p.0001 陰陽道ハ、支那ヨリ三韓ヲ經テ傳來セシモノニシテ、朝廷ニハ夙ニ陰陽寮ヲ置キテ其法ヲ採用セリ、大寶ノ制、陰陽寮ニハ頭、助、允、屬ノ外ニ、陰陽師、陰陽博士等ノ職員ヲ置キテ、其業ヲ分擔セシメ、又大宰府及ビ諸國衙ニモ陰陽師ヲ置キテ、卜筮占星漏刻等ノ事ヲ掌ラシメタリ、此術ハ當時ニ在リテハ極メテ必用ナルモノニシテ、賀茂保憲、安倍晴明ノ如キ、其他斯道ノ名人モ亦歴世乏シカラズ、中世以降、晴明ノ後裔土御門家ハ、代々斯道ノ長トシテ、陰陽頭ニ任ゼラレ、又陰陽博士トナリ、殆ド他氏ヲ交ヘズ、而シテ德川幕府ニ及ビテ、更ニ諸國ノ陰陽師ヲ管轄セシメ、之ヲ以テ業トスルモノハ、皆同家ノ免許ヲ受ケシメタリ、
凡テ陰陽ノ道タル、陰陽五行ノ説ニ本ヅキ、日月支干ノ運ヲ考ヘ、相生相刻ノ理ヲ推シ、吉凶ヲ定メ、趨避ヲ辨ズルモノニシテ、方位ニ忌アリ、日時ニ忌アリ、一身ノ忌アリ、衆人ノ忌アリ、一事ノ忌アリ、諸事ノ忌アリ、鬼門、金神、歳德、天一ノ如キ、一トシテ拘忌ニアラザルハナク、冠婚喪祭ノ大ヨリ、洗髮剪爪ノ末ニ至ルマデ、皆之ニ由ランコトヲ要セシナリ、而シテ之ヲ祈リ、之ヲ禳フニ、祭ヲ行フコトアリ、泰山府君祭、雷公祭、屬星祭ノ如キ是ナリ、又符呪アリ、之ヲ門ニ貼シ、之ヲ身ニ藏メテ、轉厄ニ備フ、又禁厭アリ、即チマジナヒナリ、呪詛ハノロヒト云ヒ、ウケヒト云ヒテ、禁厭ヲ以テ人ヲ患苦ニ陥ラシムルモノナリ、反閉ノ如キモ、禁厭ノ一ニシ
テ、亦災害ヲ避クル法ナリ、多クハ之ヲ出行ノ際ニ用イタリ、而シテ身固ハ其略法ナリト云フ、
陰陽道ノ行フ所ハ廣シ、卜筮、天文、暦學、漏刻ノ如キモ、往時ハ之ニ屬シタレド、今ハ別ニ其篇ヲ立テヽ之ヲ擧ゲタリ、又此道ハ神祇部ノ祓禊、宗敎部ノ修法ト相混ズルモノアレバ、互ニ參看スベシ、而シテ陰陽道ニ非ザルモ、其ノ法ノ相似タルモノハ、便ヲ逐ヒテ此ニ收メタルモノ多シ、
〔倭名類聚抄〕
〈五官名〉
p.0002 職員令云、〈○中略〉陰陽寮、〈於牟夜宇乃豆加佐〉
〔續日本紀〕
〈二十一淳仁〉
p.0002 天平寶字二年八月甲子、是日、大保從二位兼中衞大將藤原惠美朝臣押勝、〈○中略〉等、奉レ勅改二易官號一、〈○中略〉陰陽寮(○○○)陰陽暦數國家所レ重、記二此大事一、故改爲二大史局一(○○○)、
〔續日本紀〕
〈二十五淳仁〉
p.0002 天平寶字八年九月丙辰、勅逆人仲麻呂執政、奏改二官名一、宜レ復レ舊焉、
〔職原抄〕
〈上〉
p.0002 陰陽寮〈唐名司天臺 或云大史局〉
〔日本書紀〕
〈二十九天武〉
p.0002 四年正月丙午朔、大學寮諸學生、陰陽寮(○○○)、外藥寮、〈○中略〉等、捧二藥及珍異等物一進、
〔中右記〕
p.0002 大治二年二月十四日甲戌、未時許、當レ西有二燒亡所一、申時火滅了、後陰陽頭家榮示送云、燒亡之興、火起二醬司小屋一、燒二陰陽寮(○○○○)、勘解由使廳、宮内省、并園韓神社、神祇官八神殿、郁芳門等一了、陰陽寮鐘樓皆燒損、但於二渾天圖漏刻等具一者令二取出一也、往代之器物此時滅亡、尤爲二大歎一者、抑陰陽寮鐘樓(○○○○○)〈ハ、〉古人傳來云、昔桓武天皇遷都被二作渡一也、其後未レ逢二火災一、至二今年一三百三十七年、今日燒、爲二天下一爲二大歎一歟、
〔山槐記〕
p.0002 治承三年六月廿二日己酉、三井寺禪覺懺法來之次、〈○中略〉申云、〈○中略〉陰陽寮鐘、鑄二付十二神一、子神在レ南、 如レ此所レ釣也、於二彼由緒一者、不レ知事也者、今日、又權漏刻博士菅野季親來、問二寮鐘十二神向方一、答旨禪覺之示、仍問二由緒一、申云、本説不レ知、又不レ承、但所申傳、大神向二水神一、是厭術之心也云々、
〔增鏡〕
〈七北野の雪〉
p.0002 又そのころ〈○文永四年〉大風ふきて、人々の家々そこなはれうする事、かずしらぬ中に、
〈○中略〉陰陽寮の守護神の社もまろびぬ、
〔令義解〕
〈一職員〉
p.0003 陰陽寮
頭一人、〈掌二天文、暦數、風雲氣色、〉〈謂天文者、日月五星廿八宿也、暦數者、計二日月之度數一、而造レ暦授レ時也、氣色者、風雲之氣色也、言以二五雲之色一、視二其吉凶一、候二十二風氣一知二其妖祥一、其天文博士職掌、唯言二氣色一、不レ言二風雲一者、擧二氣色一、則有二風雲一可レ知也、〉〈有レ異密封奏聞事一、〉助一人、允一人、大屬一人、少屬一人、陰陽師六人、〈掌二占筮相一レ地、〉〈謂占者、極レ數知レ來曰レ占也、筮者、蓍曰レ筮也、相者、視也、〉陰陽博士一人、〈掌レ敎二陰陽生等一〉陰陽生十人、〈掌レ習二陰陽一〉暦博士一人、〈掌三造レ暦及敎二暦生等一〉暦生十人、〈掌レ習レ暦〉天文博士一人、〈掌下候二天文氣色一、有レ異密封、及敎中天文生等上〉天文生十人、〈掌レ習二候天文氣色一、〉漏刻博士二人、〈掌下率二守辰丁一、伺中漏刻之節上、〉守辰丁廿人、〈掌下伺二漏刻之節一、以レ時擊中鐘鼓上、〉使部廿人、直丁二人、
〔令義解〕
〈一職員〉
p.0003 中務省〈管二職一寮六司三一〉
卿一人、〈掌下侍從、獻替、贊二相禮儀一、(中略)監二修國史一、〉〈謂、圖書寮所レ修、此省更押監也、案二雜令一、有二徴祥災異一、陰陽寮奏訖者(○○○○○○)、季別封送二中務省一入二國史一是也(○○○○○○○○○○○○)、○中略〉〈事上、〉
〔令義解〕
〈一官位〉
p.0003 從五位〈○下階〉陰陽頭 從六位〈○上階〉陰陽助 正七位〈○下階〉陰陽博士、天文博士、 從七位〈○上階〉陰陽允〈○中略〉陰陽師、暦博士、 從七位〈○下階〉漏刻博士 從八位〈○下階〉陰陽大屬 大初位〈○上階〉陰陽少屬
〔撮壤集〕
〈下官位〉
p.0003 陰陽(ヲンヤウ)頭〈司天監、大史令、〉
〔續日本紀〕
〈二十八稱德〉
p.0003 神護景雲元年八月癸巳、陰陽員外助(○○○○○)從五位下紀朝臣益麻呂叙二正五位下一、〈○中略〉員外允正六位上日下部連虫麻呂〈○中略〉並外從五位下、
〔延喜式〕
〈十八式部〉
p.0003 凡諸司史生(○○)者、〈○中略〉陰陽寮各四人、
〔日本後紀〕
〈十七平城〉
p.0003 大同四年三月己未、始置二左右兵庫史生各二員一、〈○中略〉加二〈○中略〉陰陽寮二員一、
〔延喜式〕
〈十八式部〉
p.0003 凡諸司使部(○○)者、〈○中略〉陰陽寮、内匠寮各十人、
〔日本書紀〕
〈二十九天武〉
p.0004 朱鳥元年正月甲寅、召二諸才人、博士(○○)、陰陽師(○○○)、醫師者、并餘人一、賜二食及祿一、 六月庚午、工匠、陰陽師(○○○)侍醫、大唐學生、及一二官人、并三十四人授二爵位一、
〔令義解〕
〈四考課〉
p.0004 訓導有レ方、生徒充レ業、〈謂方者道也、充者滿也、依二學令一、通レ中以上、是爲レ充レ業也、〉爲二博士之最一、
占、候、醫、卜、〈謂陰陽曰レ占、天文曰レ候、療レ病曰レ醫、灼レ龜曰レ卜也、〉效驗多者、〈十得レ七爲レ多、〉爲二方術之最一、
〔令義解〕
〈十雜〉
p.0004 凡取二陰陽寮諸生一(○○○○○)者、並准二醫生一、〈謂先取二占氏、及世習者一、後取二庶人十三已上、十六已下聰令者一爲レ之也、〉其業成年限、及束脩禮、一同二大學生一、〈謂其習業經書、及考課條數、并敍法等第、並皆依二式處分一也、〉
〔政事要略〕
〈九十五至要雜事〉
p.0004 學校事下〈陰陽(○○)典藥療病在二典藥中一〉
〔通俗篇〕
〈二十一藝術〉
p.0004 陰陽生 元典章、元貞元年二月、中書省奏、定二陰陽敎授一、令下各路公中選老成厚重藝術精明爲二衆推服一一名上、于二三元經書一出レ題、移二廉訪司一、體覆擧用、按、元設二陰陽學一、學中習レ業者、乃謂二之陰陽生一、所レ習書以二周易一爲レ首、而凡天文、地理、星命、占卜、及相宅、相墓、選日諸術、悉期二精通一、明以來學廢而陰陽生但依二附道家一、名實甚不レ稱矣、
〔延喜式〕
〈十六陰陽〉
p.0004 學生卅人、〈陰陽生(○○○)十人、暦生十人、天文生十人、〉其得業生、陰陽三人、暦二人、天文二人、並取二生内人一、
右得業生、選二性識聰慧一、令レ專二精學一、其名申レ官給二衣食一、成業年限依レ令、未成業者不レ得レ趁二入他色一、若未レ終レ業、其師遷二外官一者從レ之終レ業、
〔延喜式〕
〈十八式部〉
p.0004 凡陰陽寮諸生、典藥寮醫生預レ考、并免二傜役一、
〔續日本紀〕
〈二十一淳仁〉
p.0004 天平寶字二年八月庚子朔、其大學生、〈○中略〉陰陽生(○○○)廿五已上授二位一階一、
〔延喜式〕
〈十六陰陽〉
p.0004 凡來年御忌者、寮預令二陰陽師等勘録一、十二月十日進二内侍司一、〈中宮東宮准レ此〉
〔延喜式〕
〈四十三春宮〉
p.0004 凡十二月十一日、陰陽寮啓二來年御忌一、
〔禁秘御抄〕
〈中〉
p.0004 陰陽道
大略同、〈○醫道〉但普通不レ參二御縁一、是束帶參也、近代軒廊外内々御卜之時、於二藏人所、或便宜所一有レ之、但無二
殊事一之時、不レ可レ有二御卜一、在二寬平遺誡一、行事反閉之外、時々有二身固事一、不レ可レ爲レ例、只給二御衣一可レ奉二仕身固一也、凡如二陰陽醫道一候二藏人所一也、旦元三御藥之時、醫道著二藏人所一、康保四、陰陽博士道光光宗召二藏人所一、天暦陰陽頭平野茂樹、又如レ此、藏人付レ簡、
〔官職秘抄〕
〈下〉
p.0005 陰陽寮
頭 當道中、位次第一任レ之、但不レ堪二其器一者、次人得レ之、
助〈權〉 同位次第二三者任レ之
大允 撰レ人授レ之
少允 自レ屬轉レ之、不レ經二屬陰陽師等一任例、〈秦春藤、家原芉門、賀茂道言、〉自二陰陽師一任例、〈惟宗孝親、父正邦、辭レ頭申二任之一、〉
屬〈大少〉 自二陰陽師一轉レ之、不レ經二陰陽師一任例、〈菅原公親〉
陰陽師 以二得業生一申二任之一
已上三箇職謂二之連奏一(○○○○○○○○○)
陰陽博士〈權〉 當道以レ之爲二重職一、仍門生補レ之例太希也、皆以二重代器量者一任レ之、二度任例、〈時親〉
暦博士〈權〉 又以二重代輩一任レ之、兄弟相並例、〈道淸、道言、〉
天文博士〈權〉 堪二其器一者任レ之、兄弟相並例、〈章親、奉親、〉
漏刻博士〈權〉 雖二門生一、堪レ器者任レ之、依二天文道擧一任例、〈中臣令有〉
右諸道官雖レ可レ編二諸司之中一、爲レ類二聚事一聊立二別篇一、
〔職原抄〕
〈上〉
p.0005 陰陽寮〈唐名司天臺、或云二大史局一、〉
掌二天文暦數事一、昔者一家兼二兩道一、而賀茂保憲以二暦道一傳二其子光榮一、以二天文道一傳二弟子安部晴明一、自レ此已後兩道相分、
頭一人、〈無二權官一、相當從五位下、唐名司天監、〉當道極官也、 助〈權助、相當從六位上、唐名司天少監、〉同道輩、五位六位共任レ之也、 允〈大少〉〈唐名
司天丞、〉同道被官門生等任レ之也、 屬〈大少〉〈唐名司天主簿〉 陰陽博士〈權、相當正七位下、唐名大卜正、〉同道五位已上任レ之也、 陰陽師〈相當從七位上、唐名大卜師、〉近來強不レ任レ之歟、 暦博士、〈權、相當從七位上、唐名司暦、〉暦道任レ之、近代五位已上任レ之、 天文博士、〈相當正七位下、唐名司天、〉天文道任レ之、近代五位已上任レ之、 漏刻博士〈相當從七位下、唐名司辰、又契壺司、〉五位六位共任レ之也、
〔朝野群載〕
〈十五陰陽道〉
p.0006 陰陽寮
請下特蒙二天裁一因二准先例一停二止他人非巡望一被上レ拜二任官人品官等一状
一正六位上行少屬淸科朝臣良兼 右良兼、爲レ屬二上臈一、仍以二良兼一申二請少允(○○)闕一、
一正六位上行少屬伴朝臣正信 右正信、夙夜之勤、未レ致二懈怠一、仍以二正信一申二請少允闕一、
一正六位上行陰陽師三善朝臣兼任 右兼任爲二陰陽師上臈一、仍以二兼任一申下請少屬(○○)良兼轉二任少允一之替上、
一正六位上行陰陽師菅野朝臣貞義 右貞義、任二當職一之後、勤節不レ懈、仍以二貞義一申下請少屬正信轉二任少允一之替上、
一前陰陽師得業生正六位上伴朝臣友仲 右從二得業生一拜二任陰陽師一者例也、件友仲、成業之後、寮底之勤頗超二傍輩一、仍以二友仲一申下請陰陽師兼任轉二任少屬一之替上、
一前天文得業生正六位上惟宗朝臣忠盛 右忠盛成業之後、勤勞久積、仍以二忠盛一申下請陰陽師貞義轉二任少屬一之替上、
以前、官人等、任二道理次第一所二申請一也、望請天裁、停二止他人非巡之望一、如二申請一被二拜任一者、將レ致二奉公之節一矣、謹請二處分一、
康和二年正月廿一日 從五位上行助兼權暦博士丹波介賀茂朝臣家榮
從五位上行大炊頭兼權助暦博士阿波介賀茂朝臣光平
從五位上行頭兼陰陽博士賀茂朝臣成平
〔朝野群載〕
〈十五陰陽道〉
p.0007 太政官符 中務省
應下以二學生正六位上菅原朝臣爲經一補中任陰陽得業生上(○○○○○)事
讀書
黄帝金櫃經一部
周易一部
右得二彼省去康和二年七月廿七日解状一偁、陰陽寮同月廿五日解状偁、從五位上行陰陽頭兼陰陽博士賀茂朝臣成平等牒状云、件爲經、情操聰敏、勤學匪レ懈、望請、補二得業生淸科則良年限替一、將レ令レ遂二某業一者、省依二牒状一申送者、從二位行權中納言藤原朝臣仲實宣、依レ請者、省宜二承知依レ宣行一之、符到奉行、
康和四年八月七日
權左中辨平朝臣 右少史中原朝臣
〔中右記〕
p.0007 嘉承二年十二月廿一日壬寅、今夜秋除目初也、 廿二日、晩頭參内、除目終也、
除(裏書)目任人、皆以道理也、但以二道言朝臣一、被レ任二陰陽博士一(○○○○)條如何、本陰陽頭光平者道言子也、子爲二本寮頭一、父爲二陰陽博士一事、頗不レ被二甘心一、陰陽博士依レ爲二陰陽寮所攝之官一也、
〔延喜式〕
〈十六陰陽〉
p.0007 勸學田(○○○)十町〈河内國五町攝津國五町〉 右件田依二當土估賃租一、以充二諸生等食料一、
〔類聚三代格〕
〈十五〉
p.0007 勅、安レ上治レ民莫レ善二於禮一、移レ風易レ俗莫レ善二於樂一、禮樂所レ興惟在二二寮一、門徒所レ苦但在二衣食一、亦是天文陰陽暦笇醫針等學國家所レ要、並置二公廨之田一、應レ用二諸生供給一、其大學寮卅町、雅樂寮十町、陰陽寮十町(○○○○○)、内藥司八町、曲藥寮十町、所司宜二准レ件施行一、
天平寶字元年八月廿三日〈○又見二續日本紀一〉
〔類聚三代格〕
〈十五〉
p.0007 太政官符
應レ定二博士職田一事
合博士廿人、應レ給職田七十三町、〈内五十二町、外廿一町、○中略〉
陰陽博士職田(○○○○○○)四町
河内國一町〈若江郡〉
山背國二町〈相樂郡〉
近江國一町〈野洲郡〉
右位田米年可レ收、而依二宣旨一改二置陰陽博士職田一、〈○中略〉
延暦十年二月十八日
〔類聚三代格〕
〈十五〉
p.0008 太政官符
應レ給二官田七十八町六段三百卅九歩一事
山城國十九町三段二百九十九歩
河内國廿七町九段二百九十六歩
攝津國十町二百六十歩
右陰陽寮官人以下、諸生已上、并廿八人月料、〈○中略〉
以前得二中務宮内兩省解一偁、彼兩寮解偁、件月料粮等米停レ給二京庫一、以二官田一所レ請如レ件者、謹請二官裁一者、左大臣宣、奉レ勅依レ請、
仁和四年十二月廿五日
〔類聚國史〕
〈百七職官〉
p.0008 天長三年九月甲申、河内國若江澀河兩郡地二十町充二陰陽寮一、
〔三代實録〕
〈七淸和〉
p.0008 貞觀五年四月七日己亥、河内國若江郡空閑地四町賜二陰陽寮一、
〔下學集〕
〈上人倫〉
p.0008 陰陽師(ヲンヤウシ)
〔倭訓栞〕
〈中編三十於〉
p.0009 おんやうし 陰陽師也、〈○中略〉假名は和名抄に見えたり、よみくせはおみやうし(○○○○○)也、
〔物類稱呼〕
〈一人倫〉
p.0009 をんミやう(―――)じ〈をん<ruby><rb>やうじ</rb><rt>ニヨウ(―――)</rt></ruby>と唱ふ、然どもをんみやうじとよむ也、〉
〔漢書〕
〈三十藝文〉
p.0009 道三十七家、九百九十三篇、
道家(○○)者流、蓋出二於史官一、歴二記成敗存亡禍福古今之道一、然後知二秉レ要執レ本、淸虚以自守、卑弱以自持一、此君レ人南面之術也、〈○中略〉
陰陽二十一家、三百六十九篇、
陰陽家(○○○)者流、蓋出二於羲和之官一、敬二順昊天一、暦二象日月星辰一、敬授二民時一、此其所レ長也、及二拘者爲一レ之、則牽二於禁忌一、泥二於小數一、舍二人事一而任二鬼神一、
〔史記〕
〈百二十七日者列傳〉
p.0009 褚先生曰、〈○中略〉臣爲レ郎時、與二太卜一待レ詔、爲レ郎者同レ署、言曰、孝武帝時、聚二會占家一問レ之、某日可レ取レ婦乎、五行家曰可、堪輿家曰不可、建除家曰不吉、叢辰家曰大凶、暦家曰小凶、天人家曰小吉、太一家曰大吉、辯訟不レ決、以レ状聞、制曰、避二諸死忌一、以二五行一爲レ主、人取二於五行一者也、
〔風俗見聞録〕
〈二〉
p.0009 陰陽道の事、吉凶損益を告て、人を損し己を益さん事をはかるもの也、又家相、人相、方位、的殺、地祭、身固め、家固等の事あり、これまた人身を惑し、未前を億するもの也、陰陽道は、天下國家の事に御用ひあるは、格別の御事なれども、以下に廣く行はるべきものに非ず、すでに易の弊は賊也と云り、世をぬすみ人を犯す也、此道朝廷の御用ひあさからずして、中古大に誇て、土御門家の食祿、備前大井庄〈并〉肥前内を領し、凡拾有餘萬石の家祿也と云、然るに豐臣殿下の世に欠所せられ、殊に文祿の頃、秀次卿騷動の時、土御門家の加りし事有し故、尾張國へ配流せられ、陰陽道は是國家を犯道也、治平の世には不益の物也と、兼て思ひ來れりと有て、陰陽道悉闕職せられしときく、其のち御當家の御世に成て、御赦免を蒙り、聊食祿を給はり、土御門家再び職祿を起せ
し由、併配流の内に晴明已來の家の傳書を失ひし由、今世に用る所のハ僞書也と云、當時土御門家に入寮せし門人、及配下の者ども、皆周易を用て用事をしらず、いかにも元來の源法は取失しとみゆ、或邊土の者、密に以前の本法を傳へて秘藏せしと云もありし故、是が申旨を取り、試みに未前を問しに、よく符合せし事有、然らば右の本書の法は、不測の玄旨成ものと見ゆ、扨當時土御門家の配下なる陰陽師共、三ケ津は勿論の事、國々に散在し、その數萬人成べし、是等土御門家の門人配下抔唱れども、彼家へ出入し事もなく、別而傳受を請し事なく、彼家より所々へ取締る所を立置所〈江、〉年々運上を出し、配符を得て渡世する也、依て彼家の法式をしらず、面々思思に、或は周易を用ひ、或は暦法を用ひ、又は神道の祓をなし、又は密に佛道の加持祈禱の法を行ひ、或は狐狸など遣て、奇怪の事を告て人を訛し、金錢を奪ふ也、土御門家、又は白川家、吉田家の神祇職に於ても、或は門人配下と唱えて、國々在々迄配符をわたし置けれども、其者の顔も知らず、素生の善惡もしらず、今又何樣の法を用も知らず、只年々の貢をとるのみの事也、雙方利欲同志の渡世也、尤當世は富者多く、貧者多く、優長人多く、病苦人多、又強欲惡逆盜難、其外の凶難多ありて、彼是惑犯事どもおほき世の中、古陰陽卜筮の事大に行れて、繁多に成し故、門人配下の名多く出來て、年々の收納以前倍增せしといふ、扨陰陽道卜筮の事、先辻抔へ出るは、錢廿四銅より起りて、以上だん〳〵ありて、其事に寄、其相手に寄て、何程も分限なく訛し取事也、此道元來國家を犯もの成り、當時の如く、利欲に拘りては、猶更人に害難を授るのみ也、殊に此業を成者は、或は浪人、或は僧徒の墮落、或は儒醫、其外我業體に掛て渡世に困りし者、都て放蕩無賴のものゝなす事にして、猥に利口の方便を遣ひて、欺取事を是とする也、斯の如く欲情を以て伺ふ卜筮に、天命の降る事や有べき、尤往古聖德の極給ふ法式を以伺ふ事故、差當の吉凶は顯はるゝ事も有べけれども、誠に永久不朽の天命は、降り給ふまじき也、勿論卜筮のみにも限らず、神道の祓も、佛道の祈禱
も、禮祿謝義に對して行ふ修法は、神佛も感應は有まじく、殊に天道は請給ふまじき也、譬へば賣女の子をなさゞるが如し、欲情の交りし修法は、天命も佛神も、脇に成し給ふ也、如レ此當世は、聖敎の道も、佛神の道も地に落て、利欲に汚れて奇瑞なく、不測の天命更に降り給はざる也、
○按ズルニ、陰陽寮ノ陰陽師ノ事ハ、上文陰陽寮職員條ニ收メタリ、
〔令義解〕
〈一職員〉
p.0011 大宰府(○○○)〈帶二筑前國一○中略〉
陰陽師一人〈掌二占筮相一レ地〉
〔類聚三代格〕
〈五〉
p.0011 太政官符
應レ置二鎭守府(○○○)陰陽師一事
右得二陸奧國解一偁、鎭守府牒偁、軍圑之用、卜筮尤要、漏刻之調亦在二其人一、而自レ昔此府無二陰陽師一、毎レ有二恠異一、向レ國令レ占、往還十日、僅决二吉凶一、若有二機急一、何知二物變一、請被二言上一、將レ置二件職一者、國加二
覈一、事誠可レ然、望請始置二其員一令レ備二占决一、謹請二官裁一者、大納言正三位兼行民部卿藤原朝臣冬緒宣、奉レ勅依レ請、
元慶六年九月廿九日
太政官符
應下改二權史生一爲中陰陽師上事
右得二中務省解一偁、陰陽寮解偁、武藏權史生屋代直行欵状偁、謹撿二案内一、出羽武藏(○○○○)等國、元來無二陰陽師一、而依二國解状一、以二陰陽生一始置二件職一、出羽號二陰陽師一、武藏稱二權史生一、靜尋二事意一、理不レ可レ然、望請准二出羽國一、號二陰陽師一者、寮依二欵状一申送者、省依二解状一、謹請二官裁一者、從三位守大納言兼左近衞大將行陸奧出羽按察使藤原朝臣基經宣、奉レ勅依レ請、
貞觀十四年五月二日
太政官符
應下减二史生一員一置中陰陽師上事
右得二下總國(○○○)解一偁、此國接二近邊要一、安不レ忘レ危、不虞之戒、非レ占難レ决、望請、减二史生員一置二陰陽師一、謹請二官裁一者、右大臣宣、奉レ勅依レ請、
貞觀十八年七月廿一日
〔諸家家業記〕
p.0012 陰陽道 土御門
陰陽道ハ、古來、賀茂、安倍、兩家之職掌ニ候、賀茂家ハ幸德井と稱し、地下之者ニ候、安倍家ハ、元祖安倍晴明ニ而、當時之土御門家、則右晴明之末孫ニ候、中古より、堂上ニ被二相成一候、乍レ去、陰陽道之事、今以賀安兩家之職掌ニ相成居候、尤堂上地下之差別有レ之、依而土御門家ハ陰陽頭ニ任ジ、幸德井ハ陰陽助ニ被レ任候、近例、年暦をば幸德井より調進有レ之候、乍レ去幸德井ニ而ハ、暦之中段之文を相定メ書加候迄ニ而、一體之暦ハ、當時御改暦以來、關東ニ而出來候由、土御門家ニ而も、暦之儀關係無レ之と申ニ而も無レ之、既ニ、已前寶暦御改暦之砌ハ、土御門家ニ而出來候事候得共、當時ニ而者、暦之事ハ、強而關係不レ被レ致候由、尤關東之天文方等ハ、都而彼家之門人ニ相成候先規之由、彼家、當時陰陽道を主として、天變地妖等有レ之節ハ、勘文を奉リ、古凶を密奏有レ之、禁中ニ而、御大禮被二執行一候砌ハ、御日取時取之儀、豫彼家〈江〉被二仰出一、勘文を奉らしむ、且身固、反閉、其外御撫物、御祈等之事、時々被二仰出一、關東〈江〉も、御大禮之節ハ、御身固之事被レ勤、其餘年々巳之日祓、名越祓等獻上有レ之、并年筮と稱し、其年之吉凶、冬至之日卜定、公武之家々〈江〉被二指出一候事なども有レ之候由、安倍之新家倉橋ハ、陰陽道之沙汰無レ之候、
〔嘉永七年雲上明覽〕
〈下〉
p.0012 安倍氏〈土御門 倉橋〉
〈土御門有條卿男〉久脩 泰重
〈倉橋〉泰吉
〈百七十七石梅 小 路〉土御門陰陽頭晴雄朝臣廿八〈從四位上右兵衞佐〉
家司 若杉陰陽少允 星合右兵衞
御合印 御寺 梅林寺
〔譚海〕
〈四〉
p.0013 土御門は、陰陽博士家也、因て改暦の奏を掌る、其家制作する所の、測量の書器等あれども、古代のものにして、西洋の精密なるにしかざるゆへ、今時は關東に測量所を置れ御沙汰あれば、空名を持するのみ也、
〔平城坊目考〕
〈二〉
p.0013 陰陽町〈當町南京陰陽師等住居、仍此名を號す、○中略〉
當所、南都四家陰陽家(○○○○○○○)住所、其一なり、 古老曰、當所陰陽師は、加茂氏吉備大臣眞備公之裔、而古へ吉備塚邊に住す、其後離散して、今の地に移ると云々、〈○中略〉 今按に、四箇陰陽師(○○○○○)は、山上、吉備塚、幸町、梨子原、陰陽町四箇所乎、
〔基量卿記〕
p.0013 元祿十二年六月三十日丁卯、水無月祓如レ例、陰陽師獻レ麻(○○○○○)、
〔京都御役所向大概覺書〕
〈一〉
p.0013 陰陽師之事
土(支配)御門兵部少輔
洛中洛外
一塔之段毘沙門北半町 大(陰陽師)黑刑部
一寺町佛陀寺前町 若杉金大夫
一不明門通五條上ル町 小野主馬
一北野境内馬喰町 松村河内
一北野右近馬場通下立賣上ル七軒町 吉田平九郎
〔寺社法則〕
〈下〉
p.0014 天明七未七ノ廿一 尾張殿御城附
一陰陽師之儀、往古ハ、町奉行衆支配ニ候處、中古相改、諸國陰陽師(○○○○○)共之義、土御門家〈江〉管領被二仰付一以後ハ、寺社奉行衆御支配ニ相成候由、付而ハ、陰陽師共、其職ヲ不二取放一、叱押込或ハ過料等之輕キ御咎品御申渡候節も、必寺社奉行衆前へ御召出御申渡候義ニ候哉、左候ハヾ、白洲〈江〉被二召出一御申渡候哉、或ハ板縁落間等へ被二召出一候事ニも候哉、
一總而社人と陰陽師と之御取扱方、此方致候ヘバ、輕キ社家ゟも陰陽師ハ相劣候御取扱ニ候哉、又ハ大旨輕キ社家同樣之格ニ御取扱有レ之事ニも候哉、
御書面、咎品申渡候節、奉行所ニ而ハ、都而咎之無二差別一、直ニ申渡候、且許状所持之ものハ、評席下通リ〈江〉差出、許状無レ之ものハ、板縁ヘ差出候、
〔天保集成絲綸録〕
〈八十〉
p.0014 寬政三亥年四月
大目付〈江〉
陰陽道、職業いたし候輩は、土御門家支配たるべき儀勿論候處、近年甚亂雜に相成、陰陽道猥ニ執行候族も有レ之樣ニ相聞候、以來右體之心得違無レ之樣、土御門家より免許を請、支配下知堅相守可二取行一候、
右之趣、不レ洩樣可レ被二相觸一候、
四月
右之通可レ被二相觸一候
〔德川禁令考〕
〈四十九文武藝術〉
p.0014 寬政七卯年十一月
板倉周防守〈江〉松平備前守より
寺院山伏ニ而易道致し候儀ニ付問合
易業職道ニ而、不レ殘寺院山伏等、物之善惡、或ハ失物等、考呉候樣相願候得バ、書物等ニ而差遣し、禮物等ハ不レ請候得バ、土御門家免許無レ之候而も不レ苦候哉、
書面、社家寺院山伏之類、祈禱いたし候節、善惡邪正考遣候儀、禮物不二申請一候上ハ、土御門家免許無レ之ものにても不レ苦筋ニ候得共、表向大體ニ申成、内實ハ禮錢等を申請、職業同樣致し候もの粗有レ之哉ニ付、容易ニ御聞屆難二相成一筋と存候、
文化二丑年五月
陰陽道之儀ニ付、觸頭(○○)より差出候書付、
乍レ恐以二書付一申上候
一陰陽道諸占考職業仕度者共、當役所〈江〉職札(○○)相願候刻、當家配下之内二而師匠相立、身分之儀ハ、身元引受人有レ之、連印を以、職札相願候ニ付、職業勤方之儀夫々相糺、任レ賴職札相渡候先例御座候之處、御府内之儀ハ、就レ中數多配下之儀、混雜ニも御座候之間、一派爲二取締一、以來支配入願出候者有レ之節ハ、其所之町役人〈江〉故障無レ之哉之旨掛合、故障無レ之旨申越候ハヾ、職札相渡候樣可レ仕候、左候ハヾ、一派取締ニも相成可レ申と奉レ存候間、御聞濟被二成下一候樣仕度、此段申上置候、以上、
文化二乙丑年五月
藪(關東陰陽家觸頭)兵庫〈印〉
寺社御奉行所
〔公事吟味留〕
〈五〉
p.0015 巳〈○文化六年〉十二月二十六日濟口承屆、但相手方町役人咎有レ之、
安藝守殿懸〈り〉
一陰陽家觸頭藪兵庫相手、靈巖島鹽町久右衞門店賣卜職玄春事、水村伊勢難澀出入、
差上申濟口證文之事
關東陰陽家觸頭藪兵庫煩に付、代黑田貞之允より、靈巖島鹽町家主久右衞門店水村玄春相手取候難澀出入、去辰十一月中、當御奉行所〈江〉奉二出訴一候處、御裏書奉二頂戴一相附、相手方よりも返答書を以、夫々御答申上、雙方被二召出一、數度御吟味之上、御理解被二仰聞一、難レ有仕合奉レ存候、然處此節取扱人立入、雙方都而懸合之熟談内濟仕候趣意、左に奉二申上一候、
一右出入一件、水村玄春儀、寬政八辰年より、土御門家配下入之儀願出、職札(○○)相渡、渡世仕來候處、去辰七月、吉田家より、呼名和泉と御許状頂戴仕候に付、土御門家法令に相背、配下取締り方差支候付、職札差戻候樣申聞候得共、難澀仕、職札相歸不レ申候に付、不レ得二止事一奉二出訴一候處、此節玄春儀、天社神道職札并呼名許状、土御門家よりも申受、以來陰陽道職業、前々之通仕度段、取扱人を以相詫候上は、土御門家役所規定も相立、差支無二御座一、尤吉田家に而も、差支無二御座一候間、雙方納得之上、内濟熟談仕、偏御威光と難レ有仕合奉レ存候、然上ハ、右一件に付、重而御願ケ間敷儀、毛頭無二御座一候、爲二後證一連印濟口證文差上申所、仍如レ件、
文化六巳年十二月 訴訟人(關東陰陽家觸頭藪兵庫煩に付代) 黑田貞之允
相手(靈巖島鹽町家主久右衞門店) 水村伊勢
寺社御奉行所
〔觸留〕
〈七〉
p.0016 巳八月廿一日、寺社奉行より申上書附御下〈ゲ、〉評議致し申上候、〈○中略〉
名(南北 小口年番)主共
關東陰陽師觸頭藪兵庫、并同人方に同居罷在候吉村織部儀、是迄芝田町四丁目家主善次郎店裏屋當分之内借受住居罷在、右は去ル寅年、町道場之儀に付、被二仰出一之趣を以、元より表店住居ハ不二相成一身分に候處、兵庫は觸頭相勤、其上年々土御門家より獻上之使者旅宿に相成、右御品をも相仕立、殊に數人之配下呼出、御觸并敎諭筋等申聞候儀も、裏家住居に而ハ行屆がたく、織部ハ、御由
緒を以、年來兩丸〈江〉御守札等獻上致し、是又裏家に而ハ、仕立方其外差支候由を以、追々寺社奉行〈江〉及二歎願一、事實無二餘儀一筋に付、陰陽師之内、右兩人并同職に而、兩丸御釜入御用相勤候齋田宮大夫儀ハ、追而同家相續人取極候上、右之もの共に限り、武家地之外、市中何れ之場所に而も、表店借受、勝手次第住居致シ、尤莊嚴向等取飾候儀、其外等ハ、兼而御觸之趣相守候樣、寺社奉行所に而、今般申渡候間、右之趣、町役人共相心得居候樣、早々可二申通一候、
但月行事持之場所は、最寄名主共より可二申通一、
弘化二巳年八月廿一日
〔撰要集〕
〈二十五上〉
p.0017 安永六酉年三月〈○中略〉
仁(堀江六軒町嘉兵衞店)兵衞
右仁兵衞申候者、前書之飛田長兵衞と申もの、去ル午年、土御門殿蒙二御免一、十二支七ツ目守鏡(○○○○○○○○)、大坂表に而賣弘申候、然處仁兵衞義、去ル申六月中、用事に而、大坂表〈江〉罷登候節、仁兵衞義、長兵衞と所縁有レ之候に付、右守鏡、御當地に而も賣弘呉候樣、長兵衞相願候而、土御門殿御内、岡部圖書と申者方より、御當地神田土御門殿御役所、吉村權頭と申もの方〈江〉之添状壹通、長兵衞相渡候に付、右添状、去ル申十二月中、權頭方〈江、〉仁兵衞持參仕相屆、御當地に而も、仁兵衞取次に而、右守鏡賣弘申度段、權頭〈江〉相願置候處、當二月四日、權頭方より、仁兵衞呼に參候間、則罷越候得ば、右守鏡、勝手次第賣弘候樣にと申渡候に付、右賣弘申度段、當御役所〈江〉御訴申上候處、追而御呼出可レ被レ遊段被二仰渡一候旨申レ之、尤右十二支守鏡之義は、長兵衞蒙二御免一候儀にて、仁兵衞儀は、取次而已之儀に御座候間、守鏡之譯は一向存不レ申、勿論右守鏡、角鏡(○○)、丸鏡(○○)兩樣共、長兵衞方より差下シ申候由に而、賣買直段并看板仕方、賣弘候場所等之儀申候に付、左に申上候、〈○中略〉
右一通相尋候處、前書之通御座候、則被レ遊二御渡一候訴書寫、并守鏡貳枚返上仕候、以上、
酉二月 喜多村彦右衞門
〔日本書紀〕
〈二十二推古〉
p.0018 十年十月、百濟僧觀勒來之、仍貢二暦本及天文地理書、并遁甲方術之書一也、是時選二書生三四人一、以俾レ學二習於觀勒一矣、陽胡史祖玉陳習二暦法一、大友村主高聰學二天文遁甲一、山背臣日並立學二方術一、皆學以爲レ業、
〔日本書紀〕
〈二十七天智〉
p.0018 十年正月、是月以二小山上一授二〈○中略〉角福牟一〈閑二於陰陽一(○○)〉以二小山下一授二餘達率等五十餘人一也、
〔日本書紀〕
〈三十持統〉
p.0018 六年二月丁未、詔二諸官一曰、當以二三月三日一將レ幸二伊勢一、宜下知二此意一、備中諸衣物上、陰陽博士沙門法藏道基、銀人廿兩、
〔釋日本紀〕
〈十五述義〉
p.0018 陰陽博士沙門法藏道基
〈私記曰、師説、身雖二法師一、任二陰陽博士之職一也、〉
〔藤原家傳〕
〈下武智麻呂〉
p.0018 六月〈○神龜元年〉遷二大納言一、公爲レ人温雅、備二於諸事一、既爲二喉舌一、賛二揚帝猷一、出則奉二乘輿一、入則掌二樞機一、至レ有二朝議一、持レ平合レ和、朝庭上下安靜、國無二怨讟一、當二此時一、〈○中略〉陰陽(○○)有二津守連通余、眞人王仲文、津連首谷、那康受等一、
〔續日本紀〕
〈十聖武〉
p.0018 天平二年三月辛亥、太政官奏偁、大學生徒既經二歳月一、習業庸淺、猶難二博達一、實是家道困窮、無レ物二資給一、雖レ有レ好レ學、不レ堪レ遂レ志、望請、選二性識聰惠、藝業優長者十人以下五人以上一、專精二學問一、以加二善誘一、仍賜二夏冬服并食料一、又陰陽、醫術及七曜頒暦等類、國家之要道、不レ得二廢闕一、但見二諸博士一、年齒衰老、若不二敎授一、恐致二絶業一、望仰二吉田連宜、大津連首、御立連淸道、難波連吉成、山口忌寸田主、私部首石村、志斐連三田次等七人一、各取二弟子一、將レ令二習業一、其時服食料、亦准二大學生一、其生徒陰陽醫術各三人、曜暦各二人、
〔續日本紀〕
〈三十三桓武〉
p.0018 寶龜六年五月己酉、從四位上陰陽頭兼安藝守大津連大浦卒、大浦者、世習二陰陽一、仲滿甚信レ之、問以二事之吉凶一、大浦知三其指意渉二於逆謀一、恐二禍及一レ己、密告二其事一、居未レ幾、仲滿果反、其年授二從四位上一、賜二姓宿禰一、拜二兵部大輔一兼二美作守一、神護元年以レ黨二和氣王一除二宿禰姓一、左二遷日向守一、尋解二見任一、即留二彼
國一、寶龜初原レ罪入レ京、任二陰陽頭一、俄兼二安藝守一、卒二於官一、
〔續日本後紀〕
〈十仁明〉
p.0019 承和八年正月甲午、遣唐陰陽師兼陰陽請益正八位上春苑宿禰玉成、在唐間得二難義一卷一、令二陰陽寮諸生傳學一、
〔文德實録〕
〈五〉
p.0019 仁壽三年五月壬寅、是日、並藤卒、並藤、參議從三位刑部卿大宰員外帥勳四等濱成之曾孫、中判事正六位上臣繼之孫、豐前介正六位上石雄之子也、並藤善二陰陽推歩之學一、明二曉天文風星一、〈○中略〉天長二年留爲二陰陽助一、〈○中略〉九年二月爲二陰陽頭一、〈○中略〉嘉祥三年正月叙二從五位上一、今日加二正五位下一、優二其才學少レ倫、年齒衰落一也、時年六十二、
〔今昔物語〕
〈二十四〉
p.0019 慈岳川人被レ追二地神一語第十三
今昔、文德天皇ノ失サセ給ヘリケルニ、諸陵ヲ點セムガ爲ニ、大納言安倍安仁ト云ケル人承ハリテ、其事ヲ行ヒケリ、ヲ引具シテ、諸陵ノ所ニ行ク、其時ニ慈岳ノ川人ト云陰陽師有ケリ、道ニ付テ、古ニモ不レ耻世ニ並无キ者也、其ヲ以テ、諸陵ノ所ヲ點シテ事畢ヌレバ、皆返リケルニ、深草ノ北ノ程ヲ行クニ、川人大納言ノ許ニ近ク馬ヲ打寄セテ、物云ハムト思タル氣ヲ見ヌ、大納言耳ニ聞ケバ、川人ガ云ク、年來墓々シクハ非トモ、此道ニ擕テ仕リ、私ヲ
ツルニ、未ダ誤ツ事无カリツ、而ルニ此ノ度大キニ誤候ニケリ、此ニ地神追テ來ニタル也、其ハ貴殿ト川人トコソ、此罪ヲバ負ツラメ、是ハ何カ爲サセ給ハムト爲ル、難レ遁キ事ニコソ侍ヌレト、極ク騷タル氣色ニテ云ヲ聞クニ、大納言總テ物不二思エ一成ヌ、只我レハ此モ彼モ不二思エ一、助ケテヨト云フ、川人ガ云ク、然リトテ可レ有キ事ニモ非ズ、試ニ隱シ可レ給キ事ヲ構ヘムト云テ、後ニ後レヌル人、皆前ニ行ケト勸メテ遣リツ、而ル間、日暮ヌレバ、暗キ交ニ大納言モ川人モ、馬ヨリ下テ、馬ヲバ前ヘ遣テ、只二人田ノ中ニ留テ、大納言ヲ居エテ、其上ニ田ニ刈置タル稻ヲ取積テ、川人其ノ廻ヲ密ニ物ヲ讀給ツヽ返シ廻リテ後、川人モ稻ノ中ヲ引開テ、這入テ、大納言ト語テ居ヌ、大納言、川人ガ氣色極テ騷ギワナヽキ篩フ
ヲ見ルニ、半ハ死ヌル心地ス、此テ音モ不レ爲シテ居タル程ニ、暫許有テ、千萬ノ人ノ足音シテ過グ、既ニ過テ行ヌト聞ツル者共、即チ返來テ物云ヒ騷グナルヲ聞ケバ、人ノ音ニ似タリト云ヘドモ、ニ人ニハ非ヌ音ヲ以テ云ク、此者ハ此程ニコソ馬ノ足音ハ輕ク成ツレ、然レバ此ノ邊ヲ集フ隙无ク、土一二尺ガ程ヲ堀テ可レ求キ也、然リトモ否遁レ不レ畢ジ、川人ハ古ノ陰陽師ニ劣ヌ奴ナレバ、 ニテ否不レ見樣ニ構ヘタル、然リトモ、奴ヲバ失テムヤ、吉ク ト喤ル也、然レドモ敢テ不レ候ヌ由ヲ口々ニ云騷ケバ、主人ト思シキ人、然リトモ否隱レ不レ畢ジ、今日コソ隱ルトモ、遂ニハ其ノ奴原ニ不レ會樣ハ有ナムヤ、今來ラム、十二月晦ノ夜半ニ一天下ノ下ハ土ノ下、上ハ空、目ノ懸ラムヲ際トシテ求メヨ、其奴原何ニカ隱レム、然レバ其夜可レ集キ也、然テ 出サムト云テ去ヌ、其後大納言川人走上テ出ヌ、我ニモ非ズシテ、大納言ノ云ク、此レヲ何カセムトスト、云ツル樣ニ求メバ、我等ハ可レ遁キ樣无シ、川人ガ云ク、此ク聞ツレバ、其夜露人ニ不レ被レ知シテ、只二人極ク隱レ可レ給キ也、其時近ク成テ委クハ申シ侍ラムト云テ、川原ニ有ケル馬ノ許ニ歩ヨリ行テ、各家ニ返ヌ、其後既ニ晦日ニ成ヌレバ、川人、大納言ノ許ニ來テ云ク、露人知ル事无クテ、只一人二條ト西ノ大宮トノ辻ニ暗ク成ラム程ニ、御座會ヘト、大納言此ヲ聞テ、暮方ニ成ル程ニ、世中ノ人モ騷シク行キ違フ交ニ、只獨リ二條ト西大宮トノ辻ニ行ヌ、川人兼テ其ニ待立ケレバ、二人打具シテ、嵯峨寺ヘ行ヌ、堂ノ天井ノ上ニ掻上テ、川人ハ呪ヲ誦シ、大納言ハ三滿ヲ唱ヘテ居タリ、然ル間、夜半許ニ成ル程ニ、氣色惡クテ、異ル香有ル風ノ温カナル吹テ渡ル、其程地震ノ振ル樣ニ、少許動テ過ヌレバ、怖シト思テ過ヌレバ、鷄鳴ヌレバ、掻下テ未ダ不レ明ル程ニ、各家ニ返ヌ、別ル時ニ、川人大納言ニ云ク、今ハ恐レ不レ可レ給、然ハ有レドモ川人ナレバ、此ハ構テ遁レヌルゾカシト云テ去ニケリ、大納言、川人ヲ拜シテゾ家ニ返ニケル、此レヲ思フニ、尚川人止事无キ陰陽師ナリトナム語リ傳ヘタルトヤ、
〔今昔物語〕
〈二十四〉
p.0021 賀茂忠行道傳二子保憲一語第十五
今昔、賀茂忠行ト云陰陽師有ケリ、道ニ付テ古ニモ不二耻ヂ一、當時モ肩ヲ並ブ者无シ、然レバ公私ニ此ヲ止事无キ者ニ被レ用ケル、然ルニ人有テ、此ノ忠行ニ祓ヲ爲サセケレバ、忠行祓ノ所ニ行カムトテ出立ケルニ、其忠行ガ子保憲、其時ニ十歳許ノ童ニテ有ケルニ、父忠行ガ出ケルヲ、強ニ戀ケレバ、其ノ兒ヲ車ニ乘セテ、具シテ將行ニケル、祓殿ニ行テ、忠行ハ祓ヲ爲ルニ、兒ハ其傍ニ居タリ、祓畢ヌレバ、祓ヲ爲ル人モ返ヌ、忠行モ此兒ヲ具シテ返ルニ、車ニテ兒ノ祖ニ云樣、父古曾(コソ)ト呼ベバ、忠行何ゾト云ヘバ、兒ノ云ク、祓ノ所ニテ、我ガ見ツル氣色怖氣ナル體シタル者共ノ、人ニモ非ヌガ ニ、亦人ノ形ノ樣ニシテ、二三十人許出來テ、並居テ居エタル物共ヲ取食テ、其造置タル船車馬ナドニ乘テコソ、散々ニ返ツレ、其レハ何ゾ父ヨト問ヘバ、忠行此ヲ聞テ思フ樣、我レコソ此道ニ取テ、世ニ勝タル者ナレ、然レドモ幼童ノ時ニハ、此ク鬼神ヲ見ル事ハ无カリキ、物習テコソ漸ク目ニハ見シカ、其レニ此レハ此ク幼キ目ニ、此鬼神ヲ見ルハ、極テ止事无キ者ニ可レ成キ者ニコソ有ヌレ、世モ神ノ御代ノ者ニモ不レ劣ト思テ返ケルマヽニ、我ガ道ニ知ト知タリケル事ノ限ヲバ、露殘ス事无ク心ヲ至シテ敎ヘケリ、然レバ祖ノ思ケルニ不レ違ハ、保憲ハ止事无キ者ニテ、公私ニ仕ヘテ、聊モ弊キ事无クテゾ有ケル、然レバ其ノ子孫于レ今榮エテ、陰陽ノ道ニ並无シ、亦暦ヲ作ル事モ、是ノ流ヲ離テハ、敢テ知ル人无シ、然レバ今止事无シトナム語リ傳ヘタルトヤ、
〔加茂氏系圖〕
p.0021 〈吉備彦之孫〉吉備麻呂 〈右大臣〉 小黑麻呂〈一名虫丸大納言〉
比賣〈淡海公室〉
諸雄〈正五下、參木、少納言、〉 人麻呂〈從五下左少辨〉 江人〈丹波守〉 忠行〈丹波守從五位下〉
田守 諸魚〈中宮亮〉
薑草 〈忠行一男〉保憲〈主計頭、陰陽博士、天文博士、〉 光榮〈從四上、大炊介、暦博士、右京大夫、〉
〔續古事談〕
〈五諸道〉
p.0022 晴明、大舍人ニテ、笠ヲキテ、勢田橋ヲユクニ、玆光コレヲミテ、一道ノ達者ナラムズル事ヲシリテ、ソノヨシヲイヒケレバ、晴明、陰陽師具曠ガモトニユキタルニ、モチイズ、又保憲ガリユキタルニ、ソノ相ヲミテ、モテナシケリ、晴明ハ術法ノ物ナリ、才覺ハ優長ナラズトゾ、晴明光榮論ジケル、保憲ガトキ、光榮ヲバ前ニイタスコトナシト、晴明申ケレバ、愛弟トニクマンコトナヲヒトシカラズトゾ光榮申ケル、晴明ガ云ク、百家集我ニツタフ、光榮ニハツタヘズ、コレソノ證ナリト云ケレバ、光榮、百家集我ガ許ニアリ、又暦道ツタフトゾ云ヒケル、
〔今昔物語〕
〈二十四〉
p.0022 安倍晴明隨二忠行一習レ道語第十六
今昔、天文博士(○○○○)安倍晴明ト云陰陽師有ケリ、古ニモ不二耻ヂ一止事無リケル者ナリ、幼ノ時、加茂忠行ト云ケル陰陽師ニ隨テ、晝夜ニ是ノ道ヲ習ケルニ、聊モ心モト无キ事无リケル、而ルニ晴明若カリケル時、師ノ忠行ガ、下渡ニ、夜行ニ行ケルニ、供ニ歩ニシテ、車ノ後ニ行ケル、忠行車ノ内ニシテ、吉ク寢入リニケルニ、晴明見ケルニ、艶ヌ怖キ鬼共、車ノ前ニ向テ來ニケリ、晴明是ヲ見テ、驚テ車ノ後ニ走リ寄テ、忠行ヲ起シテ告ケレバ、其時ニゾ、忠行驚テ覺テ、鬼ノ來ルヲ見テ、術法ヲ以テ忽ニ我ガ身ヲモ恐レ无ク、供ノ者共ヲモ隱シ、平カニ過ニケル、其後忠行、晴明ヲ難二去リ一思テ、是ノ道ヲ敎フル事、瓶ノ水ヲ寫スガ如シ、
〔古今著聞集〕
〈七術道〉
p.0022 御堂關白殿御物忌に、解脱寺僧正觀修、陰陽師晴明、醫師忠明、武士義家朝臣參籠して侍けるに、五月一日南都より早瓜を奉たりけるに、御物忌の中に取入られん事いかゞあるべきとて、晴明にうらなはせられければ、晴明うらなひて、一つの瓜に毒氣さふらふよしを申て、一をとり出したり、加持せられば毒氣顯れ侍べしと申ければ、僧正に仰て加持せらるゝに、しばし念誦の間に、そのうちはたらきうごきけり、其時忠明に毒氣治すべきよし仰られば、瓜を取まはし〳〵見て、二所に針を立てけり、其後瓜はたらかず成にけり、義家に仰て、瓜をわらせられけ
れば、腰刀をぬきてわりたれば、中に小蛇わだかまりて有けり、針は蛇の左右の眼に立たりけり、義家何となく中をわると見へつれ共、蛇の頭を切たりけり、名をえたる人々のふるまひかくのごとし、ゆゝしかりける事也、この事いづれの日記にみえたりといふ事をしらね共、普く申傳へて侍り、陰陽師吉平〈晴明子〉醫師雅忠と酒をのみけるに、雅忠盃をとりてうけてしばしもたれけるを、吉平みて御酒とくまいり給へ、只今ないのふり候はんずるぞといひけり、其ことばたがはず、やがてふりければ、酒がふときてこぼれにけり、ゆゝしくぞかねていひける也、
〔類聚雜例〕
p.0023 長元三年三月廿二日乙亥、近曾守道卒去、陰陽道已斷盡之中、暦道全無二其人一、方々有二此災一、可レ歎可レ恐々、
〔續日本紀〕
〈二十孝謙〉
p.0023 天平寶字元年十一月癸未、勅曰、如レ聞、頃年諸國博士醫師多非二其才一、託請得レ選、非二唯損一レ政、亦无レ益レ民、自今已後不レ得二更然一、其須レ講、〈○中略〉陰陽生者、周易、新撰陰陽書、黄帝金匱、五行大義、〈○中略〉並應二任用一、被レ任之後、所レ給公廨一年之分、必應レ令レ送二本受レ業師一、如レ此則有二尊レ師之道終行、敎レ資之業永繼一、國家良政莫レ要二於玆一、宜下告二所司一早令中施行上、
〔續日本紀考證〕
〈七孝謙〉
p.0023 新撰陰陽書、〈唐志王璨新撰陰陽書三十卷、現在書目録、大唐陰陽書五十一卷、新撰陰陽書五十卷、呂才撰、元融按、依二唐志一、呂才陰陽書五十卷、與二王璨新撰陰陽書一自別、現在書目録、以二二書一爲二呂才所一レ撰、又差二其卷數一、恐誤、〉黄帝金匱、〈唐志曹士蔿黄帝金匱經三卷、現在書目録五行家、黄帝注金匱經十卷、黄帝金匱䟽四卷、陳氏撰、按三代實録貞觀十六年五月、陰陽頭兼陰陽博士滋岳朝臣川人傳云、川人作二金匱新注二卷一、本朝書籍目録亦載二金匱新注二卷、滋岳川人撰一、蓋與二此所レ云金匱一同書也、〉五行大義、〈現在書目録又載レ之、狩谷氏曰、唐志有二蕭吉五行記一、即此、元融按、林述齋先生佚存叢書第一帙収二五行大義五卷一、淸阮元研經堂外集五行大義提要云、隋唐志均未二著録一、蓋以二其題名少異一、偶失二撿素一歟、〉
〔日本後紀〕
〈八桓武〉
p.0023 延暦十八年二月乙未、贈正三位行民部卿兼造宮大夫美作備前國造和氣朝臣淸麻呂薨、〈○中略〉長子廣世、〈○中略〉大學會二諸儒一、講二論陰陽書、新撰藥經、大素等一、
〔本朝書籍目録〕
p.0023 陰陽
世要動靜經、三卷、〈滋岳川人撰〉 六甲六帖、同撰、
指掌宿曜經、一卷、〈同撰〉 新術遁甲書、二卷、〈同撰〉
金匱新經、三卷、〈同撰〉 樞機經、同、〈陰陽寮從八位下暦志悲連猪養撰〉
宅肝經、一卷、〈滋岳川人撰〉 占事略決、同、〈晴明朝臣撰〉
暦林、十卷、〈賀家抄〉 新書、一卷、〈家榮朝臣撰〉
〔大日本史〕
〈二百二十六方技列傳〉
p.0024 安倍晴明、右大臣御主人之後也、父益材、大膳大夫、〈尊卑分脈○中略〉所レ著有二金烏玉兎集一、又名二簠簋袖衷傳一、〈據二本書一〉
〔拾芥抄〕
〈下末五行器〉
p.0024 木生レ火 火生レ土 土生レ金 金生レ水 水生レ木〈謂二之相生一(○○)〉 火剋レ金 金剋レ木 木剋レ土
土剋レ水 水剋レ火〈謂二之相剋一(○○)〉
〔五行大義〕
〈二〉
p.0024 第四論、相生就二此分一爲二三段一、一者論二相生一、
經云、天生レ一、始二於北方水一、地生レ二、始二於南方火一、人生レ三、始二於東方木一、時生レ四、始二於西方金一、五行生レ五、始二於中央土一、又曰、天始生レ一者、因レ一而生レ天、非二天生一レ一也、故云、一生レ二、二生レ三、三生二萬物一、地生レ二者、亦因レ二而生レ地、因レ三生レ人、因レ四生レ時、五行皆由レ一而生、數至二於五一、土最在レ後、得レ五而生二五行一也、五行同出而異レ時者、出二離其親一、有レ所二配偶一、譬如二人生一、亦因二元氣一而生、各出二一家一、配爲二夫妻一、化生二子息一、故五行皆相須而成也、五行同胎而異居、有二先後一耳、夫五行皆資二陰陽氣一而生、故云、濡氣生レ水、温氣生レ火、強氣生レ木、剛氣生レ金、和氣生レ土、故知五行同時而起、託レ義相生、傳曰、五行並起、各以レ名別、然五行既以レ名別、而更互用レ事輪轉休王、故相生也、穎容云、凡五行相生謂二異類相化一、如三男女異姓能至二繁殖一、若以レ水濟レ水、不レ生二嘉味一、河間獻王問二温城薰君一曰、孝者天之經、地之義也、何謂也、對曰、天有二五行一、木火土金水是也、木生レ火、火生レ土、土生レ金、金生レ水、水生レ木、木爲レ春、春主レ生、夏主二長養一、秋主レ收、冬主レ藏、藏者冬之所レ成也、是故、父之所レ生、其子長レ之、父之所レ長、其子養レ之、父之所レ養、其子成レ之、不丁敢不丙致二如レ父之意一盡乙爲レ人之道甲也、〈○中略〉第十論二相剋一
五行雖レ爲二君臣父子一、生王不レ同、逐レ忌相剋、剋者制罰爲レ義、以二其力強一能制レ弱、故木剋レ土、土剋レ水、水剋レ火、火剋レ金、金剋レ木、白虎通云、木剋レ土者專勝レ散、土剋レ水者實勝レ虚、水剋レ火者衆勝レ寡、火剋レ金者精勝レ堅、金剋レ木者剛勝レ柔、春秋繁露云、木者農也、農人不順如レ叛、司徒誅二其率正一矣、故金勝レ木、火者本朝有三讒邪熒二惑其君一、法則誅レ之、故水勝レ火、土者君大奢侈過度失レ禮、民叛レ之窮、故木勝レ土、金者司徒弱不レ能レ使レ衆、則司馬誅レ之、故火勝レ金、水者執レ法、阿黨不レ平、則司寇誅レ之、故土勝レ水、勝者爲レ君爲レ夫爲レ官爲レ吏爲レ鬼、負者爲レ臣爲レ妻爲レ財、君以二威嚴一尊高、夫以二德義一隆重、官以二能有一賞伐、吏以二刑法一裁斷、鬼以二剋殺一病喪、並爲二勝者一也、臣以レ畏伏二其上一、妻以レ敬從二其夫一、財以二休彼一制レ用、並爲二負者一、凡上剋レ下爲レ順、下剋レ上爲レ剥、喩如下君有二刑レ臣之法一、臣無二犯レ君之義一、父有二訓レ子之道一、子之無中敎レ父之方上、所下以上之剋レ下、順レ理而行、下之剋レ上、乖レ理而剋上、故白虎通云、陽爲レ君、陰爲レ臣、水以二太陰之氣一、制二太陽之火一、金以二少陰之氣一、制二少陽之木一、喩如二失レ道之君一、若二殷湯放レ桀周武伐一レ紂、此皆誅二有罪一也、凡卜筮得二其所レ剋者一凶、得二所レ受レ制者一吉、五行之道、子能拯二父之難一、故金往剋レ木、火復二其讎一、火既消レ金、水雪二其恥一、然當二衰氣一者反爲二王者所一レ制、如二鼎鑊中水爲レ火所一レ煎、
〔太
古暦傳〕
〈三〉
p.0025 尚書洪範に、五行一曰水、二曰火、三曰木、四曰金、五曰土、禮記月令に、水數六、火數七、木數八、金數九、土數十、〈洪範には五行の生數に云ひ、月令には五行の成數を言へるなり、〉五行大義に、天以レ一生二水於北方一、易氣微二動於黄泉之下一、始動無レ二、故水數一也、極易生レ侌、始二於午一、故火數二也、易左長二於東方一、長則數增、故木數三也、侌右轉而居二於西方一、在二易之後一、故金數四也、土總二括四行一、苞則彌多、故土數五也、此並生數、未レ能レ爲レ用、五行傳、及白虎通皆云、木非レ土不レ生、水非レ土不レ榮、金非レ土不レ成、水非レ土不レ停、〈以上は、繁衍叢脞の文をみな省略して引たり、本書と合せ見て知るべし、〉北方亥子水也、生數一、丑土也、生數五、一與レ五相得爲レ六、故水成數六也、〈水は北方の正行なり、亥子北方に位する故に、隷して共に水德を負たるなり、〉東方寅卯木也、生數三、辰土也、生數五、三與レ五相得爲レ八、故木成數八也、〈木は東方の正行なり、寅卯東方に位する故に、從ひて共に水德を得たるなり、〉南方巳午火也、生數二、未土也、生數五、二與レ五相得爲レ七、故火成數七也、〈火は
南方の正行なり、巳午南方に位する故に、隷して共に火德を負たるなり、〉西方申酉金也、生數四、戌土也、生數五、四與レ五相得爲レ九、故金成數九也、〈金は西方の正行なり、申酉西方に位する故に、從ひて共に金德を得たるなり、〉中央、戊己土也、生數五、兩五相得爲レ十、故土成數十也、〈土は中央の正行なり、そを侌易に分けて戊己と爲たること既に云るが如し、〉また同書に、凡五行有二生數壯數老數三種一、木生數三、壯數八、老數九、火生數二、壯數七、老數三、土生數五、壯數十、老數一、金生數四、壯數九、老數七、水生數一、壯數六、老數五、夫万物皆禀二五常之氣一、化合而生レ物、生之後必至二成壯一、成壯之後必有二衰老一、故有二三種義一也、〈五行數のこと尚種々の説等有れど、此餘は都て取ず、そは方法とも聞えねばなり、〉
〔本朝世紀〕
p.0026 久安五年八月三日壬子、内府〈○藤原賴長〉同二成通一、右府〈○藤原實行〉被レ申云、美福門者南方門也、后是陰位也、陰是水也、南是火也、水火相剋(○○○○)、定爲二違亂之基一歟、加之伉儷之間、人有二不和事一歟、仍於二美福門一者、一切不レ可レ被レ用也、八條殿尤優歟、
〔台記〕
p.0026 保延二年十月十二日丙午、此間、伊通談云、著座人踰二官外記廳閾一之時、思二秋東二字之事一、大外記信俊疑難云、秋自レ西來也、而東字相剋歟、不レ得レ心之由申也、
〔明德記〕
〈上〉
p.0026 軍ハ廿七日〈○明德二年十二月〉ト定タリトイヘドモ、河内國ノ守護代遊佐河内守國長、十七所ニ城墎ヲ構ヘ、國々和泉紀伊國ノ軍勢通路難儀ニシテ、八幡ノ勢ゾロヘハサカリケレバ、合戰已ニ延引シテ、正月二日ト定メタリシ事ナレバ、其用意アリケル處ニ、峯ノ堂八幡ノ勢共、ヌケ〳〵ニ落、夜々ニ勢スクト沙汰セシカバ、年内ト明春ト、イヅレカ合戰ニ利潤有ベキトテ、召具セラレタリケル陰陽ノ博士ニ占ナハセラレケルニ、博士占形ヲ開キ、心靜ニ合戰ノ吉凶ヲ勘テ云、奧州ハ〈○山名氏淸〉水性、當氣ハ則冬也、去レバ水ハ王ニシテ、年内御合戰アラバ、治定ノ御勝トゾ勘申ケル、奧州、此事ヲ聞給、誠ニ快ゲニテ、サラバ諸方ノ責口ヘ、晦日ノ合戰ト相觸ヨトテ定ラレタリケルニ、此陰陽ノ博士、小林ニ向ヒ、内々侘事申ケルハ、合戰ノ吉凶ノ事仰下サレ候ニ依リ、勘文ノ趣ヲバ、大概ニ申上ツレドモ、夫占ト者、推條ヲ以本意トセリ、奧州、水性ニテ御渡リ候間、冬ハ王ニシテ、御
合戰利有ベキ事ハサル事ニテ侍レドモ、十二月ハ冬ノシユノ位ニテ、季ハ春ニ近シ、又水ハ北ヨリ南ヘ流ルヽハ、陽ノ道ニテ順也、南ヨリ北ヘ流ルヽハ、陰ノ道ニテ逆也、サレバ御本意ヲ達セラレン事堅カルベシ、哀此邊ニ御陣ヲ召レテ、敵ノ下向ヲ御待候ヘカシトゾ存候ヘ、此旨ヲ申上度候ツレドモ、先勘文ニ任申上候ツル也、是ハ推條ノ了簡ニテ侍ル上ハ、是程ニ思召立タル事ヲ、兎角申サバ、定テ御氣ヲ損ゼラルベキ間、斟酌仕リテ候由ヲ語リケレバ、小林ヲ始テ、心有人々ハ、本ヨリ此惡逆思立、軍ニ勝ベキ事、千ニ一モ有ベカラズ、人ノ滅ビントテ思立惡事ナレバ、占モ文モ入ルベキニアラズト口説ツヽ、更ニ勇メル氣色ハ無リケリ、
〔比古婆衣〕
〈一〉
p.0027 附、干支唱考、
干支はもと、もろこしの國にて、暦を造る法にて、はた年月日を定むる料に設たる名目なるを、やがて日次を稱ぶ目にも用ひ、〈但し、尚書益稷篇に、辛壬癸甲云云とあるを、四日也と注せり、當昔、日次を十干にて稱びたりときこゆ、殷の世三十代の王の名の下に、かならず十干を一字づゝ著る例とせりと見えたるは、おの〳〵生日の干を取れるにやありけむ、又いと上古には、干ばかりを用ひて、支は後に作り加へて、用ふることゝせしにはあらざるかとおもふ趣あれど、いまだ考さだめざればいはず、〉後に、年に係ても稱ぶことゝなりたるなるべし、〈かの國の古書どもの紀年に、干支をかけて呼べる例の、をさ〳〵きこえざる事、本考にいへるがごとし、〉暦には、月次にも干支をかけてものすれど、平常に、某の干支月といはざる、はたおもひ合さるゝなり、さて干支の義のもとは、皇極内篇に、十爲レ干、十二爲レ支、十干者五行有二陰陽一也、十二支者六氣有二剛柔一也といへるほどのことなるべし、其を皇國言にうつして、十干の甲乙などを、キノエ、キノトなど唱ぶは、木ノ兄、木ノ弟の義なりと、はやくよりいひきたれるは、さることゝきこゆるを、〈十干のよみの、古くものに見あたりたるは、中納言兼輔卿集の物名の歌にみえたり、きのえなどのえを、悉衣の假字に當てよみ給へり、さて此よみのさだまれるは、十二支とともに、はやくよりさだめられたりけむ、その十二支のよみのことは、下に論ふべし、〉十二支の子丑寅卯などを、ネ、ウシ、トラ、ウなどよみて、鼠牛虎兎などに當て稱び用ふるは、〈俗に酉字をひよみのとりと云ひなれたるは、古きものいひざまのかたへ遺れるなり、淸輔朝臣の童蒙抄に、日よみのうま、顯昭法師の袖中抄に、日よみのさるなどみえ、それより後の書どもにも、然る定にいへる例あり、みな准へ知るべし、○中略〉皇國にて鼠牛など
の義にかなへて、よみを定め用ふる事となれりしは、いつの頃よりか始りけむ、万葉集、天平寶字二年正月三日〈戊子〉の肆宴の時、詔を奉てよめる、大伴家持卿の歌に、始春乃波都禰(ハツネ)とみえたるは、初子なり、また同集に、卯字を宇の借字に用たるも、支のよみによれるなり、又申をマシの借字に用ひたり、そのかみ、支のよみに、マシと唱びけるを、後にサルと唱ぶことゝなりぬるにや、但しもとよりサルとよみたりけるを、わざと轉じてマシに當てゝ書くまじきにもあらざれば、さだめては論ひがたけれど、申を猴に當たるよみなることは著し、然れば初子の歌よめる天平寶字のころ、十二支のよみは、はやく定まりて、〈此歌よみ給へる天平寶字二年は、唐肅宗が世の二年に當れり、〉世に普き唱とはなりたりし事明なり、〈その十二支のよみをそなへて、ものに見えたるは、中納言兼輔卿集に、四隅を物名歌に、ひつじさる、いぬゐ、うしとら、たつみとよみたまへり、ね、う、うま、とりは、次第にて推して知られたり、〉さてその十二類の中に、鼠をネ、兎をウ、蛇をミとよむは、なべてはいはざる言のごとくなれど、和名抄に、鼠、禰須美とよめるに、また鼱
小鼠也、乃良禰などみえ、〈野鼠なり〉又兎を宇佐木とよめるに、兎字を、古事記その外の古書どもに、宇の借字に用ひたれば、しか單言にもいへりしなるべし、蛇をミといへる例は、いまだみあたらざれど、和名抄などに、蛇倍美とよめるに准へておもへば、さもいひけむ、〈雞は、古事記の歌詞に、爾波都登理とみえたれど、又爾波登理とも、たゞ登利ともいふは、古も今もつねなり、〉但し、しか單言なるかたを、ことさらに選びて用ひたりげにきこゆるは、十二支の名を、連唱ふる音便のよからむために、定めたりしにやあらむ、かくておもへば、干支をとり用ひ始給へるはじめつかたの御世には、鼠牛などいへる説によれるよみをば、用ひ給ふべくもあらざるめれば、干支ともに、字音にて唱ふる例なりけるを、後に皇國言もて唱ふべく、そのよみを定めて、世に行はしめ給ひたりしにぞあるべき、
〔太皥古暦傳〕
〈三〉
p.0028 支干の起原は、五行大義に、支干者因二五行一而立レ之、昔軒轅之時、大撓之所レ制也、蔡邕月令章句云、大撓採二五行之情一占二升機所一レ建、始作二甲乙一、謂二之幹一、作二子丑一謂二之支一、支干者枝簳也、相配成二六旬一、
如下樹木之有二枝條莖簳一、共爲中樹體上也と有り、〈こは文を略して引たるなり、中に六旬の二字は、本に用字なれど、事物紀原に引たるに據りて改めつ、支干になほ異説を載せれど、其説は取らず、 劉恕が外紀に、黄帝命二大撓一探二五行之情一、占二升剛所一レ建、始作二甲子一、甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸、謂二之幹一、子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥、謂二之枝一、枝幹相配以名レ日、とも云るは、是月令章句に據れるにや、〉然れど大撓は黄帝の調暦を治むる時に補助をこそ爲つれ、干支あに此人の始作ならむや、固より太昊氏の制作なること、其暦を甲暦と云るにて、別に論ひ勿き事なり、〈但し此は早く羅泌が路史太昊氏の傅に、造二甲子一以命二日月一、配レ天爲レ幹、配レ地爲レ枝と記し、通鑑前紀太昊紀に、干支相配爲二六甲一、而天道周矣と記し、共に諸書を引きて證せれば、今更に委くは云ず、然れど諸史會編に、伏羲氏昊英に命じて歴を作ると云ふ事も有り、また史記の律書に、十母十二子とも、天干地支とも云へり、其は十二支は、十干を母として、生れたる方位なればなり、〉斯て其制作の由來を索ぬるに、抱朴子尚博卷に、八卦生二鸞隼之所一レ被、六甲出二靈龜之所一レ負、と所レ見たる八卦の事は、既に古易傳に論へれば措きて、六甲を靈龜の所レ負に出たりと有るは、此翁の究覽せる玄典の古傳説なること疑ひなし、〈葛稚川翁は、白地にも、無稽の浮説を唱ふる人に非ざること、其子書を熟讀玩味し、かつ予が別に著せる、此仙翁の傅に就て、能く其人品を知らむ人は、疑ひ有まじくこそ、〉抑六甲とは、六十干支の中に、甲子、甲戌、甲申、甲午、甲辰、甲寅の六は、各一旬の首に在りて、九干支を都るが故に、六十干支の事を謂ふに、六甲と稱へば、即て其事なる太古よりの法言なり、〈○中略〉
十干十二支を輪轉相配して、甲子に始まり、癸亥に終れる樣、左に視せる如きを、今は六十花甲と稱すれど、古くは六甲と云へり、其は甲子、甲戌、甲申、甲午、甲辰、甲寅、各々九干支を綜て其首たればなり、五行大義に、便以レ甲配レ子、盡レ干至二癸酉一、餘支有二戌亥一、〈是甲子旬なり〉又起レ甲配レ戌、盡レ干至二癸未一、餘支有二申酉一、〈是甲戌旬なり〉又起レ甲配レ申、盡レ干至二癸巳一、餘支有二午未一、〈是甲申旬なり〉又起レ甲配レ辰、盡レ干至二癸丑一、餘支有二寅卯一、〈是甲辰旬なり〉又起レ甲配レ寅、盡レ干至二癸亥一、〈是甲寅旬なり〉干支周畢、還從二甲子一起、故六甲輪轉止二六十一、と有にて知べし、偖かく六甲の位の定まるに就て、自然に孤虚と云ふ事いで來たり、此も同書に十日一旬之内、二支無二配干一者爲二之孤一、所二對衝一者爲二之虚一也、と見えたり、甲子旬には戌亥を孤となし、其相對ふ辰巳を虚となす、〈また別ては戌を易孤と云ひ、亥を侌孤と云ふ、〉甲戌旬には、申酉を孤となし、其相對ふ寅卯を虚となす、〈別ては申を易極と云ひ、酉を侌孤
と云ふ、〉甲申旬には、午未を孤となし、其相對ふ子丑を虚となす、〈別ては午を易孤と云ひ、未を侌孤と云ふ、〉甲午旬には、辰巳を孤となし、其相對ふ戌亥を虚となす、〈別ては辰を易孤と云ひ、巳を侌孤と云ふ、〉甲辰旬には寅卯を孤となし、申酉を虚となす、〈別ては寅を易孤と云ひ、卯を侌狐と云ふ、〉甲寅旬には子丑を孤となし、午未を虚となす、〈別ては子を易孤と云ひ、丑を侌孤と云ふ、〉各圖に依りて其趣を知べし、斯て虚を吉とし、孤を凶とする古例なり、〈或は虚を空と稱し、孤を凶と稱するなど、猶種々の説等聞ゆれども、其は都て取ず、〉
〔倭訓栞〕
〈前編二十二禰〉
p.0030 ね 十二支の子をよむは、十二生肖の鼠にあたれば略していへり、丑をうし、寅をとらとよむも皆同じく、十二の禽獸よりよべる名也、
〔論衡〕
〈三〉
p.0030 物勢篇〈○中略〉
且五行之氣相賊害、含血之蟲相勝服、其驗何在、曰、寅木也、其禽虎也、戌土也、其禽犬也、丑未亦土也、丑禽牛、未禽羊也、木勝レ土、故犬與二牛羊一爲二虎所一レ服也、亥水也、其禽豕也、巳火也、其禽蛇也、子亦水也、其禽鼠也、午亦火也、其禽馬也、水勝レ火、故豕食レ蛇、火爲二水所一レ害、故馬食二鼠屎一而腹脹、曰、審如二論者之言一、含血之蟲、亦有下不二相勝一之効上、午馬也、子鼠也、酉雞也、卯兎也、水勝レ火、鼠何不レ逐レ馬、金勝レ木、雞何不レ啄レ兎、亥豕也、未羊也、丑牛也、土勝レ水、牛羊何不レ殺レ豕、巳蛇也、申猴也、火勝レ金、蛇何不レ食二獼猴一、獼猴者畏レ鼠也、嚙二獮猴一者、犬也、鼠水、獮猴金也、水不レ勝レ金、獼猴何故畏レ鼠也、戌土也、申猴也、土不レ勝レ金、猴何故畏レ犬、東方木也、其星蒼龍也、西方金也、其星白虎也、南方火也、其星朱鳥也、北方水也、其星玄武也、天有二四星之精一、降二生四獸之體一、含血之蟲、以二四獸一爲レ長、四獸含二五行之氣一最較著、案、龍虎交不二相賊一、鳥龜會不二相害一、以二四獸一驗レ之、以二十二辰之禽一效レ之、五行之蟲、以二氣性一相刻、則尤不二相應一、凡萬物相刻賊、含血之蟲則相服、至二於相啖食者一、自以二齒牙頓利、觔力優劣、動作巧便、氣勢勇桀一、若二人之在一レ世、勢不二與適一、力不二均等一、自相勝服、以レ力相服、則以レ刃相賊矣、夫人以レ刃相賊、猶下物以二齒角爪牙一相觸刺上也、力強角利、勢烈牙長則能勝、氣微爪短誅、膽小距頓則服畏也、人有二勇怯一、故戰有二勝負一、勝者未三必受二金氣一、負者未三必得二木精一也、
孔子畏二陽虎一、卻行流汗、陽虎未二必色白一、孔子未二必面靑一也、
〔大方等大集經〕
〈二十三虚空目分中淨目品第五〉
p.0031 佛言、如レ是如レ是、善男子、如二汝所一レ説、又此世界、諸菩薩等、或作二天像一、調二伏衆生一、或作二龍像一、或作二鬼像一、或阿修羅像、或迦樓羅像、或緊那羅像、或摩睺羅像、或夜叉像、或拘辦荼像、毗舍闍像、薜荔陀像、人像、畜生像、鳥獸之像、遊二閻浮提一、敎二化如レ是種類衆生一、善男子、若爲二人天一、調二伏衆生一、是不レ爲レ難、若爲二畜生一、調二伏衆生一、是乃爲レ難、善男子、閻浮提外、南方海中、有二琉璃山一、名レ之爲レ潮、高二十由旬、具二種種寶一、其山有レ窟、名二種種色一、是昔菩薩所住之處、縱廣一由旬、高六由旬、有二一毒虵一(○○○)、在レ中而住、修二聲聞慈一、復有二一窟一、名曰二無死一、縱廣高下亦復如レ是、亦是菩薩昔所レ住處、中有二一馬一(○○)、修二聲聞慈一、復有二一窟一、名曰二善住一、縱廣高下亦復如レ是、亦是菩薩昔所レ住處、中有二一羊一(○○)、修二聲聞慈一、其山樹神、名曰二無勝一、有二羅刹女一、名曰二善行一、各有二五百眷屬一圍遶、是二女人、常共供二養如レ是三獸一、善男子、閻浮提外、西方海中、有二頗梨山一、高二十由旬、其山有レ窟、名曰二上色一、縱廣高下亦復如レ是、亦是菩薩昔所レ住處、有二一獼猴一(○○○)、修二聲聞慈一、復有二一窟一、名曰二誓願一、縱廣高下亦復如レ是、亦是菩薩昔所レ住處、中有二一雞一(○○)、修二聲聞慈一、復有二一窟一、名曰二法牀一、縱廣高下亦復如レ是、亦是菩薩昔所レ住處、中有二一犬一(○○)、修二聲聞慈一、中有二火神一、有二羅刹女一、名曰二眼見一、各有二五百眷屬一圍繞、是二女人、常共供二養是三鳥獸一、善男子、閻浮提外、北方海中、有二一銀山一、名二菩提月一、高二十由旬、中有二一窟一、名曰二金剛一、縱廣高下亦復如レ是、亦是菩薩昔所レ住處、中有二一
一(○○)、修二聲聞慈一、復有二一窟一、名二香功德一、縱廣高下亦復如レ是、亦是菩薩昔所レ住處、中有二一鼠一(○○)、修二聲聞慈一、復有二一窟一、名二高功德一、縱廣高下亦復如レ是、亦是菩薩本所レ住處、中有二一牛一(○○)、修二聲聞慈一、山有二風神一、名曰二動風一、有二羅刹女一、名曰二天護一、各有二五百眷屬一圍繞、是二女人、常共供二養如レ是三獸一、善男子、閻浮提外、東方海中、有二一金山一、名二功德相一、高二十由旬、中有二一窟一、名曰二明星一、縱廣高下亦復如レ是、亦是菩薩昔所レ住處、有二一師子一(○○○)、修二聲聞慈一、復有二一窟一、名曰二淨道一、縱廣高下亦復如レ是、亦是菩薩昔所レ住處、中有二一兎一(○○)、修二聲聞慈一、復有二一窟一、名曰二喜樂一、縱廣高下亦復如レ是、亦是菩薩昔所レ住處、中有二一龍一(○○)、修二聲聞慈一、山有二水神一、名曰二水天一、有二羅刹女一、名二修
慙愧一、各有二五百眷屬一圍遶、是二女人、常共供二養如レ是三獸一、是十二獸、晝夜常行二閻浮提内一、天人恭敬、功德成就、已於二諸佛所一發二深重願一、一日一夜、常令二一獸遊行敎化一、餘十一獸、安住修レ慈、周而復始、七月一日、鼠初遊行、以二聲聞衆一敎二化一切鼠身衆生一、令下離二惡業一勸中修善事上、如レ是次第至二十三日一、鼠復還行、如レ是乃至盡二十二月一、至二十二歳一亦復如レ是、常爲レ調二伏諸衆生一故、善男子、是故此土多有二功德一、乃至畜生亦能敎化、
〔拾遺和歌集〕
〈七物名〉
p.0032 ね、うし、とら、う、たつ、み、 よみ人しらず
一夜ねてうしとらこそは思けめうき名たつみぞわびしかりける
むま、ひつじ、さる、とり、いぬ、ゐ、
むまれよりひつじつくれは山にさるひとりいぬるに人ゐでいませ
〔桃花蘂葉〕
)陰陽家祭ハ漢朝事也、仍不レ忌二觸穢一、祓ハ起二我朝一、仍忌レ穢、
〔簾中抄〕
〈下神事〉
p.0032 陰陽師のする祭ども
屬星 天地災變 玄宮北極 泰山府君 三萬六千神 地震 太一 百恠 夢 火災 代厄招魂 呪咀 宅鎭 土公 鬼氣 已上次第不同
〔撮壤集〕
〈上祈禱〉
p.0032 外典〈陰陽〉
五帝四海神祭 北極玄宮祭 地震祭 屬星祭 三萬六千神祭 天地〈災〉變祭 雷公祭 風伯祭 海若祭 五龍祭 大土公祭 小土公祭 天曹地府君祭 泰山府君祭 大鎭祭 井靈祭防解火〈災〉祭 西獄眞人祭 大將軍祭 王相祭 代厄祭 鬼氣祭 河臨祭 靈氣祭 呪詛反却祭 九曜祭 百怪祭 招魂祭 惡夢祭 荒神祭
〔侍中群要〕
〈七〉
p.0032 御祭等事
大一式 大陰 熒惑 御屬星〈籠〉 地震〈籠、未説、〉 太山府君〈有二告文一〉 代厄 天地災變 玄宮北極
〈有二都状一〉 西嶽眞人 七十二星 三萬六千神〈籠〉 鎭星〈白鷄〉 雷公 四角四堺〈四角使所衆、四界使瀧口、〉 仰二上卿一行レ之、〈○中略〉
御祭
大屬星御祭〈五箇日齋籠精進〉 屬星御祭〈三日齋籠精進、從二初夜一祭也、〉 天地災變御祭〈三日齋籠食レ魚、前二夜籠、終夜祭レ之、〉 三萬六千神御祭〈三日齋籠、終夜祭レ之、精進之、〉 自餘御祭不二齋籠一
〔禁秘御抄〕
〈下〉
p.0033 御祈〈○中略〉
陰陽師御祭、祓、屬星、玄宮北極、太一、或三萬六千神、老人星等不レ可二勝計一、或遣二御衣(○○○○)、或御鏡一(○○○)、精進魚味皆(○○○○○)依レ祭、藏人多爲二勅使一、或殿上人有レ例、齋籠ナドニ女房向二其所一爲二代官一例也、四堺御祭、所衆瀧口各四人爲レ使、〈八人也〉
〔吾妻鏡脱漏〕
p.0033 嘉祿三年〈○安貞元年〉四月廿九日丁丑、仍二御不例之事一、御祈等被二始行一、周防前司親實爲二奉行一、佛眼護摩 莊嚴房律師 尊星王護摩 信濃僧都 藥師護摩 大進僧都 北斗護摩 若宮別當僧都 金剛童子護摩 丹波律師 正觀音法 山口法眼 千手法 宰相律師 不空羂索法常陸律師 延命供 越中阿闍梨 大威德法 蓮月房律師 已上内典(○○○○)
三萬六千神祭 前大膳亮泰貞 屬星 陰陽大允親職 天地災變祭 陸奧權守國繼 泰山府君 左京亮重宗 呪詛祭 陰陽少允晴幸 靈氣 散位晴賢 疫神祭 散位道繼 竈神 圖書晴職 土公祭 散位宣賢 已上外典(○○○○)
〔吉記〕
p.0033 治承五年〈○養和元年〉六月廿九日甲戌、自二今夜一、公家御祈、被レ行二玄宮北極祭一、〈大膳權大夫泰親朝臣〉雜事重衡卿沙汰、天地災變祭等〈掃部頭季弘朝臣、雜事八條殿御沙汰、〉藏人大舍人助經泰以二一身一、齋籠二兩祭一、依二藏人辨行隆與奪一也、藏人無二人數一之故歟、但兼行之條未レ知二先例一、後日右中辨云、於二陰陽師住宅一被レ行二嚴重御祭一非例也、藏人齋籠無レ謂、專可レ被レ止、自二高倉院御宇一出來事歟云々、
〔伊呂波字類抄〕
〈太諸社〉
p.0034 大屬星祭〈五日忌籠、以二御三夜一祭レ之、御精進、〉
〔今昔物語〕
〈二十四〉
p.0034 天文博士弓削是雄占レ夢語第十四
今昔 ト云フ者有ケリ、穀藏院ノ使トシテ、其封戸ヲ徴ラムガ故ニ、東國ノ方ニ行テ、日來ヲ經テ返上ル間、近江國ノ勢多ノ驛ニ宿ヌ、其時ニ、其國ノ司 ト云フ人、館ニ在テ、陰陽師天文博士弓削是雄ト云フ者ヲ請ジ下シテ、大屬星ヲ令レ祭ム(○○○○○○○)トスル間、〈○下略〉
〔吾妻鏡〕
〈十六〉
p.0034 建久十年〈○正治元年〉三月六日戊戌、自二今月一毎月可レ行二中將家御當年星祭一(○○○○○)之由、被レ仰二主計頭安倍資元朝臣一、
〔吾妻鏡〕
〈十九〉
p.0034 承元五年〈○建暦元年〉六月二日壬午、申刻將軍家俄御不例、頗有二御火急之氣一、仍戌刻於二御所南庭一被レ行二屬星祭一、泰貞奉仕之、武州帶二御撫物、并御衣一、令レ向二其所一給、
〔心日宸記〕
p.0034 延慶四年正月廿一日、自二今日一三ケ夜、屬星御祭、在所行レ之、藏人橘以爲申二出御撫物一、〈御鏡一、納二弘蓋一、不レ裹二打裏一也、〉祭料本所沙汰、女房御代官精進、御祭文草勘解由長官在兼卿、不レ令二淸書一、乍レ草也、
維、日本國、延慶三年歳次年亥正月甲戌朔廿一日甲午、吉日良辰、 仙院齋戒沐浴
謹遣二有司一、馳二誠靑天一望二星宮一、奉レ設二淸壇香花禮奠一、謹請二天皇太帝曜魄寶一、
謹請二北斗七星魁岡府君第一貪狼星(○○○)字希神子一、主二室壁奎婁一、其數常直レ建、
謹請二第二巨門星(○○○)字貞文子一、主二胃昴畢觜一、其數常直二除閉一、
謹請二第三祿存星(○○○)字祿存子一、主二參井鬼柳一、其數常直二滿開一、
謹請二第四文曲星(○○○)字微惠子一、主二星張翼軫一、其數常直二平收一、
謹請二第五廉貞星(○○○)字衞不隣子一、主二角亢氐房一、其數常直二定成一、
謹請二第六武曲星(○○○)字大東子一、主二心尾箕斗一、其數常直二執危一、
謹請二第七破軍星(○○○)字持大景子一、主二牛女虚危一、其數常直レ破、
伏願、星神廻光就産不分明座所獻尚饗〈再拜〉
南無天皇太帝曜魄寶 南無貪狼星字希神子
南無巨門星字貞文子 南無祿存星字祿存子
南無文曲星字微惠子 南無廉貞星字衞不隣子
南無武曲星字大東子 南無破軍星字大景子
謹啓北斗七星者、七政之樞機、萬物之精命也、以二神道之智一幸二世之事爲一、以二自在之威一定二人之壽笇一、若致二欽戴心一施二感應一、伏惟初擬二后宮之正位一、今儼二仙院之徽號一、卷耳慙詠、雖レ謝二周雅之詞一、齊體承恩忝備二燕寢之禮一、然間昨歳呈二吉地之瑞一、此春當二誕彌之期一、安全之謀不レ如レ致レ敬、懇祈之道無レ軼レ爲レ善、是以迎二萬期年之初節一、設二三ケ夜之薄奠一、百和之供二奇香一也、添以二梅花開窓之匀一、五彩之陳二寶幣一也、交以二松雪殘砌之色一、願施二哀納一、立垂二荅脱一、然則玉體無レ恙、慣二西華瑤姫之方一、珠昭共全、伴二東萊全母之算一、兩仙洞成二壽木之林一、前相府增二繁華之榮一、外成内平、上治下安、謹啓、
南無天皇太帝曜魄寶 南無貪狼星字希神子
南無巨門星字貞文子 南無祿存星字祿存子
南無文曲星字微惠子 南無廉貞星字衞不隣子
南無武曲星字大東子 南無破軍星字大景子
謹重啓 神者人之所レ仰也、人者神之所レ恤也、禮有二五經一莫レ重二於祭一、祭有二十倫一莫レ最二於禮一、方今專翹二發露一敬奠二尊星一、廿八宿之先、恒時加護卅六兩之候、理世爲レ槃、天孼不レ侵、地妖忽休、謹啓、
南無天皇太帝曜魄寶 南無貪狼星字希神子
南無巨門星字貞文字 南無祿存星字祿存子
南無文曲星字微惠子 南無廉貞星字衞不隣子
南無武曲星字大東子 南無破軍星字大景子
謹重啓、降臨諸神等、淸酌三獻、繁漏五更、禮微座久、不敢留、乞廻二星駕一、各還二天宮一、今日以後、遐年無レ彊、門耀二光彩一、國家屬二休明一、謹啓、
〔知信朝臣記〕
p.0036 天承二年〈○長承元年〉九月十九日、自二明曉一三ケ日、被レ行二辰星御祭一(○○○○)、須二夜陰被一レ行也、而御精進三ケ日不豫之間、有二其煩一、仍毎曉被レ行レ之、且是陰陽師保榮所二定申一也、差二侍一人一遣二御鏡於保榮私宅一勤二行之一、別納所送二祭物一、兼召二支度一、任二其乞一注レ之、 凡恒例臨時御祭祓等事、併爲二別納所沙汰一也、
〔伊呂波字類抄〕
〈保諸社〉
p.0036 本命祭〈ホンメウ〉
〔延喜式〕
〈十六陰陽〉
p.0036 御本命祭
神座廿五前
名香廿五兩、紙七百五十張、〈作二錢形二万五千文、絹形二百五十疋、馬形五十疋一料、〉筆一管、墨一廷、小刀一柄、布一端、〈敷レ布料〉脯廿五
、酒醴各三斗、米三斗、莚七枚、食薦十三枚、坏二百口、盤五十口、折櫃八合、桶二口、杓五柄、中取二脚、松明卌把、炭五斗、缶二口、瓫二口、錢二貫文、淨衣六具、巾二條、〈中宮准レ此〉
右料物、前レ祭請二内藏寮一、毎年六度祭レ之、其中取年中一度請二木工寮一通用、
〔伊呂波字類抄〕
〈太諸社〉
p.0036 太一式祭〈タイチシキ、三日忌籠、以二御鏡一祭レ之、御精進、〉
〔吾妻鏡〕
〈三十五〉
p.0036 寬元二年五月卅日己巳、若君御前御祈等重被レ行之、〈○中略〉是今年令レ當二太一(○○)定分厄一給、可レ被レ行二厄御祈一之由、助法印珍譽勘申也、
〔伊呂波字類抄〕
〈太諸社〉
p.0036 大陽祭〈一名日曜祭(○○○)、以二御鏡一祭レ之、御精進、〉
〔吾妻鏡〕
〈二十六〉
p.0036 貞應三年〈○元仁元年〉六月六日、炎旱渉レ旬、仍今日爲レ祈レ雨、被レ行二靈所七瀨御祓一、〈○中略〉日曜祭、〈親職〉
〔伊呂波字類抄〕
〈太諸社〉
p.0036 大陰祭〈一名月曜祭(○○○)〉
〔左經記〕
p.0037 長元元年九月廿二日癸丑、廿七日行啓以前、於二左衞門督家一、可レ行二土公(トクウ)御祭并大散供一之由、召二仰守道朝臣一、又仰下可レ行二月曜御祭一之由上、申云、月曜御祭廿四日可レ行也、土公并大散供、廿七日行啓以前可レ行也者、則分二給物等一、兼又作二護等一、可レ打二御在所一之由仰二守道一了、
〔伊呂波字類抄〕
〈計諸社〉
p.0037 熒惑星祭〈一名火曜祭(○○○)、以二御衣一祭レ之、御精進、〉
〔吾妻鏡〕
〈二十六〉
p.0037 貞應三年〈○元仁元年〉三月二十一日、依二怪異等事一被レ行二御祈一、屬星、月曜、熒惑(○○)、百怪、〈玉座〉泰山府君、〈七座〉等御祭也、
〔吾妻鏡〕
〈三十二〉
)嘉禎四年〈○暦仁元年〉十一月廿九日庚子、今曉太白星祭以下被レ行二御祈等一、
〔倭名類聚抄〕
〈二神靈〉
p.0037 太白神 新撰陰陽書云、太白神、〈和名、比止比米久利、〉
〔吾妻鏡〕
〈三十五〉
p.0037 寬元二年六月三日壬申、被レ行二天變御祈等一、前大納言家御分、〈○中略〉歳星祭、〈文元〉
〔吾妻鏡〕
〈二十六〉
p.0037 貞應三年〈○元仁元年〉五月十八日、炎旱御祈、可レ被レ修二何祭禮一否事、於二奧州方一重有二其沙汰一、可レ爲二五龍祭一歟之由、隱岐入道行西雖レ申之、於二此境一未無二勤行之例一上、天地災變、屬星、水曜等御祭(○○○○○)可レ宜之旨、衆儀云云、
〔伊呂波字類抄〕
〈良諸社〉
p.0037 老人星祭〈ラウシンシヤウ、三日忌籠、以二御鏡一祭レ之、御精進、〉
〔扶桑略記〕
〈二十三醍醐〉
p.0037 昌泰三年、是歳老人星見、武藏國強盜蜂起、
〔月令廣義〕
〈十五八月〉
p.0037 事文〈○中略〉 祀二老人星一〈漢書、仲秋祀二老人星于國南郊一、〉
〔通俗編〕
〈十九神鬼〉
p.0037 壽星 爾雅、壽星角亢也、注云、數起二角亢一、列宿之長、故云二壽星一、史記封禪書、杜毫有二壽星祠一、索隱云、壽星蓋南極老人星也、祠レ之以祈二福壽一、
〔吾妻鏡〕
〈二十九〉
p.0037 文暦二年〈○嘉禎元年〉十二月廿七日
千體藥師像一尺六寸 羅睺星〈忿怒形相乘二靑牛一、左右手捧二日月一、〉 計都星〈忿怒相乘レ龍、左手、捧レ日、右手持レ月、〉御本命星藥師像
入レ夜被レ修二計都星祭一(○○○○)〈文元朝臣奉仕之〉
〔吾妻鏡脱漏〕
p.0038 元仁二年〈○嘉祿元年〉十二月十八日甲辰、宅鎭祭親職、石鎭晴茂、七十二星兩條國道、 廐鎭晴職等奉仕之、周防前司親實爲二奉行一云云、
〔吾妻鏡〕
〈三十一〉
p.0038 嘉禎二年八月三日丁亥、戌刻於二新御所一被レ行二鎭御祈一、〈○中略〉西岳眞人鎭(○○○○○)忠尚朝臣、
〔猪隈關白記〕
)承元二年三月廿三日壬辰、依二明年三合一、余〈○藤原家實〉祈レ之、明後日以二陰陽頭宣平朝臣一、可レ有二三萬六千神祭一、自二今日一齋籠、今日送二鏡於陰陽師許一、職事仲國爲レ使、件仲國齋籠也、今明日物忌也、
〔吾妻鏡〕
〈二十六〉
p.0038 貞應三年〈○元仁元年〉七月十一日、爲二國土安全一、二品令レ行二三萬六千神祭一給、依二連夜天變一也、泰貞奉仕之、大膳亮廣仲爲二御使一、
〔鹽尻〕
〈二十一〉
p.0038 帛尸黎蜜多が譯せし、佛説大灌頂神呪經を見侍りしが、鬼神の事をのみくだ〳〵しくいへり、是皆道士が餘風なりと覺へ侍る、其中一の聖を震旦へ遣す等の言、皆もろこしの人の言にして、天竺の説と僞る事也、我朝陰陽師の祭る三萬六千の神(○○○○○○)といふは、此經の説と見へたり、又金毗羅神五頭神等の名も見へ、〈○下闕〉
〔康富記〕
p.0038 文安元年七月十二日己丑、武家彗星御祈事、是夜於二從三位前宮内卿安倍有重卿私宅一、三萬六千神祭在レ之、是去月廿三日以來、彗星出現之故也、室町殿御祈禱分也、天文博士有季朝臣、當時陰陽頭也、相共致二其沙汰一者哉、尚委可二尋注一之、
〔吾妻鏡〕
〈二十〉
p.0038 建暦二年四月六日壬午、戌刻將軍家御病惱、而小御所東面於二柱根一花開、仍可レ行二天地災變(○○○○)鬼氣等祭一之由、相州令二申給一之、
〔吾妻鏡〕
〈二十六〉
p.0038 貞應三年〈○元仁元年〉六月十二日、辰刻前奧州義時病惱、日者御心神雖レ令二違亂一、又無二殊事一、而今度已及二危急一、仍招二請陰陽師國道、知輔、親職、忠業、泰貞等一也、有二卜筮一、不レ可レ有二大事一、戌刻可下令レ屬二减氣一給上之由、一同占申、然而始行二御祈禱一、天地災變祭(○○○○○)二座、〈國道、忠業、〉三萬六千神祭、〈知輔〉屬星祭〈國道〉如法泰山府君祭、〈親職〉此祭具物等、殊刷二如法儀一之上、十二種重寶、五種身代、〈馬牛男女裝束等也〉悉有二其沙汰一、此外泰山府
君、天曹地府祭等數座也、是存二懇志一之人、面々所レ令レ修也、但隨レ移レ時彌危急云云、
〔吾妻鏡〕
〈三十六〉
p.0039 寬元三年二月一日丙寅、客星見二牽牛度一、行度、二夜二丈也云云、今日有二天變御祈沙汰一、天地〈災〉變祭(○○○○○)、〈泰貞〉三萬六千神祭、〈晴賢〉屬星祭〈晴茂〉等也、 七日壬申、大殿〈○藤原賴經〉并將軍家〈○賴經子賴嗣〉御二參鶴岡宮一、皆御車也、今日變〈災〉御祈等被レ行之、〈○中略〉
此御祈等、各於二里第一修レ之、但天地〈災〉變祭者、奉二爲大殿一、自二去五日一、於二御所一被レ行、泰貞奉仕之、今夜於二南庭一結願云云、御使能登右近大夫仲時、奉行攝津守師員朝臣云云、
〔吾妻鏡〕
〈五十〉
p.0039 文應二年〈○弘長元年〉二月二日甲午、今年辛酉也、仍將軍家被レ行二御祈等一、天地災變(○○○○)宣賢朝臣、天曹地府資俊朝臣、七座泰山府君晴秀、國繼、晴茂、以平、泰繼、文元、靈所七瀨祭職宗、茂氏、重氏、晴向、親員、晴行、維行、和泉前司行方奉行之、
〔吾妻鏡〕
〈二十六〉
p.0039 貞應三年〈○元仁元年〉六月六日、炎旱渉レ旬、仍今日爲レ祈レ兩、被レ行二靈所七瀨御祓一、〈○中略〉此外地震祭、〈國道〉
〔政事要略〕
〈二十六年中行事〉
p.0039 新嘗大嘗名異實同事之由縁〈○中略〉
又云、〈○寬平御遺誡〉新嘗會、神今食、并九月伊勢御幣使日、必可下幸二八省中院一以行中其儀上、雷公祭、年來有レ驗、不レ闕レ之、
〔禁秘御抄〕
〈下〉
p.0039 祈雨〈○中略〉
雷公祭雖レ有レ驗頗絶畢、範俊行二請雨經法一之時、威儀師能筭、以二別意趣一、壇邊放二赤雞一云々、世人爲二珍奇一、
〔吾妻鏡〕
〈二十九〉
p.0039 文暦二年〈○嘉禎元年〉十二月廿二日、被レ行二御祈等一、〈○中略〉雷神祭(ヒカリノカミ/○○○)相模權守俊定等奉仕之、
〔吾妻鏡〕
〈二十八〉
p.0039 寬喜三年六月十五日戌剋、於二由比浦鳥居前一被レ行二風伯祭一、前大膳亮泰貞朝臣奉仕之、祭文者法橋圓全、奉レ仰草之、是於二關東一雖レ無二其例一、自二去月中旬比一南風頻吹、日夜不二休止一、爲二彼御祈一、武州令二申行一給之、
〔吾妻鏡〕
〈四十六〉
p.0040 建長八年〈○康元元年〉七月廿六日甲寅、度々變異等事、可レ被レ行二御祈禱一旨可レ計之由、爲二和泉前司行方、淸左衞門尉滿定等奉行一、被レ仰二諸道一、仍陰陽師等群參、前陰陽權大允晴茂朝臣、可レ被レ行二雷公祭一由申レ之、天文博士爲親朝臣申云、此條、公家之外不レ聞二被レ行之例一、去寬喜三年、依二前武州〈○北條泰時〉禪室之仰一、亡父泰貞行二風伯祭一、翌日風休止、任二其例一可レ被レ行二此祭一歟云云、晴茂朝臣重申云、如二諸國受領一行レ之例、進二覽親職自筆状一、行方披露之處、難レ被二决斷一之間、被レ問二右京權大夫茂範朝臣、參河守敎隆等一、茂範朝臣申云、去寬喜三年被レ興二行彼祭一之時、被レ尋二安賀兩家一之處、安家者不二覺悟一之由申之、陰陽頭賀茂在親朝臣以後、晴憲朝臣勤仕之例奉仕之、其外例不二存知一之云云、敎隆眞人申云、凡人勤仕之例、更以無二所見一云云、依レ之不レ可レ被レ行之由被レ定之云云、
〔吾妻鏡〕
〈四十四〉
p.0040 建長六年四月四日丙午、亥刻依二殊御願一、被レ行二天地災變祭一、爲親朝臣奉仕之、御使安藝右近大夫重親、文草前大内記茂範朝臣、淸書嚴慧法印也、甚雨日被レ行レ祭事不レ可レ然之由、雖レ有二令レ申之輩一、當院御在位之時、寬元三年三月、北遊御祭良光朝臣奉仕之日、雖二甚雨一有二沙汰一、被二遂行一之云云、
〔吾妻鏡〕
〈二十九〉
p.0040 文暦二年〈○嘉禎元年〉十二月廿日、爲二御不例御祈一、〈○中略〉及二黄昏一被レ行二四角四境祭一、御所艮角、〈陰陽大允晴茂〉巽角、〈圖書助晴秀〉坤角、〈左京權亮經昌〉乾角、〈雅樂助淸貞〉小袋坂〈雅樂大夫泰房〉小壺、〈近江大夫親貞〉六浦、〈陰陽小允以平〉固瀨河、〈縫殿助久方〉
〔公事根源〕
〈六月〉
p.0040 道饗祭 同日〈○三十日〉
是は疫神の祭なり、毎年に必行はるべき事也、近頃は絶て侍にや、是も卜部の人、京城の四角の路にて、鬼魅の他方よりきたるを京路に入ざらしめん爲に、路上に供物をそなへてまつる也、鎭火、道饗の祭をば、四角四境の祭(○○○○○○)とも申也、
〔吾妻鏡〕
〈三十五〉
p.0040 寬元二年五月廿六日乙丑、乙若君御前御不例事、未レ及二御減一、仍爲二參河前司敎隆奉行一召二陰陽師等一、可レ有二護身一否被二尋問一之、〈○中略〉入レ夜爲二彼御祈一被レ行二鬼氣祭、七座、並四方四角(○○○○)等祭一、於二郭外一被レ行之云云、
〔時信朝臣記〕
p.0041 大治五年七月、被レ行二五龍祭一、臨レ期命云、康平八年六月十五日、被レ行二請向經法一、〈成尊僧都〉同十九日被レ行二五龍祭一、道平朝臣奉仕之、〈○中略〉 神泉苑五龍祭勘文支度等進上先了、其外假屋二宇、〈池東〉五間一宇、〈卯酉〉三間一宇、〈子午東〉修理職造レ之、鋪設裝束諸司勤レ之、厨如レ例、
〔伊呂波字類抄〕
〈太諸社〉
p.0041 大土公祭
〔運歩色葉集〕
〈登〉
)土公〈春三月在レ釜、夏三月在レ門、秋三月在レ井、冬三月在レ庭、〉
〔吾妻鏡〕
〈二十〉
p.0041 建暦二年四月十八日癸卯、爲二將軍家御願一、大倉郷卜二一勝地一、令レ經二始一寺一給、〈○中略〉於二此所一被レ行二水神并七座(○○○○○)、土公祭一(○○○)、橘三藏人奉行之、
〔吾妻鏡〕
〈二十六〉
p.0041 貞應二年三月三日、勝長壽院奧地、今日被レ行二土公祭一、是爲二二品御願一、可レ被レ立二御堂一之故也、
〔吾妻鏡〕
〈四十七〉
p.0041 康元二年〈○正嘉元年〉九月十八日己巳、勝長壽院造營事始、〈○中略〉戌刻於二勝長壽院一、行二大土公祭一、〈被レ引二牛一頭一如レ例〉晴茂朝臣奉行之、
〔伊呂波字類抄〕
〈天諸社〉
p.0041 天曹地府祭〈一名六道冥官祭(○○○○○)、以二御鏡并御衣一祭之、〉
〔吾妻鏡〕
〈一〉
p.0041 治承四年八月十六日丙申、爲二明日合戰無爲一、被レ始二行御祈禱一、住吉小大夫昌長奉二仕天曹地府祭一、武衞〈○源賴朝〉自取二御鏡一授二昌長一給云云、
〔玉海〕
p.0041 建久二年十月十五日庚寅、此日於二大原野一一日讀二大般若經一、導師信運已講、天曹地府祭、〈權漏刻博士菅野季長〉此日不空羂索御讀經結願也、
〔吾妻鏡〕
〈四十六〉
p.0041 建長八年〈○康元元年〉九月三日庚寅、又有二御惱御祈等一、松殿法印良基、左大臣法印嚴惠、各修二藥師護摩七座泰山府君一、宣賢、爲親、晴長、廣資、以平、晴憲、晴宗、此外被レ行二七座靈所祓、天曹地府、御當年星、呪咀等祭一、
〔看聞日記〕
p.0041 永享八年十二月十九日、歳末御祈、天曹地府御祭、自二十五日一勤仕之由申、御撫物〈鏡〉遣二公方一、
御意不快之間、雖レ不二許容一、御祈押而申間、密々仰二祭料等一遣了、
〔台記〕
p.0042 久壽二年四月四日庚辰、入レ夜高陽院〈○藤原泰子〉藏人通定來曰、依二御惱一今夜被レ修二冥道供一(○○○)、可レ令三可レ然之儒者作二獻祭文一者、申下可レ取二御願趣一之由上、被レ仰曰、今年重厄(○○)、〈○泰子嘉保二年生、今年當六十一歳、〉而不レ食及二七十日一、非レ無レ所レ畏、所レ願者增二長壽命一、久修二善根一者、即仰二大内記遠明一令二作獻一之、
〔伊呂波字類抄〕
〈太諸社〉
p.0042 泰山府君祭〈一名七獻上章祭内〉
〔下學集〕
〈上天地〉
p.0042 太山府君(タイサンフクン)〈本地地藏菩薩也、在レ天云二輔星一、在レ地曰二太山府君一、〉
〔貞丈雜記〕
〈十六神佛〉
p.0042 一泰山府君は、陰陽師の方にて祭る神也、〈日本ノ神ニハアラズ〉
〔梅花無盡藏〕
〈四〉
)福祿壽賛
在二彼蒼一則稱二太山府君一、出二厚地一則名二福祿壽星一、趙宋聖明之時現レ形、命二畫工一圖二其體一矣、吁偉哉、以二二十八言一賦レ之云、
一星千百億分身 瓢樣頭長髮帶レ春 壽命經脩杜羅是 尚添二福祿一祝塵々
〔朝野群載〕
〈三文筆〉
p.0042 謹上 泰山府君
日本國從四位上行右中辨兼備中介藤原朝臣顯隆〈年四十五〉
本命庚戌 行年庚戌
右〈某〉謹啓二泰山府君冥道諸神等一、夫信至高者、天神憐レ之、愼至深者、地祇護レ之、〈某〉官帶二右司郎中一、位昇二大中大夫一、是則蹐レ天跼レ地、仰レ神敬レ祇之故也、重祈二冥應一、更備二淸奠一、聊薦二黍稷之味一、以望二明德之馨一、伏乞加級如レ思、昇進任レ意、踏二蘭臺一而擧二秋月一、歩二槐路一而棲二靑雲一、彼趙氏之延レ笇、誠是天應、此魯性之祈レ思、盍レ成二地望一、息災延命、一家有福、謹啓、
永久二年〈○甲午〉十一月廿三日 從四位上行右中辨藤原朝臣
〔本朝續文粹〕
〈十一都状〉
p.0042 謹上泰山府君都状
南閻浮洲正二位行權大納言兼陸奧出羽按察使藤原朝臣實行
獻上冥道諸神一十二座 銀錢一百四十貫文 白絹一百二十疋 鞍馬一十二疋 勇奴三十六人
右實行、伏惟丞相者、寅二亮天地一、變二理陰陽一、誠是賢能之所レ任、敢非二愚庸之可一レ居、本朝異域之例、戚里外家之人、超二上臈一所二拜任一也、就レ中内大臣職者、曩祖大織冠〈○藤原鎌足〉廻二深圖一而全二邦國一、運二上策一而安二社禝一、初授二此職一、永貼二其例一、自レ爾以後、贈太政大臣高藤公、昌泰三年任二内大臣一、依レ爲二帝之外祖父一也、次忠義公、〈○通兼〉天祿三年不レ歴二大納言一、自二中納言一任二内大臣一、次關白道隆公、永延三年任二内大臣一、次關白道兼公、正暦二年任二内大臣一、此三人者帝之外舅、后之連枝也、次先祖仁義公、〈○公季〉長德三年任二内大臣一、又是帝之外戚也、其後任二此職一之者、受二渭陽之餘流一、超二數輩之上臈一、其中故太政大臣雅實公、超二任公位階上臈大納言師忠卿一、任二内大臣一、偏是外戚之故也、爰〈某〉才行雖レ疎、勳賢雖レ闕、今上陛下〈○崇德〉之外舅、太上天皇〈○鳥羽〉之二親戚、國母〈○待賢門院藤原璋子〉仙院舍兄、於二天下一不レ賤者歟、况驚二禁鐘一而請二鳳闕一、咫二尺天顏一、聞二衞鼓一而趍二鸞臺一、纒牽朝務一、藐姑射之春華、唯喜三德馨之及二家園一、堯母門之秋月、更仰三恩光之照二戸牅一、方今有二右大臣一、有二其闕一、若有二轉任事一者、可レ任二内大臣一也、既謂二左戚之老一、旁當二内相之仁一、縱云二愚暗一、偏憑二神明一、又祖父贈太政大臣〈○實季〉只以二親舅之寄一、多超二宿老之人一、任二中納言一、轉二大納言一、憶二其舊規一、盍レ浴二新化一、夫泰山府君者、冠二五獄之首一、視二三公之秩一、知二壽命之脩短一、掌二祿位之通塞一、是以虔二賁金幣銀錢花酒奴馬奠一敬獻二天子五道泰山府君命祿之神一、伏乞尊神、必垂二歆享一、東方之長也、宜レ追二東閣之玄蹤一、天帝之孫也、盍關二天官之淸撰一、重請二益レ算延レ年、轉レ禍爲一レ福、尚饗、
日本國保延四年三月日正二位權大納言兼陸奧出羽按察使藤原朝臣實行謹状
○按ズルニ、藤原賴長ノ泰山府君祭都状ハ、易占篇敎習條ニ收ムル所ノ台記ニモ見エタリ、
〔古事談〕
〈二臣節〉
p.0043 勘解由長官有國、當初父輔道豐前守之時、相具〈天〉下向之間、又俄病惱、忽逝去、于レ時有國、
泰山府君祭ヲ如レ説勤行、輔道經二數刻一蘇生語云、予雖レ參二炎魔廳一、依レ備二美麗之饗膳一、可レ被二返遣一之由有二其定一、爰或冥官一人申云、雖レ被レ返二遣輔道一、於二有國一者早可レ被レ召也、其故者、非二其道一者勤二行祭一、非レ無二罪科一云々、又在座之人申云、有國不レ可レ有二罪科一、無二道人一遠國之境ニテ、不レ耐二孝養之情一、勤行之輩更不レ可レ處二罪科一云云、仍冥官併同レ之、依レ之無爲所レ被二返遣一也云々、〈○又見二續世繼一〉
〔今昔物語〕
〈十九〉
p.0044 代レ師入二太山府君祭都状一僧語第廿四
今昔 ト云フ人有ケリ、 ノ僧也、止事无キ人ニテ有ツレバ、公ケ私ニ被レ貴テ有ケル間、身ニ重キ病ヲ受テ惱ミ煩ケルニ、日員積テ病重ク成ヌレバ、止事无キ弟子共有テ、歎キ悲テ、旁々祈禱スト云ヘドモ、更ニ其驗无シ、而ル間、安倍晴明ト云フ陰陽師有ケリ、道ニ付テハ止事无カリケル者也、然レバ公ケ私此ヲ用タリケル、而ルニ其ノ晴明ヲ呼テ、太山府君ノ祭ト云フ事ヲ令、此ノ病ヲ助テ、命ヲ存ムト爲ルニ、晴明來テ云フ、此病ヲ占フニ、極テ重クシテ、譬ヒ太山府君ニ祈禱スト云ヘドモ、難レ叶カリナム、但シ此ノ病者ノ御代ニ、一人ノ僧ヲ出シ給へ、然バ其ノ人ノ名ヲ、祭ノ都状ニ註シテ、申代ヘ試ミム、不レ然バ更ニ力不レ及ヌ事也ト、弟子共モ此レヲ聞テ、我師ニ代テ、忽ニ命ヲ棄ムト思フ者一人モ无シ、只命ヲ全クシテ師ノ命ヲ助ケムトコソ思ヘ、亦師失ナバ房ヲモ取リ、財ヲモ得、法文ヲモ傳ムトコソ思、代ラムト思フ心ノ露无カラムモ理ハリナレバ、互ニ顏ヲ守テ、云フ事モ无クシテ、居並タルニ、年來其ノ事トモ无クテ、相ヒ副ル弟子有リ、師モ此レヲ懃ニモ不レ思ネバ、身貧クシテ壺屋ニ住テ有ル者有リケリ、此ノ事ヲ聞テ云ク、己レ年既ニ半バニ過ヌ、生タラム事、今幾ニ非ズ、亦身貧クシテ、此ヨリ後善根ヲ修セムニ不レ堪ズ、然レバ同ク死タラム事ヲ、今師ニ替テ死ナムト思フ也、速ニ己ヲ彼ノ祭ノ都状ニ注セト、他ノ弟子共此ヲ聞テ、難レ有キ者ノ心也ト思テ、我身コソ代ラムト不レ云ネドモ、彼ガ代ラムト云コソ聞ハ哀ナリケレ、泣ク者モ多カリ、晴明此レヲ聞テ、祭ノ都状ニ其ノ僧ノ名ヲ注シテ、丁寧ニ此レヲ祭ル、師モ此ヲ聞テ、此ノ僧
ノ心此計可レ有シトハ、年來不レ思ザリツト云テ泣ク、既ニ祭畢テ後、師ノ病頗ル减氣有テ、祭ノ驗有ニ似タリ、然レバ代ノ僧ハ必ズ死トスレバ、可レ穢キ所ナド沙汰シ取セタリケレバ、僧聊ナル物具ナムド拈タル、可レ云キ事ナド云ヒ置テ、死ナムズル所ニ行テ、獨リ居テ念佛唱ヘテ居タリ、終夜傍ノ人聞ケドモ、忽ニ死ヌトモ不レ聞ヌニ、既ニ夜曙ヌ、僧ハ死ヌラムト思フニ、僧未ダ不レ死、師ハ既ニ病愈ヌレバ、僧今日ナド死ナムズルニヤト思ヒ合スル程ニ、朝ニ晴明來テ云ク、師今ハ恐レ不レ可レ給ズ、亦代ラムト云シ僧モ不レ可レ恐ズ、共ニ命ヲ存スル事ヲ得タリト云テ返ヌ、師モ弟子モ、此ヲ聞キ喜デ泣ク事无レ限シ、此ヲ思フニ、僧ノ師ニ代ラムト爲ルヲ、冥道モ哀ミ給テ、共ニ命ヲ存シヌル也ケリ、皆人此事ヲ聞テ、僧ヲナム讃メ貴ビケリ、其後師此僧ヲ哀テ事ニ觸テ、止事无キ弟子共ヨリモ重クシテ有ケル、現ニ理也、實ニ難レ有キ弟子ノ心也、
〔源平盛衰記〕
〈二〉
p.0045 淸盛息女ノ事
抑此成範卿トハ、故少納言入道信西三男也、櫻町中納言ト申事ハ、優ニ情深キ人ニテ、吉野山ヲ思出シテ櫻ヲ愛シ給ヒケリ、室ノ八嶋ヨリ歸上後、町ノ四方ニ吉野ノ櫻ヲ移植、其中ニ屋ヲ立テ住給ケレバ、見人此町ヲバ樋口町ノ櫻町ト申ケリ、又ハ此ノ中納言、櫻ノ名殘ヲ惜テ、立行春ヲ悲ミ、又コン春ヲ待ワビ給シカバ、異名ニ櫻町中納言トモイヘリ、殊ニ執シ思ハレケル櫻アリ、七日ニ咲散ル事ヲ歎テ、春ゴトニ、花ノ命ヲ惜テ、泰山府君ヲ祭ラレケル上へ、天照大神ニ祈申サセ給ケレバ、三七日ノ齡ヲ延タリケリ、サレバ角ゾ思ツヾケ給ヒケル、
千早振現人神ノカミタレバ花モ齡ハノビニケルカナ
ト人ノ祈實アリケレバ、神ノ靈驗アラタニシテ、七日中ニ咲散花ナレ共、三七日マデ遺アリ、君モ御感有テ、花ノ本ニハ此ノ人ヲゾスベキトテ、勅書ニ櫻町ノ中納言トゾ仰ケル、
〔吾妻鏡〕
〈二十三〉
)H 建保五年八月廿五日庚午、山城廷尉自二京都一歸參、院〈○後鳥羽〉御惱事、自二七月十日一連日御
瘧病也、有智高僧面々雖レ勵二修驗一無二御减之儀一、而同廿五日、前陰陽博士道昌於二赤山一修二泰山府君祭一、十一月八日壬午、陸奧守廣元朝臣不例、目所勞(○○○)、腫物等計會、今日行二七座如法泰山府君祭一(○○○○○○○○○)云云、
〔吾妻鏡脱漏〕
p.0046 嘉祿二年十一月廿六日丁丑、自レ今月次泰山府君祭(○○○○○○○)可レ被レ行云云、 三年〈○安貞元年〉十一月廿三日戊戌、將軍家赤班〈○班下恐脱二瘡字一〉出現給、仍今日、重而無爲之御祈等被レ行也、神馬被レ奉二鶴岡宮一、又於二御所一七座泰山府君祭(○○○○○○○)被レ行之、晴賢、泰貞、重宗、文元、宣賢、親貞、道繼等奉仕之、凡自二去月下旬之頃一、赤班瘡流布、貴賎不レ免、上下皆令レ煩之、京都同前云云、今月八日主上有二御惱一云云、
〔花園院御記〕
p.0046 正和三年四月二十四日丁未、今日在彦朝臣始修二百日泰山府君祭一、
〔薩戒記〕
p.0046 應永卅二年七月廿六日癸亥、第二度奏聞云、
大山府君、招魂祭、共以可レ被レ行也、陰陽師可レ隨二勅定一之由、入道殿申、又御修法阿闍梨事、彼准后爲二御加持一、只今可二參内一、相待候處參入候也者、
仰云、陰陽師於二大山府君一者、可レ仰二在方三位一、於二招魂祭一者、可レ仰二陰陽頭有重朝臣一者、
又仰云、爲二御惱御祈一、可レ被レ獻二願書於宗廟神一之由、有二禪門命一、仍可レ有二其沙汰一、雖レ可レ被レ仰二職事一、且引二勘先例一可レ被レ申者、
次奏曰、陰陽師可レ仰二兩人一之由畏承了、又御願書事、可レ勘二申先例一之由謹承了、可レ令二存知一、但御願書事如何、只可レ爲二宣命一歟、又早々可レ被レ仰二定職事一歟、
〔看聞日記〕
p.0046 嘉吉元年四月廿二日、入江殿御祈、小泰山府君祭(○○○○○○)事、土御門三位有重卿ニ相尋、則參委細申、如法ハ大儀也、小泰山府君ハ法令不レ定、千疋五百疋三百疋にても、七ケ日行也、公方參千疋にて四季ニ被レ行云々、可レ隨二御意一之由申、伍百疋之分にて可レ行之由令レ申二領状一、御撫物小袖〈御主御服〉可レ給之由申、自二明日一可二執行一云々、委細事重可二注進一之由申二入江殿一、 廿三日、自二今夕一泰山府君始行、祭料五百疋、御撫物〈鏡〉御服一被レ出、又小手箱一〈蒔繪〉御服一爲レ祭被レ出、
〔康富記〕
p.0047 嘉吉二年十月十九日丙午、昨日、〈十八日〉於二賀茂在方卿私宅一被レ祭二略泰山府君一(○○○○○)、御不豫御祈禱也、供料三千疋被レ下云々、
〔成氏年中行事〕
〈五月〉
p.0047 一同月中被レ撰二吉日一、泰山府君祭有レ之、御代官御一家中、陰陽頭出仕之時、御代官モ立烏帽子淨衣ニテ被レ參二御所一、奉行子息參二御劒一、御腰物ト、御弓、征矢、御具足、鏡、御硯、文臺、金劒被レ出之、陰陽頭被官人御中門縁ニテ奉二請取一、御秘藏ノ御馬御鞍置被レ出之、同列副合二匹、
〔大乘院寺社雜事記〕
p.0047 寬正四年七月二十六日、大上樣御違例之間、東北院僧正上洛了、 二十八日、於二高倉殿一、泰山府祭在レ之、陰陽師方下行百貫文云々、其外重寶濟々被レ出之、御違例不レ可レ有二殊儀一歟云々、
〔吾妻鏡〕
〈三十〉
p.0047 文暦二年〈○嘉禎元年〉六月廿八日己丑、今夜於二新造精舍一、被レ行二拜謝祭等一、大鎭、〈親職朝臣〉
〔親長卿記〕
p.0047 文明十一年七月十八日、予今朝申云、先井靈御祭可レ然歟、其謂此間此亭井、凡人用レ之可レ被レ淸歟、然者井靈祭可レ然、可レ仰二陰陽頭一、就二火災怪異御祭一可レ然歟、其可レ談二合有宣三位一之由申入了、次仰云、鳳輦事、先夜火事之時、置二一條家門一云々、若無二置所一者、渡二土御門殿一可レ置二紫震殿内一歟、予申云、還幸事有二其沙汰一、傳奏治定候者、御修理事最前可レ有二沙汰一、然者先不レ可レ被レ移二他所一歟、
〔吾妻鏡脱漏〕
p.0047 元仁二年〈○嘉祿元年〉十二月十七日癸卯、入レ夜於二新御所一御祭被レ爲レ行、所レ謂大藏八神祭晴賢〈○中略〉井靈(○○)信賢、〈○下略〉
〔吾妻鏡〕
〈二十〉
p.0047 建暦二年四月十八日癸卯、爲二將軍家御願一、大倉郷卜二一勝地一令レ經二始一寺一給、〈○中略〉於二此所一被レ行二水神(○○)并七座土公祭一、橘三藏人奉行之、
〔公事根源〕
〈正月〉
p.0047 火災御祭
これも月ごとの事也、陰陽師是を申おこなふ、火事をふせて、功能あるよし、董仲舒が祭書といふ物に見えたり、
〔吾妻鏡脱漏〕
p.0047 元仁二年〈○嘉祿元年〉十二月十七日癸卯、入レ夜於二新御所一御祭被レ爲レ行、所レ謂〈○中略〉防解火災(○○○○)、泰
貞云云、
〔伊呂波字類抄〕
〈和諸社〉
p.0048 王相祭
〔玉海〕
p.0048 治承五年〈○養和元年〉十月二十一日甲子、今曉有二吉夢一、今夜新御所御祈、陰陽助濟憲朝臣、令レ修二王相祭一(○)、依二吉日一也、〈○中略〉但女房今日減了、
〔吾妻鏡〕
〈三十〉
p.0048 文暦二年〈○嘉禎元年〉六月廿八日己丑、今夜於二新造精舍一被レ行二拜謝祭等一、〈○中略〉王相(○○)、〈廣賴〉
〔實久卿記〕
p.0048 天保十年十月十九日辛巳、巳刻參院、今日止止齋、御建物場所王相ニ相當、依レ之今日王相祭、陰陽權助保源勤修了、申刻退出、
〔伊呂波字類抄〕
〈太諸社〉
p.0048 代厄祭〈タイヤク、以二御衣一祭レ之、〉 代病身祭〈タイヒヤウシムノマツリ〉
〔公事根源〕
〈正月〉
p.0048 代厄御祭
是も月ごとにおこなはる、または膓母の法とも申にや、これもおなじき〈○董仲舒〉祭書にのせたり、
〔知信朝臣記〕
p.0048 天承二年〈○長承元年〉七月廿九日、晦御祓招魂御祭、秋季代厄御祭等被レ行之、
〔吾妻鏡〕
〈三十五〉
p.0048 寬元二年五月卅日己巳、若君御前御祈等重被レ行之、廣資奉二仕代厄祭一、
〔吾妻鏡脱漏〕
)H 元仁二年〈○嘉祿元年〉十二月十七日癸卯、入レ夜於二新御所一御祭被レ爲レ行、所レ謂大藏八神祭(○○○○○)晴賢、謝土公有道、井靈信賢、大將軍(○○○)晴幸、王相文元、防解火災泰貞云云、
〔朝野群載〕
〈十五陰陽道〉
p.0048 陰陽寮
進下供二奉宮城四角巽方鬼氣御祭一勅使已下歴名上事
勅使粟田憲景 祝頭(○○)賀茂朝臣成平 奉禮(○○)少屬伴知宗 祭郎(○○)陰陽師大中臣爲兼 陰陽得業生淸原親光 陰陽生高階季保
右今日戌時、供祭歴名注進如レ件、
長治二年二月廿二日 祝 從五位上行頭兼陰陽博士賀茂朝臣成平
勅使 正六位上粟田朝臣憲景
〔玉海〕
p.0049 治承五年二月七日甲申、午刻典藥頭和氣定成參上、依レ召也、令レ見二姫君御前身一、聊赤小瘡出故也、所勞之體疔氣相交、但不レ及二殊大事一歟云々、今夜漏刻博士憲成修二土公、鬼氣祭一、
〔吾妻鏡〕
〈二十〉
p.0049 建暦二年四月六日壬午、將軍家御病惱、而小御所東面於二柱根一花開、仍可レ行二天地災變、鬼氣等祭一之由、相州令二申給一之、
〔吾妻鏡〕
〈四十二〉
p.0049 建長四年八月六日戊午、欲レ有二御出一之處、御惱之間延引、仍被レ行二御祈禱一、泰山府君晴茂、鬼氣爲親、靈所七瀨晴元、文元、晴長、晴秀、以平、國高、重氏、土公、晴秀等云云、
〔吾妻鏡〕
〈二十九〉
p.0049 文暦二年〈○嘉禎元年〉十二月廿二日、被レ行二御祈等一、〈○中略〉靈氣道斷祭、陰陽助忠尚、
〔續史愚抄〕
〈後桃園〉
p.0049 安永八年十月二十八日戊寅、御惱危急、陰陽頭泰榮、奉二仕靈氣道斷祭於私館一、今夜有二群鴉啼囂一、〈愚紳〉
〔伊呂波字類抄〕
〈計諸社〉
p.0049 解返咒詛祭〈以二御衣一祭レ之〉
〔枕草子〕
〈二〉
p.0049 心ゆくもの〈○中略〉
ものよくいふをんやうじして、河原に出て、すそのはらへ(○○○○○○)したる、
〔枕草子春曙抄〕
〈二〉
p.0049 すそのはらへ 呪詛の祓にや、人に職神をよせられて、のろはれたる事の、災難なきやうにと、解除する也、中臣祓を呪詛怨敵疾病消除の祓と、卜部の家に用る類なるべし、
〔小右記〕
p.0049 萬壽四年十二月二日戊辰、聊有二夢相一、見二咀呪氣一、仍以二恒盛一令二解除一、
〔吾妻鏡〕
〈三十三〉
)H 暦仁二年〈○延應元年〉十月十七日癸丑、爲二二棟御方御産平安御祈一被レ行二七座呪咀祭一(○○○○○)、維範、親職、資宣、晴貞、晴平、廣資、範定等奉仕之、
〔吾妻鏡〕
〈三十六〉
p.0049 寬元三年二月廿一日丙戌、重御祈、泰貞奉二仕呪咀祭一云云、
〔伊呂波字類抄〕
〈比諸社〉
p.0049 百恠祭〈已上、見二延喜式一、〉
〔玉海〕
p.0050 治承四年五月四日乙卯、同刻〈○亥刻〉陰陽大允安倍泰茂來、行二百恠祭一、〈於二南庭一行レ之〉此次去二十九日飄風事持二占文一、依レ爲二希代事一續二加之一、兵有レ敗之占、尤有レ恐事歟、
〔吾妻鏡〕
〈二十一〉
p.0050 建暦三年〈○建保元年〉八月廿八日丙申、去廿二日鶴岳奇異事、爲二兵革兆一之由、依レ有二申入之輩一、被レ行二御占一之處、可レ有二御愼一之旨、勘申之間、於二八幡宮一被レ行二百恠祭一、奉行遠江守親廣、
〔親長卿記〕
p.0050 文明九年九月廿日、自二今日一被レ行二百怪祭一、有宣三位勤行、元長奉行也、御撫物直可二申出一之由仰了、
〔吾妻鏡〕
〈二十一〉
p.0050 建暦三年〈○建保元年〉八月十八日丙戌、子剋將軍家出二御南面一、于レ時燈消人定、悄然無レ音、只月色蛬思傷心計也、〈○中略〉及二丑剋一、如レ夢而靑女一人、奔二融前庭一、頻雖二令レ問之給一遂以不二名謁一、漸至二門外一之程、俄有二光物一、頗如二松明一、以二宿直者一召二陰陽少允親職一、〈職親〉倒レ衣奔參、直被レ仰二事次第一、仍勘申云、非二殊變一云云、然而南庭被レ行二招魂祭一(○○○)、
〔吾妻鏡〕
〈二十七〉
p.0050 安貞二年六月廿三日、將軍家百日招魂祭(○○○○○)、御撫物鼠飡損之云云、
〔續史愚抄〕
〈後桃園〉
p.0050 安永八年十月十八日戊辰、爲二御惱御祈一、自二今日一七箇日、陰陽頭泰榮、奉二仕招魂續魄祭於私館一、〈愚紳〉
〔伊呂波字類抄〕
〈太諸社〉
p.0050 宅鎭(タクチン)祭〈加西嶽眞人牟二星鎭〉
〔相宅要説〕
p.0050 起居工匠魘鎭解法
臞仙曰、凡梓人造レ房、瓦人覆レ瓦、石人甃レ砌、五墨繪レ彩、皆有二魘鎭呪詛一、其建造之初、必先祭二吉方隅土木等神一、其祭文曰、玆者建二造屋宇一、其木泥石繪畫之人、所レ有魘鎭呪詛、不レ出二百日一、乃使三自受二其殃一、預先盟二於群靈一、則災禍無レ于二於我一、使二彼自受一、而我家宅寧矣、造船者亦如二此例一、梓人最忌レ倒二用木植一、必取二生氣根一下而稍上、其魘者倒用之、使二人家不一レ能二長進一、作事顚倒解法、以二斧頭一擊二其木一曰、倒好倒好、住二此宅内一、世々温飽、
〔三代實録〕
〈三十淸和〉
p.0051 元慶元年二月廿九日辛未、是日申時、天皇遷レ自二東宮一御二仁壽殿一、童女四人、一人秉二燎火一、一人將二盥器一、二人牽二黄牛二頭一、在二御輿前一、用下陰陽家鎭二新居一(○○○)之法上也、
〔玉海〕
p.0051 建久二年二月十七日丙申、今日於二淸凉殿并藤壺一、可レ修二仁王講一之由仰レ之、又可レ行二宅鎭祭一之由同仰レ之、是大内魔縁亂入之由有二夢告一之故也、然而於二鎭宅祭一者、臨二行幸之期一、可レ行之由仰レ之、
〔吾妻鏡脱漏〕
p.0051 嘉祿元年十二月九日乙未、武州〈○北條泰時〉令レ參二新御所一給、御移徙以前、可レ有二御祭等一哉否、及二御沙汰一、大監物光行、入道源内左衞門尉景房、并國道朝臣、親職依レ召參上、爰光行、入道景房、件祭之事、強不レ及レ被レ行之由、内々依二申入一爲レ被レ决也、則武州直令レ問二子細於國道一給、彼朝臣申云、件兩人者、有職也、當道事、各別也、不レ可レ知二巨細一歟、自二皇居一至二臣下家一、移徙之時、行レ祭之條定例也、且華山院往昔以來、無二回祿難一者、彼祭行故也、近後京極殿御移徙之時被レ行云云、親職申云、故左府御移徙之時被レ行訖、故右府將軍〈○源實朝〉御時、厩鎭(○○)之外悉被レ行之云云、仍可レ被レ行之由云云、 十八日甲辰、宅鎭祭親職、石鎭(○○)晴茂、七十二星兩條國道、厩鎭晴職等奉仕之、周防前司親實爲二奉行一云云、
〔實久卿記〕
p.0051 天保十年十月二十日壬午、巳終刻參院、今日止止齋御建物場所地鎭祭(○○○○○○○)也、陰陽權助保源勤修了、申刻退出、
〔吾妻鏡〕
〈二十七〉
p.0051 寬喜二年六月五日、巳刻幕府小御所之上白鷺集云云、 七日、今夜被レ行二鷺祭一(○○)、晴賢奉仕之、
〔吾妻鏡〕
〈五十一〉
p.0051 弘長三年五月十七日丙申、鷺集二于左典厩御亭一、頃之指二永福寺山一飛去、被二卜筮一之處、文元、晴茂、晴宗、泰房、賴房等、爲二口舌兆一之由占申、爰武田七郎次郎、追二彼鷺一射二殺之一持參、入レ夜依二鷺怪一被レ行二泰山府君、百怪、白鷺(○○)等祭一云云、
〔公事根源〕
〈正月〉
p.0051 七瀨御祓
是は毎月の事也、七瀨とは、川合一條、土御門、近衞、中御門、大炊御門、二條のすゑ、これを七瀨とは申
也、陰陽師人形を奉る、主上御いきをかけ、御身をなでゝ返し給へば、殿上の侍臣、この所々の河原にむかふ、かへりまゐれば主上御撫物をめすまねせらる、その外さしたる事なし、後冷泉院の御時は、隔月に靈所七瀨の御祓(○○○○○○○)をおこなはる、その所々は、耳敏川、河合、東瀧、松崎、石影、西瀧、大井川など也、
〔吾妻鏡〕
〈二十六〉
p.0052 貞應三年〈○元仁元年〉六月六日、炎旱渉レ旬、仍今日爲レ祈レ兩被レ行二靈所七瀨御祓一、由比濱國道朝臣、金洗澤池知輔朝臣、固瀨河親職、六連忠業、柚河泰貞、杜戸有道、江嶋龍穴信賢、此御祓關東今度始也、
〔吾妻鏡〕
〈三十一〉
p.0052 嘉禎二年八月五日己丑、匠作武州被レ參二於新造評定所一、有二評議始一、其衆皆參、但出羽前司家長依二所勞一不參、先被レ定之、御勤仕之輩云云、仍有二御祈始一、暦博士定昌奉二仕河臨祓一、御移徙之後、三箇日被レ始二御祈一之條、先例不覺悟之由、内々雖レ有二傾申之族一、無二御許容一、○按ズルニ、七瀨祓、河臨祓等ノ如キ、此他尚ホ陰陽師ノ修スルモノ甚ダ多シ、神祇部雜祭篇、及ビ祓禊篇等ニモ散見セレバ、宜シク參看スベシ、
〔伊呂波字類抄〕
〈止人事〉
p.0052 咒咀〈トコフ〉
〔同〕
〈能人事〉
p.0052 詛〈ノロフ、咒也、〉
〔尚書註疏〕
〈十六無逸〉
p.0052 民否則厥心違怨、否則厥口詛祝、傳、以三君變二亂正法一、故民否則其心違怨、否則其口詛祝、言三皆患二其上一、〈詛側助反、祝之又反、〉疏、〈(中略)正義曰、(中略)以レ言告レ神謂二之祝一、請レ神加レ殃謂二之詛一、〉
〔源氏物語〕
〈七紅葉の賀〉
p.0052 二月の十日あまりの程に、おとこみこ生れ給ぬれば、名殘なく、内にも宮人もよろこび聞え給、命ながくもとおもほすは、心うけれど、弘徽殿などの、うけはし(○○○○)げにの給ふとききしを、むなしくきゝなし給はましかば、人わらはれにやと覺しつよりてなん、やう〳〵すこしづゝさはやい給ひける、
〔河海抄〕
〈四紅葉賀〉
p.0052 うけはしげにのたまふ 呪咀(ウケハシ)
〔律疏〕
〈名例〉
p.0053 八虐〈○中略〉
七曰不孝、〈謂告二言詛三詈祖父母父母一、〉〈本條直云レ告二祖父母父母一、此註兼云二告言一、文雖レ不レ同、其儀一也、詛猶レ呪也、詈猶レ罵也、依二本條一、詛欲レ令二死及疾苦一者、皆以二謀殺一論、自當二惡逆一、唯詛求二愛媚一、始入二此條一、依二賊律一、子孫於二祖父母父母一求二愛媚一、而厭呪者徒二年、厭呪雖二復同文一、理乃詛輕厭重、但厭二魅凡人一則入二不道一、若呪詛者不レ入二八虐一、例云、其應レ入レ罪者、則擧レ輕以明レ重、然呪詛是輕、尚入二不孝一、厭魅是重、亦入二此條一、〉
〔律疏〕
〈賊盜〉
p.0053 凡造二畜蠱毒一、〈謂造合成レ蠱堪レ害レ人者、〉及敎令者絞、〈造謂自造畜、謂傳畜可三以毒二害於人一、故云、謂造合成レ蠱堪レ害レ人者、及敎令人並合二絞罪一、若同謀而造律不レ言レ皆、即有二首從一、〉造畜者、同居家口雖二不レ知レ情者一遠流、〈謂所二造及畜一者、同居家口不レ限二籍之同異一、雖レ不レ知レ情皆從レ流、〉若里長〈坊令坊長亦同、〉知而不レ糺者徒三年、〈律文唯顯二里長等罪一、不レ言二國郡知レ情之法一者、里長之等親管二百姓一、既同二里閈一、多相諳委、國郡去レ人稍遠、管レ戸又多、是故律文遂無二節制一、若知而不レ糺、依下鬪訟律監臨之官知二所部有一レ犯レ法、不二畢擧劾一者减中罪人罪三等上、〉造畜者雖レ會レ赦、并同居家口及敎令人亦遠流、〈造二畜蠱毒一之人、雖レ會二大赦一、并同居家口及敎令人等亦遠流、〉〈八十以上、十歳以下、及篤疾無二家口同流一者放免、〉〈據レ此、老幼及疾身自犯レ罪、猶尚免レ流、今以二同居共活一有二同家口一、亦配無二同居家口共去一、其老小及疾不レ堪二自存一、故從二放免一、依レ律、老小篤疾、無二家口同流一者放免、其家總無二良口一、唯有二家人奴婢一者、不レ合レ從レ流、家人奴婢既是卑賤、諸條多不レ同二良人一、即非二同流家口之例一、〉即以二蠱毒一毒二同居者一、被レ毒之人父母妻妾子孫不レ知二造蠱情一者不レ坐、〈依レ律、被レ毒之人、父母不レ知レ情者放免、假有二親兄弟大房一、造レ蠱以毒二小房一、既同父母不レ知レ情者、父母合レ原、蠱毒家口會レ赦猶流、恐三其渉二於知一レ情、所以例不レ聽レ住、若以二蠱毒一毒二同居一、被レ毒之人、父母妻妾子孫、不レ知レ情者不レ坐、雖二復兄弟相毒一、終是被レ毒人、父母既無二不レ免之制一、不レ知レ情者不レ坐、又依レ律、犯レ罪未レ發、自首合レ原、造二畜蠱毒一之家、良賤一人先首、雖二既首訖一、不レ得レ免レ罪、犯レ罪首免本許二自新一、蠱毒已成、自新難レ雪、雖レ會二大赦一仍並從レ流、○中略〉
凡有レ所二憎惡一而造二厭魅一、及造二符書一(○○○)、呪詛欲二以殺一レ人者、各以二謀殺一論一、減二二等一、〈謂有レ所レ憎二嫌前人一、而造二厭魅一、厭事多方罕二能詳悉一、或刻二作人身一、擊レ手縛レ足、如レ此人厭勝事非二一緒一、魅者或假二託鬼神一、或妄二行左道一之類、或呪、或詛、欲二以殺一レ人者、〉〈於二二等尊長、及外祖父母夫々之祖父母一、各不レ減、〉以レ故致レ死者、各依二本殺法一、〈謂以二厭魅符書呪詛之故一、但因二一事一致レ死者不レ依二減例一、各從二本殺法一、〉欲三以疾二苦人一者又減二二等一、〈稱二又減一者、謂三等以下親、及凡人非二外祖父母一、謀殺得レ減二等一者、謂從二謀殺上一、總減二四等一、〉〈子孫於二祖父母父母一、家人奴婢、於レ主者各不レ減、〉〈即是二等尊長、外祖父母、夫々之祖父母、唯減二二等一、其祖父母父母以下、雖三復欲二疾苦一、亦同二謀殺之法一、不レ同二減例一、其於二伯叔父姑兄姉外祖父母夫々之父母一、呪詛、已令二疾苦一、理同二毆法一、便入二不道一、〉即於二祖父母父母及主一、直求二愛媚一、而厭呪者徒二年、〈謂子孫於二祖父母父母一、及家人奴婢於レ主造二厭呪符書一、直求二愛娟一者、〉若渉二乘輿一者皆絞、〈謂雖三直求二愛媚一、便得レ罪、重三於盜二服御之物一、准レ例亦入二八虐一、罪無二首從一、〉
〔續日本紀〕
〈十聖武〉
p.0053 天平元年四月癸亥、勅、内外文武百官、及天下百姓、有下學二習異端一蓄二積幻術一、壓魅呪咀、害二
傷百物一者上、首斬從流、如有下停二住山林一詐道二佛法一、自作敎レ他、傳習授レ業、封二印書符一、合レ藥造レ毒、萬方作レ恠、違二犯勅禁一者上、罪亦如レ此、其
訛書者、勅出以後五十日内首訖、若有下限内不レ首、後被二糺告一者上、不レ問二首從一、皆咸配流、其糺告人賞二絹三十疋一、便徴二罪家一、
〔日本書紀〕
〈二十一用明〉
p.0054 二年四月丙子、中臣勝海連於レ家集レ衆、隨二助大連一、遂作三太子彦人皇子像與二竹田皇子像一厭レ之、俄而知二事難一レ濟、歸二附彦人皇子水派宮一、
〔續日本紀〕
〈二十九孝謙〉
p.0054 神護景雲三年五月丙申、縣犬養姉女等坐二巫蠱一配流、詔曰、現神〈止〉大八州國所レ知倭根子掛畏天皇大命〈乎、〉親王王臣百官人等天下公民衆聞食〈止〉宣〈久、〉丈部姉女〈乎波〉内〈都〉奴〈止〉爲〈氐、〉冠位擧給〈比、〉根可婆禰改給〈比〉治給〈伎、〉然〈流〉物〈乎、〉反〈天〉逆心〈乎〉抱藏〈氐、〉己爲レ首〈氐、〉忍坂女王、石田女王等〈乎〉率〈氐、〉掛畏先朝〈乃〉依レ過〈氐〉棄給〈氐之、〉厨眞人厨女許〈爾、〉竊往〈乍〉岐多奈〈久〉惡奴〈止母止〉相結〈氐〉謀〈家良久、〉傾二奉朝庭一、亂二國家一〈氐、〉岐良比給〈氐之〉水上鹽燒〈我〉兒志計志麻呂〈乎、〉天日嗣〈止〉爲〈牟止〉謀〈氐、〉掛畏天皇大御髮(○○○○○)〈乎(○)〉盜給(○○)〈波(○)利氐〉岐多(○○)奈〈岐〉佐保川〈乃〉髑髏〈爾〉入〈氐、〉大宮内〈爾〉持參入來〈氐〉厭魅爲〈流己止〉三度〈世利、〉然〈母〉盧舍那如來最勝王經觀世音菩薩護法善神梵王帝釋四天王〈乃、〉不可思議成神力、桂畏開闢已來御宇天皇御靈、天地〈乃〉神〈多知乃〉護助奉〈都流〉力〈爾〉依〈氐、〉其等〈我〉穢〈久〉謀〈氐〉爲〈留〉厭魅事、皆悉發覺〈奴、〉是以撿レ法〈爾、〉皆當二死刑罪一、由レ之〈氐〉理〈波〉法〈未爾未爾〉岐良〈比〉給〈倍久〉在〈利、〉然〈止毛〉慈賜〈比〉爲〈氐、〉一等降〈氐、〉其等〈我〉根可婆禰替〈氐、〉遠流罪〈爾〉治賜〈布止〉宣〈布、〉天皇大命〈乎〉衆聞食〈止〉宣、
〔續日本紀〕
〈三十二光仁〉
p.0054 寶龜三年三月癸未、皇后井上内親王坐二巫蠱一廢、 四年十月辛酉、初井上内親王坐二巫蠱一廢、後復厭二魅難波内親王一、是日詔幽二内親王及他戸王于大和國宇智郡沒官之宅一、
〔續日本紀〕
〈三十七桓武〉
p.0054 延暦元年三月戊申、從四位下三方王、正五位下山上朝臣船主、正五位上弓削女王等三人、坐三同謀厭二魅乘輿一、詔減二死一等一、三方弓削並配二日向國一、〈弓削三方之妻也〉船主配二隱岐國一、自餘與黨亦據レ法處レ之、
〔扶桑略記〕
〈二十七圓融〉
p.0055 永觀二年六月二十九日戊申、安樂寺託宣、辰時以二禰宜藤原長子一託宣曰、〈○中略〉昔依二纔言一放レ我之日、大臣時平卿、光卿、納言定國卿、菅根朝臣僞稱二勅宣一、召二陰陽寮官人一、充二給種々珍寶一、令レ呪下咀我并子孫永絶、不レ可二相續一之由上、神祭多送二日月一、皇城八方占二山野一、厭術埋二置雜寶一、然而我不レ可レ絶之術、隨分相構、被レ指二姓名一之人、皆以短命、又次々孫々不レ高二官位一、家貧才乏、是依二厭術一也、朝家之政豈可レ然乎、故高視淳茂朝臣等切々祈念云、子々孫々家業不レ斷云々、
〔古事談〕
〈六亭宅諸道〉
p.0055 京極大殿〈○藤原師實〉御時、摸大内春宮町令レ造給〈伊與守泰仲朝臣造レ之〉之後、于レ今不レ燒之處也、寢殿上長押有二七星之節一(○○○○)云々、又吉平朝臣符レ之故云々、故左府之時修理之間、自二天井上一被レ取二出種々厭物一(○○)、〈多分小體人形等也〉被レ見二吉平末葉等一之處、此物體等總申下不二習傳一之由上云々、仍如レ本被二納置一云々、
〔百練抄〕
〈五堀河〉
p.0055 嘉保元年八月十七日、源仲宗、并男參河守惟淸已下、配二流國々一、依レ奉レ呪二咀太上天皇一〈○白河〉也、
〔百練抄〕
〈七近衞〉
p.0055 康治元年正月十九日、散位源盛行、并妻津守島子、配二流土佐國一、奉二侍賢門院仰一、依レ奉レ呪二咀國母皇后宮一、〈○得子〉勘二罪名一所レ處二流罪一也、件夫婦祗二候彼院一者也、
〔台記〕
p.0055 久壽二年八月廿七日壬寅、親隆朝臣來語曰、所三以法皇惡二禪閤〈○藤原忠實〉及殿下、〈○忠實長子忠通〉余〈○忠實次子賴長〉者、先帝崩後人寄二帝巫口一、巫曰、先年人爲レ詛レ朕、打二釘於愛宕護山天公像目一、故朕目不レ明、遂以畢レ世、法皇聞二食其事一、使三人見二件像一、既有二其釘一、即召二愛宕護山住僧一問レ之、僧申云、五六年之前、有夜中 美福門院及關白疑二入道及左大臣所爲一、法皇惡レ之、雖レ難レ取レ信、天下道俗所レ申如レ此、先日成隆朝臣略此事、今聞二兩人説一畏不レ少、但禪閤及余唯知二愛宕護山天公飛行一、未レ知三愛宕護山有二天公像一、何况祈請乎、蒼天在レ上白日照 怖々、〈○下缺〉
〔愚管抄〕
〈四〉
p.0055 さる程に、主上近衞院、十七にて、久壽二年七月に、うせ給ひにけるは、ひとへに、此左府〈○藤原賴長〉が呪咀(○○)なりと人いひけり、
〔百練抄〕
〈七二條〉
p.0056 應保二年六月廿三日、資賢卿、通家朝臣、時忠、範忠之配流、不レ勘二罪名一人傾レ之、是奉レ呪二咀主上於賀茂社一之由露顯之故也、
〔玉海〕
p.0056 嘉應元年四月十日、晩頭陰陽助安倍泰親來、相逢曰問二所勞事一、〈來問酉刻〉占云、土公呪咀(○○○○)成レ祟、不レ增不レ減而可レ經レ程、但六月八日爲二減氣之都一〈○都恐期誤〉云々、但六月殊爲二其期一云々、又問二發心地事一、占云、〈去六日申刻〉呪咀靈氣祟、甲辰庚申日爲二減氣一故、又一同日酉刻令レ占之、其占云、土公靈氣增減之日同前、但若胸所勞自發動歟云々、共不レ及二大事一云々、
〔康富記〕
p.0056 應永廿七年九月十日丙子、今朝室町殿醫師高天被二禁獄一、父子弟等三人也云々、此間仕レ狐之沙汰風聞、然而昨日於二御臺御方一、仰二驗者一被二加持一之處、二匹自二御所一逃出、則被レ縛二件狐一之後被二打殺一、依二此事一、高天ガ狐ヲ奉二詛付一之條露顯云々、仍今朝被二召取一云々、晝程又被レ召二取陰陽助定棟朝臣一、是モ仕レ狐之由有二虚説一云々、末代之作法淺敷々々、
〔看聞日記〕
p.0056 應永三十二年八月二十三日癸丑、源宰相〈○足利義量〉以レ状馳申云、二十日禁裏へ、庭中申物あり、今度御惱〈○稱光〉自二伏見殿一〈○後崇光〉被二呪咀申一之由申、さもありぬべきよし被レ仰逆鱗、以二永藤卿一室町殿へ被レ仰之間、事樣不審也、何樣にも申口可二召捕一之由御返事被レ申、則所司代召捕尋之間、内侍所刀自三條と云物、彼官人也、彼刀自カ夫洞院諸大夫民部少輔重季、并庭中申男〈六條中將侍金澤ト云〉其外女尼兩三人召捕被二糺明一之處、非二伏見殿御事一、大覺寺殿をこそ申て候へと申披之間、此御所之虚名ハ晴畢、御幸運珍重之由告申之間、迷惑仰天、先以無爲之條、併神慮之至喜悦也、則三條永基ニ尋二遣返事一云、大覺寺殿御事也、是之御事ハ無爲落居之由申二安堵一畢、
〔橘窻自語〕
〈上〉
p.0056 陰陽師大黑民部の家に、水合(○○)といふ事を、土用にすることあり、禁裏仙洞御所々々にて井にむかひ、呪術をせり、此事のわけは、丹後國與謝郡天眞井の水を合せし故有しと、大黑の物語なれども、不甘心の事にて、風水家の呪術におこるなるべし、
〔日本書紀〕
〈二神代〉
p.0057 一書曰、〈○中略〉時天神見二其矢一曰、此昔我賜二天稚彦一之矢也、今何故來、乃取レ矢而呪之(ホギテ/○○)曰、若以二惡心一射者、則天稚彦必當レ遭レ害、若以二平心一射者、則當レ無レ恙、因還投レ之、即其矢落下中二于天稚彦之高胸一、因以立死、
〔日本書紀〕
〈二神代〉
p.0057 一書曰、〈○中略〉時皇孫謂姉爲レ醜不レ御而罷、妹有二國色一引而幸レ之、則一夜有レ身、故磐長姫大慙而詛之(トコヒテ/○○)曰、假使二天孫不レ斥レ妾而御一者、生兒永壽有レ如二磐石之常存一、今既不レ然、唯弟獨見レ御、故其生兒必如二木華之移落一、一云、磐長姫耻恨而唾泣之曰(○○○○)、顯見蒼生者、如二木華之俄遷轉一當二衰去一矣、此世人短折之縁也、
〔日本書紀〕
〈二神代〉
p.0057 一云、〈○中略〉乃以授二彦火火出見尊一、因敎レ之曰、以レ鈎與二汝兄一時、則可二詛言一(トコヒイハマク/○○○)、貧窮之本、飢饉之始、困苦之根、而後與レ之、又汝兄渉レ海時、吾必起二迅風洪濤一令二其沒溺辛苦一矣、
〔日本書紀〕
〈三神武〉
p.0057 戊午年九月戊辰、天皇惡レ之、是夜自祈、而寢夢有二天神一、訓レ之曰、宜下取二天香山社中土一〈香山、此云二介遇夜縻一、〉以造中天平瓫八十枚上、〈平瓫、此云二毗邏介一、〉并造二嚴瓫一而敬祭二天神地祇一、〈嚴瓫、此云二怡途背一、〉亦爲二嚴呪詛一(イツノカジリ/○○○)、如レ此則虜自平伏、〈嚴呪詛、此云二怡途能伽辭離一、○中略〉是時虜兵滿レ路難二以往還一、時椎根津彦乃祈レ之曰、我皇當三能定二此國一者、行路自通、如不レ能者賊必防禦、言訖徑去、時群虜見二二人一大咲レ之曰、大醜乎、〈大醜、此云二鞅奈瀰儞句一、〉老父老嫗、則相與闢レ道使レ行、二人得レ至二其山一、取レ土來歸、於レ是天皇甚悦、乃以二此埴一造二作八十平瓫、天手抉八十枚、〈手抉、此云二多衢餌離一、〉嚴瓫一、而陟二于丹生川上一、用祭二天神地祇一、則於二彼莵田川之朝原一、譬如二水沫一而有レ所二呪著一(カジリツクル/○○)也、天皇又因祈レ之、
〔日本書紀〕
〈九神功〉
p.0057 四十七年四月、百濟王使二久氐、彌州流、莫古一令二朝貢一、時新羅國調使、與二久氐一共詣、〈○中略〉便問二久氐等一曰、百濟貢物不レ及二新羅一奈二之何一、對曰、臣等失レ道至二沙比新羅一、則新羅人捕二臣等一禁二囹圄一、經二三月一而欲レ殺、時久氐等向レ天而呪二詛(ノロヒトホフ/○○)之一、新羅人怖二其呪詛一而不レ殺、則奪二我貢物一、因以爲二己國之貢物一、以二新羅賤物一相易、爲二臣國之貢物一、
〔日本書紀〕
〈十四雄略〉
p.0057 三年〈○安康〉十月、是月、御馬皇子、以三曾善二三輪君身狹一、故思二欲遣一レ慮而往、不意道逢二邀軍於
三輪磐井側一、逆戰不レ久被レ捉、臨レ刑指レ井而詛(トコヒテ/○)曰、此水者、百姓唯得レ飮焉、王者獨不レ能レ飮矣、
〔日本書紀〕
〈十六武烈〉
p.0058 十一年〈○仁賢〉十一月戊子、於レ是大伴大連率レ兵自將圍二大臣宅一、縱レ火燔レ之、所レ撝雲靡、眞鳥大臣恨二事不一レ濟、知二身難一レ免、計窮望絶、廣指レ鹽詛(ノロフ/○)、遂被二殺戮一、及二其子弟一、詛時唯忘二角鹿海鹽一、不二以爲一レ詛、由レ是角鹿之鹽爲二天皇所一レ食、餘海之鹽爲二天皇所一レ忌、
〔日本書紀〕
〈十九欽明〉
p.0058 二十三年六月、是月、或有レ讃二馬飼首歌依一曰、歌依之妻逢二臣讃岐一、鞍韉有レ異、既而熟視皇后御鞍也、即收二延尉一、鞫問極切、馬飼首歌依乃揚言誓曰、虚也非レ實、若是實者必被二天災一、遂因二苦問一、伏レ地而死、死未レ經レ時、急災二於殿一、廷尉收三縛其子守石與二中瀨氷一、〈守石名瀨氷皆名也、〉將レ投二火中一、〈投レ火爲レ刑、蓋古之制也、〉呪曰(カジリテ/ホサキテ)、非二吾手投一、呪(カジヒ/○)訖欲レ投レ火、守石之母祈請曰、投二兒火裏一天災果臻、請付二祝人一使レ作二神奴一、乃依二母請一許沒二神奴一、
〔續日本紀〕
〈十九孝謙〉
p.0058 天平勝寶六年十一月甲申、藥師寺僧行信、與二八幡神宮主神大神多麻呂等一、同レ意厭魅、下二所司一推勘、罪合二遠流一、於レ是遣二中納言多治比眞人廣足一、就二藥師寺一宣レ詔、以二行信一配二下野藥師寺一、
〔續日本後紀〕
〈十二仁明〉
p.0058 承和九年七月乙卯、是日詔曰、〈○中略〉春宮坊〈乃〉帶刀舍人伴健岑〈伊、〉隙〈仁〉乘〈天、〉與二橘逸勢一合レ力〈天、〉逆謀〈乎〉構成〈天、〉國家〈乎〉傾亡〈无止須、〉此事〈乎波、〉皇太子〈波〉不レ知〈毛〉在〈世止、〉不善人〈仁〉依〈天〉相累事〈波、〉自レ古〈利〉言來〈留〉物〈奈利、〉又先々〈仁毛、〉令二法師等一〈天〉呪咀(○○)〈止〉云人多〈安利、〉而〈止毛〉隱
〈乎〉撥求〈女无〉事〈乎〉不レ欲〈之天奈毛〉抑忍〈太留、〉
〔百練抄〕
〈四一條〉
p.0058 寬弘六年二月四日、捕下呪二咀中宮并第二皇子左大臣等一法師圓能上、勘問承伏已了、造意者伊豫守公行朝臣妻高階光子、民部大輔方理、并同妻源子、其父前越後守爲文朝臣等被レ勘二罪名一、
〔政事要略〕
〈七十糺彈雜事〉
p.0058 勘二申散位源朝臣爲文、民部大輔同方理、伊豫守佐伯朝臣公行妻、及方理朝臣妻、 僧圓能等罪名一事
右主税頭兼大外記播磨權介滋野朝臣善言仰偁、大納言兼皇太子傳藤原朝臣道綱宣、奉レ勅、散位源朝臣爲文、民部大輔源朝臣方理、伊豫守佐伯朝臣公行妻、及方理朝臣妻等、奉レ令下僧圓能呪二咀皇后一〈○藤原彰子〉并厭中魅敦成親王〈○後一條〉左大臣上〈○藤原道長〉也、件等人所レ當罪名、宜レ令二明法博士勘申一者、今年二月五日
勘二問僧圓能等一日記云、問二圓能一云、作二厭式一(○○)奉レ呪二咀中宮若宮并左大臣一之由、依レ實辨申如何、圓能申云、依二伊豫守公行朝臣妻宣旨一云、人語下奉二呪咀一之由上、昨日被二勘問一之次、依レ實辨申先了〈止〉申、〈○中略〉復問云、此事相語之人、宣旨只一人歟、重辨申如何、圓能申云、先者民部大輔源朝臣方理〈奈牟〉相語侍之、去年十二月中旬頃也、宣旨者同月下旬〈爾奈牟〉語侍之、厭符〈者〉二枚也、一枚〈者〉度二宣旨一侍〈支、〉一枚〈者〉爲レ度二方理朝臣一持二向彼宅一、而方理朝臣他行、妻〈爾奈牟〉具依レ知二其事一〈天〉預侍〈利之、〉祿〈爾者〉紅花染褂一領〈奈牟〉令レ得〈天〉侍之、宣旨祿〈者〉給〈者〉絹一疋也〈止〉申、復問云、圓能〈加〉外、相二知此事一之陰陽師、幾侍之、又有驗之寺社及可レ然之所々〈爾、〉成二此厭法一乎、重辨申如何、圓能申云、寺社所々〈爾〉更不レ成二件事一、但宣旨宅〈爾〉侍藤原吉道〈奈牟〉案内〈者〉知〈天〉侍〈良牟、〉彼宅出納春正〈者〉爲レ使、雖レ來二圓能許一、案内〈者〉不レ知〈也〉侍〈良牟、〉元來僧道滿〈奈牟〉年來召二仕彼宅一之陰陽師〈者〉侍〈己止曾〉春正申侍〈禮、〉厭符之事〈者〉相語〈毛也〉侍〈爾志止〉申、復問云、方理朝臣宣旨同比〈爾〉件事〈遠〉相語〈止〉辨申、彼二人共相二議件事一〈天〉令レ爲歟、又僧源心〈止〉圓能〈止〉常相二語件事一之由、圓能〈加〉弟子妙延〈加〉所二指申一也、又前越後守源朝臣爲文親昵召二仕圓能一之間、有二其縁一〈天〉受二方理朝臣夫妻之語一也〈止〉昨辨申〈世利、〉若爲文〈毛〉知二此事一歟、一々慥辨申如何、圓能申云、方理宣旨住所各異侍〈禮者、〉所々〈爾志天〉受二此語一侍〈利支、〉相議〈天也〉所二厭符一事〈乎曾〉令レ爲侍〈介牟、〉不二知待一、亦圓能〈毛〉互不レ令レ知、又源心〈者〉本自不レ隔二雜事一之間、雖レ有二親昵之語一、非レ知二此厭符之事一、又爲文朝臣〈爾者〉雖レ語二雜事一、件厭符事〈者〉不レ示、圓能依三能通二彼宅一〈天、〉方理朝臣〈者〉招取〈天〉相二語此厭符之事一侍之也〈止〉申〈拷牟、〉 問二妙延一云、師僧圓能依二方理朝臣夫妻并宣旨等語一〈天、〉奉レ呪二咀中宮若宮并左大臣一之由、及厭符等〈乎〉埋二置所々一辨申如何、妙延申云、師弟子間〈爾〉侍〈禮止毛〉不レ知二何事一、去年冬童子物部糸丸〈爾〉絹一疋令レ持〈天〉來〈天〉侍〈之者〉見侍〈支、〉又圓能源心相語事〈者〉見侍〈支、〉不レ知二何事一〈止〉申〈拷牟、〉 問二糸丸一云、師僧圓能作二厭符一〈天〉奉レ呪二咀中宮若宮并左大臣一之由、汝爲二彼童子一〈天〉可レ知二件事一、依レ實辨申如何、糸丸申云、厭符事〈者〉又不二知給一、申二祓祿一〈天、〉從二宣旨宅一絹一疋〈者〉持來侍〈支、〉又紅花染衣女〈乃〉持來〈天〉持〈志者〉見侍〈支、〉不レ知二何所之物一、但去年十二月間也〈止〉申〈拷牟〉者、先レ是同四日内間日記依二事情同一更不二注載一、〈○中
略〉今件爲文朝臣、方理朝臣、并公行朝臣妻等、起二厭呪一謀在二殺害一、或擬レ奉レ危二皇后一、或似レ可レ害二皇親一、兼舍二惡心一思レ損二議貴一、此等罪戻之中、以レ渉二乘輿一爲レ重、即從二二罪之例一、入二八虐之條一、不レ論二男女一不レ辨二首從一、須下各除名皆處中絞刑上、至二于圓能一尤是加功之者也、依レ无二差別之法一、又同二上件之輩一、更令二還俗一全以可レ坐、就二日記一撿二案内一、爲文不レ知之由、圓能辨申已耳、而被レ下二宣旨一之旨、猶加二犯人之列一也、絲綸可レ有二其由一、結斷何可レ任二其意一、依二法條一所二指勘申一如レ件、
寬弘六年二月八日 從五位上守大判事兼明法博士美麻那朝臣直節
從五位上行勘解由次官兼明法博士令宗朝臣元正
〔公卿補任〕
〈一條〉
p.0060 寬弘六年〈己酉〉 〈前太宰權帥從二位藤伊周、正月日叙二正二位一、二月廿日宣旨、不レ可レ令二朝參一、依二呪咀事一也、六月十九日宣旨更聽二朝參一、〉
〔宇治拾遺物語〕
〈十四〉
p.0060 今はむかし、御堂關白殿〈○藤原道長〉法成寺を建立し給てのちは、日ごとに御堂へまいらせ給けるに、しろき犬を愛してなん、飼せ給ければ、いつも御身をはなれず、御ともしけり、ある日、例の如く御ともしけるが、門をいらんとし給へば、このいぬ、御さきにふたがるやうに吠まはりて、内へいれたてまつらじとしければ、何條とて、車よりおりて、いらんとし給へば、御衣のすそをくひて、引とゞめ申さんとしければ、いかさまやうあることならんとて、榻をめしよせて、御尻をかけて、晴明にきとまいれとめしにつかはしたりければ、晴明則まいりたり、かゝることのあるは、いかゞとたづね給ければ、晴明しばしうらなひて申けるは、これは君を呪詛し奉りて候物を、道にうづみて候、御越あらましかば、あしく候べき、犬は通力のものにて、つげ申て候なりと申せば、さてそれはいづくにかうづみたる、あらはせとの給へば、やすく候と申て、しばしうらなひて、こゝにて候と申所をほらせてみ給に、土五尺ばかりほりたりければ、あんのごとく物ありけり、土器を二うちあはせて、黄なる紙捻にて、十文字にからげたり、ひらひてみれば、中にはものもなし、朱砂にて一文字をかはらけの底にかきたるばかりなり、晴明がほかには、しりたるも
の候はず、もし道摩法師やつかまつりたるらん、報じて見候んとて、懷より紙をとり出し、鳥のすがたに引むすびて、呪を誦じかけて、空へなげあげたれば、たちまちにしらさぎになりて、南をさしてとび行けり、この鳥のおちつかん所をみてまいれとて、下部をはしらするに、六條坊門萬里小路邊に、ふりたる家の、もろおり戸の中へ落入にけり、則家主老法師にてありける、からめとりてまいりたり、呪詛のゆへを問るゝに、堀川左大臣顯光公の語をえて仕たりとぞ申ける、このうへは流罪すべけれども、道摩がとがにはあらずとて、向後かゝるわざすべからずとて、本國はりまへをひ下されにけり、この顯光公は、死後に怨靈と成て、御堂殿邊へは、たゝりをなされけり、惡靈左府となづく云々、犬はいよ〳〵不便にせさせ給ひけるとなん、
〔百練抄〕
〈五白河〉
p.0061 承暦二年十月十六日、以二撿非違使一搦二召威儀師恩紹奉膳信季一、依二呪詛事一也、前遠江守資成下女依二呪詛事一、於二使廳一勘問之間、奉レ念二熊野權現一、繩切杖折(○○○○)、不レ加二勘問一爲二奇異一、
〔百練抄〕
〈六崇德〉
p.0061 大治元年十一月七日、阿闍梨承玄、并僧妙心還俗配流、依レ有下奉レ呪二詛女院一之聞上也、去四日被レ追二捕之一、
〔有德院殿御實紀附録〕
〈十五〉
p.0061 享保の初、江戸の寺院にて、諸宗の僧侶、おもひ〳〵に法義を講論する事行はれ、參詣して聽聞する貴賤群集せり、其中に、牛込圓福寺といへる法華宗の寺僧、講談するとて、あくまで淨土宗を謗りけるに、聽衆の中に、淨土宗の僧ありて、大に憤り、雙方爭論に及びしことあり、かれら圓福寺をうらむるまゝに、なしけるにや、府内十四五ケ所に、牛込圓福寺にて、公を呪詛(○○)するよしを、紙にかきて棄置たり、其所より、町奉行所にうたへ出れば、奉行も捨置べきことならねば、かくと聞え上しに、笑はせ玉ひ、かゝる事とりあぐべきにあらず、もしまことに呪詛するものあらば、心まかせに呪詛させよ、少しも患ふべきにあらず、此後かゝる事あり共、訴へ出るに及ばず、速にすてしむべしと仰あり、
〔皇國名醫傳後編〕
〈下〉
p.0062 山田圖南
山田正珍、字宗俊、以レ字稱、世幕府醫官、父正朝、〈號二麟嶼一、即菅鱗嶼、姓菅原剥用曰レ菅、〉有二神童之稱一、〈○中略〉秋田侯有レ疾、服二正珍藥一、會有二一巫一、以レ法伏レ疾、稱レ多二靈驗一、夤二縁勢貴一、亦至二侯邸一、將レ行レ法、謂二侍臣一曰、藥劑且停、不則法驗不レ著、正珍聞レ之、告二侍臣一曰、聞有レ巫止レ藥、侯病太丞、黽勉進レ藥、尚恐レ弗レ及、况止レ之乎、正珍願見二其巫一、侍臣唯唯退告レ巫、巫不レ可、正珍強見レ之謂曰、聞汝以レ法生レ人、亦必能以レ法死レ人、汝試詛レ我(○○)、我與二汝藥一、汝法驗乎、我藥効乎、吾且觀レ之、乃取二紫圓一迫而服レ之、巫振レ鐸唱レ呪、頃之腹痛懣悶下利如レ傾、大懼且泣、固乞二罷去一、
〔温故要略〕
〈二〉
p.0062 嫉妬女呪詛シテ神木等ニ釘打事
和朝於レ今有二此事一、親見悲哉、
〔梅墩詩鈔〕
〈初編二〉
p.0062 和二島子玉丑時咀一
玉樓瘦、銀海澀、行拂二女蘿一與レ露泣、廟扉已腐推無レ聲、古佛吹レ氣敝惟濕、大樹槎
老藤垂、落月戀レ枝蹙二纎眉一、冬冬釘レ樹深恨徹、此恨狂夫知不レ知、秋帳有レ人曉夢惡、提レ劒起問何其、
〔安齋隨筆〕
〈後編一〉
p.0062 一嚔のマジナヒ 嚔(ハナビル)〈クサメの事也、俗にはクシヤミと云、〉ハ凶事也とて、マジナヒをする事あり、徒然草に、クサメクサメと云てマジナフ事見えたり、クサメと云ハ、ハナヒル事にはあらず、ハナヒル時のマジナヒの詞也、又下賤の人ハ、ハナヒル時、マジナヒ也とて、クソクラヘト云、拾芥抄に、嚔ル時の頌に、休息萬命、急々如律令ト見えたり、休息萬命を、クソクマンミヤウとよむを誤り傳へて、クソクラヘト覺えたがへたるものなるべし、
〔拾芥抄〕
〈上本諸頌〉
p.0062 嚔時頌クサメノトキノ事
休息萬命 急々如律令、クサメト云ハ是也、
〔漢書〕
〈三十藝文〉
p.0062 嚔耳鳴雜占(○○○○○)十六卷〈師古曰、嚔音丁計反、○中略〉
右雜占十八家、三百一十三卷、
〔通俗編〕
〈十祝誦〉
p.0063 嚔祝(○○) 法苑珠林、世尊嚔、諸比邱呪願言二長壽一、時有二居士一嚔、佛令三比邱亦呪二言長壽一、按、今童婦輩猶相承襲、
〔徒然草〕
〈上〉
p.0063 或人淸水へ參りけるに、老たる尼の行つれたりけるが、道すがら、くさめ〳〵といひもてゆきければ、尼御前何事をかくはの給ぞととひけれどもいらへもせず、猶いひやまざりけるを、度々とはれて、うち腹だちて、やゝ、はなひたる時、かくまじなはねば死ぬるなりと申せば、やしなひ君のひえの山に兒にておはしますが、たゞ今もや、はなひ給はんと思へば、かく申ぞかしといひけり、有がたきこゝろざしなりけんかし、
〔徒然草文段抄〕
〈二〉
p.0063 はなひたる時といふより、尼が答の詞也、是は乳母がたのならはしに、其兒のはなひたる時、かたはらの人、はなを合すとて、又くさめと云也、もしはなをあはせざれば、其はなひたる兒に害ありといひならはせり、其故に、今も守刀などに、鼻の糸とて、靑き糸をつけて、兒のはなひたる時、彼はなを合す代に、其糸をむすぶ也、此まじなひの心にて、此段を見侍るべき也、かの尼が詞に、はなひたる時、かくまじなはねば、死ぬるなりと申せばといへる、すなはち是也、其はなをあはせんとて、くさめ〳〵といひし也、
〔嬉遊笑覽〕
〈八方術〉
p.0063 嚔の頌〈○中略〉
萬葉集〈十一〉眉根掻(マユネカキ)、鼻火紐解(ハナビヒモトケ/○○○○)、待八方(マテリヤモ)、何時毛將見跡(イツカモミント)、戀來吾乎(コヒコシワレヲ)、集中、はなひる事をよめる歌、この外にもあり、詩邶風に、寤言不レ寐、顧言則嚔といへるとおなじくて、人におもはるれば、はなひるとなり、後には、其意うつりてわがうへを、かげにて後言する者あれば、嚔るとて、わろき事とす、又天竺には、もとよりこれをよからぬ事とするにや、四分律に、世尊嚔諸比丘呪願言二長壽一、といへること見えたり、古今集、〈雜〉出て行ん人をとゞめんよしなきにとなりのかたにはなもひぬかな、袖中抄に、はなひる事、いかにもよからぬ事なり、年の始に、鼻ひりつれば、祝ひごとをいひて祝ふなり、され
ば、人の所へゆかんずる初めに、隣の人嚔らむを聞ても、くせ〳〵しからん人は、立どまるべきなり、枕草子、にくきもの、はなひて、誦文する人云々、
〔北條五代記〕
〈六〉
p.0064 北條氏康和歌の事
或夕つかた、高樓にのぼり、すゞみ給ひける時に、其近邊へ、狐來て鳴つるを、御前に候する人々、あやしみけれ共、兎角いふ人なし、梅窓軒と云者申けるは、むかし賴朝公、信州淺間見はら野の御狩に、狐鳴て北をさして飛さりぬ、人々是をとゞめんとて、矢筈を取てをつかけしかどもにげ過ぬ、賴朝公御覽じ、秋の野の狐とこそいへ、夏野に狐鳴事不審なり、誰か有歌よみ候へと仰下されければ、工藤祐經承りて、誠に昨日の御狩にをいて、梶原源太景季が歌には、鳴神もめでゝ雨はれ候ひぬ、是にも歌あらばくるしかるまじ、誰々もと申けれ共、よむ人なかりしに、武藏の國の住人愛甲三郎季隆、ゐだけだかになりうかべるいろ見えしが、やがて、夜ならばこう〳〵とこそ鳴べきにあさまにはしるひる狐かな、と申ければ、君聞召て、神妙に申たり、〈○中略〉愚老、和歌の道を學びとくをよばぬまでも案じて見候べきをと申、氏康きこしめし、夏狐鳴事珍事なり、皆々歌を案じ、出來次第に一首仕るべしと仰有ければ、各々案ずる體見えけれ共詠人なし、やがて氏康公、夏はきつねになく蝉のから衣をのれ〳〵が身の上にきよ、とよみ給ひしに、夜明て見れば、其狐の鳴つる所に死て有けり、皆人奇妙不思議也と感じあへり、〈○中略〉氏康いはく、我數度の合戰に、勝利を得る事、武力のいたす所に非ずたゞしかしながら天運全して、神明佛陀の應護にかゝるが故也と神佛を信敬し、諸寺諸社を建立せり、
〔台德院殿御實紀〕
〈二十七〉
p.0064 慶長十九年七月廿一日、この日大御所、板倉内膳正重昌ならびに金地院崇傳をめして、今度京大佛新鑄鐘銘、關東へ對し、大不敬の文辭あり、そのうへ上棟の日吉日にあらざるよし聞ゆ、早く鐘銘并に棟札の草案を進呈すべき旨、京へ申つかはすべしと御諚あり、〈(中略)〉
〈世に傳ふる所は、この鐘銘は、僧淸韓がつくる所にして、その文に國家(○)安康(○)、四海施化、萬歳傳レ芳、君臣豐樂、又東迎二素月一、西送二斜陽一などいへる句あり、御諱を犯すのみならず、豐臣家のために、當家を呪咀するに似たりといふ事を、天海一人御閑室へ召れたりしとき、密々告奉りしといふ、この事いぶかしけれども、またなしとも定めがたし、いま後考の爲、爰にしるす、坂上池院日記、〉
〔下學集〕
〈下態藝〉
p.0065 返閉(ヘンハイ)〈天子出御之時、陰陽家所レ行也、又謂二之禹歩一(ウホ)也、〉
〔白石紳書〕
〈十〉
p.0065 一反閉ハ、ヘンバイとよむ也、禹歩也、故にヘンバイをフムといふ也、陰陽家にあり、
〔倭訓栞〕
〈中編二十三倍〉
p.0065 へんばい 反閉の字、十節録に見えたり、五字の反閉とは、天武博亡烈なりと、三議一統にみえたり、軍家に遍唄といふも、是を誤るにや、
〔貞丈雜記〕
〈十六神佛〉
p.0065 一反閉(ヘンバイ)と云は、神拜の時する事也、陰陽師の法也、三足の反閉、五足のへんばい、九足の反閉などゝてあり、陰陽師に尋學ぶべし、又閉配とも書也、古代貴人出御の前に、必陰陽師をして反閉を行はしむ事舊記に見えたり、〈○中略〉されば閉坏も反閉も同事なるべきか、閉坏八座と云は、惡き方角と見えたり、其惡き方角をふみ破る呪禁の方術を行ふ事を、反閉をふむと云なるべきか、將軍家など出行の前には、必反閉を行ふ事は、惡き方角をふみ破る呪禁なるべきにや、
〔荀子增注〕
〈三非相篇〉
p.0065 禹跳湯偏〈尸子曰、禹之勞十年、不レ窺二其家一、手不レ爪、脛不レ生レ毛、偏枯之病、歩不二相過一、人曰二禹歩一(○○)、〉
〔新猿樂記〕
p.0065 西京有二右衞門尉者一、一家相擧來集、所レ謂妻三人、娘十六人、〈○中略〉十君夫陰陽先生賀茂道世、〈○中略〉凡覩覽反閉(ヘンバイ)究レ術、祭禮解除致レ驗、
〔壒囊抄〕
〈六〉
p.0065 及打(キツチヤウ)ト云テ、正月ニ用ハ何之因縁ゾ、
世ニ流布ノ説、
尤ガ頭ヲ、毬杖之玉トテ打ト云リ、是ハ漢土ノ義ヲ學侍リ、 十節録曰、黄帝與二 尤一合二戰于坂泉之野一、 尤有二鐵身一、黄帝ノ箭不レ中、黄帝仰レ天祈レ之、于レ時玉女降レ自レ天反閉ス(○○○)、 尤ガ身如レ湯解テ被レ殺畢、仍テ取二 尤頭一、毬レ之取レ眼射レ之ト云々、
〔令集解〕
〈十九考課〉
p.0065 推二歩盈虚一〈(中略)尚書大傳曰、歩推也、盈虚謂二日月五星之度數一也、跡云、推歩也、穴云、盈虚謂月之大謂二之盈一、小謂二之虚一、古記云、問推歩、荅、尚書大傳、大禹歩二(○○)于上帝一、鄭玄曰、歩推、禹推二天道一觀二政得失一、盈虚謂二日月五星之度數一、二卷具説也、〉
〔隋書〕
〈三十四經籍〉
p.0066 玉女反閉局法三卷
〔武備志〕
〈百八十一占〉
p.0066 釋二玉女返閉局法一
經曰、返閉局者、在二室中一六尺、庭中六歩、野外六十歩、量二人多少地之宜一、表皆以レ六爲レ數、先定レ數訖、便以二左手一執二六算一、各長一尺二寸、隨以レ口吸二旺氣一、叩レ齒十二通、點二呪心下所レ謀事一、然後回レ身背二旺氣神一啓請曰、維某年某月某日某時、啓二天地、父母、六甲、六旬、十二時神、靑龍、蓬星、明堂、天上玉女、六戊、藏形之神一、某好樂二長生之術一、行不レ擇レ日、出不レ擇レ時、今欲下游二行某處一爲中某事上、欲レ利二大神一、謹按、天文晝、地敷局、出二天門一、入二地戸一、閉二金關一、乘二玉女一、謹請、玉女、靑龍、朱雀、白虎、玄武、勾陳、六合、六甲、六神、十二時辰、乘レ我而行、到二某處一爲二某事一、左右近防隨レ行隨レ止、隨レ臥隨レ起、辟二除盜賊一、鬼魅消亡、君子見レ之喜樂倍レ常、小人見レ我歡喜皇皇、男兒見レ我共持二酒漿一、百惡鬼賊當レ我者亡、今日禹歩上應二天岡一、玉女侍レ傍下擊二不祥一、萬精厭伏所レ向無レ殃、所レ値病瘥、所レ攻者達、所レ擊者破、所レ摧者傾、所レ求者得、所レ願者成、帝王、大臣、二千石、長吏、見レ我者愛如二赤子一、今日召二請玉女六神一隨レ我而進、
凡一切出行、用事、無二吉方吉時一可レ用二此法一、
〔小右記〕
p.0066 寬弘二年三月八日丙辰、今日中宮〈○彰子〉參二給大原野社一、權中納言隆家來、同車、卯刻參二入後宮一、同刻寄二御輿一、晴明奉二仕反閉一、乘輿出二西門一、
〔左經記〕
p.0066 長元元年八月四日丙寅、參二關白殿一、〈○藤原賴通〉申二承事一之間、右衞門尉直方朝臣令二爲祐朝臣申一云、明日寅刻欲二進發一、主計頭守道稱二母忌日一不二返閉一、爲レ之如何者、仰云、稱二忌日一強不レ可レ云、唯如二文高一可レ令レ行也、
〔中右記〕
p.0066 大治四年十一月七日癸亥、今日有レ行二幸大原野一、早旦先御二覽神寶等一、辰刻出二御南殿一、陰陽頭家榮候二反閉一、
〔吾妻鏡〕
〈二十三〉
p.0066 建保六年六月二十七日丁卯、將軍家〈○源實朝〉任二大將一御之間、爲二御拜賀一、參二鶴岳宮一給畢、〈○中
略〉先出二御南面一、文章博士仲章朝臣〈束帶〉上二御簾一、陰陽少允親職〈束帶〉參二車寄間一候二反閉一、陰陽權助忠尚〈束帶〉入二廊根妻戸一、勤二御祓一、
〔吾妻鏡〕
〈二十六〉
p.0067 貞應二年七月廿六日、二位家新造御亭、〈號二御堂御所一〉御移徙也、被レ略二水火一(○○○○)、陰陽大允親職候二反閉一云云、
〔勘仲記〕
p.0067 弘安七年六月十三日己未、行幸儲御所事、右中辨爲方朝臣奉行、〈○中略〉出御、〈○中略〉宸儀令レ立二南殿御後一給、〈○中略〉次反閉(○○)、陰陽頭國高朝臣參進、禹歩退(○○○)、〈出納給レ祿如レ例〉次宸儀令レ立二御帳前一給、
〔遷幸反閉次第〕
p.0067 行幸反閉作法圖〈土御門家古秘録抄出〉
一反閉 散供
火〈燃二燈樓一〉 水〈入未〉 米〈入二土碗一五升、以下同斷、〉
一日入二折櫃一〈以下同〉 大豆〈同〉
胡麻〈同〉 粟〈同〉 麥〈同〉
酒五升〈入二酒海一〉生牛乳〈五升、入二土瓶一代二明蜜一、〉
右乘二高机一〈八足〉齋郎三人舁レ之
一里内裏
永承六年七月十一日己丑、遷二御大膳職一、〈中略〉主税頭時親勤二仕反閉一、出二中門内一成二呪術一、至二南殿階前一讀二呪章一、畢退出、
〔東山殿年中行事〕
〈十二月〉
p.0067 晦日 將軍家〈御裝束同上○廿九日〉出二御于御對面所一、御供衆申次、御禮如レ例、當番申次、出二于閾際一、御身固(○○○)ト言二上之一シテ後、〈有宜卿在通卿〉一人宛出而三拜シテ勤二反閉一、畢而申次、又傳奏ト披露シテ退刻從二禁裏一所レ被レ進之御單〈并〉從二諸寺社一獻上之卷數〈各載二廣蓋一〉持二參之一、御頂戴之後被レ持二退之一、
〔貞丈雜記〕
〈十六神佛〉
p.0067 一御身固と云は、御身の堅固なる樣にする加持也、陰陽師のする事也、古將軍家の
御身固は、賀茂安倍の兩家つとめられし也、舊記に見えたり、
〔禁秘御抄階梯〕
〈中〉
p.0068 陰陽道〈○中略〉
按、反閉稱二六甲術一、其作法、安賀兩家所二習傳一有二異同一歟、於二反閉一者有二禹歩一、〈史記夏本紀禹身爲レ度、注、王肅曰、以レ身爲二法度一、索隱曰、按今巫猶稱二禹歩一、〉身固者反閉之略法也、身固者本朝之名目也云々、
〔吾妻鏡〕
〈五十〉
p.0068 文應二年〈○弘長元年〉八月十日庚子、御身固(○○○)、陰陽師、此間九人也、今日被レ縮二六番一(○○○○)、晴茂晴宗等、重服之間、職宗茂氏等、爲二父名代一勤仕之、而募二彼勞効一、相并又共被二召加一、以二其例一爲親朝臣子息仲光、又被二召加一之處、〈○下略〉
〔羅山文集〕
〈六十二雜著〉
p.0068 符呪
夫兵之有レ符也、不レ可レ不レ察焉、無忌奪二晉鄙符一以救レ趙、漢祖取二淮陰印一而制レ楚、千萬之衆隨二一符之所一レ在、則其爲レ用也亦大矣、若夫太公所レ謂陰符者、又深密哉、兵法謂二之鈐决之符一、且夫呪者與二祝字一相通、而雖レ爲二祭主賛祝之詞一、然又爲二軍中之密語一、則非レ無レ所レ由也、所レ謂申叔展之麥麴、有山氏之庚癸、張良陳平之耳語、曹瞞之雞肋之屬、皆廋隱之詞、譬如二世俗之謎子一歟、蓋其機不レ密則事不レ成、豈可レ洩乎、今夫符之於レ呪一也、所レ信爲レ符、所レ唱爲レ呪、方術家謂二之越方一、又號二禁架一、其符謂二之丹書一、所下以使二令鬼神一厭中殺人物上也、東漢張道陵始受二老君之正一盟威秘録、三淸衆經符圖一、自レ是傳二其術一者、召二檄鬼神一之書、其字似二古篆一不レ可レ解也、謂二之符籙一、於レ是攘二邪祟一、除二疾病一、或書レ符以呪レ之、或用二符水一而飮レ之、然其惑レ人亦多矣、本朝自二浮屠氏之來一而後、人々皆信レ之、故役小角泰澄之輩、雖下以二呪術一稱中于世上、然本是仙風道骨遊二於方外一者也、而浮屠氏推以爲二我徒一、爾來彼秘密家與二陰陽家者流一共混同、各以二其所一レ説誘二國俗一、往々書二佛菩薩鬼神之文一、以爲二靈符一、又唱二其稱號一以爲二陀羅尼神呪一、其説云、用二此符一者降二伏妖怪一、化爲二吉祥一、急々如二律令一、又云、呪是鬼神王名號、稱二其王名一則部落敬レ之、故能降二諸鬼魅一、或云、呪如二軍中密號一、唱號相應、無レ所二訶問一、又呪者願也、佛菩薩願二衆生皆如レ我成佛一、故能誦レ呪則所レ願無レ不レ然也、彼復擧二一菩薩之名一云、梵語摩利支、此翻二陽炎一、此
天恒行二日月之前一、不レ可レ見不レ可レ捉、火不レ能レ燒、水不レ能レ漂、如二陽炎一也、離二諸怖畏一、能令下人於二水火盜賊怨仇軍陣一皆可中隱身上、其呪曰、唵摩里支娑縛賀、若レ此之類雖二甚多一、今擧二崖略一、以發二彼頭腦一、有レ意二于此一者可レ不レ察乎、雖レ然河圖曰、玄女出二兵符一授二黄帝一、以殺二 尤一、王翼之中有二術士一、主下爲二譎詐一、依二託鬼神一、以惑中衆心上、則又是一術也歟、吁兵者不祥之器、而符呪亦不祥之具也、不レ得レ已而用レ之、亦何快二於心一哉、於レ是思レ之、本朝之邃古天照太神取二天眞鹿兒矢一而呪レ之曰、天稚彦其有二黑心一耶、斯箭如レ破、若其有二赤心一耶、必不レ中焉、遂投レ之、其矢隕レ自レ天而中二天稚彦之胸一乃死、然則呪之所二由來一久矣、
〔百草露〕
〈十六〉
p.0069 夫仙家には、種々の符呪あり、是を神符とも、靈符とも、寶符とも稱す、仙家の符書、五百餘卷あれども、日本へいまだ悉く渡らず、仙書に、神呪を祝とも、祝由とも、呪詛とも呪由ともいへり、皆呪(マジナ)ふと訓也、素問云、古の病を治するものは、唯其精を移し、氣を變じ、由を祝ふて已ずと、
〔眞俗佛事編〕
〈一祈禱〉
p.0069 護符〈眞言ノ文字ヲ加持シテ、呑シムレバ病差、其本説ヲ問、 答曰、三種悉地軌云、五部眞言(梵字略)是一切如來無比甘露之珍漿、醍醐佛性之妙藥、一字入二於五臟一、萬病不レ生、况修二日觀月觀一云々、深義此軌ニ説ガ如シ、 穢迹金剛法禁百變法門經ヲ考フルニ、金剛力士、自ノ呪ヲ説訖テ、神變ノ符四十二ヲ説ケリ、其符タルヤ、或ハ水火ノ災ニハ、書テ擲レ之、其災ヲ免レ、或ハ呑レ之、萬病ヲ治シ、長レ壽益レ智等ノ種々ノ符アリ、 深秘ナレバ今其符ヲ不出 護符之字義ヲ問、 答曰、彼經曰、穢迹金剛説二此符一已、大衆同聲讚言、善哉大力士、汝能説二是大妙之法一、爾時金剛白二諸大衆一、當レ知我於二此法流行之處一、我等大天、當下護二此行法之人一助成就上ト云ヘリ、故ニ名二護符一、 經文ノ護ノ字ニ著眼 又餘眞言種子等ヲ書ケル秘符ハ、其尊ノ加持護念シ玉フ所ナレバ、亦名二護符一、 此ニ意ヲ可知 按ズルニ、符ト名クル道家ノ文字ヲ假用ルカ、凡ソ密家ノ法ニ、道敎ノ術ニ似タルモノ有トキハ、飜譯家借用ルモノ多シ、陀羅尼ヲ呪ト云類ノ如シ、今ノ護符モ、道家ノ符ニ善似タルヲ以テ其名ヲ採レリ、 抱朴子云、鄭君言、符出二於老君一、皆天文也、老君能通二於神明一、符皆神明所三授令二人用一レ之、少レ驗者、由二於出來歴レ久傳寫之多一レ誤故也、又信心不レ篤施二用之一亦不レ行、〉
〔抱朴子〕
〈内篇四〉
p.0069 登渉卷第十七〈○中略〉
欲レ入レ水、以二雄者一帶レ左、以二雌者一帶レ右、但乘レ船不二身渉一レ水者、其陽日帶レ雄、陰日帶レ雌、又天文大字有二北帝書一、寫レ帛而帶レ之、亦辟二風波蛟龍水虫一也、或問曰、辟二山川廟堂レ〈一作座〉百鬼一之法、抱朴子曰、道士常帶二天水符、及上皇竹使符、老子佐契、及守眞一、思三部、將軍一者、鬼不二敢近一レ人也、其次則論二百鬼祿一知二天下鬼之名字、及白澤圖、九鼎記一、則衆鬼自却、其次服二鶉子赤石丸、及曾靑、夜光散、及葱實、烏根丸一、及呑二白石英、祗
母散一、皆令二人見一レ鬼、即鬼畏レ之矣、抱朴子曰、有二老君、黄庭、中胎四十九眞秘符一、入二山林一、以二甲寅日一、丹二書白素一、夜置二案中一、向二北斗一祭レ之、以二酒脯一各少々自説二姓名一、再拜受取、内二衣領中一、辟二山川、百鬼、萬精、虎狼、虫毒一也、何必道士亂世避レ難入二山林一亦宜レ知二此法一也、〈○符圖略〉
抱朴子曰、上五符、皆老君入山符也、以レ丹書二桃板上一、大二書其文字一、令レ瀰二滿板上一、以著二門戸上及四方四隅及所道側要處一、去二所レ住處一五十歩内辟二山精、鬼魅一、戸内梁柱皆可二施安一、凡人居二山林一、及暫入レ山、皆可レ用、即衆物不二敢害一也、三符以相連著二一板上一、意謂爾非二葛氏一、
〔老學庵筆記〕
〈九〉
p.0070 政和後道士有下賜二玉方符一者上、其次則金方符、長七寸、濶四寸、面爲レ符、背鑄二御書一曰、賜二某人一奉以行レ敎、有下違二天律一罪上、不二汝貸一、結二於當心一、毎二齋醮一則服レ之、會稽天寧萬壽觀有二老道士盧浩眞者一、嘗被二金符之賜一、予少時親見レ之、
〔琅邪代醉編〕
〈十〉
p.0070 詛楚文
秦詛レ楚文
尾曰、右秦巫咸碑在二鳳翔府學一、又一本告二亞駝神一者在二今洛陽劉忱家一、書辭皆同、惟偏傍數處小異、
〔下學集〕
〈上神祇〉
p.0070 急急如律令(キフ〳〵ニヨリツレウ/○○○○○)〈神符上所レ書之文也、言一切之惡鬼魔事、行二邪道一者敎誡之、曰二急急如律令一、可レ歸二正道一也、律令法度也、又事文類聚曰、律令者雷邊捷鬼也、愚謂、事文類聚意、言一切惡事不レ留二蹤迹一、可レ如二律令鬼疾去一、〉
〔谷響集〕
〈一〉
p.0070 急々如律令
客問、急々如律令語、 答、是巫者之呪語也、演密二云、且如二此方言音一、亦有二顯言一、亦有二呪語一、如二急々如律令等語一、呪レ火不レ燒、呪レ瘧令レ停、蓋作二呪用一不レ同二顯言一、 又事文類聚云、符祝之類、末句急々如律令者、人以爲如二飮レ酒之律令一、速去不レ得レ滯也、一説漢朝毎二行下之書一、皆云二如律令一、言當三亦如二律令一、故符祝有二如律令之言一、律令是雷邊捷鬼、此鬼善走、與レ雷相疾速、故云レ如二此鬼之疾走一也、〈資暇〉
〔吾妻鏡〕
〈二十八〉
p.0070 寬喜三年五月四日、去月之比、或僧稱二祇園示現一注二夢記一、披二露洛中一、仍自二殿下一被レ送二進于
將軍家一、假令人別、充二錢五文若三文一、可レ讀二誦心經一、於二即巽方一、可レ修二鬼氣祭一、然者今年世上云二疾疫一、云二餓死一、可レ被レ除也、疫癘事、五月以後六月十八日以前、可二蜂起一也云云、
仍可レ懸二此封一、
醫王源
山柘急々如律令(キウ〳〵ニヨリツレウ)
山柘急々如律令
令レ信二此事一者、可レ爲二人民安穩天下泰平一之由也、
〔吾妻鏡〕
〈四十三〉
p.0071 建長五年五月四日辛巳、今年端午良辰、當二于壬午一、必依レ可レ有二御謹愼一、御勘文〈故諸陵頭賀茂時定撰〉一通、并三種神符御護等、自二仙洞一密々被レ進、是則黄帝秘術也云云、
去夜、到二來于女房中一、今朝内々進覽云云、
勘文云
五月五日丙午壬午ニ當ル年、端午ノ神符ヲ作リテカクレバ、命百年ヲタモツ事、
右本文云、五月五日丙午壬午ニ當ル年、赤紙ヲモチテ、神符ヲ作リテカクレバ、壽百歳也、件神符ト云ハ、三德也、一ニハ辟兵符、此符ヲカクレバ、鉾矢ノ難ヲノガレ、敵人ヲ亡シ、我身ニ向フモノハ、ヲノヅカラホロブ、二ニハ破敵符、此符ヲカケヌレバ、敵人アヘテヲコラズ、タトヒ弓箭刀兵、我身ニ向フトイヘドモ、害ヲナス事ナシ、皆悉クダケヲル、三ニハ三台護身符、此符ヲカクレバ、三災九厄ノ病難ヲノゾク、三災トハ、盜賊、疾病、飢饉也、此三難ニアヘドモ、一切恐ナシ、皆悉消除ス、九厄トハ、諸ノ厄難ヲノゾク事也、凡此三種ノ神符ヲ造テカクレバ、短命ノ者ハ命ヲ百年ノベ、敵人有ルモノハ敵人ヲ亡シテ、我身ハツヾガナク、諸ノ厄難ニ逢タラン人ハ、厄難ヲ消除シ、禍殃ヲノゾク事、此神符ノ力ニハシカジ、故ニ先例皆此日ニ當ルゴトニ、此等ノ符ヲ書テ、御マモリニ用ヒラル、今年五月五日、既壬午ニ當ル、仍先例ニマカセテ、公家ヲコナハルヽ、誠尤此符ヲカケサセ給テ、百年
ノ御壽命ヲタモタセ給候ベク候、仍注進如レ件、
四月日
〔吾妻鏡〕
〈四十四〉
p.0072 建長六年閏五月五日丙午、三種神符御護事、去年五月五日、當二于壬午一、令レ懸二彼御護一給訖、今月五日又爲二丙午一、重可レ有二其沙汰一之由、去比被レ仰二遣京都一之處、閏月事不レ可レ准二恒節一之由云云、
〔壒囊抄〕
〈十〉
p.0072 慈惠大師ノ影像ヲ、所々ノ民屋ニ押スハ何故ゾ、
是彼ノ僧正ノ誓也ト云々、良源ハ日天子ノ垂跡也、或時鏡ヲ以テ容ヲ寫シ、誓テ云、我ガ影像ヲ置カン所ニハ、必ズ邪魅災難ヲ拂ハント云々、又殊ニ疫病ヲ防グ事ヲ誓ヒ給、或夜疫神參テ申テ云ク、師將ニ其厄ニ當リ給ヘリ、乍レ恐尊體ヲ侵シ奉ント、僧正、唯圓敎故、逆即是順トノ給テ、試ニ左ノ小指ニ移シ給ニ、忽ニ苦痛遍身ニ滿ツ、其時圓融ノ三諦ヲ觀テ、彈指シ玉ニ、鬼病速ニ去テ苦惱忽ニ止ム、僧正ノ給ク、大苦ノ病也、一指猶如レ此、何ニ况ヤ全身ヲヤ、是ヨリ特ニ彼病ヲ拂ハント誓願シ給、サレバ橫川ノ法華堂衆、敢テ此病ヲ不レ病、若シ此病ヲ受ルハ、則御廟ノ御罰ナリ、仍テ必ズ死ス、曾テ助カル者ナシト云々、此等ノ故ニ、印摸ヲ成テ、爭ソヒ粘スト云々、
〔和漢三才圖會〕
〈七十二末山城〉
p.0072 惠日山東福寺〈○中略〉
〔撈海一得〕
〈上〉
p.0072 今やく病よけの守リトテ、
ノ字(○○○)ヲ門戸ニ貼ハ、漢舊儀曰、儺立二滄耳一、註即漸耳也、又通典ニ、司刀鬼ノ名ハ 、一名滄耳、五音集韻ニ、 子役切、音積、人死作レ鬼、鬼死作レ 篆二書此一貼レ門、則離二鬼祟千里一、又酉陽、代醉ナド委シ、
〔月令廣義〕
〈五正月〉
p.0072 日次〈○中略〉 漸耳〈陰司鬼名、元日門上書レ 、可レ息レ瘧、又裴漸書曰、當今制レ鬼無レ如二漸耳一、〉
〔貞丈雜記〕
〈十六神佛〉
p.0073 一九字と云事、臨兵鬪者、皆陣列在前と唱へながら、如レ此なる形を空中に書く也、是を九字を切ると云也、一字に一ツ宛印相あり、九字を切る時も、劒印とて、印を結て九字を切る也、是皆眞言宗の習事也、眞言宗の出家より傳を受けざれば用にたゝずと云也、此九字(○○○)、本は道家の法也(○○○○○○○)、道家といふは、仙術とて、仙人の方を行ふ者なり、祈禱などをもする也、其道家の書に、抱朴子といふ書あり、其書に九字あり、臨兵鬪者皆陣列在前行とあり、是眞言宗に借り用ふる成べし、武家にて九字を用る事もある故記レ之、又云、陰陽師は道家の方也、
一十字と云も、道家の法成べし、手の中に、指の先にて文字を書て、握りてゆけば、わざはひを除き、さいはひ有りと云、
天〈大名高位ノ人ニ向フ時、此字ヲ書ク、〉龍〈海川舟橋ヲ渡ル時書レ之〉虎〈廣野原深山ニ向フ時書レ之〉王〈弓箭兵杖軍陣山賊夜行ノ時用レ之〉命〈心モトナキ食物ニ向フ時書レ之、又
ノ字ヲモ書、〉勝〈市町賣買諸勝負ノ時書レ之〉是〈病人之家ニ入時用レ之〉鬼〈魔所ヘ行時用レ之〉水〈身不淨ノ氣ヲハラフ時書レ之〉大〈萬悦言喜ノ時書レ之〉
右大秘事也とて、みだりに傳えずと云也、是も眞言宗の出家の習事也、出家より傳を受ざれば用立ずと云也、たとへ出家より傳を受たり共、何のしるしもなく用に立ぬ事也、
〔提醒紀談〕
〈三〉
p.0073 符字
世に、
抬 
(○○○○)の四字を書して、怪我除の護符とす、その驗あること、人のしるところなり、さて此符字の傳へ、一條ならず、或記に、寬永二年三月晦日に、將軍家狩したまふに、御鷹大なる鴈を捕りけり、その鴈の胸に、四の字あり、その文字は、袷
と、かくの如くなり、實に不思議なることなりと見えたり、次にまた寬文八年に、紀州に住める鐵砲師吉川源五兵衞といふ人、江戸に居ける日、大宮鷹場の中、吉野村といふところにて、白き雉子を覘すまして打たれども中らず、さればやうやう、機檻にて捕へ得たり、その雉子の背に、 抬 の文字あり、思ふに此文字こそ、定めて怪我除けの符ならんかとて、角にこの字をしるして、打試みるに、幾度打ども中らず、〈大久保酉山翁筆記〉とい
へることあり、又天明二年の春、新見某、九段坂を馬にて通りけるに、落馬して、數十丈の深き牛が淵にまろび墜たれども、人も馬もいさゝか傷ことなし、されば衣服を改るまでにて、事故なかりき、此事を聞人、いとも不思議なることとて、尊き護符にても持たれしやと尋ね問ければ、さればよ、或年、吾領知にて、雉子を一羽射とめんとしけるに、その矢それて中らず、再び射れども中らず、かゝればさま〴〵思ひを廻らし、術を以て捕え得て見るに、翼に四の文字あり、今その字を記して懷中せり、その驗しにてもあるべしと云〈耳囊〉とあり、何れも正しき記録なれば、信ずるに足れり、
〔閑窻自語〕
〈一〉
p.0074 靈元院疫癘和歌事
享保八年、病はやりて、人民多くうせぬ、靈元院の御うたあり、 風ふかば本來雲のそらにふけ人にあたりて何の疫癘 此御製を、都鄙聞つたへて、かきしるし、守りとせしに、やめるものははやく治し、やまざるものは大かたのがれけるとぞ、
〔貞丈雜記〕
〈十六神佛〉
p.0074 なで物と云は、是も陰陽師に祈禱を賴む時、陰陽師の方より、紙にて人形を作りて遣すを取て、身をなでゝ、陰陽師の方へ送れば、其人形を以て、祈禱する事有、扨後に川へ流す也、〈○中略〉
〈如レ此切ヌキタルヲ切カヘセバ頭ニナルナリ〉 ひな形といふも此事也、紙二枚重ねて、二つに折て、折目を上にして如レ此きる也、大小不レ定、
かたしろの圖 〈キリメ キリメ〉 〈折目〉 〈此所ケンサキノ如ク切リヌク也、前ノ方計切ヌク也、ウラニハ此切貫ナシ、〉
〔成氏年中行事〕
〈三月〉
p.0075 一同月晦日夜、御撫物(○○○)、陰陽頭方ヘ被レ遣、御使ハ前ニ如レ書、巳日ノ御祓ヲモ、陰陽頭調進也、次ニ、御誕生日ハ、五山十刹以下ノ寺々ヨリ、御祈禱疏之銘、維那持參アリ、御名乘被レ遊有二御出一ノ後、寺々維那ニ御對面、
〔倭名類聚抄〕
〈二鬼魅〉
p.0075 鬼 四聲字苑云、鬼居偉反、〈和名於爾〉或説云、隱字、〈音於爾訛也〉鬼物隱而不レ欲レ顯レ形、故俗呼曰レ隱也、人死魂神也、一云、呉人曰レ鬼、越人曰レ
、音蟣、又祈反、
〔倭名類聚抄〕
〈二神靈〉
p.0075 人神 周易云、人神曰レ鬼、〈居偉反、和名於邇、或記云、於邇者隱音之訛也、鬼物隱而不レ欲レ顯レ形、故以稱也、〉唐韻曰、呉人曰レ鬼、越人曰レ 、〈音蟣、又音祈、〉四聲字苑曰、鬼人死神魂也、
〔箋注倭名類聚抄〕
〈一神靈〉
p.0075 按、人神曰レ鬼、出二尸子一、見二爾雅注、及五行大義一又出二呂氏春秋、順民篇注、淮南子時則訓注、精神訓注、論語爲政篇鄭玄注一、〈○中略〉於邇乃加多、見二後撰集貞平親王女一條歌小序一、按、於邇訓義不レ詳、所レ引或説、穿鑿附會、不レ可二信據一、〈○中略〉按、於邇是牛角虎牙噉レ人者、梵策所レ謂夜叉、羅刹之類、非二亡者之精鬼一、故欽明紀鬼魅
鬼並訓二於邇一、齊明紀宮中見レ鬼、又於二朝倉山一有レ鬼者亦是耳、源君所レ引人神曰レ鬼、呉人曰レ鬼、人死神魂者、皆今俗所レ謂幽靈、古云二美太万一、下條訓二靈字一是也、則不レ得レ訓二於邇一、其鬼字可レ訓二於邇一者、論衡訂鬼篇云、鬼者老物之精者近レ之、
〔類聚名義抄〕
〈十鬼〉
p.0075 
鬼〈俗今正オニ〉 
〈古〉 
〈
二正 オニ スタマ〉 
〈俗〉 
〈
二正オニ〉 〈鬼名オニ〉
〔伊呂波字類抄〕
〈於人倫附鬼神〉
p.0075 鬼〈居偉反〉 〈音蟣、呉人曰レ鬼、越人曰レ 、又音祈、鬼俗也、〉 魔〈已上同〉
〔字鏡集〕
〈十動物〉
p.0075 鬼〈槐同、ヲニ、タカシ〉 〈ヲニ〉
〔日本靈異記〕
〈上〉
p.0075 得二雷之喜一令レ生レ子強力子縁第三
昔敏達天皇〈是磐余譯語田宮食レ國亭名倉太玉敷命也〉御世、尾張國阿育知郡片蕝里、有二一農夫一、作レ田引レ水之時、小細雨降、故隱二木本一
二金状一而立、時雷鳴、即恐擎二金杖一而立、即雷隨二於彼人前一、雷成二小子一而隨伏汝何報、雷答言也、寄二於汝一令レ胎レ子而報、爲レ我作二楠船一、入レ水泛二竹葉一而賜、即如二雷言一作備而與、時雷言レ莫二近依一令レ避、即靉レ霧登
レ天、然後所レ産兒之頭纒レ虵二遍、首尾垂レ後而生、長大秊十有餘頃、聞三之朝庭有二力人一念レ試レ之、〈○中略〉然後小子作二於元興僧之童子一、時其寺鐘堂童子夜別死、彼童子見白二衆僧一言、我捉二此鬼一殺、謹止二此死災一、衆僧聽許、童子鐘堂之四角燈儲、四人言敎我捉レ鬼時、倶開二燈蓋覆一、然於二鐘堂戸一童之鬼居、大鬼半夜所レ來、佇二童子一而見レ之退、鬼亦後夜時來入、即捉二鬼頭髮一而引、鬼者外引、童子者内引、彼儲四人慌來、燈蓋不レ得レ開、童子四角鬼引、而依開二燈蓋一、至二于晨朝時一、鬼之頭髮所二引剥一而逃、明日尋二彼鬼之血一而求往、至二於其寺惡奴埋立衢一、即知二彼惡奴之靈鬼一也、彼鬼頭髮者、今收二元興寺一爲レ財也、
〔江談抄〕
〈三雜事〉
p.0076 吉備入唐間事
吉備大臣〈○眞備〉入レ唐習道之間、諸道藝能、博達聰慧也、唐土人頗有二恥氣一、密相議云、我等不レ安事也、不レ可レ劣二先普通事一、日本國使到來、令レ登レ樓〈氐〉令レ居レ此、事委不レ可レ令レ聞、又件樓宿人多是難レ存、然只先登レ樓可レ試レ之、偏殺〈左ハ〉不忠也、歸ハ又無レ由、留〈天〉居ハ爲二我等一頗有レ耻ナント議〈天、〉令レ居レ樓之間、及二深更一風吹雨降、鬼物伺來、吉備作二隱身之封一、不レ見レ鬼〈天、〉吉備云、何物乎、我是日本國王使也、王事靡レ
、鬼何伺ヤト云ニ鬼云、尤爲レ悦、我モ日本國遣唐使也、欲二言談承一ト云ニ、吉備云樣、然バ早入レ、然バ停二鬼形相一可レ來也ト云ニ隨〈天、〉鬼歸入〈天〉著二衣冠一、出來相謁、鬼先云、我是遣唐使也、我子孫安倍氏侍ヤ、此事欲レ聞、于レ今不レ叶也、我ハ大臣ニテ來テ侍シニ、被レ登二此樓一テ、不レ與二食物一シテ餓死也、其後鬼物ト成ル、登二此樓一人〈爾〉無二害心一イヘドモ、自然ニ得レ害如レ此、相逢欲レ問二本朝事一、不レ答シテ死也、逢二申貴下一所レ悦也、我子孫官位侍リヤ、吉備答、某人々々官位次第、子孫之樣、七八許令二語聞一、大感云、成レ悦聞二此事一尤極也、此恩ニ貴下ニ、此國事皆悉語申サント思也、吉備大感悦、尤大切也云々、天明鬼歸畢、〈○中略〉然又鬼來云、今度有二議事一、爰高名智德行二密法一僧寶志〈爾〉令レ課テ、鬼物若靈告レ人トテ令二結界一テ、文ヲ作テ貴下ニ讀セント云事アリ、力モ不レ及ト云ニ、吉備術盡テ居之間、如レ案下レ樓、於二帝王前一令レ讀二其文一、吉備目暗テ凡見、此書字不レ見、向二本朝一方暫祈二申本朝佛神一〈神者住吉大明神、佛者長谷寺觀音、〉也、目頗明ニシテ文字許見ニ、無レ可二讀連一樣ニ、蛛一俄落二來
于文上一〈天、〉イヲヒキツヽクルヲミテ讀了、〈○中略〉我朝高名只在二吉備大臣一、文選、圍碁、野馬臺此大臣德也、〈○中略〉
野篁并高藤卿遇二百鬼夜行一事
又云、野篁并高藤卿、中納言中將之時、於二朱雀門前一遇二百鬼夜行一(○○○○)之時、高藤下レ自レ車、夜行鬼神等見二高藤一稱二尊勝陁羅尼一云々、高藤不レ知下其衣中乳母籠二尊勝陁羅尼一之故上也、野篁其時奉二爲高藤一致二芳意一、令レ遇二鬼神一云々、
〔大鏡〕
〈四右大臣師輔〉
p.0077 この九條殿〈○藤原師輔〉は、百鬼夜行にもあはせ給へるは、何のほど云事はえうけ給はらず、いみじう夜更て、内より出させ給ふに、大宮よりみなみざまへおはしますに、あはのゝつじのほどにて、御車のすだれうちたれさせ給ひて、御車うしもかきおろせ〳〵といそぎおほせらるれば、あやしとおもへどかきおろしつ、御隨身御前どもゝいかなる事のおはしますぞと、御車のもとにちかくまいりたれば、御したすだれうるはしくひきたれて、御さくとりてうつぶさせ給へるけしき、いみじき御人にかしこまり申させ給へる御さまにておはします、御車はしぢにかくな、たゞずゐじんどもは、ながえの左右にくびきのもとに、いとちかく候てさきをたかくをへ、ざうしきどもゝこえせさすな、御前どもゝちかくあれとおほせられて、尊勝陁羅尼をいみじうよみたてまつらせ給ふ、うしをば御車のかくれのかたにひきたてさせ給へり、さて時中ばかりありてぞ、御すだれあげさせ給ひて、今は御うしかけてやれとおほせられけれど、つゆ御ともの人々は心もゑざりけり、のち〳〵のしか〴〵のことのありしなど、さるべき人々にこそは、しのびてかたり申させ給ひけめど、さるめづらしき事はおのづからちり侍りけることにこそ、
〔宇治拾遺物語〕
〈一〉
p.0077 いまはむかし、修行者のありけるが、津の國までいきたりけるに、日くれてりうせん寺とて、大なる寺のふりたるが、人もなきありけり、これは人やどらぬ所といへども、そのあ
たりに、またやどるべき所なかりければ、いかゞせんと思て、負うちおろして内に入てけり、不動の呪をとなへてゐたるに、夜中ばかりにや成ぬらんとおもふほどに、人々のこゑあまたしてくるをとすなり、みれば手ごとに火をともして、人百人ばかりこの堂のうちにきつどひたり、ちかくてみれば、目一つきたりなどさま〴〵なり、人にもあらず、あさましき物どもなりけり、あるひは角おひたり、頭もゑもいはず、おそろしげなる物どもなり、おそろしと思へども、すべきやうもなくてゐたれば、おの〳〵みなゐぬ、ひとりぞまた所もなくてゑゐずして、火をうちふりて、われをつら〳〵とみていふやう、我ゐるべき座にあたらしき不動尊こそゐ給たれ、こよひばかりは外におはせとて、片手してわれを引さげて、堂のえんの下にすへつ、さるほどに、あかつきに成ぬとて、この人々のゝしりてかへりぬ、まことにあさましくおそろしかりける所かな、とく夜のあけよかし、いなんとおもふに、からうじて夜あけたり、うちみまはしたれば、ありし寺もなし、はるばるとある野の來しかたも見えず、人のふみ分たる道も見えず、行べきかたもなければ、あさましと思てゐたるほどに、まれ〳〵馬にのりたる人どもの、人あまたぐして出來たり、いとうれしくてこゝはいづくとか申候ととへば、などかくはとひ給ぞ、肥前國ぞかしといへば、あさましきわざかなとおもひて、事のやうくはしくいへば、この馬なる人もいとけうの事かな、肥前國にとりてもこれはおくの郡なり、これはみたちへまゐるなりといへば、修行者よろこびて道もしり候はぬに、さらば道までもまゐらんといひていきければ、これより京へ行べきみちなどをしへければ、舟たづねて、京へのぼりにけり、さて人どもにかゝるあさましきことこそありしか、つの國のりうせんじといふ寺にやどりたりしを、鬼どものき所せばしとて、あたらしき不動尊しばし雨だりにおはしませといひて、かきいだきて雨だりについすゆとおもひしに、ひぜんの國のおくの郡にこそゐたりしか、かゝるあさましき事にこそあひたりしかとて、京にきて語けると
ぞ、
〔今昔物語〕
〈三十一〉
p.0079 兄弟二人殖二萱草紫菀一語第二十七
今昔 ノ國 ノ郡ニ住ム人有ケリ、男子二人有ケルガ、其ノ父失ニケレバ、其二人ノ子共、戀ヒ悲ブ事、年ヲ經レドモ忘ル事无カリケリ、〈○中略〉此樣ニ年月ヲ經テ行ケル程ニ、墓ノ内ニ音有テ云ク、我レハ汝ガ祖ノ骸ヲ守ル鬼也、汝ヂ怖ルヽ事无カレ、我レ亦汝ヲ守ラムト思フト、弟此ノ音ヲ聞クニ、極テ怖シト思ヒ乍ラ答ヘモ不レ爲テ聞居タルニ、鬼亦云ク、汝ヂ祖ヲ戀ル事、年月ヲ送ルト云ヘドモ替ル事无シ、兄ハ同ク戀ヒ悲テ見エシカドモ、思ヒ忘ル草ヲ殖テ、其レヲ見テ、既ニ其ノ驗ヲ得タリ、汝ハ亦紫菀ヲ殖テ亦其レヲ見テ其驗ヲ得タリ、然レバ我レ祖ヲ戀フル志ノ懃ナル事ヲ哀ブ、我レ鬼ノ身ヲ得タリト云ヘドモ、慈悲有ルニ依テ物ヲ哀ブ心深シ、〈○下略〉
〔今昔物語〕
〈二十四〉
p.0079 安倍晴明隨二忠行一習レ道語第十六
今昔、天文博士安倍晴明ト云陰陽師有ケリ、古ニモ不二耻ヂ一止事无リケル者也、幼ノ時、賀茂忠行ト云ケル陰陽師ニ隨テ、晝夜ニ此道ヲ習ケルニ、聊モ心モト无キ事无カリケル、而ルニ晴明若カリケル時、師ノ忠行ガ下渡ニ夜行ニ行ケル、共ニ歩ニシテ車ノ後ニ行ケル、忠行車ノ内ニシテ吉ク寢入ニケルニ、晴明見ケルニ、絶ズ怖キ鬼共車ノ前ニ向テ來ケリ、晴明此ヲ見テ驚テ、車ノ後ニ走リ寄テ、忠行ヲ起シテ告ケレバ、其時ニシテ忠行驚キ覺テ鬼ノ來ルヲ見テ、術法ヲ以テ、忽ニ我ガ身ヲモ恐レ无ク、共ノ者共ヲモ隱シ平カニ過ニケル、〈○下略〉
〔伊呂波字類抄〕
〈伊人倫〉
p.0079 窮鬼〈イキスタマ〉 生靈〈同〉
〔倭訓栞〕
〈前編三伊〉
p.0079 いきすだま 遊仙窟に窮鬼をよめり、不レ終二天年一死者を窮鬼といふ、いきは生也、すだまは魑魅の訓也、されば怨靈なるべし、
〔源氏物語〕
〈九葵〉
p.0079 この御かへりをみづから聞えさせぬなどあり、大殿には、御ものゝけいたくをこり
て、いみじうわづらひ給、この御いきすだま(○○○○○○)、こちゝおとゞの御靈などいふ物ありと聞給につけて、おぼしつゞくれば、身ひとつのうきなげきよりほかに、人をあしかれなど思ふ心もなけれど、物思ふにあくがなるたましゐは、さもやあらんとおぼししらるゝこともあり、
〔謠曲〕
〈葵上〉
p.0080 〈大臣詞〉是は朱雀院につかへ奉る臣下也、扨も左大臣の御息女葵上の御物のけ、以外に御座候程に、貴僧高僧を請じ申され、大法秘法醫療樣々の御事にて候へ共、更に其驗なし、ここに照日の神子とて、隱なき梓の上手の候を召て、生靈死靈の間を、あづさにかけさせ申せとの御事にて候程に、此由申付ばやと存候、やがてあづさに御かけ候へ、
〔闇の曙〕
〈上〉
p.0080 或人、生靈死靈の説を問ふ、予〈○新井白蛾〉答ふ、是もいろ〳〵有、口を糊せんが爲に、虚妄なる誑惑をいふて、金錢を貪りかすむる者も有、又生得愚鈍不才にて、正理をしらず、をしへを聞ても、心底に通ぜず、己れが心より招き求めて、煩ふもあり、又は文盲白痴ゆゑ、狐狸につまゝるゝも有て、一樣ならず、理明らかなる人は、はやく其趣を知べき事也、爰に物語り有、謠のやうなれども、語て聞せ申候べし、或豪家へ出入する山伏の樣なる事をいふもの有、此者好て生靈死靈をいふて、愚人女子の心を惑はす、此等は人道を失ふて、妖怪の奴となりたるもの也、扨右豪家の主人、妾宅を作る、本妻聞て、妬情甚しとなん、田舍の門人何某、しか〴〵の事を語る、予が曰、今の世に生れて、いにしへのごとく、夜半にや君が獨り行らんなどと吟じて居る人はなき筈の事なれば、さも有べし、
〔續日本紀〕
〈十六聖武〉
p.0080 天平十八年六月己亥、僧玄昉死、〈○中略〉世相傳云、爲二藤原廣嗣靈所一レ害、
〔今昔物語〕
〈十一〉
p.0080 玄昉僧正亘レ唐傳二法相一語第六
廣繼、惡靈ト成テ、且公ヲ恨ミ奉リ、且ハ玄昉ガ怨ヲ報セムト爲ルニ、彼ノ玄昉ノ前ニ、惡靈現ジタリ、〈○中略〉天皇極ク恐サセ給テ、吉備大臣ハ、廣繼ガ師也、速ニ彼ノ墓ニ行テ、誘ヘ可レ
キ也ト仰セ給
ケレバ、吉備宣旨ヲ奉、西ニ行テ、廣繼ガ墓ニシテ誘ヘ陳ジケルニ、其ノ靈シテ、吉備殆シク可レ被レ領カリケルヲ、吉備、陰陽ノ道ニ極タリケル人ニテ、陰陽ノ術ヲ以テ(○○○○○○○)、我ガ身ヲ怖レ无ク固メテ(○○○○○○○○○○○)、懃ニ 誘ケレバ、其靈止マリニケリ、
〔續日本後紀〕
〈九仁明〉
p.0081 承和七年五月辛巳、後太上天皇〈○淳和〉顧二命皇太子一曰、〈○中略〉重命曰、予聞人沒精魂歸レ天、而空存二冡墓一、鬼物憑レ焉、終乃爲レ祟、長貽二後累一、今宜三碎レ骨爲レ粉散二之山中一、
〔古事談〕
〈二臣節〉
p.0081 一條攝政〈○藤原伊尹〉與二朝成卿一共競二望參議一之時、〈天暦〉多陳二伊尹不レ中レ用之由一、其後朝成、參二一條攝政第一、爲レ望二申大納言闕一也、丞相良久不二相逢一、數刻之後、適以面謁、朝成立レ申下任二大納言一條々之理上、丞相無レ所レ答、而云、奉公之道尤可レ謂レ有レ興、昔競二望同官一時、多雖レ被二訴訟一、今度大納言事可レ在二予心一云々、朝成懷レ恥成レ怒退出、乘車之時、先投二入笏一、其笏自二中央一破裂、其後攝政受レ病遂薨逝、是朝成生靈(○○○○)云々、
〔榮花物語〕
〈十二玉村菊〉
p.0081 大將殿〈○藤原賴通〉日頃御心ちなやましくおぼさる、御風などにやとて、御ゆゆでせさせ給ほをきこしめし、御讀經の僧ども、番かゝずつかうまつるべくの給はせ、明尊阿闍梨、夜ごとによゐつかふまつりなどするに、さらに御心ちおこたらせ給さまならず、いとゞおもらせ給、みつよし、よしひらなどめして、物とはせ給、御物のけや、かしこき神のけや、人の呪詛など、さまざまに申せば、神のけとあらば、御修法などあるべきにあらず、又御物のけとあるも、まかせたらんもおそろしなど、かた〴〵おぼしみだるゝに、たゞ御まつり祓しきり也、〈○中略〉僧達、皆しめりて候、大將殿には、御ゆなどまいらせ給て、うへのおまへ、たゞちごのやうにいだきたてまつらせたまへり、いみじうおぼしめしたる事かぎりなし、御ものゝけ、とのちかくよらせ給へと申せば、よらせ給へれば、をのれは、よに侍しに、いとしれたりなどは、人おぼえずなん侍し、又あは〳〵しく人中に出きてきこゆるに、いとめづらしくあることなれど、此かなしさは、おとゞもしりたまへればなむ、この大將を、をのが世に侍しおり、心ざしありて、いかでなど思ひ給へしかど、いのちたえ
て、かくてはべるにこそあれど、あまがけりても、このわたりを、片時さりはべらず、いとつみふかからぬ身に侍れば、なにごとも、みな見きゝてなんはべるを、此大將を、やむ事なきあたりにめしいれられぬべくおぼしかまふめるを、ひごろやすからぬ事と思ひ侍れど、さはれ、たゞまかせきこえて見んとおもひ侍に、いとやすからぬことにおぼえて、みづから聞えんとばかり思ひしに、いとをしく、此君のかくおどろ〳〵しくものしたまへば、いと心ぐるしくてなむ、かくきこゆるとの給はするは、故中務宮〈○具平親王〉の御けはひなりけりと、心えさせ給つ、との〈○賴通父道長〉かしこまり申させ給て、すべて返々ことはりに侍れば、かしこまり申侍、されどこれは、このおのこのおこたりにも侍らず、又みづからのする事にも侍らず、をのづから侍こと也と申させ給へば、いかに、さはこはかなしくおぼすやと、せめてたび〳〵申させ給、この事を、ながくおぼしたらねどなるべし、殿の御まへに御覽ぜよ、げにさる事侍らばと、ことはりのよし、たび〳〵申させたまへば、さは今は心やすくまかりなん、さりとも、そらごとはおとゞし給はじとなむおもひ侍、もしさらば、うらみ申ばかりとて、さりぬべき法文のあはれなる處うち誦しなどし給、まことに、たがふ處なくて、しばしうちねてさめぬ、名ごりもなく、御心ちさはやかにならせ給ぬれば、〈○下略〉
〔愚管抄〕
〈六〉
p.0082 後京極殿〈○藤原良經〉は、〈○中略〉三月〈○元久三年〉七日、やうもなりぬ死にせられたり、〈○中略〉このをりふしにさし合せ、怨靈も力をえけんとおぼゆるになん、その御修法はことに叡感有て、勸賞などおこなはれにけり、〈○中略〉猶法性寺殿〈○藤原忠通〉のすゑにかゝりける事の人のいでくるを、知足院殿〈○忠通父忠實〉の惡靈のしつるぞとこそは人は思へりけれ、
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