p.0175 霜ハ、シモト云フ、水氣ノ凝結シテ小片ト爲リタル者ニシテ、冬季ニアラズシテ降ルヲ變異トセリ、
p.0175 霜 陸詞切韻云、霜凝露也、音蒼、〈和名之毛〉 説文云、 早霜也、丁念反、〈和名八豆之毛〉
p.0175 按、玉篇、霜露凝也、陸氏蓋本レ此、説文霜喪也、成レ物者、釋名霜喪也、其氣慘毒、物皆喪也、
p.0175 霜喪也、〈以二疊韵一爲レ訓〉成物者〈豳風九月肅霜、傳曰、肅縮也、霜降而收二縮萬物一、秦風白露爲レ霜、傳曰、白露凝戻爲レ霜、然後歳事成、按、雷雨露皆所二以生一レ物、雪亦所二以生一レ物、而非レ殺レ物者、故其用在レ霜、殺レ物之後、詩言雨雪雰、益レ之以二 霂一、生二我百穀一、其證也、惟霜爲レ 斂二萬物之用一、許列字首靁爲レ動、萬物者莫レ病乎此也、次レ之以レ雪、乃次レ之以レ霝、 謂二冬雪一、而後春雨也、次レ之以レ露、露春夏秋皆有レ之、秋深乃凝霜也、次レ之以レ霜、而歳功成矣、歳功以レ雪始以レ霜終、〉从レ雨相聲、〈所莊切、十部、〉
p.0175 霜〈音蒼〉 〈シモ〉 〈音店、又下唊反、ハツシモ〉
p.0175 霜 下(シモ)にあるの義也、霜滿レ天などいへ共、かたちのみゆるは下にあり、又高山に霜なし、一説しは白也、もはさむき也、むともと通ず、白してさむきなり
p.0175 霜シモ 義不レ詳、東北の地方にて、冬の空のきはめてさえぬる夜に、降れる霜の、木末垣ほなどに、悉皆花をなしぬるを、シラボといふものは、即是霜華なり、シラボとはシモといふ語の轉じたるなり、其語方言には出たれど、シモといひしは、其色の白きに因れりといふ事の、徴とするには足りぬべきなり、〈或説に、シモとはシムなり、寒き事の身にシムをいふなりなどいふは、いかヾあるべき、〉
p.0175 しも 霜はしぼむ義、草木霜にあふて、凋零するをもて名くる成べし、又しむの義、肅殺の氣をもていへり、
p.0176 霜〈音蒼〉 〈音店〉早霜也〈和名八豆之毛〉 本綱、陰盛則露凝爲レ霜、霜能殺レ物、而露能滋レ物、性隨レ時異也、月令云、季秋霜始降、 五雜俎云、百草不レ畏レ雪而畏レ霜、蓋雪生二於雲一陽位也、霜生二於露一陰位也、不レ畏二北風一而畏二西風一、亦蓋西轉而北陰未レ艾也、北轉而東陽已生也、〈◯中略〉 按、霜雪將レ降日甚寒冷、既降後必暖也、自二立春一八十八日、則當二立夏前五六日一、俗稱二八十八夜餘波霜(○○○○○○○)一、凡草木畏レ霜、如二蘭番蕉佛手柑(ソテツブシユカン)以下柑橘之類一、覆レ薦禦レ霜、過二此日一則脱レ蓋、
p.0176 霜 はつ 朝 夕 はたれ〈薄垂〉 ゆふこり〈夕凝◯中略〉 つるのいましめ かねのこゑ〈かねはしもにひヾくなり〉 おくれしも〈初學抄〉 さはひこす 露結て霜とはなる也、非二別物一依二天氣一かはるなり、 霜こほり 霜くもり月
p.0176 霜〈朝霜、夕霜といへど、多く曉がたよりおくものなり、〉
p.0176 十八年七月甲午、到二筑紫後國御木一、居二於高田行宮一、時有二僵樹一、長九百七十丈、百寮踏二其樹一而往來、時人歌曰、阿佐志毛(アサシモ/○○○○)能(ノ)、瀰概能佐烏麼志(ミケノサヲバシ)、〈◯下略〉
p.0176 西園寺入道太政大臣家三十首 後九條内大臣
くれかヽるみねのしばやのゆふしも(○○○○)にたれしら雲の衣うつらん
p.0176 秋霜(あきのしも)〈霜は冬也、暮秋に漸置初るゆへ、秋の霜、秋の初霜(○○)など云、〉
p.0176 白菊の花をよめる 凡河内躬恒
心あてにをらばやをらんはつ霜のおきまどはせる白菊の花
p.0176 九月にもなりぬ、はつ霜むすぼほれ、えんなる朝に、例のとり〴〵なる御うしろみどもの、引そばみつヽもてまいる、
p.0176 六百番歌合秋霜〈◯中略〉 中宮權大夫家房卿
秋の野のちぐさの色もかれあへぬにつゆをきこむるよはのはつ霜p.0177 寂蓮法師
思ふより又もあはれはかさねけり露にしもをく庭のよもぎふ 此歌、左方申云、つゆにしもをく如何、右陳云、つゆしもといふは、つゆに霜のおきくするなり、又難云、露霜は露と霜とのともにをくにこそ、露の上に霜をかむこと如何、判者俊成卿云、霜は露の結にこそ侍めれと云々、
p.0177 志貴皇子御作歌
葦邊行(アシベユク)、鴨之羽我比爾(カモノハガヒニ)、霜零而(シモフリテ)、寒暮(サムキユフベハ)、家之所念(イヘシオモホユ)、
p.0177 詠レ霜
天飛也(アマトブヤ)、鴈之趐乃(カリノツバサノ)、覆羽之(オホヒバノ)、何處漏香(イヅクモリテカ)、霜之零異牟(シモノフリケム)、
p.0177 霜
木の葉みなからくれなゐにくヽるとて霜の跡にもおきまさるかな
p.0177 草の花は〈◯中略〉 りんだうは、枝ざしなどもむづかしげなれど、こと花みな霜がれはてたるに、いと花やかなる色あひにてさし出たる、いとをかし、
p.0177 しも 光俊
谷ふかき岩やにたてる霜ばしら(○○○○)たが冬こもる栖なるらん
p.0177 霜〈◯中略〉 万八、霜雪もいまだすぎぬにむめのはなみつといへり、これは春霜也、後撰に、しもをかぬ春よりのちといへり、 たヾし春も少々詠ず
p.0177 三十四年三月、寒以霜降、
p.0177 二年三月乙亥、霜傷二草木華葉一、
p.0177 正嘉二年毎日一首中 民部卿爲家
p.0178 苗代のころまでむすぶ春の霜民のこヽろをいかヾなげかぬ
p.0178 十一年七月戊午、是日信濃國吉備國並言、霜降、
p.0178 元慶八年四月十日庚子、天寒殞レ霜、 十一日辛丑、霜降、 十六日丙午霜降氣寒、十七日丁未、夜寒霜降、草木葉彫、
p.0178 天徳四年五月八日丙午、霜降、尤可レ爲レ異、
p.0178 寛喜二年七月十六日、霜降殆如二冬天一、
p.0178 霜 あさはやくきゆるは、かならず雨ふる、をそく消るは晴、 大霜はかならず雨 京畿内は霜あれば、かならず天氣よし、坂東も同じ、西州は霜をそく消ても明日は雨ふる、 冬の霜物をからさざるは來年虫多、五穀を害し飢饉す、