https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0781:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0781.pdf]] 煎茶ハ其起原詳ナラズ、高遊外ヲ以テ中興ノ祖トス、遊外ハ德川幕府ノ中世ノ人ニシテ、世ニ賣茶翁ト稱ス、其事ニハ水品擇芽煎法等アリテ、一ニ支那ノ風ニ摸倣シ、其器モ多ク支那ノ製ヲ用イ、簡素幽雅ヲ以テ主トスルガ故ニ、文人墨客ノ斐多ク之ヲ玩べリ、
*&aname(E7858EE88CB6E5908DE7A8B1){名稱};
**〔書言字考節用集〕
***〈六/服食〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0781:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0781.pdf]] 煎茶(センジチヤ)〈事見&size(5){二};活法&size(5){一};〉
**〔類聚國史〕
***〈三十一/帝王〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0781:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0781.pdf]] 弘仁六年四月癸亥、幸&size(5){二};近江國滋賀韓崎&size(5){一};、便過&size(5){二};崇福寺&size(5){一};、〈○中略〉大僧都永忠、手自煎&size(5){レ};茶奉御、施&size(5){二};御被&size(5){一};、
**〔江家次第〕
***〈五/二月〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0781:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0781.pdf]] 季御讀經事&br;上卿一人著&size(5){二};南殿&size(5){一};例〈天喜四年、三ケ日毎&size(5){二};夕座&size(5){一};侍臣施&size(5){二};煎茶&size(5){一};、〉
**〔木石居煎茶訣〕
***〈下〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0781:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0781.pdf]] 今日の茶は、泡(はう)茶、淹(ゑん)茶、沖(ちう)茶の三ツにて、煎茶ならぬに、なべて煎茶と唱ふる、當らぬやうなれど、矢張煎茶と稱して苦しからぬ也、かゝるためし少からねば、殊に手近き例をばいはんに、たとへば論語卷の一卷の二といふ如き、こは古竹簡に文字を彫り付、韋にて是を綴りまき置たるよりかくはいひし也、又中古になりては、絹に文字をかきて是を卷置たるが、紙の出來し後は、今の如く本に綴たれど、猶古稱を唱へて、卷の一卷の二といひ、竹簡が紙にかはりても、脱簡などゝもいふの類、煎茶の適例ともいふべし、さればだし茶にても、一煎二煎と稱するを笑ふ
べきには非ず、素より初注再注など唱ふるは、尤當れりとすべし、前に述る如く泡淹沖の三ツも、わざにかけていふ時は、矢張古稱を用ひて烹點と唱ふる、是又前の例によりて拙きにはあらぬ也、
*&aname(E7858EE88CB6E88CB6E59381){茶品};
**〔煎茶仕用集〕
***〈下〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0782:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0782.pdf]] 茶品彙&br;蘭茶〈珠蘭茶と云、其香如&size(5){レ};蘭、渡來茶第一珍品、錫の器に入來る、掛目五匁程ヅヽあり、〉&br;松蘿〈舶來のもの也、蘇州閶門といふ處より出ると云書付あり、甚希に來る、桃巖釋石舟所&size(5){レ};撰松蘿と云書あり、序曰、唐有&size(5){二};名僧&size(5){一};、號曰&size(5){二};松蘿&size(5){一};、爲&size(5){レ};喜&size(5){二};烟霞&size(5){一};隱&size(5){二};居山野&size(5){一};云々、此人の始て製せし茶なる故、其名を呼とみへたり、始終此書にそなはる可&size(5){レ};考、〉&br;武夷〈此茶武夷の白茶とて、色は黑く、白きかびのやうなるものふきてあり、あまりよろしき茶にはあらず、是も舶來の品なり、此茶のこと諸書に出たれば、委不&size(5){レ};擧、〉&br;唐茶〈常に多く舶來のもの也、於&size(5){二};肥州&size(5){一};製&size(5){レ};之、〉&br;一ツ山 雁音 山吹 初綠 湖溪 越後 初山吹 春風 喜撰 政所 龍田 一ツ森 冬梅 折鷹 朝日山 政所初葉&br;右拾六種、江州信樂より産す、日東煎茶此産第一とす、末茶は以&size(5){二};宇治&size(5){一};第一とす、&br;花橘〈江州彦根より八里ばかり北、たて原村源四郎といふもの近年製出す、上品なり、〉 莖茶〈城州字治産、薄茶の莖也、〉 室生(ムロフ)〈大和産〉 淸見〈駿河産〉 服部〈伊賀産〉 河越〈武州産〉 仙靈〈播州粟賀生蓮寺産靈玄院法皇ノ御勅名〉 本葉 薄葉〈此兩種城州高雄山ノ産、日本茶ノ殆テ産ル所ト云、〉 草山高泉寺 明石 〈此三品丹後ノ産〉 足久保〈駿州産〉 吉野茶〈和州産〉 北山茶〈和州産〉 川俣茶〈勢州産〉 高野茶〈紀州産、以&size(5){二};浪華水&size(5){一};烹甚惡シ、山水ニ宜シ、〉 日向茶〈疏茶也、無&size(5){二};精製者&size(5){一};、〉 完粟(シソウ)茶〈數品、播州産、〉 カナコシキ〈豫州字麻郡産〉 相樂茶〈肥前産〉 筑後茶〈上品〉 輪違〈濃州茶〉 葉室〈城州醍醐産〉
**〔淸風瑣言〕
***〈上〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0782:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0782.pdf]] 品解&br;煎品は、折鷹(レ)、白折(シラヲレ)、鴈がね等、上製の餘材也と見ゆ、葉茶有、莖(クキ)茶有、葉くき相半する有、其葉は尖のみなれば、氣味共に薄し、喜撰は〈山岳の名、其山下なる池の尾村に出すなり、〉朝日山の上に座せり、〈朝日は七園の一名なり〉なし蒸は下
品なり、〈里人の言に、上製の種をアヲと稱し、煎種をなしと呼とぞ、ナシ厶シの略言歟、蒸製精しからざるの名義なるべし、〉其餘品題猶多かり、&br;品目&br;近江の信樂、茶品殊に多し、山中の村民園畝を開きて蒸焙を事とす、煎種の絶品、此地天下第一なり、山吹一ツ森の名のみあまねく聞ゆ、〈山吹は本宇治の品題なり、今も猶かの地に出す、〉萬代、霜ノ花、湖水、花橘〈政所と云郷に出す、信樂の山脈也とぞ、〉等の種皆絶品也、其餘の品題多く聞ゆるは、園民漫に題するものに似たり、又京師の鬻戸等、私に品第を設けて、名と物と戸々にたがふも有べし、又彼とこれと合製して一品となるも有べし、沽酒家の醇薄辛甘を鹽梅して、戸々に品題を稱ふるに同じ、又昔の一ツ森は今の山吹にて、品第一階を進ましむとも云り、大觀茶話に、相鬻相爭、互爲&size(5){二};剝竊&size(5){一};、參錯無&size(5){レ};據、不&size(5){レ};知&size(5){三};茶之美惡在&size(5){二};于製造之巧拙&size(5){一};而已、豈園地之虚名所&size(5){二};能增減&size(5){一};哉、焙人之茶、固有&size(5){下};前優而後劣者、昔負而今勝者&size(5){上};、是亦園地不&size(5){レ};常也と云を見れば、はやくより此厄有しをしらる、唯々市に求る人、茶は眞の面目にあふ事難し、&br;洛北妙心寺の花園、近江の永源寺の越溪、土山の曙、〈永雲寺製〉美濃の虎溪、〈永保寺製〉播磨の仙靈、〈粟賀生蓮寺製〉山僧の手製、利の爲ならざるは佳品也、それを名として郷民の出せるは品降れり、&br;栂尾高雄の産、昔は上製の種ありし也、深瀨茶など聞えしも有しを、今は佳品なしと云り、&br;諸國の名産甚多七、伊勢の河上、伊賀の服部、大和の室生、紀の高野、尾張の内津、美濃の養老、駿河の蘆久保、西にては肥前のうれし野上首なるべし、肥後の鹿子尾、筑前の鶯、其餘柳川相樂等きこゆ、多くは鐺炒製にて、味醇く淸韻乏し、又唐茶とて、商舶の將來れる者は近年佳品なし、武彜、松蘿、龍井、蘭茶等の名あれども、眞物にあらざるべし、其它は丹波の草山香泉寺、播磨の鹿谷、日向茶の類は、常食の品にて文雅の友にあらず、
**〔煎茶早指南〕
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0783:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0783.pdf]] 他國はおのづから他國に上茶を出す所おふけれど、我國〈○尾張〉にては内津の村民久しく茶を製し出す、其外賣物にあらぬ上品の茶、予〈○嵐翠〉がしりたる分左の如し、
知多郡大高の長壽寺毎年製せらる、これ江州越溪茶の法にて尤佳品なり、&br;水野定光寺の茶は、京師花園の製に同じくして、又これ佳品なり、此兩所にて上製の茶を飮ば、氣味他に異なる事甚遠し、兩山ともに水も精絶なるゆへとぞおぼゆれ、&br;府下白林寺、毎年唐樣茶を製せらる、其精品に至ては兩山におとらず、水もすこぶる靈なり、&br;右四條は、我國同好の諸君子にしらしむのみなり、他國の人は、他國の人境によりて製法を問ひ玉へ、&br;本朝にて茶を産する所おふけれども、第一とするは山城の國宇治の里なり、しかれども煎茶においては、むかしより近江の信樂を天下第一と沙汰しあえり、無膓翁も宇治信樂はもろこしの上茶を出す、建溪北苑にもおとらずと、瑣言にしるされたり、&br;信樂の上品にて、高翁の比にもてはやされたる茶の銘は、萬代、霜の花、湖水、花橘等なるよし、今は銘も堂上方より申くだして新銘を稱するもあり、又高名の君子によりて求たる銘もありて、其品目はかはれども、製法におゐてはむかしにことなる事なし&br;故人すべて信樂を賞せられしが、宇治なんぞ信樂の下におらんや、兩所の高下は、歌仙の人丸赤人のごとく、宇治は信樂の上たらんことかたく、信樂は宇治の下たらんことかたし、&br;つねに煎ずる茶、宇治にては喜撰、信樂にては信樂とゆふ銘の茶よろし、飮事は一等も上の茶よけれども、まづこれらこそ中品めよきものなり、
**〔渡邊幸庵對話〕
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0784:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0784.pdf]] 一煎茶駿州府中の曲里の右の方に作るよし、され共人々呑料にする故に賣買にせず、安倍に水窪と云所あり、此所に作る茶至て極なり、然共木株少なし、是に差續て水見邑と云所の茶よし、是大方に水窪に對する也、其餘は茶料と云て、幅三里、長さ四十餘里、此所餘の物を不&size(5){レ};植、都て茶株也、是世にいふ阿倍茶也、運上も大分也、
**〔煎茶綺言〕
***〈一〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0785:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0785.pdf]] 性味&br;茶ノ性微寒、味ヒ甘苦トイヘルハ、世ノツネノ説ナリ、精良ノ品ヲエラミ、湯候ヲ得テ喫スルニ、芳鮮甘冷ノ風趣アルニ似テ、マタナキガゴトシ、餘韻ヲ呈シ、微冷ヲ賸(アマ)ス、甘ハ其花ナリ、冷ハソノ實ナリ、苦濇ハソノ根柢ナリ、然ハアレド頂選ニシテ苦濇ノ味ハ病ト云ベシ、袁仲郎其ノ澹冷ヲサシテ、ヤヽ金石ノ氣ニ類ストイヘリ、ヒトリ能茶ノ眞味ヲ識セリ、蘇東坡ハ淸風ニタトヘリ、苦濇ノ病ハ、原采收ノ早遲、蒸焙ノ過不及ニヨルナリ、其ノ製造ノ概略ハ、淸明穀雨ノ間ニ、茶ノ新芽四五葉ヲ發シ、津液萌芽ニ升ルヲ察シ、熙々煦々ノ朝タヲマチテ、頂ノ三葉ヲ摘采、淸水ニアラヒ、湯蒸焙乾ス、其時ヲ得レバ自ラ淸茶ヲ出ス、マタ焙養ノ粗ナルト、地道ノ旺セザルトニヨリテ、苦濇ノ味ヒヲ致モノ多シ、マタ一沸ノ湯候頃刻ノ火勢ニモヨルベシ、湯候ミタザル時ハ草氣ヲ剰ス、過時ハ眞味ヲ耗ス、火氣武時ハ焦氣ヲ發ス、文時ハ湯氣ヲ生ズ、マタ湯引鐺熬ノ製アリ、〈筑州ノ嬉野茶、日向ノヨシマツ茶、遠江ノ相良茶ノ如、皆イリ茶ナリ、〉其中マヽ良品アレド、多クハ草氣アリテ苦濇ナルモノナリ、喫茶ヲ賞シ、品題ヲ决識人、此造法ヲ詳ニセバ、又一助ニナルベキヤ、茶估ヨリ價得テ良器ニ收藏スルモノハ、烹時焙乾ヲ用ユベカラズ、焙乾ハヤムコトナキノ所爲ナリ、良器トイエドモ、誤テ冷濕ニ侵サルル時ハ、宜敷烘焙スベシ、サレド隔紙ニ火色ヲ蘸時ハ眞味ヲ損ズ、ツトメテ火候ヲ調シルベシ、彼ノ松蘿僧ノ如キハ、火候ノ調ガタキヲイブカリテ、芽ノ尖葶ヲ剪去テ、但其中段ヲ留トイヘリ、吁ウトカリキ、茶ニ花香ヲ裛モノハ、少シク醫藥ニ似タリ、ヨテコヽニノコス、
*&aname(E7858EE88CB6E8978FE88CB6){藏茶};
**〔煎茶仕用集〕
***〈上〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0785:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0785.pdf]] 藏茶&br;宋蔡襄茶錄曰、茶宜&size(5){二};蒻葉&size(5){一};、而畏&size(5){二};香藥&size(5){一};、喜&size(5){二};温燥&size(5){一};、而忍&size(5){二};溼冷&size(5){一};、故收藏之家、以&size(5){二};蒻葉&size(5){一};封裏入&size(5){二};焙中&size(5){一};、兩三日一次用&size(5){レ};火、常如&size(5){二};人體温温&size(5){一};、則禦&size(5){二};濕潤&size(5){一};、若火多則茶焦不&size(5){レ};可&size(5){レ};食、&br;もろこし茶をおさめたくはふことかくのごとし、此土の法は古今これに異なり、たゞよろしき
磁甕、或は錫の壺を用て、口をよく覆て濕なき所にをくによろし、蔡氏が法に必かゝはらざれ、&br;臭許次忬茶疏曰、収藏宜&size(5){レ};用&size(5){三};磁甕大容&size(5){二};一二十斤&size(5){一};、四圍厚箬中則貯&size(5){レ};茶、須&size(5){二};極&size(5){レ};燥極&size(5){一レ};新、專供&size(5){二};此事&size(5){一};、久乃愈佳、不&size(5){二};必歲易&size(5){一レ};茶、須&size(5){二};築實&size(5){一};、仍用&size(5){二};厚箬&size(5){一};、塡&size(5){二};緊甕口&size(5){一};、再加以&size(5){レ};箬、以&size(5){二};眞皮紙&size(5){一};包&size(5){レ};之、以&size(5){二};苧麻&size(5){一};緊札、壓以&size(5){二};大新磚&size(5){一};、勿&size(5){レ};令&size(5){二};微風得&size(5){一レ};入、可&size(5){二};以接&size(5){一レ};新、&br;許氏が説大ていよし、人に近き處に置は、時々かへりみるによし、又人に近ければ温にして濕少しといへり、陸氏よりこのかた、吾朝にも厚紙のふくろに茶を入るなり、茶疏には畏&size(5){レ};紙と云、紙は水中におゐてなるにより、水氣ありて濕をふくむといへり、尤なる事なり、&br;古郵羅廩茶解曰、凡貯&size(5){レ};茶之器、始終貯&size(5){レ};茶、不&size(5){レ};得&size(5){三};移爲&size(5){二};佗用&size(5){一};、 岩栖幽事曰、茶見&size(5){レ};日而味奪、墨見&size(5){レ};日而色灰、此二説もしらずんばあるべからず、因て合せ記す、
**〔淸風瑣言〕
***〈下〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0786:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0786.pdf]] 收貯&br;茶を貯ふるは錫壺に勝る者なし、瓦壺は次也、いづれも古製にあらざれば効用少し、一度它の物を收し器は不&size(5){レ};可&size(5){レ};用、香葯の器殊に忌べし、茶略に云、予嘗登&size(5){二};石鼓&size(5){一};、遊&size(5){二};白雲洞&size(5){一};、其住僧爲&size(5){レ};予言曰、瓦罐所&size(5){レ};貯之茶、經&size(5){レ};年則漸有&size(5){レ};濕、若&size(5){下};用&size(5){二};錫鑵&size(5){一};貯&size(5){上レ};之雖&size(5){二};十年&size(5){一};而氣味不&size(5){レ};改と云り、然るに頃日或高貴の家に、庫内より年記百餘年、封緘固密の茶壺を探出たり、開封して試るに、茶葉靑色乾燥、唯一二年の者に異ならず、但香味におきては舊廢の物也とぞ、是を以て見れば、瓦壺の錫に勝ると云べし、按ずるに、錫瓦の優劣にはあらで、器の新古、製造の工拙に係るなるべし、茶盒子も共に同じかるべし、唯々古製の貴むべきは、此談に明らか也、所&size(5){レ};居陰濕を忌み、煙薰を可&size(5){レ};避、雨雪雲霧の日、封を開くべからず、盒子に分取て後も、克々封固すべし、壺中茶減ずれば、其虚洞に濕氣隨て侵入、茶韻を害す、棚架上に、茶壺の口を將て、下に朝(ムカヒ)て放べし、濕烟入がたし、又茶壺を稻灰に埋め置法有、大桶に先茶壺を收め、上下四面より灰を以て瘞む、茶を分取日能せずば、灰入て茶を害すべし、西土には箬葉を以
て茶壺の口を包む、箬よく濕烟を透さず、又建城と呼て、竹籃を二重に造り、其間に箬葉を夾入たる者あり、〈圖茶經の附錄に出す〉予〈○上田秋成〉是を獲て藏む、思ふに是恐くは久藏の用に堪べからず、唯盒子の屬と云べき者也、&br;久藏&br;茶を貯ふるに、久藏の品は、今年の新茶を相半にして再び封密すべし、茶霖雨梅天には、壺中に在ても濕を感ず、快晴を待て急に焙爐に乾すべし、焙爐の火は温かるべし、是を文火と云、火勢猛なれば、葉焦れて茶韻を脱す、烹るに臨みて炙るも同法也、茶と火の間、凡一尺を去べし、茶史に、焙茶法見ゆ、夏至後三日、焙一次、秋分後三日、焙一次、一陽後三日又焙&size(5){レ};之、連&size(5){二};山中&size(5){一};共五焙、直至&size(5){レ};交&size(5){レ};新、色香味如&size(5){レ};一と云り、茶賈總て焙の候法ありとぞ、然れども古人の説に、茶濕らざれば不&size(5){レ};可&size(5){二};焙炙&size(5){一};、其度に香味を失ふと云り、又建紙包(カミノフクロ)に貯ふべからず、紙は水中に作しもの故に、濕を吸く害有と云り、此戒め茗溪詩話に見えたり、茶史に云、近人以&size(5){二};燒紅炭&size(5){一};蔽&size(5){二};殺紙裹&size(5){一};入&size(5){二};瓶内&size(5){一};、然後入&size(5){レ};茶極妙、以&size(5){レ};紙裹&size(5){二};礦灰一塊&size(5){一};亦妙と見えたり、
**〔煎茶綺言〕
***〈一〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0787:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0787.pdf]] 藏茶&br;茶ノ性、燥ヲ喜、潮ヲ嫌フ、故ニ壺ノ乾枯ナルヲヨシトス、サレド高麗、三島、熊川、龍門字、或ハ薩摩ノ古帖佐、尾張ノ古瀨戸等ノ類ヒハ、尋常ニ得難シ、頓ニ求ルニハ淸雅ナルヲ擇トリテ、數日武火ノ焙爐ニ安ジ、後爐ヲ出シ、密室中ニ懸、徐ニ冷ヲトリ、冷定テ茶ヲ藏シテ後マタ他器ニ移ベカラズ、マタ百錬ノ錫瓶モ佳ナリ、タトヒ良器トイヘド、其口ヲ守コト空疎(ウト)ケレバ、茶ノ性味自ラ散ズ、マタ經年久藏スルモノハ、故瓢、或ハ故竹筒ノ内ニ築實堅ク封ジテ、再ビ松香ニテ固縫ベシ、常ニ密室中ノ火氣絶ザル所ヲ相テ架ヲカケ儲フベシ、空堂虗屋ノ如キハ、風ノ氣ツネニ融通テ、名器トイヘド冷濕ニ侵サレテ、イツシカニ茶ノ性氣亡佚、
*&aname(E7858EE88CB6E6B0B4E59381){水品};
**〔煎茶仕用集上〕
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0788:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0788.pdf]] 辯&size(5){レ};水和漢茶を好む人、水を撰を第一とす、水よからざれば、何程よき茶にても惡くなる也、陸氏より以來、水を論ずる事委し、鹽氣、金氣、濁水等は云に不&size(5){レ};及、水の善惡甚多しといへども、先大ていの水にても、くみたてを、活水とてよしとす、何程名水にても、時刻を經たる水は用るに惡し、
**〔煎茶仕用集〕
***〈下〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0788:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0788.pdf]] 名水品彙&br;賀茂御手濯川〈城州洛外下賀茂社流水、斯泉華洛第一ノ水といふ、別て烹茶によろし、其水甘く冷なり、〉 菊水〈京祇薗下河原にあり、水甚淡く茶の可否大にしろゝなりと、賀茂の水にはなとれり、〉 明星水〈吉田にある井水なり、菊水に同じ、以上三ツ洛外にありて、名水と云ものなり、〉 飛鳥井〈京二條にあり〉 少將井〈大炊御門南〉手水井〈四條烏丸〉 柳之水〈西洞院三條通東側人家内〉 醒井〈佐女牛通六條北〉 常盤井〈武者小路新町西北方〉 淸和水〈一條堀川東〉 晴明水〈上同〉 杜鵑井〈油小路通中立賣下ル東側人家内〉&br;右洛陽洛外大概之分擧&size(5){レ};之&br;合坂水〈天王寺西門之西湧泉也、浪華第一之水、又云、今用&size(5){二};逢坂字&size(5){一};誤也、其處有&size(5){二};合坂辻&size(5){一};、用&size(5){二};此字&size(5){一};可也、〉 在栖淸水〈新淸水寺下湧泉〉 柳之水〈難波村の井水也〉 難波水〈南瓦屋町井水〉 愛宕水〈内久寶寺町井水〉 黃金水〈御城内井水〉 淀川〈長流水〉&br;右大坂近邊之名水也&br;論&size(5){レ};水&br;本邦論&size(5){二};名水&size(5){一};書〈余○大枝流芳〉未&size(5){レ};見、世上茶家者流の口談ニ云、千阿彌利休、山城宇治川の橋三の間の水、日本第一の水と定む、豐臣太閤常に汲&size(5){レ};之、茶の水に用ひ給ふと云、至&size(5){レ};今彼橋汲&size(5){レ};水所、別に附出ししるしとす、利休が末流片桐石見守貞昌この水を汲、秤量二十錢目を以て分盈を作り、爾今點茶家者流に傳て合杓(カフノシヤク)と云、余これを傳て、諸方の水を量る分量大概左にしるす、按るに、水輕重を以て好惡を論じがたし、山水乳泉石池の類に重きあり、雜穢混合して流るゝ川に輕きあり、これを按るに、長流水は水こなれ、濁氣少きものは輕し、乳泉の類にて、只今石間地中よりわき出たるものは、
水は淸ふして甚重し、此類重きとて惡きにあらず、長流水輕しとて好にもあらず、水は只輕重にて定むべからず、只ロに含てよき味あるものよし、醎あり、金氣あり、土氣あり、澁き味ある等のもの惡し、只かるく甘き水好水也、又按に、點茶家者流の定むる所は、只水の分量のみ、輕重の間にはあるまじ、點茶は末茶の多少にて、水も多少の分量を汲はこれのみの用か、猶考べし、&br;遵生八牋曰、源泉必重、而泉之佳者尤重、餘杭徐隱翁嘗爲&size(5){レ};余言、以&size(5){二};鳳凰山泉&size(5){一};、較&size(5){二};阿姥墩百花泉&size(5){一};、便不&size(5){レ};及&size(5){二};五泉&size(5){一};、可&size(5){レ};見仙源之勝矣、この説にて按るに、地中石間より出る活水は重く、長流のものは水こなれかるし、しかれば重きが惡しきにもあらず、輕きが極てよしとも定がたし、初めに論るがごとし、&br;水輕重考&br;金城中黃金水〈二十目八分〉 淀川水〈十九匁四分〉 冽寒泉〈二十目五分、余宅茶井也、〉 有馬湯山〈一ノ湯用水廿一匁三分、二ノ湯用水廿一匁三分五厘、〉 有馬鷹塚淸水〈廿一匁六分、石泉極上々甘、〉 龜尾瀑〈廿一匁五分、水至極惡し、〉 舟坂淸水〈有馬道、極上々甘、〉 宗悟川水〈名水と云、生瀨川、東小川、舟坂ニハ不&size(5){レ};及、〉 瑞寶寺水〈有馬京口也、用水廿一匁四分、〉 同所瀑泉〈廿一匁貳分五里〉 大坂愛宕水〈廿匁九分〉 合坂水〈大坂天王寺西〉在栖淸水〈同所淸水寺下〉 難波柳水 京下河原菊水 京杜鵑井 丸茂手濯水 明星水&br;此外本朝國志郡志に擧る所の名水多し、其方角に在す人は、自ら試み用んも、博物の一つならんのみ、
**〔淸風瑣言〕
***〈下〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0789:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0789.pdf]] 辨&size(5){レ};水&br;熊明遇の茶記に、茶を烹るは、水の功十の六に有と云り、〈○中略〉江水は中流の人氣遠きを汲べし、井者汲事多きを宜しと云り、是大統の論也、山水にも石池乳泉にして涌あふれざるは、陰氣を蓄ひて色鮮明ならず、或は淺縹に、或な微黑に、或者崖間樹蔭なるは、常た毒蠱なども住て潔からず、水味輕甘なりとも佳品とせず、江河長流は、汚穢流るれども、蕩々として其氣の停る所なく、味は甘重にて且無毒也、但烹て茶に靑色を出さず、山泉に劣る所也、井水は汲事多くとも、泥土或は海潮
の信ある地者、水味斥鹵腥臭、飮食の品にあらず、予〈○上田秋成〉頃(コノゴロ)京師の客舍に茶を烹て試るに、故(モト)是丘山の地なりと、いへども、千歲以來紅塵の陌、旦暮烟爨の稠密に汚穢滲漏して土臭となる乎、飮食佳品の水は稀なるやうにおぼゆ、只物に觸て其本色を出し、腐爛の氣を驅る者、山嵐寒冽の功のみ、一條通より上者尤淸冽にて、茶を烹れば靑黃鮮明なれども、甘香は冽氣に壓るゝに似たり、又洛東の井は、山下の濁溜にて土臭なき事能はず、茶韻興がたし、又市中所々に名水と聞えたる柳の水、さめが井、淸和井、あがた井、杜鵑井等は、たま〳〵地中の水脈にあひて活動あるもの、土臭なし、冽氣寒からず、旱天にも涸る事なく、茶を煎て尤佳品なるを、是亦猥に汲事を宥さゞれば、自ら渟潦の厄あり、只々淸流こそ食品の上首なれ、高野川、加茂の下上の泉川、西河も嵐山をかぎりて上は、急湍激流烹るべからず、宇治の橋本、尤絶品也、下流も人氣遠く塵垢をとゞめざるは、いづれも食品の水也、浪華は大江の中流三大橋の以東を上首とす、枝派の水は、塵穢泥臭、いづれも汲て煎るに不&size(5){レ};堪、あふ、坂、有栖等の乳泉、涌あふれて潔し、是も亦山下滴溜の弊にや、茶に靑色なし、市中郊外の井、悉く斥鹵泥腥、絶て食品なし、こゝに予が寓居の地、市陌を去事北に一里可、長柄川を南にし、大江東に流れて、柴島、山口、淡路莊等の地、井水淸潔にして、しかも寒冽ならず、甘味有て土臭なく、大凡江河中流の品に似たり、茶を烹て甘香、たゞ〳〵靑色なきを恨とす、予又私説あり、山川石池乳泉といへども、天の陽光を承ざるかぎりは、陰氣を蓄ふて寒冽なる故に、茶を烹て色は美なれども、香味は劣るべし、水は腸光を承て調和せられ、甘味もこゝに生ずる乎、江河塵穢なき事能はずとも、無毒にして廿味有者、活動陽光の和を得たるなり、水の性ひたすら澄を力む、塵穢汚泥も是を操る事能はず、市陌に横たはれる流水も、夜の丑寅の間に汲めば、淸泉に異ならずと云も此謂也、〈○中略〉茶を烹る者、水擇ばずば不&size(5){レ};可&size(5){レ};有、水えらばざれば、茶に色香味の三絶なし、是を美ならしむるは、水源遠からず、流も緩きを佳品とす、輕甘、甘重の水、再び三沸の法を以て熟味なる、
惟色香味の三絶を全くする水は天下にまれなるべし甘泉淸流、茶の三絶に和するとも、是を死活ならしむるは、烹る人の巧拙に有、能々意を用ふべき者也、予京攝の間に老て、它方の水味を試みず、虚しく井蛙の談をなすのみ、讀人擇びて取べし、又諸書に雨水を上品とす、熊明遇云、無&size(5){レ};泉則用&size(5){二};天水&size(5){一};と、此説淸泉に劣るとす、又云、秋雨爲&size(5){レ};上、梅雨次&size(5){レ};之と、毛文錫は、梅雨其味甘和、乃長&size(5){二};養萬物&size(5){一};之水と云り、五雜組に、閩人苦&size(5){二};山泉難&size(5){一レ};得、多用&size(5){二};雨水&size(5){一};、其味不&size(5){レ};及&size(5){二};山泉&size(5){一};、而淸過&size(5){レ};之、然自&size(5){レ};淮而北、雨水苦黑、不&size(5){レ};堪&size(5){レ};烹&size(5){レ};茶と云り、古人の説に、暴雨は塵土を誘ひて淸潔ならずと云り、試るに暴雨ならずとも、市中の雨水は、必塵垢浮沫の厄あり、漉て烹れば香味あれども、色は美ならず、東坡は、時雨降れば、器を多く庭中に置て是を貯へりとぞ、只簷溜の水は不&size(5){レ};可&size(5){レ};食、又雪水は五穀之精、尤宜&size(5){二};茶飮&size(5){一};と云説あり、丁謂の煎茶の詩に、痛惜藏書籄、堅留待&size(5){二};雪天&size(5){一};と云は、文雅の言のみ、雪水不&size(5){レ};能&size(5){レ};白とあれば、雨水には劣るべし、况雪水性感&size(5){二};重陰&size(5){一};とあるを見れば多飮べからず、文子の説に、水之道、上&size(5){レ};天爲&size(5){二};雨露&size(5){一};、下&size(5){レ};地爲&size(5){二};江河&size(5){一};、均一水也と云へば、雨水と江水の品、相似たるも宜也けり、又甘泉香泉の名有は、若草木の傍に生ずる物に觸てゑかりや、〈○中略〉古人の言に、眞源は無&size(5){レ};味、眞水は無&size(5){レ};香と云説もあれば、甘香共に、物に觸て生ずと云んも又理ありとせん乎、又茶經に、茶の産地の水に烹れば佳ならぬ者なしと、是自然の理也、たま〳〵折鷹の品、京攝の水に美ならず、武都に烹て宜しと聞、又人のかたれるに、筑紫の人折鷹を煎て、東方を拜し甘香の恩を謝すとぞ、茶の水に合ふは、音律の物に和して韻聲を興さしむと同じく、天然の善緣常理を以て不&size(5){レ};可&size(5){レ};論、又水を貯ふは、瓦罌に勝る者なし、是を陰庭に居て蓋を去、紗帛を以て覆ひ、星露の氣を承べし、水の英靈不&size(5){レ};散と云り、又煮泉小品に、移&size(5){レ};水取&size(5){二};石子&size(5){一};置&size(5){二};瓶中&size(5){一};、旣可&size(5){三};以養&size(5){二};其味&size(5){一};、又可&size(5){二};以澄&size(5){一レ};水と見え、鍾伯敬の水品論にも、小石冷泉留&size(5){二};早味&size(5){一};と云、又大瓮收&size(5){二};藏梅雨&size(5){一};、下&size(5){二};放鵞子石數十塊&size(5){一};、經&size(5){レ};年不&size(5){レ};壞と云り、又黃山谷の詩に、錫谷寒泉橢石倶と云も是也、〈橢ハ形長狹ナルヲ云〉又擇&size(5){二};水中潔淨白石&size(5){一};、帶&size(5){レ};泉煮&size(5){レ};之尤妙也と云り、此石の類、靑灣茶話に、河内の枚方の驛の上坂川と
云河原に有と云り、此頃山僧雲水の路次、近江の石部の宿より、佳茗少許に、加へて、小石一枚を倶に封裹して餉來る、是茶の産地の石と倶に煎るべき風流、甚興有事におぼえし、又水を製する法有、常品の水を瓦罐に沸せて、屋上或は庭砌に架を造り、瓦罐を其上に置、蓋を去、一夜星露を承しむれば上品の水となれる事、試みし所也、此事知新錄に見えたり、又一法、羅牟毗伎(ランビキ)を用て、水の英靈を取、是に星露を承しむれば、上品となる也、喫茶家淸泉に遉きは一大厄なり、東坡は常に玉女河の水を愛し、符を齎せて汲しめ、且此流を枕に爲ざる事を歎息せしとぞ、又山居の人は筧を造りて水を引、承&size(5){二};之奇石&size(5){一};、貯&size(5){レ};之以&size(5){二};淨缸&size(5){一};と見えたり、刳&size(5){レ};木取&size(5){レ};泉遠と云は是也、又水は輕きを上首とのみ云も、大統の論也、山水は渟潦の品も輕し、江水は茶に宜しきも、鹹苦腥臭の井より重きが有、茶譜に、山頂泉淸而輕、山下泉淸而重と見え、鍾伯敬も源泉必重、而泉之佳者重と云へば、一槩なるべからず、只々水は石に出るもの佳也と云へば、山泉湧流の品にこゆる者なし、文子の水之性淸、沙石穢&size(5){レ};之と云説のいぶかしきなり、水品の論猶多かり、試みざる者不&size(5){レ};言、水擇ばざれば湯の功なし、湯者寔に茶の司命也、克々擇びて煮べき者也、
**〔煎茶綺言〕
***〈一〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0792:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0792.pdf]] 驗&size(5){レ};水&br;毛文錫云、茶ハ水ノ神、水ハ茶ノ體、ソノ水ニアラザレバ其神ヲ顯スコトナシ、精茶ニアラザレバ曷ソノ體ヲ伺ハム、嘗云、新水活水大江流水皆好、然レドモ道遠ケレバ厚味ヲ失フ、飛泉湍流陰翳ノ澗水ハ、性ハゲシウシテ宜シカラズトゾ、又云、井泉流水ハ體輕ク、味ヒ廿キヲ嘉シトストイヘド、水ノ甘キハイカデカ知ベケン、皆オホカタノ説ニシテ、未ダ試ミザル水ハ茶ヲ烹ニ及デ其品ヲ定ムベキ、夫レ水ハ地脈ニヨリテ〓湧ストイヘド、五味ナク、只鹹鐵士ノ三氣ヲ狹ム、サレド其微ナルハ、單飮シテ之ヲ口裏ニ識ルベカラズ、只茶ヨク其體ヲ知テ其神ヲ顯ハス、今コレヲ審ニスルニ、井泉江水及輕重ニ抱ハラズ、平旦ニ新汲水ヲ取、白瓷鍾三箇ニ盛テ、一ニハ鮮明ノ鐵線ヲ
投ジ、一ニハ硏末セシ五倍子ヲ投ジ、一ニハ瑩徹ノ明礬ヲ投ジ、淸室中二置、一夜ヲ過テ是ヲミルニ、鐵線クモルモノハ鹹氣ナリ、五倍子皂色ヲイタスモノハ鐵氣ナリ、明礬毛茸ヲ生ズルモノハ土氣ナリ、其三件全ク元ノ如ナルハ、極テ潔水、茶神ヲミルニ疑ヒナシ、僻地潔水ナキ所ハ、新水ヲ取、土瓶ニ盛リ煮熟シ、一宿露天シテ、明朝ニ上淸ヲ用ナバ稍佳ナリ、又流水ノ如キ、性ハゲシキモノモ此法ヲ取ベシ、寒中ノ水ヲ蓄置カ、蒸露鑵(ランビキ)ニテ水ヲ製スルモ可ナリ、サレド眞味ハ得ガタシ、陸放翁ガ入蜀記ニ、溺水ニ杏仁ノ末ヲ入テ、夕ヲ過テ飮ベシト云ヘリ、田藝衡ガ小品ニ、白石ヲ擇トリテ、泉ニ帶テ煮トイヘリ、是法タトへ宜シトモ煩シ、マタ綠天ノ雨、琅玕ノ雪ヲ烹ハ、幽境ヤムコトナキノ所爲ナメリ、
*&aname(E7858EE88CB6E6B9AFE58099){湯候};
**〔煎茶仕用集〕
***〈上〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0793:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0793.pdf]] 湯候&br;茶を嗜む人、湯候をしらずんばあるべからず、點茶家者流には、みだりに湯を老爛するをよしとす、是何の益ぞや、余〈○大枝流芳〉したしく試に、湯久しく煎ばおもくなりて、生氣を失ふて毒となる、養生家に、久しぐ煮たる湯にて面を洗時は光澤をうしなふといへり、是にても其一つならざる事しるべし、况や何程ふるき釜にても、久しく煮ば鐵氣出て惡し、老湯は害ありて益なき事察すべし、
**〔淸風瑣言〕
***〈上〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0793:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0793.pdf]] 湯候&br;湯は甘泉淸流を擇び、法を以て煮るべし、茶經に老湯三沸の法を立、其候、始は茶瓶茶壺いづれにても先微々の音を出す、蟹眼魚眼散布等の序次有、中間には、四邊泉の涌が如く、珠を連ぬるに似、終は騰&size(5){レ};波鼓&size(5){レ};浪、こゝにいたりて水の性消、是茶を煮べき節也、是を過れば湯の性却りて鈍く、茶韻不&size(5){レ};興、茶譜には、其音を聽て候ふべし、初振驟の三音過て、無&size(5){レ};聲にいたり茶を烹ると見えたり、蘇廙の十六湯品に、湯者茶之司命也、湯濫りなれば、上品の茶も凡種となれると云り、
**〔煎茶綺言〕
***〈一〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0794:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0794.pdf]] 湯候&br;湯沸ニ新汲潔水ヲ盛、襄爐ニ活火ヲ起シ、初沸〈魚眼〉二沸〈連珠〉三沸〈波騰〉ヲ候シ、瓶中ニ茶ヲ投ジ湯ヲ沃ギ、湯面ノ氣眼ヲサマリ、茶脚沈ムヲ節トシテ、芳鮮ヲ喫スベシ、古人是ヲ初巡トス、初巡ハ則半韵色嫩、次ニ沸湯ヲサシ喫セシム、是ヲ再巡トス、則醇美廿冽ナリ、三巡則意况盡、 ムベカラズト、凡ソ煎茶ハ烹ニ逡速ヲ要トス、湯熟スレバ性弱ニシテ芳韻乏シ、マタ昔日ヨリ山林ノ人茶ヲ盌中ニオキ、沸湯ヲ衝、茶筅ヲモテ泡ヲタテヽ喫ス、是ヲ泡茶マタ沖茶ト云フ、實ニヒナビタル太古ノ風ナリ、
*&aname(E7858EE88CB6E7858EE6B395){煎法};
**〔煎茶仕用集〕
***〈上〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0794:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0794.pdf]] 庵茶&br;茶經曰、有&size(5){二};觕茶、散茶、末茶、餅茶者&size(5){一};、乃硏、乃熬、乃煬、乃舂、貯&size(5){二};於瓶缶之中&size(5){一};、以&size(5){レ};湯沃&size(5){レ};焉、謂&size(5){二};之庵茶&size(5){一};、&br;五雜俎曰、古、時之茶、曰&size(5){レ};煮、曰&size(5){レ};烹、曰&size(5){レ};煎、須湯如&size(5){二};蟹眼&size(5){一};、茶味方中、今之茶、惟用&size(5){二};沸湯&size(5){一};投&size(5){レ};之、稍着&size(5){レ};火卽色黃而味澁、不&size(5){レ};中&size(5){レ};飮矣、廼知古今之法、亦自不&size(5){レ};同也、&br;此二條とも、こゝに云だし茶也、茶經すでにだし茶を云ば、謝氏が論のごとく、古になしとは云がたし、是茶を沸湯の中に入て、火を以て煮ず、香氣の發するを待て飮、世俗に云、隱元禪師始て日本に此法を傳ふと云り、本邦の茶は、だし茶によろしからず、舶來のものをよしとす、武夷山の茶まれに渡來す、得がたし、其香蘭に似り、茶少し焙して後、洗て瓶に入れ沸湯を入る、また洗はずしてもよし、渡來の茶、風味和品と異にして、又賞すべし、
**〔淸風瑣言〕
***〈上〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0794:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0794.pdf]] 煎法&br;蘇子瞻の詩、佳茗似&size(5){二};佳人&size(5){一};と云句有、予〈○上田秋成〉云、茶者高貴の人に應接するが如し、烹點共に法を濫れば、其悔かへるべからず、煎法蒸焙の茶は烹るに宜しく、炒茶は淹煎に宜し、法則先湯の茶を烹べきを候ひて、茶を急に瓶に投れ、卽手に火爐を去て盆上に置、一霎時熟するを待て飮べし、熟味
の候は、瓶中の茶葉の沈めるを節とす、淹茶は別鑵に湯を沸せて、茶瓶を沃盆の上に居て、茶を先瓶に投、瓶の外面より熱湯を沃ぎ、温氣を内に通ぜしめて後、瓶中に湯を汲入る也、杓を高く擧れば湯躍りて茶韻を勵す、熟味を待事、法上に同じ、又烹るに臨みて茶葉を洗ふ法あり、是茶に塵垢有を去爲也、別に瓦盆を儲て、〈是を漉塵と名づく〉新汲の水に一洗し、竹匙を以て瓶に移し、而後湯を汲入る也、沃盥の圖茶經に出たり、但上製の品は不&size(5){レ};可&size(5){レ};洗、洗へば淸韻を脱す、鐺炒の茶は氣味共に濃く、洗ふて宜し、又淹茶の㨗法有、先瓶中に茶を投、一杓の温湯を汲入て茶葉を洗ひ、卽瓶の嘴より去て、更に熱湯を汲み熟候を待也、一二巡にして湯を次も可也、唯瓶を盡して、復烹るには及ず、茶譜の投茶法に、茶を先にし湯を後にするを下投と云、湯を半汲て茶を投、復び汲を中投と云、湯を先に茶を後にするを上投と云、春秋は中投、夏は上投、冬は下投宜しと云り、是精細の法也、然ども淹煎は〈卽下投なり〉茶葉の沈む事遲し、烹る〈上投〉に劣れる證也、茶疏に云、一壺の茶、〈壺は卽瓶の屬也〉只堪&size(5){二};再巡&size(5){一};、初巡鮮美、再巡甘醇、三巡意欲&size(5){レ};盡矣とぞ、多く不&size(5){レ};可&size(5){レ};飮、暗中の害あるべし、廬同の茶歌に、一椀喉吻潤、二椀破&size(5){二};孤悶&size(5){一};、三椀披&size(5){二};枯膓&size(5){一};、唯有&size(5){二};文字五千卷&size(5){一};と云は、茶飮の節に適ひたる也、四椀に及て發&size(5){二};輕汗&size(5){一};、平生不平の事、盡向&size(5){二};毛孔&size(5){一};發と云ぞ、漸醉夢の境に入し者よ、五椀肌骨淸、六椀通&size(5){二};仙靈&size(5){一};といひ、七椀にいたら喫不&size(5){レ};得也、唯覺&size(5){二};兩腋習々淸風生&size(5){一};、蓬萊山在&size(5){二};何處&size(5){一};等の語者、大醉の妄言にして、五千卷隻字も胸臆に記すべからぬをしられて、酒仙の道路に倒るゝと異なる事なし、予前年浪華の喫茶家にて、點茶三椀を貪り、卽時に立て一里の行程を歸る、此日中冬下旬、郊外の晩景風尤烈しく、往來の人皆苦吟して走る、予一人北風を面に浴すれども、更に飢寒を思はず、却て輕汗を發し、薄暮蝸盧に歸りぬ、是暫く茶仙の醉境に入し者也、平生渴を患ひて、漏危の癖あれど、いまだ其害を覺らず、蓋暗中の損有べし、又茶錄に、茶を品する者、一人得&size(5){レ};神、二人得&size(5){レ};趣、三人得&size(5){レ};味、七八人是名&size(5){二};施茶&size(5){一};、と見ゆるをもおもへ、客主の淸雅、多飮にあらず、衆多にあらぬ事を、
分量&br;茶の分量、烹るは水一合に茶五分を適とす、濃きを好む者は是に增べし、炒茶は量を不&size(5){レ};可&size(5){レ};過、又淹茶は大方に湯を次故に、量を增も宜し、但茶品によりて活用有べき也、色味共に濃に渦る者淸韻なし、
*&aname(E7858EE88CB6E7858EE88CB6E585B7){煎茶具};
**〔淸風瑣言〕
***〈下〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0796:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0796.pdf]] 選器&br;茶瓶は小器を要むべし、湯候ひやすく、且客を迎へて再三煎るの興あり、只前煎の宿氣を去ざれば茶の色香なし、新汲の水に克々滌ひて再烹るべし、常に一煎して宿氣なからしむれば、客來たりて急卒の効有、怠るべからず、黃金銀錫の製造有、高貴の玩器、不&size(5){レ};試ば不&size(5){レ};言、分限に應じて玩弄すべし、磁器の功用尤佳なり、西土より渡せるは、形狀の文藻のみならず、用を專らと造りたれば宜し、古渡の物得がたし、淹煎の器、今も多く來たる、古代の物に比ぶれば麁品にて愛玩する者なし、古器を得んと欲する者効用の爲にて、點茶家の舜盌禹笻を撿索する談にあらず、古渡の茶瓶たまたま得たらば、京師の名工に摸さしめ、破壞の厄に備ふべし、&br;湯鑵、黃金白銀の製は措て論ぜず、錫鐵銅鍮瓦數品の中に、瓦罐の効勝れたり、銅鐵鍮の性臭、茶に敵す、錫は淡しく害なし、新古を論ぜず、鐵鑵を用ふる事、點茶家の弊也鐵鑵の湯熟爛すれば、古製といへども、鉎氣爛れ出て茶味を害す、茶譜に、湯用&size(5){レ};嫩、而不&size(5){レ};用&size(5){レ};老と見え、茶疏に、過&size(5){レ};時老湯不&size(5){レ};堪&size(5){レ};用といへり、烹點共に害は同じ、試みよ終日煮過せし湯を以て面を洗ふに、其皮膚を刺す者は鐵氣也、且甘味とおぼゆるも卽鉎氣のみ、瓦罐も泥氣有は湯宜しからず、只新古美醜を論ぜず、湯の宜しきをえらぶべし、又茶解に湯銚と云有、釜め小而有&size(5){レ};柄有&size(5){レ};流者と云り、和名抄に、辨色立成云、銚子、和名佐之奈閉と云るは、都良香の銚子の銘に、多煮&size(5){二};茶茗&size(5){一};、飮來如何、和&size(5){二};調體肉&size(5){一};、散&size(5){レ};悶除&size(5){レ};痾と有を以て、當時は湯銚に茶を烹たる事を芝らる、又和名鈔の同條に、鐎、温器也、三足有&size(5){レ};柄と云も、銚の屬なるべ
し、是等も茶具に用ひし乎しらず、&br;茶盞、或者茶杯とも云、是も小器を宜しとす、西土明世の製造白磁なる者宜し、茶史に、盞以&size(5){二};雪白&size(5){一};爲&size(5){レ};上と見ゆ、或は椀と云、鍾と云、甌と云、其形少(ワヅ)かの異有のみ、白磁を貴むは、茶の靑黃候ひやすきを以てなり、點茶家黑椀を貴むは、漚花の白色を試ん爲也、茶盞用ふる時、潔滌を專らと力むべし、茶略に、山僧迎&size(5){レ};客餉&size(5){レ};茶時、猶將&size(5){二};濕絹&size(5){一};向&size(5){二};茶碗内&size(5){一};、再三掍拭、此誠得&size(5){二};茶中三昧&size(5){一};者と見ゆ、茶箋には、茶具滌爭覆&size(5){二};竹架&size(5){一};、俟&size(5){二};其自乾&size(5){一};爲&size(5){レ};佳、其拭巾只宜&size(5){レ};拭&size(5){二};外面&size(5){一};、切忌&size(5){レ};拭&size(5){レ};内、蓋布帨雖&size(5){レ};潔、一經&size(5){二};人手&size(5){一};、極易&size(5){レ};作&size(5){レ};氣、縱器不&size(5){レ};乾亦無&size(5){レ};害と云り、共に深切の説也、諸書に盞と云、杯と云、椀と云、御國には上古より椀と云しと思ゆ、大和物語に、良峯宗貞五條わたりに雨やどりしたる家にて、あした菘を蒸ものと云物にして、ちやうわんに盛て出せしを、興有事に後まで忘れかねつると云事見ゆ、〈茶椀をちやうわんとなだらかにとなふる類、そのかみの詞づかひなり、これをある人長椀と解しは、いぶかしき事也、〉&br;火爐風爐、共に西土の製造佳也、効用を專らに造りたり、こゝに造れるも、かしこに象れる者宜し、茶具の圖、茶經に十二具を出し、附錄に七具を見はす、遵生八牋に十六具の目見ゆ、烹點共に今は長物と思しきもあれば、擇びて取べし、必備ふべき具、&br;火爐 風爐 苦節君〈茶經に圖あり、風爐を覆ふ具、〉 湯鑵 茶瓶 茶壺〈茶瓶と同用の者〉 水注 水杓 分茶盒 茶罌 茶匙〈竹或ハ瓢或ハ銅器〉 茶盞 飛閣 沃盆 水曹〈茶葉を洗ふ盤〉 受汚 納汚 烏府 降紅 團風 焙爐&br;小物は悉く器局に收むべし、竹籃を以て製するを都籃と稱す、總て器物は分限に應じ有に任すべし豪富の家には、珍奇を搜索めて著靡の情を恣にす、山林の士は、新麁を嫌はず、効用淸潔を專らと擇ぶべし、
**〔木石居煎茶訣〕
***〈上〉
>https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png [[p.0797:https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/yugi_1/yugi_1_0797.pdf]] 〈和名〉こんろ 經〈○茶經〉に風爐とありて、其製銅鐵泥の三通りあり、眞〈○眞齋淸事錄〉には
凉爐とよべり、今用ふる所はこゝに圖〈○圖略〉するごときの類にして、形狀一ならず、いづれも明以後の製なり、按ずるに、コンロとよぶは風爐、凉爐等の唐音なるべし、しかるを俗間に崑崙の文字などを配當せしは、謂れなき傳會の説といふべし、&br;〈和名〉こんろぶた 錄〈○茶錄〉に爐蓋とあるは、疏〈○茶疏〉にいふ所の雪洞にして、今末茶家に用ふる雪洞是也、こゝに圖〈○圖略〉するはコンロブタにして、近ごろ新渡にたま〳〵これを見る、コンロに火を、用ひし後、これをもて覆ふに、灰燼騰散の憂ひなく、頗る便利を覺ゆ、舶來に蓮葉などをかたどれるもの多し、&br;〈和名〉ゆわかし きびしやう 杜〈○杜氏全集〉に急須、疏〈○茶疏〉に茶注甌、注湯銚、資〈○資暇錄〉に茗瓶、會〈○曾典〉に茶瓶、間〈○間情偶奇〉に茗壺、類〈○類書纂要〉に砂罐、眞〈○眞齋淸事錄〉に茶壺など、さま〴〵の名、種々の形もあれど、いづれも明以後のものにして、ユワカシも、キビシヤウも、素より一物なるを、三四十年來淹茶になりてより、ユワカシとキビシヤウと、二物のごとくもてはやす俗習とはなりぬ、〈○中略〉石〈○石山齋茶具圖譜〉に急尾燒の稱あり、キビシヤウの和名は、全くこゝにもとづくなるべし、&br;〈和名〉ひしやく 經〈○茶經〉に又犧杓ともよびて、圖〈○圖略〉の如くふくべにて造り、或は梨の木にても作るとあり、譜〈○茶譜〉に分盈、花〈○花史左編〉に水杓などいふも、みなヒシヤクにして、或は竹の節ある所を底にして造れるなどの類多し、&br;〈和名〉みづさし 經〈○茶經〉に熟孟とあるは、漉したる水を貯ふるゆゑの名なり、譜〈○茶譜〉に圖する雲屯は、則こゝに圖〈○圖略〉するものにして、運びに便なるを旨とするものなるべし、備〈○居家必備〉に兩耳あるものを、水提點といへるも、又此雲屯の類ならんか、經に水方とあるは、四角なる水さしをいへり、まうきはすべて方といひがたし、&br;〈和名〉みづつぎ 疏〈○茶疏〉に〓水、石〈○石山齋茶具圖譜〉に水罐などいひて、圖〈○圖略〉のごとく後手、或は上手、或

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