地部/三河國

p.0539 三河國ハ、ミカハノクニト云フ、東海道ニ在リ、東ハ遠江、西ハ尾張、北ハ美濃、及ビ信濃ニ界シ、南ハ海ニ面セリ、東西凡ソ十六里半、南北凡ソ十七里、其地勢ハ、北方ニハ飛騨、信濃二國ニ蟠マレル木曾山脈ノ一部重疊シ、東南ニハ、甲斐、信濃、遠江ニ連ナレル赤石山脈ノ餘波、其國境ヲ走リ、國内概ネ山嶽ニ富ム、此國ハ、古ヘ國府ヲ寶飫郡ニ置キ、碧海(アヲミ)、賀茂(カモ)、額田(ヌカタ)、播豆(ハヅ)、寶飫(ホオ)、設樂(シダラ)、八名(ヤナ)、渥美(アツミ)ノ八郡ヲ管シ、延喜ノ制、上國ニ列ス、明治維新ノ後加茂郡ヲ東西ニ設樂郡ヲ南北ニ分チ、凡テ十郡ト爲シ、愛知縣ヲシテ之ヲ治セシム、

名稱

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.0539 參河〈三加波〉

〔饅頭屋本節用集〕

〈美天地〉

p.0539 參河(ミカハ)〈參州〉

〔日本風土記〕

〈一寄語島名〉

p.0539 三河〈迷茄懷(ミイキヤアワイ)〉

〔參河國古蹟考〕

〈三〉

p.0539 參河〈三加波〉日本紀〈廿五ノ卅丁〉同〈三十ノ廿一丁〉續日本紀〈二ノ十五丁〉舊事記〈十ノ四丁〉令義解〈二ノ初丁〉姓氏録〈上ノ十一丁〉万葉集〈一ノ廿二〉參河ト作リ、古事記、〈中廿四丁〉同、〈中ノ卅四丁〉舊事記、〈五ノ廿三丁〉等三川ニ作リ、舊事記〈五ノ十六丁〉日本紀〈廿五ノ十六丁〉續紀〈二ノ十五丁〉令義解〈二ノ一丁〉等ニ三河ト作リ、舊事記〈七ノ卅四丁〉續紀〈廿八ノ十八丁〉參川ニ作リ、其餘餘多アリ、今略レ之、

〔古事記傳〕

〈二十二〉

p.0539 三川は、參河國なり、此國、男川、豐川、矢作(ハギ)川とて、三の大川ある故に、三川と名くと

p.0540 云り、〈男川は今大平川と云、豐川は吉田川なりと云り、或説には、男川は加茂郡より出て、池鯉鮒(チリフ)の西今岡の東を、南へ流るヽ川なるべし、大平川には非じとも云り、〉

〔諸國名義考〕

〈上〉

p.0540 參河　和名抄に參河、〈三加波國府在二寶飫郡一、彦麻呂云、今に飫を飯に誤てほひの郡といふ、〉名義は或書に引たる參河國風土記逸文に、參河國有二三川一、一曰二男川一、二曰二豐川一、三曰二矢作川一、〈◯中略〉立入信友云、今遠江に二河てふ郷ありて、よく似かよひてきこゆ、彦麿思ふに、三大川によりて三河國としも號しはうつなき物から、又思へば、數をいはず、たヾ大川を稱(タヽ)へて、御川となづけしにてもあらむか、こはこヽろみにいふのみ、

〔三河國二葉松〕

〈一〉

p.0540 三河　松泓子曰、男川、一ノ名ハ扶土(ヲト)川、〈今大平川ト云〉矢矧川、〈矢作矢矯〉豐川、右川三ツ有、以參河ト云トナリ、〈◯中略〉或翁曰、三河ノ水源ヲ考ルニ、豐川ハ設樂郡ノ神田ノ梺ニ出テ、八名郡ノ長篠村ニ合ヒ、寶飯郡ノ前芝ニテ海ニ入ル、矢作川ハ其源南ハ保殿ニ出テ、北ノ源大多賀ノ山下ニ巡テ、黒岩ニテ合ヒ、額田郡ノ西ニ出テ、播豆郡ニテ海ニ入落ル也、男川ヲ扶土川トシ、大平川トスル説ヲ取ルニ、大平川ノ源額田北ノ上毛呂ニ出テ、南ハ宮崎ニ出テ、保母生平ニテ合、大平橋ヲ流レ、上六名ニ合、矢作川ニ合流シ、海ニ落ル也、或人ノ云、大平川ヲ三河ノ中ニ入ル事信用シガタシ、夫水ハ高源ニ出テ北ヨリ西ヘ流ル、是逆流ト云ツベシ、我壯歳ヨリ是ヲ疑ヘリ、諸人ニ尋問ヒシニ不レ決レ之、然ルニ或修行僧ノ曰ヒケルハ、三ノ河ノ中ニ、男川トハ男川ノコトニテ、其源加茂郡ノ擧母梅ケ坪ノ上四郷花本之邊ヨリ出テ、一流ハ花薗ノ上竹村邊ヨリ流出テ、二流池鯉鮒之上駒場邊ニテ合、池鯉鮒ト今岡トノ間ニテ、東海路ヲ横ニ南ヘ流レ、高津川熊村苅谷ノ西ヲ流レ、碧海ノ海ニ入ル、考ルニ豐川ト矢作川ハ順流ナルニ、大平川ノ横逆流ヲ並ベカゾヘテ三河トハ云ヒ難シ、後考ヲ待ト云、再ビ按ズルニ、國名風土記ニ、三ツ之河アルニ因テ國ノ名トスルト云ヘバ、下流短キ逆流ニテハ並ベガタカルベシ、當國ノ形容、東ノ端ニ豐川アリ、中ニ矢作川有、西ニ男川アリテ、三流ヲ衽トシ經トス

p.0541 ベシ、矢作第一ノ長流、豐川次レ之、男川次レ之、

位置

〔地勢提要〕

〈乾〉

p.0541 各國經緯度〈附里程〉　三河岡崎、〈傳馬町〉極高三十四度五十七分半、經度東一度二十五分、從二東都一〈東海道〉八十五里二十七町五間半、　三河伊良湖村極高三十四度三十五分半、經度東一度一十六分、從二東都一〈東海道經二吉田驛一沿二豐川一至二海岸沿海一〉九十八里二十九町二十七間半、

〔日本經緯度實測〕

p.0541 北極出地　三河　吉田　三四度四六分三◯秒　御油宿　三四度五一分◯◯秒　岡崎　三四度五七分三◯秒　池鯉鮒　三五度◯◯分三◯秒〈◯中略〉　東西里差　山城　京　◯度◯◯分◯◯秒〈◯中略〉　三河　岡崎　東一度二四分一三秒

疆域

〔三河國二葉松〕

〈一〉

p.0541 三河　按、東限二東海路高師山一、西限二今岡ノ村堺川一、十四里半、而爲二西東一焉積二六町一里一則八十七里、　南限二海邊伊良湖崎一、北限二山中津具邑堺一、三十一里而爲二南北一焉、積二六町一里一則百八十六里、　◯按ズルニ、伊良湖ハ、伊勢國篇島嶼條ニ收ムル所ノ萬葉集ニ據ルニ、古ハ伊勢國ニ屬セシガ如シ、姑ク記シテ疑ヲ存ス、

〔日本地誌提要〕

〈十二三河〉

p.0541 疆域　東ハ遠江、西ハ尾張、北ハ美濃、信濃、南ハ海ニ至ル、東西凡一十六里、南北凡一十七里、

〔丙辰紀行〕

p.0541 しほ見坂より三河の間に、纔なる溝あり、是なん遠江、三河の境なりといふ、

島嶼

〔三河國二葉松〕

〈三〉

p.0541 三州島名　

p.0542 一竹島、一祠在レ之、不相村之氏神也、三辨天ノ其一ニ而、風景佳也、　一大島、小島對而之名也、又小島ハ、大島對而之名也、　一佛島、巖立並テ千體佛之如シ、隱顯ハ潮汐滿干ニ隨フ也、　一小島、右ニ記ス、已上三島ハ、三谷村ニ屬スル也、　一蠅田島、西浦村ニ屬ス、松樹鬱々トシタルヲ御前ト云、雪中ニモ蠅有、　一辨才天島、旛豆村ニ屬ス、雜樹茂リタル中辨天ノ祠在り、三辨天ノ一也、　一梶島、宮崎村ノ沖ニ有、異具島、　一佐久島、三國三島ノ一也、參河ニ屬ス、東南アリ、竹木繁茂シタル中ニ辨天ノ祠有、三辨天ト云、弘法大師彫刻ノ靈像三辨天ノ第一也、雌龜島、雄龜島、其外寺院多シ、　日間賀島ハ、尾州ニ屬ス、三國三島ノ其一也、　篠島ハ、勢州ニ屬ス、三國三島ノ一所也、〈今代爲二知行一、尾州ニ屬ス、〉　一龍宮島、窟屋穴藏、渥美郡日出村ニ有　一飛馬島、渥美郡片濱波瀬之沖ニ在、　一龜島、寶飯郡拾石村ニ屬ス、〈俗ニ志州神島ヲ云二龜島一非也〉　一西濱田坪、渥美郡中山村ニ屬ス、　一貝作(カサ)島、非レ島、在二渥美郡浦村一山也、　一老津島出二名所記一、渥美郡大津大崎、云二洲崎一、　一青木島　同斷　一座敷島　同斷

〔日本實測録〕

〈九島嶼〉

p.0542 三河國渥美郡　遠測　姫島　

p.0543 寶飯郡　遠測　辨天島　大島　龜岩　幡豆郡　遠測　琵琶島　梶島　佐久島　辨天島

地勢

〔易林本節用集〕

〈下〉

p.0543 參河〈參州〉上、管八郡、東西一日半、山河多而淺一尺、故五穀不熟、國乏、下々小國也、

〔三河國二葉松〕

〈一序〉

p.0543 參河國之大體、西首東尾、南海北嶺、中貫二三河一、西極二尾州一抵二遠州一、南限二滄海津湊一、北境二信州之山丘一、郡縣邑里無レ不二豐饒一、疆理之制、則以二五城一、直二隷州府一、中國分爲二八郡一、曰碧海、曰旛豆、曰額田、曰加茂、曰設樂、曰寶飯、曰八名、曰渥美、總之爲二村千二百七十四箇邑一、爲二地高三十五万八百八十石餘一、賜二分諸侯大夫旗下之臣數十人一、誠神祖龍飛之地、如二周之岐幽漢豐沛一矣、眞足下以當二形勢之勝一而爲中萬世不拔之 基一、國家根本之會成、未レ有二過レ之者一也、〈◯下略〉

〔梧窻漫筆拾遺〕

p.0543 三河の國より、天下を領する人の起りしこと、如何なる故と云ふことを知らず、山川の英靈にや、鳳來山、本宮山、猿投山等、さまでの高山にも非ず、吉田川、矢矧川も、岐岨川、利根川などに比類すべきにも非ず、往古民情風俗の至りて善き處と云ふこと、新太郞少將の諸士へ勸戒し給へる書にて知りたり、さて予〈◯太田錦城〉が所レ見は、山は童山のみ多くて、草木を生ぜず、灌漑の木少なく、いかにも瘠薄の地にて、下々の國と云へり、是れ人の興るべき基源なり、魯語の公父文伯の母の言に、沃土之民不レ才者淫也、瘠土之民莫レ不嚮レ義思也と、瘠薄の土ゆゑに、人浮華に走らず、篤實儉朴にて能く勤む、是興るべきの源本なり、されども只今にては、昔の様子とは事替りたるべし、新太郞少將の見給ふとも、最早ほめ給ふことはあるまじと思ふなり、　矢矧の橋を渡りて、西は土地肥磽の異あるは知らず、先尾張と同國様にて、四方を遠望すれば、東照神君の興り給へる國と云ふことも、自然に知るべき形象あり、是れは別論に附す、

〔日本實測録〕

〈二街道〉

p.0543 從二東京東海道一至二西京一〈◯中略〉　三河國渥美郡二川宿　二里一十三町八間半　豐橋〈本吉田〉船町、三十四度四十六分半、　二里一十

p.0544 六町二十八間　寶飯郡御油宿　七町一十二間　御油宿茶屋町、三十四度五十一分、　一十六町二十三間　赤坂宿　二里一十九町五十四間　額田郡藤川宿　二里二十九間〈至二西大平一一里五丁三十三間半〉　岡崎傳馬町、三十四度五十七分半、　三十町四十七間〈至二籠田町一三丁三十六間、從二籠田町一至二矢作橋東頭一二十四丁二十一間半、〉　碧海郡矢作村矢作橋西頭　二里三十三町二十八間　池鯉鮒宿、三十五度三十秒、　三里一町五間〈至二國界一、一里四丁五間半〉　尾張國愛知郡鳴海宿〈◯中略〉　從二東海道濱松一歴二本坂一至二御油一〈◯中略〉　三河國八名郡嵩(ヌヒ)山村、三十四度四十八分、　二里一十町三十八間　寶飯郡北金屋村、〈至二北金屋村宿所一三丁六間〉三十四度四十九分半、　二十六町四十二間半　市田村諏訪　一里一町四十八間半　御油宿　〈從二濱松一至二御油一〉街道、通計一十二里二十八町三十九間　從二東海道岡崎一、伊奈街道、至二金澤一、　三河國額田郡岡崎籠田町　一十九町五十八間半　井田村〈至二大樹寺一一十一町一間、又至二瀧山寺一三十五丁五十三間、〉　三十町一十一間　岩津村〈至二信光明寺一三丁一十間〉　一里二町三十間半　桑原村〈至二奧殿陣屋四丁四十四間〉　二十二町一十間　加茂郡中垣外村、三十五度二分半、　一十六町二十四間　九久平(クグタヒラ)村、三十五度三分半、〈至二松平郷高月院一一里二十五丁四十五間〉　二里九町三十三間　大島村、三十五度六分半、　一里二十三町三十四間　足助(アスケ)村本町、三十五度七分、　二里一十八町一十一間　明川村　三里一十一町九間　設樂郡〈武節町村〉　一里一十八町一十四間〈至二國界一一里二十一丁二十三間〉　信濃國伊奈郡根羽(ネバネ)村〈◯中略〉　從二伊奈街道根羽一歴二新城一至二市田一〈◯中略〉　三河國設樂郡上津具村　三里三町四十八間半　田口町村　一里二町四十六間半　東田内村　一里一十五町一十五間　海老村　一里二十六町五間半　田代村〈歴二門谷町一至二鳳來寺一二十三丁五十八間〉　三里七町七間半　新城(シンシロ)町　二里一十五町二十一間　寶飯郡一宮村〈至二一宮砥鹿明神社一六丁三十九間〉　一里一十二

p.0545 町三十九間〈至二大木村一五丁九間〉　市田村諏訪　〈從二根羽一（信濃）至二市田一〉街道、通計一十七里一十八町五間半

〔日本實測録〕

〈一沿海〉

p.0545 從二東京一沿海至二大坂一〈◯中略〉　三河國渥美郡伊古部村濱、〈至二伊古部村宿所一三町四十二間〉三十四度三十九分半、　三里一十八町一十間　高松村濱、〈至二高松村宿所一八町一十五間〉三十四度卅七分半、　四里五町五十三間　西堀切村、三十四度三十五分半、　一里二十五町廿九間〈至二伊良湖岬一一里一十四町五十九間〉　伊良湖村濱、〈至二伊良湖村宿所一三町二十六間〉三十四度三十五分半、　四里二十七町五十五間〈至二中山村洲岬一二里一十九町九十二間半〉　白田村、三十四度三十八分、　一里三十五町五間　江北間村〈至二東岬一八町四十六間、又至二西岬一三町二十間、〉　二里四町四十六間　野田村〈至二間草一一十四町二十六間、北極高三十四度卅九分半、〉　四里二町五十五間半　波瀬村タツヱノ岬　二里八町五十五間半〈至二鬼塚岬一一里一十町一十一間〉　吉湖村〈至二田原本町一一十七町四十八間、北極高三十四度四十分、〉　三里二十一町三十間〈至二大崎一一里一十七町〉　牟呂村濱、〈至二牟呂村宿所一四町一十六間〉三十四度四十五分、三十町三間　同豐川口〈沿二豐川一至二吉田宿一一里三町三十八間〉　一里四町一十六間　寶飯郡御馬湊　六里二町三十九間半〈至二西浦村東浦一四里一十四町三間半〉　西浦村〈至一東浦一徑側七町三十五間半〉　一里三十四町八間半　幡豆郡宮崎村、三十四度四十六分半、　五里六町二十二間　寺津村〈至二平坂湊一八町四十六間半、北極高三十四度五十一分半、〉　三里一十七町五十二間〈至二矢作川口一三十二町五十九間〉　碧海郡大濱　二里三十五町二十六間　元刈谷村川口〈至二刈谷本町一一十一町四十六間、北極高卅四度五十九分半、〉　五里三十一町五十二間半〈至二國界一一十五間〉　尾張國知多郡大足村

宿驛

〔延喜式〕

〈二十八兵部〉

p.0545 諸國驛傳馬〈◯中略〉　參河國驛馬〈鳥捕、山綱、渡津各十疋、〉傳馬〈碧海寶飫郡各五疋〉

〔源平盛衰記〕

〈四十五〉

p.0545 内大臣關東下向附池田宿遊君事　二村山ヲ過ヌレバ、三川國八橋ヲ渡給フ、昔業平ガ劇草(カキツバタ)ノ歌讀タリケルニ、皆人袖ノ上ニ涙ヲ流シケル所ト覺シケルモ、御涙關敢給ハズ、矢矯宿(○○○)ヲモ打過、宮路山ヲモ越ヌレバ、赤坂宿(○○○)ト聞エケリ、三川入道大江定基ガ、此宿ノ遊君力壽ト云ニ後レテ、眞ノ道ニ入事モ、アラマホシクヤ思召ケ

p.0546 ン、高師山ヲモ過ヌレバ、遠江橋本宿ニ著給、

〔吾妻鏡〕

〈三十一〉

p.0546 嘉禎四年〈◯暦仁元年〉十月十八日己未、有二熱田社御奉幣一、酉一點、入二御矢作宿(○○○)邊左馬頭義氏朝臣亭一、　十九日庚申、戌一刻、著二御豐河驛(○○○)一、

建置沿革

〔日本國郡沿革考〕

〈二東海道〉

p.0546 參河　古作二三川一〈國造記云、志賀高穴穗朝、定二參河國造一、　或云、國内以レ有二男川豐川矢作川之三大川一得レ名、男川今之大平川、豐川今之吉田川、〉上國、管八郡、千二百九十二村、　額田〈百六十八村〉　加茂〈三百四十七村　延喜式等作二賀茂一〉　碧海〈百二十九村〉　幡豆〈百五十一村　延喜式等作二播豆一、或作二播頭一、〉　寶飯〈百八村　古穗國見二古事記一、國造記云穗國造、泊瀬朝倉朝定後爲レ郡、建二國府于此一、俗作二寶飯一非、〉　設樂〈二百二十九村　延喜三年八月割二寶飫郡一置、〉　八名〈六十五村〉　渥美〈九十五村〉

〔日本地誌提要〕

〈十二三河〉

p.0546 沿革　古ヘ國府ヲ寶飯郡ニ置、〈今ノ國府村是ナリ〉鎌倉ノ初、源範頼州守ニ任ジ、建久正治ノ間、安達盛長守護タリ、足利氏ノ時、吉良滿貞ヲ守護トシ、八名郡西條ニ居、其弟尊義幡豆郡ヲ領シ、東條ニ居、寛正ノ初、吉良氏大ニ衰ヘ州内擾亂、將軍義政、細川成之(シゲユキ)ヲシテ守護タラシム、天文中、今川義元、本州ヲ侵シ、東條義安ヲ駿河ニ幽シ、〈義安ハ尊義八世ノ孫ナリ〉西條義昭ヲ東條ニ徙シ、州東ノ地ヲ奪フ、〈義昭ハ滿貞七世ノ孫〉是ノ時ニ當テ、徳川氏額田郡ニ興リ、岡崎ニ治シ、西境近郡ヲ略取ス、既ニシテ義元、徳川氏ヲ劫掣シ、其地ヲ攘有スル十一年、義元敗死スルニ及ビテ、徳川氏舊疆ヲ復シ、〈額田、寶飯、碧海、三郡ニ跨ル、〉遂ニ東條ヲ取リ、西尾、〈牧野氏〉吉田、〈小原氏〉　諸城ヲ拔キ、盡ク全州ヲ併ス、天正十八年、其關東ニ遷ル、豐臣氏、池田輝政ヲ吉田ニ、田中吉政ヲ岡崎ニ封ズ、關原役畢リ、徳川氏二氏ヲ徙封シ、松平家清ヲ吉田、〈後ニ松平信祝(トキ)〉本多康重ヲ岡崎、〈後ニ本多忠肅(トシ)〉本多康俊ヲ西尾〈後ニ松平乘祐〉戸田尊次ヲ田原ニ〈後ニ三宅康貞〉封ジ、水野勝成ヲシテ刈谷ノ舊邑ヲ襲ガシム、〈後ニ土井利信ヲ封ズ〉其後州内封ヲ受ル者、擧母(コロモ)、〈初本多忠利後内藤政苗(ミツ)〉奧殿(ヲクドノ)〈松平乘次〉西大平〈大岡忠相(スケ)〉西端(バタ)〈本多氏〉凡テ九藩、文久中、奧殿藩、〈松平乘謨〉信濃ノ田野口ニ徙ル、王政革新、吉田ヲ改テ豐橋ト稱シ、板倉勝達ヲ重原(シゲハラ)ニ、〈舊陸奧福島〉安部信發(オキ)ヲ半原(ハンバラ)ニ〈舊武藏岡部〉移

p.0547 封シ、十藩トナル、既ニシテ皆改テ縣トナシ、又悉ク之ヲ廢シテ額田縣ヲ置キ、岡崎ニ治ス、尋デ之ヲ廢シテ愛知縣ヨリ兼治ス、

〔先代舊事本紀〕

〈十國造〉

p.0547 參河國造　志賀高穴穗朝、〈◯成務〉以二物部連祖出雲色大臣命五世孫知波夜命一定二賜國造一、　穗國造　泊瀬朝倉朝、〈◯雄略〉以二生江臣祖葛城襲津彦命四世孫、兎上足尼一定二賜國造一、

國府

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.0547 參河國〈國府在二寶飯郡一、行程上十一日、下六日、〉

〔今昔物語〕

〈十九〉

p.0547 參河守大江定基出家語第二　今昔、圓融院ノ天皇ノ御代ニ、參河ノ守大江ノ定基ト云フ人有リ、〈◯中略〉而ル間其國ニシテ、國ノ者共風祭ト云事ヲシテ、猪ヲ捕生ケ乍ラ下シケルヲ見テ、彌ヨ道心ヲ發シテ、〈◯中略〉守其ノ日ノ内ニ國府ヲ出テ京ニ上ニケリ、道心堅ク發ニケレバ、髻ヲ切テ法師ト成ニケリ、名ヲ寂照ト云フ、世ニ參河ノ入道ト云フ此レ也、

郡

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.0547 參河國〈◯註略〉管八〈◯註略〉碧海、〈阿乎美〉賀茂、額田、〈奴加太〉幡豆、寶飫、〈穗、國府、〉設樂、〈志太良〉八名、〈也名〉渥美、〈阿豆美〉

〔延喜式〕

〈二十二民部〉

p.0547 參河國上〈管　碧海　賀茂　額田　播豆　寶飫　設樂　八名　渥美〉　右爲二近國一

〔皇國郡名志〕

p.0547 參河國〈八郡〉　碧海(アヲミ)　〈刈屋　＜池鯉鮒　＜中島　△矢矧川　尾界堺川矢ハギ川ノ間〉　賀茂(カモ)　〈衣　△衣里　●明智　＜上伊保　●足助　●サ投　●白川　●市野　＜松平　尾濃界〉　額田(ヌカタ)　〈岡崎　＜藤川　＜奧殿　國中郡〉　幡豆(ハツ)　〈西尾　△菱池　△吉良庄　南海向郡〉　

p.0548 寶飯(ホイ)　〈●上東　●大木　＜御油　＜赤坂　△豐川　＜形原　＜蒲形　國中ヨリ入江向〉　設樂(シタラ)　〈＜新城　●清井田　●門谷　△鳳來寺　●追分　●板場　●左太良分　●下利　●アス川　●岩村　●川手　濃信遠界郡〉　八名(ヤナ)　〈●大野　●須山　●大平　●高瀬　△板シキ川　遠界〉　渥美(アツミ)　〈吉田　田原　●二川　南出崎郡〉　◯按ズルニ、本書及ビ次ノ郡名異同一覽ノ符號ハ、山城國篇郡條ニ引ク所ノ、二書ノ凡例ヲ參照スベシ、

〔郡名異同一覽〕

p.0548 參河

碧海郡

〔參河國古蹟考〕

〈三〉

p.0549 碧海〈阿乎美〉　民部式〈廿二ノ二丁〉碧海郡、拾芥抄〈四ノ六十二丁〉碧海郡、〈◯中略〉　此郡今モ碧海郡ト稱テ、高七万八千七十石餘アリテ、村數ハ三川雀ニ百廿四村、二葉松ニ百卅六村、三川堤ニ百四十三村ヲ擧タリ、

〔新撰姓氏録〕

〈右京皇別〉

p.0549 御立史　御使、同氏、氣入彦命之後也、持統天皇御代、依レ居二參河國青海郡(○○○)御立地一、賜二御立史姓一、日本紀漏、

〔續日本紀〕

〈二十六稱徳〉

p.0549 天平神護元年四月丁亥、參河國碧海郡人〈◯人原脱、據二一本一補、〉從八位上石村村主押繩等九人、賜二姓坂上忌寸一、

賀茂郡

〔參河國古蹟考〕

〈三〉

p.0550 賀茂　〈民部式、拾芥抄同、當郡賀茂郷アリ、其ヨリ出タル郡名ナルベシ、〉　此郡今モ賀茂郡ト稱テ、高五万九百八石餘アリ、村數ハ、春雨咄ニ三百卅四村、二葉松三百四十七村、三川堤三百七十一村、删補松ニ三百五十七村トアリ、

額田郡

〔參河國古蹟考〕

〈三〉

p.0550 額田〈奴加太、民部式廿二、拾芥抄四同、當郡ニ額田郡アレバ、其レヨリ出タル郡名ナルベシ、◯中略〉　此郡今モ額田郡ト稱テ、高四万三千九十四石餘アリ、〈三川雀ニハ四万二千八百十石餘トアリ〉村數、春雨咄ニ百五十四村、二葉松ニ百五十村、三川堤ニ百六十八村、删補松ニ百五十七村ヲ擧タリ、

幡豆郡

〔參河國古蹟考〕

〈三〉

p.0550 幡豆〈民部式廿二、拾芥抄四同、神名式幡豆郡、◯中略〉　當郡幡豆郡〈又幡頭(○○)トモ書リ〉ト稱テ、高四万六千六百十八石餘アリ、村員ハ、春雨咄ニ百三十六村、二葉松百廿九村、删補松ニ百三十二村、三川堤ニ百三十七村ヲ擧ゲタリ、

〔三代實録〕

〈二清和〉

p.0550 貞觀元年四月十五日庚子、是日神祇官卜、以二參河國播豆郡(○○○)一爲二悠紀一、

〔三代實録〕

〈三十三陽成〉

p.0550 元慶二年六月二日丙寅、勅以二參河國播磨〈◯磨恐豆誤〉郡荒廢田一百町一賜二孟子内親王一、爲二一身田一、

寶飫郡

〔倭訓栞〕

〈前編三十一保〉

p.0550 ほ　三河郡寶飫、ほとよめり、飫飯に作るは誤なり、

〔地名字音轉用例〕

p.0550 韻(ヒヾキ)ノ音ノ字ヲ添ヘタル例　ほ　寶飫〈三郡〉穗　飫ハオノ假字也

〔參河國古蹟考〕

〈三〉

p.0550 寶飯〈穗國府　民部式廿二、神名式九、拾芥抄四同、民部式古本寶飫郡、〉　古事記〈中ノ廿四丁〉開化天皇條ニ、朝廷別王者三川之穗別之祖、　國造本紀、〈十ノ四丁〉穗國造、泊瀬朝倉以二生江臣祖葛城襲津彦命四世孫兎上足尼一定二賜國造一ナリ、〈寶飫郡莵足神社ハ兎上足尼ヲ祀ルト社説ニ云リ、委クハ官社私考上卷ニ云リ、〉コレ其本ニテ、舊クハ穗郡ナリケムヲ、大人等ノ云レタル如ク、民部式〈廿二ノ十一丁〉凡諸國部内郡里等名並用二二字一必取二嘉名一トアル御制ニ依テ、其一音ノ名ハ、二字ニ書クニ足ザリシ故、其響音ノ字ヲ加

p.0551 テ、木國ヲ紀伊、衣郡ヲ頴娃(エエ)、襲(ソ)國ヲ囎唹ナド書ル例ニ依テ、寶飫(ホオ)ト二字ニナセシナリ、此例ニ依ラバ、ホオト唱ヘテ可ナラン、扶桑略記〈廿九ノ廿四丁〉寶飯郡、卜部兼敦ノ諸社根元記ニ寶飫郡ニ作レリ、然ルヲ後ニ飫ヲ飯ニ誤リ、唱ヲモホイト誤リシナリ、此抄〈◯倭名類聚抄〉ノ比ハ、ホノ郡ト唱ヘタリト見エテ、寶飯ト記シナガラ、唱注ニハ穗ト記セリ、伴主云、日本紀ニ飫ヲ飯ニ作ル多シ、五音海篇ニ、飫與レ飯同トアリト云リ、飫ヲ飯ト誤リシ例ハ、當抄大和國十市郡飯富アリ、神名式ニ多ニ作リ、遠江國磐田郡飯寶ハ、殘風土記飫寶ト作リ、万葉八ニ大乃浦アリ、上總國望陀郡飯富、〈於布〉神名式ノ古本ニ飫富ト作リ、〈◯中略〉續日本後紀〈八ノ廿九丁〉寶飯郡トアルモ、飫ヲ誤リシナルベシ、當郡今寶飯郡ト書テホイト唱フ、高五万二千二百六十石餘(千八百七十八石餘三川雀)アリ、村員、春雨咄ニ百卅六村、二葉松ニ百四十村、三川堤百十四村、删補松ニ百四十三村ヲ擧タリ、

〔古事記〕

〈中開化〉

p.0551 其美知能宇志王、娶二丹波之河上之摩須郞女一生子、〈◯中略〉次朝廷別王、〈四柱〉此朝廷別王者、〈三川之穗別(○○○○○)之祖〉

〔古事記傳〕

〈二十二〉

p.0551 三川之穗別、三川は參河國なり、〈◯中略〉穗は、和名抄に參河國寶飫〈穗〉郡とある是なり、〈飫字誤て飯と作り、今も然り、〉舊事紀五に、三川穗國造美己止直と云人あり、〈美己止、美加度よく似たれば、若くは此は此朝廷別王のことには非るか、さて國造本紀には、穗國造、泊瀬朝倉朝以二生江臣祖葛城襲津彦命四世孫莵上足禰一定二賜國造一とあり、此の傳と異なり、〉

〔續日本後紀〕

〈八仁明〉

p.0551 承和六年十二月丙辰、太政官左大臣正二位臣藤原朝臣緒嗣〈◯中略〉奏言、〈◯中略〉伏見二參河國守從五位下橘朝臣本繼等奏一偁、去年十一月三日、五色雲見二寶飯郡(○○○)形原郷一、〈◯下略〉

〔扶桑略記〕

〈二十九後冷泉〉

p.0551 治暦三年八月十六日、參河國解状偁、管寶飫郡(○○○)渡津郷住人壬生眞世、〈◯下略〉

設樂郡

〔參河國古蹟考〕

〈三〉

p.0551 設樂〈志太良〉　〈民部式廿二、拾芥抄四同、當設樂郷アリ、此ヨリ出タル郡ノ名ナルベシ、〉　民部式〈廿二ノ二丁〉首書云、延喜三年八月十三日、割二寶飫郡一置二設樂郡一トアリ、サレド式ハ延長二年奏上ノ書ナルニ、神名式ニ石座神社ヲ寶飫郡ニ取ラレタルハ、未ダ訂シアヘ玉ハザリシナルベシ、園

p.0552 太暦ニ云、暦應二年、伊勢國不二通達一之間、先被レ行二御卜一、用二參河國設樂山一畢ヌトアリ、コハ大神宮御遷宮ノ御材木ヲ採レルナリ、〈◯中略〉當郡今モ設樂郡ト稱ヒテ、高二万五百十四石餘アリ、村數ハ、春雨咄ニ二百六十五村、二葉松ニ百八十四村、删補ニ百八十七村、三川堤二百十六村ヲ擧タリ、

〔地名字音轉用例〕

p.0552 入聲ツノ韻ヲ同シ行リノ音ニ通用シタル例　しだら　設樂〈三郡〉志太良(シダラ)　設ヲシダニ用ヒタリ〈◯中略〉　サノ行リノ音同行リ通用セル例　シダラ　設樂〈三郡〉志太良(シダラ)　設ヲシダニ用ヒタリ

〔康正二年造内裏段錢并國役引付〕

p.0552 合〈◯中略〉　一貫文　杉山彈正左衞門尉殿〈三川國設樂郡段錢〉　二貫五十文　疋田孫左衞門丞殿〈三川國設樂郡段錢◯節略〉

八名郡

〔參河國古蹟考〕

〈三〉

p.0552 八名(○○)〈也名〉　〈民部式廿二、拾芥抄四同、當郡八名郷アリ、此郡ノ本土ナルベシ、〉　世系志ニ云、平姓高力氏直鎭云々、賜二三州梁郡一、〈◯中略〉當郡今モ八名郡ト稱テ、高一万八千六百九十石餘(九千三百六十五石餘三川雀)アリ、村員ハ、春雨咄ニ五十三村、二葉松ニ七十村、三川堤ニ八十九村ヲ擧タリ、

渥美郡

〔參河國古蹟考〕

〈三〉

p.0552 渥美〈阿豆美〉　〈民部式廿二、拾芥抄四同、當郡渥美郷アリ、是ヨリ出タル郡ノ名ナルベシ、〉　當郡今モ渥美郡ト稱テ、高四万六百七十四石餘アリ、〈三川堤ニハ、四万六千六百七十四石餘アリ、〉村員ハ春雨咄ニ八十一村、二葉松九十村、删補松九十三村、三川堤ニハ八十六村ヲ擧タリ、

〔大神宮諸雜事記〕

〈一〉

p.0552 抑皇太神宮勅託宣偁、我天宮御宇之時、天下四方國攝録、可天下宮所、放二光明一見定置先畢、仍彼所可二行幸御一之由宣、倭姫内親王奉載〈天、◯中略〉次三河國渥美郡一宿御坐、國造進二渥美神戸一、

〔三代實録〕

〈四清和〉

p.0552 貞觀二年八月十四日辛卯、參河國獻二銅鐸一一、高三尺四寸、徑一尺四寸、於二渥美郡村松山中一獲之、或曰是阿育王之寶鐸也、

郷

〔倭名類聚抄〕

〈六國郡〉

p.0553 參河國　碧海郡　智立　采女　刑部　依網〈與佐美〉鷲取〈和之止利〉谷部　大市〈於保以知〉碧海〈阿乎美〉樻禮　呰見　河内　櫻井　大岡　薢野　驛家　額田郡　新城　鴨田　位賀　額田　麻津　六石　大野　驛家　賀茂郡　賀茂　仙陁　伊保　擧母〈古呂毛〉高橋〈多加波之〉山田　賀禰　信茂　幡豆郡　能束　八田〈也多〉意太　礒泊〈之波止〉大川〈於保加八〉大殯　新島　修家　寶飫郡　形原〈加多乃波良〉赤孫〈安加比古〉美養　御津〈美津〉宮道〈美也知〉望理　賀茂　度津〈和無都〉篠束〈之乃都加〉宮島〈美也之末〉豐川〈止與加波〉雀部〈散々倍〉驛家　八名郡　多木　美和　八名〈也奈〉養父〈也布〉和太　服部〈波止利〉美夫　渥美郡　幡太　和太　渥美〈安久美〉高蘆〈多加之〉礒部〈以曾倍〉大壁〈於保加倍〉　設樂郡　賀茂　設樂〈之多良〉黒瀬　多原

〔續日本後紀〕

〈八仁明〉

p.0553 承和六年十二月丙辰、太政官左大臣正二位臣藤原朝臣緒嗣〈◯中略〉等奏言、〈◯中略〉伏見二參河國守從五位下橘朝臣本繼等奏一偁、去年十一月三日、五色雲見二寶飯郡形原郷(○○○)一、

〔扶桑略記〕

〈二十九後冷泉〉

p.0553 治暦三年八月十六日、參河國解状偁、管寶飫郡渡津郷(○○○)住人壬生眞世所レ領牝牛、以二去七月廿七日辰一點一所レ生犢牛、其體長三尺許、毛色赤斑、額腰少白、有二四牙一有二二尻二尾七足一、〈◯下略〉

〔參河國古蹟考〕

〈一〉

p.0553 莵足神社〈◯中略〉　當社古鐘アリ、其銘文ニ、　參河國寶飯郡渡津郷兎足大明神洪鐘、右爲レ志者、天長地久、仰願圓滿國土安穩、諸人快樂所レ奉レ鑄也、　應安三年庚戌十一月日　大工藤原助久　勸進堊見阿彌陀佛　檀那朝阿彌陀佛

〔白河證古文書〕

〈一〉

p.0553 一讓與所領等事〈◯中略〉　一參河國渥美郡内　

p.0554 野田郷(○○○)　高足郷(○○○)　細谷郷(○○○)　大岩郷(○○○)　若見郷(○○○)　赤羽郷(○○○)　彌熊郷(○○○)　吉胡郷(○○○)　岩崎郷(○○○)　牟呂郷(○○○)　草間郷(○○○)　右於二彼所領等一者、相二副手繼證文一、所レ讓二與孫子七郞左衞門尉顯朝一、不レ可レ有二他妨一、爲二後日一讓状如レ件、　延元元年四月二日　道忠〈花押◯結城宗廣〉

〔康正二年造内裏段錢并國役引付〕

p.0554 合　八百十文　借宿五郞殿〈三川國豐原庄若林郷(○○○)段錢〉　七百五十五文　大草次郞左衞門殿〈三川國大草郷(○○○)段錢〉　百二十五文　伊勢國幡入道殿〈三川國赤羽根郷(○○○○)段錢〉　九百五十文　彦部近江守殿〈三河國設樂郡内黒瀬郷(○○○)段錢〉　壹貫文　朝倉左京助殿〈三河國寶飯郡爲任郷(○○)段錢〉　五百五十五文　天花寺領〈三河國葦谷郷(○○○)段錢〉　貳貫五百八文　山下上野入道殿〈參河國保久郷(○○○)段錢〉　四貫七百五十文　七條全光寺領之内〈三河國中山之郷(○○○○)段錢◯節略〉

村里/名邑

〔郡名一覽〕

p.0554 一三河國(御料私領)〈三州北西一里半〉　八郡　高三拾八萬三千四百拾三石四斗四升貳合三勺　千貳百六拾七ヶ村　●苅屋　〈八十二里〉　●吉田　〈七十二里〉　●擧母　〈七十九里〉　●岡崎　〈七十七里〉　●西尾　〈八十里ヨ〉　●田原〈七十五里九丁〉　○奧殿　〈八十里〉　○西大平〈七十六里〉　○畑村　 新城　〈菅沼織部正〉　 西郡　〈松平主水〉　 大崎　〈中島與五郞〉　 松平　〈松平太郞左衞門〉　 長澤　〈松平源七郞〉　 ○寺部〈尾州一万石〉　渡邊半藏　＜赤坂　〈七十九里〉　◯按ズルニ、本書ノ符號ハ、山城國篇村里條ニ引ク所ノ、本書ノ凡例ヲ參照スベシ、

〔郡國提要〕

p.0554 三河　八郡千二百九十二村　高四十六万六千八十石七斗四升六合八勺(御料私領)　額田郡百六十八村　加茂郡三百四十七村　碧海郡百二十九村　幡豆郡　百五十一村　寶

p.0555 飯郡百八村　設樂郡二百二十九村　八名郡六十五村　渥美郡九十五村

〔地勢提要〕

〈坤〉

p.0555 郡邑島嶼奇名　三河　加茂郡明川(アスカハ)村、足助(アスケ)村、酒呑(シヤケノミ)村九久平(クヽタヒラ)村、設樂(シダラ)郡小野村、身平橋(ミダラバシ)村、雙瀬(ナラヒ)村、出澤(スサハ)村、下下(シモスソ)村、新門下柳(シンケンシモヤナキ)村、碧海(アフミ)郡渡苅(トカリ)村、舳越(ヘコシ)村、矢作(キハキ)村、高足(タカシ)郡、渥美郡吉湖(ヨシコ)村、幡豆(ハヅ)郡生田村、巨海村、八名(ヤナ)郡嵩(スヒ)山村、月ケ谷(ハチカヤ)村、寶飯(ホイ)郡當古(ナウコ)村、雨谷(ウヤ)村、引佐(イナサ)郡、祀田(ホフタ)村、形部(ヲサカヘ)村、加茂郡擧母(コロモ)、

〔夫木和歌抄〕

〈三十一里〉

p.0555 たけのやのさと(○○○○○○○)〈三河〉　三河國名所歌合竹屋の里　藤原道經　みどりなる色もかはらでよのつねにいくよかへぬるたけのやの里

〔康正二年造内裏段錢并國役引付〕

p.0555 合　四百文　岩堀修理殿〈三川國西郡中村(○○)段錢〉　一貫二百五十文　大和彌九郞殿〈三河(○○)國一木村(○)之段錢〉　參貫五百文　設樂越中守殿〈三河國下郷河路村(○○○)段錢◯節略〉

〔東照宮御實紀〕

〈一〉

p.0555 かけまくもかしこき東照宮のよつて出させ給ふその源を考へ奉れば、〈◯中略〉有親の子を三郞親氏といふ、新田の庄にひそみすまれたりしが、京鎌倉より新田の黨類を捜索ひまなかりしかば、この危難をさけんがため、故郷をさすらへ出られ、〈◯中略〉三河國大濱の稱名寺に寄寓せられ、こヽにうき年月を送られし間に、〈◯中略〉其頃同國松平村(○○○)に、太郞左衞門信重とて、これも近國にかくれなき富豪なり、たヾ一人の女子ありしが、いかなるゆへにか、婚嫁をもとむる者あまたありしをゆるさで年をへしに、今親氏やもめ居し給ふと見て、其女にあはせて家をゆづらんとこふこと頻なり、親氏もとより大志おはしければ、かの酒井村にて設け給ひし忠廣に酒井の家をゆづり、其身は信重が懇願にまかせ、松平村にうつり、其女を妻とし、その讓りをうけて、松平太郞左衞門となのられけるが、〈◯下略〉

莊保

〔賀茂注進雜記〕

〈下神領〉

p.0556 同〈◯壽永〉三年〈◯元暦元年〉四月廿四日壬辰、賀茂社領四十二ケ所、任二院廳御下文一、可レ止二武家狼藉一之由、有二其沙汰一云々、　下二諸國一　可下早任二院廳御下文一、停二止方々狼藉一、備中進神事用途上、賀茂別雷社御領庄園事、〈◯中略〉　參河國　小野田庄(○○○○)〈◯中略〉　右肆拾貳箇所神領、任二院廳御下文一、停二止方々狼藉武士等濫吹一、如レ元可レ備二進神事用途一、若不レ恐二神威一、不レ用二院宣一、慥可レ處二重科一之状如レ件、以下、　壽永三年四月廿四日　正四位下源朝臣御判

〔吾妻鏡〕

〈四〉

p.0556 元暦二年〈◯文治元年〉二月十九日癸酉、南御堂事始也、〈◯中略〉申剋番匠等賜レ祿、被レ引二御馬一云々、其後熊野山領、參河國竹谷(○○)、蒲形(○○)兩庄事、有二其沙汰一、

〔吾妻鏡〕

〈六〉

p.0556 文治二年十月一日甲戌、賀茂別當領出雲國福田庄、石見國久永保、參河國小野庄(○○○)等、成二御下文一、被レ遣二社家一、當宮事、二品〈◯源頼朝〉御歸依異他之故也、

〔吾妻鏡〕

〈十四〉

p.0556 建久五年十月十七日戊戌、齒御療治事、頼基朝臣注二申之一、其上獻二良藥等一、藤九郞盛長、傳二進之一、彼朝臣者、參河國羽渭庄(○○○)、爲二關東御恩所一令二領知一者也、

〔三河妙源寺文書〕

p.0556 奉二寄進一三河國平田庄(○○○)桑子左近五郞屋敷并伍事　右於レ畠者、爲二太子堂職地一之上者、至二于子々孫々一、不レ可レ成レ妨、仍所レ奉二寄進一如件、　建武參年十二月五日　物部熙氏〈花押〉

〔參河國古蹟考〕

〈一〉

p.0556 御津神社〈◯中略〉　當社ニ古鐘アリ、其銘ニ云、日本國三州御津庄(○○○)大明神洪鐘也、述一偈而銘之、〈◯中略〉　享徳元年壬申十月十五日　

p.0557 當庄剌吏　細川兵部少輔源朝臣　大願主　藤原政家〈◯中略〉　又鰐口アリ、銘ニ奉レ寄二進三州御津庄船主大明神御寶前一、于レ時万治三庚子暦三月十五日トアリ、〈◯中略〉　奉レ懸二鰐口總庄大明神御寶前一、三州寶飯郡御津庄信心衆等、于レ時永祿元〈戊午〉八日吉月禰宜〈成政氏政守 〉大工南金屋宗次トアリ、

〔康正二年造内裏段錢并國役引付〕

p.0557 合　八百十文　借宿五郞殿〈三川國豐原庄(○○○)若林郷段錢〉　四貫五百文　慈恩庵領〈三川國宇利庄(○○○)段錢〉　一貫百五十文　堤新次郞殿〈三河國重原庄(○○○)之内郷段錢◯節略〉

〔今川文書〕

p.0557 可二早被一レ知二行參川國須美保(○○○)政所職一事　右守二先例一、可レ被レ致二其沙汰一之状如レ件、　建武三年十月十一日　滿義〈花押◯吉良〉　今川九郞殿〈◯氏兼〉

〔康正二年造内裏段錢并國役引付〕

p.0557 合　壹貫六百文　莊修理亮殿〈三川國莊山保(○○○)段錢〉　四貫七百五十文　富永彌六殿〈三河國設樂郡之内富永保(○○○)段錢◯節略〉

藩封

〔慶應元年武鑑〕

p.0557 松平刑部大輔信古(溜間格四品)　七万石　居城參州渥美郡吉田〈江戸ヨリ〉七十二里　〈永祿七、酒井左衞門尉忠次、同左衞門尉家次、天正十八、池田三左衞門尉輝政、慶長五、松平玄蕃頭家清、同民部大輔忠清、同七松平主殿頭忠利、寛永九、水野隼人正忠清、同監物志善、正保二、小笠原壹岐守忠知、同山城守長頼、同佐渡守長重、元祿十、久世讃岐守重之、寶永二、牧野備前守成春、同大學成史、正徳二、松平伊豆守信視、享保十四、松平豐後守資訓、寛延二ヨリ松平伊豆守信復、以後領レ之、〉　松平主水正乘秩(帝鑑間從五位上)　六万石　居城參州幡豆郡西尾〈江戸ヨリ〉八十里餘　〈田中兵部大輔吉政居、慶長七、本多縫殿助康俊、元和三、松平左近將監成重、同六、本多下總守俊次同十九、太田備中守資宗、正保二、井伊兵部少輔直之、万治二、増山彈正少弼正利、同兵部少輔利須、寛文〉

p.0558 〈三、土井兵庫頭利長、同伊豫守利意、同淡路守利庸、同伊豫守利信、延享四、三浦主計頭義次、同志摩守明次、明和元ヨリ松平和泉守乘祐以後領レ之、◯節略〉

〔慶應元年武鑑〕

p.0558 本多美濃守忠民(溜間從四位侍從)　五万石　居城參州額田郡岡崎〈江戸ヨリ〉七十七里　〈原隱岐守居、慶長五、田中兵部少輔吉政、同年、本多豐後守廣高、同豐後守康重、同伊勢守忠利、正保二、水野監物忠善、同右衞門大夫忠春、同豐前守忠盈、同和泉守忠之、同監物忠輝、同監物忠辰、同和泉守忠任、寶暦十二ヨリ松平周防守康福、明和六ヨリ本多中務大輔忠肅、以後領レ之、〉　土井大隅守利善(雁間朝散大夫)　二万三千石　居城三州碧海郡刈屋〈江戸ヨリ〉八十二里　〈水野和泉守忠重居、慶長九、水野日向守勝成、元和元、水野隼人正忠清、寛永九松平主殿頭忠房、慶安二、松平能登守定政、同四、稻垣攝津守重綱、同藤助重昌、同信濃守重昭、同對馬守重富、元祿十五阿部伊豫守正春、同民部正良、寶永七、本多中務大輔忠良、正徳二、三浦壹岐守明敬、同壹岐守明喬、同志摩守義次、延享四ヨリ土井伊豫守利信、以後領レ之、〉　内藤金一郞(帝鑑間)　二万石　居城參州加茂郡擧母〈江戸ヨリ〉七十九里　〈延寶五年本多氏忠利、以後領レ之、寛延二、同兵庫頭〈忠英〉、遠州相良替テ、寛延二、當主依二台命一築レ之、〉　三宅備後守康保(帝鑑間朝散大夫)　一万二千石餘　居城參州渥美郡田原〈江戸ヨリ三河通七十五里九丁　當城者、明應年中築レ之、戸田彈正左衞門宗光、彈正忠憲光、同左近尉政光、同彈正少弼康光、天正十八、池田輝政領家臣伊木清兵衞忠次居、慶長六、戸田土佐守忠次、同土佐守高次、同因幡守忠能、同伊賀守天草ニ移、寛永年中、三宅土佐守康勝、以後代々領レ之、◯節略〉

〔慶應元年武鑑〕

p.0558 大岡越前守忠敬(菊之間朝散大夫)　一万石　在所三州額田郡西大平〈江戸ヨリ〉七十六里　〈寛延元ヨリ越前守忠相、以後代々領レ之、◯節略〉

田數/石高

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.0558 參河國〈◯註略〉管八〈田六千八百二十町七段三百十歩〉

〔伊呂波字類抄〕

〈見國郡〉

p.0558 參河國〈管八（中略）本田七千五十四丁〉

〔海東諸國記〕

p.0558 參河州　郡八、水田八千八百二十町、

〔みかは雀〕

〈二〉

p.0558 參河八郡　碧海郡〈高七万八千七十五石八斗五升五合御朱印寺三十六本、同社廿一ケ所、〉百卅四村　賀茂郡〈高五万九百四十八石八斗九升七合、御朱印寺一本、同社一ケ所、〉三百五十一村　額田郡〈高四万二千八百十石四斗五升四合、御朱印寺卅六本、同社九ケ所、〉百五十二村　幡頭郡〈高四万六千六百十八石貳升七合、御朱〉

p.0559 〈印寺六十本、同社十三ケ所、〉百廿四村　寶飯郡〈高五万千八百七十八石貳斗貳合、御朱印寺十八本、同社九ケ所、〉百卅七村　設樂郡〈高二万五百十四石四斗五升六合、御朱印寺二本、〉百六十五村　八名郡〈高一万九千三百六十五石七斗四升四合、御朱印寺十三本、同社十一ケ所、〉五十二村　渥美郡〈高四万六百七十四石八升七合、御朱印寺六十六本、同社廿一ケ所、〉八十二村　高都合卅五万八百八十五石九斗二升　外中古新田三万石餘村高未レ詳　御朱印三河之分　高壹万千三百九十五石五斗七升二合　此譯　寺高七千七百十六石五斗六升七合　社高三千二百八十一石六斗五合　御黒印并寄附寺社　高三百九十七石四斗

〔三河國二葉松〕

〈一〉

p.0559 參河國八郡　當代高三十五万八百八十石五升八合　碧海郡　高七万八千七十石三斗三升八合　播豆郡　高四万八千六百十八石二升七合　加茂郡　高五万九百八石九斗三升七合　額田郡　高四万三千九十四石九斗六升三合　寶飯郡　高五万二千二百六十石六斗六升七合　設樂郡　高二万五百十四石六斗五升六合　八名郡　高一万八千六百九十石三斗八升三合　渥美郡　高四万六百七十四石八升七合

〔和漢三才圖會〕

〈六十九參河〉

p.0559 八郡　三十五万八百八十五石餘

〔官中秘策〕

〈二〉

p.0559 三河國　八郡〈◯中略〉　一石高三拾八万三千四百拾壹石餘

〔吹塵録〕

〈五人口及國高〉

p.0559 天保度御國高調〈◯中略〉　三河國〈御料私領〉　一高四拾六万六千八拾石七斗四升六合八勺

出擧稻

〔延喜式〕

〈二十六主税〉

p.0559 諸國出擧正税公廨雜稻〈◯中略〉　參河國正税公廨各廿万束、國分寺料二万束、修理志摩國國分寺料三千束、文殊會料二千束、修理地溝料三万束、救急料二万二千束、

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.0560 參河國〈◯註略〉管八〈（中略）正公各二十萬束、本稻四十七萬七千束、雜稻七萬七千束、〉

國産/貢獻

〔儀式〕

〈四〉

p.0560 踐祚大嘗祭儀下　太政官符諸國〈毎レ國有レ符〉　應レ造二新器一〈◯中略〉　參河國　等呂須岐卌口　都婆波卅二口　多志良加八口　山坏小坏各六十口　已豆伎 各六十口〈◯中略〉　已上人給料

〔延喜式〕

〈十五内藏〉

p.0560 諸國年料供進〈◯中略〉　調〈◯絁〉二百疋〈白一百疋、參河國所レ進、◯中略〉　白絲二千八百八十絇〈二千絇、參河國所レ進、◯中略〉　樽〈（中略）參河（中略）伊豫十五箇國各二合〉

〔延喜式〕

〈二十三民部〉

p.0560 年料舂米〈◯中略〉　參河國〈大炊七百石◯中略〉　年料租舂米〈◯中略〉　參河國〈一千石◯中略〉　年料別貢雜物〈◯中略〉　參河國〈筆一百五十管、紙麻十斤、黄楊六枚、◯中略〉　諸國貢蘇番次〈◯中略〉　參河國十四壺、〈四口各大一升、十口各小一升、◯中略〉　右八箇國爲二第一番一〈丑未年◯中略〉　交易雜物〈◯中略〉　參河國〈白絹百廿疋、鹿革六十張、樽二合、苧九十斤、黍子廿石、胡麻子三石、鹿角菜二石、海松五十斤、凝菜卅斤、海藻根十斤、青苔五十斤、鳥坂苔五十斤、於胡菜卅斤、那乃利曾五十斤、〉

〔延喜式〕

〈二十四主計〉

p.0560 凡貢夏調絲者、〈◯中略〉參河二千絇、〈犬頭絲◯中略〉並七月卅日以前納訖、〈◯中略〉　參河〈◯中略〉　右十二國並上絲〈◯中略〉　參河〈◯中略〉　右廿九國輸レ絹〈◯中略〉　參河國〈行程、上十一四日、下六日、〉　調、襷羅、藻羅各一疋、一窠綾十五疋、二窠綾五疋、犬頭白絲二千鉤、〈夏調〉雜魚楚割二千五百五十一斤、鯛脯一百斤鯛楚割九十斤、貽貝鮨三斛六斗、自餘輸二白絹一、　庸、韓櫃十合、〈塗レ漆著レ鎖二合、白木八合、〉自餘輸二米鹽一、　中

p.0561 男作物、麻一百斤、黄蘗三百斤、紙、紅花、席、胡麻油、 腊、雜魚腊、海藻、

〔延喜式〕

〈三十七典藥〉

p.0561 諸國進年料雜藥〈◯中略〉　參河國廿一種　甘遂十斤、獨活薺苨各二斤、桔梗卅八斤、白朮卅斤、 茄、厚朴各三斤、木斛五斤、松脂四斤八兩、地楡、黄蓍各一斤、伏苓六斤、桑螵蛸三兩三分、署預二斗、麥門冬五升、桃人一斗、胡麻子三合、蜀椒一斗、栢子人一斗九合、白殭蠶二兩、支子大二斗、

〔延喜式〕

〈三十九内膳〉

p.0561 諸國貢進御贄〈中宮准此◯中略〉　節料〈◯中略〉　參河國〈正月三節各三擔◯中略〉　右參河國進レ雉〈◯中略〉　年料〈◯中略〉　參河〈穉海藻、一擔四籠、籠様長一尺二寸、廣八寸、深四寸、他皆同レ此、◯中略〉　右諸國所レ貢、並依二前件一、　參河國、保夜一斛、

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0561 三河　ギン　雲母　モロヲロシ　蜊(アサリ)　寄居虫(ガウナ)　海鼠腸(コノワタ)　苅屋白魚(カリヤノシロウヲ)　岩堀菱(イハホリビシ)〈此菱角二ツアリ、味勝タリ、〉　名倉砥(ナグラド)　田原矢根　伊羅期碁石貝(イラゴノゴイシガイ)　稚海藻(チカイソウ)　◯按ズルニ、日本鹿子、和漢三才圖會等ニハ、右ノ外ニ足代紙、芋川温飩等ヲ擧ゲタリ、

〔三河國二葉松〕

〈三〉

p.0561 參河國土産名物器財部　一碧海郡　大濱鱒　苅谷白魚　同酒　重原土器　一播豆郡　佐久島海鼠腸　同小海蘿〈鷹爪鹿尾藻、小島龍海鮒、〉　錯石　一賀茂郡　松平漬松茸　同漬蕨　擧母綿　足助紙漉　一額田郡　岩堀菱〈有角二ツ〉　同鮒　平口ノ魚浦邊糄米　大平鮎　宮峙鮎　羽栗山雲母〈岡崎弦差、菅生海工(イモリ)、〉　一寶飯郡　穗蓼〈被レ穗生至芒種盛也〉　前芝白魚　御馬蠣　高礒苔(ノリ)　同柴胡　犬飼蟶　松菜　大島小海蘿　竹島貝蜊　同海松　御津蓴菜〈一名奴名菜〉　金谷海工　篠田土器造　

p.0562 一八名郡　大野硯石　足代紙〈作吉田〉　温泉〈能止瀬今代〉　石灰〈嵩山〉　一渥美郡〈和地海藻同貽貝〉　五拾子碁石　同石貝〈世云亡貝〉　同坊風〈龜山〉　蓮根　大崎串蜊　飛鳥島駒　同蜊貝　同藻江澤　小海蘿　田原刀鍛冶〈田原文殊、今世斷絶、〉　同鐔鍛冶〈名赤松、上同、〉　燧石〈火打坂〉　一設樂郡〈奈良山ヨリ出世ニ云河合砥石三川〉　鐵砂〈俗名幾利古、古戸山ヨリ出、〉　木葉石〈長江村黒瀬山ヨリ出〉　作手蕨水品方〈下津具山武節山殿戸山ヨリ出ル〉　 鍛石〈銘云竹下五節、今世斷絶、〉　皺文〈以中茸造ヒキハタ也、今世斷絶、〉　カリヤス〈津具山ヨリ出〉　石貝〈方瀬山ヨリ出〉　辛灰〈チマキ葉カタキ類ヲ以テヤキ用〉　蕨粉〈羽布村ヨリ出ル〉　諸木部　一段戸山〈設樂郡〉松槻檜　一雙瀬〈設樂郡〉松檜雜木　一神田山〈同〉松檜　一大高山〈賀茂郡〉松檜槻　一川合山〈同〉松檜槻雜木　一大谷山〈同〉松檜槻雜木

〔續日本紀〕

〈五元明〉

p.0562 和銅五年七月壬午、令三〈◯中略〉參河、〈◯中略〉等二十一國、始織二綾錦一、

〔續日本紀〕

〈六元明〉

p.0562 和銅六年五月癸酉、令三大倭參河並獻二雲母一、

〔續日本紀〕

〈二十九稱徳〉

p.0562 神護景雲二年八月己酉、參河國獻二白鳥一、

〔今昔物語〕

〈二十六〉

p.0562 參河國始二犬頭糸一語第十一　今昔、參河國郡ニ一人ノ郡司有ケリ、妻ヲ二人持テ、其ニ蠶養ヲセサセテ糸多ク儲ケル、而ルニ本ノ妻ノ蠶養何ナル事ノ有ケルニカ、蠶皆死テ養得事无リケレバ、夫モ冷カリテ、不二寄附一成ニケリ、〈◯中略〉其家ニ白キ犬ヲ飼ケルガ、〈◯中略〉其前ニテ此蠶ヲ物ノ蓋ニ入テ、桑咋テ見居程ニ、此犬立走テ寄來テ此蠶ヲ食ツ、〈◯中略〉此犬鼻ヲヒタルニ、鼻ノ二ツノ穴ヨリ白キ糸二筋一寸許ニテ指出タリ、此ヲ見ニ恠クテ、其糸ヲ取テ引バ二筋乍ラ絡絡ト長ク出來レバ、 ニ卷付ク、〈◯中略〉四五千兩許卷取テ後、糸ノ畢被二絡出一ヌレバ犬倒テ死ヌ、〈◯中略〉其犬埋シ桑ノ木ニ蠶彈無璽ヲ造テ有、然レバ亦其ヲ取テ糸ニ引ニ微妙キ事无レ限郡司此糸ノ出來ケル事ヲ、國ノ守ト云フ人ニ語テ出シ

p.0563 タリケレバ、國ノ司公ニ此由ヲ申シ上テ、其ヨリ後犬頭ト云糸ヲバ彼國ヨリ奉ル也ケリ、其郡司ガ孫ナム傳ヘテ、今其糸奉ル竈戸ニテハ有ナル、此糸ヲバ藏人所ニ被レ納テ、天皇ノ御服ニハ被レ織也ケリ、

〔兵範記〕

p.0563 仁安三年七月六日乙未、藏人信廣申二上犬頭糸解文二通一、下官〈◯平信範〉取之、先内覽、次持二參院一奏聞、次啓二皇太后宮御方一、件糸自二參河國衙一一向調進、四百勾、〈總數二千兩、勾別五兩云々、〉近年以後、三條女御御領碧海庄立券之中、被レ籠二此所土一、仍彼庄分進二六十勾一、國領分進二三百四十勾一、仍解文有二二通一也、

人口

〔官中秘策〕

〈二〉

p.0563 三河國　八郡〈◯中略〉　一人數四拾壹万九千貳百八拾三人　内〈貳拾万八千四百六人　男　貳拾壹万八百七拾七人　女〉

〔吹塵録〕

〈五人口及國高〉

p.0563 諸國人數調〈◯中略〉(文化元甲子年)　一人數四拾貳万六百九拾七人　三河國(高三拾八万三千四百拾三石餘)　内〈貳拾万七千四百六拾六人　男　貳拾壹万三千貳百三拾壹人　女◯中略〉　諸國人數調〈◯中略〉(弘化三丙午年)　一人數四拾三万千八百人(御料私領)　三河國(高四拾六万六千八拾石餘)　内〈貳拾壹万四千七百三拾人　男　貳拾壹万七千七拾人　女〉

風俗

〔人國記〕

p.0563 三河國　三河之國風俗、氣勝テ人之長ケ十人ニ七八人ノビズ、其言葉イヤシケレドモ實義也、人ト物ヲ談ズルニ、其事トゲズト云事ナシ、若シ違却スル事アレバ、其子細ヲ理ル風俗ニ而、子ハ親ヲハヂ、親ハ子ヲ耻テ、虚談スル事ヲ禁ズルトイヘドモ、偏屈ニ而我言ヲ先トシ、人之述ル處ヲ不レ待而是ヲ談ジ、命ヲ終之族多シ、亦自然ト氣質之邪僻スクナキ人モ有、我心ヲ知テ吾ニ勝人アレバ、諸人是ヲ崇敬スル形儀也、別而北三州之人尖ナリ、尾州ニ隣ルトイヘドモ、ソノ氣質亦勝タリ、武士之風

p.0564 儀善多シテ惡スクナシ、女モケナゲニシテ耻ヲ知レリ、

名所

〔日本鹿子〕

〈六〉

p.0564 參河國名所舊跡之部　八橋　岡崎の宿より、ちりうの宿へこゆる中間より、半路ばかり北のかた、八橋と云村の中にあり、南より北へ流るヽ小川にわたしたる橋なり、むかしなりひらの朝臣、此橋の澤邊なるかきつばたを見て、たびの心をよめる歌、　から衣きつヽなれにしつましあればはる〴〵來ぬる旅をしぞ思ふ　いかなるゆへにや、此在所になりひらの石塔なりと云傳て、今にあり、　花の瀧　八橋の村より三町餘、ひがしのかたに有レ之、　矢作の里　岡崎の宿より西の出はづれに河あり、矢はぎの橋と云、此橋をこゆれば、矢はぎの里なり、東やはぎ、にしにしやはぎと云、ひがしのかたの田中にやぶ有、むかし矢はぎの長がすみし跡とてあり、此所を矢はぎと云事は、むかし日本武の尊東夷をほろぼさんとて此所にくだり、矢を多く作らせ給ひしより、此名ありと云傳なり、　長居せそ心していよあづさ弓矢はぎの川の鷺の一むら　宮地山　矢作の里より近し、北向の里也、東に川あり、山は高からず、後撰戀のうたに、　君があたり雲井に見つヽ宮地山打こえゆかんみちも知らなくに　二村　宮地山ちかくなり、千載夏の歌に、權中納言俊忠、　五月闇二村山のほとヽぎす峯つヾきなくこゑを聞かな　衣の里　二村よりは北也、行程一里ばかりなり、　程ちかく衣の里も成にけり二村山を越てきつれば　豐河　今橋と云里より北なり、三河の國の北は山つヾき也、八橋と云所より遠江の國高師山の

p.0565 ふもとへ出る中間、北のかたに大山あり、其ふもとに有河也、　狩人の矢はぎに今宵やどりなば明日やわたらん豐河の浪　星野　豐河より東のかたにある名所なり　花園(ハナゾノ)山　然管渡(シカスガノワタリ)　荒(アレ)野　右の分、在所いまだしれざる也、

雜載

〔延喜式〕

〈二十八兵部〉

p.0565 諸國健兒〈◯中略〉　參河國五十人〈◯中略〉　諸國器仗〈◯中略〉　參河國〈甲三領、横刀七口、弓卌張、征箭卌具、胡簶卌具、〉

〔日本書紀〕

〈二十五孝徳〉

p.0565 大化二年三月甲子、詔二東國國司等一曰、〈◯中略〉有二百姓一臨二向レ京日一、恐所レ乘馬疲痩不レ行、以一布二尋麻二束一送二參河(○○)尾張兩國之人一、雇令二養飼一、乃入二于京一、於二還郷日一送二鍬一口一、而參河人等不レ能二養飼一、翻令二疲死一、〈◯下略〉

〔梧窻漫筆拾遺〕

p.0565 三河の武士　兩度天下を取りたれども、此事世に知れるものもなく、まして記載せるものもなし、己卯〈文政二年〉の秋、予〈◯太田錦城〉先主人吉田の松平侯の扈從として、三河に一年在留せり、是れにて始めて此事を知りたり、さて新田の庶流は、世良田徳川を始として、皆上州新田郡の在名なり、里見は義俊流なり、山名は義範〈山名伊豆守〉流なり、是は新田正統大炊助義兼の兄なり、故に遠く隔たりて、今の上州高崎の南に山名あり、北は里見〈上中下三村か〉あり、其他は義貞擧兵の時、天狗山伏の催促せる、三國峠を越て越後の羽川鳥山等なり、然るに下野足利郡に足利と云ふ處はあれども、足利庶流の人は、村名一もなし、少き時〈天明七丁未予二十三〉に、毛の野に浪遊して、此事を不審に思ひたれども、誰ありて此等の事を辨知せる人もなし、三河に在留して、其輿圖を披見すれば、足利庶流第一たる、仁木細川は額田郡、矢矧川の東に並びたる村名なり、吉良、一色、今川、荒川、戸ケ崎まで幡頭郡の村名なり、されば鎌倉の初に、足利庶流の人々を、此國に封じたり、細川、一色の人々、又己の次男三男を分封せし地と

p.0566 見えて、三河の國中に、一色、細川と云へる在名夥しく見えたり、元弘、建武の亂にて、尊氏天下を領し給ひ、慶長の亂にて、御當家天下を領し給ふ、三河武士の兩度まで、天下を經營したること奇と云ふべし、妙と云ふべし、