〔倭名類聚抄〕

〈十六酒醴〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0137 肴 野王案、凡非穀而食、謂之肴、〈胡交反、字亦作餚、和名佐加奈、一云布久之毛乃、見本朝令、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈四藥酒〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0137 賓之初筵鄭箋云、凡非穀而食之曰肴、玄應音義云、國語飮而無肴、賈逵曰、肴葅也、凡非穀而食之曰肴、顧氏蓋引是等書也、説文肴啖也、〈○中略〉按古總謂食魚菜奈、佐加奈酒魚菜之義、即謂下酒物也、然則佐加奈亦肴之一端、非肴之專訓也、布久之毛乃、蓋服物之義、非穀而食、謂之夫久須、源氏物語帚木卷所謂極熱乃草藥乎服之氐是也、

〔類聚名義抄〕

〈八食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0137 餚〈通肴字、音爻、サカナ、和ケウ、〉

〔伊呂波字類抄〕

〈左飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0137 肴〈サカナ〉 餚 殽

〔下學集〕

〈下飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0137 肴(サカナ)〈與餚同字〉

〔平他字類抄〕

〈上飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0137 肴〈サカナカウ〉 蔌〈サカナ精進者也〉

〔易林本節用集〕

〈左食服〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0137 肴(サカナ)〈餚同〉

〔秋齋間語〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0137 眞菜(マナ)、麁菜(ソナ)といふ時、眞菜はまなとよみて魚也、故にまな板まな箸といふは、魚板、魚ばしなり、然るに精進物調ずるまな板の名はいかゞ、明月記などに、今日姫君御眞菜始なんどあるは、魚をまいりそめらるゝ事勿論なりとぞ、予をもへらく、すべて菜の字肉にもつかへばこそ、孔子をまつるを釋奠とも釋菜ともいへり、釋もそれ〳〵にときわけてつらぬる義、菜をつらねな らべたる心なり、扨魚をなといふ事、京のことばに鮓魚といふ、魚屋を魚屋といふ、酒の菜をさかなといふは、魚にはかぎらぬ事なるべし、菜いろ〳〵取まぜて煮たるを、むかしは合菜といひしとなん、淸少納言枕草紙に、たくみの物くふこそいとあやしけれ、〈○中略〉あわせを皆くひつればと云々、今はかゝる古語も絶たり、

〔倭訓栞〕

〈前編十佐〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0138 さかな 肴をよめり、下酒の物をいふ、酒魚の義なるべし、魚鳥に肴といひ、菜蔬に蔌といふ、山肴野蔌などいへり、廣韻には凡非穀而食者曰肴、或作餚、通作殽、と見えたれば、字義は必しも海味に限らざる也、禁中の式に三ツ肴すはりてといふ事見えたり、さかなをはさむを、唐山にて過菜といふ、魚舟に到て魚を買者、もしさかなといへば、拒んで與へず、肴は些少のものなれば、向來を祝すといへり、

〔古事記傳〕

〈十四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0138 魚を那と云は、饌に用る時の名なり、〈○中略〉さて菜も本は同言にて、魚にまれ、菜にまれ、飯に副て食物を凡て那と云なり、〈菜(ナ)と魚(ナ)とを別の言の如く思ふは、文字になづめる後のくせなり、今世にも菜を字音にて佐伊と云ときは、魚にもわたる如く、古那と云名は、魚にも菜にもわたれり、又肴(サカナ)の那も魚菜にわたれり、〉万葉十一〈四十二丁〉に朝魚夕菜(カサナユフナ)、これ朝も夕も那は一なるに、魚と菜と字を替て書るは、魚菜に渉る名なるが故なり、さて其那の中に、菜よりも魚をぱ殊に賞て美き物とする故に、稱て眞那とは云り、〈故麻那は魚に限りて、菜にわたらぬ名なり、今世に麻那箸、麻那板など云も、魚を料理(トヽノホ)る具に限れる名なり、〉

〔大上﨟御名之事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0138 女房ことば 一さかな こんとも 御さかなとも 一うほ 御まな

〔江家次第〕

〈一正月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0138御藥 次入御銚子餘分、次移入御酒盞餘分、給之於後取人、又入大土器 或此間給肴(○)於後取〈多給大根(○○)、元日人多精進之故歟、或給串刾(○○)、〉

〔天文日記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0138 天文五年正月十三日、從興正寺、佳例之飯之如形、祝儀點心候、〈添肴ハ〉其後鴈之肴(○○○)、〈クミツケ鯉熊引也〉 次鯛之肴(○○○)、〈クミツケ削物蛤也〉已上三獻候、

〔新儀式〕

〈四臨時〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0139 天皇加元服事 采女於御座前茅簀薦、立小机御肴、俄頃皇帝著朝衣出、南面而坐、〈○中略〉皇帝受杯奠於薦西、大臣取一肴物(○○)以進、皇帝受先祭、後嚌之授大臣、大臣加於机

〔西宮記〕

〈三月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0139 曲水 出御、王卿參上、次置紙筆、〈文臺〉有勅令題、上卿召堂座一博士於砌下仰、有公卿博士者、乍本座上卿仰之、即書題進之、〈○中略〉給肴物三獻、

〔三中口傳〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0139 酒肴間事 〈三〉酒肴樣、或机饗不飯、號肴物勸酒盃事在之、諸衞府官參賀時居之、號無飯(イヒナシ)饗、或菓子并肴物居交之、官人下部等居之歟、而號肴物別高坏之時、居四種肴事無先例

〔雅亮裝束抄〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0139 大將あるじの事 だいきやうのをんざとは、ことはてゝおほゆかにおりゐて、かうぶつ(○○○○)〈○肴物〉とて、つちたかつきををしきにしたる、さかなくだものをまいらせ、又いものかゆなどまいらせて、〈○下略〉

〔普廣院殿任大臣節曾次第〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0139 大饗之儀 次主客昇階〈客東、主西、〉尊者入東一間橫座、〈西面〉主人著親王座、〈○中略〉次居肴物、〈大臣四折敷、納言已下二折敷、各毎机了之、〉次一獻〈○中略〉次立主人机〈赤木、四位五位各一人舁之、無簀薦、〉次居肴物、〈二折敷、陪膳地下四位、○中略〉次尊者已下移著穩座、〈○中略〉次居肴物、〈土高坏〉 大臣二本、陪膳四位殿上、納言已下二本、無陪膳役送之人、直居之、

酒肴

〔西宮記〕

〈正月中〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0139 一御齋會 内論議、〈舊例、僧綱以論議文内侍、〉公卿著右近陣、〈陣官居酒肴(○○)〉

〔江家次第〕

〈十一十二月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0139 御佛名 給酒肴於出居、〈近代不見〉出居勸酒肴於王卿、〈近代不見〉

〔建久三年皇大神宮年中行事〕

〈九月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0140 件拔穗神事、〈○中略〉於船橋辻西、在直會饗膳、廻箐盛等菓子五種、必實ヲ進、勸盃權長、三獻如常、役人等之酒肴政所ノ沙汰、肴枝大豆也、

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0140 一仁和寺殿競馬行幸御膳并御遊酒肴事、〈保延三年九月廿三日、伊與守忠隆奉行、○中略〉 次御酒盞 銀御銚子〈片口〉 次御酒肴五種〈蚫、干鳥、蛸、小鳥、海月、大盤居之、〉 次御酒器〈深草土器〉 次御酒肴二種〈擁(カタメ)劔、生蚫、〉 菓子一種〈生栗〉 次例酒器 次御酒肴、菓子二種、酒肴一種、〈已上以大盤之、匕銀也、〉 上逹部酒肴 殿下前 酒肴五種〈酢鹽〉 盛菓子六種〈已上色々以薄樣皆敷〉 已上折敷二枚 大臣前 酒肴四種〈酢鹽〉 交菓子一坏 已上折敷二枚 上逹部 酒肴四種〈中居交菓子〉 已上樣器、〈小春日〉酒器例器也、〈已上以薄樣皆敷

式肴

〔世俗立要集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0140 一公事ノ時ノ式ノサカナ イリマメ ワリカヅラ 本所藏人所ノ初參、諸家ノ吉書カクノ如シ、 一武家ノサカナノスエヤウ 承久以後武家ノ肴ノ樣ヲミルニ如此、梅干ハ僧家ノ肴也、而ヲ俗家ニ用ラルヽ事如何、若漢土ノ作法歟、漢土ニ鴆ト云鳥アリ、其鳥ノ羽ノ拘入ツル酒ヲ鴆酒ト云、此酒ヲ飮ツレバ、必死スト云々、其藥ニ梅干ヲ用ル、而ヲ若敵ハカリテ鴆酒モヤスヽムルト、ハシノ臺ニ梅干ヲ一置ト云々、而ニ日本ニハ鴆酒ナシ、彼梅干ヲ肴ニスフベキナリトモ、上ニスフル事如何、式ノサカナニ精進ヲモチイル事イリ豆ノ例歟、縦梅干ヲスフベキナリトモ、クラゲヲスヘラレタル所脇ニスフベキカ、予元日ノワウバンツトメタリシハ、サゾスヘタリシ、ムメボシノ所ニクラゲヲトリカヘタリ、

〔今川大雙紙〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0141 食物之式法の事 一しきの御肴にはじかみ梅干鹽などをすへ、 きに入てまいらする事は、自然物をきこしめす時、むせ給ふ事有、酒にも飯にもむするは大事也、梅干をみれば口の内につの出來て、物にむせぬ也、鹽も箸の前に付て少なむれば、物にむせぬ也、又はじかみは、物のあらぢはいをよくする物也、きこしめす時あぢはいわろき時は、入てきこしめせばよきとの心也、又鹽もきこしめす物に不足ならば、入てきこしめせとの義也、

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0141 引渡し式正の圖〈○圖略〉 三方に三重組のかわらけむかふに置、のし九筋右の手先に、かちぐり五つ小角に付る、左の手さきに昆布二切小角に付る、又九七五と組、のし九筋、くり七、こんぶ五つともくむ事あり、三方の左に三つ重の餅をすへ、右の方に小角にのし九切、五橫四竪に付、右の小角にかち栗五つ、左の小角に昆布三切付る、 出陣の時は、かつて、うつて、よろこぶとくむべし、歸陣の時は、うつてかつてよろこぶと組べし、右の引渡しは、兩人の時は眞中にかざり置、外に三方に三つ重の土器を出し、銚子提にて盃ごとあるべし、

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0141 一引渡シノ事、ノシアワビヲ五重テケヅル也、口傳等ヲ十二タツベシ、閏月ニハ十 三可立、ノシアワビ重ル樣口傳、

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0142 一引渡のけづり樣げんぶく、もゝか、かねつけ、おびなをし、一そくはやしかみたて、同はしだて、この祝儀には繪圖のごとく式三獻用る時は、引渡のけづり數三刀づゝ、けづりかけ七ツ也、是七ようの口にたるべし、

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0142 一出陣肴のくみ樣、うつて、かつて、よろこぶとくみ候、繪圖にこまかに有、宮仕樣は、くみおしきの中ほどを、左右の手にて取、先さいごしにてひざをばつき候はでかゞみ、うきひざ仕候て、貴人の御前に持てまいり候時は、左の足よりふみ出し、さいをこし、一かつ一かつとふみとめ候、又貴人の御前にては、右の足をふみかゝり、左の足の足にてふみとめ、ひざをばつかずしてすへ申也、立候時は手をつきひざをつく事あるべからず、扨かへり候時は、右よりふみかかり、左の足をきりゝとまはし、又右よりふみいだしかへるなり、

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0142 一出陣御肴集養の事、主人貴人もしかとは居たまはず候、うきさそくにて御座候て、御酌まはり候へば、打あふびの前の二ばんめを、御口にあて御懷中有て、御盃三ツかさねたる上の盃を取、三ど御酒きこしめし候て、御酒の下をしたの盃に御捨候て、かはらけ二ツの下にかさね、又二こんめには、かちぐりの五ツすはりたる中を取、御口にあて懷中有、又上の盃を取、三ど御酒きこしめし、かはらけを又下に御かさね、三獻めには、こぶ五ツすはりたる前二番めのをとりて、又口にあて懷中有て又御盃を取、三どきこしめし、こぶ左のひざをかづき、かはらけをば又下に御かさね候へば、最前の上のかはらけ又後に上に成なり、 一御歸陣の御肴は、かつて、うつて、よろこぶとくみ候、御さかなあげ樣の事、出陣には相ちがい候、いつものごとくさいの外にて、ちとかゞみ、左の足よりあがる也、御前にていつものごとくひざをつきあげ候て、歸り樣は左とも右ともなく、そのむきよきかたに歸る也、

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0143 式三獻の圖〈○圖略〉 一番の圖かくのごとし、左の方に燒鹽をかわらけに圖のごとく高くもり、土器の下に輪を敷べし、右の方かわらけ敷輪有べし、酒を少し入る、左の方かわらけに敷輪、きざみあらめを高盛にすべし、右の方土器に敷輪、くらげを高もりにすべし、前に耳土器に壹尺二寸の白箸を置べし、 二番のさかなはそり鯽(ぶな)、かわらけ敷輪あるべし、ふなをそらせにる也、元服祝言の時も、みな二人づゝゆへ同じごとくに、何も二くみづゝこしらへてをくべし、 三番の肴はうちみ、鯉をひらづくりにすべし、土器に敷輪有べし、かくのごとく高もりにすべし、平作りにしてうすくかわを引、鹽をす、水けをよく取盛也、少にても水けあれば、かわらけのうちみぐるしき也、廻りを切かたにもまはし、中へはくづを入、見事にすべきなり、いせごゐをする事も有、

待肴

〔世俗立要集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0143 マチザカナトイフハ、事ヲスル日イマダヨラヌサキニ、ザセキニスヘ設クルナリ、高ツキ廿前ヲ、中ヲ人トヲラヌヤウニタカツキノツメヲアハセタルガゴトク、カタ〳〵十前ニテ二行ニスフベシ、人一人マベニ一本ナレバ、アヒヲヒロクスフベシ、

三肴

〔料理獻立〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0143 年頭御式 早朝ニノ御三方ニ 〈三度敷かみ〉一小さし〈鹽だひ九串きそく〉 〈右同斷〉一かずのこ 御前折敷白箸 〈右同斷〉一根深大根九本 右十五ケ日とも早朝ニ上ル、是を御三ツ肴之御獻と申候、尤右を一通りと申候、右之外宮方攝家方大臣方御禮之節、壹通リヅヽ上ル、

〔恒例公事録〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0144 正月一日攝家中參賀之儀〈○中略〉 次供御三肴〈號組付、或ハケヅリ物ト云、〉 其儀、役送御盃臺ヲ手長ニ授ケ、申口ニ出テ、御三肴ヲ取テ、手長ノ傍ニ持參ス、手長取傳フ、陪膳之ヲ取テ、先中段ニ置キ、御盃臺ヲ御左ノ方ニ寄セ、御三肴ヲ御右方ニ供ス、 次居臣下三肴 其儀、御三肴ヲ供了ヲ窺ヒ、當番議奏非番相役ニ目ス、非番議奏切隱ノ方ニ廻リ、陪膳殿上人〈豫下段西庇屏風内ニ候〉ニ告、殿上人臣下ノ料三肴ヲ取、〈西庇ニ在〉中ノ間ヨリ進テ次第ニ之ヲ居ュ、

〔嘉永年中行事〕

〈正月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0144 朔日 朝の物 四方拜おはりて、常の御座にて、朝の物菱花びら梅干御茶など供じて御盃參る、御前にて御とをしあり、伊與酌を勤む、其やう先三つ肴菱花びらきじ茶硯蓋の御肴にて一獻を供ず、

〔嘉元記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0144 貞和三年十一月五日、脇門十郎左近殿名披露會〈於我坊之〉衆分皆參候也、三肴〈ウキ牛房 タヒノナマス エブナノスシ 魚頭慈仙アツメ毛立 飯ハカキ御料〉

〔御湯殿の上の日記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0144 慶長三年十二月十九日、御煤はきいつものごとくあり、〈○中略〉夕がた御煤はきの御いはゐ三獻、常の御所にてまいる、初こん三ツざかな、二こんそろ〳〵、三こんかうぢまいる、 准后、女御、御相伴、女中もそろ〳〵御すわりあり、めでたし〳〵、

取肴

〔尺素往來〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0145 年始慶賀日新重疊、世上朴略之兆、寰中艾寧之期可今歳候、〈○中略〉來月朔日相當初午候、稻荷御參詣勿論候歟、然者於還坂邊、例式之差榼(ダル)一個、縛(ユイ)樽兩三、檜破子、取肴風情可用意候、

〔貞丈雜記〕

〈六飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0145 一取肴と云事、昔よりあり、酒の肴の事也、尺素往來に檜破子とり肴とあり、

〔酌次第〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0145 一つねにとりざかなにて御酒有とき、座敷により久しきとき、くぎやうの物いかほども座のけうによりて出べし、かやうの儀はさだまれるほう有べからず、主人の御きしよくによりて御酒久しきときは、いづれも同前也、 一同とりざかなと云事、何なりともいくいろももりて出すをいふ也、二いろ三いろももる也、あしうちなどにも杉原をしき、そのうへになんてんのは、あるひはしやかなどをしき候て、さてそのうへにもる也、正月などはうらじろ、ゆづりはなどしきてよき也、

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0145 取肴の類有增 一いせゑび 一とぢいはし 一車ゑび 一するめ 一燒いか 一鮭鹽引 一鰤鹽引 一ばい 一からすみ 一うば〈やきて〉 一あいきやう 一さかうめ〈やきて〉 一よなき 一昆布〈やきて〉 一ゆべし 一たこ 一もみのし 一ろくでう 一ござめ 一さゞゐ粕漬 一〈はむ〉ごん切 一あはび〈糟漬〉 一めざし 一にし〈かす漬〉

〔鈴鹿家記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0145 應永六年六月十五日乙丑、當屋ヨリ赤飯給、巳ノ上刻御立、吸物コイ食、引物鱣カバヤキ鮒スシ、煮物、〈コンニヤク 串アハビ〉肴臺高砂、取肴、〈生鮑 ワタアエ〉冷物、〈リン子 アサフリ ハスノ若根〉コンニヤク色付、赤貝色付、島臺物酒宴、

挾肴

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0146 一はさみ物とは、花などをくいものゝたぐひにてつくり、そのけいきを盛ても、はさみ物と申候、

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0146 一はさみざかなの事、取ざかなともいふ、ひしなりにきる事子細有、又五ツもる事、地水火風空を表す、又わうさうしゝうらうをもへうする也、あし付めゝに如繪圖もる也、あし付めゝをかなかうけにすへてあぐる、かなかけにも足付たる能候、はしをもうちてあげ候、 一はさみ肴は、ひしなりにきり、のしなき時はいか串あふびなどもする也、

引肴

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0146 四季常體料理獻立の事 御引肴〈一赤貝 いと麩〉 〈くずわさび〉

〔鹿苑日録〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0146 慶長八年五月廿三、朝施哦https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins067448.gif 、焉藏主始之、半齋同前、嚫金黄鸝、齋作法、本膳汁蔓細々、〈○中略〉引肴〈白瓜冷物〉

追肴

〔世俗立要集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0146 ヲヒザカナ三獻内 ハジメノ一獻〈クラゲウチアハビニテ〉 次〈ウチミ、〉ツギ時ノ美物、サテ三獻ヲハリテトリアゲテ饗ヲスウ、

添肴

〔貞丈雜記〕

〈六飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0146 一添肴と云ふは、或は雜煮、或はまんぢう、やうかん、さうめんの類は、酒の肴にならぬ物ゆへ、肴をそへて出すなり、其雜煮、まんぢう、やうかんなど食て、扨添肴を食て酒をのむ也、そへ肴はやき鳥、又はさしみの類を、膳に一つに組付くるもあり、又は吸物にても何にても、魚物の肴を別の膳に載て、本膳の脇にすゆる事もあり、

〔四條家法式〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0146 一古事卷 一御添肴之事 春梅燒 夏橘燒 秋筋引 冬妻重〈筋引ハ鶴ノ肉ヲ切重、上ニヲノカクシヲ筋ノゴトク引渡シ置、妻重ハ鮭ノ肉ト雉ノ肉〉 〈ト盛合スル、赤キト白キトニテ、小袖ノツマヲ重タル如也、亦川山陰陽也、〉右大形可此、龍指鷹之羽者、不時節、但指身生鳥可時分歟、萬事分別肝要也、是者初獻〈ヨリ〉三獻進、與(ヨ)獻之卷之御添肴之部也、後分別次第也

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0147 一梅燒といふは、くづしを梅ほどにまるめ、湯びき、たれ味噌にて味をつけて、靑のりを衣に付て、梅の枝に指て龜足を付、添肴などに出すなり、

〔食物服用之卷〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0147 一むめやきの事、たちばなやきのごとく、鯉にてもたいにてもすりものにしん梅のせいほどにまるめ、靑のりの粉にてころばし、あほきやうにしてやき、梅の枝におもしろくつけ候てもるべし、

〔三好筑前守義長朝臣亭〈江〉御成之記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0147 一三月卅日〈未刻○永祿四年〉 御成〈○中略〉 一總衆へ參獻、小西仕分、〈○中略〉 よ獻 梅花かん 御そい物梅やき(○○○)

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0147 一橘燒といふは、梅燒のごとくしてくづしをする時、梔を入て色付まるめ、たれみそにて味を付、からたちの枝に指、龜足を付、添肴に出す也、

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0147 一橘やきの事、先魚のみをいつものごとくすりて、むくろうじ程にまるめて、口なしをひたして、口なしのかすのなきやうにして、まるめたる魚をそめ候て、さて水に酒をすこしくはへにる也、其後橘の木を三寸ばかりにきりて、今の魚を小枝などくいなどにさして、皿の内にいれ、又枝にさゝざる魚をも、三ツ四ツ五ツ程下にいれたるがよく候、扨汁はすめみそ一ぱいに白水二はいいれて、それをにやしたてゝ、酒鹽能かげんにさして、今の橘やきの上にかくるなり、すい口はなし、

〔食物服用之卷〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0147 一たちばないりの事、たちばなやきのごとくこしらへ、ゆにのまゝにやかずして、かわらけに五つ、賞翫ならば七ツ、あるひは九ツもり、ゆの葉のもとをきり、五三うへにをき、かつ をたれみそ、酒をかゆらかしかけ候てまいらすべし、

〔朝倉亭御成記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0148 永祿十一年五月十七日、於越前谷朝倉左衞門督義景亭へ御成事、〈○中略〉 一於會所參ル進物、并獻立の次第〈○中略〉 六獻 まんぢう〈御そへもの〉鴫〈橘燒〉 〈御酌大與〉御供衆迄 御通有

〔文祿三年卯月八日加賀中納言殿〈江〉御成之事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0148 十獻 やうかん 〈御そへもの〉鶯燒 〈きそく〉金銀

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0148 一筋打と云は、鶴を毛なしはぎの方より、刀目を入て引さけば、能ころにさける也、あぶりて龜足をさして添肴などに出す也、〈○中略〉 一燒かざめといふは、蟹の足をあぶりて、添肴に出す也、〈○中略〉 一兩指といふは、小魚を二〈ツ〉串にさしあぶり、龜足をさし出すなり、〈○中略〉 一山椒鱧の事、添肴又は引替の吸物の向菜などに出す事也、鱧を二寸計に切、山椒味噌を付出す也、又かまぼこうけいりにもする也、〈○中略〉 一こん切といふは干鱧の事也、和交削物にも用、〈○中略〉 一のりがらみと言は、くづしの中へあまのりを入湯引、少あぶり切候へば、のり筋のごとく見ゆる也、うすたれをかけ、添肴などに出す也、 一藻搦と云は、靑菜を湯引、細にさき、くづしの中へ入、のりがらみの樣にする也、〈吸物などにする〉

〔食物服用之卷〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0148 一もまきの事、まへ〈○橘煎〉のごとくうをのみをこしらへ、くろのりうつくしくつゝみ、そのうへをころばして、たちばないりのごとくに、しん汁をもそのごとくかけまいらすべし、ゆの葉は入べからず、

〔躾方明記〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0148 添肴には箸をばすへぬものにて候、本膳の箸にて給物なり、添肴をすへ候て本膳を 取事無謂事なり、 總別添肴は汁の有物は無之物にて候、乍去もし汁など御入候はゞ、汁を吸事惡敷事にて候、三度計給候て能なり、

ボンクワ肴

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0149 一ぼんくわざかなの事、竹を葉共にいだし候、其内に竹をわり候てはしにする也、かにはこうを木などにてくりてたみゝてもする也、又はかいなどをもみがき候て、其内におさへ物をいれ候、あしはくふ物のたぐひにてし候へば、はさみ物になり候、かにのこうはくしのかきにてもする、それも中をくりて、中におさへ物をいるゝ、おさへ物とは、らつちやとうちんかうこわうゑんそかうゑんちやうじ、其外きやしやなる物をいるゝ也、それを人に參らする時は、ぼん共に持て人の前に行、かにのこう共におさへ物をいれて、あふぎにすへて渡す、請取ていたゞき、我扇をひろげてかにのおさへ物を置て、人の扇をばかへす、さてかにのこう共に取て集養して、のこり候はゞ懷中あるべく候、

重肴 鉢肴

〔恒例公事録〕

〈四十二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0149 常御殿御煤拂之儀 十二月中旬 運送殿上人ヘ、御内儀ヨリ酒肴出サル、此日、午食長橋局ノ設也、〈○中略〉獻立〈兩役以下等差有リト雖モ、大略左ノ如シ、〉 吸物 熱豆腐 酒肴〈重肴(○○)鉢肴(○○)〉 雜煮 飯 燒物〈鰤〉 汁 煮物 菓子〈饅頭樒柑〉

〔恒例公事録〕

〈四十二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0149 准后御煤拂之儀 此日晝食御祝ヲ賜、執次挨拶出頭、其後御祝酒拜受、公卿三寶、殿上人足打、 吸物〈鯛〉 盃〈土器〉 重箱肴(○○○) 錫 酒肴 鉢肴二鉢 錫一對

〔恒例公事録〕

〈四十四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0150 大福茶分配之儀 十二月中旬、大福茶御用淸御文匣〈一番二番〉二合、御獻奉行申出ノ旨、表使ヲ以御内儀ヘ申込、右二合出サル、〈○中略〉御内儀ヨリ、御獻奉行ヘ御祝酒出サル、 重肴〈一組〉 鉢肴〈二ツ〉 錫〈二對〉

〔言經卿記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0150 慶長八年三月一日戊午、六宮御方、妙法院殿ヨリ御還御、御里坊ニ御入了、御樽二、重箱進入了、

〔時慶日記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0150 慶長八年十二月十九日、亥刻計ニ曇花院殿燒失、 廿日、曇花院見廻、間鍋二ツ、重箱三重、盃二ツ進上候、暫伺候シテ歸、

〔三省録〕

〈二飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0150 水府家士雨宮又右衞門語りけるは、むかし仙臺侯の御茶の水堀割の時、義公より御尋として贈り給ふ品重二重なり、一重は芋の煮ころばし、一重は黄粉むすびの御見舞なりと、六拾万石餘の諸侯三拾万石餘の御方よりの音物贈答、かゝるおもむき、今を以見れば實とはなしがたくおもふなり、

〔料理獻立〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0150 加茂祭御膳御物數如尋常 但夕御膳之節〈○中略〉 御膳御重詰 一重〈小くしたい大板かまぼこ切重にかひ〉 一重 〈御にしめけたの子つくねいもくわひ ふ こんぶ〉 一重〈小しろてんふしめぜんまひ〉 中鉢ニ一夜ずし〈たひ むじぐら うどきくらげ〉 一重 御まな前同斷 一重 にしめ前同斷 一重 一夜ずし前同斷 一重 さばのすし、たて、 御靈會御膳朝夜如御常 夕御膳二汁八菜〈但昨卯年(寬政七年)被召上候品○中略〉 御膳御重詰 一重〈小くし鯛 大板かまぼこにかひ〉 一重〈ふしめ つくねいも ぜんまい 麩 かんへう こんぶ〉 一重 一夜ずし〈雨の魚同はたたいきくらげ〉 中鉢ニあゆのすし 御所方〈江〉被進候御重詰 一重 御まな三種前同斷 一重さばのすし、たて、

〔平他字類抄〕

〈上飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0151 菜〈アワセ(○○○)サイ〉

〔撮壤抄〕

〈下飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0151 菜(サイ)

〔倭爾雅〕

〈六飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0151 飣(サイ)〈置食也、餖同、按和俗稱膾韲羮https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029786.gif 等品數、謂之幾菜、中華稱之幾飣、〉

〔倭訓栞〕

〈中編九佐〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0151 さい 俗に飯にそふる物をよぶは、魚菜の意、飣也、

〔倭訓栞〕

〈中編一阿〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0151 あはせ 枕草紙にあはせをみなくひと見え、うつぼ物語に、しもの御あはせと見ゆ、飯に對していふ、世にさいと稱する是也といへり、されば配の字の義成べし、

〔玉勝間〕

〈十四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0151 饌〈○中略〉 いはゆる菜をば昔はあはせといへり、淸少納言枕册子などに見ゆ、又伊勢神宮の書にまはりとあるは、伊勢の言歟、此國の今も山里人など、まはりといふ所あり、

〔梅園日記〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0151 あはせ 夏山雜談に、俗にいふ飯のさいの事を、あはせといふなり、宇津保物語、枕草紙にも見えたりとあり、按ずるに、宇津保物語〈藏開上卷〉御かゆのあはせいをのよくさ、しやうじのよくさ、又〈同中卷〉ちうのわんに御わけべちにすこしわけて、しもの御あはせなど、もてまゐれり、又〈同下卷〉ゆづけして、あはせいときよげにて、とみにまゐる、落窪物語云、あはせいときよげにて、かゆ參りたり、枕草紙云、あはせをみなくひつれば、花鳥餘情寄生卷云、御あはせてうぜさせなどしつゝ、〈按に源氏物語各本にことさらにてうぜさせ給ふなどしつゝとあり、〉古事談〈僧行篇〉云、仁海僧正ハ食鳥人也、房ニ有ケル僧ノ、雀ヲエモイハズ取ケル也、件 雀ヲハラ〳〵トアブリテ、粥漬ノアハセニ用ケルナリ、顯昭拾遺抄注云、アハセノ中ニ木ノメトイフハ、アケビノツルノワカキ葉ヲトリテツケタルナリ、クラマノメツケト云物也、袖中抄〈かつしかわせの條〉云、にへどのと云もしるあはせなどする所なり、大槐秘抄云、御あはせ御くだものは、人の參らせたる物をきこしめせども、御飯はいかにも内膳の御飯をめす事にてさふらふなり、續世繼〈いのるしるし〉云、まなの御あはせどもとゝのへて奉り給り、古今著聞集〈興言利口部〉云、妙音院入道殿云云麥飯に鰯あはせにて、只今調進すべきよし仰られければ、〈按に散木集に、川につりする翁の有を尋ぬれば、ごさいのなければ、もとめさふらふなりといふを聞てとあるも、もとは御菜とありけんを、ごさいとうつしたるならん、御菜とあらば、御あはせとよむべきなり、〉など見えたる皆菜なり、平他字類抄に、菜(アハセ)とあるにて明らかなるを、花鳥餘情にあはせは食物をいふ、俗に朝の飯をあさあはせといへり、合子にもる故にあはせといふにやとの給ひしは御誤りなり、又安齋翁の尺八笛に、あはせは飯のさいの事也、飯にあはせてくふ故なりとあり、又按ずるに、類聚雜要抄に、四種酢鹽酒醬、また厨事類記に、四種器酢酒鹽醬、或止醬用色利、裏書云、色利煎汁、イロリトハ大豆ヲ煎タル汁也云云、或鰹ヲ煎タル汁也、といへり、また門室有職抄に、人々羞酒飯儀の條に圖あり、圖を撿るに、高坏十二本の内、第二の高坏に四種を居て、下に注して云、四種ハミソ、シホ、ス、サケ也、近代ハ酒ヲ略シテ蓼ヲ用、蓼ナキ時ハワサビ、ハジカミ、ミソ、蓼必説(トク)酢也とあり、又今川大雙紙に、しきの御肴にはじかみ鹽などをすべてきに入て參らする事は云々、はじかみは物の味はひをよくする物なり、きこしめす時、味はひわろき時は、入てきこしめせばよきとのこゝろなり、又鹽もきこしめす物に不足ならば、入てきこしめせとの義なりとあるも、人々の好にしたがひ、上の四種の類をくはへてあはするなり、さる故にあはせと名づけしなるべし、〈笈埃隨筆に、豐後のはうちやう汁の膳の上に、小猪口に醬油を入て出す、もし汁淡味なるには、是を加ふるなりといへるも、古風の傳はれる也、〉又御湯殿上日記云、慶長三年五月四日、じゆこうの御かたより、御そへおかずとて、御まな參ると見えたるは、今も婦女のいふおかずなるべし、數々あ るをいへる歟、又かずはかづにて和の義にや、

〔大上﨟御名之事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0153 女房ことば 一さい 御まはり(○○○○)

〔海人藻芥〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0153 内裏仙洞ニハ、一切ノ食物ニ異名ヲ付テ、被召事也、一向不存知者、當座ニ迷惑スベキ者哉、〈○中略〉 御菜ヲバヲメグリト云、常ニヲマハリト云ハワロシ、〈○中略〉 毎日三度ノ供御ハ、御メグリ(○○○)七種、御汁二種ナリ、御飯ハワリタル強飯ヲ聞召ナリ、

〔貞丈雜記〕

〈六飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0153 一御まはりとも御めぐり(○○○○)とも云は、めしのさいのこと也、又さいといふ、字菜を用るは誤なり、飣の字を用ゆべし、めしのさいとよむ字なり、然れども俗に通用するは菜の字なり、菜は野菜の菜也、さいと云は本はそへなり、めしにそへてくふゆへなり、そへといふことをいひ違てさいとも云也、〈さいのことをあはせものとも云、古き詞也、源氏物語、淸少納言枕草子等に見たり、〉

〔俚言集覽〕

〈世〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0153 膳まはり 御所詞に菜をオメグリと云、海人藻芥に見ゆ、俗にオマハリと云、此ハ誤なりと云り、然ども此膳マハリのまはりはメグリの義にて一意也、

〔梅園日記〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0153 めぐり 玉勝間〈つら〳〵椿のまき〉に、いはゆる菜をば昔はあはせといへり、淸少納言枕册子などに見ゆ、又伊勢神宮の書にまはりとあるは、伊勢の言歟、此國の今も山里人などまはりといふ所あり、〈又枯野のすすきの卷に、菜をばまはりといふこと、大神宮年中行事に御廻八種とあり、○圖略〉按ずるに伊勢國のみの言に非ず、京及び筑後などにてもまはりといふとぞ、海人藻芥云、御菜ヲバメグリト云、常ニオマハリト云ハワロシ、四條流庖丁書云、タコキリモルベキ事、飯ノ御回ナラバ、如何ニモ薄ク丸ク可切、大上﨟御名之事云、女房ことば、さい御まはりなどあるにて知べし、扨まはりはめぐりの俗言也、菜をしかいへるは、古畫を見るに、 飯をば中に菜をばめぐりにおきたればしかとなへしにや、

〔燕石雜志〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0154 關東方言 稚兒の物いひならふ時には、長きをば約てをしえ、短きをば重ねていはし、亦物を比喩して敎るもあるべし、〈○中略〉あはせ物をおかず(○○○)といふは、數々ならべ居ればならん、又お菜(サイ)ともいへり、これは菜蔬の義なるべきに、魚類もすべて菜といふは、ころゝ得がたし、

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0154 後三年合戰繪などをみるに、古への膳部は高き臺にて、食物はみなかはらけに盛たり、居やう中に飯を高盛にして置、そのまはりに菜を排べたり、海人藻芥に、毎日三度の供御は御めぐり七種御汁二種なり、御飯はわりたる強飯を聞召なりとあるも、その體にならべたるもの故、菜を御めぐりといふなり、菜は數々ある故に、後世これをおかず(○○○)と云、卜養千句に、いり昆布に又よろこぶのおかずにて旅の客僧しばしとゞめん、

〔狐媚記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0154 康和三年、洛陽大有狐媚之好、其異非一、初於朱雀門前羞饌禮、以馬通飯、以牛骨菜(○)、次設於式部省後及王公卿士門前、世謂之狐大饗

〔庭訓往來〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0154 御齋(トキ)之汁者、〈○中略〉菜者、纖蘿蔔、煮染牛房、昆布、烏頭布、荒布、黑煮蕗、莇(アザミ)、蕪酢漬、茗荷、薦子、蒸物、茹物、茄子、酢菜、胡瓜甘漬、納豆、煎豆、茶、苣、園豆、芹、薺、差酢和布、靑苔、神馬藻、曳干、甘苔、鹽苔、酒煎松茸、平茸、鴈煎等、隨體可之、

〔西宮記〕

〈臨時三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0154 院宮事 上皇脱屣之後、〈○中略〉供膳同在位儀、〈采女供候〉別納供御飯〈勅旨田地子〉御菜(○○)、〈御封物〉

〔北山抄〕

〈一年中要抄〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0154 四月朔日旬事〈○中略〉 次供御飯、次給太子、次給親王以下、次供御菜并御汁物、次給臣下

〔江家次第〕

〈一正月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0154 元日宴會 次供御飯〈便撤鯤飩〉 次供進物所御菜〈窪器二、盤物六、汁物二、并十度、〉 次供御厨子所御菜(○○)二盤、〈一盤八坏、盤物、一盤四坏、汁物二、燒物二、〉

〔江家次第〕

〈六四月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0155 二孟旬儀 次供御飯、〈内膳供御飯之後、不臣下飯、供御菜之由所仰也、〉次給臣下

〔厨事類記〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0155 春宮御方之所具 内膳司晝御膳〈○中略〉 御飯 本宮内膳 御菜 進物所

〔厨事類記〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0155 供御次第 御厨子所式云 一御盤 四種〈銀器〉 御箸四雙〈銀箸二雙、木箸二雙、〉 匙二支〈銀木各一支〉 二御盤 御飯〈盛銀器、在蓋居垸、〉 三御盤 平盛菜料五坏〈銀器盛〉 窪器一坏〈銀器、海月、〉 四御盤 平盛菜料一坏〈銀盤〉 御汁物二口〈銀器〉 御酒盞一口〈銀器、在蓋居垸、〉 五御盤 窪器一坏〈同蚫醬〉 六御盤 高盛菜料七坏〈盛朱瓷〉 平盛菜料一坏〈同脯、鳥脯押年魚、東鰒、堅魚、海鼠、蛸、烏賊、鮭、久惠脯鯖等、隨本司所一レ添盛進之、〉 七御盤 御汁物二坏〈朱瓷、蚫羮一坏、一坏其色不定、〉燒物菜料二坏〈同、鯛一坏、一坏鯉鱸等、〉 已上菜料雜菜等、延喜内膳式月料條也、

〔嘉元記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0155 暦應二年〈己卯〉慶祐年會五師勤仕、正月廿日年會櫃渡、 先年會五師者實禪、〈良顯房五師〉使金剛丸辰貝以前櫃持來、饗膳事、三種御菜〈ハス、牛房、イモ、〉三合宛、饗白六合〈ナマ〉タウフノ汁、一〈裏折敷用之〉裏折敷厚紙一枚敷テ、其上ニ餅五枚、赤三切、菓物八種置、夫テ一前、同酒一ヒザケ出畢、

〔嘉元記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0155 正和六年四月十二日、成業刀禰事〈在之、〉兩座會合シテ風流〈在之、〉修羅ト帝釋トノ事、八種御菜ツイカサ子、 イモマキ タカンナ ノリノ汁 タヽミ

〔空穗物語〕

〈藏開上二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0156 左の大殿大君、東宮に侍ひ給ふがもとより、物二斗ばかり入るばかりの白がねの桶二つ、おなじひさくして白き御粥一桶、赤き御粥一桶、白がねのたゞいゑ八つに、御粥のあはせ(○○○)、いほの四くさ、しやじの四くさ、おほきなるぢんの折櫃にさし入れて、こがねのかはらけの大きなる、ちひさき白がねの箸あまたすゑて奉り給へり、

〔枕草子〕

〈十二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0156 いひにくきもの 新殿をたてゝ東のたいだちたる屋をつくるとて、たくみどもゐなみて物くふを、東おもてに出ゐて見れば、まづもてくるやをそきと、しる物とりてみなのみて、かはらけはつゐすへつゝ、つぎにあはせをみなくひつれば、おものは、ふようなめりと見るほどに、やがてこそうせにしか、二三人ゐたりしものみなさせしかば、たくみのさるなめりと思ふ也、あなもたいなのことゞもや、

〔續世繼〕

〈九いのるしるし〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0156 禪林寺の僧正〈○深覺〉ときこえ給けるが、宇冶のおほきおとゞ〈○藤原賴通〉にやおはしけん、時の關白のもとに、消息たてまつりて、法藏のやぶれて侍、修理して給はらむと侍りければ、〈○中略〉こはいかに、さはいかにすべきぞなどおほせられければ、としをひたる女房の、あれは御はらのそこなはせ給へるを、みのりのくらとは侍ものをと申ければ、さもいはれたること、さもあらんとて、まなの御あはせ(○○○○○○○)どもとゝのへて、たてまつり給へりければ、材木給はりて、やぶれたる法藏つくろひ侍りぬとぞきこえ給ける、

〔古事談〕

〈三僧行〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0156 仁海僧正ハ食鳥之人也、房ニ有ケル僧ノ、雀ヲエモイハズ取ケル也、件雀ヲハラ〳〵トアブリテ粥漬ノアハセニ用ケル也、

〔大槐秘抄〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0156 君にはすゞろなる人は、御くだ物御茶などは、まいらせぬ事なり、〈○中略〉御あはせ御くだ物は、人のまいらせたる物をきこしめせども、御飯はいかにも内膳の御飯をめす事にてさぶらふ也、

〔古今著聞集〕

〈十六興言利口〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0157 妙音院入道殿〈○藤原師長〉仰らるべき事有て、孝道朝臣のわかゝりける時、けふたがはで祗候すべき由仰ふくめられたりけるに、孝道仰を承ながらうせにけり、ひめもすあそびありきて、夕べに歸り參じたりければ、入道殿大きにいからせ給ひて、御勘發のあまりに、贄殿の別當なりける侍を召て、麥飯に鰯あはせ(○○○○)にて、只今調進すべきよし仰られければ、則參らせたりけるに、孝道にくはせられけり、日暮し遊びこうじて、物のほしかりける時にて、かひ〴〵敷皆くひてけり、

〔門室有職抄〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0157 入客之儀〈○中略〉 凡食事間、俗家ニテ頗以習多之、僧中ニハ無別樣云々、其中ニ飯ヨリ左ナルアハセヲ、及箸食事不有云々、

〔皇大神宮年中行事〕

〈二月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0157 十二日〈○中略〉次北向楊田神社拜八度、平手兩端、次西向津長神社拜八度、手兩端、次同方拜四度、在水次又楊田神社拜四度、在手皆同座、次著座、北方南向、在平張座、政所西東面、權長南北面、各在鋪設、刀禰祝東西上南面薦ヲ敷、傍官机大饗、〈居半筥〉御廻(○○)八種、四簀盛、御汁菓子等在之、〈○中略〉 於津長前河端、在手水、役人同前、在鋪設、前ニ幣ヲ立、東ニ向八所ノ詔刀ヲ讀進、〈○中略〉其後橋爪ニ著座、平張ノ構座、南向、政所西東向、權長南北向、各在鋪設使前大饗机居手筥、廻(○)八種此内四ハ簀盛、必在雉在羹在菓子等

〔守貞漫稿〕

〈後集一食類〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0157 菜音サイ(○○)也、菜蔬ト云ヲ今世ニテハ精進物ノコトナレドモ、今ハ菜蔬魚鳥トモニ飯ニ合セ食ス物ノ總名トス、本字飣、音テイ、是飯ノサイト云意ノ字也、又古ハオメグリト云、海人藻芥ニ、供御ノ菜ノコトヲ云テ御メグリト云、常ニオマワリ、今俗ニサイト云ハ、壺、平、猪口、香ノ物、燒物、膾、平日ノ菜ヲ京坂ニテハ番サイト云、江戸ニハテ總ザイト云、

〔奴師勞之〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0158 新吉原京町大文字市兵衞が狂名をかぼ茶元成といふ、妻を秋風女房といひ、隱居の姥を相應内所と稱す、〈○中略〉此市兵衞河岸にありし時、かぼちやといふ瓜を多く買ひおきて、妓の總菜に用ひ、産業をつめて此京町へ出しとぞ皆人かぼちや〳〵と異名せしなり、

〔新撰字鏡〕

〈羊〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0158 羹〈古衡反、阿豆毛乃、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十六菜羹〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0158 羹 楚辭注云、有菜曰羹、〈昔庚、和名阿豆毛乃、〉無菜曰https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029786.gif 、〈呼各反、和名上同、今按是以魚鳥肉羮也、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十六魚鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0158 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029786.gif 楚辭云、煎https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046398.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029786.gif 雀、〈02978音呼各反、訓與羹同、已見上文、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈四魚鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0158 原書大招、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046398.gifhttps://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046450.gif 玉篇https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046398.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046450.gif 同上、按説文有https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins015801.gifhttps://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046450.gif 、從責俗字、説文https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029786.gif 肉羹也、釋名https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029786.gif 蒿也、香氣蒿々也、鄭玄注公食大夫禮云、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029923.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins220022.gif 膮、今時https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029786.gif 也、牛曰https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029923.gif 羊曰https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins220022.gif 、豕曰膮、皆香美之名也、楚辭招魂注、有菜曰羹、無菜曰https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029786.gif 、匡謬正俗、案禮云、羹之有菜者用梜、其無菜者不梜、又蘋藻二物即是銒羹之芼、安在其無一レ菜乎、羹之與https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029786.gif 烹煮異齋、調和不同、非於菜也、今之膳者、空菜不https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029786.gif 、純肉亦得羹、皆取於舊名耳、文選七啓、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029786.gif阿豆毛乃

〔日本靈異記〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0158幼時網捕魚而現得惡報縁第十一 羹〈アツモノ〉

〔玉造小町子壯衰書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0158 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046097.gif 鮒之炰翠(ツヽミヤキ)、鱒之炙(アブリモノ)鮹鱖之韲(アヘモノ)、鮭鰹之https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins220022.gif (ニコガシ)、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins086784.gif(アツモノ/○)東河之鮎https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins030015.gif (シルモノ/○)煮北海之鯛、鮭條(スハヤリ)、鯔楚(ヲサシ)、鱣脂、鮪https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029884.gif 、鶉https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins015802.gif (シルモノ/○)、鴨https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins065539.gif (アツモノ/○)、鴈醢、鳳脯雉臛(ツチカキ/ヒタレ)鵞膆(モノハミ)熊掌、莵脾縻〈一作https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins015803.gif 恐當https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins015804.gifhttps://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins047635.gif 〉膸、龍腦、煮蚫、煎蚌、燒鮹、焦蠟、蟹螫、螺膽、

〔塵袋〕

〈九〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0158 一アツモノト云フハ、何ニテモアツクニタルヲ云フ歟、 精進ノアツモノヲバ羹ト云フ、魚味ノアツモノヲバ臛ノ字ヲ用フ、字ハ二アレドモ、訓ノヨミハ同之、

〔日本釋名〕

〈下飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0158 羹(アツモノ) 飯にそへたる汁はあつきがよし、禮記にもあつものゝとゝのへは、夏の時に なぞらふといへり、

〔東雅〕

〈十二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0159 羹アツモノ 倭名鈔に楚辭註を引て、有菜曰羹、無菜曰https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029786.gif 、共に讀でアツモノといふ、今按にhttps://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029786.gif は魚鳥肉をもて羹とする也と註したり、アツモノとは熱きに宜しき物なるを云ひしなり、即今の俗汁といふもの是也、日本寄語に羹を水路(シル)といふと見えし即是也、

〔倭訓栞〕

〈中編一阿〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0159 あつもの 新撰字鏡に羹をよめり、熱物の義也、今いふ汁也といへり、源氏にもわかなのあつものと見えたり、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029786.gif も同じ、魚肉のあつもの也、禁裏すゝはきにあつ物といふは、豆腐を水煮にしてみそをかけたる也、

〔貞丈雜記〕

〈六飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0159 あつものといふは、今の吸物の事也、舊記に吸物と書たる本もあり、本名はあつもの也、羹の字をあつものとよむなり、

〔燕石雜志〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0159 關東方言 羹(アツモノ)をおつけといふは、飯につけて食へば也、

〔延喜式〕

〈三十三大膳〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0159 仁王經齋會供養料 僧一口別〈○中略〉小豆一合六勺、〈菓餅料二勺、好物并羹料各四勺、汁物并索餅料各三勺、○中略〉酒一合六勺、〈好物料六勺、海菜料三勺、汁物料二勺、生菜料二勺、羹料一勺、漬菜料二勺、○中略〉醬三合〈生菜料三勺、薄餅料三勺、好物料四勺、茹菜料二勺、海菜料一勺、漬菜料一合二勺、汁物料二勺、羹料一勺、索餅料二勺、○中略〉味醬四合五撮、〈好物料一合、茹菜料四勺、漬菜料二合五撮、汁物料二勺、羹料一勺、菓餅料三勺、〉鹽九合八勺八撮、〈好物料五勺、茹菜料二合、生菜料二勺、薄餅料三勺、海菜料二勺、汁物料二勺、漬菜料五合二勺八撮、菓餅料一勺、索餅料六勺、羹料五勺、○中略〉瓜五顆〈醬漬糟漬好物羹生菜等料各一顆○中略〉 右一日供料依前件

〔延喜式〕

〈三十九内膳〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0159 楡皮一千枚、〈別長一尺五寸、廣四寸、〉搗得粉二石、〈枚別二合〉 右楡皮、年中雜御菜并羹等料、 ○按ズルニ、此大膳式及ビ内膳式ノ文ニ據リテ、當時羹ノ調理法ヲ推知スルニ足レリ、

〔北山抄〕

〈一年中要抄〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0160 四月朔日旬事〈○中略〉 次侍從厨家別當以下、取御贄物名、〈○中略〉次供蚫御羹、〈便撤索餅〉次供御飯

〔後水尾院當時年中行事〕

〈上十二月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0160 煤拂、〈○中略〉さうぢの事終りて本殿に還御、常の御所にて御盃參る、あつものそろ〳〵かうじやうの物三獻あり、女中もあつものそろ〳〵例のをしきひとつにすゑにたぶ

〔古事記〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0160是天皇〈○仁德〉戀其黑日賣、欺大后曰、欲淡道島、而幸行之時、坐淡道島、〈○中略〉自其島傳而幸行吉備國、爾黑日賣令其國之山方地而、獻大御飯、於是爲大御羹、採其地之菘菜、時天皇到坐其孃子之採菘處、歌曰、夜麻賀多邇、麻祁流阿袁那母、岐備比登登、等母邇斯都米婆、多怒斯久母阿流迦、

〔日本書紀〕

〈十三允恭〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0160 二十四年六月、御膳羹汁凝以作氷、天皇異之、卜其所由、卜者曰、有内亂、蓋親親相姧乎、時有人曰、木梨輕太子姧同母妹輕大娘皇女、因推問焉、辭既實也、

〔萬葉集〕

〈十六〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0160酢醬蒜鯛水葱歌 醬酢爾蒜都伎合而(ヒシホズニヒルツキカテヽ)、鯛願(タヒモガモ)、吾爾勿所見(ワレニナミセソ)、水葱乃煮物(ナギノアツモノ/○○○○○)、

〔定家朝臣記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0160 康平三年七月十七日癸卯、酉刻節會、〈○任大臣節會、以藤原師實内大臣、○中略〉入夜出御里亭、〈○中略〉公卿以下座定之後、立机公卿座前、〈○中略〉四獻〈右京大夫資綱卿、盃用土器、上客料理所獻之、〉次鶬羹(○○)、〈副鷄頭草加藜〉

〔空穗物語〕

〈藏開中〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0160 すみとりにをのこすみとり入て、たてまつりたまへり、あつまりてけうじてみなとりすべ〈○べ一本作ゑ〉てまいるほどに、おほひなるしろがぬのひさげに、わかなのあつもの(○○○○○○○○)ひとなべ、ふたにはくろほうをおほいなるかはらけのやうにつくりしぼめておほひたり、とりところにはおんなのひとり、若菜摘たるかたをつくりたり、それにそわうの君のてしてかくかきたる、君がため春日の野邊の雪まわけ今日の若菜をひとりつみつる、あついものをば、かくなんつ かうまつりなりにたる、きこしめしつべしやとかきつけて、ちいさきこがねのなりひさごを奉り、きしのあしおり物にたかくもりてそへ奉り給へり、

〔空穗物語〕

〈嵯峨の院二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0161 山のほうしばら、わらはべいだして、おかしきかれきひろはせて、おまへにしろがねのまがりなどとりいでゝ、をものかしがせ、おまへのくちきにおいたるくさびらどもあつ物にさせ(○○○○○○○○○○○○)、にがたけなど、てうじてしろがねのかなまりにいれつゝまいれば、きみたちけうじつゝめしそへつゝまいる、

〔厨事類記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0161 汁物 依時調美不同也、或供鳥臛汁(○○○)、或供鯛汁鱠、然而近代多供蚫汁佳例歟、盛汁器追物中央居之、汁實盛別坏加之、又供寒汁、〈或號冷汁○中略〉 生物〈鱠○中略〉 〈裏書〉承暦四年十月、皇子御著袴、御膳供鳥臛汁

汁物

〔倭訓栞〕

〈前編十一志〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0161 しる 汁をよめり、日本寄語に羹云水路(シル)と見えたり、庭訓に豆腐羹といふは、豆腐汁辛辣羹といふは辛み汁也、羹湯のみならず、何の液汁にても通じていふ也、

〔貞丈雜記〕

〈六飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0161 一汁物(シルノモノ)と云は、飯にそへたる汁の事也、古書には汁物とあり、

〔大上﨟御名之事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0161 女房ことば 一しる 御しる しるのしたりのみそを、かうの水といふ、

〔庭訓往來〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0161 御齋之汁者、豆腐羹、辛辣羹、雪林菜、并https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins201375.gif 蕷、腐笋、蘿蔔、山葵寒汁等也、

〔西宮記〕

〈九月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0161 九日宴 吏部記云、延長四年九月九日、裝束如正月七日、〈○中略〉初酒觴數行、賜供御下氷魚於殿上群臣、采女二人就御臺盤下、一人取氷魚、一人取汁、來授左大臣、大臣取之置臺盤、〈先年式部卿親王下座跪受之、而今日大臣不動坐、〉内竪二 人傳取、次第行之、各取氷魚、少許入臺盤之器、次取汁沃上、

〔江家次第〕

〈七六月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0162 忌火御飯 御菜四種、〈薄蚫干鯛鰯鰺〉和布御汁一坏、〈○中略〉 神今食解齋(ゲサイ)事 次又供和布汁物〈以上居土器

〔左經記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0162 寬仁元年十二月四日戊辰、大殿令大政大臣給、以午剋行事者、〈○中略〉居物皆如先例、二獻粉熟、三獻飯汁、〈汁燒鴂〉四獻又汁、〈https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046785.gif 燒物唐合〉五六巡、〈○下略〉

〔枕草子〕

〈十二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0162 いひにくきもの 新殿をたてゝ東のたいだちたる屋をつくるとてたくみどもゐなみて物くふを、東おもてに出ゐて見れば、まづもてくるやをそきと、しる物とりてみなのみて、〈○下略〉

〔定家朝臣記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0162 康平五年四月廿二日己亥、今日有任大將〈師實〉事、〈○中略〉三獻〈權大納言〉羞汁物、〈汁膾、如鮎燒物權紐等、〉次四獻〈左衞門督、小魚羹、烏賊生蚫等、〉次五獻、〈右衞門督、肴物鯉膾、鮎原作、〉

〔空穗物語〕

〈藏開上二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0162 中納言れいよりみ奉らぬ人もおはしまさずなどの給へば、だいばん所よりまいるおとな四人、わらは四人、おとなはあかいろのからぎぬ、あやのすりもあやかいねりのうちぎきたり、かたちきよげにらう〳〵しき人、五位ばかりのむすめどもなり、わらはもあか色の五へがさねのうへのきぬ、ろうのうへのはかまあやかいねりのあこめ、みえがさねのはかまきたり、かみたけにあまり、すがたおかしげなり、かくて御しる物、御みきたび〳〵まいりぬ、

〔兵範記〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0162 仁安三年十二月十日丁酉、大嘗會悠紀所注進御物目録事、〈○中略〉銀器、〈○中略〉 御汁物器二口、

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0162 一すまし味噌にしろ水をあはせたるは、うはみしる(○○○○○)と云也、すましみそ 一盃に、白水小わん一ツあはせべし、かつほをすこしけづりにだしたるもの也、ふなのころもにに用る也、鯛にも用る也、 一こみしる(○○○○)とは、ふくさみそ一盃に白水一はい合する也、 一うけみもと(○○○○○)をと申は、すめみそ一盃に白水二盃入る也、これもかつをゝにだし候、

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0163 汁の部加減の事 常の本汁(○○) 上々の白味噌を四分、常の遣ひみそ六分にしてよくすりまぜ、こきかげんにして煮かへし、すいのふにて漉ス、 赤み曾汁(○○○○) 上あかみそ八分に、上白みそ二分にしてすりまぜ煮かへして、すいのふにて漉ス、但赤ばかりにては味わろし、 田舎みそ(○○○○) 麥糀のみそ六分、白みそ四分にして、右のごとくする、ふすまかふぢのみそには、葛の粉すこし入べし、 白みそ汁(○○○○) 上々白みそばかりよくすり、酒にてのべ、さてよきほどに水入て煮たて、すいのうにて漉す、 伊勢味そ(○○○○)〈同なごやみそ〉 すらずして水にほだて煮かへし、すいのふにてこし、よきしやうゆすこし加へ、あんばいすべし、 五斗みそ(○○○○) 是は常のみそ汁のごとく仕立、煮上げてかげをおとし漉てよし、 もみ立汁(○○○○) 常のみそなり、板の上にて、ほうてうにてよくたゝき、湯にほだて煮かへしたるまゝこさぬ也、 煮ぬき汁(○○○○) 常のみそすらずして、だしと酒とをくわへて煮あげて、すいのうにて漉す、但かげを少シ落、

温汁冷汁

〔大上﨟御名之事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0164 女房ことば 一ひやしる(○○○○) つめたおしる(○○○○○○)

〔三中口傳〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0164 〈成海〉汁有寒温 冷汁温汁(○○)ト可書也

〔酒食論〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0164 飯室律師好飯申樣 四季おりふしの生珍は、くゝだち、たかむな、みやうがの子、松茸、平たけ、なめすゝき、あつしる(○○○○)、こしる(○○○)、ひやしつゆ(○○○○○)、

〔厨事類記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0164 温汁 蚫汁、鳥臛、鯛汁等也、汁實ベチノサラニモリテ、追物ニ居クハヘテ供之云々、 寒汁實 與利實トテ、カサ子皮ノウヘノスキタルミヲ、カマボコノミノゴトクヲロシテカサ子、カハヲウスク切カサ子テ、三枚バカリニソノミヲ中ニ入テ、一ヲバ左ニ、一ハ右ニ、中フトニヨリテ、サラニ靑カヒジキシキテ、二ヲナラベテモルベシ、ソノソバニタチバナノ葉、ワサビ、イタメジホ、トロヽナドモリグシテマイラス、アヘラルヽ事ハ御前ノ儀也、或説云、寒汁ニ鯉味曾ヲ供ス、コヒノミヲヲロシテ、サラニモリテマイラス、ダシ汁〈或説イロリニテアルベシ、或説ワタイリノシル云々、〉ニテアフベシ、イタジメホ、ワサビ、山ノイモヲヲロシテモルベシ、タチバナノ葉イルベシト云々、或説云、梨子ヲヲロシテグスベシ、アブルトキヲロシタルナシノツユヲトリテ、カキアフベシト云々、

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0164 一鳥とろゝといふ事、冷汁也、鳥をあぶり細末して、たれみそをかへし、鳥を入出す也、一鯛とろゝといふも、鯛の肉を焙、鳥とろゝのごとく調也、是も冷汁也、

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0164 冷汁 いづれもにぬきにて仕立候、もづこあまのりのろふじにても入よし、くり 生姜 めうが かまぼこ あさづきなども入よし

〔四條家法式〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0165 一十二冷汁 松島ヤ小島イカニト人問バ、何トコタエン言ノ葉モナシ、 露ノ身ヲ嵐ノ山ニ置ナガラ世ニ有顏トケムリ立カナ 一正月コ疊、鮮海鼠ヲイカニモ細造テ、酒ヲカヘラカシテ、鮮海鼠ヲ洗テ、下地ノ汁ヘカキヲ入テ、一泡煮テ採アゲテ、タヽキ參時、鮮海鼠ヲ一度ニ入テ山葵ガチ和ベシ、若山葵ナクバセウガ、又カキナクバ蛤成トモ、 二月梅花冷汁、煎海鼠ヲイカニモ薄ク小口切ニ切テ、酒ニテ一泡煮テ採上テ、下地ノ汁ヘ入テ、亦栗ヲ小口切ニ切リテ入テ花ノ心ヘ、可有山ノ芋トロヽヲ少入テ、アマリネバラヌ樣ニ可有、甘海苔針薑入テ、 三月ハエ疊ハエヲ下地ノ汁ニ入テ、一泡煮テ其ハエヲ採上ゲ、ベチノハエヲ炙燒ニ燒テ能摺蒸テ、下地ノ汁ヲカヘラカシテ入テ、少シ增テ甘海苔ヲ小ニ燒テ入テ、カラミニハ山葵、若ナクバ芥子成トモ入テ吉、 四月卯花冷汁、イカヲ下地ノ汁ニテ一泡煮テ採上、其イカヲ薄ク造リテ、甘海苔ヲモ小ニシテ入、山ノ芋ヲトロヽニシテ入ベシ、アマリネバラヌ樣ニ可有、 五月鮎疊、鮎ヲ下地ノ汁ニテ一泡煮テ採上ゲ、能越テ和ベシ、右ノハヘ疊ノゴトシ、 六月瓜冷汁、海老ノ皮ヲムキテ、下地ノ汁ニテ一泡煮テ採上、能摺テ和ベシ、亦瓜ヲ割ミテ入ベシ、辛ミハタデ也、 七月ホヤ冷汁、ホヤノ皮ヲ去、腸ヲ能摺テ入、ホヤヲバ薄ク細クイカニモ小ニ造テ、下地ノ汁ヘ腸ト一度ニ入ベシ、ウケミニハカタ海苔ヲ入テ山葵勝ニ和ベシ、若山葵ナクバ芥子成トモ、 八月鯉見、フライノスタレ骨ヲ下地ノ汁ニテ一泡煮、ヤガテ採上テ其骨ハノケテ、鯉ヲ蒲穗ノ樣ニシテ、イカニモ薄ヒロゲテ、能々色ヲ取テ、下地ノ汁ヲカヘラカシテ入ル也、ウケ身ニハ梨ノ皮ヲムキテ、流シ葉ニ切テ入、甘海苔ヲモ少入テ、芥子ヲ辛ミニ可入、 九月鯛トロヽ、鯛ヲ蒲穗ノ身ノ樣ニシテ、酒ヲカヘラカシテ色ヲ取テ、下地ノ汁ヲカヘラカシテ、鯛身ヲ摺入テカキ廻シ、甘海苔ヲ入ベシ、辛ニハ山葵若ナクバ芥子也、 十月辛ミ冷汁辛螺ノ辛ヲ能々アブリテ、能摺テ下地ノ汁ヘ入テ、亦辛螺ノ身ヲモ 細造テ入ベシ、コ椒モ入ベシ、 十一月鳥タヾミ、鳥ノヒツタレカツヲ身ヲ、カマボコノミノ如ニシテ、下地ノ汁ヲカヘラカシテ、鳥ノ身ヲダシカツヲ身ニテトキテ入テ、少サマシテ山ノ芋ヲトロヽニシテ入テ、甘海苔ヲモ入、山葵ノ辛ミナクバ芥子、 十二月カキ冷汁、カキヲカラナベエ入テ煎テ採上ゲ、能タヽキテ下地ノ汁ヘ入テカヘラカシテ、少サマシテ山芋ノトロヽヲ入テ和ベシ、辛ハ古椒也、

〔今川大雙紙〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0166 食物之式法の事 一人前にて飯くふ樣之事、人より後にくひ初め、箸をば人よりさきに置也、ひや汁をうくる時は、箸持たる手にて左のすわうの袖をかい取て請べし、汁のさいしん引人の前に來る時、先すふて出す事、ひけふなり、又何とうまき二汁ひや汁也其、かけてくふべからず、大汁請べし、もしひや汁などはくるしからず、又汁の中なる魚鳥の骨を折敷のすみへ取出す事、ひけふ第一也、

〔中島宗次記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0166 一ひやしる請て、やがてすう事なかれ、飯をくひてすう物なり、

〔躾方明記〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0166 食に汁懸候事は、冷汁を懸候て能なり、但時宜によるべし、珍敷物などならば、本汁懸候ても不苦なり、 一常の食の時ひや汁をば、二の膳に組付て置なり、引冷汁は略儀なり、引冷汁の時はかさに請、左の方に置べし、

〔江家次第〕

〈二十〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0166 攝政關白家子書始 次二獻冷汁、次三獻熱汁、或及四五獻

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0166 宇治平等院御幸御膳〈元永元年九月廿四日、大殿被下御日記定、○中略〉 三寸五寸樣器〈○中略〉 御汁物二度〈寒汁(○○)松茸、熱汁(○○)志女知、〉

〔愚味記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0166 承安三年正月九日、今日左相府始渡給、〈○中略〉羞饌〈相府陪膳大學頭有光朝臣〉二獻之後居冷汁、三獻熱汁、 次暑豫粥、

〔大饗次第〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0167 嘉禎二年六月九日 居冷汁 鮒汁鱒實同〈敷鏡葉、敷濱木綿、〉 雉〈足以濱木綿之〉 居一折敷

大汁 小汁

〔尺素往來〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0167 本膳、追膳、三膳、大汁(○○)、小汁(○○)、冷汁、山海苑池之菜、誠調百味候也、

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0167 一飯ノ獻立ノ事、〈○中略〉メシノ大汁ニビブツヲスル事不難、當流ニハ有之、

〔食物服用之卷〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0167 一食にかくる汁は、大汁(○○)又はそへしるほん也、魚鳥のしるかけべからず、さりながらあひてのことわりによるべし、又貴人御もちひの汁かけてもよし、

一汁 二汁

〔躾方明記〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0167 一常の食喰べき事、箸を取、卒度二箸程給、さて大汁を取あげ、始は汁を不吸してみを喰べし、又食給、汁を吸候ひてみを喰なり、三度迄は大汁にて給候て能なり、扨中の菜を參なり、其後食を喰、さて二の汁を參なり、二三給やう湯漬の時と同前也、

〔躾方明記〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0167 一二の汁喰べき事、箸を取直し、右の手にて取あげ、左へ取移し箸を取直し、みを喰べし、扨下に置候時は、箸を取返し右へ取移し、下に置なり、幾度も如斯なり、 一三ツ目の汁喰べき事、箸を取直し、左にて取箸を返しみを喰べし、下に置時は箸を取直し、其まま左にて置なり、五ツ目迄御入候とも、左右まいり樣二三と同前なり、

〔鹿苑日録〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0167 慶長八年五月十三、未明ニ赴尊勝院以心、西堂光駕、寺志州、同半左衞門尉、玄仍、永旬、藏人朝之會席、汁糟糖ニ蔓艸、白瓜、煎昆布、鹽山椒、引テ煎麩、二ノ汁(○○○)笋加椎茸、根若サシミ、中酒七片、菓子金飩、茶請笋、各々休息、俗客者本膳汁、同白瓜、同煎昆布ノ處ニ、シヲ引二切、二ノ汁ニ笋ニ加鳥、又引テ鮎、并ニ鯉、

蚫汁 鯛汁

〔厨事類記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0167 温汁 蚫汁、鳥臛、鯛汁等也、汁實ベチノサラニモリテ、追物ニ居クハヘテ借之云々、

鱸汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0168 鱸の汁は 昆布だしにてすましよし、うは置こんぶおごも入、雲腸(くもわた)入てよし、うすみそにても仕たて候也、

鱈汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0168 鱈汁は 昆布だしにてすましよし、すなはちこぶ上置によし、おごかたのりもをく、だしをくはへよし、又はまぐりつみ入、みのになどをくはゆることもあり、同ひだらも汁によし、

鱏汁

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0168 一鱏の汁は、柚の葉をまぜてもみ候て、水にて洗てしぼり入なり、ふくさ味噌こくして、大根豆腐ふきなどをも入て能也、

鯨汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0168 鯨汁は すましにかげをおとし候、みそしるにてもしたて候、妻ごばう大こんくきたちなどよし、竹の子めうがつくり次第、くじらはつくりさつとにえ湯をかけることもあり、又くじらにさつとにてよきも有、はじめこはく煮候て後よきも有、可心得也、

〔鯨史稿〕

〈六〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0168 鯨肉調理 赤身黑皮 味噌汁ニテ煮、或ハ煮付ニシタルモヨシ、又ハ醬油スマシニテモ用ユ、

〔文祿四年御成記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0168 一初獻御盃參候、御雜煮參候而、御銚子參候と御能初メ候同時也、〈○中略〉 六ノ御膳〈○中略〉 鯨汁

鰒汁

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0168 一ふぐ汁料理は、差合有候故取捨仕候也、但しきみの木又は古屋の煤堅嫌べし、

〔慶長見聞集〕

〈九〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0168 鰒の肉に毒ある事 見しは今知人四五人同道し、愚老〈○三浦淨心〉所へ尋來り給ひぬ、われ出逢、たまさかの御出、何をかもてなし申さん、あたらしき肴はなきかと、ひとりごといへば、客の中に一人申されけるは、亭主は我等へ馳走ぶり見えたり、餘の物は無用、皆々鰒汁好物なれば、肴町に鰒有べし、たゞ鰒汁よといへる處に、又一人鰒汁のもてなしならば、鶴白鳥にもまさる成べし、たゞ鰒のあつ物よと口々に いへり、愚老聞て、鰒汁安き御所望也、然共爰に物語の候、我知人に中嶺源右衞門と云人、常に鰒汁を好みしが、去年の夏鰒の肝にあたつて血をはき忽死たり、愚老それを見しより鰒はおそろしく候、又當年傳馬町にて、彦三と申者鰒を好みしが、有時干鰒をくひ死たり、扨又此程こあみ町にて鰒をくひ、親子けんぞく七人家一ツにて死たり、是を見しよりわれをくびやう心にや、鰒の沙汰を聞は身の毛よだつ也、此度鰒汁をばゆるし給へと申ければ、其中に竹田庄右衞門と云年比五十計の老士聞て、亭主の申處理りしごくせり、唯今思はずしらず鰒のさたありしに、若き衆たはふれ事に所望なり、我も此已前人の相伴に鰒汁をくひつるが、くふうちにも心にかゝり、食して後も何とやらん忘がたかりし、鰒を食しては酒をのみたるがよきと聞つれば、われ下戸なれ共、酒を多くのみたりしに、却て酒に醉て胸とゞろく、是は鰒故か酒故かと、しばしが程心元なく思ひつれば、酒さめたり、鰒食しては誰がおもはくも同じかるべし、然るときんば客に鰒をもてなす亭主は無分別者成べし、鰒無用と申されければ、若き衆是非のさたなし、爰に或老人此物語を聞ていひけるは、醫書に鰒は大温、肝に毒ありとしるしたり、然るに去年通町にて人々寄合鰒料理せしが、此鰒人ためならずとて、手づから生鰒をあらひ、肝を取て捨、血をあらひ、骨迄も切捨て、みところ計をよくこしらへ、にごり酒に一時ひたし料理して、八人寄合しよくせしに、其内五人は即時に死、三人は十日ほど病て後本腹す、此人々町にても人にしられたる人也、鰒をあまたくひ死たると沙汰あらば、かばねの上のちじよく成べし、時のくひちがひとてさたもせず、上代と末代は人の性も違ふ故か、肉計くひて人多く死する事必定なれば、鰒を食して益有まじく、かくおろかなる人を、佛はたとへて多く經に聱牛尾を愛するがごとしと説れたり、〈○中略〉天下にかへざる大切の命を持て、いける間よろこばす、毒魚と知てふくすは、世のしれものなりと申されし、

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0170 ふくとう汁は かはをはぎ、わたをすてかしらにあるかくしぎもをよくとりて、ちけのなきほどよくあらひきりて、まづどぶにつけてをく、すみざけも入候、さて下地は中味噌より少うすくして、にえたち候てうをゝ入、一あわにてどぶをさし、鹽かげんすい合せいだし候也、すいくちにんにくなすび、

〔秋里隨筆〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0170 備後鞆津鰒汁 爰に備後鞆の津は、近邊船だよりよき湊にして、日夜入出の船おふき繁津なり、かゝる海濱なれば、諸魚の價下直にして、完く自由をなす、時に此地別て鰒おふく食すことなり、餘國に異て、當地歴々の人だに是をいとはず食すに、尺にたらざる鰒は料せず、焚火にくべよき時分引出して、皮を剥て柚醬油などにて食す事なり、わきて鰒は頗毒なれば料理第一に念入、或は鹽水にさらしあぶらをぬきて食すに、折とし時としてこれがために命を落すものすくなからず、しかあるに此當地のもの、いにしへより鰒にあたりて死たるものかつてなきよしをいふ、一應不思議の事なり、予〈○秋里籬島〉つら〳〵鰒魚を思ふに、他の魚に異りて毒おふかるべし、されどこれを食しかならず命を失ふと決しがたし、加之俗説に北向の鰒を食せばかならず死すといひ、或は料理杜撰なれば毒にあたると決定せしものならば、蓋鰒を恐るゝことなし、此説全く虚成べし、是如何といふに、料理いかにも丁寧をつくし、且魚の新古をわきまへ食するに、折として魚毒にあたり命を失ふ者まゝあり、亦別條なきものあり、されば魚の新古によらず、料理の丁寧杜撰にもかぎるべからず、已腹中虚時是を食すれば魚毒のあたりつよくして、命を落すなるべし、亦鰒を食すれば、決て寒を防くなどいふ、元來鰒魚は温なるものなれば、極寒の節是を食すれば、寒さをしのぐこと全く自然の理なり、は或は仲春の頃より下春にいたりては、菜たね鰒といひて、かならず毒おふしといふ、案るに、都て立春より草木陽氣をふくみて芽だゝんとす、況人は万物の靈なれば、 是におなじく陽氣の時いたれるに、温物を食すがゆへおふく是がために死す成べし、此理如何といふに、醫療に太陽より陽明病にいたり熱になる時は、大黄劑の寒藥を用、大陰小陰にいたり、熱陰に閉る時は、附子劑の温藥をもて病を治す、しかるに表性の陽病なるに温藥の附子を用へば、かならず命危し、亦裏性の陰なるに、寒藥の大黄を用ば、決て命保こと不能、將馬犬に時子烏頭の温藥を食せば忽死す、牛猫これを食すとも不死、全く馬犬は陽獸なり、牛猫は陰獸なるがゆへなり、此理をもつて陽氣にいたる時節に鰒を食すれば、かならず命危きを考ふべし、蓋鰒を毒魚としつて、食す者は大膽、毒なきものとこゝろへ食す者は愚人也、かならずしも主親につかふる人は是を食すことなかれ、はからず不忠不孝の名を下すべし、且其人品を損ふことなり、

〔牛馬問〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0171 河豚(フグ)魚、本草綱目無毒と有、時珍の食物本草には、大毒有と見へたり、此魚きはめて氣有ものあり、又毒のなきもの有、故に世上其説まち〳〵也、若此毒にあたる時は、藥物の解しがたきなり、近代薩州大守入國の時、西海にて小舟一艘御座船を呼はり〳〵漕よする、何事やらんと猶豫の間、ほどなく御座船に近付、御船を見かけて願ひ奉る也、砂糖を下し賜はりなば、衆人の命たすかり候、御慈悲を以て、頂戴仕度旨ねがひける、其子細を尋させ賜へば、河豚魚の毒にあたり、九死一生に候、今少し時さりなば、一人も活する事を不得、砂糖だに候へば、みな〳〵命たすかり申由願ふ、此事太守にも聞しめされ、人の命を救ふに於ては、砂糖を賜はりなん、猶其實否を見屆參るべき由被仰付、彼小舟に御近臣を添らる、急漕出し、彼が所に至り見れば、衆人惱亂して、其言の如し、扨右の砂糖を白湯に探(カキサガ)し用るに、暫くの間に、こと〴〵く快然を覺て御高恩を謝しける、其妙なる事大守へ申上けると也、此事を尾州にても試たる人有しが、尤妙に彼毒を解したりと也、しばらく爰にしるして後人に備ふ、

〔松屋筆記〕

〈八十五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0171 魚毒の解藥河豚毒の解藥 魚毒にあたり、又は河豚の毒にあたれるなど、黑砂糖を多く服すれば愈、白砂にては功なし、黑砂糖を白湯にて多く服すれば、いかなる魚毒にても解さゞるはなし、薩摩國にては此方ありて、更に河豚を恐るゝ事なしといへり、 簷曝雜記六卷〈廿丁オ〉に、食河豚毒者、陶九成録方、或龍腦漫水、或至寶丹、或橄欖、皆可解、又槐花炒微黄、與乾胭脂各等分、搗粉水調灌即効云々、

鰒モドキ汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0172 鯛ふくとうもどきは 下地中味噌にてどぶさし、たいを入に候て、しほかげんすいあはせ出し候也、又こくなり候へば、いくたびもどぶはさし候なり、但ひぶくのかわ入てよし、ひぶくやきてはぎ候てよし、

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0172 鯒(こち) もうをなどもふくとうもどきとていだし候、これもかわをはぎすて、ひぶくのかわ入吉、仕立樣はふくとうのごとし、

鮟鱇汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0172 鮟鱇の汁 かわをはぎおろしきりて、かわをも實をもにえ湯へ入、しらみたる時あげ水にてひやし、その後さけをかけをく、みそしるにえ立候とき、魚を入どぶをさし、鹽かげんすい合せ出し候也、又すましの時は、だしばかりにかげも少おとし候、此時はうはをきつくりしだいに入、

シヤカ汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0172 しやか汁 靑いわしのわたかしらすてあらひ、妻は、大こんにてもめうがにても入、だしばかりにて仕たて候てよし、

海鼠湛味汁

〔易林本節用集〕

〈古食服〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0172 海鼠湛味(コタヾミ)

〔書言字考節用集〕

〈六服食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0172 海鼠湛味(コダヽミ)

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0172 一カキコダヽミノ事、此冷汁、當世アエ給樣當流ニ相違也、是ヲモ口傳ヲバ不知シテ推量成ニ依テ、如此ノ事ナル哉、先ナマコヲ能ホドニ作リテ、酒ニテソト色ヲトルベシ、同カキ ヲモ酒ニテ色ヲトリテ、蠣ヲバ能タヽキテ、サテ山葵辛ミニテ、辛ミニハ山葵可入、シホ酒ヨキ、若山葵ナクバ、辛ミニハ何ニテモ可入、若蠣ナクナマコ計ニテアラバ、コタヾミト云也、蠣ナキ時人ノ了簡ニ蛤ヲ〈○ヲ下恐有脱字〉事非本儀

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0173 こだゝみは 煮ぬきにて仕立候、汁をあたゝめ候て、出しさまにいとなまこかまぼこそぼろにつくり、あをのりなど入すいあはせ出し候也、山のいもおろしても入候也、〈むかしハ山のいもいれず〉

鯉汁

〔徒然草〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0173 鯉のあつもの食たる日は、鬢そゝけずとなん、膠にもつくる物なれば、ねばりたるものにこそ、

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0173 鯉のゐいり汁は まづゐをとう、ゐとほそわたをよくたゝき、なべに入、きつね色にいりて、かすをとり、酒にてもだしにてもなべをながしすて、後だしを入煮申候、こいは三枚におろし、うろこともにきり入候、夏はうろこ入事あしく候、口傳在之、しほかげん大事也、又ゐをすりてさけにてのべ別に置、にがみのかげんすい合出す流も在之、〈五左傳〉同鯉みそ汁にては鮒のごとく仕立候、

鮒汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0173 鮒の汁は みそを中より上にして、だしをくはへよし、若和布にてもかぢめにても、ふなをまきてに申候、あまみすくなき時は、すりがつほいれてよし、いづれもみそをだしにてたて候てよし、よく煮候てさかしほさし、すい口山椒のこ、

〔言經卿記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0173 慶長八年四月廿七日癸丑、因幡堂へ禁中御代官トシテ參、各相伴之衆、持明院、冷千壽丸、五辻、正親町、三條、滋野井、高倉等也、朝飡已後各參了、〈○中略〉長橋殿ヘ御ナデ物、御香水等進上申、珍重之由被仰出了、禁中常御所ニテ鮒之汁(○○○)各被下了、

ハラヽ汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0173 はらゝ汁 はらゝうすみひづにおろしなど入吉、中みそにて仕立候、だし入かきな ど入候時は、味噌かげん口傳、

鰌汁

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0174 一鰌の料理は、能々ごみを出せ、其上ぬかにてみがき、ぬめりのなき程にして、にごり酒にて能煮候也、其上ニ如常にこを入、みそをこくして煮也、

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0174 鰌汁 中みそにだしをくはへよく煮申候、どぶをさしてよし、妻はごばう大こん、其外色々、但久しくたき候て、又みそのあぢあしくなる事あり、左候へばあたらしき味噌をたてさし候て出しよき物也、いづれもみそをこうしてひさしくに申、しるには此心持入也、口傳、すい口山椒のこ同葉、

〔大和本草〕

〈十三魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0174 泥鰌 泥鰌ノ羹、米泔ニテ能煮、アブラ浮ビタルヲスクヒテ、スリミソヲ入一沸スレバ、氣ヲ不塞シテツカエズ、煮鰌法也、

〔浪花の風〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0174 ほね拔泥鰍の調製、江戸と替ることなく、刻み午房を加へ鷄卵をかけたる抔、全く江戸の通りにて、三郷一般にあり、元この調理方は、文政の始、予〈○久須美祐雋〉が二十四五歳の頃、江戸本所大川端石原町にて、石井某といへる鰻店にて初て製せしに、今は三都一般に專ら行はるゝこととはなりぬ、しかし初は鷄卵は入るゝことなかりしが、其後に加ふることとなりぬ、今も江戸にては鷄卵を加へざる製もありと覺るに、坂地の製は一樣に鷄卵を加ふる樣なり、この骨拔の調理を初めたる石井某は、其後店を兩國藥研堀へ轉ぜしが、其後はいかゞ成たるや知らず、其元住し大川端の店は、舊に依て石井をば名乘しかども、即席料理の店となりて、其主人は橋本や富五郎といへる船宿にて兼たりしが、富五郎は天保十二年丑年に死して、後は其家も絶へたり、うなぎ蒲燒鼇烹抔は、古來よりある調理なるに、江戸と坂地とは其製違ひぬるに、骨拔の泥鰍に限りて、千里一樣なるもおかしといふべし、都て新製の一時に傳播せしゆゑに、かくは一樣なることなるべし、

〔老の長咄〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0175 おのれ好めるものとて、近しき友鯲(ドジヨウ)を一升ほどくれられたり、よきものえたりと思ふ折から、一靜といへる友來たれり、幸なるかなこれを煮んといへば、先待れよ、こなたにては世話なり、我が宿にて煮させ申べしと、其まゝ持行ぬ、間もなく下人に鍋を提させ、酒一陶(トクリ)そへてぞ來たる、こはふしぎ、はやく煮べきものならずと思ひながら見てあれば、居酒やの煮おきのどじやう汁なり、是はいかにといへば、さればよ、けふは我心ざす事あれば、かくははからひしなりといひつゝ、喰ひ、酒も皆呑つくし、先の鯲を又取よせ、いさ〳〵御堀へはなしなんと、川邊にいたりてうちあくれば、おほくの鯲れい〳〵とさる、

越川汁

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0175 一越川汁といふは、かぢかといふ魚を竹の子白瓜など入調也、夏の汁の賞翫也、冬も奉る事有、略してはへをする事も有、

雜喉汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0175 雜喉汁は こぶなえびまじりにても、かげんは右のごとく、妻ごばう大こん竹の子何にても作しだいに入、さかしほすい口同、

〔鈴鹿家記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0175 應永六年六月三日癸丑、御シンザウ樣ヨリ、治部私呼ニ參、ザコ汁被下旨、夕飯給ル、

鼈汁

〔浪花の風〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0175 鼈は土人賞玩するゆゑに、四時ともにあり、されど其調理江戸と違て、羹となして、露澤山に仕立て、江戸にていふすつぽん烹といふものゝ調理方は絶てなし、夫故土人の調製にては、江戸人の口には適し難し、

笛卷汁

〔大草殿より相傳ノ聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0175 ふへまきじるは、かまぼこのごとくちと鹽を入する也、扨しやくはち竹程の竹につけて、いかにも能煮て、扨にへたる時水にてひやし、竹をぬきて、はす切にも車切にもきる、又しるの仕樣は、すめ味噌一はいに、三ばんとぎの白水を二はい合て、又かつをゝけづり、布の袋に入、煮だし候てする也、袋を取上ゲふへまきをいれにるべし、其うはをきは、時分によりせりのねがちに葉のかたを懸て、四寸にも五寸にも切て、酒いりにしているゝ、又時によりはぎな を今の樣にしていれべく候、又たんざくこぶをば、いつもの糸たんざくの事口傳にあり、又酒いりは鹽をいりてさけを入、其酒三分一水を入てする也、又吸口は柚の葉いつも入る也、冬はこせうはじかみ、酒鹽はすこしさす也、

アラ汁

〔秇苑日渉〕

〈八〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0176 燙膾羹 煮膾殘骨頭羹謂之燙膾羹〈俗云阿喇寔屢〉居家必用、魚膾條曰、將魚頭尾薑辣羹、加菜頭供、淅西人謂之燙膾羹、松江府志鱸魚條曰、有骨淡羹、毎鱠悉以https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins017601.gif 羹、淡而有眞味

酢入汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0176 すいり汁 味噌をこうして、ねいものくきともに入、よくにえ候時、鮒のすしのかしらきり入出し候也、

鶴汁

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0176 一生霍料理之事、先作候て酒鹽を懸て置、汁は古味噌をこくして、能かへらかして、煮出を後入候樣にして、座敷の鉢により鳥を入候也、何も時の物を加へて吉也、夏菜うどなどを酒にて煎て入候也、又もみだうふも吉也、すひくちは柚を入て吉也、

〔食物服用之卷〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0176 一鶴の汁には、すぢを三ツあるひは二ツをく也、ほめやう同前、〈○白鳥汁〉

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0176 鶴の汁 だしにほねを入せんじ、さしみそにて仕立候、さしかげん大事也、妻は其時の景物よし、木のこはいかほど數入候てもよし、何時も筋を置、すい口わさび柚、又はじめより中味噌にても仕立候、すましにも、

雁汁

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0176 眞雁料理之事、作候て酒を懸汁ニ入候時、なまぬる湯の少あたゝかなるにてゆがき、しぼりて入候也、又すましに足骨を入て煎じ、出しをも別にして後にさすなり、又別の鍋にて羽がいむねの皮を取て、酒煎にしていり付たる皮を能取て、其跡を煎候てすましを入て鳥を入候也、二には夏菜せりなどを加て吉、但吸口胡椒なり、但鹽鳥鶴なども同前也、

〔食物服用之卷〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0176 一鴈の汁には、くらげ大豆を二ツ三ツほど入事あり、そのときはいつにてもあれ、 初鴈とほむべし、しさい有事也、口傳、

〔江家次第〕

〈二正月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0177 大臣家大饗 次汁物〈雉羹〉

〔定家朝臣記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0177 康平五年正月二日、有臨時客事、〈○中略〉先一獻、〈少納言〉二獻〈左大辨〉羞海雲、三獻〈右京大夫〉雉羹(○○)、次召薯蕷粥、事畢無引出物

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0177 一靑がち汁の事、鳥の肉を細に作り、すりびしほをして、鳥の腸を能ときて、鍋に入いり付、酒を少ヅヽ指、能時分に水を入、もみ鰹を入煮立、鳥を入心見て、胡椒の粉をはなし、柚を入奉る也、大事の汁なり、

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0177 一雉の靑がちの事、如常別候て作り、酒をかけず候、則わたを念を入すごき、能々たたき候也、其後鍋にて鹽を煎候て、其跡に右のわたをかうばしく成程煎候て、すましの汁を入、則煎出をも入、煮たて候時鳥を入候也、こには夏菜うどなすび豆腐、何も時の物を酒にて煎候て、汁もり候時少ツヽ入候て、上汁をかくるなり、但酒鹽は古酒一段上々也、吸口ニは胡椒柚など能候、鹽は右の煎鹽を鳥入ざる先ニ入候て、能加減の時鳥を入候也、 一野鷄はすまし味噌能也、但山のいも、あまのり、うど、つく〳〵し、右の間など能也、但ふくさみその時には、いもがらも吉、鳥には酒鹽をかけずして能也、又燒鳥には一通かけて吉、燒鳥をけし胡椒山椒などを加へてもする事有之也、

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0177 あをがちは 雉子のわたをたゝき、みそを少入、なべに入、きつね色ほどになるまでいり、なべをすゝぎ、さてだしを入、にえ立次第鳥を入、鹽かげんすいあはせ出候也、いりかげん大事也、霜雪正月の事なり、 山かげは だしになまだれをくはへ、雉子を入仕立候、妻は山のいものり、靑麥にても、有次第に 入、いれずしてもくるしからず、

白鳥汁

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0178 一生白鳥料理は、作候て薄酒鹽を懸て、味噌に出を入て、かへらかして鳥を入候也、但こゝは何にても時々の物を入候也、うど京菜は酒にて煎て加ても吉、又もみ豆腐を湯にゝしても吉なり、 一鹽白鳥料理之事、先作候て能程に鹽を出て、餘りあつからぬ湯にて洗、しぼりて酒を懸候、汁はすまし味噌少こき程にして、煎出しを後にさして、下地をかへらかして能入候也、何にても加へて吉也、但みやうがふきとも湯にをして吉、椎茸も能なり、何色にても二色程加へて吉也、

〔食物服用之卷〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0178 一白鳥の汁の事、上にくろほねを二ツほどもり候ていだす也、そのとき汁をとりあげ、くはざる先にほむる事しつけ也、くひ候てのちほめ候は、あぢはひをほめたるもの也、ほんの賞翫のほめやうにてはなく候、

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0178 白鳥の汁 中味噌にてしたて候、又すましにも、妻は時分のものつくり次第ニ入、

鷺汁

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0178 一生靑鷺料理之事、作候て二度湯がき酒にて付て、古味噌こくしてかへらかして、出し候時しぼり候てにだしをもさして吉、但古味噌の時は、いもずいきを酒にて煎て入候也、又すましみその時は、なすびを酒煎にしても吉也、但椎茸茗荷なども能也、吸口は柚胡椒の内しかるべく候也、

鶉汁

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0178 一鶉汁の時は少燒候て、鳥六ツ程に切て、何にても時の物を加て、ふくさみそにて吉也、又は燒候て、けしくるみなどにてあへ候事も有べし、

貉汁

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0178 一むじな汁の事、燒皮料理共云、但わたをぬき、酒のかすを少あらひて、さかはゆき程の時、腹の内に右のかすを入て則ぬひふさぎ、どろ土をゆる〳〵として、能々毛の上を泥にてぬりかくして、ぬる火にて燒候也、燒樣の事、下にぬかを敷、上にも懸てうむし燒にして、土をおと し候得者、毛共に皆土にうつり候を、其儘四足をおろし、なまぬる湯に能酒鹽はいかにもかけしほしてさし候也、

狸汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0179 狸汁 野ばしりは皮をはぐ、みたぬきはやきはぎよし、味噌汁にて仕立候、妻は大こんごばう其外色々、すい口にんにく、だし酒鹽、

〔料理物語〕

〈萬聞書〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0179 狸汁之口傳 身をつくり候て、松の葉にんにく柚を入、古酒にていりあげ、その後水にてあらひ上、さかしほかけ候て汁ニ入よし、獺もかくのごとくつかまつりよし、

〔瓦礫雜考〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0179 鴫やき たぬき汁 又たぬき汁ハ、守武千句に、小町こふ四位の少將たぬきにて、もゝ夜もおなじ丸ね丸やき、といへるこれなるべし、されども今の蒟蒻を味噌汁にて煮たるにはあらず、大草家料理書に、むじな汁の事、〈たぬきもむじなも料理ハおなじかるべし〉燒皮料理共云、但わたをぬき、酒のかすを少あらひてさかハゆき程の時、腹の内に右のかすを入て則ぬひふさぎ、どろ土をゆる〳〵として、能々毛のうへを泥にてぬりかくして、ぬる火にて燒候也、やき樣の事、下にぬかをしき、上にも懸てうむし燒にして、土をおとし候得者、毛共に皆土にうつり候を、其儘四足をおろし、なまぬる湯に能酒鹽はいかにもかけしほしてさし候也、と見えたり、これら名ハいさゝかのたがひにて、其實は今と大に異れり、

〔屠龍工隨筆〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0179 狸を汁にて煮て喰ふには、其肉を入れぬ先、鍋に油を別ていりて後、牛房蘿蔔など入て煮たるがよしと人のいへり、されば菎蒻などをあぶらにていためて、ごぼう大こんとまじへて煮るを名付て狸汁といふなり、

〔宣胤卿記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0179 文明十二年十一月二日戊寅、當番第二也、食後參内、〈○中略〉晩頭退出、於都護許衣冠、於彼亭狸汁(○○)張行、人數源大納言、亭主父子、余、民部卿光忠等也、

〔關の秋風〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0179 狸を得しかば、庖丁して汁にさせたり、誰しも初めてくふ事なれば、一たびくひては頭 うちかたぶけ、しばしかうがへしばし味ふほどに、其匂ひいとあしく、みな〳〵はなを掩ひて吐き出だしたり、搗尾何某もおなじく喰ひしが、強食の名を得たりや有けん、其肉を只に呑みては、汁をすひつゝ三度までかへたり、さらば閑かに味ひてといへば、うまきさまなれど、味ひもせで汁打ち吸ひて、ひたのみに呑みたり、實ははなおほふ人にもかはらざりけりとて興じぬ、

鹿汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0180 鹿汁 うすみそにだしくはへ、妻色々入仕立候、すいくち にんにく こせう

〔延喜式〕

〈三十二大膳〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0180 釋奠祭料 三牲宍各一頭、鹿一斗五升、〈大羹料〉

纎蘿蔔汁

〔橘庵漫筆〕

〈二編三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0180 セロツホの味噌燒汁と云もの、京師の茶席にも用ふ、是をソロボ汁などといよいよ誤れり、大根を纖に切りて、味噌を燒きて羹とせしものなり、故に纖蘿蔔汁といふを誤れり、

〔下學集〕

〈下飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0180 纖蘿蔔(センロフ)

人參汁 オロシ汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0180 人參汁 大こんを大きにきり、一鹽の鯛を入、みそしるにだしくはへ、よく〳〵に候てよし、おろし汁 大こんをおろし かき はまぐりなど入、中味噌にだしくはへしたて候、

莖立汁

〔醒睡笑〕

〈八〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0180 一江州志賀の浦に姥あり、天然作意生つきて、かすりしうくをいふに上手なり、かすりを好む盲者あり、若狹の小濱より、はる〴〵とかれがもとへあひに行、なにとなふ宿をかりしが、飯の汁を一口すひ、此汁のみは何ぞととふ、うばそれはくゝたちのしる候よ、人のくちきらふとて、いや去年八月から、なまひてをいたと、

菜汁 干菜汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0180 わり菜 かぶらともにわり付、一束に切たる事なり、中味噌にだしくはふ、 右衞門五郎 菜をながくもみじかくもきり、ひらがつほも入、ぬかみそも入たるをいふ、 柳ニ鞠 つまみ菜にさといもいるゝ也 干菜汁 中みそにだしくはへ くろ大豆 蛤 小鳥などたゝき入、さといもゝ入よし、

葱汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0181 ねぶか汁 みそをこうしてだしくはへ、一鹽の鯛を入よし、すましにも仕たて候、

欵冬汁

〔時慶卿記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0181 慶長八年三月一日、當年初而食ニ呼、宗珠、宗慶、孝文、葛木内、長野殿等也、欵冬汁也、宗珠ヨリ鮑十盃給、

菊汁

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0181 一菊ノ汁シタヽムル樣、若キ菊ヲ摘デ能スヽギ、下地ヲカヘラカシテ、扨菊ノ葉ヲ入テ、シホサカシホ味ヒテ、參スル時クルミヲスリテ上ニ置テ參スル也、春ヨリ冬ニ至迄參スル也、夏ヨリ秋冬マデハ菊花ヲ取、湯ヲ懸苦味ヲ取如右料理參スルナリ、

蓬汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0181 蓬汁 みそにだしくはふ、ゑもぎをざく〳〵にきり、鹽すこし入もみあらひて入、又ゆがきてもよし、たうふなどさいにきり入、正二三月に吉、

ハコベ汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0181 はこべじる はこべをきりもみあらひ、三月大こんなどくはへ入、是もみそにて仕立候、

薺汁

〔執政所抄〕

〈上正月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0181 二日 臨時客〈○中略〉 御料次第 一獻主人 二獻居飯、海雲汁、零餘子燒、 三獻雉羮 追物生蚫、浮海松、雉足、酢坏、〈無海松時用白根○中略〉 六獻薺汁(○○)

集汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0181 あつめ汁 中味噌にだしくはへよし、又すましにも仕候、大こんごばういもたうふ竹の子くしあわびひぶくいりこつみ入なども入よし、其外色々、

〔天正十年安土御獻立〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0181安土上樣三河守殿御申獻立〈○中略〉 十六日之夕めし御ゆづけ〈○中略〉 二膳 あつめ汁〈いりこ くしあはび ふ しいたけ 大まめ あまのり〉

〔鹿苑日録〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0181 慶長八年五月廿三、朝施哦隗、焉藏主始之、半齋同前、嚫金黄鸝、齋作法、本膳汁蔓細々、〈○中略〉 集汁〈豆腐牛房〉 〈根若〉

ムシツ汁

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0182 名目の汁の事 むしつ汁 あつめ汁に似て精物ばかりにてするなり、何にてもいとはず入てにるなり、數入るほどよし、

シユミセン汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0182 しゆみせん 菜も豆腐もいかにもこまかにきりたるをいふ、みそしるにだしくはふ、

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0182 三峯尖、〈○中略〉庖丁聞書に、三峯膳の羮は、五斗土器に羹三色杉盛にして出すなり、此三色は須彌の三峯に表し盛なり、四季を一季づゝ殘し、過去現在未來にかたどり、其時節に色どるなりと有り、思ふにその色は、北は黄に南は靑し、東白西紅に染色の山、〈此歌謠曲の歌占に、須彌山の歌と有り、日本紀通證に泉式部が歌と云ども、出所定かならず〉といふは、須彌山の歌といへり、これを春夏秋冬に配し用、たとへば春の時ならば、これを現在とし、冬を過去とし、夏を未來とする盛かたと見えたり、料理物語に、しゆみせんといふ汁あり、菜も豆腐もいかにも細かにきりたるをいふ、みそ汁にだし加ふといへり、是も三峯にならひたる物なるべし、

博奕汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0182 ばくちじる たうふさいのめにきる事、汁同、

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0182 ばくち汁は、望一后の千句、あつまるは同じばくちの類にして、瓜やなすびや夕顏の汁、思ふに何にまれ小く四角に切たるを采のめと云、これを汁のみとするなり、

サク〳〵汁

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0182 さく〳〵汁、世話盡〈四〉予正月七日に或天台宗へ參侍て、菜汁を振まはれて云、寺でくふ〳〵じやくざくの菜汁かな、菜を麁相に切てせしむるを、世人詞にさく〳〵汁といへり、又彼宗の根本空々寂々之法を以肝要とす、然をじやくざくといひしは兩意の挨拶なるべき歟、〈料理物語に蓬をさく〳〵に切などいへり、菜を切る音なり、世話盡は承應三年の撰なり、〉

〔鈴鹿家記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0183 光嚴院延元丙子元年二月十四日迄 十七日丙午、卯ノ中刻聖護院村西ノ方、南北百貮拾九間ノフカサ七尺八寸ニホリタテサセ申、粟田口ヨリ廿五人スケニ參、岡崎村ヨリ五拾人スケニ參候、白川村ヨリ四拾五人、田中ヨリ廿人、四村ヨリ百四拾人增人カヽリ、山城兩人御本所ヘ手紙ニテ申遣候、〈○中略〉未ノ上刻、聖護院ハ兩人ヨリ貮百五拾貮人夕飯出ル、汁サク〳〵、アエ物、ヤキ物、香物大樽五荷、

カラゲ汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0183 からげ汁 なすびを二つにわり、中を少くぼめ、あをざんせうけしなどすり、くるみも入、あはせ、しその葉につゝみ、こぶを糸にしてよくからげ入、みそしるにだしくはへよくに候て、出しさまにすいあはせ、葛をときうち候て出しよし、

準蔔汁

〔增補下學集〕

〈下二飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0183 準蔔汁(シユンフシル)

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0183 じんふ汁 なすびを二つにわり、又かたなめをこまかにきりかけ候を申也、是もみそをこうしてだしくはへ、すい口けし靑山椒すりてをく、

納豆汁

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0183 淨請物之覺 一なつとう汁の事、とうふいかにもこまかに切て、くきなどこまかに切て、ふくさ味噌にて能々立て、すひくちを入候也、但くきは出し樣に入て吉也、なつとうのはしやうは如常ねせて吉也、

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0183 納豆汁 味噌をこうして、だしくはへよし、くきたうふいかにもこまかにきりてよし、小鳥をたゝき入吉、くきはよくあらひ、出しさまに入、納豆はだしにてよくすりのべよし、すい口からし柚にんにく、

觀世汁

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0183 觀世汁 たうふをうすくきり、中みそにてしたて候也、これもあんをかけ出してよし、 鯉の觀世汁(○○○○○) こいをおろしちいさくきりて、たうふをあぶりきり入、中みそにて吉、けしさんせ うのあんをかけて出してよし、

庖丁汁

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0184 庖丁汁、笈埃隨筆、日向より薩摩に至る處、やがて夕餉して、平温飩に茄子やうの物をうすき味噌汁に煮たるなり、亭主云、是は此國の一調味なり、卑き品なれども頗據あり、昔此邊大友宗麟領せられし時、俄に菊池肥後守來會あり、取あへずせし事なれば、蛤の腸を汁に調じて出さむとす、然るに菊池思ひの外多人數にて、其用意足らず、いかゞせんといふに、人敎へて如此作らしめて中を足したり、いづれも分がたかりし、それより名をほうてう汁と呼も、蚌腸と申ことのよしを誤りて庖丁汁と覺えしと語る、其製至て無造作なり、小麥の粉を鹽をすこしやわらかめにして水にて練り、暫らく布など覆ひて寢さしむれば粘るなり、其内に醬汁をうすく煮て、茄子瓜の野菜をも入置、かの粘りたる粉を手の内に少づゝ丸め持て引のばせば長く延るなり、それをよき程づゝに引きり、直に汁の鍋に入、手なれしものは、甚平らに延し、平うどんのやうにするなりといへり、此説附會なるべし、是むかしの入麵なり、又庖丁の名は烹雜の誤りなるべし、梅窻筆記に、烹雜とは今の雜煮餅のことなり、御厨子所預紀宗國記、明應六年十二月七日〈取要〉三獻公家衆、ボウザウとありといへり、今の雜煮餅と定むるもいかゞなり、何にてもくさ〴〵煮たる故なるべし、然らば雜炊と云も似たることにや、其ながら雜炊は野卑なるものなるべし、上杉上州平井に在城のとき、出仕の人の下部共、平井の民家に充滿し、誰がし初るともなく、菅を引て手ずさみに蓑を織て家主にとらすれば、家主よろこび、大鍋をゐろりにかけて湯を炊ば、下部共豆粟菜かぶら何にても一品づゝ打込て煮る故に、これを雜炊と云へりとなり、

トロヽ汁

〔類聚名物考〕

〈飮食三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0184 とろゝ 薯蕷汁 薯蕷汁をとろゝといふは、其さまとろ〳〵とする汁故いふ成べし、秋齋閑語〈三〉とろゝは奥州とろゝ山より出る薯蕷とろゝによし、故にとろゝの名有といへども、とろといふ地名は諸所に多 し、延喜式にも土呂鍬などいふ名も見えたり、ことに薯蕷は南部など名産あり、

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0185 とろゝ汁 にぬきよし、山のいも、あをのりよく〳〵こまかにおろしすりて吉、のりはいろよきほど入候て吉、あたゝめ過候へばあしく候、すい口こせうのこ、

〔鹿苑日記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0185 慶長八年二月十六日、辰刻柳芳同途シテ赴勝願院、相伴兵衞大夫、木工頭、會席、トロヽ、煎昆布アライデ、鹽山升、引テ牛房、フツ煎、後又椎茸猪口アエテ引之、酒四片、又後ウ曇、肴一兩種、酒四五盃喫https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins087228.gif 々トシテ歸院、

〔醒睡笑〕

〈五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0185 一とろゝの汁の出たるを、座敷に古人ありて、けふのことつて汁(○○○○○)は、いつにまさり、一入出來たるなどいひほむる、是はめづらしきことばやと、其子細をとふ、さればよ此汁にてはいかほども飯がすゝむゆへ、よくいひやるとのえんに、ことづてしるといふならん、きこえたる作意やと感じやがてとろゝをとゝのへ、客をよぶに、ことづてをとはれ、おたひやるとぞ申ける、

〔醒睡笑〕

〈六〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0185 一ある座敷にて、兒のとろゝ汁(○○○○)の、再進をひたもの、うけらるゝ時、三位目をしてにらみければ、ちごのあごにさのみ科はないぞや、たゞとろゝをにらめ、

〔和歌食物本草〕

〈草〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0185 とゝろ汁きをめぐらして食すゝめすぎてははらぞふくれこはばる、とゝろ汁おり〳〵すこし食すれば、脾腎の藥気虚をゝぎなふ、

糟糠汁

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0185 汁の部加減の事 ぬかみそ汁 極ふるきぬかみそをすりだしにてのべ、煮上てこし、どぶをさしあんばいする也、

〔醒睡笑〕

〈八〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0185 一山寺に人いたりて、さても〳〵おもしろき境地や候、大略八景も候はんと申ければ、住持の返答に、當寺は十景の古所也と、さ候へば、秦の始皇の地にもまさりたり、八景の外には、いづれを用られ候ぞ、されば旦那あり麓にくだり齋をたべて、こざけにも醉てかへれば、くはつけいあり、さもなく唯二時糟糠汁の風情なれば、ことにひんけいあるかな、

昆布汁

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0186 淨請物之覺 一こぶ汁料理は、先火執候て、其儘水ニ入て、後に能比に切候てより、醬油にても水出しにても、粒山椒を入て燒之ば、一段と藥に成候由言傳候也、

モヅク汁

〔武家調味故實〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0186 もづくしるには、こぶを煎出して、あまかりに入べき也、

吸物

〔書言字考節用集〕

〈六服食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0186 吸物(スヒモノ)

〔秇苑日渉〕

〈八〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0186 解酲湯 解酲湯此云須伊毛https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins028587.gif (スイモノ)伊世珍瑯環記曰、嘉平二十五日、叔良〈張叔良字房卿、大暦中人、〉宿酲未解、窈窕烹百龢解酲湯之、隨飮而醒、後遂依法作湯、名窈窕湯、品字箋曰、世以醒酒羹、謂之解酲湯、岳陽風土記有魚淸羹、〈詳見水飯條〉亦醒酒羹耳、

〔玉勝間〕

〈十四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0186 饌 つねの饌は、羹一つ菜(アハセ)一つにて止べし、しな〴〵數多ければ、これかれにまぎれて、美きものももはらならねばさしもめでたくおぼえず、但し他の餐饌は數すくなくては、さう〴〵しきこゝちす、あまり多きも中々めでたからずおぼゆ、數おほくつもりて後々は、うるさくあきたくなるなり、たゞ羹は品をかへて數おほきもよろし、さて昔はすべてあつものといひしを、近き世には始の一つを汁といひ、次に出すを二の汁といひて、その餘をば汁とはいはず吸物といひて、しるとすひ物とは別なる如し、

〔今川大草紙〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0186 食物之式法の事 一客人のしやうばん仕候へと仰あらば、座敷にて肴のすはりてくふ時は、すひものなどの汁をすふ事あるべからず、二はし三箸くふて後汁をすふべし、

〔三議一統大雙紙〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0186 御吸物喰事、先右にて箸のもとを取、其手にて肴を持上て、其儘汁を吸ひ、其後左 へ取移し、箸を直して可喰、箸を納るには、小折敷のふちへ押入べし、又肴取替る時は、左にて箸を持てかゆるなり、箸をすみかけて可置、

〔中島宗次記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0187 一すひ物はいくたびすわり候共、まづ箸を取あげみを喰置ざまに汁をすうべし、努努一番にしるをすう事なかれ、但物によりて一番にすう事あり、口傳有、

〔鳥板記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0187 一すひ物くひやうの事、銚子出たるを見て、扨持上て人ごとに先しるをすひて後にくふ也、是もわろく、先しるをすはぬ先にそとみをくひてのちしるをすふべし、是もわかきものなどは、あまりすふ物などをつよくみなくふ事もわろし、見計てよき程にくふべし、

〔躾方明記〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0187 吸物の事、箸を取寄、右の手にて吸物を取あげ、左へ移し右の手をも添て吸、さて箸をとり返しみを喰べし、下に置候時は箸持たる方へ取移し候て置なり、幾度も如斯、さて箸を置膝を立るものなり、 吸物獻々有時は、始には汁を吸、扱みを給也、二獻めにはみを給、さて汁を吸候て能也、三獻めは初獻と同前、此心得に何獻御入候とも參候て能なり、

〔宗五大草紙〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0187 公方樣諸家へ御成の事 一先年金仙寺〈貞宗朝臣常の御城〉亭御成の時、御肴參たる次第大方注候、初獻〈ぞうに〉二獻〈まんぢう、又二獻めにすひ物參候而、三獻點心の參候事も候、〉三獻〈すひ物、〉

〔老人雜話〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0187 高麗陣の時、太閤日根野備中を高麗へ使に遣す、備中甚貧く支度成がたし、三好新右衞門を介媒にして、銀を黑田如水に借る、如水銀百枚をかす、備中歸朝して、新右衞門と同道し、如水へ往て禮を云、銀百枚外に拾枚を持參す、〈利息の心なり〉如水對顏し、暫くありて人を呼て、さきに人の呉たる鯛を三枚にをろし、其骨を吸物にして酒を出せよと云ふ、兩人心に不足す、酒訖て、三好銀を取來て禮を云、如水云、初より借す心無し、合力の心なりとて、再三強ても取らず、二人甚だ感じ て歸りけるとぞ、

〔時慶卿記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0188 慶長八年二月廿日、辰下刻各出仕、食ハ御相伴也、其後照門、一門御出也、〈○中略〉攝家、門跡、親王勿論一同ノ御禮也、一獻參候由候、各被立テ後、堂上不殘淸花衆一同ニ御禮、公卿衆ハ太刀披露也、上壇ニ各列ス、雲客ハ太刀持參シテ後、各座敷ニ著、其後吸物一獻參、

〔御湯殿の上の日記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0188 慶長八年十二月十六日、へちでんの御ふるまい、けふくろどにてあり、御しやうばんの御しゆう、みやの御かた、八條どの大しやう寺どの、女御の御かたなり、おとこたち、御ばんしゆう所にて參る、く御すぎて、からくろどにて、御すい物にて御さか月一こん參る、だいの物いづる、八でう殿御しやうばんなり、

味噌吸物

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0188 御成式正獻立 一御吸物〈こみそ〉 燒小鮒 御食 一御吸物〈こみそ山のいもすりおとし〉

〔江戸流行料理通大全〕

〈二編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0188 座附四季味噌吸物之部 春 常みそ 小鯛姿見しんぢよ 葛しめぢ 若布(わかめ)せん 芽うど〈○中略〉 夏 中白みそ うづら小鯛 いわたけ煮ぬき 葉いも火どり 靑山しよう〈○中略〉 秋 南部みそ 鮎かた身おろし まつば茄子 ひもかわ葛きり〈○中略〉 冬 常みそ あわもり鯛 ゑのきたけ 糸海苔

スマシ吸物

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0188 御成式正獻立 一御吸物〈田にしめうがの于 薄醬油〉 一御吸物〈こまめ水仙寺のり 薄醬油〉

〔江戸流行料理大全〕

〈二編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0189 すまし吸物之部 春 ひめ烏賊 柚練 つくばね〈○中略〉 夏 手長鰕 蓴菜卷葉 露生姜〈○中略〉 秋 白髪雞魚(きす) 海藻(もづく) 靑柚〈○中略〉 冬 糸みる貝 水ぜんじ 海苔四半

鰭吸物

〔大江俊光記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0189 寶永六年十一月廿日、巳刻參内、差次新藤人參、有栖川宮〈○正仁親王〉御盃被下、〈○中略〉ヒレノ御吸物出、又宮ヘモ右ノ勝手ヨリ御吸物出、又一獻上リ宮ヘ被下、一獻ウケテ藏人クハヘ持參退、クハヘ在テ銚子引、上ノ御吸物引、宮ノモ引、

請入吸物

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0189 一うけ煎とは、鯛の躬を摺て小むめほどにまるめ、湯びき、たれみそにて煮也、是を夏はうけ煎の吸物と言、冬は零のすひものと言也、

〔貞丈雜記〕

〈六飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0189 一うけ入といふ料理は、今の魚のすりみなり、つみ入はんぺんなどの類、鯛の身を摺りくづして、小梅程に丸めて、ゆびきてたれみそにて煮なり、冬は零(ミゾレ)の吸物とも云、

〔宗五大草紙〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0189 料理の事 一請入とは、鯛のみをこまかにおろして、すり合てゆるめて、折敷にても又只板にてもうつくしく村もなく付候て、板をおほひて十文字にからげゆでゝ、あけてすいせんのごとく切てすへ、みそをかへらかして、しほさかしほを心みて、何にても靑みを少入て、其後魚を入てまいらする也、

〔天文日記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0189 天文六年正月十三日、興正寺先日より被申候點心、未刻過に被振舞候、相伴兼譽兼智兼盛勝萬寺、〈○中略〉二獻の點心也、すひ物うけいり也、

打海老吸物

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0189 一打海老の吸物とは、生にて皮をむき、葛の粉を交て、摺板の上にてをしねやし、うどん を打ごとくして、色々に切てたれ味噌にて煮也、

〔宗五大草紙〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0190 料理の事 一打海老は、ゑびなまながらかはをむきて、まな板の上にてこまかにをしねやして、くずのこをまきてをしまはしてひろぐれば、うどんのごとくなるをはからひて、切てみそをかへらかしてさと入てまいらする也、これらは今川の貞世のかゝれたる大雙紙といふ物にあり、

卯花吸物 ミノニ

〔料理物語〕

〈吸物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0190 うの花(○○○) いかのせのかたをすぢかひ十文字にこまかにきりかけ、又大さよきころにきりはなしゆにをして、妻にのりなど入、だしにかげをおとし、ふかせすい合出し候也、 みのに(○○○) 玉子をあけしやくしにうけ、くだけぬをにえ湯へ入候、是も妻色々、汁同前、

蠣吸物

〔料理物語〕

〈吸物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0190 かき 鹽をいりて、よきころにしほを殘し、かきを入ふきたち候ときすい合せ候、汁すくなくば、だしにても水にても可入、鹽をいらずにつかまつる事も在之、さかしほさしてよし、

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0190 魚類雜汁吸物仕樣 蠣吸物 鍋に鹽を入付、其鹽を取上、かきを二つ三つならべ入すりつぶし、扨蠣に水ひた〳〵に入、一あはにてみきの入鹽かけ申候、時により少醬油をくはへ、尤酒をもさし候、

〔鈴鹿家記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0190 應永元年十二月廿六日戊辰、今晩若州御袋樣ヨリ御モタセ、御内義樣、御表侍從樣御内不殘食、石花(カキ)ノ吸物、鯛濱燒、ヒツシホリ、蒟蒻、牛房フト煮、鴨〈皮煮靑菜入〉肴色々出、出雲歌色々御遊、

蛤吸物

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0190 魚類雜汁吸物仕樣 蛤吸物 むき身を手の内にて少汁しぼり、扨酒と水と等分に入、酒匂ひなき程に能煮申候、燒鹽にても仕候、

〔三省録〕

〈二飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0190 婚禮に蛤の吸物は、享保中明君の定め置給ふよし、寔に蛤は數百千を集めても、外の 貝等に合はざるものゆゑ、婚儀を祝するに是程めで度物はなし、夫故の御定なり、恐れながら味ある事なり、蛤は四季とも澤山なるものにて儉を接する第一なり、その餘風京師には傳はりたれども、大坂には曾て用ひず、あるまじきことなり、これはその澤山なるを鄙みてのことなるべし、然るにすでに上巳には專ら蛤を用て祝儀とす、既に風をなせば誰も鄙とせざるを見るべし、かつは蛤は宰割もいらず、烹飪も隙も取らず、鹽梅も易く、是にて祝儀をなして濟めば、至簡至當といふべし、實に先世の遺美なれば、賴ある號令ありたきものなり、〈草茅危言〉

〔三省録〕

〈後編二飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0191 有徳院樣御代始に、御儉約の被仰出にも、凡て嫁取の規式も蛤吸物酒三獻を不過との御書付出たり、是はと笑ふものもありけれども、吸物蛤と婚禮の法に立給ふ事は、御學問すぐれ給ふゆえなりと、或學者これを稱し奉とかや、外の貝にあはざるは、外の夫にこゝろをかよはさぬ貞女の兩夫にまみえざるの戒めといふことわきまへさせ給ひて、蛤吸物と被仰出けるぞありがたきとて、諸人これを賞しけり、〈明君享保録〉

生海鼠吸物

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0191 魚類雜汁吸物仕樣 生海鼠吸物 なまこ二つに割洗、大キに切、銅鍋にていり、ぬる湯に漬置、扨出し申時、煮汁能かげんに調にやし置、わんに柚の輪敷て、其上へ右のまなこ入、煮汁かけ、其まゝ出し申候、上置に芹など置てもよく候、

海鼠腸吸物

〔料理物語〕

〈吸物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0191 このわた よきころに切、うすみそにだしを入、ふき立候時わたを入、すい合せ其まゝ出し候也、

兎吸物

〔式正秘傳書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0191 一御嘉例年中行事 一正月朔日之朝、〈○中略〉御黑書院出御、御盃捨土器御引渡、二獻式御臟煮、三獻兎御吸物、御相伴大納言殿、中納言殿、

〔御日記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0192 寛永八年正月元日、〈○中略〉三御盃〈御右置之〉青山大藏少輔〈役之、〉兎御吸物(○○○○)被成、御初御盃公方樣、其御杯駿河殿、其盃公方樣、其盃相國樣御納、

三國吸物

〔料理物語〕

〈吸物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0192 三國は のとのり也、だしたまりにて仕たて候、川えびをくはへよし、すい口こせうのこ、

松茸吸物

〔料理物語〕

〈吸物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0192 松茸 古酒にてさわ〳〵といり、さかけのなき時白水をさし、だしたまりくはへふかせ候て、すいあはせ出し候、すい口柚輪切其まゝ入吉、

菓子椀

〔浪花襍誌街迺噂〕

〈四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0192 菓子椀 江戸通用の吸物椀に同く、大ぶりにて深みあり、色は内外あらひ朱にてぬる、料理種はくさ〴〵なれども、先は切身、かまぼこ、ゑび、椎茸、松茸。麩、ゆば、菜、せりの類也、江戸の太平の種(○○○○)と同じ、

〔浪花襍誌街迺噂〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0192 千長、向ふの角に行燈が見えるが何だらふト〈いひながら、二人して足をはやめて其處にいたり見れば御吸物かしわじ○くわしわんさしみ御酒肴と記したる看板なれば、ふたりながらうちへ入、〉万松、吸物で一ツ出してくんなせい、肴は何がありやすねへ、小女、ハイ〳〵そこにかきつけてござりますものは、みなできます、千長、なるほどかきつけてある、先さしみを出してくんな、オヤ〳〵解らぬものがある、此菓子椀といふは、菓子を椀へ盛ツたのかね、小女、「へんなかほをして」、イヘ〳〵めつさうな、万松、そして何(なん)だね、小女わん盛て厶り升、千長、椀盛とはアヽ何か、しるこのことかへ、小女、わからずまご〳〵してゐると、奥より女房と見えて、年はいの女かけいで、女房イヘ〳〵くわしわんは、かまぼこ、しい茸、鯛の切身などを入れましたつゆもので厶り升、お江戸で申太平種で厶り升わいな、万松、へゝ分りやした、それをこちらでは菓子椀といひますか、女房、わらひながら、へゝさやうで厶り升、千長、何でもねいことにおほきに骨を折た、さうなら其菓子椀で飯を出しておくれ、

潮煮

〔運歩色葉集〕

〈字〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0192 潮(ウシヲ)煮〈鯛〉

〔易林本節用集〕

〈宇食服〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0193 潮煮(ウシホニ)

〔三議一統大雙紙〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0193 うしほ煎は、神功皇后異國退治の時に、舟中にて御酒の遺水を海中へ御入ある時、鯛寄て是を呑、夫より始る也、口傳、

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0193 一川鱸汁はうしほに上也、但此料理は三番の白水をいかにも薄して、出し汁初より入て、味噌を袋に入て、鹽は初より少入て吹立て、加減を見る也、酒鹽はたべ候時にさしたるが能也、 一鯛うしほにの事、右鱸のごとく也、

〔宗五大草紙〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0193 公方樣諸家へ御成の事 一式三獻あがり候て、式の御成之時は、主殿へ御成候、御座をしかれ候、御盃參三度入、初獻あつ物、鯛如常うしほ煮、

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0193 魚類雜汁吸物仕樣 鯛うしほ煮 身もほねも常のごとく切、古酒をひた〳〵に入、火をほそくして煮申候、酒の匂ひなきとき其うへゝ水を入、鹽計にて仕立申候、

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0193 うしほ煮加減の事 鯛のあら 魚にしばらく鹽をふりおき、なべにしほを入て、かなじやくしにてなべにすりやきつけ、だしを入煮立て、さて魚のしほをよくあらひおとして入、すこしたまりおとしあんばいする也、 同 是は酒のすぎたる上のかげん也、此時は魚をしほ湯にてゆがき上て、水にてよくあらひおき、さてなべにしほをやき付、水ばかり入て煮立、出スまへに右の魚を入る也、 但し湯のにごらず、たるきうまみなきやうに仕立る事肝要なり、小鯛もみぎのとふり也、 かつを 是も酒の上のうしほのごとくしたてゝ上〈ゲ〉ぎはに大こんのしぼりしるおとしてよし、あぢ 夕がしのあたらしき鯵のぜこをとり、口よりわたをぬきよくあらひ、さつとしほをふりおき、だしにたまり少しやきしほかげんして煮たて、魚入て煮て出スなり、 はまぐり 祝儀ときの仕やうなり、なべに水七分に内へ中はまぐりを十五ほど入、まづにてからもみもすくひあげ、別にはまぐりの大きさのそろひたるを酒にてむし、身をはなし貝をよくあらひて、かいの兩方へみをひとつゝ入て碗へもり、右のしだしをかけて出ス、但し一碗にはまぐり二ツくらひ入、 精進のうしほ よきこんぶしほのまゝ水にて煮出し、たまりすこし酒すこしおとしてあんばいする也、 もづこ とさかのり みるふさ ところてん草 燒いも さき松だけのるいよし わさびのしるはなすも吉

〔新撰字鏡〕

〈點〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0194 臠〈力兗反、上、肉乃奈万須、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十五魚鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0194 鱠 唐韻云、鱠〈音會、和名奈萬須、〉細切肉也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈四魚鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0194 廣韻、鱠古外切、會黄外切、説文徐音同、按古屬牙音見母、黄屬侯音匣母、其音不同、此云音會恐誤、〈○中略〉紀親宗曰、奈万須去魚皮肉爲片疊盛也、非今俗酢和造者之類、〈○中略〉按説文、膾細切肉也、孫氏蓋依之、廣韻細切上有魚膾二字、釋名、膾會也、細切肉令散、分其赤白、異切之、已乃會合和之也、肉則、内腥細者爲膾、大者爲軒、鄭玄注、言大切細切異名也、膾者必先軒之、所謂聶而切之也、少儀牛羊與魚之腥、聶而切之則爲膾、鄭玄注聶之言https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029680.gif 也、先藿葉切之、復報切之成膾、

〔類聚名義抄〕

〈二肉〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0194 膾〈音檜ナマス〉

〔同〕

〈十魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0194 鱠〈音會、ナマス俗膾字、〉

〔伊呂波字類抄〕

〈奈飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0194 膾〈ナマス、亦作鱠、〉 鮮〈見文選〉 宰〈已上同〉

〔下學集〕

〈下飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0195 鱠(ナマス)〈調魚云之〉

〔運歩色葉集〕

〈那〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0195 膾(ナマス)

〔易林本節用集〕

〈奈食服〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0195 鱠(ナマス)〈膾同〉

〔大上﨟御名之事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0195 女房ことば 一なます おなま つめた物とも

〔塵袋〕

〈九〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0195 一ナマスト云フハ、ナマシキ魚ニスヲカクル心歟、 ツネニハ鱠ノ字ヲナマストヨメリ、其ノ心ニヤ、日本紀ニハ割鮮トカキテナマスツクルトヨマセタリ、コレハ野ノカリニカク云ヘリ、サレバ必ズ魚ニハカギラザル歟、文選ニハ割鮮ノ二字ヲバ、アサラケキヲサクトゾヨマセタル、アタラシキシヽムラヲキリサクナリ、魚ニハカギラザル歟、

〔大和本草〕

〈十三魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0195 魚膾 細者爲膾、大者爲軒(サシミ)、本草綱目、本草約言等ニ、治病之功多シト云、壯盛ノ人ハ食之可害、虚冷病人老衰之人所宜也、凡生肉ハ脾胃ノ發生ノ氣ヲヤブル、醋ハ脾虚ニ不宜、生肉生菜ニ醋ヲ加へ和シテ生ニテ食ス最害アリ、魚肉ヲ細ニ切、鹽酒菜蔬ニ和シテ後少煮アタヽメ、醋ヲ少加ヘ食ス、不胃、本草ニ魚膾ハ瓜ト同食スベカラズ、然レバ魚ト菜瓜トヲ和シテ膾ニシテ食フベカラズ、又生肉ヲ大ニ聶(ヘギ)テ醋或煎酒ニ浸シ食フヲ指身ト云、病人不食、生肉ヲ切テ沸湯ニテ微煮テ、ワサビ芥薑醋或煎酒ヲアタヽメ、肉ヲ入テ食フ無害、人ニヨリ生肉ハ不滯消化シ易シ、煮乾鹽藏シタル魚滯リヤスシト云、人ノ性ニヨルベシ、無病人ハ生肉早ク消シテ不滯、

〔東雅〕

〈十二飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0195 鱠ナマス 倭名抄に唐韻を引て、鱠はナマス細切肉也と註したり、ナマとは生也、スとは醋也、生魚の肉を細かに切りて、酢をもて食ふ物なるをいふ也、

〔倭訓栞〕

〈中篇十七那〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0195 なます 膾鱠をよめり、生酢の義也、新撰字鏡に、臠を肉のなますと訓ぜり、類聚 雜要に、汁鱠より鱠見ゆ、 日本紀に、割鮮をなますにつくるとよめり、

〔秇苑日渉〕

〈八〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0196 魚膾 説文曰、膾細切肉也、禮記内則曰、肉腥細者爲膾、大者爲軒、論語曰、膾不細、酉陽雜俎曰、膾曰萬丈蟁足、言其細也、五雜組曰、膾今之魚肉生也、聶而切之、沃以薑椒諸劑、閩廣人最善爲之、廣東新語曰、粤俗嗜魚生、以鱸以https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins019601.gif鰽白黄魚靑鱭、以雪鈴、以鯇爲上、又以白鯇上、以初出水潑刺者、去其皮劍、洗其血鮏、細劊之爲片、紅肌白理、輕可吹起、薄如蝉翼、兩々相比、沃以老醪、龢以椒芷、入口氷融、至甘旨矣、而鰣與嘉魚尤美、中饋録遵生八牋並有肉生法、訓蒙字義曰、膾俗呼打生、又見雞肋編、今此方人裝膾、必插花菓于中央、名曰軒、蓋古者以肉片大者中間故也、近人代以花果、亦襲用其名耳、通雅曰、膾大者曰軒、細者曰https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins002181.gif 、亦曰纖、南史趙鬼食https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins002181.gif 、諸鬼盡著調、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins002181.gif調叶、當音蕭、細剉肉糅以薑桂也、蓋説文https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins002181.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins002181.gifhttps://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins002181.gif 、鄭玄誤解、定爲乾魚耳、軒見内則、雞纖細擗其腊纖、免亦如之、見釋名、今謂之雞https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029814.gif 、肉https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029814.gif 、魚https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029814.gif 、筆乘曰、特牲饋食、佐食擧幹、注牲肉長脇也、可證幹訛爲軒、又禮記考異軒或作胖、

〔日本靈異記〕

〈中〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0196漢神祟牛而祭又修放生善以現得善惡報縁第五 膾〈ナマス〉

〔玉造小町子壯衰書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0196 鱠非頳鯉(セイリ/アカキコイ)之腴(ツチスリニ)不嘗、鮨非紅鱸之鰓味、

〔日本書紀〕

〈七景行〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0196 五十三年八月丁卯朔、天皇詔群卿曰、朕顧愛子何日止乎、冀欲狩小碓王所平之國、是月、乘輿幸伊勢、轉入東海、十月、至上總國、從海路淡水門、是時聞覺賀鳥之聲、欲其鳥形、尋而出海中、仍得白蛤(ウムギ)、於是膳臣遠祖名磐鹿六鴈、以蒲爲手繦白蛤爲膾(○)而進之、故美六鴈臣之功、而賜膳大伴部

〔本朝月令〕

〈六月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0196 朔日内膳司供忌火御飯事 高橋氏文云、挂畏卷向日代宮御宇大足彦忍代別天皇〈○景行〉五十三年癸亥八月、詔群卿曰、〈○中略〉冬十 月到于上總國安房浮島宮、爾時磐鹿六獦命從駕仕奉矣、天皇行幸於葛飾野、令御獦矣、太后八坂媛〈波〉借宮〈雨〉御座、磐鹿六獦命亦留侍、此時太后詔磐鹿六獦命、此浦聞異鳥之音、其鳴駕我久々、欲其形、即磐鹿六獦命、乘船到于鳥許、鳥驚飛於池浦、猶雖追行遂不捕、於是磐鹿六獦命詛曰、汝鳥戀其音貌、飛遷他浦、不其形、自今以後、不陸、若大地下居必死、以海中住處還時顧舳、魚多追來、即磐鹿六獦命、以角弭之弓、當遊魚之中、即著弭而出、忽獲數隻、仍號曰頑魚、此今諺曰堅魚、〈今以角作釣柄堅魚、此之由也、〉船遇潮涸〈天〉渚上〈爾〉居〈奴、〉堀出〈止〉爲〈爾〉得八尺白蛉一貝磐鹿六獦命捧件二種之物、獻於太后、即太后譽給〈比〉悦給〈氐〉詔〈久、〉甚味淸、造欲御食、爾時磐鹿六獦命申〈久、〉六獦令料理〈天〉將供奉〈止〉白〈天、〉遣喚無邪志〈○志字據舊事記補〉國造上祖大多毛比、知々夫國造上祖天上腹、天下腹人等、爲膾及煮燒雜造盛〈天、○中略〉乘輿從御獦還御入坐時〈爾〉爲供奉

〔日本書紀〕

〈十四雄略〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0197 二年十月癸酉、幸于吉野宮、丙子、幸御馬瀨、命虞人縱獵、凌重巘長莽、未移影、獮(エツ)什七八、毎獵大獲、鳥獸將盡、遂旋憩乎林泉、相羊乎藪澤、息行夫、展車夫、問群臣曰、獵場之樂使膳夫割一レ鮮(ナマス/○○)何與自割、郡臣忽莫能對、於是天皇大怒、拔刀斬御者大津馬飼、是日、車駕至吉野宮、〈○中略〉皇太后知詔情天皇曰、群臣不陛下因遊獵場宍人部問群臣、群臣默然理且難對、今貢未晩、以我爲初、膳臣長野能作宍膾(○○)願以此貢、

〔厨事類記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0197 生物〈鱠〉 鯉ハ、先シタニ掻敷之實〈或云敷實〉ツクリカサ子テモル、次打實歟、引實上ニウナモト〈三枚或五枚〉モリテ供之、 鮭ハ、皮ヲスキテ、ツクリカサ子テモルベシ、上ニ氷頭〈三枚或五枚〉コレヲモリテ供之、 鱒ハ、鮭ノゴトシ、 鯛ハ、皮ヲスキテ、ツクリカサ子テモルベシ、 鱸ハ、皮スカズ、ツクリカサ子テモルベシ、説々アリト云々、 雉ハ、生鳥トモイフ、鳥ノ右ノヒタレヲツクリカサ子テモルベシ、

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0198 一鱒の鱠は三枚におろし其儘鹽を付、みを堅して薄く切也、是は水出ししなくとも不苦也、〈○中略〉 一鮒なますの事、作候て水出し酒出し、夏は酢を多く入て吉、冬は酢を少しひかへる也、何もなますの加減同前也、但鱠の口傳は、酢を酒水出し入合、念を入てき色大事なる加減也、〈○中略〉 一うなぎ鱠は、醬油を薄くして魚にかけて、少し火執候て、切て右〈○鮚料理〉同加減にする也、又は湯を暑かにして拭てもあぐる也、是は中也、鱠は口傳有也、 一海月鱠は、能洗候て加減如右也、

〔料理物語〕

〈鱠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0198 鮒なます ふなを三枚におろし、ほねかしらにしやうゆうを付、よくやきてこまかにたゝき、身はいかにもうすくつくり、いりたる子をかきあはせ、からし酢にてあへ候、又たでずにてもよし、やきがしらめん〳〵にもりわくることもあり、總別なますの酢かげんは、なますをみなもりて、あとにすのおほくあまり候はねが、よきかげん也、

汁鱠

〔定家朝臣記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0198 康平五年正月廿日、有大饗事、〈○中略〉此間羞汁物、〈汁膾、雉燒物、〉

ヨリ鱠

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0198 一五節殿上饗目録〈保延元年右衞門督家成進五節時、玄蕃頭久長調進之〉 居物次第〈○中略〉 次寒汁〈鯉ヨリ鱠〉 追物〈蒲鉾 鳥足 蠣 生鮑 細蜷 ヨリ鱠〉

山吹鱠

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0198 山吹膾ト云ハ、王餘魚ナマス也、マナガツホハ蓼ズニテ可參ラズ、總ジテ蓼出來スレバ、ナニ魚ニテモ蓼ズ良也、

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0198 一膾ノ事、山吹ナマスト云ハ、半面魚膾ノ事也、カレイノ子ヲイリテ、アヘテ參ラスル、ヨリテ山吹ノ如ナルト申傳侍、

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0199 一山吹鱠といふは、初夏の鱠也、鮒を作り、山吹の花改敷の上にもり出なり、口傳、

糸鱠

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0199 糸鱠ト申ハ鮒ノ膾ノ事也、是ハ如何ニモ細ク作テアヘベシ、大ニ作レバ、口中ニ久ク有テ必ナマグサク覺間、料理徒ニ可成、其心得ヲ忘レジガタメニ、糸ナマストハ名付タリト被申シ也、鯛ヲ膾ニ用時大根ヲ加ルヨリ外ノ事ヲバ人知玉ハズ、此膾モ鯛ノ子ヲイリテアヘベキコト本可成、カラミハ生姜ヲ可用、

筏鱠

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0199 一鮎のいかだ鱠といふは、鮎をおろして細作にして、柳葉をいかだのごとく皿にならべ、其上に作りたる躬を盛て出すべし、柳葉の葉先、人の左又は向へなるやうに敷べし、

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0199 一のぼりいかだくみやうしだいの事は、したの板は魚の切樣七刀にて候、切たるは八ツにて候、もちろんまる鮎たるべく候、其うへに六ツ盛也、其上に三ツの板には、右には五ツ、これはひがきもり也、其上にふたをするなり、いかだの中をかやにてよきころに、かやの本をかなむすびて、順にひねりさしはさむべし、かやのさきをばおなじやうにきる也、筏のさほをさし、網を順にねぢまはしをく也、さす花の方をば人の左になし、さほはほそ方人の右になし候、 一くだりいかだのくみやう、下にふたつ、上にひとつひがきの樣にくみて、上の板に五刀にきりて六ツに盛、其さきの下の板に、五ツに切候て、六ツにもり候、前の下の板、右の方にはうすみを三つもる也、又左の方にはをくまを二ツに切て、二切れをくなり、前の板の上には、ひとかさね五ツに切、六ツにもる、もちろん魚の腹の方さきに成也、さてふたをして、かやにてむすぶなり、結びやう先同前、 一のぼりいかだ集養の事、左にはしを取なをして、其後右にて花をぬき、兩の手にて花をかんずる心もちをして、我右の方のたゝみにをきて、又右にていかだの棹をぬき、順にまはして棹のさ きを我が前になし、おしきのふちにかけてをく也、其後左の手にはし持ながらゆひ、ふたにて筏ををさへ、右にてゆひ、かやをとき、さかてにとり、我前にひき、又左の手をそへて、さか手にかやをとり、其後右の手にて棹をさか手に取、棹とかやとを取て、かやをかたむすびに結て、さて棹をとりなをし、右の手にてかやをおしきの前にをく也、其後左の箸と筏の棹とひとつに取そへて、右にて筏の板をかはらけの前によせ、上のふたを取て、さらかはらけのさきにをき、又其下の板を筏にくみ、棹を板のさきにさし、其後花を兩の手にて取て、前のごとくかんじて、扨ふたの板の左の方のさきに、花のりんを我左になし置て、其後又右にはしを取なをし、すこしかんずる心もちして、集養の時は、いかだの上のいたを、ふたの板の上にちとちがへてかさね、其後はしを取なをし、魚のかしらをすしほのあたりにおろし、その次より集養有也、又も集養ある度にはしを取なをし、二番めの板をふりなをし、其下の板の魚を集養は同前、

〔風呂記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0200 一鮎の筏なますは、料理の第一の秘事なり、知たる人稀なり、是も酢鹽うすぬたなり、大豆をぬたにすべき也、かい敷は柳の葉なるべし、折敷は筏を二ぎやうにならぶるなり、筏秘事なり、料理方にも知人稀なり、京都におゐても稀なり、こと物をくみまぜぬ習なり、一段賞翫の鱠なり、鮎のさびぬ時計なり、

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0200 筏鱠、庖丁家書に、鯉、鮒、すゞき、鮎などをするなり、皮をひくに依て筏鱠と云なり、筏は川を引の謎なり、庖丁聞書に、鮎の筏鱠といふは、鮎をおろして細づくりにして、柳の葉をいかだの如く皿にならべ、そのうへに作りたる身をもりて出すべし、柳の葉さき人の左又は向へなるやうに敷べしとあれば兩義なり、今蘆の莖を筏に作るも杜撰にあらず、

ヒデリ鱠

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0200 一ひでり鱠といふは、削大根の入たる鱠也、世に之を笹吹鱠といふ也、

〔料理物語〕

〈鱠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0200 ひでりなます あめのうをを三枚におろし、身はすきてつくり、兩のかわをうちあ はせ、かわめよりやきてきざみ入、たうのいものくきをさゝがき入、酢しほかげんしてあへ候を云也、皮も白やき也、

雪鱠

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0201 一雪鱠は、下に魚をもり、上におろし大根を置出すを言也、

靑鱠

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0201 一靑鱠は靑ぬたにて和たるをいふ也、春三月のうちは賞翫也、

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0201 一靑鱠の事、先葉からしを能すりて、すりばちの内にてすりたるこみを紙を上におひ候て、火を置ふすべ候て又すり、又前のごとく一ところによせ、かみをふすべてよし、又からみにはみがらしをよくすりて、それにけしかつをゝ一ツに合すり候てすれたる時、まへのすりたるからしの葉を一ツに合置候也、又酒のかすをすりてをく也、御座に參時、前のすりたる二くさを一ツに合て、酒にてぬたをとき、魚はすにて白めたるが能候、それにぬたを入あへたるもの也、

〔天文三年淺井備前守宿所饗應記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0201 天文三年八月廿日、御屋形樣淺井備前守宿所〈江〉申入時之御座敷之次第、井獻立進物能組以下注文、〈○中略〉 一御肴之次第〈○中略〉 三獻 〈さゞいあをなます〉

生姜鱠

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0201 一生姜鱠は雪鱠のごとくもりて、上におろし生姜を懸て出す也、

卯花鱠

〔宗五大草紙〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0201 料理の事 一卯花なますと云は、何魚にてもぬたにてあへて、所々にしろくつくりたるををきたるを花のこゝろにてをく也、

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0201 一卯の花鱠といふは、ぬた鱠の上へ湯曳たる魚をちらし盛也、又おろし大根を置ても卯花といふ也、

〔料理物語〕

〈海の魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0201 烏賊は うのはななます

〔朝倉亭御成記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0202 永祿十一年五月十七日、於越前谷朝倉左衞門督義景亭へ御成事、一於會所參進物并獻立の次第〈○中略〉 十四獻〈かずのこ卯花なます〉うけ入〈御酌大與〉

五色鱠

〔風呂記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0202 一鱸の五色なますとは、榎の木の葉をかいしきにして可認、此なますは定て二獻に參なり、酢鹽はうすぬた成べし、栗ぬたなり、川鱸にて可之、

初音鱠

〔風呂記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0202 一鶯の初音鱠と云は、節分の夜の物なり、鮎にて認る物也、かいしきは芹の葉なり、是は大草の家の秘事なり、此鱠は五獻目に參なり、世に有事をしらねば、物ごとにつまる物なり、

越川鱠

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0202 一越川鱠といふは、かぢかと云魚を背越にして、燒かしらをちらし、上に盛也、

子付鱠

〔料理物語〕

〈鱠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0202 鯉の子づけなます こいを三枚におろし、身をうすくへぎかわをのけ、ほそくつくり候、やがていりたる子をつけてよし、をそく候へば付かね申候、さていりざけに酢をくはへ、はしらかし、なます半分にかけて、半分はひえたる酢ニわさびいれてあへ、兩方かきあはせ出し候事也、たヾし鯉みなにはしらかしたるをかけ候傳も在之、

色取鱠 皮引鱠

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0202 一鮒の色どり鱠は、下に燒かしらをもり、扨背越かさね、上ニ躬を盛、子をちらし、鰭を差なり、 一鮎の皮引鱠といふは、皮を引てふくさ盛にして、たで酢をかける也、

カンザウ鱠

〔料理物語〕

〈鱠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0202 かんざうなます きすご さより かれい ゑい 烏賊など色々つくりまぜ候事也、是は酢鹽かげんしてあへ、けんばかり置べき也、

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0202 和雜鱠、かざうなます、夏の料理なり、洛陽集、和雜なます蓼の酢たゝへて藍の如し、永榮料理物語に、かんざうなます、きすご、さより、かれい、ゑい、いかなど色々つくりまぜ候事なり、これは酢しほかげんしてあへ、けんばかりおくべきなり、又鶉汁と云條に、せんばほねぬきかぜ ちあへ、又あをがちと云は、雉子のわたをたゝき、みそをすこし入、なべに入て、きつね色ほどになるまでいり、なべをすゝぎ、さてだしを入にゑ立しだい鳥を入、しほかげんすひ合せ出候なりとあり、前の蓼ずも調やうはことなれども、あをがちなり、かつとは雜るをいふ、もとかちあへなるべきを、字音に紛れてかざうと云ひしを、訛りてかんざうと云、かせちあへと云も、せもじ誤れり、又おもふに、嘉定の日などこれを作りしかば、かじやうなますともいひけんを、もとより和雜と書しなれば、かた〴〵混じあやまりて、字音のやうにかざうとなりしか、字音なればくわざうなり、音訓のかちあへなます也、

〔四條家法式〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0203 一大猷院樣〈○中略〉寛永三寅年九月六日行幸二條御城、同十日還御、〈○中略〉同七日晩御本カゾウ鱠〈木耳、栗、海月、薑、貝、老、海、大根、キス、氷頭、〉

芋鱠

〔武家調味故實〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0203 一いもなますと云は、殿中へは不知、よきほどの人にはまいらすべし、口傳あり、鯉鮎にてあふべし、鱸鯛又はにしのからへ、みあへなどにてもする也、〈口傳〉あゆる樣は、いもをゆでてかはらけにむき入て、其上に此なますを掛てまいらすべし、時節をばいはずといへども、秋の事なるべし、

沖鱠

〔料理物語〕

〈鱠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0203 沖鱠 あぢ いななどをまろづくりにして、たでをあら〳〵ときり入候をいふ也、鯖もよし鯛其外のうをにても仕候、鹽かげんいよ〳〵大事也、

〔料理物語〕

〈海の魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0203 鱸 おきなます 鯖 沖なます 名吉 沖なます

〔饌書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0203 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins086855.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins065982.gif 魚〈加都和〉 俗作鰹魚、〈○中略〉江都極賞鰹魚、初出者一尾萬錢、其肉多血不打生、而有舟中斫、塊洗以海潮浸、以嚴醋者曰沖鱠

太郎助鱠

〔料理物語〕

〈鱠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0203 太郎助なますは 一鹽のたいあわびなど、いかにもうすくつくり、いりざけ酢等分にしてあへ候、たヾしあはびは後にいれてよし、鱒鮭もよし、はながつほ、三月大こん、木くらげな どきざみいれてよし、

燒骨鱠

〔料理物語〕

〈鱠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0204 燒ほねなます 鯛のうすみほねなどやきむしりとりて、田つくり〈いりて〉川えび木くらげ栗しやうがおろしなど入、すしほかげんしてあへ候也、

皮燒鱠

〔料理物語〕

〈鱠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0204 皮やき鱠 あゆにてあめのうほのごとくつかまつり候事也、これも身はすきて作候、かわしらやき、

料理鱠

〔料理物語〕

〈鱠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0204 料理なます 鯛 さゞい きすご かれい 小海老などいろ〳〵入、おろしなどくはへ仕候、何れもなますは膳を出しさまにあへ候て吉、鹽かげん大事也、しほは一度入候てよきやうに分別あるべし、二度三度に入候ては、しだいにあしくなり申候、無曲物也、けんは色々其時分のもの、つくり次第にをくべし、

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0204 魚類鱠月々取合 九月之分 料理鱠〈たこの花作り あかゞい あはび さけ さけのひず 同かわやきて たい たまご うすやき たんさん いせゑびむしり はり大こん うど せりのくき ずいき くらげ はせうが わさびず けんみつかん〉

カテ鱠

〔江戸流行料理通大全〕

〈初編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0204 膾の事 一膾は慶賀の第一也、上より下に至る迄、祝日にはかて膾といふをこしらへ、慶賀をとゝのふ、此かて膾といふは、膾に作りたる魚へ、時の靑もの大根にんじんうどの類をきざみ、魚の相手に盛、是をかて膾といふ也、膾の本式は魚計を作りて盛事也、なますのケンの意味を知らざれば、慶賀第一の膾とは知れまじき也、しやう進の酢あへにケンを付る事、甚あやまり也と云傳ふ、

眼摩鱠

〔倭訓栞〕

〈中編二十六米〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0204 めすりなます 山東の人蛙を捕て熱湯に投じ、皮を剥て芥醋に和し食ふ、是を眼摩膾といふと、本朝食鑑に記せり、宋書に蝦蟆膾見えたり、

鳥鱠

〔料理物語〕

〈鱠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0204 鳥膾 何もつくり鳥ばかりすにていため候て、その後鯛其外も入あへ候て出し吉、 わさびくはへよし、

〔料理物語〕

〈鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0205 鴈 汁 ゆで鳥 煎鳥 かはいり 生かは さしみ なます(○○○)〈○中略〉 鴨 汁 骨ぬき いり鳥 生かは さしみ なます(○○○)〈○中略〉 雉子 靑かぢ 山かげ ひしほいり なます(○○○)

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0205 鱠の仕樣并鳥料理の仕樣 鳥鱠 鴈鴨にても、身を二ツ三ツに切へぎ、油皮を去て成程細作り、あたゝめ酒にて洗酒を捨、酢は鳥のどうがらを入せんじ少さまし、右の鳥にかけあへてよし、わさび花がつを入〈レ〉、魚何にても少まぜてよし、

白アへ

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0205 一海月白あへは、けし豆腐生姜酢摺交て、加減次第に酢をかけてあへる也、是は上上也、

靑アへ

〔料理物語〕

〈鱠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0205 靑あへ いりこをよくゆにして、だしたまりにてよく煮候て、あをまめをすり、鹽かげんしてあへ申事也、

水アへ

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0205 一當世ワロキ事ドモ、何ニハ針栗ヲ入、針生姜ヲ入事、イカナル口傳ゾヤ、ホヤ汁ニハリグリヲ入事ハ、ホヤノ毒ヲ生栗ニテ可消タメニハリグリニシテ入也、 カラ鮭ノ水アエニ生姜ヲ針ニシテ入ハ、水アエト名ヲ指タル間、水毒ヲ可消タメナリ、ケ樣ニ萬事昔ヨリ飼鋪以下ノ事迄モ、ソノ德ヲホメタルニヨリテ定置所也、鮒ノ子膾ニ當世ハリ生姜ヲ入事、如何ナルドクゾヤ、若辛ミノ爲歟、然バヲロシテ入ヨカシ、乾鮭ノ水アエニハリ生姜ヲ入事ハ、ヘギ生姜ノ心ニテアレバコソアレ如何、但毒ヲトリタルハリ栗トハリ生姜トヲ參タランハ如何ト申、不審有ベシ、ソコニ口傳有、

〔料理物語〕

〈鱠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0205 水あへは いりざけに酢をくはへよし、ごんぎり、田つくり、するめ、いりこ、小鳥〈やきて入〉 からざけ、靑うり、めうがのこ、木くらげ、牛房、右之内にて取合あへ候也、さんせうの葉きざみ入てよし、

〔天正十年安土御獻立〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0206安土上樣三河守殿御申獻立〈○中略〉 十五日晩御膳 みづあへ

羽節アへ

〔宗五大草紙〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0206 料理の事 一はぶしあへと云は、雉のはぶしをこまかにたゝきて、すをかへらかして五六度もしたみて、さて後にわさびを入てまいらする也、

〔倭訓栞〕

〈中編二十波〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0206 はぶし はぶしあへは、雉のはぶしなり、

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0206 一羽節和といふは、雉子の羽節を細かにたゝき酢をかへらかして中へいれ交て、わさびをかけ出すなり、

〔河村誓眞聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0206 一羽ぶしあゑは、きじの鳥のはぶしをこまかにたゝきて、しやうがずにてもわさびにても、あゑて參るなり、れうりの事種々有之、

山吹アへ

〔料理物語〕

〈鱠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0206 やまぶきあへは 鮒なますをからし不入にあへ申事也、

山葵アへ

〔料理物語〕

〈鱠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0206 わさびあへは 鴈鴨同もゝげなどつくり、すにてしほ少しふりいため、そのすをすて、たいらぎあわびたいなど入、わさびずにてあへ候、鳥いれずもつかまつり候

カゼチアへ

〔料理物語〕

〈鱠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0206 がぜちあへは 鶉にても小鳥にても、しやうゆうをつけよくあぶり候て、こまかにきり、からしずにてあへ候也、あをがちあへともいふ也、

イソベアヘ

〔武家調味故實〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0206 一白鳥いそべあへといふ事、ひつたれ身の皮をすきて、火にしろめてほそながに小鮎ににせてつくり、ひほのなますにあへぐすべし、紅葉のかいしきして盛て、上にくろあしをほそく作て、をきて進すべし、口傳有、

シラネアヘ

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0206 一鮭のしらねあへの事、先さけを白水に付てをき候時、むくの葉又柿の 葉、柿のかはもよし、是を白水に此内一色入て、明日の客來には、よひより白水にてひたし候へば、いかにも白く成候、さて能比取いだし、いつもの水にて二三度もよくあらふべし、扨鮭のみを手にてわり候へば、いかほどもこま〴〵われ候、又さけのかはをば、魚のをのかたよりをしまき、いかにもこまかにきり候、ながきはいかほどもながきが能候、扨ねぜりをもとはきらずして、ゆにてすこしゆがき、取あげてせりをばすにひたし置候、あへやうはもちのこめをいりて、ほどばかしけしをいりて、べち〳〵にこまかにすり、けしとかつをゝ米のこよりは少多くいれ候、一ツにくはへて物にてうるしこす樣にこし候て、さけをあへ候、其後もり候て、はじかみをはりのごとくこまかにきり、同あんにんを又こまかにきりてうへに置也、あんにんなき時は、たうにんをも入候、

ミカハアヘ

〔料理物語〕

〈鱠〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0207 みかわあへ きうりをかわともにきざみ、鹽すこしふりもみて、ざつとすゝぎしぼり、花がつほ入、けしみそをいり、酒すにてのべあへ候なり、こわくなり候時は、かわをさりてもつかまつり候、

指身

〔易林本節用集〕

〈左食服〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0207 指身(サシミ)

〔倭爾雅〕

〈六龍魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0207 魚軒(サシミ)〈肉塊小切爲膾、大切爲軒、〉

〔倭訓栞〕

〈後編七佐〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0207 さしみ 魚軒也といへり、刺身の義也、身は肉を云、雪のさしみは、鯛をあつゆもて色をとりつくりたるをいふと、大諸禮に見えたり、

〔松屋筆記〕

〈百四〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0207 刺身、鱠、ぬた和、 膾に刺身といふ名目おこり、製法も一種出來たるは、足利將軍の代よりの事なるべし、

〔類聚名物考〕

〈飮食三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0207 縷切 文選西征賦〈潘安仁〉雍人縷切、鑾刀若飛、應刀落俎、注、劉良曰、縷切、言切魚細如線縷也、 今按に、この縷切は、今俗に云ふ鯉の細作などいふ類也、

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0208 一サシ味之事、鯉ハワサビズ、鯛ハ生姜ズ、鱸ナラバ蓼ズ、フカハミカラシノス、エイモミカラシノス、王餘魚ハヌタズ、

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0208 一差味可盛事、鯉ノウチミ(○○○)ノ事ハ、ヒバカイジキノ上ニカイシキアリテ、扨子付ニテモ只ノ打身ニテモ盛ベシ、二枚重ニテハ不之、一枚宛盛上也、但子付ノ時フクサ盛ニ盛テモ苦間敷也酢ハワサビズ成ベシ、但蓼出來ノ時分ハ靑酢吉、イカナル魚鳥ニテモ、靑醋ハ苦間敷ナリ、鯛ノ差ミノ事、カイジキハ同前二枚重ニ盛也、キガイシキヲ三所計ニ盛交也、酢ハ生姜酢成ベシ、王餘魚ノ差ミハフクサ盛ニシテ、ヌタ醋ヲ能拵テ參スル也、乾ノコトハ一枚ウツクシク盛ベシ、カイジキ同前、又フクサ盛ニシテモ不苦、前コトヂ鳥ノミ有ベシ、コトヂヲバ上テ鳥ノミヲバサゲテ置也、酢ハ蓼ズ也、此魚ハ四條家ノ秘事第一成ベシ、鯉ハ海物ノ上ヲスル由申ツレ共、此乾ニ對シテハ乾上ルベシ、鱸ノ差味ノ事、前ニ申落候間又申、鱸ノ差味ニハ、前ニ尾ナドモ三切ニテモ五切ニテモ上テ置テ、同コワ腸ヲ置ベシ、此コハワタヲシラ皮共云也、是モ當流ノ秘事也、鱏(エイ)ノ差味ハフクサ盛、飼シキ同前、酢ハヌタズ成ベシ、若ハ實芥子ノ酢モヨシ、ガザタニハ龜足シテ靑酢ヲ添テ可參也、

〔貞丈雜記〕

〈六飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0208 一うちみ(○○○)と云は、さしみの事也、條々聞書、蜷川記に、うちみともさしみともあり、鯉のあつづくりとて、あつさ五分ほど、長サ四五寸、はゞ三寸ほどなり、五切立並べもる醋をかわらけに入てそへ出すなり、男には左のひれ、女には右のひれを盛る也、橘皮花鹽箸の臺有べし、

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0208 一打身ノ事、公卿ニテモ足打ニテモ、置時は、打身トハサビトテシホト差寄テ置タルヲ四條流ト申也、差除テ置タルハ他流也、

〔武家調味故實〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0208 一三本立五本立にも、打身は、す、しほをばそへず、たゞ打身ばかりをすふる也、

〔よめむかへの事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0209 一しき三ごんのとゝのへの事、 うちみ よめ入にはこいをもちひず、たいをもちふるなり、なほくでん有、ひばのえだをさへる、

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0209 一鯛はさしみにもする也、但辛酢上也、是は夏の料理ニ吉也、 一川鱸料理の事、但差味は上也、酢鹽はしやうが酢上なり、又煎酒中也、辛し酢下也、〈○中略〉 一海鱸は汁にするは上也、さしみは中也、〈○中略〉 一眞鰹汁は上也、但差味しやうが酢上々也、但樣口傳有、同煎皮は中なり、〈○中略〉 一鯉の差味は煎酒上々也、辛し酢中也、〈○中略〉 一生ざより、同きすは、さしみにも吉、又あぶりても珍敷物なり、〈○中略〉但さしみの時、夏はたで酢上上也、 一鮝料理は、先湯にして、辛し酢にてもしやうが酢にてもさしみに吉也、

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0209 一鳥ヲ差味ニシテ參スル事(○○○○○○○○○○○)、雉子山鳥ニテモ、荒卷テ置タルヲ夏取出シテ湯ヲカヘラカシテ、彼鳥ヲ入テ、湯ビキテ取上サマシテ、薄ク引テフクサ盛ニシテ、飼シキ同前、蓼酢ニテ參ラスベシ、御湯漬ノ御廻ナドニ可然物也、

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0209 一鯉の重皮といふは、躬とりて小口切にして盛たる刺躬なり、

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0209 一岸盛といふは、鰹の刺躬也、盛形の名也、 一がんぎ盛といふは、鰐の刺躬也、からし酢かけ出す也、

〔三議一統大雙紙〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0209 さしみの事、可喰前に酢に浸すべし、

〔料理物語〕

〈指身〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0209 すゞき あをず 生姜酢にてよし まな鰹 いりざけ しやうがずにても吉 くじら うすくつくり候て、にえ湯をかけ、山椒みそずにてよし、 ふか かわを引、つくりてにえゆをかけよくしらめ、しやうがずにて吉、さつとゆがきてもよし 鮫 これも、ふか同前、 こち かわをはぎ、うすくつくり候、しやうがず、いりざけ、たでずにても、 鮟鱇 これも、しらめてしやうがず、 さわら いりざけ しやうがず なまがつほ しらめて吉、そのまゝもつくる、からし酢、 鯉 いりざけよし 鮒 これも、いりざけよし、 あゆ これも、煎酒よし、 うなぎ 白やきにして、靑ずにてよし、 雉子 丸煮にしてむしり、山椒みそずよし、 鴨雁 きじのごとく、又ほねぬきにしては輪切にして、わさびずしやうがみそずよし、 にはとり これも、きじのごとくつかまつり候、 小鴨 きじのさしみに、鯛のうほろゆがきもりあはせ、わさびみそずにて出しよし、けんにかたのりきんかん、何も鳥むしりて、 むし竹子 ねをきりかわともにたてにをき、せいろうにて、よくむして、色々にきり、白ずにてさしみに吉、みるくひあわびにかひ、又椎茸木くらげなどももり合せよし、 うき木 しらめて しやうがずよし 榮螺 よなき みるくひ 鳥がひ たいらぎのわたなどは、つくりゆがきて、わさびみそずにてよし、 川ぢしや よめがはぎ あさづき、又は菊の花芍藥のるいは、いづれもすみそにてよし、 松露 ゆがき 白ずにてよし 眞龜 よくゆにしてむしり 生姜みそずよし

〔鈴鹿家記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0211 應永六年六月十日庚申、當屋鈴鹿勝昌定師次男定好弟、始テ神事ヲ勤、御本所へ赤飯荷桶一手、酒干鰤壹連、上座敷十四人朝振舞、〈○中略〉引テ指身〈鯉イリ酒、ワサビ、〉

〔祗園會御見物御成記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0211 大永二年祇園會爲御見物御成之時、從上平御一獻に付而次第、〈○中略〉 獻立〈○中略〉 五 〈はむゑび〉さしみ 御しる こい

〔醒睡笑〕

〈六〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0211 一振舞の菜に、茗荷のさしみありしを、人ありて小兒にむかひ、是をばいにしへより今にいたり、物よみおぼへん事をたしなむ程の人は、みなどんごん草と名付、ものわすれするとてくはぬよし申されば、兒きいて、あこはそれならくはふ、くうてひだるさをわすれうと、

〔貞丈雜記〕

〈六飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0211 一さしみにすたで(○○○)、すもたせ(○○○○)と云事有、すたでと云は、うすみを云なり、〈うすみとは魚のはらのみの、薄きところ也、〉すもたせと云は、中骨を切て置、喰ふ時は、すたでを箸にてはさみ、醋に鹽をかきまぜて、それをすもたせの上において、此すたですもたせをば喰べからず、是をくひたらんは耻なるべし、鯉のさしみ鱸のさしみにも、すたですもたせをもる也、

〔貞丈雜記〕

〈六飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0211 一魚のさしみのそばに、右の角の方に魚のみを五分計に四角に切て置く物也、それを箸にてはさみて、醋に鹽をかきまぜる爲也、其五分計に切たるをば食はぬ物なり、くふためにしたる物にあらず、此事北上記にみえたり、

水作

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0211 魚類指身の仕樣 鯉の水作り 子のなき鯉をいかにも薄く作り、くみたて水に鹽を少入、二三返も洗、鯉の身はせ 申程洗、水けをしぼり、身のちゞみ申樣にいたし、いり酒に酢をくはへ候てもよし、からし味噌にてもよし、

〔饌書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0212 鱸魚〈○中略〉此物味状倶韻、其稱洗鱸者、聶鱠投新汲水、攪洗數次、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins031768.gif 酒喫之、品味逈秀、其僅尺者宜鹽炙

細作

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0212 魚類指身の仕樣 生海鼠細作りは、二ツ三ツにへぎ、成程細作り、煎酒にてあへ、其いり酒をすて、又別の煎酒をかけ今一へんあへ候へばさらりと成る、わさび花がつをを上置にいたし候、ぬる湯にてざつと洗候へば、ねばりけなくよく候、

小ダヽミ

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0212 魚類指身の仕樣 小だゝみは常世間にする通り也、され共鯛の中うちをこげ不申ぬ樣に遠火にあぶり、うへのかう色になり候時分、骨に付たる身を竹箸にてむしり細に刻み、すり鉢にて能すり、是を加へ候へば猶以ふうみよし、

霜降

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0212 一冬は生姜酢にても、辛酢にても鯛を少し暑かにしては一返加減する也、但出す時花鰹を上に置て吉也、是は則霜降と云る料理也、

〔料理物語〕

〈指身〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0212 霜降 鯛をおろし、よきころにきどり、にえゆに入しらみたる時あげ、ひやしつくりたゝみ候事也、いりざけ吉、からしなどもをく、

カキ鯛 小川ダヽキ

〔料理物語〕

〈指身〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0212 かきだい(○○○○) 鯛を三枚におろし、こそげてかさねもり候、いりざけよし、からしをく、けんはよりがつほ くねんぼ みかん きんかん 小川だゝき(○○○○○) 生がつほをおろしよくたゝき、杉いたにつけにえ湯をかけ、しらめてつくりたゝみ候、右のかきだいにもりあはせよし、鯉にてもつかまつり候也、同いり酒

篠掻

〔倭訓栞〕

〈中編九佐〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0213 さゝがき 料理にいふは、篠葉の如く薄くかくをいへり、

酒浸

〔書言字考節用集〕

〈六服食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0213 酒浸(サカビテ)

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0213 一酒びてとは、何魚にても出し、酒計に鹽を入て、酢を少し加る也、

〔料理物語〕

〈海の魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0213 鯛はさかびて、鱈 さかびて

〔料理物語〕

〈川魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0213 鮎 さかびて

〔料理物語〕

〈鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0213 鶴 さかびて 白鳥 酒びて 雁 さかびて 鴨 酒びて

〔料理物語〕

〈指身〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0213 さかびて 鯛 あわび たら さけ あゆの鹽引 からすみ かぶらぼね 鶴 雁 鴨 右之内、いかにも鹽めよきを取あはせ、つくりもり候、けんくねんぼ、其外作次第、だし酒かけてよし、

〔三好筑前守義長朝臣亭江御成之記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0213 一三月卅日〈未刻○永祿四年〉 御成〈○中略〉 一公方樣〈○足利義輝〉御前并御相伴衆、御供衆、走衆雜掌方之事、進士美作守被申談、八十貫文にて十七獻之分調進云々、進士美作守請取調進獻立次第、〈○中略〉 よ 〈酒びておちん〉かひあはび くじら

煮物

〔類聚名義抄〕

〈四火〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0213 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins021301.gif 煮〈俗今音渚、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins045737.gif 正、ニル、ヤク、イル、カシク、〉 烹https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins230990.gif 〈普耕反、ニル、〉

〔伊呂波字類抄〕

〈仁辭字〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0213 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins021302.gif 〈煮〉https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins019187.gif 〈已上同煮鹽〉

〔鈴鹿家記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0213 應永六年六月廿四日甲戌、アタゴ講、當人小山田志摩、何モ一町寄合遊、晝素麵、夕食汁〈ハエナスビ子イモ〉鱠〈赤貝 クラゲ アサフリ〉 煮物〈イリコ コンニヤク スリ山椒〉

煮染

〔增補下學集〕

〈下二飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0213 煮染(ニシメ)

〔庭訓往來〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0213 菜者、纖蘿蔔、煮染(○○)、牛房、

〔倭訓栞〕

〈中編十八爾〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0214 にしめ 庭訓に煮染と書り

〔江戸名物詩〕

〈初編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0214 翁屋煮染〈上野廣小路〉 暖簾髙掛翁之面、幾箇盤臺煮染温、上野花開三月始、辨當重詰注文喧、

〔江戸名物詩〕

〈初編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0214 萬久煮染〈芳町〉 蒲鉾長芋燒豆腐、干瓢椎茸露自含、一重見舞幕之内、味得直知萬久甘、

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0214 一江州ノ鮒ヲ獻立ニ丸ニト書タラバ、魚ノ尾サキヲモオスベカラズ、少モ刀寄タラバ、丸ニトハ不云、

太煮

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0214 一ふとにりうりの事、たわらこの本うらを切て、いかにも内の物をよく取てあらひ候て、山のいもをおしいれ候、自然山のいもなき時は、くずにみけし又もちのこめのこ抔をまぜてこねて、たわらこの中におしいるゝ、扨なはにてまき候へば、たはらこいたみ候、あひこかへしにて、いかにもゆひて、一ばんすめのすめみそにて能煮候、扨取いだしさめたる時、きりやうは車ぎりにも、又はなびけても切て取也、

〔鈴鹿家記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0214 應永元年十二月朔日、聖護院村若衆吉田村若衆雪打、御本所御見物、〈○中略〉御本所ヨリ御酒持樽ニ五荷、ハギノ花大桶ニ三荷、クキカマス大根フト煮、大重箱二荷、

〔文祿三年卯月八日加賀之中納言殿〕

〈江〉

御成之記

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0214 次之御供衆貳百人前〈○中略〉 三ノ膳〈○中略〉 ふとに

黑煮

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0214 一くろにの事、まづくろ物の内にかぢめを敷て、其上にあふびを入て、又其上にかぢめをふたにして、すめみそにていかにもよくに候、かぢめなき時は、をごひじきにてもあれ、かぢめの名代にいるゝ也、さやうに候へば、くろく成候、明日の客來ならば、宵より煮候、あふびも先煮候て、又すめ味噌にて、いまのごとくにる也、扨切候へば、中はしろく、まはりはくろし、 それを切樣は、すぎもりになるやうに切べし、しぜんあへてもいだす事あり、其時はけしともちの米をいりて、湯にてほとばかして、扨いかほどもすり、けしほどもかすのなきやうにすりて、酒鹽ばかりにてあゆる也、しほなどは入候まじく候、自然からみ入候はゞ、はじかみよく候、

柔煮

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0215 柔かに煮は、駿河煮と混じたるなり、同書〈○料理物語〉するが煮、たこをよく洗ひ、其儘だしたまりに酢を加へ、いぼのぬくる迄よく煮とある是なり、

〔江戸流行料理通大全〕

〈初編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0215 やはらか煮の傳 一生貝赤貝榮螺とこぶしの類、大根にて能々たゝき、其大根こぐち切にして、其中へ米ぬか少しくはへ、釜に入、一日一夜たき火にて能々煮る也、 蛸やはらか煮の傳 一蛸を大根にて能々たゝき、白豆まめを入、みりん酒壹ぱい、醬油半分、水一盃入、火かげん火の上へわら灰をまき、能々煮て、煮上ぐる時に、鍋共に土間におろししばらく置也、

〔鼎左秘録〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0215 諸魚類骨まで和らかに煮る法 山楂子 壹味 右十粒ばかり魚を煮る鍋へ入、一所に煮るときは、いかやうの魚にても、和らかになる事妙なり、又此山楂子は魚毒を解す功能あり、

衣煮

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0215 一鯉の衣煮之事、鯉のつくり樣、うろこを小刀のさきにて、魚のかは共におこし、それを方一寸二三分に切、くろ物に鹽を入ていり、鹽のいれたる時酒を入、又白水を入て、鯉のうろこを煮候而置候、鯉のつくりやうは三まいおろしにして、方一寸づゝみをさり、酒をかけをく也、したじのこしらへ樣は、すましみそ飯のわん一はいに、まへしほざら程の物にすたでをさして、なま水より鯉を入て、ふたをもとらずに能煮たてたる物にて候、扨御座にあがる時、酒 鹽をさし用る也、又もり樣うろこのかたになるやうにもり、其上にれうりしたるうろこを二ツ三ツほども打ちらし、其後汁をいるゝ也、すい口は山椒のこにて候、

駿河煮

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0216 たい、するがには、 たいを白やきにして、だしたまりにすをすこしくはへ、よくよくに候て出し候、又やきてぶたのあぶらにてあげ、さてに候へばいよ〳〵よし、是は兩蠻料理ともいふ、 たこのするが煮 たこをよくあらひ、そのまゝだしたまりにすをくはへ、いぼのぬくるまでよくに申候、くろにとも云也、

カウライ煮

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0216 鯛かうらいには なべに鹽を少しふり、そのまゝ鯛を入、古酒に白水をくはへ、右のいほひた〳〵に入候て、さかけのなきまで煮候て、めしのとり湯をさし、景(けい)をおとしてかげんすい合せ出し候也、何にても木の子ねぶかなど入てよし、其外作次第、此時はたいをおろしてきり入る也

一コン煮

〔朝倉亭御成記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0216 永祿十一年五月十七日、於越前谷、朝倉左衞門督義景亭へ御成事、〈○中略〉 一於會所參ル進物并獻立の次第〈○中略〉 十五獻〈かまぼこけづりもの〉 一こん煎(○○○○)

〔文祿三年卯月八日加賀之中納言殿江御成之事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0216 七獻 御前 御配膳 同前〈○丹後少將〉 一物 ふな 一こんに

越川煮

〔文祿四年御成記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0216 一初獻御盃參候、御雜煮參候而、御銚子參候と御能初メ候同時也、〈○中略〉 五ノ御膳〈○中略〉 越河煎

淀川煮

〔鼎左秘録〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0216 鮒淀川煮の法 鮒貳三寸より五六寸位までの魚を、凡長日なれば二時計、短日ならば三時ばかり酒に浸し置なり、尤鱗はそのまゝ、腸は泥沙をよく去るべし、右のごとく酒にひたしたるものを、酒水おの〳〵等分にして、文武火(すみび)にて半日ばかり煮て、其上醬油を少し入れ、又酢を少し入て、また文武火にて寛く半日ばかり煮るなり、前後凡一日ばかり煮るなり、但し右の酢を入ること誠に極秘事なり、左すれば其骨すこしも齒にこたへず、眞に麩を喫と同やうになるなり、

定家煮

〔江戸流行料理通大全〕

〈三編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0217 定家煮 一燒酎と燒鹽にて味を付煮るを、定家煮といふなり、

五菜煮

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0217 ごさいに さわらを白やきにして、だしたまりにてに申事也、

〔四條家法式〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0217 一大猷院樣〈○中略〉寛永三寅年九月六日、行幸二條御城、同十日還御、〈○中略〉同九日晩御本〈○中略〉御二 五菜煮鰆〈一鹽アテ、酒ニ醬油少加へ、〉

杉燒

〔倭訓栞〕

〈中編十一須〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0217 すぎやき 禁中料理にあり、杉の折に種々の物を包みたるをいふ也、

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0217 後撰夷曲集、花に酒月に芋くふ春秋も冬にはいかですぎ燒の鯛、〈行重〉櫻陰秘事に、杉燒のまはり振舞して、町衆四五人參會、伊呂三絃に、面々杉燒も鯛靑鷺ならでは喰れずと云々、杉燒と云に二種あり、これは料理物語に、へぎやきといへり、鴨を大きにつくりたまりかけ置て、皮を煮身をはさみ入、一枚ならびにおきやくことなり、又調味抄に、杉の箱又面々和鼓(フクサミソ)にとぶろく加事もあり、鯛もしくは鱸https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046174.gif (コチ)鮭、取合に葱よく茄(ユデ)て、又後卵餅を入煮と有、面々といへるは、面々杉燒なり、是古の杉の折櫃なり、又一種は一代男に、杉板につけて燒たる魚(トヽ)お定りの蛸、漬梅色付の薑云々、〈其外鴈の板やき鴨の板やきあり、〉

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0217 杉やき 鯛をあつく作りをき、だしにてみそをこうたてなべに入、にえ候時箱に入、先ほねかしらを入にる、身は入候てやかでよし、どぶをさしてよし、かき、蛤、たうふ、ねぶか、其外 作り志だいに入也、

鍋燒

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0218 なべやき みそ汁にて、なべにて其まゝに申候也、たい、ぼら、こち、何にても取あはせ候、

〔料理物語〕

〈海の魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0218 鱏(ゑい) なべやき 名吉 なべやき

〔料理物語〕

〈川魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0218 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046572.gif (なまづ) なべ燒

芹燒

〔易林本節用集〕

〈世食服〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0218 芹炙(セリヤキ)

〔增補下學集〕

〈下二飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0218 芹炙(セリヤキ)

〔料理物語〕

〈靑物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0218 芹 汁、あへもの、せりやき、なます、いり鳥に入、みつばせりも同じ、

〔信綱記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0218 一松平伊豆守〈○信綱〉常に茶の湯にても謠舞にても、碁將棊一色も數寄好者被申事無之、毎度隙の時分は、出入の心安き衆を集、色々理屈咄をいたされ、或は公事沙汰の事を問答批判をなぐさみとして日を暮し在之候、〈○中略〉或夜出入之侍衆申出さるゝは、〈○中略〉亦問給ふは、總而人のさかやきを致候と申事は合點不參事也、あたまをやきたる事もなきにさかやきと申候、豆州被申は、夫には御返答は無之、料理に肴燒といへる料理有、是も煮て用るものなれども、せりやきと申候、是はいかんと被申候へば、皆返答なくして、御理屈にあひ候ては、文殊も成申間敷候と笑ひて過ぬ、さかやきのひらきはならざるといへども、負はいたされずと申沙汰せり、

鮭煎燒

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0218 鮭のいりやき 杉やきのやうにつくり、はらゝを半分すりこしてをき、半分は丸子にてをき、だしたまりかげんして、身にわたもきもゝ入に申候、にえ立候時、丸子もすりこも入かきあはせ、やがて出し候也、粒山椒入てよし、

煮浸

〔料理物語〕

〈煮浸〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0218 にびたし 鮒を白やきにして、だしたまりにてに申事也、

煮和

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0218 煮和(にあへ) だしたまりよし、からざけのかわうすみもすこし入、くろまめからかわ、梅 干、田作り、木くらげ、あんにん、ぎんなん、など入に候て、玉子のそぼろうはをきにしてよし、夏はさまして出し候也、

ゾロリコ

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0219 ぞろりことは いりこをせんにきざみ、よくゆにして、小鳥かもなどをたゝき入、山のいもゝいれ、だしたまりにてに申事也、いりこばかりに候へば、せんいりこといふ、

笋于

〔下學集〕

〈下飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0219 笋干(シユンカン)〈笋與筍同字也〉

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0219 しゆんかん 竹の子をよくゆにして、色々にきり、あわび小とりかまぼこたいらぎ玉子〈ふのやき〉わらびさがらめ、右之内を入、だしたまりにてに候てよし、又竹子のふしをぬき、かまぼこを中へいれ、に候てきり入も有、

ノツヘイトウ

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0219 のつへいとう 鴨をいり、鳥のごとくつくり、だしたまりにてにる、にえたち候ときかげんすいあはせ、うどんのこをだしにてとき、ねばるほどさし、にえたち候時出し候ほど、鴫なども、うづらも、

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0219 ふののつへいとうは ふを油にてあげ大きにきり、鴨の料理のごとくいたしてよし、

生皮

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0219 生(なま)かわは 雁にても、鴨にても、かわをはぎつくりすをはしらかし、二へんかけてをき、又身を作、すを一返かけてしたみ、だしたまりかげんして、にえ立候時すいあはせ鳥を入、そのまゝ出し候也、うはをきせり、其ほかつくり次第なり、鯛のそぼろしらめをきてもよし、

センバ 骨拔

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0219 せんば(○○○)は 小鳥にても大鳥にても、だしにかげをすこしおとしてよし、 ほね拔(○○○) 鴨のとしりをきり、それよりあしかたまでのほねをぬき、中へ玉子かまぼこをいれ、口をぬひあはせゆで、鳥のごとくに候て、輪切にして出し候、赤あしくほねはのこし候也、

〔天文日記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0219 天文六年正月十三日、興正寺先日より被申候點心、未刻過に被振舞候、相伴兼譽兼智、兼 盛、勝萬寺、〈○中略〉二獻の點心也、すい物うけいり也、三獻肴は、鴈せんばいり(○○○○○)也、くみつけ〈右に鯛のさしみ、左に白きけづり物、〉なり、

野衾

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0220 野衾 小鳥をたゝき、せんばのごとくさつとにて、扨鯛をかき、こまかにたゝき、にえ湯をかけあげおき、大きなるあわびをうすくへぎて、これもしらめ候へば、ふくろのごとくなり申候、此時だしたまりかげんして入、ふき立候とき、三色入かきあはせ候へば、ふくろの中へつつまれ申候、玉子のそぼろうは置によし、すい口いろ〳〵、

伊勢豆腐

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0220 伊勢豆腐は 山のいもをおろし、鯛をかきてすりいもの三分一いれ、たうふに玉子のしろみをくはへする、何もひとつによくすりあはせ、杉の箱に布をしき入つゝみ、ゆにをしてきり葛だまりかけ候て出し候、又鳥みそわさび味噌などかけていよ〳〵吉、又たうふばかりにても能すりて、右のごとくつかまつりいだし候、

葛鯛 二色

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0220 葛鯛 たいをやき物のごとくきり、くしにさしゆにして、くずだまりかけ出し候、葛大こんも右のごとくつかまつり候、 に色の仕樣は だしたまりにすをくはへ、何もよし、

コロ〳〵

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0220 ころ〳〵 小鳥をたゝきせんばのごとく、さつとに候てうちあげをき、かまぼこをよくすり、むくろじほどにして、かの鳥にてこかし、だしたまりかげんしてに候て出し候、

從弟煮

〔書言字考節用集〕

〈六服食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0220 從弟煮(イトコニ)

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0220 いとこに あづき、牛房、いも、大こん、とうふ、やきぐり、くわいなど入、中みそにてよし、かやうにをひ〳〵に申により、いとこに歟、

〔屠龍工隨筆〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0220 いとこ煮は、おい〳〵入れて煮るといふ秀句なりとぞ、 ○按ズルニ、いとこ煮ノ事ハ、歳時部御事篇ニ在リ、

〔倭名類聚抄〕

〈十六魚鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0221 寒 文選云、寒鶬蒸麑〈師説寒讀古與之毛乃(○○○○○)、此間云近古與春、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈四魚鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0221 按靈異記、煮鯉寒凝、厨事類記背書、任大臣并大將之日、温汁之後又居寒汁、鯉味噌即是、文選七啓訓爾古之、樂府詩訓爾古與須毛乃、〈今本寒誤炮、爾誤末、〉下總本春作之、按伊呂波字類抄亦作須、則作之恐非是、按古與春即古々也須也、謂凍之、今俗呼邇古々利、羽族部寒鴟、廣本讀古伊太流止比、亦古々衣太流止比也、

〔易林本節用集〕

〈古食服〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0221 凝魚(コヾリ)

〔倭訓栞〕

〈中編八古〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0221 こゞる 万葉集に凝字をよめり、もと寒凝(コイコル)の義也、靈異記に煮鯉寒凝(コヽラス)とみゆ、今もこゞり鯉、こゞり鮒などいふめり、

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0221 一コヾリノ事、小鮒ヲ可用也、其外ハ何魚成共可用、タレミソニテ煮タルヲバ、コヾリ迄ニテ有ベシ、スリミソニテ煮タルヲバ、シロニノコヾリト申也、メシノ時コヾリヲ出シテ、晝ノ肴ノ時白煮ノコヾリヲ又出シタリトモ不難事也、夏コヾリヲコソ當流ノ面目トハ心得申拵テ參スル也、五月ノ末六月ニスベシ、

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0221 鮒のこゞり たれみそにかげをおとし、ほねのやはらかになり候までに申候て、風ふきにをき候へば、一時の間にこゞり候、夏はところてんの草くはへよし、

〔料理物語〕

〈海の魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0221 たなご こゞり 名吉 こゞり

〔料理物語〕

〈川魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0221 鯉 こゞり 鮒 こゞり

〔延喜式〕

〈三十九内膳〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0221 諸國貢進御贄〈中宮准此〉 旬料 大和國吉野御厨所進鳩、從九月明年四月、年魚鮨火干、從四月八月、月別上下旬各三擔、但蜷并伊具比魚煮凝(○○)等、隨得加進、

〔鈴鹿家記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0221 應永元年十二月廿一日癸亥 一巳ノ上刻 御元服 新官 兼倶〈○中略〉 二〈杉燒(根ブカ)香物〉 御汁(スマシ)〈生鱈柚〉 〈昆布〉 三〈大血〉 〈鯉コヾリヲハリ大根〉

熬物

〔倭名類聚抄〕

〈十六魚鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0222 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029952.gif 玉篇云、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029952.gif 〈音雖一音淺、和名以利毛乃(○○○○)、〉少汁臛也、

〔伊呂波字類抄〕

〈伊飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0222 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029952.gif 〈イリモノ小汁https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029786.gif 亦作https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins019486.gif https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins019425.gif 、〉https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins050835.gif 物〈同〉

〔類聚名義抄〕

〈四火〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0222 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins050835.gif 〈〈子連反イル ニル〉 熬〈イル ヤイタナ イリタナ アフリ物〉

〔平他字類抄〕

〈上飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0222 https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins050835.gif 〈〈イリモノ、セム、〉

〔書言字考節用集〕

〈六服食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0222 熬物(イリモノ)

〔易林本節用集〕

〈伊衣食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0222 熬付(イリツケ)

〔空穗物語〕

〈國讓上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0222 おとゞ御まへに人めして、てうぜさせ給て、けふじてまいる、藤つぼはあゆならぬいを、いり(○○)てまいり給、

〔今昔物語〕

〈二十八〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0222 金峯山別當食毒茸醉語第十八 今昔、金峯山ノ別當ニテ有ケル老僧有ケリ、〈○中略〉夜明テ未ダ朝ニ別當ノ許ニ人ヲ遣テ、急ト御座セト云ハセタレバ、別當程モ无ク、杖ヲ突テ出來タリ、房主指向ヒ居テ云ク、昨日人ノ微妙キ平茸ヲ給ヒタリシヲ、煎物(○○)ニシテ食セムトテ申シ候ヒツル也、年老テハ此樣ノ美物ノ欲ク侍ル也ナド語ラヘバ、別當喜テ打ウナヅキテ居タルニ、糄ヲシテ此ノ和太利ノ煎物ニ温メテ、汁物ニテ食セタレバ、別當糸吉ク食ツ、

煎鯛 煎鯉

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0222 いり鯛(○○○) さしみよりすこしあつく作り候、たいにてもこいにても、子を半分はつみきり、半ぶんはくだきて、いり酒にすをおとしはしらかし、出しさまにたいも子も入、やがてもり候、にえ過候へばあしく候、

鯛カキ煎

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0223 鯛のかきいりは(○○○○○○○) 鹽をいり、よきころにしほをのこし、なべのやけたる所へうほを入、そのうへゝいをのひたるほど古酒を入たく、さかけのきたるとき、三番白水をさし、鹽かげんすひ合候て出し候也、すいくちは時分の景物よし、但是は鯛せぎり也、

鱧子煎

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0223 はもの子いり(○○○○○○) だしに鹽又はかけをおとし候、すも少しくはへ仕立候、はもはなますよりあつくつくり候、子もわたも入てよし

煎鳥

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0223 いり鳥(○○○) 鴨をつくり、まづかわをいりて、後身をいれ、いりだし、たまりかげんしてに申候、いりざけもくはふ事有、せりねぶかくきたちなど入よし、すい口柚わさび、

鳧煎

〔易林本節用集〕

〈加食服〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0223 鳧熬(カモイリ/○○)

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0223 一鴨煎鳥は、薄く切てよく鍋にて其儘いる也、但後に醬油酒を指て吉也、又時分によりては、靑菜芹などを入ても吉也、仍大鳥小鳥同前也、

酒熬

〔易林本節用集〕

〈左食服〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0223 酒熬(サカイリ)

〔庭訓往來〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0223 御齋之汁者、〈○中略〉菜者、〈○中略〉酒煎(○○)松茸、平茸、鴈煎等、隨體可之、

酢煎

〔新猿樂記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0223 七御許者、食飮愛酒女也、所好何物、鶉目之飯、蟇眼之粥、鯖粉切、鰯酢煎(○○)

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0223 一酢入ノ事、今ノ人々ノ心得ニハ、ミソ不入ヲスバスイリト被申事如何ナルコトゾヤ、スイリト申ハ、鯉ニテモ鯛ニテモ差ミノ如ニ作リテ、水鹽カツホ酒入テ、能ホドニ煮テ參ラセザマニ酢ヲ指テ參スル也、是ヲコソ酢入トハ申侍レ、

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0223https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins050835.gif だしに鹽ばかり入にる、出し候時すをすこしくはへてよし、あぢ さばかつほのるいよし、

〔文祿三年卯月八日加賀之中納言殿江御成之事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0223 次之御伴衆貳百人前〈○中略〉 二ノ膳〈○中略〉 すいり(○○○)

醬煎

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0224 一醬いりといふは、魚鳥共に摺醬にして置、出す時山のいもを湯引、たれみそを煮立候て魚鳥を入、一泡煮立いもを入、柚の皮を置出す也、

〔武家調味故實〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0224 一ひしほいり(○○○○○)には、頭魚を入べし、鳥の汁には不入、〈○中略〉 一ひしほいりの事、骨をもりやう、何にてももりて、其上にかうしやう骨を三切、上下可置、當事は是ひしほ入りの汁といふ也、

〔よめむかへの事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0224 一きやうのぜん、しるかけいゝなどまいり候、〈○中略〉 ひしほいり 山のいもをかはをすきて一寸ばかりにきりて、きじをつくりてたれみそにてしたゝめ候て、うへにあまのりををくなり、わなし、

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0224 ひしほいり うす味噌にだしをくはへ、きじを入仕立候、山のいものりなど入て仕候、

〔今川大雙紙〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0224 食物之式法の事 一しきの御飯之事、〈○中略〉こづけの上にかけて參らする御汁は、ひしほいり等也、さてはたゝみの汁也、たゝみの汁とは、色々のうちな等也、

〔古事談〕

〈二臣節〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0224 二修帥長實、著水干裝束、遊女〈神崎君目古曾〉ニイカヾ見ユルト被問ケレバ、目出度御座之由申之、重被問云、水干裝束ニテヨカリシ人、又誰ヲカ見哉云々、遊女申云、肥前守景家ト申人コソ見候シカト、詞未了前忽解脱云々、件景家水干裝束之時無雙、布衣之時似田舎五位、束帶之時ハ諸人咲之云々、常ハ小鳥柹ノ水干無文袴紅衣ヲ著テ、赤ツカノ刀ノマブタキニ貝摺タル差テゾ、家中ニハ居タリケル、最後ニ何事カ思置事有哉ト問人アリケレバ、無別之遺恨、伹大殿大饗之時、山鴫ノ翳焦被召之時、山鴫ノナクテミヤマ鷯ノヒシホイリ(○○○○○)ヲマイラセタリシ事ナン遺恨云々、

〔祇園會御見物御成記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0224 大永二年祇園會爲御見物御成之時、從上平御一獻ニ付而次第、〈○中略〉 獻立〈○中略〉 九獻〈○中略〉 ひしほいり

〔天正十年安土御獻立〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0225安土上樣三河守殿御申獻立〈○中略〉 十六日御あさめし〈○中略〉 與膳 ひしほいり

脹熬

〔倭訓栞〕

〈中編二十二不〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0225 ふくだめ あはびにふくら煮といふは、脹の義也といへり、

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0225 脹煮は、料理物語に、なまこを大にきり、だしたまりふかせ、出しさまに入、其儘もることなり、すつぽうともいふ、蚫烏賊もよし、〈調味抄も此法にて、蚫いかの事なし、〉調味抄には、鱆(タコ)の條に、ふくら煮は如常と有は、上のしかたをいふなり、今すつぽん煮といふは、此すつぽうにて土竈を專くふやうになりて名はまがひたり、

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0225 ふくらいり なまこを大きにきり、だしたまりふかせ、出しさまに入、そのまゝもる事也、すつほうともいふ、あわびいかもよし、

〔天正十年安土御獻立〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0225安土上樣三河守殿御申獻立〈○中略〉 十五日晩御膳〈○中略〉 ふくらいり

ジブ

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0225 じぶとは 鴨のかわをいり、だしたまりかげんして入、じぶ〳〵といはせ、後身を入申事也、

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0225 名目の煮物の事 じぶ〳〵 鳥のあぶらかはをうすなべに入、いればあぶらにへ出る時、酒しやうゆおとし、鳥の身を入て、じぶ〳〵といふばかり煮て出すなり、入合し、ぼりどうふなどよろし、

〔料理獻立〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0225 舞御覽 二ノ御三方 一御あへ物(御茶わんニ) 〈かき山椒みそあへ〉 一ぢぶ(前同斷) 〈かも菜〉 〈但御に物なり、ぢぶと申儀、前同斷古實有之哉、〉

櫻熬

〔易林本節用集〕

〈左食服〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0226 櫻熬(サクライリ)

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0226 一さくらいりの事、先すましみそ一はいに、すめみそすゑのかさ一ツづつ合せて、能櫻には、くろいか又はたこ川すゞき、これを用也、すりやう口傳、すひ口は、ゆのは、又は冬はさんせうのこ、こせうのこをも用也、又櫻のつぼみを、花も同前さらのさきにかけて置なり、

〔料理物語〕

〈煮物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0226 櫻煎は たこの手ばかり、いかにもうすくきり、だしたまりにてさつとに申也、

〔文祿三年卯月八日加賀之中納言殿江御成之事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0226 九獻 〈けづりものまきするめ〉 櫻いり

松笠熬

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0226 一松笠いりとは、鯛の躬を鱗形に切、筋違に刀目を入、湯びき候へば松笠に似る、たれみそなどにて煮也、

卯花熬

〔易林本節用集〕

〈宇食服〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0226 卯花熬(ウノハナイリ)

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0226 一卯の花いりとは、いかを切、薄たれにて煮なり、靑味を入べし、

腸煎

〔世俗立要集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0226 一ワタイリ可食事 後鳥羽御宇ノ水無瀨殿ニテ、卿相雲客ノ中ニテ供御ノマイリシニ、仰ニイハク、飯ヲ汁ニツケズ、サキニシルノミヲクヒ、シルヲスヽル事ハマサナキ事也、タヾシワタイリヲスヘタルヲクハヌハ、ハシニテシルノミクヒタルヨリモ、ソクヤウニテアル事ナリ、スエハテバサウナククウベシ、又女房ト帳臺ノ上ナドニテ食スル時クハヌハ、ヤナギノハムザウナリト仰アリキ、

〔今川大雙紙〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0226 食物之式法の事 一鯉のかしらなどを、わた煎の上にもる事は、内々の時の事也、若骨はかいしきのみと云て下にもる也、わたを御前によせてもるべし、子をばあながちもちゐざる也、 一女房の三獻の事、鯉のわた煎には、うをの左のひれを上に盛る也、おもむきのひれとがうする也、其次の女房にはとむきのひれを上にもる也、外むきと云は、うをの右ひれ也、おもむきと云は左のひれ也、きこしめす時むかひ給はおもむきと云也、なますをばうすみをまはしもり候て、うなもとのみを上にもる也、是は男には斯のごとし、女房には鱠のおはりにのしあはびちゞめて盛也、若は又けづりてもまはし盛にする也、かやうの儀はたゞ常に式三獻と云ごとくにする也、別に子細あるべからず候、

皮熬

〔易林本節用集〕

〈加食服〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0227 皮熬(カハイリ)

〔常盤嫗物語〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0227 しゝ、とり、うさぎ、まみ、むじな、かはいりにしてくひたやな、

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0227 一カハイリノ事、雁ノ皮煎ナラバ、必木ノコ、シメヂ以下ノ物入ベシ、何ヲモ不入ヲバ、ス皮煎ト云也、皮イリト云事、雁鵠菱喰ナドニモ不限、魚ニハ鮭ニアリ、然間只皮煎ト計申事不然、皮煎ナニト名ヲ指テ獻立ニモ有ベシ、鮭ノ皮煎ノ時ハ、少モ身ハ不入、皮計可成也、鳥ノ皮イリモ根本ハ皮バカリ也、

〔料理物語〕

〈汁〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0227 かわいりは 雁にても鴨にても、皮をいり、だしを入、ほねをせんじ、なまだれ少さしてみを入、しほかげんすい合出し候、これも妻は時分の物、總別きの子は鳥汁にいつも入候てよし、すい口わさび柚、

〔鈴鹿家記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0227 應永元年十二月廿六日戊辰、今晩若州御袋樣ヨリ御モタセ、御内儀樣、御表侍從樣御内不殘食、〈○中略〉蒟蒻牛房フト煮、鴨〈皮煮靑菜入〉肴色々、

〔朝倉亭御成記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0227 永祿十一年五月十七日、於越前谷朝倉左衞門督義景亭へ御成事、〈○中略〉 一於會所參ル進物并獻立の次第〈○中略〉 五獻 かはいり〈御酌一式〉

モヽキ煎

〔武家調味故實〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0227 一鴈のもゝきいりの事、もゝきのうちの皮をすきて、ほそくわりてうすびろに作 りて、酒と鹽と入てよくあへて、皮いりするやうに石鍋にているべし、鹽をすこし多入て、常の皮いりよりもいりすごし、さて取あぐる時、かふぢのすをしぼりかけて進すべし、汁はきはめてしほからくしてわろし、

ウケミ煎

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0228 一河うそうけみいりの事、やきやういかにも能燒て、毛の一ツもなきやうにやくべし、うそをやき候時、石を二ツ三ツ火にくべてをき、うその腹をたてにわりて、わたをとりいだし、腹の内水を打候へば、腹の内のかくさき事もうせ候、其後腹の内の石を取いだし、こぬかを入て内外をよくあらふなり、うそのつくり樣は、うそのなかりのごとく、まさめにつくり候へば、すいく候つくり候ながさは、三寸四寸程につくる也、つくりたるを其まゝさかしほにつけてをく、又しるの仕樣はすましみそ一はいに、すめ味噌小わん一ツいれ、かつをと、けしとを布の袋に入て煮だし、取あげて能時分にうそを入候、うそのうはをきには、牛房を四の一寸程にうすくへぎ、はりきりにしているゝ也、すい口はうそのをゝ車切にきりて、鹽と酒にていりて、其上にさんせうをすりて、それをさか鹽にてこねて、いまのうその尾の車切の上に置て、汁の上にをくなり、うその尾はをぐるまといふ也、

炙物

〔新撰宇鏡〕

〈火〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0228 焚、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins018893.gif 、燌、〈三形同、快雲、快芬二反、以物入火之貌、保須、又阿夫留、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十六魚鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0228 炙 唐韻云、炙、〈之夜反、又之石反、和名阿布利毛乃、〉炙宍、説文字從月火

〔箋注倭名類聚抄〕

〈四魚鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0228 文選樂府詩同訓、今俗呼也岐毛乃

〔伊呂波字類抄〕

〈安飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0228 炙〈アブリモノ、黄帝始燔肉爲炙、又説文云、燒肉也、从肉在火上也、〉 烘 耿〈已上同〉

〔下學集〕

〈下飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0228 炙物(アブリモノ/ヤキモノ)

〔運歩色葉集〕

〈阿〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0228 炙物

〔易林本節用集〕

〈阿食服〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0228 炙魚(アブリモノ)

〔大上﨟御名之事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0229 女房ことば 一やきもの うき〳〵

〔倭訓栞〕

〈中編一阿〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0229 あぶる 萬葉集に焱をよめり、或は焙又烘をよみ、又炙(セキ)をよめり、炙之也、音せき、倭名抄にはあぶりものとよみたり、音しや、新撰字鏡にhttps://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins018893.gif 燌などをよめり、

〔厨事類記〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0229 記云 晝御膳〈○中略〉 七御盤 御汁二坏〈土器〉 燒物(○○)二坏〈同〉

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0229 一やきうを(○○○○)、高さ五寸たるべし、うへをほそくすぎもりに用也、つくり樣のこと、うをのみのかたより、刀をなびけつくりて、すりびしほをかけあぶり用なり、あぶり樣は、めこの上にわらをぬらししき、其上にみのかたよりかけあぶる也、

〔古事談〕

〈一王道后宮〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0229 或人云、鰯、雖良藥、不公家、鯖雖賤物、備供御云々、後三條院ハ鯖頭ニ胡椒ヲヌリテ、アブリテ常聞食キト、範時語ケリ、

〔定家朝臣記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0229 康平三年七月十七日癸卯、酉刻節會、〈○任大臣節會、以藤原師實内大臣、中略、〉 大饗料理次第 納言以下〈○中略〉 四獻〈鳥羮鴿〉 次鷄頭草〈莖立代〉 次鮎燒物(○○○)〈裹燒代(○○○)〉

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0229 一あぶり貝(○○○○)は、醬油にて丸ににて、少油でだす事も有、好次第に吉也、

〔料理物語〕

〈海の魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0229 名吉 かひやき(○○○○) 蚫 かひやき 辛螺(にし) かひやき

〔料理物語〕

〈獸〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0229 鹿 かひやき 川うそ かひやき いぬ かひやき

〔料理早指南大全〕

〈初編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0229 即席料理之部 鰒 貝燒 さい刀(かたな)付て出す 大あはび貝とも火にかけやく、かけしほ入ル、但し初手にかひを放す、

〔料理物語〕

〈海の魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0230 よなき からやき(○○○○) みるくひ からやき 赤貝 からやき 鳥貝 からやき ほたてがひ からやき

〔料理簡便集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0230 燒物方 燒はまぐり(○○○○○) けし炭 松かさ松木雜木の火にて燒くべし、中に火をおこし、はまぐりの口を火の方へ向け、すもう場の土俵のごとくならべ立まわす、口をしめる故、目切て汁もれず、其時火ばしにてはさみ兩へらを燒也、

〔今昔物語〕

〈三十〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0230 品不賤人去妻後返棲語第十一 而ル間男十日許有テ、攝津ノ國ヨリ返リ上テ、今ノ妻ニ何シカ彼ノ奉リシ物ハ侍リヤト打咲テ云ケレバ、妻遣タリシ物ヤハ有シ、其レハ何物ゾト云ケレバ、男否ヤ小キ蛤ノ可咲氣ナルニ、海松ノ房ヤカニ生出タリシヲ、難波ノ濱邊ニテ見付テ見シニ、興有ル物也シカバ、急ギ奉リシハト云ヘバ、妻更ニ然ル物不見エズ、誰ヲ以テ遣セ給ヒシゾ、持來タラマシカバ、蛤ハ燒テ食テマシ(○○○○○○○○)、海松ハ酢ニ入レテ食マシト云フニ、男聞クニ思ヒニ違テ少シ心月无キ樣也、〈○下略〉

〔料理物語〕

〈海の魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0230 榮螺 つぼやき(○○○○)

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0230 名目のやきものゝ部 つぼやき さゞい、かきなど貝にてやきたるをいふ、さゞいのこしらへがたつねにする所也、又やきはまぐりなどもみなおなじ、あわびのかひやきもつねにする所なれば、仕やうはしるさず、

〔鼎左秘録〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0230 榮螺の壺やき心得べき術 海濱にて榮螺を島やきとて燒なり、其とき其實貝をはなれ飛ぶこと五六間にも及び、もし人にあたる時ニ、甲にて傷付ること石弓のごとし、恐るべし、先さゞゐを燒んとおもふとき、鹽にても醬油にても殻の中へ入れ、小さき火を甲の上に置てのち燒べし、取たての生のさゞゐにても、飛 出ることなし、これさゞゐを燒秘法也、

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0231 一にしのつぼいりの事、下にひばを鋪、其上にゆかい敷を敷、其上にしをもる也、高さ三寸たるべし、其上にふたをおひ候、にしのつくりやうは、わきのかつうを取て、まがりを切はなし、竪にうすくつくりよし、

〔四條家法式〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0231 一大猷院樣〈○中略〉寛永三寅年九月六日、行幸二條御城、同十日還御、〈○中略〉同七日晩御本、〈○中略〉 辛螺坪煎

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0231 一鷹の鶉を足計肴に出すを、ひるふさと云也、 一雉子の首計燒て肴に出すは、おのみを出といふ、 一同首骨を肴に出すは、山かけを出と云也、〈○中略〉 一鶉のやき鳥には、兩羽を切廣げ、其上ニ檜葉を置盛也、是を羽改敷といふ也、 一鴫の燒鳥に羽改敷はせず、柿の葉をしきもるなり、〈○中略〉 一雲入といふは、雲雀の燒鳥を盛時の故實也、春夏秋冬によりて口傳有、 一肴にうづらを出す時、鷹と網との替り有、鷹の鶉をやき盛出すときは、足を竪にもる也、網鶉は橫にもる也、何時も頭は上なり、

〔武家調味故實〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0231 一しぎあぶりて可獻樣 別足二ツ上はし下はしをつゝみて、おしきに置て、こうばいの檀紙にて、をしきながらつゝみて可用、是も雪の朝まいるべき物なり、あぶる事如常、せなかをわりてかしらをば口むきにわるべし、かやうにしてあぶりて、足と上はし下はしとをつゝみて、わり目を上になして置なり、必雪の朝にてなくとも、冬はまいらすべし、足をも足の四ある鳥と云々、秘藏の秘曲なるべし、次若足を切て參らせよと仰かうぶる時は、しぎつぼに切やうに可切、但ひつたれを下す事かなふまじけ れども、常はかやうたるべし、別足のおもむきをまいらせば、下はしを可獻、つゝみたるすがた、〈○圖略〉下はおしき也、つゝみたるはこうばいだんし、かいしきの葉はなんてんぢく也、やき物にも尊者には別足の面向をまいらせて、上はしにても、下はしにても、一のこすべき也、猶口傳あり、 一別足つゝみて三十三刀ニ切樣、口傳在之、 鳥左をもむきに當也、但切事、外ニ十七刀、内ニ十三刀、上ニ三刀、少すぢかへて切べし、以上三十三刀なり、

〔北山抄〕

〈三拾遺雜抄〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0232 新任饗 延長八年正月四日、立作所進雉小燒(○○○)荒蠣等

〔定家朝臣記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0232 康平三年七月十七日癸卯、酉刻節會、〈○任大臣節會、以藤原師實内大臣、中略、〉大饗料理次第 納言以下〈○中略〉三獻〈飯次〉 小鳥燒物(○○○○)

〔古事談〕

〈二臣節〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0232 九條民部卿顯賴弁官之時、有公事之日、早旦參陣、漸及深更之間、已臨飢、仍於床子座、喚其由了、頃之雜色黑器ト云物ニ、ミソウヅノ毛立タル一盃ト、薯蕷ノ燒タル(○○○○○○)二筋トヲ持來テ與之云々、黑器物ヲバヒキソバメテ、皆啜クヒテ、只今ゾ人心地スルトテ、イモヲバワトノヨソヘトテ、授師光〈大外記〉云々、

〔料理物語〈燒物〉〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0232 やき竹の子(○○○○○) 竹のこのふしをぬき、中へかまぼこ玉ごまろにして入、かわともにやきてきり候、かまぼこの鹽すこしからめにしてよし、

〔倭名類聚抄〕

〈十六魚鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0232 炰 禮記注云、炰〈薄交反○和名豆々三夜木、〉裹燒也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈四魚鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0232 禮運注、燒下有之字、按説文、炮毛炙肉也、毛傳義同、鄭意、毛謂燎毛、炮謂裹燒、不毛詩

〔類聚名義抄〕

〈四火〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0232 炰〈亦炮字、ツヽミヤキアブリ物、〉 炮〈音庖、ツヽミヤキ、アブル、〉

〔倭訓栞〕

〈前編十六都〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0233 つゝみやき 和名抄に炰をよめり、裹燒也と注せり、類聚雜要大饗に、追物鮒裹燒と見え、宇治拾遺に、天武の吉野にまします時に、大友の妃たりし皇女、鮒のつゝみやきの腹に文をおし入て奉りたまふよし見えたり、

〔類聚名物考〕

〈飮食三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0233 炰 つゝみやき つゝみやきといふこと、いまだしるしとするものなし、或やごとなきかたの仰せられしは、今鮒の昆布卷などいふものあり、是物にみえしつゝみやきなる中の玉章などみえしこれにやと仰られしは、いかゞにや侍らん、今思ふに、毛萇が詩の傳に、以毛曰炰とみえしによれば、獸を燒に毛をも引ず、腸をもさらずして、そのまゝ燒をいふ也、これ多く祭祀に用ひしと見えて、鬼神は人とは異にして、生贄をもそのまゝ料理せずし奉れば、ことにこれを用る歟、皇朝にては中世より獸は用ひず、魚鳥をのみ用れば、ことに片岡鮒の炰は名高きもの也、これは腸を去ず鱗をもとらで、そのまゝに燒ば、やがて包燔といふならん、昆布卷とてする物は、燒にはあらず煮物也、つねに鮒などは鱗をさり腸をも去て燒に、さもせねばこそ、中に玉章は有といふことは、唐の雙鯉の腹中の尺素によせたるなり、今俗にも鮎鮒などをそのまゝ燒をば、土藏燒といふ、至りていやしき詞なれども、つゝみやくことの意はたがはざるなり、 毛詩 炰之燔之 毛萇曰、以毛曰炰、 文選〈第一〉西都賦〈班固〉然後收禽、會衆論功賜胙、陳輕騎以行炰、騰酒車以斟酌、 注張銑曰、言收獲之禽、會師衆以論功賜胙、賜其餘炰炙肉、言以騎行炙、以車載酒、

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0233 一包燒ノ事、鮒ノ五六寸計ナルヲ、能鱗ヲフイテ腹ヲ明、能洗テ、扨結昆布、串柿、クルミ、ケシ、此四色ノ外ニ粟ヲ蒸シテ可入、五色入テ腹ヲヌイクヽミテ薄タレニカツホ入テ、能ホドニ認テ、シホ、酒シホ入テ、貴人ヘハ三ツ計、其外ヘハ一宛盛テ、胡椒入テ可參、此料理ノ事、四條家ニ 秘スル也、御門出ニハ尤目出度カルベキ事也、子細ハ天武天皇ト大友王子ト、御代ヲ爭給フ時ノ事ニヤ、天武天皇ヘ御敵ナスベキ事サマ〴〵書テ、鮒ノ腹ニ入テ參ラセラルヽ間、御覽有テ即御謀共有ケレバ、御敵ヲ亡シエテ御心ノ如ク成リシコト也、然間目出度御肴成ベシ、其後左大臣殿此歌ヲヨメルト申ナリ、 イニシヘハイトモ賢キカタヽ鮒包燒タル中ノ玉章 又此肴出陣ナドニコソ同クハ參ラセ度ハ侍、腹ノ中ニ入色々ノ中ニモ、取分結昆布ヲイカニモ小クシテ入タル、是ヲ其時ノ玉章ニ表スル間肝要可成、其外ノ物ハ隨時可然物共ヲ可入、粟ヲ入ハ鮒ノ子ヲ學タル也、歌ニ包ヤキトヨメル所ニニモノニ拵參スルコト口傳ニ有之可秘、

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0234 一鮒の包やき拵樣、六七寸許のふなの腹の中へ、結昆布、串柹、芥子、燒栗を入燒也、此肴は常に調進する事なし、

〔西宮記〕

〈正月上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0234 臣家大饗 三獻後、雅樂發音聲、〈羞莖立、裹燒、蘇甘栗、立作物等、〉

〔北山抄〕

〈三拾遺雜抄〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0234 大饗事〈○中略〉 次羞飯汁物、四獻後羞裹燒、莖立

〔江家次第〕

〈二正月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0234 二宮大饗 三獻〈在座公卿二人執坏〉給飯汁、〈○中略〉近代不三獻、莖立包燒蘇甘栗等給之、

〔江家次第〕

〈二正月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0234 大臣家大饗 次五獻〈同上〉 裹燒

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0234 母屋大饗 永久四年正月廿三日 内大臣殿〈○藤原忠通〉母屋大饗〈○中略〉追物、鮒裹燒、莖立、鳥足、汁鱠、是四種也、

〔定家朝臣記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0235 康平五年正月廿日、有大饗事、〈○中略〉 五獻、〈侍從、宰相左大辨、〉次裹燒

〔大饗次第〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0235 嘉禎二年六月九日 居熱汁裹燒等康平例、今度可之、

〔普廣院殿任大臣節會次第〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0235 大饗之儀 次居裹燒〈役人同前〉

〔宇治拾遺物語〕

〈十五〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0235 今はむかし、天智天皇の御子に、大友皇子といふ人ありけり、太政大臣になりて、世のまつりごとをおこなひてなんありける、心の中に御門うせ給なば、次の御門には我ならんとおもひ給けり、淸見はらの天皇そのときは、春宮にておはしけるが、このけしきをしらせ給ければ、〈○中略〉御門〈○天智〉病つき給則(とき)、吉野山のおくに入て法師に成ぬといひてこもり給ぬ、〈○中略〉軍をとゝのへて迎たてまつるやうにして、ころしたてまつらんとはかり給ふ、この大とものわうじの妻にては、春宮の御女ましければ、父のころされたまはんことをかなしみ給て、いかでこの事つげ申さむと覺しけれど、すべきやうなかりけるに、おもひわび給(○○○○○)て、鮒のつゝみやきのありけるはらに、ちいさくふみをかきて、おし入てたてまつり給へり、〈○下略〉

〔拾遺和歌集〕

〈七物名〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0235 つゝみ燒 祐見 わきもこが身を捨てしより猿澤の池のつゝみやき(○○○○○)みは戀しき

〔新撰和歌六帖〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0235 ふな 衣笠内大臣〈○家良〉 いにしへはいともかしこしかたゝぶなつゝみやきなる中の玉章

〔類聚名物考〕

〈飮食三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0235 鮒の和布卷 ふなのめまき 此ほどは妻にてまかるゝ伊勢守鮒となりてや口にのるらん 今案に、是はその比伊勢伊勢守貞親の妻の縁に引れて、政事に私有ことを惡みてよめる也、鮒のめ卷は、是いにしへのつゝみやきの遺なるべし、

串燒

〔料理物語〕

〈海の魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0236 よなき くし燒には、たまりに山椒のこをふり付てよし、 みるくひ くしやき 赤貝 くしやき ほたてがひ くしやき〈よなき同前〉 蠣 くしやき

〔料理物語〕

〈川魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0236 はんざき くしやき

〔料理物語〕

〈鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0236 白鳥 くしやき 鴈 くしやき

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0236 燒物に用肴の有增 一鱒〈くしやき〉 一たいらぎ〈色付くしやき〉

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0236 一鳥ノ串燒ノコト、鳥ノ引垂ヲ串ニ差テ、アブリテ中ノ汁ヲ推出シテ、扨クルミヲネバ〳〵トスリ付テ、カハクホドニ又アブリテ、直違ニ切テ可參也、是ヲ串燒ト云也、

零餘子燒

〔厨事類記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0236 零餘子燒〈差物〉鯉ノミヲ皮ニ二分許ツケテスキテ、ソレヲヒロサ五分許ニ切〈天〉串ニサス、スリビシホツケテアブルベシ、〈或説クルミヲツケテアブルベシ〉或説云、サス事四切ニハスグベカラズ、盛コト又四クシナリ、串ノナガササラダケ也云々、或説云、ウチミノソバノミアヒノ所ヲキリイダシタルヲバ、ヌカゴヤキ(○○○○○)ノミト云也、件ノミハ四切アルベシ、一ヲ四ヅヽニキリテ、一串ニサシテ四ナラベ盛之云々、

〔江家次第〕

〈二正月〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0236 大臣家大饗 居穩座酒肴〈○註略〉 次一兩巡〈納言執坏、殿上侍臣取瓶子、〉 羞零餘子燒芋粥等

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0236 一五節殿上饗目録〈保延元年、右衞門督家成進五節時、玄蕃頭久長調進之、〉 居物次第〈○中略〉 次〈熱汁 追物小鳥 綿 零餘子燒(○○○○) 生海鼠〉

クリカラ燒

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0236 一くりから燒といふは、鯛のひれを串に卷付燒て、龜足を付添肴に出す也、

〔貞丈雜記〕

〈六飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0237 一くりから燒とは鯛のひれを串に卷付て燒て、龜足を付添肴などに出す也、〈貞丈按、背のひれを串に卷也、くりから不動の形のごとし、〉

杉板燒

〔料理早指南大全〕

〈初編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0237 即席料理の部 いなだ 杉板燒 いなださしみに作り、杉の板のうらにしほあつくぬり火鉢へかけ、さしみにせうゆつけて、右のいたの上にてやくなり、

〔料理物語〕

〈燒物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0237 へぎやき(○○○○) 右〈○いりやき〉のごとくつかまつり、杉のへぎにて、一枚ならびにをきやく事也、

炮烙燒

〔料理山家集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0237 鹽物魚調理之部 炮烙燒 鹽引の鮭其まゝ大さいの目にきり、ほうろくに入、酒ばかりにて煮出し、玉子を打わり、かきまぜて、上にかけてとぢるなり、

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0237 名目のやきものゝ部 焙ろく燒 ほうろくへしほをもり、魚は何にてもしほの上へならべ、又ほうろくをふたにして、上下に火を置てやく、

鋤燒

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0237 名目のやきものゝ部 鋤やき 鴈鴨かもしかのるい、つくりたまりにつけおき、古く遣ひたるからすきを火の上に置、柚のわを跡先におきて、鋤のうへ右の鳥るいをやく也、 いろかはるほどにて、しよくしてよし、

濱燒

〔倭訓栞〕

〈中編二十波〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0237 はまやき 鯛などを鹽をやく釜の下に生ながら土にいけて後燒なり、其味至てよろし、よて是を賞せしなり、

〔料理物語〕

〈燒物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0237 はまやき 大鯛のうろこばかりふき竹にてはさみ、かたなめを入、鹽をふりやき 候て、さか鹽ニかげをおとしかけ候て出し候也、

〔料理物語〕

〈海の魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0238 鯛はまやき(○○○○○)

〔料理物語〕

〈川魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0238 鯉はまやき(○○○○○) 鱒はまやき(○○○○○)

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0238 名目のやきものゝ部 はまやき 土間へ瓦を立ならべ、鯛をよくあらひ、土間へしほをあつく敷、上へ鯛を置、上より瓦をふたにして、跡先も瓦にてふさぎ、炭火を多くくわらの上よりかけて、むし燒にしてやき上、さてこてを火にやきて、かつ手よき所へやきめを付るなり、〈但しきうなる時は、大竹ぐしにさし、長ひばちのふちへ立かけてもやくなり、それはりやくしたるやきやうなり、〉

〔料理簡便集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0238 燒物方 濱燒鯛は、鹽がまある處にて燒上たる鹽の中に、鯛を埋み置、冷て取出す事也、大なべニしほ五六升水一二升入、火をたき水氣さりたるとき、鯛を埋み火を引、おきばかりにして暫く置、冷して出す、鱗は不去、腸ばかりさるべし、生姜醬油添出ス、鹽がま燒玉子鯛と同方也、これは小なべニしほ五合水三合ばかりニても出來る也、

〔饌書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0238 鯛魚〈○中略〉此物宜生宜炙宜蒸宜煮、又宜糟豉麹鹽、食方綦多、然欲其眞味、莫濱燒潮烹打生三方、濱燒言鹽鍋炮蒸、潮烹言鹽湯淸煨、其法至簡而愈見其美、脂味之濃可知、

〔屠龍工隨筆〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0238 濱燒は、夏月には生魚あさる故にて、はまにて鯛を燒て、京へ送りたるをもてはやして、京より云出せる名なるべし、今も夏の間は、燒たる鯛計を京へは大阪より來るなり、

〔鈴鹿家記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0238 應永元年十二月五日丁未、雪雨持病指發御本所エ不參、筑前、安田周防、牧掃部、小山田主膳持病見舞、藥飯、大根フトニ、鯛濱燒、小鳥燒、酒出ス、

〔見た京物語〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0238 一鯛を靑竹にはさみ燒て賣る、多く堺より來るよし、是濱燒なるべし、此の外堺のい りものとて、小肴を鹽にし籠に入れて賣る、

苔燒

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0239 一鯛の苔燒と申は、わたをぬきて、皮をむかずに藁にて卷候て、上に壁土を塗付、火中にくべて燒也、則口より竹を指こみ、竹より醬油をさし候也、

マクリ燒

〔料理物語〕

〈燒物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0239 まくりやき たいをおろしうすくきり、しほをうち候へてやく事也、

木芽燒

〔料理物語〕

〈燒物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0239 木のめやき ゑそに鹽を付、ゆの葉にてつゝみ、そのうへをかみにつゝみ、むしやきにして取出し、かけしるをかけ出し候也、

土藏燒

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0239 名目のやきものゝ部 土藏やき 魚は何にてもする、さんしやうみそつけてやく事なり、魚のうへをぬるゆへにかくいふか、

〔類聚名物考〕

〈飮食三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0239 炰 つゝみやき〈○中略〉 今俗にも鮎、鮒などをそのまゝ燒をば土藏燒といふ、至りていやしき詞なれどもつゝみやくことの意はたがはざるなり、

鐵炮燒

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0239 名目のやきものゝ部 てつほうやき これも右〈○土藏燒〉に同じけれど、とうがらしみそにするをいふ也、 精進のてつほうやき といふは、竹の子かはのまゝなまにてねをきりはなし、内のふしをぬきて、さかしほにたまりをくわへつぎこみ、切口を大こんにてふさぎ、わらばいの内に入てやく也、やけたるころ出し、かはをむきてきれば、内へつぎたるしやうゆよくしみて、甚こうみ也、 但し竹の子あたらしければ、ひとしほよし、

蒲燒

〔書言字考節用集〕

〈六服食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0239 樺燒(カバヤキ)〈本朝俗、炙https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046626.gif 則色紅黑有樺皮、故云爾、〉

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0239 名目のやきものゝ部 椛(かば)やき うなぎ、はも、さより、沖さより、ふかなどのるい、長くきり、小ぐしにさしてやく事也、 近來かばやきといふは、うなぎよりいひ出たるやうに思ふなれども左にはあらず、かばやきといふは、紀州よしの山のふもとにて、椛のかはをすきて、竹のくしのわりかけにはさみてうる、そのさくらのかはをかばといへば、その形に似たるより、かばやきといふなり、しかれば何にても右のなりにしたるは、すでにかばやきといひてしかなり、

〔近世事物考〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0240 蒲燒 當世うなぎをさきて燒たるをかばやきといふ、其製昔とはかはれり、昔は鰻を長きまゝ丸でくしに竪にさして、鹽を付燒たるなり、その形河邊などに生たる、蒲の花のかたちによく似たる故に、かまやきとは云しなり、今世の製はいと近き頃より初る、今の形にては名義に叶はねども、名は昔のまゝに呼ぶなり、

〔本朝世事談綺〕

〈一飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0240 樺燒 鰻のやく加減、紅黑の色なるころをよしとす、其色その状ともに樺皮に似たるを以名とす、

〔傍廂〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0240 かまぼこ かばやき 蒲燒も鱣の口より尾まで、竹串を通して鹽燒にしたるなり、今の魚田樂の類なり、さるを今脊より開きて竹串さしたるなれば、鎧の袖、草摺には似れど、蒲の穗には似もつかず、名義を失へれど、味は無雙の美味となれり、これはいにしへにも遙にまされり、わきてこの大江戸なるを極上品とせり、

〔松屋筆記〕

〈九十六〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0240 蒲燒(カバヤキ)は香疾燒(カバヤキ) かばやきといふ名目、文祿三年卯月八日、加賀中納言殿へ御成記に、かばやき云々、東海道名所記二卷〈十五丁ウ〉駿河の新田の條に、此所にてうなぎのかばやきをうる云々、按に新猿樂記〈六丁ウ〉七御許 の段に、香疾大根とあり、蒲燒と書は誤にて、鰻https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046626.gif の香疾燒(カバヤキ)の義なるべし、

〔瓦礫雜考〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0241 香物 かまぼこ 蒲燒 又鰻https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046626.gif のかばやきは、右の香疾(カバヤキ)の意なりといへる人もあれど、そは誤なり、又雍州府志の、鰻https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046626.gif 魚の條に、近江國云々、其下流宇治川之所取亦美、以其形肥大宇治丸、燒而用之、是謂樺燒、其所燒之色、紅黑而似樺皮之謂也、といへるもみだりなる臆説なり、かばやきは蒲鉾の形によりて名付たる也、〈○中略〉さてかばやきの名も、蒲の穗のかたちによりたりといふ證は、大草家料理書に、宇治丸はかばやきの事、丸にあぶりて後に切なり、醬油と酒と交て付るなり、又山椒味噌つけていだしてよき也、といへるにて、その形をおもひ見るべし、昔の質素なることみなかくのごとし、〈今は田舎にてはうなぎなまずなど、みな骨ともに煮もし燒もするなり、又京師にては江戸にていはゆる長ざきにして、やきたる後に切ること常也、これも古風の存れるなるべし、おもふに萬葉集に家持石麻呂贈答の歌に、うなぎのこと見えたり、そのころはいかにしてくひけんおぼ束なし、〉ある人おのが此説を難じていはく、がまの穗をかま鉾といひ、肉羹のそれにかたどりて造れるを、直にかまぼこといへれば、蒲燒も淸てかまやきといふべきを、さいはざるはいかにぞや、かつかまぼこも、本はかもじ濁りていひたるなるべし、蒲は濁りてがまといへばなり、さらんにはいよゝかばやきに遠しといへり、こは蒲をがまと濁るが正しきと思へるより、かゝるひがこといふなり、凡言のはじめを濁るは古例なし、蒲もすみてかまといへるは、かまぼこ即その證なり、〈蒲原蒲生などは、今もすみていふ也、〉又かまをかばといふは、蒲の御曹子などおもふべし、この例は斑をむちとよめると同じ、かばかりのことをもしらで難じたるはをかし、

〔大草家料理書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0241 一宇治丸かばやきの事、丸にあぶりて後に切也、醬油と酒と交て付る也、又山椒味噌付け出しても吉也、

〔鈴鹿家記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0241 應永六年六月十日庚申、當屋鈴鹿勝昌定師次男定好弟、始テ神事ヲ勤、御本所ヘ赤飯荷 桶一手、酒干鰤壹連、上座敷十四人朝振舞汁、〈スマシ 生鱸 コンブ〉仁物〈イリココンニヤク〉鱠、〈ハエ シヤウガ アサ瓜 クラゲ〉引テ指身、〈鯉イリ酒ワサビ〉鱣カバ燒(○○○○)、鮒スシ、カマボコ、香物、肴種々、臺物五ツ、

〔文禄三年卯月八日加賀之中納言殿江御成之事〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0242 一御湯漬〈○中略〉御二〈○中略〉 かばやき(○○○○)

〔風俗文選〕

〈六〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0242 飮食色欲箴 許六 燒蛤の馨しきには、胡椒の粉の鼻に入たるがうれし、かばやきの匂ひ、風流にはあらねど、うまき匂ひとやいはむ、

〔理齋隨筆〕

〈三〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0242 鯛のこけは大根にてこする時はこと〴〵く落るとぞ、また鰻https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046626.gif を殊の外味よくす、るには、生たるを地にいく度も打付うちつけ殺してかばやきにすれば、其風味別格に成ると、併生を殺すはいづれおなじ事ながら、其味をよくせんとてかゝるさまをせん事、餘りむごき趣なるべし、君子庖厨をだに遠ざく、いはん哉如斯わざをや、

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0242 宇治丸は鰻https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046626.gif の鮓にて、古く名高きものなり、今の人うなぎに醋を忌といふは、いつの頃よりいふことゝも聞えず、調味抄鱠に用べき魚云々、鰻やきて細く作り、蓼酢おろし大根芹うど栗生薑ぼけの酢大にいむべしとあり、唯木瓜の酢を忌を、常の酢もいむやうに誤りしなり、うなぎを燒て賣家むかしは郭の内にはなかりしとぞ、新增江戸鹿子、〈寛延四年撰〉深川鰻名産なり、八幡宮門前の町にて多賣云々、池の端鰻、不忍池にて取にあらず、千住尾久の邊より取來る物を賣なり、但し深川の佳味に不及といへり、此頃迄いまだ江戸前うなぎといふ名をいはず、深川には安永頃いてうやといへるが高名なり、耳袋に、濱町河岸に大黑屋といへる鰻屋の名物ありといへり、天明頃の事にや、これらや御府内にてうなぎやの初めなるべし、京師も元祿頃迄よき町にはかばやきなかりしにや、松葉端歌に、朱雀がへりの小歌に、松ばら通りのかばやきはめすまいかと卑きものにいへり、

〔浪花の風〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0243https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046626.gif 蒲燒とは製すれども、其調理少しく違ひ、醬の鹽梅等、土製のものは江戸人の口には適し難し、されども二十年來のこと、今よし谷町に菱富、又は加賀重抔と稱する鰻店出來て、此二軒はもと江戸人の出せし店のよし、調理全く江戸と替ることなく、魚もよろしく江戸人の口にも適することなり、

〔浪花襍誌街迺噂〕

〈一〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0243 鶴人、面白いおはなしだ、初て聞やした、イヤ此地の鰻を味〈ツ〉て御覽じたか、江戸のやうに竹の串へは指やせん、金串へさして、出すときに串をぬき、皿へはとらずに大平へもりやす、千長、〈ヘ、引〉ソレハおつで厶りやす〈子、〉三谷の重箱もそれから思ひついたやつと見えやす、こちらのは風味はとふで厶りやす、鶴人、隨分善う厶りやす、網島の鮒與、せんばの取久などゝきては中にも喰やす、

〔奴師勞之〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0243https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046626.gif に酢は毒なりと關東にてはいふに、長崎にては浦上のうなぎを酢味噌にてあへて喰ふもをかし、うなぎを一斤二斤とて、死うなぎをさげて來るをみしなり、

〔一話一言〕

〈四十〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0243 神田旅籠町名主中村氏書留抄書、寅〈○享保七年〉八月九日茶屋有之町々名主へ御尋、一うなぎをからし酢にて給、三人相果候由之事、 覃按、近來鰹之差身をからし酢にてたべ即死のよし、長崎にてはうなぎを酢味噌に和へて食もおかし、

〔南畝莠言〕

〈上〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0243 世俗鰻https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046626.gif に山椒をそへて食ふ事、證類本草云、食醫心鏡に、主五痔痿瘡殺蟲方、鰻https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046626.gif 魚一頭治、如食法切作片、炙著椒鹽醬調和食とあり、本草綱目引書に、食醫鏡とはあれども、此事を漏せり、

〔皇都午睡〕

〈三編下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0243 宇治丸と云は、鰻鮓にて價金百疋の由人々云傳へたり、中々左樣の價にては是なきとぞ、近年大坂中の島の何某と云ふ富貴なる人、出入の幇間を召連れ京都へ上り、數日逗留 の内、或日宇治見物に行しに、かの幇間が旦那宇治丸立(うじまろだて)とはいかゞと云ふに、いかさま來たこそ幸ひ、よきに計らへと有に、心得候とて、菊屋とやらん料理屋へ至り尋ければ、亭主出て、宇治丸御所望に候やと云に、いかにも所望なりと云ふ、然らば奥へお通り下さるべしと、座敷へ伴ひ、扠家内の樣子甚混雜の體にて、やがて亭主上下を著し座敷に出て、先以て大慶の段有難き旨一禮をのべ、夫より盃出て、鉢物類あれこれ出せども、鰻はかつて有ざれば、いかゞと思ひながら、良久しく待しに、漸く細き鰻二本燒て出したり、され共つゞひて持出る體もなけねば、今少し澤山に出し候へといへば、畏り候とて、又餘程隙入りて三本燒て出しぬ、是にて茶漬など喰ひ、酒も納めて拂ひの書付を取らんといへば、亭主お心持次第下さるべしと申に、夫にては如何なれば、是非直段聞せ候へと再三尋ねしかど、兎角御心持次第と計り申す故、かの幇間亭主を片隅へ呼び、内分にて尋ねけるに、是迄かやうなる格もあらんに、心持といふは大體いか程なるやと、亭主云ふ、是迄の格を申さば、金廿兩又卅兩申受候、至つて過分なる心持に申受候は、五十兩も御座候といふに驚き夫は何故左樣に高直にやと問ふに、いかにも高直なる譯申さんと、裏の小屋へ連行き見せけるに、大半切桶に鰻數杯あり、亭主ゆびざして云、斯の如く宇治中の鰻を丸で買取申候、去により宇治丸と申傳へ候、此内にて纔三五本目利仕り、料理致し差上申候、殘りの鰻は此宇治川へ殘らず放生いたし候なり、右の樣子候へば、施主の御方所望成され候こと甚稀に候へば、私祖父の代に兩度、親の代に、一度御座候まゝにて、私の代にては、今日が初に候、元より此義に付、口錢世話錢申受候儀は曾て是なく候、只私の身に取て外聞にて候へば、いか程にても御心持次第つかはさるべしと申にぞ、據なく亭主を京都宿へ連歸り、數十金を渡しかへされしと也、

〔江戸名物詩〕

〈初編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0244 深川屋蒲燒〈外神田仲町加賀原前〉 蒲燒名物深川屋、魚切年中休日長、壹歩鰻https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046626.gif 纔一皿、喰來風味異尋常

〔江戸名物詩〕

〈初編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0245 森山蒲燒 水道橋外住水灣、蒲燒評判久世間、此家風景自然好、窻外有森又有山、

〔江戸流行料理通大全〕

〈二編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0245 四季燒物之部 夏 鱸かばやき〈○中略〉海鰻https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046626.gif (あなご)かばやき

〔江戸流行料理通大全〕

〈三編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0245 慈姑蒲燒 一くわゐをよく摺おろし、うどんの粉を少し入れ、淺草海苔にのべ、油にてあげ、串をうち蒲やきに燒なり、

田樂燒

〔倭訓栞〕

〈前編十七底〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0245 でんがく 俗間豆腐の製に田樂といふは、田樂法師の竿に上りて踊る貌に似たるをもて名を得たりといへり、禁裏にて御煤拂にて用ゐさせらるゝ也、 ○按ズルニ、豆腐田樂ノ事ハ、豆腐篇ニ詳ナリ、

〔料理物語〕

〈海の魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0245 鯛は でんがく 養魚(ふか)は でんがく 王餘魚(かれい)は でんがく ふくたう でんがく

〔料理物語〕

〈獸〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0245 狸 でんがく〈山椒みそ〉 猪 でんがく 熊 でんがく

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0245 御成式正獻立 一あわびでんがく〈山椒みそ〉 小角八寸

〔時慶卿記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0245 慶長八年十二月十七日、御番時直勤、女院御所ヨリ御所ヘ御田樂被進由候、

〔四條家法式〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0245 一大猷院樣〈○中略〉寛永三寅年九月六日、行幸二條御城、同十日還御、〈○中略〉同七日晩、御三〈○中略〉 御肴〈フワ〳〵、貝田樂(○○)アミ、短册海苔、海茸、烏頭目、〉

傳法燒 義淸燒

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0245 名目のやきものゝ部〈○中略〉 傳法やき(○○○○)、後とうがはらけにねぎの白ねせんに打てしき、火にかけすこしやけたる時、かつを まぐろのるいをさしみの如くつくり、上へならべやきて、いろのかはる時にかへし、したぢこしらへ置てかける也、 義淸やき(○○○○) すりみに山いも玉子の白みしほ入てより、四角によせてなりづくり、燒なべにごま油引てやく也、 但し片めんこがし、片めんきつねにすべし、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/insyo_024601.gif此切て、https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/insyo_024601.gif此うち違てもる也、

油燒

〔料理物語〕

〈海の魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0246 鰤 あぶらやき

ゴサイ燒

〔料理物語〕

〈海の魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0246 鰆(さはら) ごさい燒

鬼ガラ燒

〔料理早指南大全〕

〈初編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0246 即席料理の部 海老 鬼がら燒 二つに割て、かしらよりせうゆさしてやくなり、

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0246 名目のやきもゝ部 鬼がら燒 いせゑび、車ゑび、がさみのるい、かうともにさんしやうぜうゆのつけやきにする事也、

合燒

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0246 名目のやきものゝ部 合やき さより、かます、すばしりなど、ひらき、ほねをぬき、身のかたへ玉子の白をぬり、二まい打あはせて、しほをふりてやくなり、 小口とふちとをきり、角(かく)どりていかやうにも切、

煎燒

〔料理物語〕

〈川魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0246 鮭 いりやき

〔料理物語〕

〈獸〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0246 鹿 いりやき 兎 いりやき

〔料理物語〕

〈燒物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0246 いりやき 鴨を大きにつくり、たまりかけをきて、かわをいり、身をはさみ入、なべにて一枚ならびにやく事也、あまりにしるなくば、かけ置たるたまりすこしいるべき也、

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0247 燒物に用肴の有增 一こち〈いりやき〉

白燒

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0247 御成式正獻立 三之御膳 一大鮒 白燒(しらやき)〈かけ汁〉 大皿〈八寸〉

鹽燒

〔料理物語〕

〈燒物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0247 あらしほやき(○○○○○○) 鮒にしほばかりつけやきて、かけしるさかしほにかげをおとしかけ出し候也、

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0247 名目のやきものゝ部 あらしほやき 〈あぢ〉こはだ、ふな、あゆなどのるい、白しほにしてやき、かけじほして出ス事也、大こんおろしもよし、

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0247 燒物に用肴の有增 一石かれい〈しをやき〉

〔江戸流行料理通大全〕

〈二編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0247 四季燒物之部 夏 江珧桂(たいらぎ)鹽燒

付燒

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0247 燒物に用肴の有增 一あはび〈付やきにして〉 一學鰹〈醬油付やき〉 一さより〈醬油付やき〉

〔今昔物語〕

〈二十八〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0247 左大臣御讀經所僧醉茸死語第十七 今昔、御堂ノ左大臣ト申シテ、枇杷殿ニ住セ給ヒケル時ニ、御讀經勤メケル僧有ケリ、名ヲバトナム云ケル、ノ僧也、枇杷殿ノ南ニ有ケル小屋ヲ房トシテ居タリケルニ、秋比童子ノ童ノ有テ、小一條ノ社ニ有ケル藤ノ木ニ、平茸多ク生タリケルヲ、師ノ取リ持來テ、此ル物ナム見付タルト云ケレバ、師糸吉キ物持來タリト喜テ、忽ニ汁物ニ爲サセテ、弟子ノ僧童子ト三人指合テ、吉 ク食テケリ、其ノ後暫クアツテ三人乍ラ、俄ニ頸ヲ立テ病迷フ、物ヲ突キ難堪ク迷ヒ轉テ、師ト童子ノ童トハ死ヌ、弟子ノ僧ハ死許病テ、落居テ不死ズ成ヌ、即チ其由ヲ左大臣殿聞セ給テ、哀ガリ歎カセ給フ事无限シ、貧カリツル僧ナレバ、何カヾスラムト押量ラセ給テ、葬ノ料ニ絹布米ナド多く給ヒタリケレバ、外ニ有ル弟子童子ナド多ク來リ集テ、車ニ乘セテ葬テケリ、而ル間東大寺ニ有ルト云フ僧、、同ク御讀經ニ候ヒケルニ、其レモ殿ノ邊近キ所ニ、某僧ト同ジ房ニ宿シタリケルニ、其ノ同宿ノ僧ノ見ケレバ、弟子ノ下法師ヲ呼テ私語テ物ヘ遣ツ、要事有テ物ヘ遣ニコソハ有ラメト見ル程ニ、即チ下法師返リ來ヌメリ、袖ニ物ヲ入レテ、袖ヲ覆テ隱シテ持來タリ置クヲ見レバ、平茸ヲ一袖ニ入レテ持來タル也ケリ、此ノ僧此ハ何ゾノ平茸ニカ有ラム、近來此ク奇異キ事有ル比、何ナル平茸ニカ有ラムト、怖シク見居タルニ、暫許有テ燒漬(○○)ニシテ持來ヌ、飯ニモ不合セテ只此ノ平茸ノ限ヲ皆食ツ、

〔松屋筆記〕

〈九十六〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0248 汁物、燒漬、附燒、煎物 、今昔廿八の十七語に、〈○中略〉平茸ヲ燒漬ニシテ持來ヌ云々、燒漬ハ今俗付燒(ツケヤキ)といふ是也、

色付燒

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0248 名目のやきものゝ部 いろ付やき 魚にてもとうふにても、其外松だけ長いものたぐひにても、しやうゆに酒しほくわへ、うすくつけやきにする事をいふなり、何によらず醬油つけやく事也、うへにけしなどふりても吉、

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0248 御成式正獻立 一めざし色付燒 小榧〈八寸〉

〔當流節用料理大全〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0248 四季常體料燒獻立の事 御夜食〈○中略〉 引而 一燒物〈眞がつを色付やき〉

紅毛燒

〔料理早指南大全〕

〈初編〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0249 即席料理の部 鯛 をらんだやき 切身にして串にさし、玉子くだきかきまぜ、かけながらやくなり、 玉子にすこし味付る、

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0249 名目のやきものゝ部 紅毛(をらんだ)やき 鯛のおらんだやきは、仕やうせんへんにいふなり、但しいづれも同じ事ながら、すばしりのせびらき、あひなめ、かながしらのたぐひは、ひらきてやきて出スには、まづ玉子をやき、なべにてうすくやきおき、何の魚にても、せびらきにしてすこしひどり、身のかたへ玉子の白みをぬり、うすやきにしておきたる玉子をはり付てやき付け、魚のかたに玉子のまわりを切てとる也、 但し魚には下しほして、すこし日にほしたるよし、

カステラ燒

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0249 名目のやきもゝの部 かすてら燒 すり身に玉子おほく入、燒なべ入、上下より火をおきてやくなり、しほかげんよくすべし、

別足

〔運歩色葉集〕

〈邊〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0249 別足(ベツソク)〈雉別足事也、三條院御時、於交野雉取鷹、尋鷹逸物合之、雉一足也、院曰別足也、左足也、庖丁而獻之、今習之、〉

〔易林本節用集〕

〈邊無形〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0249 別足(ベツソク)〈鳥〉

〔厨事類記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0249 鳥足ハ、或説云、鳥ノ右ノ別足也、ヤキテフシヨリ切テ、薄樣ニテツヽミテモルベシ、フシヨリ上ハ、ワリテキリカサ子テソバニモル、前ヲキウシロヲキトテヲク也、故實云、晴ノ御膳ニハ、ユデヽモリタルガヨキ也、或説ニハ左足ヲモルベシト云々、 今案或包丁云、鳥左鯉右トテ、鳥ハ左ヲ賞シ、鯉ハ右ヲ賞スト云々、依此説歟、或云、鳥左鯉右トハ、鳥ハ左ヨリキル、鯉ハ右ヨリヲロスガユヘ也、紀久信家ニハ左足ヲモルト云々、

〔今川大雙紙〕

〈下〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0250 食物之式法の事 一れうりする人心得べき事、魚鳥はあぢはいよき所を、主人にも又上座の人にも參らすべし、鳥の燒物は別足のみを前盛にして、ひたゝれの身をばうしろに盛なり、べつそくはあぢはいのよき間、先まいらせべき爲也、秘事、いかのみも雪まろばしの骨とて、羽節の骨を上に盛也、是もあぢはいよき所を參らせべきため也、鷹を取飼時、山わすれの筋をかふと云も、此羽ぶしの筋のあぢはいのよき間、山にわけ行べき心をわすれてなづくゆへ也、白鳥鴈なども別そくの身とわたは、あぢはいのよきが故に、上方には參らすると云也、鯛の汁も首の身をば上方にまいらするゆへは、目とくちとの間べつしてあぢはいのよきが故也、

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0250 一鳥ノ別足ト云事、別ナル足トハ如何ナル事ゾヤ、朱雀院ノ御時トカヤ、足ノ四有鳥アリ、其御代天下太平ニシテ目出カリシ也、ソレヨリコソハ、別足トハ申傳キ、今モ雲雀ニテモ鶉ニテモ、足ヲ立テ盛時、賞翫ノ人ナレバ足二立ベシ、其外ハ足一立ニテモ不苦、天子或京鎌倉ノ將軍ナドヘハ、足ヲ四立ルコト自然ニ有之、是モ別足ノ心ニテ、天下ヲ祝タル心也、然ニ無左右四立ル事不有ト云々、雲雀ノ足ヲバ後爪長ヲ一殘シテ、殘ノ爪三ヲバ切捨ベシ、鶉ヲバ足ヲモ爪ヲモ其儘置ベシ、雲雀ヲバ爪一殘シ、鶉ヲバ足ヲ其儘置事口傳コトナル事ニテ有ヲ、道ヲ不知者共、小鳥ナラバ足ヲ可立事トヤ推量仕テ、鶉其外小鳥ノ足ヲ立ル事共口惜事也、

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0250 一鳥ノ燒物ノ事、女ニハヒツタレヲ上ニ盛ベシ、男ニハ別足ヲ上ニ盛ベシ、引垂ハ陽、別足ハ陰也、然ニ陰ニハ陽ノミヲ參也、陽ニハ陰ノミヲ參スル也、口傳有之、和合ノ心也、

〔北山抄〕

〈三拾遺雜抄〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0250 大饗事 〈裏書〉新任饗〈○中略〉 三獻〈殿上四位執之〉 居飯居汁物〈汁鱠〉 鳥足箸下〈○註略〉 四獻〈以下公卿取之、雉別足、〉 莖立 生蚫

引垂燒

〔四條流庖丁書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0251 一鳥ノ引垂燒ト云事、雉子ノ引垂ヲ燒時、身ノ中ニ赤ミ少宛有樣ニヤキ、切之參スル也、是引垂燒トハ、見給ハデナマヤキナルナド思テハ如何、昔如此申定、又自然鳥ノヤキモノ、味スク覺事アリ、酒ヲカケテ鹽ヲ振テ燒タル鳥必スクナル也、當流ニハ水ヲカケテ鹽ヲ振可燒也、

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0251 一雉子に引たれと躬といふ事有、雉子は胸をさき申ゆへ、さきたるを引たれと云、ひほねに殘りたるを躬といふ、餘鳥も是に准じていふ也、

丸燒

〔新猿樂記〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0251 七御許者、食飮愛酒女也、所好何物、〈○中略〉鯖粉切、鰯酢煎、鯛中骨、鯉丸燒(○○)、

〔料理物語〕

〈鳥〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0251 雉子 丸やき 鳩 丸やき

鴫壺燒

〔武家調味故實〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0251 一しぎつぼの事 つけなすびの中をくりて、しぎの身をつくりて可入、身をば大略のこすべからず可入なり、かき(柿)のは(葉)をふたにしてからぐる事あり、わらのすべにてからぐる也、いしなべに酒を入て煎べし、くはしくは別本に有之、折びつにみゝがはらけにいためじほ置て可獻、 但〈しぎ二にてしたゝむべし、さてこそ別足四はあるべけれ、必雪の朝にてなくともまいるべし、〉 雪の朝まいる物なり、御前にてこの折びつを火にたきて、あたゝめてまいらすべし、みゝざらにいためじほ置て、折びつの中の前に置てまいらすべし、 折びつは口四寸五分、高サ二寸三分、足ナシ、下座は折敷也、是は雪の朝まいるべき間、折びつを可給物也、かはらけのあるはつけなすびなり、柹葉二枚ふたにしたる也、ふたの上にしぎの下はしをさしたり、但わけてまいらするときに、別足をばのこすべし、口傳、候べき所は別足四、ひつたれ少々可入也、分てまいらする時は、ひつたれ三切、別足一アリ、置て可獻、但したゝむべき樣料理口 傳の卷に委有之、

〔庖丁聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0252 一鴫壺燒と云は、生茄子の上ニ枝にて鴫の頭の形を作りて置也、柚味噌にも用、

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0252 一鴫のつぼいりのつぼは、なすび本也、なすびをへうして木にてもひきてする、其時は金銀にみがき、ろくしやうこんじやうにて、いろへたるものにて候、なすびの時はなすびのまゝたるべく候、其時はみがくまじく候、なすびのつけもとふたになり候、いかにもみのりてこはくあるなすびをする也、

〔大草殿より相傳之聞書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0252 一鴫のつぼいり扱したの、〈○したの三字恐誤〉是も本膳二三膳の中に參るべし、中より外にはかつてすゆる事有間敷候、集養の樣は、これもめしきこしめし候時は、集養なき事にて候、御銚子あがり一二へん參りたる時、左右の座中を見合て、右の手にて鴫のつぼいりの臺を取あげ、左の手にすへ、日まはりにまはし鴫の口と我とむきあふやうにして、又本のごとく取直し、右の手にて御おし、右の手にてつぼいりのふたに有花を取、左の手に持たる鳥をさげ、花をすこしかんずるやうして、我が右の方へ二の膳の前たゝみにをき、其後左にもちたる臺を右にて取、是もこの二の膳のたゝみにをき、扨又つぼをとりおろし、鳥の右の羽がいを、つぼのあたりにをき、鳥の足をひとつに取て、取たる羽がいのあとに、爪さきを我が前になして置、其後つぼのふたを取、臺の右のふちにかけをくなり、其後鴫のみをつぼより羽がいの上にうつし、つぼを本のごとく臺にをき、花を右の手に取、つぼの中にいけ、又右にて臺をとりあげ、かんずる心もちして、左の手をつき、右の手にて本所へをくべく候、其後羽がいともに持あげ、左の手にすへ集養あるべく候、鴫の羽ぶしをうつむけ、鴫の臺の下にをく也、

鴫燒

〔瓦礫雜考〕

〈二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0252 鴫やき たぬき汁 今の茄子の鴫やきといふものは、鴫壺燒といふことより轉れるなるべし、庖丁聞書に、鴫壺燒と 云は、生茄子のうへに、枝にて鴫の頭の形をつくりて置也、柚味噌にも用とあり、されどこれもやや後の製なり、猶古くは武家調味故實に、しぎつぼの事、つけなすびの中をくりて、しぎの身をつくりて可入、柿葉をふたにしてからぐる事あり、わらのすべにてからぐる也、いしなべに酒を入て煎べし、折びつにみゝがはらけにいためじほ置て可獻云々、折びつは口四寸五分、高サ二寸三分、足なし、下座は折敷也云々、かはらけの上にあるはつけなすび也、柿葉二枚ふたにしたる也、ふたの上に鴫の下はしをさしたり云々とあり、〈此書は天文四年の奥書あり〉

〔料理物語〕

〈燒物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0253 鴫やき なすびをゆで、よきころにきり、くしにさし、山椒みそ付候てやく事也、

〔風俗文選〕

〈六〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0253 飮食色欲箴 ある法師の茄子の鴫やきをほめられければ、傍の俗人、鴫の茄子やきも又よしと返しける、

雀燒

〔料理物語〕

〈燒物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0253 小鳥やき ふなの三四寸ばかりあるを、三枚におろしくしにさし、山椒みそをつけやく事なり、こいなよしなどもよし、

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0253 名目のやきものゝ部 小鳥やき 今いふふなのすゞめやき(○○○○○)なり 但し小ぶなよりは、四五寸のふなをせびらきにてやきてよし、

〔饌書〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0253 鯽魚〈○中略〉其五六寸者、燒酒烹之、骨尾酥軟、二寸許者、剖脊串炙曰雀燒、芳美仙壽驛有名、

〔料理物語〕

〈海の魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0253 名吉 小鳥燒

〔料理物語〕

〈川魚〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0253 鯉 小鳥燒 鮒 小鳥やき

雉燒

〔易林本節用集〕

〈幾食服〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0253 雉燒(キジヤキ)

〔料理物語〕

〈燒物〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0253 きじやき とうふをちいさくきり、鹽をつけうちくべてやくなり、

〔料理談合集〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0253 名目のやきものゝ部 精進のきじやき とうふをちいさく切、しほをつけてやく事也、

〔料理獻立〕

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0254 年頭御式 朝御膳前 御雉子燒 温酒 但十五日とも同斷

〔一話一言〕

〈十二〉

https://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0254 池田氏筆記〈○中略〉 一兼葭堂云、木地燒(○○○)魚ニテモ豆腐ヤウノモノニテモ、靑竹ノ串ニサシヤキタル計ノモノヲ、木地ヤキト云、是ニ醬油ヲカケ、又浸ヤキニモスルナリ、 但串トモニ盛之、又云木地ヤキハ禁中ニ限ラズ、平人常ニ燒所ノモノモ又木地燒ナリ、


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Last-modified: 2022-06-29 (水) 20:06:27