飮食部/飴

p.0874 飴ハ、アメト云フ、又糖ノ字ヲ用イル、古ハタガネトモ稱シキ、糯米ヲ煮熟シ、麥糵ノ粉ト冷湯トヲ和シ、醴ノ如クナラシメ、濾過シテ之ヲ煉リタルヲ水飴ト云ヒ、更ニ煉リテ膏ト爲シタルヲ堅飴ト云フ、其煉過シテ硬凝セシモノニ至リテハ僅ニ鑿ヲ以テ穿ツベシ、堅飴ヲ用テ兩人相對シ、手ヲ以テ互ニ掣スルコト數次、漸クニシテ白色ニ變ズ、之ヲ白飴ト云フ、

名稱

〔新撰字鏡〕

〈食〉

p.0874 餳〈徐盈反、平、飴也、阿女、〉

〔康煕字典〕

〈戉集會〉

p.0874 餳〈唐韻、韻會、並徐盈切、夕平聲、集韻飴也、〉 餳〈集韻、韻會、正韻、並徒郎切、音唐、説文、飴和レ 也、揚子方言、餳謂二之餹一、(中略)按重編廣韻云、餳徐盈切、當レ从レ易、正韻、从〉 〈レ昜誤、餳徒郎切、當レ从レ昜、今混爲二一字一非、字彙、既有二餳字一从二徐盈反一、復于二餳字一作二徐盈徒郎二切一、尚未レ了二然於字書一之誤也、〉

〔新撰字鏡〕

〈米〉

p.0875 糖 溏〈四形同、徒郎反、平、並阿米、〉

〔本草和名〕

〈十九米榖〉

p.0875 糖膠 濕 、〈如厚蜜者〉和名阿米

〔倭名類聚抄〕

〈十六酥蜜〉

p.0875 飴 説文云飴〈音怡、和名阿女、〉米糵爲レ之、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈四酥蜜〉

p.0875 按今俗作レ飴、用二麥糵一、不レ用二米糵一、〈○中略〉釋名、餳洋也、煮レ米消爛洋々然也、飴小弱二於餳一、形怡々然也、依レ之餳謂下今俗呼二水飴一之厚者、飴水飴之薄者上、不下與二説文注レ餳云飴和レ 者一同上、李時珍曰、餹之淸者曰レ飴、稠者曰レ餳、引二陳嘉謨一曰、乾枯者名レ餳、亦不下與二釋名一同上也、關東俗呼二水飴一(○○)者、關西俗謂二之汁飴一(○○)、

〔伊呂波字類抄〕

〈安飮食〉

p.0875 飴〈アメ亦作レ 〉 餳 糖 膠 濕〈如二淳蜜一者〉 餹〈已上アメ、亦作レ糖、〉

〔下學集〕

〈下飮食〉

p.0875 飴(アメ)

〔撮壤集〕

〈下飮食〉

p.0875 糖 飴(アメ)〈同〉</rt></ruby>

〔書言字考節用集〕

〈六服食〉

p.0875 膠牙飴(クロアメ)〈本草出レ乃〉 溼餳(同)〈同上〉 餳(アメ)〈活法、米糵煎成者、〉 餹(同)〈餳之硬者、〉 飴(同)〈餳之軟者、〉 餔(シルアメ)〈本草〉 餦 (同)〈楊氏方言〉 滑飴(同)

〔日本釋名〕

〈下飮食〉

p.0875 飴(アメ) あめはあま也、あまき意、めとまと通ず、

〔倭訓栞〕

〈前編二阿〉

p.0875 あめ 飴餳をいふは甘き義也、餳はしるあめ也、江戸にて水あめといふ、新撰字鏡に もよめり、八斛麥あり、餳に作るによろし、飴をねぶらすといふ俗語は、後漢書に含レ餳弄二兒孫一と見え、大學衍義に、啗以二甘言一而陰陷レ之といへる意なりといへり、〈○中略〉豆汁を俗にあめといふ餳に似たる也、

〔物類稱呼〕

〈四衣食〉

p.0875 滑飴 しるあめ(○○○○) 畿内にてしるあめといふ、西國にてぎやうせん(○○○○○)と云、關東にて水あめ(○○○)、又ぎやうせんと云、水あめはぎやうせんよりもゆるし、又ぎやうせんは濃煎(じようせん)なるべしや、 又地黄煎とも書、江戸にては下り(○○)ともいふ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十七造釀〉

p.0876 飴餹♯飴餹ハアメノ總名ナリ、分ツ時ハ飴ハシルアメ、一名ジヤウセン、〈西國東國〉ミヅアメ、〈東國〉クダリアメ、〈同上〉飴一名膠飴、〈弘景説〉 、〈典籍便覽〉軟餳、〈延胡索附方〉稀餳、〈磠砂附方〉餹ハ餳ナリ、 カタアメ(○○○○)一名玉餳、〈尺牘雙魚〉

〔倭訓栞〕

〈中編十三多〉

p.0876 たかね(○○○) 日本紀に飴をたがねとよめり、あめの古語なり、

〔日本書紀〕

〈三神武〉

p.0876 戊午年〈○即位前三年〉九月、造二作八十平瓫、天手抉八十枚〈手抉此云二多衢餌離一〉嚴瓫一、而陟二于丹生川上一、用祭二天神地祇一、〈○中略〉天皇又因祈レ之曰、吾今當以二八十平瓫一、無レ水造レ飴(タガ子)、飴成則吾必不レ假二鋒刃之威一平二天下一、乃造レ飴、飴即自成、

種類

製法

〔本朝食鑑〕

〈二榖〉

p.0876 飴〈和名阿米、今亦同、〉♯集解、源順曰、米糵煎也、今有二數種一、水飴(○○)一名濕飴(シルアメ)、白飴(○○)、膠飴(○○)等、倶麥糵糯米所レ成也、其法用二糯米春白者一升一、多造者三四升、或一斗餘亦準レ此、倶洗淨煮熟作二軟飯一、候二略冷一而要二人虜之温爲一レ度、合二麥糵粉一合冷湯八合一拌匀入レ桶如レ醴、過二二刻半許時一取出盛二布囊一、漉濾取レ汁、用二其濃汁一入二砂糖一、徐々煉二之炭火一、煉レ之如二海蘿煎汁一者、名曰二水飴濕飴一(○○○○)、復煉過熬作レ膏、粘二著竹篦一投二冷水一、作二膠固一爲レ度、候レ冷取出、兩人相對用レ手互掣者數次、其極白、或切或撚揉、以作二方圓筋條之状一、若牽レ之者漸四五次、則作二黄白色一、是近世所レ賞之菊川飴(○○○)也、京師江都處々相似不レ及者多、然其法大略同如二前法一、極白者細切抹二米粉一、名曰二三官飴一(○○○)、是華商三官之所レ造歟、此類亦處々多矣、膠煎俗稱二地黄煎一(○○○)、倶以二形色相似一而名、或作二凝煎一、用二白砂糖三斤、水二升一拌合、入二于銅鍋中一、而炭火煎至二湧發一レ沫、取レ汁去レ滓、再入二新銅鍋一而炭火煎至レ半、入二米醋盃七分一〈今之酒盃七分不レ至二十分一、〉拌合、煎至レ發レ沫、入二濕飴半飯椀一〈今之飯椀之半也〉拌合、煎至レ發レ沫、入二糯米極末粉三合半一、而後用二木篦一頻攪レ之、要不レ熬二箸于鍋内一、至下如二軟膏一時上、取出移二置于小麥粉上一、候二冷堅一而截二斷之一、以二鑿子一而截レ之、呼曰二鑿切一、或用二堅木篦一而引二展之一、粘二箸木片一亦有、此等類皆近世作二兒女民間之弄物一、而不レ爲二大家之饌一、惟濕飴及 菊川三官爲二上饌一、一種有二求肥餳(○○○)者一、用二葛粉沙糖糯粉等物一而造レ之、淺茅餳(○○○)亦類二求肥一、外抹二白胡麻一者、近代京師市上造レ之、送二傳江都一、江都亦造レ之、以爲二官家之用一也、

〔齊民要術〕

〈九〉

p.0877 餳餔♯史游急就篇云、鐵 飴餳、楚辭曰、粔籹蜜餌有二餦 一、餦 亦餳也、柳下惠見レ飴曰、可二以養一レ老、然則 餔可二以養レ老自一レ幼、故録レ之也、♯煮二白餳一法 用二白牙散糵一佳、其成レ餠者則不レ中レ用、用不レ渝レ釜、渝則餳黑、釜必磨治令二白淨一、勿レ使レ有二膩氣一、釜上加レ甑、以防二沸溢一、乾糵末五升、殺米一石、米必細師、數十徧淨淘、炊爲レ飯、攤二去熱氣一、及レ暖於二盆中一以二糵末一和レ之使二均調一、臥二於酳甕中一、勿二以レ手按一、撥平而已、以レ被覆二盆甕一令レ暖、冬則穰茹、冬須二竟日一、夏即半日許、看一米消滅離一レ甕、作二魚眼沸湯一以淋レ之、令二糟上一水深一尺許乃止、下水冷訖、向二一食頃一、便拔レ酳取レ汁取レ汁煮レ之、毎沸輒益二兩杓一、尤宜二緩火一、火急則焦氣、盆中汁盡、量レ不二復溢一便下レ甑、一人專以レ杓揚レ之、勿レ令レ住レ手、手住則餳黑、量レ熟止レ火、良久向レ冷、然後出レ之、用二梁米一者、餳如二水精色一、♯黑餳法♯用二靑牙一成レ餅、糵末一斗、殺米一石餘、法同前、♯琥珀餳法♯小餅如二碁石一、内外明徹、色如二琥珀一、用二大麥一、糵末一斗、殺米一石餘、並同二前法一、

〔和漢三才圖會〕

〈百五造釀〉

p.0877 飴(あめ)〈音夷〉 餹〈音唐〉 餳〈音唐〉 餦 〈和名阿女〉 膠飴〈俗云地黄煎〉♯本網飴用二麥糵或榖芽一、同二諸米一熬煎而成、古人寒食多食レ餳、惟以二糯米一作者入レ藥、其濕餹如二厚蜜一、而因二色紫一類二琥珀一謂二之膠飴一、其乾枯牽白者謂二之餳一、♯膠飴(○○)〈甘人温〉補二虚冷一益二氣力一、止二腸鳴咽痛一、治二吐血一、脾弱不レ思レ食人、少用能和二胃氣一、♯ 凡中滿吐逆秘結牙 赤目疳病腎病者宜レ忌レ之、生レ痰動レ火、以二最甚甘一也、♯按飴造法用二半熟糯〈俗云奈末毛知〉一斗一爲二精白一蒸レ 、麥糵去二芽稃一爲レ末、五合拌匀、漬レ湯 レ蓋二時許、而盛二布囊一、搾二去糟一取二用汁一煉レ之、甚軟者名二濕飴一、〈又名二水飴一〉煉過如二 膏藥一、紫色者名二膠飴一、〈俗云地黄煎〉其硬凝者可二以レ鑿穿切一、餳(○)〈餹同〉用二膠飴一、兩人對向牽レ之、傳レ油〈少許〉牽也疊也數十次、變二白色一、中有二窠孔一謂二之餳一、如値二霖雨一者、櫃中餳解稠成二一塊一、〈以二炒糖一糝レ之則不レ然〉攝州平野、山州伏見飴得レ名、今則大坂多造レ之、豐前小倉膠飴色似二琥珀一而玲瓏、味亦淡美、♯半熟糯不二肥白一、状似レ粳而粘少、羽州莊内、豐州小倉、肥州唐津多出レ之、其飴糟可二以爲一レ培、又貧人食之、

〔經濟要録〕

〈四〉

p.0878 諸糕第五♯飴モ亦製シテ利潤多キ者ナリ、水飴條(○○○)、飴(○)、痰切餳(○○○)ヲ始トシテ、打切餳(○○○)ヤ、渦形餹(○○○)、櫻餳(○○)、蠟燭餹(○○○)、其他豆粉ヲ混ジテ豆膏餅(スアマ&○○○)ヲ製シ、或ハ熬豆、米花小麥粉等ヲ和シテ、種々ノ果子トナスモ、能ク精微ヲ盡シテ製シタルハ、月日ヲ經タリトモ敗レズシテ、遠國ニモ輸スベシ、肥後熊本ノ朝鮮飴(○○○○○○)、相州浦賀ノ水飴(○○○○○)等ノ如キ、即チ是ナリ、凡ソ飴ハ糯米ト麥芽ヲ以テ造ルコト、古來ノ法ナリシガ、今ハ米屑ヤ糠粒ヲ用テ釀ガ故ニ、其利ハ古ニ三倍ス、然レドモ極上飴ヲ製スルニハ、糯米ヲ用テ寒製ニスベシ、

〔雍州府志〕

〈六土産〉

p.0878 地黄煎(○○○) 古禁裏、命二醫家一令レ製二地黄煎一、其法榖芽末粉合二地黄汁一入二鐺内一、慢火錬レ之而用レ之、則潤二腸胃一益二氣血一、今不レ用二地黄汁一、以二淸水一煎二錬之一、其味雖レ美、其功能爲レ劣、又東福寺門前菊一文字屋之滑飴(○○)爲二精品一、食レ之不レ粘二齒牙一、不レ滯二胸膈一、♯飴糖(○○) 東福寺門前菊一文字屋之所レ製爲レ佳、又桂里之製造細密而甘美、形如二竹管一、是謂二桂飴一(○○)、或稱二管飴一(○○)、又南都春日禰宜、春正月錬レ糕贈二堂上地下一、是稱二滑糕一(○○)、又謂二糕宜糕(○○○)、是亦在二京師一、

〔本朝世事談綺〕

〈一飮食〉

p.0879 地黄煎(○○○)♯古へ堂上より醫家に命じて、地黄煎を製しむ、其法榖芽末粉に、地黄の汁を合せ、これを煉て用ゆ、腸胃を潤し、氣血を益すの良糕なり、今は地黄の汁を用ひずといへども、此名を以す、京稻荷前にて專製レ之、江戸にては下り飴と稱す、

産地

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十七造釀〉

p.0879 飴餹♯増、本草綱目纂疏引二説文一云、飴米糵煎也、乃諸注既詳、斯方多煎二麥糵一、薩摩地方用二甘藷一造レ之、本邦處々ニ多クコレヲ造ル、讃州ノ金毘羅、城州ノ桂村等ハ名産ナリ、

〔守貞漫稿〕

〈後集一食類〉

p.0879 水飴♯今世水飴堅飴トモニ越ノ高田ニ精製シ、又相ノ浦賀ノ製次レ之、トモニ往々江戸ニ贈ル、

〔奥羽觀蹟聞老志〕

〈三庸貢土産〉

p.0879 糖圓(アメ&○○) 出二于宮城郡松島一、海濱蜑家以レ此爲レ業、鹽釜次レ之、兩地經過遊歴之客必齎レ之以還レ家、包レ之以二竹皮一、但近年味稍惡、所二以其制一疎而貧レ利亦多也、

〔寬政武鑑〕

p.0879 細川越中守齊茲、〈○肥後熊本〉 時獻上〈六月〉朝鮮飴(○○○)、

飴商

〔人倫訓蒙圖彙〕

〈六〉

p.0879 飴師(○○) 菅飴桂里名物也、其外七條東洞院の西にこれをつくる、江戸櫻あめ、芝田町、ぶぜん小倉、

〔守貞漫稿〕

〈六生業〉

p.0879 飴賣(○○)♯三都トモニ其扮定ナク、又飴製ニモ數種アリ、又毎時種々ノ異扮ヲシテ、賣レ之者アリ、故ニコレヲ圖スルコトヲ得ズ、唯江戸ニ一種毎時不易ノ飴賣アリ、今是ヲ圖ス、〈○圖略〉賣辭ニ下リ〳〵ト云、原京坂ヨリ贈リ下スノ謂歟、又因曰、江戸飴店ニハ必ズ渦ヲ描ケリ、今擔賣ニモ描レ之者アリ、

〔江戸總鹿子〕

〈六〉

p.0879 唐飴♯芝田町三丁目 陳三官 同札辻 西村伊織♯ 櫻あめ♯芝田町三丁目 あめや長左衞門

〔武江年表〕

〈六〉

p.0880 此年間〈○安永〉記事♯安永十年俳人提亭の撰たる種おろしと云句集に載る所の、其時代のはやり物商物目録左に略記す、〈○中略〉飴〈目黑桐屋雜司が谷川口屋〉

〔還魂紙料〕

〈上〉

p.0880 千年飴(○○○)♯元祿寶永の比、江戸淺草に七兵衞といふ飴賣あり、その飴の名を千年飴又壽命糖ともいふ、今俗に長袋といふ、飴に千歳飴と書こと、彼七兵衞に起れり、生質酒を好で世事にかゝはらざるの一奇人なり、今樣廿四孝〈寶永六年印本〉二の卷に曰、千年の七兵衞といふ飴賣あり、樂に養ふ子のあるに、いかないかなそれにかゝらず、江戸中を空にして童にねぶらし、價の其錢をすぐに處々にて酒にして、春秋の榮枯を息なし呑の一盃にらちをあけて、年のよらぬ顔をひさしく見ること、頬髭をかこち給ふ、堺町のさる野良のあやかりたしとまうされぬ云々、寶永六年に久しく顔を見るとあれば、貞享或は元祿の初より、其名を人に知られたる歟、

〔嬉遊笑覽〕

〈十一商賈〉

p.0880 今江戸に飴と古きせるなどを、かへにありく者あり、とつかへゞいと名く、其ことばにめげたらしよ、きせるの古いとゝつかへべにしよと呼ぶ、諸艶大鑑、松屋燒の土火入に、取集めたるめげ烟管といへり、損へることをめげるといひ、缺瓦をめげと云、めげたらとはつぶれたるきせるを云ふなり、今是をかへる飴賣も見付たらといふことゝ心得めり、此飴賣の事を、或説に正德の頃、淺草田原町に善右衞門といふ者ありしが、生國紀伊國道成寺の僧、つき鐘建立の爲に、江戸に下りて、この事に賴まれしかば、飴と古かねと取かへて、町々をあるきし、是その始なり、その後すたれて、寶暦三年の頃より、神田小柳町に甚右衞門といふもの、異なる聲して、とつかへ べいとつかへべい〳〵と呼あるき、專ら盛になりしは、寶暦九年の頃なりといへり、此説おぼつかなし、其磧が色三線大坂の卷、傾城買が落ぶれたる事をいふ處、茶碗燒出す高原といふ處に、風の神と相住して、〈風の神とは、風神送り、といふ物もらひなり、〉新町の名ある大夫、天神の姿を紙のぼりに畫き、其身は古き破あみ笠を著て、端々をもつて廻り、さあ〳〵丹波屋の小ざつま、明石やのもろこし云々、古釘にかへましやう〳〵と子供たらして其日を送りける、本朝文鑑左角が地黄煎解に、此ごろの人の覺えたがひて覗からくりのあしらひと思ひ、古がね買のきせるの雁首とかゆる、又伊呂芝居に、きせる皿ひとつにもかへてもらひにくき、しろものとも見えたり、

〔倭訓栞〕

〈前編二阿〉

p.0881 あめ あめうりのふえを吹事は、古く西土より傳はれり、詩箋に簫編二小竹管一如二今賣餳者所一レ吹也と見えたり、

雜載

〔延喜式〕

〈三十三大膳〉

p.0881 仁王經齋會供養料♯僧一口別、〈○中略〉糖三合六勺、〈菓餅料二合、好物料五勺、海菜料七勺、生菜料、一勺、索餅料三勺、〉

〔延喜式〕

〈三十三大膳〉

p.0881 年料♯糖十斛八斗九升四合六勺、〈御井中宮各一斛六斗八升三合、東宮一斛六斗七升八合八勺、雜給五石八斗四升九合八勺、〉絹篩九口、〈別三尺〉絞レ糖布袋十二口、〈別四尺〉

〔延喜式〕

〈三十九内膳〉

p.0881 供御月料♯糖一斗四升二合五勺〈○中略〉 右月料、小月減二卅分之一一、

〔東大寺正倉院文書〕

〈二十九〉

p.0881 但馬國天平九年正税帳♯正月十四日讀經供養料充稻伍拾貳束玖把〈○中略〉♯ 〈○朱書云阿米〉料米壹升充稻貳把

〔本朝食鑑〕

〈二榖〉

p.0881 飴♯ 撥明、飴及擬煎、近世擧作二民家兒輩之弄一、而言能補二脾胃一、殊不レ知二動レ火生レ痰動一レ蟲也、小食則止レ瀉和レ血者乎、

〔塵塚談〕

〈下〉

p.0882 飴餳の事、小兒には忌べき物也、宇治田先生も嚴しくいましめ給ふ、予〈○小川顯道〉おもふに造飴屋には飴を製する場所に、蚯蚓の生ずる事多し、故に蚯蚓を堀て渡世とする者は、飴屋へ行買求る事なりとぞ、されども蚯蚓を賣と家の零落の本なりとて、うらぬ飴屋もあるよし、

〔守貞漫稿〕

〈六生業〉

p.0882 飴細工♯諸物ノ形ヲ摸造ス、蓋飴細工ハ皆必ズ葭莖ノ頭ニ粘ス、又飴丸ヲ葭頭ニ粘シ、吹レ之テ中虚ノ大丸トスルアリ、專ラ藍紅等ヲ以テ彩レ之、諸形トモニ飴細工ハ製後彩レ之也、又昔ハ鳥形ヲ專トスル歟、今世モ飴ノ鳥ト云テ、飴細工ノ總名トス、又京坂ニテハ前ニ云丸ヲ吹キ大ニシタル者ヲ吹掛ト號ク、專ラ葭頭ニ粘シ、未ダ吹廣ゲザルヲ買テ自ラ吹レ之、故ニ吹カケト云歟、