揚物 精進揚

〔大草家料理書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0255 淨請物之覺 一ふや、こんにやく、とうふ、何も萬の精進物、油にてあげても吉也、但淨請物は口によりてする也、

〔料理物語〕

〈磯草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0255 昆布 汁 に物 にあへ くはし むし漬 たし〈ニ〉 油あげ(○○○) 其外いろ〳〵 〈略〉

〔塵塚談〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0255 あぶら揚賣童の事、我等〈○小川顯道〉二十歳頃迄は、貧民の子ども十歳十二三歳なるが、提籠へ油揚のみを入賣歩行しが、近年絶てなし、其頃見苦しき童を見ては、皆人あぶらげ賣のやうだといひけり、

〔守貞漫稿〕

〈六生業〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0255 塵塚談ニ云油揚〈ゲ〉賣、〈○中略〉廿歳比ハ寶暦中ヲ云、〈○中略〉油揚トノミ云ハ、今人ハ三都トモニ豆腐油アゲ(○○○○○)ノコトトスル也、恐ラクハ昆布ノ油揚(○○○○○)ナル歟、昆布ナラバ京坂ニハ今モ有之、左ニ出セリ、〈○中略〉 揚昆布賣 春ノ花觀等ノ群集ノ所ニ賣ル、昆布ノ油揚也、一ケ價一文、専ラ十餘歳ノ童子賣之、詞ニコブヤアゲコブ、〈○中略〉 揚ゲ(再出)昆布賣リ 春二三月ノ比、花見遊參人ノ群集ノ所ヘ賣リ巡ル、高二尺許亘一尺餘ノ目籠ニ、掛子アリテ、裏ヨリ紺紙ヲハリ、比籠ニ昆布ノ油揚ゲ入レ賣ル也、貧家男子ノ十二三歳ナル者也、 前ニ出セル塵塚談ニ云ルモ是歟、

〔南畝莠言〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0256 菊の葉を油の漬あげ(○○○○○○○○○)にして食ふ事、五雜組に、今人有菊葉麵米之者、其味香尤勝枸杞餅(クコベイ)也とあり、

天麩羅

〔皇都午睡〕

〈三編上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0256 揚物を、天麩羅また金麩羅(○○○)とも、〈○下略〉

〔守貞漫稿〕

〈後集一食類〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0256 半平 ハンヘイハ蒲鉾ト同ジク磨肉也、〈○中略〉京坂ニテハ半平ヲ胡麻油揚ゲトナシ、號ケテテンプラト云、油ヲ用イザルヲ半平ト云也、江戸ニハ此天麩羅ナシ、他ノ魚肉海老等ニハ小麥粉ヲネリ、コロモトシ、油揚ゲニシタルヲ天プラト云、此天麩羅京坂ニナシ、有之ハツケアゲト云、〈○中略〉 天麩羅 京坂ノ天プラハ前ニ云ル如ク、半平ノ油揚ヲ云、江戸ノ天麩羅ハ、アナゴ、芝エビ、コハダ、貝柱、スルメ、右ノ類總テ魚類ニ、温飩粉ヲユルクトキテコロモトナシ、而後ニ油揚ニシタルヲ云、菜蔬ノ油揚ハ、江戸ニテモテンプラト云ズ、アゲモノト云也、〈○下略〉

〔蜘蛛の糸巻〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0256 天ぷらのはじまり 天明の初年、大坂にて家僕二三人も仕ふ商人の次男、至情の歌妓をつれて江戸へ逃げ來り、余〈○岩瀨京山〉が住みし同街の裏にすみ、名を利介とて、朝夕出入しけるに、或時亡兄〈○京傳〉にいふやう、大坂にてつけあげ(○○○○)といふ物、江戸にては胡麻揚(○○○)とて辻うりあれど、いまだ魚肉あげ物は見えず、うまきものなれば、是を夜見世の辻賣にせばやとおもふ、先生いかん、兄曰、そはよき思ひつきなり、まづ試むべしとて、俄にてうじさせけるに、いかにも美味なれば、はやく賣るべしとすゝめけるに、利介曰、是を夜見世にうらんに、そのあんどんに、魚の胡麻揚としるすは、なにとやらん物遠し、語聲もあしく、先生名をつけてたまはれと云ひけるに、亡兄すこし考へ、天麩羅と書きて見せければ、利介ふしんの顔にて、てんぷらとはいかなるいはれにやといふ、亡兄うちゑみつゝ、足下は今 天竺浪人なり、ふらりと江戸へ來りて賣り始める物ゆゑ、てんぷらなり、てんは天竺のてん、即ち揚ぐるなり、ぷらに麩羅の二字を用ひたるは、小麥の粉のうす物をかくるといふ義なり、と戯れいひければ、利介も洒落たる男ゆゑ、天竺浪人のぶらつきゆゑ、てんぷらは面白しとて、よろこび見世を出だす時、あんどんを持ち來りて、字をこひける故、亡兄余に書かしめ給へり、こは己れ十二三の頃にて、今より六十年の昔なり、今は天麩羅の名も文字も海内に流傳すれども、亡兄京傳翁が名付親にて、予が天麩羅の行燈を書きはじめ、利介が賣り弘めしとは知る人あるべからず、〈○中略〉おもふに、物の始源おほかたは、かやうなる事にぞあらんかし、

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0257 文化のはじめ頃、深川六軒ぼりに松がすし出きて、世上すしの風一變し、それより少し前に、日本橋きはのやたいみせにて、吉兵衞と云もの、よきてんぷらし出してより、他所にもよきあげものあまたになり、是また一變なり、

〔江戸名物詩〕

〈初編〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0257 金麩羅仕出〈深川櫓下〉 金麩羅名響海邊、會席料理品最鮮、揚出或五藻屑(モク)卷、初知意氣在深川

飛龍頭

〔倭訓栞〕

〈中編二十一比〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0257 ひりうす 料理の目にいへり、蠻名也とぞ、

〔紅毛雜話〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0257 飛龍頭 此邦にて云、油揚の飛龍頭は、「ポルトガル」〈國の名〉の食物なり、其製左の如し、ひりうづは彼國の語のよしなり、粳米粉 糯米粉〈各七合〉 右水にて煉合せゆで上て、油揚にしたる物なり、

卷煎

〔倭訓栞〕

〈後編六計〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0257 けんちえん しつぽくに用ふる料理の名也、油あげの品なり、卷煎なりといへり、

〔和漢精進料理抄〕

〈上唐〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0257 煮菜類 卷煎(ケンチエン) 大根 牛蒡 栗子(クリ) 椎茸 麵筋 靑菜 豆腐 大根、牛蒡、栗子をはりにきり、椎茸麵筋も細切、靑菜はみぢんにきり、豆腐は一挺を十二にきりて 油にあげ、又一切を二枚にへぎ、又ほそくきりて、右の七種合せて一升程には、油七八勺計よくたたせ、先大根、牛蒡、靑菜を入れてよくいり付、後に椎茸麵筋豆腐栗子を入れて、推返々々て、扨醬油にて味付、よく熟せばとりいだしさまし置て、豆腐の皮を水に入て、そのまゝ引あげ打ひろげて、廣方に右の子高さ四五分計に長く置き、さてまきつけて、留(トメ)口に水にて葛粉をといてぬり、又油にあげ、厚さ六七分ばかりにきり、生菜の中に有卷煎酢(ケンチエンツヽ)〈謂しやうゆと酢と合し、しやがをおろして入、水囊にてこすなり、〉にさして喰ふべし、但大根、牛蒡、靑菜の中一色ありてもよし、

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins030025.gif

〔倭名類聚抄〕

〈十六魚鳥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0258 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins030025.gif 唐韻云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins030025.gif 〈蘇弔反、與http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins030025.gif 同、今案鹿http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029884.gif 、俗云、阿閉豆久利(○○○○○)是也、〉切肉合糅也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈四魚鳥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0258 廣韻、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins025801.gifhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029884.gif 按集韻http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins030025.gif 或作http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029884.gif 、則知http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029884.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins025801.gif 同字、廣韻http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029884.gif 蘇弔切、切肉食糅、又云http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029884.gif 所鳩切、乾魚蓋一字有二訓、只其音不同也、源君分爲二字http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029884.gif乾魚http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins025801.gif切肉合糅誤、今本廣韻合糅作食糅、然集韻作合糅此合、則作食誤、

〔松屋筆記〕

〈百三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0258 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins030025.gif (アヘツクリ) のたあへ 和名抄十六〈十七丁ウ〉魚鳥類に、唐韻云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins030025.gif肉合糅也、今按鹿http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins030025.gif 、俗云阿閉豆久利云々、此アヘツクリは、料理の書にのたあへといふ物にあたれり、

〔倭訓栞〕

〈中編一阿〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0258 あへづくり 倭名抄にhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins030025.gif をよめり、合せ作の義成べし、切肉合揉也と見えたり、

〔萬葉集〕

〈十六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0258酢醬蒜鯛水葱歌 醬酢爾(ヒシホズニ)、蒜都伎合而(ヒルツキカテヽ)、鯛願(タヒモガモ)、吾爾勿所見(ワレニナミセソ)、水葱乃煮物(ナギノアツモノ)、

〔松屋筆記〕

〈百四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0258 刺身、鱠、ぬた和(アヘ)、 醬酢(ヒシホズ)は今の酢味噌の事にて、鯛の刺身蒜など和(アヘ)まぜたるぬたあへの事也、後世のぬたあへは、酒糟大豆粉(キナコ)花鰹を酢にてすり、それに刺身の魚を和たるをのたあへ鱠といふよし、大草家料理書〈群書類從三百六十六卷廿二丁右〉に見ゆ、〈○中略〉萬葉集の比は、刺身を酢味噌に和たるを、後世ヌタと云名を いひ出し也、

〔大草家料理書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0259 一のたあへ鱠は、酒のかすを能摺て、大豆の粉を入て、花鰹を摺てまぜて、魚に酢を掛てあへる也、何も萬の魚も如此候也、又は大豆の粉なくば、けしか胡麻かを入て、糟と酢と酒にてあゆる、又ひとしほ靑くするは靑辛だて摺交り吉也、大魚は中うちを燒ても入吉事もあり、

〔料理物語〕

〈鱠〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0259 ぬたなます からしをよくすり、さて酒のかすをよくすり、あゆにてもいわしにても鰡にても、まづすにていため、その酢をすて、後にぬたをすにてのべ、鹽かげんしてあへ候也、後のすおほきはあしく候、但あゆにはあをまめのぬたに、柚の葉きざみ入、あへ申事も存之、

和物

〔易林本節用集〕

〈安食服〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0259 和(アヘモノ)

〔書言字考節用集〕

〈六服食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0259 和物(アヘモノ)

〔倭訓栞〕

〈中編一阿〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0259 あへもの あへはあはせ也、はせ反へ也、あかきをものゝあへものとよめるは、饗物の義也、新撰字鏡、和名抄に韲をよめり、是も又同義成べし、擣姜蒜醋和之、と見ゆ、萬葉集に、醬酢に蒜搗雜て鯛ねがふなどよめる是也、今いふあへものと同じからずといへり、今いふものは壒囊抄に酤字をよみ、酤以春梅といへり、和字を用る事もありと見えたり、

〔大上﨟御名之事〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0259 女房ことば 一あへもの みそ〳〵

〔當流節用料理大全〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0259 大書院御成精進御料理式正獻立 御茹(あへ)物 〈竹の子輪切、たでごまみそ、〉

〔料理早指南大全〕

〈初編〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0259 猪口の部 春〈梨子靑あへ〉 夏〈ふぢまめ木のめあへ〉 秋〈よまきいんげんせうがみそあへ、てんもんどうからしあへ、〉 〈まきあらめ白あへ〉 冬 〈生ぐりもみて梅びしほあへ〉

〔三好筑前守義長朝臣亭江御成之記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0260 一三月卅日、〈未刻○永祿四年〉 御成〈○中略〉 一總衆へ參獻立、小西仕分、〈○中略〉 二獻〈さしみけづり物〉 あへ物

〔醒睡笑〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0260 一あるひとり坊主、烏賊をくろあへ(○○○○)にしてたまはる處へ、ふと人來れり、口をぬぐはん料簡もなかりつるに、そなたの口は、何とてくろひぞや、かねをつけられたかととふ、いやあまりさむさに、たゞいまもえさしを、一口くふたと、

〔醒睡笑〕

〈八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0260 一會下僧に齋をすゆる、菜に蕨あり、終に服せず、施主如何なれば、蕨をば食せられぬぞ、人のくちやかふとて、大事候まひ、けしあへ(○○○○)にしてさうほどに、

蒸物

〔倭名類聚抄〕

〈十六菜羮〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0260 蒸 禮記注云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins018437.gif 〈私列反、師説無之毛乃、〉蒸也、野王按、蒸〈之繩反〉火氣上行也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈四菓菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0260 按廣韻、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins018437.gif 蒸也、餘制切、禮記釋文渫字音義同、廣韻又云、渫治井、又除去、私列切、是http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins018437.gif 渫雖同字、然私列可以音除去字、源君以私列http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins018437.gif是、按无之毛乃烝物也、烝訓牟之牟須、謂鬱熱http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins019615.gif、今俗謂縟署牟之阿都之是也、

〔伊呂波字類抄〕

〈無飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0260 蒸〈ムシモノムス〉 茹 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins026001.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins018437.gif 〈已上同、亦作http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins018437.gif 、〉

〔庭訓往來〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0260 御齋之汁者、〈○中略〉菜者、〈○中略〉蒸者茹物、

〔東雅〕

〈十二飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0260 蒸ムシモノ 倭名鈔に禮經を引て、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins018437.gif は蒸也、師説にムシモノといふ也、蒸は玉篇に、火氣上行するなりと見えたりと註せり、凡火氣上行するを云ひて、ムシともムスとも云ひし、義詳ならず、

〔倭訓栞〕

〈中編二十六牟〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0260 むしもの 和名抄にhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins018437.gif をよめり、蒸也と注せり、大和物語に、菜をむしものといふ物にしてとみゆ、

〔大和物語〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0260 日もたかうなれば、此女のおや、少將〈○良岑宗貞〉にあるじすべきかたのなかりければ、こどねりわらはばかりとゞめたりけるに、かたいしほざかなにして、酒をのませて、少將にはひろ き庭に生えたるなをつみて、むし物(○○○)といふものにして、ちやうわんにもりて、はしには梅のはなのさかりなるをおりて、その花びらに、いとおしげなる女のてにてかくかけり、 君が爲衣のすそをぬらしつゝ春の野に出てつめるわかなぞ

茹物

〔新撰字鏡〕

〈火〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0261 煠、濈、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins026101.gif 〈同土洽、徒牒二反、以菜入涌湯煠、煮也、奈由豆、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十六菜羮〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0261 茹 文選傳玄詩云、厨人進藿茹、有酒不杯、〈茹音人恕反、由天毛乃、藿音霍、葵藿也、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈四菓菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0261 文選所載傳玄詩、只有雜詩一首、所引旬無有按太平御覽載傳玄是句、疑源君從修文殿御覽之、誤爲文選也、又按、江次第二孟旬條有菁茹蓋從此所一レ訓、然茹訓菜見後漢書馬融傳注、茹本訓http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins231945.gif 馬、轉爲凡食、又爲食菜、逐謂菜爲茹也、然則傳玄詩、藿茹猶藿菜、不由天毛乃、又説文、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins045752.gif肉及菜湯中薄出之、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins045752.gif 又作瀹、玄應音義引通俗文云、以湯煮物曰瀹、又廣雅、煠爚也、龍龕手鑑、煠湯瀹菜也、新撰字鏡、以菜入涌湯煠、煮也、奈由豆、釋名、生瀹葱韮兌、言其柔滑兌々然也、此可以充由天毛乃

〔下學集〕

〈下飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0261 茹物(ユデモノ)

〔運歩色葉集〕

〈遊〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0261 茹物(ユデモノ) 茹(ユギル) 燖(ユビク) 臑(同)〈煮熟也〉

〔東雅〕

〈十二飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0261 茹ユデモノ 倭名鈔に、文選註に見えし霍茹を引て、茹讀でユデモノといふなり、内則註に據るに、瀹は肉菜湯中薄熟出之と見えたり、さらばユデモノとは、湯より出ぬるものを云ひし也、

〔倭訓栞〕

〈前編三十五由〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0261 ゆでもの 倭名抄に茹をよめり、湯より出す意也、内則注にも、瀹は肉菜湯中薄熟出之と見えたり、新撰字鏡に煠をなゆづと訓ぜり、以菜入涌湯煠と注せり、今俗うでものといふも、うとゆは横通せり、今のしたし物是也、

〔倭訓栞〕

〈中編十志〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0261 したしもの 西土にいふ茹也といへり

〔新猿樂記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0262 七御許者、食飮愛酒女也、所好何物、〈○中略〉油濃茹物(ユデモノ/○○)、面穢松茸、

〔運歩色葉集〕

〈遊〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0262 湯煎

〔倭訓栞〕

〈中編二十七由〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0262 ゆびく 禮記に濡をよみ、又燖をよめり、湯を引なり、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins036076.gif も煠も同じ、童蒙頌韻に胹をよめり、ゆびきものは茹をよめり、菜を湯引たるをいふ、くらぶともよめる意なり、

〔類聚名物考〕

〈飮食三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0262 臑 ゆびく いびく〈俗云〉ゆでる 湯引は、俗に云ゆがくともいふに同じ、湯煮をするなり、 文選 七發〈枚叔〉熊蹯之http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029880.gif 〈五臣作臑、音而、〉勺藥之醬、注、左氏傳曰、宰夫臑、熊蹯不熟、方言曰、臑熟也、音而、

〔延喜式〕

〈三十三大膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0262 仁王經齋會供養料 僧一口別、〈○中略〉醬三合〈生菜料三勺、薄餅料三勺、好物料四勺、茹菜料(○○○)二勺、海菜料一勺、漬菜料一合二勺、汁物二勺、羮料一勺、索餅料二勺、〉麁醬九合二勺五撮、〈好物料四合、熬菁料五勺、茹菜料(○○○)三勺、海菜料三合五勺、漬菜料三勺五撮、薄餅料二勺、汁物料四勺、〉味醬四合五撮、〈好物料一合、茹菜料(○○○)四勺、漬菜料二合五撮、汁物料二勺、羮料一勺、菓餅料三勺、〉鹽九合八勺八撮、〈好物料五勺、茹菜料(○○○)二合、生菜料二勺、薄餅料三勺、海菜料二勺、汁物料二勺、漬菜料五合二勺八撮、菓餅料一勺、索餅料六勺、羮料五勺、○中略〉鳥坂菜二分、〈生菜并海菜茹菜(○○)等料各四銖、○中略〉角俣菜一兩二分、〈好物料一兩、茹菜料(○○○)二分、○中略〉芥子一合二勺、〈好物料五勺、茹菜料(○○○)三勺、汁物料四勺、○中略〉生薑一合九勺五撮、〈好物料一勺、茹菜料(○○○)二勺、汁物料五撮、索餅料一勺、漬菜料五勺、韲料一合、○中略〉右一日供料依前件

〔古今著聞集〕

〈十八飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0262 聖信房弟子共、くゝたちを前にてゆで(○○)けるに、なべのはたより、くゝたちの葉のさがりたりけるを見て、其座に有ける人のいひける、 くゝたちのやいばはたりて見ゆる哉 房主うち聞てつゞけゝる なまいてたれかつくりそめけん めでたくこそつけられ侍れ

〔大草家料理書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0262 一鴈のいで鳥と云は、足手を落し、水出しと醤油にて不切ににて、食樣ニ薄切に作 也、 一鴨のいで鳥は、湯を以て洗て、丸に鍋ニ入て、花鰹を入て、酒とぬかみそ少し入てたく也、食樣に薄く作て、醤油か酢か、又は辛酢も食也、

〔料理物語〕

〈煮物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0263 ゆで鳥は 骨共にだしたまりにて、久しくに申也、

〔四條家法式〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0263 一大猷院樣、元和九亥年七月十三日御上洛ニテ、寛永三寅年九月六日、行幸二城御城、同十日還御、〈○中略〉九月六日晩、御引替之御膳、御本〈○中略〉 ユデ鳥〈鴨〉

蘸物

〔書言字考節用集〕

〈六服食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0263 蘸(ヒタシモノ) 浸物(同)〈俗字〉

〔當流節用料理大全〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0263 大書院御成精進御料理式正獻立 一蘸物(ひたしもの) にんじん〈どんぶり〉鉢八寸

〔鈴鹿家記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0263 永正十四年六月朔日、當月ノ神事、隼人カ左京カ若狹可致候、禰宜方ニモ神大工方ニモ神人方ニモ、左樣ニ可心得、 一十日御神事 鈴鹿勝正〈○中略〉 右ハ御立計手酒、肴サヽゲヒタシ物(○○○○)、卷ズルメ、飛魚ムシリ物、〈○下略〉

〔料理獻立〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0263 寛政七年卯二月十六日 御幸 御膳方 夕御膳 御ひたし つくし

生物 干物 貝物

〔空穗物語〕

〈あて宮〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0263 二月中の十日、年のはじめのかうしん出來るに、春宮の君だち御つぼねことにあて宮さらぬさきより、殿上たちはきのぢんにくだもの出さむとおぼす、よきおりなりとて、殿に聞え奉れ給、宮の御たいには、かねのごきにこがねのけうち、しろがねのおしき三十、こがねのごき御たいのうちしきは、花ふれうにうすものかさねたり、ひわりご五十、たゞのわりご五十、かひわりごは御かた〴〵にし給、たゞのは殿につかうまつる、すりやうどもにおほせ給へれば、つ かうまつれる、すへものはまどころより、いゐ四石ばかり、いたまさのきのひつ十、ほをのきにくろがきのあしつきたるながもちとをにすへ、一尺三寸ばかりのわたきのものに、なまもの(○○○○)、からもの(○○○○)、すしもの、かいつもの(○○○○○)、たけたかくうるはしくもりて、ほとはまひとはきのあしつけたり、しきさらどもにすへて、一石いるそん十にさけいれ、ごてにぜに三十貫、かみふでつくゑにつみて、色々のしきしつみて十、たかつきすはうのつくゑに、まゆみのかみ、あをがみ、まつかみ、ふでなどつみて、ごてにしたり、

〔空穗物語〕

〈藏開上二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0264 頭の中將、御ぜんどもの物などまいらせ給はぬ、宮の御まへには、白がねのおしき、おなじきたかつきにすへて十二、ごきどもひわたりご三十か、むくにのくぼのつきども、もちゐ四をしき、からもの(○○○○)四をしき、くだもの四をしき、しきものこゝろばいときよらなり、

〔西宮記〕

〈十月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0264 旬 供御飯、〈此先供蚫御羮、次進物所物、〉居臣下飯汁生物(○○)窪坏物、〈應御箸音之〉一獻供御酒、〈○中略〉供干物(○○)菓子

〔執政所抄〕

〈上正月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0264 元日 御節供事〈○中略〉 干物(○○)八坏 干鳥 楚割 蒸蚫 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins032894.gif 燒 干鮭 干鯛 押鮎 白干

〔二中歴〕

〈八供膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0264 大饗 尊者 唐菓〈餲餬、桂心、黏臍、饆饠、〉 木菓〈梨、棗、柑、獼猴桃、〉 干物(○○)〈蒸蚫、燒鮹、干鳥、楚割、〉 生物(○○)〈雉、鯉、鱒、鯛、〉 貝物(○○)〈蚫、螺、白貝、甲羸、〈ツヒ〉〉 窪坏物八坏〈肫裹、海月、保夜、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins033275.gif 蟻、細螺、蠏蜷、石花、肝掻、〉 四種箸匕 納言以下 唐菓〈餲餬、桂心、饠饆、〉 木菓〈梨、棗、柑、〉 干物(○○)〈蒸蚫、干鳥、楚割、〉 生物(○○)〈雉、鯉、鯛、〉 貝物(○○)〈蚫、螺、甲羸、〉 已上各三坏 窪坏物六坏〈肫裹海月、保夜、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins033275.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins033030.gif 、細螺、蠏蜷、〉 四種〈鹽、酢、醬、〉 辨少納言 唐菓〈餲餬、桂心、〉 木菓〈梨、棗、〉 干物(○○)〈蒸蚫、干鳥、楚割、〉 生物(○○)〈雉、鯉、鯛、〉 貝物(○○)〈蚫、螺、甲羸、〉 已上各三坏 窪坏物六坏〈如前〉四種〈鹽、酢、〉 外記史 唐菓〈餲餬、桂心、〉 木菓〈梨、柑、〉 干物(○○)〈干鳥、押鮎、〉 生物(○○)〈雉、鯉、〉以上各二坏、 貝物(○○)一坏〈蚫〉 四種〈鹽、酢、〉 史生 中純物六坏〈餅、伏莵、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins044055.gif 、大柑、小柑、串柿、〉 干物(○○)〈押鮎、干鯛、鮭、〉 生物(○○)〈雉、鯉、鹽鮎、〉 貝物(○○)〈蚫、〉 窪坏二坏〈肫裹、海月、〉 四種〈鹽、酢、〉 飯二斗汁 餛飩 汁物〈汁、鱒、鱠、雉羹、〉 追物〈莖立、裹燒、〉 立作物二折敷〈一枚、蘇甘栗、零陵子燒、一枚、鯉鱠、指鹽、辛虀、〉

〔厨事類記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0265 干物(○○)或稱乾物(○○) 干鳥 楚割 蒸蚫 燒鮹 或干物四坏、内用鯛平切

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0265 一保延二年十二月日、内大臣殿〈○藤原頼長〉廂大饗差圖、〈○中略〉 穩座肴物〈樣器土高坏、繪折敷、○中略〉 干物(○○)八種 蒸蚫〈放耳刊上、廻盛不切、〉 干鳥〈不切、引渡盛之、〉 楚割、并鯛、鮭、〈各切、長八寸、引渡盛之、〉燒鮹〈刊裹長切八寸引渡盛之、〉 大海老〈乍丸引渡盛之、〉 生物(○○)八種 鯉〈九寸許ノヲ、本ノ尻ヲ短尾ニ切〈天〉、乍丸引渡盛之、〉 鮨鮎、并煮鹽鮎、〈以上引渡盛之、〉 雉〈別足引垂、引渡盛之、〉 鱒、鱸、鯛、〈鯉定也〉 蛸〈切長八寸、引渡盛之、〉

削物

〔運歩色葉集〕

〈古〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0265 五種削物〈蛸、鰻、蚫、鰹、干鯛也、〉

〔二中歴〕

〈八供膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0265 五種削物 蚫、鰹、鯛、雉、鮹、〈蛸一云烏賊〉

〔庭訓往來〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0265 削物者、干鰹、圓蚫、干鮹、魚躬、煎海鼠、

〔厨事類記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0265 調備故實 干物〈削物〉 干鳥 雉ヲ鹽ツケズシテ、ホシテ削〈天〉供之、 楚割 鮭ヲ鹽ツケズシテ、ホシテ削〈天〉供之、 蒸蚫 蚫ヲ蒸テ、ホシテケヅリテ供之、 燒蛸 蛸ヲ石ヲヤキテ、ホシテ削〈天〉供之、 干鯛 平切〈天〉供 之、 〈裹書〉干鳥ソハヤリナキ時、カツヲヽモル、ソハヤリヲナジ アハビタコナキ時、イヲノミヲモル、 ヤキダコヲナジ

〔武家調味故實〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0266 一このみてまいるべき物〈○中略〉 五しゆのけづり物〈ほしとり、ひだい、あわび、かつほ、いりこ、〉

〔山内料理書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0266 一夏肴くみ之事 五種削物如此もるなり 白 靑 四季同 赤 黄

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0266 一向の菜は、五種の削物(○○○○○)、燒鳥、からすみ、數の子などを、龜甲又は土器に高立して盛也、又具足餅の時は、大根の香の物、田作、甲の大豆を用ゆ、

〔空穗物語〕

〈藏開上一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0266 中納言奉り給へる物どもをとりよせて見給へば、〈○中略〉ひとおりびつ白きものをいれたり、いま二にはえび丁子を、かつをつきのけづりもの(○○○○○)ゝやうにていれたり、

四種物

〔執政所抄〕

〈下四月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0266 三日京極殿北政所御忌日事〈○中略〉僧前一前〈下家司〉 四種物〈深草六寸盤〉 居切机〈有覆布二丈〉 干物〈海松、靑苔、煎餅、河骨、〉 生物〈荒布、牛房、瓜、蕗、〉 窪坏物四種

〔厨事類記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0266 四種器 酢 酒 鹽 醬 或止醬用色利 〈裹書〉色利煎汁、イロリトハ、大豆ヲ煎タル汁也云々、或鰹ヲ煎タル汁也云々、

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0266 一保延二年十二月日、内大臣殿○藤原賴長廂大饗差圖、〈○中略〉穩座肴物、〈○中略〉 四種〈酢 鹽 酒 醬〉 在箸臺〈箸匙○中略〉 四種坏〈口徑各二寸〉 箸臺〈口徑五寸、二方折立端、〉 已上、深草土器用之、

〔門室有職抄〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0267 四種ハミソ、シヲ、ス、サケ也、近代ハ酒ヲ略シテ蓼ヲ用、タデナキ時ハ、ワサビ、ハジカミ、ミソ蓼必説酢也、

〔塵袋〕

〈九〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0267 一女房ノ中ニ酢ヲ御シスト云フ心如何 御膳ニ四種ト云フ事アリ、味曾鹽酢酒ノ四ナリ、此レヲバヲノ〳〵一器ニ入テマイラスベキナリ、今ノ世ニハ四種カナラズシモ器ニイレズ、或ハタヾ四ノスミニ一ヅヽ器バカリヲヲキテモアルベキニヤ、或ハ酒ヲ略シテ、蓼モシハ山癸ヲイルベシト云フ人モアリ、又味曾モ蓼モカナラズ酢ヲ入ト云々、四種ニ酢ノム子トアレバ、スト云ハンモヒタハタシノユヘニカクシ題ニテ、スヲ御四種ト云フナルベシ、

盛物

〔倭訓栞〕

〈前編三十三毛〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0267 もりもの 盛物と書リ、侍中群要に小盛物見ゆ、大盛物も見えたり、御厨子所下物四種、近年稱小盛物とも見ゆ、

〔貞丈雜記〕

〈七膳部〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0267 一もり形の名 輪かくもりかはらけ まはしもり杉なり也 ひめもり ほやもり >いてふもり

〔三中口傳〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0268 調膳樣事 飯ヲバ、カタウツケズシテ丸ラカニ可盛、四種器不入物 高盛 平盛可高下 菓子 高盛程也 餅 四破ニシテ盛之、定時也、又調小餅〈圓形〉盛之自上古常事也云々、又樣々切盛交菓子之外不然、近代他菓子各雖一種、限餅盛二合、甚無其謂事歟、

〔當流獻方口傳七册之書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0268 一女中方の食は、常も七ツ定器、五ツ定器には、食を大飯にかさだかに盛也、汁も再めされぬゆへかさ高に盛也、菜もつまみ盛とてかさ高に腰高に盛也、御膳すへる時、何方を参候哉しれぬ樣に介添箸にて直し申也、添食籠とて、食の入たる食籠を臺にのせ出す、是に有食をかさへ分てまいらする也、大飯にははしをつけ給はぬなり、

〔四條流庖丁書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0268 一魚ノヒレ可參事、鯉ノヒレニハ杉サシノヒレヲ第一賞翫ニ申傳、此ヒレニ名餘多有事、ナレドモ尊者ノヒレ杉サシノヒレト名付タルヲ、當流ノ秘事トセリ、是忝モ神秘也、可秘可秘、彼ヒレ盛物ノ上ニ置事大事可成、天子或京鎌倉ノ將軍、セメテハ攝政關白ナド迄ハ、同前ニ可盛也、ヒレ一ナレドモ、置樣ニヨリテ過分ナラバ罰ヲ可蒙ト見エタリ、口傳、何ニモ此ヒレヲバ手ヲ付テ聞召サバ悉參ベシ、不參ハ一向ニ押除テ不參、殊ニ盛樣ナドヲ賞翫シテ盛テ參ラセバ、其心得一廉有ベシ、何ニテモ毎物ニ盛樣ヲ賞翫シテ參スル時コソ、過分ノ至トハ、亭主ニモ御禮有コトナレドモ、右ノ樣ニ仕立ヲ能拵テ參ラスル人モナシ、喰知人モナクシテ、此道徒ニ成行事トモ可成、今ノ世ニハ參物ヲ多拵テ參ラスレバ、ソレヲ過分トノミ心得候、然間彌道ハ衰果テ可行哉、

〔西宮記〕

〈正月下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0268 内宴 先御四種〈女藏人、各坏居御盤之、陪膳傳取居東御臺盤巽角、〉次餛飩索餅、〈居前端索餅、昆屯西、〉次蚫御羹、〈居四種御器北、以御盤索餅、〉次盛物(○○)汁物等、〈盛物居馬頭盤右、汁物居右方最端、〉

高盛

〔倭訓栞〕

〈中編十三多〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0269 たかもり 高盛也、ひらもりは平盛なり、進物所御厨子所ともに、江次第に御菜とみゆ、

〔厨事類記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0269 内御方 晝御膳 高盛七坏 平盛一坏 御汁物二坏〈土器〉 燒物二坏 已上魚味、盛土器内膳司所一レ進、〈近年日別蚫二連添之〉當旬番衆於御厨子所取之盛進也、但六齋御齋會最勝講佛名等日、高盛精進各四種、〈内膳司所進、近年添和布、〉居交之

〔成氏年中行事〕

〈正月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0269 朔日ノ椀飯ハ管領ヨリ參、遠侍ニハ高盛物(○○○)二アリ、一ニハ波葉、一ニハ螧也置鳥置鯉アリ、椀飯奉行直垂ニテ出仕、

平盛

〔新儀式〕

〈五臨時〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0269 皇太子加元服事 皇太子將元服、〈○中略〉供奉威儀御肴、〈夜中坊官率僚下厨子、供威儀菓子干物、平盛(○○)也、〉

〔類聚雜要抄〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0269 移徒作法 康治二年七月十一日丙寅、前齋院〈統子、一院御女、〉三條殿移御、〈○中略〉紫端八帖二行相向敷〈天、〉爲殿上人座、黑柹机平盛饗也、

切盛

〔西宮記〕

〈正月上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0269御藥事 正月元日早朝供奉屠蘇御膳事、猪宍二盤、〈一群、一燒、〉押鮎一盤、〈切盛置頭二串〉煮鹽鮎一盤〈同切置頭二串〉但御器者度於内膳瓷盤四口

〔江家次第〕

〈一正月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0269御藥 押鮎一坏〈切盛置頭〉

海老船盛

〔四條流庖丁書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0269 一海老ノ船盛ノ事、料理ノ物ナルベシ、然間貴人一御前ナド計ニテ、殘ハ只ノワリエビニテ可然哉、

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0270 一海老に、舟盛、ひけ盛、廻り盛と云口傳有

〔大草殿より相傳之聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0270 一海老のふなづみ(○○○○○○○)の事、本膳にもあれ、二三の間にもあれ、集養はおなじ事也、先ゑびを臺共に右の手にてとり、我が前にて左の手をそへて、いかにも〳〵かんずる心もちをして左の手に取、右の手にてほづなをはづし、海老の頭のかたへかけ、我が右の方のたゝみにをきて、しばらく座中をみあはせ、よきころにほばしらをぬきて、ほばしらさきにてゑびのみをさして、左の手にてぬき、右に又とり、ほばしら持たる手にて集養あり、其後ほばしらをはさみかけて、海老の上にをき、いかにもたべたき程手にてたべべく候、扨よの手の物にはちとかはり、しばらく我前にをきて、膳のくだり候時、膳の中をく也、

甲盛

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0270 一甲盛と云は、大蟹の甲を仰けて、燒蟹を中に盛也、

〔四條流庖丁書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0270 一カザメ(擁劔)ノ事、可盛カタチ流ニ餘多有哉、雖然當流ノコトハ各別也、是ニ龜足ナクシテハ、假初ニモ御前ヘ不參、甲ニ盛ベシ、若カザメノ甲ナクバ、土器ニ可盛也、當世折敷ニ取雙テ參スル不然事也、

姫盛

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0270 一姫盛(○○)といふは、荒和布を盛たるを云也、

花盛

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0270 一花盛(○○)と云は、色々に染て合せて盛を云、

沈盛

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0270 一沈盛(○○)と云は、鮫魚の干物を削て、土器に盛て出す也、沈香に似たる故名とす、

ウス盛

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0270 一うす盛(○○○)といふは、巻鯣を盛たるをいふ也、

〔大草殿より相傳之聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0270 一鮎のほうらいづみの集養の事、のぼり鮎の時は、かしらを取おろし候、そのまゝいたの下にそへをく也、くだり鮎のはうらいづみの時は、うをの頭をはしにはさみ、魚のをのかたへむけてをき、魚のをゝ右の手にて取を集養有て、殘りたるは本膳の前にをき、魚のみをばはしにてくふ也、のぼり鮎もくだり鮎も、鮎は本膳にむき候、

鶉羽伏盛

〔大草殿より相傳之聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0271 うづらの羽ぶしもり(○○○○○○○○○)の拵樣の事、本膳の中にくむ事あり、集養はおなじ事也、食をたべ候時は、鶉をばたべぬものにて候、食くいはて候へば御銚子參り、おの〳〵ひざを立られ候、時宜にて候に御酒三べん參りてより座中を見合、右の手にて鶉のだいを取あげ、左の手にそへて、鶉の左の羽がひの下をみる心もちして、又もとのごとく鳥のはしを我が前になし、鶉のくゞみたる花を右の手にて手折、左にもちたる鶉をばすこし持さぐるやうにして、花を先かんずる也、其後本膳と二膳のあいだ、まへのたゝみのかたへ花をおき、扨鶉のだいを、右の手にて、取て、これも我右の二膳の前のたゝみにをき、左の手をばつきて、右の手かた手にてをくなり、軈而左の手を鶉の臺に添て、右にて鶉の左の羽ぶしをぬきやりて、臺のあたりへをく、さて又羽の内にいか程も集養ありたきほど、鶉もりたる身の右の手にて取おろし、羽の上に置て、其後又鶉の臺右の手にて取、左の手にすへ、能々かんじ、右の手にとり渡し、本の前にすゆる也、扨羽ぶしに置たるさかなを、右にて取左の手にすへ、右の手にて集養有也、又以前の所へをきて、御酒のあいだは幾度も集養あるなり、扨又御湯あがりはしをおき候て、しぜんうづらのみ殘り候はゞなにとなく本膳に羽よりこぼし、扨又鶉の羽を右の手にて鶉にかぶせをく也、其後右の手にて花を取、少ほうびしてかくやうにして懐中する也、

窪坏物

〔厨事類記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0271 記云 晝御膳〈長日次第歟〉 御厨子所備 高盛四坏 平盛二坏〈已上銀器平盤〉 窪器物(○○○)二坏〈銀器坏〉

〔厨事類記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0271 窪器物 海月 老海鼠〈或稱保夜〉 牟々跂裹 鯛醬

〔厨事類記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0271 調備故實 窪器物〈醬類也〉 海月ハ、或説云、酒ト鹽トニテメデタクアラヒテ、方ニキリテ、鰹ヲ酒ニヒタシテ、其汁ニテアフベ シ、酢イルベシ、キザミモノ〈ハジカミ〉イルベシ、キカハトテ橘皮ヲモサス也、故實晴時ハ、タヾ細ク切テソクヒニテ打違〈天〉盛之、 老海鼠ハ、或保夜ヅクリカサネテモルベシト云々、或説、方ニツクリテモル、或老海鼠醬云々、無老海鼠之時ハ、蚫醬鮨蚫ヲモチイル、 牟々跂裹、雉ノモヽキヲ醬ニシテ、ツクリテモルベシ、 鯛醬ハ、ツネノゴトシ、 モヽ(裏書)キコミナキ時、生イヲノアカミヲタヽキテモル、鳥ノクビノ皮ヲ、カヒシキノ樣ニキリテ、三方モリ、物ニヲシツク、黄皮ホソクキリ、ウチヽガヘテ、三方又上ニヲシツクベシ、 鯛ビシホナキ時、生魚ノミヲタヽキテモル、タヒノカハヲ三方ニ、カヒシキノ樣ニ切テ盛、物ニヲシツク、キカハヲナジ、

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0272 一保延二年十二月日、内大臣殿〈○藤原賴長〉廂大饗差圖、〈○中略〉隱座肴物、〈○中略〉 窪坏物四坏〈老海鼠 海月 蟹蜷 細螺○中略〉 窪坏物坏〈口徑各五寸〉

臺物

〔貞丈雜記〕

〈七酒盃〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0272 一今時逢萊の島臺とて、洲濱の臺に三の山を作り、松竹鶴龜などを作り、其の下に肴をもり置事、昔より有し事なり、これは風流の事にて、規式の事にはあらず、たゞ酒宴の興に出す也、又花鳥など作り物して盃をおく盃臺も有、今の世のごとく、祝儀には必蓬萊を用ると云法はなし、東鑑卷四十九〈正元二年〉四月三日庚子、晴、入御〈○宗尊〉于入道陸奧守亭、御息所御同車、〈○中略〉御息女御方に進風流〈造逢萊〉云々、又鎌田草子〈ニ〉云、君の是迄の御下向を一期のめんぼく、うどんげとぞんじ、當世はやるほうらいをからくみ、君をいはひ申さんため、ほうらいのしたぐみにうをとしかとの入事にて候へば、五人の子どもをば、みかはの國あすけの山へしかがりにこし候ぬ、又うつみのおきにおほあみをおろして候、 一今世島臺と云ふ物、昔も有之、古は島形と云ふ、蓬萊も島形の内なり、洲濱形〈○圖略〉如此に臺の板を作る、海中の島のすその海へさし出たる形、右の圖の如くなるを洲濱と云ふなり、されば島形とも洲濱がたとも云ふ、其上に肴を盛る也、かざりには岩木花鳥などを置く也、〈○下略〉

〔松屋筆記〕

〈百十二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0273 蓬萊島臺洲濱 島臺は蓬萊の島のつくりものゝ臺なればさいふ也、洲濱など同物也、紫式部日記傍注本下卷〈五丁方〉に、御前に扇どもあまたさぶらふ、中に蓬萊つりたるをしもえりたる心ばへあるべし云々、洲濱は同上卷〈三丁方〉に見ゆ、

〔豐艦〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0273 内野行幸 初獻の御かはらけ御氣色あり、三獻には天盃天酌、五獻には盆香合御進上、七獻には御劔御進上、とり〴〵御肴、くだ物、あつもの、金銀の作花、折臺の物(○○○)には、蓬萊の島に鶴龜のよはひ松竹のみさほなど、行末の千年をいはひそなへたる物也、

〔太閤記〕

〈十一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0273 行幸 御會〈○天正十六年四十六日和歌會〉のけしきいとゆゝしく、披講畢て主上入御ならせ侍りけり、かくて各御膳のゝち、とり〴〵の御酒宴さま〴〵の臺之物折などかず〳〵にして、夜半の鐘聲殿中に入しかば、咸退出之御暇給りけり、

〔御湯殿の上の日記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0273 慶長八年四月六日、御くわいあり、御人じゆ、せうかうゐん殿、めうほうゐん殿、しやうごゐん殿、このゑ殿、う大辨、にしのとうゐん、あすか井、六でうなり、しゆひつゐのくま也、御ほつく、めうほうゐん殿にて、おり、だいのもの(○○○○○)、御たる參る、夕く御參る、はてゝくもじ參る、

〔當流節用料理大全〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0273 春 〈高砂あいきやう〉 おさへ〈かきつばた、からすみ、〉 夏 浦島太郎 おさゑ〈かうほね、こんぎり、〉秋 〈慈童きくすい〉 おさえ〈雲かさね〉 冬 孟宗 おさへ〈水仙うは〉

小腋物

〔江家次第〕

〈八七月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0273 相撲召合 三四番間供御膳、〈○中略〉次小腋物、〈居一御臺

折物

〔貞丈雜記〕

〈七酒盃〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0274 一折の物(○○○)と云ふは、折に酒の肴をもりて出す也、〈折の事は前に記す〉

〔貞丈雜記〕

〈七膳部〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0274 一折と云ふは、木を折わげて箱にするゆへ折と云、足を折に直に打付る事はなし、折に合せて臺をして、臺に足を付る也、ふたも釘にて打付る事なし、臺よりふたの上へ水引をかけて結ぶ也、蜷川記に云く、御折は三獻め五獻めより參候而可然候、乍去獻數少き時は二獻めよりも參候、きそくの物には箸はすはらず候、〈折の内にもりたる物、きそくさしたる物ならば、箸をすへざる也、きそくの物はきそくを以て人に遣す故也、〉又樣體によりすはり候事も候、しばりをばかげにてとき候て持出候也云々、しばりとは水引にて折を結びたるを云ふ也、今時折と云は、折に直に足を打付けふたをも釘にてしめ、削り花をふたの上にさす也、是は古は折といはず櫃物と云ふ也、〈折に金らん段子くつわなど入る事、進物の部に記す、〉今時折一合といふを、折二ツの事と心得たる人あり、あやまり也、折にかぎらず唐櫃なども一合と云ふは一ツの事也、すべて箱類をば一合二合と云ふ也、

土器物

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0274 一とり居といふは、土器に檜葉南天の葉など改敷にして、肴を盛土居に据るなり、精進のときは梅漬のりの類抔也、是をかはらけのものともいふ、

〔貞丈雜記〕

〈七酒盃〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0274 一かはらけ物と云ふは、大なるかはらけに酒の肴をもりて出すを云ふ、今時鉢に肴をもりて出すに同じ心也、〈土器にもりたる肴を二ツも三つも一ツの臺に居て出す也、陪膳記に見えたり、〉

〔宗五大草紙〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0274 大酒の時の事〈同殿中一獻の事○中略〉 一貴人へ折土器の物(○○○○)に有肴取てまいらする事、敬人には人によりて酙酌有べし、又若き人などは何とやらん似合候はず候、ちと年もふけ故實がましき人可然候、人のくひよさそう成物をまいらすべし、何れも大なる物よろしからず、又貴人へまいらせやう、肴をはさみたる右の手に、左の手をそとそへて、我揔の身をちとしづむるやうの心にてまいらすべし、又折土器の物などを あなたこなたへ持てありくはわろし、又末座へ出たる物を、貴人の御前へ又まいらするはしかるべからず、

〔宗五大草紙〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0275 公方樣諸家へ御成の事 一一獻の時、折土器物出候事、五六獻めよく候、乍去三四獻めに出候而も能候べし、時宜によるべし、又土器の物きとしたる時は、古は出候はず、近年御前などへも參候、

〔大草殿より相傳之聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0275 一かはらけの物、二ツだての時は、左はやき鳥、右はきりかまぼこ、しぜんしやうじんと魚とをもる事もあり、 一しやうじんと魚類の時は、しやうじんは左、魚は右、しやうじんと鳥とをつがふ事あるまじく候、 一かはらけの物、盛物には小串の物、かまぼこ、たゝみずるめ、まきいもよし、くろに、ふとに、小ゑび、此内一いろもる也、是にはしやうじんつかひてもくるしからず、 一かはらけ物三ツだての時は、臺のはゞながさはかくのごとし、をきやうりやうしてこしらへべく候、〈○以下二行缺損〉 かはらけの物はしのをきやう、三ツだてにも、二ツだてにも、繪圖の如く置也、 一かはらけの物、高六寸たるべし、 一かはらけ三ツだての時は、あひの物たるべし、あひの物とは、三ど入よりすこしほそく、平かうよりはふとし、 一かはらけの物二ツだてのときは、五斗入たるべく候、 一かはらけの物盛樣、中をあけ候て、まはり計候事わろく候、中にはひばをつかみて、外にいで候はぬやうに盛る也、扨盛たて候て、上一寸ばかりをば、その物一いろにて、ひばをもしかず盛なり、 一かはらけの物かざり樣は、二ツだての時は、一ツには、しべあるべし、勿論金銀たるべし、とんぼうしべたるべし、是もみがくべし、しべは魚のかたにあるべし、しやうじんにはつげ、又はびむろひば、ひの木、又菊などもさし候、其時は菊の葉をもさし候、しべには露有間鋪候、草木の葉をさしたる時は、露をはくにてをき候、花には露を置べからず、 一かはらけの物、三ツだてのかざりやうは、中のかはらけの物はしべたるべし、もろこき也ともかたこきなりとも、此内一ツ用る也、左右のかはらけには草木をさし候、これも一ツ草木はさゝず候、かへてさし候、又とんぼうにむけてさし候、はさみ樣は二てふのごとくはさむべし、

〔殿中申次記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0276永正十三丙子、至同十七庚辰歳記録事、 七月九日 一御土器物一膳、柳三荷、〈同前○例年進上之〉 寶鏡寺殿

〔公方樣正月御事始之記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0276 一一獻の時は、先折を出、其後かはらけもの(○○○○○○)を可出候、此後くぎやうの物たるべく候、

〔言繼卿記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0276 慶長八年四月六日壬辰、殿中ニテ御能有之、冷父子、四、同道參了、辰下刻相始了、御出座、予、六條相公、鳥丸辨、冷千壽、堀川入道、水無瀨羽林、藤侍從、堀川侍從、極﨟等也、其外武士大名僧俗群集也、四番已後別座飡有之、後刻盃出了、折四合、土器物(○○○)出了、

引物

〔四條流庖丁書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0276 當世引物ト云物ヲ、腋ノ膳五ノ膳ト心得給コソ不思儀ナレ、飯參リテ扨土器一ニ、皮イリニテモ何ニテモ盛テ參ラスルヲバ、一物ト可申也、土器一ニ何ニテモ盛テ、御回リニ計組テ參スルヲバ、引物ト申也、若腋ノ膳五ノ膳ナドヽテ參セバ、御汁計ニテ御回リモ數有ベシ、今ハ如此ノサカイムサ〳〵ニテ其記ナシ、

〔三議一統大雙紙〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0276 引物にも三樣在、折は右に置て盛也、公卿の物は左に置て可盛也、土器の物は中 ほどに置て盛べし、條々口傳、

〔躾方明記〕

〈四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0277 一引物五ツ目迄有は、是も給樣湯漬と同前、汁有物ならば吸候て箸を取直し、みを給ものにて候なり、

〔宗五大草紙〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0277 人の相伴する事 一人前にて飯くひ候やう、〈○中略〉年寄たる人は、鴈のかはいり、くゞゐ、くじらなどの珍物の引物などに候をば、取て大汁の上に置てもくひたる能候、若人は不然候、

〔鈴鹿家記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0277 光嚴院延元丙子二月十四日迄 一九日戊申、左大臣樣〈○藤原經忠〉御成、〈○中略〉午ノ下刻御膳出ス、御汁、〈ツマミ大根ニトウヘイヲウチ〉御食、仁物、〈アカヾヒウヅラ、〉ナマス、〈ウド、フナ、クリ、〉ヤキ物、〈生ノサハラ、〉御引物、〈ヤキシホ、イセエ、ウリツケ、〉

〔法皇御幸九條殿饌物雜記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0277 院御所〈○靈元〉九條殿〈○輔實〉亭へ御幸御内々之御獻立、 御引物 御やき物〈生小鯛かけ汁せうが〉 御皿 〈うづらひたし〉 御吸物 〈にしのり〉 御重肴 〈花いかしゐたけ〉 御鉢肴 〈赤貝切重〉 同 〈ひたしくこ九年母〉

追物

〔江家次第〕

〈一正月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0277 元日宴會〈御忌月并不出御儀〉 居臣下飯〈大炊頭率内豎送之〉 居汁物〈大膳大夫率内豎送之、〉 居追物〈謂菜也〉

〔江家次第〕

〈二正月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0277 七日節會 次給臣下飯汁追物

〔厨事類記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0277 日貢御膳 御菜十種〈○中略〉 御汁一坏 追物二種 以上小預勤之、各居平御盤、日別三ケ度也、

〔厨事類記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0277 諸女院御方 日貢〈○中略〉 御汁物〈土器〉 追物〈不之云々〉

〔厨事類記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0278 追物〈燒物〉 雉足〈以薄樣之〉 零餘子燒〈同差物〉 鯛面向

〔厨事類記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0278 温汁 汁實ベチノサラニモリテ、追物ニ居クハヘテ供之云々、

〔門室有職抄〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0278 人々羞酒飯儀 汁二、折敷、各追物、或四種或二種居加テ、一番折敷ヲ第五高坏ニ取居ベシ、次折敷ヲバ第六ノ高坏ニ可取居也、追物二折敷ノ内、精進二種必可之、追物ハ時々珍物也、春ハ鳥ノ引垂ヅヽミ、鴫ツボ、〈間夏モ有之〉鯉ノナマス、ナマヒヲ、夏ハエユノ敦作、ムシアハビ、〈マロアハビニテモ切盛之〉秋ハ此上スズキノナマスヲ可加也、其時鯉ノナマス不居也、

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0278 一宇治平等院御幸御膳〈元永元年九月廿四日、大殿被下御日記定、○中略〉 三寸五分樣器〈○中略〉 追物八種〈樣器春日〉

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0278 一聟娶御前 臺三本〈普通定○中略〉 九進、酒銚子、第二三日ニハ不五菓子、例菓子進之、又進追物、〈時美物八種計也〉

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0278 一母屋大饗 永久四年正月廿三日、内大臣殿〈○藤原忠通〉母屋大饗饗應差圖、〈○中略〉 追物、鮒裹燒、莖立、鳥足、汁膾、此四種也、

〔兵範記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0278 仁安二年四月廿六日癸巳、故殿〈○藤原基定〉御月忌也、〈○中略〉先中門廊二行對座、敷紫縁疊六枚、居懸盤饗五前、〈○中略〉次二獻季經朝臣、賴輔朝臣、次立箸居汁、〈折敷有追物、侍僧等役之、〉

押物

〔倭訓栞〕

〈中編二十於〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0278 おさへもの 酒宴の後押物とて出る、又食籠を座敷に置て押物の代とする事ありとぞ、

〔貞丈雜記〕

〈七酒盃〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0279 一押物とは、花鳥山水の形などの作り物の臺に、酒の肴もりて出すを云ふ、

〔酌次第〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0279 一をさへの物といふ事、いろ〳〵のさかな出つくしてのち、まへのさかなどもををさへて、今一こん申たきといふ心なり、同又じぎにより、にはかなどのとき、さかな調法なきのとき、をさへのものを出して參る事もあるべし、一通にはあるまじく候、何もじぎによるべし、大かた先はじめに出事は、まれなる事にて候、しぜんの儀なり、よく〳〵あひ心得べし、 一をさへの物と云事、すわまがたなど、又はぢかみなどにして、いはくみなどのていをして、さてしゆ〴〵のさかなをもるを云也、らつちや、とうちんかうなどをももるべし、盃のていの心得に大にしてさてさかなをもり、はしををき候て出すををさへの物と云也、大小は又座敷によるべし、何も盃のだいよりは大きなるべし、

〔躾方明記〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0279 おさへの物と云ふ事、臺に盃は置ずして、色々肴を盛、箸を置出し申なり、肴の引樣供饗のもの同前、常に肴を引候時、賞翫にて候へは、折供饗食籠いづれも肴の臺共に持て參り、挾候て參候なり、同輩より以下へは臺をよするに不及、肴ばかりはさみて出し申ものなり、何れも時宜ニよるべし、

〔躾方明記〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0279 おさへ物と云事、色々の盃出し盡して後、前の肴どもをおさへて、今一獻申度と、樣々の肴の色を盛交出し參らする事も有べし、一篇には有間敷事なり、

〔躾方明記〕

〈八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0279 おさへの物と云ふ事、或はすわまがた、又いろ〳〵に岩くみなどの體をこしらへて、種々肴をもりて、はしを置て出し候を云ふなり、大小は又座敷にもよるべし、

〔公方樣正月御事始之記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0279 一一獻の時は、先折を出、其後かはらけものを可出候、此後くぎやうの物たるべく候、又おさへものは末つかたに出候、

冷物

〔酌次第〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0279 一ひやし物の事、なつはうりなど、又は何にてもすゞのはち、あるひはちやわんの物など に水を入て、ひやし候て出すをいふ也、 一大しゆになりて貴人御つまりありて、御さかなをといふとき、ひやし物などを出すときは、やがてもちて參りたる人はさみ候てまいらせ候てもよき也、同又座中の人たれにてもまいらせられ候事ももちろん也、よく〳〵心得べし、

〔躾方明記〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0280 一夏など冷し物御肴に出し候事、是は獻々の肴の外にて候、茶碗鉢などに冷し候て出し候なり、けづり栗などの類也、かやうの物は持出たるもの挾候て參せ候なり、又座中の人參らする事も可勿論なり、 一冷し物の事、夏は瓜など又は何にても、すゞの鉢或は茶碗鉢などに水を入、冷し候て出す物なり、

〔躾方明記〕

〈八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0280 一ひやし物などのたぐひは、本式の肴にはあらず候なり、亂酒などの時あるべし、 一ひやし物とは、夏冬ともに有之、或はかたふるなどをちやわんはちにひやし候て持て參候なり、かやうの時は持て出たるものはさみてまいらせる事も勿論なり、

〔料理物語〕

〈さかな〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0280 冷し物 大こん、うり、なすび、はす、黑ぐわい、りんご、もゝ、すもゝ、あんず、くり、なし、此外いろ〳〵時の景物よし、

だし

〔倭訓栞〕

〈中編十三多〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0280 だし 垂汁の義、又煮出の義、

〔屠龍工隨筆〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0280 鰹ぶしを味に用る事、いつよりありつるともしらず、古へには沙汰もなきことなりけり、然而延喜式大膳式に、鰹の汁幾http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins015093.gif と出文、宇治拾遺物語に、みせんといふもの見えたるは、文字をいかに書とも知れざれども、事のさま、今いふ水出しの樣におもはれたり、

〔一話一言〕

〈二十一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0280 煎汁 薩摩より出る鰹煎汁を、外の國にてはニトリ(○○○)といふ、薩摩にてはセン(○○)といふ、和名抄に煎汁とあ れば古語なりと、忍池子の話、〈九月初三〉

〔料理物語〕

〈なまだれだし〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0281 だしは かつほのよきところをかきて、一升あらば水一升五合入、せんじあぢをすひ見候て、あまみよきほどにあげてよし、過候てもあしく候、二番もせんじつかひ候、精進のだしは かんへう 昆布、〈やきても入〉ほしたで、もちごめ、〈ふくろに入に候〉ほしかぶら、干大根、右之内取合よし、

〔厨事類記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0281 寒汁實〈○中略〉 或説云、寒汁ニ鯉味曾ヲ供ス、コヒノミヲヲロシテ、サラニモリテマイラス、ダシ汁(○○○)〈或説イロリニテアルベシ、或説ワタイリノシル云々、〉ニテアフベシ、

生垂

〔料理物語〕

〈なまだれだし〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0281 生垂(なまだれ)は 味噌一升に水三升入、もみたてふくろにてたれ申候也、 垂味噌(たれみそ) みそ一升に水三升五合入、せんじ三升ほどになりたる時、ふくろに入たれ申候也、

煮貫

〔料理物語〕

〈なまだれだし〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0281 煮貫(にぬき) なまだれにかつほを入、せんじこしたるもの也、

〔料理物語〕

〈萬聞書〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0281 煮貫は 味噌五合、水一升五合、かつほ二ふし入せんじ、ふくろに入たれ候、汲返し汲返三返こしてよし、

煎酒

〔倭訓栞〕

〈後編二伊〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0281 いりざけ 熬酒の義、好酒堅魚節もて鹽梅を加へ作るものなり、もろこし人は甚賞して、彼土此味なしといふとぞ、酸酒と稱するものこれに似たり、

〔當流節用料理大全〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0281 煎酒の仕樣 一古酒三升 一醤油五合 一かつを一升、成程細く削、水にてざつと洗はかり申候、水にて洗不申は二升入也、右の三色能まぜ、すみ火のうへにてわかし、酒のにほひのき候までいり、大方にえ申時、いり鹽を入かげん仕候、又酢をも心次第加へ申候、何れもにえ申内にくはへ候、又梅ぼしを廿程も入候、かつを其まゝこして取申候、久敷置候へば、かつをくさく成申候、此煎酒ははやく出 來申候、 精進煎酒 古酒壹升あま口なる酒よし 一昆布二本、上々を細かに割む、一かんへう 右かんへう細に刻み、昆布のかさ〈半分、〉但かちぐりも入候、是は打くだきこんぶのかさ〈半分、〉一梅ぼし〈少は廿五、大は廿、〉右の内へ水壹升いれ、よくかきまぜ、炭火のうへにてそろ〳〵とわかし、本の酒一升のかさ程にせんじつまりし時、よき程鹽すくなくはあつき内にいれ申候、 同早煎酒 古酒四盃 一醤油一盃 一酢半盃 右三色合、炭火の上にて一淡にやし、其儘おろし、箸にてかきまはし、人はだにさめし時、又火にかけにやし右のごとくさます、かくのごとく三べんにやし候へば、いり酒に成申候、

〔料理物語〕

〈なまだれだし〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0282 煎酒(いりざけ)は かつほ一升に梅干十五廿入、古酒二升、水ちと、たまり少入一升にせんじ、こしさましてよし、又酒二升、水一升入、二升にせんじつかふ人もあり、 だし酒(○○○)は かつほに鹽ちと入、新酒にて一あわ二あわせんじこしさましてよし、 しやうじんの煎酒は たうふをでんがくほどに切、あぶりて、梅干ほしかぶらなど刻入、古酒にてせんじ候也、又さけばかりにかけをおとしてもよし、口傳在之、

〔料理物語〕

〈萬聞書〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0282 煎酒急候時は、酒壹升ニかつほ二ふしだし五合入、あぢをすひ見候て、たまりくはへ出し候、梅干は酒壹升に六七入候て吉、鹽もたまりもよき比せんじ候て入候事に候、

〔四條流庖丁書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0282 一海月之事、差ミ海月ノ時モ、醋ハクルミ醋(○○○○)ニテ參ラスベシ、アヘ海月ノ時モクルミ醋ニテアエテ可參候、花鰹能入ベシ、カラミニハ生姜ヲ可用也、

〔四條流庖丁書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0282 一サシ味之事、鯉ハワサビズ(○○○○)、鯛ハ生姜ズ(○○○)、鱸ナラバ蓼ズ(○○)、フカハミガラシノス(○○○○○○)、エイモミガラシノス、王餘魚ハヌタズ(○○○)、 一イト鱠ト云ハ、鮒鱠ノ事也、〈○中略〉マナガツホハ蓼ズ(○○)ニテ可參ラス、總ジテ蓼出來ヌレバ、ナニ魚 ニテモ蓼ズ良也、

〔料理物語〕

〈なまだれだし〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0283 山葵みそず(○○○○○)とは わさびをおろし、みそをくはへよくすりて、酢にてのべ申事也、 生姜味噌酢(○○○○○)とは 右同前 白酢(○○)は けしにたうふを入、しほかげんしてすにてのべ候、しらあへには酢をいれずよくすり候、

〔江戸流行料理通大全〕

〈初編〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0283 鱠掛酢 一御膳酢 一三盃酢 一密柑酢 一柚ねり酢 一ぶだう酢 一九年母酢 一だい〳〵酢一いりざけ酢 一たまご酢 一かき酢 一たで酢 一芳野酢 一けし酢 一胡麻酢 一ねり酒酢 一靑梅酢

藥味

〔運歩色葉集〕

〈加〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0283 加藥 加味(ミ)

〔書言字考節用集〕

〈六服食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0283 藥味(ヤクミ)

〔門室有職抄〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0283 四種ハミソ、シヲ、ス、サケ也、近代ハ酒ヲ略シテ蓼ヲ用、タテナキ時ハ、ワサビ、ハジカミ、ミソ蓼必説(トク)酢〈ニ〉也、

〔今川大雙紙〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0283 食物之式法の事 一しきの御肴にはじかみ(○○○○)、梅干、鹽などをすへ、きに入まいらする事は、〈○中略〉はじかみは物のあぢはいをよくする物也、きこしめす時あぢはいわろき時は、入てきこしめせばよきとの心也、

鴨頭

〔伊呂波字類抄〕

〈加飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0283 鶴頭〈カウトウ、橘名也、〉

〔撮壤抄〕

〈下飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0283 鴨頭(アウトウ)

〔書言字考節用集〕

〈六服食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0283 吸口(スヒクチ/○○)

〔貞丈雜記〕

〈六飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0284 靑き柚(ユヅ)を小くけづりて香に入るを、古はかうとうと云、鴨頭と書なり、靑柚(アヲユ)の皮の汁の中に浮たる體、鴨の水に入て靑き頭を出して浮たるに似たる故なり、今はすい口といふ、 〈頭書〉鴨、玉篇ニ鳥甲ノ切音アフナレドモ、俗ニカフトヨミ來レリ、 太平記卅五ノ卷、湯川の庄司が宿の前に、作者いもせの庄司と書きて、宮方の鴨頭(カウト)になりしゆの川は都に入りて何の香もせず、右落首は湯の川を柚の皮に取なしてよめり、

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0284 口頭、湯河莊司が宿の前にある落書、太平記南方蜂起條に、宮方の鴨頭になりしゆのかはゝ都に入て何の香もせずとあり、湯河を柚皮にとりなしたり、猿樂の狂言、すゞき庖丁にも、ゆのかうとうと云ことあり、これ今いふ吸口なり、

〔四條流庖丁書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0284 一參ラセ物ノ上ニ置カウトウノ事、香頭トモ申、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins047373.gif 頭トモ申也、文字ニ書時兩説有、口傳、白鳥菱喰鴈ナドノ皮入ノ時ハ、ヘギ生姜ヲカウトウニ可置、萬美物ソシメ匂有、夏ノ時分ハ柚ヲヘギテ可置、是物ノ匂ヲ爲粉也、當世吹口ト名付テ、万ノ毎物ニ香頭ヲ入ルコト、如何ナル仕立ゾヤ、非當流承引

〔三議一統大雙紙〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0284 吸口の事、鱈は山椒、雁鴨は胡椒、雉子はわさび、うしほ煎は柚也、しやうが本也、

〔大草家料理書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0284 一生鶴料理の事、〈○中略〉すひくちは柚を入て吉也、 一眞雁料理之事、〈○中略〉吸口胡椒なり、

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0284 一引渡に組付る橘皮は柚の皮の事也、又陳皮をも割て土器に盛出す也、四時の邪氣を除との事也、 一同生姜を組付る事は、穢の氣を去との事也、此ゆへに用ゆ、

ケン

〔料理物語〕

〈指身〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0284 かきだい 鯛を三枚におろしこそげて、かさねもり候、いりざけよし、からしをく、けんはよりがつほ くねんぼ みかん きかん

獻立

〔書言字考節用集〕

〈六服食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0285 獻立(コンダテ)

〔俚言集覽〕

〈古〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0285 こんだて 獻立、こんだててふ、菜帖、

〔倭訓栞〕

〈中編八古〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0285 こんだて 獻立と書り、酒に一獻二獻といへば、下酒の物を主としたる詞也、韋居聽輿に、食牌といふ是也といへり、朱子の語也、

〔續昆陽漫録〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0285 食檄 膳夫録曰、弘君擧食檄有http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029324.gif 、牛http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins029680.gif 、炙鴨、脯魚、熊白、麞脯、糖蟹、車螯と、食檄は今の獻立のことなり、

〔四方の硯〕

〈月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0285 庖丁家の獻立といふことは、膳夫録曰、弘君擧食檄といふことあり、是獻立のことなり、

〔撈海一得〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0285 王侯家ニ日用三度ノ厨饌ノ食品翌朝ノ饌ニ充ベキヲ、前夜ニ豫メ黄漆板ニ書シテ、贄御(ヲソバ)ノ臣ニ判ヲ乞ヲ、君ニ白シテ其食ント欲スル食品ヲ板上ニ點竄シテ、宰夫ニ命ズルヲ獻立ト云、是ヲバ食牌ト云ベシ、陣直ガ韋居聽輿ニ曰、温州蕭震、少夢神人告以壽止十八、至十七父帥蜀、蜀俗主帥大宴、例進玉筋羹、毎取乳牸、鐡筋鑽其乳而出之、乳凝筋上以爲饌、蕭偶至庖見縶牛、叩知其故、丞白父索食牌、判免此味、又乞增永字於其上、已而シ復夢、有陰德獨免一レ夭、可其頤(ナガイキ)、果至九十餘ト、此食牌ノ事ヲミレバ、今獻立ヲ豫メ書シテ判ヲ乞ニ同キナリ、

〔禮容筆粹〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0285 獻立書樣(○○○○)之事 祝言の時は、獻立と口に書、二三引而吸物肴菓子後段までそろへて書なり、皿付は右のわきに少さげて書也、獻立より終の書留まで重行に書べし、 愁の時は、月何日之齋非時膳部と書也、二三引物等まで上に書、其下に品々を書なり、

〔北山抄〕

〈三拾遺雜抄〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0285 新任饗〈主人暫著親王座〉 雖太政大臣、猶有樣器 一獻〈主人執之經座後〉 敷主人圓座、立主人机、〈地下四位下、勸盃於外記史座、〉 二獻〈非參議三位、若殿上四位執之、〉 撿非違使著庭中 三獻〈殿上四位執之〉 居飯居汁物〈汁鱠〉 鳥足箸下〈檢非違使退去〉 四獻〈以下、公卿取之、雉別足、〉 莖立 生蚫 五獻 獼猴桃 枝柿 仰録事 先弁座料、殿上四位五位各一人〈敷圓座〉次政官料、諸大夫二人、無史生座録事、歡盃非參議大弁 敷穩座圓座、公卿以下移、〈以後事如常大饗〉 或曰、非攝關之家饗時、大納言以下猶設茵云々、〈此説可之〉 暑日羞膳次第 三獻〈汁膾 燒物〈小鳥〉 或水飯等交居〉 四獻〈宇留賀煎〉 五獻〈ra_ins032894"/>(タニ)以下或六獻後、鱗煎物鷄頭草、〉 隱座〈勸削氷云々〉

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0286 一五節殿上饗目録〈保延元年、右衞門督家成、進五節時、玄蕃頭久長調進之、○中略〉 居物次第 初干物〈蚫 蛸 大海老 干鯛〉 次生物〈鯉鳥〉 窪器物〈海月モムキコ〉 次飯 次酒坏 次居器 次酒坏 次酒 次寒汁〈鯉ヨリ鱠〉 追物〈蒲鉾 鳥足 蠣 生蚫 細蜷 ヨリ鱠〉 次酒器 次〈熱汁 追物 小鳥 綿 零餘子燒 生海鼠〉 次酒盞 次菓子〈小餅 唐菓子 枝柿 小柑子 掻栗 野老 椿餅 甘栗〉 次署預粥

〔二中歴〕

〈八供膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0286 執聟供膳 先箸匙〈乍臺居之〉 次飯〈居中盤、在蓋、對箸臺之〉 次四種〈酢、醤、酒、鹽、居箸臺、右汁燒物供此之、〉 次干物五坏〈對四種〉 次窪垸物四盃〈四種右居之、酒器居之、〉 次生物五坏〈對窪垸物〉 次餅〈居箸臺左〉 次木菓〈對餅〉 小垸〈分燒小土器居中盤、皆逆取出供之、〉

〔四條流庖丁書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0287 一飯ノ獻立ノ事、本膳ノ中ニハ必不紛定事ニハナマス用處ニ、近代無其儀然、燒物ノ事ハ、本膳ニハ魚ノヤキモノ、二ノ膳ニハ鳥ノヤキモノ有ベシ、是ヲ本膳ニ雙テ、鷠ノ燒物ヲ置事、四條六條ノ日記ノ外成ベシ、不之子細也、メシノ大汁ニビブツヲスル事不難、當流ニハ有之、次ニサハサラニ香物以下ノ物ドモヲ盛事ハ、廿餘年此方ノ事也、古ハ自然ヤキシホ山椒ナド少置タル歟、勿論ヤキシホナド不入トモ、只サハ皿ヲバ可置也ト云々、冷汁ノ事、美物ニ組添タラバ、精進ノ冷汁ナレバ上リ也、精進ノ汁ニ組付タラバ冷汁下ルベシ、但冷汁ヲアケテクメバ、バンノヲモテ見惡間口傳、

〔江戸流行料理通大全〕

〈初編〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0287 膳部の三新の事 重き慶賀などの振舞に、膳部の本、二、三の膳中に三新といふ秘事あり、本膳に杉の木地の小角に香物を盛、二の膳に杉の木地の丸ものに敷味噌を盛、三の膳に杉の木地の地紙にさしみを盛る、是を膳中の三新といふ也、

〔定家朝臣記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0287 康平三年七月十七日癸卯、大饗〈○藤原師實任大臣大饗〉 納言以下 菓子二種〈梨栗〉 干物二種〈干鳥蒸蚫〉生物二種〈鯉雉代鱸〉窪坏物〈海月保夜代鮎兒膾〉 一獻〈立主人机〉二獻 三獻〈飯次〉 小鳥燒物 四獻〈鳥羹鴒〉 次鷄頭草〈莖立代〉 次鮎燒物〈裹燒代〉 五獻〈瓜菱 若栗 淡柿已上、粥甘栗代、〉次水飯〈湯漬代、立后大饗召之、〉 隱座〈削氷、薯蕷粥代、〉

〔祇園會御見物御成記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0287 大永二年祇園會爲御見物御成之時、從上平御一獻ニ付而次第、〈○中略〉 獻立 一式三獻參 初獻 鳥 ざうに 五しゆ 二獻 ひや麥 御そへ物〈なまとり〉 三獻こざし(きそく金) たい くらげ 御ゆづけ〈たこ かうの物〉あへまぜ〈やき物 かまぼこ〉御ゆづけ〈このわた(おけ金だい繪あり) ふくめ鯛〉 二〈鹽引 からすみ〉にし〈あゆ くる〳〵〉御汁〈たい わらび〉 三〈すし さかな〈ます〉〉かい〈あはび〉御しる〈がん あつめに〉 よ 〈おちん いか〉くらげ 御しる ゑい 五 〈はむ ゑび〉さ しみ 御しる こい 御くわしあり よこむ(御さかな) 〈のし たこ うけいり〉 五獻 まんぢう 御そへ物〈ひばり〉 六こん〈しほびき まきするめ〉 かん 七こん やうかん 御そへ物〈さしみ〉 八こん〈はむ くる〳〵〉 ゑい 九獻 〈いりこ かいあはび〉 ひしほいり 以上 信直(下津屋三郞左衞門尉)〈在判〉 大永貳年六月廿八日 岩山民部少輔殿 右御一獻御足付五千疋、下津屋方え被渡之

〔天文三年淺井備前守宿所饗應記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0288 天文三年八月廿日、御屋形樣〈○足利義晴〉淺井備前守宿所〈江〉申入時之御座敷之次第、并獻立進物能組以下注文、〈○中略〉 一御獻立 式三獻 御ゆづけ 〈しほびき かうの物〉あへまぜ 〈ふくめだい たこ〉飯 〈やきふ〈さけ〉 かまぼこ(きそく金銀)〉 二 〈ひばり あはびしほ〉にし 〈すし こんきり〉 〈松だけしる あつめしる〉 三 〈このわた(金繪あり)からすみ〉さしみ〈くらげ〉 〈ひしくい たい〉 よ 〈くる〳〵はむ(さんしよ)〉 ゑい 五 〈うぢまるこぐし(金)〉 こち 御くわし九種〈きそくつくり花已下種々有之〉 一御茶まいりて以後、進上之御馬ヲ被御覽也、 一御肴之次第 初獻 〈五種鳥〉 ざうに 二獻 〈ゑびすし〉 こひ(にしの宮) 三獻 〈さゞい あをなます〉 くゞい よ獻 まんぢう 御そへ物〈たち花やき〉 五獻 〈さしみふか はらゝご〉 すゞき 六獻 やうかん 御そへ物〈うづら〉 七獻 〈くまひき かどのこ〉 はすいり 八獻 すいせん 御そへ物〈すきやき〉 九獻 〈けづりもの しぎ〉 あめ 十獻 御てんしん 御そへ物〈まながつほ〉 十一獻 〈のしはい(きそく金)〉 つる 十二獻 〈さしみ みかき〉 うけいり 十三獻 〈せんはんやき いもこみ〉 かん 十よ獻 いるか 十五獻 はまぐり 十六獻 ひしほいり 十七獻 くぢら 已上

〔行幸御獻立記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0290 天正十六年卯月十四日、行幸之引付於聚樂城太閤樣御申、 初日御獻 小出播磨守御賄 初獻 〈すし〈金銀きそく〉けづり物〈かはらけしきしかみ〉〉 桶〈繪有金〉ぼうざう〈五と入輪金〉箸臺 二獻 〈かいあわび〈金〉からすみ〈しきし紙金〉〉くらげ〈いけばく〉鯛 三獻 〈とつさか〈しきしかみ金〉酢大根〉 まんぢう(御そへ肴くもたか) 同 余獻 〈かまぼこ〈きそく金かく〉卷するめ〈しきしかみ金〉〉ゑび〈船盛いけはく〉鴈〈かはらけわ金〉同 五獻 〈かたのり〈しきしかみ金〉すり物 同 きざみ物〉 蒸麥(御そへざかなさしみこい) 六獻 〈いか〈しきしかみ金かく〉はむ〈わ金〉〉 すし〈同前〉 鶴 七獻 一川物 鯉 以上 二日目 初獻 〈こさし〈何も金きそくかく〉はむ〈しきしかみ金〉〉 龜のかう〈金銀ノかう立〉 ぼうざう(五と入輪金) 同 二獻 〈桶〈金ゑ有かはらけしきしかみ金〉にし〈金きそくわ金〉〉 鳥〈きそく金〉 鯉 同(あいの物わ金) 三獻 〈きざみ物〈しきし金〉のり〈同〉〉 すいせん(御そへざかなありあいの物わ金) 余獻 〈からすみ〈かく〉かいあわび〈かいのわ金〉〉 さしみ〈眞がつほ〉 白鳥(あいの物わ金) 五獻 〈すり物〈しきしかみ金〉きさみ物〉 かたのわ むし麥(御そへ肴ほやなり敷十六枚) 六獻 〈くま引〈かく〉しほ引すし〉 酒ひて 鯉 同(あいの物わ金) 七獻 〈のり〈しきし金とつかさいけはく〉酢大根〈同〉〉 饅頭(御そへざかなさゞいあいの物金/五と入わきん) 同 八獻 〈まき鯣 桶かはらけ〈敷紙金〉〉 山椒鯉(金) 鶴〈あいの物輪金〉 九獻 一川物 鮒〈五と入輪金〉 同 以上 初獻(三日目) 〈こさし〈きそく金かく〉けづり物〈しきし金〉〉 ぼうざう(五と入輪金) 同 二獻 〈くらげ〈かく〉まきずるめ〈しきし金〉〉 とり 同(あいの物輪金) 三獻 〈のり〈金〉酢大根〈敷紙金〉〉 やうかん(御そへ肴櫻入五と入輪金) 同 余獻 〈海老〈敷紙金舟盛〉こんきり〈金〉〉 鯛〈同〉 五獻 〈あへみ〈敷紙金如本〉まめのこ〈同〉こめのこ〈同〉〉 つばきもり(御そへ肴ほやあいの物五と入金) 六獻 〈かざめ〈かくきそく金〉かまぼこ〈敷紙金切かまぼこ〉〉 くぢら(あいの物輪金) 同 七獻 一川物 鮒(五と入輪きん)〈同〉 以上 初日十四日御膳御湯漬民部卿法印御賄 一 〈鹽引食の物(敷紙金)〉 〈ふくめ〉あへまぜ〈すし〉 〈炙物〈ます〉〉御飯〈桶〈かうのまめゑ有〉〉 箸臺 二 からすみ(敷紙金)<ruby><rb>たこ同</rt></ruby> 鱠〈炙物 鯛くらげ(かくいけはく) あつめ〉 三 〈かまぼこ〉かい鮑〈さしみ鯉〉 〈山椒はむ〈何も金〉いか〉 白鳥 余 〈酒びてにし金(きそく)〉 いりこ 鯉 五 〈さゞい くし鮑〉 かざめ(いけはく) 〈すあまの臺〈たもくか〉うど〉 雁〈山ノいも入〉 以上 二日目御膳 山口玄蕃頭御賄 一 〈鹽引(かはらけ何も金)〉鱠鮒〈かうの物〉 〈すし いもこみ〉 御飯〈炙物〈かく〉〉箸臺〈桶〈金かく〉〉 二 〈からすみ はす〉 〈桶(何も敷紙金)〉さしみ鰡〈くらげ〉 〈鯛 鶴〉 三 〈ひだら 山椒はむ〉かんさう 〈鳥 かいあわび〈金銚〉〉こち 余〈酒びて にし〈金きそく〉〉かまぼこ 鱸 五 〈鴫羽盛かため(いけはく)〉 いか〈島の臺すあま〉 白鳥(あふぎ地がみ相金) 六 〈さゞいふ〉 鳥 鯉(いけはくきそく) 七 〈鱠 おけ〉くしあわび 鮒 以上 三日目 一 〈すし かうの物〉 鱠〈ひだら くらげ〉 御飯〈炙物たい いか〉 箸臺 二 〈http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins084583.gif かまぼこ(かくきそく)〉 いりこ〈桶 かいあはび〈輪何も金〉〉白鳥 三 〈からすみ さかびて〉 さしみ鯉〈くしあわび まきずるめ〉鯛 余 〈桶〈金ゑあり〉桶〉さしみ鱸 雁〈くりふいれて〉 五 〈おしんゑび(舟盛いけはく)〉 のし〈あへて〉 鯉 以上 十八日御膳御すき 〈すし かうの物〉 鱠 〈からすみ ひだら〉 御飯 〈炙物 あへまぜ〉同 二 〈http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins084583.gif かまぼこ〉かいあわび〈さしみ鱸 くらげ〉鶴うど入 三 〈まきずるめ さかびて〉 さしみ〈くしあわび おじん〉 鯛 余 〈桶〈からすみ〉桶〈かうのまめ〉〉 桶〈金銀はらゝ子〉 鴈 五 〈鹽引 ゑび舟盛〈いけはく〉〉 はい 鯉 以上 御菓子次第 石川伊賀守御賄 十四日金銀 うすかわ かや からすみ あまのり やうかん かき やうひ むすびこんぶみつかんつゆをきて 十五日 同 ふ ところ はす こぶまき くるみ まつばこんぶ〈但ごぼうかくあい〉 きんかん しひたけ 十六日 同 からはな ひし まめあめ 雲かん むきぐり うすかわ 十七日 同 〈山ノいも からすみ〉中にかき〈わりぐるみ うちぐり〉 〈くもだこやうひ〉 十八日 同 つりがき ふ くもだこ あんにん(おけ) うんかん くすのり うすかは からはな ところ 以上

〔法皇御幸九條殿饌物雜記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0294 享保七壬寅年三月廿七日壬子、九條前關白〈輔實公〉亭〈識仁○靈元〉御幸御膳〈懸盤六脚〉儲居次第、 御打敷〈表青地小紋錦、裏平絹ニ藍打物也、在上差青玉、長八尺三幅也、但以金尺之〉 懸盤六圖 御膳色目 御打敷〈紺地小紋錦打裏二藍有玉上差〉 一〈第一ノ御膳第二ノ御膳ト稱ス、皆傚此、〉 御飯〈御器皆銀器也〉 二 四種〈四種共ニ鹽梅ヲ加ヘズシテ、銀ノ窪カナル御器ニモル、〉 〈酢酒〉 〈鹽醤〉馬頭盤〈銀御箸一雙、銀匕一支、木御箸一雙、木匕一支、〉 三 窪器 海月〈割テ少シ鹽梅ヲ加ル也〉 モヽキコミ〈雉鴨等ニテツクル鳥醢ナリ、民間ニ云、タヽキト云樣ノモノナリ、其鳥ノ品ハ時ノ庖丁宜ニ從フ、〉鯛醤〈鯛ノ肉ヲキリアヘテ、タヽキノ如クナシタルモノ也、醤ノ字醢トナシテミルベシ、〉 鮨鮑〈鮑ノ切積ノ類ナリ、昔ハ出雲ノ名ニシテ、彼國ヨリ供セシトナリ、〉 四 菓子四坏 松子 柏子 干柿〈民間ニ云枝柿也〉干棗 五 干物四坏 燒海蛸子 蒸蚫 千鳥〈鹽鳥也〉 筋破〈鮭ノ肉ヲ干タル也、此四種少ヅヽ鹽梅ヲ加テ之ヲモル、〉 第六 第三  〈高盛器物圖之〉 第五 第二   第四  第一  六 生物四坏 鳥 鯉 鱸 鯛〈此四種モ庖丁ヲ加ヘ、少宛鹽梅ヲ加、〉 七 居折敷 御汁物 鯉 追物(追テ出ス義也)〈於毛牟幾別足〉 〈此二名共ニ燒物ト云ガ如シ、肴ノ品ハ庖丁ノ時ノ宜ニ從フ、〉 八 御酒盞〈居折敷臺并蓋〉 九 御銚子〈銀片口入御酒〉

〔俗耳鼓吹〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0296 天明元年辛丑、小石川布施氏〈狂歌の名山手白人〉の宅〈江〉、洲崎望陀欄の主祝阿彌を招請、獻立、〈客萬年氏〉 〈祝阿彌文竿〉 予〈○太田南畝、中略、〉 あくるとし壬寅正月十六日、望陀欄へ布施氏夫婦子息予招請料理付、 孟春十六日、望陀欄、 御吸物〈鯛切め 尾 はだな めうど〉 〈文臺〉御硯蓋〈かやせん也 かちぐりせん也 ほだはら のり卷鮓ところ さけすし いせゑび せうが〉 御小皿〈おろし大こん このわた 鮓びてうを 田作りほうづき〉 御吸物〈しほ 安こう こんぶしん 黑ぐわゐ ぜんまい コンブノシンノ所ヲタンザク切タリ色白クカンピヤウニノ如シ〉 御膳部 御向〈たら子付 さるぼ こんぶ わさび〉 御汁〈米つみ入 かぶ からとり〉 小猪口〈いりざけ〉 御飯 御煮物〈いりとり鴨 こんにやく な〉 御燒物〈ほうろく あまだい ふきのとう〉 御湯(御手箱) 御菓子〈さらさようかん さわらび〉 御吸物〈うすみそ 馬刀 岩たけ からし〉 御肴〈漬あゆ うにとん 鹽うつほせん なすび とうがらし〉 同〈こせうみそ ふか す貝 さより わけぎ〉 御鉢〈大ぶな 若大こん 山せう〉 御茶碗〈ちよ麩 りうきういも〉 御肴〈うど黑あへ 色白あへ〉 一 〈みそづけ ちよろぎ〉 一 〈鹽だひ かいわり 河たけ 花がつほ〉 一 〈青す みるがひ ぼう風 ひじき くり〉 一 〈ばか いも〈イモハサトイモ也〉ちんぴ〉 山川酒 御吸物〈たひほね 同目 めうがたけ〉 御肴〈竹の子 白うを にしん 千疋〉 御吸物〈あかみそ もろこ たゝき大こん ねぎ〉 御夜永 御坪〈今出川 みそかけ〉 御茶わん〈いけな めし〉 椀もり〈ほう〴〵 若め〉 御香の物 御湯 御くわし 御乾肴〈あしのはがれい 長いもせん 青のり くわゐ こんぶ ゆば のり〉 〈〈ハリ〳〵トスル〉味也〉 此時あるじ思ひつきにて、先に布施氏にて南京の器を用ひしゆへ、器物に唐物を一ツも用ひず、和物のみ也、酒闌にしてあるじ出挨拶あり、布施氏去年の調理はいかゞと問侍りければ、あるじ答て、器物といひ調味といひ、のこる所も侍らず、唯うらむらくは、一色申上たき事ありと申せしに、布施氏うなづきて、とはずやみにき、今はなき人なれば去年の暦をみ、昔時の獻立紙にむかふがごとし、 予問祝阿彌此事、祝云、白人料理、佳則佳牟、但恨美味累々、腹中鮑滿、故料理以腹中口中要、

〔續視聽草〕

〈二集一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0297 水黄門臨時客次第 文政六癸未年三月廿七日、水戸殿の〈齊脩卿〉招にて、彼方の庶流松平中務大輔〈侍從〉林大學頭述齋一同の饗應にて舞樂あり、〈○中略〉其日の饗一々古式に據りて、珍らしく面白きことなりけりとぞ、〈○中略〉 廂饗 御あるじの状 吸物(第一) 〈包花ざゝ〉伊勢〈すまし 波立鰒 莫鳴菜〉 右臺高坏〈はし土器〉 花包〈色目〉 公前〈脂燭色〉 高須侯前〈黄木賊〉 林祭酒前〈苦色〉 さか月〈こがね 在蓋擎子〉 林祭酒前〈無蓋〉 右臺皆敷〈色目〉 公前〈銀楊器 皆敷ゆるし色〉 高須侯前 〈繪器 皆敷黄匂〉 林祭酒前〈繪足打 皆敷淺縹〉 衝重(一のさかな) 〈上〉二色蒲鉾〈紅 たまご〉 〈下〉さしみ〈鯛薄作 赤貝 紫蘇 はますがな 花生姜窪坏〉合酢 右臺高坏〈銀はし題土器〉 皆敷〈色目〉 公前〈白がさね〉 高須侯前〈藤重〉 林祭酒前〈若苗〉 取おろしの臺 公前〈高坏〉 高須侯前〈淺香折敷〉 林祭酒前〈同前〉 皿物(二のさかな) 蒲燒(るりの皿)〈さはら〉 筍(窪平坏) 味噌煮 右臺高坏 皆敷〈色目〉一同 〈瑠璃皿 しろかね 窪平坏 早蕨〉はし包〈色目〉 公前〈辛螺色〉 高須侯前〈比金襖〉 林祭酒前〈唐紙〉 鮮味(三のさかな) 〈松枝かたま〉尾付海老 右臺中盤 打敷はし包〈色目〉 公前〈樣器表錦押 裏繪 はし包白躑躅〉 打敷〈表赤地錦 唐縹唐綾〉 高須侯前〈同上打敷〈表青綾 裏紫平絹〉はし包若蝦子〉 林祭酒前〈繪器打敷縹平絹 はし包百合〉 籠皆敷一同〈色目〉靑丹 總獻鳥瓶子〈口紙或有〉 菓子(第二) 〈松露羹 ひめくるみ 雲上比呂米〉 右臺皆敷〈色目〉 高須侯前〈縁高小臺 皆裏同うたん〉林祭酒前〈土器十六夜 臺皆敷同前〉 添物 胡蘿蔔〈味噌漬〉 右臺櫑子盛付〈皆敷色目靑柳〉 帖紙〈竹はし添〉 高須侯前〈蒲萄染〉 林祭酒前〈松重〉 薄茶〈尋常〉 後饗(第三) 粉熟 右臺高坏〈はし土器〉 高須侯前〈銀器盛〉 林祭酒前〈椀盛〉 肴物 〈百合 鹽煮 岩たけにしめ〉 右臺高坏 地紙合盛〈皆敷地紙〉 湯〈尋常 湯の粉 舊製 右臺繪折敷〉 以上 末間 破子 〈屯食黄白 櫻煮 蕨甘煮〉 右皆敷帖紙〈色目花山吹〉 以上

〔續視聽草〕

〈五集八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0299 水府公飯膳式目 御五十日過より左之通ニ而、御膳等被差上候思召候事、 五節句式日者 老公之御時之通、其外常々は、 朝晝は 一汁一菜之事〈但一汁一菜之時、向皿に而も壺に而も有之候はゞ、平は無用の事、〉 夕は 汁計〈汁は大根菜ふき冬瓜うどゆば豆腐、右三度ヅヽ同前ニ而も好物よろしく候、〉 肴は 〈鯉鮒赤ゑび鮟鱇よし、外は迷惑存候、右品も好候時計ニ而、常は無用に候、〉 右之外好みて申付候事は、臨時に候得ば不記、魚は水府より參り候計可用候、尤客來之節向等は飾の事故、何方之品を用ひ候而も宜敷候、 御守殿にて御膳被進候節も、右之心得ニ而宜敷候、前文之通ニ致候ても、是迄之食には勝候得ば、是迄之事を忘れ不申樣存度候、儉約ニ而致候儀には無之、是迄一汁一菜にて仕來候處、養生に宜敷樣に相覺候得ば、右の通拵候樣可申付候、乍然右之通致候而は、臺所下働人益に成兼可申候得ば、一汁一菜は如何體ニ而も多拵候樣是亦可申付候、 前文に申候通り、式日等には臺所預之了簡次第にて獻立仕候樣、連枝方客來之節は、一汁三菜燒物吸物差身位之事ニ而可然存候、

鹽梅

〔倭名類聚抄〕

〈十六鹽梅〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0299 鹽梅 尚書説命篇云、若作和羹、爾惟鹽梅、〈孔安國云、鹽鹹也、梅酢也、〉

〔易林本節用集〕

〈安言辭〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0299 按排(アンバイ)〈味〉

〔同〕

〈江食服〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0299 鹽梅(エンバイ)

〔書言字考節用集〕

〈六服食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0299 鹽梅(アンバイ)〈尚書註、作羹者鹽過則鹹、梅過則酸、鹽梅得中然後成羹、〉 按排(同)〈鹽梅按排通用〉

〔貞丈雜記〕

〈六飲食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0299 あんばいと云は、鹽梅の二字也、上古は味噌醤油も醋もなし、鹽と梅を以て味を調へたる故、鹽梅といふ也、

〔倭訓栞〕

〈後編一阿〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0299 あんばい 羹を和するをいふは、書の鹽梅の轉ぜる也といへり、李時珍も梅者媒 合衆味といへり、

〔庭訓往來〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0300 能米、馬大豆、秣、糖、藁、味噌、醬、酢、鹽梅(○○)、并初獻料、〈○中略〉等、或買http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins001085.gif (ヲギノリ)或乞索令進候、

〔類聚雜要抄〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0300 五節雜事 一所々垸飯 瀧口本所 大外居交菓子二合 盛飯廿坏 垸飯廿坏 透蓋飯一盛 瓶子一口 鯉一隻 雉一枝 鹽梅(○○)并木炭等 武者所 大外居交菓子一合 盛飯卅坏 埦飯卅坏 透蓋飯一坏 瓶子一口 鯉一隻 雉一枝 鹽梅(○○)并木炭等

〔伊呂波字類抄〕

〈天疊字〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0300 調味(○○)

〔易林本節用集〕

〈天言辭〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0300 調味(テウビ)

〔增補下學集〕

〈下態藝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0300 調味(テウミ)

料理法

〔宗五大草紙〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0300 料理の事 一主人貴人の前にて、魚鳥等燒事あらば、先炭の火にてもあれ、又たゞのおきにても、半分前へ搔出して、おきぎをよくならべて、其上にて燒べし、やきはてゝそのおきのぶんを物にすくひて取べし、蛤をやくには、はまぐりのとぢめを小刀にてきりて、其きりめをうへになして、口の方をあつばいの中へふか〳〵と入て、その蛤におきをかけてやく也、今の切口よりあはを四五度ふき出したらば、やけたると思ひ、かんなかけに取上、小刀にて口をあけて參すべし、

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0300 一御前にて煮方する時は、金輪の足二ッ上座へ向べし、 一御前の火にてうちくべ燒の魚をせば、火を前へ舁出し燒て、其火を取て立べし、口傳、

〔大草家料理書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0301 一鹽鳥肴(○○○)の時、同は古酒にて洗あげて煎也、 一鹽鳥汁の時、荒作をして能鹽を出して、洗候て後、小作をして水につけて、かげん吉時分湯がき候て、酒をかけてすましをかへらかして、鳥の酒をしぼり出して入候也、但吸口は胡椒吉也、

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0301 一このわたの鹽をとるには、箸を紙にてまき、このわたをかけ、脇の水へ入れば鹽とれる也、〈○中略〉 一ぼんぼりとは、干鯛、干鱈をふくめ高立の中へつまみ盛事也、〈○中略〉 一鮭の式の鰭(○○○○○)とは、背鰭一二三の内を云也、賞翫也、間の肴抔に出す也、 ○按ズルニ、羹汁、吸物等ニ關スル料理法ノ事ハ、各々其條下ニ散見シタレバ、宜シク就キテ見ルベシ、

料理人心得

〔今川大雙紙〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0301 食物之式の事 一れうりする人心得べき事、魚鳥はあぢはいよき所を、主人にも又上座の人にも參らすべし、〈○下略〉

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0301 一魚鳥組合の次第 左ニ山のもの 右に川海の物 此心にて、山の鳥、田の鳥、海川の魚鳥分別すべし、鷹の時は何も左に引也、

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0301 一板に鳥据る事、鷹の鳥は志餌(クチエ)たる方を上になし居る也、射鳥は矢目を上にして居べし、順逆の沙汰に有べからず、

〔武家調味故實〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0301 一魚鳥の面向外向の事 鳥をば左を面向とす、魚をば右を面向とす、但鰭を賞する時は、左を用ゆる也、〈口傳にあり〉 猶又左右の面向外向の事、如此さだめて定めがたし、口傳あり、

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0302 一出門に用る魚、鳥、鯛、鯉、鮒、鮑、かつほ、數の子、雉子、鶴、雁の類を第一とす、海老、蟹、鰯、鴛、茸の類不宜也、

〔大草殿より相傳之聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0302 一手の物あつかいの事、其座に功者一兩人あつかはれ候時、若輩として巧者の樣にあつかい候事、いかゞに候あひだ、あつかいをば仕候てくふ事は、それほど仕候はぬもよく候、

〔貞丈雜記〕

〈六飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0302 一料理に手の物と云事有、鶉の羽ぶしもり、鴫のつぼいり、かざみのこうもり、 海老の舟づみ、鮎のいかだなますなどの類、名ある料理を手の物と云也、大草相傳聞書にあり、

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0302 一手鹽を組付る事は、膳部の不淨を拂の心と云へり、其外心入有べし、

庖丁作法

〔貞丈雜記〕

〈六飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0302 一いにしへは殿中を始め諸家にても、酒宴の時庖丁人出て、魚鳥を切て御目に懸る事有、其切樣(○○)、庖丁方の作法(○○○○○○)あり、まな板持參し樣の法(○○○○○○○○○)も舊記に有、其比は庖丁を習う人も多かりしなり、今は庖丁の法知りたる人少し、庖丁の故實世にすたれたる故、食物も古法を知りたる人少き故、調味のしかたも新らしき事のみ多く、あらぬ事ども多し、

〔四條流庖丁書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0302 一俎紙(イタガミ)上ニ土器可置樣ノ事、鯉ヲ俎ニ置テ出時、内ヨリ庖丁人ヲ召出スベキニハ、筯(ハシ)刀ヲ俎上ニ不置シテ、俎紙ノ上ニ土器ヲ置テ出也、此時ハ坐中ノ心得ニ、内ヨリ人ヲ召出スト覺悟スベシ、又俎ノ上ニ筯刀土器ヲ所置時ハ、如此杉差ノヒレノ下ニ庖丁刀ヲ敷テ、筯ヲバ俎紙ニ置テ、同土器ヲ可置也、此法ヲ不知者ハ、俎紙ノ上ニ筯刀土器ナドヲ一ニ取集テ置間、俎紙ノ上セバクシテ見惡キ可成、杉差ノヒレノ下ニ置庖丁ノ刃向ニヨリテ、庖丁人ノ心遣有ベシ、魚ノ尾方へ刃ヲ向ルコトモ有ベシ、又頭ノ方ヘ向テモ置也、庖丁人ノ心遣ヲ以ケイコノ程顯也、但俎紙ノ上ニ刀ヲ置ドモ、此用心ハ有ベシ、然間當流ニハ俎紙ノ上ニモ置樣ハ、刃方ヲ俎ノ上ヘ成テ置 也、繪圖アリ、刀ノカイベラノコトアリ、同袖返シ袖流ノコトアリ、〈○中略〉 一當流片身下ニ、諸人ヨリハ不切シテ齋太(サイタ)ヲ先ワカツコトハ、陽ノ庖丁ナレバ前ヨリ切ト也、

〔大草家料理書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0303 一庖丁士之俎ニ寄時體配事、先向魚板本寄時兩膝突、箸刀一度とりて、刀先鹽紙を抑て抜箸、軈而板のかどを刀のむねにて三度撫下て、軈而右の膝を立て左をしき、右膝は板より六七寸程可退、左の膝三寸程退、次式に箸を取、左手内外に向て中二つふせて、人指指片方の箸にはさむべし、次魚をすくひて向の板の下に置、引刀にて鹽紙を一刀切て、半分刀の方を板より下に刀許にてかき落す、さて魚を刀と箸にて取てまへにひき寄て、板に有紙を腹の内に入て、いたより在下紙を箸にてはさみ上て、指のhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins046327.gif 際にしきて、魚の腹なる紙をとり出て、下なる紙にて裹、刀と箸にてかみのはし〴〵を返して裹なり、軈而の文字形に板を拭て、本の鹽紙の所に直、軈而魚の背方よりまな箸にてはさみて、水はたけを三度宛撫下す、又前の方を三度可撫、中をば一度可撫、而口より箸を入て可返、又如前水はたけをすべし、次に水返骨に箸を立て、鱗三目ニ一の刀を切、次魚喉を刀にてすくひ上て、箸を以てはさみ上肉をおろす、軈而向に置、引箸刀にて魚頭を向の板の角方ニはり頭に置、引刀にて魚を返て一方の肉をすくべし、軈而返て向に先の肉の前ニ置、引刀にて中骨を中程より切て、刀手の方の骨を一寸程切て、又軈而二切て魚頭置たる下方ニ、今骨を一可直、是をうなもとゝ云、此後は記に無計、一々有相傳、 一式鯉〈ニ〉切刀曲四十四在之、式草鯉三十八、行鯉〈ニ〉三十四刀也、又俎ニ切放て並たる數十二、置所六あり、 一まなばしニ七の病有、刀ニ五の病、此内禁忌箸刀あり、秘事ナリ、

〔當流節用料理大全〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0303 料理人諸鳥庖丁指南 まないたの前大方一尺二寸計のつもりに、間をあけて畏り、足をくみて腰をどつくとすへ、身づ くろひして、扨箸庖丁を取いだし、箸庖丁一ツに右の手に持そへ、俎まへ左の足の上のとをりになみをよく直す、尤箸は左、庖丁は右、大方一寸二分計のつもりにあけて、銘を上になして置べし、扨鳥魚にかゝり候時、箸庖丁に手を一度にかけ候と、はやく庖丁をさつと引分、箸は則左の足の通りにきつとたてゝ持かため、庖丁は右の足のとをりにはをうへになして、先をきつとたてゝ持かため、しづかに大手前にかゝりたるがよし、總じて俎前にて湯水を好み、物をみだりにいひ口をたゝき、頭をまげ腰をかゞめなどする事惡しゝ、たしなみ也、 鶴白鳥鴈鴨は、先鴈かしらを前になし、俎のまん中になをし、まのはぶしをひろげ、首を左の羽がいに持せ、左のむねより庖丁にて水をなでおろし、右をなでゝ左のわきに箸をたて、左のむねより切めを付、右のむねよりをろし、頭を右の羽がいにもたせ、左のむねをおろし、扨もゝのまのつがいをはなし、左より切はなして、俎右のむかふのすみの足を右になしてをき、頭を左へまげて右を切はなし、右のところへなをすべき也、扨胴がらは左の向のすみへなをすべし、扨俎をよくなでて、左の身より引なをし、足を右へなして、頭の次へなをし、羽ぶしのつがいをはなし、身を俎むかふの中のはづれにをき、羽ぶしは胴がらの通りの下に置、はしは中の向ふのはづれに直す、右身をもかくのごとし、 雉子山鳥鳩等は、先きじ頭を左にして、はしを前へむけ、腹を前へむけて、よこに羽がひをしかせてなをし、頭をねより切て、左の向ふのすみへ直し、扨おろしやう、何れも右に同前なり、

〔四條流庖丁書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0304 一女ニ參ラスル物ヲバ大ニ切(○○○)ベシ、男ニ參ラスルヲバ小ニキル(○○○○)ベシ、口傳、〈○中略〉 一タコキリモルベキ事、タコヲバ前ヘ置テ可出、扨飯ノ御回(メゲル)ナラバ、如何テモ薄ク丸ク可切、御肴ニハ少厚ク長ク切ベシ、何ニモイボヲスキ皮ヲムキテ可切也、

〔宗五大草紙〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0304 一鯰のさゝら切と申は、おのかたよりはじめて、一刀ヅヽ切のぼせ、取なをして頭 を立ざまにをしわりてにたるを云、切つゞくる也、

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0305 一三鳥と云は、鶴、雉子、鴈を云也、此作法にて餘鳥をも切る也、 一五魚と云は、鯛、鯉、鱸、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins045976.gif 、王餘魚をいふ、此作法にて餘の魚をも切也、〈○中略〉 一そぼろ切とは、細く削る事也、 一そぎ物とは、干鯛、こんきり、たらなどふとくそぐ事也、 一爪重とは、廻しもりのこぐちを云、 一鷹の羽とは、大かまぼこの内へ、たてに荒和布を入、燒て切を云也、 一筋引といふは、筋子の事也、

〔當流節用料理大全〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0305 海川魚類庖丁指南 鯛鱸茂魚等は、先たい頭を左にして、腹を前へしてなをし、包丁にて尾の方へ背中腹のとをりを三べん水をなでおろし、又上へなであげべし、是はこけの有なきをしるべきため也、扨箸を口へよくさし込、包丁ながしをよく切こみて、箸を内のゑらへよくたてゝ、包丁ながしのきはより頭を切おとし、水はきを右になして、頭をむかふへむけて、俎左のむかふのすみへなをしおき、扨身の切口へ箸をさし込、尾の方へおろすべし、身向ふへかへし、俎右のむかふの角へ、尾の方を右になして直し、扨下身上下へかへし、尾を左へなして、頭の方より尾のかたへおろして、頭の方よりかへし、右の所にうすみとうすみとあふやうになをし、中打を眞中より一打に打て、尾の方をうへにのせて、尾さきを左へして、頭の下に置べし、扨俎をよくなでゝ、うは身より引よせ、頭の方をまへになして、ひれをそとへかへして、うす身をば取、中打を下に置べし、身は中のとをりに尾をむかふへなしてなをし、身をもかくのごとくにすべし、 鯉鮒うぐひさは等は、先こい頭を左へなして、腹を向へむけてなをし、右のごとく三べんづゝ水 なでをして上下へかへし、右のごとく水なでをして、箸を口へよくさし込、包丁水はきの内へ、はを上にしてさしこみて、前の方へあをのくやうにをせば、腹うへになる也、扨箸を向ふのえらぎはへよくたてゝ、包丁にて向の一のひれをおとし、はしにて歸らぬやうにおさへ、扨前の一のひれを包丁にてはねおとし、其儘頭を切おとし、箸をぬき頭を向ふの左のすみに、水はきをむかふへむけて、切口をたてゝ、ひれを兩へひろげて置べし、川魚は頭にひれの付やうにおろすべし、扨身の切口へはしをさし込てたて、頭の方より尾の方へよくをろすべし、扨むかふへかへし置、右のごとく右の角へ直し、又下身をも上下へかへして、頭のかたを右になしておろし、右のごとくなをすべし、扨俎をよくなでゝ、右のごとく身を引よせ、うす身を取、身も中打もなをすべし、 鮭、鱒、あめ、なまず、鰹、めじか、鰤はおろす計の事也、〈直し樣右同前〉海魚は腹を前にしておろすゆへ、初は向ふになすなり、川魚は腹をむかふになしておろすゆへに、初めは腹を前になすなり、是は手まはしはやきときの事なり、 萬海川魚小切形は、 背切(○○)とは、頭をおとし兩のうすみ計腹のなりにきはより切て、ごみはきのふくらをもまつすぐに成樣に切てさり、頭の方を右になして、およぐごとくにしてひれを付て、厚サ四五ぶにも木口切にする事也、是は鯛鱸等に用ゆる事也、 平背切(○○○)とは、右のごとくにして、尾を右へなして、腹を向ふにても前にても平にして、尾の方より包丁ねさせ、厚サ四五分計、木口切にする也、 片背切(○○○)とは、右のごとくにし、右にても左にても片身をろして、平せぎりのごとく、片方に骨を付て、尾の方よりきる事也、 すい切(○○○)とは、三枚におろして、うす身をさりて、左の方より庖丁を成程ねさせて、すくひ切にきる事也、 ぶり切(○○○)とは、おろしてうす身をさり、先よこにいか程にも切て、それをたつに切事也、ぶりをかやうに切はじめたるによつて名付候也、 一もんじ(○○○○)とは、おろして尾の方よりよこに包丁をたてゝ、一文字に切事也、さいとは、大さ一寸四方計 に四かくに切事也、 鯛鯉などの木口作(○○○)りとは、おろしてうすみをさりて、中のあかみを二つに立ぬきて切、尾の方より包丁を立て、厚サ一分計に皮を付て、身のくづれぬやうに作る事也、同指身などのたゝみ作(○○○○)りとは、おろして右のごとくに木どりて、皮をさりゆがきて、水にてよくひやし、木口にうすく作りて、かさねをく事也、但大だゝみ小だゝみといふ事有、 なげ作(○○○)りとは、右のごとくにして、包丁をすぢかへねせて、平めをうすく作る也、 鯉筒切(○○○)とは、こけ計よく取て、腹わたもあけずして、其儘尾の方より庖丁を立て、厚サ四五分計に丸切にきる事也、但シゐを切つぶさぬやうに心へべし、ゐと云物はかみに有物なり、つぶれぬればにがくてあしゝ、鯛の平背切に同じ、 けぎり(○○○)とは、こけもとらずして、右のごとくこけ共に切事也、右筒切に同じ、鮒などの一つ切(○○○)とは、こけ計取て、腹もあけずして包丁を立て、厚サ一寸計にもまる切にする事なり、〈○中略〉 背ごし(○○○)とは、腹わた計よく取、肉をよくあらひて、其まゝ尾の方より、木口切に少し包丁をねせて作る事也、是はあじ、あゆなどの鱠に用る、〈○中略〉 片背ごし(○○○○)とは、片々おろし、かた方の骨のつきたるを、右せごしのごとく作る也、 切かけ(○○○)とは、三枚におろして、いか程にも切て、身の方を四五分計にも、四方に包丁めを付て切かける事也、これは杉やきなどに用る、 切やき物大ぎりとは、皮を付てうすみをすきてとり、一もんじにきる事也、 あんかうつるし切(○○○○○○○○)とはいへ共、つるしあらひの事也、よつてあらひ方の役也、則つるして口より水を入てひれをさり、皮をはぎて骨のつがひをはなして、みを三枚におろす事也、扨切方は包丁の役也、

〔今川大雙紙〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0307 食物之式法の事 一まな板を持て出る(○○○○○○○○)には、二人して持て出る也、座敷に入る時は、同樣にあゆみて置也、跡があがる也、同取てしざるには、一方をば切て持て、前のごとく取てしざるべし、

〔御供古實〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0307 一御前へ魚板を持參候時、包丁仕候人の左の方あがり候哉、板に置候切物鳥にて候得 ば、鳥の羽がいの左の方にて候、何も其心得にてあるべく候、然ども就此儀口傳有之、

〔家中竹馬記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0308 一まな板を持て出るには、魚の頭の方はうは手、是賞翫なり、うはてはさきへ行、具足の前後には替也、是もさきへ行人は、後ざまにもそばざまにも出る也、可切人は誰にてもあれ、其座鋪に賞翫の人可切樣に、先板を向て可置、但きはへ持ては寄べからず、其通りにのけて置也、扨きるべき人定めて板を直す時、以前持て出たる人出て直すべし、逆にはなをさず順になをす、順と云は東より南へめぐる也、南より東めぐるは逆也、四方准之、

鯉庖丁

〔大草家料理書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0308 一魚鳥鯉切樣、一條院御宇於神泉苑池鵙取鯉上所、折節於南陣、藤藏人自負矢抜出シテ射處、遄内裏南殿落庭、鳥魚ニ取組テ不放、是則奏聞、公卿殿上祗候有シガ、惟隆卿見之、切出毛包丁叶叡覽、寫形事ナケレドモ、次ニ依望出之、自今以後人敎時、此手ヲ不傳、自家本外へ出ル事是始也、能々可秘、不聊爾、若聊爾ナラバ大明神可御罰、可口傳

〔武家調味故實〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0308 一本所の侍と云は、たきぐちのも、口れうり包丁のこ實といふは、時の口ある物ニ取かゝるは、人の目にもかゝる也、ありがたき子細、夏鯉などは、必人の前などにては取かゝるべからず、其興なき物なり、是はなつ鯉の口傳大事なる故か、

〔貞丈雜記〕

〈七膳部〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0308 一活きたる鯉のはねる時は、目を紙にて張り、尾を包む也、板の上にてはねる時は、尾を切りたるがよし、かやうの事を知るを庖丁人の秘事古實といふなりと、四條流獻方口傳書に見へたり、 一藻分鹽分と云板の上にてする所作なり、先藻分と云は、庖丁にて魚をなでる事也、鹽分とは庖丁にて鳥を撫でる詞也、鷹鳥は飼方をおろし、飼方を上へして、式より上の方へ直し、右の方に置也、首は左也、餘の躬は下の方へ置也、射鳥は矢目を賞翫して、鷹の鳥の飼方の所へ直す也、

〔新儀式〕

〈四臨時〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0308幸神泉苑競馬事 王卿移就簀子敷、仰召大臣、令侍御厨子所供膳、〈或此間仰左衞門府、捕池魚料理所供御膳侍臣、〉

〔雅亮裝束抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0309 だいきやうのこと ないらんのいゑにもやのだいきやうを、〈○中略〉たちつくりのあくといふことあり、えんちかく三げんのあくをうちて、さうじのしりかくるほどなるをたてり、それはしりをかけてこいをきりて、御さかなにまいらするなり、そのあくは、ざのかみのかたにうちて、まんをあげて、はう丁をそんざ御覽ずるなり、はう丁しは、五ゐ六ゐをきらはず、いゑのものをめさる、

〔古事談〕

〈一王道后宮〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0309 鳥羽院御前ニテ有酒宴之日、刑部卿家長朝臣奉仕庖丁之間、可魚頭之由有仰事、其時或人云、魚頭ハ折櫃尻ニテ破候也ト云々、可然之由有勅定、爰其人、〈失其人〉立座、御棚ナル菓子中、餅入タル折櫃ヲ、乍入餅ヲバ隱之、ウツブセニヲキタリケレバ、其上ニテ安ク破タリケリ、有叡感ト云々、ヤガテ餅ヲバ遂ニ人ニミセズシテ、乍折櫃件ノ人トリノケテケリ、家長ハ此恩イカニシテ報ゼムト思ケレド、便宜モナカリケルニ、件ノ人御前ノ常燈搔上トテ、カキケチテ、シソクサシニユキタリケルマニ、家長ヤヲラヨリテ、油ヲトリテ皆飮テ返シ置了、シソクサシテ歸參之時、家長寄テ見テ、油ノツヤ〳〵候ハデ消テ候ケリト被申ケリ、

〔古今著聞集〕

〈十八飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0309 保延六年十月十二日、白河仙洞に行幸の時、御前にて盃酌有けり、家成卿右兵衞の督にて侍けるに、包丁すべきよしさた有けれども辭し申けるを、ある殿上人、鯉を彼卿のまへにをきてけり、德大寺左大臣右大將にて侍りけるが、天氣をまつにこそと奏せられたりければ、主上わたらせ給ひて、すゝめさせおはしましければ、家成つかうまつりけり、群臣興に入て目をすましけるとぞ、

〔台記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0309 康治二年十月廿七日庚戌、拂曉視魚干網代、刻歸洛、於網代獲鯉便出舊厨、源行方庖丁、割甚易、見者無羨、賓客兩三輩羞酒、 仁平二年正月廿六日壬戌、今日於東三條再行大饗、〈○中略〉參議左大辨資信朝臣端笏伺尊者氣色、尊者把笏目余、余已〈○已下恐脱下字〉以次立箸、了一同餛之、〈主人尊者以箸挾餛飩、入汁盃之、〉訖返置臺盤、〈主人置机上、此間須二レ包丁人解一レ(○)鯉(○)而左兵衛尉行賢未參、仍不之、再三遣使催促、○中略〉于時佐兵衞尉源行賢參入、著南床子東頭、余催包丁、行賢申曰、鷹飼渡後解之既爲故實、余仰曰、餛飩箸下之後解鯉、鷹、飼渡後解雉禮也、及三獻猶爲遅緩、口待鷹飼乎、行賢即解鯉、〈于時史生參進之間也、先役送衞府撤兩組蓋、〉

〔今昔物語〕

〈二十八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0310 左京屬紀茂經鯛荒卷進大夫語第三十 今昔、左京ノ大夫ノト云フ舊君達有ケリ、〈○中略〉茂經馬引カヘタル童ヲ呼ビテ、取テ其ノ馬ヲバ御門ニ繫テ、只今走テ殿ノ贄殿ニ行テ、贄殿ノ預ノ主ニ其ノ置ツル荒卷三卷、只今遣セ給ヘト云テ、取テ來ト私語キテ、走レ走レト手搔テ遣ツ、然テ返リ參テ、俎洗テ持詣來ト音高ニ云テ、ヤガテ今日庖丁茂經仕ラムト云テ、魚箸削リ、鞘ナル庖丁ヲ取出シテ、打鋭テ遅シ〳〵シト云居タル程ドニ、遣ツル童ハ糸疾ク、木ノ枝ニ荒卷三卷ヲ結付テ、捧テ走テ持來タリ、茂經此レヲ見テ、哀飛ガ如クニ詣來タル童カナト云テ、俎ノ上ニ荒卷ヲ置テ、事シモ大鯉ナドヲ作ラム樣ニ(○○○○○○○○○○)、左右ノ袖ヲ引http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins078863.gif テ、片膝ヲ立テ、今片膝ヲバ臥テ、極テ月々シク居シテ、少高ミテ、刀ヲ以テ荒卷ノ繩ヲフツ〳〵ト押切テ、刀シテ藁ヲ押披タルニ、物共泛レ落ツ、〈○下略〉

〔鳩巣小説〕

〈中〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0310 一只今御料理ノ間ト申間有之候、此間台德院樣毎度出御被遊、御咄ノ相手ニ成候者、大方極リ有之候、其時分俄ニ鯉ヲ獻ジ申者有之、幸何某ニ庖丁仰付ラレ御覽ナサレ候、鯉ノ庖丁ハ、鯉ノ脊ヲ庖丁ノ裏ニテ三度撫候テ切候ト申候、撫申時鯉ハネ候テマナ板ヨリ落申ス處ヲ、マナ箸取直シ鯉ノ兩眼ヲヒシト指候テ、其マヽ庖丁イタシ候、滿座興ニ入候テ、其手ノキヽ申ヲ感申候、上樣ニモ御覽ナサレ候へカシト存ジ候ヘドモ、折節膳ノ脇ヲ御覽ナサレ、右ノ首尾御覽不成ヤト各存候テ殘念ガリ申候、偖御前ニテ一統ニ其儀ヲ申候ヲ、何卒御賞美モ有之樣ニト色 色執成候ヘドモ、トカク御返答無之候、其後右ノ鯉御料ニ相成、風味各別ニ御座候ト、皆々感ジ、其上ニテ又先刻ノ庖丁ハサテモ見事ナルコトヽ申候、其時上樣仰ラレ候ハ、何レモ先刻ヨリ庖丁ノコトヲヒタト申出候ハ、予ニ賞美モイタシ候ヤウニト存候テノコトヽ被思候、ケ樣ノ小キコトニ賞ハ不行モノニ候、總テ賞罰ハツリ合申サネバ、賞罰トモニ立不申候、此庖丁ヲ賞シ候ハ害モ無之コトニ候ヘドモ、左候ハヾ重テ又鯉ヲ取ヲトシ不調法ナル時、罰イタサネバナラズ候、イヅレモ平生心得アシキト被仰候由、乍恐御尤ニ奉存候、

〔嚴有院殿御實紀〕

〈二十〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0311 萬治三年十月十六日、臺所頭天野五郎大夫正國、御前〈○德川家綱〉にて、鯉庖丁仰付られ、時服をたまふ、

鶴庖丁

〔貞丈雜記〕

〈六飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0311 後代鶴の庖丁といふ事あり、古は鶴を賞翫とせず、故に古は鶴の庖丁といふ事なし、古も鶴にても白丁にても、貴人の御前にて庖丁する事はあれども、雉鯉などの如く、式正の事はなき也、

〔諸國圖解年中行事大成〕

〈一正月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0311 十九日 鶴庖丁 或記云、中頃豐臣太閤、年始に鶴を獻ぜられしより始ると云々、 今朝六位二人、末那板に末那箸檀紙をのせて舞臺へ舁すへ、扨鹽鶴一羽末那板の上に置く、御厨所高橋大隅兩家の人參入して、隔年にこれをつとむ、其體衣冠を著し、先座して後庖丁魚箸を取て、鳥の兩羽をしごく、俗に是を水しごき(○○○○)といふ、次に兩翼を切て肉案(まないた)のうへに直違に置、十字の形を作る、次に兩足を切て、肉几の下へ庖丁箸にてかき落す、次に頭を切てさきの兩翼十字の上に置て、千の字をつくる、是を千年切(○○○)と云、又万年切(○○○)とも云、扨肉を二段に調じて退く、さて淸凉殿の階下にのぞみて、太刀折紙を賜ふ、左手に取て座上に退き、拜して退出す、鳥末那板等は、又六位の人撤する也、次に舞御覽ありて後、鶴高盛等の獻あり、群臣又これを賜ふ、

〔後水尾院當時年中行事〕

〈上正月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0312 十七日舞御覽あり、淸凉殿東庭左右の樂屋をかまふ、ひさしに翠簾かけわたして御見物所とす、先鶴庖丁(○○○)あり、小預是を奉仕す、事終りて御太刀をたぶ、藏人東かいにのぞみて是を下す、

〔御湯殿の上の日記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0312 天正十五年正月十七日、せいりやうでんの御庭にて、たかはしつるのはうちやう(○○○○○○○○)する、御たちくださるゝ、きよくらういださるゝまい御らんあり、色々めでたきまいどもまいしなり、ふしみ殿、かぢ井殿、御まいり、とざまない〳〵御參り、せいりやうでんにて、みな〳〵つるのこん參る、二のみやの御かた、五の宮の御かた、ふしみどのかぢ井殿、御しやうばん、もんぜきへは御しやうじん也、だい出てくもじあり、ぐ御はつねの御所にて參る、じゆごう女御、御しやうばん、女中ひし〳〵と參る、だいにてくもじ參る、めでたし、〳〵 〳〵、

〔續視聽草〕

〈八集三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0312 庖丁上覽 寛文五己巳年二月十二日、御黑書院鶴庖丁上覽、天野五郎太夫勤之、老中高家諸役人見物御目見、入御已後御振廻、御代官も布衣之分罷出、五郎太夫〈江〉時服拜領、〈如官日簿〉

〔有德院殿御實紀〕

〈二十一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0312 享保十年十一月廿一日、黑木書院にて鶴の庖丁御覽あり、鶴に庖丁魚莇を爼にのせて、中奥の小姓二人にて持出て、東縁の下段の閾の外にすゆ、ときに臺所頭小林貞右衛門祐良熨斗目長の袴つけて出、鶴を調理す、事はてゝはじめのごとく中奥小姓出て爼を撤す、祐良はこの事つかふまつりしをもて、時ふく一襲をたまふ、

〔續視聽草〕

〈八集三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0312 庖丁上覽 安永四丁未年十二月廿五日、於奥鶴庖丁上覽、 〈御臺所頭〉松尾彌平兵衛勤之〈安永日録〉

雁庖丁

〔武家調味故實〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0312 一雁切事、一の刀に二の羽ぶしをて切てさしかさねて後、一の羽ぶしを重て可切事、大事成べきなり、かさね羽ぶし是也、身をおろす事、ふつうのごとし、但うしろを前にかきま はしておろす事もあり、是は前をおろしかけての事也、但雁のくぼねをさらぬ樣にて、あふのけに押しもぢらかして、くぼねをきればよく切也、〈○中略〉 一雁のくぼねつく事、たとへば雁のくぼねをつく事は、左右の羽ぶしを切て、くぼねをば鳥に付ながら身をおろす事有、くびをぬきぬれば、見にくき事あるゆへに、かやうに切事もあり、

〔大草殿より相傳之聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0313 一初雁の料理の事、がんのかはをはぎ、かはせんろつぶのやうにきりて、鹽を先いりいれたる時、酒鹽にすたでをすこしくはへ、雁のかはを入、よきかげんにいる也、此ごとくする時は、うはをきすい口有まじく候、先かはいり計をいだして、二度めに雁のみをいれ、うはをきにはねぜりたるべく候、せりのきりやうは、せりのくき五分ばかり、ねのながさはいか程もあれ、有次第、ねのすゑにはいさゝか手をかくべからず、それをさかいりにして、うはをきにはいれべく候、すい口にはみかんの輪ぎりにして、はじかみをよくすり、むくろうじの程に、みかんのわの上にをく、其置樣にくでんあり、 一雁の汁仕樣は、朝の客にて候はゞ、宵よりがんをきり、ひしほをしておき、その朝いかきの中に入、さて客の越られ候以前に、いかき共にすこしにてやがて取あげ、又客御入ありて、本膳すはり候て、今の雁をいれ候へば、能程にしるあるべく候、自然茶湯がたり時は、大汁にまいる事もあり、其時は能比にはろふべく候、 一初雁の時、御めしの時は、右のりうりたるべく候、自然又さかなてんしんのとき、初雁いづる事あり、其時は味噌をばかつて入ず、白水と鹽計にて煮候、もちろんにだしあるべく候、すい口うはをきあるまじく候、上をきにもすい口にも、ふつけ一ツ入られべく候、汁のいれ物はかはらけ本にて候へども、時によりては、茶わんも大ざらなども、くるしかるまじく候、

〔續視聽草〕

〈八集三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0313 庖丁上覽〈○中略〉 同年〈○萬治三年〉十一月十六日、御臺所天野五郎太夫、鈴木喜左衞門兩人被召出、於御所五郎太夫鯛庖丁、喜左衞門雁庖丁被仰付、上覽以後喜左衞門小袖二被下候、

白鳥庖丁

〔宗五大草紙〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0314 色々の事 一貴人の前へまな板持參之事、庖丁仁の左の方をかきて出る人はうは手也、公方樣正月二日細川殿へ御成はじめに、進士白鳥をきり申候、其時のまな板を伊勢名字兩人參り候て持參申候、應仁の亂前迄は、親にて候者下總守貞牧、備後守貞熙、〈其時七郎左衞門〉兩人御供衆の外役につきて參り候、大口ひたゝれ著候、進士同前、亂以後さやうの儀なし、

〔年中定例記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0314 殿中從正月十二月迄御對面御祝已下之事 一一亂已前までは、今日〈○正月二日〉細川殿へ御成始あり、御供衆の外、御役に付て、伊勢備後守貞熙、又下總守おや貞牧、〈うら打〉御供衆の御跡にまいる、進士御前にて白鳥切り申、此まないたを貞熙と貞牧かきて參候、一亂前まで此分也、進士〈うら打を著、〉

〔武家調味故實〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0314 一白鳥切事、一の羽ぶしより次第につゐてくぼね、三に可切、さておろす事如雁也、

〔續視聽草〕

〈八集三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0314 庖丁上覽 今度珍敷庖丁被仰付候處、御慰にも被成、御機嫌被思召候、依之拜領物被仰付、於奥被仰渡候、 時服二 〈御臺所頭〉小林定右衞門 一右品は去月三日、川崎筋御鷹狩之節、白鳥御弓ニ而御射留被遊候、右白鳥御矢開可遊との思召、御臺所頭定右衞門へ庖丁被仰付候、 公方樣、大納言樣、御一同御休息所御勝手之方長圍爐裏の上御著坐、鵲庖丁古實に白鳥鵲と唱申候、於長圍爐裏之間仰付、鵲載せ候御眞那板、御納戸衆兩人之者持出、長圍爐裏之下に置て、定右衞門熨斗目長袴著罷出、庖丁勤之、畢而御眞那板引之、

膳夫

〔倭訓栞〕

〈前編六加〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0315 かしはで 日本紀に、饗膳、膳夫、拍手等を訓ぜり、大古は凡そ飮饌皆木葉をもて器とす、よて葉盤(ヒラテ)、葉椀(クホテ)、折敷などの名あり、

〔料理無言抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0315 夫膳部をかしはで又は庖丁人、公方樣ニ而は御臺所衆と云、今云世上の料理人也、

〔古事記〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0315出雲國之多藝志之小濱、造天之御舎〈多藝志三字以音〉而、水戸神之孫櫛八玉神爲膳夫(○○)、獻天御饗之時、〈○下略〉

〔古事記傳〕

〈十四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0315 膳夫は、加志波傳と訓む、中卷にも見ゆ、書紀にも多し、〈○中略〉名義は先いと上代には、凡て饌を木葉に盛ける其葉をば、何木にまれ總て加志波と云り、〈○註略〉故饌の事を執行ふ人を加志波傳とは云なり、傳は手なり、凡て物を造る人を手人といひ、今世にも事を行ふ人を某手と云類多し、 ○按ズルニ、膳夫ノ事ハ、官位部伴造篇膳部條ニ在リ、參看スベシ、

庖丁人

〔倭訓栞〕

〈中編二十三保〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0315 ほうちやう 莊子に見えし庖厨のことをよくせし丁子が故事によりて、宰烹する人庖丁人といひ、其用る處の臠刀をもかく名けたる也、類聚雜要に庖丁刀と見ゆ、和名抄には料理魚鳥者謂之庖丁とかけり、庖丁者の初は、山蔭中納言なりと、徒然草に見えたり、鶴の庖丁は庖人の秘するところなり、

〔倭訓栞〕

〈前編四十禮〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0315 れうり〈○中略〉 料理人を厨子と見えたり、

〔新猿樂記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0315 十一君氣裝人者、一宮先生柿本恒之、管絃并和歌之上手也、〈○中略〉庖丁(○○)、料理、和歌、古歌、天下無雙者也、

〔異制庭訓往來〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0315語名譽之庖丁人種々料理也、即可色々膾、樣々羹、品々炙物、體々燒物也、

〔七十一番歌合〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0315 五十七番 左 はうちやうし 大鯉のかしらを三にきりかねて片われしたる在明の月

〔七十一番歌合〕

〈下〉

〔大草家料理書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0317 一庖丁可如木烏帽子、調度懸可裏打、大口可袖、衣文者鯉、紫革可閉結、有口傳、專祝儀時者可之、凡庖丁之道、雖相傳、不深道者、或鷹如山雲、或如犬只星、是以釋此譜、雖持向一レ師、深道不相傳、教人有春日大明神の可御誓、永可智惠者、此於以一心生記置也、仍包丁髓腦口傳雖雲霞、徒返財用特故、爲末代記置、深洩出是、能々可必得事也、一々可秘可秘、

〔塵塚物語〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0317 左馬頭基氏宥庖廚人事 鎌倉左馬頭もとうぢは、武勇たくましくして慈悲のこゝろも人にこえ、いと正直なる生れつきなりけりと云傳へ侍る、〈○中略〉しかふしてつねに美食をこのみて賞翫し侍るに、或時庖丁人をよびよせ、ふなを取寄ていはく、此うを能くやきてのち羹にすべし、相かまへて無さたに仕るなと、きびしくいひ付て、内へ入られけるとなん、庖人かしこまりて、右ふなをよくあぶりて、みそ汁をもて熟くこしらへ、煮て膳部にそなへけり、扨陪膳のもの是を持て、基氏にすへたり、基氏椀のふたを取てふなをみれば、よきほどに火とをりて愛すべしとみえてければ、かた〴〵を食して又うちかへして食はんとし給へば、則一方は生にてぞ有ける、庖人の不運にや、此魚ぶ沙汰にはせざれども、片身きら〳〵しく生にて有あひだ、基うぢ大きにいかりたまひて、やがて執事をよびよせて、彼庖人を召つれて可罷出よし責られけり、執事も此ものをふびんに思ひながら、主命もだしがたくして、つゐに庖人を引つれ、客殿の二間を過ておくへ入れば、庖人もすは覺悟してけり、あつはれ爰にて御手うちにあひぬるものをと、色をうしなふてひざまづき居けり、時にもとうぢわきざしを腰に横へ、かたなをはひたり、手にひさげてちか〴〵とあゆみより、をのれすでに日來の不忠心にあるゆへに、今かやうの失あり、すみやかにいのちをうしなふべきなれども、先此たびはゆるし置物なり、自今以後よく心得て、料理いたすべし、さりながら此たびも唯にはあらじ、はだかにして此縁のはしへまいり、ひざまづきて居るべし、ゆるしなきうちははたらく べからずといひて、又鷹がりに出られける、〈○下略〉

〔塵塚談〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0318 江戸自慢、世にいひ習はしたるもの、紫染、色摺錦繪、釣鐘の出來合、針金賣、らうのすげかへ、縫針賣、印判墨賣、火打鎌石賣、ほうづき賣、〈○中略〉此餘予〈○小川顯道〉が江戸自負あり、今こゝろみに左に記す、 火事、馬鹿者、癩病、蝮蛇、齒磨賣、織紋熨斗目、無筆手習師、無算勝手役、無庖丁料理人(○○○○○○)、文盲醫師、占卜者、風呂屋、〈○中略〉 料理人に鯛、鯉、鮟鱇、雁、鴨の類を、切刻むすべもしらず、無庖丁にして主人の臺盤所に居て、食物の調理をなし祿をはむ者あり、

調采

〔下學集〕

〈下態藝〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0318 調采(テウサイ)〈調味者也〉

〔七十一番歌合〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0318 五十七番 右 てうさい よもすがらあすのてんしんいそぐとて心もいらぬ月をみる哉 ○按ズルニ、調菜ノ圖ハ、菓子篇蒸菓子條饅頭ノ下ニ引ク七十一番歌合ニ在リ、宜シク參看スベシ、

〔俚言集覽〕

〈禮〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0318 料理 料理の家、四條流(○○○)、大草流(○○○)、進士流(○○○)、

〔尺素往來〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0318 池邊春日、江上秋風、羹膾蒸炙別其氣、鮨醢脯腥同其美、筋割濕香之品、庖丁易牙之業、刀俎解盛之樣、鹽醬醯(ミソス)酒之分、縦雖四條家(○○○)并大草(○○)等、座席之興味有何不足乎、

料理家流派

〔松屋筆記〕

〈百四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0318 膳部、庖丁家、料理人 按、景行天皇の膳夫に磐鹿六雁あり、倭建命の膳夫に七拳脛あり、後に大膳職、内膳司、主膳監などを置れ、近世は高橋氏、濱島氏、膳部の家業を繼げり、武家には足利家の代、四條流(○○○)、大草流(○○○)あり、多治見氏四條流を相傳す、其書も厨事類記、世俗立要集、四條流庖丁書、武家調味故實、大草預料理書、庖 丁聞書、大草相傳聞書、料理物語、料理獻立集などいとおほかり、

〈江戸流行〉

料理通大全

〈初編〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0319 日本の料理庖丁の發りの事 一山蔭中納言、四條藤原の政朝卿は、日本料理并庖丁の祖也、何れの慶賀にも鯉魚を職掌する事を第一と祝ひ給ふ、凡魚として飛龍と成によりて、高貴の祭とする事、鯉にかぎる也、もとより鯉は中通りの鱗、大小にかぎらず三十六枚を具足せり、是を工夫し給ひ、鯉に三十六枚の庖丁を作り給ふ、彼卿の淸光を尊て、世に四條流(○○○)と號すと也、

〔四條家法式〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0319 四條家園部流(○○○○○○)禮式序 武家禮節之所起、出於小笠原、足利氏之時、信濃前司貞宗深達弓馬之法、是時嚴禁犬追物、貞宗捧状請其禁、將軍家從之、遂命考定武家諸禮法式、其後伊勢氏傳饗應式、今川氏傳書禮式、雖各立門戸、而其一本也、故輯録三家言、著成一書、名曰三議一統、慶長以降、幕府饗禮、專用園部流者、横輿於泰親公在參州之日也、先是林藤助光政、元旦進兎羹於親氏公、初爲嘉例、其後洞院大納言實熙卿、有故配干參州、泰親公奉之甚謹、而饗應之式、有禮者、實熙卿曰、飮食者禮之本也、正其本者、有邦者之事也、今見君有世長民之器、宜其法式以立禮之本也、泰親公大悦、招膳職官人園部和泉守之族于京師、講求其式、實熙卿亦參互斟酌、采擇武門可用者、隨時制宜、其後出征之日、始用三獻之禮、武威日盛、四方服從、寛永中御臺所頭天野圖書、撰定韓使來聘公卿參向之饗式、而歳首五節、一仍參州之舊、於是幕府燕饗之儀大備矣、是謂當流、既而圖書有罪處流、世少其法、或混合他流、儀制頗紊〈予〉先人得當流傳法、深究秘奥、貞享中、秋元但馬守喬朝、傳命使先人http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins031901.gif 正之、雜者刊之、舛者糾之、盡得舊矣、予恐久而失其傳、是以繙閲家記、抽其精要、勒成一書、以貽万代、因書當流之縁由、以爲之序、 享保九辰暦初冬 小川藤原良恭謹識

〔庖丁秘密〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0319 一式三獻の事 二梅干の事 三引渡熨斗の事 四三つ盃の事 五内外の事 六腸煎の事 七御手かけの事 八こぶ、搗栗の事 九熨斗の事 饗膳の事 十一杉盛の事 十二立松の事 十三〈本饗http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins055289.gif 盛〉 十四五節供の事〈○中略〉 右庖丁卷第一魂見眞言曰、 伊舍那天 焔魔天 帝釋天 羅刹天 金剛界 火天 水天 風天 地天 貽藏界毘沙門天 日天 梵天 月天〈守護所〉 四條家(○○○)傳授 薗部新兵衞尉 吉田五左衞門尉 薗部和泉守 羽田神右衞門尉 高橋權兵衞尉 高橋五左衞門尉 寛永十九年 〈午ノ〉五月廿一日 中村十右衞門殿

〔宗五大草紙〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0320 色々の事 一庖丁仁覺悟兩樣に申候、板ゆるぎ候へば、よくをし直す共云、又包丁仁いろふはまじき事なり、見物衆板の足などにものをかふべしとも云、包丁仁は必えぼしかけをすべし、公方樣には進士大草兩流を御用候、流々あまたある事にて候間、一へんに不有、舟中にては魚を常のごとくにはをくべからず、魚をかへす事をせず、其儘きる樣にをくべし、又大草流には、まなばしのさきをばかけすくきのやう成かねを、箸の先に入られ候なり、又刀をとりかへて切べからずと申候、又白鳥などの鹽鳥は、能つかへを引くつろぐべし、

〔鳥板記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0321 鳥を板にすゆる事、揔別包丁の事は進士大草兩流あり、鳥のくびを鳥の左の方へ折てすゆべし、出候同じ事成べし、

〔文化增補京羽二重大全〕

〈三上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0321 生間流(○○○)料理 兩替町姉小路 生間

〔俚言集覽〕

〈禮〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0321 料理人、鱔の不手際、生間流、

〔笈埃隨筆〕

〈八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0321 五十間庖丁(○○○○○) 京都に五十間某とて、代々包丁の家あり、元来豊臣秀賴公に仕へし者也、大坂城亂の時、故有て京極宮に入て今に庖丁司たり、料理をする人多く此門下に客たり、其百日の鯉を截事、山蔭中納言殿に始り、今に庖丁の名譽とす、正月五十間氏に庖丁始といふ事あり、門人會して諸の魚鳥を料理すに、花美なる見物也、予〈○百井塘雨〉が見候時は、東山長樂寺の佐阿彌が亭にて有し、先其日の番組有て、奉書紙に書て出すに、料理人の國所姓名又料理の題名あり、第一の祝儀として熨斗包鯉とあり、一人は麻半上下を著し、眞那板長五尺計、幅貮尺計り、眞那箸庖丁を置、膝行して眞那板により、庖丁箸を取て種々の式ありて、先眞那箸を以て奉書紙を行の熨斗包に折形し、扨鯉の大なるを截立て、彼紙につゝみ水引を以て結ぶ、始終庖丁眞那箸にて、更に手を以てせず、斬て次第に出て料理す、都合十五番なりし中に、鰭通し鯛と銘せし物は、貳尺に餘る大鯛を、堅にして其口より鰭尾に至る迄三枚に卸す、又幣帛鯉といふは、鯉を横に堅に毛切にして、眞那箸に貫きたるは、則幣の形とす、左右の刺身離るゝ如くにて連れり、其餘は宗氏五十間氏倶利加羅鯛といふを勤らる、魚多鯛鯉、又鰈ありし、其手練無造作なるや目覺る見物也、其庖丁眞那箸と同じ長さ貮尺計也、兼て思ふ、庖丁は目釘にて固めし物やと、曾て左にあらず、時として拔る事あり、是を以て見れば、皆手の内の練磨にて、誠に業に熟せしなめり、人いふ西國の諸候、船にて上坂の時、料理人の者、眞 那箸にて大切の皿を挾み、海にて濯ひしといふも、又妄言ならじ、或人の説に、料理の始りは、魚名公の男四條中納言政具卿より庖丁起れり、爰を以て四條流などいへる、別て傳授とするは、五魚三鳥也、五魚とは、鯉、鯛、鰈、眞那鰹、鱸也、三鳥とは鶴、雁、雉子にして、各作法有て、又料理の調味少なからず、

名人

〔古今著聞書〕

〈十八飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0322 滋井入道〈○藤原實教〉宰相中將にて侍ける時、梶井宮にまいりけるに盃酌有けり、終座に成て宰相中將、今は柚まいらばやと侍ければ、すなはち參らせたりけり、或上達部〈經家卿と云々〉柚八柑七とこと葉をつがひて、八にきりたりけるを、宰相中將見て、あしく切つる物かなと思ひて、ともかくもいふことなかりけり、宮も御覽じて、何とも仰られざりけり、とばかり有て行算(○○)まいれやと仰られければ、等身衣にかりばかま著たるさぶらい法師の、みめよくつき〴〵しげなるまいりたり、その柚きりてまいらせよと仰られければ、こしより包丁刀をぬきたりけり、まづ興有てぞ見へける、ぞんずる所きりてまいらせたりければ、宮以下入興有けり、くだんの行算さゑもんばうは、行孝が弟也けり、其げい舎兄にもはぢざりけるとぞ、柚をば三切にぞ切たる、をよそ柚をきることは、盃酌至極の時の肴物也、盃を取人必ず三度呑事にて侍とや、

〔徒然草〕

〈七〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0322 園の別當入道(○○○○○○)〈○藤原基氏〉はさうなき庖丁者也、或人のもとにていみじき鯉をいだしたりければ、皆人別當入道の庖丁をみばやとおもへども、たやすくうち出んもいかゞとためらひけるを、別當入道さる人にて、此程百日の鯉をきり侍るを、今日かき侍るべきにあらず、まげて申請んとてきられける、いみじくつき〴〵しく興有て、人ども思へりけると、ある人北山太政入道殿〈○藤原公經〉にかたり申されたりければ、かやうの事おのれはよにうるさく覺ゆるなり、きりぬべき人なくばたべ、きらんといひたらんはなほよかりなん、何條百日の鯉をきらんぞとの給ひたりし、をかしくおぼえしと、人のかたり給ひけるいとをかし、

〔常山紀談〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0323 三好家滅し時、料理庖丁の上手と聞えし坪内何がしといへる者、生どりとなりしが、放し囚にして有しに、年經て後、菅谷九右衞門に賄申ける市原五右衞門、坪内は鶴鯉の庖丁は云にも及ばず、七五三の饗膳の儀式よくしれる者なり、其上子ども兩人は既に奉公申候へば、ゆるされ候て、厨の事を司らせ申さんといひけるを、信長聞きて、明朝の料理させよ、其の鹽梅によらんとなりしかば、則坪内をして膳を出させけるを、信長食して、水くさくしてくはれざるよ、それ誅せよと怒られしかば、坪内、畏承候、今一度仕らん、それにても御心に應ぜずば腹切んといへば、信長許容せられけり、さてその翌日膳を出しけるに、味のうまき事殊の外によかりければ、信長悦て、祿あたへられけり、坪内、辱き由申して、さて昨日の鹽梅は三好家の風なり、けさの鹽梅は第三番の鹽梅なり、三好家は、長輝より五代公方家の事をとり、日本國の政をとりはからひぬれば、何事もいやしからず、其好む所第一等の鹽梅を昨日奉りければ、いやしみ給ふ事ことわりなり、けさの風味は、野鄙なるゐなか風にて候へば、御心に入たるなりといひければ、聞人信長に恥辱をあたへたる坪内が詞也といひあへり、

〔續視聽草〕

〈八集三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0323 庖丁上覽 家康公或とき御船にて被成、御船中御目通りにて御臺所方天野五郎太夫(○○○○○○)活鯉を料理庖丁仕候とき、鯉はね上り船外へ飛出候を、五郎太夫さわがず左の手に持候魚箸にて挾とり候、本多佐渡守扨も仕たりと譽て、御前にも御感被遊候半と存じけるに、御不興にていかひわたけものと上意なり、佐渡守一圓了得不仕打過たり、其後或時佐渡守御前に罷出候節、吾は秀忠へ恩を成すと上意なり、時に佐渡守承り仰までもなく、天下を御讓り被遊候上は、是に過たる事何か可御座と申上る、いや〳〵天下は元より秀忠のものに定りたれば、恩といふにはあらず、總て古より大底に親增ても、外からは左に不思、まして少し劣りたるをば、大に劣りたる樣に思ひなすもの なり、萬事我だけ一はひに働ひて、子の事を思はぬはたはけ者也と上意有、そこで佐渡守先年の天野が事不審晴たりとなり、

〔近世畸人傳〕

〈四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0324 堅田祐庵(○○○○) 祐庵は北村氏、淡海堅田の浦の豪農にて、茶事に熟し物の味をしることは、いにしへの符朗易牙にも恥ず、傳る所の話多し、〈○中略〉かゝれば人に物を饗すること必つゝしめり、所がら湖中の鯉鮒の類を調ずるに、魚板數枚用ゆ、はじめ鱗をはなつより肉を切にいたるまで、次を追て板を轉ず、かくせざればうつり香ありてなまぐさしといへり、

〔近世畸人傳〕

〈四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0324 高橋圖南(○○○○) 高橋若狭守紀宗直老人、號は圖南、御厨子所預にして、庖丁は其家なれどもことに勝たりとかや、或時諸友六人會して庖丁を望むに、鯉一つを何の品もなく六ツに切られしに、能みれば六つの割、一分もたがはざりしに、皆其妙を感じぬ、

〔一話一言〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0324 樽三ぶ(○○○) 樽三ぶ〈樽屋三郎兵衞事なり〉は庖丁に名高きものなり、初呉服橋外油會所のわきに居れり、其のち中洲にいでゝより、やゝ評判おとろへたりといふ、深川升屋宗助(○○○○)〈升億とも號す、隠居して祝阿彌と云ふ、〉と肩をも並ぶる程の調理なりしが、天明二年壬寅四月十七日身まかりぬ、

〔江戸流行料理通大全〕

〈初編〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0324 序〈○中略〉 割烹氏八百善(○○○)、所謂先得我之所同嗜者也、其技殊精、其法尤密、是以其名喧于都下、雖巨璫大畹之家、其庖厨食單、皆期於八百善云、〈○中略〉鵬齋老人撰、

料理茶屋

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0324 江戸にて料理茶屋といふものむかしはなし、〈寛文の頃迄もすくなかりし、寛文八年申の十月中、町中諸職人諸商人共、茶屋拜借し座敷をかり、より合相談仕候こと相聞候、自今已後左樣の者、ざしき借候者共、借し申間敷候、凡ふれごと江戸中を南北中を分ち、月番にかはる〴〵三げんより觸出す、此時此方中通〉 〈を觸るに、茶屋一軒もなし、〉西鶴が置土産、〈元祿六年板〉近き頃金龍山の茶屋に、一人五分づゝの奈良茶をしだしけるに、器物きれいに色々とゝのへ、さりとは末々のものゝ勝手のよき事となり、中々上方にもかかる自由なかりきとあり、これは寛文のころ、けんどん蕎麥切出來て、それに倣ひて慳貧飯といふも出たり、江戸鹿子、食見頓金龍山、品川おもだかや、同所かりがねや、目黑と并び載、又奈良茶堺町ぎおんや、目黑かしはや、淺草駒形ひものや是なり、〈○中略〉江戸鹿子に、奈良茶は別に出して、金龍山には食けんどんとあり、おもふに他の奈良茶は、今の如く一ぜんめしにて、一椀づゝの定なるべし、金龍山は其後よき料理したりと見ゆ、こはさきの奈良茶やとは異なる歟、衣食住の記に、享保半頃迄、途中にて價を出し食事せむ事、思ひもよらず、煎茶もなく、殊に行掛りに茶屋へ料理いひ付ても中々出來せず、其頃金龍山の茶屋にて、五匁料理仕出し、行がゝりに二汁五菜を出す、人人好みに隨ひ、ことの外はやる、其後兩國橋の詰の茶屋、深川洲崎、芝神明前などに、料理茶屋出來、堺町にて一人前百膳といふもの出きてより、是又所々に出たり、湯島祇園豆腐、女川菜飯、居酒やの大田樂、湯豆腐始る、寶暦の始より、吸もの、小付飯、大平、しつぽくのうまみ、金龍山の料理は跡なく、夫より宮地端々おびたゞしく、わけて明和のころより、辻々に軒を并ぶる、〈安永の頃より辻賣の油あげ、燒肴、餅菓子、唐菓子、一夜ずし、くさぐさ筆に及ばずと云り、〉明和八年ごろ、深川すさきに、鹽やき場を開き、兩國橋づめと云、今もある中村屋、洲先は升屋宗助なり、是はするがの淺間の坊叔阿彌と云ものになれりとか、

〔蜘蛛の糸卷〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0325 料理茶屋 百五六十年以前は、江戸に飯を賣る店はなかりしを、天和の比、始めて淺草並木に、奈良茶飯の店ありしを、諸人珍らしとて、淺草の奈良茶飯喰はんとて、わざ〳〵行きし由、近古のさうしに見えたり、〈本書より抄出し置きたれ共、坐右におきてむづかしければ引據せず、〉しかるに都下繁昌につれて、追々食店多くなりし中に、明和の比、深川洲崎に、升屋祝阿彌と云ひし料理茶屋、亭主は剃髪にて阿彌といふ名をつけしは、 京都丸山に倣ひたるなるべし、此者夫婦、人の機をみる才ありて、しかも好事なりしゆゑ、其住居二間の床、高麗縁なげし入り、側付を廣座敷とし、二の間三の間に座しきをかこひ、中の小亭、又は數奇屋鞠場まであり、庭中は推してしるべし、雲州御隱居南海殿、おなじく御當主の御次男雪川殿、しば〳〵爰に遊び給へり、此兩殿は其比の大名の通人なり、雪川殿のかくし紋、<tmc code="i032601"/>此の如く川といふ字の羽織、名あるたいこ持は著ざるはなし、升屋祝阿彌、件のごとき大家ゆゑ、諸家の留守居者の振舞といふ事、みな升屋を定席とせり、其繁昌今比すべきなし、廣座敷に望陀覽の三字を鑄物になし、地は呂色、縁は蒔繪、四角に象眼のかな物、額長さ六尺ばかり、裏書漢文にて南海君の祝阿彌へ賜ふゆゑよし、二百字ばかり記しあり、嗚呼盛唐の宮閣も亡ぶる時あり、此額近ごろ質の流れを買ひしとて、或人の家にて見しが、後に聞けば、今の白猿に與へけるとぞいひし、天明に磯せゝりの通人が遊ぶ料理茶屋、葛西太郎〈隅田川より秋葉へ往く堤の下り口、今は平岩、〉大黑屋孫四郎、〈同所秋葉〉甲子屋、〈眞崎〉四季庵〈中洲〉二軒茶屋、〈深川八幡境内〉百川、〈室町横町〉

〔塵塚談〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0326 四谷堀の内祖師、我等〈○小川顯道〉三十歳比迄は、地名をしれる人もなかりしに、近頃に至り、祖師堂はもちろん、堂宇の設も伽藍の如くに造建し、新宿より寺の門前迄、水茶屋料理茶屋(○○○○)、其外酒食の店、數百間簷をならぶ、

〔皇都午睡〕

〈三編上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0326 貨食屋(れうりや)などは、年々歳々の流行あれば、然と定規には言難けれど、當時名高きは深川八幡前平淸、八幡社地に二軒茶屋、向ふ島に大七、武藏屋、平岩、〈昔葛西太郎と云し也〉小倉庵、今戸に金波樓、大七出店川口、〈お直とて通り名也〉橋場に柳屋、尾花屋、〈深川仲丁の女や爰に移、〉甲子屋、千束に田川屋、〈駐春亭とも、〉兩國柳橋に梅川、万八、是は書畫會舞ざらへ等の席玄冶店に杉板、爰らを上の分として、中分に繁榮なる料理屋頗る多し、靑物丁讃岐屋、下谷の濱田屋、同鴈鍋、王子の海老屋、扇屋、雜司谷に茗荷屋、淺草に万年屋、鰻屋にて極々上々筋違見付外深川屋、駒形の中村屋、鳥越の重箱鰻、淺草奴鰻、水道橋鰻屋、南で狐鰻、尾張 丁の鈴木、茅場丁の岡本、靈岸島の大黑屋、新地の荒井、親仁橋大和田、人形町の和田、茶漬屋は通り山吹宇治里、笹岡、兩國にて五色、淡雪、淺草に蓬萊、菊屋など、書出しては際限なし、此餘そばや、居酒屋始め、名代の鮓屋、てんぷら屋など數へる時は、一丁内に半分餘は食物屋なり、余が三都の見立に食の第一に見立しが、中々食物是程自在なる所は、見ぬ唐土にも有まじと思はるゝなり、 扨立延(たちのび)たる貨食屋(れうりや)には、京攝の如く女給仕に出、是を仲居とは呼ず、女子衆なり、御趣意後なくなりたれど、女郎屋の欠引する女を輕子と云し也、町々の仲衆を江戸にては車方を車力といひ、荷を運ぶ者を輕子とも云なり、扨も中より下の料理屋、煮賣屋、居酒屋、蕎麥や、芝居茶や、總一統に女はつかはず、皆荒男の若い者が運ぶことなり、見たる處、女氣なけねば我雜(がさつ)の樣なれ共、其男皆物いひは優(やさ)しく叮嚀なり、中にも芝居茶やの棧敷土間へ案内、或ひは食物を持運ぶも皆若い者の役にて、大坂のお茶の子などゝ違ひて、氣轉よくきゝて辨利甚よろし、

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0327 昔は夜の煮賣御法度なり、寛文元年辛丑十二月廿三日、先日も如相觸候、町中茶屋煮賣仕候者、并振賣の煮賣、夜に入堅商賣仕間敷候云々、寛文十年庚戌七月、日暮六已後より煮賣可、前方相觸候、今程方々有之沙汰ども、彌可無用事、

〔料理茶屋取立願書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0327 新茶屋町開發之覺 一表御門前新茶屋町煮賣茶屋(○○○○)取立の義は、元祿十五年午年、御地頭所樣御住職佛頂院樣新規門前町家御願被成候砌り、表門前は茶屋町ニ御願被遊候、翌十六未年、下谷廣小路御木具屋勝井吉左衞門と申者、日蓮宗より感應寺旦那ニ而御座候ニ付、吉左衞門被召出、佛頂院樣被仰候は、感應寺の義、其方存之通、天台宗に被仰付候以後は、旦方不殘離檀、殊の外貧寺ニ有之候處、我等に住職被仰付候得共、相續難成ニ付、此度門内三拾間切込、表門前ハ茶屋町ニ願請候、其方相働キ京都ニも有候間、いろは茶屋と名付、茶屋町取立可申旨、御願被遊候ニ付、右吉左衞門半兵衞兩人御請負 申上候得ば、則名主役義は吉左衞門ニ被仰付候、依之助左衞門、新十郎、半兵衞、左兵衞、何右衞門、吉左衞門、以上六人の名代ニ而御請負仕、未ノ三月より表門前中門前ニ有來り候寺家拾貮間同境内〈江〉引直シ、金貮百貮拾兩ニ而、大工作兵衞と申者ニ相渡シ、段々引地致し、御門前町家に取立申候、未五月頃、佛頂院樣半兵衞ヲ被召寄仰候は、門前の義、吉左衞門ニ申付候處に、不働キ故引地不埒明、氣の毒ニ候、其方壹人成とも早々門前〈江〉引越、取立候樣に達而御賴被遊候、半兵衞申上候は、奉畏候、乍去私共只今迄罷在候所引越住居仕候上、若重而御住職御替り被遊候哉、如何樣の義も出來迷惑仕候義も可之候、爲末々御證文壹通拜領仕、御門前取立申度段奉願候得ば、尤ニ被思召、御院代安立院樣、寺家御役僧現受院、圓曉院、了音院御連判、佛頂院樣裏書御判ニ而、永々無相違新茶屋町の地主共、役義可相勤候、若相勤兼候者は、子孫諸親類縁者の者成共、地屋敷讓り渡シ、役義相勤候樣にと、六人之地主共方〈江〉、名主吉左衞門宛名ニ而被下置候、依之早速地形普請仕、同十一月六日御門前〈江〉引越候處、同月廿九日類燒仕、家財諸道具書物等燒失仕候段、其節御訴申上置〈キ〉、其後半兵衞壹人又候小屋掛ケ普請仕、又々町内いろは茶屋取立候所、其後上野御用地ニ付、只今の所〈江〉引地被仰付候ニ付、又候茶屋取立新茶屋町と號、數年繁昌仕來り候、 一寶永四年亥六月、勝井吉左衞門名主代いの字屋庄兵衞と申者、不埒之義有之候ニ付、東叡山御執當樣より、表門前の義、御公儀樣〈江〉御願申上、潰し申樣にと、其節御住職先五佛院樣〈江〉被仰渡候ニ付、無是非御願被成、鳥居伊賀守樣御内寄合ニ而、御門前茶屋町御停止ニ被仰付候、依之庄兵衞義退役仕候、同七月十七日名主吉左衞門病身の由ニ而、名主役義差上申候、同十九日半兵衞に名主役義被仰付候間、翌廿日五佛院樣、半兵衞義御供ニ被召連、本多彈正少弼樣〈江〉御出被成、御取次高田半平殿迄、名主役替り候上は、以前之通いろは茶屋町取立申度旨、地主共願の段被仰上候處、御口上ニ而は埒明不申候間、口上書御持參被成候樣ニ被仰渡、十七日の日付ニ而、地主共三人、 感應寺へ願書差上置候由被仰、同廿三日御持參被成候、御取次明石新藏殿被仰候ニは、此願書の義は、上野御執當楞伽院〈江〉御届被成候樣ニと被仰候ニ付、則楞伽院樣〈江〉半兵衞御供ニ被召連御出被成、段々被仰候處、御合點の上、又候彈正少弼樣〈江〉御出被成、右願書被差上候得ば、御留置被成、明廿四日窮ニ罷出候樣被仰候候、依之翌廿四日五佛院樣、則半兵衞御供ニ而、明日被仰候通御伺ニ罷出候由御申上候得バ、私共右願之通被仰付候間、御月番堀丹後守樣〈江〉參リ、御帳面ニ付置候樣ニと、内山貞右衞門殿被仰渡候、依之直ニ丹後守樣〈江〉御出被成、御帳面ニ御附被成候、翌廿五日右の為御禮、地主共三人御供ニ被召連、五佛院樣彈正少弼樣へ御出被成、御取次山本杢右衞門殿〈江〉右の御禮被仰上、地主共三人御帳ニ付罷歸り申候而、以前の通表御門前茶屋町ニ取立、唯今迄數拾ケ年以來繁昌仕來候、右半兵衞より當名主迄六代名主役義無滯相勤來り候、

〔料理茶屋取立願書寫〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0329 天保十三壬寅年三月十九日御書付、端々料理茶屋渡世替被仰出候、以前迄、谷中茶屋町ニ料理茶屋(○○○○)渡世致居候もの左之通、 谷中天王寺表門前新茶屋町 〈松五郎店〉東屋吉五郎 〈同店〉金子屋長右衞門 〈甚吉店〉大津屋文藏 〈同店〉岡村屋久五郎 〈甚右衞門店〉越前屋六右衞門 〈左兵衞店〉福島屋佐吉 〈傳左衞門店〉木村屋總吉 〈和平店〉越中屋常吉 〈佐兵衞店〉成田屋孫三郎 同所總持院門前 〈善右衞門店〉萬屋たき〈後見〉久兵衞 〈同店〉島村屋淺五郎 右同斷煮賣臺屋(○○○○)と唱候者左の通 谷中天王寺表門前新茶屋町 〈長次郎店〉田川屋作次郎 〈同店〉武藏屋熊次郎 〈茂吉店〉駿河屋 七郎兵衞 谷中町 〈喜八店〉越後屋金次郎

〔寛天見聞記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0329 享和の頃、淺草三谷ばしの向に、八百善といふ料理茶屋流行す、深川土橋に平淸、大音寺前に田川屋、是等は文化の頃より流行せし料理屋也、或人の噺に、酒も飮あきたり、いざや八百 善へ行て、極上の茶を煎じさせて、香の物にて茶漬こそよからんとて、一兩輩打連て八百善へ行て、茶漬飯を出すべしと望しに、暫く御待有べしと、半日ばかりもまたせて、やう〳〵にかくやの香のものと、煎茶の土瓶を持出たり、かの香の物は春の頃よりいと珍らしき瓜茄子の粕漬を切交ぜにしたる也、扨食おはりて價をきくに、金一兩貮分なりと云、客人興さめて、いかに珍らしき香の物なればとて、あまりに高直也といへば、亭主答て、香の物の代はともかくも、茶の代こそ高直なり、茶は極上の茶にても、一ト土瓶へ半斤は入らず、茶に合たる水の近邊になき故、玉川迄水を汲に人を走らしたり、御客を待せ奉りて、早飛脚にて水を取寄せ、此運賃莫大也と被申ける、

〔江戸流行料理通大全〕

〈初編〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0330 東都之大、閭閻闐噎、古稱八百、今餘二千、凡飮食之鬻於市者、五歩一樓、十歩一閣、魚標酒旆、絡繹相望、日本堤北、有八百善者、稱都下第一、公侯大人、命割烹奇饌、美景良辰、期賞心樂事、〈○中略〉 壬午〈○文政五年〉春日 蜀山人

〔江戸名物詩〕

〈初編〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0330 百川樓參會〈日本橋浮世小路〉 諸家振舞名弘宴、貸切更無一日休、浮世小路浮世客、百千來會百川樓、 萬八書畫會〈淺草平右衞門町柳橋北角〉 萬八樓上書畫會、不晴雨御來臨、先生席上皆揮毫、帳面頗付収納金、 田川屋料理〈金杉大恩寺前〉 風爐場淨在于庭、酔後浴來酒乍醒、會席薄茶料理好、駐春亭是駐人亭、 平淸會席〈深川〉 會席風流辰巳誇、坐鋪近對水之涯、尾花梅本山本客、馴染連來此地奢、 大七洗鯉〈向島〉 客込奥庭中二階、温泉石滑暖如蒸、酒肴色々喰來處、洗出鯉魚數片冰、 武藏屋濃漿〈向島〉 向島高名武藏屋、春花秋月客來頻、葛西太郎今何在、一碗濃漿風味新、 海老屋料理〈王子〉 欄干四面水潺湲、王子一番普請殷、初午稲荷權現祭、晩來賣切客空還、

〔浪華の賑ひ〕

〈二篇〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0331 浮瀨 此遊宴の樓は、新淸水の坂の下にありて風流の席なり、遙に西南を見わたせば、海原往來ふ百船の白帆、淡路島山に落かゝる三日の月、雪のけしきは言もさらなり、庭中には花紅葉の木々春秋の草々を植て、四時ともに眺めに飽ざる遊觀の勝地なり、名にしおふ浮瀨幾瀨の貝觴をはじめ種々の珍觴、又七人猩々の大さかづき等を秘藏す、浪花に於て貨食家(りやうりや)の魁たるものなり、 一方樓 此家は難波村中の東にあり、江南隨一の大貨食家にして、宴席廣く美を盡し、庭前の林泉風流なり、さる程に諸祝儀の振舞、構内の參會、數百人の集客をも引うけて、饗應ごと他の小料理屋の及ぶ處にあらず、さればとて一兩輩の遊客たりとも、其饗應程よくして歡樂せしむるは、流石練磨の功といふべし、原より座敷料理むき萬寛濶にして苛つかず、僅の杯を傾るにも、花街に譬れば揚屋大靑樓等に遊ぶ心ぞせらる、

仕出

〔皇都午睡〕

〈三編上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0331 貨食に名高き鳥越の八百善は、以前は客の誂らへにて自由なること出來たれど、當時は精進料理の仕出(○○)しのみをして、町家にて三十人五十人の法事佛事あれば、誂らへに任せ、朱黑靑漆とか、膳碗家具迄殘らず取揃へ、引菓子に至る迄揃へ、送り膳の提箱迄持來りて、勝手混雜なく殊に辨利よろし、諸道具は火早き所ゆゑ、内に有ども遣はず、皆誂らへること也、

〔江戸名物詩〕

〈初編〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0332 瓢箪茶漬〈日本橋浮世小路〉 俳偕之開小集筵、浮世茶漬忙出前(○○)、坐間並掛多少句、客人笑指是翁連、 八百善仕出〈新鳥越〉 八百善名響海東、年中仕出(○○)太平風、此家欲鹽梅妙、請見數編料理通、

奈良茶

〔近世奇跡考〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0332 金龍山奈良茶飯 事跡合考に云、明暦大火の後、淺草金龍山〈待乳山〉門前の茶店に、始て茶飯、豆腐汁、煮染、煮豆等を整へて奈良茶と名づけて出せしを、江戸中はし〴〵よりも、金龍山の奈良茶くひにゆかんとて事の外めづらしき事に興じけり、それよりおひ〳〵さま〴〵の美膳店出來しより、いつしか彼聖天の山下の奈良茶衰微におよびたり、〈案るに、これ江戸にならちやめしを賣るはじめなるべし、〉

〔守貞漫稿〕

〈五生業〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0332 茶漬屋 茶漬飯ノ略也、京坂其始ヲ詳カニセズト雖ドモ、元祿六年印本西鶴置ミヤゲニ曰、近キ比、金龍山ノ茶屋ニ一人五分ヅヽノ奈良茶ヲ仕出シケルニ、器ノキレイサ色々調ヘ、サリトハ末々ノ者ノ勝手能コト也、中々上方ニモカヽル自由ナシ云々、金龍山ハ今ノ待乳山ヲ云也、一人五分ハ價銀五分也、是ニヨレバ、京坂ハ元祿以後ニ始ルコト明カ也、〈○中略〉右ノ奈良茶、皇國食店ノ鼻祖トモ云ベシ、 今世江戸諸所ニ種々ノ名ヲ付ケ、一人分三十六文、或ハ四十八文、或ハ七十二文ノ茶漬飯ノ店、擧テ數ベカラズ、〈○中略〉大坂道頓堀奈良茶飯、是江戸ヲ學ビタルベク、古クヨリ有之、其他新町ノ春日野一人三十六文、天王寺前ノ福壽、是ハ享和比ヨリ始ル、野中ノ轡屋ハ文政中ニ始ル、難波新地ノ朝日野、天保ニ始メ行レ、近來天滿ノ社前、博勞稻荷ノ前、三津寺前ニ店ヲ出ス、

〔江戸總鹿子名所大全〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0332 諸職名匠諸商人 奈良茶 堺町 ぎおんや 目黑 かしわや 淺草駒形 ひ物や

〔江戸名物詩〕

〈初編〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0333 濱田屋奈良茶〈山下佛店〉 茶碗大平鯉濃漿、煮附吸物鯛潮煮、坐鋪客夥濱田屋、混雜唯聞打手聲、

飮食商

〔懷寶便覽〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0333 文化十酉年三月廿八日 食類商賣人と申ハ 一雜菓子 一煮賣肴 一同居酒 一汁子團子 一水菓子 一菜飯 一飴 一料理茶屋 一奈良茶 一鮓 一茶漬 一蕎麥 一麥飯 一醴 一餅菓子 一煎餅 一揚物〈○揚物以下朱書〉 一蒲鉾 一漬物 一煮豆 一燒玉子 右五品ハ、文化十一戌年八月九日、樽與左衞門殿〈○江戸町年寄〉江伺之上、除ニ相成、

〔德川禁令考〕

〈四十九魚鳥野菜并諸食物商〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0333 文化元子年十二月十四日 食物商ひ之儀ニ付年寄〈江〉申渡〈根岸肥前守殿(江戸町奉行)御渡書〉 何品ニ寄らず、食物商ひ致し候者、前々より多分相增候儀、畢竟貴賤共、奢之心より無益之費を不顧故之事ニ候、此度江戸内食物商ひ致し候者、相調候處、六千百六十軒餘有之候間、此度右軒數委細帳面にいたし置、此上右商ひ相止メ、外商賣ニ相成候分、都〈而〉五ケ年之内減候分ハ減切之積相心得、來ル午年ニ至リ、軒數相改メ申聞候樣可致候、 十二月 右御書取御渡被成候ニ付、同廿一日、樽與左衞門役所ニ〈而〉、組々肝煎名主小口年番名主〈江〉申渡、 申渡 一勝手ニ〈而〉食物商賣相仕舞候分ハ、減切之人數ニ入候事、 一親子兄弟、或ハ養子致し、商賣相續之儀ハ承屆可申候、 一養子等ニ〈而〉家業相續致し候ニハ無之、右商賣體計、親類〈江〉相讓候儀ハ難成候、 一堺町、葺屋町、木挽町、并新吉原町之儀ハ、是又此度調之外ニ相心得可申事、 一日々出稼之食物振賣之ものハ、其日稼之儀ニ付、際限無之候間、此度調之外ニ可存事、 〈子〉十二月廿一日 文化八未年正月廿七日 食物商ひ之儀ニ付申渡〈小田切土佐守殿(江戸町奉行)御内寄合おゐて、根岸肥前守殿御渡書、〉 町年寄〈江〉 御府内町々食類商ひ之儀、去ル子年〈○文化元年〉改之上、有軒数六千百六拾五軒之内、六千軒を目當ニ致し、五ケ年之内ハ減切ニ致し、五ケ年過改之積被仰出、候間、減候分ハ勝手次第ニ致し、商賣相始候分ハ、右人數之外〈江〉不出樣、去ル子年申渡、年番名主肝煎名主〈江〉申含、總名主〈江〉も名前大帳を仕立、無間斷取調候積、樽與左衞門於役所申付候處、右五ケ年も相濟候故、去午年改取被掛候處、寅年春、芝車町より出火致し、稀成大火ニ〈而〉、諸商人共家財并商道具を失ひ、渡世可致樣も無之、當座之凌ニ食物商ひ致し取續、勿論其砌ハ上よりも格別之御救御手當も有之時節故、名主共も制方不行屆、勘辨も加罷在、子年極方より增候も有之由、尤當分之凌ニ相始候食物之商ひハ、調之上爲相止、商賣替可致候處、無其儀段ハ、支配之名主共不束ニ候得共、年限中、無間も大造之火災も有之候事ニ付、輕き者共急ニ商賣替致し候〈而〉ハ、難儀之筋も可之と、是迄ハ吟味之不沙汰ニも、此度格別之勘辨評議之上、猶又當未年より來〈ル〉亥年迄五ケ年、改方年延之儀伺之上申渡候、然ル上ハ 以來支配限名主共、其支配町々ニ食類商ひ候軒數を相調、可成丈ケ早速相減候樣取計、減候分ハ、當七月http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra_ins002001.gif 毎年七月十二月大帳ニ認メ、町年寄〈江〉申立、町年寄より兩番所〈○南北町奉行所〉江可申聞候、右ハ御慈悲之趣意を以、食物商賣減方をも被仰付候儀ニ付、右之趣嚴重に相守可取計候樣、得と名主共〈江〉も申渡候樣可致、 未正月 天保七申年四月 食物商人之儀ニ付町年寄より申渡 御府内町々食物商人共、文化元子年相改候軒數六千百六十五軒之内、六千軒を目當ニ致し、五ケ年之内減候分、減切申渡候處、年限中、同三〈寅〉年、芝車町よりの大火ニ〈而〉人數相增、一時ニ商賣爲差止候〈而〉ハ難澀之趣を以、同八未年中、伺之上、題帳差出、家業讓渡之儀、親子兄弟養子之外不致、右寅年相始候分ハ、寄々商賣替之積、減方取計候樣、五ケ年宛、追々年延申渡、去未年、年限ニ付取調候處、當時全ク五千七百五十七軒有之候間、今般右軒數を元高ニ相定、以來、取扱方、左之通可相心得候、 一不何品、食物商之外、新規者勿論、縱令似寄之品取扱候ものにても、食物商〈江〉商賣替等も、一切不相成候事、 一相續之儀、以來親子兄弟養子之外にても、差障無之分ハ承屆候條、老衰又ハ病死等引受相續申出候節、都〈而〉是迄之通、當人町役人連印、其組合肝煎世話掛年番名主共之内加印可申出候事、 一所替、是迄之通差支無之分、當人雙方町役人連印之上、前條同樣加印ニ〈而〉可申出、名前替、家主替、印形改等も同樣之事、 一病死跡差當り相續人無之、後家娘姉妹等之名前等ニ致し候分、後見を付可申出、當人養子にて 及離縁、相續申出候ハヾ、家持ハ親類、地借店借ハ地受人店受人印形致し、是迄之通、前同斷連印可申出候事、 一御仕置等被仰付、減切相成候者ハ、其時々可申出候事、 一欠落致し、欠所ニ相成候分ハ減切、家財妻子〈江〉被下候分、相續是迄之通、前同斷連印を以可申出候事、 但是迄之通、堺町、葺屋町、木挽町、并新吉原町、且出稼之食物商人共ハ、右申渡之外ニ候事、 右之通相心得、以後共猶不相弛樣嚴重ニ可取計候、食物渡世之者、株式差定候筋ニは無之、右渡世柄之もの、人數不相增樣ニとの御趣意ニ候間、家業賣買ニ紛敷儀、并其最寄之組合之名目、或者行事等相立候樣之心得違無之樣、名主支配限、月行事持場所共、不洩樣壹人別ニ得と可申聞候、 右之趣者、町御奉行〈江〉伺之上申渡候儀ニ候條、可其意候、 〈申〉四月

雜載

〔徒然草〕

〈四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0336 鯉ばかりこそ御前にてもきらるゝ物なれば、やんごとなき魚なれ、鳥には雉さうなきものなり、雉松茸などは、御湯殿の上にかゝりたるも苦しからず、其外は心うき事なり、

〔塵塚物語〕

〈四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0336 細川勝元淀鯉料理之事 管領右京大夫勝元は、一家無雙の榮耀人にて、さま〴〵のもてあそびに財寶をついやし、奢侈のきこえもありといへり、平生の珍膳妙衣は申に及ばず、客殿屋形の美々しき事言語同斷なりと云々、此人つねに鯉をこのみて食せられけるに、御家來の大名、彼勝元におもねりて、鯉をおくる事かぞへがたし、一日ある人のもとへ勝元を招請して、さま〴〵の料理をつくしてもてなしけり、此奔走にも鯉をつくりて出しけり、相伴の人三四人うや〳〵しく陪膳せり、扨鯉を人々おほ く賞翫せられて侍るに、勝元もおなじく一禮をのべられけるが、此鯉はよろしき料理と計ほめて、外のこと葉はなかりけるを、勝元すゝんで、是は名物と覺え候、さだめて客もてなしのために使をはせてもとめられ候とみえたり、人々のほめやう無骨なり、それはおほやう膳部を賞翫するまでの禮也、切角のもてなしに品をいはざる事あるべうもなし、此鯉は淀より遠來の物とみえたり、そのしるしあり、外國の鯉はつくりて酒にひたす時、一兩箸に及べば其汁にごれり、淀鯉はしからず、いかほどひたせども汁はうすくしてにごりなし、是名物のしるし也、かさねてもてなしの人あらば、勝元がをしへつること葉をわすれずしてほめ給ふべしと申されけるとなり、まことに淀鯉のみにかぎらず、名物は大小となく其德あるべきもの也、かやうの心をもちてよろづに心をくばりて味ふべき事と、その時の陪膳の人の子あるひとのもとにてかたり侍るとぞ、

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0337 伊呂三絃に、其頃のひねりたる料理をいふに、何も入れずに鷄頭の葉のはしらかし汁、割ずるめにあらめ置合たる酒びて、是よりは古代靑鷺鹽鴨增ぞかし、とかく手づまのきいたかるい料理より、へたくろしう、うまきがよしといへる、今から見ればいとをかし、

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0337 鮧(ナマヅ)魚は寛永の料理集にも載たれど、是は近在にあるを廣く擧たる物なり、大和本草に、箱根より東に是なしと有、これも又誤りなり、日東魚譜に、昔は江戸になまづなかりしが、享保十四年九月、井頭より水溢出たることありし、其より鮧魚出來けるよしみゆ、增補總鹿子に、往昔は此魚關東には曾てなかりき、享保年中より甚多くなれり、西國のなまづとは其形やゝ異なり、關東にては下品の人のみ食す、〈西國の産と異なりといへるは非なり、いづくにも色のかはれるあり、〉團魚を載せざるはこれもいと下品のものにて、賣ことも稀なりしにや、寛永料理集に、眞龜は吸もの、さしみ、石がめも同といへる、眞龜はすつぽんをいへり、浪花にてはもとより好て食たるものなり、諸艶大鑑、〈二〉世渡り とて丸魚(スポン)突になつて、天滿におはしける、其繪をみるに、ヤスをもて突て取なり、元祿曾我、伏見船の乘合にて、京の人と大坂の者と物爭ひする處、大坂の人、料理したすつぽんがあるが、京人、くゝし鹿子や紅染は、都でなければならぬ云々、京は其頃迄すつぽん食ふもの稀なりしを知べし、諸藝太平記〈四〉元祿十五年板、遊女がことをいふに、たとへ納戸ではすつぽんの料理をまいらうとも、それはしりてがない云々、又元祿十七年草子誰袖海に、京人江戸に下り居たる處、寒さは雞卵ざけにわすれ、すつぽんもくひならひ、雞のなき内はこれもましと云々あるをみるに、下賤の食物なり、それより寛延四年の江戸鹿子新增迄は五十年に近きに、猶産物の内にかずまへいれぬは、鮧よりも劣りたるものにてありしなり、寛延七年草子伽羅女に、新地堀江の料理茶屋にて、鰻のかばやき丸龜(スツポン)まいる云々、難波にては、其頃うなぎと並び行はれたり、江戸は下手談義に、賣卜者のことをいふ處、柳原の長堤に泥龜(スツポン)の煮賣と軒をならべと有、寛延寶暦の頃は、此體にて葭簀の小屋にて、今の山鯨の風情よりあさましき賣物と見えたり、〈是故にや、今は價うなぎよりも貴けれど、よきうなぎやには是を賣らず、〉

〔浪花襍誌街迺噂〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0338 千長、万松さんまだ分らぬものがある、此じの字の下へ○をかいたはこりやア何だらふ、万松、さればさ馬鹿〳〵しく聞れもしめい、あんまり知惠がねいやうだ、千松、旅の恥はかきずてだ、きいて見や正、オイ姉さん、此じの字の下へ○をかいたのはこりやア何だね、已前の女また奥よりいでゝ、女房、ハイ〳〵それはまるで厶り升、万松、わからぬかほにて、まるは知つて居るが、まさか四角とは見ねいが、其まるが分らぬのだ、千長、へゝ知れやした、姉さん團子のことだらふ、女大わらひにわらひふき出しながら奥へゆく、女房、イヘ〳〵めッさうな、コリヤお江戸でいふすつぽんで厶り升、万松、又やりそくなつた、なるほど土鱉(すつぽん)のことを上方で丸といふことはきいてゐたが、畫で○がかいてあるから分らねい、そして上にあるじの字は何の印だね、女房、ハイ ハイアレハじ○といふことで厶り升、千長、また分らねい、じ○とはどふいふ譯だね、女房、ハイすつぽんは宇治から出ますのが上品で厶り升から、宇治○とかきますので厶り升が、それを略して只じ丸とばかりかき升、また家によりましては、今ひとつ略しまして○と計もかき升處も厶り升、オホヽヽ万松、イヤじ○の講釋おそれいりやした、それをも肴に出してくんなせい、

〔北國奇談巡杖記〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0339 鱒の魚舟 同國〈○越中〉於矢部川は水流激して勢ひはやし、此川に鱒魚多し、毎年卯月のころ盛にいづるを、引あげましまゝにて脊腹ともに斷て、内に鹽をしたゝかふくませ、そのうへを靑竹幅一歩に削たる簾にまきしめ、靑苧にて、三ところむすびて、川中に積置、三十日ばかりをへて引あげもてなすに、味きこと龍のひしほに越るとて、國主へも貢し、諸士にも配りて後、鄕民等この川邊にいでゝ酒琴の遊宴を催す、これを鱒のなぶねとぞ申侍る、

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0339 一鳥類上置(○○○○)之事 白鳥〈水舁又首骨〉鶴〈黄筋〉菱喰〈黑足〉雁〈水かき〉鴨〈赤足〉五位鷺〈夕顔〉雲雀〈掛爪〉鶉〈黄足〉水札〈尾花筋〉

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0339 一から花(○○○)とは、薄板にて作りたる花なり、又結花の内にても、此國になきはなを云也、一小刺(○○)といふは、小串の物をいふ也、

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0339 一改敷(○○)品々之事 鮑〈海草、〉鱸〈榎葉、〉海松〈榎葉、〉桃葉鯉〈桃花、〉生鰹〈庭床、〉鮎〈藤葉、〉鴈〈水草、〉霍〈蘆葉、〉鴨蘆鴫〈をもだか、〉鶉〈振笹、〉雲雀〈地草、又蔦芝草、〉 右之外鳥魚によからず檜葉を敷べし、又年葉の改敷といふ事有、口傳、

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0339 一仁和寺殿競馬行幸御膳并御遊酒肴事〈保延三年九月廿三日、伊與守忠隆奉行、○中略〉 上達部酒肴 殿下前 酒肴五種〈酢鹽〉 盛菓子六種〈已上色々以薄樣皆敷(○○)〉 已上折敷二枚 大臣前 酒肴四種〈酢鹽〉 交菓子一坏 已上折敷二枚 上達部 酒肴四種〈中居交菓子〉 已上樣器〈小春日〉酒器例器也、〈已上以薄樣皆敷(○○)〉

〔嬉遊笑覽〕

〈十上飮食〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0340 かひしき、くだものいそぎ、源氏物語あづまや、尼君のかたよりくだものまいれり、筥のふたに紅葉つたなどをりしきて、ゆゑなからずとりまぜてしきたる紙に、ふつゝかに書たるもの、くまなき月にふとみゆれば、めとゞめ給ふほどに、くだものいそぎにぞ見えける、此は薰が辨の方よりの歌に目をとむれば、菓に心の移るやと見ゆると、草子の地のたはぶれながら、此俗諺ありしなるべし、又あげ卷に、あじろのひをも心よせ奉りて、色々の木の葉にかきまぜもてあそぶ云々、是もかひしきなり、調味故實しぎの別足を包むことの處、下はをしきなり、つゝみたるはこうばいだんし、かいしきの葉はなんてんちく(○○○○○○)也云々、ふるくより南天は難轉の名詮にて、鏡の背のもやうに付、又手水鉢の旁に植る、〈甲陽軍艦〈九〉勝時を行ふ處に、なんてんの御水入と有などによる歟、〉一代女〈四〉泉州堺の處に、湊の藤見に、大重箱に南天を敷て、赤飯山の樣にして行ます、〈○中略〉庖丁聞書、改敷品々の事、〈○中略〉あり、何によりて箇樣に定めたる歟覺束なし、口傳と云る年葉は鳥柴成べし、調味故實に見ゆ、木は何にても鳥を付たる木を云にや、饅頭のかひしきは前にいへり、改鋪といふも假字書なるべし、古くかいのかなを用ふれど誤なるべし、かひにて飼と同意、物のあはひに插むをかひ物といふ是なり、くわへさすることなり、

〔枕草子〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.0340 木は ゆづりはのいみじうふさやかにつやめきたるは、いとあをうきよげなるに、おもひかけずにるべくもあらずくきのあかうきら〳〵しう見えたるこそいやしけれどもおかしけれ、なべての月ごろは、露も見えぬ物の、しはすのつごもりにしもときめきて、なき人のくひ物にもしく(○○○○○○○)にや とあはれなるに、又よはひのぶるはがための具にもしてつかひためるは、いかなるにか、紅葉せん世やといひたるもたのもし、


Last-modified: 2019-03-15 (金) 09:48:59 (386d)