http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0844 苔ハ、コケト云フ、樹木、岩石、若シクハ屋瓦等ノ陰濕ナル處ニ叢生スル微細ナル植物ノ總稱ナリ、蕨ハ、ワラビト云ヒ薇ハゼンマイト云フ、並ニ到ル處ノ山野ニ生ジ其嫩芽ハ採リテ以テ食料ニ供ス、尚ホ此類ノ植物ニハ、忍草、石葦石松(ヒトツバヒカゲノ)、卷柏(カヅライハヒバ)等甚ダ多シ、

名稱

〔倭名類聚抄〕

〈二十/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0844 苔 陸詞切韻云、苔〈音臺、和名古介〉水衣也、

〔東雅〕

〈十五/草卉〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0844 苔コケ 倭名抄に、陸詞切韻を引て、苔はコケ水衣也と註せり、此にコケといふもの、水衣をのみいふにもあらず、舊事紀に、八岐大蛇の事をしるされしに、其身生蘿と見えて、古事記に 見えし所も亦同じく、並に讀てコケといふ、〈萬葉集に蘿讀む事亦同じ、倭名抄にも松蘿讀てマツノコケといふ事前に註す、〉今も俗に蛇また魚の鱗をコケといふ也、此語その苔の如くなるによりて云ひしにや、また苔をコケといふ事は、鱗に似たるに因りてかく云ひしにや其詳なる事は知るべからず、

〔倭訓栞〕

〈前編九/古〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0845 こけ 古事記に蘿をよみ、倭名抄に苔をよめり、木毛の義なるべし、或は莓をよめり、韻會に苔也と見ゆ、苔は水衣也と注せり、されど地衣草もいへり、又石衣をちいさきこけとよめり、石髮も同じ、東坡が詩に空餘石髮魚衣といへれば、水衣も通じいふべし、又松蘿をまつのこけ、屋遊をやのへのこけとよめり、こけ衣、こけ席など皆みたてたる詞也、苔の袖、苔の袂など、桑門によめり、苔の戸、苔の庵などは、閑居の體をいふ也、

地衣

〔和漢三才圖會〕

〈九十七/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0845 地衣(こけ) 〈仰天皮掬天皮〉本綱、地衣、乃陰濕地被日晒苔蘚、如草状者也、氣味〈苦冷微毒〉 取停水濕處乾卷http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 皮爲末傅於陰上粟瘡、治之神効、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0845 地衣草 ヒカリグサ(○○○○○)〈古歌〉 ヂゴケ(○○○) アヲゴケ(○○○○) ビロウドゴケ(○○○○○○) 一名青膚、〈事物紺珠〉陰地上ニ一面ニ生ズル緑苔ナリ、形鵞毛絨ノ如シ、數品アリ、土部仰天皮ハ、附方ノ停水濕處ノ乾卷皮ト云フト同ジ、水ノツキタルアト日照ルトキハ、ソノ土皮トナリ、起テ乾キ反卷スル者ナリ、此ヲ聖濟總録ニ日炙沙ト云ヒ、外臺秘要ニ乾卷地皮ト云フ、地衣草トハ別ナリ、

石蕊

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0845 石蕊 ハナゴケ(○○○○) シラゴケ(○○○○) 一名石蕊花〈本草彙言〉 石雲茶〈同上〉 蒙茶〈廣東新語〉山中土石上ニ生ズ、高サ二三寸叢生シ、白色形花蕊ノ如シ、圓細ニシテ枝叉ヲ分ツ、内空シ、採リ研テ茶トナシ飮ベシ、

紫衣

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0846 昨葉何草〈◯中略〉附録、紫衣 ムラサキゴケ(○○○○○○)、アカゴケ(○○○○)、濕地上及ビ古木ニ生ズ、ソノ状泥土ノ如クシテ紫色ナリ、又雨ノ後陰地上ニ多シ、

松蘿

〔本草和名〕

〈十三/木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0846 松蘿、一名女蘿、〈本條〉一名葛蘿、一名蓎蒙、一名玉女、〈已上出兼名苑〉一名蔦蘿、一名蔓蘿、一名蔓女蘿、〈出雜要訣〉一名莵絲、〈出爾雅〉和名末都乃古介(○○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈二十/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0846 松蘿 辨要決云、松蘿一名女蘿、〈和名萬豆乃古介、一云佐流乎加世(○○○○○)、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0846 本草和名云、松蘿一名女蘿、本條、一名蔦蘿、一名蔓蘿、一名蔓女蘿、出雜要訣、則知女蘿之名本草所載、蔦蘿以下三名出雜要訣也此女蘿上恐脱蔓字、或源君引本草二名、誤爲雜要訣也、別録、松蘿、生熊耳山川谷松樹上、陶注、松蘿多生雜樹上、而以松上者眞、小雅頗辨正義引陸氏義疏云、松蘿自蔓松上、生枝正青、萬豆乃古介依輔仁、又見元輔歌、按萬豆乃古介謂松苔也、又六帖歌謂萬都乃岐乃古介、躬恒歌謂之萬都爾加々禮留古介、本草和名無佐留乎加世之名、按、乎加世、麻桛也、以綰之麻縷麻桛、今俗亦有加世絲之名是物在深山、其状似麻桛、故云猿麻桛也、桛訓加世比、古今集物名有左賀利古計、即此物、故日本紀纂疏云、蘿謂垂苔也、或名幾都禰乃乎賀世、今周防俗呼佐留乃乎賀世、南部俗呼佐留賀世

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十六/寓木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0846 松蘿 マツノコケ(○○○○○)〈和名抄〉 サルヲガセ(○○○○○)〈同上〉 サルノヲガセ(○○○○○○)〈阿州〉 ヤマウバノヲクズ(○○○○○○○○)〈同上〉 ヤマウバノヲガセ(○○○○○○○○)〈伯州〉 サルガセ(○○○○)〈南部〉 キリサルカセ(○○○○○○)〈駿州富士〉 クモノハナ(○○○○○)〈日光〉 キヒゲ(○○○)〈http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e292.gif 州〉 ハナゴケ(○○○○)〈泉州〉 キツネノモトユヒ(○○○○○○○○) 一名松上藤〈藥性奇方〉 蓎蒙〈正字通〉 象主〈名物法言〉 榼蘿〈事物紺珠〉 藤蘿〈秘傳花鏡〉松皮ニ附テ生ズ、然レドモ松ニ限ラズ、深山ニテハ諸木共ニアリ、又http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a58.gif 木(アセボ)躑躅等ノ小木ニモアリ、京師ノ者ハ短小ニシテ僅ニ二三寸、形細圓ニシテ絲ノ如シ、木皮ニ生ズル處ハ、一筋ニシテフト シ、末ニ枝多ク分レ、下垂シテフサノ如シ、白色ニシテ微緑ヲ帶ブ、フトキ處ヲ採リシゴケバ、皮細カニ碎テ、離レズ、内ニ強キ心アル故、數珠ノ形ノ如シ、故ニ俗ニ弘法ノ數珠ノ變化ト云、和州芳野高野山、野州日光山殊ニ多シ、長サ三五尺ニシテ至テフトシ、雨中ニハ自ラ切レテ落ツ、

垣衣

〔和漢三才圖會〕

〈九十七/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0847 垣衣(かべのこけ) 鼠韭 昔邪 垣嬴 天韮 和名之乃布久佐(○○○○○) 土馬駿 乃木乃之能布(○○○○○○)本綱、垣衣即磚墻城垣上青苔衣也、〈◯中略〉按、垣衣乃非草類、只垣墻苔、以字義解也、土馬駿、乃〈俗云乃木之乃不〉生古屋上及樹椏、其葉二三寸、濶二三分、似風蘭葉而色淡、脊有筋、不窄、面有細點、脊色稍淺、冬月亦不凋無花實、◯按ズルニ、倭名類聚抄ニハ垣衣ヲ之乃布久佐ト註セリ、但シ忍草ハ、漢名海州骨碎補トスルヲ允ト爲ス、宜シク忍草及ビ骨碎補ノ條ヲ參看スベシ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0847 垣衣 カキノコケ(○○○○○) ツイヂノコケ(○○○○○○) 一名蘭香〈酉陽雜俎〉 牆衣〈外臺秘要〉 墻上青衣〈千金方〉地衣草ノ垣墻ニ生ズル者ナリ、垣ハタカベイ、墻ハツイヂ、

屋遊

〔倭名類聚抄〕

〈二十/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0847 屋遊 蘇敬本草注云、屋遊〈和名夜乃倍乃古(○○○○○)介〉屋瓦上青苔衣也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0847 按此屋瓦上苔、則輔仁所訓爲正、宇倍省云倍、猶尾上謂之乎能宇倍、見萬葉集、省云乎能倍、諸書多爾、故源君云夜乃倍耳、又或急呼夜禰、古今六帖貫之兩歌、今俗稱同、但俗書作屋根者假借耳、〈◯中略〉證類本草中品云、屋遊生屋上陰處、無蘇注、引陶隱居、與此同、唯屋瓦倒、上有此字異耳、本草和名同、源君引爲蘇注誤、醫心方亦引陶注、而無此字、與此同、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0847 屋遊 ヤノヘノコケ(○○○○○○)〈和名抄〉 ヤネノコケ(○○○○○)古瓦屋上ニ生ズ、又板屋ニモ日ノアタラザル處ニ生ズ、

石衣

〔倭名類聚抄〕

〈二十/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0848 石衣 本草云、石衣、一名石髮、〈和名知比佐木古介(○○○○○○)、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0848引文、千金翼方、證類本草並不載、證類本草下品烏韮條、引唐本注云、此物即石衣也、亦曰石苔、又名石髮、本草和名亦云、烏韮、一名石衣、一名石苔、一名石髮、已上三名出蘇敬注、是石衣石髮並出蘇注也、〈◯中略〉爾雅、藫、石衣、郭璞注云、水苔也、一名石髮、江東食之、本草云、烏韭、生山谷石上、蘇注云、生巖石陰不日處、與卷栢相類也、陳藏器云、烏韮生大石及木間陰處、青翠茸々者、似苔而非苔也、日華子云、石衣、此即是陰濕處、山石上苔、長者可四五寸、又名烏韭、陶云、垣衣亦名烏韮、而爲療異、非是此種類也、

桑花/艾納

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0848 桑花(○○) クハノコケ 一名、桑樹上白蘚花〈附方〉クハノキノ皮ニ附テ生ズルゼニゴケナリ、附録、艾納(○○)、マツノゼニゴケ、マツノコケ、一名松http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b4d1.gif 、〈通雅〉松納衣、〈黒娥小録〉松緑衣、〈東醫寶鑑〉松雪、〈天祿識録〉松樹皮ニ著テ生ズ、薄シテ堅ク皮ノ如シ、白緑色、

土馬http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001c8fc.gif

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0848 土馬http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001c8fc.gif  スギゴケ(○○○○)山中陰處ニ多ク生ジテ地ニ滿ツ、採テ茶室ノ庭ニウユ、高サ三寸許、枝ナク絲ノ如キ細葉多ク附テ杉ノ如シ、長サ三四分深緑色ナリ、一種白色ヲ帶テ莖直ナラズシテ獸尾ノ如クナル者ヲトラゴケ(○○○○)ト云フ、又スギゴケノ一種短クシテ石上ニ生ズルヲ、イハゴケ(○○○○)ト云フ、是石馬http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001c8fc.gif ナリ、

忍草

〔倭名類聚抄〕

〈二十/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0848 垣衣 本草云、垣衣、一名烏韮、〈和名之乃布久佐(○○○○○)〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0848 千金翼方、證類本草中品韮作韭、本草和名與本書同、〈◯中略〉本草和名云、一云古介、西山經云、小華之山、其草有萆茘、状如烏韭、廣雅、昔邪、烏韭也、在屋曰昔邪、在牆曰垣衣、本草、垣衣、生古垣牆陰或屋上、陶注、俗中少見者、蘇云、此即古牆北陰青苔衣也、其生石上者名昔邪、一名烏韮、江南少牆、陶故云少見、屋上者名屋遊、形並相似、是訓古介允、按八雲抄謂、忍草其葉狹長有星、 則當瓦韋http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4d.gif 之、瓦韋其状見石韋條

〔饅頭屋本節用集〕

〈之/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0849 垣衣(シノブ) 荵(同)

〔圓珠庵雜記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0849 しのぶ草に三つあり、ひとつには、垣衣つねの如し、ふたつには忘草を又はしのぶ草といふよし、大和物がたりに見えたり、これに付きて先達多くあやまりて、垣衣をわすれ草とこころ得られたるもあり、又垣衣の外にわすれ草といふ物の、軒におふるよしによめるもあり、わすれぐさおふる野べとは見るらめどと、業平のよめる物を、いかで軒の草とはいふべき、又伊勢物語の心は、一草二名とは聞えず、業平のしのぶとはいひつヽ忘れたるを、女うらみてこれをわすれ草ともやいふとて、しのぶ草を出だして、思ふ心をふたつの草の名にそへたり、下の心はしのぶをばわすれ草とは申さぬものをといへるなり、三つには、萬葉に菅をもしのぶ草とよめり、しのび草とよめるは、かたらひ草のたぐひなり、重之集に、ことのはにいひ置く露もなかりけりしのび草にはねをのみぞなく、元輔集に、行く先のしのび草にもなるやとて露のかたみにおかんとぞ思ふ、眞淵(http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f00000b2010.gif 頭書http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f00000b2011.gif )云、伊勢物語にいへるは、わざと名をかへいひて、男のいはんにつけて、うらみんとまうけたる事、此人のいふがごとし、大和物語の頃にしも、誤る人ありつらん、しのぶ草は、枕の草子に、くちたる物のはしなどに生ふるがをかしきよしいへれば、軒に生ふる苔の類にて、さる物のあるなり、わすれ草は、萬葉にも萱草と書き、かの忘憂草の意によみたり、且枕册子に、六月わすれ草の花の咲きたるよしありて、萱草にうたがひなし、又萬葉に菅をしのぶ草とよめるといふは、しのぶ草ははへてましをとよめるをいふなり、然れども、それ物語種の意をかたらひ草といふがごとく、したはるヽ思ひ草をはらへ捨てましをといふにて、菅をいふにはあらず、續古今戀五、わするヽもしのぶも同じ古郷ののきばの草の名にこそありけれ、眞淵云、こは理 をいふ時は、忍び種なれど、猶忍ぶ草とよみて、さる心とも聞ゆべければ、いかヾあらん、古きよき本にしのびと書きてあるにや、後の本はたのみがたし、

〔圓珠庵雜記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0850 しのぶ草をことなし草(○○○○○)といふ、異名なり、後撰集つまに生ふることなし草をみるからにたのむ心ぞかつまさりける、新勅撰集、君みずてほどをふるやのひさしにはあふことなしの草ぞおひける、

〔伊勢物語〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0850 むかし男、後凉殿のはざまをわたりければ、あるやんごとなき人の、御つぼねより、忘草をしのぶ草とやいふとて、いださせ給へりければ、給りて、 忘草おふる野邊とは見るらめどこはしのぶなりのちもたのまん

〔大和物語〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0850 在中將うちにさぶらふに、みやすん所の御かたより、わすれ草をなん、これは何とかいふとて給へりければ、中將、 わすれ草生ふるのべとは見るらめど、こはしのぶなりのちもたのまんとなんありける、おなじ草を、しのぶ草わすれ草といへば、それによりてなんよみたりける、

〔玉勝間〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0850 しのぶもぢずり(○○○○○○○)しのぶもぢずりといひし物は、古今集の河原左大臣の歌の、顯昭の注に、陸奧國の信夫郡にもぢずりとて、髮をみだしたるやうにすりたるをしのぶずりといふといひ、契沖が勢語臆斷にも、信夫郡よりむかし摺て出したる名物なりといへるがごとし、然るを師〈◯賀茂眞淵〉のいせ物語古意に、垣衣草(シノブグサ)の形を、紫の色もて摺たるをいふと見えたり、陸奧國に石二つある、其石にてすりたるよしいふは僞言なり、むかしのすり衣は家々にてこそすりたれとて、己が家々にてすりたりし證を出し、さて垣衣草の形の亂れたるをもて、おのが戀のみだれにたぐへたりといはれたるはいかにぞや、いせ物がたりの歌にては、さ聞ゆることも有べかめれど、そは次に古今集なる河原大 臣の歌を出して、といふ歌のこヽろばへなりといへり、これしのぶのみだれとよめるは、しのぶずりの亂れといふ意也と、しらせたる也、かの紫の色こきときはといふ歌の次に、むさし野のこころなるべしといへるをもおもひ合すべし、もししのぶ草のかたをすりたるをよめるならば、古今の歌を引出たるは、用なきいたづらごと也、又垣衣草のかたならんには、かの古今の歌、軒に生るなどこそよむべけれ、みちのくのとよめるは何のよしぞや、かの國に信夫郡といふがあればとて、さる遠き國の名をとり出て、よしもなき垣衣草の枕詞にはおくべき物かは、又みだるヽよしをいはむに、しのぶ草はいとも似つかはしからず、かの草のさまは、さいふばかりみだれたる物にはあらず、それも摺たる形は亂れてもあるべけれど、すりたるにつけてみだれたらんは、いづれの物のかたにても同じことなるべし、いたく物よりことに亂れたる形ならではかなはず、又垣衣(シノブ)はとり分て摺染(スリゾメ)などにすべき物にもあらざるをや、さて又かの信夫郡より出といふことを破りて、布など染たるを、諸國より貢ることは古見えずといはれたるもたがへり、延喜の大藏内藏などの式にも、諸國所貢染布の色々など見えたるをや、すり衣は、おのが家々にてこそ摺たれといはるれども、さりとて外より摺ていだすこともなどかなからん、國々より出て名ある物を、めで用ふることは、今も昔も同じこと也、さて信夫郡に石の有しにてすれりといふはいかヾ有けむ、されどまことに然なりけんもしりがたきを、ひたぶるに僞言也とはいふべくもあらず、その石の事はとまれかくまれ、信夫郡より出せりしことは論なきをや、

〔新著聞集〕

〈三/勝蹟〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0851 奧州信夫文字摺石奧州信夫郡に信夫文字摺の石あり、福島より貳里ばかり行て、瀬の上といふ所の山の下の畠にあり、此石の面を摺てみれば、死せる親族の形あらはるヽとて、人々あつまりて、田畠の損亡多かりければ、今はその畠の中に埋みをきし、

骨碎補

〔和漢三才圖會〕

〈九十八/石草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0852 骨碎補(こつさいほ) 石毛薑 胡猻薑 石菴䕡 猴薑〈◯中略〉按、骨碎補、出於紀州熊野者良、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/石草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0852 骨碎補 詳ナラズ〈◯中略〉證類本草ニ載スル所ノ海州骨碎補(○○○○○)ハシノブグサナリ、山谷土石上ニ蔓延ス、根ハ箸ノ大サノ如クシテ褐毛アリ、即蔓ナリ、春宿根ヨリ葉ヲ生ズ、形甚細碎ニシテ海金沙(スナグサ)ノ梢葉ノ如シ、花實ナシ、増、唐種ノ骨碎補ト云モノアリ、木石上ニ蔓延ス、高サ一尺餘、葉ハ蛇眼草(イワカネサウ)ニ似テ直葉(シタヒバ)アリ、面背共ニ深緑色ニシテ、光澤アリ、葉心ノ縱脈黒色ヲ帶ブ、大小變葉多シ、根ハ圓扁ニシテ青色褐毛アリ、阿州海部郡處處ニ多シ、牟岐浦ノ海中出羽島殊ニ多シ、若水翁釋名ノ胡猻薑石毛薑、ノ二名ヲサルノセウガニ充ツ、一名ハヒセウガ、アヲネカヅラトモ云、深山石上ニ生ズ、根ノ形小雉尾(タチシノブ)草ニ似テ横行盤屈シテ繁茂ス、青緑色ニシテ毛ナシ、根ハ悉ク外ニ出ヅ、冬モ葉枯レズ、梅雨ノ時舊葉落ツ、五六月新葉ヲ生ズ、形ムカデグサノ如ニシテ薄ク毛茸アリ、一葉ヅヽ垂下ル、背ニ細キ金星ヲ生ズ、此レ花ナリ、一種大樹枝上ニ生ズルアリ、形少ク異ナリ、根ノ色微褐色ニシテ青緑ナラズシテ、ツリモノニ作ルニ、根苔中ヨクヾリテ外ヘ出デズ、葉狹クシテ毛ナシ、背ニハ金星アリ、下品ナリ、

烏韭

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0852 烏韭石上ニ生ズルコケノ總名ナリ、蘇恭ノ説ハ、ホラシノブ(○○○○○)ナリ、洞窟中或ハ石間陰處ニ生ジ、形チ海州骨(シノブ)碎補ニ似テ淡黒褐色、又微青ヲ帶ル者アリ、倶ニ長サ二三寸、

石葦

〔新撰字鏡〕

〈草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0852 石葦〈鹿耳草、又云鹿舌、一云公彌乃加志波(○○○○○○)、〉

〔本草和名〕

〈八/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0852 石韋、〈陶景注云、葉如皮故名石韋、〉一名石http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000386.gif 、〈楊玄操音之夜反〉一名石皮、一名瓦韋、〈生瓦屋上〉一名石産、〈出釋藥性〉又有木葦、〈生木上、出雜要訣、〉和名以波乃加波(○○○○○)、一名以波之(○○○)、一名以波久佐(○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈二十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0853 石韋 陶隱居本草注云、石韋〈和名以波乃加波、一云以波久美(○○○○)、〉其葉如皮、故以名之、生瓦屋上、謂之瓦韋

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0853 按本草和名又云、卷栢和名伊波久美、一云以波古介、本書卷栢、和名與輔仁同、此伊波久美、恐伊波久佐之誤、〈◯中略〉證類本草中品引、作延石上葉如韋故名石韋、本草和名同、蘇云、此物叢生石傍陰處、不蔓延生、圖經云、葉如柳、背有毛而斑點、時珍曰、其葉長者近尺、濶寸餘、柔http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001c654.gif皮、背有黄毛、亦有金星者、名金星草、凌冬不凋、又一種如杏葉者、亦生石上、〈◯中略〉所引〈◯生瓦屋上、謂之瓦韋之文〉陶注證類本草不載、引唐本注云、生古瓦屋上、源君併引爲陶注、非是、本草和名引、瓦屋上脱古字、源君從之、方非是、

〔類聚名義抄〕

〈八/艸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0853 石韋〈イハノカハ、一云イハグミ、〉

〔大和本草〕

〈九/雜草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0853 石韋(ヒトツハ) 石ノ側及陰癖ノ地ニ生ズ、好事ノ者庭ニウヘテ石ニ伴ハシム、

〔和漢三才圖會〕

〈九十八/石草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0853 石韋 石http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000386.gif  石皮 石蘭 〈和名以波乃加波、一名以波久美、俗云比登豆波、◯中略〉按石韋、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000018041.gif 波、伊豫處處有之、其葉厚柔http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001c654.gif 深緑色、面有微黄粉毛、背淺白而如白毛也、不黄毛

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/石草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0853 石韋 イハグミ(○○○○)〈和名鈔〉 イハノカハ(○○○○○)〈同上〉 イワガシワ(○○○○○)〈古名〉 ヒトツバ(○○○○) カラヒトツバ(○○○○○○) 一名石花〈採取月令〉山陰土石上ニ生ズ、根ハ長ク藤蔓ニシテ繁茂ス、處處ニ葉ヲ生ズ、濶サ一寸餘、長サ六七寸、勁厚ニシテ深緑色、背ニ褐毛斜紋アリ、肥タル者ハ葉長サ一尺ニ過グ、冬ヲ經テ枯レズ、夏月新葉ヲ生ズ、初ハ色白シ、長ズレバ漸ク緑ニ變ズ、根ヲ採リ卷束シテツリモノトス、屢水ヲ潅ゲバ年ヲ經テ彌繁茂ス、一種葉短ク二寸許ナル者ヲキンサジ(○○○○)ト呼ブ、本草彙言ニ謂ユル杏葉石韋ナリ、一種葉長シテ本ニ兩岐アリテ、慈姑葉ノ形ナルヲイハオモダカ(○○○○○○)ト呼ブ、一科ニ叢生ス、根ハ蔓ヲナサズ、一名トキハノオモダカ、〈奧州涌谷〉集解瓦韋ハノキシノブ(○○○○○)ト呼ブ、一名マツフウラン、〈讃州〉カラスノワス レグサ、〈加州〉ワスレグサ、〈同上〉ヒトツバ、〈越前〉ヤツメグサ、舊樹皮或ハ枝間ニ生ジテ下垂ス、土石間ニモアリ、一根ニ叢生ス、葉ハ濶サ二三分、長サ三五寸、甚厚シテ深緑色、背ニ金星兩對ス、大サ一分許、冬ヲ經テ枯レズ、年久キ者ハ葉長サ七八寸ニモ至ル、増、一種葉ノ長サ一尺許ニシテ厚ク、幅五六分、一科ニ數葉叢生スル者アリ、深山幽谷ニ産ス、花戸ニテアツイタ(○○○○)ト呼ブ、一種長サ六七寸、幅六七分ニシテ厚キ者アリ、初生ノ形匙頭ノ如シ、サジラン(○○○○)ト名ク、一種葉ノ長サ一尺許、濶サ二三分許ニシテ、麥門冬葉ノ如キモノアリ、深山陰幽ノ地ニ生ズ、又一種ミルラン(○○○○)ト云アリ、深山ノ石面ニ生ズ、葉ノ形瓦韋ニ似テ厚ク、長サ二三寸、濶サ一分餘、面背共ニ毛茸アリ、水松(ミル)ノ形ノ如ク、其色茶褐色、根ハ細クシテ石韋根ノ如ク蔓延ス、一種深山ニシシラン(○○○○)ト云アリ、葉厚クシテ濶サ四五分、長サ一尺許、

〔延喜式〕

〈三十七/典藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0854 諸國進年料雜藥近江國七十三種、〈◯中略〉石韋五斤、

〔採藥使記〕

〈中/駿州〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0854 重康曰、駿州富士山ノ中宮ニ石韋ヲ出ス、光生按ズルニ、石韋和名ヒトツ葉ト云フ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000018041.gif 波伊豫ナドヨリモ出ル、葉白芨ノ葉ニ似テ厚ク、一枚ヅヽ岩石ノ間ニ生ズ、葉ノ面ニ微黄ノ紛アリテ毛ノ如シ、背ハ淺白色ニシテ、白毛アルガ如シ、

金星草

〔多識編〕

〈二/石草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0854 金星草、今案加良比登豆波(○○○○○○)、異名鳳尾草〈綱目〉

〔大和本草〕

〈九/雜草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0854 金星草 石韋ト一類ニテ相似タリ、ウラニ黄星多シ、是與石韋異、カラヒトツバト訓ズルハアヤマレリ、本邦ニモトヨリアリ、山城西山處々ニアリ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/石草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0854 金星草 ヒトツバ(○○○○) ウラボン(○○○○)〈(ン恐シ誤)筑前〉 一名金星石葦〈本草http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001922c.gif 言〉 希聖草〈醫學要集〉 金星鳳尾草〈同上〉 出髮草〈典籍便覽〉 山陰ニ生ズ、多ハ崖壁ニアリテ葉下垂ス、一根數葉、帶甚細クシテ堅シ、葉ハ濶サ五六分、長サ三寸許、亦http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif シ、面深緑色、背ハ色淺クシテ小金星多シ、又瓦韋ノ如ク、星大ナル者モアリ、葉冬ヲ經テ枯レズ、一種葉三ツニ分レ、鷄脚ノ如キ者アリ、ミツデウラボシ(○○○○○○○)ト呼ブ、藥性要大全ニ謂ユル金鷄脚是ナリ、又一種大葉ノ金星草(○○○○○○)アリ、和州紀州山中ニ生ズ、根ハ蔓ニシテ石韋根ノ如ク土中ニ延ブ、處處ニ一葉生ジ、莖長サ一尺ニ近シ、葉長キ者ハ二尺、濶サ三寸、薄クhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif クシテ尋常ノ金星草ノ如シ、背ニ小金星多キコト、又尋常ノ者ニ同ジ、即集解ニ説クトコロノ者是ナリ、

〔佐渡志〕

〈四/物産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0855 金星草 方言ウラボシ 山中崖壁ニ生ズ、一種方言タニワタシアリ、

石長生

〔新撰字鏡〕

〈草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0855 石長生〈保度(○○)〉

〔本草和名〕

〈十一/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0855 石長生、一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000018041.gif 草、一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000387.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000388.gif 草、〈市人用之、仁諝音力丁反、出蘇敬注、〉

〔大和本草〕

〈九/雜草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0855 石長生(シノブグサ) 莖黒ク或紫色、細莖ナリ、葉似蕨又似檜、四時不凋、多生石岩下、又生山陰、苗高尺許、今按本草弘景時珍所説ノ石長生ノ形状、ヨクシノブニ合ヘリ、和草(ニコクサ)〈◯中略〉 篤信云、和草是俗ニ云ハコネ草ナルベシ、箱根草ハシノブニ似テ小ナリ、葉細シ、莖紫色、光アリ莖堅シ、又黒色ナルモアリ、相州箱根山ニ多シ、他州ニモ岩上古墻石壁ナドニ生ズ、

〔和漢三才圖會〕

〈九十二末/山草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0855 箱根草(○○○) 〈本名未詳〉按箱根草相州箱根山有之、小草苗高六七寸、細莖褐色、葉形似銀杏葉而小、其根細如絲而短、未其本名、相傳云、能治産前産後諸血症及痰飮、往年阿蘭陀人見之稱良草、請採得之、甚以爲珍、

〔和漢三才圖會〕

〈九十八/石草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0855 石長生 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000018041.gif 草 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000018041.gif 沙草 〈俗云加豆閉良艸(○○○○○)、又云閉禰連牟艸(○○○○○)、◯中略〉按石長生生溪澗井石間、状似蕨而面背青、夏背著子茶褐色、如虎尾草子、莖紫黒、爲折傷及痰咳隔噎藥

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/石草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0856 石長生 ハコネグサ(○○○○○) オランダサウ(○○○○○○)〈武州〉 クロハギ(○○○○)〈加州〉 ヨメノハハキ(○○○○○○)〈江州〉 ヨメガハヽキ(○○○○○○)〈新校正〉 ヨメガハシ(○○○○○)〈甲州〉 イシヽダ(○○○○)〈駿州〉 ホウヲウハギ(○○○○○○)〈同上〉 イチヤウシノブ(○○○○○○○)〈阿州〉 イチヤウグサ(○○○○○○)〈伯州〉 一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000018041.gif 陽草〈本草原始〉 増、一名小蕨萁、〈幼幼集成〉 鳳尾草〈同上〉幽谷石上ニ生ズ、春新葉ヲ生ズル時紅色ニシテ美シ、一科ニ叢生ス、莖ノ高サ一二尺、黒色ニシテ光リアリ、漆ノ如シ、上ニ枝又多ク分レ、又ゴトニ一葉アリ、形三角ニシテ鴨脚葉ノ如シ、大サ三四分、深緑色、秋ニ至レバ葉背ノ末ニ、一ツノ小褐片ヲ生ズ、即其花ナリ、葉冬ヲ經テ枯レズ、已ニ落葉スル者ハ、枝ヲ連テ束テ箒トス、タマハヽキト名ク、然レドモ甚脆クシテ折レ易シ、此草元祿中、紅毛人相州箱根ニ於テトリ得テ、産前後ニ殊效アリト云ルニ因テ、ハコネグサト名ク、然ドモ箱根ニ限ラズ、諸州山中ニ多シ、一種ヌリバシ(○○○○)ト呼ブ者アリ、一名カラスノアシ、〈越後〉アシナガ、〈江州〉クジヤクサウ、〈花戸〉ヨメノハシ、〈能州〉キツネノカンザシ、〈越州〉ヨメノカンザシ、ヨメノヌリバシ、〈共同上〉山ノ幽谷ニ多シ、春舊根ヨリ苗ヲ生ズ、高サ一二尺、叢生ス、莖ノ色黒漆ノ如ク微ク紅ヲ帶ブ、莖上ニ長枝十餘並ビ分チ、枝ニ小葉兩邊ニ連生シテ、孔雀ノ尾ノ如シ、花ハ開カズ、秋後苗枯ル、春ノ嫰葉紅色ニシテ美ハシ、是又石長生ノ一種ナリ、

〔採藥使記〕

〈中/相州〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0856 重康曰、相州箱根アシガラノ關ノアタリニ、箱根草ト云フヲ出ス、土人ノ曰、元祿ノ頃、紅毛人江都參府ノ時、此草ヲ見テ曰、是レカツヘレヘンネレスト云フテ、難産ノ藥ニ妙アリトテ採ラセケル、故ニ一名ヲオランダ草(○○○○○)トモ云フ、コレ本艸ニ載スル處ノ石長生ナルヨシ、光生按ズルニ、箱根草此比參府ノ紅毛人ヤンヘツキト云ヘル醫ニ問ヒシニ、此艸本國ニテフランチリイリヨト云フ、此國トムマヘヤト云フ二ケ國ヨリ外ニナシ、故ニ兩國ニ來ル時、採リ持行ト云フ、此艸專ラ産後産前ノ諸病ニ黒燒トシテ白湯ニテ用ユ、又湯火傷、アルヒハ髮ノ兀タルニハ、末トシ、ホルトガルノ油ニテトキ、付ルト云フ、

白龍䰅

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/石草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0857 白龍䰅〈䰅ハ鬚ノ本字〉 ホヤ(○○) シラコケ(○○○○) シラガゴケ(○○○○○)深山古木枝上ニ生ズ、白色ニシテ細絲ノ如シ、長サ二三寸、多ク叢生シテ枝ヲ掩フ、甚松蘿ニ似テ柔ニ、心ナクシテ斷ヤスシ、

虎尾

〔大和本草〕

〈九/雜草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0857 虎尾 小草ナリ、箱根草ヨリ細ニシテ柔ナリ最美、箱根艸ニ相似テ不同、蠻語ニカツテイラトモ、ペンネレストモ云、状如此、〈◯圖略〉産後ニ紅夷人コレヲ用ユ、日本人ハ四物湯ト等分ニ合セ、産前後ニ用テ驗アリ、カゲボシニスル、又膈症ニ此草トアメンダウス氷沙糖三種等分ニ合セ服ス、甚驗アリ、シノブ、ハコネ草、虎ノ尾三物相似テ不同、三才圖繪草木五曰、地柏根黄状如絲莖細、上有黄點子花、葉三月生長四五寸許、四月採暴乾用、主臟毒下血神速、今按此亦石長生之類歟、

〔和漢三才圖會〕

〈九十八/石草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0857 虎尾草 俗稱〈正字未考、止良乃於(○○○○)、濕草有同名、〉按虎尾草生石縫間及竹藪中、草似大葉蕨葉、而甚厚http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif 、微反無枝椏、其背有茶褐色粉點、無花實、彼粉點若是爲子乎、其散布處逈隔二三尺亦自然出生、一莖僅寸許、頂有一葉、似蕎麥葉而微成三稜、尋爲二葉、此時無虎尾草之苗、終莖葉全備亦一異也、人家亦栽之、

雁足

〔大和本草〕

〈九/雜草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0857 雁足 深山ノ内ニアリ、初度ニシダノゴトクナル葉イヅ、兩々相對ス、ワラビノ葉ニ似タリ、後ニ心ヨリソデツニ似タル葉生ズ、初度ノ葉トハ各別ノモノ也、立花ニ用ユル物也、鞍馬山ニモアリ、又鬼シダ(○○○)ト云物アリ、雁足ニ似タリ、共ニ漢名未詳、

螺厴草

〔多識編〕

〈二/石草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0857 螺厴草、今案加加美久左(○○○○○)、俗稱岐岐佐宇(○○○○)

〔和爾雅〕

〈七/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0857 螺厴草(マメツル/カヾミグサ)〈鏡面草同〉

〔大和本草〕

〈八/蔓草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0857 螺厴草 ツルニバイノフタノヤウナル葉連リツケリ、又大豆ヲ二ニワリタル形ニ似タリ、陰處石ニ附テ生ズ、本艸石草類ニ載ス、功能多シ、

〔和漢三才圖會〕

〈九十六/蔓草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0858 鵝抱(まめつる) 俗云末女古介(○○○○○○)本綱、鵝抱生山林中石而生、作蔓似大豆、其根形似萊菔(タイコン)、大者如三升器、小者如拳、二八月采根切片陰乾、氣味〈苦寒〉 治風熱上壅咽喉腫痛、按鵝抱葉圓扁徑三分許、栽之盥鉢石傍則延蔓、一面蔽石、如敷青豆、其根最細小、所謂如萊菔者未見、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/石草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0858 螺厴草 マメゴケ(○○○○) アラマメゴケ(○○○○○○) マメヅタ(○○○○)〈筑前、豫州、〉 イシマメ(○○○○)〈長州〉 サネカヅラ(○○○○○)〈雲州〉 イハマメ(○○○○)〈讃州、播州、〉 カヾミゴケ(○○○○○)〈山城加茂〉山中古木及石上ニ延ク、葉圓、厚ク大サ三四分、緑色ニシテ光リアリ、相思(トウアヅキ)子ノ形ノ如ク、緑大豆ノ瓣ノ如シ、互生ス、蔓ハ細クシテ黒色、春間梢ニ長葉ヲ生ズ、背ニ微黒毛アリ、是其花ナリ、

蛇眼草

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/雜草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0858 蛇眼草 カナビキサウ(○○○○○○) イハガネサウ(○○○○○○) オホシダ(○○○○)〈江州〉山足ニ多ク生ズ、薇葉ニ似テ大ニシテ厚ク枝少シ、又枝ナキモアリ、深緑色、冬ヲ經テ枯レズ、花實ナシ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/石草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0858 仙人掌草〈◯中略〉増、蘭山翁コノ條ノ仙人掌草ト、花鏡ノ仙人掌ヲ同物トスルハ誤ナリ、本條ハイワガネサウ、一名カナビキサウ、江州ニテオホシダト云、葉細長クシテ井口邊草(トリノアシノ)葉ニ似テ厚ク、大ニシテ枝少ナク、掌指ヲ張タルガ如シ、其色深緑ニシテ光澤アリ、四時枯レズ、廣東新語ニ、仙人掌多依石壁而生、其葉勁而長ト云、集解ニモ葉細而長ト云、即雜草部ノ蛇眼草是ナリ、

〔新撰字鏡〕

〈草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0858 蕨〈古月反、和良比(○○○)、〉 電丸〈和良比乃根、著如大豆、又如http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif 、〉

〔本草和名〕

〈十八/菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0858 蕨菜、〈黒者〉一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000389.gif 、〈白者〉一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b60d.gif 、〈紫者也、出崔禺、〉和名和良比、

〔倭名類聚抄〕

〈十七/野菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0858 薇蕨 爾雅注云、薇蕨〈微厥二音、和名和良比、〉初生無葉而可之、崔禹錫食經云、白者曰http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000389.gif 、〈音鱉〉 黒者曰蕨、紫者曰http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b60d.gif 、〈音期〉置熱湯中熟、然後可之、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九/菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0859 按史記伯夷傳、登彼西山兮、采其薇矣、是亦謂毛詩爾雅之薇、而陳藏器又云、夷齊食蕨而夭、與史記三秦記異、蓋以毛詩四月篇云、山有蕨薇、蕨薇並稱、謂薇是蕨類、故唐俗有蕨類名薇者、陳氏亦誤、以夷齊所食之薇蕨、源君亦同其誤、故連引薇蕨二字、訓和良比、其實爾雅薇蕨二字不連牽也、

〔易林本節用集〕

〈和/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0859 薇(ワラビ) 蕨(同)

〔和爾雅〕

〈七/菜蔬〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0859 蕨(ワラビ)〈一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000389.gif 〉 蕨拳(ワラビノホ)

〔海人藻芥〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0859 内裏仙洞ニハ、一切ノ食物ニ異名ヲ付テ被召事也、一向不存知者當坐ニ迷惑スベキ者哉、〈◯中略〉ツク〴〵シハツク、蕨ハワラ、葱ハウツホ、如此異名ヲ被付、近比ハ將軍家ニモ、女房達皆異名ヲ申スト云々、

〔東雅〕

〈十三/穀蔬〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0859 薇蕨ワラビ 倭名鈔に爾雅註を引て、薇蕨二字引合せ讀てワラビといひ、貫衆讀てヲニワラビといふと註せり、爾雅及び陳藏器李東璧等の本草に據るに、薇と蕨とは相類して同じからざる事、猶貫衆と薇蕨との如し、倭名鈔に載せし所によれば、古の時には薇蕨の類、總稱してワラビと云ひしと見えたり、今俗にワラビといふ物は即蕨也、ゼンマイといふものは即薇也、ワラビといふ義不詳、ゼンマイといふが如きも亦不詳、オニワラビと云ひしは、そのワラビにして大きなるを云ひし也、〈ゼンマイは、蕃語なるに似たり、〉

〔倭訓栞〕

〈後編十八/和〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0859 わらび 新撰字鏡に蕨をよめり、歌に藁火にもよせてよめり、藁火の字通鑑に見えたり、蕨も萌出る事の速なれば、藁火もて呼しにや、歌にさわらび、したわらび、かぎわらびなどよめり、根もて餅とし、又其からを縄とす、新撰字鏡に、狗脊を大わらびとも、山わらびとも訓ぜ り、花わらび又秋わらびと稱するは、陰地蕨也、紫塵嫰蕨人拳手といふ嫰は、わかきとよむべし、芽出しをいふ也、撰集抄にものよきとよめるは、草書をもて誤りたる也、郭璞も紫蕨拳曲繁盛すといへり、

〔本朝食鑑〕

〈三/柔滑〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0860 蕨〈訓和良比〉釋名〈薇蕨二字、古併訓和良比、(中略)必大(平野)按、薇別一種也、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000389.gif 者蕨初生無葉類鱉脚、故齋魯曰http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b6d4.gif 、今見蕨之初生、皆青紫色、既長彌青、竟無白者、食經所言白者未詳、源順不薇蕨、從崔氏食經而不辨、則以謬傳誤者乎、〉集解、處處山中岡野有之、二三月生芽拳曲、状如小兒拳、山野之人、冬日燒山野、其火連日不消、其跡至春生蕨最多、春初先生者號早蕨(サワラビ)、自古歌人賞詠之、若欲生蕨者、先用灰湯去滑涎、取出投水洗淨數次作蔬、不然則必被毒、今世采其嫰芽、醃藏而貢獻之、野人多采收之、作淹作乾以貨于四方、信州野州三越之諸山、常之秋田、羽之莊内、奧之仙臺、南部等處最佳、津輕之産圓肥、味殊美、駿遠參尾濃勢、及幾内西州處處多有、或晒乾作蔬煮食稍佳、其芽旣長、則展開如鳳尾焦、高三四尺、其根去紫色、皮内有白粉、擣爛數次、洗澄取粉、水飛晒乾煉湯作餅、状如葛餅、而色紫黒、味不葛餅、世以爲珍、此亦貢獻餽贈之品也、采其粉後采根之筋條擣碎作繩、呼稱蕨繩、勁強不鐵鏁、而千年不朽、世以爲土木之具、此亦民間之最貨物也、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十九/柔滑〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0860 蕨 ヤマネグサ(○○○○○)〈古歌〉 ホドロ(○○○)〈同上〉 ワラビ(○○○) シドケ(○○○)〈土州〉 ヨメノサイ(○○○○○)〈勢州◯中略〉春宿根ヨリ葉ヲ生ズ、初ハ卷曲シテ拳ノ如シ、コレヲサワラビト云ヒ、カキワラビト云フ、採リ煮テ食用トス、或ハ醃シ或ハ乾ス、乾ス者ハ奧州三越信濃東北國ノ産ヲ良トス、形肥大ニシテ柔軟ナリ、葉長ズレバ莖ノ長サ三四尺、老莖ヲ用テ箸トス、凡一根數莖ヲ生ズ、冬ニ至テ苗枯ル、山人根ヲ掘リ製シテ粉トス、コレ蕨粉〈授時通考〉ナリ、一名山粉、〈温州府志〉烏http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a9f9.gif 、〈通雅〉俗名ワラビノコ、古歌ニムラサ キノチリト云、一名カネノコ、〈備前、作州、〉ネハナノコ〈羽州〉コレヲ糕トナシ食フ、ワラビモチト云、南部ニテネモチト云、物理小識ニ謂ユル黒腐ナシ、已ニ粉ヲ採リタルhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019edf.gif 筋ヲ乾シテ繩トナスヲ、ワラビナハト云、色黒クシテ能ク水ニ耐ユ、

〔農業全書〕

〈五/山野菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0861 蕨蕨紫蕨薇(わらびぜんまいいのて)是皆山中に生じ、田圃に作る物にあらず、此ゆへに委しく記さず、蕨は生にては性あしく味もよからず、鹽づけよし、ほしたるは出羽の秋田より出る物、柔にして味よし、ぜんまいも食様は右に同じ、加賀より出る味尤よし、

〔廣益國産考〕

〈四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0861 蕨を掘并に製する事わらびを掘には、先蕨の肥て生ずる所を見すまし、尖鍬にて掘、其根を繩にてくヽり、家に持かへり、水にて土を洗らひ落し、偖藁打石のごとく、面よき石の大きなるを居置、其根を石の上にのせ、かたき木にて拵へたる、柄の長き槌をもて、兩人向ひ合せに居てたヽきひしぎ、四斗樽ぐらゐの桶の口に、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651b44.gif をのせ、その中にたヽきひしぎたる根を入、壹人は杓にて水をかけ一人は兩手にてもめば、粕の筋はhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651b44.gif に殘り、桶の中は鼠色の水と成る也、偖木綿の豆腐袋のごとく縫たるを、別の桶の中に入、其袋の中に、右鼠色の濁りたる水を入漉せば、袋の中に細なる粕たまる也、其粕は日にほし置、あらき水囊にてふるひ、飯を焚に其飯の上に木引頃入置、かきまぜ食すれば、糧のたしとなるもの也、偖桶の中にたまりたる水は、其まヽ半日ほど置ば、薄にごりの水となる也、桶をかたむけ、是をもすたみ捨れば、粉は底にかたまり付居るなり、又少し水を入、棒をもてかきまぜ、堅まりなくなるとき、水を桶九分目ぐらゐに入、棒もて水をくる〳〵まぜ、又半日ほど置ば、元のごとく粉底に付、水はすみて上にうくを、又すたみとり、又元のごとくすると、三返もすれば、粉の色白くなる也、白くなるとても、葛天花粉などのごとく白くはならざるものなり、偖桶そこにおり 溜りたる粉を、庖丁にて起しとり、灰を土邊に厚さ貳寸程にひろげ、その上に木綿の二布半ぐらゐなる風呂敷様のものを敷、その上に置ば、半時ほどにして水氣はこと〴〵く灰に吸とり、粉乾くなり、是を糀ぶたやうのものに入、日にほし乾かし、紙の袋に入、俵として問屋に出し商ふ也、偖右叩きひしぎてhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651b44.gif に入、もみたる粕の筋は、又水をかけよくあらひ、日にほし置、雨の日など取出し、水にひたし置、和らかに成たる時、水氣の乾きしを繩になひ、束とし賣べし、此繩を則ち世間にてわらび繩と呼びて、垣などを結に用ふるに、雨に濡ても腐ることなし、又風流の垣を結には緑礬を水にて煮、その中に此繩を入て引上れば、眞黒に染る也、偖蕨粉は、反ものヽ糊と成り、傘をはる糊とし、油紙桐油等の糊、又は求肥わらび餅等になるなり、飢饉の時には、いろ〳〵の物をまぜ餅となし糧とするに、葛と同様の功あり、多く生ずる所の山里にては、常に掘り糧ともし、粉ともして利を得べし、

〔宜禁本草〕

〈乾/五菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0862 蕨菜 甘寒滑、壅經絡、筋骨間毒氣、令人脚弱不行、消陽事、令眼暗、鼻塞、髮落冷氣人食之、多腹脹令人睡、小兒食之、脚弱不行、山人作茹食之、〈不生食〉日用本草云、蕨根搗洗、澄清成紛可以充飢性冷、不久食

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0862 信濃 干蕨 出羽 干蕨 但馬 干蕨 同繩 紀伊 干蕨

〔奧羽觀蹟聞老志〕

〈三/庸貢土産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0862 薇蕨 所于玉造郡大口村田切邑尤佳、其長三尺、其莖如矢、蕨粉 所于伊澤郡鬼首村、尤好、

〔藝備國郡志〕

〈上/安藝土産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0862 蕨索 山縣郡山中農民、到秋掘蕨根、以槌擣之、取其心、水飛以爲蕨粉、以其皮索、名曰蕨索、其形堅剛而堪水濕、其色淡黒而不鄙野、用之或縛墻或纏樽、又合作帆綱、又編代簾箔其所用幾許不枚擧矣、蕨粉 出山縣郡、蕨根洗淨、以槌碎之、水浸一夜、漉其渣脚、以其汁器盛水飛、則其白汁凝滯如葛粉、陰 乾致遠方、水練作餅名曰蕨餅

〔寛政四年武鑑〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0863 松平肥後守容頌〈◯陸奧會津〉 時獻上 〈八月〉漬蕨青山大膳亮幸完〈◯美濃八幡〉 時獻上 〈八月〉干蕨一箱 九鬼定五郞隆卿〈◯http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000018041.gif 波綾部〉 時獻上〈四月〉蕨粉

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0863 漬年料雜菜蕨二石〈料鹽一斗◯中略〉 右漬春菜

〔續修東大寺正倉院文書〕

〈三十二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0863 造佛所作物帳斷簡〈◯原註云、年記不詳、按成卷文書四十五卷所收天平六年造佛所作物帳中卷斷簡、恐與此同物也、〉買雜菜直錢廿一貫七百十六文〈◯中略〉 蕨五千二百九十六把、直一貫三百廿四文、〈文別四把〉

〔出雲風土記〕

〈意宇郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0863 凡諸山野所在草木、〈◯中略〉薇(ワラビ)、

〔萬葉集〕

〈八/春雜歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0863 志賀皇子懽御歌一首石激(イハバシル)、垂見之上乃(タルミノウヘノ)、左和良妣乃(サワラビノ)、毛要出春爾(モエイヅルハルニ)、成來鴨(ナリニケルカモ)、

〔古今和歌六帖〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0863 わらびみよし野の山の霞をけさみればわらびのもゆる煙なりけり

〔古今著聞集〕

〈十二/http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000650f42.gif 盜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0863 花山院の粟田口殿の山のわらびを、あまりに人のぬすみければ、こもり縁淨法師よみ侍ける、 山守のひましなければかきわらびぬす人にこそいまはまかすれ

〔古今著聞集〕

〈十八/飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0863 別當入道北しら川にすみ侍ける比、山のわらびをおりて、相國の許へつかはせり、返事に、 思ひやる二木の松の下わらびおりてきつらんみねぞしらるヽ

〔兼好法師集〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0864 ほりかはのおほいまうちきみ〈◯源基具〉を、いはくらの山莊におさめたてまつりにし又の春、そのわたりのわらびをとりて、雨ふる日申つかはし侍し、さわらびのもゆる山邊を來てみればきえしけぶりの跡ぞかなしき

貫衆

〔本草和名〕

〈十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0864 貫衆、〈仁諝音古亂反〉一名貫節、一名貫渠、一名百頭、一名虎卷、一名扁苻、〈仁諝音捕典反〉一名伯http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000390.gif 、〈楊音薄形反〉一名藥藻、〈仁諝音藥〉一名草鵄頭、〈陶景注云、形似老鵄頭、故以名之、〉一名貫來、一名貫中、一名渠母、一名貫鐘、一名樂、一名黄鐘、〈已上六名出釋藥性〉一名頭實、〈出兼名苑〉一名貫草、〈出雜要決〉和名於爾和良比(○○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈二十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0864 貫衆 本草云、貫衆、〈和名於邇和良非〉

〔康頼本草〕

〈採藥時節〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0864 貫衆 〈味苦微〉〈寒有毒〉 〈和、和良比、又云於仁和良比、二月八月採根暴乾、〉

〔倭訓栞〕

〈後編十八/於〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0864 おにわらび 枕草紙に見ゆ、倭名抄に貫衆を訓ぜり、今熊わらび(○○○○)ともいへり、新撰字鏡に、殷http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f00006519c5.gif をおにわらび、土殷http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f00006519c5.gif をほしわらびによめるは、似たるをもて呼るなるべし、殷http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f00006519c5.gif は鍾乳の根、土殷http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f00006519c5.gif は土中に凝たる者也、

〔藥經太素〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0864 貫衆 微寒味苦白水ニ浸シテ剉焙、能散熱、主除寸白、殺三蟲癥、仍治金瘡痛、細末湯調、止鼻洪

〔枕草子〕

〈八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0864 名おそろしき物をにわらび

ムカデグサ

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十二/隰草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0864 地蜈蚣草名ニヨリテムカデグサニ充ツル説ハ穩ナラズ、ムカデグサ(○○○○○)ハ貫衆ノ一種ナリ、地蜈蚣草ハ紀州熊野山中ニ生ジ、土人ムカデラント呼ブモノコレニ近シ、ソノ草ハ樹皮ニ繁鋪シテ螺厴(マメゴケ)草ノ樹石ニ附著スルガ如シ、藤ハ螺厴草ヨリ粗シ、葉ハ佛甲草葉ノ如クニシテ狹小、質厚クシテ微シ彎リ互生ス、葉ハ深緑色、一葉ゴトニ一根ヲ生ジテ樹皮ニ粘ス、花實ハ蘭ニ類シテ極メテ小シ、此草 形ヨク蜈蚣ニ似タレドモ、味苦カラズ、故ニ的當ニ非ズ、

齒朶

〔下學集〕

〈下/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0865 齒朶(シダ/ヨハイノエタ)〈正月用之〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十三下/毒草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0865 格注草 詳ナラズシダニ充ルハ穩ナラズ、シダハ大小二種アリ、單ニシダト云時ハ、オホシダ(○○○○)ニシテ、ホナガ(○○○)一名ウラジロ(○○○○)ト云、歳首ニ簷ニ掛ル者コレナリ、又名ヤマクサ、〈讃州〉スダ、〈筑後〉モロムキ、〈筑前〉ムロムキ、〈肥前〉モロモキ、〈雲州〉ヤマノクサ、〈播州〉ヘゴ、〈薩州、今ハ琉球ヨリ來ル、杪欏ヲ訛テヘゴト呼ブ、〉別ニ一種小シダ(○○○)ト云草ハ形小シ、松耳ノ下シキニシ、又立花ニ用ユルモノコレナリ、コレヲ長崎ニテハ小ヘゴト云、京ニテコシダト云、増、一種クモノスシダ(○○○○○○)ト云モノアリ、深山幽谷巖石間ニ生ズ、ソノ葉冬ヲ經テ枯レズ、春ヨリ夏ニ至テ、漸漸嫰葉ヲ生ズ、葉ノ形金星草ニ似テ嬌嫰ナリ、葉背ニ金星ヲ生ズ、コレ其花ナリ、葉ノ末細長クシテ絲ノ如シ、夏月葉ノ末ニ小塊ヲ結ビ垂レテ、地ニ著テ根ヲ下シテ苗ヲ生ズ、江州八日市ヨリ勢州桑名ヘ通行スル、八風越ト云處ニ多シ、草木性譜ニ圖スルトコロコレナリ、一種タマシダ(○○○○)ト云フモノアリ、葉ノ形アヲネカヅラ一名サルノシヨウガノ葉ニ能ク似タリ、ソノ根ニ正圓ノ塊アリ、形半夏ノ如シ、夏月別ニ葉蒂ノ本ヨリ細絲ヲ生ジテ嫰芽ヲ別チ生ズ、冬ヲ經テ枯レズ、然レドモ甚ダ寒氣ヲ恐ル、又フヂシダ(○○○○)ト云フモノアリ、鐵脚鳳尾草ノ類ナリ、形チ相似テ莖長ク小葉繁密ス、又葉ノ疏ナルモノモアリ、形状一ナラズ、コレモ夏月葉ノ末ニ小塊ヲ結ビ、地ニ著テ苗ヲ生ズ、冬ヲ經テ枯レズ、

〔草木育種〕

〈下/葉或實視べきもの〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0865 をにしだ(○○○○) 清俗に海蝦青と云と、未是非を詳にせず、二種あり、雄(を)しだは葉厚して短し、雌(め)しだは葉長し、黒ぼく土の陰地に栽、折々米泔水を潅てよし、總てしだの類は葉の背褐色になり、或星を生ず、此しだの實なり、此葉を採揉て、陰地のこけむしたる所へ振て置ば、生るものなり、

〔出雲風土記〕

〈意宇郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0866 砥神島〈(中略)有椎、松、葦、薺頭、蒿、都波、師太(○○)等草木也、〉

海金沙

〔多識編〕

〈二/隰草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0866 海金沙、今案須那久左(○○○○)、異名竹園荽、

〔重修本綱草目啓蒙〕

〈十二/隰草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0866 海金沙 スナグサ(○○○○) カニグサ(○○○○)〈大和本草ニ京師ノ名トス、然レドモ今ハコノ名ヲ呼バズ、〉 カンヅル(○○○○)〈同上〉 カニヅル(○○○○) カナヅル(○○○○) イトカヅラ(○○○○○)〈江州〉 タヽキグサ(○○○○○)〈同上〉 ハナカヅラ(○○○○○)〈西國〉 サミセンカヅラ(○○○○○○○)〈同上〉 ツルシノブ(○○○○○)〈江戸〉 サミセンヅル(○○○○○○)〈和州〉 リンキヤウグサ(○○○○○○○)〈用藥須知後編〉 カニコグサ(○○○○○)〈勢州〉原野ニ極テ多シ蔓草ナリ、三月宿根ヨリ苗ヲ生ズ、一二尺マデハ直立シテ草本ノ如シ、故ニ禹錫説初生作小株高一二尺ト云、今ノ本ニ初ノ字ヲ脱ス、宜ク補ベシ、苗長ジテ藤蔓細ク堅シ、長ク草木上ニ纏フ、其蔓ヲ採リ外皮ヲ剥、サレバ中ニ堅キ心アリ、黄色ニシテ光アリ、三弦ノ線ノ如シ、小兒戯ニ兩端ヲ引テ彈ズレバ聲アリ、故ニサミセンヅルト云、葉ハ井口邊草(トリノアシクサ)ノ葉ニ似テ深緑色、夏已後蔓ノ末ニ生ズル葉ハ甚細ニシテ、海州骨碎(シノブノ)補葉ニ似テ脚葉ノ形ト異ナリ、秋ニ至テ葉背ゴトニ、皆邊ニソヒテ高ク皺ミ、卷カヘシタル状ノ如ク見ユ、其中ニ金沙ヲ含ム、脚葉ニハ沙ナシ、其梢葉ヲ採リ紙ヲ襯キ、日乾スレバ細沙自ラ落テ紙上ニアリ、收メ貯ヘ藥用ニ入ル、

〔和漢三才圖會〕

〈九十八/石草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0866 蟹草(かにくさ) 〈俗稱〉按蟹草山谷石縫間有之、人家盥孟際栽之、高一尺許、莖細http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif 、葉細長匾如韭葉様而有又、表裏蒼、四時不凋、無花實

〔新撰字鏡〕

〈草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0866 薇〈http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001980b.gif 非反、菜垂水也、白薇、萬可古、〉 狗脊〈犬和良比(○○○○)、又云山和良比(○○○○)、〉

〔本草和名〕

〈八/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0866 狗脊、〈蘇敬注云、状如狗脊、〉一名百枝、一名強膂、一名快蓋、一名快䈥、〈已上本條〉一名狗青、一名萆薢、一名赤節、〈已上三名出釋藥性〉和名於爾和良比(○○○○○)、一名以奴和良比、

〔饅頭屋本節用集〕

〈世/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0866 前麻伊(ゼンマイ)

〔和爾雅〕

〈七/菜蔬〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0867 紫蕨(センマイ)〈http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001eac1.gif 同、爾雅謂之月爾、郭璞云、花繁曰爾紫蕨、拳曲繁盛、故有月爾之名、今按和俗以狗脊紫蕨者誤、〉

〔倭訓栞〕

〈後編十/世〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0867 ぜんまひ 薇をいふ、錢舞の義、嫰芽の錢の形して廻轉せるをいふなるべし、古書にぜんまひの名なし、倭名抄にも爾雅を引て、薇蕨をあはせてわらびと訓ぜり、〈◯中略〉いぬぜんまひは毛蕨なりといへり、又ひのきぜんまひあり、

〔本朝食鑑〕

〈三/柔滑〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0867 狗脊〈俗稱世牟麻伊〉集解、古未蔬用之者、近世多用之、出關西諸州者、圓肥長大而軟脆、味亦美、就中河内泉陽但播備諸州所産最佳、處處山野多生、春三四月生芽、如蕨而緑色、食之無滑涎柔脆甘美、或醃藏或晒乾、以貢獻之、野人亦采貨于四方、京市最販之者多矣、旣長如蕨莖、細葉似藤而小團、不尖有齒、而背有光、兩兩相對、其花至小、而隨葉相對、其根黒色如狗之脊骨、又有黄毛如狗形最少矣、

〔大和本草〕

〈五/菜蔬〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0867 紫萁(ゼンマイ) 本艸蕨集解、一種紫萁似蕨有花而味苦、謂之迷蕨、初生亦可食、又曰、拳曲繁盛、今案ゼイマヒニ花アリ、又其サキマガレリ、多ク繁生ス、ワラビニ似テ味苦ク、初生ノ時可食、是紫萁ナル事分明ナリ、其苗ワカキ時採テ乾シテ食フ、ヤハラカニシテ蕨ニマサレリ、ゼンマイノ根ノ水飛ノ粉モチニ製シテ味ヨシ、蕨粉ニマサレリ、國俗狗脊ヲゼンマイト訓ズアヤマレリ、狗脊ハ別物也、中夏ヨリ來ル、誠ニ狗ノ脊ニ似タリ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十九/柔滑〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0867 薇 ゼンマイ(○○○○) ゼンゴ(○○○)〈上總◯中略〉山足水旁ニ多ク生ズ、深山ニ生ズル者最大ナリ、春嫰芽ヲ採リ乾菜トス、コレヲ拳紫蕨〈朝鮮賦〉ト云、奧州三越ノ者、肥柔ニシテ上品トス、形拳曲シテ綿アリテコレヲ包ム、開ク時ハ紫藤(フヂノ)葉ノ如ニシテ厚ク尖ラズ、枝多シ、莖長サ三尺許、數莖一根ニ叢ル、別ニ花穗ヲ出ス、高サ葉ト均シ、多ク枝ヲ分チ、黄褐色ノ穗ヲ布ク、長サ一寸許リ、秋後苗枯ル、根ハ則枯レズ李時珍薇ヲ以テ、野豌豆、大巣菜ト爲ルハ是ナラズ、此二名ハ翹搖ニ移シ入ルベシ、

イノテ

〔大和本草〕

〈五/菜蔬〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0868 薇(イノテ/○) 召南草蟲詩云、陟彼南山、言采其薇、朱傳曰、薇似蕨而差大、有芒而味苦、山間人食之、謂之迷蕨、胡氏曰、疑即莊子所謂迷陽者、本草蒙筌曰、薇較蕨差大、味略苦、有芒亦潤大腸調中、尤消浮腫水、イノテハ深山幽谷ノ内ニアリ、ワラビニ似テ大也、毛アリ、生ナルハ味苦シ、ホシテ食スベシ、其初生野猪ノ手ニ似タリ、故ニイノテト云、紫萁(ゼンマイ)ハ一根ヨリ多ク生ズ、薇ハ然ラズ、似蕨而大ニ、有芒而味苦キコト、朱子詩傳ニ云ヘルガ如シ、ゼンマヒニ不同、三才圖繪ニイヘルモ同、只本草綱目ニ薇トイヘルハ別ノ物ナリ、イノテニハ非ズ、本草ニ紫萁ノ一名ヲ迷蕨ト云、朱子ノ詩傳ニ別名ヲ又迷蕨ト云ヘリ、然レバゼンマヒモイノテモ同迷蕨ト云ナルベシ、カヤウノ同名異物多シ、

木賊

〔倭名類聚抄〕

〈十五/膠漆具〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0868 木賊 辨色立成云、木賊、〈度久散〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈五/細工具〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0868 木賊出嘉祐本草云、木賊苗長尺許、叢生、毎根一http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000147.gif花葉、寸々有節色青、凌冬不凋、圖經云、獨莖苗如箭笴、李時珍曰、此草有節面糙澀、治木骨者、用之磋擦則光淨、猶木之賊也、按度久佐礪草也、

〔下學集〕

〈下/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0868 砥艸(トクサ)〈異名木賊〉

〔新猿樂記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0868 四郞君者、受領郞等刺史執鞭之圖也、〈◯中略〉得萬民追從、宅常擔集諸國土産、貯甚豐也、所謂〈◯中略〉信濃梨子、〈又木賊(○○)〉

〔和漢三才圖會〕

〈九十四本/濕草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0868 木賊 和名度久散〈◯中略〉按木賊磋物如砥、故稱砥草矣、多出http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000018041.gif

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十/隰草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0868 木賊 トクサ 一名銼草〈盛京通志〉山谷水邊ニ生ズ、人家庭際ニモ多ク栽ユ、苗ノ形麻黄ニ似テ大ナリ、徑二分餘箸ノ如シ、直立スルコト二三尺叢生ス、色深緑ニシテ束鍼道(ノギスヂ)アリ、糙澀ニシテ木骨ヲ磋スベシ、寸餘ゴトニ節アリ、夏 月莖梢ニ花ヲ發ス、筆頭菜ニ同ジ、コノ草莖ニ枝ナシ、若シ梢ヲ摘去ル時ハ、節ニ對シテ細枝ヲ生ズ、今梓人用ル所ノ者ハ、鹽湯ヲ以略煮過シテ、乾シタルモノ故、藥用ニ入ルヽニ堪ズ、生ナルヲ乾シテ用ユベシ、一種木ドクサハ、形長大ニシテ節ゴトニ枝ヲ生ズ、又レグマモ木ドクサト云、同名ナリ、

〔農業全書〕

〈十/藥種之類〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0869 木賊木賊(もくぞく)は藥にも用ゆ、細工につかふ時はとくさと云、庭にうへてもめづらし、正月に舊莖を悉く切取べし、新莖生じて美なり、本草曰、四月に取べし、又曰、取に時なし、うゆる地は、細かなる肥地の、やはらかなるにうへ、しば〳〵水をそヽげば、くきふとくのびやかにして、用ゆるにたへたり、

〔草木六部耕種法〕

〈八/需葉〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0869 木賊ハ砂眞土ノ少シク濕氣アル地ニ宜シ、地ノ堅ク實シタルニ宜カラズ、根ヲ分植ルニハ、秋分頃ヲ時トス、旣ニ活付タルノ後ハ、魚洗水米泔水等時々澆(カケ)ルトキハ、甚能ク肥太繁生スル者ナリ、毎年ノ早春舊葉ヲ悉ク刈採ベシ、莖葉新ニ生ジテ其色甚ダ美ナリ、

〔令義解〕

〈三/賦役〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0869 凡〈◯中略〉其調副物、〈◯註略〉正丁一人〈◯中略〉木賊六兩、

〔延喜式〕

〈十三/大舍人〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0869 木綿六斤、木賊十五兩、十二月五日申省、

〔延喜式〕

〈十五/内藏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0869 年中所造御梳三百六十六枚、〈◯註略〉所須〈◯中略〉木賊大三兩、柳筥四合、三月中旬具數申省、

〔延喜式〕

〈十七/内匠〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0869 御斗帳一具、〈◯中略〉洗刷料油四合、木賊四兩、

〔延喜式〕

〈二十三/民部〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0869 年料別貢雜物 信濃國〈(中略)木賊二圍、◯中略〉 右別貢雜物依前件

〔延喜式〕

〈三十四/木工〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0869 年料 伊豫砥五顆、木賊大二斤、磨床案等

〔延喜式〕

〈四十九/兵庫〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0869 凡御梓弓一張、〈◯中略〉木賊小一兩三分、〈錯弓料〉

〔枕草子〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0869 草はとくさといふ物は、風にふかれたらん音こそ、いかならんとおもひやられておかしけれ、

〔新勅撰和歌集〕

〈十九/雜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0870 題しらず     寂http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif 法師とくさかるきそのあさ衣袖ぬれてみがかぬ露も玉と置けり

〔新續古今和歌集〕

〈十九/誹諧歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0870 とくさに露のおきたるを見て     三條院女藏人左近しなののや木賊にをけるしら露はみがける玉とみゆるなりけり

〔雨窗閑話〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0870 觀世一代能の事〈并〉木賊刈の事百姓共申すは、我等事は信州のその原と申す所の土民に候、今日木賊刈の能興行有るよし承り及び、我等も木賊かる者共なれば、なぐさみながら見物して、〈◯中略〉心なき賤の我々どもヽ感心して、面白く侍る、去りながら只今遊ばされたる内、いで〳〵とくさからうよと申す所、鎌の御手、我等がしなれたるとは、聊替はりある故、申す事にて候といへば、觀世の曰く、それはいと面白き見咎めやうなり、いかにして汝等はかるかと尋ねければ、さればとくさはむかふへ一刀切りにかり申し候に、今遊ばされたるを拜見いたし候へば、同じ所を前の方へ二刀にて、御かりなされ候を見申して候、あれにてはとくさはかられ申すまじく候と云ひければ、〈◯下略〉

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0870 信濃 曾原木賊

土筆

〔伊呂波字類抄〕

〈都/殖物附殖物具〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0870 土筆〈ツク〳〵シ〉

〔運歩色葉集〕

〈津〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0870 土筆(ツク〴〵シ)

〔易林本節用集〕

〈津/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0870 天花菜(ツク〴〵シ) 土筆(同)

〔書言字考節用集〕

〈六/生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0870 天花菜(ツク〴〵シ) 土筆(同) 天花菜(フデツバナ)〈又云土筆〉

〔藻鹽草〕

〈八/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0870 土筆筆つ花、〈異名也、春のやけ野にと云と云々、〉つく〴〵ともよめり、〈かた山のしづがこもりに生にけりすぎなまじりのつく〴〵しかな、 さほひめのふでかとぞみるつく〴〵し雪かき分る春のけしきは、〉

〔倭訓栞〕

〈後編十二/都〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0871 つく〳〵し 筆頭菜をいへり、東國につくしともいふ、作州にははふしといへり、突出の意也、 片山のしづがこもりに生にけり杉菜交りのつく〳〵しかもすぎなは杉菜也、接續草をいふ、こもりはこもりたる所をいふなるべし、杉菜の花也、土筆は和名也、西土に土筆と云は燒筆也、爲家卿、 さほ姫の筆かとぞ見るつく〳〵し雪かき分る春の景色を

〔海人藻芥〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0871 内裏仙洞ニハ、一切ノ食物ニ異名ヲ付テ被召事也、一向不存知者、當坐ニ迷惑スベキ者哉、〈◯中略〉ツク〳〵シハツク、〈◯中略〉如此異名ヲ被付、近比ハ將軍家ニモ、女房達皆異名ヲ申スト云々、

〔多識編〕

〈二/隰草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0871 問荊(○○)、今案左宇知久、

〔本朝食鑑〕

〈三/柔滑〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0871 土筆〈訓津久津久志〉集解、土筆者、如毫拔土而生杉菜多處之地、又有杉菜並生者、有土筆凋盡、杉菜生其根、故或謂此與杉菜同根一種也、處處原野園塘多有、二三月http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001aa5a.gif 土而出、高四五寸、或六七寸、其筆頭初黄緑有細紋、老而紋作紫黒http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a620.gif、莖紫赤有節、節上著青皮、此亦老而作白皮、嫰時採收去節上薄皮而煮食、味甘淡可愛、旣老則頭禿莖http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif之、然菜之過時有筆頭者希、此野人所謂、野雞喜啄土筆頭之故也、南方諸州早生、駿陽地煖、十一二月及正月盛菜之、或冬日http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001aa5a.gif 土得之、倶野民競求誇珍、以貪價之故也、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十/隰草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0871 木賊〈◯中略〉問荊 スギナ(○○○) マツナ(○○○)〈筑前〉 トウナ(○○○)〈讃州〉 ツクノヲハ(○○○○○)〈勢州〉 ツギマツ(○○○○)〈土州〉 マツブキ(○○○○)〈播州〉 ツギグサ(○○○○)〈仙臺〉 一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b64f.gif 〈爾雅〉 牛脣〈同上〉 水http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b57b.gif 〈爾雅註〉 續斷〈通志略〉 相思草〈述異記〉 斷腸草 愁婦草 霜草 寮莎〈共ニ同上〉 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b64f.gif 菜〈毛詩集解〉 水舄〈經傳釋文〉 水邊沙地ニ多ク叢生ス、春舊根ヨリ先ヅ花ヲ生ズ、莖高數寸梢ニ花アリ、筆頭ノ形ノ如シ、故ニ筆頭菜ト名ク、慶陽府志ニ見タリ、花ノ名ヲフデツグサ、〈古歌〉フデツバナ〈同上〉ト云、今ハツクヅクシト云、ツクシ、〈東國〉ホウシコ、〈豫州〉ホウシ、〈雲州〉ツク〳〵ボウシ、〈和州〉ホシコ、〈讃州〉嫰時二三寸ナルヲ早春食用ニス、今ハ冬ノ中ヨリ出ス、花終テ葉出ヅ、是スギナ也、形イヌドクサニ似テ細ク短クシテ八九寸、節ゴトニ細枝簇生ス、是モ嫰ナルトキ食ベシ、此根黒色土ニ入ルコト甚深クシテ、本根ハ堀リ得ガタシ、

〔源氏物語〕

〈四十八/早蕨〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0872 あざりのもとより、年あらたまりては、なにことかおはしますらん、御いのりはたゆみなくつかうまつり侍り、今はひと所の御ことをなん、やすからずねんじきこえさするなど聞えて、わらびつく〴〵し(○○○○○)おかしきこにいれて、これはわらはべのくやうじて侍る、はつほ成とて奉れり、

〔夫木和歌抄〕

〈二十八/土筆〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0872 貞應三年百首草     民部卿爲家さほひめのふでかとぞみるつく〴〵し雪かきわくる春のけしきは

〔宣胤卿記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0872 文明十二年二月十三日甲子、橋本羽林相伴、行河原土筆、〈◯中略〉今日於河東荊、指東北堀上、橋本羽林來、夕喰土筆賞翫之

〔殿中申次記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0872 正月八日一土筆(同◯永正十三) 一折〈◯中略〉 若王子〈例年進上之〉

〔藝備國郡志〕

〈上/安藝土産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0872 大芝土筆 中華書未其名、其形似筆故名之、春末生矣、湯燖之合醬食、又作羹可也、大芝屬佐東郡

石松

〔倭名類聚抄〕

〈二十/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0872 蘿 唐韻云、蘿〈魯何反、日本http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e292.gif 私記云、蘿、比加介(○○○)、〉女蘿也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0872 蘿見神代紀上、訓注云、蘿此云比舸礙、古語拾遺、蘿葛、比可氣、齋宮式作日蔭、按、是草可鬘翳日影故云日蔭、〈◯中略〉本草和名云、松蘿、一名女蘿、本條、一名蔦蘿、一名蔓蘿、一名蔓女 蘿、出雜要訣、則知女蘿之名、本草所載、蔦蘿以下三名出雜要訣也、此女蘿上恐脱蔓字、或源君引本草二名、誤爲雜要訣也、別録、松蘿生熊耳山川谷松樹上、陶注、松蘿多生雜樹上、而以松上者眞、小雅頍辨正義引陸氏義疏云、松蘿自蔓松上、生枝正青、萬豆乃古介、依輔仁、又見元輔歌、按萬豆乃古介、謂松苔也、又六帖歌謂萬都乃岐乃古介、躬恒歌謂之萬都爾加々禮留古介、本草和名無佐留乎加世之名、按乎加世麻桛也、以綰之麻縷麻桛今俗亦有加世絲之名、是物在深山、其状似麻桛、故云猿麻桛也、桛訓加世比、古今集物名有左賀利古計、即此物、故日本紀纂疏云、蘿謂垂苔也、或名幾都禰乃乎賀世、今周防俗呼佐留乃乎賀世、南部俗呼佐留加世

〔圓珠庵雜記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0873 こけをひかげといへど、なべてみないふにはあらず、ひかげをまたかげともいへり、萬葉にみえたり、眞淵(http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f00000b2010.gif 頭書http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f00000b2011.gif )云、ひかげは深き山などのきにかヽれる、猿をがせてふものなり、萬葉に松のこけとよみしもこの事なるべし、さるを契沖は磐木の下の地などに、長くはふ苔のあるを、それなりと思へるよし、あるものに書きたり、そは誤なり、和名抄、祭祈具、蘿蔓〈和語云、比加介加都良、〉同苔類、蘿〈日本http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e292.gif 私記云、蘿比加介、〉女蘿也、松蘿一名女蘿、〈和名萬豆の古介、一云、佐流乎加世、〉宣長云、萬葉十四に、夜麻可都良、加氣麻之波爾母、衣可多伎可氣乎、これに加氣とよめるもひかげなり、二に山蘰影爾所見乍とあるも、山かづらを枕言として、影はひかげの意につヾけたるを、この十四の歌にて知るべし、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0873 石松(○○) キツネノヲガセ(○○○○○○○)〈新校正〉 ヒカゲノカヅラ(○○○○○○○) カミダスキ(○○○○○) サガリゴケ(○○○○○)〈新古今榮雅抄〉 ヒカゲグサ(○○○○○)〈同上〉 ヤマカヅラ(○○○○○)〈共ニ同上〉 キツネノタスキ(○○○○○○○)〈但州〉 ヤマウバノタスキ(○○○○○○○○)〈豫州〉 シヽノネバ(○○○○○)〈土州〉 キツネノケサ(○○○○○○)〈豐州〉 ハイタロ(○○○○)〈越前〉 サルヲガセ(○○○○○) テングノタスキ(○○○○○○○)〈江戸〉 山中地ニハヒテ生ズ、其蔓長サ五七尺、枝多ク分ル、葉ハ土馬騣ニ似テ黄緑色ナリ、四月枝ノ梢ゴトニ穗ヲ生ズ玉柏ニ異ナラズ、

玉柏

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0874 玉柏 マンネングサ(○○○○○○)〈新校正〉 日光ノマンネングサ(○○○○○○○○○) マンネンスギ(○○○○○○)〈花戸〉 ビロウドスギ(○○○○○○)〈同上〉即次ノ條ノ石松(ヒカゲノカツラ)ノ草本ナル者ナリ、深山幽谷ニ生ズ、一莖直上ス、高サ五七寸、上ニ枝ヲ多ク分チ、土馬騣ノ如キ細葉多ク著テ石松ニ異ナラズ、夏已後枝頂ニ穗ヲ生ズ、長サ一寸許、濶サ三分許、周圍細鬚アリテ、葉ノ形ニ異ナラズ、黄白色ソノ苗冬ヲ經テ枯レズ、故ニ千年柏萬年松ノ名アリ、又別ニ一種高野ノマンネングサ(○○○○○○○○○)ト呼ブ者アリ、苔ノ類ナリ、根ハ蔓ニシテ長ク地上ニ延ク、處處ニ莖立テ、地衣(チゴケ)ノ如キ細葉簇生ス、深緑色ナリ、採リ貯ヘ久シクシテ乾キタル者水ニ浸セバ、便チ緑ニ反リ生ノ如シ、是物理小識ノ千年松ナリ、増、衡嶽志曰、萬年松出祝融峯縣崖上、本草類也、高者三四寸許、凌冬不凋、連根拔之收巾笥中、歴數年、取而植之、蒼翠如故、又拔收之、再經歳月復植、亦復如是、海内名勝志云、蒙自山中仙草、葉圓枝細、採其葉之一二年、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b6be.gif泉井或呵之、復鮮如故、此亦大和山萬年松之屬也、一種カサゴケ(○○○○)ト呼ブモノアリ、莖細クシテ高サ僅ニ二寸許、一莖直上シテ枝ナク、頂ニ葉ヲ生ジ傘ノ状ヲナス、徑リ一寸餘、ソノ色http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001735f.gif 緑色ニシテ、湯ヲ澆タルガ如シ、深山幽谷石苔中ニ混ジ生ズ、

松葉蘭

〔草木育種〕

〈下/葉或實視べきもの〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0874 松葉蘭 中山傳信録の松蘭竹蘭の類なるべし、九州伊豆安房等の高山岩石の間に生ず、石を割て是を採也、植る盆の水拔の穴を大くあけ、陶器の闕を伏へごを刻て入、或ハ椶櫚の毛を入、其上へ山の黄土(あかつち)の塊を入て、山の樹の根などを掘たる赤土へ、へごを粗く刻てまぜ植てよし、常に北陰(ひかげ)に置、北風をよく通し、折々米泔水を澆べし、霖雨の節ハ内へ取入べし、冬ハ土藏へ入るなり、

〔草木六部耕種法〕

〈十/需花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0875 松葉蘭ハ琉球國ヨリ多ク舶來ス、又薩摩、大隅、伊豆、安房等ノ海岸ニモ稀ニハ有リ、八丈島等ニハ殊ニ多シ、凡ソ此種類ハ甚ダ寒氣ニ傷ム者ナレドモ、日光ヲ忌ミ北風ヲ好ム、故ニ夏ハ陰地ノ北風能ク透ル處ニ置テ、薄キ盛養水或ハ米泔水ヲ時々澆ギテ霖雨ヲ避ケ、九月下旬ヨリ三月マデノ間ハ、閉藏シテ霜ト寒風トヲ嚴ク防グヲ良トス、

卷柏

〔倭名類聚抄〕

〈二十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0875 卷柏 本草云、卷柏、〈和名伊波久美(○○○○)、一云、伊波古介(○○○○)、〉

〔東雅〕

〈十五/草卉〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0875 卷柏イハグミ 倭名抄に、卷柏イハグミ、一にイハゴケといひ、石韋イハノカハ、一にイハグミといふと見えたり、これ二物にして、亦同じくイハグミの名あるなり、イハグミの義不詳、イハゴケとは石苔也、今俗にイハヒバといふ是也、イハノカハとは即石韋の字の訓をもて呼ぶ也、今俗にイハガシハとも、ヒトツバともいふ、是也、〈ヒバといひ、カシハといふ義下に註す、〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0875 卷柏 イハクミ(○○○○)〈和名抄〉 イハゴケ(○○○○)〈同上〉 イハヒバ(○○○○)〈京〉 イハマツ(○○○○)〈讃州〉 コケマツ(○○○○)〈筑前〉 テングノモトヾリ(○○○○○○○○)〈秩父〉 クサヒバ(○○○○) 一名、長生草〈秘傳花鏡〉 萬年松〈同下〉 蕨臣〈藥譜〉 不死草〈正字通〉 陸苔〈同上〉 苔松〈廣東新語〉 石卷柏〈本事方〉 生卷柏〈天台山方外志〉深山ニ生ズ、採テ假山ニ栽ユ、年久シキ者ハ幹フトク、高サ一二尺、葉繁密、形扁柏(ヒノキ)ニ似テ薄ク勁シ、冬ヲ經テ枯レズ、乾ク時ハ葉卷屈シテ鷄ノ足ノ如シ、潤ヘバ開テモトノ如シ、其葉短クシテツマリタルハ、トウゲヒバ(○○○○○)ト云フ、葉ノ長キハスソノヒバ(○○○○○)ト云フ、一種淺山ニ生ジ、只一葉ノミナルヲヒメヒバ(○○○○)ト云フ、一名メヒバ、〈勢州〉カタヒバ、〈同上〉是紹興本草ノ兗州卷柏ナリ、

地柏

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/苔〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0875 卷柏附録、地柏アタゴヽケ(○○○○○)、ヤウラクゴケ(○○○○○○)、深山陰地ニ自生アリ、移シテ家庭ニ栽レバ、盛ニ蔓延シテ地ヲ掩フ、蔓ハ細クシテ絲ノ如ク、葉ハ扁柏ニ似テ薄シ、冬ハ色黄赤ニ變ジテ枯レズ、


Last-modified: 2019-03-15 (金) 09:49:00 (390d)