http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1304 八月十五夜ノ月ヲ賞スルコトハ、支那人ニ傚ヒシモノニテ、寛平延喜ノ頃ヨリ、之ヲ以テ高興ト爲シ、宴ヲ設ケ詩歌ヲ賦スルコト、漸ク盛ニシテ、後世ニ至ルマデ衰ヘズ、而シテ民間ニテハ、芋、團子等ヲ月ニ供シ、又互ニ贈遺スルヲ以テ例トス、
九月十三夜ノ月ヲ賞スルコトハ、醍醐天皇ノ時ヨリ起リ、爾後八月十五夜ト相對シ、並ニ此夜ヲ稱シ、以テ明月ノ夜トス、

名稱

〔書言字考節用集〕

〈二時候〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1304 月見(ツキミ) 名月〈八月望夜〉

〔倭訓栞〕

〈前編十六都〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1304 つきみ 中秋十五夜は秋の最中なれば、至て清明なるをもて、倭漢ともに賞し來れり、

〔月令廣義〕

〈十五八月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1304 十五日、中秋節、〈秋九十日、是日爲中秋、是夕月中天是正、乃太陰朝元、宜夜燒一レ香、〉三五夕、〈三五十五夜〉

〔日本歳時記〕

〈五八月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1304 十五日、中秋といふ、秋九十日の最中なる故なり、〈◯中略〉今宵は秋の最中にて、殊に月を賞する故に、月夕とも、三五夕ともいふ、歌人騷客の晴を期する夕なり、林羅山野槌にいはく、今夜月を玩ぶ事、大かた李唐の世より盛にして、詩人文人其詠おほしといへども、古樂府に孀娥怨の曲あり、漢人の中秋の月なきによりて、此曲を作るとある時は、漢の世よりもある事にや、又

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1305 もろこしには、今宵餅を製して、いろ〳〵の状に作り、月餅と號して相をくり、又月餅、西瓜等を食して、看月會をするよし、月令廣義にみへたり、

〔東京夢華録〕

〈八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1305 中秋 中秋節前、諸店皆賣新酒、重新結絡門面綵樓、花頭畫竿、酔仙錦旆、市人爭飮、至午未間、家々無酒、拽下望子、是時螯蟹新出、石榴榲勃梨棗栗孛萄弄色棖橘皆新上市、中秋夜、貴家結飾臺榭、民間爭占酒樓月、絲管鼎沸、近内庭居民夜深遙聞笙竿之聲、宛若雲外、閭里兒童連宵嬉戲、夜市駢闐至於通曉

〔徒然草〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1305 八月十五日、九月十三日は、婁宿也、此宿清明なる故に、月をもてあそぶに良夜とす、

〔古今要覽稿〕

〈歳時〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1305 八月十五夜 八月十五夜の月を賞すること、島田忠臣の集にはじめて見えたり、その年記さだかならずといへども、齊衡三年詠史百四十六首を奉り、貞觀元年調三百六十首を奉れるよし、家集の自注に見えたれば、その時代大概しられたり、そののち貞觀六年八月十五日、菅原是善卿後漢書の竟宴せし時、聖廟の作られたる序に、滿月光暉咸陳中庭之玉帛とあれば、その宴夜に及びしこともしらる、〈本朝文粹〉また聖廟の八月十五夜、望月亭にて桂生三五夕といふことを賦させ給ひし時は、紀納言詩の序をかけり、〈同上〉大内にて賞し給ひしは、醍醐天皇の延喜九年なり、〈同上〉仙洞にて賞し給ひしは、寛平法皇の亭子院にて行はれし時、菅原淳茂の詩序かけるや〈同上〉はじめならん、歌は貫之、躬恒、素性法師などのをはじめともいふべきにや、〈貫之集、古今六帖、〉林道春は、古樂府の孀娥怨を引て、西土にては、漢の代よりもありしにやといひて、されど盛なりしは、李唐の代よりなりと〈野槌〉いへり、

〔雲州消息〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1305 明月之得名者八月十五夜也、雖其名、晴又希有也、今夜銀漢卷翳、金波鋪影、可千載一遇歟、難得易失時也、何可默止乎、褰箔登樓之興、聊欲前蹤、詩客四五人、伶人兩三輩、不期而來會、是皆當世之好士也、只依尊下之光臨、豫空座右耳、抑恩慶之甚也、忝廻花軒、素懷可足、下若酒、上林

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1306 菓、聊以儲之、乞莫下劣、謹言、
  八月十五日       兵庫頭
    謹上源兵衞佐殿

朝廷十五夜

〔故實拾要〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1306 八月十五日御獻 是名月ノ御獻也、初獻、二獻ハ、自男居之、又供禮酒

〔後水尾院當時年中行事〕

〈上八月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1306 十五日、名月御さかづき、つねの御所にて參る、まづいも、次に茄子を供ず、なすびをとらせまし〳〵て、萩のはしにて穴をあけ、穴のうちを三反はしをとほされて、御手にもたる、御さかづき參りてのち、御前のをてつす、せいりやうでんのひさしに、かまへたる御座にて月を御覽あり、彼の茄子の穴より御覽じて御願あり、これらも專世俗に流布の事也、禁中には、いつの比よりはじまれることにか、

〔禁中年中行事〕

〈八月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1306 十五日 名月和歌御會 芋ノ獻 甘酒 伊豫殿局ヨリ調進

〔禁中近代年中行事〕

〈八月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1306 十五日、名月おこん、 九月十三日同事 初獻、さといも三計、かわらけに高盛、直に三方におく、常の御はしそへ、
二獻、小きなすび三計、かわらけに高盛にして、三方一ツに二ツを置、御はし、はぎのはし、なすびにはぎの御はしにて丸くあなをあけ、月の御覽のよしなり、
三獻、あまざけ、伊豫の局よりあがる、荷桶に入上ル、常のあまざけをひきこしてなり、御まへ〈江〉はてうしに入出ル、

〔光臺一覽〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1306 十五夜〈◯八月〉良辰とて、和漢兩朝いまもたへせぬ名におふて、天氣に任せ、詩歌管絃堂上御近臣を被召、内々之酒饌を被下、上達部も後免を蒙り、新月の情をのべ、風雅を口に嘯き、いと面しろき嘉會也、

〔日本紀略〕

〈一醍醐〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1306 延喜九年閏八月十五日、夜、太上法皇〈◯宇多〉召文人於亭子院、令月影浮秋池之詩

〔本朝文粹〕

〈八詩〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1307 八月十五夜、侍亭子院同賦月影滿秋池、應太上法皇〈◯宇多〉製、    菅淳茂
洛陽城内、有一離宮、竹樹泉石如仙洞爾、蓋世之所謂亭子院焉、太上法皇雖三密之道萬乘之家、猶未此地風流、以助彼岸寂靜、故今商飈半暮之秋、漢月正圓之夕、阿耨池淨、摩尼光浮、懸鸞鏡於波心、似楊州之鑄出、浸冰綃於潭面、如泉室之織成、况珠露萬點、倚荷葉而助桂花、玉沙數重、穿魚衣而宿蟾影、水月之相應、空觀自生、心目之不離、煩慮即滅、宜哉我后、偏命斯遊、既而其屬事者千萬種、其應製者八九人、俗物去而無來、囂塵絶而不起、詠歌一曲、奏水閣之秋聲、盃酌數行、促華池之夜宴、嗟呼天氣爽也、地形勝也、物色幽也、人心切也、筆不毛擧、聊記口談爾謹序、

〔新勅撰和歌集〕

〈四秋〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1307 延喜御時、八月十五夜月宴歌、   源公忠朝臣
いにしへもあらじとぞ思ふ秋の夜の月のためしはこよひなりけり

〔中右記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1307 寛治八年〈◯嘉保元年〉八月十四日、明夕爲御覽月、可乘船興、著布衣參入之由、從鳥羽殿〈◯白河上皇〉有召、 十五日、午時許候大納言殿御車後、參入鳥羽殿、〈◯中略〉殿上人船、頭中將國信朝臣四十人許、皆布衣、此外御隨身、副小船前行、先出御船御遊、藤大納言拍子帥大納言、〈琵琶〉左大將、〈筝〉宰相中將、〈笛〉宗忠、〈笙〉有賢、〈和琴〉皇大后宮權大夫并政長朝臣付歌、先雙調、紀伊州、席田、鳥破急、平調、大平樂破、伊勢海、廻急、五常樂急、帥大納言朗詠、盤渉調、秋風樂三帖、青海波、蘇香急、各及數反、于時雲收天末、月明池上、絲竹之調興入幽玄、〈◯下略〉

〔御湯殿の上の日記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1307 慶長八年八月十五日はるヽ、めい月の御さか月一こん參る、せいりやうでんへならしまして、月おがませらるヽ、女ゐんの御所より、まき、御てうし參る、

〔榮花物語〕

〈一月宴〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1307 康保三年八月十五夜、月宴せさせ給はんとて、清凉殿の御前に、みなかたわかちて前栽うゑさせたまふ、〈◯中略〉御遊ありて上達部おほくまゐり給て、御祿さま〴〵なり、

〔日本紀略〕

〈四村上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1307 康保三年閏八月十五日丙子、御座前兩壺分方、有前栽合

幕府十五夜

〔年中恒例記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1308 八月十五日 明月御祝參於内儀也、茄子きこしめさるヽ、枝大豆、柿、栗、瓜、茄、美女調進之、 御いも、御かゆ、茄、大草調進之

〔江戸鹿子〕

〈二御城之年中行事〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1308 八月 名月月見之御祝 金かわらけに而さヽげ奉る

臣庶十五夜

〔田氏家集〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1308 八月十五夜宴
夜明如晝宴嘉賓、老兎寒蟾助主人、欲露晞天向曙、未曾投轄滯銀輪
  八月十五夜惜
月好偏憐是夜深、三更到曉可陰、爭教天柱當西崎、礙滯明光肯沈

〔田氏家集〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1308 八月十五夜宴、各言志探一字亭、
月情多暗數蓂、逐光移座最西亭、若令他夕如今夜、不惜明朝一莢零、
 ◯按ズルニ、田氏家集八月十五夜宴月ノ詩ノ下ニ、晩秋陪右丞相開府飮、于時美作獻白鹿、仍命賦四韻ト題セル詩アリ、美作國ヨリ白鹿ヲ獻ゼシハ、貞觀四年ノ事ニシテ、三代實録九月二十七日ノ條ニ見エタリ、以テ此詩ノ貞觀四年ニ係レルヲ知ルベシ、

〔本朝文粹〕

〈九論文〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1308 八月十五夜、嚴閣尚書授後漢書畢各詠史得黄憲、 菅贈大相國〈◯菅原道眞、中略、〉
貞觀六年甲申歳八月十五夜、訓説雲披、童蒙霧散、〈◯中略〉於是赤帝之史、倚席於白帝之秋、三千之徒、式宴于三五之日、嚴凉景氣、方酔上界之烟霞、滿月光暉、咸陣中庭之玉帛、數盃快飮、一曲高吟、不必趨瑤池、不必臨梓澤

〔本朝文粹〕

〈八詩序〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1308 八月十五夜、同賦池秋月明、〈并序可注〉   善相公〈◯三善清行〉
八月十五夜者、秋之仲、月之望也、風驚蕭索、蒼天卷其群翳、雲收蒙朧、碧落晴而踈http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001cf91.gif 、今夜初更銷暗、團月褰光、清景外徹、照天地於冰壺、浮彩傍散、變都城於玉府、長安十二衢、皆蹈萬項之霜、高宴千萬處、各得一家之月、斯乃良夜之美、足愛玩者也、况乎秋水澄徹、夜池平鋪、對絳宵之明月、倒素光而映波、玉鏡

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1309景、與止水而可鑑、金波凝色、混細浪而難分、于時詩賦之客、筆硯得時、遇幽閑之月夜、取縱容於池亭、周遊忘歸、似行瑤池之曲、風情漸高、疑銀河之中、所以爲佳會也、與夫魏夜徘徊、開西園之敬愛、晋月玲瓏、催北堂之賞玩、論其風流、足在昔也、嗟呼人之一遇、時不再來、盍命以篇章其中情爾、

〔本朝文粹〕

〈八詩序〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1309 八月十五夜、陪菅師匠望月亭、同賦桂生三五夕、      紀納言〈◯序略〉

〔古今著聞集〕

〈十九草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1309 經信卿太宰帥に任じて下向の時、八月十五夜に筑前國筵田驛につきたりけるに、天はれ月あきらかなるに、館の前に大きなる槻ありけり、枝葉ひろくさしおほひて、月をへだてければ、人をめしあつめて、たちまちに其木を切はらはせて、月にむかひて、夜もすがら琵琶をかきならして、心をすまして天あけぬれば、たヽれにけり、かヽるすき人も、今はなき世なりけり、

〔今昔物語〕

〈二十四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1309 大江朝綱家尼直詩讀語第二十七
今昔、村上天皇ノ御代ニ、大江朝綱ト云博士アリケリ、〈◯中略〉其朝綱ガ家ハ、二條ト京極トニナム有ケレバ、東ノ川原遙ニ見エ渡テ、月http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001bb7f.gif ク見エケリ、而ルニ朝綱失テ後、數ノ年ヲ經テ、八月十五夜ノ月極ク明カリケルニ、文章ヲ好ム輩、十餘人伴ヒテ月ヲ翫バムガ爲ニ、去來故朝綱ノ二條ノ家ニ行カムト云テ、其家ニ行ニケリ、其家ヲ見レバ、舊ク荒テ人氣无シ、屋共モ皆倒傾テ、只煙屋許殘タルニ、此人々壞タル縁ニ居並テ、月ヲ興ジテ詩句ヲ詠ジケルニ、踏沙被練立清秋、月上長安百尺樓、ト云詩ハ、昔シ唐ニ云ケル人、八月十五夜ニ、月ヲ翫テ作レル詩也、其ヲ此人々詠ジケルニ、〈◯下略〉

〔江戸鹿子〕

〈二年中行事〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1309 八月 同夜〈◯十五日〉月見 江府之諸人、三ツまたへ舟に而行、花火立、

〔俳諧歳時記〕

〈八月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1309 名月〈名高き月、けふの月、今宵の月、十五夜、三五夜、望月、月見、中秋、十五夜の月を玩ぶこと、中ごろより和漢みな然り、民間今日http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001c84b.gif を製し、同器に芋と枝豆とを盛り、并に神酒尾花を月に供し、或は互に相贈る、今の清人の説に、八月十五夜雨ふれば、來年元日快晴也、若十五夜晴るヽときは、元日雨ありといへるよし、或物に記したり、兩三年これをこヽろみるに、多くは違はず、〉 新月〈三五夜中新月色、白樂天詩、〉端正月〈事文類聚、今の人八月十五夜を以、良夜とするは誤也、書言古事に、良夜は深更なりとあり、しからば秋の夜にも〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1310 〈限べからず、〉芋名月〈俗間、今日必芋と團子とを食ふ、故に芋名月の名あり、〉

〔東都歳事記〕

〈三八月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1310 十五日 看月諸所賑へり〈家々團子、造酒、すヽきの花等月に供す、清光のくまなき、うかれ船を浮べて、月見をなす輩多し、〉 今夜吉原の賑ひ大方ならず、廓中のならひとして、遊女より馴染の客へ杯を送る事、寶永の頃角山口の太夫香久山より始りけるとぞ、又待宵既望ともに賑へり、 元祿の頃迄は、良夜に三派の月見とて、船にて大川へ出たのしめる事あり、此夜に限り官のゆるしを得て、花火をともしけるとなり、享保の頃にいたりては、此事少かりしよし、江戸砂子拾遺にいへり、中古迄は麻布六本木芋洗坂に、青物屋ありて、八月十五夜の前に市立て、芋を商ふ事夥かりし故、芋あらひ坂とよびけるなり、近來は坂上に市立り、

〔浪花の風〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1310 月見には團子を製すること江戸と同じ、しかし汁烹にすることは稀なり、きなこ、又はあんを附て食ふ、芋を賞玩す、故に十五夜の月を賞して、芋名月といふ、

〔守貞漫稿〕

〈二十七〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1310 八月十五夜、賞月俗ニ月見ト云、
三都トモニ今夜月ニ團子ヲ供ス、然レドモ京坂ト江戸ト大同小異アリ、江戸ニテハ圖〈◯圖略、下同、〉ノ如ク、机上中央ニ三方ニ團子數々ヲ盛リ、又花瓶ニ必ラズ芒ヲ挟テ供之、京坂ニテハ芒及ビ諸花トモニ供セズ、手習師家ニ此机ヲ携ヘ行キ、此引出シ、筆、硯、紙、手本等ヲ納メ、京坂ノ如ク別ニ文庫ヲ携ヘズ、京坂ニテモ机上三方ニ團子ヲ盛リ供スコト、江戸ニ似タリト云ドモ、其團子ノ形、圖ノ如ク小芋ノ形チニ尖ラス也、然モ豆粉ニ砂糖ヲ加ヘ、是ヲ衣トシ、又醤油煮ノ小芋トトモニ、三方ニ盛ルコト各十二個、閏月アル年ニハ十三個ヲ盛ルヲ普通トス、江戸ノ俗、今日若他ニ行テ酒食ヲ饗サルヽ歟、或ハ宿スコトアレバ、必ラズ九月十三日ニモ再行テ今日ノ如ク宿ス歟、或ハ酒食ヲ饗サルヽコトトスル人アリ、不之ヲ片月見ト云テ忌ムコトトス、俗諺ノ甚シキ也、片付身ト云コトヲ忌ナルベシ、此故ニ大略今日ハ他家ニ宿ラザルコトトス、

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1311     ◯

九月十三夜

〔書言字考節用集〕

〈二時候〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1311 後月宴(ノチノツキミ)〈九月十三夜〉

〔和漢三才圖會〕

〈四時候〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1311 九月十三夜 按、俗八月十五夜煮芋食、稱芋名月、今夜煮莢豆食、稱豆名月

〔古今要覽稿〕

〈歳時〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1311 九月十三夜 九月十三夜を賞することは、延喜十九年内裏にて、月の宴せさせ給ひしぞ始なるべき、〈躬恒集にみえたり、中右記には、寛平法皇の仰より、明月の夜とすとみえたり、〉然るを菅家の詩作よりといひ、又は天暦七年八月十五夜、先帝の御國忌をさけられしより、はじまるといへるは、みなあやまりなり、

〔躬恒集〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1311 清凉殿の南のつまに、みかは水ながれいでたり、その前栽にさヽら河あり、延喜十九年九月十三日に賀せしめ給ふ、題に月にのりてさヽら水をもてあそぶ、詩歌心にまかす、
もヽ敷の大宮ながら八十島を見るこヽちする秋のよのつき〈◯又見拾遺和歌集十七

〔古今要覽稿〕

〈歳時〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1311 弘賢曰、これ九月十三夜、賞月のはじめなるべし、これより前には所見なきにや、

〔中右記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1311 長承四年〈◯保延元年〉九月十三日、今夜雲淨月明、是寛平法皇、今夜明月無雙之由被仰出云々、仍我朝以九月十三夜明月之夜也、

〔光臺一覽〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1311 十三日、〈◯九月〉今夜は名殘の月とて眺賦せる事、異朝には例なし、和國にては後朱雀院いまだ潛龍の御時、樞要の公卿御發鬱之御爲にて、彼御所へ參上して御遊を催し、枝豆を供じて慰め奉る、其明の年御位に即玉ひしかば、御佳例と有て、明の年よりも九月十三夜の月をも、賞し詠させたまひける例とかや、

〔俳諧歳時記〕

〈九月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1311 十三夜 後の月、二夜の月、豆名月、栗名月、七十五代崇徳院保延元年九月十三日、今宵雲清く月明らか也、是むかし寛平法皇明月無雙のよし仰出さる、依て我朝九月十三夜を以

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1312 明月の夜とす、〈中右記〉今夜の月を翫ぶや、無題詩に載る所の藤原忠通公の詩、證とするに足れり、菅家の作の如き、配所に在て、たま〳〵九月十五日の月を詠じ給ひし也、後人妄りに五の字を以三となし、證とするものあり、或は兼好が婁宿の説の如き、又信とするに足らず、亦建仁寺三益和尚十三夜の詩の序に、延喜の御時始まると記せり、はたこよひの月は、唐山にも賞すると見えて、明の十二家詩に、鄭少谷、何大復が詩あり、本朝の俗、九月十三日を豆名月と稱し、又栗名月と名づく、是栗を以節物とし、或はhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001c84b.gif を製し、莢豆を烹てこれを食ふ、こヽをもて名づく、又俗間今宵必芋子を食ふ、その芋子外皮を除ずしてこれを烹る、この芋を呼て衣かつぎといふ、後の月は八月十五夜を前とし、九月十三夜を後とするの稱、二夜の月は、中秋、季秋、兩夜月を賞する故にいふ也、

〔隣女晤言〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1312 十三夜 九月十三夜は、婁宿にあたれるによりて晴明なるよし、つれ〴〵草に書たれどさにはあらず、たヾ何となく、寛平の帝、九月十三夜のこよなう晴明なりし年、興じさせ給ひて、仰られし事よりおこれり、〈◯中略〉勅撰に十三夜と出たるは、拾遺集がはじめなり、

〔隨意録〕

〈八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1312 兼好云、八月十五日、九月十三日、皆婁宿也、以此宿清明月以爲良夜、斯古人之所以未發歟、將有據焉歟、婁宿金氣與月之水氣相和、以特清明、此説頗似理矣、然仲秋之月、史傳論星宿者未之有一レ見焉、且賞九月十三夜者、獨我方之事、而基乎寛平法皇、然是其當時特以此夜清光可一レ愛也、謂其星宿者則未之有也、或資乎菅相公宰府詩、以爲十三夜之濫觴者、固不是也、

〔隨意録〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1312 我方賞九月十三夜、蓋初於寛平中、而其來久矣、而明十二家詩、鄭少谷、何大復、有九月十三夜詩、此必我方之事、傳以傚乎彼爾、

〔故實拾要〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1312 九月十三日御獻 是名月ノ御獻也、八月十五夜ノ如御獻

〔禁中年中行事〕

〈九月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1312 十三日 名月和歌御會 芋之獻 甘酒 伊豫殿ヨリ上ル

〔古今著聞集〕

〈四文學〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1312 東三條院關白太政大臣、〈◯藤原兼家〉九月十三夜の月に、東北院の念佛に參給へる

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1313 に、夜もうちふけて、世の中もしづかなるほどに、齊信民部卿をめして、今宵たヾにはいかヾやまん、朗詠有なんやと仰られければ、いとかしこまりて、しばし煩ふけしきなるを、人々耳をそばだてヽ、いかなる句をか詠ぜんずらんと待程に、極樂の尊を念ずる事一夜とうちいだしたりける、たぐひなくめでたかりけり、此句かきたる齊名、やがて御供にさぶらひけり、我句をしもさばかりの人の朗詠にせられたりける、いかばかり心の中のすヾしかりけん、此句は、勸學會の時、攝念山林を賦する序なり、
 念極樂之尊一夜、山月正圓、 先句曲之會三朝、洞花欲落、
これは三月十五夜の事なり、九月十三夜に詠ぜられける、いかにとおぼゆ、但念佛の義ばかりにとれるにや、古人の所作、仰而可信歟、

〔後拾遺和歌集〕

〈十五雜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1313 賀陽院におはしましける時、いしたて瀧おとしなどして、御らんじける頃、九月十三夜になりければ、   後冷泉院御製
岩まよりながるヽ水ははやけれどうつれる月の影ぞのどけき

〔本朝無題詩〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1313 九月十三夜翫月   法性寺入道殿下
閑窓寂々月相臨、從窮秋望叵禁、潘室昔蹤凌雪訪、蒋家舊徑蹈霜尋、十三夜影勝於古、數百年光不今、猶憑前軒首見、清明此夕價千金、
星河皎々月蒼々、從窮秋最斷膓、訪古無今夜影、經年豈忘此時光、洛中各領吾家雪、塞外定疑萬里霜、起倚前軒首立、金波朣朗足相望

〔源平盛衰記〕

〈三十三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1313 平氏九月十三夜歌讀事
九月〈◯壽永二年〉十三夜ニ成ヌ、今夜ハ名ヲ得タル月也、秋モ末成行バ、稻葉ヲ照ス電ノ、有カ無カモ定ナク、荻ノ上風身ニシミテ、萩ノ下露袖濡ス、海士ノ篷屋ニ立煙、雲井ニ昇面影、葦間ヲ分テ漕船ノ、

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1314 波路遥ニ幽也、十市ノ里ニ搗砧、旅寢ノ夢ヲ覺シケリ、ヨハリ行蟲音、吹シホル風ノ音、何事ニ付テモ、藻ニスム蟲ノ風情シテ、我カラ音ヲゾナカレケル、更行秋ノ哀サハ、何國モト云ナガラ、旅ノ空コソ悲ケレ、冷行月ニアクガレテ各心ヲ澄シツヽ、歌ヲヨミ連歌セラレケルニモ、都ノ戀シサアナガチ也、會紙ヲ勸メケルニ、寄月戀ト云題ニテ、薩摩守忠度、
 月ヲ見シコゾノコヨヒノ友ノミヤ都ニ我ヲ思ヒ出ラン〈◯中略〉各加様ニ思ツヾケ給ヒテモ、互ニ御目ヲ見合テ、直垂ノ袖ヲゾ絞ラレケル、

〔吾妻鏡〕

〈二十三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1314 建保六年九月十三日辛巳、明月夜、御所和歌御會也、一條羽林、李部已下好士七八輩、被其座

〔年中恒例記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1314 九月十三日 明月御祝參於内儀也、茄きこしめさるヽ、御祝調進儀、八月十五日同、

〔江戸鹿子〕

〈二年中行事〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1314 九月 同夜〈◯十三日〉 月見舟遊山

〔東都歳事記〕

〈三九月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1314 十三日 看月〈後の月宴といふ、衣被、〈かはむかぬいも〉栗、枝豆、すヽきの花等月に供ず、船中月見多し、〉

〔浪花の風〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1314 十三夜には團子を製することなし、うで豆一式を多く調へ置て、家内下女、下男迄に、多く是を食はしむ、故に十三夜の月を、市中にて豆名月といふ、


Last-modified: 2019-03-15 (金) 09:48:57 (387d)