鷄/名稱

〔本草和名〕

〈十五/獸禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0677 丹雄雞、肶胵、〈仁諝音上毗下蚩、鳥胃、〉雞白蠹、〈陶景注云、白蠧不是何物、〉雞、一名翰音、一名時夜、一名囑夜、一名伺時之禽、一名反翅、一名金距、一名五指、一名金骹、〈已上八名、出兼名苑、〉一名戴丹、〈出養性要集〉和名爾波止利(○○○○)、

〔干祿字書〕

〈平聲〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0677 鷄雞〈竝正〉

〔類聚名義抄〕

〈九/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0677 鵈〈ニハトリ〉 鵊鷄〈俗籀雞正、ニハトリ、〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01320.gif 〈ニハトリ〉

〔同〕

〈九/隹〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0677 雞〈鷄並正、ニハトリ、〉

〔下學集〕

〈上/氣形〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0677 雞(ニハトリ)〈一名司晨、此鳥有五德云、日本云木綿付鳥(ユフツケ /○○○○)、或云臼邊鳥(ウスへ /○○○)也、〉

〔八雲御抄〕

〈三/下鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0677 鷄 ゆふつけとり〈付木綿相坂に祓故也〉 庭つとり(○○○○)〈萬〉 八こゑのとり(○○○○○○) くたかけ(○○○○)〈伊勢物語〉 かけろ かけのたれをのみだれおといふ かけ(○○) 鳥のそらねは、函谷關にて鳥のまねをして、人に夜あけぬと、おもはせたる事也、 あけつげ鳥(○○○○○)〈淸抄〉 大和物語に、曉になくゆふつけ鳥のわび聲と云り、ゆふつけとりともよむべし、

〔藻鹽草〕

〈十/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0677
ゆふつけ鳥〈世中さはがしき時、四境祭とて、おほやけせさぜ給に、鷄に木綿を付て四方關にいたりて祭と云々、又曉になく夕つけのわび聲にとよめり、鳥となけれ共、又たつ田かも讀り、又立田によむ事は奈良京の儀也、〉 庭津雞 八聲の雞 には雞〈是常の事也〉 くたかけ雞〈又只くたかけ共ばかりにて、鳥となけれ共云り、但小には鳥を云也と云々、異説云、東國には家をくたと云也、在家のくたくたしきを云、かけとは家のには鳥と云と云々、たゞしこれいかゞ、〉 かけろ〈なく聲也、さればかけろとなく共よめり、〉 かけ〈かけのたれをのみだれをと云〉 雞のそらね〈函谷關にて鳥のまねをして、人に夜あけぬとおもはせたる事也、そらねはそらごと也、鳥のそらねははか〉 〈るともとよめるも、たばかる也、はかり事也、〉 雞のね〈是庭鳥也、ことに夜にそへたらんはぜひにをよばず、〉 しは雞〈後になく鳥也〉 とこよの雞(○○○○○)〈あさくらや昔をかへす神がきに常世の鳥もなくかとぞきく、とこよの鳥とは、日神、天の岩戸にこもらせ給し時、神樂をして出したてまつらんとせし時、龍宮の鷄を取て夜はあけたると云心になかせしと也、〉ねざめ雞(○○○○)〈藏玉にあり〉 逢坂のゆふつけになく雞のね〈後撰〉 空なきしつる雞の聲〈深夜にまづ一しきり聲たてゝ夕つけとりは又ねしてけり〉

〔袖中抄〕

〈二十〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0678 ゆふつけどり
逢坂の夕付鳥にあらばこそ君が行來をなく〳〵もみめ
顯昭云、夕つけとりとは、にはとりを云也、よの中さわがしき時、四境ノ祭とて、おほやけのせさせ給に、鷄に木綿(ユフ)をつけて、四方ノ關にいたりて祭也、逢坂は東の關なればかく讀り、

〔東雅〕

〈十七/禽鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0678 雞ニハツトリ 日神、天磐屋戸をさしこもり給ひし時、思兼神、常世長鳴鳥を集めて、鳴しめられしと見えしは、〈舊事、古事、日本紀等に、〉鷄をいふと云ひ傳へしなり、さらばニハツトリとは、齋場の鳥なるを云ひしなるべし、一に木綿付鳥(ユフツケトリ)などいひしも、此事にや因りぬらん、〈○中略〉又唯よのつね人家の庭に棲む鳥なれば、かく云ひしも知るべからず、萬葉集に、雞の字讀てカケと云ひしは、東國の方言といふなり、仙覺抄には、カケとは啼聲に因りていへりと見えたり、古歌にカケロと鳴くなどよみし、これなるべし、古の俗その啼聲によりて、名づけ呼びし鳥もありとは見えたり、家雞の字讀てカケといふなどいへど、凡そ事には依りぬれど、古の方俗の言に、夫等の字義に因りし事あるべしとも思はれず、

〔圓珠庵雜記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0678 には鳥をば、たゞ鳥(○)ともかけともよめり、かけは、かけうとなくこゑよりつけたる名なり、

〔倭訓栞〕

〈前編十八/登〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0678 とり〈○中略〉 雞は平生人家に在をもて、とりの名を專にせり、戀の歌に多くよめるは、天寶遺事の、名妓劉國容が歡寢方濃恨雞聲之斷一レ愛といへる意也、

〔古事記〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0679 天照大御神見畏、閉天石屋戸而刺許母理〈此三字以音〉坐也、爾高天原皆暗、葦原中國悉闇、〈○中略〉是以八百萬神、於天安之河原神集集而、〈訓集云都度比〉高御産巢日神之子思金神令思〈訓金云加尼〉而、集常世長鳴鳥(○○○○○)鳴、

〔古事記傳〕

〈八〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0679 常世長鳴鳥とは鷄をいふ、常世は常夜にて、常世とは本より別なり、されど言の同きまゝに通はして、字には拘ず書るは古の常なり、こは今かく常世往時(トコヨユクヲリ)に集へて鳴せし鳥なるをもて、後に負し稱なるを、其始へ廻して、如此云るなり、〈○中略〉長鳴とは、凡て鷄は他鳥よりも鳴聲の絶(スグレ)て長き物なる故にいふなり、〈から書にも長鳴鷄と云フ見えたれど、そはなべての鷄を云にあらねば、今と同じからず、〉書紀にすなはち使互長鳴とあり、

〔古事記〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0679 八千矛神、將高志國之沼河比賣、幸行之時、到其沼河比賣之家、歌曰、〈○中略〉遠登賣能(ヲトメノ)、那須夜伊多斗遠(ナスヤイタドヲ)、淤曾夫良比(オソブラヒ)、和何多々勢禮婆(ワガタヽセレバ)、〈○中略〉爾波都登理(ニハツトリ/○○○○○)、迦祁波那久(カケハナク/○○ )、宇禮多久母(ウレタクモ)、那久那留登理加(ナクナルトリカ)、許能登理母(コノトリモ)、宇知夜米許世泥(ウチヤメコセネ)、〈○下略〉

〔古事記傳〕

〈十一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0679 爾波都登理(ニハツトリ)、迦祁波那久(カケハナク)は〈○註略〉庭鳥雞者鳴(ニハツトリカケハナク)なり、此鳥の本ノ名は迦祁(カケ)なるを、人家の庭に住む故に、庭つ鳥と枕詞に云ること、野ツ鳥と同じ、然るを後には、庭鳥とのみ呼(イヒ)て、迦祁(カケ)てふ名は失(ウセ)ぬ、〈契冲云、迦祁を家雞の字音と思ふは誤なり、〉

〔冠辭考〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0679 いへつとり(○○○○○) 〈かけ〉 又にはつとり〈○中略〉
神樂歌に庭とりはかけろと鳴ぬとうたふに依に、彼が鳴こゑもてかけとは呼也、かり〳〵と鳴まゝにかり、から〳〵と鳴故にからすてふ如き類ひ、他(アダ)しものにも多し、〈此かけを家鷄の字音の樣にいふ人あり、こゝのいと上つ代に、漢の字音もていふこと無をだに思はぬ人のわざ也、萬葉に可雞(カケ)と書しは只假字也、それはやなぎの事を楊奈伎、うめを烏梅と樣に書る如く、幸により來たる字を借たるのみ也、〉

〔神樂歌〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0679 酒殿歌 にはとり(○○○○)は、かけろとなきぬなり、おきよおきよ、わがひとよづま、人もこそ見れ、人もこそ見れ、

〔古今和歌集〕

〈十八/雜〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0680 題しらず よみ人しらず
たがみそぎゆふつけどり(○○○○○○)か唐衣たつたの山にをりはへてなく

〔堀河院御時百首和歌〕

〈雜〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0680 曉 前齋院肥後さしぐしのあかつきがたになりぬとや八聲の鳥(○○○○)もおどろかすらん

〔千載和歌集〕

〈十五/戀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0680關路戀といへる心を讀る 前中納言雅賴
思ひかねこゆる關路に夜をふかみ八聲の鳥に音をぞそへつる

〔袋草紙〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0680 鷄鳴時歌
よみつどり(○○○○○)わがかきもとになきつとり人みなきゝつゆくたまもあらし

鷄種類

〔和爾雅〕

〈六/禽鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0680 鷄(ニハトリ)〈鷄同、一名翰音、〉 丹鷄(アブラトリ/○○)〈朱鷄同〉 黃鷄(カシハドリ/○○) 長鳴鷄(ナガナキドリ/○○○) 荒鷄(ヨイナキドリ/○○)〈見于本草綱目〉 矮鷄(チヤボ/○○) 鳥鷄(クロニハトリ/○○) 鶤鷄(トウマル/○○)〈傖鷄同〉 烏骨雞(ウコツケイ/○○○)

〔宜禁本草〕

〈坤/諸禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0680 烏雄雞(○○○) 甘温補中、止矮折骨痛痿痺、肪主耳聾、腸主遺尿、肝及左翅毛主陰、䏶胵裏黃皮微寒、主泄痢遺溺、除煩熱、屎白微寒、主消渴石淋、利小便、止遺尿、滅瘢痕
丹雄雞(○○○)〈毛紫赤色〉甘温、主女人崩漏赤白補虚温中止血、諸雞有毒、發腸風痔瘻瘡癤皆忌、蒜薤同食氣滯、小兒未乳食之生虫、瘧後忌之、姙人食子腹生虫、
白雄雞(○○○)〈純白〉酸微温、六爪者殺人、下氣安五藏、治狂邪消渴、利小便、獺同食作鬼疰
黑雌雞(○○○) 甘温、主風寒濕痺、安胎益血、〈破宿補新〉産後虚羸乳少食、頭白殺人、腸治遺尿
黃雌鷄(カシハメンドリ/○○○) 酸甘平、主傷中消渴尿數不禁腸澼泄痢、補益五藏絶傷、益氣添髓補精、助陽氣、暖小腸、止泄精、補水氣、五色具雞、食之致狂、

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0680 雞〈訓仁波止利、古訓加介、〉 釋名、庭鳥、〈俗稱〉家鷄、〈古俗、倶俗稱而歌人亦言之、其訓同上、〉
集解、家家村村畜養之、有黃白丹黑烏骨、或有丹黑、有黃白、有丹白、有黃丹、有白黑、有黃黑、又有三色四色駁雜者、烏骨亦有雜色者、大抵平生所養者俗呼稱地鳥(○○)、大者稱唐麻呂(○○○)、是素自華來之謂乎、麻呂者古男子之通稱也、唐麻呂之中有冠如大鋸齒、呼稱大鋸(タイキリ/○○)、近時以大鋸唐麻呂之純白無脛毛勝、家家珍之、此等者蜀之鶤雞、楚之傖鷄乎、小者稱知也保(○○○)、狀不尋常之雞、而脛漸一二寸許、其最小者號南京知也保(○○○○○)、以大不三四寸而純白者勝、好事之家爭畜之、是近世自華之南京來者而矮鷄乎、烏骨亦近世至華者不五六十年、今處處多有之、自古作鬪雞之戯者久矣、故畜唐丸大鋸以當其用、然地鳥之勁剛、能勝唐丸大鋸者多矣、養小者惟愛形之微美耳、今食鷄者、惟以黃雌鷄上、烏骨鷄次之、或問野人曰、鷄有文武勇仁信之五德、或曰翰音、或曰司晨、文王問安、孟子爲善、然則賢者可愛之物、今爲村村家家之畜是何謂哉、野人曰、僕等未賢者之徒、民間所養者有三利、一曰、山中田家風雨之日、不晝夜之時、但鷄鳴報時、二曰、場庭穀菽漏脱混土砂、但鷄啄不遺、三曰、多蓄雞則生卵亦多、故時時販市以得不時之利、此三者民間之貨也、世俗所謂凡雞過夜半而鳴者常也、不夜半而鳴者不常、呼稱宵鳴(ヨヒナキ)以爲不祥、是荒雞乎、其家主不吉政禳之、捕其雞水則免災也、亦吉則柤逖起舞之類乎、其矮雞者不時、故妄鳴不之耳、別有反毛鷄(○○○)、老鷄(○○)、詳于本草
肉、氣味、甘温無毒、〈本草食忌所謂五色者、玄鷄白首者、六指者、四距者、鷄死足不伸者、並不食害人、閹雞能鳴者有毒、四月勿抱鷄肉、令人成癰成漏男女虚乏、小兒五歲以下食鷄生蚘蟲、鷄肉不葫蒜芥李、同兎食成痢、同魚汁食成心瘕、同鯉魚食成癰癤、同獺肉食成遁尸、同生葱食成虫痔、同糯米食生蚘蟲、必大按、最非此理、然不盡信一レ之、可時之宜爾、〉主治、補肝肺腎調脾胃、除風逐濕益氣温血、凡諸瘡諸傷不瘥者最宜、五勞七傷無調理、婦人諸病、産後崩中漏下無治療、能袪邪惡、惟多食動風耳、又據鷄之毛色而有治、詳于李時珍綱目
發明、鷄屬巽而風木之象、是陽中之陰、故能生熱動風、風火相扇、乃成中風、不愼戒也、丹者火、白者金、黑者水、黃者土、而配之所一レ主、可以斟酌也、獨無靑色者鷄之本性、屬木分之故也、烏骨者得水木之精 氣、故陰分虚熱者宜之、今本邦專用黃雌鷄者、黃者土色、雌者坤象、坤者土主脾胃、土者爲萬物之母、脾胃者爲五臟之主、先保養脾胃之土、脾胃實則心肺肝腎倶受保養、土實則木火金水皆得其處、故以脾胃本矣、或疑之曰、本邦以禽類食者多、然唯以雞爲脾胃之補何哉、予曰、諸禽皆有一二之性、入一二之臟腑、故以用、雞有五色以入五臟、然丹白黑靑雖各治、而不精明、唯黃入脾胃、所其治用最有驗、於是專用黃者朱丹溪、所謂鷄屬土者、當指此鷄、而發他鷄不一レ此、亦此之謂也、今用雌不雄者黃雌、氣和者不烈、黃雄氣烈而不和、氣烈者不脾胃、氣和者宜脾胃而巳、〈○中略〉
雞屎白、〈雄鷄屎乃有白、臘月取之、烏骨者更良、内經曰、鷄矢也、〉氣味、微寒無毒、主治、諸風傷寒下氣消積通大小便、療心腹鼓脹、破癥瘕金銀蜈蚣蚯蚓毒、〈○中略〉
烏骨鷄肉、氣味甘温無毒、〈本草曰平〉主治、女人諸病一切虚損、及久無子者宜之、或補男子虚勞羸弱遺精陰痿等症、〈李時珍曰、有白毛黑毛斑毛者、有肉白骨烏者、骨肉倶黑者、但觀鷄舌黑、則肉骨倶烏、入藥更良、〉
發明、烏骨者受水木之精氣、故入肝腎二經之血分、男用雌女用雄、專主婦人之病、古人製烏鷄丸是也、以治婦人諸病、就中久無子者服此丸、久則螽斯詵詵焉、今本邦試之者多矣、

〔和漢三才圖會〕

〈四十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0682 雞〈鷄同〉 鳩七咤〈梵書〉 燭夜 和名加介 又云久太加介 又云木綿附(ユフツケ)鳥、 俗云庭鳥〈○中略〉
按、雞家家畜之馴於庭、因稱庭鳥、又稱家雞、以別野鷄、其種類甚多、尋常雞俗呼名小國、能鳴吿時、而丑時始鳴者稱一番鳥、寅時鳴者稱二番鳥人賞之、丑以前鳴者爲不祥、俗謂之宵鳴、所謂荒鷄盜鷄之類矣、呼鷄重言之聲曰喌(トヽ)、〈音祝〉俗云止止止、
蜀雞(トウマル/○○)〈俗云唐丸〉 形大而尾短、其中有冠如大鋸齒(ダイギリノハ)、呼曰大鋸、初自中華來、爲鬪雞最强、
暹羅雞(シヤムトリ/○○○)〈之夜無〉 形大於蜀雞、而尾殊微少、大抵高二尺餘、肩張脛大距(ケツメ)尖而長、身毛多兀而冠小、性勁剛
能鬪、雖倒不逃、是初自暹羅來焉、 南京雞(ナンキントリ/○○○) 初來於中華南京、形似和雞(シヤウコク/○○)而純白、有尨(ムク)毛、脚瘡黑、冠亦黑色也、其冠赤者名地南京、〈○中略〉
凡經百八十日始鳴、吿時未亮亮、如人呵呻、又可二十日聲大定、能爲各曷課之(コツカツコヲノ)聲、其鳴也雌先啄叩 雄翅其時、則雄發聲、蓋此陰陽相待之義乎、
韓詩外傳曰、雞有五德、頭戴冠、〈文也〉足搏距、〈武也〉敵在前敢鬪、〈勇也〉見食相呼、〈仁也〉守夜不時、〈信也〉葛洪云、凡古 井及五月井中有毒、不輒入、卽殺人、宜先以雞毛上レ之、毛直下者無毒、回旋者有毒也、感應志云、五 酉ノ日以白雞左翅灰揚之風立至、以黑犬皮毛灰揚之風立止也、相傳、如有人溺于池川、未獲 屍骸、則乘鷄於板筏水上、鷄能知所在而鳴、於是探獲其骸焉、 矮雞(○○) 俗云知也保 矮〈鴉楷切、短也、不長也、〉
本綱、矮雞出江南、脚纔二寸許也、
按、矮鷄嘴脚黃色者爲上、但脚有毛者不佳、尾長勾屆頸後、復曲垂者謂之佐志尾、翅闊張者並佳、 南京矮鷄(○○○○) 初來於南京、最小而脚及眼色黃、甚賞之、
同白矮雞(○○○○) 純白有尨毛、冠黑者最勝焉、其冠赤者呼曰地南京、次之、
加比丹矮雞(○○○○○) 眼色黑脚亦帶黑、又次之、
凡矮雞不高飛、聲亦小、然吿時不諸雞也、矮雞交于和雞(シヤウコク)生者、形小而脚不甚矮、曰之半矮、爲 下品

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0683 鷄 ニハツドリ〈古歌〉 ヤコヘノトリ ネザメドリ アケツゲドリ(○○○○○○) ナガナキドリ トコヨノトリ クダカケドリ ユウツケドリ〈共ニ同上〉 ウスベドリ〈下學集〉
カケ〈伊勢物語〉 カケロ ニハトリ 一名翰音〈禮記曲禮〉 鸊https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01321.gif 〈楊子方言〉 割鷄 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01322.gif 〈共同上〉 會稽公〈典籍便覽〉
戴官郎〈同上〉 戴冠郎〈名物法言〉 爥夜〈卓氏藻林〉 羮本〈淸異錄〉 德禽〈事物異名〉 巽羽 窻禽 時夜 赤幘勇士 忽魯花〈蒙古名〉 司晨郎〈共同上〉 司晨〈行厨集〉 穿籬〈同上〉 穿籬菜〈留靑全書〉 鑽籬菜〈事物紺珠〉 家 雉 介羽 花冠 長鳴都尉〈共同上〉 五悳禽〈本草原始〉 鸊鴟〈楊州府志〉 積陽〈通雅〉 天鷄〈廣東新語〉 巽木禽〈傷寒論條辨註〉
凡人家ニ畜ヒ食用ニ供スル者ヲ家鷄〈秘傳花鏡〉ト云、伊勢物語ニ多クカケト書セリ、卽古俗名ナリ、今ハ地鳥(○○)ト云ヒ、或ハカシフ(○○○)ト呼ブ、讃州高松ニテニホン(○○○)ト云フ、黃丹黑白アリ、又丹黑、黃白、丹白、黃丹、白黑、黃黑アリ、又三色四色駁雜ナル者アリ、又弱クシテ鬪フコト能ハザル雞ヲ草雞(○○)〈秘傳花鏡〉ト云、强キ雞ヲ見レバ逃去ル、故ニ草雞雖雄多望風而靡同上ト云フ、又形大ニシテ能鬪フモノヲ、シヤム(○○○)ト云フ、卽鬪雞〈秘傳花鏡〉ナリ、シヤムノ小ナル者ヲ通事(○○)ト云フ、小國(○○)ハシヤムノ次ナリ、又至テ大ナルヲトウマル(○○○○)ト云、卽鶤鷄ナリ、一名蜀鷄〈釋名下〉傖鷄〈集解〉 トウマルノ中ニ、冠ニ大鋸齒アル者アリ、ダイギリトウマル(○○○○○○○○)ト呼ブ、又至テ小者ヲチヤボ(○○○)ト云、矮雞ナハ、一名https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01323.gif 夷鷄〈雲南通志〉形狀常雞ニ異ナラズシテ、脛僅ニ一二寸、其最小ナル者ヲ、南京チヤボ(○○○○○)或ハ地スリ(○○○)ト呼ビ、上品トス、只其小ニシテ美ナルヲ愛スルナリ、又烏骨雞(○○○)ハウコケイ、一名ヲコッケイ(○○○○○)〈筑前〉ヲゴッケイ(○○○○○)、〈讃州〉ヲケラ(○○○)〈石州〉ヲケラコウ(○○○○○)、〈同上〉ムツユビドリ(○○○○○○)、後へ出タル指數多シ、八指ノ者ヲ上トス、萬病回春ニ烏骨白鷄ト云フ、羽毛細クシテ白ク、食犬(ムクイヌ)ノ形ノ如シ、冠ハ紫黑色ニシテ高カラズ簇生ス、嘴脚倶ニ黑シ、藥餌ノ用ニ入、又雜色ナル者アリ、又反毛鳥(○○○)ハサカゲノ雞ナリ、筑前ニテキクチヤウ(○○○○○)ト云フ、毛ハ順ニ生ジテ末白、反シテ前ニ向フ、數色アリ、脚ハ六指ナリ、

〔嬉遊笑覽〕

〈十二/禽蟲〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0684 しやむとはもと暹羅より渡りし鷄なり、暹羅は南天竺の内にて、唐山より西南の方に當れり、莫臥爾(モウル)の屬國といへり、これをシヤム又シヤモ(○○○)とも呼、こゝにいつの頃わたりしか定かならず、外國は鷄を常に食料とすれば、いつも舶上に載來る故この鷄も早く渡りしにや、されど古書には見えず、大和本草に、暹羅鷄、紅毛鷄は外國より來れりとのみいへり、西鶴が大鑑に、むかしの芝居若衆〈坂田皆之丞などにや〉しやむの鷄合を好みたることを載たり、〈若衆歌舞妓は、明曆二年に停止ぜらる、それより〉 〈以前の事なり、〉

〔百千鳥〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0685 てんけい鳥(○○○○○) 餌かい〈キビ、菜、玄米、〉
大きさ高麗雉子に大ぶり、是はかうらい(○○○○)と、きんけい(○○○○)と合せたる物のよし、能出來たるは至て紫の毛など見事に成物のよし、むかしは折々有けるよし、今は一向なし、

〔飼鳥必用〕

〈中〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0685 シヤム鷄(○○○○)
此鳥大鷄也、とさかくるみさかに垂なし、胸に赤はだ見ゆる、羽色は種々あり、
唐丸(○○)
此鳥出島十善寺筋二種有り、出鳥は紅毛出也、とさか垂迄八寸程にてせいたかく、鳥の股扇を立にして通行なる程也、至て身ほそく鶴の形したるを上とする、勿論十善寺種は唐方にて紅毛程はなし、せいひくゝして身太なり、とさかも小サく、尤毛色いろ〳〵あり、紅毛筋萬端よろし、
烏骨鷄(○○○)
此鳥とさか柘榴さかにて色黑み、足の指六ツありと見へ、また此上も有をよしとす、渡鳥は白鳥のもの也、和にて出來は、毛色いろ〳〵あり、とさかも赤し、
逆毛鷄(○○○)
此鳥明和年中、初て紅毛より東都へ渡る、油鳥幷白鳥貳番渡來る、夫より東都におゐて段々子出來、今にてはちやぼ鷄にても有之也、
紅毛鷄(○○○)
此鳥半鷄より大きく方にて、とさか三枚さかにてれんじやく有り、羽色種々有り、尤大小あり、

〔飼鳥必用〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0685 半鷄 (○○)大地鷄(○○○)
右鷄羽色さま〴〵有、とさかくるみさか三枚さか共云、じやくろさか、大切りさか、此三品有、尤髭 鷄とて、のどの下頰にも毛のはへたるもあり、これを髭と云、
矮鷄(○○) 〈總羽の色好む處を記す〉
いこう黑〈是は頰の通りとさかまで少し黑み出る〉 岸黑〈是は頰とさかに黑みなし、からす黑の鷄なり、〉
此二品の黑は老鳥に成候ても、首に油毛の羽出ず、
白毛、碁石、猩々、〈是には三品有、こい猩々、薄毛猩猩、至て赤きはかびたんと云、〉 鈴波碁石〈是は總羽白黑の波のかたち有を云〉 淺黃耳白〈是は耳白く輪をかけたるを云〉 桂尾〈是は白に尾羽黑きを云、是に首にさし尾あるは惡し、但しとさかに二品有、ちりめんさかよろし、ぬめさかは惡し、總たいのこぎりさかをよしとする、〉 車尾〈是は尾を卷ささげたるを云〉 丸羽〈是は尾のつけねと、首の羽なし、めんに尾を付たる樣也、〉 菖蒲尾〈但しさし尾と云、柳尾共云、け爪なきをなんきん筋と云、〉

〔武江産物志〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0686 山鳥類 鷄〈ちやぼ(○○○)、とうまる(○○○○)等有、しやむ(○○○)は下谷坂本に鬪鷄の會あり、〉

〔甲子夜話〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0686 岸和田ノ岡部氏、今ノ三四代モ前ノ主、殊ノ外鷄ヲ好テ數百番畜養セリ、ソノ内ヨリ翖毛ノ常ト替リシモ往々出シトゾ、世ニ玩ブ淺黃矮雞(○○○○)ト云テ、黪素色ナルモノハ、其家ヨリ新ニ生ゼシ種子ニテ、別ニ一種ヲ成シ、今ハイヅ方ニモアルヤウニナリタルナリ、

瑞鷄

〔日本書紀〕

〈二十九/天武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0686 四年正月壬戌、是日大倭國貢瑞雞、 五年四月辛丑、倭國添下郡鰐積吉事貢瑞雞、其冠似海石榴華

鷄飼養法

〔農業全書〕

〈十/生類養法〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0686
には鳥は人家に必なくて叶はぬ物なり、鷄犬の二色は田舍に殊に畜置べし、是大小色々あり、唐丸とて甚大きあり、近來しやむと云て一種あり、是又大なり、是皆體おもくして、高き所に上りかねて、狐狸にそこなはるゝゆへ、雛も生立がたし、時を作る事も正しからず、唯中鷄の毛のあかき脚の黃なるをかふべし、又雌鳥はかたちさのみふとからず、毛淺くて脚細く短きが、卵を多くうみて、雛をよく生立る物なり、又雄鳥は聲の小きは子少なし、黑き鷄、頭の白き、六指のもの四距のもの、死して足の申(のび)ざるもの、皆人を害すとあり、料理をするに心を用ゆべし、又五歲以下の小兒 鷄を食すれば、あしき虫を生ずると見えたり、多く畜はんとする者は、廣き園の中に、稠(きび)しくかきをし廻し、狐狸犬猫の入ざる樣に堅く作り、戸口を小さくしたる小屋を作り、其中に塒を數多く作りて、高下それ〴〵の心に叶べし、尤わらあくたを多く入置て、巢を作らすべし、園の一方に粟黍稗を粥に煮てちらし置、草を多くおほへば、やがて虫多くわき出るを餌とすべし、是時分によりて、三日も過ずして虫となる、其虫を喰盡すべき時分に、又一方かくのごとく、年中絶ず此餌にて養へば、鷄肥て卵を多くうむ物なり、園の中を二つにしきりをくべし、又雜穀の枇(しいら)、其外人牛馬の食物ともならざる物を多く貯へて、はみ物常に乏しからざる樣にすべし卵(かいこ)も雛も繁昌する事限なし、甚利を得る物なれども、屋敷の廣き餘地なくては、多く畜事はなり難し、凡雄鳥二つ䳄鳥四つ五つ程畜を中分とすべし、春夏かいわりて廿日程の間は、ひな巢を出ざる物なり、飯をかはかして入れ、水をも入れて飼立べし、甚多く畜立るは人ばかりにては、夜晝共に守る事なり難く、狐猫のふせぎならざる故、能き犬を畜置てならはし守らすべし、〈但かやうにはいへども、農人の家に鷄を多く飼へば穀物を費し妨多し、つねのもの是をわざとしてもすぐしがたし、しかれば多くかふ事は、其人の才覺にょるべし、〉

〔源平盛衰記〕

〈三十二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0687 四宮御位事
七條修理大夫信隆卿ハ、白鷄ヲ千羽飼ヌレバ、必其家ニ王孫出來リ御座ト云フ事ヲ聞テ、白雞ヲ千羽ト志シテ飼給ケル程ニ、後ニハ子ヲ生孫ヲ儲テ、四五千羽モ有ケリ、夥ナドハ云計ナシ、鳥羽、田井、西〈ノ〉京〈ノ〉田ナドニ行テ稻ヲ損シ麥ヲ失フ、懸リケレバ、信隆ノ雞トテ人モテアツカヘリ、此コ彼コニシテ打殺ケレ共、生子ハ多シ、七條八條ニ充滿テ、盡ベキ樣モ不見ケリ、誠ニ其驗ニヤ有ケン、四宮〈○後鳥羽〉位ニ卽セ給フ、

鷄卵

〔宜禁本草〕

〈坤/諸禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0687 雞卵 甘微寒、葱蒜同食氣促生瘡、鱉同食異病、韭子同食節風、和魚肉食心瘕生、卵白微寒、治目熱赤痛、除心熱煩滿、主小兒下泄、産難胞衣不一レ下、卵黃、除熱治火灼爛瘡、卯中白皮、主久欬結 氣、和麻黃紫苑之立止、

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0688
卵、氣味甘平無毒、〈白者性寒、黃者性温、合則性平也、畏醇醋多食令人腹中有一レ聲、動風氣葱蒜之氣短、同韭子食成風痛、共鼈肉獺肉兎肉食損人、姙婦以鷄子鯉魚同食令兒生一レ瘡、同糯米食令兒生一レ蟲、小兒患痘疹鷄子、及聞煎食之氣翳膜、必大按、此等食忌悉於理然乎、細辨之則無理亦有、宜酌之耳、〉主治、鎭心止癇、潤肺補肝、滋腎調脾胃、安胎及姙娠、天行熱疾、狂走赤白痢、小兒疳痢、男子陰囊濕痒、婦人陰瘡亦宜、或除火灼熱瘡、或療白虎風病三十六黃症
發明、李時珍以黃白氣味寒温之治、可至論、又曰、小兒患痘疹者食之聞氣、令翳膜何哉、然痘疹預防用之、其法載蚯蚓附方、此兩説似相齟齬、若得地龍童便厠氣之類、以除鷄子之毒歟、而未得之、予毎令痘疹之兒而食上レ之、未眼翳之疾、惟時珍論鷄白荊芥治産後血運鷄黃髮煎治小兒胎瘡、是予亦試之、尤有奇効、載之在後、大抵世俗瘡疥家、妄忌鷄子温毒、此未其性也、若多食之雖性平和、而蓄積作温熱、則生害者必矣、此是不惟鷄子而人間飮食皆然、於是聖人、以多食郷黨之戒爾、

〔和漢三才圖會〕

〈四十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0688 雞〈○中略〉
雞卵〈中有黃肉白汁、白者性寒、黃者性温、〉筑前豐前多出之、而不於畿内之卵味、〈畏山椒、如藏之同器則卵腐爛、〉煮之則白汁包黃肉塊、譬之天地兩象、殻乃象總廓無星天、〈如初投熱湯之、則殼肉不離、〉

〔雜談集〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0688 或上人、鷄ノ卵(カヒコ)ヲ取テ、ユデヽクヒケルガ、小法師ニカクシテ、茄子漬ト名ヅケテ食シケル、小法師コレヲ知テ、事ノ次デニ云ヒタク思テ、鷄ノ曉鳴ヲ、御房々々、ナスビヅケノ父ノ鳴候、キカセ玉フカト云ケル、

〔食物和歌本草〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0688 卵白(タマゴノシロミ)
玉子白み小兒の泄瀉難産の胞衣のをりぬに藥成けり 右幷ニ生にてのむなり 玉子白み赤 小豆の粉をばかきませて一切の熱毒腫やむにぬれ
卵黃(タマゴノキ)
玉子の黃生にて數をのみぬれば小便通ぜぬ人によきなり

玉子酒身うちあたゝむ寒き夜は醉ざる程にねるたびにのめ 玉子こそやせたる人にことによし肝氣やしなひ骨をつよふす 玉子こそ久しうくへば氣をまして身をかるくして力をぞつく

〔皇大神宮儀式帳〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0689 一新宮造奉時行事幷用物事〈○中略〉
次取吉日山口神祭用物幷行事、〈○中略〉雞卵十丸、

〔先哲叢談後編〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0689 細井廣澤
廣鐸以擊劒於堀内源太左衞門、與赤穗堀部武庸、〈通稱安兵衞、堀部彌兵衞金丸義子、〉爲同門、情交尤密、〈○中略〉當其襲吉良氏邸之先夜、赤穗遺臣大石良雄等四十六人、皆會源太左衞門家、〈源太左衞門家在于神田紺街〉廣澤爲武庸、避其奴僕、獨趣離筵、齎鷄卵數十箇、良雄在樓上、武庸及其他之士五人、與廣澤傾盃酣暢、武庸以廣澤所贈雞卵、碎破之、曰、明夜碎破敵讐、亦若此、廣澤壯其言

鷄雛

〔和漢三才圖會〕

〈四十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0689 雞〈○中略〉
凡雞多淫生數子、毎日生一卵、人濳取之、唯遺一卵、則逐日生卵數不定、始終不取則十二而止矣、母雞伏卵於翅下二十日許而稍温暖、中子欲出吮聲曰啐、母雞亦啄孚、其雛不哺自啄粟糏(コヽメ)、謂https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01324.gif (ヒヨコト)、〈https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01324.gif側則不交、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01324.gif 取避則生卵、〉

〔菅家文草〕

〈一/詩〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0689源皇子養白鷄雛聊叙一絶
治氷殘片雪孤團、権問雞雛子細看、養得恩容交杵臼、因君一到五雲端、

〔枕草子〕

〈六〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0690 あはれなる物
にはとりの子いだきてふしたる

〔枕草子〕

〈八〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0690 うつくしきもの
鷄のひなのあしだかに、しろふおかしげにきぬみじかなるさまして、ひよ〳〵とかしかましくなきて、人のしりにたちてありくも、又おやのもとにつれだちありく、見るもうつくし、

〔沙石集〕

〈八上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0690 雞子殺酬事
尾州ニ若キ女房、子ニクハセントテ、雞ノカイ子ヲアマタ殺シテケリ、或時夢ニ、女人一人來テ、我子ノ臥タル枕モトニウチイテ、子ハイトオシキゾカナシ〳〵トイヒテ、ヨニ恨メシゲナル氣色ニテ、ウチナキ〳〵スルト見テ、コノ子ナヤミテ、ホドナクウセヌ、オトヽノアリケルガ、又ナヤミケル時モ、サキノ女人スコシモタガハズ、サキノヤウニイフト見テ、ソノ子モウセニケリ、當時有人也、

雌鷄化雄

〔日本書紀〕

〈二十九/天武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0690 五年四月辛丑、倭國飽波郡言、雌雞化雄、

〔三代實錄〕

〈十六/淸和〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0690 貞觀十一年十一月十三日丙寅隱岐國言、雌雞化爲雄、

異形鷄

〔扶桑略記〕

〈二/應神〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0690 四年、雞生鵲巢中、生子四足、

〔日本書紀〕

〈二十七/天智〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0690 十年、是歲讃岐國山田郡人家有雞子四足者

〔日本書紀〕

〈二十九/天武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0690 十三年、是年倭葛城下郡言、有四足雞

〔扶桑略記〕

〈二十五裏書/朱雀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0690 承平四年三月十一日、山城國進于雞雛一翼、其體自頸下相分二體、有四翼四足二尾

〔兎園小説〕

〈九集〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0690 一足の鷄
文化十一年の夏の比、飼鳥あきのふもの、鷄の雛の一足なるをもて來て、これ買ひ給はずやとい ひしかば、引きよしてよく見るに、げに一足なることは、寔に一足なるものから、その足らざる左の足は、皮肉の間にありとおぼしく、運動にしたがうて腹の皮うごもちたり、これ尫弱不具にして眞の一足なるものならず、

〔甲子夜話〕

〈八十九〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0691 予〈○松浦淸〉淺草ノ邸ニ往ク、途次ニ花鳥屋ト云店アリ、看板ヲ掛ケ四足雞ヲ圖ス、予思フ、錢ヲ募ル爲ニ作ル物ト、一日人ヲ遣シテ視セシム、返テ曰ク、實ニ四足ヲ生ズ、信濃國ノ所産ト云、雞二脚ハ尋常ノ如シ、二脚ハ前足ノ後臀ノ左右尾毛ノ下ニアリ、但々脚後ニ斜ニシテ指屈シテ開カズ、又地ヲ踏コト能ハズ、ソノ視シ者ノ所圖ヲ後ニ載ス、圖略

鷄事蹟

〔日本書紀〕

〈一/神代〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0691 天照大神、〈○中略〉乃入于天石窟、閉磐戸而幽居焉、故六合之内常闇、而不晝夜相代、于時八十萬神會合於天安河邊、計其可禱之方、故思兼神深謀遠慮、遂聚常世之長鳴鳥、使互長鳴

〔日本書紀〕

〈二/神代〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0691 天稚彦之妻下照姫、哭泣悲哀、聲達于天、是時天國玉聞其哭聲、則知夫天稚彦已死、乃遣疾風、舉戸致天、便造喪屋而殯之、卽以川鴈持傾頭者、及持帚者、〈一云、以雞爲持傾頭者、以川雁持帚者、〉

〔古語拾遺〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0691 昔在神代、大地主神營田之日、以牛宍田人、于時御歲神之子至於其田、唾饗而還、以狀吿父御歲神發怒、以蝗放其田、苗葉忽枯損似篠竹、於是大地主神、令片巫〈志止止鳥〉肱、巫〈今俗竃輪及米占也〉占求其由、御歲神爲祟宜白猪白馬白鷄、以解其怒、〈○中略〉仍従其敎、苗葉復茂年穀豐稔、是今神祗官、以白猪白馬白鷄(○○)、祭御歲神之緣也、

〔儀式〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0691 二月四日祈年祭儀
其日卯四刻、〈○註略〉所司辨備庶事、神祗官陳幣物於齋院、京職貢白鷄(○○)一隻、近江國豚一頭

〔日本書紀〕

〈十四/雄略〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0691 七年八月、官者吉備弓削部虚空輒急歸家、吉備下道臣前津屋〈或本云、國造吉備臣山、〉留使虚空經月不一レ聽上京都、天皇遣身毛君大夫召焉、處空被召來言、前津屋以小女天皇人、以大女己人、競令相鬪、見幼女勝、卽拔刀而殺、復以小雄雞呼爲天皇鷄、拔毛剪翼、以大雄雞呼爲己雞、著鈴金距、競 令之、見禿鷄勝亦拔刀而殺、天皇聞是語、遣物部兵士三十人、誅殺前津屋、幷族七十人
○按ズルニ、鬭鷄ノ事ハ、遊戲部物合篇ニ詳ナリ、

〔萬葉集〕

〈十九〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0692 三日、〈○天平勝寶三年正月〉會集介〈○越中〉内藏忌寸繩麻呂之館宴樂、〈○中略〉于是諸人酒酣、更深鷄鳴、
此主人内藏伊美吉繩麻呂作歌一首、
打羽振(ウチハブリ)、雞者鳴等母(トリヘナクトモ)、如此許(カクバカリ)、零敷雪爾(フリシクユキニ)、君伊麻左米也母(キミイマサメヤモ)、
守大伴宿禰家持和歌一首
鳴雞者(ナクトリハ)、彌及鳴杼(イヤシキナケド)、落雪之(フルユキノ)、千重爾積許曾(チヘニツメコソ)、吾等立可氐禰(ワレタチガテネ)、

〔枕草子〕

〈七〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0692 頭弁のしきにまいり給ひて、物がたりなどし給ふに、夜いとふけぬ、あす御ものいみなるにこもるべければ、うしになりなばあしかりなんとてまいり給ひぬ、つとめて藏人所のかうやがみひきかさねて、後のあしたはのこりおほかる心ちなんする、夜をとをして昔物語もきこえあかさんとせしを、とりのこゑにもよほされてと、いといみじうきよげに、うらうへに事おほくかき給へるいとめでだし、御かへりに、いと夜ふかく侍ける鳥のこゑは、まうさうくんのにやときこえたれば、たちかへりまうさうくんのにはとりは、かんこくくはんをひらきて、三千のかくわづかにされりといふは、あふさかのせきの事なりとあれば、
夜をこめて鳥のそらねははかるとも世にあふさかのせきはゆるさじ、心かしこきせきもり侍るめりときこゆ、たちかへり、
あふさかは人こえやすき關なれば鳥もなかねどあけてまつとか、とありし文どもを、はじめのは僧都のきみのぬかをさへつきてとり給ひてき、のち〳〵のは御まへにて、さてあふさかのうたはよみへされて、返しもせず成にたる、いとわうしとわらはせ給ふ、

〔枕草子〕

〈十二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0692 大納言殿〈○藤原伊周〉まいり給ひて、ふみの事などそうし給ふに、例の夜いたうふけぬれ ば、〈○中略〉うへ〈○一條〉のおまへのはしらによりかゝりて、すこしねぶらせ給へるを、かれ見奉り給へ、今はあけぬるに、かくおほとのごもるべき事かはと申させ給ふ、げになど宮のおまへにもわらひ申させ給ふも、しらせ給はぬほどに、おさめがわらはの、庭鳥をとらへてもちて、あす里へいかんといひて、かくしをきたりけるが、いかゞしけん、犬の見付てをひければ、らうのさきににげいきて、おそろしうなきのゝしるに、皆人おきなどしぬや、うへもうちおどろかせおはしまして、いかにありつるぞと尋させ給ふに、大納言殿の、聲めい王のねぶりをおどろかすといふ詩を、たかう打出し給へる、めでたうおかしきに、ひとりねぶたかりつる目もおほきになりぬ、

〔和漢朗詠集〕

〈下/雜〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0693 禁中
雞人曉唱聲驚明王之眠https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00995.gif 鐘夜鳴響徹暗天之聽、〈都良香〉

〔伊勢物語〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0693 むかし男みちのくにゝすゞろにいたりにけり、そこなる女、京の人をばめづらやかにかおもひけん、せちにおもへるけしきなん見えける、〈○中略〉さすがにあはれとやおもひけん、いきてねにけり、夜ふかく出にければ女、
夜もあけばきつにはめなでくだかけ(○○○○)のまだきになきてせなをやりつる

〔伊勢物語新釋〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0693 立入信友字伴州五郎と云人の、江戸よりいひおこせけるは、〈○中略〉歌の意きつは、吾友平田篤胤がもの語に、己がうまれし國の出羽の秋田のあたりにては、木もてつくれる大なる箱を、家々にすゑおきて、水を畜ふる器とせり、其器の名をきつといふ、老人のものがたりに、此きつ昔はおしなべて家ごとにありしものなりといへるが、ちかき比は、大かた瓶を用ふる事となりて、きつをすゑおく家は少く、其名を知るものも多からず、これ古き東語にて、きつにはめなんの歌は、雞をきつと云器の水中へ、うちはめんといへる成べしといへりとは、いとめづらしき證ある考なるにつきて、なほ考るに、今も雞の宵鳴するをにくみて、しかさせじ とするには、雞の腹を水にひたし冷せば、其事止むもの也、〈そは腹の熱をさます術なりとぞ〉はめなんは水に投(イ)るゝ事なり、はめははませにて、すべてものゝ中へこなたより入る事をいふ詞にて、今水中へ物を投(イ)るゝをもはめはむるなど云是也、女此雞の又宵鳴せん事をにくみきらひて、しかせんといへる也、くだかけのくだは腐(クダ)にて、雞をふかく惡みてのゝしりたる言也、〈此歌をおきて、鷄をくだかけといへることきこえず、〉一首の意は、夜あけなば、きつにうちはめなん腐雞よ、汝が宵鳴せしゆゑに、曉ぞとおもひて夫をかへしやりつるが、くやしく悲しき事、かさねてしか、宵鳴はせさせじといへる也といひおこせき、いとめづらしき説にぞありける、

〔三國傳記〕

〈十〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0694一首歌盲鷄眼開事
和云、中比伊豆ノ三島ノ大明神之社頭ニ、鷄多ク有リケル中ニ、盲雞一隻アリ、自餘ノ鳥共ハ虫類ヲ啄ミ、全口米ヲ拾ヒテ、嗉(モノハミ)ノ中ニ肉飽テ、肥滿シテ聯翩セリ、此ノ盲鳥ハイツモ暗夜ノ如クナレバ、時ナラヌ時ヲ作リ、食ナラヌ食ヲ嗜、或ハ爲童子打擲セラレ、或ハ爲猫犬驚キ鳴ク、無南北往還、不朝夕風霜、爰ニ修行者ノ有ケルガ、此盲鳥ノ疲瘦飢渴セルヲ見テ、物ヲ哀マバ是ニ過タル事有ベカラズ、穴カハユヤトテ硯ヲ乞ヒテ、其鳥ノ頸ニ短册ヲ付タリケレバ、鳥眼忽ニ開ヒテ物ヲ見ル事自在ナリ、社人等恠ミテ是ヲ見レバ、一首ノ歌ニテゾ有リケル、
鷄ノ鳴ク音ヲ神ノ聞キナガラ心ヅヨクモ目ヲ見セヌ哉、此ノ歌神感ニ達シケル故也、靈神ノ感應歌道ニアル事ハ不珍イヘドモ、纔ニ三十一字ヲモテ神慮ニ達スル事、誠ニ新タナル奇特也、

鷄利用

〔日本書紀〕

〈二十九/天武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0694 四年四月庚寅、詔諸國曰、〈○中略〉莫牛馬犬猿鷄(○)之完、以外不禁例、若有犯者罪之、

〔和漢三才圖會〕

〈四十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0694 雞〈○中略〉
按、雞家家畜之馴於庭、〈○中略〉能鳴吿時、而丑時始鳴者稱一番鳥(○○○)、寅時鳴者稱二番鳥(○○○)、人賞之、丑以前鳴者爲不祥、俗謂之宵鳴

〔常山紀談〕

〈拾遺二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0695 輝政公〈○池田〉武將の重寶とすべきは、領分の百姓と譜代の士と鷄と三品なり、それを如何と云ふに、〈○中略〉目に見ゆる相圓、耳に聞ゆる相圖は敵の耳目にかゝることゆへに、たやすく敵國にてなしがたし、鷄鳴は誰もその相圓ぞと知らざるゆへに、卽ち敵國の鷄鳴にて、一番鳥(○○○)にて人衆を起し、二番鳥(○○○)にて食し、三番鳥(○○○)にて打立などゝ相圖を究て、敵もその相圖を知らざるの德あり、この三ツの重寶なり、是を三の重寶と立しと宣ふなり、

〔沙石集〕

〈七上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0695 眠正信房事
和州菩提山ノ本願僧正御房ニ、忠寬正信房ト云僧有ケリ、アマリニネブリケレバ、ネブリノ正信トゾ申ケル、〈○中略〉或ル夜、九番鳥(○○○)ノ鳴ケルヲ、眠耳ニ御所ニ忠寬々々ト召スト聞ナシテ、事々シク御イラへ申テ御前へ參ル、イカニナニ事ゾト被仰レバ、召ノ候ツルト申ス、サル事ナシト仰アリケレバ、鳥ノ猶空ニ聲ノスルヲ指サシテ、アレニ召ノ候ツルトゾ申ケル、

〔備前老人物語〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0695 一吉田久左衞門、雞をもとめて陣屋に飼置たり、家康公ある夜、雞の聲を聞召れ、これは多分吉田久左衞門が雞を飼をきたる物ぞとて、たづねさせ給ひしに、久左衞門にてありけり、時をしるべき(○○○○○○)との心懸奇特也とて、御感有しなり、

〔雲萍雜志〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0695 ある人、時刻を知らん爲にとて、自鳴鐘を求めんとするを、その妻是をとゞめていひけるは、明くれにかくる世話のみにあらず、くるひたる折からには、その隙を費し、自鳴鐘のためにがへりて時を失ふこと多からん、やめ給へといへば、さあらば庭鳥を飼ふべしといふに、その妻、又とゞめて云けるは、時刻は人のうへにあり、汐の滿干もこれとおなじかるべし、自鳴鐘、雞を便りとするは、勤めに怠るものゝいたすことなりと、夫を諫め、つひに雞をも飼ずなりにき、

鷄雜載

〔日本書紀〕

〈十七/繼體〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0695 七年九月、勾大兄皇子〈○安閑〉親聘春日皇女、於是月夜淸談、不天曉、斐然之藻、忽形於言、乃口唱曰、〈○中略〉伊慕我堤嗚(イモガテヲ)、倭例儞魔柯施毎(ワレニマカシメ)、倭我堤鳴磨(ワガテヲバ)、伊慕儞魔柯施毎(イモニマカシメ)、磨左棄逗囉(マサキヅラ)、多多企阿(タタキア) 藏播梨(ザハリ)、矢自矩矢廬(シヾクシロ)、于魔伊禰矢度儞(ウマイネシトニ)、儞播都等唎(ニハツトリ/○○○○○)、柯稽(カケ/○○)播儺具儺梨(ハナクナリ)、奴都等唎(ヌツトリ)、枳蟻矢播等余武(キヾシハトヨム)、婆施稽矩謨(ハシケクモ)、伊麻娜以幡https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01325.gif 底(イマタイハズテ)、阿開儞啓梨倭蟻慕(アケニケリワギモ)、

〔皇大神宮儀式帳〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0696 一新宮造奉時行事幷用物事
吉日、山口神祭用物幷行事、〈○中略〉雞二羽、〈雄一雌一〉雞卵十丸、〈○中略〉次取吉日、爲正殿心柱造奉、率宇治大内人一人諸内人等戸人等杣、木本祭用物注左、〈○中略〉雞二羽、〈雄一羽雌一羽〉卵子十丸、〈○中略〉次取吉日、宮地鎭謝之用物幷行事注左、〈○中略〉雞二羽、〈雄一雌一〉雞卵二十丸、

〔延喜式〕

〈三/臨時祭〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0696 霹靂神祭〈○中略〉 雞二翼

〔萬葉集〕

〈七/挽歌〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0696 雜挽
庭津鳥(ニハツトリ)、可鷄乃垂尾乃(カケノタリヲノ)、亂尾乃(ミダリヲノ)、長心毛(ナガキコヽロモ)、不所念鴨(オモホエヌカモ)、

〔就狩詞少々覺悟之事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0696 一射まじき鳥の事、〈○中略〉庭鳥、

雉/名稱

〔本草和名〕

〈十五/禽獸〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0696 雉肉、一名疏趾、一名華虫、一名https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01326.gif 、〈音遵〉一名顱諸、一名鷩、〈音鱉、已上五名出兼名苑、〉和名岐之(○○)、

〔段注説文解字〕

〈四上/隹〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0696 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01327.gif十四種〈見下文〉盧諸雉〈張揖上林賦注曰、盧白雉也、○中略〉鷮雉、〈各本作喬誤、鳥部曰鷮、走鳴長尾雉也、〉卜雉、〈各本https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01328.gif 誤、鳥部無https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01328.gif 、釋鳥作https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01328.gif 郭云、黃色鳴自呼、〉鷩雉、〈鳥部曰鷩赤雉也、又曰鵔鸃鷩也、〉秩秩海雉、〈郭云、如雉而黑、在海中山上、陸曰秩秩、本又作失失、〉翟山雉、〈見羽部、〉雗雉、〈郭輿https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01329.gif一、許爲二、陸云雗字又作翰、〉卓雉〈卓今爾雅作https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01329.gif 郭云今白https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01329.gif 也、江東呼白雗亦名白雉、〉伊雒而南曰翬、〈碓各本作洛誤、釋鳥曰、伊洛而南素質五彩皆備成章翬、見羽部、〉江淮而南曰搖、〈釋鳥江淮而南靑質五彩皆備成章鷂、夫人揄狄、○中略〉南方曰https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01330.gif 、〈賈逵杜預注、左傳https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01330.gif翟、○中略〉東方曰甾、〈今爾雅作鶅〉北方曰稀、〈今爾雅作鵗〉西方曰蹲、〈○註略〉从隹矢聲、〈直几切、十五部、按雉古音同夷、周禮雉氏掌艸、故書作夷氏、大鄭从夷、後鄭从雉、而讀如鬀、今本周禮作薙者俗製也、左傳五雉爲五工夷民者也、楊雄賦辛雉卽辛夷、漢地理志南陽雉縣、舊音弋爾反、江夏下雉縣如淳、音羊氏反、皆古音也、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十八/羽族名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0696 雉 廣雅云、雉、〈音智、上聲之重、和名木々須(○○○)、一云木之、〉野雞也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈七/鳥名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0696 按玉篇云、直理切、在上聲六止、廣龍直几切、在上聲五旨、雖其韻少異、並屬澄母、智知義切、屬知母、在去聲五寘、音韻皆異、此以智音雉、恐誤、又澄母是舌音定母之輕、知母亦端母 之輕、此云重、未詳、〈○中略〉按古云岐藝斯、見古事記八千戈神歌、及繼體紀御歌、皇極紀童謠、萬葉集武藏國相聞歌、六帖以下歌詠皆云岐岐須、云岐岐須者岐岐之之轉、岐之者岐岐之之急呼耳、皆以鳴聲名、〈○中略〉漢書高后紀云、高皇后呂氏、注、荀悦曰、諱雉之字野雞、廣雅本之也、説文雉有十四種、李時珍曰、形大如鷄、而斑色繡翼、雄者文采而尾長、雌者文暗而尾短、其性好鬪、按史記封禪書、文公獲若石于陳倉北阪城之、其神從東南來、集于祠城、則若雄雞、其聲殷云、野雞夜雊、集解引如淳曰、野雞、雉也、呂后名雉、故曰野雞、漢書郊祀志、雄雞作雄雉、雊作鳴、顏師古注云、野雞亦雉也、避呂后諱、故曰野雞、上言雄雉、下言野雞、史駁文也、王念孫曰、史記殷本紀有飛雉登鼎耳而呴、屈原傳、雞雉翔舞、淮南王安傳、守下雉之城、皆不呂后、不于封禪書獨一レ之也、漢書五行志、有飛雉子庭、又云、天水翼南山大石鳴、壄雞皆鳴、一篇之中、旣言雉、又言野雞、與郊祀志同、不駁文如是之多也、今按、易林睽之大壯云、鷹飛雉遽、兎伏不起、狐張狼鳴、野雞驚駭、則野雞之非雉明甚、又按、急就篇説飛鳥云、鳳爵鴻鵠鴈鶩雉、其説六畜則云、豭豶狡犬野雞雛、則野雞爲常畜之雞矣、謂之野雞者、野鄙所畜之雞、野雞夜鳴者、猶淮南泰族訓云雄雞夜鳴耳、郊祀志之雄雉野雞、五行志之野雞飛雉、皆判然兩物、謂野雞避呂后諱者、不其解而爲之辭也、廣雅云、野雞、雉也、亦誤矣、顏師古急就篇注又云、野雞生在山野、鷮雞鶡雞天雞山雞之類、如此則非復常畜者、何以急就篇數六畜之哉、

〔類聚名義抄〕

〈九/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0697https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01331.gif 〈今正羊照反雉名〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01332.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01333.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01334.gif 〈俗アヲキシ(○○○○)〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01335.gif 鷮〈今正、nanhttps://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01336.gif 二音、キジ、〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01337.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01338.gif 〈俗正、直流反、南方雉、〉 鵗〈音希、北方雉名、キキシ(○○)、〉䳄〈キシノメトリ(○○○○○○)〉 雉キシ

〔同〕

〈九/隹〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0697 雉〈音知、キヾス、一云キジ、〉 瞿〈徒歷反、キシ、〉

〔下學集〕

〈上/氣形〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0697 鴙(キジ)翬〈二字義同〉山梁(サンリヤウ)〈雉異名也、見論語也、〉

〔玉海〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0697 壽永三年〈○元曆元年〉十二月廿一日丙子、右近府生下毛野忠武持參雉〈付枝○中略〉此間自簾中出衣、基輔朝臣取傳給、〈○中略〉先々近衞舍人雪朝持來山梁(○○)之時、給御衣故實

〔拾遺和歌集〕

〈七/物名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0697 きじのをとり すけみ 河きしのをとりおるべき所あらばうきにしにせぬ身はなげつべし

〔八雲御抄〕

〈三下/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0698 雉 さをとるきゞすと云おとる由 かた山きゞす やたけのきゞす やみねとも つまよぶとも あさのゝきゞす
日本紀曰、ななしきじ、是たかむすびの使、あめわかみこの家の、かつらのきにゐる、天わかみこ射之、 とかり、とたちなどいへり、皆きじの事也、 あさるきゞす

〔藻鹽草〕

〈十/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0698
きゞす〈異名にあらず、きゞしと云なきゞすと云也、しとずと同五音也、日本紀にきゞしと云り、雉子とかく、〉 さをとる雉〈椙野にさをとる雉いちしくゝねさしもなかん〉 かた山雉 やたけの雉〈八峯也、又やみれのきゞす共云り、又やたけのきじとは、ねたけき雉を、やたけの雉と云共云り、雉は春たけき也、〉 つまよふあさの雉 あさる雉〈食物もとむるかほ也と云々、さの字をすみてよむ也、駒にも云也、仍禽獸に云り、〉 はしる雉のかたあと〈狩也〉 きじのはね音〈重々〉 雉鳴とよみ〈萬〉 なゝしきじ〈○註略〉 かほよ鳥〈雉男鳥也、藏玉にあり、但又別の鳥共云、〉 うつはり〈春鳥也、みよしのゝ山のうつはりなく聲にことしも春のたつかとぞおもふ、是不審也、歌樣も燕鳥かときこえたり、〉 御幸鳥〈狩にする歟〉 きじのほろうとかなく しばうつりして鳴雉 さわらびあさり雉なく なぐきじのきじのほろ〳〵なみだこぼるゝ 野火けつ雉のはねのしづく きゞすのひな

〔東雅〕

〈十七/禽鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0698 雉キシ〈○中略〉 此物の名、太古の頃聞えて、其義旣に不詳、則今俗に、凡そ事のはげしきをケヾシといふ事あり、もし古の遺言ならんにはゲヾシとは、キヾシといふ語の轉ぜしにて、キヾシと云ひしは、此鳥の性の勇み烈しきを云ひしも知るべからず、

〔碩鼠漫筆〕

〈十五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0698 雉の名義
此名義を古事記傳卷十三〈廿二左〉に、伎藝志と云名は、其鳴聲を以負(ツケ)たる物なり、〈凡て鳥蟲獸などに、其鳴聲を以名とせる例多し、〉云々〈以上〉と見えたれどおぼつかなし、伎藝は其聲ともいふべけれど、斯は如何にとも解べき由なし、さるに依て春村按ふに、こは聞知鳥(キヽシリトリ)の義にて、そを下略せし名なるべし、〈但し次の岐を藝と濁るに、名と成〉 〈て後の音便なるべし、原は必淸音なりけむ事、下に猶云をも見るべし、〉今かくおもひ得たるもまた同じ傳の十三〈廿四右〉なる、無名雉(ナヽキキヾシ)を明せる條に、此度の御使に、かく雉鳥をしも撰びて遣はせしは、如何なる所以にか測難けれども、漢籍どもを見るに、雉は物聞こと聰く、又よく耿介(ミサヲ)を守る鳥なりと云〈へ〉れば、さる由にぞ有けむかし、〈禮記月令に、季冬之月云々、雉雊註に、謂陽動則雉鳴而句其頸也、前漢書五行志に、雉者聽察、先聞雷聲、故月令以紀氣、また禮記に、士相見之贄各執雉、注に、取其守介不一レ節などいヘり、以上、〉とあるに據れば、漢書の聽察は、キヽシルとも訓べき事を思ふべし、かゝれば岐藝志は正しき名なるを、萬葉集卷三〈卅右〉に、淺野(アサヌノ)之雉(キヾス)、卷八〈十九右〉に、安佐留雉(アサルキヾス)、卷十〈十右〉に、春鷄鳴(キヾスナク)、卷十二〈四十一右〉に、片山雉(カタヤマキヾス)、卷十三〈廿五右〉に、野鳥雉動(ノツドリキヾスモトヨミ)、卷十九〈十左〉に、左乎騰流鴙(サヲドルキヾズ)、また八峯之鴙(ヤツヲノキヾス)等見えたるは、傍椴字を誤れるなり、此事も記傳卷十一〈十二左〉に、萬葉十四〈七丁〉にも吉藝志(キギシ)とあり〈他卷に雉とあるも、皆如此 訓べきを、今本にキヾスと訓るは、古を知ぬ誤なり、〉と見えたるが如し、但し如此誤れる原は、倭名抄卷十八〈羽族類〉に、廣雅云、雉、〈音智、上聲之重、和名、木々須、一云木之、〉野雞也、〈古本には、鴙亦作雉、またhttps://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01339.gif 居苗反、鳪音卜、雉也、〉とあるよりなるべし、其所以は如何にといふに、須はスの音〈拗音シユ〉なる事云までもなけれど、摸虞韻と支脂之韻とは、互に通ふ古音の例にて、シの假字とせしもの此彼見ゆれば、木々須も實はキヾシならむを、ふと通音に呼なれたるなるべし、〈○下略〉

雉種類

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0699 雉〈訓木之、古訓木木須、〉
集解、雉處處有之、東北最多、常之秋田、奧之仙臺、南部、津輕、岩城、羽之庄内、信之諏訪爲上、三越、飛州衣之、狀類鷄、而雄者頂有雙角毛、頭頸胸腹、翠黑有光、眼頰紅觜蒼而尖、背翮采斑色、腰有長綠毛、尾長有文采、翅短而蒼黑斑、脛掌亦似雞而勁、雌者黃赤黑斑而文不鮮尾短、其雌雄性狡躁好鬪、其飛勁捷不翔舞、其鳴則必翥(ハウチ)聲高響而短、呼曰鷕(ホロロ)、鷕(ウツ)音杏、雉本屬離火胃土、故陽動震、則必鳴而勾其頸也、其味最美、以供上饌、通神以尊廟祀、冬月可食、春後肉臞脂少而不佳、月令曰、仲冬雉始雊(ツルム)至春二三月而伏卵、其卵褐色白亦有、比鷄卵則稍小、床亦不鷄卵也、雌伏卵時濳伏于叢中、雄不近境、狐狸猫犬或人至、則頻翥而鳴、是雄愛惜雌及卵之故乎、春月山人燒野、火旣欲雉之伏卵處時、雌先張翅而仰 臥于地、雄https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00934.gif 數卵、來置雌之翅内、而後雄https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00934.gif 雌之觜、急引去以辟火、是雉之性慧自然如此者、不鶴之有一レ智矣、若人欲雌及連一レ卵、則先挾籠不伏卵處、周巡而獲之、若陽見伏卵處則雌驚去、大抵雉之潛人者藏菅見尾、故世俗以人之隱形露迹者、譬雉濳草叢也、雉至三四月蛇有毒不人、雉啄蛇頭、蛇捲雉頸者數回、雉急翥而鷕、則蛇身自斷落、而後悉食之、其勢若斯矣、〈○中略〉
高麗雉〈狀類雉而光彩最麗、頸有白環絞、此亦自朝鮮來、難雌雄而伏上レ卵、然其類不多、〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0700 雉 キヾス〈和名鈔〉 キジ〈同上〉 キヾシ〈古歌〉 キヾスヘドリ ミユキドリ カホヨドリ カホドリ一説雄 ヤマノウツバリ ウツバリ サノツドリ ノツトリ〈共同上〉 一名鳩〈禽經〉 原禽〈典籍便覽〉 良游〈事物異名〉 夏翟 戸魯還〈共同上、蒙古名、〉 妬壟〈事物紺珠〉 錦衣 史芳卿 義鳥〈共同上〉 積陰〈通雅〉 陳寶〈故事成語考〉
山野ニ多レドモ人ニ近ヅカズ、雛ヲ取テ畜ヘバ、善馴レドモ、長ズレバ自逃レ去ル、雄ハ頂ニ小紅冠アリテ時々コレヲ出ス、冠出ルトキハ、耳邊ニモ小ク赤キ冠ノ如キ者ヲ出ス、大和本草ニ、攝州能勢郡神山村及大和長谷山ノ雉ハ、冠ナシト云ヘリ、〈○中略〉春夏ニハ更ニ應ジテ鳴ク、必二聲高ク響テ短シ、ソノ肉味美ニシテ上膳ニ供ス、然ドモ秋冬ノミ食フベシ、益アヲ、春後ハ肉臞脂少クシテ佳ナラズ、且毒アリ食べカラズ、東北州最多シ奧州ニテハ玉造郡岩出山ノ雉ヲ上品トス、玉造キジト云、又南部三戸郡田子ノ雉ヲ名産トス、獻上アリ、

瑞雉

〔延喜式〕

〈二十一/治部〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0700 祥瑞
白雉(○○)、〈岱宗之精也〉雉白首(○○○)、〈○中略〉 右中瑞

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0700 白雉
狀全似雉而純白、頰色純紅、此亦雖雌雄上レ卵、其種不多、孝德帝大化六年、長州獻白雉、帝甚喜、大召百官于朝而視之、百官爲上瑞以拜賀、故改大化白雉元年、爾後爲祥瑞之物、而今代惟愛其美 耳、

〔日本書紀〕

〈二十二/推古〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0701 七年九月癸亥朔、百濟貢〈○中略〉白雉一侯

〔扶桑略記〕

〈三/推古〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0701 七年八月、百濟國貢白雉一隻、是鳳類也、

〔日本書紀〕

〈二十五/孝德〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0701 白雉元年二月戊寅、穴戸國司草壁連醜經獻白雉曰、國造首之同族贄、正月九日、於麻山焉、於是問諸百濟君、曰、後漢明帝永平十一年、白雉所在見焉云云、又問沙門等、沙門對曰、耳所聞、目所覩、宜天下使上レ民心、道登法師曰、昔高麗欲伽藍、無地不一レ覽、便於一所白鹿徐行、遂於此地造伽藍、名白鹿園寺、住持佛法、又白雀見于一寺田莊、國人僉曰休祥、又遣大唐使者、持死三足烏來、國人亦曰、休祥、斯等雖微、尚謂祥物、況復白雉、僧旻法師曰、此謂休祥、足希物、伏聞、王者旁流四表、則白雉見、又王者祭祀不相踰、宴食衣服有節則至、又王者淸素剿山出白雉、又王者仁聖則見、周成王時、越裳氏來獻白雉曰、吾聞、國之黃耉曰、久矣無別風淫雨、江海不波溢、三年于玆矣、意中國有聖人乎、蓋往朝之、故重三譯而至、又晉武帝成寧元年、見松滋、是則休祥、可天下、是以白雉使于園、 甲申、朝庭隊仗、如元會儀、左右大臣百官人等、爲四列於紫門外、以粟田臣飯虫等四人、使雉輿、而在前去、左右大臣乃率百官及百濟君豐璋、其弟塞城忠勝、高麗侍醫毛治、新羅侍學士等、而至中庭、使三國公麻呂、猪名公高見、三輪君甕穗、紀臣麻呂岐太四人、代執雉輿、而進殿前、時左右大臣就執輿前頭、伊勢王、三國公麻呂、倉臣小屎、執輿後頭、置於御座之前、天皇卽召皇太子、〈○天智〉共執而觀、皇太子退而再拜、使巨勢大臣奉一レ賀曰、公卿百官人等奉陛下、以淸平之德、治天下之故、爰有白雉、自西方出、乃是陛下及千秋萬歲、淸治四方大八島、公卿百官及諸百姓等、冀罄忠誠、勤將事、奉賀訖再拜、詔目、聖王出世、治天下時、天則應之、示其祥瑞、曩者西土之君、周成王世與漢明帝時、白雉爰見、我日本國譽田天皇之世、白烏樔宮、大鷦鷯帝之時、龍馬西見、是以自古迄今、祥瑞時見、以應有德、其類多矣、所謂鳳凰騏驎、白雉白烏若斯鳥獸、及于草木、有符應者、皆是天地所生、休祥嘉瑞也、夫明聖之君、獲斯祥瑞、適其宜也、 朕惟虚薄、何以享斯、蓋此專由扶翼公卿臣連伴造國造等、各盡丹誠、奉上レ遵制度之所致也、是故始於公卿百官等、以淸白意奉神祗、並受休祥、令天下、又詔曰、四方諸國郡等、由天委付之故、朕總臨而御寓、今我親神祖之所知、穴戸國中有此嘉瑞、所以大赦天下、改元白雉、仍禁鷹於穴戸境堺、賜公卿大夫以下至于令史、各有差、於是褒美國司草壁連醜經、授大山、幷大給祿、復穴戸三年調役

〔扶桑略記〕

〈五/天智〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0702 七年五月日、自常陸國、進白雉幷生角馬

〔日本書紀〕

〈二十九/天武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0702 二年三月壬寅、備後國司獲白雉於龜石郡而貢、乃當郡課役悉免、仍大赦天下

〔扶桑略記〕

〈五/天武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0702 十五年丙戌、大倭國進赤雉(○○)、仍七月改爲朱鳥元年

〔續日本紀〕

〈六/元明〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0702 和銅六年十一月丙子、但馬國獻白雉、 十二月乙巳、近江國言、慶雲見、丹波國獻白雉、仍曲赦二國

〔扶桑略記〕

〈六/元正〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0702 和銅八年〈○靈龜元年〉同月〈○九月〉丹後國進白雉

〔續日本紀〕

〈十三/聖武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0702 天平十二年正月戊子朔、飛驒國獻白狐白雉

〔續日本紀〕

〈二十九/稱德〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0702 神護景雲二年六月癸巳、武藏國獻白雉、勅、朕以虚薄、謬奉洪基、君臨四方、子育萬類、善政未洽、毎兢情於負一レ重、淳風或虧、常駭念於馭奔、於是武歲國橘樹郡人飛鳥部吉志五百國、於同國久良郡白雉獻焉、卽下群卿之、奏云、雉者斯良臣一心忠貞之應、白色乃聖朝重光照臨之符、國號武藏、旣呈武崇文之祥蔀稱久良、是明寶曆延長之表、姓是吉志、則標兆民子來之心、名五百國、固彰五方朝貢之驗、朕對越嘉貺、還愧寡德、昔者隆周刑措、越裳乃致、豐碕〈○孝德〉升平、長門亦獻、永言休徵、固可惠、宜武藏國天平神護二年巳往正税未納皆悉免除、又免久良郡今年田租三分之一、又國司及久良郡司各叙位一級其獻雉人五百國、宜從八位下絶十匹、綿廿屯、布卌端、正税一千束

〔續日本紀〕

〈三十/稱德〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0702 寶龜元年七月戊寅、筑前國嘉麻郡人、財部宇代獲白雉、賜爵人二級、稻五百束

〔續日本紀〕

〈三十一/光仁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0702 寶龜二年三月戊午朔、太宰府獻白雉、 閏三月乙巳、壹伎島獻白雉、授守外從五位 下田部直息麻呂外從五位上、賜絁十匹、綿廿屯、布卌端、稻一千束、目從七位下〈○下原作上、據類聚國史改、〉笠朝臣猪養從七位上、賞賜半之、除當島田租三分之一

〔續日本紀〕

〈三十三/光仁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0703 寶龜六年四月丁丑、山背國獻白雉

〔續日本紀〕

〈三十四/光仁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0703 寶龜八年十一月丙寅、長門國獻白雉

〔續日本紀〕

〈三十九/桓武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0703 延曆六年四月庚午、山背國獻白雉

〔類聚國史〕

〈百六十五/祥瑞〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0703 延曆十一年三月乙亥、美作國獻白雉

〔類聚國史〕

〈七十一/歲時〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0703 延曆十五年正月甲午朔、長門國獻白雉

〔類聚國史〕

〈百六十五/祥瑞〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0703 弘仁五年二月己卯朔、陸奧國獲白雉
天長四年五月庚午、武藏國獻白雉

〔文德實錄〕

〈十〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0703 天安二年七月甲子、是日武藏國上白雌雉一

〔三代實錄〕

〈二十八/淸和〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0703 貞觀十八年正月廿七日乙巳、越中國獲白雉而獻、

〔三代實錄〕

〈三十/陽成〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0703 元慶元年正月三日乙亥、是日但馬國獻白雉一

〔日本紀略〕

〈二/朱雀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0703 承平七年二月一甘甲申、太宰府獻白雉

〔日本紀略〕

〈八/花山〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0703 寬和元年五月十七日辛酉、信濃國獻白雉、 廿日甲子、今日兵部少輔藤原忠輔獻白雉勘文、 廿一日乙丑、白雉令藏人所之間、一足折畢、被北山靈感谷畢、

〔日本紀略〕

〈九/一條〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0703 正曆二年九月十日丙午、尾張國〈○國下恐脱獻字〉白雉、

〔日本紀略〕

〈十一/條〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0703 長保三年十二月廿七日甲子、今日右衞門少尉源忠隆獻白雉純白

〔一話一言〕

〈二十一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0703 攝州白雉
當正月廿八日、攝州西成郡九條村字本村と申所に而、白雉捕候よし、當月四日、大坂町人過書町にて伊賀屋長次郎と申方へ、代錢三十七貫三百文にて、同村百姓市兵衞下男藤七より賣渡候段、村 役人共申聞候に付、早々先方へ懸合、白雉取戻し可差出旨申渡爲掛合候所、追日飼付入用等も相懸り、其外同仲間も有之儀に付、相談之上可挨拶旨申聞、追々掛合候得共、相對に而は難行屆、依之右白雉賣主へ差戻候樣御達之義、大坂町奉行佐久聞備後守殿へ御懸合、今廿五日村方へ請取、御役所へ差出候よしにて、御書上本紙繪圖とも、仲之間御組頭中へ御狀一封、六日限を以差立之、二月三日過書町著いたし、同四日御殿へ持參、當地へ差送り候ては、道中手當、此度長崎表より鳥獸御用に付、高木作左衞門手代相添、當地へ罷出候風聞有之候間、御同人江戸御役所へ振合聞合、其外早川八郎左衞門殿、稻垣藤四郎殿より、白牛差出候類例等爲聞合、取計候積り、
一右白雉野鳥を捕へ候儀に而、殊之外衰候由之所、先買手長次郎功者之ものにて追々飼付、此節は凡八九分通肉付、丈夫に相見へ候得共、人馴付不宜、大坂御役宅内に庭籠補理移し入、晝夜兩人宛番人付置、朝夕長次郎罷越、餌飼いたし候義に御座候、右に付當地へ差立候に付而は、手附手代足輕幷飼付人差添、道中之義も、漸平均六里歩行位ならでは難相成よし、左候へば凡廿日餘も可相掛、然所道中八十八夜に懸り候ては、鳥痛候よし、右長次郎申聞、遲くも三月十日比迄に、當地著いたし候樣、右日積りにて來月廿日前、大坂表差立候樣、道中籠用意等もいたし候に付、來月十四五日比迄には、御下知到著不致候而は、間に合不申候右之心得を以申上候積り、右長次郎儀も幼年より飼鳥相好み、鍛錬いたし候者に付、諸鳥遠國へ差送り候義も、度々手掛候趣に御座候、當時之飼餌は小麥五分、玄米二分、大麥壹分半、外一分籾、外大根之葉水にしたし置飼付申候、右白雉總羽色白く觜薄靑く、目の上下、幷頰之邊赤く、足薄鼠色にて、通例之雉よりは少々小き方に御座候、右は閏正月廿五日朝御書上にて、二月三日著致シ候事、
享和三亥年
右は篠山十兵衞御代官所に付、右同人手代口達之趣、 右白雉、享和三年亥三月、御城へ來候由、

〔宮川舍漫筆〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0705 白雉
同〈○天保〉八酉年の事なりしが、駿州にて白雉を捕候事、いと目出度祥瑞なりとの噂あり、
公儀〈江〉さし上候事
岸本何某御代官所
駿州北安東村にて、白雉を差上候者〈江〉、御手當之儀申上候書付、
書面願之通、爲御手當
金壹兩被下置候旨被仰渡、 矢部何某
承知候、
〈酉〉五月廿八日
岸本某御代官所駿州安倍郡北安東村百姓源太郎義、同州庵原郡山中にて捕候白雉差上御留 に相成候に付、可相成も御座候はゞ、相應之御手當被下候樣仕度旨、十輔相願候旨相糺候處、前 前ゟ右體之品指上候者〈江〉は、御手當被下置候旨、源太郎〈江〉も相應之御手當被下置候樣仕度奉 存候、以上、
〈酉〉五月〈○下略〉

〔嘉永明治年間錄〕

〈九〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0705 万延元年十一月十九日、織田兵部少輔白雉子ヲ幕府ニ獻ズ、
私領分、羽州天童陣屋前城山と唱へ、又は鶴の舞候形に似寄申候迚、舞鶴山とも申來候場所にて、當申の五月頃、卵生と相見え候、白雉子雛鳥八月中相見候に付取獲候樣申付、去九月十日手に人、追々飼付、健に生立申候、然る處白雉子の義は、古來稀成靈鳥の由傳聞、此節當表へ取寄相成候處此度御本丸へ御移徙も被濟、誠に以て恐悦折柄に付、此上の吉祥にも相成候樣、何卒獻上仕度 奉存候に付、此段奉伺候、以上、十二月朔日に至り内獻上に成る、

怪雉

〔續日本後紀〕

〈十七/仁明〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0706 承和十四年三月己酉、放恠雉(○○)於北野、高飛遠去、

雉飼養法

〔百千鳥〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0706 尾長雉子 餌かい 前同〈○キビ、菜、玄米、〉
大きさ高麗きじより大きく、尾長し、今ふつていなるものにてわたらず、子もなすべし、追而考べし、當時なか〳〵巢のところへゆかず、一向なし、それゆへにりやくす、
白雉子 餌かい 前同
大きさ高麗きじにおなじやう、かうらいのしろきものなり、耳もあり、本しろ雉子すくなし、眞白のうち尾のかたへかゝりたる蓑毛のはしすこし黃にかばいろなるを、本性のしろ雉子とす、是は塒の度だん〳〵常の雉子になるものにてたのみなし、大かたはとやにてほん毛へもどる物なり、本性の白雉子はすくなし、子もずい分出來る也、飼かた錦鷄におなじ、
高麗雉子 餌かい 前同
大きさ和の雉子に少し大ぶり、頭黑く茶色の毛交り光あり、脊も常の雉子のごとく、胸黑くむらさきいろに光、脇腹にかき色の毛あり、毛の末に黑き玉のふ有、尾常の雉子のとふり、見事成首輪切ざるを上とす、眼もふどう目をよしとす、かし目はあしゝ、雌雄ともに眼を吟味すべし、玉子は廿四日にて開、子は錦鷄より又飼立にくき物なり、筋つまる病出て、十羽に五羽は落たがる物にてかいにくし、中子に成まで、上籠にて飼立るがよし、庭籠へ早く放す時は怪我多し、其うへ上籠にて久しく飼ふ時は、能馴れてよし、うづらより大きく成たる頃、庭籠へ放すべし、子のうち首の上より脊へかけて、赤く照出るは女鳥也、しらけたるは男鳥也、總たい飼方錦鷄におなじ、其年の内とやを上、見事に成る物也、

〔飼鳥必用〕

〈中〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0706 高麗雉子 朝鮮國の地雉子にて、我朝の地雉子に同じ、胸より腹迄赤紫にて、首白輪有り、飼方何れ地雉子同樣、地雉子懸合の高麗諸國より流布して紛敷有り、白輪大キク赤實宜敷を上する、肥前の國平戸の内放島へ放シ飼の高麗ふへ、此鳥宜敷、乍去國の掟きびしく、取出シ他國へ出ス事を近年禁ず、同國博多町の鳥や、長崎より尾長雉子とて唐人持渡、長崎より江戸へ相廻ル、尾羽ながく三尺餘りにて、鳥のようす則山鳥の大方有り、其國其所にて同じ鳥にも、鳥のようすにて餘多有るものゆへに、一方に思ふべからず、勿論雉子と鷄は年越雌かんと成、高麗も右同樣、飼方米にては惡し、籾そば諸干麥黍を、右の品にて飼べしよろし、

雉事蹟

〔古事記〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0707 故爾天照大御神高御産巢日神、亦問諸神等、天若日子久不復奏、又遣曷神以問天若日子之淹留所由、於是諸神及思金神答白、可雉名鳴女(キヾシナナキメ)時詔之、汝行問天若日子狀者、汝所以使葦原中國者、言和其國之荒振神等之者也、何至于八年復奏、故爾鳴女自天降到、居天若日子之門湯津楓上而言委曲如天神之詔命、爾天佐具賣(アメノサグメ)、〈此三字以音〉聞此鳥言而語天若日子言、此鳥者其鳴音甚惡、故可射殺云進、卽天若日子、持天神所賜天之波士弓、天之加久矢、射殺其雉、爾其矢自雉胸通而逆射上、逮天安河之河原天照大御神、高木神之御所、是高木神者、高御産巢日神之別名、故高木神取其矢見者、血著其矢羽、於是高木神吿之、此矢者所天若日子之矢、卽示諸神等詔者、或天若日子不命、爲惡神之矢之至者、不天若日子、或有邪心者、天若日子於此矢麻賀禮〈此三字以音〉云而取其矢百其矢穴衝返下者、中天若日子寢胡床之高胸坂以死、亦其雉不還、故於今諺雉之頓使本是也、故天若日子之妻下照比賣之哭聲、與風響到天、於是在天天若日子之父、天津國玉神、及其妻子聞而降來哭悲、乃於其處喪屋而、阿鴈爲岐佐理持、〈自岐下三学以音〉鷺爲掃持、翠鳥爲御食人、雀爲碓女、雉(キヾシ)爲哭女(ナキメ)、如此行定而、日八日、夜八夜以遊也、

〔古事記傳〕

〈十三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0707 名鳴女には二〈ツ〉の考あり、一〈ツ〉には先、伎藝志(キヾシ)と云名は、其鳴聲を以負たる物なれば、 〈凡て鳥虫獣などに、其鳴聲を以名とせる例おほし、〉己が名を呼て鳴意にて、名鳴女(ナナキメ)とは云なり、さて此は、雉とのみ云ても事足れるを、又かく名鳴女としも云るは、御使に遣す處なる故に、人めかしき名を擧たる物なり、〈かくはかなだちたるが、古傳のめでたきなり、後世のなまさかしき心には、如此云を、淺はかに思ふ人もありなんか、〉又思ふに、次にはたゞ鳴女(ナキメ)とのみあれば、此も名者鳴女と訓べきにや、〈名鳴女ならんには、名な略てたゞ鳴女と云ては、聞ゑぬことなればなり、〉下ノ段に、雉爲哭女と云ることもあり、されど書紀に無名雉(ナヽキキヾシ)とあると合せて見れば、必名鳴(ナヽキ)とつゞくべきなれば、此は只鳴女には非じ、さて此記と照して、書紀の無名をも、那々伎と訓べし、〈此考へによるときは、此記の名鳴は正字、書紀の無名は借字なり、〉二〈ツ〉には、書紀の無名を正字として、此記の名鳴をも、那々志と訓べし、物を鳴すを、古言に那須(ナス)と云り、〈笛を吹なす、琴をかきなすなどいふが如し、〉されば無(ナシ)の借字に、鳴(ナシ)とは書るなり、卷首に、畫鳴(カキナシ)、註訓鳴云那志とあるに同じ、又無名女の意として、那々伎賣と訓むもひがことならじ、さて書紀に、遣無名雉伺之、また一書に、使雉往候などある、伺〈ノ〉字候〈ノ〉字を思ふに、此〈ノ〉御使には、名ある神をば、遣さずて、故に雉〈ノ〉鳥をしも擇びて遣すは、天若日子が狀を、伺ひ視しめむが爲なる故に、名も無き微賤者を遣すと云意にて、無名女(ナナシメ)とは云か、右ニツの考、人々好まむ方を取てよ、さて女と云は、書紀一書に、乃遣無名雄雉往候之、此雉降來、因粟田豆田、則留而不返、故復遣無名雌雉、此鳥下來、爲天稚彦所射、中其矢而上報、ともあるに依らば、雌雉の意ともすべけれど、凡て雌雄にかゝはらず、魚鳥などの名をば、某女と云ぞ古の常なる、〈○註略〉さて此度の御使に、かく雉鳥をしも撰びて遣はせしは、如何なる所以にか、測難けれども、漢籍どもを見るに、雉は物聞こと聰く、又よく耿介(ミサヲ)を守る鳥なりと云れば、さる由にぞ有けむかし、〈○下略〉

〔塵袋〕

〈八〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0708 一シヅノヲダマキヲヘソトイフハ、人ノへソニニタル歟、〈○中略〉
常陸國記ニ、昔兄ト妹ト同日田ヲツクリテ、今日ヲソクウヘタランモノハ伊福部(イフクベノ)神(ノ)ワザハヒヲカブルベシト云ケルホドニ、妹ガ田ヲオンクウヘタリケリ、其時イカヅチナリテ妹ヲケコロシ ツ、兄大ニナゲキキテウラミテ、カタキヲウタントスルニ、其神ノ所在ヲシラズ、一ノ雌雉(メキジ)トビ來リテ、カタノウヘニイタリ、ヘソヲトリテ、雉〈ノ〉尾ニカケタルニ、キジトビテ、伊福部岳ニアガリヌ、又其ヘソヲツナギテユクニ、イカヅチノフセル石屋ニイタリテ、タチヲヌキテ、神雷ヲキラントスルニ、神雷オソレヲノヽキテ、タスカラン事ヲコフ、子ガハクハキミガ命ニシタガヒテ、百歲ノノチニイタルマデ、キミガ子孫ノスエニ、雷震ノヲソレナカラント、是ヲユルシテコロサズ、キジノ恩ヲヨロコビテ、生々世々ニ德ヲワスレジ、若シ違犯アラバ、病ニマツハレテ、生涯不幸ナルベシトチカヘリ、其故ニ其所ノ百姓ハ、今ノ世マデ雉ヲクハズトカヤ、

〔扶桑略記〕

〈六/聖武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0709 神龜四年四月丁卯日、飄風忽來、吹折南苑樹二株、卽化成雉、

〔續日本紀〕

〈十四/聖武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0709 天平十四年十一月壬子、大隅國司言、從今月二十三日未時、至二十八日、空中有聲如太鼓、野雉相驚、地大震動、

〔日本紀略〕

〈桓武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0709 延曆十三年正月癸未、有雉集主鷹司垣上、 十六年五月戊戌、有雉集禁中正殿、 十月庚辰、雉止兵衞陣、入禁中闈房獲、

〔日本紀略〕

〈淳和〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0709 天長七年十月庚戌、一雌雉來、集左衞門陣建春門以北垣欄中、衞士射而獲、

〔三代實錄〕

〈四十二/陽成〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0709 元慶六年九月十八日丁亥、有雄雉淸凉殿上、須叟飛入東宮、勅遣使求之、遂無獲、

〔扶桑略記〕

〈二十三/醍醐〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0709 延喜七年七月八日、雌雉集桂芳房北墻上

〔大鏡〕

〈二/太政大臣基經〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0709 太政大臣基經のおとゞは、長良中納言の三郎におはす、〈○中略〉よしふさのおとどの大饗にや、むかしはみこたち、かならずつかせ給事にて、わたらせ給へるに、雉足はかならずする物にてありけるを、いかゞしけん、そんじやの御前にとりおとしてけり、

〔大鏡〕

〈五/太政大臣兼通〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0709 この殿〈○藤原兼通〉には、後夜にめすばうすの御さかなには、たゞ今ころしだる雉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0710 子をぞまいらせけるに、もてまいりあふべきならねば、よひよりぞまうけてをかれけるなりとをのぬしの、まだ六位にて、はじめてまいらるゝ夜、御くつびつのもとにいられたりければ、ひつのうちに、物のほと〳〵としけるがあやしさに、くらきまぎれなれば、やをらほそめにあけて見給ひければ、きじのおとりはかゞまりをる物か、人のいふ事はまことなりけりと、あさましくて、人のねにけるおりに、やをらとりいでつ、ふところにさし入れて、冷泉院の山にはなちたりしかば、ほろ〳〵ととびてこそいにしか、ことしえたりし心ちはいみじかりしものかな、それにぞ我はかう人なりけりとは、おぼえしかとなんかたられける、

〔左經記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0710 寬仁四年十月七日甲申、人々云、敎書殿東砌上有雉云々、召陰陽師於藏人所有御ト、〈穴事、兵亂、〉

雉進獻贈與

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0710 節料
參河國〈正月三節各三擔○中略〉右參河國進

〔扶桑略記〕

〈二十五裏書/朱雀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0710 承平三年四月一甘、若狹國貢進雉雛四足卵子等

〔源氏物語〕

〈二十九/行幸〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0710 藏人の左衞門の尉を御使にて、きじ一枝たてまつらせ(○○○○○○○○○○)給ふ、おほせごとにはなにとかや、さやうのをりのことまねぶに、わづらはしくなん、
雪ふかきをしほの山にたつきじのふるき跡をもけふは尋ねよ

〔大和物語〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0710 おとこ、女のきぬをかりきて、いまのめのがりいきてさらに見えず、このきぬをみなきやりて、返しをこすとて、それにきじ、かり、かもをくはへてをこす、人の國にいたづらに見えける物どもなりけり、さりける時に、女かくいひやりける、
いなやきじ人にならせるかり衣我身にふればうきかもぞつく

〔安東郡專當沙汰文〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0710 元德元年己巳十一月注之
一毎年二月亥子日、鍬山神事之時、山鳥雄一羽宛、政所大夫、出納所大夫方、各一羽宛進之、〈號亥子之鳥○中略〉 一毎年十二月廿七八日比、號節料鳥、〈但元三之饗時料ニ被之〉山鳥雄一羽、長御館進之間、出納請取之云々、但近代檜垣東長官御時、依精好、雉雄一羽進之、〈雉新儀也〉

雉利用

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0711 雉〈○中略〉
肉、氣味、甘温無毒、〈秋冬宜食、春夏有毒、發五痔諸瘡疥、與胡桃同食、發頭風眩運及心痛、與菌蕈同食、發五痔立下血、同蕎菱食、生肥蟲、卵同葱食、生寸白蟲、自死爪甲不伸者殺人、必大按、以上數語、應不應在時宜、不一槩論一レ之、其菌蕈蕎麥之同食、而不中多多矣、〉
主治、温中益氣、止瀉痢蟻瘻
發明、李時珍論別錄發痔痢痢瘻詳矣、曰久食或非其時則有毒、此亦相當、然本經曰、酸微寒何不之譌雉屬火則不温何哉、今嗜食雉者、必發惡瘡衂血下血、患痔瘻、是温蓄火毒、而不非時非月之故也、

〔雍州府志〕

〈六/土産〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0711 雉 洛外山林執之賣市中、凡雉在寒谷而不海潮者、形小而脂多、其味爲良、

〔藝備國郡志〕

〈下/備後〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0711 土産門
雉鳥 俗傳雉生山谷之間者、其形雖小其味大勝也、〈凡物生北方之寒國者、其性强健、雉亦在山谷者、其形小其肉實而有脂、不此則不寒、其味亦厚、〉又曰不海潮者又佳也、〈凡鳥獸飮潮、則其肉柔軟而無脂、其味亦薄、〉三谷郡東條山深海遠、故雉之産于此地者爲上品

〔渡邊幸庵對話〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0711 一片羽道味駿府の人也、名醫にして異人也、〈○中略〉或時水戸賴房卿、雉子を上り候て、御食傷被成御苦み甚し、其時道味を被招候處に、殺生ゟ直に鐵炮かたげ、草鞋をはきながら御寢所へ伺公、御樣子を聞、よくして可進と申、生姜一味煎じて上る所に、忽吐ありて御本復也、道味は夫ゟ直に殺生に出る夫ゟ雉子の倉傷に生姜を用る事、皆人知りけり、總て諸鳥の食傷に能といへり、

雉雜載

〔古事記〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0711 八千矛神、將高志國之沼河比賣、幸行之時、到其沼河比賣之家、歌曰、〈○中略〉遠登賣能(ヲトメノ)、那須夜伊多斗遠淤曾夫良比(ナスヤイタドヲオソブラヒ)、和何多々勢禮婆(ワガタヽセレバ)、〈○中略〉佐怒都登理(サヌツトリ/○○○○○)、岐藝斯(キヾシ/○○○)波登與牟(ハトヨム)、〈○下略〉

〔日本書紀〕

〈十七/繼體〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0712 七年九月、勾大兄皇子〈○安閑〉親聘春日皇女、〈○中略〉口唱曰、〈○中略〉失自矩矢盧(シシクシロ)、于魔伊禰矢度儞(ウマイネシトニ)、儞播都等利(ニハツトリ)、柯稽播儺倶儺梨(カケハナクナリ)、怒都等蜊(ヌツトリ/○○○○)、枳蟻矢(キヾシ/○○○)播等余武(ハトヨム)、〈○下略〉

〔日本書紀〕

〈二十四/皇極〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0712 三年六月、是月國内巫覡等、折取枝葉掛木綿、伺大臣度橋之時、爭陳神語入微之説、其巫甚多、不具聽、老人等曰、移風之兆也、于時有謠歌三首、〈○中略〉其二曰、烏智可抱能(ヲチカタノ)、阿婆努能枳枳始(アヘヌノキキシ)、騰余謀作儒(トヨモサズ)、倭例播禰始柯騰(ワレハネシカド)、比騰曾謄余謀須(ヒトゾトヨモス)、

〔塵袋〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0712 一雷鳴ト地震トニハ雉ナク事アリ、其ノ心如何、
洪範五行云、正月雷微動而雉雊、雷ハ諸隻之象也、雉モ亦人君之類也ト云ヘリ、コレニテ思ニハ、同類ヲ感ジテナク心ナリ、地震ニハカナラズナク、是ハヲソレオドロク歟、伯耆國ノ風土記ニ云ク、震動之時ハ、鷄雉悚懼シテ則鳴、山鷄ハ踰嶺谷、卽樹羽蹬踊也ト云ヘリ、鷄雉ヤマトリ、コレラバミナ陽ノ氣ヲウケタルトリナリ、地震ハ陰陽フサガルトキ、必ズアル事ナリ、サレバ陽ノ精ナルニヨリテ、イタミオドロク歟、

〔三内口決〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0712 一同鷹鳥事
鳥トハ雉ノ事候、禁野片野名物候、就此儀故實繁多候、此鳥必付鳥柴候、〈切候刀目、口僅有之候、〉或鳥柴之代、其木不相定候、〈○下略〉

〔古今和歌集〕

〈十九/俳諧〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0712 題しらず 平貞文
春ののゝしげき草ばの妻戀にとびたつ雉のほろゝとぞ鳴

〔武江産物志〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0712 山鳥類 雉〈王子、駒場、地震の前ニ鳴、〉

山鷄

〔本草和名〕

〈十五/獸禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0712 山鷄、〈此鳥有美采、終日映水、目眩而溺死、出七卷食經、〉和名也末止利(○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十八/羽族名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0712 山鷄 七卷食經云、山鷄一名鸚鸛、〈峻儀二音、和名夜萬土利、今按山鷄鵕䴊種類各異、見漢書注、〉地理志云、山雞形如家雞、雄斑雌黑者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈七/鳥名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0713 按藝文類聚引南越志云、曾城縣多鵕䴊、鵕䴊、山鷄也、利距善鬪、光色鮮明、五采炫燿、史記索隱引司馬彪曰、鵕䴊、山鷄也、皆與引食經合、釋名云、鷩雉之憋惡者山鷄是也、説文云、鵕䴊、鷩也、然則釋名所云亦與食經同、漢書司馬相如傳顏師古注云、鵔鸃、鷩鳥也、似山鷄而小冠、背毛黃、腹下赤、項綠色、其尾毛紅赤、光采鮮明、今俗呼爲山鷄、其實非也、注所引漢書注卽是、按郭璞注爾雅鷩雉云、似山鷄而小冠、背毛黃、腹下赤、項綠色鮮明、據鷩似山鷄、以山鷄鵔鸃別物、顏氏蓋本之、李時珍曰、鸐與鷩同名山鷄、故或以爲一、或以爲二也、本草圖經云、江淮伊洛間、有一種尾長而小者山鷄、人多畜之樊中、則爾雅所謂翟山雉者也、李時珍曰、山鷄似雉、而尾長三四尺、是可以訓夜末止利、陳藏器曰、鷩雉、如雉五色、李時珍曰、鸐大而鷩小、是卽錦鷄、或曰、錦鷄之類、皆與夜末止利同、然則輔仁引鵕䴊一名山鷄誤、源君從之非是、〈○中略〉所引文、〈○地理志〉漢書晉書地理志並不載、未出、按如家鷄雄斑雌黑之山鷄、不其物、呉都賦注、山鷄如鷄而黑色、樹棲晨鳴、今所謂山鷄者鷩蛦也、

〔類聚名義抄〕

〈九/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0713 鶤鵾〈俗或正、音昆、狀如鶴而大、ヤマトリ、〉 鵕䴊〈俊儀二音、ヤマトリ、今按別、〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01340.gif 〈ヤマトリ〉 嶌〈ヤマトリ〉

〔多識編〕

〈四/禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0713 翟雉、〈也末登里、〉

〔和爾雅〕

〈六/禽鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0713 山鷄(ヤマドリ)〈山雉、鸐雉、並同、〉 鷮雞(ヲホヤマドリ)〈山雞之大者〉

〔書言字考節用集〕

〈五/氣形〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0713 鸐雉(ヤマドリ)〈郭璞云、似雉而大、長尾者、〉鵕䴊(同)〈格物論、活法、〉山鷄(同)山雉(同)翟(同)

〔八雲御抄〕

〈三/下鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0713 山鷄 をろのはつをは〈たゞの尾也〉 はつをのかゞみ〈有因緣、右他卷、〉ひとりぬるは、夫妻山のをゝへだてゝぬる也、さてひるはゆきあふなり、萬、やまどりこそはをの上につまこひすてふ、〈家持短歌〉

〔庖厨備用倭名本草〕

〈十/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0713 鸐雉〈○中略〉 元升曰、山雞ハ其一名ナリ、多識篇ノ程字鸐字トオナジ、考本草、一名山雉、一種小シテ尾長ヲ山雞トス、人多クコレヲ樊中ニ畜フ爾雅ニイヘル鸐ハ山雞ナリ、 四種アリ、名同ジウシテ物異ナリ、雉ニ似テ尾ノ長サ三四尺ナルハ鸐雉也、鶴ニ似テ尾ノ長サ五六尺、又ヨク走リテ鳴クモノハ鷮雉也、此外二ツハ鷩雉ト錦雞ナリ、鷮鸐ハミナ勇健也、自ラ其尾ヲ愛シテ叢林ニ入ズ、雨雪ニハ岩ニフシ木ニスミテ下リテ食ヲ求メズ、往々ニ餓死ス、師廣禽經云、雪封枯原文禽多死ト是也、〈○中略〉元升曰、此註ヲミレバ、鸐雉ハヤマドリ疑ナシ、山ドリハ雉ニ似テ尾長ク、雪雨ニハ岩ニ伏シ木ニトマリテ食ヲ求メズ、餓死スルモノ也、
鸐雉肉味甘性平小毒アリ、五臟氣喘シテ息シガタキヲ治スルニ、羮https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01341.gif ニシテ食ス、炙テ食スレバ中ヲ補ヒ氣ヲマス、
食禁、痔アル人ハ食スベカラズ、多食スレバ痔ヲ發ス、久食スレバ瘦ヲイタス、合食禁、蕎麥、豆豉、卵ハ葱ト同食スベカラズ、此外皆雉トオナジ、

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0714 山鷄〈訓夜萬止利
釋名、鶡、〈近俗用此字、尤善、山鷄之名不當、源順爲鵕䴊、此亦異矣、〉
集解、鶡狀類雉而黃色、帶赤黑斑、首有冠毛、尾長黃黑成文而有列、性愛其黨、若有侵者、直往赴鬪、雖死不置、常粗暴、若有獲應手摧碎、又能逐邪、故本邦自古爲箭羽邪鬼、凡禳産屋及邪病之家、以蟇目鏑邪鬼之法、必用鶡尾箭、或武官箙籙中表指箭、必鶡尾交鷹鷲羽以造箭羽、此皆取鶡之性毅而耿介鬪不死、能驅邪氣乎、中華古者、虎賁戴鶡冠、此亦取鶡性毅剛也其味美不雉肉、然大抵雌肉味美、雄肉白味不佳、東北處處最多、出于野之那須大田原二荒山中者、味尚爲勝、常奧之産亦佳、
肉、氣味、甘平無毒、〈或曰微温〉主治、令人肥健、或曰令人勇剛、此因鶡之性然歟、未詳、

〔本朝食鑑〕

〈六/華和異同〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0714 山鷄
本邦呼鶡鷄山鷄者尚矣、山鷄本鷩鷄之名也、

〔和漢三才圖會〕

〈四十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0714 山雞 鸐雞 山雉 和名夜万止利、〈○中略〉 按、鸐形大於雉而尾長二三尺、頭背尾皆赤、羽端有白圈文、頂與兩頰紅毛冠、腹淡赤而毛端有白彪、觜黑而末赤、脚黑色、其尾數二十六中最長者二、俗呼曰引尾、歌所謂絲垂尾是也、有黑横紋、白纖紋相雙爲文、亦如虎彪、其彪凡十一二、〈有十三者爲珍〉白彪中有黑點者爲常、〈無點鮮明者貴、爲眞羽、〉爲箭羽以射邪魅、或爲楊弓箭亦佳、
䳄者黑色帶赤而腹略白、其尾短五寸許、端白而頂無冠、形色遙劣也、深山中皆有之、丹波之産形小於東北者、出於薩州者極大、而有尾三四尺者、所謂鷮雉是矣、肉脂多、然有酸味於雉、凡山雞性乖巧而難捕、人緩則禹歩、急則暴飛、爲之終日費人力、非鐵銃獲、偶獲者養于樊中、飼以芹、性愛尾、令尾不于物也、相傳云、鸐雌雄日則在一處、夜則隔溪谷、視雌影寫于雄尾而啼、謂之山鳥鏡、〈萬葉集、枕雙紙、良材集等載之、〉歌人爲口弄

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0715 鸐雉 ヤマドリ〈和名鈔〉 ヒトリヌルトリ〈古歌〉
形雉ニ能似タリ、全體黃赤色ニシテ黃赤斑アリ、頭ニ冠毛アリ、尾ハ雉ノ尾ヨリ長ク、黃赤色ニシテ黑斑アリ、斑ハ雉ヨリ粗ニシテ、斜ニ左右ニ排シテ十二アリ、十三アルモノハ、俗ニ人ヲ魅スト云、〈○中略〉此鳥ハ䳄ノ尾モ長クシテ雉ニ異ナリ、ソノ肉味美ニシテ雉肉ニ減ゼズ、雌肉最勝レリ、古ヨリ白雉ヲ瑞物トス、今モ間コレアリ、鸛雉ノ白キモノモ稀ニアリ、雉ヨリ尾長ク、脚ノ色黑カラズ、

〔食物和歌本草〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0715 鸐雉
山鳥を久しく食ば痔を發す人のしゝをもをとすもの也 山鳥と蕎麥と同食蟲を生ず豉(なくら)とくへば人を害する

〔出雲風土記〕

〈意宇郡〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0715 凡諸山野所在、〈○中略〉禽獸則有〈○中略〉山鷄

〔日本書紀〕

〈二十七/天智〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0715 十年六月、是月〈○中略〉新羅遣使進調、別獻水牛一頭、山鷄一隻

〔日本書紀〕

〈三十/持統〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0716 八年六月庚申、河内國更荒郡獻白山鷄(○○○)、賜更荒郡大領小領位人一級、幷賜物、以進廣貳獲者刑部造韓國、幷賜物、

〔萬葉集〕

〈十一/古今相聞往來歌〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0716物陳
念友(オモヘドモ)、念毛金津(オモヒモカネツ)、足檜之(アシビキノ)、山鳥尾之(ヤマドリノヲノ)、永此夜乎(ナガキコノヨヲ)、
或本歌曰、足日木乃、山鳥之尾乃、四垂尾乃(シダリヲノ)、長永夜乎(ナガナガシヨヲ/ナガキナガヨ)、一鴨將宿(ヒトリカモネム)、

〔萬葉集〕

〈十四/東歌〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0716 相聞
夜麻杼里乃(ヤマドリノ)、乎呂能波都乎爾(ヲロノハツヲニ)、可賀美可家(カヾミカケ)、刀奈布倍美許曾(トナフベミコソ)、奈爾與曾利鷄米(ナニヨソリケメ)、

〔扶桑略記〕

〈二十三裏書/醍醐〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0716 延喜十二年九月十九日癸亥、午刻山鷄自丑寅方飛來、集左衞門陣上卿座上、飛去北方

〔日本紀略〕

〈十一/一條〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0716 寬弘三年十月十一日庚辰、山鷄飛入一條院、瀧口宣輔射之、給祿、

〔枕草子〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0716 鳥は
山どりは友をこひてなくに、かゞみを見せたればなぐさむらん、いとあはれなり、谷へだてたるほどなどいとこゝろぐるし、

〔左經記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0716 長元元年十月三日甲子、臨昏黑宮、人々云、未刻許山鷄起從御師家、飛渡宅上老堂高藏宅、被下人、又歸入宮中、居南庭樹木上、不幾又起飛入南宅、爲下人取云々、 四日乙丑、頃之殿下出給、余〈○源經賴〉申昨日鷄事、仰雖入下人等、頗不快事也、可御卜者、參宮召守道朝臣ト云々、可御火事者、則參啓殿仰云、御物忌日々能可愼火事、兼又以陰陽師三人火災御祭者、

錦鷄

〔多識編〕

〈四/禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0716 鷩雉、〈阿加岐志、又云仁志岐鳥(○○○○)、〉

〔和爾雅〕

〈六/禽鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0716 錦鷄(キンケイ)〈鷩雉、鵕鷄、采鷄並同、〉

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0716 錦鷄 近世自外國來、而官家畜之樊中、狀似雉而五色、頂白冠毛亦白、兩頰黃頂白有黑細文、胸腹純朱、背綠翅黑、腰帶細白毛、尾長四五尺、上二尾最長、黃黑紫斑、下四五尾長二三尺、純朱色、觜淡紅脛灰黑、利距善鬪、世愛其采美之者、故不其氣味、價貴而畜之者少矣、一種稱柹(カキ)雉者、狀類錦雞、頭背尾紅如紅柹色、帶黃有光彩、此亦外國産、而雌雄倶至者希、偶雖雌而孕不育之、故其類不多、

〔本朝食鑑〕

〈六/華和異同〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0717 錦雞
凡雉類曰雞者、漢書注、呂后名雉、故改曰野雞、錦雞小於鷩、而背文揚赤、膺前五色炫燿如孔雀羽、此乃爾雅所https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01342.gif 大雞者也、逸周書、謂之文https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01342.gif 、音汗、山雞如小雞、其冠亦小、有黃赤文、綠項紅腹紅嘴、利距善鬪、此乃爾雅所謂鷩山雞者也、逸周書謂之采雞、禽經曰、首有采毛山雞、腹有采色錦雞、今本邦所有之錦雞者、與前之二雞異矣、初來於本邦時、中華之産歟、蠻戎之産歟、未其出自、則難明辨耳、或曰、有家雞之錦雞者、予〈○平野必大〉未其形狀、則不之、又曰、吐綬雞自外國長崎、此亦未眞僞焉、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0717 鷩雉 キンケイ(○○○○)〈通名〉 一名丹鳥〈左傳昭十七年〉 山鷩〈埤雅〉 啞瑞〈淸異錄〉 赤 雉〈説文〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01343.gif 蟻〈典籍便覽〉 山鳳凰〈江西通志〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01337.gif 〈通雅〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01342.gif 雉〈同上〉
原舶來ナレドモ、今ハ蕃息シテ世上ニ多シ、形雉ニ似テ、冠毛及ビ頸頂ノ長毛、金黃色ニシテ深黑斑アリ、背ハ黑色ニシテ綠光アリ、翅ハ風キリ黑クシテ褐斑アリ、ホロツケ白ク、ホロ栗殼色ニシテ黑文アリ、腹ハ深紅色ニシテ朱ノ如シ、尾長クシテ雉ノ如シ、上ニ並ベル長羽ハ、茶色ニ黑ミアリテ、淡茶色ノ小圓斑アリ、下ニアル短羽ハ、深紅色ニシテ腹ノ色ト同ジ、觜脚倶淡黃色、性至テ强ク他鳥ヲ畏レズ、

〔百千鳥〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0717 錦鷄 餌かい 〈キビ、菜、玄米、〉
大きさ世に知るごとし、飼かた又白鷴にかわることなし、子は白鷴よりすこしよわきもの也、玉子は二十三日にてかへる、開て十日ばかりの内、手入第一なり、子は十日ばかり過て、庭籠へは なすべし、子あがり、おとりは、翌年とやをして見事に成、女とりは直に塒をする也、

〔飼鳥必用〕

〈中〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0718 錦鷄
いつの比渡しとゆふ事不知、紅毛持渡にて、何レ外國鳥と相見へ目色不常、生立方白鷴と同じ、雛の内雌雄も分り兼候得共、足の色も少シ替り、總羽赤實出候は雄也、雌は目の色違ひ、産巢ならば雄壹羽に雌三羽付置、羽をばこき圍の内放飼にて、夜々庭籠へ留候得者、玉子落しよふ宜敷、かならず高キ所へ登りたがり、玉子産み候山にては、木の上へ巢組、玉子産かへり候へば、土地にて生立候ものにはあらず哉、氣を付候得者、其樣子相見へ申候、地鳥水鳥にも木のうへゝ巢組の鳥多有之物也、功者へ尋度思ひしかど、外國鳥にてしる人なし、庭籠の内へ飼詰には、雌雄引放し差置、盛りの時節掛ケ合、一度掛り候得者不殘かへる事無相違、雄盛りの時隨分氣付、雌の不痛よふに計べし、四季とも盛り有る鳥にて心得可有事、熱氣强鳥鼻のつまる事有り、早速療治するべし、〈○中略〉
天鷄
唐紅毛の渡鳥にもあらず、錦鷄と高麗雉子懸合せ、玉子落し生立、天鷄と名附、錦鷄と地雉子と懸合せも有之、右善惡毛色いろ〳〵あり覺べし、鷄と雉子と懸合、雁鷄(ガンケイ)と名附、毛色善惡有り、此類盛薄く、玉子かへり兼候もの也、飼方雉子之通り、

吐綬鷄

〔多識編〕

〈四/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0718 吐綬雞、異名避株、〈禽經〉

〔和爾雅〕

〈六/禽鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0718 吐綬鷄(トシユケイ)〈https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01344.gif 、綬鳥、吐錦鳥並同、〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0718 鷩雉〈○中略〉
吐綬雞 和産ナシ、稀ニ舶來スルコトアリ、長崎ニテ吐錦雞(○○○)ト云フ、一名吐綬鳥、〈禽經註〉功曹、〈古今注〉綬鳥、〈埤雅〉錦心繡口鳥〈王會新編〉錦帶功曹、〈廣東新語〉孝https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01344.gif 、綬鷄、吐綬〈共同上〉形鷄ノ如ク、首ハ雉ニ似テ白色、頰赤ク 頸黃ニシテ黑文、春夏天晴明ナル時ハ、先ヅ首ニ兩翠角ヲ出シ、漸ク咽下ヨリ胸邊マデ、肉綬左右へ開キ出、綠色ニシテ碧點朱斑アリ、時ヲ踰テ盡ク歛マル、畫ニハ此ノ肉綬ヲ出セルトコロヲ畫ク、觜黑ク胸綠色ニシテ朱ノ點アリ、腹黃色ニシテ淺黑ノ波文アリ、背綠色ニシテ黑斑、端ニ金色ノ圈アリ、尾淡黑ニシテ黑點アリ、脚靑黑色ナリ、

白鷴

〔多識編〕

〈四/禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0719 白鷴、〈志良岐志(○○○○)〉異名閑客(カンカク)、

〔和爾雅〕

〈六/禽鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0719 白鷴(ハクカン/シラキジ)〈又作白鷲、一名閑客、〉

〔庖厨備用倭名本草〕

〈十/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0719 白鷼(カン) 倭名抄ニ白鷼ナシ、多識篇ニシラキジ、考本草云卽白雉也、江南ヨリ出ル、白色ニシテ、背ニ細黑文アリ、畜ベシ、其ノ肉ハ食スベシ、李時珍曰、鷼ハ山雞ニ似テ色白シ、黑文アリテ漣漪ノ如シ、尾ノ長サ三四尺、體ニ冠ト距トアリ、紅頰赤嘴、丹爪、其性耿介也李太白曰、其卵ハ雞ニテ伏スベシ、元升曰、余長崎ニ住セシトキ、大明ヨリ白鷼ノ來ルヲミツ、形狀雉ノ如クニシテ色白シ、本草註ノ説ノ如シ、其鳴モマタ雉ノ鳴ガ如シ、是モタヽカヒヲ好ム、白鷴肉味甘性平毒ナシ、中ヲ補ヒ毒ヲ解ス、

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0719 白鷴
此亦頃自中華來、不三四十年、狀似錦鷄而色白、有細黑文漣漪、尾長三四尺、體備冠距、紅頰黑腹、赤觜丹爪、其性耿介、其雌蒼赤色、頰紅觜微赤、脛亦淡紅、尾裏白而有細黑文、生卵不伏、以雞伏之、故種類未多、其所啄之食亦多、於是世俗未多蓄、最不氣味、惟官家畜之樊中、以爲珍賞也、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0719 白鷴 カノコドリ(○○○○○) シラキジ 一名越禽〈事物異名〉 鷴鳥〈典籍便覽〉 玄素先 生〈事物紺珠〉
此鳥和産無レドモ、カノコドリ、或ハシラキジノ和名アリ、廣東新語ニモ、白鷴者南越羽族之珍、卽白雉也、周武王時、越裳貢白雉、建武中、南越徼外蠻白雉、唐肅宗時、日南徼外蠻究不事、人獻白雉、皆 白鷴也ト云ヘリ、然ドモ白鷴ハ全身白色ナルニ非ズシテ嶺南ノ産ナリ、白雉ハ本邦ニモ稀ニアリテ別種ナリ、白鷴ハ今世上ニ多シ、雉ノ類ナリ、雄ハ首ニ黑色ノ冠毛アリ、頰ハ紅色、胸腹深黑色、背及翅ハ灰白色ニシテ、黑キ細斑アリテサゞナミノ如シ、時珍有黑文漣漪ト云是ナリ、尾ハ至テ長シ、觜ハ白色、本ハ淡黃色ニシテ末ニ黑ミァリ、雌ハ頭灰色、長毛ノ端黑文咽ハ灰色、咽後腹背淡綠ニシテ赤褐文、尾ハ短クシテ同色、裏ハ灰色ニシテ白章アリ、脚赤色ナリ、

〔百千鳥〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0720 白鷴 餌かい〈前におなじ、(きび、米、蕎麥、粟、菜をきざみ水を入、)もろこしもよし、〉
大きさきんけいに餘ほど大ぶりにて、頭黑く咽より下はら迄くろし、背は白くくろきもくめのふありて、見事なるもの也、正月中のせつより、よくさかるものなり、朝のうちの事なり、よくこゝろをつけて見るがよし、當時ふつていなり、めとりは總身茶いうに、こまかきふ黑くあり、たいがい世に知るところゆゑ略す、玉子は二十五日廿六日にてひらく、子もつよくかひたてよき物なり、きんけいとちがひ、口氣もなくかいよし、すり餌よわくして、餌のうちへきざみたる菜、またぼうふりむしを、箸にてませて飼ふべし、其外はさみ虫あをむし類ずいぶんよし、過ぬやうに飼ふべし、蜆のむしたるを、よくあらひきりてかふ、是も好なる物也、おほくはあしゝ、いさいの飼かたまた外にしるしあり、

〔飼鳥必用〕

〈中〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0720 白鷴
本朝へ渡初未一百年を不過、世に無多事鳥にて、夫長甚高軒にて、下賤の家に飼置事不叶、三拾年已前迄は玉子かへり候而も、生立方薄く、近世庭鳥の子同樣に歸り、數羽皆とも無事に相生立、是は鳥數寄の心得可有事、無多事鳥、念に念を入過し、雉子同樣の鳥に、小鳥生立之心得にて、朝夕の仕事にも人を不近付、餌は至而重く拵へ羽も不切、おのれと生立に仕立、肉强く鳥は荒く人おじして胸を打、羽足を痛まして、いぬ猫を除ケ用心有りて、かへつて足指に痛を生じ、夫故落鳥多し、 今にては粒餌に輕きすり餌にて、さまで活餌をも不飼、羽を切り廣キ庭へ放し、猶さわぐは儘にして差置、所相應にて皆不事に生立、鷄を料理するに牛刀を用ルとは是なるべし、何レ鳥に氣を付るには、先觜を能く見極メ、たとへ孔雀大鳥なれども平觜にて、野山にても活餌勝相立、夫故に飼方六ケ鋪、白鷴は丸觜にて雉子鷄の觜と同じ、平生粒餌而巳にて生立たる鳥ならず哉、さあらば差而摺餌其外入念ては惡敷あるべし、諸鳥是に等シ、雛の内鳩より小く、鶉位にて雌雄わかり兼候はゞ、足へ氣を付、頭の處へ目を付、能く見分べし、鳥に心有ル人は自然と分るべし、地籠之内あまり地のかたきは惡し、少シやわらかにしてよろし、堅き方は足指痛まがり候もの、しとり氣有ルよふに心懸ケ、水を引餌にて飼立、夏より秋迄稻子を飼候事宜敷、夏終日日の當り候は不宜、親鳥玉子落し候とも、二才迄はかへり薄し、三才より玉子皆かへり申候、雄は古鳥よろしきとの事は、諸事右之通、玉子は二十五日にてかへる、雛鳥の内に、早く泊り木へとめならわせ候得ば、指まがり候事無之、滿足に生立、折角大振りに出來候鳥を上とする、君命屋久島○薩摩之内尾間村にて神山へ錦鳥、原村神山へ白鷴、志戸子村住吉山江白鷴放シ飼を被仰付、村近く一圍の山にては候得共、大山引續にて候ゆへ、飛去深山へ飛住は案中にて、後年彼島へ相見へ、其節志シのものあらずんば、屋久島自然と生ずるとも云べし、

鷓鴣

〔下學集〕

〈上/氣形〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0721 鷓鴣(シヤコ)〈鳴而自呼、常好南飛、縱雖東西、開翅之始、必先南向也、〉

〔藏玉和謌集〕

〈雜〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0721 鷓鴣
鷓鴣といふ鳥のうはげの紅に散し紅葉の殘る也けり
鳥のうは毛の紅とは、鷓鴣と云鳥は、さむがりをするなり、仍秋の末になれば、もみぢのちるを、せなかにおひかさねて、霜雪の寒をふせぐなり、深山にあり、鳴聲すごく淋しといへり、此鳥に山がら似たりといふ説有、

〔庖厨備用倭名本草〕

〈十/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0722 鷓鴣〈○中略〉 考本草江南ニ生ズ、カタチ母雞ニ似テ、鳴テ鈎輈格磔(コウシユカクサク)ト云モノ是ナリ、形相似テ此鳴ヲナサヾルモノハ非ナリ、蘇頌曰、カタチ母雞ニ似テ、頭ハウヅラノ如ク、ムネニ白圓點アリテ眞珠ノ如シ、背毛ニ紫赤浪文アリ、李時珍曰、鷓鴣ハ霜雪ヲ恐ル、早晩ニハ出ルコト稀也、夜栖ニハ木葉ヲ以テ身ニオホフ、今俗云、其鳴ハ行不得哥(アンブテカ)也ト、元升曰、是ハシギノ類ナルベシ、形母雞ノ如クトイヘバ、ウバシギニテモアランカ、鷓鴣ヲシル人ナシ、
鷓鴣、肉味甘性温毒ナシ、嶺南野葛菌子毒生金毒ヲケシ、温瘧久病死セントスルニハ、毛トモニ熬酒ニ漬シ服ス、或ハ生ニテツキシボリテ、汁ヲ服シテ最ヨシ、ヨク五臟ヲ利シ、心力ヲマシテ聦明ナリ、食禁、自死ノモノハ食スベカラズ、多食スベカラズ病ヲ生ズ、合食禁、竹笋ト合食スベカラズ、

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0722 鷓胡
形似母鷄、頭如鶉、臆前有白圓點、背毛有紫赤浪文、性畏霜露、故以稻草之、未其啼聲、近頃自華來、一公家畜之、此亦最希、而予〈○平野必大〉未之、

〔大和本草〕

〈十五/異邦禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0722 鷓鴣 昔年日本ニ渡ス、矮雞(チヤボ)ノ雌ニ似テ頭ハ鶉ノ如シ、

〔飼鳥必用〕

〈中〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0722 鷓鴣
此鳥の形ちやぼの雌位にて、形鶉に似たり、雄は首より胸脊黑羽にて、丸き白大小の星シ入たるごとき府合也、啼こへは鷄の啼ならいのよふなるもの、本朝の歌人時鳥を詠しごとく、唐にては詩に賞美して唱よし唐人長崎江持渡事なし、琉球國より間々持渡り、世に稀成もの、若キ人はよく見覺へて、後世の人に言傳へべし、輕キすり餌に粒餌、菜の葉細ク割み飼立べし、雌は雉子雌の府合せに少シ黑みあり、雌雄揃ふたらば、子も生立そふなものと、兼て思ひしかども、公侯身にあらねば飼事不叶して、むなしく世を過ル事の殘念さよ、

〔西遊記〕

〈續編二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0722 鷓鴣 九州には珍らしき鳥多し、〈○中略〉肥前肥後邊の海上に、脛高く口ばし長く少し鼠色にて、翼に白き點紋ある鳥あり、舟人にとへば、しやくといふ鳥也といふ、余〈○橘南谿〉肥後の隈本にて、ある醫家を訪たりしに、折ふし彼家へ鳥を送り來れり、主持出て余に此鳥をしり給ふやととはる、先に此邊の海上にて見し鳥にて、上方にては見侍らざる鳥なりといへば、あるじ笑ふて、此鳥は唐土の南方にありといふ鷓鴣なり、船人などは言ひ誤りて、しやくと覺えたり、上方の人にはめづらしかるべければ、料理すべしとて、やがてあつものとなしぬ、其味誠に美にして、いと珍らしかりき、又其翼をこひて歸りしに、旅の日永くて、途にて鼠の爲に奪はれぬ、此鳥いよ〳〵鷓鴣なりや、唐土にては南國のみにある鳥にて、多く詩に作りて、皆都遠く離れたる情を述たり、日本に鷓鴣有事を聞ざることにていぶかしけれど、彼醫家も博物の人なれば、考ふる處もあるにや、

竹鷄

〔多識編〕

〈四/禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0723 竹雞多計乃登里異名山菌子〈藏器〉

〔和爾雅〕

〈六/禽鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0723 竹鷄(ウバシギ/ヤマシギ)〈山菌子、泥滑滑並同、或云山和尚亦同、〉

〔庖厨備用倭名本草〕

〈十/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0723 竹鷄 倭名抄に竹雞ナシ、多識篇ニタケノトリ(○○○○○)、訓蒙圖彙ニヤマシギ、或云ウバシギ、考本草此鳥多ハ竹林ニヲレリ、其形鷓鴣ニ比スレバヤヽホソシ、褐色ニシテ斑オホク赤文アリ、好テ啼鳥也、其儔ヲミレバ必ズタヽカフ、又好テ蟻ヲ食ス、元升曰、此説ノ如キ鳥アラバ竹雞ナルべシ、ヤマシギ、ウバシギ、イヅレナルラン、〈○中略〉
竹雞、肉味甘性平毒ナシ、野雞病ヲ治シ蟲ヲコロス、
解毒、鷓鴣ト竹雞トハ、常ニ好テ半夏苗ヲ食ス、又烏頭苗ヲ食ス、故ニ人多ク此二鳥ヲ多食シテ、其毒發シタルニハ、生薑ヲ用テヨシ、其説本草註ニミエタリ、

〔大和本草〕

〈十五/雜禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0723 竹雞(ウバシギ) ツグミヨリ大ニ、鳩ヨリ小也、頭小ニ尾短シ、背ト翅ノ毛黃褐黑色マダラ也、ワキニ白黑ノ文アリ、觜少長シ、味ヨシ、本草ニ載タリ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0724 竹鷄 一名四大八〈興化府志〉
和産ナシ、稀ニ舶來アリ、形矮雞ノ雌ニ似テ尾下ニ垂ル、目ハ淺赤黃色、觜淺黑色、頰咽黃赤色、胸下左右同色ニシテ黑文アリ、腹漸ク白クシテ黑斑アリ、頂ヨリ尾ニ至マデ、茶色ニシテ綠色ヲ帶ブ、羽ゴトニ半片ハ黑文ト白圈トアリ、半片ハ小黑漣文アリ、目ノ通一條及胸ニ小黑文アリ、翼一二羽ハ灰色ニシテ波文アリ、カザキリハ淡黑色、尾ハ淡綠色、端赤色ヲ帶テ小黑波文アリ、雌モ形相類シテ色淡ク、背ニ赤小點アリ、脚淡黑色ニシテ距アリ、古ヨリ竹雞ヲウバシギ(○○○○)ト訓ズルハ非ナリ、ウバシギハ一名ヤマシギ、シバシギ(○○○○)、アマシギ(○○○○)ニシテ、鷸ノ品類ナリ、〈○中略〉
增、竹鷄ヲヤマシギニ充ツル説アリ、一名ウバシギ、又シバシギ、アマシギトモ云フ、此ハシギノ品類ニシテ、竹林ニ栖ムモノナリ、常ノシギヨリ大ニシテ、鳩ホドアリ、形雞ノ䳄昌似テ喙長ク、尾至テ短クシテ頭小ナリ、全身黃褐色ニシタ黑キ斑文アリ、翅ノ下兩脇ニ白黑ノ斑文アリ、食用ニ上品ナリ、豫州伯州ナドニ居ルハ、形大ニシテ雌雞ホドモアリ、

〔飼鳥必用〕

〈中〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0724 竹鷄
此鳥形鶉より大きくして、脊薄黑色に赤き府合あり、胸は淺黃にて腹赤し、近年東都表にて子を取、貳番巢迄は産生立候ゆへ、産巢親烏さへあらば、澤山子は取れべし、飼方鷓鴣に同樣、此鳥何ぞ案事不及、唐方にては竹鷄のこへ聞ゆる所〈江〉は、家村に虫つかぬとて、家々に飼置よし、本朝にては其事を不知、此鳥のこへにむし恐るゝとや、試度は思ひしが、未其事を不計、

鶉/名稱

〔新攝字鏡〕

〈鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0724 鶉〈同常倫反、䳺宇豆良(○○○)、〉 䳺鶕〈同於含反、宇豆良、〉 鶛〈何諧反、宇豆良、〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01345.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01346.gifhttps://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01347.gif 〈四字宇豆良〉

〔本草和名〕

〈十五/獸禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0724 鶉肉、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01348.gif 鶉、〈貌似雲雀、而其音勅々者也、上https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01349.gif 驗反、下市倫反、〉一名鼃鳥、〈鼃化爲鵪鳥、故以名之、出崔禹、〉和名宇都良、

〔倭名類聚抄〕

〈十八/羽族名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0724 鶉 淮南子云、蝦蟇化爲鶉、〈市綸反、和名宇都良、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈七/鳥名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0724引齊俗訓文、原書無化字、李時珍曰、鶉大如雞雛、頭細而無尾、毛有斑點、甚 肥、雄者足高、雌者足卑、其性畏寒、其在田野、夜則群飛、晝則草伏、人能以聲呼取之、郝懿行曰、鶉黃黑雜文、大如秧雞、説文作https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01350.gif 、云䨄屬、隸變从鳥作鶉、與https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01351.gif 省作一レ鶉混、〈○中略〉按、宇都良亦以鳴聲名、按鶉䳺之鶉、古從隹、説文、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01350.gif 、䨄屬也、隸變从鳥、毛詩伐檀縣鶉、禮記内則鶉羹、爾雅釋鳥、鷯、鶉又鶉、子鳼、莊子天地篇、鶉居、列子天瑞篇、田鼠之爲鶉也、及此所引淮南子皆是也、又説文、鷻、雕也、徐音度官切、隸省亦作鶉、毛詩四月、匪鶉匪鳶、毛傳、鶉、鵰也、釋文鶉徒丸反、字或作https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01351.gif 、説文引是詩卽作匪鷻、説文隼字注云、一曰鶉字、是亦鷻字之省、一曰鶉字猶一名鷻、考工記輈人、鳥https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01352.gif 七斿、以象鶉火、周禮司常釋名並云、鳥隼爲https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01352.gif 、則鶉火之鶉、卽鷻字、然則鶉首鶉尾亦是鷻字、左傳僖五年、童謠鶉之賁賁下、擧鶉火之、則毛詩鄘風鶉之奔奔、當亦是鷻字、並非鶉䳺字、經典釋文爾雅釋天鶉火、音純、左傳鶉之賁責、音述春反、又常倫反、毛詩鶉之奔奔、音純、云䳺鶉鳥者、皆誤、頃讀焦循毛詩補疏、亦有是説、與此印合、

〔類聚名義抄〕

〈九/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0725 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01355.gif 鶉〈正今、或鶉、音淳、ウヅラ、〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01353.gif 〈今https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01353.gif 、正、烏合反、鶉https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01353.gif 鶉、ウヅラ、〉 鶛〈音皆、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01353.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00197.gif ウヅラ、〉 鳼〈鶉https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00197.gif 、ウヅラノコ、ウヅラ、〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01345.gif 〈ウヅラ〉https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01346.gif 〈同〉

〔同〕

〈九/隹〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0725 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01356.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01355.gif 〈通正、音純、ウヅラ、〉

〔下學集〕

〈上/氣形〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0725 鶉(ウヅラ)〈田鼠化爲鶉、日本俗作鶁大誤也、〉 壒囊抄

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0725 鳥類字 鶉(ウヅラ) 鶁(同)

〔和爾雅〕

〈六/禽鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0725 鶉(ウヅラ) https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01354.gif (ウヅラノコ)

〔庖厨備用倭名本草〕

〈十/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0725 鶉〈○中略〉 元升曰、鶉ト鴛ト和名ヲトモニウヅラト云、本草ニ大小形色ヲアラハサズ、人常ニ養ヒヨクシル故ナルベシ、四時常ニアルハ鶉ト云、ウヅラ、夏アリテ冬ナキハ鴽ト云、ウヅラ、是ヲ以テワカチシルベシ、

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0725 鶉〈訓宇都良
釋名、鶁、〈字彚、居卿切、音京、羌鶁鳥、今俗借用、或曰、以字似而誤用也、〉 集解、鶉狀如雞雉之雛、頭小而短尾、羽毛有蒼黑黃赤白斑、甚肥、平旦能鳴、其聲高有長短、雄者有聲而足高、雌聲微而足卑、其性畏寒、常在田野、見人則疾入叢間、細尋不見、夜則群飛、晝則草伏、張網設https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01151.gif (ハコ)而捕之、或以雌爲媒誘而取之、鷂亦能鷙、其味極美、炙食最宜、好事者多養之竹漆畫籠、而誇聲之美以競之、其聲高大圓亮而長者爲勝、或遊富士野、那須野、信州之田隴、及攝州、播州、濃州之山野、而旦聽聲以媒捕之、三四月田麥長時取之者、呼號麥鳥、冬月雪中取之者、呼號雪鳥、凡鶉以甲信野之下州之産上、攝播濃之産次之、

〔本朝食鑑〕

〈六/華和異同〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0726 鶉〈附鷃〉
鶉、崔禹錫引列子及楊億談苑曰、蝦蟇所化也、李時珍曰、交州記、南海黃魚、九月變爲鶉、蓋始化成、終以卵生、故四時常有之、又鷃釋名以鵪〈一作䳺〉鸋鴽鳸一物、又云、鵪與鶉兩物、而今人總以鵪鶉之、夏小正云、三月田鼠化爲鴽、八月鴽化爲田鼠、註云、鵪也始由鼠化終復爲鼠故無斑、而夏有冬無焉、必大按、鷃、予〈○平野必大〉未其終始也、鶉者、予少時畜駿之富野麥鳥伏卵者、卵生得二雛二雛、而旣長、後過三年以屬人、然則卵生之後不化者明矣、其始化之始者何時之始乎、化生之鶉者以何狀證矣、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0726 鶉 イトラ(○○○)〈萬葉集〉 コハナドリ(○○○○○)〈古歌〉 ウヅラ〈和名鈔〉 一名循〈禽經注〉 長 生網〈淸異錄〉 族味〈同上〉 賓ト胡兒〈事物紺珠、蒙古ノ名、〉 毛次羅只〈郷藥本草〉
體肥テ首小ク短尾、全身褐色ニシテ黑白斑アハ、其味美ナリ、炙食最宜シ、〈○中略〉
增、鶉ノ形狀ハ衆人知ル所ナレドモ、コヽニ説ク所ハ甚略文ナリ、其形雞ノ雌ノ如シ、全身甚肥テ丸ク、頭ハ不相應ニ小ナリ、頭ノ樣子ハ吿天子(ヒバリ)ニ似タリ、尾ハ至テ短ク、全身茶色ニシテ黑白ノ斑文アリ、晝ハ草間ニ隱レテ夜多ク連飛、鳴聲スハチヽクヲハヽクヲト聞ユ、冬夏共ニ食用ニス、夜ヨクナク、聲尤大ナリ、晝ハ鳴カズ、希ニ鳴クトモ高ク聲ヲ發セズ、

鶉種類

〔和漢三才圖會〕

〈四十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0726 鶉〈音純〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01354.gif 〈鶉之子〉 羅鶉〈鶉卵初生〉 早秋〈至秋初者〉 白唐〈中秋已後者〉 和名宇豆良〈○中略〉 按、鶉處處原野多有之、甲州、信州、下野最多、畿内之産亦勝矣、色有黃赤而黑白斑彪、如有珍彪者人甚賞之、其聲如知地快、〈今如此聲者希有而不好〉有數品(○○○)、〈帳吉古、吉幾利快、幾比快、勅快等聲皆不佳也、〉嘩嘩快爲上、〈聲轉而永引大圓亮爲珍〉毎早旦日午夕暮鳴、凡春二三月始鳴、至芒種聲、六月又更發聲至中秋聲、人養之、其籠最美麗、而此與鶯相並弄之、其雌者小足卑不囀、〈呼曰阿以布〉如雄鶉未聲、則置雌籠於側則發聲、

〔飼鳥必用〕

〈中〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0727 朝鮮鶉(○○○) 琉球國にては、三府鶉又は三足鶉とも云、
此鳥の樣子、和の鶉の形にてちいさく、頰の邊は淺黃、胸に黑み有るも有り、又黑みなきもあり、雌雄分り兼候もの也、琉球國渡る鳥也、

鶉飼養法

〔喚子鳥〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0727 粒餌小鳥の分 何にても水を入る
鶉 餌飼 〈きび、粟、ひゑ、米、〉
大きさ毛色世に知る鳥なれば、しるすにおよばず、こゑ大きに善惡あり、よき鳥まれに有時は大きに調法す、あら鳥冬おほくいづる、此かご上はあみをはり、下には砂を入かふべし、うなぎの生ゑにて夜がひなどする時は、冬もふける物なり、お鳥にはすりゑを用ゆ、
〈島うづら りうきううづらともいふ〉〈ゑがひ あは きび すりゑは生ゑ七分粉壹匁〉
大きさうづらにちいさし、かたちうづらににてせい高し、毛色あを黑く、うづらににたるふあり、めづらしきるいにて、遠國よりまれに來る、

〔嬉遊笑覽〕

〈十二/禽蟲〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0727 鶉は歌に多くよめども、飼鳥にする事、古へは聞えず、後世慶長より寬永の頃、鶉合大に行はれし事、其ころの草子どもに往々見えたり、犬子集に、籠もちつれてかへるさの袖、暮るより鶉合やみてぬらん、又發句帳〈貞德〉詰籠てもしくはくはひとなく鶉かな、〈詩歌會の心にや、然らばしかくわいと書べし、〉又鶉の啼聲に、七ツさがりといふ事あり、籠耳に、大藏といふ能の狂言師、鶉をすきて飼ける、ある時江戸へ下る道中、はたごやの門に、籠に入て鶉の挂てあるを、ふと聞ければ、なく聲ふとく七 ツ下がりの名鳥なり、大藏聞といなや、此鳥ほしくなりぬ云々、岩翁が若葉合、第二介我やくそくも二處なり、月二夜鶉合は金ほどの聲、麥うづらと稱するは、麥秋の頃、諸方より取て出す、江戸には南部より多く來る、近年明和安永の頃、鶉合の事流行て、大諸侯競ひて是を飼はれける、鳥籠は金銀を鏤め、唐木、象牙、螺鈿、高蒔繪にて、皆一雙ヅヽに作らせ、裝束は足かけ天幕金襴猩々緋のたぐい、用ひざるものなし、其會日には、江戸中鳥好のものは、是また件のごとく美を盡し、よき鳥をえらび持出て、勝負をなす、鶉は朝をむねと啼ものなれば、必朝早く會あり、飼鳥屋は江戸中のものみな集り、よしあしを聞わけ、甲乙をさだめ、角力番付の如くに東西を分ち、一二を以てしるす、大奉書を横につぎて書付、東西の壁上に貼付、もし一となれば、鳥屋共に祝義として、目錄を遣す、此費許多なり、凡鶉はよき鳥ありても、其音を移す付子などする事ならぬものにて、鶯などのごとく、其類出來ず、其うへ何ぞ驚さわげば、忽胸をうちて死する事あり、高價をもて買ふは、かはりたる物ずきにて、鶯飼をいやしむとかや、〈近頃は鶉を子を生せて、そだつるとなり、〉
鶉の雌をあひふといふ、懷子、草枯やあひ夫うづらも床はなれ、〈玖巴〉鶉を飼ふ者、よく其聲をまねて口笛に吹ば、是を聞て雄なく、同集、なけばなく眞似の入江のうづら哉、〈宗治〉西土には鬪鶉とて、鷄のごとく戰はしむ、五雜爼云、江北有鬪鷯鶉、其鳥小而馴出入懷袖、覗鬪雞、又似近雅云々、鶉雖小而馴、然最勇健善鬪、食粟者不再鬪、食際者尤耿介、一鬪而決、故詩言鶉之奔々、言其健也、また花鏡に、凡鳥性畏人、惟鶉性喜近人、諸禽鬪則尾竦、獨鶉其足而舒其翼、人多畜之使鬪、有鷄之雄、頗足戯玩、また小き布袋に納れ、身邊に近づけ、放ちて養ことなども記したり、此戯はこゝにてせざる事なり、唯放し飼にすることもなし、此外の鳥は放ち飼にする事、古くもありしなるべし、

〔飼鳥必用〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0728 巾著鶉とて袋に入腰に提、座敷にて袋ゟ出し啼する仕込方、
荒鳥を野移にして雙の羽をこき、厚きれにて六七寸廻りなる巾著を拵へ、口は如常緖にて〆、能 拵へ、巾著のそこに六七寸廻りの丸き板を入、それにて右の鶉を入置、晝は其儘にて、夜分は燈の元にて、初には鶉の面計巾著の口ゟいだし、粟稗の類、手に入、是を飼候て、毎夜々々其通りにして、だん〴〵總身を巾著より出し啼せる也、又もとの巾著に入、腰に提て、常々右のとをりに取扱ひにて、自然と手馴候、此仕込、鳥の手馴ざるも有り、能く手馴るもあり、二三羽も同樣に仕立、其内に思ふ通り不參もあり、子鶉は不宜、老鳥は荒く、野鳥の若鳥を見計り仕込方宜、鶉に不限、放し飼の仕込、何れ若鳥の方宜敷、鳥を手馴よふに夜飼いたし、段々相馴れ、外に仕方無之、夜飼にて晝は水をして、人近き所へ居置候得ば、自ら人馴いたして、盛もはやく出るもの也、

〔飼鳥必用〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0729
此鳥啼出しにクワ頭、チヨ頭、コキ頭三品有、鳥の形に海老脊、蟹脊、山形脊と三品有、觜ニ豆觜椎觜、腐觜とて三品有、首に鶴首、雌鷄首、猪首とて是も三品有、尾にさし尾、半さし尾、海老尾とて三品有、府合に白府、赤府、ボケ府とて是も三品有、駿河、甲州、信州、奧州南部より鶉江戸ヘ來る、諸國鶉を好、啼方の吟味同前也、クワ頭にて聲大きく靜に長く引、結びに玉を付、聲に光ある鳥ならば、何國にても上とする、音には色々の音をふくみ鳴故、先々の鳴方變化し、下音にて能聞人はまれ也、鶉の鳴樣くわしく書記し度は思へ共、口に語り筆に認る通には、下音より高聲まで鳴ざる鳥のみにて、何れ世の人に、わらひ草の種ならん事をおそれて筆を止る、

〔鶉書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0729 一問ていはく、鶉の見鳥はいかやうなるがよく候や、答ていはく、見鳥のめきゝさま〴〵ありといへども、あたる事不定なり、さりながら、かしら大きくながくして、はしねくゝらず、すゝめはし、くびながくむねいでゝかたいかり、くちひろくどうあいながく、大小によらず、いろはほうよりむねまでかきいろにて、あかふよし、いかにもふだんかごのうちしづかにして、とらへて見れば、鳥やはらかなるが上の鳥なり、かやうのとりには、ふとねおほきものなり、問ていはく、鳥 見やうはいかゞ候や、答ていはく、くびたちのびて、かしらはちいさくとも、ながみあり、はしほそくくゝらずして、どうあいながく、せなかひしげて地びきなるが引鳥(ひきとり)なり、このほかいろ〳〵ありといへども、この二色第一よき鳥おほきなり、問ていはく、上のこゑとはいかやうなるを申候や、答ていはく、上のこゑとは、大ごゑにどうよりいだし、第一ひやうしよく、いろにほひこれあり、あとをはりあげひくなり、〈○中略〉 問ていはく、やまひ鳥さま〴〵あり、見やうまたくすりやうじやううけたまはりたく候、答、〈○中略〉
一とやのときのゑには、あわ、ひゑを等分に合せ用候て、第一すりゑ用てよし、すりゑのこには、あわを粉にして、せりにてもなにてもあをみに合なり、とやのうちすなをかへまじく候、たゞしかごのうちあしきにほひ出候はゞ、かへてもよし、目のわきはり出候はゞ、そのとりはとやしまひ候としるべし、
一とやまへにつめはしつくる事、ならひ口傳あり、
一春夏のかひやうは、すな十日に一度づゝかへべし、すな水にはくろ土を一ケ月に四五度ほどあびせ、二ケ月に一度づゝ鶉を小雨にうたせて、ゑにはあわ、ひゑを等分にしてかふべし、春ははさみむし一日に二ツほどかひ、せりはこべおり〳〵用、夏はいなご一日に一ツ二ツ、せりくこのはとき〴〵よし、冬はあぶらゑ、あわ、ひゑ等分にしてかふべし、はさみむし、はだかむし、さい〳〵かふべし、とりわけいなご、はさみむしは、あるがなかにもくすりなり、とやにかゝりてよりこれにしくはなし、また見鳥の口傳、したのねあごに大事あり、ひすべし〳〵とかたりだまふ、さて老人もわれもまた鳥のふる巢にかへりける、たちざまに鶉ぶゑとてあり、ゑのだけを一寸六分にきり三本ならべあはせ、吹口のあな三ツあり、〈○圖略〉鶉のひゝなき、又はふけるこゑも、したのまはし、いきのつかひやうにて、いかやうにもまねるもめなり、野の鶉きゝとるにも、またつねにも用 ひ侍るなり

鶉事蹟

〔大館常興日記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0731 天文九年十月廿八日、及晩爲御使祐阿來臨、御鷹の鳥にて候由被仰て、うづら一さほ、〈五〉被之、畏て令戴之、一段忝畏存旨言上仕也、

〔奧州波奈志〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0731 貞山公〈○伊達政宗〉昔軍の有し頃、京におはせしに、鳥屋のみせに立よらせ給て、よきうづらの有しを、これはいかほどのあたひぞと問せられしかば、鳥やのをとこ、今ぞ高直に申べき時とや思つらん、五十兩也と申上たりしを聞せ給て、
立よりてきけば鶉の音はたかしさてもよくにはふけるものかな、とたゞごとにのたまはせしを、鳥や聞て大にはぢて、あたひなしに奉りしとぞ、

〔窻の須佐美追加〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0731 忍侍從忠秋朝臣、鶉を好みて多く集めをかれたり、その比富商、世上第一と聞ふる鶉を持しが、朝臣の御許にまいらせたきよし、立入る御旗本衆に申置けるを、或時おりよかりしにや、其事を申出られたるに、其いらへはなくて、よも山の物語時を移して後、近侍の者を呼て、聚おける鶉の籠を持來てならべよと有しかば、悉くかいつらねし時、其戸を皆開候へとてあけし程に、鶉は不殘飛さりぬ、そこにて朝臣の云、重職の人は物を好む事大なる誤にて有を、今まで心づかで、鶉數多あつめおきしに、さきの富商のよき敎をきゝて、今より鶉を好む事はやめぬ、彼に此禮詞をよく傳へてたべと有しかば、申せし人詞なくして出られけり、

〔近世畸人傳〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0731 河内淸七
河内の國日下の里に樵を業とする、貧者淸七といへるものあり、母は富人の家の乳母たりしかば、貧しき世を經ても、口腹のことに儉することあたはず、〈○中略〉或日母鶉のあぶりものをのぞみたりしに、其日は暮たれば、明日朝とぐ起て、市に行てもとめんと用意したる時、窻にあたるものの音せしかば、童どもが戯に、土くれなどうちけるよとおぼえながら、いでゝ見るに、鶉二羽落て 有ければ、喜びてとくすゝめけり、

鶉利用

〔宜禁本草〕

〈坤/諸禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0732 鶉 甘平、小豆生姜同食能止泄痢、四月以前不食、猪同食生小黑子、菌同食發痔、蝦蟆化爲也、補五藏中續氣、實筋骨寒温、消結熱、治小兒疳痢

〔武家調味故實〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0732 一うづらひばり可付樣、但鶉は祝言の所へは不出候、荻を二すぢゆひあはせて、ゆひめより下一尺ばかりより置て可付、式には鳥七付るよし有といへども、いくつにてもあれ付る時は、鳥をあふのけて、うちちかへ〳〵荻にはさみて、あをつゞらにて可付、兩方のはがへをはさみ出して、かしらをはがへの下にかきはさむべし、すゝきにてもくるしからず、うすやうにてする事あり、すゝきもよし、口傳あり、

〔雍州府志〕

〈六/土産〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0732 鶉幷藁雀(ヒバリ) 凡一切魚鳥水草淸潔地、其風味大勝、故洛邊所有、其風味與他郷之所一レ産爲異矣、鶉幷藁雀其餘雜禽、其形小者總稱小鳥、自秋至冬賣之、

〔食物和歌本草〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0732 鶉(ウヅラ)
鶉こそ五臟補ひ中をまし筋骨つよめ氣をもつけける〈○中略〉 鶉には蝦蟇變化して生ずれば疳痢をとめて奇特也けり

鶉雜載

〔古事記〕

〈下/雄略〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0732 天皇坐長谷(ハツセ)之百枝槻下、爲豐樂之時、〈○中略〉天皇歌曰、毛々志紀能(モヽシキノ)、淤富美夜比登波(オホミヤビトハ)、宇豆良登理(ウヅラトリ/○○○○○)、比禮登理加氣氐(ヒレトリカケテ)、麻那婆志良(マナバシラ)、袁由岐阿閉(ヲユキアへ)、爾波須受米(ニハスヾメ)、宇受須麻理韋氐(ウズスマリイテ)、祁布母加母(ケフモカモ)、佐加美豆久良斯(サカミヅクラシ)、多加比加流(タカヒカル)、比能美夜比登(ヒノミヤビト)、許登能(コトノ)、加多理碁登母(カタリゴトモ)、許袁婆(コヲバ)、

〔伊勢物語〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0732 むかし男ありけり、ふかくさにすみける女を、やう〳〵あきがたにや思ひけん、ものへいてたちて、
年をへて住こし宿を出ていなばいとゞ深草野とや成なん、女かへし、
野とならば鶉となりて鳴をらんかりにだにやは君はこざらん、とよめりけるに、いでゝゆか んとおもふ心うせにけり、

〔萬葉集〕

〈二/挽歌〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0733 高市皇子尊城上殯宮之時、柿本朝臣人麻呂作歌一首幷短歌
挂文(カケマクモ)、忌之伎鴨(ユヽシキカモ)、〈○中略〉烏玉能(ヌバタマノ)、暮爾至者(ユフベニナレバ)、大殿乎(オホトノヲ)、振放見乍(フリサケミツヽ)、鶉成(ウヅラナス)、伊波比廻(イハヒモトホリ)、雖侍(サモラヘド)、〈○下略〉

〔萬葉集〕

〈四/相聞〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0733 大伴宿禰家持贈紀女郎歌一首
鶉鳴(ウヅラナク)、故郷從(フリニシサトユ)、念友(オモヘドモ)、何如裳妹爾(ナニゾモイモニ)、相緣毛無寸(アフヨシモナキ)、

〔千載和歌集〕

〈四/秋〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0733 百首歌奉ける時、秋歌とてよめる、 皇太后宮大夫俊成
ゆふざれば野邊の秋風身にしみて鶉なくなりふか草のさと

〔就狩詞少々覺悟之事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0733 一ふせ鳥と云事、雉と鶉と二ならでは、ふせ鳥とはいはず、ふせて射事と云事、此二ならでは有まじき事也、能々可心得事也、〈○中略〉
一矢開にせざる鳥の事、うづら鶯二ツなり、殊人無存知事也、昔より用ざると云々、しさいは秘事也、

〔武江産物志〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0733 山鳥類 鶉〈西ケ原、駒場、〉

〔風俗文選〕

〈三/譜〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0733 百鳥譜 支考
深草に住なる鶉は、其聲すみやかにして、世をはゞからず、山にもちかく水にも遠からず、粟の穗の靜なる時は、こゝにも出てあそぶなるべし、

〔新撰字鏡〕

〈鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0733 鷃〈上字加也久岐(○○○○)〉 鷯〈聊音、鷦、加也久支、又左々支、〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01357.gif 〈張交反、黃鳥、加也久支、〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01235.gif 〈可也久岐〉

〔倭名類聚抄〕

〈十八/羽族名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0733 鷃 唐韻云、鷃〈音晏、和名加夜久木、〉雀鷃、小鳥也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈七/鳥名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0733 按加也、菅茅也、久岐、漏也、與古事記自手俣久岐斯子也、萬葉集伯勞鳥之草具吉、保登等藝須木際多知久吉之久岐同、是鳥好濳飛菅茅之問、故以名之、輔仁擧本草拾遺蒿雀、訓加也久岐、〈○中略〉廣韻云、鴳、爾雅曰、鳸鴳、郭璞云、今雀鴳、鷃、上同、無小鳥也之注、按晉語注云、鷃雇、小 鳥也、小鳥之解出於此、今本爾雅注、今雀鴳作今鴳雀、莊子釋文引司馬彪注亦云、鷃、鴳雀也、孫氏引作雀鴳者、蓋誤倒也、按説文云、鴳、雇也、又云、老雇、鷃也、老雇、九雇之一、莊子斥鷃卽是、高誘注呂氏春秋明理篇云、鴳一名冠爵、玄應音義引纂文云、關中有鴳濫堆、是也、顏師古急就篇注、亦有鷃爛堆、郝懿行曰、今鷃爛堆、如雀而大、東齊謂之阿https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01359.gif、色如https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01356.gif、善鳴多聲、一種有毛角者、高誘所謂冠雀、今俗呼老兒角其物未詳、而鶉鷃正作鶉䨄、説文、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01356.gif 、䨄屬也、䨄、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01356.gif 屬也、是也、後或作鶉鷃、内則云、雉兎鶉鷃是也、蓋俗變隹爲鳥、又變酓爲晏、遂與鴳一作一レ鷃混也、䨄又作鴾、李時珍曰、鵪與鶉兩物也、形狀相似倶黑色、但無斑者爲鵪也、鄰懿行曰、今鶉黃黑雜文、大如秧雞、無尾、䳺較長大黃色無文、又長頸長觜則知䳺是https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01356.gif 之無斑文者、今亦有之、源君訓加夜久岐者、恐鶉鷃之鷃非斥鷃字、則引唐韻雀鷃小鳥之解、非是、小野氏曰、加夜久岐、今俗呼加夜久々利、一名菩登之伎、鷸之一種、漢名未詳、然則訓鶉鷃之鷃、爲加夜久岐亦不允、

〔類聚名義抄〕

〈九/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0734 鷃〈音晏、安、カヤクキ、小鳥、〉 鳭〈ツキ カヤクキ、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01360.gif 黃鳥、〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01235.gif 〈草クキ〉

〔伊呂波字類抄〕

〈加/動物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0734 鷃〈カヤクキ、音晏、作鴳、〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01235.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01361.gif 鸚〈已上同〉

〔壒囊抄〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0734 鳥類字 鷃(カヤクキ)

〔饅頭屋本節用集〕

〈加/生類〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0734 萱潛(カヤクヾキ/○○)

〔和爾雅〕

〈六/禽鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0734 鷃(カヤグキ/ホトシギ)〈小而黑色無斑者爲鷃、鴽同、〉 鸋(カヤグキノコ)

〔本朝食鑑〕

〈五/原舍〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0734
加也久幾、或訓加也久久利、狀似鶉而小、蒼黑背有黑斑、腹灰白翅黑、脚細而高、人未之、故捕者少矣、氣味甘平無毒、主治諸瘡去熱、

〔大和本草〕

〈十五/水鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0734 鷃〈ボトシギ(○○○○)カヤグキ〉 大如鶉、身少ホソ長シ、觜長シ、下觜二寸バカリ、上觜少短シ、ウヅラヨリ足長シ毛ハウヅラニ似テマダラナク、クビ長ク頭ホソシ、腹白ク尾短シ、味美ナリ、七八月味最 美シ、鶉ノ類ナリ、中夏ノ書ニ鶉鷃トツヾケリ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十二/林禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0735 鷃 フナシウヅラ(○○○○○○) 一名黃鵪〈盛京通志〉 石鷃〈千金翼〉
ウヅラノ類ニシテ斑文ナキモノナリ、從前ボトシギト訓ズルハ非ナリ、ボトシギハ鷸ノ品類ナリ

〔喚子鳥〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0735 粒餌小鳥の分 何にても水を入る
〈かやくゞり(○○○○○) 大さゞいともいふ〉 〈ゑがひ〉 〈ゑのごますりゑ四分ゑよし〉
大きさすゞめに少し大ぶり、毛色赤黑く、さゞいの色ににたり、さへづり有、鳥きやしやにて、かごの内よし、

〔拾遺和歌集〕

〈七/物名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0735 かやぐき すけみ
なにとかやくきのすがたはおもほえであやしく花の名こそわするれ

〔夫木和歌抄〕

〈二十七/鷃〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0735 正治二年百首 正三位經家卿
をく霜にかれもはてなでかやくきのいかで尾花のすゑになくらん

蒿雀

〔本草和名〕

〈二十/本草外藥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0735 蒿雀、〈似雀靑黑、在蒿間、〉 和名加也久岐(○○○○)、
○按ズルニ、加也久岐ハ鷃ナリ、宜シク上文鷃條ヲ參看スベシ、

〔物類稱呼〕

〈二/動物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0735 蒿雀あをしとゝ(○○○○○) 遠江にて靑ちゝん(○○○○)と云、東國及四國にてあをじ(○○○)と云、美作にて靑じやう(○○○○)と云、〈鵐(シトヽ)に似て靑色なるものなり〉
靑しとゝを略語してあをじと云、鵐は山林に在て原野にいでず、靑しとゝは藪林にすむもの なり、

〔和漢三才圖會〕

〈四十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0735 蒿雀 靑鵐〈俗稱〉 俗云阿乎之(○○○)〈○中略〉
按、蒿雀似鵐而帶靑黃色、故俗呼曰靑鵐、〈阿乎之止々、略曰阿乎之、〉常棲山中、秋冬出原野蒿篁間、大如鵐及雀、而頭 靑黃有縱紫斑、眉頰稍黃色、上觜眼邊眞黑、胸脇淡黃、有黑斑翅、有黃赤與黑縱斑紋、腹淡黃脚脛赤、指爪淡白、性急https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01362.gif 、聲亦短小、〈鵐見于林禽
肉〈甘温〉 燒存性能止血有神効、又能解毒治食傷

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0736 蒿雀 アヲシトヾ アヲジ〈京〉 アヲジヤウ〈作州〉 アヲチヽン〈遠州〉 シイ(○○)〈薩州〉 一名草雀〈三才圖會〉 蒿溜兒〈盛京通志〉 讚籬〈嘉興縣志〉
形狀ノジコニ似テ微大ナリ、頭背ハ黑羽褐綠、眉ハ淡黃褐色、脇同色ニシテ微黃ヲ帶テ黑斑アリ、腹ハ微黃色、翼ハ黑色褐綠ニシテ白色ナシ、尾黑色、裏ノ羽ハ白色、觜ハ黑色、脛ハ淺檀子(ウスシユズミ)色ナリ、秋中多ク來ル、取テ食用ニ供ス、鳴聲ノジコ及ホジロノ如シ、春ニ至レバ囀鳴聲亦ノジコニ似タリ、和方ニ臘月蒿雀ヲトリ、腸及羽翅ヲ去リ、燒灰シ末ト爲シ、凡一切血ヲ止金瘡ニ傅、下血吐血衂血崩漏血暈ニ用テ妙ナルコト、食療正要ニ載ス、又眼藥ニ用ユ、凡雀ニ似タル小鳥ヲ總ジテシトヾト云、ノジコ、ホジロ、ミヤマホジロ、カシラダカ、ホアカ、ノジロ等、皆シトヾナリ、皆眼ニ菊坐ノ如キ圈アリ、今腰刀ノ飾ニシトヾメト云ハ、シトヾ目ノ義ナリ、

〔喚子鳥〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0736 粒餌小鳥の分 何にても水を入る
あをじ 〈ゑがひ〉 〈きび、あは、ひゑ、米、すりゑ五分ゑよし、〉
大きさすゞめに大ぶり、毛色きにあをし、さゑづりよし、冬おほくいづる、
くろじ(○○○) 〈ゑがひ〉 〈きびあは、ひゑ、米、すりゑ五分ゑよし、〉
大きさあおじに大ぶり、毛色總身こいねずみにくろし、さゑづりほそく、諸事あおじににたり、冬いづるすこしすくなし、

〔武江産物志〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0736 山鳥類 嵩雀(あをじ)〈高田穴八幡〉

いはくゞり

〔喚乎鳥〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0736 粒餌小鳥の分 何にても水を入る 〈いはくゞり はぎとも、いはさゞい共いふ、〉 〈ゑがひ〉 〈ゑのごますりゑ四分ゑよし〉
大きさ雀にばいせり、せはかやくゞりににて、かしらくろじににたり、咽に白きふ有、さへづり有、近國にすくなし、

鳩/名稱

〔本草和名〕

〈十五/獸禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0737 鳩、鴿、〈頸短灰色、音古答反、〉鴀、〈頸細班々駮駮、音夫有反、〉鸅、〈頸大足赤、音古豪反、〉https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01363.gif 、〈頸長脚短、音路唐反、〉鵃、〈頸短色五采可愛、音東堯反、〉䳕〈頸大尾長、音伏優反、如此之例不少、鳩其總名耳、出崔禹、〉和名波止(○○)、

〔段注説文解字〕

〈四/上鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0737 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01364.gif 、鶻鵃也、〈按今本説、文奪譌鳩與雉雇、皆本左傳、鳩爲五鳩之總名、猶雉爲十四雉之總名雇爲九雇之總名也、當先出一レ鳩、篆釋云、五鳩鳩民者也、乃後聿、鶌鳩鶻鵃也、鳩祝鳩也、桔https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01365.gif 尸鳩也、瞗王瞗瞗鳩也、瞗鳩鷙鳥故別爲類廁之、而痽爲爽鳩、巳見於隹部矣、度説文古本當是、今本以鳩名專系諸鶻鵃、則不通矣、毛詩召南傳曰、鳩尸鳩桔鞠也、衞風傳曰、鳩鶻鳩也、月令注曰、鳩搏穀也、經文皆單言鳩、傳注乃別爲某鳩、此可鳩爲五鳩之總名、經傳多假鳩爲述爲勼、辵部曰、述歛聚也、勹部曰、勼聚也、〉从鳥九聲、〈居求切、三部、〉https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01366.gif 、鳩
屬也、〈鳩之可於家者、狀全與勃姑同、〉从鳥合聲、〈古沓切、七部、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十八/羽族名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0737 鳩 野王按、鳩、〈音丘、和名夜萬八止、〉此鳥種類甚多、鳩其總名也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈七/鳥名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0737 本草和名單訓波止、無夜末波止、伊閉波止之別、源君亦引鳩爲總名之説、訓夜末波止非是、古所云夜末波止、今俗呼岐之波止、別呼靑䳡夜末波止、仙臺今猶謂岐之鳩、爲夜末波止、〈○中略〉所引文、今本玉篇不載、按本草和名引崔禹錫食經、載鳩、鴿、䲹鷱、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01363.gif 、鵃、䳕云、如此之例不少、鳩其總名耳、源君豈非誤引一レ之耶、説文、鳩、鶻鵃也、

〔類聚名義抄〕

〈九/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0737 鶌〈君物反、似土鵲而小短、尾靑黑色多聲、 カヤクキ、ヤマハト、〉 鵊https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01367.gif 〈家ハト〉 䳩〈音腰、狀如山雞長尾、赤如丹火靑喙、山ハト、〉 鳩〈音丘、イへハト、ハト、ヤマハト、〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01368.gif 䲥〈俗〉 鴿〈晋合、イへハト、ヤマバト、〉 鳺〈音庸、鴀鳩、〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01369.gif 鵴〈イへハト〉

〔伊呂波字類抄〕

〈波/動物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0737 鳩〈ハト山鳩〉 鴿〈同家鴿〉

〔和爾雅〕

〈九/禽鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0737 鳩(ハト)〈䧱同、總名也、〉 斑鳩(ツチクレバト)〈錦鳩、祝鳩皆同、〉 䳕鳩(ハトノコ)〈糠鳩同〉 鴿(イヘバト/タフバト)〈鵓鴿、飛奴並同、〉 靑䳡(ヤマバト)〈黃褐鳥、靑鳩並同、〉

〔八雲御抄〕

〈三下/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0737 鳩 はとふくは鳩をまねびて人のふく也、〈あきのはじめよりなくゆへに、はとふくといふ、範兼説、〉はとふくと云、れうしの所爲也、 戀のこゝうにいふは、まぶしさすしづのをのみにもたへかねてといふ 歌心也、

〔東雅〕

〈十七/禽鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0738 鳩ハト〈○中略〉 日本紀に斑鳩讀てイカルガといふ、〈○中略〉舜水朱氏は、ヤマハトは靑鵻なり、イヘハトは海鴿子、則勃鳩なり、ツチハトは斑鳩也と云ひしといふ、もし又斑鳩の字によらんには、斑鳩とも錦鳩ともいひて、此俗ツチハト(○○○○)といふものは、斑鳩なり、

鳩種類

〔新撰字鏡〕

〈鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0738 䳩〈於遙反、鴿也、也万波止(○○○○)、〉 鴀〈夫有反、乳鶌鳲鳩也、伊倍波止(○○○○)、〉 鶌〈屈音鶻鳩伊戸波止、〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01214.gif 〈他口、太口二反、伊戸波止、〉 鳺〈方于反、伊戸波止、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十八/羽族名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0738 鴿 本草云、鴿、〈古沓反、和名以倍八止、〉頸短灰色者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈七/鳥名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0738 原書不鴿、按本草和名載鳩下載鴿頸短灰色出崔禹、則知輔仁以本草不鳩類、依食經錄載、源君從彼引之、誤以爲本草文也、説文、鴿、鳩屬、李時珍曰、鴿處々人家畜之、亦有野鴿、名品雖多、大要毛羽不靑白皂綠鵲斑數色、眼目有大小黃赤綠色而巳、

〔倭名類聚抄〕

〈十八/羽族名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0738 鵤〈○中略〉 兼名苑注云、斑鳩(○○)〈和名上同、(伊加流加)見日本紀私記、〉觜大尾短者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈七/鳥名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0738 毛詩鄘風氓篇云、于嗟鳩兮、無桑葚、正義引陸機云、斑鳩也、小雅小宛、宛彼鳴鳩、釋文亦引草木疏云、鳴鳩、斑鳩也、左傳云、鶻鳩氏、司事者也、正義引舍人曰、鶌鳩一名鶻鵃、今之斑鳩也、嘉祐本草、斑鵻一名斑鳩、本草衍義云、有斑者、有斑者、有灰色者、有小者、有大者、李時珍曰、今鳩小而灰色、及大而斑如梨花點者、並不善鳴、惟項下斑如眞珠者、聲大能鳴、今俗呼數珠掛鳩、八幡鳩者是也、訓以加流賀是、按本草和名以鵤爲以加流賀、日本紀私記以斑鳩以加流賀、其説不同也、源君混爲一條是、方言鳩其大者謂之鳻鳩、郭璞注云、鳻音斑、是鳻鳩卽斑鳩、爾雅所謂鶌鳩、鶻鵃也、舍人注云、鶌鳩一名鶻鵃、今之斑鳩、孫炎云、鶻鵃一名鳴鳩、引月令云、鳴鳩拂其羽、小雅小宛傳云、鳴鳩、鶻鵰也、雕與鵃通、義疏云、斑鳩也、杜陽人謂之斑隹、似䳕鳩而大、項有繡文斑然、故曰斑鳩、高誘注呂氏春秋季春紀云、鳴鳩、斑鳩也、是月拂擊其羽、直刺上飛數十丈乃復者、是也、王念孫曰、諸書以鶻鵃斑鳩、乃是鳩之大者、而方言云、其小者或謂之鶻鵃、爾雅釋文引字林亦同、鶻鵃小種 鳩也、不諸書所一レ言同

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0739 鴿(○)〈訓以倍八止(○○○○)
集解、鴿家鳩也、今家家畜之、能馴不人、與鷄犬相侶覔食、惟猫鼬鳶烏爲害耳、屋上構棲、局局開窻而出入、匹偶常守一局、拒不他匹偶、性淫易合、生卵亦荐、伏卵能育、故種類蕃多、傳稱、若欲近隣之養鴿、則營新棲香設米菽卽來居、然予〈○平野必大〉未之、凡鴿之毛色、不靑白黃赤紫黑皂綠鵲斑數色、又有野鴿(○○)、俗稱堂鳩(○○)、源順曰、頸短灰色者乎、本邦食鴿者少、故未氣味也、或曰、山人儘有鴿者、謂甚有臊氣、未之、

〔本朝食鑑〕

〈六/林禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0739 鳩〈訓波止
釋名、壤鳩(ツチクレバト/○○)〈古俗〉雉鳩(○○)〈今俗、以上皆俗稱、壤字未何稱、雉鳩者毛羽有斑似雉、故名之、〉
集解、鳩者此類之總名也、先以壤鳩第一、其狀蒼灰與紫赤相交如錦、啄脚淡赤而鳩類中之最大者也、常棲山林而不人家、其聲短其味美、大抵海西之産爲勝、九州之産味不https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00995.gif者多矣、性慤孝而拙於營一レ巢、纔架數莖、而粗麁不密、往往墮卵、故詩鵲巢曰、維鳩居焉、天將雨則逐婦、天旣晴則呼婦、或雄呼晴雌呼雨、或倶呼雨呼晴、雖鳩類皆然、最聲多者八幡鳩(○○○)、而壤鳩、家鳩、布穀(○○)之類、皆聲短矣、〈○中略〉
附錄、南京鳩(○○○)、〈狀頂背紫靑成斑、頸有黑絞、眼邊微紅、頰臆靑、胸腹紫紅、羽黑尾碧白、觜脚蒼、近世自華之南京長崎、世畜樊籠以愛翫之、〉
山鳩(○○)
集解、山鳩居山中而不村里、其色美其聲短、謂小兒吹一レ竽者也、狀如壤鳩而頂背深綠、目前觜後至臆黃色、臆有綠斑毛、腹白有綠文、羽毛黑啄蒼脛掌紅、本邦天子服、有山鳩色御衣者、綠黃色而卽此鳩也、
肉、氣味、甘平無毒、〈味不佳有臊〉主治、大抵與壤鳩而排膿活血、療一切瘡癤癰瘻
附錄、頂小鳩(○○○)、〈是鳩類最微小者也、頂亦尤小、而遍勇蒼色帶紅、蒼觜紅距、其聲高而圓轉亮滑、故畜于樊中、以弄之、近世自外國于長崎、以及諸國、性淫能孕、故易蓄息、然生卵時動難澀欲斃、急〉 〈煎箱根草而用之則安、又預用之亦可也、箱根草狀似燈心草、極細莖、有小節細葉、生相州箱根山中、世稱能婦人難産、中華未之、南蠻、阿蘭陀、常用之、〉
八幡鳩
釋名、數珠釋(○○○)〈俗稱〉老來(トシヨリコヒ/○○)〈上同、本邦俗稱、白鳩者八幡神之使也、故以男山、一名鳩峯亦此類乎、數珠懸者項下有斑、如珠之連、或云、似浮屠頸懸念珠故名、老來訓登志與利古比、言鳩聲如老也、〉集解、老來小於壤鳩、遍身灰白、項下有黑斑連珠、其聲高亮如老、或曰喚子、歌人稱喚子鳥亦此類乎、又或曰、呼雨呼暗、常棲林篁野藪而不城市、最閑寂之賞也、其味不佳、故不之、俚俗稱神使亦不之、

〔本朝食鑑〕

〈六/華和異同〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0740 鴿
家鳩也、張九齡爲飛奴、孟詵、張鼎爲鵓鴿、倶一種也、李時珍曰、人家畜之、亦有野鴿、又曰與鳩爲匹偶、必大按、不然也、人家畜者與野鴿一種非別類、雖野鴿棲于農屋及堂舍古社佛寺之間、而不上レ山林野處、今放家鳩于林野、則必棲社寺農屋而野鴿也、捕野鴿而畜之、則棲于簷梁間而家鳩也、能馴人與人者、倶經日自可議而已、予〈○平野必大〉往年棲遲于郊外野處、見群鴿逐斑鳩而拒之不上レ留、又遊天台山下山王社、見野鴿拒山鳩而追去、然則與鳩爲匹偶者如何哉、〈○中略〉
壤鳩
本邦稱壤鳩雉鳩者、華之錦鳩祝鳩乎、今稱南京鳩、亦錦鳩之類、李時珍曰、鳩小而灰色、及大而斑如梨花點者、並不善鳴、然則非錦鳩、是野鴿乎、
山鳩
靑䳡、黃褐侯、綠鳩、倶一種也、其白者未詳、李時珍謂、夏月出、一種糠鳩、微帶紅色、小而成群者、近代自外國來、頂小鳩之類、然亦未詳、
八幡鳩 李時珍曰、項下斑如眞珠、聲大能鳴者是也、

〔大和本草〕

〈十五/雜禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0741 鳩 本邦四品アリ、斑鳩(ツチクレバト)、トシヨリコヒ、山バト、鴿(イヘバト)ナリ、ツチクレバトハ斑鳩ナリ、山バトハ靑䳡(スイ)ト云、トシヨヲコヒバ腹ノ毛淡白、背ノ毛淡灰色、ツバサノ端黑シ、筑紫方言ヨサフジハト、本草ニ宗奭曰、斑鳩而有無斑者、有灰色者、有大者、有小者、コレヲ以テ見レバ、トシヨリコヒモ、斑鳩ノ無斑シテ灰色ニテ小ナル者也、然レバ斑鳩ノ類ナルベシ、

〔和漢三才圖會〕

〈四十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0741 鴿〈音閤〉 鵓鴿 飛奴 和名以倍八止〈○中略〉
按、鴿有數品、頸短而有小冠、胸隆脹脚脛亦短、今家家畜之、頸有斑文者名暹羅鴿(○○○)、頭背灰黑色、腹灰白有鷹彪者名朝鮮鴿(○○○)、背上有金紗者名金鴿(○○)、有黑白椀三色、鮮明美者最珍也、並觜短、眼金色爲上品、價貴爭養之、〈暹羅朝鮮二種、小於常鴿、〉皆能馴與雞犬相伴、屋上構棲、局局開窻而出入各居、匹偶拒不https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01371.gif 、可貞節者矣、其生卵也、先生一雄卵、隔一兩日一雌子、〈共是匹偶〉二十日而孚、毎日從午至酉雄鴿伏之、從酉迄午雌鴿伏之、十日許止、羽翅未備而不自求食、母亦觜甚短不之、故人嚙碎蕪菁子(ナタ子)、以竹篦雛觜之、如此經二三日、乃自開口受餌、人安餌於舌頭之、大抵兩月一産、毎二卵也、上品者一歲不二産四卵、而多難伏育、是不惟鴿、草木亦人所重者子稀、諺所謂稗枋(シブカキ)之核多、可笑矣、凡鴿終夜鳴聲如偶々
野鴿〈一名堂鴿〉 與家鴿同類異種也、多灰色無冠爲異、能飛舞、常棲堂社寺樓、故俗呼曰堂鴿、畜鴿之家亦必畜堂鰻如鴿去不歸則使堂鴿若干飛舞誘歸之也、堂鴿肉、味甘有泥氣、人不之、

〔百品考〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0741 鸇鴿(○○) 一名白鳩一名洋鴿 和名クジヤクバト(○○○○○○)
百鳥圖贊、〈有圖〉張廷玉詩毆爵叢中鸇最猛、飛奴底事亦同名、寄書可張丞相、介壽何來鞏大卿、嫰羽潔淸紅吐暈、頂毛披拂黑留晴、雪衣號汝應相稱、位置金籠好對鳴、
臺灣府志、白鳩毎當風雨、無翅盤旋、霜衣雪襟、可近玩、或呼爲洋鴿、云白https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01372.gif 吧來者、初開臺時、一雙 不二十金、近飼養將雛者多、價不十分之一、白鳩能知氣候、毎交一時、卽連鳴數聲、
元外國ヨリ來ル、今世上ニ飼者多シ、形チ鴿ヨリ微大ナリ、全身潔白ニシテ、尾ヒロガリテ孔雀 ノ如シ、故ニ孔雀バトト云、籠中ニテ能ク子ヲ育ス、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0742 鴿 イヘバト〈和名鈔〉 フタコエドリ(○○○○○○)〈古歌〉 フタコエノトリ〈同上〉 ハト トウバト〈筑後〉 カヒバト(○○○○)〈播州豫州〉 ドバト(○○○)〈京〉 一名波羅越〈佛國記梵名〉 弼陀里〈雞林類聚〉 人日鳥〈淸異錄〉 插羽佳人 半天嬌人〈共同上〉 半天嬌〈事物紺珠〉 鳳髻 增朋〈共同上〉 插羽家人〈玄亭渉筆〉
野鴿家鴿ノ別アリ、本ハ一鳥ナリ、野ニ在テ人ノ畜ザルモノハ野鴿ナリ、ノバトヽ云フ、人畜フモノハ家鴿ナリ、カヒバト、云、今寺社ニ群集スル者是ナリ、形ハ鳩ニ同ジクシテ小ナリ、毛色數十品アリ、鴿ハ主人ノ家ヲヨク覺ヘヲル者ユへ遠方ニ行クト雖ドモ、放ツ時ハ必ソノ家ニ還ル、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十三/林禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0742 班鳩(○○) ジユヅカケバト ジユヅバト ハチマンバト トシヨリコヒ 一名嘩咷〈廣志〉 䳡鳩〈格物論〉 鵻〈典籍便覺〉 鳴鳩〈詩傳〉 淸鴻〈名物方言〉 眞珠鳩〈南寧府志〉
斑鳩ヲイカルガト訓ズルハ非ナリ、播川ニ斑鳩寺アリ、イカルガ寺ト讀ム、又地名ニモ斑鳩アリ、然レドモイカルガハ斑鳩ノ訓ニ非ズ、桑鳸(マメマハシ)ノ古名ナリ、又ツチクレバトヽ訓ズル説アリ、亦非ナリ、斑鳩ハ市中ヘハ稀ニ來ル、山村ニハ此鳥多クシテ鴿ハ無シ、ソソ形狀鴿ニ同ジクシテ微小ク、羽色數十品アルコトモ鴿ニ異ナラズ、皆頸項ニ白斑文アリ、數珠ヲ挂タル狀ニ似タリ、鳴ク聲トシヨリコイト云ガ如シ、京ニテ鳩(キジバト)ヲトシヨリコイト云フ、同名ナリ、然レドモ其聲ニ小異アリ、鳩ハ聲濁リテ、トシヨリコイ〳〵ト鳴、九州ニテ與總次コイ〳〵ト鳴ト聞テ、與總次バトヽ呼ブ、奧州ニテハ、テヽイポウポウカヽアポウポウト鳴ト聞ユ、皆後コイコイト重ネ鳴ク、斑鳩ハ聲高ク淸ミテ、トシヨリコイトノミ鳴テ、コイコイト重ネズ、凡ソ鳩鴿形同ケレドモ、鳩類ハ皆巢ヲ木ニ構フ、鴿類ハ巢ヲ堂塔ノ簷或ハ土庫中ニ構フ、 靑䳡 ヤマバト〈筑後〉 アヲバト〈京〉 シマバト〈備前〉 日向バト 一名黃鶡侯〈通雅〉 靑鳩〈大倉州志〉 橄欖鵻〈廣東新語〉
市中ニ來ラズ、常ニ山中ニ棲ム、形狀鴿ノ如ニシテ大ナリ、全身綠色ニシテ黑ヲ帶、胸ハ微黃ニシテ綠色ノ斑毛アリ、腹ハ白色ニシテ綠文アリ、觜ハ蒼色、翼尾共ニ黑ク、脚ハ紅色ナリ、

〔百千鳥〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0743 金鳩〈綾鳩とも〉 餌かい 〈キビ、黑米、 ゑごま 菜のくきの所をきざみて用ゆ〉
大きさ白子鳩に少し大きく、鳥の風總たひみじかく太し、頭淺黃鼠に白き眉有、雄は肩に白き毛少し計有、背の色靑光に金色あり、胸より腹までみなむらさきにて、觜朱のごとく、足は白子鳩に同色也、尾こい鼠色にて甚短し、巢もなす物なり、雌は總體色あしく白き眉、頭の淺黃も少し、むね腹茶色にて少し紫の心持有、見事成物也、玉子は十六七日の内に開る、鳩の類の玉子は何もニツ充産物也、
長莊鳩(○○○) 餌かい 〈キビ、ゑごま、黑米、〉
長莊鳩は文字いろ〳〵に書、大きさ銀鳩の半分より餘程ちいさく、毛色鼠に赤みあり、羽子毎に薄黑きふ有、能キ子そだての鳥少き物なり、子は二ツ充能開す物なれども、兎角捨て又外に菓をなす、盛り至て强ゆへなり、若鳥は玉子の生よわく、其上巢も猶捨る物にて、とかく古鳥程よく出來る也、此秘事は跡に書印ごとし、二月頃より九月まで巢にかけ、夫よりは寒き故、子育ツ事なし、雌雄わけおくべし、
銀鳩(○○) 飼かい 右同斷
大きさ白子に同じ、總身至て白く奇麗にて、觜薄桃色に足赤し、能子出來る物なり、子上りに煩ひ有、跡に書しるすごとく手入有、よき銀鳩の筋は今少し、鳥至てちいさく、首に輪の心持なく白し、兎角ゑりに珠數かけの心有り、又白子に合たるは、薄がき色に珠數毛有ものなり、あしゝ、子は年 中なす、冬寒きかた結句子は能なす物也、
白子鳩(○○○) 飼かい 右同斷
大きさ銀鳩に同じ、毛いろ薄がき色也、女烏のかたは少しかき色こく、雄はしらけたり、しかし銀鳩白子ともに雌雄分りがたく似たる物也、盛り付て知るなり、巢も又銀鳩同事、年中子をなす、
南京鳩 飼か、い 右同斷
大きさ白子鳩によほど小ぶりにて、毛色又白子に似て、總身かき色につよし、頭淺黃にてきれゐなり、巢も隨分なす物也、春より秋の内計巢をなす、冬は不産、
しやむろ鳩 ゑかい 同斷
大きさ白子に少し小ぶり、又同じくらいのもあり、總身きじ鳩の毛色に似て、黑きふあり、ゑりに黑白のごまふの毛多く有、これをしやむろ毛と云、巢もなす物なり、聲かわりたる物にて面白く淋しき物也、
べんがら鳩(○○○○○) ゑかい 同斷
大きさ白子鳩に似て、毛色は白子に同じ、首に黑き毛、白子のごとく珠數かけ有、巢もなす物なり、
孔雀鳩(○○○) ゑかい 同斷
大きさ土鳩によほど大ぶり、毛は土鳩のごとくさま〴〵有、子能出來る物なり、兩羽をはさみ置なり、尾初を押て尾のひらきあしく成ゆへ、兩羽を切也、又巢親にする鳥は、番共に尾數多は、片はしの尾を、四五枚ヅヽ兩羽をはさみ、中を五六枚殘し置がよし、女も同じ、右にてつがひくち格別よし、
じやがたら鳩(○○○○○○) ゑかい 同斷
土鳩に辰じ、土鳩のすぐれて大き成物にて、さして替りもなし、不宜品也、此外に又日光より出る、 靑鳩よわき物なり、小豆を喰ふ、すりゑに付て飼がよし、尺八鳩抔といふも、此類にて同じ物なるべし、聲至て淋しき物にて面白し、又山鳩に白子鳩に似たるあり、聲かわりあり、
大鳩(○○) 餌かい 同斷大きさ烏に少し小ぶりにて、總身濃ひ鼠、首長く鱗立毛あり、觜靑くして足鳩のごとく赤し、ゑりに白き毛少し有、めづらしき類也、

〔八丈物産志〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0745 クロバト(○○○○)ハ形チ慈鳥ニ似テ、首ノ廻リ靑光ノ色アリ、山中ニ多クシテ椿ノ實ヲ好ム、是ヲ捕テ食スルニ味ヒ鴨ニ類ス、
シヨバト(○○○○)ハ國地ノキジバトニテ、島人詞タラズシテシヨバトヽ云、是ハシロハトノツマリタルナルカ、村々ニ多クシテ、タミト云木ノ實ヲ好ム、味ヒクロバトニ及バズ、

〔源氏物語〕

〈四/夕顔〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0745 夕暮のしづかなるに、そらのけしきいと哀に、おまへの前栽かれ〴〵に、むしの音もなきかれて、もみぢやう〳〵色づくほど、〈○中略〉竹の中に家ばとゝいふ鳥の、ふつゝかになくをきゝ給て、かのありし院に、このとりのなきしを、いとおそろしと思ひたりしさまの、おも影にらうたくおもほしいでらるれば、〈○下略〉

〔内安錄〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0745 一山鳩(○○)は繪にて見る計なるに、越前屋彦四郎〈本郷一丁目〉の飼鳥を見て、珍敷ものと思ひしに、桑山修理が咄には、修理の知行大和國にては食物にするよしを聞けり、石淸水臨時祭後度の出御、桐竹鳳凰の御袍を遙拜し、極臈の袍を見れば、いかにも山鳩色とは、よく名付たるものと思はる、又肥前大柎領民家の庭に、山鳩色なるものを笊に入て並べたるを見、何ぞと尋しに、醤油の麹也といふ、麴塵の色奇妙也、越前屋の飼鳥、大村領の麴を見て、漸發明せしはをかしかりき、關東もの衣文などをものしり顏にいふは、僻事多かるべし、

瑞鳩

〔延喜式〕

〈二十一/治部〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0745 祥瑞 白鳩〈○中略〉 右中瑞

〔續日本紀〕

〈一/文武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0746 三年三月甲子、河内國獻白鳩、詔免錦部郡一年租役、又獲瑞人犬養廣麻呂戸給復三年、又赦畿内徒罪已下

〔續日本紀〕

〈三/文武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0746 慶雲三年五月丁巳、河内國石川郡人、河邊朝臣乙麻呂獻白鳩、賜絁五疋、絲十絇、布二十端、鍫二十口、正税三百束

〔續日本紀〕

〈六/元明〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0746 和銅六年正月戊辰、備前國獻白鳩
靈龜元年正月甲申朔、是日〈○中略〉丹波國獻白鴿

〔續日本紀〕

〈八/元正〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0746 養老四年正月甲寅朔、太宰府獻白鳩

〔續日本紀〕

〈二十九/稱德〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0746 神護景雲三年五月癸未、伊勢國員辨郡人、猪名部文丸獻白鳩、賜爵二級、當國稻五百束

〔菅家文草〕

〈七/賛〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0746 省試當時瑞物賛六首〈毎首十六字、已上自第二至第六、依次而賦之、貞觀四年四月十四日試、五月十七日及第、〉
禮部王獻白鳩第二
鳩呈瑞色、質巳如霜、羽毛皎皎、日德分光、

鳩飼養法

〔百千鳥〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0746 諸鳥餌飼幷藥之事
鳩の類何も菜を飼ふがよし、すりゑに遣ひたる跡の菜のくきの所よし、葉くひがたし、とかくくきの所をきざみ飼ふべし藥也、又孔雀鳩などには、肉の落たる時、燒味噌をして丸め、少し計飼ふがよし藥也、肉上る也、
鳩之類煩ふに藥之事
鳩の類煩ひは、多くは餌も喰ながら、ふら〳〵と煩ふて、肉段々に落て、三十日四十日も煩ひて落るもの也、右のをりはうなぎをきざみて、當芬餌にすり、米の粉のかわりに豆の粉を入ねり交、靑みも强く靑きほどよし、かたくねりて一目に四五度ヅヽわり餌にすべし、一まわり程の内に肉 あがり直る物也、又子あがりの鳩の、右のごとく煩ふには、予が案事の療治あり、銀鳩白子鳩に多く、右のとふりの煩ひ、子あがりに有、其折は子を取出し、右のすりゑを飼、さて水を飼入か猪口などへ入、口へおし付て呑せてよし、水を呑ならはぬ鳥、子上り多く此煩ひ有、殊のほか其時よろこび水を呑もの也、一日に三度ほどヅヽ呑せだるがよし、尤銀鳩白子鳩の類、此わずらひにて落したり、六七年以前不計案事て如斯する時、一羽も落る事なく育なり、愚案の秘事也、

〔吾妻鏡〕

〈十九〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0747 承元二年十月廿一日丁亥、東平太重胤〈號東所〉遂先途京都歸參、卽被御所、申洛中事等、〈○中略〉去月廿七日夜半、朱雀門燒亡、常陸介朝俊、〈朝隆卿末孫、弓馬相撲達者、〉取松明昇門、取鳩子歸去之間、件火成此災、凡近年天子〈○土御門〉上皇〈○後鳥羽〉悉令鳩給、長房保敎等本自養鳩、得時兮殊奔走云々、

鳩事蹟

〔日本紀略〕

〈淳和〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0747 天長七年十月戊申、一小鳩、飛入永明門西廊

〔日本紀略〕

〈六/圓融〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0747 天延三年三月十七日、夜亥時許、鴿滿天飛、其鳴聲似童子泣

〔陸奧話記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0747 武則〈○淸原〉遙拜皇城、誓天地言、臣旣發子弟、應將軍〈○源賴義〉命、志在節、不顧身、若不苟死、必不空生、八幡三所照臣中丹、若惜身命、不死力者、必中神鏑先死矣、合軍攘臂一時激怒、今日有鳩、翔軍上、將軍以下悉拜之、

〔台記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0747 康治二年三月九日丙寅、參高陽院、新院〈○崇德〉進鴨䐿、報之以家鳩(○○)、〈長頭白色、頭有冠、足右毛、性能馴人、〉

〔吾妻鏡〕

〈十七〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0747 建仁三年六月卅日丙寅、辰刻鶴岡若宮寶殿棟上、唐鳩(○○)一羽居、頃之頓落地死畢、人奇之、七月四日庚午、未刻鶴岡八幡宮自經所與下廻廊造合之上、鴿三喰合、落地一羽死、九日乙亥、辰刻同宮寺閼伽棚下、鳩一羽頭切而死、此事無先規之由、供僧等驚申之

〔太平記〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0747 中堂新常燈消事
其比都鄙ノ間ニ、希代ノ不思議共多カリケリ、山門ノ根本中堂ノ内陣へ、山鳩一番飛來テ、新常燈ノ油錠ノ中ニ飛入テ、フタメキケル間、燈明忽ニ消ニケリ、此山鳩堂中ノ闇サニ、行方ニ迷フテ、佛 壇ノ上ニ翅ヲ低テ居タリケル處ニ、承塵ノ方ヨリ、其色朱ヲ指タル如クナル、鼠狼(イタチ)一ツ走リ出テ、此鳩ヲ二ツナガラ食殺テゾ失ニケリ、

〔桃源遺事〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0748 一西山公〈○德川光圀〉むかしより禽獸草木の類ひまでも、〈○中略〉この國〈○常陸〉へ御うつしなされ候、〈○中略〉
禽之類〈○中略〉 靑鸞〈御領内の山林に御はなち候○中略〉 テウセウ鳩〈俗云朝鮮鳩○下略〉

〔香取神宮古文書纂〕

〈十六〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0748
戌七月廿八日、下總國香取大明神鳥居之外、於町屋近所、鳩めん鳥三百廿六羽、内雉子鳩一羽御散成候處に、壹羽も無別條、成程快飛行仕候、此上私共心を付、念を入可申旨奉畏候、以上、
寶永三戍年七月廿八日 大禰宜讃岐代 香取内膳
大宮司 香取丹波

〔幕令拔抄〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0748 相摸屋又一相願、聞屆置候米市場へ、堂島米相庭之高下を、飛脚ニて取來候處、拔商ひと唱、右高下を記、鳩之足ニ括付相放し、又は手品仕形等ニ而、相圖いたし候もの有之趣相聞、不埓之事ニ候、右體之者有之ば召捕、急度遂吟味候條、心得違無之樣可致候、右之趣、先達而も相觸候へども、年數相立、心得違之もの可之哉ニ付、尚又三郷町中可相觸候、
天明三年卯三月十四日

〔文恭院殿御實紀附錄〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0748 いつの頃なりけむ、表方より彩羽の家鴿を獻ぜしが、いと麗しければ、殊に御寵愛ありし、其明る年この家鴿塒せしに、かの彩羽翠翼かはりて、尋常の山鴿となる、これは全く僞作のものと思ひたどられたり、このこと掛りの者より聞え上しに、頓てそこに至り見玉ひて、是にて實の鴿なりと仰ありしと、こは有難き寬仁の御深慮なり、たてまつりしものは、いかばかり慙愧の事にやありし、

鳩利用

〔宜禁本草〕

〈坤/諸禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0749 白鴿(タウノハト/○○) 鹹平無毒、翔集屋間、久疥人食立愈、解藥毒、屎主馬疥
斑鳩(ツチクレ/○○) 甘平無毒明目、多食益氣助陰陽
春分後鳩化爲黃褐侯、聲如小兒吹一レ竽、秋芬後黃褐侯化爲斑鳩、衍義曰、數年養之並不春秋分化、有斑小大、久病虚損人食之補氣、雖數色其用卽一也、安五藏氣虚損、排膿血瘡癤

〔本朝食鑑〕

〈六/林禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0749 鳩〈○中略〉
肉、氣味、甘平無毒、主治、益氣補腎、令人不一レ噎、能明目、
發明、今俗毎製鳩酒鳩羮、冬月食之、或臨臥毎食、而謂能温中壯氣、久病虚羸者最宜肥健、老人常食則侖長生、是鳩之性温故也、必大按、鳩性不温、温何有腎水乎、旣假酒氣則然焉、平而助陰陽、用久病虚損者、益氣養血、用老人者、助氣滋血而不噎、鳩性亦不噎、周禮、仲春養國老、仲秋授鳩杖是也、

〔大和本草〕

〈十五/雜禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0749 鳩〈○中略〉 鳩ノ性食ニムセズ、故ニ杖頭ニ鳩ノ形ヲ作リ、老人ニツカシム、老人ハ食ムセヤスケレバ厭禳(マジナヒ)ナリ、靑䳡(ヤマバト)肝苦シ不之餘肉亦苦、

〔甲子夜話〕

〈三十七〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0749 鳩ハ咽ザル鳥ナリ、老人ハ疾セマリ氣ヨハクシタ咽ブ者ナリ、故ニ呪咀トス、續漢儀志曰、仲秋月八九十ノ老人ニ杖ヲ賜フ、杖端ニ鳩ヲ造テ著タルニ因リ、鳩杖ト云ト、又云、唾ニ咽タルトキ、掌ニ鳩字ヲ指畫シテ嘗レバ、卽治スト云、

〔武家調味故實〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0749 一くわい人の間にいませ給べき物 はと

鳩雜載

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0749 諸國貢進御贄〈中宮准此〉
旬料 大和國吉野御厨所進鳩、從九月明年四月

〔日本書紀〕

〈十三/允恭〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0749 二十四年六月、有人曰、木梨輕太子姧同母妹輕大娘皇女、因以推問焉、辭旣實也、太子是爲儲君、不罪、則流輕大娘皇女於伊豫、是時太子歌之曰、〈○歌略〉又歌之曰阿摩儾霧(アマダム)、箇留惋等賣(カルヲトメ)、異哆儺介麼(イタナカバ)、臂等資利奴陪瀰(ヒトシリヌベミ)、幡舍能夜摩能(ハサノヤマノ)、波刀能(ハトノ)、資哆儺企邇奈勾(シタナキニナク)、〈○又見古事記

〔就狩詞少々覺悟之事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0750 一射まじき鳥の事〈○中略〉鳩

〔嬉遊笑覽〕

〈十一/乞子〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0750 仲間六部、下手談義に、年中江戸に住居しながら、日本回國とまか〳〵しき顔つき、是を仲間六部といふ、昔はかやうのものを、鳩のかひ(○○○○)といへり、〈○中略〉浮世ばなし、〈寬文十年板〉鳩の戒とありて、鳩は鶯の巢をよく作るを見て、それを學て巢を作れども、木の枝などを組て、その上に卵をうむ故、枝の間をもれて碎く、それ故物ごと心得がほにふるまふものを、鳩の戒といへり、〈浮世物語見合べし〉浮世物語、〈二〉京にも田舍にも鳩の戒と云もの有て、萬のことの間を合せ、さながら其根に入たることは、ひとつもなけれども、又しらぬ事もなし、あれ是に成りかへ〳〵、うそをつきて世を渡る、是を鳩の戒と名付る事、鳩は人里近くすむものにて云々、鶯の巢をならひて作らむと、作りやうを見るに、はゝき竹きれ柴の類を下にしき、そめ上に巢をかくる、それまでも見とゞけず、もはや心得たりと思ひ、木の枝に柴の折四五本を渡し、其上に木葉をしきて卵をうむに柴のあひだよりもれ落て打くだく、口傳も師傳もうけずして、只見及び聞及びたるに任せて、根に入らぬわざどもを、しらぬことなく覺がほなるは、鳩の巢にたとへたり、又秋になれば、鳩すなはち鷹となりて、鷹のまねするものなれば、時に隨ひ折によりて色々になりかはり、世を渡る業をいたし、人をへつらひだますものを、鳩の戒とは申すとなり、

雀/名稱

〔本草和名〕

〈十五/獸禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0750 雀卵、一名鳸〈音戸〉一名黃口、一名鴳、〈音晏、已上三名出兼名苑、〉一名嘉賓、〈常栖集人家賓客、故名之、出古今注、〉矢名育丹、〈出拾遺〉和名須々美(○○○)、

〔段注説文解字〕

〈四上/隹〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0750 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01373.gif人小鳥也、〈今俗云麻雀者是也、其色褐、其鳴節節足足、禮器象之曰爵、爵與雀同音、後人因書小鳥之字爵矣、月令鴻鴈來、賓爵入大水蛤、高注呂覽曰、賓爵老爵也、棲宿於人堂宇賓客、故謂之賓爵、又有雀而色純黃者黃雀、戰國策云、俛啄白粒、仰棲茂樹、詩所謂黃鳥也、〉从小隹、讀與爵同、〈小亦聲也、卽略切、古音、在二部、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十八/羽族名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0750 雀 漢書陳勝傳云、燕雀安知鴻鵠之志哉、〈雀音且略反、古字與爵通、和名須須女(○○○)、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈七/鳥名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0751 按須須其鳴聲、米群之義須須美轉語耳、説文、雀依人小鳥也、埤雅、雀賦曰、頭如顆蒜、目如擘椒、李時珍曰、雀、處々有之、羽毛斑褐、頷觜皆黑、尾長二寸許、爪距黃白色、躍而不歩、其視驚瞿、其目夜盲、其卵有斑、

〔類聚名義抄〕

〈九/隹〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0751 雀〈音爵、スヽミ、〉

〔伊呂波字類抄〕

〈須/動物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0751 雀〈スヽメ、スヽミ、禮云、雀入大水蛤也、〉

〔和爾雅〕

〈六/禽鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0751 雀(スヾメ)〈爵同〉 黃雀(アグラスヾメ)〈小曰黃雀、黃口雀同、〉 䨁(スヾメノコ)〈雀子也〉 白丁香(スヾメノクソ)

〔八雲御抄〕

〈三下/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0751 雀 むら すゞめいうといふは、夕のそら也、

〔藻鹽草〕

〈十/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0751
むら雀 雀色〈ゆふべのそら也〉 雀かくれ〈眞木の目の出て、いまだ葉ならぬねを云也、〉 破車といふ事〈すゞめのよりあひの事也、又すゞめよく家をうがつともいへり、うがつとは破事也、〉 とまり雀 雀なく 雀のこゑ 雀かたよる 羽をわかみ 雀のひなのてなれぬ ねぐらもとむるむら雀

〔日本釋名〕

〈中/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0751 雀(スヽミ) 此鳥の性おどりてすゝみ行、故にすゝみと云、

〔東雅〕

〈十七/禽鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0751 雀スゞメ 古事記に、天若彦の身まかりし時、雀を碓女(ウスメ)となせしといふ事あり、スゞメとはウスメといふ語の轉ぜしに似たり、されど舊事紀には碓舂女(ツキメ)としるされ、日本紀には舂女(ツキメ)とも見えたれば、其云ひつぎし所、同じからずと見えたり、或はスゞとは猶サゝといふが如く、其小しきにして小きを云ひしも知るべからず、メといひしは、古俗鳥を呼てメと云ひしこと少からず、鳹をヒメといひ、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01374.gif をシメといひ、鷗をカモメといひ、燕をツバクラメといひしが如き是也、

〔閑田耕筆〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0751 雀字、大雀尊(サヾキノ)と古事記に書れしごとく、さゝは古訓なるべし、さゝとは少き事也、本草綱目時珍説、上〈ノ〉少は哀容につき、隹は短尾の鳥を稱する字なれば、合せて雀字を作るといへり、後世さゝと稱へず、すゞめと訓ても少き事に用ゆ、すゝめうりはひめうりともいひて、王瓜の類也、 すゞめの鐵炮といふは、看麥娘(カンバクジャウ)といふ草にて、皆少きもの也と、一友人話せりき、

雀種類

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0752
集解、雀處處有之、無所不相集、羽毛斑褐、眼下兩頗黑、白圈中有黑圓文、頷下淡黑腹白、觜翅尾黑帶赤色、爪趾黃赤色惟常躍而歩者少、顧視驚懼、成群喧躁、能鬪不止、相噬墜地、其目夜盲、迷宿入座不之、大抵禽類皆然、不獨雀而已、雀性最淫、春二三月、秋八九月、孕而生卵、其卵有斑、巢于瓦甍、檐間之虧隙、堂社之破竅、朽木之空穴而伏卵、小者號黃雀、雛口黃未黑故名、八九月群飛于田間、拾啄雜穀之遺棄、或近于宮厦村郭者、竊食飯粟之餘殘、貪覔倉廩之遺漏、體甚肥、背有脂如綿、性味皆同、炙食最佳、今養官鷹之家、令役夫小鳥毎給之、役夫日擁黏竿、周巡于村郭田園以捕雀而供之、是雀於禽中最多之故乎、或雀性和是鷹者也、一種雀白而明者、又有白斑者、雖希而間有之、人人珍賞之、爲其瑞應所一レ感者拙哉、〈○中略〉
附錄紅雀(○○)〈訓倍仁須須女、狀小於雀、遍身純紅、頭頸腹下有黑處、翅羽純黑有白點雪、尾亦深黑、觜脚尚紅、其聲淸而幽艷、近世自外國來官家畜之籠樊、以爲奇翫耳、〉

〔本朝食鑑〕

〈六/華和異同〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0752
李時珍曰、有白雀(○○)、緯書以爲瑞應所一レ感、今本邦儘有、不瑞也、雀屎或名白丁香、靑丹雀蘇、雷斅曰、坐尖在上是雄也、兩頭圓者是雌也、此難證、今畜雀見其屎、則雄屎有上尖下直者、有兩頭圓者、雌屎亦然、於玆難糞之雌雄耳、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0752 雀 スヾメ イナヲホセドリ〈古歌〉 一名馬婦鳥〈彚苑詳註〉 靑喜〈淸異錄〉
小蟲〈本草原始〉 家常腽肭劑同上 賽〈雞林類聚〉 家雀〈盛京通志〉 佳賓〈名物法言〉 家賓〈大倉州志〉 奸雀〈事物紺珠〉 䳸雀〈同上〉
雀ノ老タル者ハ、背ノ斑文分明ナリ、コレヲ麻雀(○○)ト云、親ドリナリ、卵ヲ出テ未久カラザル者ハ吻黃色ナリ、コレヲ黃雀(○○)ト云、子トリナリ、〈○中略〉一種入内スヾメ、俗ニ訛テミヤウナイスヾメト云フ、 昔實方中將奧州配所、ニテ終ル、再ビ禁庭ニ歸ラント欲スル念アリテ、雀ニ化シテ殿上ノ大盤ノ飯ヲ食フト、俗ニ言傳テ入内スヾメト云フ、然レドモ別ニ一種ナリ、首ノ色常雀ヨリ深ク、背モ黃色微靑ニシテ形稍小ナリ、此モ黃雀ト云、集解ニ出、又浙江通志ニモ見タリ、雀ハ和漢共ニ藥食ノ用ニ入ル、ソノ糞ヲ白丁香ト云、雄雀ノタチフンヲ用ユ、飛ントスル時ノ糞、上立シテ上細ク下ヒロシ、今賣者雌雄ヲ混ジ、臥屎モ雜ハル、宜ク撰ブベシ、雀頭ヲ用ルヲ雀腦ト云、一名首陽、〈本草滙〉雀卵ヲ和方ニ雀石子ト云、眼科ノ書ニ雀貝ト云フ、時珍曰、又有白雀云云、シロスヾメハ稀ニアリ、全身白色ナリ、唐六典ニハ、白雀中瑞ト云、遁甲圖ニハ王者爵祿均則至ト云、然レドモ飼ヤウニヨリテモ、白雀ト爲ルコト、黑客揮犀ニ見ヘタリ、曰、雀有色純白者、有尾白者、構巢人家、多爲祥瑞、余曾見賣藥老人責白雀數枚、間何從得之、答云、雀方出殼未羽時、以蜜和飯飼之乃然ト、本邦ニモ尾白キ者アリ、又全身白斑アル者、頭ノミ白ヲフタボウシト呼者アリ、皆變生ナリ、此外ニベニスヾメ、シマスズメ、カハラスヾメ、キスヾメ等ノ品アリ、
增、ベニスヾメハ背白赤シテ、喉ノ下ヨリ羽ノ方ニ黑斑アリ、羽ハ黑シテ白斑アリ、尾ハ黑シテ觜足ハ甚赤シ、胭脂ヲ塗タルガ如シ、常ノ雀ヨリ形小ナリ、マシコニ近キモノナリ、舶來ノ品ニシテ禽肆ニアリ、又シマスヾメ(○○○○○)、一名クロスヾメハ、形狀尋常ノモノト同シテ赤黑シ、目ノ旁ト胞トニ白毛ヲ雜ユ、足ハ赤黃色ニシテ爪ハ甚白シ、此レ亦奇品ナリ、

〔百千鳥〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0753 べに雀 餌がい 〈キビ、小米、アワ、〉
大きさじやがたらによ程小ぶりにて、赤く茶色の毛も交りたり、兩羽に白き星こまかに有、見事なる鳥也、口觜赤く足黃也、雌は茶色にて赤みも少し有、よわき鳥なり、觜よりくさり出落る、とかく觜あしくなる物也、又寒氣にもいたみ飼にくし、巢もなす鳥有、きびは皮をさり、又引割て飼ふべし、多引割ておく時はあしくなる、其折々少宛こしらへ置て飼がよし、 べんがら雀(○○○○○) 餌がい 前同
右紅雀のうち也、よほど鳥大き成物也、諸事紅雀同事、〈○中略〉
じやがたら雀(○○○○○○) 餌がい 前同〈○キビ、モミ、米、アワ、〉
大さ和のさゞいに似て、總身かき色に、むねより脇はらの下まで鱗のふ有、又あしきはうろこの形なく、かきいろにてあしゝ、上觜黑く、下觜紺色にて太し、足も紺色なり、腹うす白し、巢もなす烏也、文鳥のごとく春秋に子をなす、しかし巢をなす鳥は、十姉妹と違まれ也、横に口を明たるふごを釣べし、〈○中略〉巢ぐさはところの毛、しゆうの毛多く入置べし、又かれ芝、笹の落葉、わらは九寸位に切て、はかまみご共に入べし、子はかへりても文鳥のごとく、きび、あわのもやしを飼ふ也、ゑごまもよし、
せうき雀(○○○○) 餌がい 前同
大さ總たひ鳥の形、きんばら碧鳥に同じ、諸事似たる物也、總身とび色のこき色にて、頭よりむねのうへまで黑く、觜鼠色にて太し、薄く紺いうなるもあり、巢はなさず、よろしからぬ物なれども、めづら舖類なり、此類の鳥、巢はみな〳〵能作る物なれ共、巢計作て其内へ入、一日あまり出ざるものにて淋し、

〔飼鳥必用〕

〈中〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0754 紅雀
此鳥唐鳥にては秋の頃にも候哉、群立渡來ルよしなれども、日本〈江〉澤山に不渡、餘多のうちには巢組に、宜敷鳥も可有に、無多事故思ひつきて庭籠に放し不申、夫故日本にて子をとつたる事未不聞、拙〈○比野勘六〉案ずるに、長崎江相渡たる歲若鳥を見極メ、直に庭籠に巢組に還しなば、手前に飼置て慥成所を見極メ、夫より庭籠へ放シ候故、年後になり子出來兼可申哉、何れ十姉妹類の小鳥は、四五才以上は産巢には不用立、貳才年第一宜敷聞傳へ、思ひ付ては居たれども、求得ざれば無 詮事哉、此鳥の病ひ、口に白キ粉のよふなる物付たらば、早く用心して療治すべし、小キ鳥には病ひ多發るもの、兼而氣を付可飼事、寬政年中、本郷邊にて子出來候事も有り、此鳥至而寒にまけ候間、夫故塒は秋する也、但春巢より秋の巢子出來候鳥也、第一易キ鳥にて六ケ敷もの也、

〔飼鳥必用〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0755 岩雀(○○)
此鳥春秋、日光ちゝぶより出る鳥也、雌雄よくわかるなり、荒鳥は荏胡麻に、して、後摺餌につける也、
石殘雀(セキザン/○○○)
此鳥石殘雀とて上方より來る事有、尤唐方とてもなし、和鳥にも澤山なし、形大ましこに似て、頭ゟ總羽上への照りましこの如く、觜黃色足は黑し、雌は靑し、塒して何れも靑くなる、飼方ゑごまにて、後すりゑにつけるなり、

〔玉勝間〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0755 にふなひ(○○○○)といふ雀
尾張國人のいはく、尾張美濃などに、秋のころ、田面へ廿三十ばかりづゝ、いくむれもむれ來つゝ、稻をはむ、にふなひといふ小鳥あり、すゞめの一くさにて、よのつねの雀よりは、すこしちひさくて、觜の下に、いさゝか白き毛あり、百姓はこれをいたくにくみて、又にふなひめが來つるはとて、見つくればおひやる也、此すゞめ春夏のほどは、あし原に在て、よしはらすゞめ(○○○○○○○)ともいふといへり、のりながこれを聞て思ふに、入内雀(ニフナイスヾメ)といふ名、實方ノ中將のふる事にいへる、中昔の書に見えたり、されどそれは附會説にて、にふなひは、新嘗(ニヒナへ)といふことなるべし、新稻(ニヒシネ)を、人より先キに、まづはむをもて、しか名づけたるなるべし、萬葉の東歌にも、新嘗をにふなみといへり、又おもふに、稻負鳥(イナテオホセドリ)といふも、もし此にふなひの事にはあらざるにや、古き歌どもによめる、いなおほせ鳥のやう、よくこれにかなひて聞ゆること多し、雀はかしかましく鳴物也、庭たゝきは、かなへりとも聞えず、

瑞雀

〔延喜式〕

〈二十一/治部〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0756 祥瑞
赤雀(○○)〈○中略〉 右上瑞〈○中略〉
白雀(○○)〈○中略〉 右中瑞〈○中略〉
神雀(○○)〈五色者也、又大如鷃雀、黃喉白頸黑背腹斑文也、〉冠雀(○○)〈戴冠者也○中略〉 右下瑞

〔日本書紀〕

〈二十四/皇極〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0756 元年七月丙子、蘇我臣入鹿豎者、獲白雀(○○)子、是日同時有人、以白雀籠、而送蘇我大臣

〔日本書紀〕

〈二十九/天武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0756 九年七月癸未、朱雀(○○)在南門、 十年七月戊辰、朱雀見之、 十一年八月甲戌、筑紫太宰言、有三足雀(○○○)、 十二年正月庚寅、百寮拜朝廷、筑紫太宰丹比眞人島等、貢三足雀、 乙未、親王以下及群卿喚于大極殿前而宴之、仍以三足雀、示子群臣、 丙午、詔曰、明神御大八州日本根子天皇勅命者、諸國司國造郡司及百姓等諸可聽矣、朕初登鴻祚以來、天瑞非一二多至之、傳聞、其天瑞者、行政之理、協于天道則應之、是今當于朕世、毎年重至、一則以懼、一則以喜、是以親王諸王、及群卿百寮、幷天下黎民、共相歡也、乃小建以上、給祿各有差、因以大辟罪以下皆赦之、亦百姓課役、並免焉、

〔帝王編年記〕

〈十/天武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0756 十二年、今年太宰府貢三足雀、又曰(○○)三足烏(○○○)

〔續日本紀〕

〈十/聖武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0756 神龜四年正月丙子、天皇御大極殿朝、是日左京職獻白雀

〔續日本紀〕

〈十一/聖武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0756 天平四年正月乙巳朔、御大極殿朝、天皇始服冕服、左京職獻白雀

〔續日本紀〕

〈三十/稱德〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0756 寶龜元年五月壬申、先是伊豫國員外掾從六位上笠朝臣雄宗獻白鹿、勅曰、〈○中略〉今年得大宰帥從二位弓削御淨朝臣淸人等進白雀一雙、乾坤降祉、符瑞駢臻、〈○中略〉於是左大臣藤原朝臣永手〈○中略〉已下十一人奏、臣等言、〈○中略〉白鹿是上瑞、白雀合中瑞、伏望、〈○中略〉進白雀人叙位兩階、賜稻一千束、〈○中略〉伏請付外施行、制曰可、

〔續日本紀〕

〈三十八/桓武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0756 延曆四年五月癸丑、先是皇后宮赤雀見、是日詔曰、朕君臨紫極、子育蒼生、政未於 南熏、化猶闕於東戸、粤得參議從三位行左大辨兼皇后宮大夫大和守佐伯宿禰今毛人等奏云、去四月晦日、有赤雀一隻、集于皇后宮、或翔止廳上或跳梁庭中、貌甚閑逸、色亦奇異、晨夕栖息、旬日不去者、仍下所司、令圖諜、孫氏瑞應圖曰、赤雀者瑞鳥也、王者奉己儉約、動作應天時則見、是知、朕之庸虚、豈致此貺、良由宗社積德、餘慶所一レ覃、旣叶舊典之上瑞、式表新邑之嘉祥、奉天休而倍惕、荷靈貺以逾競、思敦弘澤以答上玄、宜天下有位、及内外文武官把笏者、賜爵一級、但有蔭者、各依本蔭、四世五世、及承嫡六世已下王、年二十以上、並叙六位、又五位已上子孫、年二十已上、叙當蔭階、正六位上者免當戸今年租、其山背國者、皇都初建、旣爲輦下、慶賞所被、合常倫、今年田租、特宜全免、又長岡村百姓家、入大宮處者、一同京戸之例、 六月癸酉、勅曰、去五月十九日、緣皇后宮有赤雀之瑞、普賜天下有位爵一級、但宮司者是祥瑞出處也、當褒賞以答靈貺、宜宮司主典已上、不六位五位、進爵一級、 辛巳、右大臣從二位兼中衞大將臣藤原朝臣是公等、率百官上慶瑞表、〈○中略〉詔報曰、乾坤表貺、休瑞荐彰、白䴏構巢於前春、赤雀來儀於後夏、寔惟宗社攸祉、群卿所諧、朕之庸虚、何應於此、但當卿等理政化、上答天休、省來賀、祗懼兼懷、是日授皇后宮大夫從三位佐伯宿禰今毛人正三位、亮從五位上笠朝臣名末呂正五位下、大進從五位下藤原朝臣眞作、少進從五位下安倍朝臣廣津麻呂並從五位上、大屬正六位上阿閉間人臣人足、少屬正六位上林連浦海、並外從五位下

〔續日本紀〕

〈四十/桓武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0757 延曆十年七月辛巳、伊豫國獻白雀、詔國司及出瑞郡司進階一級、但正六位上者廻授一子、其獲雀人凡直大成賜爵二級幷稻一千束、授國守從五位上菅野朝臣眞道正五位下、介從五位下高橋朝臣祖麻呂從五位上

〔類聚國史〕

〈百六十五/祥瑞〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0757 延曆十三年六月壬戌、肥前國獻白雀

〔類聚國史〕

〈七十一/歲時〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0757 延曆十五年正月甲午朔、皇帝〈○桓武〉御大極殿朝賀、石見國獻白雀

〔日本後紀〕

〈五/桓武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0757 延曆十六年正月戊子朔、皇帝御大極殿朝賀、太宰府獻白雀、宴侍臣已上於前殿被、

〔類聚國史〕

〈百六十五/祥瑞〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0758 延曆十六年六月辛酉、三品朝原内親王獻白雀、御https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00023.gif 及家司等賜物有差、初見者伊勢直藤麻呂、獲者菅生朝臣魚麻呂叙位一階、 二十一年八月壬辰、豐後國獻白雀、賜獲者稻五百束

〔類聚國史〕

〈七十一/歲時〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0758 延曆二十二年正月癸丑朔、廢朝雨也、 甲寅、受朝賀、〈○中略〉豐後國獻白雀、宴侍臣於前殿、賜被、

〔日本後紀〕

〈十二/桓武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0758 延曆二十三年正月丁丑朔、御大極殿朝賀、〈○中略〉近江國獻白雀、宴次侍從已上、於前殿被、 四月壬申、右兵衞大初位下山村曰佐駒養獻白雀、 五月丙申、齋宮寮獻白雀

〔日本後紀〕

〈二十四/嵯峨〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0758 弘仁五年閏七月癸卯、美作國獲白雀、賜獲人稻四百束

〔三代實錄〕

〈二/淸和〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0758 貞觀元年五月十三日戊辰、備前國獲白雀一而獻之、

〔菅家文草〕

〈七/賛〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0758 省試當時瑞物賛六首〈毎首十六字、已上自第一第六、依次而賦之、貞觀四年四月十四日試、五月十五日及第、〉
備州獻白雀第四
新呈白雀、已異環、鷹鸇莫畏、近見龍顔

〔三代實錄〕

〈三十三/陽成〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0758 元慶二年四月二十六日辛卯、備中國獲白雀一

〔三代實錄〕

〈四十八/光孝〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0758 仁和元年七月十四日丙申、西寺獻白雀一

雀飼養法

〔喚子鳥〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0758 粒餌小鳥の分 何にても水を入る
すゞめ 〈ゑがひ〉 〈きび、あは、ひゑ、米、すりゑ四分ゑよし、〉
大きさ毛色、世にしるごとし、
〈島すゞめ 黑すゞめともいふ〉 〈ゑがひ〉 〈きび、あは、ひゑ、米、〉
大きさすゞめににて、かたちまたすゞめなり、毛いろ總身あかぐろく、目の邊、のどのあたりに、白 きけいろまじりたり、あしすゞめよりきれいにてつめしうし、さゑづりすこしあり、めづらしきるいなり、
にうないすゞめ 〈ゑがひ〉 〈きび、あは、ひゑ、米、すりゑ四分ゑよし、〉
大きさすゞめににて、かしらのあかみ色よく多し、其外すゞめににたり、さへづり諸事すゞめに同事、

〔閑田耕筆〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0759 雀の子飼はよく人に馴るものにて、放飼にするに安し、或は人の肩に登り懷にも入り、又庭の樹木にも遊ぶ、苦しげも見へず、よきものなれども、あまりに馴て人の足もとにまとひ、あやまちて踏殺すことのあるがかなしと人いひき、此飼雀にふと酒糟を喰せたれば、頓て死だりとか、さらば雀には限らず、鳥類には大毒なるが、人の心つかぬこと也、

雀事蹟

〔日本書紀〕

〈二/神代〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0759 天稚彦之妻、下照姫哭泣悲哀、聲達于天、是時天國玉聞其哭聲、則知夫天稚彦巳死、乃遣疾風尸致天、便造喪屋而殯之、卽以川鴈持傾頭者、及持帚者、又以雀爲舂女(ツキメ)

〔三代實錄〕

〈三十四/陽成〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0759 元慶二年七月甲午朔、是日立秋、早旦雷聲隱々、至未一刻忽發一聲、其勢非常、〈○中略〉大藏省奏、霹靂於倉前陣木、有黃雀(○○)、含口蒼虫而死、腹毛燋爛、

〔左經記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0759 長元四年八月四日己卯、侍從中納言移著南座、召吏仰曰、依宇佐宮恠異、可軒廊御卜也、〈○中略〉傳闘、自去五月二日于晦比、宇佐神殿上雀群集、或作栖云々、仍有此御卜、卜而官申云、本所火事疾疫云々、寮申云、天下疾病、若御藥云々、

〔續世繼〕

〈十/敷島の打聞〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0759 實方中將の御はかは、みちのおくにぞ侍なるとつたへきゝ侍し、まことにゃ、藏人頭にもなり給はで、みちのおくのかみになり給て、かくれたまひにしかば、このよまでも、殿上のつきめのだいばんすへたるをば、すゞめののぼりて、くうおりなどぞ侍なる、實方の中將の、頭になり給はぬ、おもひののこりておはするなど申も、まことに侍らば、あはれにはづかしくも、 すゑのよの人は侍ことかな、

〔台記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0760 天養元年九月十二日庚申、今春中門廊軒際雀生子、其子成長有斑毛、常飛來此亭、衆欲之不得、左近府生秦公春取之獻、余〈○藤原賴長〉見之頭及上喙羽白、背如常雀足赤、愛賞殊甚、

〔宇治拾遺物語〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0760 今はむかし、春つかた日うらゝかなりけるに、六十計の女のありけるが、虫うちとりてゐたりけるに、庭に雀のしありきけるを、童部石をとりてうちたれば、あたりてこしをうちをられにけり、羽をふためかしてまどふほどに、烏のかけりありきければ、あな心う、からす取てんとて、此女いそぎてとりて、いきしかけなどして物くはす、小桶に入てよるはおさむ、明ればこめくわせ飼菜にこそけてくはせなどすれば、子ども孫など、あはれ女なとじは老て雀かはるるとて、にくみわらふ、かくて月比よくつたへば、やう〳〵おどりありく、雀の心にもかくやしなひいけたるを、いみじくうれし〳〵と思けり、あからさまに物へいくとても、人に此すゞめみよ、物くはせよなどいひおきければ、子まごなど、あはれなんでう雀かはるゝとて、にくみわらへども、さばれいとおしければとて、飼ほどに、飛ほどに成にけり、今はよも烏にとられじとて、外にいでゝ手にすへて、飛やするみんとてさゝげたれば、ふらふらととびていぬ、女おほくの月比日比、くるればおさめ、明ればものくはせならひて、あはれや飛ていぬるよ、又來やするとみんなど、つれづれに思ていひければ、人のわらはれけり、さて廿日ばかりありて、此女のゐたるかたに、すゞめのいたくなくこゑしければ、すゞめこそいたくなくなれ、ありしすゞめのくるにやあらんと、思ていでゝ見れば、此すゞめ也、あはれにわすれずきたるこそ、あはれなれといふほどに、女のかほをうちみて、くちより露ばかりのものを、おとしおくやうにしてとびていぬ、女なにゝかあらん、すゞめのおとしていぬる物はとて、よりてみれば、ひさごのたねをたゞひとつおとしてをきたり、もてきたる樣こそあらめとて、とりてもちたり、あないみじ、すゞめの物えて寶にし給とて 子どもわらへば、さばれ植てみんとて、うへたれば、秋になるまゝに、いみじくおほくおいひろごりて、なべての杓にもにず、大におほく成たり、女悦けうじて、さと隣の人にもくはせ、とれどもとれどもつきもせずおほかり、わらひし子孫もこれをあけくれ食てあり、一里くばりなどして、はてにはまことにすぐれて、大なる七八はびさごにせんと思ひて、内につりつけておきたり、さて月比へて、いまはよく成ぬらんとて見れば、よくなりにけり、とりおろしてくちあけんとするに、すこしおもし、あやしけれどもきりあけてみれば、物ひとはた入たり、なにゝかあるらんとてうつしてみれば、白米の入たる也、思かけずあさましとおもひて、大なる物にみなをうつしたるに、おなじやうに入てあれば、たゞごとにはあらざりけり、すゞめのしたるにこそと、あさましくうれしければ、物にいれてかくしをきて、のこりの杓どもをみれば、おなじやうに入てあり、これをうつし〳〵つかへばぜんかたなく多かり、さてまことにたのもしき人にぞ成にける、〈○下略〉

〔藩翰譜〕

〈二/松平〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0761 或時若君〈○德川家光〉大殿の御寢殿の屋の軒端に、雀の巢をくひ、子を生みたりしを、こなたより御覽じて、欲しがらせ玉ひ、長四郎〈○松平信綱〉とりて參らせよとあり、長四郎年十一才のときなれば、いかにも叶ふまじきよし辭しけれぱ、君は驚きて飛去ることもありなん、巢くひし所よく見置て、日暮てこなたの屋の軒の端さして登り、彼處に忍び行て取べし、おとなは身重く、足音もしなん、たゞ汝取てまゐらせよと、候ふ人々の敎へしかば、力なく日暮てこなたの屋よりして、つたひ〳〵行く、旣に御寢殿の軒に至りて、取らんとせしに踏損じて、御坪の内へどうと落つ、將軍家〈○德川秀忠〉御刀取て障子引あけ玉へば、御臺所燈火とつて出させ玉ひ、御覽ずるに、長四郎にて在けり、將軍家不思儀に思召して、汝は何しに爰には來りぬるぞと御尋ありしに、今日の晝、この御殿の屋の軒端に、雀の子うみたるを遙かに見て、餘り欲しさに參りて候と申、將軍家いや〳〵、おのれが心にはあらじ誰がをしへけるぞと、いろ〳〵に御推問あれども、幾度も初め申しゝ言 葉にかはらず、〈○下略〉

〔百家琦行傳〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0762 唐齋
江戸麻布雜式といへる處に、〈氏を忘れたり〉唐齋といへる儒者ありし、書を能し、もつとも博覽の人なり、〈○中略〉此人つねに雀を愛し、朝飯を喰をはりて後、また一椀の飯をもらせ、庭上にこれを蒔、はたはたと手を拍ければ、たちまち數百の雀むらがり來り、彼飯をはむ事なり、小時ありて亦手をはたはたと鳴しければ、彼雀いづこともなく飛さりて、一羽も居ずなりにける、晝も猶斯のごとく、都て日に三度づゝ食をあたへけるとなり、

〔百家琦行傳〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0762 河内屋太郎兵衞
大坂備後町堺筋に河内屋太郎兵衞といふ者ありけり、世人略して河太郎と呼ぬ、商家にして家もつとも富り、〈○中略〉河太郎思ふやう、彼岸の茶の子、何れも同じ物をやつたり貰たり、不益の事なり、何ぞ跡にのこりて要にたつものを、配んと思ひ、〈○中略〉ある秋の彼岸八月十五日、中日に當りけるとき、河太郎また工風をめぐらし、五六寸まはりの小き笊を多く求め、裡に雀を一羽づゝいれて、上を白紙にてはりつめ蓋とし、夫に彼岸の志河太郎と書著てくばりけり、貰たる家には不審におもひ、彼笊(いがき)、〈東國にてざると云なり〉の中にて、何かばた〳〵と音のする故に、紙を扯(ひき)はなし看ば、忽ち裡より雀一羽とび出て、客次(ざしき)中をとび廻り、竟には外面へ舞いでゝ、那里(いづこ)ともなく去行ける、是彼岸八月十五日に中りたれば、放生會の意なり、然して跡に笊ひとつ殘り、永く庖湢(だいどころ)に調寶して、をりをり河太郎が事を云いでけり、

雀利用

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0762 雀〈○中略〉
肉、氣味、甘温無毒、〈不李食、妊娠之人不豆醬、服白朮之人忌之、〉主治、壯陽益氣煖腰膝、縮小便寒疝偏墜及久痢、冬三月宜之、或治婦人血崩帶下、 發明、雀之淫慾過他之禽類、是因陽氣熾而陰氣溢也、故能起人之陽道陰精、而令男女有一レ子、然春夏秋者雀多淫而妄泄精、精泄則陰陽動躁、食之不人、至冬三月者、雀無慾而陰陽靜定、氣不外、此可食之時也、今人、常服驛馬丸雀附丸、漫耽簾帷之樂、而不腃(カヘリミ)陽氣外竭陰水内涸、飜歸咎於無情之飛禽、飛禽不幸無罪、嗟乎可憐爾、〈○中略〉
卵、氣味、酸温無毒、〈r取第一番者用、或五月宣之、〉主治、大抵與肉同、
雄雀屎一名白丁香、〈凡屎色自或靑或淡黑、以白者上、今用立糞、雀立而屎、則尖挺向上、下干直如丁子頂、是白丁香也、其居屎者平圓横臥、本邦不雌雄而用立糞、若用雄之立糞則尚可矣、〉氣味、苦温微毒、主治、疝瘕積脹痃癖、及目醫努肉癰疽瘡癤、咽喉齒齲、或中風口噤、女人乳腫、小兒驚癖、

〔古事談〕

〈三/僧行〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0763 仁海僧正ハ食鳥之人也、房ニ有ケル僧ノ雀ヲエモイハズ取ケル也、件雀ヲハラ〳〵トアブリテ、粥漬ノアハセニ用ケル也、雖然有驗之人ニテ被坐ケリ、大師之御影ニ不違云々、

〔矢開之記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0763 一矢開には一ニ鹿、二ニ雀と申義也、 武家調味故實一くわい人の間にいませ給べき物 すゞめ

雀雜載

〔古事記〕

〈下/雄略〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0763 天皇坐長谷之百枝槻下、爲豐樂之時、〈○中略〉天皇歌曰、毛々志紀能(モヽシキノ)、淤富美夜比登波(オホミヤビトハ)、宇豆良登理(ウヅラトリ)、比禮登理加氣底(ヒレトリカケテ)、麻那婆志良(マナバシラ)、袁由岐阿閉(ヲユキアへ)、爾波須受米(ニハスヾメ/○○○○○)、宇取須麻理韋氐(ウズスマリイテ)、祁布母加母(ケフモカモ)、佐加美豆久良斯(サカミヅクラシ)、多加比加流(タカヒカル)、比能美夜比登(ヒノミヤビト)、許登能(コトノ)、加多理碁登母(カタリゴトモ)、許袁婆(コヲバ)、

〔源氏物語〕

〈五/若紫〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0763 すゞめの子をいぬきがにがしつる、ふせごのうちにこめたりつるものをとて、いとくちをしと思へり、

〔枕草子〕

〈八〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0763 うつくしきもの
すゞめの子のねずなきするにおどりくる、またべになどつけてすへたれば、おやすゞめの虫などもてきてくゝむるもいとらうたし、

〔梅園日記〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0764 勸學院雀
勸學院雀囀蒙求といへること、寶物集、八幡愚童訓等に出たり、富樫の舞、賴政の謠にもいへり、曾我物語にも、勸學院の雀とかや申ければ、などあれば、久しき諺なり、日本國風、勸學院雀の一條に、閑窻倭筆を引て云、雀とは、勸學院に仕れて、水を汲、薪を運ぶ小女の名也、其女此勸學院にて、朝夕學問する人の蒙求を誦を聞て、常に口まねをする故に、雀の名にたよりて囀といふ也、按に勤勵讀書の聲を、雀も聞覺えて、王戎簡要などゝ囀やうに、きかるゝなるべし、〈以上日本國風〉按ずるに、閑窻倭筆に、又云、古來蒙求抄の題注にいへる、蒙求の作者の李瀚がつかふ女の名を雀といふ、それまでが、此蒙求を囀と云とあり、甚非也〈古來の抄とは蒙求聽塵にや、彼書に此説見えたり、〉とあり、今考るに、蒙求の開卷に載たる、李良が薦蒙求表に、李瀚撰古人狀跡、編成音韻、名曰蒙求、瀚家兒童、三數歲者、皆善諷誦とあり、瀚家兒童云々をつゞめて、瀚が家の兒童は蒙求をさへづると、ふるき諺にいひしなるべし、唐人などのものいふをば、さへづるといへれば也、さるを後に瀚が家を、勸學院と誤り、さへづるといへるより、兒童を雀と誤たる也、又宋の方岳が詩に、黃鸝を敎得て書を讀ことを解せしめ、能蒙求中の一句を記せしむと、いへる句などをも混じたるにや、〈方岳秋崖集獨立詩に、村夫子挾兎園冊、敎得黃鸝、解書、能記蒙求中之一句、百盤嬌姹可渠、自注に、蓋俗以其聲呂望非熊、此詩こゝに早く傳はりしなるべし、月舟が鶯誦蒙求詩、翰林五鳳集に見えたり、〉されば倭筆に引たる古抄の説、やゝ是に近しといふべし、

〔山陽遺稿〕

〈十/雜著〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0764雀説
雀、小https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00194.gif 善畏、望食而不敢下、鴉多智、善就利避害、鴉之所在、雀則下之、故捕雀者、以鴉爲招、縶鴉之足、環散粟、而隱網其傍、鴉俯啄粟也、群雀望視之嘖暗然、蓋相吿曰、彼在焉、我可以往也、連翼而下、百啄喧爭、而網已彜之矣、鳴呼彼自謂智且巧莫或敢侮一レ予、而爲食蟄其手足、貪戀不自脱、而視之者不以爲一レ憫、而以爲與歸、胥溺於禍機、而兩不悟也、可哀哉、

〔柳亭筆記〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0765 雀 烏
雀といひ烏といふは、その郷に馴、又その道に馴たる者をいふ、旅烏は旅行になれたる者なり、吉原雀は遊廓の吉原に馴し者なり、他はおして知るべし、書名に吉原雀〈寬文七年印本〉京雀、〈寬文〉宮雀、江戸雀、〈延寶〉茶屋雀、〈元祿〉などあるも、其意によりて題(なつけ)しなり、〈○下略〉

〔武江産物志〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0765 山鳥類 雀〈市ケ谷御門外、淺草御藏、〉

頰赤鳥

〔和漢三才圖會〕

〈四十三/林禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0765 頰赤鳥 正字未詳 保阿加止利
按、頰赤鳥形似雀、而背色亦如雀、其頰赤胸白、有雌鶉文、聲似靑鵐而細高常棲蒿間、爲原禽之屬、〈對煩白鳥于此

〔喚子鳥〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0765 粒餌小鳥の分 何にても水を入る
〈ほあか あかしとゝ共いふ〉 〈ゑがひ〉 〈あは、ひゑ、きび、米、すりゑは四分ゑよし、〉
大きさすゞめに大ぷり、毛色すゞめにあをみ有てうすし、目の下に赤き所少し有、仍てほあかといふ、さへづりよし、むね白く黑きごまふみだれて、すぐれたるは見事なるもあり、冬おほく出る、

雨乞鳥

〔大和本草〕

〈十五/小鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0765 兩乞(ゴヒ)鳥 其形如雀、其毛如火焔之赤、性好水、天欲陰雨則仰天飛鳴、山中人占之以爲雨兆

このは

〔大和本草〕

〈十五/小鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0765 コノハ 其大如雀淡黑ナリ

よしかや

〔喚子鳥〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0765 粒餌小鳥の分 何にても水を入る
よしかや 〈ゑがひ〉 〈きび、ゑごま、すりゑ七分ゑよし、〉
大きさすゞめににて、毛色すゞめに色あさく赤し、さへづりあしく、めづらしきるいなり、

突厥雀

〔多識編〕

〈四/禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0765 突厥雀、惠比須寸寸米(○○○○○○)異名冦(コウ)雉、

〔庖厨備用倭名本草〕

〈十/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0765 突厥雀(トツケツシヤク) 倭名抄ニ突厥雀ナシ、多識篇ニエビススヾメ、今本草一名鵽鳩、 李時珍曰、案唐書云、唐高宗時、突厥犯塞、有鳴鵽、群飛入塞、邊人驚曰、此鳥一名突厥雀、南飛則突厥必入寇、已而果然、又云、郭璞曰、鵽鳩ハ北方沙漠地ニ生ズ、大サ鴒ノ如クニテ形雌雉ニ似タリ、鼠脚ニテ後距ナシ尾ハ岐アリ、元升曰、本草注如件、サテ倭名抄ニ鵽烏ノ和名ヲタドリトイヘリ、其註ニ陸詞切韻ヲ引テ云、鵽ハ小鳥似雉也、此説ヲミレバ、本草註ノ説ニ似タリ、然レバ突厥雀ハ鵽鳥ニテ、タドリナルベシ、今ノ人タドリヲシルモノナシ、多識篇ニエビススヾメト和名セルハ、本草ノ名字ニヨリタル今案ナルベシ、

〔本草一家言〕

〈四/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0766 突厥雀 和名麻之古(○○○)、此者有麻之古、天理麻之古二種、見通鑑唐記、元主突厥國、其狀如雀勿翼、翅綠赤百千入冦、已而果然、猶言邵康節行天津橋、忽聞杜鵑之聲、而地勢南也、天理麻之古、似麻之古文采極美、突厥雀、本草綱目及諸州府志出之、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0766 突厥雀 一名鵽雀〈朝野僉載〉 蕃雀〈通雅〉
和産詳ナラズ、往年舶來アリシヲ、仙臺侯ニ賜リシ寫眞ヲ見ルニ、雀類ノ小鳥ニ非ズ、身肥長ク首小クシテ赤褐色、觜喉倶ニ黃紅色、胸ハ赤褐色ニシテ少黃羽アリ、背モ同色、以下漸ク淺クシテ皆黑斑アリ、肩ハ褐色ニシテ端ニ少白毛アリ、翼ノカザキリ黑色、尾ハ赤褐色ニシテ黑斑アリ、二羽甚長クシテ身ニ等シ、ソノ末長サ五寸許細クシテ鍼ノ如ク色黑シ、翼ニモ左右各一羽長クシテ、末細ク絲ノ如クナルアリ、脛ハフトク黑褐色ノ長毛アリテ獸足ノ如シ、指ハ鼠足ノ形ノ如クシテ毛アリ、稻若水翁陳藏器ノ説ニ據テ、マジコト訓ズルハ穩ナラズ、マジコハ雀ヨリ微小ク、觜淡黑色頭圓、目ノ狀チ猴ノ如シ、身ハ色赤クシテ淡黑淡白相間ハル、赤毛ノ少キ者ヲサルマジコト云、下品トス、赤毛ノ多キ者ヲベニマジコ、一名テリマジコト云、上品トス、喉下ニ白毛アリテ、菊花ノ如ク見ユルヲ、キクマジコト云フ、

巧婦鳥

〔新撰字鏡〕

〈鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0766 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01215.gif 云〈似醬反、桑飛、又巧嬬豆支(○○)、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十八/羽族夂〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0767 巧婦 兼名苑注云、巧婦、〈和名太久美止里(○○○○○)〉好割葦皮中虫、故亦名蘆虎

〔箋注倭名類聚抄〕

〈七/鳥名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0767 按是名似巧婦工雀之名上レ之、可以訓鷦鷯、不剖葦也、〈○中略〉按爾雅云、鳭鷯剖葦、郭注好剖葦皮、食其中蟲、因名云、江東呼蘆虎、似雀、靑斑長尾、兼名苑注蓋本之、説文、鷯、刀鷯剖葦、食其中蟲、是郭注所本、〈○中略〉又按爾雅又云、桃蟲、鷦、郭注、鷦https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01215.gif 桃雀也、俗呼爲巧婦、説文、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01376.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01377.gif 、桃蟲也、方言云、桑飛、自關而東謂之工爵、或謂之過羸、或謂之女https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01215.gif 、郭注云、卽鷦鷯也、今亦名爲巧婦、禽經注云、鷦https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01378.gif 、桃雀也、狀類雀而小、燕人謂之巧婦、亦謂之女https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01215.gif 、關東人呼曰巧雀、亦謂之巧女、毛詩義疏、鴟鴞、似黃雀、而小、其喙尖如錐、取茅莠巢、以https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01379.gif 之、如襪然、縣著樹枝、或一房或二房、幽州人謂之鸋鴂、或曰巧婦、或曰女匠、或曰巧女、是巧婦者鷦鷯之一名、非剖葦之別稱、鷦鷯鳭鷯其名相似、故玉篇謬混云、鷦鷯或作鳭、兼名苑以巧婦剖葦者、襲是誤也剖葦今俗呼蘆原雀、蘆鳥、蘆切者是也、飛驒俗呼須賀鳥、或曰、萬葉集所咏管鳥亦卽是、李時珍亦謂、剖葦爲一種鷦鷯、然剖葦鷦鷯非一類也鷦鷯造巢以人髮或馬尾蘆花、其形如襪、巧緻可愛、是所以有巧婦之名、剖葦則不然、稻稈縛蘆以爲巢而已、絶不觀、然則太久美止利、可以訓鷦鷯、不剖葦也、

〔類聚名義抄〕

〈二/女〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0767 巧婦〈タクミトリツク(○○) 鳥類〉

〔本朝食鑑〕

〈五/水禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0767 葦原雀〈訓如字〉
釋名、巧婦、〈源順〉蘆虎、〈上同、(中略)必大按、葦蘆雖相似一物、然生同處而相混乎、巧婦者鷦鷯之名相似而別一種、詳于華和異同、〉
集解、葦雀似雀而靑灰斑色長尾、好食葦中之蠧、其聲高長淸亮、日晴風靜囀子水叢而喧、故世諺呼多語喧囂者葦原雀、或曰、葦雀、能知歲有大風、而有風之歲避之不至、是未詳其眞也、人未之、故不氣味矣、

〔本朝食鑑〕

〈六/華和異同〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0767 葦原雀
爾雅曰、鳭鷯割葦、郭璞曰、好剖葦皮其中蟲因名云、江東呼曰蘆虎、似雀靑斑色長尾、李時珍曰、靑灰 斑色亦鷦類也、源順和名號巧婦、巧婦者鷦鷯之名、燕人謂之、必大按、葦雀爲鷦類、則巧婦之名亦不遠耳、

〔大和本草〕

〈十五/小鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0768 ヲグラ 腹白ク尾長シ、背ノ毛色ウグヒスニ似タリ、ヨシ鳥(○○○)トモ云、又ヨシ原雀(○○○○)ト云、ツグミヨリ小ナリ、筑紫ノ方言ギヨ〳〵シ(○○○○○)ト云、其ナク聲ギヨ〳〵シト云ニ似タリ、麥熟スル時ナク、其聲晝夜不止、甚シゲクカマビスシ、漢名シレズ、僧玄蘇仙巢稿葦雀序ニ、斯禽也、筑後肥前最夥シト云ヘリ、小兒言遲キニ、コレヲ炙食ヘバ言フト俗説ニイヘリ、未然否

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0768 巧婦鳥〈○中略〉
集解、一種https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01357.gif 鷯(○○)ハヨシハラスヾメ、一名ゲラ(○○)、ヲゲラ〈仙臺、筑前、四國、〉ヨシドリ、〈加州〉ヨシキリドリ(○○○○○○)、〈江戸、水戸、〉ギヤウギヤウジ、〈越中〉ギヤウ〴〵シ(○○○○○○)、〈西國、四國、〉ギヨ〴〵シ、〈筑前、肥前、〉コヽチン(○○○○)、〈播州、赤穗、〉ケヽシ(○○○)、〈若州〉ムギウラシ(○○○○○)、〈共同上、雲州、〉ムギカラシ(○○○○○)、土州ケヽス(○○○)、〈阿州、丹波、〉カラ〳〵ジ(○○○○○)、〈仙臺、南部、〉夏月蘆葦中ニ居リテ、莖中ノ蟲ヲトリ食ヒ、晝夜鳴クコト喧シ、ソノ聲ケヽシ〳〵ト云ガ如シ、卽麥秋ノ時ナリ、形ハ柴鶺鴒ニ似テ大ナリ、色モ相似タリ、腹下白ク尾微長シ、一種小ヨシキハハヨシキリニ半分小ク、形色ハ異ナラズ、南部ニテハコレヲヨシドリト云、大ヲカラ〳〵ジト云フ、聲ハ同ジト云フ、爾雅ニhttps://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01357.gif 鷯ハ別種ナルヲ、時珍引テ鷦鷯ノ一種トスルハ非ナリ、一名葦雀、〈通雅〉蘆䳄、〈鎭江府志〉蘆虎、〈爾雅註〉

〔喚子鳥〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0768 〈よしきり ぎよぎやうしとも、又げらともよしはら雀ともいふ、〉 〈ゑがい〉 〈生ゑ壹匁五分、粉壹匁、あをみ入、〉
大きさうぐひすに大きし、毛色鶯ににたり、囀り大をん、あら鳥、かい鳥になりがたし、子は夏出る、かん氣になればかならず落る、たまにとしをこすは、つよくかいよきものなり、
小よしきり 〈ゑがい〉 〈生ゑ壹匁五分、粉壹匁、あをみ入、〉
大きさよしきりに半分ちいさし、毛色諸事よしきりににたり、さへづりよし、飼にくき類、よしきりに又々よはき鳥なり、夏す子出る、あら鳥かいがたし、

〔飼鳥必用〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0769 小よしきり
此鳥、本所筋に澤山居鳥也、此邊に巢子有之、巢子にても來る親鳥ともに取也、至て弱鳥也、飼方魦にて六分餌、右の處にて子を生立、土用に入ると何國へか歸る也、
大よしきり
此鳥、川筋に澤山に居也、よしの中へ巢組し子をうむ也、但シ三月より六月迄多く居鳥也、土用に入といづくへか歸る飼方魦にて五分餌、勿論此鳥を取候時は、まづ壹羽取て、右の鳥の鼻へ糸を通し、さしさほの目つぶしより五六寸さげ、右の鳥を糸にてながさ壹尺程さげて、よし切の居たる處へしづかにさし出し候へば、さほのもちへとまる也、これを釣と云也、

〔食物和歌本草〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0769 葭原雀(ヨシハラスヾメ)
葭雀平なりちごの五六歲物をいひかねくちのおもきに 葭雀諸病にさして毒もなし鬱氣を散し聲出す也 葭雀常に用ひて氣力まし血をもしづむるぐすり成けり

〔散木弃謌集〕

〈十/隱題〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0769 たくみどりのす
ひめこまつねたくみどりのすがたをばたちへだてける春のかすみか

〔甲子夜話〕

〈五十七〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0769 成島東岳ノ話ニ、俗ニ巧婦鳥ヲミソサヾイトスルハ誤ナリ、官庫ニ沈南蘋ガ繪タル百鳥圖アリ、未ダ一覽ハセザルガ、人ノ話ニテ聞ニ、遙ニ達タル鳥ナリト云、コノ頃南部ニテ取リシト云フ巧婦鳥ノ巢ヲ見タリ、蘆花ヲ以テ作リ、其形襪ニ少シモカハルコトナシ、精細巧緻ハ目ヲ驚ス計ナリ、コノ鳥一名ハ刺襪、又女匠トモ云、其巢ヲ見ザレバ其名解シ難シトナリ、南部ノ方言ニテハ、高見鳥(タカミ /○○○)ト云トゾ、木ノ至テ高キ所ニ巢ヲ挂クルヨリ斯ク云トナリ、

〔武江産物志〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0769 水鳥類 剖葦〈小よしは大野邊、浅草たんぼ、〉

鷦鷯

〔新撰字鏡〕

〈鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0769 䳬〈上同、非左々支(○○○○)〉、 鷯〈聊音、鷦、加也久支、又左々支(○○○)、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十八/羽族名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0770 鷦鷯 又選鷦鷯賦曰、鷦鷯、〈焦遼二音、和名佐佐木、〉小鳥也、生於蒿莢之間、長於藩籬之下

〔箋注倭名類聚抄〕

〈七/鳥名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0770 毛詩正義引陸機疏云、桃蟲今鷦鷯是也、微小於黃雀、陳藏器曰、在林藪之間窠、窠如小囊、埠雅云、其喙尖利如錐、取茅秀巢、巢至精密、以https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01379.gif 之、如韤然、故又一名韤雀、李時珍曰、灰色有斑、聲如吹嘘、王念孫曰、鷦鷯鷦https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01380.gif 一聲之轉、皆小貌、小謂https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01381.gif 、一目小謂之眇、茆中小蟲謂之蛁蟟、剖葦謂之鳭鷯、聲義並同、郝懿行曰、今鷦https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01378.gif 靑黃色、眉間有白如粉、

〔類聚名義抄〕

〈九/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0770 鷦鷯〈焦遼、二音、サヽギ、〉 鷯〈正通、力鵰反、鷦鷯小鳥カヤクキ、ツクミ、コトリ、アトリ、サヽギ、〉 鷤〈音提、又徒反、鷤䳏、サヽギ、〉

〔伊呂波字類抄〕

〈左/動物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0770 鷦鷯〈サヽギ、小鳥也、〉 反舌〈サヽイ(○○○)〉

〔壒囊抄〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0770 鳥類字 獣(サヽイ)

〔運歩色葉集〕

〈鳥名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0770 鷦鷯(ミソサヽイ) 溝(同)三歲

〔日本釋名〕

〈中/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0770 鷦鷯(ミソサンザイ) みぞにすむ小鳥なり、さゞいとは、さゝやかなる意、ちいさき也、

〔東雅〕

〈十七/禽鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0770 鷦鷯サヽギ 倭名抄に、鷦鷯はサヽギ小鳥也と註せり、古語に細にして細かなるを狹(サ)といひけり、キとは古語鳥を呼びし語也、其義は不詳、鷺をサキといひ、鳭をツキといひ、鸗をシギといひ、鷃をカヤクキといひしが如き是也、卽今俗にミソサヾイといふ此也、ミソといふも、其細かなる事を重ね云ひしと見えたり、

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0770 鷦鷯〈訓佐佐木、今訓美曾佐佐伊、〉
釋名https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01382.gif 〈壒囊訓佐佐伊、按字書、徒計切、音地、山海經、鳥狀如鳬、然則爲鷦鷯之名者訛焉、〉
集解、處處近人家而多有、故張華賦生蒿萊之間、居藩籬之上、是固然矣、狀似小雀而小、灰赤色有斑、其聲圓亮細碎、啄如利錐、取茅葦毛毳窠、大如雞卵、繫之麻髮https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01379.gif 之如襪、至爲精密、懸于樹上、或一房二房、故巢林不一枝、今人畜之、以弄形之至微與聲之巧大耳、
肉、氣味、甘温無毒、主治、膈噎、專興陽事、 發明、近世製一方鷦鷯(サヾイ)藥、以興廢陽、日勤房閨、外揚求嗣之名、丙娯探春之遊、不求嗣而速發薤露之嘆、悼哉、縱使雖瓦璋之慶、亦及鄭衞之淫乎噫、
附方、陽事衰縮、〈世有獻(サヾイ)藥者、而家家秘之、〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0771 巧婦鳥 サヾキ(○○○)〈日本紀〉 タクミドリ〈和名鈔〉 ミゾサンザイ(○○○○○○) ミソサヾイ(○○○○○)〈京〉 サヾイ(○○○)〈同上〉 ミソバヘ(○○○○) ミソヌスミ(○○○○○)〈奧州〉 ミスクヾリ(○○○○○)〈仙臺〉 ミソツグ(○○○○)〈野州〉 ミソツ(○○○) チヤウ(○○○)〈防州〉 ミソチヤウ(○○○○○)〈薩州〉 センネン(○○○○)〈長州〉 一名工雀〈楊子方言〉 雙飛 桑飛 鷦鸚 過贏〈共同子〉 鷦https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01378.gif 〈禽經注〉 女https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01215.gif 鷯雀〈共同上〉 鷦https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01378.gif 〈説文〉 扛鼓〈八閩通志〉 桑錢〈通雅〉 訪蒙鳩〈事物異名〉 女工〈同上〉 巧匠〈秘傳花鏡〉 蒿喞喞〈説嵩〉 襪雀〈留靑新集〉 十姉妹鳥〈江村歸田集〉 相思〈廣東新語〉 相思仔〈同上〉極小ノ鳥、長サ僅ニ一寸許、冬月多シ、雪降ル時ハ人家ニ近ヅキ、厨邊ニ來リ食ヲ索ム、冬ハ鳴ク聲柴鶺鴒(ウグヒス)ニ同シテ高シ、身ハ褐ト黑トノ細斑アリ、又黑白ノ斑アルモノヲタカフト云、又鳴ク時尾ヲ開キ舞ハスモノヲ、尾マワシト名ケ、上品トス、其外斑色品類多シ、春ニ至レバ囀ル聲繡眼兒(メジロ)ニ似テ高シ、性甚弱ク、寒暑共ニ畏レテ畜ガタシ、

〔喚子鳥〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0771 〈さゞい みそさゞい共いふ〉 〈ゑがい〉 〈生ゑ壹匁五分、粉壹匁、あをみ入、〉
大きさ雀半分にちいさし、毛色赤ぐろく、總身にこまかきふ有、さゑづりいうねよく、たかねにておもしろきものなり、かごのうちに、へうたんに錢ほどなる穴をあけ釣べし其内にとまる、あら鳥冬より春まで出る、子は夏出る、尤子がいを調法す、飼にくき類にて毛をかはす時分、おほく落るなり、あら鳥はくるみ壹ついれ、しらゑにてかふべし、
大さゞい(○○○○) 〈ゑがひ〉 〈生ゑ壹匁五分、あをみ入、粉壹匁、くるみ入、〉
大きささゞいにばい大きし、毛色さゞいににたり、又かやくゞりといふ鳥を大さゞいともいふなり、本大さゞいめづらしきるいなり、さゑづりよし、 島さゞい(○○○○) 〈ゑがい 右同斷〉
大きささゞいほど有て、毛色又さゞいににたり、さへづりよろしからず、又一名道くすべともいふ、

〔武江産物志〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0772 山鳥類 巧婦鳥(みそさゝい)〈本所竪川邊〉

〔日本書紀〕

〈一/神代〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0772 一書曰、初大己貴神之平國也、行到出雲國五十狹々之小汀、而且當飮食、是時海上忽有人聲、乃驚而求之、都無見、頃時有一箇小男、以白蘝皮舟、以鷦鷯羽衣、〈○中略〉此師少彦名命是也、〈○中略〉鷦鷯此云娑娑岐

〔日本書紀〕

〈二/神代〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0772 天稚彦之妻下照姫、哭泣悲哀聲達于天、是時天國玉聞其哭聲、則知夫天稚彦己死、乃遣疾風、擧尸致天、便造喪屋而殯之、卽以川鴈持傾頭者、及持帚者、〈一云、(中略)以鷦鷯哭女(ナキメ)、〉

〔日本書紀〕

〈十一/仁德〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0772 元年正月己卯、大鷦鷯尊卽天皇位、〈○中略〉初天皇生日、木莵入于産殿、明旦譽田天皇〈○應神〉喚大臣武内宿禰之曰、是何瑞也、大臣對言、吉祥也、復當昨日臣妻産時鷦鷯入于産屋、是亦異焉、爰天皇曰、今朕之子與大臣之子、同日共産、兼有瑞、是天之表焉、以爲取其鳥名、各相易名子、爲後葉之契也、則取鷦鷯名以名太子大鷦鷯皇子、取木莵名大臣之子、曰木菟宿禰、 四十年三月、納雌鳥皇女妃、以隼別皇子媒、時隼別皇子密親娶、而久之不復命、〈○中略〉俄而隼別皇子、枕皇女之膝以臥、乃語之曰、孰捷鷦鷯與一レ隼焉、曰隼捷也、乃皇子曰、是我所先也、天皇聞是言、更亦起恨、時隼別皇子之舍人等歌曰、破夜歩佐波(ハヤブサハ)、阿梅珥能朋利(アメニノボリ)、等弭箇慨利(トビカケリ)、伊菟岐餓宇倍能(イツキガウヘノ)、娑弉岐等羅佐泥(サザキトラサネ)、天皇聞是歌而勃然大怒之、

燕/名稱

〔新撰字鏡〕

〈鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0772 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01383.gif 〈於乙反、䴏、豆波比良古(○○○○○)、〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01384.gif 〈房久反、上、鷂、豆波比良古、〉 䴏〈烏見反、去、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01385.gif 、豆波比良古、〉 䲴〈乎利反、豆波比良古、〉 䳍〈豆波比良古〉 䳾〈豆波比良古〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01386.gif 〈豆波比良々古(○○○○○○)〉

〔干祿字書〕

〈去聲〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0772 䴏燕〈竝上通下正〉

〔段注説文解字〕

〈十一下/燕〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0773 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01387.gif 、燕燕元鳥也〈各本無燕燕二字、今補、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01388.gif 下曰燕燕也、齊魯謂https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01388.gif 、隹部巂下曰巂、周者燕也、邶風傳曰、燕燕https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01388.gif 也、商頌傳曰、元鳥https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01388.gif 也、釋鳥曰巂、周燕燕https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01388.gif 也、古多叚燕爲宴、安宴享、〉籋口〈故以廿像之〉布翄〈故以北像之〉枝尾〈與魚尾同、故以火像之、〉象形〈於甸切、十四部、〉凡燕之屬皆从燕、

〔本草和名〕

〈十五/獸禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0773 䴏矢、越䴏、〈紫胸、輕少者也、〉胡䴏、〈胸斑黑、聲大者、〉一名夏侯、〈俗名也、出陶景注、〉一名玄鳥、一名天女、一名蟄鳥、一名朱鳥、一名https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01385.gif 、〈已上五名出兼名苑〉和名都波久良女(○○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十八/羽族名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0773 鷰 爾雅集注云、鷰、〈烏見反、和名豆波久良米、〉白脰小烏也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈七/鳥名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0773 按、都波久良、以鳴聲之、米是牟禮之急呼、羣也、〈○中略〉按爾雅云、燕燕、鳦、郭注、詩云、燕燕于飛、一名玄鳥、齊人呼鳦、説文、乙、玄鳥也、齊魯謂之乙、取其鳴自呼、象形也、或从鳥作鳦、燕、玄鳥也、籋口、布翅、枝尾、象形、鄭注月令云、燕以施生時來、巢人堂宇而孚乳、夏小正、二月來降、燕乃睇、九月陟、玄鳥蟄、郝曰、今燕蟄多於海濱坻岸及深山古木中、蟄則毛羽解脱也、是我邦所謂豆波久良米也、陶弘景曰、鷰有兩種、有胡有越、紫胸輕小者是越鷰、胸斑黑聲大者是胡鷰、然則今所多有者越鷰也、爾雅又云、燕白脰烏、郭注云、脰、頸、此引云白脰小烏者、蓋舊注、邵晉https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00836.gif 曰、後世所謂燕烏也、小爾雅云、白項而羣飛者、謂之燕烏、郝曰、今此鳥、大於雅烏、而小於慈鳥、李時珍曰、似雅烏而大白項者、燕鳥也、是鳥我邦所無、源君引之爲豆波久良米者、其名同而誤也、

〔類聚名義抄〕

〈八/艸〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0773 燕〈音宴、ツバクラメ、〉 鷰〈ツバクラメ、與上通用、〉

〔同〕

〈九/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0773 玄鳥〈ツバクラメ〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01385.gif 〈乙二正、英物反、ツバクラメ、〉 䳍〈ツハクラメ〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01389.gif 〈ツバクラメ〉 鷰〈烏見反、ツバクラメ、〉 䴏〈同〉 鵾〈ツバクラメ〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01340.gif 〈同〉

〔壒囊抄〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0773 鳥類字 鷰(ツバクラ/○)

〔八雲御抄〕

〈三下/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0773 鷰 つばめ(○○○) つばくらめ ならびゐたる事によむ、ふたりのめもたざるよし、在古歌本文なり、 かりにかはりて來る物也、夫妻之間祝言物也、 ならびすむ

〔日本釋名〕

〈中/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0773 鷰(ツバメ) つばめは土をはみて巢を作る、つちばみ也、みとめと通ず、

〔東雅〕

〈十七/禽鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0773 鷰ツバクラメ 倭名抄に爾雅註を引て、ツバクラメといふと註せしは、卽今俗にツバ メといふ是也、兼名苑を引て、燕に胡越二種あり、漢語抄に、胡鷰子アマドリ(○○○○)といふと註せし者、卽今もアマドリといふなり、義並に不詳、〈或人の説に、ツバクラメとは土食(ツチハミ)なり、アナグラツバメ(○○○○○○○)といふは、胡燕也といふなり、古語にはツバグラメとこそいひつれ、ツバメとは後の人其語を省きて呼びし名也、古語にツバと云ひし詞は、前の海石榴の註にしるせし如くに、凡物の光り澤へるを云ひしなり、クラとは黑也、メとは古俗に鳥を呼びし語也、其毛色の光りて黑みたれば、ツバクラメといひしなり、アマドリといふものは、藻鹽草に、和名には胡燕とかきて、アマドリとよめり、此鳥は雲の中にすみて、大かた人にも知られぬ鳥也、(中略)と見えたり、もし此説に依らむには、アマドリといふは、アマとは天なり、天にすむ鳥と云ふ義なるべし、されど此鳥は東海の地方にて、雨を占ふ鳥なり、雨ふりなむとするに、此鳥雲中に翻り飛て啼く也、その大きなるは、鳩よりは小くして、燕の如くなるなり、アマとは雨の義とこそ見えたれ、〉C 燕種類

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0774 燕〈訓豆波久良米、或曰豆波米、〉
集解、燕大如雀而身長、玄衣白腹、紫頷岐尾、身輕翼捷、反轉上下無自由、春社來秋社去、其來也https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m00934.gif 泥巢於屋宇之下、其去時伏氣蟄於窟穴之中、凡一營巢之家、年年依舊而不相忘、若一年不巢、則其家必殃、燕比于雀亦似智、能識人情而馴近、預擇鳶鳥不至處而營巢、然雛出巢後羽翮軟弱爲鳶烏摯、其旣長而羽翼固定後、鷹鷂亦不能鷙一レ之、或曰、鷹鷂食燕則死、予〈○平野必大〉未之、又有白燕(○○)最希、然未祥瑞也、

〔本朝食鑑〕

〈六/華和異同〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0774
京房易占曰、人見白燕貴女、故燕名天女、今偶見白燕未其應、還使https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01151.gif 而捕一レ之、竟鎖籠以待價之貴、或爲貴人之弄耳、是據史記所謂簡狄祠於高禖玄鳥遺一レ卵呑之生契之言乎、凡春來秋去、世有渡海之説、是據摭遺謂王榭至烏衣國之言乎、文昌雜錄曰、昔年因京東開一レ河、岸崩見蟄燕無數、晉郗鑒爲充州刺史鄢山、百姓饑饉、或掘野鼠蟄燕而食之、乃知燕亦蟄爾、驚蟄後中氣乃出、非海也、苕溪集曰、余曩歲冬聞呉興山中營、先隴闢一山路、路傍有數互石、其穴頗深、試令僕輩https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01390.gif 一レ之、見鶯燕蟄於其間者甚衆、急掩之曰、騐文昌之言是、而摭遺之説爲非也、李時珍亦以海爲謬談、或語予曰、僕秋末遊海西時、舟泊備前之海岸、日旣欲タ、掲蓬窻岸上、見數百燕並頭于巖窟口、驚問舟子、舟子曰、是燕 之蟄穴、而海岸之暖地也、此兼文昌胡仔之説合、則燕之蟄者不疑矣、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0775 燕 ヒメスドリ(○○○○○)〈古歌〉 ツバクラメ〈和名鈔〉 ツバメ ツバクラ(○○○○) ツバクロ(○○○○) ツバ(○○) ヒゴ(○○)〈播州〉 ヒイゴ(○○○)〈備後、但州、〉 一名https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01385.gif 〈埠雅〉 時鳥〈典籍便覽〉 玄乙〈卓氏藻林〉 社君〈事物紺珠〉 遏里紫車 朱鳥〈共同上〉 社公〈事物異名〉 烏衣郎 遏里葉車〈共同上〉 意而〈嫏環記〉 意怠〈庶物異名疏〉 燕子〈訓蒙字會〉 社燕〈格物論〉 嶲周〈通雅〉 黑燕〈凉州記〉 越燕一名紫燕〈函史〉 合鶘兒〈事物紺珠〉 拙燕〈訓蒙字會〉 胡燕一名焉舍胡〈大倉州志〉 蛇燕〈函史〉 巧燕〈訓蒙字會〉
時珍云、春社來秋社去ト、此説ノ如ク春社〈立春後五戊日〉前後市中ニ來リ、子ヲ生育シ、秋社〈立秋後五戊日〉前後ニ歸ル、二種アリ、人家ニ入リ巢ヲ結モノハ、形小ク腹下白色、胸紫色、俗コツバメ(○○○○)ト云、〈同名アリ〉弘景説トコロノ越燕是也、又堂社ノ兩椽(タルキ)ノ間ニ、土ヲ以テ長ク底ヲコシラへ、巢ヲ結ブモノハ、形大ニシテ胸紫ナラズ、吿天子(ヒバリ)ノ如クナル斑文アリ、腹下黃色、雨前ニハ必群飛ス俗オホツバメ(○○○○○)ト云、一名アマドリ〈和名鈔〉ヤマツバメ(○○○○○)〈大和本草〉トウツバメ(○○○○○)、アマツバメ(○○○○○)、〈共同上〉アナグラツバメ、〈勢州〉ミヤマヒイゴ(○○○○○○)、〈備後〉妙見ヒイゴ、〈但州〉キヤウドツバメ(○○○○○○○)、〈雲州〉朝鮮ツバクラ(○○○○○○)、〈羽州〉ミヤマツバクラ(○○○○○○○)、〈防州〉是弘景説トコロノ胡燕ニシテ、藥用ニ入ルヽ者ナリ、總テ寒氣ヲ畏ル、故ニ春社ヨリ此地ニ來リ、秋社ヨリ南方暖國ニ渡ル、中山傳信錄ニ、七月玄鳥來、注ニ燕至此月始來ト云、又燕七月來不人屋ト云、此文ニ據レバ、實ニ南國ニ歸去ルト見ヘタリ、然レドモ攝州六甲山ノ巓ニハ、土中ニ穴シテ蟄シ、正月ニテモ天氣晴暖ナル時ハ、數萬出テ飛翔スト云、時珍、伏氣蟄於窟穴之中ト云ニ合ヘリ、然ル時ハ燕一々皆南歸スルニ毛非ザルナリ、

〔喚子鳥〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0775 つばめ ゑがい 〈右同断、○生ゑ壹匁あをみ入、粉壹匁、〉
つばくらなり、毛色總身くろく、のどうす黃にはらしうし、あら鳥かい鳥に成がたし、子がいともにかいにくき類なり、さへづりよし、 みねつばめ(○○○○○) ゑがい 〈右同斷〉
大きさ、つばめに大きし、さへづりよし、
小つばめ ゑがい 〈右同斷〉
大きさ、つばめにちいさし、總身くろく、羽に少ししろき毛あり、き色のまゆ有て、咽胸までかばきいろにあかし、さへづりほそし、此烏羽づかい面白し、ひろきかごにとまり木壹本入よし、冬またはるのすゑに出る、すくなし、
同こむしくひ(○○○○○) ゑがい 〈生ゑ壹匁、あをみ入、粉壹匁、〉
小つばめの若鳥なり、毛色小つばめの色にそうたいうすきものなり、諸事小つばめにかはる事なし、秋のすゑふゆいづる、

〔飼鳥必用〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0776 小つばめ
此烏京大坂名古屋より出る、雛の内半なれとてあり、塒あけて本毛となる、此鳥を飼時は、小つばめ籠とて、丸籠にて山がらもんどり籠の通りにて飼也、さかりの節は中にて舞ながら啼もの也、餌飼魦にて五分餌也、〈○中略〉
つばくら
此鳥三月前後、江戸にて子を生立候て、秋の節何國へか飛かへるなり、
鷲つばめ(○○○○)
此鳥も秋巢組するに、へうたんの形に巢を懸る也、
雁金つばめ(○○○○○)
此鳥江戸にて巢をせず、空計まひ、下たには下ざる鳥也、

瑞燕

〔延喜式〕

〈二十一/治部〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0776 祥瑞 赤鷰(○○)〈○中略〉 右上瑞

〔日本書紀〕

〈二十七/天智〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0777 六年六月、葛野郡○山城獻白䴏(○○)

〔日本書紀〕

〈三十/持統〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0777 三年八月辛丑、詔伊豫總領田中朝臣法麻呂等曰、讀吉國御城郡所獲白鷰、宜放養焉、

〔續日本紀〕

〈一/文武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0777 三年八月壬寅、伊豫國獻白鷰

〔續日本紀〕

〈三/文武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0777 慶雲元年七月丙戌左京職獻白鷰

〔續日本紀〕

〈九/聖武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0777 神龜二年正月丙辰、山背、備前國獻白䴏各一

〔續日本紀〕

〈三十八/桓武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0777 延曆三年五月甲午、攝津職史生正八位下武生連佐比牟貢白䴏一、賜爵二級幷當國正税五百束

〔日本後紀〕

〈十七/平城〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0777 大同三年五月丙申、播磨國獻白䴏二

〔三代實錄〕

〈十三/淸和〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0777 貞觀八年六月十四日丁亥、丹波國獻白燕一

〔三代實錄〕

〈三十八/陽成〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0777 元慶四年七月五日丁巳、伯耆國獲白鷰一而獻、

〔菅家文草〕

〈七/賛〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0777 省試當時瑞物賛六首〈毎首十六字、已上自第一第六、依次而賦之、貞觀四年四月十四日試、五月十五日及第、〉
美州獻白鷰第三
美州白鷰、羽翼惟奇、初知政理、廉潔相移、

燕巢

〔梅園日記〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0777 燕巢
三國塵滴問答云、民間ノ占ニ、紫燕來巢ハ主ノ家富ヲ益ト云ヘリ、温故要略云、燕巢ツクルハ家ノ嘉瑞ト云傳事、抱朴子云、燕知戊巳者其日巢ヲツクリソムルニヤ、又事林廣記、擧燕巢邊書戊字卽燕不上レ來などいへり、されども嘉瑞の證なし、按ずるに、蟲天志〈卷八〉に、陶隱居曰、燕有二種、紫胸輕小者是越燕、胸斑黑聲大者是胡燕俗呼胡燕夏候、其作窠喜長、人言有一疋絹家富、珍珠船〈卷一〉に、俗傳燕巢人家、巢戸内向、及長過尺者吉祥也、集賢張公、毎歲燕巢正寢、其長可疋練、戸悉内向、數年 遂登庸焉、

〔甲子夜話〕

〈三十〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0778 燕ノ巢ニサマ〴〵アリ、江都ハ鴨居又ハ梁ナドニ、狀指ノ如キ形ニ、泥土ヲモテ造ル、又小板ヲ棚トシテ置バ、ソレニ巢クフ、諸國モ大率コノ如シ、ソノ中奇ナルハ、備後ノ鞆浦ニテ見タリ、彼處ニ大ナル神祠アリ、ソノ軒ノウラニ、垂木或ハツカ梁等ニ所々巢アリ、其形壼ノ如シ、入口ハ向ノ方又ハ上ノ方ニアルモ有リ、ソノ狀翳螉ノ居ニ類ス、垂木ニアル者ハ、ソノ形乳房ノ如シ、下方ニ口アリ最奇ナリ、又筑前ノ民家ニアリシハ、方板五寸計ナルニ、四隅ニ繩ヲツケテ屋中ニツリ置ク、其中ニ巢クフ、形竃ノ如シ、又藁ヅトノ小ナル六七寸ナルヲルリ設ク、コレモソノ中ニ巢クフ、カク土風ニヨツテ別異ナルモ奇ナリ、又聞備中吉備津宮ノ燕巢モ壼ノ如ク、祠ノ軒ウラニ多シト、又同國足守邊ノ人云フ、燕ニヒウゴト云一種アリト、然レバカノ異形ノ巢ハヒウゴノ巢ナルカ、〈餘錄〉

燕事蹟

〔今昔物語〕

〈三十〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0778 夫死女人後不他夫語第十三
今昔ノ國ノ郡ニ住ケル人、祖有テ娘ニ夫ヲ合セタリケルニ、其ノ夫失ニケレバ、祖亦他ノ夫ヲ合セムト爲ルニ、娘此レヲ聞テ母ニ云ク、我レ男ニ具シテ可有キ宿世有ラマシカバ、前ノ男コソ不死ズシテ相具シテ有マシカ、男ニ不具マジキ報ノ有レバコソ彼レモ死タラメ、譬ヒ夫ヲ儲タリトモ、身ノ報ナラバ亦モ死ナム、然レバ此ノ事可止シト、母此レヲ聞大キニ驚テ、父ニ此ノ由ヲ語ケレバ、父ノ云ク、我レ年旣ニ老タリ、事近キニ有リ、汝ヂ其ノ後ハ何ニシテカ世ニハ有ラムト爲ルトテ、尚合セムト爲ル、娘父母ニ云ク、然ラバ此ノ家ニ巢ヲ作テ子ヲ産メル鷰有リ、雄鷰ヲ相具セリ、其ノ雄鷰ヲ取テ殺シテ雌鷰ニ注シヲ付テ放チ給へ、然テ明ケム年其ノ雌鷰他ノ雄鷰ヲ具シテ來タラム時ニ、其レヲ見テ我レニ夫ヲ合セ給へ、畜生ソラ夫ヲ失ヒツレバ、他ノ夫ヲ儲クル事无シ、況ヤ人ハ畜生ヨリモ心可有シト、父母現ニ然モ有ル事トテ、其ノ家ニ巢ヲ咋 テ子ヲ産タル鷰ヲ取テ、雄鷰ヲ殺シテ、雌鷰ニハ頸ニ赤キ糸ヲ付テ放ツ、然テ明ル年ノ春鷰ヲ待ツニ、其ノ䳄鷰他ノ雄鷰ヲ不具ズシテ、頸ニ糸ハ付乍ラ來レリ、巢ヲ咋テ子ヲ産ム事无クシテ飛去ヌ、父母此レヲ見テ實ニ然ル事也ケリト云テ、娘ニ夫合セムノ心无クテ止ニケリ、然テ娘此ナム云ケル、
カゾイロハアハレトミラムツバメソラフタリハ人ニチギラヌモノヲ、トゾ云ケル、此レヲ思フニ昔ノ女ノ心ハ此ナム有ケル、近來ノ女ノ心ニハ不似ザリケルニコソ、鷰メモ亦他ノ雄无ケレバ子ハ不産子ドモ、家ニ來リケムコソ哀ナレトナム語リ傳ヘタルトヤ、

〔牛馬問〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0779 予〈○新井白蛾〉が類緣に、宇(ウノ)松貞といへる醫あり、一とせ夏鍼をならべ置たるに、鐵鍼を紛失せり、尋れども終に不得して止ぬ、翌年の夏のはじめ、徒然して座し居たるに、緣の上へ血したゝり落、不思議に詠め見る所に、大なる蛇落て死にける、此由を審にするに、燕來て年々此家に巢を作るといへども、此蛇のために卵をとられ、生育する事なかりしに、去年の鍼を巢に貯、今年終に敵をとりぬ、物おのづから此理有、是予親しく聞所なり、

〔隨意錄〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0779 嘗聞焉、大阪道頓堀、鍋屋道味者宅、有雙燕來巢三年、生雛四、一朝雄夙起巢、宅未戸、乃頡頏宅中、猫捕食之、雌乃獨能養雛、後有一雄燕、來欲其巢、寡雌拒之不容、雄猶欲來棲、可二十日、而雌遂許之、相與哺雛、一朝雌不處、時雄含蒺藜雛、而殺其二、爾後雌頻搏追其雄、又不復邇焉、獨育二雛、元元貞二年、雙燕巢于柳湯佐者宅、一夕家人擧燈照蠍、其雄驚墜、猫食之、雌悲鳴不已、朝夕守巢、哺諸雛、成翼而去、明年雌獨來復巢其處、自是春來秋去獨六稔、目爲貞燕、云禽獸之性、彼此有相同者、如斯之類不一而措

燕利用

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0779 燕〈○中略〉
肉、氣味、甘平有毒、〈本草言酸、然未酸、略覺苦味耳、〉主治、殺蟲利水腫蠱脹痔漏、 屎、氣味、辛平有毒、主治、蠱毒瘧疾逐邪通淋、利小水目翳、愈突眼口瘡

〔甲子夜話〕

〈三十〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0780 加賀ニハ年々夏ノ中ニ、燕ヲ夥ク取リ鹽漬ニシテ貯へ、兵食ノ料ニ備フ、前田家ノ古法ト見へテ、昔ヨリソノ如クシテ、前年ニ鹽漬シタルハ弃テ新ト引換置クコト、年々違フコト無ト云、或云、息合ノ藥ナル歟ト、尚ソノ國人ニ問ベシ、〈林話〉

燕雜載

〔竹取物語〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0780 中納言磯のかみのまうたりは、家につかはるゝをのこどものもとに、つばくらめのすくひたらば、つげよとの給ふを承て、何の用にかあらむと申、こたへての給ふやう、つばくらめのもたるこやすのかひをとらんれうなりとの給ふ、をのこどもこたへて申、つばくらめをあまたころしてみるにだにも、腹になき物也、だゞし子うむ時なんいかでかいだすらん、はう〳〵かと申、人だにみればうせぬと申、又人申やう、おほいつかさのいひかしくやのむねに、つくのあなごとに、つばくらめは巢をくひ侍る、それにまめならんをのこどもをゐてまかりて、あぐらをゆひあげてうかゞはせんに、そこらのつばくらめ、こをうまざらむやは、扨こそとらしめ給はめと申、中納言よろこびたまひて、おかしき事にも有哉、尤えしらざりけり、けうある事申たりとの給ひて、まめなるをのこども廿人ばかりつかはして、あななひにあげすへられたり、とのより使隙なくたまはせて、こやすのかひとりたるかととはせ給ふ、つばくらめも人あまたのぼりゐたるにおぢて、すにものぼりこず、かゝるよしの御返事を申たれば、聞給ひて如何すべきとおぼしめし煩ふに、彼つかさのくわん人、くらつまうと申翁申やう、こやすのかひとらむとおぼしめさば、たばかり申さむとて、御前に參たれば、中納言額を合てむかひゐたまへり、くらつまうが申やう、此燕めこやすのかひは、あしくたばかりてとらせ給ふ也、扨はえとらさせたまはじ、あなゝひにおどろおどうしく、廿人のひと〴〵ののぼりて侍るなれば、あれてよりまうでこず、せさせ給ふべきやうは此あなゝひをこぼちて、人みなしりぞきて、まめならむ人をあらこにのせすへて、つな をかまへて、鳥のこうまん間に、つなをつりあげさせて、ふとこやすのかひをとらせ給なん、よき事なるべきと申、中納言の給ふやう、いとよき事なりとて、あなゝひをこぼし、人みなかへりまうできぬ、中納言くらつまうにの給はく、つばくらめはいかなる時にか、子うむとしりて、人をばあぐべきとのたまふ、くらつまろ申やうつばくらめ子うまむとする時は、ををさげて七度めぐりてなんうみおとすめる、扨七度めぐらんをり、ひきあげてそのおりこやすの貝はとらせたまへと申、中納言喜て、よろづの人にもしらせ給はで、みそかにつかさにいまして、をのこどもの中にまじりて、夜をひるになしてとらしめ給ふ、くらつまうかく申を、いといたく喜ての給ふ、こゝにつかはるゝ人にもなきに、ねがひをかなふることのうれしさとの給ひて、御ぞぬぎてかづけ給つ、さらによさり此司にまうでことの給ひてつかはしつ日暮ぬれば、かのつかさにおはして見給ふに、誠につばくらめ巢つくれり、くらつまろ申やう、おうけてめぐるに、あらこに人をのぼせてつりあげさせて、つばくらめの巢に手をさし入させて、さぐるに物もなしと申に、中納言あしくさぐればなきなりと腹立て、たればかりおぼふらんにとて、われのぼりてさぐらむとの給ひて籠に入てつられのぼりて、うかゞひ給へるに、つばくらめ尾をさげていたくめぐりけるにあはせて、手をさゝげてさぐり給ふに、ひらめる物さはりけるとき、我物にぎりたり、今はおろしてよ、おきなしえたりとの給ひて、あつまりてとくおろさんとて、綱を引すぐして、つなたゆるときに、やしまのかなへのうへに、のけざまにおちたまへり、〈○中略〉からうじて御心ちはいかゞおぼさるゝととへば、息の下にて物はすこしおぼゆれど、こしなむうごかれぬ、されどこやすのかひをふとにぎりもたれば、嬉敷おぼゆれ、まづしそくさしてこゝのかひかほ見むと、御ぐしもたげ御手をひろげ給へるに、つばくらめのまりおける、ふるくそをにぎり給へるなりけり、

〔拾遺和歌集〕

〈七/物名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0781 つばくらめ すけみ なにはつはくらめにのみぞ舟はつく朝の風のさだめなければ

〔風俗文選〕

〈三/譜〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0782 百鳥譜 支考
燕もゆかりはわすれぬ鳥也、終日にひるがへり、終日に囀りて、餌にはかならず身をつくさずや、いはゞ江湖の僧の一夜二夜にちぎり捨て、身を雲水にまかせたるが、年を經て後は見しらぬ人もおほかる、されば行脚の身の、人にもおくられ、おのれもおくりたらんに、涙のこぼるゝはいかなる時にかあらん、かの法師の、宿かし鳥とよみつゞけぬるより、孤村に出て夕陽を啼盡せば、誰が家にか今宵もおくらんと、あぢきなき事もおもはるゝなり、

〔笈埃隨筆〕

〈八〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0782 雜説八十ケ條
予〈○百井塘雨〉備前の沖なる鵜の瀨といふ所に汐待せしに、大巖二ツある所也、夫に燕の樣なる鳥(○○○○○○)夥しく群がりたり、舟人に問へば、かりがねといへり、人に遠ければさのみ恐れず、手にてとらヘたり、脊黑く、觜尖りたり、京には見馴ぬものにて、彼紋所に付るかりがね也、かりがねといへば、鳫の事と計思ふは非なり、

石燕

〔多識編〕

〈四/禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0782 石燕、豆知豆波米(○○○○○)異名土燕(トエン)、〈綱目〉

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0782 石燕〈訓阿末(○○)豆波米(○○○)
釋名胡燕、〈源順〉雨燕〈俗稱、胡燕詳于異同、雨燕者欲雨而飛故名、〉
集解、石燕卽土燕、乳于巖穴者也、大於燕而黑色、胸有黑斑而不紫、毎棲于山上巖穴之中、天陰則群飛必雨、故唐許渾詩、石燕拂雲晴亦兩、是也、今海西及近州濃州之山中多有、江東亦間有之、
肉、氣味、甘温無毒、主治、壯陽益精、煖腰膝小水、能禦山嵐瘴氣邪疫

〔本朝食鑑〕

〈六/華和異同〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0782 石燕
石燕者雨燕土燕、而非右中之石燕也、一名胡燕、源順和名載兼名苑曰、燕有胡越二種、楊氏漢語抄、胡 燕訓阿萬止利、陶弘景曰、紫胸輕小者是越燕、有斑黑而大者是胡燕、必大按、越燕者尋常之燕子也、胡燕者與本邦之雨燕同、然陶氏所謂胡燕、作窠長能容二疋絹者、令人家富也、此與雨燕異、雨燕者棲山上之巖穴而作窠耳、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈三十二/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0783 石燕
炳ノ説ハ琉球カハホリ、形伏翼(カハホリ)ヨタ大ニシテ淡紫色、好テ樹枝ニ倒懸ス、前足ハ毛ナクシテ一ノ駒アリ、後足ハ毛アリテ五指アリ、時珍ノ説ハ百鳥圖ニ符ス、卽酉陽雜俎ノ鷫鷞ニシテ、カザキリナリ、已ニ鵠雞ノ附錄、鷫鸘ノ下ニ詳ニス、又石部ニ石燕アリ、石ノ形栗介ニ似タルモノニシテ、舶來和産倶ニアリ、此條ト同名ナリ、
增、石燕ヤマツバメ(○○○○○)、此レハ乳石ノアル岩穴ニアリ、形狀伏翼ニ似タル鳥ナリ、富士ノ人穴、大峯蟷螂ノ岩屋、近江風穴、丹州大江山等、巖窟中ニ産ス、常ニ窟中ニ在テ飛行シ、外へ出デズ、

〔日光山志〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0783 岩燕(○○) 華嚴瀑の峻谷に巢(すく)ひ、常に谿間を回翔ス、常の燕より殊に大にして、尾二ツにさけず、尾先に針の如きものあり、

〔西遊記〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0783 一足鳥(○○○)
肥後の國八ツ代の求麻川をさかのぼる事八里にして、神(かう)の瀨(せ)の岩戸といふ所あり、天下の奇所なり、〈○中略〉南向にて高さ廣さともに十四五間ばかりもや有らん、上よりは石鐘乳の甚大にして柱の如く、或は人の如くなるが、つらゝの下りたるやうに、口より奧に至るまで、透間なく下れり、其石鐘乳の間に鳥有りて飛ありく、背中黑く腹白く尾みじかく、全體燕に似たり、此鳥只一足なり、世界の中に、只此岩戸の中ばかりに生ずる鳥なりといふ、奧より口にいたるまで數百羽むらがり飛て、程近くまでも飛下る、されど甚すみやかにして、いかなる形としかと見定めがたし、

胡鷰

〔新撰字鏡〕

〈鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0783 鵽〈竹刮反、山鳥、又阿万止利(○○○○)、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十八/羽族名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0784 胡鷰(○○) 兼名苑注云、鷰有胡越二種、〈楊氏漢語抄云、胡鷰子阿萬止里、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈七/鳥名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0784 按證類本草引陶隱居云、鷰有兩種、有胡有越、兼名苑注蓋本之、陶又云、胷斑黑聲大者是胡鷰、其作巢喜長、人言有一匹絹、令家富、本草和名、䴏矢條、載越䴏胡䴏、別無和名、新撰字鏡、鵽、阿萬止利、袖中抄載阿萬止利之歌、今俗呼雨燕、又山燕、又唐燕、又大燕

〔類聚名義抄〕

〈九/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0784 胡鸞〈アマトリ〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01391.gif 鴽〈或駑、音如、音鋤、田鼠化爲鴽、卽鴾䳇、アマトリ、〉 胡䴏アマトリ

〔伊呂波字類抄〕

〈安/動物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0784 胡鷰(アマトリ)〈鷰有胡越二種〉 鷁鷚 鵭〈已上同〉

〔古事記〕

〈中/神武〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0784 爾大久米命、以天皇之命、詔其伊須氣余理比賣之時、見其大久米命黥利目、而思奇歌曰、阿米都々(アメツヽ)、知杼理(チドリ)、麻斯登々(マシトヽ)、那杼佐祁流斗米(ナドサケルトメ)、

〔古事記傳〕

〈二十〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0784 阿米都々(アメツヽ)〈四音一句なり〉知杼理麻斯登々(チドリマシトヽ)、此二句甚解り難し、されど例の試に强て云ば、鳥の名四歟、そは阿米(アメ)は詳ならねど、若くは和名抄に、胡鷰子阿万止利とある、是を阿米とのみも云るにや、

〔袖中抄〕

〈十九〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0784 あまどり
あまたゆひゆたひたゆたふ雲まよりきこえやすらんあまどりの聲
顯昭云、あまどりとは空の雲の中にすみて、おほかた人にもしられぬ鳥也、その鳥六月つごもり七月になるほどに雲の中に、すをつくりて子をうむが、風など吹て雲いたくさはぎて、そのすのやぶれぬべければ、わびてなくなり、その時ばかりぞ、よの人なくこゑをもきくと、或書にかけり、まことゝもおぼえねど、ふるさうしにしるしたれば書のする也、但和名には胡鷰とかきてあまどりとよめり、又あとり(○○○)共よめり、

鵽鳥

〔新撰字鏡〕

〈鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0784 鴰(○)〈古活反、比波利、又太止利(○○○)、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十八/羽族名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0784 鵽鳥(○○) 陸詞切韻、云、鵽、〈古活反、和名多土利、〉小鳥似雉也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈七/鳥名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0785 按玉篇、鵽知括切、廣韻丁刮切、屬舌音知母、古屬牙音見母、其音不同、而諸從叕字皆屬舌音、無牙音、則此云古活反恐誤、〈○中略〉今俗呼田雲雀(○○○)、蓋雲雀之一種、漢名未詳、〈○中略〉按爾雅、鵽鳩寇雉、郭璞注云、鵽大如鴿、似雌雉、鼠脚無後指、岐尾爲鳥憨急、群飛出北方沙漠地、陸詞蓋本之、説文、鵽、鵽鳩也、玄應音義引爾雅注云、俗名突厥雀、陳藏器曰、塞北有突厥雀、身赤、以是充多止利是、

〔類聚名義抄〕

〈九/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0785 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01392.gif 鵽〈或正、音咄玉貞刮反、大如鴿似雌雉、タトリ、ヤマトリ、アマトリ、二小、小鳥似雉、〉

雲雀/名稱

〔新撰字鏡〕

〈鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0785 鴰〈古活反、比波利(○○○)、又太止利(○○○)、〉 鵳〈古賢反、比波利、〉 鶊〈古衡反、比波利、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十八/羽族名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0785 雲雀 崔禹錫食經云、雲雀似雀而大、〈和名比波里〉楊氏漢語抄云、鶬鶊〈倉庚二音、和名上同、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈七/鳥名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0785 按説文、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01393.gif 、天龠也、爾雅、鷚、天鸙、郭璞注、大如鷃雀、色似鶉好高飛作聲、今江東名之曰天鷚、後世名曰吿天子、曰噪天、三才圖會云、吿天子似鶉而小、褐色、海上叢草中多有之、黎明時遇天晴霽、則且飛且鳴、直上雲端、其聲連綿不已、常熟縣志云、噪天、麥熟時有之、亦名吿天子、郝懿行曰、今此鳥俗謂之天雀、毛色全似https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01359.gif 、而形差小、高飛直上、鳴聲相屬、有吿訴、或謂之吿天鳥、卽此也、是可以充比波利、〈○中略〉按爾雅、倉庚、黧黃也、毛詩七月、春日載陽、有鳴倉庚、毛傳、倉庚、離黃也、鶬鶊卽倉庚俗字、好色賦、爾雅郭注、左傳杜注、皆从鳥、是可宇久比須https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01394.gif 條詳之、又按雲雀於他書見、雖形狀難一レ知、然依其名則知、蓋爾雅所謂鷚也、則雲雀鶬鶊非一物、本草和名以雲雀比波利、萬葉集、漢語抄以鶬鶊比波利、其説不同也、源君兩引混爲一非是、

〔類聚名義抄〕

〈九/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0785 鴰〈音恬、鶬鴰、一身九頭、ヒバリ、タトリ、〉 鴳〈ヒバリ〉 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01395.gif 鴳〈俗正、音案、鶬鴳以春分鳴、立秋去、〉 鶬〈或鶬、音倉、鶬鴰鳥、ヒバリ、〉 鶬鶊〈倉庚二音、ヒバリ上ヒバリ、下同、〉 鶥〈音眉、鶬塢、ヒバリ、〉 䳾〈ヒバリ〉

〔同〕

〈九/隹〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0785 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01396.gif 〈或https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01396.gif 字、音倉、ヒバリ、〉 雲雀〈ヒバリ〉

〔和爾雅〕

〈六/禽鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0785 吿天子(ヒバリ)〈叫天子同、出于三オ圃會、〉 噪天(ヒバリ)〈常熟縣志云、麥熟時有之、亦名吿天子、〉

〔日本釋名〕

〈中/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0785 吿天子(ヒバリ) ひばりは日のはれたる時、そらに高くのぼりてなく鳥なり、ひはる也、雨天 にはのぼらず、

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0786 雲雀〈訓比波里
釋名、倉庚、〈源順曰、楊氏漢語抄、鶬鶊、和名比波里、必大按、今古訓比波里、然大抵倉庚者https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01394.gif 之名也、〉
集解、崔禹錫食經曰、雲雀似雀而大、必大按、雲雀處處多有、淡黃毛有黑赤斑、腹頰略黃而白、羽翮輕捷而疾、脛細長而健、故飛翔高遠而歩亦急速、其鳴圓吭睍睆、其聲喧啾高響、春二三月野濶日暖、高擧戻一レ天、舞鳴上下、倦則飛下入草叢、夏四五月伏卵時、尚飛舞頡頏、性能多疑有智、直不吾棲、先下數十歩之外、而疾歩入常宿、於是避https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01151.gif 罹、捕之不多、故令犬逐出、放鷹鷙之、則多得之、至六七月毛改舊、俗呼稱練雲(ネリヒバリ)雀、或曰、飛舞勞身、麥菽養肉、如煉於物之謂乎、至冬鳥肥極倦、而羽老脛弱、故網https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01151.gif之者多、雪中尚易獲耳、其味甘脆肪淺骨軟、脛掌亦可食、以具上饌、近世官家賞之至重、不于鶴鴈、江都官鷹摯之以奉獻于上都、其餘次第賜于列侯、公家鷹亦摯餽送四方、家家甚賞美之、或畜之樊籠、但恐脛掌細弱易一レ折、故籠中盛砂鋪艾以備之、若羽中生蟲則令砂浴一レ之、鶉亦同此、竹籠上設張于長網、籠之高數十尺、網之長亦應之、雲雀能馴、則舞鳴頡頏于網籠中、而終日囀吭圓亮不倦、以爲宮中之翫弄也、〈○中略〉
附錄、田雲雀、氣味、甘温無毒、〈或曰、微温、狀類雲雀而稍大、頭背淡蒼帶靑、翅尾黑、臆前後黃色有黑點、常居田澤流水之間、鳴聲飛舞亦雖雲雀、而性不捷、勢亦稍微、其味雖美劣雲雀耳、〉

〔本朝食鑑〕

〈六/華和異同〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0786 雲雀
崔禹錫食經、雲雀似雀而大、雲雀之名、食經之外未之、故不其字義、此鳥飛上入雲、其狀類雀、仍名之乎、雲雀者鷚也、爾雅、鷚、天鸙、郭璞曰、大如鸚雀、色似鶉、好高飛作聲、韻會曰、今江東名之曰天鷚、亦雲雀也、三才圖會、有吿天子者、褐色似鶉而小、海上叢草中多有之、黎明時遇天晴霽、則且飛且鳴、直上雲端、其聲連綿不已、一云、叫天子、此亦雲雀之類也矣、

雲雀飼養法

〔喚子鳥〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0787 〈たひばり(○○○○) いぬひともみそひばり共いふ〉 〈ゑがい〉 〈生ゑ七分、あをみ入、粉壹匁、〉
大きさ鶯に大ぶり、尾ながくうごかし、せきれいのごとし、せの色あを黑くむね白く、くろきごまふ有、さゑづり少し有、形ちはひばりににたり、冬出る、
〈木ひばり(○○○○) びんずい共たにはいともいふ〉 〈ゑがい〉 〈生ゑ七分、あをみ入、粉壹匁、〉
大きさひばりに少し大ぶり、毛色たひばりにおなじ、むねのごまふ、たひばりよりあらし、さゑづりよし、たひばりとよくにたるものにて、まぎらはしきものなり、たひばり同時に出る、

〔喚子鳥〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0787 粒餌小鳥の分 何にても水を入る
ひばり 〈ゑがび〉 〈きび、あは、すりゑは生ゑ四分、粉壹匁、あをみ入、〉
大きさすゞめに大きし、毛色さへづり世にしるごとし、子がひ重寶す、さへづり善惡あり、又まひひばりとてぜい高きかごの内にてまひ上り、さゑづるなり、まひひばり世にまれなり、夏の初にす子出る、
〈おにひばり(○○○○○) きうともいふ〉 〈ゑがび〉 〈きび、あは、すりゑに生ゑ四分、粉壹匁、あをみ入、〉
大きさひばりに大ぶり、諸事ひばりにかはりなし、

〔飼鳥必用〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0787 放シ雲雀を仕込仕樣
春八十八夜の日、野にて啼雲雀を取移し、尤若鳥をゑらみ、七年程も飼馴し、此鳥を二月末冶仕込、常の雲雀籠より大なる籠を調て、口も廣く明け、家の内明り宜敷座舖にて、度々手にて虫を喰せ、毎日座舖へかごを居へ置て如此、夫ゟ籠の戸口を明け、此戸口ゟ鳥の面を出して虫を喰るよふに仕付、是を喰時、ごみ拂のよふ成ものを拵へ、白紙にてばれんを付、不開柄の方へ結び付、其先きへ虫を乘て喰せ、暫は是に驚候得共、段々と蜘を喰馴はせ、それゟ座敷之内にて引出し、かごに入る時も蜘にて引入、日々右之仕込も相馴候はゞ、障子を少し宛切破り、外を段々と見せ、八十八夜 過にもなり候はゞ、盛り氣つよく、手に喰付よふに成、其時分籠を外庭へいだし、虫にて引出し、是も座敷と庭との違ひにて、座敷のよふには手なれずよし、是も日々相馴候、ばれんにつけ候節庭江引出し、不舞して虫にて籠に入、度々一ツ事宛仕込候へば、自然と舞上り、暫くも舞也、總て舞下る折、ばれんを見せ候得ば、其所直ぐに下る也、右の通舞せ候事、度々は惡敷、一日に朝と晝後二度程宛舞候事、盛氣ぬけ候得ば、ばれんにも不添、方々舞下るよし、春の内盛り廿日計り舞候事、子飼は鳶烏におぢ氣有り、思ふ儘に仕付不相成もの也、野鳥にて七年已上飼置たる鳥ならでは、仕込がたきのよし、日數廿日餘も仕込方取懸り、是のみの仕事に致仕付候よし、中々もつてまいり兼る仕よふ也、まづあらまし聞傳へし事を記す、

〔飼鳥必用〕

〈中〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0788 吿天子(○○○)
此鳥唐人持渡し鳥にて、唐の雲雀也、日本の雲雀より格別大形、頭少し平み、府合薄赤、墨色にて首に白輪の府有り、足の跡爪鳥の鳥に同じ、地鳥にてひばり籠に入てよし、天明の比、琉球國より相渡候得共、帰音を不レ聞、唐にては此鳥にて會を催シ、啼かち候を上ときわめて、鳴まけたるを勝の方へ渡し候よし聞傳へし、一體鳥の樣子雲雀に似たり、

〔飼鳥必用〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0788 雲雀
此鳥野方の鳥は黑斑(クロフ)也、砂場の鳥は赤斑也、尤所々よりも出る也、但し雌雄見分の義は、ひかへの爪長くそりなきは雄也、雌は少しそりあり、子の雌雄も右の處にて見分る也、勿論子飼は諸鳥のまねをするゆへに人々きろふ也、荒鳥三年過たる至てよし、
りう雲雀(○○○○) 一名大雲雀(○○○)と言
此鳥駿府より出る、荒鳥を取、三年ほど飼へば宜しく鳴也、尤鳴方常の雲雀より大口也、餌飼魦にて三分餌也、

雲雀事蹟

〔古事記〕

〈下/仁德〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0789 其夫速總別王到來之時、其妻女鳥王歌曰、比婆理波(ヒバリハ)、阿米邇迦氣流(アメニカケル)、多迦由玖夜(タカユクヤ)、波夜夫佐和氣(ハヤブサワケ)、佐邪岐登良佐泥(サヾキトラサネ)、天皇聞此歌卽興軍欲殺、

〔萬葉集〕

〈十九〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0789 二十五日〈○天平五年二月〉作歌一首
宇良宇良爾(ウラウラニ)、照流春日爾(テレルハルビニ)、比婆里安我里(ヒバリアガリ)、情悲毛(コヽロカナシモ)、比登里志於母倍婆(ヒトリシオモヘバ)、
春日遲々、鶬鶊正啼、悽惆之意、非歌難撥耳、仍作此歌、式展締緖、但此卷中、不作者名字、徒錄年月 所處緣起者、皆大伴宿禰家持裁作歌詞也、

雲雀進獻賜與

〔親元日記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0789 文明十五年正月九日癸卯、兵庫殿御進上、雲雀五十、鯉二、鯛五、以上長谷へまいる、

〔大館常興日記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0789 天文九年七月十日、已上刻爲御使綠阿來入、ひばり一さほ拜領仕候、面目至忝衣第也、

〔幕朝年中行事歌合〕

〈中〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0789 二十三番 右 賜鶬
我きみのみことかしこみ門を明て雲雀の使今や待らん
賜鶬とは七月の頃、小鷹にてとりしひばりを、三家三卿のかた〴〵、國主の面々、在府の家がら の人々に、わかち賜ふ也、

〔守國公御傳記〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0789 將軍家御鷹捉飼ノ雁ト雲雀トヲ、三家三卿溜詰國主等ニ、毎年恩賜アリ、冬ノ雁ハ昔ヨリ鹽ニ漬タレドモ、夏ノ雲雀ハ生ニテ數十羽ヅヽ賜フ例ナレバ、鷹匠近村ニ出タ捉飼シタル雲雀ヲ、炎天ノトキ速カニ奉ルトテ、夜ヲ籠テ運ビ、其村々ノ農民ハ、兼テ其用意ヲナシ、數十人待設ル故、農民ノ勞少カラザリシニ、公○松平定信執政ト成玉ヒシヨリ、雲雀モ雁ノ如ク鹽漬ニナツ、日ヲ經テ奉リケレバ、農民ノ勞ナク、且鷹匠近國ノ鷹場ニ出テ、農民ヲ惱ス事モ、此頃ヨリ絶テ止タリトゾ、

雲雀利用

〔宜禁本草〕

〈坤/諸禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0789 蒿雀(ヒバリ) 甘温無毒、益陽道、美於諸雀、補益人

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0790 雲雀〈○中略〉
肉、氣味、甘温無毒、主治、久泄虚痢、
發明、今俗通言、雲雀性平肉淺而不病、故令病人食一レ之、必大按、雲雀翼强而輕、脛細而捷、飛戻天歩則疾、是雖體徵小而勢健之故也、凡體輕勢健者陽而能升、得春氣長、遇冬氣衰、則雲雀之升陽可知、故令氣升提能調泄痢之虚極、然則氣實之病而食之、則發熱動血、暗生不治之痼、氣虚之病而食之、則據症可治焉、凡禽類馴家游水者、雖毒而不烈、棲山宿野者、有毒彌熾而遺害也、
腸肫、氣味、倶甘温無毒、近世醃腸肫脛掌及諸骨以作醢醬、或和麴亦有、倶味甘鹹香膩、其美不言、世以爲珍肴、然多食則温毒莫害乎、

雲雀雜載

〔萬葉集〕

〈二十〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0790 三月〈○天平勝寶七歲〉三日撿挍防人勅使、幷兵部使人等、同集飮宴作歌三首、
阿佐奈佐奈(アサナサナ)、安我流比婆里爾(アガルビバリニ)、奈里氐之可(ナリテシガ)、美也古爾由伎氐(ミヤコニユキテ)、波夜加弊里許牟(ハヤカヘリコム)、
右一首、勅使紫微大弼安倍沙美麻呂朝臣、
比婆里安我流(ヒバリアガル)、波流弊等佐夜爾(ハルベトサヤニ)、奈理奴禮波(ナリヌレバ)、美夜古母美要受(ミヤコモミエズ)、可須美多奈比久(カスミタナビク)、〈○一首略〉
右二首、兵部少輔大伴宿禰家持、

〔神藥歌〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0790 閑野
し(本)づやのこすげ、かまてからばおひんや、おひんやこすげ、
あ(末)めなるひばり、よりこやひばり、とみくさ、とみくさもちて、

〔武江産物志〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0790 山鳥類 吿天子〈廣尾〉
V 風俗文選

〈三/譜〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0790 百鳥譜 支考
雲雀は終日に啼暮して、はては空にもふすにかあらむ、此ものは小春の空をよくおぽへて、鳥羽の田づらなどに、ふと啼出たるに、かゐつれて囀る鳥もなければ、あはれさびしきものかなと、お もふ時もある也、

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01397.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01398.gif

〔倭名類聚抄〕

〈十八/羽族名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0791 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01397.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01398.gif 四聲字苑云、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01397.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01398.gif 〈獨春二音、漢語抄云、獨春鳥、佐夜豆米土里(○○○○○○)、〉鳥黃色、聲似舂者相杵也、

〔類聚名義抄〕

〈九/鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0791 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01397.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01398.gif 〈獨春二音、獨春鳥、サヤツキトリ〉

〔本朝食鑑〕

〈五/原禽〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0791 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01397.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01398.gif
集解源順曰、四聲字苑云、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01397.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01398.gif 鳥、黃色聲似舂者相杵也、今無許之鳥、未舂聲之禽、且待博識之人耳、

〔本朝食鑑〕

〈六/華和異同〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0791 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01397.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/km0000m01398.gif
獨舂者寒號蟲也、一名鶡鴡、屎名五靈脂、李時珍曰、鶡鴡、夜鳴求旦之鳥、夏月毛盛、冬月裸體、晝夜鳴叫、故曰寒號、曰鶡且古刑有城且舂、謂晝夜舂米也、故又有城且獨舂之名、月令云、仲冬曷且不鳴、蓋冬至陽生漸暖故也、必大按、和名所言獨舂者黃色、舂聲似尋常之禽、而無狀如小雞、四足肉翅、夏月毛采五色、冬毛落如雛、然則本邦之獨舂別一種哉、


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Last-modified: 2022-06-29 (水) 20:06:31