https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1244 沼ハ、ヌマト云フ、ヌマトハ、水底泥濘アリテ黏滑ナルノ意、湖トハ其義固ヨリ異ナレドモ、其大ナルモノニ至リテハ亦湖ト稱スルモアリ、而シテ沼ヲ開拓セシ事ハ、政治部開墾篇ニ在リ、

名稱

〔倭名類聚抄〕

〈一河海〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1244 沼 唐韻云、沼池也、之詔反〈和名奴萬〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈一水土〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1244 廣本少作詔、按之少與廣韻合、在上聲三十少、詔在去聲三十五笑、作詔誤、曲直瀬本奴下有麻字、刻版本同、按古事記、天沼矛、日本紀作天之瓊矛、訓注、瓊此云努、古事記、綏靖天皇御名沼河耳、敏達天皇御名沼名倉、其他沼名木之入日賣、沼羽田之入毘賣、沼代郞女、日本紀皆作渟、日本紀天武天皇御名渟中原、訓注、渟中此云農難、越後國頸城郡沼川郷、讀奴乃加波、皆可以證沼之訓一レ奴、又古事記應神天皇段云、新羅國有一沼、名謂阿具奴摩、萬葉集云、奴麻布多都、伊可保乃奴麻、可保夜我奴麻、伊奈良能奴麻、新撰字鏡、淇陂並訓奴万、然則沼訓奴訓奴麻、古皆有之、然山田本、尾張本、昌平本、下總本、皆無麻字、與舊同、伊勢廣本、那波本亦同、則源君訓奴不奴麻也、淺人知奴麻之名、不古或單稱一レ奴、妄意増麻字也、不從、按奴謂黏滑、言沼者水底有泥黏滑也、古事記云、五瀬命於御手登美毘古之痛失串、到血沼海、洗其御手之血、故謂血沼海也、血沼者、謂血之在皮上黏滑、今俗呼乃利、乃利、與粘同訓、又黏滑之義、是血沼之沼借字、非池沼之義、蓋滑也、沼也、粘也、黏也、奈爾奴禰乃通音、皆同語也、〈◯中略〉廣韻同、按池沼也、猶池沼之池、説文沼池也、詩召南毛傳同、

〔八雲御抄〕

〈三上地儀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1244 沼 ぬまといふは、池のつヽみのかくれぬとも云り、かくれぬは草にかくれたる也、たヽぬまといふは、水のたまりたるなり、

〔東雅〕

〈二地輿〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1244 沼ヌマ 義不詳、古語には、ヌとのみ云ひしなり、萬葉集抄に、ヌマとは水の流れぬをいふといひけり、されど古事記に、彦五瀬命の登美毘古の痛矢串を負ひ給ひ、其御手の血を洗ひ給

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1245 ひし故に、其海を血沼海といふ也と見えしは、今の和泉國の南海也、さらば古にヌといひしものは、後にいふ所には同じからぬ歟、倭名抄に、瀦の字、讀てヌマともウマともいひけり、後にヌマといひしものは、水たまりぬる所の泥沙のために埋まりて、其水淺きをいひしと見えたり、今も俗にそれらの所をぞ沼とはいひける、〈俗に泥濘の地をヌカリミなどいふは、沼の水枯れて、其泥の滑かなる如くなる也、〉

〔倭訓栞〕

〈前編二十一奴〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1245 ぬま 沼瀦などをよみ、神賀詞に、沼間と見え、新撰字鏡に、淇もよめり、日本紀に、渟名井、渟名川などいへり、さればぬなの轉ぜるなるべし、日本紀に、要害をぬまとよめり、沼より出たる詞なるべし、又要字のみもよめり、ぬまるといふ詞も沼より出たる成べし、

〔萬葉集〕

〈十一古今相聞往來歌〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1245物陳思 隱沼乃(コモリヌノ)、下爾戀者(シタニコフレバ)、飽不足(アキタラズ)、人爾語都(ヒトニカタリツ)、可忌物乎(イムベキモノヲ)、

名沼

〔八雲御抄〕

〈五名所〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1245 沼 つくまえのぬま〈近 後拾、みくりひく、道信歌、〉いならの〈上野 万、おほ井 草〉いかほの〈同 万、なき、在山上池也、〉いはかき〈同 万、只非名所も詠之、〉かほやり〈同、万、可保夜とかけり、仍或かほよかといへり、〉あさかの〈陸 古、はなかつみ、あさかの沼に詠菖蒲ひがことなり、彼國に無菖蒲、仍かつみを五月もふくなりと在俊頼抄、〉 たまえの〈攝 千 清輔 あし〉 あさヽは〈千 顯仲〉 あかすの〈武〉

〔藻鹽草〕

〈五水邊〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1245 沼 冴野沼〈山城◯中略〉玉井沼〈大和◯中略〉小墾田沼〈攝州◯中略〉玉江沼〈同上◯中略〉淺澤沼〈攝州◯中略〉筑摩沼〈近江◯中略〉富士野沼〈駿河、宗祇、〉いならの沼〈上野◯中略〉伊香保沼〈上野◯中略〉石垣沼〈上野◯中略〉可保夜沼〈上野◯中略〉石井沼〈奥州◯中略〉大浦田沼〈伊勢、或筑前、〉安積沼〈奥州◯中略〉小崎沼〈武州◯中略〉あすかの沼〈武州、八雲御説、〉おくろさきの沼〈奥州◯中略〉みかはの沼

駿河國/富士沼

〔東海道名所圖會〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1245 富士沼 吉原の北にあり、富士八湖の其一也、丙辰紀行に羅山子のいへる、古への善徳寺村、今は今泉といふ、治承の戰場の遺跡はこれなりと書り、按ずるに、昔は此沼東西三里餘もありて、富士川のほとりまでも續き、平氏の軍勢水鳥の羽音に驚き敗走せしも、此沼なら

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1246 ん、今はあせて纔の沼となり、こヽにて漁したる鱣を、四ツ屋柏原の茶店に出して商ふなり、

下總國/印播沼

〔下總國舊事考〕

〈十二古書地名考〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1246 稻穗湖、和名抄印播郡印播郷トアレド、訓注ナキ故ニ、文字ノマヽニ今ノ世インバト云ヘド、和名抄ノ訓例ヲ考ルニ、因幡國ハ伊奈八、遠江國引佐郡ハ伊奈佐ト訓注アルナド、皆インヲイナニ用ヒタリ、伊勢國員辨郡モ爲奈部トアリ、是モヰンヲヰナニニ用ヒタリ、此例ニテ印播ニイナバナルコト疑ナシ、夫ヲイナボト訛リタルナリ、バトボハ通音ナレバ轉語シタルナルベシ、此沼ハイト大キク、印幡埴生ノ二郡ニカヽレリ、

〔廻國雜記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1246 けふ小春のしるしにや、いさヽかのどかに侍ければ、みな〳〵いなほの湖水(○○○○○○)にうかびて、舟のうちにて酒など興行し侍りき、富士のね湖にうつれる心を、みな〳〵よむべきよし申ければ、 水うみの波まにかげをやどしきて又たぐひあるふじを見るかな

〔徳川禁令考〕

〈六山川林木荒地〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1246 印旛沼新開相止候御書付(天明六午年八月二十四日) 御勘定奉行江 下總國印旛沼新開之儀、此度出水ニ付、新開場も押流シ、迚も右難埒明趣ニ付、開發之儀無用ニ致、諸取〆方之儀相調可相伺候、 八月二十四日

近江國/つくま江沼

〔後拾遺和歌集〕

〈十一戀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1246 女のもとにつかはしける 藤原道信朝臣 あふみにかありといふなるみくりくる人くるしめのつくま江の沼

上野國/伊香保沼

〔書言字考節用集〕

〈一乾坤〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1246 伊香保沼(イカホノヌマ)〈上州群馬郡今温泉之地〉

〔萬葉集〕

〈十四東歌〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1246 可美都氣努(カミツケノ)、【伊可保乃奴麻】爾(イカホノヌマニ)、宇惠古奈宜(ウヱコナギ)、可久古非牟等夜(カクコヒムトヤ)、多禰物得米家武(タ子モトメケム)、〈◯中略〉 右二十二首上野國歌

陸奥國/淺香沼

〔古今和歌集〕

〈十四戀〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1247 題しらず 讀人しらず 陸奧のあさかの沼の花がつみかつ見る人に戀ひや渡らむ

〔都のつと〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1247 みちの國淺香の沼をすぐ、中將實方朝臣くだられけるに、此國には菖蒲のなかりければ、本文に水草をふくとあれば、いづれもおなじこと也とて、かつみにふきかへけると申つたへ侍るに寛治七年〈◯堀河〉郁芳門院の根合に、藤原孝善がうたに、あやめぐさひくてもたゆくながきねのいかで淺香の沼におひけん、とよめるは、此國にもあやめのあるにやと、年月ふしんにおぼえしかば、此度人にたづねしに、當國にあやめのなきにはあらず、されどもかの中將の君くだり給ひし時、なにのあやめもしらぬしづか軒ばには、いかで都のおなじあやめをふくべきとて、かつみをふかせられけるより、これをふきつたへたる也と、かたり侍しかば、げにもさる一義も侍るにや、風土記などいふ文にも、その國の古老の傳などかきて侍れば、さる事もやとてしるしつけ侍る也、

〔古今和歌六帖〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1247 ぬま いつとてかわがこひざらんみちのくの淺香の沼は煙たゆとも


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Last-modified: 2022-07-23 (土) 17:18:50