天部/霙

p.0241 霙ハ、ミゾレト云フ、舊クハ雨氷及ビ霰、霂等ノ字ヲモ訓ゼリ、雨雪相雜リテ降ルモノナリ、

名稱

〔新撰字鏡〕

〈雨〉

p.0241 霂〈亡各反霡也、志久禮、又三曾禮、〉

〔倭名類聚抄〕

〈一風雪〉

p.0242 霰　爾雅註云、霰冰雪雜下也、七見反、又作レ 、〈和名美曾禮〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈一風雨〉

p.0242 按、皇極紀二年三月、風雷雨氷、雨氷訓二美曾禮一、然美曾禮、非二寒天一不レ降、雷而降者蓋謂レ雹、當レ訓二比佐女一、上條〈◯雹條〉詳レ之、今本訓二三曾禮一非、又孝徳紀白雉三年四月、連雨水至二于九日一、損二壞宅屋一、傷二害田苗一、人及牛馬溺死者多、持統紀五年六月、京師及郡國四十雨氷、戊子詔曰、此夏陰雨過レ節、惟必傷レ稼、兩雨水、今本並訓二三曾禮一、然四月六月非下降二美曾禮一之時上、又云、人及牛馬溺死者多、云陰雨過レ節則所レ謂雨水、蓋霖雨大水非二美曾禮一、當レ訓二比左米一、今本所レ訓誤矣、〈◯中略〉按、美曾禮者、阿良禮之脆弱、與レ雨倶下者、阿良禮之可レ充レ霰、詳二前條一、〈◯雹條〉美曾禮亦霰之類、然除レ霰之外、未レ見下西土書可レ充二美曾禮一者上、故萬葉集霰字訓二阿良禮一、或訓二三曾禮一也、或曰、萬葉集霰六見、其五訓二安良禮一、唯一訓二美曾禮一、則此一霰當下依二佗五霰一訓中阿良禮上、然則後世呼二美曾禮一者、古統二言阿良禮一、不二析言一也、

〔倭名類聚抄〕

〈一風雪〉

p.0242 霙　孫愐云、霙雨雪相雜也、音於驚反、文選雪賦師説曰、〈三曾禮〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈一風雨〉

p.0242 按、雪賦、霰淅瀝而先集、李善注、韓詩曰、先集惟霰、薛君曰、霰霙也、是霙字出二李善所レ引薛君韓詩章句一、非二賦文一、本書引二文選師説一、所レ訓皆文選正文、不レ及二注文一、此引二師説一訓二注霙字一可レ疑、〈◯中略〉按、玉篇、霙雨雪雜下、孫氏蓋本レ此、又按、霰之可レ充二阿良禮一見二雹條一、孫愐以二雨雪雜一訓レ霙、則霙充二美曾禮一似レ爲レ允、薛君以レ霙訓レ霰、統二言之一耳、〈◯中略〉按、霰霙皆訓二美曾禮一、則不レ宜レ爲二別條一、師説亦可レ疑、蓋此多二譌誤一也、

〔類聚名義抄〕

〈七雨〉

p.0242 霰〈先見反ミソレ〉　霙〈音英、又乙丈反、雲皃ミソレ、〉　 〈ミソレ〉

〔藻鹽草〕

〈一天象〉

p.0242 霙　みぞれの空　みぞるヽ空　霙ふる比　霙降くる　霙傳　木の葉こきまぜみぞれふる　霙空　つもるかとみえつる雪も霙

〔日本釋名〕

〈上天象〉

p.0242 霙　水あられ也、縱横二重相通の反なり、此類も亦多し、らを略す、雨とあられとまじるを云、

〔東雅〕

〈一天文〉

p.0243 雪ユキ〈◯中略〉　雪と雨と雜り下るを、ミゾレといふは、水降の轉語なるに似たり、

〔倭訓栞〕

〈前編三十美〉

p.0243 みぞれ　倭名抄に、霰また霙をもよめり、水あられの急語成べし、孫愐も霙は雨雪相雜也といへり新撰字鏡には霂をよみ、日本紀には雨氷もよめり、

降霙

〔日本書紀〕

〈二十四皇極〉

p.0243 二年三月、是月風雷雨氷(ミゾレ)、行二冬令一、

〔續日本紀〕

〈七元正〉

p.0243 靈龜二年四月戊午、雨レ霰、

〔萬葉集抄〕

〈二〉

p.0243 霰打(あられふる)、安良禮松原(あられまつばら)、住吉(すみのえ)之(の)、弟日娘與(おとひをとめと)、見禮常(みれど)不飽(あかぬ)香聞(かも)、此歌、古點には、みぞれふり(○○○○○)、あられまつばら、すみよしの、をとひむすめと、みれどあかぬかもと點ぜり、霰字はみぞれ、あられ、もとより兩訓あり、玉篇曰、霰思見切、暴雪、東宮切韻曰、霰、〈雨雪雜下也、又作二霓 一、釋名曰、霰星也、氷雪相搏如レ星而散也、〉ともに以て本説あり、事にしたがひて可レ和レ之歟、但し四條大納言公任卿の和漢朗詠集の中に、あられに用らる、

〔枕草子〕

〈十〉

p.0243 ふるものは　みぞれはにくけれど、雪のましろにてまじりたるをかし、

〔源氏物語〕

〈二帚木〉

p.0243 りんじの祭のでうがくに夜更て、いみじうみぞれふる夜、これかれまかりあがるる所にて、思ひめぐらせば、猶いへぢとおもはんかたは又なかりけり、

〔千載和歌集〕

〈二春〉

p.0243 後朱雀院の御時、うへのをのこども、ひんがし山の花見侍けるに、雨のふりにければ、白川殿にとまりて、をの〳〵歌よみ侍けるによみ侍ける、　　　大納言長家
春雨に散花みればかきくらしみぞれし空の心ちこそすれ