貝/名稱

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝體〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1613 貝 尚書注云、貝〈音拜、和名加比(○○)〉水物也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝體〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1613 介虫總名、加比者以其有一レhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01083.gif 也、〈○中略〉所引禹貢孔傳文、按西山經、邽山濛水出焉、其中多黃貝、注貝甲蟲、肉如科斗、但有頭尾耳、貝是貝子、古以爲貨幣者、國俗呼子安貝是也、以爲甲介之稱者誤、然日本紀有貝鮹、延喜式有白貝、貽貝、皆非貝子、則其謬來亦已久矣、

〔段注説文解字〕

〈六/下貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1613 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02051.gif 海介蟲也〈介蟲之生於海者〉居陸名猋、在水名蜬、〈(中略)虫部曰、蜬毛蠹也、則非貝名、〉象形〈象其背穹隆而腹下岐、博益切、十五部、〉古者貨貝而寶龜、〈○註略〉周而有泉、〈○註略〉至秦廢貝行錢、〈○註略〉凡貝之屬皆从貝、

〔類聚名義抄〕

〈三/貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1613 貝音拜、和名、方ヒ、一云カヒツ物(○○○○)、

〔源氏物語〕

〈十二/須磨〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1613 あまどもあさりして、かいつ物(○○○○)もてまいれるを、めしいでゝ御らんず、

〔日本釋名〕

〈中/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1613 貝(カイ) かはから也、下を略すいは家也、凡貝の類は皆からを家とす、或曰、かいは介の音也、介とはからある物、貝の事也、介の音をもちひて訓とす、

〔萬葉集〕

〈十八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1613 天平二十年春三月二十三日、左大臣橘家之使者造酒司令史田邊福麿、饗于守大伴宿 禰家持館、爰新歌幷使古詠、各述心緖、〈○中略〉
奈美多底波(ナミタテバ)、奈臭能宇良末爾(ナゴノウラマニ)、余流(ヨル)可比乃(カヒノ/○○ )、末奈伎孤悲爾曾(マナキコヒニゾ)、等之波倍爾家流(トシハヘニケル)、〈○下略〉

〔催馬樂〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1613 伊勢海 いせのうみの、いせのうみの、きよきなぎさの、しほがひに、なのりそやつまん、かひ(○○)やひろはん、玉やひろはん、

貝種類

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1614 海蛤 凡蛤(○)ノ種類甚多シ、不擧記、スベテ海蛤ト云淡菜、蚶、西施舌、蚌、馬刀、貝子、朗光、蛤蜊、蜆、海月、海扇、潮吹貝、白貝、大貝、石ワリ貝、波遊、アサリ貝等、皆蛤ノ類ナリ、地ニヨリ異品アリ、其中ニテ蚫、蛤蜊、蚶、西施舌、文蛉、蠣、蜆等ハ上品ナリ、其餘ハ多ハ下品ナリ、伊勢ノ桑名、武州江戸、其外處々ノ海ニ多シ、〈○中略〉勢州山田ノ坤ノ方五里、波多獺ト云處ノ山ニ生蛤アリ、里人アヤシミテ神ニイハヘリ、〈○中略〉螺(○) 類多シ、不勝計、辛螺、光螺、甲香、刺螺、梵貝、チシヤコ、カウカヒ、サヾエ、河貝子(ミナ)等皆螺ノ屬ナリ、 重修本草綱目啓蒙三十一蛙蛤蚌〈○中略〉
凡ソ介ノ形長キモノヲ蚌類(○○)トシ、形圓ナルヲ蛤類(○○)トス、

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1614 諸蛤貝
集解、凡蛤貝之類不勝計矣、其漁市海俗所賣貨者、有形色、有氣味、辨論有品、若夫至花貝、梅花貝、櫻貝、千草貝、瞿麥貝、增尾貝、蘇木貝之類者、以形色而名之、盡是空殻隨潮而來、混于沙石也、若忘貝、妹背貝、袖貝、背見貝、片子貝之類者、惟以意趣所寄寓也、身無貝、空世貝者空殼也、若斯之類、皆本朝歌客之艶辭、浮虚不旦夕供給之事爾、

〔八雲御抄〕

〈三下/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1614 貝 梅花 櫻 わすれ あま かたし ふところ いたや から みなしいそ しほ やく うつせ〈みもなき也、いづれのうらのうつせにかまじはりけんと云々〉あはひ すわう いろ こやす

〔藻鹽草〕

〈十三/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1614
花貝 梅花貝 櫻貝 こ貝〈むれてひろふなどもいへり〉みやこ貝 ますおの貝〈又ますおの小貝とも〉 むらさき貝忘貝 ちくさの貝 なでしこ貝 袖貝 われ貝 かたし貝 せみ貝 あま貝 ふな貝 いたや貝 ほら貝 みなし貝いそ貝 みそ貝〈江のよどにみそかいひろふうなひこがたにふれにだにとふ人もなし〉 やく貝すはう貝 しほ貝〈しほかひひろめあつあなど云り、しほかひとはしほにまじる貝也、しほふくかひと云貝もあれど、それは別の物也、歌をしりあつむるにとれるなるべしと云々、〉 うつせ貝〈身もなき也、いづれのうらのうつせにかまじはりけんと云々みるめにまじるうつせかひとも云り、〉いろ貝 こやす貝 ふとくろ貝〈ふとくろは心得す、ふところ也、ふところ歟、ふとこうかひと云は、おほいかひの事也と云々、仍私に云、くとこと同事也、しからば、只ふとくろもたがふべからざる也、〉 からす貝 すゞめ貝 すだれ貝 うらうつ貝〈たつさはくあしのもとはをかき分てうらうつかひをひろひつるかな〉 きすかく〈かひの名也、かくとはすなごをかきのけて取を云也、よさの海のしほひのかたのすなこをかけば、きすかひありと云々、藏玉にあり、〉浪間かしは〈岩とかきこと云かひ也、なにはめがなみまかしはをとるほどに日もくれ袖に月ぞやどれる、〉 いもせ貝 ひろふ 螺をさたへと云〈さゝいと云かひ也〉 つくえの島のしたゞみ 貝しげみ〈多也、二見の浦のと云り、〉浪うちよせてける忘貝 つくえの島の小螺 櫻かひよるみしま江のうら 時うつりしてふく螺 時つぐかひ〈かひありなきみがみ袖におほはれて心にあはぬことしなき世は、かひあはせをよめる也、〉

〔貝盡浦之錦〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1615 前歌仙三十六首和歌
簾介(すだれかい)〈左一〉
山家集
波かくる吹上の濱のすだれ貝風もぞおろすいそぎ拾はむ
忘介(わすれかい)〈右一〉
後拾遺
松山のまつが浦かぜふきよせばひろひて忍べ戀わすれ貝
梅花介(むめのはなかい)〈左二〉
春風に波やおりけんみちのくの籬が島のむめのはながひ
櫻貝(さくらかい)右二〉
夫木西行
春たてばかすみのうらのあま人はまづひろふらんさくら貝をや
片貝左三〉 いせ島や二見のうらのかたし貝あはで月日を待ぞつれなき
石決明貝(あはびかい)〈右三〉
古今
伊勢のあまの朝な夕なにかづくてふあはびの貝のかたおもひして
紫貝(むらさきかい)〈左四〉
夫木
むらさきの貝よる浦の藤潟は波のかへるぞ花と見えける
白介(しらかい)〈右四〉
はる〴〵としらゝの濱の白貝は夏さへふれる雪かとぞ見る
蛤介(はまくりかい)〈左五〉
今ぞしる二見の浦のはまぐりを貝あはせとぞおもふなりけり
蜆介(しゞみかい)〈右五〉
しゞみとる堅田の浦のあま人よこまかにいはゞかひぞあるべき
溝貝(みぞかい)〈左六〉
江の淀にみぞ貝ひろふうなひこがたはぶれにだに問人もなし
馬刀貝(まてかい)〈右六〉
後撰源英明
伊勢の海のあまのまてがたまてしばしうらみて波のひまはなくとも
花貝(はなかい)〈左七〉
夫木
枝ながらうつまて波のおらねばやちり〴〵よする千代の花貝
瞿麥介(なでしこかい)〈右七〉
夫木西行
千しほしむなでしこ貝にしく色はやまとからにもあらじとぞ思ふ
空背介(うつせかい)〈左八〉
堀川百首師賴
思ふ事ありその海のうつせ貝あはでやみぬる名をや殘さん
袖介(そでかい)〈右八〉
夫木西行
波あらふ衣のうらの袖貝をしほひに風のたゝみをくかな
船介(ふねかい)〈左九〉
夫木
こぐ人も渚によする舟貝はふきくる風やつなぐなるらん
蜑介(あまかい)〈右九〉
浪まくら一夜もうきを住吉とあやしいかなるあまがいふらむ
浦打介(うらうつかい)〈左十〉
夫木
田鸖さはぐあしのもと葉をかきわけて浦打貝を拾ひつるかな
礒介(いそかい)〈右十〉
夫木人丸
水底の玉にまじれる礒貝のかた戀のみぞ年はへにつゝ
佐多部(さたべ)〈左十一〉
さたべすむ瀨戸の岩つぼもとめ出ていそしき海士のけしきなる哉
千種介(ちくさかい)〈右十一〉
夫木
君が代のためしと見ゆる長濱に千くさの貝の數もつきせじ
物(もの)あら介(かい)〈左十二〉
はちす葉のうへはつれなき浦にさへ物あら貝はつくといふなり
津貝(つかい)〈右十二〉
鴨長明
たのみつる人はなぎさのかたつ貝あはぬにつけて身をうらみつゝ
烏介(からすかい)〈右十三〉 山家集西行
浪よするしらゝの濱のからす貝拾ひやすくもおもほゆるかな
雀貝(すゞめい)〈右十三〉
波よする竹のとまりの雀貝うれしき世にもあひにけるかな
都介(みやこかい)〈左十四〉
夫木
ともすればこひしきかたの名におへる都貝をぞまつ拾ひぬる
梭尾螺(ほらのかい)〈右十四〉
山ぶしのこしにつけたるほらの貝ふくるをまゝの秋の夜の月
文蛤介(いたやかい)〈左十五〉
信實
あやしぐもうらめづらしきいたや貝笘ふく海士のならひならずや
色介(いろかい)〈右十五〉
夫木菩提院關白
汐みてば礒間になびく色貝のうきみしづみゝ戀わたるかな
破介(われかい)〈左十六〉
夫木和歌の浦にふるきくだけのわれ貝も拾へるかずに又まじりぬる
疵介(きずかい)〈右十六〉
與謝の海の汐干のかたの眞砂地を行ばきず貝ありといふなり
小介(こかい)〈左十七〉
山家集西行
なには潟しほひにむれて出たゝんしらすのさきの小貝拾ひに
眞蘇枋介(ますほうかい)〈右十七〉

しほそむるますふの小貝ひろふとて色の濱とはいふにやあるらむ
浪間柏介(なみまかしはかい)〈左十八〉 定家
難波めがなみまがしはをとるほどに日もくれ袖に月ぞやどれる
貽介(いかい)〈右十八〉
あこやとるい貝のからをつみおきて寶のあとを見するなりけり

瑞貝

〔延喜式〕

〈二十二/治部〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1619 祥瑞〈○中略〉
大貝〈貝自海出、其大盈車、○中略〉 右上瑞

貝殼

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝體〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1619 殼 唐韻云、殻〈音角、和名與貝同、〉虫之皮甲也崔禹錫食經云、河貝子、其殼上黑是、

〔類聚名義抄〕

〈九/殳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1619 殼カヒ

〔貝盡浦之錦〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1619 空背介(うつせ /○○○)〈左八 百貝圖には甲貝と云、又へなだりと云、〉
螺類〈○中略〉古來歌書の説には、すべて肉のなきを、うつせ介と云よし見えたり、まづ此前歌仙に入はつべた介也、もろこしにて、貝光又は光螺と云ものなり、

〔萬葉集〕

〈十一/古今相聞往來歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1619物陳
住吉之(スミノエノ)、濱爾緣云(ハマニヨルトフ)、打背具(ウツセガヒ/○○○)、實無言以(ミナキコトモテ)、余將戀八方(ワレコヒメヤモ)、

〔冠辭考〕

〈二/宇〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1619 うつせがひ 〈みなきこともて○中略〉
こは虚になりたる石(セ)花貝の身無をもて、實なき言にいひかけたり、〈○中略〉集中に石花と書て、勢とよめり、此せがひのうつらになりたるを、虚石花(ウツセ)貝とはいふべし、〈○註略〉

〔いほぬし〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1619 そこ〈○熊野有馬浦〉にかひひろふとて、袖のぬれければ、
ふぢ衣なぎさによするうつせ貝ひらふたもとはかつぞぬれける
○按ズルニ、貝殼ヲ貝合ニ用イル事ハ、遊戲部物合篇貝合條ニ載セタリ、

貝蓋

〔本草和名〕

〈十六/蟲魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1619 甲香、一名流螺、〈最美且香、出七卷食經、〉和名阿岐乃布多(○○○○○)

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝體〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1619 角蓋 本草云、甲蠃子中有角蓋、〈和名都比乃不太(○○○○○)〉蓋上錯似鮫魚皮者也、 玉蓋 崔禹錫食經云、小蠃子口有白玉之蓋、〈和名之太々美乃不太(○○○○○○○)、〉

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1620 醋貝(○○)〈訓須加比
釋名、玉蓋、〈食經曰、小蠃子口有白玉之蓋、訓之太太美乃不太、〉
集解、源順載食經漢語言、按今之醋貝者是也、醋貝者小螺、大如小栗手、殼類榮螺、極細小、殼外常被靑苔、其蓋如豆碧白色、亦類榮螺之蓋、而無沙積歲不壞、置酷中卽盤旋不已、入甌磁器皿則潤滑最易回轉、以爲兒女之弄戯、或謂雌雄相逐逡巡便合、下卵如粟、故有郎君相思之名、或謂婦人難産手把之便極驗、是別有一種乎、今本朝所玩者螺靨也、性瑩潔圓輕得醋之滑利、彌旋廻不滯何、有雌雄相逐之理乎、獨非醋貝、大抵貝蛤之蓋、乾枯滑利者、悉置醋中、則盤旋周巡、惟是一玩物耳、凡山中之人未海物之奧、而傳流聞之語者多、若李時珍亦近此類宜哉、

〔和漢三才圖會〕

〈四十七/介貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1620 郎君子 相思子〈本艸〉 小蠃子〈和名抄〉 玉蓋〈小螺子之蓋〉 和名之太々美、俗云醋貝(○○)、〈○中略〉
按小螺子狀類榮螺而極小、灰白色、有小厴、如豆而扁碧白色名玉蓋、海人去殼取厴販之、入磁器醋卽盤旋不已、似相逐之貌、兒女以爲戯、京洛及山人不螺之蓋、或以爲有雌雄、加之謂卵者皆憶見焉、此貝紀州海中多有之、毎二月廿二日、攝州天王寺聖靈會有舞樂、飾以大造花、其花葩粘小螺子殻、寺役人至住吉濱取之、二月十八日、暴風吹後必有之、稱之貝寄風、亦一奇也、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1620 海蠃〈○中略〉
甲香ハ海螺ノフタナリ、俗名カイカウ、法ノ如ク製シテ甲煎(タキモノ)ニ入ルレバ、諸香ヲ聚メテ散ザラシム、〈○中略〉徒然草ニ、甲香ハ武藏國金澤ノ浦ノヘナダリノフタ(○○○○○○○)ナルコトヲ云ヘリ、今ハヘナダリ(○○○○)ト云、或ハヘナダレ(○○○○)ト云、〈○中略〉
郎君子 スガヒ タマイシ(○○○○)〈豫州〉 一名雌雄石〈豫部疏〉 相思螺〈通雅〉 カラクモ介(○○○○○)ノ厴也、カラクモ介ハ一名コマノツメ(○○○○○)、〈勢州、同名多シ、〉海濱ニ甚多シ、〈○下略〉

〔貝盡浦之〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1621 酢介(すかい)
厴也(ふたなり) これ螺類の介の厴なり、黑きあり、白くされたるあり、皿に酸を入れはなてばはしる、諸方に甚だ多し、もろこしには得がたしと云り、本草に云、郎君子、相思子是なり、

〔徒然草〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1621 甲香はほら貝のやうなるが、ちいさくて口のほどのほそながにして、出たる貝のふたなり、武藏國金澤といふうらにありしを、所の者はへなたりと申侍るとそいひし、

〔類聚雜要抄〕

〈四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1621 甲香〈漬美酒、經一宿取出、削去内外膚、更煎、甘葛煎塗甲香火令色黃、但於甘葛煎、以微火之、上白有皮之時用之、一剤六合、甘葛煎用堅美、燥甲之必用微火、以鐵臼春篩之、燥甲宜蜜、無蜜用甘葛煎宜、〉

〔薰集類抄〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1621 甲香 一名流螺、南州異物志云、可衆香之、便益芳、獨燒之則臭、

眞珠

〔康賴本草〕

〈下/蟲魚部上品〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1621 眞珠 味寒無毒、和(○)、波末久利乃太末(○○○○○○○)、圖經論見之、

〔伊呂波字類抄〕

〈志/疊字〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1621 眞珠

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1621 鰒〈○中略〉
集解、〈○中略〉鰒(○)腸有眞珠、不蛤蚌、色靑白明瑩、本邦入藥以鰒珠上、蛤蜊(○○)、淺蜊(○○)次之、未識以蚌(○)珠上レ眞也、然本朝鰒珠者至寶之一、而有大如豆粒梅子、以爲小珠、與輕粉燈心同收盒中則日久必長贅出數子、以成肥大、此亦一奇也、〈○中略〉
浅蜊(○○)〈○中略〉
集解、〈○中略〉腸中多小珠、而色瑩白、海俗采之、送于藥肆市中、多亂眞珠、然入藥用亦不惡、惟功用劣矣、〈○中略〉
蚌(○)〈訓奈加他加比
集解、〈○中略〉凡本邦之人知鰒、蛤、淺蜊之珠、而釆爲眞珠、誇于藥肆、然未蚌珠之貴、是不類多之故乎、

〔和漢三才圖會〕

〈四十七/介貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1622 眞珠 珍珠 蚌珠 蠙珠 俗云貝珠〈○中略〉
按眞珠以鰒珠最上、然得之者鮮、故今用蜮䗯(アコヤカヒ/○○)、淺蜊二種而已、蚌珠亦不多、依和漢土地異乎、
伊勢真珠(○○○○) 蜮䗯珠也、勢州多取之、海西大村(○○○○)亦有其珠、小者大如猪實子、中者如麻仁、大者如黃豆、而 重五六分者爲上、至一錢目者未曾有、珍寶也、皆色潤白有微靑光、華人見之則喜求之、價最貴、以小 者藥用
尾張眞珠(○○○○) 淺蜊貝珠也、尾州多取之、近年藝州廣島(○○○○)亦有、其珠大小與伊勢眞珠異、但無光澤魚 眼玉、價亦不貴、凡眞珠藏輕粉中、則經年者稍長生贅子

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1622 眞球 カヒノタマ(○○○○○) アコヤノタマ(○○○○○○) シンガヒノタマ(○○○○○○○)能州 一名蚌胎〈事物異名〉 明月 政瑰 摩尼 速不〈共同上蒙古名〉 李藏珍〈水族加恩簿〉 神胎〈廣東新語〉 珍珠兒〈訓蒙字會〉 亞思佛〈東西洋考呂宋名〉 谷蝦羅以〈同上下港名〉
從前伊勢眞珠ヲ上品トシ、尾張眞珠ヲ下品トス、今ハ大村肥前眞珠ヲ上品トシ、伊勢眞珠ヲ次トス、僞雜多ケレバナリ、凡ソ眞珠ハ銀色ニシテ光澤アリ、微シク透トヲリテ、瑪瑙ノ如クナルモノ眞ナリ、ンノ微靑色ヲ帶ルモノハ最上ナリ、形正圓ナルモノヲ眞トス、故ニ走珠走盤珠ノ名アリ、土州ニテコロビト呼ブ、形正圓ナラザルモノハ僞ナリ、然レドモ介ニ著タルヲ離シ、採リタルモノハ、微シ長ミアリ、カビヅキト云フ、是ハ形正圓ナラザレドモ、眞物ナリ、ソノ體甚堅硬、鐵椎ニテ搥テモ碎ケ難シ、破ル時ハ層層相重リテ、鮓荅(セキフン)ノ如ク内外同色ナリ、又金色ナルモノアリ、大村ニテキンズキト云、土州ニテキダマ(○○○)ト云、又微紅色ヲ滯ルモノアリ、勢州ニテアカダマ(○○○○)ト云フ、皆上品ナリ、又微黑色ヲ帶ルモノアリ、土州ニテゴミクヒ(○○○○)ト云、勢州ニテドロクヒ(○○○○)ト云フ、皆最下品ナリ、伊勢眞珠ハ皆志摩領ニテ採ル、勢州ニハ眞珠ナシ、今ハ土州能州ニテモ採ル、又ヨメノタマ(○○○○○)〈志州〉ト呼ブモノアリ、一名ヒザガヒノタマ(○○○○○○○)、〈同上〉伊勢眞珠ノ小ナルニ、多ク此物ヲ雜ユ、大村眞珠モシ カリ、ソノ色眞珠ニ異ナラズ、形メ正圓ナラズシテ微長シ、一頭平ナルモノアリ、一頭尖アルモノアリ、稀ニハ正圓ニシテ辨別シガタキモノアリ、上品ノヨメノタマハ、下品ノ眞珠ヨリ好ク見ユ、然ドモ質眞珠ニ比スレバ柔軟ナリ、新渡ノ眞珠ハ、色白ミ多クシテ、和産ヨリ軟ニシテ碎ケヤスシ、廣東新語ニ載スル養珠ニ近シ、尾張眞珠ハ、色濁白ニシテ光彩ナシ、或ハ黑色ヲ帶ルアリ、是蛤仔(アサリ)、文蛤(ハマグリ)、魁蛤(アカヾヒ)等ノ珠ニシテ、眞ニ非ズ、蚌珠ハドブガヒノ殼ノ内ノ色ニ同ジ、タガヒノタマ(○○○○○○)ト呼ブ、蜆ノ珠、淡菜(イガヒ)ノ珠モ、皆其殼ノ裏ノ色ニ同ジ、牡蠣ノ珠ハ色白シ、石決明ノ珠ハ、日本紀ニアハビシラタマ(○○○○○○○)ト云、萬葉集ニアハビダマ(○○○○○)ト云フ、今藥舖ニテハ眞珠ト呼バズ、單ニカヒノタマト呼ビテ、價甚ダ賤シ、ソノ珠紫綠色ニシテ、千里光ノ内ノ色ノ如クシテ光澤アリ、又靑色ナルアリ、形ハ長アリ、橢アリ、正圓アリ、一ナラズ、至テ大ナル者アリ、全腸珠トナリタルアリ、又至テ小ナル者アリ、皆腸中ニアリ、又殻ニツキタルモノアリ、靑色多シ、肉中ニ胎スルモノハ稀ナリ、ソノ形圓ニシテ甚ダ眞珠ニ似タレドモ、眞珠ヨリハ微シ靑ミアリテ硬シ、眞珠ハアコヤガヒヨリ出ル珠ナリ、李珣ノ説ニ、眞珠出南海石決明産也ト云、癘瘍全書ニ、石厥明一名眞珠母ト云、本經逢原ニ、石決明一名珍珠母ト、云フ、皆非ナリ、廣東新語ニ、或以爲石決明産非也ト云フ、正説トスベシ、

〔日本山海名産圖會〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1623 鰒〈○中略〉
眞珠〈漢名李藏珍〉
是はアコヤ貝の珠なり、卽伊勢にて取りて、伊勢眞珠と云て上品とし、尾州を下品とす、〈○中略〉アコヤ貝は一名袖貝といひて、形袖に似たり、和歌浦にて、胡蝶貝と云、大きさ一寸五分二寸ばかり、灰色にて微黑を帶たるもあるなり、内白色にして靑み有、光ありて厚し、然れども貝毎にゐるにあらず、珠は伊勢の物形圓く、微し靑みを蔕ぶ、又圓からず長うして、綠色を帶ぶるもの、石決明の珠なり、〈○中略〉尾張は形正圓からず、色鈍(ど)みて光耀なく、尤小なり、是は蛤、蜆、淡葉(イカイ)等の珠なり、 附記
或云、あこやといへるは、所の名にして尾張の國知多郡にあり、〈○中略〉新猿樂記には、阿久夜玉(あくやたま)と見ゆ、萬葉集の鰒玉を、六帖にあこや玉と點ぜり、又近比波間かしはと云貝より多く取得るともいへり、〈○下略〉

〔日本書紀〕

〈十三/允恭〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1624 十四年九月甲子、天皇獦于淡路島、〈○中略〉終日以不一獸、於是獦止以更卜矣、島神祟之曰、不獸者、是我之心也、赤石海底有眞珠(シラダマ)、其珠祠於我、則悉當獸、爰更集處處之白水郎、以令赤石海底、海深不底、唯有一海人、曰男狹磯、是阿波國長邑之海人也、勝於諸海人、是腰繫繩入海底、差頃之出曰、於海底大蝮、其處光也、諸人皆曰、島神所請之珠、殆有是蝮腹乎、亦入探之、爰男狹磯、抱大蝮而泛出之、乃息絶以死浪上、旣而下繩測海底六十尋、則割蝮、實眞珠有腹中、其大如桃子、乃祠島神而獦之、多獲獸也、〈○下略〉

〔日本書紀〕

〈十六/武烈〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1624 十一年八月、〈○仁賢、中略、〉太子〈○武烈〉贈影媛歌曰、擧騰我瀰儞(コトガミニ)、枳謂屢箇皚比謎(キ井ルカゲヒメ)、拖摩儺羅磨(タマナラバ)、婀我裒屢拖摩能(アガボルタマノ)、婀波寐之羅陀磨(ハビシラタマ)、〈○下略〉

〔日本書紀通證〕

〈二十一/武烈〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1624 鰒具珠也、見允恭紀、蓋婀波寐寄逢之義也、寐作寤誤、 神名式、伊豆國田方郡鮑玉白珠比http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02052.gif 命神社、

〔萬葉集〕

〈十八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1624京家眞珠歌一首幷短歌
珠洲之安麻能(スヾノアマノ)、於伎都美可未爾(オキツミカミニ)、伊和多利氐(イワタリテ)、可都伎等流登伊布(カヅキトルトイフ)、安波妣多麻(アハビダマ)、伊保知(イホチ)毛我母(ガモ)、波之吉餘之(ハシキヨシ)、都麻乃美許登能(ツマノミコトノ)、許呂毛泥乃(コロモデノ)、和可禮之等吉欲(ワカレシトキヨ)、奴婆玉乃(ヌバタマノ)、夜床加多古里(ヨドコカタサリ)、安佐禰我美(アサ子ガミ)、可伎母氣頭良受(カキモケヅラズ)、伊泥氐許之(イデヽコシ)、月日余美都追(ツキヒヨミツヽ)、奈氣久良牟(ナゲクラム)、心奈具佐爾(コヽロナグサニ)、保登等藝須(ホトヽギス)、伎奈久五月能(キナクナツキノ)、安夜女貝佐(アヤメグサ)、波奈多知波奈爾(ハナタチバナニ)、奴吉麻自倍(ヌキマジへ)、可頭良爾世餘等(カヅラニセヨト)、都追美氐夜良牟(ツツミテヤラム)、
白玉乎(シラタマヲ)、都々美武夜良波(ツヽミテヤラバ)、安夜女具佐(アヤメグサ)、波奈多知婆奈爾(ハナタチバナニ)、安倍母奴久我禰(アヘモヌクガネ)、
於伎都之麻(オキツシマ)、伊由伎和多里氐(イユキワタリテ)、可豆具知布(カヅクチフ)、安波妣多麻母我(アハビダマモガ)、都々美氐夜良牟(ツヽミテヤラム)、 和伎母故我(ワギモコガ)、許己呂奈具左爾(コヽロナグサニ)、夜良無多米(ヤランタメ)、於伎都之麻奈流(オキツシマナル)、之良多麻母我母(シラタマモガモ)、
思良多麻能(シラタマノ)、伊保都都度比乎(イホツヽドヒヲ)、手爾牟須妣(テニムスビ)、於許世牟安麻波(オコセンアマハ)、牟賀思久母安流香(ムガシクモアルカ)、
右五月〈○天平感寶元年〉十四日大伴宿禰依興作

〔山家和歌集〕

〈下/雜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1625 いしこへわたりたりけるに、井かひと申はまぐりに、あこやのむねと侍る也、それ をとりたるからを、たかくつみをきたりけるをみて、
あこやとる井がひのからをつみをきてたからの跡をみする也けり

〔渡邊幸庵對話〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1625 一眞珠は唐にても重寶とす、予も所持したりとて、見せ被申候、常體より大き成眞珠也、銀の香箱に入て被置ける也、光り有て、太だ稀也、眞珠蚫の貝、伊勢立貝、今一色語られけれ共失念、〈○下略〉

〔倭各類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1625 蚌蛤 兼名苑云、蚌蛤、〈放甲二音、蚌或作蜯、和名波萬久理(○○○○)、〉一名含漿、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1625 波末久利、濱栗也其形似栗子海濱也、本草和名云、和名多加比新撰字鏡、蜌蚌也、長田加比、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01890.gif 大田加比、源君不之也、按蚌訓多加比允、今加賀美濃曰多賀比、近江曰土夫賀比、其波末具利宜文蛤上レ之、蛤是介屬(○○○○)、兩甲相合者之總名(○○○○○○○○)爾、故説文云、蛤、蜃屬有三、皆生於海、厲千歲雀所化、秦人謂牡蠣、海蛤者百歲燕所化也、魁蛤一名復累、老服翼所化也、今本説文多誤脱、今依爾雅音義引、王念孫曰、蛤之言合也、兩殼相合也、〈○中略〉按爾雅云、蚌含漿、蓋兼名苑本於此、郭注爾雅云、蚌卽蜃也、月令注、大蛤曰蜃、晉語注、小曰蛤、大曰蜃、郝曰、蚌類多薶伏泥中、含肉而饒漿、故被含漿之名矣、

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1625 蚌蛤〈放甲二音 ハマグリ 今ツヒ上下倶ハマグリ〉

〔下學集〕

〈上/氣形〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1625 蛤蚌(ハマグリ)〈二字義同〉

〔東雅〕

〈十九/鱗介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1625 蚌蛤ハマグリ 倭名鈔に兼名苑を引て、蚌蛤はハマグリ、一名含漿と註す、東璧本草に よるに、蚌と蛤と、同類而異形、長者通曰蚌、圓者通曰蛤と見えたり、此國にしてハマグリと云ひしは、其形の圓ならむにも、長ならんにも、すべて海濱砂泥の間にある事、石の地中にある如くなれば、ハマグリといひし也、されば蚌蛤の二字、引合せて、讀てハマグリとはなしけるなり、卽今花蛤をのみハマグリといふは、古義とは見えず、〈石をグリと云ふ事、前の石の註に見ゆ、〉

〔物類稱呼〕

〈二/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1626 蛤蜊はまぐり 上總にてぜんな(○○○)と云、同國にて蛤の大な畜物を小だま(○○○)と云、小なるを大玉(○○)と云〈是は雄鷹をせうといひ、雌鷹をだいといふ詞に似たり、意は別也、〉

〔大上﨟御名之事〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1626 女房ことば
一はまぐり おはま(○○○)

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1626 蛤〈訓波萬久理、古訓(○○)宇無木(○○○)、○中略〉
集解、江海處々有之、大小不一、殻有白紫赤斑及花斑雜色、其狀上尖下開、上之縫處、一片有鋸齒兩三箇、一片入鋸齒之穴而緊合、一端長、一端短、長處俗曰耳、耳有小凸、俗曰目、耳之紫黑曰耳黑、耳之靑白曰耳白、是皆通俗之稱也、肉有膜、有唇、有腸、其腸有黑靑淡黃、又有兩小柱、纒膜粘殼、纒膜者易取、粘殼者用箸徐徐撞之印落、其肉味以大爲美、小亦最佳、炙食極好、煮食次之、生食和芥薑醋亦佳、炙食有法、以松毬火上、稻草火炭火次之、縱雖此火、而妄炙之、則火透殼肉、必殼口自開、腥漿溢外以消火、煤灰混肉而不食、故常禁灰火也、煮食者釆鮮蛤洗淨入空鼎而煮則從火氣燃起、蛤漿自沸、熟時和好酒冷水少許而可也、生食者割生蛉殼口、取肉用冷水洗淨數遍而食、若以熱湯而燖之則無味也、唯恨動蛤殼内及腸中有砂者、是海俗所謂月夜蛤開口、故砂自口入、暗夜蛤閉口、故砂不入、此亦一奇也、凡以勢州桑名海上者上品、桑名土人炙蛤必用松毬子火曰、蛤能熟美而不病焉、或曰、松旣欲枯時、掘根邊四圍之土溝、用生蛤數顆、搗碎入溝中、掩之以土、則徐徐而穌、或取煎蛤汁、候冷入溝中亦可、然則松蛤素相喜之理乎、海西之産甚大而肉味亦佳、常漁艇傳送難波之市以鬻之、江都芝江及房 州下總之江濱多采之、肉味亦好、〈○中略〉大抵蛤大小殊處而成群、漁人能察其處而采之、自春二三月秋八九月最多、

〔和漢三才圖會〕

〈四十七/介貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1627 文蛤 花蛤 和名波萬久里 古云宇牟木〈○中略〉
按文蛤在海濱而形似栗、故俗名濱栗、大小不一、大者圓三寸、小者五六分、灰白色有紫黑文、而如花鮮明、故曰文曰花、又有純褐色者油貝(○○)、又有純白無文者、名耳白貝(○○○)、〈此二種者少、百中一二有、○中略〉凡蛤秋冬味勝矣、勢州桑名炙蛤得名、泉州堺浦之産、小而味美也、阿波之産、殼厚扁大、有四五寸者、和石灰煮則殼色鮮明、如琢成者、以貯膏藥等甚佳、〈○中略〉參州之産最厚堅、工人切磋作碁子

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1627 海蛤〈○中略〉 勢州山田ノ坤ノ方五里、波多瀨ト云處ノ山ニ生蛤アリ、里人アヤシミテ神ニイハヘリ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1627 文蛤 ハマグリ マダラガヒ(○○○○○) 一名文身合氏〈事物異名〉
海中ニ生ズ、淡水雜ル所ニ多シト云、或ハ泥中ニアリ、或ハ沙裏ニアリ、二三月ヨリ八九月ニ至リ最モ多シ、大小齊カラズ、其質白ク或ハ黃ニシテ、紫黑斑文一ナラズ、其黃質ナルモノヲ、キハマグリ(○○○○○)ト云、寧波府志ニ、黃蛤毎一塑一暈、殻有紋ト云是ナリ、ソノ全殻紫黑色ニシテ花斑ナキ者ヲ、アブラガヒ(○○○○○)ト云ヒ、又ビンツケガヒ(○○○○○○)ト云フ、〈○中略〉一種兩頭相等シキ者ヲ、ワケビ(○○○)ト云フ、一名宮津ハマグリ(○○○○○○)、卽丹後ニ産スルハマグリナリ、一種小ハマグリ(○○○○○)ハ、一名小ビトハマグリ(○○○○○○○)、大サ三分許ニシテ、花斑アリ、豫州小人浦ノ名産ナリ、此外ウスハマグリ(○○○○○○)、ヒメハマグリ(○○○○○○)、ハタビ(○○○)、ワタリハマグリ(○○○○○○○)ノ類猶多シ、凡蛤類甚多品、枚擧ニ遑アラズ、

〔常陸國風土記〕

〈行方郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1627 板來村近臨海濱、〈○中略〉蛤多生、

〔出雲風土記〕

〈島根郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1627 凡北海所捕雜物〈○中略〉蛤貝〈字或作蚌菜

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1627 攝津 蛤 伊勢 桑名蛤 武藏 蛤 上總 東金蛤(トウガ子ハマグリ)〈蟹蛤共云〉 紀伊 松江 浦蛤 阿波 撫養蚌〈碁石ニ用之〉 讃岐 石蛤〈濱一所ニ有、太師封給故ニ、蛤石ニ成タルト云傳侍ル、〉

〔日本靈異記〕

〈中〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1628 力女捔力試緣第四
聖武天皇御世、三野國片縣郡少川市、有一力女、爲人大也、名爲三、野狐、〈○註略〉力强當百人力、住少川市内、恃己力、浚弊於往還商人、而取其物業、時尾張國愛智郡片輪里、有一力女、爲人少也、〈○註略〉其聞三野狐凌弊於人物而取、念之、蛤捕五十斛、載船泊彼市也、亦儲備副納熊葛練韃廿段、時狐來、彼蛤皆取令賣、〈○下略〉

〔古今著聞集〕

〈二十/魚虫禽獸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1628 東大寺の上人春豪房伊勢海いちしのうらにて、海人はまぐりを取けるを見給ひて、あはれみをなして、みな買とりて、海にいれられにけり、ゆゝしき功德つくりぬとおもひて、ふし給ひたる夜の夢に、はまぐりおほくあつまりてうれへていふやう、われ畜生の身をうけて、出離の期をしらず、たま〳〵二ノ宮の御ぜんにまいりて、すでに得脱すべかりつるを、上人よしなきあはれみをなし給ひて、又重苦の身と成て、出離の緣をうしなひ侍りぬる、かなしきかなや〳〵といふと見て、夢さめにけり、上人啼泣し給ふことかぎりなかりけり、
主計頭師員も、市に賣けるはまぐりを、月ごとに四十八買て海にはなちにける程に、ある夜の夢に、畜生のむくひをうけたるが、たま〳〵生死をはなれんとするを、かくし給へば、猶本の身にてくるしみをはなれぬよしを、あまどもがなげきてなくと見て、夫より此事とゞめてけるとなん、放生のくどくもことによるべきにこそ、たゞの人の放生するをすらなげき侍るなれば、まして大神宮の御前にまいりて、生死をはなれん事は、まことにうたがひあらじ、

〔山家和歌集〕

〈下/雜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1628 くしにさしたる物をあきなひけるを、なにぞとゝひければ、はまぐりをほして侍 なりと申けるを聞て、
おなじくはかきをそさしてほしもすべきはまぐりよりはなもたよりある

〔甲陽軍鑑〕

〈二/品第六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1629 一武田信玄晴信公、十三歲の御時、駿州義元の御前は、信玄のあね子にておはします、此姉子の御方より、母公へ貝おほひのためにとて、蛤をおくりまいらせらるゝ、信玄公を勝千代殿と申時なれば、御母公より、上﨟をもつて、此蛤の大小を扈從どもに申付、ゑりわけて給はれとの御事也、卽大をばえりて、まいらせられ、小き蛤、たゝみ二帖敷ばかりに大方塞り、たかさ一尺も有つらん、是を扈從ビもにかぞへさせ給へば、三于七百あまうなり、其時諸士參候せしに、此蛤は何程あらんと問せ給ふ時、各有功の人々、二万或一万五千などゝ申す、勝千代殿仰らるゝは、人數は多くなき物ならん、五千の人數を持人は何をいたさんも、まゝなりと仰ら、れしを、きくほどごとの人、したをふるはぬ者はなし、〈○下略〉

〔先哲叢談〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1629 野中止、字良繼、小字傳右衞門、號兼山、〈○中略〉
嘗來江戸、及歸期也、致書郷人曰、土佐無物不一レ有、自江戸http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02054.gif 歸、惟有蛤蜊一艘耳、海路幸無恙、以歸日饋之、衆以爲異味、計日待歸、旣至、則命投其所漕於城下海中、不一箇、衆怪問、兼山笑曰、此不獨饋諸卿、使卿子孫亦飫一レ之也、自此後、果多生蛤蜊、遂爲名産、衆始服其遠慮

海蛤

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1629 蚶〈魽同、大含反、宇牟支(○○○)、又豆比(○○)、〉 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01645.gif 〈之戎反、螽字、宇牟支、又腹赤虫、〉 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02055.gif 〈宇牟支〉

〔本草和名〕

〈十六/蟲魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1629 海蛤、一名魁蛤、一名㹠耳蛤、 和名宇牟岐乃加比(○○○○○○)
魁蛤〈苦廻反〉 一名魁陸、一名活東、〈表有丈、已上本絛、〉又有魽〈治體相似而圓、音呼甘反、出崔禹、〉一名伏老、〈伏翼化成、出拾遺、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1629 海蛤 本草云、海蛤一名魁蛤、〈和名宇無木乃加比〉蘇敬注云、亦謂之㹠耳蛤也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1629 按海蛤狀詳下所引本草注、魁蛤卽上條蚶、卽是、則二物不同、説文亦謂蛤有三、一牡蠣、一海蛤、一魁蛤、本草統言之耳、〈○中略〉按加比有二義、一則介蟲之總稱、一則皮甲也、故本書貝殼並訓加比、海、蛤入藥用殼、故輔仁云宇无岐乃加比也、新撰字鏡蚶http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01645.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02055.gif 竝訓宇牟岐、景行紀白蛤傍訓亦同、皆不加比、則輔仁所訓宇无岐乃加比之爲殻可證也、源君不察漫從輔仁所一レ訓、非是、 其文蛤貽貝紫貝錦貝之訓加比、卽介蟲之總名、不此同也、〈○中略〉按本草別本注云、雁腹中出者極光潤、蘇敬曰、此物以細如巨勝、潤澤光淨者好、有麄如半杏仁、不藥用、又謂爲㹠耳蛤、麁惡不堪也、然則㹠耳㹠者、海蛤之麁大者、非卽海蛤也、㹠耳合大如半杏仁、則海蛤之小可知、故曰巨勝、其細小不膾、則充宇牟岐、非是、陳藏器云、按海蛤是海中爛殼、久在泥内、風波淘灑、自然圓淨者、有大有小、亦非一々從雁腹中也、據此説亦不宇牟岐也、宇牟岐未詳、或曰、安房海中有一種蛤、其形似蚶無瓦屋之狀、其色白無文、似俗呼婆加、土俗呼宇万賀比(○○○○)、蓋宇牟伎之轉、其婆加亦宇万加比之轉也、

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1630 海蛤〈ウムキノカヒ〉

〔東雅〕

〈十九/鱗介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1630 海蛤ウムキ〈○中略〉 姓氏錄には、白蛤また大蛤ともしるせり、並に讀てウムキをいふ、ウムキとは、海蛤といふが如し、倭名鈔には、本草を引て、海蛤一名魁蛤、ウムキのカヒと注したりけり、此説の如きは、如何にやあるべき、魁蛤は卽爾雅の魁陸、其注に今之蚶也といひしもの、前に見えし蚶也、蚶と魁蛤と二物也とは見えず、〈(中略)倭名鈔に見えし所は、古にウムキと見えしは、海蛤の事をいひしかば、本草の海蛤の字を取用ひて、讀てウムキといふ、遂に其註をも併せ註せし程に、ウムキといふ者の、キサといふ者に疑しき事にはなりたるなり、〉

〔古事記〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1630 故爾八十神怒、欲大穴牟遲神、共議而至伯伎國之手間山本云、赤猪在此曲、故和禮〈此二字以音〉共追下者、汝待取、若不待取者、必將汝云而、以火燒猪大石而轉落、爾追下、取時卽於其石燒著而死、爾其御祖命哭患而參上于天、請神産巢日之命時、乃遣http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02056.gif 貝比賣與蛤貝比賣作活、爾http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02056.gif 貝比賣岐佐宜〈此三字以音〉焦而、蛤貝比賣持水而塗母乳汁者、成麗壯夫、〈○下略〉

〔古事記傳〕

〈十〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1630 蛤貝比賣は宇牟岐比賣(ウムギヒメ)と訓べし、其故は、書紀に、景行天皇東ノ國を巡り賜し時、そこの海の白蛤姓氏錄には大蛤とありを膾に作て奉りしこと見ゆ、此レを字牟岐(ウムギ)と訓メり、さて和名抄仁は、蚌蛤一名含漿、和名波万久理(ハマグリ)、海蛤、和名宇無木之力比(ウムギノカヒ)、文蛤、和名伊太夜加比(イタヤガヒ)と分ケて出せれども、蛤と 云は、波万具理の類の介蟲(カヒ)どもの揔名にて、〈右の三漢名は、彼國にても互に、混(マガヒ)て、詳には分らざれば、此方にても、古人の心々に當つらむなれば、必しも右のまゝに定むべきにもあらず、〉右の三の和名の中に、宇牟岐(ウムギ)ぞ蛤の古キ名なる、〈○註略〉字鏡にも、蚶http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01645.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02055.gif などの字を、いづれも宇牟岐(ウムギ)と記して、餘の二ノ名は凡て見えず、〈されば本は凡て宇牟岐(ウムギ)と云しを、やゝ後に其中にて、小きを濱栗(ハマグリ)とつけ、大なるを本のまゝに呼び、文(アヤ)あるを板屋貝(イタヤガヒ)とぞつけゝむ、板屋貝とは、其文の板屋根の葺目(フキメ)に似たる故の名なるべし、さて又後にはつひに宇牟岐(ウムギ)てふ名は亡(ウセ)て、大小凡て波万具理と云なりけり、○中略〉出雲風土記に、神魂命御子宇武賀比賣命と云見ゆ、〈○註略〉さて右の二比賣は卽蚶貝と蛤貝とを云なり、さるを比賣と云るは、雉を鳴女(ナキメ)と云、魚名にも、赤女、口女、鯛女など、皆女の定に云る、凡ての例ともすべけれど、此はたゞ女(メ)と云ずして、比賣と云るは、今の功を美稱て神とせる名なり、

〔日本書紀〕

〈七/景行〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1631 五十三年八月丁卯朔、天皇〈○中略〉幸伊勢、轉入東海、 十月、至上總國、從海路渡淡水門、是時聞覺賀鳥之學欲見ニ其鳥形、尋而出海中、仍得白蛤、於是膳臣遠祖名磐鹿六雁、以蒲爲手繦、白蛤爲膾而進之、〈○下略〉

〔本朝月令〕

〈六月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1631 朔日、内膳司供忌火御飯
高橋氏文云、〈○中略〉天皇〈○景行〉五十三年〈○中略〉行筆於葛飾野御獦矣、大后八坂媛〈波〉借宮〈爾〉御坐、磐鹿六獦命亦留侍、此時太后詔磐鹿六獦命、此浦聞異鳥之音、其鳴駕我久久其形、卽磐鹿六獦命乘船到于鳥許、鳥驚飛於他浦、猶雖追行、遂不捕、〈○中略〉船遇潮涸〈天〉渚上〈爾〉居〈奴〉、堀出〈止〉爲〈爾〉、得八尺白蛤一具、磐鹿六獦命捧件二種之物、獻於太后、卽太后譽給〈比〉悦給〈氐〉詔〈久〉、甚味淸造、欲御食、爾時磐鹿六獦命申〈久〉、六獦令料理〈天〉將供奉〈止〉白〈天〉、遣無邪志國造上祖大多毛比、知々夫國造上祖天ノ上腹、天ノ下腹人等、爲膾及煮燒雜造盛〈天〉、見河西山梔葉〈天〉高次八枚〈爾〉刺作、見眞木葉〈天〉枚次八枚〈爾〉刺作〈天〉、取日影〈氐〉爲縵、以蒲葉〈天〉美頭良〈乎〉卷、採麻佐、氣葛〈天〉多須岐〈爾〉加氣、爲帶、足纒〈乎〉結〈天〉、供御雜物〈乎〉結飾〈天〉、乘輿從御獦還御入坐時〈爾〉爲供奉、此時勅〈久〉、誰造所進物ト間給、爾時太后奏、此者磐鹿六獦 命所獻之物也、卽歡給〈比〉譽賜〈天〉勅久、〈此〉者磐鹿六獦命獨〈我〉心〈耳波○心耳二字、伴信友所加、〉非矣、斯天坐神〈乃〉行賜〈倍留〉物也、〈○中略〉此〈乎〉忌火〈止〉爲伊波比由麻閉〈天〉供御食、幷大八洲〈爾〉像〈天〉、八乎、止古八乎止咩定〈天〉、神嘗大嘗等供奉始〈支、○下略〉

蚌/烏蛤

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1632 蚌〈大田(○○○○)加比〉

〔本草和名〕

〈十六/蟲魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1632 蚌蛤〈貌似蜃而殼上有文理、色http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02057.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02057.gif 班々也、文項反、出崔禹、〉一名含漿、一名蜃、一名海月、一名含珠、〈出兼名苑〉 和名多加比(○○○)

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1632 蚌〈訓奈加(○○○○○)〉
他加比集解、蚌形似牡蠣、淡菜蛤等而長、殼薄於蛤蜊、太者長七八寸、或過尺、小者三四寸、其肉不佳、但爲民間之食也、凡本邦之人知鰒蛤淺蜊之珠、而采爲眞珠、誇于藥肆、然未蚌珠之貴、是不類多之故乎、江東見蚌者少、勢參及海西間采之耳、

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1632 蚌 カ ラ ス(○○○○○) ガ ヒ 、ドブガイ(○○○○)、幷江州ノ方言ナリ、琵琶湖ニアリ、長七八寸アリ、他州ニモ池塘ニ處々ニアリ、海ニハナシ、食ズベシ、殼ハ蛤粉ノ如クヤキテカベニヌル、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1632 蚌 ドブガヒ〈江州〉ダブガヒ(○○○○) カラスガヒ〈共同上〉 メタカ(○○○)〈丹州〉 カタガヒ(○○○○)〈佐渡〉タンガヒ(○○○○)〈加州〉 ヌマガヒ(○○○○)〈南部〉 ナガタガヒ(○○○○○) エガヒ(○○○) エカキガヒ(○○○○○) ゴウツウ(○○○○)〈筑後〉 ゴウツウガヒ(○○○○○○) ゴウツウゲ(○○○○○)〈共ニ同上〉 一名含漿〈爾雅〉 螃蛤〈康醫寶鑑〉 合漿〈康熙字典〉 大朴胃介〈郷藥本草〉
ドブガヒハ、池澤江湖ニ生ズ、湖中ノ産ハ大ニシテ、長サ七八寸、或ハ一尺ニ過グ、形狀狹長ニシテ一頭廣シ、〈○下略〉

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1632 烏蛤〈訓加良須加比(○○○○○)
釋名〈以殼黑烏貝乎、烏旦卽馬刀馬蛤也、〉 集解、烏貝似蚌而小、形狹而長、殻黑而麁、肉甘腥不美、但海人捕而食之、江海處處有之、瘍醫用烏貝殼、燒治腰以下之漫腫、腰以上腫無功、而言性寒、江海之生者功少、琶湖及東國川湖者功多、其琶湖者最好、又一種有雀貝(○○)者、未詳、

〔和漢三才圖會〕

〈四十七/介貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1633 馬刀〈○中略〉 俗云烏貝 又云剃刀貝(○○○)〈○中略〉
按江海泥中有蚌、長四五寸、狹細、其殻黑、冬月出於魚市、呼曰烏貝、〈宇加伊、一名加良須加伊、〉最下品也、生川澤者、殻薄頗似剃刀、而渉川人傷蹠、俗呼名剃刀貝
疑本名當烏刀、〈色黑似刀〉本草本經傳寫誤爲馬刀乎、此物不甚大、而無馬之理、恐是烏焉馬之誤矣、又和名抄以馬刀訓萬天、〈唐音之略乎〉然今云萬天則蟶也、

〔貝盡浦之錦〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1633 烏介(からすかい)〈左十三〉
蚌類 形千鳥介に同じく色黑し、白きに褐色のかすりあるを千鳥(○○)と云、又るりいろに見ゆるを、鶯介(うぐひすかい/○○)と云なり、皆同物にて、色のかはりにて、名かはる也、

〔山家和歌集〕

〈下/雜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1633 内〈○二絛院〉に貝あはせせむとせさせ給けるに、人にかはりて、〈○中略〉
なみよするしらゝの濱のからす貝ひろひやすくもおもほゆる哉

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1633 蜆〈呼典反、上、小蛤、之自彌(○○○)、〉

〔本草和名〕

〈十六/蟲魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1633 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02058.gif 蛤〈上音呼典反、貌似栗而色黑貝也、出崔禹、〉一名王琲、〈(琲恐珧談)音遙〉一名䴏蛤、〈出兼名苑

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1633 蜆貝 文字集略云、蜆貝〈昔顯、字亦作鹽、和名之々美加比(○○○○○)、〉似蛤而小黑者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1633 本草和名引崔禹http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02058.gif、無和名、疑輔仁訓之々美加比、源君依之也、今本本草和名傳寫誤脱也、按之々美加比、蓋蜆http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01083.gif 之義、以蜆入藥用http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01083.gif 、故輔仁訓之々美加比也、其説與海蛤之訓宇无岐乃加比同、源君所擧非藥用、當軍訓之々美、新撰字鏡蜆訓之自彌、萬葉集亦云住吉乃粉濱乃四時美、皆不加比、則加比爲http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01083.gif 之義證也、〈○中略〉慧琳音義引無黑字、廣韻蜆小蛤、陳藏 器云、小於蛤、黑色、生水泥中、卽此義、爾雅説文並云、蜆縊女、非此義、〈○中略〉按貝是貝子、今俗呼子安貝者、非此用、則標目宜單擧一レ蜆、源君誤似貝爲介蟲之總稱、故加貝字、非是、那波本正文蜆下有貝字、益誤、

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1634http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02059.gif 音顯 〈シヽミカヒ〉

〔伊呂波字類抄〕

〈志/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1634 蜆貝〈シヾミガヒ〉 蛤蜆〈シヾミガヒ〉

〔東雅〕

〈十九/鱗介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1634 蜆介シヾミガヒ〈○中略〉 其義は不詳〈日本紀に縮の字を讀て、シヾミといひしなり、此物の殻の上に縮める文あるを以て、云へるなる、へし、〉

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1634 蜆〈訓之之美○中略〉
集解、江河倶多有、狀似小蚌純黑色、大者兩頭上有白禿斑、而圓一二寸、小者圓三四分、大小厚薄不一、漁家常多采之作食、大者鬻市貨之、江都之芝濱、品川、隅田、葛西、戸田、荒川、多采之、肉味亦佳也、或謂蜆者蛤屬聚處、不鹹水則不居、然江之勢多橋邊多采而味最厚、是上都之嘉珍也、勢多之水卽琶湖之流雖鹹水亦有之、其末流者淀川經十二三里難波江、難波江中無蜆、則無http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01852.gif 河之理、惟湖中之蜆也、李時珍所謂溪湖中多有之類乎、今好事者取江河之小蜆、養庭池之泥沙、經兩年則大如蛤、肉肥白味亦厚美也、
肉、氣味、甘鹹冷無毒、主治、下濕熱黃症、利小水消渴、解醒酒毒、生蜆浸水洗痘癰瘢痕
附方、遍身發黃、〈生蜆煎汁候冷、日洗浴遍身則愈、〉

〔和漢三才圖會〕

〈四十七/介貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1634 蜆〈○中略〉
按蜆江河皆有之、〈○中略〉武州江戸近處多有之者、大而味佳、江州勢多之産亦得名、攝州難波蜆川多取之、而稍小、其殼燒灰爲堊、以僞石灰、與牡蠣殻灰並用、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1634 蜆 シヾミ チヾミ(○○○) ゼヽガヒ(○○○○)〈江州〉 一名䗾〈通雅〉 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02059.gif 子〈訓蒙字會〉 蟟〈八閩通志〉 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02060.gif 〈同上〉 金錂口〈南寧府志〉 蜆函〈珠璣藪殼ノ名〉 湖海倶ニ産ス、又齦淡相雜ハル處ニ生ズ、江州湖中ニ最多シ、勢田ヲ名産トス、古歌ニハ堅田ノ蜆ヲ詠ズレドモ、今ハ勢田ニ多シ、泥中ニ生ズルモノハ色黑シ、シンデンシヾミ(○○○○○○○)〈江州〉ト云、コレヲ烏蜆〈廣東新語〉黑蜆〈同上〉ト云、大ナルハ八九分、久キモノハ兩片禿テ白シ、沙中ニ生ズルモノハ色黃ナリ、アメ(○○)〈江州〉ト云、コレヲ黃蜆〈廣東新語〉ト云、廣束勅語ニモ、在沙者黃、在泥者黑ト云ヘリ、又シマシヾミ(○○○○○)アリ、色黃ニシテ竪ニ黑道ア丿、粗細一ナラズ、又斑點アルモノアリ、又海中ニ産シ、皺アラクシテ色白キモノヲサヾメト云、白蜆〈廣東新語〉ナリ、白蜆ニ同名アリ、尋常ノシヾミガラノ久クナリテ、黑皮自ラ脱シタルヲ、白蜆殼附方ト云、サレシヾミカラナリ、

〔日本山海名物圖會〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1635 蜆貝 海と河との鹽ざかひに多く生ず、又湖水にもあり、小蜆を取て泥池の中にやしなひおけば、年をへて甚だおほきくなりて、味よしといへり、蜆を取には竹籠をこしらへ、底に袋網を付て水中をかきて取也、土砂と共に袋の中へ入て、しヾみは袋の中に殘り、土砂は袋あみよりもれてのく也、身しヾみは貝を釜にてたき、水にゆりて貝殻を去て、むきみとする也、

〔播磨風土記〕

〈美囊郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1635 志深(シジミ)里〈土中中〉所以號志深者、伊射報和氣命御食於此井之時、信深貝遊上於御飯莒緣、爾時勅云、此貝者於阿波國和那散、我所食之貝哉、故號志深里

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1635 攝津 川口蜆 武藏 川口蜆 近江 蜆貝

〔萬葉集〕

〈六/雜歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1635 春三月〈○天平六年〉幸于難波宮之時歌六首〈○五首略〉
住吉乃(スミノエノ)、粉濱之四時美(コバマノシヾミ)、開藻不見(アケモミズ)、隱耳哉(コモリノミヤモ)、戀度南(コヒワタリナン)、
右一首作者未

〔爲尹卿千首和歌〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1635貝戀
しヾみとる堅田の浦の海士人よこまかにいはヾかひぞあるべき

蛤蜊

〔和漢三才圖會〕

〈四十七/介貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1636 蛤蜊 俗云鹽吹(○○)〈○中略〉
按蛤蜊處處皆有、泉州堺浦多、春月釆之、漁人去殻取肉販之、用芥醋之、俗呼曰醋蛤、煮亦佳、柔於文蛤、其大二寸許、圓灰白色無花文、而紫唇殻薄無光滑、横有同色文理、其肌如出鹽粉、故名鹽吹貝、燒灰亦不于牡http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02061.gif、故不用、其肉亦賤民嗜之、不上饌、凡蛤蜊變成蟹、

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1636 蛤蜊〈○中略〉 蛤蜊ハ、長門ノ安岡貝(○○○)、筑前野北貝(○○○)是ナルベシ、安岡、野北、何モ地ノ名ナリ、其海中フカキ處ニアリ、大蛤ナリ、殼厚ク味美シ、殻色淡白肉多シ、長三寸餘、又殻薄ク色白クシテ大ナル蛤アリ、味ハ不美、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1636 蛤蜊 アマヲブネ(○○○○○)〈紀州〉 ヤサラガヒ(○○○○○)〈遠州荒井〉 サヽラガヒ(○○○○○)〈同上〉 シヤベリグチ(○○○○○○) 一名甘鬆左右丞〈水族加恩簿〉 蛤http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01662.gif 仲扃〈共同上〉
アマヲブ子ハ紀州海濱ニ多シ、形ハアサリ介ニ似テ至テ厚ク、竪ハ四五分許、横ハ長クシテ七分許、横條深シ、内外潔白ニシテ紅紫緣ナリ、此ニ白殼紫唇ト云、修治ニ紫口蛤蜊ト云、大倉州志ニ、以口有紫緣者爲佳ト云フニ據リテ、先師アマヲブ子トス、然レドモ此介皆小クシテ、大二三寸ナル者ハ、未ダ目擊セズ、一説大和本草ニノギタ介(○○○○)〈筑前〉トス、一名ヤスヲカ介(○○○○○)、〈長州〉ハマグリ(○○○○)、〈加州〉國府ノハマグリ(○○○○○○○)、〈志州〉マガヒ(○○○)、〈防州〉キツキハマグリ(○○○○○○○)、〈雲州〉クチブト(○○○○)、〈阿州〉ミヽジロ(○○○○)、ヘリジロ(○○○○)、ゴイシ介(○○○○)、朝鮮ハマグリ(○○○○○○)、是ハ臨海異物志ニ、蛤蜊白厚而圓、肉如車螯ト云ニ據ル、閩書ニ蛤蜊文蛤皆一潮生一暈ト云フ、綱目ニ指ス所ノ者ト同カラズ、此介ハ文蛤ヨリ大ニシテ、三四寸ニ過グ、殻薄クシテ唇厚ク白色ナリ、肉多ク味美ナリ、北國ニハ文蛤ナク、此品ヲ食用トス、其殻淡白ニシテ斑文アリ、婦女ノ貝合ニハ此介ヲ用ユ、至テ大ナル者ハ、畫彩シテ香合トシ、或ハ小ク切リ、圓ニ磨シテ、白棋子ニ造ル、故ニゴイシ介(○○○○)ト云フ、

鳥蛤

〔和漢三才圖會〕

〈四十七/介貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1636 鳥蛤 正字未詳 俗云止利加比 按鳥蛤形色似蛤蜊(シホフキ)而圓肥、大三寸許、殻薄灰白色、有縱細理、而略似蚶而(アカヾヒ)白色帶淡紫、假令〈蚶名瓦屋子、車渠名板屋貝、〉此亦名柿屋(コケラヤ子)子可矣乎、内正紅、其腸有緗色汁、肉狀如鳥喙、故俗名鳥貝、所謂爵入大水化爲蛤者此乎、然攝州尼崎多有之、冬春盛出、未他國、漁人去殼販之、有白丁(ハシラ)指犬、擣爲魚餅、送于他邦、其肉炙食甘美、煮亦佳、最下品爲賤民之食、無毒、但猫食鳥蛤腸則耳脱落也、又云、鳥蛤腹有小蟹、大如豆、是此瑣珸之類乎、所食之蟹乎、

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1637 和泉 鳥貝

忘貝

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1637 讃岐 忘貝〈蛤ノナリニテ紋アリ〉

〔貝盡浦之錦〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1637 忘介〈右一〉
蛤類 かいふかく、たつに筋細くふかく入、しほふき介に似て別也、〈○下略〉

〔萬葉集〕

〈一/雜歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1637 太上天皇〈○持統〉幸于難波宮時歌〈○中略〉
大伴乃(オホトモノ)、美津能濱爾有(ミツノハマナル)、忘貝(ワスレガヒ)、家爾有妹乎(イヘナルイモヲ)、忘而念哉(ワスレテオモヘヤ)、
右一首身人部王

〔萬葉集〕

〈六/雜歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1637 同〈○天平二年冬十一月〉大伴坂上郎女海路見濱貝作歌一首
吾背子爾(ワガセコニ)、戀者若(コフレバクルシ)、暇有者(イトマアラバ)、拾而將去(ヒロヒテユカン)、戀忘貝(コヒワスレガヒ)、

〔土左日記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1637 四日〈○承平五年二月、中略、〉このとまりのはま〈○はこの浦〉には、くさ〴〵のうるはしきかひいしなどおほかり、かゝれば、たゞむかしの人をのみ戀つゝ、ふねなる人のよめる、
よするなみうちもよせなむわがこふる人わすれがひおりてひろはん、といへれば、ある人のたへずして、ふねの心やりによめる、
わすれがひひろひしもせじしら玉をこふるをだにもかたみとおもはむ、となんいへる、をんなこのためには、おやをさなくなりぬべし、玉ならずもありけんをと人いはんや〈○下略〉

淺蜊

〔物類稱呼〕

〈二/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1638 淺利貝あさり貝 勢州にてきしめ貝(○○○○)と云

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1638 淺蜊〈訓阿佐利
釋名〈古訓文蛤伊太也、近世訓車渠伊太良、也良相似、故議稱乎、此物常聚于江水淺處、蜊者滑利之謂、故號浅蜊矣、〉
集解、淺蜊者文蛤也、形似小蛤而殻薄粗、有白者、有淡灰色耋有淡黑者、有紫斑黑斑者、有花紋者、大者圓一寸、小者四五分、其肉一頭小尖、一頭大、其小處有兩耳而尖黑、倶有赤白二種、其味短於蛤而亦稍佳、性能成群、漁家常多采之、鬻民間日用之食、價亦極賤也、腸中多小珠而色瑩白、海俗采之送于藥肆市中、多亂眞珠、然入藥用、亦不惡、惟功用劣矣、乾淺蜊者用竹串子、貫兩三箇而暴日、此謂串淺蜊、參遠之守令貢獻之
肉、氣味、甘鹹冷無毒、〈生食煮食倶好〉主治、解煩止渴、鹹味走腎以增水氣、故能利小便、多食還消腎氣

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1638 伊勢 蜊(アサリ) 三河 蜊 紀伊 蜊

波遊

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1638 淺利貝〈○中略〉波遊(○○)アサリニ似テ殼厚シ、味淡美、殼ニ花紋アリ、甚美ナリ、又無花紋モアリ、大ナルハ長一寸許アリ、小蛤ナリ、

白貝

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1638 蜡〈思閭思擧二反、蚣也、於不(○○)、〉 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02062.gif 〈卽由反、平、蚶、阿波比、又於不、〉 蛿〈於不、又阿波比、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1638 白貝 唐韻云、蛿〈(蛿原作蛤、據天文本改下同)古三反、一音含、辨色立成云、於富、本朝式文用白貝二字、〉爾雅云、在水曰蛿也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1638 今房總有於不乃(○○○)、白貝見延喜内膳司式、賦役令亦有白貝葅、〈○中略〉廣韻所引爾雅與此所一レ引不同、因撿爾雅釋魚蜬有二、一云蠃小者蜬、一云貝在水者蜬、恐源君以二物同一レ名誤引、非唐韻舊文也、

〔東雅〕

〈十九/鱗介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1638 海蛤ウムキ〈○中略〉 式に白貝としるされしは、此物は卽今アサリ、シヾミ、アカヾヒなどいふ者の如くにはあらず、其肉の殊に白きを云ひしなり、

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1638 白貝〈訓於保乃貝〉 釋名、潮吹蛤(○○○)、〈江中淺處、能吹潮故名也、白貝源順和名爲蛤類也、〉
集解、殻似淡菜蛤而小、肉亦似淡菜蛤、而無菜及紫茸、但有黑茸白肉、而味不佳、海俗食之耳、勢尾參豆相武房海濱多采之、式稱白貝、古賞之乎、

〔令義解〕

〈三/賦役〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1639 凡調〈○中略〉正丁一人絹絁八尺五寸、〈○中略〉若輸雜物者、〈○中略〉白貝葅三斗、

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1639 年料
尾張國〈(中略)白貝二擔四壼○下略〉

〔常陸國風土記〕

〈行方郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1639 板來村〈○中略〉其海〈○中略〉白貝〈○中略〉多生、〈○中略〉板來南海有洲、可三四里許、春時香島行方二郡男女、盡來拾津、白貝、雜味之貝物矣、

〔出雲風土記〕

〈島根郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1639 凡北海所捕雜物、〈○中略〉白貝、

〔播磨風土記〕

〈揖保郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1639 浦上里〈○中略〉白貝浦、昔在白貝、故因爲名、

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1639 一母屋大饗
同饗應差圖 白貝

潮吹貝

〔物類稱呼〕

〈二/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1639 鹽吹貝しほふきかい(○○○○○○) 伊勢にてとんび貝(○○○○)と云、總州にてつぶ(○○)と云、

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1639 潮吹蛤〈訓如字〉
釋名〈此蛤最吹潮故名、與白貝殊矣、〉
集解小者似淺蜊白而無紋、殼口紫黑、常水中開口吹潮、江東漁艇與淺蜊相雜而來、故合烹而食、但肉白味短耳、芝江常采之、勢參尾及海西諸濱亦多采之、或曰、潮吹長故作蚌、又曰、海西有大如小笠、殻上略有紫花絞、然則車螯之類歟、素聞筑之海、越佐之大洋、有時望重樓高閣乍出島嶼上、則本邦亦有蜃哉、
肉、氣味、甘鹹平無毒、主治、海俗稱能解酒毒

文蛤

〔本草和名〕

〈十六/蟲魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1640 文蛤〈表有文〉一名蛤、〈出兼名苑〉 和名以多也加比(○○○○○)

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1640 文蛤 新抄本草云、文蛤〈和名伊太夜加比〉表有文者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1640 按伊太夜加比、今俗呼阿左利者、蓋文理縱横如板葺屋狀、故曰板屋賀比、文理縱横有沙不滑、故今俗呼阿左利、猶礫爲沙利也、卽淸俗所謂蛤仔是也、是物斑文美於波万具利、故輔仁以文蛤之、然文蛤卽波万具利、非阿左利也、〈○中略〉所引本草和名蟲魚類文、據千金翼方、證類本草、文蛤表有文五字是本條文、源君倂爲新抄本草、非是、陶弘景云、文蛤大小而有紫斑、蘇敬曰、文蛤大者圓三寸、小者圓五六分、若今婦人以置燕脂

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1640 文蛤〈イタヤカヒ〉

〔醫心方〕

〈一/諸藥和名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1640 文蛤〈和名以多也加比〉

〔東雅〕

〈十九/鱗介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1640 海蛤ウムギ〈○中略〉 倭名鈔に新抄本草を引て、文蛤表有文者、和名はイタヤカヒと註したり、これも又然るべからず、文蛤は筆談〈○沈括筆談〉に見えし所のもの、卽今のハマグリ也、イタヤガヒといふものは、霏雪錄に、淘中有、物如扇、其文如瓦屋、唯三月三日潮盡乃出、名海扇と見えしもの、車渠は此物の大なるをいふなり、東璧が本草に、車渠海中大貝也、背上壟文、如車輪之渠、故にかく名づけしといふ是也、卽今もイタヤガヒといひ、また俗にホタラガヒ(○○○○○)とも、シヤクシガヒ(○○○○○○)ともいふなり、鷲すべて其形の摺扇を開きしに似たれば、海勗とはいひしなるべし、然るを文蛤をもつて、此物となしぬるは、その文の字を誤り解して溝文の文となせしと見えたり、

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1640 帆立蛤(○○○)〈訓如字、或稱伊多良加比(○○○○○)、〉
釋名〈蛤殼如遠帆之開、故通俗名之、又稱伊多良、是訛伊多夜之名乎、伊多夜者文蛤也、或有車渠、海扇之名、〉
集解、帆立者海中之大蛤也、大者長五六寸至一二尺、濶二三寸至尺許、厚二三分至一二寸、殻外溝壟、如蚶殼而深大、黃白色、又有紅斑、其肉最白、然味不佳、海俗亦不之、海西諸州最多、海人采殻啻買 難波之市、市工磨琢夾竹柄、而造成大食匙、以貨四方、是酌味噌汁醬汁之匕杓也、

〔新撰六帖〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1641 貝 家良
奧津風あれたる浦のいたや貝そも身の程のすみか成けり

阿古夜貝

〔和漢三才圖會〕

〈四十七/介貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1641 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02063.gif 䗯 生䗯 蜮蛤 俗云阿古夜加比〈○中略〉
http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02063.gif 䗯生海泥中、外黃淡赤色如毛、剝之皮毛剝而滑、其狀略似車渠(イタヤカヒ)、而無溝文、薄扁稍長、殼縫目有齒如蛤、其肉滿殻、所于石絲靑蒼色、如苧屑食、勢州多有之、其珠光澤謂之伊勢眞珠、〈○下略〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1641 眞珠〈○中略〉
アコヤガヒハ、一名ソデガヒ(○○○○)〈同名多シ〉テフガヒ(○○○○)、アコヤテフガヒ(○○○○○○○)、シンガヒ(○○○○)、〈能州〉ノブツラガヒ(○○○○○○)、〈同上〉タマガヒ(○○○○)、〈土州〉シンジユガヒ(○○○○○○)、是頌ノ説ノ珠牡ナリ、一名珠母、珠蚌、〈共同上〉銀母蠃、〈廣東新語〉此品海中ニ産ス、形方ニシテ大サ一二寸、或ハ三寸許、肥前大村ニハ、大サ六七寸ナルモアリ、外面粗糙ニシテ、蠣房ノ如シ、殼緣甚薄クシブ紙ノ如シ、質薄クシテ外面蠣房ノ色ノ如ク、裏面ハ白色ニシテ、靑微紫ヲ帶ブ、大村ノ産ハ靑多ク、志州ノ産ハ白多シ、磨礪スルモノハ、薄緣自ラ落ツ、用テ小楪ニ代フ、雅趣アリ、生ナル者ハ殼外ニ五七分許ノ小者ヲ負フ、ソノ磨礪スルモノ、淺靑黑色ニシテ黑斑アリ、ヒナヅルト呼ブ、アコヤガヒノ肉ハ、桃紅色ニシテ、一邊ニ小聚毛アリテ、淡菜ノ毛ノ如シ、黑綠色ニシテ光アヲ、此肉ヲ食用トス、鹽藏シテ遠ニ致ス、肥州ノ産、冬春ハ肉肥大ナリ、夏秋ハ肉至テ少シ、故夏月鹽藏スト云、廣東新語ニ、珠母肉作秋海棠或杏華色、甚甘鮮而性大寒ト云ヘリ、又アコヤガヒノ形ノ異ナルモノ數品アリ、各俗稱アハ、又アコヤガヒノ形ニシテ、甚厚ク大ナルモノヲアツ(○○○○)ガヒト云フ、舶來アリ、大ナルハ七八寸、厚サ七八分、銀色微靑ニシテ光アリ、古人用テ螺鈿トス、今ノ螺鈿ハ、皆千里光ヲ用ユ、〈○下略〉

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1641 志摩 眞珠貝

硨磲

〔倭名類聚抄〕

〈十一/玉〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1642 硨磲 廣雅云、車渠〈陸詞並從石作硨磲也、俗音謝古、〉石之次玉也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈三/玉石〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1642 集韻云、生西國、是玉石之類、形似蜯蛤文理、沈存中筆談、海物有車渠、蛤屬也、大者如箕、背有渠壟、如蚶殼、故以爲器、緻如白玉、生南海、尚書大傳曰、文王囚於羌里、散宜生得大貝、如車渠、以獻紂、鄭康成乃解之曰、渠、車岡也、蓋康成不車渠、謬解耳、〈○下略〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1642 車渠 シヤコ〈通名○中略〉
此介ハ琉球ヨリ來ル、蛤屬ノ至テ大ナル者ナリ、ソノ形チ横ニ長シ、〈○中略〉堅ニ大瓦隴五行アリ、切テ壓口捺(ヲジメ)子トナシ、帶骻(イシノオビ)ニ造ル、白色ニシテ細白道アリ、是卽七寶中ノ車渠也、〈○下略〉

海鏡

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1642 海鏡 嶺表錄異記ニアリ、此地ニテ月日貝(○○○)ト云、大ナリ、其カラ兩片ノ内、一片ハ赤ク一片ハ白シ、但本草ニハ悉ニ不合、時珍兩片相合成形ト云ニハ似タリ、其カタチヒラシ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1642 海月〈○中略〉
附錄、海鏡、マドガヒ(○○○○)、イタガヒ(○○○○)、トウカヾミガヒ(○○○○○○○)、トウロウガヒ(○○○○○○)、〈○中略〉舶來アリ、和産モ肥前平戸ニアリト云、其形圓薄ニシテ白色、外面ハ肌粗ク、内面ハ滑澤ナリ、日ニ映ズレバ紙ノ如シ、大ナル者ハ四五寸、小ナル者一二寸、兩片相合ス、一片ハ正ク平ニ、一片ハ微凹ナリ、平ナル者ヲ用テ粗皮ヲ刮リ去リ、鱗次シテ燈ニ粧ヒ、以紙ニ代レバ、紙ヨリ明ナリ、今琉人將來朱骨六稜ノ小燈アリ、此殻ヲ用ユ、雨中ニ携ヘテ損ゼズ、煤汚ニ及ベバ、水ニテ洗ヘバ、新ナルガ如シ、〈○中略〉古説ニ海鏡ヲツキヒガヒト訓ズルハ非ナリ、其介ハ南海二産ス、大ナル者ハ六七寸、小ナル者ハ一寸ニ盈タズ、形正圓兩片倶ニ微凹ナレドモ、海鏡ヨリ深シ、一片ハ深紅色、一片ハ潔白ナリ、故ニツキヒガヒト呼ブ、唐山ニテモ日月〈嶺南雜記〉ト云、一名日月殼〈淸俗〉磹蠣、〈同上〉

〔貝盡浦之錦〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1642 月日介(つきひかい)〈嶺表錄異記號海鏡
蛤類 うすく丸し、片方赤く片方白し、因て月日の名目あり、大なるもの多く少きもの鮮し、〈○下略〉

梅花貝/蘇芳貝

〔貝盡浦之錦〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1643 梅花介(むめのはなかひ)〈左二〉
蛤類 白くつやなし、横に細く筋立なり、介のなり、梅花の一瓣落たるごとし〈○下略〉

〔飾抄〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1643 心葉
平治或秘記曰、心葉梅枝三寸許也、予金枝付梅花貝(○○○)、今來以續飯蘂、或銀枝付同貝、若蘇芳貝(○○○)破、或用銀、〈○下略〉

〔散木弃謌集〕

〈九/雜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1643 しりたる人のもとより、梅花貝といふ物やあるとたづねたりければ、つかはすとてよめる、
春風になどやおりけんみちのくのまかきが島の梅の花貝

櫻貝

〔貝盡浦之錦〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1643 櫻介(さくらかい)〈右二〉
蚌類 此介前に辨せしごとく、あぶみ介(○○○○)を櫻介と名付入る、恐らくは誤なるべし、櫻介は薄く赤き介也、

〔前大納言公任卿集〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1643 夜一よたうとき事きゝあかして、曉がたにみれば、よる散ける花の、やり水の浪によせられて、すはうがひ(○○○○○)のさまなるに、櫻がひとは、是をやなどいひて、
よもすがら散ける花を朝ぼらけあかしの濱のかひかとぞみる、

〔廻國雜記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1643 櫻井の濱といへる所にて、櫻貝をひろふとて、
春はさぞ花おもしろく櫻井の濱にぞ拾ふおなじ名の貝

阿座蛤

〔和漢三才圖會〕

〈四十七/介貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1643 阿座蛤(あざかひ) 正字未
按阿座貝、琉球國海中有之、蛤蜊之屬、淡赤白色、裏白、其大者二三尺、肉白如鰒、味亦甘美、其殼厚硬、以爲盥鉢

石ワリ貝

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1643 石ワリ貝 筑紫ノ海濱石中ニアリ、ワリテトル、色淡白ナリ、大サ魁蛤ノ如シ、殼厚 シ、殼ノ文理横ニアリ、

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1644 蚶 唐韻云、蚶〈乎談反、辨色立成云、和名木佐(○○)、〉蚌屬、狀如蛤、圓而厚、外有理縱横、卽今魽也

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1644 唐韻作呼談、按呼屬曉母乎屬匣母、淸濁不厨、乎恐呼字之壞、〈○中略〉按本草和名魁蛤條甲蠃子條並擧魽、不和名、〈○中略〉廣韻云、蚶蚌屬、爾雅曰、魁陸、本草云、魁狀如海蛤、員而厚、外有文縱横、卽今蚶也、亦作魽、按所引本草云、至文縱横、郭璞引本草、卽今蚶也者、郭擧時稱爾雅魁、亦作魽者、孫愐擧異文也、源君節引不出典、又蚶作魽、則似古名蚶、孫愐之時謂之魽也、非是、但今本本草云、魁蛤一名魁陸、一名活東、生東海、正圓兩頭空、表有文、不郭所一レ引伺、説文、魁http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01573.gif 、一名復老、服翼所化、〈○中略〉嶺表錄異云、瓦屋子南中舊呼爲蚶子、以其殼上有稜如瓦壠故名焉、殼中有肉、紫色而滿腹、

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1644 蚶〈火甘切 キサ〉

〔日本釋名〕

〈中/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1644 蚶(キサ) さの字すみてよむべし、其からにきざみ多し、みを略せり、今はあか貝(○○○)と云、

〔倭訓栞前編〕

〈七/幾〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1644 きさ〈○中略〉蚶をいふも貝の文をもて名くるなり、今赤貝といふは、肉の色也、

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1644 蚶〈古訓木佐〉
釋名、瓦壟子、〈本草〉魁蛤〈同上〉赤貝〈俗稱、蚶殼似瓦屋之壟故名、魁者http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02064.gif 斗之名、蛤形肯之故也、源順海蛤一名魁蛤、是傳舊本草之誤也、蚶肉赤色、煮之變深紅色、故近俗通稱赤貝耳、〉
集解、狀似蛤而圓厚、殼背上溝似瓦屋之壟、大者徑三四寸、肉純赤有筋膜柱、柱形如榛子之大而白色、有黑腸者、有赤腸者、有外赤内黑者、有外黑内赤者、其肉狀全類于蛤蜊、而味極佳、江海淺處相聚成山、不幾千萬、海俗呼稱蚶(アカヽヒ)山、漁人偶遇之、則其貨十倍、或一處四五箇、或數十箇毎採之、江東海濱多有、然比攝泉海上者其味甚劣、住江泉界等諸濱之産、殼肉甚圓厚肥實、味最甘美、播州、但州、丹後、若狹亦相同、

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1644 蚶(キサ/イタラカヒ) アカヾヒ也、一名魁蛉、又名瓦壟子、其殼瓦屋ニ似タリ、其肉ニ血アリ、蛤類ノ内 ニテ味尤美ナリ、且補益於人、奧〈○奧恐羽誤〉州ニ蚶潟(キサカタ)ト云名所アリ、キサノ名古シ、

〔古事記〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1645 大穴牟遲神、〈○中略〉卽於其石燒著而死、爾其御祖命哭患而、參上于天、請神産巢日之命時、乃遣http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02056.gif 貝比賣與蛤貝比賣作活、〈○下略〉

〔古事記傳〕

〈十〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1645 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02056.gif 貝比賣、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02056.gif は蚶をhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02065.gif と作(カケ)るを誤れるものなり、〈○註略〉されば伎佐賀比(キサガヒ)と訓べし、〈○中略〉今阿加々比(アカヾヒ)と云物なり、〈○中略〉倭姫命世記に、阿佐加々多爾伎佐宇阿佐留(アサカヾタニキサウアサル)とあるも、蚶子(キサヲ)求(アサル)にや、〈○下略〉

〔朝倉亭御成記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1645 九獻 あかゞゐ

〔桃源遺事〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1645 一西山公〈○德川光圀〉むかしより、禽獸草木の類ひまでも、〈○中略〉其國よりこの國〈○常陸〉へ御うつしなされ候、〈○中略〉
蟲之類〈○中略〉 魁蚶(アカガイ)〈武州より御取寄、常陸の海へ御はなち候、〉

貽貝

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1645 燵〈卽刀反、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02063.gif 也、伊加比(○○○)、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝 H 貽貝 爾雅注云、貽貝一名黑貝、〈貽音怡、和名伊加比、〉〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1645 釋魚、玄貝貽貝、郭注、黑色貝也、此所引蓋舊注、然爾雅無黑貝之名、不一名黑貝、此恐一名玄貝之誤、〈○中略〉按據爾雅、貽貝、貝之黑色者、〈○中略〉今俗子安貝者、非伊加比、陳藏器曰、東海夫人、生南海、似珠母、一頭尖、中銜小毛、海人亦名淡菜、此可以充伊加比也、俗呼伊乃加比、〈○下略〉

〔伊呂波字類抄〕

〈伊/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1645 貽貝〈イカヒ〉 黑貝同

〔運歩色葉集〕

〈伊〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1645 貽貝(イヽカヒ)

〔東雅〕

〈十九/鱗分〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1645 貽貝イガヒ〈○中略〉 イガヒとは、イは卽貽字の音を呼び、カヒは貝の字の訓を呼びしと見えたり、〈(中略)むかし或人の云ひしは、イカヒとはアコヤノカヒ(○○○○○○)といふ者也、其貝より出でし珠をばアコヤノタマと云ふなりといヘり、後に西行法師の歌を見るに、あこやとるいか〉 〈ひのからをつゝみおきて寶のゐとを見するなりけり、とよみたり、さらば今アコヤノカヒといひて、其殼のハマグリといふよりは、長くて黑きが、かの珠を産じぬる蚌といひしもの是也とぞ見えたる、〉

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1646 貽貝〈訓伊乃加比○中略〉
集解、殼類蚌、肉微赤似蚶肉、海人食之、細切曝乾以送四方、昧不美、粗有臭氣、嗜之者愛其臭氣、常和生茄無根等羮之、今參勢之守令貢獻之、本朝式亦若狹參河貢之、江都漁市亦時鬻之、
肉、氣味、甘鹹平無毒、主治未詳、海人傳稱、同茄子味噌汁煮食、能止泄痢

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1646 淡菜(井ガイ) 海中ニアリ、延喜式ニ貽貝ト云是ナルベシ、東海及筑紫ノ海ニ多シ、蜒(アマ)カヅキテトル、本草ニ一名東海夫人ト云、ソノ形ヲ以名ヅクトイヘリ、〈○中略〉ミルクヒト訓ズルハ非ナリ、ミルクヒハ西施舌ナリ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1646 淡菜 黑貝〈舊事記〉 貽貝〈延喜式〉 イノガヒ〈勢州〉 ヨシワラガヒ(○○○○○○)〈江戸〉アカヽヒ(○○○○)〈豫州〉 セトガヒ(○○○○)〈防州、藝州、〉 ヒメガヒ(○○○○) ニタガヒ(○○○○)〈南部〉 シユウリカヒ(○○○○○○)〈同上仙臺〉 センダイカヒ(○○○○○○)〈仙臺〉 ツバクラガヒ(○○○○○○)〈水戸〉 ケカチガヒ(○○○○○)〈淡州〉 ハシバシラ(○○○○○)〈阿州〉 ケガヒ〈食療正養〉 カラスガヒ〈○中略〉
其形一頭ハ狹ク、一頭ハ濶クシテ蚌ニ似タリ、長サ三四寸、外ノ色黑シ、阿州伊島へ渡海ノ間ニ、古橋ノ石柱多シ、此介多ク粘著セリ、故ニ方言、ハシバシラト云、肉ハ色紅ニシテ、蚶肉ノ如シ、味佳ナリ、口ニ少シ黑毛アリ、故ニ東海婦人ノ名アリ、猶海參(イリコ)ヲ海男子〈五雜組〉ト稱スルガ如シ、〈○下略〉

〔令義解〕

〈三/賦役〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1646 凡調〈○中略〉正丁一人絹絁八尺五寸、〈○中略〉若輸雜物者、〈○中略〉貽貝鮓三斗、〈○中略〉貽貝後折(シリヲリ)六斗、

〔延喜式〕

〈五/齋宮〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1646 月料〈○中略〉
腸漬鰒貽貝鮨各一斗五升

〔延喜式〕

〈二十四/主計〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1647 凡諸國輸調、〈○中略〉貽貝〈○中略〉卌六斤、貽貝鮨三斗、〈○中略〉
凡中男一人輸作物、〈○中略〉飴貝鮨四斤十兩、
參河國〈○註略〉調〈○中略〉貽貝鮨三斛六斗、〈○若狹伊豫亦有貽貝鮨調、〉

〔土左日記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1647 十三日〈○承平五年正月、中略、〉船にのりはじめし日より、ふねにはくれなゐこくよききぬきず、それはうみのかみにおぢてといひて、なにのあしかげにことつけて、ほやのつまのいずし、すしあはびをぞ、こゝうにもあらぬはぎにあけてみせける、

〔土佐日記考證〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1647 ほやのつまのいずしは、眞淵の説のごとく、式に貽貝保夜交鮨とある、これなるべし、つまは妻の義にあらず、交をいふなるべし、すべて物に物をかて交へるをつまにするといへるがこどし、いずしは貽貝鮨にて保夜をつまにしたる貽貝鮨なるべし、〈○下略〉

〔朝倉亭御成記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1647 三獻御湯漬參、〈○中略〉いゝ貝、

猿頰

〔物類稱呼〕

〈二/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1647 朗光さるぼ(○○○) 勢州にてつめきり貝(○○○○○)と云、筑紫にて馬の爪貝(○○○○)といふ、土佐にてたぶかい(○○○○)、又ちがい(○○○)共云、

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1647 蚶〈○中略〉
一種有小蚶圓二三寸者、江都流俗呼稱猿頰(サルホフ)、以色赤而名之乎、味不大蚶、但民間之食耳、

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1647 朗光(サルボ)〈○中略〉 今按、サルホハアカヾヒニ似テ昧ヲトレリ、江戸ニ多シ、又筑紫ニ馬ノ爪ト云貝アリ、朗光ノ類ナルベシ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1647 魁蛤〈○中略〉
一種サルボハ、一名ハイガヒ(○○○)、〈備前作州〉ラフガヒ、〈同上〉チガヒ、〈同上〉ツメキリガヒ〈勢州〉ムマノツメ〈筑紫〉形アカヾヒニ似テ、大サ一寸許、瓦隴最粗シ、肉ノ味劣ル、

比良夫貝

〔古事記〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1647 猨田毘古神坐阿邪訶〈此三字以音、地名、〉時、爲漁而、於比良夫貝、〈自比至夫以音〉其手見咋合而、沈溺海鹽、〈○下〉 〈略〉

〔古事記傳〕

〈十六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1648 比良夫貝は、古へ世に多かりし物とおぼしくて、人名に負る、書紀續紀にいと數多見えたり、〈○註略〉然るに和名抄などに見えざるは、後に名の變れるにやあらむ、〈(中略)今ノ世に月日貝(○○○)と云あり、殼(カラ)のさま、月日に似たり、是レなどにや、そは比良(ヒラ)は平(ヒラ)、夫(ブ)は日(ビ)に通ひて、干日(ヒラビ)の意かと思へばなり、又多比良岐(タヒラギ/○○○○)と云貝あり、岐(ギ)は賀比(ガヒ)の切たるにて、平貝(タヒラガヒ)の意にて、是レにや、又佐流煩(サルボ/○○○)と云貝あり、猨溺(サルオボ)らしてふ意にて、此の故事に依れる名にて、是レにや、されどこれら皆其名につきて思ひよれるままに、こゝうみに云のみな、り、かくて後に、志摩ノ國の海邊の人に、此ノ貝の事問けるに、云く比良夫貝は、月日貝のことなり、此ノわたりの海に、いと稀にある物なりとぞ云ける、なほ國々の人に尋問はゞ、今も古の名の殘れる處も有ルべきなり、さて今飯高郡の海邊に、平生と書て比良於(ヒラオ)と呼村あり、壹志郡の堺に近くして、阿坂村より一里半ばかり東なり、これ若ぐは占は比良夫にて、此ノ貝の此の故事より出たる地名にはあらざるか、神鳳抄に、平生御厨とある處なり、〉

溝貝

〔今昔物語〕

〈二十九〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1648 鎭西猿打殺鷲恩與女語第卅五
今昔、鎭西ノ國ノ郡ニ賤キ者有ケリ、海邊近キ所ニ住ケレバ、其妻常ニ濱ニ出テ、〈○中略〉貝ヲ拾ヒ行ク程ニ、山際近キ、濱ナレバ、猿ノ海邊ニ居タリ、ケルヲ、此ノ女共見テ、彼レ見ヨ、彼ニ魚伺フニヤ有ラム、猿ノ居ルヲ、去來行テ見ムト云テ、此ノ女二人烈〈○烈恐列誤〉テ歩ヒ寄ルニ、猿逃テ行カムズラムト思フニ、怖シ氣ニハ思タル物カラ、難堪氣ニ思テ否不去デ、カヾメキ居ケレバ、女共何ナルコト有ルゾト思テ、立廻テ見レバ、溝貝(○○)ト云物ノ大キナルガ、口ヲ開テ有ケルヲ、此ノ猿ノ取テ食ハムトテ、手ヲ差入レタリケルニ、貝ノ覆テケレバ、猿ノ手ヲ咋ヘラレテ、否不引出サデ、鹽ハ只滿ニ滿來ルニ、貝ハ底樣ニ堀入ル、今暫シ有ラバ、鹽滿テ海ニ入ベキ程ニ、此ノ女〈○中略〉木ヲ以テ、貝ノ口ニ差入レテケレバ、少シ排タレバ、猿ノ手ヲバ引出デツ、然テ猿ヲ助ケムトテ、貝ヲ可殺キニ非ズト云テ、異貝共ヲバ拾フ心ナレドモ、其ノ貝ヲバ知テ〈○知テ、一本作和ラ、〉引拔テ、沙ニ搔埋テケリ、〈○下略〉

〔散木弃謌集〕

〈九/雜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1648 むかひの江にわらはのあそびたはぶるゝを尋ぬれば、みぞがひといふ物ひろふなりといふを聞てよめる、 江のよどにみぞがひひろふうなひ子がたはぶれにてもとふ人ぞなき、C http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02066.gif

〔物類稱呼〕

〈二/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1649 多伊良木たいらぎ 大坂にてゑぼし(○○○)貝と云

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1649 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02066.gif 〈訓多比羅岐
釋名、江瑤柱、〈本草、近俗呼此名者多矣、江瑤者總稱、桂者圓肉如柱也、今本邦之http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02066.gif 殼黑潤有光、然未知、海月玉珧之形、若空殼老枯變白而生美色乎、〉
集解、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02066.gif 殼似蚌黑色、波紋上大下小、大者廣五六寸、長過尺餘、惟有柱白圓如玉、大者數寸、味極甘美、其肉腥靱不堪、其帶膜白舌味稍好、世俗取白柱、而細切作片、炙食烹食生食倶佳、此海錯中之珍賞、與鰒蠣蛤蜊伍、專充上厨之供古來未、近世多賞之、海人亦探其大者以貨之、

〔和漢三才圖會〕

〈四十七/介貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1649 玉珧 江珧 馬頰 馬甲 俗云太以良木、又云烏帽子貝、〈○中略〉
按玉珧蚌屬、黑色有波浪文、而上濶下窄、長六七寸、似鳥帽子形、又如馬甲、故名之、其腸不食、有一肉柱、圓白如玉、故名玉珧、其大者徑二寸許、味甘美爲上饌、但本草謂四肉柱者非也、疑四柱之四字當有矣、其殼一片以可華箕、〈玉珧一名海月者非也〉

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1649 紀伊 烏帽子貝〈タイラギトモ云〉

海松蛤

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1649 海松蛤〈訓美留久(○○○○)比○中略〉
集解、蛤殼肉倶類蚌、一頭小生黑茸、略比鹿茸而有黑毛、茸頭生茱、初微黃帶赤色、味淡脆甘美、老變作深靑色、味淡而微澀、此卽海松也、海松非松狀淡菜者相當矣、庖人磨黑茸則頭紅茸白、味最美而充上厨、世旣嘉賞之、其袴帶舌柱亦味佳、古者出雲、石見、紀伊、參河、安房等州貢之、近世處々多有之、

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1649 西施舌(ミルクヒ)〈○中略〉 江戸ニ多シ、諸州ニアリ、佳品ナリ蛤ニ似テ少長クヒラシ、其舌殻ノ外ニ長ク出ヅ、紅白色ナリ、味ヨシ、淡菜ヲミルクヒト訓ズルハアヤマリ也、

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1649 丹後 切門(キレト)文珠貝(○○○)〈海松喰トモ云〉

馬鹿蛤

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1649 馬鹿蛤〈訓波加加比(○○○○)〉 釋名、馬珂、〈本草馬珂與馬鹿相類也、凡本邦構頑痴之人、用秦二世趙高之事、號馬鹿、然於此蛤何以而言也、一號大野貝(○○○)、此參州大野海濱多有之故名、〉
集解、殻類蚌而淡白、肉類蚶而淡赤、味靭不食惟采兩柱而鬻之、味佳而賞之、柱形如指頭、或如葱蒜根片、其色微赤、或白色、春夏采之以貨、今江都漁浦最多矣、
柱、氣味、甘微温無毒、主治未詳、多食動蟲積人嘔也、

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1650 蟶〈正音虹、万天(○○)、〉

〔本草和名〕

〈十六/蟲魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1650 馬刀〈仁諝音彫〉一名馬蛤、一名單姥釗、〈仁諝音羌遼反〉蛤蟍〈仁諝音力尸反〉蜆殼〈仁諝音顯、亦作http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02059.gif 、已上三名出陶景注、〉一名王http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02067.gif 、〈音遙〉一名鷰蛤、〈已上二名出兼名苑〉蚶〈呼甘反〉蠣〈力制反〉http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02063.gif 〈古禪反〉蟭〈子饒反〉螯〈呉高反、此輩皆可之、出崔禹、〉馬刀、一名齊http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01573.gif 、一名蛤鋌〈已上二名、出釋藥性、〉一名公刀、一名姥刀、一名蜌、〈音階(階恐衍)陛、已上三名出兼名苑、〉和名末天乃加比(○○○○○)

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1650 馬蛤 唐、韻云、蟶〈音檉、辨色立成云萬天、〉蚌屬也、本草云、馬刀一名馬蛤、〈和名上同〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1650 證類本草云、蟶生泥海中、長二三寸、大如指、兩頭開、小野氏訓蟶爲阿計万岐閩書所載竹蟶万天、然竹蟶之名、古書無見、古不甚分別也、〈○中略〉本草和名云、和名末天乃加比、此云和名同上者卽是、證類本草馬刀條引陶云、李云生江漢中、長六七寸、食其肉、肉似蜯蜀本圖經云、生江湖中、細長小蚌也、長三四寸、闊五六分、圖經云、頭小鋭、多在沙泥中、小野氏曰、馬刀生琵琶湖、俗呼伽羅加比、又篠葉加比、又長加比、訓万天是、按馬刀與蟶不同、如上文所一レ引、辨色立成以蟶爲麻天、本草和名以馬刀麻天者、二家其説異也、源君不辨、並引非是、

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1650 蟶〈亦虹字 音檉マテ〉 馬蛤〈同上〉

〔下學隻〕

〈上/氣形〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1650 馬蛤(マテ)

〔日本釋名〕

〈中/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1650 蟶 まては左右(マテ)也、左右をまてと云、此貝左右に口ありて、他の貝にことなれり、

〔東雅〕

〈十九/鱗介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1650 海蛤ウムキ〈○中略〉 倭名鈔に、〈○中略〉また馬蛤(マテ)の註に、唐韻の蟶は、蚌屬也といふを、引て、辨色立成にマテといふと註し、また不草に云ふ、馬刀一名馬蛤、和名上に同じと註したり、蟶をもつ てマテといひしは誠に然り、本草の馬刀の註を倂載て、馬蛤を以てマテとなせしは、然るべからず、舜水朱氏も、蟶は漢地の物も、此にしてマテといふ者也、馬刀は別に一種也といひし事、猶東璧本草に見えし所の如く、馬刀二字の方音マテといふに近ければ、誤り解して、馬蛤をもて、マテとなせしなるべし、是等は後の俗、その訛を承けし所なれば、辨せざる事を得ず、

〔物類稱呼〕

〈二/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1651 蟶まて 大坂にて、かみそり貝(○○○○○)と云、上總これにをなじ、

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1651 蟶〈訓萬天○中略〉
集解、蟶殼圓如小竹管而靑黑、頭有兩巾殻外、此謂蟶袴、其肉似蠣肉而細長、其味淡甘脆美、漁人彩之、先探求于海涯細砂上、必有小穴、靜歩呑聲到穴處、用白鹽一撮穴口、潛窺之、蟶出穴口、如聽人聲而深入、有頃復出穴外、以箒掃之、若斯終日得數十箇、或掘砂亦得之、處々江海砂洲多采、一種有總角者、似蟶而大、味亦略同、亦蟶之別類也、
肉、氣味、甘微温無毒、主治、調冷痢

〔和漢三才圖會〕

〈四十七/介貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1651 蟶〈音稱〉 俗云萬天〈○中略〉
眞蟶〈一名總角〉 蟶之大者也
凡蟶巾出於殼外、貌似小兒垂一レ洟、人取其肉臛食之、然不上品

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1651 蟶 アゲマキ 一名麻致〈郷藥本草○中略〉
マテハ竹蟶ナリ、〈○中略〉豐前ノ小倉ニ最多シ、〈○下略〉

〔延喜式〕

〈三十七/典藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1651 諸國進年料雜藥
伊勢國五十種〈○中略〉馬刀七斤〈○中略〉 備前國卅種〈○中略〉虵http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02068.gif 、〈○中略〉馬刀各三斤、

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1651 攝津 馬刀(マテ) 伊勢 馬刀 紀伊 藤代馬刀 豐前 内裏馬刀〈外ヨリ勝タリ〉

〔袖中抄〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1651 あまのまてがた いせの海のあまのまてがたいとまなみながらへにける身をぞうらむる
顯昭云、あまのまてがたとは、あまのまてと云かひつものとること也、あまのまくかたとかけ る本もあれど、多本にまてとかきたれば、それにつきて釋すべし、
しほのひたるかたにて、まてをとるには、まてかりといふ、かねのさきほそきを、ふたまたにつ くりて、竹をつかにほそうして、すげてもちて、まつくはにて、すなごのうへをひけば、まてのあ なよりしるをはきいだせば、そこにまてかりをさしいれて、ひきいだしてとり〴〵すといへ り、
またくはならねど、上手はふぐせにてもすなごをかけば、しるをばはきいだすといへり、秋冬 春とるとぞ申す、夏はまてよこさまになりてあればとらず、まてはおほやうあなにたてざま にある也、さればきはめていとまなくうるさきことにてあれば、まてがたいとまなみとはよ めるにや、まてとるともいはぬそこゝうえねど、まくかたといふ義もすなごまくともいはね ば、それはおなじ事なり、和泉式部歌云、よさのうみのあまのあまたのまてがたにをりやとる らんなみのはななみ、但此後撰の歌おぼつかなし、てとくと書たがへつべし、此式部歌もまく かたをまてかたとかきなしたるやらんもしりがたし、龜鏡集といふ文は、伊勢の室山の入道 が撰也、以此歌馬蛤歌、甲虫類也、
或人まてかたといふに付て、まく形といふは、いはれず、まて潟と可書也、彼入道、伊勢海の邊に て、能知案内歟、
奧儀抄云、あまはしほやくとては、しほひのかたのすなごをとりて、すゝぎあつめて、そのし るをたれてやくなり、さて又そのすなごをば、もとのかたにまき〳〵するを、あまのまくか たとはいふなり、しほひのまにいそぎて、いとなめば、いとまなき事によせて、いとまなくて ひさしくとはざりけるみをなむうらむるとよめる也、
齋宮女御集云、まくがたにあまのかきつむもしほぐさけぶりはいかにたつぞとやきみ、
私云、まてがたといふは、まてとるとも聞えたり、まくかたといふは、なにをまくともきこえず、又しほだるともやくともいはねば、何事共きこえずや、此女御の歌ぞ、しほやくとはきこえたる、但證本を見るべし、

〔六百番歌合〕

〈戀四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1653海人
十五番 〈左〉顯昭
もしほ燒海士のまくかたならね共戀のそめきもいとなかりけり〈○中略〉
判云、左歌、あまのまくかたと讀る上に、戀のそめきもいとなかりけりといへる下句も、優にも 聞ざるべし、〈○中略〉後撰英明朝臣歌はあまのまてがたいとまなみと讀るなり、此事往昔に、崇德 院御前に侍し時〈○中略〉後撰の難儀とおぼしくて、此まてがたの歌をまくと云て、釋もなくて只 をきて侍しを、是はまてがた也、まくとひがこと書たりける本にむかひて、不審したるにこそ 侍めれと申て侍しを、後に人傳きゝて、彼が門徒のまくと混じて、勘侍て侍りけるにこそ、いと まなみとは、まてがたにて殊に叶へる也、〈○下略〉

〔僻案抄〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1653 いせの海のあまのまてがた暇なみ長らへにける身をぞ恨むる
此歌、先人〈○藤原俊成〉命云、往年參崇德院之次、以女房草子一帖、彼仰云、此抄物或好士稱秘藏物所持也、乍坐加一見則可返上、物體可然哉、所存如何、依仰於御簾前披見之際、不委細、卽返上申云、古來書出如此物之時、雖先賢皆少々之事誤難遁候歟、此抄物又大概優候、但此中伊勢の海のあまのまてかたと書て未勘と付て候、此歌海士のまてがたと存候、海邊に蛤と申物、沙中に候、其かたの候なるを見て、海人等いそぎてこれをさしとり候なるをいとまなしとは、詠ずるよし、基俊申候き、 と申、件草子其時不誰人所一レ進、手跡も淸輔朝臣乎、未委見知、卽返上訖、後經多年、奧義集進二條院之時、まてかたの釋所書加也、彼時申旨、和讒者又相語候者之間、結意趣書、此事云云其始作此抄物之時、惚字誤多き、後撰を見て多書僻事也、此事父〈京兆○顯輔〉祖〈匠作○顯季〉存知被傳授者、彼時不未勘由、以往年未勘、後日注出、非傳授之説之由分明也者、庭訓如此天納言〈○藤原行成〉本文まて分明也、

〔詞延抄〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1654 しほひの潟にて、まてと云貝を取也、俊成卿如此、あまのまくかたとは、干潟に鹽をまきて、鹽をかたくほして燒と云云、淸輔朝臣説也、いづれも隙なくいそがはしきことによめり、和泉式部歌にも、あまのまくかたとよめり、所詮いづれもある事なるべし、

〔夫木和歌抄〕

〈三十五/海人〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1654 家集戀歌中 家隆
いせのうみのあまのまてがたまてしばしうらみに浪のひまはなくとも

〔伊勢紀行〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1654 うら〳〵と過侍るに、あまどものしはざ、さま〴〵也、汐干にまてと云ものさしとるを見て、
いせの海のあまのまてかきまてしばし都のつとに我も拾ん

〔拙堂文話〕

〈八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1654 津城之東爲阿漕浦、古歌所云阿古岐島是也、其南爲米津浦、又其南爲辛洲、〈○中略〉海濱又多竹蟶、潮退卽蟄、採者以一撮鹽穴中、蟶以爲潮至、挺然突出、卽捉獲之、稍緩則縮入、就堀之不蹤跡、〈○下略〉

〔星巖乙集〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1654 余性甚嗜蠣、又甚嗜蟶、偶閲南産志、云閩人濱海種蠣、又種蟶因竊意、本州旣已有蠣田、則饕餮若余、亦得厭飫、唯恨其無蟶田耳、嗟呼誰居爲燧人氏者、必當人焉、
蠣房上市馬蹄圓、一箸千枚不錢、自笑貪饞心未足、放匙更望有蟶田、〈○註略〉

辛螺

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1654 蟀〈爾志〉

〔本草和名〕

〈十六/蟲魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1654 辛蠃子〈貌似甲螺、而口有蓋、蓋似甲香、出崔禹、〉 和名於保阿岐 大辛螺肉〈出七卷食經〉 和名阿岐
口廣大辛螺肉〈出七卷食經〉 和名於保爾之
白小辛螺肉〈出七卷食經〉 和名之良爾之
累〈○累恐黑誤〉小辛螺肉〈出七卷食經〉 和名久呂爾之

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1655 大辛螺 七卷食經云、大辛螺〈和名阿木〉楊氏漢語抄云、蓼螺、一云赤口螺、〈和名上同、辨色立成説亦同、〉小辛螺 七卷食經云、小辛螺〈和名仁之〉楊氏漢語抄云、蓼螺子、

〔下學集〕

〈上/氣形〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1655 辛螺(ニシ)

〔日本釋名〕

〈中/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1655 辛螺(ニシ) 其からあかく、其身白し、には丹也、あかきなり、しはしろきなり、

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1655 辛螺〈大訓阿木、小訓仁之、○中略〉
集解、狀似榮螺而圓無尖角、色紫黑、螺口圓而一端長尖、内色純赤口蓋亦黑、薄於榮螺、其肉頭外黑中白、尾似榮螺而蒼黑、有腸亦靑黑、味辛辣甚於芥蓼、肉味甘美也、小辛螺亦同、
肉、氣味、甘平無毒、〈得蕪菁葉良、惡糖霜及蜜、〉主治、經年眼痛、及心胸痛、胃院痛、逐疝積蟲、
辛腸、氣昧、辛温無毒、主治、殺寸白蟲、及一切蟲症最妙、多食則下氣、令人泄、凡食辛腸法、取鮮腸洗淨擂泥、和冷噌汁及醬攪拌、入生蒜一兩片而食、或浸麥飯食亦可矣、
殼、主治、能袪上部積熱、取經年陳殻、或生亦好、洗淨令白鹽透明者滿于内、燒炭火別采繁蔞生汁、頻頻用小匕于殼内鹽、其殼通紅、鹽亦燒枯而後放地上火氣、蓮殻搥碎爲末含口塗齒、用口津眼、或含口時和水以水洗眼亦佳、久而明目固牙最妙、

〔常陸國風土記〕

〈行方郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1655 板來村、近臨海濱、〈○中略〉辛螺多生、

〔出雲風土記〕

〈意宇郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1655 鹽楯島〈有蓼螺子

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1655 淡路 辛螺

〔古今著聞集〕

〈二十/魚虫禽獸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1656 宮内卿なりみつ卿のもとに、盃酌の事ありけるに、すびつの邊ににしをおほく取置たりけるに、亭主酒にえひて、其すびつを枕にして、ね入にけり、其夜の夢に、ちいさき尼その數おほく、すびつの邊になみゐて、めん〳〵になきかなしみて、さま〴〵くどきごとしけり、おどろきてみれば、物もなし、又ねいれば、さきのごとくに見ゆ、かくてたび〳〵になりけれども、おほかたその心をえぬに、曉にのぞみて、又目をもてあげて見るに、にしの中に小尼せう〳〵まじりて、うつゝに見へて、やがてうせにけり、おどうきあざみて、それよりながくにしをばくはざりけり、

〔散木弃謌集〕

〈九/雜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1656 あるあまのくちあしとて、ものゝくはれぬに、にしといふものこそ、思ひ出らるれといひけるを聞て、もとめてくはせけるに、からみといへる所は、からしとて、くはざりければよめる、
よしとおもふ心のねがふにしなればからみ成ともまいらざらめや

〔令義解〕

〈三/賦役〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1656 凡調〈○中略〉正丁一人、絹絁八尺五寸、〈○中略〉若輸雜物者、〈○中略〉辛螺頭打六斗、

〔四條流庖丁書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1656http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02069.gif ヲ折ニ積ベキ事、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02069.gif ノ蓋ノ方ヲ下ニナシテツムベシ、〈○下略〉

〔房總志料〕

〈三/上總附錄〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1656 螺の類にからにしといふものあり、大さ拳の如し殼の内赤色腸の尖れる所に水あり、其味甚辛し、蕎麺を嗜る人、蘿萄汁に易用ゆ、望陀市原の海邊にて甚珍とす、

〔三好筑前守義長朝臣亭〈江〉御成之記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1656 三獻〈○中略〉御ゆづけ、〈○中略〉にし、

〔祇園會御見物御成記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1656 三獻〈○中略〉 あへまぜ、〈○中略〉にし(きそく金)、

長螺

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1656 長螺〈訓奈加仁之(○○○○)
釋名、香螺、〈本草〉夜啼螺〈或稱邊奈多禮(○○○○)、又云海鳥(○○)、俗稱小兒夜啼不止、長螺一箇置兒之枕邊、誓曰、汝不兒之夜啼、則破殼拔肉棄于野、若治之則放于江海、於是夜啼必止、故俗名之乎、海鳥者擬鸚鵡螺乎、〉 集解、狀類辛螺而小、殼口如爵之長廣、肉亦似辛螺、味尚優矣、故爲會宴之佳肴而被美賞也、肉生小蓋、薄輕紫黑、藥市采鬻之、呼號甲香、或以辛螺海螄田螺之蓋而亂之、凡甲香本邦自古宮家合香、用沈檀麝腦、甘松、薫陸、甲香之類、極末修合以蜜和匀、收藏經年而燒之、此謂薫物、御製稱勅方、有黑方、荷葉、梅花、曙、蘭等名、同入甲香、以管衆香之氣、若獨燒則臭、今醫家全不之矣、

〔和漢三才圖會〕

〈四十七/介貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1657 香螺 流蠃〈螺與蠃同字〉 俗云長螺、一云倍奈太禮、今云夜啼螺(ヨナキ/○○○)、今云、豆布、〈○中略〉
按香螺狀似辛螺而口長、其肉白軟、甘美、蓋海蠃〈和名豆比〉總名也、今人以香螺豆布、〈豆比通音〉世俗隱婦人陰戸貝、又轉曰豆比亦然、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1657 蓼螺 ニシ ナガニシ ニガニシ(○○○○) カラニシ(○○○○) マキニシ(○○○○)備後ヨナキ〈大和本草〉 カウカヒ〈筑前肥前〉 ウミトリ〈本朝食鑑〉 ヨナキ螺(○○○○)〈同上〉 ウシガヒ(○○○○)〈防州〉一名辣螺〈蟹譜、寧波府志、〉
海中ニ生ズ、形玉螺(バイ)ヨリ大ニシテ、ソノ流更ニ長シ、外ニ短黑褐毛アリ、肉ハ紅螺ニ似テ味美ナリ、腸ハ至テ辛辣、厴ハ玉螺厴ノ如シ、藥舖ニ采テ甲香トス、ソノ爛殼毛已ニ脱落シ、淺黃紅色トナル、〈○中略〉一種形小ク流短ク、色白クシテ、粗黑疣相連ナル者ヲイワニシ(○○○○)ト云、一名イワカタ(○○○○)〈防州〉ホウホウニシ(○○○○○○)、〈備前〉ホウジニシ(○○○○○)、〈同上〉カラニシ(○○○○)、〈土州〉此外品類多シ、

〔貝盡浦之錦〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1657 へなだり〈○註略〉
螺類 色白く細くあさく、すじ横に入、長てなる介なり、多くはなし、此名甚雅ならず、別に名も有べきもの也、

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1657 武藏 長辛螺(ナガニシ)〈ヘナタリ共云歟〉

赤辛螺

〔和漢三才圖會〕

〈四十七/介貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1657 蓼螺〈○中略〉
赤辛螺 殼内外正紅、其殼燒灰入藥、傅瘡腫妙、或作藥鹽、其法取辛螺殻、盛鹽燒于炭火上、采蘩蔞汁、 頻頻加入能燒調去火氣、碎末塗牙齒甚佳、含口洗眼亦可、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1658 海蠃〈○中略〉
紅螺ハ、アキ(○○)〈和名鈔〉俗名ニシ、又アカニシ(○○○○)ト呼ブ、形拳螺ニ似テ低ク、大ニシテ圓ナリ、角刺ナシ、外色紫黑、厴モ同色、内ハ純赤色、ソノ肉頭黑ク、中白ク、尾ハ拳螺ニ似テ蒼黑色、靑黑腸アリ、味辛辣、肉ノ味甘美ナリ、〈○下略〉

〔渡邊幸庵對話〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1658 一赤辛螺、あなたにも稀也、〈○中略〉到て赤き貝の事也、卽明丹に入る一藥也、予も爲其あなたゟ二ツ求め來る、其内には類なき赤にし也、〈○中略〉松平長門守樣へ〈○註略〉咄候へば、見度と御申故、或時持參して、懸御目に候へば、忝とて御戴き故、夫は上げ申事は威不申と申候得共御聞入なく、ふちを金にてふくませ、根付に被成、いかひ御秘藏也、是はあなたにて、餘程の價する貝也、今一ツは大なれ共、色あひ十分に無しとて、取出し見せ被申候得共、少し黑み有之、夫とも終に不見貝なりと、老人被申候、是も代金三十兩程と被申候、ケ樣の赤にしをつかわねば、赤藥調合成不申候處、今は爰にもかしこにも赤藥を調合候者有之候、何を合せ候哉、夫共に功あればこそ、人々用ひ申候、

小蠃子

〔本草和名〕

〈十六/蟲魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1658 小蠃子〈貌似甲蠃而細小、口有白玉之蓋、出崔禹、〉 和名之多々美(○○○○)

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1658 小蠃子 崔禹錫食經云、小蠃子〈楊子漢語抄云、細螺、之太々美、〉貌似甲蠃而細乎、口有白玉之蓋者也、

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1658 螺子〈シタヾミ〉 海細螺〈シタヾミ〉

〔物類稱呼〕

〈二/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1658 細螺きさご(○○○) 中國にていしやらがい(○○○○○○)といふ、伊勢にてこながら(○○○○)と云、肥の唐津にてこぶら(○○○)といふ、

〔屠龍工隨筆〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1658 したゝみはきさごの事なり、此貝を童の戯に、舌の先に吸つくれば、舌のだみて物の 言憎きゆへに、名づけたり、古歌に
あづまにてやしなはれたる人の子はしたゞみてこそものはいひけれ

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1659 錦沙子〈訓幾左古○中略〉
集解、殻似蝸牛而厚堅、旋文、五色如錦、殼中有蟲、如寄居蟲、今江東諸濱最多、然不杏子榛實之大、參遠海濱之産者、似文蛤小蜊之大、倶海人采之、煮熟而去蟲取殼、洗淨磨砂、以、爲兒女之翫

〔令義解〕

〈三/賦役〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1659 凡調、〈○中略〉正丁一人、絹絶八尺五寸、〈○中略〉若輸雜物者、〈○中略〉海細螺(シタヾミ)一石、

〔日本書紀〕

〈三/神武〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1659 戊午年十月癸巳朔、擊八十梟帥於國見丘破斬之、是役也、天皇志存必克、乃爲御謠之曰、伽牟加筮能(カムカゼノ)、伊齊能于瀰能(イセノウミノ)、於費異之珥夜(オホイシニヤ)、異波臂茂等倍屢(イハヒモトヘル)、之多懷瀰能(シタヾミノ)、之多儴瀰能(シタタミノ)、阿誤豫(アゴヨ)、阿誤豫(アゴヨ)、之多太瀰能異波比茂等倍離(シタダミノイハヒモトヘリ)、于智氐之夜莽務(ウチテシヤマム)、于智氐之夜莽務(ウチテシヤマム)、

〔播磨風土記〕

〈揖保郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1659 少宅里〈本名漢部里○中略〉 細螺(シタヾミ)川、所以稱細螺川者、百姓爲田闢溝、細螺多在此溝、後終成川、故曰細螺川

〔萬葉集〕

〈十六/有由緣雜歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1659 能登國歌三首〈○二首略〉
所聞多瀰乃(カシマ子ノ)、机之島能小螺乎(ツクエノシマノシメヾヒヲ)、伊拾持來而(イヒロヒモチキテ)、石以(イシモテ)、都追伎破夫利(ツヽキヤフリ)、早川爾(ハヤカハニ)、洗濯(アラヒソヽギ)、辛鹽爾(ギカランホニ)、古胡登毛美(コヽトモミ)、高杯(タカツキニモリ)爾盛、机爾立而(ツクエニタテヽ)、母爾奉都也(ハヽニマツリツヤ)、目豆兒乃負(メヅコノマケ)、父爾獻都也(チヽニマツリツヤ)、身女兒乃負(ミメノヅコノマケ)、

〔延喜式〕

〈七/踐祚大嘗祭〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1659 阿波國所獻〈○中略〉細螺、棘甲蠃、石華等、幷廿坩、〈已上那賀潜女十人所作、〉

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1659 一母屋大饗
同饗應差圖 小蠃子(シタヾミ)

〔朝倉亭御成記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1659 二獻したヾみ〈○下略〉

〔房總志料〕

〈四/上總附錄〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1659 一長柄郡の海、錦砂子(キシヤゴ)を産す、女兒の輩つゝなご(○○○○)といへるものなり又なんごともいふ、大鏡にらんご、貝おほひとあるも是なり、又いしなご西行の歌にもよめり、其最小なる もの市原望陀の海に産す、其名をきさごといふ、土人採て稻田の糞とす、

甲蠃子

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1660 蜬〈姑含反、蠃大者、海豆比(○○○)、〉

〔本草和名〕

〈十六/蟲魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1660 甲蠃子、〈貌似辛螺、而口有角蓋、蓋上甲錯似http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01227.gif 魚皮、〉榮螺子〈胡垧反〉板螺〈性味相似〉一名魽、〈呼甘反、似蛤而圓、出崔禹、〉和名都比(○○)

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1660 甲蠃子 本草云、甲蠃子〈今按、蠃卽螺字也、音羅、楊氏漢語抄、海蠃豆比、〉貌似辛螺、而中有角蓋者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1660 按、海蠃、海産螺類之總稱、然多都比(○○○)謂之田螺、故漢語抄海螺訓都比也、谷川氏曰、伊勢桑名四日市之間謂之都煩、然則都比當壼之義、又曰以http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01953.gif京謂之貝、音讀、江戸俗亦呼婆伊(○○)、愚按都毘謂其形昆于然也、粒訓以奈都毘亦同、壼訓都菩亦同語耳、非壼義上レ螺也、〈○中略〉所引文、千金翼方、證類本草及注皆不載、按本草和名引崔禹食經、其文全同、只中作口、無者也二字異、則知此源君誤引、其作中亦誤、然龜貝體角蓋條引亦作中、蓋源君所見本誤、非後來傳抄之誤也、今不遽改、本草和名引有角蓋下云、蓋上甲錯似鮫魚皮、愚按據其云蓋上甲錯如鮫魚皮都比、崔氏又狀辛蠃子云、貌似甲蠃、狀小蠃子云、似甲蠃而細小、則甲蠃子當佐々江、海藥本草有小甲香、若螺乎狀、取其蔕而修成也、貝原氏曰、此可以充婆伊、小野氏從之、未然否、小野氏又曰、婆伊淸俗謂之王螺、黃螺、油螺

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1660 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02070.gif 螺〈カビ ツヒタツヒ〉

〔令義解〕

〈三/賦役〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1660 凡調〈○中略〉正丁一人、絹絁八尺五寸、〈○中略〉若輸雜物者、〈○中略〉螺(ツビ)〈謂蜯(ハマグリ)之屬也〉卅二斤、

〔山家和歌集〕

〈下/雜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1660 ひゞ、しぶかはと申方へまかりて、四國のかたへ渡らんとしけるに、風あしくてほ どへけり、しぶかはのうらだと申所に、おさなきものどもの、あまた物をひろいけるを、とひ ければ、つみ(○○)と申もの、ひろふなりと申けるを聞て、
おりたちてうらだにひろふあまのこはつみよりつみをならふ也けり
すなべと申島に、京よりあき人どものくだりて、やう〳〵のつみの物どもあきなひて、又し はくのしまにわたりて、あきなはんずるよし申けるを聞て、
すなべよりしはくへかよふあき人はつみをかひにて渡る也けり

〔蒹葭堂雜錄〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1661 狂歌蘆荻集云、備前の小島の瀧資之ぬしと物がたりのついで、圓位上人の山家集に、ひゞ澀川などいふ浦につみといふ貝のあるよし見へたるは、いかなる物にか、そこは小島に近きわたりと聞を、さるもの見給ひつる事やおはさぬかととひけるに、我も珍らしく思ひて、此たびこゝにもて下りぬ、此程見せ參らせんとて、みな月晦日の日、つみなくなるよしの歌をそへて、貝ひとつ送りこされければ、
澀川とさらにをじまの蜑小ぶねつみ送りしは吉備のよき人〈東都狂歌堂眞顏〉

海獅

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1661 貝〈訓波比(○○)
集解、生海中海崖巖壁、海人乘其不一レ測而取之、毎春初蜒起夏月最多、殼類田螺而黑有施文四五曲、殼口頭上有厴、其肉上黑中白、尾盤曲有蒼腸、去其腸水煮之、則肉堅脆甘美、或作吸壼亦可矣、肉氣味、甘鹹寒無毒、主治、胸中鬱氣不舒、利大小便、多食之易瀉、

〔和漢三才圖會〕

〈四十七/介貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1661 海螄 俗云波比
按海螄生海中小螺也、色形似田螺而堅、大於田螺、春夏最多出、其肉上黑中白、盤曲隋殼有蒼腸、去腸煮食之、〈甘鹹〉商賣毎除夜及歲始、爲必用酒肴、言取千倍萬倍貨殖之祝乎、紀州熊野之産、大而厚、其大者長三寸許、小兒取其殻打去頭尖、令半均、纏細苧繩之爲戯、

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1661 和泉 海蠃(バイ) 備前 ハイ貝 紀伊 海蠃

榮螺

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1661 榮螺子 崔禹錫食經云、榮螺子〈和名佐左江〉似蛤而圓者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1661 按本草和名甲螺子條下云、榮螺子胡垧反、板螺性味相似、一名魽、呼甘反、似蛤而圓、出崔禹、按魽卽下條所載蚶、故云蛤而圓、榮螺子板螺雖詳、然二物以螺名則其非蛤類知也、蓋本草和名一名上傳寫有脱字、蓋源君所見本亦脱、故誤以魽爲榮螺子之一名、遂以蛤而圓形狀榮螺子也、榮螺子於他書見、其形不詳、本草和名亦不和名、源君定爲佐左江、不何據、佐左江當甲蠃子上レ之、前條詳之、嶧山君曰、寧波府志拳螺、可以充佐左江也、

〔下學集〕

〈上/氣形〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1662 榮螺(サヽイ)

〔日本釋名〕

〈中/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1662 榮螺(サヾエ) さゝは小也、小きなるをさゝと云、えはいえなり、さゞえは其から堅固にして、ふたもかたく小家のごとし、

〔物類稱呼〕

〈二/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1662 榮螺さゞえ 相州三浦三崎邊にてつぼつかい(○○○○○)と云、さゞえのふた(○○○○○○)を同所にてとうもいちと云、是は童部の戯玩に、穴一といへる事をすなり、浦里にてあれば、錢のかはりに用るもの歟、

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1662 榮螺〈訓佐佐伊
釋名〈源順曰、食經、榮螺子似蛤而圓者也、和名訓佐左江、按榮者螺之殼背尖角、如枝芽之向一レ榮、故名之乎、〉
集解、榮螺狀類辛螺而圓、色靑白、殼尾盤起、殻背嵯峨多尖角、一角長四五分、螺口圓深、厴亦甚厚、堅而圓、高起中凹、外如鮫皮、肉頭一端黑、一端黃、皆如爛肉而中白、尾長捲、碧色而包腸、肉味甘硬而厚美、今嗜之人、取肉去腸尾、細切和醬酒殼内、投于炭火煮熟而食、呼稱壼熬、其殼内深如小壼之故也、或生鮮者細切作鱠、和薑山葵酷食亦可、又有小榮螺圓五六寸者、此榮螺之子也、或曰、非子、別一種、未詳、尾腹苦而味稍好、生不殼投于炭火、煮熟而食、此謂苦燒、宴酒之佳肴也、凡榮螺以殼背無角最圓者上品、泉攝海濱之産是也、其肉味最美、而勝江東之産、間糟之以送來矣、今豆相房總之海濱、海濱漁人多採傳送于江都魚市也、
肉、氣味、甘平無毒、主治、明目止渴、利水解酒毒、性硬堅入腹中消、故生而打却之、煮熟則肉軟易消也、

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1662 榮螺 漢名未知、順和名佐左江、中夏ノ書ニ出處未之、本邦ニ甚多シ、頗佳品トス、 無毒、然レドモ堅硬ノ物不人、殻ニ角多キアリ、無角アリ、鎌倉ノ海ニ、左顧(マキ)ノ榮螺アリ、下ノ半邊ノミアリテ、小ナリ、メグリニ角アリ、イヅレモ左ノ方ニ顧ル、

〔鎌倉巡覽記〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1663 杜戸明神、〈○中略〉賴朝御舟あそびの時、こゝには貝の類なL とて、さゞいをおほくまかせられしに、ひだり卷にせしかば、そのさゞいみなひだり卷に成て、今にこど〳〵くひだりまきなりとぞ、

〔出雲風土記〕

〈島根郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1663 凡北海所捕雜物、〈○中略〉榮螺、

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1663 淡路 榮螺

〔皇大神宮儀式帳〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1663 一供奉朝大御饌夕大御饌行事事〈○中略〉
志摩國神戸百姓供進、鮮蚫螺等御贄〈乎〉、御机上爾備置〈氐○中略〉天照皇大神乃大御饌供奉、〈○下略〉

〔大神宮儀式解〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1663 螺は種々にて、榮螺(サタエ)、石炎螺(ニヨハ)、大辛螺(カキ)、小辛螺(ニシ)、細螺(シタヽミ)あれど、こゝ仁いふは榮螺(サダエ)にて、今も國崎より乾たる榮螺を奉れり、〈○中略〉諸記文には、榮螺先とも榮螺前ども注して、佐々延佐伎とよめり、佐伎は割の意にゃ、

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1663 一母屋大饗
同饗應差圖 榮螺子(サヽエ)

〔文祿三年卯月八日加賀中納言殿〈江〉御成之事〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1663 御引物 さゞい〈○下略〉

〔催馬藥〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1663 我家
わいへ〈ン〉は、とばりちやうをも、たれたるを、おほぎみきませ、むこにせん、みさかなになによけむ、あはびさだえかかせよけん、あはびさだえかかせよけん、

〔催馬樂註秘抄〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1663 さだかいは、さゝいといふ貝なるべし、

〔山家和歌集〕

〈下/雜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1663 うしまどのせとにあまのいていりて、さだえと申ものをとりて、舟にいれ〳〵し けるをみて、
さだえすむせどの岩つぼもとめ出ていそぎしあまの氣色なる哉

法螺

〔下學集〕

〈上/氣形〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1664 螺(ホラカヒ)

〔日本釋名〕

〈中/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1664 法螺(ホラガヒ) ほらはこえ也、訓にあらず、僧家の法事にふく貝なれ、ば名づけり、螺はすべてさゞえ、にしのかたちなる貝をいふ、

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1664 寶螺〈訓保良加伊
集解、海中之大螄也、狀類海螄而殻白、有紫黃虎斑、大者一二尺、小者四五寸許、殼尾圓旋盤屈比婦人之http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02071.gif、或三四旋五六旋、隨其大小殼尾旋留作小尖頭、其肉淡赤色味短不食、漁人待肉之出、以繩急縛其肉、則肉http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01550.gif 繩入殼而不出、引縄懸簷牙、經日螺乾死而殼自脱、取其殻洗淨琢磨以曝之、乾枯而後破尖尾口吹之、其聲嘹喨、殼大者本邦軍中吹之、進先鋒之兵、或釋子吹之人勤行之峯、小者爲兒童之戯器、世傳稱寶螺長大者數千、自海中穿土潛山底、拔山跳出、飛入大洋、則巖岳大崩變作江湖、今遠州荒井之今切、近世拔去之痕、此類處處多有、是未其眞焉、

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1664 梵貝(ホフガイ)〈○中略〉 俗ニホラノ貝ト云、大螺ナリ、佛書ニ法(ハフラ)螺ト云、是ナリ、海中或山土ノ内ニアリ、大雨フリ山クヅレテ出ル事アリ、出テ大ニ鳴クト云、本邦昔ヨリ軍陣ニ用テ吹之、〈○中略〉又本邦ノ山伏コレヲフク、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1664 海螺〈○中略〉
梭尾螺ハ、ホラガヒ又ホラノカヒ共云フ、〈○中略〉ホラハ海中ノ大螺ナリ、俗ニ傳へ言フ、大ナル者數多ク海中ヨリ土ヲ穿チ、山底ニ濳居シ、時ニ山ヲ出テ洋中ニ飛入ル時ハ、大風雨山崩レ洪水スト、ソノ長サニ尺餘ナル者、中山ヨリ來ル、〈○下略〉

〔丙辰紀行〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1664 今切 遠州荒井の濱より、奧の山五里ばかり海となりて、大舟も出入事、むかしは山につゞきたる陸地なりしが、中比山よりほらの貝おびたゞしくぬけ出て、海へ入ける、其跡かくのごとく海となりて、今切と名づくるよし、古老いひつたへたり、〈○下略〉

〔東海道名所圖會〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1665 今仞〈(中略)後柏原院御宇永正七年八月廿七日、螺の貝出て、山崩れ川埋もれ、舞坂の原を破り、深淵となる、○下略〉

〔蒹葭堂雜錄〕

〈四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1665 筑前國遠賀郡の浦人どもの中に、伊万里の陶器を船に積て、諸國を廻り渡世となす者あり、〈○註略〉天明二年寅の五月、奧州津輕にいたり、舟宿に滯留し、乘組の者銘々日毎に荷をかつぎ、市中在々を徘徊して賣めぐりけるに、其内に有し一人、〈○註略〉或日山路に踏まよひ、そこはかとなく吟ひけるに、〈○中略〉女房の洗濯し居たるに逢ひ、〈○中略〉あはれ簀子のはしに成とも、こよひ一夜を明させ給はらば、一命を助け給ふにひとしかるべし、偏に賴み入候と手を合せて賴みければ、女房のいはく、商人には何國の人にて侍らふやと、商人答へて、われは九州筑前のものなりと、此女いとおどろきたるさまにて、あらなつかしの筑紫人や、〈○中略〉抑わらわは山鹿の傍、庄の浦〈○註略〉といへる處の賎しき海士の子にて候ひしが、〈○中略〉男子女童二人持はべりしが、最孝心にして枕に附そひ歎き侍りしに、或日磯に出て、一のほら貝を拾ひ歸り、これをよく煮調へ、すゝめ侍りしが、其味ことの外よろしく覺へしより、少しづゝ食事にもとづきけるゆへ、朝夕二三日の間、其貝をさいとなして、終にこと〴〵く食せしが、頓て病本復せしより、身體もとより倍て健になり、其後は更に病といふ事を知ず、幾春秋を重て、老衰の貌もなく、所謂不老不死の藥にてもや侍りけむ、今思ひ巡らすに、はや六百餘年と申昔語にて、我ながらいといぶかしき身上に侍なり、〈○中略〉さる程にいつしか住馴し故郷も住うく覺へけれぱ、〈○中略〉子孫のもの、所の人々に暇を乞て、〈○中略〉都の方より、吾妻の國々を經歷、さいつ頃より、此陸奧の津輕の郡にまいりしが、又もや人々のわりなく申給へるに固辭がたく、此家のあるじに嫁づきはべり、我身〈○中略〉故郷を出し頃、かの哱囉(ほらがい) の殻を、我命の親なりと思へば、所の神職を賴みて、小き祠の有しに、祝おさめて我姿とも形見とも見よかしと申殘し候ひしが、今は限りもなき年月に候へば、いかゞ成行はべりしやらん、爾有(しかはあれ)ど、其小祠のわたりに、舟留の松とて、大なる木の一もと有しなり、松は千歲のものなれば、今に朽木ともならで、有なんもほかり難し、若彼處にいたり給ひなば、是をしるしに万が一、わが子孫の末のものなど候はゞ、尋出して此物語をも聞せて給はり候へとて、夜すがら語あかしけるよし、此商人ことし〈○天明二年〉の神無月、庄の浦に尋來りて、傳治郎といへる者の家に、かのほら貝の傳はれるを見つ、又小祠の傍に彼松の有を見て、いとゞ奇異の思ひをなし、如此のよしを傳治郎へ物語けるとなり、〈○中略〉
岡部久伯、山鹿に滯留せしうち、此物語を聞しより、庄の浦へまかりて、彼ほら貝を見しに、いかにも古物と思しくて、口のあたり所々かけ損じたりと語れり、
遠賀郡乙丸村庄屋儀平ゟ御役所へ申上の口上之寫、
當村郷庄の浦へ、古來ゟ持傳候ほら貝、此節御上御用ニ付、御役所〈江〉差出候樣被仰付、則ほら貝主傳治江爲持差上申候、右ほら貝持傳候次第申上候樣被仰付候得共、何分村方ニ慥成書付等無御座候、倂往古右ほら貝之肉喰候女、今以遠國に致長壽居申由、六十年已前ニ風説有之由、老人之咄ニ承及候處、又々三十年已前、同樣之風説御座候得共、村方ニ趣意存候儀少〈茂〉無御座候、尤村中流行病、又は牛馬相煩候節など、次第者存知不申候得共、右ほら貝持廻來申候、其後天明〈壬〉寅年、同樣之風説專御座候而、世上ゟ取々咄候ニ付、咄之趣寫留、所持仕候者隣村ニ御座候、是以御役所〈江〉難差上存候得共、爲御内見ほら貝ニ相添差上候、何れ共御奉行樣御前宜被仰上爲下候、偏ニ奉願上候、以上、
寬政九年十二月 〈乙丸村庄屋〉儀平 坂田新五郎樣御役所〈○下略〉

鸚鵡螺

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1667 海蠃〈○中略〉
鸚鵡螺ハ、アウムガヒ(○○○○○)、一名フメツノカヒ(○○○○○○)、ウケツ、〈大和本草、相州、〉諸州深海底ニアリ、潮盡ノ時、コレヲ得コト、アリ、形圓ニシテ扁ク、高サ三寸許、濶サ七八寸許、尾平ニシテ尖ナク、大抵扁螺(シタヾミ)ノ形ニ類ス、色白クシテ紫黑色ノ斑絞アリ、ソノ口濶クシテ厴ナシ、深サ三寸許ニシテ底アリ、平ニシテ一小孔アリ、是ヲ折破レバ、又底アリ、末ニ至ルマデ、凡數十底、皆一小孔アリ、故ニ數年ヲ經トイヘドモ、潮水涓滴シテ息マズ、然ドモ口殼薄クシテ、破レ碎ケ易ク、全キ者アルコト稀ナリ、

〔壒囊抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1667 明衡往來ニ泛羽觴トアルハ何事ゾ〈○中略〉 或説ニハ海中ニ貝アリ、鸚鵡ノ形ニ似タリ、是ヲ取テ背ヲウガチ破リテ、盃ニ用フ、能ク泛ガ故ニト云云、〈○下略〉
○螺盃ノ事ハ、器用部飮食具篇盃條ニ詳ナリ、

光螺

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1667 光螺(ツヘタ) 閩書ニ出タリ、海邊ニアリ、其肉カタシ、味不美、其形蝸牛ニ似タリ、フタハソリテウスシ、食シテ不人、

〔三好筑前守義長朝臣亭〈江〉御成之記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1667 二獻〈○中略〉 つべた

田螺

〔本草和名〕

〈十六/蟲魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1667 田中螺汁〈崔禹音洛果反〉一名螭螺〈有稜者也、出拾遺、〉和名多都比(○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1667 田中螺 拾遺本草云、田中螺其有稜者謂之螭螺、〈和名太都比、螭音知、見龍魚類、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1667 今俗呼多都菩、或云多邇之

〔物類稱呼〕

〈二/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1667 田螺たにし(○○○) 畿内、及西國、東武、其外國々にてたにしと云、土佐國にては一名田貝(○○)と云、北國及房總、又駿河、相摸、伊勢路にて田つぼ(○○○)といふ、又つぶ(○○)と計も云、和名に拾遺本草を引て、田つび(○○○)と書り、

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1667 田螺〈訓多仁之○中略〉 集解、甲蠃生水田小川及池瀆岸側、其殻蒼黑類海螄旋文、大者如大海螄、小者如小蝸螺、其肉頭黑身白、至三四月、腸内抱子、一箇有三五王而細小、其形全不母形、子長則母半出殻、子隨母出而蠢于泥中、農家兒女采之鬻市、或春初采水田之家庭池、經一兩月之、則肉脆無泥味、最爲佳、大抵采之放淸水盤中、而養者經一兩日則無泥而味亦美矣、食之煮熟和葫蒜味醬茹、或浸椒醬以煮乾食、又擊破尾尖去尾腸、以味醬汁而烹熟之、吸食其肉、烹煮之際、有火之大過不及、則令殻肉相粘涸、雖力而吸一レ之、終不出也、此俗號吸壼、庖人常誇此法者也、
肉、氣味、甘寒無毒、〈畏麝香葱韮之類、故今昶葫蒜而食之、則妄不通利乎、最惡温也、〉主治、去腹中結熱、利小便赤澀、消手足浮腫、取http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02072.gif 痔瘻體氣
附方、小便不通、〈小腹急痛用大田螺、大蒜、車前子、各等分、麝香少許、搗膏攤貼臍上下則通、〉小兒白禿、〈用大田螺、生鷄腸草、各等分、白鹽少許、搗膏和調、先以木片起患處而抹之及二三度寬痊、〉

甲貝

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1668 甲貝(カフカイ) ニシニ似テ大ナリ、食シテ味美シ、但性ハ不人、C 刺螺

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1668 刺螺 ニシカラノ口ノ左右ニ、長キ針アルモノ、和名ヲハツキ(○○○)ト云、C 蜷

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1668 蜷〈奇圓反、爾奈(○○)、〉 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02079.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02080.gif 〈二字彌奈(○○○○)〉

〔本草和名〕

〈十六/蟲魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1668 河貝子〈殼上黑小夾長〉似人足、出崔禹、〉 和名美奈

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1668 河貝子 崔禹錫食經云、河貝子〈和名美奈、俗用蜷字非也、音拳、連蜷、虫屈貌也、〉殼上黑小狹長、似人身者也、

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1668 蜷〈音同上(脊)ニナ、カウナ、〉

〔日本釋名〕

〈中/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1668 蝸蠃(ミナ) 水鳴(ナキ)也、水中にありてなくもの也、

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1668 蜷〈訓仁奈、古訓美奈、○中略〉
集解、湖邊溪澗流水有之、大如指頭、殼厚於甲螺而小色黑、或生苔、上有稜下細尖、肉如小蝸牛、其類成群、惟山中之人間食之、此物難死、誤入泥壁中、數年猶活也、人人語之、 肉、氣味、甘寒無毒、主治消一切黃疸水腫、利大小便、解熱醒酒、治産後血暈、故近世家家流傳法、於産前四五日、取生蜷數箇、洗淨放盆水養之令泥、待泥盡而采出、入土器固封、燒存性令黑、硏末和雞冠血及水糊、攤小團紙、至臨産、時、貼産婦額上髮際下、産後七日内不落、宜防血暈血逆、若乾落則別貼之、有病者不落、無病者枯落、或極虚之人亦易落、不詳察焉、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1669 蝸蠃 ミナ〈和名鈔〉 ニナ カハニナ(○○○○)〈豫州〉 ホウジヤウ(○○○○○) カモラ(○○○)〈共同上〉イナ(○○)〈食療正要〉 カハニシ(○○○○) ビンナ(○○○)〈佐州〉 カツタヌシ(○○○○○)〈伊州〉 ビンロウジ(○○○○○)〈能州〉 ビンロジ(○○○○)〈加州〉ニダ(○○)〈備前〉 カラスガヒ(○○○○○)〈播州〉 河貝子〈大和本草〉 ホウザイ(○○○○)〈魚譜〉 ドロナメ(○○○○)〈同上、泥水者、〉 一名蝸籬〈事物異名〉 水螺子〈訓蒙字會〉 溪螺〈八閩通志〉 師螺〈大倉州志〉 石螺〈藥性奇方〉 小螺螄〈附方〉
溪澗及ビ溝瀆流水中ニ多シ、湖邊ニモアリ、長ナ一寸許、甲頭ハ尖リ、一頭ハ漸ク濶ク、四分許ニシテ筆頭ノ形ノ如シ、殻ハ田螺ヨヲ厚シテ薄http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02073.gif アリ、全ク黑色ナリ、ソノ肉ハ小蝸牛ノ如シ、賤民食フ、〈○中略〉阿州ニ弘法大師シリキレガウナ(○○○○○○○○○○○)ト呼ブアリ、卽ニナノ尾過半腐禿スルモノナリ、廣東新語ニ神仙蠃ト云、又海涯ニ産スル者ヲ、ウミニナ(○○○○)ト云、形色淡産ニ異ナラズ、只尾尖禿セズ、是海螄〈寧波府志〉ナリ、〈○中略〉凡ニナハ、水ヲ離テ久ク死ザルコト、藏器モ云ヘリ、筑前糟屋郡産村ハ、上古神功皇后、應神帝ヲ誕玉フノ地ナリ、今八幡社中ニ、大樟樹アリ、枝上或ハ皮中ニ海螄アリ、土人取還リ、産ヲ占フ、螺活スル時ハ、産安ク、已ニ死スル時ハ、産難シト云、一種形圓ニシテ大サ四五分、殼薄ク黑色ニシテ細靑斑アヲ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02073.gif モ亦薄シ、俗ニガンガラト呼ブ、一名マルニナ、佐州ニテナンドキ介ト云、水ヲ離レ、已ニ久キモノモ水ニ入レバ活スル故ナリ、是亦海螄ナリ、

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1669 旬料
大和國吉野御厨所進、〈○中略〉年魚鮨火干從四月八月、月別上下旬各三擔、但蜷幷伊貝比魚煮凝等隨得加進、〈○下略〉

〔兵範記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1670 保元二年八月十九日壬子、有任大臣事、〈○中略〉窪海二種、〈海月、蜷酢鹽、箸、七等也、〉

〔萬葉集〕

〈五/雜歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1670世間難一レ住歌一首幷序〈○中略〉
世間能(ヨノナカノ)、周弊奈伎物能波(スベナキモノハ)、〈○中略〉美奈(ミナ/○○)乃和多(ノワタ)、迦具漏伎可美爾(カグロキカミニ)、伊都乃麻可(イツノマカ)、斯毛乃布利家武(シモノフリケム)、〈○下略〉

〔冠辭考〕

〈九/美〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1670 みなのわた 〈かぐろきかみに○中略〉
蜷腸と書るにつかば、和名抄に、河貝子〈美奈〉殻上黑、小狹長似人身者也てふ物にて、腸もいと黑ければ、髮にたとへたる歟、〈○下略〉

〔徒然草〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1670 みなむすびといふは、糸を結びかさねたるが、蜷といふ貝に似たればいふと、あるやんごとなき人仰られき、になといふはあやまりなり、

尨蹄子

〔本草和名〕

〈十六/蟲魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1670 尨蹄子〈貌似犬蹄而附石生也、上麥江反、下音啼、出崔禹、〉 和名世衣(○○)

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1670 尨蹄子 崔禹錫食經云、尨蹄子〈和名勢(○)〉貌似犬蹄而附石生者也、兼名苑注云、石花〈花或作華〉二三月皆舒紫花、附石而生、故以名之、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1670 按文選注引臨海水土異物志云、石華附石生、肉中啖、又引南越志云、石http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02074.gif 形如龜脚、得春雨則生花、似草華、是知舒紫花者石砝、附石生者石華、二物不同、故江賦云、其水物怪錯、玉珧海月、土肉石華、又云石䂶應節而揚葩二物秉擧、其不同可證、疑兼名苑注誤混之、閩中海錯疏亦云、龜脚一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02075.gif 、生石上人指甲、連枝帶肉、一名仙人掌、一名佛手蚶、春夏生苗如海藻、亦有花生、按石http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02075.gif 生海中石上、如蠣房之附一レ石也、形如龜脚故名、近甲處有軟爪黑色、肉白味佳、秋生冬盛、來年正月得春雨軟爪開花如絲、散在甲外、又云石華附石而生、方言謂之石雹、肉如蠣、房殼如杜蠣大可飾戸牖天窗、是亦可二物不一レ同也、萬葉集、大嘗祭式、類聚雜要抄、八幡愚童訓、皆以石華世、皆襲兼名苑之誤也石http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02075.gif 今猶呼世伊、又呼加米乃天、石華不詳、

〔類聚名義抄〕

〈七/子〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1670 尨蹄子〈セイ〉

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1671 石䂶 本草介類ニノセタリ、又龜腳ト云、和名カメノテ(○○○○)ト云、筑紫ニテシイ(○○)ト云、殼トモニ煮テ肉ヲ可食、貝ノ類色紫ナリ、長一寸四五芬、猶大ナルモアリ、半ヨリ上ハ龜脚ノ皮ノ如ク、半ヨリ下ハ爪ノ如ク、ウラ表各二三片相合テ、サキハ尖ル、海岸ニ生ジ垂レテ不移動、果ノ木ニ付ルガ如シ、ホヤト訓ズルハアヤマレリ、椎ノ實ノ垂タルニモ似タリ、故ニシイト云、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1671 石䂶 シイ〈大和本草〉 ゼイ(○○)〈筑前、今ハシイト呼バズ、〉 セイ(○○)〈同上、佐州、土州、〉 カメノテ〈紀州〉エボシガヒ(○○○○○)〈勢州〉 イワノツメ(○○○○○)〈播州〉 ジユミガヒ(○○○○○)〈丹後〉 オニノテ(○○○○)〈同上〉 イワノセイ(○○○○○)〈肥前〉タカヽフト〈○中略〉
海岸石縫中ニ生ズ、一箇離テ生ズルモアリ、數箇或數十箇叢生スルモアリ、ソノ石ニ粘スル處ハ莖也、頭濶ク扁シテ、手腕ノ如シテ、莖ト倶ニ細鱗アリ、其中以上ハ五ノ扁ク尖レル、爪甲相比ビテ、龜ノ脚ノ形ノ如ク白色也、小ナル者ハ五六分、大ナル者ハ一寸許、腕莖ハ倶ニ綠色ナリ、春間爪中ヨリ紅肉ヲ吐シ花ノ如シ、〈○下略〉

〔出雲風土記〕

〈島根郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1671 凡北海所捕雜物、〈○中略〉石華、〈字或大脚也、或曠作蠣、於脚者勢也、〉

〔延喜式〕

〈七/踐祚大嘗祭〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1671 阿波國所獻〈○中略〉鰒卌五編、蝮鮨十五坩、細螺、棘甲蠃、石華等幷二十坩、〈已上那賀潜女十人所作、○下略〉

〔台記別記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1671 康治元年十一月十六日甲辰、近江丹波國司解申進上多米都物事、 丹波國〈○中略〉石花二疋

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1671 一母屋大饗
同饗應差圖 石華(セ)

靈蠃子

〔本草和名〕

〈十六/蟲魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1671 靈蠃子〈貌似橘而圓、其甲紫色、生芒角、出崔禹、〉和名宇爾(○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1671 靈蠃子 本草云、靈蠃子〈漢語抄云、棘甲蠃宇仁、〉貌似橘而圓、其甲紫色生芒角者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1672引文、千金翼方、證類本草、及注皆不載、按本草和名引崔禹全同、只無者也二字、此亦源君誤引、按據靈蠃子之形狀與棘甲蠃之名、蓋二物異名實同、是卽閩書云海膽、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01083.gif孟外密刺、内有膏黃色、土人以爲醬、舊志又有石榼、云形圓色紫有棘、人觸之則刺動搖、疑海膽而異其名也、

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝體〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1672 芒角 本草云、靈蠃子、其甲紫色曰芒角、〈和名宇(○○○○○○)仁乃介〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝體〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1672 龜貝類靈蠃子條已引之、亦云本草、然是崔氏食經文非本草文、源君誤引也、

〔伊呂波字類抄〕

〈宇/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1672 靈蠃〈ウニ二字一ニヨム〉棘甲蠃〈已上同三字一ニヨム〉

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1672 靈蠃子〈訓宇仁
釋名、棘甲螺〈漢語抄〉甲貝、〈甲本朝俗誤傳讀作胄、靈蠃殼似胃形角刺故名、閩書南産志有海膽石榼之名、亦同種乎、〉
集解、殼如橘子外多角刺、而紫灰色、或帶黑、全似鐙兜之形、下有小口、今漆工造盒子、以爲兒女之翫器焉、殼内有白肉之、但有腸味佳、海人取之和鹽作醬、其腸有赤黃者上品、是大村五島平戸之産也、有紫黃者味亦殊他而佳、是薩之島津産也、有黃白者、味次前之二州、是越之福井、奧之巖城等産、倶其守令所貢獻也、
腸、氣味、甘澀冷無毒、主治、調瀉痢、和酒食則能止腸痛

〔令義解〕

〈三/賦特〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1672 凡調〈○中略〉正丁一人、絹絁八尺五寸、〈○中略〉若輸雜物者、〈○中略〉甲棘蠃(ウニ)六斗、

〔常陸國風土記〕

〈久慈郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1672高市、〈○中略〉其東南臨海濱〈(中略)棘甲蠃(ケウニ)(中略)甚多〉

〔出雲風土記〕

〈島根郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1672 凡北海所捕雜物〈○中略〉棘甲蠃(ウニ)〈字或作石經子

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1672 陸奧 岩城宇爾〈カザ醬トモ云〉 肥前 宇爾 壹岐 宇爾

〔日本山海名産圖會〕

〈四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1672 海膽〈一名靈蠃子〉 是鹽辛中の第一とす、諸島にあれども、越前薩摩の物名品とす、殻圓うして、橘子のごとく、刺多くして栗の氊(いか)に似たり、住吉二見などの濱に、此刺を削りて、小兒の弄物のとす、形鐙兜に似て、其口殼の正中にあり、まゝ中に漆して器物とす、肉は殼に滿ることなく、甚微少して膏あり、海人鹽に和して、酒殽の上品とす、尤黃に赤きを帶ぶるをよしとす、大村五島平戸の産を賞す、紫黃なる物は、薩摩島津の産なり、和潤にして香芬甚勝れり、越前の物は黏粘ありて、光艶も他に超たり、又物に調味しては、味噌にかへて、一格の雅味あり、海膽燒海膽田樂など、好事に任せてしかり、 漁捕は海人干潟に出で、岩間にもとめ、卽肉を採り、殼を去り、よく洗ひて、桶に收めて亭長(とひや)に送る、亭長鹽に和して售る、〈○下略〉

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1673 一母屋大饗
同饗應差圖 靈蠃子

石陰子

〔本草和名〕

〈十六/蟲魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1673 石陰子〈是物生海中、有陰精、故以名之、〉一名貽、〈餘之反、黑色貝似含珠子、〉鷰貝〈貌似堝、而大夫者如十合器、小者如橙子、〉妾貝子〈在海中者、名曰鷰貝、在江河者、名曰妾貝子、出崔禹、〉和名、加世(○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1673 石陰子 本草云、石陰子〈漢語抄云、甲蠃、加世、〉是物生海中陰精、故以名之、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜目〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1673 按本草和名以甲蠃都比、以石陰子加世、漢語抄以海蠃都比、以甲蠃加世、其説不同、源君混引非是、按賦役令有甲蠃、棘甲蠃、似甲蠃爲加世、棘甲蠃爲宇邇、與漢語抄、岩城謂海盤車加世、探黃膏醬、其味略與海膽同、漢語抄加世蓋卽是、仙臺謂海膽加世者恐非、〈○中略〉所引文、千金翼方、證類本草、及注皆不載、按本草和名引崔禹全同、只陰精上有有字異、則知此所載食經之文、源君引爲本草誤也、按本草和名引崔禹云、石陰子一名貽、依爾雅貽貝、貝子之黑色者、然則石陰子亦貝子、其狀略似女陰、故云陰精、以石見之、蓋貝子之小者、今俗呼兒安貝、非加世也、

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1674 石陰子〈百訓加世
集解、源順曰、是物生海中而陰精、故以名之、今海濱巖上有小黑貝、一片無對、肉仰面、殻粘于苔痕、以笻撞面則縮甚醜、是非海俗所一レ食、惟爲烏鳶之食矣、

〔令義解〕

〈三/賦役〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1674 凡調〈○中略〉正丁一人絹絁八尺五寸、〈○中略〉若輸雜物者、〈○中略〉甲蠃(カセエ)六斗、

〔出雲風土記〕

〈島根郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1674 凡北海所捕雜物、〈○中略〉甲蠃、

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1674 一母屋大饗
同饗應差圖 石陰子

〔催馬樂〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1674 我家
わいへ〈ン〉は、とばりちやうをも、たれたるを、おほぎみきませ、むこにせん、みさかなに、なによけむ、あはびさだえか、かせ(○○)よけん、あはびさだえか、かせよけん、

紫貝/錦貝

〔本草和名〕

〈十六/蟲魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1674 紫貝、一名文貝、〈出兼名苑〉 和名牟末乃久保加比(○○○○○○○)〈○中略〉
貝子、一名貝齒馬呵、 和名牟末乃都保加比(○○○○○○○)

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1674 紫貝 兼名苑云、紫貝一名大貝、〈和名宇萬乃久保加比、見本草、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1674 按大荒南經云、赤水之東、有梧之野、爰有文貝、郭注云、紫貝也、兼名苑蓋本於此、紫貝文見呉都賦、又嶺表錄異云、紫貝卽砑螺也、爾雅郭注云、今之紫貝、以紫爲質、黑爲文點、陸機疏云、又有紫貝、其白質如玉、紫點爲文、皆行列相當、藝文類聚引相貝經云、赤電黑雲謂之紫貝、桂海虞衡志云、貝子、海傍皆有之、大者如拳、上有紫斑、鹽鐵論錯幣篇、夏后以玄貝、周人以紫石、江賦、紫蚖如渠、按紫石紫蚖蓋是紫貝、證類本草引蘇敬云、紫貝形似貝圓大二三寸、出東海及南海上紫斑而骨白、〈○中略〉按注於和名後本草、蓋謂本草和名、單言本草、非是、今俗呼八丈加比(○○○○)又錦加比(○○○)

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1674 錦貝 辨色立成云、錦貝〈夜久乃班貝(○○○○○)、今按、本文未詳、但俗説西海有夜久島、彼島所出也、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1675 按本草和名紫貝訓宇末乃久保加比、辨色立成錦貝訓夜久乃斑貝、其名不同、而實卽一也、紫貝蓋貝子之大者、紫黑色有斑文、故曰紫貝、其腹、下、狀、略似牝馬陰、故名馬也貝、其質紫黑有斑文、光彩、煥爛、故或名錦具、以其出於夜久島、或呼夜久斑貝、源君以紫貝錦貝二、非是、夜久島又有一種螺、裁爲酒盃、今人呼爲光乃加比、蓋夜久加比之轉訛、〈○中略〉儀式大嘗儀、夜久貝齏坏八口、帥此所謂紅螺杯也、蓋是本草綱目所載靑螺、其螺綠色、故名靑螺、磨治作盃、光彩帶淡紅、故名紅螺、而螺貝不類、源君以錦貝紅螺、亦非是、又按釋日本紀、引私記云、掖玖者、西海別島也、出美貝、今俗謂之夜句貝、以其云美貝之、則私記所云者似斥紫貝、應德二年、造法勝寺注文有夜久貝、蓋修飾堂宇之用、則當是靑螺、空物語樓上卷所載夜久加比、亦蓋是、以紫貝靑螺共出於夜久島並名夜久加比、故遂以混殽也、又按嶺表錄異云、紅螺大小亦類鸚䳇螺http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01083.gif 薄而紅、亦堪酒器、未此所謂紅螺卽是否

〔類聚名義抄〕

〈三/貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1675 紫貝〈ウマノクボカヒ〉大貝〈同〉 錦貝〈ヤクノカヒ、〉

〔新猿樂記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1675 八郎眞人者、商人主領也、〈○中略〉交易之物、賣買之種、不稱數、〈○中略〉本朝物〈○中略〉夜久貝、〈○下略〉

〔東雅〕

〈十九/鱗介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1675 紫貝ウマノクボカビ〈○中略〉毛詩疏に、紫貝質白如玉、紫點爲文と見えしもの、今俗にタカラカヒ(○○○○○)とも、コヤスガヒ(○○○○○)ともいふ是也、ウマノクボカヒ、倭名鈔にいふ所詳ならず〈凡物の名、馬といふをもて呼びしは、大なるをいひけリ、此物をも馬といふは、大貝の謂にや、クボとは其腹下兩間相向ひし中の、窪かなうをいひしに似たり、〉

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1675 紫貝〈古訓宇萬乃久保、今世稱子易貝、〉
釋名、寶貝、〈俗名〉大貝、〈兼名苑、大貝之名未詳、按李時珍曰、大者徑一尺七八寸、交趾、九眞以爲盤孟、是大貝也、然本朝未之、以斯之類、古人須寶貨乎、〉
集解、背有紫斑、隆如龜背、腹下白色、兩開相向有齒、其細刻者如魚齒、其中肉如科斗而有首尾、又有背紫有波文、亦同種、倶貝肉不食、惟其殼婦人求蓄以爲臨産之備耳、
氣味、鹹平無毒、〈然本朝不藥〉主治謂臨産之時持之、則生子最易、故俗稱子易貝

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1676 貝子 ムマノクボガイ古名 タカラガヒ コヤスガヒ ハガヒマキガヒ(○○○○○○○) タラヒガヒ(○○○○○) 子コガヒ(○○○○)〈筑前〉 チカラガヒ(○○○○○) ヤウカヒ(○○○○)〈眼科書〉 一名海巴子〈黴瘡秘錄〉壓驚〈本草蒙筌〉 壓驚螺〈呉氏食物本草〉 海巴〈同上〉 白海肥〈附方〉 管貝齒〈東醫寶鑑〉 螺巴〈東西洋考〉
海邊ニ多シ、〈○中略〉ソノ質光滑ニシテ、厚硬紙ヲ砑ルベシ、背ハ微ク隆ニ、腹ハ平ニシテ、左右兩邊ヨリ卷テ内ニ向ヒ、中央縱ニ小長竅ヲ開ク、左右ミナ齒刻アリ、ソノ色白シ、又斑文アルモノ甚多ク、數百品ニ至ル、古者貨貝〈説文〉而寶龜、夏后以玄貝、殷人以紫石、周則有泉貝、至秦廢貝行錢、〈正字通〉貝ニ大貝、壯貝公貝、小貝、不成貝ノ五等アリテ、貝ノ長短ニヨリ、直ノ齊カラザルコト、正字通ニ漢食貨志ヲ引ケリ、唐山ニテ上古寶トセシユへ、貝ノ字ヲタカラガヒト訓ズ、〈○中略〉
紫貝 ヤクノマダラガヒ〈和名鈔〉 コヤスガヒ 八丈ガヒ(○○○○) ニシキガヒ〈○中略〉
丹後、紀州、土州ノ海ニアリ、薩州及八丈島ニ産スル者ヲ上トス、大ナル者ハ長サ三四寸、形ハ貝子ニ同ジ、只背上中央聳へ隆ニシテ、質更ニ光硬紙ヲ砑ルニ堪ユ、質ハ黑クシテ圓白章明ナリ、形ノ小異ヲ似テ雌雄ヲ分ツ、俗ニ言フ臨産ノ婦人コレヲ持トキハ、産シ易シト、故ニコヤスガヒト呼ブ、貝子モ亦代用スベシ、因テ貝子ニモ、コヤスガヒノ名アリ、

〔貝盡浦之錦〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1676 貝子(こやすがひ)亡からかい、齒貝とも云よし、百貝の固に見え澹リ、是は古へ寶として、交易に用しものなり、委は貝經本草に見えたり、錢世に行れて、貝子すたると、天竺にても貝をすり碁石のごとくして、かりしやはだと云て、錢のやうに用ゆとなり、色いろいろあり、東海夫人の類也、婦人産するに手にもたせば、安産すると云り、〈○下略〉

〔延喜式〕

〈三十七/典藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1676 諸國進年料雜蘂
安房國十八種〈○中略〉貝子八兩〈○中略〉 上總國廿種〈○中略〉瞿麥、貝子各三斤、

〔竹取物語〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1676 中納言礒めかみのもろたかは、家につかはるゝをのこどものもとに、つばくらめすく ひたらばつげよとの給ふを承て、何の用にかあらむと申、こたへての給ふやう、つばくらめのもたる、こやすの貝(○○○○○)をとらんれうなりとの給ふ、をのこどもこたへて申、つばくらめをあまたころしてみるにだにも、はらになき物也、たゞし子うむ時なん、いかでかいだすらんはう〳〵とか申、人だにみればうせぬと申、又人申やう、おほいづかさのいひかしぐ屋のむねに、つくのあなごとに、つばくらめは巢をくひ侍る、〈○中略〉まめなるをのこども、廿人許つかはして、あなゝひにゐけすへられたり、〈○中略〉つばくらめも、人あまたのぼりゐたるにおぢて、すにものぼりこず、〈○中略〉つかさの官人くらつまうと申翁申やう、〈○中略〉此あなゝひをこぼちて、人みなしりぞきて、まめならん人をあらこにのせすへて、つなをかまへて鳥の子うまん間に、つなをつりあげさせて、ふとこやすのかひをとらせ給なんよき事なるべきと申、〈○下略〉

〔空穗物語〕

〈樓の上ノ下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1677 ふたつのろうのなかしまばかりを、いとたかきそりはしのたかきにして、きたみなみには、ろうのかうしかきたり、しろき所には、しうものにはやくかい(○○○○)をつきまぜてぬりたればきら〳〵とす、

鰒/名稱

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1677 蚫〈阿波比(○○○)〉

〔本草和名〕

〈十六/蟲魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1677 石決明〈崔禹云、食心目聰了、亦附石生、故名决明、秦皇所覓之不所(所恐死誤)藥、蓋謂於斯歟、〉 一名紫貝、〈俗名之也、定小異、〉一名鰒魚甲、〈仁諝音補角反、已上、二名出陶景注、〉一名馬蹄决明、〈似馬蹄、故以名之、〉和名阿波比、

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1677 鰒 四聲字苑云、鰒〈蒲角反、與雹同、今案一音伏、見本草音義、〉魚名似蛿、偏著石、肉乾可食、出靑州海中矣、本草云、鮑一名鰒、〈飽音抱、和名阿波比、〉崔禹錫食經云、石決明〈和名上同〉食之、心目聰了、亦附石生、故以名之、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1677 按説文、鰒魚名、後漢書伏隆傳注引郭璞注三蒼云、鰒似蛤、偏著石、四聲字苑蓋本於此、本草云、生南海、今注云、石決明生廣州海畔、圖經云、今出萊州卽墨縣南海、因樹屋書影云、鰒魚出膠州、膠人言鰒生海水中亂石上、一面附石、取者必泅水持鐵鏟、入鏟驟觸、鰒不覺則可得、 一再觸則粘石上碎其http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01083.gif 、亦膠結不脱、〈○中略〉千金翼方、證類本草上品有鮑魚、不一名、按説文、鮑饐魚也、吏記秦始皇崩、秘之、棺載轀涼車中、會暑臭、載鮑魚以亂之者、非阿波比、千金翼方、證類本草上品有石決明、陶隱居云、是鰒魚甲、本草和名云、和名阿波比爲允、按有誤以鮑爲鰒者、醫心方石決明條引崔禹食經云、以鰒爲眞、或作鮑、亦爲誤、江鄰幾雜志云、鰒魚又讀如鮑、非臭者也、五雜組云、鰒音撲入聲、今人讀作鮑、非也、香祖筆記云、鰒魚産靑萊海上、今京師以此物餽遺、率作鮑魚、則訛爲秦始轀椋中物笑、皇國俗有蚫者、〈○中略〉輔仁旣訓石決明阿波比、又以鰒或作鮑者、誤認本草鮑魚鰒魚、亦訓爲阿波比、源君襲其誤、混鮑鰒一、遂言鮑魚一名鰒魚、其實本草鮑魚鰒魚逈別、無引文

〔類聚名義抄〕

〈二/肉〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1678 石决明〈和云アハビ〉

〔同〕

〈十/魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1678 鰒〈音雹、一音伏、アハビ、〉 鮑〈俗正音抱、アハビ、〉

〔伊呂波字類抄〕

〈安動物鮑〈アハビ蚫俗同〉〉

〔下學集〕

〈上/氣形〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1678 鮑(アハビ)〈或成海貝、或成石決明、〉

〔日本釋名〕

〈中/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1678 蚫(アハビ) あはでひかると云事也、あはびは其から片貝にてふたなし、からひかるもの也、故に名つく、一説に、あはでひらく也、ふたなき故、あはでつねにひらけり、

〔物類稱呼〕

〈二/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1678 鰒魚あはび 上總にてかいつけ(○○○○)と云、是は蚫の蓋なくして、身は貝につきて有物なれば、貝つけといふか、貝つきなるべし、江戸にて一名なまがい(○○○○)共云、又あがりたる蚫をば、すい(○○○○)けんと云、泉州境にて、此貝の壳をあま貝(○○○)と云、これは海士のとる貝なれば海士貝と云か、

鰒形狀

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1678 鰒〈音薄、本邦讀音伏、訓阿和比、○中略〉
集解、凡介中之長、自古美賞之、形圓而長扁、一片無對、殼雖扁肉尚圓、大者徑尺餘、小者方二三寸、其最小者曰登古不志(トコフシ/○○○○)、外殼甚粗藻苔依附、内有五色光耀、器工碎之以飾、漆工最用之、背側有孔、七孔、九孔、或十孔亦有、皆如穿成者、其肉色有靑赤二色、靑爲雄赤爲雌、雌味優於雄、肉味甘脆美於蛤蠣、肉之四 圍薄堅、其端蒼黑如鋸屑之凝堅、在水中則半出殼外、轉運以跂歩、俗稱鰒耳、肉之首尾兩端有二竅、如上下二口之形、常附於巖腹石上、蜑之男婦入水、或深沒于波底、用小刀不意急削采之、若斯則易得、否則緊粘難脱也、凡蜑有男婦、同依海濱之習俗以爲營爾、食鰒者有生食、煮食、蒸食、乾食醃食、糟漬食、倶去甲及腸、又有肉割腸和鹽以爲醬者、故今古食品最多、漁市以爲貨、其大者價貴、近時以志摩、伊勢、隱岐、佐渡、駿河、伊豆、相摸、安房等海濱之産上品、今相州長田小坪來者、大不徑泗五寸、肥圓肉起、其味極美、海俗以爲御厨之供、〈○中略〉鰒雖雌雄、未其孚乳、雌肚未子者、然海中生態不知矣、李時珍所謂蚌蛤屬、皆有胎生、卵生、則此亦其類乎、

鰒産地

〔延喜式〕

〈二十四/主計〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1679 相摸國〈○中略〉中男作物、〈○中略〉短鰒〈○中略〉
安房國〈○註略〉調、〈○中略〉鳥子鰒、都都伎鰒各廿斤、放耳鰒亠ハ十亠ハ斤四兩、著(ツケル)耳鰒八十斤、長鰒七十二斤、〈○中略〉
若狹國〈○註略〉調、絹、薄鰒、〈○中略〉
佐渡國〈○中略〉中男作物、布、鰒、〈○中略〉
出雲國〈○註略〉調、〈○註略〉鰒廿四斤〈○中略〉
石見國〈○中略〉中男作物、〈○中略〉薄鰒、〈○中略〉
隱岐國〈○註略〉調、御取鰒、短鰒、〈○中略〉
長門國〈○中略〉調、〈○中略〉雜鰒〈○中略〉中男作物、〈○中略〉薄鰒、〈○中略〉
紀伊國〈○註略〉調、〈○註略〉鰒〈○中略〉
阿波國〈○中略〉調、〈○中略〉御取鰒二百斤、細割鰒三百卅三斤、横串鰒卅九斤、〈○中略〉
伊豫國〈○中略〉調、〈○中略〉長鰒卅六斤、短鰒三百卅斤、〈○中略〉
筑前國〈○註略〉調、〈○中略〉御取鰒二百亠ハ十斤、羽割鰒六斤、葛貫鰒一百八斤、蔭鰒一百卅五斤、鞭鰒廿四斤、 腐耳鰒一百八十二斤、〈○中略〉
庸、〈○中略〉腐耳鰒、鮨鰒腸漬、鰒鮨、〈○中略〉
肥前國〈○註略〉調、〈○中略〉御取鰒三百六十四斤、短鰒五百卅四斤、長鰒廿四斤、羽割鰒廿四斤、〈○中略〉
肥後國〈○註略〉調、〈○中略〉躭羅鰒卅九斤、〈○中略〉
豐後國〈○註略〉調、〈○中略〉御取鰒五十二斤、短鰒七十二斤、蔭鰒卅斤、羽割鰒十二斤、葛貫鰒十二斤、躭羅鰒
十八斤、〈○中略〉
日向國〈○註略〉調、〈○中略〉薄鰒、〈○中略〉
壹岐島〈○註略〉調、〈○中略〉薄鰒、

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1680 諸國貢進御贄〈中宮准此〉
旬料〈○中略〉志摩國御厨鮮鰒螺起九月明年三月、月別上下旬各二擔、味漬腸漬蒸鰒、玉貫、御取、夏鰒等、月別揔五擔、〈○中略〉
年料〈○中略〉
太宰府〈御敗鰒四百五十九斤五裹、短鰒五百十八斤十二裹、薄鰒八百五十五斤十五裹、陰鰒八十六斤三裹、羽割鰒卅九斤一裏、火燒鰒三百卅五斤四裹、已上調物、(中略)鮨鰒一百八斤三缶、腸漬鰒二百九十六斤九缶、甘腐鰒九十八斤二缶、已上中男作物、○中略〉
右諸國所貢、並依前件、仍收贄殿供御、〈○下略〉

〔常陸國風土記〕

〈久慈郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1680高市、自此東北二里密筑里、〈○中略〉其東南臨海濱、〈石决明棘甲蠃魚貝等類甚多、〉

〔出雲風土記〕

〈出雲郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1680 凡北海所在雜物、〈○中略〉但鮑出雲郡尤優、所捕者所謂御埼海子、是也、

〔新猿藥記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1680 四郎君受領郎等、刺史執鞭之圖也、〈○中略〉常擔集諸國土産、貯甚豐也、所謂〈○中略〉隱岐蚫、〈○下略〉

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1680 伊勢 蚫 上總 ヲダキ鮑(アハビ)〈貝勝タリ〉 長門 火打鮑 三島貝〈大飽ナリ〉 筑前 金崎鮑

鰒捕獲

〔日本山海名産圖會〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1681 鰒〈○註略〉
伊勢國、和貝浦、御座浦、大野浦の三所に鰒を取り、二見の浦北塔世と云所にて、鮑(のし)を制すなり、鰒を取には必女海人を以てす、〈是女は能く久しく呼吸を止めて、たもてるが故なり、〉般にて沖ふかく出るに、かならず親屬を具して、船を盪(や)らせ繩を引せなどす、海に入には腰に小き蒲簀(かます)を附て、鰒三四ツを納れ、又大なるを得ては、二ツ許にしても泛めり、淺き所にては、竿を入るゝに附て泛む、是を友竿といふ、深き所にては腰に繩を附て、泛んとする時、是を動し示せば、船より引あぐるなり、若き者は五尋、卅以上は十尋十五尋を際限とす、皆逆に入て立游ぎし、海底の岩に著たるをおこし、箟(へら)をもつて、不意に乘じてはなち取り、蒲簀に納む、その間、息をとゞむること暫時、尤朝な夕なに馴たるわざなうとはいへども、出て息を吹ーに、其聲遠くも響き聞えて、實に悲し、

〔今昔物語〕

〈三十一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1681 能登國鬼寢屋島語第廿一
今昔、能登國ノ奧ニ寢屋ト云フ島有ナリ、其ノ島ニハ河源ノ石ノ有ル樣ニ、鮑ノ多ク有ナレバ、其ノ國ニ光ノ島ト云フ浦有リ、其ノ浦ニ住ム海人共ハ、其ノ鬼ノ寢屋ニ渡テゾ、鮑ヲ取テ國ノ司ニハ弁ケル、其ノ光ノ浦ヨリ、鬼ノ寢屋ハ一日一夜走テ人行ナル、〈○中略〉光ノ浦ノ海人ハ、彼ノ鬼ノ寢屋ニ渡テ返ヌレバ、一人シテ、鮑万ヲゾ、國ノ司ニ弁ケル、其レニ一度ニ四五十人渡ケレバ、萇ノ鮑ノ多サヲ思ヒ可遣シ、而ル間藤原ノ通宗ノ朝臣ト云フ能登ノ守ノ任畢ノ年、其ノ光ノ浦ノ海人共ノ鬼ノ寢屋ニ渡テ、返テ國ノ司ニ鮑弁ケルヲ、强テ責ケレバ、海人共侘テ越後ノ國ニ返テ渡ニケレバ、其ノ光ノ浦ニ一人ノ人無クテ鬼ノ寢屋ニ渡テ、鮑取ル事絶ニケリ、然テ人ノ强ニ欲心有ルハ弊キ事也、一度ニ責テ多ク取ラムトシケル程ニ、後ニハ一ツヲダニ否不取テ止ニケリ、于今モ國ノ司其ノ鮑不取サナレバ、極テ益无キ事也トゾ、國ノ者共ハ、彼ノ通宗ノ朝臣ヲ謗ケルトナム語リ傳ヘタルトヤ、

鰒利用

〔皇大神宮儀式帳〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1682 一供奉朝大御饌夕大御饌行事事〈○中略〉
志摩國神戸百姓供進鮮蚫螺等

〔大神宮儀式解〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1682 鮑は鰒と同じ、〈○中略〉古代は此儀式にしるすごとく、生鮑を奉りしなるべし、中世より乾て奉る、それを玉貫蚫といふ、其形(サマ)蚫を横に切て乾し、藁もて其端を貰き、十箇を一連とす、そのさま玉を貫しに似たればなるべし、是は國崎より上れり、〈○下略〉

〔延喜式〕

〈三十二/大膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1682 御膳神八座〈○中略〉
東鰒十二斤、島鰒〈○中略〉各六斤、〈○中略〉
新嘗祭〈○中略〉
小齋給食〈○中略〉五位己上一人〈○中略〉東鰒七兩、〈○中略〉六位已下一人〈○中略〉東鰒七兩、〈○中略〉
同小齋解齋給食〈○中略〉五位巳上一人〈○中略〉東鰒二兩三分、隱岐鰒二兩、〈○中略〉六位已下一人〈○中略〉東鰒二兩三分、〈○中略〉
同會皇后宮小齋〈○中略〉五位一人〈○中略〉東鰒七兩、〈○中略〉六位已下一人〈○中略〉東鮑六兩、〈○中略〉同宮神態直相給食〈○中略〉五位一人〈○中略〉東鮑二兩二分〈○中略〉六位已下一人〈○中略〉東鮑二兩三分、〈○中略〉宴會雜給 親王以下三位以上、幷四位參議、
人別〈○中略〉東鰒二兩、隱岐鰒二兩一分、〈○中略〉繩貫鰒各二兩二分、〈○中略〉四位五位幷命婦、
人別〈○中略〉東鰒、隱岐鰻〈○中略〉各一兩、繩貫鰒一兩、〈○中略〉
供御月料〈○中略〉
東鰒卌五斤、薄鰒十一斤四兩、隱岐鰒卅五斤、醬鰒廿一斤、〈○中略〉腸漬鰒二斗三升二合五勺、

〔北山抄〕

〈一/四月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1682 朔日〈○中略〉
侍從厨家別當以下、取御贄進、稱物名、〈○註略〉兩度、次供蚫御羮、〈○下略〉

〔建武年中行事〕

〈正月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1683 元日節會〈○中略〉内辨天氣に候、御はしくだる、〈○註略〉臣下みなこれにおうず、〈はしをとる也〉次あつものを供ず、〈あはびのあつ物也、たゞあつものといふ、○下略〉

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1683 一母屋大饗
同饗應差圖 貝蚫

〔厨事類記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1683 蒸蚫 蚫ヲ蒸テ、ホシテケヅリテ供之、

〔奉公覺悟之事〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1683 うちあはびを引わたしと云なり、閏は十三けづりかけ、長七寸五分、

〔三好筑前守義長朝臣亭〈江〉御成之記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1683 三獻〈○中略〉御ゆづけ〈○中略〉かいあはび、

〔祇園會御見物御成記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1683 九獻〈○中略〉 かいあわび

〔昨日は今日の物語〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1683 一けふはおやの日じやとて、寺へ參ければ、〈○中略〉折ふし坊主はあはびのわたあへ、りやうりをなさるゝが、だんなに見付られ、かくすべきやうはなし、〈○下略〉

〔類聚符宣抄〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1683 皰瘡事〈○中略〉
太政官符、東海、東山、北陸、山陰、山陽、南海等道諸國司、令疫之日治身及禁食物等事漆條、〈○中略〉
一病愈之後、〈○中略〉廿日已後、若欲魚宍、先能煎炙、然後可食、但乾鰒堅魚等之類、煎否皆良、〈乾脯亦好○中略〉
天平九年六月廿六日

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1683 鰒〈○中略〉
集解、造長鰒法(○○○○)、采生鰒腹殻、以小刀耳端、環切至中肉條、次第切盡、條條洗淨、略暴乾待生乾、而引舒令長、復暴乾作明白條、此謂長鰒、短鰒亦略同、近世伊勢志摩多造、以貢獻之、伊豆海人造短鰒以貨之、或用榮螺而亂之、然味亦不鰒故謂榮螺熨斗而賞之、筑前肥後有丸片鰒、此亦短鰒之類也、凡本邦賞長鰒者、仍爲上下賀祝之先供也、神祠亦奠之、取延長悠久之義乎、
氣味、主治、與乾鰒同、但懼多食難消耳、

〔日本山海名産圖會〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1684
制長鮑(のし)〈○註略〉
先貝の大小に隨ひ、剝べき數葉を量り、横より數々に剝かけ置て、薄き男にて薄々と剝、口より廻し切る事圖のごとし、〈○圖略〉豐後豐島(テシマ)薦に敷き並らべて乾が故に、各筵目を帶たり、本末あるは、束ぬるが爲なり、さて是をノシといふは昔は、打鰒とて、打栗のごとく打延し、裁截などせし故に、ノシといひ、又干あはびとも云へり、
又干鮑、打あはびともに、往昔の食類なり、又薄鮑とも云へり、江次、第忌火御飯の御菜四種、薄鮑、干鯛、鰯、鯵とも見へたり、今壽賀の席に、手掛或はかざりのしなどとして用ゆることは、足利將軍義滿の下知として、今川左京大夫氏賴、小笠原兵庫助長秀、伊勢武藏守滿忠等に、一天下の武家を十一位に分ち、御一族大名守護外樣評定等の諸禮に附て、行はせらるより起る事三儀一統に見えたり、往昔は天智帝の大嘗會に、干鮑の御饌あり、延喜式諸祭の神供にも悉く加へらる、第一伊勢國は本朝の神都にして、鎭座尤多し、故に伊勢に制する所謂(ゆえん)、又は飾物にはあらずして、食類たることも知るべし、〈○下略〉

〔平治物語〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1684 賴朝遠流事附盛安夢合事
盛安〈○纐纈〉申ケルハ、都ニテ御出家不然由申候シハ、不思議ノ夢想ヲ蒙タリシ故也、君〈○源賴朝〉御淨衣ニテ、八幡へ御參候テ、大床ニ座ス、盛安御供ニテ、數多ノ甃ノ上ニ伺候シタリシニ、十二三許ナル童子ノ、弓箭ヲ抱テ大床ニ立セ給、義朝ガ弓胡箙召テ參テ候ト被申シカバ、御寶殿ノ内ヨリケダカキ御聲ニテ、深ク納置ケ、終ニハ賴朝ニ給ハンズルゾ、是賴朝ニクハセヨト被仰レバ、天童物ヲ持テ、御前ニ差置セ給、何哉覽ト見奉レバ、打鮑ト云物也、君恐テ無左右參ラザリシヲ、其タベヨト被仰、數ヘテ御覽ゼシカバ、六十六本アリ、彼鮑ヲ兩方ノ御手ニテ押ニギリテ、太キ所ヲ三口進 リテ、小キ所ヲ盛安ニ投給シヲ、取テ懷中スルト存候シハ、故殿コソ一旦朝敵ト成セ給へ共、御弓胡箙八幡ノ御寶殿ニ被納置、終ニハ君ニ給ハンズル也、又打鮑六十六本參リシハ、六十六箇國ヲ打被召候ハンズルト合セ申テ候ツト申セバ、〈○下略〉

〔吾妻鏡〕

〈十二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1685 建久三年十二月廿甘戊午、前右大將家政所運上、相摸國吉田御庄、御年貢送文事、〈○中略〉例進長鮑千百五十帖、〈○下略〉

〔寬正七年餃尾宅御成記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1685 一當日まくや柳五荷、折二合、〈まんぢうのし蚫〉折二尺五寸よはう、

〔宣胤卿記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1685 永正三年正月三日、伊勢又七〈○中略〉鮑三百本、炭一荷送之、歲暮佳例儀遲々也、

〔殿中申次記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1685 二月朔日〈○中略〉 熨斗蚫千本
七月朔日〈○中略〉 伸蚫千本、天野五荷、〈恒例〉

〔和漢三才圖會〕

〈四十七/介貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1685 鰒〈○中略〉
鰒殼(○○) 以有翳之功、名石決明、以靑白之光、名千里光、磪片可漆器、俗云靑貝(○○)是也、

〔大海のはし〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1685 中つかさのみこ、御數寄屋をいみじくこ、のみ給ひて、たてさせ給ふ、御ふすまの門松、萬歲など、年のはじめの景物をゑがゝせたまひて、引手をあはびの貝にし、御ふくろだなのひきてを、丸のゝもじにせさせたまひけるを、民部卿〈冷泉大納言爲村〉見給ひて、
しめかざり松を引く手ののしあはび間毎にめだたう候はれける、と申されければ、みこかしこく興ぜさせ給ひける、

鰒事蹟

〔源平盛衰記〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1685 法皇熊野山那智山御參詣
花山法皇御參詣、瀧本ニ三年千日ノ行ヲ始置セ給ヘリ、〈○中略〉法皇ノ御行ノ其間ニ、樣々ノ驗德ヲ顯サセ給ケル、其中ニ龍神アマクダリテ、如意寶珠一顆、水精ノ念珠一連、九穴ノ蚫貝一ツヲ奉ル、法皇此供養ヲメサレテ、末代行者ノ爲ニトテ、寶珠ヲバ岩屋ノ中ニ納ラレ、念珠ヲバ千手堂ノヘヤ ニ納ラレテ、今ノ世マデモ先達預之渡ス、蚫ヲバ一ノ瀧壼ニ被放置タリト云、白河院御幸時、彼蚫ヲ爲見、海人ヲ召テ、瀧壼ニ入ラレタリケレバ、貝ノ大サハ傘バカリトゾ奏申ケル、參詣上下ノ輩、萬ノ願ノ滿ル事ハ、如意寶珠ノ驗也、飛瀧ノ水ヲ身ニフルレバ、命ノ長キ事ハ彼蚫ノ故トゾ申傳タル、

〔新著聞集〕

〈十八/雜事〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1686 大蚫光をはなつ
寬文五年、房州平群郡の内、龜崎の海中俄に光りかゞやきて、海士の仕業もやみて、いかゞすべきと歎きしに、老たるものゝ云しは、若き輩はせん方しるまじ、いで某見とゞけんとて、その光り二町ばかり隔て、海に入り、かの邊をうかゞひみれば、七八間ほどの蚫なり、すさまじなどいふばかりなし、あたり近くは、中々よりがたしとて歸りしが、其後行方しらずなりし、

〔房總志料〕

〈三/上總附錄〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1686 同郡〈○夷隅郡〉岩田浦の海岸に、鰒魚大さ雨傘の加くなるもの有、蜑人懼れて近づかず、或は誤て其殼にふるゝ時は、海潮暴起す、實に神靈有て護するに似たりと、彼土の里正市東氏語れり、

鰒雜載

〔令義解〕

〈三/賦役〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1686 凡調〈○中略〉正丁一人、絹絁八尺五寸、〈○中略〉若輸雜物者、〈○中略〉鰒十八斤、〈○中略〉鰒鮓二斗、

〔延喜式〕

〈二十四/主計〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1686 凡諸國輸調、〈○中略〉御取鰒著耳鰒各四斤、躭羅鰒六斤、鳥子鰒、都都伎鰒各二斤、放耳鰒三斤五兩、長鰒、短鰒、凡鰒、串鰒、横串鰒、細割鰒、葛貫鰒、火燒鰒、羽割鰒、蔭鰒、薄鰒各六斤、〈壹岐島三斤○中略〉
凡中男一人輸作物〈○中略〉短鰒、薄鰒各一斤、〈○中略〉鰒鮨二斤十兩、腐耳鰒、腸潰鰒〈○中略〉三斤八兩、

〔萬葉集〕

〈十一/古今相聞往來歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1686物陳
伊勢乃白水郎之(イセノアマノ)、朝魚夕菜爾(アサナユフナニ)、潛云(カヅクトフ)、鰒貝之(アハビノカヒノ)、獨念荷指天(カタモヒニシテ)、

〔山家和歌集〕

〈下/雜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1686 沖なるいはにつきて、あまどものあはびとりけるところにて、
岩のねにかたおもむきも浪うきてあはびをかづくあまのむらぎみ

とこぶし

〔物類稱呼〕

〈二/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1687 鰒魚あはび〈○中略〉 蚫の小なる物をとこぶし(○○○○)と云、土佐にてながれこ(○○○○)と云、今按にとこぶしは蚫の子にはあらず、種類也、又蚫のわた(○○○○)を西國にて角と云、

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1687 鰒〈○中略〉
集解、〈○中略〉登古不志者、以伊勢、志摩、安房勝、雖常采一レ之、自仲春秋初最多伊州作腸漬醬以送之、呼曰福溜(フクタメ/○○)、今江都魚市四五月多鬻之、此相房總之産也、或謂是鰒子也、長而作大鰒、或謂非子鰒、別一種、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1687 石決明 アハビ〈○中略〉
石決明ノ一種小ナル者ヲ、トコブシト云、一名ヲイズ、〈豐後〉センネン介、〈豐前〉ナガレコ、〈土州〉此物二三寸ノ大サニ過ギズ、殼薄ク形瘠セ、ソノ孔數多シ、八九孔ヨリ十一二孔ニ至ル、決明ノ形大ニシテ、孔數少ニ異ナリ、東西諸州皆アリ、勢州、房州ノ産ヲ勝レリトス、勢州、阿州、日州ニテ、腸漬醬〈延喜式〉ヲ造リ出ス、フクダメト云、

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1687 蠣〈力制反、相著生石、加支(○○)、〉 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02076.gif 〈加支〉 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02077.gif 〈可支〉 蚹〈上同、(加太豆夫利)又加支、〉

〔本草和名〕

〈十六/蟲魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1687 牡蠣 一名蠣蛤、一名牡蛤、〈本條〉一名離螻、〈音婁〉一名典蜂、一名噴〈音蟦〉一名馬蹄、〈已上四名出兼名苑〉一名四海分居、〈出五金粉藥訣〉和名乎加岐乃加比(○○○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1687 蠣 四聲字苑云、蠣、〈力制反、本草云、蠣蛤、和名加木、〉相著虫殼石者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1687 本草和名云、和名乎加岐乃加比、按證類本草引陶隱居云、道家方以左顧者是雄、右顧則牝蠣爾、是入藥用左顧http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01083.gif 、故訓云乎加岐乃加比、源君引四聲字苑、不牝牡、又所訓非http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01083.gif 、故單云賀岐也、〈○中略〉按酉陽雜爼云、牡蠣言牡非雄也、介蟲中唯牡蠣是鹹水結成也、依是説則雖名曰牡蠣、亦不乎加岐也、〈○中略〉説文、蠣蚌屬似螊微大、出海中、今民食之、段曰、螊長寸而白者、據本草經牡蠣條注、則此物有絶大者、不螊微大也、且蛤下作厲、云秦人謂之牡蠣、似蛤屬有屬、蚌屬有蠣、其字不必同、引圖經云、此物附石而生、磈礧相連如房、故名蠣房、一名蠓山、晉安人呼爲 蠓莆、初生海邊、才如拳石、四面漸長有一二丈者、嶃巖如山、卽此義、

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1688 蠣音例 〈カキ〉

〔伊呂波字類抄〕

〈加/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1688 蠣〈カキ〉

〔醫心方〕

〈一/諸藥和名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1688 牡蠣和名乎加岐乃加比

〔下學集〕

〈上/氣形〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1688 蛎(カキ) 石花(カキ)

〔東雅〕

〈十九/鱗介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1688 蠣カキ〈○中略〉 義不詳〈カキとは其殼相著きしをいひしが如し〉

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1688 牡蠣〈訓加幾
集解、今江濱皆有之、附石而生、或寄聚于泥沙、其殼灰黑磈礧相連如房、毎一房肉一塊、形類茘子核、色白、似括紗囊、上肉片麁散、下白膜裏黑腸、大者殼至二三尺、小者如人指頭、肉亦應之、初生止如拳石、經日四面漸長而大也、相聚相重嶄巖作堆、此謂蠓山乎、蠓者大蠣也、自九十月春三月味美、夏月肉脆味甚鹹不食、故海俗不之、以參州苅屋江上者上品、蠣亦大也、尾勢次之、江東房總最多、今江都漁市所鬻者、永代島江上采之、蠣大而味亦佳、海人生割殼采肉以賣之、故明鮮以爲珍也、
氣味、甘鹹平無毒、〈自古謂温、温何解丹毒及酒、後煩、熱、按平而近冷也、〉主治、凉心滋腎、去脾胃鬱熱、止汗止渴、調瀉消酒毒、收婦人血氣、久食令人美顔色、生食煮炙食功同、
殼、氣味、鹹平徵寒無毒、主治、李時珍載諸説、言考其發明則功用尚明矣、蠣殼者入足少陰血分、爲耎堅之劑、又壯水之主、以制陽光、或消胸膈之熱、以泄水氣、故止汗止渴、消疝積老痰結核、而能益精收澀也、同以引使之劑、則取驗者速哉、
附方、天行疫痢、〈家家傳染者、蠣殼粉毎五分白湯飮下、〉http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01942.gif 雜不息、〈蠣殼粉毎四五分冷水飮下〉濕瀾瘡痛、〈蠣殼蛤殼同燒、硏末傳之、〉霍亂腹痛及傷食、或積痛者白燒牡蠣、寒水曝十錢、丁子肉桂甘草各四錢、胡椒二錢半、右細末白湯下、

〔和漢三才圖會〕

〈四十七/介貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1688 牡蠣 蠔 古賁 牡蛤 蠣蛤 凡蛤蚌之屬、皆有胎生卵生、獨此化生純雄 無雌、故名牡、 和名加木〈○中略〉
按牡蠣東北海多有之、參州苅屋、武州江戸近處之産、大而味美、藝州廣島之産、小而味佳尾州勢州衣之、播州之産雖大肉硬味不佳、凡牡蠣殼其用多矣、卑濕之家、多埋於地下、能行水去濕、又燒灰爲堊、塗壁以代石灰、〈勝於蜆灰〉入藥者可左顧、以口在上、擧以腹向南視之、口斜向東、則謂之左顧、〈右顧者不用〉貝母爲之使、〈得甘草、牛膝、遠志、蛇牀子良、惡麻黃、〉

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1689 牡蠣〈○中略〉 凡介ノ類皆胎生ス、又卵生アリ、只蠣ノミ化生ス、〈○中略〉ヲキカキ海中フカキ處ニアリ、大ニシテ色黃ナリ、夏食ス、常ノ蠣ハ石ニ附テ生ズ、故ニ殼偏ナリ、ヲキカキハ偏ナラズ、其殼蚌ノ如ク、外ハ皆殻ナリ、味ハヲトレリ、又コロヒカキト云、蚫ノ大サナルアリ、猶大ナルアリ、泥海ニ多シ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1689 牡蠣 ナミマガシハ(○○○○○○)〈古歌〉 カキ 一名房叔化〈水族加恩簿〉 大屈乙胃介〈郷藥本草〉 屈照介〈同上〉 蠣房 須摩ガシハ(○○○○○)〈古歌〉 カキガラ 一名蠔袍〈閩書〉 石雲慈〈通雅〉
海濱皆コレアリ、又鹹淡水ノ交ル處ニモアリ、〈○中略〉潮來ル時ハ房ヲ開キ、小蟲ノ入ヲ俟テ合ス、潮退クトキハ、皆房ヲ闔テ、自固クス、海人是ヲ鑿取リ房ヲ碎キ、肉ヲ採リ賣ル、〈○中略〉是海濱ニ生ズルモノナリ、故ニコレヲイソガキ(○○○○)ト名グ、以テオキガキ(○○○○)ニ別ツ、筑前ニテウチガキ(○○○○)ト云、京師ニ賣ルモノハ、皆コノ品ナリ、參州房州總州江都ニ産スルモノハ、形大ナリ、又形至テ小ナルモノアリ、〈○中略〉是コガキ(○○○)ナリ、又已ニ肉ヲ取去ノ空殼ヲ多ク海ノ磯ニ積重ネオキ、年久ナレバ、自復肉ヲ生ズルヲ、ツクリガキ(○○○○○)〈筑前〉ト云フ、〈○中略〉又一種、洋海中ニ生ジ、形圓ニシテ、大サ六七寸ナルヲ、コロビガキ(○○○○○)ト云、一名ナツガキ(○○○○)、〈加州〉ハス子(○○○)、〈泉州〉ヲチガキ(○○○○)、〈備後〉ヲチヒガキ(○○○○○)、〈備前〉此ハ海底ニ特生シ、常蠣ノ如クニ重疊シテ石ニ著カズ、故ニ形正シクシテ偏歪ナラズ、頌ノ説ニ、大房如馬蹄ト云モノニシテ、閩書ノ草鞋蠣ナリ、夏月肉ヲ食フ、形ハ大ナレドモ、味ハ常蠣ニ劣レリ、又一種殼厚ク一二寸ニ シテ、長サ二三尺ニ至ル者アリ、オホガキ(○○○○)ト云、閩書ノ黃蠣ナリ、此コロビガキ、オホガキノ二品ヲ總ジテオキガキト云、〈○中略〉ナミマガシハノ類ナリ、〈○中略〉イソガキハ白色ニシテ、微黑ヲ帶ブ、オキガキハ淺黑色ニシテ微臭アリ、盜汗遺精等ニ、オキガキヲ用テ効アリ、藝州及大坂ヨリ出スモノハ形小シ、イソガキナリ、用テ効ナシト云、

〔日本山海名産圖會〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1690 牡蠣〈一名石花〉
畿内に食する物、皆藝州廣島の産なり、尤名品とす、播州、紀州、泉州等に出すものは、大にして自然生なり、味佳ならず、又武州、參州、尾州にも出せり、廣島に畜養て大坂に售る物、皆三年物なり、故に其味過不及の論なし、畜ふ所は草津、爾保浦、たんな、ゑは、ひうな、おふこ等の五六ケ所なり、積みて大坂濱々に繫ぐ、數艘の中に草津爾浦(にほ)より出る者十が七八にして、其畜養する事、至て多し、大坂に泊ること、例歲十月ゟ正月の末に至て歸帆す、
畜養 畜所各城下より一里或は三里にも沖に及べり、干潮の時、潟の砂上に大竹を以て垣を結ひ列ぬること、凡一里許、號てひゞと云、高一丈餘、長一丁許を、一口と定め、分限に任せて、其數幾口も畜へり、垣の形への字の如く作り、三尺餘の隙を所々に明て、魚其間に聚を捕也、ひゞは潮の來る毎に、小き牡蠣又海苔の付て殘るを、二月より十月までの間は、時々是を備中鍬にて搔落し、又五間或は十間四方許、高一丈許の同じく竹垣にて結廻したる籞(いけす)の如き物の内の砂中一尺許、堀り埋み、畜ふこと三年にして成熟とす、

〔星巖乙集〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1690 廣島城南、凡三十餘里皆爲䤋地、遍插http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00895.gif、望之若水柵然、卽牡蠣田(○○○)也、土人云、率以五六月種、則翌年八九月苗生、較之他州所一レ産更肥美、輙賦一絶句
匝地笆犂不潮、時淸斥鹵也豐饒、淘々三萬六千頃、一夜寒風長蠣苗

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1690 伊勢 蠣 武藏 蠣 陸奧 石花 播磨 蠣 紀伊 玉津島蠣

〔出雲風土記〕

〈神門郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1691 神門水海、〈○中略〉裡則有〈○中略〉玄蠣也、

〔出雲風土記〕

〈島根郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1691 凡北海所捕雜物、〈○中略〉螺蠣(カキ)子、

〔延喜式〕

〈三十一/宮内〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1691 諸國例貢御贄〈○中略〉
伊勢〈(中略)蠣蟻蠣〉

〔延喜式〕

〈三十七/典藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1691 諸國進年料雜藥〈○中略〉
伊勢國〈○中略〉牡蠣一斗九升〈○下略〉

〔北山抄〕

〈三/拾遺雜抄〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1691 大饗事〈○中略〉
裏書(大饗)〈○中略〉
史記
延長八年正月四日、立作所進雉小燒、荒蠣等

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1691 一五節殿上饗目錄〈○中略〉
居物次第〈○中略〉追物〈(中略)蠣○下略〉

〔文祿四年御成記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1691 六ノ御膳〈○中略〉 蠣

〔古事記〕

〈下/允恭〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1691 故其輕太子者、流於伊余湯也、亦將流之時、〈○中略〉其衣通王獻歌、其歌曰、那都久佐能(ナツクサノ)、阿比泥能波麻能(アヒネノハマノ)、加岐賀比爾(カキガヒニ/○○○○ )、阿斯布麻須那(アシフマスナ)、阿加斯氐杼富禮(アカシテトホレ)、〈○下略〉

〔古事記傳〕

〈三十九〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1691 加岐賀比爾(カキガヒニ)は、〈○註略〉蠣貝になり、〈○中略〉此は蠣の身を取たる殼の濱べに多く棄られあるを云るなるべし、〈○中略〉蠣殼のある上を踏て、足を傷ひ賜ふ勿と詔ふなり、〈○下略〉

〔日本靈異記〕

〈中〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1691布施放生而現得善惡報緣第十六聖武天皇御代、讃岐國香川郡坂田里有一富人、夫妻同姓綾君也、〈○中略〉彼家口中有一使人、〈○中略〉家口副置釣人、入海經釣之、繩http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02053.gif 著䗧十具而上、誂釣主曰、此䗧欲贖、釣主不免、叮々至心敎化之言、能人作 寺、何甚不脱、乃脱之言、宛十具直米五斗、如乞而贖、勸請法師呪願之於海、〈○下略〉

〔日本靈異記攷證〕

〈中〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1692 䗧〈未詳、北氏曰、疑蠔俗字、康豪國音相近、猶鑰字作一レ鎰也、前田氏曰、恐卽蠣字之訛、艸書字樣近似、䗧蜻蛉也、見玉篇、非此義、〉

〔古事談〕

〈五/神社佛寺〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1692 昔傳敎大師、叡山建立之時、爲中堂、被地之間、自地中蠣之カラヲ多被引出云云、大師奇而被申比良明神云云、答云、件事吾之世事ニアラズ、古人語侍シハ、此所依布圓宗法文之地、諸海神等聚會テ、此山ヲ築タルヨシ語侍シカバ、海底ノ蠣ノカラ等出シ侍歟、件事能久罷成事也、

〔千載和歌集〕

〈十八/物名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1692 かきのから(○○○○○) 大貳三位
榊葉は紅葉もせじを神がきのから紅に見えわたるかな

寄居子

〔本草和名〕

〈十六/蟲魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1692 寄居〈貌似蜘蛸、出崔禹、〉 和名加美奈(○○○)

〔倭名類聚抄〕

〈十九/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1692 寄居子 本草云、寄居子〈和名加美奈、俗假用蟹蜷二字、〉貌似蜘蛛者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/龜貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1692 今俗譌呼駕宇奈、〈○中略〉崔氏所集諸物多云某子、本草和名引食經、亦當寄居子之脱誤、源君引未此字也、然則此所引崔氏食經文非本草也、藝文類聚引異物志云、寄居之蟲、如螺而有脚、形如蜘蛛、本無殼、入空螺殼中戴以行、觸之縮足如螺閉一レ戸也、火炙之、乃出走、始知其寄居也、郝曰、今驗寄居形狀、大小不一、其蟲倶如蜘蛛、而有http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m02037.gif蟹、戴殼而遊、亦能走出、殼如小螺、形色瑰異、閩中海錯疏云、寄居、海上枯蠃殼存者寄生其中、負殼而走、形如蟹四足兩螯、大如楡莢、其味若蝦得之者不剔出、曳之卽出、以肉不一レ附也、炒食味亦脆矣、

〔日本釋名〕

〈中/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1692 寄居蟲(カミナ) かにみな也、其形かにの如くにして、みなのからの内にやどる物也、又かは借也、みなのからをかりてやどるもの也、俗にがうな(○○○)共やどかり(○○○○)共云、

〔物類稱呼〕

〈二/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1692 寄居蟲がうな一名やどかり伊豆及駿河にていそもの(○○○○)と云、上總にてがなづう(○○○○)といふ、肥前にてほうざい(○○○○)蟹といふ、和名かみな、

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1693 寄居子〈訓加宇奈、古訓加美奈、〉
釋名、蟹蜷〈源順曰、俗假用此二字加美奈、〉
集解、谿澗石川處處有之、參遠最多、狀似蜘蛛、紫身黃腸、殼似蜷殼灰黑色、負殼而走、觸之深入、卽縮如螺、其前二足有螯鉗、餘足皆有爪甲則蟹族乎、用火炙之乃出、或破殼采之、其殼無相類者、非蜷非田螺、亦不江海、然則寄居何等物乎未詳、源順號蟹蜷赤爲蜷族乎、但乖寄居之名耳、不江海川溪、則其謂居于龜蠣蛤螺殼中者、別一種乎、今作醢以貢獻之、其味香脆可愛、與石蟹彷彿、以可盃酒之右也、

〔大和本草〕

〈十四/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1693 寄居蟲〈○中略〉 海邊斥地ニ多シ、小螺ノカラニ入テ寄居ス、故ニ俗ニヤドカリト云、首ハ蜘蛛ニ似テ身ハ蝦ノ如シ、カラヲ負テユク、海人多クヒロヒテ一所ニ集メ、泥水ヲニゴラセバ殼ヲ出ヅ、是ヲ取集メテシホカラニス、又異邦ヨリ來ル、大ナルアリ、其殼バイノ如シ、或曰、山間ニアリ、海潮ノ通ズル處ニナシト云ハ非ナリ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1693 寄居蟲 カミナ〈和名鈔、蟹蜷ノ意、〉 ガウナ〈今名〉 ヤドカリ 〈大和本草〉カニノヤドカリ(○○○○○○○) カニモリ(○○○○)〈佐州〉 イソモノ〈豆州駿州〉 カナヅウ〈上總〉 ホウザイガニ〈肥州〉 サヾイヤドカリ(○○○○○○○) カトウシ(○○○○)〈薩州〉 アマン(○○○)〈琉球〉 一名附螺〈典籍便覽〉 寄生蝦〈閩書〉 寄生蠃〈廣東新語〉 借屋蝓 螯 多足蠃 竊蠌 屋蠌〈共同上〉
海涯ニ生ズ、潮已ニ去リ、餘水凹地、或ハ石間ニ殘リタル處ニ多シ、頭ハ蝦ニ似テ、兩螯ニ、鉗(ハサミ)アリ、足ニ爪アリ、腹ハ微長クシテ草蜘蛛ノ如シ、空殼螺中ニ寄居シ、コレヲ負テ走ルコト甚早シ生螺ノ行クコト遲クシテ蝸牛ニ似タルニ異ナリ、若コレニ觸レバ、深ク殻内ニ縮入ス、ソノ身漸ク長ズレバ、巨殻ヲ擇デ遷ル、又螺卿ニ似テ厚殼ナルモノアリ、此蟲多クハ此殼ニ居ル、故螺モガウナト名ク、

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1694 年料〈○中略〉
尾張國〈(中略)蠏蜷二擔四壼○下略〉

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1694 三河 寄居虫

〔いほぬし〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1694 みなべの濱に、しりたる人の、みやまより歸るにあひぬ、同じうは、もろともにまて給へかしといへば、かへる人忍びて申給ふこともこそあれといへば、いほぬし〈○僧增基〉なにごとにかあらん、ものうたがひは、つみうなりとてひろひたる貝を手まさぐりに、なげやりたれば、ものあらがひぞまさるなる、かうなあらがひ給そとて、かうなのからをなげをこせたり、また浪にもうかびて、うちよせらるゝを、かれ見給へ、入ぬるいそのといへば、かへる人、こふる日はと、心ありがほにいへば、いほぬし、くまのおのづからといへば、浦のはまゆふといらふる、に〈○下略〉

〔方丈記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1694 がうなは、ちいさきかひをこのむ、是よく身をしるによりてなり、

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1694 一母屋大饗
同饗應差圖 蠏蜷(カミナ)

〔朝倉亭御成記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1694 五獻〈○中略〉 がうな

旦鮹

〔和漢三才圖會〕

〈四十七/介貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1694 貝鮹 章魚舟 乙姫貝
按、貝鮹、津輕處處北海有之、不時多出、或全不出、其螺大者七八寸、小者二三寸、黃白或純白、形似鸚鵡螺之輩、略如秋海棠之葉、有文理愛、中有一小章魚、出兩手於殼肩、出兩足於殻後、爲櫂半之象遊行、故名章魚船、一歲津輕海濱、數百成群寄來焉、人多捕之、而恠無之者、試煮食犬、其犬爲煩悶、因知有毒物、棄章魚殻以爲珍器、然其殼薄脆不用、

海燕/陽遂足

〔本朝食鑑〕

〈十/介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1694 蛸枕(○○)〈俗稱如字〉
釋名〈海俗所謂蛸魚得此物枕而眠故名、是兒女之戯謔也乎、〉 集解、江海雜魚之中相雜入漁網來、其形之殊歟、味之短歟、民間不之、或曰、壯陽之藥也、狀類蛸蜊、一身五足、背紫黑腹白、倶有細文、内有小甼、大者方一寸餘、背靑黑有五路花紋、腹白有小口、沙石自入口非一レ食、俗稱餅貝(○○)、如小團餅、亦一物也、

〔和漢三才圖會〕

〈四十七/介貝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1695 海燕 俗云餅貝、又云海星、 陽遂足(タコノマクラ) 俗云鮹枕〈○中略〉
按、海燕、陽遂足、二種、時珍以爲一物、混注之者非也、
海燕 圓薄扁如馬錢子(マチン)、而大一二寸、灰白色有桔梗花文、其裏正中有一小孔、卽是爲口、其旁有五路 正勾文、而似彫成幐之具、山人見之、疑貝石蕈菓器之間
陽遂足 一身五足、如雞冠木葉形、而灰白色有細刻文、大一寸、不頭尾口眼、交於雜肴中魚市、俗 呼曰章魚枕、〈名義未詳〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十一/蚌蛤〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1695 海燕 タコマクラ タコノマクラ〈佐州〉 アゲマキ(○○○○)〈紀州〉 ハスノハガヒ(○○○○○○) テングノツメガヒ(○○○○○○○○)〈阿州〉 セピタ(○○○)〈江戸〉 ガハタラウノコマ(○○○○○○○○)〈泉州〉 ツムノハ(○○○○)〈攝州〉 ゼニノフタ(○○○○○)〈加州〉 タコイエンザ(○○○○○○) カブトエンザ(○○○○○○)〈共同上〉 サクラガヒ(○○○○○)〈仙臺〉 カツパノシリカケ(○○○○○○○○)〈同上〉
ソノ形正圓ニシテ扁薄、灰色或ハ白色、大サ四五分ヨリ二三寸ニ至ル、面ハ中央微ク隆起シテ紋アリ、五出ノ櫻花ノ形ノ如シ、腹ハ平ニシテ荷葉ノ紋脈アリ、中央ニ一ノ小孔アリ、ソノ口ナリ、旁ニ至テ小ナル一孔アリ、體堅脆ニシテ輕ク、骨ノ如シ、撼セバ聲アリ、打碎ケバ内ニ五片ノ小骨アリテ口ヲ環ル、毎片三角ニシテ斜又アリテ、蛺蝶(テウ)ノ翅ヲ張ルニ似タリ、故ニテフガヒ(○○○○)ト名ク、此品海濱沙磧間ニ多シ、生ナルモノハ海中ニアリ、外ニ肉ナク角ナクシテ、短刺多ク毛ノ如シ、綠毛、或ハ紫色或紫綠相間ハル、已ニ死スル者ハ毛刺盡ク脱ス、是時珍説トコロノ海燕ナリ、又菊花ノ形ヲナスモノアリ、一種正圓ニシテ扁ク、大サ五七寸、面ハ微高ク、腹ハ正平ニシテ、邊ニ五ノ長孔ア リテ面ニ通ズ、中央ニ一小孔アリ、内ニ蝶形ノ小骨アリ、コレヲ豫州ニテサルノマクラ(○○○○○○)ト云、一名サクラガヒ(○○○○○)〈土州〉ヲゴゼノマクラ(○○○○○○○)、〈備前〉一種、體厚タシテ慥粗茶褐色、大サニ寸許、面ハ凸ニ、腹ハ凹ニシテ五ノ溝道アリ、豫州ニテキンツバト云、此外品類尚多シ、一種體小ニシテ五ノ細長足アルモノヲクモヒトデト云、足ニ軟剌アルモ、ノモアリ、是陽遂足ナリ、此ニ一種、體ニ短岐ヲ分チ、九ノ長足アルモノアリ、紀州ニテカクレミノ(○○○○○)ト云フ、本草原始、及ビ大和本草ニ圖スル所ノ海燕ハリウグウノイトマキ(○○○○○○○○○)〈筑前〉ナリ、一名イトマキヒトデ(○○○○○○○)、形扁ク五角アリテ、桔梗ノ花瓣ノ殊ノ如シ、大サ一ニ三寸、面ハ微ク隆起ス、靑クシテ藍色ノ如ナル者アリ、黃褐色ナル者アリ、並ニ丹色ノ斑點アリ、腹ハ平シテ丹色、五角ゴトニ溝アリ、中央ニ口アリ、口ヲ環リテ小足多クシテ毛ノ如シ、海中ニテハ微ク蠕動ス、生時ハ體軟ニシテ骨ナシ、已ニ死スル者ハ乾脆ナリ、海人拾集テ田肥トス、大和本草ニハ、生時五肉角アリ、死スレバ角脱シテ圓骨ノコルコトヲ言フ、然ドモイトマキヒトデノ内ニ、骨アルモノヲ見ズ、一類別種ナリ、一種、五枝ニ深ク分レテ、枝ゴトニ末尖リ、長サ各二三寸ニシテ、槭樹(モミヂ)葉ノ形ノ如クナルアリ、俗三ヒトデ(○○○)ト呼、或ハシトデ(○○○)ト云、一名シヲデ(○○○)、〈阿州〉ヲコゼノ(○○○○○○○)マクラ、〈讃州〉ヨツデ(○○○)、〈防州〉ヤツデ(○○○)〈豫州〉是本草原始ニ圖スル所ノ海盤車ナリ、色白キ者ヲシラヒト(○○○○○)デト云、赤キ者ヲベニヒトデ(○○○○○)ト云、一名オニヒトデ(○○○○○)、〈攝州〉モミヂガヒ(○○○○○)、〈加州〉皆背ニ軟刺多クシテ足ノ如シ、又面背倶ニ軟刺アリテ、七枝、八枝、九枝ナルモアリ、一種シフヒトデ(○○○○○)、〈紀州〉ハ一名マツダコ(○○○○)、〈同土〉シワ(○○)阿州デンパチ(○○○○)、〈豫州〉ガラコ(○○○)、〈同上〉ツナツカミ(○○○○○)、〈肥前〉ホ子ツギ(○○○○)、〈同上筑前〉テヅルモヅル(○○○○○○)、〈攝州〉テンツクモンツク(○○○○○○○○)、テンバ(○○○)、テンズモンズル(○○○○○○○)〈共同上〉シヤグマ(○○○○)、〈淡州〉ノヅカミ(○○○○)、〈讃州〉ノウツカミ(○○○○○)、ナルカシラ(○○○○○)、〈房州〉バンシヤガヒ(○○○○○○)、〈尾州〉形圓扁、大サ一寸許、菊花ノ形アリ、周圍ニ足多シ、足ニ横紋アリ、足ゴトニ枝ヲ分チ、枝ゴトニ叉ヲ分チテ、數十叉ニ至ヲ、皆卷曲ス、松蘿ノ狀ニ似テフトシ、赤白二色アリ、末ト爲シ、酒ニテ服シテ胸痛ヲ治ス、又煎ジ服シテ疝ヲ治ス、又生ナル者、末ト爲シ、酒ニテ服シテ、打 撲瘀血アル者ヲ治ス、又足ヲ取燒、性ヲ存シテ酒ニテ服シ、或末ト爲シ、米飯ニ和シ傅ルモ可ナリト云フ、


Last-modified: 2019-11-13 (水) 10:46:45 (143d)