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p.0981 駕籠ハ輿ノ一變セシモノニシテ、其形ハ輿ノ兩轅ヲ去リ、一轅ヲ屋上ニ加ヘタル如クニシテ、肩ニ携ヒテ前後ヨリ之ヲ舁クモノナリ、駕籠ノ一種ニ又乘物ト稱スル者アリ、其製作ニ少異アルノミ、凡テ乘物ハ周圍ヲ備後莞席ヲ以テ裹メリ、而シテ又木ヲ以テ造リ、鬆漆ヲ施シ、金銀ヲ以テ飾フ、美麗ヲ極ムルモノアリ、德川幕府ノ時、乘物ノ製作ヲ以テ、人品ノ高下ヲ定メ、家格ニ由リテ特ニ聽スノ制アリ、普通ノ駕籠ニモ乘用ノ制アリシガ、普通ノ駕籠ノ制ハ、後ニ漸ク弛ミシニ由リ、屢〻之ヲ戎飭セリ、要スルニ、乘物ハ固ヨリ駕籠ト云フベシ、駕籠モ乘物ト云フコトナキニアラズ、或ハ又輿ヲ稱シテ車ト云ヒ、乘物ヲ稱シテ輿ト云ヘリ、凡ソ此ノ如キノ類、古書ヲ讀ムニ方リテ、遽ニ辨ジ難キモノ少カラズ、故ニ此篇ニハ其名ニ循ヒテ收メタル者多シ、
三才圖會云、晉陶元亮、有二脚疾一、毎レ有遊歷一、使下一門生與二其子一舁以中籃輿上、古無二其制一、疑元亮以レ意爲レ之者、 按、倭名抄載二漢書注一云、箯輿、編二竹木一爲レ輿也、卽以爲二刑罰之具一、則今囚人所レ乘牢輿之類乎、據二三才圖會一、則箯輿、卽籃輿、而賤民常用レ之駕籠也、阿牟太者、編版(アミイタ)之訓、其、制精二於籃輿一、而二物自分明、
按、近俗箯輿之精者、稱二乗物一、其周匝裹用二備州莞筵一、今武家、僧、醫、及婦女所レ乘者也、民俗不レ許レ乘レ之、
駕形(○○)ニテモ、搢紳家ニハ總テ專ラ輿(○)ト云、武家ニハ肩輿ニ非レバ輿ト云ズ、乘物(○○)ト云習ヘリ、〈○中略〉乘物俗ニ長棒〈ナカボウ〉トモ云、轎夫四人ニテ舁ヲ本トス、〈○下略〉
當時乘物ト稱スルハ、幾時頃ヨリ造リ始シニヤ、考ル事ヲ得ズ、定テ其始作リ用ヒシ人有ベシ、必定永祿天正ノ頃ヨリ以來ノ事ナルベシ、太平記ノ後ノ實録ヲ考ルニ、應仁マデ諸家ノ記ニ乘物ト云フモノナシ、是ヨリ後ノ記ハ、未ダ具サニ探索セズト云ヘドモ、全ク永祿天正ノ頃、諸記ニハ、乘物ノ義アルべキ事カト思ハル、〈爰ニ永祿天正ヲ引テ考ルモノハ、永祿ハ織田信長公勃興ノ年、天正ハ豐臣秀吉天下ヲ掌握ノ年ナリ、足利ノ機運盡テ、天下ノ事大小トナク、庶政此二公ニ歸シテ、世變浩革アル時ナレバナリ、〉今世乘輿ニ貴賤ノ甲乙アリ、所レ謂白木輿網代輿、打揚、網代腰、腰網代、黑呉筵包等ナリ、然シテ此制度ハ、何ニ據ト云コト不レ詳ト云ヘドモ、其制嚴然トシテ、乘輿ノ 人毎ニ、其家々ノ先蹤格例アリテ、聊モ過度スルコトヲ憚ラルヽナリ、謹デ考ルニ、是皆車ノ制ニ本ヅキタル物力、其車ノコト、當時乘用希有ノ事ナルヲ以、轅輿等ニ依テ斟酌アルモノナリ、〈○中略〉白木輿ヨリ、呉筵包ノ乘物ト云フ物ニ至ルマデ、乘用スル時ノ甲乙アル計ニテ、共ニ腰輿ノ舁行ベキヲ轉用シテ、其箱(クルマヤ)ノ上棟へ柄ヲ透シテ、肩ニ載セカツグコトニナリタリ、恐ラクハ其如レ此轉ゼシハ、人夫ノ便宜ニ因レルモノ成ベシ、假令バ箱ノ下へ柄ヲ入レバ、轅輿ノ如ク四人ノ夫ニテ舁行ベキヲ、箱ノ上へ柄ヲトヲセバ、二人ノ夫ニテ大刀(カツ)グコトユへ、其始ハ毎事質素ヲ可トセシトキノコトナルベシ、爾シヨリ以來ハ、治世ノ繁花ニテ、人夫ノ多寡、ニ拘ルノ義ナキ故、輿一口へ、或ハ八人、或ハ十人十二人ナド、乘用スル人ノ尊貴ニ任セラルト云、其物ハ造リ初タル時ノ形象ヲ改メザルナリ、〈或云、今ノ乘物ト云ハ、古ニ荷輿ト云シモノナリ、其名目ノ轉ジタルモノニテ、形象ハ其古ノ荷輿ナリト云ヘリ、去レドモ、舊記ニ荷輿ト云モノ、未ダ所見セズ、タトヘ其名月アリトモ、形象ノコトヲ註セザレバ、今夫ヲ據リ用ヒガタシ、其記無二覺束一ユへニ、爰ニ其説ヲ省ク也、○中略〉
駕籠 俗稱ナリ、本ハ箯輿ト云フモノニテ、病アルモノ、又ハ罪科アリテ、械錠ヲ打テ步行ナセガタキ物ヲ乘テ行ベキノ料ニ、竹木ヲ編テ輿ニ造リシ物ナリ、故ニ類聚和名鈔ニモ、刑罰ノ具ニ收メテ云フ、箯輿、漢書ノ註ニ云、編二竹木一爲レ輿也、和名阿美以太トアリ、今ノ世阿牟太ト云フ駕籠アリ、卽チ其名ヲ存シタルニテ、阿美太ノ轉音ナリ、或ハ是ヲ阿於太トモ云へリ、是モ阿美太ノ轉音ナリ、太平記鎌倉ノ時、高時入道滅亡ノ時、舍弟四郎左近入道戰場ヲ遁レ落行時ニ、郎等南部太郎、伊達六郎ト云兩人ノ者、形ヲヤツシテ夫ト成、四郎入道ヲ〓ニノセ、血ノ附タル帷子ヲ上ニ引覆テ、中黑ノ笠驗ヲツケサセ、源氏ノ兵ノ手負テ本國へ歸ル眞似ヲシ、武藏迄ゾ落タリケルトアリ、箯ハ字書ニ竹輿トアリ、晉書ニハ籃輿ト云ヘリ、〈太平記ノ〓ノ字モ、竹輿ノコ下ナルベシ、卽假名ニ阿乎太下有、此字他書ニ所見ナシ、〉此物假令、竹木ヲ編ムノ義ニテ阿美太ト云ヒシヲ、竹ヲ曲テ造リタルヲ籠ト云へルナリ、駕ハ乘物ノ義ニテ、駕トスル籠ト云フ意ナリ、今駕籠ノ二字ヲ用テ、其物ノ一名トセシナリ、故ニ輿ノ名アル乘 物ニ分タンガ爲ニ、其駕ノ腰ヲ竹ニテ組ム定ナリ、〈近世ハ腰ヲ乘物ノ如クニ板ニテ作リ、春慶タメ等ニ塗テ、籠ト云印計ニワヅカニ、組竹ヲ其腰ニウチツケテ用ユ、〉又此物ヲ舁ベキ柄ハ、其本丸木ナリシヲ、今ハ乗物柄ノ如クニ平角ニシテ、兩端ヲ細クスルニ至レリ、是モ又僭上ノ一ツナルニヤ、
竹駕は箯輿よ 出たるもの也、今能役者の乘、あんだといふは箯輿の事也、竹駕もあをだと讀也、箯輿は元軍用の具也、手負などを乘るもの也、八島にて嗣信を箯輿にのせたると也、軍用のあをだは、今の竹駕、あんだとは異也、竹を以籠にあみ、竹を曲て蔓とし、丸竹を以これを擔ふと也、大きさも又格別也、
一乘輿は、東山殿下〈○足利義政〉に初る、元來は俗に云御所車の車を除、屋形計用ひて輿となれり、輿の下の二ツの轅を除き、上の一ツの轅を用ひて、駕籠と名づく、高貴の人用レ之、〈○下略〉
一雜人恣不レ可二乘輿一事
古來依二其人一、無二御免一乘家有レ之、御免以後乘家有レ之、然近來及二家郎諸卒一乘輿、誠濫吹之至也、於二向後一者、國大名以下、一門之歷々者、不レ及二御免一可レ乘、其外昵近之衆、幷醫陰兩道、或六十以上之人、或病人等、御免以後可レ乘、家郎從卒、恣令レ乘者、其主人可レ爲二越度一、但公家門跡、幷諸出世之衆者、非二制限一、〈○中略〉
右可レ相二守此旨一者也
慶長廿年七月
見しは昔、十年已前の事かとよ、江戸町のうちに、ひとりふたりのり物に乘、異樣を好み、よせいし て往來するものあり、是をみて其町人は申に及ばず、よの町衆までも、他のひをやみ、腹をすへかねて云ける樣は、乘物にのる人は、智者、上人、高家の面々、其外の人達にも位なくては乘がたし、されば江戸町には、奈良屋、樽屋、北村とて、三人の年寄あり、町の者がのるならば、先此等の人こそのるべけれ、人もゑしら淹町人の分として、上もをそれず、世のひけんをわきまへず、推參やつめが振舞かな、あはれ我人に路次にてさわれかし、こととがめして、よりあふて乘物をふみやぶり、自慢顏する男めを、海道にふみころばし、頭をもだげさせず、物はきながら、むず〳〵としやつらをふみたくり、土にまみれて、見たもなき姿を往來の人に、見せばやなんとてしかりつるが、今みれば、いがなる町人も乘と見へたりといへば、かたへなる人の曰、義は宜なり、時の宜にしたがふといへるなれば、當世流行物、たれとても乘りて見よきなり、さればせつなの榮花も、こゝろをのぶることわりをおもへば、無爲のけらくにをなじ、〈○中略〉松樹千年、ついに朽ぬ、槿花一日、をのづから榮なりなど云て、高きも賤しきも乘輿する所に、此由公方〈○德川秀忠〉に聞召、慶長十九年、御法度被二仰渡一趣、
雜人ほしいまゝに乘輿すべからざる事
古來其人に依て、御免なく乘家有レ之、御免已後、乘家有レ之、然るを昵近家老諸卒に及ぶ迄、乘輿誠にらんすいの至りなり、向後に於ては、國大名以下一門の歷々、幷醫陰の兩道、或は六十以上之人、或は病人等は御免におよばず乘べし、國々の諸大名の家中に至りては、其主人、仁體をゑらみ、吟味をとげ、是をゆるすべし、みだりに乗らしめば、くせ事たるべき者也、但公家、門跡、出家の衆は、制のかぎりにあらずと云、是に依て今は諸人子細なくして、乘輿することあたはず、
覺〈○中略〉 一乘物は、六十歲以上たるべき事、〈○中略〉
右は去辰年申觸候、彌可レ相二守此旨一もの也、〈○中略〉
孫大夫
年號月日 丹波
大坂天滿
三郷年寄中
一乘輿者、一門之歷々、國主城主一万石以上國持大名之息、城主曁侍從以上之嫡子、或年五十以上、或醫陰之兩道病人免レ之、其外禁二濫吹一、但免許之輩者各別也、至二于諸家中一者、於二其國一撰二其人一可レ載レ之、公家門跡諸出世之衆者、制外之事、〈○中略〉
右之條々、准二當家先制之旨一、今度潤色而定訖、堅可レ有二相守一者也、
寬永十二年乙亥六月廿一日
一幼年之者、乘物に乘候年數之儀、元祿二巳十二月廿八日、安房守殿〈江〉相伺候處、十五歲迄乘り、十六歲之正月ゟ馬上に可レ仕旨、御老中御相談之上に而、被二仰渡一候、以上、
元祿二年十二月廿八日
一尾州高六拾壹万九千五百石 從三位尾張中納言宗春卿〈○中略〉
一紀州高五拾五万五千石 從三位紀伊中納言宗直卿〈○中略〉
一水戸城主高三拾五万石 正四位下水戸少將宗翰卿 右稱二御三家一、〈○中略〉乘輿は打揚腰黑(○○○○)也、
高家 表高家 御側衆 駿河御城代 御留守居 大御番頭
右之分御免也、其内表高家者、無官に而白衣、
無垢著二用之一、右之外喜連川左兵衞督、
松平志摩守、何も代々乘輿、嫡子部屋住に而も乘輿、代替之節、家老御太刀目録を以、御目見申上、
一諸大名侍從たる人之嫡孫、部屋住にて乘輿不二罷成一、縱御連枝少將たる人之次男三男、勿論乘輿不二罷成一、但國主者各段之子細有レ之、
打上
御三家幷御分家不レ殘、越前家不レ殘、薩州、仙臺、藝州、長州、備前、因州、佐賀、阿州、土州、米澤、久保田、久留米、對州、喜連川、盛岡、宇和島、弘前、山名中務、〈○下略〉
松平右近將監殿御渡
諸大名乘物之儀、近頃は打揚腰網代に紛敷乘物相用候面々も相見候、打揚腰網代之儀は、國持、溜詰、御三家之庶流、越前家、古來より相用候分計、以來とも可レ被二相用一候、其外は國持たりとも、近來新規に相用候分は勿論、古來相用候共中絶いたし、近來相用候分は、向後可レ爲二無用一候、右之外は從前之用來候、通例之乘物相用、尤打揚腰網代に紛敷乘物は、猶以可レ爲二無用一候、〈○中略〉
右之趣被二相心得一、此後とも打揚腰網代之乘物、虎革鞍覆相用、茶辨當爲レ持候分は、大目付江可レ被二相屆一候、 十二月右之趣可レ被二相觸一候
安永五丙申年二月廿九日
打揚腰網代乘物相用候分
松平薩摩守 松平陸奧守 松平越前守 松平掃部頭
松平彈正大弼 松平左近將監 松平讃岐守 松平大膳大夫
松平相摸守 松平播磨守 松平内藏頭 松平大學頭
松平安藝守 松平出羽守 上杉彈正大弼 松平左京大夫
松平攝津守 松平豐松 松平雅樂頭 松平壹岐守
津輕越中守
腰網代に而無レ之打揚乘物相用候分
松平越後守 松平左兵衞佐 松平千太郎 松平淡路守
松平兵庫頭 松平大炊頭 松平豐太郎 喜連川左兵衞督
山名靭負
打揚腰網代之内一方相用候分
松平肥後守 有馬中務大輔 左竹右京大夫 有馬上總介
打揚にて無レ之腰網代乘物相用候分
伊達遠江守
右之通、向後相極候間、爲二心得一相達候、
二月
覺〈○中略〉
一醫師之外、何者に寄らず、乘物一切無用たるべし、〈○中略〉
五月
一御本丸西丸大奧女中方、朱ぬりあじろ乘物被二相用一候御役々、左之通り、
老女衆 小上藺 御客應答 御中﨟 御錠口 表使
御守殿御住居之分は、老女衆計り朱ぬりあじろ御免、
一御本丸西丸大奧女中衆、靑漆塗乘物相用候分
御次頭 御右筆 御錠口介 御次 切手書 尼 呉服之間頭 矣服之間 御廣座敷頭
御三之間頭
御目見以下之分は、呉座包乘物之事、〈○下略〉
一町中にて、籠、あんだに乘候者有レ之由に候段、前々御法度に候聞、自今以後は、町中は不レ及レ申、品川、千壽、板橋、高井戸、此内を限り堅乘申間敷候、若相背乘候もの有レ之候はゞ、相改捕レ之、急度可二申付一候事、
一乘物幷籠、あんだ、御赦免無レ之者、旅〈江〉出候とも、又は旅より江戸〈江〉罷越候其、品川、千壽、板橋、高井戸、此内に而堅乘申間敷候、是又相背乗候もの有レ之候はゞ、相改急度可二申付一事、
二月
延寶五巳年四月 一頃日端々、駕籠幷借乘物相見え候、依レ之近日御とらへさせ可レ被レ成之由に候、若左樣之者、町中有レ之候はゞ、家主五人組は不レ及レ申、名主迄不念に可二罷成一候間、爲二心得一爲二申知一候、以上、
四月
延賓七年〈未〉五月廿三日
壹人五右衞門 是は芝金杉貳丁目忠左衞門店之者、御法度之駕籠を舁候故今日金杉橋ニ而捕籠舍、
覺
一駕籠之儀、自今以後、堅乘申間敷候、尤町中は不レ及レ申、旅立候共、又は旅より江戸〈江〉入候とも、御赦免無レ之ものは、品川、千住、板橋、高井戸、中川、此内を限、一切乘申間敷候、若相背乘候もの在レ之ば、其者は勿論、駕籠持主、幷駕籠舁候者迄、急度曲事に可二申付一候間、此旨可二相守一者也、
七月
覺
一借シ駕籠之儀、向後目印(○○)を附、旅人は格別、其外は極老之者、或病人、或女、又は小兒、此外一切不レ可レ借候事、〈○中略〉
右之趣、若相背もの有レ之候はゞ、當人は不レ及レ申、家主名主迄、可レ爲二越度一者也、
七月
元祿十三辰年八月 覺
一今度町中代八車、幷借駕籠之分、三傳馬町名主共方ゟ致二極印(○○)一候筈に被二仰付一、先達而相觸候、就レ夫代八車致二所持一候者、日本橋ゟ北之方、大傳馬町名主馬込勘解由、小傳馬町名主宮邊又四郎、日本橋より南之方は、南傳馬町名主小宮善右衞門、右之通名主共方〈江〉、當月廿九日迄之内罷越候而、帳面に付、極印請候日限も承合、極印請可レ申候、借駕籠致二所持一候もの共も、右同前たるべく候間、此旨可二相心得一候、以上、
八月
元祿十三辰年十一月
一借駕籠之儀、傾城町〈江〉參候者〈江〉は、一切借シ申間敷事、
一駕籠に乘候もの、紛敷候問、簾を取可レ申事、
一總而辻々橋々、駕籠集り居申間敷事、
右之趣、可二相守一候、折々人を出し改させ可レ申候間、相背者有レ之候はゞ、曲事可二申付一候、以上、
十一月
元祿十三辰年十二月
借駕籠乘せ申間敷場所之覺
一外櫻田御門之内ゟ、馬場先御門、和田倉御門之内、
一龍之口ゟ、井上大和守屋敷之方、小普請小屋之前道通り、松平肥後守屋鋪之方、神田橋御門通り、
一橋御門内より竹橋を限り大手之方〈江〉、
右之場所、一切乘せ申間敷候、此旨御門幷辻番等にも申付置候、以上、
十二月 元祿十四巳年三月
覺
一借駕籠、傳馬町におゐて極印請候儀、只今迄は駕籠主之由に而、駕籠持來候得共、其者之判形計取レ之、極印いたし遘由、依レ之猥に相聞候、自今已後、駕籠主幷家主判形取レ之、致二極印一候樣にと、傳馬町名主共〈江〉申渡候條、可レ得二其意一候、以上、
三月
元祿十四巳年六月
一借駕籠に乘候もの、駕籠之内に而、笠をかぶり、又は羽織などにて、面を覆ひ候もの有レ之由相聞候、依レ之女之外、左樣之者於レ有レ之は、見合次第相改、曲事に可二申付一候、以上、
六月
寶永六丑年三月
一頃日辻駕籠戸を拵、又はすだれをおろし、停止之ものをも乘せ候之樣相聞、不屆之至に候、人を廻し、見合次第駕籠舁召捕、家主迄越度可二申付一候條、此旨町中可二相觸一候、以上、
三月
寶永七寅年二月
一借駕籠之儀、定之外之もの、一切爲レ乘間敷候、駕籠に戸幷簾をも懸申間敷旨、度々相觸候之處、頃日は戸をたて候駕籠多、其上年若きものも、駕籠に乘候も相見え、不屆に候、人を廻し、定之外之者を爲レ乘、又は戸をたて候駕籠有レ之ば、駕籠舁召捕、當人は不レ及レ申、家主迄急度越度可二申付一候間、此旨町中不レ殘可二觸知一候、以上、
二月 享保五子年二月
一近頃辻駕籠に簾をおろし戸などたて、猥に有レ之不屆候、戸簾を取拂、定數之外、辻駕籠一切持あるく間敷候、追而組之ものを廻し相改、右之族有レ之ば召捕、吟味之上、當人は不レ及レ申、家主迄急度可二申付一候條、此旨町中可二觸知一候、以上、
二月
享保十巳年正月
一辻駕籠に戸を立候儀、前々より御停止に候處、近き頃戸を拵候に付、去辰閏四月、名主共〈江〉申渡し相止させ候、然處此間又々猥に戸を立候辻駕籠多ク相見〈江〉候間、名主支配限り遂二吟味一、辻駕籠之敷居鴨居、早々取拂可レ申候、自今廻り之もの差出し、敷居鴨居付候辻駕籠有レ之ば、見當り次第召捕、裳人共は勿論、名主家主五人組幷駕籠借候もの共に、急度曲事可二申付一候條、其旨町中可二觸知一者也、
正月
享保十一午年十二月
一辻駕籠之儀、〈○中略〉駕籠戸を立候儀は、只今迄之通停止候間、戸立候事は、一切致間敷候、駕籠や共も其旨相心得、辻駕籠之分、敷居鴨居附申間敷候、唯今所持いたし候駕籠之内にも、敷居鴨居有レ之分は、早々取放し可レ申候、自今戸立候駕籠於レ有レ之は、持主は勿論、駕籠屋共に、吟味之上、急度可二申付一候、
右之趣、町中可二觸知一者也、
十二月
寬保三亥年十月 一戸立候辻駕籠、前々停止に付、去戌五月も相觸、駕籠之敷居鴨居、取放し候樣申付候處、當分は相用候得共、此間は猶又戸を立候駕寵致二徘徊一、或は戸無レ之駕籠には乘候者、面體不二見〈江〉一樣に桐油を下ゲ、其上御曲輪内抔にも、駕籠之もの罷有、往來之もの乘候體相見、不屆至極に候、去五月、相觸候通、彌駕籠之敷居鴨居取放し戸立候事、一切仕間敷候、其所之名主致二見分一、敷居鴨居取放候儀相違無レ之段、名主共方ゟ町年寄〈江〉屆書差出可レ申候、
右之趣、駕籠致二所持一稼致候ものは勿論、駕籠借し致二商賣一候もの共迄、急度可二相守一候、
右之趣於二相背一は、召捕吟味之上、當人は勿論家主迄、急度可二申付一候、
十月
覺〈○中略〉
一乘物之棒、上檜無用仕、何木なりとも可レ用レ之、但幅五寸に不レ可レ過事、
右之通、來午正月より改レ之、可レ被二相守一者也、
高木伊勢守
藤堂伊豫守
如レ斯御書付出候間、何〈茂〉可レ被レ得二其意一候、乘物之棒之儀、書付之通勿論候、但桐ほどの木等は、檜よりも少き木にて候間、用レ之候はゞ、あたり候所も可レ有レ之候條、被レ致二無用一、何木にても可レ被レ用事、
元祿二己巳年九月十八日
進物臺伺之書立、附御差圖御加筆、
覺〈○中略〉
一乘物桐之棒、かろき乘物手籠、此類之乘物籠には、桐の棒結句多し、當地にも御座候、是ともに、來 正月よりは仕替申にて可レ有二御座一候哉、其通にて差置申候得ば、能乘物之棒には、桐の木用不レ申候ゆへ、二道に相聞〈江〉申候付、奉レ伺候、
御附札
輕き者乘候麤相なる乘物かごの棒は、丸木の桐、又は棒なりに割候桐も、みぢかき棒にて、有來通り用可レ申候、
一女乗物之棒有來棒を幅五寸におとし、其儘用ひ申候こと、可レ有二御座一候哉之事、
御附札
山高き有來棒を五寸におとし用ひ可レ申候、新規に仕候ば、上檜無用に可レ仕候事、〈○中略〉
一乘物之棒、上檜無用と御座候、下之節木抔にて用可レ申哉之事、
御附札
ふしの多有レ之下之檜、用可レ申候事、
巳九月廿八日
元祿二己巳年九月廿九日
乘物之棒、幷金銀付臺之覺、附御差圖加筆、
覺
一上下共に桐之棒用、不レ苦候哉之事、
御附札
巳九月廿九日、御老中御列座にて、桐之棒不レ苦由被二仰渡一候、
覺〈○中略〉 一新規塗物之事、國大名之調度たり共、輕き梨子地蒔繪に不レ可レ過、妻女之乘物、挾箱、長持等之類は、黑塗蒔繪之紋ゟ上之結構不レ可レ致、其餘之輩は、黑塗輕き蒔繪、或はいつ懸等を用ひ、乘物は黑塗のし金物、又は天鵞絨包、挾箱、長持之類は黑塗、或は溜塗を用べし、蒔繪之紋、無用之事、〈○中略〉
六月
酒井石見守御目付へ左之書付渡レ之
諸大名、〈○中略〉乘物日覆も、前々より羅紗相用候面々は格別、近來相用候分は、向後無用候、前々之通、呉座相用可レ被レ申候、〈○中略〉
三月
右之趣可二相觸一旨、大目付江申渡候間、爲二心得一相達候、
諸家使者留守居等供立之儀に付御書付
越前守殿御渡 大目付〈江〉
諸家使者留守居等召連候若黨共、兎角駕籠之者を廣場に置候も有レ之、駕籠切棒には候得共、仕立方乘物同樣腰黑に而、簾之緣〈江〉内廣之毛類、黑天鵞統抔用候も相見候、右は形裏を飾候而已にて、如何之儀に有レ之、心得違之事に候、向後は可レ成丈、不二目立一樣質素にいたし、毛類黑天鵞絨抔用ひ候儀も無用可レ致候、〈○中略〉
右之通、萬石以上、幷交代寄合等、其向々不レ洩樣、可レ被二相觸一候、
三月
万石以上御役人供立之儀に付御觸書
万石以上之御役人供立行裝、是迄は元席等之仕來を以、區々に候處、以來御役相勤候内は、諸事質素專一に相心得、前々乘物腰黑臺黑幷化粧紐塗簾等相用來候も、呉莝包下〈ケ〉にいたし、化粧紐塗簾、其外日覆も、毛類木綿等も相止、中計呉莝日覆相用可レ被レ申候、且陸尺手廻り、目立候印附看板類、無用にいたし、陸尺人數可レ成丈減少いたし、陸尺幷手廻り迚も手人を相用、尤在所人に而不案内之分は、聊不レ苦候、〈○中略〉
右御書付、越前守殿被レ成二御渡一、万石以上〈江〉相觸候間、爲二心得一申達候、以上、
跡部能登守
池田修理
佐々木三藏
一万石以上家督、或は自身、或は心安旗本衆ヲ以而、年寄〈江〉御内意奉レ伺、御差圖次第、御用番〈江〉 達、城主之嫡子拾四歲之暮、心安旗本衆ヲ以、年寄御老中〈江〉御内意窺レ之、重而右之旗本衆ヲ以窺之通可レ乘之旨被二仰渡一相二達之一、爲二御禮一父子其に、御用番幷御年寄〈江〉參上、幷城主嫡子、病氣に而乘輿之時は、御年寄〈江〉窺レ之、任二御差圖一、御用番〈江〉窺レ之被二仰出一、御禮右同斷、御差圖衣第に、御目付衆〈江〉罷 越、血判誓紙(○○○○)相濟、以後乘盥ハ、但五ケ月限(○○○○)故、度々御目付衆〈江〉罷越、神文致ス、
陪臣乘物駕籠願之覺
行年五十歲以後願レ之、但家老は乘物、其外共駕籠免許也、
一右願之事、其主人書付を以て、月番之御老中〈江〉被レ申二達之一、御老中より御目付衆〈江〉被二仰渡一、月番之御目付衆之宅にて、願之者誓詞血判いたし、相濟也、
一御老中〈江〉願之證文
江戸詰家老之 姓氏假名
右私家老に而御座候、御當地差置、用事申付候、當年何十何歲に罷成候、何病氣に而、馬上之勤難二相叶一御座候に付、乘物被レ遊二御免一候樣奉レ願候、以上、
年號月日 堀周防守居判
宛所なし
附榊原式部少輔ゟは、月番御老中を注ざるよし也、
一右之趣、其向寄之御目付衆〈江〉樣子被二相尋一候上にて、如レ左認レ之、堀田筑前守御用番之由を以て被レ達レ之候處、件之趣御目付衆〈江〉被レ仰二達之一候間、向寄之御目付衆〈江〉願之者差越、誓詞いたさせ可レ然候由御差圖也、
一御目付衆〈江〉願之者指越時書札案
一筆致二啓上一候、私家來何某と申者、當年何十何歲に罷成候、御當地差置用事申付候、持病眩暈、其上不步行御座候而、馬上難レ叶御座候間、其身誓詞被レ仰二付之一、乘物御赦免被レ成可レ被レ下候、恐惶謹言、 年號月日
宛所御目付衆不レ殘記レ之、但月番之衆を先に注之由、尤折紙也、
一願人誓詞案
起請文
私儀何十何歲に罷成候、何持病御座候間、馬上に而は奉公難レ勤御座候間、依レ之周防守方より、乘物御赦免之御斷申上候通御座候、右之趣於二僞申上一者、
式目之神文、尤牛王に血判、但宛所御目付衆、不レ殘樣書也、
右は御目付衆一人之前に而血判シ、それより御禮として、御目付衆不レ殘廻ル、
一筆致二啓達一候、然ば麻唯月儀、持病之痔痛、馬上に而難レ勤、其身誓文狀被二仰付一、乘物御免可レ被レ下候、爲レ其如レ此御座候、恐惶謹言、
子三月廿二日 松平淡路守
寶永七庚寅年六月四日
唯今范壹万石以上之陪臣、乘物願候節、主人ゟ狀を取、且又其身ゟ誓文狀を取り被レ申候得共、向後左之通、主人ゟ之狀計取レ之可レ被レ申候、其身より之誓文狀に不レ及候、
案文
私家來何と申者、知行何万石取らせ置候、依レ之乘物御赦免可レ被レ下候、爲レ其如レ此に御座候、以上、 年號月日 誰 書判
御目付中不レ殘殿
寶永七庚寅年六月四日
總御旗本中五十歲以上斷狀
一筆致二啓上一候、然ば拙者儀、來何之年五十歲に罷成候、日本之神僞に而無二御座一候、依レ之乘物御斷申上候、恐惶謹言、
年號月日 名字名判御目付中不レ殘殿書
表書之通紛無二御座一候、我等〈支配に候間歟、組に候間歟、〉裏判仕候、
誰判
諸役人幷御番衆當病に而乘物斷起請文前書
拙者儀、何頃より何を相煩、〈御役、御番、〉可二相勤一體に無二御座一候、依レ之醫幷親類抔所〈江〉も罷越候は、氣色養生にも可二罷成一樣に、療治賴候醫師誰被レ申候間、五ケ月之積、何之月ゟ何之月迄、乘物御斷申上候、尤其内病氣致二快氣一候はゞ、乘輿仕間敷候、勿論御免之期月過申候節は、此方ゟ可二申上一候、
右之趣於二相背一は
式目之罰文牛王
年號月日 誰血判
〈宛所〉御目付不レ殘〈○中略〉
家中は五十歲以上之〈乘物、駕籠、〉斷、主人ゟ狀を取、其身誓詞、
主人ゟ狀之案文 一筆致二啓上一候、私〈家老、家來、〉何〈與〉申者、當何之年五十歲に罷成候、當御地に差置、用所申付候、〈何煩、何痛、〉馬上に而可二相勤一體に無二御座一候間、其身に誓詞被二仰付一、〈乘物、駕籠、〉御赦免被レ成可レ被レ下候、恐惶謹言、
年號月日 誰判
御目付中不レ殘
起請文前書
私儀、當何年五十歲に罷成候、煩何痛馬上計に而奉公難二相勤一體に御座候、依レ之主人誰ゟ〈乘物、駕籠、〉御赦免之御斷申上候通に御座候、
右之趣於二僞申上一は
式目之罰文牛王
年號月日 誰血判
〈宛所〉御目付中不レ殘
家中五十歲以下之者、當病乍レ勤之駕籠斷、主人より狀を取、其身誓詞
一筆致二啓上一候、私家來何〈與〉申者、何煩何痛馬上に而可二相勤一體に無二御座一候間、其身に月切之誓詞被二仰付一、駕籠御赦免被レ成可レ被レ下候、恐惶謹言、
年號月日 誰判
御目付中不麺
起請文前書
私儀、何煩何痛に付、奉公難レ勤體に御座候、依レ之主人誰ゟ駕籠御赦免御断申上候通に御座候、五ケ月之積り、何月迄乘輿仕、其内得〈與〉快氣候はゞ申上、乘輿仕間敷候、尤御赦免之期月過候はゞ、御斷可二申上一候、 右之趣於二相背一は
式目之罰文牛王
年號月日 誰血判
〈宛所〉御目付中不レ殘
寬政十午年十二月廿四日、儒者古賀彌助來ル、未年五十歲罷成候ニ付、乘物斷狀差出可レ申旨ニ而、其筋〈江〉間合候所、前ニ出候儀と、御目付衆被二相尋一候處、芝野彦助差出候ニ付、問合候處、乘物斷案文帳内ニ無レ之、武家諸法度御條目之内ニも、儒者は制外と有レ之候得ば、差出ニ不レ及旨、矢部彦五郎申聞ル、
足利家の末、天正元祿の頃など、乘輿御免の大名五七人も有、其餘は乘馬なりとぞ、當時凡万石以上國持嫡子、侍從以上之嫡子、其外年五十以上之外、猥に是を許されず、御旗本之面々、歲四十九歲之暮に乘輿願差出、翌年五十歲より、御城内下乘橋迄乘輿被レ致候事、
一陪從之輩乘物之次第 天明五巳年四月廿七日、陪臣者、五十歲以上に而、乘物斷相濟候而も、致二乘輿一候義難二相成一候處、近來下乘所迄、致二乘輿一候類有レ之趣相聞候、御三家家老、其外庶流たり共、大 手下馬所内者、不二相成一候旨、向後心得違無レ之樣、主人より可レ被二申付置一候、
陪臣乘物御免駕籠御免(○○○○○○○○)之譯之事 一家老は乘物御免に相成 一家老五十以下は駕籠御免相成 一万石以上之家老は、縱五十以下に而も乗物御免に相成、 一家老之外者、五十以上、駕籠御免に相成、五十以下に而は、月切駕籠御免に相成候、右何れも其主人より相願候得者、御目付宅にて判元見候事、 一乘物に而も駕籠にても、御目付宅に而、一度判元見候得者、其身一代相濟候事、但月切駕籠者(○○○○○)、五ケ月目引替(○○○○○○)之事、
一問曰、乘輿の儀は、以前も今時の如く、御吟味强く有レ之たる事に候や、答曰、只今とてもと申内に、我等抔若き頃の儀は、乘輿の御制禁、別而稠敷有レ之たる樣に覺へ申候、子細を申に、以前の儀は、御直參衆の義は格別、大名方の家來共、五十有餘に罷成、乘輿の御願をいたし候節、大家小家に寄らず、其家に於て家老職を申付置候と有レ之儀を、主人方より御斷被二申上一候得ば、乘物を御免被レ遊、其外には、たとへ高知行を取、重き役儀を勤候者たり共、竹輿ならでは御免無レ之に付、何れも竹輿を澀塗に仕りて乘り申也、町人職人等の儀も、五十以上に罷成、又は法體など仕る者、御願を申上候へば、右の竹輿を御免被レ遊るゝ也、今時の御免駕籠抔申物は無レ之也、其節も四坐の猿樂共は、御願申上、老若を不レ限、竹輿を御免被レ遊けれ共、一同に黑く塗りて乘申義は、外々の竹輿に紛れ不レ申樣にとの儀に有レ之と也、右竹輿の義に付、御代々公儀の御用を相勤る者に、橋本甚三郎とやらん申たる町人、法體仕り、橋本深入と改名仕るころ、御禮日の事に候處に、澀張の竹輿に乘、下乘橋の邊迄乘來候に付、御徒目付、是を見咎、其方は何者なれば、竹輿にて是へは乘入たるぞと尋に付、私儀は御用を承りし橋本深入と申ものゝよし申候得ば、御徒目付被レ聞、たとへ御用達にもあれ、下乘迄竹輿に乘、御大法を背き候上は通申こと成らず、吟味を不レ遂して は不レ叶との儀に付、深入大に迷惑いたし、御堀端につくばい罷在候所に、朽木民部少輔殿登城有、深入を御見かけ、御徒目付衆へ、あの者の儀は、何故爰元に居候哉と尋られければ、總て町人抔の樣なる者の儀は、いづれも御門外にて下乘筈の義也、此邊迄竹輿に乘罷越候に付、指扣へ罷在候樣にと申付候由被レ申ければ、御聞ありて、あの者は、近き頃御願申上、法體の身と成、竹輿に乗候ては、何國迄も乘候事と心得、爰元迄も乘付しと相見候、近比不調法なる事也、乍レ去我等狂歌を一首よみ候間、此歌に免じ、今日の儀は宥免致され間敷やと御申に付、御徒目付衆も、民部殿御申の事故、何がさてと被レ申ければ、民部殿とりあへず、
橋本で下るべきものが乘物で深入をしてとがめられけう
一乘物御赦免之衆、家康、利家、景勝、輝元、隆景、並古公家、長老出世之衆、此外雖二大名一、若年之衆者、可レ爲二騎馬一、年齡五十以後之衆者、路次及二一里一者、駕籠之儀被レ成二御免一候、於二當病一者、是又駕籠御免之事、右條々於二違犯之輩一者、可レ被レ處二嚴科一者也、
文祿四年八月三日 隆景 輝元 利家 秀家 家康
覺
一小普請役相勤、五十歲ゟ内に而乘物斷、向後不レ被レ成二御免一事、
一當病に而御奉公不二相勤一、養生之内乘物斷、向後以二誓詞一可レ爲二御免一事、
一乍レ勤乗物斷は、以二月切之誓詞一可レ爲二御免一事、
一雖レ爲二御直參一、輕御奉公人、可レ爲二乘物無用一、無レ據子細有レ之ば、支配方受二差圖一、或乘物、或駕籠、以二誓詞可レ爲二御免一事、 一町人乘物之事、只今迄支配方斷に而雖二御免候一、向後は先總樣可レ爲二駕籠一、乍レ去無レ據子細於レ有レ之は、老中、幷松平因幡守、石川美作守〈江〉申達、可レ受二差圖一事、
一猿樂は、縱五拾歲爲二以下一といふ共可レ爲二駕籠一事
一御三家方、甲府殿〈○宰相綱豐〉家司、乘物斷は、老中へ申達、其上以二誓詞一可レ爲二御免一事
一諸家中五拾歲以上之者、乘物斷は、主人より狀を取、其身に誓詞爲レ致、其上に而可レ被レ免候事、
一諸家中五拾歲ゟ内之者、病氣に付而、乘物斷申上間敷候、倂乍レ勤之斷は、老中迄申達可レ受二差圖一、於二相調は、主人ゟ狀ヲ取、其身ニ誓詞爲レ致可レ被レ免候事、
右之外、乘物之儀は不レ及レ申、駕籠たりといふ共、御目付衆〈江〉申達、無レ據子細有レ之而、吟味之上、可レ有二差圖一事、
五月
延寶九酉年七月
覺
一町人乘物之儀、御免に而只今迄乘來候とも、向後は無用に致し、先總樣駕籠に乘べし、乍レ去無レ據子細在レ之ば、支配方へ可二相達一事、
一自今以後、五拾以上之者、駕籠願候はゞ、前々之通、町年寄共方へ可レ申候、尤五十より内之者は、駕籠たりといふ共、一切乘申間敷之事、
一向後御免被レ成候駕籠之仕樣、此度相極候間、町年寄共方へ參、樣子承、拵乘可レ申候、勿論御定ゟ外之駕籠拵乘候儀、堅可レ爲二無用一事、
七月
元祿四辛未年十月十九日
大名之家老乘物、今迄は五万石以上被レ成二御免一候得共、向後は五万石以上に而も、城主に而無レ之面面家老は、駕籠之筈に成候間、内藤丹波守殿被二仰渡一候、
〈本 番〉 伊勢守
元祿四未年十月十九日 〈御用番〉 十左衞門
〈御供番〉 五郎右衞門
元祿七甲戌年正月十四日
御直參御奉公不レ致候衆、幷大名之次男乘物駕籠之分、今日美作守殿〈江〉伺候得ば、其人々により達可レ申候間、度々伺可レ申旨被二仰渡一候、以上、
戌正月十四日
寶永七庚寅年六月四日
一壹万石取之總領たりといふとも、病氣に而乘物斷、以二月切之誓詞一御免之事、
一壹万石以上城主之面々之家老、五十歲以上乗物斷、主人より狀を取、其身不レ致二誓詞一御免之事、
一家中五十歲以上たりといふとも、家老之外は、駕籠主人より狀を取、其身爲レ致二誓詞一御免之事、
一家中家老たりといふとも、五十歲以下は、主人ゟ狀を取、其身月切之誓詞を以、駕籠御免之事、
一家中に而壹万石以上は、主人ゟ狀を取、其身誓文狀を取、乘物可レ爲二御免一事、
一與力幷町人、駕籠御免之儀、誓詞は支配方に而申付、御目付中〈江〉請取可レ申事、
附支配方ゟ、差添狀越候樣に可レ仕事、
諸大名家來乘物人數之定
一壹萬石より壹萬九千石迄 壹人
一貳萬石より四萬九千石迄 貳人
一五萬石より九萬九千石迄 三人
一十萬石より十五萬九千石迄 四人
一十六萬石より十九萬九千石迄 五人
一貳十萬石より二十九萬九千石迄 六人
一三十萬石より三十九萬九千石迄 七人
一四十萬石より四十九萬九千石迄 八人
一五十萬石より五十九萬九千石迄 九人
一六十萬石以上 拾人
五萬石以上ニ〈而〉も、城主ニ〈而〉無レ之面々、家老乘物御免不二罷成一候、五萬石以下ニ〈而〉モ、城主家老ハ乘物御免被レ成候、
自二左衞門陣標一、後相去十許丈、立二大臣下馬標一、去レ之廿許丈、立二諸司下馬標ニ一、〈左右各一丈、高三許尺、下同、〉自左衞門陣標一、右去四許丈、立二右兵衞留標一、右去四許丈、立一右衞門留標一、其後廿許丈、立二諸司下馬標(○○○)一、
先レ是立二下馬標一
諸大名下乘(○○○○○)之儀ニ付達
諸大名下乘之場所之儀、前々と違、猥に成候ニ付、向後者國持大名たりといふ共、大手之方は、張番所東之角を限り、内櫻田之方者、張番所向御堀端東之角を限り、被レ致二下乘一可レ然候、以上、
戌五月
右〈萬石以上〉〈江〉〈大目付以下〉〈江〉〈御目付大久保一郎右衞門達之〉
松平左近將監殿御渡
万石以上嫡子(○○○○○○)之内、月切乘物斷濟候面々も、下馬迄乘輿可レ有レ之候、下乘迄乘輿之儀、向後可レ爲二無用一候、 右之趣、可レ被レ得二其意一候、
元文二年十二月十四日
御右筆組頭の類(○○○○○○○)、五十以下は乘物御免無レ之故、駕籠に目を付て、四枚の駕籠人足の看板をそろへぬなり、町駕籠に乘る體なり、駕籠なれば下乘まで乘下はならず、極樂橋〈○下乘橋〉の外にて下るなり、
陪臣(○○)乘物之儀ニ付御書付
大目付
〈江〉
御目付
一陪臣は五拾歲以上ニ〈而〉、乘物斷相濟候〈而〉も、下乘迄致二乘輿一候儀、難二相成一事ニ候之處、近來下乘迄致二乘輿一候類も有レ之趣ニ相聞候、御三家家老之外は、御三家庶流たりとも、大手下乘所内者不二相成一候間、向後心得違無レ之樣、主人々々より可レ被二申付置一候、
右之趣、萬石以上之面々、〈幷〉其面々〈江〉可レ被レ達候、
四月
下馬より下乘之橋迄召列人數之事
出仕之面々、御城中〈江〉召列人數被二仰出一之、所レ謂、
下馬より下乘之橋迄召列人數之覺
一侍 六人、或五人、或四人、
一六尺 四人 一挾箱持 貳人
一草履取 壹人
一雨天之節は笠持 壹人
右之通可レ相二通之一、縱國持大名たりといふ共、此書付之外、人數多通間敷者也、
月日
御城内召列候供廻之事
御城内外、召列候供廻り等之儀、先年被二仰出一候處、近年猥ニ相成候間、元祿十二卯年被二仰出一候通、彌相守可二申付一候、以上、
四月〈○中略〉
〈下ケ礼〉布衣以上御役人中、大手櫻田より下乘迄之内、乘物ニ附候ため、侍三人召連申度樣ニ相尋申候面々も有レ之候、六尺は麤末成者ニ候間、此段は右之通ニ〈而〉も可レ然哉と奉レ存候、
下乘橋迄も、侍貳人召連候樣にと、口上ニ〈而〉被二仰渡一候、
一今度町中借駕籠、御免之御書付出候に付、借駕籠之分も、三傳馬町名主共、極印致候樣に被二仰付一候、依レ之爲二極印賃一、借駕籠壹挺ゟ、壹ケ月に銀三匁宛、三傳馬町中〈江〉出し候筈に候間、駕籠持主共、此旨可二相心得一候、
右兩品之儀、申觸候樣にと、今日御内寄合に而被二仰渡一候、委細三傳馬町名主共方ゟ、可二申談一候間、少も違背有レ之間敷候、以上、
八月
一乘輿は、東山殿下に初る、〈○中略〉扨乘物と駕籠との差別は(○○○○○○○○○○)、駕籠は(○○○)、乘物の腰に(○○○○○)、いさゝか籠目あるをいふ(○○○○○○○○○○○)なり、
駕籠幷長柄傘之儀ニ付達
月切駕籠相用候面々、近來乘物にまぎれ、不レ宜旨御沙汰有レ之候、諸事元文二巳年四月出候御書付之趣相心得、以來別而乘物にまぎれ不(○○○○○○○)レ申樣(○○)、籠目腰通り不(○○○○○○)レ殘附(○○)、聢と相分〈リ〉候樣致、尤駕籠之者看板、色替り候儀も、似寄不レ申色合、聢と相分候樣、御心得可レ有レ之候、〈○中略〉
松平庄九郎
正月
松平縫殿頭
一長三尺三寸五分
一横下貳尺四寸、上壹尺八寸五分、
一軒之出端壹寸五分〈但四方共〉 一臺木幅貳寸、角金物、
一腰之緣六分、四方へ折廻シ、〈但四方へ、つり木壹本ヅヽ入レ、〉
一腰之籠外ゟ見へ候高三寸五分〈但澀張、外皮竹亀甲組、〉
一折返、後、七寸、前壹寸五分、前後共に御座包、
一掛筵前一盃、後は小明キ五寸みせ、〈据へり迄に〉
一同窻長壹尺五寸、高九寸、軒下ゟ壹寸五分下ゲて、
一窻明ケ、但白すだれ布緣、
一前に窻、大體簾前一盃に仕、布緣を取、
一屋根、澀張角金物、
一總體近江表包
一押緣竹四通、四方共、
一駕籠之内さわら木地
一肱懸、何に而も白木、
一棒長サ壹丈丸太
以上
右之通、駕籠之仕樣被二仰付一候間、駕籠に乘候者は不レ及レ申、駕籠拵候乘物屋(○○○)共爲二申聞一、何方ゟ誂候共、仕樣違候駕籠、一切拵申間敷候旨、被二仰付一候間、此旨相守可レ申候、以上、
七月
加、州一統、無二日覆一桐腰引戸、 長州、津輕越中、松平讃岐、網代打上、
松平肥後、松平下總、腰網代引戸、
松平越中、黑塗棒引月、
本多中務、構子引戸、
戸田越前、桐棒引戸、
細川越中、引戸障子ギヤマン、
戸田采女、織田越前、突上ゲ日覆、
酒井左衞門、靑竹打乘物、
大垣侯〈戸田氏〉ノ駕籠ハ、屋根ノ上ニ、日覆ノ如ク羅紗張リノ屋根ヲ設ク、駕籠ノ棒ハ、ソノ半ヲ上ニ出タルト聞ク、如何カナル用心カ、羽州高畠侯〈織田〉モコノ如シト、是等ハ信長比ノ古制カ、〈○中略〉
仙臺侯ノ駕籠ノ者モ、雨天ニハ笠ナク鉢卷ナリ、是ハ古ノ遺法カ、
今ノ桑名侯〈松平越中守〉ノ駕籠ノ棒黑漆ナルハ、世ノ所レ知ナリ、駕籠ノ攝、イヨスヲ編タリ、ソノ家式ナリト、若シヤコレモ昔官用ニアリシヤ、〈○中略〉
明石侯ノ駕籠ノ押緣ノ竹ハ、朱塗ナリ、
出羽ノ庄、内侯〈酒井〉ノ駕籠ノ押緣ハ、靑竹ヲ用ユ、コレヲ近來奢侈ヨリ起リタリト人稱ス、登營ノ度、毎ニ、新竹ヲ打カユルト云、〈○中略〉
駕ノ棒ノ木、宇都宮侯ト、駿府御城代ノ戸田氏〈土佐守七千石〉計ハ、桐ノ木ヲ用ユ、予〈○松浦淸〉ガ家モ以前ヨリ然リ、〈○中略〉 津山侯、〈松平越後守〉熊本侯〈細川氏〉ト、出雲ノ廣瀨侯〈松平佐渡守三萬石〉トハ、駕簾ノ化粧紐、何レモ紫革ナリ、〈○中略〉
同侯〈○熊本〉又ソノ支家ノ采女正、〈三萬石〉宇土侯、ミナ乘輿ノ屋根、黃漆ヲ以テヌル、〈○中略〉
岡崎侯〈本多氏〉ノ駕籠ノ屋ネハ白塗ナリ、戸ノ物見ハ、婦人ノ輿ノ如ク、ムソウニセシナリ、〈○中略〉
無城ノ嫡子ハ、假令七萬石ニテモ乘輿セザルコトナリ、然ルニ松前氏ハ、城主ニ非レドモ嫡子乘輿ス、〈○中略〉
岸和田侯〈岡部氏〉ノ駕ノスグレハ、朱ニテ塗ル、〈○中略〉
岡山侯ノ支侯ハ、本多ノ邸ニイタルトキ、其門ニ駕ヲ横ヅケニシテ出輿スルト云、〈○中略〉
岩城平侯〈安藤對馬守〉ハ、駕ノヤネヲウルミ色ニ塗ル、挾箱ノ蓋モ同ジ、又駕ノ化粧紐ハ桃色ナリ、〈○中略〉表高家畠山左衛門〈五千石〉ノ駕ハ、簾ノ竹、殊ニ太ク、アミ糸モ殊ニ太シ、〈○中略〉
熊本侯ノ乘輿ハ、二重包ト云フ、何ナル製造ニヤ、林子曰、實家能登守〈岩村侯〉ノ駕籠ハ、前ヲ取ハヅシニシテ、蹴放スヤウニ作リタリ、牽馬ニ冬夏トモ尻駄覆ヲ用ヒズト、駕籠ノ前ヲ蹴放ニスルコトハ、予ガ家ノ駕籠モ同ジ、蓋シ天祥公ヨリヤ始マル、又予ガ駕籠ニハ、後ニハネブタアリ、コレ刀ヲ拔クトキニ鞘拂ノ爲メトゾ、又駕籠ニ水ヌキノ孔アリ、コレモ要法アリ、是等他ハイカニヤ、
越て行駕のすだれ(○○○○○)の靑によしならべるしがの花の木のもと
一乘輿は、東山殿下に初る、〈○中略〉扨乗輿に、當時腰板(○○)、打揚(○○)、引戸(○○)、腰網代(○○○)、薦包(○○)等の製有、各家格によるなり、腰網代に二重腰、又腰ばかりの品有、板にも腰黑又二重黑、又ぬらざるも有、是は各其好に任すべし、
網代輿(○○○) 淸華以下諸家中尋常ニ乘用アリ、或ハ黃或ハ溜色ニスルナリ、武家ニテハ柳營ノ乘御ソ外ニ、三家〈○尾張、紀伊、水戸、〉ノ如キ公卿タリト云ヘドモ乘用ナシ、但シ法中ニテ堂上ノ猶子タル僧中ハ、乘用スルコトヲ憚ラザルナリ、〈車ニ網代アリ、依テ其制ニ擬スルナリ、乘用ノコトハ、網代ノ定ニハ拘ラズ、其趣ヲ以テ新制ナルベシ、〉
打揚網代腰(○○○○○) 打揚ト云ハ、左右ノ引戸ナク、簾ヲ揚テ上下セラルヽヲ云、是卽上ノ條ニ云、古實西譚ノ塗輿ハ、四方輿ノ代リナリト、古云ル四方輿ヲ移シタルモノナリ、卽轅ノ輿ト同ジク、上下シ 玉フニ、左右ニ引戸アリ、前後ヨリ上リ下リ有ナリ、卽轅ノ輿ハ車ノ代リナル故、其上リ下リ車ノゴトシ、四方輿ト云ハ、御鳳輦ノゴトク四方ニ簾アリ、轅ノ輿ハ人ヲ移サルヽユへ、前後ニ乘下スベキ簾アリテ、左右ニモ物見ノ簾アリ、然ルヲ乘物ニ移シ造ルニ依テ、乘物ハ轅ノ棟中ニ柄アルヲ以テ、是ヲ舁ノ夫前後ニアリ、仍テ乘下シ玉フ時ハ、便宜ニ任セテ左右ヨリ乘下アルユヘ、其制轅輿ノ前後ト左右トニテ入違ヘタルモノナリ、以上ノ子細ヲ以テ、打揚ト云ハ塗輿ニ准ジ、且網代輿ノ制ヲ摸シテ、腰ヲ籧篨ニ組タルナリ、故ニ白木輿網代輿ニ次テ、貴重ノ物トナルト見エタり、以上愚案ナリ、〈嘉樹〉公家ニ乘用ナシ、當時武家ニテ、柳營ノ御家門國主方、幷ニ由緖アル家々計、乘用ヲ聽サル、〈御家門ノ中ニモ、聽サルトユルサヾルトアリ、國主トィヘドモ又同レ之、由緖アルトハ津輕家ノコ下ナリ、安永五年丙申ノ三月中、定ノ沙汰アル家々、凡ソ二十一人也、父子一族ニテ定メラル名簿アレバ、以來又其人々ハ增減アルベシ、故ニ今其名簿ヲ略シテ不レ注レ之、〉是武家乘用ノ至極ナリ、假令四方輿塗輿ニ等キガ故ナリ、
打揚簾(○○○)〈腰網代無レ之、腰黑塗ナリ、〉是上ニ云四方輿ノ趣也、但腰ニ、網代ヲ用ヒザルモノハ、大樹ノ乘御ト公家ノ乘用アル網代輿ニ准ズルコトヲ制止セシムル故、打揚網代ノ次ナリ、〈按ルニ、網代ハ打揚簾ヨリ其義重カルベシ、如何トナレバ、網代ハ網代車ノ意アリ、打揚ハ四方輿ヲ移シタルナレバ、普通ノ塗輿トイヘドモ、轅輿ノ義ナルヲモツテノユヘニ、車ニ准ジタル網代ヨリ次タルベキ也、然ルヲ安永五申年ノ制等ニハ、腰網代ヨリ重キ家ニ乘用之定アルユヘ、其制ニ從テ腰絹代ヨリ上ミニコレヲ注ズ、コノ甲乙ノコトハ、定ラル官吏ニ、子細モアルベキコトナルベシト思フナリ、〉安永五年丙申二月中、定テ沙汰アル家々凡九家ナリ、〈是又上ノ條、打上腰アジロノ如ク、御家門ノ中七家ト、喜連川家、山名靱負トモニ、當時九家ナリト見ヘタリ、〉
腰網代(○○○)〈打上簾、シナ無レ之モノナリ、〉 是ハ網代輿ノ略ニテ、腰ノ方計ヲ網代ニ製シタルナリ、網代ハ柳營ノ乘御ナルヲ以テ、武家ニテハ固ク制止アル事ユへ、腰計ニ綱代ヲ用ル也、去レドモ四方輿ニ准ズル、打揚簾ヲ制止アルモノハ、此腰網代ヲ乘用スベキ由緖アリテ、却而打揚ゲ也、塗輿ニ乘用スルノ家格ナキモノニヤ、上ノ條ニ註スル如ク、網代腰ハ打上ヨリ重カルベキモノカ、畢竟總網代ハ、柳營ヲ憚ルノ義ナレバ、是ヲ腰ニ計用ルトイヘドモ、網代車ノ移レルコトヲ以テ考レバ、塗腰ニ摸 シタル打上簾ヨリハ、尤重カルベキ也、安永五年申二月、定メ沙汰アル家ハ、伊達遠江守殿バカリナリ、
腰黑塗(○○○) 是ヲ普通ニ用ルコトヲ制止アルハ、腰網代ニ見紛フノ故ナルベシ、多年高家ノ人々乘物ハ、腰ヲ黑ク塗リタルヲ用ヒラレタルニ、安永五年申ヨリ、其品ヲ制止アル由ナリ、是如何ナル故ト云コトヲ考ヘズ、全ク似テ非ナルモノヲ惡ムノ謂ナルベシ、
呉筵包(○○○) 是ヲバ只乘物ト言習セリ(○○○○○○○○○○○)、大小名以下普通ノ家々、乘輿ヲ聽ル人ハ是ヲ用ユ、但シ乘輿ヲ聽サズ、乘馬スベキ人ノ老衰ニ及、又所勞ニテ乘馬ヲ厭フ人ハ、月日ヲ限リテ願ヒ請ヒテ乘輿スルナリ、去レドモ其物ハ、俗ニ駕籠ト名付タルモノニテ、古ニ云フ箯輿(アヲダ)ナリ、此物ノコトハ猶下ニ辨ズ、乘物トハ混ズベカラズ、然シテ此乘物ヲ呉筵包ニスルノ義、且乘物トノミ稱スルノコトハ、考ルコトヲ得ズ、〈○中略〉
幷ニ按ニ、今ノ世、古ノ箯輿ハ駕籠ト稱シテ、乘物ニ等ク用ルユへ、箯輿ノ名ヲ用ズシテ、別ニ丸棒或ハ角棒ヲ用テ、其棒ヲ透スニ、乘物ノ如クニ、カナモノヲ打テ透シタルガ、〈又丸竹ヲシキ曲テ、夫ヘ棒ヲ透スモアリ、〉其乘物又右ノ駕籠ト少ク異ナルモノヲ、阿牟太ト云ヒ、或ハ御免駕籠(○○○○)、丸棒駕籠(○○○○)、寶泉寺カゴ(○○○○○)ナドトモ云ヘリ、此頃諺ニハ權門駕籠(○○○○)ナドトモ云ヘリ、〈丸俸トハ、見ヘタル形象ニテ云匕、御免駕籠トハ、賤者ノ乘ルコトヲ免サルヽモノニ用ルユヘニ名付タリ、賓泉寺トハ、云傳近世寶泉寺ト云フ寺ノ僧ノ吁ミテ造リシ駕籠ト云ヘリ、詳ニシラズ、今爰ニ寶泉寺ト書タルハ、予(大塚嘉樹)ガ作リ字ナリ、又檀門カゴト云フハ、謂家中ノ使者ヲ勤ルモノ、槽門家ヘ立入候族、多クハ馬ニ乗ラズ、此アンダニノルユヘ、俗ニ權門カゴトイエルナリ、〉
此餘辻駕籠(○○○)、〈戸ナシカゴ(○○○○○)トイヘドモ、今ハコレモ又戸アリ、〉网曾駕籠(○○○○)、宿カゴ(○○○)等ノ物アリ、カゾヘ註スルニ及ザル雜品ユへ筆セズ、
將軍家ハ溜塗總網代、棒黑塗、家齊公薨御ノ後、其駕及ビ挾筥ヲ芝增上寺大僧正ニ賜フ、〈故ニ芝大僧正ハ、駕〉 〈將軍ト同ジ、〉日光法親王モ溜塗總網代、棒黑塗ナドモ、前ニフクラミアリ、此形他ニ無レ之歟、未レ見レ之、
紳縉家ハ位階ヲ擇バズ、總網代ニ棒黑塗也、
官僧モ總網代ニ棒黑塗ナレドモ、溜塗ハ無レ之、朱漆ヲ專トシ、或ハ黃漆、江戸官僧ノ乘物ハ、聊カ小形也、唯家齊公薨後、其駕ヲ芝增上寺方丈ニ給フ、故ニ今世芝方丈ノミ、駕及ビ挾箱トモニ將軍家ト同ジ、
大名モ道中ニハ總網代溜塗、棒黑漆ヲモ用フル者アレドモ、江戸ニテハ是ヲ許サズ、凡テ江戸用ヨリ、道中用ハ上製ヲ用フル也、譬バ江戸ニテ〓卷ノ人モ、旅中腰黑ヲ用、江戸コシグロノ人、道中コシアジロヲ用フ、他准レ之、武家、江戸用ハ打上グヲ上トス、打上ゲ腰網代ヲ最土トス、
加州前田家、或ハ納言ニ任ズルコトアリ、城内下乘モ陸薩ニ越タリ、駕腰アジロ白塗網代也、次ニ常體ノ腰網代、アジロノ上ヲ黑塗ニス、次ニ腰黑腰ハ、板ノ表ヲ黑ヌリニス、蓋押ブチ下ヨリ一間モ二間ノ物モアリ、一重二重ト云、次ニ總〓卷ヲ下トス、蓋其制ニ甚ダ精粗アリ、
武家在府用、打上以下並棒素ナリ、唯松平越中守ノミ黑塗棒ヲ用フ、是先年日光御社參ノ時、故有テ免二許之一ス、又腰ヲ胡粉塗ニシテ腰白ナル物アリ、腰黑ノ次トスル歟、或ハ制外歟、未レ考、乘物ハ素黑トモニ檜棒也、
貞享二乙丑年二月廿二日〈○中略〉
長柄すま 長柄〈ゆふ○中略〉 網代乘物〈山崎〉 同〈るつ〉 同〈菊野〉 〓筵〈とよ〉 同〈かぢ○中略〉 黑緣金物〈いそめ○中略〉 おりべ乘物〈しま〉 同〈梅枝〉
一享保十四〈酉〉年十二月十一日、竹姫君樣、松平大隅守繼豐方〈江〉御入輿之行列、幷御道具獻上之覺、
〈御徒一人〉長柄〈御徒一人〉 〈御年寄〉藤江 〈同壹人〉長柄切〈同壹人〉 〈若年寄〉つ崎〈○中略〉 〈同壹人〉めんゑん乘物〈同壹人〉 〈御小姓〉ちさ
〈同一人〉さゑ〈同一人〉
黑緣金物 〈表使〉早川〈○中略〉 〈同壹人〉おりべ乘物〈同壹人〉 〈御末〉 しま
旅人も網代の駕(○○○○)にのればにや日ををしみ行しがの山こえ
御網代幸菱組栗色、御金物總煮黑目、無地、御翠簾四方緣、花色天鵞絨菊紋織、御内總木地、御棒木地檜木柾目、長サ壹丈六尺六寸、山高サ 尺五分、〈○圖略下同〉
近衞樣
御網代取卷組うす櫻色塗、外廻り總春慶塗、御金物總煮黑目、無地、御内總木地、御翠簾貳分割ため塗、黑天鵞絨緣、御棒檜木柾目、春慶塗、
但シ御紋付無シ
知恩院方上樣
御網代升組朱網代、御金物煮黑目、總唐草毛彫、御内總朱塗、壁板黑繻子張、御内三方御憲、上ゲ下ゲ御障子、淺ギ紋紗張、御翠簾、貳割朱塗疎入、
聖護院樣
御網代幸菱組黃網代、御金物總銀滅金、御内總春慶塗、御翠簾木地、黑天鵞絨四方緣、御棒春慶塗、檜木柾目、
知恩院宮樣
御網代幸菱組栗色、御金物總毛目唐草毛彫、御紋付、御棒黑蠟色、但シ柱間三枚打、
妙法院樣 御網代小菱組栗色、御金物總煮くすべ、御内總黑蠟色塗、御翠簾油竹、四方緣黑天鵞絨、
佛光寺樣
御網代小菱組黃網代、御金物總金滅金唐草毛彫、御内總木地、御翠簾通例、
勸修寺宮樣
御網代小菱組黃網代、御金物總煮黑目、御内總木地、御翠簾通例、但シ腰柄カクシ金物打、
泉涌寺樣
御網代小菱組黃網代、御金物總金滅金唐草毛彫、御内總四季草花繪張、御翠簾通例、
東六條樣
御網代取卷組黃網代、御金物總地彫牡丹唐草、金けし滅金、御内總緞子張、御障子紫紋紗張、御雨戸繪絹金箔置張、御翠簾通例、
但シ外に墨さし金物有レ之候
一條樣
御網代小菱組黃網代、御金物總緣金唐草毛彫、御内總萌黃繪絹霞若松金泥置摸樣、御翠簾通例、
鷹司樣
御網代取卷組栗色、御金物總鐵、御内總木地、御翠簾通例、
九條樣
御網代小菱組黃網代、御金物總鐵金物、御内總木地、御翠簾通例、紫蜻蛉房付、
小野宮樣
御網代小菱組栗色、御金物總鐵、御内總木地、御翠簾通例、金滅金御紋付、
一十日〈○正月〉は、上野總御靈屋へ被レ爲レ成候、〈○中略〉
一御召駕籠(○○○○) 是は御下臥座一枚敷、天鵞絨御蒲團敷、又御上臥座一枚敷有レ之、
一御召替御駕籠(○○○○○○) 是は御下臥座、天鵞絨御蒲團、御上臥座敷レ之、羅紗雨覆を掛候て出レ之なり、
一兎御雨覆御窻掛三枚入出レ之 是は御召駕籠の雨覆なり
潛行俗ニオシノビト云、大名モ潛行ノ時用レ之、室モ潛ニハ用レ之、男用ト異ナルナシ、隱居ナドモ用レ之、全體〓打、其大サ乘物ト均シク、又皆精製也、棒兩端細カラズ黑塗也、カゴモ腰黑也、日覆黑ラシヤ、
留守居駕(○○○○) 留守居ハ武家ノ役名、重臣ニ非レドモ外事ヲ務ル、故ニ專是ニ乘ル、家老以下重臣ハ、自國及旅中ニハ乘物ヲ用フレドモ、在府ノ日ハ憚レ之コト多ケレバ又用レ之、駕籠ニハ桐棒ヲ用フ、以下皆然リ、蓋留守居カゴ、棒素ヲ專トスレドモ、又溜塗ニスルモアリ、黑ハナシ、轎夫四人ヲ用ヒ ズ、三夫又ハ二夫也、蓋手代リハ製外也、日覆ニハ紺木綿等ヲ專トス、
ケンモンカゴ(○○○○○○) 獻物歟、又權門歟、大名ノ家來自駕ナキ者、主用ニテ他家ニ往クニ、步行ニテハカナハザル時是ニ乘ル、主人ヨリノ貸駕籠也、權門ニ非ズ、恐ラクハ幕府獻上物ノ時乘レ之ヲ以テ、獻物ナルベシ、留守居駕ヨリハ粗製ニテ小形也、日覆ヲ用フル時ハ紺麻布ノヘリトリゴザ也、以下皆轎夫二人也、蓋手代ト號ケ、餘夫ヲ供スルハ制外也、
追書、茲ニ醫師乘物ト書タレドモ、ノリ物ト云ズ、形ノ乘物ナレドモ、醫者駕籠ト云也、唯官醫ニハノリモノ、町醫ニカゴト云ヲ、總テノリモノト云ハ非歟、是歟、〈○中略〉
女駕(○○)〈○中略〉
女乘物ニモ數種アリ、總黑漆ニ金蒔繪ヲ最上トス、蒔繪ハ定紋散シ、或ハ定文ニ唐草、又ハ唐草ノミヲモ描レ之歟、予見ル物多クハ定紋ノチラシ也、棒同制也、押緣黑ニ滅金ノ金具ヲ打ツ、右ノ製ナル物ニハ日覆猩々緋也、兩端ヲ男用ノ如ク、乘物屋根ニ直ニ置キタル物モアレドモ、多クハ右圖ノ如ク、〈○圖略〉兩端ト屋根ノ間ヲ透ス、窻簾ノ緣赤地錦ニ緋總也、
因ニ記ス、右ノ如キ乘物ノ時ハ、長刀帒、挾筥覆傘帒トモニ猩々緋、定紋ハ白羅紗ノ切付紋也、
高位ノ婦女ニハ、乘物ノ上ヨリ朱爪打傘、或ハ一個或ハ二個ヲサシカザス也、傘轆轤ノ所ニ錦ノ守帒ヲ釣タルヲモ見タリ、 次ニ天鵞絨卷也、紺唐草紋天鵞絨ヲ以テ、全體ヲ包ミ、棒及ビ押緣トモニ黑塗、滅金ノ金具、簾ヘリ赤地錦日覆アレドモ、兩端ヲ透サズ、屋根ニ直ニ置ク、次ニ網代、朱漆ヌリ押緣、其他トモニ前ニ同制、唯一等粗製也、次ニ全體靑漆押緣黑、銅具及鋲ヲ打ツ、故ニ鋲打乘物ト云ハ、俗ノ名付所歟、或ハ押ブチ鋲ノミ打テ、別ニ銅具ナキモアリ、次ニ〓打全體莞筵押緣黑、銅鋲ヲ打ツ、此二種共ニ窻簾同前、又棒モ黑漆ニテ白ナシ、蓋錦、及ビ塗製ニ精粗アルノミ、靑漆ヌリト、ゴザ打トモニ專ラ日覆ナシ、黑漆ニ蒔繪ハ高位及ビ大名ノ室用レ之、是亦精粗アリ、天鵞絨卷、小國ノ大名モ用レ之、大祿旗本ノ室專ラ用レ之、幕府上輩ノ女房、同宗室及大國大名ノ上輩女房モ用レ之、靑漆幕府同宗室ノ中輩女房、大名上中輩女房用レ之、〓打ハ下輩ノ用トス、万石以下旗本ノ室モ中祿ノ家ハ靑漆ヲモ用レ之歟、大名以下ノ室モ私行潛行ニハ權門駕也、其製男用ト異ナルコトナシ、
因云、天鵞絨卷ニ乘ル人ハ、長刀帒挾筥トモニ專ラ紺或ハ萌木羅紗、白切付文、傘帒ハ無レ之ガ多シ、蓋婚姻ノ時ナドハ、長刀帒、挾筥オヒ、トモニ緋ヲ用フル歟、貴人及下輩トモニ潛行ノ時ハ、挾筥覆紋純子ニ無記號也、對挾筥モアレドモ、潛行片筥多シ、長刀傘岱等ハ貴人モ不レ從レ之、
一右大將樣〈江〉〈家定公〉有君御方、〈○鷹司〉御緣組被二仰出一候ニ付、總出仕有レ之、〈○中略〉
姫君樣御入輿御道具出來之内〈○中略〉
〈黑塗若松唐草兩御絞ぢらし〉一御輿 一挺
内御摸樣
御日覆猩々緋張、兩御紋二つ充、白ぬめ黑蛇腹、總ふち黑糸、御金物濃めつき、兩御紋唐草毛彫、 紅唐糸四ツ打紐付、御雨覆猩々緋兩御紋付、白羅紗蛇腹、裏紅綸子、御紐紫皮付、
憲政ノ長男龍若丸トテ、十三歲ニテオハシケルヲ、情ナクモ平井ニ捨置、越後へ趣カレシ儘、乳母子ノ目賀田新助兄弟三人トモ、叔父九重采女正、同與左衞門抔ト云、江州所産ノ者共、介抱シテ居タリケルガ、〈○中略〉龍若丸ヲ籃輿ニ舁乘、小田原へ連行、其由ヲ申入タリケレバ、〈○下略〉
佐大夫宗信ハ、〈○中略〉淨衣著タル死人ノ、首モナキガ、アフダ(○○○)ニ舁レテ通ヲ見レバ、腰ニ笛ヲサセリ、穴心憂ヤ、宮〈○以仁王〉ノ御ムクロニコソ、早討レサセ給ニケリト思テ、走出テ抱付キ進ラセント迄覺 エケレ共、サスガ武士共恐シケレバ、其モ叶ハズ、
伊達南部二人ハ、貌ヲヤツシ夫ニナリ、〈○中略〉四郎入道、〈○左近大夫舍弟慧性〉ヲ〓(アヲタ)ニノセテ、血ノ付タル帷ヲ上ニ引覆ヒ、源氏ノ兵ノ手負テ本國へ歸ル眞似ヲシテ、武藏マデゾ落タリケル、
イマダ三番貝ノナラザルニ出陣スレバ、道無ガ勢、先ヘハユカズ、一所ニ集リ、餘リニ急ギシ故、落馬セラレ旣ニ息絶候トイフ、駿河守モアタリニ寄テ、如何候トイフニ返事モナシ、嫡子右衞門尉、二男善九郎、左右ニ在テ、〓ニノセテカヽセ歸レバ、大道寺モ進ム事能ハズ、
一〓之事、天井なく、棒をつきとをしに致、いかにもそそうに可レ仕候事、〈○中略〉
子〈○正保五年〉二月
右は二月廿八日御觸、町中連判、
猿樂あをだの覺
一高サ三尺壹寸七分 一長サ三尺三分
一横貳尺五分
一軒之出端壹尺六寸七分
一前之方内之高サ七寸壹分
一臺木之厚八步、臺木之高サ貳寸七步、
一けた行之長サ三尺壹寸五分
一棒丸太九尺貳寸、但丸棒、
一澀紙長サ代木の上端いつはい
但雨ふらざる時は、肩切にかほかくれ候ほどに仕、肩よりさげ可レ申候、
一後に、さん三通有、
一前後何も澀張
以上
宿駕籠(○○○) 宿音ニテシユクカゴト云、俗ニ驛ヲ宿ト云、故ニ驛路ノ駕ト云心也、自駕ヲ携ザル旅人ハ用レ之、俗ニ雲助ト云、驛家ノ雇夫ヲシテ舁レ之シム、故ニ雲カゴトモ云、中略也、
又御用人馬賃錢帳ヲ以テ、問屋場ヨリ夫ヲ役ス、旅宿ニハ特ニ麁製ヲ用フ、是ヲ問屋カゴ(○○○○)ト云、人夫ノ雇錢ノミニテ、カゴノ料ヲ取ラズ、若駕料二十四文バカリヲ與フレバ、聊カ精製ナルヲ用フ、但宿カゴ板底モアレドモ、自ラ問屋カゴニ勝レリ、
一享保十六〈亥〉年、伏見殿御息女比之宮樣、大納言樣〈○德川家重〉〈江〉御婚儀に付、同年四月、關東御下向之節、爲二御迎一上京之諸役人、幷諸供奉之面々、路次之御行裝、〈○中略〉
一御行列〈○中略〉
〈黑鍬組頭壹人〉御山駕〈奧小人壹人〉〈黑鍬八人〉 御駕臺〈黑鍬四人〉
覺
一山駕籠壹挺 四人掛リ
但引戸に無レ之あをり之分は貳人掛り、引戸と申迄に而、あをりも同樣之手輕き分は、見計ひ三人掛り、
辻駕籠の得意とする者は、遊所通ひなり、四里四方ある江戸の地に遊所なく、深川、本庄、根津、谷中、麻布、赤坂なんど、遊所諸所にありけれども、當時禁止となりて不自由なれば、南に品川宿、西に内藤新宿、板橋、北に吉原、千住と此五ケ所なり、何れも日本橋より二里半、三里に餘る道なれば、行計りにも隙取れば、纔の隙に駕籠にて欠行、歸りにも又其地より駕籠にて欠戻るゆゑ、辻かご大に流行なるべし、駕籠賃の相圏も、京攝の如く、直切小切するにも及ばず、四文錢何本とか、南鐐とか、埓早く、乘と直に欠出す事、誠に宙を走るが如し、人立多き四ツ辻にても、エイハアと懸聲して腰をひねり、肩には茶呑茶碗に、水一抔入乘せ行とも、こぼるゝ事もあらじと思ふ計りに欠行なり、誠によく馴れたるもの也、此かご舁、寒中にも肌を脱ぎ、入ぼくろ見事にし、手を盡したる武者繪抔あり、辻々にて駕籠舁などに入ぼくろあるは、勇ましく見よき物なり、間にはかごの垂おろしあれ共、見附々々にては、手早く垂を上て、往來群集の中を、聊も滯る事なく走れり、吉原大門口、品用入口、新宿入口、夜明前より駕籠エ〳〵と聲をかけ、數十人扣へり、是は右にいふ、江戸へ歸るを乗せる爲なり、
京四ツ駕籠(○○○○○) 江戸ニテノ名目也、京四ツ手カゴ(○○○○○)ノ略ナルベシ、ハウセンジノ次ハアンボツ、アンボツノ次ニ京四ツ也、此戸ハ引戸ニシタルモアレドモ稀ニテ、垂レヲ專トス、
アンボツ(○○○○) 是モ江戸ノ名目也、京坂アンダト云景四ツヨリ上也、
ホウセンジ以上ハ前後直立シ、アンボツ以下ハ後ロ直立、前ハ上ニテ出張タリ、
前人有レ句云、前鴈高鳴後鴈低、高低相喚度二長堤一、唯見二尻動一不レ見二脚動一、使三人無レ足而飛二行于天街一者、街頭肩輿是也、其雄二奔群集中一、巧避妙讓、肩以撥レ群、眞上二虚邑一、縱レ矢追レ猋、奔逸絶レ塵、衆皆仰レ尻瞠焉、不レ知都人奔レ事、何多如レ此、何急如レ此、東郭西橋、奔走如レ烟、南坊北街、經緯如レ織、士而不レ馬、借二此急脚一、上二何變事一、借而不レ錫、買二此急尻一、參二何法會一、〈買レ尻僧本分〉轎夫貴二駿足一也、後夫凶也、以二百步一笑二五十步一、以レ軼二前輿一爲レ雄、走而褌解、則身走手結、雖レ慣猶妙、或蹶滅レ趾、躡レ血雄走、不レ遑レ拾レ爪、其家計レ程定レ値、雖二此駿足一非二特貴一也、値同尻異、聞今以レ駿鳴者、曰二赤岩一、曰二十字一、曰何、曰何、駿相軋云、城門店戸、開閉有レ限毫釐之差、或致二千里之謬一、乃兩肩四脚外、更加二一肩一、更增二四脚一、數里一瞬、刻レ期往返、此則與二彼大儒肩輿、徐而叱々者一異焉、客以快爲レ妙、且有下轎夫擇二繁雜康莊一、呼叫鬻上レ之、本無二定値一、如レ遇二野夫一、値低約レ駿、走數百步、脚力漸軟、〈中心有レ違〉客自レ中促、然脚愈緩、曰官欲レ疾請益二些値一、客曰、唯、〈蓋與二之釜一〉脚便健矣、未二數十步一復緩又請、曰、諾〈蓋與二之庚一〉數步又復請、客不レ肯矣、 夫乃弄レ之曰、官富貴、何論二些錢一、走聞、〈走字言得妙〉君子周レ窮不レ繼レ富惠レ之、客怒曰、自レ此下步、夫不二敢許一、假怒激爭、住レ輿不レ動、〈莫レ往莫レ來中心惟悼〉客不レ知レ所レ爲、竟聽焉、脚卽健極健、詩所レ謂其虚其邪、旣亟只旦者、轎夫有焉、記曰、元祿年間(○○○○)、官始許(○○○)二民輿行(○○○)一、然其數僅百(○○○○○)、自(○)レ非(○)二老夫病客(○○○○)一、不(○)レ許(○)二妄載(○○)一、爾後漸盛、有レ命停レ之、夫輩暴失レ産、途多二乞兒一、官愍遂復二前律一、事在二享保九年一、天保之今、於レ斯爲レ盛、此亦繁昌之一肩、何物與レ之肩隨、猪牙船是也、
寶永八卯三月廿一日御觸
一辻駕籠書上 同廿五日、樽屋へ駕籠持召連、鬮取いたし、當り候分は、棒に燒印請申候、不レ當ものは、向後家業相止申候、町方三百挺、寺社方百挺、御代官所貳百挺、都合六百挺に究る、
一辻駕籠員數之儀、寺社方、町方、御代官所共相究、駕籠之棒に燒印申付候處、燒印無レ之辻駕籠、幷戸を立候駕籠(○○○○○○)も相見、其上定之外之者共も乘せ、不屆之至に候、人を廻し、相改召捕、當人者不レ及レ申、家主迄越度可二申付一候條、此旨町中急度可二相觸一候、以上、
五月
覺〈○中略〉 一町駕籠(○○○)の事、古來は無レ之事に付て、其數を減ぜられ候、此上彌以其數を減じ、三百挺は免許有レ之、女童の類、又は老人病人の外には乘すべからざる由、可レ被二申付一候事、〈○中略〉
以上
三月
正德三巳年三月
一町駕籠之儀、只今迄、町方三百挺差免候得共、向後百五拾挺減候之間、致二吟味一、持主書付可二差出一候、只今迄之燒印之外に、添燒印可二申付一候、尤御定之外之者、爲レ乘申間敷事、
附、駕籠數すくなく成候とて、駕籠借し代、幷舁賃上ゲ申候はゞ、當人者不レ及レ申、家主迄越度可二申付一候、幷日用賃銀高直仕間敷候、〈○中略〉
以上
三月
享保十一午年十二月
一汢駕籠之儀、只今迄都合三百挺に相極、燒印致、右員數之外者、停止に候處、自今者、辻駕籠不レ及二燒印一、員數無レ構候間、勝手次第に可レ致二渡世一候、〈○中略〉
右之趣、町中可二觸知一者也、
十二月
御駕籠組頭、御駕籠之者(○○○○○)より操上有り、御小人目付の昇路也、五役の頭の内、第一の業役也、御廣敷向仕丁、同世話役、吹上向よりも至る、小普請よりの御入人は、餘りなきなり、
陪臣五十以上、駕籠之者衣類之儀、紋付或は對之衣類之儀、相尋候者も有レ之候、駕籠之儀に御座候間、右對之衣類、無用可レ仕由挨拶可レ仕哉奉レ伺候、以上、
四月 御目付
伺之通可レ仕旨奉レ畏候
四月廿三日 松前主馬
大岡右近
御中間は、大名の手廻りなり、公方樣〈○德川氏〉御駕籠は二十人なり、國持は八人也、芙蓉間御役人、寺社奉行、奏者番は六人、町奉行の如きは四人なり、乍レ去御定と云にてはなし、御右筆組頭の類、五十以下は乘物御免無レ之故、駕籠に目を付て、四枚の駕籠人足(○○○○)の看板をそろへぬなり、
寬政十一未年十二月、細川越中守より太田幸藏ヲ以問合、翌春三月三日附を以及二挨拶一、
乗物壹挺 人足六人掛 駕籠壹挺
右駕籠は人足掛、道中方定無レ之候、山乘物之事に候はゞ、人足四人掛り、
打揚戸
右人足掛り、道中方定無レ之候得共、あをり駕籠之事に候はゞ、人足貳人掛、引戸に候はゞ、人足四人掛、
丸棒 角棒
右貳ケ條、御定無レ之候得共、引戸に候はゞ、山乘物定に而、人足四人掛、
ろくしやくは、力者を訛れる也、
京にて乘物をかき、あるひは庭にてはたらくおとこを、六尺とはなどいふならん、さる事候、屋敷につき、家につき、たゝみに付、一切竪横間をさだむるに、田舍のは一間を六尺にとる法なり、都のは間尺を六尺三寸にとつて、一間とする法なり、されば亭主をば、都六尺三寸の間にとり、つかはるゝ男をば、田舍六尺の間にとる、其故は、主人たる人の心と、下男の心と、ものごと、はらりとちがひて、まにあはぬゆへに、かの下人を六尺とはいふとなり、
一當時公家ノ方ニテハ、乘物ト云ハズ輿ト云ヒ、肩ニ荷擔トモ云ヘリ、六尺夫ノコトヲ、輿ノ者、又輿舁ト云ヘリ、是ハ各古言ノ殘リタルニテ最殊勝也、
一或人云、今乘物ヲ舁人ヲ陸尺ト云ハ、秦ノ世ノ輿ハ、六尺ト云ヨリ起レル成ベシ、曰始皇本紀ニ曰、數以レ六爲二紀符一、漆冠皆六寸、而輿六尺、六尺爲レ步、乘二六馬一ト云々、是秦ハ周ニツギテ天下ヲ得タル故、水德ヲ以テ、周ノ火德ニ代ルノ義ナリ、爰ニ輿ハ六尺トアルニヨテ、輿ヲ役スル夫ヲ六尺ノ者ト云フナラント、又云、乘物ノ柄一丈二尺ナルユへ、各六尺ヲ持シテ舁ニ因テ、六尺ト名ヅクト云リ、又六字モ普通ニハ陸尺ト書也、各六ツカシキ考也、予〈○大塚嘉樹〉思ハ、輿ヲ舁モノハ、人體ノ長大ナルヲ可トスルユへ、六尺ノ夫ヲエランヂ用ルユへ、世ニ長大ナル人ヲ斥テ六尺男ト 云ヘリ、是故ヲ以テ六尺男トイヘリ、是故ヲ以テ六尺ト呼來レルナルベシ、上ノ諸説ノ如ク、巧ミ考タルコトニハ非ル成ベシ、〈此六尺ノ夫ヲ、駕ゴノ者、又カゴ舁下云ヒ習ハセリ、大ナル謬ナリ、又カゴト云ルモノニ用ル夫ハ、カゴ舁、カゴノ者ト云フゴト勿論力、タキモナキコトナリ、猶可レ考、〉
此女陸尺ニモ看板ト號ケテ、家々定リノ摸樣ヲ染メ與レ之、女陸尺前二人ハ背ニ向ヒ、アトジサリニテ玄關ニ出ル也、又乘物ノ下左右各二鐶アリ、婢是ニ手ヲ懸ケテ助レ之、故ニ一駕ハ女ニテ玄關ニ至ル、
女乘物モ路次ハ男陸尺(○○○)也、前後四夫トモニ前ニ向フ、男陸尺看板ハ、男乘物ノ陸尺トハ染方別〈ツ〉也、幕府ハ唐草、其他ハ梅櫻若松楓熨斗蛇等、種々家々定アリ、下輩ノ駕ニモ著レ之、男乘物ノ陸尺ニモ、家ニヨリ是ニ似タル染形アレドモ、自ラ又異也、横筋或角ツナギ、或ハ輪チガヒ、又菱ツナギ等也、
出仕之面々、御城中〈江〉召列人數被レ仰二出之一、所レ謂
下馬より下乘之橋迄、召列人數之覺、〈○中略〉
一六尺 四人〈○中略〉
右之通可レ相二通之一、縱國持大名たりといふ共、此書付之外、人數多通間敷者也、
月日
天和三年八月廿九日
一月切駕籠斷之面々、陸尺對之看板、紛敷も有之候間、先達而申達候通り、色合對之看板ゟ紛敷無レ之、目立不レ申候樣可レ被レ致候、尤陸尺人數之儀も、御定之通り、四人之外余慶ニ召連候儀は有レ之間敷候事に候、〈○中略〉
右之趣、向々〈江〉相達候樣、壹岐守殿被二仰渡一候、
十二月
打上〈○中略〉
御三家幷御分家六尺、脇差帶レ之、
江戸吉原及其他遊ニ通フ徒、殊ニ急速ヲ欲ス者ハ、四ツ手ニ四夫、或ハ三夫ヲ供シ、二夫ヅヽ輪替シ舁ク、二夫ヲサシト云、三四夫ヲ三枚四枚ト云、如レ此急速ヲ欲スル、地廣ク路遠キ故也、此時バカケゴエシテ大股ニ走ル、駕中動搖甚シ、尾ノ名古ヤニモ、熱田驛遊女ニ通フ者ヲ乘スルカゴアリ、其疾コト江戸四ツ手ニ下ラズト雖ドモ、小股ニテ走ル故ニ動搖セズ、
一町中駕籠舁候もの、常に日用と紛候間、向後駕籠候者之分、日用座(○○○)ゟ札を取置可レ申候、但札賃(○○)は差出し申間敷候、尤駕籠舁相止候はゞ、右之札、日用座へ可二相返一候、總而借駕籠旅人は各別、其外極老之者、病人、或女、又は小兒、此外一切不レ可レ借旨、最前相觸候所、近來は猥に乘候由相聞、不屆候條、此已後、若定之外之者乘せ候はゞ、駕籠舁候もの曲事に可二申付一候、右之趣相二守之一、名主幷家主、急度可二申付一候、以上、
八月
賓永四亥年八月
一町中借駕籠舁候者共、只今迄、日用札不レ取候故、日用之もの紛敷候、向後借シ駕籠舁候もの共も、日用座へ參、定之通札錢を出し、日用札請取可レ申候、若相背者有レ之ば、曲事可二申付一候、此段可二相觸 知一候、以上、
八月
一駕籠舁幷二丁立船之事
二三年前迄は、駕籠之數三千程も有レ之候歟、然ば駕籠之者は六千人、其妻子をかぞへ入候はゞ、壹万には餘るべく候其後駕籠之數を減られ候得共、いまだ男女三四千人には可レ及候、〈○中略〉
〈巳〉二月〈○正德三年〉十七日
寬政七卯年十二月
上方にて駕籠かく者をおろせといふ、或人の曰、昔駕籠かく者が、おもくばおろせと云歌をうたひてかきたりしが、中昔より歌をばうたはず、たゞおほせ〳〵とかけ聲にしたるより、おろせといふなりとぞ、寬文年間に刊行せし、獨吟集に、〈前〉麓への道にて連レも一休み、安靜、〈附〉おもくばおろせおろせしばらく、同、此句は駕籠といふ事なければ、たしかには聞えがたけれど、是よりさき明曆年間印本、野良虫の序に、〈○中略〉それは四條川原のかぶき子の事にては侍らぬかといへば、大手を打て笑ひて、さればとよ、そのかぶき子といふ者、去年今年就レ中はびこりて、〈中略〉かのやつばらのとろ〳〵眼にたらされて、芝居終れば、東山にともなひ、あんだ乘物にのせられて、はい〳〵おろせおろせといさみすゝむ云々とあるに、てらしあはせて考れば、そのことのやうに思はる、此事引書も見いでず、考もたらざれど、まづ心おぼえに書のせておきつるなり、
貞享五年辰色里案内島原條に、卸(オロセ)とは此里の籠かき也、揚屋茶屋など、銀拂の請合するものなり、
夜船に乘遲れじとの早駕籠かと思へば、伏見卸(○)が通るといふ、是は京都を忍び大盡、〈○中略〉廓の外に、京屋の七左衞門、大和屋の七兵衞とて卸宿(○○)あり、是に夜明を待ちて、乘せて返る、三人懸り、銀一兩の定め、
おもふ事ゑやはゆふべの四ツ手駕かくとしらせん便だになし
〈大傳馬一〉 赤岩 〈本町二〉 重の字 〈同三横町〉 田原常 〈同四〉 巴屋
〈横山三〉 ふじ田 〈馬喰三〉 とら屋 〈甚左衞門町〉 加奈川屋 〈江戸橋〉 玉屋
〈田所町〉 出羽屋 〈箱崎一〉 遠州屋 〈辨慶橋〉 白岩 〈南新堀〉 江戸屋
〈靈がん島〉 長門屋 〈湯島切通〉 瀧本 〈山下〉 さがみ屋 〈上野〉 はし本
〈芝口二〉 初音屋 〈柴井町〉 稻毛屋 〈三田二〉 あら島 〈同三〉 わかな屋
〈西のくぼ〉 但馬や 〈同〉 いかり 〈同〉 大井戸 〈赤羽根〉 瓦屋
〈有馬前〉 いなば屋 〈龜島〉 寶角 〈芝田町一〉 武藏屋 〈麹町三〉 するが屋
〈同〉 するが屋 〈同九〉 武藏屋 〈赤坂御門外〉 信の屋 〈同〉 三の屋
〈芝濱松三〉 武藏屋 〈淺草瓦町〉 江戸勘 〈同御門外〉 宮本 〈同藏前〉 秋田屋
〈同八幡前〉 むさし屋 〈通新石町〉 三河屋 〈甚左衞門町〉 上州屋 〈本町三〉 ちくぜんや
〈通一丁目〉 越ぜんや 〈同三丁目〉 大泉 〈呉服町〉 一守 〈するが町〉 巴屋
〈石町一〉 おはり屋 〈本銀町二〉 中半 〈銀坐四〉 日の出屋 〈よし町〉 つる屋
〈ふきや町がし〉 武藏屋 〈市ケ谷本村〉 仲屋
三場所駕籠之部 〈五十けん〉 平松屋 〈田中〉 竹屋 〈同〉 岡崎屋 〈土手下〉 武藏屋
〈同〉 鎌倉屋 〈淺田町〉 岩本 〈品川〉 いづみ屋 〈四ツ谷〉 蔦屋
〈北高輪〉 天滿屋 〈南高輪〉 久村屋 〈四ツ谷〉 あら木 〈土手下〉 き屋
〈同〉 三の屋 〈同〉 いせ屋 〈小塚原〉 丸屋
安國寺〈○惠瓊〉は、毛利宰相殿〈○秀元〉騎馬と一ツに、十六日に、摺針を、笠を被り、黑き羽織にて通候由沙汰あり、其後十日計りも行方不レ知、京なる雜色ども、御奉公の手立に、京近き在所、方々何となく尋廻り候に、鞍馬寺の月性院に忍んで被レ居けるが、尋廻て候を聞て、乘物に乘、京を指て被レ出候由、跡より人々追掛候を聞てエハ條本願寺西門跡屋敷へ乘物かき居候やらん、かき捨候歟不レ慥、乘物搔も手前の者歟、人足か聢と不レ知、小性壹人附申候、强く被二追掛一、乘物より御出候へと申、旣に乘物より被レ出候處を、右の方より小性立寄、一刀に首と思ひ切候へば、刀は乘物屋根に當り、首にてはなく、安國寺の右の頰先を少し切候、
一問云、於二御當地一貴賤男女衣服等の儀は、以前と只今と相變儀は無レ之候哉、答云、左のみ替りたる儀は無レ之候、但我等〈○大導寺友山〉の承傳たる儀有レ之候、〈○中略〉七十年計以來は、〈○中略〉輕々の者の女房むす めなど迄も、乘物に乘不レ申候では不レ叶如く罷成候、右女乗物(○○○)の儀に付、我等老父儀、杉浦内藏允殿と心やすく有レ之候が、或日の朝用事有レ之、早天に見舞申候處に、玄關の上の間に於て、杉浦殿、高聲を被レ致候付、不審に存候て、其間へ參り、是は早朝より何事を被レ仰候やと申候得ば、杉浦殿被レ申候は、其元にも兼て被レ存候通、我等儀は朝起を致すに付、毎朝玄關より座敷邊を見廻り候處に、使者の間の窻より覗き見候得ば、門下に新敷女乘物の有レ之候付、門番を呼尋候處、夜前我等の家來婚禮をとゝのへ候が、其女の乘來候乘物の由申に付、其者を始め家來共を呼出し、談義をのべ聞せ申事に候、權現樣參河に被レ遊二御座一候節、我等祖父は知行五百石被二下置一、御奉公申上候節、妻を呼むかへ候刻、譜代の家來に負木と申物をもたせ遣はし、女房にはかづきをかぶらせ、件の負木に腰を懸させ、後に負せて呼迎へ候との事に候、然るに我等などの家來の身として、女房を呼候とて、めつきの星金物など打たる乘物にのせて、呼迎へ候如く成、うつけたる事が有ものにて候哉、去に依て件の乘物をば、女の親元へ返し候共、又は近所の町屋へ遣はし、拂物に成共致べく候、我等のやしき内にとても置せ候事不二罷成一、若又乗物に不レ乘して叶不レ申と女房申に於ては、親元〈江〉送り歸し候共、又は夫婦づれにて、我等方を出候共、其段は勝手次第に致し候得と申事に候、〈○下略〉
一問曰、何れの御代の義に候や、松平越中守殿に、公儀より御乘物(○○○)を拜領被二仰付一たる義有レ之、夫より彼の家の乘物の棒を黑くいたし乘り被レ申候との事也、右乘物を被二下置一候節、御懇意なる上意の趣を、世上に於て樣々被二申觸一候由、其元には如何聞及候や、答曰、此義を我等〈○大導寺友山〉承り候は、大猷院樣〈○德川家光〉御代、日光へ被レ爲レ成、還御の刻、野州宇都宮に於ての義に有レ之由、然共其節の上意の趣と有レ之儀に於ては、誰も存たる者とては有間敷かにて候、子細は我等若年の節、淺野因幡守殿方へ振舞にて客來有レ之、其座中に於て、右越中守殿、御乘物拜領の由緖も有レ之、其上別て心安く候 に付、或時御乘物の拜領の直物語を可レ承候と存、相尋所に、篤と咄不レ被レ聞候に付、重て松平安藝守殿方へ一家振舞の節、勝手座敷に越中守殿と我等兩人罷在候に付、幸ひと存、御乘物拜領の時の首尾を尋候へば、越中守殿被レ聞、其元には、日外も此義を御申候、總て乘物の棒を黑塗に致候と有レ之義は、法中抔の義は格別、武家方にては決て不二罷成一義に候處に、我等乘物の棒を黑く申付て乘りあるき候には、定て不レ苦子細抔も〓レ之候やと、御推量にて事濟可レ申との返答に付、其後は尋も不レ致、然らば今時世上に於て、とやかくと風説致候は、皆以て推量沙汰とより外には不レ被レ存候、因幡守殿、各へ御申候と也、右にも申阿部豐後守、未だ微官少祿の節、御一字拜領、越中守殿へ黑ぬりの棒の乘物御免抔と有レ之義は、外にたぐひも無レ之儀に候へば、其節御懇意の次第を外へ演説不レ被レ致とあるは、尤至極の義共可レ申也、
