天部/日〈日蝕併入〉

p.0021 日ハ、ヒト云フ、即チ太陽ナリ、上世ノ人ハ殊ニ日ヲ尊崇スルノ風アリ、又日重出シ、或ハ日光ノ異状ヲ呈スル等ヲ以テ變異ノ事トセリ、日月ノ蝕スルヲ、ハエト云フ、後世字音ヲ以テ稱ス、凡ソ日蝕ハ、月ノ朔、二、三ノ三日間ニ生ジ、 p.0022 月蝕ハ、十四、十五、十六ノ三日間ニ生ズルヲ以テ常トス、而ルニ史ニ、六日、十九日等ニ日蝕アリ、九日、二十一日、二十二日、二十五日等ニ月蝕アルガ如ク記セシハ誤ナルベシ、抑モ日蝕ノ事ヲ記セルハ、推古天皇三十六年ノ紀ヲ以テ始見トス、蝕ハ陰陽寮ニテ暦博士暦法ニ據リテ日時及ビ蝕ノ限度等ヲ推歩シ、中務省ニ申シ、省ハ太政官ニ申ス、官奏聞シ訖テ諸司ニ告知ス、當日天皇事ヲ視ズ、百官發務ス、正月元日、十一月朔旦冬至等ニ日蝕アレバ、賀節ノ禮ヲ行ハザルコトアリ、中古以來、宿曜道ノ輩、亦勘文ヲ進ルニ及ビ、暦家ノ奏ト牴牾スルコトアリ、當時僧侶ニ命ジテ、修法讀經セシメ、若シ蝕正現セザレバ修法ノ驗トセリ、蝕ノ間ハ薦席ヲ以テ御所等ヲ覆ヒ、又臣庶モ他行等ヲ爲サズシテ戒愼セリ、而シテ月蝕ノ事ハ月篇ニ載ス、

名稱

〔新撰字鏡〕

〈日〉

p.0022 晷〈汜洧反、日影也、日光顯二於水陸一也、加介、〉　暉暈輝煇〈四形同、虚歸、旰飛二反、平光也、猶二光明一也、氐良須、〉　曜耀〈同弋羊反、去照也、光明也、爾也、豆久己毛利、又加久須、又氐良須、〉　旭〈許玉反、旦日欲レ隆也、日乃氐留、又阿加止支、〉

〔倭名類聚抄〕

〈一景宿〉

p.0022 日　造天地經云、佛令二寶應〈◯應下恐脱二聲字一〉菩薩造一レ日、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈一景宿〉

p.0022 造天地經一卷、見二開元釋教録一、不レ著二譯人名一、今無二傳本一、杜臺卿玉燭寶典引、作下寶應聲菩薩、吉祥菩薩、練二七寶一造中日月星辰上、又瑜伽論倫法師記、引二天地經一云、安養國寶應聲菩薩作二日城一、寶吉祥菩薩作二月城一、道綽安樂集、引二須彌四域經一云、阿彌陀佛遣二二菩薩一、一名二寶應聲一、二名二寶吉祥一、此二菩薩共相籌議、向二第七梵天上一、取二其七寶一來至二此界一、造二日月星辰廿八宿一、以照二天下一、寶池房證眞文句私記、引二十一面經疏一云、天地本起經云、阿彌陀佛遣二應聲吉祥二菩薩一爲二日月一、皆其事、並與二此所一レ引少異、各本脱二聲字一、今依二上文所レ引諸書一増、按言二日月之起原一、宜レ引二古事記、日本書紀一、證二其字形音義一、當レ引二説文釋名一、説文、日實也、大陽之精、不レ闕、从二◯一一象形、月闕也、大陰之精、象形、釋名、日實也、光明盛實也、月闕也、滿則闕也、源君不レ引二是等書一、引二梵典一、可四以見三當時所二好尚一也、調度部以二佛塔伽藍僧房

p.0023 具一在レ首、亦與レ此同、又按、日月風人子顏目口毛身鳥皆不レ載二倭名一、蓋是諸名、衆人所二明知一、無レ可レ疑、故從レ略也、

〔段注説文解字〕

〈七上日〉

p.0023 日實也、〈以二疊韵一爲レ訓、月令正義引二春秋元命包一云、日之爲レ言實也、釋名曰、日實也、光明盛實也、〉大易之精不レ虧〈故曰レ實〉从二◯一一象形、〈◯象二其輪郭一、一象二其中不一レ虧、人質切、十二部、〉凡日之屬、皆从レ日、 古文象形〈蓋象二中有一レ烏、武后乃竟作レ 誤矣、〉

〔倭名類聚抄〕

〈一景宿〉

p.0023 陽烏　歴天記云、日中有二三足烏一、赤色、今按、文選謂二之陽烏一、日本紀謂二之頭八咫烏一、田氏私記云、〈夜太加良須〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈一景宿〉

p.0023 歴天記無レ攷、按、徐堅初學記、及文選蜀都賦李善注、並引二春秋元命苞一曰、日中有二三足烏一、歐陽詢藝文類聚、引二五經通義一曰、日中有二三足烏一、王充論衡説日篇、儒者曰、日中有二三足烏一、淮南子精神訓、日中有二踆烏一、高誘注、謂二三足烏一、大荒東經、湯谷上有二扶木一、一日方至、一日方出、皆載二于烏一、郭璞注、中有二三足烏一、皆其事也、〈◯中略〉按、頭八咫烏者、天照大神爲二神武帝一遣以爲二郷導一之神烏也、古事記所レ載同、源君以爲二日中烏一者誤矣、又按、夜太加良須、彌尺烏之義、謂二大烏一也、

〔類聚名義抄〕

〈二日〉

p.0023 日〈人一反ヒ、ヒル、〉　旭〈許玉反　アシタアサヒ〉　晷〈音軌ヒカケ〉

〔同〕

〈七雨〉

p.0023 〈アマツヒ〉

〔撮壤集〕

〈上天像〉

p.0023 日　陽烏(ヤウウ)〈和名類聚〉　金鴉(ア)　火精(クワセイ)　日尾(ジツビ)

〔和爾雅〕

〈一天文〉

p.0023 日(ヒ)〈大陽之精〉曜靈〈日也、出二楚辭一、〉火精(クハセイ)〈日也〉旭日(アサヒ)〈朝日也、又暾、昕並同、〉旰(ユフヒ)〈夕日也、頽陽同、〉晛(ヒノケ)〈日氣也、出二詩經一、〉日影(ヒカケ)　晷(ヒカゲ)　日陰(ヒカゲ)〈與二日影一不レ同〉景(ヒノヒカリ)〈日光也〉昐(ヒノヒカリ)〈日光也、昡曦並同、〉白駒(ハクク)〈日景也、出二莊子一、〉日升(ヒイヅル)〈日出也、出二詩經一、〉日遷(ウツル)〈淮南子云、日至二西南一曰二小遷一、日西曰二大遷一、〉日傾(カタフク)〈昃同〉日曛(クルヽ)　照(テラス)〈明所レ燭也、俗作レ焰、〉日映(シナテル)〈出二藻鹽草一〉返照(カヘリテラス)〈日將二西落一、光返二照東一也、〉反景(ハンケイ)〈返照也〉扶桑(フサウ)〈日所レ出也、又云暘谷、〉咸池(カンチ)〈日入處也〉

〔壒囊抄〕

〈九〉

p.0023 日中有レ烏ト云如何、同長短、　五經通義云、陽以レ一起、故日行一度、陽成二於三一、中有二三足烏一、又云、日火精陽氣也、外熱内陰、象二烏黒一也、

〔日本釋名〕

〈上天象〉

p.0023 日　天地はじめてひらけし時より、すでに日あり、是自然の語なるべし、或説日は火の精なるゆへに名づく、又ひると云説あり、日にあたりて物ひるなり、此等の説用ひがたし、日

p.0024 は上古の自語なれば、日の訓をかりて、火をひといふなるべし、ひるといふことばは、日より出たり、日は母語也、ひるは子語也、子語を以母語をとくべからず、

〔東雅〕

〈一天文〉

p.0024 日ヒ　ヒとは靈(ヒ　)也、上古の時、凡そ物の靈なるを稱してヒといふ、されば後に漢字を借用ひられしにも、靈の字を讀て、ヒとは云ひしなり、舊事紀には産靈の字讀てムスビとせられしを、古事記には産巣日としるして、讀てムスビとせしが如き、即是日といふは、靈の義なるが故也、

〔倭訓栞〕

〈前編二十五比〉

p.0024 ひ　日をいふは、明らかにましますを、自然にかくいひ初めし語なり、日出の大さ富士山の如く、寅時より深紅なるは、土佐南海の眺望、志州鳥羽の漂船の視し所も、同じ大きく見ゆるは、地水の陰氣を含める故なり、出る時は遠し、地より十七萬里、日中は近し、地より十五萬六千五百里なりといへり、

〔八雲御抄〕

〈三上天象〉

p.0024 日　あまひこ〈異名也〉　あかねさす〈万には、あかねさす日とよめり、〉　うちひさす〈みやちとつづけたり〉　又あまつたふ　又わたる春日ともいへり〈万、度とかけり、〉　たかてらす〈是は帝御事也、但寄レ日可レ詠也、〉　但朝日かげにほへる山　あさつくひ　夕つくひ　あさ日　ゆう日　春日　なが　入

〔古事記〕

〈上〉

p.0024 於レ是詔之、此地者向二韓國一眞二來通笠沙之御前一而、朝日(○○)之直刺國、夕日(○○)之日照國也、〈◯下略〉

〔暦林問答集〕

〈上〉

p.0024 釋レ日第三
或問、日何也、　答曰、定象紀云、日大陽之精也、又五經通義曰、陽以レ一起、故日行一度、陽成二於三一、故中有二三足烏一、又云、日火精、陽炁也、外熱内陰、象二烏之黒一也、白虎通云、日徑千里、周三千里、下二於天一七千里、日一南萬物死、日一北萬物生、故夏陽盛而陰衰、故晝長夜短、冬陰盛而陽衰、故晝短夜長、日行二陽道一長、出二入卯酉之北一、行二陰道一短出二入卯酉之南一、春秋陰陽等、故行二中道一晝夜等也、漢書天文志云、日君之象也、君行急則日行疾、君行緩則日行遲、是以觀二乎天文一、以察二乎時變一、

〔日本書紀〕

〈一神代〉

p.0024 伊弉諾尊、伊弉冉尊共議曰、吾已生二大八洲國及山川草木一、何不レ生二天下之主者一歟、於レ是

p.0025 共生二日神一、號二大日孁貴一、〈大日孁貴、此云二於保比屢咩能武智一、孁音力丁反、一書云、天照大神、一書云、天照大日孁尊、〉此子光華明彩、照二徹於六合之内一、故二神喜曰、吾息雖レ多、未レ有二若レ此靈異之兒一、不レ宜三久留二此國一、自當下早送二于天一、而授以中天上之事上、是時天地相去未レ遠、故以二天柱一擧二於天上一也、

日重出

〔扶桑略記〕

〈二十三裏書醍醐〉

p.0025 昌泰四年〈◯延喜元年〉二月一日甲寅、辰刻日三出、虹各日纒廻三刻、微々散失、可レ謂二奇異一、

〔日本紀略〕

〈三村上〉

p.0025 天暦二年六月七日甲申、是日、日二見、

〔百練抄〕

〈四一條〉

p.0025 永祚元年八月三日、酉時日三面雙出、即以混合、凡近日恠異多、

〔百練抄〕

〈八高倉〉

p.0025 承安二年六月十六日、或記云、今日申刻、兩日出現之由、有二閭巷説一、但司天之輩不レ見之由申之、

〔吾妻鏡〕

〈十七〉

p.0025 建仁二年正月廿八日甲戌、辰一點朝日見二兩輪一、

日光呈異状

〔日本後紀〕

〈十三桓武〉

p.0025 大同元年三月丙戌、日赤無レ光、兵庫夜鳴、是夜月蝕之、　丁亥、是日日赤無レ光、

〔日本紀略〕

〈淳和〉

p.0025 天長元年二月丙戌、巳時日無レ光、輪暈、兩傍小有レ光、宛似レ虹薄雲承レ之、東西延曼、亦如レ引レ縠、

〔續日本後紀〕

〈十仁明〉

p.0025 承和八年四月癸卯、日色赤如レ血、須 復レ常、

〔續日本後紀〕

〈十三仁明〉

p.0025 承和十年五月己丑朔、日赤无レ光、終日不レ復、非レ雲非レ霧、黒氣亘レ天、至二于午後一、時々日見、其色黄赤、　辛卯、令二神祇官陰陽寮解謝一レ之、是日午刻、日色明潔也、　丙申、爲レ鎭二内裏物恠并日異一、屈二百法師一、限二三箇日一、讀二藥師經於清涼殿一、修二藥師法於常寧殿一、轉二大般若經於大極殿一、諸司醋食、兼禁二殺生一、

〔文徳實録〕

〈三〉

p.0025 仁壽元年十月甲戌、自レ旦日無二精光一、日中有(○○○)二黒點(○○)一、大如二李子一、

〔三代實録〕

〈七清和〉

p.0025 貞觀五年二月十九日壬子、自二十六日一至二十八日一、日初昇、白無レ光、月初出、赤如レ丹、今日並復レ舊、　八月十一日辛未、晨日無レ光、　十二日壬申、晨日無レ光、小選復レ本、

〔三代實録〕

〈十二清和〉

p.0026 貞觀八年閏三月十五日庚申、日出之時、營頭出レ室入二紫微宮一、色赤黄、

〔三代實録〕

〈二十二清和〉

p.0026 貞觀十四年九月十六日癸未、日赤無レ光、月宿二亢氐一、

〔三代實録〕

〈二十五清和〉

p.0026 貞觀十六年四月十八日丙申、申時日赤無レ光、

〔三代實録〕

〈二十七清和〉

p.0026 貞觀十七年六月三日甲寅、日少レ光、星月並晝見、

〔三代實録〕

〈二十八清和〉

p.0026 貞觀十八年正月三日辛巳、日色變レ赤、西京三條、降レ霧陰蒙、往還之人、不レ辨二其形一、須 開霽、日色復レ常、

〔三代實録〕

〈四十七光孝〉

p.0026 仁和元年正月十六日壬申、是日自レ未至レ申、日上有レ氣向レ外、其體如二張弓一、長二丈許、五月廿二日丙午、酉時日色變黒、光散如レ射、

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

p.0026 昌泰元年四月十九日戊午、日色黄而無レ光、一刻之後、其色如レ血、只無二光耀一、遂沒二西山一、日在二畢度一、

〔扶桑略記〕

〈二十四裏書醍醐〉

p.0026 延喜十九年七月五日庚午、酉刻日色赤黒、其光不レ明、延長八年五月廿四日丁亥、如レ虹色繞レ日、

〔扶桑略記〕

〈二十六村上〉

p.0026 天徳四年十一月十七日癸丑、日自二辰初一薄蝕、色赤而無レ光、至二午四刻一復、

〔日本紀略〕

〈六圓融〉

p.0026 貞元元年六月四日己亥、辰刻日廻動、變レ色數度、

〔小右記〕

p.0026 寛弘二年二月十八日丙申、去十六日、日欲レ入之間、其色如レ火、月出間、其色相同、乍レ驚問二遣奉平宿禰一云、雲陰掩所レ見也者、昨日、日又如二一昨一、今日又同、仍重問二奉平宿禰一、答云、連日連夜有二此事一、誠可レ爲レ變、明日可二上奏一者、

〔扶桑略記〕

〈三十白河〉

p.0026 應徳二年四月廿三日、申時薄蝕、日色如レ血、无レ光入レ山、　三年正月十三日戊申、申刻日色赤如レ朱、全以无二光氣一矣、

〔吾妻鏡〕

〈十四〉

p.0026 建久五年三月十六日丁丑、巳刻自二若宮一令レ還給、而朝日無レ光、偏如レ蝕、是敢非二煙霞之掩映一、

p.0027 又煩二國領一之由依二聞食一、宜レ令二停止一之旨被二仰下一云云、

〔吾妻鏡〕

〈三十一〉

p.0027 嘉禎三年四月廿二日癸卯、天晴、申刻日色赤如レ蝕、　廿三日甲辰、今日自二午刻二點一至二酉刻三點一如二日色蝕一、將軍家〈◯藤原頼經〉大被二驚思食一、召二司天之輩一、出二御寢所車御壺一、直有二御尋一、泰貞、晴賢、廣經、晴貞、資俊等朝臣申云、雖レ非二普通一、雲靄引掩去時、傾二西山一日之色赤如レ此、強不レ可レ處二變異一、但旱 兆歟云云、宣賢申云、何年無レ春、何春無レ霞、若被レ映レ霞、霞者年々可レ有二此變一歟、則建久被レ定二薄蝕一之間、被レ載二仁王會咒願文一云云、同夜丑刻月光黄色也云云、　廿四日乙巳、昨日日光事、親職朝臣令レ奉二薄蝕勘文一、非二天變一之由申輩多之、　五月十九日己巳、定員自二京都一歸參、去月廿二三四日間、日色事、洛中怪レ之、　廿三日、日色赤、依レ有二石清水行幸一、無二其沙汰一、翌日天文道〈季尚、良光、業經、〉天變之旨、令二奏聞一之由於二御前一申、　廿九日己卯、去月廿三日、日月共赤黄事、陰陽頭惟範朝臣薄蝕之由、自二京都一申レ之、宣賢申状符二合之一、仍爲二主計頭師員朝臣奉行一、可レ勤二仕日曜祭一之由被レ仰、此外無二御祈一、將又季尚朝臣申云、被レ映レ霞日色赤黄定習也、且建久資元晴光等雖レ申二薄蝕之由一、季弘朝臣更非レ變之旨申レ之、

〔百練抄〕

〈十五後嵯峨〉

p.0027 寛元三年三月五日庚子、酉始許、日無二光芒一云々、或依二紅霞引覆一如レ此云々、或薄色歟云云、

〔花徑樵話〕

〈二天〉

p.0027 日色如レ血
鈴木寄松〈通稱米屋平、大坂ノ人、〉ガ征途隨筆卷之七(　ニ)云、四月十二日〈天保四癸巳年〉此(　ノ)ヒト日二日空ノ氣色常ナラズ、曇ルニモアラズ霽ルヽニモアラズ、終日朦朧トシテ蝕スルゴトク、夜ハ月色光彩ナク、恰モ臙脂ヲソヽグニ似タリ、今朝トク麴町ニユク事アリテ、日比谷門外ヲ過グ、朝輝應ニ昇ントシテ赫々タリ、顧ルニ日輪朱ヲ施スガ如ク、シカモ光芒ノ目ヲ射ルナシ、其異ナル、人ミナアヤシム、或ハコレヲ天變トイフ、其然ルヤ否ヲシラズトアリ、士由〈◯大屋〉云、此レ東武ニテノコトナリ、果シテ此年奧羽米穀不登ニシテ、其荒關八州、甲、信、諸越ニ及ブ、嘗聞天明三癸卯年正月元日、皆既ノ日食

p.0028 アリテ忽黒暗、毎戸燭ヲ秉ル、蓋黒暗ノ景甚ダスサマジク、常ニ異ナリシニ、又春初ヨリ出沒ノ日色如レ丹、外ニモ種々ノ異アリケレバ、仙峯院了堅〈奧州安積郡日和田驛ノ修驗、則今ノ了堅ノ祖父也、〉預メ荒飢ノ徴ナルコトヲ知リテ、兼テ其備アリテ、院内人多カリシカド、其愁ヒヲ免カレタリシト、其子了天法印語リキ、又天保八酉四月十二日、士由發二二本松縣城一、行二福島治下一、到二郷目村一、日既晡後、時見二西山落日一赤如レ血、蓋光彩未レ失矣、又翌十三日在二同治下一、亦見二落暉一、則赤如レ丹、失レ光似レ銅矣、又同十四日、尚在二同治下一、夙起望二東方一、煙嵐頗深、群峯連岳皆沒、不レ見二些子之日光一、然東方天、煙嵐悉赭然如二赤幔一、而到二日暮一亦復然、雖二親不一レ見二其日一、其色赤果可レ知耳、〈予客中日録〉

日暈

〔倭名類聚抄〕

〈一景宿〉

p.0028 暈　郭知玄切韻云、暈氣繞二日月一也、音運、〈此間云、日月加左、〉辨色立成云、月院也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈一景宿〉

p.0028 新撰字鏡、晛、訓二比乃加佐一者即是、按睍、毛詩傳訓二日氣也一、日氣者、謂三日出有二温氣一也、昌住誤二會日氣一、爲二日旁氣一、故訓二比乃加佐一也、凡新撰字鏡所レ訓不二允當一、多此類、今引レ之者、以證二源君所レ訓倭名一耳、至二其所レ訓當否一、予別有レ書、故下條引レ之、不二一々煩論一、賀佐、又見二夫木集一、按、賀佐、笠也、言日月之有レ暈、猶二人戴レ笠之状一也、月院之名未レ聞、〈◯中略〉郭知玄拾遺緒正陸法言切韻、更以レ朱箋二三百字一、見二廣韻卷首一、見在書目録云、切韻五卷、郭知玄撰、今無二傳本一、釋名暈棬也、氣在レ外棬二結之一也、日月倶然、即此義、按説文無二暈字一、有二暉字一、又有二煇字一、並訓二光也一、轉注爲二日旁氣一、周禮眂祲、掌二十煇之法一、鄭司農曰、煇謂二日光氣一也、漢書天文志注、如淳曰、暈讀曰レ運、呂氏春秋明理篇、有二煇珥一、注、煇讀爲二君國子民之君一、氣圍二繞日一、周匝有レ似二軍營相圍守一、故曰レ煇也、後人或變作レ暈、以別二輝光字一也、

〔類聚名義抄〕

〈二日〉

p.0028 暈〈音運、日月ノカサ、〉

〔和漢三才圖會〕

〈三天象〉

p.0028 暈(かさ)〈音運〉〈和名加佐〉　按、暈日月傍氣也、有二輪光一而如レ笠、將二風雨一時生レ暈、如月暈内無レ星則雨、有レ星不レ雨、万寶全書云、日生レ暈有レ雨、月生レ暈主レ風、更看二何方缺一、風從二缺方一來、　天文書云、暈乃空中之氣、直逼二日月之光一、圍抱成レ環、有二缺者、團者、抱者、背者、厚者、薄者一、皆是氣所二注射一也、月暈者必在二中天一、必

p.0029 在二望之前後上下弦内一、晦朔則無レ暈矣、然欲二風雨一月方吸二其雲氣一、而光所レ射以爲レ暈也、故暈氣漸稠而黒者雨徴也、有二忽然去一邊者一、全去者晴徴也、然有三見與二不レ見之地一、

〔續日本紀〕

〈八元正〉

p.0029 養老五年二月癸巳、日暈如二白虹貫一、暈南北有レ珥、因召二見左右大辨及八省卿等於殿前一、詔曰、朕徳菲薄、導レ民不レ明、夙興以求、夜寐以思、身居二紫宮一、心在二黔首一、無レ委二卿等一、何化二天下一、國家之事、有レ益二萬機一、必可二奏聞一、如有レ不レ納、重爲二極諌一、汝無三面從退有二後言一、

〔三代實録〕

〈二十四清和〉

p.0029 貞觀十五年十月廿日辛亥、時加レ辰、日重レ暈、左右有レ珥、其下雲氣如レ龍、

〔三代實録〕

〈二十五清和〉

p.0029 貞觀十六年四月七日乙未、時加レ未、日有二重暈一、白虹貫レ日、即日在レ胃、天文書曰、日月暈氣者、三日以内有二陰雨一、則其災消而不レ成、　八日丙申、暴雨然則可レ謂二災消一、

〔三代實録〕

〈二十七清和〉

p.0029 貞觀十七年正月廿一日乙巳、是日巳時日暈、　廿三日丁未、酉時日暈而有レ珥、

〔三代實録〕

〈三十九陽成〉

p.0029 元慶五年五月十六日癸亥、午時日有二二重暈一、内黒外赤、

〔本朝世紀〕

p.0029 久安三年四月廿日癸丑、今日巳刻日有レ暈、其色黒體、甚厚密也、

〔吾妻鏡〕

〈三十三〉

p.0029 暦仁二年〈◯延應元年〉三月五日乙亥、京都去月十一日巳刻、有二日暈變一、密奏之輩、申状不同之間、兩度召二勘文一之上、菅大藏卿爲長、清大外記頼尚等及二勘状一、其状等今日到來、於二御前一師員朝臣讀二申之一、天文道忠尚、良元、季尚等朝臣申二重暈之由一、家氏申二交暈之旨一、晴繼申二白虹貫レ日之由一云云、大藏卿引二後漢書文一、假二郞顗之詞一、暈即虹也、大略白虹旨委細勘レ之、大外記者、暈虹先例、本文勘進許也、　十五日乙酉、司天輩依レ召皆參、二月十一日天變事、被レ下二京都勘文一、各可レ申二存知旨一之由被二仰出一、維範、泰貞、晴賢等一同申二重暈之由一、師員朝臣申云、晴繼朝臣勘文載二白虹一之旨尤甘心、本文分明也云云、

〔吾妻鏡〕

〈五十〉

p.0029 文應二年〈◯弘長元年〉四月廿八日己未、天晴、入レ夜雨降、今日午刻暈見、其色青黄赤白也、

〔甲子夜話〕

〈五〉

p.0029 或人書ヲ贈テ曰、コノ正月〈◯文政五年〉廿一日巳刻頃太陽ニ暈アリ、五彩ヲ成シ、ソノ暈ハ輪違ノ如キ形ナリシトゾ、ヤガテ白虹出テ日ヲ貫シト云コト、大分觀シ者アリ、〈◯中略〉輪違ノ如キ

p.0030 暈ト云モノ、乃交暈歟ト、此コト予〈◯松浦清〉ハ知ラザリシガ、予ガ邸内ニモ觀シ者多シ、其始メハ五ツ半頃、天色朦朧タル中、日光コモリテ見ユ、其傍ニ餘程ヘダヽリテ、又日光ノ如ク小キ光ノコモリタル見ヘシガ、四ツ前頃、又朦朧ノ中光明ハナケレドモ、日象隱翳ヲ隔テヨク見ユ、其少シ傍ニ下リテ、月輪ノ如キモノ亦掩中ニ見ユ、夫ヨリ九ツ半頃、暈至大ニシテ二ツ、上下ニ輪違ノ如クアリケル、日輪ハ何クニ在ケン心ツカザリシト、八ツ半頃、日輪赫々ト耀キ、餘ホドワキニ白キ暈、殊ニ大キク見エシト、カヽレバ朝ヨリ晝ヲ過ルマデ、次第ニ其象ヲ變ゼシナルベシ、

〔萬寶鄙事記〕

〈六占天氣〉

p.0030 暈(かさ)　日のかさは雨、夕日のかさも雨、又朝日にかさありて、やうやくきゆるときは晴、　日のかさ青赤は大風、赤きは旱、白は風雨、黒きは大水、紫は大旱、

日珥

〔續日本紀〕

〈三十七桓武〉

p.0030 延暦元年十一月辛卯、有レ光挾レ日、其形圓而色似レ虹、日上復有レ光向レ日、長可二二丈一、

〔日本後紀〕

〈二十一嵯峨〉

p.0030 弘仁二年閏十二月己亥、日抱レ翼、

〔三代實録〕

〈十四清和〉

p.0030 貞觀九年十一月卅日乙丑、日上有レ冠、左右成レ珥、色黄白、

〔三代實録〕

〈二十七清和〉

p.0030 貞觀十七年二月十七日辛未、日有二冠纓一宿レ奎、

〔三代實録〕

〈四十四陽成〉

p.0030 元慶七年七月廿六日庚寅、申時日右有レ珥、上下有二白雲一、日即宿レ翼、　廿七日辛卯、申時日左右有レ珥、其下雲氣、形如二龍馬一、　八年正月廿三日乙酉、日有レ冠、右有レ珥、色黄、左有二白虹一向レ日、是名二日抱一、　廿四日丙戌、自レ辰至レ巳、日有レ冠、左右有レ珥、色白、即日宿レ危、

〔三代實録〕

〈四十九光孝〉

p.0030 仁和二年正月廿八日戊申、申時日右有レ珥、　二月五日乙卯、是日辰時、日上有レ冠、左右成レ珥、　十四日甲子、辰時日有二冠纓一、其色黄白、日即宿レ奎、

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

p.0030 延喜十五年七月五日甲子、巳二刻日無レ暉、其形似レ月、時人無レ不二奇怪一、

〔扶桑略記〕

〈二十四醍醐〉

p.0030 延長六年二月十一日、巳時白珥抱レ日、

〔日本紀略〕

〈四村上〉

p.0030 康保二年二月廿七日戊辰、出羽國言上、正月八日未時、日之左右有二兩耀一、即虹貫レ之、又

p.0031 有二白虹一、分二立東西一、仍下二陰陽寮一令レ占レ之、

〔吾妻鏡〕

〈三十三〉

p.0031 暦仁二年〈◯延應元年〉十月廿日丙辰、午刻陰陽師廣經參二御所一、今日巳刻、日有二兩珥一之由申之、作二進繪圖一、兵庫頭爲二申次一持二參御前一云云、　廿一日丁巳、昨日廣經注進變異事、被レ問二司天輩一、維範朝臣申云、暈虹若二日月蝕之時一、於レ令二出現一者、以二其次一可二勘申一也、以二珥計一及二奏聞一事、於二京都一未レ覺二悟之一云云、

〔吾妻鏡〕

〈四十二〉

p.0031 建長四年十二月十六日丙寅、辰刻日南北西有レ珥、六尺去レ之皆在レ西、色青赤白之由、司天等申レ之云云、

〔萬寶鄙事記〕

〈六占天氣〉

p.0031 日〈◯中略〉　日に耳あるに、南にあるは晴、北にあるは雨、兩方に耳ある時は雨なし、又耳ながくして下へたるヽは久しく晴なり、〈◯中略〉　朝日に珥(みヽ)あるは狂風ふく、夕日に耳ある時は明る日雨、

雜載

〔古事記〕

〈上〉

p.0031 此八千矛神、將レ婚二高志國之沼河比賣一幸行之時、〈◯中略〉沼河日賣未レ開レ戸、自レ内歌曰、〈◯中略〉阿遠夜麻邇(アヲヤマニ)、比賀迦久良婆(ヒガカクラバ)、奴婆多麻能(ヌバタマノ)、用波伊傳那牟(ヨハイデナム)、阿佐比(アサヒ/○○○)能(ノ)、惠美佐迦延岐氐(ヱミサカエキテ)、〈◯下略〉

〔日本書紀〕

〈三神武〉

p.0031 戊午年四月甲辰、皇師勒レ兵、〈◯中略〉欲下東踰二膽駒山一而入中中洲一、時長髓彦聞レ之曰、夫天神子等、所二以來一者、必將レ奪二我國一、則盡起二屬兵一、徼二之於孔舍衞坂一與レ之會戰、有二流矢一中二五瀬命肱脛一、皇師不レ能二進戰一、天皇憂レ之、乃運二神策於沖衿一曰、今我是日神子孫、而向レ日征レ虜此逆二天道一也、不レ若下退還示レ弱禮二祭神祇一、背負二日神之威一、隨レ影壓躡上、如レ此則曾不レ血レ刃、虜必自敗矣、僉曰然、於レ是令二軍中一曰、且停勿二復進一、乃引レ軍還、

〔古事記〕

〈下雄略〉

p.0031 初大后坐二日下一之時、自二日下之直越道一、幸二行河内一、〈◯中略〉於レ是若日下部王、令レ奏二天皇一、背レ日幸行之事甚恐、故己直參上而仕奉、

〔萬葉集〕

〈十夏相聞〉

p.0031 寄レ日
六月之(ミナヅキノ)、地副割而(ツチサヘサケテ)、照日爾毛(テルヒニモ)、吾袖將乾哉(ワガソデヒメヤ)、於君(キミニ)不相(アハズ)四手(シテ)、

〔枕草子〕

〈十〉

p.0031 日は　入日、いりはてぬる山際に、光りの猶とまりてあかう見ゆるに、うすきばみたる

p.0032 雲のたなびきたる、いとあはれなり、

〔萬寶鄙事記〕

〈六占天氣〉

p.0032 日　雨と晴とをしるには、先曉の天氣と日の出る時をうかヾふべし、日の出るとき赤きは風、黒きは雨、青白きは風雨としるべし、又日の出るときはれて、やがて陰りて晴ざるは風雨となる、連日の陰雨の後、日出て早く晴るはかへつて雨ふる、朝曇りてやう〳〵をそく晴るは晴、さて又明日の日和は、今晩の日の沒とき見るべし、日沒に照ば晴る、雲の中に日入ば、夜半の後にあめ、あるひは明日かならず雨ふる、日入て後、やうやく紅粉のごとくにして、やがて色かはるは風もしくは雨ふる、日の入とき雲あかけれ共、其色かはらず、漸うすくなりてきゆるはよし、黒雲日の入につヾくは明日天氣よからず、西に黒雲あれども、日のいる時雲なく日のかたち見えて、日雲外に入れば雲はれて明日も晴る、日のいろ黄なるは風〈◯中略〉　赤き雲氣日の上下に有時は、大風いさごをあぐ、但し色變ぜずして、やうやくうすくなるときは、晴て又風もふかず、白氣日月の上下にひろくしくは、三日の内に惡風雨有、
◯

日蝕

〔倭名類聚抄〕

〈一景宿〉

p.0032 蝕　釋名云、日月虧曰レ蝕、音食、稍小浸虧、如三虫食二草木葉一、故字從二虫食一也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈一景宿〉

p.0032 按、日本紀、蝕訓二八江一、當二是古訓一、蓋源君之時、人皆音讀、不下以二國訓一呼上、故此不レ載レ訓、羅古訓二宇須毛乃一、或訓二宇須波多一、樽、古訓二多利一、本書並不レ載レ訓、皆此例也、〈◯中略〉原書、今本蝕作レ食、玄應一切經音義再引、及廣韻引、並作レ蝕、與レ此合、按、説文、 敗創也、又云、食一米也、二字不レ同、此作レ蝕正字、作レ食假借也、原書今本稍小作二稍稍一、廣韻引作二稍小一、與レ此合、下總本、浸作レ侵、與二原書一合、按、説文、有レ侵無レ浸、史記孝武本紀、文選上林賦、風賦、浸淫字皆作二侵淫一、知浸即俗侵字、連二下字一變レ人從レ水也、古書或借レ濅爲二侵淫之侵一、因謂二浸淫之浸、即説文濅字之省一、非レ是、原書無二故字從虫食五字一、按、説文、 从二虫人食一、然則作レ蝕隷省耳、此云三字從二虫食一者、非二古義一、是五字恐非二劉熙原文一、

〔類聚名義抄〕

〈八食〉

p.0033 蝕〈時力切、音食、日月蝕也、クヲフ、ヤフル、ムシクフ、〉

〔和爾雅〕

〈一天文〉

p.0033 日蝕(ニツシヨク)〈日食同〉

〔和漢三才圖會〕

〈一天〉

p.0033 日蝕(につそく/ジツジツ)〈和名波惠〉　〈朔、二日、三日、限二此三箇日一、〉　〈日月虧曰レ蝕、稍小侵虧如三蟲食二草木之葉一也、〉日天高、月天低、而常異二其行道一、至二毎朔一則日月同二經緯一、而相値則月在レ下、而隔二掩日光一、故日失レ光、相離則復レ元、日蝕入二陰暦一、則初虧二西北一、甚二於正北一、復二於東北一入二陽暦一、則初虧二西南一、甚二正南一、復二於東南一、〈如日蝕陰侵レ陽、臣掩レ君之象、或大水、如日蝕見レ星、有二弑レ君天下分裂一、〉

〔倭訓栞〕

〈前編二十四波〉

p.0033 はゑ　日本紀に蝕字を訓ぜり、日月の蝕は、虫の木葉を食ふごとくなれば、食餌(ハムヱ)の義なるべし、俗にゑばみといふがごとし、日蝕月蝕に禁裏御坐の間を包みまゐらする事、御湯殿の記に見えたり、舶來の品に兩蝕儀あり、

〔比古婆衣〕

〈二〉

p.0033 月日の蝕をはえといふ由　近き頃となりて、古事しのぶともがら、日月の蝕といふことになれるを、古はハヱといへりと心えて、文などにものすめり、されど和名抄にも蝕字の下に和名を載られず、其外古き書どもの訓にも、をさ〳〵見あたらず、たヾ書紀の古訓に、推古三十六年三月丁未朔戊申、日有二蝕盡一之とある蝕盡を、ハヱツキタルコトと訓み、舒明八年正月壬辰朔、日蝕之とある蝕を、ハヱタリと訓み、〈次に九年三月乙酉朔丙戌、日蝕之とあるところの訓も同じ、〉皇極二年五月乙丑、〈十六日〉月有レ蝕之とある蝕をも、ハヱタルコトとよみ、又天武九年十一月壬申朔、日蝕之とみえたるところには、ハヱタリと訓り、是ぞ其ハエといへる言の書に見えたる始なるべき、さて其蝕をハエと云へるは、日月の光映の翳る丶を忌て、反さまに映(ハエ)と云なしたるにて、死を奈保留、病を夜須美、葦を與志など云ふと同じ例なるべし、但し映の意ならむには、假字ハエなるべきを、此に擧たる推古紀などにハヱと作るかたは誤寫にて、天武紀にハエと書事ぞよろしかるべき、〈すべて書紀の假字は、古の私紀どもに據れりとみえて、古書のめでたきがあれど、假字づかひの違ひたるも交れるは、後人の作ひがめたるものなり、其義を考へて訂し用るべきなり、〉さて推古紀なる日有二蝕

p.0034 盡一之を、ハヱツキタルコトアリと訓るは、ハエを蝕の名として、其ハエの殘りなく、か丶りたる由なり、但しこは字にすがりて訓る詞なれば、よくは當らず、字をはなれては、ノコリナクハエタリなど訓むべきなり、或人此説をき丶て因に問ふ、天地定位たる後は、今の定のごとく、かならず日月の蝕あるべきを、上世はいまださる理を窺測り知るべきに非ざれば、人皆のいかに怪み畏れたりけむ、そは既くより賢々しく物の理を測りごつ漢人すら、なほ古くは天の變異として畏れたりげにきこえたり、然るに書紀のいと上御代の卷々に、一度も此事を記されずして、推古天皇の御世に及て、載始められたるはいかならむ、答けらく、後世のごとく天學推歩の術明かになりたる上の意のみになりておもへば、いはれたるがごとし、然れど説れたるごとく、天地定位たる後は、かならず蝕ありぬべければ、世々の人皆おのづから見知りをりて、さらに怪しとも畏しともおもふべきにあらず、またことさらに蝕の事をいふ名もなくてぞあり經にけむ、〈上古の人はおほらかなりければ、後の世にあはせては、おのづから詞もすくなくなむ、また無用に物に名つくる事などは、をさ〳〵あるべからず、古意を得て悟るべし、〉今の世にても、いと邊土なるものなどには、然おもひとりてあるも多かめり、其はいづれの國にても、上〈ツ〉世には、なべてしかありけむを、漢國にては世を治る謀に天變なりとして、畏れがほに神祭などして、人をおもむけむともしたりけるが、〈漢籍に古く書に記せるは、春秋の始、隱公三年に、二月己巳日有レ食之と書たるを始にて度々に記せり、其中に文公十五年六月辛丑朔、日有レ食之、鼔用二于社一と、書せる下の左氏傳に、日有レ食之、天子不レ擧、伐二鼔于社一、諸侯用二幣于社一、伐二鼔于朝一、以昭レ事レ神、訓二民事一レ君、示レ有二等威一、古之道也、〉後に推歩の術もて豫て窺測り知る世となりても、猶むかしの例に因准て、史にも書載る例となれりとぞきこえたる、〈漢國にては、後漢の世の末より、日月の蝕を推考る法始りて、漸に精密くなれりとぞ、〉皇國にても推古天皇の紀より始て、日蝕ををり〳〵載られたるは、此御代より始て、漢國の暦を用ひ給ひけるによりて、かねて蝕をも推考て、かの國風をまねびて、書記(ト)め置つるふみの遺りたりけるを、彼國の史に例ひてものせられたるなるべし、〈◯中略〉そもそも日月の蝕を忌む事は、もとより古傳にあらず、何の故實もなきいとはかなきならはしなる

p.0035 ものから、その光の翳る丶を見て忌々しげにおもはる丶も、なべての人の眞情なれば、おほかたの世のならひのま丶に、事によりてはその日其夜を避て、ものするもよかるべきなり、

〔兩部神道口决抄〕

〈一〉

p.0035 日蝕月蝕、釋教ニハ帝釋ト修羅ト鬪諍シ、修羅敗北ノ時逃隱ル處ロ見ザラシメンガタメ、日月ヲ晦クスト云云、五儒ニテハ、月ハ水ニシテ元來光リ無シ、日ノ光リヲ請テ以テ照ル、十五日ニ至テ日月相對スルノ時、地球隔テ日ノ光リ月ニ遷ラズ、月缺テ月蝕ト云フ、故ニ月蝕ハ十五日ニ限リ、日蝕ノ事、朔日ハ日月同時ニ出テ同時ニ入ル、日ハ遠ク月近ク、日ノ前ニ月重リ、月輪日ヲ隔テ日光缺、是ヲ日蝕ト號ス、故ニ日蝕ハ朔日ニ限レリ、修羅ノ敗軍ハ朔日十五日ニ窮ルヤ否ヤ、然モ吾儒ハ何時何刻何分ナン釐何毛缺ルコトヲ、百歳ノ前ヨリモ知ル、桑門ノ面々此事如何トスルヤ、釋教ノ虚妄ヲ可レ知、

〔玉勝間〕

〈十四〉

p.0035 日食　月食　もろこしの聖人、日食月食のゆゑをだにえはかりしらで、わざはひとしたるもをかし、

〔塵袋〕

〈一〉

p.0035 一薄蝕(○○)ト云フハ何ナル蝕ゾ
京房ガ易ノ飛候白曰、凡日蝕皆於二晦朔一、不レ於レ朔者、名曰レ薄ト云ヘリ、ウスキニハ非ル歟、

〔和漢三才圖會〕

〈一天〉

p.0035 陽暦(やうれき/○○)、陰暦(ゐんれき/○○)、　日蝕、南陽暦、北陰暦、　月蝕、北陽暦、南陰暦、【帶蝕】(たいしよく)　〈有二日月出入時一、謂二之帶蝕一、〉　〈日帶蝕(○○○)將レ復在レ東、漸虧在レ西、月帶蝕(○○○)將レ復在レ西、漸虧在レ東、〉又有二正交、中交、相交等數品一、　凡月蝕分天下皆同、而日蝕分隨二東西南北地一在レ異、故有下不二全見一レ蝕地上、　如二日蝕一有二陽暦一、則日北月南、故南方人所レ睹直而蝕分多、北方人所レ睹略齟齬而蝕分少、或無レ之、故年中月蝕多有、而日蝕少、　按、日行不レ出二二黄道外一、其間四十七度太、〈中間爲二赤道一、春秋二分道、〉冬至行二南黄道一、漸北經二十日一、過二二度六分餘一、〈百八十日〉欵(イタリ)二夏至一行二北黄道一、月行有二九道一、〈見二于前圖一〉有レ出二於黄道外六度許一而有二遲速一、故與レ日常異レ道、〈朔初二初三日〉相會時偶中二于同緯一、時月在二日正下一蔽也、人在二其下一覩レ之、故日光暫昏爲二之日蝕一、相離則隨日光見、謂二之復一、　月望前後〈十四、十五、十六日也、〉與レ日相對、

p.0036 日在二地下一、月在レ天、偶中二同緯一、時地所レ障而月失レ光、爲二之月蝕一、相離則月光見、謂二之復一、皆因二暦筭一考二知未來蝕分一、而分釐不レ差、然浮屠氏以爲下帝釋與二修羅一之戰上、或爲二日月之病惱一者共可レ笑、

〔暦林問答集〕

〈上〉

p.0036 釋二日月蝕一第二十
或問、日月蝕何也、答曰、蝕者雖レ多レ説、今暦家法、周天之位三百六十五度二十五分半也、二十八宿行度亦同、故天以二二十八宿一爲レ體、則二曜五星、皆行二二十八宿之度一、晦朔之間、月及二於日一、與レ日相會、而正爲レ朔、凡日月一歳十二會也、於レ是君之政、急則日行疾、緩則日行遲、有二疾遲一失二其常度一則日蝕、蝕者日月同レ道、而月揜レ日而相重之時、現二虧蝕一、故日蝕則陰侵レ陽、臣凌レ君之象也、王者修レ徳行レ政、用レ賢去レ姧、則月當二避不一レ蝕也、張氏曰、春秋云、五星潜在二日下一、禦レ侮言レ之乎、又月與レ日相對、則月光正滿、而爲二日月正對衝一、而日光遙奪二月光一、則有二月蝕一、又云、月之側有二靈雲一、謂二之闇虚一、當レ月則月蝕、當レ星則星亡、月蝕者陽侵レ陰之象也、董仲舒云、月后妃大臣諸侯之象也、故月蝕修レ刑以攘レ災也、

〔寛政暦書〕

〈十二日食暦理〉

p.0036 太陽食限　日食之限、不レ同二於月食一、月食惟以二太陰地影一、兩視半徑相併之數、當二黄白二道之距緯一、推二距交之經度一即爲二食限一、日食因レ有二高下差一、其距緯度、隨レ地隨レ時不レ同、故太陽太陰、兩視半徑、不レ能レ定二食限一也、太陽最大視半徑二十七分二十九秒一十一微、太陰最大視半徑二十七分九十九秒四十五微、相併得五十五分二十八秒五十六微、與二最大高下差一度零二分四十零秒七十七微一相加、得二一度五十七分六十九秒三十三微一、以二此數一當二距緯一、用二最小黄白大距四度九十九分三十一秒一、求得二距交一、白道經度一十八度四十三分爲二黄道之北實朔可レ食之限一、又以二太陽太陰最大視半徑相併數一當二距緯一、用二最小黄白大距一求得二距交一、白道經度六度三十七分爲二黄道之南實朔可レ食之限一、而在二黄道之北一者必食、在二黄道之南一者或食或不レ食、在二黄道之北一者亦非二普天之下一皆見レ食、但必有二見レ食之地一耳、蓋視差因二居地之南北一而殊、而距緯又因二實緯之南北一而異、故食限不レ可二一概而論一也、今依二前法一求二得黄道之北實朔可レ食之限、及黄道之南實朔可レ食之限一、各加二實朔距平朔之行〈求二實朔距平朔之行一法、詳二太陰食限篇一、〉二度五十

p.0037 二分四十四秒一、得二黄道之北平朔之限二十零度九十五分一、黄道之南平朔之限得二八度八十八分一、〈共止二分位一〉要レ之視差之故多端、食限不レ過レ得、其大概欲レ定二食之有無一、必按レ法求三得本地本時距緯度與二太陽太陰兩視半徑一相較、若兩視半徑相併之數、大二於距緯一者爲レ有レ食、小二於距緯一者爲レ不レ食也、

〔新考日食三法〕

〈一〉

p.0037 日食三法附言　日食法、支那ニ正法ナシ、其コレアルハ、歐羅巴ノ暦入テヨリシテ始ル、而シテ歐羅巴之法、亦古粗今密ニシテ、漸ヲ以テ精ヲ盡シ、暦象考成後編ニ至テ精巧極ル、其法、條理貫通シテ論ズベキモノナシ、然ドモ人其布算ノ繁雜ニ苦シム、是ニ於テ予〈◯高橋至時子春〉考索シテ、日食法數條ヲ設ケ得タリ、今其稿ヲ脱スルモノ、白道新法、及ビ赤道法ノ二條ヲ繕寫シテ、予ニ求ムル二三子ニ授ク、二法ノ趣キ異ナリト雖ドモ、理ハ一ナリ、其東西南北ノ二視差ヲ求ムルニ、舊法ハ、黄道高弧交角及白道高弧交角太陰高弧ヲ求メ、〈是暦象考成上下編之法〉或ハ赤經高弧交角及白經高弧交角太陰距天頂ヲ求メテ〈是暦象考成後編之法〉以テ二視差ニ求メ至ル、今一切ニ削リ去テ、東西南北ノ原數法數ヲ立テ、以テ逕チニ二視差ヲ得ル、舊法ニ比スルニ、エカヲ省クコト數倍ナリ、簡捷トス、〈◯中略〉　支那往古ノ日月食ヲ推スガ爲ニ、消長法ト倶ニ簡法ヲ設ケ、前二法ヲ併セテ三法トス、歴史載ル所、多ク食甚ノ分、及時刻而已、且ツ其數亦未ダ必密ナラジ、故ニ易簡ヲ要シテ、初復ノ法ヲ略ス、二視差ヲ求ル法、又舊法ヲ取ル、コレ食甚一條ヲ求ムルニ至テハ、前ノ二法ヲ用ルモ、簡迂甚異ナラザルニヨル、但赤經高弧交角ヲ求ル別法ヲ設テ之ヲ記ス、若夫レ歴史中初復ノ測數備ハルモノハ、宜シク前法ヲ撰ミ用ユベシ、

〔令義解〕

〈六儀制〉

p.0037 凡太陽虧、有司預奏、〈謂太陽者日也、虧者、薄蝕也、有司者、陰陽寮也、〉皇帝不レ視レ事、百官各守二本司一不レ理レ務、過レ時乃罷、〈謂不レ視レ事者、不レ聞二政事一、過レ時乃罷者、假令日蝕在レ申者、酉時得レ罷、是爲二過レ時罷一也、〉

〔令集解〕

〈二十八儀制〉

p.0037 跡云、預奏下計二日度數一預知中可二日蝕一之日上也、朱云、太陽虧、謂日蝕也、不レ云二月虧一也、有司預奏者、陰陽寮直奏也、不レ可レ經二中務及太政官一者何、穴云、有司預奏、官亦預須レ告二諸司一、或云、師云、不レ申二中

p.0038 務太政官一、而經レ寮奏耳、〈在レ穴〉

〔延喜式〕

〈十一太政官〉

p.0038 凡大陽虧者、陰陽寮預申二中務省一、省録申レ官、即少納言奏聞訖、官告二知諸司一、

〔延喜式〕

〈十六陰陽〉

p.0038 凡太陽虧者、暦博士、預正月一日申二送寮一、寮前レ蝕八日以前申二送於省一、

〔禁祕御抄〕

〈下〉

p.0038 日月蝕　主上當二日月蝕一之時、御愼殊重、〈日五、十四、廿三、不レ輕、卅二、四十一、五十、已上可レ愼、月八、十七、廿六、卅五、四十四、五十三、同レ上、〉不レ然年非レ輕、天子殊不レ當二其光一、雖二蝕以前以後一、不レ當二其夜光一、日月惟同、以レ席裹二廻御殿一、如二供御一不レ當二其光一、日蝕未レ明前、月蝕未レ暮前、〈月不レ出前〉人々可二參籠一、御持僧或他僧ニテモ奉二仕御修法一、其上於二御殿一有二御讀經一、近代多藥師經也、不可説、凡僧等參、上古可レ然僧參、不レ限二藥師經一、或法花經〈永長此御讀經被レ行二兼日一〉大般若經常事也、上卿一人著二弘廂一行レ之、有二出居堂童子一、引二廻席一之上、内引二軟障一、外席所衆引レ之、内藏人引レ之、近代或有二無レ何御遊一、昔不レ然、嘉保或記、日蝕止二音奏一、雨下稱二音奏一、又曰、凡日月蝕月内、猶不レ聞二食音樂一、〈在二宇治左大臣記一〉又止二行幸警蹕一、近代無二此儀一可レ尋、雨下時結二願御讀經一、撤二廻席一、但不レ上二御簾一、殊可レ有二御愼一事也、

〔禁祕御抄〕

〈下〉

p.0038 天文密奏
日月蝕、翌日奏、又同、

〔日本書紀〕

〈二十二推古〉

p.0038 三十六年三月戊申、〈◯二日〉日有二蝕盡一之(ハエツキタルコト)、

〔日本書紀〕

〈二十九天武〉

p.0038 八年十一月壬申朔、日蝕之、

〔續日本紀〕

〈三十四光仁〉

p.0038 寶龜八年二月壬子晦、日有レ蝕之、

〔續日本紀〕

〈四十桓武〉

p.0038 延暦八年正月甲辰朔、日有レ蝕之、

〔三代實録〕

〈二十四清和〉

p.0038 貞觀十五年七月癸亥朔、日蝕無レ光、虧昃如二月初生一、自レ午至レ未乃復、

〔三代實録〕

〈三十一陽成〉

p.0038 元慶元年四月壬申朔、夜丑一刻日有レ蝕之、虧初子三刻三分、復至二寅二刻一分一、皇帝不レ視レ事、百官不レ理レ務、不レ擧二常樂一、先レ是中務省預奏二陰陽寮所レ言、四月朔夜太陽虧之事一、詔命二明經紀傳明法等博士一、議二日蝕在レ夜廢務以否一、從五位上行大學博士兼越中守善淵朝臣永貞、從五位下行助教善

p.0039 淵朝臣愛成、從五位下善淵朝臣廣峯、勘解由次官從五位下兼行直講小野朝臣當岑、外從五位下美努連清名等議曰、春秋莊公十八年穀梁傳曰、王三月日有レ蝕之、不レ言レ日、不レ言レ朔、夜食也、何以知二其夜食一、曰、王者朝レ日、范寗注曰、王制云、天子玄冕而朝二日於東門之外一、故日始出而有二虧傷之處一、是以知二其夜食一也、何休曰、春秋不レ言二月食一、月者以二其無一レ形故闕レ疑、夜食何縁書乎、鄭君釋レ之曰、一日一夜合爲二一日一、今朔日日始出、其食有二虧傷之處一未レ復、故知此日以レ夜食、夜食則亦屬二前月之晦一、故穀梁子不レ爲レ疑、疏曰、玉藻云、天子朝二日於東門之外一、服二玄冕一、其諸侯則皮弁、以聽二朔於大廟一、與二天子禮一異也、其禮雖レ異、皆畢レ事、而昨夜有レ食、虧傷之處尚存、故知二夜食一也、徐邈云、夜食則星无レ光、張靖策癈疾云、立二八尺之木一、不レ見二其影一、並與二范意一異、據二此文一夜食在二前月晦一、則今月朔、不レ可二廢務一、故有二天子朝レ日之禮一、又禮記曰、曾子問曰、諸侯旅二見天子一、入レ門不レ得レ終レ禮、而廢者幾、孔子曰大廟火、日食、后之喪、雨霑レ服失レ容則廢、如諸侯皆在而日食、則從二天子一救レ日、各以二其方色一與二其丘一、注曰、示二奉レ時事有一レ所レ討也、方色者、東方衣色青、南方衣色赤、西方衣色白、北方衣色黒、據二此文一、行レ禮之間、太陽有レ虧、不レ得レ卒レ事、中途廢止、但此間之法、有司豫奏、與二古禮一意頗不二相同一、夫薄蝕者、國家之大忌也、經典所レ記、不レ別二晝夜一、以レ此尋レ此、雖二是夜蝕一、猶令二廢務一、文章博士從五位下兼行大内記越前介都宿禰良香議曰、案二經傳諸史一、太陽虧損、君避レ殿移レ時、百官廢務、自有二明文一、不レ煩二更載一、此謂二晝日之蝕一也、至二于夜食虧傷之理一、不レ見二避レ殿廢レ務之義一、但春秋穀梁傳莊公十八年、春王三月日有レ蝕之、不レ言レ日言二朔夜食一也、鄭君釋曰、一日一夜合爲二一日一、今朔日日始出、其食有二虧傷之處一未レ復、故知此日以レ夜食、夜食則亦屬二前月之晦一、謹按、一日一夜合爲二一日一、其食有二虧傷之處一、然則若食及復在二丑刻前一、食者當下屬二前月一、以爲二晦食一、晦日廢務上、若食及復在二子刻後一者、當下屬二來月一、以爲二朔食一、朔日廢務上、且如雖三食在二丑刻一、而虧傷之處、至二寅若卯一、未レ及二全復一、則晦朔兩日並須二廢務一、古之與レ今、其事各異、何者古之暦家、未レ知下豫推二日食一之術上、唯見二虧傷一、然後知レ食、設有二夜食一、不レ由レ得レ知、後代暦家、以レ術推レ理、豫知二食否一、毫毛不レ差、故唐開元禮云、太陽虧、有司豫奏二其日一、置二五穀五兵於大社一、皇帝不レ見レ事、百官各守二本司一不二理務一、過レ時乃罷、如二

p.0040 唐禮文一、不レ論二晝夜一、有司豫奏、今豫知二夜食一、豈得二以レ在レ夜不一レ救レ之乎、既能救レ之、豈得下准二平日一擧中政事上乎、然則不レ問二晝夜一、必當二廢務一、從五位下守大判事兼行明法博士櫻井田部連貞相、正六位上行左少史兼明法博士秦公直宗等議曰、儀制令曰、太陽虧、有司豫奏、皇帝不レ見レ事、百官各守二本司一不二理務一、過レ時乃罷、義解云、帝不レ見レ事者、不レ聽二政事一、過レ時乃罷者、假令日蝕在レ申者、酉時得レ罷、是爲二過レ時罷一也、公式令曰、京官皆開門前上、閉門後下、外官日出上、午後下、案二此等文一、殊擧二晝時一、不レ遑レ言レ夜、爲下其依二夜食一不上レ可二廢務一故也、今太陽隱去、夜漏既致レ臻、晝夜異レ名、爲レ政有レ時、而依二夜食一廢二晝政一、其文未レ明焉、問下暦博士、日夜食之時、有司豫可レ奏以否上、陰陽頭從五位下兼行暦博士越前權大掾家原朝臣卿好、外從五位下行陰陽權助弓削連是雄等言、天長八年四月一日夜、日有レ蝕之、有司豫不レ奏、朝廷問二其由一、暦博士外從五位下刀岐直淨濱言、陰陽寮壁書云、夜蝕不レ奏、故豫不レ奏、參議從三位行刑部卿兼下野守南淵朝臣弘貞、仰二陰陽寮一云、國家急務、何待二明朝一、雖レ當二夜食一、不レ可レ不レ奏、謹案、凡日月蝕者、是陰陽虧敗之象也、故日蝕修レ徳、月蝕修レ刑、經典所レ言、日食之可レ愼、不レ論二晝夜之有一レ別、又壁書所レ記、不レ見レ所レ據、寮式亦無二此文一、然則天長八年以往之例、事渉二疎漏一、理不レ可レ然、是以頃年、夜食豫申二送中務省一、行來漸久、如レ有二成式一、

〔扶桑略記〕

〈二十三醍醐〉

p.0040 寛平九年九月一日癸酉、太政官奏、可レ有二日蝕一、而日不レ蝕、律師聖寶御修法終罷二歸山一、召給二衾一條一、〈已上御記〉

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

p.0040 寛平九年九月一日癸酉、日蝕、諸司廢務、昌泰二年二月一日乙丑、日蝕廢務、　八月一日壬戌、日蝕廢務、延喜元年正月一日甲申、日有レ蝕云々、仍天皇不レ御二南殿一、　十二月一日、當レ蝕不レ蝕、

〔扶桑略記〕

〈二十三裏書醍醐〉

p.0040 延喜九年二月一日丁酉、日食廢務、仍釋奠延引、　二日戊戌、右大臣以下就レ政、又依二上宣一、外記召二問暦博士等一、依二日食刻限謬一也、　十一年五月廿七日庚戌、暦博士千門等、依二日食誤一、進二過状一、

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

p.0041 延喜十三年五月一日壬寅、日蝕、但雨降、今日諸司廢務、　十一月一日己亥、日蝕廢務、　十四年四月一日丁卯、日蝕、百寮廢務、　十一月一日癸巳、日有レ食之、諸司廢務、　十七年十二月廿七日壬申、今日召二暦博士葛木宗公、大春日弘範等於陣頭一、對二問來正月一日日蝕有無兩人異論一、即宗公定二申可レ有之由一既了、

〔扶桑略記〕

〈二十三裏書醍醐〉

p.0041 延喜十七年十二月廿六日辛未、右大臣〈◯忠平〉參入、暦博士宗公申二明年正月一日日食之由一、因レ玆朝拜停止、權暦博士弘範申下不レ可レ有二日食一之由上、　廿八日癸酉、右大臣參入、召二暦博士等一對二問日食事一、依二宗公申一レ可レ有二日食一、

〔扶桑略記〕

〈二十四裏書醍醐〉

p.0041 延喜十八年正月一日乙亥、日食廢務、仍无二朝賀一、　十二月廿二日、右大臣召二暦博士等一、令レ勘下申明年正月一日日食可二廢務一否之由上、　廿八日、博士等令レ勘下申同日食可二廢務一否由上、博士等申云、依二宗公申一、夜食不レ可二廢務一之由定申、又召二外記一、仰云止二朝拜一者、

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

p.0041 延喜廿年正月一日甲子、日蝕廢務、　廿一年六月一日乙卯、日蝕、但大雨也、廢務、

〔日本紀略〕

〈二朱雀〉

p.0041 承平七年正月二日乙卯、日蝕廢務、〈或記曰、元日日蝕、二日行二宴會一、〉天慶二年七月一日庚子、日蝕廢務、自二申刻一可レ始、其時不レ見、或云不レ食、

〔朝野群載〕

〈十五陰陽道〉

p.0041 陰陽寮解申大陽虧蝕事
七月一日辛未、日蝕十五分四、虧初卯一刻三分　加時辰二刻一分　復末巳初刻二分
右依二從五位下行暦博士賀茂朝臣光榮等正月一日解状一、大陽虧状、申送如レ件、以解、天延三年六月廿三日　正六位上行大屬秦

〔日本紀略〕

〈六圓融〉

p.0041 天延三年七月一日辛未、日有レ蝕、十五分之十一、或云皆既、卯辰刻皆虧、如二墨色一無レ光、群鳥飛亂、衆星盡見、詔書大二赦天下一、大辟以下常赦所レ不レ免者咸赦除、依二日蝕之變一也、　八月廿七日丙寅、

p.0042 去安和二年三月廿五日、流罪輩被二召返一、給二官符一、依二去月日蝕一也、貞元二年十二月廿五日辛巳、諸公卿上表、賀二去月一日日蝕不レ見事一、詔大二赦天下一、但犯八虐常赦所レ不レ免者不レ赦、

〔小右記〕

p.0042 天元五年三月一日癸巳、〈日蝕十五分之七虧、初辰三刻一分、加時巳一刻二分、復末巳三刻三分、〉日蝕叶レ暦、

〔權記〕

p.0042 長保二年三月一日戊寅、日蝕、仍不レ參二結政一、詣二左府一、〈◯藤原道長〉右中辨以下自二結政一參會、余〈◯藤原行成〉云、日蝕之日廢務例也、而今日結政如何、左少辨云、寮雖レ申レ省、省未レ申レ官、官隨難レ知二其案内一、有二結政一也、予重云、此蝕諸人所レ知也、所司縱懈緩無レ所レ申、可レ尋二問之事官一也、寮申レ省之由若有云々、先令レ問レ省、隨二申來一可二進止一、而只以二省違例懈怠申上一、直行二結政一之儀如何、中辨以下無レ所レ答、丞相命云、此事可二尋問一歟、

〔小右記〕

p.0042 寛弘九年〈◯長和元年〉八月一日丙申、日蝕叶レ暦、但一時相違〈未刻虧初、申刻復末、仍一時相違、〉了、

〔日本紀略〕

〈十三後一條〉

p.0042 治安元年七月一日甲戌、日蝕符合、守道〈◯加茂〉給レ祿、

〔日本紀略〕

〈十四後一條〉

p.0042 長元元年三月一日丙申、卯刻日蝕十五分之八也、暦家不レ注、仍中務省不レ申、不二廢務一、

〔左經記〕

p.0042 長元元年三月一日丙申、天晴、日蝕十五分八、〈虧初寅初分、加時卯一刻卌七分、復末辰二刻六十一分、〉虧從二西南一、甚二於正南一、復二東南一、是大外記頼隆眞人所二注送一也、此蝕暦家不二注申一云々、仍所司不二廢務一、兼依レ不レ存歟云々、暦博士守道公理、爲二夜蝕一之中、蝕分不レ幾、仍不二注申一云々、入レ夜甚雨、日蝕咎自滅歟、本條云、日蝕以後五箇日之中、天陰無レ災云々、況於二甚雨一哉云々、微雨時其災少滅、大雨時大滅云々、是證昭所レ陳之文也、　日蝕十五分〈三半弱〉　虧初寅七刻〈八十三分〉　加時卯一刻〈卌六分〉　復末卯三刻〈卅七分〉　日〈出卯三刻廿六分入酉四刻五十四分〉日天在二奎宿十四度〈八十七分一〉此證昭所二注送一之分法也、兩説雖レ不レ同、共立二其道一之人等也、仍共記レ之、二日丁酉、參二關白殿一、天文博士時親獻二昨日蝕勘文一、公家并丞相可レ有二御愼一云々、　十日乙巳、大夫外記頼隆眞人來向云、日月蝕以後、三日若七日之中降雨、其災滅之由、前日宿曜師證昭稱申之由、依レ有レ命

p.0043 勘二見本條等一、總不レ見二其文一、日月變レ光、星宿成レ變之時、雨降無レ災之由有二其文一、若見二此文一所レ申歟、變與レ蝕已可レ有二輕重一、何以二輕事一准二重事一哉、則有二勘文一、

〔春記〕

p.0043 長暦三年十二月廿九日乙酉、參二御前一、奏二關白復命等一、〈◯中略〉明年正月一日日蝕事、古昔在二此事一、彼間被レ行二何等事一哉、可レ令レ勘二申其例一歟等事也、仰云、四十口御讀經可レ吉仰可レ然之、上卿可レ令レ行也、日蝕事可レ仰二右大臣一也、此由可レ仰二關白一者、酉時許參二關白殿一、依二御物忌一、以二章信一令レ申二此旨一、〈◯中略〉復命云、日蝕事早可レ仰二右大臣一也、〈◯中略〉又參二右府一、仰下日蝕例可二勘申一之事上畢退出、

〔大神宮諸雜事記〕

〈二〉

p.0043 治暦四年正月一日甲戌、時未二點ヨリ申刻マ〈天、〉日蝕如レ暗ナリ、同二日戌時大地振動、同三日終日大風吹、所々人家吹倒セリ、但至二于日蝕一者、兼日依二卜申一、以二去年十二月十七日一〈天、〉勅使神祇少祐大中臣輔長以令二祈申一給、宣命状云、明年正月一日、日蝕可レ有之由、即御體御愼可レ有之由、所レ被二祈申一也、

〔朝野群載〕

〈八別奏〉

p.0043 日月蝕奏
中務省解　申請官裁事
二月朔乙丑、日蝕十五分之八、〈半弱〉　虧初寅一刻〈三分〉　加時寅四刻〈九分〉　復末卯三刻〈十分〉
右得二陰陽寮解一偁、件日蝕勘申者、寮依二牒状一申送如レ件者、省依二解状一申送如レ件、應徳二年正月廿五日　正六位上行少録紀朝臣時基
卿〈闕〉　正六位上行少丞源朝臣
從五位上行大輔藤原朝臣　正六位上行少丞橘朝臣〈未判〉
從五位上行少輔　正六位上行少丞藤原朝臣
從五位上行權少輔源朝臣廣綱　正六位上行
　正六位上行少録惟宗朝臣

p.0044 正六位上行少録大江朝臣俊任

〔中右記〕

p.0044 寛治三年十一月一日、可レ有二日蝕一之由、道言能筭共勘申、而雖二天晴一無二其蝕一、但廢朝不二警蹕一、垂二御簾一、又曉更供二忌火御飯一、是依レ恐二日蝕一也、寛治八年〈◯嘉保元年〉三月一日壬申、早旦出二河原一謝二北辰一、其後馳參内、是午時依レ可レ有二日蝕一也、右大將、新大納言、治部卿、頭辨以下殿上人濟々參集、主上御二夜大殿一、朝干飯方、下二格子一、依二殿下仰一下、晝御座御簾兼不レ下、藏人之失歟、午刻推遷漸及二申二點一、初蝕十一分者、烏輪已虧、清光頗欠、及二酉三點一、漸復二本體一、太陽所レ殘如二初三月一、抑司天臺所レ奏已如レ指レ掌、是雖二末代一暦數顯然也、但至二刻限一頗有二相違一、今日止二警蹕音奏等一、嘉保二年二月一日、今日可レ有二日蝕一之由、暦道奏聞、仍兩殿下令レ參二籠御物忌一給、殿上人職事十人之外、又以濟々參籠、而從二夜前一、天陰雨下、已不二正見一、司天臺所レ奏十二分半、蝕從二寅刻一可レ及二辰刻一者、纔及二午刻一、天頗晴、雖レ然圓光甚明、定知復末以後天晴歟、不二正現一條、人々皆感歎、仍有二音奏一、未時許兩殿下令二退出一御、人々或退出云々、今日大原野祭、并釋奠、依レ可レ有二日蝕一、皆以延引、大僧正良眞、爲三日蝕不二正現一、從二兼日一於二私房一、七佛藥師法所レ修也、而已天陰雨下不二正現一、其實誠雖二末代一、佛力之靈驗、自以顯然者歟、

〔殿暦〕

p.0044 康和二年四月一日丁酉、依レ當二日蝕一、不二參内一云々、日蝕間不二出行一、復末後東面開レ戸、雖二件日一者不レ當レ日者也、雖二八分一二分許蝕也、祈尊勝念誦僧六口、大品經讀經僧五人、

〔永昌記〕

p.0044 嘉承元年七月一日庚寅、今日御物忌、可レ有二日蝕一、仍於二御殿一可レ有二六十口御讀經一、〈◯中略〉予〈◯藤原爲隆〉仰二御願趣一、〈◯註略〉發願如レ例、未一刻大陽初虧、四點漸過、復末之間、浮雲時々覆、非二只蝕正見一、虧分已過、天之變異不レ可レ不レ愼、主計頭道言朝臣參二藏人所一、執二奏此由一、又賢暹法印申云、七月朔水曜蝕本條所レ指草木傷損、百物不レ登云々、加以炎旱日久、民庶之憂、尤可レ有二祈請一者、及二申刻一有二御結願一、　十二月一日戊午、今日可レ有二日蝕一之由、陰陽寮執奏、〈中務省奏、史定政一昨日持參、虧初未二刻卅二分、加時未三刻卅六分、復末未四刻廿七分、蝕大分十五分之二半弱云々、覽二大辨一付二内侍〉

p.0045 〈所一也、〉而或白雲既覆、紅輪不レ見、或大陽斜出、短晷欲レ暮、僧深筭前日勘奏云、雖レ入二蝕限一、不レ可二正見一、今案、口傳并祕説術意之不レ可レ叶二筭計一之無レ謂也者、後日道言朝臣云、二分蝕、前々或不レ見、又中古以來蝕時必降、若及二申終刻一、已爲二日沒之時一、彌不レ可二顯現一之由、前日執申了、此事今日不レ可レ被レ决、仍垂二御簾一廢務如レ例、予爲二御使一參二鳥羽御所一下二格子一、今即入二簾中一、有二御旨等一、晩頭歸二參朝餉一、又下二格子一、入レ夜又參二殿下一、不レ下二格子一之由有レ仰、尤以可レ然、今日於二尊勝寺一、請二六十口僧一、被レ轉二讀大般若經一、依二蝕御祈一也、〈自二昨日一被レ始〉左右大辨藤宰相參上、納言不レ被レ參、右大辨爲二上卿代一行事、希代之例也、堂童子布施、取二外記一催二諸大夫一、布施供養從二藏人所一以二別進物一遣レ之、〈僧綱一石、凡僧五斗、〉

〔中右記〕

p.0045 嘉承元年十二月朔日戊午、殿下〈◯藤原忠實〉依二日蝕一不二令レ參給一、公卿三四許參入、今日未刻可レ有二少分日蝕一之由、暦道所二勘奏一也、而宿耀家僧明筭深筭等、不レ可レ有レ之由進二申文一、彼是相論之間、已無二日蝕一、陰陽助家榮談云、近代日蝕必所二勘申一之刻限推遷事也、定及二申酉時一歟、日已申刻入之頃也、恐入二西山一之後蝕歟云々、此事一端雖レ有二其理一、頗遁申詞歟、　二年十一月朔日壬子、今日冬至、又可レ有二日蝕一之由、司天臺所レ奏也、〈其日蝕十五分之十三半弱、虧初未一刻十九分、加時申十五分、復末酉一刻十分、〉未時許參内、御物忌也、仍候二仗座一、右宰相中將〈顯〉左大辨〈重〉上官等參會、相二窺時刻一之處、及二晩景一片雲横レ漢、日光不レ現、就レ中天下不レ及レ暗計也、不レ蝕歟、誠可二欣歡一、代初之蝕、朔旦冬至之日也、加之主上〈◯堀河〉御當年星也、今無二正現一、爲二天下大慶一歟、〈◯中略〉今日公卿多不レ被レ參、大奇恠之事也、日蝕之時、人々可レ被二皆參一歟、　三年〈◯天仁元年〉五月朔日、未刻日蝕正現、〈片輪少許也、本六分蝕、〉暦道不レ奏二刻限一、蝕分如レ指レ掌、但宿曜道不レ可レ有レ蝕由、兼日奏之處、兩道之相違可レ决二勝負一也、暦道已相叶也、及二申刻一結願〈先奏二事由一〉不レ賜二度者一也、則退出、明筭來談云、此蝕正現者、上皇〈◯白河〉御愼重云々、

〔中右記〕

p.0045 元永二年四月朔日丙子、天晴、今日可レ有二日蝕一之由、暦道所レ奏也、仍於二中殿一可レ被レ行二御讀經一也、上卿人々皆依レ愼被レ申下捧早可二參勤一之由上、依二院宣一頭辨送二消息一也、予〈◯藤原宗忠〉雖二重厄年一、不レ可レ闕二公事一、仍巳時許參内、頭辨示二藏人辨實光一所二沙汰一也、陰陽寮總所二催儲一也、〈兼日内々仰二綱所一、啒二請卅口僧侶一也、〉相尋之處、僧名日時未レ被二

p.0046 沙汰一也、予移著二端座一、敷二膝突一、召二藏人辨一令レ勘二日時一、而陰陽寮泰長申上云、日月蝕當日被レ行二御讀經一、或不レ被レ勘、或又勘レ之、頗不レ定也如何、予命云、先々皆如レ此、但猶以二吉時一可レ被レ始也、勘二日時一可レ宜歟、藏人辨持二來日時一、披見之處、今日午刻可レ被レ行者、可レ進二例文硯一之由、仰二藏人辨一了、史持二來例文筥一置二座前一、〈今日請定、僧名交名加入、〉又以二硯筥一置二參議座前一、只今參議不參、仍召二上藏人辨一令レ書二僧名一、書了持來、〈◯中略〉予申上云、律師覺嚴也、皆所存也、然者早可レ仰二覺嚴一也、仍始事御經心閑可レ奉二轉讀一之由仰下了、〈大般若一部、各二帙也、〉堂童子著座、〈藏人辨實光、兵衞佐經親、藏人二人、〉散花了、頭中將宗輔依二御願趣一、是日蝕御愼之由也、導師啓白了、奉レ讀二御經一、漸及二午後一、中將師時、少將成通、重道、皆參上、著二出居座一、今日之蝕、十五分十三分半、虧初申刻者、而漢天掌來、大陽不レ蝕、日既入二西山一、略西明之蝕歟、臨二酉刻一御經轉讀、了奏二事由一、令二結願一御卷數綱所書儲、授二御導師權律師覺嚴一啓白、〈開白結願同人之所役也〉事了、依レ無二人數一無二行香一、〈◯中略〉今日無二日蝕一、若是筭術之相違歟、將又依二旁御祈一不レ蝕歟、可レ尋事也、或人云、後日聞、居二海濱一下人望二日沒時一之處、入二海上一間輪頗虧云々、此事又有レ疑、雖二西山一雖二海上一、日入之時同事也、何於二海上一可レ現レ蝕哉、保安元年十月朔日戊辰、今日有二日蝕一、及二申刻一正現、〈十五分之十一分蝕〉暦道之所レ勘、如レ指レ掌、後聞、於二中殿一有二卅口御讀經一、上卿侍從中納言云々、又山座主、行二熾盛光法一、大治二年五月朔日庚寅、今朝可レ有二日蝕一由、司天臺所レ奏也、但丑寅卯復末〈十五分之十二分〉恐帶蝕(○○)欲レ出レ山歟、近日日出二寅時一也、而依二昨日天陰、今朝雨下一、不レ見二日蝕之正否一、且是御祈之驗也、

〔長秋記〕

p.0046 大治四年九月一日、日蝕、〈暦道辰時始渡歸宿耀、未時始申時滿、已一刻蝕、〉二日、頭辨召二陰陽頭家業於殿上一、口給祿出二給之一、依二昨日蝕符合一也、

〔中右記〕

p.0046 長承三年閏十二月一日乙巳、今日日蝕十一分、巳午未時之由、司天臺所レ奏也、内以二山僧十二口一、於二御前一藥師經御讀經、上卿源大納言、定海法印御修法、日蝕御祈者、臨二未時一日蝕正現、如二天文奏一也、刻限度分、如レ奏也、

〔百練抄〕

〈七近衞〉

p.0047 康治二年正月一日、可レ有二日蝕一之由、暦道奏レ之、實不レ可レ有レ蝕由、筭道申レ之、仍行二節會一、遂不レ蝕、

〔本朝世紀〕

p.0047 康治二年正月一日、抑今日太陽可二虧蝕一之由、暦道所二注申一也、而舊年筭博士三善行康奏二勘文一云、不レ可レ有レ蝕、故如何者、去二爻分一遇二八千四百之統法暦一云々、去年除夜於二攝政〈◯藤原忠通〉直廬一、招二諸卿一被二議定一、左大將源雅定卿定申云、長久二年正月一日有二日蝕論一、相二待蝕見否一之後、依行二宴會一者、今度可レ依二彼例一歟、皇太后宮大夫藤宗能卿定申云、可レ依二先例一、又大納言藤實行卿定申云、可レ依二暦道申一、又隨二現否一可レ被レ行二節會一、又前中納言顯頼卿申云、可レ依二暦道説一、件兩卿不レ向二攝政直廬一、藏人勘解由次官藤光房依レ仰所レ尋二問兩卿一也、爰攝政以二光房一爲レ使、被レ奏二法皇一〈◯鳥羽〉云、群議之趣如レ此、左右之間可レ依二勅定一、法皇仰云、蝕差不二正現一者、被レ行二節會一有二何事一哉、又撿二先例一、康平二年正月、暦道博士賀茂道平不レ從二蝕由一、而大法師昭證弟子藤長經、兼日申二可レ有レ蝕之由一、臨レ期既以正現、道平等總無レ所レ陳、先例如レ此、一向不レ可レ信二暦道一、然則不レ可レ被レ仰二廢務由一、隨二形勢一可レ被レ行二宴會一歟、光房承レ仰退出、今朝既無レ蝕、仍被レ行二宴會一、行康有二壯雄之氣一云々、

〔台記〕

p.0047 康治二年正月一日己丑、藏人光房示送云、日正現故准レ无レ食、可レ有二節會、院拜禮等一者、早旦傳二人日出申一之、日出レ山後、只暫虚掩、其後晴日見處无レ蝕、餘〈◯藤原頼長〉疑今日食、虧初寅刻、加時卯一刻、復末卯五刻レ、〈暦道所申如レ此〉而近代食、多一兩時移後食、然故卯辰之間、可二食初一歟、正當不レ食之、因及二巳刻初一上二格子一、今日食事、自レ本筭道暦道相論、暦道折レ名、但春秋之世、猶多二暦失一、何况末世乎、私四方拜事、先撿二先例一、治暦四年雖二日食一有二此事一、見二御暦一、猶依レ爲レ疑、去年仰二大内記藤令明、文章得業生成佐、友業一、〈無官六位〉令レ勘二申漢家之事一、令明、友業申二可レ有之由一、成佐申二可レ止之由一、按レ之成佐以レ得レ理、因止レ之、但公家不レ被二一定一、隨下當二日蝕一否上、可レ有二廢務一云々、私四方拜如何由、問二右將軍一、報云、依二日蝕一可レ止、故未レ見二蝕否一之前、不レ可レ有二四方拜一歟、因停二止之一、於二法成寺一令レ讀二藥師經一、依二日蝕一也、〈◯中略〉後日、友業、成佐等云、見二日出一間、所二少蝕一也、通憲云、全不レ蝕、當世之才士、只此三人耳、因記レ所レ申備二後鑒一、人民或云有レ蝕、或云無レ蝕、昭十七年左傳正義曰、日食、王或取二至

p.0048 社一、親伐レ鼔時云々、以レ之案レ之、我朝日食、不レ當二其光一、无レ所レ怖歟、然則日食四方拜、无二其憚一乎、兩才士不レ勘二此文一、不レ及レ見乎、自レ今已後雖二日食一可レ有二四方拜一者也、

〔本朝世紀〕

p.0048 康治二年十二月一日癸未、卯刻日蝕十五分十四、所レ注二御暦一也、而天晴雲收、全無二虧輪一、今日蝕、公家并法皇〈◯鳥羽〉可二愼御一之由、宿曜道所二勘申一也、仍有二種々祈禱一、法皇於二得長壽院一、屈二天台淨侶〈住山不退輩〉百廿口一、被レ轉二讀大般若一、限以二三箇日一、受領之輩、營二其供給齋飯一、別給二小袖等一、又公家於二延暦寺一、被レ行二千僧御讀經一、被レ付二寺家一、辨史不參、今日蝕不レ現、實三寶靈驗也、久安二年五月一日己巳、今日宿耀道申下可レ有二日蝕一之由上、至二御暦一者不二注申一也、大法師珍也申云、十五分之二、虧初巳刻云々、然而不二正現一、　三年十月一日辛卯、日蝕也、太政官謹奏　來月朔日辛卯、日蝕十五分之十半弱、虧初申四刻十一分、加時酉三刻五分、復末戌二刻十四分、右中務省解偁、陰陽寮解偁、從四位下行權介兼權暦博士備前權守賀茂朝臣憲榮等状偁、申送如レ件、仍注二事状一謹奏、久安三年九月廿九日

〔台記〕

p.0048 久安三年十月一日辛卯、有レ食、雖レ晴人不レ見レ食、後日、頭經宗朝臣語曰、依二朔日日食一、二日改二殿上御裝束一、但侍臣衣、朔日改レ之、今案二此事一、未レ辨二是非一、可レ尋二先例一、　四年四月一日戊子、依二日食一、廢務、不二正現一、

〔本朝世紀〕

p.0048 久安五年三月一日癸未、日蝕也、太政官謹奏　來月朔日癸未、大陽蝕十五分之十四半弱、　虧初寅二刻、加時卯一刻、復末辰一刻、〈◯中略〉久安五年二月廿七日　今日法皇〈◯鳥羽〉御本命日也、而蝕不二正現一、尤可レ謂二禎祥一也、權現靈威尤顯然歟、此間一院御二熊野本宮一也、

〔兵範記〕

p.0049 保元三年三月一日辛酉、朝間天陰、日蝕也、虧初寅、復末辰初云々、公家御祈、座主於二中堂一被レ行二七佛藥師法一、又今朝於二食堂一被レ行二千僧御讀經一、辨有レ障、仍少納言通能依二勅定一、昨日登山奉行云々、

〔百練抄〕

〈七二條〉

p.0049 應保二年正月一日、日蝕、暦道笇道相論、兼召二諸道勘文一被レ問二公卿一、大略不レ可レ改二正朔一之由被レ申之、然而依二正現一二日行二節會一、或記云、予問、春補之日、蝕前七日、必有レ變之、何事哉、答云、七星之中、有二滅レ光之星一、此事祕事也、普通無下知二此事一人上、故對而所レ申云々、正月朔蝕、延暦九、　昌泰四　延喜八　同十一　同十八　同十九　同廿　天慶三　長暦四　永承四　康平二　治暦四　承保三　康治二　仁平三

〔兵範記〕

p.0049 仁安二年四月一日戊辰、天晴日蝕、公家御勘文云、虧初未初刻、加時未七刻、復末未七刻、而現二御降誕天象圖一、天年二二歳、今度蝕在位帝王御愼也、宜レ令レ修二日蝕攘災法一者、保二千秋萬歳一御歟者、

〔愚昧記〕

p.0049 仁安二年四月一日、今日日蝕云々、仍終日閉レ戸、但不レ蝕云々、

〔玉海〕

p.0049 嘉應二年七月一日己卯、今日日蝕也、雖レ有二現不現之論一、尚付二正見之例一、有二御祈等一、公家被レ行二七壇北斗法一云々、女院御方并余〈◯藤原兼實〉共修二金輪念誦一、雨降之間、現否不レ决、

〔百練抄〕

〈八高倉〉

p.0049 嘉應二年十二月廿七日、四箇條仗議、〈◯中略〉明年正朔蝕不二正現一者、可レ被レ行二節會一否事、暦道申二可レ有レ蝕之由一、宿曜筭道兩道申二不レ可レ現之由一事也、

〔玉海〕

p.0049 嘉應三年正月一日丙子、陰晴不レ定、微雨間灑、今日日蝕有二現否之論一、遂不二正現一、乖二暦家之術一、叶二筭道之説一、〈宿曜道同レ之〉壽永二年閏十月一日壬戌、天晴、此日日蝕也、所レ載二勘文一、辰刻虧初、午刻復末云々、而午刻虧初、申刻復末、筭勘之相違歟、先々雖二時刻相違一、今日殊乖二勘文一了、可レ尋レ之、

〔源平盛衰記〕

〈三十三〉

p.0049 源平水島軍事

p.0050 壽永二年閏十月一日、水島ニテ源氏ト平家ト合戰ヲ企ツ、〈◯中略〉城ノ中ヨリハ、勝鼔ヲ打テ訇懸ル程ニ、天俄ニ曇テ、日ノ光モ見エズ、闇ノ夜ノ如クニ成タレバ、源氏ノ軍兵共、日蝕トハ不レ知、イトヾ東西ヲ失テ、舟ヲ退テ、イヅチ共ナク、風ニ隨ツテ遁行、

〔玉海〕

p.0050 文治三年七月廿九日戊辰、明日日蝕、陰陽道申云、虧初酉一刻、日入同三刻、仍可二正現一、暦笇宿曜道等申云、虧初酉三刻、或戌一刻、仍不レ可二正現一云々、然而爲二用意一、公家可レ被レ行二御讀經一之由仰レ之、　八月一日己巳、陰晴不レ定、午後雨降、

〔百練抄〕

〈十一土御門〉

p.0050 正治元年正月一日、今日可レ有二日蝕一之由、暦道載二御暦一、而筭道行衡、長衡等、申下不レ可二正現一之由上、兩道申状、眞僞難レ决、隨二蝕之現否一、可二節會一之由、被二仰下一之處、終日雨降、入レ夜天晴、有二節會一、

〔吾妻鏡〕

〈二十二〉

p.0050 建保二年九月一日壬戌、巳午兩時日蝕、正見五分、

〔百練抄〕

〈十三後堀河〉

p.0050 元仁元年八月一日、寅卯刻、可レ有二日蝕一之由暦注、天晴雲收、日輪出現、敢未レ令レ蝕、及二午上一、可レ謂二道之陵遲一歟、

〔吾妻鏡脱漏〕

p.0050 元仁二年〈◯嘉祿元年〉二月一日壬辰、今日可レ有二日蝕一之由、宿曜道助法眼珍譽雖レ勘二申之一、日輪無レ虧云云、　八月一日己丑、酉刻可レ有二日蝕一之由、宿曜師與二暦道一日來相論、雖レ然依二雨降一而現否難レ决云云、嘉祿三年〈◯安貞元年〉六月一日戊申、日蝕正見、〈四分〉

〔百練抄〕

〈十三後堀河〉

p.0050 安貞二年六月一日、今日未刻日蝕可二出現一之由、權少外記清原教隆以二欽天暦之後一令二勘申一、以二件状一被レ下二問暦道一、當日天晴、不レ决二是非一、雖レ然於二暦道申状一不レ及二沙汰一云々、

〔吾妻鏡〕

〈二十八〉

p.0050 寛喜四年〈◯貞永元年〉四月一日、今日可レ有二日蝕一之旨、宿曜備中法橋依レ申レ之、可レ被レ裹二御所一否、以二周防前司親實一被レ問二暦道一、各不レ可レ有二日蝕一之由申レ之、

〔吾妻鏡〕

〈三十一〉

p.0050 嘉禎三年十二月一日戊寅、雨降日蝕不二正現一、昨日天晴、夜半以後陰雲、自二丑寅刻一雨降、

p.0051 蝕時分被レ造二立〈愛染〉金剛如法佛一〈五指量〉主計頭奉行之、

〔吾妻鏡〕

〈三十六〉

p.0051 寛元三年十二月廿四日乙酉、明年正朔日蝕事有二其沙汰一、今日被レ始二行御祈等一、但馬前司奉行之、

〔百練抄〕

〈十五後嵯峨〉

p.0051 寛元四年正月一日辛卯、可レ有二日蝕一之由、陰陽等奏レ之、筭博士雅衡不レ可レ有二日蝕一之由申之、終日遂不二正現一、雅衡所レ申符合、尤珍重也、仍被レ行二勸賞一、日沒以後、被レ行二小朝拜節會等一如レ恆、

〔吾妻鏡〕

〈三十七〉

p.0051 寛元四年正月一日辛卯、今日申酉間、可レ有レ蝕之由、諸道雖レ勘二申之一、窮冬有二其沙汰一、任二右大將家建久九年正朔日蝕時之例一、不レ被レ裹二御所一、隨而又蝕不二正現一、若二他州事一歟云云、　廿八日戊午、主税頭雅衡〈算道〉自二京都一進レ状申云、今年朔蝕事、不レ可レ令レ蝕之旨、兼申入候處、忽符合之間、爲二其賞一、所下令レ敍二正下四位一候上也、宿曜道珍覺法眼同如レ此、依二奏聞一轉二權少僧都一候畢、同十四日御齋會除目之次也云云、

〔園太暦〕

p.0051 康永三年九月一日、天晴、今日院評定、依二日蝕并御八講中一不レ被レ行、及二酉刻一正現了、時刻雖二相違一、日蝕無二其誤一、尤無二止事一也、御八講又入レ夜被レ行云々、

〔看聞日記〕

p.0051 應永廿九年正月一日、午未時日蝕也、〈◯中略〉元日節會依二日蝕一延引、可レ爲二明日一云々、

〔言經卿記〕

p.0051 慶長八年四月一日丁亥、天晴、日蝕、巳午時、〈◯中略〉禁中へ極臈早朝ニ參、日蝕ニ付テ、御殿ヲツヽミ了、如レ例了、

〔當代記〕

p.0051 慶長十三戊申年正月朔日己丑、朝少曇、未申刻日蝕也、暦ニハ辰巳刻ト出シケルガ、時ハ違也、昔年建久九年戊午正月朔日日蝕、是凶兆ト云々、其年頼朝姉聟二品能保父子、暫時薨ト吾妻鏡ニ有、

〔宗建卿記〕

p.0051 享保十五年五月廿八日、予申云、來月一日日蝕也、件日古來宣下之事有レ之哉、殿仰云、朔旦冬至日蝕有レ之、於二平座一被レ行レ之、於二賀表一者後日上レ之、又御暦奏依二日蝕一二日奏レ之、於レ然者於二當時一〈茂〉宣下之事、不レ可レ然之由也、

〔仙臺實測志〕

〈上〉

p.0052 同年〈◯享保二十年〉九月朔日、日食九分半、〈◯中略〉陽厝交前之食也、或曰、於二江戸一所レ見、此食甚二於北一、然則交後陰厝也、蓋依二土地一所レ見不レ同、或有二皆既之國一乎、食甚之時、太白星見、隨レ復而星光消、太陽在二赤道南八度九十四分一、

〔仙臺實測志〕

〈上〉

p.0052 同年〈◯元文五年〉十一月朔日、朝日帶食(○○○○)四分計、至レ明、半時而復レ圓、延享四年丁卯七月朔日、日帶食(○○○)、此日以二渾天儀一考二日入一、則大率戌初刻、以二貞享暦法一考レ之、則日入酉正三刻、於レ是仙臺與二暦法一凡差二一刻計一、予此日至二於酉正二刻一窺二日入一、未レ食而入二黒雲一、故與二飯澤子一往二于伊勢山一窺レ之、竟不レ見、〈植〉按、交食近年午後即後、午前即先、明和七年庚寅五月朔日、日食凡七分半、此食、板行暦曰二皆既一、而不レ既、晝不レ暗、衆人以爲二推歩大違一、此日雨不レ見、細雨内所レ測凡四分計、此時巳初四刻半始見レ食、又食七分半計、此時巳正一刻七十分計、甚二於正南少東一、以二方角一考レ之、則爲レ過二食甚一、自レ是所レ見漸復矣、

〔瀬田問答〕

p.0052 一來午年〈◯天明六年〉元日日蝕ナリト承候、公ニテ御禮御座候哉イカヾ、答、來午正月元日日蝕皆既、午ノ一刻西ノ方ヨリカケ初メ、午六刻甚シク、未ノ一刻南ノ方ニ終ル、如レ斯ニ候ヘバ、御禮明七ツ時ヨリ初リ、蝕已前退散ノ事ト存候、正月元日日蝕ノ例　元祿五壬申年、未申ノ時、食七分半、同十四辛巳年、卯辰ノ時、食八分半、享保四己亥年、酉ノ時、食二分、明和四丁亥年、未ノ八刻ヨリ申ノ刻迄、如レ斯ニ候、右ノ内、元祿十四年ノ蝕、御禮刻限ニ候、其節モ食終リテ辰ノ中刻ヨリ御表ヘ出御、右ノ外ハ皆御禮ノ刻限ノ外ナリ、右ノ趣ヲ以相考ヘ候ヘバ、食ノ内ハ迚モ出御ハ無レ之、來春モ食以前

p.0053 御禮相濟候積、未明ヨリ御禮始リ候ト被レ存候、

〔筆のすさび〕

〈一〉

p.0053 一月蝕〈◯中略〉　丙午〈◯天明六年〉元日の日蝕皆既は、日色茶色に見えて、薄暮のごとく、雀など棲宿せり、寛保二年壬戌五月日蝕は、白晝烏黒にして、星宿爛々たり、さながら夜のごとくなりしと云ひ傳ふ、天學家も、日行至りて高く、月行至りて低き時は、暗きことは甚だしかるべし、されど星の見えしは、いかヾありしにかといひし、

〔大江俊矩公私雜日記〕

p.0053 文化十二年六月一日乙卯、日食也、〈暦面云、一分うの七刻上の左よりかけはじめ、たつの初刻上と左の間に甚しく、たつの二刻左の方におはる、〉御殿裹寅半刻、〈但依二短夜一催二寅刻一云々〉俊常參勤、撤却常顯參勤、當日參賀、依レ蝕被レ停如レ例、不レ及二參賀一、　十四年四月一日甲戌、當日參賀、依二日蝕一被レ停レ之、仍不レ參二中宮陽明等一、日蝕也、〈暦面云、申八刻下ノ左ヨリ缺始、酉三刻左ノ下ニ甚、酉ノ六刻左ノ上ニ終、〉御殿裹未半刻、俊常參勤、一洞中御殿裹申刻、常顯參勤、一御殿裹撤却酉半刻過、〈予〉參勤、出納職寅以下酉半刻出仕、〈予〉參勤之上尋二時刻一處、酉半二刻過之由、故即屆二議奏卿一、尋二撤却之儀一處、當番豐岡前宰相面會、酉半二刻過之間、最早勝手撤却可レ然由被レ示、且被レ示曰、先刻常御殿々々裹之節、東面不レ及二其儀一哉被レ尋、故相伺之處、御殿裹之事故、不レ因二時刻之早晩一、如レ例東南二面共奉仕可レ然旨御沙汰也、向後以二此定一各其覺悟可レ然、猶申合可レ置由被レ示也、此儀不審也、〈予〉未レ覺三悟有二差略一、於二清凉殿一者、依二時刻一令二差略一事、毎度有レ例、常御殿未レ知レ有二差略一、上臈之問不レ得二其意一、可レ慥事歟、令レ開二平唐門一後、仰二出納一令レ撤二御殿西面筵道一、〈此日依二夕景之儀一、東面不レ裹レ之云々、〉事終由申屆二議奏卿一、戌刻計、令二退出一了、〈仰二退出於出納一令レ閉二平唐門一、〉於二常御殿一者、任レ例不レ及二撤却一、

〔拾遺和歌集〕

〈十九雜戀〉

p.0053 日蝕の時、太皇太后宮より、一品のみこの許につかはしける、
あふことのかくてやつゐにやみの夜のおもひもいでぬ人のためには

〔日本紀略〕

〈十一條〉

p.0053 長保四年九月六日戊戌、今夜日月薄蝕、終夜流星、　八日庚子、左大臣〈◯藤原道長〉以下參

p.0054 入、詔曰、大辟以下赦除、常赦所レ不レ免者不レ赦、依二三光之恠異一也、左大辨忠輔卿作二詔書一、依二内記遲參一也、左遷解官皆復二本官一、

〔當代記〕

p.0054 慶長八年二月十九日、酉刻日蝕アリ、其色赤キ事甚、亥刻之終時分月蝕アリ、兩蝕同日ニ有事珍事カ、