〵に鐵物も打立、棒之塗直しも可レ致、扨此方所持之網代、賣口ヲ隨分聞立、此方に而も聞立可レ申間、何分下負之網代賣レ次第、殘金貳兩可二 相渡一間、其節新調ノ網代持參可レ致、夫迄之所は、金子三兩相渡置計に而、代〈ロ〉物は其方に可二差置旨、爲爲レ致二應樹一候處、先其通りに相談成行候由、乍レ去若外に望人出來、直段能賣レ候はゞ、其方へ差遣度、其節は是に不レ劣網代一挺、更に仕立可二差上一とも申居由、將又一向只今金子六兩貳步と所持之網代とを遣候はゞ、打切ニシテ、右新調網代差上ゲ度とも申居由、先此方ノ所存は前文之趣故、其通爲二引合一、近日金子三兩相渡可レ遣約束也、淸介請合に而、隨分慥成もの、彼町之町主に而、しかも組ノ内之ものゝ由、仍三兩は、印形付之受取書に而相渡遣、證文には不レ及筈に、淸介懸合置候由也、

〔雍州府志〕

〈七/土産〉

p.0933 輿 京師新町作二竹輿一、倭俗專謂二乘物一、幷板輿手輿等、亦造レ之、C 種類

〔貞丈雜記〕

〈七/輿〉

p.0933 一輿に四品あり(○○○○○○)、一に板ごし(○○○)、二に網代ごし(○○○○)、三にはりごし(○○○○)、四にぬりごし(○○○○)是也、板ごしは一段規式を正す時用レ之、其次はれなる時は網代ごし也、其次には張ごし也、ぬりごしは略儀也、常に用レ之也、板ごしの時は、御供白直垂、〈淨衣の事也〉又は單直垂に大帷を重て著す、網代ごし、はりごしなどの時は、御供うら打を著す、ぬりごしの時は、御供常のすあふ也云々、

鳳輦

〔海人藻芥〕

p.0933 輿之事
鳳輦(○○)〈帝王乘物〉

〔撮壞集〕

〈中/奧〉

p.0933 鸞輿(ランヨ/○○)

〔三條家裝束抄〕

〈坤〉

p.0933 車
天子御輿
鳳輦
朝覲遷幸等ノ晴ノ時乘御、凡行幸ノ時ハ、大略鳳輦ナヅ、其體金鳳、御輿ノ上ニ立ナリ、諸社ノ行幸ニモ葱花ヲ用ヒラルレドモ、春日日吉ノ行幸ニハ鳳輦ナリ、

〔故實拾要〕

〈六〉

p.0933 鳳輦 是天子ノ被レ召輿也、其形チ飾リ等、如二神輿一也、但擧行ヲ謂レ輿、輓行ヲ謂レ輦ト云々、凡天子ハ鳳輦也、御〈○御下恐脱二車字一〉ヲ用ル事ナシ、后宮幷宮方ナドハ、御車ヲ用ル也、

〔光臺一覽〕

〈二〉

p.0934 御位の内は、稱へ言も外に變りて、品々有て、大略の分、左に書つけぬ、〈○中略〉
鳳輦〈則神輿同前、但六方正面、〉

〔西宮記〕

〈臨時十〉

p.0934 節會口事
行幸時事、〈○註略〉朝賀及拜賀、〈謂元正聞、幸二上皇母后宮一、〉五月五日、九月九日、御二鸞輿一、自餘御二葱花輿一、御輿初安二日華門外一、〈施レ筵立二胡床一、其上居二御輿一也、〉

〔北山抄〕

〈五〉

p.0934 大嘗會事
卯日、〈○中略〉戌刻、鸞輿出レ自二建禮門一、入レ自二昭訓門一、於二東廊壇上一改駕二腰輿一、

〔小野宮年中行事〕

〈正月〉

p.0934 三日行幸事
醍醐御日記曰、延喜三年正月三日、此日奉レ謁二仁和寺一、例三日供二鳳輦一、而用二葱花輦一失レ例也、
長保元年三月十六日、幸二一條院一、供二葱華輦一、上達部曰、可レ供二鳳輦一、而後日問二主殿寮一、元三日内供二鳳輦一、其外供二葱華輿一、五月五日節會日、供二鳳輿一、六日供二葱花輿一、節會及元三行幸、供二鳳輿一、自餘不レ供、尚供二葱花一、案二醍醐御日記一、如二所司申一、將二後追記一、

〔續日本後紀〕

〈二十/仁明〉

p.0934 嘉祥三年正月癸未、天皇朝二覲太皇太后於冷然院一、親王以下、飮宴酣樂、賜レ祿有レ差、須臾天皇降レ殿、於二南階下一端レ笏而跪、召二左大臣源常朝臣、右大臣藤原良房朝臣一勅曰、被二太后命一偁、吾處二深宮之中一、未三嘗見二我帝御レ輦之儀一、今日事訖、階下登レ輿、使レ得二相見一者、朕再三固辭、遂未レ得レ命、於二卿等意如何、大臣等奏云、禮敬而已、如レ命而可、天皇卽登レ殿、至二御簾前一北面跪、于レ時寄二鳳輦於殿階一、天皇下レ殿御レ輦而出、左右見者攬レ涙、僉曰、天子之尊、北面跪レ地、孝敬之道、自二天子一達二庶人一、誠哉、

〔三代實録〕

〈十二/淸和〉

p.0934 貞觀八年閏三月丙午朔、鸞輿幸二太政大臣〈○藤原良房〉東京染殿第一、觀二櫻花一、

〔大鏡〕

〈八〉

p.0935 野〈○大原野〉の行幸〈○醍醐〉せさせ給ひしに、〈○中略〉しらぜうといひし御鷹の、鳥をとりながら御輿の鳳(○○○○)のうへにとびまゐりて居て候ひし、

〔古事談〕

〈一/王道后宮〉

p.0935 陽成院、御邪氣大事御坐之時、依レ不レ坐二儲君一、昭宣公、〈○藤原基經〉親王達ノ本へ行廻リツツ見二事體一給ニ、〈○中略〉小松帝〈○光孝〉御許ニマイラセ給タリケレバ、ヤブレタル御簾ノ内ニ、緣破タル疊ニ御座シテ、本鳥二俣ニ取テ、無二傾動氣一御座シケレバ、此親王コソ帝位ニハ卽給ハメトテ、御輿ヲ寄セタリケレバ、鳳輦〈○鳳輦、神皇正統記作二鸞輿一、〉ニコソノラメトテ、葱花ニハ不二乘給一ケリ、

〔扶桑略記〕

〈三十/白河〉

p.0935 承保二年正月十三日丙午、中宮自二定綱朝臣洞院宅一、遷二御東三條第一、用二鳳輦一、

〔中右記〕

p.0935 嘉承二年十二月一日壬午、今上〈○堀河〉御卽位也、〈○中略〉寄二御輿於南階上一、〈鳳輦、左右帷垂レ之、依二皇后同輿一也、但前方少許上レ之、爲レ御二覽物一也、〉
永久二年八月三日、今夕依レ欲レ有二行幸一、令レ裝二束御輿一之處、已鳳輦也、竊招二大夫史盛仲一云、如レ此時、多用二葱花一、而鳳輦也、如何、大夫史答曰、尤可レ然、仍尋二葱花御輿一之處、今月下旬、依レ可レ有二賀茂八幡行幸一爲二修理一、於二行事所一成二彩色一、仍令レ裝二束鳳輦一也、但只取二遣葱花許一、暫取二置鳳形一、假居二葱花一之間、行幸今日延引、來八日可レ有レ之由被二仰下一也、

〔殿曆〕

p.0935 永久五年十月四日戊午、及二秉燭一參内、卽有二行幸一、其儀如レ常、御輿を留二白河泉殿一、〈○中略〉去九月朔日、大風の爲に於〈○於恐誤字〉主殿寮顚倒之間、鳳輦破損、雖二鳳形無一レ損、件輦裝束調レ之、大略如二新造一、合夜件御輦供レ之、

〔海〕

p.0935 安元三年〈○治承元年〉四月十七日丙戌、一昨日、還二御閑院一之間、葱花鳳輦有二議定一云々、遂被
近代多神事之時、被レ用二葱花一之故也、

〔百練抄〕

〈十三/後堀河〉

p.0935 寬喜元年八月廿五日、御方違行幸也、還御之間、於二錦小路大宮邊一、御 鳳落レ地、後日有二沙汰一、裝束司進二怠狀一云々、

〔太平記〕

〈十七〉

p.0936 自二山門一還幸事
鳳輦〈○後醍醐〉ヲ大床ニ差寄テ、新典侍内侍所ノ櫃ヲ取出シ奉レバ、頭辨範國劒璽ノ役ニ隨テ、御簾ノ前ニ跪ク、貞滿〈○堀口〉左右ニ少シ揖シテ、御前ニ參、鳳輦ノ轅ニ取付、涙ヲ流シテ被レ申ケルハ、〈○下略〉

〔皇年代略記〕

〈後小松〉

p.0936 明德三年閏七月三日、南方主〈○後龜山〉令二和睦一、遷二御于大覺寺一、〈令レ駕二鳳輦一御〉三種神器、同渡御、

〔聚樂第行幸記〕

p.0936 抑そのかみの行幸、いくたびといふことをしらず、此度〈○天正十六年四月〉は北山殿〈○足利義滿〉應永十五年、室町殿〈○足利義敎〉永享九年の行幸の例とぞきこえける、鳳輦牛車、その外の諸役以下、事も久しくすたれたる事なれば、おぼつかなしといへども、民部卿法印玄以奉行として、諸家のふるき記録故實など尋さぐり、相勤らる、

〔義演准后日記〕

p.0936 慶長十五年七月廿九日、瑠玖國王、伏見ヨリ御通、鳳輦ニ被レ乘、

〔東武實録〕

〈十六〉

p.0936 寬永三年九月六日行幸〈○中略〉
鳳輦〈○註略〉
四府駕輿丁兄部四人、右近府沙汰人、一人下座〈四十五人〉猪熊座、〈三十六人〉以上白張ヲ著シ、鳳輦ヲ舁ク、

〔實麗卿記〕

p.0936 文久三年三月十一日丁巳、今日賀茂下上社行幸〈○孝明〉也、〈○中略〉未刻許、上御社行幸有レ催、〓二腰輿一乘御、於二樓門外一召二鳳輦一時、劒璽進退、准二始御輿出御一、

葱花輦

〔撮壤集〕

〈中/輿〉

p.0936 葱花(ソウクワ)

〔倭訓栞〕

〈中編五/幾〉

p.0936 きぼうし〈○中略〉 葱の花をいふは、葱帽子の義也、神事の行幸には、葱花の御輿を用うる、漢語抄に、葱薹、橋兩端所レ竪之柱、其頭似二葱花一故云、と見ゆ、

〔三條家裝束抄〕

〈坤〉

p.0936 車
葱花 神事ノ時是ヲ用ラル、卽位由奉幣ノ行幸、必葱花ヲ用ヒラル、大内裏ノ時、建 門ニ行幸アリテ行ル、〈○中略〉又神事ニアラズ、尋常ノ行幸ニモ粗例アリ、春日日吉ノ外、諸社ノ行幸ハ、勿論葱花也、其體葱花ノ形ヲ金ニテ打ヲ、御輿ノ上ニ居ルナリ、

〔代始和抄〕

p.0937 御卽位事
由の奉幣といふは、御卽位あるべき由を、伊勢大神宮に申されんがため、神祇官に行幸ありて、奉幣使をたてらるゝ事也、〈○中略〉行幸の儀式は常のごとし、但御輿は葱花を用らる、葱花とは、きの花の形を金にて打て、御輿のうへにすゑらる、これは御神事の時の行幸に召るゝ御輿なり、

〔西宮記〕

〈臨時五〉

p.0937 行幸
神事時供奉人不レ著レ靴、不レ稱二警蹕一、無二鈴奏一、御二華輦(○○)一、御卽位朝拜御二鳳輦一、大嘗會時同レ之、

〔北山抄〕

〈八/大將要抄〉

p.0937 駒牽
早旦乘輿、〈花輦(○○)〉出二宜秋門一、

〔小右記〕

p.0937 長和五年六月二日甲戌、今日遷二幸一條院一、〈○中略〉鳳輿入レ自二南門一、候二束橋頭一、〈行事中納言俊賢、仰下可レ候二葱花輦一之由上、卽葱花輿候、然而攝政(藤原道長)有レ命、用二鳳輿一云々、〉

〔長秋記〕

p.0937 大治四年四月廿五日癸酉、賀茂祭也、〈○中略〉齋王已出給了、〈○中略〉御輿〈葱花、駕丁黃色、蓋障子鈍色、帷紫目結、〉

〔伏見院御記〕

p.0937 弘安十一年〈○正應元年〉二月八日癸亥、今夕行二啓常磐井殿一、〈○後深草〉也〈○中略〉公卿等次第進列立、〈階北東上南面〉卽進二御輿一〈葱華、兼儲二御車寄一、〉廿七日壬午、今日伊勢幣、神祇官行幸也、〈○中略〉先レ之奏二宣命草幷淸書一、上卿權大納言藤原朝臣〈實〉行幸儀如レ常、〈無二闈司鎰奏一、不レ仰二御綱一、葱 、無二警蹕一、〉

瑤輿

〔故實拾要〕

〈六〉

p.0937 瑤輿
是親玉家ノ乘輿也、當時モ晴ノ時、此輿ヲ被レ用事也、

〔源平盛衰記〕

〈三十三〉

p.0937 平家大宰府落幷平氏宇佐宮歌附淸經入レ海事 去程ニ、主上〈○安德〉ハ、駕輿丁ナケレバ、玉ノ御輿(○○○○)ヲモ不レ奉、〈○下略〉

〔太平記〕

〈二〉

p.0938 師賢登山事附唐崎濱合戰事
師賢、法勝寺前ヨリ袞龍ノ御衣ヲ著シ、瑤輿(タマノコシ)ニ乘カヘテ、山門ノ西塔へ登リ給フ、

〔太平記〕

〈十一〉

p.0938 正成參二兵庫一事附還幸事
兵庫ニ一日御逗留〈○後醍醐〉有テ、六月〈○元弘三年〉二日瑤輿ヲ ラサルヽ處ニ、〈○下略〉

〔萬松院殿穴太記〕

p.0938 玉の輿は、鹿苑院にて、大工塗師唐紙師に至るまで參りつどひて、こよなう造出して廿一日〈○天文十八年五月〉の朝天に、慈照寺に渡さる、

〔應仁記〕

〈二〉

p.0938 室町亭行幸之事
花ノ御所ニ、十二人ノ人々諍亂、故ニ天手〈○後土御門〉仙院〈○後花園〉ノ玉輦ヲ、總門ノ外ニ留奉レバ、〈○下略〉

輦輿

〔三代實録〕

〈三十九/陽成〉

p.0938 元慶五年正月廿八日丁丑、遣二散位従四位下恒基王、左少辨正五位下兼行大學頭巨勢朝臣文雄等一、齎二輦輿(○○)腰輿資具等一、向二伊勢大神宮一、迎二前齋内親王一、令下山城、大和、伊勢三國、充二夫八十人一、擔二輦輿等物一遞中送前所上、

〔朝野群載〕

〈四/朝儀〉

p.0938 伊勢齋王歸京國々所課〈○中略〉
伊賀國〈○中略〉 可レ造二儲輿二基一〈白木輦輿、腰輿、○中略〉
嘉承二年十一月廿八日
左辨官下 伊勢國
應三早速造二儲伊勢齋王歸京輿一事
輦輿壹基
腰輿壹基
右權中納言源朝臣基綱宣、奉レ勅、齋王月日退レ宮歸レ京、宜下仰二彼國一以二白木一令上レ造二儲件輿等一、其裝束資具、同 以調備者、國宣二承知依レ宣行一之、期日在レ近、不レ得二緩怠一、
嘉承二年十二月四日 右大史紀朝臣
中辨藤原朝臣

腰輿

〔倭名類聚抄〕

〈十一/車〉

p.0939 腰輿 唐令云、行障六具、分二左右一夾レ車、其次腰輿〈和名太古之(○○○)〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈三/車〉

p.0939 所レ引唐令、蓋鹵簿令文、按、通典載二開元禮皇太、后皇后鹵簿一云、次行障六具、分二左右一宮人執、次坐障三具、分二左右一宮人執、次内寺伯二人、領寺人六人、騎分二左右一、夾二重翟車一、次腰輿一、執者八人、是其事、此所レ引恐有二脱字一、〈○中略〉按、胡三省注二通鑑梁紀一云、腰輿令二人擧一レ之、其高至レ腰、海録碎事引二決疑要録一云、腰輿以レ手挽レ之、別二於肩輿一、是所三以訓二太古之一也、

〔類聚名義抄〕

〈四/〓〉

p.0939 腰輿〈タコシ〉

〔令集解〕

〈五/職員〉

p.0939 漢語抄云、腰輿、多許之、

〔伊呂波字類抄〕

〈太/雜物〉

p.0939 腰輿〈タコシ〉 肩舁 手輿〈已上同〉

〔易林本節用集〕

〈與/器財〉

p.0939 腰(ヨウ)輿〈天子御狩時乘物〉

〔三條家裝束抄〕

〈坤〉

p.0939 車
腰輿
大嘗會御禊行幸、太政官ヨリ河原ノ頓宮マデハ鳳輦ニテ、御膳ノ幄ヨリ腰輿ニ乘御ス、此外宮中ノ間ニテ、御方違ノ行幸、或ハ火事地震ナドノ儀ノ行幸ニ、乘御アリトミへ侍ルナリ、

〔光臺一覽〕

〈二〉

p.0939 腰輿〈常の乘物〉

〔儀式〕

〈一〉

p.0939 賀茂祭儀
時刻齋王駕レ輿而出、其前駈次第也、〈○中略〉齋王輿在二中路一、〈○中略〉中路少後腰輿次レ之、駕輿丁四人擔レ之、〈服色同レ上○紺布衣白布帶〉火長左右各十人、〈前頭與二腰輿丁在レ後者一、相當行列、相去一許丈、〉其内齋院次官判官、夾二腰輿一各一人、〈○中略〉齋王先 詣二下社一、暫留二社頭幄一、脱二御衣裳一、更著二淸服一、卽駕二腰輿一入レ社、

〔江家次第〕

〈十五〉

p.0940 大嘗會
卯日、〈○中略〉戌刻御二鸞輿一、〈○中略〉出レ自二建禮門一、入レ自二昭訓門一、於二東廊壇上一改駕二腰輿一、〈○中略〉承平、〈○朱雀〉入レ自二宣政門一、不レ御二腰輿一、依二皇后〈○皇太后藤原穩子〉同輿一也、

〔禁秘御抄〕

〈下〉

p.0940 一内裏燒亡
主上、御直衣生御袴也、乘二御腰輿一、奉レ舁無二定樣一、人々下人雜人隨二參曾一、相撲節前日、有二内裏燒亡一、相撲人舁レ之、尤有レ便歟、凡樣在二時儀一也、

〔公卿補任〕

〈宇多〉

p.0940 仁和五年〈○寬平元年〉
關白太政大臣 從一位藤基經〈五十四〉 〈十一月十九日、聽二腰輿一、〉
寬平二年
左大臣 從一位源融〈六十九〉 〈七月廿二日、聽二腰輿一、〉

〔日本紀略〕

〈宇多〉

p.0940 寬平二年七月廿一日、聽三太政大臣〈○藤原基經〉乘二腰輿一、

〔古今著聞集〕

〈三/政道忠臣〉

p.0940 寬治八年十月廿四日、亥時計に、丙裏燒亡有けり、〈○中略〉事急になりて、腰輿すでに南殿によせられたるほどに、〈○下略〉

〔百練抄〕

〈八/高倉〉

p.0940 治承元年四月十四日、主上駕二腰輿一、行二幸院御所一、武士供二奉前後一、

〔增鏡〕

〈十/老の波〉

p.0940 六年〈○弘安〉正月六日、日吉社の訴訟、勅裁なしとて、御輿はみやこへいらせ給、〈○中略〉御門〈○宇〉 はいそぎ對屋にいでさせ給て、腰輿にて近衞殿へ行幸なる、

〔實躬卿記〕

p.0940 永仁三年閏二月廿日、今夕爲二御方違一行二幸持明院一、〈○中略〉後聞及二深更一、乘二御腰輿一、臨二幸御堂方一、此間雨下之間、立レ蓋供二御雨皮一、

〔太平記〕

〈十七〉

p.0940 義貞北國落事 明レバ十月〈○延元元年〉十日ノ巳刻ニ、主上〈○後醍醐〉ハ、腰輿ニメサレテ、今路ヲ西へ還幸ナレバ、春宮〈○尊良〉ハ龍蹄ニメサレテ、戸津ヲ北へ行啓ナル、

〔小島の口ずさみ〕

p.0941 同〈○文和二年八月〉廿五日、をじまの頓宮より、たるゐに行幸あり、〈○後光嚴〉そのありさま非常の儀にて、腰輿にめさる、朝衣の人はなくて、えびすごろもとかやの姿、めづらしき事也、

〔後水尾院當時年中行事〕

〈下〉

p.0941 一御所々々の御祝どものしだい、御誕生日より百廿日滿るとき、〈當日延引の例あり〉宮參りあり、上の御靈〈但し産やの在所にようべき事か〉に參らる、先典侍一人、里亭にむかふ、これ乘ぞへの局也、里亭ゟ直に參向也、腰輿〈下すだれをかけず〉を用ふ、

手輿

〔撮壤集〕

〈中/輿〉

p.0941 手輿(タコシ)
〈○ ズルニ、腰輿、手輿、共ニタゴシト訓ズレバ、恐ラクハ同物ナルベシ、〉

〔運步色葉集〕

〈多〉

p.0941 手輿(タコシ)

〔饅頭屋本節用集〕

〈太/財寶〉

p.0941 手輿(タゴシ)

〔蛙抄〕

〈車輿〉

p.0941 四方輿間事〈○中略〉
今案、〈○中略〉號二手輿一ハ、四方輿ノ蓋、幷柱ヲ撤シテ乘ズル、力者等儀同前、〈○四方輿〉

〔皇大神宮儀式帳〕

p.0941 神嘗祭供奉行事
以向日〈○九月十七日〉午時一、齋内親王參入、坐二川原御殿〈爾〉一、御輿留〈氐〉、手輿坐〈氐〉、致二第四重東殿一就二御座一、

〔榮花物語〕

〈二十九/玉の飾〉

p.0941 月ごろ、百體の釋迦、つくりたてまつらせ給へる、いそぎ給へりとて、この廿一日〈○萬壽四年六月〉にぞわたしたてまつらせ給、〈○中略〉九十九體は、たごし(○○○)といふものにのせたてまつりて、あをく裏やうしたるきぬばかまきて、四人づゝもてたてまつりたり、

〔中右記〕

p.0941 天永二年二月廿九日辛酉、院〈○白河〉令レ參二詣八幡一給云々、〈○中略〉於二宿院鳥井外一、御車手引、於二廊前門下一令レ乘二手輿一御、〈駕輿丁昇レ之〉

〔愚昧記〕

p.0942 仁安四年〈○嘉應元年〉二月十三日庚子、皇大后宮、行二啓日吉社一之日也、〈○中略〉今日内大臣、〈○平宗盛〉大宮大夫、乘二手輿一供奉、奇怪事歟、到二大宮大夫一、彌不レ可レ然歟、近代之法、諸事如レ此、爲レ怨爲レ歎耳、

〔源平盛衰記〕

〈二十二〉

p.0942 入道申二官符一事
九月〈○治承四年〉四日戌時ニ、太政入道〈○平淸盛〉手輿ニ乘、新院〈○高倉〉ノ御所ニ參テ申ケルハ、〈○下略〉

〔玉海〕

p.0942 治承四年十二、月廿六日甲辰、未刻參二女院御方一、依二行步不一レ叶、用二手輿一如レ例、

〔古今著聞集〕

〈十八/飮食〉

p.0942 文治の比、後德大寺〈○藤原實定〉の左大臣、右大臣〈○右大臣據二一本一補〉におはしける時、德大寺のていに作泉をかまへられて、中御門左府〈○藤原經宗〉へ案内申されければ、わたり給にけり、〈○中略〉亭主手輿を用意して、ひとへがりぎぬきたるさぶらひ六人にかゝせて、左府の車のもとへむかへにまいらせられたりけるに、しきりにのがれ申されけれども、あながちに申されければ、のりて泉へわたり給ひけり、

〔增鏡〕

〈二/新島守〉

p.0942 中院〈○土御門〉は、〈○中略〉そのとし〈○承久三年〉うるふ十月十日、とさの國のはたといふ所にわたらせ給ぬ、〈○中略〉いとあやしき御手輿にてくだらせ給、

〔葉黃記〕

p.0942 寬元四年五月廿日丁丑、上皇、〈○後嵯峨〉自二今日一七ケ日、可レ御二參籠八幡一也、〈○中略〉及二微明一、弘御所南中門廊、儲二御輿一、〈屋形立桂四本取放也、其體如レ常、御力者十八人、件御輿、去四月御幸時、圓滿院宮被レ進二御手輿一、其時屋形同有二御用意一云々、寸法太相違之間、今被レ用レ之、後鳥羽院御輿造樣又如レ此、但彼御輿之上、或張二唐油單一、是ハ常網代也、又同御時、有二造付屋形一、袖以二金銅一被レ透二菊八葉一、是天王寺御幸之時被レ用レ之、可レ有レ袖之由前内府(源通光)、被レ申レ之、然而但常例如レ此、〉

〔吾妻鏡〕

〈四十七〉

p.0942 康元二年〈○正嘉元年〉十月一日壬午、今日大慈寺供養也、〈○中略〉午一點、大阿闍梨三位僧正賴兼、到二南門外橋下一之際、遣二手輿一〈退紅丁六人舁レ之〉令レ移二乘之一、

〔吉續記〕

p.0942 正應二年九月七日、新院〈○後宇多〉御二幸上御堂一、〈南禪院〉被レ用二御手輿一、〈被レ撤二御屋、形一也〉

〔後伏見院御記〕

p.0942 延慶三年十月六日己酉、今日余參二八幡宮一、 七日、今日可レ歸レ京也、〈○中略〉里神樂了起坐、於二東鳥居下一乘二手輿一、參二藥師堂一、手輿之間、御劒猶公春朝臣持レ之、不レ令レ持二隨身一、是手輿准(○○○)二步行(○○)一之故也、

〔園太曆〕

p.0943 貞和四年二月十三日、今日相二當顯親門院十三回忌辰一、有二御佛事一、於二荻原殿一被レ行レ之、〈○中略〉小時上皇〈○光嚴、中略、〉仰云、今日法皇、〈○花園〉可レ渡二御御堂御聽聞所一、御步行難治之間、可レ被レ用二御手輿一之由、兼御用意、而御風猶難治之上、見聞雜人成レ群、頻無骨之間、御輿被レ構二屋形一之處、此御堂伏見院御影御坐、可レ有レ恐歟之苗有二御不審一、

肩輿

〔光臺一覽〕

〈二〉

p.0943 肩輿〈あげこし(○○○○)春慶ぬり〉

〔西宮記〕

〈十二月〉

p.0943 御佛名
昌泰元、御導師依二 耄一、乘二肩輿一參、

〔平定家朝臣記〕

p.0943 康平四年九月廿五日、平等院御塔供養也、未刻僧侶參上、〈○註略〉導師前大僧正明尊、乘二肩輿一無レ蓋、依レ無二可レ張レ綱人一俄有レ議留レ之、

〔初例抄〕

〈下〉

p.0943 權僧正公範 永保元年十二十二、參二仕法勝寺大乘會一次、蒙二肩輿宣一、依レ不レ叶二行步一也、〈七十三〉

〔長秋記〕

p.0943 大治二年十一月五日辛卯、至二盤折坂本一、〈○白河鳥羽高野御幸〉供奉人々上下皆乘レ馬、本院〈○白河〉御肩輿、新院〈○鳥羽〉騎馬、民部卿〈○藤原忠敎〉獨著二藁沓一、
保延元年五月六日戊寅、女院密々令レ詣二法輪一、御二下官〈○源師時〉車一、御供女子、下官一人扈從、乍レ乘二肩輿一乘レ船渡給、

〔玉蘂〕

p.0943 嘉禎四年六月五日、今日前大納言、〈○藤原賴經〉初參二詣春日社一、〈○中略〉隨兵百騎在二輿前後一、大納言、乘二肩輿一、

〔明良洪範〕

〈十一〉

p.0943 延寶八年將軍宣下有シ時、島津薩摩守綱貴、未ダ嫡子ニテ侍從ニ在ケレバ、揚輿ヲ用ル事決定シ難ク、幸ヒ加賀仙臺兩家共在江戸ナレバ、此兩家へ問合セケルニ、嫡子ノ揚輿、兩家ニテモ決定シ難キニヤ、シカトシタル返答モナカリシカバ、綱貴云ケルハ、我今嫡子ノ身ニテ、未ダ家督ハセザレド、家ニ用ヒ來リシ揚輿ヲ用フルニ、豈遠慮スベケンヤ、先例ノ通リ用意スベシ トテ、慶長年中ノ通リニ布衣素袍等ヲ調ヘケル、且先例ハ、龍ノ口ノ酒井家へ装束長袖ナド遣ハシ置キ、其所へ立寄リ支度シケルヲ、今度ハ押テ揚輿ヲ用ルカラハ、他家へ勞ヲ懸ベカラズ、吾家ヨリ乘テ登城スベシトテ、居屋敷ヨリ輿ニテ乘リ出ケル、

車輿

〔台記別記〕

p.0944 久安四年七月十一日丙申、今日女子、詣二石淸水稻荷一、〈○中略〉於二宿院一移二乘車輿一、〈修理別當最淸輿也○中略〉晩頭詣二稻荷一、〈幣五帛〉於二下社一乘二車輿一、〈憲賴輿〉詣二中上等社一、

〔台記〕

p.0944 久安四年十二月七日辛酉、參二女院一、〈中將同車〉尼上自二辰刻一煩惱、因レ之亥刻乘二車輿一、〈法親王輿也、入臥二其内一、〉移二御仁和寺木寺第一、

小輿

〔儀式〕

〈五〉

p.0944 正月八日講二最勝王經一儀
講讀師前行者、左右相分列進、〈各居二小奧一、其擔丁、 二紺衣袴白布帶一、用二駕 丁一、〉執レ蓋覆二其上一、

〔江家次第〕

〈五/二月〉

p.0944 圓宗寺最勝會事
講讀師 行、左右相分引進、〈各居二小輿一、其擔丁、著二紺衣袴白布帶一、用二駕輿丁一、〉執レ蓋諸司擎レ蓋覆二其上一、

〔西宮記〕

〈 時五〉

p.0944 齋王入京事
於二伊賀國堺一弃レ輿、寮官置レ笏、〈改用二小輿一、伊賀作、〉向二難波禊一、〈山城、依二宣旨一進レ船、〉

屋形輿

〔玉海〕

p.0944 治承四年六月二日癸未、卯刻行二幸〈○高倉〉於入道相國〈○平淸盛〉福原別業一、〈○中略〉自二八條通一至二草津一、武士數千騎、二行並レ轡夾二幸路一、先入道相國、駕二屋形輿一、次女車一輛、次女房輿二、 十四日乙未、寅刻就二前大納言邦綱寺江山莊一、暫以休息、未一點乘レ船、女房等不レ從、到二于大物一駕レ輿、〈高屋形輿、同所レ借二用前大納言也、輿昇十二人、寺僧都被二借送一、〉

〔園太曆〕

p.0944 聽二牛車人、被レ用レ輿候條は、無二子細一候やらんと覺候、手輿は、別宣下候歟、屋形輿は、准レ車候、無二子細一候やらんに見及候し心地申候也、以二此等之趣一可レ被レ申候哉、謹言、
二月〈○延文五年〉十四日 判

板輿

〔名物六帖〕

〈器財二/車輿轎籃〉

p.0944 板輿(イタゴシ)〈通鑑梁紀、章叡、毎レ戰常乘二板輿一、〉

〔海人藻芥〕

p.0945 輿之事
駕柄輿(○○○)、是者田舍等用レ之、當時板輿ト云物ナルベシ、

〔貞丈雜記〕

〈七/輿〉

p.0945 一板こし、一名は木ごし(○○○)、又棟立(○○)、又棟上(○○)とも、又四方ごし(○○○○)とも云、

〔守貞漫稿〕

〈後集三/駕車〉

p.0945 板輿
木輿トモ云、木輿ハ漆等ヲ用ヒズ、白木也、今モ駕形ニテ此製アリ、余先年大内近所ヲ徘徊セシ日、菊亭殿此駕ニ乘テ通行アリ、聞レ之バ板輿也ト云リ、

〔滿濟准后記〕

p.0945 正長二年九月廿一日、南都下向、〈○中略〉宗濟僧都、隆濟僧都、顯濟等、板輿體、御後參了、

〔石淸水放生會記〕

p.0945 永享十年八月十五日丁卯、今朝公方樣、〈○足利義敎〉御二下向八幡一、〈御板輿〉御臺樣、同曉天有二御下向一云々、

〔建内記〕

p.0945 永享十二年二月十一日甲申、春日祭也、予〈○藤原時房〉爲二上卿一、仍早旦進發、〈先行水〉内々用二板輿一、近例也、成房爲二參詣相伴一、是又板輿也、

〔後法興院記〕

p.0945 文明十一年二月廿三日庚戌、今日若宮御方、〈○後柏原〉八幡社御參詣云々、御板輿、供奉卿相雲客、直垂乘馬云々、

〔宣胤卿記〕

p.0945 文明十三年三月廿三日丁酉、早旦行水、駕レ輿〈板輿也、仍至二坂下一下レ輿、登山步行也、〉參二詣横川一、元三坊主、出逢勸レ酒、
長享三年〈○延德元年〉正月十日己巳、今日室町殿、諸家參賀式日也、〈○中略〉自二殿下一、今日御參賀爲二御乘用一、予輿被二借召一之由、皆具進了、亂來攝家淸花、皆以乘二板輿一、不レ及二車之沙汰一、輿所持方、尚以希也、末代作法可レ悲也、
永正八年二月廿七日戊申、今日春日祭也、上卿事、有二存旨一所二申請一也、〈○中略〉著二衣冠一乘輿、〈板輿輿丁三人也、内々儀、著二直垂一常儀也、〉

〔元長卿記〕

p.0946 永正五年二月廿八日、今日春日祭也、爲二參行一自二曉天一經營、著二束帶一乘二板輿一、

〔二水記〕

p.0946 永正十七年十一月廿八日、早旦參二伏見殿一、今日四宮御方、〈○彦胤親王〉御入室〈梶井〉御登山也、〈○中略〉御輿、〈板輿、懸二下簾一、御共侍十人歟、〉
大永六年二月十六日、今日石淸水社遷宮也、〈○中略〉後聞室町殿、於二善法寺一被レ著二御淨衣一、平絹御下〓、御乘輿、板輿云々、

〔義演准后日記〕

p.0946 慶長十四年正月十一日、辰刻參内、乘二板輿一、上古ハ或車、或張輿等也、板輿ハ夜陰ナドニ乘ズル物也、當時或白他此體、零落無二是非一歟、力者六人、〈淨衣〉

〔實麗卿記〕

p.0946 文久三年四月十一日丁亥、供奉之輩、〈○男山行幸〉追々參上、酉斜著二御下院一、〈○中略〉自二此所一極密々、召二御板輿一、〈山路依二狹少一也〉戌刻許、著二御豐藏坊一、

白輿

〔故實拾要〕

〈六〉

p.0946 白輿(シラコシ)
是親王攝家淸華大臣以上ノ乘輿也、於二諸家中一者、白輿ヲ用ル事不レ可レ叶義也、白輿トハ、木地ノ以レ板、輿ヲ仕立タル物也、

〔光臺一覽〕

〈二〉

p.0946 白輿〈常の乘物を總體檜の白木にてさしたるなり、五攝家親王計、〉

〔婚禮問答〕

p.0946 こしは白木のこしたるべく候哉、如何、白木のこし用事、本儀候、略儀には網代ごしを用也、常にはぬりごしを用也、〈○中略〉白木のこしをば、板ごし(○○○)とも、木ごし(○○○)とも棟立(○○)とも云、是は總而一段式正のはれ成時、白直垂など著用の時用レ之、

〔續視聽草〕

〈初集十〉

p.0946 乗物名目
白木輿(○○○)〈今略稱シテ臼輿ト云フ、親王攝家淸華大臣以上ノ乘輿ナリ、〉
凡家ハ、任槐アリテモ乘用ナシ、車轅輿等ニ白木ノ制アル事ヲ知ラズ、去ルハ爰ニ用ヒラルヽ白木ノ輿ハ、何制ニヨルモノカ、考ルコトヲ得ズ、恐ラクハ新調ノ品ヲ用ヒ玉フノ義ヲ、俗ニ云フカ ケ流シノ意ナルベシ、

〔嬉遊笑覽〕

〈二下/器用〉

p.0947 輿の品、さま〴〵あり、其中白輿は、大臣以上親王家用ひ給ふとあり、棺うる家を、しらこしやなど呼は、憚るべきこと也、

〔秦山集〕

〈雜著/甲乙録七〉

p.0947 八重姫君、嫁二水戸殿一時、先乘二白輿一、開レ戸有二婦人一、手執二志伊之絹張一、蓋式正也、白輿取二其不レ飾之義一、

棟立輿

〔貞丈雜記〕

〈七/輿〉

p.0947 一棟立の事、〈棟あげ(○○○)ともいふ也○中略〉貞衡云、常のこしは、屋ねのむねをひきくする也、むねあげは、やねをそらせて、むねを高く立る也、これは白木のこし也、式正の時は、男女ともにむね立にめし候也、婚禮にもむねあげを用也、〈よめ入に、あじろごしを用る事もあり〉

〔簾中舊記〕

p.0947 御なりの事
一正月二日は、時のくわんれいへなり候、御所さま、御しやうぞくめし候て、車にめし候、上さまは、御むねあげ(○○○○)にめし候、御りきしや、かき參らせ候、

〔成氏年中行事〕

〈正月〉

p.0947 一同五日ノ夜、御行始、管領へ御出、恒例也、公方樣、御直垂、御紋桐、御輿棟立、力者舁申也、

〔看聞日記〕

p.0947 永享六年四月廿一日、晩頭眞乘寺御入室、御輿、〈公方之御輿、棟立輿、〉力者、〈是も公方御力者也〉

〔康富記〕

p.0947 嘉吉二年八月廿二日庚戌、畠山左衞門督入道、管領職之出仕始也、午刻也、出立之儀、布衣袴也、乘二網代輿一、〈立棟(○○)〉

四方輿

〔海人藻芥〕

p.0947 輿之事
四方輿ハ、僧俗皆用レ之、

〔蛙抄〕

〈車輿〉

p.0947 四方輿間事
上皇攝關大臣以下公卿僧綱等、遠所之時乘二用之一、〈直衣衣冠淨衣狩衣時、皆乘レ之、〉棟之體、眞俗相替、〈俗ハ庵形、僧ハ如二雨眉一、〉其外 無二差異一、表張一網代一、〈靑地黃ノ文、小八葉也、〉下張、〈白紙〉四方ニ懸レ簾、〈例靑簾革緖也〉
力者一手舁レ之、〈著二白直垂一眞俗同レ之〉一手ト號スルハ、六人也、前後各三人舁レ之、三人之内、中央ハ如レ常懸レ綱、於レ肩舁之、其左右兩人ハ、只取二長柄一也、前後共同レ之、遠所之時ハ、二手モ三手モ可二召具一也、一手之外ハ、只輿ノ前後ニ走行也、僧俗同レ之、長途之間、相替舁レ之、
或抄云、四方輿ニハ、自レ傍下二乘之一、〈左右依二便宜一〉若自レ傍無レ便ニハ、自レ前可レ下也、四方輿ヲ簾ヲバ前へ一面揚之、三面ハ人相遇之時下ス也、
今案、常儀上二三方簾一、不レ上二後方簾一也、〈又自レ傍下乘事、依レ處便宜下、〉

〔尺素往來〕

p.0948 夜前於二或方一、不慮陪二講演之席一候、〈○中略〉音聲者、秦長榮之舍弟、其外別當供僧等、面々行粧、盡レ善盡レ美、或令レ駕二新車强牛一、或又見レ舁二諸四方輿一、〈○下略〉

〔貞丈雜記〕

〈七/輿〉

p.0948 一四方輿と云は、前に書置たる、むねたてのごしの事(○○○○○○○○○)也、室町記、應永三十年十一月二日の記文に、自二善法寺一御社參、御淨衣四方輿、〈力者十二人白〉役人淨衣とあり、四方輿と名付る事は、こしのやねの四方にむねを立る故也、

〔長門本平家物語〕

〈一〉

p.0948 あるとき法皇、〈○白河〉得長壽院に御かうなりたり、八十有餘ばかりなる老僧の、かうべには雪をいたゞき白髮をひ、額には四海の波をたゝみ、腰ふたへにして、杖にすがり蓑笠きたるが、ひらあしだはきて總門より來りんす、〈○中略〉さるほどに、旣に御供養の日にも成にければ、彼聖のもとへ四方ごしをむかへにつかはす、

〔秋の夜の長物語〕

p.0948 哀天ぐばけもの成とも、われらをとりて、ひえの山へのぼせよかしといひて、唐崎の松の木陰にて、やすみゐたるところに、年のいとたけたる山伏の、四はうごしにのりたりけるが、こしをまへにかきすゑさせて、〈○下略〉

〔光嚴院御記〕

p.0948 元弘二年三月七日丙子、今日巳刻許、先帝〈○後醍醐〉令二進發一給、自二六波羅一出御、〈○中略〉今度御輿、 四方輿、被レ卷二三方簾一云々、

〔梅松論〕

〈上〉

p.0949 後醍醐院を以、先帝と申奉り、承久の後鳥羽院舊規に任せて、隱岐國へ遷幸なし奉るべき由治定する間、〈○中略〉御幸は六波羅より、六條河原を西に、大宮を下りにぞなし奉る、御先には、洛外にて召さるべき四方輿を舁せらる、都のうちは、御車の下簾を懸られて、武士ども關東の令に任て前後をかこみ奉る、

〔園太曆〕

p.0949 貞和四年八月十四日、明日放生會、上卿春宮大夫〈○藤原實夏〉參向、雖レ未レ拜二氏社一、依二別勅一參向也、先先駕二毛車一、前驅幷布衣輩等召具人數也、而近日家僕等窮困、家中召具之、更不似二先々一、仍不レ守二先規一、不レ及二毛車沙汰一、駕二四方輿一、〈衣冠上〓〉其人諸大夫〈光綱、仲康、光照、經賢、永季、光之、〉侍〈橘重貞、源康成、紀定業、〉都合八九人召具之、皆布衣上〓也、

〔花營三代記〕

〈下〉

p.0949 應永卅年十一月二日、自二善法寺一御社參、御淨衣、四方輿、〈力者十二人、白、〉

坂輿

〔䮿驢嘶餘〕

p.0949 坂輿
四方輿等ノ事也、山中ノ木ニカマウ故ニ四方輿ノヤネヲ除テ、下バカリヲ坂輿ト云也、

〔輿車圖考〕

〈三〉

p.0949 坂輿
四方輿にもかぎらず、手輿をも用ゆ、山坂なんどに、柱などありてはさはり多かれば、かくして用う、ゆへにかくは名づけしなるべし、

〔二水記〕

p.0949 永正十七年十一月廿八日、早旦參二伏見殿一、今日四宮御方〈○彦胤親王〉御入室〈梶井〉御登山〈○叡山〉也、〈○中略〉
一御登山之事、本路雪裏難レ通、仍從二ヤセ一御登山云々、從二山下一乘二御四方輿一、〈四方簾悉垂也〉ヤセ童子奉レ舁也、山徒三百人許參二御迎一、使節引具也云々、俗中從レ是乘二坂輿一、力者舁也云々、

網代輿

〔撮壤集〕

〈中/奧〉

p.0949 網代(アジロ) 籧篨(アジロ)同

〔段注説文解字〕

〈五上/竹〉

p.0949 〓、籧篨、〈逗〉粗竹席也、〈方言曰、簟、宋魏之間、謂二之笙一、或謂二之籧䒼一、自レ關而西、或謂二之簟一、或謂二之䇽一、其麤者、謂二之籧篨一、自レ關而東、或謂二之蓋一、〓郭云、〉 〈江東乎二籧篨一爲レ䉬、音廢、按此云レ粗者、與二上筵簟一別言レ之、筵簟、其精者也、晉語毛詩皆云、籧篨未レ可レ使レ俯、此謂捲二籧篨一而豎レ之、其物不レ可レ俯、故詩風以言二醜惡一、爾雅以名二口柔一也、〉从レ竹遽聲、〈彊魚切、五部、〉

〔守貞漫稿〕

〈後集三/駕車〉

p.0950 網代輿
晴ノ時用レ之、從者モ裏打ヲ著スト云リ、今世乘物ニハ上極トス、

〔三光院内府記〕

p.0950 輿乘馬之事
網代者准レ車也、仍路頭之禮無レ之、或寺中、或下馬下車之在所、一向不レ拘二其禮一乘打也、依レ之男子者、忍之時乘レ之、女房者、迄二中﨟一掛二下輿一、末々者、下簾無レ之、亦尼者、雖二貴人一不レ掛二下簾一、是偏捨レ世之儀歟、

〔故實拾要〕

〈六〉

p.0950 網代輿
是親王、攝家、淸華家、常輿也、諸家中モ晴ノ時乘レ之、但依レ家有二用捨一歟、

〔婚禮問答〕

p.0950 こしは、白木のこしたるべく候哉如何、白木のこし用事、本儀候、略儀には網代ごしを用也、常にはぬりごしを用也、略儀也、網代こしは、靑竹を細くうすく削り、あじろを組てこしにはり、黑ぬりのおしぶちを打也、

〔成氏年中行事〕

〈正月〉

p.0950 一同十一日、御評定始、〈○中略〉評定奉行、政所、問注所、其外ノ衆中ハ、皆面ノ御門ヨリ出仕、網代輿也、

〔太平記〕

〈三〉

p.0950 主上御二沒落笠置一之事
俄ノ事ニテ、網代輿ダニ無リケレバ、張輿ノ怪ゲナルニ、扶乘セ進セテ、先南都ノ内山へ入奉ル、

〔增鏡〕

〈十五/村時雨〉

p.0950 十月〈○元弘元年〉三日、都へ入せ給ふも、〈○後醍醐〉思ひしに替りて、いとすさまじげなる武士ども、衞府の佐の心ちして、御輿近く打圍みたり、鳳輦にはあらぬ、網代輿のあやしきにぞたてまつれる、

〔太平記〕

〈九〉

p.0950 主上上皇御沈落事 主上、〈○光嚴〉其日ハ篠原宿ニゾ著セ給フ、此ニテ怪ゲナル網代輿ヲ尋出テ、步立ナル武者共、俄ニ駕輿丁ノ如ク成テ、御輿ノ前後ヲゾ仕リケル、

〔太平記〕

〈三十〉

p.0951 持明院殿吉野遷幸事附梶井宮事
本院〈○光嚴〉新院〈○光明〉主上〈○崇光〉春宮〈○直仁〉御同車有テ、南ノ門ヨリ出御ナル、〈○中略〉鳥羽マデ御幸成タレバ、夜ハ早、若々ト明ハテヌ、此ニ御車ヲ駐テ、怪ゲナル籧輿ニ召替サセ進ラセ、日ヲ經テ吉野ノ奧、賀名生ト云所へ、御幸成シ奉ル、

〔後愚昧記〕

p.0951 永和三年八月廿九日、申刻許、三品〈主上(後圓融)御母儀〉爲二御迎一來臨、用二網代輿一、〈力者六人舁レ之〉懸二下簾一也、

〔建内記〕

p.0951 永享三年三月二日丙寅、室町殿、〈○足利義敎〉今日渡二御一條大宮素玉房庵室一也、自二彼庵一御幸〈○後小松〉移二網代御輿一、渡二御梶井御門跡一、
嘉吉元年十月廿日癸丑、今夕室町殿、〈○足利義勝〉自二上御亭一、先還二御伊勢入道宿所一、〈○註略〉被レ用二御輿一、〈網代〉

〔康富記〕

p.0951 嘉吉四年〈○文安元年〉正月十日庚申、是日室町殿、〈○足利義政〉有レ渡二御於管領畠山左衞門入道宿一、〈○中略〉御母堂大方殿、同有二御出一、〈網代御奧也、御力者舁レ之、〉

〔親長卿記〕

p.0951 文明五年八月廿八日、今日細川宗明、〈九歲童名〉出仕始也、〈○中略〉宗明、〈網代輿、力者六人舁レ之、〉

〔鎌倉九代後記〕

p.0951 永祿元年四月、左馬頭義氏、〈(足利)十八歲〉拜賀ノタメ、鎌倉鶴岡八幡宮參詣、網代輿ニ乘ル、供ノ輿十五丁アリ、

〔相州兵亂記〕

〈四〉

p.0951 景虎小田原へ寄來事
長尾義景、〈○中略〉上洛シテ、京公方光源院殿義輝公へ出仕ヲイタシ、關東管領ノ御致書ヲ賜リ、朱柄ノ唐笠、同御紋ノユタンヲ御免アリ、御諱ノ一字ヲ被レ下輝虎ト改名シテ、アジロゴシ、狀ノ裏書ヲ御免アリ、

〔享保六年林丘寺御幸記〕

p.0951 享保六年辛丑には、普明院宮〈○靈元姉光子〉御年八十八に及ばせたまふ、〈○中略〉御 幸〈○靈元〉あるべき由仰出され、漸九月廿七日卯下刻、御出門、〈○中略〉御輿〈網代〉御輿の右、滋野井中將、左、風早中將、〈狩衣同前〉御輿者十人、

張輿

〔類聚名物考〕

〈船車三〉

p.0952 張輿 はりごし
罪人などの乘輿にて、いやしきものなり、その製は布にて張て、外は繪抔有て、内は白也、布にてはる故にその名あり、手輿に同じ、

〔貞丈雜記〕

〈七/輿〉

p.0952 一はり輿と云は、疊の表をはりて包み、おしぶちを打たるなり、略儀なるこし也、但ぬりごしより上也、〈貞衡説〉

〔守貞漫稿〕

〈後集三/駕車〉

p.0952 張輿
疊表ニ用フ、莞筵ヲ張リタル也、今ハ駕ニ有レ之、俗ニ〓(ゴザ)打ト云、割竹ノ押緣ヲ打ツ也、張コシハ略物ナレドモ、塗輿ヨリ上トス、

〔簾中舊記〕

p.0952 御よめいりの時の事
一こしは、はりごしにてまゐらせ候、

〔山槐記〕

p.0952 治承四年五月十五日丙寅、高倉宮、〈○以仁、註略、〉有二配流事一、〈○中略〉宮乘二張藍摺之輿一令レ持レ幣、如二物詣人一令レ向レ寺給云々、

〔吉記〕

p.0952 元曆二年五月七日己丑、早旦大夫判官義經、相二具前内府一、〈(平宗盛)乘二張藍摺輿一、〉

〔靑蓮院坊官記〕

p.0952 元亨四年四月廿五日、妙香院僧正御坊、〈慈慶〉爲二御住山一御登山、〈○中略〉奉行泰寬法眼、〈付二衣袈裟一不レ著レ袴、張輿ニ乘用、〉

〔太平記〕

〈三〉

p.0952 俊基被レ誅事幷助光事
今日コソ京都ヨリノ召人ハ斬ラレ給フベキナリ、アナ哀ヤナンド沙汰シケレバ、助光、コハイカガセント肝ヲケシ、爰カシコニ立テ見聞シケレバ、俊基、已ニ張輿ニ乘セラレテ、ケハイ坂へ出給 フ、

〔太平記〕

〈二〉

p.0953 天下恠異事
藤房卿、〈○中略〉御車ヲ差寄、〈○中略〉主上〈○後醍醐〉ヲ扶乘進テ、陽明門ヨリ成奉ル、〈○中略〉兼テ用意ヤシタリケン、源中納言具行、按察大納言公敏、六條少將忠顯、三條河原ニテ追付奉、此ヨリ御車ヲバ被レ止、怪ゲナル張輿ニ召替サセ逕ラセタレドモ、〈○下略〉

〔後愚昧記〕

p.0953 永和五年六月廿七日、今日小童〈十二歲、予(藤原忠嗣)末子、〉入二室威德寺一、先向二于德大寺一、行粧凡不レ及二沙汰一、只張絹水干、〈不レ著二單衣一〉用二張輿一、凡言語道斷之體、〈○下略〉

〔伊勢貞彌記〕

p.0953 應永廿九年十二月廿一日、爲二大御所樣〈○足利義持〉御代官一、御方御所樣、〈○足利義量〉八幡宮ニ御參籠、〈○中略〉御輿ハリゴシ、御力者十二人、

〔看聞日記〕

p.0953 永享二年十月廿六日、辰一點出京、〈張輿、勸修寺召進力者六人、〉〈大光明寺進之〉長資朝臣重賢御共、〈騎馬〉

〔親元日記〕

p.0953 寬正六年七月十七日壬戌、上樣、石山寺〈本尊因二去月開帳一〉御參詣、女中御衆、悉御はり輿也、

塗輿

〔貞丈雜記〕

〈七/輿〉

p.0953 一ぬりごしと云は、漆ぬりのこし也、こしをうるしにてぬるには、赤くも黑くも色をつけず、うるし計にてぬる也、〈古是を赤うるしと云也、今の世のタメヌリと云物也、〉
一ちよくれん(○○○○○)は、ぬりこしの事也、年中諸大名へ御成記に、御ちよくれんとて、常の御ぬりごしにて御參内も在レ之云々、ちよくれんは、直輦と書なるべし、〈走衆故實には、御直簾とあり、簾の字は非なるべし、〉

〔續視聽草〕

〈初集十〉

p.0953 乘物名目
塗輿 是ハ轅輿ノコトニテ、今ノ乘物ノ制ニハ預ラズト云ヘドモ、古實西譚ニ、其義四方輿ノ代ナリト云コトアリテ、當時乘物ノ制ニ引用スル打揚ノ意味アルヲ以テ、爰ニ其名目ヲ擧ルナリ、古實西譚ニ云、塗輿ハ四方輿ノ代ナリ、當時ハ車ノ代リ、諸家之輿ハ有レ廂、僧幷武士ハ無レ廂云々、

〔守貞漫稿〕

〈後集三/駕車〉

p.0953 塗輿 漆塗也、古ハ赤黑等ヲ交ヘズ、素漆ヲ以テヌル、今世ハ辨柄ヲ和シテ溜塗トスル也、塗ゴシ、一名直輦(○○)ト云、略物ニテ平日用レ之、今世此他ヲ不レ用歟、今世幕府大臣、位官ノ時ハ、京師ヨリ攝家及ビ殿上人、江府ニ下向、大禮アリ、其日ノ大臣モ、殿上人モ、トモニ麁ナル塗輿也、是ハ京師ヨリ携ヘズ、幕府ヨリ借用ト聞リ、又今世大名モ家格ヨリ、右ノ如キ大禮ノ日、及ビ毎年正月初登城ヲ見ルニ、塗輿ヲ用フ、總テ板ノ春慶ヌリ也、

〔伊勢貞興返答書〕

p.0954 こしの高下の事
一ぬりごしは、公方樣、又門跡長老などめし候、其外官領大名衆、公方樣より御免之上にてめし候事候、一段規模なる事候、金物の數は五ツ七九十一などは、平人はあるまじき事候、

〔三内口決〕

p.0954 一塗輿、〈四方〉輿之代也、當時ハ車之代、
諸家之輿ハ有レ廂〈僧幷武士ハ無レ廂〉
路頭之禮有レ之、〈以二車之禮一爲二准據一、令二了見一者也、〉前駈、〈雜色以角木次侍爲二上首一〉騎馬、〈諸大夫侍等之在二後陣一〉下車步行之時者、諸大夫雜色等、可レ爲二前行一也、以二此准據一、乘輿之時モ可レ有二其沙汰一、〈武士ハ步行之時、前駈無レ之候也、〉塗輿者、諸家諸山、於二門前一乘レ之也、但東堂者、至二玄關一乘レ之云々、若然者經二寺僧之推擧一之後、可レ遂二其例一歟、總別者於二門前一可レ乘之條、爲二本儀一歟、凡輿之立所者、禁中ハ限二立石一、諸家ハ互ニ限二門外一、〈但攝家、凡家ヘ渡御之時、限二中門一、諸寺ハ限二門前一、〉

〔二水記〕

p.0954 永正十五年三月十九日、宮御方、密々令レ詣二石山寺一給、依レ仰供奉了、伏見殿宮御方竹内殿、右宰相中將、予、〈(藤原隆康)已上輿、各御板輿也、竹内殿一丁塗輿也、〉
大永元年十二月廿四日、今日武家御元服也、仍渡二御于三條御所一、〈○中略〉辰刻渡御、塗輿、〈垂レ簾〉

〔成氏年中行事〕

〈正月〉

p.0954 一同廿九日、雪下今宮へ御參詣アリテ、直ニ瀨戸ノ三島大明神へ御社參、御先ニ御劒役被レ參、其次ニ御馬ヲ被レ牽、其後公方樣御出、御輿赤漆御單物(○○○○○○○)也、

〔貞丈雜記〕

〈七/與〉

p.0954 一ぎいろごし(○○○○○)黃色輿也、是も前に云塗ごしを、責色の漆にてぬりたる也、婚入之記に 云、あじろごし、是又よめむかひの時ばかり也、常の時は、きいろのこし也云々、黃色輿む塗輿なり、

長柄輿

〔故實拾要〕

〈六〉

p.0955 長柄輿
是諸家中、節會隨役勅使等ノ時ノ乘輿也、此輿ハ社人等、神事ノ時ニ乘、長柄輿同キ物也、

〔毛利家記〕

〈三〉

p.0955 一右ノ翌年、〈○文祿三年〉於二京都一秀元卿御祝言御調候、〈○中略〉長柄ノ輿、御召替トモニ十三、下アジロノ輿三十六丁、結構ニ飾、金銀ノ金具ヲ打タル常ノ駕二百十六丁、御供ハ諸大夫迄ハ式正ノ裝束、常ノ侍ハ長袴也、最日本初テノ祝言タルベシト沙汰有シ也、

〔甲子夜話〕

〈九十四〉

p.0955 當日〈○文政十年三月十八日〉津輕侯ノ登營ニハ、牽馬ハ二匹ナルガ、コレモ鞍覆ハカケズ、紅ト紫ノ厚總ヲゾカケタルト、又轅ニ乘リタリト聞ク、四品ノ人モコレニ乘ルカ、隱倫ノ身ハ、カヽル雲上ノ事ハ今ハ露ホドモ辨ヘズ、

〔甲子夜話〕

〈九十六〉

p.0955 前九十四卷、〈○中略〉弘前侯ノ轅ニ乘テ登城セシコトヲ云へル結句ニ、四品ノ人モコレニ乘ルカ、隱倫ノ身ハ、カヽル雲上ノ事ハ、今ハ露ホドモ辨ヘズト記セシガ、此頃聞ケバ思モヨラヌ大事トナリケルトゾ、
申渡之覺〈四月(文政十年)廿五日〉
津輕越中守名代
岩城伊豫守
今度御昇進御位階之節、〈○德川家齊任二太政大臣一、德川家慶敍二従一位一、〉登城之砌、轅相用候由、然る處先達て父越中守より内意申聞候節、轅用候儀難二相成一旨相達置候處、其心得も無レ之、此度相用候儀、不束之儀と思召候、依レ之逼塞被レ仰二付之一、
右於二下野守宅一、老中列坐、同人申二渡之一、大目付織田信濃守、御目付曾根内匠相越、
又聞ク、或人當日途中ニテ見タルハ、彼侯退朝ノ時、兩國橋ヨリ居屋鋪ノ方ヘハ行カズシテ、川端 ヲ上リ、予〈○松浦淸〉ガ末族和州ノ邸前ヲ上へ、埋堀ノ方ニ越テ、割下水ノ方ヨリ歸邸セシトゾ、又或人ハ、御倉前ヲ通行テ大川橋ヲ渡リシトモ云、登城ノ時ト歸路ト道ヲ違ヘタリトモ云フ、イカニモ乘轅ノ體ヲ人ニ見セソトテ、ワザト路ヲ迂廻シテ通行アリシナラン、然ルニコノ譴責ヲ蒙レバ、榮耀ヲ人ニ示スノ心ハ、翻テ恥辱ヲ人前ニ曝スコトヽ成リヌ、去リトハ笑止ナルコトヾモナリ、頃ロ又、一紙ノ書付ヲ示ス者アリ、云ク、
四月廿八日
〈大目付〉石谷備後守 〈御目付〉羽太左京
此度御大禮之節、津輕越中守、轅相用候處、出役之御目付、御小人目付不二申立一候段、平日申付方不行屆不調法之事に候、依レ之御目見差扣被レ仰二付之一、
右於二新部屋前溜一、下野守申渡、本多遠江守侍坐、
〈御徒目付〉速見左大夫 小櫛七十郎 野宮市大夫 〈御小人目付〉持田登平 中島儀藏
坪山忠八
此度御大禮之節、津輕越中守、轅相用候を見請候はゞ相糺、大目付御目付〈江〉可二申立一儀、無二其儀一不束之事に候、依レ之押込申二付之一、
〈御徒目付〉金子榮五郎 小田又七郎 〈御小人目付〉鈴木甚右衞門 伊奈源太郎 金井新作 加藤此八
津輕越中守、轅相用候節、出役は不レ致候得共、出役之者より不二申立一候共、平日供連之儀取扱候上は、相互に可二心付儀、無二其儀一不調法之事に候、依レ之御目見差扣被一申付一、
右於二小田切土佐守宅一、金森甚四郎立合、土佐守申二渡之一、
彼ノ御大禮ノトキ、丹羽侯モ、〈奧州二本松〉四品ニテ轅ニ乘テ出タリ、コレハ侯ノ先代ノ中、轅ヲ新造シ テ、三四年モ釜所ノ塵汚スル場ニ置テ、殊ニ煤ビサセ、官家大禮アルニ臨テ乘出タリ、果シテ役向ノ人見咎メシニ、先祖小松宰相〈○長重〉乘用ノ者ヲソノマヽ用テ、カク古ビタリト答テ事濟シト、夫ヨリ引續テ例用シ、當丹羽氏モ此度轅ナリシトゾ、又藤堂侯ハ、〈勢州阿能津〉侍從ノ事ユエ、家臣等、此度ハ轅乘勿論ト議セシニ、老臣曰、太祖高虎公、轅ヲ用ヒラレシコトナシ、然レバ子孫ノ今ニ到テ創用スベキニ非ズトテ、駕籠ニテ登城アリシト、丹羽氏ノ祖小松宰相ハ、イカサマ轅ニモ乘ツラン、左ナクトテ子産放魚ノ類、欺クニ道ヲ以テセバ、官家ノ咎モ無キ理ナリ、又藤堂ノ謙遜ハ論ズルマデモナシ、弘前侯ニ於テハ、祖先ニ由緣スベキナク、又遜順ノ義ヲ知ラズ、招二其尤悔一者宜哉夫、

籠輿

〔類聚名物考〕

〈船車三〉

p.0957 籠輿 らうごし
案〈○山岡浚明〉に、牢輿にや、牢獄に比ひたる輿を云に似たり、尤籠居の意にていふべけれども、意穩當ならず、

〔太平記〕

〈三〉

p.0957 主上御二沒落笠置一事
山城國ノ住人深須入道、松井藏人二人ハ、此邊ノ案内者ナリケレバ、山々峯々無二殘所一搜シケル間、皇居〈○後醍醐〉隱ナク被二尋出一サセ給フ、〈○中略〉此時此彼ニテ、被二生捕一給ケル人々ニハ、先一品中務卿親王、〈○尊良、中略、〉都合六十一人、其所從眷屬共ニ至ルマデハ、計ルニ不レ遑、或ハ籠輿ニ被レ召、或傳馬ニ被レ乘テ、白晝ニ京都へ入給ケレバ、其方樣歟ト覺タル、男女街ニ立並テ、人目ヲモ不レ憚泣悲ム、淺增カリシ分野也、〈○中略〉三日〈○元弘元年十月〉迄、平等院ニ御逗留有テゾ、六波羅ヘハ入セ給ケル、日來ノ行幸ニ事替テ、鳳輦ハ數萬ノ武士ニ被二打圍一、月卿雲客ハ怪ゲナル籠輿傳馬ニ被二扶乘一テ、七條ヲ東へ河原ヲ上リニ、六波羅ヘト急ガセ給ヘバ、見ル人涙ヲ流シ、聞人心ヲ傷シム、

〔輿車圖考〕

〈三〉

p.0957 籠輿
籠輿てふもの、傳馬とならべとなへたれば、旅人の病者などのために、驛場などにて、もとは設 しものなるべし、それよりしては嚴島詣にもめされけり、いまの世、こゝにてかごてふものは、堂上にては板ごしなどいひて、大臣等は白木もてつくり、有明網代、むしろつゝみなどあるなり、この地にては、それをかごといふ、こは轅切といふものよりはじまりしなり、荷輿てふことも、舜舊記などにおほく出したるが、これまた似たるものなるべし、肩にてになふゆへになづけけむ、尤轅切の源始はさだかならず、むかしまたのりものといふは、輿をも馬をもいひたるなり、二水記に、大永三年六月十三日、各直垂乘物也、〈廣姉等輿、少納言馬、〉とみえたりとぞ、籠輿、舜舊記には、鹿籠輿とかけり、このふたつは、今いふかごのことにやはべらむ、

〔貞丈雜記〕

〈七/輿〉

p.0958 一籠の輿と云物あり、〈○中略〉今の駕籠乘物の類なるべき歟、

袖輿

〔滿濟准后記〕

p.0958 正長二年三月廿九日、今日戌始、予院參、堅固内々儀也、著二裘袋一乘二袖輿一、扈從僧綱、松橋僧都賢紹、〈重衣〉房官一人、

荷輿

〔倭訓栞〕

〈前編九/古〉

p.0958 こし ござ包みを荷輿とす、地下も用う、

〔故實拾要〕

〈六〉

p.0958 荷輿
是地下ノ輩ノ乘輿ヲ云也、堂上モ納言以下ハ常ニ用レ之、晴ノ時ハ不レ用レ之也、ゴザニテ包タル輿ヲ荷輿ト云也、

〔梵舜日記〕

p.0958 慶長二年四月十三日、龍御料人、甲賀郡水口之城へ嫁娶始也、〈○中略〉荷輿同上五丁也、
元和四年五月十三日辛丑、荷輿筵包、大工申付、爲二作料一銀三貫目遣也、 十年九月十六日丁卯、予食過、令二下山一罷歸也、於二路次一神輿舁二置御座一也、予荷輿ヨリ令二下輿一、拜罷通也、

擔輿

〔梵舜日記〕

p.0958 慶長五年十二月十四日、京へ銀子十文目、破木十束、同貳十疋、次破木十束、次同貳十疋、次擔輿、於レ京申付來、代六文目也、

包輿

〔大江俊矩記〕

p.0958 文化五年三月五日辛丑 一酉刻出門、狩衣差袴著用、乗輿、〈包輿也、舁人四人、絞付看板著用、〉 十年三月廿九日丙申、向二池尻家一、彈正少弼面會參役之儀、萬端相賴、且申談條々如レ左、
一進物未定之由、下﨟公卿被二聞合一、相分次第可レ被レ知由、
一召具人數、先雜色四人、白丁二人、步行覺悟之由、大雨は無レ據可レ爲二乘輿一、〈包輿〉少雨は先步行之積云云、粗如レ此雖二治定一、今一應交野右衞門佐相談之積云々、予乘輿之事、幷召具人數等不レ及二斟酌一間、任二所存一可二用捨一旨、深切示給也、

女房輿

〔續視聽草〕

〈初集十〉

p.0959 乘物名目
女房ノ輿トハ、今ノ世モ女乘物ト云ガ如ク、其製造聊カタガヘルナリ、尤下簾等アルベシ、今京師ニテ用ラルヽ女轅ハ、必下簾アリ、京師ノ俗ニ、是ヲ車轅ナド云ヘリ、將軍家出行之至極ノ内々ナル故、女轅ヲ用テ、供奉ヲモ少略アルナリ、

〔明月記〕

p.0959 建仁二年二月二日、自二鳥羽一御二幸八幡一、女房輿三、

〔吾妻鏡〕

〈三十九〉

p.0959 寶治二年十月六日己卯、將軍家、〈○藤原賴經〉俄入二御于鶴岡別當法印雪下坊一、被レ用二女房輿一、

〔吾妻鏡〕

〈五十二〉

p.0959 文永三年七月四日甲午、戌剋將軍家、〈○宗尊親王〉入二御越後入道勝圓佐介亭一、被レ用二女房輿一、可レ有二御歸洛一之御門出云云、

〔宣胤卿記〕

p.0959 永正十四年閏十月二日、今日室町殿、爲二有馬山温泉一令レ下二攝州一給、依二御中風氣一也、御忍分、被レ用二女房輿一云々、

釣輿

〔倭訓栞〕

〈前編九/古〉

p.0959 こし 釣ごしあり、又半切(○○)とも稱す、もと官家のめしつかはるゝ婦女の乘物也、今公卿夫人とても是にめす也、

〔板坂ト齋記〕

〈下〉

p.0959 慶長元年、秀賴公三歲上洛、〈○中略〉馬三疋、鞍置大總、土佐駒、其次見せ釣輿一丁、次に釣輿に秀賴公乳母に抱れ、供の女房衆、釣輿に三十一、御供の騎馬諸大名の子供、十より内、何も裝束、

〔梵舜日記〕

p.0959 寬永三年九月六日、行幸之儀式也、〈○中略〉攝家淸花衆、塗輿十五丁計にて通也、次女中方之 輿共廿五丁、釣輿也、次荷輿廿五丁、塗輿廿丁出仕也、次淸華堂上已下悉出仕也、

凉轎

〔下學集〕

〈下/器財〉

p.0960 凉轎(リヤウキヤウ)〈禪家所レ乘〉

塵取

〔撮壤集〕

〈中/輿〉

p.0960 塵取(チリトリ)

〔常照愚草〕

p.0960 一ぬりこし御免の事、〈○中略〉入道にては、不レ及二御免一候由候へども、いかゞ候哉、〈○中略〉自然忍て乘用の時は、ちりとりにのり候てなどゝ、ひげの詞申事も在レ之、

〔貞丈雜記〕

〈七/輿〉

p.0960 一塵取と云物も、輿の類也、日置流法要録抄に、輿に行合たる時の式體、弓手へ打のけておるべし、〈中略〉又下すだれみせぎぬ出したる輿におるべき也、ちりとりには、うちよけて通るべしとあり、

〔嬉遊笑覽〕

〈二下/器用〉

p.0960 塵取は、〈○中略〉今も塵をとる具に、むしろの端に繩を付て、二人して舁ものゝ如くなるべし、師門物語、〈寬永六年の寫本、是も室町頃の草子なり、上卷、〉御こしをつまどの口へたてまうす、御供の女房達のちりとりまで、十六ちやうこそかきすゑたれ、〈師門夫婦、鹽がま明神に參りし處なり、〉これらの塵取と云は、麤末なる釣輿の類なるべし、

〔太平記〕

〈二十九〉

p.0960 師直以下被レ誅事附仁義血氣勇者事
河津左衞門ハ、小淸水ノ合戰ニ痛手ヲ負タリケル間、馬ニハ乘得ズシテ、塵取ニカヽレテ、遙ノ跡ニ來ケルガ、執事〈○師直〉コソ已ニ討レサセ給ツレト、人ノ云ヲ聞テ、アトル辻堂ノ有ケルニ、輿舁居サセ、腹搔切テ死ニケリ、

輿具

〔朝覲行幸部類〕

p.0960 慶安四年二月廿五日、卯刻天皇〈○後光明〉渡二御南殿一、〈○中略〉左右次將上首二人引二鳳輦一、豫寄二月花門内一、次將二人分二左右一、寨二御輿御簾(○○○○)一、而見二御裝束具否一、

〔娶入記〕

p.0960 一御こしの下すだれ(○○○○)の事、上のすだれ(○○○○○)のうちより、ひきとをして、上がひをうへへなし、こしのやねのごとく、むねをたて候て、かけ候べく、すそのきぬ(○○○○○)も、いなのつな(○○○○○)も、ながえのほかへ出 してさげ申候、そうじて下すだれは、たれ〳〵もかけ申まじく候、かうゐの女房衆御かけ候、九所がな物、七所がなものまでもかけられ候、五所のこしには、かけ申まじく候、〈○中略〉
一御こしの下すだれの長さ、上樣のは六しやくたるべし、御しんるいなどは、五尺六寸、すそご也、

〔婚禮問答〕

p.0961 こしは白木のこしたるべく候哉、如何、〈○中略〉御こしには、すだれの内に、下すだれをかくる、下すだれとは、すゞしの絹に、ふとく横筋を靑く染め、又は、すそごなどに染て、上すだれのうちより引とほして、上がへを上へなして、こしのやねの如く、むねをたてゝかくる也、下の方のうらに綱をぬひ付て、下るをいなのつなと云、白黑又は白紅になひまぜにして、先にふさを付る也、すそのきぬも、いなの綱も、ながえの外へ出してさげ申候、上のすだれの下より、長くさがり出る也、すだれは、高位の女房衆、かけらるゝ也、九所七所がな物のこしには、すだれの外にかくるなり、これをみせぎぬ(○○○○)と云、五所のこしには、みせぎぬもかけ申さず候、下すだれの長さ、高位の人のは六尺たるべし、其次は五尺六寸、但何も一方の長サ也、兩方合て一丈貳尺、又其次は一丈一尺貳寸也、すそごとは、すそ程色を段々こくする也、

〔貞丈雜記〕

〈七/輿〉

p.0961 一こしの下すだれの事は、婚入記にあり、今かけやうの繪圖、左に記す、
一幅を如レ此折てかくる也、兩方にて二幅ナリ、
おもての方
地へ〓〓―の絹〓そご又ハ横筋を染る
い〓のつ〓左より
同右より
下簾の圖
三角のかど〳〵を、
折釘にかくる也、
三所糸にてわな
をしてかくる也、 簾の内にかくる、頭
とすそは、すだれの
外へ出るなり、
いなのつなは布を繩にする也
紅白又ハ白黑ないまぜ
うらの方
うしろを如此折也
右より
左より
總長〈高位の女房は一丈二尺、其次は一丈一尺二寸〉
一みせぎぬと云は、右の一丈一尺二寸の下すだれを、みすの内へ入てかけず、みすの外よりかけたるを云、五所がな物のこしなどには、みせぎぬもかけぬ也、下すだれは、高位の人かくる也、其外の人は、みせぎぬかくる也、九所七所がな物に懸る也、下すだれは、十二所がな物の輿こかくる也、

〔供立之日記〕

p.0962 一御輿の物具、何もあき、簾も三方共に上られ(○○○○○○○○○)、御立烏帽子、すいかん、御扇もたせらるるなり、

〔枕草子〕

〈十一〉

p.0962 御經のことに、あすわたらせおはしまさむとて、〈○中略〉今ぞ御こし出させ給ふ、めでたしと見え奉りつる御ありさまに、是はくらぶべからざりけり、朝日はる〴〵とさしあがるほどに、木の葉のいと花やかにかゞやきて、みこしのかたびら(○○○○○○○○)の色つやなどさへぞいみじき、御つな(○○○)はりて出させ給ふ、御こしの帷子の、うちゆるぎたるほど、まことにかしらの毛など人のいふは、さらにそらごとならず、

〔大江俊矩記〕

p.0963 文化四年十一月十八日乙卯、新嘗祭也、〈○中略〉
一葱華輦内御前帷子撤レ之、可レ掛二御後輦戸所一哉、行事官相伺、其通申二奉行一處、被レ伺二殿下一後、不レ及二其儀一自レ初有レ儲通宜旨被レ示、卽命二行事官一了、
件葱華輦帷、〈稱レ幌歟〉御前御左右等三方有レ之、御後無レ之者也、〈依三御後有二輦戸一也〉寬政立后ニ御再興之時、御前計被レ懸二御簾一、仍於二御前一者、御帷御簾等爲二二重一、御後御帷御簾共無レ之、故如レ此相伺由也、

〔延喜式〕

〈三十六/主殿〉

p.0963 御輿一腰綱(○)廿六條料、緋絁四疋四丈六尺、〈腰輿二丈五尺〉心料、調布十二端四尺、〈腰輿一端八尺〉

〔西宮記〕

〈臨時十〉

p.0963 行幸仰二御綱一事
乘輿出二閤門一之間、大將〈立二閊外壇上一〉召二大舍人一二聲、大舍人稱唯、大將仰云、御綱張〈禮〉、大舍人同音稱唯、張二御輿綱一、〈今案之時、無二上宣之詞一、神事不レ仰云々、大舍人候二中隔一、〉行路之間、左右大將、立二左右之〈○一木無二之字一〉御綱末、少將之後一也、〈於二古行幸指圖一、左右大將、立二御綱末、少將後一、而近代皆立レ前、若有レ故可レ尋也、〉

〔娶入記〕

p.0963 一御こしのつな、女房ごしは、ひだりのながえのきつかけ、一しやくばかりのけて、かしつけにて、右のながえに、ひつときにとむるなり、

〔大江俊矩記〕

p.0963 文化四年十一月十八日乙卯、新嘗祭也、〈○中略〉
一葱華輦御綱、御輿長張之事雖二本儀一、輿丁依二少人數一、密々卷二付御綱一、於レ轅四人共加輿丁奉レ舁度相願旨、官務行事官申立、卽申二入奉行一處、被レ伺二殿下一後、可レ爲二其通一被レ示、申二渡官務一畢、

〔娶入記〕

p.0963 よめ入の條々
一わたしやうは、御こしの右のながえ(○○○)かな物よりさき、兩の手をあをのけて、ながえをてのひらにのせて、うけとる人のかほを見る也、

〔大江俊矩記〕

p.0963 文化四年十一月十八日乙卯、新嘗祭也、〈○中略〉秉燭過雨尚不レ止、依レ之一統雨儀覺悟可レ致、尤御輿被レ用二葱華輦一旨被二仰出一、〈○中略〉 一葱華輦添轅事、於二南殿簀子上一、其儘難二舁上一、仍先於二階下一儲二呉床一安二御輦一、撤二添轅一、其後舁二居簀子一、乘御後又舁二居階下臭床上一、加二添轅一可レ奉レ舁覺悟、還御時亦猶此旨行事官相伺申二入奉行一處、被レ伺二殿下一〈○藤原政煕〉後可レ爲二其通一被レ示、卽申二渡行事官一了、
但於二神嘉殿一者舁二居階下一故、其煩無レ之也、雖レ然於レ有二横轅一者、乘御下御共、非レ無二御煩一、仍於二神嘉殿一亦駕輿丁退去之時、可レ撤二一方横轅一樣、申二入奉行一、後申二含行事官一了、
添轅横木寸尺取計處、日月華門幷中和門代中門幔門等、悉通行無レ障由、行事官申居也、

〔愚昧記〕

p.0964 承安三年四月十三日、行二幸賀茂社一之日也、〈○中略〉於二上社一、中將被二來尋一云、御輿覆(○○○)於二鳳輦一者、無二左右一可レ顯也、葱花同前歟、予〈○藤原實房〉不二慥覺一、但定令二露顯一歟、後日中將云、一定可レ顯云々、

〔羽林要秘抄〕

p.0964 朝覲行幸
雨儀條々〈○中略〉
一御輿供二雨皮(○○)一、安二南階之後一、左右下﨟次將撤レ之、乘御之後、如レ本供レ之、或説、雖二雨儀一不レ供二雨皮一乘御云々、仍勘レ例之處、供二雨皮一例度々、
〈土御記〉永承五十十三、〈丁卯〉甚雨、此日朝覲行幸、大將以下立二廊下一、御鳳輦、供二雨皮一寄二南殿一、〈○中略〉
以上供二雨皮一寄二御輿一、此外例多、猶可レ勘レ之、隨二近例一又如レ此、

〔庭槐抄〕

p.0964 治承三年八月廿七日辛亥、今日八幡行幸〈○高倉〉也、〈○中略〉雨又灑、公卿等乘馬之間、立二日花門代内一、御輿進、予〈○藤原實定〉暫停レ之、示二頭中將通親一、於レ今者、御輿雨皮可レ候歟、朝臣云、御棧敷前、爲二此程一者、不レ可レ覆、猶降者、於二路頭一覆レ之常事歟、予諾レ之、

〔明月記〕

p.0964 建永元年六月十三目、少納言長季鈴奏了、寄二御輿一、兩三位副レ之、〈○註略〉定通卿開レ輦取二御草鞋一、出御、定通卿仰二御綱一、〈猶右弓彌〉自二出レ門程一大雨、雨皮事頻雖二相觸一上下不二聞入一、御輿長等奔走、於二待賢門下一僅奉レ留、予〈○藤原定家〉資家奉仕之間に、御輿南面に奉レ居、〈クレドコ伏〉〈天〉〈敷レ之〉次席の御後方を竹針〈二天〉、三所許差貫〈天〉、 後打覆、御前の方に又差レ針、〈是皆資冢所レ爲〉次に廻の雨皮を引廻、御前左角に結レ之、〈予結レ之〉次資家以一輿帷紐一御前を結、次上雨皮を打懸〈天〉鳳を出、〈以レ弓搔出〉次綱を打懸〈天〉轅に結、資家云、雖レ可二故實一、此綱已短、只可レ略歟、

〔大江俊矩記〕

p.0965 文化四年十一月十八日乙卯、新嘗祭也、〈○中略〉申刻過雨降出、到二日沒以前一尚不レ止、依レ之主殿寮内々伺申曰、若於レ被レ用二御鳳輦一者供二雨皮一事不二容易一故、豫設置度旨也、其通申二入奉行一處承知、仍供二御下湯一畢、後早々雨皮點撿令二取掛一也〈○中略〉葱華輦雨皮事、頭辨被レ示曰、御屋根之垂何程有レ之哉、可レ尋旨也、仍行事官召寄相尋處、此儀者、主殿寮調進故、委敷雖レ不二覺悟一、荒方御屋根垂四方共三寸計有レ之樣令二覺悟一了、其上廻リ雨皮有レ之、自二御後方一掛レ之、於二御前方一打合タルモノヽ樣ニ覺居由申レ之、就レ不レ慥又尋二主殿助一處、行事官申通也、尤御後之處、一面ニテ御左右者明キ有レ之、御前亦打合故明キ有レ之由、御之乘時、雖レ被二卷上一、輦戸不レ開故、是非共廻リ於レ不レ被レ撤者、乗御難レ成、此雨皮者、普通乘物桐油之通、掛釘有レ之故、乘御以前被二取放一、乘御後又被レ掛、於二御前方一被二打合一宜旨申レ之、仍其趣可二申入一處、最早出御頭辨下殿故、〈依留主辨也〉於二渡廊一申二入頭中將一處承知、卽六條羽林其趣被レ談樣子也、然處助功不案内事故、依レ無二覺束一、又々走二行南殿南面階一、召二主殿寮一、爲レ念相尋處、前件無二相違一旨申レ之、仍於二馬形障子邊一列候處、唯今之儀、爲レ念又々相尋處、葱華輦御屋根雨皮之垂者、三寸計ニテ、御廻雨皮者如レ初、御後者一面御前ニテ打合有レ之、何分乘御之時、於レ不レ被レ撤者、輦戸不レ開故、御廻リ可レ被レ撤樣申之旨、更申二入頭中將一承知也、其後又雨皮無レ筵哉、可レ尋二合奉行一被レ示、卽以二便宜一尋二行事官一處、御屋根有二張筵一、其上供二雨皮一、廻リ者無レ筵、雨皮計之由申答、仍其通申二入奉行一也、
件雨皮一件、甚有二簡違一、元來甚雨時、可レ被レ用二廻リ雨皮一、微雨者御屋根雨皮計被レ用レ之、不レ及二廻リ雨皮一由被二仰出一有レ之處、此事奉行申渡漏脱歟、一列勿論官務以下、主殿寮行事官、皆不レ知之故、行幸時雖レ不二雨降一、廻リ雨皮迄供レ之、舁二立御輦一、甚不都合之至也、〈仍於二南簧子一、重能朝臣、有家朝臣兩人、臨期被レ撤二却廻リ雨皮一也、元來被レ用二葱華輦一事、今夜初度、必竟各不二覺悟一故、雨皮事前以雖レ有二往復一、互不二會得一、仍語意不二相通一及二間違一也、可レ恐可レ恐、○中略〉其後内々入御之間、頭辨有レ噂曰、雨皮之事、奉行不 レ及レ被レ申二上御斷一、御輦下御之儀有二間違一、故此事者卽御斷被二申上一由、内々物語也、一列聞レ之大令二安心一、乍レ倂後來尚用心可二覺悟一事也、〈疑次將被レ申二上御斷一歟〉

〔宗五大草紙〕

〈下〉

p.0966 公方樣御成の樣體の事
一雨ふり候時、御こしにゆたん(○○○)かけられ候事は、公方樣御輿には見及不レ申候、御旅にて、一段雨降風吹候へば、懸られ候由に候、さ候へば御供衆も蓑をめし候、御こしに、ゆたんかけられ候はねば、御供衆もかさを御さし候はず、御臺樣の御こしには、いづくにてもゆたんかゝり候、御車の時は、御ゆたんかゝらぬ程は、御供衆もかさをも御さし候はず候、

〔伊勢兵庫頭貞宗記〕

p.0966 輿のゆたんの事
一輿のゆたんの事、塗輿には掛り候はず候、但旅の時かゝり候事も候、板輿にはかゝり候、公方樣御輿に、ゆたんかけられ候事見及不レ申候、一段雨風候得ば被レ懸候よし候、然ば御供衆笠さし候、御臺樣そとの雨に御輿ゆたん被レ掛候也、

〔貞丈雜記〕

〈七/輿〉

p.0966 一輿のたてむしろ(○○○○○)の事、御成次第古實に云、御こしにめしをりの時、御供衆あつかひにて、むしろは、兩もふり道わるく候へば、御こしよりたてむしろを引出して、たてられ候て、かぎに御かけ候べく候さりながら、前のすだれおろされ候はではわろく候、是はむかひ風に雨つよく入候はゞの儀にて候、さて御じやうりを、御小者參らせ候、〈此分除て見べし〉雨もよく候時、たてむしろは引出候はぬ物にて候、立むしろは、よこ雨の御用までにて候也云々、たてむしろは、疊の表にへりを取て、輿に入置て、風雨の吹時引出して、簾の外よりかくる成べし、

〔輿車圖考〕

〈二〉

p.0966 鳳輦
くれ床(○○○)のことを按ずるに、世俗淺深秘抄云、〈○中略〉くれどこを伏してとも、又は平敷ともあるは、いづれ御こし高ければ、雨皮のかけがたきをもてなめり、さるに橋本經亮は、伏といふも、たゞにく れ床設置くことにて、呉床平床もおなじことなりといへり、もと平床の名はなし、平敷のおもひあやまりなるべし、屋代弘賢は、伏とは側おく事なり、もとくれ床の名は、延喜内匠式に牙床、〈和名抄にくれどこと訓ず〉等料、檜榑一材と見えたり、これその徵なり、かたちは榻よりも長くせばぐ、足も直立せし床なるべきなり、さて伏てといへるは、横さまに側だてしなるべし、ひろさ八九寸あるべきものを側てゝ用ひんには、榻よりもひきゝ事、便なるべしといへり、伏するとも、平敷にすともいふを、たゞ設置く事ともいひがたく、側ておくを伏するといふことも、いかゞあらん、稻村行敎は、例こしを置かたを地にし、是をうへのかたにしておくなるべしといふことは、平敷といふにも、伏してなどいふにもかなへりしやうなり、また弘賢説、くれもてつくるてふことは、いかゞあらん、すでに式〈○延喜内匠式〉にも、手輿の條に、檜榑とあれば、この床にのみ榑とあるにもあらず、されば猶この名とはいひがたかるべし、總て物の名なんどは、さして深きことわりある事にもあらず、たゞにいひ傳へ、となへ來りしことのみにて侍るを、數百年ののちに、なにくれとより所をかうがへ侍るにぞ、あたり侍らざること多かめる、呉床を、胡床などいへば、かの呉床呉竹などいふたぐひにて、もろこしよりわたりし床よりつくりなせしを、呉床といひ、えびすの地よりわたりしを、胡床といひしにもあらんかし、されどこは、何よりいづるとも、强て實用のせんある事には侍らず、此の平敷てふこと、いまだ説々定まらねば、その説をあげて、その圖〈○圖略〉をば、しばらくこゝにかくのみ、
搢紳家、古より傳へたる、鳳輦のくれどこてふものありとて、經亮のもとより模本おこしぬ、その床は、いとひろくつくりなせしものなり、鳳輦のしたに四足あれば、ひろき床にて、その四足をあんじ置くべきことわりなきにもあらざれば、先此の模本をも、こゝに收入し侍るなり、これらのことをも、みやこ人へ、たび〳〵たづねものしたるが、これぞ明證とすべき説もなければ、しばら く疑はしきをかきて、識者をまつのみ、

〔世俗淺深秘抄〕

〈上〉

p.0968 一雨日行幸之時、次將奉二仕御輿雨皮役一事、第一大事也、〈○中略〉御輿固於二路次一覆事丶於二四辻一大略覆レ之、必向二東面南面一、敢不レ向二西面北面一也、伏二榑輫一可レ安二其上一也、其儀如二堂上一、

〔明月記〕

p.0968 建永元年六月十三日、少納言長季鈴奏了寄二御輿一、〈○中略〉自二出レ門程一大雨、〈○中略〉予〈○藤原定家〉資家奉仕之間に、御輿南面に奉レ居、〈クレドコ伏〉〈天〉〈敷レ之〉

〔貞丈雜記〕

〈七/輿〉

p.0968 一こし臺(○○○)とは、こしの長柄をすへおく物也、まな板のごとくにして四足あり、本名をばしぢと云也、楊の字也、車に召るゝ時用レ之、
榻如レ此物也〈車のしぢは、金物もあり、あげまきを付るなり、〉

〔宗長息女婚禮記録〕

p.0968 息女出給ふ時、〈○中略〉道具の順は、二の門にて定候也、〈○中略〉
道具輿以下次第之事〈○中略〉
五拾 御輿臺

〔扶桑略記〕

〈二十九/後三條〉

p.0968 治曆五年〈○延久元年〉三月十五日壬午、行二幸石淸水一、此日於二朱雀院東門前一、御輿朸(○○○)損、召二内匠寮一、卽旬令二修補一、 十六日、還御之間、同朸破損、後日、右中辨隆方朝臣、有レ所二恐懼一、依レ爲二裝束使一也、

乘輿法

〔北山抄〕

〈九〉

p.0968 行幸
少納言奏鈴、訖候御輿於南階上簀子敷一、〈○中略〉主殿寮撤二御輿覆一、上﨟次將開二輦戸一、〈置二璽筥一後閉之〉自餘臥レ弓跪候、

〔羽林要秘抄〕

p.0969 朝覲行幸
左右次將副二御輿〈○註略〉左右一、上﨟次將見二御座覆一、〈○中略〉上﨟次將〈不レ論二左右一〉昇二南階西邊一、〈○中略〉進二簀子一開二輦戸(○○)一〈○註略〉左廻進持二御劒一、内侍下〈東也〉跪〈先二左膝一、内侍相居、〉取二御劒一、左廻進跪、入二御輿前方一、〈柄右、刃外、此間他次將臥レ弓、〉歸向レ北、跪取レ弓、候二簀子一、〈東面〉卽乘二御輿一、〈○中略〉左右將監昇二西階一、舁二下大刀契櫃〈或閉二輦戸一後〉置レ弓取二御草鞋一給二東豎子一、〈藏人頭候二御裾一時、便可レ取歟、〉進跪〈先二右膝一〉取レ璽内侍下取レ璽、右廻進跪入二御輿一、〈御劒柄内方也〉閉二輦戸一、〈此間他次將立レ弓退下〉跪取レ弓退下、

〔門室有職抄〕

p.0969 輿乘下事
四方輿ニハ、自レ傍下乘、〈左右任レ意〉若自レ傍無レ便ニハ、自レ前可レ下レ之、四方輿ノ簾ヲバ、前へ一面揚レ之、三面ハ人相遇之時下ス、有レ煩故也云々、

〔貞丈雜記〕

〈七/輿〉

p.0969 一車には後より乘りて、前より下る事にて候、〈盛衰記卅三、木曾院參ノ條ニ見、〉輿には前より乘りて、前より下るなり、

〔今川大雙紙〕

〈下〉

p.0969 馬に付て式法之事
一御こしよする事、妻戸の左を賞翫するは常の儀也、さてよめどりの御こしは、のりたる人の右を賞翫するなり、右と云は、乘手のためには左也、然るに大方輿をよするには、役人とのばら兩方にねり寄て、左右に膝まづきて、妻戸を押ひらきて、さて御輿の中へ目を見入ずして、長柄を執て、其時力者綱をはづしてまいる也、又長柄に執付とき、力者さしよる也、さて兩方のとびらを押よせて、しさりてかしこまる也、のり給ひて後、うしろ妻戸をほと〳〵とたゝき給ふ時、則左右の役人、妻戸を開て長柄を取、然ばりき者心得て、御こしを引出す也、其後左右の長柄をカ者に請取せて、手を付て片手にて妻戸を押とづる也、さて妻戸のちやう木のある方を上手と云也、御こしをよするをば、いさするといふ也、
一御こしよするには、女には右のあがり、男には左の上りなり、輿をよする時、殿原はつなの上へ あがりて、つゝしんでかしこまる也、其後中間御こしをさしよする也、其時左の手をこしの長柄に打掛て、右の手にてこしの長柄をかゝへてよするなり、妻戸をたつる時は、下まへの方より押とづる也、さて又こしの繩も、右にとめて、又左にとむる也、是もとめやう、男女によると云一儀有、〈○中略〉
一よめ入之時、迎の人に輿渡す事、輿を立て、さて互に一禮申て、先右の方の長柄を請取せて、軈て左をとらすべし、こしの後よりまわりて請取べき也、

〔宗五大草紙〕

〈上〉

p.0970 人の召仕れ候仁心得らるべき事
一輿寄の妻戸のうはがさね下がさね、こしのよる時さた候はず候、たゞ武家には、こしの左をあがりと心得候、公方樣御劒の役人も、御妻戸の左に祗候也、又私ざまにては、輿ぞへの役人兩人あり、妻戸のうはき打たる方、輿の左あがり、右はしたで、女房衆はめして後、こしをそと御たゝき候、其時えんより兩人かきおろし候へば、こしかき請取候、公方樣には、御こしかき計あつかひ申候、

〔奉公覺悟之事〕

p.0970 一私にてこしよせの時、こしぞひのさむらい兩人、えんへあがりてこしをよせ候、御成には、御はしり衆は手をかけられず候て、御こしかきばかりあつかひ申候也、其時御劒の御やく、妻戸左の方の御えんに祗候也、

新輿乘始

〔看聞日記〕

p.0970 應永廿六年十二月廿九日、今春新造輿、于レ今不レ乘、今日吉日之由在方申レ之、仍乘始、
○按ズルニ、婚嫁ノ時ニ於ケル新輿乘始ノ事ハ、禮式部婚嫁篇ニ詳ナリ、

輿長

〔延喜式〕

〈十三/大舍人〉

p.0970 凡車駕行幸者、舍人四番〈以二十二人一爲二一番一〉供奉、御輿長八人、駄鈴四人、並著二緋袍白布袴帶一、若皇后有レ幸、又供二御輿長一、裝束同レ前、

〔延喜式〕

〈四十五/左右近衞〉

p.0970 凡行幸之時、御輿長五人、擇二近衞膂力者一、預前注二交名一奏之、並著二紅染布衫一、不レ帶二弓箭一、 其料細布三端一女四尺、紅花十五兩、隔二三年一請、〈○中略〉
凡十二月廿七日、進下請二元日威儀料挂甲一奏、幷御輿長歷名上、

〔延喜式〕

〈四十七/左右近衞〉

p.0971 凡駕行之日、分二配兵衞一者、御輿長二人、〈不レ帶二弓箭一〉御膳前二人、御馬副二人、自餘陪レ陣、

〔北山抄〕

〈九〉

p.0971 行幸
時刻御二南殿一、左次將以下、出レ自二敷政門一到二日花門外一、右次將、率二御輿長等一、〈御輿長之中、用二番長一人一、但腰輿不レ須、〉經二階下一至二同門外一、〈○中略〉閨司奏後、少納言奏鈴、訖候二御輿於南階上簀子敷一、〈御輿不レ何二西北一〉御輿長等、相扶而侍、駕輿丁等退候二階掖一、

〔園太曆〕

p.0971 觀應二年正月十四日、參内、依二世上擾亂一、今夜俄可レ有レ行二幸〈○崇光〉仙洞一〈持明院殿〉之由、被二仰下一之間、御輿長駕輿丁等相催之所、少々參集、

〔相國寺塔供養記〕

p.0971 御車やう〳〵東の門にちかづきぬれば、樂屋亂聲、左右樂人、舞人、一奚婁を打て參向、駕輿丁腰輿をかきてまいれば、やがて御車よりめしうつらせ給ふほど、御こし長ども、御前をまいらす、

駕輿丁

〔運步色葉集〕

〈賀〉

p.0971 駕輿丁(カヨチヤウ)

〔庭訓往來〕

p.0971 駕輿丁(○○○)

〔儀式〕

〈五〉

p.0971 正月八日講二最勝王經一儀
講讀師前行者、左右相分列進、〈各居二小輿一、其擔丁著二紺衣袴白布帶一、用二駕輿丁一、〉執レ蓋覆二其上一、

〔延喜式〕

〈四十五/左右近衞〉

p.0971 凡番長八人、近衞六百人、駕輿丁百一人、〈二入隊正、十人火長、一人直丁、八十八人丁、〉
凡供二奉行幸一駕輿丁者、駕別廿二人、〈十二人擎二御輿一、自餘執二前後綱一、〉皆著二皂頭巾、皂緌、緋帛衫、調布襖、貲布袗、紫大纈褶、白布袴、白布帶、白布脛巾一、總廿二具〈中宮亦准レ此〉貯二收府庫一、臨時充用若有二損破一申レ官請換、但笠簔請二内藏寮一、凡近衞駕輿丁直丁等、月粮米鹽、毎月請受、唯漬レ菜料鹽、春秋請レ之、〈數見二大膳式一〉餘府准レ此、 凡近衞駕丁、祿物粮米、府總請取班給、其不仕料幷節服、及靑摺衫大衣、駕丁裝束、舊破之物、並充二府中雜用一、兵衞亦同、
凡駕輿丁百人〈隊正二人、火長十人、了八十八人、〉衣服料、夏隊正火長、各庸布一段、丁別商布一段、冬隊正火長、各庸布二段、綿三屯、丁別商布二段、綿三屯、

〔延喜式〕

〈四十七/左右兵衞〉

p.0972 凡駕輿丁五十人
凡供二奉行幸一駕輿丁裝束十一具〈中宮准レ此〉

〔新儀式〕

〈四〉

p.0972 野行幸事
少納言鈴奏如レ常、御輿入レ自二日華門一供レ之、〈中少將供奉如レ常、承平七年例、駕輿丁著二兩面帽子桃染衣一、而延喜十七年、依レ不レ供二野御輿一不レ用二別裝束一、同十八年、延長六年等皆用二尋常御輿一、駕輿丁如レ例、〉

〔續日本紀〕

〈十九/孝謙〉

p.0972 天平勝寶八歲十二月庚子、太上天皇〈○聖武、此年五月崩、〉御輿丁一人、叙二四階一、一人二階、五十七人外二階、一百二十六人外一階、

〔續日本紀〕

〈三十六/光仁〉

p.0972 寶龜十一年三月辛巳、太政官奏偁、〈○中略〉於レ是諸司仕丁駕輿丁等厮丁及三衞府火頭等、徒免二庸調一無レ益二公家一、遠離二本郷一、多破二私業一、仍從二本色一、以赴二農畝一焉、

〔朝野群載〕

〈四/朝儀〉

p.0972 伊勢齋王〈善子〉歸京國々所課〈○中略〉
左右衞門府
歸京駕輿丁各十六人
嘉承二年十一月廿八日

〔太平記〕

〈二〉

p.0972 天下怪異事
御車〈○後醍醐〉ヲバ止ラレ、怪シゲナル張輿ニ召替ナセ進ラセタレドモ、俄ノ事ニテ、駕輿丁モ無リケレバ、大膳大夫重康、樂人豐原兼秋、隨身秦久武ナドゾ、御輿ヲバ舁奉リケル、

〔太平記〕

〈十四〉

p.0973 主上都落事附勅使河原自害事
主上〈○後醍醐〉ハ、山門〈○延曆寺〉へ落サセ給ハントテ、三種ノ神器ヲ玉體ニ添テ鳳輦ニ召レタレドモ、駕輿丁一人モナカリケレバ、四門ヲ固テ侍フ武士共、鎧著ナガラ徒立ニ成テ、御輿ノ前後ヲゾ仕リケル、

〔東武實録〕

p.0973 寬永三年九月六日行幸〈○後水尾、中略、〉
長柄 三十五丁
釣輿 四十七丁
包輿 二十五丁
布衣 四十人
烏帽子著 百十人
十德著 五百二十五人
右是ハ女院御供女中衆ノ輿副、幷駕輿丁也、

〔大江俊矩記〕

p.0973 文化四年十一月十八日乙卯、新嘗祭也、〈○中略〉
一駕輿丁進退事、精々雖二申含茖愚鈍性質故、火急指揮難レ及、一統申合會得不レ仕、甚不都合之儀可レ有レ之歟、尤官務在レ傍雖レ可二指揮一、幼年故不レ及レ力、仍密々行事官〈知昌著用如二形小忌一〉相添罷在、不都合之處、加二指揮一度旨、内々申立、其通申二入奉行一處、被レ伺二殿下一〈○藤原政熙〉後、可レ爲二其通一被レ許、仍其趣申二渡行事官一畢、
依レ之行幸還幸兩度共、南殿階下神嘉殿階下等、於二兩所一添轅供撤之節、密々行事官在レ傍加二指揮一體也、

輿舁

〔下學集〕

〈上/人倫〉

p.0973 輿舁(コシカキ)

〔撮壌集〕

〈中/輿〉

p.0973 輿舁(コシカキ) 輿擡〈同〉

〔䮿驢嘶餘〕

p.0974 一門跡御輿舁〈八瀨童子也、從二閻魔王宮一歸ル時、輿ヲ舁タル鬼ノ子孫也、十二人ヲ一結ト云也、是ハ淨衣ヲ著シテ、髮ヲ唐輪ニワケル也、長一人ハ淨衣ニテ髮ヲサゲテ御輿ノ前ニ行ク也、以上十二人、今ハ御下行ガ造作ナリ、故ニ西坂本ノ下法師御輿ヲ舁ナリ、〉坂輿〈四方輿等ノ事也、(中略)六人ハ略儀也、片ト云也、又遠路ハ輿舁多シ、近所ハ少ナシ、雖レ近大臣公卿ハ廿四人、二結モ被二召供一、下官ハ雖レ遠、片或一結ビ也、〉

〔大内家壁書〕

p.0974 條々
一何方へも御出之時、供奉之衆、御中間、御小者、御輿舁以下可レ被二相觸一、御禮物已下之事、同當番として相調、御氣色にしたがひ、供奉衆に渡すべきよし、壁書如レ件、
文明十八年十一月四日

〔伊勢貞興返答書〕

p.0974 こしかきしたての事
一十德を、地をあさぎにそめ、ぬいめには四ツめゆひを付候、十とくのうへに、しろき帶をする也、公方樣御こしかき、つかさをとり候物一人は刀をさし、御こしの御さきへ參候也、口傳、〈○下略〉

〔娶入記〕

p.0974 よめ入の條々
一御こしかきのいでたちやう、同御物もち候にんぶ、いづれも十とくをうへにき候て、其上にしろきぬのおびにする也、御こしかき御物もち、いかほども候へ、此ぶんにいでたち候べし、

〔愚管抄〕

〈五〉

p.0974 信西はかさとりて、左衞門尉師光、右衞門尉成景、田中四郎兼光、齋藤右馬允淸實を具して、人にしらるまじき夫こしかきにかゝれて、大和國の田原と云方へ行て、穴を掘てかき埋れにけり、

〔結城戰場物語〕

p.0974 春王〈○中略〉御風呂よりもあがらせ給へば、こしかきやがて心得て、すぐに道場へ入たてまつる、

〔三十二番職人歌合〕

p.0974 二十六番 右 輿舁
旅の世のうきをいとはゞ輿舁のくるしむみちぞさし合せなる〈○中略〉 右のこしかき、旅の世に身を捨て、苦をしのがば、終に安樂の國にのぞまむ心を會得せり、三人輿にさへ遠路はかなひがたき、さしあはせの苦行、あぢきなくぞ侍る、

〔嬉遊笑覽〕

〈二下/器用〉

p.0975 三十二番職人歌合、船人と輿舁とつがひたり、〈○中略〉三人輿は、今かごかきの三枚肩、さし合せは、今さしになひ、又省きてはさしともいふ、

力者

〔倭訓栞〕

〈前編三十八/利〉

p.0975 りきしや 東鑑に力者と見えて、中間にならべり、大諸禮に輿かきの類にいへり、

〔庭訓往來扶翼〕

〈乾〉

p.0975 夫力者 貞丈云、〈○中略〉力者トハ古代ハ力者トテ、剃髮シタル中間ノヤウナルモノアリ、出張頭巾ヲカブリ、白布ノ狩衣袴ニ脚絆シテ、馬ノ口ニモツキ、馬ビサクナドヲ持、長刀ナドヲ持チ、輿ナドヲモ舁ク者ナリ、短刀ヲ腰ニサス事、俗人ノ如シ、剃髮ノ人夫也、後三年合戰ノ繪ニ、義家凱陣シテ歸路ノ行粧ヲ畫タルニ、力者兩人、馬ノ口ノ左右ニ立タル體見タリ、紺ノ出張頭巾ヲカブリタリ、一人ハ柄長ビサクヲ持タリ、古門跡方ニモ、力者ニ輿ヲ舁セラレシ事、舊記ニ見タリ、室町將軍モ、式正ノ時ハ、力者ニ輿ヲ舁セラレシ由、古記ニ見タリ、

〔梅園日記〕

〈四〉

p.0975 ろくしやく(○○○○○)
ろくしやくは力者を訛れる也、力者の輿舁事は、長谷寺觀音驗記、杉原本保元物語、法然上人繪詞、類聚大補任等に出たり、吾妻鏡、嘉禎四年二月十七日、又仁治二年十一月四日、又建長四年四月一日等の記に、御輿御力者三手とあり、康正二年慈照院殿〈○足利義政〉八幡社參記を見れば、三手は十八人なり、乘輿の力者十八人の事、荒曆、至德二年八月廿七日に出たり、さて六人を一手とすることは、六人にて輿かく事あればなり、〈○中略〉また䮿驢嘶餘云、門跡御輿舁、八瀨童也、十二人を一結といふ也とあり、〈○中略〉天龍寺臨幸私記に、三百年來、佛法日衰、似二沙門形一、而非二沙門一者多矣、田樂法師、力者法師等是也とあり、按ずるに、此記は崇光院の觀應元年庚寅に、夢窻國師の作也、三百年前は後冷 泉院の永承七年壬辰なり、そのころより力者の名は有けるなるべし、さて上にいへる觀音驗記なるは、淸和天皇の御代とあり、太平記なるは、村上天皇應和三年の事をいへるなり、これみな後世より記したる事なれば、はやく淸和村上などの御時より、力者のとなへ有しとも定めがたくや、又今はれの時、乘物かく者、足ぶみして拍子とるわざあり、これもふるき事なり、わくらはの御法に、牛飼は新車に强牛をかけ、力者はいろ〳〵に足をふみて、こしをかくと見えたり、又輿のみにもあらず、外の事をもなす力者、山槐記等に出たり、

〔蛙抄〕

〈車輿〉

p.0976 一四方輿間事
上皇攝關大臣以下公卿僧綱等、遠所之時乘二用之一、〈○中略〉
力者一手舁レ之、〈著二白直垂一、眞俗同レ之、〉一手ト號スルハ六人也、前後各三人舁レ之、三人之内、中央ハ如レ常懸二綱於肩一舁レ之、其左右兩人ハ、只取二長柄一也、前後共同レ之、遠所之時ハ、二手モ三手モ可二召具一也、一手之外ハ、只輿ノ前後ニ走行也、僧俗同レ之、長途之間、相替舁レ之、

〔太平記〕

〈二十四〉

p.0976 依二山門嗷訴一公卿僉議事
我朝ニハ村上天皇ノ御宇應和元年ニ、天台法相ノ碩德ヲ召テ宗論有シニ、山門ヨリハ横川慈慧僧正、南都ヨリハ松室貞松房仲算已講ヲ被レ參ケル、豫參日ニ成シカバ、仲算旣南都ヲ出テ上洛シ給ケルニ、時節木津河ノ水出テ、舟モ橋モナケレバ、如何セント、河ノ邊ニ輿ヲ舁居サセテ、案ジ煩給タル處ニ、怪氣ナル老翁一人現ジテ、〈○中略〉水ハ深シ、智ハ淺シ、潛鱗水禽ニダニモ不レ及、以レ何可レ致二宗論一ト恥シメケル間、仲算誠ト思テ、十二人ノカ者ニ、只水中ヲ舁通セトゾ、下知シ給ヒケル、輿舁サラバトテ、水中ヲ舁テ通ルニ、サシモ恀シキ洪水、左右ニ颰ト分レテ、大河俄ニ陸地トナル、

〔法然上人行狀畫圖〕

〈三十四〉

p.0976 三月〈○建永二年〉十六日に、花洛をいでヽ、夷境におもむき給に、信濃國の御家人角張の成阿彌陀佛、力者の棟梁(○○○○○)として、最後の御ともなりとて御輿をかく、

〔類聚大補任〕

〈順德〉

p.0977 承久三年
齋宮熙子内親王〈四月廿日讓位、(中略)八月廿一御歸京、〉〈鈴跖道〉〈葦代輿(○○○)、以二力者法師(○○○○)一仕之、〉

〔秋の夜の長物語〕

p.0977 山伏、こしよりおりて、〈○中略〉此こしにめし候へとて、ちごとわらはをかきのせて、りきしや十二人、鳥のとぶがごとくに行ける、

〔吾妻鏡〕

〈三十二〉

p.0977 嘉禎四年〈○曆仁元年〉二月十七日癸巳、子刻御入洛、〈○藤原賴經〉著二于六波羅御所一〈丗間新造〉給、〈○中略〉御輿〈被レ上二御簾一、御装束御布衣、御力者三手、〉

〔吾妻鏡〕

〈三十四〉

p.0977 仁治二年十一月四日丁亥、今朝將軍家、〈○藤原賴經〉爲二武藏野開發御方違一、渡二御于秋田城介義景武藏國鶴見別莊一、御布衣、御輿、御力者三手供奉、著二水干一、

〔臨幸私記〕

p.0977 觀應元年八月齋罷
本新兩院、〈○光明、崇光、〉同幸二本寺一、〈○天龍寺、中略、〉還幸之次、至二雲居庵一、又有二法譚一、不レ設二御座一假坐二亭上一、
原夫佛法流二通我朝一已來、迨二于七百餘載一、三百年來、佛法日衰、似二沙門形一而非二沙門一者多矣、〈田樂法師、力者法師等是、〉間有二貴曹高僧敎庠大德一、其威儀亦弊、

〔和久良半の御法〕

p.0977 爰かしこより、女中抔の御聽聞所へ入せ給ふ輿車どもきしろいつゝ、路頭さながら市の如し、何れもそめきりたる下簾、土をはくまで、牛飼は新車に强牛をかけ、力者はいろいろに足をふみて輿をかく、

〔臥雲日件録〕

p.0977 文安四年正月八日、凡當院主年始始出時、力者八人而輿、雖二大路廣衢一、而亦后四力各成レ列而行レ之、則殆乎塞二路半邊一、行路之間、老者、弱者、荷者、行步遲疑、則諸力肘而脅レ之、嚇而畏レ之、予住二等持相國一之時、深誡レ之、又未三嘗輿過二六力一也、蓋東西山諸高宿入城者、雖二遠路一而二力三力而已、多者亦不レ過二四力一也、但現住不レ在二此限一、予遷二當院一以來、亦未二八力而輿一、何必年始獨然哉、舊例八力内、當住六力、亦當レ如レ本、唯除下號二〓分一者三人上可也、

〔八幡社參記〕

p.0978 康正二年三月廿七日丙申、今日參二詣〈○足利義政〉石淸水八幡宮一、〈○中略〉
路頭行列〈○中略〉
輿〈卷二前方幷左右簾一〉 力者三手〈十八人也〉

雜載

〔日本書紀〕

〈二十五/孝德〉

p.0978 大化二年三舟甲申、詔曰、〈○中略〉迺者我民貧絶、專由レ營レ墓、爰陳二其制一、尊卑使レ別、〈○中略〉上臣之墓、〈○中略〉其葬時帷帳等用二白布一、擔而行レ之、〈蓋此以レ肩擔レ輿而送レ之乎、〉

〔日本書紀〕

〈二十八/天武〉

p.0978 元年六月甲申、是日、發途入二東國一、事急不レ待レ駕而行之、儵遇二縣犬養連大伴鞍馬一、因以御駕、乃皇后載レ輿從之、

〔日本書紀〕

〈三十/持統〉

p.0978 十年十月乙酉、賜二右大臣丹比眞人輿杖一、以哀二致仕事一、

〔萬葉集〕

〈三/挽歌〉

p.0978 十六年〈○天平〉甲申春二月、安積皇子薨之時、内舍人大伴宿禰家持作歌、
掛卷母(カケマクモ)、綾爾恐之(アヤニカシコシ)、〈○中略〉和豆香山(ワヅカヤマ)、御輿立之而(ミコシタヽシテ)、久堅乃(ヒサカタノ)、天所知奴禮(アメシラシヌレ)、〈○下略〉

〔續日本紀〕

〈十七/聖武〉

p.0978 天平勝寶元年十二月丁亥、大神禰宜左太朝臣社女、〈其輿紫色、一同二乘輿一、〉拜二東大寺一、

〔保元物語〕

〈三〉

p.0978 爲義北方入水事
去程ニ秦野次郎ハ、卽六條堀河へ參タレバ、母ハイマダ下向モナシ、依テ八幡ノ方へ馳行ニ、赤井河原ノ邊ニテ參逢タリ、延景馬ヨリ飛下テ、輿ノ轅ニ取ツケバ、軈テ輿ヲゾ舁居ケル、

〔源平盛衰記〕

〈四十七〉

p.0978 六代御前事
若公、〈○中略〉旣ニ輿ニ乘給ヘバ、妹ノ姫君、イカニヤ誰ニモ離レテ獨ハオハスルゾ、童モ參ラントテ走出給ヘバ、女房泣々奉二取留一、

〔吾妻鏡〕

〈六〉

p.0978 文治二年十一月十二日乙卯、若公〈○源賴家〉御二參鶴岡八幡宮一、被レ用二御輿一、

〔吾妻鏡〕

〈二十四〉

p.0978 承久元年七月廿五日戊午、酉刻、伊賀太郎左衞門尉光季使者自二京都一到著、申云、去十三日未剋、誅二右馬權頭賴茂朝臣一、虜二子息下野守賴氏一訖、〈○中略〉賴茂幷伴類、右近將監藤近仲、〈○中略〉入二籠 仁壽殿一自殺、放二火槨内殿舍以下一、仁壽殿觀音像、應神天皇御輿(○○○○○○)、乃大嘗會御卽位、藏人方往代御裝束靈物等、悉以爲二灰燼一、

〔增鏡〕

〈十一/さし櫛〉

p.0979 同〈○正應三年十月〉廿五日、かまくらへつかせたまふにも、御關むかへとて、ゆゝしき武士ども、うちつれてまいる、宮〈○久明親王〉は、きくのとれんじの御輿(○○○○○○○○○○)に御簾あげて、御らんじならはぬゑびすどもの、うちかこみたてまつれる、たのもしく見給ふ、