櫻/名稱

〔倭名類聚抄〕

〈二十木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0283 櫻 文字集略云、櫻〈烏莖反、和名佐久良〉、子大如柏、端有赤白黒者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0283 本居氏曰、佐久良、開光映之轉、謂是花開有光映他木也、也良通韻、〈◯中略〉玉篇、櫻、含桃也、上林賦、櫻桃也、又有http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001d6ef.gif云、今謂之櫻桃也、亦作含、廣韻亦云、櫻、含桃、然則櫻即櫻桃、櫻桃以鸎所http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 含得名、故非櫻桃外別有單呼櫻者、源君分條兩載、非是、按加婆佐久良、當是山櫻桃、佐久良亦山櫻桃之一種、但濃華艷麗、非加婆佐久良之此、是樹西土所無故無別漢名之可http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 充也、

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0283 櫻(サクラ)〈支那以牡丹花王、日本以櫻爲花王、故國俗止呼稱花者櫻而已、又本朝賞櫻、權輿于履中帝稚櫻宮、〉

〔倭訓栞〕

〈前編十佐〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0283 さくら 櫻をかりてよめり、沈休文詩に、山櫻發欲然、註に果木名、朱色如火然也と見え、王荊公詩に、山櫻抱石映松枝、司馬温公詩に、紅櫻零落杏花開と見えたるは別品なるべし、神代紀に、木ノ花開耶姫ありて、伊勢朝熊の神社に、櫻樹を其靈とせし事、古記に見えて、櫻ノ宮とも稱せり、西行の歌あり、神名秘書の苔虫神も、櫻大刀自の神體形石に坐り、苔生たるをいへり、思圓上人文永十年の記に、小朝熊の宮の坤の方隅にそびえたる巖ありて、其上に櫻木あり、高さ三尺ばかり、此木往古已來かれず、是櫻大刀自命の神體也と見え、一宮記に駿河の淺間も木花開耶姫とす、富士も同じ、伊勢朝明郡に布自神社、櫻神社相並び、甲斐國の金櫻神社もまた此神を祭れり、さればさくらは開耶の轉ぜるなりといへり、或は咲簇るの訓義とす、きむ反く也、花木の中にも、開み ちてうるはしきは櫻に及ものなし、よて後世にいたりては、花とのみいへば櫻の專稱ともなれるなり、貫之歌に、 櫻よりまさる花なき花なればあだし草木は物ならなくに、清少納言も繪にかきておとる物といひ、宋景濂は、恐是趙昌所畫と作れり、西土萬國にも此種絶てなしといへり、

〔古事記傳〕

〈十六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0284 木花之佐久夜毘賣、上に大山津見神之女、木花知流比賣と云もあり、名意、木花は字の意の如し、佐久夜は、開光映(サキハヤ)の伎波を切めて加なるを、通はして久と云なり、〈若子(ワカゴ)を和久碁と云類なり〉さて光映(ハエ)を波夜と云は、上なる下照比賣の歌に、阿那陀麻波夜とある波夜の如し、〈◯註略〉かくて萬の木花の中に、櫻ぞ勝れて美き故に、殊に開光映(サキハヤ)てふ名を負て、佐久良とは云り、夜と良とは横通音なり、〈小兒のいまだ舌のえよくもめぐらぬほどの言には、良理流禮呂も夜伊由延余と云て、櫻をも佐久夜と云、これおのづから通ふ音なればなり、◯中略〉されば比御名も、何の花とはなく、たヾ木花の咲光映ながら、即主と櫻花に因て然云なるべし、やヽ後には、木花と云て即櫻にせるもあり、古今集序の歌に、難波津に咲や木花とある是なり、〈これも何の花となく、ただ木花ともすべけれど、然にはあらず、又梅花とするは由なし、そは冬隱今は春べとヽ云語を、あしく心得て、おしあてに定めたるひがごとなり、◯中略〉又萬葉八〈廿丁〉に、藤原朝臣、廣嗣、櫻花贈娘子歌に、此花乃云々、和歌(コタヘタル)にも此花乃云々とよめる、是は贈る花を指て、〈字の如く〉此花と云る物ながら、櫻を木花と云から、其を兼たりげに聞ゆるなり、さていよヽ後には、たヾ花といへば、もはら櫻のことヽなれり、〈それもおのづから上代の意に叶へり〉

〔茅窻漫録〕

〈中〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0284 木花櫻 木花(○○)は古今集序細注よりして、千載以來梅花の名と成れり、されども其起りを考索するに、梅花にあらず、櫻花なり、木花開耶姫五字は、神代紀下一書第二に、妾是大山祇神之子、名神吾田鹿葦津姫、亦名木花開耶姫とあるを權輿とす、〈又木華ともあり〉木花は櫻樹にて、鎭座傳記に、伊勢朝熊神社以櫻樹、爲木花開耶姫靈〈サクラ、サクヤ音通ず、見延經之注、〉此朝熊社、櫻宮ともいふ、西行の歌あり、〈◯中略〉 此外にも櫻樹を祭りて、木花開耶姫とするは、駿河の富士淺間もおなじ、一宮紀に見えたり、神名式に、甲斐國山梨郡金櫻神社、在金峯山、三代實録に、貞觀七年十二月廿日丁卯、令甲斐國於山梨郡祭淺間明神とあるも、皆伊勢朝明郡布自神社、櫻神社と同じく、一體一神なり、此櫻樹木花開耶姫を王仁はよみたるなり、故に萬葉集第二十に、 櫻花今盛りなり難波の海おしてる宮にきこしめすなへ 是は王仁が難波津に開耶木花の歌をふくみてよみたるなり、〈◯中略〉櫻は此邦山野自然生の樹にて、木花開耶の轉音なり、〈サクヤサクラ〉一説に咲簇(サキムラガル)の訓ともいふ、〈キムノ反ク〉最初花を名付けて賞美せり、〈◯下略〉

〔玉勝間〕

〈四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0285 櫻を花といふ事 たヾ花といひて櫻のことにするは、古今集のころまでは聞えぬ事なり、契冲ほうしが餘材抄に、くはしくいへるがごとし、源氏物語若葉上の卷に、梅の事をいふとて、花のさかりになるべく見ばやといへる事あり、これらはまさしく櫻を分けて花といへり、

〔大和本草〕

〈十二花木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0285 櫻 文選沈休早發定山詩、山櫻發欲然、註果木名、花朱色如火欲http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 然也、王荊公詩曰、山櫻抱石映松枝、司馬温公ノ詩ニ曰、紅櫻零落杏花開、是中華ニ櫻ト云ハ朱花ナリ、日本ノ櫻ト云物ハ中華ニ無之由、延寶年中長崎ニ來リシ何清甫イヘリ、若アラバ中華ノ書ニ記シ、詩文ニ述作シ、賞詠スベキニ、此樹ナキト云ハ實説ナルベシ、朝鮮ニハアリ、昔年朝鮮ヨリ漂來ル舟ノ篷桁ニシタルヲ見ルニ、疑ヒモナキ本邦ノサクラ也、奈木ト云ヘリ、其花ヲ問シニ、朝鮮ノ客答テ、二三月淡紅白花ヲ開ク愛スベシトイヘリ、中華ニハ梓ヲ以書ヲ刻ム、日本ニハ櫻ヲ用ユ、木堅クシテ良材ナリ、凡土宜ニヨリテ品物有無アリ、是自然之理ナリ不疑、此木百年ノ壽ナシ、處々ニ刀ニテ皮ヲタテニワルベシ、榮ヘテ命長シ、日本ニ昔ハ梅ヲ花ト云、中世以來櫻ヲ花ト云、日本ニテ花ヲ 賞スルニコレヲ第一トス、櫻花ノ品甚多シ、アゲテカゾヘガタシ、單アリ、八重アリ、八重ニシテ赤ヲ帶ルアリ、緋櫻ト云、青ヲ帶ルアリ、アサギ櫻ト云、香有リ、

〔東雅〕

〈十六樹竹〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0286 櫻サクラ〈◯中略〉 むかし朱舜水に、こヽの櫻花の事を問ひしに、櫻桃は此にいふサクラにあらず、唐山にしても、もし此にいふサクラあらむには、梨花海棠の如き、數ふるにたらじと答へられしと、我師也し人は語りき、琉球、喎蘭陀等の國人のいひし所は、前の楓樹の下に見えたり、朝鮮に此物ありやなしやの事を、對州の人の問ひしに、かしこにある館中に、こヽの楊貴妃といふ櫻を移し植て、其花の開きし時に、王城の人の來り見しに問ひたりけるに、かしこにもある也、其樹名をばhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e09b.gif (○)といふ也といひしと答へたり、正徳聘使の時に、其學士の稻若水に對へし所を見れば、彼國にも此物はなき也、さきにhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e09b.gif の字をもて對へしといふは、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e09b.gif 亦作柰ものをいひしと見えたり、

〔松屋筆記〕

〈六十五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0286 櫻 同書〈◯秋夜談〉に、客問テ云ク、西土ニハ櫻ナク、朝鮮ニハ櫻アリト云信ナルニヤ、答テ云ク、西土ノ書ニハ櫻ミヘズ、去ル戊辰ノ年朝鮮人ニ尋シニ、櫻アリテホンナモ(○○○○)ト云ト云ヘリ、 櫻ノ始ハ御鎭座傳記ニ見ゆ、櫻ヲ花ト云フ、梅花无盡藏六ノ十五丁ウ、(http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f00000b2010.gif 頭註http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f00000b2011.gif )

〔萬葉集〕

〈三雜歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0286 鴨君足人香具山歌一首并短歌 天降付(アモリツク)、天之芳來山(アマノカグヤマ)、霞立(カスミタチ)、春爾至婆(ハルニイタレバ)、松風爾(マツカゼニ)、池浪立而(イケナミタチテ)、櫻花(サクラバナ)、木晩茂爾(コノクレシゲニ)、奧邊波(オキベニハ)、鴨妻喚(カモメヨバヒテ)、邊津方爾(ヘツカタニ)、味村左和伎(アヂムラサワギ)、百礒城之(モヽシキノ)、大宮人乃(オホミヤビトノ)、退出而(タチイデテ)、遊船爾波(アソブフネニハ)、梶棹毛(カヂサヲモ)、無而不樂毛(ナクテサビシモ)、己具人奈四二(コグヒトナシニ)、

〔萬葉集〕

〈八春雜歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0286 櫻花歌一首并短歌 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000018d02.gif 嬬等之(ヲトメラガ)、頭插乃多米爾(カザシノタメニ)、遊士之(タハレヲノ)、蘰之多米等(カツラノタメト)、敷座流(シキマセル)、國乃波多氐爾(クニノハタテニ)、開爾鷄類(サキニケル)、櫻花能(サクラノハナノ)、丹穗日波母安奈何(ニホヒハモイカニ)、 反歌去年之春(コゾノハル)、相有之君爾(アヘリシキミニ)、戀爾手師(コヒニテシ)、櫻花者(サクラノハナハ)、迎來良之母(ムカヘクラシモ)、 右二首若宮年魚麻呂

櫻種類

〔草木六部耕種法〕

〈十一需花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0287 櫻ト梅トハ種類ノ極メテ多キ者ナリ、共ニ百餘種ヅヽ有リ、〈◯中略〉且ツ櫻品中ニ於テ、古來ヨリ其名高キ者ハ、彼岸櫻(ヒガンザクラ)、寒緋櫻(カンヒサクラ)、香櫻(ニホヒザクラ)、月白櫻(アサギザクラ)、樺櫻(カバザクラ)、下垂櫻(シダリザクラ)、紅絲櫻(アカキイトザクラ)、上瑞櫻(ウハミヅザクラ)、八重櫻(ヤヘザクラ)、熊谷櫻(クマガヘザクラ)、流黄櫻(ウスキザクラ)、常盤櫻(フダンザクラ)、犬櫻(イヌザクラ)等ナリ、彼岸櫻ハ花單ニシテ小ク、下垂ナルヲ絲櫻(イトザクラ)ト云フ、寒緋櫻(カンヒサクラ)モ花ハ單ニテ紅キ色ナリ、此二種ハ花開コト最早シ、八重ハ花開クコト遲シ、熊谷櫻ハ八重ナレドモ花早シ、八重櫻ノ花ノ最モ遲ク開ヲ泰山府君ト名ク、犬櫻モ二種アリ、其一ハ單ナル山櫻ナリ、其二ハ彼岸櫻ノ如クニシテ、其花ノ種ヲ抽ルコト上瑞櫻(ウハミヅザクラ)ニ似タリ、花瓣ノ細ナルコト毛ノ如キ者ナリ、

〔地錦抄〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0287 櫻のるい〈木春中末〉 〈櫻は、蕚くヽり花莖長くさがりて咲をよしとす、尤うるわしき色ありて、〉 吉野〈中りん、ひとへ、山櫻共いふ、吉野より出るたねは花多く咲て見事也、古今序に、春のあした、ふじの山のさくらは人丸が心にはもヽるこのみなんおぼえける、〉 なでん〈うすむらさき、八重くヽりてさがる、〉 奧州なでん〈なでんより木形よく、木ちいさくして咲ゆへ、櫻のhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e05f.gif には是をつぐ、〉 楊貴妃〈うるわしき色あり、大りん、八重、よほどさがる、〉 きりがやつ〈八重、ひとへ有、大りん、さがる、〉ちやうちん〈八重、大りん、くヽりて長くさがる、〉 大手鞠〈色あり、ずいぶんくヽりさがる、〉 小手鞠〈色有、小りん、〉 大ぢやうちん〈右之花形成ほど大りん〉 わしの尾〈よほど色あり、大りん、くヽりてさがる、〉 らいてう〈うすむらさき、八重、よくくヽりさがる、〉 とらの尾〈色あり、大りん、くくり長クさがる、〉 淺黄〈水あさぎ色、八重とひとへあり、〉 しだれ〈少色有、ひとへ、小りん、木はおほく柳のごとくしだるヽ也、〉 ひがん〈うすあか色、ひとへ、小りん、二月時正の時分花咲、秋のひがんにも自然花咲事有、〉 大しだれ〈花形つねのしだれ也、木しだるヽ事おふふうなり、〉 色よししだれ〈花形色よし〉  右衞門櫻〈少色有、しべ長く少くさがる、〉 ふげんざう〈色有、八重、花中より葉一枚づヽ出るよし、〉 丸山〈色あり、よくくヽて長クさがる、〉 たいさんぼく〈色有、くヽり長さがる、〉 こんわう櫻〈澀谷金王丸が植云、櫻の種か、色は白、一重、大りん、〉 ちもと〈色有、せんやう、小りん、〉ぢしゆ〈色有、大りん、くくりてさがる、〉 にはざくら〈白紫の二種有、成程せんやう、小りん、〉 なら櫻〈いにしへのならの八重ざくらか〉 しほがま〈色あり、せんやう、大りん、成ほどくヽりてさがる、〉 ぼたん櫻〈色有、大りん、八重、くヽりさがる、〉 ひよとり〈むらさきせんやう、大りん、くヽりて長くさがる、〉 うば櫻〈色有、八重、大りん也、落花迄葉なし、〉 ちござくら いぬざくら ひたちころ はちす きりん うすいろ ひざくら おそざくら いとざくら いとくり くまがへ ありあけ しやう〴〵 さこん〈禁中に有よし〉 まさむね ほうりん寺

〔花壇綱目〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0288 櫻珍花異名の事 山ざくら〈 壹重なり、櫻の中にての中輪なり、〉 ひがん櫻〈うす色白、中輪なり、〉 きりが八〈白八重壹重、大輪なり、〉 いと櫻〈中輪なり〉 江戸櫻〈中輪大輪あり〉 うす色〈壹重の中輪なり〉 淺黄櫻〈中輪なり〉 ちもと〈小輪なり〉 伊勢櫻〈中輪なり〉 匂ひ櫻〈中輪なり〉 こんわう〈中輪なり〉 うば櫻〈中輪大輪あり〉 衞門櫻〈八重の大輪也〉 あり明〈小輪中輪あり〉 わしの尾〈中輪なり〉 霧が谷〈小輪中輪あり〉 楊貴妃〈中輪なり〉 猩々〈小輪中輪あり〉 鹽がま〈中輪なり〉 南殿〈薄赤色有、中輪也、〉 いわいし〈薄赤色の大輪也〉 正宗〈中輪なり〉 てまり〈中りんなり〉 爪紅〈赤色の小輪〉 熊がへ〈中りんなり〉 せき山〈小りんなり〉 普賢像〈中りんなり〉 ひ櫻〈中輪大輪あり〉 仁和寺〈中輪大輪あり〉 虎の尾〈中輪大輪あり〉 奈良櫻〈八重壹重、中輪、〉 よし野〈中輪、八重壹重、〉 車がへし〈中輪大輪あり〉 法輪寺〈大輪なり〉 きりん櫻〈中輪大輪あり〉 さかて櫻〈中りんなり〉  糸くヽり〈中輪なり〉 はちす〈中輪なり〉 大山木〈中輪大輪有〉 八重一重〈中輪大輪有〉 右は櫻の名なり、此ほかにもあるべし、

〔圓珠庵雜記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0289 花さくらにふたつあり、さくら花といふべきを、打ちかくしいへると、又紅のさくらをいへるは、さくらの中に一種の名なり、紅の薄花櫻などよめるもこれなり、六帖にさくらにつづけて、花櫻の題を出だし、又躬恒、つらゆきなどの集にもよめり、菅家萬葉、あさみどり野べの霞はつヽめどもこぼれて匂ふ花櫻かな、重之集、花櫻つもれる庭に風ふけば舟もかよはぬ浪ぞたちける、古今春下、うつせみのよにもにたるか花櫻咲くとみしまにかつちりにけり、眞淵云、六帖には同じ事をも少しいひそへたる語あるは、別に擧げたるも多ければこヽに引くは中々わろし(http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f00000b2010.gif 頭書http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f00000b2011.gif )、

〔松屋筆記〕

〈十三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0289 冬櫻 江戸谷中三浦坂の上なる寺に、毎年十月花盛なる櫻あり、年によりて十一月まで、花葉ともに盛なることあり、

〔一話一言〕

〈二十四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0289 忍岡南墩乘抄 寛文十一年辛亥三月三日快晴、後園群櫻其中有香者名鐘山、又一株號本然、俗所謂櫻色者是也、

〔佐渡志〕

〈五物産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0289 櫻 通名サクラ 數品アリ、羽茂郡ニハ八種菊ノ花ニ似タルモノアリ、土人深ク珍トス、他ニウツセバ枯ルトイヒ傳フ、

山櫻

〔櫻品〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0289 山櫻(○○) 凡山中に多、單辨にして色白く早く開くもの、通じて山櫻と呼ぶ、其中品類亦多し、花色紅の二種 あり、又著花疎密大小の別あり、葉の初出に青紅のかはるあり、吉野(○○)といふあり、花密なり、大抵山櫻といふは花疎なり、〈◯下略〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0290 山櫻桃 ヤマザクラ 一名棣子〈急就篇〉山ニ自生アル故、ヤマザクラト呼ブ、市中ニ種テ花ヲ賞ス、諸櫻ヨリ早ク開ク、單葉ニシテ落易シ、數少キヲヤマザクラト云、花多ク簇リ開ヲヨシノザクラト云、花小ナルヲチゴザクラト云、共ニ花後實ヲ結ブ、形正圓三分許長莖下垂ス、初メ緑色熟シテ赤色、或ハ黒色、兒童サクラボント呼ブ、木皮和方ニ多ク用ユ、藥舖ニサクラノ皮ト云、樺皮トハ別ナリ、凡ソ樺櫻ノ類、皮ノ條理横ニシテ、他木皮ノ條理竪ナルニ異ナリ、山櫻桃ヲ大和本草ニ、ニハザクラト訓ズルハ非ナリ、ニハザクラハ多葉郁李、又千葉郁李ト云、又本經逢原ニ、櫻桃一種小者名山櫻桃ト云ハ非ナリ、集解ニモ數説アリ、時珍ノ説ニ、葉長尖不團ト云ヲ以テ、ヤマザクラトスベシ、唐山ニテハ櫻ヲ櫻桃ニ混ズルコト多シ、名花譜ニ説ク所ノ櫻桃ノ形状ハ、全ク櫻ノコトナリ、コノ外考證多シ、櫻ハ明ノ宋景濂ノ詩アリ、

〔玉勝間〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0290 花のさだめ 花はさくら、櫻は山櫻の葉あかくてりてほそきが、まばらにまじりて、花しげく咲たるは、又たぐふべき物もなく、うき世のものとも思はれず、葉青くて花のまばらなるは、こよなくおくれたり、大かた山ざくらといふ中にもしな〴〵の有て、こまかに見れば、一木ごとにいさヽかかはれるところ有て、またく同じきはなきやうなり、又今の世に桐がやつ八重一重などいふも、やうかはりていとめでたし、すべてくもれる日の空に見あげたるは、花の色あざやかならず、松も何もあをやかにしげりたるこなたに咲るは、色はえてことに見ゆ、空きよくはれたる日、日影のさすかたより見たるは、にほひこよなくて、おなじ花ともおぼえぬまでなん、朝日はさらなり夕ばえも、

〔萬葉集〕

〈八春雜歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0291 山部宿彌赤人歌四首〈◯三首略〉足比奇乃(アシビキノ)、山櫻花(ヤマザクラハナ)、日並而(ヒナラベテ)、如是開有者(カクシサケラバ)、甚戀目夜裳(イタモコヒメヤモ)、

〔古今要覽稿〕

〈草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0291 嵐山櫻(○○○) 嵐山櫻、もと嵐山の種なるを以て名を得しものなり、其花單瓣白色、すこし淺紅を帶、一莖二三花にすぎず、即山櫻の一種なり、嵐山の櫻は龜山院芳野の山櫻を移し植させられしといへば、よしのヽ花と同じかるべきに、今存せるさくらは、芳野の花とは異なり、風土によりてかはれるもの歟、右植千本櫻於嵐山〈雍州府志〉といへども、今現存するはさほど多からずといへり、

彼岸櫻

〔大和本草〕

〈十二花木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0291 櫻〈◯中略〉彼岸櫻(○○○) 其花櫻花ヨリ小ニシテ、櫻ニ先立テ早ク開クコト旬餘日、花開ク時葉未生、櫻ヨリ小樹ナリ、花モ小也、櫻ノ類也、

〔櫻品〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0291 彼岸櫻 開最早先諸櫻、二月春分節開花、俗呼彼岸櫻、按此乃海棠譜所載、帚子海棠是也、枝頭叢生如地膚枝葉、 小櫻(○○)〈即彼岸櫻、或兒櫻、〉 花譜又曰、彼岸櫻、本名は小櫻、俗に彼岸櫻と云、河内國獅々の窟には彼岸櫻多し、同國の伊駒山の西鷲尾山の寺に八重多し、 達〈◯松岡玄達〉按ずるに、世に云鷲尾は自此寺出る故名なる歟、又武士の甲胄小櫻威あり、此花色にかたどる歟、

兒櫻

〔櫻品〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0291 兒櫻(○○) 山櫻の中の一種、單の小輪白色疎花者呼兒櫻、洛陽仁和寺二王門下東側に一株あり、小花にして よく似李花、此に單瓣白色中輪なるを殿櫻(○○)と名く、

婆櫻

〔大和本草〕

〈十二花木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0292 櫻〈◯中略〉 ウバ櫻(○○○)モ彼岸櫻ノ類ナリ、彼岸櫻ノ次ニ開ク、是モ花開ク時葉ナキ故、ウバ櫻ト名ヅク、

〔櫻品〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0292 婆櫻 彼岸櫻と一般、但無葉を以て名く、葉と齒と和音通ず、見活所翁櫻譜

絲櫻

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0292 糸櫻(イトザクラ)

〔大和本草〕

〈十二花木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0292 垂絲海棠(イトザクラ) 樹與彼岸櫻同、枝長ク絲ノ如クニシテ下リ垂ル、花美ハシ、彼岸櫻ヨリ花ヤヽ遲シ、イトザクラ唐ヨリモ來ル、唐人コレヲ垂絲海棠ト云、合璧事類海棠花説曰、一種柔枝長http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b530.gif 者、顏色淺紅、垂英向下謂之垂絲海棠、與海棠大不類、蓋強名爾、コレイトザクラ也、本草時珍ガ説、海紅集解ニ出タリ、事言要言ニ沈立海棠記ヲ引ケルモ與此同、海棠ニ非レドモ、花似タル故ニ垂絲海棠ト名ヅク、樹ノ形状モ花ノ容モ彼岸櫻ト同、イトザクラヲ櫻ニツゲバサカヘズ、彼岸櫻ニツゲバ榮フ、同氣ノ故也、王世懋ガ花疏ニハ、垂絲以櫻桃木接グトイヘリ、ユスラノ木ニツグベシトナリ、彼岸櫻ト垂絲海棠ノ別ハ、シダリ柳ト常ノ柳ノ如シ、ウバ櫻トイトザクラハ一時ニ開ク、

〔櫻品〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0292 絲櫻 彼岸櫻と花全同、但枝軟裊々如柳枝、往昔黄檗の唐僧に訪問せしに、垂絲海棠なりといへり、按垂絲海棠の名出海棠譜、按洛陽花木記に、垂枝一名輭條といへり、今の絲櫻の形状に合せり、然れども二如亭群芳譜垂絲海棠の下に、西府海棠を出す、莖枝やヽ堅といへり、然れども西府海棠は今の櫻に似たり、垂枝といふも枝の垂るヽにはあらずして、苞の中より絲を吐出して、其先に花の垂るヽをいふと見えたり、然れば垂絲は今の櫻の總名にして、ひとり絲櫻を指すにあらず、唐 僧偶絲櫻をさして垂絲と云しより、習而不察、不知絲櫻は軟條にして非垂枝、據女南圃史、地棠花(やまぶき)の條に、垂絲海棠似棠棣花とあるときは、今の櫻中の江戸桐谷伊勢等をさすこと分明なり、畢竟今の櫻は海棠の一種にして非櫻、そは即ち櫻桃にして、今のゆすら梅なり、垂枝と類自別なり、又按に垂枝海棠二種あり、同名別物なり、一種は古來所稱絲櫻、一種は今のさくら是なり、按に行厨集花木門に垂枝海棠の條曰、吐絲向下、花似地棠花とあり、今のさくら皆莖長下に垂、吐絲は枝のしたヽるヽ事にあらず、海棠譜及圓機活法にいへる垂絲海棠とは今の絲櫻なり、行厨集にいへる諸櫻のことたること分明なり、近世大徳寺の覺印問之唐僧、曰垂絲海棠は諸櫻の通稱なり、重葉の垂絲は八重櫻の事なりと、唐僧の話なりといへり、是行厨集の説と合せり、敬義の櫻の辨にも、誤て以櫻桃、日本の櫻とせり、不知櫻即櫻花而本より非佐久良、櫻の名日本所私名而非漢土之櫻也、

〔義演准后日記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0293 慶長十年二月廿五日、秀頼公へ伊勢櫻一枝、初蕨進上之、馬場并中谷ノ花最中、今夕見物驚目了、歸路ニhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000087.gif 寺絲櫻見物、泉水ノ伊勢櫻三分一咲、 廿七日、寺澤志摩守、龍藏寺信濃守、東條紀伊入道爲見物來、

熊谷櫻

〔大和本草〕

〈十二花木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0293 櫻〈◯中略〉 熊谷櫻(○○○) 高サ尺ニ不過シテ花サク、長シテ四五尺ニ過ズ、彼岸櫻ニ先立テ八重ノ好花ヒラク、枝ノカタチハ櫻ニ似テ彼岸櫻ニハ似ズ、櫻ノサキガケ也、別種ナリ、花色白クシテ少紅ヲ帶タリ、

〔櫻品〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0293 熊谷櫻 彼岸櫻の八重也、開事最早し、故に名花の先登といふ義なり、昔源平http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/0000000196b0.gif 州一谷の合戰、熊谷次郞直實爲先登、以て此に比す、花小にして色赤し、或曰千葉のものあり、千葉難波櫻に似たり、此非熊谷、乃藝花家に所謂楊貴妃也、似緋櫻而小也、又單瓣大輪、似芝山櫻而色帶紅暈者呼熊谷、是亦非也、此 乃さかて櫻なり、

〔義演准后日記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0294 慶長十年二月四日、女御女三宮九條殿豐光寺圓光寺備前後室、初櫻枝送進之、〈但ツボミテ花ブサ出了未開〉彼岸八重櫻〈クマガヘト云也〉悉開了、一重彼岸櫻半分開了、 廿日、大樹へ櫻花一枝進上之、廿四日、大樹若君へ花枝折一合進上之、御あちやノ方へ同前、山下ノ花最中、

南殿櫻

〔古今要覽稿〕

〈草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0294 南殿櫻(○○○) 南殿櫻或は南天(○○)と書し、又奈天(○○)と書す、その名づけしゆへをしらず、花瓣或は數葉千葉淡紅甚艷麗にして、一種の花なり、紅葉奈天、色奈天、爪紅奈天、菊奈天、奧州奈天、大奈天等數種あり、葉の色も亦數品なり、

火櫻

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0294 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000069.gif (ヒサクラ) 樺木(同)

〔壒囊抄〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0294 火櫻トハ何ナル花ゾ 此名、歌ニハ讀テ侍レ共、未釋セル文ヲ不見侍、櫻ノ名、都ニハ多クアルト云リ、顯昭ガ義ニハ火櫻ト云物更ニナシ、蕪荑(フイ)ト書テ、ヒキサクラトヨム、若是ヲ略シテ云カ、紅櫻(クレナヒ)ヲ赤ニ付テ云カト申セリ、朱櫻(シユワウ)ト書テ庭櫻トヨム、色モスワウ色也、若是等ヲモ申ニヤ、櫻色トハ白ヲ云詞也、赤ヲバ實色ヲ云カナンド古シヨリ申侍リ、其歌ハ、 アヅサ弓春ノ山邊ニケフリタチモユトモ見ヱヌ火櫻ノ花

〔新撰六帖〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0294 ひざくら みよし野の草葉ももゆる春の日に今さかりなるひざくらの花 家良 春をやくひかりはおなじ梢にも分て名にたつひざくらの花 爲家

朱櫻

〔本草和名〕

〈十七菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0294 櫻桃、一名朱櫻胡頽子、〈淩冬不凋〉一名朱桃、一名麥http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b2d9.gif 、一名楔、〈革http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001cd8d.gif 反〉一名荊桃、〈已上四名出釋藥性http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a8d.gif 子、〈味酸、出崔禹、〉櫻桃、一名含桃、一名荊桃、一名麥桃、〈已上三名出兼名苑〉和名波々加乃美(○○○○○)、一名加爾波佐久良乃美(○○○○○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈二十木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0294 朱櫻 本草云、櫻桃一名朱櫻、〈和名波々加、一云邇波佐久良、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0295 原書果部上品有櫻桃、不一名、陶注云、此即今朱櫻、則知朱櫻之名出陶注也、蜀都賦云、朱櫻春孰、御覽引呉普本草云、櫻桃味廿云々、一名朱櫻、是陶氏所本、按爾雅、楔荊桃、郭注今櫻桃、月令仲夏之月、天子乃以雛嘗黍、羞以含桃、先薦寢廟、鄭注云、含桃今之櫻桃也、呂氏仲夏紀高注云、含桃鸎桃也、鸎鳥所含、故言含桃、〈◯中略〉本草和名云、波々迦乃美、一名迦爾波佐久良乃美、蓋藥用櫻桃子、故訓爾、源君所擧非特其實、故雖輔仁所http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 訓、然删乃美字也、各本脱邇波上加字、按、加邇波佐久良、古今集物名和歌所詠者即是、此蓋偶脱也、今依本草和名増正、源氏物語野分卷所云、加波佐久良、即加邇波佐久良之急呼也、河海抄引本書朱櫻之、似彼所見有加字、然袖中抄、類聚名義抄並訓爾波左久良、伊呂波字類抄收仁部、埃囊抄以庭櫻朱櫻、則脱來亦已久、按迦爾波佐久良(○○○○○○)、今俗呼(○○○)赤加婆(○○○)、當山櫻桃http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4d.gif 之、櫻桃今呼(○○○○)由須良宇米(○○○○○)者、是也、源君以櫻桃加邇波佐久良者、非是、又按波々迦(○○○)、蓋今俗呼(○○○○)白加婆(○○○)者、非加邇波佐久良之一名、輔仁以其名同混同也、説詳木具樺條

〔伊呂波字類抄〕

〈仁殖物附植物具〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0295 朱櫻〈ニハサクラ〉 櫻桃〈同〉

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0295 櫻桃(ニハザクラ/ハヽカ)〈時珍云、木不甚高、春初開白花、繁英如雪、〉 含桃(同)〈鶯桃荊桃並並同、見本草、活法、〉 玉帶花(同) 樺(カバザクラ/カハ)〈其皮曰暖皮燭、又工匠所用者、〉 朱櫻(同/カニハサクラ)〈万葉河海〉

〔大和本草〕

〈十二花木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0295 櫻〈◯中略〉 カバサクラ(○○○○○)ハ一重櫻也ト徹書記イヘリ、或曰ヒトヱ櫻ノウス紅ナルヲ云、古今集ニ、カニハザクラト云ハ是也、

〔古今和歌集〕

〈十物名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0295 かにはざくら つらゆき かづけども浪のなかにはさぐら(○○○○○○)れて風吹ごとにうきしづむ玉

〔空穗物語〕

〈吹上之下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0295 宮より東はうみなり、そのうみづらに、きしにそひておほひなる松に藤かヽりて、廿ぢやうばかりなみたちたり、それにつきてかばざくら(○○○○○)ひとなみなみたちたり、

〔源氏物語〕

〈二十八野分〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0296 春のあけぼのヽ霞のまよりおもしろきかば櫻(○○○)の、さきみだれたるをみるこヽちす、

〔河海抄〕

〈十一野分〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0296 かはさくら〈◯中略〉かは櫻とは、花の色うす紅にて、ことさら艷なる花也、和名には朱櫻とかけり、古今にかにはざくらとあるこれなり、

〔古今要覽稿〕

〈草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0296 弘賢曰、カニバザクラのニを省きて、カバザクラといひしなり、倭名鈔櫻桃一名朱櫻ハヽカ、一云ニハザクラと注したれば、カバザクラの證にひきしは誤なり、契冲がいひしは無http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001aa09.gif なり、和名鈔に輔仁の本草和名を引たるに、本書にカの字あれば、和名鈔今の本脱字なり、河海抄引用の本にはカの字在しならん、さて本艸和名に櫻桃の一名あまた有てハヽカノミ、カニハザクラノミとよみて、草の部に收たり、然るを倭名鈔には木部にうつして、ノミの二字を省きたり、櫻桃はユスラムメにて、サクラにはあらずとおもはるれども、櫻字をサクラとよみしうへは、カバザクラは花の色赤ければ、朱櫻の字をかり用たるにて、こヽのカバザクラ、かしこの櫻桃なりといふにはあらず、 ◯按ズルニ、樺及ビ櫻桃ノ事ハ、別ニ其條有リ、宜シク參看スベシ、

淺黄櫻

〔北邊隨筆〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0296 淺黄櫻(○○○) 長明四季物語といふものに、御社のあたり、みあれ山の櫻は、あさ黄なるもありて云々とあり、今の世淺黄櫻といふ物これなるべし、これよりふるきものには、いまだみおよばす、されどこの四季物語うけがたきものなれば、かへりて後にや、

八重櫻

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0296 八隔櫻(ヤエザクラ)〈万葉〉

〔詞花和歌集〕

〈一春〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0296 一條院の御時、ならの八重櫻を人の奉りけるを、そのおり御前に侍りければ、その はなをだいにてうたよめとおほせごとありければ、 伊勢大輔 いにしへのならのみやこの八重櫻けふ九重ににほひぬる哉

〔大和本草〕

〈十二花木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0297 櫻〈◯中略〉 八重櫻、ヲソキヲ泰山府君(○○○○)ト云ハ、盛衰記曰、昔櫻町ノ中納言成範卿、此花ノサカリ短キヲナゲキテ、櫻ノタメニ泰山府君ノ祭ヲ行ハレシヨリ此名アリト云、又鹽カマ(○○○)ト云遲櫻アリ、ハマデ見事ナリト云意ナルベシ、

不斷櫻

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0297 不斷櫻(フダンザクラ)〈在勢州奄藝郡白子邑、〉

〔櫻品〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0297 不斷櫻 一名若木櫻、一名節會櫻、一名十六日櫻、按節會櫻、一名十六日櫻、伊豫松山大須社前にあり、正月十五日に必開、單瓣小花也、近來枯たり、他邑に種ありしを接て又繁茂すと云、此櫻藝州廣島にもあり、播州明石の邊にては不斷櫻と名く、皆一物也、其花似彼岸櫻及婆櫻、叢生す、上元の前後必著花、四時不斷、故に土人呼不斷櫻、按に此乃宋の陸游老學菴筆記に、所謂小桃紅是也、與鳳仙花同名、而物異也、熊谷櫻も此種類也、歐陽公梅宛陵王文恭集皆有小桃者、歐陽詩曰、雪裏花開人未識、摘來相顧共驚疑、便須酒花前酔、初見今年第一枝、初但謂桃花有一種、早開者耳、及成都、始識謂小桃者、上元前後即著花、状如垂絲海棠、曾子固雜識曰、正月二日開天章閣、賞小桃正謂此也、〈出宋陸游老學庵筆記〉曾聞伊勢白子觀音寺の庭に櫻あり、四季著花、名不斷櫻、訪問彼地方之人、與須磨及藝州者一物也、楊升菴丹鉛總録、陸游老學菴筆記所載正指此物、小桃紅とも出せり、非桃花種類、實櫻中一品而小華者也、

〔地錦抄附録〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0297 若木不斷櫻(わかきふだんざくら) 源氏若木櫻の實生にて、かはりて出來たり、はるより秋まで花咲なり、枝ほそく痩形にて、葉もちいさくしほらしく、尺にたらずして花多くさく、小鉢に植てながめよし、春は山櫻より少しはやく咲、花ひとへ小りんなり、又五六月ごろに若芽出て、さきに花多く しげりて、春の花よりにぎやかにて、猶ながめよし、秋若芽出て花さく、山櫻に接木してよくつくものなり、

普賢象

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0298 普賢象(フゲンザウ)〈櫻花、花間出葉故名、蓋普賢薩埵所駕白象、齒鼻相列、所見似之、花鼻葉齒和訓相通、〉

〔般若熙百首〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0298人惠櫻花詩并叙 横川 櫻之於我國也、不櫻而曰花、如洛之牡丹、蜀之海棠、蓋所以貴http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 之也、普賢堂者、天下第一也、世傳、鎌倉有堂、普賢安之、其地有櫻、俗謂之普賢堂、或曰普賢象、和訓鼻與花音同、花之白且大者如菩薩所乘白象之鼻也、兩説孰是、平安城之西有此櫻、實名花也、万年之距此地也里許近而近、毎春時、携客出遊、何可一日無此花耶、自丁亥之亂、東西鴻溝不普賢堂者、七八九年于今矣、距歩之間、雖花如敵、音春負公乎、公負音春乎、不得而知也、今玆甲午、西人乞降、軍退解圍、不亦悦乎、今日有客惠櫻花、所謂普賢堂也、予與花一咲、知十年之舊、吁異哉、不啻生逢大平日、而得此花、幸之又幸也、感喜有餘、作詩謝之云、〈◯下略〉

櫻栽培

〔草木六部耕種法〕

〈十一需花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0298 櫻ト梅トハ種類ノ極メテ多キ者ナリ、共ニ百餘種ヅヽ有リ、然レドモ梅ハ實ヲ主トシテ作ル者ハ多ク、花ヲ主トシテ作ル者ハ少シ、故ニ梅ノコトハ下ノ需實篇ニ詳ニスベシ、櫻ハ實ヨリ花ヲ賞スル者ナレバ、玆ニ其作法ヲ論ゼン、凡ソ櫻類ハ高燥ノ土ヲ好ミ、濕潤ノ處ニ宜カラズ、移植ルニハ二月十月ヲ良トス、冬至頃ニ根周圍(ネマハリ)ニ、馬糞カ厩肥ノ粉ヲ入ルベシ、隔年ニ花ノ過タル頃ニ、鎌ヲ以テ處々ノ皮ヲ剥ベシ、如斯スレバ其創ヨリ肉ヲ生ジテ、木モ能ク肥リ、花モ甚ダ盛ニナル者ナリ、〈◯中略〉凡ソ櫻ハ實ヲ蒔モ能生ジ、根分スルモ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651547.gif 木スルモ、能ク活モノナレドモ、名花ノ枝ヲ採テ接木スルヨリ便良ナルハ無シ、彼岸櫻寒緋櫻絲櫻ハ、八重櫻ヲ砧(ダイ)ニシテ接グベシ、八重櫻ハ山櫻ヲ砧ニシテ接ベシ、花師山師(ハナヤニハツクリ)等ノ櫻ヲ作テ接木スルヲ觀ルニ、圃ニ數多ノ砧木ヲ並テ、皆此ニ接ギ土ヲ覆テ、接梢少出シ、其圃ノ四方ニ杬ヲ立テ卑キ棚ヲ造リ、雨覆ヲ 設ケ、周圍ニモ藁筵等ヲ以テ圍ヲ爲シ、能ク活テ芽ノ生長スルニ從テ、漸々ニ土ト圍トヲ取リ除クトキハ、皆能ク活テ繁榮スル者ナリ、

〔駒井日記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0299 文祿四年四月朔日辰、一京總堀枯竹之事、民法〈江◯民部法印前田玄似〉爲御屆申遣旨書状之案、一爲御意啓達候、仍伏見向島櫻植木之義被仰出候、然者櫻被植候刻、木ころびゆがみ候はぬ様にらちを可結之思食候、左候得者、木竹過分に入可申體に候、京總廻土居之内に枯竹餘多見申候迚、くさり可申間、右之枯竹被取成次第可仰付と被思召候、土居枯竹之義も、少成共青之有之竹を被置、悉枯迚くさり果候分可御沙汰と思召候、如何可之候哉、爲上意申入候、恐惶謹言、 四月朔日 駒井 民法様〈人々御中〉 一櫻木之事に付而西美濃之事 一東ハ久瀬川、北者赤坂、南ハしつヽやをさかひ可付由、右之村數百計有之由、右之内五里四方程も可之由、次ときたるハ江州近くに候へ共、山中故江州〈江〉海道無之由、 一伏見御屋敷之儀、土居こわし候事、最前普請衆可申付由御意候通、奉行中へ申遣〈◯中略〉 一伏見向島櫻木之儀ニ付而、民法より先刻返事、 一伏見向島櫻植木之かこひとして、京之總廻之土居之枯竹被伐旨令存知候、何も境を極、其勝手之所ニハ預ケ置せらせ候間、撿使を出伐せ、運上可申候哉、但以上使可仰付候哉、御諚次第之旨可御取成候、恐々謹言、 四月朔日 民部卿法印 駒井中務少輔殿〈御返報〉

觀賞

〔櫻之辨〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0300 倭國にて專ら花とは櫻をいふなり、櫻を詠ずる歌數もしらず、此花神代よりありけるにや、大山祇の女始て天上より櫻の木に降れりけるとて、木花開耶姫と申侍る、皇代履仲天皇禁池の御舟遊に、櫻花の散て御盃に入しを賞して、内裏を若櫻の宮と名付玉ふ、平城天皇櫻花の御製、昔在幽巖下、花光照四方、忽逢攀折客、含笑亘三陽、送氣時多少、垂陰絲短長、如何此一物、擅美九春場と宣へり、凌雲集に出たり、嵯峨天皇弘仁三年二月に、神泉苑に御幸ありて、茶を御覽じ詩を作らしめ玉ふ、これ花の宴の濫觴なりとぞ、文徳天皇仁壽元年に、藤原の良房の館に御幸ありて、櫻花を御覽じ、詩歌の御遊あり、宇多天皇寛平七年、神泉苑の櫻を御覽じて、菅丞相供奉なりしかば、かくもてはやし、業平歌に、 世の中にたえて櫻のなかりせば春の心は長閑からまし、といへり、

〔茅窻漫録〕

〈中〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0300 木花櫻〈◯中略〉 本より櫻は此邦第一の花にて、漢土にも賞美せり、義楚六帖に、日本國都城南五百餘里、金峯山頂上有金剛藏王菩薩、第一靈異、山有松檜名花軟草といふ、金峯山は神名式に見えたる大和國吉野郡金峯神社にて、〈今は金精明神といふ〉名花は、今の吉野櫻なり、宋景濂が櫻詩に、賞櫻日本盛於唐、如牡丹兼海棠、恐是趙昌所畫、春風纔起雪吹香と作れり、趙昌所畫といふは、枕草紙に繪に書きて劣る物といふにおなじ、神代木の花櫻より王仁が難波津の詠に入り、歴代帝王の花宴を開き、詩歌墨客の賞美するところ、實に日本第一の木の花なる事しるべし、

〔昆陽漫録〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0300 花 鶴林玉露に云く、洛陽の人謂牡丹花、成都の人謂海棠花、尊貴之也と、我國の人は櫻をいひて花となす、これも賞翫するによりてなり、人情はいづくもたがひあらざるなり、

〔日本書紀〕

〈十二履中〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0300 三年十一月辛未、天皇泛兩枝船于磐余市磯池、與皇妃各分乘而遊宴、膳臣余磯獻酒、 時櫻花(○○)落于御盞、天皇異之、則召物部長眞膽連、詔之曰、是花也非時而來、其何處之花矣、汝自可求、於是長眞膽連獨尋花、獲于掖上室山而獻之、天皇歡其希有、即爲宮名、故謂磐余稚櫻宮、其此之縁他、

〔日本書紀〕

〈十三允恭〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0301 八年二月、幸于藤原、察衣通姫之消息、是夕衣通郞姫戀天皇而獨居、〈◯中略〉明旦天皇見井傍櫻華而歌之曰、波那具波辭(ハナグハシ)、佐區羅能梅http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019e89.gif (サクラノメデ)、許等梅http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019e89.gif 麼(コトメデハ)、波椰區波梅http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019e89.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000089.gif (ハヤクハメデズ)、和我梅豆留古羅(ワガメヅルコラ)、皇后聞之且大恨也、

〔日本紀略〕

〈四村上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0301 康保二年三月五日丙子、諸卿著陣座、翫南殿前新移櫻樹、有詠歌盃酒絃管之興、少内記大江昌言紀小序、權大納言師尹朝臣以下於仗座之、右近將監尾張安居奉仕律呂舞

〔古今著聞集〕

〈十九草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0301 宇治殿、四條大納言公任卿と、春秋の花いづれかすぐれたると論ぜさせ給ひけり、春はさくらをもて第一とす、秋は菊をもて第一とすと、宇治殿仰られければ、大納言梅の候はんうへは、さくら第一にてはいかヾ候べきと申されければ、梅と櫻との論に成て、自餘の花のさたは、つぎになりにけり、大納言恐をなして、つよく論じ申されずながら、猶春のあけぼのに、紅梅の艷なるいろすてられがたしと申されける、優にぞ侍ける、江記に見えたり、 長元元年十二月廿二日、昭陽舍のさくらを一本、清涼殿ひがしきたの庭にうつしうゑられけるに、殿上人どもおりたちてふみいためけり、いと興ある事也、むかしはかやうにあちこちほりわたし、又はじめてもうゑられける、ちか比はかぎりある木の外へ、うへらるヽ事もなきにや、 長治二年後二月二十日あまりの比、内の女房殿上人せう〳〵花を見侍りけるに廿三日に一枝ををりて奉るべきよし、天氣ありけれ共、日くれて奉らざりけり、其うらみ有とて、次の日左右をわかちて花を合られけり、左方の人々櫻の枝を折て、ゑもん陣の後にうつしたてヽ、五枝をえらびてもて參けり、備後介有賢朝臣、柏子取て櫻人をうたひけり、管絃をもつけ侍けり、比花を泉の御所にうつしうへて、つり殿にて御遊有けり、右方花をそかりければ、上達部五人をつかはされ けり、洲濱にたてヽもて參けり、其後滿座和歌を奉べき由、勅定有て、人々つかうまつりけり、〈爲範記に見へたり〉

〔源平盛衰記〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0302 清盛息女事 抑此成範卿トハ、故少納言入道信西三男也、櫻町中納言ト申事ハ、優ニ情深キ人ニテ、吉野山ヲ思出シテ、櫻ヲ愛シ給ヒケリ、室ノ八島ヨリ歸上後、町ノ四方ニ吉野ノ櫻ヲ移植、其中ニ屋ヲ立テ住給ケレバ、見人此町ヲバ、樋口町櫻町ト申ケリ、又ハ此中納言、櫻ノ名殘ヲ惜テ、立行春ヲ悲ミ、又コン春ヲ待ワビ給シカバ、異名ニ櫻待中納言トモイヘリ、殊ニ執シ思ハレケル櫻アリ、七日ニ咲散事ヲ歎テ、春ゴトニ花ノ命ヲ惜テ、泰山府君ヲ祭ラレケル上ヘ、天照大神ニ祈申サセ給ケレバ、三七日ノ齡ヲ延タリケリ、サレバ角ゾ思ツヾケ給ヒケル、 千早振現人神(アラヒトガミ)ノカミタレバ花モ齡ハノビニケルカナ、ト人ノ祈實アリケレバ、神ノ靈驗アラタニシテ、七日中ニ咲散花ナレ共、三七日マデ遺アリ、君モ御感有テ、花ノ本ニハ此人ヲゾスベキトテ、勅書櫻町ノ中納言トゾ仰ケル、〈◯下略〉

〔續古今和歌集〕

〈二春〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0302 龜山の仙洞に、吉野山の櫻をあまたうつしうゑ侍し花のさけるを見て、 太上天皇 春ごとに思ひやられし三吉野の花はけふこそ宿に咲けれ

〔北條五代記〕

〈十〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0302 三浦三崎寶藏山舊跡の事 扨又三崎の前海城ケ島に、春は櫻花咲みだれ、面白き磯山の氣色たぐひなかりけり、是によく頼家公花の時分は三崎へ毎年著御、正治元年も出御し給ひぬ、實朝將軍三崎の櫻花御見物有べしとて、建暦二年壬申三月九日、尼みだい所をともなはしめ、三崎へ入御し給ふ、建保三年三月、同五年九月、安貞三年二月廿一日、同四月十七日、詩歌管絃の御遊さらに盡しがたし、扨又寛喜元年己 丑三月十七日辰刻、頼經將軍三崎の磯山御遊覽のため出御し給ふ、相州武州をはじめ御共する、かの前司御船をもよほし、海上にて管絃詠歌あり、佐原三郞左衞門尉遊女を相ともなひ、一葉にさほさし、さんかうする事、しかも興あらずと云事なし、およそ山陰のけいすう、海山の眺望、比類有べからずとほめさせ給ひ、同十九日に還御也、同二年庚寅三月十九日、將軍家三崎磯山の花ざかり御遊覽のため、武州六浦の津より御舟にめされ、海上にて管絃あり、若宮の兒童等を召れ、船中にて詩歌を詠じ、連歌をつらね給ふ、相州武州以下參らる、よつて領主駿河前司ことなる御まうけ、善盡し美つくさずと云事なし、

〔太閤記〕

〈十六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0303 醍醐の花見 夫惟白髮は貴賤を不分、月は雲を不除花は風を不厭、死は時を期せぬ習目前なり、いざ此春は北政所〈◯豐臣秀吉妻〉に醍醐の花を見せしめ、環堵の室を出でやらぬ女共にも、いみじき春に合せ、胸のかすみをはらし、一榮一樂に世を忘させんと思ひ寄しなり、いかヾ有べきと、徳善院玄以に仰談ぜられし時、尤宜しき御催にておはしまさんと申上しかば、御氣色なり、さらば、其のあらましを、はやく政所へ告侍りて、あまたの日數を樂しましめんとて、尼幸藏主をもつて仰せられしかば、三月十五日〈◯慶長三年〉醍醐の花見を催され候はん、政所殿も見物あるべきよし申候へと宣ふにより、則幸藏主まいり侍りてかくと申上しかば、一入めづらしき事なるべしと、御うれしさのあまりに御文をもつて仰上らる、

〔駒井日記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0303 文祿三年二月廿九日、吉野、一大閤様御假屋形ニ而御歌之御會有之、 二月晦日、吉野、御花有之、 三月朔日、吉野、御能有之 三月二日、從吉野大閤様高野に御參詣、

〔太閤記〕

〈十六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0303 吉野花御見物の事 文祿三年〈甲午〉二月廿五日、吉野の花御覽あるべきとて、大坂を立出させ給ふ、秀吉公例の作り鬚に 眉作らせ、鐵黒なり、供奉の人々、我も〳〵と美麗を盡し、わかやかなる出立なれば、見物群集せり、廿七日紀州六田の橋を打渡り、市の坂に至て下らせ給へば新宅有、大和中納言秀俊卿より立させ給へる御茶屋にて侍るよし申ければ、則立寄せ給ふ、饗膳など上られければ、御心よげにすヽみまいらせられ、それより千本の櫻花園櫻田ぬたの山、かくれがの松など御覽有て、秀吉公かくぞ詠じ給ふ、〈◯下略〉

櫻名木

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0304 南殿(ナンデンノ/ナテン)櫻(サクラ)〈在紫宸殿巽角、詳禁秘抄、河海、拾芥、〉

〔江談抄〕

〈一公事〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0304 紫宸殿南庭橘櫻兩樹事 内裏紫宸殿南庭櫻橘樹者、舊跡也、件橘樹地者、昔遷都以前、橘本大夫宅也、枝條不改、及天徳之末云云、又秦川勝舊宅者、但是或人説也、

〔古今著聞集〕

〈十九草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0304 南殿の櫻は村上の御時、式部卿重明親王の家の櫻匂ひ異なりとて、うつしうへられけるとぞ、其後たび〳〵の炎上にやけにければ、又あらぬ木をぞうゑかへられける、代々の御門、此はなを賞せさせ給ひて、花の宴を行なはる、承久に右馬權頭頼茂朝臣うたれし時、又やけにけり、やがて造内裏ありしに、この櫻のたね大監物源光行が家にうつしうへたるよし聞へて、めしてうへられけるとぞ、いづれの時のたねにてか有けん、おぼつかなし、其櫻もいく程なくてやけぬれば、今はあとだにもなし、くちおしきこと也、

〔古今要覽稿〕

〈草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0304 紫宸殿左近櫻 左近の櫻といふは、紫宸殿の前東方にあり、平安城草創の時よりの樹といへば、〈禁秘抄〉桓武天皇の御時より有しなるべし、天徳の火にやけたるは草創よりの樹にや、其後康保元年十一月植られしは、そのとしに枯たり、その二年正月植られたるは、三月花宴せさせ給ひしといひ、その後度々燒て、堀川院の御時に植られし樹、順徳院の御時までは殘りしとなり、〈同上〉左近衞大將櫻の東に列 すべきよし、〈延喜御記〉さだめられしより、この櫻かるれば近衞大將これをうふる〈藻鹽草〉ことヽはなりしなるべし、かく度々の火にやけし櫻にて、八重なりし時も、一重なりし時も有しなるべし、然るを兼好法師は必一重なるべきよしいひたり、世に南殿といふは、もとこの左近の櫻なるが故に、しか名付しといひ傳へたれば、八重なりし時も有しなるべし、こヽに載たるはいづれの御時の櫻にや、定かならざれども、その一重なりし折にうつしたりし種なるべし、次に出せるもをなじく、この櫻の種なり、うつし植たりし人の心のまヽに、紫宸殿左近櫻、平安左近櫻と名付たるのみにして、をなじく左近の櫻なり、たヾうつし植られし折によりて、その樹はおなじからざるべし、また或人曰、嵯峨清凉寺地藏堂の前に櫻あり、この櫻を平安櫻(○○○)と呼べり、時平公の植られし櫻なりと云、又貞信公のうへられし木なりともいへり、しかれば此花を寫せしもの歟、その花を見ざれば決しがたし、佐藤成裕〈平三郞、水戸殿御家人、〉曰、この平安左近櫻と稱するもの往々あり、人の珍重せしところ、古への絶品にしていやしからず、南都へ移し植れば、瓣大にして一朶七八莖にいたる、北地に植れば花小なりといへども色尤よし、

〔今昔物語〕

〈二十四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0305 敦忠中納言南殿櫻讀和歌語第三十二 今昔、小野宮ノ大キ大臣左大臣ニテ御座ケル時、三月ノ中旬ノ比、公事ニ依テ内ニ參リ給テ、陣ノ座ニ御座ケルニ、上達部二三人許參リ會テ候ハレケルニ、南殿ノ御前ノ櫻ノ器ノ大キニ神サビテ艷ヌガ、枝モ庭マデ差覆テhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001bb7f.gif ク榮テ、庭ニ隙无ク散リ積テ、風ニ吹キ被立ツヽ水ノ浪ナドノ様ニ見エケル、

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0305 墨染櫻(スミソメザクラ)〈城州深草〉

〔古今和歌集〕

〈十六哀傷〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0305 ほりかはのをほきおほいまうちぎみ、身まかりにける時に、ふか草の山におさめてけるのちによみける、〈◯中略〉 かむつけのみねを 深草の野邊の櫻し心あらばことしばかりはすみぞめにさけ

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0306 雲珠櫻(ウズサクラ)〈城州鞍馬名木、見藻鹽、〉

〔大和本草〕

〈十二花木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0306 櫻〈◯中略〉 鞍馬ノ山ノ雲珠(ウズ)櫻トハ、藻鹽草ニウズハ、カザリ鞍ノ具ナリウス櫻トヨメルモ、クラマノ山ニソヘタルナリトイヘリ、ウス櫻トテ別ニ櫻アルニハアラズ、順和名ニ雲珠爲飾未詳、和名宇須、

〔還魂紙料〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0306 秋色櫻(○○○) 俳諧をもつて其名を知られたる秋色は、江戸小網町菓子屋の女なり、幼名を阿秋といふ、十三歳のとき上野の花見にまかりて、清水堂の邊、井の端にありて、大般若といふ櫻を見て、井のはたの櫻あぶなし酒の酔と口ずさみぬ、しかりしよりその櫻を秋色櫻といひけるよしは諸書に載て、たれ〳〵も知るところなり、其刻の老樹は枯たれど、今も其跡に糸櫻を植て秋色櫻といふ、觀音堂の辰巳にて、側に井あり、井は御供所とかいふ所の板桓の裏なり、昔は此垣無かりし故、かヽる發句をなしたるなるべしと思ひをりしが、つら〳〵考れば此説おぼつかなし、

〔古今要覽稿〕

〈草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0306 右衞門櫻(○○○○) 武藏國豐島郡柏木村に立所なり、楊貴妃の變種とおもはるれども、莖の下にむかふを異なりとす、 右衞門櫻之由來 抑このさくらは、長元年中ゑもんの佐源頼季朝臣、勳功の賞に此地を給らせ給ひ、こヽに御館をいとなみ住せ給ひし比、家門繁榮の兆を見せよと、御手づからひとへのさくらをうへさせられしに、その花八重をまじへて咲出けり、是よりして深く此樹をめでさせ給ひ、春ごとに花の宴遊をぞ催されける、其後百六十餘歳をへて、江戸民部大輔頼介、當時再興のみぎりゐかきをなし、一 面の碑をたつ、弘安の兵火に燒れて霜樹たちまちかれぬと見へしが、年かへりてひこばへさらに花をふくみ、枝葉なをもとの如はんもす、亦天正のころ野火の爲に、伽藍は一時の烏有となるを、祝融のおしむによりてか、此木はつヽがなりけり、享保のはじめに至て、四百餘歳の舊樹をのづから雨露の惠を辭すといへども、又ひこばへ弘安の往古の如し、今に至て佐殿の俤をとヾめ、源家に南山の壽を獻ず、寛永年中春日の御局、尾州千代姫君様、當山御再營の時、此花奉りしより、いまなを兩御殿へさヽぐるの外、一枝をだにおる事をゆるさず、佐殿と申は、河内守源頼信公の御子、八幡太郞義家公には御伯父君なると也、 文化十一甲戌年三月 圓照寺現住隆晃代

〔武江産物志〕

〈遊觀〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0307 櫻 上野山王社前〈ひとへのひがん櫻、立春より六十五日ごろよりひらく、〉 同清水觀音堂後 同山門の前 同大佛堂前 同慈眼堂 同寒松院 同護國院〈ひがんしだれ〉 同〈谷中門清水門内寺院ひがんしだれ〉 同車阪〈ひとへ〉 絲櫻〈増上寺〉 傳通院大黒社内 谷中善照寺〈ひがんしだれ〉 根岸西藏院〈ひがんしだれ〉 根津權現 養福寺〈日暮里〉 谷中七面境内〈ひがんしだれ〉 乘圓寺〈鳴子村ひがんしだれ〉 長谷寺〈麻布〉 光林寺〈麻布〉 麻布廣尾〈木下屋敷〉 右衞門櫻〈大久保柏木村〉 雲井櫻〈傳通院寮舍〉 駒込神明前〈ひとへひがん〉 文箱櫻〈市ケ谷火ノばん丁〉 芳野櫻〈上野〉 犬櫻〈上野〉 秋色櫻〈清水御供所〉 感應寺〈谷中〉 瑞林寺〈谷中〉 飛鳥山〈八重、立春より七十日頃、〉 隅田川〈同上〉 王子權現 根津權現 御殿山〈品川〉 小金井〈玉川上水邊、立春より六十日餘、〉 廣福寺〈玉川〉 千手院〈千だがや〉 深川元八幡 大井の櫻〈品川來復寺常蓮寺にあり、立春より七十七八日頃、〉 鹽竈〈高田明神〉 金王櫻〈青山教覺院〉 兼平櫻〈小日向〉 延命櫻〈品川來福寺〉 泰山府君〈三田〉 千本櫻〈淺草〉 淺黄櫻〈感應寺長命寺〉 歌仙櫻〈深川八幡〉 百枝櫻〈谷中妙林寺〉 九品櫻〈田ばた六あみだ〉 母衣(ぼろ)櫻〈西ケ原〉 八重垣〈神田明神〉 十月櫻〈王子權現〉

〔佐渡志〕

〈四古蹟〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0307 御所櫻(○○○) 羽茂郡小木村海潮寺ニアり、花ハウス紅ノフタヘナルガ、殊ニ葩大キヤカニシテ、其香ノ深キコ ト又類ヒナク、尋常ノ櫻ニハ似ルベクモアラズ、傳ヘイヘラク、昔シ順徳上皇極テ櫻ヲ愛サセタマヒ、遷幸ノノチ人シテ都ヨリ數種ノ花ヲメサレ、泉ノ御所ノ南ニゾ栽サセラレケル、其中ニ此一種ノミ水土ニ合ザリケレバ、重テ御ミヅカラ所ヲ撰バセタマヒ、爰ニウツシテ栽置セタマヒケルトナリ、中ゴロマデハ世ニ移ル老木ニテヤアリケム、越後ノ國ノ古キ童謠ニモ、佐渡ノ三岬ノ御所櫻、枝ハ越後ニトウタヒヌ、何レノ頃カ枯ルコト二タビニ及ビテ、今ハ其蘖生ナリトイフ、〈海潮寺縁起トイフ物ニハ、怪シキコトノミチ記シテ、實説ニ纔ニ其末ニ出セリ、今コヽニ記ス所ハ、加茂郡井内村ノ神職本間某トイフモノヽ家ノ舊記ニシタガフ、〉

〔閑窗瑣談〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0308 母櫻(○○) 紀州野中村に秀衡の母櫻といふ名木あり、奧州の旅客は何れも此櫻を尋來るといふ、其由來は委しく知れず、高さ八九間の木なり、

〔西遊記〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0308 十六日櫻(○○○○)伊豫國松山の城下の北に、山越といふ所あり、此處に十六日櫻とて、毎年正月十六日には、此さくら滿開して見事なり、松山より花見とて貴賤群集す、寒氣面をそぎ、餘雪梢を封ずる頃に、此さくらのみ色香めでたく咲出れば、遠近の人ともにもてはやして、殊に其名高し、過し年先太守より和歌の御師範京都の冷泉家へ、此花を贈り給ひし事あり、其時冷泉殿より御返事の御和歌あり、 十六日ざくらといふ花を、頃しも睦月半のたよりに折こせしを、末の四日に都に來りつきて、色もうるはしく、驚くばかりの初花櫻の花になん、賞翫の辭、 きゑのこる、雪かと見れば、年々の、む月半に、さくといふ、初花櫻、はつ春の、柳の木のめ、それもまだ、色別そむる、ころにはや、若葉催し、ほころぶを、散さぬ風の、たよりもて、心有人の、見せばやと、折こせはこそ、けふ見そめつれ、 返歌 初春の初花櫻めづらしき都の梅のさかりにぞ見る 猶此外に、都鄙の詩人歌人俳人など、見る人ごとに吟詠して賞翫す、予が彼國に遊びしは四月の頃なりしかば、花の時におくれて見ざりき、殘り多き事なり、彼國の人に此櫻の由來を聞くに、むかし山越の里に老人有けるが、年殊に老て其上重き病にふし、頼みすくなくなりけるに、只此谷の櫻に先立て、花をも見ずして死になん事のみをなげきて、今一たび花を見て死しなば、浮世に思ひのこす事もあらじなと、せちに聞へければ、其子かなしみなげきて、此櫻の本に行て、何とぞ我父の死し給はざる前に、花を咲せ給はれと、誠の心をつくして天地にいのり願ひけるに、其孝心鬼神もかんじ給ひけん、一夜の間に花咲亂れ、あたかも三月の頃の如くなりけり、此祈りける日、正月十六日なりければ、其後は今の世にいたるまでも、猶正月十六日に咲けるなりとぞ、其由來も正しかりぬ、又伊勢國白子といふに、子安の觀音とて名高き寺あり、其寺内に不斷櫻(○○○)とて常に花咲ける櫻あり、是は都近ければ古今ともに其名高く、歌人俳人もつとも吟詠多し、只三月は殊に花多く、其餘は花すくなし、冬などは纔に尋求めて見付る程なり、然れども常に其はなたへせずして咲る事、世にたぐゐなき名木なり、又薩州には崎島とて冬の内より咲る櫻あり、予が遊びし年は殊に暖なりしゆゑにや、寒中に櫻多く咲たれば珍敷て、所の人にたずねけるに、崎島櫻(○○○)とていつもかくのごとしといふ、正月はじめには眞盛なり、彼國は人家に多くうへてめづらしからず、崎島とは琉球の領分にて、琉球より南の方二三百里へだたれるよし、誠に南國なればかくもあるべし、此さくらも都近くへ移しうへば、必かく早くは開まじ、

〔古今要覽稿〕

〈草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0309 薩摩緋櫻(○○○○) 怡顏齋櫻品云、薩摩に緋櫻といふものあり、名はおなじく、花形大に異なり、薩州鹿兒島より琉球へゆくみちに、みちのしまといふ所にあり、はなは正月上元に最盛なり、冬より芽生ず、花重瓣、紅 梅に似てはなはだ紅し、葉も樹の皮もまつたく櫻に異なることなし、此種東山泉涌寺悲田院にあり、然れども花いまだ貼す、是暖國の木、京地のさむき地へうつしたる故、木長ぜざるものなり、京師の緋植とは別種なり、予悲田院に過て目擊、

櫻名所

〔義演准后日記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0310 慶長十年正月二十日、櫻木百本程植之、當寺〈◯醍醐〉花名所之故也、凡毎年植了、上古ハ櫻會トテ花盛ニ大法會被行之、建武已來歟、退轉無念々々、

〔山城名勝志〕

〈十葛野郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0310 嵐山(○○)〈在大井川南法輪寺西

〔雍州府志〕

〈一山川〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0310 葛野郡 嵐山 在大井川之西、曾言龜山院摸和州嵐山千本櫻於山上、今又處々殘、

〔新千載和歌集〕

〈二春〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0310 題しらず 後宇多院御製 あらし山これもよし野やうつすらん櫻にかヽる瀧のしら糸

〔大和本草〕

〈十二花木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0310 櫻〈◯中略〉 吉野(○○)ノ櫻ハ古來今ニ至テ多シ、山谷ニ滿リ、麓ヨリ咲初テ、奧ノ院ノ峯ニ至リ、中道ト左右ノ谷ヤウヤク咲ツヾク、其間一月アリ、盛ナル時目ヲ驚カス、東西ノ谷々、數里ノ間櫻多シ、他處ノ花ヨリウルハシ、如此美觀恐クハ華夏蠻貊共ニアルベカラズ、其花立春ヨリ六十五日ヲ盛トス、寒温ニヨリテ少遲速アリ、皆單花ナリ、八重ハナシ、八重櫻ハ奈良ヨリヲコレリ、

〔拾遺和歌集〕

〈一春〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0310 題しらず よみ人しらず 芳野山きえせぬ雪と見えつるはみねつヾきさく櫻なりけり

〔江戸名所圖會〕

〈十九〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0310 隅田河堤 深堀橋にはじまり熊谷に至る行程、凡拾六里、是を熊谷堤と云、天正二年、小田原北條氏これを築たりといへり、御當家にいたり、官府の命ありて三圍稻荷の邊より、木母寺の際迄、堤の左右へ桃櫻柳の三樹を殖させられければ、二月の末より彌生の末まで、紅紫翠白枝を交へ、さながら錦鏽を晒すが如く、幽艷賞するに堪たり、またhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000090.gif 菜(すみれ)、碎米菜(げゝばな)盛りの頃は、 地上に花氈を敷が如く、一時の壯觀たり、

〔守國公御傳記〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0311 江戸本所深川出水ノ時、動モスレバ屋宇迄沒シ、溺死等モ少カラザレバ、公〈◯松平定信〉建議シテ高キ臺ヲ三ケ所ニ作リ、中洲〈永代橋ト大川橋ノ間也〉ヲ取拂ヒ水患ヲ免ルヽ事ヲ得タリ、享保頃黒水ノ堤ニ植玉ヒシ櫻ノ殘少クナリシヲ、有司ニ命ジテ植續セ玉フ、今ハ雪トモ雲トモナリテ、都下ノ人隅田川ノ櫻トテ、盛ニ賞スルハ是也、

〔江戸名所圖會〕

〈十五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0311 飛鳥山 數萬歩に越たる芝生の丘山にして、春花秋草夏凉冬雪眺あるの勝地なり、始元亨年中、豐島左衞門、飛鳥祠を移す、〈祭神事代主命なり〉因て飛鳥山の號あり、寛永年中、王子權現御造營の時、此山上にある飛鳥祠を遷して、權現の社頭に鎭座なしけり、其後元文の頃、台命によつて、櫻樹數千株を植させらる、内には遊觀の便とし、外には蒭堯の爲にす、年を越て花木林となる、爾しより騷人墨客は句を摘、章を尋ぬ、牧童樵夫はhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651a0b.gif を刈、薪をとる、殊にきさらきやよひの頃は櫻花爛熳として尋常の觀にあらず、熊野の古式に春は花を以て祀るといへるに相合するもの歟、

〔有徳院殿御實紀附録〕

〈十六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0311 吹上の御庭に櫻楓の苗多く叢生したるを御覽ありて、小納戸松平專助當恒〈後伊賀守〉に、よくやしなふべしと命ぜられしにより、別に花欄を設け、懇につちかひ水すヽぎけるに、いくほどなく其苗五六尺ばかりになりしかば、廣尾(○○)、隅田川のほとり(○○○○○○○)、又は飛鳥山(○○○)に植られし、其中にも飛鳥山は享保五年九月より植はじめて、凡櫻二百七十株、楓百本、松百本植られしに、櫻はわきて年を逐て枝葉しげり、花の時は燦爛として美觀をなせり、其地は小十人のなにがしが采邑なりしを、外にうつされ、元文二年二月十日、山をば王子權現の祠僧金輪寺宥衞にたまはりて、永く社頭に寄附せらる、もとの祠は紀伊國熊野權現をうつしたるゆゑに、公〈◯徳川吉宗〉御發祥の地の鎭守を、はやくよりいはひそめしことをおぼしめされ、かくはなされしなるべし、其つ まびらかなることは、成島道筑信遍に仰せて、山上にたてられし碑文に記せり、此碑石もかねて熊野山の石を引て吹上の御庭におかれしを用らる、さて此神の傳をも信遍につくらしめらる、又山の麓に瀧野川といへる、左右の岸に棣棠をあまた植、山上には櫻に交へて松數十株をうゑしめ、山より西の田づらには菜をつくらしめられしかば、櫻の咲ころ木間よりのぞめば、菜の花こがねをまきたるやうに見えて、其景色いはむ方なし、これ府内近きほとりに、名勝を開き玉ふべしとの御事とぞ、〈一説に享保のはじめまでは、毎春花の時、貴賤みな寛永寺にまゐり遊興せしほどに、まく打まはし酒くみて、らうがはしかりければ、祖廟近きほとりにて、もしや猥りなる擧動あらん恐れなきにあらず、是府内に遊樂の地乏しきゆゑなりとて、飛鳥山を開かれしに、諸人それよりこヽにつどひあつまり、寛永寺はありしに比すれば、大にものしづかになりしとなり、〉

〔江戸名所圖會〕

〈十一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0312 金井橋 多磨川の上水堀兩岸の芝塘にあり、金井村に架す、故に名とす、〈水源小川村より新橋の東北千川上水の掛口の所まで凡一里あまり、兩岸こと〴〵く櫻にして、左右の兩岸九村に跨る、また架す所の橋大小七ケ所ありて、何れも其地名によりて唱ふ、いはゆる金井橋の類なり、此水流西の方羽村より北に播れて江戸に至るまで、直流凡十里あり、是を玉川上水と號す、承應の頃始て此水流を大江戸に引給ふといへり、〉此地の櫻は、享保年間〈或云元文二年丁巳〉郡官川崎某、台命を奉じ、和州吉野山および常州櫻川等の地より櫻の苗を殖らるヽ所にして、其數凡一萬餘株ありしとぞ、〈今存する所の古木一圍にあまるものまヽあり、延享の頃までは、年々に官府よりこれを殖つがせ給ひしとなり、今は其數大に减て凡三百株あまりあり、〉立春より五十四五日目の頃開初て、六十日目を滿開の期とす、七十日目の頃に至りては落花す、最其年の寒暖によりて少しの遲速はありといへども、大方は違はず、就中金井橋の邊は佳境にして、爛熳たる盛には兩岸の櫻、玉川の流れを夾んで、一目千里實に前後盡る際をしらず、こヽに遊べばさながら白雲の中にあるが如く、蓬壺の仙臺に至るかとあやしまる、最奇觀たる故に、近年都下の騷人韻士遠を厭はずしてこヽに來り遊賞す、

〔伊豫古蹟志〕

〈四周布郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0312 千原邑(○○○)夾岸有櫻樹、其中無雜樹、名曰(○○)矢野櫻(○○○)、或曰櫻三里、斯地巖峭嶺稠土性疎惡、故峯崿爲雨善崩毀也、郡尹矢野五郞右衞門曰、櫻柢能盤滋焉、貞享四年命植八千二百四十株、路 北有危岑、尖耑直上曰仙波嵩、其頂蒼翠鬱茂、常噭々清猿鳴、

〔豐前志〕

〈三企救郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0313 嵐山(○○) 嵐山は徳力山(○○○)を云ふ、此處の川を櫻川とも云ふ、蒲生川の川上なり、むかし細川幽齋こヽの景色の京の嵐山に似たればとて、其臣中村某に命じて、嵐山の櫻を根こじにこじて移し植ゑさせ給ひきとかや、細川幽齋の歌、 豐國の嵐の山の麓川岩こす波は櫻なりけり

梅/名稱

〔倭名類聚抄〕

〈十七菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0313 梅 爾雅注云、梅〈莫杯反、和名宇女、〉似杏而酢者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九果蓏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0313 下總本有和名二字、无女作宇女、廣本同、本草和名云、和名牟女、與舊合、按其讀當口呼、合口呼則宇女、无女、其音同也、或曰、皇國古無梅、故古事記、日本書紀、皆無是物、後自西土之、然則宇女是以梅字音名也、〈◯中略〉釋木、梅柟、郭注今本作杏實酢、按説文、梅柟也、詩秦風陳風毛傳同、秦風正義、孫炎曰、荊州曰梅、楊州曰柟燓光曰、荊州曰梅、楊州曰柟、益州曰赤楩、似豫樟、無子也、陸機疏云、梅樹皮葉似豫樟、豫樟葉大如牛耳、一頭尖、赤心、華赤黄、子青不食、大三四葉一藂、木理細緻於豫樟、然則爾雅梅又名柟、即本書木類所載楠是也、説文又云、某酸果也、某或借梅字之、召南摽有梅、曹風其子在梅、小雅四月矦栗矦梅、書説命爾惟鹽梅、夏小正煮梅、昭廿年左傳醯醢鹽梅、中山經靈山其木多桃李梅杏、陸機疏云、梅杏類也、樹葉似杏、葉有長尖、先衆木而花、其實酢、曝乾爲脯、入羊羮http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b088.gif 虀中、又含之可以香http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 口、是可以訓无女、後通以梅爲酸果字、某字廢矣、故郭璞誤以杏而酢釋木之梅、其實爾雅無酸果之梅也、

〔爾雅註疏〕

〈九釋木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0313 梅柟、註〈似杏實酢、柟而占切、〉疏〈孫炎云、荊州曰梅、楊州曰柟、郭云似杏實酢、詩秦風終南云、有條有梅、陸機云、梅樹皮葉似豫樟、葉大如牛耳、一頭尖赤心華赤黄、子青不食、柟葉大可三四葉、一叢木理細緻於豫樟子、赤者材堅、子白者、材脆是也、〉

〔和字正濫要略〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0313 むとうと通ずる類 梅 うめ 和名に、萬葉第五に家持の父大納言旅人卿太宰帥なりし時、家に三十二人集會して、梅の歌をよみ、追加の歌もあるに、三十首は烏梅とかけり、是やがて梅の呉音を轉じて假名に用たり、此時は只音にて、字に付て梅の義有に非ず、やなぎを楊奈疑と書るに同じ、其外は字米、汙米、宇梅、有米、于梅などかけり、牟梅とかける歌一首あれども、異本には宇梅とあれば、他に例するに然るべし、第八第十第十七より廿迄にもおほけれど、餘りなれば出さず、古今集物名に、うめを題にて、あなうめにつねなるべくも見えぬかなこひしかるべき香はにほひつヽ、順家集にも、西四條宮源中納言のもとにて、うもじを給はりてとて、梅津川このくれよりぞながれてのうれしきせヾは見えむみなそこ、かやうにむかしは皆うめとのみ書けるを、中頃より音便の無に近ければにやあらん、むめとのみ書て、今の世はうめとかく人なし、然ども昔をしたふ人は、かよはして書べき也、

〔南留別志〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0314 一梅をうめ、馬をうまといふ、皆音なり、うは發聲なり、日本紀の中に、梅をめのかな、馬をまのかなに用ひたるも、此いはれなり、

〔橿園隨筆〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0314 梅の假字 梅の假字、万葉集にてはまさしくうめなれど、古今集貫之主の自筆の本といふに、むめとあれば、古今集已後の假字には、むと書方よろしとて用る人あり、おのれいまだ其自筆の本といふものは見ざれども、古今集物名に、梅あなうめにつねなるべくも見えぬかなこひしかるべき香はにほひつヽとあり、これはあな憂といひかけたれば、貫之主もうの方を用られたりと見ゆ、これも高鞆説也、

〔新撰六帖〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0314 むめ 家良 日數まつ春ををそしと白雪の下より匂ふ梅のはつ花 爲家 我せこにまづ告やらん梅の花あかね匂ひをきてもみるがに

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0315 好文木(カウブンボク)〈梅一名、晉武帝好文、四時隨之開花、廢學則不開、故名、見起居註、〉

〔臥雲日件録〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0315 寶徳四年壬申二月六日、晩聞、等阿來報、少納言來尋、未誰、某迎之、則大外記蓋遷少納言、也、又及天神之事、名梅曰好文木本據否、或曰、天神詩有之、又曰、白樂天來日本、與住吉大明神相逢、樂天作詩、有白雲如帶繞山腰之句、蓋俗説未所出

〔三養雜記〕

〈四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0315 好文木(かうぶんぼく) 梅を好文木といふことは軒端梅の謠曲にありて、人の知ことなれども、唐土の書にはたえて見えざることなり、臥雲日件録にも見えたれば、ふるく故事とすることヽおもはれたり、さてその來所は、謠古抄に、好文木晉起居注云、哀帝讀書、則四時隨之開華、故好文木と云なり、また東見記に、梅云好文木、故事在晉起居注、晉武好文則梅開、廢學則梅不開云々とあり、武帝哀帝いづれか是なりや、説郛などにも、起居注はくさ〴〵收めたれど、好文木の事は見えず、

〔源氏物語湖月抄〕

〈六末摘花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0315 〈花〉政事要略衞門府風俗歌云、多々良女の花(○○○○○○)の如、加以禰利好牟夜、滅紫色好牟夜、たヾらめの花は、たヾむめの花といへることをあやまれるなるべし、宗祇云、うたひものには、たヾらめの花といふを、たヾ梅の花とかへて源はのたまへり、かひねりとは色紅也、末つむの鼻の色の赤きをいはんため也、

〔比古婆衣〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0315 たヽらめの花 玉の小櫛に、件のたヽうめ花のとあるを論ひて、これはたヽらめの花のと有しを、此名きヽなれぬ故に、らをうの誤ならむと思ひて、さかしらに改めつるなるべし、たヽらめを梅とかへてうたふべきよしもなきうへに、たヽといふことも穩ならざるをや、注にたヽらめの花といふは、たヽ むめの花といへるを書誤れるなるべしとあるは、いみじきひがごとなり、新撰字鏡に、莘太々良女と見え、内膳式には多々良比賣花と見え、後の書どもには、たヽらべともあり、風俗歌花鳥に引給へるとして、注されたるたヽうめはたヽらめなるべしと説はれたる、まことに然ることなり、〈但シウとラとはいとよく似て、つね書訛る字なれば、さかしらに攺たらむと、おしはかりさだむべきにはあらざるべし、〉されど字鏡に太々良女、式に多々良比賣とみえ、後の書どもにたヽらべといへるもの、いかなるものとも注されず、おのれ其ものさねをしらざれば、さらに考ふるに、まづかのたヽらめの花の色のことうたひたまへるは、政事要略〈六十七〉に載たる衞門府風俗歌に、多々良女乃花乃如、加以禰利好牟夜滅紫乃色好牟夜と見えたる歌をうたひ給へる下こヽろは、かの常陸の君の鼻のあかきにそへ給へるにて、下文の命婦が詞に、さむき霜あさにかいねりこのめる色あひや見えつらむ、〈寒き朝、鼻の赤らむさまをふくみていへるなり、〉御つヽしり歌のいとをかしきといへるに相照へて、其こヽろばえみえきこえたれば、多々良女の花は紅色なること著し、〈◯中略〉紫草の分量を三等に減じて、淺く染る法なれば、薄紅に似たる色なるべし、多々良女の花にならべて歌へるをおもへば、その花の色に似て淺きなるべし、さはいへど、其多々良女、いかなるものなるにかと、こヽろにかヽりつるに、此比源順朝臣歌集の古本の寫をみるに、〈此は富士谷成章が歌仙家集の板本の中に見えたり〉田の條里の形に、歌四十五首を廻らしよむべく書とヽのへられつる中の歌に、をり〳〵ににほふたヽべのうめなればをしめどかひな花のにほひや、とみえたり、〈◯註略〉今考ふるに、このたヽべは、たヽらめの急りたるにて、紅梅のことなるべし、〈◯註略〉そは内膳式にみえたる多々良比賣も同物にて、漬年料雜菜の條、漬春菜料の中に、多々良比賣花搗三斗〈料鹽三斗〉と載られたるこれなるべし、さてその多々良比賣花とあるは、紅梅の花にて、搗とはそを搗とりて鹽漬にして奉る料なるべし、〈◯中略〉さるをうちまかせて紅梅の一名のごとくに呼ことヽもなりて、たヽらめともい ひ、又たヽべと急ていふことヽもなりしなるべし、かくておもへば源氏君のかのたヽらめの花のごと云々と歌ひ給へる後に、またかの姫君のもとにおはしてかへるさに、二條院へ紫君のもとにおはして、例の姫君の鼻の色につけたるたはぶれごとして立いで給ふところの詞に、はしがくしのもとの紅梅いととくさく花にていろつきにけり、くれなゐのはなぞあやなくうとまるヽ、梅の立枝はなつかしけれど、いでやとあひなくうちうめかれ給ふとみえたるも、さきにたたらめの花の色と歌ひたまひしに、この紅梅をみて歌よみし給へる趣の、ひヾきあひてぞきこゆるかし、〈◯下略〉

梅種類

〔花壇綱目〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0317 梅珍花異名の事 一重の白梅〈梅の内、にくの中輪、〉 うす色〈中輪なり〉 一重の紅梅〈梅の内、にくの中輪、〉 淺黄梅〈中輪なり〉 八重の白梅〈中輪大輪あり〉 大梅〈黄の大輪也〉 八重の紅梅〈色のこひうす、中輪、大輪有、〉 小梅〈白の中輪也〉 咲分の紅白〈八重、壹重、中輪大輪有、〉 黄梅〈壹重早咲也〉 早咲の紅白〈八重、壹重、中輪有、〉 花座論〈八重のうす色、中輪、〉 とうじ梅〈早咲の中輪なり〉 實座論〈八重のうす白色、中輪、〉 みかいかう〈中輪大輪あり〉 天りう寺〈八重の紅梅なり〉 おうしゆく梅〈中輪大輪あり〉 やくら梅〈中輪大輪あり〉 、まやかう梅〈中輪大輪あり〉 はな紙〈匂ひあり、實あり、中輪、〉本りうし〈八重うす色、中輪、〉 南京梅〈黄の中輪、匂ひ高し、〉 ゑい山紅梅〈中輪大輪あり〉 すわう梅〈中輪なり〉ゆすら梅〈小輪なり〉 難波梅〈うす色の中輪大輪あり〉 とらの尾〈中輪なり〉 難波白〈八重の中輪なり〉 しだれ梅〈中輪なり〉 難波紅〈八重の中輪なり〉 南禪寺〈紅中輪なり〉 豐後梅〈白の一重、中輪なり、〉 軒端梅〈中輪なり〉 越中梅〈白の中輪なり〉 出雲紅梅〈一重の中輪〉 大筑紫〈大輪、實も大なり、〉 讃岐紅梅〈一重の中輪〉 物ぐるひ〈中輪なり〉 加賀紅梅〈八重の中輪〉 輪紫梅〈白少うす色、紫のりん、茶あり、中輪、〉 松浦梅〈紅、八重、中輪、〉 花香實〈薄色、八重の中輪也、〉 備中紅梅〈八重の中輪なり〉 楊貴妃〈薄色小輪なり〉 かうだひ寺〈黄色、茶、如針、〉 ぬき白〈中輪なり〉 からむめ〈大輪なり〉 桃梅〈白一重、中輪也、實如桃、〉 常陸座論〈紅、壹重、中輪也、〉 とび梅〈赤の中輪なり〉 未開紅〈中輪なり〉 ひばい〈中輪なり〉 匂ひ梅〈白の八重、中輪、〉 右は梅の名なり、此外にも色々あるべし、

〔大和本草〕

〈十二花木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0318 梅 萬葉集ニムメノ花、又ウメノハナトモ訓ズ、梅花ハ獨天下ノ花ニ先ダツテ開ク故、百花魁ト云、花兄トス、其香色形容亦百花ニスグレタリ、故花中第一トス、園ニハ必先ヅ梅ヲウフベシ、近年ハ種類多シテ雖擧計、白梅紅梅單葉重葉、此四類ノ外ニ出ズ、范成大梅譜所載梅品多シ、日本ニモ其品數不少、白キ單葉ノ香アルヲ第一ノ好品トス、野ニアツテ未栽接者江梅ト云、又名直脚梅、或謂之野梅、紅譜ニ云ヘリ、江梅尤香多シ、梅ヲ好文木ト云事、晉ノ起居注ニ見エタリ、日本ノ俗ニ好文木(○○○)ト稱スルハ、白梅ノ香スグレタル一種アリ、古今倭漢梅ヲ題詠セシ詩歌アゲテカゾヘガタシ、淺香山(○○○)ハ紅梅ノ單葉ナリ早梅ナリ、紅白梅(○○○)ハ江戸桃ノ如ク、紅白一枝ノ内ニワカル、八朔紅梅(○○○○)ハ八朔ノ比ヨリ開ク、花小ニシテ八重ナリ、西土ニテコレヲ寒紅梅ト云、冬至ニ至テ多クヒラク、梅ノサキガケナリ、畿内ノ寒紅梅ハ西土ニテ淺香山ト云、九月ヨリヒラク八重ナリ、但九月ニ開クハ狂(アダ)花ナルベシ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b070.gif 月ニ開クヲ正時トス、故寒紅梅ト名付ク、凡他ノ紅梅ハ白梅ニヲクレテサク、此二種ハ白梅ニ先ダチヒラク、鵞梅ハ興化志云、實大者爲鵞梅、日本ニテ豐後肥後ヨリ出、故ニ豐後梅(○○○)トモ、肥後梅(○○○)トモ云、コレ梅ノ尤大ナル也、消梅ハ梅ノ尤小ナル也、鵞梅ト大小相對ス、消梅ハ梅志及范至能梅譜ニ出タリ、其花皆下ニ向フ、甲斐信濃ヨリ出ヅ、故ニ信濃梅(○○○)トモ甲州梅(○○○)トモ云、未開紅(○○○)ハ花未開時色紅ナリ、開テ後色淡シ、照水梅園史ニノセタリ、日本ニモアリ、八重ノ梅花ナリ、香アリ、花皆下ニ向フ故ニ名ク、衆梅ヨリ花ヲソシ、又近比黄梅(○○)アリ異品ナリ、緑蕚梅(○○○)近年中華ヨリ來ル、梅譜曰、凡梅花跗蔕皆絳紫色、惟緑蕚梅純緑、枝梗亦青、特爲清高、王世懋ガ花疏ニ爲梅之極品、花小ニシテ盡開カズ、花萼青ク香ヨシ枝青シ、座論(○○)ト俗名ヲ稱スル 梅アリ、花一處ニ多ク開ク、實モ同ジ、同處ニ多ク開キ、實ノリテ座ヲアラソフニ似タリ、花ハ小ニシテ八重ナリ、香ヨシ、梅譜ニ重葉梅結實多雙ト云是ナルベシ、八月梅(○○○)秋ミノル上州ニアリ、シダレ梅(○○○○)其枝如柳其花單アリ重葉アリ

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一五果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0319 梅 ムメ〈萬葉集〉 ウメ〈和名鈔〉 コノハナ〈以下古歌ノ名〉 ハナ ニホヒグサ カゼマチグサ カザミグサ カバヘグサ ミドリノハナ カトリグサ ハツナグサ ツケグサ イヒナシノハナ 花一名百花魁〈故事白眉〉 花魁〈典籍便覽〉 世外佳人 鶴膝枝 清友 清客〈共同上〉 官長〈事物異名〉 羅浮仙子〈同上〉 羅浮仙〈名物法言〉 索笑客〈花鳥爭奇〉 東閣〈尺牘雙魚〉 冰柟〈花暦百詠〉 梅伯華〈事物紺珠〉 冰姿 玉骨 大庾公 自知春 香雪〈共同上〉 冰肌〈留青新集〉 實一名雪華〈行厨集〉 含酸〈同上〉 柟果〈典籍便覽〉 梅柟〈通雅〉 蠟果〈事物紺珠〉 含酸子〈同上〉 嘉實〈書言故事〉 止渇〈同上〉 乾http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000091.gif 〈名物法言〉 古ヘ單ニハナト云ハ梅花ナリ、後世ハ櫻花ヲハナト云ト、八雲御抄ニ見ヘタリ、唐山ニテハ牡丹ヲ單ニ花ト云、梅ニ品類多シ、文長先生ノ梅品六十種ヲ載ス、後世新花年ゴトニ出テ、今ハ三百餘品ニ至ル、梅譜ハ百川學海ニアリ、コヽニ引クトコロハ其略ナリ、梅ハ正月ニ花ヲ開クヲ常トス、冬月花ヲ開クモノハ早ザキナリ、漢名早梅〈梅譜〉八朔梅(○○○)、冬至梅(○○○)モ、皆早梅ニシテ多ハ紅色ナリ、單葉ノ白梅モアリ、又實ノ早ク熟スルモ早梅ト云群芳譜ニ出ヅ〈◯中略〉凡ソ單瓣ノ梅ハ五出ナリ、又六瓣ナルモアリ、コレニ紅白二種アリ、紅ナルヲ花戸ニテ退場(ノキバ)ノ梅ト云、形小ニシテ尖リ、瓣ゴトニ離レテ連ナラズ、故ニ名ク、又圓瓣ナルモノアリ、之ヲ西行ムメ(○○○○)ト云、皆六瓣梅ナリ、孝豐縣志ニ出、又軒端(ノキバ)ノムメアリ、今京都誓願寺和泉式新墓上ニアルハ小川ムメ(○○○○)ニシテ、眞木ハ相國寺中林光院、及誓願寺方丈庭中ニアリ、千葉ニシテ小ク、心凹ニシテ外瓣紅ク、内ハ白ク紅點アリ、江梅(○○)ハノムメ(○○○)原野ニ自ラ生ズル單葉ノムメナリ、白色ニシテ香氣アリ、花ニ大小アリ、汝南圃史ニ野 梅ト云、梅譜ニ直脚梅ト云、又詩ノ題及句中ニ江梅ト云ハ江邊ノ梅ヲ云、花史左編ニ出ヅ、消梅(○○)ハコムメ(○○○)、シナノムメ(○○○○○)、樹葉ハ尋常ノ梅ニ異ナラズ、花ハ單ニシテ白ク、下ニ向フテ開ク、實ノ形正圓ニシテ小ク、金柑ノ如シ、二三十一枝ニ簇リ垂ル、梅雨中ニ早ク熟ス、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ヲ併テ食フ、緑蕚梅(○○○)ハアヲジク(○○○○)、花戸ニハ誤リテ玉蕚梅ト呼ブ、ソノ花蕚緑色嫰枝モ緑色、尋常ノ梅ノ蕚枝共ニ赤色ナルニ異ナリ、花ノ色ハ白クシテ單梅千葉アリ、一名平樂香、〈事物紺珠〉重葉梅(○○○)ハ、ザロンムメ(○○○○○)、實ザロン(○○○○)、花ザロン(○○○○)、ノ二種アリ、重葉梅ハ實ザロンナリ、一花ノ蒂中ヨリ三四實ヲ生ズルヲ云、一名品字梅、〈泉南雜志〉三品梅、〈葯圃同春〉大抵三實ノ者多シ、俗ニスヾナリ(○○○○)ト呼ブ、又一種ヤツムメ(○○○○)、一名ヤツブサムメ(○○○○○○)ト云アリ、越後八梅ト云地、親鸞上人ノ墓所ノ旁ニアリ、越後七不思議ノ一ツナリ、一蒂ノ内八實ヲ結ブ、長ズルニ及テ落ル者多ク、熟スル者只二三實ナリ、其未熟ノ時觀ツベキ者ナリ、京師本願寺ニモ此樹アリ、花ハ單瓣白色ナリ、紅梅(○○)ハ通名ナリ、蕾ノ時モ開キタル時モ同ク紅色ナルヲ云、今世ニ紅梅ト云ハ、蕾ノ時赤クシテ開ケバ變ジテ色淺シ、是未開紅(○○○)〈俗名〉ナリ、花家ニテハ誓願寺ムメ(○○○○○)ト云、紅梅ノ品類數多シ、杏梅(○○)ハアンズムメ(○○○○○)、一名モチムメ(○○○○)、單葉ニシテ色淺ク杏花ニ似タリ、凡ソ梅ハ味酸キ者ナレドモ、此梅ハ酸味ナク杏ニ似タリ、故ニ名ク、又杏ノ味酸者ヲ梅杏ト云、鴛鴦梅(○○○)ハハナザロン(○○○○○)、花一所ニ簇リ開ク者ヲ云、苦楝椄梅云云トハ黒梅(○○)ノコトナリ、花ニ黒ミアルヲ云、汝南圃史ニ、或云、接苦楝樹上則成墨梅、然詢之老圃、獨宜紅梅、餘倶不然ト云、烏梅(○○)ハフスベムメ(○○○○○)、熏シテ乾スナリ、市ニ煤ヲ塗タル者アリ宜シカラズ、一名巣烟九助〈藥譜〉白梅ハムメボシ、紫蘇ノ葉或ハ牽牛花(アサガホ)ヲ入、色ヲ赤クスルコトアリ、是ヲ紅梅〈北戸録〉ト云、梅子ニテ製スル食品多シ、汝南圃史ニ詳ナリ、〈◯中略〉 増、六瓣白花ノ者ヲ水仙梅(○○○)、又六瓣梅トモ云、花ノ形尤大ニシテ、其香勝レタリ、花六瓣ナルヲ以テ水仙梅ト名ク、又其香氣水仙ニ似タリトシ、或ハ初白色ニシテ後淡紅ヲ帶ブ、故ニ酔仙梅ト名ク トモ云、誤ナリ、桃洞遺筆ニ廣東新語ヲ引テ、五行配當ノ説ニ由テ、水先梅ト書モ鑒説ナリ、又阿州板野郡徳命村千光寺ノ梅ハ、天下第一ノ名木ナリ、故ニ此寺ヲ梅ノ坊ト云、其枝地ニ著テ根ヲ下シ横行ス、廣サ二間許リ、長サ十五間許リ、上ニ細條ヲ束子、架ヲ結テ堤ノ如シ、花ヲ綴ルコト甚多ク尤觀美ナリ、白花千瓣、其香氣殊ニ勝レタリ、俗ニ八重梅ト呼ブ、實モ亦大ナリ、此樹數百年ノ古木ナリ、即范成大ガ臥譜ニ、古梅會稽特多、去城二十里有臥梅、相傳唐時物也、謂梅龍偃蹇十餘丈ト云是ナリ、大和本草ニ、臥梅(○○)ハ別種ニ非ズト云ハ誤ナリ、邦俗白花ニシテ香氣勝レタルヲ好文木(○○○)ト稱ス、唐山ニテハ唯梅ヲ好文木ト稱ス、晉ノ起居注ニ見ヘタリ、曰晉武好、文則梅開、廢學則梅不開、故梅云好文木也、又墨梅ト呼モノアリ、花戸ニ誤テ黒梅ト云、花深紫色ニシテ微紅ヲ帶ブ、八重ノ大輪ナリ、蕚黒色ヲ帶ブ、滿開セズシテ落易シ、又王敬美梅疏云、鶴、頂梅種園中果、不几案也、熟而可食、曰鶴頂梅、時梅鶴頂最佳、以其紅大如鶴頂、コレ興花府志ニ實大者爲鵞梅ト即同物ナリ、和産ハ豐後肥後ヨリ出ヅ、故ニ豐後梅(○○○)又肥後梅(○○○)トモ名ク、甚大ニシテ二寸餘ニ及ブ、然レドモ實ヲ結ブコト甚ダ希ニシテ熟セズ、落易シ、又一種トキハバイ(○○○○○)ト云アリ、枝赤褐色ニシテ軟ナリ、故ニ花戸ニテシダレ梅ニ作ル、葉粗クシテ深キ鋸齒アリテ、榔楡ノ葉ノ如シ、花ハ紅梅ト同ジ、香氣モ紅梅ニ異ナラズ、八重ニシテ淡紅色、又單葉ノ者アリ、コレ楡葉梅(○○○)ナリ、畿輔通志云、楡葉梅、葉似楡、花開如紅梅、故名、嫰枝頗柔、可以編籬ト是ナリ、百品考ニ見ヘタリ、

〔一話一言〕

〈十六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0321 白山梅〈◯中略〉 白山のみそのヽ梅のか心にしみわすれがたく、同月〈◯二月〉十七日ふたヽびゆきてみる、老杜がかさねて何將軍の山林にあそびし心地す、今日は豚兒をもぐしたれば、案内のものにとひて梅の種類をわかち、矢立とりいでヽ書つく、芥川氏のかたは梅の種類多し、 丁梅〈養老梅ともいふよし、案内のものヽいふ、うす紅、花も實もよし、もとは此種のみありしが、後に多くの種をうへしとぞ、〉  四月十六日重遊此園芍藥花、岡田氏云、丁梅は、享保六年紀州丁(ヨボロ)村より御取よせありし梅なる故に、丁(ヨボロ)梅といひしを訛りて、養老梅と云しとなん、紀伊國海士郡紀州御領丁(ヨボロ)村、今はヤウラウ村と云、 箙の梅〈白く重ねあつし〉 鶯宿梅〈白八重小りん、匂ひふかし、〉 加賀梅〈白く一重にして花形梅鉢の紋の如し、實もよし、〉 ぜんぎ梅〈白一重、加賀梅に似て實なし、〉 蘇芳〈紅八重〉 座論〈紅一重〉 更紗〈白に紅文あり〉

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0322 紅梅(コウバイ)

〔拾遺和歌集〕

〈七物名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0322 紅梅 うくひすのすつくるえだを折りつればこをばいかでかうまむとすらん

〔玉勝間〕

〈十四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0322 紅梅の假字 紅梅の假字、字音をしるす時には、こうばいと書べけれど、つねにはこをばいと書べし、拾遺集物名の歌に、これを子をばいかでか生むとすらむとよめるを、此時かりに宇(ウ)を乎(ヲ)に通はしてよめるものと心得るはたがへり、こはもとより、常にもこをばいといひもし書もせし也、古今集物名に、芭蕉を心ばせをばとよめると同じ例也、又和名抄に、襖子阿乎之(アヲシ)と見え、他の書にもあをといへる、此たぐひみな宇(ウ)の韻を乎(ヲ)となほして、やがて訓にしたるにて、燈心の美(ミ)、錢(ゼニ)、蘭(ラニ)などの爾の類なり、

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0322 鸎宿梅(アウシユクバイ)〈紅梅一名、村上帝朝因西京紀貫之女詠歌故事、見世繼大鏡、〉

〔拾遺和歌集〕

〈九雜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0322 内より人の家に侍ける紅梅をほらせ給けるに、うぐひすのすくひて侍ければ、家のあるじの女、〈◯紀貫之女〉まづかくそうせさせ侍ける、 勅なればいともかしこしうぐひすの宿はととはヾいかヾこたへん かくそうせさせければ、ほらずなりにけり、

〔世事百談〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0323 梅に鶯 梅に鶯をよめること、和歌には常のことなり、鶯宿梅の故事、拾遺和歌集に見えたるより、猶さらなべて世人も鶯といへば、梅はかならずあるべきものとしもおもへり、いとふるくも、萬葉集にも、鶯には多く梅をよみ合せたり、詩にも葛野王の春日翫鶯五言に、素梅開素靨、嬌鶯弄嬌聲といふ句あり、唐土にはいはぬことヽのみおもへるに、王維の早春行の詩に、紫梅發初遍、黄鳥歌猶澀といへるとぞ鶯梅を對する據ともすべし、

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0323 未開紅(ミカイコウ)〈紅梅一名〉

〔佐渡志〕

〈四古蹟〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0323 未開紅 コノ梅雜太郡竹田村大運寺ニアリ、莟ハ薄紅ニテ開ケテ後ハ尋常ノ梅ナリ、天正ノ頃高阪彈正ガ姪、春日總次郞トイフモノ、此國ニ遁レ來テ、大運寺ノ羅漢堂ニ寓居シテ、此所ニテナクナリケルガ、鉢植ヲ携來テコヽニ植シトイフナリ、總次郞ハ癌噎ヲ煩ヒテ世ヲ早クセシトイヘリ、

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0323 豐後梅(ブンゴムメ)〈豐後大分郡用内所産支那所謂鵝梅是矣、〉 消梅(コムメ)〈本朝俗(○)、鵝梅爲(○○○)豐後梅(○○○)、消梅爲(○○○)信濃梅(○○○)、凡諸品如此者居多、蓋斥州縣大小、所以暗令http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif美惡也、〉 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019ab3.gif (同) 燕梅(同)〈西京雜記〉

〔和漢三才圖會〕

〈八十六五果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0323 梅〈◯中略〉 消梅、實圓鬆脆、多液無滓、惟可生噉煎造、〈◯中略〉杏梅〈今云豐後梅乎〉花色淡紅、實扁而斑、味全似杏、〈◯中略〉豐後梅〈大花白帶淡紅色八重、其子最大、此所謂杏、梅鶴頂梅之類乎、〉

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0323 寒梅(カンバイ)〈又云早梅(○○)〉

〔古今要覽稿〕

〈草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0323 はやざき〈大雪梅〉 はやざき〈怡顏齋梅品〉寒梅〈地錦抄〉今はやざき寒梅と呼花なし、大雪梅と稱せり、〈◯中略〉怡顏齋が梅品に早梅とすれ共、是は西土の梅譜に本づきての説也、皇國にて早梅と稱するは、八朔梅、冬至梅、寒梅の 類總て春を待ずして開くもの皆早梅也、されど梅譜に重陽日親折之といふ説あれば、是八朔梅の類にも有べし、

〔古今要覽稿〕

〈草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0324 八朔梅(○○○)八朔梅は八月朔日ごろよりさきそめて、冬至にいたり多くひらく、故にしか名付しなり、西國にては寒紅梅(○○○)といふ〈大和本草〉といへり、何人のいつ頃よりいひ出し名にや、そのはじめをしらず、花房正矩園中百種梅の中に、古巣といへるは、八月頃よりさき、八重なりといへば、今いふ處の八朔梅ならんに、その名をあげざれば、當時いまだ知人まれなりしにや、和漢三才圖會にものせず、松岡玄達は八月より二月にいたる一名からくれなゐといふといひ、〈梅品〉春田久啓は八朔ころより一二輪さきそめて初春にいたると〈韶勝園梅譜〉いへり、また一種八九月頃と初春と二度さく花に八朔といへるあり、

梅栽培/梅利用

〔廣益國産考〕

〈八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0324 梅を植て農家之益とする事 諸國に梅を植置、詠(ナガメ)とするは、實をとるにあらず、梅の艷しきを賞翫するのみなり、又實を賞し梅干とするは、珍花を撰ばず、實大粒にして肉厚く、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ちひさきを植る事也、いつの頃よりか、大坂近邊に治左衞門と云梅は、花薄紅の八重にして艷はしく、紅梅の八幡といへるもの、開口に同じくいと見事也、大坂に便宜よき所は、註文して取寄植給ふべし、池田部の部といへるは、植木を作りて諸國にひさぐを業とする一村也、扨此梅は梅干として出さヾれば益にはなるべからず、浪花にては是を何千石といへる程、干して小き樽に詰、江戸へ送る事夥し、近頃遠州相良にて大坂の通に小樽詰にして送るに、一廉益を得るよし、扨此梅干に製し様あり、梅の熟し過たるは园(つぶ)れて費となれば、少し赤味さして堅き時とりて、酒の古樽に梅壹斗に鹽三升のわりに漬、おもしをしつかり置、六月土用中におもしをとり、水をしたみ干べし、干様は、ほし場に砂ぼこりの來らざ る平面の小石なき所にうすき藁筵を敷、夫に入、一ならびに重ならぬやうして干べし、此干筵厚きは梅に色付ず、薄筵は地氣を通ず故歟、色ほんのりと赤みさして艷よし、能天氣ならば二日程にて宜しけれども、日勢ぬるきの時は三四日も干べし、扨其干揚たるを、すぐに樽に詰、四方に細繩をかけ、諸方へ送るべし、 又小田原名物の紫蘇卷梅は、右の如く青漬にしたるを、紫蘇にて卷也、扨紫蘇の仕立やうは、丸葉の兩面を蒔育べし、縮面は惡し、七月盆後頃、能成長したるしそをこきあげ、葉をむしりて重ね、鹽押にして、十日計置、葉の和らかなる頃、右青鹽漬の梅の水をしたみ捨、紫蘇の葉一枚づヽを卷て、先ぐりに、壺か、桶に詰べし、然して一ケ月程置ば、青漬の梅十分紫蘇汁に漬たる如く見事に染る也、小田原漬は決して紫蘇汁につくる事なし、是名物也、 爰に江戸本庄龜井戸に梅屋敷とて有、此所の梅は地をはひて龍の形ちあれば、臥龍梅とて一種の名木也、寛政文化の頃東都に誹諧を樂む一老人あり、隅田川の邊りに地面を求め草庵をむすび、其四方に梅の木の一二尺廻りにもあまれるを、三百六十本調へ植置けるに、新梅屋敷と稱し、春は男女群集せり、其老人〈予◯大藏永常〉に語りて曰、吾風流に梅を植しにあらず、壹本の木に梅の生る事銀四匁ならしにはあるべし、吾が一日の暮し方銀四匁にて足り、さるに依て一年の日數に植たりとなん、梅も能作れば壹本にて錢貳貫文位取上るもの也、依て梅を植、右記す如く梅干として都會に出しひさぐべし、又我住る屋敷内に無用の樹を植んより、五六本づヽにても植置なば、五六人暮しの鹽代は取もの也、

〔草木六部耕種法〕

〈十九需實〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0325 梅ハ花ヲ賞玩スルコト極テ篤シ、其事需花編ニ既ニ詳セリ、實ヲ需テ此物ヲ作ニハ、接木スルヲ良トス、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 栽ヲ成長セシメタルハ、實結コトノ遲ノミナラズ、其實肉ノ肥大ナラザルコト多シ、宜ク先其http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ヲ栽テ苗ヲ爲立テ、苗一尺以上ニ及ビタルヲ、植地ニ移シ植ヱ、培養シテ早ク成長セシメ、其幹笛竹(フエタケ)ノ太ニ至リ、乃チ伐テ砧木ト爲シ、極良ナル梅ヲ撰ビ、其ノ梢ヲ接木 スベシ、其法ハ下ノ接木編ノ條下ニ詳ナリ、實ヲ需テ接木スルニハ其實大ニシテ肉肥タルヲ撰ブニ利アリ、紅梅、臘梅、碧梅等ハ實小シ、宜シク白梅、青梢(アヲジク)、豐後(ブンゴ)等、其實大ニ肉肥タル木ノ枝ヲ接ベシ、然レドモ歳暮ヨリ早春ノ間ニ花ヲ賣ノ利、亦少カラザル事ナレバ、此等ノ勘辨モ有ベシ、故ニ野梅ト雖ドモ、花美ク實味苦カラザル者ハ、植テ人世ノ用ヲ利スベシ、又信濃梅アリ、其實小シテ龍葵子(ホウツキ)ノ如ク、鹽梅ニ製スレバhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 齒ニ脆ク、噬碎テ賞味スベシ、且又梅ハ地嫌スルコト少ク、眞土擬土共ニ栽ベク、山中海邊ノ土地ト雖ドモ、培養ヲ懇ニスルトキハ、皆能ク繁榮ス、然レドモ寒糞ヲ用ヒザルトキハ、花發賣結ト雖ドモ皆徒ニ早ク落チテ、用フベキノ時マデハ留著ザル者ナリ、故ニ寒中ニハ其根ヲ去ルコト一尺餘ヲ隔テ、地ニ穴ヲ掘リ、人糞或活物肉、干鰯汁等ノ肥養ヲ饒ニ用テ、上ニ土ヲ覆ヒ置クベシ、

〔庖厨備用倭名本草〕

〈六五果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0326 梅(バイ/ムメ)〈◯中略〉 梅實味酸性平毒ナシ、生ニテ食スレバ渇ヲトヾム、多食スレバ齒ヲ損シ筋ヲ破リ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001afd5.gif 胃ムシバミ膈上ノ痰熱ヲ發ス、 合食禁 黄精ヲ服スル人ハ膈ヲ食スベカラズ、梅ヲ食シテ齒イタム人ハクルミヲカミテヨシ、

〔和漢三才圖會〕

〈八十六五果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0326 梅〈音枚〉 槑〈古〉 〈和名宇女今云牟女〉 烏梅〈布須倍牟女〉 白梅〈牟女保之◯中略〉 按烏梅出於備後三原者良、山城之産次之、白梅俗云梅脯也、豐後之産肥大肉厚味美、用其肉、卷瘭疽治、燒末入咽喉及牙齒藥、又用生梅〈百箇〉黒沙糖〈半斤〉煮爲膏、〈治人息切及馬喘

〔大和本草〕

〈十二花木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0326 梅〈◯中略〉 梅子梅雨ノ時熟ス、白梅ヲ製スル法、熟梅一升鹽三合入、ヲシヲカケ、十日バカリ置テ數日日ニ干シ、カハキタル時、紫蘇ノ葉ニ包ミ壺ニ入ヲクベシ、干スゴシタルハ味アシヽ本草ニ白梅ニ青梅ヲ用ユ、今皆黄梅ヲ用ユ、凡白梅ノ能多シ、人家不闕之物也、梅醤ニ砂糖ヲ加ヘ製ス、酒毒ヲ解シ止渇、烏梅能收斂スレドモ、脾胃生發ノ氣ヲ妨グ、不多用、藥性解曰、風寒初起瘧痢未久者、不驟以此收斂也、

梅名木

〔三代實録〕

〈二十六清和〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0327 貞觀十六年八月廿四日庚辰、大風雨折樹發屋、紫宸殿前櫻、東宮紅梅(○○○○)、侍從局大梨等樹木有名皆吹倒、

〔禁秘御抄〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0327 草木 同〈◯南殿〉 南殿梅〈在瀧口南砌〉 天徳四年十二月十八日栽紅梅於中殿艮角、康保二年十二月廿五〈◯五一本作九〉日御記曰、式部大輔直幹獻梅一株、即栽仁壽殿東北庭、以前日所栽小紅梅栽清凉殿東北庭、此梅去月四日所仁壽殿木也、 仁壽殿艮角梅〈自延喜御時之、又天暦御時被直幹家梅也、◯中略〉 梅壺西白梅、東紅梅之由、在清少納言記、〈◯中略〉 梅 綾綺殿前、應和二年藏人所雜色等栽紅梅於昭陽舍南庭、又栽東庭、左馬頭有年ガ家梅ナリ、

〔古今著聞集〕

〈十九草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0327 菅家、太宰府におぼしめしたちける比、 こちふかばにほひをこせよ梅のはなあるじなしとて春なわすれそ、とよみをき給ひて、みやこをいでヽ、つくしにうつり給ひてのち、かの紅梅殿の梅の片えだ飛〈◯飛以下十六字原脱、今據一本補、〉まゐりておひつきにけり、或時かの梅にむかひ給ひて、 ふるさとの花の物いふ世なりせばいかにむかしのことをとはまし、とながめさせ給ひたりければ、かの木、 先久於故宅 廢籬於久年 麋鹿於住所 無主又有花 かく申たりけるこそ、あさましともあはれともこヽろもことばもおよばね、

〔秋里隨筆〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0328 宰府奇梅 抑宰府天滿神とあがめ奉るは、菅原道眞卿の靈をまつる事は、衆人よくしる所にして、利生あらたにまし〳〵ければ、近國はさらなり、遠つくにより歩をはこびけること、年々歳々とこしなへなり、然に明和の頃、東社屋根葺更(かへ)のさたにおよびけるが、神木の楳樹繁茂して、二三枝本社の破風に垂けり、よつて枝をおろさずしては、葺かゆる事かたかるべしと評定し、其朝社人枝を伐らすべしと出來りけるに、不思議なるかな、かの破風にたれたる枝悉くふりかはりて、葺更のさはりを除けるとなん、是まさに菅神愛樹を惜給ふ所ならむと、諸人奇異のおもひをなしけるとかや、又當社より梅守と號(なづけ)、白き絹をもてかの梅を封じ、朱をもて表に天滿神の文字をしるし出す事なり、さればそのとし〴〵此守を受る諸人の數に應じ、實をむすぶとかや、これらも神の示し玉ふ所ならずや、

〔謠曲〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0328 老松 〈ワキ〉聞及びたるとび梅(○○○)とは何れの木を申候ぞ、〈ツレ〉荒事も愚や我等は唯、紅梅殿と社あがめ申候へ、〈ワキ〉實々紅梅殿共申べきぞや、忝くも御詠歌により、今神木と成給へば、あがめても猶あきたらず社候へ、

〔拾玉藻〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0328 飛梅〈◯中略〉 元來菅家ノ思ヒ人三人有リ、一人ヲバ櫻戸殿ト云、一人ヲバ紅梅殿ト云、一人ヲバ老松殿トゾ申シタリ、〈◯中略〉今安樂寺ニアル所ノ飛梅ト云ハ、紅梅殿ノ御墓ノシルシノ樹ナリト云、櫻戸御前ハ御臺所ニシテ、紅梅殿老松殿ハ妾ナリト云、紅梅殿ノ屋敷跡ハ、今ノ西洞院高辻ニテ、今菅大臣ト云神社ノ鄰リノ趾ナリト云フ、

〔玉勝間〕

〈九〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0328 梅はとぶといふ歌 世俗にいひつたへたる、梅はとぶ櫻はかるヽよの中に何とて松はつれなかるらんといふ歌、源平盛衰記には、菅原大臣、東風(コチ)ふかばといふ御歌をよみ給ひしかば、紅梅つくしへ飛行ければ、同じ御所にならびて有ける櫻の、御言の葉にかヽらざることを恨みて、一夜が中に枯にけるを、源順が歌に、梅はとび櫻はかれぬ菅原や深くぞ頼む神のちかひを、とよみけるよししるしたり、此歌をつくりかへたるにやあらむ、されど此順がといふも、本末かけあはず、いと〳〵つたなき歌也、

〔笈埃隨筆〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0329 難波梅(○○○) 難波の梅といふも、一木とす梅からず、岸の姫松磯訓松などいふが如し、百濟王仁、梅によそへて、仁徳帝を諷諫し奉りし和歌より名譽たり、さるに弘安禮節に曰、難波の別當、源判官殿へ花の制札申請るに、辨慶に仰付らる、其札に、江南梅花折一枝者可嚴科者也と認ければ、義經御覽じ、花を折もの心なくては折らじ、餘りに強き文言なりとて、江南梅花折一枝一指也と直されしと云々、此制札今は須磨寺に有て、若木の櫻の制札とす、心得ず也、 此花江南所無也、於一枝折盜之輩は、任天永紅葉之例一枝者可一指者也、 壽永二年二月

〔古今要覽稿〕

〈草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0329 臥龍梅(○○○) 臥龍梅は龜井戸梅やしきに植る所、古木にして世のしる所なり、まヽその種を植るものあり、正月末より開く、花は單瓣清白中輪にして、上花也、蕚黄緑にて紅色を帶たり、その香馥郁として數歩にかほれり、又一種淡江のものあり、花形白色のものと異ならず、されど清白の方を眞の臥龍とすべしと〈春田久啓韵勝園梅譜〉いへり、淡紅は即白花より變ぜしものなるべし、諸書に淡紅の説見えず、その木の形枝の末、地中に入て幹となり、枝と成てはひわたる故、臥龍梅と黄門光國卿名付給へ りと、今は其地中より出し幹ひともと〳〵にわかれて數株となれり、其地中へはひし枝は皆朽たり、

〔佐渡志〕

〈四古蹟〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0330 莓梅(○○) 加茂郡梅津村眞法院ニアリ、花ハ薄紅ニシテ、初メ延文頃枯テノチ年テ隔テ、又若木生出シヨリ、今ニイタルマデ、或ハ朽ルトイヘドモ、其根ヨリ必ズ蘖生アリ、尋常ニ替リ、若木トイヘドモ莓深ク、其莓ノ中ニ花籠レル故ニ、名ヲ莓梅トイヘリ、昔ハ梅昌寺トイヘル禪院此梅ヲ守リシガ、文祿ノ水ノ災ニ寺流レケレバ、後マタ此患アラムコトヲ恐レテ梅ヲ捨置テ、同ジ村ノ内隔レル方ニ移リヌ、年經テノチ、心アル僧一寺ヲ建テ、眞法院ト名ヅケ、永ク此木ヲ守ルトイヘリ、

〔松屋筆記〕

〈百十五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0330 梅の大木 日向國高岡の香積寺に月知梅(○○○)とて、八町四方に枝さしひろごりたる梅樹あり、世に珍しき大樹なるよし、佐藤平三郞かたりき、

梅名所

〔月瀬記勝〕

〈乾〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0330 梅谿(○○)遊記一 何地無梅、何郷無山水、唯和州梅溪、花挾山水而奇、山水得花而麗、爲天下絶勝、然地在州之東陬、頗幽僻、舊罕造觀者、名不甚顯、顯自我伊人始云、溪傍種梅爲業者凡十村、曰石打、曰尾山、曰長引、曰桃野、曰月瀬、曰嵩、曰獺瀬、曰廣瀬、屬和州、曰白樫、曰治田、屬伊州、在我上野城南三里許、〈當今里法〉我藩封疆除全伊半勢外、又有城和之田五萬石、環梅溪而處、而種梅之村多屬他封、獨和之廣瀬嵩村、伊之白樫治田、爲我治下而已、然按舊志、月瀬諸村多屬伊、伊人道、戰國之際、豪強相奪、此地始屬和、今審其地勢、近上野城、山脈相通、理固應然、故和人之來常少、而四五十年來、伊人毎常往觀焉、溪之勝於是乎顯矣、十村之梅不幾萬株、然不盡臨http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 谿臨谿者最爲清絶、谿發源於和之宇陁、歴伊之名張、而到於此、廣殆百歩、尾山在其北岸、嵩、月瀬桃野在其南岸、危峯層巖、簇々錯立其間、梅爲之經、而松爲之緯、水竹點綴之、余住 津城、距梅溪殆二日程、久願游而未能也、庚寅二月十八日、與宮崎子達子、淵子、山下直介伊州、遂往游焉、上野人服部文稼、深井士發等爲導、美濃梁公圖、及其妻張氏、遠江福田半香亦來會、未出城門、行一里餘、爲白樫、山谷間已多梅花、漸入佳境、又半里弱、爲石打、又行未一里、尾山在目、爲之躍然、至則遍地皆花、余初恐違花期、見之心降入憩三學院、約宿而出往觀一目千本、梅溪之賞始是矣、 記二 一目千本、尾山八谷之一也、花最饒、故有此名、蓋比芳野櫻谷云、余與同人院、下前崖、覺山水與梅花皆已佳絶、任意而行、至一大谷、文稼識而言之、徑詰曲而上、花夾之、歩出其間、如白雲而行、數百歩達巓、下顧彌望皜然與谿山相輝映、余嘗遊芳野、觀其一目千本、有此盛而無此勝、又嘗觀嵐山櫻花、有此勝而無此盛也、更求之西土梅花名者、抗之孤山、境蓋、幽、花則寥々、蘇之鄧尉花頗多、地則熱閙、唯羅浮梅花村、對峻峯、臨寒溪、而花尤饒、庶幾可我梅溪歟、日已歛昏、花隱淡煙中、千樹依約不其所http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 極、暗香蓊葧襲人聞溪聲益近且大、至咫尺不http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif色、而後去、〈◯中略〉 文政庚寅仲春 伊勢拙堂居士齋藤謙

〔武江産物志〕

〈遊觀〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0331 梅 本所梅屋敷〈龜戸寺島、立春より三十四五日目に開く、〉 臥龍梅〈龜戸、同時、〉 杉田の梅〈神奈川、立春より廿五日頃開、〉 蒲田梅〈大森、立春より三十日位、〉 龍戸天神境内 難波梅〈淺草自性院〉 箙の梅〈はしば法源寺〉 鶯宿梅〈高田南藏院〉 御殿址の梅〈高田南藏院〉 茅野の梅〈増上寺山内〉 榮の梅〈牛込宗參寺〉

梅雜載

〔泊洦筆記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0331 一ある時、縣居翁の家に文會ありて、梅の詞を人々にもつくらせ、翁もつくられたりけるに、翁の文きはめて梅をそしりて、梅はから國よりつたはれるものにして、いとふるくは歌にもよめることなく、寧樂朝に至りて、大伴卿、家に人々をつどへて、梅の花の宴せられし三十餘首のうた、萬葉に見えたるがはじめなり、枝さしこわ〴〵しく、冬のうちより、我はがほに咲き出でてかしこがりたるさま、櫻のわが皇國におひそめて、にほひやかなるには、いたくおとれりと、口 をきはめていひおとされたるを、門人橘常樹といへるが、ひとりごとのやうにいへるやう、翁の文詞、大よそ人の趣にさまかはりて、めづらしう思ひめぐらされたるはさることながら、梅の文をかヽむとて、梅をおとしめ難ぜられたるは、梅のため面ふせぞかし、たとひさる事にもせよ、其ものをむねとして、文かき歌よまんには、わがともがらのうひまなびの身にのりとし、まねばん事いかヾあらんといへり、げに常樹がことばもことわり、さる事とおぼゆかし、

〔南島志〕

〈下物産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0332 果則龍荔、〈◯中略〉石榴橘柿、但無梅杏桃李之類、近時有梅移此間者、唯著花而不子、

〔隨意録〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0332 梅賞花者、二漢以上未之有http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 見焉、經傳言梅皆稱實耳、其賞花之詩、無於范曄何遜、又賞花之事無於趙師雄、然則其賞花、蓋六朝而來、與桃李棠棣、皆見乎風雅、而梅花獨不乎古者何也、

〔明月記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0332 建仁二年三月十五日、近日櫻梅花之盛也、今年花甚遲、梅及二月晦開、遲梅近日猶盛也、

〔古今著聞集〕

〈十九草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0332 ある貴所より仰をうけ給て、梅をあまたうへける折ふし、隆祐朝臣白河の花すでにちり侍也、たヾ今見にまかり侍にといざなひければ、けふかヽる事にかヽりて、えなんともなふまじきよし申ければ、をしかへしよみつかはしける、 うつしううる花は千とせの物なればちる木のもとをいそげとぞ思ふ、返し聞侍しを、わすれ侍にけり、

桃/名稱

〔本草和名〕

〈十七菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0332http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 、桃梟〈仁諝音古堯反〉一名桃奴、〈實著樹不落、實中者、〉桃蠧〈食桃樹虫也〉山龍桃〈出陶景注〉一名緗http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 、一名勾鼻、一名金城、一名綺葉、〈已上四名出兼名花、〉一名金桃、〈出漢武内傳、〉一名僻側膠、〈桃膠也、〉一名木http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 葩〈花也、已上出墨子五行記〉桃膠一名桃脂、一名桃膏、一名桃魄、一名桃靈、一名桃精、一名桃父母、〈已上出神仙服餌方、〉和名毛々、

〔倭名類聚抄〕

〈十七菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0332 桃子 漢武内傳云、西王母桃、三千年一生實、〈西王母者仙人名也、桃音陶、和名毛々、楊氏漢語抄云、錦桃、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九果蓏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0332 漢武内傳一卷、舊題漢班固撰、原書西王母桃、作母曰此桃、説文、桃桃果也、

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0332 桃(モヽ)〈一名仙菓花、又有紅、緋、白、源平等之稱、〉桃仁(モヽノサネ)〈又云桃奴〉

〔倭訓栞〕

〈前編三十三毛〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0333 もヽ〈◯中略〉 桃は燃實の義なるべし、緅をもヽいろと云は、花に据たり、後拾遺集に、みちよへてなりける物をなどてかはもヽとしもはた名づけ初けん、三千歳の故事は西王母より起る、八重桃、毛桃、姫桃などよめり、〈◯中略〉倭名抄陸奧の郡名に桃生をもむのふとよめり、されば又もむの轉にや、實に細毛あり、揉て去べし、以黍雪桃の意にやともいへり、〈◯中略〉後撰に物いはばとはまし物を桃の花とよめるは、桃李不言下自成溪といへる故事によめり、三月三日に桃花を用うるは本草に据也、須磨兵庫邊には家ごとの軒に柳と桃を交へ插り、桃の鬼を避る事は、神代紀に見えて本草にも、桃符桃橛を表出せり、

〔萬葉集〕

〈七譬喩歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0333木 向峯爾(ムカツヲニ)、立有(タテル)桃樹(モヽノキ)、成哉等(ナリヌヤト)、人曾耳言爲(ヒトゾサヽメキシ)、汝情勤(ナガコヽロユメ)、

〔拾遺和歌集〕

〈七物名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0333 もヽ すけみ 心ざしふかき時にはそこのもヽ(○○)かつきいでぬるものにぞありける

〔鹽尻〕

〈五十四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0333 一孔子家語に、果屬有六、而桃爲下、祭祀に不用といへり、不審、漢唐には桃を五果の一(○○○○○○)ヅにして(○○○)、ことに目出度ものとす、いかにして祭祀に用ひざる哉、夫桃は鬼を避るもの故、鬼神に薦めざるか、書して以て識者をまつ、

〔倭名類聚抄〕

〈十七菓具〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0333 桃奴(○○) 本草云、桃人一名桃奴、〈和名毛々乃佐禰〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九果蓏具〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0333 原書下品桃http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 條、有桃梟云、一名桃奴、按桃梟是實著樹不落實中者、今俗謂木守即是、本草和名並擧桃http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 桃梟一名桃奴、源君誤認以桃奴桃人一名非也、

〔採藥録〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0333 桃仁 種類尤多シ、一種野桃ト云者、俗ニ苦桃ト云、能ク熟タル時採リ收メ、地中ニ埋メ、肉ヲ腐リ盡シテ取出シ、洗淨シ、打碎キ仁ヲトリ、日乾スベシ、又土中ニ埋メ置キ、春ニ至テ掘出シ、日乾スレバ自ラ 裂テ自ラ仁出ヅ、然レドモ氣味却テ惡シ、願ハ用ル時ニ臨テ碎キ用レバ、其功力尤モ速ナリ、

〔倭名類聚抄〕

〈十七菓具〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0334 桃脂(○○) 神仙服餌方云、桃脂一名桃膠、〈和名毛々乃夜邇、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九果蓏具〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0334 神仙服餌方無傳本、本草和名桃http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 條云、桃膠一名桃脂、出神仙服餌方、此所引即是、

〔和漢三才圖會〕

〈八十六五果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0334 桃〈音陶◯中略〉 桃肉(○○)〈辛酸甘熱微毒〉 多食令人膨脹及生癰癤損無益、服白朮蒼朮人忌之、 桃仁〈苦甘平〉 味厚沈而陰、陰中之陽、手足厥陰血分藥也、其功有四、治熱入血室也、〈一〉泄腹中滯血也、〈二〉除皮膚血熱燥痒也、〈三〉 行皮膚凝聚之血也、〈四〉故通月水潤大便心下堅http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif 、〈香附子爲之使

桃種類

〔倭訓栞〕

〈前編三十三毛〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0334 もヽ〈◯中略〉 近世種類多し、〈◯中略〉さねはなれを解http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif といへり、毛桃漢名同じ萬葉集にも見ゆ、にがもヽともいふ、緋桃も漢名なり、冬桃あり、花は單へ也、博玄が冬桃賦あり酉陽雜俎に西王母桃と名く、我方にて西王母と呼ものは壽星桃也、一花兩實の者をめをともヽといふ、群芳譜に鴛鴦桃といへり、紅白相交るを源平桃といふ、旗の色によれり、群芳譜に日月桃といふ、しだり桃あり、八重一重あり、藻鹽艸に夏桃あり、一歳桃あり實を殖て尚年に花咲り、西王母に似たり、はヽき桃と稱するは地膚のごとし、菊咲と稱するは花菊のごとし、

〔地錦抄〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0334 桃のるひ〈木春中〉 西王母 もヽいろ、八重大りん、木一尺ほどになれば、花さく事おびたヾし、花は一所に二ツづヽなる物なり、花落ルまで葉出ずして、落花後葉出、六七月時分、葉のさきに又花さく事あり、 一歳桃(いつさいもヽ) 花形せいわうぼ似て、たねを植て其年の實生に、花咲ゆへ、一才もヽといふとぞ、 あめんだう 葉ほそく長く、やなぎのごとく、今は中絶してなし、 帚桃 春末花白と、もヽいろさきわけにて、なかほどにりん、八重なり、木立(こだち)本よりほそく、多ク出 て、草帚のごとし、花よくあつまりさく、見事、又もヽいろの八重もあり、是はさきわけよりわるし、 火桃 なるほどくれない、八重又緋桃とも書、 大坂桃 是を今世間にてあめんだうといふ、葉ほそ長く、木しかみて花もヽいろ大りん、 源平桃 白赤さきわけ、八重ひとへあり、 白桃 白八重ひとへあり 紅桃(こうとう) 火桃より色うすし、八重ひとへ有、 しだれ桃 もヽいろ八重一重有、大りん、木やなぎのごとくしだるヽ、 ずばい 火桃の一重なり、色よし、 さきわけ 源平桃の事か 紅しだれ しだれもヽの色少あかき物なり 長せいもヽ くわしくしらず よろいたうし 花もヽいろ、ひとへくりん、桃すぐれて大きし、 李(すもヽ) 花形白小りん、八重ひとへあり、 にがもヽ もヽいろひとへ、八重白きも有、いつまでもにがし、 さもヽ からもヽのごとし 楊桃 もヽのるいにはあらず、實むらさきいろ、 からもヽ 白小りんもヽちいさし、 夏もヽ もヽいろひとへ大りん、花は春咲、もヽの色づく事はやし、

〔花壇綱目〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0335 桃珍花異名の事 南京もヽ〈壹重、葉は柳のごとし、〉 一重もヽ〈白赤あり、中輪大輪也、〉も上もヽ〈桃の中にての大輪、赤白の咲分なり、〉さもヽ〈うす色の壹重なり〉  しだれ桃〈白赤あり、中輪也、〉 風車〈赤の壹重、中輪也、〉 せいおうぼう〈千ようす色、中輪也、〉 きとう〈千よの大輪なり〉 右は桃の名なり、此外にもあるべきなり、

〔谷響集〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0336 日本金桃 又曰、〈◯客〉日本金桃何書所載、答、梁任昉述異記云、磅磄山去扶桑五萬里、日所及、其地甚寒、有桃樹千圍、萬年一實一説日本國有金桃、其實重一斤、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一五果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0336 桃 モヽ〈和名抄〉 ミチヨグサ〈古歌〉 ミキフルグサ〈同上〉 一名仙木〈行厨集〉 仙卿〈尺http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f00006520ec.gif 雙魚〉 福孫歹〈事物異名、蒙古ノ名、〉 花一名鎖恨客〈花鳥爭奇〉 紅雲〈事物紺珠〉 天采客〈同上〉 天采〈典籍便覽〉 靚晨粧〈名物法言〉 鎖恨花〈事物紺珠千葉ノ名〉 助嬌花〈名花譜同上〉 實一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b573.gif 實〈行厨集〉 膽之〈名物法言〉 蟠實〈事物紺珠〉 千年桃〈同上〉 五木精〈同上〉 仁一名脱http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 嬰兒〈輟耕録〉 脱http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 兒〈事物異名〉 桃ノ品類多シ、凡ソ多ハ早ク實ノリ早ク老ス、俗諺ニ桃栗三年柹八年ト云、汝南圃史ニ、頭白可種桃ト云、又桃三李四梅子十二ト云諺アリ、實生ヨリ二年ヲ經テ花實アリ、故ニ時珍早花早結實ト云、然レドモ木早ク老ス、故十年ハ保チ難シ、因テ五年ニ刃ヲ以皮ヲ切リ脂ヲ出ス時ハ、數年ヲ延ブト云リ、子生ヨリ三年ニシテ、花實アルハ尋常ノ桃ナリ、土州紀州ニハ一歳桃(○○○)アリ、子生ノ年花ヲ開キ、翌年ヨリ實ヲ結ブ、其枝叢シ生テ喬木トナラズ、凡ソ桃ハ春花サキ、實秋熟ス、桃ノ色赤クシテ光リ、毛ナキ者ヲズワイモヽ(○○○○○)ト云、山茶實(ツバキノ)ノ形色ニ似タル故ニ名ク、宗奭ノ説ノ油桃ナリ、色赤カラザルヲ、アヲズワイ(○○○○○)〈江州〉ト云、是レ光桃〈汝南圃史〉ナリ、一名李桃〈同上〉又ケモヽ(○○○)アリ、花大ニシテ色淺シ、實も亦大ニシテ杏ノ如シ、外皮ニ毛茸アリ、是毛桃ナリ、熟スレバhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 自ラ離ル、之ヲ離http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ト云、離レザル者ハ粘http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ト云、下品ナリ、時珍ノ説ニ、其花有紅、紫白、千葉、二色之殊ト、紅ハ尋常ノ桃花ヲ云、紫ハ和産ナシ、白ハシロモヽ、千葉ハ重子多キヲ云、二色ハ花色紅白雜ルヲ云、俗ニ源平桃(○○○)ト呼ブ、秘傳花鏡ニハ日月桃ト云、洛陽花木記ニハ、二色桃ト云、群芳譜ノ二色桃ハ、千葉ニシテ色ノ 淺ヲ云、別物ナリ、源平桃ハ單葉千葉垂枝ノ品アリ、此二色ノ字、食物本草ニハ單葉ニ作ル、其實有紅桃、緋桃、碧桃、緗桃、白桃、烏桃、金桃、銀桃、咽脂桃ト、紅桃緋桃碧桃ハ、皆花ノ色ニシテ實ノ色に非ズ、コヽニ混入スルハ非ナリ、紅桃(○○)ハ常ノ桃ナリ、又櫻色ナルヲ秘傳花鏡ニ美人桃(○○○)ト云、緋桃(○○)ハ花ノ色深赤ナルヲ云、和漢通名ナリ、單葉千葉ノ品アリ、一名蘇州桃、〈遵生八牋〉蘇桃、〈秘傳花鏡〉又絳桃(○○)アリ、緋桃ヨリハ色淺シ、碧桃(○○)ハ白花ノ者ヲ云、又實ノ色白キヲ碧桃ト云説アレドモ宜シカラズ緗桃(○○)ハ淡黄色ナル者ヲ云、白桃(○○)ハ重出、烏桃(○○)ハ實ノ色黒キ者ヲ云、金桃(○○)ハ本邦ニアリト云ヘドモ詳ナラズ、銀桃(○○)ハ實初緑色熟シテ色白シ、花大ニシテ白色緑蕚、コレヲシロモモト云、一名リンゴモヽ咽脂桃(○○○)ハ熟シテ色赤キヲ云、有綿桃、油桃、御桃方桃、匾桃、偏http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gifト綿桃(○○)ハ詳ナラズ、油桃(○○)ハズワイモヽ、御桃以下和産詳ナラズ、五月早桃(○○○○)、サモモ、一名五月モモ、ナツモモ、實早ク熟ス、十月冬桃(○○○○)ハ即崑崘桃ナリ、十月ニ熟シテ肉モ色赤キヲ云、冬モヽナリ、一名カンモモ偏http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 桃(○○○)ハ實ノ形扁ナル者ヲ云、奇品ナリ、其餘皆奇品ニシテ、和産詳ナラズ、秘傳花鏡花史左編等ニ桃ノ品類ヲ載スルコト多シ、シダレモモ(○○○○○)アリ、單葉千葉紅白數品アリ、漢名詳ナラズ、典籍便覽ノ垂絲桃ニ充ル説ハ穩ナラズ、垂絲桃ハ花ノ時絲ノ出ルヲ云、枝ノ下垂スルニ非ズ、カラモモ(○○○○)アリ、一名江戸モヽ、アメンドウ、西王母、〈同名アリ〉小木ニシテ五寸或ハ一尺許ナルニモ花實アリ、大ナルハ三四尺ノ高サニ至ル、花多ク簇リ生ジ、千葉單葉紅色白色及ビ二色アリ、葉ノ形細長クシテ多ク繁ル、是壽星桃〈汝南圃史〉ナリ、一名道州桃、〈同上〉矮桃、〈秘傳花鏡〉人面桃、〈八閩通志〉キクモモ(○○○○)アリ、高サ丈餘、花瓣狹細ニシテ、十二三並ビテ單葉菊花ノ如シ、初ハ淺紅色、後ハ白色、紅心ナリ、尋常ノ桃ヨリ後テ開ク、花戸ニテ源氏車ト呼ブ、廣東新語ニ菊桃ノ名アリ、一種菊モヽ(○○○)瓣濶クシテ尖リ、重葉ニシテ菊花ノ形ノ如ク、淺紅色ナリ、ホウキモモ(○○○○○)アリ、高サ一尺許ニシテ花實アリ、花小ク千葉ニシテ、紅白雜リテ、多葉郁李(ニハザクラ)ノ如シ、枝多シテ掃箒ノ形ノ如シ、圃ニ栽ユレバ丈餘ノ高サニ至ル、中山傳信録ニ箒桃ノ名アレドモ註ナシ、

〔倭名類聚抄〕

〈十七菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0338 李桃(○○) 辨色立成云、李桃、〈都波木毛々〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九果蓏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0338 本草綱目引種樹書云、李椄桃則爲李桃、廣群芳譜云、李桃、形圓色青、肉不http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 、其皮光澤如李、一名光桃、按、豆波歧毛々、其實光澤似海石榴子故名、今俗譌呼豆婆伊毛々

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0338 油桃(ツバキモヽ/ヅバイモヽ)、〈本草、小於衆桃、光如油者、〉李桃(同)〈順和名〉椿桃(同)〈俗字〉

〔塵袋〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0338 李桃トカキテ、ヅバイモヽトヨム、李ニヅハイト云ヨミアル歟、スモヽハハモナキモノナレバ李桃トカケリ、スモヽト云コト、重點ハヅラハシキ歟、而椿子ニモニタレバ、和語ツバイモヽト云ナルベシ、李ノ字ニツバイノヨミアルベカラザル歟、

〔倭名類聚抄〕

〈十七菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0338 冬桃(○○) 傳云桃賦云、亦有冬桃、冷侔氷霜、和神適意、恣口所http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 嘗、〈今按冬桃、俗所謂霜桃是、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九果蓏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0338 按西京雜記云、霜桃霜下可食則霜桃非國俗所http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 名、今俗呼不由毛々、又寒毛々、〈◯中略〉藝文類聚初學記引並同、爾雅、旄、冬桃郭注、子冬熟説文、楙冬桃、則知爾雅作旄假借、桂海虞衡志云、冬桃、状如棗軟爛甘酸、冬月熟、李時珍曰、冬桃、一名西王母桃、一名仙人桃、即昆侖桃、形如http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001f0b6.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b550.gif 、表裏微赤、得霜始熟者即是、郝懿行曰、今冬桃有十一月熟者、形如常桃青若膽、

〔新撰字鏡〕

〈木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0338 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000093.gif 〈佐桃(○○)〉

〔倭名類聚抄〕

〈十七菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0338 麥李 陶隱居本草云、麥李、〈漢語抄云、佐毛々、〉麥秀時熟、故以名之、兼名苑注云、青房〈今按即麥李也〉五月熟李也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九果蓏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0338 本草和名、麥李在http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 人條、別無和名、新撰字鏡、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000093.gif佐桃、本居氏曰、古謂農事佐、五月農事起、故云佐月、愚按五月云佐都歧、麥李以五月熟故名佐毛々、今俗呼佐毛々者、本草綱目所(○○○○)云(○)、五月早桃是也(○○○○○○)、與此名同實異、〈◯中略〉新修本草李條載、無故以名之四字、本草和名同、爾雅痤椄慮李郭注、今之麥李、齊民要術引廣志云、赤李麥李、細小有溝道、〈◯下略〉

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0338 鼠李(サモヽ)〈楮李、山李、烏巣子、牛皂子並同、〉麥李(同)〈順和名、麥秀時熟故名、〉

〔和漢三才圖會〕

〈八十六五果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0339 阿面桃(あめんとう) 正字未詳〈用巴旦杏阿女牟止宇、今人以此桃同名者、不其據也、〉 按阿面桃樹高不四五尺、矮勁葉亦厚、深緑色、花小單葉粘枝繁重開、淡紅色、三月花落生葉、其實百千攅生、時摘去其繁者、一朶纔有四五顆則甚大冬熟肉軟而甘、能離http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 、其http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 眞紅色、種之易生、翌年高尺餘而開花、未其大木、蓋此與西王母桃、一類二種也、

桃栽培

〔草木六部耕種法〕

〈十九需實〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0339 桃(モヽ)亦種類多ク、花ヲモ賞玩スル者ニテ、花ニハ白、緋、紅、淡紅、千葉(ヤヘ)、一葉(ヒトヘ)數十品ノ雅名有リ、其事ハ上ノ需花編ノ條下ニ詳ナリ、此編ハ唯其實ヲ需ルノ業ナルヲ以テ、實ヲ肥大甘美ニスルノ作法ヲ精説スルノミ、絶テ花ニ拘ルコト無シ、世ニ西王母ト稱スル桃アリテ、花穠(サカンニ)實大ニ、味亦美シ、此ヲ第一ノ上品トス、又鎧透(ヨロヒトホシ)ト呼者アリ、此レモ亦上品ナリ、今夫江戸近邊ニハ、越谷、松伏等諸邑夥シク桃ヲ作リ、頗百姓ヲ利潤ス、京大坂間ニテハ、伏見ノ佐桃(サモヽ)五月桃、大臼桃(オホウスモヽ)、此三種上品ナリ、凡桃ヲ作ルニハ實大ニ味美キhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ヲ多ク取集メテ種子ト爲ベシ、必ズシモ名ニ拘ルコト勿レ、桃ハ實植ニ宜シク、其ノ苗ヲ生長セシムルトキハ、三四年ノ間ニ必花ヲ開キ實ノ生者ニテ、接木スルニモ及バズ、能ク繁榮ス、故ニ果樹中ニ於テ作法最無造作ナリ、然レドモ脂膠ノ甚多キ者ナルヲ以テ、成長シテ四五年ヲ經ルトキハ、必起線鉋(ミゾカンナ)ノ細者ヲ用テ、竪ニ其ノ皮ヲ傷ベシ、然セザルトキハ、其膠ニ搾ラレテ其木衰弱シ、或ハ枯死ルコト有リ、又桃ハ實結初テ八九年間ハ、漸々多ク實ヲ結ブモノナレドモ、其後ハ次第ニ實小ナリテ、品モ下リ、結コトモ減ズル者ナルガ故ニ、年々實ヲ栽テ絶ザルヤウニシ、老木ノ宜シカラザルハ追々伐リ去テ、林ヲ新ニスルヲ良トス、植地ハ必シモ肥良ヲ撰ニ及バズ、砂地、壤土、墳土モ宜シ、粘http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000094.gif ノ強キ土ニハ宜シカラズ、新墾ノ畑ニハ合ハズシテ、熟畠ハ惡地ニテモ能ク應合ス、此レヲ植ル法ハ、能ク熟シタル大桃ヲ肉ナガラ埋置トキハ、翌春芽ヲ出ス者ナリ、苗六七寸ニ延タルハ移植ルモ害ナシ、又其儘ニ成長セシムルモ宜シ、根邊ノ土ヲ高シテ堅ク蹈付テ置ベシ、糞苴(コヤシ)ヲ用ルコトヲ禁ズ、糞養ズルトキハ、 其ノ實小シテ味苦ク、大ニ他ノ果木ニ異ナリ、

桃名所

〔大和本草〕

〈十果木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0340 桃〈◯中略〉 上野下野ノ桃花、及李花甚ウルハシ、唐ニテ桃李花ヲ賞スル事ムベナリ、近年伏見ノ桃花盛ナル時、一處ニサキ連レル事、吉野ノ櫻ヨリ多シ、遠處ヨリ見ル尤ヨシ、凡桃久シケレバ花スクナク、實不好、秋ノ比切テ若立ヲ二本立テヨシ、花實共ニヨシ、梅杏李ノ枝ヲ桃ニ接ゲバ長ジヤスシ、

〔武江産物志〕

〈遊觀〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0340 桃 桃園〈四ツ谷、中野、中里、立春より七十日頃、〉 大師河原〈立春より六十日餘〉 隅田川堤 築比地〈葛飾郡〉

〔一話一言〕

〈十六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0340 駒原桃花 三月十五日、河原西川の兩氏にいざなはれて、駒場御用やしき後藤氏をとふ、後藤氏の案内にて駒が原のうち、植木屋長七といへるものヽ、近比あらたに植し桃林をみる、門のさし入の地をはらひきよめて、しだれ桃を兩行にうゆ、左は六十八本、右は四十本ばかり、白桃櫻などもまじれり、しだれ桃は、深紅の色にして蘂白く、つくり花をみるごとし、相模しだれといふ種なりとぞ、庭のうちにも數十本つぎ穗してかこひ置り、斑入の五葉松あり、芝山あり、池あり、門のさし入より兩行の桃をみれば、さながらきぬがさをはりたてたらんがごとし、かへりに松の間をあゆみて、蕨、土筆、白頭翁花などつみかへれり、 きぬがさをはるかとばかりみちとせの桃の林の林やさしてゆくらん、この夕雨もよひしてくもりしが、亥の時比やどりにかへるまでふらざりしも幸なりき、

桃雜載

〔古事記〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0340 爾伊邪那岐命〈◯中略〉到黄泉比良〈此二字以音〉坂之坂本時、取其坂本桃子三箇、待擊者悉逃返也、〈◯豫母都志許賣及八雷神〉爾伊邪那岐命告桃子、汝如吾、於葦原中國有宇都志岐〈此四字以音〉青人草之落苦瀬而患惚時、可助告、賜名號意富加牟豆美命、〈自意至美以音〉

〔古事記傳〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0340 桃子は毛々能美(モヽノミ)と訓べし、〈凡ての木草に、花をもて名るもあり、實をもて名るもあり、幹をもて名るもある中に、實を以名けたる梨栗柹な〉 〈どは、實と云ねど、實のことになりて、梨の實柹の實とは云ず、されば桃も其類とせば、實をもただ毛々と云べし、和名抄にも菓類に收て、桃子和名毛々と注し、其外も梨子栗子椎子などヽ出せり、然れども桃は花をも賞る木なり、又こヽの様を思ふに、坂本なる毛々とのみいひては、其木のことヽ聞ゆれば、なほ美と訓べきにこそ、〉

〔日本書紀〕

〈二十二推古〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0341 二十四年正月、桃李實之、

〔慶長日件録〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0341 慶長十二年五月十九日、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001c555.gif 沃、御方御所へ參、早桃進上之、

〔半日閑話〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0341 安藝國に佐東新庄と云村有、佐東は北、新庄は南也、其境に桃の木有、佐東の方の枝になる實は苦く、新庄の枝になる實はあまし、

〔増訂豆州志稿〕

〈七土産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0341 桃 増、田京、湯ケ島ノ二村、及初島等ヨリ産出スルヲ最トス、〈延喜貢物ニ桃仁アリ〉

〔新撰字鏡〕

〈木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0341 李〈良士反、使也、須毛々(○○○)、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十七菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0341 李子 兼名苑云、李、〈音里〉一名黄吉、〈和名須毛々〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九果蓏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0341 本草和名李http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 人條、引兼名苑四名、不黄吉、杏http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 條云、一名黄吉、蓬萊杏、已上二名出兼名苑、按齊民要術種梅杏條、引廣志曰、鄴中有赤杏、有黄杏、又引西京雜記曰、蓬萊杏、是仙人所食杏也、兼名苑蓋本之、黄吉即黄杏之譌、輔仁所見兼名苑、既誤作黄吉、然猶爲杏子一名、源君襲之、又誤爲李子一名也、説文、李、李果也、李時珍曰、李緑葉白花、樹能耐久、其種近百、〈◯中略〉須毛々依輔仁、新撰字鏡同訓、新井氏曰、酸桃之義、

〔伊呂波字類抄〕

〈須殖物附殖物具〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0341 李〈スモヽノ子〉

〔古今和歌集〕

〈十物名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0341 すもヽの花 貫之 いまいくか春しなければうぐひすもも(○○○)のはながめて思ふべら也、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一五果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0341 李 スモヽ(○○○)〈和名抄〉 スムメ(○○○)〈播州〉 一名木子〈汝南圃史〉 朱實〈事物異名〉 朱仲實 房陵子 韓終子〈共ニ同上〉 鼠精〈行厨集〉 玉華〈同上〉 李兒〈訓蒙字會〉 疐之〈群芳譜〉 青李一名青玉〈名物法言〉 青綺〈典籍便覽〉 青房〈同上〉 碧實〈事物異名〉 碧翠〈事物紺珠〉 花一名碧雪〈名物法言〉 仙李〈行厨集〉 九標〈同上〉 唐山ニテハ桃李ト熟シテ共ニ花ヲ賞ス、本邦ニテハ桃林多ケレドモ李ハ少シ、其木形桃ニ似タリ、葉モ亦相似テ小ク鋸齒細ナリ、多葉郁李(ニハザクラ)ノ葉ノ如ニシテ互生ス、花ハ桃ニ次テ開ク、形梅ノ花ニ似テ微シ小ク多ク簇リ、潔白愛スベシ、花謝シテ葉ヲ生ズ、其實梅ヨリ小ク、正圓ニシテ林檎ノ如シ、六月ニ熟ス、色赤シテ光アリ、集解ニ、駁ハ乃赤李ト云、及時珍ノ説ニ胭脂ト云者是ナリ、又青李アリ、俗名アヲスモヽ、實色ニ因テ名ク、時珍ノ説ノ青皮李是ナリ、又江州ニ熟シテ皮ノ色白キ者アリ、シロモヽト呼ブ、秘傳花鏡ノ白李是ナリ、又一種熟シテ黄色ナル者アリ、漢種ノ者ハ實形大ナリ、時珍ノ御黄李是ナリ、

〔草木六部耕種法〕

〈十九需實〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0342 李(スモヽ)ハhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ヲ栽タルヲ、其儘成長セシモ宜シ、唯其實大ニ甘美ナル種子ヲ撰ベシ、此ヲ植法、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 子ヲ九月ノ初メヨリ肥タル土中ニ埋置テ、翌春芽少シ出タルヲ、肥地ニ畦ヲ作リ、五寸ヅヽ間ヲ隔テ、一粒ヅヽ植ヱ、土七八分ヅヽ覆ヒ押付置キ、苗延タラバ時々泔水ヲ澆テ長ゼシメ、翌年正月中二間ヅヽ隔テ、一本ヅヽ移栽ベシ此物ハ、耕耙タル熟地ヲバ甚嫌フ者ナルガ故ニ、畑間カ野地等ニ直ニ栽ヲ良トス、但根邊ノ艸ヲ耘ベシ、四五年間ニ繁衍シテ實ヲ結ニ至ル、正月元日或十五日ニ、石瓦等繩ニテ括リ、木ノ股ニ掛置トキハ、夥シク實ノ結者ナリ、

〔庖厨備用倭名本草〕

〈六五果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0342 李〈◯中略〉 李實味苦酸氣微温毒ナシ、骨節ノ間ノ勞熱ヲサル、肝病ヨロシク食スベシ、曝シタルヲ食スレバ、痼熱ヲサリ、中ヲ調フ、多食スベカラズ、熱ヲ發ス、又外科ノ用多シ、 食禁 水ニ臨デ食スレバ痰瘧ヲ發ス、水ニ沈マザルハ毒アリ食スベカラズ、合食禁 雀肉 蜜 右合食スレバ五藏ヲ損ス

〔延喜式〕

〈三十三大膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0342 七月廿五日節料〈◯中略〉 李子(○○)〈參議以上四合、五位已上三合、〉

〔延喜式〕

〈三十九内膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0343 供奉雜菜〈◯中略〉 李子二升〈五六月◯中略〉 中宮准此、其東宮雜菜、〈◯中略〉柹子李子各一升、

〔萬葉集〕

〈十九〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0343 天平勝寶二年三月一日之暮眺矚春苑桃李花作歌二首〈◯中略〉 吾園之(ワガソノヽ)、李花可(スモヽノハナカ)、庭爾落(ニハニチル)、波太禮能未(ハタレノイマダ)、遺有可母(ノコリタルカモ)、

〔夫木和歌抄〕

〈二十九李〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0343 六帖題 民部卿爲家 きえがての雪と見るまで山がつのかきほのすもヽ花咲にけり

均亭李

〔百品考〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0343 均亭李 和名トガリスモヽ(○○○○○○) 本草綱目、李時珍曰、一種均亭李、紫而肥大、味甘如蜜、 格致鏡原、均亭李、紫色極肥大、味甘如蜜、南方之李、此實爲最、 花戸誤テ巴旦杏ト稱ス、花葉常李ニ同シテ、實熟スルコト遲シ、形チ杏ニ似テ先尖リ、大サ小梨ノ如シ、畫ケル西王母ノ桃ニ似タリ、初ハ深緑色ニシテ光アリ、熟シテ紫色ナリ、上ニ粉ヲ塗タルガ如シ、紫蒲萄ノ熟シタル色ニ似タリ、味至テ甘ク槳多シ、果中ノ美味ナリ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 常李ニ同ジ、

嘉慶李

〔百品考〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0343 嘉慶李 和名ウラベニスモヽ(○○○○○○○) 汝南圃史、嘉慶李、外青内紅、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 小味甘、 薩摩ヨリ種ヲ傳フ、誤テ漢種ノ郁李トスル者アリ、樹葉常李ニ似テ小ク、花ハ梢小シ、實ハ八月ニ熟ス、大サ常李ノ如ク圓シテ、溝道至テ深シ、故ニ麥李ニ充ル説アリ、然ドモ麥李ハ麥ト同熟スト云文ニ合ハズ、熟シテ外皮青ク内紅ニシテ胭脂(ベニ)ニテ染タルガ如シ、久シキヲ經レバ皮モ紅色ナリ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 常李ト同ジ、

〔本草和名〕

〈十七菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0343http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif  一名杏子、〈本條〉柵子、〈味酸出崔禹〉一名黄吉、蓬萊杏、〈已上二名出兼名苑〉和名加良毛々(○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十七菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0344 杏子 本草云、杏子、〈上音荇、和名加良毛々(○○○○)、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九果蓏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0344 原書果部下品載http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 云、一名杏子、此所引即是、本草和名亦云、杏http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 一名杏子、本條、千金翼方證類本草題http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif、不一名、蓋誤脱、非蘇敬之舊也、傷寒論有桂枝加厚朴杏子湯、説文、杏、杏果也、李時珍曰、諸杏葉皆圓而有尖、二月開紅花、亦有千葉者、不實和名依輔仁、加良毛々乃波奈、見古今集物名歌、今俗呼安无受、又今俗呼加良毛々者、謂壽星桃、與此不同、

〔伊呂波字類抄〕

〈加殖物附殖物具〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0344 杏〈カラモヽ〉

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0344 杏(カラモヽ)、〈出安〉巴旦杏(同)、〈同上〉 杏子(アンズ)〈一名甜梅、出加、〉 杏仁(アンニン)

〔古今和歌集〕

〈十物名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0344 からもヽの花 ふかやぶ あふからもヽ(○○○○)のはなほこそかなしけれわかれむことをかねて思へば

〔和漢三才圖會〕

〈八十六五果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0344 杏〈音荇〉 甜梅 和名加良毛々、俗云阿矣須、杏何梗切音衡、然今呼如姜音、〈◯中略〉按杏山林及家園皆有之、信州最多而出杏仁他邦、凡桃仁扁長有皺、梅仁圓而尖、杏仁大於梅仁而圓微皺三物宜之、

〔古今要覽稿〕

〈草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0344 からもヽ 〈あんず〉 〈杏〉 からもヽ、あんず、漢名杏は、花信風雨水二候に配し、梅と艷を共にす、杏は皇國固有の種にあらざれども、本草和名、和名本草、和名類聚抄等にからもヽとよみ、古今集物名深養父の歌に、逢からもものはなをこそ悲しけれ、又新撰六帖にも、からもヽの歌五首あり、今はからもヽといはず、あんずと呼て、何國にも植て花をめで、實は果となし、仁も藥とし、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019c29.gifhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019c29.gif 逆狗毒を解、其外功多し、花も婦人子なき者、二月丁亥の日、杏花と桃花を取陰乾して、戊子の日井華水にて服すといひ、又粉滓面http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001cd71.gif にも、杏花桃花を用〈共本草綱目附法〉といへり、和漢三才圖會には、信州最多而出杏仁といへども、今は伊豫國殊に多く出すといへり、又杏仁を取るに、其皮肉を劃たるを乾し、果となし、煮ても食ふといへり、本草綱目集解、宗奭の説に、生杏可晒晡作乾果http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4d.gif 之といへり、今西土より渡るは、仁大に して、生にて食ふに美味あり、かの人常の果とす、又杏http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif の兩面を磨して、小孔を明て笛となし、雉子をとるに用て、雉子笛といふとぞ、杏花は五辨淡紅にして、かヽへて開き、滿開はせざるなり、又八重なるは滿開す、大和本草に、一種花紅にして、八重なるあり、花大なり、單花に後れて開く事十餘日、俗名六代、其木ひきヽ時花を見るによし、〈◯中略〉此花開かんとする時甚美し、今六代と呼花しれず、今八重あんず、花あんずといふは大輪なれども、淡紅にして紅とはいひ難し、莟尤紅なり、その背の蕚の邊は鮮紅なれば、蕾より半開の裏は美なり、されば昔六代と呼し種となしても佳なり、又もちむめあんずむめ、〈怡顏齋梅品〉すあんず〈通稱〉と呼種は、其花あんずと一様にて、實の味酸なる故にいふ、怡顏齋味酸からすといひ、韵勝園梅譜にも、實の甘きこと杏のことしとあるは誤なり、杏の類多く有といへども、皆實の形状にて名を異にせり、又花戸にてあんずだちと稱する梅多し、三國一酒中花と呼、梅杏に接(ツガ)ざれば活せず、岩崎常正曰、つらゆきと呼梅實は、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 肉を離れて、杏のごとしといへり、又杏條下に巴旦杏あり、アメンドウ、アメンドウス、又アメンテルともいふ、和産なし、又アメンドウと云あり、是は壽星桃なりと、本草綱目啓蒙に見えたれども、壽星桃はアメンドウスといふ桃なり、スモヽノアメントウは牛心李なり、

〔大和本草〕

〈十果木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0345 杏(カラモヽ/アンズ) 其花紅梅ニヲクレ、桃ニ先ダツ、花ウルハシク、子ハ果トシテ食シ、其内ノ仁ハ藥トシ、又食品ニ加フ、香味良、世俗ニ杏子唐音ヲヨンデアンヅト云、仁ニアンニント云、和名カラモヽ、杏子ヲホシテ果トスルモヨシ、一種花紅ニシテ八重ナルアリ、花大ナリ、單花ニ後レテ開ク事十餘日、俗名六代、其木ヒキヽ時花ヲ見ルニヨシ、長ジテハ切ベシ、此木高キヲ切レバ又早ク榮ヘ長ズ、故ニヒキキニ花サクヲ見ルタメ、高キヲ切ナリ、菊ニモ六代アリ、是モ長ジテ切ベシ、平氏ノ重盛ノ孫六代年長ジテ切レシナリ、此花初開カントスル時甚美シ、花衰謝スル時アシヽ、實ヲ結ブ事稀也、李惟熙曰、桃杏雙仁者殺人、其花六出失其常故也、時珍云、索麪豆粉近杏仁則爛、杏ハ根 入最淺シ、故ニ石ヲタカク根ニヲクベシ、根堅ク花盛ニシテ果ヲ結ブ、此事書譜等中華ノ書ニ出タリ、實ヲウフベシ、或曰桃ノ木ニ杏枝ヲツグベシ、杏ニ數種アリ、實ニ大小アリ、味ニ甘酸アリ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一五果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0346 杏 カラモヽ〈和名鈔〉 アンヅ 一名孔壇仁實〈事物異名〉 南郡金腴 上林 文實 魯壇眞味 漢苑遺文 董林勝果 草金丹〈共ニ同上〉 文杏〈行厨集〉 星精〈同上〉 紅玉〈名物法言〉 杏兒〈訓蒙字會〉 花一名花友〈事物紺珠〉 艷客〈同上〉 碎錦〈行厨集〉 麗色〈尺牘雙魚〉 江錦〈同上〉 倚雲客〈花鳥爭奇〉 出墻燒林〈名物法言〉 仁一名徳兒〈輟耕録〉 老陰子〈袖珍方、老陽子ハ巴豆ノ一名ナリ〉 古名カラモヽ、今カラモヽト呼ブ者ハ壽星桃ナリ、今ハアンズト云、即唐音杏子ノ音ノ轉ナリ、杏樹ハ梅樹ニ似タリ、紅梅ニ次テ花ヲ開ク、鵞梅(ブンゴムメ)花ノ形ト同シテ大ナリ、花後葉ヲ生ズ、圓尖ニシテ細鋸齒アリ、梅葉ヨリ大ナリ、其花單ナル者ハ實ヲ結ブコト多シ、千瓣ナル者ハ實ヲ結バズ、是ヲハナアンヅ(○○○○○)ト云、時珍ノ説ニ、有千葉者不實ト云ヘリ、ソノ實ハ梅實ニ似テ大ナリ、シロアンヅ(○○○○○)ト呼ブ者ヲ上品トス、形大ニシテ黄白色味美ナリ、宗奭ノ説ニ、又有白杏ト云是ナリ、又モチアンヅ(○○○○○)アリ、形大ニシテ黄赤色味甘シ、頌宗奭ノ説ノ金杏ナリ、又スアンヅ(○○○○)アリ、時珍ノ説ノ梅杏ナリ、味酸シ故ニ梅ト云、〈◯中略〉 増、アンヅハ唐音アンツウノ略ナリ、又シロアンヅニ同名アリ、白花ノモノモシロアンヅト呼ブ、〈◯中略〉又汝南圃史云、其仁有毒、須煮令極熟中心無自爲度ト云ヘリ、

〔草木六部耕種法〕

〈十九需實〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0346 杏子(アンズ)、亦http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ヲ植タル儘ニテ成長シタルハ、實小ク味苦シ、宜ク苗ヲ爲立テ、移シ植テ接木スベシ、其法梅ニ異ナルコト無シ、且此ノ物ハ、梅桃、李等ヲ砧木ニシテ接ベシ、桃ヲ砧トシテ接タルハ、實大ニシテ色深紅、其味甘ク、殊ニ上品ナル美果ナリ、杏子ハ壽木ニテ百年ヲ經ルト雖ドモ、能ク實ノ結者ナリ、然レドモ成長シタル木ハ移シ植ウベカラズ、大抵繁生スルコト無ク枯死者ナリ、又此物ハ正月木ノ下ヲ大槌ニテ打チ、三月根ヲ去ルコト、二三間隔テ畦ヲ作リ、 水ヲ漑テ潤ストキハ夥シク實結者ナリ、

〔草木育種〕

〈下果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0347 杏(あんず)〈本草〉 桃砧又李砧に接べし、樹はぶんご梅によく似たり、花單にて紅し、又八重もあり、接様移樹肥皆梅と同じ

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001dfe4.gif 厨備用倭名本草〕

〈六五果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0347 杏〈◯中略〉 杏實味酸氣熱小毒アリ、曝シ脯ニシテ食ス、冷熱毒ヲサル心之果ナリ、心病ニハヨロシク食スベシ、生ニテ多食スレバ筋骨ヲソコナフ、梅ニ類スルハ味スシ、桃ニ類スルハ味アマシ、杏仁ハ藥ニ入テ功オホシ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 枝葉根皆藥ノ用アリ、 食禁 多食スベカラズ、瘡癤ヲ生ジ、膈熱シ、宿疾ヲ動シ、目クラミ鬚眉オチ、痰熱ヲ生ジ、精神ヲクラマス、

〔新撰六帖〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0347 から桃 爲家 もろこしのよしのヽ山に咲もせでをのが名しらぬから桃のはな

〔夫木和歌抄〕

〈二十九杏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0347 衣笠内大臣 いかにしてにほひそめけんひのもとのわがくにならぬからもヽの花

巴旦杏

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0347 巴旦杏(アメンダウ)〈八擔杏忽鹿麻、並同、見本草、又出加、〉壽星(同)桃〈又云婆淡杏、出酉陽雜俎、〉

〔和漢三才圖會〕

〈八十六五果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0347 巴旦杏 八擔杏 忽鹿麻 阿女牟止宇〈◯中略〉按巴旦者國名、呱哇國之屬、而近于咬http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra0000066116.gif 吧(ヂヤガタラ)、今多出者咬http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra0000066116.gif 吧波斯之産、而阿蘭陀將來之、今有俗謂阿女牟止宇、乃桃之類、〈出於西王母桃之下〉此與巴旦杏大異、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一五果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0347 巴旦杏 アメンドウ(○○○○○) アメンドウス(○○○○○○) 一名杏榛〈汝南圃史〉 八丹杏〈同上〉 八達杏仁〈遵生八牋〉 和産ナシ、紅毛人持來ル、杏http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ナリ、其仁ヲ採リ藥トシ果トス、巴爾齊亞(ハルシヤ)國咬http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra0000066116.gif 吧(ジヤガタラ)國ヨリ出ヅ、尋常ノ杏http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ヨリ大ニシテ黄色其紋細ニシテ堅シ、其形大小長短均シカラズ、仁ハ杏仁ヨリ大ナリ、生 食スレバ味栗ノ如シ、紅毛ヨリ來ル痰ノ藥ニズートボートヽ云アリ、其方巴旦杏鳳尾(トラノオ)草ヲ用甘草ノ濃煎汁ニテ製スルト云、俗ニ誤テズドウボウト呼ブ、又別ニアメンドウト云アリ、小木ニシテ花實ヲ多ク生ズ、是レ壽星桃ナリ、巴旦杏ノ類ニ非ズ、又花家ニ漢種ノ巴旦杏ト呼ブ者アリ、李類ニシテ眞ニ非ズ、 増、本草綱目會誌云、按ニ巴旦ハ國ノ名、呱哇(ジヤワ)國ニ屬して咬http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra0000066116.gif 吧(ジヤガタラ)ニ近シ、今多ク出ル者咬http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra0000066116.gif 吧(ジヤガタラ)、波斯(ハルシヤ)ノ産ナリ、阿蘭陀將來ノ方ニ、膈噎ヲ治スルニ、巴旦杏仁、小鳳尾草、氷砂糖、各等分、水煎服ス、

〔庖厨備用倭名本草〕

〈六五果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0348 巴旦杏(ハタンキヤウ/アタンタウ)〈◯中略〉 巴旦杏、味甘氣平温毒ナシ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019c29.gif ヲトヾメ、氣ヲ下シ、心腹ノ迷悶ヲ消ス、

〔本草一家言〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0348 巴旦杏 出于本草、番藥也、漢土和邦共無之、一名扁桃、其實酢不食、其http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 扁大、去http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif仁、今所渡者敗朽腐爛者尤多、宜擇用、然近世和邦稱阿女牟登宇者、其木矮短長葉、稠密攅聚、稍頭花色不于常桃、其實稀少、俗醫以此物巴旦杏誤也、即陳氏花鏡王氏彙苑所載壽星桃也、與扁桃絶不同、不藥用

梨/名稱

〔本草和名〕

〈十七菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0348 梨〈楊玄操音力之反〉棎子〈味酸甘、音市廉反、〉http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019bae.gif 子〈亦似梨而小酸、音詞酔反、〉檖子〈生山中、已上三名出崔禹、〉一名紫實、一名紫條、一名縹帶一名六俗、一名含須、〈已上五種出兼名苑〉和名奈之(○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十七菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0348 梨子 唐韻云、梨〈力脂反、和名奈之、〉果名兼名苑云、梨子一名含消、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九 果蓏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0348 按説文http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a9f.gif 果名、孫氏依之、李時珍曰、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a9f.gif 樹高二三丈、尖葉光膩有細齒、二月開白色、如雪六出、〈◯中略〉本草和名引作含須、按洛陽伽藍記云、城南報徳寺有含消梨重十斤、齊民要術引三秦記曰、漢武東園一名御宿、有大梨斗、落也即收取著、以布囊之、名曰含消、藝文類聚初學記、並引三秦記云、漢武帝園有http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a9f.gif 、名曰含消http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a9f.gif 、兼名苑蓋本於是等書、則知作含須者誤、

〔鹽尻〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0348 梨をなしと讀は、和語にあらず、奈子をかりて訓とせり、

〔倭訓栞〕

〈前編十九那〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0349 なし〈◯中略〉 梨を訓ぜるは奈子の音を謬用うといへど、中酸の義にてこそ、磐梨郡を倭名鈔にもいはなすとよめり、水なしは消梨也、又青なしあり、共に賞すべし、觀音寺松尾ともによろし、堅なしは棠梨也、こりんごともいふ、あまなしは加冬梨也、又島なしあり、實少さく赤し、日本紀に木梨あり、今も一種とす、本草榠樝の一名に見えたり、攝州に紫花梨あり、本草にも見ゆ、美濃山中に姫なしあり、形圓くてちひさし、冬に至り食べし、新撰六帖に夏梨あり、秋をもまたぬとよみたれば、夏より熟するなるべし、西陽雜俎に曹州出夏梨と見えたり、

〔枕草子〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0349 木の花は なしの花(○○○○)よにすさまじくあやしき物にして、めにちかくはかなき文つけなどにせず、あいきやうおくれたる人のかほなど見ては、たとひにいふもげに其いろよりしてあいなく見ゆるを、もろこしにかぎりなき物にて、文にもつくるなるを、さりともあるやうあらんとて、せめて見れば、花びらのはしにをかしきにほひこそ心もとなくつきためれ、やうきひ、みかどの御使ひにあひてなきけるかほににせて、梨花一枝春雨をおびたりなどいひたるは、おぼろけならじとおもふに、猶いみじうめでたき事はたぐひあらじとおぼえたり、

〔新撰六帖〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0349 なし(○○) 家良 年ふれどかはらずながらつれなしのあらぬ物にも身こそ成ぬれ 爲家 いたづらにおふのうらなし年をへて身は數ならず成まさりつヽ

〔圓珠庵雜記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0349 なし、ありのみ(○○○○)、〈◯中略〉 事物異名云、梨阿里馬、

〔相模集〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0349 さかりすぎてくちたるなしを、おさなき人の許にやるとて、たヾならじとて、  をきかへし露ばかりなるなしなれど千代ありのみと人はいふ也

〔山家集〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0350 れいならぬ人の、大事なりけるが、四月になしの花の咲たりけるをみて、なしのほしきよしをねがひけるに、もしやと人に尋ければ、かれたるかしはにつヽみしが、なしをたヾひとつつかはして、こればかりなど申たる返ごとに、 花の折かしはにつヽむしなのなしはひとつなれどもありのみとみゆ

〔續狂言記〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0350 連歌毘沙門 〈初アト〉扨いつものごとく年籠いたさふ、〈アト〉よふござろ、ゆるりと御ざれ、少まどろみましよ、〈◯中略初アト〉いや別の事でもござらぬ、夜前は多門天より、御ふくを被下てござる、〈アト〉それはめでたいことでござる、何を被下たぞ〈アト〉福ありのみを被下てござる〈◯中略〉〈シテ〉是はざれごとじや、是はなんばのほこといふて、さびるほこではおりなひ、さらばはいぶんをしてやらふ、〈色〉いでいでありのみわらんとて、なんばのほこをとりなをし、まん中にをしあて、さつくり、扨も〳〵かたわれもなふよふわれた、さあとれ、汝もとれ、あまり見事なありのみで酢だまりが出來た、是は多門天が徳分にしてたべう、

梨種類/梨産地

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0350 空閑梨(コガナシ)〈本名鵝梨、今按、肥前高來郡空閑(○○○○○○○)所産、故名、〉 甘棠(アマナシ)〈出加〉 杜棠(同)〈毛詩〉 消梨(ミヅナシ)〈本草、所謂香水梨也、〉

〔和漢三才圖會〕

〈八十七山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0350 梨〈音離〉 快果 果宗 玉乳 蜜父 和名奈之〈◯中略〉 按梨雖山果而人家近煙處能結子、性不寒、故北國最多、奧州津輕(○○)、羽州秋田(○○)之産、倍於他國者而大、其大者周一尺四五寸、俗呼名犬殺(○○)、〈狗子有樹下梨落所撲死故名、〉 紅瓶子(ヘイシ)梨似瓶子形而色赤、其肉白如雪、江州觀音寺梨(○○○○○○)色微赤、不甚大、而漿多甘美如於口中、山城松尾梨(○○○○○)状類觀音寺、而褐色甘脆如雪但槳少耳、 水梨(○○)状似青梨(○○)而褐色帶青、味極甜美、有微香漿  圓梨(○○)即青梨之種類而大、皮薄、色青帶微褐、多漿甘美、 肥前空閑(コガ)梨、微赤色、極大、其味亞於圓梨、其外數品不枚擧、 凡梨冬月毎枝曲撓縛而常不解、則能結實、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0351 梨 ナシ アリノミ〈阿州、京都ニテハ、鹿梨ヲアリノミト云、〉 一名青田菓〈典籍便覽〉 百菓珍 玄圃實〈共同上〉 阿馬〈事物異名〉 百果宗 飣坐珍 山檎 鳳棲〈共同上〉 阿里馬〈事物紺珠〉 瓊實珍寶〈同上〉 快雪〈名物法言〉 含消〈同上〉 百損黄〈清異録〉 圓果〈菽園雜記〉 玉實〈尺http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f00006520ec.gif 雙魚〉 雪液〈行厨集〉 珍實〈同上〉 梨兒〈訓蒙字會〉 離〈品字箋〉 花一名千株雪〈典籍便覽〉 玉容〈名物法言〉 香雪〈同上〉 清艷〈事物紺珠〉 瀛洲玉雨 濃香〈共同上〉 春未ダ葉ヲ生ゼザル已前ニ、桃ニ次テ花ヲ開ク、白色五瓣莖長シテ簇リ生ズ、花衰テ新葉ヲ生ズ、形圓尖ニシテ厚ク、細鋸齒アリ互生ス、唐山ニハ其品多コト集解ニ載ス、和産ハ數品アリ、一種空閑(コガ)ナシハ形圓ク、皮ニ微赤ヲ帶ブ、佳味ナレドモ水少シ、是乳梨ナリ、事林廣記ニ、赤皮梨子ノ名アリ、一種水ナシ(○○○)ハ形空閑ナシト同シテ、佳味ニシテ、水多シ、是水梨ナリ、一種アヲナシ(○○○○)アリ、形微長ク、皮ノ色青ク味佳シ、是レ青梨ナリ、他梨ヨリ早ク熟ス、故ニ酉陽雜俎ノ夏梨アリト大和本草ニ云リ、一種大場ナシ(○○○○)ハ雲州ノ名産ナリ、形圓大ニシテ水多ク香アリ、穰小クシテ肉多シ、皮ノ色黄ヲ帶テ微透ス、越後(○○)及ビ勢州(○○)ニテマツヲナシ(○○○○○)ト云、是レ香水梨ナリ、一種牛面(ゴメン)ナシハ越後新潟(○○○○)ノ産ナリ、形至テ大ナル故名ク、又丹後田邊(○○○○)ニ一升ナシ(○○○○)アリ、一顆ニ水一升アリト云、豫章漫抄ニ斤九梨ノ名アリ、一夥ノ重サ一斤九兩〈二百五十錢〉アルヲ云、此類ナルベシ、

〔草木育種〕

〈下果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0351 梨〈本草〉 甲斐相模下總(○○○○○○)等にて多作、砂まぢりたる眞土(まつち)よし、根の土しまりたるがよき故に、小砂利を突込處もあり、寒中人糞又酒粕等根廻を掘て入べし、高五六尺に棚を拵へ、枝を結付てよし、又花咲たる時一房の内、實の大なるを一ツ二ツ殘て、跡を摘捨たるもよし、梨も種類 多し、中にもあわ雪(○○○)、あをなし(○○○○)等は、わせにて味よし、

〔甲斐國志〕

〈百二十三産物及製造〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0352 一青梨子(○○○) 延喜式云、諸國貢進菓子、甲斐國青梨子五擔、又例貢御贄ノ品ニモ載タリ、本州第一ノ名品ニシテ、四方ニ聞タリ、州中所在民戸園林ヨリ産スル物ナレドモ、今運上永ヲ納ル村多シ、山梨郡勝沼村ノ産爲最上、岩崎村及北山筋長塚五箇村ノ産次之ト云、消梨(○○/ミヅナシ)〈本草ニ云、香水梨、今云雪梨子、〉鵝梨(○○/コガナシ)、〈肥前高來郡空閑(コガ)産種子故名之、〉御前梨(○○○)ノ類數品有リ、皆青梨ニハ不若ナリ、其形中豐シテ上下消殺、如麥粒、大ナル物重百匁ニ餘ル、削皮皎潔如霜、麗液指間ニ滴ル、甘美不言、古歌ニ、 夫木集、かひにて山なしの花をみて、 能因法師 甲斐がねに咲にけらしなあし引の山なしをかの山なしの花 松平甲斐守領國ノ時八月獻上之、今モ府中藩鎭ヨリ獻ズル恆例ナリ、

〔佐渡志〕

〈五物産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0352 梨 和名ナシ 家園マタハ圃中ニ栽ユ、水梨アリ、青梨アリ、松尾狐コロシハ俗間ノ方言ナルベシ、

〔武江産物志〕

〈遊觀〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0352 梨 隅田村 下總八幡〈市川向〉 生麥村〈川崎〉

梨栽培

〔草木六部耕種法〕

〈十九需實〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0352 梨ハ種植ヲ成長セシメタルモ宜ク、接木、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651547.gif 木ニスルモ皆宜シ、種類亦甚多ク、世ニ古河(コカ)梨子、禪師、楊貴妃ナド稱スル者アリ、皆上品ナリ、又青梨子(アヲナシ)ニ、極大ニシテ味甘美ナル有リ、子植スルニハ實大ニシテ味美ナル上品ノ種子ヲ採リ、此ヲ直ニ苗地ニ疎ク隔テ蒔キ、細土ヲ七八分許覆テ、少シ押付置ベシ、翌春芽ヲ出タラバ、時々泔水ヲ澆テ成長セシメ、明年別ニ植地ヲ調理置テ、其苗ヲ一本ヅヽ間ヲ六尺隔ニ植テ、時々泔水或薄キ水糞ヲ灌ギ成長セシムベシ、夏中能ク太リタルヲ、冬ニ至リテ葉落タル時ニ、利刀ヲ以テ土際ヨリ二寸許遺シ、伐採テ其切口ヲ炭火ヲ吹キ燒テ置トキハ、翌春根ヨリ新芽ヲ生ジテ、勢能ク成長シ、二年ヲ經ルノ間ニハ、必實ヲ結ビ、漸々良木ト成ル者ナリ、凡實植ノ梨子ハ、此法ヲ行ハザレバ繁榮スルコト能ハズ、假令繁榮 スルトモ實小ク味ヒ美ナラズト知ベシ、又接木スルニハ、其梨子ノ笛竹程ニ太リタルヲ引切リ、正月中其芽ノ少出ントスル時ニ、望ム所ノ梨木ノ南向ナル枝ノ、勢ヒ壯ナル梢ヲ切テ接ベシ、南枝ニ非ザレバ實結コト遲者ナリ、又http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651547.gif 木スルニハ、二月中旬頃南向ノ勢壯ナル枝ヲ一尺五六寸ニ切リ採テ、基本末ヲhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000096.gif (フ)ギ、上下ノhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000096.gif 口(ソギクチ)ヲ炭火ニテ燒キ、豫テ糞養シ置タル植地ヲ掘テ、適宜ク此ヲ栽ヱ、細ナル肥土ヲ上ニ覆ヒ、蹈付テ遮陽ヲ致シ、燥クトキハ、泔水ニテ少シ潤シ置ベシ、此ノ如クスルトキハ、幾本http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651547.gif ト雖ドモ皆能ク活者ナリ、總テ此物ヲ作テ上品ナル實ヲ多結シメンコトヲ需メバ、寒中其根ヲ去ルコト一尺餘ヲ鍬ニテ耕シ、干鰯汁〈即干鰯一斗ヲ粉ニシテ水三斗ヲ合セ、數日調和シタルヲ云フ、〉ヲ澆テ土ヲ覆置クベシ、利潤ヲ得ルコト多キ糞養ナリ、

〔廣益國産考〕

〈八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0353 梨を多く作りて利を得る事〈◯中略〉 木植するには、先其土地の地味をよく見立べし、予〈◯大藏永常〉先年美濃の國大垣の在、梨を作りし所に參りし事あり、其邊は餘り上地にてはなく、黒土がちにてありしと覺ゆ、都て木は山によく育つ性分なれば、あまり上地ならざる山土の方能生育すると見えたれば、作物のとれかたすくなき地面を撰び仕立べし、然し風當強く北請の地、又は日蔭抔は忌べし、南請の風すきよき所を見立べし、植るには貳間宛間置植べし、植付たるとしは、此ごとく〈◯圖略〉竹にて鳥居の如くして、其中に繩もてゆるく括付置べし、其翌年は六七尺にも伸べし、三年目には地より七尺高さに竹にて棚をかき枝を四方へくばるべし、

梨雜載

〔日本書紀〕

〈三十持統〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0353 七年三月丙午、詔令天下勸殖桑紵梨栗蕪菁等草木以助五穀

〔續日本紀〕

〈一文武〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0353 四年三月己未、道照和尚物化、〈◯中略〉初孝徳天皇白雉四年、隨使入唐、適遇玄弉三藏、師受業焉、三藏特愛、令同房、謂曰、吾昔往西域、在路飢之、無村可http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 乞、忽有一沙門、手持梨子吾食之吾自啖後、氣力日健、今汝是持梨沙門也、〈◯下略〉

〔續日本後紀〕

〈十二仁明〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0354 承和九年十月丁丑、文章博士從三位菅原朝臣清公薨、〈◯中略〉六年〈◯承和〉正月叙從三位、老病羸弱、行歩多艱、勅聽牛車南大庭梨樹底、斯乃稽古之力、非備求所http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif

〔倭訓栞〕

〈前編十九那〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0354 なし 伊勢飯野郡に一株の古木ありてならずなしといふ、よて嫁娶などの時、その樹下を避て通行せずといへり、枝葉甚梨に似てちひさし、山なしなるべし、實も梨にて丸く、至て小也、ならぬにはあらず、叡山の西坂に不實の柿ある事、元亨釋書に見ゆ、

鹿梨

〔倭名類聚抄〕

〈十七菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0354 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019b50.gif 子 陸詞切韻云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019b50.gif 〈音離、和名夜末奈之(○○○○)、〉山梨也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九果蓏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0354 今俗亦呼夜末奈之、又呼以奴奈之、又呼阿利乃美、〈◯中略〉廣韻同玉篇亦云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019b50.gif 山梨也、按爾雅釋木、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a9f.gifhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019b50.gif 、謂http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a9f.gif山中者名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019b50.gif 、篇韻蓋依之、説文無http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019b50.gif、借用離字、子虚賦檗離朱楊、注引張楫云、離、山梨也、爾雅釋文云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a9f.gif 字亦作梨、按晨風詩云、隰有http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019bae.gif 、毛傳、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019bae.gif 、赤羅也、正義引爾雅郭注云、今楊http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019bae.gif 也、實似梨而小酢可食、陸機疏云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019bae.gif 一名赤羅、一名山梨、今人謂之楊http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019bae.gif 、實如梨、但小耳、一名鹿梨、一名鼠梨、今人亦種之、極有脆美者、亦如梨之美者、本草圖經云、江寧府信州出一種小梨、名鹿梨、葉如荼、根如小栂指、李時珍曰、山梨野梨也、梨大如杏、可食、其木文細密、赤者文急、白者文緩、

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0354 鹿梨(ヤマナシ)、〈陽http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019bae.gif 、鼠李、野李、並同、〉山梨、〈毛詩〉

〔和漢三才圖會〕

〈八十七山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0354 鹿梨(ありのみ/やまなし) 鼠梨 山梨 陽http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019bae.gif  赤羅 〈詩曰、隰有http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019bae.gif 者是也、〉 俗云阿利乃美 本綱鹿梨乃野梨也、大如杏、〈味酸嗇氣寒〉其木文細密如羅、赤者文急、白者文緩、 按、鹿梨枝有刺、其子如大棗、味酸濇不食、但爲聖靈祭果耳、故名聖靈梨

〔本草一家言〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0354 欏木 和名阿利乃實(アリノミ) 典籍便覽曰、色白紋理黄花紋麁亦可愛、謂之倭羅、不花者多、有一等稍堅、理直而細、謂之革欏

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0354 鹿梨 ヤマナシ(○○○○)〈和名抄〉 アリノミ(○○○○)〈京〉 イヌナシ(○○○○)〈濃州〉 ユデナシ(○○○○)〈雲州〉  一名兒梨〈典籍便覽〉 牛嬭梨〈藥性纂要〉 京師ニテハ市中ニ栽ヱズ、八瀬大原邊ノ民家ニ多シ、木高大ニシテ梨樹ニ異ナラズ、葉モ形同シテ枝ニ刺アリ、春未ダ葉ヲ生ゼザル已前ニ、白花ヲ開クコト梨花ト同ジ、實ハ桃實ヨリ小ニシテ、冬ニ至テ熟シ、食フベシ、夫ヨリ已前ハ煠セザレバ食ハレズ、京師ニテハ中元ノ佛供トス、ソノ木ニ文理アリテ羅ノ如シ、

〔夫木和歌抄〕

〈二十九梨〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0355 弘長四年毎日一首中 民部卿爲家 山なしの花しら雪ふるさとの庭こそさらに冬ごもりけれ

〔新撰六帖〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0355 山なし 家良 足曳の山なしの花咲しよりたなびく雲のおもかげぞたつ 爲家 きヽわたる面影みえて春雨の枝にかヽれる山なしの花(○○○○○)

菴羅果

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0355 菴羅菓(アリノミ)〈一名香蓋、本草、梨之屬、大日經疏、菴摩羅(エンモラ)果、形如本國夏梨云々、出世繼大鏡、〉

〔倭訓栞〕

〈中編一阿〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0355 あんらん 菴羅果をいふ、大和塔ノ峯の廟側に一株あり、五臺山の種といひ傳へり、皮片々自らへげ落て、其痕五色班爛たり、三月に花さく、五出粉紅秋に至り、實熟す、凡て榠楂の類也實の形は梨子の如し、

〔和漢三才圖會〕

〈八十七山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0355 菴羅果(てんぢくなし) 菴摩羅迦果 香蓋 此種未於此 本綱、菴羅果出西域、梨及柰之類也、葉似茶葉實似http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a9f.gif 、五六月熟、色黄、七夕前後已堪噉味甘温、果中極品、〈多食亦無害〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0355 菴羅果 一名王城〈事物紺珠〉 菴羅迦果〈花暦百詠〉 羅迦果〈食物本草〉 和産詳ナラズ、世ニ安蘭樹ヲ以テコレニ充ルハ穩ナラズ、安蘭樹ハ和州多武峯大織冠ノ御廟ノ 旁ニ一株アリ、是ハ鎌足公ノ御子定慧和尚如唐ノ時、鎌足公ノ薨去ヲ聞玉ヒ、五臺山ニ登リ、此種ヲ採リ、十三重ノ塔ニ用ユル材木トヲ擕テ、歸朝アリテ栽ラレシナリ、寶暦癸酉ノ年ニ至マデ千八十年ナリ、原木ハ山谷中ニアリ、今廟旁ノ者ハ榠櫨ニ接タルナリト云、形状榠櫨ト同ジ、葉ノ形モ異ナラズ、三月ノ末淡紅花ヲ開ク、又榠櫨ト同ジ、實ハ榠櫨ヨリ小ニシテ香味微シク異ナリ、内ニ黒http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif アリ、地ニ下シテ生ジ易シ、亦枝ヲ壓スルモ可ナリ、故ニ今花家ニ多シ、俗ニ實ヲ用テ痰及膈症ノ藥トス、漢名詳ナラズ、世ニ安蘭ノ音菴羅ニ近キ故ニ誤リ混ズルナリ、

〔扶桑略記〕

〈二十三醍醐〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0356 延喜十五年三月八日、相應傳云、相應和尚對本尊前、祈念可http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif往生之所、夢中明王捧和尚須彌山頂磐石之上十方淨土都率極樂、如掌中奄羅菓(○○○)、即告曰、〈◯下略〉

林檎

〔本草和名〕

〈十七菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0356 林檎一名黒琴〈出七卷食經

〔倭名類聚抄〕

〈十七菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0356 林檎 本草云、林檎〈音禽、和名利宇古宇(○○○○)、〉與柰相似而小者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九果蓏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0356 按利宇古宇、即林檎音轉、非倭名、故輔仁不是名今俗呼利无呉、又呼阿乎利无呉、〈◯中略〉所引文、原書不載、按http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019aed.gif 條陶注云、有林檎、相似而小、此所引蓋陶注也、王羲之帖、有櫻桃來禽日給滕、尚書故實云、來禽、言味甘來衆禽也、俗作林檎、蜀都賦劉逵注、林檎、果名也、林檎實似赤柰而小、味如http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a9f.gif 、開寶本草云、林檎其樹似柰樹、其形圓如柰、六月七月熟、陳士良曰、大長者爲柰、圓者林檎、〈◯下略〉

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0356 林檎(リンゴ/リンキ)〈一名來禽〉

〔塵袋〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0356 林檎ヲバ字ノ如ハヨマズシテ、リウコウト云コトアル如何、 順ガ和名ニハ林檎トカキテ、リウゴウトヨメリ、今ハ林ノ字リウトマデハ云ハネドモ、檎ヲバ尚コウト云人モアルナリ、ソノヨシナキニハアラズ、

〔倭訓栞〕

〈中編二十八利〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0356 りうごう 和名抄に林檎をよめり、今はりんごといふ、音をもて訓とするな り、長崎りんごあり、實小なり、花はよし、 りんご 林檎の音轉なるべし、又東國にて林檎の音を呼ものは柰なりといへり、りんごより少し長し、又小なり、赤りんごともいふ、

〔和漢三才圖會〕

〈八十七山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0357 林檎(りんご) 文林即果、 來禽〈和名利宇古宇今云利牟五〉 〈初從河中浮來、有文林即、拾得種之、因以爲名云云、◯中略〉 按、林檎花葉類海棠、花莟紅色、開則白帶微紅、似海棠花而小、其實有窪溝繩痕、徐熟半青半紅、味淡甘微酸脆美、今病人口中凋乾好吃之、如實熱消渇者不害、虚熱煩渇者、生冷物不食、

〔白石雜考〕

〈五木瓜考〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0357 林檎(リンキン) 多識編曰和名利牟古宇、俗云利牟古、異名來禽、文林即果、貝原篤信曰、林檎リンゴ、 稻若水曰、林檎リンゴ、 舜水朱魯璵曰、花紅リンゴ、 右本朝諸家ノ説ヲ考ルニ、我朝ノ昔リウゴウト云シモノ、今ハリンゴト云也、〈リウゴウ、即林檎二字ノ音ヲ以テ和名トハセルナリ、コノ例尤秘訣ニテアルナリ、芭蕉ヲバセヲト云ヒ、紫苑ヲシヲント云モ同ジ例也、リンゴト云モ、スナハチ林檎二字ノ音ヲモテヨビシナリ、〉古ニリウゴウト云ヒ、今ハリンゴト云モノ、共ニ林檎二字ノ音ナレバ、リウコウ、リンゴ、リンキン、其名異ナルニ似タレドモ、同ク一物ニテ、〈木瓜ヲモケトモボケトモ、モクカウトモ云ヘドモ、モトコレ一物ナルガゴトシ、〉舜水ノ所謂花紅ニ、亦林檎ノ一名ナレバ、皆是異ナル物ニハ非ズ、然ルニ近世リンゴノ外ニ、俗ニリンキント云モノ出來シヨリ、夫ヲワカチシルスベキ爲ニ、多識編ニヨリテ、榲桲ノ字ヲ以テ、リンキントナス、尤アヤマレリトゾ云ベキ、是リンキント云物ノ事ヲ詳ニセザルニヨリテナルベシ、リンキンノコト下ニ注シヌ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0357 林檎 リウゴウ(○○○○)〈和名抄〉 リンゴ(○○○) アヲリンゴ(○○○○○)〈加州〉 一名花紅〈本經逢原、物理小識 汝南圃史救荒本草ニハ奈ノ一名トス〉 青李〈事物異名〉 林家果〈同上〉 文林〈通雅〉 文林果〈花暦百詠〉 文官果〈同上〉蜜果〈群芳譜〉 冷金丹〈同上〉 淋http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000097.gif 〈名物法言〉 水精團〈事物紺珠〉 金彈丸〈同上〉 聯珠果〈廣群芳譜 事物紺珠ニハ柰ノ一名トス〉 月臨花〈同上花ノ名〉 靚客〈事物紺珠同上〉 金櫻子〈金櫻子條下http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ノ名〉 唐山ニハ品類多シ、汝南圃史ニモ蜜林檎、花紅林檎、水林檎、金林檎、操林檎、轉身林檎ノ六種ヲ戴ス、 本邦ニテハ只一種ノミ木ハ丈餘ニ至リ、枝柔ニシテ廣ク繁茂ス、春新葉出テ後三月花ヲ開ク、葉ハ形橢ニシテ細鋸齒アリ、花ハ五瓣ニシテ大サ一寸許、數蕚簇リ開ク、白色或ハ淡紫ヲ帶ブ、花後實ヲ結ブ、大サ一寸許、正圓ニシテ緑色光リアリ、六月ニ熟ス、其頭半紅色トナル、内ニ黒子アリ、梨http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ノ如シ、

〔剪花翁傳〕

〈前編二三月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0358 林檎 花の色淡赤、開花三月上旬、花葉ともに海棠に似たれど、よく約りて力あり、育方海棠に同じ、

〔甲斐國志〕

〈百二十三産物及製造〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0358 一林檎〈和名利宇古宇〉 方言リンゴ、古府中ニ産スル者味美ナリ、台徳廟賜平岩主計頭御報書〈櫻林保格所藏〉りんご一籠到來云云、六月十二日トアリ、其頃モ名品ト爲シテ獻上セシナルベシ、松平甲斐守ノ時ハ七月ノ獻上物ナリ、宗瑞ガ甲山行ニ、瑞的者〈江戸人〉送別ノ發句アリ、 道すがら目にも倦べし花林檎ト、他州ノ人モ名品タルコトヲ知レリ、

〔佐渡志〕

〈五物産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0358 林檎 方言リンゴ 州ノ東南ニ多シ、加茂郡夷湊ヨリ舟ニツミテ越後ヘ買去ル也、

〔本草和名〕

〈十七菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0358 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019aed.gif 〈仁諝作奈〉又有林檎〈相似而小〉http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019998.gif 子〈状如小梨〉棪子〈亦似http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019aed.gif 色赤、音餘冉反、已上二名出崔禹、〉一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019b45.gif 、〈音速、出兼名苑、〉http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019aed.gif 一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000098.gif 、一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a70.gif 、〈已上二名出兼名苑〉和名奈以(○○)、一名布奈江(○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十七菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0358 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e09b.gif 子 本草云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e09b.gif 子、〈上音内、字亦作柰、和名柰以、一云加良奈之(○○○○)、〉兼名苑云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019b45.gif 〈音速〉一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a70.gif 〈音掩〉柰也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九果蓏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0358 原書下品載http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e09b.gif 、無子字、本草和名同、千金翼方證類本草作柰、亦無子字、子字疑係源君所http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 増、説文、柰柰果也、按陶注http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e09b.gif 云、有林檎相似而小、則知http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e09b.gif林檎而大也、陳士良曰、大長者爲http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e09b.gif 、圓物林檎、夏熟、李時珍曰、柰與林檎、一類二種也、樹實皆似林檎而大、玉篇柰http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e09b.gif 同上、廣韻、奈本亦作柰、〈◯中略〉本草和名云、和名奈以、一名布奈江、加良奈之與新撰字鏡同、今俗呼阿加利旡呉、謂其花紅於林檎也、〈◯中略〉本草和名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019aed.gif 條引崔禹、載棪子云、似http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019aed.gif 色赤、又引兼名苑云、一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019b45.gif 、是以棪與 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019aed.gif 相類附録、且擧其一名也、按爾雅、棪http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019b45.gif 其、郭注、棪實似柰赤、可食説文、棪遬其也、南山經、堂庭之山多http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001d0ed.gif、郭注、棪別作速、其子似柰而赤、可食、今本速作連誤、兼名苑云、棪一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019b45.gif 者、蓋本此等書也、明http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019b45.gif 是棪之一名、非http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019aed.gif 之別名、本草和名又云http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e09b.gif 一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a70.gif 、出兼名苑、廣雅、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001d709.gifhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a70.gif 櫙、柰也、兼名苑蓋本之、源君引云http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019b45.gif 一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a70.gif 者誤混、恐非兼名苑原文、王念孫曰、齊民要術、種柰林檎篇、引廣雅http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001d709.gifhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a70.gif 、櫙、柰也、撿廣雅、楉榴柰也、在栟櫚椶也下、枺http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001d108.gif 也上、是果名也、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001d709.gifhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a70.gif 、櫙、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e09b.gif 也、在http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/0000000199d9.gif 也下、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000100.gif 蘀落也上、此皆言木、之形状、不雜以果名、則此句當死木、集韻、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e09b.gif 、乃計切、木立死也、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e09b.gif 之言http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019ca0.gif 也、廣雅http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019ca0.gif 死也玉篇http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001d709.gif 木瘤也、則http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001d709.gif瘣木、木病腫無枝葉、謂http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001d709.gif 、因而死木亦謂http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001d709.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001d709.gif 之言殄也、鄭注周官稻人云、殄病也絶也、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a70.gif 之言奄也、白虎通義云、薨、奄然亡也、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000100.gif 之言丘也、賈逵説九丘云、九州亡國之戒也、孟康注漢書楚元王傳云、西方謂亡女壻丘壻、皆死之義也依此説、則兼名苑以http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a70.gif果名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e09b.gif 一名者誤也、〈◯中略〉本草和名引無二字、〈◯柰也二字〉蓋是兼名苑注文、

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0359 柰(カラナシ)〈林檎之別種〉

〔和漢三才圖會〕

〈八十七山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0359 柰(からなし)〈音耐〉 頻婆〈梵言〉本綱柰江南雖有、而北國最豐、作脯食之、〈若寒有小毒〉與林檎一類二種、樹實皆似林檎而大、有赤白、青三色、白者爲素柰、赤者爲丹柰、〈一名朱柰〉青者爲緑柰、皆夏熟、又有冬柰、冬熟子帶碧色、〈凉州有之〉

〔白石雜考〕

〈五木瓜考〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0359 リンキン 倭名抄ニ此物ヲ載セズ 多識編ニ此物ヲ出サズ、榲桲ノ下ニ、或ハ利牟幾牟トシルセリ、貝原篤信曰、柰リキン、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e09b.gif 同ジ、稻若水曰、リンキンハ海棠ノ實、即海棠http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a9f.gif 也、舜水朱魯璵曰、沙果ハリンキン、 右諸説ヲ考ルニ、倭名抄ニリンキンノコト見エザルハ、順朝臣ノ比ホヒニハ、此物只リウゴウノ類ニ混ジテ、別チ名付ルニ及バザリシナルベシ、多識編ニ此物ヲ出サヾルハ本草綱目ニ此物ヲ、載セザルガ故ナルベシ、篤信ガ柰ヲ指テリキント云シコト、似タルコトハ似タリ、〈リキン、リンキン相同ジ、委ク〉 〈下ニ見ユ〉、若水ガ海棠ノ實ヲリンキント云シハ、アヤマレルナルベシ、〈海棠ノ實ト、リンキント同ジカラザルコトハ、辨ズルニ及バズ、〉舜水朱氏ハ異朝ノ人ニテ、我國ニ來リ留リ、我國ノ物ヲ見テリンゴ、リンキンノ二種ヲワカチ云ヒシ所ナレバ疑フベカラズ、但舜水ノ所謂花紅沙果、イヅレモ諸ノ本草ニハ見エズ、世ノ人專ニ李時珍ガ本草綱目ヲノミ據トシテ、カヽル物ノ名状ヲ辨フル事ナルニ、花紅沙果ノ名其中ニ見エザレバ疑フ所モアリナン、サラバ花紅沙果ノ名、異朝ノ書ニ出シモノ一二引出シテ、其疑ヲ定ムベシ、余庭璧ガ事物異名ト云モノニ、花紅ハ林檎トモ來禽トモ云由見エタリ、〈舜水ノ云シ如ク、花紅即我朝ノリンゴタルコトウタガフベカラズ、〉又方以智ガ通雅ト云モノニ、日給ハ沙果也、味甘シト見エタリ、サラバ沙果ハ日給ノ一名タリ、日給ト云モノ王羲之ガ帖ニ見エタレド、其形ハサダカナラズ、シカハアレド其帖ニ來禽日給トナラベ云ヒタレバ、林檎ノ類也トハ見エシ、李時珍ガ本草綱目ニ、柰ノ條ノ下、ワヅカニ日給ノコトヲシルシテ、王羲之ガ云シ所ハ、柰ヲ指テ日給トスルニ似タリトシルセリ、サラバ時珍モ林檎ノ類トハ思ヘルナリ、〈通雅ニ、林檎ハ柰ノ一種トモイヘリ、〉サレド時珍モ未ダ日給ヲヨク知ラザルニ似タリ、〈篤信ガ柰ヲリキント注セシハ、時珍ガ此説ニヨレルニヤ、據ナシト云ベカラズ、サレド時珍ガ説モ、日給スナハチ柰也トハイハズ、又食性本草ニ、柰ニ三種アリ、大ニシテ長キ者ヲ柰トス、圓ナル者ヲ林檎トス、コレラハ夏熟スル也、小キナル者ヲ梣トス、秋熟ス、一名ヲ楸子ト云由ミエタレバ、柰ハリンゴヨリ大クシテ長キ者也、今世ニリンキント云モノ、リンゴヨリハ猶小シキニシテマドカナレバ、柰ヲ指テリンキント云シモオボツカナシ、只舜水ノ説ノ如クニ、沙果一ニ日給ト云モノヲ、リンキント心得シニハシカザルベシ、〉シカジ只舜水ノワカチ云シマヽニ、花紅一名林檎ト云モノヲリンゴトシ、沙果一名日給ト云モノヲリンキント心得ンニハ、〈又按ズルニ、今世ニリンキント云モノ、リンゴニ似テ小シク、秋ニ至テ熟スル者ナレバ、食性本草ニ見エシ梣一名楸子ト云者ニ似タリ、サレドモ舜水ノ説ニ、沙果又梣ト云由モ見エザレバ覺束ナシ、ヨク知レル人ニタヅヌベキモノカ、〉 右諸説ヲ併セ考テ、ミダリニ是ヲ辨ジ決メンニハ、 リンゴ花紅一ニ林檎ト云モノ也 此物本朝異國、共ニ果ノ佳美ナル者トセリ、 リンキン沙果一ニ日給ト云モノ也 此物異朝ニハ昔ヨリ果ノ佳美ナル物トセシカド、我國 ニハ昔ヨリ林檎ノ中ニ混ジテ別チイハザリシヲ、近キ代ニ及テ別チ名付シモノナリ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0361 柰 ナイ(○○)〈和名抄〉 リンキン(○○○○) アカリンゴ(○○○○○) ベニリンゴ(○○○○○)〈加州〉 ベニココ(○○○○)〈同上〉 リンキ(○○○)〈羽州〉 一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a70.gif 〈品字箋〉 頻菓〈三才圖會〉 平波〈典籍便覽〉 苹坡〈汝南圃史〉 蘋蒲〈同上〉 貧婆〈花暦百詠〉 沙果子樹〈救荒本草〉 嘉實〈行厨集〉 浮朱〈同上〉 聯珠果〈事物紺珠〉 相思果〈同上〉 火刺賓〈物理小識〉 莟http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000101.gif 〈通雅〉花紅〈汝南圃史、救荒本草、三才圖會、事物異名、物理小識、本經逢原等ニハ、林檎ノ一名トス、〉 林檎ノ種類ニシテ寒國ニ生ズ、故ニ加信奧羽ニ多シ、他處ニ移シ栽ユルモ活ズ、形状林檎ニ似テ葉細長シ、花ハ林檎ニ同ジ、熟シテ内外共ニ深紅ニシテ柔軟ナリ、薄ク切リ日乾シ、遠ニ寄セ、菓ニ充ツ、實ノ形林檎ト同キアリ、又小クシテ微長ナルモアリ、皆熟シテ全ク鮮紅ナリ、林檎ノ熟シテ半紅ナルニ異ナリ、

棠梨

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0361 棠梨 コリンゴ(○○○○) ヤマナシ(○○○○) ヤブリンゴ(○○○○○) カラツポウ(○○○○○)〈豫州〉 一名 加冬梨〈閩書南産志〉 杜梨〈典籍便覽〉 山中ニ多シ、高サ一二丈、又小木ニテモ花實アリ、春新葉ヲ生ズル時花ヲ開ク、白色五瓣林檎(リンゴ)ノ花ニ似テ小シ、多ク蔟リ生ズ、花後實ヲ結ブ、形櫻實ニ似タリ、秋ニ至テ紅熟ス、葉モ林檎葉ニ似テ白毛アリ、又三叉ニシテ牽牛葉(アサガホノ)ノ如ナルモアリ、又五岐ニシテ、山査ノ葉ノ如クナルモアリ、又七岐ナルモアリ、皆一枝ノ中ニ變葉多ク雜レリ、秋深テ葉落ツ、甲州ニハ小木小葉ニシテ、黄實ヲ結ブ者アリ、方言ズミ、一種花淡紅色ナル者アリ、カタナシ(○○○○)〈北國〉ト云、一名コナシ(○○○)、〈飛州〉亦山中ニ生ズ、實ハ大ニシテ山査子ノ形ノ如シ、是ヲ紅梨棠〈天台山方外志〉ト云、一名山海棠、〈同上〉山梨紅、〈訓蒙字會〉日光山中ニハ深紅色ナル棠梨アリ、

〔百品考〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0361 棠梨 一名野梨一名加冬梨 和名コリンゴ〈◯中略〉 北國ニ自生アリ、花戸ニ多栽テ海棠林檎ヲ接グダイ木ニ用ユ故ニカイダウダイト云、木ノ高サ 一二丈、葉ハ林檎ニ似タリ、又二岐三岐アリテ、山査子葉ノ如キモノ交レリ、花ハ海棠ニ似テ色白ク、稍後レテ開ク、後實ヲ結ブ、海棠ヨリ微大ナリ、霜降ル比實熟ス、色黄ナリ、味海棠ニ劣ル又粉紅花ヲ開モノアリ、古來ヤブリンゴヲ以テ棠梨ニ充ツ謬ナリ、ヤブリンゴハ葉山楂ニ似テ、三岐五岐ノモノ多シ、春花ヲ開ク、一處ニ多ク聚開ク、五辨白花ニシテ李花ヨリ小ナリ、又紅花アリ、實ハ小ニシテ營實(イバラノミ)ノ大サナリ、熟シテ澀ク堅ク食フベカラズ、果部ニ入ルベキモノニアラズ、

〔本草一家言〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0362 甘棠 按本草棠梨條云、樹似梨而小、葉似蒼朮葉、亦有團者、三叉者葉邊皆有鋸齒、二月開白花實、如小楝子大云云、此俗小林檎者是也、賀越地方名堅(カタ)梨花有赤白二色、群書有白者、杜赤者棠之説、此之故也、其實至小、似林檎而味澀、不果食、惟稱賞其花而已、予讀詩甘棠篇、謂其呼小林檎者非甘棠也明矣、蓋林檎之名本於王羲之十七帖中、來檎帖、林檎、棠子、著實囊盛爲可之説、自羲之帖以上、未林檎之名也、於是始覺、林檎來禽爲甘棠之俗名、同斷付林檎等名而掲甘、棠之名云林檎數種、其實皆味甜美、正合于甘棠之名義、〈圭録〉

海棠

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0362 海棠(カイダウ)〈正曰海棠梨、本名海紅、事文、花中神仙、一名不香花、又云花貴妃、〉

〔和漢三才圖會〕

〈八十七山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0362 海棠(かいだう)梨、 海紅 凡花木名海者皆從海外、來也、〈◯中略〉 按海棠花亞於櫻艷美也、今又有二葉海棠者、其木小而能開花、白色帶紅、但黄花及垂絲海棠未曾有也、蓋中華則以海棠花之第一、詩人最賞之、然杜子美詩集無海棠詩者、其母名海棠也、貴州鎭遠府之産最美、

〔大和本草〕

〈十二花木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0362 海棠 唐ノ賈耽ガ百花譜ニ、花中ノ神仙ト稱シ、又華夏ノ人花中ノ名友ト云、彭淵材ハ海棠ニ香ナキヲ恨ム、眞海棠ハ二三月ニ花開ク、實ノ大比林檎小、其形モ味モ恰如林檎食、八月ニ至リ遲ク熟ス、眞海棠ハカラヨリ來ル、山海棠ハ本邦處々ノ山ニモトヨリアリ、中華ヨリ來ルハ南京ト淅江トノ二種アリ、日本ニテ絲櫻ト云物、唐人ハ垂絲海棠ト云、海棠ノ類ニハアラ ズ前ニ記セリ、本艸ニ海棠子(ミ)ヲマケバ花遲シ、梨ト本瓜ニ接ゲバ早茂ス、海棠ハ梨ノ類ナリ、

〔本草一家言〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0363 海棠 按本草、凡以海命名者、皆自海外來之種也、余以不疑恐頗謬論、蓋於海棠之種而觀之、海之命義未詳、以海邊之地名歟、夫古人以洛陽牡丹西蜀海棠一雙美觀、蓋西蜀雖僻地而接中國之海外殊俗、其他如川海棠、杜海棠、淅江海棠、亦其本地固所産、自古皆有之也久矣、非其自海外者甚明也、凡天下之花富麗曄艷無海棠、然則詩所詠云棠棣唐棣者、指此種類而言、注疏家往々爲之注、或曰扶栘、或曰車下李、或曰金棠棣、何不思之甚也、如已上數種細瑣微末、詩人謂之鄂不韡、韡偏其反而可乎、注家爲誤也著明矣、本邦稱櫻花者、先輩嘗曰海棠譜中所謂垂絲海棠即是、以汝南圃史等書解、金棠棣曰金棠棣、花状如垂絲、海棠之説考之則垂絲海棠爲今櫻花、尤可證矣、金棠棣即山吹是也、唐山僧指絲櫻花垂絲海棠者誤也、垂絲其花英軟弱、如絲開放即垂下、非枝條軟弱命名也、如絲櫻花、洛陽花木記有軟條海棠是也、海棠譜有帚子海棠、乃垂絲海棠之特生者、猶小翹大翹之異、但雌雄之別而已、餘見于櫻譜參考、〈圭録〉、重葉海棠偏指爲八重櫻者非、筑前州福岡有八重海棠、即海棠之重葉而非櫻即是也、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0363 海紅 カイドウ〈通名〉 一名花仙〈典籍便覽桂花同名〉 花中神仙〈海棠譜〉 神仙 川紅〈共同上〉 名友〈事物紺珠〉 書客 睡餘妃子〈共同上〉 睡妃〈名物法言〉 酔春〈尺牘雙魚〉 花貴妃〈事物異名〉 海棠果〈雲南通志〉 暖紅〈撿蠧隨筆〉 蓮花海棠〈梅譜、重葉ノ名、〉 花命婦〈事物紺珠、千葉ノ名、〉 花戚里〈同上、同上、〉 今漢種多シ、春新葉ヲ生ズ、林檎葉ニ似テ微ク長シ、數葉叢生ス、先ニ出ル者ハ緑色、後ニ出ル者ハ淡紫色ヲ帶テ、櫻樹ノ葉ノ如シ、其中ニ數花ヲ開ク、大サ七八分、梅花ノ瓣ヨリ微ク長シ、蕾ノ時ハ全ク赤クシテ朱ノ如シ、開ク時ハ半紅半白、内ハ粉紅色ニシテ、淡紫蘂有テ金屑ヲ點ズ、蕚莖共ニヒガンザクラノ如シ、花戸ニテ色ノ淡シキ者ヲ杜子美海棠ト云ヒ、色深キ者ヲ南京海棠ト呼ビ上品トス、花後實ヲ結ブ、形山査子ノ如クシテ味酸シ、秋ニ至リ黄熟スレバ酸味ナシ、

〔剪花翁傳〕

〈前編二三月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0364 海棠 花の色淡赤、開花三月上旬、方日向、地二分濕、土回塵(まひごみ)、肥大便寒中入べし、移秋彼岸より寒前までよし、一種すヾしといふあり、蕚長く風搖して、櫻の蕚の如し、接(つぎヽ)いづれも春彼岸切接にすべし、

〔地錦抄〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0364 海棠るい〈木春末〉 海棠〈花形さくらのごとく色あり〉 杜子美〈花形つねのかいだうのごとくうるはしき色あり、木ちいさきより花さくなり、〉 實海棠〈花形まへに同、實なるよし、〉

〔佐渡志〕

〈五物産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0364 海紅 通名カイトウ 所々園中ニアリ、垂絲海棠ハ稀ナリ、

木瓜

〔倭名類聚抄〕

〈二十木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0364 木瓜 爾雅注云、木瓜一名楙、〈音茂、和名木草木瓜、毛介(○○)、〉其實如小瓜也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0364 按毛介即木瓜之音轉、今俗呼菩計、〈◯中略〉釋木云、楙木瓜、郭曰、實如小瓜、酢可食、所引亦蓋舊注、〈◯中略〉毛詩木瓜傳、楙木也、可食之木、齊民要術引詩義疏曰、楙葉似奈、實如小瓜、上黄似粉香、啖者截著熱灰中、令萎蔫、淨洗、以苦酒豉汁蜜度之、可酒、密封藏百日、食之甚益人、水經江水注、故陵村谿即永谷也、地多木瓜、樹有子大如甒白黄、實甚芬香爾雅之所謂楙也、按説文、楙木盛也、爲木瓜一名者、蓋假借、 

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0364 木瓜(ボケ)〈博物志、味酢善療轉筋、如轉筋時、但呼楙名、及書上木瓜字輙愈、〉

〔倭訓栞〕

〈前編三十三毛〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0364 もけ 倭名抄に木瓜をよめり、音也、今いふ唐ぼけ是也、

〔白石雜考〕

〈五木瓜考〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0364 木瓜 多識編〈林道春撰シト云〉木瓜和名毛介、又云保計、異名楙、 貝原篤信〈筑前ノ人〉曰、木瓜カラボケ、一名楙、 稻若水〈加賀ノ人〉曰、木瓜今云カラボケ、 舜水朱魯璵〈大明ノ人、本朝ニ來レリ、水戸西山公ノ師ナリ、〉曰、木瓜モルメロ有大小同、又有長而頭尖者、 右本朝諸家ノ説ヲアハセル考ルニ、源順朝臣ノ説ハ、即異朝ノ木瓜ノ注ニ同ジケレバ、本朝ノ昔ハ 眞( /マコトノ)木瓜ヲ以テモケト云シナルベシ、サレド今ノ俗樝子(サシ)ト云物ヲヨビテ、ボケト云フ、若シ此ナラハシ、昔ヨリノ事ナランニハ、順朝臣ノ云シ所モ、樝子ヲモテ、モケト云シモ知レズ、又今俗ニ木瓜ヲ以テカラボケト云コトハ、世人樝子ヲモテ、ボケトイヘバ、ソレニワカツベキ爲ニ、カクハイヘルナルベシ、〈モケト云ハ、スナハチ木瓜ノ二字、呉音ヲ以テヨビシ也、ソノ後俗ニボケト云シモ、木ノ字ヲ漢音ニヨビカヘテ、瓜ノ字ヲバ、アリシマヽニ呉音ヲ用ヒシモノ也、ソレヲ又醫家ニモツクウト云ハ、二字又呉漢ノ音ヲ交ヘヨビシ也、モツクワノ倭名ヲ、モケトモボケトモ云トノミ心エンハヨカラジ、〉サレド今カラボケト云物ハ、異朝ニ所謂木瓜ノ大ナル物ニテアル也、本草衍義ニ、大木瓜ト云ハコレナルベシ、近キ比ホヒ大明ノ人朱魯璵ニ木瓜ノ事ヲ問シニ、今俗ニマルメロトイフモノヲ指テ木瓜也トハ云キ、〈マルメロト云ハ番語ニテアル也、此モノ昔ヨリ我國ニアリシヲ、番人ノ見テヲノガクニニテヨブトコロヲモテカク呼シニヤ、又番人ノモテ來シヨリ、此國ニハアルモノニヤ、未ダツマビラカナラズ、〉此人格物ノ君子ニテ、大明ノ代ノ末ノ亂ヲ避テ、番國ニノガレ、其後我朝ニ來リトヾマレリ、サレバ獨異朝ノ事ニ委キノミニアラズ、番國ノ事ヲモヨク知レル人也、其説アヤマルベカラズ、且ハ今異朝ノ諸書ヲ考フルニ、マルメロト云モノハ、彼國ノ書ニ見エシ、木瓜ノ注ニ違フ所ナシ、サラバ我朝ノ諸儒マルメロノ外ニ、カラボケト云モノヲモテ、眞木瓜トノミ思ヘルハアヤマレルナルベシ、

〔大和本草〕

〈十二花木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0365 木瓜(ボケ) ボケハモククハノ轉語ナリ、本邦ノボケ數種アリ、寒木瓜(ボケ)花小ニシテ紅ナリ、帶黄色實、淀木瓜、花紅ニシテ美シ無實、白木瓜、葉初生時色鮮緑、長春木瓜、一月ヨリ花開春夏有花、唯秋無花、十二月正月花尤ヨシ、花紅ナリ、カラボケ、花初白ク中比淡紅後ニ深紅、八重ボケアリ、草ボケ、高一二尺野ニ多シ、花赤色木ニ刺(ハリ)アリ、果小シ、武藏野ニシドミト云、草木瓜アリ、其實ノ大サ肥後梅ホドアリ、土民其醋ヲ用ユ、榠樝ニ葉モ實モ同ジクシテ甚小也種木ノ形梨ニ似タリ、高大ナルハ丈許、大抵六七尺、刺アリトイヘドモマレナリ、其實木瓜ヨリ頗大ナリ、又一種花大ニ紅白二色アリ、實モ右二種ヨリ大ナリ、刺多シ、山州鷹峯ニアリ、猶品類多シ、不窮盡、凡木瓜ノ花盛久シ、可愛、木瓜ノスヲ鰻鱺ニカクレバ甚大ニナル、木瓜トウナギト同食スベカラズ、

〔本草一家言〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0366 木瓜 綱目、時珍説、以花之脱處有鼻者木瓜、無者爲榠楂、又就榠楂中出木李木桃云、木李似李、木桃似桃、何分疏之甚乎、宜爾雅http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4d.gif 斷、按爾雅云、楙木瓜、郭注云、實如小瓜酢可食也、其佗鄭樵邢昺等、古今釋爾雅者、未曾言花之脱處有鼻無鼻之別、意時珍之臆度耳、其榠楂蓋俗稱非正名也、況其木李木桃殊非木瓜之類乎、此三名本出于詩經、如木瓜固是楙木、如木李木桃則直是桃李、非別有木李木桃者也、 毎章變物名而反復吟詠耳、醫家疏于六經誤讀以爲木瓜之三種也、顧夢麟詩經説約辨之、尤審宜併按

〔本草辨疑〕

〈四菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0366 木瓜(モククワ) 藥舖ニ、ボケヲ用ユ、誤リナリ、 蒙筌云、枝大者可策杖、木乾者堪桶盆、〈和ノボケノ木甚小〉時珍曰、可種可接可枝壓、其葉光而厚、其實如小瓜而有鼻、津潤味不木者爲木瓜、〈今所渡ノ者如此説、又和ノカラボケコレト同、◯中略〉 コヽニ四種ヲ擧 今和ニ二種アリ、通用ノボケハ甚小ニシテ、諸註ニ不合、カラボケト云モノ形小瓜ニ似テボケヨリモ大ナリ、諸註ニ能合ス、然ドモコレヲ眞トスル人希ナリ、ボケハ小ニシテ木瓜ノ文字ニ不應、カラボケハ形チ瓜ニ似テ長ク、木瓜ノ文字ニ相叶ヘリ、 和ノボケハ不用、唐ヲ可用、若ナクンバ和ノカラボケヲ可用、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0366 木瓜 通名 一名鐵脚梨〈秘傳花鏡〉 眞ノ木瓜ハ享保年中ニ渡ル、木大ニシテ一丈ニ過グ、葉ノ形長大ニシテ桃葉ノ如シ、春未ダ葉ヲ生ゼザル時花ヲ開ク、海棠ボケニ似テ色鮮美、花後實ヲ結ブ長サ二寸餘其末凹ニシテ内ニ鼻アリ、石榴(ザクロノ)尖ノ如シ、常ノカラボケニハ鼻ナシ、カラボケハヒボケ、海棠ボケノ總名ナリ、花ノ色紅ナルヲヒボケト云、即貼幹海棠ナリ、花紅白雜リ、海棠ノ花ノ如キ者ヲカイドウボケト云、即木瓜ノ一種ナリ、此ニ雌雄アリ、雄ナル者ハ實ヲ結バズ、雌ナル者ハ實ヲ結ベドモ多カラズ形眞ノ木瓜 ヨリ短クシテ鼻ナシ、藥舖ニ舶來ノ木瓜アリ、一寸半許ノ長サニシテ、縱ニ二ツニ切ル、形状漢種ト同ジ、眞物ナリ、眞ノ木瓜ト呼ブ者ハ大サ八分許リナルヲ、厚サ二三分ニ横ニ切リ乾タル者ナリ、此ハクサボケノ實ニシテ樝子ナリ、眞ニ非ズ、又二寸許ノ長サナル實ヲ、竪ニ四ツニ切リテ乾タルアリ、是榠樝(クハリン)ニシテ亦眞ニ非ズ、 増、古ヘヨリ木瓜ヲボケト訓ズ、ボケハ木瓜ノ音轉ナリ、本邦ノ俗久ク坐シテ麻痺轉筋スル時ボケボケト呼ブ時ハ、速ニ治スト云ヒ傳フ、即發明ニ、弘景曰、木瓜最療轉筋、如轉筋時但呼其名、及書上木瓜字皆愈、此理亦不解ト云ニ符合ス、コレ木瓜ニボケノ訓アルヲ以テナリ、

樝子

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0367 樝子(クサボケ)〈一名木桃〉 樝子(コボケ)〈木桃、和圓子、並同、時珍云、木瓜之短小而味酢濇者、〉 樝子(シドミ)

〔白石雜考〕

〈五木瓜考〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0367 樝子 倭名抄ニ此物ヲ載セズ 多識編曰、和名今按古保計、異名木桃、和圓子、 貝原篤信曰、樝子ボケ、 稻若水曰、木桃ボケ、 右諸説ヲ併セ考ルニ、樝子ハ今俗ニボケト云モノ也、篤信若水等ノ説モ、今ノ俗ノ呼トコロニ從ヘル也、多識編ニコボケト云シハ、本草綱目ノ説ニ、樝子ハ木瓜ヨリ小シキナル者也ト云ニヨリテ名付シナルベシ、某按ズルニ、今世ニボケト云モノ、異朝ノ諸書ニ見エシ樝子ノ注ニヨク叶ヘリ、篤信若水等ノ説據アリト云ベシ、又一種草間ニ紅白花ヲ開テ、其實木瓜ノ小キナル酸ク澀レル者ヲ、俗ニシドメトモ、ボケトモ、又ハクサボケトモ云也、此物ハ即樝子木ノ年毎ニ、草ト共ニ苅レテ、其木長ズルコト叶ハデ、草間ニテ花ヲ開キ實ヲ結ブ者也トモ云フ、但ボケト云モノハ其實多カラズ、シドメト云者ノ實ヲ結ブ事尤多シ、サレバモト是一類ニシテ、別種ナルニヤ、アル人シドメト云モノハ、欄地錦ト云モノ也トイヘドモ、心得ラレズ、常熟縣志ノ中草木ノ條ニ、欄地錦ハ花絳色(アカイロ/ボケノイロトモヨム也)、朶如海棠、四時皆有花、獨盛於春ト見エタリ、其木ノ朶海棠ノ如クトアランニハ、木高キモノ也、今ノシドメノ如クニハアラズ、且ハ又花ノ事ノミ見エテ、實ヲ結ト云コトハ見エズ、思フニ シドメト云モノハ、雷公炮炙論ニ見エシ、木瓜ノ類ニ、蔓子土伏子ナド云物ト覺エ侍リ、今試ニ樝子蔓子等ノ事、異朝ノ書ニ見エシ所ヲコヽニ注ス、 本草綱目曰、樝子乃木瓜之酸澀者、〈今世ニボケト云モノ、木ノ高サ六七尺、其花紅白ニシテ、其實木瓜ニ似テ小ク、其味酸クシブルモノナリ、〉炮炙論木瓜條曰、有蔓子絶小、味絶濇不用、有土伏子味絶苦濇不堪、〈按ズルニ蔓子トイヘバ、其性ヨク蔓リテ子ヲムスブモノニヤ、土伏子トイヘバ土ニ伏シテ子ヲムスブモノニヤ、何レモ木瓜ノルイニシテ、其實甚小ニシテ、其味酸ク濇リテ用ルニ堪ルモノナリ、サラバ今イフシドメト云モノニヨクカナヒ侍ル歟、〉

〔和漢三才圖會〕

〈八十七山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0368 樝子(こぼけ)〈音http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019edf.gif 〉 木桃 和圓子〈俗云小木瓜〉 寒樝子(カンコホケ)〈◯中略〉 按樹似海棠而叢生有刺、葉亦似海棠而厚、末圓、三月開花、紅色結子、似林檎而團、熟則黄、味木而(ジカ〳〵)酸澀、用之克木瓜、相傳此花爲咒咀佛供、故尋常不賞、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0368 樝子 ボケ(○○) クサボケ(○○○○) ノボケ(○○○) コボケ(○○○) シドミ(○○○)〈奥州〉 チクムメ(○○○○)〈肥前〉 ヂナシ(○○○)〈常州〉 山野ニ多シ、高サ一尺許叢生ス、廣原ノ者ハ、三四寸ニ過ギズ、山中ノ者ハ三四尺ニ至ル、枝ニ刺多シ、葉ハ貼幹海棠ニ似テ小シ、春新葉出テ後花ヲ開ク、形小ニシテ五瓣重瓣ナル者ハ稀ナリ、大サ八分許紅黄色、夏秋モ不時花(カヘリバナ)アリ、花後圓實ヲ結ブ、夏ニ至テ熟ス、大サ一寸許、頭尾共ニ凹ナリ、藥舖ニハ横ニ薄ク切リ、眞ノ木瓜ト呼ビ賣ル僞物ナリ、一種白花ノ者ハ自生ナシ、花家ニシロボケト呼ブ、

榠樝

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0368 榠樝(カラボケ)、〈蠻樝(バンサ)、木梨、並同、時珍云、木瓜之大而黄色無重蔕者、置衣箱中蠧虫、〉 榠樝(タウボケ) 唐木瓜(同)〈俗字〉

〔大和本草〕

〈十果木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0368 榠樝(クハリン/メイサ) 俗ニクハリント云、京畿ニ多シ、梨ノ類木瓜ニ似タリ、大木アリ、花ハ林檎、又海棠ニ似タリ、海棠ニヲクレテ開ク、實ハ秋冬熟ス、大サハ瓜ノ如シ、香氣アリ、味シブシ、不食、性ハ木瓜ト同ジ、柹ノ未熟ナル百バカリアル内ニ、榠樝ヲ一ツ入ヲケバ、柹ヨク熟スト古書ニイヘリ、花梨(クハリン)ハ木理ノ美ナルカラ木ナリ、櫚木トモ云、是トハ別ナリ、本草喬木類ニノセタリ、中夏ヨリ來 ル、

〔和漢三才圖會〕

〈八十七山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0369 榠樝(くはりん) 蠻樝 瘙樝 木李 木http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a9f.gif  〈俗云久波利牟、瓜梨字乎、〉 〈別有外國花櫚木、與此不同、◯中略〉 按榠樝可壓可種、嫰時有刺、大者高一二丈、葉似海棠而大、有細鋸齒、春葉稀間開五出淡紅花、秋結實、團長五寸許、如小瓜黄青色、味酸而木(ジカ〳〵セリ)、冬熟則帶微甘、絞汁和生薑汁及砂糖練、名瓜梨膏、云治痰嗽

〔和漢三才圖會〕

〈八十三喬木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0369 華櫚(くはりん)木 〈俗作花梨誤矣◯中略〉 按華櫚木來於南蠻、其木理似欅而帶紫光色、作板及器美也、今以榠樝花梨(クハリン)且疑、思華櫚木、誤之甚者也、

〔白石雜考〕

〈五木瓜考〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0369 榠樝 倭名抄ニ此物ヲ載セズ 多識編曰、和名今按、加羅保計、異名木李、木梨、蠻樝、瘙榠 貝原篤信曰、榠樝クハリン、 稻若水曰、榠樝クハリン、 右諸説ヲ併セ考ルニ、多識編ニカラボケト呼コト然ルベカラズ、〈篤信若水共ニ、モツクハヲカラボケトイヒシハサモアルベシ、〉篤信若水共ニクハリント云シハ、今ノ俗ニ呼トコロノマヽニ呼シモノ也、サレド今世ニクハリント云者二種アリ一種ハ諸ノ本草ニ見エシ、榠樝ノ如クニシテ、其實梨子ノ如ク其味酸シ澀レリ、サレバ木梨ナド云異名モ有シナルベシ、〈某昔此種ヲ求得テ植タリ、其木葉共リンゴノ如シ、程ナク火ニ燒失ヒシカバ、花實ヲマサシクバ見ズ、〉一種ハ又木ダチ葉ノ形、共ニ梨ノ如クニシテ、其木皮ニ白點アリテ、劈テ見ルニ木理少ク赤ク、其花海棠ニ似テ、其艷ナル事ハ猶甚シ、其實リンゴニ似テ、大サ拳ノ如シ、漿多ク味長ク、香キ事皆梨子ヨリモマサレリ、コレラ二種ノ中、篤信若水イヅレヲ以カ榠樝トハサシ名付ケン、榠樝一ニ木梨ト云ヒ、又其氣味酸平也ト、本草綱目ニ見エタレバ、篤信若水ガ指シ名付シ所、梨子ノ如クシテ、其味酸キ者ヲ云ヘルナルベシ、今一種リンゴニ似タル物ハ、開寶本草、本草綱目、通雅等ニ見エシ、菴羅果ニテゾアルベキ、今試ニ異朝ノ書ニ見エシ榠樝菴羅果ノ注ヲ下ニ注ス、 圖經本草曰榠樝、但比木瓜、大而黄色、辨之惟在http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001c407.gif 、別有重蒂如乳者木瓜、〈木瓜ノ下ニ詳ニ見ユ〉無此則 榠樝也〈重蒂アルヲ木瓜トシ、重蒂ナキヲ榠樝ト云、コレヲ見テ二ノ物ヲワキマフベシト也、サレバ此物ハ木瓜ノ類ナルコトハ一定ナリ、〉 開寶本草曰、菴羅果若林檎而極大、〈一種クハリント云モノ、リンゴノゴトシ、〉 大明一統志曰、菴羅果俗名香蓋、〈香トイヘバ香アルナリ、一種クハリント云モノハ殊ニ香シ、〉乃果中極品〈一種クハリント云モノ、アヂコトニ美ナルモノアリ、〉種出西域、亦奈類也、〈一種クハリント云モノ、始メ番人ノ我國ニ傳ヘシニヤ、モシサアランニハ、西域ヨリイデシ種ナルベシ、〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0370 榠樝 クハリン キボケ 市中ニ多ク植ユ、高サ一二丈、木大ニナレバ皮一二寸ゴトニ、鱗ノ如クナリテ落ツ、ソノアト數色アリテ美ハシ、冬ハ葉ナシ、春新葉生ジ、三月ノ末ニ花ヲ開ク、葉ハ林檎ノ葉ニ似テ長大ナリ、細鋸齒アリテ、質堅シテ互生ス、花ハ五瓣淡紅色、實ノ形甜瓜ノ如ニシテ小ク末ノ方濶シ、秋ニ至リ熱シテ、淡黄色香氣多シ、味酸澀食シ難シ、蜜薑ヲ以テ製シテ菓トス、カセイタト云、藥舖ニハ竪ニ四ツニ切リ乾テ、木瓜ニ充テ賣ルハ非ナリ、舶來木瓜中ニモ、此小ナル者ヲ竪ニ二ツニ切リ雜ユル者アリ、宜ク撰ブベシ、クハリンニ同名アリ、唐木ノクハリンハ花櫚ノ唐音ニシテ喬木類ノ櫚木ナリ、

榲桲

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0370 榲桲(マルメル)〈榠樝之屬、本草、性温氣馥、故名、〉

〔倭訓栞〕

〈中編二十四末〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0370 まるめろ 榲桲をいへり、まるめいらともいふ、その實まろし、よて名くるか、或は蠻語なりといへり、砂糖漬を香圓といふ、

〔大和本草〕

〈十果木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0370 マルメル 樹モ花モ海棠ニ似テ、葉ハ梨ニ似タリ、花淡紅色、實ハボケニ似タリ、本草ニ榲桲(ウンホツ)アリ、或曰、是マルメルナルベシト云、然ドモ本草ニ、榲桲ハ味尤甘、其氣芬馥、又曰、花白緑色、本草ノ數説花白ク香アル事ヲイヘリ、マルメルハ花淡紅、花モ實モ無香、實味澀酸不食、然レバ榲桲ニ非ズ、榲桲ハ日本ニ無之、マルメルハ蠻語ナルベシ、是蠻國ヨリ來リテ中華ニハ無之乎、花ハ頗ヨシ、實ヲ用テカセイタニ作ル、

〔和漢三才圖會〕

〈八十七山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0371 榲桲 俗云未留女呂、蠻語乎、〈◯中略〉 按榲桲、近頃蠻人將來于長崎、而今畿内處處有之、其樹花實皆合本草註、但葉大於林檎、而圓薄柔、其實不林檎多結也、蠻人用沙磄蜜煮食之、呼名加世伊太云能治痰嗽

〔鹽尻〕

〈三十三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0371 一栂梨とて、瓜のごとく、いろ黄にして味不好菓也、〈梨の類に非ず、木瓜の一種也、〉或は是を櫨http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000650d9c.gif 〈マルメル〉と云、又花梨牟なりといふ、案ずるに、榠樝也、されば栂をトガと訓じツガと呼、又過をトガとよむ、此木の實香味不佳の故に、毒とも藥ともいふ者なく、過ちもなく、譽もなし、世俗つヽなしとは、痴にして心つきなき者をいふ也、是をまたとてなしと云は郷談の訛也、

〔白石雜考〕

〈五木瓜考〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0371 榲桲 倭名抄ニ此物ヲ載セズ 多識編曰、和名或云利牟幾牟、 一云今南蠻云、 末留米留是也、 貝原篤信曰、榲桲マルメル、 稻若水曰、榲桲マルメラ、 右諸説悉ニアヤマレルニ似タリ、多識編ニハリンキントモ、又ハマルメルトモシルセリ、一定ノ説ニアラズ、是未ダ此物ヲ詳ニセザル證也、篤信若水共ニマルメルト云シモ心得ラレズ、〈リンキンハ沙果ト云モノ也、下ニ詳ニ見ユ、マルメルハ木瓜ノ番名ナリ、〉又今世ニリンキント云モノヲ指テ榲桲トナス、コレ多識編ノ訛ヲ傳ヘタル也、但此アヤマリハ異朝ニモ似タルコト侍リ、李珣ガ南海藥録、關中謂林檎榲桲ト云、コレヲ本草綱目ニハ、述征記ヲ引テ、林檎佳美、榲桲微大而状醜有毛トアレバ、林檎榲桲蓋相似而二物アル由ヲ辨ジタリ、サレバ榲桲ハ林檎ヨリ大ニシテ毛アル者也、今世ニ云リンキント云モノハ、リンゴヨリ猶小ニシテ、シカモ毛モナシ、榲桲ノリンキンニ非ルコト、尤明ニ侍ルニヤ、異朝ニモ榲桲ト云モノハ北土ニハアレド、江南ニハ甚稀也ト見エシ、サレバ李時珍モ未ダ榲桲ヲバ見ザリシヤウニ、本草綱目ニハシルセリ、サラバ我國ニモ此物ハアラザルモ知ルベカラズ、 右諸家ノ説ヲ併セ考ヘテ、自ノ淺陋ナルヲ省ズ、ミダリニコレラノ物ヲ辨ジ決センニハ、 マルメロト云モノハ木瓜(モククハ)也 カラボケト云モノハ大木瓜(ダイモククハ)也 朱舜水ノ説ニモ、木瓜ニ大小アリテ同ジカラヌ由見エタリ、本草衍義ニモ、木瓜ノ條ニ、西洛ノ大木瓜ト云モノヲ出シテ、コノ物ハ藥ニ入ニ甚功アリトシルセリ、今我國ニテモ此物ヲ以テ藥トシテ甚功アリト云ヘリ、カラボケト云モノ、木瓜ノ大ナルモノニテ、即番名ハマルメロト云モノヽ大ナルナリ、 ボケト云モノハ樝子也 シドメ〈クサボケボケ〉ト云モノハ蔓子土伏子ノ類也 クハリント云モノハ榠樝也 又一種クハリント云テ、リンゴノ類ニテ菴羅果ト云モノニ似タリ、 此外ニ山樝子ト云モノアリ、是ハ三四十年前ニ生シ得シヨリ、始テ我國ニモ出來タリ、此物樝子ニ對シテ山樝子トイヘバ、是モ又木瓜ノ類也、唯榲桲ト云モノハ、我國ニアリヤナシヤ未ダサダカナラズ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0372 榲桲 マルメロ(○○○○) マルメル(○○○○) マルメイラ(○○○○○) オニメロ(○○○○) マルムメ(○○○○)〈南部〉 マルメ(○○○)〈同上〉 ボウカイ(○○○○)〈仙臺〉 ボウカイナシ(○○○○○○)〈同上〉 東北ニ多シテ西南ニハ少シ、故ニ大和本草ニマルメロノ形状ヲ説クコト異ニシテ、榲桲ニ充ラザルコトヲ云リ、木ノ形林檎ニ似テ、枝多ク廣ガリ、節ニ瘤アリ、春新葉ヲ生ズ、林檎葉ニ似テ濶ク白毛アリ互生ス、新枝ノ梢ニ花アリ、大サ一寸許、五瓣水紅色、又白色ノ者アリ、後實ヲ結ブ、榠樝(クワリン)ニ似テ圓ナリ、秋ニ至テ熟ス、黄色微緑香氣アレドモ、榠樝ヨリ少シ味酸澀、賣藥ノ榲桲圓ニハ榠樝ヲ雜ユル者多シ、

〔本朝世事談綺〕

〈二生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0372 榲桲(まるめろ) 寛永のころ蠻國より渡、此實林檎のごとし、 南蠻人沙糖を以てこれを煮、加世伊太(かせいた)とよぶ、よく痰嗽を治す、

〔採藥使記〕

〈中常州〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0372 照任曰、常州佐野天ミヤウヨリ榲桲ノ木ヲ出ス、即チ獻上ス、  光生按ズルニ、榲桲ハ番名マロメロト云テ、榠樝ノ一類ナリ、

山樝子

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0373 山樝(ヤマズミ)〈時珍云、樹高數尺、葉有五尖、實有赤黄二色、肥者如小林檎、〉 山樝(サルナシ)

〔和漢三才圖會〕

〈八十七山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0373 山樝子(さんざし) 赤瓜子 鼠樝 山裏果 猴樝 棠梂子 茅樝 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019998.gif 子 羊梂 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019baf.gif 梅 本綱、山樝子生山中、而味似樝子、故名之、世俗作山査者誤矣、査〈音槎〉乃水中浮木與櫨字何關、有二種而功相同、 一種小者、樹高數尺、葉有五尖、椏間有刺、三月開五出小白花、實有赤黄二色、肥者如小林檎、小者如指頭、九月熟、小兒采而賣之、閩人取熟者、去http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 搗和糖蜜、作爲樝http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001dc72.gif 、以充果物、其http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 状如牽牛子(アサカホノミ)、黒色甚堅、 一種大者、樹高丈餘、花葉皆同、但實稍大、而色黄緑、皮濇肉虚爲異爾、初甚酸澀、經霜乃可食、 氣味〈酸冷〉消食積、補脾、治小腸疝氣産後兒枕痛、 唐本草雖赤瓜、後人不即此也、自朱丹溪始著山樝之功、而後遂爲要藥、能尅化飮食、若胃中無食積、脾虚不運化、不食者多服之、則反尅伐脾胃也、煮老雞http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif山樝子數顆即易爛、則消肉積之功可推、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0373 山樝 サンザシ(○○○○)〈通名〉 閏月ムメ(○○○○)〈種樹家今ハ呼バズ〉 一名山果子〈醫學正傳〉 山栗紅果〈今古醫統〉 山栗果〈同上〉 猴梨〈保赤全書〉 柹楂子〈百一選方〉 糖毬兒〈同上〉 糖毬子〈本草蒙筌〉 映山紅果〈救荒本草〉 棠毬子〈本經逢原〉 地乙梨〈採取月令〉 山棠梂〈附方〉 小木ニシテ高サ四五尺叢生ス、枝又多ク繁リテ刺アリ、春新葉ヲ互生ス、長サ一寸許、五岐七岐ニシテ鋸齒アリ、枝梢ニ白花簇生ス、梅花ノ形ニ似テ瓣皆上ニ向フ、後實ヲ結ブ、形林檎ニ似テ大サ六七分許、秋ニ至リ熟シテ赤シ、又黄色ナル者アリ、内ニhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif アリ、牽牛子ノ如シ、藥ニハhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ヲ去リ肉 ヲ用ユ、一種喬木ニナル者アリ、高サ二三丈、或ハ叢生シテ二丈許ナルモアリ、是ヲオホサンザシ(○○○○○○)ト呼ブ、葉大ニシテ形梨ノ葉ノ如ク、七岐九岐ニシテ鋸齒アリ互生ス、枝梢ニ花ヲ開ク、形山楂ノ花ニ同クシテ、數十百簇リテ傘状ヲナス、實形モ山楂子ニ同クシテ熟シテ赤シ、又黄色ナル者アリ、是羊http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019998.gif 子ナリ、

〔採藥録〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0374 山査子 處々藥園ニ栽ル者、漢種也、八九月ニ子ノ半熟タル時取リ、板ニテ押シ平メ、内ノhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ト肉ヲ去リ、其儘日乾スベシ、藥力ハ舶來ニ劣レリ、是レ土地ノ使然ル所ナリ、

枇杷

〔倭名類聚抄〕

〈十七菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0374 枇杷 唐韻云、枇杷、〈琵琶二音、此間云味把、〉菓木冬花而夏實也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九果蓏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0374 本草和名枇杷葉、和名比波、新撰字鏡杷訓比波乃木、比波又見古今集物名歌、〈◯中略〉廣韻無而字、實作熟説文、枇、枇杷木也、上林賦注、張揖曰、枇杷似斛樹長葉、子如杏蜀本圖經云、樹高丈餘、葉大如驢耳、背有黄毛、子梂生、如小李黄色、味甘酸、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 大如小栗、皮肉薄、冬花春實、四月五月熟、凌冬不凋、本草圖經云、其木陰婆娑可愛、冬開白花三四月而成實、其實作梂如黄梅、皮肉甚薄、味甘、本草衍義云、枇杷葉以其形如枇杷故名之、按寇氏云、形如枇杷者、謂形如琵琶也、

〔和漢三才圖會〕

〈八十七山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0374 枇杷(びわ) 葉形似琵琶、故名枇杷云、今觀葉不言、〈◯中略〉 按枇杷木黏堅堪杖棒、其子七八顆作梂生、初則黄帶青、熟則正黄、亦有淡白色者佳、此異乎本草之説、一http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gifhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 圓大有二三或五六抱合者、全無http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 者爲希珍、其一http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gifhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 能解毒、被蟲螫而腫痛者刮http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif之、 倭方有枇杷葉湯 治食傷及霍亂以爲妙 枇杷葉肉桂、藿香、莪求、呉茱萸、木香、甘草〈各等分或有異同、〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0374 枇杷 ビハ(○○)〈和名抄〉 ビヤ(○○)〈本草類編選〉 コフクベ(○○○○)〈同上〉 一名蠟兒〈典籍便覽〉 蠟 兄〈清異録〉 炎果〈事物異名〉 俗客〈事物紺珠〉 夏果 金珠 上林〈共同上〉 花一名負雪〈名物法言〉 葉一名無憂扇〈輟耕録〉 木久シキヲ經ザレバ實ヲ結バズ、故ニ俗ニ栽シ人死セザレバ實ヲ結バズト云、葉冬ヲ經テ枯レズ、形長大ニシテ大槲葉(ハヽソノ)ノ如ニシテ、鋸齒細クシテ厚ク、背ニ褐毛アリ、藥ニハ毛ヲ去リ用ユ、冬月枝梢ゴトニ二三寸ノ穗ヲ出シ、小白花ヲ簇生ス、採テ瓶花ニ供ス、唐山ニテハコノ花ヲ欵冬花ニ僞ルト云、唐山ニ欵冬少キ故ナリ、花後實ヲ結ブ、五月ニ至テ熟ス、正圓大サ金柑ノ如ク、熟シテ黄白色微毛アリ、唐山ニハ白色ノ者アリト般山志ニ云ヘリ、皆一枝ニ二三十簇リテ葡萄ノ如シ、肉少クhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 大ナリ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ノ形龍眼http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ノ如ク、栗殼色二http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ノ者多ク、獨http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ノ者ハ少シ、獨http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ノモノヲ金蜜罐〈般山志〉ト云フ、唐山ニハ無http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ノ者アリ、集解ニ無http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 者名焦子ト云、再ビ接換スル時ハ、無http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ニナルコト秘傳花鏡ニ云リ、接ガズシテ自然ト肉多ク、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 小ニシテ山椒ノ大サナルヲ椒子枇杷ト名クト、汝南圃史ニ云リ、上品ナリ、枇杷ハ和漢共ニ夏熟ス、中山ニテハ正月ニ熟ス、傳信録ニ、枇杷與中國異、形略長如棗、元旦食新爲百果先ト云、此http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 和ノ方書ニ巴實ト名ク、一http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ノ者ヲ用ユ、ソノ形正圓ナリ、唐山ニテハ圓http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ヲ用テ、ツリヤヒ人形ノオモリトス、故ニhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ヲ、定風珠〈花暦百詠〉ト名ク、ツリヤヒ人形一名ミヅクミ人形、ヤノスケ〈京〉ハリヤヒ人形〈伊州〉ト云、此外方言多シ、

〔草木六部耕種法〕

〈十九需實〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0375 枇杷ハ百菓ニ先テ成熟シ、味亦甚ダ美ナリ、此物實栽ノ儘ニテモ能ク結實(ミノ)リ、且地嫌スルコトモ無キヲ以テ、何レノ地ニ栽ルモ能ク豐熟シ、最上品ナル果物ナリ、都會ノ近傍諸邑ハ數多此ヲ栽立ベシ、殊ニ此物ヲ栽立ツルハ、甚ダ無造作ナル者ナリ、

〔三代實録〕

〈四十三陽成〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0375 元慶七年五月三日戊辰、天皇御豐樂殿宴、渤海客徒親王已下參議已上侍殿上、五位已上侍顯陽堂、大使已下二十人侍承歡堂、〈◯中略〉妓女百三十八人、遞出舞、酒及數杯、別賜御餘枇杷子(○○○)一銀椀、大使已下起座拜受、

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0376 昌泰二年六月四日丙寅、東宮有藤花、又監物局枇杷(○○)花不發而有子生、或熟或青、小於常子、人皆食之、

〔松屋筆記〕

〈五十一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0376 枇杷は接木を佳とす 孔氏談苑一の卷枇杷の條に、枇杷須接、乃爲佳果、一接http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 小如丁香荔枝、再接遂無http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 也とあり、接木の歌は夫木抄に見えたり、

〔佐渡志〕

〈五物産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0376 枇杷 和名ビハ 三郡トモニアリ、國ナカトイフアタリ最多シ、

郁李

〔和漢三才圖會〕

〈八十七山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0376 庭梅〈正字未詳 灌木類也、然以櫻(ユス)桃之類故附于此、〉按庭梅叢生高三四尺、三月開花、形似梅而小、白色帶紅色、蘂黄而甚繁、艶美也、花落葉生狹長似庭櫻葉、結子小於櫻桃、生青、熟赤、味酸甘、

〔百品考〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0376 車下李 一名赤棣樹一名庭梅一名赤郁子 和名ニハウメ〈◯中略〉 花戸ニ多シ、樹ノ高サ二三尺、一根叢生シテ、葉ハ李ニ似テ至テ小ニシテ、邊ニ鋸齒アリ、葉http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif シ、多葉郁李(ニハザクラ)ニ似テ幅セバク黒ミアリ、春イマダ葉ノ長ゼザル前ニ花アリ、五辨淡白色、大サ四五分、辨ノ邊淡紅色ニシテ觀美ナリ、又白花モアリ、後實ヲ結ブ、大サ櫻桃(ユスラ)ヨリ小ナリ、熟シテ色赤ク食フベシ、中ニhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif アリ、至小ナリ、本草ニ郁李ト同物トス非ナリ、通雅ノ説ヲ正トス、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十五灌木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0376 郁李(○○) ニハムメ(○○○○) コムメ(○○○)〈播州 消梅ト同名〉 一名雀李〈本經逢原〉 御園李〈八閩通志〉 棣李〈三才圖會〉 棠李〈事物異名〉 脆櫻桃〈物理小識〉 櫙黎兒〈救荒本草〉 馬鞭花〈嘉興縣志〉 英梅〈漳州府志〉 國大李〈本草 義〉 甌李〈説嵩〉 仁一名隱上座〈藥譜〉 千金藤〈醫學正傳〉 山梅子〈郷藥本草〉 庭際ニ多ク栽ユ、小木ナリ、高サ二三尺、枝條叢生ス、春新葉ヲ生ス、李葉ニ似テ小ク互生ス、未ダ長ゼザル時、葉間ニ花ヲ開ク、五辨大サ四分許、白花紅邊甚美シ、又白花ナル者アリ、後實ヲ結ブ、形圓 ニシテ大サ四五分、初ハ緑色、五月ニ至リ熟シテ色赤ク食フベシ、又魚鱠中ニ入テ飾トス、實中ニhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif アリ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 中ニ褐色ノ薄皮アリ、ソノ中ノ白仁ヲ採リ藥用ニ入ル、舶來ノ者ハ大小雜レリ、其大ナル者ハ李ノ仁ナリ、故ニ和産ヲ用テ佳ナリ、本草原始ニ、眞ナル者ハ粒小ク、僞ル者ハ顆大ナルコトヲ云ヘリ、

〔草木六部耕種法〕

〈十九需實〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0377 櫻桃(ユスラ)〈◯中略〉又一種俗ニ庭梅(ニハムメ)ト稱スル者有リ、櫻桃ト同種ノ物ニシテ、花實更ニ櫻桃ヨリモ小ナリ、一名山櫻桃ト呼ブ、

〔佐渡志〕

〈五物産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0377 郁李 方言コムメ 庭上ニ多ク植ユ、小木也、白花紅實觀ツベシ、クラフベシ、

多葉郁李

〔庖厨備用倭名本草〕

〈六山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0377 櫻桃(アウタウ/ニワサクラ) 倭名抄ニニソサクラ一名朱櫻、多識篇モニワザクラ、考本草一名鸎桃(アウトウ)、一名含桃(カンタウ)、禮記ニ仲春天子似含桃宗廟即此也、其木多陰ナリ、百果ニ先テ熟ス、故古人多ハ珍貴ス、其實熟スル時、深紅色ノモノヲ朱櫻ト云、紫色ニシテ皮裏ニ細黄點アルヲ紫櫻ト云、味最甘美ナリ、又正黄明ナルヲ蠟梅ト云、小ニシテ紅ナルヲ櫻珠ト云、味皆及バズ、極テ大ナルハ彈丸ノ如シ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 細シテ肉厚シ、尤得ガタシ、李時珍曰、櫻桃樹甚ダ高カラズ、春初ニ白花ヲ開ク、繁英ニシテ雪ノ如シ、其葉ハ團ニシテ尖アリ、細齒アリ、子ヲムスブコト一枝ニ數十顆、三月熟スル時ヨク守ルベシ、シカセザレバ鳥皆食シテノコリナシ、鹽ニカクシテ蜜ニ煎ジテ皆ヨシ、或ハ蜜ト同ジクツキテ糕ニシテ食ス、元升曰、西國民間ニ或ハユスラトモイヘリ、 櫻桃味甘性熱濇毒ナシ、中ヲ調ヘ脾氣ヲマシ、顏色ヲ美ニシテ、洩精水穀痢ヲトヾム、 食禁 多食スレバ熱ヲ發ス、病アル人ハ食スベカラズ、病立ドコロニ發ス、且死スルモノモアリ、小兒多食スレバ吐血シテ死スルモノモアリ、古ヘ小兒兄弟毎日多食シテ、長ハ肺痿ヲ發シ、幼ハ肺癰ヲ發シテ相繼デ死タリ、儒門事親ニ此ヲ載タリ、

〔百品考〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0378 車下李 一名赤棣樹一名庭梅〈◯中略〉 又ニハウメニ似テ葉稍大ニシテ、花千葉ナルモノアリ、ニハザクラト云、白花ノ者ヲ漢名喜梅ト云、紅梅ノ者ヲ玉梅ト云、又錦帶トモ云、共ニ多葉郁李ト云、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十五灌木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0378 郁李〈◯中略〉 一種ニハザクラハ、苗ニハムメヨリ大ナリ、高サ四五尺叢生ス、葉モ亦長大ナリ、同時ニ葉ニ先テ花ヲ開ク、千http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a43d.gif 白色ニシテ、棣棠花ニ似テ微小、實ヲ結バズ、是多葉郁李(○○○○)ナリ、一名千葉郁李〈洛陽花木記〉玉帶〈同上〉喜梅〈汝南圃史〉玉蝶〈同上、同名アリ、〉熹梅〈農圃六書〉一種桃紅色ニシテ千葉ナルヲ錦帶〈通雅〉ト云フ、一名玉梅〈汝南圃史〉又一種紅白二色ナル者アリ、

ウハミヅ

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0378 麥櫻(ウハミヅ)〈本名山櫻桃、本草、實大如櫻、多毛、四月采、〉

〔草木六部耕種法〕

〈十一需花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0378 櫻ト梅トハ種類ノ極メテ多キ者ナリ、共ニ百餘種ヅヽ有リ、〈◯中略〉上瑞櫻ハ枝ヨリ長キ穗ヲ生ジ、其花白クシテ櫻桃(ニハムメ)ノ如シ、花後ニ實ヲ結テ、大五味子(ゴミシ/サネカヅラノミ)ニ似タリ、此ヲ鹽藏(シホツケ)ニシタルハ頗ル佳味ナリ、

〔鋸屑譚〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0378 洛東祇園有樺、和名かば、又云香庭櫻(かばざくら)、又南殿櫻又犬櫻、其實鹽藏して以媒於酒、芳香可愛、謂之表水(うはみづ)、後水尾帝勅名也、

櫻桃

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0378 繫梅(ユスラ)〈未詳〉櫻桃(同)〈俗用此字謬矣、〉

〔大和本草〕

〈十果木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0378 櫻桃(ユスラ) 本草宗奭曰、形肖桃、頌曰、其木多陰、先百果熟、小而紅者謂之櫻株、極大者有彈丸http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 細而肉厚、尤難得、又曰、三月末四月初熟、時珍曰樹不甚高、春初開白花、繁英如雪葉圓有尖、及細齒、結子一枝數十顆、又榛條下曰、葉如初生櫻桃葉、今按ユスラノ葉ノ初生ヨリ榛ノ葉ニ似タリ、篤信右ノ二説ヲ以考ルニ、本邦ニ所在ユスラト云小樹ニ能合ヘリ、事類合璧大如拇指トアルハ、土地ニヨリ、種ニヨリテ大小アルベシ、

〔和漢三才圖會〕

〈八十七山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0379 櫻桃(ゆすらむめ) 鸎桃 含桃 荊桃 〈和名抄云〉鸚實、〈宇久比須乃岐乃美〉 俗云由須良梅〈◯中略〉按櫻桃樹、高四五尺、葉大可拇指(ヲホユヒ)、團末尖有細齒、微似木天蓼(マタヽビ)葉而厚皺、其子半熟時、大可大豆而有溝及毛、状與桃無異、既赤熟則大可小金柑、脱毛如李(スモヽ)亦似梅、味甘、其花小二分許、白色帶微赤、但謂雪者不然、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十一山果〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0379 櫻桃 ユスラムメ(○○○○○) ユスラゴ(○○○○) ユスラ(○○○)〈京〉 ユリサン(○○○○)〈大和〉 一名朱 桃〈事物異名〉 石蜜 麥英 麥甘〈共同上〉 朱英〈秘傳花鏡〉 梅桃〈八閩通志〉 玉桃〈同上〉 牛桃〈事物紺珠〉 朱星 瓊液〈共同上〉 英桃〈群芳譜〉 丹砂顆〈蔬菓爭奇〉 楔桃〈汝南圃史〉 朱茱〈證類本草〉 伊士http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000018121.gif 叱〈郷藥本草〉 庭際ニ栽テ花ヲ賞ス、自生ナシ、二三尺ノ小木ニテモ花實アリ、大ナル者ハ丈許ニ至リ、枝條繁茂ス、春末葉ノ未ダ出ザル先ニ蕾ヲ生ズ、淡紅色ニシテ、彼岸ザクラノ蕾ノ如シ、葉ノ出ル時花盛ニ開ク、色白ク形梅花ノ如クニシテ小ナリ、蕚ハ櫻花ノ蕚ノ如シ、葉モ櫻葉ニ似テ短ク、皺紋鋸齒及ビ微毛アリ、實ハ五月ニ至テ葉間ニ紅熟ス、形正圓大サ四分許、郁李(ニハムメ)ノ子ニ似テ微シ早ク熟ス、味酸シ、小兒採リ食フ、内ニ小http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif アリ、下シテ生ジ易シ、三年ヲ經テ花實ヲ生ズ、秋ニ至テ葉枯レ落ツ、唐山ニハ品類多コト集解ニ云リ、和産ハ然ラズ、

〔一話一言〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0379 櫻棠花〈◯圖略〉 櫻とばかりいへば櫻桃にて、ユスラの事也、文選詩、山櫻發欲燃なども、山ざくらの事にはあらず、櫻桃の事也、羅山集仁齋集などにも、櫻をもて海棠とせり、尤垂絲海棠は此方のシダレザクラとみゆれども、海棠と櫻とは大に異なり、今沈南蘋が畫に櫻棠といへるものあり、正しく此方のサクラなるべし、按ずるに、中華に古此樹なくして近頃此樹あり、因て櫻棠と名づけて、海棠の一種とせる歟もしるべからず、明の宋景濂日東曲に、賞櫻日本盛於唐、如牡丹兼海棠といへば、日本にてサクラを櫻といふ事、華人もしる所なるべし、〈又云、垂枝海棠近來種樹家にあり、シダレザクラにあらず、〉 後佐藤一見が新傳秘書を見るに、山櫻桃はサクラ、野櫻桃はユスラなりと清人いへるよし、黄蘗僧の詩にも、東來初見櫻桃花と賦せり、

〔草木六部耕種法〕

〈十九需實〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0380 櫻桃(ユスラ)ハ多ク作リテ産業ト爲スベキ物ニハ非ズ、然レドモ百果ノ最初ニ熟シテ珍シキ物ナルヲ以テ、此ヲ作ルモ農事ノ一端ナリ、故ニ此物ハ活垣ニスルヲ良トス、花ハ紅紫二色有テ愛スベク、實ハ三月熟スルヲ、鹽漬ニシテ肴ト爲スベク、又蜜煮ニシテ乾葡萄ノ如ク製スレバ、久シク貯ベキノ美菓ナリ、其實ハ龍葵(ホウヅキ)ノ大ニシテ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ハ齒ニ脆ク珍賞スベシ、

〔採藥使記〕

〈中奥州〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0380 照任曰、奧州南部ノ内川目村ヨリ櫻桃ヲ出ス、即チ獻上ス、 光生按ズルニ、櫻桃ハ國々ニアリテ珍シキ品ニアラズトイヘドモ、當國ノ産ハ各別ニ勝レタルカ知ラズ、

笑靨花

〔書言字考節用集〕

〈六生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0380 笑靨花(コヽメザクラ)〈遵生八牋〉

〔大和本草〕

〈十二花木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0380 笑靨(コヽメ)花 花鏡及遵生八牋ニ見エタリ、花細ニシテ豆ノゴトシ、花ノ頭少クボシ、故笑靨ト名ヅク、花シゲクシテ白キコト雪ノゴトシ、葉マルクシテ實ナシ、根ヨリムラガリ生ズ、花鏡曰、二月中旬分ウフベシ、活ヤスシ、糞ニ宜シ、

〔和漢三才圖會〕

〈八十四灌木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0380 糏花(こゞめばな) 〈正字未詳俗稱古々女波奈〉按、糏花小樹叢生、高三四尺、葉狹長、薄有縱理、二三月開白花、大可錢、如蒸糏、故俗呼名小米花、又似胡羅蔔花、而圓匾小者也、

金櫻子

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十五灌木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0380 金櫻子 ナニハイバラ(○○○○○○) ナツヽバキ(○○○○○)〈同名アリ〉 リキウイバラ(○○○○○○)〈筑前〉 チヤウセンイバラ(○○○○○○○○) 一名鷄陀雨〈醫宗粹言〉 南絡刺子〈藥性奇方〉 卣櫻〈藥性要略大全〉 糖http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a8da.gif 〈通雅〉 刺瓨〈通雅〉藤本ナリ、葉ハ胡枝(ハギ)子ノ葉ニ似テ、厚滑深緑色互生ス、蔓ニ刺多シ、夏月葉間ゴトニ花ヲ開ク、五http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a43d.gif 白色、大サ三寸許、山茶(ツバキノ)花状ノ如シ、故ニナツヽバキト云、蘂ハ小ニシテ黄色香氣多シ、朝ニ開キ夕 ニ萎ム、又重葉ナル者アリ、又淡紅花ナルモノアリ、並ニ花謝シテ蒂漸大ニナリ、形石榴花ノ蒂ノ如シ、長サ八九分刺多シ、是藥用ノ金櫻子ナリ、稀ニ舶來アリ、今種植家ニ唐種ノ金櫻子ト呼ブモノハ、別ノ一種ニシテ眞物ニ非ズ、ソノ葉細小ニシテ、花椒(サンシヤウ)ノ葉ニ似タリ、故ニサンシヤウイバラ(○○○○○○○○)ト云フ、夏月花ヲ開ク、大サ三寸許リ、千瓣ニシテ必一缺アリ、故ニイザヨイイバラ(○○○○○○)ト云フ、色ハ淡紅、或ハ白色、實ノ形正圓ニシテ、大サ八九分、刺多シ、罌形ヲ爲サズ、駿州甲州ニ自生多シ、

ハマモツコク

〔大和本草〕

〈十二雜木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0381 水木犀(ハマモクコク) 葉モ木モヨクモクコクニ似タリ、又木犀ニモ似タリ、海濱ニ生ズ、平陸ニモウフ、四月花アツマリ開ク、其花ノ香スコシ木犀ニ似タリ、高濂艸花譜ニハ、水木犀ヲ爲草本、二月分栽トイヘリ、

下毛

〔大和本草〕

〈十二花木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0381 下毛 小木ナリ叢生ス、臘月ニ早ク萌生ス、四月開花、一處ニ多クアツマリヒラク、サカリ久シ、眞紅アリ、淡紅アリ、眞紅尤美ナリ、愛スベシ、又白花アリ、春秋枝ヲ挾ムベシ、ヨク活ス、老枝ヲ冬切ベシ、嫩枝生長シ、明年ノ夏、花ヒラキテ最ウルハシ、舊枝ヨリマサレリ、葉ハスヾカケニ似タリ、漢名未詳、拾遺集ナド古歌ニモヨメリ、草下ツ毛アリ、花相似タリ、又山下ツ毛アリ、小木也、

ラウザイバラ

〔大和本草〕

〈十二花木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0381 ラウザイバラ 紅夷ヨリ來ルト云、花大ニ葉小也、山椒ノ葉ニ似タリ、枝條曲節多クシテ不舒、挾テ活ク、有刺、是又薔薇之類而花葉較異者也、四月開花至秋、又牡丹イバラト云、花頗牡丹ニ似タリ、又箱根イバラ、此單葉ナリ、

棣棠

〔新撰字鏡〕

〈木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0381 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000208.gif 〈山不支(○○○)〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0381一訓夜末布歧、蓋蕗訓布布歧、或省云布歧、故槖吾之訓夜末布布歧、亦省云夜末布歧也、其訓偶與萬葉集所謂山吹花合、遂誤以欵冬山吹也、而山吹萬葉集多作山振、蓋是草生山谷、其枝柔輭隨風振搖、故名山振、振字古訓布歧布久、神代紀云、背揮、此云志理幣提爾布屨、 古事記載其事、作於後手布伎都都、可以證、故呼山振夜末布歧也、其作山吹者、訓同而假借耳、雖欵冬山振其訓同、然其語原不同、混爲一者誤、源君以欵冬山吹、故不輔仁於保波之名也、又按清愼公詩云、點著雌黄天有意、欵冬誤綻暮春風、攷本草圖經傳咸欵冬賦序云、余嘗逐禽登于北山、于時仲冬之月也、冰凌盈谷、積雪被崖、顧見欵冬、煒然始敷華艷、水經注引述征記云、洛水至歳末凝厲、則欵冬茂悦曾冰之中、本草云、欵冬花、十一月採花陰乾、藝文類聚引呉普本草云、欵冬十二月花黄白、證類本草引日華子云、十一十二月雪中出花、諸書所言略同、今目驗即然、未欵冬至暮春乃開花者、以欵冬山吹也、其誤非源君

〔大和本草〕

〈十二花水〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0382 棣棠(ヤマブキ) 園史及允齋花譜ニ、其形状詳也、疑モナキ山吹ナレバ、コヽニ詳ニ記サズ、遵生八牋ニモノセタリ、名花譜ニ、ワカ枝ヲ折テ挾メバ生トイヘリ、八重ノ花尤賞スベシ、日ヲヲソル、日本ニ昔ヨリ此花ヲ賞シ、古歌ニ多クヨメリ、山州井手ノ山吹尤名アリ、今ハナシ、又ヒトヱアリ、山中ニ生ズ、金碗喜水ト漢名ヲ稱ス、又白花ノヒトヱアリ、黄花ニヲトル、是ハ棣棠ト一類ニ非ズ、實アリ、花ハ似タリ、順和名欵冬ヲヤマブキト訓ジ、朗詠集ニモ欵冬ヲヤマブキトス、皆アヤマレリ、萬葉ニハ山吹トカケリ、酴http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001c15f.gif (ドビ)ヲヤマブキト訓ズルモ亦非ナリ、酴http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001c15f.gif ハゴヤヲキ也、

〔牛馬問〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0382 或人の曰、前問に依て、山吹の事をおもひ出たり、朗詠集、欵冬(クリンドウ)を山吹と誤り訓ずること久し、近世酴http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001c15f.gif (トヒ)をやまぶきの正字とす、此文字なるや、答て曰、欵冬もとより山ぶきにあらず、酴http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001c15f.gif も又やまぶきにあらず、此物本草綱目に不載、事物紺珠といふ書に出、先輩多く此物をやまぶきと誤る、是は和名トキンイバラといふものなり、或人又曰、しからば山ぶきの文字は如何、曰、棣棠花なり、是又同名にして異物あり、混ずべからず、

〔萬葉集〕

〈二相聞〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0382 十市皇女薨時高市皇子尊御作歌三首〈◯中略〉 山振之(ヤマブキノ)、立儀足山(タチヨソヒタルヤマノ)、清水(シミヅヲバ)、酌爾雖行(クミニユクンド)、道之白鳴(ミチノシラナク)、

〔萬葉集〕

〈十春雜歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0383花 花咲而(ハナサキテ)、實者不成登裳(ミハナラネドモ)、長氣(ナガキケニ)、所念鴨(オモホユルカモ)、山振之花(ヤマブキノハナ)、

〔萬葉集〕

〈十九〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0383 從京師贈來歌一首 山吹之(ヤマブキノ)、花執持而(ハナトリモチテ)、都禮毛奈久(ツレモナク)、可禮爾之妹乎(カレニシイモヲ)、之努比都流可毛(シヌビツルカモ)、 右四月五日、從留女之女郞送也 詠山振花歌一首并短歌 宇都世美波(ウツセミハ)、戀乎繁美登(コヒヲシゲミト)、春麻氣氐(ハルマケテ)、念繁波(オモヒシゲレバ)、引攀而(ヒキヨヂテ)、折毛不折毛(ヲリモヲラズモ)、毎見(ミルゴトニ)、情奈疑牟等(コヽロナギムト)、繁山之(シゲヤマノ)、谿敝爾生流(タニベニオフル)、山振乎(ヤマブキヲ)、屋戸爾引植而(ヤドニヒキウヱテ)、朝露爾(アサツユニ)、仁保敝流花乎(ニホヘルハナヲ)、毎見(ミルゴトニ)、念者不止(オモヒハヤマズ)、戀志繁母(コヒシシゲシモ)、〈江家〉 反歌 山吹乎(ヤマブキヲ)、屋戸爾植氐波(ヤドニウヱテハ)、見其等爾(ミルゴトニ)、念者不止(オモヒハヤマズ)、戀己曾益禮(コヒコソマサレ)、

〔後拾遺和歌集〕

〈十九雜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0383 小倉の家にすみ侍けるころ、雨のふりける日、みのかる人の侍りければ、山ぶきの技ををりて、とらせてはべりけり、こヽろも得で、まかりすぎて、又の日山吹のこヽろもえざりしよし、いひにおこせて侍けりる返事に、いひつかはしける、 中務卿兼明親王 なゝへ八重花はさけども山ぶきのみのひとつだになきぞかなしき

〔擁書漫筆〕

〈四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0383 いにしへより、山吹は實なきものとせしに、この二十年ばかりほどは、諸國に實のれるがおほしとて、このごろも小谷鳩谷がもとより、押花にしておこせたり、西蕃にも群芳譜果部卷之一に、棣棠、栘(ハイ)也、似白楊、江東呼爲夫栘、一名郁李、一名鬱梅、一名雀梅、一名車下李、其花反而後合、凡木之花先合而後開、惟此花先開而後合、花正白亦或赤、花蕚上承下覆、有親愛之義、故以喩兄弟、周公所爲賦常棣也、子如櫻桃、六月熟可食、仁可藥、〈◯中略〉など見えて、群芳譜に花正白或 赤花としるせしものは實のれるよしなれど、花若金黄、一葉一蕋、生甚延蔓とも、金碗喜(きんゑんき)木ともいへるかたは、實を結ぶさたなし、さて棣棠に三種ありて、一種白赤花開て子をむすぶものは、中國にたえてきこえず、金黄花といへるは、これすなはち八重山吹、金碗喜木は一重山吹になんありける、かゝれば山吹に實なれるは、いと〳〵めづらかなることゝいふべし、因にいふ、和漢朗詠欵冬(やまぶき)の詩に、清愼公の點著雌黄天有意、欵冬誤綻暮春風と作られしを、集註二の卷にたすけて解たれど、こは和名抄草類部にも、欵冬一名虎鬚、和名夜末不々木、一云夜末布木、萬葉集云山吹花など混雜てしるして、そのころ訓のおなじきがゆゑに、おもひひがめし也、これよりやゝふるき本草倭名には、欵冬を九の卷草部中に、和名也末布々岐、一名於保波(オホバ)とて出し、新撰字鏡にはhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000208.gif の字を、木部に山不支(ヤマブキ)と訓て載たり、萬葉集にも假名に書き、または山吹山振(やまぶき)なども書たれど、欵冬と書るは一所もなし、さればいとあがれる世には、草屬の欵冬を木屬の棣棠とは字をあやまらざりし也、亦按に欵冬は也末不々木と五言にいひ、棣棠は山不支と四言にいふべき例也、ふゞきといへる語意は、已に余〈◯高田與清〉が著せし棟梁集の自注に釋たれば、こゝに贅せず、

〔常山紀談〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0384 太田左衞門大夫持資は、上杉宣政の長臣也、鷹狩に出て雨に遭、ある小屋に入て蓑をからんといふに、わかき女の、何とも物をばいはずして、山ぶきの花一枝折て出しければ、花を求るに非ずとて、怒て歸りしに、是を聞し人の、それは七重八重花はさけどもやまぶきのみのひとつだになきぞ悲しきといふ古歌のこヽろなるべしといふ、持資おどろきて、それより歌に志をよせけり、

〔武江産物志〕

〈遊觀〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0384 棣棠花 金性寺〈押上俗ニ山吹寺といふ〉 蒲田新梅屋敷〈中ノ和中散〉

〔剪花翁傳〕

〈前編二三月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0384 八重山吹 花の色黄葩一重山吹より少(ちい)さし、開化三月上旬、方東南向三分陰、 地三分濕、土薼雜(ごもくまじり)、肥淡小便八月に澆ぐべし、又冬月より寒中にも澆ぐべし、花はやく咲也、分株(かぶわけ)十一月より寒中迄よし、春は剪得ても葉萎凋なり、是は切口を叩き挫き、酢をもてよく煮るべし、

扶栘

〔本草一家言〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0385 扶栘 按本草云、柳類也、其葉似白楊而狹長有毛、面青背白、二三月開白花、細小不觀、春風一觸、花葉動搖、遠望如翻白一、、似偏其反而之状、故陸機輩似此充詩唐棣、倭呼志天乃木(○○○○)〈一名志手柳(○○○)〉者是也、又一種圓葉似梨、面青背白、又柳類也、本草呼爲白楊、倭名箱柳、枝葉軟弱、微風自搖、故似白楊扶栘之説、其白楊亦扶栘之屬、宜二種併爲扶栘也、與唐棣全不相預、注家依其花葉之動搖翻白一、而妄生臆度、同襲不正、使唐棣有名而無http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 實可嘆乎、餘見于海棠條、〈圭録〉

〔本草一家言〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0385 志天乃木(○○○○) 樹葉似楊梅葉而狹、又似登美良(トヒラ)葉、而極繁密不實、其木枝入土經久則化石、似石灰而極堅、有識者壺井某語予曰、或惠此石一塊、試使工製http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 硯、質堅片々飛落、不終彫琢、北山岩屋山中多産之、賣炭翁採其枝葉炭包蓋用、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十四喬木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0385 扶栘 シデノキ(○○○○) シデヤナギ(○○○○○) シデザクラ(○○○○○) シデヤグラ(○○○○○) ヤグラバナ(○○○○○) ザイフリ(○○○○) ヤマムロ(○○○○)〈濃州〉 ウ子モヂリ(○○○○○)〈能州〉 シワキ(○○○)〈播州〉 子ヂノキ(○○○○) アカ子ヂ(○○○○)〈丹後〉 ミズミザクラ(○○○○○○)〈同上〉 ナマヘ(○○○)〈讃州〉 一名栘柳〈古今注〉 蒲栘〈同上、以上ノ二名、水楊ノ釋名ニ誤リ入ル、〉 扶楊〈附方〉山中ニ多シ、葉ハ櫻ノ葉ニ似テ小ク互生ス、初出ル時白毛アリ、三月新葉長ジテ後枝ノ梢ニ穗ヲナシ、枝ヲ分チ花ヲ開ク、五瓣ニシテ細長ク、數十花簇リ開ク、白花ノ者多シ、紅花ノ者ハ少シ、花後圓實ヲ結ブ、大サ三分許、霜後葉落ツ、

〔佐渡志〕

〈五物産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0385 扶栘 方言シテノ木 羽茂郡新保柳澤邊ニ多シ、化シテ石トナルトイフ、又松楊ハ方言ヂシヤノキ、加茂郡ニセリノキ、ブナノキ、デロノキアリ、大同小異ナリ、

扇骨木

〔和漢三才圖會〕

〈八十三喬木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0385 扇骨木(かおめのき) 〈正字未詳 俗又以要字加奈女〉 按、扇骨木高二三丈、葉似海石榴葉而狹小、有細鋸齒、面滑四月開小白花細子簇、八九月赤熟其木最堅http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif 、堪扇骨(カナメ)、故名、


Last-modified: 2019-03-15 (金) 09:48:58 (386d)