〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1079 䗲〈力人反、螢、保太留(○○○)〉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1079 螢 兼名苑云、螢〈胡丁反〉一名熠燿、〈上一入反、和名保太流、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1079 按本草古今注、並云、螢火一名熠燿、兼名苑蓋本於此、説文無螢字、古用熒、爾雅熒火卽炤、郭注、夜飛腹下有火、〈○中略〉陶注本草云、螢火此是腐草及爛竹根所化、初猶未蟲、腹下已有光、數日已變而能飛、蜀本注云、此蟲是朽草所化也、衍義云、螢常在大暑前後飛出、月令雖腐草、然非陰溼處終無、郝氏曰、今驗螢火二種、一種飛者、形小頭赤、一種無翼、形似大蛆灰黑色、而腹下火光大於飛者、及詩所謂宵行、爾雅之卽炤、亦當此二種、但説者止見飛蟲耳、

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1079 螢〈ホタル〉

〔下學集〕

〈上/氣形〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1079 螢(ホタル)〈腐草化成螢者也〉

〔八雲御抄〕

〈三下/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1079 螢 あきかぜふくとかりにつくと云り 夏虫共云

〔日本釋名〕

〈中/蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1079 螢(ホタル) ほは火也、たるは垂也、垂は下へさがりたるゝ也、

〔東雅〕

〈二十/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1079 螢ホタル 葦原中國に道速振荒振神等(チハヤブルアラブルカミラ)多有て、夜者(ヨルハ)若燿蜜火而喧響(クニメホヤホタルビノサヤゲリナク)といふ事、舊事紀にみえたれば、此物の名上世にすでに聞えたる也、ホタルとは、たとへば爾雅に螢火卽炤とみえしが如く、ホは火也、タルは炤(テル)也、テルといひ、タルといふは、轉語なる也、萬葉集抄に、ホトロといふ ことばを釋して、ホドロとはヒカルといふ詞也、ヒカル虫をホタルといふがごとしとみえし、卽是也、

〔日本書紀〕

〈二/神代〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1080 螢火(ホタルヒノ/○○)光神(カヽヤクカミ)

〔釋日本紀〕

〈八/述義四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1080神之威光、喩螢火之光者也、

〔大和本草〕

〈十四/蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1080 螢火(ホタル) ホハ火ナリ、タルハ垂也、下體光ル、故名トス、大小二種アリ、山中ノ川ノ邊ニ多シ、勢田宇治ニハ螢火多クシテ賣之、賣螢火事、和漢メヅラシ、〈○中略〉詩經ニ熠燿タル宵行トイへリ、宵行ハ卽螢也、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十八/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1080 螢火 ホタル〈和名鈔〉 ナツムシ〈古歌○中略〉
螢ハ夏初油菜稭ヲ刈ノ候、多ク出、大中小ノ三品アリ、皆水蟲ヨリ羽化シテ出、夏後卵ヲ生ジテ、復水蟲トナル、腐草化シテ螢ト成ルニ非ズ雄ナル者ハ光大ナリ、雌ナル者ハ光小ナリ、川ノ大小ヲ問ハズ、年中水ノ斷ザル川筋ニ多シ、城州宇治川、和州宇陀川江州西黑津大日山田上八島ノ螢火名産ナリ、ソノ形尋常ノ者ヨリ大ナリ、大ナル者ハ、ウシボウタル越前ト云フ、

〔蟲譜圖説〕

〈八/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1080 集解、時珍説、螢有三種ト言モノハ、頭及甲黑ク、背赤キ小蟲ナリ、今オシナベテホタロ(○○○)ト呼者ナリ、ムシホタロ(○○○○○)バ蠋ノ類ナリ、ウジホタロ(○○○○○)ハ、土ニ生ル蠶ノ類ニシテ、物各異リ、

〔つれ〴〵草拾遺〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1080 腐草化して螢となるとはいへど、水にすむ尖螺(ミラ)といふもの、田蠃のやうにて、ほそながきが、化してほたるとなるよし、東國の人は申侍る、久我殿の池にはやくほたるおほかりしが、家http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00995.gif をおほく飼けるのちは、ほたるまれ〳〵になりにける、かのみらを、家http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00995.gif の喰ひ盡し侍りけんかし、

〔空穗物語〕

〈初秋〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1080 螢おはします御前わたりに、みつよつつれてとびありく、これがひかりに、ものは見えぬべかめりとおぼして、たちはしりて、みなとらへて、御そでにつゝみて御らんずるに、あま たあらんは、よかりぬべければ、やがてわらはやさぶらふ、螢すこしもとめよやかのふみ思ひ出んと仰らる、殿上わらは、夜ふけぬれば、さぶらはぬうちにも、なかたゞの朝臣、承りたる樣ありて、水のほとり、草のわたりにありき、多くの螢をとらへて、朝服のそでにつゝみてもて參りて、くらき所にたちて、この螢をつゝみながら、うそぶく時に、上いとしく御らんじつけて、なほしの御袖にうつしとりて、つゝみかくしてもてまゐり給ひて、内侍のかみのさぶらひ給ふ、几帳のかたびらをうちかけ給ふに、かの内侍のかみの、ほどちかきに、この螢をさしよせて、つゝみながら、うそぶき給へば、さるうすものゝ御なほしにぞ、たゞつゝまれたれば、殘る所なくみゆる、

〔伊勢物語〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1081 むかし男有けり、人のむすめのかしづく、いかで此男に物いはんと思ひけり、〈○中略〉時はみな月のつごもりいとあつきころほひに、よひはあそびをりて、夜ふけてやゝすゞしき風ふきけり、ほたるたかうとびあがる、この男見ふせりて、
ゆくほたる雲のうへまでいぬべくは秋風ふくと雁につげこせ〈○下略〉

〔大和物語〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1081 桂の見こに、式部卿の宮すみ給ける時、その宮にさぶらひけるうなゐなん、このおとこ宮をいとめでたしと思ひかけ奉りけるをも、えしり給はざりけり、ほたるのとびありきけるを、かれとらへてと、此わらはにのたまはせければ、かさみ○汗衫の袖にほたるをとらへて、つゝみて御覽ぜさすとて、聞えさせける、〈○歌略〉

〔源氏物語〕

〈二十五/螢〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1081 み木丁のかたびらを、ひとへうちかけ給に、あはせて、ざとひかるもの、しそくをさし出たるかとあきれたり、ほたるをうすきかたに、此夕つかたいとおほくつゝみをきて、ひかりをつゝみかくし給へりけるを、さりげなくとかくひきつくろふやうにて、にはかにかくけちえんにひかれるに、あさましくて、あふぎをさしかくしたまへる、かたはらめいとおかしげなり、おどろおどうしきひかり見えば、宮ものぞき給ひなん、〈○中略〉御心ときめきせられ給ひて、えなら ぬうすものゝかたびらのひまより、みいれたまへるに、ひとまばかりへだてたるみわたしに、かくおぼえなきひかりの打ほのめくを、おかしとみ給ふ、程もなくまぎらはしてかくしつ、されどほのかなるひかり、えんなることのつまにもしつべく見ゆ、ほのかなれど、そびやかにふし給へりつるやうだいのおかしかりつるを、あかずおぼして、げにあのごと御心にしみにけり、なく聲も聞えぬ虫の思ひだに人のけつにはきゆる物かは、思ひしり給ぬやと聞え給ふ、〈○下略〉

〔枕草子〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1082 夏はよる月のころはさらなり、やみもなほほたるおほくとびちがひたる、又たゞ一二などほのかにうちひかりてゆくも、いとおかし、

〔古今著聞集〕

〈五/和歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1082 和泉式部おとこのかれ〴〵に成ける比、貴布禰に詣でたるに、ほたるのとぶを見て、
ものおもへば澤のほたるも我身よりあくがれいづる玉かとぞみる、とよめりければ、御社の内に忍たる御聲にて、
おく山にたぎりておつる瀧津瀨の玉ちるばかりものなおもひそ、其しるしありけるとぞ、

〔宇治拾遺物語〕

〈十二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1082 いまはむかし、あづまうどのうたいみじうこのみよみけるが、ほたるを見て、 あなてりやむしのしや尻に火のつきてこ人玉ともみえわたるぞ、
あづま人のやうによまんとて、實はつらゆきがよみたりけるとぞ、

〔今物語〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1082 ある殿上人、ふるき宮ばらへ、夜ふくる程に參りて、北のたいのめむだうにたゝずみけるに、局におるゝ人の氣色あまたしければ、ひきかくれてのぞきけるに、御局のやり水に、螢のおほくすだきけるを見て、さきにたちたる女房の、螢火みだれとびてと、うちながめたるに、つぎなる人、夕殿に螢とんでとくちずさむ、しりにたちたる人、かくれぬものは夏むしの、とはなやかにひとりごちたり、とり〴〵にやさしくもおもしろくて、此男何となくふしなからんもほいなくて、 ねずなきをしいでたりける、さきなる女房ものおそろしや、螢にも聲のありけるよとて、つやつやさわぎたるけしきなく、うちしづまりたりける、あまりに色ふかくかなしくおぼえけるに、今ひとり、なく虫よりも、とこそとりなしたりけり、是もおもひ入たるほどおくゆかしくて、すべてとり〴〵にやさしかりける、
音もせでみさほ〈○みさほ、後拾遺和歌集三作おもひ、〉にもゆる螢こそ鳴虫よりも哀成けれ
螢火亂飛秋已近、辰星早沒夜初長、
夕殿螢飛思悄然
つゝめどもかくれぬ物は夏むしの身よりあまれる思ひ成けり

〔四季物語〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1083 石山に詣でぬ、かへさには、螢いくそばく、薄衣の器に包み入れて、宮の内に奉れば、ここらの御簾、或は御局のそこらに、數多放されて、晴るゝ夜の星とものせしも、いひしらず思ひたどりぬ、されどこの蟲も夜こそあれ、晝は色異樣に夜の光にはけおされて、劣れる蟲也、まいて手に觸れ身に添へては、惡しき香うつり來ぬ、手には蘭を握り、身には百壽の香を塗る、若人君の前にては、心あるべき蟲の香ならし、

〔伊勢物語〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1083 はるゝ夜の星かかはべのほたるかもわがすむ方のあまのたく火か

〔明月記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1083 嘉祿二年四月七日辛卯、招請承明門黃門令衆灌佛、布施三エタスキ薄物小單文裏白張薄物、以胡紛キコエ、ヌ虫ノ思ダニト令晝以几張手横竿以黑紐付之、其中入螢也、

〔つれ〴〵草拾遺〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1083 ほたるこそ、猶なまめかしくをかしけれ、あこがれいでしたまなど聞えしは、わびしけれど、風にさそはれて、そこはかとなく、とびちりたるもをかし、夜ふけて、軒ちかくきらめくが、まどしとみなどのうちについ入て、とびまどひたる、ことにをかし、

〔牛馬問〕

〈四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1083 宗祇石山にもふで、螢を見て、 うき草に火を埋たるほたるかな
童子かたはらに有て曰、死螢なるやと、宗祇驚き、 池水に火をうつなみのほたる哉
此童子何ものぞや

〔骨董集〕

〈上編上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1084 駒形の螢
江戸雀〈延寶五年印本〉十之卷淺草駒形堂の條に云、〈○中略〉船つきにして、出船入船のありさまは、遠浦の歸帆とや申さん、九夏三伏のあつき比は、風すゞやかに吹おとし、とびかふ螢水にうつり、勝景かぎりなき所なりとあり、繪を見るに堂のかたはらに、樹木ある體をかけり、又江戸名所記〈寬文二年板〉の駒形堂の圖を見るに、木立葆(くさむら)などありて、螢もをるべき體也、
焦尾琴(元祿十四年板)こまがたに舟をよせて、 此碑では江を哀まぬ螢哉 其角
かくいへるも、眼前の體なるべし、今は所せきまで人家立つゞきて、螢に化すべき草だになし、〈○下略〉

〔嬉遊笑覽〕

〈十二/禽蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1084 螢合戰(○○○)は、狂歌咄に、卯月の末つかた、こゝ〈宇治〉は螢の集りえならぬ興を催せり、餘所の螢よりは、一きは大にして、光りことさらにみゆ、世にいふ賴政入道が亡魂にて、今も軍する有さまとて、夜に入ぬれば、數十萬のほたる川面にむらがり、或は鞠の大さ、或はそれよりも猶大に丸がりて、空にまひあがり、とばかり有て水のうへにはたと落て、はら〳〵ととけてながれ行こと、幾むらとも限りなし、正章千句に、纚(サデ)網をもちかよふ夏川、螢こよといふ聲、波に響きわたり、續山井に、火廻しがせたから宇治に行ほたる、〈衆下〉和漢三才圖會に、〈○註略〉石山の溪に螢多して、常のよりは大なり、此所を螢谷と呼、北は勢多の橋、南は供江ケ瀨に至る、其あはひを群がり飛こと、高さ十丈ばかり、火燄のごとし、又數百集りて塊ることあり、大かた芒種の後、五日より夏至の後、五日 までの間、十五日ばかりを盛りの時とす、其後下りて宇治川に到る、こゝには夏至小暑の間をさかりとす、また一説に云、小滿の後、四日五日の間、宇治勢田西賀茂北宇喜多社、及水上村に螢多くあり、一時の壯觀なりといへり、東國には、下野佐野を名所とす、

〔後拾遣和歌集〕

〈三/夏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1085 ほたるをよみ侍りける 源重之
をともせで思ひにもゆる螢こそ鳴虫よりも哀なりけれ
宇治前太政大臣卅講のゝち歌合し侍けるに、ほたるをよめる、 藤原良經朝臣
澤水に空なるほしのうつるかとみゆるは夜はのほたるなりけり

〔後奈良院御撰何曾〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1085 秋の田の露おもげなるけしきかな 螢

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1085 蛙〈注音、謂虫物、槙壞衣者、如白魚等、乃牟之(○○○)、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1085 蠹 説文云、蠹〈音妬、和名乃牟之、〉木中虫也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1085 新撰字鏡、蛙、乃牟之、今能登俗呼衣魚(○○)乃乎之、伊豫俗呼乃之(○○)、皆乃牟之轉、而訓衣魚、與蠧、古今不同耳、今俗呼蠹爲、〈○中略〉木食蟲(○○○)原書䖵部同、陳藏器曰、木蠹一如蠐螬、節長足短、生腐木中、穿木如錐刀、至春羽化、一名蝎、爾雅云、蝎咭http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01578.gif 、注云木蠹也、蘇敬以爲蠐螬、誤也、按是羽化爲天牛者、宜見上蠰及蠐螬條

〔壒囊抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1085 蠹ノ字丁護反、古文ニハ螙ト書ク、ノンシト讀也(○○○○○○)、木蟲トモ云、又ハ白魚共云、皆是ノンシ也、其國ニ居テ其國ヲ亡ス蠹ノ其木ヲ飡テ、其木ヲ枯スニ喩ヘタリ、今シミ(○○)ト云是也、私ニ思ハク、木ヲ飡ノンシニハ、木蟲ヲ用ヒ、紙ヲ食ノンシニハ、白魚ヲ用ベキ歟、蠹ノ字何レニモ亘ベキ也、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十八/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1085 木蠹蟲 ノムシ〈和名鈔〉 キクラヒムシ(○○○○○○) キクヒムシ ゴトウムシ(○○○○○)〈信州〉諸木身中ニ生ジ、内ヨリ木ヲ食フ長蟲ナリ、形ハ烏蠋(イモムシ)ノ如シ、木ニヨリテ其效異ナリ、故ニ下ニ各木蠹蟲ヲ出シ、初ニ總名ヲ擧テ木蠹蟲ト云フ、皆後ニハ羽化シテ天牛(カミキリムシ)、叩頭蟲(キヽリムシ)、飛生蟲(カプトムシ)ノ類トナル、 各木ニヨリテ化スルトコロノ蟲異ナリ、木上ニ生ジテ葉ヲ食フ者ハ蠋(アヲムシ)ニシテ蠹ニ非ズ、松(マツノ)蠹蟲(/○)ハ形鳥蠋ノ如クニシテ肥大、長サニ寸許、南部ニテ土人醬油ヲツケ燒食フト云、又臭梧桐蠹蟲(クサギノムシ/○○○○○)ハ醬油ニ漬炙リ、小兒ニ與へ食ハシム、虚損疳疾ヲ治スト云、津輕ニテハトウノキノムシ(○○○○○○○)ト呼ビ、信州ニテハ トウナムシ(○○○○○)ト云フ、

〔延喜式〕

〈三十一/宮内〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1086 凡應諸司月料魚宍者、省司毎月臨勘厨庫見物多少、及可蠹(ムシハム)之物官充用、勿蠹腐(○○○○)、臨時雜用准此、

桃蠹

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1086 桃蠹(○○) 本草云、桃蠹、一名山龍蠧、〈和名毛毛(○○○○○)乃牟之〉食桃樹虫也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1086 原書果部下品桃核條云、桃蠹食桃樹蟲也、不一名、陶注云又有山龍桃、其仁不用、本草和名桃核條竝擧桃蠹食桃樹虫也、山龍桃出陶景注、無和名、山龍桃者桃之一種、其仁不藥用、故擧以示之也、源君誤山龍桃山龍蠹、遂爲桃蠹一名、其誤甚矣、按證類本草山龍桃脱龍字、又按本草桃蠹、卽桃木中蠹、非桃子中蟲、孟子云、井上有李、螬食實者過半矣、然則桃子中蟲、亦可之桃螬也、螬蠐螬也、按證類本草脱龍字、宜新修本草、本草和名及本書而補正

〔和漢三才圖會〕

〈五十三/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1086 蝎〈○中略〉
桃蠹〈和名毛毛乃牟之、一名山龍蠹、〉 食桃樹蟲也、殺鬼辟邪惡不祥、又其蛙糞爲末、水服則辟温疫、令相染

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十八/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1086 桃蠹蟲 モヽノムシ〈和名鈔〉
本草蒙筌ニ、桃蠹食皮長蟲ト云、本經逢原ニ、桃實中蟲食之、令人美顏、色與桃蠹異ト云へリ、

柳蠹

〔和漢三才圖會〕

〈五十三/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1086 蝎〈○中略〉
柳蠹蟲(○○○)〈甘辛平有小毒〉 至春夏化爲天牛(カミキリムシ)、蓋桑柳蝎共、有驚風及血症之功、然今俗以柳蟲(○○)、爲痘瘡變症 神樂、予屢試之未効、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十八/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1086 柳蠹蟲 ヤナギノムシ 一名柳木蛙蟲〈附方〉 柳蟲〈同上〉 此蟲臭梧桐蠹蟲ト形モ効モ同ジ、大和本草ニ、小兒痘ノ後餘毒腫レ、俗ニヨリト云ニ榑レバ愈ト云へリ、

桑蠹

〔和漢三才圖會〕

〈五十三/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1087 蝎〈○中略〉
桑蠹蟲(○○○)〈甘温無毒〉 其糞能治小兒胎癬、先以葱鹽湯洗淨、用桑木蛙屑、燒存性、入輕粉、等分油和敷之、凡小 兒頭生瘡、手爬處卽延生、謂之胎癬

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十八/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1087 桑蠹蟲 クハノムシ 一名桑木中蝎蟲〈附方〉
桑ノ樹身ニ生ジ、内ヨリ木ヲ食フ蟲ナリ、以下諸木皆コレニ傚フ、桑ノ蟲糞ヲ桑木蛙屑〈附方〉ト云、又桑木裏蠹蟲糞 桑木上蟲糞〈共同上〉トモ云フ、

蒼耳蠹

〔和漢三才圖會〕

〈五十三/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1087 蝎〈○中略〉
蒼耳蠹(ヲナモミノムシ) 生蒼耳草梗中、狀如小蠶、取之但看梗、有大蛙眼者、以刀截去兩頭、有蛙梗多收、線縛掛簷下、 其蟲在内、經年不死、用時取出、細者以三條、當一用之、以麻油浸死、收貯毎用一二枚、擣傅疔腫惡毒 卽時毒散、大有神効

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十八/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1087 蒼耳蠹蟲 オナモミノムシ一名蒼耳草梗中蟲〈附方〉 蒼耳草内蟲 蒼耳節内蟲〈共同上〉
蒼耳ノ莖中、及節中ニ生ズル蟲ナリ、下ノ靑蒿モ同ジ、

蘹香蟲

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1087 蘹香蟲(○○○) ウイキヤウノムシ(○○○○○○○○)、
茴香ニ生ズル蟲、多クハ橘蠹ナリ、凡香氣アル草木上ニミナアリ、後ニ羽化シテ鳳子蝶トナル、蛺蝶ノ條下詳ニス、

齧髮蟲

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1087 靭〈加彌(○○)(彌下恐脱岐字)利虫(○○)〉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1087 齧髮虫 玉篇云蠰〈相毫反、漢語抄云、加美木里無之(○○○○○○)、〉齧髮虫也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1088 新撰字鏡、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01579.gif加彌利虫、當岐字、按加美岐利无之之名、今俗所呼同、與齧髮義合、〈○中略〉郭注爾雅云、似天牛長角、體有白點、喜齧桑樹、作孔入其中、李時珍曰、此以天牛齧桑二物也、而蘇東波天水牛詩云、兩角徒自長、空飛不箱、爲牛竟何益、利吻空枯桑、此則謂天牛卽囓桑也、大抵在桑樹者卽爲囓桑爾、〈○中略〉又按、爾雅、蝎桑蠹、蠰齧桑、然諸樹蠹所羽化天牛、桑樹蠹所羽化蠰也、

〔伊呂波字類抄〕

〈加/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1088 蠰〈カミキリムシ〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十八/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1088 天牛 カミキリムシ〈和名鈔〉 ツノムシ(○○○○)〈薩州○中略〉
木蠹蟲(キクヒムシ)、春夏ノ交リニ至リ、水中ニテ羽化シ、木ヲ穿チ、穴シテ出ルモノナリ、山中ニ多シ、長サ一寸餘、徑四分許、腹ニ六足アリ、背ニ硬キ甲アリ、色黑クシテ白點アリ、翅ハ甲下ニカクル、首ニフトキ鬚二條アリ、黑白相雜リ、身ヨリ長シ、藏器兩角ト云ハ此鬚ヲ指スナリ、口ニ利齒左右ニアリテ蜈蚣(ムカデ)ノ如シ、髮ヲモ能ク囓キル、竹木ノ類ハ更ナリ、故ニカミキリムシト云、陰天ニハ必多ク出テ地上ヲ行ク、此蟲ノ桑樹ヨリ出ルヲ囓桑ト云、又一種形狀同ジクシテ、栗殻(クリ)色ニシテ白點ナク、角ニハ褐ト黑トノ斑アルモノアリ、薩州ニテ枇杷ムシ(○○○○)同名アリト呼ブ、

蠐螬

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1088 蠐〈在鷄反、須久毛(○○○)、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1088 蠐螬 本草云、蠐螬〈齊曹二音〉一名蛣http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01578.gif 〈吉屈二音、和名須久毛無之、〉爾雅注云、一名蝤蠐、〈上オ尢反〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1088 千金翼方、證類本草中品有蠐螬、不http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01578.gif 之名、所引爾雅注、亦非郭璞、〈○中略〉按説文、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01580.gifhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01580.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01581.gif 也、蝤蝤http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01580.gif 也、蝎蝤http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01580.gif 也、蛣http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01578.gif 蝎也、〈○中略〉太平御覽引陸機疏云、蠐螬生糞土中、其説與郭合、陶、云大者如足大指、以背行、乃駛於脚、郝曰、此物有足而任背行、亦不駛也、蘇敬曰、此蟲有糞聚、或在腐木中、其在腐柳樹中者、内外潔白土糞中者、皮黃内黑黯、陳藏器云、蠐螬居糞土中、身短足長、背有毛筋、但從夏入秋蛻爲蟬、飛空飮露、能鳴高潔、蝎在朽木中心、穿如錐刀、一名蠹、身長足短、口 黑無毛節慢、至春羽化爲天牛、兩角狀如水牛色黑、背有白點、上下緣木、飛騰不遙、二蟲出處旣殊、形質又別、〈○中略〉則源君訓須久毛牟之者、謂糞土中者也、

〔伊呂波字類抄〕

〈須/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1089 蠐螬〈スクモムシ〉 蛣http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01578.gif 蝤蠐〈已上同〉

〔東雅〕

〈二十/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1089 蠐螬スクモムシ〈○中略〉 爾雅註に據るに、蠐螬在糞土中といふなり、俗に糞土をスクモといふなり、其中にあるに因りて、此名ありしなるべし、此物夏秋の交、蛻して蟬となるなり、

〔和漢三才圖會〕

〈五十三/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1089 蠐螬(きりうじ/すくもむし) 蟦蠐 蜰蠐 乳齋 應條 地蠶 和名、須久毛無之、〈○中略〉
按蠐蝤、今俗呼名賀登(○○)者也、栗根及薯蕷下多有之、大抵寸半許、似蠶而腰略細足略長、背有皺筋、以背滾行蛻而爲蟬、但不毛耳、
一種生圃園糞土中、食斷草木根、多爲害者、俗呼名木里宇之(○○○○)、其形似蠶而肥皂負或灰白、或赤褐色、短足大小不一、常圓屈而如猫幡臥狀

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十八/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1089 蠐螬 ヂムシ(○○○)〈總名〉 ガツトウムシ(○○○○○○)〈播州〉 アマメ(○○○)紀州 子キリムシ(○○○○○)〈仙臺〉 シロコムシ(○○○○○) チゴクムシ(○○○○○)〈共同上〉 コトコトムシ(○○○○○○)〈加州〉 コエムシ(○○○○)〈肥前〉 シクジ(○○○)〈尾州〉ニウドウ(○○○○)〈阿州〉 ニウドウムシ(○○○○○○)〈上州〉 ドンガ(○○○)〈若州〉 ツボムシ(○○○○)〈薩州〉 カラスノハヽ(○○○○○○)〈泉州〉 ガトムシ(○○○○) チノソコノウバ(○○○○○○○)〈共同上〉 ノケダ(○○○)〈防州〉 ノケダウジ(○○○○○)〈同上〉 イシノシタノウハキゼウ(○○○○○○○○○○○)〈筑前〉 ムマノクソムシ(○○○○○○○)〈筑後○中略〉
園圃土中ニ生ズ、形烏蠋(イモムシ)ノ如ク、長サ一寸、或ハ一寸餘、白色ニシテ、首赤ク尾黑シ、草根ヲ食ヒ、或ハ嫩苗ヲ囓截リ、大ニ害ヲナス、掘テ土上ニ出ス時ハ曲屈シテ動カズ、暫クシテ蠕行シ、土中ニ隱ル、春後ニ至リ、土内ニテ化シテ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01582.gif 蜟(ニシヤドチ/○○)トナリ、後羽化シテ蟬トナル、一種形大ニシテ、長サ三寸許ナルアリ、通ジテヂムシト呼ブ、泉州ニテハ、ゴトムシ(○○○○)ト云フ、此蟲羽化シテ、蚱蟬(アキセミ)、馬蜩(ヤマセミ)ノ大蟬トナル、又一種春時土中ニ長サ一寸許、濶サ一分許ニシテ、色黑キ蟲アリ、早朝ニ土上ニ出テ、草ノ嫩苗ヲ 囓截ル、俗名キリウジ、又キリムシ共云フ、是群芳譜菊ノ條下ニイへル黑小地蠶ナリ、又桃栗等ノ實内ニ生ズル色白キ長蟲ヲモ蠐螬ト云、同名ニシテ混ジヤスシ、孟子ノ註ニ螬ハ蠐螬也トイへリ、スクモムシト訓ズ、

〔蟲譜圖説〕

〈八/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1090 腹蜟〈キノボリ(○○○○)、又キドマリ(○○○○)、〉集解、時珍曰、腹蜟折脊而爲蟬、此蟲至夏登木而脱、

斑猫

〔和漢三才圜會〕

〈五十二/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1090 斑猫(はんめう) 斑蝥 盤蝥 龍蚝 斑蚝 蝥刺也、言毒如矛刺也、俗訛爲斑猫、〈○中略〉按人食豆葉者、能擇取宜淨洗、恐有斑猫毒、夏秋出於圃園、飛道街五六尺而止、止則必顧看、但倭斑〈○中略〉毒不外國者之甚也、蓋有古方藥用之者然不輕用也、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1090 斑蝥 ハンメウ〈卽斑猫ノ音〉 一名龍尾〈千金翼方事物異名〉 加乙畏〈郷藥本草〉
漢渡具物ナレドモ、今ハ渡ラズ、蠻舶來モ形狀同ジ、長サ一寸許、首ニ兩短鬚アり、背甲ニ黑ト赤黃色トノ斑アリ、本草原始ノ圖ニ異ナラズ、腹ノ色黑シ、近來江戸ニ此蟲アリ、余モコレヲ捕得タリ、只斑ニ微シク紅色ヲ帶ブ、 又和ノ斑猫ト藥舖ニ唱フルモノアリ、往年唐山ヨリモ來ルト云傳フ、ソノ形ハ甚ダ異ナリ、俗名ミチシルべ(○○○○○)、ジヤウメムシ(○○○○○○)〈北國〉タイドウトヲシ(○○○○○○○)〈讃州〉カイドウトヲリ(○○○○○○○)〈新校正〉 此蟲ハ舶來ノ者ヨリ形小ク、長サ八分許、前ハ狹ク、後ハ廣ク、行夜ノ形ニ似タリ、背甲黑色ニシテ碧綠ノ光アリ、黃ト紅トノ小斑ヲ點シテ美ハシ、腹ノ色黑シ、山野白沙アル地ニ多シ、徑路ノ間、人ニ先ツテ飛ブコト一二歩、地ニ下レバ必人ニ向フ、旋追ヘバ旋飛ブコト數度ニシテ外ニ飛去ル、山ニ近キ寺社ノ内殊ニ多シ、此蟲形狀舶來ノ者ニ異ナレドモ、ソノ功ハ大抵相同ジ、

地膽

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1090 地膽 本草云、地膽、一名芫靑、〈上音元、和名仁波豆々(○○○○)、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1090 千金翼方、證類本草下品、芫作蚖、本草和名引作芫、與此同、按蓋是蟲其色靑、好在芫華上、故名芫靑、作蚖靑者、後人从虫耳、與榮蚖字自別、然陶隱居謂、蚖字恐是相承之誤、而別有芫靑、則此不艸明、則知陶所見本草作地膽一名蚖靑疑、蓋輔仁改蚖作芫源君從之、非本草 之舊也、按本草云、地膽、一名蚖靑者混言之、別錄擧芫靑者析之也、陶言蚖靑芫靑不一レ同者泥矣、〈○中略〉按邇波都々之名今不傳、其物未詳、按地膽陶云、狀如大馬蟻翼、陶云、芫靑芫花時取之、靑黑色、蜀本圖經云、形大小如班猫、純靑綠色、又云、背上一道黃文、尖喙、小野氏曰、地膽今俗呼都知班猫(○○○○)、芫靑呼阿乎班猫(○○○○)

〔和漢三才圖會〕

〈五十二/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1091 地膽(にはつゝ) 蚖靑 靑蠵 杜龍 和名仁波豆豆〈○中略〉
按、有毒之藥不輕用也、而和劑局方耆婆萬病圓中、有芫靑、石蜥http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01583.gif 、蜈蚣、以毒攻毒、能平治堅結難病矣、遠則如砒霜、輕粉、近則大黃、牽牛子之類、亦皆然矣、蓋鋸釿猶瀉藥、鉋鐁猶補藥、其所用各有定格、而以能用之者良匠

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1091 地膽 ニハツヅ〈和名鈔〉 ツチハンメウ(○○○○○○)
舶來ナシ、山中土内或ハ原野石間ニ居リ、時時出行ク、長サ一寸餘、濶サ三四分、色黑クシテ碧光アリ、背上ニ短翅アリ、飛ブコト能ハズ、凡ソ斑蝥、芫靑、葛上亭長、地膽ノ四蟲、ソノ種自ラ別ナリ、而ルニ本一蟲ニシテ、時ニヨリ所ニヨリテ名ヲ變ズト云説ハ甚ダ誤リナリ、
增、地膽ハ斑猫ノ類ニシテ、行夜(ヘヒリムシ)ニ似タリ、晝ハ蟄シテ、黃昏ヨリ地上ニ出テ疾行ス、形瘦テ黑色、脊ニ螢ノ如キ堅キ羽アリ、尾ノ端ニ微シク赤斑アリ、稀ナルモノナリ、

芫靑/葛上亭長

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1091 芫靑(○○) アヲハンメウ(○○○○○○) 一名莞靑、〈束醫寶鑑〉 元靑〈醫學正傳〉 蚖靑蟲〈正字通〉
今舶來ナシ、間蠻舶來アリ、紅毛語カンターリイ、又ハパンスフリイゲト云フ、パンスハ國名、フリイゲハ蠅ナリ、ソノ形斑猫ヨリ狹小、長サ六七分許、ゼウカイニ似ラ小ク、綠色ニシテ金光アリ、腹ハソノ光多シ、和産稀ニ草木上ニ飛來ルコトアリ、形蠻産ニ異ナラズ、又一種形瘠細ク、黑色ニシテ碧光アルモノハ處處ニ多シ、
葛上亭長(○○○○) マメハンメウ(○○○○○○) ヲンニヤウジ(○○○○○○)〈江州〉 ヲニウジ(○○○○)〈同上長濱〉 ヒムシ(○○○)〈同上大塚〉 ヘムシ(○○○)〈伊州〉 サルメウジ(○○○○○)〈土州〉 アブレジ(○○○○)〈和州〉 一名、葛上加乙畏〈郷藥本草〉
江州ノ地豆ニ宜シ、故ニ菽田多シ、近江大豆ト稱シ名産トス、夏月北風吹ク時ハ、此蟲生ジテ擧田皆食ヒ枯ラスニ至ルト云、和州ニテハ數多ク、群ヲナシテ菽園ニ來リ、コグチヨリ苗ヲ食巳盡ス、捕ヘテ小竹上ニ貫キ、處處ニ立テ置ク時ハ、漸ク逃去ルト云、土州ニテハ豆ニ限ラズ、諸草木上ニ生ズト云フ、ソノ蟲長サ四五分、濶サニ分弱、形狀蠻來ノ芫靑ニ似テ小ク、甲ハ色黑クシテ綠光アリ、竪ニ褐色ノ細條二三道アリ、首ハ黃赤色ナリ、癬ニ摩碎シ、醋ニテ傅レバ、甚腫痛シ、水出テ愈後、皮ヲ脱スルコト兩三度ナリ、又一種阿州ニテ、ヲロメウジ、一名ヲロメト呼ブ蟲アリ、江州ニテハ、ハラボテト云、大豆苗上ニ生ズ、長サ三分半許、濶サ二分許、靑綠色ニシテ斑點ナシ、傳藥ニ用テ、ソノ効斑猫ニ及バズト云、亦葛上亭長ノ屬ナリ、

蜣蜋

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1092 蜣蜋 本草云、蜣蜋〈羌郎二音〉一名蛣蜣〈吉羌二音、和名久曾無之(○○○○)、一云、末呂無之(○○○○)、〉兼名苑注云、食糞虫也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1092 千金翼方、證類本草下品同、陶隱居注云、甚喜入人糞中、取屎丸而却推之、俗名爲推丸(○○)、李時珍曰、蜣蜋以土包糞、轉而成丸、雄推置于坎中、覆之而去、數日有小羌蜋出、孚乳于中也、蜀本圖經云、此類多種、取鼻高目深者、名胡蜣蜋(○○○)、本草衍義云、蜣蜋大小二種、一種大者爲胡蜣蜋、身黑光腹、翼下有小黃子母而飛行、晝不行、夜方飛出、至人家庭戸中、見燈光則來、一種小者身黑暗、晝方飛出、夜不飛、〈○中略〉按陶注云、取屎丸而却推之、是所以得久曾牟之、末呂牟之之名也、今俗呼古賀禰虫(○○○○)、又名黑金虫(○○○)、按爾雅、蛣蜣蜣蜋、蛣蜣、又見莊子齊物論、按説文無蜣字、有䖼字、云、渠脚一曰天社、廣雅、天社蜣蜋也、玉篇謂蜣䖼同字、段氏曰、此物前却推丸、故曰渠䖼、廣韵、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01584.gif 其虐切、又丘良切、則知䖼蜣正俗字、渠䖼雙聲、蛣蜣卽渠䖼之轉、蜣蜋疊韻也、〈○中略〉按爾雅郭注云、黑甲蟲噉糞者、兼名苑注文蓋本於此也、

〔伊呂波字類抄〕

〈久/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1092 蜣蜋〈クソムシ、糞虫也、羗良二音、又云卽禽、〉 蛣蜣〈同吉羗二音〉 轉丸 弄丸 諸羗 糞虫〈已上クソムシ、〉 〈四名出兼名苑、又名マロムシ、〉

〔物類稱呼〕

〈二/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1093 飛蛾、こがねむし(○○○○○)、 つくしにてぶどう(○○○)と云、肥州にてかねぶう〳〵(○○○○○○)と云、此むし夏の夜、油灯に入て灯を消す事あり、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十八/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1093 蜣蜋、 マロムシ(○○○○)〈和名鈔〉 クソムシ(○○○○)〈同上〉 コガネムシ(○○○○○)〈京〉 クロコガネムシ(○○○○○○○) センチコガネムシ(○○○○○○○○)〈共同上〉 サラムシ(○○○○)〈北國〉 ゴキトリ(○○○○)〈江州〉 サラマワシ(○○○○○) ゴキマワシ(○○○○○)〈共同上〉 ブイブイ(○○○○)〈備後〉 力ネブイブイ(○○○○○○)〈豫州西條〉 カネブ(○○○)〈同上、大洲、○中略〉
大小數品アリ、胡蜣蜋ハ形金龜子(コガネムシ)ニ異ナラズ、長サ四五分、濶サ三四分、背ニ剛甲アリ、全身黑色ニシテ、漆ノ如ク光アリ、晝伏シ夜出、燈火ヲ見テ來リ、誤テ油ニ入リ死ス、〈○中略〉又一種小ナル者アリ、長サ三四分、形瘠、甲ニ光ナク、晝飛テ夜伏ス、宗爽小者不堪用ト云モノナリ、

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01585.gif

〔伊呂波字類抄〕

〈多/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1093 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01585.gif タマムシ(○○○○)

〔下學集〕

〈上/氣形〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1093 蜴蛀(タマムシ) http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01585.gif (同)

〔書言字考節用集〕

〈五/氣形〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1093 吉丁蟲(タマムシ)〈本草、背正綠有翅、取用帶之、令人喜好愛媚、〉金花蟲(同)

〔和漢三才圖會〕

〈五十三/化生驫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1093 吉丁蟲(たまむし) 俗云玉蟲〈○中略〉
按、俗云、玉蟲是也、江州及城州山崎、攝津有馬多有之、婦女納鏡奩以爲媚藥、用白紛汞粉(ハラヤ)之、歷年不腐、雄者全體正綠光色、縱有二紅線、腹亦帶赤色、潤澤可愛、長一寸二三分、頗似蟬形、而扁小頭、其頸有切界眼六足也、雌者長寸許、全體黑而光澤帶金色、縱有同色筋脉數行、蓋雄者多、雌者少、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十八/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1093 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01586.gif 螽〈○中略〉
附錄、吉丁蟲、 タマムシ〈○中略〉 山中ニ生ズ、叩頭蟲(キヽリムシ)ニ似タリ、長サ一寸許ニシテ、濶サ三四分、背ニ硬甲アリ〈○中略〉金光アリ、〈○中略〉女人取テ粉匣ニ收ム、久クシテ敗レズ、

〔四季物語〕

〈八月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1093 なりはうつくしう玉むしなどいひて、いみじけれど聲きり〴〵すはたおりかう ろぎにさへおとりて、こゑたてぬもあれど、此むしはやむごとなきさちあるものにて、宮のさうにて、何くれの御つぼねにも、御くしげの中、白ふんの中にまろびて、からは人をさへ、野べにすてためるならひなるに、十とせはたとせの後までも、御ものゝ中につゝませおかせ給ふ事よ、かうやうのものに雲井にまうのぼる、昔のかしこき人は、草を耕して、位にのぼりしをさへ、めづらしうありがたき事にものするに、これはやうかはれり、

叩頭蟲

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 叩頭虫 傅咸叩頭虫賦云、虫之細微者、觸之輙叩頭、〈叩頭虫、和名沼加豆木無之(○○○○○○)、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 太平御覽引叩頭蟲賦叙云、叩頭蟲、蟲之微細者、然觸之輙叩頭、〈○中略〉李時珍曰、蟲大如斑蝥、而黑色、按其後則叩頭有聲、今俗呼米舂蟲(○○○)、或曰爪彈(○○)

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 叩頭虫〈ヌカツキムシ〉

〔書言字考節用集〕

〈五/氣形〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 叩頭蟲(ヨネツキムシ/コメムシ)

〔東雅〕

〈二十/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 叩頭蟲ヌカヅキムシ〈○中略〉 古には叩頭をいひて、ヌカヅクと云ひけり、ヌカとば額也、ツクとは著也、額の地に至るをいふなり、今俗にハタオリムシ(○○○○○○)ともいふ是也、

〔和漢三才圖會〕

〈五十三/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 叩頭蟲(こめふみむし) 和名沼加豆木無之 俗米踏(○○)〈○中略〉
按、狀如吉丁蟲(タマムシ)而小純黑、頸下背上有折界(ヲレメ)、毎點頭作聲、音如保知保知、其貌似碓者、故俗曰米踏蟲

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十八/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01586.gif 螽〈○中略〉
叩頭蟲 ヌカヅキムシ〈和名鈔〉 キコリムシ(○○○○○)〈古歌、播州、雲州、石州、備後、防州、作州、〉 キヽリムシ(○○○○○)〈大和本草○中略〉 カネタヽキ(○○○○○)〈○中略〉 コメフミムシ(○○○○○○)〈讃州高松〉 コメツキムシ(○○○○○○)〈同上、香西阿州、○中略〉 ツメハジキ(○○○○○)〈筑前○中略〉 此モ木蠹蟲ノ羽化スルモノアリ、其品數多シ、

〔枕草子〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 むしは ぬかつきむしまたあはれなり、さる心地に道心をおこして、つきありくらんよ、思ひもかけずくらきところなどに、ほと〳〵としありきたるこそをかしけれ、

蛞䗐

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1095 蛄䗐 爾雅集注云、蛄䗐、〈姑翅二音、和名與奈無之(○○○○)、〉今穀米中蠹、小黑虫也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1095引爾雅、蛄䗐、强http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01587.gif 也、説文、蛄䗐、强羊也、然則蛄字从女爲正、从虫俗字、與螻蛄字自別、郭璞曰、建平人呼爲http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01587.gif、音芋姓、郭注方言云、米中小黑甲蟲也、郝懿行曰、此蟲大如黍米、赤黑色、呼爲牛子、音如甌子、登萊人語也、廣東人呼米牛、紹興人呼米象、並因形以爲名、段玉裁曰、宋本説文及釋文所引皆作羊、當音陽、今江東人謂麥中小黑蟲羊子、是也、郭璞音恐未諦、徐鉉本作蚌、李燾本作芋、皆非是、

〔和漢三才圖會〕

〈五十三/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1095 蛄䗐(よなむし) 强蚌 和名與奈無之 與奈者米也 俗云虚空藏(○○○)〈○中略〉
按俗呼米穩菩薩、隨呼此蟲虚空藏、其形小、似蚤而赤黑色、長喙兩髭、六足跋行甚疾、

烏毛蟲

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1095 烏毛虫 兼名苑云、髯虫、一名烏毛虫、〈和名加波無之(○○○○)〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1095 加波无之、有毛、化爲蝶、見堤中納言物語、則知今俗所謂介牟之(○○○)也、爾雅䘃蛄蟴、説文蛄斯墨、陶弘景曰、帖蟖蚝蟲也、此蟲多在石榴樹上、俗爲蚝蟲、其背毛亦螫人、陳藏器云、其蟲好在果樹上、背有五色襇毛、刺人有毒、欲老者口中吐白汁、凝聚漸堅正如雀卵、子在其中、作蛹以甕爲繭、羽化而出作蛾、是可以充介牟之也、

〔堤中納言物語〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1095 むしめづる姫君
てふめづるひめ君の住み給ふかたはらに、あせちの大納言の御むすめ、心にくゝなべてならぬさまに、おやたちかしづき給ふことかぎりなし、このひめぎみのの給ふ事、人々のはなやてふやとめづるこそ、はかなくあやしけれ、人はまことあり、ほんぢたづねたるこそ、心ばへをかしけれとて、よろづのむしのおそろしげなるを取りあつめて、これがならんさまをみんとて、さま〴〵 なるこはこどもに人れさせ給ふ、中にもかはむし(○○○○)の、心ふかきさましたるこそ心にくけれとて、あけくれはみゝはさみをして、手のうらにそへふせてまほり給、若き人々はおぢまどひければ、をのわらはの物おぢせず、いふかひなきをめしよせて、箱の蟲ども取らせ、名をとひきゝ、いまあたらしきにはなをつけてけうじ給へば、すべてつくろふ所あるはわうしとて、まゆさらにぬき給はず、はくろめさらにうるさしきたなしとてつけ給はず、いとしろらかにゑみつゝ、このむしどもをあしたゆふべにあいし給、〈○中略〉さすがにおやたちにもさしむかひ給はず、おにと女とは、人に見えぬぞよきとあんじ給へり、もやのすだれをすこしまきあげて、きてうそへてたてゝ、かくさかしくいひいだし給ふなりけり、これをわかき人々きゝて、いみじくさかしうし給へど、心ちこそまどへ、この御あそびものよ、いかなる人、てふめづる姫君につかまつらんとて、兵衞佐といふ人、 いかで我とかむかたないてゝしかなるかは蟲ながら見るわざはせし、といへば、小大輔といふ人笑ひて、
うら山しはなやてふやといふめれどかはむしくさき世をもみるかななどいひてわらへば、かちしやまゆはしも、かはむしだちたんめり、さてはくさきこそ、かはのむけたるにやあらんとて、左近といふ人、
冬くれば衣たのもしさむくともかはむしおほく見ゆるあたりは、きぬなどきずともあらんかし、などいひあへるを、おとな〳〵しき女聞きて、わかう たちはなにごといひおはさうずるぞ、てふめで給ふなる人、もはらめでたうもおぼへず、けしからずこそおぼゆれ、さて又かはむしならべ、てふといふ人ありなんやは、たゞそれがもぬくるぞかし、そのほどを尋ねてし給ふぞかし、それこそ心ふかけれ、てふはとらふれば、手にきらつきて、いとむづかしきものぞかし、又てふはとらふれば、わらはやみをせさすなり、あなゆゝしともゆゝしといふに、いとゞにくさまさり ていひあへり、このむしどもとらふるわらべは、をしきもの、かれがほしがるものをたまへば、ざまざまにおそろしげなるむしどもをとりあつめて奉る、かはむしはけなどはをかしげなれど、おぼえねばさう〴〵しとて、いほむしかたつぶりなどをとり集めて、うだひのゝしらせてきかせ給ひて、われもこゑをあげて、かたつぶりのつのゝあらそふやなぞといふことをうちずんじ給、〈○下略〉

雀甕

〔和漢三才圖會〕

〈五十二/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1097 雀甕(すゝめのたご) 蚝蟲 躁舍 雀兒 飯甕 蛄蟖房 天漿子 俗云雀乃太古(○○○○)〈○中略〉按俗云雀(/○)擔桶(タンゴ/○○)是也、果樹枝間在之、形似草麻子、取甜柘榴樹上者、可兒驚癇、正二月未口者佳也、運則空殼耳、或採雀甕紙包收、經日開之、乃燈蛾出去、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1097 雀甕 スヾミノツボ(○○○○○○)〈古名〉 スヾメノタゴ(○○○○○○) スヾメノシヤウベンタゴ(○○○○○○○○○○○)〈京〉 スヾメノマクラ(○○○○○○○)〈作州〉 スヾメノサカツボ(○○○○○○○○)〈信州〉 イラムシノス(○○○○○○) 一名蛅蟖殼〈本經逢原〉衰也只家〈郷藥本草〉 蛅蟖一名蟔〈爾雅〉 毛http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01588.gif 〈通雅〉 蛓毛〈本經逢原〉
蛅蟖ノ窠(○○○○)ナリ、蛅蟖ハイラムシ(○○○○)、ヲコゼ(○○○)、霎州ハンキヤウシ(○○○○○○)、勢州梅樹、林檎、棗樹等ニ生ジテ葉ヲ食フ、長サ七八芬、形扁ク、色黃ニシテ、黑色ノアツマリタル毛處處ニアリテ、馬鬣ノ如シ、若シ是ニテ觸レバ、甚人ヲ惱シム、秋深レバ樹枝ニツイテ、白乳ノ如キ者ヲ吐シテ身ヲ覆フ、後ニ凝テ雀卵ノ如ク堅シ、長サ五六芬、濶サ三四分、淺黑色ニシテ竪ニ白キ紋アリ、コレヲ破リ開ケバ、内ニ蟲アリ、小鳥好デ食フ夏ニ至レバ甕上ニ圓孔ヲ穿チ、其中ヨリ羽化シテ出飛ブ、其蛾褐色ニシテ厚キ翅アリ、本經逢原ニ、至夏羽化而出、其形有蜻蜓、而翅黑稍潤ト云フ、

蚇蠖

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1097 蚇蠖 兼名苑云、蚇蠖、〈尺郭二音〉一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01563.gif 䗩〈卽戚二音〉爾雅注云、一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01563.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01589.gif 〈子六反〉説文云、蠖〈和名乎岐無之(○○○○)〉屈伸虫也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1097 按、神代紀招、訓乎幾、謂致鷹之餌乎幾惠、亦是也、尺蠖屈伸、有物之 狀、故名乎歧牟之、今俗呼尺取虫(○○○)、新撰字鏡、蠖訓衣比万良虫、不知與乎歧牟之同否、〈○中略〉原書虫部、屈上有尺蠖二字、伸作申、爾雅翼云、狀如蠶而絶小、行則促其腰、使首尾相就、乃能進歩、屈中有伸、故曰屈申、又如人以手度物、移後指前指之狀、玄應音義引舍人云、一名歩屈、床地曰尋桑、臭人名桑闔、郝曰、今驗歩屈小靑虫也、在草木葉上、懸絲自縋、亦作小繭、化爲飛蝶、或在桑上、故有尋桑桑闔諸名、其在它樹上者、亦隨染、故晏子春秋外篇云、尺蠖食黃則黃、食蒼則蒼、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1098 蘹香蟲〈○中略〉
集解、尺蠖ハ ヲキムシ〈和名鈔〉 シヤクトリムシ スントリムシ(○○○○○○)〈土州阿州〉 タカバカリ(○○○○○)〈尾州〉 一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01563.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01589.gif 、〈通雅〉http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01563.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01590.gif 、〈正字通〉http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01591.gif 蠋、〈同上〉歩屈、〈典籍便覽〉蚇蠖〈事物紺珠〉蚸蠖、〈文選〉屈伸蟲、〈潜確類書〉屈申蟲、〈三オ圖會〉曲曲蟲〈訓蒙字會〉此蟲夏秋ノ候、草木上ニ生ジテ葉ヲ食フ、形細長ク、兩頭ニ足アリ、腰ヲ屈シ首尾相就テ行ク、ソノ狀人ノ兩指ニテ寸尺ヲ度ルニ似タリ、故ニシヤクトリムシト名ク、易ニ尺蠖之屈以求信也ト云是ナリ、小ナル者ハ一寸ニ及バズ、大ナル者ハ二三寸ニ過グ、綠色ナルモノアリ、灰色ナル者アリ、褐色ナル者アリ、皆老スレバ羽化シテ蝶トナル、

螟蛉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1098 螟蛉 毛詩注云、螟蛉、〈冥靈二音、和名阿乎無之(○○○○)、〉蒼虫也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1098 小雅小宛篇毛傳蒼作桑、按爾雅云、螟蛉桑蟲、毛詩正義引陸璣亦云、螟蛉者桑上小靑蟲也、是詩注作桑蟲疑、源君引作蒼者、恐桑蒼音近、旦因阿乎牟之之訓而誤也、又按説文蠕字注云、螟http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01592.gif 桑蟲也、螟字注云、蟲食〈○中略〉穀葉者、非此義、古蓋作http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01592.gif 也、後人作螟蛉、與蜻蛉字混無別、詩疏引陸機、又云、螟蛉者似〈○中略〉歩屈其色靑、或在草葉上、按太平御覽引郭氏云、尺蠖有歩屈、其色靑而細小、或在草木葉上、今蜾贏所〈○中略〉負以爲一レ子者、蓋郭氏音義之文、以螟蛉歩屈一、與陸機所一レ説異、

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00164.gif

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1098http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00164.gif 蟲(○○○) クイ(○○)〈南部〉 一名苟http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00164.gif 上蟲〈證類本草〉
此ハ枸http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00164.gif 上二生ジ、葉ヲ食フ、小長靑蟲(○○)ナツ、コノ木ニ限ラズ諸草上ニ生ズ、コレヲ蠋ト云、老スレ バ羽化シテ小蛾(○○)トナル、時珍ハ爾雅ノ烏蠋トス、コレハイモムシ(○○○○)ナリ、一名嶋蠋、〈正字通〉芋ノ葉上ニ生ズル大長蟲ナリ、形狀ハ蠶ニ似テ、大ニシテ綠褐黑數色アリ、皆老テ大蝶ニ化ス、多クハ玄武蟬トナルナリ、
增、釋名、蠋(○)ハ靑クシテ、毛ナキ長ムシノ總名ナリ、同類ノモノ故、コレヲ釋名ニ出ス俗ニイモムシト云、イモムシト云モ總名ナリ、芋ニ限ラズ、草木其ニ生ズ、ソノ生ズル所ノ草、或ハ木ニ因テ形色少異アリ、皆繭ヲ作リ、蛹トナリテ蝶ニ化ス、集解ニ烏蠋ト云ハ黑色ノ者ナルベシ、

蓑蟲

〔書言字考節用集〕

〈五/氣形〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1099 木螺(ミノムシ) 避債蟲(同)〈又云結草虫〉

〔和漢三才圖會〕

〈五十三/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1099 蓑(みのむし)衣蟲 結草蟲 木螺 壁債蟲 俗云美乃無之
按諸木嫩葉漸舒、老葉間有卷、中生小蟲、其蟲喰取枯葉、吐絲用作窠、長寸許、婆娑形如撚艾炷、毎縋于枝、其蟲赤黑色、有皺段而首尖、時出首喰嫩葉、動其首、貌彷彿蓑衣翁、故名之、俗説、秋夜鳴曰、秋風吹兮父戀焉、然未鳴聲、蓋此蟲、以木葉父爲家、秋風旣至、則邇零落矣、人察之、附會云爾耳、其鳴者非喓聲、乃涕泣之義、

〔蟲譜圓説〕

〈二/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1099 避債蟲、俗〈云ミノムシ〉、
千蟲譜、引程參醫抄錄撮要云、今柘榴上、有一種短梗半寸以來、周圍植之以裹身、行則負以自隨、 亦化蛹、其蟲俗呼避債蟲、諸木皆生、〈○下略〉

〔枕草子〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1099 みのむしいとあはれなり、をにのうみければ、おやににて、是もおそろしき心ちぞあらむとて、おやのあしき衣をひききせて、いま秋かぜふかんおりにそこむとする、まてよといひおきていにけるを、さもしらず、まことかとて、風のおとをきゝしりて、八月ばかりになれば、ちゝよちゝよとはかなげになく、いとあはれなり、

〔嬉遊笑覽〕

〈十二/禽蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1099 これ古への童が諺なるべし、蓑虫のきぬ穢けきあら〳〵しきもの故、おにのす て子など云しことゝ見ゆ、

〔和泉式部家集〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1100 柳にみのむしのつきたるをみて
雨ふれば梅の花がさあるものを柳につけるみのむしのなぞ

〔夫木和歌抄〕

〈二十七/蓑虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1100 松にみのむしのつきたるを、すけちかおこせたりける、 祐擧
いかでかは露にもぬれん雨ふれどもらしがいその松のみのむし

〔新撰字鏡〕

〈天〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1100 蚕〈丁殄反、上、蜸蚕、久禮乃彌々受(○○○○○○)、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1100 蠶(カヒコ)〈䖢附〉 説文云、蠶〈昨含反、俗爲蚕、和名賀比古(○○○)、〉虫吐絲也、玉篇云、䖢〈三消反、和名與蟻同、〉蠶初生也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1100 下總本蛾作蟻、類聚名義抄云、與蟻同、或本云與蛾同、彼所見本亦或作蟻、或作蛾也、按此云與蛾同者、謂其訓與蠶蛾也、作蛾爲是、

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1100 蚕〈コカヒ〉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1100 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01593.gif (○) 玉篇云http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01593.gif 〈音元、和名奈都古(○○○)、〉晩蠶也、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1100 原蠶(○○) ナツゴ(○○○) 一名蝩〈正字通〉
六月中旬ノ比、春蠶ノ雌蛾卵ヲ紙上ニ産ツケタル者、初ハ色白シテ形圓ニ長ク、頭ニ微尖アリ、三日許ヲ歷テ、色黃ニ變ジ、形扁ク凹トナル、又四日許ヲ歷テ、淺黑微紫色ニ變ズ、又日ヲ歷テ頭尖黑色ニ變ジ、漸ク全ク黑色トナリ、一日ヲ歷テ其尖ヨリ卵ヲ穿チ生出ス、此ヨリ漸ク成長シ、眠起スルコト、四度過テ、繭ヲ爲シ、蛾ニ化スルコト、春蠶ト同シテ日數早シ、藥ニハ蛾ト沙トヲ用ユ、
雄原蠶蛾 ナツゴノ蝶 雄ヲ用ユ、雌ハ用ヒズ、三才圖會ニ、爾雅正義ヲ引テ、羅卽是雄、蛾卽是雌ト云フ、廣濟譜ニ蛾出第一日者、名苗蛾、末後出者名末蛾、皆不用、次日以後出者取之ト云、コレハ種ヲ取ル蛾ヲ擇ブヲ云、藥ニハ必シモ拘ラザルベシ、

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1100 蝱(○) 文字集略云、蝱、〈今案、卽是蚊虻之虻字也、見下文、和名比々流(○○○)、〉蠒内老蠶也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1101 按蠶之在繭中、未化爲一レ蛾者名蛹、説文蛹繭蟲也、是也謂之蝱者、未出、比比流、今俗猶呼比伊流(○○○)、信濃上野陸奧謂之比流(○○)、近江謂比由利(○○○)、伊勢謂之比伊呂(○○○)、皆比々流之譌轉也、下總本蝱皆作䖟、按玉篇云、蝱俗作䖟、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1101 蠶 カヒコ(○○○)〈和名鈔〉 カフコ(○○○)〈古歌〉 ヲコ(○○)〈東國〉 ウスマ(○○○)〈越後〉 ボコ(○○)〈同上〉トヽコ(○○○)〈羽州〉 ヒメコ(○○○)〈房州〉 トウドコ(○○○○)〈津輕大者〉 キンコ(○○○)〈同上小者〉 一名龍精〈事物紺珠〉 錦娘子 女兒http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01594.gif 母〈共同上〉 馬頭娘〈名物法言〉 䗸〈正字通○中略〉
三月淸明〈節〉ノ後、桑初テ出ルノ時、蠶連紙(タ子ガミ)ノ上ニ、細カク切タル嫩桑葉ヲ以テ糝シ置ケバ、已ニ卵ヲ出タル蠶兒、桑葉ニ上リ附クヲ、鳥ノ翎ヲ用テ、葉ト共ニ拂ヒ落ス、其出ルコト早晩齊シカラズ、故ニ一番ハキ、二番ハキ、三番ハキノ稱アリ、大抵辰巳ノ時蛻シ出ヅ、長サ僅一分許、康濟譜ニコレヲ蟻ト云フ、時珍ノ謂ユル䖢ナリ、ソノ身ハ黑褐色、首ハ小クシテ、御米(ケシ)ノ如ク、黑色ニシテ光リ、漆ノ如シ、康濟譜ニ初生黑色、三日後漸變白變靑、復變白變黃、純黃則停食、謂之正眠、眠起自黃而白、自白而靑、白靑復白、自白而、黃、又一眠也毎眠例如此ト云、日ヲ追ヒ長ズルニ隨テ、色變ズルナリ、五日ニナレバ長サ二分餘ニナリ、葉ヲ食ハズ眠ル狀ノ如シ、コレヲ眠ト云、飛州ニテツボムト云、是第一眠ナリ、一名正眠、〈康濟譜〉江州ニテ一度井ト云、上州ニテシヾト云、康濟譜ニ北蠶多是三眠、南蠶倶是四眠ト云、本邦モ皆四眠ナリ、凡ソ一眠一起ノ間十二時ナリ、故ニ今日午前ヨリ眠スルモノハ、明日午時ヨリ、クビスジノ處裂破レテ、漸ク舊皮ヲ蛻出ヅ、是ヲキヌヲヌグト云、已ニ出レバ、半身以上ハ立チテ、半身以下ハ葉ニ附著シテ暫ク動カズ、コレヲ起ト云、是一起ナリ、飛州ニテヒトヲキト云フ、此時長サ三分許、九日ニ至リテ長サ四分許ニナリ眠起初ノ如シ、是第二眠ナリ、江州ニテハニ度井ト云、上州ニテタケト云、第二起ヲ飛州ニテフタヲキト云、此時長サ四分餘、十四日ニ至リテ、長サ七分餘ニナリ、眠起ス、是第三眠ナリ、江州ニテヒナイト云、又フナイト云、上州ニテ フナト云、第三起ヲ飛州ニテ、ミヲキト云、此時長サ八分許、十九日ニ至リテ、長サ一寸二三分ニナリ、色白ク微黃ニシテ光アリ、眠起ス、是第四眠ナリ、是ヲ大眠ト云ヒ、停眠ト云、倶ニ康濟譜ニ出ヅ、江州ニテニワイト云、上州モ同ジ、第四翹ヲ飛州ニテ、ニワヲキト云、此時長サ一寸四、分許、白色微黃褐、身ニ九段アリ、第一段ハ長クシテ、上ニ兩眉ノ形アリ、色黑シ、下ニ左右各三足アリ、三段ノ上前ニヨリテ○ノ形アリ、深黑色二重ナリ、五六七八段ノ下段ゴトニ、左右各一足アリ、九段ノ上ニハ、肉刺一アリテ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01595.gif 蠋(イモムシ)刺ノ如シ、尾下ハ兩ヨリ葉ヲ挾デ足ノ如シ、二十七日ニ至リテ、長二寸ニ分許、濶三分許、全身白色ニシテ光アリ、喉下及尾上透徹シ、漸クヒロガリ、全身透徹シテ黃色トナル、是ヲ南部ニテ、ヒキルト云、是ヨリ漸ク老テ、形小クナレバ、只仰デ上ニ向フ、此時採テ簇中ニ入ル、康濟譜ニ、候十蠶九考方可簇ト云、簇ハ器中ニ枝叉アル木柴ヲ束ネタルヲ入置キ、上ニ稻草ヲ覆フコノ云フ、蠶ヲコノ中ニ入レバ、便チ絲ヲ吐キ、枝叉ニ掛テ繭ヲ造ル、コレヲ飛州ニテスガクト云、〈○中略〉
繭マユ〈○中略〉 凡繭三日許、日乾シテ後絲ニヒキ、綿ニ造ル、コレ中ノ蛹(ヒイル)ヲ殺スタメナリ、然ラザレバ繭ヲ破リ、羽化シテ出レバ、ソノ繭絲ニナラズ、故ニコノ繭ヲ綿ニ製ス、コレヲ空蠶繭〈醫學彚函〉ト云、〈○中略〉
繭中ニ居ルモノハ足ナクシテ兩目アリ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01585.gif 蜟(ニシヤドチ)ノ形ノ如クニシテ赤褐色ナリ、コレヲ蛹(○)ト云、俗名ヒル、〈野州、信州、奧州、〉ヒイル(○○○) ヒユリ(○○○)〈江州○中略〉
稱子トスル繭ハ、器中ニ入レ、上ニ藜葉(アカザ)ヲ蓋ヒ置ク時ハ、日ヲ經ズシテ、蛹羽化シテ、繭ノ一方ヲ破リ穿チテ出ヅ、コレヲ蠶蛾(○○)ト云、カヒコノ蝶ナリ、〈○中略〉
蠶蛾ノ形ハ、䗳蛾(ヒトリムシ)ニ似テ、淺褐色、雄ハ體瘦小ニシテ紙上ニ飛走ス、雌ハ體肥大ニシテ、紙上ニ伏シテ動カズ、天工開物ニ、凡蛹變蠶蛾、旬日破繭而出、雌雄均等、雌者伏而不動、雄者兩翅飛撲、遇雌卽交、 交一日半日方解、解脱之後、雄者中枯而死、雌者卽時生卵、承藉卵生者、或紙或布、隨方所一レ用、一蛾計生卵二百餘粒、自然粘于紙上、粒粒匀鋪、天然無一堆積、蠶主收貯以待來年ト云、此紙ヲ蠶連ト云、俗名タネガミ、

〔續日本紀〕

〈二十/孝講〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1103 天平寶字元年八月己丑、駿河國益頭郡人金刺舍人麻自、獻蠶産成一レ字、 甲午勅曰、〈○中略〉爰得駿河國益頭郡人金刺舍人麻自、獻蠶兒成一レ字、其文云、五月八日、開下帝釋標天皇命百年、因國内頂戴玆祥躍踊歡喜、〈○中略〉謹案、蠶之爲物、虎文而有時蛻、馬吻而不相爭、生長室中被天下、錦繡之麗於是出焉、朝祭之服於是生矣、故令神虫作字、用表神異、而今蕃息之間、自呈靈字、〈○中略〉宜王公其辱斯貺、但景命爰集、隆慶伊始思俾惠澤被於天下、宜天平勝寶九歲八月十八日、以爲天平寶字元年、其依先勅天下諸國調庸、毎年免一郡者、宜遺諸郡合年倶免

〔續日本紀〕

〈三十一/光仁〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1103 寶龜二年五月己酉、右京人白原連三成獻蠶産成一レ字、賜若狹國稻五百束

〔萬葉集〕

〈十一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1103物陳思歌
足常(タラチネノ)、母養子(ハヽノカフコノ/○○○)、眉隱(マユコモリ/○○)、隱在妹(コモレルイモヲ)、見依鴨(ミルヨシモカモ)、

〔萬葉集〕

〈十二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1103 問答歌
中々二(ナカ〳〵ニ)、人跡不在者(ヒトヽアラズバ)、桑子(クハコ/○○)爾毛(ニモ)、成益物乎(ナラマシモノヲ)、玉之緖許(タマノヲバカリ)、

〔萬葉集〕

〈十四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1103 常陸國歌
筑波瀰乃(ツクハネノ)、爾比具波麻欲(ニヒグハマヨ/○○○○○○)能(ノ)、伎奴波安札杼(キヌハアレド)、伎美我美家思志(キミガミケシヽ)、安夜爾伎保思母(アヤニキホシモ)、
○養蠶ノ事ハ、産業部養蠶篇ニ詳ニセリ、宜シク參看スベシ、

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1103 蛾〈柯我反、螘也、蟻也、安利、比々留、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1103 蛾 説文云、蛾〈音峩、和名比々流(○○○)、〉蠶作飛虫也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1103 比々流、和名抄、靈異記訓釋同訓、谷川氏〈○士淸〉曰、火簸之義、今俗呼蠶蝶、今土 佐俗呼比伊流、阿波俗又譌呼比宇利、本草和名、螈蠶蛾、和名比々留、乃布多古毛利、按陶隱居云、原蠶是重養者、謂春蠶當盛暑時、所於紙上、歷數日化爲蠶、謂之原蠶、下條http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01593.gif奈都古、是也、後羽化爲蛾者語之原蠶蛾、今俗呼夏子蝶、輔仁誤讀重字、爲二蠶爲一繭、訓布多古毛利誤、今引之者、以證蛾之訓比々留耳、

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1104 蛾ヒヽル

〔八雲御抄〕

〈三/下虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1104 蛾 おやのかふこのまゆとこもりいへり、 ふたこもり ひきまゆ

〔倭訓栞〕

〈前編二十五/比〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1104 ひゝる 倭名鈔、新撰字鏡、靈異記に蛾を訓ぜり、火簸の義にや、よく燈を消つもの也、山谷が詩に飛蛾赴燭廿死禍と見えたり、又蝱も訓ぜり、日本紀に、飄又翥をよめり、日簸の義なるにや、盛衰記に、一ツの鳥ひゝめきわたるともいへり、萬葉集に蛾葉之衣といふ事あり、かはのきぬと訓れど、異訓あるべく思はるれ、古事記に内剝鵝皮といふ事見ゆ、ごも蛾皮なるべし、説文にも蛾蠶化飛虫也と見ゆ、書紀には以鷦鷯ノ羽衣と見ゆ、

〔日本書紀〕

〈三十/持統〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1104 六年九月癸丑、越前國司、獻白蛾(ヒヽル)、戊午詔曰、獲白蛾於角鹿郡浦上之濱、故增封笥飯神二十戸、

〔書紀集解〕

〈三十/持統〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1104 按、蛾微少之物、非獻者、蓋蛾鵝誤耳、

〔太平記〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1104 資朝卿被斬幷阿新事
折節夏ナレバ、燈ノ影ヲ見テ蛾ト云蟲ノアマタ明障子ニ取付タルヲ、スハヤ究竟ノ事コソ有ト思ヒテ、障子ヲ少シ引アケタレバ、此蟲アマタ内へ入テ、軈テ燈ヲ撲滅ヌ、

燈蛾

〔東雅〕

〈二十/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1104 蝶〈(中略)蛾は倭名鈔に説文を引て、(中略)義は不詳、今俗にヒトリムシ(○○○○○)といふものは、觸蛾是也、〉

〔倭訓栞〕

〈中編二十一/比〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1104 ひとりむし 火取虫の義、飛蛾の類をいふ也、心地觀經に、心如飛蛾燈色と見ゆ、古今集に、 夏虫をなにかいひけん心から我もおもひにもへぬべらなり、

〔和漢三才圖會〕

〈五十二/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1105 燈蛾 燭蛾 火蛾 俗云火取虫〈○中略〉
燈蛾(ヒトリムシ)多出雀甕、大五六分、形色似黃蝶、色枯渴者也、夏夜見燈燭、則如火、數回而終沒燈油中死、

樗鷄

〔醫心方〕

〈一/虫魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1105 樗鷄〈和名奴天乃支乃牟之(○○○○○○○)〉

〔大和本草〕

〈十四/蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1105 樗雞(/ウチスヽメ) 一名紅娘子、本草綱目四十ニノセタリ宗奭曰、形類蠶蛾、但腹大頭足徵黑、翅爾重、外一重灰色、内一重深紅、五色皆具、筑紫ノ方言ウチ雀ト云、又一種夕顏ノ花ヲ吸翼アル虫アリ、飛コト早シ、夕顏マダラト云、是モ樗雞ノ類ナリ、樗雞ヨリ小ナリ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1105 樗鷄 詳ナラズ〈○中略〉
大和本草ニ、ウチスヾメ(○○○○○)ト訓ズルハ穩ナラズ、 ウチスヾメハ燈蛾(ヒトリムシ)ノ雌ナリ、一名ザシキスヾメ(○○○○○○)〈南部〉コブ(○○)〈尾州〉フクラスヾメ(○○○○○○)、形、蠶蛾(カイコノテフ)ノ雌ニ似テ、灰褐色ニシテ粉アリ、〈○中略〉畫ハ扉ノ陰、或器物ノ間ニ隱レテ睡リ、夜ハ飛翔シテ、燈火ニ集リ、終ニ油ニ入リ死ス、正字通ニ符子ヲ引テ、不其昧、而樂其明、譬猶文蛾去暗赴燈而死也ト云フ、

蝶/名稱

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1105 蝶〈徒頰反、蛺也、加波比良古(○○○○○)、〉 蛺〈古夾反、蝶也、加波比良古、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1105 蝶(テフ) 兼名苑云、蛺蝶〈頰牒二音〉一名野蛾、〈形似蛾而色白者也〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1105 按古今注云、蛺蝶一名野蛾、色白背靑者是也、兼名苑蓋本於此、説文蛺、蛺蜨也、蜨、蛺蜨也、蜨蝶正俗字、伊勢廣本蝶作http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01596.gif 、按是唐人避諱字、新撰字鏡、蝶蛺並訓加波比良古、李時珍曰、蝶蛾類也、大曰蝶、小曰蛾、其種甚繁、皆四翅有粉、好嗅花香

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1105 蛱蛺〈カハヒラコ〉 蝶〈カハヒラコ〉

〔八雲御抄〕

〈三/下虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1105 蝶 こてふ(○○○)はるさま〴〵のはなのさくより、秋花のちるまでの物なり、 たゞてふとも云、なべてはこてふと云、、こてふににたりといふは非蝶、來といふに似也、

〔東雅〕

〈二十/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1106 蝶テフ 字の音をもて呼也

〔倭訓栞〕

〈前編十七/底〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1106 てふ 蝶をよむは音なり、相摸下野陸奧にてふま(○○○)、津輕にかにべ(○○○)、又てこな(○○○)、秋田にへらこ(○○○)、越後にてふまべつたら(○○○○○○○)、信濃にあまびら(○○○○)といふ、かひこのてふは蛾なり、信濃陸奧上野にひるといふ、西國にひるろうと云、伊勢にひいうといふ、柳女郎(○○○)と呼者あり、水蝶(○○)也、粉蝶を放ちて、其止る所に隨て幸なるは唐明皇の故事なり、天寶遺事に見ゆ、てふ〳〵とまれ、菜の花にとまれ、なれもとまらば、我もとまらんといへる童謠は、古意を得たり、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1106 蛺蝶 テフカラテフ(○○○○)〈古歌〉 チヨテフ(○○○○)〈京〉 テフ〳〵(○○○○)〈江戸〉 テフコ(○○○)〈阿州〉 カツカベ(○○○○)〈南部〉 テイコウナ(○○○○○)〈津輕〉テコナ(○○○) カヽべ(○○○)〈共同上〉 ハへル(○○○)〈琉球〉 テフマベツ(○○○○○○○)トウ〈越後〉 アマビラ(○○○○)〈信州〉 カバビラコ(○○○○○) テフ〳〵ベコ(○○○○○○)〈野州〉 ヘラコ(○○○)〈秋田○中略〉
蛺蝶ハ春夏秋ノ間飛翔シ、草木ノ花ヲ吸フ、菜花上殊ニ多ク集ル、一身四翅、翅ノ大サ八九分ニシテ粉アリ、色白キ者ヲ粉蝶〈泉州府志〉-云、色黃ナル者ヲ黃蝶〈同上〉ト云、又黑ヲ雜ルアリ、皆油菜葉ノ上或下ニ纖小ノ黃卵ヲ生ズ、數日ノ後化シテ小長蟲-ナル、〈○下略〉

〔古今要覽稿〕

〈蟲介〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1106 てふ〈蝶〉
てふ、一名をこてふ、古名をかはらひこといひ、俗稱をてふ〳〵といひ、〈○中略〉漢名のごときも數名ありと雖も、通名は蝴蝶といひ、蛺蝶といひ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01597.gif 蝶といひ、蜨ともいへり、説文によるに、蝶は俗字のよしにて、蜨を本字となせり、然れ共、古來より蝶字を以て通用したり、又雅名の如きは、春駒といひ、野織といひ、撻抹といひ、探花使といひ、或は採花使共、採花子とも目せるは、名義皆同じくして、いはゆる蝴蝶の花に遊ぶとも、花に戯るなど、ふるくより詩歌に詠ぜるよりして、しか名付そめけん、又戀花といふ目もあるは、もと蝶は花木花草中の毛蟲尺蠖の類、或は蠹蠋の諸蟲老時に至りて、おの〳〵脱して蝶となる也、〈○中略〉また此物大小あり、大なるものは蝙蝠の如く、故に蝙蝠蝶 の名あり、小なるものは、梅花瓣にまがふありて、翼に五色の斑文あるあり、純白純黃紫黑靑赤、其色錯雜にして、種類きはむべからず、〈○下略〉

蝶種類/綠蝶

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1107 綠蝶(○○) 兼名苑云、綠女、一名姥蝶、〈綠蝶也〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1107 按綠女姥蝶二名、未出、

紺蝶

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1107 紺蝶(○○) 兼名苑云、紺幡、一名童幡、〈紺蝶也、今案、又一名靑蛉、見古今注、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1107 按古今註云、紺蝶遼東人呼爲紺幡、亦曰童幡、兼名苑蓋本於此、廣本注末、有今案又一名靑蛉見古今注十一字、按古今注魚蟲條作蜻蛉、又按紺蝶、今俗呼蝶登无保(○○○○)、蜻蛉之屬非蝶類、以其飛翔狀似蛺蝶、有蝶名也、源君廁於此、恐非、

黃蝶

〔吾妻鏡〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1107 文治二年五月一日戊寅、自去比黃蝶飛行、殊遍滿鶴岳宮、是怪異也、仍今日以御供之次、爲邦通奉行、有臨時神藥、〈○同書建保元年又有此事、〉

〔吾妻鏡〕

〈三十八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1107 寬元五年三月十七日庚午、黃蝶飛、〈幅假令一丈許、列三段許、〉凡充滿鎌倉中、是兵革兆也、承平、則常陸下野、天喜、亦陸奧出羽四箇國之間、有逗怪、將門貞任等及鬪戰訖、而今此事出來、猶若可東國兵亂歟之由、古老之所疑也、

〔吾妻鏡〕

〈三十九〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1107 寶治二年九月七曰辛亥、黃蝶飛行、自由比浦于鶴岡宮寺幷右大將家法花堂群亙云云、 十九日癸亥、未申兩時之間、黃蝶群飛、自三浦三崎方、出來于名越邊、其群集之幅三許段云云、

鳳蝶

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1107 鳳蝶〈或説作車〉 崔豹古今注云、鳳蝶其大如蝙蝠者、或黑色或靑斑、名曰鳳子、一名鳳子車、一名鬼車、〈今案、和名保々天布(○○○○)、是鳳蝶二音之轉乎、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1107 按原書魚蟲條、作風蝶其大如蝙蝠者、或黑色或靑斑、名爲鳳子、一名鳳車名鬼車、與廣本所一レ引略同、其鳳蝶作風蝶恐誤、名鬼車上亦似一字、初學記、太平御覽引亦作鳳車、與今本同、廣本作鳳子車、誤衍也、

蝶事蹟

〔三代實錄〕

〈二十六/淸和〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1108 貞觀十六年八月丁巳朔、伊勢國上言、〈○中略〉蝗虫或化蝶去、

〔大和名所圖會〕

〈五/高市郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1108 菩提寺緣記曰、橘寺の西方より金色の蝶(○○○○)とび來りて、講堂の柱に羽うちやすめとまり、しばしして飛さりぬ、其跡をみれば、一首の和歌を喰付たり、
新古今 菩提寺の講堂のはしらにむしくひたる歌
しるべある時にだにゆけ極樂の道にまどへる世中の人

〔帝王編年記〕

〈二十二/高倉〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1108 治承二年八月、叡山坂本粉蝶如雨降、高雄寺魔滅之時如此云々、

〔發心集〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1108 佐國愛華成蝶事
或人〈○中略〉人ノ家ヲカリテ、且ク立入タリケルガ、カクテ其家ヲミレバ、ツクレル家ノ、イト廣モ非ヌ庭ニ、前栽ヲエモイハズ、木共ウへテ、ウへニ假屋ノカマへヲシツヽ、聊カ水ヲカケタリケリ、色色ノ花カズヲツクシテ、錦ヲ打オホヘルガ如ク見エタリ、殊ニサマ〴〵ナル蝶イクラトモナク遊アへリ、事サマノ難有覺エテ、ワザトアルジヲヨビ出デヽ、此事ヲ問フ、アルジノ云樣、是ハナホザリノ事ニモ非ズ、思フ心アリテウへテ侍べリ、オノレハ佐國ト申テ、人ニシラレタル博士ノ子ニテ侍べリ、彼父世ニ侍リシ時、フカク花ヲ興ジテ、折ニツケテ是ヲ翫ビ侍リキ、且ハ其心ザシヲバ、詩ニモ作レリ、六十餘國見レドモ、未アカズ、他生ニモ定メテ花ヲ愛スル人タランナド、作リ置テ侍ベリツレバ、自ラ生死ノ會執ニモヤ罷成ケント、疑シク侍リシ程ニ、アル者ノ夢ニ、蝶ニ成テ侍ルト、見タル由ヲ語侍レバ、罪深ク覺エテ、然ラバ若コレラニモヤマヨヒ侍ルラムトテ、心ノ及ブ程ウへテ侍ル也、其レニトリテ、唯花バカリハ猶アカズ侍レバ、アマヅラ蜜ナドヲ、朝ゴトニソヽギ侍ルトゾ語リケル、

〔明月記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1108 天福元年五月十八日壬戌、或人云、自四月廿八日五月三日、日吉社頭、蝶雨降(ノ如クル)、

蝶雜載

〔榮花物語〕

〈三十二/歌合〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1108 かねのすはまに、沈をませゆひたる、かねのとこなつのくさむらをかきたり、歌 はなにゝかきたるぞなど、心にくきほどに、はやう花にてふのいみじうおかしきが、とをばかりゐたるなりけり、〈○中略〉歌は内の御めのと宰相の内侍のすけかきたり、右には兼房の右衞門佐、蝶ゐたるとこなつのえだをおりて、すけみち〈○右講師〉にとらす、

〔源氏物語〕

〈二十四/胡蝶〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1109 鶯のうらゝかなるねに、鳥のがくはなやかにきゝわたされて、いけの水鳥も、そこはかとなくさえづりわたるに、きうになりはつるほど、あかずおもしろし、てふはまして、はかなきさまにとびたちて、やまぶきのませのもとに、さきこぼれたる花のかげにまひいづる、

〔赤染衞門集〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1109 草のなかにてふのしにたるをみて
うき世にはながらへじとそおもへどもしぬてふばかりかなしきはなし

〔夫木和歌抄〕

〈二十七/蝶〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1109 正治二年百首 寂蓮法師
とこなつのあたりは風ものどかにて散かふものはてふのいろ〳〵

〔源仲正家集〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1109
はかなくもまねく尾花にたはむれて暮行秋をしらぬてふ哉

蟻/名稱

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1109 蟻螘〈同上義、音宜奇反、阿利(○○)、又左曾利(○○○)、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1109 大蟻〈蚳蝝附〉 爾雅集注云、蚍蜉〈毘浮二音〉一名馬螘、〈宜倚反、今案卽蟻字也、見玉篇、和名於保阿里(○○○○)、〉大蟻也、野王按、蚳蝝〈遲鉛二音〉蟻子也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1109 今本玉篇虫部云、螘宜倚切、蟻同上、與此注所一レ引合、別名蛾、樂記蛾子時術之、鄭注、蛾眦蜉也、是也、又蠶http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01598.gif 字从䖵、俗省作蛾、與此蛾字混、故蛾羅字俗作蟻、以蠶蛾字也、然則蟻是螘一名、非卽螘字、顧氏以蟻爲螘或字、恐不然、〈○中略〉今俗呼山安利(○○○)、爾雅云、蚍蜉、大螘、郭注云、俗呼爲馬蚍蜉、毛詩東山正義引舍人云、蚍、蜉卽大蟻也、説文、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01599.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01600.gif 大螘也、蚍蜉字云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01599.gif 或从虫比聲、又云、螘蚍蜉也、〈○中略〉今本玉篇虫部云蚳蟻卵也、按説文、蚳、螘子也、説文又引http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01601.gif蝝蚍蜉子、與此所引 玉篇義同、唯蚳蝝連文訓蟻子恐非、〈○中略〉按類聚名義抄、一名玄駒四字、在螘字注、此一名上恐脱蟻字、按大戴禮夏、小正傳云、玄駒者螘也、廣雅、玄駒螘也、方言云、蚍蜉、西南梁益之間謂之玄蚼、古今注云、今人名蟻曰玄駒、兼名苑蓋本於此等書、蚼卽俗駒字、魚猗反、又作螘、與上文云螘宜倚反卽蟻字複、是注恐後人所增、非源君舊文、舊本魚猗反本兼猗反、又作螘、作又作一レ蝖、今改正、顯宗紀蟻、新撰字鏡蛾、同訓、

〔本草綱目〕

〈四十一/蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1110 時珍曰、蟻處々有之、有大小黑白黃赤數種、穴居卵生其居有等其行有隊、能知雨候、春出冬蟄、

〔五雜組〕

〈九/物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1110 物之小而可愛者、莫蟻、其占候似智、其兼弱似勇、其呼類似仁、其次序似義、其不爽似信、有君臣之義焉、兄弟之愛焉、長幼之倫焉、

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1110 螘蟻 〈アリ〉馬蟻〈オホアリ〉赤蟻〈イヒアリ(○○○○)〉

蟻種類

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1110 蟻 アリ〈○中略〉
凡ソ蟻種類多シ、〈○中略〉市中ニ在ルモノ、赤黑二色アリ、體ハ小ナレドモ、皆力强シ、〈○中略〉事物紺珠ニ、力擧等身鐵善戰有行伍ト云ヘリ、通雅ニ、小而微黃曰黃蟻ト云フ、黃蟻(○○)ハアカアリ(○○○○)ナリ、庭上ニ多シ、〈○中略〉通雅ニ稍大、好啖群蟻虎蟻ト云、是ナリ、其内ニ形長大ニシテ、大頭ナル者雜リ行ク、通雅ニ、大頭不負曳、若紏率者、故世以群者大頭蟻ト云是ナリ、コノ蟻ヲ筑前ニテハ、藤四郎アリ(○○○○○)ト云、土州ニテハ庄屋アリ(○○○○)ト云フ、又赤蟻ノ一種(○○○○○)、至テ小ナル者アリ、徵黑色ヲ雜ユ、常ニ木中ニ住ミ、遠ク連行ス、事物紺珠ニ、黃螘細如灰ト云是ナリ又黑色ノ蟻(○○○○)、數品アリ通雅ニ玄蟻尤蕃、遇羶負曳ト云ヒ、泉州府志ニ、有黑蟻穴地中ト云フ、皆クロアリナリ、〈○中略〉又長サ一分許ニシテ、肥腹ナルモノ、常ニ木中ニ住ミ、年々窠ヲ換ルニ、遠方ヨリ卵ヲ含抱シテ連行スルアリ、此蟻ハ臭氣アリ、通雅ニ、有臭蟻(○○)、好緣木爲窠ト云是ナリ、又一種コシボソ(○○○○)ト呼ブモノアリ、長サ一分餘、色黑クシテ光 アリ、尾刺上ニ向フ、故ニ人ヲ螫ス、常蟻ノ尾刺下ニ向フニ異ナリ、朽柱及舊閫中ニ穴居ス、通雅ニ、有蛆蟻、狀如黑蟻化而羽、能螫人、爾雅所謂丁蟻也ト云ヒ、泉州府志ニ、有走馬蟻、作穴依樹能螫人ト云是ナリ、又山中ニ居ル者、形大ニシテ長サ七八分、或五六分ナルアリ、 ヤマアリ(○○○○)ト呼ブ オホアリ(○○○○)、〈和名鈔〉此ニモ赤黑二色アリ、釋名ノ註ニ、大者爲蚍蜉ト云是ナリ、

赤蟻

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1111 赤蟻(○○) 爾雅集注云、赤駮蚍蝣、一名蠪虰、〈龍偵二音、和名伊比阿里(○○○○)、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1111 伊比阿利未詳、疑謂今俗呼赤阿利、按通雅小而微黃曰黃蟻、事物紺珠、黃螘細如灰、是可以充赤阿利也、爾雅邢昺疏云、其大而赤色斑駁者名蠪、是山阿利之赤色者、〈○中略〉又按邢昺曰、蠪一名朾螘、以朾螘一句、玉篇云、蠪蠪虰蟲、又云、虰、蠪虹也、以蠪虰連讀、與此所引説合、顧氏蓋依爾雅舊注、王引之曰、以蠪朾螘一名非也、蠪、打螘、慰、飛螘、二句文同一例、若以螘字自爲句、則與爾雅上文小者螘相複矣、王引之又云、蠪之言尨也、古者謂雜色尨、或借龍字爲之、故螘之赤色斑駁者謂之蠪、義與尨同也、朾之言頳也、頳赤也、螘色赤駁、故又謂之頳、虰與頳音同、説文䞓、赤色也、或作頳或作http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01602.gif 、故字亦相通也、

飛蟻

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1111 飛蟻 爾雅集注云、螱〈音尉〉一名飛蟻、〈和名波阿里〉蟻有翼而能飛也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1111 爾雅http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01603.gif 、飛螘、郭注云、有翅、此所引蓋舊注、舊雅翼云、蓋柱中白螘之所化也、白螘狀如螘卵、凡斬木不時、木未燥而作、至或柱礎去地不一レ高、則是物生其中、以泥爲房、詰曲而上、往々變化生羽、遇天晏温、群隊而出、飛亦不高、尋則脱翼、藉々在地而死矣、郝氏曰、劉歆以蝝爲蚍蜉之有翼者、蓋謂此也、

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1111 飛蟻〈ハアリ〉

〔和漢三才圖會〕

〈五十二/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1111 螱(はあり) 白蟻 飛螘 和名波阿里 俗云波里(○○)〈○中略〉
按螱〈俗云波里〉羽蟻也、人家古松柱間生螱、蚔細白如罌粟子黑點處頭也、尋變黃赤翼再變黑而群飛、 不奈何、相傳、書呪歌其柱、則螱悉除去、屢試驗焉、其歌未誰人所一レ詠、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1112 蟻〈○中略〉
附錄、白蟻、 ハアリ(○○○)〈和名鈔〉 ハネアリ(○○○○)〈尾州〉 ハリ(○○)〈越中、河州、勢州、〉 フアリ(○○○)〈豫州〉 ケガレバイ(○○○○○)〈土州〉 ドクドウシ(○○○○○)〈薩州〉 ドクヅシ(○○○○)〈同上〉 イツトキバイ(○○○○○○)〈防州〉 ウンゾウバイ(○○○○○○)〈筑前〉
增、白蟻、一名飛蟻、〈爾雅註〉 翹蟻〈事物紺珠〉
此蟲ハ朽木、或ハ水ニ近ヅキ、常ニ濕へル柱杙中ニ自生シ、木ヲ嚙、中ヲ空クシ、數ナクソノ内ニ往來連行ス、蟻ノ形狀ニシテ色白ク、未ダ羽ヲ生ゼズ、コレヲ、ドウトヲシ(○○○○○)筑前ト云フ、春暖ノ候ニ至レバ羽化シテ出飛ブコト甚多シ、遠ク望メバ烟ノ如シ、ソノ羽ハ四片ニシテ、身ヨリ長シ、身ハ淡赤黑色ニシテ光アリ、其飛ブコト高キコト能ハズシテ地ニ下リ、卽翼ヲ脱シテ地上ヲ行ク、長サ四五分ナルモアリ、三才圖會ニ、飛亦不高、尋則脱藉、藉在地而死ト云フ、然レドモ急ニハ死セズ、地中ニ入ル、多クハ虎蟻ニ食ハル、

〔三代實錄〕

〈五十/光孝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1112 仁和三年八月四日乙巳、地震五度、是日達智門上、有氣如煙非煙如虹非虹、飛上屬天、或人見之皆曰、是羽蟻也時人云、古今未此之異、陰陽寮占曰、當大風洪水失火等之災焉、 八日己酉、有羽蟻、出大藏正藏院、群飛竟天、屬于船岳

〔扶桑略記〕

〈二十二/宇多〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1112 寬平元年十月、〈○中略〉大臣云、一日安然法師云、近來在雲林院人云、蟲蠢々爰出、看之其虫所竟、東至園池司、西至絹笠岡、北至紫野、卽羽蟻也、

〔日本紀略〕

〈二/朱雀〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1112 天慶七年七月廿日庚寅、羽蟻集北野、其勢滿野、

〔日本紀略〕

〈五/冷泉〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1112 安和元年四月三日乙卯、巳刻御在所麗景殿與淑景舍間羽蟻飛如雲、又敷政門外陽明門等又如此、

〔日本紀略〕

〈十一/條〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1112 長德四年四月八日丙申、左近陣北掖羽蟻出來、

〔百練抄〕

〈十六/後深草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1113 寶治元年正月十七日辛未、今日關東若宮神前螻蟈數十万充滿、亥子時人々見付之、翌朝失畢之由、後日風聞、
建長三年五月十五日甲戌、權中納言通雅卿被軒廊御卜、〈鴨社羽蟻出來事〉

〔吾妻鏡〕

〈二十〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1113 建曆二年十月廿日壬辰、午剋鶴岡上宮寶前、羽蟻飛散、不幾千萬

〔吾妻鏡〕

〈三十一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1113 嘉禎二年四月一日丁亥、午剋鶴岡若宮、羽蟻群集、子剋地震、

〔康富記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1113 嘉吉三年四月廿日、又先日比、春日社へ御殿瑞籬内羽蟻立之由、社家有注進、永享八年有此事、仍來廿七日、可遣春日一社奉幣使之由、頭辨爲奉行、今日被淸大外記、云云、

靑腰蟲

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1113 靑腰蟲(○○○)
形蟻ヨリ、長クシテ、腰細カラズ、尾ハ直ニシテ尖リ、刺アリ、蟻尾ノ下ニ曲レルニ異ナリ、全身色赤ク、其腰綠色ニシテ光アリ、身長サ三四分、又一寸許ナル者アリ、稀ナリ、又全身黑色ニシテ、腰中黃赤色ナル者ハ甚多シ、春夏ノ交リ、朽木腐柱中ヨリ羽化シテ飛ビ出、甚ダ多キコト白蟻ニ異ナラズ、飛上ルコト高カラズシテ地ニ下リ行ク、ソノ四羽薄クシテ色白ク、身ヨリ長キコト白蟻ニ同ジ、地ニ下レバ卽羽ヲ脱シ去リ、數多連行スルコト蟻隊ノ如シ、腰中ニ又羽アリ、驚ク時ハ出テ飛ブ、地ニ下レバ羽ヲタヽミテ腰中ニ藏ス、

蟻事蹟

〔枕草子〕

〈十〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1113 ありどほしの明神、貫之が馬のわづらひけるに、此明神のやませ給ふとて、歌よみて奉りけんに、やめ給ひけんいとおかし、此ありどほしとつけたる心は、誠にやあらん、〈○中略〉もろこしの帝、この國のみかどをいかではかりて、此國うちとらんとて、常に心見あらがひ事をしてをくり給ひける、〈○中略〉七わだにわだかまりたる玉の中とをりて、左右に口あきたるが、ちいさきを奉りて、これにをとほしてたまはらん、此國にみなし侍る事なりとて奉りたるに、〈○中略〉おほきなるあり(○○○○○○○)を二つとらへて、こしにほそき糸をつけ、又それに今すこしふときをつけて、あなたの口に、 みつをぬりて見よといひければ、さ申てありをいれたりけるに、みつのかをかぎて、まことにいととうあなのあなたのくちに出にけり、さて其糸のつらぬかれたるを、つかはしたりける後になん、猶日本はかしこかりけりとて、のち〳〵はさる事もせざりけり、〈○中略〉其人の神になりたるにやあらん、

〔日本靈異記〕

〈中〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1114僧與邪婬惡病而死緣第十一
聖武天皇御世、紀伊國伊刀郡桑原之狹屋寺尼等請奈良右京藥師寺僧題惠禪師、奉仕十一面觀音悔過時、彼里有一凶人、姓文忌寸也、天骨邪見不三寶、凶人之妻有上毛野公大椅之女、一日一夜受八齋戒、夫從外歸家而見無妻卽往喚妻、導師見之宣義敎化、不信受曰、汝婚吾妻、頭可罰破斯下法師矣、惡口多言、具不述、喚妻歸家、卽犯其妻、卒爾http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00479.gif蟻嚼痛死、

〔日本靈異記〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1114 彌勒丈六佛像其頸蟻所嚼示奇異表緣第廿八紀伊國名草郡貴志里有一道場、號曰貴志寺、〈○中略〉白壁天皇〈○光仁〉代有一優婆塞、初夜思疑行路之人得病參宿〈○中略〉呻音毎夜不息、行者不聞忍、故起窺看、猶無病人、然最後夜倍於常音、響于大地而大痛呻、猶疑珞靈也、明日早起見堂内、其彌勒丈六佛像頸斷落在云、大蟻千許集嚼摧其頸、行者見之吿知檀越、檀越等復奉造副

〔寶物集〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1114 小沙彌蟻子ヲ助ノ事
小沙彌七日ノ内ニ死スベキ相アリ、彼沙彌、道ヲ行ケルニ、蟻ノ子ノ一ツ水ニ流レケルヲ助生タリ、其故ニ此沙彌ガ命延タル事アリキ、

〔蟲譜圖説〕

〈七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1114 弘化丁未四月、野火留〈○武藏新坐郡〉ノ平林寺山由松ノ朽タルアリ、其底黃赤大蟻(○○○○)多ク、其大五分、其色黃赤、走ル最早シ、廣東新語、所謂ノ黃赤大蟻ナル者ハ、是ノ類ナラン、

蟻雜載

〔嬉遊笑覽〕

〈十二/禽蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1114 蟻の熊野參り(○○○○○○)、長嘯子、虫の歌合なさけなき君が心はみつの山くまのまいりをし て祈らまし、そのかみ熊野に人多く參りしかば、かゝることわざあり、古きことゝ見えて、家長日記、元久三年京極殿うせ給ひ、攝政殿夢のやうにて、上下北面の人々馬車にて、はせちがふさま、ありといふむしの、もの參りとかやするにこそよう似て侍りしか、是には唯もの參りとめれど、熊野參なるべし、〈○中略〉蟻はむれをなして、他のむれに入らず、僅ばかり隔てし處の蟻も、むれことなるをば、必くひ殺すものなり、戯に砂糖などの甘みある物を、紙などの上に載せ、蟻のとほる處に置ば、須臾の間に多く集る、それを取て、他所の蟻の群たる中に入るれば、くひあふに、主客のきほひことなれば、他より入る蟻は敗走す、かくして鬪はしめざれども、もとより集りて戰ふものなり、〈○中略〉
蟻の塔(○○○)をくむ事、五雜爼、人有地得蟻城(○○)、街市屋宇樓蝶門巷、井然有條、唐五行志、開成元年、京城有蟻聚、長五六十歩、濶五尺、至一丈、厚五寸至一尺、可異矣、蜂亦有之、おもふに蟻の塔、そのまゝにして置かば、次年も又蟻集るものならむ、

蜂/名稱

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1115 螽䗦〈二作疋凶反、波知(○○)、〉

〔同〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1115 蟺〈時緬反、丘蚓也、一名蜜壇、波知乃古(○○○○)、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1115 蜂 説文云、蜂蠆〈峯帶二音、和名波知、〉螫人虫也、四聲字苑云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01604.gif 〈音范〉蜂子也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1115 新撰字鏡、蠭同訓、原書䖵部云、蠭、飛蟲螫人者、虫部云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01605.gif 毒、蟲也、按玉篇云、蠭亦作蜂、又玉篇、廣韻、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01605.gif 皆作蠆、源君引並從今字、原書蠭蟇不連、注亦不同、此所引有誤、玉篇云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01604.gif 蜂也、廣韻同、禮記檀弓及内則注亦云、范、蜂也、未蜂子、不四聲字苑何據、按読文無http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01604.gif、依禮記注、則知古唯用范字也、

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1115 蜂蠆〈ハチ〉蠭〈正〉蜂〈通〉http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01606.gif 〈ハチ〉

〔日本釋名〕

〈中/蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1115 蜂(ハチ) はりさし也、しとちと通ず、

〔東雅〕

〈二十/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1115 蜂ハチ 素戔烏神、大己貴神を蜂室に寢しめられしといふ事は、前に見えし如く、又饒 速日尊を天降されし初に、高木神の授け給ひし神寶の中に、蜂比禮といふものあり、〈○中略〉並に義不詳、〈ハチとは、羽蟲の螫す者を云ひしと見えたり、チといふ義は、前の註にも見えし如く、ツツといふ語急にして轉ぜしなり、饒速日尊の神寶の外にも、須世理媛命、蛇蜈蚣蜂の比禮をもて、大己貴神に與へられしといふ事も見えたるなり、其比禮といふ者は、是等の蟲を除ふものと見えけり、神寶といふ者の中に、此者あるを以つても、上古の俗、その毒を畏れし事、ツヽといひ、チといふが如きこれを畏れて神とするの謂なる事をも思ひはかるべきなり、戒愼をいひて、ツヽシムといふもツヽスムの義也などいふなり、ユスルの義不詳、ミカとは、其房の大きなること、甕の如くなるをやいひぬらん、さらばユスルといふも、其房の泔器(ユスルツキ)の如くなりと云ひしも知るべからず、ミチとは、蜜の字の音をもて呼びしなり、サソリとは細腰の義と見えたり、サソといひ、サヽといふは、轉語なる也、りといひしは詞助なるベし、蝶蠃は日本紀にスガルと讀みたり、其義同じかるべし、古語に細き事をいひて、サとも、サヽとも、スガルとも云ひけり、本朝式に須賀流横刀(スガルタチ)といふも、則今の細太刀といふものなり、壒囊抄に、サソリとは、サヽリ蜂なり、常陸國には、カソリといふなり、彼國に賀蘇理岡といふ岡あり、むかし此國にサヽリ蜂多きによりて、此名ありといふと見えたり、其サヽリといふも、サソリといふ語の轗也、その語竟に轉じて、カソリともいひしなるべし、

〔和漢三才圖會〕

〈五十二/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1116 蜂〈音峯〉 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01604.gif 〈音范〉 和名波知〈○中略〉
按蜂人不觸則不螫、如行於巢下、則追來螫、〈蜂羽傳油則不敢動

蜂種類

〔大和本草〕

〈十四/蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1116 蜂 種類多シ、ツネノ蜂ノ外、土蜂(○○)アリ、蜜蜂(○○)アハ大黃蜂(○○○)アリ、クマハチト云、又ヤマハチト云、人ヲサス大ナリ、又ジガバチ(○○○○)アリ、

土蜂

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1116 土蜂 爾雅集注云、土蜂〈和名由須留波知(○○○○○)〉大蜂之在地中房者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1116 今俗呼阿奈婆知(○○○○)、或都知婆知(○○○○)、谷川氏曰、其所居之穴、形如泔器之狀、泔器訓由須流豆岐、故名之、按陳藏器本草云、穴居者名土蜂、最大、螫人至死、又云、土蜂赤黑色、蘇敬曰、土蜂、土中爲窠、大如烏蜂、不人、郝懿行曰、土蜂今呼戅蜂、大者斃牛、其房層纍大於十斗饗器

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1116 土蜂スルハチ(○○○○)

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1116 土蜂 ユスルバナ(○○○○○)〈和名鈔〉 ツチバチ(○○○○) ツチスガリ(○○○○○)〈南部〉 アナバチ(○○○○)〈○中略〉土中ニ巢ヲ作ルハチヲ云、數品アリ、地上ニ小穴ヲ穿テ出入ス、土中ニ深ク入リテ、大ナル巢ヲ作ル、其蜂形大黃蜂(ヤマバチ)ノ如シ、人、土ヲ堀テ其巢ヲ破リ、蜜ヲ採ル、是土蜜ナリ、熊野ノ方言ニツト云、〈○下略〉

木蜂

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1117 木蜂 爾雅集注云、木蜂〈和名美加波知(○○○○)〉似土蜂、而小在樹上房者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1117 按釋日本紀引私記曰、今俗大蜂爲美加忽知、其説與源君同、

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1117 木蜂ミカハチ

蜜蜂

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1117 蜜蜂〈蜚零附〉 方言注云、蜜蜂〈和名美知波知(○○○○)、蜜見飮食部、〉黑蜂、在竹木孔、又有室者也、本草云、蜜蜂子、一名蜚零、〈今案蜚者古飛字也、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1117 方言卷十一云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01606.gif 其大而蜜、謂之壼螽、注云、今黑http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01606.gif 穿竹木孔亦有蜜者、或呼笛師、此恐有誤、按陶氏云、石蜜卽崖蜜也、其蜂黑色似䖟、又木蜜呼爲食蜜、懸樹枝之又樹空及人家養作之、又有土蜜、於土中之、李時珍曰、蜜蜂有三種、一種、在林木或土穴中房爲野蜂、一種、人家以器收養者、爲家蜂、並小而微黃、一種、在山巖高峻處房、卽石蜜也、其蜂黑色似牛䖟、依之方言注、黑蜂卽石蜜蜂、而云竹木上レ孔、則非石蜜蜂、陳藏器餘有留師蜜、云、蜂如小指大正黑色、嚙爲窠蜜、如稠糖、方言留師、竹蜂也、今方言注作笛師、蓋此蜂穿竹如笛孔、故有此名、作留師誤也、李時珍又曰、今人家一種黑蜂大如指頭、能穿竹木而居、腹中有蜜、正是方言注所言者、千金翼方、證類本草上品有蜂子、不一名、別有大黃蜂子、又有土蜂子一名蜚零、並在蜂子條下、故本草和名云、蜂子、大黃蜂子、土蜂子一名蜚零、源君以大黃蜂子及土蜂子之一名蜚零、並爲蜂子一名誤也、按陶隱居曰、直云蜂子、卽應是蜜蜂子也、黃蜂則人家屋上者、及http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01607.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01608.gif 蜂也、新撰字鏡、蟺訓波知乃古、按史記正義、漢書注、文選注並云、蜚古飛字、此注蓋本于是等書

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1117 蜜蜂〈ミチハチ〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1117 蜜蜂 ミチバチ(○○○○)〈和名鈔〉 ミツバチ(○○○○) ヘボ(○○)〈信州○中略〉
蜜蜂ハ䖟ニ似テ狹小、黃蜂(ヤマバチ)ノ形ニシテ小ナリ長サ四五勞微黃色、常ニ人ヲサヽズ、コレニ觸ル時ハサス、〈○中略〉凡ソ蜜蜂、春ノ末、分レ飛テ、一處ニ簇リ、鞠ノ如クナリテ、人家ノ簷、或ハ木ノ枝ニ下垂 シタルヲ、箱或ハ酒樽ノ内ニ蜜ヲヌリ、コノ蜂ヲ箒ニテ掃ヒ落シ入置ケバ、直ニコノ中ニ巢ヲカケ、蜜ヲ釀ス、コノ箱ハタジノ形ニシテ、前ニヲトシ蓋ノ戸アリ、屎ヲ採リ去リ、或ハ巢ヲ採ル時ニ、コノ戸ヲ開ク、常ハ閉テ下ヲ微シ開ク、或ハ小穴ヲ數多ク鑽スルモ佳シ、筑前ニテハ、稻草(ワラ)ニテ、アミガサノ形ノ物ヲ作リ、内ノ上ノ處ニ酒ヲ塗リ、蜂ノ多ク簇リヲル枝ノ上ニ蓋ヒ置キ卞ヨリ竹葉ニテ超フトキハ、皆其中ニ入ル、一蜂入ル時ハ、衆蜂尋デ皆入ル、コレヲ採リ下シテ仰ギ置、其上ニ箱ヲ蓋ヒ、帕ニテ裹ミ、一夜ヲケバ、皆箱中ニノボリ入ルナリ、

〔大和本草〕

〈十四/蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1118 蜂蜜(○○) 本草ヲ考ルニ石蜜(○○)アリ、木蜜(○○)アリ、士蜜(○○)アリ、人家ニ養フ家蜜(○○)アリ、スベテ四種也、日本ニモ亦此四種アリ、石蜜ハ高山岩石ノ問ニ作之、其蜂、常ノ蜜蜂ニ異リ、黑色ニシテ似蝱(アブ)、日本ニモ處々有之、木蜜ハ陶弘景曰、樹枝ニカケテ巢ヲ作ル、日本ニモ有之、人家ニ養フモ本是ヲ取來ル、又大木ノ空虚ノ内ニ房ヲ作リ、南方ヨリ小穴ヲ開テ出入ス、穴大ナレバ、熊蜂入テ、蜜蜂ヲ喰殺シ蜜ヲ吸取ル、山ニアル木蜜ハ木ノ空虚ノ内ニ房ヲ作ル者多シ、枝ニアルハ稀也、土蜜ハ山ノ崖ナドカハキタル土中ニ房ヲ作ル、是土蜜ハ日本ニモ稀有之、人家ニ養フハ諸州處々ニ多シ、木蜜、土蜜、人家ニ養フ者、此三種ハ同蜂ナリ、常ノ蜂ニ似テ小也、色微黃ナリ、常ニハ人ヲ不螫、人サハレバサス、伊勢、紀州ノ熊野、尾張、土佐、其外諸國ヨリ出ヅ、土佐ヨリ出ルヲ好品トス、何ノ國ヨリ出テモ眞蜜ヲ爲好、蜂房ノ内、處々ニ自シタヽリタマルヲトリ用ユ、是ヲ眞蜜トス、生蜜ナリ、上品トス、藥ニ可用、蜂房ヲ煎ジ棗シテ蜜トス、是ハ下品ナリ、藥ニ不用、煮熟セザル生蜜ヲ用ヒ、我家ニテ煉熟スベシ、〈○中略〉蜜ヲ煉ル法(○○○○○)、先陶品ニ蜜ヲ布ニテコシテ入、其陶器ヲ鍋ニ沸湯ヲワカシテ入重湯ニテ湯煎シ、浮沫ヲ箆(ヘラ)ニテスクヒ去リ、蜜ヲ少水ニ滴テヽ、珠ヲナシテ不散ヲ爲度、壼ニ納貯フベシ、〈○中略〉 蜜蜂ノ蜜ヲ作ルハ、春ノ末ヨリ秋ノ末マデ、出テ花ヲ含ミ、花ヲ翅ト足ノ間ニ挾ミ、或花ノ汁ヲ含ミ來リ、房中ニヌリ付テ、釀テ蜜トナス、酒ヲ釀スガ如シ、凡蜜蜂ハ甚風寒ヲ畏ル、冬 ノ初ヨリ不出、房中ニ蟄居ス、其間ハ曾テ釀シテ貯置タル蜜ヲ粮トシ食フ、蜜ハ蜂ノ粮也、故ニ蜜ヲ取ルニ、粮ヲ殘シテ取盡サズ、取盡セバウへ死ス、〈○中略〉 蜂房(○○)ハ蜂毎年改作ル、家ニ養フハ蜂房ヲワリテ、房中ニ白タマレル蜜ヲトル、是上品也、可藥、然レドモ難多得、故ニ蜂房ヲワリテ、三分一ハ殘シテ爲粮、三分二ヲ取テ、大器ノ上ニ竹ヲワタシナラべ、其上ニワリ取タル蜂房ヲ置テ、天日ニ曝セバ、蜜煖氣ニトケテ、器中ニ滴リヲツルヲ取ル、是中品ナリ、蜂房ヲ釜ニ入テ、煮テ蠟ヲ取、其アトヲ煎ジツメテ蜜トス、是下品ナリ、不藥、故ニ生蜜ヲ上品トシ、熟蜜ヲ下品トス、 蜜蠟(○○)ハ蜜ヲ煎ジテ、面ニ浮ブ査(カス)ナリ、黃蠟ト云、

〔家蜂蓄養記〕

〈自序〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1119 夫蜜蜂若、靈蟲也、〈○中略〉我日東國、處々出名産、歷世而彌多、物皆以其物、有僞物鮮矣、特未之、其唯蜂蜜乎、願多眞物、而無僞物、雅與伺志言焉、夫南方温煖、而有家蜂、北方陰寒、而有土蜂、若有能養一レ之、而得其宜、蓋土蜜亦得家蜜乎、又未嘗有蜜蜂之所、若有能移一レ之、而得其情、蓋西北亦得東南乎、而眞物已多、僞物自廢、是人々所望、奚翅刀圭家、夫雖中夏多一レ産而物至其少矣、小人爲議張、動有眞者、先達惡非、是以盡明辨、其於蜜、亦復詳也、由是謂之、僞多眞少乎、又博物君子、有能言蜜、而違其實、是唯因耳聞之、而目未一レ之乎、乃知蜜蜂之少矣、今玆寬政辛亥之季夏、偶過目黑先生、談及于蜜蜂、不余孤陋、來需之、於是乎、以治療之暇、避暑之間、敢妄撰述、名曰家蜂蓄養記、序以爲贈 、是嘗聞先人、及余所見也、極知多遺漏、請君子補焉、
寬政三年辛亥秋七月書于東都龜島旅宅 久世敦行撰

〔家蜂蓄養記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1119 蜜蜂有君王
古人稱蜜蜂有一レ王、今人亦謂然、余始聞而疑之、後見而信之、夫稱王者、其爲形也、似蝱蟲長、而有緼色、比之其諸臣、最爲長大、其爲氣也、温厚和平、天姿拔群、是豈與諸同孔而生者乎、是故王所生之孔、比之其諸孔、大且深矣、諸所生之孔、列在房之横、王所生之孔、特在房之端、而直向于下土、君臨民之象乎、異哉 此宮也、蓋以爲其初諸知王將一レ起而造作乎、將有受命者而經營乎、抑王與氓並作乎、是未知也、余見儲宮、未王子、故闕如也、夫王之在宮、幽隱深遠、群聚衞護、見之難矣、唯分敷之秋蒙塵于外、見之易矣、故始聞而疑之、後見而信一レ之、今玆稱儲宮者、假謂王子之所一レ在、實房下之大孔也、見此之術、矢于次篇
儲宮之術
小子嘗過庭、大人謂余曰、汝見儲宮乎、曰未也、曰吾敎汝、勿輕卒如宋人之揠一レ禾、勿暴爾如馮婦之攖一レ虎、汝定汝心意、而後左右、攘臂及肩、左維持右臂以壓襟、莫使之撥、而後執器之蓋、其心如玉璧大圭、踧踖如也、如勝、而後以手入宮中、其意如公門、鞠躬如也、如一レ容、上愼㫋哉、敢勿訓、詩不云也、莫http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01609.gif、自求辛螫、予其懲而毖彼後患、是我善彼、彼亦善我、雖毒尾、無敢觸一レ讐、豈如虎穴之難乎、是亦如拔田穉之易矣、乃就房之端、徐々動指頭、使諸倚左右、而後可以莅視、果有大孔向一レ下、所謂儲宮是也、夫要一レ此孔之有無者、前知當年其分不分、與分多寡也、若見孔一勣知分有一レ一、若見二則知分有一レ二、若三亦爾、而分許多、至于四、至于五、凡分寡可也、分多不可也、不分四五年、或六七年、或八九年、猶尚可也、何則群者、彌群彌盛、今嫌分許多、本末共涸也、傳所謂大都不國之一、是分而可也、如都城過百雉之類、是巢之害也、王元之云、小人貪其利、恐其分、刺其子、不仁之甚矣、實有斯乎、可謂狡智也、然大知蜂哉、可以見一レ分、凡視此儲宮者不察而知分矣、豫營藏蓄之器、與筑壇之地、是可也、小子謹受敎、逡巡而退、
藏蓄之器製
蜂不一レ器方圓、任意而可製作、方者有便、今玆謂之、圓者以之可準知也、木厚四分許、長尺七八寸、或至二尺、底板長於三方、可四五寸、名謂之舌、爲此舌者、蜂有便出入、且爲遊息、幅尺二三寸、爲蓋於前、如今書櫃之蓋、爲溝於上、或不之、唯釘而可也、不溝於下、有之反不便也、因之於蓋之下、兩端之内外、釘于其底板、其釘之者、爲使其蓋不一レ于内外也、且爲烈風之備也、又爲空道也、蓋之下端、當舌之所、尺二 三寸間、於一寸間、爲二空、廣二分有奇、逐寸及尺、不廣大、僅可蜂、若製失宜、階之爲禍、大者有數害、一曰紅娘子、夜而入之、雖蜂、多嘬其蜜、二曰蠨蛸、亦夜而來、直食其蜂、三曰山蜂、或稱獅子蜂、取名於猛威也、彼終日翺翔、蜂懼殊甚矣、於器之空際、出入遊息者、有見之、恐懼戰慄、狼狽藏隱、未竄者、獅子奔突、取之齧之、或攫搏去、又少焉翔回、直下驅之、而或不得、遂入空内、群蜂振翼、聲聞于外、此時、開蓋見之、一獅子與群蜂、頡頏獮掎、鎭壓重積、忽韜獅子之形、群蜂爲一團丸、右旋左轉、如http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01532.gif、終墮于外、旣而彼斃、此亦解圍、有直歸巢中、有傍養傷痍、有毀敗内者、有死尸外者、其形態之狀不卑言矣、此之役也、諸毀傷者、不多、而死斃者、及數十頭、是其所得僅一、而所失實多矣、是此之禍、一緣空也、故曰不廣大、僅可蜂、又蝱蟲好食蜂、然在于器外、不于器内、凡製器之所專要、在蓋之機關也、
壇之高卑
壇、高三尺五六寸、縱横隨器之長短、位置據土之高卑、宜權執一レ中、不一概拘、夫秋水氾溢、卑濕之地、宜高作一レ之、其高者、可則可矣、過猶及、蓄養掃除、或有不便、其卑者、若尺、蟾蜍有之、夜中屢吸蜂、此害不少矣、又或作棚、欲置器、長短高下、當其宜、若其新分者、莫俄比舊器、一有誤入一レ之、彼此相戰鬪、互多致毀敗、若有已、而欲比置一レ之、爲漸近一レ之、莫俄近一レ之、漸者何也、謂其馴居之有一レ日也、俄者何也、詣其馴居之無一レ日也、凡欲易居處、宜夜中盍簪、以紙塞其空道、而後爲易之、明日雖噪於舊處、無復歸者也、
蜂器之位置
蜂器之位置、宜東南面、好陽和温煖也、不西北面、嫌陰冷沍寒也、宜擇置一レ之、若夫居處、有廣狹通塞、適不適之異、何以謂之、適則其出者、如矢之直疾、其入者如懸星之斜落、是因廣通也、不適則其頡者、如鳶之升一レ天、其頏者如燕之反行、是因狹塞也、若有諸不適、恐不安處、又蜂嫌爨烟、勿薫近一レ巢、宜常避一レ之、恐 出亡矣、又陜隘之處、欲比置一レ器者、宜設色蓋面、而以爲分別、則彼易見而無相誤、先人嘗於蓋面、畫方圓、使彼熟視、而後比置之、無相誤者、是嘗所試、擧以言之、凡茨器以茅、或瓦藁竹木、亦當其宜、冬則茅藁、覆而温之、或以垣之、使風寒、春煖則除之、秋冷則爲之、
彼此爲戰鬪
若夫王子、羽翼旣成、分定而一出者、義在再入乎、其新分者、有誤入舊器、則相聚攻之、不死不措也、此復私讐者乎、將耻衡行者乎、蓋是執事之臣、而行王命者也、不然有罪乎、可見法嚴性烈也、其新分者、君義臣行、救其急難、勇敢猛憤、矯々振翼、疊々鳴羽、彌出彌多、彼此戰鬪、移時猶未止、而其敗死者、不擧數也、此之戰也、新分之敗死、三而減一者、猶且生育也、而減ニ者、豈能生育乎、余嘗見此鬪、謂先人曰、今以孟烏張蘇之辨力、豈能解之罷之乎、〈○中略〉大人曰、吾能罷之、語不云也、〈○中略〉卽令兩器之空道、斷來者之通路、少焉移新分之器、而後察兩憤之止、乃各發前之塞、時見諸悦出、似憤怨、於是乎、得其餘、小子怡悦、
蜂王爲分敷
夫蜂之分者、昉暮春、迄于仲夏、其分之前、諸出巢翔噪、爲將分之狀、而亦有屢止、或有直分、於陰雨而不分、至快晴而分敷、又毎日、至于未刻、則諸出巢翔噪、俗謂之八時噪、少出而不多、翔噪而不亂、卑飛而不高、近回而不遠、所謂應潮上下、是也、偶當分之時、亂噪有分、然勢異于分、夫王之分也、諸高飛者、一、丈五六尺、或二丈許、四方四隅、在六七間、東飛西還、南翔北去、往復甚疾、不其形、如飛針、如引絲、薨々有聲、營々不絶、可小半時而分漸定、或有斯、而希不分、亦不遠而分、或明日而分、或隔日而分、凡其飛高者、其往亦遠、其飛卑者、其止亦卑、卑者敷近、高者去遠、又或有遠去、而終不處、是故欲使其高者卑、其遠者近、卽以水及砂、高投其郷所、高者自卑、遠者自近、夫將分之時、視諸亂噪、初似其止所、後多郷子行在所、王之所止、諸亦從止、是以視者、占其止所、其所好敷、大樹凸凹、甍標檐端、多於屈曲、或敷如 、扇、或圖如罌、夫欲之器者、先見其敷所、而以索縛器、後以爲懸之備、乃察王之所一レ在、視其盡盍簪、而後可之、其納之術、袒裼臨之、於其敷所、動左右指頭、徐々入蜂中、臨半離之機、一旦投納之、彼雖大亂噪、我莫以懼一レ之、多無毒而已、或以箒拂納之、是亦可以爲也、然如手爲之乎、王得器、則雖亂外者多、而群聚内者少矣、皆入以從王也、王不入、則雖亂外者、而群聚内者多矣、皆出以歸王也、是故納之者、要王之所在、旣得之器、暫懸之其處、以遲其盍簪、從而以蓋之、後移之置處、卽可以養一レ之、凡養育以蜜酒飴、飴合酒水、上火解之、使之淡薄、濃者粘足、蜂殊嫌之、又寒冷淫雨、宜以養一レ之、
黑蜂無毒尾
黑蜂之生、在三四月、黑蜂多生、則王亦、生、而後有分、黑蜂其形、大於諸、小於王、不于諸、不于王、其色黑矣、故名曰黑蜂、無毒且不才、蜂中之饕餐者、唯素餐已矣、是故諸憎之、追出巢、聚害之、得其生也、纔一二旬後、出皆死、王元之曰、王之無毒、似君德也、彼之無毒、亦似王乎、是不啻無一レ益、反費食衆http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01610.gif 、宜哉其害也、古人不言、非知焉、蓋以爲無用乎、夫無用者、不言也、余亦何贅乎、
蜂器有生蟲
器内有生蟲、而蜂散亡、或曰蟲生自屎、或曰爲巢以蠟、屑落生蟲、二物不之、蓋鬱蒸而生也、若此二物、積而歷旬、則生白色細蟲、故器内六七日、而可以掃除之、此蟲易長、若歷三旬、則小者重分、大者過寸、稍隨其長、穿穴于巢、引縷于房、纒絲如蜘、縱横如織、蜂殊嫌之、蟲之所在、忌而避之、從復侵之、終知免、則捨巢去、凡出亡者、必有以也、爲蓄養者、宜以察一レ之、世上不實、而妄説吉凶、遂使人傳一レ虗、是無他矣、蓄而鹵莽之、則彼亦鹵莽而報予也、幸有其行、可以納之新器、莫復置之舊所、欲其安處、無仁愛、勿多爲一レ利、恐不繁蓄、〈○中略〉
巢中之蜜
夫取蜜之時、在九十月、其取之者、取之于一方、將取之方、以小鐵槌、徐扣器外、五六十許、要勿使之驚、扣 其左則蜂移右、扣其右則蜂移左、而見其移、若猶未也、復當之、及手得一レ意、持刀可巢、不使之傷、不使之怒、我莫之、彼無敢毒、夫取蜜之數、可三分之一、或曰可半、當巢之大小、因蜜之有無、或曰、毎年不蜜、則蜂惰而不勤、不知此言、實然也否、蓋其乾々、彼之性也、如勤與一レ惰、豈因蜜之有無乎、若不此言、無天物乎、今以此切巢、置之別器内、傾則蜜流垂、俗謂之垂蜜、是爲之最上、味純厚而色淸黃也、又殘孔内、未悉出者、盛袋絞之、悉以取之、比之垂者、味淡薄而色濁赤也、其淡薄者、以孔内之子、共絞相混也、色濁赤者、以巢房之穢、共漏相雜也、故品不垂者、然是皆蜜也、非他者、是以貯之歷年、
附言
蜜蠟之法
鍋内入巢、以水煮之、得其沸和、移之別器、待冷取之、蠟浮于上、水沈于下、任器班形、而蠟與水相接 之際、穢物悉聚、在蠟之下、宜去之、猶未淸潔、再以煮之、煮法如前、猶未可者、及三四五而後得焉、
蜜之僻説王充論衡云、蜜爲蜂液、此言實然矣哉、我郷之童子、有好食蜂者、余亦嘗味之、是皆蜜也、嘆曰、宜哉董之嗜也、卽知蜜者、爲蜂之液也、夫蜂之成蜜、從上吐之乎、從下出之乎、不分別、玆視其巢、帥以口爲之、由是謂之、蠟從上吐之、蜜從下出之、彰々乎明也、人謂蜜爲蜂溲、是不亦宜乎、或云、蜂著花液、入置巢中、諸釀之、則化成蜜、此言雖理、然蜜者蜜也、其蜜而成之、是未知者也、何以謂 之、有彼著花液巢中、未見其化而爲蜜者也、果釀成蜜乎、將以爲食乎、是未知者也、陶弘景曰、蜂須人小便以釀諸花、乃得和熟、狀似飴須一レ蘖、李時珍曰、蜂采無毒之花、釀以大便而成蜜、所謂臭腐出神奇也、此二説、一以爲人屎、一以爲人溲、何齟齬如斯也、蓋二子聞蜂之便、互誤爲人之便也、然其言不類、其乖戻矣、余嘗見蜂在諸花、未嘗見一レ不潔者也、又嘗見蜂後趾著花液、未嘗見人之溺也、是可以見牽强爲一レ辭、工則工矣、然失其實、故曰因耳聞之、而目未之也、

〔日本山海名産圖會〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1125 蜂蜜(○○)〈一名、百花精、百花蕊、〉 凡蜜を釀する所、諸國皆有、中にも紀州熊野を第一とす、藝州是に亞ぐ、其外勢州、尾州、土州、石州、筑前、伊豫、丹波、丹後、出雲などに、昔より出せり、又舶來の蜜あり、下品なり、是は砂糖又白砂糖にて製す、是を試るに、和産の物は煎ずれば、蜂おのづから聚り、舶來の物は聚ることなく、此をもつて知る、 蜜は夏月蜂䏷(ハチノス)の中に貯へて、己が冬籠りの食物とせんがためなり、一種人家に自然に䏷を結び、其中に貯はふ物を山蜜といふ、又大樹の洞中に、䏷を結び貯はふを、木蜜といふ、以上熊野にては、山蜜といひて上品とす、又巖石間中に貯はふ物を、石蜜と云、又家に養て採る蜜は、毎年䏷を採り去る故に、氣味薄く、是を家蜜といふ、䏷を炎天に乾かし、下に器を承けて解け流るゝ物を、たれ蜜といひて、上品なり、漢名生蜜、〈一法、槽に入れて火を以て焚きて取なり、但し火氣の文武毫厘の間を候こと大事あり、〉又䏷を取り潰し、蜂の子ともに硏(モリ)、水を入れ煎じて絞り採を、絞りといふ、〈漢名熟蜜〉凡蜜に定る色なし、皆方角の花の性によりて、數色に變ず、
家蜂(○○○) 家に畜はんと欲すれば、先桶にても箱にても作り、其中に酒砂糖水などを沃ぎ、蓋に孔を多くあけて、大樹の洞中に結びし窠の傍に置ば、蜂おのづから、其中へ移るを持歸りて、蓋を更ためて、簷端或は牖下に懸置なり、此箱桶の大きさに規矩あり、されども諸州等しからず、先九州邊一家の法を聞くに、箱なれば九寸四方、竪二尺九寸にして、是を竪に掛るなり、〈○中略〉戸は上下二枚にして、下の戸の上に一歩八厘、横四寸計のhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01611.gif 穴を開きて、蜂の出入の口とす、若一二厘も廣く開れば、山蜂抔http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01611.gif より窺て、大きに蜜蜂を擾亂す、又大王の出にも此穴よりして、凡小き物也、〈○中略〉造䏷(スヲヅクル/○○) 先箱の内の上より、半月のごとき物を造りはじめ、繼で下一はひ兩脇共に盈しむ、其厚さ凡壹寸八歩、或二寸許、兩面より六角の孔數多を開き、拓榴の膜に似て、孔深八九歩、是のごとき物を、幾重も製りて、其䏷と䏷との間、纔人の指の通る程宛のhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01611.gif あり、蜂其http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01611.gif に入には下より潜(クヾル)なり、〈○中略〉其孔には子を生み、又蜜を貯へ、又子の食物の花を貯ふ、又子成育して飛で出入するに及べ ば、其跡の孔へも亦蜜を貯はふ、凡蜜はじめは甚淡しき露なり、吐積んで日を經れば、甘芳日毎に進こと、實に人の酒を釀するに等し、旣に露孔に盈る時は、其表を閉て、一滴一氣を洩すことなし、蜂の數多ければ、氣味も厚し、蜂は小なり、大きさ五歩許、マルハチに似て、黃に黑色を帶、多群て、花を採る物は、巢を造ず、巢を造ものは、花を採らず、時々入替りて、其役をあらたむ、夫が中に蜂王(ダイワウ)といひて大きなる蜂一ツあり、其王の居所は黑蜂の巢の下に一臺をかまふ、是を臺(ウテナ)といふ、その王の子は、世々繼で王となりて、元より花を採ることなく、毎日群蜂輪値に、花を採りて王に供す、是一桶に一个(ヒトツ)のみなるに、子を産むこと、雌雄ある物に同じ、道理においては希異なり、群蜂是に從侍すること、實に玉體に向がごとし、又黑蜂十許ありて、是を細工人と呼ぶ、孔口を守りて、衆蜂の出入を撿め、若花を持たずして、孔に入らんとするものあれば、其懈怠を責て、敢て入ることを許さず、若再三に怠る者は、遂に螫殺して、軍令を行なふに異ならず、凡家にあるも野にあるも、儀におゐては同じ、 頒脾(スワカレ/○○) 大王の子成育に至れば、飛で孔を出るに、群蜂半從がふて、恰も天子の行幸のごとく、擁衞甚嚴重なり、其飛行こと、大抵五間より十間の程にして、木の枝に取附ば、其脊其腹に重り留りて、枝より垂たるごとく、一團に凝集り、大王其中に核のごとく裹まる、畜人是を逐て、袋を群蜂の下に承けて、羽箒を以て、枝の下を掃がごとくに切落せば、一團のまゝにて、其袋中へおつる、其音至て重きがごとし、○註略是を用意の箱に移し畜なふを、䏷(ス)わかれといふて、人の分家するに等し、若其一團の袋へ落るに、早く飛放る者ありて、大王の從行に洩れて、其至る所を知らず、又原の巢へ飛歸る時は、衆蜂敢て孔に入ることを不許、爭ひ起て、是を螫殺し、其不忠を正すに似たり、〈○中略〉彼王一群ごとの中に、必一ツあり、巢中に王三つある時は、群飛も三にわかる、〈○下略〉

〔栗氏蟲譜〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1126 江都官家ニ、蜂堂(○○)ヲ庭上ニ設テ、蜜ヲ採テ戯トシ玉フコトアリ、堂内部局ヲ構へ、其上ノ奧所、蜂王ノ座アリ、群臣次第ニ列座シテ、自然ニ官職アルガ如シ、下ニ聚花ノ會場アリ、大窠ヲ 綴ル、是密ノ在處ナリ、堂ノ下邊ニ、小竅並べ開テ、五門ニ比ス、其竅外ニ五員ノ蜂卒並坐シテ、各門ヲ守護ス、來蜂ノ貢花ヲhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00023.gif ミ、群蜂早晨ニ堂ヲ出デ、午時ニ花蕊、及精液ヲ含ミ來テ、衙門ニ入ルトキ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00023.gif 蜂是ヲ撿察シテ入シム、若シ花ヲ含マズシブ入來モノアレバ、嚴シク逐返シテ入レズ、爭拒ク者アレバ、群蜂コレヲ刺殺ス、或ハ風雨、堂ヲ侵シ、又雜人ノ毎ニ堂ヲ窺フコトアリ、或ハ糞穢ノ氣、堂ニ迫リ、或ハ堂衙破壞スルコトアリ、大黃蜂又ハ蟻蛛等ノ堂中ニ聚ルコトアリ新ニ喪ヲ受タル人、月信婦人等ノ近キ視ガ如キ、群蜂悉去テ歸ラズ、若新ニ堂衙ヲ築テ、淸潔ナル時ハ、卽チ歸リ至ルコトアリ、或ハ事ニフレテ、滿堂ノ群蜂盡死スルコトモ、マヽアルコトナリ、故ニ堂ヲ設ノ家愼戒ベシ、夫々ノ勤行ノ役アルコト、右ノ圖〈○圓略〉ヲ以テ察スベキモノナリ、

〔秘傳花鏡〕

〈六/養昆蟲法〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1127 蜜蜂
蜜蜂身短而脚長、尾有鋒螫、衆蜂内有一蜂王、形獨大、且不人、毎日群蜂兩朝、名曰蜂衙、頗有君臣之義、無王則衆蜂皆死、若有二王、其一必分、分出時、老蜂王反遜位而出、衆蜂均挈其半、略無多寡、從王出者、不復回舊房、出則群蜂擁護其王、不人見、當花時、一半守房、一半挨次出採、如掠花少者受嚴罰、但採各花鬚、倶用雙足、挾二花珠、惟採蘭花、則必背負一珠、以此頂獻其王、又有蜂將、不善往外採一レ花、但能釀蜜、至七八月間、蜂將盡死、若不死、則蜜皆被蜂將食去、衆蜂必饑、故俗諺云、將蜂活過冬、蜂族必皆空、亦一異也、〈○下略〉

〔延喜式〕

〈十五/内藏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1127 蜜蘇(○○)〈諸國所進〉
蜜〈甲萎國一升、相模國一升、信濃國二升、能登國一升五合、越中國一升五合、備中國一升、備後國二升、〉

〔延喜式〕

〈三十七/典藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1127 諸國進年料雜藥
攝津國蜂房(○○)七兩、伊勢國蜂房一斤十二兩、

〔類聚雜要抄〕

〈四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1127 煎蜜法(○○○)〈以蜜入器、埋火居之、常撿器、頭適寒温微々、煎銅石鍋同用、蓋ニハ綿ヲハル、塵入レマジ、堅ク覆之、〉

〔日本書紀〕

〈二十四/皇極〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1128 二年十一月、是歲百濟太子餘豐、以蜜蜂(○○/ミチバチ)房(ス)四枚、放養於三輪山、而終不蕃息

〔續日本紀〕

〈十三/聖武〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1128 天平十一年十二月戊辰、渤海使已珍蒙等拜朝、上其王啓幷方物、〈○中略〉蜜三http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01612.gif (○○○)進上、

〔續日本紀〕

〈二十二/淳仁〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1128 天平寶字四年閏四月丁亥、仁正皇太后遣使於五大寺、毎寺施雜藥二櫃、蜜缶一口(○○○○)、以皇太后寢膳乖一レ和也、

〔三代實錄〕

〈二十一/淸和〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1128 貞觀十四年五月十八日丁亥、勅遣左近衞中將從四位下兼行備中權守源朝臣舒、向鴻臚舘、撿領楊成規等所賚渤海國王啓及信物(クユツモノ)、〈○中略〉蜜五斛(○○○)、

〔山槐記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1128 治承二年十一月十二日辛未、定成朝臣獻御乳付雜具、〈○中略〉蜜、兼日自藏人所召蜜御園、所進非眞蜜(○○)、仍定成朝臣賜藏人所一レ儲、差副寮官一人於仕人、遣御園所、取進眞蜜也、

大黃蜂/胡蜂

〔和漢三才圖會〕

〈五十二/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1128 大黃蜂(やまはち) 也末波知(○○○○)
本綱大黃蜂、其狀比蜜蜂更大、其色黃、在人家屋上、及太木間房、大者如巨鐘、其房數百層、土人采時、著草衣身以捍其毒螫、復以烟火熏去蜂母、乃敢攀緣崖木其蒂、一房蜂兒五六斗至一石、捕狀如蠶蛹瑩白者、然房中蜂兒三芬之一翅足已成、則不用、
胡蜂(○○) 壼蜂http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01613.gif 數蜂玄瓠蜂、 大黃蜂之黑色者也、凡物黑者謂胡故也、乃是大黃蜂一類二種也、
按黑蜂、遍身正黑、唯背一處、自頸至腰正黃、身肥圓、四翅六脚、其脚末曲如鐵把、而尻出刺、能螫人、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1128 大黃蜂(○○○) マルバチ(○○○○) ヤマバチ(○○○○) オホバチ(○○○○) カメバチ(○○○○)南部 ハンメ ウバチ(○○○○○○)〈能州〉 イモバチ(○○○○)〈和州〉 ホウヲウ(○○○○)〈筑前○中略〉コノ蜂形狀黃蝱(ハナアブ)ノ如クニシテ大ナリ、首黑ク短鬚アリ、背尻黃赤色ニシテ腰黑シ、春夏諸花ニ多ク集リ黃䖟ト混ジ易シ、一種形最大ニシテ、色黑ク腰ノ色黃赤ナル者ハ、胡蜂(○○)ナリ、俗名クマバチ(○○○○)、 スズメバチ(○○○○○) オホカミバチ(○○○○○○)〈仙臺〉アンドンバチ(○○○○○○)〈越前○下略〉

赤翅蜂

〔和漢三才圖會〕

〈五十二/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1128 赤翅蜂(あかはち) 本綱、赤翅蜂、狀如土蜂、翅赤頭黑、大如螃蟹、穿土爲窠食蜘蛛、蜘蛛遙知蜂來、皆狼狽藏隱、蜂以預知其處、食之無遺、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1129 赤翅蜂 アカキハネノハチ(○○○○○○○○)アカバチニ似テ、翅黃赤色、端微黑色ヲ帶テ、身深黑色、背首足倶ニ黃赤色ナル蜂、間庭中ニ飛來ルコトアリ、赤翅蜂ノ類ナリ、眞物ハ詳ナラズ、又簷下ニ窠ヲ爲スアカバチハ、此ト異ナリ、ソノ翅黃赤色、身ハ細腰ニシテ、黑ト黃赤ト斑ヲナス、南部ニテ、スガリ(○○○)ト呼ブ、漢名木蜂、〈秘傳花鏡〉穉蜂、〈典籍便覽〉細腰http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01606.gif 、〈埤雅〉

獨脚蜂

〔和漢三才圖會〕

〈五十二/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1129 赤翅蜂〈○中略〉
獨脚蜂 在嶺南小蜂黑色、一足連樹根、不去、不動搖

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1129 獨脚蜂 詳ナラズ 一名樹蜂〈通雅〉
俗ニ馬尾蜂(○○○)ト呼ブ者、木中ニ生ズ、木ヲワリテコレヲ得、出テ飛コト能ハズ、又自ラ出ルモアレドモ、唯蠕動スルコト數日ニシテ死ス、其形アカバチニ似テ小ク、翅ニ少ク黑キ處アリ、尾ニ一ツノ毛アリ、椶櫚ノ毛ノ如ク、長サ四五寸、色黑シ、死スル時ハ分レテ三毛トナル、是獨脚蜂ニ近シテ、別ナル者アリ、

竹蜂

〔和漢三才圖會〕

〈五十二/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1129 竹蜂(たけはち) 留師
本綱、竹蜂、于野竹上窠、紺色、大如雞子、長寸許、有蔕、窠有蜜、甘倍常蜜
一種黑蜂(○○)、大如指頭、能穴竹木而居、腹中有蜜、小兒撲殺取食、亦此類也、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1129 竹蜂 詳ナラズ
竹ヲ嚼テ穴ヲ穿チ、其中ニ窠ヲ作ルハチヲ云、故ニ、新校正ニ、アナバチ(○○○○)ト訓ズレドモ詳ナラズ、時珍ノ説ニ、一種黑蜂、大如指頭、能穴竹木而居ト云ハ、寺ノ堂梁柱、或ハ門柱等ニ孔ヲ穿チ入テ巢ヲ 爲ス蜂アリ、形大黃蜂ノ如シ、

獨蜂/蛒蜂

〔和漢三才圖會〕

〈五十二/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1130 赤翅蜂〈○中略〉
獨蜂 作窠於木、其窠大如鵞卵、皮厚蒼黃色、只有一箇蜂、人馬被螫立亡也、蛒蜂 在褰鼻蛇穴内、其毒倍常、中人手腦卽圮裂、非方藥可一レ療、惟禁術可制、

蠮螉

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1130 蛘〈餘章反、平、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01614.gif 蛘、波知、又佐曾利(○○○)、〉 螫〈舒亦反、佐須又佐曾利、〉 虰蛏〈佐曾利〉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1130 蠮螉 爾雅注云、蠮螉〈悦翁二音、和名佐曾里、〉似蜂而細腰者也、兼名苑云、一名蜾蠃、〈果裸二音〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1130 新撰字鏡、蛘、螫、蟻、虰、蛏、皆訓佐曾利、古謂之須賀流(○○○)、雄略紀、有人名蜾蠃、本注此云須我屢、万葉集云、腰細之須輕娘子飛翔爲輕如來腰細丹、皆是也、今俗呼似我蜂(○○○)、常陸謂之加曾利、蓋佐曾利之轉譌也、所引蓋舊注也、爾雅果蠃蒲盧、郭注云、卽細腰蠭也、俗呼爲蠮螉、〈○中略〉太平御覽引陸機云、螟蛉者桑上小靑蟲也、似歩屈、其色靑而細小、或有草葉上蜾蠃、土蜂也、似蜂而小腰取桑蟲之、於木空中筆筒中、七日而化爲其子、里語曰、祝云、象我象我也、法言學行篇、作我類我、久則肖一レ之、是陸機所本、〈○中略〉按本草和名云、蠮螉、一名土蜂、一名蜾蠃、一名細腰、一名蛞螻、一名莆蘆、已上三名出兼名苑、據證類本草、一名土蜂本條文、一名蜾蠃、陶注文、一名細腰以下出兼名苑、蓋兼名苑亦有蜾蠃之名、而以本草已載其名、輔仁不引及一レ之、源君此不本草、依兼名苑此名歟、抑以本草和名土蜂蜾蠃、並失載出典、源君誤爲五名皆出兼名苑、亦未知也、

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1130 蠮螉〈サソリ〉

〔下學集〕

〈上/氣形〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1130 似我(ジガ)〈毛詩、螟蛉有子、蜾蠃負之、朝野僉美云、蜂啣他虫、置於窠中、呪曰似我似我、卽成蜂也、故名曰似我也、〉 蒲盧(アナハチ/○○)〈細腰蜂也〉

〔倭訓栞〕

〈前編十二/須〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1130 すがる〈○中略〉 日本紀に蜾http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01615.gif を訓ぜり、細腰蜂也、よて萬葉集に、腰細のすがる娘(ヲトメ)子とよめり、俗語にすんがりといふ是也、古今集に、すがる鳴秋の萩原とよめるは此虫也、後人鹿となしてよむもの多し、謬なりといへり、倭名鈔にはさそりと訓ぜり、さゝりばちともいふ、常陸 にかそりと云、出羽にては、凡て蜂をすがるといふ、仙臺にてすがりといへり、

〔日本書紀〕

〈十四/雄略〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1131 六年三月丁亥、爰命蜾蠃〈蜾蠃人名也、此云須我屢(○○○)、〉聚國内蚕、於是蜾蠃誤聚嬰見獻天皇、〈○下略〉

〔和漢三才圖會〕

〈五十二/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1131 蠮螉〈謁翁〉 土蜂 細腰蜂 蜾蠃 蒲蘆 俗云似我 又云腰細蜂〈○中略〉按蠮螉無雌、取桑虫負來入于窠養子、祝曰似我似我、則長爲蜂、故名似我蜂之説甚誤、而和漢共然焉、〈本草亦其論辨、多取要旨于上也、〉又倭名抄以蠮螉佐曾里者非也(○○○○○○○○○○)、〈佐曾里(○○○○○○)卽蠍也〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1131 蠮螉 スガル〈日本紀〉 サソリ〈和名鈔〉 ジガバチ カソリ(○○○)〈常州〉 ヂスガリ(○○○○)〈信州〉 コシボソ(○○○○)〈畿内、同名アリ、〉 ツチスガリ(○○○○○)〈仙臺○中略〉
蠮螉數種アリ、一ハ長サ八分許、濶サ一分許、腰甚細ク、絲ノ如シ、全身深黑色、夏月人家ニ飛來リ、葦薄或ハ筆管中ニ入テ巢ヲ作ル、初泥ヲ摙テ、底ノ隔ヲナシ、小喜母(サガリグモ)、蠅虎等(ハイトリグモ)數箇ヲ螫シ傷メテ、其中ニ入レ、其蛛ニ小子ヲ粘ス、〈○中略〉外ヲ泥ニテ塗リフサグ、其蛛ヲ入レ泥ヲ入ルヽゴトニ、管内ニテ鳴ク聲、似我似我ト云ニ似タリ、〈○中略〉數日ノ後、ソノ子大ニナリ、蜂トナリ、管ヲ穿チ出飛去ル、蛛ハ皆食ヒ盡シテ遺ラズ、

〔天野政德類語〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1131 按、古今集離別の部に、すがるなく秋の萩原朝立て旅行人をいつとかまたん、と此歌を引て、古人此すがるを鹿の事也と云説有、其後の歌には、多くすがるを鹿の事となして、詠る歌有、皆誤にて隨がたし、すがるは蜂なる事、いちじるし、さそりといふ蜂也、

〔壒囊抄〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1131 似我々々事
蜂ニ似タル虫ヲ、ジガ〳〵ト云、何ナル名ゾ、似我似我ハ、只蜂ノ類也、本名ハ螟蛉(メイレイ)也、〈○中略〉朝野僉載曰ク、蜂銜他虫置於窠中、呪シテ曰似我々々、卽成蜂云云、故ニ名テ曰似我也、〈○中略〉サレバ大師〈○弘法〉ノ御遺吿ニモ、從赤子時、得人之子、敎ヘテ爲弟子、如螟蛉以他子己子ト侍リ、

〔萬葉集〕

〈九/雜歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1131上總末珠名娘子一首幷短歌 水長鳥(シナガトリ)、安房爾繼有(アハニツギタル)、梓弓(アヅサユミ)、末乃珠名者(スエノタマナハ)、胸別之(ムナワケノ)、廣吾妹(ヒロキワギモ)、腰細之(コシホソノ/○○○)、須輕(スカル/○○)娘子之(ヲトメノ)、其姿之(ソノカホノ)、端正爾(ウツクシケサニ)、〈○下略〉

蜂事蹟

〔古事記〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1132 大神〈○素盞鳴尊〉出見而、吿此者謂之葦原色許男、〈○中略〉入呉公與蜂室(/○○)、且授呉公蜂之比禮、敎先故平出之、

〔藤原家傳〕

〈下/武智麻呂〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1132 藤原左大臣諱武智麻呂、〈○中略〉按行至坂田郡〈○近江〉寓目山川曰、吾欲伊福山頂瞻望、土人曰、入此山疾風雷雨、雲霧晦瞑、群蜂飛螫、〈○中略〉公曰、吾從少至今、不敢輕慢鬼神、鬼神若有知者、豈其害我、若无知者、安能害人、卽滲洗淸齊、率五六人、披蒙籠而登、將頂之間、忽有兩蜂飛來欲公、揚袂而掃、隨手退歸、

〔三代實錄〕

〈二十六/淸和〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1132 貞觀十六年八月十三日己巳、蝗虫或化蝶飛去、或爲小蜂(○○)刺殺

〔扶桑略記〕

〈二十五/朱雀〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1132 天慶三年一月廿四日、世相傳云、於東大寺羂索院執金剛神前、七大寺諸僧集會、祈請將門調伏之由、然間數萬大蜂(○○)遍滿堂内、迅風俄來、吹折執金剛神之髻糸、數万之蜂、相隨髻糸、向東穿雲飛去、時人皆謂、將門誅害之瑞也、〈○又見帝王編年記

〔古事談〕

〈三/僧行〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1132 金鐘行者靈驗殊勝、天下皆歸依之云々、可大佛殿沙汰之時、自大佛殿正面、東ハ金鐘行者之所領也、自正面西ハ辛國行者ノ領也、爰辛國申云、歸依僧ノ道、可驗德、何强被依金鐘一人哉、早被合兩人、可其効驗、隨勝劣德ヲモ被崇、伽藍ヲモ可立云々、依申有一レ謂、召合二人ノ行者、已被驗德、各誦呪祈之間、自辛國行者方、數万ノ大蜂出來、擬著金鐘ノ時、自金鐘方、大蜂飛來、件ノ蜂ヲ拂間、蜂皆退散了、彼大蜂至辛國之許、滅行者、故辛國忽結惡心寺敵、度々此寺之佛法ヲ魔滅セントシケリ、此事雖慥所見、古老所申傳也、但寺ノ繪圖ニ氣比明神ノ巽ノ角ニ有辛國堂由注之云々、

〔今昔物語〕

〈二十九〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1132鈴鹿山蜂螫殺盜人語第卅六
今昔、京ニ水銀商スル者有ケリ、年來役ト商ケレバ、大キニ富テ、財多クシテ家豐カ也ケリ、伊勢ノ 國ニ年來通ヒ行ケルニ、馬百餘疋ニ、諸ノ絹糸綿米ナドヲ負セテ、常ニ下リ上リ行ケルニ、只小キ小童部ヲ以テ、馬ヲ追セテナム有ケル、〈○中略〉而ル間、何也ケル盜人ニカ有ケム、八十餘人、心ヲ同クシテ、鈴香ノ山ニ、テ、國々ノ行來ノ人ノ物ヲ奪ヒ、公ケ私ノ財ヲ取テ、皆其人ヲ殺シテ、年月ヲ送ケル、〈○中略〉此ノ水銀商、伊勢ノ國ヨリ、馬百餘疋ニ諸ノ財ヲ負セテ、前々ノ樣ニ小童部ヲ以テ追セテ、女共ナドヲ具シテ、食物ナドセサセテ上ケル程ニ、此ノ八十餘人ノ盜人、極キ白者カナ、此ノ物共、皆奪取ラムト思テ、彼ノ山ノ中ニシテ、前後ニ有テ、中ニ立挾メテ恐シケレバ、小童部ハ皆逃テ去ニケリ、物負セタル馬共、皆追取ツ、女共ヲバ皆著タル衣共ヲ剝取テ、追弃テケリ、水銀商ハ〈○中略〉辛クシテ、逃テ高キ岳ニ打上ニケリ、〈○中略〉虚空ヲ打見上ツヽ、昔ヲ高クシテ、何ラ何ラ遲シ遲シト云立テリケルニ、半時計有テ、大キサ三寸計ナル蜂ノ怖シ氣ナル、空ヨリ出來テ、フント云テ、傍ナル高キ木ノ枝ニ居ヌ、水銀商此レヲ見テ、彌ヨ念ジ入テ、遲シ遲シト云フ程ニ、虚空ニ赤キ雲二丈計ニテ、長サ遙ニテ俄ニ見ユ、道行ク人モ、何ナル雲ニカ有ラムト見ケルニ、此ノ盜人共ハ、取タル物共拈ケル程ニ、此ノ雲漸ク下テ、其盜人ノ有ル谷ニ入ヌ、此ノ木ニ居タリツル蜂モ立テ、其方樣ニ行ヌ、早ウ此ノ雲ト見ツルハ、多ノ蜂ノ群テ來ルガ、見ユル也ケリ、然テ若干ノ蜂、盜人毎ニ皆付テ、皆螫殺シテケリ、一人ニ一二百ノ蜂ノ付タラムダニ、何ナラム者カハ堪ムトスル、其レニ一人ニ二三石ノ蜂ノ付タラムニハ、少々ヲコソ打殺シケレドモ、皆被螫殺ニケリ、其ノ後、蜂皆飛去ニケレバ、雲モ晴ヌト見エ、ケリ、然テ水銀商ハ、其ノ谷ニ行テ、盜人ソ年來取貯タル物共多ク、弓胡錄馬鞍著物ナドニ至マデ、皆取テ京ニ返ニケリ、然レバ彌ヨ富增テナム有ケル、此ノ水銀商ハ家ニ酒ヲ造リ置テ、他ノコトニモ不仕ズシテ、役ト蜂ニ呑セテナム、此ク祭ケル、然レバ彼レガ物ヲバ、盜人モ不取ザリケルヲ、案内モ不知ザリケル盗人ノ、取テ此ク被螫殺ル也ケリ、然レバ蜂ソラ物ノ恩ハ知ケリ、心有ラム人ハ、人ノ恩ヲ蒙リナバ、必ズ可酬キ也、亦大キナラム蜂ノ見エムニ、專ニ不 打殺ズ、此ク諸ノ蜂ヲ具シ將來テ、必ズ怨ヲ報ズル也、

〔十訓抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1134 むかし中納言和田丸と聞る人おはしけり、其末に余古大夫といふ兵者有けり、〈○中略〉初瀨山のおくに籠りてけり、敵あさり求れども、深く用意して、笠置といふ山寺の岩屋の有ける中にかくれて、二三日住けるほどに、岩のもとにて、蛛と、いふもの、いをかけたりけるに、大なる蜂のかゝりたりけるに、いをくりかけて、まきころさんとしける時に、愍をおこして、とりてはなちて、蜂にいひけるやう、いける物は命に過たる物なし、前世の戒がすくなくて、畜生と生れたれども、心あるは命を惜む事、人にかはらず、恩を重くする事、同じかるべし、我敵にせめられて、からきめをみる、身をつみて、汝が命をたすけむ、必ずおもひしれとて、放ちやりつ、其夜の夢に、かきの水干袴きたる男のきていふやう、晝の仰悉く耳にとまりて侍る、御志實に、忝し、我つたなき身を受たりといへ共、いかでかその恩を報じ奉らざらん、願は我申さむまゝに構へ給へ、君の敵亡さんといふ、誰人のかくはのたまふぞといへば、晝の蛛の網にからまれつる蜂は、おのれに侍ると云、あやしながら、いかにしてか敵をばうつべき、我にしたがひたりしもの、十が九は亡び失の城もなし、かゝりもなし、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00773.gif じて立あふべき方もなしといへば、などかくはのたまふ、殘りたるものも侍らん、二三十人ばかりかまへてかたらひ集めたまへ、此うしろの山に、蜂の巢四五千ばかりあり、是もみな我に同じ物なり、語集てカをくはへ奉らんに、などか打得給はざらん、但其軍したまはん日は、なよせたまひそ、本城のほどに假屋をつくりて、なりひさご壼瓶子かやうの物多く置たまへ、やう〳〵まかりつとはんずれば、そこにかくれいらんためなり、しかしながら、其日吉(ヨカ)らんと、ちぎつていぬと思ふ程に夢さめぬ、うける事とは思ねど、いみじく哀に覺えて、夜にかくれ、故郷へ出て、此彼かくれをる者共を語て云、我生るとてかひなし、最後に一矢射てしなばやと思ふ、弓箭の道はさこそあれ、男共など云ければ、誠に可然事とて、五十人ばかり出にけり、假屋造て、あ りし夢のまゝにしつらひをれば、是は何のためぞと、あやしみければ、さるべきゆへありとて、めでたくしつらひをきつ、其朝にほの〴〵と明はなるゝほどに、山のおくのかたより、大なる蜂一二百二三百うちむれて、いくら共なく入集るさま、いとけむづかしく見けり、日さし出るほどに、敵の許へ是に侍り、申べき事ありといへりければ、敵悦びて、尋失ひて安からずおぼえつるに、いみじき幸なりとて、三百騎ばかり打出たり、いきほひをくらぶるに、物の數にもあらねば、侮りていつしかかけくむほどに、蜂ども假屋より雲霞のごとくわき出、敵の人ごとに、二三十、四五十取つかぬはなし、目鼻ともなく、はたらく所ごとにさし損じけるほどに、物も覺えず、打ころせども、五六こそしぬれ、いかにも〳〵する力なくて、弓箭の行衞もしらず、まづ貌をふさぎさはぎけるほどに、思ふさまに馳まはりて、敵三百餘騎、時の程にたやすくうち殺してければ、恐れなく本のあとに還居にけり、死たる蜂少々ありければ、笠置のうしろの山に埋て、堂をたてなどして、年ごとに蜂の忌日とて、恩を報じけり、

〔古事談〕

〈一/王道后宮〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1135 京極大相國〈○藤原宗輔〉被蜂之事、世以稱無益事、而五月比、於鳥羽殿、蜂栖俄落テ、御前多飛散ケレバ、人々モサヽレジトテ、ニゲサワギケルニ、相國御前ニ枇杷ノ有ケルヲ一總トリテ、コトヅメニテ、カハヲムキテ、サシアグラレタハケレバ、蜂アルカギリツキテ、チラザリケレバ、乍付召共人、ヤハラ捨ケリ、院モ賢ク宗輔ガ候テト被仰テ、令感御ケリ、

〔十訓抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1135 京極太政大臣宗輔公は、蜂をいくら共なく、飼給ひて、何丸か丸と名を付てよびたまひければ、召にしたがひて、格勤者などを勘當し給ひけるには、何丸某さしてことの給ければ、そのまゝにぞふるまひける、出仕の時は、車のうら、うへの物見にはらめきけるを、とまれとのたまひければ、とまりけり、世には蜂飼の大臣とぞ申ける、

〔赤染衞門集〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1135 ぎだりんにありしひじりの、たけの枝にはちのすくひたるをおこせて、釋迦佛のゝ 給なりとて、 我宿の汀に生るなよ竹のはちすとみゆるおりもありけり

蜂雜載

嬉遊笑覽十二禽蟲蜂が刺たら子をとらうといふは、もと蜂吹(○○)なり、源氏〈松風〉大井も宿もりが體をいふ處、はなゝど打あかめつゝ、はちふきいへば、若菜の下にも、はちぶくと有、抄に蜂の面近く飛時、恐れてうそぶきするやうに物いふなり、物を聞いれず、一向にいひそくるを、蜂拂(○○)といふに似たり、守武獨吟、辨慶や蜂のありともしらざらんうそをもふかずけなげなるころ、

〔新撰字〕

〈鏡虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1136 蛉蠕http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01616.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01617.gif 〈四字同蠅也、螟也、波戸(○○)、又桑虫、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1136 蠅〈䏣附〉 方言云、陳楚之間、謂之蠅、〈音膺、和名波閉(○○)、〉東齊之間、謂之羊、〈郭璞曰、蠅羊此轉語耳、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1136 説文、蠅、營々靑蠅、蟲之大腹者、从黽虫、李時珍曰、蠅夏出冬蟄、喜煖惡寒、蒼者聲雄壯、負金者聲淸括、靑者糞能敗物、巨者首如火麻者、茅根所化、蠅聲在鼻而足喜交、

〔下學集〕

〈上/氣形〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1136 蠅(ハイ)〈點黑白糞珠玉者、喩之讒言者也、〉

〔八雲御抄〕

〈三/下虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1136 蠅 さはへなす 五月のはへとかけり わろき物也

〔東雅〕

〈二十/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1136 蝿ハへ 日神天磐屋戸に籠り給ひし時、萬神の聲如狹蠅鳴といふ事、舊事紀に見えしを、古事記には、狹蠅那須としるし、又舊事紀には、天孫天降り給はむとし給ひしとき、此國に多に道速振荒振神ありて、又磐根木株、草之垣葉、猶能言語、夜は螢火の如くにして喧響、晝者如五月蠅(サバヘ)而沸騰としるされ、日本紀も舊事紀によられたり、ハへの義は不詳、〈(中略)凡そ蟲の名に、ハといふをもて呼ぶは、皆羽あるものなり、(中略)舊事古事日本紀等に見えし所に據れば、ハへとは其聲あるに因りて、云ひし所に似たり、〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1136 蠅 ハへ〈和名鈔〉 ハイ(○○)〈京○中略〉
蠅ハ皆三月土用ノ比ヨリ暖氣ヲ逐テ出、數種アリ、ソノ四五月ノ時、人家四邊ノ陽地ニ多ク集リ、相追ヒテ飛ビ翔ルモノハ、蒼蠅ナリ、俗名クロバイ(○○○○)、色蒼黑ニシテ、大サ四分許、ソノ聲高シ、故ニ典籍 便覽ニ蒼蠅善亂聲ト云、〈○中略〉ソノ夏秋ノ間、家中ニ多來リ、竈邊或ハ食物ニ集リ、農家ニ別シテ多キ者ハ、コバイ(○○○)〈筑前〉ト云フ、〈○中略〉三才圖會ニ、一種不靑不蒼、俗謂之麻蠅、夏大好集人體間、驅而復來、故俗謂人可憎者麻蠅ト云ヒ、正字通ニ、一種小者、集几案殽羞間、衆多爲擾、人恚之ト云フ、是ナリ、 ソノ秋中多出テ、飛翔聲聒シク、臭ヲ慕テ庖厨ニ集リ、必卵ヲ遺シ、蛆ヲ生ズルモノハ、俗ニシマバイ(○○○○)ト呼ブ、事物紺珠ニ、大麻蠅大於蒼蠅ト云フ是ナリ、〈○中略〉 ソノ線色或ハ靑色ニシテ、金光アリ、聲淸高ニシテ、必糞上ニ集ルモノハ靑蠅ナリ、大小數品アリ、俗名クソバイ(○○○○)、 キヌバイ(○○○○)〈備後〉キンバイ(○○○○)、時珍負金者、聲淸聒、靑覗石糞能敗物ト云、

〔肥前國風土記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1137 神埼郡 蒲田郷
同〈○景行〉天皇行幸之時、御宿此郷西御膳之時、蠅甚多鳴、其聲大囂、天皇勅云蠅聲甚囂、因曰囂郷、今謂蒲田郷訛也、

〔日本書紀〕

〈二十二/推古〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1137 三十五年五月、有蠅聚集、其凝累十丈之、浮虚、以越信濃坂、鳴音如雷、則東至上野國而自散、

〔日本書紀〕

〈二十六/齊明〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1137 六年十二月庚寅、科野國言、蠅羣向西飛踰巨坂、大十圍許、高至蒼天

〔明月記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1137 寬喜二年八月廿八日丁亥、心寂房來相逢語、去夜事、脚氣所爲歟、可疑近日蠅漸弱、而落入飮食、自然不腹中歟、是又坐痢極毒也、蠅入腹中、多頓死者

〔南方紀傳〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1137 北朝康曆元年六月、細川賴之阿波國隱居作詩云、
人生五十愧功、花木春過夏已中、滿室蒼蠅掃難盡、去尋禪榻淸風

〔運歩色葉集〕

〈葉〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1137 蠅參(ハイマイリ/○○)〈伊勢參附道者之尾、譬諸蠅附驥尾也、〉

〔日本書紀〕

〈一/神代〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1137皇孫天津彦火瓊々杵尊以爲葦原中國之主、然彼地多有螢火光神及蠅聲邪神(○○○○)

〔釋日本紀〕

〈八/述義〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1137 案、下一書文、如五月蠅而沸騰云云、五月蠅三字之訓、サハへ(○○○)ト讀之、今此蠅聲同點 也、言葦原中國惡神充滿、如五月之蠅、衆多之意也、

〔日本書紀〕

〈一/神代〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1138 一書曰、〈○中略〉素盞鳴尊、乃以天(/○)ノ蠅斫(ハエキリ/○○)之劒(/○○)、斬彼大蛇時、斬蛇尾而刃缺、

〔源平盛衰記〕

〈四十四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1138 神鏡神璽都入幷三種寶劒事
十握劒、〈○中略〉又ハ蠅斬(ハイキリ)ノ劒ト云、此劒利劒也、其刃ノ上ニ居ル蠅ノ、不自斬ト云事ナケレバ也、〈○又見釋日本組

〔枕草子〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1138 むしは
はへこそ、にくきものゝうちにいれつべけれ、あいぎやうなく、にくき物は、人々しふかきいつべき物のやうにあらねど、よろづの物に居、かほなどにぬれたるあしゝてゐたるなどよ、人の名につきたるは必かたし、

〔異本枕草子〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1138 にくきもの
はへの秋などおほくて、よろづの物にあしはぬれ、つめたくて、かほにもゐありく、いとむづかしうにくし、

〔小夜のねざめ〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1138 はいといふ虫のぬり物などには、こを白くしかけ、白き物には、はこをくろくしかけ侍る、

〔花月草紙〕

〈四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1138 とりもちをもて、はへといふ虫をおほくとりたるを、ふとけみきやうとて、目もおよばぬものをみるめがねのあれば、それもてみしに、そのもちにつきたるはへが、にげんとして、羽を動かすが、はてはその羽ももちにつきて、うごきえず、かうべうごかして苦しむもあり、又久しくつきしは、飢にのぞみてよはり死するけしきもあり、たゞに羽をならす音のみきゝしが、よくみれば、いとかなしきさまなりしとかたるを、さあらんよなど、人のこたへしを、みしときゝしとは、いとたがふものぞかし、みしごとくきゝ給はゞ、さあらんなどゝ計はいひ給はじ、まいて目の 及ばぬあたりのことは、猶心にてみ給へかしと、いひしものありけり、

〔關の秋風〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1139 蠅てふ虫は、またなくにくし、晝ねの夢妨ぐるは、怠りを諫むるともいふべければ、咎めむやうもなし、たゞ書なんど見、畫なんどかくころ、顏のあたりに二つ二つとまるを、おひやれば、しばしかなたへうつり、また飛來り飛去り、はては友多くつどひて鬪諍し、あるはえもいはぬふるまひいと狼藉也、

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1139 蛆〈子餘反、宍中蟲也、痛也、螂也、臭公也、螫也、止加介、〉 蜡〈旦鹿反、去、宇自(○○)、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1139 蠅〈○中略〉 聲類云、䏣(○)〈音且、又去聲、和名波閉乃古(○○○○)、〉蠅子也、説文云、蠅乳肉中也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1139 李時珍曰、蛆胎生、蛆入灰中、蛻化爲蠅、如http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01618.gif 之化一レ䖸也、

〔圓珠庵雜記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1139 虫の字、むしとも、うじともよめど、うじはきたなく、むぐめくをいひて、歌にはよまず、 新撰字鏡云、蜡宇自とあれど、蛆の字をよみきたれり、本草云、蛆蝿之子也、凡物敗臭則生云々、

〔和漢三才圖會〕

〈五十二/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1139 蛆〈音疽〉 蛆 䏣〈本字〉 和名波閉乃古、俗云宇之、〈○中略〉
按蛆字、本作䏣、蠅乳肉中故从肉、
素問類經云、蛆性喜暖畏寒、火運之年尤多也、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1139 蛆 ハエノコ〈和名鈔〉 ウジ〈○中略〉
諸蠅皆蛆ヲ生ズ、殊ニ大麻蠅多ク生ズ、夏秋ヲ時食物ニ集レバ、至小ノ卵ヲ遺シ著クルコト甚ダ數多シ、初其卵ハ動カズ、暫クシテ能行ク、其形一頭ハ細ク尖リ、一頭ハ齊シクシテ截タルガ如シ、長サ一二分、是ヲサシト云フ、書隱叢説ニ、蠁子化蠅ト云フ、是ナリ、數日ヲ經テ、形漸ク大ニナリ、變ジテ五六分ノ長サ、二三分ノ濶サニナリ、色白クジテ一條ノ細キ尾アリ、長サ一寸許、此蟲糞缸中ニ別シテ多シ、是糞中蛆ナリ、俗名カミサゲムシ、〈京〉 カミナガムシ〈筑前〉 ドブムシ〈豫州〉 ウナゴゼ ウナゴシ〈勢州松坂〉 ヲナゴシ〈同上山田〉 ウナガジ〈雲州〉 ヲナガジ〈同上〉 アナゴゼ〈筑後〉 ヲナ ガムシ〈和州〉 シリケノウジ〈石州〉 ウナグジ〈加州〉 ウナクジ ウナグシ〈共ニ同上〉 此ノ形ニナル時ハ、糞缸中ヨリ出上リ、板間或ハ壁隙ニ入リ、黑キ蛹トナリ、羽化シテ大麻蠅トナル、

〔古事記〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1140 爾伊邪那美命答白、悔哉不速來、吾者爲黃泉戸喫、然愛我那勢命〈那勢二字以音、下效此、〉入來坐之事恐故欲還、旦具與黃泉神相論、莫我、如此白而、還入其殿内之間、甚久難待、故刺左之御美豆良〈三字以音、下效此、〉湯津津聞櫛之男柱一箇取闕而、燭一火入見之時、宇士(○○)多加禮斗呂呂岐氐、〈此十字以音〉於頭者大雷居、〈○下略〉

〔古事記傳〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1140 宇士は、蛆字を訓來れり、本草てふ書に、〈李時珍云〉蛆蠅之子也、凡物敗臭則生之とあり、和名抄には、䏣を波閉乃古(ハヘノコ)とありて、宇士てふ訓はなし、䏣と蛆とは通ふ、字鏡には、蜡を宇自とあり、〈蜡の宇士なるべき由はいかゞしらず〉今も腐爛たる物に生る小虫を宇士とぞいふ、

狗蠅

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1140 狗蠅(○○) 兼名苑云、狗蠅、一名犬蠅、〈著於犬者也〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1140 按狗蠅又見齊東野語、李時珍曰、狗蠅生狗身上、狀如蠅、黃色能飛、堅皮利喙、噉咂狗血、冬月卽藏狗耳中者是也、今俗呼以奴婆倍(○○○○)也、

〔和漢三才圖會〕

〈五十二/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1140 狗蠅 以沼波閉〈○中略〉
接狗蠅、多著老狗頸濳行咂血、故難避、用煙草脂稈心、如輪而毎宜于狗頸

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七/卵生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1140 狗蠅 イヌバイ(○○○○)
狗身ニ集ル蠅ハ、夏秋尤多シ、蒼蠅ヨリ狹長ニシテ、背平ニシテ、黃赤色、人ニ著ク時ハ其害ヲナス、燈油ヲ咂シムル時ハ、堅クナリテ死ス、

守瓜

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1140 守瓜 爾雅注云、蠸一名守瓜、〈蠸音權、和名宇利波閉(○○○○)、〉食瓜葉者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1140 爾雅云、蠸輿父守瓜、郭注云、今瓜中黃甲小蟲、喜食瓜葉、故名守瓜、此所引蓋舊注也、説、文、蠸、蟲也、玉篇、蠸、食瓜蟲、列子天瑞篇蠸文、釋、瓜中黃甲蟲也、郝氏曰、此蟲黃色、小於螌蝥、 常在瓜葉上、食葉而不瓜、俗名看瓜老子(○○○○)者也、然則玉篇訓蠸爲食瓜蟲是、

〔和漢三才圖會〕

〈五十三/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1141 守瓜 蠸〈音權〉 䗣〈音含〉 和名宇利波閉、爪蠅也、〈○中略〉
按、䗣桑蟲、又瓜蟲、食瓜桑者也、蓋與蠸一類二種乎、其大如犬蠅而黃色、甲下有翅速飛、喜食瓜葉、以蟲眼鑑之、黑眼露與蠅不同(○○○○)、

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1141 耕種園圃 螢早瓜一段、〈○中略〉拂虫十二人、

〔古今著聞集〕

〈六/管絃歌舞〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1141http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00023.gif 物源賴能は、上古に耻ざる數寄の者也、玉手信近に順て、横笛を習けり、〈○中略〉或時は信近武田にありて、其むしをはらひければ、賴能も隨て朝より夕にいだる迄、もろ共にはらひけり、扨かへらんとする時、たま〳〵一曲を授けり、

蠁子

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1141 蠁子 蔣魴切韻云、蠁子、〈上音饗、和名佐之(○○)、〉酒醋上小飛虫也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1141 谷川氏曰、佐之當小虫之義、按書隱叢説、蠁子化蠅、然則上條所載䏣是也、今俗呼䏣爲佐之、又酒醋上小飛虫卽醯雞、今俗呼猩々(○○)者是也、莊子田子方篇、丘之於道也、其猶醯雞與、郭象注、醯雞者甕中之蠛蠓、釋文引司馬彪云、醯雞若酒上蠛蠓也、列子天瑞篇、醯雞生于酒、釋文云、醯雞蠛蠓也、新撰字鏡、蠛訓酒乃波戸、説文、蠁、知聲蟲也、非此義

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1141 蠛〈亡結反、蠓也、黃節食虫、又酒乃波戸(○○○○)、〉

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1141 蠓〈サカハヘ(○○○○)〉

〔壒囊抄〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1141 猩(シヤウ)々ノ事
酒ノ香ニ付ク小虫ヲ猩々ト云ハ、何ニ事ゾ、猩ハ非虫獸也、〈○中略〉彼ノ獸、酒ヲ好ム故ニ、小虫ノ酒ノ香ニ耽テ倚リ來ヲ以テ、推テ猩々ト云ナルベシ、

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1141 蝱 説文云、蝱〈莫衡反、與亡同、字亦作䖟、和名阿夫(○○)、〉齧人飛虫也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1141 雄略紀御歌云阿牟(○○)、卽是也、本草和名、木䖟、和名於保阿布(○○○○)、蜚䖟、古阿布(○○○)、〈○中略〉 蘇敬曰、䖟有數種、並能噉血、商淅已南江嶺間有大木䖟、長大綠色、殆如次蟬、咂牛馬、或至頓仆、蜚䖟狀如蜜蜂黃黑色、又一種小䖟名鹿䖟、大如蠅、齧牛馬亦猛、

〔醫心方〕

〈一/虫魚〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1142 木䖟〈和名於保安不又キアブ(○○○)〉

〔伊呂波字類抄〕

〈安/動物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1142 蝱〈アフ、齧人飛虫也、亦作䖟〉 蜩 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01619.gif 已上同

〔東雅〕

〈二十/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1142 蝱アブ 雄略天皇紀に、蝱の來りて、天皇を噬みまいらせしといふ事見えて、〈○中略〉古語にはアム(○○)といひしに、後轉じてアブといふとは見えたり、其義不詳、〈蝱類には蜚蝱、木蝱、鹿蝱、牛蝱等の類あり、アムとは、アは發語の詞、ムはミといふ語の轉ぜしにて、これも囓むを云ひしなるべし、後に轉じて、アブといふに及びては、前に註せしブトといふ物の名、此物に因リてや云ひぬらん、〉

〔倭訓栞〕

〈中編一/阿〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1142 あぶ 倭名鈔に虻を訓ぜり、万葉集に蜂音をふとよめば、虻のなく聲をもて名とせるなるべし、是蜚蝱也、木蝱は血を噉はずといへり、此を美濃路にては、ひの木あぶといふ、又めくらあぶあり、すゝきの根の玉よりわく、色黃也、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十八/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1142 木䖟(○○)〈○中略〉
集解ニ説トコロ一ナラズ、蘇恭ノ説ノ木䖟ハオホウシバイ(○○○○○○)、 サンネンアブ(○○○○○○)、〈北近江〉形、蒼蠅ノ如クニシテ、微綠色ヲ帶ビ、大サ蟪蛄ノ如シ、利觜アリ、牛馬ニ附テ、血ヲ咂ヒ售ヲナス、鹿䖟(○○)ハウシバイ、蒼蠅ノ形ニシテ、牛馬ノ血ヲ咂フ、一種血ヲ噉ハズ、只草木ノ花ニ集ル者ヲ、ハナアブ(○○○○)ト云、此ニモ大小數品アリ、大ナル者ハ、大黃蜂ノ形ニ似テ、鬚ナク、刺ナク、色黃ナリ、好デ花ヲ吸フ、コレヲヅンヅンバイ(○○○○○○)、〈薩州〉 ブイブイ(○○○○)〈備後〉ト云フ、〈○中略〉
蜚䖟(○○) コアブ(○○○)〈古名〉 アヲアブ(○○○○) アダムシ(○○○○)〈隅州○中略〉
秋日稀ニ來ル、形黃蝱(ハナアブ)ヨリ瘠小ク、蜜蜂ヨリ大ナリ、長サ六分許、綠頭ニシテ、利觜アリ、是古渡ノ者ニ異ナラズ、今ハ渡ラズ、皆細篤ニテ十箇横ニ貫ク、本草彙言ニ、嘴鋭而利若鋒鑽、然春半後秋半前出、暑月繁多、ト云ヘリ、藥舗ニ貨モノ、古ハ紀州熊野ヨリ京、師へ多ク出ス、今ハ丹波ゴハ少シ出ス、 皆松葉ニテ十箇横ニ貫ク、又細http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01620.gif ニテ貫クモアリ、皆鹿䖟或ハ木䖟ニシテ舶來ニ異ナリ、

〔古事記〕

〈下/雄略〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1143 天皇坐御臭床、爾http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01619.gif (アム/○○)咋御腕、〈○中略〉多古牟良爾(タコムラニ)、阿牟加岐都岐(アムカキツキ)、〈○下略〉

〔古事記傳〕

〈四十一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1143 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01619.gif (アム)は〈延佳本に蝱と作るは、さかしらに改めたるなり○中略〉虻なり、書紀には虻とも蝱とも書れたり、〈虻と蝱とは同字也、〉和名抄に、説文云、蝱齧人飛虫也、和名阿夫とあり、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01619.gif は字書には見えざれども、皇國にて、古に書ならへる字なるべし、然る類多し、〈師云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01621.gif と亡と同じければ、虻をhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01622.gif と書るかと云れたりhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01621.gif と亡と同じきこと未考へず、若さることあらば、此説の如くにてもあるべし、字書を考るに、罔网㘝など同じき由あれば、亡をも通はして書るにや、字鏡に、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01623.gif 奴可我、また虻䗈同奴可我とあれば、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01623.gif と虻と通ふよしあるにこそ、〉

〔續日本後紀〕

〈十五/仁明〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1143 承和十二年五月乙卯、山城國言、綴喜相樂兩郡境内、始去三月上旬、蝱虫殊多、身赤首黑、大如蜜蜂、好咬牛馬、咬處卽腫、相樂郡牛斃盡無餘、綴喜郡病死相尋、郡司百姓求之龜筮、就于佛神、隨分祓攘、曾無止息、移染之氣于今比行者、令其由、綴喜郡樺井社、及道路鬼更爲祟、卽遣使折謝之、兼賜牛疫方幷祭料物

〔今昔物語〕

〈十三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1143 筑前國僧蓮照身令諸蟲語第廿二
今昔、筑前ノ國ニ蓮照ト云僧有ケリ、〈○中略〉諸ノ虫ヲ哀テ、多ノ蚤虱ヲ集メテ、我ガ身ニ付テ飼フ、亦蚊虻ヲ不掃ハ、嶋蛭ノ食付クヲ不厭シテ、身ノ宍ヲ令食ム、而ルニ蓮照聖人、態ト虻蠇多カル山ニ入テ、我ガ肉血ヲ施サムト爲ルニ、裸ニシテ不動シテ、獨リ山ノ中ニ臥タリ、帥チ虻蠇多ク集リ來テ、身ニ付ク事无限シ、身ヲ喰ム間、痛ミ難堪シト云ヘドモ、此レヲ厭フ心无シ、而ル間、身ニ虻ノ子ヲ多ク生入レツ、〈○中略〉聖人ノ夢ニ、貴ク氣高キ僧來、〈○中略〉此ノ疵ヲ撫デ給フト見テ、夢覺ヌ、其後身ニ痛ム所无クシテ、疵忽ニ開テ、其中ヨリ百千ノ虻ノ子出デゝ飛テ散ヌ、

〔平家物語〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1143 文覺の荒行
そも〳〵この文覺と申は、〈○中略〉六月の日の草もゆるがず、てつたるに、あるかた山里のやぶの中へはいり、はだかになり、あをのけにふす、あぶぞ蚊ぞ、はちありなどいふどくちうどもが、身にひ しと取付て、さしくひなどしけれども、ちつとも身をもはたらかさず、七日まではおきあがらず、

〔宇治拾遺物語〕

〈七〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1144 䗈(あぶ/○)一ふめきて、かほのめぐりにあるを、うるさければ、本のえだをおりて、はらひすつれども、猶たゞおなじやうに、うるさくふめきければ、とらへてこしを、このわらすぢにてひきくゝりて、枝のさきにつけてもたりければ、腰をくゝられて、ほかへえいかで、ふめき飛まはりけるを、長谷にまいりける女車の、まへのすだれをうちかづきてゐたるちごの、いとうつくしげなるが、あの男のもちたる物はなにぞ、かれこひて、われにたべと、馬にのりてともにあるさぶらひにいひければ、その侍、その持たる物、若ぎみのめすにまいらせよといひければ、ほとけのたびたる物に候へど、かく仰事候へば、まいらせ候はんとて、とらせたりければ、このおとこいとあはれなる男なり、わかぎみのめすものを、やすくまいらせたる事といひて、大柑子をこれのどかはくらんたべとて、いとかうばしきみちのくに紙につゝみてとらせたりければ〈○下略、又見今昔物語雜談集、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1144 蚊 四聲字苑云、蚊〈音文、和名加、(○)〉小飛蟲、夏月夜噬人者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1144 説文、蟁、齧人飛蟲、又載蚊字云、俗蟁从虫从文、爾雅翼云、蚊者惡水中孑子所化、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01624.gif 人肌膚、其聲如雷、東方朔隱語、長喙細身、晝亡夜存、嗜肉惡煙、爲掌指所一レ捫、

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1144 蚊〈正文 力クチフト(○○○○)〉

〔下學集〕

〈上/氣形〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1144 蚊(カ)〈食人、夏夜飛虫也、又云豹脚(○○)、〉

〔增補下學集〕

〈上二/氣形〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1144 額白豹脚(ヒタイシロノヘウキヤク)〈取異名也〉

〔書言字考節用集〕

〈五/氣形〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1144 蚊(カ)〈暑蟲、白鳥、並同、爾雅翼、惡水中孑孑(ボウフリ)所化、〉 豹脚(ヤブカ/○○) 藪蚊(同/○○)〈俗字〉

〔日本釋名〕

〈中/蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1144 蚊(カ) かむ也、人のはだへをかむ虫也、むを略す、

〔東雅〕

〈二十/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1144 カとは囓也、カブレといひ、カユシといふが如きは、此物によりていひしと見えたり、豹脚は今俗に、ヤブカ(○○○)といふもの是也、

〔壒囊抄〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1145 丹鳥、白鳥ト云ハ何レノ鳥ゾ、
白鳥トハ蚊也、大戴禮小正曰、白鳥ハ蚊網也ト、俗ニ鵠(クヽヒ)ヲ白鳥ト云ハ、只其色ヲ指ス歟、未ダ其本説ヲ不見、

〔大和本草〕

〈十四/蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1145 蚊、子ヲ水中ニウムデ、孑孑蟲トナルト云ヘリ汚水ヨリ孑孑蟲ヲ生ジ、後化シテ蚊トナル、蚊ハ烟ヲキラフ、蚊ヲ去ルニ、ウナギノ乾タルヲタケバ化シテ水トナル、骨ヲタクモヨシ、又榧ノ木或楠木ノ屑ヲタクベシ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十八/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1145 蜚䖟〈○中略〉
蚊子 カヒ(○○)〈和名鈔〉 カ〈同上古歌○中略〉 蚊ハ夏月惡水中ヨリ生出シ、味辛シ、卽孑孑蟲ノ羽化スルモノナリ、晝ハ伏シ、夜ハ出テ人ヲ唖フ、色微白ナリ、又綠身ナル者アリ、又身ハ瘠テ、頭ニ絮ノ如キ者ヲ戴クアリ、顯微鏡ニテ見レバ、大ニシテ鳥羽ノ如シ、是雄ナリ、絮ナクシテ身肥タル者ハ雌ナリ、〈○中略〉 又草木多キ處、或ハ野邊ニハ、 ヤブガ多シ、〈○中略〉晝出夜伏シテ、常ノ蚊ニ反ス、〈○中略〉三才圖會ニ其生草中者吻尤利、而足有文彩、呉興號豹脚、蚊字所以從一レ文有文也ト云ヒ、彙苑詳註ニ、湖中多蚊、其中有豹脚者尤毒ト云フ、〈○下略〉

〔嬉遊笑覽〕

〈十二/禽蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1145 蚊、物類相感志、九月蚊子嘴生花、また代醉編に、古諺有云、霧滃而蟹螯枯、露下而蚊喙折、こゝにて八月あばれ蚊と云は、喙の折る前なり、花の如きもの出ては、人を刺ず、

〔枕草子〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1145 にくきもの
ねぶたしと思ひてふしたるに、蚊のほそごゑに名のりて、かほのもとにとびありく、はかぜさへ、みのほどにあるこそいとにくけれ、

〔枕草子〕

〈九〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1145 大藏卿〈○藤原正光〉ばかり、みゝとき人なし、誠に蚊の(/○○)睫(まつげ/○)のおつるほども、聞付賜ひつべくこそ有しか、

〔袋草紙〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1146 おとたてゝものはいはねど、ゆふぐれのはへはらひつるこゑはきこえつ、シノビテオコナヒケルニ、カノクヒケレバ、アフギシテ、ウチハラヒツヽ、ネブリケル夢ニ、僧ノ讀カケヽル歌ハ蠅也、詞ハ蚊、

〔異本世諺問答〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1146 問テ曰、ヲサナキワラハノ、コキノコトイフツキ侍ルハ、イカナル事ゾヤ、答コレハヲサナキモノ、、蚊ニクハレヌマジナヒ(○○○○○○○○○○)事ナリ、秋ノハジメニ、蜻蛉トイフ虫出キテハ、蚊ヲトリクフ物ナリ、コキノコトイフハ、木蓮子ナドヲ、トンボウカシ、ラニシテ、ハネヲツケタリ、コレヲイタニテツキアグレバ、ヲツル時ハ、トンボウカ、ヘリノヤウナリ、サテ蚊ヲオソレシメンタメニ、コギノコトテ、ツキ侍ルナリ、

〔陰德太平記〕

〈三十二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1146 播磨守盛重繼杉原家
丸山三九郎ト云者、佐田〈○彦四郎〉ガ宿所ニ忍入、犬ノ後足ニテ、頸ヲ搔、身振スル眞似ヲシケリ、佐田、犬ニハ非ジト思ヒ、蚊帳ノ中ヨリヤヲラ起出タルヲ、九山早ク心得テ、立歸リヌ、翌朝佐佃、丸山ニ向テ、昨夜犬ノ身振シツルハ、汝也ヤトトヘバ、左候ト、答フ、何ト、シテ吾出タルヲ知レゾヤ、サレバ宵ノ程ハ滋カリシ、蚊ノ聲モ、漸ク夜半ニナレバ、聲ノ靜マルナルニ、蚊ノ聲一ト頻リ雷鳴シツル故、扨ハ蚊帳ヨリ人ノ出タルナリト思、歸テ候ト答ケレバ、佐田、吾モ庭前ノ蟲ノ、更ル夜ニ、己ガ自恣打添テ滋カリシ、聲ノシヅマリシユへ、人來レリト知シナリ、

〔風俗文選〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1146蚊辭 嵐蘭〈○服部〉
大盜あに樞戸を穿むや、汝がふるまふを見るに、帳をたるゝ時は、其翩々の間をうかゞひ、垂おはつて、縱横の透間をたづね、すべて少破の所をもとめ、人のしりへにつきて、入らむとはかる、鳴呼跖蹻が徒にはあらじ、すべて汝がおこなふ處、猛き事もなく、たのしむ事もなし、あはれなるかたにも、やさしきかたにもあらず、たゞにくむべきものゝ甚しき也、蚊、蚊、帳中の蚊、汝をやくに 辭をもてす、汝此ことばをきく時は、我手に死すとも、みづからたれりとせよ

〔關の秋風〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1147 蚊てふ虫もにくさは劣るべくもあらず、夏の夕凉しさにはしゐして、笛のしやうかなんどいへば、はや其聲をしるべに飛來りて、己が名呼ぶ聲いとうるさし、蚊やりふすぶれど、煙薄きほどは、猶立さらず、人もたへかぬる頃、かれもしばし立行侍るを、其隙を得て、帳打たれつゝ、今宵は安くいぬべかめるとおもふ内、耳のあたりに聲して、枕、のあたりさらぬぞいとにくし、紙燭もて燒殺してんと思へば、起あがるほどのわびしければ、人呼出して燒盡せよといへば、しそく持ありくまゝに、ほかげの目にてりて、ねむさいとたへがたし、顏にとまりてさすを、はやり打にうてば、多くもらしつ、腹ふくるゝばかり吸せてうてば、血うち散りて穢らはし、たゞ手と足のうらさしたらんは、かゆさもそことさすべうもなく、ひたかきにかきてもあたらずいとくるし、晝の程も調度ならべおくかたはらより、忍びやかに出て害ふのみ、足に白き斑ありて、全體黑くたくまし、秋の末つかた、やゝ夜寒の頃、この虫も夏の程の年わかくわざ勝れたる心にて、ひたすら打とまりてさせども吸ども、おのが口はし、七つ八つにさけたれば、心ばかりにて、わざおとりするぞ愚なる、

〔堀川院御時百首和歌〕

〈夏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1147 蚊遣火 大江朝臣匡房卿
すゝたるゝ宿にふすぶる蚊遣火(○○○)の煙は遠になびけとぞおもふ

〔續千載和歌集〕

〈三夏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1147 蚊やり火を 前大納言爲家
蚊やり火の下やすからぬ煙こそあたりのやども猶くるしけれ

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01625.gif

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1147 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01625.gif 蔣魴切韻云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01625.gif 〈音魯、和名美加良(○○○)、〉井水中小虫也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1147 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01625.gif 字諸書無見、按説文、蜎肙也、肙小蟲也、爾雅、蜎、蠉、郭璞注、井中小蛣蠍赤蟲、一名孑孑、與此略同、疑http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01625.gif 是蜎字之訛、則知今俗呼棒振者也、王引之曰、蛣蠍猶詰屈也、此蟲行於水 中、則棹尾至首左右回、其狀曲而且圓蠉、謂之蜎者、猶釋器環謂之蜎、蜎之言http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01626.gif 也、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01626.gif 規也、規亦http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01626.gif 也、郝懿行曰、莊子秋水篇釋文、虷音寒、井中赤蟲也、一名蜎、引爾雅及郭注、是虷與蠉同、廣雅孑子蜎也孑子卽蛣蟩、又作http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01012.gif 、淮南子説林訓、孑孒爲蟁、高誘注、孑孒結http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01012.gif 、水上倒跂蟲按今此蟲多生止水、頭大而足小、尾末有岐、行則搖掉其尾、翻轉至頭、止則頭縣在下、尾浮水上、故謂之倒跂蟲、欲老則化爲蚊、尾生四足つ遂蛻於水而蚊出、玄應音義引通俗文云、蜎化爲蚊、是也、郭璞云、赤蟲、乃別一種、細如綫而赤者、長寸許、穴泥中、其行蜿蟺、欲老則頭上生毛、亦化蚊也、然與蜎非一物、郭注誤耳、

〔和漢三才圖會〕

〈五十三/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1148 孑孒(ぼっふりむし) 蛣蟩 蜎蠉 赤蟲 釘倒蟲 俗云棒振蟲(○○○)〈○中略〉
按孑孒溝泥中濕熱相感生小蟲、長二三分、灰黑色、微似科斗(カイルコ)形、而常一曲一直、如棒狀、故名之、經日羽化爲蚊、

〔皇都午睡〕

〈三編下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1148 夏中金魚の餌とする物を、江戸にてぼうふらと云ふ、京攝にいふ孑々にあらず、孑孑は俗にどんぶりと云ふ、壬生狂言の棒ふりに似たるゆゑ云か、いはゞ上方に桃鬼灯といへる虫に似たり、此もゝほうづきの名義解らず、桃の如く甘みありて、鬼灯の如く苦みありて云か、金魚ならねば味わかるまじ、只色の薄赤きゆゑ桃鬼灯と呼か、識者の考をまつ、

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1148 蚤〈子孝反、上、乃美(○○)、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1148 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01627.gif 説文云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01627.gif 〈音早、和名乃美、〉齧人跳虫也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1148引䖵部文、原書作http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01628.gif 、又載蚤字云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01628.gif 或从虫、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01627.gif 是蚤字之訛文、

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1148 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01629.gif 蚤〈倶ノミ〉

〔下學集〕

〈上/氣形〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1148 蚤(ノミ)〈食人夏跳虫也〉

〔和漢三才圖會〕

〈五十三/牝生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1148 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01628.gif (のみ)〈音早〉 蚤 䖣〈並同字〉 和名乃美〈○中略〉
按蚤赤色、肥身小首、六足能跳、夏月人家生於濕熱氣、而自在牝牡、其大者牝、腹有白子、成小蚤、牡者却 小、故謂婦大於夫、稱蚤之婦夫矣、凡http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01586.gif 螽、莎雞、蟋蟀、螽斯之類、亦雄小而不好鳴、雌大而善鳴也、如鶯、雲雀、山雀等小鳥、雄大而善囀、雌小而不能囀、上下各別也、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十七〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1149 卵生蟲狗蠅〈○中略〉
附錄、壁蝨、〈○中略〉
蚤ハノミ〈和名鈔〉一名虼蚤〈事物紺珠〉毛隱〈同上〉跳蚤〈訓蒙字會〉

〔枕草子〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1149 のみもいとにくし、衣のしたにをどりありきて、人をもだえるやうにするよ、

〔古事談〕

〈三/僧行〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1149 此聖人〈○僧性空〉ハ得六根淨之人也、或時害人來臨、對面間、懷中ニhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00519.gif (○)ヲトリテ捻ケリ、于時聖人云、イカニサハ、ノミヲバ捻殺ムトハシ給ゾトテ、大ニ悲歎給ケリ、客人耻テ退散云々、

〔源平盛衰記〕

〈十一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1149 大地震事
昔モ今モ怨靈ハ怖キ事也、蟇(ノミ)ノ息天ニ上ト云事モアルゾカシ、

〔梅園日記〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1149 蟇息
のみの息、天へあがるといふは、近き頃の諺にて、長頭丸ノ油かす以下の書に見えたり、されども蟇の字を、ノミとよまむ事あるまじく思ひしに、南浦文集に、我日本之諺有之、曰蝦蟇之嘆息、其氣昇天とあるに據れば、盛衰記の蟇は、ヒキとよむべし、

〔沙石集〕

〈七/下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1149嫉妬之心人事
有人ノ妻マオトコトネタリケル時、夫俄ニネヤノウチヘイラントス、イカニシテカ、ニガサント思テ、衣ノノミトル由ニテ、ニガサントテマオトコノハダカナルヲ、ムシロニカヒマヒテ、衣ノノミトラントテ、スビツヲトビ越ケルホドニ、スベラカシテ、スビツニドウトヲトシツ、男是ヲミテ、目見ノベ、口ヲホヒシテ、ノドカナル氣色ニテ、アライシノノミノ大サヤト云テ、ナニトモセザリケレバ、勢ハ大ナレドモ、小(コ)ノミノ如クモ、トバズシテ、ハダカニテハヒニゲニケリ、

蠛蠓

〔倭名類聚抄〕

〈十九/蟲豸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1150 蠛蠓 爾雅集注云、蠛蠓〈上亡結反、下亡孔反、漢語抄云、加豆乎無之(○○○○○)、日本紀私記云、蠛末久奈木(○○○○)、〉小虫亂飛也、磑則天風、舂則天雨、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈八/蟲名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1150 新撰字鏡、蚙訓加豆乎、當此、土佐俗今猶呼蠛蠓、爲加豆乎、蠛見允恭二年紀、本注云、蠛此云摩愚那岐、按末久奈岐、謂開闔目數搖也此虫細小亂飛、分人目數搖、故名末久奈岐、源氏明石、有末久奈伎都久良世天之語、謂開闔目數搖也、與鶺鴒訓邇波久奈布利之久奈同語、郭注云、小虫似蚋、喜亂飛然、續博物志引郭璞曰、蓬飛、磑則天風、舂則天雨、蓬蠓也、埤雅引郭璞云、蠓飛、磑則天風、舂則天雨、蓋郭氏音義之交、玄應音義引郭注云、小蟲似蜹、風舂雨磑者也、埤雅引郭氏圖讃云、風舂雨磑、則知玄應所引亦圖讃之文、而二説不同、太平御覽引字書亦云、蠛蠓小蟲、風舂雨磑者也、爾雅説文並云、蠓、蠛蠓也、然説文無蠛字、古蓋只作蔑蠓、蔑之言末也、微也、文選甘泉賦注引孫炎曰、此蟲小於蚊、埤雅引孫炎云、此蟲徵細羣飛、謝墉曰荀子蒙鳩、大戴禮作http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01630.gif、方言作蔑雀、蒙http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01630.gif 蔑一聲之轉、皆謂細也、

〔新撰字鏡〕

〈虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1150 蚙〈加豆乎〉

〔類聚名義抄〕

〈十/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1150 蠛蠓〈マクナキカツウムシ〉

〔藻鹽草〕

〈十二/虫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1150 蠛〈如蚊にて、空に多物也〉
まくなきつくるといへり

〔和漢三才圖會〕

〈五十三/化生蟲〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1150 蠛蠓 醯雞 和名加豆乎蟲 又云末久奈木〈○中略〉
按蠛蠓腐肉食、醯溝泥中多有之、形似蠅而小翅、身皆灰色背窄、其大不一分

〔日本書紀〕

〈十三/允恭〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1150 二年二凋己酉、立忍坂大中姫皇后、〈○中略〉初皇后隨母在家、獨遊苑中、時鬪雞國造、從〈○中略〉傍徑行之、〈○中略〉皇后則採一根蘭於乘馬者、因以問曰、何用求蘭耶、乘馬者對曰、行山撥蠛(○○)也、〈蠛此云摩愚那岐〉時皇后結之意裏乘馬者辭无一レ禮、卽謂曰首(オフト)也、余不忘矣、

〔源氏物語〕

〈十三/明石〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1151 まくなぎ(○○○○)つくらせて、さしおかせけり、

〔源語秘決〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1151 明石卷云 またゝきすることをば、まくなぎつくるといふ也、まくなぎといふ、ちいさき虫のとびちる時は、目たゝきをする故に、其むしのとぶ時のやうにまたゝきをする也、


Last-modified: 2019-11-13 (水) 10:46:44 (143d)