地部/攝津國

p.0351 攝津國ハ五畿内ノ一ニシテ、東ハ、河内、西ハ播磨、南ハ和泉及ビ海ニ面シ、北ハ山城、丹波ニ接 p.0352 シ、東西凡ソ十二里、南北凡ソ九里アリ、此國ハ初メ浪速國(ナニハノクニ)ト云ヒ、後ニ津國(ツノクニ)ト云ヒシガ、天武天皇ノ六年ニ始テ、攝津職ヲ置キ、大寶ノ制、攝津職ヲシテ津國ヲ帶セシム、桓武天皇ノ延暦十二年職ヲ停メテ國ト爲シ、國府ヲ西生郡ニ置キ、住吉(スミヨシ)、百濟東生(クダラヒガシナリ)、西生(ニシナリ)、島上(シマカミ)、島下(シマシモ)、豐島(テシマ)、河邊(カワノベ)、武庫(ムコ)、莵原(ウバラ)、八部(ヤタベ)、有馬(アリマ)、能勢(ノセ)ノ十三郡ヲ管シ、延喜ノ制上國ニ列ス、明治維新ノ後、住吉、百濟二郡ヲ東成部ニ併セ、莵原八部二郡ヲ武庫郡ニ併セ、島上島下二郡ヲ合セテ三島郡トシ、豐島能勢二郡ヲ合セテ豐勢郡トシ、新ニ大阪神戸ノ二市ヲ設ケテ、大阪府及ビ兵庫縣ヲシテ之ヲ分治セシム、

名稱

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.0352 攝津

〔運歩色葉集〕

〈津〉

p.0352 接津國

〔同〕

〈勢〉

p.0352 攝州

〔同〕

〈那〉

p.0352 難波〈接州〉

〔饅頭屋本節用集〕

〈門天地〉

p.0352 攝津(ツノクニ)〈攝州〉

〔日本風土記〕

〈一寄語島名〉

p.0352 攝津〈子奴困儞(ツノクニ)〉

〔倭訓栞〕

〈中編十七那〉

p.0352 なには　難波と書り、神武紀仁徳紀に見えたるは攝津也、式部卿藤原宇合の歌に、むかしこそ難波居中といはれけめ今は京引みやこびにけり、〈◯下略〉

〔倭訓栞〕

〈中編十五都〉

p.0352 つのくに　津ノ國なり、今攝津と書、字彙に攝靜謐也、

〔玉勝間〕

〈二〉

p.0352 攝津　津國を攝津といふは、もと國の名にはあらず、難波津をつかさどれる官ノ名なり、難波は古京師に准へて、京職と同じく攝津職をおかれたる、これむねと難波によれる官にして、津國の事をも兼掌れり、職員令に、攝津職帶二津國一とあるをもて心得べし、そのかみ國のことをも攝津國と書る、これも攝津職の掌る國といふ意なり、さて攝字は、難波と津國とを攝(カ子)て掌るよしなり、靜謐の意ぞなどいふはあらず、かくて延暦十三年停レ職爲レ國とありて、それより其官、諸國司の列となれり、然

p.0353 れども字はなほもとのまヽに、攝津とかヽれたる故に、後の人皆これをもとより國名と思ふめり、さて文には攝津と書ながら、職にて有しほども、口によぶ詞には、たヾ津のつかさとぞいひけむ、さらではよぶべきやうなし、國の列になりてはさらなり、然るを俗にせツつとしもよむはいふにたらぬひがことなり、今の世にも津の國といひ、攝津守などをも、つのかみとよむぞ正しかりける、むかし女房の名にも攝津といひし有て、撰集などにも出たり、これもたヾ津とこそはよびつらめ、續世繼に、津のごとぞある、ごは伊勢のごなどいふごなり、

〔諸國名義考〕

〈上〉

p.0353 攝津　和名抄に訓法なし、たヾ津とのみよむべきか、名義は即津なり、津は同抄に、四聲字苑云、津渡レ水處也、唐令云、諸渡關津及乘二船筏一、上下經レ津者、皆當レ有二過所一〈和名豆〉とあり然るを神武天皇御代に、奔潮太急にあひて、浪速國と云しを、後に訛て難波といへるよし、國史に見えたり、其後仁徳天皇御代に皇都となし給ひて、高津宮と號く、さて高津とは岸高ければにや、下河邊長流が續歌林良材集に、此國風土記を引て、天稚彦に屬て下れる神、天探女磐船に乘て爰に泊る故に、高津と號くといへり、〈◯下略〉

〔屠龍工隨筆〕

p.0353 みよし野とは、吉野山の峯をいヽ、〈◯中略〉浪花も、もとなみはやの國といヽぬれば、同じ津の國とても江によりたる今の大坂のあたりを、ことさらにいヽたるならん、

位置

〔地勢提要〕

〈乾〉

p.0353 各國經緯度〈附里程〉　攝津大坂、〈長堀留田屋町〉極高三十四度四十分、經度西一十五分、從二東都一〈東海道〉一百四十六里三十四町一十間、　攝津兵庫〈新在家町〉極高三十四度四十分、經度西三十二分半、從二東都一〈東海道、淀西國海道、〉一百五十二里二十七町三十八間、

〔日本經緯度實測〕

p.0354 北極出地　攝津　大坂　三四度四〇分〇〇秒　西宮　三四度四四分三〇秒　兵庫　三四度四〇分〇〇秒　尼崎　三四度四四分〇〇秒〈◯中略〉　東西里差　山城　京　〇度〇〇分〇〇秒〈◯中略〉　攝津　大坂　西〇度一五分〇〇秒　尼崎　西〇度一九分二五秒

疆域

〔攝津志〕

〈一〉

p.0354 疆域　東至二河州界一、西至二丹播二州界一、南至二海濱及泉州一、北至二山丹二州界一、東西十五里餘、南北十五里餘、

〔日本地誌提要〕

〈七攝津〉

p.0354 疆域　東ハ河内、西ハ播磨、南ハ和泉及海、北ハ山城丹波ニ至ル、東西凡壹拾貳里餘、南北凡九里、

〔續日本紀〕

〈十四聖武〉

p.0354 天平十三年四月辛丑、遣二從四位上巨勢朝臣奈氐麻呂、從四位下藤原朝臣仲麻呂、從五位下民忌寸大楫、外從五位下陽侯史眞身等一、撿下校河内與二攝津一相二爭河堤一所上、

〔續日本紀〕

〈三十九桓武〉

p.0354 延暦七年三月甲子、中宮大夫從四位上兼民部大輔攝津大夫和氣朝臣清麻呂言、河内攝津兩國之堺、堀レ川築レ堤、自二荒陵南一、導二河内川一、西通二於海一、然則沃壤益廣、可二以墾闢一矣、於レ是便遣二清麻呂一、勾二當其事一、應下須二單功二十三万餘人一、給上レ粮從レ事矣、

地勢

〔易林本節用集〕

〈下〉

p.0354 攝津〈攝州〉上管十三郡、二日半、帶二皇城一而抱二西海一、南暖北寒、故五穀先熟、魚鹽繁、大上國也、

〔日本鹿子〕

〈三〉

p.0354 攝津國　十六郡、大上國、四方二日半、京ヨリ未申、河内ヨリ西也、西南ハ海、北ハ山也、

〔攝津志〕

〈一〉

p.0354 形勝　海陸都會天下要衝、咽二喉西州一、閫二域皇州一、郡峯右繞、平野左連、淀水貫レ内、江海抱レ外、山川明麗、田野壤腴、海濱廣斥、澤國佳致、

道路里程

〔攝津志〕

〈一〉

p.0355 〈路程〉　大坂至二京師一十二里有半、至二江都一百三十二里、至二尼崎一三里、至二兵庫一十里、至二高槻一六里、至二播州明石一十五里、至二丹州篠山一十五里、至二山州淀一八里、至二河州狹山一五里十八町、至レ堺三里、至二泉州岸和田一七里、　〈官道〉　西國路　關戸〈山州乙訓郡界〉至二芥川驛一一里三十一町、〈其所レ歴則曰東大寺、曰廣瀬、曰櫻井、曰神内、曰梶原、曰丹波谷、曰下村等、〉芥川至二宿川原驛一一里、〈所レ歴曰新町、曰宮田、曰上野曰大田、曰十日市、曰耳原、曰中川原、曰下居等、〉宿川原至二瀬川驛一二里十二町、〈所レ歴曰道祖本、曰小野原、曰今宮、曰西宿、曰芝村、曰東稻、曰西稻、曰落村、曰西牧、曰半町等、〉瀬川至二崑陽驛一一里三十町、〈所レ歴曰石橋、曰今在家、曰下河原、曰大鹿、曰千僧等、〉崑陽至二西宮驛一二里二町、〈所レ歴曰寺本、曰廣田、曰中村等、〉西宮至二兵庫驛一四里五町、〈所レ歴曰打出、曰蘆屋、曰片町、曰住吉、曰河原、曰味泥(ミドロ)、曰岩屋、曰生田、曰神戸、曰二ノ茶屋、曰走水等、〉兵庫至二濱須磨一一里十八町、〈所レ歴曰西代、曰東須磨、曰西須磨等、〉濱須磨至二界溪(ガハ)一〈播州明石郡界〉十五町〈關戸至レ此通計十五里二十二町〉　紀州路、〈一名京路〉今市〈河州茨田郡界〉至二京橋驛一一里十四町、〈所レ歴曰森小路、曰關目曰内代、曰野江、曰野田町、曰片町等、〉京橋至二堺大小路一〈泉州大鳥郡界〉二里二十三町、〈所レ歴曰大坂、曰今宮新家、曰天下茶屋、曰住吉新家、曰安立町等、今市至レ此通計四里餘、〉　龜山路　國界嶺〈丹州桑田郡界〉至二吉野一六町、吉野至二木津一四里十九町、〈所レ歴曰倉垣、曰山内、曰宿野、曰大里、曰栗栖、曰今西、曰垂水、曰神山、曰槻並等、〉木津至二道場川原一四里二十九町、〈所レ歴曰長谷、曰大原野、曰波豆、曰山田、曰桑原、曰田中、曰鹽田等、〉道場川原至二唐櫃一一里、〈歴二日下部、名來等一、〉唐櫃至二衝原一四里、〈所レ歴曰上谷上、曰下谷上、曰原野、曰福地、曰中村、曰東下、曰坂本等、〉衝原至二國界嶺一〈播州三木郡界〉二十五町、〈丹州界至レ此通計十五里七町〉　南都路　玉造〈大坂〉至二深江一〈河州澀河郡界〉三十町、〈所レ歴曰中道、曰本莊、曰大今里等、〉　〈間道〉　喜連路　高麗橋至二平野一二里、〈歴二天王寺桑津一〉平野至二國界一〈澀河郡界〉十三町〈歴二喜連一、又有下自二平野一出二竹淵正覺寺二村一之徑路上、〉　古堤路　京橋至二放出一〈河州茨田郡界〉一里、〈所レ歴曰片町、曰野田町、曰蒲生、曰今福等、又有下自二京橋一經二過森小路等數村一、至二般若寺國界一一路上、謂二之世木路一、以レ出二茨田郡世木村一也、路程同レ上、〉　鳥居嶺、〈又名二清坂越一、桑田郡界、〉天滿橋至二長柄濟一二十六町〈歴二國分寺南長柄一〉濟至二吹田濟一一里十一町、〈所レ歴曰柴島、曰新家、曰下新莊、曰上新莊等、〉濟至二官道一二里二十五町、〈所レ歴曰小路、曰七ツ尾、曰市場、曰宇野邊、曰下穗積、曰中穗積、曰上穗積等、〉官道至二清坂一二里二十五町、〈所レ歴曰福井、曰國見、曰忍頂寺、曰下音羽等、天滿橋至レ此通計七里、〉　吉野嶺、〈桑田郡界〉天神橋至二長柄濟一二十八町、濟至二小曾根濟一一里六町、〈所レ歴曰藥師堂、曰南方新家、曰崇禪寺濱、曰蒲田、曰十八條等、〉濟至二池田一三里七町、〈所レ歴曰小曾根、曰西願寺、曰染(シム)香、曰櫻塚、曰岡町、曰新免、曰刀根山、曰石橋、曰井口堂、曰新家、曰尊鉢、曰才田等、〉池田至二吉野一四里三十二町、〈所レ歴曰木部、曰吉田、曰吉川、曰黒川、曰野間、曰地黄、曰倉垣等、〉吉野至レ嶺六町、天神橋至レ此通計十里八町〉　天王嶺、〈丹州多喜郡界〉　高麗橋至二十三(ジウソフ)濟一一里、〈歴二北野三番茶屋一〉濟至二神崎濟一一里、〈所レ歴曰堀、曰三津屋、曰加島等、〉濟至二小濱驛一三

p.0356 里三町、〈所レ歴曰小中島曰下食滿(ケマ)、曰上食滿、曰稻寺、曰伊丹、曰廣大寺曰大鹿曰安倉等、〉小濱至二生瀬驛一三十一町、〈所レ歴曰米谷、曰川面、曰安場等、〉生瀬至二三田一三里十八町、〈所レ歴曰名鹽、曰平田、曰道場川原、曰下宅原等、又自二生瀬一歴二舟坂一至二湯山一二里、謂二之湯山道一、〉三田至二母子(モシ)一四里、〈所レ歴曰三輪、曰志手原、曰尼寺、曰小野、曰乙原等、〉母子至レ嶺六町、〈高麗橋至レ此通計十三里二十三町、　喜連路已下、往自二大坂一、〉　長坂嶺〈乙訓郡界〉至二高槻一三里、〈歴二大澤尺代一〉　横縱嶺〈桑田郡界〉至二高槻一三里、〈歴二原村服部芥川等一〉　關明神越〈桑田郡界〉至二余野一九町、余野至二池田一三里十八町、〈所レ歴曰木代、曰川尻、曰上止止呂美、曰下止々呂美、曰伏尾、曰東山、曰中川原、曰木部等、〉　摺脛(スネコスリ)峠〈一名天王村越、又名二福住路一、多喜郡界、隘路巉巖、殆難二攀躋一、〉峠至二天王一十七町、天王至二池田一六里二十五町、〈所レ歴曰山邊、曰山田、曰今西、曰平野、曰山原、曰西畝野、曰横山、曰古江等、池田至レ此七里六町、又有二一徑一曰二狸岩峠一、又杉生有二杓子嶺一、柏原有二七石嶺一、小柿有二氷柱(ツラヽ)嶺一、嶮岨巖滑、不レ通二馬牛一、此外通二于後(ヒソ)川村一、〉　日出坂嶺〈多喜郡界〉至二日出坂一六町、日出坂至二井澤一二里、〈所レ歴曰本莊、曰波(ナヒ)田、曰四辻、曰長坂町、田廣野等、〉井澤至二三田一一里、〈所レ歴曰加茂、曰福島、曰川(ヨケ)、防、曰三輪等〉　駒丸嶺〈多喜郡界〉至二上相野一二十町　三國嶺〈丹播攝三州交界仍名、路通二丹州小津村一、〉至二大川瀬一二十九町、〈山路難嶮〉大川瀬至二井澤一二里五町、〈歴二下内神一〉　平松嶺〈播州加東郡界〉至二大川瀬一十二町　注連引越〈三木郡界〉至二大川瀬一九町　二本松嶺〈三木郡界〉至二井澤一三十二町　赤松嶺〈三木郡界〉至二岩谷一四町、岩谷至二道場川原一一里二十五町、〈所レ歴曰上津上、曰上津下、曰上宅原、曰下宅原等、〉　屏風嶺〈明石郡界〉至二屏風一八町、屏風至二湯山一二里二十八町〈所レ歴曰深谷、曰附物、曰吉尾、曰田尾寺、曰下山口、曰上山口、曰中野等〉鵯越〈明石郡界〉至二兵庫一三里〈歴二小河藍那一〉　白川越〈明石郡界〉至二白川一七町、白川至二兵庫一二里、〈歴二長田一、又自二藍那一歴二少河一出二播州木津村一、謂二之小河越一、〉　日野嶺〈明石郡界〉至二多井畑一八町、多井畑至二東須磨一一里、〈長坂嶺巳下、來從二郡界一〉　津戸中道　西宮至二吹田一五里十三町〈所レ歴曰上今津、曰四軒茶屋、曰東新田、曰尼崎、曰長洲、曰淨光寺、曰神崎、曰戸内、曰莊本、曰牛立、曰小曾根、曰廣芝等、〉吹田至二芥川一四里十五町、〈所レ歴曰小路、曰七尾、曰市場、曰宇野邊、曰茨木、曰戸伏、曰富田、曰西五百住(イヨスミ)、曰東五百住等、〉　野香越　八幡至二唐櫃一三里〈歴二篠原一〉　鳥原谷越　兵庫至二西下一三里〈歴二鳥原谷一、又自二兵庫一至二下谷上一三里、歴二天王谷一、故曰二天王谷越一、　津戸中道以下、國内行路之號、〉　〈航路〉　大坂至二尼崎一三里、至レ堺三里、至二兵庫一十里、至二淡州岩屋一十四里、至二泉州谷(タ)川一十四里、至二紀州和歌山一十八里、至二阿州北泊一二十二里、至二播州室一二十六里、至二讃州高松一三十三里、至二備之前州牛窗一三十五里、至二備之後州鞆一五十五里、至二豫州松山一八十八里、至二藝州嚴島一百里、至二土州高知一、百八里、至二豐之後州臼杵一百二十八里、至二豐之前州小倉一百三十六里、至二防州岩國一百四十里、至二肥之後州熊本一百五十八里、至二筑之後州久留米一百五十九里至二筑之前

p.0357 州福岡一百六十八里、至二壹州勝本一百九十五里至二日州飯肥一二百十二里、至二對州府中一二百四十五里至二武州江都一二百四十八里、至二肥之前州長崎一二百七十里、至二薩州鹿兒島一二百八十一里、

〔日本鹿子〕

〈三〉

p.0357 攝津國　大坂ヨリ西國所々〈エ〉之船路附リ攝津國中之分道法〈付〉　大坂ゟ傳法へ　一里　傳法ゟ尼崎へ　二里　尼崎ゟ鳴尾崎へ　一里　尼ケ崎城あり、大物の浦といふも此所なり、大坂よりいぬい也右の方にみかげ、てつかいがみね、ひよ鳥ごへ、一の谷みゆる、　鳴尾崎ゟ西ノ宮へ　二里　西宮ゟあふぎへ　一里　あふぎゟみかげへ　一里　御影ゟわきの濱へ　一里　わきの濱ゟかうべへ　一里　かうべゟ兵庫へ　一里　兵庫ゟ須磨へ　二里　此間に平の清盛入道のつきし經の島あり、爰に清もり入道の影像有、福原舊城郭の跡あり、此間わだの御崎あり、　須磨ゟ一の谷へ　一里　一の谷ゟ烏崎へ　一里　平家の城跡あり、かねかけの松山ふもとの野べ、海邊にあつもりのせきたうあり、攝州と播州の堺なり、はりまの方には松原あり、此さかいに双方より松をうへたるよし、相生のまつといふて大木あり、左の方にあわぢしま山みゆる也、

〔日本實測録〕

〈一沿海〉

p.0357 從二大坂一沿海至二赤間ケ關一　攝津國西成郡千島新田木津川湊口　三里三十五町六間〈至二安治川口一、一里一十町五間、從二安治川一至二中津川口一、三十三町四十間、從二中津川一至二神崎川口一、一里一十六町一十二間、〉　川邊郡初島新田〈沿レ川至二西川村一、一里六町二十五間半、〉　二里二十町五十一間　武庫郡西宮宿〈至二街道一七町五十二間〉　二里三十五町二十七間　兎原郡大石村、三十四度四十二分半、　二里六町三十七間〈至二生田村一一里三町二十五間〉　八部郡兵庫津新在家町、三十四度四十分、　二里五町三十間　西須磨村　二里三十一町一十九間〈至二一ノ谷八町三十間、從二一ノ谷一至二二ノ谷一、五町三十間、從二二ノ谷一至二國界三ノ谷一、四町二十二間、從二三ノ谷一至二舞子ノ濱一、一里一十九町二間、〉　播磨國明石郡大藏谷

宿驛

〔續日本紀〕

〈五元明〉

p.0358 和銅四年正月丁未、始置二都亭驛一、〈◯中略〉攝津國島上郡大原驛、島下郡殖村驛、

〔延喜式〕

〈二十八兵部〉

p.0358 諸國驛傳馬〈◯中略〉　攝津國驛〈草野(○○)、須磨(○○)、各十三疋、葦屋(○○)十二疋、〉

〔日本紀略〕

〈二朱雀〉

p.0358 天慶二年十二月廿六日壬戌、備前介子高於二攝津國須岐驛一、爲二前伊豫掾藤原純友一、爲二海賊首一〈◯爲以下四字恐分註〉被レ圍、雖二放レ矢合戰一、隨兵員少、子高乞レ降、即縛二子高一、子高太郞爲レ賊被レ殺了、

建置沿革

〔日本國郡沿革考〕

〈二畿内〉

p.0358 攝津　古攝津職延暦十三年、停レ職爲レ國、〈據二和名抄一、類聚三代格、爲二十二年三月一、〉上國、管十二郡、〈延喜式等十三郡〉九百五十五村、　島上(シマカミ/シマノカミ)〈六十五村、　古三島郡見二日本紀一、伊豫風土記作二御島一、分爲二上下一、未詳レ在二何時一、谷川士清曰、今島上、島下、豐島之三郡、古三島郡之地、〉　島下(シマジモ)〈九十九村〉　豐島(テシマ)〈九十三村　古國府、天長二年四月、遷二國治於豐島郡家以南地一、先レ是未レ詳レ在二何地一、蓋莫二定處一也、承和十一年十月、國司奏、依二去天長二年正月及承和十一年十月勅旨一、欲下定二河邊郡一以爲中國治上、然以二邦弊民不レ堪レ役故一、請以二鴻臚館一爲二國治一、古事記、手島連、則出一于此地一之稱、〉　有馬〈九十村〉　八部(　/ヤタベ)〈四十五村　古事記云、若郞女之御名代、定二八田部一、和名抄、里名部、拾芥抄、共八田部、〉　兎原〈五十一村〉　川邊(カハベ/カハノベ)〈百九十三村　延喜式等、作二河邊一〉　武庫〈五十村　神功紀務古水門、即此地、〉　西成(ニシナリ)〈百二十二村　延喜式等、作二西生一、和名抄里名部、作二西成一、拾芥抄、以レ是爲二國府一、〉　東成(ヒガシナリ/ヒンガシナリ)〈六十二村　延喜式等、作二東生一、〉　住吉〈四十九村　古事記墨江、萬葉集清江、即是、〉　能勢〈三十六村　和同六年九月、割二河邊郡玖左々村一、爲二能勢郡一、玖左々村、雄略紀、作二來狹々村一、〉　百濟〈延喜式等、共載、廢置夫レ詳、〉　雄伴〈見二攝津風土記一、廢置未レ詳、延喜式等不レ載、〉

〔攝津志〕

〈一〉

p.0358 建置沿革　尚古曰二浪速國一〈或作二浪華一〉神武天皇、艨艟東征、方到二于此一、適會二海潮太急一、因以名レ國、逮二應神天皇之時一、始有二攝津之號一、以三萬國海舶會二于此一也、仁徳天皇元年春正月、都二難波一居二高津宮一、孝徳天皇大化元年十二月、遷二都長柄豐碕一、天武天皇六年冬十月、置二攝津職一、天平十六年二月、以二難波宮一定爲二皇都一、十七年九月、復還二于平城宮一、延暦十二年三月、罷二攝津職一爲二國司一、天長二年三月、以二江南四郡一、隷二和泉國一、夏四月遷二國治於豐島郡家以南一、閏七月以二江南四郡一還二附於本國一、承和十一年十一月、以二鴻臚館一爲二國府一、建武中河内守楠正成、兼守二本國一、延元中赤松範資掠二略河西之地一、文和元年、佐佐木秀詮代レ之、

p.0359 應安七年使三細川頼之兼二守護一、明應中政元強梁、二子鬩レ牆、家臣瓜裂、各結二黨與一、相二爲仇讎一、若二池田伊丹能勢有馬諸士一、互擧更興、荒木占二其上頭一、遂補二攝津守一、而斃二於織田侯一、若二守護代藥師寺秋庭一、皆有レ名而無レ實也、初明應中、釋兼壽建二本願寺于大坂一、天正初光佐營爲レ城、號曰二石山一、相二結黨與一、抗二衡諸侯一、織田侯使二諸將攻一レ之、光佐逃二于紀州雜賀一、天正十三年、豐太閤益二拓其城一、元和中、廢而復興焉、

〔日本地誌提要〕

〈七攝津〉

p.0359 沿革　古ヘ浪速國ト云、仁徳天皇高津宮ニ都ス、〈今東成郡高津小橋〉孝徳天皇亦長柄豐崎宮ニ都ス、〈西成郡長柄村〉天武天皇六年、攝津職ヲ設ケ、延暦中、國司ニ改メテ、府ヲ西生郡ニ置ク、〈府址未レ詳、續日本後紀承和十一年、鴻臚館ヲ以テ府トスルノ語アリ、館址今東成郡玉造ノ南、眞田山ニアリト云、〉治承中、平清盛、安徳天皇ヲ奉ジテ、福原ノ都〈今兵庫〉ニ徒ル、未ダ半歳ナラズ舊都ニ復ス、元暦元年、平氏再ビ天皇ヲ奉ジテ此ニ居リ、幾バクモナクシテ讃岐ニ奔ル、鎌府ノ建ツ、大内惟義ヲ以テ守護トス、建武中興、楠氏本州ノ守護ヲ兼ヌ、足利尊氏、赤松範資ヲシテ州疆ヲ侵略セシメ、後ニ佐々木秀詮ヲ守護トシ、應安中、管領細川頼之之ニ代リ、終ニ其管國トナリ、其臣藥師寺氏ヲシテ守護代タラシメ、頼之ヨリ六傳シテ政元ニ至ル、其義子高國、澄元、互ニ相鬩ギ、池田伊丹諸族競ヒ起リ、或ハ澄元ニ屬シ、或ハ高國ニ應ジ、闔州分裂、永正五年、高國終ニ本州ヲ取テ尼崎城ニ居ル、享祿四年、高國澄元ガ子晴元ト、天王寺ニ戰テ敗死シ、地皆晴元ニ歸ス、天文ノ末、三好長慶、高國ガ義子氏綱ヲ奉ジテ州境ヲ侵シ、晴元ヲ逐ヒ、終ニ本州ヲ奪ヒ、同族ヲシテ芥川ニ居テ之ヲ守ラシム、永祿中、織田信長之ヲ降シ、地ヲ分テ伊丹親興、池田勝政、和田惟政ニ畀フ、元龜ノ末、惟政ヲ誅シ勝政ヲ逐ヒ、荒木村重ヲ以テ守護トス、天正七年、村重叛シ、伊丹城ヲ棄テ出亡、信長地ヲ以テ池田信輝ニ賜フ、豐臣氏、信輝ヲ轉封シテ、其地ヲ有シ、大坂城ヲ築キテ之ニ居ル、元和元年、豐臣氏亡ビ、徳川氏其故城ヲ修シ、松平忠明ニ賜フ、同八年、始テ内藤信政ヲ以テ城代トナシ、戌士及騎歩卒ヲ置キ、攝河泉播政刑ヲ統シム、後奉行ヲ兵庫ニ置、又封ヲ本州ニ得者、尼崎、〈松平忠喬〉高槻〈永井直清〉三田、〈九鬼久隆〉麻田〈青木一重〉凡テ四藩

p.0360 王政革新、大坂ヲ以テ府トナシ、更ニ兵庫縣ヲ置キ之ヲ治ム、

〔日本書紀〕

〈三神武〉

p.0360 戊午年二月丁未、皇師遂東、舳艫相接、方到二難波之碕一、會下有二奔潮一太急上、因以名爲二浪速國(○○○)一亦曰二浪華一、今謂二難波一訛、〈訛、此云二與許奈磨盧一、〉

〔日本書紀〕

〈十應神〉

p.0360 二十二年三月戊子、天皇幸二難波一居二於大隅宮一、　四十一年二月戊申、天皇崩二于明宮一、時年一百一十歳、〈一云、崩二于大隅宮一、〉是月、阿知使主等、自レ呉至二筑紫一、時胸形大神乞二工女等一、故以二兄媛一奉二於胸形大神一、是則今在二筑紫國一御使君之祖也、既而率二其三婦女一、以至二津國(○○)一、及二于武庫一而天皇崩之、

〔日本書紀〕

〈十五清寧〉

p.0360 三年正月丙辰朔、小楯等奉二億計弘計一、到二攝津國(○○○)一使下臣連持レ節以二王青蓋車一迎中入宮中一、

〔日本書紀〕

〈二十九天武〉

p.0360 六年十月癸卯、内大錦下丹比公麻呂、爲二攝津職(○○○)大夫一、

〔令義解〕

〈一職員〉

p.0360 攝津職〈帶二津國(○○)一〉

〔日本紀略〕

〈桓武〉

p.0360 延暦十二年三月丁亥、改二攝津職一爲レ國、

〔令集解〕

〈六職員〉

p.0360 攝津職　延暦十二年三月九日官符云、應下停二攝津職一爲中國司上事、右被二右大臣宣一偁、奉レ勅、難波大宮既停、宜下改二職名一爲上レ國、其二季祿及月料並宜二停止一、

國府

〔伊呂波字類抄〕

〈都國府〉

p.0360 攝津國〈管十三◯中略〉　西成〈府〉

〔拾芥抄〕

〈中末本朝國郡〉

p.0360 攝津〈◯中略〉　西生〈府〉

〔日本後紀〕

〈十三桓武〉

p.0360 延暦廿四年十一月乙酉、遷二攝津國治於江頭一、許レ之、

〔續日本後紀〕

〈十四仁明〉

p.0360 承和十一年十二月戊子、攝津國言、依二去天長二年正月廿一日承和二年十一月廿五日兩度勅旨一、定二河邊郡爲奈野一、可レ遷二建國府一、而今國弊民疲、不レ堪レ發レ役、望請、停レ遷二彼曠野一、便以二鴻臚館一爲二國府一、且加二修理一者勅聽レ之、

郡

〔延喜式〕

〈二十二民部〉

p.0360 攝津國上〈管　住吉　百濟　東生　西成　島上　島下　豐島　河邊　武庫　莵原　八部　有馬　能勢◯中略〉　右爲二近國一

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.0361 攝津國、〈◯註略〉管十三、〈◯註略〉住吉、〈須三與之〉百濟、〈久太良〉東生、〈比牟我志奈里〉西生、〈邇之奈里〉島上、〈志末乃加美〉下、〈准レ上〉豐島、〈手島〉河邊、〈加波乃倍〉武庫、〈無古〉兎原、〈宇波良〉八部、〈夜多倍〉有馬、〈阿利萬〉能勢、〈乃世〉

〔拾芥抄〕

〈中末本朝國郡〉

p.0361 攝津〈上〉十三郡　住吉　百濟　東生　西生〈府〉　島上　島下　豐島　河邊　武庫　兎原　八田部　有馬　能勢　羽束〈無二延喜式一〉

〔易林本節用集〕

〈下〉

p.0361 攝津〈攝州〉上、管十三郡、〈◯中略〉住吉(スミヨシ)　百濟(クダラ)　東成(ヒガシナリ)　西成(ニシナリ)〈府〉　八部(ヤタベ/ヤベ)　島下(シマシモ)　島上(シマカミ)　豐(テ/トヨ)島　河邊(カハノベ)　武庫(ムコ)　兎原(ウバラ)　有馬(アリマ)　能勢(ノセ)

〔和漢三才圖會〕

〈七十四攝津〉

p.0361 十三郡〈◯中略〉　住吉　百濟　東生　西生〈府〉　川邊　武庫　兎原　八田部〈一本、無二田字一、〉　有馬　島上　島下　豐島　能勢　〈拾芥抄、有二羽束郡一、而如二十四郡一、延喜式倭名抄等、無二羽束之名一、〉今無二百濟一〈俗稱二欠郡一、多入二東生西生一、〉

〔攝津志〕

〈一〉

p.0361 建置沿革〈◯中略〉　延喜式曰、攝津國管郡十三、曰住吉、曰百濟、〈今入二住吉、東生二郡一、如二南田邊、北田邊、砂子、桑津、平野町西一、皆舊百濟郡、〉曰東生、〈上古難波大郡〉曰西成、〈上古難波小郡〉曰島上、曰島下、曰豐島、〈以上三郡、上古渾曰二三島一、〉曰河邊、曰武庫、〈日本紀作二務古一〉曰莵原、曰八部、〈或作二矢田部一〉曰有馬、曰能勢、〈◯下略〉

〔皇國郡名志〕

p.0361 攝津國〈十二郡〉　住吉(スミヨシ)　〈●住吉　△同社　＜安立町　●平野　△大念佛　河泉堺郡〉　能勢(ノセ)　〈△地黄　●吉野　△妙見宮　丹界郡〉　東成(ヒガシナリ)　〈大坂御城ヨリ上町玉造天王寺茶臼山河界淀川ニ添〉　西成　〈大坂船場島ノ内　●長柄　●曾根崎　●江口　大坂西海ニ向〉　島上(シマノカミ)　〈高根　△芥川　礒島　丹城界ヨリ淀川ニ至〉　島ノ下　〈△吹田　茨田　△郡山　●國見　●清坂　△勝尾寺　郡丹界郡〉　豐島(テシマ)　〈△瀬川　△池田　△清明塚　國中郡〉　

p.0362 河邊(カハノベ)　〈尼崎　△神崎　△伊丹　△崑陽　●小濱　△銀山　●國サキ　●柏原　●大井　丹界ヨリ海ニ貫〉　武庫(ムコ)　〈△西宮　●中村　△蛭子社　海ニ付郡〉　兎原(ウバラ)　〈●生田　●ミカゲ　△布引瀧　右并〉　八部(ヤタベ)　〈△兵庫　●田井畑　●小川　●広野　△箙ノ梅　△生田社　一ノ谷　二ノ谷　三ノ谷　△スマ寺　△アツモリ塔　播界海付〉　有馬(アリマ)　〈●岩谷　●大川セ　●新町　＜湯本町　△温泉　●舟坂　＜三田　●生瀬　●母子　丹播界　舊有二百濟郡一、今省レ之、〉　◯按ズルニ、本書及ビ次下郡名異同一覽ノ符號ハ山城國篇郡條ニ引ク所ノ二書ノ凡例ヲ參照スベシ、

〔郡名異同一覽〕

p.0362 攝津

〔續應仁後記〕

〈八〉

p.0364 阿波御所義榮被レ任二左馬頭一事附三好松永取合事　高屋ノ城ヨリ馳向フ寄手ノ三好勢、先ヅ總大將左京大夫義次、相從フ輩、〈◯中略〉攝津上郡下郡(○○○○)衆、〈◯下略〉

住吉郡

〔攝津志〕

〈二〉

p.0364 住吉郡〈東至二河州澀川、丹北、八上三郡界一、西至二海濱一、南至二泉州大島郡界一、北至二東生西成二郡界一、〉

〔古事記〕

〈上〉

p.0364 其底筒之男命、中筒之男命、上筒之男命三柱神者、墨江(○○)之三前大神也、

〔古事記傳〕

〈六〉

p.0364 墨江之三前大神、墨江は津ノ國の住吉をいへるなり、〈住吉を須美與志(スミヨシ)と唱るは、後世のことにて、那良のころまでは、須美能延(スミノエ)とのみ云り、まづ此記には墨江とかき、書紀万葉には、住吉と書ても須美乃延(スミノエ)とよみ、又万葉に墨之江、清江、須美乃延など有て、須美與志と云ることは一ツもなし、〉

〔釋日本紀〕

〈六述義〉

p.0364 住吉大神〈◯中略〉　攝津國風土記曰、所三以稱二住吉一者、昔息長足比賣天皇世、住吉大神現出、而巡二行天下一、覓二可レ住國一、時到二於沼名掠之長岡之前一、〈前者、今神宮南邊、是其地、〉乃謂、斯實可レ住之國、遂讃二稱之一、云一眞住吉住吉(○○○○○)〈◯住吉二字原脱、據二一本一補、〉國(○)一、乃是定二神社一、今俗略レ之、直稱二須美乃叡一、

〔續日本紀〕

〈十八孝謙〉

p.0364 天平勝寶二年八月辛未、攝津國住吉郡人外從五位下依羅我孫忍麻呂等五人、賜二依羅宿禰姓一、

〔法隆寺縁起資財帳〕

p.0364 合墾田地壹伯貳拾五町　攝津職住吉郡廿五町〈◯中略〉　天平寶字五年十月一日　寺主法師隣信〈◯下略〉

百濟郡

〔和漢三才圖會〕

〈七十四攝津〉

p.0364 西生郡　按、昔百濟郡、有二住吉郡之北一、何時乎失二其名一、俗稱二欠郡(○○)一、木津、難波、勝間、今宮、西高津等是也、今屬西生郡一、湯屋島、喜連、田邊砂子、山内、寺岡、奧村、大豆塚、淺香、天王寺、阿倍野、新家、舍利寺、林寺、平野町、東高津等、百濟郡爲二欠郡一、今屬二東生郡一、但天王寺東門東、有二百濟寺舊地一、

〔續日本紀〕

〈四十桓武〉

p.0365 延暦十年八月壬子、攝津國百濟郡人正六位上広井造眞成賜二姓連一、

〔續日本後紀〕

〈一仁明〉

p.0365 天長十年四月己卯、以二攝津百濟郡荒廢田廿七町野一、賜二源朝臣勝一、

〔細川兩家記〕

p.0365 高國〈◯細川〉方の衆切まけて、大將分皆々討死する、雜兵以下三百餘人死するなり、殘る勢はいづみの境へ漸々逃入也、然ばその日〈◯永正八年七月十三日〉に、澄元〈◯細川〉方、欠郡(○○)中島まできり上る、〈◯中略〉　一同〈◯天文〉十二年十月十二日に、氏綱〈◯細川〉欠郡(○○)内喜連杭全と云處へ御出張候へども、泉州横山合戰玉井總じて引退候間、同十九日に則氏綱も御歸陣也、然ば世上しづか也、

〔細川兩家記〕

p.0365 同〈◯永祿二年七月〉廿九日に南河内喜連杭全と云處へ、三好〈◯長慶〉方又陣替候也、

東生郡

〔攝津志〕

〈三〉

p.0365 東生郡〈東至二河州澀川、若江、茨田三郡界一、西北至二西成郡界一、南至二住吉郡界一、〉

〔聖徳太子傳暦〕

〈上〉

p.0365 推古天皇元年四月〈（中略）本願縁起云、（中略）法華勝鬘兩部經典、六節講演、其供養料、以二東生郡陸箇坪水田應輸物一獻供而已、◯下略〉

〔續日本紀〕

〈十一聖武〉

p.0365 天平六年三月丁丑、免下供二奉難波宮一東西二郡今年田租調、自餘十郡調上、

〔東大寺小櫃文書〕

〈上〉

p.0365 東大寺三綱牒　攝津職　家壹區地參町陸段貳伯肆拾玖歩　〈東生郡三町三段　今撿益百十五歩西成郡地三段二百卌九歩◯中略〉　天平寶字四年十一月十八日〈◯署名略〉

〔今昔物語〕

〈二十〉

p.0365 攝津國殺レ牛人依二放生力一從二冥途一還語第十五　今昔、攝津ノ國東生ノ郡、捶凹ノ村ト云フ所ニ、住ム人アリケリ

西生郡

〔攝津志〕

〈四〉

p.0365 西成郡〈東至二東生郡及河州茨田郡界一、西至二海濱一、南至二住吉郡界一、北至二島下豐島二郡界一、〉

〔東大寺正倉院文書〕

〈十四〉

p.0365 攝津國正税帳　西成郡　天平七年定穀壹萬貳仠貳伯貳拾肆斛陸斗陸升漆勺伍撮

〔續日本紀〕

〈二十九稱徳〉

p.0366 神護景雲三年五月己丑、攝津國豐島郡人正七位上井手小足等十五人、賜二姓秦井手忌寸一、西成郡人外從八位下秦神島、正六位上秦人広立等九人秦忌寸、

島上郡

〔攝津志〕

〈五〉

p.0366 島上郡〈東南至二淀河一、西至二島下郡界一、北至二山州乙訓郡及丹州桑田郡界一、〉

〔攝津國島上郡水無瀬繪圖〕

p.0366 天平勝寶八歳十二月十六日(奥書)　島上郡主帳无位物部首子老〈◯下略〉

〔續修東大寺正倉院文書〕

〈二十八〉

p.0366 合三箇日〈以二廿四日參〉　右依二親父老人衣具可一レ進、退二攝津職三島上郡一、仍具注状申送、以解、　天平寶字四年十月廿二日　判聽　主典安都宿禰　史生福麻呂

〔續日本紀〕

〈二十九稱徳〉

p.0366 神護景雲三年二月辛酉、攝津國島上郡人正六位上三島縣主広調等、並賜二姓宿禰一、

島下郡

〔攝津志〕

〈六〉

p.0366 島下郡〈東至二島上郡界一、西至二豐島能勢二郡界一、南至二西成郡及河州茨田郡界一、北至二丹州桑田郡界一、〉

〔續日本後紀〕

〈十一仁明〉

p.0366 承和九年六月戊寅、以二攝津國島下郡古荒田五十二町一、賜二從五位下大中臣朝臣岑子一、

豐島郡

〔攝津志〕

〈七〉

p.0366 豐島郡〈東至二島下郡界一、西至二河邊郡界一、南至二西成郡界一、北至二能勢郡界一、〉

〔續日本紀〕

〈二十九稱徳〉

p.0366 神護景雲三年五月己丑、攝津國豐島郡人正七位上井手小足等十五人、賜二姓秦井手忌寸一、

〔續日本後紀〕

〈一仁明〉

p.0366 天長十年二月甲戌、攝津國豐島郡人散位從七位下出雲連男山河邊郡人正六位上出雲連雄公、出雲連伊都岐麿等男女廿二人、賜二姓於〈◯於字恐衍〉出雲宿禰一、

〔應仁後記〕

〈下〉

p.0366 四國勢蜂起攝州所々合戰事附若槻伊豆守辭世事　

p.0367 池田〈◯三郞五郞〉ハ其日討捕タル頸共ニ、合戰ノ次第ヲ記シ添、阿州エ遣シタリケレバ、京兆澄元感悦シテ、攝州豐島ノ一郡ヲ三郞五郞ニ賜リ、改名サセラレテ、池田彈正忠トゾ呼レケル、寔ニ父子二代忠功ノ者トゾ聞ヘシ、

〔細川兩家記〕

p.0367 一攝州三宅出羽守は、此とき畠山方へ一味して、此日色を立候て、同〈◯永祿五年〉五月廿日に、攝州豐島郡十里計、放火共候つれば、如レ此成行候條、則晩景より我城を明、浪人にて候、

河邊郡

〔攝津志〕

〈八〉

p.0367 河邊郡〈東至二豐島、能勢二郡界一、西至二武庫、有馬二郡界一、南至二海濱一、北至二丹州多紀郡界一、〉

〔日本後紀〕

〈十七平城〉

p.0367 大同三年七月甲申、廢二攝津國河邊郡畝野牧一、爲三牧馬逸出損二害民稼一、

〔日本後紀〕

〈二十一嵯峨〉

p.0367 弘仁二年三月壬子、停二攝津國川邊郡揩戸十烟、豐島郡二烟一爲二平民一、

武庫郡

〔攝津志〕

〈九〉

p.0367 武庫郡〈東至二河邊郡界一、西至二莵原郡界一、南至二海濱一、北至二有馬郡界一、〉

〔續日本紀〕

〈二十七稱徳〉

p.0367 天平神護二年九月壬申、攝津國武庫郡大領從六位上日下部宿禰淨方、獻二錢百万、椙榑一千枚一、授二外從五位下一、

〔日本後紀〕

〈二十四嵯峨〉

p.0367 弘仁五年八月甲子、免二囚人日下部土方一、補二木工長上一、土方者、攝津國武庫郡人、以二私鑄錢一、著レ鏁役二於堀河一、頗善二工巧一、仍棄レ瑕取レ才、

莵原郡

〔攝津志〕

〈十一〉

p.0367 莵原郡〈東至二武庫郡界一、西至二八部郡界一、南至二海濱一、北至二有馬郡界一、〉

〔法隆寺伽藍縁起并流記資財帳〕

p.0367 合水田參佰玖拾陸町參段貳佰拾壹歩參尺陸寸〈◯中略〉　攝津國莵原郡參拾壹町陸段貳佰捌拾捌歩〈◯中略〉　天平十九年二月十一日〈◯署名略〉

〔續日本紀〕

〈二十九稱徳〉

p.0367 神護景雲三年六月癸卯、攝津國莵原郡人正八位下倉人水守等十八人、賜二姓大和連一、

八部郡

〔攝津志〕

〈十二〉

p.0367 矢田部郡〈東至二莵原郡界一、西至二播州美嚢、赤石二郡界一、南至二海濱一、北至二有馬郡界一、〉

〔三代實録〕

〈四十九光孝〉

p.0368 仁和二年八月四日庚戌、攝津國島上、島下、豐島、河邊、武庫、兎原、八部(○○)、能勢、八箇郡官田四十七町一段百二十二歩、給二主計寮要劇併番上料一、　十月十九日甲子、勅以二〈◯中略〉攝津國島上、島下、河邊、武庫、莵原、八部、有馬郡官田五十二町八段三百十一歩一、賜二典藥寮一、爲二月料田一、

〔釋日本紀〕

〈十二述義〉

p.0368 菟餓野鹿　攝津國風土記曰、雄伴郡(○○○)有二夢野一、〈◯下略〉

〔法隆寺伽藍縁起并流記資財帳〕

p.0368 合陸地壹仟玖佰貳拾玖町玖段漆拾陸歩貳尺肆寸〈◯中略〉　山林岳島等貳拾陸地〈◯中略〉　攝津國雄伴郡(○○○)宇治郷宇奈五岳壹地　〈東限二彌奈刀川一　南限二加須加多池一　西限二凡河内寺山一　北限二伊米野一◯中略〉　合庄庄倉捌拾肆口　屋壹佰拾壹口〈◯中略〉　攝津國伍處〈西成郡一處　川邊郡一處　武庫郡一處　雄伴郡二處◯中略〉　天平十九年二月十一日〈◯署名略〉

〔冠辭續貂〕

〈二〉

p.0368 大伴の　〈三津〉　高師　攝津の風土記に、夢野は雄伴郡に在と見え、又大和の法隆寺の資材帳に、攝津國雄伴郡宇治郷宇奈五岳壹地と見えたり、和名抄には此郡名なきは、淳和天皇の御諱を、大伴と申奉りしかば、大伴氏を伴氏と改めし時、雄伴郡を八田部と改ためけん、〈此事、日本後紀、日本逸史等に見えざるは、脱漏なるべし、是よりさきに、桓武の御名を山部と申せしかば、山部氏を山氏と攺め、平城の御名をさけて、紀の國の安提郡を、在田郡と攺め、嵯峨の御名をさけて、伊豫の神野郡を、新居に攺めらる　例也、〉是を八部ならんと云は、かの資財牒に、東限二彌奈刀川一、南限二加須加多池一、西限二凡河内寺一、北限二伊米野一と見ゆると、風土記に夢野の地を指とかなへるは、今の兵庫の津より西邊を云也、さらば津の國の西の極を雄伴郡と云、東南の河内國〈今の和泉〉までを、大津三津又大伴の高石(タカシ)ともよみたるを思ひ

p.0369 て、攝河の二國は、大伴氏の食地ならんかとはいふ也、さて大伴はおほども、雄伴はをどもと言を略してとなへしなるべし、〈◯下略〉

有馬郡

〔攝津志〕

〈十〉

p.0369 有馬郡〈東至二河邊郡界一、西至二播州美囊、加東二郡界一、南至二武庫、莵原、矢田部三郡界一、北至二丹州多紀郡界一、〉

〔三代實録〕

〈三十八陽成〉

p.0369 元慶四年十月廿七日丁未、免二攝津國河邊郡人九世從七位下川原公福貞、無位川原公福繼、有馬郡人無位川原公千被、河邊郡人十世從八位下川原公夏吉、大初位下川原公有利等五戸課徭一、

〔應仁後記〕

〈下〉

p.0369 四國勢蜂起攝州所々合戰事附若槻伊豆守辭世事　攝州勢ニハ、池田故筑後守ガ嫡子池田三郞五郞、時ヲ得タリト馳來テ、某今度攝州口ノ先陣ヲ仕ラント、同國有馬郡田井ト云處エ出來テ、勢揃セシ處ニ、〈◯下略〉

〔信長公記〕

〈十二〉

p.0369 天正七年四月廿八日、有馬郡迄、中將信忠卿御馬被レ入、是より直に野瀬郡へ御働、耕作薙捨、

能勢郡

〔攝津志〕

〈十三〉

p.0369 能勢郡〈東至二島下郡界一、西至二河邊郡界一、南至二豐島郡界一、北至二丹州桑田郡界一、〉

〔續日本紀〕

〈六元明〉

p.0369 和銅六年九月己卯、攝津職言、河邊郡玖左佐村、山川遠隔、道路嶮難、由レ是大寶元年始建二館舍一、雜務公文、一准二郡例一、請署二郡司一、許之、今能勢郡是也、

郷

〔倭名類聚抄〕

〈六攝津國〉

p.0369 住吉郡　住道、〈須無如〉大羅、〈於保與佐美〉杭全、〈久末多〉餘戸、　榎津〈以奈豆〉　百濟郡　東部　南部　西部　東生郡　古市、〈不留智〉郡家、　酒人　味原、〈◯原、高山寺本作レ厚、〉餘戸、　西成郡　長源　安良　伏見、〈布之美〉槻本、〈都木乃毛止〉郡家　宅美　讃楊　雄惟　三野　津守　驛家　餘戸　島上郡　濃味　兒屋　眞上、〈末加美〉服部、〈波止利〉高上、

p.0370 島下郡　新野、〈爾比夜〉宿人、〈◯人恐久誤〉安威、〈阿井〉穗積、〈保都美〉　豐島郡　秦上　秦下　驛家　豐島、〈天之萬〉餘戸　桑津、〈久波都〉大明、〈於保阿介〉　河邊郡　雄家、〈乎倍〉山本、〈也萬毛止〉爲奈　郡家　楊津、〈也奈以豆〉餘戸　大神、〈於保無知〉雄上　武庫郡　賀美　兒屋〈古也〉武庫、〈無古〉石井、〈以之井〉曾禰　津門、〈都止〉廣田、〈比呂多〉雄田、〈乎多〉　有馬郡　春木、〈波留木〉幡多、〈發多、在二上下一、〉羽束、〈波都加之〉大神　忍壁〈於之加倍、在二上下一、〉　兎原郡　賀美　葦原　布敷　津守　天城　覺美　佐才　住吉　八田部郡　生田、〈以久多〉宇治、　神戸　八部、〈也多倍〉長田、〈奈加（加高山寺本作レ以）多〉　能勢郡　能勢　雄村〈乎無良〉枳根〈木子〉

〔攝津志〕

〈二住吉郡〉

p.0370 郷名　住道(スンヂ)〈方廢、村存、今隷二河州丹北村一、〉大羅(ヲヽヨサミ)、〈已廢、存二庭井村一、〉杭全(クマタ)、餘戸、〈已廢、存二山内村一、〉榎津(ヱナツ)〈已廢、存二杉本住吉二村一、◯中略〉　廢百濟郡〈入二住吉東生兩郡一〉郷名　東部、〈已廢、屬二住吉郡平野中野邑一、〉南部、〈已廢、爲二住吉郡南田邊一、延喜式曰、凡諸國部内郡里等名並用二二字一、必取二嘉名一、故源順省二田字一爾、〉西部、〈已廢、屬二東生郡阿部野村一、〉

〔攝津志〕

〈三東生郡〉

p.0370 郷名　郡家〈已廢、存二國分村一、〉酒人〈廢〉味原、〈方廢、味生原存、今屬二島下郡一、〉餘戸〈廢〉

〔東大寺小櫃文書〕

〈上〉

p.0370 香山藥師寺鎭三綱牒　攝津職東生郡務所　賣買庄地立券事　合地參町貳段肆拾漆歩〈東限二御 殿西道一　南限レ路　西限レ谷　北限堀江一〉　在二彼部酒人郷(○○○)御 殿村一　價錢漆拾貫文　右依二勅旨省并職牒一、充二上件錢價直一、永爲二公地一、奉賣旣畢、今依レ式立券如レ前、仍注二事状一、以牒、　神護景雲三年九月十一日〈◯署名略〉

〔攝津志〕

〈四西成郡〉

p.0370 郷名　長源〈或曰、源當レ作レ洲、傳寫誤、方廢、而長洲村存、村入二川邊郡一、〉安良〈或曰、安當レ作レ長、方廢、而長柄村存、〉伏見〈已廢、故伏見川在二大坂島内一、見二三津八幡社記一、〉槻本〈方廢、或曰、塚本村存、〉郡家〈已廢、存二國分寺村一、〉安美〈已廢、存二浦江大仁二村一、〉讃揚〈或曰、揚當レ作レ場、方廢、而三番村存、〉雄惟〈廢〉三野〈已廢、勝間、今宮、中在家三〉

p.0371 〈村、有二三野之號一、〉津守、驛家、〈倶廢〉餘戸

〔東大寺小櫃文書〕

〈上〉

p.0371 東大寺三綱牒　攝津職　請庄地券文事　折東南地參町壹段壹佰貳拾玖歩〈◯中略〉　以前地、在二西生郡美怒郷(○○○)一、本數三町六段二百卌九歩、主安宿王、以二去天平勝寶四年正月十四日一、充二價錢一百貫文一、賣二納東大寺一已訖、〈◯中略〉　天平寶字四年十一月七日〈◯署名略〉

〔攝津志〕

〈五島上郡〉

p.0371 郷名　濃味、〈已廢、存二上田邊村一、〉兒屋、〈已廢、存二土室(ハムロ)塚原二村一、〉眞上、〈方廢、村存、〉服部、〈方廢、村存、〉高上、〈廢〉

〔古京遺文〕

p.0371 石川朝臣年足墓志　武内宿禰命子、宗我石川宿禰十世孫、從三位行左大辨石川石足朝臣長子、御史大夫正三位兼行神祇伯年足朝臣、〈◯中略〉以二十二月〈◯天平寶字六年〉乙巳朔壬申一、葬二于攝津國島上郡白髮郷(○○○)酒垂山墓一、〈◯中略〉　右墓志、文政三年正月、攝津國島上郡眞上光徳寺村民徳右衞門、鑿二其宅後荒神山一而獲レ之、按〈◯中略〉　倭名類聚抄、島上郡有二眞上郷一、無二白髮郷一、按續日本紀、延暦四年五月詔曰、臣子之禮、必避二君諱一、比者先帝御名及朕之諱、公私觸犯、猶不レ忍レ聞、自今以後、宜二並改選一、於レ是改二姓白髮部一爲二眞髮部一、山部爲レ山、然則白髮郷之爲二眞上一、亦使二延暦所一レ改、是志在二詔前二十四年一、故猶不レ避也、〈◯下略〉

〔東大寺奴婢籍帳〕

p.0371 攝津職移　大養徳國司　合十三人　奴伊賀臣大麿〈年九十一◯中略〉　右五人、部内島上郡野身郷(○○○)戸主輕部造弓張戸口所貫〈◯中略〉　天平十五年九月一日　從四位上行大夫大伴〈病〉　從六位上少進高向朝臣諸成

〔東大寺奴婢籍帳〕

p.0372 東大寺大宅可是麻呂籍帳案〈天平勝寶元年〉　散位寮散位大初位上大宅朝臣可是麻呂謹解　申貢進賤事　合陸拾壹人〈◯中略〉　婢古阿禰年十五〈已上四人、攝津國島上郡濃味里戸主辛矢田部君水内戸口、◯中略〉　天平勝寶元年十一月三日

〔朝野群載〕

〈二十一雜文〉

p.0372 攝津國島上郡兒屋郷(○○○)長解申立賣買常地券文事　合地參町伍段　在二五條一里一、十七十八兩坪内七段、　十九坪八段　廿坪一町　廿一坪一町　四至〈限二東沒官地一　限二南路一　限二西藤原種雄地一　限二北公田一〉并二紀峯高領山一〈◯中略〉　天暦四年六月十七日　長〈◯以下署名略〉

〔攝津志〕

〈六島下郡〉

p.0372 郷名　新屋、〈已廢、存二西川原村一、〉宿人、〈人當レ作レ久、傳寫誤、宿久莊存、〉安威、穗積、〈倶廢、村存、〉

〔神宮雜例集〕

〈一〉

p.0372 一中臣氏祖神〈◯中略〉　聖武天皇天平十二年庚辰四月五日、春日御社奉レ遷二壽久山御社一、是右大臣大中臣清万呂卿、致仕籠二居攝津國島下郡壽久郷(○○○)一之間、住家近所奉レ崇也、

〔攝津志〕

〈七豐島郡〉

p.0372 郷名　秦上、〈方廢、畑村存、〉秦下、〈已廢、存二池田村一、〉驛家、〈今曰二萱野谷一〉豐島、餘戸、〈今曰二原田莊一〉桑津、〈已廢、村存、今屬二河邊郡一、〉大明、〈廢〉

〔攝津志〕

〈八河邊郡〉

p.0372 郷名　雄家、〈家今作レ戸、小戸莊存、〉山本、爲奈、〈方廢、稻寺村存、〉郡家、〈方廢、鴻池村存、〉楊津、〈方廢、木津對津二村存、〉餘戸、〈廢〉大神、〈方廢、大物村存、〉雄上、〈已廢、存二加茂村一、〉

〔攝津志〕

〈九武庫郡〉

p.0372 郷名　賀美、〈廢〉兒屋、〈方廢、村存、〉武庫、〈今曰二武庫莊一〉石井、〈廢〉曾禰、〈方廢、村存、〉津門、〈方廢、村存、〉廣田、〈方廢、村存、〉雄田、〈廢〉

〔攝津志〕

〈十有馬郡〉

p.0372 郷名　春木、〈已廢、存二青野村一、〉幡多、〈有二上下一、〉羽束、〈方廢、有二羽束山一、〉大神、〈已廢、存二三輪村一、〉忍壁、〈有二上下一、方廢、草下部村存、今入二幡多郷一、〉

〔攝津志〕

〈十一莵原郡〉

p.0373 郷名　賀美、〈廢〉葦原、〈原富レ作レ屋、今呼二本莊一、〉布敷、〈今呼二葺屋莊一〉津守、〈已廢、存二森杉一、〉天城、〈已廢、存二上野村一、〉覺美、佐才、〈倶廢〉住吉、〈方廢、村存、〉

〔攝津志〕

〈十二矢田部郡〉

p.0373 郷名　生田、〈方廢、村存、〉宇治、〈方廢、村存、〉神戸、〈方廢、村存、〉八部、〈廢〉長田、〈方廢、村存、〉

〔攝津志〕

〈十三能勢郡〉

p.0373 郷名　能勢、〈已廢、存二地黄村一、〉雄村、〈已廢、存二大里村一、今屬二枳根郷一、〉枳根、

村里/都邑

〔郡名一覽〕

p.0373 一攝津國(御料私領)　〈攝州　南北一日半餘〉　拾貳郡　高三拾九萬貳千七百七石六斗九升九合九勺七才　八百七拾七ケ村●大阪御城〈百三十三里京十二里半〉　　●尼ケ崎　百三十五里　●高槻　百三十七里　◯三田　百卅三里七町　◯麻田　百三十里　∧大坂　鈴木町　百三十三里餘　◯按ズルニ、本書及ビ次下郡名異同一覽ノ符號ハ、山城國篇郡條ニ引ク所ノ、二書ノ凡例ヲ參照スベシ、

〔郡國提要〕

p.0373 攝津　十二郡九百五十五村　高四十一万七千三百九十九石一斗二升七合(御料私領)　島上郡六十五村　島下郡九十九村　豐島郡九十五村　有馬郡九十村　八部郡四十五村　兎原郡五十一村　武庫郡五十村　川邊郡百九十三村　西成郡百二十二村　東成郡六十二村　住吉郡四十九村　能勢郡三十六村

〔地勢提要〕

〈坤〉

p.0373 郡邑島嶼奇名　攝津　東成郡、澤上江(サヌカエ)村、荒止(ナギウ)村、豐島(テシマ)郡、蔣江(コモエ)村、西成郡、成少路(ナルシヤウジ)村、島上郡、神内(カウナイ)村、島下郡、安威(アイ)村、耳原(ミノ)村、泉原(イワハラ)郡島養(トウカヒ)三ケ村、能勢郡、木代(キシロ)村、

〔日本書紀〕

〈十四雄略〉

p.0373 十七年三月戊寅、詔二土師連等一、使レ進下應レ盛二朝夕御膳一清器上者、於レ是土師連祖吾笥、仍進二攝津國來狹狹村(○○○○)〈◯中略〉民部一、名曰二贄土師部一、

〔日本書紀〕

〈十五清寧〉

p.0374 二十三年〈◯雄略〉八月、大泊瀬天皇〈◯雄略〉崩、〈◯中略〉小根仍使三漢彦啓二於大連一曰、大伴大連我君、降二大慈愍一、促短之命、既續延長、獲レ觀二日色一、輙以二難波來目邑(○○○)大井戸田十町一、送二於大連一、又以二田地一與二于漢彦一、以報二其恩一、

〔續日本紀〕

〈十九孝謙〉

p.0374 天平勝寶五年九月壬寅、攝津國御津村(○○○)南風大吹、潮水暴溢、壞二損盧舍一百十餘區一、漂二沒百姓五百六十餘人一、並加二賑恤一、仍追二海濱居民一、遷二置於京中空地一、

〔類聚三代格〕

〈十五〉

p.0374 太政官符　合田六町〈◯中略〉　攝津國二町〈一町九條五里卅五大針田、一町九條六里二丈針田、在二島上郡兒屋里(○○○)一、〉　右修二理大門中門四王并金剛力士等像一料〈◯中略〉　神護景雲元年十二月一日

〔續日本紀〕

〈三十八桓武〉

p.0374 延暦三年五月癸未、攝津職言、今月七日卯時、蝦蟇二万許、長可二四分一、其色黒斑、從二難波市南道一、南行池列可二三町一、隨レ道南行、入二四天王寺内一至二於午時一皆悉散去、

〔玉勝間〕

〈六〉

p.0374 しはつ山笠縫島　古今集大歌所の歌、しはつ山ぶり、しはつ山うち出て見れば笠ゆひの島こぎかくるたななしをぶね、これは萬葉三の卷に、四極山(シハツヤマ)、打越見者(ウチコエミレバ)、笠縫之(カサヌヒノ)、島搒隱(シマコギカクル)、棚無小船(タナナシヲブ子)とある歌なるを、笠ゆひとは、うたひひがめたるなり、さてしはつ山笠ぬひのしまは、或人のいはく、ともに津ノ國なり、〈◯中略〉さて笠縫島は、今東生郡の深江村といふところ是なるべし、此所、菅田多く有て、其菅他所より勝れたり、里人むかしより、笠をぬふことを業として名高く、童謠にもうたへり、今も里長幸田喜右衞門といふ者の家より、御即位のをりは、内裏へ菅を獻る、又讃岐の殿へも、圓座の料の菅をまゐらすとぞ、〈◯中略〉さて此深江村は、大坂城より東にあたりて、河内の堺に近し、此地いにしへは島なりし

p.0375 よし、里人いひ傳へたり、まことに此わたり、古は、北の方は難波堀江につヾき、東は大和川、南西は百濟川、そのほかも小川共多く流れあひて、廣き沼江にて有しとおぼしくて、難波の古キ圖のさまも、然見えたり、又今此里人の語るをきくに、此村のみ地高くて、ほとりはいづ方もいづかたも地ひきし、井などほれば、葦の根、貝のからなどいづといへり、かくて此ところ、かのしはつ山の坂路より北にあたりて、よきほどの見わたしなれば、島こぎかくるたななし小船とはよめるなりけり、

〔擁書漫筆〕

〈二〉

p.0375 京都空也堂の叩鐘の銘に、天暦十年伊丹住貞俊作と見ゆ、こは空也上人のことおほせて鑄させられし也、今も攝津國伊丹の里(○○○○)より、廿町ばかり西北に、鑄物師村あり、昆陽のちかきわたりなれば、昆陽寺の鑄物師が子孫など、世々こヽには住たりけん、

〔西大寺文書〕

〈一〉

p.0375 注進　西大寺所領諸庄薗現存日記事　合〈◯中略〉　一顚倒庄々〈◯中略〉　攝津國　豐島郡佐伯村(○○○)三十町〈◯中略〉　已上二十七處、依二流記公驗一明白注進之、右依二宣旨一注進如レ件　建久二年五月十九日〈◯署名略〉

〔石清水文書〕

〈一〉

p.0375 茨木長隆領知證状寫　攝州島下郡溝杭村(○○○)内本領并所々散在田畠、小西分寺庵被官人等、〈目録在二別紙一〉封裏事、任二當知行旨一、被レ成二御判一上旨、彌領知不レ可レ有二相違一由候也、仍執達如レ件、　八月廿六日(天文十四年)　長隆〈花押〉　溝杭龜松丸殿

〔和漢三才圖會〕

〈七十四攝津〉

p.0375 東生郡〈或用二成字一〉　

p.0376 按、大坂(○○)舊東生郡内一邑名、而今廣跨二于西生郡一、民家衆二於東一、其境以レ岸爲レ限、今之天神橋筋東裏通、自レ北至レ南有二山岸形一、〈有レ川、流二于南北一、名二東横堀一、大概爲レ境、〉東高西卑、地面坂嶝多、故呼曰二大坂一矣、元和以來益繁昌、其瓦土壁土礎土、自レ東 レ西、稍至二平均一、自二淀川一北稱二天滿一、〈北組、南組天滿、謂二之大坂、三郷一、〉

〔攝津志〕

〈三東生郡〉

p.0376 村里　大坂〈以二谷町街路一、爲二西成郡界一、玉造町名三十、上町町名二十六、〉

〔幽遠隨筆〕

〈上〉

p.0376 大坂は、津の國第一の湊にして廣大の地也、しかも其古名、古書和歌等にいまだ見わたらず、〈◯此間引二用日本書紀仁徳天皇皇后贈答歌及釋日本紀文一、今略、〉承徳年中の古圖を考るに、大江岸の巽、生玉之庄小坂村有、後世村民繁榮して、民家廣大の地となり、時の人、小坂を轉じて大坂とする歟、〈◯下略〉

〔孝經樓漫筆〕

〈二〉

p.0376 石山　大坂、中古まで石山とよびしにや、永祿十年の古記に、東成郡生玉庄石山本願寺と書る、

〔御文章〕

〈四〉

p.0376 抑當國攝州東成郡生玉ノ庄内大坂トイフ在所ハ、往古ヨリイカナル約束ノアリケルニヤ、サンヌル明應第五ノ秋下旬ノコロヨリ、カリソメナガラ、コノ在所ヲミソメシヨリ、スデニカタノゴトク一宇ノ坊舍ヲ建立セシメ、當年ハハヤスデニ三年ノ星霜ヲヘタリキ、〈◯中略〉　明應七年十一月廿一日ヨリハジメテコレヲヨミテ、人々ニ信ヲトラスベキモノナリ、

〔嚴助往年記〕

〈上〉

p.0376 享祿五年〈◯天文元年〉六月五日夜、山科本願寺坊主、其外内衆以下退去、小坂(○○)大騷動也、

〔碩鼠漫筆〕

〈十〉

p.0376 大坂は舊小坂と呼けむ事　攝津國の大坂は、舊は小坂と呼び、或は尾坂ともかけりけむを、明應の頃よりか、大坂とも書そめけむとおぼし、〈◯中略〉上件の諸書〈◯醍醐日記、嚴助僧正記、二水記、天聽集、無名記、永祿九年記、〉の限り、或は小坂ともかけるにやともおもへど、猶よくおもふに然るべからず、此地本よりしからむには、大かたは大坂と有て、たま〳〵小坂尾坂などはあらむを、小坂の號のみ多く見ゆれば、是を古名と決むべきに似たり、さて大坂と呼そめたりしは、何時許りならむと推考なるに、疑ふらくは明應五年に、蓮如

p.0377 上人此地を卜て、本願寺を建立せしほど、小坂の號を祝ひ更め、始て大坂と呼びしにはあらじか、何れにも此寺建立せし後に、改めしものと見えたり、但ししか呼かへたる事、やがて世間にしるべくもあらねば、暫くはなほ舊名にのみ、他し方よりは呼てぞ有けむ、〈◯中略〉其後天正に及びては、凡て大坂とのみ呼びけむとぞおぼゆる、されば小坂はいと古き名とおもへど、いつばかりよりともしるべき由なし、〈◯下略〉

〔經厚法印日記〕

p.0377 享祿五年八月八日、自二堺津一打二向大坂(○○)一〈津州〉合戰、一揆又失レ利、下間刑部大夫等討死也、

〔二水記〕

p.0377 享祿五年九月廿六日巷説云、堺儀、依二不通一不二慥聞一、尾坂(○○)未二攻落一如何云々、〈◯中略〉　十月廿日〈◯中略〉風聞云、堺武家近日御出奔、御落所不二慥聞一、尾坂(○○)一向衆、不レ及二指合戰一歟、〈◯下略〉

〔續應仁後記〕

〈三〉

p.0377 畿内近國一揆所々騷動事　細川晴元ハ淡路國ヨリ歸帆シテ、同〈◯天文二年〉四月六日ノ夜、池田ノ城ニ落著ケル、斯ニテ各々評議シテ、堺庄ヲ取返サント、多勢ヲ催シテ、同月廿九日ニ打立、堺ノ庄ヲ攻ケル程ニ、一向門徒等悉攻破ラレ、本願寺上人ハ堺庄ヲ落去テ、攝州西成郡石山ノ庄(○○○○)ニ居住セラル、此石山ハ元ヨリ大河帶ノ如ク岡ヲ卷テ、要害堅固ノ勝地也、シカモ海陸自由ニシテ、繁昌ノ地ナルガ故ニ、此所ニ伽藍ヲ建テ、上人即チ安居シ給フ、今ノ大坂ト云ハ此地也(○○○○○○○○)、右京大夫晴元ハ元ノ如ク、堺ノ庄エ入リ替テ斯ニ居住シ、人數ヲ催シ、武士ニハ木澤左京亮等、僧ニハ又日蓮宗ノ僧俗數多勢揃シ同キ五月五日大坂エ押寄セ攻ルト云へ共、元ヨリ堅固ノ要害ニ防グ兵多シテ、攻落ス事成難ケレバ、漸當分ノ和議ヲ扱ヒ、同キ廿日ニ寄手ノ諸勢等悉歸陣シケリ、

〔嚴助往年記〕

〈下〉

p.0377 天文十五年三月日、小坂講衆參宮、　弘治三年四月十七日、小坂(○○)本願寺江、晴元女被二相越一云々、六角猶子云々、

〔信長公記〕

〈十三〉

p.0377 天正八年庚辰八月二日、〈◯中略〉抑大坂は凡日本一之境地也、其子細は、奈良境京都程

p.0378 近く、殊更淀鳥羽より大坂城戸口まで舟の通ひ直にして、四方に節所を拘、北は賀茂川、白川、桂川淀、宇治川之大河の流幾重共なく、二里三里之内、中津川、吹田川、江口川、神崎川引廻し、東南者、上が嵩、立田山、生駒山、飯盛山之遠山の景氣を見送、麓は道明寺川、大和川之流に新ひらき淵立田之谷水流合、大坂之腰まで三里四里之間、江と川とつヾひて、渺々と引まはし、西は滄海漫々として、日本之地者不レ及レ申、唐土高麗南蠻之舟、海上に出入、五畿七道集レ之、賣買利潤、富貴之湊也、

〔國花萬葉記〕

〈六之一攝津〉

p.0378 大坂大圖　上町とは、京橋ゟ大坂之入口、御太城之東のうしろより西は東堀とて高麗橋農人橋等の堀すじを限とす、此所は古より、住吉大江の岸の上すじなる故、東堀より西船場の地よりは町に坂有て岸通高し、故に上町と云なり、東堀と云も、船場より東に有故東横と云り、上町よりは西なる故、上町にしてはさは云べからず、此堀は北今橋の大川口より南へ一すじに、高津の宮の順路へ通り、それゟ西へくじきながるヽ川すじを道頓堀と云、此所の角をほりつめと云、道頓堀ゟ北は十筋目に長堀とて、東横堀ゟ西へ流れ、西横堀を十文字に堀通りて、すぐに西濱へ流れ入也、道頓堀と本末ひとしき堀也、

〔半日閑話〕

〈九〉

p.0378 一文化元子年九月　大坂町中并大坂附之寺社人數書　都合三拾七万五千五百三拾壹人　内僧七百八拾四人　男拾九万七千九百八人　女拾七万六千八百三拾九人　外四千三百七拾六人　内男貳千貳百拾九人　女貳千百五拾七人　攝津西成郡穢多村　町數竈數橋書付　一三口町數高六百貳拾町　内〈貳百五十町　北組　貳百六十一町　南組　百九町　天滿組〉　一同竈數九万三千九百六拾七軒　

p.0379 一同橋數高百五十七　内公儀橋十二

〔浪花の風〕

p.0379 浪花の地は、日本國中船路の樞要にして、財物幅湊の地なり、故に世俗の諺にも、大坂は日本國中の賄所とも云、又は臺所なりともいへり、實に其地巨商富估軒を並べ、諸國の商船常に碇泊し、兩川口よりして、市中縱横に通船の川路ありて、米穀を始め日用の品はいふに及ばず、異國舶來の品に至る迄、直ちに寄場と通商なる故、何一つ欠るものなし、古來よりかくの如き土地がら故、商估專らにして、人氣もおのづから其風に移り、利を謀ること他國に超て慧敏なり、故に淳朴質素の風は更に失ふて、只だ利益に走るの風俗のみ、士といへども、土著のものは自然此風に浸潤して、廉耻の心薄く質朴の風なし、これ浪花風俗の大概なり、

〔一話一言〕

〈首〉

p.0379 大阪状　一此地米直段下直に候、〈◯中略〉扨々結構成所にて、遊で食ふもの多き筈にて候、江戸より見候へば、半分は遊んで居り、氣の長き事、急の間に不レ合、道をもうかり〳〵あるき、人をよけ候事を不レ知、供などに叱られ、肝をつぶし申候、大名往來など見候はヾ、驚き可レ申候、正九ツゟ八時迄は、町中にて晝寐也、　一家作の仕方、至て上手にて、戸のしまり、竈本の様子、臺所向棚のつり様など、感心いたし候、〈◯中略〉一土用に成候へども、具足など干し候事、一向跡かたもなき事也、誰も見やうなどヽいふものなし、重ては張ぬきにてもよし、町人いづれも人柄よく候處、此方體の家來御普請役など、家來ども其さま賤しく、氣の毒なる位也、嘸々わるせはしく下卑たる事と、さげすみ居り可レ申と耻入候、〈◯中略〉　六月〈◯享和元年〉七日　大田直次郞　島崎金次郞様　

p.0380 一毎朝、辰牌後より未牌後までは、役所に罷在候、〈◯中略〉市中の人、日傭取まで、古雅に御座候、皆々朝寐、午時より未時頃迄は、市人といへども、一度づヽ晝寢也、夜談をこのみ候、米價は一升五十二文より九十文位まで故、市人くらしよく候、女の風俗重て可二申上一候、餘程面白事に候かつぎを著候形など、小原女の體など、金屏風の如し、二千年來の化には感じ入候、　六月七日　大田覃　山内尚助様　一六月十八日出の状、廿五日夕相達候、其地〈◯江戸〉暑中冷氣の由、此方〈◯大阪〉は土用前は、左のみにも不レ覺候處、暑中酷烈、夜分蒸しあつく御坐候、乍レ去旅宿廣く風入候間、凌ぎよく候、其上夕方日影傾候へば、二階の物干へ上り候處、ことの外凉く御座候、物干ゟ屋根へかけ階子腰掛等有レ之南は紀州の山々、近くは天王寺の塔、東は伊駒山金剛山、近くは大坂の御城の櫓白壁、北は京の山山、丹波の山、西には武庫山、甲山、一の谷、ひよどり越、すま明石の方、すこしはなれて淡路島、其前は海、木津川口の帆柱林のごとく、近くは兩本願寺の堂〈下谷の稱念寺ユウ子ン寺位也〉大てい上野山王より見わたしたる所程、又は愛宕より下の屋敷を見るごとく、家根より下の方は大坂の市中不レ殘見わたし申候、夕日に雲のうつるけしき、機關の畫とも、阿蘭陀畫とも可レ申、是にて夕方は、暑をわすれ臥り申候、只今迄かヽる見晴しは覺不レ申、ことに名所計にて、中々詩も歌も出不レ申候、〈◯中略〉　七月二日　大田直次郞　島崎金次郞様

莊保

〔江家次第〕

〈十一十二月〉

p.0380 御佛名　今夜差二栢梨一〈左近衞府攝津庄名也、以二彼地利一所レ造之甘糟也、〉　

p.0381 裏書曰、栢梨、昔府中將和氣某、以二攝津國栢梨庄(○○○)一寄二左近府一、以二其地利一充二官人以下酒醪料一、頭書

〔東大寺要録〕

〈六〉

p.0381 一諸國諸庄田地〈長徳四年注文定◯中略〉　新發田〈◯中略〉　水成瀬庄(○○○○)田八町七段七十八歩〈在二攝津國島上郡一◯中略〉　攝津國　西成郡安曇江庄(○○○○)地六段　河邊郡猪名田八十五町一段三百卌三歩　或日記云、猪名庄野地百町、濱二百五十町云々、

〔東大寺要録〕

〈二〉

p.0381 東大寺注進　寺領役夫工免除證文事〈◯中略〉　一卷〈三枚〉六箇寺領役夫工免除宣旨嘉應元八月廿三日〈◯中略〉　攝津國猪名(○○)　水成瀬　兩庄〈◯中略〉　右件役免除請文等、開印藏隨可レ有二進上一如レ件、　文治四年七月十三日　寺主大法師嚴信

〔東大寺要録〕

〈二〉

p.0381 攝津國長洲庄(○○○)者、本願勅施之地、當寺根本之領也、而於二開發地一、鴨社々司等、去建保之比、致二濫訴一驚二上聞一之間、或被レ尋二記録所一、或被レ問二三大臣公群臣一、皆可レ爲二當寺之進止一之由、被二奏聞一了、其状云、　鴨社東大寺相論長渚開發事　右件地、可レ爲二東大寺領一之條、應徳皇后宮職相傳之状、嘉承宣旨、承安祐季請文等、已以炳焉歟、〈◯中略〉、但如二康和宣下一者、猪名庄四十餘町之外、可レ非二寺領一歟、〈◯中略〉　六月廿一日　右大臣〈在判〉　

p.0382 右大辨宰相殿

〔殿暦〕

p.0382 嘉承二年五月三日戊子、今日依二日次宜一、攝津國垂氷莊(○○○)、右大辨時範朝臣預レ之、

〔當宮縁事抄〕

p.0382 左辨官下　石清水八幡宮并宿院極樂寺　應丙永停下止宮寺并極樂寺庄園領家預所下司公文等、或號レ有二先祖讓状一、或稱レ相二傳文書一、致二異論一企中掠領上、兼又有二由緒一雖レ令二傳領一、子孫斷絶處々付乙本所甲事、　宮寺領〈◯中略〉　攝津國　鹽田庄(○○○)〈◯中略〉　極樂寺領〈◯中略〉　攝津國　天下高羽園　富垣庄(○○○)　可賀島庄(○○○○)〈◯中略〉　保元三年十二月三日　大史小槻宿禰〈花押〉

〔吾妻鏡〕

〈三〉

p.0382 壽永三年〈◯元暦元年〉四月六日甲戌、池前大納言并室家之領等者、載二平氏沒官領注文一、自二公家一被レ下云云、而爲レ酬二故池禪尼恩徳一、申二宥彼亞相勅勘一給之上、以二件家領三十四箇所一、如レ元可レ爲二彼家管領一之旨、昨日有二其沙汰一、令レ辭之給、〈◯中略〉　池大納言家沙汰〈◯中略〉　兵庫三箇莊(○○○○○)〈攝津◯中略〉　已上八條院御領〈◯中略〉　右莊園拾陸箇所、注文如レ此、任二本所之沙汰一、彼家如レ元、爲レ有二知行一勤状如レ件、　壽永三年四月六日

〔賀茂注進雜記〕

〈下神領〉

p.0382 同〈◯壽永〉三年〈◯元暦元年〉四月廿四日壬辰、賀茂社領四十二ケ所、任二院廳御下文一、可レ止二武家狼藉一之由、有二其沙汰一云々、　下二諸國一　可下早任二院廳御下文一、停二止方々狼藉一、備中進神事用途上、賀茂別雷社御領庄園事、〈◯中略〉　攝津國　米谷庄(○○○)〈◯中略〉　

p.0383 右肆拾貳箇所神領、任二院廳御下文一、停二止方々狼藉武士等濫吹一、如レ元可レ備二進神事用途一、若不レ恐二神威一、不レ用二院宣一、慥可レ處二重科一之、状如レ件、以下、　壽永三年四月廿四日　正四位下源朝臣御判

〔吾妻鏡〕

〈七〉

p.0383 文治三年二月一日癸酉、二品以二沒官領内二箇所一、可レ被レ避二于建禮門院一之由、有二其沙汰一、是攝津國眞井島屋(○○○○)兩庄也、元者八條前内府知行云云、依レ被レ訪二申彼御幽栖一也、　十月廿六日癸巳、攝津國山田庄(○○○)、〈◯中略〉被レ奉レ寄二左女牛若宮一、

〔吾妻鏡〕

〈十〉

p.0383 文治六年四月十九日壬寅、造大神宮役夫工米地頭未濟事、頻有二職事奉書一、神宮使又參訴之間、可レ致二不日沙汰一之旨下知給、於下有二子細一所々上者、今日令レ注二進京都一給、因州并盛時、俊兼等奉行之、其状云、　内宮役夫大工作料未濟成敗所々事〈◯中略〉　攝津國　平野(○○)　安垣(○○)　下二知景時一處、返事如レ此、相副之、　同國　安富(○○)　相二尋早河太郞遠平一處、件所一切不二知行一之由申レ之、　然者、可レ被レ尋レ之、　同國　武庫庄(○○○)〈◯中略〉　文治六年四月十九日

〔西大寺文書〕

p.0383 注進　西大寺所領諸庄薗現存日記事　合〈◯中略〉　

p.0384 攝津國　島下郡三島庄(○○○)、七十町田畠領知半分、　已上九箇庄大體有名无實、或被二國領一、或被二人領一、或半分、或三分之一也、然而就二庄號一注進之、〈◯中略〉　建久二年五月十九日〈◯署名略〉

〔吾妻鏡〕

〈十二〉

p.0384 建久三年十二月十四日壬子、一條前黄門書状參著、以二亡室遺跡廿箇所一、讓二補男女子息一、爲レ塞二將來之乖違一、去月廿八日、申二下宣旨一訖、〈◯中略〉是平家沒官領内、攝津國福原庄(○○○)、武庫御厨小松庄(○○○)、〈◯中略〉先日被レ奉レ讓二黄門室家一、〈將軍家御妹也云云〉　◯按ズルニ、高倉天皇ノ治承四年、都ヲ福原ニ遷シヽコトアリ、皇都篇ニ在ルヲ見ルベシ、

〔吾妻鏡〕

〈二十五〉

p.0384 承久三年五月十九日壬寅、午刻大夫尉光季、去十五日飛脚下二著關東一、申云、〈◯中略〉武家背二天氣一之起、依二舞女龜菊申状一、可レ停二止攝津國長江倉橋(○○○○)兩庄地頭職一之由、二箇度被レ下二宣旨一之處、右京兆不二諾申一、是幕下將軍募二勳功賞一、定補之輩、無二指雜怠一、而難レ改由申之、仍逆鱗甚故也云云、

〔古文書類纂〕

〈上處分状〉

p.0384 後深草天皇建長二年關白藤原道家處分状　總處分條々事　一寺院〈◯中略〉　院領　攝津國輪田庄(○○○)〈◯中略〉　一家地文書庄園事〈◯中略〉　尚侍殿〈◯中略〉　新御領　攝津國松山庄(○○○)〈◯中略〉　前攝政〈◯中略〉　家領　女院方〈◯中略〉　攝津國倉垣庄(○○○)〈春日四季御八講被レ宛レ之◯中略〉　新御領〈◯中略〉　攝津國湖江庄(○○○)〈憲長入道寄進◯中略〉　佐々木女房讓進所々　攝津國富島庄(○○○)〈◯中略〉　右大臣〈◯中略〉　家領　女院方〈◯中略〉　攝津國輪田庄〈報恩院領〉　生島庄(○○○)〈被レ寄二進春日四季御八講一◯中略〉　

p.0385 建長二年十一月日　愚老〈在二御判一〉

〔龜山院御凶事記〕

p.0385 嘉元三年九月廿三日丁卯、依可レ分二進故院御書一、早旦著二直衣一、〈烏帽〉相具御書、御手簡〈存日予預置也〉參二御所一、〈◯中略〉女院御方自餘御書等〈兼有二御封一、以二檀紙一被二立文一之、押二折上下一、又有二銘等一、〉悉盛二筥蓋一、〈◯中略〉　一通〈銘曰禁裏〉　備前國長田庄〈二品一期可レ被レ免二知行一〉　攝津國位倍庄(○○○)〈◯中略〉　右庄々所二讓進一也　嘉元三年七月廿六日　御判

〔梅松論〕

〈下〉

p.0385 建武三年二月朔日、猶都に責入べき其沙汰有といへども、退て功をなすは武略の道なりとて、細川の人々赤松以下西國の輩を案内者として申されけるは先御陣を攝津の國兵庫(○○)の島にうつされて、當所の船を點じて、兵粮等人馬の息をつがせて、諸國の御方に志を同して、同時に都に責入べしとて、三草山通に播磨のいなみ野に出て同二月三日、兵庫の島に御著有處に、赤松入道圓心參て申けるは、當所は要害の地にあらず、御座痛敷候、兩大將をば圓心が摩耶の城にうつし奉り、軍勢は當津に陣を取べし、兵庫と摩耶の間五十町のよし申所に、〈◯中略〉其時圓心、當所は要害にあらざるに依て、愚意の及所を申上候計也、更に諸國の事思ひもよらず、遠方の聞え尤大切なる間、縱城に御座候共、御出有べきにてこそ候べけれと、赤松此儀に同じければ、當所御陣にさだめらる、

〔應仁廣記〕

〈四〉

p.0385 山崎天王山合戰事附大内介降參事　于レ斯先年ヨリ山名彈正忠是豐ハ、一家ヲ離レテ御所方ト成リ、攝州兵庫ニ在ケルガ、京都ヘ責上リ、東陣〈◯細川〉ニ力ヲ合スベシトテ、山崎ノ天王山ヲ城郭ニ拵ヘ、〈◯下略〉

〔報恩院文書〕

p.0385 醍醐寺報恩院所司等謹解　

p.0386 欲下早依二相承理一、且被レ優二數代護持勤勞一、預二御吹擧一、達二理訴一、全中公家武家御祈禱上、當院領攝津國平駄足庄(○○○○)讃岐國陶保等間事、〈◯中略〉　建武四年十二月日

〔多田神社文書〕

p.0386 攝津國多田庄條目　條々〈◯中略〉　文永十年十二月七日　田部〈花押◯以下四名略〉　多田庄(○○○)兩政所　恒念御房

〔續應仁後記〕

〈三〉

p.0386 三好孫次郞範長所々合戰事　此範長、武勇智謀ノ器量有テ、父ガ讒死ノ恨ヲ不レ夾、忠義ヲ守テ晴元ノ敵徒ヲ退冶シ國亂ヲ靜メントス、先ヅ故常桓禪門ノ妹聟鹽川伯耆守政年ガ、攝州多田ノ庄一藏ノ城ニ在ケルヲ攻落サント相議シ三好新五郞政康、同舅波多野備前守等ヲ催シ、天文十年辛丑九月六日打立テ、一藏ノ城ヲ攻ル、

〔多田神社文書〕

p.0386 足利尊氏政所平氏契約状　けいやく申、つの國ぜんげん寺庄(○○○○○○)東かたの地頭しき〈すはの三郞左衞門入道跡〉半ぶん事、御けいやくにまかせて知行申べく候、〈◯中略〉　康暦二年六月三日　平氏女〈花押〉

〔應仁後記〕

〈下〉

p.0386 四國勢攻上攝州合戰事附前公方家御逝去事　高國〈◯細川〉先ヅ五百餘騎ヲ攝州ヘ差下ス、此勢萬代ノ庄(○○○○)ニ陣取タルニ、四國勢モ不二寄來一、空ク日數ヲ送リケレバ、同〈◯永正八年〉七月十三日、京方ノ兵、深井ヘ押寄セ、輕々敷合戰ヲ始ケルニ、澄元勢ノ横

p.0387 合ニ駈立ラレテ、京方悉打負、同國堺ノ庄ヘ引退ク、勝ニ乘テ澄元勢ハ中島邊迄攻入タリ、攝州兵庫ノ津ヘハ、細川淡路守成春兵船ヲ著ケ、押上ツテ難波ノ庄(○○○○)マデ攻上レバ、高國方ノ勇士河原林對馬守正頼同國蘆屋ノ庄(○○○○)上ナル鷹尾ノ城ニ楯籠テ、是ヲ防ギ留ントス、〈◯中略〉　三好希雲居士降參自害事　細川高國沒落シケレバ、同〈◯永正十七年〉二月廿七日、三好入道希雲居士、京都ヲ差テ攻上ル、威勢權柄アタリヲ拂テ見ヘニケル、同三月十六日、細川右京大夫澄元神呪寺ノ陣ヲ拂テ、伊丹ノ庄(○○○○)エ移リケレバ、攝津國ヨリ京都マデ、軍兵巷ニ滿々タリ、

〔古野文書〕

p.0387 新右衞門等請状　定　一今度當町火付有レ之ニ付而、改可レ被レ申事、或はばくち類之儀仕候もの有レ之か、或は作りとても商内にても不レ仕、不思儀成徒者有レ之か、一町切に被レ致二穿鑿一、於レ有レ之者、縱縁者親類たりと云共、見隱聞隱なく、有様に可レ被二申上一候事、〈◯中略〉　巳二月廿四日　小川又左〈在判〉　伊丹町(○○○)　〈紙屋與左衞門殿　豐島屋二郞左衞門殿〉

〔續應仁後記〕

〈二〉

p.0387 常桓禪門最期事　去程ニ、三好筑前守元長ハ合戰ニ打勝テ、四國勢、赤松勢、何レモ頸數多討捕ケレ共、未ダ細川常桓ノ頸ハ見ヘザリケル程ニ、方々エ手分シテ、常桓ノ行衞ヲ捜シ索ル、村々里々ハ云ニ不レ及、木ノ茂リ草ノ陰迄尋ヌ所ハ無リケリ、常桓禪門ハ六月〈◯享祿四年〉四日ノ戰場ヲ落延テ、播磨路エ趣キケレ共、敵徒路々ヲ遮テ、落行方モ塞リケレバ、大物ノ庄(○○○○)ノ民家エ入テ、紺屋ヲ頼テ忍居ラル、〈◯中略〉捜ス兵共紺屋エムズト押入テ、紺搔ノ男ヲ搦置、其外多勢シテ彼藍瓶ヲ取ノケ、隱レシ法師ヲ出シ見

p.0388 ケレバ、疑モ無キ常桓也、〈◯中略〉同六月八日、寅ノ刻バカリニ、尼ガ崎大物ノ庄廣徳寺ニ於テ、常桓禪門ニ腹ヲ切ラセケルトゾ聞ヘシ、

〔細川兩家記〕

p.0388 一同〈◯永祿四年〉五月日、細川の晴元、入道有て一清と號申候也、修理大夫殿と御和睦有、攝州富田庄(○○○)普門寺へ入被レ申候、富田庄御料所被レ付、御馳走候てめで度由候也、

〔古文書類纂〕

〈上施行状〉

p.0388 北朝後圓融天皇應安七年御教書　攝津國宮原北保(○○○○)領家職事、興福寺衆徒重僉議状如レ此、長良孫三郞濫妨云云、及二神木歸座之違亂一之上者、不日止二彼妨一、任二先例一可レ被二全雜掌所務一之状、依レ仰執達如レ件、　應安七年四月三日　武藏守〈御判◯細川頼之〉　細河右馬之助殿　同上遵行状　攝津國宮原北保(○○○○)事、今年〈應安七四三〉御教書并今年七月二日御施行案文遣レ之、早任下被二仰下一之旨上、退二長良孫三郞濫妨一沙汰付、興福寺雜掌可二執進一請取之状如レ件、　應安七年七月廿三日　左衞門尉〈花押〉　難波太郞左衞門入道殿

藩封

〔慶應元年武鑑〕

p.0388 松平遠江守忠興(帝鑑間　從五位上)　四万石　居城攝州河邊郡尼崎　〈江戸ヨリ百三十五里　城主荒木攝津守村重居、池田紀伊守信輝、元和三、戸田左門氏欽、寛永十二、青山大藏大輔幸成、同大膳亮幸利、同大藏少輔幸實、同播磨守幸督、同大膳亮幸侶、信州飯山ニ替ル、寶永八、松平遠江守忠喬以後領レ之、〉　永井鐵之丞(雁間)　三万六千石　居城攝州島上郡高槻　〈江戸ヨリ百三十二里　高山右近居、元和三、土岐山城守定吉、同三、松平紀伊守家信、寛永十、岡部美濃守宣勝、同十七、松平若狹守康信、慶安二、永井日向守直清以後、代々領レ之、〉　九鬼長門守(柳間　朝散大夫)　三万六千石　居城攝州有馬郡三田　〈江戸ヨリ百三十七里餘　〉

p.0389 〈山崎左馬介居、天正十八、有馬中務大輔則頼、同玄蕃頭豐氏、元和七、松平丹波守康長、寛永十一、九鬼大和守久隆以後、代々領レ之、〉　青木源五郞重義(柳間)　一万石餘　在所攝州豐島郡麻田　〈江戸ヨリ百卅三里　寛永年中ヨリ、青木氏代々領レ之、◯節略〉

田數/石高

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.0389 攝津國〈◯註略〉管十三〈田萬二千五百二十五町百七十八歩〉

〔伊呂波字類抄〕

〈都國郡〉

p.0389 攝津國〈管十三◯中略〉　本田一万二千十四町

〔海東諸國記〕

p.0389 攝津州　郡十四、水田一千一百二十六町、

〔拾芥抄〕

〈中末本朝國郡〉

p.0389 攝津〈上〉十三郡〈（中略）田萬千三百十四町〉

〔新撰類聚往來〕

〈下〉

p.0389 攝津〈攝州〉十三郡〈（中略）田數三万三千三百十四町也〉

〔日本鹿子〕

〈三〉

p.0389 攝津國　十六郡、大上國、〈◯中略〉　知行高二十九万九百石

〔官中秘策〕

〈一〉

p.0389 攝津國〈◯中略〉　一石高三拾九万貳千七百七石餘

〔吹塵録〕

〈五人口及國高〉

p.0389 天保度御國高調〈◯中略〉　攝津國〈御料私領〉　一高四拾壹万七千三百九拾九石壹斗貳升七合

出擧稻

〔延喜式〕

〈二十六主税〉

p.0389 諸國出擧正税公廨雜稻〈◯中略〉　攝津國正税公廨各十八万五千束、國分寺料一万五千束、大日寺料五千束、修理池溝料三万束、救急料六万束、

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.0389 攝津國〈◯註略〉管十三〈（中略）正公各十八萬五千束、本稻四十八萬束、雜稻十一萬束、〉

〔延喜式〕

〈十五内藏〉

p.0389 諸國年料供進〈◯中略〉　畿内國營田舂米六百五十四斛七斗三升二合〈（中略）攝津國二百九斛七斗九合〉

國産/貢獻

〔延喜式〕

〈二十三民部〉

p.0389 交易雜器〈◯中略〉　攝津國酒槽十七隻、〈長各八尺、廣二尺三寸、手長一尺、〉圓槽四隻、槽六口、輿籠五十口、臼八腰、杵十四枝、匏一百七十五柄、置簀五十四枚、　

p.0390 凡五畿内丹波等國、例進雜器并檞、十月以前充進、若致二未進一移式部省一、不レ聽三國司預二新嘗會節一、　交易雜物〈◯中略〉　攝津國〈大麥三石、小麥卅五石一斗、葟子九斗、薦一千五百枚、〉

〔延喜式〕

〈二十四主計〉

p.0390 攝津國〈行程一日〉　調、葉薦五百枚、折薦一千廿枚、明櫃十合、大明櫃二百卅五合、小明櫃一百八十四合、折櫃一千二百九十六合、麻笥三口、板笥六百三合、圓笥一百廿四合、大笥四百五十合、陶燼瓫四口、脚短坏卌六合、筥坏二百七十二合、水椀卅九合、韲坏七十合、自餘輸レ錢、

〔延喜式〕

〈三十三大膳〉

p.0390 諸國貢進菓子〈◯中略〉　攝津國〈蔔子二擔、覆盆子四擔、楊梅子四擔、花橘子二擔、〉

〔延喜式〕

〈三十七典藥〉

p.0390 諸國進年料雜藥〈◯中略〉　攝津國卌四種　獨活漏蘆各五斤、䓡苺、松脂、桑根、白皮各四斤、橘皮六斤、墻薇根、烏賊骨各四斤、桔梗廿三斤六兩、香 七斤、白朮廿三斤、枳實、黄檗、玄參、人參、茯苓、升麻各三斤、厚朴十斤、杜仲三斤十二兩、松蘿、萆薢、地楡、桑螵蛸各二斤、桃花十兩、夜干五斤、茜根一斤、蜂房七兩、菟絲子二升、署預六升、桃人一升、車前子、亭藶子、蓼子、蜀椒各三升、荏子二升五合、胡麻子〈◯此間恐有二脱文一〉各四升五合、杏人一斗九升、鼈甲四枚、鹿角四具、葵子大五升、 杞六斤、

〔延喜式〕

〈三十九内膳〉

p.0390 年料〈◯中略〉　攝津〈擁釼皮蘭〉

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0390 攝津　天滿宮前大根　新艘　立臼　韋囊　碁盤　川崎島木綿　フケ島　福島細木綿　雀鮨〈江鮒也、腹ニ飯ヲ多入タルガ、雀ノゴトクフクルヽヲ以云ナリ、〉　野里川島村蟹〈昔島村ト云人、此所ニテ合戰シ果ケル其幽靈ト云、カニノ甲ニ人顏スハレリ、〉　京橋網島網　今橋戸障子　高麗橋團子(ダンス)　古手〈濃ニツギハギ、又新染ヲ云、〉　繪馬〈麁相物也〉　道修谷延命散〈定齋藥トモ云、根本之出所也、〉　疊　薄縁〈麁相物、相國ニ行、〉　平野町傘　双六石賽　備後町摺碁石　安土町厨子　紫革　錦革　毛皮細工　唐物町切革細工　久寶寺町紙子　澀紙〈麁相物ナリ〉　横堀川引板　榑板〈諸國ニ遣ス〉　阿波堀川石

p.0391 灰〈シヾミ貝ノ灰ナリ〉　安堂寺町髮モジ　津村木綿織帶、　同織足袋、〈指豆袋ノゴトク織レ之〉　雪踏　張人形〈世ニ是ヲオキアガリコホボシト云也、〉　張箱〈麁相物也、〉　難波橋筋文臺　重箱〈麁相物〉　阿波座指物〈櫃箱等ヲ切合、錐揉計ニテ諸國ヘ商レ之、〉　大溝筋木綿組緒〈蒲團張葛籠等ニ用レ之〉　大坂高津瓦　生玉澀(サビ)土　玉作疊針　天王寺鋸　綿體　ハゼ　蕪　住吉御祓團子　松露　水仙花〈分テ當所ニ多シ、桐ノ箱ニ入テ諸方ヘ遣ス、〉　馬刀(マテ)　酢蛤　木津瓜　難波干瓢　今宮千生瓢簟　古妻木綿　遠里小野油　築島櫛　キセル　將碁馬　堺北庄大道筋朱座　丹　唐土　鉞割　阿仙藥　粒半夏　疊庖丁　柳町針口　櫻町鐵炮　分銅下地　秤金竿　小櫻町多葉古庖丁　土井原鋸　針金　中濱懸硯　机　十露盤　天秤　旦過小路圍爐裏　木綿織緒〈箱掛物等ノ紐ニ用レ之〉　ドシ織帶　山口筋大工墨斗糸　川口蜆　鮊　尼崎餅貝　蛤　爪白蟹　西宮水鮧　水鱧　小鮦　烏帽子糖(アメ)〈金(カネ)アメトモ云〉　御影飛石　兵庫簾干小鰯、〈世ニ是ヲゴマメ、又コトノバラト云〉同鯷漬　牛舌　赤貝　須磨濁酒〈サヽボロヤ、波コヽモトヲ打過テ、スマデノムコソ濁酒ナレ、所ニ云ナラハシタル歌ナリ、〉　多田紺青　緑青　藜蘆　生木香　香薷　防己　木通、　菊花　葛根　銀銅　勝尾寺冰餅　能世篇栢〈外ヨリ勝レリ、ワラニテアミタルヲイヘリ、〉　一倉炭〈此所ヨリ池田ノ市ニ出テ賣ナリ、故ニ是ヲ池田炭共云、〉　池田呉服綾服御衣　名鹽鳥子　有馬引物〈湯ノ山引共云宜シ〉　楊枝　竹柄杓　竹水囊　人形筆　眉作　庖丁　菜刀　鼓瀧盆山蒔砂　藥師山琢砂　伊丹酒　富田酒　漬物　三島江大根〈勝テ太シ、雜煮用レ之、〉

人口

〔宮中秘策〕

〈一〉

p.0391 攝津國〈◯中略〉　一人數八拾万三千五百九拾五人　内〈四拾貳万六千七百五拾六人　男　三拾七万六千八百三拾九人　女〉

〔吹塵録〕

〈五人口及國高〉

p.0391 諸國人數調(文化元甲子年)〈◯中略〉　一人數七拾八万九千八百五拾七人(御料私領)　攝津國(高三拾九万貳千七百七石餘)　内〈四拾壹万九百六拾六人　男　三拾七万五千八百九拾壹人　女◯中略〉諸國人數調(弘化三丙午年)〈◯中略〉　

p.0392 一人數七拾六万三千七百貳拾八人(御料私領)　攝津國(高四拾壹万七千三百九拾九石餘)　内〈三拾八万九千八百六拾四人　男　三拾七万三千八百六拾四人　女〉　◯按ズルニ、文化度ノ諸國人數調ノ總計ハ内譯ト合ハズ、蓋シ一誤アラン

風俗

〔人國記〕

p.0392 攝津國　攝津國之風俗、山城之國ニ似タリ、一圓不レ可レ好也、先武士ハ町人百姓ノナス所ヲ我ガ業ト覺テ、是ヲ眞似、而モ其當然ヲ勤ル處ハ、武士之業之様ナレドモ、武藝ヲ學ブハ渡世之爲、光陰ヲ送ラン所作也ト覺ユル風俗ニテ、更ニ武士之武士ニハ非ズ、而僞リ諂フ類之人多シ、亦町人ハ武士ヲ眞似、己ガ實ニ勤ル身ニアラザレバ、譬バ座敷之置合ニ兵具ヲナラベ置テ、インケンヲ吐キ、亦ハ刀脇指ヲ拵ニモ、異風ニ作リテ金銀ヲ費シ、己ガ業ヲバ如レ形大様ニモテナシ、百貫之身體之者ハ、千貫モ持タルヤウニ有徳顏シテ、己モ身上ヲ滅シ、人ニモ損ヲカクル風俗也、雖レ然北郡之者ハ實儀少有、武士モハゲシキ處有テ、諂フ心スクナシトイヘドモ、國風ヲマヌカルヽ事ナクテ、百人ガ九十人ハ欲心深シ、是國ノ人ヲ傾ンニハ、威ヲ專ニシテ、金銀花飾ヲ以テ是ヲナビクベシ思ヒ、詰タル心ナク、我々ガチ成風俗故ニ、欲ニフケリ威ニ恐ルヽ形儀也、サレドモ和泉之國ニハハル〴〵マサレリ、若柔ニ而示ス則ハ威ヲ奪ハレ、還テ害ト成ベキ國風也、大和山城河内之ハヅレノ國成故ニ、四ケ國之水土集リタル風俗ナレバ、善事モ有テ、亦惡キ事モ有トイヘドモ、總而之風儀、柔弱虚談之國風故、武ハ用ルニ不レ足也、雖レ然間々義ヲ辨フルモノモ可レ有トハ、北郡ヲ差テノ事也、　口傳右五畿之風俗、都而智惠ハシリテ實ヲ失フ人多シ、人ハ唯實ヲ本ト而身ヲ定ルヲ以テ人トス、實寡ク虚多ク智有者ハ疑之第一也、寶寡フ而虚多ク智有者ハ、疑心多ク而一和スル事ナキ也、己ヲ全フ而人ヲ不レ可レ疑也、人我ヲ疑フハ我ニ實不レ足乎、我ニ實有ト云共、來ル人虚之邪智カト可レ知也人々ヲ疑フ風俗之國成故ニ、人ヲ而人ヲ疑セテ、時至ラバ不レ招トモ可レ來、此時出陣セバ、一陣ニ向

p.0393 フテ滅セン事手中ニ有、猶口傳、

〔攝津志〕

〈一〉

p.0393 風俗　習俗喜レ勤意氣慷槪、殷富奢靡、厚二于滋味一、崇二尚浮屠一、不レ好二名教一、

名所

〔日本鹿子〕

〈三〉

p.0393 攝津國中名所之部　難波　郡の名也、大坂より未申のかた也、〈◯歌略〉　長柄橋　難波より北也、橋はなし、〈◯歌略〉　渡邊橋　是も難波邊也、天王寺の北一里なり、長柄は此所より北也、淀川の末也、渡邊橋今ははしなし、その跡のみいひつたへて侍る、此所に熊野の一の王子御座なり、是より神崎といふ所ちかし、川尻大江の岸などいふ所あり、〈◯歌略〉　蘆屋の里　天王寺よりいぬゐのかたなり　鳴尾崎　なには近所なり、かい邊なり、〈◯歌略〉　田蓑島　天王寺の西、海邊也、源氏身をつくしに、光源氏みやこより住吉へまうで給ふに、明石のうへに行逢給ふと有も、此あたりの事とかや、　御津松原　是も難波近所也、敷津などいふ所あり、〈◯歌略〉　高師濱(タカシノハマ)遠江に同名有、難波郡のうち也、小松崎、蘆間、橋本などいふ所あり、〈◯歌略〉　住吉　郡の名也、西は海、北は難波、南は阿波也、淡路は西なり、明神の宮井西向也、松原あり、住吉のかたははまなり、あられ松原當所也、難波より住吉へ一里餘也、〈◯歌略〉　安倍野　すみ吉より北のかたなり〈◯歌略〉　長井浦〈◯歌略〉　遠里小野　住よしゟ東也〈◯中略〉　猪名山〈◯歌略〉　

p.0394 芥川　いなのうち也、北より南へながれたる細き川也、京よりつくしへ下る海道なり、大田の宿といふ所より十町計東也、大田迄京より六里なり、〈◯歌略〉　武庫川　北より南へながれたる川也、山は北也、大田宿より西いなの内也、　有馬山　出湯あり、いなのうち也、北にはるかに見えたり、いなの奧なり、美作の境なり、俗に湯の山といふ、京より廿里なり、西の宮は南にあたる也、しば山、はやまいづれも北に見えたり、〈◯歌略〉　小夜(コヤ)池　大田の宿よりは西なり、嗚尾の北也、　打出濱　北は山、南は海也、西の宮より十八町西也、小清水と云宿より西の宮は南なり、小清水と打出は未申也、京より兵庫へくだれば海邊に出る初也、十三里也、近江に同名あり、過ればすヾめの松原といふあり、勝尾山といふ山寺あり、瀬川と云宿の北也、こやのあたり也、　箕面　北は山寺あり、辨財天也、瀧あり、勝尾山のつヾき也、　五月山〈◯歌略〉　御影の森　すヾめの松原の内也、社あり、天神の御座也、南向也、海きわの海道也、北は山なり、　生田の里　北は山、南は海也、東西へ遠き所也、〈◯歌略〉　布引の瀧　生田のもりより北山をく也、山より南へながれたり、〈◯歌略〉　湊山　兵庫の北なる宿なり〈◯歌略〉　輪田の御崎　ひようごの南に出たるす崎の事也、兵庫は南向なり、いにしへのつきしま有レ之、〈◯歌略〉　夢野　兵庫より北、みなと川邊也、　蓮の池　ひようごより西十町計也、湊川の宿よりも西也、うみより北也、　廣田濱　兵庫より五丁計西なり　

p.0395 須磨　北は山、南は海也、蓮の池より西なり、間ちかし、〈◯歌略〉須磨の里は兵庫より一里餘なり、西也京より兵庫まで十八里也、そなれ松は、里より南濱邊に有レ之、〈◯中略〉鼓瀧　有馬湯本より八丁程南にあり

雜載

〔延喜式〕

〈二十八兵部〉

p.0395 諸國健兒〈◯中略〉　攝津國卅人